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特表2022-553960嵩密度が改善されたモリブデンオキシクロリド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-27
(54)【発明の名称】嵩密度が改善されたモリブデンオキシクロリド
(51)【国際特許分類】
   C01G 39/00 20060101AFI20221220BHJP
   B01J 3/06 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C01G39/00
B01J3/06 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523589
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 US2020056424
(87)【国際公開番号】W WO2021080945
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】62/923,892
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508348680
【氏名又は名称】マテリオン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】リドル,ブレンダン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ガーディニア,キャサリン・エス
(72)【発明者】
【氏名】ランドバッター,ティモシー
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA06
4G048AB03
4G048AC08
4G048AD03
(57)【要約】
モリブデンオキシクロリドおよび10重量%未満の結合剤を含むモリブデンオキシクロリド圧密化物。圧密化物は0.85g/ccを超える嵩密度を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデンオキシクロリド圧密化物であって、
モリブデンオキシクロリドと、
10重量%未満の結合剤と
を含み、
0.85g/ccを超える嵩密度を有する、圧密化物。
【請求項2】
前記モリブデンオキシクロリドが結晶を含み、前記結晶の少なくとも90%が5mm未満の平均差し渡し寸法を有する、請求項1に記載の圧密化物。
【請求項3】
95重量%を超えるモリブデンオキシクロリドを含む、請求項1に記載の圧密化物。
【請求項4】
75%を超える相対密度を有する、請求項1に記載の圧密化物。
【請求項5】
前記個々の圧密化物全体にわたって±10%未満の伝熱均一性を有する、請求項1に記載の圧密化物。
【請求項6】
前記モリブデンオキシクロリドが結晶を含み、前記結晶が0.0005cm/gを超える表面積を有する、請求項1に記載の圧密化物。
【請求項7】
1mmを超える平均差し渡し寸法を有する、請求項1に記載の圧密化物。
【請求項8】
セラミック結合剤、セルロース、もしくはヒドロキシアルキルセルロース、またはそれらの混合物を含む5重量%未満の結合剤を含む、請求項1に記載の圧密化物。
【請求項9】
モリブデンオキシクロリド組成物であって、
モリブデンオキシクロリドと
10%未満の結合剤と
を含み、
0.75g/ccを超える嵩密度を有する、組成物。
【請求項10】
前記モリブデンオキシクロリドが結晶を含み、前記結晶の少なくとも90%が1mm未満の平均差し渡し寸法を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
95重量%を超えるモリブデンオキシクロリドを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
ASTM B527-2006によって測定して0.5g/ccを超えるタップ密度を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記モリブデンオキシクロリドが結晶を含み、前記結晶が0.0005cm/gを超える表面積を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
モリブデンオキシクロリド圧密化物を製造する方法であって、
0.75g/ccを超える嵩密度を有し、かつ
モリブデンオキシクロリド、および
10%未満の結合剤
を含むモリブデンオキシクロリド組成物を準備するステップと、
前記モリブデンオキシクロリド組成物をプレスして1.4g/ccを超える嵩密度を有する前記圧密化物を形成するステップと
