(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-27
(54)【発明の名称】平滑化および着色による積層造形部品の仕上げ
(51)【国際特許分類】
B29C 64/188 20170101AFI20221220BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221220BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20221220BHJP
C09D 7/41 20180101ALI20221220BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20221220BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20221220BHJP
B24B 31/00 20060101ALI20221220BHJP
C09D 201/00 20060101ALN20221220BHJP
C09D 163/00 20060101ALN20221220BHJP
B22F 10/28 20210101ALN20221220BHJP
【FI】
B29C64/188
B33Y10/00
B33Y40/20
C09D7/41
C09D7/20
C09D167/00
B24B31/00 C
C09D201/00
C09D163/00
B22F10/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523706
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 US2020057376
(87)【国際公開番号】W WO2021081507
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519127340
【氏名又は名称】ポストプロセス テクノロジーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】ハッチンソン,ダニエル,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】ノーブル,マシュー,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ファーファグリア,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ウェグマン,オーウェン
【テーマコード(参考)】
3C158
4F213
4J038
4K018
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AB08
3C158CB01
3C158DA12
4F213AB12
4F213AM13
4F213AR11
4F213WA25
4F213WA54
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4F213WB01
4F213WL02
4F213WL96
4F213WW02
4F213WW24
4F213WW37
4J038DB001
4J038DD001
4J038JA26
4J038KA06
4J038PC02
4K018FA01
4K018FA14
(57)【要約】
積層造形技術によって形成された部品を平滑化および着色するための表面仕上げ装置および方法が開示されている。表面仕上げ装置は、部品が入れられるタンクまたはチャンバを含んでいる。着色剤が与えられる。部品が所望の平滑度および色となるまで部品は着色および平滑化される。部品は好適なさまざまな平滑化技術を用いて平滑化可能であり、これには固形媒体によるアブレイディング、液体流体の吹きかけ、液体流体に同伴する固形粒子の吹きかけ、または液体渦への浸漬が含まれる。積層造形部品に着色しながら積層造形部品の表面を平滑化する仕上げ処理に用いられる着色剤用の組成物も開示されている。
【図面】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形法によって形成された部品を表面仕上げする方法であって、
前記部品の表面を平滑化すること、および
前記部品の表面を平滑化する間に前記部品を着色することを含む方法。
【請求項2】
前記部品の表面の平滑化を続けつつ前記部品を着色することに先立ち、第1の持続時間の間、前記部品を着色することなく前記部品の表面を平滑化することをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の持続時間の後に着色剤が与えられる請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の持続時間の間の平滑化速度が、前記部品を着色する間の平滑化速度と異なるものである請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記着色の工程が着色剤を与えることをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記着色剤が、
エナメル油性または水性塗料を5重量%~40重量%、
グリコールエーテルを25重量%~75重量%、
樹脂を1重量%~20重量%、および
染料またはインクを1重量%~20重量%含むものである請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記着色剤が、
塗料を26重量%、
ブチルカルビトールを56重量%、
Bondo樹脂を10重量%、および
黒の酸性染料を8重量%含むものである請求項5記載の方法。
【請求項8】
ほぼ同時に所望の平滑度と所望の色が得られる請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記平滑化の工程が、固形粒子を含む媒体内で前記部品を研磨することさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記平滑化の工程が、前記部品の上方に配置されたノズルから固形粒子の同伴する液体流を前記部品に吹きかけることをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記平滑化の工程が、前記部品の上方および下方に配置されたノズルから液体流を前記部品に吹きかけることをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記平滑化の工程が、液体渦の中で前記部品を研磨することをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項13】
所望の平滑度および色に前記部品を仕上げるレシピを選択することをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記部品が金属部品であり、前記方法が前記部品の着色前に前記金属部品の酸化被膜を除去することをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記金属部品の前記酸化被膜が酸を与えることによって除去される請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記部品を着色している間に追加の着色剤を与えることをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項17】
