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特表2022-554004傾斜パッド付き軸受及び上記傾斜パッド付き軸受用の熱油導出器
<図1>
  • 特表-傾斜パッド付き軸受及び上記傾斜パッド付き軸受用の熱油導出器 図1
  • 特表-傾斜パッド付き軸受及び上記傾斜パッド付き軸受用の熱油導出器 図2
  • 特表-傾斜パッド付き軸受及び上記傾斜パッド付き軸受用の熱油導出器 図3
  • 特表-傾斜パッド付き軸受及び上記傾斜パッド付き軸受用の熱油導出器 図4
  • 特表-傾斜パッド付き軸受及び上記傾斜パッド付き軸受用の熱油導出器 図5
  • 特表-傾斜パッド付き軸受及び上記傾斜パッド付き軸受用の熱油導出器 図6
  • 特表-傾斜パッド付き軸受及び上記傾斜パッド付き軸受用の熱油導出器 図7
  • 特表-傾斜パッド付き軸受及び上記傾斜パッド付き軸受用の熱油導出器 図8
  • 特表-傾斜パッド付き軸受及び上記傾斜パッド付き軸受用の熱油導出器 図9
  • 特表-傾斜パッド付き軸受及び上記傾斜パッド付き軸受用の熱油導出器 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-27
(54)【発明の名称】傾斜パッド付き軸受及び上記傾斜パッド付き軸受用の熱油導出器
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/03 20060101AFI20221220BHJP
   F16N 7/36 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
F16C17/03
F16N7/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525286
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2020078915
(87)【国際公開番号】W WO2021083668
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】102019129381.2
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020101866.5
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522170009
【氏名又は名称】エムアイビーエー・インダストリアル・ベアリングス・ジャーマニー・オステローデ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】MIBA Industrial Bearings Germany Osterode GmbH
【住所又は居所原語表記】Rolandsweg 16-20,37520 Osterode,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】コッホ、ティロ
(72)【発明者】
【氏名】ラービッド、アブデルハキム
(72)【発明者】
【氏名】ハイン、アンドレアス
【テーマコード(参考)】
3J011
【Fターム(参考)】
3J011AA07
3J011BA16
3J011JA02
3J011KA02
3J011LA01
3J011LA06
3J011MA02
(57)【要約】
本発明は、長手軸を有する伝動軸を設置するための傾斜パッド付き軸受に関する。その際、傾斜パッド付き軸受は、軸受面をそれぞれ有する互いに対して離れている少なくとも2つの傾斜パッドと、少なくとも1つの熱油導出器とを有しており、その熱油導出器は、o少なくとも2つの傾斜パッドの間の中間空間内に配置されており、少なくとも1つの熱油導出器は、伝動軸に近づき、伝動軸から遠ざかる方向に移動可能に設置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸を有する伝動軸を設置するための傾斜パッド付き軸受であって、前記傾斜パッド付き軸受が、
