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特表2022-553943分散可能な徐放性組成物およびその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-27
(54)【発明の名称】分散可能な徐放性組成物およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/16 20060101AFI20221220BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20221220BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20221220BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221220BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20221220BHJP
   A23L 33/175 20160101ALI20221220BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20221220BHJP
   A23L 29/238 20160101ALN20221220BHJP
   A23L 29/262 20160101ALN20221220BHJP
   A23L 29/25 20160101ALN20221220BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/24
A61K47/44
A61K31/4045
A61P21/00
A61K31/198
A61K31/522
A61K45/00
A23L5/00 D
A23L33/175
A23L33/10
A23L29/238
A23L29/262
A23L29/25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523056
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 US2020056014
(87)【国際公開番号】W WO2021076910
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】62/916,387
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591223105
【氏名又は名称】ハーキュリーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【弁理士】
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】トーマス デュアリグ
(72)【発明者】
【氏名】カピッシュ カラン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート マククライムリスク
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4B041
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE05
4B018MD09
4B018MD10
4B018MD15
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4B018MD33
4B018MD35
4B018MD46
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4B035LG25
4B035LG26
4B035LG28
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4B041LE01
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4C206MA57
4C206MA61
4C206MA64
4C206MA72
4C206NA12
4C206ZA94
4C206ZC52
(57)【要約】
本願は、(i)1つ以上の生物活性成分;(ii)少なくとも1つの水溶性ゲル形成ポリマー;および(iii)少なくとも1つの水不溶性脂質材料を含む分散可能な徐放性顆粒組成物を開示し、生物活性成分および水溶性ゲル形成ポリマーは、水不溶性脂質材料で一部または全体がコーティングされた、乾燥した、事前に粒状にされた粒子の形態で存在する。本願はまた、そのような徐放性組成物を調製する方法およびその適用も開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
(i)1つ以上の生物活性成分;
(ii)少なくとも1つの水溶性ゲル形成ポリマー;および
(iii)少なくとも1つの水不溶性脂質材料
を含む、分散可能な徐放性顆粒組成物であって、
前記生物活性成分および前記水溶性ゲル形成ポリマーは、一部または全体のいずれかが前記水不溶性脂質材料によってコーティングされた、乾燥した、事前に粒状にされた粒子の形態で存在する、分散可能な徐放性顆粒組成物。
【請求項2】
前記生物活性成分が、医薬品および栄養補助食品活性成分からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記生物活性成分が、必須アミノ酸、カフェインおよびメラトニンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記必須アミノ酸が、ロイシン、イソロイシン、バリン、L-リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、スレオニン、メチオニン、トリプトファン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記生物活性成分が、前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも20重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記生物活性成分が、前記組成物の総重量に基づいて、20重量%~80重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記水溶性ゲル形成ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、アカシアガムおよびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記水溶性ゲル形成ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、USP