を含む方法。
【請求項15】
前記プレスするステップが、
前記モリブデンオキシクロリド組成物を型へ充填するステップと、
成形されたモリブデンオキシクロリド組成物を加圧して前記圧密化物を形成するステップと
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記加圧するステップが1000MPa未満の圧力で実行される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記準備するステップが、
モリブデンオキシクロリド、および
10%未満の結合剤
を含む中間モリブデンオキシクロリド組成物を合成するステップであり、前記中間モリブデンオキシクロリド組成物が結晶を含みかつ0.75g/cc未満の嵩密度を有する、ステップと、
前記中間モリブデンオキシクロリド組成物を分離して前記モリブデンオキシクロリド組成物を形成するステップと
を含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2019年10月21日に出願された米国特許仮出願第62/923,892号に対する優先権を主張し、その全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本開示は、モリブデンオキシクロリド組成物および圧密化物、例えばそれから製造されたペレットに関する。特に、本開示は、あったとしても少量の結合剤を含む、嵩密度において改善を示すモリブデンオキシクロリド組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]従来のモリブデンオキシクロリド組成物は、しばしば典型的には高温の薄膜昇華加工槽中で粉末形態で用いられる。一般に、これらのモリブデンオキシクロリド組成物は、低密度(ふかふかした)粉末の形態で合成され、典型的には比較的大きい平均結晶サイズ、例えば、差し渡し(cross body)測定値、および/または低い表面積を有する。作業では、粉末は昇華するまで、堆積が生じる温度に加熱される。
【0004】
[0004]一般的に言えば、粉末(しばしばペレット化結合剤)は、プレスしてペレット、例えば、錠剤にすることができる。しかしながら、比較的大きい平均結晶サイズを有する粉末は、しばしば恐らく結晶と結晶の接着の可能性が減少することにより、ペレット形成において問題を引き起こし、可能性として嵩密度の低いペレットになる。重要なことには、低密度ペレットは、本質的に粉末組成物を多く含まない。モリブデンオキシクロリドペレットの場合には、低密度ペレットは、モリブデンオキシクロリドを多く含まないことがある。したがって、低密度ペレットは、場合によっては、一部の後続の処理を含めて、しばしば薄膜昇華加工槽に再装填されなければならず、その結果、休止時間が生じ、全工程の効率の低下をもたらす。
【0005】
[0005]一部の場合において、結晶の接着を改善するために結合剤を添加し、それによってペレット形成の改善を促進することができる。残念ながら、結合剤の導入は、さらなる問題、例えば全体的なペレット純度の低下を引き起こし、提案される応用分野におけるペレットの使用より前に、さらなる加工、例えば、ペレット化後の精製または結合剤の「焼尽」に取り組まなければならない。重要なことには、結合剤の添加は、またペレットの嵩密度の低下にも寄与し得る。
【0006】
[0006]さらに、従来のモリブデンオキシクロリド粉末は、不十分な粒度均一性、および/または不十分な形状均一性および/またはそれらの嵩全体にわたってむらのある伝熱の問題を起こし、その結果、堆積の不統一をもたらす。
【0007】
[0007]さらに、従来のモリブデンオキシクロリド粉末は、低密度により包装および輸送の難事を伴うこと、例えば、粉末(またはそれから製造された低密度圧密化物)は、実際の量のモリブデンオキシクロリドに関してあまりにも多くの体積を取ることがわかっている。このように、効果的に利用可能な包装および出荷を使用する能力は有効ではなく、追加の包装および出荷手段が用いられなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]従来のモリブデンオキシクロリド技術を鑑みると、例えば結合剤に対する必要性を低減または解消しつつ、改善された物理的特性、例えば、増加させた嵩密度および改善されたサイズ/形状均一性および伝熱を示す改善されたモリブデンオキシクロリド圧密化物に対する、および圧密化物の形成で使用されるモリブデンオキシクロリド組成物(粉末)に対する必要性が、存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]一部の実施形態において、本開示は、(95重量%を超える)モリブデンオキシクロリドおよび(10重量%未満、例えば5重量%未満の)結合剤(セラミック結合剤、セルロースもしくはヒドロキシアルキルセルロース、またはその混合物)を含むモリブデンオキシクロリド圧密化物(consolidated masses)に関する。