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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-27
(54)【発明の名称】音を生成する時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 21/08 20060101AFI20221220BHJP
   G04B 23/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G04B21/08 B
G04B21/08 C
G04B23/02 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524034
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2020079955
(87)【国際公開番号】W WO2021078972
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】19205441.9
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501099611
【氏名又は名称】パテック フィリップ ソシエテ アノニム ジュネーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベノワ、クエンティン
(72)【発明者】
【氏名】ゲイザー、シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ル ゴール、エリック
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンディーニ、アレッサンドロ
(57)【要約】
本発明は、中央部(3)、裏蓋(4)、およびベゼル(5)を有するケース(2)と、ケース(2)内に収容される、少なくとも1つの音を生成することを目的とした振動を生成する振動生成装置と、振動生成装置によって生成された振動を増幅するための振動増幅装置(16)と、増幅された振動を受け取り、腕時計の内部から外部へ音を生成するように配置された膜(18)とを含む、機械式腕時計(1)に関するものである。振動生成装置は、音を生成するように配置された少なくとも1つの溝(15)を含む読み取り面を有する回転要素(13)である。腕時計(1)はまた、回転要素(13)を回転駆動するための手段と、回転要素(13)を回転駆動するための手段を作動させるための手段と、回転要素(13)と協働して、回転要素(13)の回転運動中に溝によって生成された振動を振動増幅装置(16)に伝達する伝達部材(28)とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式の腕時計(1)であって、
中央部(3)、裏蓋(4)、およびベゼル(5)を有するケース(2)と、
前記ケース(2)内に収容される、少なくとも1つの音を生成することを目的とした振動を生成する振動生成装置と、
前記振動生成装置によって生成された前記振動を増幅するための振動増幅装置(16)と、
前記増幅された振動を受け取り、前記腕時計の内部から外部へ音を生成するように配置された膜(18)と
を備える、前記腕時計(1)において、
前記振動生成装置は、音を生成するように配置された少なくとも1つの溝(15)を含む読み取り面を有する回転要素(13)であり、
前記腕時計(1)は、
前記回転要素(13)を回転駆動するための手段と、
前記回転要素(13)を回転駆動するための手段を作動させるための手段と、
前記回転要素(13)と協働して、前記回転要素(13)の回転運動中に前記溝によって生成された振動を前記振動増幅装置(16)に伝達する伝達部材(28)とを備えることを特徴とする、腕時計。
【請求項2】
前記回転要素(13)を回転駆動するための手段は、ばねと、前記ばねの巻き付け機構とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の腕時計。
【請求項3】
前記回転要素(13)の回転速度を制御するように配置されたレギュレータを備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の腕時計。
【請求項4】
前記回転要素(13)を回転駆動するための手段を作動させるための手段は、スライド、押しボタン、または所定の時間に結び付けられ、時計のムーブメントと協働する、係合機構を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項5】
前記振動増幅装置(16)は、前記膜(18)の平面に平行でない枢動平面内の支持体(22)に枢動可能に取り付けられたレバー(20)を備え、
前記レバー(20)は、前記レバー(20)に振動を伝達するために前記伝達部材(28)によって作動されるように配置され、前記レバー(20)は、同様に、前記枢動面において少なくとも並進的に前記膜(18)と一体であり、それにより、前記回転要素(13)に連結された前記伝達部材(28)の振動によって生成され、前記伝達部材(28)によって作動される前記レバー(20)を介して前記膜(18)に伝達される伝達部材(28)の動作が、前記膜(18)の増幅された動作を生成して、増幅された音を生成するようになっていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項6】
前記膜(18)の前記動作によって生成された前記音を、それが外部に出る前に増幅するように配置された圧縮室(40)を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項7】
前記膜(18)の下流に配置された、少なくとも1つの開口部(42)を有する壁によって、前記圧縮室(40)が閉じられ、前記開口部(42)の寸法は、所望の音の増幅の関数として前記膜(18)の表面積に関連して選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項8】