-軸受面をそれぞれ有する互いに対して離れている少なくとも2つの傾斜パッドと
-少なくとも1つの熱油導出器であって、
前記少なくとも2つの傾斜パッドの間の中間空間内に配置されている
熱油導出器と、を有し、
前記少なくとも1つの熱油導出器が前記伝動軸に近づき、前記伝動軸から遠ざかる方向に移動可能に設置されている
ことを特徴とする、傾斜パッド付き軸受。
【請求項2】
前記傾斜パッド付き軸受が軸方向の軸受であり、前記少なくとも1つの熱油導出器が軸方向に移動可能であること、又は前記傾斜パッド付き軸受が半径方向の軸受であり、前記少なくとも1つの熱油導出器が半径方向に移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の傾斜パッド付き軸受。
【請求項3】
前記傾斜パッド付き軸受が少なくとも1つの力誘起要素を有しており、前記力誘起要素により半径方向内側に作用する力が、前記少なくとも1つの熱油導出器上に加えられ得ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の傾斜パッド付き軸受。
【請求項4】
前記傾斜パッド付き軸受が少なくとも2つの力誘起要素を有しており、前記力誘起要素により前記力が熱油導出器上に加えられ得ることを特徴とする、請求項3に記載の傾斜パッド付き軸受。
【請求項5】
前記少なくとも1つの力誘起要素が、少なくとも1つの機械的要素、特にばね、好ましくは圧力ばね、及び/又は少なくとも1つの油圧要素を有することを特徴とする、請求項3又は4に記載の傾斜パッド付き軸受。
【請求項6】
各々の隣接する2つの傾斜パッドの間に少なくとも1つの熱油導出器が配置されており、前記傾斜パッド付き軸受が、少なくとも熱油導出器と同じくらい多くの力誘起要素を有しており、前記力誘起要素により各々の熱油導出器上に半径方向内側に作用する力が加えられ得ることを特徴とする、請求項1から5のうちの1項に記載の傾斜パッド付き軸受。
【請求項7】
前記少なくとも1つの熱油導出器が誘導器に沿って移動可能であり、前記誘導器が、好ましくは軸方向への及び/又は周囲方向への前記熱油導出器の移動を妨げることを特徴とする、請求項1から6のうちの1項に記載の傾斜パッド付き軸受。
【請求項8】
前記少なくとも1つの熱油導出器が、前記伝動軸の前記長手軸に対して平行に延びている旋回軸を中心に旋回可能に配置されていることを特徴とする、請求項1から7のうちの1項に記載の傾斜パッド付き軸受。
【請求項9】
前記少なくとも1つの熱油導出器が、少なくとも1つの堰と少なくとも1つの油噴射装置とを有しており、前記油噴射装置により油が、前記傾斜パッド付き軸受内に設置された伝動軸上に吹き付けられ得ることを特徴とする、請求項1から8のうちの1項に記載の傾斜パッド付き軸受。
【請求項10】
前記熱油導出器が、前記伝動軸の周囲方向において互いに対して離れた少なくとも2つの堰を有しており、前記堰の間に前記油噴射装置があることを特徴とする、請求項9に記載の傾斜パッド付き軸受。
【請求項11】
前記少なくとも1つの熱油導出器が、少なくとも2つの油噴射装置を有しており、前記油噴射装置が、前記少なくとも1つの堰の異なる側に配置されていることを特徴とする、請求項10に記載の傾斜パッド付き軸受。
【請求項12】
請求項1から11のうちの1項に記載の傾斜パッド付き軸受用の熱油導出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手軸を有する伝動軸を設置するための傾斜パッド付き軸受に関する。その際、傾斜パッド付き軸受は、軸受面をそれぞれ有する互いに対して離れている少なくとも2つの傾斜パッドと、少なくとも1つの熱油導出器とを有し、その熱油導出器は、少なくとも2つの傾斜パッドの間の中間空間内に配置されている。さらに本発明は、上記の傾斜パッド付き軸受用の熱油導出器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の軸受は、従来技術から長年知られている。その軸受は、周囲方向において互いに対して離れている少なくとも2つの傾斜パッドを有し、それらの傾斜パッドはそれぞれ軸受面を有する。この傾斜パッドは多くの場合、個別に油で潤滑されている。この油は膜を形成し、その膜は、各々の傾斜パッドの軸受面と設置され得る伝動軸との間の潤滑隙間内にある。伝動軸が回転するために、その油はこの潤滑隙間を通り抜けるように搬送される。それにより油が加熱されるので、その油は、潤滑隙間に入り込んだ時よりも熱くなって潤滑隙間を離れる。