NFに従って測定した場合、4000cP~200、000cPの範囲の粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記水溶性ゲル形成ポリマーが、前記組成物の総重量に基づいて、5重量%~90重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記水不溶性脂質材料が、パーム油、パームステアリン、パームオレイン、ココナッツオイル、中鎖トリグリセリド(MCT)、モノカプリル酸グリセリル、脂肪酸エステル、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記水不溶性脂質材料が、前記組成物の総重量に基づいて、2重量%~40重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記水不溶性脂質材料が、前記組成物の総重量に基づいて、15重量%~35重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記分散可能な徐放性顆粒の表面の一部または全体にコーティングされた分散剤を含む分散剤コーティングをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記分散剤が、レシチン、モノグリセリドおよびジグリセリド、ポリソルベート、カラギーナン、グアーガム、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記分散剤が、前記組成物の総重量に基づいて、1重量%~5重量%の量で存在する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
経口剤形として製剤化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記経口剤形が、分散性粉末、タブレット、カプセル、トローチ、スティックパックおよび小袋からなる群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
分散性粉末、スティックパックまたは小袋の形態の前記経口剤形が、水性媒体またはミルク、フルーツジュース、野菜ジュース、アルコール飲料およびノンアルコール飲料からなる群から選択される他の生理学的に許容される液体媒体に分散可能である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記徐放性組成物が、徐放性経口懸濁液である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
アスリートまたは健康なヒト用の、運動前および/または運動後の粉末シェイクに配合される、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも1つの生物活性成分を送達して、加齢に伴うサルコペニア(筋力低下)を防ぐ粉末飲料製品に配合され、前記生物活性成分が必須アミノ酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
小児、アスリート、健康なヒトおよび老人用の液体生物活性製品として製剤化された、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
以下:
(i)スプレー造粒法を使用し、流動床システム内において、少なくとも1つの生物活性成分および少なくとも1つの水溶性ゲル形成ポリマーの乾燥配合物を粒状にして、前記生物活性成分および前記水溶性ゲル形成ポリマーの前記乾燥配合物の事前に粒状にされた粒子を得る工程;および
(ii)工程(i)で得た前記事前に粒状にされた粒子を、スプレー造粒法を使用し、流動床システム内において、少なくとも1つの水不溶性脂質材料でコーティングして、顆粒の形態の分散可能な徐放性組成物を得る工程
を含む、請求項1に記載の分散可能な徐放性顆粒組成物を調製する方法。
【請求項25】
スプレー造粒法を使用し、流動床システム内において、少なくとも1つの分散剤で徐放性顆粒の表面をコーティングする工程をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
現在開示されている方法、手順、製品、結果および/または概念(以下、まとめて「本開示」と称する)は、一般に、分散可能な徐放性組成物、その調製のための方法、およびその適用に関する。
【背景技術】
【0002】
徐放性製剤は、活性成分が通常の速度よりも遅い所定の速度で放出される、医薬品および栄養補助食品の剤形の分野でよく知られている。中でも最も商業的な意味があるものは、タブレットやカプセルなどの徐放性固形経口剤形である。固形剤形の一般的な要件は、タブレットまたはカプセルを、それらの徐放メカニズムが危険にさらされ、業界では一般に「過量放出」と呼ばれる壊滅的な障害を引き起こさないよう、粉末に粉砕しないことである。
【0003】
別の手法として、シロップ懸濁液や乳濁液などの液体経口放出制御剤形がある。しかしながら、液体経口徐放性剤形は広く受け入れられていない。良く知られている例としてペンキネティックシステムがあり、これは、活性成分をイオン交換樹脂に装填した後、エチルセルロースなどの不溶性ポリマーでビーズレットをコーティングするものである。効果的ではあるが、このような手法はイオン性薬物のみに適している、というのもこれらのシステムでは薬物を樹脂に化学的に結合させる必要があり、これは多くの薬剤に適するものでなく、結果として比較的低い活性ペイロードをもたらすからである。また、液体経口徐放性剤形は複雑で製造に費用がかかるため、活性成分を大量に送達する必要のある、栄養補助食品などの活性成分には適していない。これらの利点を実証する研究では、通常500mg~1000mgなどの高用量の栄養補助食品を使用する。栄養補助食品の1日あたりの推奨用量は、一般的に50mg~1000mgの範囲である。従って、重量でほんの20%の活性成分を可能にする徐放性システムは、最大5gの総剤形を必要とする。このような剤形は結果的に大きなカプセルとなり、消費者が受け入れることができないか、または複数のカプセルとなり、製品が高価になってしまう。したがって、徐放性の形態で栄養補助食品を製剤化することには問題があり、費用効率が高くない可能性がある。
【0004】
栄養補助食品の分野の技術は、薬物に利用可能な大量の徐放性送達システムを提供しないが、先行技術には徐放性栄養補助食品、例えば、徐放性飲料の技術が存在する。徐放性飲料技術では一般的に水不溶性コーティングを用いて、栄養補助食品の放出を遅らせる。これは活性成分の放出を制御するには良い方法であるが、液体に加えると、粉っぽい、ざらざらした、またはぬるぬるした口当たりや沈殿物を生じさせる傾向がある。またそのような技術は、低活性なペイロードを提供する。
【0005】
