(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-27
(54)【発明の名称】オレフィンを調製するための原油の直接分解方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C07C 4/08 20060101AFI20221220BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20221220BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20221220BHJP
C07C 11/167 20060101ALI20221220BHJP
C07C 11/21 20060101ALI20221220BHJP
B01D 11/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C07C4/08
C07C11/04
C07C11/06
C07C11/167
C07C11/21
B01D11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524698
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 CN2020124197
(87)【国際公開番号】W WO2021083165
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】201911027979.0
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】510016575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】劉同挙
(72)【発明者】
【氏名】王国清
(72)【発明者】
【氏名】張利軍
(72)【発明者】
【氏名】張兆斌
(72)【発明者】
【氏名】周叢
(72)【発明者】
【氏名】蒋氷
(72)【発明者】
【氏名】石瑩
【テーマコード(参考)】
4D056
4H006
【Fターム(参考)】
4D056AB13
4D056AC02
4D056BA14
4D056BA16
4D056CA01
4D056CA17
4D056CA20
4D056CA21
4D056CA22
4D056CA37
4D056CA39
4D056CA40
4D056DA01
4D056DA02
4D056DA05
4H006AA02
4H006AB46
4H006AB84
4H006AC26
4H006AD16
4H006BC10
4H006BC51
4H006BC52
4H006BD84
(57)【要約】
本発明は、原油の分解方法およびシステムに関する。該方法は原油を予熱するために分解炉の対流部の第1の管群に送って、次いで気化を行って第1の気相および第1の液相を得て、第1の液相を高圧抽出して非アスファルト油およびアスファルトを得て、第1の気相および非アスファルト油をそれぞれ水蒸気と混合するか、または第1の気相を非アスファルト油と混合した後に水蒸気と混合し、次いでこれを分解炉の対流部の第2の管群に送って昇温し、続いてこれを分解炉の放射部に送って分解して分解生成物を得て、分解生成物を分離して低炭素オレフィンを得ることを含む。本発明において、原油を分解炉内で予熱して気化させた後に、得られた気相を分解炉内に通し、得られた液相を超臨界抽出部に通して抽出油を分離し、次いでこれを分解炉内に通し、この方法は原油の分解効率を効果的に改善し、生成物中の低炭素オレフィンの収率を改善し、運転サイクルを延長し、分解工程における気化原油混合物のコーキングを低減することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原油の分解方法であって、以下の工程:
工程1 原油を予熱するために分解炉の対流部の第1の管群に送って、次いで気化を行って第1の気相および第1の液相を得る工程、
工程2 前記第1の液相を高圧抽出して、非アスファルト油およびアスファルトを得る工程、
工程3 前記第1の気相および前記非アスファルト油をそれぞれ水蒸気と混合するか、または前記第1の気相を前記非アスファルト油と混合した後に水蒸気と混合し、次いでこれを、クロスオーバー温度まで昇温するために前記分解炉の前記対流部の第2の管群に送って、続いてこれを前記分解炉の放射部に送って分解して分解生成物を得て、そして前記分解生成物を分離して低炭素オレフィンを得る工程、を含む、方法。
【請求項2】
工程1において、前記気化が、ストリップ、フラッシュ気化およびサイクロン分離の少なくとも1つであり、サイクロン分離が前記気化のために好ましく使用され、および/または
工程2において、前記高圧抽出は、抽出処理、任意の沈降分離処理および溶媒回収処理を含み、好ましくは、前記高圧抽出は超臨界抽出を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程2において、前記第1の液相を前記高圧抽出に供して、抽出油、沈降油および前記アスファルトを得て、
工程3において、前記第1の気相および前記抽出油をそれぞれ前記水蒸気と混合するか、または前記第1の気相を前記抽出油と混合した後に前記水蒸気と混合し、次いでこれを、クロスオーバー温度まで昇温するために前記分解炉の前記対流部の前記第2の管群に送って、続いて前記分解炉の前記放射部に送って分解して前記分解生成物を得て、そして前記分解生成物を分離して前記低炭素オレフィンを得ることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程3は以下のサブ工程:
工程3.1 前記第1の気相を前記水蒸気と混合し、次いでこれを、クロスオーバー温度まで昇温するために前記分解炉の前記対流部における前記第2の管群の第1の管列に送って、続いて前記分解炉の第1の放射部に送って第1の分解を行い、第1の分解生成物を得る工程、
工程3.2 前記抽出油を前記水蒸気と混合し、次いでこれを、クロスオーバー温度まで昇温するために前記分解炉の前記対流部における前記第2の管群の第2の管列に送って、続いて、前記分解炉の第2の放射部に送って第2の分解を行い、第2の分解生成物を得る工程、
工程3.3 前記第1の分解生成物と前記第2の分解生成物とを、それぞれ分離するかまたはそれらの混合後に分離して、低炭素オレフィンを得る工程、を含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程1において、予熱後の前記原油の流出温度が120~350℃、好ましくは120~315℃、より好ましくは150~300℃であり、および/または
前記第1の気相中の液体含有量が10g/m
3未満、好ましくは200mg/m
3未満であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程2において、前記高圧抽出は、前記抽出処理、前記沈降分離処理、および前記溶媒回収処理を含み、これらは好ましくは抽出カラム、沈降カラム、および溶媒回収カラムでそれぞれ行われ、好ましくは前記抽出処理が溶媒の存在下で行われ、好ましくは前記溶媒が低炭素炭化水素であり、より好ましくは前記低炭素炭化水素がプロパン、ブタン、ペンタン、プロピレン、およびブテンからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記高圧抽出は超臨界状態で行われ、以下の工程:
工程(I) 前記第1の液相および前記溶媒を抽出処理に供して、非アスファルト部分および前記溶媒を含む第1の軽質相成分と前記アスファルトとを抽出し、当該アスファルトを外部に排出する工程であって、好ましくは、工程(I)において、前記第1の液相に対する前記溶媒の比率は(0.1~20):1であり、好ましくは(1~10):1である、工程、
工程(II) 前記第1の軽質成分を昇温処理に供して、次いで前記沈降分離処理を行って溶媒および前記抽出油を含む第2の軽質相成分と沈降油とを得て、当該沈降油を排出する工程、
工程(III) 前記第2の軽質成分を昇温処理に供して、次いで前記溶媒回収処理を行って回収溶媒および前記抽出油を得る工程、を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出処理、前記沈降分離処理および前記溶媒回収処理の圧力が、独立に、1~10MPa、好ましくは3~6MPaであり、および/または、
前記抽出処理の温度が50~200℃、好ましくは80~160℃であり、および/または、
前記沈降分離処理の温度が前記抽出処理の温度よりも1~30℃、好ましくは3~8℃高く、および/または、
前記溶媒回収処理の温度が前記沈降分離処理の温度よりも1~30℃、好ましくは5~20℃高いことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程3.1における前記クロスオーバー温度が500~750℃、好ましくは540~700℃であり、および/または、
工程3.1における前記第1の放射部の出口温度が780~950℃、好ましくは800~900℃であり、および/または、
工程3.1における前記第1の分解の滞留時間が0.05~1秒、好ましくは0.1~0.7秒であり、および/または、
工程3.1における前記第1の分解の水対油の比率が(0.1~2):1、好ましくは(0.4~1.5):1であることを特徴とする請求項4~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程3.2における前記クロスオーバー温度が520~760℃、好ましくは550~710℃であり、および/または、
工程3.2における前記第2の放射部の出口温度が750~950℃、好ましくは760~900℃であり、および/または、
工程3.2における前記第2の分解の滞留時間が0.05~1秒、好ましくは0.1~0.7秒であり、および/または、
工程3.2における前記第2の分解の水対油の比率が(0.1~2):1、好ましくは(0.4~1.5):1であることを特徴とする請求項4~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実施するための、原油の分解システムであって、当該システムは分解炉と、気化部と、高圧抽出部とを含み、前記分解炉は流れ方向に沿って順に配置された対流部および放射部を含み、前記高圧抽出部は順に接続される抽出部、任意の沈降分離部および溶媒回収部を含み、好ましくは前記抽出部、前記沈降分離部および前記溶媒回収部はすべて、軽質相出口および重質相出口を備え、前記気化部は第1の気相出口および第1の液相出口を備える、システム。
【請求項12】
前記抽出部が溶媒入口および第1の液相入口を備え、前記第1の液相入口が前記気化部の前記第1の液相出口に接続され、前記溶媒入口が前記溶媒回収部の前記軽質相出口に接続され、および/または、
前記高圧抽出部が沈降分離部を含み、前記抽出部の軽質相出口が前記沈降分離部の材料入口に接続され、および/または、
前記沈降分離部の前記軽質相出口が前記溶媒回収部の材料入口に接続され、および/または、
前記溶媒回収部の前記軽質相出口および前記気化部の前記第1の気相出口が、それぞれ別々にまたは合流した後に、前記分解炉の前記対流部の材料入口に接続されていることを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は原油分解の分野に関し、特に、原油の分解方法およびシステムに関し、特に、オレフィンを調製するための原油の直接分解方法およびシステムに関する。
【0002】
〔背景技術〕
低炭素オレフィンは、通常、主にエチレン、プロピレン、ブタジエン、および高い経済的価値を有する他の有機化学原料を含む、4個以下の炭素原子を有する不飽和炭化水素の一般用語を指す。中国経済の発展に伴い、これらの有機化学原料の需要は年々増加している。低炭素オレフィンの生産規模も年々増加しているが、増加する需要を満たすことはできない。
【0003】
長い間、中国は、低炭素オレフィンを調製するための主要な原料としてナフサを常に使用してきた。しかし、近年、中東の油田関連ガスや米国のシェールガスの大規模な開発により、これらの安価な石油およびガス資源がエチレン原料として広く利用され、エチレン関連製品の価格が下がっている。市場競争の影響に対応するために、エチレン分解装置の原料源を拡大し、原料のコストを削減することは、伝統的なエチレン事業にとって、コストを削減し、能率を向上させる効果的な手段となっている。このため、低炭素オレフィンを製造する分解炉のための原料として、特殊な重炭化水素、特に未処理原油を用いることは、オレフィン製造装置の原料コストやエネルギー消費量を低減し、市場における分解原料の需給の変化に迅速に対応することができる。
【0004】
原油資源を十分に利用し、低炭素オレフィンの収率を改善するために、分解炉は通常、気化ガス分解によって種々の炭化水素の原料をオレフィンに分解するために使用される。一般的に使用されている分解炉は、対流部と放射部から構成されている。原油は一般に、飽和物、芳香族物、コロイドおよびアスファルテンの4つの成分に分けられ、飽和物およびアスファルテンは、それぞれ、原油中で最も安定な成分および最も不安定な成分である。原油は、590℃を超える沸点を有する高分子量不揮発性成分を含む。これらの不揮発性成分を従来の分解炉の対流部で予熱すると、一部がガス化せず、ガス化していない不揮発性成分が混合ガス流と共に放射部に混入し、放射部でコーキング堆積を起こしたり、放射部をふさいだりして、分解生成物の収率に影響を与える。
【0005】
CN101583697Aは、合成油含有原料を分解するための方法を開示し、当該方法は以下を含む:1)沸点の範囲が広いアリコートであって、a)50°F~800°Fの範囲で沸騰し、実質的に残留物を含有しない通常は液体の炭化水素部分と、b)600°F~1050°Fの範囲で沸熱分解された液体炭化水素とを含む、アリコートを液体処理して、合成原油であって、73°F~1070°Fの範囲で沸騰し、25重量%を超える芳香族化合物、25重量%を超えるナフテン、0.3重量%未満のSおよび0.02重量%未満のアスファルテンを含有し、実質的にアスファルテン以外の残留物を含有しない、合成原油を得る;2)100°F~1050°Fの範囲で沸騰する通常は液体の炭化水素成分を合成原油に添加する;そして3)放射コイル出口を含む分解炉において、2)から得られた混合物を分解して、分解された流出物を得るが、ここで、分解は合成原油を別々に分解するための最適な放射コイル出口温度よりも高い放射コイル出口温度を十分に達成する条件下で行われる。
【0006】
