(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-27
(54)【発明の名称】負極活性材料及びその製造方法、二次電池及び二次電池を含む装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20221220BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221220BHJP
C01B 32/205 20170101ALI20221220BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20221220BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 C
C01B32/205
C01B32/05
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534656
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 CN2020088426
(87)【国際公開番号】W WO2021217620
(87)【国際公開日】2021-11-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】王家政
(72)【発明者】
【氏名】董▲曉▼斌
(72)【発明者】
【氏名】何立兵
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA02
4G146AB01
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC11A
4G146AC22A
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4G146AD23
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4G146BC04
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
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5H050HA00
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA15
5H050HA19
(57)【要約】
負極活性材料及びその製造方法、二次電池(5)及び二次電池(5)を含む装置。前記負極活性材料は核と前記核の表面を被覆する被覆層とを含み、前記核は人造黒鉛を含み、前記被覆層は非晶質炭素を含み、前記負極活性材料の表面積平均粒径D(3、2)をAと記し、前記負極活性材料が20kNの圧力で粉圧された後の表面積平均粒径D(3、2)をBと記し、前記負極活性材料は:72%≦B/A×100%≦82%を満たす。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極活性材料であって、核と前記核の表面を被覆する被覆層とを含み、
前記核は人造黒鉛を含み、前記被覆層は非晶質炭素を含み、
前記負極活性材料の表面積平均粒径D(3、2)をAと記し、前記負極活性材料が20kNの圧力で粉圧された後の表面積平均粒径D(3、2)をBと記し、前記負極活性材料は72%≦B/A×100%≦82%を満たす、負極活性材料。
【請求項2】
前記負極活性材料は74%≦B/A×100%≦80%を満たす、請求項1に記載の負極活性材料。
【請求項3】
前記Aは、9μm≦A≦15μmであり、好ましくは、11μm≦A≦13μmである、請求項1又は2に記載の負極活性材料。
【請求項4】
前記負極活性材料の体積平均粒径D
v50は10μm≦D
v50≦16μmを満たし、好ましくは、12μm≦D
v50≦14μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の負極活性材料。
【請求項5】
前記負極活性材料の粒径分布(D
v90-D
v10)/D
v50は1.0≦(D
v90-D
v10)/D
v50≦1.35を満たし、好ましくは、1.15≦(D
v90-D
v10)/D
v50≦1.25である、請求項1~4のいずれか一項に記載の負極活性材料。
【請求項6】
前記負極活性材料の体積粒径分布D
v90は18μm≦D
v90≦26μmを満たし、好ましくは、20μm≦D
v90≦24μmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の負極活性材料。
【請求項7】
前記負極活性材料のタップ密度は0.9g/cm
3~1.15g/cm
3であり、好ましくは、0.95g/cm
3~1.05g/cm
3である、請求項1~6のいずれか一項に記載の負極活性材料。
【請求項8】
前記負極活性材料の黒鉛化度は90%~96%であり、好ましくは、92%~95%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の負極活性材料。
【請求項9】
前記負極活性材料の粉体のOI値は2.0~5.0であり、好ましくは、2.1~4.0である、請求項1~8のいずれか一項に記載の負極活性材料。
【請求項10】
前記負極活性材料のグラム容量Cは350mAh/g≦C≦356mAh/gを満たし、好ましくは、352mAh/g≦C≦354mAh/gである、請求項1~8のいずれか一項に記載の負極活性材料。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の負極活性材料を含む負極シート、を含む二次電池。
【請求項12】
請求項11に記載の二次電池を含む装置。
【請求項13】
負極活性材料の製造方法であって、
(a)コークス原料を提供し、前記コークス原料の体積平均粒径D
v50が7μm~12μmであり、前記コークス原料の揮発分含有量C
1が1%≦C
1≦12%を満たし、好ましくは、5%≦C
1≦9%である工程と、
(b)前記コークス原料を整形して分級処理を行い、粒径分布(D
v90-D
v10)/D
v50が1.0~1.55である前駆体を得る工程と、
(c)前記前駆体を造粒させ、前記造粒過程で添加された接着剤の使用量C
2が0%≦C
2≦16%を満たし、且つ前記C
1と前記C
2が10%≦C
1+C
2≦16%を満たし、好ましくは、12%≦C
1+C
2≦14%である工程と、
(d)造粒生成物を2800℃~3200℃の温度で黒鉛化処理を行い、人造黒鉛を得る工程と、
(e)有機炭素源を用いて前記人造黒鉛を被覆し、熱処理することにより、前記人造黒鉛の少なくとも一部の表面に非晶質炭素被覆層を形成し、負極活性材料を得て、前記被覆過程で添加された有機炭素源の使用量C
3と前記C
1と前記C
2との間が13%≦C
1+C
2+C
3≦18%、且つ1.5%≦C
3×残炭率≦3.5%を満たす工程と、を含み、
前記負極活性材料の表面積平均粒径D(3、2)をAと記し、前記負極活性材料が20kNの圧力で粉圧された後の表面積平均粒径D(3、2)をBと記し、前記負極活性材料が72%≦B/A×100%≦82%を満たす、負極活性材料の製造方法。
【請求項14】
前記コークス原料は、さらに、
(1)前記コークス原料は石油系非針状コークス、石油系針状コークスのうちの一種又は複数種を含み、好ましくは、前記コークス原料は石油系生コークスを含むこと、及び、
(2)前記コークス原料の粒径分布(D
v90-D
v10)/D
v50は1.2~1.7であること、
のうちの少なくとも一つを満たす、請求項13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、二次電池技術分野に属し、具体的に負極活性材料及びその製造方法、二次電池及び二次電池を含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、信頼性の高い動作性能、汚染がなく、メモリ効果がない等の特徴を有するため、広く応用されている。例えば、環境保護の問題がますます重視されるに連れて、新エネルギー自動車が日増しに普及し、動力型二次電池の需要は爆発的な成長を呈する。しかしながら、二次電池の応用範囲がますます広くなるに連れて、二次電池の性能に対しても深刻な挑戦を提供する。エネルギー密度は、二次電池の航続能力(即ち、一回の充電後の使用時間)に影響するため、二次電池技術の開発は高いエネルギー密度を前提とする必要がある。しかしながら、本発明者らは、電池のエネルギー密度が高い場合、一般的に急速充電性能とサイクル寿命が相対的に悪いことを発見した。
