(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-27
(54)【発明の名称】圧力測定機能付き真空域調節装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20221220BHJP
B25J 13/00 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522831
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2020078993
(87)【国際公開番号】W WO2021074270
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】102019007194.8
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593030945
【氏名又は名称】バット ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】マルジノット,アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】エッシェンモーザー,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ホーファー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】バロン,フランチシェク
(72)【発明者】
【氏名】ツィッカー,ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707AS24
3C707MS14
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3C707NS13
5F131AA02
5F131AA03
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5F131KB44
5F131KB45
(57)【要約】
プロセス雰囲気領域で移動可能な能動素子のための真空調節装置(10)であって、カップリング(18)と、電動モータ(12)を有し、カップリング(18)と協働して、当該カップリング(18)をノーマル位置からアクティブ位置まで、そして戻るように調節可能とするドライブユニットとを備える。本装置は、プロセス雰囲気を提供するプロセス空間に当該真空調節装置(10)を接続するための機械的インターフェースと、プロセス雰囲気を外部雰囲気領域(A)から分離するための動的な分離装置(15)と、ドライブユニットに少なくとも電気的に接続され、そして電動モータ(12)を制御するように設計された制御処理ユニットとを備える。制御処理ユニットは、モータ動作パラメータの大きさに基づいてモータ状態情報を導出するように設計されるとともに、既知のモータ目標状態に対するモータ状態情報との比較により負荷の差分を導出し、前記負荷の差分に基づいて、外部雰囲気領域(A)とプロセス雰囲気領域(P)との差圧を導出するように設計されている圧力測定機能部を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス雰囲気領域(P)、特に真空領域で移動可能な能動素子(7、19、50)のための真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)であって、
前記能動素子(7、19、50)を連結するように設計されたカップリング(18、38)と、
電動モーター(12、32)を有するドライブユニットであって、前記電動モータによって、
前記能動素子(7、19、50)がその意図される効果に関して本質的に効果のない連結状態にあるノーマル位置から、
連結状態にある前記能動素子(7、19、50)がその意図される効果を発揮する、調節可能な状態に戻されたアクティブ位置まで、
前記カップリング(18、38)が調節可能となるように当該カップリング(18、38)と相互作用し、そして設計されているドライブユニットと、
当該真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)を、プロセス雰囲気を提供するプロセス空間に接続するための機械的インターフェースと、
プロセス雰囲気を外部雰囲気領域(A)から分離することにより前記プロセス雰囲気領域(P)を画定する、動的な分離装置(15、35、45)であって、ここで前記ドライブユニットが前記外部雰囲気領域(A)に少なくとも部分的に割り当てられ、前記カップリング(18、38)が前記プロセス雰囲気領域(P)に割り当てられている、動的な分離装置(15、35、45)と、
前記ドライブユニットに少なくとも電気的に接続され、そして前記電動モータ(12、32)を制御するように設計された制御処理ユニットと、
を有し、
前記制御処理ユニットが、
前記電動モータ(12、32)の制御された動作中における少なくとも総モータ負荷に依存する、モータ動作パラメータの大きさに基づいてモータ状態情報を導出するように設計されるとともに、圧力測定機能部を有しており、
ここで、前記圧力測定機能部が、
前記ドライブユニットによって調節可能な当該真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)の構成要素の少なくとも現在の状態に依存する、既知のモータ目標状態に対するモータ状態情報との比較により負荷の差分を導出し、
前記負荷の差分から、外部雰囲気領域(A)とプロセス雰囲気領域(P)との差圧を導出するように設計されている、
ことを特徴とする、真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)。
【請求項2】
前記モータ動作パラメータが、前記電動モータ(12、32)に印加されるモータ電流であることを特徴とする、請求項1に記載の真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)。
【請求項3】
前記モータ動作パラメータが、前記カップリング(18、38)の移動する調節距離とそれに要する動作時間との比として具体化されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)。
【請求項4】
前記制御処理ユニットが、移動調節距離とそれに要する動作時間との比から、前記モータ状態情報が前記電動モータに生じる抗力として導出されるように設計されていることを特徴とする、請求項3に記載の真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)。
【請求項5】