積層造形法によって形成された部品を仕上げるための装置であり、
固形媒体による研磨によって前記部品が所望の平滑度まで平滑化可能なタンクと、
前記タンク内の前記固形媒体へと着色剤を供給すべく前記タンクに接続された前記着色剤の供給源を含む装置。
【請求項18】
積層造形法によって形成された部品を仕上げるための装置であり、
前記部品の上方に配置されたノズルから固形粒子の同伴する液体を吹きかけることによって前記部品が所望の平滑度まで平滑化可能なチャンバと、
前記チャンバ内の前記部品へと着色剤を供給すべく前記チャンバに接続された前記着色剤の供給源を含む装置。
【請求項19】
積層造形法によって形成された部品を仕上げるための装置であり、
前記部品の上方および下方に配置されたノズルから液体を吹きかけることによって前記部品が所望の平滑度まで平滑化可能なチャンバと、
前記チャンバ内の前記部品へと着色剤を供給すべく前記チャンバに接続された前記着色剤の供給源を含む装置。
【請求項20】
積層造形法によって形成された部品を仕上げるための装置であり、
前記部品を液体渦内で研磨することによって前記部品が所望の平滑度まで平滑化可能なタンクと、
前記タンク内の前記液体渦へと着色剤を供給すべく前記タンクに接続された前記着色剤の供給源を含む装置。
【請求項21】
積層造形法によって形成された部品を仕上げるために用いられた部品仕上げ装置を洗浄する方法であり、洗浄は、前記部品仕上げ装置が前記積層造形法によって形成された前記部品を平滑化すると同時に前記積層造形法によって形成された前記部品を着色するのに用いられた後に行われるものであって、
前記積層造形法によって形成された前記部品が平滑化および着色された後に前記積層造形法によって形成された前記部品を取り除いた後、その中で前記積層造形法によって形成された前記部品が平滑化されかつ前記部品がそこに与えられた着色剤によって着色された媒体へと洗浄用流体を与えること、
前記部品仕上げ装置を作動させ、持続時間中、前記部品仕上げ装置内で前記媒体を流動させること、
前記部品仕上げ装置から前記洗浄用流体を抜くこと、および
前記洗浄用流体を与える工程、前記部品仕上げ装置を作動させ、持続時間中、前記部品仕上げ装置内で前記媒体を流動させる工程、および前記洗浄用流体を抜く工程を繰り返し、これにより前記部品仕上げ装置を洗浄すること、を含む方法。
【請求項22】
積層造形部品に着色しながら前記積層造形部品の表面を平滑化する仕上げ処理に用いられる着色剤用の組成物であって、
エナメル油性または水性塗料を5重量%~40重量%、
グリコールエーテルを25重量%~75重量%、
樹脂を1重量%~20重量%、および
染料またはインクを1重量%~20重量%含む組成物。
【請求項23】
塗料を26重量%、
ブチルカルビトールを56重量%、
Bondo樹脂を10重量%、および
黒の酸性染料を8重量%さらに含む請求項22記載の組成物。
【請求項24】
前記エナメル油性または水性塗料は、ラスト・オリウム(登録商標)のブラックセミグロスエナメル塗料、非エナメル塗料、および艶消しブラック塗料の少なくとも1つを含む請求項22記載の組成物。
【請求項25】
前記樹脂は、Bondo樹脂、ポリエステル仕上げ樹脂、およびエポキシ樹脂の少なくとも1つを含む請求項22記載の組成物。
【請求項26】
前記染料は、黒のJacquardai酸性染料、黒の墨汁、RITの粉末、液体染料、および黒のタトゥーインクの少なくとも1つを含む請求項22記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(参照出願)
本願は、2019年10月24日に出願された米国仮出願番号62/925506の優先権を主張するものである。本願は米国特許出願公開2019/0022931を参照して援用する。
【0002】
本開示は積層造形法によって形成された部品の表面仕上げのための装置および方法に関するものであり、表面仕上げは部品の平滑化と着色を含む。
【背景技術】
【0003】
マルチジェットフュージョン方式(MJF)、選択的レーザ焼結法(SLS)、熱溶解積層方式(FDM)などの積層造形技術は、でこぼこの表面を持つ部品を生み出すものであり、これは本来の目的のために部品が用いられる前に平滑化を必要とする。例えば熱溶解積層方式は材料を層状に積み重ねる。プラスチックフィラメントや金属ワイヤがコイルから引き出され部品形成のための材料を供給する。この方法は縞状の表面を作り出すもので、各層ごとに工程が全方向で進行する。このような表面は用途によっては好ましくなく、平滑仕上げが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10737440号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0022931号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2019/0176403号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2019/0202126号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2017/0348910号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
積層造形法によって形成された部品の仕上げ方法への改善要求に対しては、これまでにも大きな進歩があった。ニューヨーク州バッファローのポストプロセス・テクノロジーズ社によって作られたシステムは、さまざまな積層造形法によって形成された部品の表面仕上げを改善するものである。積層造形法によって形成された部品の仕上げ改善に向けて進歩はあったものの、改善の余地は残っている。場合によっては、積層造形法によって形成された部品を着色することが望まれる。例えば、積層造形法によって形成された部品は所望の色へと塗装(painted)または染色(dyed)される。積層造形法によって形成された部品の着色は、追加の時間およびリソースを必要とする。さらに、積層造形法によって形成された部品はポロシティや密度などのさまざまな特性を有し、これが部品の着色具合に影響を与え得る。したがって積層造形部品の仕上げ方法にさらなる改善が必要である。
【0006】
積層造形法によって形成された部品の仕上げ、およびプリント段階で形成された部品から不要な材料を除去するための従来技術および方法についてのさらなる開示は同時係属特許出願(2018年12月26日出願の出願番号16/232955、2019年4月9日出願の出願番号16/340647、2019年3月11日出願の出願番号16/298550、2018年12月4日出願の出願番号16/209778、2019年7月23日出願の出願番号16/519237(現米国特許番号10737440))に見いだすことができ、これらは本願の所有者に譲渡されており、その開示のすべてを参照して援用する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