【0003】
したがって、如何に二次電池に高エネルギー密度、急速充電能力及びサイクル性能を同時に備えさせるかは、二次電池の研究と開発における重要な課題である。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは大量の研究により、負極活性材料を改善して高いグラム容量を有する前提で、その構造安定性及び活性イオンを迅速に輸送する能力を向上させ、それにより高いエネルギー密度、急速充電能力及びサイクル寿命を同時に兼ね備えさせることができる二次電池を得る。
【0005】
したがって、本願の第1の態様は、負極活性材料であって、核と前記核の表面を被覆する被覆層とを含み、前記核は人造黒鉛を含み、前記被覆層は非晶質炭素を含み、
前記負極活性材料の表面積平均粒径D(3、2)をAと記し、前記負極活性材料が20kNの圧力で粉圧された後の表面積平均粒径D(3、2)をBと記し、前記負極活性材料は72%≦B/A×100%≦82%を満たす、負極活性材料。
【0006】
本願の第2の態様は、本願の第1の態様に係る負極活性材料を含む負極シート、を含む、二次電池を提供する。
【0007】
本願の第3の態様は、本願の第2の態様に係る二次電池を含む装置を提供する。
【0008】
本願の第4の態様は、負極活性材料の製造方法であって、
(a)コークス原料を提供し、前記コークス原料の体積平均粒径Dv50が7μm~12μmであり、前記コークス原料の揮発分含有量C1が1%≦C1≦12%を満たす工程と、
(b)前記コークス原料を整形して分級処理を行い、粒径分布(Dv90-Dv10)/Dv50が1.0~1.55である前駆体を得る工程と、
(c)前記前駆体を造粒させ、前記造粒過程で添加された接着剤の使用量C2が0%≦C2≦16%を満たし、且つ前記C1と前記C2が10%≦C1+C2≦16%を満たし、好ましくは、12%≦C1+C2≦14%である工程と、
(d)造粒生成物に対して黒鉛化処理を行い、人造黒鉛を得る工程と、
(e)有機炭素源を用いて前記人造黒鉛を被覆し、熱処理することにより、前記人造黒鉛の少なくとも一部の表面に非晶質炭素被覆層を形成し、負極活性材料を得て、前記被覆過程で添加された有機炭素源の使用量C3と前記C1と前記C2との間が13%≦C1+C2+C3≦18%、且つ1.5%≦C3×残炭率≦3.5%を満たす工程と、を含み、
ここで、前記負極活性材料の表面積平均粒径D(3、2)をAと記し、前記負極活性材料が20kNの圧力で粉圧された後の表面積平均粒径D(3、2)をBと記し、前記負極活性材料が72%≦B/A×100%≦82%を満たす、負極活性材料の製造方法を提供する。
【0009】
従来の技術に対して、本願は少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0010】
驚くべきことに、本願に係る負極活性材料が核と前記核の表面を被覆する被覆層とを含み、前記核が人造黒鉛を含み、前記被覆層が非晶質炭素を含み、且つ負極活性材料は20kNの圧力で粉圧される前後のD(3、2)の間に特定の関係を満たすことにより、負極活性材料は、高いグラム容量を有すると同時に、活性イオンを迅速に輸送する能力、及び受圧(例えば、負極サイクル膨張力等)時の構造安定性も大幅に向上することができる。したがって、本願の負極活性材料を採用することにより二次電池が高いエネルギー密度を有する前提で、急速充電能力及びサイクル寿命も向上させることができる。本願の装置は本願に係る二次電池を含むため、少なくとも前記二次電池と同様の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下は本願の実施例に必要な図面を簡単に紹介する。明らかに、以下に説明する図面は単に本願のいくつかの実施形態である。当業者であれば、創造的な労力を要することなく、さらに図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【
図1】人造黒鉛の一つの実施形態の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【
図4】電池モジュールの一つの実施形態の模式図である。
【
図5】電池パックの一つの実施形態の模式図である。
【
図7】二次電池が電源として用いられる装置の一つの実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願の発明目的、技術案及び有益な技術的効果をより明確にするために、以下は実施例を参照して本願をさらに詳細に説明する。理解すべきことは、本明細書に記述された実施例は単に本願を説明するためであり、本願を限定するものではない。
【0013】
簡潔にするために、本明細書にはいくつかの数値範囲のみが明確に開示されている。しかしながら、任意の下限は任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、任意の下限は他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。同様に任意の上限は任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、明確に記載されていないが、範囲端点間の各点又は単一の数値はいずれも該範囲内に含まれる。したがって、各点又は単一の数値は自身の下限又は上限として任意の他の点又は単一の数値との組み合わせて若しくは他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されない範囲を形成することができる。
【0014】
本明細書の説明において、説明すべきことは、別途説明をしない限り、「以上」、「以下」はその数を含む。「一種又は複数種」のうちの「複数種」の意味は二種又は二種以上である。
【0015】
本願の上記発明の内容は、本願における各開示の実施の形態や各種の実施形態を記述することを意図するものではない。以下、本実施形態をより具体的に例示する。全体の出願における複数の箇所で、一連の実施例により指導を提供し、これらの実施例は様々な組み合わせ形式で使用することができる。各実施例において、代表的なグループとして列挙しただけであり、網羅していると解釈すべきではない。
負極活性材料
【0016】
本願の第1の態様の実施形態は負極活性材料を提供する。当該負極活性材料は核と前記核の表面を被覆する被覆層とを含み、前記核は人造黒鉛を含み、前記被覆層は非晶質炭素を含む。前記負極活性材料の表面積平均粒径D(3、2)をAと記し、前記負極活性材料が20kNの圧力で粉圧された後の表面積平均粒径D(3、2)をBと記し、前記負極活性材料は72%≦B/A×100%≦82%を満たす。
【0017】
本願に係る負極活性材料が核と前記核の表面を被覆する被覆層とを含み、前記核が人造黒鉛を含み、前記被覆層が非晶質炭素を含み、且つ負極活性材料が20kNの圧力で粉圧された前後のD(3、2)の間に特定の関係を満たすと、負極活性材料は高いグラム容量を有すると同時に、活性イオンを迅速に輸送する能力も大幅に向上し、応力を受ける時の構造安定性も向上することができる。用語「応力を受ける」は、負極活性材料が電池のサイクル充放電過程において負極の往復の収縮膨張により生成された巨大な内部応力(サイクル膨張力と略称する)等を受けることを含む。したがって、本願の負極活性材料を採用することにより、二次電池は、高いエネルギー密度を有する前提で、急速充電能力及びサイクル寿命を向上し、それにより高いエネルギー密度、急速充電性能及びサイクル性能を同時に兼ね備える。
【0018】
発明者らは研究により、人造黒鉛は多層グラファイト層(Graphene layers)がc軸方向に沿って配列される層状構造を有し、その表面が底面(Basal plane)及び端面(Edge plane)を含む。活性イオンは主に人造黒鉛の端面で挿入・脱離するため、端面/底面比が高いほど、活性イオンの急速輸送に有利である。本発明者らは驚くべきことに、負極活性材料は、20kNの圧力で粉圧された前後のD(3、2)の間に適切な関係を満たす場合、高い構造安定性を有すると同時に、高い端面/底面比を有することを発見した。したがって、当該負極活性材料は、高いグラム容量を有する前提で、長いサイクル寿命と高い活性イオン急速輸送性能を兼ね備える。それにより、それを用いた二次電池は、高いエネルギー密度を有する前提で、長いサイクル寿命と高い急速充電能力を兼ね備える。