前記プロセスでは、原油を希釈し、原油の分解性能を改善し、かつオレフィンの転化率を改善するために、エチレン製造のための既存の原料を原油に混合する。しかしながら、このプロセスは、エチレン生産のための既存の原料の供給源によって制限され、低炭素オレフィンの生産のために大量の原油を有効活用できない。
【0007】
CN1957068Aは、塩および/または粒子状物質を含有する炭化水素原料の水蒸気分解を開示しており、当該方法は以下を含む:a)塩および任意の粒子状物質を含有する未脱塩原料を乾溜炉の対流部に添加すること;b)前記炭化水素原料を昇温すること;c)炭化水素原料を乾点の上流に位置するフラッシュ/分離容器に供給すること;d)炭化水素原料を、不揮発性成分および塩が実質的に除去された気化ガス相と、不揮発性成分および塩が濃縮された液相であって、フラッシュ/分離容器の上流の対流部のすべての点に5%の液相を含む液相とに分離し、塩および任意の粒子状物質を懸濁状態に維持すること;e)フラッシュ/分離容器から気化ガス相中の炭化水素原料の50~95%を除去し、気化ガス相を分解してオレフィンを含有する流出物を生成すること;およびf)液相中の炭化水素原料の少なくとも5%を、懸濁状態の塩および任意の粒子状物質と共にフラッシュ/分離容器から除去することを含む。US3617493はまた、前記の方法と同様の、水蒸気で原油を分解する方法を開示している。
【0008】
CN1041967Aは分解炉内で重質留分を含有する低品質原料を熱分解する方法を開示しており、該低品質原料は分解炉の予熱器から回収されて、気化の方法によって該低品質原料から重質留分を分離し、除去し、その後、該原料を熱分解に供する前に該予熱器に戻される。
【0009】
原料を分解する前記の方法は、全てフラッシュタンクを用いて分解炉の対流部を通る原油を処理して気化させ、放射部に気相を通して分解させるものである。しかしながら、原料がフラッシュされた後、炭化水素原料の少なくとも5%は依然として液体中に残り、これは低炭素オレフィンの収率に影響を及ぼす。さらに、分離された液相は、燃料油として直接使用され、その結果、原料が無駄になる。
【0010】
したがって、原油の分解中のコーキングを減少させ、低炭素オレフィンの収率を増加させることができる、原油を分解するための改良された方法およびシステムが依然として必要とされている。
【0011】
〔発明の概要〕
先行技術における不十分な原油気化、分解中のコーキングの起こりやすさ、および低炭素オレフィンの低収率の問題を克服するために、本発明は原油の分解方法およびシステムを提供し、具体的には原油を直接的に分解してオレフィンを調製するための方法およびシステムに関し、これは原油原料の利用率および分解効率を改善し、運転サイクルを延長し、分解中のコーキングを低減し、同時に生成物中の低炭素オレフィンの収率を改善することができる。
【0012】
一態様では、本発明は、以下の工程を含む、原油の分解方法を提供する:
工程1 原油を予熱するために分解炉の対流部の第1の管群に送って、次いで気化を行って第1の気相および第1の液相を得る工程、
工程2 前記第1の液相を高圧抽出して、非アスファルト油およびアスファルトを得る工程、
工程3 前記第1の気相および前記非アスファルト油をそれぞれ水蒸気と混合するか、または前記第1の気相を前記非アスファルト油と混合した後に水蒸気と混合し、次いでこれを、クロスオーバー温度まで昇温するために前記分解炉の前記対流部に送って、続いてこれを前記分解炉の放射部に送って分解して分解生成物を得て、そして前記分解生成物を分離して低炭素オレフィンを得る工程。
【0013】
具体的には、本発明は、以下の工程を含む、原油の分解方法を提供する:
工程1 原油を予熱するために分解炉の対流部の第1の管群に送って、次いで気化を行って第1の気相および第1の液相を得る工程、
工程2 前記第1の液相を高圧抽出して、非アスファルト油およびアスファルトを得る工程、
工程3 前記第1の気相および前記非アスファルト油をそれぞれ水蒸気と混合するか、または前記第1の気相を前記非アスファルト油と混合した後に水蒸気と混合し、次いでこれを、クロスオーバー温度まで昇温するために前記分解炉の前記対流部の第2の管群に送って、続いてこれを前記分解炉の放射部に送って分解して分解生成物を得て、そして前記分解生成物を分離して低炭素オレフィンを得る工程。
【0014】
本発明において、原油の気化後に得られた第1の気相は分解炉に通され、高圧抽出後に第1の液相から分離された非アスファルト油(抽出油を含む)は分解炉に通される。この方法は原油の利用率および分解効率を効果的に改善し、生成物中の低炭素オレフィンの収率を改善し、運転サイクルを延長し、分解中の気化した原油混合物のコーキングを低減することができる。
【0015】
本発明において、原油には、軽質原油、中質原油、重質原油、および脱水・脱塩後の原油などの超重質原油が含まれる。20℃における軽質原油の相対密度は0.8661未満であり、20℃における中質原油の相対密度は0.8661~0.9162であり、20℃における重質原油の相対密度は0.9162~0.9968であり、20℃における重質原油の相対密度は0.9968超である。好ましくは、本発明における原油は、中質原油、重質原油および超重質原油であり得る。
【0016】
好ましい実施形態では、原油中のコロイドおよびアスファルテンの総含有量は1重量%を超え、好ましくは原油中のコロイドおよびアスファルテンの総含有量が5重量%を超える。
【0017】
本発明において、原油は前記に限定されず、原油の一次処理によって得られる油、原油の二次処理によって得られる油、および液化石炭を含むこともできる。好ましくは一次処理が常圧蒸留および/または減圧蒸留を含み、原油の一次処理によって得られる油は軽質ナフサ、ナフサ、ディーゼル油、残油などを含む。好ましくは二次処理が熱分解、接触分解、水素化分解、遅延コーキング、および接触改質を含み、原油の二次処理によって得られる油は水素化分解テール油、水素化ディーゼル油、ガソリン、ラフィネート油などを含む。
【0018】
好ましい実施形態では、工程1において、予熱後の原油の流出温度は約120~350℃、好ましくは約120~315℃、より好ましくは約150~300℃である。ここで、予熱後の原油の流出温度は、対流部における予熱後に原油が分解炉の対流部から流出する温度を指す。
【0019】
好ましい実施形態では、工程1において、第1の気相中の液体含有量は10g/m3未満、好ましくは200mg/m3未満である。
【0020】
好ましい実施形態では、工程1において、気化はストリップ、フラッシュ気化およびサイクロン分離のうちの少なくとも1つであり、サイクロン分離が気化のために好ましく使用される。
【0021】
好ましい実施形態では、工程1において、サイクロン分離機が気化のために使用される。
【0022】
さらなる好ましい実施形態では、サイクロン分離機がボリュートサイクロン分離機、アキシャルガイドベーンサイクロン分離機、円筒形サイクロン分離機、コーン-シリンダ複合サイクロン分離機または直流サイクロン分離機から選択される。
【0023】
さらに好ましい実施形態では、サイクロン分離機の上端部に配置されたスキミングカートリッジおよび/またはサイクロン分離機の下部にバッフルおよびボルテックスブレーカーを含む内部部材をサイクロン分離機が備えている。
【0024】
