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  • 特表-複合フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-27
(54)【発明の名称】複合フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/085 20060101AFI20221220BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20221220BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20221220BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20221220BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20221220BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B32B15/085 A
B32B15/20
B32B27/20 Z
B32B27/32 Z
B32B7/12
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522828
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2020079159
(87)【国際公開番号】W WO2021074364
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】19203777.8
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522152441
【氏名又は名称】コンスタンティア・タイヒ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーゲンベルガー・アルフレート
(72)【発明者】
【氏名】シュタイナー・マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ファイヒティンガー・ローラント
(72)【発明者】
【氏名】レロタ・パトリック
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA02
3E086AB01
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB85
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA40
4F100AB10A
4F100AB33A
4F100AC03B
4F100AK06B
4F100AK28B
4F100AK64B
4F100AK66B
4F100AL09B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA17B
4F100CA23B
4F100CB00C
4F100EH20B
4F100EH20C
4F100GB16
4F100GB23
4F100JA11B
4F100JK12A
4F100JK13A
4F100JL11C
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
アルミニウム層(2)と、このアルミニウム層(2)上に共押出によって多層状に押出された押出層(3)とを有する、カバーシートを製造するための複合フィルム(1)。
記押出層(3)は、封止層(6)、及び封止層(6)とアルミニウム層(2)との間に配置された付着促進剤層(5)を含む。前記封止層は、少なくとも第一のポリマー構成分及び第二のポリマー構成分を有するポリマーマトリックスを含み、この際、封止層(6)のポリマーマトリックスには、剥離力添加剤、特にタルクなどの鉱物性フィラーが加えられている。前記第一のポリマー構成分はポリオレフィンから選択され、そして前記第二のポリマー構成分は、それぞれ900kg/m未満の密度を有するポリオレフィンプラストマー及び/またはポリオレフィンエラストマー、並びにこのような材料の組み合わせから選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム層(2)及び封止層(6)を有する複合フィルム(1)、特にカバーシートを製造するための複合フィルム(1)において、前記封止層(6)は、少なくとも第一のポリマー構成分及び第二のポリマー構成分を有するポリマーマトリックスを含み、封止層(6)の前記ポリマーマトリックスには、剥離力添加剤、特に鉱物性フィラー、例えばタルクが添加されており、前記第一のポリマー構成分はポリオレフィンから選択され、及び前記第二のポリマー構成分は、それぞれ900kg/m未満の密度を有するポリオレフィンプラストマー及び/またはポリオレフィンエラストマー、並びにこのような材料の組み合わせから選択される、複合フィルム(1)であって、
