(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】バイオマーカー型治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/444 20060101AFI20221221BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221221BHJP
C07D 495/04 20060101ALI20221221BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20221221BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20221221BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221221BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20221221BHJP
【FI】
A61K31/444
A61P35/00 ZNA
C07D495/04 105A
A61K31/496
A61K31/5377
A61P43/00 111
C12N15/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020560797
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(85)【翻訳文提出日】2021-02-02
(86)【国際出願番号】 KR2019011570
(87)【国際公開番号】W WO2021045279
(87)【国際公開日】2021-03-11
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】320001857
【氏名又は名称】ウェルマーカー・バイオ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Wellmarker Bio CO., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ホン・スンウ
(72)【発明者】
【氏名】ムン・ジェヒ
(72)【発明者】
【氏名】シン・ジェシク
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】パク・ユンソン
(72)【発明者】
【氏名】イ・ミンギ
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ジュンイェ
(72)【発明者】
【氏名】イ・ソヒ
(72)【発明者】
【氏名】チェ・スンジン
【テーマコード(参考)】
4C071
4C086
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC01
4C071CC21
4C071DD15
4C071EE13
4C071FF06
4C071GG04
4C071GG05
4C071HH05
4C071JJ01
4C071JJ04
4C071JJ05
4C071JJ08
4C071LL01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB26
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、プロテインキナーゼ阻害剤に対して耐性のある患者を治療するための抗癌剤であって、チエノピリジン誘導体化合物またはその薬学的に許容される塩を活性成分として含む抗癌剤、を提供する。ここで、患者は、活性RONを保有する患者であり得る。さらに、患者は、正常なKRASを保有する患者であり得る。さらに、抗癌剤は、EGFR阻害剤に対して耐性のある患者に適用され得る。特に、抗癌剤は、治療剤セツキシマブに対して耐性のある患者を治療するために有用に使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1:
【化1】
[式中、
R
Aは、C
1-10アルキル、フェニル、またはベンジルであり、ここで、R
Aは、任意に、ハロゲンおよびC
1-10アルコキシから選択される1つまたは複数の置換基を有していてもよく;
Xは、-C(-R
B’)=、または-N=であり;
R
BおよびR
B’は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、C
1-10アルキル、またはC
1-10アルコキシであり;
R
Cは、H、ハロゲン、またはC
1-10アルキルであり;
Lは、単結合、またはC
1-6アルキレンであり;
Rは、NおよびSから選択される1つまたは2つのヘテロ原子を有する、5~8員のヘテロ環であり;
R
Dは、H、C
1-10アルキル、-(CH
2)
nY-R
G、または-CH
2-NR
ER
Fであり;
R
EおよびR
Fは、それぞれ独立して、H、C
1-10アルキル、または-(CH
2)
nY-R
Gであるか、あるいは、R
EおよびR
Fが互いに繋がって、それらが結合するN原子と一緒になって4~10員のヘテロ環を形成し;
ここで、nは、0~10の整数であり;Yは、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-S-、または-S(=O)
2-であり;R
Gは、直鎖または分岐のC
1-10アルキルであり、ただし、R
Gは、非置換であるか、あるいは、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、およびC
1-6アルコキシからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換されており;そして、
該4~10員のヘテロ環は、R
EおよびR
Fが結合しているN原子に加えて、N、O、およびSからなる群から選択される1つまたは2つのヘテロ原子を任意にさらに含んでよく、非置換であるか、あるいは、ハロゲン、およびC
1-6アルキルから選択される1つまたは複数の置換基により置換されている。]
により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩を活性成分として含む、プロテインキナーゼ阻害剤に対して耐性のある癌患者を治療するための、医薬組成物。
【請求項2】
該化合物において、R
Aが、メチル、フェニル、ハロベンジル、またはハロフェニルである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
該化合物において、R
BおよびR
B’が、それぞれ独立して、H、メチル、メトキシ、またはエトキシである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
該化合物において、Xが、-C(-R
B’)=であり;そして、
R
BおよびR
B’が、それぞれ独立して、H、メチル、メトキシ、またはエトキシであり、ただし、R
BおよびR
B’は同時にHでない、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
該化合物において、R
Cが、Hまたはハロゲンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
該化合物において、Lが、単結合またはメチレンであり;そして、
Rが、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピペラジニル、またはチアゾリルである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
該化合物において、R
Dが、H、メチル、エチル、メトキシメチル、または-CH
2-NR
ER
Fであり;そして、
R
EおよびR
Fが、それぞれ独立して、H、C
1-6アルキル、または-C
1-6アルキレン-O-C
1-10アルキルであり、ただし、R
EおよびR
Fは同時にHでない、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
該化合物において、R
EおよびR
Fが、それらが結合するN原子と一緒になって
【化2】
[式中、R
aおよびR
bは、それぞれ独立して、C
1-3アルキレンであり;そして、Aは、-N(-C
1-6アルキル)-、または-O-である。]
を形成している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
該化合物において、R
Aが、メチル、フェニル、ハロベンジル、またはハロフェニルであり;
Xが、-CH=であり;
R
Bが、H、メチル、メトキシ、またはエトキシであり;
R
Cが、H、またはハロゲンであり;
Lが、単結合、またはメチレンであり;
Rが、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、チアゾリル、またはピペラジニルであり;
R
Dが、H、メチル、エチル、メトキシメチル、または-CH
2-NR
ER
Fであり、ここで、R
Eが、-C
2H
4-O-CH
3であり、R
Fが、Hまたはメチルであるか、あるいは、R
EおよびR
Fが互いに繋がって、それらが結合するN原子と一緒になって、モルホリノまたはメチルピペラジニルを形成している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
式1により表される化合物が、以下の化合物:
1) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
2) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
3) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
4) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
5) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
6) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(ピリジン-3-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
7) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(チアゾール-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
8) 4-エトキシ-N-(4-(2-(1-エチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)-3-フルオロフェニル)-1-(4-フルオロベンジル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
9) 4-メトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-(メトキシメチル)-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-フェニル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
10) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(ピペラジン-1-イルメチル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
11) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
12) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
13) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
14) N-(3-クロロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-4-メトキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
15) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-1-(3-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
16) N-(3-フルオロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-4-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
17) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)(メチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
18) 4-エトキシ-N-[3-フルオロ-4-({2-[5-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル]チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル}オキシ)フェニル]-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
19) 4-エトキシ-N-[3-フルオロ-4-({2-[5-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル]チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル}オキシ)フェニル]-2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
20) 4-エトキシ-N-{3-フルオロ-4-[(2-{5-[(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル]ピリジン-2-イル}チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル)オキシ]フェニル}-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;または、
21) 4-エトキシ-N-{3-フルオロ-4-[(2-{5-[(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル]ピリジン-2-イル}チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル)オキシ]フェニル}-2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド、
である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
プロテインキナーゼが、EGFRである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
該患者が、活性RON(Recepteur d’Origine Nantais)を保有している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
活性RONが、RONΔ155、RONΔ160、RONΔ165、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
該患者が、正常なKRASを保有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
プロテインキナーゼ阻害剤が、セツキシマブである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
癌が、乳癌、肺癌、胃癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、腎臓癌、膵臓癌、肝臓癌、結腸癌、皮膚癌、頭頸部癌、および甲状腺癌からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
プロテインキナーゼ阻害剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
プロテインキナーゼ阻害剤が、EGFR阻害剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項19】
EGFR阻害剤が、セツキシマブである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
以下のステップ:
i)癌患者が活性RONを保有しているかどうかを確認すること;および、
