(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-27
(54)【発明の名称】逆荷電粒子を含む電気光学媒体およびそれを組み込む可変透過デバイス
(51)【国際特許分類】
G02F 1/167 20190101AFI20221220BHJP
【FI】
G02F1/167
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524635
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 US2020060370
(87)【国際公開番号】W WO2021097180
(87)【国際公開日】2021-05-20
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】テルファー, スティーブン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトサイズ, トーマス エイチ.
【テーマコード(参考)】
2K101
【Fターム(参考)】
2K101AA04
2K101BA02
2K101BA03
2K101BB11
2K101BB22
2K101BB32
2K101BB43
2K101BB60
2K101BB63
2K101BB91
2K101BC02
2K101BC25
2K101BC28
2K101BC30
2K101BD61
2K101BD93
2K101BE21
2K101EC02
2K101ED01
2K101ED22
2K101EE02
2K101EG52
2K101EK05
(57)【要約】
可変透過電気光学媒体は、複数の荷電粒子と流体とを含むカプセル化双安定性分散体を含み、荷電粒子は、電場の印加によって移動可能であり、開状態と閉状態との間で切り替えられることが可能である。複数の荷電粒子は、第1の組の荷電粒子の色が、第2の組の荷電粒子の色と同じであり、第1の組の荷電粒子が、第2の組の荷電粒子の極性と反対である極性を有するように、第1の組の荷電粒子および第2の組の荷電粒子を含み得る。一実施形態において、分散体は、分散体の重量比10%未満の安定剤をさらに備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変透過電気光学媒体であって、前記可変透過電気光学媒体は、複数の荷電粒子と流体とを含むカプセル化双安定性分散体を備え、
前記荷電粒子は、電場の印加によって移動可能であり、開状態と閉状態との間で切り替えられることが可能であり、
前記複数の荷電粒子は、第1の組の荷電粒子と第2の組の荷電粒子とを備え、前記第1の組の荷電粒子の色は、前記第2の組の荷電粒子の色と同じであり、前記第1の組の荷電粒子は、前記第2の組の荷電粒子の極性と反対である極性を有する、可変透過電気光学媒体。
【請求項2】
前記分散体は、前記分散体の重量比10%未満の安定剤をさらに備えている、請求項1に記載の可変透過電気光学媒体。
【請求項3】
前記分散体は、前記安定剤を含まない、請求項2に記載の可変透過電気光学媒体。
【請求項4】
前記安定剤は、ポリイソブチレンおよびポリスチレンから成る群から選択される、請求項2に記載の可変透過電気光学媒体。
【請求項5】
前記第1および第2の組の荷電粒子の色は、赤色、緑色、青色、シアン色、マゼンタ色、黄色、白色、および黒色から成る群から選択される、請求項1に記載の可変透過電気光学媒体。
【請求項6】
前記流体は、無色である、請求項1に記載の可変透過電気光学媒体。
【請求項7】
前記流体の色は、赤色、緑色、青色、シアン色、マゼンタ色、黄色、黒色、および白色から成る群から選択される、請求項1に記載の可変透過電気光学媒体。
【請求項8】
前記分散体内の前記第2の組の荷電粒子に対する前記第1の組の荷電粒子の重量比は、1.0より大きい、請求項1に記載の可変透過電気光学媒体。
【請求項9】
前記分散体は、複数のカプセル内にカプセル化され、前記媒体は、結合剤をさらに備えている、請求項1に記載の可変透過電気光学媒体。
【請求項10】
2つの光透過性電極間に配置された請求項9に記載の可変透過電気光学媒体の層を備えているデバイス。
【請求項11】
複数のシールされたマイクロセルを備えているポリマーシートをさらに備え、前記分散体は、前記複数のシールされたマイクロセル内にカプセル化されている、請求項1に記載の可変透過電気光学媒体。
【請求項12】
2つの光透過性電極間に配置された請求項11に記載の可変透過電気光学媒体の層を備えているデバイス。
【請求項13】
連続ポリマー相をさらに備え、前記分散体は、前記連続ポリマー相内にカプセル化された複数の液滴中に提供された請求項1に記載の可変透過電気光学媒体。
【請求項14】
2つの光透過性電極間に配置された請求項13に記載の可変透過電気泳動媒体の層を備えているデバイス。
【請求項15】
可変透過電気光学媒体であって、前記可変透過電気光学媒体は、複数の荷電粒子と流体とを含むカプセル化双安定性分散体を備え、
前記荷電粒子は、電場の印加によって移動可能であり、開状態と閉状態との間で切り替えられることが可能であり、
前記複数の荷電粒子は、第1の組の荷電粒子と第2の組の荷電粒子とを備え、前記第1の組の荷電粒子は、光透過性であり、かつ前記流体の屈折率に合致する屈折率を有し、前記第2の組の荷電粒子は、前記第1の組の荷電粒子の極性と反対である電荷極性を有する、可変透過電気光学媒体。
【請求項16】
前記分散体は、前記分散体の重量比10%未満の安定剤をさらに備えている、請求項15に記載の可変透過電気光学媒体。
【請求項17】
前記分散体は、前記安定剤を含まない、請求項16に記載の可変透過電気光学媒体。
【請求項18】
前記前記第2の組の荷電粒子の色は、赤色、緑色、青色、シアン色、マゼンタ色、黄色、白色、および黒色から成る群から選択される、請求項15に記載の可変透過電気光学媒体。
【請求項19】
前記流体は、無色である、請求項15に記載の可変透過電気光学媒体。
【請求項20】