ここで、サイクロン分離機は、体積が小さく、分離効率が高いという利点がある。
【0025】
本発明において、「サイクロン分離機」は、狭義の「サイクロン分離機」だけでなく、ハイドロサイクロン分離機のような、そのような技術分野でそれと同様の原理を有する分離装置も含む、広義のサイクロン分離機を指す。特に明記しない限り、本発明で述べたサイクロン分離機は、広義のサイクロン分離機である。本発明によれば、気化のためのサイクロン分離機の作動媒体は大部分が気体である。また、予熱された原油が120~350℃、好ましくは120~315℃で分離され、分離効率が90%以上に達することができる限り、当分野で一般に使用されるサイクロン分離機を選択することができる。
【0026】
ここで、サイクロン分離機の数は必要に応じて選択することができ、1つ以上のサイクロン分離機を備えることができる。複数のサイクロン分離機を備える場合、複数のサイクロン分離機を並列または直列に接続することができる。
【0027】
一実施形態では、工程2において、高圧抽出は抽出処理、任意の沈降分離処理および溶媒回収処理を含む。沈降分離処理を行わない場合には、第1の液相は抽出処理および溶媒回収処理に供され、それぞれアスファルトおよび非アスファルト油を得る。アスファルトは外部に排出され、非アスファルト油はその後の分解のため分解炉に送ることができる。沈降分離処理を行う場合には、第1の液相は抽出処理、沈降分離処理および溶媒回収処理に供され、それぞれ抽出油、沈降油およびアスファルトを得る。沈降油およびアスファルトは外部に排出され、抽出油は、その後の分解のために分解炉に送ることができる。
【0028】
第1の液相に沈降分離処理を行う必要があるかどうかに関しては、主に供給原油に依存することが指摘されるべきである。原油の重質炭化水素含有量が少ない場合には、高圧抽出において、第1の液相を抽出処理に供してアスファルトを除去した後、直接溶媒回収処理を行って溶媒を回収し、非アスファルト油を得て、これを分解に適用することができる。原油の重質炭化水素の含有量が多い場合には、第1の液相を抽出処理に供してアスファルトを除去した後、さらに沈降分離処理に供して沈降油を除去する必要があり、次いでアスファルトおよび沈降油から除去された材料を溶媒回収処理に供して溶媒を回収し、抽出油を得て、分解に適用することができる。
【0029】
本発明において、「高圧」とは、一般に、約0.5~40MPa、好ましくは約0.8~25MPa、より好ましくは約1~10MPaの圧力を指す。
【0030】
好ましい実施形態では、工程2において、第1の液相を高圧抽出に供して、抽出油、沈降油およびアスファルトを得る。
【0031】
好ましい実施形態では、工程2において、第1の液相を高圧抽出に供して、抽出油、沈降油およびアスファルトを得る。工程3において、第1の気相および抽出油をそれぞれ水蒸気と混合するか、または第1の気相を抽出油と混合した後に水蒸気と混合し、次いでこれを、クロスオーバー温度まで昇温するために分解炉の対流部の第2の管群に送って、続いて分解炉の放射部に送って分解して分解生成物を得て、分解生成物を分離して低炭素オレフィンを得る。
【0032】
さらに好ましい実施形態では、工程2において、第1の液相を高圧抽出に供して、抽出油、沈降油およびアスファルトを得る。工程3において、第1の気相および抽出油をそれぞれ水蒸気と混合し、次いでこれを、クロスオーバー温度まで昇温するために分解炉の対流部の第2の管群に送って、続いて分解炉の放射部に送って分解して分解生成物を得て、分解生成物を分離して、低炭素オレフィンを得る。好ましい実施形態では、工程2において、高圧抽出は抽出処理、沈降分離処理および溶媒回収処理を含み、これらはそれぞれ、好ましくは抽出カラム、沈降カラムおよび溶媒回収カラムにおいて行われる。
【0033】
さらなる好ましい実施形態では、抽出処理は溶媒の存在下で実施され、好ましくは溶媒が低炭素炭化水素であり、より好ましくは低炭素炭化水素がプロパン、ブタン、ペンタン、プロピレンおよびブテンからなる群から選択される少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、高圧抽出が以下の工程を含む:
工程(I) 第1の液相および溶媒を抽出処理に供して、非アスファルト部分および溶媒を含む第1の軽質相成分とアスファルトとを抽出し、アスファルトを外部に排出する工程;
ここで、好ましくは、抽出処理は抽出カラムで行われ、より好ましくは、第1の液相が抽出カラムの上部に供給され、溶媒が抽出カラムの下部に供給され、非アスファルト部分および溶媒を含む第1の軽質成分がカラムの上端部で得られ、アスファルトがカラムの底部で得られ、外部に排出される;
ここで、溶媒が第1の液相中の非アスファルト部分を抽出し(この部分が好ましくは抽出カラムの上端部から回収される)、アスファルトがその後の処理のために抽出カラムの底部から排出される;
工程(II) 第1の軽質成分を昇温処理に供して、次いで沈降分離処理を行って溶媒および抽出油を含む第2の軽質相成分と沈降油とを得て、沈降油を外部に排出する工程;
ここで、好ましくは、沈降分離処理が沈降カラムで行われ、より好ましくは、溶媒および抽出油を含む第2の軽質分が沈降カラムの上端部から回収され、沈降油は沈降カラムの底部で得られ、外部に排出される;
工程(III) 第2の軽質成分を昇温処理に供して、次いで溶媒回収処理を行って回収溶媒および抽出油を得る工程。
【0034】
ここで、工程(III)で得られた溶媒は、任意に冷却された後に再循環され、抽出油はその後の分解のために分解炉に送られる。
【0035】
好ましい実施形態では、工程(I)において、第1の液相に対する溶媒の比率が約(0.1~20):1であり、好ましくは(1~10):1であり、例えば4:1である。
【0036】
本発明の高圧抽出では、抽出処理により抽出された非アスファルト部分と溶媒とを含む第1の軽質相成分を沈降分離処理前に昇温処理に供して、沈降分離処理により得られた溶媒と抽出油とを含む第2の軽質相成分を溶媒回収処理前に昇温処理に供するが、昇温の目的は、溶媒の密度および溶解度を低下させることであり、これにより溶媒に溶解した原油成分の一部分または全部分が析出する。
【0037】
本発明において、抽出処理、沈降分離処理、および溶媒回収処理は、高圧下で行われる。好ましくは、抽出処理、沈降分離処理および溶媒回収処理の圧力は、独立に、約0.5~40MPa、好ましくは約0.8~25MPa、より好ましくは約1~10MPaであり、より好ましくは抽出処理、沈降分離処理および溶媒回収処理の圧力は同一または同程度である。
【0038】
好ましい実施形態では、抽出処理の温度は、約30~300℃、好ましくは約50~200℃である。
【0039】
好ましい実施形態では、沈降分離処理の温度が抽出処理の温度よりも約0.5~50℃高く、好ましくは約1~30℃高い。
【0040】
好ましい実施形態では、溶媒回収処理の温度が沈降分離処理の温度よりも約0.5~50℃高く、好ましくは約1~30℃高い。
【0041】
好ましい実施形態では、高圧抽出が超臨界抽出を含む。
【0042】
好ましい実施形態では、高圧抽出が超臨界状態で実施され、工程(I)における抽出処理中に設定された温度および圧力条件は、溶媒を超臨界または超臨界に近い液相領域にし、溶媒は第1の液相中の非アスファルト部分を抽出し(これが好ましくは抽出カラムの上端部から回収される)、アスファルトが後続の処理のために抽出カラムの底部から排出される。