【0019】
いくつかの実施形態において、負極活性材料は72%≦B/A×100%≦80%、74%≦B/A×100%≦82%、74.5%≦B/A×100%≦79%、75.5%≦B/A×100%≦81%、76%≦B/A×100%≦82%又は77%≦B/A×100%≦80%等を満たすことができる。
【0020】
いくつかの好ましい実施形態において、負極活性材料は74%≦B/A×100%≦80%を満たす。負極活性材料のB/A値が適切な範囲内にあれば、さらに電池に高い急速充電能力及びサイクル寿命を同時に兼ね備えさせることに役立つ。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態において、核の80%~100%の表面に非晶質炭素被覆層を被覆することができる。より好ましくは、核の90%~100%の表面に非晶質炭素被覆層を被覆することができる。
【0022】
非晶質炭素被覆層は、有機炭素源が炭化により形成されてもよい。例えば、有機炭素源は高分子重合体、例えば、石炭アスファルト、石油アスファルト、フェノール樹脂等の高分子材料から選択することができる。
【0023】
非晶質炭素の構造が無秩序であり、且つ高い層間隔を有するため、非晶質炭素で核材料を被覆することは、活性イオンを負極活性材料粒子中に迅速に拡散させることができ、それにより材料の急速充電能力を改善することができる。同時に、非晶質炭素被覆層は、さらに核材料に対して保護作用を果たすことができ、核材料が溶媒共挿入によるグラファイト層の剥離を大幅に減少させ、負極活性材料が高い構造安定性を有する。したがって、負極活性材料は高い容量発揮及びサイクル寿命を有することができる。
【0024】
本発明者らは鋭意研究により、本願の負極活性材料が上記条件を満たす上で、さらに以下の設計条件のうちの一つ又は複数を必要に応じて満足すれば、二次電池の性能をさらに改善することができることを発見した。
【0025】
いくつかの好ましい実施形態において、負極活性材料のD(3、2)(即ち、A)は、9μm≦A≦15μmを満たすことができる。例えば、9μm≦A≦14.5μm、9.5μm≦A≦14μm、10μm≦A≦14μm、10.5μm≦A≦14μm、11μm≦A≦14μm、12μm≦A≦14μm、9.5μm≦A≦13μm、10μm≦A≦13μm、10.5μm≦A≦13μm、又は11μm≦A≦13μm。より好ましくは、11μm≦A≦13μmである。
【0026】
負極活性材料のD(3、2)が適切な範囲内にあれば、活性イオン及び電子が粒子においてより短い拡散経路を有し、それにより負極活性材料の活性イオン拡散速度及び電子伝導性能を向上させるため、電池の急速充電能力を向上させることができる。適切なD(3、2)を有する負極活性材料は高いグラム容量を有し、同時にそれを採用するシートも高い圧縮密度を得ることができるため、電池のエネルギー密度を向上させることができる。また、当該負極活性材料の活性比表面積が小さいと、その表面で電解液の副反応を減少させることができるため、電池に高いサイクル性能を兼ね備えさせることができる。
【0027】
いくつかの好ましい実施形態において、負極活性材料の体積平均粒径Dv50は10μm≦Dv50≦16μmを満たすことができる。例えば、負極活性材料のDv50は≧10.5μm、≧11μm、≧11.5μm、≧12μm、又は≧12.5μmであってもよい。さらに、負極活性材料のDv50は≦15.5μm、≦15μm、≦14.5μm、≦14μm、≦13.5μm、又は≦13μmであってもよい。より好ましくは、12μm≦Dv50≦14μmである。
【0028】
負極活性材料のDv50は、高い活性イオンと電子の急速輸送性能を有すると同時に、電解液の負極への副反応を低減することができる。負極活性材料は、適切なDv50を有すると、さらに自体の粉体圧縮密度を向上させることに役立つ。それを採用するシートは、高い圧縮密度を得るため、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態において、負極活性材料は9μm≦A≦14μm及び10μm≦Dv50≦15μmを同時に満たすことができる。より好ましくは、負極活性材料は11μm≦A≦13μm及び12μm≦Dv50≦14μmを同時に満たすことができる。
【0030】
負極活性材料は、同時にA及びDv50が適切な範囲内にあると、優れた表面構造及び粒度分布を有する。これにより、当該負極活性材料は、高い電気化学的動力学性能及び高い表面安定性を有することができ、それにより電池の急速充電能力及びサイクル性能をさらに向上させることができる。また、当該負極活性材料で製造されたシートにおいて、粒子の間に緊密な接触を形成すると同時に、良好な孔隙構造を形成することもできる。それにより、シートは高い活性イオンの固相拡散性能及び液相伝導能力を有するため、電池の急速充電能力をさらに向上させる。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態において、負極活性材料の粒径分布(Dv90-Dv10)/Dv50は、1.0≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.35を満たす。例えば、負極活性材料の(Dv90-Dv10)/Dv50は、1.1、1.15、1.18、1.2、1.25又は1.3であってもよい。より好ましくは、1.15≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.25である。
【0032】
適切な粒度分布によると、負極活性材料に適量の大粒子及び小粒子が含有され、当該負極活性材料を用いて製造された負極フィルム層は高い圧縮密度を得ることができる。そのうちの材料粒子の間に大きな接触面積を有することができ、それにより負極シートが高い可逆容量を有すると同時に、負極フィルム層中の活性イオンの固相拡散性能及び電子伝導性能を向上させることができる。負極活性材料の粒度分布によると、さらに負極フィルム層にスムーズな細孔構造が形成され、特に活性イオンの液相伝導の経路が短く、抵抗が小さい。したがって、電池は、高い急速充電能力及びエネルギー密度を得ることができる。
【0033】
また、負極活性材料の粒径分布が適切な範囲内にあれば、負極フィルム層は同時に高い凝集力を有し、このように電池のサイクル膨張力を低下させることができる。且つ、負極活性材料に小粒子の数が少なく、電池内の副反応を低減することができる。したがって、電池のサイクル寿命をさらに向上させることができる。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態において、負極活性材料は10μm≦Dv50≦16μm及び1.0≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.35を同時に満たすことができる。より好ましくは、負極活性材料は12μm≦Dv50≦14μm及び1.1≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.3を同時に満たすことができる。
【0035】