積層造形技術によって形成された部品の平滑化および着色のための表面仕上げ装置および方法が開示されている。この表面仕上げ装置はタンクまたはチャンバを含んでおり、部品がその中に入れられ、部品が所望の平滑度および色となるまで着色および平滑化される。部品は好適なさまざまな平滑化技術を用いて平滑化可能であり、これには固形媒体によるアブレイディング(abrading)、液体流体の吹きかけ(spraying)、液体流体に同伴する固形粒子の吹きかけ、または液体渦への浸漬(submersing)が含まれる。ある実施形態では、部品は第1の継続期間中に着色なしで平滑化される。その後、着色剤(colorant)が加えられ、所望の平滑度および色が得られるまで部品が平滑化および着色される。他の実施形態は、乾燥着色剤の使用、液体の着色剤の使用、仕上げ処理中のさらなる着色剤の追加などを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
一例として本発明の好ましい実施形態を添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に基づく部品仕上げ装置を上側から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に描かれた部品仕上げ装置を上側から見た別の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すレシピデータベースの構成要素を示す略図である。
【
図4】
図4は、
図1および2の部品仕上げ装置を部品仕上げに用いる際の全工程を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図1および2の部品仕上げ装置を部品仕上げに用いる際の工程を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の別の実施形態に基づく部品仕上げ装置の別実施形態を上側から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、部品仕上げ装置の他の別実施形態を示す略図である。
【
図8】
図8は、部品仕上げ装置のさらに他の別実施形態を示す略図である。
【
図9】
図9は、部品仕上げ装置のさらに他の別実施形態を示す断面図である。
【
図10】
図10は、部品仕上げ工程の別実施形態を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、部品仕上げ工程の他の別実施形態を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、部品仕上げ装置を部品仕上げに用いた後に部品仕上げ装置を洗浄する工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では本発明のさまざまな実施形態が詳述されている。ただしこれらのディテールは、本発明の理解を容易となし、かつ本発明を実施するための代表的な実施形態を説明するために語られるものである。本発明の範囲に留まったままで他の変形例や実施形態が可能なのだから、記載された特定の実施形態に本発明を限定するためにこれらのディテールが用いられてはならない。
【0010】
さらに、本発明を十分に理解できるように多くのディテールが語られているが、本発明を実施するためにこれら特定のディテールが必要ないことは当業者にとっては明らかである。他の例では、公知の方法、データのタイプ、プロトコル、手順、構成要素、ネットワーク機器、工程、インターフェース、電気的構造、回路などのディテールは詳述されておらず、あるいは本発明が不明確にならないようにブロック図の形で示されている。
【0011】
積層造形法によって形成された部品を仕上げるための実施形態は、本明細書に開示された積層造形および3Dプリント法に限定されない。本明細書に開示の実施形態は、FDM、ポリジェット方式、DMLS、GBAMなどを含むさまざまな積層造形および3Dプリント技術によって形成された、さまざまな複合材料や部品形状の部品の仕上げに適用可能である。
【0012】
図1および2には、部品仕上げ装置100の実施形態が図示されている。部品仕上げ装置100は積層造形法によって形成された部品を仕上げるために用いられる。部品仕上げ装置100はとりわけ、積層造形法によって形成された部品の平滑化および着色の両方に備えたものである。本明細書に開示されている部分を除き、部品仕上げ装置100は、2017年6月30日出願の米国特許出願公開US2019/0022931に開示された表面仕上げ装置の実施形態と似たものにできる。部品仕上げ装置100は、ニューヨーク州バッファローのポストプロセス・テクノロジーズ社によって製造されたNITOR、RADOR、またはLEVO装置と似たものにできる。
【0013】
図1および2を参照すると、部品仕上げ装置100は蓋13を有しており、これが開くことで仕上げタンク16に保持された媒体44(
図2に図示)への積層造形部品の投入が可能となる。仕上げタンク16はウレタンまたは他の好適な非反応性の丈夫な材料からなるものとできる。部品仕上げ装置100は制御パネル10を有しており、これは時間、モータ速度、ならびに以下に述べる他のパラメータなどのパラメータをオペレータに入力可能とさせるユーザーインターフェースを備える。偏心モータ14は仕上げタンク16の下に取り付けられている。仕上げタンク16はスプリング20に取り付けられており、これが偏心モータ14によって加わる力を制御し、1~3ミリメートル程度の垂直動作を生じる。偏心モータ14が動作することで、仕上げタンク16内の媒体44に投入された部品の表面平滑化(表面均一化とも称される)につながるように仕上げタンク16が振動する。実施形態によっては、2つの偏心モータ14をサイドバイサイドで、および/または仕上げタンク16の両側に配置して用いてもよい。
【0014】
供給タンク12は、スプレーノズル22を介しての仕上げタンク16内への供給のための媒体44の供給源であり、スプレーノズル22はスプレーノズル導管23を介して供給タンク12へと接続されている。供給タンク12は仕上げタンク16に隣接して描かれており、スプレーノズル導管23へと媒体44を供給する。廃水除去バケツ24は、仕上げタンク16の底部の廃水出口26から廃水が出てきた後に固形廃棄物から液体を分離するための手段を提供する。
【0015】
この実施形態のスプレーノズル22は、仕上げタンク16の上端に等間隔に並ぶ3つのスプレーノズルを有している。スプレーノズル22は仕上げタンク16内の媒体44に直接向けられている。
【0016】
スプレーノズル22に隣接して着色剤ノズル27が配置されている。本実施形態では3つの着色剤ノズル27が設けられ、それぞれスプレーノズル22のうちの1つに対応している。実施形態によって着色剤ノズルの数が増えてもよいし減ってもよい。着色剤ノズル27は着色剤供給タンク25へとつながる着色剤供給管31の端部に配置されている。
【0017】
電子機器パネル28(
図2に図示)は、偏心モータ、制御パネル10、および部品仕上げ装置100の他のハードウエアへの電気的接続を提供する。電子機器パネル28は1つ以上のコンピュータ実行可能プログラム35(本明細書では場合によって“プログラミングソフトウエア35”と称される)を実行するオンボードコンピュータ29を有し、プログラム35は以下に説明するように、コンピュータに部品仕上げ装置100の動作制御を可能とする。例えばスプレーノズル22を出ていく媒体44の流量は、オンボードコンピュータ29でプログラム35を実行することで決定される。電子機器パネル28はまたレシピデータベース37を含んでおり、すなわちレシピデータベース37にアクセス可能である。レシピデータベース37はデータ保存媒体に保存されており、データ保存媒体の配置はローカルでもリモートでもよい。
【0018】