前記既知のモータ目標状態が、対応する調節状態において前記電動モータ(12、32)に印加すべきモータ目標電流であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)。
【請求項6】
前記既知のモータ目標状態が、少なくとも、前記カップリング(18、38)及び/又は前記ドライブユニットの前記分離装置(15、35、45)又は電動モータに作用する負荷によって規定されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)。
【請求項7】
前記既知のモータ目標状態が、前記カップリング(18、38)の調節可能幅によって規定される調節距離にわたって動的な基準値を形成することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)。
【請求項8】
前記既知のモータ目標状態が、
前記カップリングの調節移動動作、特に移動/動作時間の関数によるキャリブレーション、
当該真空調節装置を記述するモデル、
前記カップリング(18、38)の調節可能幅によって規定される調節距離にわたる調節条件のシミュレーション、又は
基準動作の反復サイクル中において測定される負荷及び/又は力の平均値
により決定されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)。
【請求項9】
前記分離装置(15、35、45)が、前記電動モータによって、前記ノーマル位置から前記アクティブ位置まで、そして戻るように調節可能となるように、前記ドライブユニットが前記分離装置(15、35、45)と相互作用することを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)。
【請求項10】
前記動的な分離装置(15、35、45)が、ベローズ(15、35、45)又はシール、特にダイヤフラムベローズ又はダイヤフラムシールとして設計されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)。
【請求項11】
前記ドライブユニットが、ある調節軸(V)に沿い及び/又は平行な、前記カップリング(18、38)の直線軸上での移動のために設計されていることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)。
【請求項12】
前記能動素子(7、19、50)が支持ピン(7、19)又はバルブクロージャ(50)として設計されていることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)であって、
当該真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)がピンリフティング装置(6、10、30)、特に、真空プロセスチャンバにより提供可能な少なくともプロセス雰囲気領域(P)がなされた、処理される基板(1)の、特にウェハの移動及び位置決めをするためのピンリフターであり、
前記ピンリフティング装置が、特に複数のカップリングからなる第1カップリングとしての前記カップリング(18、38)を有しており、
ここで、
前記ドライブユニットが、前記第1カップリング(18、38)の直線的な調節機能を提供し、
前記アクティブ位置が、前記ピンリフティング装置(6、10、30)を前記基板(1)に取り付ける取付位置としてなされ、
前記カップリング(18、38)が、基板(1)に接触して支持し、かつ、能動素子を形成するように設計されたリフティングピン(7、19)を収容するように設計されている
ことを特徴とする、真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)であって、
当該真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)が、体積流量又は質量流量を制御するための及び/又は流路を気密に遮断するための真空バルブ(40)、特に真空スライドバルブ、振り子バルブ又はモノバルブとして設計され、
開口軸(O)を規定するバルブ開口部(42)及び前記バルブ開口部(42)を囲む第1シール面を備えるバルブシート(43)と、
体積流量又は質量流量を制御するための及び/又は流路を遮断するための、特にバルブディスクである前記能動素子(7、19、50)を形成するバルブクロージャ(50)であって、前記第1シール面に対応する第2シール面を有するバルブクロージャ(50)と
を有し、
ここで、前記バルブクロージャ(50)が、
当該真空バルブ(40)のバルブクロージャ(50)とバルブシート(43)とが非接触に相対向するノーマル位置としての開位置から、
前記第1シール面と前記第2シール面とが介装シールを介してシール接触し、それにより前記バルブ開口部(42)が気密に閉じられたアクティブ位置としての閉位置まで、そして戻るように調節可能とされるように、前記カップリングによって前記ドライブユニットに連結されており、そして
前記カップリングが前記バルブクロージャ(50)を収容するように設計されている
ことを特徴とする、真空調節装置(5a、5b、6、10、30、40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス雰囲気内において、カップリングによってドライブユニットに連結可能な能動素子の移動及び位置決めをするための真空調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空での用途のために設計される、このような調節装置は、例えば、真空チャンバ内で処理される基板を位置決めするために用いられている。基板は、通常、ロボットによってプロセス空間内に導入され、そこで、チャンバ内の所定の設置ポイントに配置されるとともに、処理後にこれらのポイントから離昇させる必要がある。プロセスチャンバ内でのこの位置決め及び移動は、いわゆるピンリフトシステム、またピンリフターとも呼ばれる特別な調節装置によって実現される。
【0003】
ピンリフティングシステムは、特に、汚染粒子ができるだけ存在しない保護された雰囲気内で行う必要がある、IC、半導体、フラットパネル又は基板の製造における真空チャンバシステムに用いられている。
【0004】
このような真空チャンバシステムは、特に、処理又は製造されるべき半導体素子又は基板を収容するために設けられ、半導体素子又は他の基板を真空チャンバの中及び/又は外に導くことができる、少なくとも1つ又は2つの真空チャンバ開口部を有する少なくとも1つの真空チャンバを含む。例えば、半導体ウェハ又は液晶基板の製造ラインでは、非常に繊細な半導体又は液晶素子が、それぞれ1つの処理装置によって処理されるいくつかのプロセス真空チャンバを順次通過する。
【0005】