前記回転要素(13)は、その読み取り面の上に延在するいくつかのらせんコイルを備えた少なくとも1つの溝(15)を含み、前記伝達部材(28)および前記回転要素(13)は、前記回転要素(13)が1回転を超えて回転するときに、前記伝達部材(28)が前記回転要素(13)の前記読み取り面の少なくとも一部にわたって移動するように、相互に可動となるように配置されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項9】
前記振動増幅装置(16)は、
前記膜(18)の平面と平行な平面内で並進誘導するための手段であって、前記回転要素(13)が1回転を超えて回転するとき、前記並進誘導するための手段は、前記振動増幅装置(16)が前記回転要素(13)の読み取り面の少なくとも一部にわたる前記伝達部材(28)の動作に追従することを可能にするように配置される、並進誘導するための手段と、
前記振動増幅装置(16)と前記膜(18)との間の可動結合のための手段であって、前記可動結合のための手段は、前記振動増幅装置(16)が移動しているときに前記膜(18)と連結されたままであることを可能にするように配置される、可動結合のための手段とを含むことを特徴とする、請求項8に記載の腕時計。
【請求項10】
前記振動増幅装置(16)は、前記膜(18)の平面と平行でない枢動平面内で支持体(22)上に枢動可能に取り付けられ、前記伝達部材(28)と一体である第1の端部(20a)を有するレバー(20)を備え、
前記振動増幅装置を並進誘導するための手段は、前記ケース(2)と一体であるベアリング要素(50)であって、前記ベアリング要素(50)に沿って前記レバー(20)の前記支持体(22)が、前記膜の平面と平行な平面内で支持およびスライドすることができる、ベアリング要素(50)を含み、
前記可動結合のための手段は、前記レバー(20)の第2の端部(20b)と一体であるフォーク(52)と、前記膜(18)と一体であるスタッド(54)とを備え、前記フォーク(52)は、前記枢動面内で並進的にスタッド(54)と一体でありながら、前記膜(18)の平面と平行な平面内で前記スタッド(54)のいずれかの側でスライドするために前記スタッド(54)と係合していることを特徴とする、請求項9に記載の腕時計。
【請求項11】
前記振動増幅装置(16)は、前記レバー(20)と一体である関節式安定化アーム(58)を備えることを特徴とする、請求項10に記載の腕時計。
【請求項12】
前記回転要素(13)を回転駆動するための手段を作動させるための手段の作動の前にまたは同時に、前記伝達部材(28)を、前記回転要素(13)の前記読み取り面の開始に対応する初期位置にもたらすための機構を備えることを特徴とする、請求項8~11のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項13】
前記伝達部材(28)は、前記回転要素(13)の少なくとも1つの溝(15)に追従するように配置された針であり、前記針は、前記振動増幅装置(16)と一体であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項14】
前記回転要素(13)は、平らなディスクまたはシリンダであることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項15】
前記回転要素(13)は、前記腕時計の文字盤を形成するように配置された平らなディスクであることを特徴とする、請求項14に記載の腕時計。
【請求項16】
前記回転要素に設けられた前記溝(15)が、言葉または音楽の形態で音を生成するように配置されていることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項17】
機械式の時計(1)であって、
中央部(3)、裏蓋(4)、およびベゼル(5)を有するケース(2)と、
前記ケース(2)内に収容される、少なくとも1つの音を生成することを目的とした振動を生成する振動生成装置と、
前記振動生成装置によって生成された前記振動を増幅するための振動増幅装置(16)と、
前記増幅された振動を受け取り、前記時計の内部から外部へ音を生成するように配置された膜(18)とを備える、前記時計(1)において、
前記振動生成装置は、いくつかのらせんコイルを備えた少なくとも1つの溝(15)を含む読み取り面を有する回転要素(13)であり、前記少なくとも1つの溝(15)は、音を生成するように配置され、前記読み取り面にわたって延在し、
前記時計は、
前記回転要素(13)を回転駆動するための手段と、
前記回転要素(13)を回転駆動するための手段を作動させるための手段と、
前記回転要素(13)と協働するように配置され、前記回転要素(13)の回転中に前記溝(15)によって生成された振動を前記振動増幅装置(16)に伝達する伝達部材(28)とを備え、
前記伝達部材(28)および前記回転要素(13)は、前記回転要素(13)が1回転を超えて回転するときに、前記伝達部材(28)が前記回転要素(13)の前記読み取り面の少なくとも一部にわたって移動するように、相互に可動となるように配置されることを特徴とする、時計。
【請求項18】
前記振動増幅装置(16)は、
前記膜(18)の平面と平行な平面内で並進誘導するための手段であって、前記回転要素(13)が1回転を超えて回転するとき、前記並進誘導するための手段は、前記振動増幅装置(16)が前記回転要素(13)の読み取り面の少なくとも一部にわたる前記伝達部材(28)の動作に追従することを可能にするように配置される、並進誘導するための手段と、
前記振動増幅装置(16)と前記膜(18)との間の可動結合のための手段であって、前記可動結合のための手段は、前記振動増幅装置(16)が移動しているときに前記膜(18)と連結されたままであることを可能にするように配置される、可動結合のための手段とを備えることを特徴とする、請求項17に記載の時計。
【請求項19】
前記振動増幅装置(16)は、前記膜(18)の平面と平行でない枢動平面内で支持体(22)上に枢動可能に取り付けられ、前記伝達部材(28)と一体である第1の端部(20a)を有するレバー(20)を備え、
前記振動増幅装置を並進誘導するための手段は、前記ケース(2)と一体であるベアリング要素(50)であって、前記ベアリング要素(50)に沿って前記レバー(20)の前記支持体(22)が、前記膜(18)の平面と平行な平面内で支持およびスライドすることができる、ベアリング要素(50)を備え、