特許文献1は、(a)即時放出粉末および(b)コアを含む徐放性顆粒の粉末配合物を教示している。徐放性顆粒のコアは、少なくとも1つの性能向上成分、1つ以上の脂肪性材料、および任意選択で、微結晶性セルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの1つ以上の膨潤性ポリマーを含む。徐放性顆粒のコアは、バリアコーティングとして、エチルセルロース系コーティング、ポリビニル系コーティング、疎水性シェラック系コーティング、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース系コーティングでさらにコーティングされている。
【0006】
特許文献2は、長期にわたって、または遅延して放出する栄養補助食品組成物を開示している。栄養補助組成物は、(i)栄養補助食品;(ii)精製糖、単糖、二糖などの糖類;(iii)二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、リン酸カルシウムなどの賦形剤;(iv)ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルクなどの潤滑剤;(v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸塩等の膠着剤;(vi)シェラックガムなどの安定剤;および(vii)フタル酸ジエチル、アジピン酸塩、ステアリン酸塩などの可塑剤の混合物から形成されるペレットを含む。また、ペレットは、コアおよびそのコアを囲む半透膜の形態で存在することもでき、コアは糖類、賦形剤、潤滑剤および凝集物からなり、コーティングは潤滑剤、安定化剤および可塑剤からなる。
【0007】
特許文献3は、クレアチンおよびアルギニンなどのインスリン調節剤の徐放性経口運動および筋肉増強組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3242565号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005181047号
【特許文献3】PCT公開番号WO2001035953
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、様々な物理的特性および投与/ペイロード範囲を有する広範囲の生物活性成分を送達する柔軟性を有し、また比較的高い投与レベルの生物活性成分を送達することができる適切な剤形に対する必要性がある。さらに、そのような剤形は、シンプルで、従来の製薬技術および材料で製造できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、(i)1つ以上の生物活性成分;(ii)少なくとも1つの水溶性ゲル形成ポリマー;および(iii)少なくとも1つの水不溶性脂質材料を含む分散可能な徐放性顆粒組成物を提供し、生物活性成分および水溶性ゲル形成ポリマーは、水不溶性脂質材料で一部または全体がコーティングされた、乾燥した、事前に粒状にされた粒子の形で存在する。本開示の非限定的な一実施形態において、生物活性成分は、必須アミノ酸、カフェイン、およびメラトニンからなる群から選択される。非限定的な一実施形態において、水溶性ゲル形成ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、グアーガム、アカシアガム、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。別の非限定的な一実施形態において、脂質材料は、パーム油、パームステアリン、パームオレイン、ココナッツオイル、中鎖トリグリセリド(MCT)、モノカプリル酸グリセリル、脂肪酸エステル、およびこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0011】
本開示の別の非限定的な一実施形態において、分散可能な徐放性組成物は、分散可能な徐放性顆粒の表面の一部または全体にコーティングされた、少なくとも1つの分散剤を含む分散剤コーティングをさらに含み得る。分散剤は、レシチン、モノグリセリドおよびジグリセリド、ポリソルベート、カラギーナン、グアーガム、ならびにそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0012】
本開示の別の態様は、本開示における分散可能な徐放性組成物を調製する方法を提供し、該方法は、(i)少なくとも1つの生物活性成分および少なくとも1つの水溶性ゲル形成ポリマーの乾燥配合物を、噴霧造粒法を用いて流動床システム内において粒状にし、生物活性成分と水溶性ゲル形成ポリマーとの乾燥配合物の、事前に粒状にした粒子を得る工程と;(ii)工程(i)で得られた事前に粒状にした粒子を、噴霧造粒法を用いて流動床システム内において少なくとも1つの水不溶性脂質材料でコーティングし、分散可能な徐放性顆粒組成物を得る工程とを含む。本開示の別の非限定的な一実施形態において、該方法は、徐放性顆粒の表面を、噴霧造粒法を用いて流動床システム内において少なくとも1つの分散剤でコーティングする工程をさらに含む。
【0013】
本願のさらなる実施形態は添付の図面を参照して理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(a)は、実施H例1の徐放性顆粒組成物中のロイシン、イソロイシンおよびバリンを追跡する必須アミノ酸(EAA)の溶解プロファイルを示す図である。図1(b)は、実施例1の徐放性顆粒組成物中のロイシン、イソロイシンおよびバリンを追跡する必須アミノ酸(EAA)の溶解プロファイルを示す図である。図1(c)は、実施例1の徐放性顆粒組成物中のロイシン、イソロイシンおよびバリンを追跡する必須アミノ酸(EAA)の溶解プロファイルを示す図である。
図2図2(a)は、比較例1(CE1、CE2およびCE3)の組成物中のロイシン、イソロイシンおよびバリンを追跡する必須アミノ酸(EAA)の溶解プロファイルを示す図である。図2(b)は、比較例1(CE1、CE2およびCE3)の組成物中のロイシン、イソロイシンおよびバリンを追跡する必須アミノ酸(EAA)の溶解プロファイルを示す図である。図2(c)は、比較例1(CE1、CE2およびCE3)の組成物中のロイシン、イソロイシンおよびバリンを追跡する必須アミノ酸(EAA)の溶解プロファイルを示す図である。
図3図3(a)は、比較例4(CE4AおよびCE4B)の組成物中のロイシン、イソロイシンおよびバリンを追跡する必須アミノ酸(EAA)の溶解プロファイルを示す図である。図3(b)は、比較例4(CE4AおよびCE4B)の組成物中のロイシン、イソロイシンおよびバリンを追跡する必須アミノ酸(EAA)の溶解プロファイルを示す図である。
図4】比較例5(CE5)の組成物中のロイシン、イソロイシンおよびバリンを追跡する必須アミノ酸(EAA)の溶解プロファイルを示す図である。
図5】実施例2の徐放性顆粒組成物中に存在するカフェインの溶解プロファイルを示す図である。