【0003】
傾斜パッド付き軸受は一般に伝動軸の定められた回転方向に対して設けられている。しかしながら、伝動軸の両側の回転方向に対して使用され得る傾斜パッド付き軸受も知られている。本発明は、傾斜パッド付き軸受の両方の型に使用され得る。各々の傾斜パッド付き軸受は、先行する縁と後続の縁とも表記される前方の縁と後方の縁とを有する。その際、前方の又は先行する縁は、回転する伝動軸上の点が最初にその上をかすめて行く、縁であるのに対し、後方の又は後続の縁は、その伝動軸上の点が最後にその上を走行する、傾斜パッドの縁である。
【0004】
傾斜パッド付き軸受は、例えば米国特許第5738447号明細書及び米国特許第5879085号明細書から知られている。
【0005】
米国特許第4497587号明細書からは、2つの隣接する傾斜パッドの間に配置されている個別の部品に潤滑油を供給することが知られている。この部品は伝動軸の回転方向において前に堰を有し、その堰により、伝動軸にある油が続く傾斜パッドの次の潤滑隙間内に侵入するのが妨げられることになっている。米国特許第5738447号明細書からは類似の形態が知られている。2つの部品は堰を備えており、その堰により、伝動軸にある油が続く傾斜パッドの次の潤滑隙間内にそれぞれ侵入するのが妨げられることになっている。回転方向においてこの堰の後には、未使用の特に冷たい油を各々の潤滑隙間内に噴射する油噴射装置がある。米国特許第5288153号明細書からは、同様に隣接する傾斜パッドの間に追加の個別部品が配置されている、傾斜パッド付き軸受が知られている。しかしながらこの追加の個別部品は、付着油を取り除くための堰を備えてはおらず、未使用の油を高圧下で設置され得る伝動軸の上に吹き付ける多数の油噴射ノズルを備えている。それにより、伝動軸に付着している油膜が剥がされることになる。
【0006】
独国特許出願公開第102011105762号明細書から同様に、隣接する傾斜パッドの間に油噴射装置が配置されている、傾斜パッド付き軸受が知られている。この油噴射装置は、その効果を最適化するために特別に構成された表面形状及び輪郭を備えている。この部品は一般に熱油導出器と呼ばれる。
【0007】
伝動軸が傾斜パッド付き軸受及び移動する傾斜パッドに対して移動する際に、熱油導出器の堰が、設置され得る伝動軸と直接的に接触しないことを保証することができるように、熱油導出器の堰と設置され得る伝動軸との間の間隔が比較的大きく選択されなければならないことは不利である。従って、多くの場合、伝動軸と個々の傾斜パッドの軸受面との間に生じる潤滑隙間の油膜厚さよりも明らかに大きな安全間隔が選択されなければならない。従って伝動軸上に付着している熱油の一部のみが導出され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5738447号明細書
【特許文献2】米国特許第5879085号明細書
【特許文献3】米国特許第4497587号明細書
【特許文献4】米国特許第5288153号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第102011105762号明細書
【発明の概要】
【0009】
従って本発明は、伝動軸に付着する油がより多く導出され得るように、傾斜パッド付き軸受をさらに開発することを目的とする。
【0010】