このようなプロセスチャンバは、しばしばトランスファーバルブのような追加の調節装置を有する場合が多く、その断面は基板及びロボットに適合され、これを介して基板を真空チャンバ内に導入することができ、必要に応じ、その意図された処理の後に除去することができる。或いは、処理された基板をチャンバから取り出すための更なる調節装置(トランスファーバルブ)が設けられる場合もある。
【0006】
基板、例えばウェハは、例えば、的確に設計され制御されたロボットアームによって案内され、このロボットアームは、トランスファーバルブにより提供される、プロセスチャンバの開口部を通って移動することができる。ロボットアームによって基板を持ち上げ又は把持し、基板をプロセスチャンバ内に搬入し、所定の方法で基板を設置させた後に、プロセスチャンバが稼働する。プロセスチャンバは、それぞれに応じた方法で真空にすることができる。
【0007】
チャンバ内での基板の配置及び基板の正確な位置決めのために、基板の比較的高い精度及び移動性を確保する必要がある。この目的のために、使用されるピンリフティングシステムは、基板を支持するための複数の支持ポイントを提供し、それにより基板全体にわたる(基板の自重による)荷重分散を提供することができる。
【0008】
基板は、ロボットによって、リフティングシステムの伸長されたリフティングピンの上に載置され、ピンを下げることによって、キャリア、例えば、電位プレート(チャック)の上に配置される。この目的のために、通常、基板を搬送するロボットアームをチャンバから移動させる。ピンは、基板が設置された後にさらに下降され、次いで基板から離れ、つまりピンと基板との接触がなくなる。ロボットアームが移動し、チャンバを閉止した後(及びプロセスガスを導入し又は真空にした後)、プロセス工程が実行される。
【0009】
特に、プロセス工程がチャンバ内で実行された後、そしてそれに続く基板のリフティング中における基板への力を軽減する効果は極めて重要である。一般的に、基板は、設置工程においてキャリアと接触し、当該キャリアに載置される比較的平滑な表面を有している。基板をキャリアから取り外そうとするとき、基板とキャリアとの間に作用する負圧は、例えばエアポケットによって引き起こされる一種の固着を引き起こす場合がある。基板がキャリアからあまりにも急激に押し出されると、少なくとも複数の接触ポイントで、接している力を克服又は開放することができずに基板が破損するおそれがある。さらに、リフティングピンと基板との間の接触が確立されたとしても、基板に対する衝撃による結果として望ましくない応力(又は破損)をもたらす可能性もある。したがって、基板に対する力の印加は、チャンバ内での基板の取り扱いにおいて重要な事項である。
【0010】
それと同時に、目的とすることは、処理する基板を可能な限り穏やかにかつ慎重に取り扱い、そして処理時間をできるだけ短くすることにある。このことは、基板を、チャンバ内でできるだけ迅速に、所定の状態、すなわち搬入位置、搬出位置及び処理位置にすることができることを意味する。
【0011】
例えば、半導体ウェハの処理中における望ましくない衝撃を回避するために、米国特許第6,481,723 B1は、ピンリフターにおけるハードモーションストップに代わる特別なストップ手段の使用を提案している。それは、硬質プラスチックのストップを、軟質ストップ部材と硬質ストップとの結合体に置き換え、最初の軟質ストップ部材との接触で制動され、次いで軟質ストップ部材と硬質ストップとが接触しながら減衰される。
【0012】
米国特許第6,646,857 B2は、検出された発生力によるリフティング動作の制御を提案している。このリフティングピンは、受けた力の信号に応じて移動可能とされ、それにより、リフティングピンにおけるリフティング力が、常時、制御された状態でウェハに作用する。
【0013】
真空条件下及び電圧印加を伴う作業プロセスのさらなる側面には、電気的及び/又は磁気的干渉源の影響の可能性がある。このような状況では、特にピンのリフティングシステムを設計する際に、機械的プロセスへの影響を考慮する必要がある。例えば、米国特許出願公開2005/0092438 A1は、非導電性材料を用いて、リフティングピンを制御プレートから電気的に分離することができるリフティング装置を提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
当然のことながら、真空調節装置によって移動される構成要素部品は、プロセス空間内に存在するので、機械的プロセスの影響にもさらされる。その結果、これらの部品の磨耗や破損が増加するおそれがあり、通常は、定期的若しくは要請に応じたメンテナンスが必要になるか又は定期的若しくは必要に応じた交換が必要となる。
【0015】
ピンリフティング装置として設計される真空調節装置の場合、リフティングピンは、特にこれらの摩耗の影響を受け、それに応じて交換する必要がある。
【0016】
真空バルブとして設計される真空調節装置の場合、バルブクロージャ(バルブディスク)は、特にプロセスに関連する摩耗の影響を受ける。そのため、これらのクロージャは、そのような特別なメンテナンスの要請を強いられる。
【0017】
一般に、体積流速又は質量流速を調整するための及び/又はバルブ筐体に形成された開口部を通り導かれる流路を本質的に気密に閉止するための真空バルブは、様々な実施形態において従来技術から知られており、上述した、特に、汚染粒子ができるだけ存在しない保護された雰囲気内で行う必要がある、IC、半導体又は基板の製造部門における真空チャンバシステムに用いられている。プロセス真空チャンバ内での機械的プロセスの際、及びチャンバからチャンバへ移送する際の両方で、非常に繊細な半導体素子又は基板が、常に保護された雰囲気、特に真空の環境内にある必要がある。
【0018】
この目的のために、一方で、ガスの供給又は排気を開閉するためのプリフェラルバルブが用いられ、他方で、部品を挿入及び取外すために真空チャンバのトランスファー開口部を開閉するためのトランスファーバルブが用いられる。
【0019】
半導体の部品が通過する真空バルブは、説明された適用分野及び関連する領域により真空トランスファーバルブと呼ばれ、また、主に矩形の開口断面形状により矩形バルブとも呼ばれ、通常の動作モードによりスライドバルブ、矩形スライドバルブ又はトランスファースライドバルブとも呼ばれている。
【0020】
プリフェラルバルブは、真空チャンバと真空ポンプとの間又は他の真空チャンバとの間のガスの流れを制御又は調整するために用いられる。プリフェラルバルブは、例えば、プロセス真空チャンバ又はトランスファーチャンバと、真空ポンプ、大気又は他のプロセス真空チャンバとの間のパイプシステム内に配置される。ポンプ弁としても知られる、このようなバルブの開口断面は、通常、真空トランスファーバルブのそれよりも小さい。プリフェラルバルブは、その適用領域に応じて、開口部を完全に開閉するために使用されるだけでなく、全開位置と気密閉止位置との間で開口断面を連続的に調節することによって流速を制御又は調整するためにも使用されるので、調整バルブとしても知られている。ガスの流れを制御又は調整するためのプリフェラルバルブを、振り子バルブとすることができる。