前記複合フィルム(1)が、前記アルミニウム層(2)上に共押出によって多層に押出された押出層(3)を含み、前記押出層(3)が、封止層(6)、及び封止層(6)とアルミニウム層(2)との間に配置される付着促進剤層(5)を含むこと、及び前記押出層(3)が、10~18g/m、特に10g/mと15mとの間の総厚を有し、及び前記付着促進剤層(5)の厚さが殊に3g/mと5g/mとの間であり、及び封止層(6)の厚さが殊に6g/mと10g/mとの間であることを特徴とする、前記複合フィルム(1)。
【請求項2】
ポリマーマトリックス中の第一のポリマー構成分の割合が、殊に約30重量%と約70重量%との間であることを特徴とする、請求項1に記載の複合フィルム(1)。
【請求項3】
第一のポリマー構成分が、ポリエチレンであり、殊に低密度ポリエチレンであることを特徴とする、請求項1または2に記載の複合フィルム(1)。
【請求項4】
ポリマーマトリックス中の第二のポリマー構成分の割合が、30重量%と70重量%との間であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つに記載の複合フィルム(1)。
【請求項5】
好ましくは軟質のまたは半硬質のアルミニウム箔からなるアルミニウム層(2)が、10μm~70μm、特に20~38μmの厚さで形成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載の複合フィルム(1)。
【請求項6】
押出層(3)が、封止層(6)に隣接する外側のカバー層(7)を有し、このカバー層(7)が1g/mと3g/mとの間の厚さを有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一つに記載の複合フィルム(1)。
【請求項7】
第二のポリマー構成分が、エチレン/プロピレンコポリマー、特に半結晶性エチレン-プロピレンコポリマー(これらは、殊に、ジエンを実質的に含まない)、アルファ-オレフィンコポリマー、特にエチレン/アルファ-オレフィンコポリマー及び/またはプロピレン/アルファ-オレフィンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンエラストマー、並びにこのような物質の組み合わせから選択されるポリマー成分を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一つに記載の複合フィルム(1)。
【請求項8】
包装容器の封止のためのカバーシートであって、請求項1~7のいずれか一つに従う複合フィルム(1)から、殊に打ち抜きまたは切り取りによって製造される、前記カバーシート。
【請求項9】
複合フィルム(1)、特にカバーシートの製造のための複合フィルム(1)の製造方法であって、次のステップ:
-アルミニウム層(2)を用意するステップ、及び
-前記アルミニウム層(2)に隣接する付着促進剤層と、この付着促進剤層(5)に隣接する封止層(6)とを含む多層押出層(3)を、前記アルミニウム層(2)上に押出し、この際、前記押出層(3)は、10~18g/m、特に10g/mと15g/mとの間の総厚を有し、及び前記付着促進剤層(5)の厚さは、殊に3g/mと5g/mとの間であり、及び前記封止層(6)の厚さは、殊に6g/mと10g/mとの間であるステップ、
を含み、
前記封止層(6)は、少なくとも第一のポリマー構成分及び第二のポリマー構成分を有するポリマーマトリックスを含み、この際、前記封止層(6)のポリマーマトリックスには、剥離力添加剤、特にタルクなどの鉱物性フィラーが加えられており、及び前記第一のポリマー構成分はポリオレフィンから選択され、及び前記第二のポリマー構成分は、密度がそれぞれ900kg/m未満のポリオレフィンプラストマー及び/またはポリオレフィンエラストマー、並びにこのような材料の組み合わせから選択される、
前記方法。
【請求項10】
ポリマーマトリックス中の第一のポリマー構成分の割合が、殊に約30重量%と約70重量%との間であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第一のポリマー構成分が、ポリエチレンであり、殊に低密度ポリエチレンであることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