ii)活性RONを保有している患者に、上記の式Iにより表される化合物またはその薬学的に許容される塩を活性成分として含む抗癌剤を投与すること、
を含む、プロテインキナーゼ阻害剤に対して耐性のある患者の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性RONキナーゼを保有する癌患者に適用可能なチエノピリジン誘導体、およびそれを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セツキシマブ(cetuximab)は、上皮成長因子受容体(EGFR)の阻害剤である。特に、EGFRは、転移性結腸癌、転移性非小細胞肺癌、および頭頸部癌の癌細胞において過剰発現しているため、セツキシマブは、そのような疾患の治療に主に使用される。しかしながら、セツキシマブは、抗がん剤に耐性のある患者には使用できない。セツキシマブに対する耐性は、いくつかの理由で生じる。典型的には、EGFRシグナル伝達系にあるKRASなどのタンパク質に変異がある癌細胞は、セツキシマブに対する耐性がある。したがって、効果的な癌治療のために、従来の抗癌剤に耐性のある患者に適した新しい抗がん剤が求められる。
【0003】
一方、細胞内シグナル伝達系で最も重要なタンパク質の1つは、プロテインキナーゼである。プロテインキナーゼは、他のタンパク質をリン酸化して、タンパク質の活性、位置および機能を調節し、それによって細胞内シグナル伝達プロセスを制御する。プロテインキナーゼとしては、例えば、AB1、ACK、ALK、ARG、ARK5、AURORA、AX1、BMX、c-MET、c-RAF、c-SRC、EGFR、FAK、FES、FGFR、FLT3、GSK3、IGF、IKK、JAK、LCK、LIMK、LYN、MEK、MER、MK-2、RET、RON、ROS、RSE、などが挙げられる。これらのプロテインキナーゼの変異は、癌、免疫疾患、神経疾患、代謝疾患、および感染症などの疾患をもたらす可能性がある。
【0004】
これらの中で、癌細胞における異常なc-MET活性化は、抗癌療法の予後の悪化と密接に関連していると報告されている。特に、c-METの過剰発現と変異は、非小細胞肺癌(NSCLC)などのいくつかの癌疾患において観察されている。腫瘍の浸潤と転移は、癌患者の主な死因であり、したがって、c-METシグナル伝達の阻害は、癌治療に有効である可能性がある。特に、RON(recepteur d’origine nantais)は、c-METファミリーに属するタンパク質受容体を意味し、マクロファージ刺激タンパク質(MSP)の受容体、血清タンパク質であり、肝臓から分泌され、マクロファージの作用を調節する。RON活性は、腫瘍の発生、進行および転移に重要な役割を果たす。特に、結腸癌および乳癌におけるその過剰発現または過剰活性は、腫瘍の浸潤と転移を誘発し、アポトーシスを阻害することの一因となることが報告されている。
【0005】
したがって、異常に活性化したRONの活性を特異的に阻害することが可能な物質を用いることにより、RONに関連する様々な疾患、特に結腸癌などの腫瘍を効果的に治療することが可能である。そのため、異常に活性化したRONの活性を阻害することができる抗癌剤を開発することが緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、異常に活性化したRONの活性を阻害することが可能な化合物またはその薬学的に許容される塩を活性成分として含む、癌治療用医薬組成物を提供することを目的とする。特に、本発明は、セツキシマブなどの抗癌剤に耐性のある患者においてその作用を効果的に発揮することができる医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、セツキシマブなどのプロテインキナーゼ阻害剤に対して耐性のある患者を治療するための抗癌剤であって、式1で表されるチエノピリジン誘導体化合物またはたはその薬学的に許容される塩を活性成分として含む抗癌剤、が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示による抗癌医薬組成物は、活性RONキナーゼを保有する癌患者に適用可能である。特に、医薬組成物は、抗癌療法に従来使用されているセツキシマブに耐性のある患者を治療するために有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、RON変異体(Δ160)を保有する結腸癌腫瘍細胞株(KM12C)における、サンプル化合物の濃度(1μMおよび5μM)に応じた細胞死率(%)を示すグラフである。
【
図2】
図2は、RON変異体(Δ160)を保有するKM12C細胞株に対して複数の濃度で実施例18の処理を行い、次いで、活性RON(pTyr-RON)の発現の減少を測定することによって得られた結果を表す。
【
図3】
図3は、RON変異体(Δ160)についてキナーゼアッセイを実施することによって得られた結果を表す。
【
図4】
図4は、RON変異体(Δ155)についてキナーゼアッセイを実施することによって得られた結果を表す。
【
図5】
図5は、Colo320HSR細胞株についてRON変異体(mt#1:Δ160、mt#2:Δ155)を過剰発現させて、次いで、実施例18の有効性を測定することによって得られた結果を表す。
【
図6】
図6は、Colo320HSR細胞株についてRON変異体(mt#1:Δ160、mt#2:Δ155)を過剰発現させて、次いで、実施例18の有効性をウェスタンブロッティングで測定することによって得られた結果を表す。
【
図7】
図7は、RON変異体(Δ160)を保有するKM12C細胞株に対して実施例18の処理を行い、次いで、実施例18の作用機序を分析するために、活性RON(pTyr-RON)の発現の減少を測定することによって得られた結果を表す。
【
図8】
図8は、KM12C細胞株が移植された動物モデルにおいて、実施例18の腫瘍増殖阻害効果を測定することによって得られた結果を表す。
【
図9】
図9は、KM12C細胞株が移植された動物モデルにおいて、実施例18の腫瘍増殖阻害効果を測定することによって得られた結果を表す。
【
図10】
図10は、KM12C細胞株が移植された動物モデルに実施例18を投与した場合における、マウスの体重変化を測定することによって得られた結果を表す。
【
図11】
図11は、KM12C細胞株が移植された動物モデルに実施例18による処置を行った場合における、活性RON(pTyr-RON)、p-ERK、および切断カスパーゼ3の発現の変化を測定することによって得られた結果を表す。
【
図12】
図12は、KM12C細胞株が移植された動物モデルに実施例18を投与し、投与終了後に腫瘍を摘出し、活性RON(pTyr-RON)および切断カスパーゼ3の発現の変化を測定することによって得られた結果を表す。
【
図13】
図13は、KM12C細胞が移植された動物モデルに実施例18を投与した場合における、実施例18の腫瘍増殖阻害効果を分析することによって得られた結果を表す。
【
図14】
図14は、KM12C細胞が移植された動物モデルに実施例18を投与し、その後、マウスの状態およびそれぞれのマウスから摘出した腫瘍のサイズを分析することによって得られた結果を表す。
【
図15】
図15は、KM12C細胞株が移植された動物モデルに実施例18を投与した場合における、マウスの体重変化を測定することによって得られた結果を表す。
【
図16】
図16は、KM12C細胞株が移植された動物モデルにおいて、有効用量濃度を確認することによって得られた結果を表す。
【
図17】
図17は、KM12C細胞株が移植された動物モデルにおいて、有効用量濃度を確認することによって得られた結果を表す。
【
図18】
図18は、結腸癌患者の組織が移植された動物モデルにおいて、実施例18の有効性を分析することによって得られた結果を表す。
【
図19】
図19は、結腸癌患者の組織が移植されたマウスに実施例18を投与し、その後、マウスの状態およびそれぞれのマウスから摘出した腫瘍のサイズを分析することによって得られた結果を表す。
【
図20】
図20は、結腸癌患者の組織が移植された動物モデルにおいて、実施例18の有効性を分析することによって得られた結果を表す。
【
図21】
図21は、結腸癌患者の組織が移植された動物モデルから摘出した腫瘍のサイズを分析することによって得られた結果を表す。
【
図22】
図22は、結腸癌患者由来の細胞株において、活性RONの発現に応じた、実施例18の細胞殺傷効果を分析することによって得られた結果を表す
【
図23】
図23は、結腸癌患者由来の細胞株において、活性RONの発現に応じた、実施例18の有効性を分析することによって得られた結果を表す。
【
図24】
図24は、RONが発現されていない結腸癌患者由来の細胞株において、実施例18の細胞殺傷効果を分析することによって得られた結果を表す。
【
図25】
図25は、RONが発現されていない結腸癌患者由来の細胞株において、実施例18の有効性を分析することによって得られた結果を表す。
【
図26】
図26は、結腸癌細胞株において、バイオマーカー(RON変異体)の遺伝子分析を実施することによって得られた結果を表す。
【
図27】
図27は、韓国人の結腸癌患者群において、RON変異体の遺伝子分析を実施することによって得られた結果を表す。
【
図28】
図28は、韓国人の結腸癌患者群において、RON変異体およびKRAS変異体の遺伝子分析を実施することによって得られた結果を表す。
【
図29】
図29は、白人の結腸癌患者群において、RON変異体の遺伝子分析を実施することによって得られた結果を表す。
【
図30】
図30は、白人の結腸癌患者群において、RON変異体およびKRAS変異体の遺伝子分析を実施することによって得られた結果を表す。
【
図31】
図31は、結腸癌患者の腫瘍細胞が移植された動物モデルから得た組織において、遺伝子分析を実施して、RON変異体およびKRAS変異体を測定することによって得られた結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0011】
用語の定義
本明細書において、「ハロゲン」との用語は、特に断りのない限り、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0012】
「アルキル」との用語は、特に断りのない限り、直鎖または分枝の飽和炭化水素基を意味する。例えば、「C1-10アルキル」とは、1~10個の炭素原子からなる骨格を有するアルキルを意味する。具体的には、C1-10アルキルとして、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、t-ペンチル、sec-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、などを挙げることができる。
【0013】
「ハロアルキル」との用語は、1つまたは複数のハロゲン原子で置換されたアルキルを意味する。具体的には、ハロアルキルは、同種の2つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル、または、2種以上のハロゲン原子で置換されたアルキル、であってもよい。
【0014】
「ヘテロ環」との用語は、1つまたは複数のヘテロ原子を有する芳香族環または非芳香族環を意味し、これは、飽和または不飽和であってよく、単環式または多環式であってもよい。例えば、「4~10員のヘテロ環」は、ヘテロ原子と炭素原子を含む合計4~10個の原子からなる骨格を有するヘテロ環を意味する。具体的には、4~10員のヘテロ環として、例えば、アゼチジン、ジアゼチジン、ピロリジン、ピロール、イミダゾリジン、イミダゾール、ピラゾリジン、ピラゾール、オキサゾリジン、オキサゾール、イソオキサゾリジン、イソオキサゾール、チアゾリジン、チアゾール、イソチアゾリジン、イソチアゾール、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ジアジン、モルホリン、チオモルホリン、アゼパン、ジアゼパン、などを挙げることができる。
【0015】
「ヘテロ原子」との用語は、炭素(C)以外の原子を意味し、具体的には、窒素(N)、酸素(O)、または硫黄(S)原子であってよい。
【0016】
「置換」との用語は、化学的に安定な化合物が、指定された原子の原子価を超えずに得られるように、分子構造内の水素原子を置換基で置き換えることを意味する。例えば、「A基が置換基Bで置換されている」との表現は、A基の骨格を構成する炭素原子などの原子に結合している水素原子が、置換基Bに置き換えられ、A基と置換基Bとが共有結合を形成することを意味する。
【0017】
医薬組成物
本発明の一態様において、式1:
【化1】
[式中、
R
Aは、C
1-10アルキル、フェニル、またはベンジルであり、ここで、R
Aは、任意に、ハロゲンおよびC
1-10アルコキシから選択される1つまたは複数の置換基を有していてもよく;
Xは、-C(-R
B’)=、または-N=であり;
R
BおよびR
B’は、それぞれ独立して、H、ハロゲン、C
1-10アルキル、またはC
1-10アルコキシであり;
R
Cは、H、ハロゲン、またはC
1-10アルキルであり;
Lは、単結合、またはC
1-6アルキレンであり;
Rは、NおよびSから選択される1つまたは2つのヘテロ原子を有する、5~8員のヘテロ環であり;
R
Dは、H、C
1-10アルキル、-(CH
2)
nY-R
G、または-CH
2-NR
ER
Fであり;
R
EおよびR
Fは、それぞれ独立して、H、C
1-10アルキル、または-(CH
2)
nY-R
Gであるか、あるいは、R
EおよびR
Fが互いに繋がって、それらが結合するN原子と一緒になって4~10員のヘテロ環を形成し;
ここで、nは、0~10の整数であり;Yは、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-S-、または-S(=O)
2-であり;R
Gは、直鎖または分岐のC
1-10アルキルであり、ただし、R
Gは、非置換であるか、あるいは、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシル、およびC
1-6アルコキシからなる群から選択される1つまたは複数の置換基で置換されており;そして、
該4~10員のヘテロ環は、R
EおよびR
Fが結合しているN原子に加えて、N、O、およびSからなる群から選択される1つまたは2つのヘテロ原子を任意にさらに含んでよく、非置換であるか、あるいは、ハロゲン、およびC
1-6アルキルから選択される1つまたは複数の置換基により置換されている。]
により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩を活性成分として含む、プロテインキナーゼ阻害剤に対して耐性のある癌患者を治療するための、医薬組成物、が提供される。
【0018】
一実施形態によれば、式1において、RAが、メチル、フェニル、ハロベンジル、またはハロフェニルであり得る。
【0019】
一実施形態によれば、式1において、RBおよびRB’が、それぞれ独立して、H、メチル、メトキシ、またはエトキシであり得る。
【0020】
一実施形態によれば、式1において、Xが、-C(-RB’)=であり得;そして、RBおよびRB’が、それぞれ独立して、H、メチル、メトキシ、またはエトキシであり得、任意に、RBおよびRB’は同時にHでなくてよい。
【0021】
一実施形態によれば、式1において、RCが、Hまたはハロゲンであり得る。ここで、ハロゲンは、F、Cl、Br、またはIであり得る。
【0022】
一実施形態によれば、式1において、Lが、単結合またはメチレンであり得;そして、Rが、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピペラジニル、またはチアゾリルであり得る。
【0023】
一実施形態によれば、式1において、RDが、H、メチル、エチル、メトキシメチル、または-CH2-NRERFであり得;そして、REおよびRFが、それぞれ独立して、H、C1-6アルキル、または-C1-6アルキレン-O-C1-10アルキルであり得、任意に、REおよびRFは同時にHでなくてよい。
【0024】
一実施形態によれば、式1において、R
EおよびR
Fが、それらが結合するN原子と一緒になって
【化2】
[式中、R
aおよびR
bは、それぞれ独立して、C
1-3アルキレンであり;そして、Aは、-N(-C
1-6アルキル)-、または-O-である。]
を形成し得る。
【0025】
一実施形態によれば、式1において、RAが、メチル、フェニル、ハロベンジル、またはハロフェニルであり得;Xが、-CH=であり得;RBが、H、メチル、メトキシ、またはエトキシであり得;RCが、H、またはハロゲンであり得;Lが、単結合、またはメチレンであり得;Rが、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、チアゾリル、またはピペラジニルであり得;RDが、H、メチル、エチル、メトキシメチル、または-CH2-NRERFであり得、ここで、REが、-C2H4-O-CH3であり得、RFが、Hまたはメチルであり得、あるいは、REおよびRFが互いに繋がって、それらが結合するN原子と一緒になって、モルホリンまたはメチルピペラジニルを形成し得る。ここで、ハロゲンは、F、Cl、Br、またはIであり得る。