これらの実施形態において、さらに、9μm≦A≦14μmである。好ましくは、11μm≦A≦13μmである。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態において、負極活性材料の体積粒径分布Dv90は、18μm≦Dv90≦26μmを満たす。より好ましくは、20μm≦Dv90≦24μmである。負極活性材料のDv90は適切な範囲内にあれば、負極活性材料中の大粒子の含有量をさらに減少させ、活性イオン及び電子の急速輸送性能を向上させ、それにより電池の急速充電能力をさらに向上させることができる。また、当該負極活性材料中の大粒子が少ないと、負極活性材料をフィルム層中に均一に分布させることに役立ち、フィルム層の活性イオン及び電子輸送性能をさらに向上させ、且つ電池の分極を減少させることができるため、電池が高い急速充電能力及びサイクル性能を得る。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態において、負極活性材料のタップ密度は0.9g/cm3~1.15g/cm3であってもよく、より好ましくは、0.95g/cm3~1.05g/cm3である。負極活性材料のタップ密度が適切な範囲内にあれば、負極活性材料が高い活性イオンと電子の急速輸送能力を有することができる。同時に、当該負極活性材料の二次粒子化程度が小さいと、さらに高いグラム容量及び低い副反応を有することができる。したがって、適切なタップ密度であれば、電池の急速充電能力、エネルギー密度及びサイクル寿命を改善することができる。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態において、負極活性材料は、10μm≦Dv50≦15μm及びタップ密度が0.9g/cm3~1.15g/cm3であってもよいことを同時に満たすことができる。好ましくは、負極活性材料は12μm≦Dv50≦14μm及び0.95g/cm3~1.05g/cm3を同時に満たすことができる。
【0039】
負極活性材料は、同時にDv50及びタップ密度が適切な範囲内にあることを満たすと、高いバルク構造の安定性及び表面安定性を有することができ、同時に高い端面/底面比及び短い活性イオン及び電子の輸送経路を有する。したがって、当該負極活性材料を採用することにより、電池が高いサイクル性能を有すると同時に、電池の急速充電能力をさらに向上させることができる。
【0040】
さらに、1.0≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.35である。好ましくは、1.15≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.25である。
【0041】
さらに、9μm≦A≦14μmである。好ましくは、11μm≦A≦13μmである。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態において、負極活性材料の黒鉛化度は90%~96%であってもよく、より好ましくは92%~95%である。負極活性材料の黒鉛化度が高いほど、その粉末抵抗率が小さい。負極活性材料は、黒鉛化度が適切な範囲内にあれば、小さい粉末抵抗率を有すると同時に、大きな層間隔を有し、活性イオンの粒子内部の固相拡散抵抗を低減するため、その急速充電能力を向上させることができる。また、適切な黒鉛化度を有することにより、電池のサイクル過程において人造黒鉛に溶媒共挿入が発生しにくく、黒鉛層が剥離しにくいため、負極活性材料の構造安定性を向上させる。
【0043】
いくつかの好ましい実施形態において、負極活性材料の粉体のOI値は2.0~5.0であってもよく、より好ましくは2.1~4.0であり、特に好ましくは2.5~3.5である。
【0044】
負極活性材料は、粉体のOI値が適切な範囲内にあれば、高い等方性を有することができ、これにより活性イオンが異なる方向に沿って挿入・脱離することができ、イオン移動経路を短縮し、イオン拡散抵抗を低減し、それにより電池の急速充電能力を向上させる。同時に、イオンの挿入による負極活性材料の膨張エネルギーが各方向に分散され、それによりシートと電池のサイクル膨張を低減し、サイクル寿命を向上させる。
【0045】
いくつかの好ましい実施形態において、負極活性材料のグラム容量Cは、350mAh/g≦C≦356mAh/gを満たし、より好ましくは352mAh/g≦C≦354mAh/gである。当該負極活性材料は、高いグラム容量を有すると同時に、活性イオンのその中の移動経路を減少させ、活性イオンの固相拡散速度を向上させることができ、それにより電池が高いエネルギー密度及び急速充電能力を有する。また、当該負極活性材料は高い構造安定性を有することができ、それは応力を受ける過程において解体しにくく、且つシート中の粒子の間に高い凝集力を有し、それにより電池が高いサイクル寿命を有する。
【0046】
本願において、負極活性材料の表面積平均粒径D(3、2)は本技術分野の公知の意味であり、本技術分野の既知の方法で測定することができる。例えば標準GB/T 19077.1-2016を参照し、レーザー回折粒度分布測定器(例えば、Mastersizer 3000)を使用して測定することができる。本願において、具体的に以下の方法で測定することができる。
【0047】
(1)適量の本願の負極活性材料を取り、2つの測定試料試料(それぞれ測定試料試料1及び測定試料2と記す)に均等に配分する。
【0048】
(2)上記記載の測定基準及び器械を用いて測定試料1の表面積平均粒径D(3、2)を測定し、Aと記す。
【0049】
(3)測定試料2を20kNの圧力で粉体締固め(粉圧と略称する)処理を行い、次に上記標準及び器械に応じて粉圧処理後の測定試料2の表面積平均粒径D(3、2)を測定し、Bと記す。
【0050】
(4)計算することで、B/A×100%の数値を得る。
【0051】
本願において、負極活性材料のDv10、Dv50、Dv90はいずれも本技術分野の公知の意味であり、本技術分野の既知の方法で測定することができる。例えば、標準GB/T 19077.1-2016を参照し、レーザ粒度分析計(例えば、Malvern Mastersizer 3000)を使用して測定することができる。
【0052】
ここで、Dv10、Dv50、Dv90の物理的定義は以下のとおりである。
【0053】
Dv10は前記負極活性材料の累積体積分布パーセントが10%に達する時に対応する粒径である。
【0054】
Dv50は前記負極活性材料の累積体積分布パーセントが50%に達する時に対応する粒径である。
【0055】
Dv90は前記負極活性材料の累積体積分布パーセントが90%に達する時に対応する粒径である。
【0056】
負極活性材料のタップ密度は本技術分野の公知の意味であり、本技術分野の既知の方法で測定することができる。例えば、標準GB/T 5162-2006を参照し、粉体タップ密度測定計を用いて測定することができる。例えば、北京鋼鉄研究総院のFZS4-4B型タップ密度計を採用し、測定のパラメータは以下のとおりである。振動周波数は250±15回/分間であり、振幅は3±0.2mmであり、振動回数は5000回であり、メスシリンダーは25mLである。
【0057】
負極活性材料の黒鉛化度は本技術分野の公知の意味であり、本技術分野の既知の方法で測定することができる。例えば、黒鉛化度はX線回折計(例えば、Bruker D8 Discover)を用いて測定することができ、測定はJIS K 0131-1996、JB/T 4220-2011を参照し、d002の大きさを測定する。次に、式G=(0.344-d002)/(0.344-0.3354)×100%に基づいて計算して黒鉛化度を得る。ここで、d002はナノメートル(nm)で表される黒鉛の結晶構造における層間隔である。X線回折分析測定において陽極ターゲットとして銅ターゲットを採用することができ、CuKα線を放射源とし、放射線波長はλ=1.5418Åであり、走査2θ角範囲は20°~80°であり、走査速度は4°/minである。
【0058】
負極活性材料の粉体のOI値は本技術分野の公知の意味であり、本技術分野の既知の方法で測定することができる。負極活性材料の粉体のOI値=I004/I110と定義する。ここで、負極活性材料について、X線回折分析において、黒鉛に帰属される004結晶面の回折ピークのピーク面積がI004であり、黒鉛に帰属される110結晶面の回折ピークのピーク面積がI110である。X線回折分析は、標準JIS K 0131-1996を参照してX線回折装置(例えば、Bruker D8 Discover型X線回折計)を用いて測定することができる。X線回折分析測定において陽極ターゲットとして銅ターゲットを採用することができ、CuKα線を放射源とし、放射線波長はλ=1.5418Åであり、走査2θ角範囲は20°~80°であり、走査速度は4°/minである。
【0059】
人造黒鉛の004結晶面に対応する2θ角は53.5°~55.5°(例えば、54.5°)。人造黒鉛の110結晶面に対応する2θ角は76.5°~78.5°(例えば、77.4°)である。
【0060】
次に、本願の実施例に係る負極活性材料の製造方法を説明し、当該製造方法により上記いずれかの負極活性材料を得ることができる。