前記可動結合のための手段は、前記レバー(20)の第2の端部(20b)と一体であるフォーク(52)と、前記膜(18)と一体であるスタッド(54)とを備え、前記フォーク(52)は、前記枢動面内で並進的にスタッド(54)と一体でありながら、前記膜(18)の平面と平行な平面内で前記スタッド(54)のいずれかの側でスライドするために前記スタッド(54)と係合していることを特徴とする、請求項18に記載の時計。
【請求項20】
前記振動増幅装置(16)は、前記レバー(20)と一体である関節式安定化アーム(58)を備えることを特徴とする、請求項19に記載の時計。
【請求項21】
前記回転要素(13)を回転駆動するための手段を作動させるための手段の作動の前にまたは同時に、前記伝達部材(28)を、前記回転要素(13)の前記読み取り面の開始に対応する初期位置にもたらすための機構を備えることを特徴とする、請求項17~20のいずれか一項に記載の時計。
【請求項22】
前記伝達部材(28)は、前記回転要素(13)の前記溝(15)に追従するように配置された針であり、前記針は、前記振動増幅装置(16)と一体であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項23】
前記回転要素(13)は、平らなディスクまたはシリンダであることを特徴とする、請求項17~22のいずれか一項に記載の時計。
【請求項24】
前記回転要素に設けられた前記溝(15)が、言葉または音楽の形態で音を生成するように配置されていることを特徴とする、請求項17~23のいずれか一項に記載の時計。
【請求項25】
前記膜(18)の前記動作によって生成された音を、それが外部に出る前に増幅するように配置された圧縮室(40)を備えることを特徴とする、請求項17~24のいずれか一項に記載の時計。
【請求項26】
前記膜(18)の下流に配置された、少なくとも1つの開口部(42)を有する壁によって、前記圧縮室(40)が閉じられ、前記開口部(42)の寸法は、所望の音の増幅の関数として前記膜(18)の表面積に関連して選択されることを特徴とする、請求項1~25のいずれか一項に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式時計に関するものであり、より具体的には、中央部、裏蓋、およびベゼルを有するケースと、このケース内に収容される、少なくとも1つの音を生成することを目的とした振動を生じさせる装置と、この振動生成装置によって生成された振動を増幅するための装置と、増幅された振動を受け取り、時計の、より具体的には腕時計の内部から外部へ音を生成するように配置された膜とを有する機械式腕時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、「機械式時計または腕時計」という表現は、時計または腕時計がその異なる機能を実行するための機械的要素のみを含み、より具体的には、音およびその増幅が機械的要素のみを使用して生成されることを意味する。
【0003】
このような時計は、例えば、音を生成するために時打ち機構が振動を生成するように使用されるとき、振動生成装置が、ハンマーで打たれるように配置されたゴングである時打ち機構(ミニッツリピーター、グランデソネリ、プチソネリ、アラームなど)を備えた腕時計である。時打ち機構を備えた時計は、一般的に2つのゴングを含み、1つは深い音を生成するためのものであり、もう1つは高音を生成するためのものである。2つのゴングに変更を加えたり、1/4時間または分とは異なって時間に時打つように変更したとしても、時打ち機構を備えた時計は、2つのゴングのそれぞれに対応する2つの異なる音のみに制限される。
【0004】
さらに、CH4918(特許文献1)に記載されているように、懐中時計は時間を話すことができることが知られている。懐中時計は、スタイラスと、48個の同心溝を含むディスクとを含む。スタイラスは、話される時間に対応して、割り当てられた溝の上方に配置されるように制御される。ディスクが持ち上げられてスタイラスと接触し、回転を開始して、スタイラスが溝上で話される時間を読み取るようにする。したがって、生成される音は非常に短く、数秒であり、話される時間にはちょうど十分な時間である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】スイス特許第4918号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1の態様によれば、本発明は、2つを超える異なる音の組み合わせの生成を可能にし、例えば、腕時計の限られたスペース内で音楽または言葉を再生することを可能にする腕時計を提案することによって、これらの欠点を克服することを目的とする。
【0007】
別の態様によれば、本発明は、例えば、音楽またはスピーチの一片を再生可能にするのに十分な長さの時間の間に音を生成することを可能にする時計を提案することを目的とする。
【0008】
本発明のさらなる目的は、生成された音のかなりの程度までの増幅を可能にすることであり、好ましくは、不要なノイズを制限するか、またはさらにはキャンセルすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、中央部、裏蓋、およびベゼルを有するケースと、ケース内に収容される、少なくとも1つの音を生成することを目的とした振動を生成する装置と、振動生成装置によって生成された振動を増幅するための装置と、増幅された振動を受け取り、腕時計の内部から外部へ音を生成するように配置された膜とを含む、機械式腕時計に関するものである。
【0010】
本発明によれば、振動生成装置は、音を生成するように配置された少なくとも1つの溝を含む読み取り面を有する回転要素であり、腕時計は、回転要素を回転駆動するための手段と、回転要素を回転駆動するための手段を作動させるための手段、ならびに回転要素と協働して、回転要素の回転運動中に溝によって生成された振動を増幅装置に伝達する伝達部材とを含む。
【0011】
有利な方法で、回転要素は、その読み取り面にわたって延在するいくつかのらせんコイルを備えた少なくとも1つの溝を含むことができ、伝達部材および回転要素は、回転要素が1回転を超えて回転するときに、伝達部材が回転要素の読み取り面の少なくとも一部にわたって移動するように、互いに対して可動となるように配置される。
【0012】