ポリマーマトリックス中の第二のポリマー構成分の割合が、30重量%と70重量%との間であることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
好ましくは軟質のまたは半硬質のアルミニウム箔からなるアルミニウム層(2)が、10μm~70μm、特に20~38μmの厚さで形成されていることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
押出層(3)が、封止層(6)に隣接する外側のカバー層(7)を有し、このカバー層(7)が殊に1g/mと3g/mとの間の厚さを有することを特徴とする、請求項9~13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
包装容器を封止するためのカバーシートを製造する方法であって、このカバーシートは、請求項9~14のいずれか一つに記載の方法によって製造された複合フィルム(1)から、殊に打ち抜きまたは切り取りよって製造される、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合フィルム、カバーシート、及び複合フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に食品の分野及びペットフードの分野において、包装容器を封止するためには、いわゆるカバーシート(Deckelplatine)が使用され、これは、包装容器を封止するために、容器の縁にシーリングされる。このような包装容器の例には、例えばヨーグルトのカップ、トレーまたは類似の容器などが挙げられる。
【0003】
特に、良好な加工性、有利なバリア特性及びリサイクル性のために、これらのカバーシートはアルミニウム箔から製造されることが多く、これは、場合によっては、印刷、塗工及び/またはエンボス加工されており及び封止面上で封止用材料でコーティングされている。実施形態に依存して、封止用材料としては、例えば積層封止フィルム、封止用ワニス、押出コーティングまたはこれらの技術の組み合わせが使用される。この際、アルミニウム箔上に施用された層は、多くの場合に、封止性の保証に役立つだけでなく、場合によっては、例えば向上した耐穿孔性、より有利な引裂き挙動、高い破裂圧力などの構造的な特性を、カバーシートに付与するのにも役立つ。
【0004】
DE10253110B4(特許文献1)は、例えば、少なくとも三層の共押出コーティングでコーティングされたアルミニウム層を備えたカバーシートを開示している。
【0005】
このカバーシートからはアルミニウム部分のみが問題なくリサイクル可能であるため、封止層として施用される材料の部分を減少させることに関心がもたれている。しかし、これは、技術的要件と相反する。すなわち、一方では、封止層は、十分に良好な封止付着性を生じさせるために十分に強くなければならず、他方では、封止層は良好な剥離挙動を有するべきである、すなわち、これは、包装容器からカバーシートを引き剥がすために消費者が過度の力を使用することなく(及びカバーシートが引き裂かれることなく)可能でなければならない。追加的に、封止層が、包装される物、例えば食品に適したものであることも考慮されなければならない。剥離挙動を改善するためには、剥離力添加剤(Peelkraft-Additive)、特に鉱物性フィラー、例えばタルクを封止層の材料に加えることができる。しかし、この鉱物性フィラーは、ポリマー材料の加工性を悪化させ、押出の時の問題を招く。それ故、比較的大きい層厚を有する然るべき封止層を押し出す必要がある。
【0006】
WO2012/113530A1(特許文献2)は、共押出された層と組み合わせたアルミニウム箔からなる複合フィルムを記載している。この共押出された層は、フィラーと混合されたポリプロピレンからなる中間層と、両側でそれに接続された、無水マレイン酸で変性されたポリプロピレンからなる付着促進剤層とからなる。
【0007】
US5,626,929A(特許文献3)は、ウレタン系接着剤を用いて封止層と積層されたアルミニウム層を含む複合フィルムを記載している。この封止層は、ブテン-1/エチレンコポリマーとエチレンホモポリマーとの混合物と、無機フィラーとから構成される。この封止層は、24g/m~48g/mの厚さを有し、そのため、該複合フィルムのプラスチックの割合は高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE10253110B4