【0061】
S10 コークス原料を提供し、前記コークス原料の体積平均粒径Dv50は7μm~12μmであり、前記コークス原料の揮発分含有量C1は1%≦C1≦12%を満たす。
【0062】
S20 前記コークス原料を整形して分級処理を行い、粒径分布(Dv90-Dv10)/Dv50が1.0~1.55の前駆体を得る。
【0063】
S30 前記前駆体を造粒させ、前記造粒過程で添加された接着剤の使用量C2は0%≦C2≦16%を満たし、且つ前記C1と前記C2は10%≦C1+C2≦16%を満たし、好ましくは12%≦C1+C2≦14%である。
【0064】
S40 造粒生成物に対して黒鉛化処理を行い、人造黒鉛を得る。
【0065】
S50 有機炭素源を用いて前記人造黒鉛を被覆し、熱処理することにより、前記人造黒鉛の少なくとも一部の表面に非晶質炭素被覆層を形成し、負極活性材料を得て、前記被覆過程で添加された有機炭素源の使用量C3と前記C1と前記C2との間は13%≦C1+C2+C3≦18%、且つ1.5%≦C3×残炭率≦3.5%を満たす。
【0066】
上記製造方法において、工程S10において、前記コークス原料を直接購入して取得するか、又はコークス材料を破砕して取得することができる。いくつかの実施形態において、コークス材料を破砕処理してコークス原料を得る。破砕した後に得られたコークス原料の形態は、好ましくはブロック状、球状及び類球状のうちの一種又は複数種を含む。そうすると、コークス原料は高い端面/底面比を得ることができ、それにより負極活性材料が高い端面/底面比を有することができる。
【0067】
破砕により得られたコークス原料のDv50は7μm~12μmであり、好ましくは、破砕した後に得られたコークス原料のDv50は7μm~10μmである。コークス原料のDv50は適切な範囲内にあれば、後の造粒工程を改善することができ、得られた負極活性材料が適切な二次粒子程度及びDv50を有する。特に、当該コークス原料のDv50により、コークス原料は高い端面/底面比を有することができる。
【0068】
さらに、前記コークス原料の粒径分布(Dv90-Dv10)/Dv50は、好ましくは1.2~1.7であり、より好ましくは1.2~1.6である。コークス原料はさらに適切な粒径分布を有し、その端面/底面比をさらに最適化することができる。また、コークス原料の粒径分布は適切な範囲内にあれば、後の整形及び分級生成物の粒径分布を適切な範囲内に分布させ、それにより得られた負極活性材料が適切な二次粒子化程度を有すると同時に、さらに負極活性材料の(Dv90-Dv10)/Dv50を前記範囲内にすることに役立つ。
【0069】
工程S10において、コークス原料の揮発分含有量C1は1%≦C1≦12%を満たす。例えば、コークス原料の揮発分含有量C1は≧1%、≧3%、≧5%、≧6%、≧7%、又は≧8%であってもよい。さらに、≦12%、≦11%、≦10%、又は≦9%であってもよい。コークス原料の揮発分含有量が適切であれば、製造された人造黒鉛は高い構造強度を有することができ、それにより負極活性材料のB/Aを前述の範囲内にすることに役立つ。好ましくは、5%≦C1≦9%である。
【0070】
コークス原料の揮発分含有量は本技術分野の既知の方法で測定することができる。例えば、SH/T 0026-1990を参照して測定する。
【0071】
いくつかの実施形態において、コークス原料中の硫黄の重量パーセントは≦4%であってもよく、例えば≦1%又は≦0.5%である。
【0072】
いくつかの実施形態において、前記コークス原料は石油系非針状コークス、石油系針状コークス、石炭系非針状コークス及び石炭系針状コークスのうちの一種又は複数種を含む。
【0073】
好ましくは、前記コークス原料は石油系非針状コークス(例えば、▲カ▼焼石油コークス、石油系生コークス等)及び石油系針状コークスから選択される一種又は複数種である。より好ましくは、前記コークス原料は石油系生コークスを含む。適切なコークス原料を採用して製造された負極活性材料は、高い構造安定性及び端面/底面比を兼ね備えることができ、B/Aが前述の範囲内であることに役立つ。
【0074】
本技術分野の既知の設備及び方法、例えばジェットミル、機械研磨機又はローラープレス機を利用してコークス原料を破砕することができる。破砕工程は常に多くの過小粒子を生成し、過大粒子が存在する場合もあり、したがって破砕後に需要に応じて分級処理を行うことにより、破砕後の粉体中の過小粒子及び過大粒子を除去することができる。分級処理後に良好な粒径分布を有するコークス原料を得ることができ、それにより後の整形及び造粒工程に役立つ。分級処理は本技術分野の既知の設備及び方法、例えば分級篩、重力分級機、遠心分級機等を用いて行うことができる。
【0075】
工程S20において、整形することによりコークス原料粒子のエッジ角を研磨する。整形の程度が大きいほど、粒子は球形に近い。そうすると、端面/底面比を増加させることができる。整形処理はさらに後の造粒工程に役立ち、得られた負極活性材料中の二次粒子が高い構造安定性を有する。
【0076】
工程S20において、本技術分野の既知の設備及び方法でコークス原料について整形処理を行うことができ、例えば整形機又は他の整形設備である。
【0077】
コークス原料について整形処理を行った後、さらにコークス原料を分級処理を行い、粒径分布(Dv90-Dv10)/Dv50が1.0~1.55であり、好ましくは1.1~1.3であり、例えば1.15、1.20、1.23、1.25又は1.28である。分級処理により前駆体の粒径分布を適切な範囲内に調整することにより、得られた負極活性材料の二次粒子化程度及び粒径を必要な範囲内に分布させる。
【0078】
工程S20において本技術分野の既知の設備及び方法を用いて分級処理を行うことができ、例えば分級篩、重力分級機、遠心分級機等である。
【0079】
工程S30において、工程S20で処理された前駆体を造粒することにより、独立して分散された一次粒子を凝集させて二次粒子を形成する。これにより、人造黒鉛の端面/底面比及びその等方性をいずれも向上させることができる。同時に、二次粒子化程度(即ち二次粒子の一次粒子の粒径と当該二次粒子の粒径との比)を調整することにより、人造黒鉛が同時に高い構造安定性を有することができる。前記造粒過程で添加された接着剤の使用量C2は0%≦C2≦16%を満たし、さらに、2%≦C2≦10%である。また、工程S30の造粒過程で添加された接着剤の使用量C2とコークス原料の揮発分含有量C1との間は10%≦C1+C2≦16%を満たす。好ましくは、12%≦C1+C2≦14%である。前記接着剤の使用量C2は前記造粒過程で添加された接着剤の重量がコークス原料の合計重量に対する百分率である。
【0080】
工程S30の造粒過程で添加された接着剤の使用量C2及びコークス原料の揮発分含有量C1を所定の範囲内に制御する場合、負極活性材料粒子の造粒度を改善することができ、それによりA及びBの値を前述の範囲内にすることに役立つ。また、そうすると、負極活性材料のグラム容量をさらに向上させることができ、且つ負極活性材料粒子全体の構造強度を向上させることに役立つ。
【0081】
いくつかの実施形態において、工程S30において、前記接着剤は好ましくはアスファルトから選択される。
【0082】
工程S30において、本技術分野の既知の設備を採用して造粒を行うことができ、例えば造粒機である。造粒機は一般的に反応釜と反応釜を温度制御するモジュールとを含む。造粒過程における撹拌回転速度、昇温速度、造粒温度、降温速度等を調整して造粒度及び粒子の構造強度を調整することができ、それにより得られた負極活性材料が高いグラム容量を有すると同時に、高い構造安定性及び高い端面/底面比を有する。
【0083】
さらに、上記プロセス条件を調整することにより造粒して得られた生成物の体積平均粒径Dv50を必要な範囲内にすることができ、より好ましくは造粒して得られた生成物のDv10、Dv50及びDv90をいずれも必要な範囲内にある。
【0084】
工程S10及び/又は工程S30の粒度を調整することにより、最終的に製造された負極活性材料のDv50、Dv90及び/又は(Dv90-Dv10)/Dv50を必要な範囲内にすることができる。
【0085】