【0021】
例えば米国特許第6,089,537号(オルムステッド)の実施例として知られているように、典型的な振り子バルブでは、第1段階で、通常、円形のバルブディスクが、通常、円形の開口部を介して、開口部を解放する位置から開口部を覆う中間位置まで回転可能に枢動される。米国特許第6,416,037号(ガイザー)又は米国特許第6,056,266号(ブレチャ)に記載されているように、スライドバルブの場合、バルブディスクは、開口部と同様の、通常、長方形の形状であり、この最初のステップでは、開口部を解放する位置から、開口部を覆う中間位置まで直線的に押される。この中間位置で、振り子又はスライドバルブのバルブディスクは、開口部を囲むバルブシートと対向し間隔を置いた位置にある。第2のステップでは、バルブディスクとバルブシートとの間の距離が縮まり、バルブディスクとバルブシートとが互いに均等に押し付けられ、開口部が実質的に気密に封止される。この第2の移動は、バルブシートに対し実質的に垂直な方向に行われることが好ましい。シールは、例えば、開口部を囲むバルブシートに押圧される、バルブディスクの閉止側に配置されたシールリングか、又はバルブディスクの閉止側が押圧される、バルブシート側のシールリングのいずれかによって実現することができる。これら2つのステップで行われる閉止プロセスは、バルブディスクとバルブシートとの間のシールリングに、そのシールリングを破壊するような剪断力をほとんど与えない。これは、この第2のステップにおけるバルブディスクの移動が、バルブシートに対して本質的に直線的に行われるためである。
【0022】
上述した真空調節装置、特にピンリフティングシステム及び真空バルブを俯瞰すると、これらは、それぞれ真空空間、すなわちプロセスチャンバに接続されるという点で共通している。プロセス空間内では、規定の機械的プロセスを実行するための所定のプロセス雰囲気、特にある特定の内圧が通常設定される。例えば使用されるプロセスガスに関連して、このように正確に調節される内圧は処理プログラムの一部であり、すなわち、確保すべきプロセス品質の保証に関する重要なパラメータである。換言すると、内圧設定の信頼性は、機械的プロセスの信頼性に相応の影響を及ぼすともいえる。
【0023】
プロセス雰囲気の測定及び監視をするために、プロセス空間内に配置され又はプロセス空間に接続される圧力センサが通常用いられる。1つ又は複数のこのような圧力センサを設けることは、同時に、真空システムの構築、特に気密性と潜在的なズレの回避に関する追加費用を意味する。さらに、そのようなセンサは、システムにおけるエラーの追加的な原因にもなり、すなわち、これらのセンサの1つが故障すると、プロセスが完全に停止する場合がある。
【0024】
したがって、本発明の目的は、上述の欠点を回避する解決策を提供することである。
【0025】
特に、本発明の目的は、上述の欠点を回避するのに役立つ改良された真空調節装置を提供することである。
【0026】
本発明はまた、信頼性の高いプロセス実行のためにそれぞれ改良された真空調節装置を提供する目的にも基づく。
【課題を解決するための手段】
【0027】
これらの目的は、独立クレームの特徴を実現することによって解決される。代替的又は有利な方法で本発明をさらに発展させる特徴は、従属クレームから得ることができる。
【0028】
本発明は、構造設計、特に真空調節装置における動的挙動の正確な知識に基づいて実現され、そしてそのような知識を用い装置をさらに機能的に拡張することができ、そしてそれが機械的プロセスに関する更なる情報へのアクセスを可能とする。つまり、真空プロセスに関する追加の情報を、その情報を生成するための追加のコンポーネントを必要とせずに提供することができる。
【0029】
より具体的には、本発明の範囲では、調節装置のモータは制御コマンドによって動作し、モータの状態に基づく電流フィードバックを受けてさらに処理され、すなわち、動作中、モータの実際の状態(例えば、総モータ負荷)が記録される。この実際の状態に加えて、モータについて、対応する目標状態(例えば、モーターシステム負荷)が既知とされている。この目標状態は、例えば、どの条件(例えば、温度、圧力、湿度、積算モータ時間、総動作時間など)で、どれだけの負荷をモータに課すべきかを示す。
【0030】
実際の状態と目標状態との比較から追加の情報を得ることができ、これにより、主な動作条件を示すことができる。特に、差圧は、こうして測定される負荷又は力の差分から導出することができる。
【0031】
本発明は、プロセス雰囲気、特に真空領域で移動可能な能動素子のための真空調節装置に関する。真空調節装置は、能動素子を連結するように設計されたカップリングと、電動モータを含むドライブユニットとを有し、ドライブユニットは、電動モータによってカップリングをノーマル位置からアクティブ位置へ、そして戻るように調節可能となるようにカップリングと協働し、そしてそのように設計されている。
【0032】
ノーマル位置では、能動素子は、連結状態(すなわち、能動素子がカップリングに接続されている)において、その意図される効果に関して本質的に効果のない状態にある。アクティブ位置では、連結状態にある能動素子は、その意図される効果(例えば、基板を搬送する又はバルブの開口部を閉じる)を発揮する。
【0033】
真空調節装置は、また、プロセス雰囲気を提供するプロセス空間に当該真空調節装置を接続するための機械的インターフェースと、プロセス雰囲気を外部雰囲気領域から分離することによりプロセス雰囲気領域を画定する、動的な分離装置であって、ここでドライブユニットが外部雰囲気領域に少なくとも部分的に割り当てられ、カップリングがプロセス雰囲気領域に割り当てられている分離装置と、ドライブユニットに少なくとも電気的に接続され、そして電動モータを制御するように設計された制御処理ユニットとを有している。
【0034】
特に、動的な分離装置は、カップリングが調節されるときに、それに応じて分離装置が部分的に移動するように、ドライブユニット及び/又はカップリングに連結又は接続されている。
【0035】
制御処理ユニットは、受信したモータ動作パラメータの大きさに基づいてモータ状態情報を導出するように適合され、ここで、モータ動作パラメータの大きさは、電動モータの制御された動作中における少なくとも総モータ負荷に依存する。また、制御処理ユニットは、圧力測定機能部を有しており、圧力測定機能が実行される際には、モータ状態情報と既知のモータ目標状態との比較により負荷の差分が導出され、ここで、既知のモータ目標状態が、ドライブユニットによって調節可能な真空調節装置の構成要素の少なくとも現在の状態に依存し、そして外部雰囲気領域とプロセス雰囲気領域との差圧が、前記負荷の差分に基づいて導出される。