圧密化物は0.85g/ccを超える、例えば1.4g/ccを超える嵩密度を有する。モリブデンオキシクロリドは結晶を含んでもよく、結晶の少なくとも90%は5mm未満の平均差し渡し寸法(average cross body dimension)および/または0.0005cm/gを超える表面積を有していてもよい。圧密化物は、75%を超える相対密度および/または個々の圧密化物全体にわたって±10%未満の伝熱均一性を有していてもよい。圧密化物は、1mmを超える平均差し渡し寸法を有していてもよい。
【0010】
[0010]一部の実施形態において、本開示は、(95重量%を超える)モリブデンオキシクロリドおよび10%未満の結合剤を含むモリブデンオキシクロリド組成物に関する。モリブデンオキシクロリド組成物は、ASTM B527-2006によって測定して0.75g/ccを超える嵩密度および/または1g/ccを超えるタップ密度を有する。モリブデンオキシクロリドは結晶を含んでもよく、結晶の少なくとも90%は、1mm未満の平均差し渡し寸法および/または0.0005cm/gを超える表面積を有していてもよい。
【0011】
[0011]一部の実施形態において、本開示は、モリブデンオキシクロリド圧密化物を製造する方法であって、0.75g/ccを超える嵩密度を有しかつモリブデンオキシクロリド、および10%未満の結合剤を含むモリブデンオキシクロリド組成物を準備するステップと、モリブデンオキシクロリド組成物をプレスして圧密化物を形成するステップとを含む方法に関する。圧密化物は1.4g/ccを超える嵩密度を有する。一部の場合において、プレスするステップは、モリブデンオキシクロリド組成物を型へ充填するステップと、成形されたモリブデンオキシクロリド組成物を加圧して圧密化物を形成するステップとを含む。加圧は1000MPa未満の圧力で実行されてもよい。準備するステップは、モリブデンオキシクロリド、および10%未満の結合剤を含む中間モリブデンオキシクロリド組成物を合成するステップであり、中間モリブデンオキシクロリド組成物が結晶を含みかつ0.75g/cc未満の嵩密度を有する、ステップと、中間モリブデンオキシクロリド組成物を分離してモリブデンオキシクロリド組成物を形成するステップとを含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0012]上に示したように、従来のモリブデンオキシクロリド粉末は、(本開示の粉末に比較して)大きい平均結晶サイズ、例えば、差し渡し測定値、および/または小さい表面積を有し、および/または、かなりの量の結合剤を含んでいることがある。その結果、圧密化物、例えば、前記粉末から製造されたペレットは、所望の嵩密度より低い。嵩密度の低いペレットは、用いられる(一部の場合では、ペレットは槽で使用される前に処理される)高温の半導体加工槽の頻繁な装入/再装填を必要とする。その結果、休止時間が生じ、全工程の効率の低下をもたらす。さらに、これらの粉末/ペレットは、不十分な粒度および/または形状均一性、および/または嵩全体にわたってむらのある伝熱の問題を起こし、その結果、堆積の不統一をもたらす。また、従来の粉末/ペレットは、包装および輸送に関して問題をかかえ、例えば、ペレットは、実際の量のモリブデンオキシクロリドに対してあまりにも多くの体積を取る。このように、利用可能な包装および出荷を効果的に使用する能力は有効でなく、追加の包装および出荷手段が用いられなければならない。
【0013】
[0013]ところで、本発明者らは、比較的小さな結晶を有する特定のモリブデンオキシクロリド粉末を効果的にプレスして、より高密度の圧密化物、例えばペレットにすることができることを見いだした。圧密化物は、組成物、例えば本明細書において開示される粉末から形成または成形された結果として得られる物体を包含する幅の広い用語である。一部の場合において、圧密化物は、ペレット、錠剤、球体、ディスクもしくはパステル剤、またはその組み合わせの形をしている。「ペレット」または「ペレット化」という用語の本明細書における使用は、圧密化物の範囲または関連するプロセス/加工を限定するようには意図されない。例えば、「ペレット」は球形であってもよく、および/または「ペレット化」は球形に成形された圧密化物を形成してもよい。
【0014】