工程S40において、工程S30で得られた造粒生成物を2800℃~3200℃の温度で黒鉛化処理を行うことにより、適切な黒鉛化度を有する人造黒鉛を得る。いくつかの実施形態において、工程S40で黒鉛化処理を行う温度は好ましくは2900℃~3100℃である。黒鉛化度を所定の範囲内に制御する場合、人造黒鉛は高いグラム容量を有し、同時にリチウム挿入過程での格子膨張が低い。
【0086】
工程S40において、本技術分野の既知の設備を採用して黒鉛化を行うことができ、例えば黒鉛化炉であり、さらに例えばアチソン黒鉛化炉である。黒鉛化処理が終了した後、篩分けにより造粒生成物が高温での黒鉛化過程において凝集して形成された少量の過大粒子を除去することができる。そうすると、過大粒子が材料の加工性能(例えば、スラリーの安定性、塗布性能等)に影響を与えることを防止することができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、工程S50は、工程S40で得られた人造黒鉛を有機炭素源と混合し、有機炭素源を人造黒鉛の少なくとも一部の表面に被覆させる。次に、700℃~1800℃の温度で加熱処理し、有機炭素源を炭化させ、人造黒鉛の少なくとも一部の表面に非晶質炭素被覆層を形成し、負極活性材料を得る。好ましくは、加熱処理の温度は1000℃~1300℃である。
【0088】
被覆過程で添加された有機炭素源の使用量C3とC1とC2との間は13%≦C1+C2+C3≦18%を満たす。且つ、有機炭素源は1.5%≦C3×残炭率≦3.5%を満たす。有機炭素源の使用量C3は前記被覆過程で添加された有機炭素源の重量が人造黒鉛の合計重量に対する百分率である。残炭率は有機炭素源の残炭率であり、LP-5731石炭アスファルトコークス化値測定機を用いて測定することができる。測定は、GB/T268『石油製品残炭測定法』、GB/T8727-2008『石炭アスファルト系製品のコークス化値の測定方法』を参照することができる。
【0089】
被覆過程において有機炭素源の添加量が上記関係を満たすことにより、負極活性材料粒子の造粒度を改善することができ、それによりA及びBの値を前述の範囲内にすることに役立つ。また、有機炭素源の使用量が前記範囲内にあれば、被覆層が負極活性材料に適切な割合を有し、負極活性材料に高い動力学性能と長いサイクル寿命を兼ね備えさせることができる。好ましくは、有機炭素源は1.5%≦C3×残炭率≦2.5%を満たす。より好ましくは、13%≦C1+C2+C3≦17%、且つ1.8%≦C3×残炭率≦2.4%である。
【0090】
選択的に、2%≦C3≦8%、例えばC3が3%、4%、5%、6%又は7%である。
【0091】
いくつかの実施形態において、有機炭素源は石炭アスファルト、石油アスファルト、フェノール樹脂、ヤシ殻等から選択される一種又は複数種かであってもよく、好ましくは石炭アスファルトである。
二次電池
【0092】
本願の第2の態様の実施形態は、二次電池を提供する。前記二次電池は、本願の第1の態様に係る負極活性材料を含む負極シートを含む。
【0093】
本願の二次電池は、本願の第1の態様の負極活性材料を採用するため、高いエネルギー密度、サイクル寿命及び急速充放電能力を同時に兼ね備えさせることができる。
【0094】
二次電池は、さらに、正極シートと、電解質とを含む。電池の充放電過程において、活性イオンは正極シートと負極シートとの間に往復して挿入・脱離する。電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。
[負極シート]
【0095】
負極シートは負極集電体と負極集電体の少なくとも一つの表面に設置された負極フィルムシートを含み、負極フィルムシートは本願の第1の態様に係る負極活性材料を含む。
【0096】
本願において、負極集電体はその厚さ方向に対向する二つの表面を有し、負極フィルムシートは負極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一つ又は両方に積層される。
【0097】
負極集電体は良好な導電性及び機械的強度を有する材質を採用し、導電及び集電の作用を果たすことができる。いくつかの実施形態において、負極集電体は銅箔を採用することができる。
【0098】
本願において、負極フィルムシートはさらに接着剤を含んでもよい。例として、接着剤はポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)から選択される一種又は複数種であってもよい。
【0099】
本願において、負極フィルムシートはさらに増粘剤を含んでもよい。一例として、増粘剤はカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)であってもよい。
【0100】
本願において、負極フィルムシートは導電剤をさらに含むことができる。例として、負極フィルムシートに用いられる導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーから選択される一種又は複数種であってもよい。
【0101】
いくつかの実施形態において、負極フィルムシートはさらに他の負極活性材料を含むことができる。他の負極活性材料は他の黒鉛材料(例えば、本願の第1の態様と異なる人造黒鉛、天然黒鉛等)、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料及びスズ系材料から選択される一種又は複数種であってもよい。
【0102】
本技術分野の既知の方法に従って負極シートを製造することができる。例として、負極活性材料、接着剤、及び選択可能な増粘剤及び導電剤を溶剤(脱イオン水であってもよい)に分散させ、均一な負極スラリーを形成する。負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等の工程を経た後、負極シートを得る。
[正極シート]
【0103】
本願において、正極シートは正極集電体と正極集電体の少なくとも一つの表面に設置された正極フィルムシートを含む。例として、正極集電体はその自体の厚さ方向に対向する二つの表面を有し、正極フィルムシートは正極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一つ又は両方に積層される。
【0104】
本願において、正極集電体は良好な導電性及び機械的強度を有する材質を採用することができる。いくつかの好ましい実施形態において、正極集電体はアルミニウム箔を採用することができる。
【0105】
本願において、正極フィルムシートは正極活性材料を含む。本願は正極活性材料の具体的な種類を具体的に制限せず、本技術分野の既知の二次電池正極に用いることができる材料を採用することができ、当業者であれば実際の需要に応じて選択することができる。
【0106】
いくつかの実施形態において、二次電池はリチウムイオン二次電池であってもよい。正極活性材料はリチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその各自の改質化合物のうちの一種又は複数種を含むことができる。リチウム遷移金属酸化物の例は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含むが、これらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含むがこれらに限定されない。本願はこれらの材料に限定されず、二次電池正極活性材料として用いられる従来公知の他の材料を使用することができる。
【0107】
いくつかの好ましい実施形態において、電池のエネルギー密度をさらに向上させるために、正極活性材料は式1に示されるリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの一種又は複数種を含むことができる。
【0108】
【0109】
前記式1において、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、1≦e≦2、0≦f≦1、MはMn、Al、Zr、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBから選択される一種又は複数種であり、AはN、F、S及びClから選択される一種又は複数種であってもよい。
【0110】
本願において、上記各材料の改質化合物は材料にドープ改質及び/又は表面被覆改質を行うことができる。