【0036】
具体的な一実施形態では、制御処理ユニットは、この差圧に基づいて、プロセス雰囲気領域の絶対圧を導出するように設計される。この目的のために、特に、外部雰囲気領域における現在の圧力についての情報を用いることができる。この情報は、圧力を測定することによって、又は既知の量として取得することができる。
【0037】
これは、真空プロセスチャンバ内部の直接的な圧力測定を提供する。それぞれの測定値を出力として提供してもよく、また例えばプロセスチャンバ内の機械的プロセスを制御又は調整するために使用することもできる。特に、圧力情報(絶対圧又は差圧)は、プロセス圧力を設定又は調整するために考慮することができる。
【0038】
一実施形態において、モータ動作パラメータは、電動モータに印加されるモータ電流である。これにより、実際のモータ電流の測定値が得られ、制御処理ユニットに入力され処理される。
【0039】
モータ動作パラメータは、カップリングの移動する調節距離とそれに要する動作時間との比として具体化することができる。換言すると、カップリングの移動に必要な時間が測定されてもよい。
【0040】
一設計において、制御処理ユニットは、移動調節距離とそれに要する動作時間との比から、モータ状態情報が電動モータに生じる抗力として導出されるように設計されてもよい。
【0041】
本発明によれば、一実施形態において、モータ目標状態は、対応する調節状態(動作状態)において電動モータに印加すべきモータ目標電流であってもよい。例えば、印加すべきモータ電流は、電動モータによる移動可能な調節距離にわたる、又はモータ回転速度、特に動作時間に関連する推移を有するものとして予め既知とされる。
【0042】
一設計において、既知のモータ目標状態は、少なくとも、カップリング及び/又は分離装置を介してドライブユニット又は電動モータに作用する負荷によって決定することができる。この負荷は、例えば、ベローズ抵抗、すなわち、定められた移動距離にわたってベローズを圧縮するのに必要とされる力によって、又はバルブクロージャ若しくはピン(ピンリフティング装置)の荷重力によって、部分的に測定することができる。これにより、一定の調節距離の範囲内で、モータ目標状態を変更することができる。かかる変更もまた既知であり、測定され及び記憶され得る。
【0043】
一実施形態によれば、既知のモータ目標状態は、カップリングの調節可能幅によって規定される調節距離にわたって動的な(変化する)基準値を形成することができる。
【0044】
一設計において、既知のモータ目標状態は、
- 調節装置によって与えられる調節距離の範囲内でのカップリングの調節移動動作のキャリブレーション、特に調節距離-動作時間の速度関数によるキャリブレーション、
- 真空調節装置を記述するモデル、特にデジタルコンピュータモデル、
- 前記カップリングの調節可能幅によって規定される調節距離範囲における調節条件のシミュレーション、又は
- 基準動作の反復サイクル中おいて測定される負荷及び/又は力の平均値
により決定される。
【0045】
一実施形態では、分離装置が、電動モータによって、ノーマル位置からアクティブ位置まで、そして戻るように調節可能となるように、ドライブユニットが分離装置と相互作用することができる。例えば、分離装置は、ドライブユニットに直接接続されてもよく、又は、例えばカップリングを介してドライブユニットに間接的に接続されてもよい。
【0046】
この動的な分離装置は、特にベローズ又はシール、とりわけダイヤフラムベローズ又はダイヤフラムシールとして設計することができる。このように、分離装置は、ある距離の範囲内で移動してもシール効果を発揮する動的シールを提供する。
【0047】
調節装置は、特に真空領域で使用するために設計されており、調節装置の一部が真空領域内にあって動作し、他の部分、好ましくはドライブユニットの一部が、真空領域の外にある。これら2つの領域を雰囲気分離する分離装置もまた、この目的のためにドライブユニットによって設けられてもよく、例えば、ドライブユニットのハウジング又はベローズによって形成されてもよい。
【0048】
或いは、分離装置は、カップリングを備え、カップリングが部分的に又は完全に真空範囲の外に移動するように設けることもできる。分離装置は、例えばプロセスチャンバのチャンバ壁に接続することができる。
【0049】
分離装置は、例えば、Oリングでシールされるスライドブッシングとして設計することもできる。
【0050】
ドライブユニットは、ある調節軸に沿い及び/又は平行な、カップリングの直線軸上での移動のために設計することができる。
【0051】
本発明の実施形態によれば、能動素子は、ピンリフティング装置のリフティングピンとして、又は真空バルブのバルブクロージャとして実現することができる。
【0052】
一実施形態によれば、真空調節装置は、ピンリフティング装置、特に、真空プロセスチャンバにより提供可能なプロセス雰囲気領域において、処理される基板の、特にウェハの移動及び位置決めをするためのピンリフターであり、特に複数のカップリングからなる第1カップリングとしての前記カップリングを有している。
【0053】
ここで、ドライブユニットは、第1カップリングの少なくとも直線的な調節機能を提供する。アクティブ位置は、ピンリフティング装置を基板に取り付ける取付位置としてなされ、そして、カップリングが、基板に接触して支持し、かつ、能動素子を形成するように設計されたリフティングピンを収容するように設計されている。ここでの能動素子(リフティングピン)の意図される効果は、処理基板の搬送、持ち上げ及び下降である。
【0054】
第1カップリングの直線移動性能によりもたらされるノーマル位置は、特に、基板との接触がないリフティングピンの下降位置によって表される。
【0055】
さらなる実施形態において、真空調節装置は、体積流量又は質量流量を制御するための及び/又は流路を気密に遮断するための真空バルブ、特に真空スライドバルブ、振り子バルブ又はモノバルブとして設計することができる。この真空調節装置は、開口軸を規定するバルブ開口部及び前記バルブ開口部を囲む第1シール面を備えるバルブシートと、体積流量又は質量流量を制御するための及び/又は流路を遮断するための(意図される効果)、特にバルブディスクである能動素子を形成するバルブクロージャであって、前記第1シール面に対応する第2シール面を有するバルブクロージャとを有している。
【0056】