【0043】
好ましい実施形態では、抽出処理、沈降分離処理および溶媒回収処理はすべて、超臨界または超臨界に近い状態で行われる。
【0044】
好ましい実施形態では、超臨界抽出処理にける抽出処理条件は、約1~10MPa、好ましくは約3~6MPaの圧力、および/または約50~200℃、好ましくは約80~160℃の温度である。
【0045】
好ましい実施形態では、超臨界抽出処理において、沈降分離処理のための条件は、約1~10MPa、好ましくは約3~6MPaの圧力、および/または抽出処理の温度よりも約1~30℃高い、好ましくは約3~8℃高い温度である。
【0046】
好ましい実施形態では、超臨界抽出処理において、溶媒回収処理のための条件は、約1~10MPa、好ましくは約3~6MPaの圧力、および/または沈降分離処理の温度よりも約1~30℃高い、好ましくは約5~20℃高い温度である。
【0047】
ここで、抽出処理、沈降分離処理および溶媒回収処理の圧力は、独立に、約1~10MPa、好ましくは約3~6Mpaであり、好ましくは抽出処理、沈降分離処理および溶媒回収処理の圧力は、同一または同程度である。好ましい実施形態では、抽出処理、沈降分離処理および溶媒回収処理の圧力および温度条件は、3つの処理が超臨界または超臨界に近い状態で実施されることを確実にするよう制御される。
【0048】
好ましい実施形態では、工程3が以下のサブ工程を含む:
工程3.1 第1の気相を水蒸気と混合し、次いでこれを、クロスオーバー温度まで昇温するために分解炉の対流部における第2の管群の第1の管列に送って、続いて分解炉の第1の放射部に送って第1の分解を行い、第1の分解生成物を得る工程、
工程3.2 非アスファルト油を水蒸気と混合し、次いでこれを、クロスオーバー温度まで昇温するために分解炉の対流部における第2の管群の第2の管列に送って、続いて、分解炉の第2の放射部に送って第2の分解を行い、第2の分解生成物を得る工程、
工程3.3 第1の分解生成物と第2の分解生成物とを、それぞれ分離するかまたはそれらの混合後に分離して、低炭素オレフィンを得る工程。
【0049】
より好ましい実施形態では、工程3が以下のサブ工程を含む:
工程3.1 第1の気相を水蒸気と混合し、次いでこれを、クロスオーバー温度まで昇温するために分解炉の対流部における第2の管群の第1の管列に送って、続いて分解炉の第1の放射部に送って第1の分解を行い、第1の分解生成物を得る工程、
工程3.2 抽出油を水蒸気と混合し、次いでこれを、クロスオーバー温度まで昇温するために分解炉の対流部における第2の管群の第2の管列に送って、続いて、分解炉の第2の放射部に送って第2の分解を行い、第2の分解生成物を得る工程、
工程3.3 第1の分解生成物と第2の分解生成物とを、それぞれ分離するかまたはそれらの混合後に分離して、低炭素オレフィンを得る工程。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明において、第1の気相および非アスファルト油(好ましくは抽出油)は、それぞれ、異なる環境で分解される。具体的には、最も軽質な第1の気相が比較的高い温度で分解されて、分解度を最大限に増大させ、生成物の収率を増大させることができる。一方、比較的重質な非アスファルト油(好ましくは抽出油)は、比較的低い温度で分解され、これにより、コーキングの程度を低下させることができる。
【0051】
好ましい実施形態では、工程3.1におけるクロスオーバー温度が約500~750℃であり、好ましくは約540~700℃である。
【0052】
好ましい実施形態では、工程3.1における第1の放射部の出口温度が約780~950℃であり、好ましくは約800~900℃である。
【0053】
好ましい実施形態では、工程3.1における第1の分解の滞留時間が約0.05~1秒であり、好ましくは約0.1~0.7秒である。
【0054】
好ましい実施形態では、工程3.1における第1の分解の水対油の比率が約(0.1~2):1であり、好ましくは約(0.4~1.5):1である。
【0055】
ここで、水対油の比率は重量比率を指す。
【0056】
好ましい実施形態では、工程3.2のクロスオーバー温度が約520~760℃であり、好ましくは約550~710℃であり、より好ましくは工程3.1のクロスオーバー温度よりも低い。
【0057】
好ましい実施形態では、工程3.2における第2の放射部の出口温度が約750~950℃であり、好ましくは約760~900℃であり、より好ましくは工程3.1における第1の放射部の出口温度よりも低い。
【0058】
好ましい実施形態では、工程3.2における第2の分解の滞留時間が約0.05~1秒であり、好ましくは約0.1~0.7秒である。
【0059】
好ましい実施形態では、工程3.2における第2の分解の水対油の比率が約(0.1~2):1であり、好ましくは約(0.4~1.5):1である。
【0060】
好ましい実施形態では、工程3.3において、分離は以下のように行われる:分解生成物が急冷および分解ガス分離システムに連続的に送られて、水素、メタン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、熱分解タール油などの生成物を得て、従来技術における分離処理を分離に使用することができる。
【0061】
さらなる好ましい実施形態では、分解ガスが分離前に熱交換される。
【0062】
ここで、生成物中の低炭素オレフィンの収率をさらに改善するために、分離前に分解ガスに熱交換処理を施すことにより、生成物中の低炭素オレフィンの収率をさらに改善し、冷却および分離中の分解ガスのコーキングを低減することができる。
【0063】
好ましくは、工程3.1および3.2における水蒸気が分解炉の対流部における過熱水蒸気である。
【0064】
別の態様では、本発明が、好ましくは本発明の方法を実施するための、原油の分解システムを提供し、該システムは分解炉と、気化部と、高圧抽出部とを含み、該分解炉は、流れ方向に沿って順に配置された対流部および放射部を含む。気化部はその上に、第1の気相出口と第1の液相出口とを備える。
【0065】
好ましい実施形態では、対流部が気化部の材料入口および気化部の第1の気相出口と閉ループ接続を形成する。
【0066】
好ましい実施形態では、気化部の第1の液相出口は高圧抽出部に接続されており、気化部で生成された第1の液相を高圧抽出部に送る。
【0067】
好ましい実施形態では、高圧抽出部が順に接続された抽出部、任意選択の沈降分離部、および溶媒回収部を含む。
【0068】
さらなる好ましい実施形態では、抽出部、沈降分離部、および溶媒回収部はすべて、軽質相出口および重質相出口を備える。
【0069】
好ましい実施形態では、抽出部には溶媒入口および第1の液相入口が設けられ、第1の液相入口は気化部の第1の液相出口に接続され、溶媒入口は溶媒回収部の軽質相出口に接続される。
【0070】
好ましい実施形態では、高圧抽出部が沈降分離部を含み、抽出部の軽質相出口が沈降分離部の材料入口に接続される。
【0071】
好ましい実施形態では、高圧抽出部が沈降分離部を含み、沈降分離部の軽質相出口が溶媒回収部の材料入口に接続される。
【0072】
好ましい実施形態では、溶媒回収部の重質相出口および気化部の第1の気相出口が、それぞれ別々にまたは合流した後に、分解炉の対流部の材料入口に接続される。