図6】実施例3の徐放性顆粒組成物中に存在するメラトニンの溶解プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本開示は、その適用において、以下の説明に記載されるか、または図面に例示される構成の詳細および構成要素の配置、工程または方法の詳細に限定されるものではないと理解されたい。本開示は、他の実施形態、または多くのやり方で実施または実行することができる。また、本明細書で使用する言い回し及び用語は、説明のためのものであり、限定的なものと見なされるべきではないことを理解されたい。
【0016】
本明細書において特に定義しない限り、本開示に関連して使用する技術用語は、当業者が一般的に理解する意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の定めがない限り、単数形には複数形が含まれ、複数形には単数形が含まれるものとする。
【0017】
本出願のいずれかの部分で言及されるすべての特許公報、出願公開広報および非特許刊行物は、本開示の関係する技術分野の当業者の技術レベルを示すものである。本出願のいずれかの部分で参照されるすべての特許、公開特許出願、および非特許文献は、個々の特許または公開が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。
【0018】
本開示に従って使用される場合、以下の用語は、特に断りがない限り、以下の意味を有するものと理解されたい。
【0019】
「1つの(a)」または「1つの(an)」という用語が「含む(comprising)」という用語と併せて使用される場合、「1つ(one)」を意味することがあるが、「1つ以上(one or more)」、「少なくとも1つ(at least one)」および「1つまたは1つより多い(one or more than one)」も意味する。「または」という用語は、代替案が相互に排他的である場合にだけ代替案を指すよう明示的に示されていない限り、「および/または」の意味で使用されるが、本開示では、代替案だけをいう定義、並びに、「および/または」をいう定義を支持している。本明細書を通して、「約(about)」という用語は、定量装置、値の測定に用いられる方法の誤差の固有の変動、または、試験対象の間に存在する変動を含む値をいう。例えば、限定するものではないが、「約(about)」という用語が使用される場合、その指定値は、プラスまたはマイナス12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%変動することがある。「少なくとも1つ(at least one)」という用語は、1および1より多い任意の量を指し、これらに限定されないが、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含む。「少なくとも1つの(at least one)」または「少なくとも2つの(at least two)」という用語は、この用語が付随する用語に応じて、100以下であっても100を超えていてもよい。また、100/1000の量は、より少ないまたはより多い限界値で満足のいく結果が得られる場合があるため、限定的であるとみなされるべきではない。さらに、「X、YおよびZの少なくとも1つ」という用語は、Xのみ、YのみおよびZのみ、並びに、X、YおよびZの任意の組合せを含むものと理解されたい。序数の用語の使用(すなわち、「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」など)は、2つ以上の項目を区別することのみを目的としており、特に断りがない限り、ある項目の他の項目に対する任意の配列もしくは順序もしくは重要性、または、任意の他の順序を意味するものではない。
【0020】
本明細書で使用する「含む(comprising)」(「含む(comprise)」および「含む(comprises)」等の任意の形態の「含む(comprising)」)という用語、「有する(having)」(「有する(have)」および「有する(has)」等の任意の形態の「有する(having)」)という用語、「含む(including)」(「含む(includes)」および「含む(include)」等の任意の形態の「含む(including)」)という用語、または、「含有する(containing)」(「含有する(contains)」および「含有する(contain)」等の任意の形態の「含有する(containing)」)という用語は、包括的または開放的であり、追加の、規定されていない要素または方法の工程を排除しない。本明細書で使用される「またはそれらの組合せ」および「および/またはそれらの組合せ」という用語は、その用語に先行して列挙された項目のすべての順序と組合せをいう。例えば、「A、B、Cまたはそれらの組合せ」はA、B、C、AB、AC、BCまたはABCの少なくとも1つを含むことを意図しており、特定の状況において順序が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BACまたはCABの少なくとも1つを含むことを意図している。この例示を続けると、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの、1つ以上の項目もしくは用語の反復を含む組合せが明示的に含まれる。当業者であれば、文脈から明らかでない限り、いかなる組合せにおいても、典型的には、項目または用語の数に制限がないことが理解されよう。
【0021】
本明細書で使用する全てのパーセンテージ、比率および割合は、特に指定がない限り、重量基準である。
【0022】
本明細書で使用する「生物活性成分」という用語は、疾患または病気の治療、予防、診断、治癒または緩和に使用することを目的とした生理学的または薬理学的に活性な物質、または摂取された場合に動物またはヒトにある程度の栄養的または治療的利益をもたらす物質が含まれる。生物活性成分には、医薬用途または食用もしくは栄養補助食品用途の生物活性成分が含まれ得るが、これらに限定されない。本開示の分散可能な徐放性顆粒組成物の目的のための使用に適した例示的な、しかし非限定的な生物活性成分の例には、ホルモン、タンパク質、アミノ酸およびアミノ酸誘導体、ポリペプチド、抗原、プロバイオティクス細菌、プレバイオティクス、酵素、補酵素、補因子、抗酸化物質、ミネラルおよびミネラル塩、ビタミン、炭水化物、植物化学物質、デキストロース、リン脂質、その他の微量栄養素、酵素供給物質、脳刺激性物質、エネルギー供給物質、代謝中間体、植物抽出物、脂肪酸、オート麦βグルカンまたは他の機能性繊維、カルニチン、重炭酸塩、クエン酸塩、薬物、および他の薬学的、栄養学的または治療的に有用な化合物が含まれる。
【0023】
本明細書で使用する「徐放性(extended release)」という用語は、溶液または即時放出剤形などの従来の剤形では提供されない治療目的または利便性を達成するために、所望のプロファイルに従って長期間にわたって組成物または剤形から生物活性成分を放出することと説明することができる。