図3は、プログラミングソフトウエア35を実行するオンボードコンピュータ29にアクセスを受けるレシピデータベース37の構成要素を示す略図である。レシピデータベース37は既知のレシピ131(すなわち指示)を含み、これは仕上げ装置100を動かして指定の材料で所望の平滑度および所望の色を有する完成部品を製造するための動作パラメータを指定するものである。レシピデータベース37の既知のレシピは、以前に用いられたレシピ、現在の装置や他の装置の両方から時間をかけて確立されたレシピ、実験的に確立されたレシピ、または既知の部品、材料、および装置特性に基づいて算出されたレシピを含む。例えばレシピデータベース37は数千のレシピを含む。
【0019】
レシピデータベース37は、さまざまな積層造形部品についてのデータ123を含んでおり、これは部品を構成する材料、部品のサイズ、部品を製造したプリンタのモデル、部品の形状、および他のいろいろな特性を含む。レシピデータベース37は、さまざまな部品仕上げ装置特性についてのデータ125を含んでおり、これは部品仕上げ装置で用いられる技術、部品仕上げ装置で用いられる媒体、部品仕上げ装置で用いられる着色剤(複数可)、部品仕上げ装置で用いられる洗浄剤(複数可)、ならびに他のいろいろな特性を含む。レシピデータベース37はまた、完成部品のさまざまな所望の特性についてのデータ127を含んでおり、これは例えば所望の平滑度や所望の色である。
【0020】
既知のレシピ131はそれぞれ部品仕上げ装置の動作パラメータを含む。動作パラメータは、媒体を与えるタイミング、着色剤を与えるタイミング、特定の段階で用いられるアジテーションレベルなどを規定するデータを含むものとできる。温度、圧力、湿度などの付加的なパラメータがあってもよい。例えば、レシピは1つ以上の期間(すなわち持続時間)を規定するデータを含む。各期間に関して、レシピは、その期間のタイミング(持続時間)、その期間の部品仕上げ装置のアジテーションレベル、(もしあれば)与えられる着色剤の種類、与えられる着色剤の量などについての情報を含むものとできる。例えばレシピは初期期間(10分)のデータを含むものとでき、この期間にUPM1からなる固形媒体に40グラムの乾燥粉末状酸性染料が添加され、混合される。他の例では、レシピは着色剤なしに部品を平滑化するように部品仕上げ装置が動作させられる段階を規定する期間を含むものとできる。他の例では、レシピは部品仕上げ装置へと追加の着色剤が与えられる段階を規定する1つ以上の期間を含むものとできる。
【0021】
既知のレシピデータベース131は、仕上げ前の積層造形部品の特性ならびに部品仕上げ装置の特性を踏まえて、所望の平滑度および色の完成部品を製造するための既知のレシピを特定するために利用可能である。
【0022】
部品の仕上げ時には適切な媒体が選択される。適切な媒体選択に関する情報は、米国特許出願公開US2019/0022931に開示されている。さらに部品仕上げ工程に潤滑剤、液体洗浄剤、泡立ち防止溶液を加えてもよい。好適な洗浄剤はポストプロセス・テクノロジーズ社製のPLM-001-SURF(PG3)である。好適な潤滑剤を用いることで、例えば部品仕上げ装置の壁に媒体または着色剤が付着しづらくすることができる。好適な媒体、洗浄剤、潤滑剤、および泡立ち防止溶液の選択に関する情報はレシピデータベースによって提供されるものとできる。
<動作>
<一般動作>
部品仕上げ装置で仕上げ処理を受ける部品は、部品仕上げ装置によって行われる処理全体で平滑化および着色される。本明細書に記載されているように、仕上げ処理動作にはさまざまな実施形態が存在する。ある実施形態の仕上げ処理動作においては、部品仕上げ装置で仕上げ処理を受ける部品は、同時に平滑化処理と着色処理を受ける。ある実施形態の仕上げ処理動作は、着色されることなく部品が平滑化される期間を含むものとできる。ある実施形態の仕上げ処理動作は、平滑化処理が始まる前に着色剤を与える工程を含むものとできる。ある実施形態の仕上げ処理動作は、仕上げ処理中に平滑化が完了する前に1回きりまたは複数回、追加の着色剤を与える工程を含むものとできる。これらの動作の実施形態のいくつかを以下に述べる。
【0023】
図4は積層造形部品を仕上げる全工程150を示すフローチャートであり、仕上げには積層造形部品の平滑化と着色の両方が含まれている。仕上げ媒体が部品仕上げ装置へと与えられる(工程151)。部品仕上げ装置は
図1および2に描かれたものに似たものとすることができる。媒体は部品の表面を削り落とす小さい固形粒子から構成される。好適な仕上げ媒体の一例がUPM1だが、他の好適な仕上げ媒体を用いてもよい。任意だが、本実施例においては乾燥(スタータ)着色剤が媒体に与えられる(工程152)。例えば乾燥(スタータ)着色剤は乾燥粉末状酸性染料(またはインク)である。例えば40グラムの乾燥(スタータ)着色剤が媒体に与えられる。部品仕上げ装置を作動させて媒体とスタータ着色剤を混ぜ合わせる(工程153)。次に液体着色剤が媒体に与えられる(工程154)。本実施例においては液体着色剤の構成は以下のとおりである。
エナメル油性または水性塗料が5%~40%、
グリコールエーテルが25%~75%、
樹脂が1%~20%、および
酸性染料が1%~20%。
【0024】
より具体的には、例えば40グラムの液体着色剤が与えられる。例えば液体着色剤の構成は以下のとおりである。
塗料が125グラム(26重量%)、
ブチルカルビトール(グリコールエーテル)が267グラム(56重量%)、
Bondo(登録商標)(樹脂)が50グラム(10重量%)、および
黒の酸性染料が40グラム(8重量%)。
【0025】
次に積層造形部品(複数可)が部品仕上げ装置内の媒体へと与えられる(工程155)。部品仕上げ装置を作動させて媒体をアジテートし、部品を平滑化および着色する(工程156)。任意だが、仕上げ処理中に追加の着色剤を媒体に与えてもよい(工程157)。追加の着色剤は一回きりまたは複数回与えられるものとできる。部品は所望の最終レベルまで平滑化および着色される(工程158)。部品が所望の最終レベルまで平滑化および着色された後、部品が部品仕上げ装置から取り出される(工程159)。
【0026】
部品仕上げ装置100では、さまざまな着色剤を用いることができる。着色剤は酸性でも非酸性でもよい。使用可能な着色剤の一例は酸性アゾ染料である。他の着色剤としては、RIT(登録商標)の染料、塗料、インク、墨汁、炭素系インク、顔料、およびステインがある。部品仕上げ装置で用いられる着色剤はさまざまな色とでき、赤、黒、グレー、青、黄、緑、オレンジなどを含む。部品仕上げ装置での使用に選ばれる着色剤の色は、部品仕上げ装置に投入される前の部品の色(すなわち部品がプリントされる材料の色)を考慮に入れる。上述のように、着色剤は塗料、グリコールエーテル、樹脂、および酸性染料からなる組成物とすることができる。塗料はラスト・オリウム(登録商標)のブラックセミグロスエナメル塗料などのエナメル油性塗料とすることができる。あるいは他の種類の塗料を使ってもよく、例えば水性塗料、非エナメル塗料、あるいは艶消しブラック塗料とすることができる。樹脂はBondo樹脂、またはポリエステル仕上げ樹脂やエポキシ樹脂などの他のタイプとすることができる。酸性染料は黒のJacquardai酸性染料、さもなくば、黒の墨汁、RITの粉末または液体染料、または黒のタトゥーインクとすることができる。
【0027】
部品仕上げ装置は積層造形法によって形成された金属部品の着色および平滑化に用いることができる。金属部品の場合、着色剤を与える前に部品表面が不動態化されてもよい。金属部品の場合、金属部品の酸化被膜を除去して部品に着色剤を与えやすくするために、着色剤を与える前または与えた後に酸が与えられてもよい。
【0028】