前記流体の屈折率および前記第1の組の荷電粒子の屈折率は、550nmにおいて、1.51~1.57である、請求項15に記載の可変透過電気光学媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2019年11月14日に出願された米国仮特許出願第62/935,455号の優先権を主張する。本明細書で開示される全ての特許および刊行物は、参照することによってその全体として組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
光変調器は、電気光学媒体のための潜在的に重要な市場を表す。建物および車両のエネルギー性能が、ますます重要になるにつれて、電気光学媒体は、窓(天窓およびサンルーフを含む)上のコーティングとして使用され、窓を透過させられる入射放射の割合が、電気光学媒体の光学状態を変動させることによって、電子的に制御されることを可能にすることができる。建物におけるそのような「可変透過率」(「VT」)技術の効果的実装は、(1)高温天候中の不要な加熱効果の低減(したがって、冷却のために必要とされるエネルギーの量、空調設備のサイズ、およびピーク電気需要を低減させる)、(2)天然日光の使用の増加(したがって、照明のために使用されるエネルギーおよびピーク電気需要を低減させる)、(3)熱および視覚的快適性の両方を増加させることによって、増加させられた居住者の快適性を提供することが予期される。さらなる利益は、封入体積に対する光沢表面の比率が典型的な建物におけるより大きく上回る自動車において生じることが予期されるであろう。具体的に、自動車におけるVT技術の効果的実装は、前述の利益だけではなく、(1)増加させられた運転安全性、(2)低減させられたグレア、(3)強化されたミラー性能(電気光学コーティングをミラー上に使用することによって)、および、(4)ヘッドアップディスプレイを使用する増加させられた能力を提供することも予期される。VT技術の他の潜在的用途は、電子デバイスにおけるプライバシガラスおよびグレア保護を含む。
【0003】
米国特許第7,327,511号(特許文献1)は、非極性溶媒中に分散させられ、カプセル化された荷電顔料粒子を含む可変透過デバイスを説明している。これらの可変透過デバイスは、AC駆動電圧を用いて、開状態に駆動されることができ、それによって、荷電顔料粒子は、カプセル壁に駆動される。故に、そのような可変透過デバイスは、プライバシガラス、サンルーフ、および建物の窓等の透過率を自由に改変させることが望ましい視認表面のために有用である。
【0004】
第‘511号特許は、可変透過デバイスにおける最適性能のために、電気泳動媒体を適合させることにおいて重要である種々の因子を説明している。1つの重要な因子は、ヘイズの最小化である。本願では、「ヘイズ」は、総透過光と比較して拡散透過光(透過させられるにつれて散乱させられる光)のパーセンテージを指す。カプセル化電気光学媒体を使用すると、ヘイズが、切り替わり媒体を保持するカプセルの屈折率に可能な限り近くなるように、結合剤を屈折率整合させることによって低減させられることができる。
【0005】
電気泳動媒体の別の特性は、双安定である。用語「双安定性」および「双安定」は、当技術分野におけるそれらの従来の意味で、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する表示要素を備えているディスプレイを指すために本明細書で使用され、表示要素は、その第1または第2の表示状態のいずれかをとるように、有限持続時間のアドレスパルスを用いて、任意の所与の要素が駆動されてから、アドレスパルスが終了した後、表示要素の状態を変化させるために要求されるアドレスパルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍、その状態が持続するようなものである。米国特許第7,170,670号(特許文献2)では、グレースケールが可能ないくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、それらの極限黒色および白色状態においてだけではなく、それらの中間グレー状態においても安定し、同じことが、いくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイにも当てはまることが示されている。このタイプのディスプレイは、適切に、双安定性ではなく、「多安定性」と呼ばれるが、便宜上、用語「双安定性」が、本明細書では、双安定性および多安定性ディスプレイの両方を対象とするために使用され得る。
【0006】
電気泳動媒体の双安定を維持する1つの方法は、粒子間に弱引力が存在することを確実にすることである。例えば、前述の米国特許第7,170,670号は、粒子の弱凝集が、電気泳動粒子の枯渇凝集を引き起こすと考えられるポリイソブチレン等の高分子量ポリマーの流体への添加によって達成される電気泳動媒体を説明する。このアプローチは、双安定において実質的改良を与え得るが、流体へのポリマーの添加は、流体の粘度を不可避的に増加させ、故に、流体の増加させられた粘度が、任意の所与の電場における電気泳動粒子の移動率を低減させるので、ディスプレイの切り替わり時間を増加させる。高濃度の高分子量ポリマーも、ヘイズに寄与する。
【0007】
したがって、可変透過デバイスにおいて使用され得る電気泳動媒体の改良された双安定性調合物の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,327,511号明細書
【特許文献2】米国特許第7,170,670号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面では、可変透過電気光学媒体は、複数の荷電粒子と流体とを含むカプセル化双安定性分散体を備え、荷電粒子は、電場の印加によって移動可能であり、開状態と閉状態との間で切り替えられることが可能である。複数の荷電粒子は、第1の組の荷電粒子の色が、第2の組の荷電粒子の色と同じであり、第1の組の荷電粒子が、第2の組の荷電粒子の極性と反対である極性を有するように、第1の組の荷電粒子と第2の組の荷電粒子とを備えている。
【0010】