【特許文献2】WO2012/113530A1
【特許文献3】US5,626,929A
【特許文献4】WO2007/115816A1
【特許文献5】US2004/0236042A1
【特許文献6】US7557172B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、中でも、改善されたリサイクル性を持ち、それにより、プラスチックの割合を減少させることができ、及びアルミニウム層上に押出することができる、アルミニウムカバーシートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一の観点では、本開示は、請求項1に従う、(特にカバーシートを製造するための)複合フィルムに関する。更に、本開示は、(特にカバーシートを製造するための)このような複合フィルムを製造する方法にも関する。それ故、押出層は、特に薄く製造することができ、その際、更に、製造の際に、高い線速度を達成することができる。この際、約400m/分またはそれ以上の線速度が、押出層の溶融フィルム中に欠陥または孔を生じさせることなく、達成できる。これは、予期できない効果である、というのも、剥離力添加剤の添加は、通常は、対応する押出層をより厚く設計しなければならないかまたは線速度を減少させる必要がある程に、溶融強度を低下させるからである。驚くべきことに、第二のポリマー構成分を添加することによって、押出層の厚さを、一定の高い線速度において大きく減少できる。同時に、良好でしっかりとした封止継ぎ目強度を達成できる。
【0011】
押出層は、本発明では、10~18g/m、特に10g/mと15g/mとの間の総厚を有し、この際、付着促進剤層の厚さは、殊に3g/mと5g/mとの間であり、及び封止層の厚さは、殊に6g/mと10g/mとの間である。この非常に薄いコーティングによって、複合フィルム中でのアルミニウムに対するポリマー構成分の比率は、非常に小さい値まで調節することができ、その結果、該複合フィルムを用いることにより、複合フィルムのリサイクル性を決定付ける限界値を下回ることができる。
【0012】
有利には、ポリマーマトリックス中の第一のポリマー構成分の割合は、殊に約30重量%と約70重量%との間であることができる。この第一のポリマー構成分によって、特に、溶融粘度を有利な値に調節することができる。
【0013】
有利な実施形態の一つでは、ポリマーマトリックス中の第二のポリマー構成分の割合は、30重量%と70重量%との間であることができる。第二のポリマー構成分の割合の選択によって、特に、該複合フィルムから製造されたカバーシートの封止継ぎ目強度及び破裂圧に目的通りに有利に影響を及ぼすことができる。
【0014】
更に別の有利な実施形態の一つでは、好ましくは軟質のまたは半硬質のアルミニウム箔からなるアルミニウム層は、10μm~70μm、特に20~38μmの厚さで形成することができる。これは、非常に良好なバリア特性を供し、そして触感、外観、剥離挙動などの顧客にとって通例の所望の特性を持つカバーシートの製造を可能にする。
【0015】
場合によっては、押出層は、封止層に隣接する外側のカバー層を有してもよく、このカバー層は、1g/mと3g/mとの間の厚さを有することが好ましい。前記カバー層は、封止層の機能に少なくとも本質的に不利に損なわせることのないように十分に薄いものである。場合によっては、前記カバー層は、例えば熱粘着特性を向上することによって、有利な特性も表面に付与し得る。前記カバー層は、特に、該複合フィルムの製造時に方法技術上の利点を供する、というのも、押出ダイへの剥離力添加剤の堆積が避けられるからである。
【0016】
第二のポリマー構成分は、好ましくは、エチレン/プロピレンコポリマー、特に半結晶性エチレン-プロピレンコポリマー(これらは、殊にジエンを実質的に含まない)、アルファ-オレフィンコポリマー、特にエチレン/アルファ-オレフィンコポリマー及び/またはプロピレン/アルファ-オレフィンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンエラストマー、並びにこれらの物質の組み合わせから選択されるポリマー成分を含むことができる。
【0017】
本開示は更に、包装容器を封止するためのカバーシートにも関し、この際、このカバーシートは、先に記載した複合フィルムから、殊に打ち抜きまたは切り取りによって製造される。
【0018】
本開示は更に、包装容器を封止するためのカバーシートを製造する方法に関し、この際、このカバーシートは、ここに記載の方法によって製造された複合フィルムから、殊に打ち抜きまたは切り取りよって製造される。