例えば、部品が着色および平滑化の両方の処理を受けている期間中、部品は摂氏約60~70度の温度に維持される。より高い、より低い別の温度範囲を用いることもでき、これは周辺室内温度を含む。
【0029】
例えば、着色および平滑化処理に他の化学薬品、洗浄剤、または溶液が与えられてもよく、これはシュウ酸、D-リモネン、ジペンテンを含む。
<部品仕上げ装置の動作>
図5は、
図1および2の部品仕上げ装置の実施形態の作業工程166での段階を示す。この工程では、オペレータが制御パネル(
図2に図示)を用いて部品仕上げのパラメータを入力する(工程168)。オンボードコンピュータ29で作動するプログラミングソフトウエア35は、パラメータ入力のためのプロンプトを制御パネル10のユーザーインターフェースを介してコンピュータ29に与えさせる。これらのパラメータは仕上げ処理を受ける部品についての特性を含むものとできる。これらの特性は部品の所望の仕上げ特性を含むものとできる。これらは完成部品の所望の平滑度および完成部品の所望の色を含むものとできる。プログラミングソフトウエア35はまた、部品の他の特性についてコンピュータ29が入力を得ることを可能にするものであり、それは例えば、部品を構成する材料、部品のサイズ、部品の形状、部品を製造したプリンタのモデル、ならびに部品についての他の情報である。この情報は制御パネル10のユーザーインターフェースを介してオペレータから得られるものとできる。あるいは、この情報は他のソースから得られるものであってもよく、それは例えば部品仕上げ装置100と関連するセンサであり、部品のこれらの特性を特定可能なものである。このようなセンサは、画像認識プログラミングへと画像を提供するカメラを含むものとできる。あるいは、これらの特性は部品を製造したプリンタ装置からのデータ伝送で得られるものであってもよい。あるいは、これらの特性は積層造形部品と関連するラベリングまたは仕様書から得られるものであってもよい。プログラミングソフトウエア35はまた、部品仕上げ装置特性についてコンピュータ29が入力を得ることを可能にするものである。これらの部品仕上げ装置特性は、部品仕上げ装置100で用いられる技術、装置100で用いられる媒体44の種類、用いられる着色剤、用いられる洗浄剤および/または潤滑剤、ならびに他の特性を含む。部品仕上げ装置特性についての情報は、オペレータから得られるものとできる。あるいは、部品仕上げ装置特性についての情報は、部品仕上げ装置と関連するセンサによって得られるものとできる。これらの特性のいくつかは事前に記憶されたものであってもよい。例えば処理に関する特性は先の動作からプログラミングによって保存されるものとでき、同じ技術、媒体、着色剤、洗浄剤が装置で用いられているかぎりは再入力される必要はない。
【0030】
プログラミングソフトウエア35がコンピュータ29にパラメータを取得させた後、プログラミングソフトウエア35はコンピュータ29にその特性をレシピデータベース37の既知のレシピと比べさせる(工程169)。既知のレシピは、さまざまな既知の製造後特性を有する積層造形部品に関して既知の処理特性を用いて所望の仕上げ特性を得るために、動作パラメータすなわち部品仕上げ装置100の動作のための処方を提供する。
【0031】
所定の部品特性および処理特性を有する部品を所望の仕上げとすべくコンピュータ29がレシピデータベースに一致するものを見つけたら、プログラミングソフトウエア35がコンピュータ29に装置100を作動させ、一致するレシピに従って部品を仕上げる(工程170および172)。例えば、プログラミングソフトウエア35は部品特性、仕上げ特性、処理特性に関して完全一致するレシピを見つけることをコンピュータ29に要求したりはしない。既知のレシピはそれぞれ、1つ以上の特性に関連して許容範囲を有するものとできる。あるいは、プログラミングソフトウエア35によって、一致するレシピを見つける際の許容範囲レベルの指定をコンピュータ29がオペレータに許可することもできる。オペレータは特性に関するパラメータの入力前または後にこの許容範囲レベルを指定するものとできる。
【0032】
コンピュータ29が一致するものを見つけられなかったらプログラミングソフトウエア35はコンピュータ29に新たなレシピを算出させる(工程170および174)。プログラミングソフトウエア35は、既知のレシピに含まれる情報ならびに部品および処理についての他の情報に基づいてコンピュータ29に新たなレシピを算出させる。新たに算出されたレシピは出力され、所望の仕上げを実現すべく装置を作動させるのに用いられる(工程176および172)。
【0033】
積層造形部品に所望の仕上げ特性を得るべくコンピュータ29によって決定されたレシピは、着色剤なしで部品仕上げ装置を動かす時間およびそのアジテーションレベル、いつ着色剤を与えるか、および着色剤が与えられた後に所望の仕上げを実現すべく部品仕上げ装置を動かす時間およびそのアジテーションレベルについての情報を含む。レシピはまた、どのくらいの着色剤を与えるか、すべての着色剤を一度に与えるべきかそれとも着色剤を分けて与えるべきか、および後者の場合、与える量とタイミングについての情報を含むものとできる。レシピはまた、温度、湿度などについての情報も含むものとできる。
【0034】
部品仕上げ装置を作動させるためのレシピを用いて平滑度と色に関して積層造形部品を所望の仕上げ特性へと仕上げることに加えて、プログラミングソフトウエア35はコンピュータ29に、選択されたレシピについての情報をレシピデータベース37に保存させる(工程178)。用いられるレシピが工程174でプログラミングによって算出された新たなレシピである場合、この新たなレシピはレシピデータベースに加えられ、同様の部品を同じ所望の仕上げ特性へと仕上げるためにその中の情報が将来的に使用可能とされる。用いられるレシピがレシピデータベース37に既に存在するレシピだった場合、質、信頼性、傾向、経過などを評価する際に役立つようにそのレシピが用いられたという情報が記憶される。
<別実施形態>
図6は、部品仕上げ装置の別実施形態180を示す。
図6の実施形態は
図2に示す実施形態と似ているが、着色剤供給管27がスプレーノズル22につながっている点で異なっている。この実施形態では媒体44と同じノズル22を介して着色剤が供給される。
図6の実施形態は
図1および2の実施形態と同様に作動する。
【0035】
図7は他の別実施形態の表面仕上げ装置500を示す。
図7の実施形態500は積層造形部品を平滑化し着色する。
図1および2の実施形態と比べると、
図7の実施形態は積層造形部品の平滑化に異なる技術を用いている。例えば
図7の表面仕上げ装置500は、積層造形法によって形成された部品の表面の平滑化にサーマル・アトマイズト・フュージレイド(TAF)技術を用いるものとできる。本明細書に開示されている部分を除き、表面仕上げ装置500は、2018年12月4日出願の米国特許出願公開US2019/0176403に開示された表面仕上げ装置と似ている。表面仕上げ装置500は、ニューヨーク州バッファローのポストプロセス・テクノロジーズ社によって製造されたDECI DUO装置と似たものにできる。
【0036】