【0026】
本発明には、式1により表される化合物の薬学的に許容される塩が含まれる。薬学的に許容される塩は、ヒトに対する毒性が低く、親化合物の生物学的活性および物理化学的特性に悪影響を及ぼさないものである。
【0027】
例えば、薬学的に許容される塩としては、薬学的に許容される遊離酸で形成された酸付加塩が挙げられる。遊離酸としては、無機酸または有機酸を用いることができ、ここで、無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、臭素酸、などが挙げられ;有機酸としては、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、サリチル酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、エンボン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、などが挙げられる。
【0028】
酸付加塩は、従来の方法、例えば、式1の化合物を過剰量の酸性水溶液に溶解し、得られた塩を、メタノール、エタノール、アセトン、またはアセトニトリルなどの水混和性有機溶媒を用いて、沈殿させることによって製造することができる。
【0029】
さらに、薬学的に許容される塩は、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩)、またはアルカリ土類金属塩(例えば、カリウム塩)であってもよい。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩は、例えば、式1の化合物を過剰量のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の溶液に溶解し、溶解しない化合物の塩をろ別し、その後、ろ液をエバポレートおよび乾燥することによって、得ることができる。
【0030】
さらに、本発明の化合物は、キラル炭素中心を有していてもよく、したがって、RまたはSの異性体、ラセミ化合物、個々のエナンチオマーまたはその混合物、または、個々のジアステレオマーまたはその混合物、の形態で存在し得る。そのような立体異性体およびその混合物はすべて、本発明の範囲内に含まれ得る。
【0031】
さらに、本発明の化合物には、式1の化合物の水和物および溶媒和物が含まれ得る。水和物および溶媒和物は、公知の方法を用いて製造することができ、好ましくは、無毒性で水溶性である。特に、水和物および溶媒和物は、好ましくは、1~5分子の水およびアルコール溶媒(特に、エタノールなど)のそれぞれと組み合わせることによって、形成することができる。
【0032】
一実施形態によれば、式1により表される化合物の具体例は、以下の通りである:
1) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
2) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
3) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
4) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
5) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
6) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(ピリジン-3-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
7) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(チアゾール-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
8) 4-エトキシ-N-(4-(2-(1-エチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)-3-フルオロフェニル)-1-(4-フルオロベンジル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
9) 4-メトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-(メトキシメチル)-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-フェニル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
10) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(ピペラジン-1-イルメチル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
11) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
12) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
13) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
14) N-(3-クロロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-4-メトキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
15) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-1-(3-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
16) N-(3-フルオロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-4-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
17) 4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)(メチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
18) 4-エトキシ-N-[3-フルオロ-4-({2-[5-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル]チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル}オキシ)フェニル]-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
19) 4-エトキシ-N-[3-フルオロ-4-({2-[5-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル]チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル}オキシ)フェニル]-2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;
20) 4-エトキシ-N-{3-フルオロ-4-[(2-{5-[(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル]ピリジン-2-イル}チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル)オキシ]フェニル}-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド;および、
21) 4-エトキシ-N-{3-フルオロ-4-[(2-{5-[(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル]ピリジン-2-イル}チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル)オキシ]フェニル}-2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド。
【0033】
医薬組成物の適用範囲
プロテインキナーゼは、他のタンパク質をリン酸化して、タンパク質の活性、位置、および機能を調節し、それによってさまざまな細胞内プロセスを制御する酵素である。これらのプロテインキナーゼの制御機能の異常は、癌、免疫疾患、神経疾患、代謝疾患、感染症などの疾患メカニズムと密接に関連している。プロテインキナーゼとしては、例えば、ABl、ACK、ALK、ARG、ARK5、AURORA、AXl、BMX、BTK、CDK、CHK、c-KIT、c-MET、c-RAF、c-SRC、EGFR、FAK、FES、FGFR、FLT3、GSK3、IGF、IKK、JAK、LCK、LIMK、LYN、MEK、MER、MK-2、P38ALPHA、PDGFR、PDK、PIM、PKA、PKB、PKCR、PLK-1/3、RET、ROS、RSE、TIE、TRK、TYRO3、VEGFR、YES、などが挙げられる。ここで、プロテインキナーゼは、好ましくはEGFRであり得る。
【0034】
さらに、医薬組成物が適用される癌患者は、活性RON(Recepteur d’Origine Nantais)を保有していてよい。さらに、患者は、正常なKRASを保有する患者であってよい。好ましくは、医薬組成物は、活性RONおよび正常なKRASを保有する患者に適用され得る。特に、患者は、セツキシマブに耐性のある患者であり得る。
【0035】
RON(Recepteur d’Origine Nantais)は、MET(c-MET)ファミリーに属するプロテインレセプターを意味し、肝臓から分泌されてマクロファージの作用を調節する血清タンパク質、MSPの受容体である。本明細書において、「活性RON」との用語は、通常のRONとは異なり、常に活性化されたRONを意味する。このようなRONの活性の程度は、真核生物の遺伝子発現を調節するための重要なプロセスの1つである選択的スプライシングによって、調節される。
【0036】
活性RONとしては、例えば、RONΔ155、RONΔ160、RONΔ165などを挙げることができる。活性RONは、スプライシングによるエクソン(exon)のスキップによって発生する形態であり、リガンドなしで構造的に常に活性化されている。したがって、癌患者により保有される活性RONの実施形態は、これに限定されるものではないが、RONΔ155、RONΔ160、RONΔ165、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであり得る。さらに、活性RONは、変異したRONであってもよい。「変異したRON」とは、RONのアミノ酸の一部が、置換、削除、または挿入され、RONが常に活性化されることを意味する。さらに、MSPが存在する場合は、通常のRONさえも活性化される。本発明の医薬組成物は、活性RONに作用することができ、それにより、活性RONの活性を阻害することができる。
【0037】
さらに、医薬組成物は、乳癌、肺癌、胃癌、前立腺癌、子宮癌、卵巣癌、腎臓癌、膵臓癌、肝臓癌、結腸癌、皮膚癌、頭頸部癌、および甲状腺癌からなる群から選択されるいずれか1つの癌を治療するための組成物であり得る。ここで、癌は、活性RONを保有し得る。好ましくは、癌は、RONΔ155、RONΔ160、およびRONΔ165からなる群から選択されるいずれか1つの活性RONを保有し得る。
【0038】
医薬組成物の製剤
本発明の医薬組成物は、式1により表される化合物、またはその薬学的に許容される塩を、活性成分として、組成物の総重量を基準として、約0.1重量%~約90重量%の量で、特に、約0.1重量%~約75重量%の量で、さらに特に、約1重量%~約50重量%の量で、含み得る。
【0039】
本発明の医薬組成物は、従来の方法に従って製剤に組み合わされる従来の非毒性の薬学的に許容される添加剤を含み得る。例えば、医薬組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤をさらに含み得る。
【0040】
本発明の組成物に用いられる添加剤としては、例えば、甘味料、結合剤、溶媒、可溶化剤、湿潤剤、乳化剤、等張剤、吸収剤、崩壊剤、抗酸化剤、保存剤、潤滑剤、流動促進剤、充填剤、香味料などを挙げることができる。例えば、添加剤として、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、グリシン、シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン、ステアリン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、デンプン、ゼラチン、トラガンドガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、水、エタノール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、オレンジエッセンス、ストロベリーエッセンス、バニラフレーバーなどを挙げることができる。
【0041】
本発明の組成物は、経口投与用(例えば、錠剤、ピル、粉末、カプセル、シロップ、または乳濁液)、または非経口投与用(例えば、筋肉内注射、静脈注射、または皮下注射)の様々な製剤形態に製剤化することができる。
【0042】
好ましくは、本発明の組成物は、経口投与製剤に製剤化することができ、この目的のための添加剤としては、例えば、セルロース、ケイ酸カルシウム、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、デキストロース、リン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ゼラチン、タルク、界面活性剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤などを挙げることができる。具体的には、流動促進剤としては、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられ;希釈剤としては、例えば、結晶セルロース、Fast Floラクトース、無水ラクトース、ラクトース一水和物、ケイ化(silicified)MCC HD90などが挙げられ;崩壊剤としては、例えば、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドンなどが挙げられ;潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸などが挙げられる。
【0043】
さらに、経口投与用の液体製剤として、例えば、懸濁液、乳濁液、シロップなどを挙げることができ、液体製剤は、簡単な希釈剤として一般的に使用される流動パラフィンおよび水に加えて、湿潤剤、甘味料、香料、保存剤などの様々な賦形剤を含んでいてもよい。
【0044】
さらに、非経口投与のための製剤として、例えば、滅菌水溶液、非水系溶液、懸濁液、乳濁液、凍結乾燥製剤、および坐剤を挙げることができる。非水系溶液および懸濁液のために、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルなどを用いることができる。坐剤基剤として、ウイテプゾール(Witepsol)(商標)、マクロゴール、ツィーン(Tween)(商標)61、カカオバター、ラウリン脂肪、グリセロゼラチンなどを用いることができる。一方、注射剤は、可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤、および保存剤などの従来の添加剤を含んでいてもよい。
【0045】
医薬組成物の用量および用法
本発明の化合物または組成物は、治療有効量または薬学的有効量で、患者に投与することができる。
【0046】
本明細書において、「治療有効量」または「薬学的有効量」との用語は、医薬治療に適用され得る合理的な利益/リスク比で疾患を治療するのに十分で、副作用を引き起こさない、問題となる疾患を予防または治療するのに有効な、化合物または組成物の量を意味する。有効量のレベルは、患者の健康状態、疾患の種類および重症度、薬物の活性、薬物に対する患者の感受性、投与方法、投与時間、投与経路および排泄率、治療期間、製剤または同時に使用される薬物、および医薬分野で周知のその他の要因を含む要因に応じて決めることができる。
【0047】
本発明の化合物または組成物は、個々の治療剤として、または他の治療剤と組み合わせて、投与することができ、従来の治療剤と同時にまたは連続して投与することができ、そして、単回または複数回の投与で投与することができる。上記の要因をすべて考慮し、最大の効果を副作用なしに得ることができる最小量の量で投与することが重要であり、そのような量は、当業者によって容易に決めることができる。