このバルブクロージャは、カップリングによってドライブユニットに連結され、真空バルブのバルブクロージャとバルブシートとが非接触に相対向するノーマル位置としての開位置から、前記第1シール面と前記第2シール面とが介装シールを介してシール接触し、それによりバルブ開口部が気密に閉じられたアクティブ位置としての閉位置まで、そして戻るように調節可能とされる。カップリングは、バルブクロージャを収容するように設計されている。
【0057】
本発明による装置は、例としてのみ図面で概略的に示される具体的な実施形態によって以下詳細に説明され、ここでは本発明のさらなる利点もまた議論される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、本発明による真空調節装置を備えた、ウェハのための真空処理システムの一実施形態の概略図を示す。
【
図2】
図2は、ピンリフティング装置として設計された、本発明による真空調節装置の一実施形態を示す。
【
図3】
図3は、ピンリフティング装置として設計された、本発明による真空調節装置の他の実施形態を示す。
【
図4】
図4は、真空バルブとして設計された、本発明による真空調節装置の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、真空条件下で半導体ウェハ1を処理するためのプロセス機構を概略的に示している。ウェハ1は、ロボットアーム2により、真空調節装置の第1の真空トランスファーバルブ5aを介して、真空チャンバ4(プロセス雰囲気P)に搬入され、そして、本発明により設計された真空調節装置の、ここではピンリフティング装置(3本のピンが表示されている)のリフティングピン7により位置決めされる。そしてウェハ1はピックアップされ又はピン7の上に載置され、ロボットアーム2は外に移動する。このときピンリフティング装置のピンは、伸長したキャリング位置にある。ウェハ1は、通常、ロボットアームの上又はロボットアーム2、3に設けられた搬送装置に置かれるか、又は特別の搬送装置によって保持される。ウェハ1がピン7によってピックアップされた後、ロボットアームがチャンバ4から外に案内され、トランスファーバルブ5aが閉じ、ピン7が(ノーマル位置まで)下降する。これは、各ピン7に連結された、ピンリフティング装置のデバイス6により行われる。このようにして、ウェハ1は、図示される4つのキャリア素子8の上に載置される。
【0060】
この状態で、ウェハ1に対する所望のプロセス(例えばコーティング)が、真空条件下、特に規定された雰囲気(すなわち、規定の圧力にあるプロセスガス)の下で行われる。この目的のために、チャンバ4は、真空ポンプに連結されており、好ましくは、チャンバ圧力を調整する真空調整バルブを有している(図示せず)。
【0061】
プロセスが行われた後、ウェハ1は、ピンリフティング装置によって、再び除去位置(キャリング位置)に持ち上げられる。そして、第2のロボットアーム3によって、ウェハ1は、第2のトランスファーバルブ5bまで搬出される。或いは、この工程が、1つのロボットアームのみの使用で設計することができ、その場合、単一のトランスファーバルブを介して搬入及び搬出を実行することができる。
【0062】
図2は、本発明による真空調節装置がピンリフティング装置10である場合の一実施形態を示す。
【0063】
リフティングピン19は、装置10のカップリング18にロックされている。リフティングピン19は、好ましくは、金属、ポリマー系又はセラミックの材料を有し、特にピン19の全体がそのような材料で作られることが好ましい。カップリング18のロックは、例えば、磁気的に又はクランプによって実現することができる。
【0064】
カップリング18は、スライド14によってz方向に移動可能である。この目的のために、スライド14は、ねじ付きのスピンドル13に結合され、このスピンドルは、ドライブユニットのモータ12によって駆動される。
【0065】
上方のカップリング部と下方のドライブ部との間の熱的及び電気的な任意の絶縁が、一変形例として、上方のハウジング部と下方のハウジング部とを熱的及び電気的に分離する第1の絶縁要素16によって実現される。好ましくは、スライド14によって具体化される第2の絶縁要素を設けてもよい。このピンリフティング装置10の変形例では、スピンドル13とカップリング18との間に(相対的な移動があったとしても)、(電気的及び熱的な伝導)接触が生じないように、ねじ付きのスピンドル13が正確かつ堅固に設計され、取り付けられている。或いは、スピンドル13は、非導電性若しくは断熱性の材料で作られるか又はそれらの材料でコーティングされる。これにより、装置10がどの状態にあっても、上方部と下方部との間が完全に電気的にも熱的にも絶縁される。さらに別の変形例では、ねじ付きのスピンドル13と、スピンドル13に据えられるスライド14の両方を導電性(例えば金属)にすることができる。その場合、絶縁は、特に例えばスピンドル/スライドとカップリングとの間の中間スリーブによって実現することができる。
【0066】
上述の電気的な絶縁は純粋に任意であるところ、本発明は、そのような絶縁を伴わない実施形態にまで及ぶものと理解される。
【0067】
ピンリフター10は、また、内部にベローズ15を有している。ベローズ15は、ピン19(ピン)が存在し、機械的プロセスが通常行われるプロセス雰囲気領域Pと、例えばドライブ12及び他の周辺の構成要素が存在する外部雰囲気領域Aとを雰囲気分離するよう配置及び形成されている。ベローズ15は、雰囲気分離を維持しつつ、ピン19の伸長時に圧縮される。
【0068】
図示される変形例では、調節スライド14は、カップリング18とベローズ15の両方を移動させる。カップリング18とベローズ15の両方は、このスライドに、少なくとも間接的に連結されている。特に、スライド14は、カップリング18に接続され、カップリング18がベローズ15に連結される。また、ベローズの第2の端部は、ピンリフティング装置のハウジングに接続される。
【0069】
個々の構成要素の接続は特に気密な方法でなされる。
【0070】
ピンリフティング装置10は、真空プロセスチャンバのハウジング20に接続される。この接続は、プロセスチャンバの内部プロセス雰囲気がピンリフティング装置10の内部にも影響を及ぼすように設計される。ピン19のために設けられるハウジング壁20のフィードスルーは、プロセス雰囲気がリフター10の中まで延びることを確実にするものであり、すなわち、プロセス空間及びピンリフター10の内部空間の一部が共通のプロセス雰囲気領域Pを形成している。
【0071】
プロセス雰囲気領域Pは、少なくともベローズ15によってピンリフティング装置10内で画される。ベローズ15によって規定される内側ベローズ空間は、プロセス雰囲気領域Pの一部である。さらに、特に軸方向の移動が、カップリング18の下部で規制される。プロセス雰囲気領域Pから分離される雰囲気領域は、基本的には外雰囲気領域Aである。
【0072】