【0019】
本発明を、例示的、概略的かつ非限定的に有利な本発明の形態を示す図1に関連して以下により詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、カバーシートの層構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
カバーシートを製造するための図1に断面で概略的に示した複合フィルム1は、本質的にアルミニウム層2を有し、このアルミニウム層は、それの製品の方を向いた面で、多層押出層3でコーティングされている。場合によっては、アルミニウム層2の製品とは反対側の面には、印刷のためのプライマー層4が設けられていることができる。図1の描写は、純粋に概略的なものであって、縮尺通りではない。それ故、特に、これは、実際の厚さの比率を表すものではない。
【0022】
押出層3は、作業工程中に共押出物としてアルミニウム層2上に施用され、そして付着促進剤層5及び剥離可能な封止層6を有する。場合によっては、追加的に、薄いカバー層7が、封止層上に設けられていることができる。押出層3は、殊に10g/mと18g/mとの間、好ましくは10g/mと15g/mとの間の総厚を有する。
【0023】
アルミニウム層2は、好ましくは軟質または半硬質のアルミニウム箔からなり、そして好ましい厚さは、約20μm~約38μmである。場合によっては、特定の用途に望ましいまたは必要な場合には、厚さは、それよりも厚くとも薄くともよい。通常は、カバーシートのためには、例えば10μmと70μmとの間の厚さを有するアルミニウム層が使用される。アルミニウム層2は基材として役立ち、その上に、共押出法において、押出層3の積層体が施用される。
【0024】
付着促進剤層5は、封止層6とアルミニウム層2との間の付着を改善し、この際、付着促進剤層5の製造に使用できる多数の材料が従来技術において知られている。例示的には、付着促進剤層5の前記材料は、エチレン-アクリル酸コポリマー(EAA)、エチレン-メタクリル酸(EMAA)、無水マレイン酸変性LDPE(PE-g-MAOH)、ターポリマー(例えばArkema社のLotaderTM)、アイオノマー、及び当該技術分野においてこの目的に適したものと考えられる同様の材料、またはこれらの材料の組み合わせから選択することができる。
【0025】
付着促進剤層5は、特に、後で必要な熱処理、例えば付着促進剤層5の十分な活性化のための熱処理無しでも、封止層6とアルミニウム層2との間の良好な付着を可能にするべきである。このような熱処理は、共押出後に、典型的には200℃と300℃との間の温度で行われ、複合フィルム1の平坦さに負に影響を及ぼす虞がある。例示的には、複合フィルム1を用いて製造されたカバーシートの反り返りを招く虞があり、その結果、カバーシートの加工性、特に容器を封止するための容器上のシーリングが損なわれる。このような問題は、無水マレイン酸がグラフトした付着促進剤(例えば、PP-MAOH類またはPP-MAOH)を用いた場合に生じ得る。特にポリエチレンをベースとする封止層6とも使用し得る先に記載の付着促進剤は、アルミニウム層2上に直接付着し、共押出後の熱処理を必要としない。
【0026】
付着促進剤層5は、殊に、3g/mと5g/mとの間の層厚で押出することができる。実際に必要な層厚は、通常は、製造業者の指示に従って選択される。付着促進剤層の層厚の選択は、例えば以下の基準にしたがって行うことができる。この層厚はできるだけ薄く選択される、というのも、全体的に薄いコーティング(最大で18gの総厚が好ましい)では、封止のために十分に厚い封止層が必要とされるからであり、またコストの面からは、上記の材料は、大概は、封止層に使用される材料よりも高額であるからである。しかし、付着促進剤層は、アルミニウム箔上への押出コーティングの十分に良好な付着を保証するために、一貫して均一な層が残るように十分に厚いものである必要がある。
【0027】
封止層6は、10重量%と35重量%との間の割合で剥離力添加剤が加えられたポリマーマトリックスを有する。封止層6は、殊に、6g/mと12g/mとの間の層厚で押出することができる。該複合フィルムのより良好なリサイクル性を達成するためには、押出層の厚さ及びこの場合は特に、封止層6の厚さを最小化することが有意義である。この際、封止層6はできるだけ薄くするべきであり、この際、それにもかかわらず、必要な封止継ぎ目強度及び剥離特性は保証されるべきである。更に別の技術的な限定の一つは、押出層3の製造可能性である、というのも、層厚が薄すぎると、孔及び他の欠陥が押出層3中に形成し得るからである。押出層の厚さの最小化は、ここに開示された教示の知識の下に平均的な当業者の能力内にある。