【0048】
具体的には、本発明の組成物中の化合物の有効量は、患者の年齢、性別、および体重に応じて変わってよく;通常、体重1kgあたり、約0.1mg~約1,000mg、または約5mg~約200mgを、毎日または一日おきに、あるいは1日1~3回で、投与することができる。しかしながら、有効量は、投与経路、疾患の重症度、患者の性別、体重、年齢などに応じて増減し得るため、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0049】
好ましくは、本発明の化合物または組成物は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、骨髄移植、幹細胞補充療法、その他の生物学的療法、外科的処置、またはそれらの組み合わせ、と組み合わせた腫瘍療法のために投与することができる。例えば、本発明の化合物または組成物は、他の長期治療戦略と組み合わせた補助療法として用いることができ、あるいは、重症患者における腫瘍退縮または化学的予防療法の後の患者の状態を維持するために用いることができる。
【0050】
組み合わせ投与のための医薬組成物
本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの活性成分をさらに含有していてもよく、さらに含まれる活性成分としては、これに限定されるものではないが、例えば、抗増殖性化合物、例えば、アロマターゼ阻害剤、抗エストロゲン、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、微小管活性化合物、アルキル化化合物、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、細胞分化プロセスを誘導する化合物、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、MMP阻害剤、mTOR阻害剤、抗腫瘍薬、抗代謝物、プラチン(platin)化合物、タンパク質または脂質キナーゼの活性を標的/減少させる化合物、抗血管新生化合物、タンパク質または脂質ホスファターゼの活性を標的として減少または阻害させる化合物、ゴナドレリンアゴニスト、抗アンドロゲン、メチオニンアミノペプチダーゼ阻害剤、ビスホスホネート、生体応答調節物質、抗増殖抗体、ヘパラナーゼ阻害剤、Ras発癌性アイソタイプ阻害剤、テロメラーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、血液学的悪性腫瘍の治療に用いられる化合物、Flt-3活性を標的として減少または阻害させる化合物、Hsp90阻害剤、キネシンスピンドルタンパク質阻害剤、MEK阻害剤、ロイコボリン、EDG結合剤、抗白血病化合物、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤、S-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ阻害剤、止血ステロイド、コルチコステロイド、その他の化学療法化合物、および光感作化合物、を挙げることができる。
【0051】
さらに含まれる活性成分は、公知の抗がん剤であってもよい。抗癌剤としては、これに限定されるものではないが、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、メクロレタミン、クロラムブシル、フェニルアラニン、マスタード、シクロホスファミド、イホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ストレプトゾトシン、ブスルファン、チオテパ、シスプラチン、およびカルボプラチンなど;抗癌抗生物質、例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、マイトマイシンC、およびブレオマイシンなど;および、植物アルカロイド、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシド、テニポシド、トポテカン、およびイリノテカンなど、が挙げられる。
【0052】
本発明の別の態様では、式1により表される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、癌を治療するための医薬組成物であって、さらにプロテインキナーゼ阻害剤を含む医薬組成物、が提供される。
【0053】
医薬組成物を用いた治療方法
本発明のさらに別の態様では、以下のステップ:i)癌患者が活性RONを保有しているかどうかを確認すること;および、ii)活性RONを保有している患者に、上記の式Iにより表される化合物またはその薬学的に許容される塩を活性成分として含む抗癌剤を投与すること、を含む、プロテインキナーゼ阻害剤に対して耐性のある患者の治療方法、が提供される。
【0054】
ここで、プロテインキナーゼは上記で説明した通りであり、活性RONは、RONΔ155、RONΔ160、RONΔ165、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであり得る。
【実施例】
【0055】
以下、本発明について、以下の実施例により詳細に説明する。ただし、以下の実施例は、理解を容易にするために本発明を説明しようとしたものにすぎず、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0056】
製造例1:4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸の製造
工程1:エチル 4-エトキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキシレートの製造
【化3】
オルト酢酸トリエチル(249.6mL、1.32mmol)および酢酸(19.6mL、0.33mol)を、シアノ酢酸エチル(70.5mL、0.66mol)に加え、120℃で、12時間以上、撹拌を行った。反応混合物を濃縮し、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール(DMFDEA)(141mL、0.55mol)を加えた。70℃で、2時間以上、撹拌を行った。反応混合物に酢酸500mLと蒸留水60mLを加え、これを12時間以上還流した。反応混合物を室温に冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液と水を加えた。得られたものをジクロロメタンとメタノールの混合溶媒(9:1)で抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。酢酸エチル100mLを加え、得られたものを濃縮した。得られた固体をろ過して、化合物、エチル 4-エトキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキシレート(37g、収率:26%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 11.61 (bs, 1H), 7.46 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 6.21 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 4.14(m, 4H), 1.22 (m, 6H)
MS (ESI) m/z 212.12 (M + H)
+
【0057】
工程2:エチル 4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキシレートの製造
【化4】
炭酸セシウム(114g、0.35mol)に、N,N-ジメチルホルムアミド100mLを加え、これに窒素ガスを充填した。室温で10分間撹拌を行った。工程1で得た化合物、エチル 4-エトキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキシレート(10.2g、0.07mol)を、N,N-ジメチルホルムアミド200mLに溶解させ、混合物に加え、ヨウ化銅(10g、0.05mol)、4-フルオロ-ヨードベンゼン58.3g(0.26mol)、および上記で得た化合物(37g、0.17mol)を加えた。110℃で24時間、撹拌を行った。反応終了後、得られたものを室温に冷却し、酢酸エチルを加え、10分間撹拌を行った。反応混合物をセライトパッドを通してろ過し、水および酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。その後、減圧下で溶媒を除去した。
【0058】
工程3:4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸の製造
【化5】
溶媒を完全に除去した工程2の化合物を200mLのエタノールに溶解し、それに400mLの3N塩化水素水溶液を加えた。60℃で24時間、撹拌を行った。得られた固体をろ過して、4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸(21g、2工程の収率:43%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 7.95 (d, J = 76 Hz, 1H), 7.48 (m, 2H), 7.35 (m, 2H), 6.58 (d, J = 8 Hz, 1H), 4.28 (q, J = 68 Hz, 2H), 1.32 (t, J = 68 Hz, 3H)
MS (ESI) m/z 276.09 (M + H)
+
【0059】
製造例2:4-エトキシ-2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸の製造
製造例1の工程2において、4-フルオロ-ヨードベンゼンの代わりにヨードベンゼンを用いたことを除いて、製造例1と同様の方法により、下記の化合物を製造した。
【化6】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.98 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.56-7.41 (m, 5H), 6.60 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 4.30(q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.34 (t, J = 7.2 Hz, 3H)
MS (ESI) m/z 260.05 (M + H)
+
【0060】
製造例3:1-(4-フルオロフェニル)-4-メトキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸の製造
工程1:メチル 4-メトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキシレートの製造
エチル 4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキシレート(0.37g、1.20mmol)を、28%のNaOMeの溶液で処理を施し、その後、室温で10分間、撹拌した。減圧下で濃縮して溶媒を除去することにより、下記の化合物(0.26g、収率77%)を得た。
【化7】
【0061】
工程2:4-メトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸の製造
メチル 4-メトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキシレート(0.33g、1.18mmol)を、5mLのエタノールで処理し、次いで、10mLの2.75N塩酸溶液を室温で滴下して加えた。60℃で4時間、撹拌を行った後、得られた固体をろ過して、下記の化合物(0.16g、収率:52%)を得た。
【化8】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 13.89 (bs, 1H), 8.02 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.53-7.48 (m, 2H), 7.40-7.34 (m, 2H), 6.63 (d, J = 8 Hz, 1H), 4.02 (s, 3H)
MS (ESI) m/z 264.06 (M + H)
+
【0062】
製造例4:4-メトキシ-2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸の製造
製造例3の工程1において、エチル 4-エトキシ-1-フェニル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキシレートの代わりに、製造例2で用いたエチル 4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキシレートを用いたことを除いて、製造例3と同様の方法で、下記の化合物を製造した。
【化9】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 7.96 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.55-7.45 (m, 5H), 6.58 (d, J = 78 Hz, 1H), 3.99 (s, 3H)
MS (ESI) m/z 246.06 (M + H)
+
【0063】
製造例5:4-エトキシ-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸の製造
N,N-ジメチルホルムアミド30mLおよび炭酸セシウム(15.4g、0.05mol)を、製造例1の工程1で得た化合物(エチル 4-エトキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキシレート)(5g、23.7mmol)に加え、室温で10分間、撹拌した。ヨードメタン(6.7g、47.3mmol)を加え、室温で5時間、撹拌した。反応終了後、混合物を濃縮し、50mLの酢酸エチルを加えた後、これを再度濃縮した。濃縮混合物にイソプロピルエーテル50mLを加え、撹拌した。得られたものをろ過して、スラリーの形態の固体を得た。得られた固体にテトラヒドロフラン20mLと3N塩化水素水溶液10mLを加えた。これを80℃で5時間、撹拌し、濃縮した。ジクロロメタン180mLとメタノール10mLを加え、有機層を分離した。分離した有機層に無水硫酸マグネシウムを加え、ろ過してろ液を得た。得られたろ液を濃縮し、得られた固体をろ過して、下記の化合物(3g、収率:64%)を得た。
【化10】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 8.04 (d, J = 8 Hz, 1H), 6.56 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 4.24 (q, J = 6.8 Hz, 1H), 1.32 (t, J = 7.2 Hz, 1H)
MS (ESI) m/z 198.17 (M + H)
+
【0064】
製造例6:4-エトキシ-1-(4-フルオロベンジル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸の製造
ヨードメタンおよび炭酸セシウムの代わりに、4-フルオロベンジルブロミドおよび水素化ナトリウムを用いたことを除いて、製造例5と同様の方法により、下記の化合物を製造した。
【化11】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.50 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 5.2 Hz, 2H), 7.29 (d, J = 5.2 Hz, 2H), 6.29 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 5.15 (s, 2H), 4.28 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.52 (t, J = 7.2 Hz, 3H)
MS (ESI) m/z 289.98 (M + H)
+
【0065】
製造例7:4-エトキシ-1-(3-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸の製造
【化12】