図7の表面仕上げ装置500は、浮遊固形媒体流体(SSM流体)507を用いて積層造形部品(AM部品)519から不要な支持材料を除去すると同時にAM部品のビルド材の表面仕上げを平滑化する。SSM流体507は液体媒体であり、小さな固形粒子が液体媒体に浮遊および/または液体媒体によって運ばれるものである。粒子は研磨を助けるようなものが選ばれて用いられ、支持材料を除去および/またはAM部品表面を平滑化するものとできる。AM部品519は、装置500のスプレーチャンバ525内にあるターンテーブル522などのプラットフォームに載置される。AM部品19を平滑化するためのSSM流体507は、AM部品519の上方および側方に配置されたノズル528を介して吹きかけられる。SSM流体507はターンテーブル522の下に配置されたタンク531から供給されるものとできる。媒体ポンプ537は、パイプ、チューブ、および/またはホースなどの流体管543Aを介して、タンク531からSSM流体507を汲み上げ、ノズル528へと送り、これが強制空気と共にSSM流体507をノズル528からAM部品519に向けて吹き出させる。SSM流体507はその後タンク531に再集合し、SSM流体507はリサイクル、すなわちタンク531から汲み上げられ、ノズル528へとポンプで送られ、再びAM部品519へと吹きかけられることが可能となる。
【0037】
この実施形態では、投与機構582を用いて着色剤が与えられる。投与機構582はタンク531とつながっている。部品仕上げ装置500はタンクポート579を有しており、ポート579Aを介して水を、ポート579Bを介して支持材料溶媒を、ポート579Cを介して泡立ち防止剤を、ポート579Eを介して着色剤供給タンク25から着色剤を、それぞれ供給する。部品仕上げ装置500はまた、圧縮空気を供給するためのポート579Dを有しており、これを用いてノズル528を作動させること、および/またはタンク531のSSM流体507中で固形媒体粒子を浮遊状態に保つのを助けることができる。投与機構582はこれらの流体をタンク531内へと自動的に供給する。
図7の部品仕上げ装置500の実施形態の動作は、
図4および5に関連して述べた動作に似たものとできる。
【0038】
図8は、他の別実施形態の部品仕上げ装置600を示す。
図8の実施形態600は積層造形部品を平滑化し着色する。
図1および2または
図7の実施形態と比べると、
図8の実施形態600は積層造形部品の平滑化に異なる技術を用いている。例えば
図8の表面仕上げ装置600は、積層造形法によって形成された部品の表面の平滑化にボリューメトリック・ベロシティ・ディスパージョン(VVD)技術を用いるものとできる。本明細書に開示されている部分を除き、部品仕上げ装置600は、2018年12月26日出願の米国特許出願公開US2019/0202126に開示された部品仕上げ装置と似ている。部品仕上げ装置600は、ニューヨーク州バッファローのポストプロセス・テクノロジーズ社によって製造されたBASEおよびDECI装置と似たものにできる。
【0039】
図8では1つ以上の積層造形部品610がチャンバ616内のプラットフォームすなわちトレイ613に載置される。支持材料の溶解および/または浸食ならびに表面仕上げのための流体622が部品610の下方および上方に配置されたノズル625を介して部品610へと吹きかけられる。流体622は、その上側が開いたタンク631から供給される。タンク631はノズル625の下方に配置されている。ポンプ623がノズル625へとつながる一連のパイプ650を介してタンク631から流体622を汲み出し、これが流体622を部品610に向けて吹き出させる。流体622はタンク631に再集合し、流体622は閉ループ方式で装置600内でリサイクルされる。
【0040】
タンク631はオペレータによって設定されたパラメータに基づいて、あるいはオペレータが選択権を有する所定の動作レシピに関連して事前に記憶されているように、自動的に流体622で満たされるものとできる。このため部品仕上げ装置600は、水、支持材料溶媒(洗浄剤とも称される)、着色剤、および泡立ち防止剤の供給物をそれぞれ供給するための装置を有するものとできる。水は施設の給水設備619あるいは容器または他の貯蔵タンクから供給されるものとできる。溶媒と泡立ち防止剤はそれぞれ、ホース662または他の管によって装置に接続されたバケツ656などの独自の容器または貯蔵タンクから供給されるものとできる。着色剤は着色剤供給タンク25から供給される。溶媒、泡立ち防止剤、および着色剤それぞれ用のホース662は、これらの流体をタンク631内へと自動的に供給するために、水撃ポンプなどの機構に接続されるものとできる。
図8の部品仕上げ装置600の実施形態の動作は、
図4および5に関連して述べた動作と似たものとなり得る。
【0041】
図9は、他の別実施形態の表面仕上げ装置700を示す。
図9の実施形態700は積層造形部品を平滑化し着色する。
図1および2または7または8の実施形態と比べると、
図9の実施形態は積層造形部品の平滑化に別の異なる技術を用いている。例えば
図9の表面仕上げ装置700は、積層造形法によって形成された部品の表面の平滑化にサブマースト・ボルテックス・キャビテーション(SVC)技術を用いるものとできる。本明細書に開示されている部分を除き、表面仕上げ装置700は、2017年6月1日出願の米国特許出願公開US2017/0348910に開示された表面仕上げ装置と似ている。表面仕上げ装置700は、ニューヨーク州バッファローのポストプロセス・テクノロジーズ社によって製造されたDEMIまたはCENTI表面仕上げ装置と似たものにできる。
【0042】
図9の断面側面図は、部品仕上げ装置700のさまざまな構成要素を示している。部品740は蓋(図示せず)を通って部品仕上げ装置700へと投入され、部品740は出力タンク716へと入る。出力タンク716は液体塊728で満たされており、液体塊728はポンプ(図示せず)の起動に応じて入力タンク718から循環的に流動するものであって、ポンプは圧力をかけて液体塊728をタンクマニホルド714から流れ出させる。超音波発生装置770が出力タンク716の下方に示されている。
【0043】
図9の実施形態では、例えば洗浄剤である液体塊728が、入力タンク718の下方領域からポンプによって汲み出され、複数のマニホルド714を介して出力タンク716へと送られ、出力タンク716内で水圧と回転流を生じる。着色剤は着色剤供給タンク25から供給される。供給管762は、着色剤が液体塊728に与えられるように入力タンク718に着色剤を自動的に供給すべく、着色剤供給タンク25を入力タンク718に接続する。
【0044】
一式のタンクマニホルド714を通過した液体728の流れは概ね回転状であり、液体塊728が渦を形成し、かつ部品740が液体塊728の表面にほとんど達しないようになっている。マニホルド714の位置およびマニホルド714から生じた液体塊728の流れの方向が渦を発生させ、これが液体塊728の表面と出力タンク716の底面および側面との間に部品を浮遊させる。部品を平滑化および着色するための
図9の部品仕上げ装置700の実施形態の動作は、
図4および5に関連して述べた動作と似たものとなり得る。
【0045】
他の別実施形態では、積層造形部品の平滑化に用いられる媒体自体が、積層造形部品が媒体によって平滑化された時にリリースされる着色剤を含むものとできる。この実施形態では、平滑化処理中に液体を与えて積層造形部品によって吸収される着色剤を希釈することで所望の最終色を得ることが可能である。
<さらなる別実施形態>
別モードの動作では、所望の色を得るためにどの着色剤を用いるべきかをオペレータが事前に知らない。この動作モードでは、どの着色剤を用いるべきかをオペレータが部品仕上げ装置のプログラミングに問い合わせる。どの着色剤を用いるべきかアドバイスを受けた後、オペレータは適切な着色剤で着色剤供給タンク25を満たす。
【0046】