【0028】
剥離力添加剤は、特に、鉱物性フィラーであることができ、これは、殊に食品適合性であるものである。殊に、剥離力添加剤は、タルク、CaCO、チョーク、シリケート(例えば雲母、カオリン)、他の鉱物性フィラーまたはこれらの材料の組み合わせから選択することができる。剥離力添加剤は、殊に、所与の薄い封止層において、これを損なわないかまたは無視できる程度にしか損なわない粒度を有することができる。特に、粒度D98(「トップカット」)は、例えば20μm未満であるのがよい。
【0029】
封止層6のポリマーマトリックスは、少なくとも二種の異なるポリマー構成分を含み、これらは、ここでは「第一のポリマー構成分」及び「第二のポリマー構成分」と称する。場合によっては、更に別のポリマー構成分も存在することができる。選択された呼称は、単に識別性のためのものであり、制限的なものとして解釈するべきではない。
【0030】
第一のポリマー構成分はポリオレフィン、特にポリエチレン、殊に低密度ポリエチレン(LDPE)である。しかし、他のポリエチレン種、例えば線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)または高密度ポリエチレン(HDPE)も考慮され得る。しかし、分子構造に基づいて、LDPEが特に良好に適している。ポリマーマトリックス中の第一のポリマー構成分の割合は、約30重量%と約70重量%との間である。
【0031】
第一のポリマー構成分は、封止層6の「基礎材料」として役立ち、材料のコストにだけではなく、加工性に関して考慮する必要のある基本的なパラメータ、例えば溶融粘度、引き伸ばし性または溶融強度及び押出の間のポリマーマトリックスもしくは封止層6の溶融フィルム安定性にも影響を及ぼす。第一のポリマー構成分の割合を変えることによって、特に、ポリマーマトリックスの溶融粘度を変えることができる。ポリマーマトリックスの有利な溶融粘度は、メルトフローインデックス(MFI値)では、約2g/10分と約15g/10分との間の範囲である。
【0032】
第二のポリマー構成分は、それぞれ900kg/m未満の密度を有するポリオレフィンプラストマー及び/またはポリオレフィンエラストマーから選択される。ポリマーマトリックス中の第二のポリマー構成分の割合は、約10重量%と約40重量%との間である。
【0033】
「ポリオレフィンプラストマー及びポリオレフィンエラストマー」とは、本開示に関連しては、ポリオレフィンをベースとするコポリマーのことであり、これらは、対応するホモポリマーと比べて、より小さい密度(900kg/m未満)及びより大きな弾性を有する。ポリオレフィンプラストマー及び/またはポリオレフィンエラストマーの例には、以下のものには限定はされないが、エチレン/プロピレンコポリマー、特にプロピレンと小割合のエチレンを含むコポリマー、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー、プロピレン/アルファ-オレフィンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンエラストマー、並びにこれらの物質の組み合わせなどが挙げられる。ポリオレフィンプラストマー及びポリオレフィンエラストマーは、エラストマー(すなわち、形態安定性であるが弾性変形可能な物質)の特性と、他のプラスチックの利点、例えばそれの加工性とを兼ね合わせて持つ。
【0034】
専門文献では、時にはポリオレフィンプラストマーとポリオレフィンエラストマーとは区別され、この際、一般的に、885kg/m~900kg/mの密度を有する材料は、ポリオレフィンプラストマーと称され、特に小さい密度では、すなわち例えば885kg/cm未満の密度では、ポリオレフィンエラストマーという呼称が好ましく使用される。しかし、前記の区別は常に一貫して使用されるわけではない。それ故、本開示に関連しては、これらの全てのポリマーに関して、分かり易くするために、「ポリオレフィンプラストマー及び/またはポリオレフィンエラストマー」という呼称が一貫して使用される。それ故、上記の用語は、ここで使用する場合、当技術分野でポリオレフィンプラストマーと称される物質も、ポリオレフィンエラストマーと称される物質も含む。
【0035】
ポリオレフィンプラストマー及びポリオレフィンエラストマーは、一般的に、高い靱性及び高い耐穿孔性、フィラー及びオイルとの良好な適合性、並びにポリオレフィンとの優れた混合可能性を特徴とする。