好ましくは、振動増幅装置は、膜の平面に平行でない枢動平面内の支持体に枢動可能に取り付けられたレバーであって、レバーは、レバーに振動を伝達するために伝達部材によって作動されるように配置され、レバーは、同様に、枢動面において少なくとも並進的に膜と一体であるため、回転要素に連結された伝達部材の振動によって生成され、伝達部材によって作動されるレバーを介して膜に伝達される伝達部材の動作が、増幅された音を生成するように、膜の増幅された動作を生成する、レバーを含む。
【0013】
したがって、本発明は、いくつかの音の組み合わせの生成を可能にし、好ましくは数秒の時間の間、好ましくは少なくとも約10秒、より好ましくは少なくとも1分またはさらには数分、音楽または言葉の一片を再生可能にし、機械式腕時計の限られたスペース内で、不要なノイズを制限またはさらにはキャンセルして、音を大幅に増幅される。
【0014】
別の一態様によれば、本発明は、中央部、裏蓋、およびベゼルを有するケースと、ケース内に収容される、少なくとも1つの音を生成することを目的とした振動を生成する装置と、振動生成装置によって生成された振動を増幅するための装置と、増幅された振動を受け取り、時計の内部から外部へ音を生成するように配置された膜とを含む、機械式時計に関するものである。
【0015】
本発明の他の態様によれば、振動生成装置は、いくつかのらせんコイルを備えた少なくとも1つの溝を含む読み取り面を含む回転要素であり、少なくとも1つの溝は、音を生成するように配置され、読み取り面にわたって延在し、時計は、回転要素を回転駆動するための手段と、回転要素を回転駆動するための手段を作動させるための手段と、回転要素と協働して、回転要素の回転中に溝によって生成された振動を増幅装置に伝達する伝達部材とを含み、伝達部材および回転要素は、回転要素が1回転を超えて回転するときに、伝達部材が回転要素の読み取り面の少なくとも一部にわたって移動するように、互いに対して可動となるように配置される。
【0016】
有利には、振動増幅装置は、膜の平面と平行な平面内で並進誘導するための手段であって、記回転要素が1回転を超えて回転するとき、手段は、増幅装置が回転要素の読み取り面の少なくとも一部にわたる伝達部材の動作に追従することを可能にするように配置される、手段と、増幅装置と膜との間の可動結合のための手段であって、手段は、増幅装置が移動しているときに膜と連結されたままであることを可能にするように配置される、手段とを含む。
【0017】
したがって、本発明は、数秒~数分の時間の間、いくつかの音の組み合わせの生成を可能にし、機械式時計を使用して音楽または言葉の一片を再生することを可能にし、ムーブメントの部分の振動に関連する不要なノイズを制限またはさらにはキャンセルして、音はかなりの程度まで増幅される。
【0018】
本発明の他の構成および利点は、非限定的な例として提供される本発明の様々な実施形態の、添付の図面を参照して行われる以下の詳細な説明を読むことから明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る腕時計または時計のケースの断面図である。
図2】本発明に係る腕時計の文字盤側の上面図である。
図3】本発明で使用する振動増幅装置の上面図である。
図4】振動増幅装置および膜の断面図である。
図5】本発明で使用される針の図である。
図6】膜と圧縮室の断面図である。
図7】膜によって生成される音の音量を調整するための手段の図である。
図8】閉位置での音量調整手段を示す部分断面図である。
図9】開位置での音量調整手段を示す部分断面図である。
図10】音を生成する時間の外側の圧縮室の開口部の閉鎖を示す、本発明に係る時計の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の態様によれば、本発明は、使用者が手首の周りに着用することを意図した機械式腕時計に関するものである。図1図2、および図10を参照すると、腕時計1は、中央部3、ガラス7によって閉じられた裏蓋4、およびガラス6によって閉じられたベゼル5を有するケース2と、ケース2に収容される少なくとも1つの音を機械的に生成する目的の振動を生成するための装置と、振動生成装置によって生成された振動を増幅するための装置16と、増幅された振動を機械的に受け取り、腕時計1の内部から外部へ音を生成するように配置された膜とを含む。ベゼルと中央部は、2つの異なるパーツであってもよいし、単一のモノブロックピースを形成してもよい。同様に、裏蓋と中央部は、2つの異なるパーツであってもよいし、単一のモノブロックピースを形成してもよい。ケース2はまた、膜18とガラス6との間に配置された針11を使用して時間を表示することができる機械式時計ムーブメントを封入することができる。振動生成装置および振動増幅装置は、アラームへのリンクが必要とされない限り、モジュールの形態で、ムーブメントから独立していてもよい。
【0021】
本発明によれば、振動生成装置は、音を生成するように配置された少なくとも1つの溝15を含む読み取り面を有する回転要素13であり、腕時計は、回転要素13を回転駆動する手段と、回転要素13を回転駆動するための手段を作動させる手段と、ならびに回転要素13と協働して、回転要素13の回転運動中に溝15によって生成された振動を増幅装置16に伝達する伝達部材28とを含む。
【0022】
以下の説明では、振動生成装置、振動増幅装置、および膜は、腕時計の文字盤側、より具体的にはガラス6を通して音を生成するように配置されている。明らかに、振動生成装置、振動増幅装置、および膜は、腕時計の裏蓋側から、より具体的にはガラス7を通して音を生成するために同様に配置することができるが、逆の方法で配置してもよい。
【0023】
回転要素13は、溝15の形態で生成される音響情報を含む。これらの溝15は、任意のタイプの音、例えば、言葉(例えば、スピーチ)または音楽(クラシック音楽、電子音楽など)の形態の音を生成するために適切な方法で回転要素13にエッチングされる。回転要素13の回転は、伝達部材28および振動増幅装置16を介して膜18に振動を生成することを可能にする。本発明の第1の態様によれば、回転要素13は、それぞれがコイルで形成された1つまたは複数の溝を含むことができ、コイルは、複数の溝の場合には同心であるか、または回転要素13は、それぞれがいくつかのらせんコイルで形成された1つまたは複数の溝を含むことができ、複数のトラックが形成されることを意図している場合には、溝は不連続である。
【0024】