図10は、部品仕上げ装置100を用いて積層造形部品の表面仕上げを行う工程800の別実施形態での段階を示している。仕上げ前の積層造形部品100が部品仕上げ装置に投入される(工程802)。この別実施形態では、着色剤なしで平滑度Ra=Xの中間レベルまで部品表面を平滑化するように部品仕上げ装置を作動させる(工程804)。次に部品仕上げ装置の媒体に着色剤が与えられる(工程806)。着色剤が媒体に含まれた状態で積層造形部品の表面の平滑化を続けるように部品仕上げ装置100を作動させる(工程808)。部品表面が所望の平滑度となりかつ部品が所望の色となったら部品仕上げ装置を停止させる(工程810)。部品仕上げ装置から部品が取り出される(工程812)。
【0047】
図10の実施形態では、部品を所望の色および平滑度に仕上げるべく、着色剤を与えるまでの平滑化処理の持続時間が決定され、かつ着色剤を与えた後の平滑化処理の持続時間が決定される。仕上げタンクの媒体に着色剤が与えられると、着色剤は部品表面またはその内部に付着する。着色剤は部品表面に留まってもよいし、部品表面に吸収されてもよい。ただし平滑化処理は部品から材料を除去する。よって平滑化処理中に除去される材料に着色剤が付着してしまうことを考えると、本動作実施形態では、平滑化の初期段階で着色剤を与えることは恐らく不要である。本実施形態では、部品の最終表面が着色剤に暴露される段階で着色剤が表面平滑化処理に与えられる。
【0048】
図10の実施形態では、着色剤を与える前後の平滑化処理の持続時間を決定する際に、さまざまな特性も考慮に入れる。そうした特性の一つが所望の最終色である。例えば、所望の色または彩度を得るために、部品が特定の期間にわたって着色剤に暴露されることを必要とする場合がある。
【0049】
本実施形態では、着色剤を与える前後の平滑化処理の持続時間はまた、部品が必要とする着色剤への暴露時間を前提として、完成部品に所望の平滑度を得るために必要なアジテーションレベルも考慮に入れている。例えば装置は、着色剤が与えられるまで、より高いアジテーションレベルで動かされるものとできる。より高いアジテーションレベルで装置を動かすことで不要な材料をより速く除去可能である。ただし、部品が特定の期間にわたって着色剤に暴露されることを必要とする場合、部品が所望の平滑度まで平滑化されながら同時に部品が所望の最終色へと着色されるように、着色に必要な時間と釣り合うように部品のアジテーションレベルが落とされるものとできる。第2の期間の持続時間(すなわち部品が平滑化および着色される時間)は、部品が同時に平滑化および着色されるわけであるから、所望の平滑度を得るための時間が所望の色を得るための時間と一致するように決定される。第1の期間の持続時間(すなわち着色剤なしで部品が平滑化される時間)は、着色剤を用いたさらなる平滑化が所望の平滑度と所望の色の両方を同時に実現できるように中間レベルの平滑度まで部品を平滑化するように決定される。
【0050】
図10に記載された別実施形態では、部品仕上げ装置が、仕上げタンク中にある部品の特性を検知可能な1つ以上の部品センサを有するものとできる。センサは、部品仕上げ装置が作動して部品表面を平滑化している時に部品の平滑度を感知するように動作する。部品センサは、部品表面が平滑化されている時または不要な支持材料が除去されている時に部品の画像を取得するカメラを含むものとできる。カメラの出力は画像認識ソフトウエアに与えられ、これが部品の画像を分析して部品表面の平滑度を特定する。カメラの代わりに超音波センサやレーザーレーダなどの他の種類のセンサが用いられてもよい。部品表面が第1の特定の平滑度Ra=Xであると判定されると、着色剤ノズルを介して仕上げタンクへと着色剤を与えることで着色剤が部品に与えられる。仕上げ処理が続けられ、所望の仕上げ特性が得られるまで部品が平滑化および着色される。
【0051】
図10に記載された実施形態では、仕上げ中の部品の平滑度を特定するために仕上げタンクと関連したセンサを有する代わりに、所望の中間レベルの平滑度が得られたかどうかを判断するために、部品がオペレータによって目視検査されてもよい。この代案では、仕上げ処理が一時停止され、部品が仕上げタンクから取り出され目視検査されるものとできる。これにより、着色剤を与えて平滑化処理を継続するか、それとも所望の中間レベルの平滑度が得られるまで着色剤を与えることなく平滑化処理を継続するかの判断を下すことができる。
【0052】
図11は積層造形部品の表面仕上げ工程820のさらに他の別実施形態を示す。
図11の工程820は
図4に描かれた工程と似ている。
図11に示す工程が
図4に示す工程と異なるのは、
図11に示す工程が任意で追加の着色剤を与える点である。
図11の工程820では、仕上げ前の積層造形部品が部品仕上げ装置に投入される(工程822)。部品仕上げ装置が
図1および2に描かれた装置と似ている場合は、媒体は既に部品仕上げ装置に与えられている。着色剤は部品仕上げ装置内の媒体に与えられるが(工程824)、あるいは仕上げ前の積層造形部品が部品仕上げ装置に投入される前に着色剤が与えられてもよい。部品仕上げ装置を作動させて積層造形部品の表面を平滑化および着色する(工程826)。中間段階で追加の着色剤を与えるかどうかの判断がなされる(工程828)。この判断は部品を目視で検査するオペレータによって行われるものとできる。あるいはこの判断は部品仕上げ装置と関連するプログラムされたコンピュータによって行われてもよく、これは仕上げおよび着色処理を受けている部品の特性を検知するセンサから入力を受け取る。他の選択肢としては、部品の仕上げおよび着色に用いられているレシピに従って自動的に判断が行われるものとできる。追加の着色剤を与えるとの判断がなされることで、追加の着色剤が与えられる(工程828および830)。工程はその後、部品平滑化工程(工程826)へと戻る。部品はその後また別の中間段階まで平滑化され、そのポイントでまた追加の着色剤を与えるかどうかの判断がなされる(工程828)。追加の着色剤は複数回与えられるものとできる。追加の着色剤を与えないとの判断がなされたら部品は最終レベルの平滑度まで平滑化される(工程828および832)。平滑化処理は停止され(工程834)、仕上げ装置から部品が取り出される(工程836)。
【0053】
図12は、
図1および2に示すものと同様の部品仕上げ装置を洗浄する工程850を示すものであり、部品の平滑化および着色に部品仕上げ装置を用いた後に行われる。例えば
図12の工程850は、
図4に示す工程150、
図10に示す工程800、または
図11に示す工程820を行った後に行われる。工程850は部品仕上げ装置で用いられた媒体を洗浄するためにも利用可能である。
図12の工程850は、平滑化および着色された部品が部品仕上げ装置から取り除かれた後に始まる(工程852)。この工程850では媒体は依然として部品仕上げ装置内にある、次に部品仕上げ装置に水が与えられる(工程854)。例えばおよそ2ガロンの水が部品仕上げ装置に与えられる。あるいは他の分量の水または他の好適な流体が用いられてもよい。次に部品仕上げ装置が作動させられ、すなわち部品仕上げ装置の仕上げタンク内で媒体に回転流を起こす(工程856)。例えば媒体はおよそ5分間、部品仕上げ装置内で流動させられる。あるいは媒体は他の持続時間にわたって流動させられるものであってもよい。次に部品仕上げ装置を操って部品仕上げ装置の仕上げタンク内での媒体の流動を止める(工程858)。次に部品仕上げ装置の仕上げタンクから水が抜かれる(工程860)。水を与える工程(工程854)、媒体を流動させる工程(工程856)、媒体の流動を止める工程(工程858)、水を抜く工程(工程860)が5~6回繰り返される(工程862)。水を与える工程、媒体を流動させる工程、媒体の流動を止める工程、水を抜く工程(工程848)が5~6回繰り返されたら処理が完了したものと見なされる(工程864)。部品仕上げ装置はさらなる部品の平滑化および着色に再び使用可能となる。