[0014]伝統的に、より大きい結晶を有する粉末をペレット化する際に、例えば、不十分な結晶と結晶の接着および低い嵩密度という問題が生じている。理論によって束縛されることはないが、結晶構造が大きいほど表面積(単位体積当たり)が小さく、そのために結晶と結晶の接着、すなわち、自己接着のための、圧密化物を形成する機会が低下すると想定される。モリブデンオキシクロリドの場合には、比較的小さな結晶を有する粉末を使用することによって、表面積は改善され、より良好な結晶と結晶の接着、およびより有効なペレット化が可能になる。さらに、圧密化物は、驚いたことに、より高純度に加えてより高い嵩密度も有することが見いだされた。有益なことに、増加した嵩密度のために、半導体加工槽中でペレットに再装填する必要性は著しく減少する。したがって、全体的な生産効率は非常に改善される。
【0015】
[0015]一部の場合において、粉末(および結果として得られる圧密化物)は、あったとしても少量の結合剤を必要とするが、有利にはさらに、結合剤にまつわる純度および密度に関連する問題の低減または解消に寄与する。理論によって束縛されることはないが、あったとしてもより少ない低密度成分、例えば、結合剤を使用することによって、圧密化物の全体的な嵩密度が改善されると想定される。また、半導体加工槽中で圧密化物を使用する前の、さらなる加工、例えば、ペレット化後の分離または結合剤の「焼尽」(バーニングアウト)(burning out)に対する必要性は、有益なことに、低減または解消される。
【0016】
[0016]また、本明細書において開示される高密度圧密化物は、圧密化物全体にわたってより一貫した均一性および伝熱を有し、有利には半導体応用分野においてより均質な堆積を提供することが発見された。
【0017】
[0017]モリブデンオキシクロリドは、黄色またはオレンジ色の固体として一般に入手可能な公知の化合物である。例えば、モリブデンオキシクロリドはCAS番号13637-68-8を有することができる。モリブデンオキシクロリドは、3.31g/cmの理論密度を有するが、しかし、従来のモリブデンオキシクロリド組成物、例えば、粉末は、粉末の構造によりこの密度に達しない。留意されるように、従来のモリブデンオキシクロリド組成物、例えば、粉末またはペレットははるかに低い実際の、嵩および/または相対密度を有する。
【0018】
圧密化物
[0018]一部の実施形態において、本開示はモリブデンオキシクロリド圧密化物に関する。圧密化物は、特定のモリブデンオキシクロリド(粉末)、およびあったとしても少量の結合剤を含む。圧密化物は高い嵩密度、例えば1.4g/ccを超える嵩密度を有する。嵩密度はよく知られている測定である。例えば、嵩密度は、既知体積に含まれる材料の量を秤量し、圧密化物の体積当たりの重量、すなわち、嵩密度を計算することにより測定することができる。嵩密度を測定する別の方法はASTM B329- 2006に提供される。モリブデンオキシクロリドは、モリブデンオキシクロリドの結晶を含み、一部の実施形態において、結晶は比較的小さい。上に示したように、小さな結晶サイズは、驚いたことに、表面積が増加し、圧密化物中のより良好な結晶と結晶の接着を可能にし、少なくとも部分的に嵩密度の改善に寄付する。モリブデンオキシクロリド粉末それ自体は、以下により詳細に議論される。
【0019】
[0019]一部の実施形態において、圧密化物の嵩密度は、0.85g/ccを超え、例えば、0.9g/ccを超え、1.0g/ccを超え、1.2g/ccを超え、1.4g/ccを超え、1.5g/ccを超え、1.7g/ccを超え、2.0g/ccを超え、2.1g/ccを超え、2.2g/ccを超え、2.5g/ccを超え、2.7g/ccを超えまたは3.0g/ccを超えてもよい。範囲の観点では、圧密化物の嵩密度は、0.85g/cc~3.1g/cc、例えば、0.9g/cc~3.1g/cc、1.0g/cc~3.1g/cc、1.2g/cc~3.1g/cc、1.4g/cc~3.1g/cc、1.4g/cc~3.0g/cc、1.4g/cc~2.2g/cc、1.4g/cc~2.8g/cc、1.5g/cc~2.8g/cc、1.6g/cc~2.5g/cc、1.4g/cc~2.0g/ccまたは1.6g/cc~2.0g/ccの範囲であってよい。
【0020】
[0020]圧密化物はまた相対密度の観点で特徴付けることができる。例えば、圧密化物の相対的な密度は、75%を超え、例えば、80%を超え、85%を超え、86.5%を超え、87%を超え、88%を超え、90%を超え、92%を超え、95%を超え、97%を超え、または99%を超えてもよい。範囲の観点では、圧密化物の相対密度は、75%~99.9%、例えば、85%~99%、88%~99%、90%~98%、91%~97%または92%~96%の範囲であってよい。一部の場合において、相対密度は、どれだけの空気または不純物がペレット中に存在するかの測定である。相対密度は、最大の理論密度、例えばモリブデンオキシクロリドに対して、3.31に対する実際の測定された密度の比として計算することができる。本発明者らは、本開示の粉末の使用が、少量の空気/不純物を与え、思いがけず密度および伝導度における改善を提供することを見いだした。