プロセス雰囲気領域Pでは、通常、外部雰囲気領域Aの圧力よりもかなり低い圧力が存在する。よって、真空プロセスチャンバのプロセス雰囲気領域Pにおいても、非常に低い圧力が存在し、特にワークピースを機械的に処理をするための低い圧力が存在する。通常、そこでは真空状態が支配的である。ピンリフティング装置10の動作中には、プロセス雰囲気Pと外部雰囲気Aとの間に大きな圧力差があると想定することができる。
【0073】
本発明は、この差圧を利用するものである。
【0074】
可動のシステム構成要素、すなわちこの場合、カップリング18及びベローズ15を移動させるために、電動モータ12は、これらの構成要素において生じるシステム負荷に打ち勝つ必要がある。この負荷は、構成要素の構造設計(例えば質量)、移動特性(摩擦など)、及び現在の状態(例えば、位置、ベローズ圧縮など)に依存する。このモータシステム負荷(モータ目標状態)は、ピンリフター10に関し既知であり、又はキャリブレーションにより測定されてもよく、また制御システムに記憶されてもよい。この目的のために、ルックアップテーブルか、ピンリフター10を十分正確に記述したモデルか、又はモータティーチング処理(モータ動作シーケンスの反復、監視、比較、記録)を利用することができる。このように、モータシステム負荷は、特に圧力、温度などの環境条件を考慮し定められた条件下で動作中の電動モータのそれぞれの目標状態を記述する。
【0075】
制御処理ユニットはリフター10を動作させるために設けられている(図示せず)。目標制御、例えば所定のピン位置への移動のため、モータ12には適宜の信号(モータ制御信号)が供給される。モータ12を動作させる際にモータ動作パラメータが与えられる。電動モータが制御動作中のモータ動作パラメータの範囲は、総モータ負荷に依存し、つまりモータ12に現在かかっている負荷を表している。例えば、モータ動作パラメータは、いかなる時点においても、モータに印加されるモータ電流とすることができる。
【0076】
制御処理ユニットは、モータ動作パラメータからモータ状態情報を導出することができるように、すなわち、例えば、現在のモータ負荷又は現在のモータ電流の定量化を行うことができるように構成される。このように、制御処理ユニットは、電動モータの実際の状態を判定する。
【0077】
そして、この実際の状態は、既知のモータ目標状態に関連付けることができ、すなわち、モータ状態情報を、既知のモータシステム負荷(モータ目標状態)と比較することができる。モータシステム負荷の正確な知識に基づいて、負荷の差分、すなわち目標負荷と実際の負荷との差分を導出できる。
【0078】
このようにして求めた負荷の差分から、外部雰囲気領域(A)とプロセス雰囲気領域(P)との差圧が導出される。外部雰囲気領域(A)に存在する大気圧力を知ることによって、プロセス雰囲気領域(P)、すなわちプロセスチャンバ内の絶対圧力を測定することができる。
【0079】
このように、本発明によれば、真空調節装置は、圧力測定の拡張機能を提供する。
【0080】
記憶された基準関数(モータシステム負荷)に対し現在のモータ動作パラメータを(連続的に)比較することによっても、プロセス監視及びプロセス空間の状態の記録が可能になる。例えば、許容できる最大偏差を超えた場合には、対応する信号を生成及び出力し、許容できないシステム状態であることを表示し、必要に応じてシステムチェックを推奨することができる。
【0081】
モータ動作パラメータでの長期間にわたる監視は、ピンリフティング装置の1つ又は複数の構成要素の摩耗と、プロセス品質の両方の判定に使用することができる。このように、類似したプロセスステップ(プロセスサイクル)の繰り返しを長期間観察することにより、プロセスにおける変化の傾向を検出することもできる。傾向の監視は、また、将来のシステム状態の予測と、それに対応して最適化されたメンテナンスサイクルの策定をも可能にする。
【0082】
図3は、本発明によるピンリフティング装置30の一実施形態を示す。このピンリフティング装置30は、下降したノーマル位置が示されている。
【0083】
図3は、モータ32(電動モータ)を有するピンフティング装置30のドライブユニットを示している。モータ32は、例えば、サーボモータ又はステッパーモータとすることができる。ドライブユニットは、ここではスピンドル33として設計されたシャフトに連結され、すなわち、シャフト33は、モータ32によって回転可能である。この回転は、例えば所与の回転数に応じて管理された方法で制御することができ、又は調整することができる。例えばエンコーダを伴うことで制御された動作が可能であり、その場合、エンコーダは、例えばベアリングピンの軸位置周りの制御変数を提供する。図示される例では、スピンドル33は雄ねじを有している。このねじは、台形ねじ、鋭角ねじ又は丸ねじとして設計することができる。このように、モータ32を適宜制御することで、ねじ付きのロッド33(スピンドル)を回転させることができる。
【0084】
本発明によるピンリフター30は、また、スライドガイド素子31を備える。スライドガイド素子31は、当該スライドガイド素子31の軸方向、ここでは調節軸Vと同軸に延在する中央凹部を有している。この凹部には雌ねじが設けられている。雌ねじは、例えば、スライドガイド素子31に直接、すなわち、スライドガイド素子31の素材に雌ねじを切削加工することができる。或いは、凹部は、例えば、雌ねじを有するスリーブを備えることができる。
【0085】
スライドガイド素子31は、その雌ねじがスピンドル33の雄ねじに結合される、すなわち、雄ねじと雌ねじとが対応し相互作用する。雄ねじが雌ねじに噛み合う。スピンドル33は、移動要素としてのスライドガイド素子31のみに直接結合される。換言すると、スピンドルは、ドライブ32をスライドガイド素子31に、特にスライドガイド素子31にのみ連結させている。
【0086】
この相互作用は、スピンドル33を回転させることで、スライドガイド要素31を調節軸Vが延在する前後方向への移動を可能にしている。このように、この移動は、調節軸Vに沿う軸方向に行うことができる。この目的のために、スライドガイド要素31は、当該スライドガイド要素31が前記調節軸周りの回転移動を実質的に行うことができず、軸方向にしか移動できないように取り付けることができる。
【0087】
スライドガイド要素31は、また、ピンリフティング装置30のカップリング38にも接続されている。これにより、カップリング38は、スライドガイド要素31の移動と同様に軸方向に、特に、図示される下降したノーマル位置から、伸長したキャリング位置まで移動可能とされている。
【0088】