【0024】
本明細書で使用する「分散可能な」という用語は、本開示の徐放性顆粒組成物を適切な分散媒と混合して、高剪断混合を使用せずに、巨視的に均一な混合物を形成できることを意味する。分散媒は、水性媒体または他の任意の適切な液体媒体であり得る。そのような適切な液体媒体の例示的であるが非限定的な例には、水、ミルク、フルーツジュースおよび野菜ジュースを含むジュース、ココナッツ水、アルコール飲料ならびにノンアルコール飲料などが含まれる。
【0025】
本明細書で使用する「脂質材料」という用語は、親油性または両親媒性の特性を有する有機化合物の一種であるということができる。本開示の目的に適した脂質材料の例示的であるが限定されない例としては、パーム油、脂肪、脂肪油、精油、ワックス、ステロイド、ステロール、リン脂質、糖脂質、硫酸脂質、アミノ脂質、クロモ脂質、脂肪酸、またはそれらのエステルなどを挙げることができる。
【0026】
一態様において、本開示は、(i)1つ以上の生物活性成分;(ii)少なくとも1つの水溶性ゲル形成ポリマー;および(iii)少なくとも1つの水不溶性脂質材料を含む分散可能な徐放性組成物を提供する。本開示の徐放性組成物は分散可能な顆粒組成物であり、生物活性成分および水溶性ゲル形成ポリマーは、乾燥した、事前に粒状にされた粒子の形態で存在する。事前に粒状にされた粒子は、生物活性成分および水溶性ゲル形成ポリマーの乾燥配合物から形成される。事前に粒状にされた粒子はさらに水不溶性脂質材料でカバーまたはコーティングされる。水不溶性脂質材料は、本開示における徐放性組成物の事前に粒状にされた粒子の表面の一部または全体にコーティングすることができる。
【0027】
本開示の徐放性顆粒組成物で使用される生物活性成分は、医薬品用途または栄養補助食品用途に適した生物活性成分であり得る。本開示の非限定的な一実施形態において、生物活性成分は、栄養補助食品や健康食品用途の生物活性成分であり得る。栄養補助用途の生物活性成分は、関連技術において栄養補助食品または栄養補助サプリメントとしても知られている。本明細書で使用する「栄養補助サプリメント」という用語は、動物またはヒトに生理的な作用を及ぼす物質を指す。本開示の分散可能な徐放性顆粒組成物は、栄養補助用途における広範囲の生物活性成分に適し得る。例えば、生物活性成分は、エネルギー増強、睡眠障害の管理または睡眠効率の改善、関節と軟骨の健康、関節の快適さと可動性に関連する用途、消化器、心臓、肝臓、膵臓、肺、脳、骨、筋肉などの主要臓器の健康状態の改善および維持、リラクゼーションや気分の高揚、認知機能的健康(向精神薬)、身体的、化学的、環境的ストレスへの適応および抵抗(ストレスへの適応力を高める)、体重管理、スポーツ栄養などに有用であり得る。
【0028】
エネルギー増強に関連する生物活性成分の例示的な、しかし非限定的な例には、カフェイン、グアユサ、テオフィリン、テオブロミン、ガラナ、マテエキス、などがある。睡眠関連障害の治療または睡眠効率の改善に適した生物活性成分の例示的であるが非限定的な例には、メラトニン、レモンバームエキス、カモミールエキス、バレリアン根エキス、γアミノ酪酸(GABA)などがある。同様に、関節および軟骨の健康、ならびに関節の快適性および可動性に適した生物活性成分の例示的であるが非限定的な例には、グルコサミン、コンドロイチン、メチルスルホニルメタン(MSM)、コラーゲン、ゼラチンなどがある。消化器の健康の改善および維持に適した生物活性成分の例示的であるが非限定的な例には、ショウガエキス、ペパーミントエキス、甘草エキス、ブロメライン、パパインなどがある。同様に、リラクゼーション/気分の高揚に適した生物活性成分の例示的であるが非限定的な例には、L-テアニン、S-アデノシルメチオニン(SAMe)、イチョウの葉などが含まれる。
【0029】
認知的健康(向知性薬)に適した生物活性成分の例示的であるが非限定的な例には、コリン、アシュワガンダ、テアクリンなどがある。さらに、身体が物理的、化学的、および環境的ストレスに適応し(適応促進薬)、抵抗するのを助けるための生物活性成分の例示的であるが非限定的な例には、高麗人参エキス、イワベンケイエキス、フェヌグリークエキス、ハマビシエキスなどがある。体重管理のための生物活性成分の例示的であるが非限定的な例には、エピガロカテキンガレート(EGCG)、L-アラビノース、白インゲンマメエキス、ダイダイエキスなどがある。スポーツ栄養のための生物活性成分の例示的であるが非限定的な例には、L-シトルリン、L-アルギニンなどのアミノ酸、ぶどう種子エキス、ビートルートエキスなどがある。
【0030】
本開示の非限定的な一実施形態において、生物活性成分は、1つ以上の必須もしくは非必須アミノ酸、カフェインおよび/またはメラトニンを含み得る。
【0031】
本開示の一実施形態において、生物活性成分は1つ以上の必須または非必須アミノ酸であり得る。アミノ酸はタンパク質のよく知られた構成要素である。これらは体内でエネルギー源としても使用することができる。アミノ酸は、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、条件付きアミノ酸の3つのグループに分類することができる。必須アミノ酸は体内で生成できないため、食品、食事または栄養補助食品から摂取する必要がある。さらに、これらのアミノ酸は、筋肉の修復や回復、痩せた筋肉の発達を促進させるために、スポーツ栄養でも非常によく使用されている。本開示の非限定的な一実施形態において、アミノ酸は1つ以上の必須アミノ酸であり得る。そのようなアミノ酸の適切な例には、ロイシン、イソロイシン、バリン、L-リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、スレオニン、メチオニン、トリプトファン、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。本開示の別の非限定的な一実施形態において、アミノ酸は、1つ以上の非必須アミノ酸であり得る。そのようなアミノ酸の適切な例には、L-シトルリン、L-アルギニン、テアニンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
本開示の別の実施形態において、生物活性成分はカフェインまたはその類似体であり得る。本開示のさらに別の実施形態において、生物活性成分はメラトニンまたはその類似体であり得る。本開示による徐放性組成物は、比較的高い投与量/量の生物活性成分を含み得る。生物活性成分は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも20重量%の量で存在し得る。本開示の非限定的な一実施形態において、生物活性成分の量は、組成物の総重量に基づいて、20重量%~80重量%の範囲で変化し得る。本開示の非限定的な一実施形態において、生物活性成分の他の範囲として、20重量%~30重量%、30重量%~40重量%、40重量%~50重量%、50重量%~60重量%、60重量%~70重量%、または70重量%~80重量%がある。