【0021】
[0021]一部の実施形態において、比較的小さな結晶を有するモリブデンオキシクロリド粉末を使用することによって、より高密度の圧密化物が、多くの事例において、結合剤を使用しないで達成することができる。
【0022】
[0022]一部の実施形態において、モリブデンオキシクロリド結晶の少なくとも90%は、5mm未満、例えば、4mm未満、3mm未満、2mm未満、1mm未満、0.7mm未満、0.5mm未満、0.3mm未満、0.1mm未満、または0.05mm未満の平均差し渡し寸法を有する。範囲の観点で、結晶の少なくとも90%は、0.01mm~5mm、例えば、0.05mm~3mm、0.05mm~2mm、0.1mm~3mm、0.1mm~2mm、0.1mm~1mm、0.3mm~3mm、0.3mm~2mmまたは0.5mm~1.5mmの範囲の平均差し渡し寸法を有していてもよい。下限の観点で、モリブデンオキシクロリド結晶の少なくとも90%は、0.01mmを超え、例えば、0.05mmを超え、0.1mmを超え、0.3mmを超え、0.5mmを超え、または0.7mmを超える平均差し渡し寸法を有する。
【0023】
[0023]一部の実施形態において、圧密化物の結晶は大きい表面積を有することができる。例えば、結晶は、0.0005cm/gを超え、例えば、0.001cm/gを超え、0.005cm/gを超え、0.007cm/gを超え、0.01cm/gを超え、0.012cm/gを超え、0.015cm/gを超え、0.017cm/gを超え、0.02cm/gを超え、0.025cm/gを超え、0.05cm/gを超え、0.1cm/gを超え、または0.25cm/gを超える表面積を有していてもよい。範囲の観点で、結晶は、0.0005cm/g~1.0cm/g、例えば、0.001cm/g~0.5cm/g、0.005cm/g~0.1cm/g、0.007cm/g~0.1cm/g、0.01cm/g~0.1cm/gまたは0.012cm/g~0.05cm/gの範囲の表面積を有していてもよい。
【0024】
[0024]一部の場合において、モリブデンオキシクロリド圧密化物は高純度ペレットである。例えば、圧密化物は、95重量%を超える、例えば、96重量%を超え、97重量%を超え、98重量%を超え、99重量%を超え、または99.5重量%を超えるモリブデンオキシクロリドを含んでもよい。範囲の観点で、圧密化物は、80重量%~99.999重量%、例えば、90重量%~99.999重量%、95重量%~99.99重量%または97重量%~99重量%のモリブデンオキシクロリドを含んでもよい。下限の観点で、圧密化物は、99.99重量%未満、例えば、99.9重量%未満、99.5重量%未満、99.3重量%未満または99重量%未満のモリブデンオキシクロリドを含んでもよい。驚いたことに、あったとしても、圧密化物中でのより少量の結合剤の使用、例えば、不純物は、有利には純度改善に寄与する。
【0025】
[0025]上に示したように、あったとしても少量の結合剤の使用は、前述の恩恵を提供した。一部の実施形態において、圧密化物は、10重量%未満、例えば、 重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、1重量%未満、0.7重量%未満、0.5重量%または0.1重量%未満の結合剤を含む。範囲の観点で、圧密化物は0.1重量%~10重量%結合剤、例えば、0.1重量%~8重量%、0.5重量%~7重量%、1重量%~6重量%または2重量%~5重量%を含む。
【0026】
[0026]ペレット化結合剤は当業界でよく知られている。例示の結合剤は、セラミック結合剤、セルロースおよびヒドロキシアルキルセルロースを含む。例示の市販品はAshland ChemicalからのKlucel(商標)ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0027】
[0027]本開示の粉末(場合によっては、あったとしても結合剤をわずかしか含まない)の使用は、思いがけず個々の圧密化物全体にわたって伝熱均一性の改善を提供することが発見された。理論によって束縛されることはないが、高密度の圧密化物ほど、その中に配置される空気および/または不純物が少ないと考えられる。その結果、圧密化物の全体的な伝導度および伝熱性が改善される。一部の実施形態において、圧密化物は、個々の圧密化物全体にわたって±10%未満、例えば、±8%未満、±5%未満、±3%未満、±1%未満、±0.5%未満、または±0.1%未満の伝熱均一性を有する。