カップリング38は、リフティングピンを収容するためのレセプタクル37を有している。このようなリフティングピンは、好ましくは、基板(例えば半導体ウェハ)に接触して支持するように設計される。レセプタクル37は、カップリング38内でリフティングピンをクランプ係止する、リング又は螺旋スプリングを備えている。しかしながら、レセプタクルは、別のロック手段(止め輪、磁石、ねじなど)を有することもできる。リフティングピンは、この目的のため、特にカップリング38のレセプタクル37に設けられた開口を通して、軸Vに沿って上方から挿入することができる。
【0089】
このように、スライドガイド要素31は、最終的にドライブによってリフティングピンを移動させる手段としての接続要素を形成している。
【0090】
適切な材料を選択することにより、スライドガイド要素31の移動を、低摩擦で潤滑剤なしで行うことができる。例えば、PTFE又は他の非固着性材料を、製造材料又は表面コーティングとして選択することができる。スライドガイド要素31及び/又はその内面は、この材料を含むことができる。
【0091】
また、ピンリフター30は、雰囲気分離装置としてのベローズ35を有している。ベローズ35の上端部は、ピンリフター30のハウジングに間接的に(例えば、頭部に搭載されたハウジングシールによって)又は直接的に接続されている。ベローズ35の上端部は、カップリング38(カップリング38の基部)に接続されている。各接続部は、気密な方法で形成される。ベローズ35の内部容積又は軸方向における伸びは、特にプロセス雰囲気と外部雰囲気との間の雰囲気分離を維持しながら変化させることができる。
【0092】
ベローズ35及びカップリング38は、カップリング38がベローズ35を片側大気シールを提供するように接続されている。このように、ベローズ35及びカップリング38によってプロセス雰囲気領域Pが画される。
【0093】
このような配置構成の結果、スピンドル33を駆動することにより、ピンリフティング装置30内で、カップリング38をベローズ35とともに直線移動させることができる。
【0094】
ピンリフティング装置30は、ねじ接続によってプロセスチャンバ20に接続されるか又はフランジ付けされている。これにより、ベローズ35及びカップリング38の各側によって画される、ピンリフター30の内部容積によってプロセスチャンバの容積が拡張され、それがプロセス雰囲気領域Pを形成することとなる。これは、外部雰囲気領域Aから気密な方法で分離される。
【0095】
ピンリフティング装置30は、
図2に示す実施形態に対応する制御処理ユニット及びアルゴリズムを有しており、すなわち、ピンリフティング装置30は、検出可能なモータ動作パラメータに基づいて、プロセス雰囲気領域Pと外部雰囲気領域Aとの間の測定するように設計されている。
【0096】
図4は、本発明による真空調節装置40が真空スライドバルブである、別の実施形態を示す。真空スライドバルブ40は、開口軸Oを有する開口部42と、開口部42を囲む細長で略長方形のバルブシート43とをバルブ壁に備えるバルブハウジングを有している。特にプロセス側に閉止側を有するクロージャー要素50は、開口部42よりも若干大きな断面を有し、閉止側をバルブシート43に押し付けることにより、開口部42を実質的に気密に閉止する。クロージャー要素50は、互いに平行に配置された2本のバルブロッド46により支持されている。クロージャー要素50は、カップリングによってバルブロッドに接続されている。この連結は、ねじ込み又はクランプによって実現することができる。
図4にはバルブロッドの側面図が示されているので、1本のバルブロッド46のみ見える。本発明による別の実施形態によれば、単一のバルブロッド46のみで、クロージャー要素50を支持してもよい。
【0097】
このバルブハウジングは、開口部42、バルブシート43及び閉止プレート50が配置される真空領域51と、真空領域51の外側にある駆動領域52とを分離している。
【0098】
2本のバルブロッド46は、真空領域51から駆動領域52までのバルブハウジング内で、ダイヤフラムシール又はダイヤフラムベローズ45として設計され、端部にシール(例えばOリング)を有する、2つの気密フィードスルーに挿通されている。ダイヤフラムシール又はダイヤフラムベローズ45は、気密なシールを維持しながら、バルブロッド46が一定の移動範囲内で縦軸及び横軸に沿って移動できるように設計されている。
【0099】
駆動領域52は真空領域51から気密な方法で分離されていることから、駆動領域内は大気圧が支配的となる。駆動領域52内の摩擦粒子は、繊細な真空領域に入ることができない。モータを有するドライブユニットは、駆動領域52に配置される。
【0100】
ドライブユニットは、2本のバルブロッド46を、縦閉止方向zにおける長手軸に沿う開位置から中間位置まで移動させ、そして、2本のバルブロッド46を、縦軸に対し直角に延びる、横閉止方向yにおける横軸に沿う中間位置から閉止位置まで、往復調節することで、クロージャープレート50を開位置から図示される中間位置まで移動させることができるよう設計されている(クロージャープレートはL字形なのでL型とする)。
【0101】
真空スライドバルブ40又はその開口部42は、真空プロセスチャンバに接続するよう設計される。このチャンバ内のプロセス雰囲気は、真空スライドバルブ40の真空領域51まで及びそれを含むように拡張されている。換言すると、真空チャンバの空間及び真空スライドバルブ40の真空領域51の少なくとも両方を含むプロセス雰囲気領域Pが形成されている。このプロセス雰囲気領域Pは、シールされたベローズ45により外部雰囲気領域Aから分離されている。駆動領域52は外部雰囲気領域Aの一部である。
【0102】
真空スライドバルブ40は、プロセス雰囲気Pと外部雰囲気Aとの差圧を測定できるように設計され構成された制御処理ユニットを有している。この目的のために、既知の目標システム負荷(バルブの目標状態)が、動作中、現在提供されている動作パラメータ(例えば印加モーター電流)と比較される。差圧は、それにより導出される負荷の差分から推定することができる。
【0103】
プロセス雰囲気領域Pの圧力が外部雰囲気領域A内の圧力よりも低いので、例えば、その差圧が大きいほど、閉止動作時の電流動作負荷は小さくなる。
【0104】
したがって、負荷の差分に基づいて、特にシステムの事前のキャリブレーションにより、すなわち、モータ負荷の差分と雰囲気差圧との間の関係を記述する関数を決定することによって、差圧を導出することができる。
【0105】
最後に、この思想は、絶対プロセス圧力を測定するためにも使用することができ(外部雰囲気領域Aにおける既存の圧力が既知である場合)、したがって、真空機械的プロセスにおけるプロセス監視のためにも使用することができる。
【0106】
示された図は、実現可能な実施形態を概略的に例示するにすぎないことが理解される。本発明によれば、異なるアプローチは、特に基板処理(例えばピンリフター)又は従来技術の真空バルブのための真空装置と同様に、互いに組み合わせることができる。
【国際調査報告】