いくつかの実施形態において、可変透過電気光学媒体は、分散体の重量比10%未満の安定剤を備えている。例えば、分散体は、ポリイソブチレン、ポリスチレン、またはポリ(ラウリル)メタクリル酸であり得る安定剤を含まないこともある。いくつかの実施形態において、第1および第2の組の荷電粒子の色は、赤色、緑色、青色、シアン色、マゼンタ色、黄色、白色、および黒色から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、流体は、無色である。いくつかの実施形態において、流体は、赤色、緑色、青色、シアン色、マゼンタ色、黄色、黒色、および白色から成る群から選択される色である。いくつかの実施形態において、分散体内の第2の組の荷電粒子に対する第1の組の荷電粒子の重量比は、1.0を上回る。いくつかの実施形態において、分散体は、複数のカプセル内にカプセル化され、媒体は、結合剤をさらに備えている。いくつかの実施形態において、可変透過電気光学媒体は、2つの光透過性電極間に配置される。いくつかの実施形態において、可変透過電気光学媒体は、複数のシールされたマイクロセルを備えているポリマーシートを含み、分散体は、複数のシールされたマイクロセル内にカプセル化される。いくつかの実施形態において、可変透過電気光学媒体は、連続ポリマー相を含み、分散体は、連続ポリマー相内にカプセル化される複数の液滴中に提供される。
【0011】
第2の側面では、可変透過電気光学媒体は、複数の荷電粒子と流体とを含むカプセル化双安定性分散体を備え、荷電粒子は、電場の印加によって移動可能であり、開状態と閉状態との間で切り替えられることが可能であって、複数の荷電粒子は、第1の組の荷電粒子と第2の組の荷電粒子とを備え、第1の組の荷電粒子は、光透過性であり、かつ流体の屈折率に合致する屈折率を有し、第2の組の荷電粒子は、第1の組の荷電粒子の極性と反対である電荷極性を有する。いくつかの実施形態において、流体の屈折率および第1の組の荷電粒子の屈折率は、550nmにおいて1.51~1.57である。
【0012】
いくつかの実施形態において、可変透過電気光学媒体は、分散体の重量比10%未満の安定剤を備えている。例えば、分散体は、ポリイソブチレン、ポリスチレン、またはポリ(ラウリル)メタクリル酸であり得る安定剤を含まないこともある。いくつかの実施形態において、第2の組の荷電粒子の色は、赤色、緑色、青色、シアン色、マゼンタ色、黄色、白色、および黒色から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、流体は、無色である。いくつかの実施形態において、分散体内の第2の組の荷電粒子に対する第1の組の荷電粒子の重量比は、1.0を上回る。いくつかの実施形態において、分散体は、複数のカプセル内にカプセル化され、媒体は、結合剤をさらに備えている。いくつかの実施形態において、可変透過電気光学媒体は、2つの光透過性電極間に配置される。いくつかの実施形態において、可変透過電気光学媒体は、複数のシールされたマイクロセルを備えているポリマーシートを含み、分散体は、複数のシールされたマイクロセル内にカプセル化される。いくつかの実施形態において、可変透過電気光学媒体は、連続ポリマー相を含み、分散体は、連続ポリマー相内にカプセル化される複数の液滴中に提供される。
【0013】
本発明のこれらのおよび他の側面は、以下の説明に照らして、明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面の図は、限定ではなく、例としてのみ、本概念による、1つ以上の実装を描写する。図面は、正確な縮尺で描かれていない。図では、同様の参照番号は、同一または類似する要素を指す。
【0015】
【
図1】
図1は、本発明のある実施形態による、閉状態における電気光学ディスプレイの概略断面側面図である。
【0016】
【
図2】
図2は、中間状態における
図1の電気光学ディスプレイの概略断面側面図である。
【0017】
【
図3】
図3は、開状態における
図1の電気光学ディスプレイの概略断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細な説明では、多数の具体的詳細が、関連教示の完全な理解を提供するために、例として記載される。しかしながら、本教示はそのような詳細を伴わずに実践され得ることが、当業者に明白であろう。
【0019】
概して、本発明の種々の実施形態は、可変透過電気光学デバイスの中に組み込まれ得る電気泳動媒体を提供する。一実施形態において、電気泳動媒体は、反対電荷極性であるが、同じまたは実質的に類似する光学特性(色など)を有する複数の荷電粒子を含む双安定性分散体を含む。材料またはデバイスに適用されるような、用語「電気光学」は、結像技術分野におけるその従来の意味で本明細書で使用され、それは、少なくとも1つの光学特性において異なる第1および第2のディスプレイ状態を有する材料を指し、材料は、材料への電場の印加によって、その第1からその第2のディスプレイ状態に変化させられる。
【0020】
ここで
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態による電気泳動媒体を含む可変透過電気光学デバイス10が、図示される。上部層16は、光透過性伝導性材料の層を備え、それは、光透過性保護シートも含み得る。例えば、上部層16は、ガラス、またはより好ましくは、伝導性金属(例えば、インジウムスズ酸化物)、または、例えば、伝導性ポリマー(例えば、PEDOT:PSS)等、伝導性材料の薄い層でコーティングされたテレフタル酸ポリエチレン等の可撓性プラスチックシートを備え得る。用語「光透過性」は、そのように指定される層が、電気光学媒体のディスプレイ状態における変化を観察するために、観察者が層を通して見ることを可能にするために十分な光を透過させることを意味するように、ディスプレイの種々の層に対して本明細書で使用され、それは、通常、導電性層および隣接する基板(存在する場合)を通して視認されるであろう。電気光学媒体が非可視波長における反射率の変化を示す場合、用語「光透過性」は、当然ながら、関連非可視波長の透過を指すように解釈されるべきである。
【0021】