【0028】
[0028]圧密化物のサイズは広く変動してもよい。一部の場合において、圧密化物は、平均差し渡し寸法、例えば、1mmを超え、例えば、3mmを超え、5mmを超え、7mmを超え、10mmを超え、12mmを超え、15mmを超え、17mmを超え、20mmを超え、24mmを超え、または30mmを超える長さを有していてもよい。
【0029】
粉末
[0029]上に示したように、圧密化物は特定の粉末から形成される。一部の実施形態において、モリブデンオキシクロリド粉末(モリブデンオキシクロリド組成物)は、モリブデンオキシクロリドを含み、あったとしてもわずかな結合剤、例えば10%未満の結合剤を含む。モリブデンオキシクロリド粉末は0.75g/ccを超える嵩密度を有する。モリブデンオキシクロリド粉末は圧密化物にプレスされる。このように、圧密化物の前述の組成の特色、特性、および性質の測定の多くは、粉末にも、例えば、モリブデンオキシクロリドおよび結合剤濃度、結晶のサイズ、表面積などにも当てはまる。しかし、一部の場合において、粉末は、低密度特性を有していてもよく、例えば、粉末は、ペレットほど高密度でなくてもよい。
【0030】
[0030]一部の実施形態において、粉末の嵩密度は、0.55g/ccを超え、例えば、0.65g/ccを超え、0.75g/ccを超え、0.8g/ccを超え、0.85g/ccを超え、0.9g/ccを超え、1.0g/ccを超え、1.2g/ccを超え、1.5g/ccを超え、2.0g/ccを超え、または2.5g/ccを超えてもよい。範囲の観点で、粉末の嵩密度は、0.55g/cc~3.31g/cc、例えば、0.65g/cc~3.31g/cc、0.70g/cc~3.31g/cc、0.75g/cc~3.31g/cc、0.77g/cc~3.0g/cc、0.78g/cc~2.5g/cc、0.77g/cc~2.0g/cc、0.55g/cc~2.0g/cc、0.7g/cc~1.8g/cc、1.0g/cc~1.5g/cc、1.2g/cc~1.3g/ccの範囲であってよい。
【0031】
[0031]粉末は一部の場合において高いタップ密度を有していてもよい。例えば、粉末のタップ密度は、0.5g/ccを超え、例えば、0.6g/ccを超え、0.7g/ccを超え、0.8g/ccを超え、0.85g/ccを超え、0.9g/ccを超え、1.0g/ccを超え、1.2g/ccを超え、1.5g/ccを超え、または2.0g/ccを超えてもよい。範囲の観点で、粉末のタップ密度は、0.5g/cc~3.5g/cc、例えば、0.5g/cc~2.0g/cc、0.6g/cc~1.8g/cc、0.7g/cc~1.5g/cc、0.8g/cc~1.3g/cc、0.9g/cc~1.1g/ccまたは0.95g/cc~1.05g/ccの範囲であってよい。タップ密度はASTM B527- 2006によって測定されてもよい。
【0032】
[0032]一部の場合において、圧密化物の嵩密度は、粉末の嵩密度より、少なくとも5%大きく、少なくとも10%大きく、少なくとも25%大きく、少なくとも50%大きく、少なくとも75%大きく、または少なくとも100%大きくてもよい。
【0033】
圧密化物を製造する方法
[0033]本開示はまた圧密化物を製造する方法に関する。方法は、モリブデンオキシクロリド粉末を準備するステップと、粉末をプレスして圧密化物を形成するステップとを含む。圧密化物は本明細書において検討される特性を有する。
【0034】
[0034]一部の場合において、プレスするステップは、粉末を型へ充填するステップと、成形粉末を加圧して圧密化物を形成するステップとを含んでもよい。本発明者らは、本明細書において開示される特定の粉末が加工の恩恵を提供することを見いだした。例えば、粉末が型を完全に満たせばそれだけ、例えば、あったとしても、ペレット組成、密度および/または伝導度に影響を与え得るエアポケットおよび/または他の不純物として、粉末が放置する量はそれだけ少ない。理論によって束縛されることはないが、より小さな寸法の結晶は、型のこの改善されたパッキングにおいて助けとなると想定される。その結果、高密度高性能の圧密化物が形成される。
【0035】
[0035]一部の場合において、成形粉末の加圧は、従来の粉末が用いられる場合に使用されるものより低圧力で行うことができる。粉末のより小さな結晶およびより大きい表面積は、結晶と結晶の接着に有利に寄与し、より低圧力下で圧密化物を形成することができると考えられる。
【0036】