【0054】
ここまで本発明の詳細を述べてきたが、以下のステートメントは上述の発明の側面のいくつかを要約するものとして理解可能である。
<ステートメント1(S1)>
積層造形法によって形成された部品を表面仕上げする方法であって、
前記部品の表面を平滑化すること、および
前記部品の表面を平滑化する間に前記部品を着色することを含む方法。
<ステートメント2(S2)>
前記部品の表面の平滑化を続けつつ前記部品を着色することに先立ち、第1の持続時間の間、前記部品を着色することなく前記部品の表面を平滑化することをさらに含むS1記載の方法。
<ステートメント3(S3)>
前記第1の持続時間の後に着色剤が与えられるS2記載の方法。
<ステートメント4(S4)>
前記第1の持続時間の間の平滑化速度が、前記部品を着色する間の平滑化速度と異なるものであるS2またはS3記載の方法。
<ステートメント5(S5)>
前記着色の工程が着色剤を与えることをさらに含む先行するいずれかのステートメントに記載の方法。
<ステートメント6(S6)>
前記着色剤が、
エナメル油性または水性塗料を5重量%~40重量%、
グリコールエーテルを25重量%~75重量%、
樹脂を1重量%~20重量%、および
染料またはインクを1重量%~20重量%含むものである先行するいずれかのステートメントに記載の方法。
<ステートメント7(S7)>
前記着色剤が、
塗料を26重量%、
ブチルカルビトールを56重量%、
Bondo樹脂を10重量%、および
黒の酸性染料を8重量%含むものであるステートメントS1ないしS5のいずれかに記載の方法。
<ステートメント8(S8)>
ほぼ同時に所望の平滑度と所望の色が得られる先行するいずれかのステートメントに記載の方法。
<ステートメント9(S9)>
前記平滑化の工程が、固形粒子を含む媒体内で前記部品を研磨することさらに含む先行するいずれかのステートメントに記載の方法。
<ステートメント10(S10)>
前記平滑化の工程が、前記部品の上方に配置されたノズルから固形粒子の同伴する液体流を前記部品に吹きかけることをさらに含む先行するいずれかのステートメントに記載の方法。
<ステートメント11(S11)>
前記平滑化の工程が、前記部品の上方および下方に配置されたノズルから液体流を前記部品に吹きかけることをさらに含む先行するいずれかのステートメントに記載の方法。
<ステートメント12(S12)>
前記平滑化の工程が、液体渦の中で前記部品を研磨することをさらに含む先行するいずれかのステートメントに記載の方法。
<ステートメント13(S13)>
所望の平滑度および色に前記部品を仕上げるレシピを選択することをさらに含む先行するいずれかのステートメントに記載の方法。
<ステートメント14(S14)>
前記部品が金属部品であり、前記方法が前記部品の着色前に前記金属部品の酸化被膜を除去することをさらに含む先行するいずれかのステートメントに記載の方法。
<ステートメント15(S15)>
前記金属部品の前記酸化被膜が酸を与えることによって除去されるステートメント14記載の方法。
<ステートメント16(S16)>
前記部品を着色している間に追加の着色剤を与えることをさらに含む先行するいずれかのステートメントに記載の方法。
<ステートメント17(S17)>
積層造形法によって形成された部品を仕上げるための装置であり、
固形媒体による研磨によって前記部品が所望の平滑度まで平滑化可能なタンクと、
前記タンク内の前記固形媒体へと着色剤を供給すべく前記タンクに接続された前記着色剤の供給源を含む装置。
<ステートメント18(S18)>
積層造形法によって形成された部品を仕上げるための装置であり、
前記部品の上方に配置されたノズルから固形粒子の同伴する液体を吹きかけることによって前記部品が所望の平滑度まで平滑化可能なチャンバと、
前記チャンバ内の前記部品へと着色剤を供給すべく前記チャンバに接続された前記着色剤の供給源を含む装置。
<ステートメント19(S19)>
積層造形法によって形成された部品を仕上げるための装置であり、
前記部品の上方および下方に配置されたノズルから液体を吹きかけることによって前記部品が所望の平滑度まで平滑化可能なチャンバと、
前記チャンバ内の前記部品へと着色剤を供給すべく前記チャンバに接続された前記着色剤の供給源を含む装置。
<ステートメント20(S20)>
積層造形法によって形成された部品を仕上げるための装置であり、
前記部品を液体渦内で研磨することによって前記部品が所望の平滑度まで平滑化可能なタンクと、
前記タンク内の前記液体渦へと着色剤を供給すべく前記タンクに接続された前記着色剤の供給源を含む装置。
<ステートメント21(S21)>
積層造形法によって形成された部品を仕上げるために用いられた部品仕上げ装置を洗浄する方法であり、洗浄は、前記部品仕上げ装置が前記積層造形法によって形成された前記部品を平滑化すると同時に前記積層造形法によって形成された前記部品を着色するのに用いられた後に行われるものであって、
前記積層造形法によって形成された前記部品が平滑化および着色された後に前記積層造形法によって形成された前記部品を取り除いた後、その中で前記積層造形法によって形成された前記部品が平滑化されかつ前記部品がそこに与えられた着色剤によって着色された媒体へと洗浄用流体を与えること、
前記部品仕上げ装置を作動させ、持続時間中、前記部品仕上げ装置内で前記媒体を流動させること、
前記部品仕上げ装置から前記洗浄用流体を抜くこと、および
前記洗浄用流体を与える工程、前記部品仕上げ装置を作動させ、持続時間中、前記部品仕上げ装置内で前記媒体を流動させる工程、および前記洗浄用流体を抜く工程を繰り返し、これにより前記部品仕上げ装置を洗浄すること、を含む方法。
<ステートメント22(S22)>
積層造形部品に着色しながら前記積層造形部品の表面を平滑化する仕上げ処理に用いられる着色剤用の組成物であって、
エナメル油性または水性塗料を5重量%~40重量%、
グリコールエーテルを25重量%~75重量%、
樹脂を1重量%~20重量%、および
染料またはインクを1重量%~20重量%含む組成物。
<ステートメント23(S23)>
塗料を26重量%、
ブチルカルビトールを56重量%、
Bondo樹脂を10重量%、および
黒の酸性染料を8重量%さらに含むステートメント22に記載の組成物。
<ステートメント24(S24)>
前記エナメル油性または水性塗料は、ラスト・オリウム(登録商標)のブラックセミグロスエナメル塗料、非エナメル塗料、および艶消しブラック塗料の少なくとも1つを含むステートメント22に記載の組成物。
<ステートメント25(S25)>
前記樹脂は、Bondo樹脂、ポリエステル仕上げ樹脂、およびエポキシ樹脂の少なくとも1つを含むステートメント22に記載の組成物。
<ステートメント26(S26)>
前記染料は、黒のJacquardai酸性染料、黒の墨汁、RITの粉末、液体染料、および黒のタトゥーインクの少なくとも1つを含むステートメント22に記載の組成物。
【0055】
特定の好ましい実施形態を参照して本開示を説明してきたが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく変更および変形を行い得ることは当業者であれば当然理解できる。上述および添付の図面に描かれた特定の詳細への限定を出願人が意図していないことを理解されたし。
【国際調査報告】