本発明は、少なくとも1つの熱油導出器が伝動軸に近づき、伝動軸から遠ざかる方向に移動可能に設置されていることを特徴とする請求項1の前提部に従う傾斜パッド付き軸受により、提起された課題を解決する。熱油導出器はこのように外部の影響及び力、特にその熱油導出器を包み囲む油の油圧及び特性により、より良い払い落とし効果を得る位置に導かれる。熱油導出器が伝動軸に近づき、伝動軸から遠ざかる方向に移動され得ることは、熱油導出器が少なくとも1つの所定の領域にわたり、伝動軸に近づき、伝動軸から遠ざかるように移動され得ることを意味する。この移動は止め具により、例えば機械的な止め具により2つの方向のうちの少なくとも1つに、しかしながら好ましくは2つの方向に限定されてもよい。熱油導出器がこれらの止め具のうちの1つに隣接している場合は当然、2つの方向のうちの一方のみの移動、つまり伝動軸に近づく又は伝動軸から遠ざかるのいずれかの移動が可能である。この形態は、本明細書で使用される表現により補填される。
【0011】
有利には傾斜パッド付き軸受は軸方向の軸受であり、少なくとも1つの熱油導出器が軸方向に移動可能である。この形態において好ましくは伝動軸の正面又は軸方向の軸受面に近づくように及びその正面又は軸受面から遠ざかるように移動され得る。その代わりに、傾斜パッド付き軸受は半径方向の軸受であり、少なくとも1つの熱油導出器が半径方向に移動可能である。
【0012】
有利な軸受装置は、半径方向の軸受として形成されている本明細書に記載の少なくとも1つの傾斜パッド付き軸受と、軸方向の軸受として形成されている本明細書に記載の少なくとも1つの傾斜パッド付き軸受とを備えている。従って、これらの傾斜パッド付き軸受のうちの各々は少なくとも1つの熱油導出器を備えており、その際、半径方向の軸受の少なくとも1つの熱油導出器は半径方向に、軸方向の軸受の少なくとも1つの熱油導出器は軸方向に移動され得る。
【0013】
好ましくは、傾斜パッド付き軸受は少なくとも1つの力誘起要素を有し、その力誘起要素により、伝動軸の方向に作用する力を少なくとも1つの熱油導出器上に加えることができる。従ってこの力は、熱油導出器を設置され得る伝動軸に近づくように押す。力誘起要素により加えられるこの力と、本明細書では油圧と表記する、油圧特性のために生じる反対方向に作用する力との間に力の均衡が生じる。伝動軸の回転と、伝動軸と共に回転し、伝動軸に付着している潤滑層と、潤滑隙間を通じて移動する油とにより、伝動軸から遠ざかるように作用する油圧が少なくとも1つの熱油導出器上に加えられる。この油圧が大きくなるほど、熱油導出器は伝動軸に近くなる。
【0014】
このようにして、伝動軸に向き合う熱油導出器の面と設置される伝動軸との間の間隔を、従来技術の実施形態と比べて削減することができるので、回転している伝動軸から油をより多く払い落とし、傾斜パッド付き軸受から油を導出することができる。それによりさらに傾斜パッド付き軸受から熱が排出されるので、その他の点では同じ傾斜パッド付き軸受の形態において、伝動軸の回転速度をさらに高くすることができる及び/又は耐性をさらに高くすることができる。
【0015】
好ましい形態では、傾斜パッド付き軸受は少なくとも2つの力誘起要素を備えており、それらの力誘起要素により、力を熱油導出器上に加えることができる。それにより力を一様に誘起することができ、傾斜運動、横加速又は引っかかりが回避される。少なくとも2つの力誘起要素は、半径方向の軸受では好ましくは軸方向に、軸方向の軸受では好ましくは半径方向に、横に並べて配置されているので、熱油導出器の複数の箇所で力が誘起される。
【0016】
好ましくは少なくとも1つの力誘起要素は、少なくとも1つの機械的要素、特にばね、とりわけ好ましくは圧力ばね、及び/又は少なくとも1つの油圧要素を備えている。好ましくは少なくとも1つの力誘起要素が複数の機械的要素を備えており、それらの機械的要素は、既に説明したように軸方向に並ぶように配置されているので、軸方向に互いに対して離れた複数の箇所で熱油導出器上に力が誘起され得る。少なくとも1つの力誘起要素が少なくとも1つの油圧要素を備えている場合、熱油導出器上に力を誘起し、調節することもとりわけ容易にできる。その際、いずれにせよ調達されるべき油により傾斜パッド付き軸受が潤滑にされ、その油を油圧流体として使用することができる。熱油導出器と設置され得る伝動軸との間の動作中の間隔を狭くする予定である場合、好ましくは設計を、つまり特に幾何学的な形状及び輪郭を整合させることにより、潤滑流体を同時に形成する油の圧力を容易に高めることができる。それにより、反対方向に作用する油圧を用いての力の均衡は、伝動軸にさらに近づくように変移された熱油導出器の位置へ移される。