[0036]一部の実施形態において、加圧は、1000MPa未満、例えば、800MPa未満、750MPa未満、700MPa未満、650MPa未満、600MPa未満の圧力で実行される。範囲の観点で、加圧は、50MPa~1000MPa、例えば、100MPa~1000MPa、50MPa~500MPa、50MPa~400MPa、50MPa~300MPa、75MPa~400MPa、100MPa~300MPa、100MPa~200MPa、200MPa~900MPa、300MPa~800MPa、400MPa~700MPaまたは400MPa~650MPaの範囲の圧力で実行されてもよい。有益なことに、低圧力は作業効率を改善し、また装置の消耗の改善に寄与する。
【0037】
[0037]他の実施形態において、粉末の準備は、モリブデンオキシクロリドおよび10%未満の結合剤を含む中間モリブデンオキシクロリド組成物(粉末)を合成するステップを含む。中間モリブデンオキシクロリド組成物は結晶を含み、0.75g/cc未満の嵩密度を有する。方法は、中間モリブデンオキシクロリド組成物を分離して、モリブデンオキシクロリド組成物を形成するステップをさらに含む。このステップにおいて、中間モリブデンオキシクロリド粉末の嵩密度が増加して、前述のモリブデンオキシクロリド粉末が得られる。一部の場合において、より大きい結晶は、例えばふるいまたは他のサイズ関連の分離方法を介して中間モリブデンオキシクロリド粉末から除去されてもよい。
【実施例
【0038】
[0038]以下の実施例は本開示の組成物および方法を例証するために提供される。実施例は単なる例証であり、本明細書において述べられる材料、条件またはプロセスパラメータに本開示を限定するようには意図されない。
【0039】
[0039]本明細書において記載されるようにより小さな結晶サイズ、例えば、5mm未満、例えば、およそ0.8mm~2mmを有する実施例1および2のモリブデンオキシクロリド粉末を調製した。体積およそ870ccの目盛り付きガラス製容器に粉末を装填した。有利には、最小限の結合剤含有量(あったとしても)のため、粉末の焼尽(バーンアウト)(burn-out)は実行しなかった。より大きい結晶サイズを有する比較例Aの従来の粉末を、同様の目盛り付きガラス製容器に装填した。装填した容器を秤量し、それによって嵩密度を計算した。表1に結果を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
[0040]示したように、実施例1および2の粉末は、例えば1.4g/ccを超える、著しくより高い嵩密度を示す。この高密度は、有益には、より高密度の圧密化物、例えばより高密度の粉末を可能にする。有利には、より高密度の粉末はモリブデンオキシクロリドをより多く含み、使用において、半導体加工槽中でモリブデンオキシクロリドペレットを再装填する必要性を著しく減らすことができる。
【0042】
[0041]本明細書において記載されるより小さな結晶サイズを有する実施例3および4のモリブデンオキシクロリド粉末を調製し、表2に示すような錠剤を形成した。有利には、最小限の結合剤含有量(あったとしても)のため、粉末の焼尽は実行しなかった。より大きい結晶サイズを有する比較例BおよびCの従来の粉末を同様に調製し、表2に示すような錠剤を形成した。3.31の最大理論密度と錠剤密度を比較することによって、相対密度を計算した。
【0043】
【表2】
【0044】
[0042]表2に示すように、実施例3および4の錠剤は、比較例BおよびCの従来の錠剤に対してはるかに高い錠剤密度および相対密度を示す。有利には、実施例3および4の錠剤はモリブデンオキシクロリドをより多く含み、使用において、半導体加工槽中でモリブデンオキシクロリドペレットを再装填する必要性を著しく減らすことができる。
【0045】
[0043]本明細書において記載されるより小さな結晶サイズを有する、実施例5-12のモリブデンオキシクロリド粉末を調製した。タップ密度について、ASTM B527-2006によって測定して、粉末を測定した。より大きい結晶サイズを有する、比較例Dの従来の粉末を同様にタップ密度について測定した。表3に結果を示す。
【0046】
【表3】
【0047】
[0044]表3に示すように、実施例5-12の錠剤は、0.5g/ccより十分に大きい、例えば0.80g/ccより大きいタップ密度を示す。実際に、ほとんどの事例において、タップ密度は1.0g/ccより大きかった。示したように、比較例Dは、最小の作業例(実施例10)よりさえ12%も小さい、0.80g/ccのタップ密度を示した((0.91-0.8) → 0.11/0.91 = 12%)。比較例Aのタップ密度もまた実施例5-12のものより小さかった。有益なことに、使用において、開示されるより高いタップ密度の粉末は、優れたパッキングを提供し、低いタップ密度を有する粉末に必要になるほど圧縮を必要としない。
【0048】
実施形態