上部層16の下方に、電気泳動媒体20の層がある。粒子ベースの電気泳動媒体を利用するデバイスは、例えば、液晶ディスプレイと比較したとき、良好な輝度およびコントラスト、広い視野角、状態双安定、および低電力消費の属性を有することができる。本発明の種々の実施形態において使用される電気泳動材料は、材料が固体外部表面を有するという意味において、好ましくは固体であるが、材料は、多くの場合、内部液体または気体充填空間を有し得、かつ好ましくは、カプセル化される電気泳動材料である。
【0022】
電気泳動材料は、好ましくは、双安定性である。用語「双安定性」および「双安定」は、当技術分野におけるそれらの従来の意味で、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する表示要素を備えているディスプレイを指すために本明細書で使用され、表示要素は、第1または第2の表示状態のうちのいずれか一方を示すように、有限持続時間のアドレスパルスを用いて、任意の所与の要素が駆動されてから、アドレスパルスが終了した後、表示要素の状態を変化させるために要求されるアドレスパルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍、その状態が続くようなものである。
【0023】
第2の光透過性電極14を備えている層は、第1の電極16に対して電気泳動媒体20の層の反対側に位置する。電極層は、媒体が、いわゆる「シャッタモード」で電場の印加に応じて開状態(光透過性)と閉状態(不透明)との間で切り替わるように、電気泳動媒体の層を横断して電位を印加する。例えば、米国特許第5,872,552号、第6,130,774号、第6,144,361号、第6,172,798号、第6,271,823号、第6,225,971号、および第6,184,856号を参照されたい。
【0024】
電極層は、いくつかの形態で提供され得る。例えば、電極層は、伝導性材料の連続した層であり得る。代替として、電極は、各セグメントが独立して制御可能であるように、伝導性材料の複数のセグメントに分割され得る。別の実施形態において、電極層の一方または両方は、ディスプレイのピクセルを画定するようにパターン化され得る。例えば、一方の電極層は、細長い行電極に、他方は、行電極に対して直角で伸びる細長い列電極にパターン化され得、ピクセルは、行電極と列電極との交点によって画定される。代替として、より一般に、一方の電極層は、単一の連続した電極の形態を有し、他方の電極層は、ピクセル電極のマトリクスにパターン化され、それらの各々が、独立してアドレスされ、デバイスの1つのピクセルを画定し得る。
【0025】
基板層18は、底部層として提供され得る。基板18は、一時的剥離シートを備え得るが(それは、下でより詳細に説明されるであろう)、底部基板16は、好ましくは、最終製造デバイス10内の上部電極層16に組み込まれる保護シートと同じまたは類似であり得る別の光透過性保護シートである。いくつかの実施形態において、基板18は、ガラスまたは透明なポリマー等の光透過性支持基板である。いくつかの実施形態において、電気光学デバイス10は、2枚のガラス間に配置され、したがって、その透過が電子的に制御され得る窓を提供するであろう。
【0026】
図1に図示されるように、DC場が、デバイスに印加されると、カプセル22内の荷電粒子24、26は、印加される電場の極性および大きさに応じて、2つの電極14、16のうちの1つに向かって移動する。例えば、
図1において、正の極性を有する第1の組の粒子24が、上部電極16に引きつけられる一方、負の極性を有する第2の組の粒子26は、底部電極14に引きつけられ、それによって、デバイス10の光学状態を不透明に変化させ、光が電気光学媒体20の層を透過させられることを防ぐ。
【0027】
電極14、16によって印加される電場の極性の一時的な切り替わりは、
図2に図示されるように、粒子24、26をカプセル22の中央内で混合することを可能にするであろう。これは、正荷電粒子24が負荷電粒子26とヘテロ凝集を形成し、それによって、デバイス10を中間光学状態に切り替わることを可能にし得、電気泳動媒体20の層を透過させられることが可能である光の量は、閉状態より大きい。
【0028】
ここで
図3を参照すると、交流電場が電極14、16のうちの1つに印加されると、荷電顔料粒子24、26も、
図2に図示される中間状態と同様、混合またはヘテロ凝集し得るが、粒子24、26のヘテロ凝集は、電気泳動媒体20の層を通した光の透過のために、カプセル22の側壁に駆動され、カプセル22を通した開口ももたらし、それによって、デバイス10を開状態に切り替えるであろう。
【0029】
上記のように、本発明の種々の実施形態で使用される電気光学媒体は、好ましくは、カプセル化電気泳動媒体である。Massachusetts Institute of Technology (MIT)、E Ink Corporation、E Ink California,LLC、および関連する企業に譲渡された、またはそれらの名義の多数の特許および出願が、カプセル化電気泳動および他の電気光学媒体において使用される種々の技術を説明している。カプセル化電気泳動媒体は、多数の小型カプセルを備え、そのそれぞれ自体は、電気泳動により移動可能な粒子を流体媒体中に含む内相と、内相を包囲するカプセル壁とを備えている。典型的に、カプセルは、2つの電極の間に位置付けられるコヒーレント層を形成するために、それ自体がポリマー結合剤内に保持される。代替として、荷電粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されず、代わりに、典型的にはポリマーフィルムであるキャリア媒体内に形成された複数の空洞内に保持される。これらの特許および出願に説明される技術は、以下を含む。
(a)電気泳動粒子、流体、および流体添加物(例えば、米国特許第7,002,728号および第7,679,814号参照)
(b)カプセル、結合剤、およびカプセル化プロセス(例えば、米国特許第6,922,276号および第7,411,719号参照)
(c)マイクロセル構造、壁材料、およびマイクロセルを形成する方法(例えば、米国特許第7,072,095号および第9,279,906号参照)
(d)マイクロセルを充填およびシールする方法(例えば、米国特許第7,144,942号および第7,715,088号参照)