有利には、回転要素13は、(例えば、針11のスピンドルの周りに)回転可能となるように、時計の文字盤(または裏蓋)と平行にベゼル5に取り付けられた平らなディスクである。この平らなディスクは、腕時計の文字盤を形成するように配置することもできる。ディスクは金属(鋼、CuBeなど)から製造できる。溝15は、機械的に(フライス盤、エッチング針など)またはレーザによってエッチングされる。ディスクは、ガルバニック成長(LIGA[リソグラフィ、電気めっき、および成形])によっても製造できる。また、DRIEによって製造されたシリコンから作ることもできる。セラミックス、複合材料、またはポリマーも使用できる。
【0025】
回転要素13はまた、ムーブメントの周りに配置され、その内周または外周に溝が配置されたシリンダによって形成することができる。
【0026】
回転要素13は、可能な限り最小の質量および慣性を有し、急速な加速度を得るためにバランスがとられていなければならず、加速度(重力、衝撃など)の影響を受けてはならない。
【0027】
好ましくは、伝達部材28は、回転要素13の少なくとも1つの溝15に追従するように配置された針であり、針は、振動増幅装置16と一体である。そのような針を図5に示す。それは、摩耗が速すぎないように、薄くて硬くなければならない。それは、鋼、CuBe、セラミックス、硬質金属、ルビーなどで製造できる。溝を読み取るためのその端部28aは、図示されているように球形、または円錐形とすることができる。
【0028】
振動を生成するのは溝15内の伝達部材28の摩擦であるため、音が何度も聞かれ得ることを確実にするために、回転要素13と伝達部材28との間のトライボロジートルクは高い。摩耗した場合、音響品質に直接影響する。
【0029】
有利には、回転要素13を回転駆動するための手段は、バレルスプリングタイプのばねを含む。ばねは、回転要素13の動作に必要なエネルギーを提供して、1回または複数回の読み取りを確実にするように構成される。
【0030】
腕時計はまた、ばねの巻き上げ機構を含む。ワンタイム読み取りの場合、ミニッツリピータータイプのスライドによってばねを巻くことができる。複数回の読み取りが可能な機構の場合、ムーブメントのバレルと同様に、巻き上げステムでばねを巻き上げることができる。
【0031】
さらに、腕時計は、回転要素13の回転速度を制御するように配置されたレギュレータを含む。このレギュレータは、フライホイールタイプ(ミニッツリピーターで使用されるものと同様)、バランスまたはフレキシブルガイド付きのエスケープメントタイプ、ベーンタイプとすることができるか、またはそれ自身の慣性によって調整され得る。
【0032】
回転要素を回転駆動するための手段を作動させるための手段は、駆動手段、1つまたは複数の回転の読み取り、および生成された音の機能に基づいて、異なるタイプのものとすることができる。したがって、回転要素を回転駆動するための手段を作動させるための手段は、ミニッツリピータータイプのスライドを含むことができ、上記のようにばねを巻き、ならびに回転要素13の回転を係合させることができる。必要に応じて、スライドは、以下で詳細に説明するように、伝達部材を読み取り面の始めの最初の読み取り位置にもたらすように配置することもできる。
【0033】
回転要素を回転駆動するための手段を作動させるための手段はまた、押しボタンの作動時に、以下で詳細に説明するように、読み取り面の開始時に伝達部材を初期読み取り位置にもたらし、その後、押しボタンを離すと、回転要素13の回転を作動させ、読み取りを可能にするように配置された押しボタンを含むことができる。
【0034】
生成された音をアラームとして使用する場合、回転要素を回転駆動する手段を作動させる手段は、所定の時間に結び付けられ、時計の動作と協働する係合機構を含むことができる。
【0035】
より具体的には、図1図3、および図4を参照すると、回転要素13によって生成される音を増幅するために、回転要素13によって生成される振動を増幅するための装置16は、単一の回転軸に沿って関節によって支持体22に連結されたレバー20を含み、膜18の平面に平行でない枢動平面において、レバー20が回転軸の周りで支持体22上に傾斜可能または枢動可能に取り付けられるようにする。
【0036】
特に好ましくは、レバー20は、膜18によって画定される平面に垂直な枢動平面内で傾斜するように、その支持体22上に枢動可能に取り付けられる。
【0037】
特に好ましくは、レバー20は、フレキシブルボールジョイント24を介して支持体22に枢動可能に取り付けられる。フレキシブルボールジョイントにより、必要に応じて振動の方向を変えることができる。支持体22に横方向に取り付けられ、レバー20のピボット軸を構成するピンも使用することができる。
【0038】
レバー20は、回転要素13と協働する伝達部材28によって作動されて、溝15によって生成された振動をレバー20に伝達するように構成される。伝達部材28(この場合は針)は、好ましくはレバー20と一体である。それは、例えば、埋め込みまたはろう付けによって取り付けられる。この目的のために、レバー20は、針が挿入されるオリフィス29を含む。
【0039】
レバー20はまた、レバー20が傾いたときに膜18をレバー20の枢動面内で動かすことができるようにするために、レバー20の枢動面内で少なくとも並進的に膜18と一体になっている。したがって、回転要素に連結され、伝達部材28によって作動されるレバー20を介して膜18に伝達される伝達部材28の振動によって生成される伝達部材28の動作は、膜18の増幅された動作を生成し、増幅された音を生成するようにする。増幅された音を生成するのは、レバー20によって動かされる膜18の直線運動である。
【0040】
より具体的には、レバー20は、以下に説明するように、膜18の平面に平行ではない枢動平面において支持体22に枢動可能に取り付けられ、伝達部材28と一体である第1の端部20aと、レバー20の枢動面内で少なくとも並進的に膜18と一体である第2の端部20bとを含む。
【0041】
単一のコイルで形成された単一の溝、または同心コイルを備えた溝のセットを含む回転要素(この場合、腕時計は、伝達部材を位置決めするための機構を含み、この機構は、伝達部材が割り当てられた溝に面する伝達部材を位置決めするように配置される)の場合、伝達部材28は、読み取り時に回転要素13に対して固定されている。したがって、レバー20は、並進的に固定され、膜18に固定的に接続され、すなわち、回転および並進的に膜18と一体になっている。レバー20は、例えば、膜18に設けられた穴およびレバー20に設けられた穴にねじ込まれたねじによって、または接着結合、溶接などによって、膜18に固定することができる。