工程2において、4-フルオロ-ヨードベンゼンの代わりに3-フルオロ-ヨードベンゼンを用いたことを除いて、製造例1の合成経路に従って製造を行い、表題の化合物(192mg、収率:73%、白色固体)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 13.70 (brs, 1H), 7.99 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.60-7.56 (m, 1H), 7.43 (dt, J = 10.0 and 5.0 Hz, 1H), 7.36 (td, J = 10.0 and 5.0 Hz, 1H), 7.30 (dd, J = 10.0 and 5.0 Hz, 1H), 6.61 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 4.30 (qt, J = 5.0 Hz, 2H), 1.34 (t, J = 5.0 Hz, 3H)
【0066】
製造例8:4-メチル-2-オキソ-1-(4-フルオロフェニル)-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸の製造
工程1:エチル 2-(4-フルオロアニリノカルボニル)-3-メチル-2-ブチレートの合成
【化13】
4-フルオロアニリン(0.20mL、2.05mmol)、イソプロピリデンマロン酸ジエチル(1.60mL、8.20mmol)、およびイミダゾール(139mg、2.05mmol)の混合物を、200℃で5時間撹拌した。得られたものを室温に冷却し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題の化合物(151mg、収率:28%、黄色の油)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.25 (s, 1H), 7.65-7.62 (m, 2H), 7.17-7.13 (m, 2H), 4.12 (qt, J = 5.0 Hz, 2H), 2.16 (s, 3H), 1.88 (s, 3H), 1.16 (t, J = 5.0 Hz, 3H)
【0067】
工程2:エチル 4-メチル-2-オキソ-1-(4-フルオロフェニル)-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキシレートの合成
【化14】
工程1で製造した化合物(96mg、0.36mmol)、および1,1-ジメトキシ-N,N-ジメチルメタンアミン(72μL、0.54mmol)の混合物を、100℃で1時間撹拌した。得られたものを室温に冷却し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題の化合物(34mg、収率:34%、褐色の固体)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 7.36-7.33 (m, 2H), 7.27-7.26 (m, 1H), 7.17-7.13 (m, 2H), 6.13 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 4.39 (qt, J = 5.0 Hz, 2H), 2.28 (s, 3H), 1.37 (t, J = 5.0 Hz, 3H)
【0068】
工程3:4-メチル-2-オキソ-1-(4-フルオロフェニル)-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸の合成
【化15】
出発物質として工程2で製造した化合物(34mg、0.12mmol)を用いたことを除いて、製造例1の工程3と同様の方法で反応を行うことにより、表題の化合物(29mg、収率:100%、黄色の固体)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 7.90 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.56-7.52 (m, 2H), 7.42-7.37 (m, 2H), 6.56 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 2.52 (s, 3H)
【0069】
実施例1:4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミドの製造
工程1:7-クロロチエノ[3,2-b]ピリジンの製造
【化16】
塩化ホスホリル25mLを60℃に加熱し、チエノ[3,2-b]ピリジン-7-オール(15g、99.2mmol)を加えた。同じ温度で1時間撹拌し、次いで、室温に冷却した。反応混合物を減圧下で濃縮し、氷冷水100mLを加えて完全に溶解させた。アンモニア水を加えて塩基性化させ、得られた固体をろ過した。ろ過した固体を酢酸エチルに溶解し、ろ過した。ろ液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、白色の固体として、7-クロロチエノ[3,2-b]ピリジン(15g、89%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 8.66 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 8.26 (d, J = 56 Hz, 1H), 7.67 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.58 (d, J = 4.8 Hz, 1H)
MS (ESI) m/z 169.92 (M + H)
+
【0070】
工程2:7-クロロ-2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジンの製造
【化17】
7-クロロチエノ[3,2-b]ピリジン(50g、294.8mmol)をテトラヒドロフラン500mLに溶解し、次いで、これを-78℃に冷却した。n-ブチルリチウム(25M、ヘキサン溶液)(118mL、294.8mmol)を同じ温度でゆっくり加え、10分間撹拌した。塩化亜鉛(1M、ジエチルエーテル溶液)(295mL、294.8mmol)をゆっくり加え、10分間撹拌した。得られたものの温度をゆっくりと室温まで上昇させ、1時間撹拌した。次に、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(28g、29.5mmol)、および4-ヨード-1-メチル-1H-イミダゾール(51g、245.6mmol)を加え、これを4時間還流して撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。酢酸エチル500mLと水20mLを加えて撹拌し、セライトパッドでろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、ジクロロメタンを加え、次いで、これを1N塩化水素水溶液で酸性化した。得られた固体をろ過した。ろ過した固体をアンモニア水および水で洗浄して、オフホワイトの固体、7-クロロ-2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン(29g、収率:39%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 8.55 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 7.90 (S, 1H), 7.75 (s, 1H), 7.74 (s, 1H), 7.45(d, J = 4.8 Hz, 1H), 3.73 (s, 3H)
MS (ESI) m/z 249.98 (M + H)+, 252.02 (M + Na)
+
【0071】
工程3:7-(2-フルオロ-4-ニトロフェノキシ)-2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジンの製造
【化18】
無水炭酸カリウム64g(464.5mmol)、および2-フルオロ-4-ニトロフェノール(36g、232.2mmol)を、ジフェニルエーテル200mL、および7-クロロ-2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン(29g、116.1mmol)の混合物に加えた。反応混合物を200℃に加熱し、3時間撹拌した。得られたものを室温に冷却し、水を加えて撹拌した。得られた固体をろ過して、7-(2-フルオロ-4-ニトロフェノキシ)-2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン(16.6g、収率:39%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 8.53 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.46 (dd, J = 10.4 and 2.8 Hz, 1H), 8.21-8.18 (m, 1H), 7.88 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 7.73 (s, 1H), 7.72 (d, J = 12 Hz, 1H), 7.68 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 6.87 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 3.73 (s, 3H)
MS (ESI) m/z 370.91 (M + H)
+
【0072】
工程4:3-フルオロ-4-((2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル)オキシ)アニリンの製造
【化19】
7-(2-フルオロ-4-ニトロフェノキシ)-2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン(16.2g、43.7mmol)、鉄(7g、131.2mmol)、および塩化アンモニウム(23.4g、437.4mmol)を、エタノール400mLおよび水200mLの混合液に加えた。混合物の温度を100℃まで上昇させ、混合物を1時間撹拌した。これを室温に冷却し、セライトパッドでろ過し、減圧下で濃縮した。水を加えて撹拌した。その後、得られたものをろ過して、3-フルオロ-4-((2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル)オキシ)アニリン、8.3g(56%)、を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 8.40 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.84 (S, 1H), 7.71 (s, 1H), 7.64 (s, 1H), 7.10 (t, J = 88 Hz, 1H), 6.55-6.43 (m, 3H), 5.52 (s, 2H), 3.72 (s, 3H)
MS (ESI) m/z 34111 (M + H)
+
【0073】
工程5:4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミドの製造
【化20】
塩化チオニル(116g、97.5mmol)を、ジクロロメタン100mL、および4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸(10g、36.6mmol)の混合物に加えた。これを室温で2時間撹拌し、次いで、減圧下で濃縮して、4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボニルクロリドを合成した。3-フルオロ-4-((2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル)オキシ)アニリン(8.3g、24.4mmol)を、ジクロロメタン100mLに溶解し、次いで、トリエチルアミン(4.93g、48.8mmol)を加えた。室温で2時間撹拌した。反応混合物に、減圧下の濃縮により得られた4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボニルクロリドを加え、2時間撹拌した。得られた固体をろ過し、水で洗浄して、オフホワイトの固体として、4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド(10.4g、収率:71%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.61 (s, 1H), 8.42 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.92 (dd, J = 2.0 and 13.6 Hz, 1H), 7.86 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.86 (s, 1H), 7.72 (s, 1H), 7.68 (s, 1H), 7.50-7.43 (m, 4H), 7.37 (t, J= 8.8 Hz, 1H), 6.59 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 6.52 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 4.26 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.73 (s, 1H), 1.31 (t, J = 7.2 Hz, 3H)
MS (ESI) m/z 600.16 (M + H)
+
【0074】
実施例2:4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミドの製造
実施例1と同様の方法により、下記の化合物を製造した。
【化21】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.58 (s, 1H), 8.43 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.94 (d, J = 13.2 Hz, 1H), 7.87 (t, J = 4.0 Hz, 2H), 7.73 (s, 1H), 7.69 (s, 1H), 7.46 (m, 2H), 6.60 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 6.39 (d, J =8.0 Hz, 1H), 4.19 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.74 (s, 3H), 3.44 (s, 3H), 1.28 (t, J = 7.2 Hz, 3H)
MS (ESI) m/z 520.15 (M + H)
+
【0075】
実施例3:4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミドの製造
実施例1と同様の方法により、下記の化合物を製造した。
【化22】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 11.65 (s, 1H), 8.47 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.97 (dd, J = 12.8 Hz, 2.4 Hz, 1H), 7.72-7.68 (m, 3H), 7.54-7.50 (m, 3H), 7.38-7.35 (m, 2H), 7.34-7.31 (m, 1H), 7.24-7.12 (m, 3H), 7.03 (d, J = 0.8 Hz, 1H), 6.53 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 6.37 (d, J = 8 Hz, 1H), 4.37 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.96 (s, 3H), 1.63 (t, J = 7.2 Hz, 3H)
MS (ESI) m/z 599.99 (M + H)
+
【0076】
実施例4:4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミドの製造
実施例1と同様の方法により、下記の化合物を製造した。
【化23】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.60 (s, 1H), 8.44 (d, 1H, J = 5.6 Hz, 1H), 8.31 (s, 1H), 7.80 (s, 1H), 7.93 (dd, J = 2.8 Hz, J = 12.8 Hz, 1H), 7.86 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.69 (s, 1H), 7.47 (m, 5H), 7.37 (t, J = 8.8 Hz, 1H), 6.60 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 6.52 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.27 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.90 (s, 3H), 1.31(t, J = 7.2 Hz, 3H)