[0045]とりわけ、以下の実施形態が開示される。
【0049】
[0046]実施形態1:モリブデンオキシクロリド;および10重量%未満の結合剤を含むモリブデンオキシクロリド圧密化物。圧密化物は0.85g/ccを超える、例えば1.4g/ccを超える嵩密度を有する。
【0050】
[0047]実施形態2:モリブデンオキシクロリドが結晶を含み、結晶の少なくとも90%は5mm未満の平均差し渡し寸法を有する、実施形態1の実施形態。
[0048]実施形態3:圧密化物が95重量%を超えるモリブデンオキシクロリドを含む、実施形態1または2の実施形態。
【0051】
[0049]実施形態4:圧密化物が75%を超える相対密度を有する、実施形態1-3のいずれか一項に記載の実施形態。
[0050]実施形態5:圧密化物が個々の圧密化物全体にわたって±10%未満の伝熱均一性を有する、実施形態1-4のいずれか一項に記載の実施形態。
【0052】
[0051]実施形態6:モリブデンオキシクロリドが結晶を含み、結晶が0.0005cm/gを超える表面積を有する、実施形態1-5のいずれか一項に記載の実施形態。
[0052]実施形態7:圧密化物が1mmを超える平均差し渡し寸法を有する、実施形態1-6のいずれか一項に記載の実施形態。
【0053】
[0053]実施形態8:セラミック結合剤、セルロースもしくはヒドロキシアルキルセルロースまたはその混合物を含む、5重量%未満の結合剤を含む、実施形態1-7のいずれか一項に記載の実施形態。
【0054】
[0054]実施形態9:モリブデンオキシクロリド;および10%未満の結合剤を含むモリブデンオキシクロリド組成物。モリブデンオキシクロリド組成物は0.75g/ccを超える嵩密度を有する。
【0055】
[0055]実施形態10:モリブデンオキシクロリドが結晶を含み、結晶の少なくとも90%は1mm未満の平均差し渡し寸法を有する、実施形態9に記載の実施形態。
[0056]実施形態11:モリブデンオキシクロリド組成物が95重量%を超えるモリブデンオキシクロリドを含む、実施形態9または10に記載の実施形態。
【0056】
[0057]実施形態12:モリブデンオキシクロリド組成物が、ASTM B527-2006によって測定して0.5g/ccを超える、例えば1g/ccを超えるタップ密度を有する、実施形態9-11のいずれか一項に記載の実施形態。
【0057】
[0058]実施形態13:モリブデンオキシクロリドが結晶を含み、結晶は0.0005cm/gを超える表面積を有する、実施形態9-12のいずれか一項に記載の実施形態。
[0059]実施形態14:モリブデンオキシクロリド圧密化物を製造する方法であって、0.75g/ccを超える嵩密度を有しかつモリブデンオキシクロリド、および10%未満の結合剤を含むモリブデンオキシクロリド組成物を準備するステップと、モリブデンオキシクロリド組成物をプレスして圧密化物を形成するステップとを含む、方法。圧密化物は1.4g/ccを超える嵩密度を有する。
【0058】
[0060]実施形態15:プレスするステップが、モリブデンオキシクロリド組成物を型へ充填するステップと、成形されたモリブデンオキシクロリド組成物を加圧して圧密化物を形成するステップとを含む、実施形態14に記載の実施形態。
【0059】
[0061]実施形態16:加圧するステップが1000MPa未満の圧力で実行される、実施形態14または15に記載の実施形態。
[0062]実施形態17:準備するステップが、モリブデンオキシクロリド;および10%未満の結合剤を含む中間モリブデンオキシクロリド組成物を合成するステップであり、中間モリブデンオキシクロリド組成物が結晶を含みかつ0.75g/cc未満の嵩密度を有する、ステップと、中間モリブデンオキシクロリド組成物を分離してモリブデンオキシクロリド組成物を形成するステップとを含む、実施形態14-16のいずれか一項に記載の実施形態。
【0060】
[0063]本発明が詳細に記載されたが、本発明の趣旨および範囲内の修正は当業者には容易に明らかであろう。前述の議論を考慮して、背景技術および詳細な説明に関連して当業界に関連する知見および上で検討された参照の開示は、すべてが参照によって本明細書において組み込まれる。さらに、本発明の態様および様々な実施形態の部分、ならびに以下におよび/または添付された特許請求の範囲において記述された様々な特色は、組み合わせてよく、または全体もしく一部のいずれかと交換されてもよいことは理解されるべきである。様々な実施形態の前述の説明において、別の実施形態を指す実施形態は、当業者によって認識されるように、適切に他の実施形態と組み合わせることができる。さらに、当業者は、前述の説明が単なる例であり、限定するようには意図されないことを認識するであろう。
【国際調査報告】