【0042】
特に好ましくは、回転要素13は、その読み取り面にわたって延在するいくつかのらせんコイルで形成された少なくとも1つの溝を含み、数回転で回転要素13の読み取りを可能にし、これにより読み取り時間を増加させることができる。この場合、伝達部材28および回転要素13は、回転要素が1回転を超えて回転するとき、伝達部材28が回転要素13の読み取り面の少なくとも一部の上を移動するように、互いに対して可動となるように配置される。これは、伝達部材28が動かされて回転要素13が所定の位置に固定されたままであるか、または逆に伝達部材28が所定の位置に固定されたままで回転要素13が動かされていることを意味する。
【0043】
好ましくは、図示の変形例では、伝達部材28が動かされ、回転要素13は所定の位置に固定されたままである。
【0044】
したがって、伝達部材28と一体の振動増幅装置16は、伝達部材28の動作に追従できるように配置されなければならない。したがって、レバー20と膜18との間の可動接続が提供されなければならない。
【0045】
この目的のために、振動増幅装置16は、膜18の平面と平行な平面内で並進誘導するための手段であって、回転要素13が1回転を超えて回転するとき、手段は、増幅装置16が回転要素の読み取り面の少なくとも一部にわたる伝達部材28の動作に追従することを可能にするように配置される、手段と、増幅装置16と膜18との間の可動結合のための手段であって、この手段は、増幅装置が移動しているときに膜18と連結されたままであることを可能にするように配置される、手段とを含む。
【0046】
有利には、増幅装置を並進誘導するための手段は、ケース2と一体であるベアリング要素50であって、ベアリング要素50に沿ってレバー20の支持体22が、膜18の平面と平行な平面内で支持およびスライドすることができる、ベアリング要素50を含む。ばね51は、ベアリング要素50上の支持体22の良好な支持を保証することができる。ベアリング要素50は、文字盤側で音が生成される場合はベゼル5に、裏蓋側で音が生成される場合は裏蓋4に、またはさらには中央に取り付けることができる。それは、硬い材料でできている。それは、その動作全体を通して支持体22の誘導を可能にするのに十分な長さを有する。
【0047】
可動結合手段は、レバーの第2の端部20bと一体のフォーク52と、膜18と一体であり、フォークの2つのプロング52a、52bを収容する溝56を有するスタッド54とを含む。したがって、フォーク52は、スタッド54と係合している、より具体的には、その溝56においてスタッド54の側面と接触しているので、フォーク52は、枢動面内で並進的にスタッド54と一体であり、スタッド54を支持しながら、膜18の平面と平行な平面内でスタッド54のいずれかの側でスライドすることができる。したがって、回転要素13に連結された針の振動によって生成された針の動作であって、針によって作動されるレバー20を介して膜18に伝達される針の動作は、膜18の増幅された動作を生成し、増幅された音を生成するようにする。
【0048】
有利には、振動増幅装置16は、レバー20と一体である関節式安定化アーム58を含む。これらのアーム58は、パンタグラフの形態とすることができ、パンタグラフの先端58aは、レバー20の支持体22と一体であり、反対側の先端58bは、ケース2(ベゼル、裏蓋、または中央部)または腕時計のムーブメントと一体である。関節は、有利には、フレキシブルボールジョイント58cの形態とすることができる。パンタグラフの動作を制限するために、係止部58dを設けることができる。
【0049】
回転要素13の読み取りが数回転にわたって行われる場合、腕時計は、回転要素13を回転駆動するための手段を作動させるための手段の作動の前にまたは同時に、伝達部材28を、回転要素13の読み取り面の開始に対応する初期位置にもたらすための機構を含む。この機構は、例えば、上記のスライドまたは押しボタンと協働する。
【0050】
伝達部材28によるレバー20の作動点、レバー20の枢動点、およびレバー20が膜18に連結される点は、回転要素13に連結され、伝達部材28によって作動されるレバー20を介して膜18に伝達される伝達部材28の振動によって生成される伝達部材28の動作が、機械式レバーアーム効果によって膜18の増幅された動作を生成し、それによって増幅された音を生成するように配置される。
【0051】
好ましくは、フレキシブルボールジョイント24は、伝達部材/レバー/膜アセンブリの重心上に配置される。
【0052】
好ましくは、レバー20が膜18に連結される点は、膜18の幅の40%未満、好ましくは20%未満である、膜18の中心からの距離に配置される。特に好ましくは、レバーアーム効果を最大化するために、レバー20が膜18に連結される点は、膜18の中心に配置される。
【0053】
別の変形例では、連結点を膜の周辺に配置して、固定点の弾性および膜のねじれを利用することができる。
【0054】
伝達部材28およびレバー20が動かされ、回転要素13が所定の位置に固定されたままである場合、レバーアーム効果の減少による音の増幅の減少は、伝達部材28によって読み取られた溝によって生成された振動の振幅を増加させることによって補償される。
【0055】
回転要素13および/または伝達部材28を損傷しないように、衝撃の場合の保護システムが提供される。
【0056】
有利なことに、振動増幅装置、より具体的には、レバー20の支持体22は、ムーブメントおよびフレームから隔離されている。この目的のために、レバー20の支持体22は、外部部品に、より具体的には、音が文字盤側から伝達される場合はベゼル5に、または音が裏蓋を介して伝達される場合は裏蓋4に取り付けられ得る。
【0057】
レバー20の支持体22はまた、支持体22をムーブメント、中央部、およびフレームから確実に隔離するために、ムーブメントに、またはさらには中央部3に、しかしながらポリマーなどの隔離要素によって、取り付けられ得る。
【0058】