MS (ESI) m/z 600.10 (M + H)
+
【0077】
実施例5:4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミドの製造
実施例1と同様の方法により、下記の化合物を製造した。
【化24】
1H NMR (400 MHz, MeOH-d
4) δ 8.61 (dd, J = 4.8 Hz, 0.4 Hz, 1H), 8.47 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.1 (s, 1H), 8.08 (s, 1H), 7.95-7.91 (m, 2H), 7.77 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.46-7.37 (m, 5H), 7.27 (t, J = 8.4 Hz, 2H), 6.65 (dd, J = 0.8, 5.6 Hz, 1H), 6.58 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 4.32 (q, J = 6.8 Hz, 2H), 1.46 (t, J = 7.2 Hz, 3H)
MS (ESI) m/z 597.16 (M + H)
+
【0078】
実施例6:4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(ピリジン-3-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミドの製造
実施例1と同様の方法により、下記の化合物を製造した。
【化25】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 11.68 (s, 1H), 9.02 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 8.63 (dd, J = 4.8 Hz, 1.2 Hz, 1H), 8.49 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.02 (dt, J = 8, 1.6 Hz, 1H), 7.96 (dd, J = 12.4 Hz, 2.4 Hz, 1H), 7.80 (s, 1H), 7.51 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.41-7.31 (m, 4H), 7.25-7.15 (m, 3H), 6.53 (dd, J = 5.2 Hz, 0.8 Hz 1H), 6.36 (d, J = 8 Hz, 1H), 4.36 (q, J = 6.8 Hz, 2H), 1.58 (t, J = 7.2 Hz, 3H)
MS (ESI) m/z 597.13 (M + H)
+
【0079】
実施例7:4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(チアゾール-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミドの製造
実施例1と同様の方法により、下記の化合物を製造した。
【化26】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 11.65 (s, 1H), 8.49 (d, 1H, J = 5.6 Hz, 1H), 7.96 (dd, J = 2.8 Hz, J = 12.8 Hz, 1H), 7.93 (s, 1H), 7.88 (d, J = 3.6 Hz, 1H), 7.51 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.42 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.22-7.38 (m, 6H), 7.18 (t, J = 8.8 Hz, 1H), 6.54 (dd, J = 1.2 Hz, J = 5.6 Hz, 1H), 6.37 (d, J = 8.0Hz, 1H), 4.37 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.59 (t, J = 7.2 Hz, 3H)
MS (ESI) m/z 603.15 (M + H)
+
【0080】
実施例8:4-エトキシ-N-(4-(2-(1-エチル-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)-3-フルオロフェニル)-1-(4-フルオロベンジル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミドの製造
実施例1と同様の方法により、下記の化合物を製造した。
【化27】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 11.76 (s, 1H), 8.43 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.95 (dd, J = 12.8 and 2.0 Hz, 1H), 7.66 (s, 1H), 7.55 (s, 1H), 7.44 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.28-7.37 (m, 4H), 7.19 (t, J = 8.8 Hz, 1H), 7.00 (t, J = 8.8 Hz, 1H), 6.47 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 6.24 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.15 (s, 1H), 4.27 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 4.05 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.53 (t, J = 7.2 Hz, 3H)
MS (ESI) m/z 628.24 (M + H)
+
【0081】
実施例9:4-メトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(1-(メトキシメチル)-1H-イミダゾール-4-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-フェニル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミドの製造
実施例1と同様の方法により、下記の化合物を製造した。
【化28】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.66 (s, 1H), 8.44 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.04 (s, 1H), 7.95-7.89 (m, 3H), 7.77 (s, 1H), 7.56-7.40 (m, 7H), 6.61 (d, J = 56 Hz, 1H), 6.53 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 5.37 (s, 2H), 3.94 (s, 1H), 3.27 (s, 3H)
MS (ESI) m/z 568.12 (M + H)
+
【0082】
実施例10:4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(ピペラジン-1-イルメチル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の製造
工程1:7-クロロチエノ[3,2-b]ピリジン-2-カルバルデヒドの製造
【化29】
7-クロロチエノ[3,2-b]ピリジン(1g、5.89mmol)を20mLのテトラヒドロフランに溶解し、-70℃に冷却した。n-ブチルリチウム(25Mヘキサン溶液)(3.06mL、7.66mmol)を加え、その後、1時間撹拌した。無水N,N-ジメチルホルムアミド(0.68mL、8.84mmol)を同じ温度で加え、その後、1時間撹拌した。得られたものを室温に冷却し、次いで、40mLの水を加えた。これを40mLの酢酸エチルで抽出し、次いで、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られたものをろ過し、減圧下で濃縮して、7-クロロチエノ[3,2-b]ピリジン-2-カルバルデヒド(1.17g、収率:98%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.24(s, 1H), 8.82(d, J = 4.8 Hz, 1H), 8.64(s, 1H), 7.81(d, J = 4.8 Hz, 1H)
MS (ESI) m/z 197.99 (M + H)
+
【0083】
工程2:7-(2-フルオロ-4-ニトロフェノキシ)チエノ[3,2-b]ピリジン-2-カルバルデヒドの製造
【化30】
20mLのジフェニルエーテルに、工程1で得た化合物(1.17g、5.91mmol)、2-フルオロ-4-ニトロフェノール(1.39g、8.87mmol)、および炭酸カリウム(2.45g、17.73mmol)を加えた。これを170℃で29時間、加熱還流した。反応終了後、得られたものを室温に冷却した。そこに水40mLを加え、40mLの酢酸エチルで抽出した。得られたものを無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することにより、7-(2-フルオロ-4-ニトロフェノキシ)チエノ[3,2-b]ピリジン-2-カルバルデヒド(1.05g、収率:54%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.26 (s, 1H), 8.75 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.63 (s, 1H), 8.49 (dd, J = 10.4 Hz, 2.8 Hz, 1H), 8.24 (m, 1H), 7.79 (t, J = 8 Hz, 1H), 7.11 (dd, J = 52 Hz, 0.4 Hz, 1H)
MS (ESI) m/z 351.08 (M + H)
+
【0084】
工程3:tert-ブチル 4-((7-(2-フルオロ-4-ニトロフェノキシ)チエノ[3,2-b]ピリジン-2-イル)メチル)ピペラジン-1-カルボキシレートの製造
【化31】
工程2で得た化合物(100mg、0.31mmol)を1mLの無水ジクロロメタンに溶解し、tert-ブチル ピペラジン-1-カルボキシレート(64.3mg、0.34mmol)を加えた。これを室温で1時間撹拌した。ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(95.8mg、0.45mmol)を加え、室温で2時間、撹拌した。飽和重炭酸ナトリウム水溶液2mLを加え、1mLのジクロロメタンで抽出した。得られたものを無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮して、tert-ブチル 4-((7-(2-フルオロ-4-ニトロフェノキシ)チエノ[3,2-b]ピリジン-2-イル)メチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(148.5mg、収率:97%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 8.54 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 8.46 (dd, J = 10.4 Hz, 24 Hz, 1H), 8.20 (m, 1H) 7.68 (t, J = 5.2 Hz, 1H), 7.52 (s, 1H), 6.88 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 3.33 (t, J = 4.8 Hz, 4H), 2.44 (t, J= 4.8 Hz, 4H), 1.39 (s, 9H)
MS (ESI) m/z 489.27 (M + H)
+
【0085】
工程4:tert-ブチル 4-((7-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)チエノ[3,2-b]ピリジン-2-イル)メチル)ピペラジン-1-カルボキシレートの製造
【化32】
工程3で得た化合物(140mg、0.28mmol)を10mLのエタノール:水(2:1)に溶解し、次いで、鉄(48mg、0.86mmol)および塩化アンモニウム(152mg、2.85mmol)を加えた。110℃で1時間、撹拌した。反応終了後、得られたものを室温に冷却した。その後、酢酸エチルを加え、10分間撹拌した。反応混合物をセライトに通過させ、酢酸エチルで洗浄した。セライトを通過した溶液に蒸留水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、次いで、減圧下で溶媒を除去して、tert-ブチル 4-((7-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)チエノ[3,2-b)]ピリジン-2-イル)メチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(120mg、収率:93%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 8.42 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.43 (s, 1H), 7.08 (t, J = 9.2 Hz, 1H), 6.54-6.49 (m, 2H), 6.44 (dd, J = 8.8 Hz, 2.4 Hz, 1H), 5.51 (bs, 2H), 3.86 (s, 1H), 3.33 (m, 4H), 2.43 (m, 4H), 1.39 (s, 9H)
MS (ESI) m/z 459.31 (M + H)
+
【0086】
工程5:tert-ブチル 4-((7-(4-(4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド)-2-フルオロフェノキシ)チエノ[3,2-b]ピリジン-2-イル)メチル)ピペラジン-1-カルボキシレートの製造
【化33】
4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸(90.6mg、0.32mmol)を4mLのジクロロメタンに溶解し、次いで、塩化チオニル(47.5uL、0.65mmol)をゆっくり加えた。室温で1時間、撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、得られたものを真空下で乾燥して、4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボニルクロリドを合成した。
工程4で得た化合物(100mg、0.21mmol)を2mLのジクロロメタンに溶解した。これにトリエチルアミン(45.6μL、0.32mmol)を加えた。室温で30分間、撹拌した。減圧下で溶媒を除去して得られた酸塩化物を再度2mLのジクロロメタンに溶解し、反応混合物に加えた。室温で1時間、撹拌した。水および飽和重炭酸ナトリウム水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することにより、tert-ブチル 4-((7-(4-(4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド)-2-フルオロフェノキシ)チエノ[3,2-b]ピリジン-2-イル)メチル)ピペラジン-1-カルボキシレート(150mg、収率:99%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.59 (s, 1H), 8.44 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 7.92 (dd, J = 12.8 Hz, 2 Hz, 1H), 7.86 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.49-7.41 (m, 5H), 7.39-7.34 (m, 2H), 6.60 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 6.51 (d, J =7.6 Hz, 1H), 4.26 (q, J = 6.8 Hz, 2H), 3.87 (s, 1H), 3.35 (bs, 4H), 2.45 (bs, 1H), 1.39 (s, 9H), 1.30 (t, J = 1.4 Hz, 3H)