【0033】
本開示の徐放性組成物中に存在する水溶性ゲル形成ポリマーは、セルロースまたはセルロースエーテルポリマーを含み得る。セルロースエーテルポリマーの例には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびこれらの組合せが含まれ得るが、これらに限定されない。非限定的な一実施形態において、他のポリマーには、グアーガム、アカシアガム、およびこれらの組合せが含まれ得るが、これらに限定されない。非限定的な一実施形態において、水溶性ゲル形成ポリマーはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)であり得る。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、米国薬局方(USP NF)に従って測定した場合、約4000cP~約200,000cPの範囲の粘度を有し得る。別の実施形態において、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの粘度は、USP NFに従って測定した場合、約85,000cP~約200,000cPの範囲で変化し得る。本開示は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの比較的高分子量のセルロース系ポリマーの使用を企図している。というのも、これらのポリマーは膨潤し、生物活性成分の放出を遅らせるからである。さらに、水溶性ゲル形成ポリマーは、徐放性組成物の総重量に基づいて、約5重量%~約90重量%の量で存在し得る。本開示の別の非限定的な一実施形態において、水溶性ゲル形成ポリマーの量は、徐放性組成物の総重量に基づいて、約5重量%~約10重量%、約10重量%~約20重量%、約20重量%~約30重量%、約30重量%~約40重量%、約40重量%~約50重量%、約50重量%~約60重量%、約60重量%~約70重量%、約70重量%~約80重量%、または約80重量%~約90重量%の範囲で変化する。
【0034】
非限定的な一実施形態において、水不溶性脂質材料は、パーム油、パームステアリン、パームオレイン、ココナッツオイル、中鎖トリグリセリド(MCT)、モノカプリル酸グリセリル、植物性ステアリン酸(VSA)などの脂肪酸エステル、およびこれらの組合せを含み得るが、これらに限定されない。事前に粒状にされた粒子の外面に脂質コーティングを行うことで、水の取り込みを遅くし、ミキシングボールによるシェーカーボトラでの混合時に粒子の破壊を防ぐ。本開示の非限定的な一実施形態において、水不溶性脂質材料は、徐放性組成物の総重量に基づき、約2重量%~40重量%の量で存在し得る。別の非限定的な一実施形態において、水不溶性脂質材料は徐放性組成物の総重量に基づき、約5重量%~35重量%、約15重量%~35重量%、約10重量%~30重量%または約20重量%~30重量%の量で存在し得る。
【0035】
本開示の徐放性組成物は、分散剤を含む分散剤コーティングをさらに含み得る。徐放性顆粒の表面の最も外側のコーティングとして分散剤を使用すると、水に加えると凝集する傾向がある他の徐放性/制御放出性成分とは異なり、分散性に役立つ。このような分散剤の例示的な、しかし非限定的な例には、レシチン、モノグリセリドおよびジグリセリド、ポリソルベート、カラギーナン、グアーガム、ならびにこれらの組合せが含まれる。分散剤は、組成物の総重量に基づき、1重量%~5重量%、または1重量%~2重量%の量で存在し得る。別の非限定的な一実施形態において、徐放性顆粒の表面の最も外側のコーティングに分散剤を使用することが企図されている。
【0036】
本開示による徐放性顆粒組成物は、滑剤、防腐剤、香料、甘味料、着色剤、結合剤などのカテゴリーから選択される成分を含むがそれらに限定されない、少なくとも1つの追加の成分をさらに含み得る。それらの量を含むそのような追加成分の選択は、当業者の能力の範囲内であると考えられる。さらに、これらの追加成分は、徐放性顆粒組成物の事前に粒状にされた形態で存在し得ることが特に企図される。あるいは、これらの追加成分は、脂質および分散剤コーティングのいずれか一方または両方に存在し得る。
【0037】
本開示の別の態様は、本開示の分散可能な徐放性組成物を調製する方法、特に分散可能な徐放性顆粒組成物を調製する方法を提供する。本開示の徐放性顆粒組成物は、関連技術において知られている造粒方法を使用して調製することができる。そのような方法には、流動床造粒、高剪断造粒、押し出しおよび球形化、ならびに噴霧乾燥を含む、乾式、湿式造粒技術が含まれ得るが、これらに限定されない。本開示による方法は以下の工程、すなわち、(i)少なくとも1つの生物活性成分および少なくとも1つの水溶性ゲル形成ポリマーの配合物を調製する工程;(ii)工程(i)から得た配合物を粒状にして配合物の事前に粒状にされた粒子を得る工程;および(iii)少なくとも1つの水不溶性脂質材料で、工程(ii)で得た事前に粒状にされた粒子の表面をコーティングして、分散可能な徐放性顆粒組成物を得る工程を含む。この方法は、本開示の徐放性顆粒を界面活性の、食品グレードの分散剤でコーティングする任意の工程をさらに含み得る。そのような分散剤の例示的な例には、レシチン、モノグリセリドおよびジグリセリド、ポリソルベート、カラギーナン、グアーガム、ならびにそれらの組合せが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0038】
典型的な方法の工程において、生物活性成分および水溶性ゲル形成ポリマーを配合し、それらの乾燥配合物を得る。次に、得た乾燥配合物を、トップスプレー造粒法を使用し、流動床システム内において水で湿式造粒し、生物活性成分および水溶性ゲル形成ポリマーを含む乾燥配合物の事前に粒状にされた粒子を得る。次に事前に粒状にされた粒子を乾燥させ、少なくとも1つの水不溶性脂質材料でさらにコーティングし、分散可能な徐放性顆粒組成物を得る。水不溶性脂質材料のコーティングは、同じ流動床システムにおいて、スプレー造粒法を用いて行うことができる。このようにして得られた分散可能な徐放性顆粒組成物は、さらに少なくとも1つの分散剤でコーティングすることができる。本開示による任意選択のコーティングは、トップスプレー造粒法を用い、同じ流動床システムにおいて行うことができる。
【0039】
本開示の方法に従って得られた徐放性顆粒は、300μm未満の平均粒子径を有し得る。本開示の非限定的な一実施形態において、徐放性顆粒組成物の粒子径は200μm~300μmの間で変化し得る。
【0040】