レバー20の支持体22がケースの要素の1つ(ベゼル5、中央部3、裏蓋4)に取り付けられている場合、ムーブメント上の分離装置を、ムーブメントと、レバー20の支持体22を支えるケースの要素との間に配置することにより、時計の残りの部分からムーブメントを分離することも同様に可能である。そのような分離装置は、例えば、フラットガスケットに関連する真ちゅうリングまたは炭素充填ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の分離リングとすることができる。例えば、ムーブメントを分離するために、後者は、それ自体がケースの中央部にねじ込まれているPEEK分離リングにフランジで固定することができる。
【0059】
レバー20の支持体22がベゼル5または裏蓋4に取り付けられている場合、ベゼル5または裏蓋4は、従来は、中央部3に直接取り付けることができる。しかしながら、望ましくない振動が中央部3に到達し、したがってムーブメントに到達することをほとんどまたは全くないことを確実にするために、ベゼル5または裏蓋4は、ポリマーなどの分離要素によって中央部3に取り付けられる。
【0060】
膜18は、音が裏蓋を介して伝達される場合は裏蓋4に取り付けられ、音が文字盤側から伝達される場合はベゼル5に取り付けられる。したがって、膜18もムーブメントから分離されている。
【0061】
その結果、振動増幅装置および膜は、ムーブメントおよびフレームから分離されるため、レバー20によって回復された回転要素13のすべての振動は、ムーブメント、フレーム、または中央部に伝達されることなく、膜18に向けられ、伝達される。
【0062】
レバー20は、好ましくは、非常に軽量で非常に高剛性の材料で作製される。例えば、レバー20は、鋼、チタン、アルミニウム、マグネシウム、複合材料、炭素、ガラス、サファイア、およびセラミックスで作製することができる。
【0063】
膜18は自由に振動できなければならない。動的応答が大きく、移動時に変形しないように、非常に軽量で高剛性の材料で作製することが好ましい。膜18は、好ましくは透明な材料で作製される。例えば、膜18は、サファイア、鉱物ガラス、プレキシグラスなどのプレートの形態で作製することができる。したがって、膜18は、ガラス6(または該当する場合はガラス7)の下に配置された内部ガラスによって構成することができる。膜18はまた、複合材料、セルロース、または安全ガラスタイプの複合ガラスで作製され得る。明らかに、膜18はまた、金属ガラス、チタン、シリコン、セラミックス、炭素繊維複合材料、セルロースまたはケブラーなどの半透明または不透明な材料など、完全に透明ではない材料で作製され得る。
【0064】
膜18は、可能な限り高剛性かつ軽量でなければならない。この目的のために、その厚さは1mm未満、好ましくは0.5mm未満、より好ましくは0.3mm未満である。
【0065】
より具体的に図6を参照すると、膜18は、好ましくは、シールの気密性を確保しながら膜18が自由に振動できるように、サスペンション上に取り付けられる。サスペンションは、膜18の周りに配置された成形ガスケット、または膜18のいずれかの側の周辺に配置されたOリングガスケットを介して、膜18とベゼル5(または該当する場合は裏蓋4)との間に提供することができる。同様に、例えば膜18の周囲に設けられた溝38によって、その可撓性を改善するために膜18にテクスチャを付けることが可能である。膜18の厚さを利用することも可能である。
【0066】
有利なことに、腕時計は、すでに最初に増幅された膜の動作によって生成された音を、それが外部に出る前に増幅するように配置された圧縮室40をさらに含む。
【0067】
圧縮室40は、膜18の下流に配置され、時計の外側に向けられた少なくとも1つの開口部42を有する壁によって閉じられている。開口部42の寸法は、所望の音増幅の関数として、膜18の表面積に関連して選択される。
【0068】
好ましくは、膜18がベゼル(または裏蓋4)上に配置される場合、壁は、ガラス6(またはガラス7)によって構成される。ガラス6または7は、丈夫で傷がつきにくいものでなければならない。それは、サファイアで作製されることが好ましい。
【0069】
膜18の下流に配置された壁は、圧縮室40内に一定体積の空気を生成することを可能にする。膜18の動作は、この空気を圧縮する。空気の体積を画定する可動膜18の表面積と開口部のサイズとの間の比率は、音の第2の増幅を達成することを可能にするであろう。
【0070】
開口部42は、様々な形態:壁の中央の穴(この場合はガラス6)、複数の横方向の穴、多数の微細な穴などを取ることができる。音をさらに増幅するために、出口開口部の形状は円錐形とすることができる。有利には、開口部42は、図10に示すように、膜18が裏蓋4上に配置される場合、中央部の周りに延在し。ムーブメントの面に平行で、例えば、裏蓋4と中央部3との間に空間を残すことによって得られる、1つまたは複数の長手方向の溝の形態をとることができる。そのような横方向の開口部42は、膜18によって生成された音を腕時計の着用者の腕に向け直すことを有利に可能にし、着用者にさらに増幅された音の感覚を与える。
【0071】
図7図9を参照すると、腕時計は、膜18によって生成される音の音量を調整することを可能にするように配置された圧縮室40の開口部42の調整可能な閉鎖手段44を有利に含む。これらの閉鎖手段44は、開口部42が完全に閉鎖される閉鎖位置と、開口部42が最大である開放位置との間で移動可能となるように配置され、中間位置は、音量を調整するために、より多いまたは少ない程度に開口部42を遮断することを可能にする。例えば、開口部42が横方向の開口部である場合、閉鎖手段44は、ベゼル5(または該当する場合は裏蓋4)に回転可能に取り付けられ、図8に示すように、開口部42が完全に遮断される閉鎖位置と、図9に示すように、開口部42が最大になる解放位置との間で回転するように配置される、リングなどの回転要素を含むことができる。
【0072】
有利には、開口部42は、不純物が圧縮室40に入るのを防ぐために、通気性・防水性のフィルターによって保護することができる。そのようなフィルターは当業者に知られている。
【0073】
有利には、装置と膜が裏蓋側に配置され、裏蓋側で音が生成される図10を参照すると、腕時計は、圧縮室40の開口部42を閉鎖するための機構であって、音が生成されたら、例えば時打ち時間外に、開口部42を閉じるように配置された機構を含むことができる。このような機構により、振動生成装置を使用していないときの不純物の侵入を抑えることができる。特に、開口部42が横方向の開口部である場合、閉鎖機構は、時打ちが完了すると、開口部42を自動的に閉鎖するように、時打ち機構によって制御される、リングなどの閉鎖部材46を含むことができる。そのような機構は、例えば、特許CH704940に記載されており、参照により組み込まれる。