【0036】
実際の用途では、第一の、第二の及び場合によって更に別のポリマー構成分の混合可能性が保証されることが重要である。これは、特に、材料パラメータの選択及び適合によって行うことができ、その際、第二のポリマー構成分の最も重要なパラメータを、以下に例として取り上げる。
【0037】
ポリマー材料の加工性の評価のための重要なパラメータは、メルトインデックス、特にメルトマスフローレート(MFR)、及びそれと関連するメルトボリュームフローレート(MVR)である。本開示に関連して、「メルトマスフローレート」(MFR)及び「メルトボリュームフローレート」(MVR)という用語は、本願の優先日において有効なバージョンの規格DIN EN ISO1133に従い求められた値のことである。MFRは、文献及びプラクチスにおいて「メルトインデックス」、「メルトフローレート」、「メルトマスフローレート」または「メルトフローインデックス」(MFI)とも称される。同様に、MVRは文献及びプラクチスにおいて、「メルトボリュームレート」または「メルトボリュームインデックス」(MVI)とも称される。
【0038】
第二のポリマー構成分の2.16kg及び190℃でのメルトマスフローレートの好ましい値は、2g/10分と15g/分との間の範囲である。
【0039】
第二のポリマー構成分の選択のための更に別の重要なパラメータの一つは、破断伸びである。破断延びについてここに記載の値は、本願の優先日において有効なバージョンの規格DIN EN ISO527に従い求めることができる。
【0040】
第二のポリマー構成分の破断伸びの好ましい値は、第一のポリマー構成分の破断伸びの少なくとも数倍であり、殊に200%超、特に1000%超である。
【0041】
第二のポリマー構成分の溶融温度は、殊に、第一のポリマー構成分の溶融温度よりも低い。この際、溶融温度は、第一の及び第二のポリマー構成分について同じ方法が使用されることを条件に(すなわち、値が類似の方法で測定され、それ故、比較可能であることを条件に)任意の方法に従って測定できる。例えば、溶融温度の測定については、本願の優先日において有効なバージョンの規格DIN EN ISO3146を使用することができる。
【0042】
好ましくは、第二のポリマー構成分の溶融温度の値は、第一のポリマー構成分の対応する溶融温度よりも90%未満、特に80%未満である。
【0043】
例えば第二のポリマー構成分としてまたは第二のポリマー構成分の一部として使用できるポリオレフィンプラストマーまたはポリオレフィンエラストマーとしては、例えば、Exxon Mobil Chemicalから「VistamaxxTM」の名称で、The Dow Chemical Companyから「VersifyTM」及び「AplyfyTM」の名称で、Borealis AGから「QueoTM」の名称で、Sumitomo Chemicalから「ESPRENE SPOTM」の名称で、またはMitsui Elastomers Singapore PTE LTD.から「TafmerTM」の名称で販売されている商業的に入手可能な材料が挙げられる。場合によっては、任意選択に別の種類の更なるポリオレフィンプラストマー及び/またはポリオレフィンエラストマーを含む、これらの材料の組み合わせまたは混合物も第二のポリマー構成分として使用することができる。本開示に従い使用可能なポリオレフィンプラストマー及びポリオレフィンエラストマーは、現在商業的に入手可能な製品には制限されず、当技術分野で既知であるかまたは当技術分野で既知の物質から平均的な当業者が可能なパラメータ変更によって製造できる全てのポリオレフィンプラストマー及びポリオレフィンエラストマーを包含する。
【0044】
例えば第二のポリマー構成分としてまたは第二のポリマー構成分の一部として使用できる、ポリオレフィンプラストマーまたはポリオレフィンエラストマーは、例えば、以下の特許文献にも開示されている:
WO2007/115816A1(特許文献4)は、プロピレンベースのポリオレフィンエラストマーを開示している。この文献では、これは、「propylene based elastomer」と称されている。これは、95重量%までが、プロピレンと限られた割合のエチレンとからなるコポリマーの形態の第一の半結晶性ポリマー成分を含む。
【0045】
US2004/0236042A1(特許文献5)は、ポリオレフィンエラストマー、特に主たる割合のプロピレンと比較的小割合のエチレンを用いた熱可塑性ポリマー組成物の製造方法を開示している。
【0046】