【0111】
本願において、正極フィルムシートにはさらに接着剤が含まれてもよい。接着剤の種類が具体的に制限されず、当業者であれば実際の需要に応じて選択することができる。例として、正極フィルムシートに用いられる接着剤はポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの一種又は複数種を含むことができる。
【0112】
本願において、正極フィルムシートには導電剤がさらに含まれてもよい。導電剤の種類が具体的に制限されず、当業者であれば実際の需要に応じて選択することができる。例として、正極フィルムシートに用いられる導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種又は複数種を含むことができる。
【0113】
本技術分野の既知の方法に従って正極シートを製造することができる。例として、正極活性材料、導電剤及び接着剤を溶媒(例えば、N-メチルピロリドン、NMPと略称する)に分散させ、均一な正極スラリーを形成する。正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等の工程を経た後、正極シートを得る。
[電解質]
【0114】
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。本願は、電解質の種類を具体的に制限せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は固体電解質及び液体電解質(即ち電解液)から選択される少なくとも一種であってもよい。
【0115】
いくつかの実施形態において、前記電解質は電解液を採用する。前記電解液は、電解質塩及び溶媒を含む。
【0116】
いくつかの実施形態において、電解質塩はLiPF6(六フッ化リン酸リチウム)、LiBF4(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO4(過塩素酸リチウム)、LiAsF6(六フッ化ヒ酸リチウム)、LiFSI(リチウムビスフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート)、LiBOB(リチウムビスオキサレートボラート)、LiPO2F2(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロビス(オキサレート)ホスフェート)及びLiTFOP(リチウムテトラフルオロオキサラートホスフェート)から選択される一種又は複数種であってもよい。
【0117】
いくつかの実施形態において、溶媒はエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1、4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルケトン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)から選択される一種又は複数種であってもよい。
【0118】
いくつかの実施形態において、前記電解液は添加剤をさらに含むことができる。例えば添加剤は負極成膜添加剤を含んでもよく、正極成膜添加剤を含んでもよく、さらに電池のある性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤等を含むことができる。
[セパレータ]
【0119】
電解液を用いる二次電池、及び固体電解質を採用するいくつかの二次電池において、さらにセパレータが含まれる。セパレータは正極シートと負極シートとの間に設置され、隔離の役割を果たす。本願は、セパレータの種類を特に制限せず、任意の公知の良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する多孔質構造セパレータを選択することができる。いくつかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの一種又は複数種を含むことができる。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく異なってもよい。
【0120】
いくつかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは巻回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリを製造することができる。
【0121】
いくつかの実施形態において、二次電池は外装を含むことができる。当該外装は、上記電極アセンブリ及び電解質を封止するために用いることができる。
【0122】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装はハードケースであってもよく、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼ケース等である。二次電池の外装はソフトパッケージであってもよく、例えばバッグ式ソフトパッケージである。ソフトパッケージの材質はプラスチックであってもよく、例えばポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のうちの一種又は複数種である。
【0123】
本願の二次電池の形状は特に限定されず、それは円柱形、方形又は他の任意の形状であってもよい。
図2は、一例としての方形構造の二次電池5である。
【0124】
いくつかの実施形態において、
図3を参照し、外装はケース51及びカバープレート53を含むことができる。ここで、ケース51は底板と底板に接続された側板を含み、底板と側板の嵌合で収容室を形成する。ケース51は収容室に連通する開口を有し、カバープレート53は前記開口にカバーすることができる。それにより前記収容室を閉鎖する。
【0125】
電極アセンブリ52は、前記収容室に封止されている。電解質は電解液を採用することができ、電解液は電極アセンブリ52に浸潤する。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は一つ又は複数であってもよく、必要に応じて調整することができる。
【0126】
いくつかの実施形態において、二次電池は電池モジュールに組み立てることができる。電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は電池モジュールの応用及び容量に応じて調整することができる。
【0127】
図4は、一例としての電池モジュール4である。
図4を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は電池モジュール4の長さ方向に沿って順に配列されてもよい。もちろん、他の任意の方式で配列することができる。この複数の二次電池5は、さらに締結具によって固定されていてもよい。
【0128】
選択的に、電池モジュール4はさらに収容空間を有するハウジングを含み、複数の二次電池5は当該収容空間に収容される。
【0129】
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールはさらに電池パックに組み立てることができる。電池パックに含まれる電池モジュールの数は電池パックの応用及び容量に応じて調整することができる。
【0130】
図5及び
図6は、一例としての電池パック1である。
図5及び
図6を参照すると、電池パック1に電池ボックスと電池ボックスに設置される複数の電池モジュール4を含むことができる。電池ボックスは上部筐体2及び下部筐体3を含みむ。上部筐体2は下部筐体3にカバーして設けられ、そして電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、電池ボックス内に任意に配置されることができる。
装置
【0131】
本願の第2の態様は本願の第1の態様の二次電池を含む装置を提供する。前記二次電池は前記装置の電源として用いられてもよく、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記装置はモバイル装置(例えば、携帯電話、ノートパソコン等)、電動車両(例えば、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電気トラック等)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等であってもよいがこれらに限定されない。