【0017】
好ましくは、各々の隣接する傾斜パッドの間に少なくとも1つの熱油導出器がある。その際、傾斜パッド付き軸受は、少なくとも熱油導出器と同じくらい多くの力誘起要素を有し、それらの力誘起要素により、半径方向内側に作用する力を各々の熱油導出器上に加えることができる。好ましくは各々の熱油導出器に対して同数の力誘起要素が存在する。複数の異なる傾斜パッドが周囲にわたり等間隔に分配されている場合、このようにしてとりわけ容易に、この等間隔の分配が複数の熱油導出器に対しても当てはまることになる。その際、好ましくは熱油導出器は、隣接する2つの傾斜パッドの間の中央において中心にはなく、後続の傾斜パッドの方へ移されている。これは、回転方向において熱油導出器の前には、回転方向において熱油導出器の後よりも大きな中間空間があるので、熱油導出器によりこの箇所で払い落とされた油がとりわけ容易に、軸方向の軸受では好ましくは軸方向に、半径方向の軸受では好ましくは半径方向に傾斜パッドを離れ得ることを意味する。複数の異なる熱油導出器を等距離に配置することにより、可能な限り多くの箇所で熱油を傾斜パッドから除去することができるので、油の温度が周囲全体にわたり可能な限り均等になる。
【0018】
好ましくは少なくとも1つの熱油導出器が誘導器に沿って移動可能である。その際、誘導器は、半径方向の軸受では、好ましくは軸方向への熱油導出器の移動を妨げ、軸方向の軸受では、好ましくは半径方向への熱油導出器の移動を妨げる。特に好ましくは誘導器により、周囲方向への少なくとも1つの熱油導出器の移動が妨げられない。しかしながら特定の用途に対しては、誘導器により周囲方向への移動を妨げることが有利であることもある。誘導器により、熱油導出器が、伝動軸の方向に又は伝動軸から遠ざかる方向に正確に作用しない力を回避することが妨げられる。さらに止め具により、伝動軸に近づく熱油導出器の最大移動が制限され、このようにして熱油導出器と設置され得る伝動軸との間の直接接触が回避されるのを確保することができる。
【0019】
好ましい形態では、少なくとも1つの熱油導出器が、伝動軸の長手軸に対して平行に延びている旋回軸を中心に旋回可能に設置されている。傾斜パッド付き軸受が動作する際、例えば回転する伝動軸は半径方向に設置されている。その移動及びその時に生じる油流により、個々の傾斜パッドは各々の移動状況及び軸受状況に適した位置に傾けられる。そのために能動的な制御は必要ではない。少なくとも1つの熱油導出器を対応して設置することにより、熱油導出器も旋回軸を中心に旋回され得るものであり、その旋回軸は、伝動軸の長手軸に対して平行に、好ましくは傾斜パッドがそれを中心に傾けられ得る、軸に対しても平行に通っている。この場合、熱油導出器の旋回又は傾斜も生じている力により行われ、それは能動的な制御又は移動を必要としない。
【0020】
好ましくは少なくとも1つの熱油導出器は、少なくとも1つの堰と少なくとも1つの油噴射装置とを備えており、その油噴射装置により、傾斜パッド付き軸受内に設置された伝動軸の上に油を吹き付けることができる。堰は、好ましくは半径方向内側に最も遠くに突出する熱油導出器の一部分を成す。従ってその堰は、設置され得る伝動軸に最も近づく部分である。その堰と伝動軸との間には潤滑隙間があり、その潤滑隙間は伝動軸の熱油導出器の間に生じる。回転方向においてその堰の後には油噴射装置があり、その油噴射装置により未使用の油が噴射される。堰の「スリップストリーム」内のその油噴射装置の位置により、未使用の、特に冷たい油をとりわけ容易に噴射することができる。その直後にその油は回転する伝動軸により運び去られ、次の潤滑隙間内へ挿入される。従来技術から堰の様々な形態及び配置が知られている。特に有利には、堰は、好ましくは軸方向において熱油導出器の中心にある先行する先端又は先行する部分を備えている。その先端には両方の軸方向で堰の一部分が続いており、その一部分は引き続きさらに後続している。