(e)電気光学材料を含むフィルムおよびサブアセンブリ(例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号参照)
(f)バックプレーン、接着剤層、および他の補助層、およびディスプレイにおいて使用される方法(例えば、米国特許第7,116,318号および第7,535,624号参照)
(g)色形成および色調節(例えば、米国特許第7,075,502号および第7,839,564号参照)
(h)ディスプレイを駆動する方法(例えば、米国特許第7,012,600号および第7,453,445号参照)
(i)ディスプレイの用途(例えば、米国特許第7,312,784号および第8,009,348号参照)
(j)非電気泳動ディスプレイ(米国特許第6,241,921号および米国特許出願公開第2015/0277160号に説明される)、ディスプレイ以外のカプセル化およびマイクロセル技術の用途(例えば、米国特許出願第2015/0,005,720号および第2016/0,012,710号参照)
【0030】
前述の特許および出願の多くは、カプセル化電気泳動媒体内の別々のマイクロカプセルを包囲する壁が、連続相と置換され、したがって、いわゆるポリマー分散電気泳動ディスプレイを生産し得、電気泳動媒体が、電気泳動流体の複数の別々の液滴と、ポリマー材料の連続相とを備え、そのようなポリマー分散電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の別々の液滴が、いかなる別々のカプセル膜も各個々の液滴に関連付けられない場合であっても、カプセルまたはマイクロカプセルと見なされ得ることを認識する。例えば、前述の米国特許第6,866,760号を参照されたい。故に、本願の目的のために、そのようなポリマー分散電気泳動媒体は、カプセル化電気泳動媒体の亜種と考えられる。
【0031】
カプセル化電気泳動ディスプレイは、典型的に、従来的な電気泳動デバイスのクラスタ化および沈降故障モードに悩まされることがなく、多種多様な可撓性および剛体基板上にディスプレイを印刷またはコーティングする能力等のさらなる利点を提供する。(用語「印刷」の使用は、全ての形態の印刷およびコーティングを含むことを意図しており、限定ではないが:パッチダイコーティング、スロットまたは押し出しコーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング等の前計量コーティング;ナイフオーバーロールコーティング、フォワードおよびリバースロールコーティング等のロールコーティング;グラビアコーティング;浸漬コーティング;スプレーコーティング;メニスカスコーティング;スピンコーティング;ブラシコーティング;エアナイフコーティング;シルクスクリーン印刷プロセス;静電気印刷プロセス;熱印刷プロセス;インクジェット印刷プロセス;電気泳動析出(米国特許第7,339,715号を参照);および、他の類似技術を含む。)したがって、結果として生じるディスプレイは、可撓性であり得る。さらに、ディスプレイ媒体は、(種々の方法を使用して)印刷され得るので、ディスプレイ自体は、安価に作製され得る。
【0032】
マイクロカプセル、マイクロセル、または連続ポリマー相内の液滴のいずれの中にカプセル化されているかにかかわらず、複数の荷電粒子を含む分散体は、流体のみならず他の随意の添加剤も含む。分散体流体は、好ましくは、液体であるが、電気泳動媒体は、ガス状流体を使用して生産されることもできる。例えば、Kitamura,T.,et al.,「Electrical toner movement for electronic paper-like display」、(IDW Japan,2001,Paper HCS1-1)、およびYamaguchi,Y.,et al.,「Toner display using insulative particles charged triboelectrically」(IDW Japan,2001,Paper AMD4-4)を参照されたい。また、米国特許第7,321,459号および第7,236,291号も参照されたい。
【0033】
荷電顔料粒子は、種々の色および組成物であり得る。いくつかの実施形態において、荷電粒子の全ては、電荷極性にかかわらず、同じまたは類似する光学特性(色など)を有し得る。他の実施形態において、第1および第2の組の逆荷電粒子は、異なる光学特性を有し得る。いくつかの実施形態において、第1の組の粒子は、着色される(例えば、白色、例えば、黒色)一方、他の組の粒子は、光透過性であり、電気泳動媒体の内相の屈折率に合うように屈折率整合させられる。加えて、荷電顔料粒子は、表面ポリマーで官能化され、状態安定性を改良し得る。そのような顔料は、米国特許公開第9,921,451号(参照することによってその全体として組み込まれる)に説明されている。例えば、荷電粒子が、白色である場合、それらは、TiO2、ZrO2、ZnO、Al2O3、Sb2O3、BaSO4、PbSO4等の無機顔料から形成され得る。それらは、高屈折率(>1.5)を伴い、あるサイズ(>100nm)であり、白色を示し、実質的に光透過性であるポリマー粒子、または、所望の屈折率を有するように工学設計された複合粒子でもあり得る。そのような粒子は、例えば、ポリ(メタクリル酸ペンタブロモフェニル)、ポリ(2-ビニルナフタレン)、ポリ(ナフチルメタクリル酸)、ポリ(アルファメチルスチレン)、ポリ(N-ベンジルメタクリルアミド)またはポリ(ベンジルメタクリル酸)を含み得る。黒色荷電粒子は、CI顔料黒色26または28等(例えば、マンガンフェライトブラックスピネルまたは銅クロマイトブラックスピネル)またはカーボンブラックから形成され得る。他の色(非白色および非黒色)は、CI顔料PR254、PR122、PR149、PG36、PG58、PG7、PB28、PB15:3、PY83、PY138、PY150、PY155、またはPY20等の有機顔料から形成され得る。