【0132】
前記装置はその使用需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0133】
図7は、一例としての装置である。当該装置は純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。当該装置の二次電池への高電力及び高エネルギー密度の需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0134】
他の例としての装置は携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコン等であってもよい。当該装置は一般的に薄型化が要求され、二次電池を電源として採用することができる。
実施例
【0135】
以下の実施例は本願の開示する内容をより具体的に説明し、これらの実施例は単に説明を説明するために用いられ、本願の開示する内容の範囲内で様々な修正及び変更を行うことは当業者にとって自明である。特に断らない限り、以下の実施例に報告された全ての部、百分率、及び比はいずれも重量に基づいて計算するものである。また、実施例で使用された全ての試薬を購入して取得するか又は従来の方法に従って合成して取得することができ、且つさらに処理する必要がなくて直接使用することができる。また、実施例で使用された装置はいずれも購入して取得することができる。
実施例1
負極活性材料の作製
(1)原料の破砕
【0136】
機械研磨機又はローラープレス機を用いて▲カ▼焼石油コークスを破砕する。当該コークス原料における揮発分含有量は1重量%であり、硫黄含有量は0.5重量%である。破砕した後に分級処理を行うことにより、得られたコークス原料の粒径分布を調整する。前記コークス原料のDv50=8μm、(Dv90-Dv10)/Dv50=1.61。
(2)整形及び分級
【0137】
整形機を用いて工程(1)で得られたコークス原料を整形し、その後に分級処理を行い、粒径分布(Dv90-Dv10)/Dv50が1.51の前駆体を得る。
(3)造粒
【0138】
工程(2)で得られた前駆体と接着剤を混合し、造粒機を用いて前駆体を造粒する。ここで、造粒過程で添加された接着剤の使用量はC2=10重量%であり、且つC1+C2=11重量%である。
(4)黒鉛化
【0139】
工程(3)で得られた造粒生成物を黒鉛化炉に添加し、3000℃で黒鉛化処理を行い、人造黒鉛を得る。
(5)被覆
【0140】
工程(4)で得られた人造黒鉛を有機炭素源である石炭アスファルトと混合し、1050℃で熱処理し、負極活性材料を得る。ここで、被覆過程に添加された有機炭素源の使用量C3とC1とC2との間はC1+C2+C3=14重量%を満たし、且つC3×残炭率=2%である。
負極シートの作製
【0141】
上記製造された負極活性材料、導電剤カーボンブラック(Super P)、接着剤スチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を96.4:1:1.2:1.4の質量比で適量の脱イオン水に十分に撹拌して混合し、均一な負極スラリーを形成する。負極スラリーを負極集電体である銅箔の表面に塗布し、乾燥、冷間プレスを経て、負極シートを得る。前記負極シートの圧縮密度は1.65g/cm3であり、面密度は11mg/cm2である。
正極シートの作製
【0142】
正極活性材料LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523)、導電剤カーボンブラック(Super P)、接着剤ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を96:2:2の重量比で適量のN-メチルピロリドン(NMP)に十分に撹拌して混合し、均一な正極スラリーを形成する。正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔の表面に塗布し、乾燥、冷間プレスを経て、正極シートを得る。前記正極シートの圧縮密度は3.45g/cm3であり、面密度は19mg/cm2である。
電解液の作製
【0143】
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を1:1:1の体積比で混合し、その後にLiPF6を上記溶液に均一に溶解させて電解液を得る。ここで、LiPF6の濃度は1mol/Lである。
セパレータ
【0144】
ポリエチレンフィルムを採用する。
二次電池の作製
【0145】
正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層し、巻回した後に電極アセンブリを得る。電極アセンブリを外装に装入し、上記電解液を添加し、封止、静置、化成、エージング等の工程を経て、二次電池を得る。
実施例2~18及び比較例1~2
【0146】
実施例1と異なるのは、負極シートの製造プロセスにおける関連パラメータを表1~表6に示すように調整し、対応する二次電池を得る。
測定内容
(1)電池のサイクル性能の測定
【0147】
25℃で、実施例及び比較例で製造されたリチウムイオン二次電池を1C倍率で充電し、1C倍率で放電する。電池の放電容量が初期放電容量の80%未満になるまで、満充電放電サイクル測定を行い、リチウムイオン二次電池のサイクル回数を記録する。
(2)電池の急速充電性能の測定
【0148】
25℃で、実施例及び比較例で製造された電池を30minで80%SOC(State of Charge、荷電状態)まで充電し、0.33Cで100%SOCまで満充電し、1Cで満放電する。10回繰り返した後、さらに電池を30minで80%SOCまで充電し、0.33Cで100%SOCまで満充電し、その後に負極シートを解体し、且つ負極シート表面のリチウム析出状況を観察する。負極表面にリチウムが析出しないと、80%SOCまで充電する時間を1minの勾配で漸減して再び測定し、負極表面がリチウムを析出するまで測定を停止した。この時の80%SOCまで充電する時間(min)+1minは電池の最大充電能力である。
【0149】
【0150】
【0151】
実施例1~8と比較例1~2の比較結果から分かるように、本願に係る負極活性材料が核と前記核の少なくとも一部の表面に被覆された非晶質炭素被覆層とを含み、前記核が人造黒鉛を含み、且つ負極活性材料が20kNの圧力で粉圧の前後のD(3、2)の間に特定の関係を満たすことにより、負極活性材料は高いグラム容量を有すると同時に、負極活性材料が活性イオンを迅速に輸送する能力、及び応力を受ける時の構造安定性を大幅に向上させることができる。それにより、それを用いた二次電池は、高いエネルギー密度を有する前提で、急速充電能力及びサイクル寿命を向上する。したがって、二次電池は、高いエネルギー密度、急速充電性能及びサイクル性能を同時に兼ね備えることができる。
【0152】
比較例1の負極活性材料のB/A値が高く、材料の動力学性能が低く、急速充電を実現することができない。比較例2の負極活性材料のB/A値が低く、材料の電池サイクル過程での安定性が低く、電池のサイクル性能を低下させる。
【0153】
【0154】
表3においてコークス原料はいずれも石油系針状コークスである。
【0155】
【0156】
実施例9~13の結果から分かるように、負極活性材料の粒径分布を適切な範囲内に分布させると、電池が高いエネルギー密度、急速充電性能及びサイクル性能を同時に兼ね備えることに役立つ。
【0157】
【0158】
【0159】
実施例14~18の結果から分かるように、負極活性材料の粒径を適切な範囲内にすれば、電池が高いエネルギー密度、急速充電性能及びサイクル性能を同時に兼ね備えることに役立つ。
【0160】
以上の説明は、本願の具体的な実施形態だけであり、本願の保護範囲はこれに限定されるものではない。当業者であれば、本願に開示された技術的範囲内に、様々な等価な修正又は置換を容易に想到でき、これらの修正又は置換はいずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本願の保護範囲は請求の範囲の保護範囲を基準とすべきである。
【国際調査報告】