【0073】
好ましい実施形態では、気化部はサイクロン分離機であり、好ましくはサイクロン分離機が矩形入口サイクロン分離機、ボリュートサイクロン分離機、アキシャルガイドベーンサイクロン分離機、円筒型サイクロン分離機、コーン-シリンダ複合サイクロン分離機、対向流サイクロン分離機、直流サイクロン分離機または直流マルチサイクロンチューブ分離機から選択され;好ましくはボリュートサイクロン分離機、アキシャルガイドベーンサイクロン分離機、円筒型サイクロン分離機、コーン-シリンダ複合サイクロン分離機、または直流サイクロン分離機である。サイクロン分離機は、サイクロン分離機の上端部に配置されたスキミングカートリッジおよび/またはバッフルと、サイクロン分離機の下部に配置された渦ブレーカとを含む内部部材を備える。
【0074】
好ましい実施形態では、システムが、分解炉を介して得られた分解生成物を分離するための分解生成物分離部をさらに含む。
【0075】
本発明の好ましい実施形態において、原油は予熱のために分解炉の対流部の第1の管群に送られ、その後、気化部によって分離されて第1の気相および第1の液相を形成し、第1の気相は分解炉の対流部における第2の管群の第1の管列に送られ、第1の液相は高圧抽出部に送られ、第1の液相は抽出部、沈降分離部および溶媒回収部によって順次処理され、同時に、溶媒が高圧抽出部に導入される。アスファルトは抽出部から外部に排出され、沈降油は沈降分離部から外部に排出され、溶媒回収部から気相溶媒が回収され、抽出部に再循環され、抽出油は回収され、分解炉の対流部における第2の管群の第2の管列に送られる。第1の気相および抽出油は分解炉の第1の放射部および第2の放射部においてそれぞれ分解されて、分解生成物を得て、これは分解生成物分離部によって処理されて、低炭素オレフィンが得られる。
【0076】
好ましい実施形態では、高圧抽出部が超臨界抽出処理部を含むことができる。
【0077】
先行技術と比較して、本発明の有利な効果には以下が含まれるが、これらに限定されない:本発明において、原油を分解炉内で予熱し、気化させた後、得られた第1の気相を分解炉内に通し、得られた第1の液相を高圧力抽出部内に通し、高圧抽出によって分離された非アスファルト油、好ましくは抽出油を分解炉内に通し、したがって、原油中のコロイドおよびアスファルテンを効果的に除去することができ、その結果、非アスファルト油(抽出油を含む)はコロイドおよびアスファルテンを実質的に含まず、それによって、原油の利用率および分解効率が改善され、生成物中の低炭素オレフィンの収率が改善され、運転サイクルが42日以上に延長され、分解中の気化原油混合物のコーキングが低減される。
【0078】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明のシステムの概略構造図を示す。
【0079】
【0080】
図3は、実施例5で採用したシステムの概略構造図を示す。
【0081】
図1、
図2および
図3において、1-分解炉、2-対流部の第1の管群、3-第1の放射部、4-気化部、5-高圧抽出部、6-抽出部、7-沈降分離部、8-溶媒回収部、9-分解生成物分離部、10-対流部の第2の管群、11-第2の放射部、が存在する。
【0082】
図1において、予熱のために分解炉1の対流部の第1の管群2に原油を送り、その後、気化部4で分離して第1の気相と第1の液相とを形成し、クロスオーバー温度まで昇温するために第1の気相を分解炉1の対流部における第2の管群10の第1の管列に送り、第1の分解のために第1の放射部3に送って第1の分解生成物を得て、第1の液相を高圧抽出部5に送り、第1の液相を抽出部6、必要に応じて沈降分離部7および溶媒回収部8で順次処理すると同時に、溶媒を高圧抽出部5に導入する。なお、沈降分離処理が不要な場合には、第1の液相は抽出部6および溶媒回収部8で順次処理され、沈降分離部7では処理されない。アスファルトは抽出部6から外部に排出され、溶媒回収部8から気相溶媒が回収され、抽出部5に再循環され、非アスファルト油が回収され、クロスオーバー温度まで昇温するために分解炉1の対流部における第2の管群10の第2の管列に送られ、次いで第2の分解のために第2の放射部11に通されて第2の分解生成物が得られる。第1の分解生成物および第2の分解生成物は、分解生成物分離部9によって処理され、低炭素オレフィンが得られる。沈降分離処理が必要な場合には、詳細は後述する
図2に示すように、第1の液相を沈降分離部7で処理する。
【0083】
図2において、原油を予熱するために分解炉1の対流部の第1の管群2に送り、その後、気化部4で分離して第1の気相と第1の液相とを形成し、クロスオーバー温度まで昇温するために第1の気相を分解炉1の対流部における第2の管群10の第1の管列に送り、第1の分解のために第1の放射部3に送って第1の分解生成物を得て、第1の液相を高圧抽出部5に送り、第1の液相を抽出部6、沈降分離部7および溶媒回収部8で順次処理すると同時に、溶媒を高圧抽出部5に導入する。アスファルトが抽出部6から外部に排出され、沈降油が沈降分離部7から外部に排出され、溶媒回収部8から気相溶媒が回収され、抽出部5に再循環され、抽出油が回収され、クロスオーバー温度まで昇温するために分解炉1の対流部における第2の管群10の第2の管列に送られ、次いで第2の分解のために第2の放射部11に通されて第2の分解生成物が得られる。第1の分解生成物および第2の分解生成物は、分解生成物分離部9によって処理され、低炭素オレフィンが得られる。
【0084】
図3において、原油は予熱のために分解炉1の対流部の第1の管群2に送られて、その後、気化部4で分離されて第1の気相および第1の液相を形成し、第1の気相が分解炉1の対流部の第2の管群10に送られ、第1の液相が高圧抽出部5に送られ、第1の液相が抽出部6、沈降分離部7および溶媒回収部8で順次処理され、同時に高圧抽出部5に溶媒が導入される。抽出部6からアスファルトが外部に排出され、沈降分離部7から沈降油が排出され、溶媒回収部8から気相溶媒が回収され、抽出部5に再循環され、抽出油が回収され、分解炉1の対流部における第2の管群10に送られる。第1の気相および抽出油は分解炉1の第1の放射部3(ここでは分解炉1が第1の放射部3のみを含む)において分解されて、分解生成物を得、これは分解生成物分離部9によって処理されて、低炭素オレフィンを得る。
【0085】
〔実施例〕
以下、具体的な実施例と併せて本発明を具体的に説明する。以下の実施例は、本発明をさらに例示するためにのみ使用され、本発明の保護範囲に対する限定として解釈されるべきではないことを指摘しなければならない。本発明の内容に従う発明のために当業者によってなされたいくつかの本質的でない改良および調整は、依然として本発明の保護範囲に属する。
【0086】
なお、以下の具体実施例で説明する様々な具体的な技術的特徴は、矛盾がない状況で適宜組み合わせることができる。不必要な繰り返しを避けるために、本発明は、様々な考えられる組み合わせを記載しない。
【0087】
本発明の実施例1-4に使用した分解炉は、二重放射部分解炉(二重炉床分解炉)、具体的にはCBL-VII型分解炉(シノペックグループ社から購入)である。本発明および比較例の実施例5に使用される分解炉は、単放射部分解炉(単炉床分解炉)、具体的にはCBL-III型分解炉(シノペックグループ社から購入)である。