MS (ESI) m/z 718.44 (M + H)
+
【0087】
工程6:4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-(ピペラジン-1-イルメチル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の製造
【化34】
工程5で得た化合物(126mg、0.17mmol)をジクロロメタンに溶解し、次いで、4N塩化水素水溶液のジオキサン液を加えた。室温で12時間、撹拌を行った。減圧下で濃縮した後、ジエチルエーテルを加えた。得られた固体をろ過して、4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-((2-(ピペラジン-1-イルメチル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル)オキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩(123mg、収率:95%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ 10.66 (s, 1H), 8.63 (d, J = 6 Hz, 1H), 8.05 (m, 2H), 7.87 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.55-7.44 (m, 5H), 7.40-7.34 (m, 2H), 6.90 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 6.53 (d, J = 8 Hz, 1H), 4.26 (q, J = 6.8 Hz, 2H), 3.23 (bs, 4H), 2.97 (bs, 4H), 1.30 (t, J = 7.2 Hz, 3H)
MS (ESI) m/z 652.02 (M + HCl)
-
【0088】
実施例11:4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-(2-((4-メチルピペラジン-1-イル)メチル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミドの製造
実施例10と同様の方法により、下記の化合物を製造した。
【化35】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 11.65 (s, 1H), 8.45 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.96 (dd, J = 12.4 and 2.0 Hz, 1H), 8.45 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.40-7.24 (m, 6H), 7.15 (t, J = 8.8 Hz, 1H), 6.49 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 6.39 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 4.39 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.90 (s, 1H), 2.87-2.52 (m, 8H), 1.61 (t, J = 72 Hz, 3H), 1.27 (s, 3H)
MS (ESI) m/z 632.25 (M + H)
+
【0089】
実施例12:4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の製造
工程1:N-{(6-ブロモピリジン-3-イル)メチル}-2-メトキシエタンアミンの合成
【化36】
6-ブロモピリジン-3-カルボキシアルデヒド(5g、26.88mmol)を1,2-ジクロロエタンに溶解し、次いで、2-メトキシエチルアミン(3.5mL、40.32mmol)および酢酸(1.6mL、28.76mmol)を順次加えた。20分間、撹拌を行った。次に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(8.5g、40.32mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。1N塩酸水溶液で反応を停止させ、これを2N水酸化ナトリウム水溶液でpH9に調整した。その後、ジクロロメタンで抽出した。分離した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題の化合物(4.05g、収率:70%、淡赤色の油)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 8.31 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.70 (dd, J = 10.0 and 5.0 Hz, 1H), 7.58 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 3.69 (s, 2H), 3.37 (t, J = 5.0 Hz, 1H), 3.22 (s, 3H), 2.60 (d, J = 5.0 Hz, 2H)
【0090】
工程2:t-ブチル [(6-ブロモピリジン-3-イル)メチル](2-メトキシエチル)カルバメートの合成
【化37】
工程1で製造した化合物(4.05g、16.52mmol)をテトラヒドロフランに溶解し、次いで、二炭酸ジ-t-ブチル(3.9mL、17.02mmol)を加えた。室温で30分間、撹拌を行った。酢酸エチルで抽出した。分離した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、表題の化合物(5.52g、収率:97%、無色の油)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 8.27 (s, 1H), 7.64-7.59 (m, 2H), 4.40 (s, 2H), 3.40 (m, 4H), 3.21 (s, 3H), 1.42-1.31 (m, 9H)
【0091】
工程3:t-ブチル {[6-(7-クロロチエノ[3,2-b]ピリジン-2-イル)ピリジン-3-イル]メチル}(2-メトキシエチル)カルバメートの合成
【化38】
7-クロロチエノ[3,2-b]ピリジン(5.4g、31.86mmol)をテトラヒドロフランに溶解し、次いで、2.5Mのn-ブチルリチウムヘキサン溶液(2.7mL、31.86mmol)を-78℃でゆっくり加えた。30分間撹拌した。1M塩化亜鉛ジエチルエーテル溶液(31.9mL、31.86mmol)をゆっくり加え、10分後、得られたものの温度を徐々に室温に上昇させた。その後、1時間撹拌した。その後、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(920mg、0.79mmol)、および工程2で製造した化合物(5.5g、15.93mmol)を加え、これを2時間還流した。得られたものを室温に冷却し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をアセトニトリルでろ過し、乾燥して、表題の化合物(5.2g、収率:75%、オフホワイトの固体)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 8.66 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.54 (s, 1H), 8.42 (s, 1H), 8.29 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.82 (dd, J = 10.0 and 5.0 Hz, 1H), 7.59 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 4.50 (s, 2H), 3.45-3.36 (m, 4H), 3.23 (s, 3H), 1.45-1.34 (m, 9H)
【0092】
工程4:t-ブチル {[6-[7-(2-フルオロ-4-ニトロフェノキシ)チエノ[3,2-b]ピリジン-2-イル]ピリジン-3-イル]メチル}(2-メトキシエチル)カルバメートの合成
【化39】
工程3で製造した化合物(2.0g、4.61mmol)をジフェニルエーテルに溶解し、無水炭酸カリウム(765mg、5.53mmol)および2-フルオロ-4-ニトロフェノール(1.4g、9.22mmol)を順次加えた。160℃で5時間、撹拌を行った。得られたものを室温に冷却し、酢酸エチルで抽出した。分離した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をテトラヒドロフランに溶解し、次いで二炭酸ジ-t-ブチル(1.06mL、4.61mmol)を加えた。室温で30分間、撹拌を行った。減圧下で濃縮により得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題の化合物(1.2g、収率:46%、オフホワイトの固体)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 8.62 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.50-8.48 (m, 2H), 8.39 (s, 1H), 8.28 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.21 (d, J = 10.0 and 5.0 Hz, 1H), 7.80 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.72 (t, J = 10.0 Hz, 1H), 6.98 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 4.48 (s, 2H), 3.43-3.35 (m, 4H), 3.23 (s, 3H), 1.44-1.33 (m, 9H)
【0093】
工程5:t-ブチル {[6-[7-(4-アミノ-2-フルオロフェノキシ)チエノ[3,2-b]ピリジン-2-イル]ピリジン-3-イル]メチル}(2-メトキシエチル)カルバメートの合成
【化40】
工程4で製造した化合物(1.2g、2.16mmol)をエタノールおよび水に溶解し、次いで、鉄(363mg、6.49mmol)および塩化アンモニウム(1.16g、21.64mmol)を室温で順次加えた。得られたものの温度を100℃に上昇し、3時間撹拌を行った。反応終了後、セライトパッドを用いて温かい状態でろ過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をジクロロメタンで抽出した。分離した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した後、ジエチルエーテルでろ過して、表題の化合物(833mg、収率:73%、オフホワイトの固体)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 8.51-8.49 (m, 2H), 8.30 (s, 1H), 8.24 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.78 (dd, J = 10.0 and 5.0 Hz, 1H), 7.13 (t, J = 10.0 Hz, 1H), 6.60 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.53 (dd, J = 15.0 and 5.0 Hz, 1H), 6.45 (dd, J = 10.0 and 5.0 Hz, 1H), 5.55 (s, 2H), 4.48 (s, 2H), 3.43-3.33 (m, 4H), 3.23 (s, 3H), 1.44-1.34 (m, 9H)
【0094】
工程6:t-ブチル [(6-{7-[4-(4-エトキシ-2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド)-2-フルオロフェノキシ]チエノ[3,2-b]ピリジン-2-イル}ピリジン-3-イル)メチル](2-メトキシエチル)カルバメート
【化41】
製造例2の4-エトキシ-2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸(0.57g、2.2mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(0.42g、2.2mmol)、およびヒドロキシベンゾトリアゾール(0.3g、2.2mmol)をジクロロメタンに溶解し、次いで、トリエチルアミン(0.22g、2.2mmol)、および工程5で製造した化合物(0.58g、1.1mmol)を順次加えた。室温で24時間以上、撹拌を行った。飽和重炭酸ナトリウム水溶液で反応を停止し、ジクロロメタンで抽出した。次に、分離した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題の化合物(0.69g、収率:82%、オフホワイトの固体)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.64 (brs, 1H), 8.52-8.51 (m, 2H), 8.33 (s, 1H), 7.95 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.87 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.79 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.56-7.40 (m, 8H), 6.71 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.52 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 4.48 (s, 2H), 4.27 (qt, J = 7.5 Hz, 2H), 3.43-3.36 (m, 4H), 3.23 (s, 3H), 1.14-1.30 (m, 12H)
【0095】
工程7:4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の合成
【化42】
工程6で製造した化合物(0.69g、0.9mmol)に、10mLの4M塩酸の1,4-ジオキサン液を加え、室温で1時間以上撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、少量のエタノールに溶解し、ジエチルエーテルを加えた。得られた固体をろ過し、乾燥して、表題の化合物(0.61g、収率:96%、オフホワイトの固体)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.70 (brs, 1H), 9.50 (brs, 2H), 8.80 (s, 1H), 8.69 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.47 (s, 1H), 8.44 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.22 (dd, J = 10.0 and 5.0 Hz, 1H), 7.99 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.88 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.57-7.40 (m, 7H), 6.97 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.53 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 4.29-4.25 (m, 4H), 3.65 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.31 (s, 3H), 3.16-3.12 (m, 2H), 1.31 (t, J = 5.0 Hz, 3H)
【0096】