【0074】
膜18が裏蓋4上に配置され、裏蓋側から音が生成される場合、生成された音が時計の側面から立ち上がることを可能にするように配置された反射器を設けることも可能である。そのような反射器は、例えば、裏蓋の外側に配置され、裏蓋を取り囲み、時計に向けられた円錐形の外壁を有する。
【0075】
本発明に係る腕時計は、エッチングされた溝を含む回転要素を使用して、いくつかの音の組み合わせを、好ましくは数秒~数分の時間の間、生成することを可能にし、機械式腕時計の限られた空間内で音楽または言葉の一片を再生することを可能にする。
【0076】
さらに、本発明に係る腕時計は、大幅な音増幅を可能にし、レバー20を介して実行される第1の増幅比は、10対16のオーダーである。さらに、膜18の移動表面積と開口部42との間の比(20対30の表面積比)のために、第2の増幅比は、1.5のオーダーである。本発明に係る時計によって達成される総増幅比は、60dBの標準的なミニッツリピーター音と比較して、80dB、またはさらに90dBを超える音が得られるようなものである。
【0077】
さらに、増幅装置の構造と取り付けにより、回転要素と膜を、ムーブメント、フレーム、および中央部から分離することが可能になるため、すべての振動が、ムーブメントを介して通過することなく、レバーを介して膜に向けられる。したがって、一般的にムーブメントのコンポーネントの振動に関連する不要な音は、ほとんどまたはまったく生成されない。
【0078】
さらに、膜を備えた増幅装置は、裏蓋またはベゼルと一体になっているため、裏蓋またはベゼルを取り外すだけで簡単にムーブメントに容易にアクセスできる。
【0079】
最後に、膜を備えた増幅装置の構造は、例えば他のすべてのミニッツリピーターの原理とは異なり、ケースの密閉性が音量に影響を与えないようになっている。これは、そのサスペンションを備えた膜が、圧縮室40を除いて、システムを漏れなしにするためである。圧縮室40は、フィルターシステムによって漏れなしにすることができる。
【0080】
別の一態様によれば、本発明は、より一般的には、中央部3、裏蓋4、およびベゼル5を有するケース2と、ケース2に収容される、少なくとも1つの音を機械的に生成する目的の振動を生成するための装置と、振動生成装置によって生成された振動を機械的に増幅するための装置16と、機械的に増幅された振動を受け取り、時計の内部から外部へ音を生成するように配置された膜18とを含み、振動生成装置は、いくつかのらせんコイルで形成された少なくとも1つの溝15を含む読み取り面を有する回転要素13であり、溝は、音を生成するように配置され、読み取り面にわたって延在する、機械式時計1に関するものである。時計は、回転要素13を回転駆動するための手段と、回転要素13を回転駆動するための手段を作動させるための手段と、回転要素13と協働するように配置され、回転要素13の回転中に溝15によって生成された振動を増幅装置16に伝達する伝達部材28とを含み、伝達部材28および回転要素13は、回転要素13が1回転を超えて回転するときに、伝達部材28が回転要素13の読み取り面の少なくとも一部にわたって移動するように、互いに対して可動となるように配置される。
【0081】
有利には、振動増幅装置16は、膜18の平面と平行な平面内で並進誘導するための手段であって、回転要素13が1回転を超えて回転するとき、この手段は、増幅装置16が回転要素13の読み取り面の少なくとも一部にわたる伝達部材28の動作に追従することを可能にするように配置される、手段と、増幅装置16と膜18との間の可動結合のための手段であって、この手段は、増幅装置が移動しているときに膜18と連結されたままであることを可能にするように配置される、手段とを含む。
【0082】
有利には、振動増幅装置16は、膜18の平面と平行でない枢動平面内で支持体22上に枢動可能に取り付けられ、伝達部材28と一体である第1の端部20aを有するレバー20を含むため、回転要素13によって生成された振動をレバー20に伝達するために伝達部材28によって作動されることができ、増幅装置を並進誘導するための手段は、ケース2と一体であるベアリング要素50であって、ベアリング要素50に沿ってレバー20の支持体22が、膜18の平面と平行な平面内で支持およびスライドすることができる、ベアリング要素50を含む。可動結合手段は、レバー20の第2の端部20bと一体のフォーク52と、膜18と一体のスタッド54とを含み、フォーク52は、枢動面内で並進的にスタッド54と一体でありながら、膜18の平面と平行な平面内でスタッド54のいずれかの側でスライドするために、スタッド54と係合している。したがって、回転要素13に連結された針の振動によって生成され、針によって作動されるレバー20を介して膜18に伝達される針の動作は、膜18の増幅された動作を生成し、増幅された音を生成するようにする。
【0083】
有利には、振動増幅装置16は、レバー20と一体である関節式安定化アーム58を含む。
【0084】
時計は、回転要素13を回転駆動するための手段を作動させるための手段の作動の前にまたは同時に、伝達部材28を、回転要素13の読み取り面の開始に対応する初期位置にもたらすための機構をさらに含む。
【0085】
伝達部材は、有利には、回転要素13の溝15に追従するように配置された針であり、針は、振動増幅装置16と一体である。
【0086】
好ましくは、回転要素13は、平らなディスクまたはシリンダである。それは、時計の文字盤を形成するように配置された平らなディスクとすることができる。
【0087】
有利には、回転要素に設けられた溝15は、言葉または音楽の形態で音を生成するように配置される。
【0088】
有利には、時計は、膜18の動作によって生成された音を、それが外部に出る前に増幅するように配置された圧縮室40を含む。膜18の下流に配置され、少なくとも1つの開口部42を有する壁によって、圧縮室40は閉じられることができ、その寸法は、所望の音の増幅の関数として膜18の表面積に関連して選択される。
【0089】
本発明の第1の態様に係る腕時計の構造の詳細および利点、特に振動増幅装置、並進誘導のための手段、および可動結合手段に関する詳細は、同様に、本発明の第2の態様に係る時計にも当てはまる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】