【0088】
なお、以下の実施例、比較例に用いた原油は、比重0.8724(20℃)、コロイド含有量8.8wt%、アスファルテン含有量0.2wt%であり、ASTM D5307法によって測定された表1に示す蒸留範囲解析を有する。
【0089】
【0090】
実施例1
実施例は
図2に示すシステムを用いて行い、気化部として内装部材付きガイドベーン型サイクロン分離機を用い、抽出部6を抽出カラム、沈降分離部7を沈降カラム、溶媒回収部8を溶媒回収カラムとした。
【0091】
(1)脱水・脱塩した原油は、分解炉1の対流部2で288℃に予熱され、圧力が0.12MPaである予熱された原油となった。予熱された原油は気化のためにサイクロン分離機に送られて第1の気相および第1の液相を得て、第1の気相中の液体含有量は270mg/m3であり、第1の液相中のコロイドの含有量は11.3重量%であり、第1の液相中のアスファルテンの含有量は0.26重量%であった。
【0092】
(2)第1の液相を抽出カラムの上部に送り、溶媒であるn-ブタンを抽出カラムの下部に通し、第1の液相に対する溶媒の質量比は4:1であり、抽出カラムの圧力は4MPaであり、抽出カラムの温度は160℃であった。第1の液相中の非アスファルト部分を溶媒で抽出し、抽出カラムの上端部から回収し、アスファルトをカラムの底部から排出した。抽出カラムの上端部から回収した溶媒および非アスファルト部分を165℃まで昇温した後、沈降カラムに通し、沈降カラムの上端部から溶媒および抽出油を回収し、沈降カラムの底部から沈降油を回収した。沈降カラムの上端部から回収した溶媒と抽出油を180℃まで昇温して溶媒回収カラムに通し、溶媒と抽出油を分離し、カラムの上端部から溶媒を回収した後、160℃まで温度を下げて再循環し、抽出油をカラムの底部から回収した。抽出油中にコロイドおよびアスファルテンは検出されなかった(SY/T 7550-2000の分析方法による)。
【0093】
(3)第1の気相を水蒸気(水対油の比率0.7)と混合した後、混合物を分解炉の対流部における第2の管群の第1の管列に送ってクロスオーバー温度(600℃)に昇温し、次いで第1の分解のために第1の放射部に直接送り、第1の分解生成物を得た。第1の放射部3の操作パラメータは、炉管出口温度810℃、滞留時間0.22秒とした。
【0094】
(4)抽出油を水蒸気(水対油の比率0.75)と混合した後、混合物を分解炉の対流部における第2の管群の第2の管列に送り、クロスオーバー温度(575℃)に昇温し、次いで第2の分解のために第2の放射部に直接送り、第2の分解生成物を得た。第2の放射部11の操作パラメータは、炉管出口温度770℃、滞留時間0.21秒とした。
【0095】
(5)第1の分解生成物および第2の分解生成物を混合し、次いで分解生成物を分離するために急冷部および分離部に通して(LUMMUSの連続分離処理を使用)、分離して低炭素オレフィンを得た。
【0096】
分解ガスを分離して低炭素オレフィンを得て、エチレンの収率は25.07重量%、プロピレンの収率は13.79重量%、1,3-ブタジエンの収率は4.66重量%、トリエンの収率は43.52重量%であった。操作サイクルは50日間であった。
【0097】
実施例2
実施例は
図2に示すシステムを用いて行い、気化部として内装部材付きガイドベーン型サイクロン分離機を用い、抽出部6を抽出カラム、沈降分離部7を沈降カラム、溶媒回収部8を溶媒回収カラムとした。
【0098】
(1)脱水・脱塩した原油は、分解炉1の対流部2で230℃に予熱され、圧力が0.13MPaである予熱された原油となった。予熱された原油は気化のためにサイクロン分離機に送られて第1の気相および第1の液相を得て、第1の気相中の液体含有量は150mg/m3であり、第1の液相中のコロイドの含有量は10.2重量%であり、第1の液相中のアスファルテンの含有量は0.33重量%であった。
【0099】
(2)第1の液相を超臨界抽出部の抽出カラム上部に送り、抽出カラム下部に混合溶媒C4(それぞれ50%のn-ブタンとイソブタン)を通し、第1の液相に対する溶媒の質量比を3:1とし、抽出カラムの圧力を4MPaとし、抽出カラムの温度を150℃とした。第1の液相中の非アスファルト部分を溶媒で抽出し、抽出カラムの上端部から回収し、アスファルトをカラムの底部から排出した。抽出カラムの上端部から回収した溶媒および非アスファルト部分を162℃まで昇温した後、沈降カラムに通し、沈降カラムの上端部から溶媒および抽出油を回収し、沈降カラムの底部から沈降油を回収した。沈降カラムの上端部から回収した溶媒と抽出油を180℃まで昇温して溶媒回収カラムに通し、溶媒と抽出油を分離し、カラムの上端部から溶媒を回収した後、150℃まで温度を下げて再循環し、抽出油をカラムの底部から回収した。抽出油中にコロイドおよびアスファルテンは検出されなかった(SY/T 7550-2000の分析方法による)。
【0100】
(3)第1の気相を水蒸気(水対油の比率0.65)と混合した後、混合物を分解炉の対流部における第2の管群の第1の管列に送り、クロスオーバー温度(610℃)に昇温し、次いで第1の分解のために第1の放射部に直接送り、第1の分解生成物を得た。第1の放射部3の操作パラメータは、炉管出口温度815℃、滞留時間0.25秒とした。
【0101】
(4)抽出油を水蒸気(水対油の比率0.65)と混合した後、混合物を分解炉の対流部における第2の管群の第2の管列に送り、クロスオーバー温度(585℃)に昇温し、次いで第2の分解のために第2の放射部に直接送り、第2の分解生成物を得た。第2の放射部11の操作パラメータは、炉管出口温度785℃、滞留時間0.2秒とした。
【0102】
(5)第1の分解生成物および第2の分解生成物を混合し、次いで分解生成物を分離するために急冷部および分離部に通して(LUMMUSの連続分離処理を使用)、分離して低炭素オレフィンを得た。
【0103】
分解生成物を分離して低炭素オレフィンを得て、エチレンの収率は25.31重量%であり、プロピレンの収率は13.41重量%であり、1,3-ブタジエンの収率は4.73重量%であり、トリエンの収率は43.46重量%であった。操作サイクルは52日であった。
【0104】
実施例3
実施例は
図2に示すシステムを用いて行い、気化部として内装部材付きガイドベーン型サイクロン分離機を用い、抽出部6を抽出カラム、沈降分離部7を沈降カラム、溶媒回収部8を溶媒回収カラムとした。
【0105】
(1)脱水・脱塩した原油を分解炉1の対流部2で315℃に予熱し、圧力が0.12MPaである予熱された原油とした。予熱された原油は気化のためにサイクロン分離機に送られて第1の気相および第1の液相を得て、第1の気相中の液体含有量は200mg/m3であり、第1の液相中のコロイドの含有量は11.9重量%であり、第1の液相中のアスファルテンの含有量は0.27重量%であった。
【0106】
(2)第1の液相を抽出カラムの上部に送り、溶媒であるn-ブタンを抽出カラムの下部に通し、第1の液相に対する溶媒の質量比は8:1であり、抽出カラムの圧力は3MPaであり、抽出カラムの温度は140℃であった。第1の液相中の非アスファルト部分を溶媒で抽出し、抽出カラムの上端部から回収し、アスファルトをカラムの底部から排出した。抽出カラムの上端部から回収した溶媒および非アスファルト部分を148℃まで昇温した後、沈降カラムに通し、沈降カラムの上端部から溶媒および抽出油を回収し、沈降カラムの底部から沈降油を回収した。沈降カラムの上端部から回収した溶媒と抽出油を180℃まで昇温して溶媒回収カラムに通し、溶媒と抽出油を分離し、カラムの上端部から溶媒を回収した後、140℃まで温度を下げて再循環し、抽出油をカラムの底部から回収した。抽出油中にコロイドおよびアスファルテンは検出されなかった(SY/T 7550-2000の分析方法による)。