【0021】
それにより、伝動軸により払い落とされた油は同時に半径方向の外の方へ搬送され、そこでその油は傾斜パッド付き軸受を離れ得る。
【0022】
好ましい形態では、少なくとも1つの熱油導出器は、少なくとも1つの堰の異なる側に配置されている少なくとも2つの油噴射装置を備えている。このように熱油導出器は、設置された伝動軸の回転方向に限定されず、その方向とは無関係に使用され得るので、油噴射装置のうちの1つは常に回転方向において堰の後にある。好ましくは少なくとも1つの熱油導出器は、堰の中央にある油噴射装置を備えている。それによっても、設置された伝動軸の回転方向とは無関係に使用可能な熱油導出器が得られる。
【0023】
好ましくは少なくとも1つの熱油導出器は、周囲方向において互いに対して離れている少なくとも2つの堰を備えている。従って堰のうちの1つは先行する縁の近くに配置され、1つは熱油導出器の後続の縁の近くに配置されている。それらの堰の間には、好ましくは少なくとも1つの油噴射装置がある。このようにして2つの堰の間には油噴射装置が配置されているので、設置される予定の伝動軸の回転方向とは無関係に熱油導出器を使用することができる。
【0024】
本発明はさらに、提起された課題を本明細書に記載される傾斜パッド付き軸受用の熱油導出器により解決する。
【0025】
付属の図面を用いて以下に本発明の幾つかの実施例を詳説する。図は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施例による傾斜パッド付き軸受の断面図である。
図2図1からの拡大部分図である。
図3】本発明の第2の実施例による傾斜パッド付き軸受の断面図である。
図4図3からの拡大部分図である。
図5】熱油導出器の異なる実施形態である。
図6】熱油導出器の異なる実施形態である。
図7】熱油導出器の異なる実施形態である。
図8】熱油導出器の異なる実施形態である。
図9】熱油導出器の異なる実施形態である。
図10】熱油導出器の異なる実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の第1の実施例による傾斜パッド付き軸受の断面図を示す。その傾斜パッド付き軸受は軸受筐体2を備えており、その軸受筐体には4つの傾斜パッド4が配置されている。傾斜パッド付き軸受は、図示された実施例において半径方向の軸受である。それぞれ傾斜パッド4のうちの2つの間にはそれぞれ熱油導出器6があり、その熱油導出器は、図示された実施例において、力誘起要素を形成するばね8により半径方向内側へ、つまり見通しをよくするために示されていない伝動軸の方向へ移動され得る。各々の熱油導出器6が、隣接する2つの傾斜パッド4の間の中央にはないことがわかる。むしろ時計回りにおいて各々の熱油導出器6の前には、時計回りにおいて熱油導出器6の後の中間空間よりも大きな中間空間10がある。図1及び図2に示された傾斜パッド付き軸受は、時計回りに回転する伝動軸に対して設けられている。
【0028】
図2図1からの拡大部分図である。隣接する傾斜パッド4の間に配置されている熱油導出器6がその内部にあるばね8と共にわかる。熱油導出器6は、図示される実施例において先行する縁を形成する堰12を備えている。堰12は熱油導出器6の一部分であり、その部分は、図示された半径方向の軸受では半径方向内側に最も遠くに、つまり設置され得る伝動軸に近づくように突き出ている。傾斜パッド付き軸受が軸方向の軸受として形成されている場合、堰12は半径方向に突き出ており、設置され得る伝動軸に最も近づく熱油導出器6の一部分を形成する。
【0029】