本開示による徐放性顆粒組成物は経口投与に適しており、適切な経口剤形に製剤化することができる。このような経口剤形の例には、分散性粉末、タブレット、カプセル、トローチ、スティックパックおよび小袋が含まれるが、これらに限定されない。本開示の非限定的な一実施形態において、徐放性顆粒組成物は分散性粉末である。本開示の別の非限定的な一実施形態において、徐放性顆粒組成物はスティックパックや小袋に製剤化される。さらに、本開示の徐放性顆粒組成物は、分散媒と混合して、経口投与可能な徐放性経口懸濁液を形成することができる。本開示の徐放性顆粒組成物の形態、好ましくは分散性粉末、スティックパックまたは小袋の形態は、分散媒中に容易に分散される。本開示の別の実施形態において、分散可能な徐放性組成物は徐放性経口懸濁液である。
【0041】
また、本開示の分散可能な徐放性顆粒組成物は異なる製品の形態に製剤化することができる。そのような製品の適切な例には、分散性粉末飲料または粉末シェイク、粉末飲料製品、液体生物活性製品などが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
非限定的な一実施形態において、本開示の徐放性顆粒組成物は、運動前および/または運動後の粉末シェイクに製剤化することができる。運動前および/または運動後の粉末シェイクは、アスリートや健康なヒトに使用することができる。別の非限定的な一実施形態において、本開示の徐放性顆粒組成物は、加齢に伴うサルコペニア(筋力低下)を防ぐために、粉末アルコール飲料またはノンアルコール飲料製品に配合して、生物活性成分、好ましくは、必須アミノ酸(EAA)を送達することができる。別の非限定的な一実施形態において、本開示の徐放性顆粒組成物は、小児、運動するヒト、健康なヒトおよび老人の液体生物活性製品に製剤化することができる。
【0043】
製品を製剤化する間、本開示の徐放性顆粒組成物は、任意の適切な分散媒に分散され得る。分散媒は、水性媒体または他の生理学的に許容される液体媒体であり得る。そのような媒体の適切な例には、ミルク、フルーツジュース、野菜ジュース、ココナッツウォーター、アルコールまたはノンアルコール媒体、および他の同様の飲料が含まれるが、これらに限定されない。徐放性顆粒組成物の分散は、分散ボールを含むシェイカーカップ内における機械的攪拌によって行うことができる。非限定的な一実施形態において、適切な分散媒での徐放性顆粒組成物の分散は、すぐに分散させることができる製品のように、機械的攪拌なしに手動で行うことができる。
【0044】
本開示の出願人は、驚くべきことに、生物活性成分の比較的高い装填レベル(組成物の総重量に基づいて20重量%~80重量%の範囲)を含む本開示の徐放性顆粒組成物が、激しい攪拌に耐え、長期間にわたる分散の後、制御されたやり方で、そのペイロードを放出することを発見した。必須アミノ酸(EAA)の例に限定されるものではないが、必須アミノ酸の配合物を含む製剤は、例として模擬胃液(pH 1.2)および腸液(pH 6.8)で、USP溶解装置において4~6時間かけて放出され得る。さらに、事前に粒状にされた粒子の一部としての水溶性ポリマー、ならびに脂質および分散剤材料コーティングの特定の組合せにより、本願は、分散時に凝集しない侵食および膨潤に基づく制御された放出組成物を有利に達成することができる。
【0045】
以下の実施例は、本開示を例示するものであり、特に明記のない限り、部およびパーセンテージは重量によるものである。各実施例は本開示の説明のために提供され、本開示を限定するものではない。本発明の範囲または精神から逸脱することなく、種々の変更および変形を本開示に行うことができることは、当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として例示または説明された特徴を別の実施形態に用いて、さらなる実施形態とすることができる。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内に入るような変更および変形をカバーすることが意図されている。
【実施例
【0046】
(実施例1: 必須アミノ酸含有徐放性顆粒組成物)
(1(a)必須アミノ酸配合物の調製):
表1に示す重量割合のアミノ酸を使用して、必須アミノ酸(EAA)の配合物を調製した。
【0047】
【表1】
【0048】
(1(b)必須アミノ酸徐放性顆粒組成物の調製):
実施例1(a)の必須アミノ酸(EAA)配合物およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を、以下の表2に記載した重量割合に混合して、それらの乾燥配合物を得た。次に、EAAとHPMCの乾燥配合物を、トップスプレー造粒法を使用し、流動床システム内において水で湿式造粒し、EAA-HPMC配合物の事前に粒状にされた粒子を得た。この事前に粒状にされた粒子を乾燥させ、スクリーニングした。別の工程において、パーム油を液体になるまで緩やかに加熱し、次いでトップスプレー造粒法を使用し、同じ流動床システム内において、EAA-HPMC配合物の事前に粒状にされた粒子に噴霧し、必須アミノ酸の徐放性顆粒組成物を得た。パーム油の適用量は、表2に示すように、必須アミノ酸徐放性顆粒組成物の30重量%をなすのに十分な量であった。さらに、同じ装置およびトップスプレー造粒法を使用して、必須アミノ酸徐放性顆粒の表面にレシチンの上塗りも行った。レシチンの適用量は、表2に示すように、必須アミノ酸徐放性顆粒組成物の2重量%をなすのに十分な量だった。さらに乾燥およびスクリーニングを行った後、必須アミノ酸徐放性顆粒組成物を分散および溶解性能について試験した。
【0049】
【表2】
【0050】
(分散および溶解試験):
実施例1(b)の徐放性顆粒組成物30グラム(1回分のEAA15グラム相当)を、300mlの水でシェーカーボトルに分散し、ボトルに含まれるシェイカーボールで混ぜた。得られた混合物を30秒間激しく振とうし、次いで再構成されたアミノ酸組成物を10分間静置して、消費者が飲み物をどのように使用するかに関する変動性(variability)をシミュレートした。次に、USP(米国薬局方)装置I(パドル装置)において、600mlの模擬胃液(pH1.2)中で溶解試験を行った。試料を様々な時点で採取し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)技術を用いて分析した。ロイシン、イソロイシンおよびバリンの溶解結果を本開示の図1(a)、図1(b)および図1(c)に示し、これら3つのアミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)が二相性の放出曲線を示し、20~40%のアミノ酸が負荷用量の形態ですぐに利用でき、残りのアミノ酸は最大6時間徐放されることがわかる。
【0051】
【表3】
【0052】
(実施例2:カフェイン含有徐放性顆粒組成物)
生物活性成分としてカフェインを含む徐放性顆粒組成物を上述の実施例1と同様に調製した。カフェイン含有徐放性顆粒調製のために使用した、重量割合を含む成分のリストを以下の表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