US7557172B2(特許文献6)は、エチレンベースのポリオレフィンプラストマーを開示しており、これは、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーである。
【0047】
US2004/0236042A1(特許文献5)、US7557172B2(特許文献6)及びWO2007/115816A1(特許文献4)の内容は、これが可能である法域については、本発明の詳細な説明または出願の内容の一部とされる。
【0048】
確かに、第二のポリマー構成分の割合が多いほど、押出時の加工が困難になるかまたは手間がかかるようになる虞があるが、封止層6の封止継ぎ目強度は、特に封止層6が薄く形成されている場合には向上する。封止継ぎ目強度の他、第二のポリマー構成分の割合を変えることによって、破裂圧にも有利に影響を及ぼすことができる。
【0049】
第二のポリマー構成分のための材料を選択する時は、第二のポリマー構成分は、密度が低ければ低いほど、益々エラストマーのように(すなわちゴム様に)挙動するようになる点を考慮するべきである。しかし、この際、融点も低下し、また接着性も(高められた温度下での材料の軟化に基づいて)高まる。これは、押出時の加工面での問題(例えば、冷却ロールへの付着)または完成した材料の加工面での問題(例えば、ロールへのブロッキング、材料ウェブの走行性)を招く虞がある。平均的な当業者は、ここに開示された教示の知識の下に、日常の作業及び試験によって、材料の適切な組み合わせを有意義に選択し、そしてこの際、記載の付随条件を考慮することが当然にできる。
【0050】
封止層6のポリマーマトリックスには、場合によっては、更なるポリマー構成分を25重量%までの割合で加えることができる。
【0051】
この更なるポリマー構成分は、特に、LLDPE(C、C、C)、mLLDPE(C、C、C)、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、またはこのような材料の組み合わせから選択することができる。
【0052】
前記更なるポリマー構成分は、例えば、封止特性に影響を及ぼすのに役立ち得る。例えば、これらは、特定のカップ材料、例えば様々な割合でポリプロピレン及び/またはポリエチレンを含むカップに適合させることができる。更に、(より良好な熱粘着特性が必要な)熱間充填(ホットフィル)のためには、封止材料の融点を、例えば更なるポリマー構成分としてCポリマーを使用することによって、高めることが有利であり得る、というのも、これは、第一のポリマー構成分の例えばLDPEよりも高い融点を有するからである。
【0053】
カバー層7は、設けられている場合には、殊に1~3g/cmの層厚で押出することができる。カバー層7の材料は、殊に、LDPE、LLDPE、MDPE、またはこれらの材料の組み合わせから選択される。
【0054】
カバー層7は非常に薄く、それ故、封止層6の封止特性に対しては、少なくともネガティブな観点では非本質的な程度でしか影響を及ぼさない。カバー層7の設置は、特に方法技術面で有利である。例えば、カバー層は、押出ダイの壁を封止層6の材料から隔離する。それによって、押出ダイへの鉱物性フィラーの堆積、特にタルクの堆積が避けられる。
【0055】
発明の詳細な説明及び特許請求の範囲において、「本質的」または「約」という表現は、然るべき場所で他に記載がなければ、物理的に可能である場合には、下方及び上方の両方で、またはそうでない場合には意味のある方向のみにおいて、記載された値の10%までの偏差を意味し、それ故、度数(角度及び温度)の場合には、±10°を意味する。
【0056】
全ての量の記載及び割合の記載、特に本発明の限定のためのこれらの記載は、実施例に関するもの以外は、±10%の許容差を持って理解されるべきである。従って、「11%」という記載は、例えば「9.9%~12.1%」を意味する。「溶剤」のような記載において、「ein」という語は、文脈から何か他のことが示されない限り、数詞と見なすべきではなく、不定冠詞または代名詞と見なすべきである。
【0057】
「組み合わせ」(複数可)という用語は、他に記載が無い限り、関連する構成分のうちの二つから、このような構成分の多数または全てまでの全てのタイプの組み合わせを表し、「含む」という用語は、「からなる」も表す。
【0058】
個々の構成及び例において記載した個々の特徴及びバリエーションは、(然るべき場所で他に記載がなければ)他の例及び構成の個々の特徴及びバリエーションと自由に組み合わせることができ、そして特に特許請求の範囲において本発明を特徴付けするためには、各々の構成または各々の例の他の細部を必ずしも組み合わせる必要無く、使用することができる。
図1
【国際調査報告】