熱油導出器6は、堰12に続いて油噴射装置14を備えており、その油噴射装置は図示された実施例において熱油導出器6の内部空間16と繋がっており、この内部空間を介して油供給管18と繋がっている。図示された熱油導出器6は、誘導器20に沿って二重矢印22により示された方向に移動され得る。
【0030】
図3は、図1に類似の傾斜パッド付き軸受の断面図を示す。またこの軸受も4つの傾斜パッド4を備えており、それらの傾斜パッドの間にはそれぞれ熱油導出器6があるが、その熱油導出器には機械的力誘起要素、つまり例えばばね8によってではなく、油圧で力が加えられ得る。
【0031】
図4は拡大部分図を示す。2つの傾斜パッド4の間に熱油導出器6があり、その熱油導出器は誘導器20に沿って二重矢印22により示された方向に移動され得る。熱油導出器6は、再び先行する縁を形成する堰12を備えている。この縁に続いて油噴射装置14が示されている。熱油導出器6には、必要とされる油が油供給管18を介して供給され、油圧流体としても力を熱油導出器6上に誘起する。
【0032】
図5図7は熱油導出器6を概略的に示す。その熱油導出器はそれぞれ堰12を備えており、その堰は、図5及び図6において図示された熱油導出器6の後端にある。図5に示される熱油導出器6は、油噴射装置14として用いられるスリット24を備えている。それとは異なり、図6に示される熱油導出器6は、油噴射装置14を形成する一列の穴26を示す。
【0033】
図7は熱油導出器6の別の形を示す。その熱油導出器もスリット24を備えているが、そのスリットは、図7では熱油導出器6の後端にある。堰12は前方に配置されており、2つの面28を備えている。それらの面により堰はv形を得る。油は、設置され得る伝動軸によりこの堰12を通じて払い落とされ、その油はこのようにして軸方向に移動し、傾斜パッド付き軸受をこの方向に容易に離れ得る。
【0034】
図8及び図9はそれぞれ、2つの傾斜パッド4の間にある熱油導出器6の概略側面図を示す。設置され得る伝動軸30は、概略的に傾斜パッド4の上方に示されている。各々の回転方向は矢印32により示されている。熱油搬出器本体6は、誘導器20上で移動するように設置されており、これは図5図7に示された実施形態にも該当する。さらに熱油導出器6は、図8及び図9において描画面から垂直にある軸を中心に傾けられ得る。図8では、熱油導出器6が右の方へ傾いていることがわかる。これは、反時計回りに回転する伝動軸30及びそれにより引き起こされる油流により実際に得られる。図9ではそれと反対に伝動軸30が時計回りに回転しているので、熱油搬出器は左の方へ傾いて示されている。
【0035】
図10は、図8に示されているような熱油搬出器6の概略断面図を示す。誘導器20上には熱油導出器6が配置されており、その誘導器には、熱油導出器6の内側と接触する封止リング34がある。その封止リングは、図示される実施例では誘導器20を越えてはみ出しており、熱油導出器6が傾いていない場合、好ましくは熱油導出器に対する唯一の接触箇所を形成する。それにより傾くことができる。その傾きは制限されており、熱油導出器の下縁が誘導器20と接触する位置までである。
【0036】
熱油導出器は、伝動軸30に向き合う側に互いに対して離れた2つの堰12を備えており、それらの堰の間に油噴射装置がある。熱油導出器6を、図8及び図9に示されている両方の回転方向に対して使用することができる。熱油導出器は、図10においてそれぞれ「F」で示されている異なる2つの力に曝されている。ばね要素により又は油の油圧により下方に、つまり半径方向に作用する力と、伝動軸30の回転及びそれにより引き起こされる油流により周囲方向に作用する力とである。
【符号の説明】
【0037】
2 軸受筐体
4 傾斜パッド
6 熱油導出器
8 ばね
10 中間空間
12 堰
14 油噴射装置
16 内部空間
18 油供給管
20 誘導器
22 二重矢印
24 スリット
26 穴
28 面
30 伝動軸
32 矢印
34 封止リング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】