(分散および溶解試験):
実施例2の生物活性成分(1回分のカフェイン300mg相当)として、カフェイン含有徐放性顆粒組成物を300mlの水でシェーカーボトルに分散し、ボトルに含まれるシェイカーボールで混合した。得られた混合物を30秒間激しく振とうし、次いで再構成された徐放性カフェイン組成物を10分間静置して、消費者が飲み物をどのように使用するかに関する変動性(variability)をシミュレートした。次に、USP(米国薬局方)装置I(パドル装置)において、600mlのDI水の中で溶解試験を行った。試料を様々な時点で採取し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)技術を用いて分析した。実施例2の徐放性組成物からのカフェインの溶解プロファイルを本開示の図5に示し、ピュアカフェインの溶解プロファイルと比較した。図5より、カフェインの40重量%~60重量%(~50重量%)は負荷用量の形態ですぐに放出され、残りのカフェインは最大6時間放出されることがわかる。このカフェインの徐放は、頭痛、イラつき、「カフェインクラッシュ」などの副作用を抑えつつ、最大6時間の長期間にわたって活力の高揚を提供する。
【0055】
(実施例3:メラトニン含有徐放性顆粒組成物)
【0056】
生物活性成分としてメラトニンを含有する徐放性顆粒組成物を上述の実施例1と同様に調製した。メラトニン含有徐放性顆粒を調製するために使用されるそれらの重量割合を含む成分のリストを以下の表5に示す。メラトニンの異なる重量割合を有する以下の2つの異なる徐放性顆粒組成物を調製した。実施例3(A):メラトニン72重量%、実施例3(B)メラトニン53重量%。
【0057】
【表5】
【0058】
(分散および溶解試験):
実施例3のメラトニン徐放性顆粒組成物(1回分のメラトニン100mg相当)を、300mlの水でシェーカーボトルに分散し、ボトルに含まれるシェーカーボールで混ぜた。得られた混合物を30秒間激しく振とうし、次いで再構成されたメラトニン含有徐放性組成物を10分間静置して、消費者が飲み物をどのように使用するかに関する変動性(variability)をシミュレートした。次に、USP(米国薬局方)装置I(パドル装置)において、600ml中で、溶解試験を行った。試料を様々な時点で採取し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)技術を用いて分析した。実施例3の徐放性顆粒からのメラトニンの溶解プロファイルを本開示の図6に示し、ピュアメラトニンの溶解プロファイルと比較した。提供された図6から明らかなように、40重量%~60重量%のメラトニンが負荷用量の形態で即座に放出され、残りは最大6時間にわたって一晩で放出される。このため、入眠が助けられ、睡眠と覚醒のサイクルが維持される。
【0059】
(比較例):
(比較例1、2、3(CE.1、CE.2、CE.3):必須アミノ酸と水溶性ゲル形成ポリマーの事前に粒状にされた粒子(脂質コーティングなし)):
本例において、必須アミノ酸および水溶性ゲル形成ポリマーの事前に粒状にされた粒子を調製し、これらには水不溶性脂質材料でさらにコーティングを行わない。本例において、グアーガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびヒドロキシプロピルメチルセルロースの3種類の水溶性ゲル形成ポリマーを使用して、3つの異なるタイプの事前に粒状にされた粒子を調製した。比較例1(CE.1)では、実施例1(a)の活性アミノ酸85gmおよび(水溶性ゲルポリマーとして)グアーガム15gmを混合し、乾燥配合して、実施例1(b)の手順に従って事前に粒状にし、事前に粒状にされた粒子を得た。これらの事前に粒状にされた粒子は、水不溶性脂質材料でさらにコーティングしなかった。水溶性ゲル形成ポリマー(CE.2およびCE.3それぞれにおいて)としてカルボキシメチルセルロース(CMC)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を使用して、2つの異なるタイプの事前に粒状にされた粒子も同様に調製した。これらの組成物も、水不溶性脂質材料でさらにコーティングしなかった。
【0060】
【表6】
【0061】
比較例1、2、3における組成物の事前に粒状にされた粒子の溶解テストを、本開示における上述の実施例1の組成物、および図2(a)、図2(b)および図2(c)に示した場合と同様に行った。溶解試験は、0.1N HCl(pH1.2)を含む溶解媒体中で行った。USP(米国薬局方)溶解装置1を使用した。提供された図2(a)、図2(b)および図3(c)から明らかなように、CE.1の事前に粒状にされた粒子は、最初の30分以内に最大60%のEAAが放出される1時間の放出プロファイルを提供した。水不溶性脂質のコーティングがないため、2時間以下の不十分な放出遅延が生じた。さらに、HPMCのみが3つのアミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)すべてを維持することがわかった。
【0062】
(比較例4:水不溶性脂質材料のみでコーティングされた必須アミノ酸配合物):
比較例4A(CE.4A):2つの異なる例において、比較例3(CE.3)の事前に粒状にされた粒子を、それぞれ植物性ステアリン酸(VSA)(15%)およびパーム油(15%)でコーティングした。この組成物の分散および溶解プロファイルを、0.1N HCl(pH1.2)を含む溶解媒体中で、USP(米国薬局方)溶解装置1を用いて行った。溶解プロファイルを本開示の図3に示す。提供された図3から、脂質コーティングによる顆粒の不十分なコーティングのために、EAAの不十分な放出遅延があることは明らかである。
【0063】
比較例4B(CE.4B):必須アミノ酸の物理的な配合物を、わずか30重量%のパーム油でコーティングした。溶解プロファイル試験を、USP(米国薬局方)溶解装置1を使用して、0.1N HCl(pH 1.2)の溶解媒体で行った。溶解プロファイルを本開示の図4に示す。水溶性ゲル形成ポリマーを使用しない場合、30重量%の脂質コーティングの増加により、1時間を超えてEAAの放出を再開できないことが明らかである。
【0064】
本明細書に開示および請求されているすべての組成物および/または方法は、本開示に照らして過度の実験を実施せずに作製および実行することができる。本発明の組成物および方法を、好適な実施形態の観点から説明してきたが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物および/または方法ならびに工程または工程の順序に変形を加えることができることは、当業者には明らかであろう。当業者に明らかなそのような類似の代替および変更はすべて、添付の請求項に規定された発明の概念の精神、範囲ならびに概念の範囲内であると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】