【0107】
(3)第1の気相を水蒸気(水対油の比率0.80)と混合した後、混合物を分解炉の対流部における第2の管群の第1の管列に送ってクロスオーバー温度(600℃)に昇温し、次いで第1の分解のために第1の放射部に直接送り、第1の分解生成物を得た。第1の放射部3の操作パラメータは、炉管出口温度800℃、滞留時間0.28秒とした。
【0108】
(4)抽出油を水蒸気(水対油の比率1)と混合した後、混合物を分解炉の対流部における第2の管群の第2の管列に送り、クロスオーバー温度(570℃)に昇温し、次いで第2の分解のために第2の放射部に直接送り、第2の分解生成物を得た。第2の放射部11の操作パラメータは、炉管出口温度765℃、滞留時間0.15秒とした。
【0109】
(5)第1の分解生成物および第2の分解生成物を混合し、次いで分解生成物を分離するために急冷部および分離部に通して(LUMMUSの連続分離処理を使用)、分離して低炭素オレフィンを得た。
【0110】
分解ガスを分離して低炭素オレフィンを得て、エチレンの収率は22.85重量%であり、プロピレンの収率は12.57重量%であり、1,3-ブタジエンの収率は4.27重量%であり、トリエンの収率は39.69重量%であった。操作サイクルは48日間であった。
【0111】
実施例4
実施例は
図2に示すシステムを用いて行い、気化部として内装部材付きガイドベーン型サイクロン分離機を用い、抽出部6を抽出カラム、沈降分離部7を沈降カラム、溶媒回収部8を溶媒回収カラムとした。
【0112】
(1)脱水・脱塩した原油を分解炉1の対流部2で200℃に予熱し、圧力が0.12MPaである予熱された原油とした。予熱された原油は気化のためにサイクロン分離機に送られて第1の気相および第1の液相を得て、第1の気相中の液体含有量は100mg/m3であり、第1の液相中のコロイドの含有量は9.9重量%であり、第1の液相中のアスファルテンの含有量は0.22重量%であった。
【0113】
(2)第1の液相を抽出カラムの上部に送り、溶媒であるn-ブタンを抽出カラムの下部に通し、第1の液相に対する溶媒の質量比を10:1とし、抽出カラムの圧力を18MPaとし、抽出カラムの温度を160℃とした。第1の液相中の非アスファルト部分を溶媒で抽出し、抽出カラムの上端部から回収し、アスファルトをカラムの底部から排出した。抽出カラムの上端部から回収した溶媒および非アスファルト部分を170℃まで昇温した後、沈降カラムに通し、沈降カラムの上端部から溶媒および抽出油を回収し、沈降カラムの底部から沈降油を回収した。沈降カラムの上端部から回収した溶媒および抽出油を180℃まで昇温して溶媒回収カラムに通し、溶媒と抽出油を分離し、カラムの上端部から溶媒を回収した後、160℃まで温度を下げて再循環し、抽出油をカラムの底部から回収した。抽出油中にコロイドおよびアスファルテンは検出されなかった(SY/T 7550-2000の分析方法による)。
【0114】
(3)第1の気相を水蒸気(水対油の比率0.6)と混合した後、混合物を分解炉の対流部における第2の管群の第1の管列に送り、クロスオーバー温度(620℃)に昇温し、次いで第1の分解のために第1の放射部に直接送り、第1の分解生成物を得た。第1の放射部3の操作パラメータは、炉管出口温度820℃、滞留時間0.2秒とした。
【0115】
(4)抽出油を水蒸気(水対油の比率0.8)と混合した後、混合物を分解炉の対流部における第2の管群の第2の管列に送り、クロスオーバー温度(590℃)に昇温し、次いで第2の分解のために第2の放射部に直接送り、第2の分解生成物を得た。第2の放射部11の操作パラメータは、炉管出口温度790℃、滞留時間0.21秒とした。
【0116】
(5)第1の分解生成物および第2の分解生成物を混合し、次いで分解生成物を分離するために急冷部および分離部に通して(LUMMUSの連続分離処理を使用)、分離して低炭素オレフィンを得た。
【0117】
分解ガスを分離して低炭素オレフィンを得て、エチレンの収率は23.51重量%であり、プロピレンの収率は14.58重量%であり、1,3-ブタジエンの収率は4.35重量%であり、トリエンの収率は42.44重量%であった。操作サイクルは49日間であった。
【0118】
実施例5
実施例は
図3に示すシステムを用いて行い、気化部としてサイクロン分離機を用い、分解炉は第1の放射部3のみからなる。
【0119】
実施例1の工程(1)~(2)を繰り返したが、以下の工程(3)で詳述するように、第1の気相と抽出油とを一緒に分解した点が異なる:
(3)第1の気相および抽出油をそれぞれ水蒸気(水対油の比率0.7)と混合し、次いで混合物を分解炉の対流部に送ってクロスオーバー温度(585℃)に昇温し、次いで分解のために第1の放射部3に直接送り、分解生成物を得た。第1の放射部3の操作パラメータは、炉管出口温度780℃、滞留時間0.22秒とした。分解生成物を分離するために分解生成物を急冷部および分離部に通して(LUMMUSの連続分離処理を使用)、分離して低炭素オレフィンを得た。
【0120】
分解ガスを分離して低炭素オレフィンを得たが、生成物の収率は実施例1の収率よりわずかに低く、エチレンの収率は24.25重量%であり、プロピレンの収率は12.61重量%であり、1,3-ブタジエンの収率は4.51重量%であり、トリエンの収率は41.37重量%であったが、操作サイクルは実施例1の収率より短く、わずか42日であった。
【0121】
比較例1
比較例は、通常の分解炉を分解に用いた。
【0122】
脱水・脱塩した原油を、分解炉に直接送り、対流部に通してクロスオーバー温度(580℃)に昇温し、次いで、分解のために放射部に直接通した。分解条件は、水対油の比率0.75、放射部出口温度790℃、放射部出口圧力0.11MPa、滞留時間0.22秒とした。分解ガスにはLUMMUSの連続分離処理を用いた。水蒸気分解反応生成物の分析によって、エチレンの収率が21.49重量%、プロピレンの収率が13.29重量%、1,3-ブタジエンの収率が4.03重量%、トリエンの収率が38.81重量%であることが示された。操作サイクルは5日間であった。
【0123】
実施例および比較例1の結果から、従来の分解装置を使用すると、原油は5日間のみの運転サイクルを維持するために使用されたが、本発明は、原油が分解装置において正常に使用されたことを保証することができ、原油を処理するための気化部および高圧抽出部の使用はコーキングの発生を効果的に低減し、42日以上の運転サイクルを達成することができることが分かる。さらに、同じ処理条件下で、実施例は、比較例と比較して、低炭素オレフィンの収率を効果的に改善した。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【
図1】
図1は、本発明のシステムの概略構造図を示す。
【
図2】
図2は、本発明のシステムの概略構造図を示す。
【
図3】
図3は、実施例5で採用したシステムの概略構造図を示す。
【国際調査報告】