他の例は、Clariant Hostaperm Red D3G 70-EDS、Hostaperm Pink E-EDS、PV fast red D3G、Hostaperm red D3G70、Hostaperm Blue B2G-EDS、Hostaperm Yellow H4G-EDS、Novoperm Yellow HR-70-EDS、Hostaperm Green GNX、BASF Irgazine red L3630、Cinquasia Red L 4100 HD、およびIrgazin Red L3 660 HD;Sun Chemical phthalocyanine blue、phthalocyanine green、diarylide yellow、またはdiarylide AAOT yellowを含む。色粒子は、CI顔料青色28、CI顔料緑色50、CI顔料黄色227等の無機顔料から形成されることもできる。荷電粒子の表面は、米国特許第6,822,782号、第7,002,728号、第9,366,935号、および第9,372,380号、および米国公開第2014-0011913号(その全ての内容は、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に説明されるように、要求される粒子の電荷極性および電荷レベルに基づいて、公知の技法によって修正され得る。
【0034】
粒子は、本来の電荷を示し得るか、または、電荷制御剤を使用して明示的に帯電させられ得るか、または、溶媒または溶媒混合物中に懸濁されると電荷を獲得し得る。好適な電荷制御剤は、当技術分野において周知であり、それらは、性質においてポリマー性または非ポリマー性であり得るか、または、イオン性または非イオン性であり得る。電荷制御剤の例は、限定ではないが、Solsperse17000(活性ポリマー分散剤)、Solsperse9000(活性ポリマー分散剤)、OLOA(登録商標)11000(スクシンイミド無灰分散剤)、Unithox750(エトキシレート)、Span85(ソルビタントリオレエート)、Petronate L(スルホン酸ナトリウム)、Alcolec LV30(大豆レシチン)、Petrostep B100(石油スルホン酸塩)またはB70(硫酸バリウム)、Aerosol OT、ポリイソブチレン誘導体またはポリ(エチレン-co-ブチレン)誘導体等を含み得る。懸濁流体および荷電顔料粒子に加えて、内相は、安定化剤、界面活性剤、および電荷制御剤を含み得る。安定化材料は、それらが溶媒中に分散させられると、荷電顔料粒子上に吸着され得る。この安定化材料は、粒子がそれらの分散状態にあるとき、可変透過媒体が実質的に非透過性であるように、粒子を互いに分離された状態に保つ。
【0035】
当技術分野において公知のように、荷電粒子(典型的に、上で説明されるように、カーボンブラック)を低誘電定数の溶媒中に分散させることは、界面活性剤の使用によって補助され得る。そのような界面活性剤は、典型的に、極性「頭部基」と、溶媒と相溶性がある、またはその中に可溶性である非極性「尾部基」とを備えている。本発明では、非極性尾部基は、飽和または不飽和炭化水素部分、または、例えば、ポリ(ジアルキルシロキサン)等の炭化水素溶媒中に可溶性の別の基であることが、好ましい。極性基は、アンモニウム、スルホン酸塩またはホスホン酸塩、または酸性または塩基性基等のイオン性材料を含む任意の極性有機官能性であり得る。特に、好ましい頭部基は、カルボン酸またはカルボキシレート基である。いくつかの実施形態において、ポリイソブテニルコハク酸イミドおよび/またはソルビタントリオレエートおよび/または2-ヘキサデカン酸等の分散剤が、添加される。
【0036】
分散体は、1つ以上の安定化剤を含み得る。本発明の種々の実施形態に従って作製される分散体において使用するために好適な安定化剤は、限定ではないが、ポリイソブチレンおよびポリスチレンを含む。しかしながら、比較的に低濃度の安定化剤のみが、必要であり得る。低濃度の安定化剤が、閉(不透明)または中間状態において媒体を維持することを補助し得るが、開状態における逆荷電粒子のヘテロ凝集のサイズは、安定化剤の存在を伴わずに、事実上安定であろう。例えば、本発明の種々の実施形態に組み込まれる分散体は、分散体の重量に基づいて、列挙される量において増加する選好を伴う、例えば、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、および1%未満またはそれに等しい安定化剤を含み得る。いくつかの実施形態において、分散体は、安定化剤がないこともある。
【0037】
いくつかの実施形態において、安定化剤の濃度は、第1の組の荷電粒子の濃度が第2の組の荷電粒子の濃度を上回る分散体を提供することによって低減させられ得、第2の組の荷電粒子は、反対極性を有し、荷電マイクロカプセル内に分散体をカプセル化する。例えば、一実施形態において、分散体が、第1の組の正荷電粒子および第2の組の負荷電粒子を有して調製され得、第1の組の正荷電粒子の濃度は、負荷電粒子を上回る。分散体が、負荷電カプセル壁を有するマイクロカプセル内にカプセル化され、開状態に切り替えられると、ヘテロ凝集は、ヘテロ凝集内のより正の荷電粒子の存在により、正味の正の電荷を有し得る。結果として、ヘテロ凝集は、負荷電カプセル壁に引きつけられ、それによって、電場が、除去されると、開状態の安定性を改良するであろう。分散体内の第2の組の荷電粒子に対する第1の組の荷電粒子の重量比は、1.0を上回り得、より好ましくは、列挙される比率において増加する選好を伴う、例えば、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、10.0、および20.0を上回るかまたはそれに等しい。
【0038】
本発明の可変透過媒体中で使用される流体は、典型的に、低誘電定数(好ましくは、10未満、望ましくは、3未満)であろう。流体は、好ましくは、低粘度、比較的に高い屈折率、低費用、低反応性、および低蒸気圧/高沸点を有する溶媒である。流体は、好ましくは、光透過性であり、分散体の組の荷電粒子のうちの少なくとも1つの光学特性と異なる色(例えば、赤色、緑色、青色、シアン色、マゼンタ色、黄色、白色、および黒色)等の光学特性を有することも、有しないこともある。溶媒の例は、限定ではないが、へプタン、オクタン、およびIsopar(登録商標)(Exxon Mobil)またはIsane(登録商標)(Total)等の石油蒸留物等の脂肪族炭化水素、リモネン、例えば、l-リモネン等のテルペン、およびトルエン等の芳香族炭化水素を含む。特に好ましい溶媒は、それが低誘電定数(2.3)を比較的に高い屈折率(1.47)と組み合わせるので、リモネンである。内相の屈折率は、屈折率整合剤の添加によって修正され得る。例えば、前述の米国特許第7,679,814号は、電気泳動粒子を包囲する流体が、部分水素化芳香族炭化水素およびテルペンの混合物を備え、好ましい混合物が、d-リモネンおよびCargille-Sacher Laboratories(55 Commerce Rd,Cedar Grove N.J. 07009)からCargille(登録商標) 5040として商業的に入手可能な部分水素化テルフェニルである可変透過デバイスにおいて使用するために好適な電気泳動媒体を説明している。本発明の種々の実施形態に従って作製されるカプセル化媒体では、カプセル化分散体の屈折率は、ヘイズを低減させるためにカプセル化材料のそれと可能な限り密接に合致することが、好ましい。殆どの事例では、550nmにおいて1.51~1.57、好ましくは、550nmにおいて約1.54の屈折率を伴う内相を有することが、有益である。内相と屈折率整合させられた光透過性粒子を使用する実施形態において、光透過性粒子も、550nmにおいて1.51~1.57、好ましくは、550nmにおいて約1.54の屈折率を有するであろう。
【0039】
本発明の好ましい実施形態において、カプセル化流体は、1つ以上の非共役オレフィン族炭化水素、好ましくは、環状炭化水素を含み得る。非共役オレフィン族炭化水素の例は、限定ではないが、リモネン等のテルペン、フェニルシクロヘキサン、安息香酸ヘキシル、シクロドデカトリエン、1,5-ジメチルテトラリン、Cargille(登録商標) 5040等の部分水素化テルフェニル、フェニルメチルシロキサンオリゴマー、およびそれらの組み合わせを含む。本発明のある実施形態によるカプセル化流体に関する最も好ましい組成物は、シクロドデカトリエンと、部分水素化テルフェニルとを含む。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態において、カプセル化流体内に含まれる安定剤の量は、電気泳動ディスプレイにおいて従来的に使用されるより低くあり得る。比較のために、米国特許第7,170,670号を参照されたい。そのような安定剤は、ポリイソブチレン、ポリスチレン、またはポリ(ラウリル)メタクリル酸等の高分子量の自由ポリマーであり得る。故に、いくつかの実施形態において、カプセル化流体(すなわち、分散体)は、分散体の重量比10%未満の安定剤をさらに備えている。いくつかの実施形態において、分散体は、安定剤を含まない。高分子重量ポリマーの存在を低減させることによって、ヘイズは、改良され、最終生成物を満足の行くものにすることが見出されている。
【0041】
マイクロカプセルを備えている電気泳動媒体は、概して、基板上への電気泳動媒体のコーティングを補助するための結合剤も含む。魚ゼラチンおよびアカシア等のポリアニオンの混合物が、(ブタ)ゼラチンおよびアカシアのコアセルベートから形成されるカプセルとの使用のための優れた結合剤であることが見出されている。魚ゼラチンとともに結合剤中に含まれ得るポリアニオンは、限定ではないが、デンプンおよびセルロース誘導体、植物抽出物(例えば、アカシア)、および多糖類(例えば、アルギン酸)等の炭化水素ポリマー、ゼラチンまたは乳清タンパク質等のタンパク質、蜜蝋またはリン脂質等の脂質、およびそれらの組み合わせを含む。
【0042】
ゼラチンベースのカプセル壁は、上で言及されるE InkおよびMIT特許および出願の多くに説明されている。ゼラチンは、Sigma AldrichまたはGelitia USA等の種々の商業供給業者から入手可能である。それは、用途の必要性に応じて、種々のグレードおよび純度で取得されることができる。ゼラチンは、主に、動物生成物(ウシ、ブタ、家禽、魚)から収集され、加水分解されたコラーゲンを備えている。それは、ペプチドおよびタンパク質の混合物を備えている。本明細書に説明される実施形態の多くでは、ゼラチンは、アカシアの木の硬化樹液に由来するアカシア(アラビアガム)と組み合わせられる。アカシアは、糖タンパク質および多糖類の複雑な混合物であり、それは、多くの場合、食料品中の安定化剤として使用される。アカシアおよびゼラチンの水性溶液のpHは、非極性内相の液滴をカプセル化し得るポリマーが豊富なコアセルベート相を形成するように調整されることができる。
【0043】
ゼラチン/アカシアを組み込むカプセルは、以下のように調製され得、例えば、米国特許第7,170,670号(参照することによって全体として組み込まれる)を参照されたい。このプロセスでは、ゼラチンおよび/またはアカシアの水性混合物が、炭化水素内相(またはカプセル化するために所望される、他の水不混和性相)とともに乳化され、内相をカプセル化する。溶液は、ゼラチンを溶解するために、乳化に先立って40℃に加熱され得る。pHは、典型的に、所望される液滴サイズ分布が達成された後、コアセルベートを形成するために低下させられる。カプセルは、典型的に、室温またはそれを下回るまでのエマルションの制御された冷却および混合に応じて形成される。均一な様式で内相液滴の周囲でコアセルベートを別々の的にゲル化するための適切な混合およびあるカプセル化調合物(例えば、ゼラチンおよびアカシア濃度およびpH)は、湿潤および拡散条件が正しい場合に達成され、それは、内相組成物によって大いに要求される。このプロセスは、20~100μmの範囲内のカプセルをもたらし、多くの場合、開始材料の50パーセント以上を使用可能カプセルの中に組み込む。生産されたカプセルは、次いで、篩分または他のサイズ除外ソートによって、サイズ別に分離される。
【0044】
多層電気光学ディスプレイの製造は、通常、少なくとも1つの積層動作を伴う。例えば、前述のMITおよびEインク特許および出願のうちのいくつかにおいて、その中で結合剤内にカプセルを備えているカプセル化電気泳動媒体が、プラスチックフィルム上に酸化インジウムスズ(ITO)または類似伝導性コーティング(最終ディスプレイの1つの電極としての機能を果たす)を備えている可撓性基板上にコーティングされる、カプセル化電気泳動ディスプレイを製造するためのプロセスが説明され、カプセル/結合剤コーティングは、基板にしっかりと付着させられた電気泳動媒体のコヒーレント層を形成するために乾燥させられている。別個に、第2の電極層と、回路を駆動するように電極を接続するための導体の適切な配置とを含むバックプレーンが、調製される。最終ディスプレイを形成するために、カプセル/結合剤層を有する基板は、積層接着剤を使用して、バックプレーンに積層される。そのようなプロセスの1つの好ましい形態では、バックプレーンは、それ自体が可撓性であり、電極および導体をプラスチックフィルムまたは他の可撓性基板上に印刷することによって調製される。このプロセスによるディスプレイの大量生産のための明白な積層技法は、積層接着剤を使用するロール積層である。
【0045】
前述の米国特許第6,982,178号は、大量生産に非常に適している固体電気光学ディスプレイ(カプセル化電気泳動ディスプレイを含む)を組み立てる方法を説明する。本質的に、本特許は、順に、光透過性導電性層と、導電性層と電気接触する固体電気光学媒体の層と、接着剤層と、剥離シートとを備えているいわゆる「フロントプレーンラミネート」(「FPL」)を説明する。典型的に、光透過性導電性層は、光透過性基板上に支持され得、それは、好ましくは、基板が、永久ひずみを伴わずに、(例えば)10インチ(254mm)の直径のドラムの周囲に手動で巻き付けられ得るという意味において、可撓性である。基板は、典型的に、ポリマーフィルムであり、通常、約1~約25ミル(25~634μm)、好ましくは、約2~約10ミル(51~254μm)の範囲内の厚さを有するであろう。導電性層は、便宜的に、アルミニウムまたはITOの、例えば、薄金属または金属酸化物層である、または伝導性ポリマーであり得る。アルミニウムまたはITOでコーティングされたポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムは、例えば、E.I. du Pont de Nemours & Company(Wilmington DE)からの「アルミコーティングを施したMylar」(「Mylar」は、登録商標である)として市販されており、そのような市販の材料は、フロントプレーンラミネートにおける良好な結果と共に使用され得る。
【0046】
そのようなフロントプレーンラミネートを使用する電気光学ディスプレイのアセンブリは、剥離シートをフロントプレーンラミネートから除去することと、接着剤層をバックプレーンに接着させるために効果的な条件下、接着剤層をバックプレーンと接触させることと、それによって、接着剤層、電気光学媒体の層、および導電性層をバックプレーンに固定することとによって、もたらされ得る。このプロセスは、フロントプレーンラミネートが、典型的に、ロール/ロールコーティング技法を使用して大量生産され、次いで、具体的バックプレーンとの使用のために必要とされる任意のサイズの部片に切断され得るので、大量生産に非常に適している。
【0047】
米国特許第7,561,324号は、前述の米国特許第6,982,178号のフロントプレーンラミネートの本質的に簡略化されたバージョンであるいわゆる「二重剥離シート」を説明する。二重剥離シートの1つの形態は、2つの接着剤層間に挟まれる固体電気光学媒体の層を備え、接着剤層のうちの一方または両方は、剥離シートによって覆われている。二重剥離シートの別の形態は、2つの剥離シート間に挟まれる固体電気光学媒体の層を備えている。二重解放フィルムの両方の形態は、電気光学ディスプレイをすでに説明されたフロントプレーンラミネートから組み立てるためのプロセスに概して類似するプロセスにおいて使用することが意図されるが、2つの別個の積層を伴う。典型的に、第1の積層では、二重剥離シートは、正面サブアセンブリを形成するために正面電極に積層され、次いで、第2の積層では、正面サブアセンブリは、最終ディスプレイを形成するためにバックプレーンに積層されるが、所望の場合、これらの2つの積層の順序は、逆転され得る。
【0048】
米国特許第7,839,564号は、前述の米国特許第6,982,178号で説明されるフロントプレーンラミネートの変形であるいわゆる「反転フロントプレーンラミネート」を説明する。この反転フロントプレーンラミネートは、順に、光透過性保護層および光透過性導電性層のうちの少なくとも1つと、接着剤層と、固体電気光学媒体の層と、剥離シートとを備えている。この反転フロントプレーンラミネートは、電気光学層と正面電極または正面基板との間の積層接着剤の層を有する電気光学ディスプレイを形成するために使用され、接着剤の第2の、典型的に、薄い層が、電気光学層とバックプレーンとの間に存在することも、存在しないこともある。そのような電気光学ディスプレイは、良好な分解能を良好な低温性能と組み合わせることができる。
【0049】
積層接着剤は、ディスプレイスタックの層のいずれかの間に存在し得、この積層接着剤層の存在は、ディスプレイの電気光学特性に影響を及ぼす。特に、積層接着剤層の電気伝導性は、ディスプレイの低温性能および分解能の両方に影響を及ぼす。ディスプレイの低温性能は、積層接着剤の伝導度を増加させることによって、例えば、前述の米国特許第7,012,735号および第7,173,752号に説明されるように、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウムまたは他の材料で層をドープすることによって、改良されることができる(実験的に見出されている)。いくつかの実施形態において、光学的に透明な接着剤の複数の層が、光透過性電極、電気光学媒体、および支持基板のスタックに関する光透明性を維持するために使用され得る。
【0050】
本発明の好ましい実施形態が、本明細書に示され、説明されているが、そのような実施形態は、例のみとして提供されることを理解されたい。多数の変形例、変更、および代用が、本発明の精神から逸脱することなく、当業者に想起されるであろう。故に、添付の請求項は、本発明の精神および範囲内に該当するように、全てのそのような変形例を網羅することが意図される。前述の特許および出願の内容物の全ては、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】