実施例13:4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の製造
工程6の出発物質として、製造例1の4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸を用いたことを除いて、実施例12の合成経路に従って製造を行い、表題の化合物(収率:52.8%)を得た。
【化43】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.67 (br s, 1H), 9.32 (br s, 2H), 8.78 (s, 1H), 8.62 (d, J=5.0Hz, 1H), 8.46 (s, 1H), 8.41 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 8.18 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.99-7.96 (m, 1H), 7.90-7.88 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.53-7.39 (m, 6H), 6.86 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.55 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 4.30-4.26 (m, 4H), 3.64 (m, 2H), 3.33 (s, 3H), 3.19-3.14 (m, 2H), 1.32 (t, J = 5.0 Hz, 3H)
【0097】
実施例14:N-(3-クロロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-4-メトキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の製造
工程6の出発物質として、製造例3の1-(4-フルオロフェニル)-4-メトキシ-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸を用い、工程4で2-フルオロ-4-ニトロフェノールの代わりに2-クロロ-4-ニトロフェノールを用いたことを除いて、実施例12の合成経路に従って製造を行い、表題の化合物(収率:88.6%)を得た。
【化44】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.72 (brs, 1H), 9.44 (brs, 2H), 8.79 (s, 1H), 8.65 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.45 (s, 1H), 8.42 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 8.21-8.17 (m, 2H), 7.92 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.70 (dd, J = 10.0 and 5.0 Hz, 1H), 7.54 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.49-7.36 (m, 4H), 6.84 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.56 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 4.27 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.94 (s, 3H), 3.65 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.31 (s, 3H), 3.16-3.12 (m, 2H)
【0098】
実施例15:4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-1-(3-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の製造
工程6の出発物質として、製造例7の4-エトキシ-1-(3-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸を用いたことを除いて、実施例12の合成経路に従って製造を行い、表題の化合物(収率:73.5%)を得た。
【化45】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.70(s, 1H), 9.47(brs, 2H), 8.79(s, 1H), 8.66(d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.46(s, 1H), 8.43(d, J = 10.0 Hz, 1H), 8.21(dd, J = 10.0 Hz and 5.0 Hz, 1H), 7.98(d, J = 15.0 Hz, 1H), 7.91(d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.61-7.53(m, 3H), 7.39-7.33(m, 2H), 7.28(d, J = 10.0 Hz, 1H), 6.93(d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.55(d, J = 5.0 Hz, 1H), 4.30-4.26(m, 4H), 3.65(t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.31(s, 3H), 3.16-3.12(m, 2H), 1.30(t, J = 5.0 Hz, 3H)
【0099】
実施例16:N-(3-フルオロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-4-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の製造
工程6の出発物質として、製造例8の4-メチル-2-オキソ-1-(4-フルオロフェニル)-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸を用いたことを除いて、実施例12の合成経路に従って製造を行い、表題の化合物(収率:67.4%)を得た。
【化46】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.95 (s, 1H), 9.24 (brs, 2H), 8.75 (s, 1H), 8.58 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.44 (s, 1H), 8.39 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 8.14 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.98 (d, J = 15.0 Hz, 1H), 7.75 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.53-7.49 (m, 4H), 7.41-7.37 (m, 2H), 6.79 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.38 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 4.27 (t, J = 5.0 H, 2H), 3.63 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.17-3.13 (m, 2H), 2.31 (s, 3H)
【0100】
実施例17:4-エトキシ-N-(3-フルオロ-4-{[2-(5-{[(2-メトキシエチル)(メチル)アミノ]メチル}ピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシ}フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩
【化47】
実施例13の化合物を1mLのメタノールに溶解し、ホルムアルデヒド(0.02mL、0.28mmol)を滴下して加えた。撹拌を1時間行った。次に、ナトリウムシアノヒドリド(12mg、0.19mmol)を加え、12時間撹拌した。反応終了後、得られたものをジクロロメタンで抽出し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、その後、0.2mLの4M塩酸の1,4-ジオキサン液を用いて、表題の化合物(17.5mg、収率:50.5%、オフホワイトの固体)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.67 (s, 1H), 10.51 (brs, 1H), 8.80 (s, 1H), 8.60 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.48 (s, 1H), 8.43 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 8.21 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.96 (d, J = 15.0 Hz, 1H), 7.88 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.52-7.45 (m, 4H), 7.39-7.36 (m, 2H), 6.83 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.53 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 4.51-4.36 (m, 2H), 4.27 (q, J = 5.0 Hz, 2H), 3.73 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.38-3.29 (m, 2H), 3.32 (s, 3H), 2.75 (d, J = 5.0 Hz, 3H)
【0101】
実施例18:4-エトキシ-N-[3-フルオロ-4-({2-[5-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル]チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル}オキシ)フェニル]-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の製造
工程1:N-[4-({2-[5-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン-2-イル]チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル}オキシ)-3-フルオロフェニル]-4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミドの合成
【化48】
出発物質として、国際公開WO2009/026717の製造方法により容易に製造可能な、4-({2-[5-(1,3-ジオキソラン-2-イル)ピリジン-2-イル]チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル}オキシ)-3-フルオロアニリンを用い、実施例12の工程6と同様の方法で反応を進行させることにより、表題の化合物(135mg、収率:64%、オフホワイトの固体)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.63 (s, 1H), 8.70 (s, 1H), 8.52 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.41 (s, 1H), 8.32 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.99 (dd, J = 10.0 and 5.0 Hz, 1H), 7.94 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.87 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.50-7.45 (m, 4H), 7.39-7.35 (m, 2H), 6.71 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.52 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 5.90 (s, 1H), 4.27 (qt, J = 5.0 H, 2H), 4.12-4.07 (m, 2H), 4.04-3.99 (m, 2H), 1.31 (t, J = 5.0 Hz, 3H)
【0102】
工程2:4-エトキシ-N-{3-フルオロ-4-[2-(5-ホルミルピリジン-2-イル)チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル]オキシフェニル}-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミドの合成
【化49】
工程1で製造した化合物(100mg、0.15mmol)をアセトンと水の混合溶液に溶解し、次いで、2mLのトリフルオロ酢酸を室温で滴下して加えた。60℃で12時間、撹拌を行った。得られたものを室温に冷却し、得られた固体を減圧下でろ過した。次に、得られたものを水およびジエチルエーテルで洗浄し、乾燥して、表題の化合物(82mg、収率:88%、オフホワイトの固体)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.64 (s, 1H), 10.14 (s, 1H), 9.15 (s, 1H), 8.59-8.58 (m, 2H), 8.52 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.39 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.95 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.87 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.51-7.45 (m, 4H), 7.39-7.36 (m, 2H), 6.78 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.53 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 4.27 (qt, J = 5.0 H, 2H), 1.31 (t, J = 5.0 Hz, 3H)
【0103】
工程3:4-エトキシ-N-[3-フルオロ-4-({2-[5-(ヒドロキシメチル)ピリジン-2-イル]チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル}オキシ)フェニル]-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミドの合成
【化50】
工程2で製造した化合物(82mg、0.13mmol)を1,2-ジクロロエタンに溶解し、次いで、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(83mg、0.39mmol)を加えた。室温で12時間、撹拌を行った。飽和重炭酸ナトリウム水溶液で反応を停止し、ジクロロメタンで抽出した。次に、得られたものを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題の化合物(53mg、収率:64%、白色の固体)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.63 (s, 1H), 8.58 (s, 1H), 8.51 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.33 (s, 1H), 8.25 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.94 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.89-7.86 (m, 2H), 7.50-7.45 (m, 4H), 7.39-7.36 (m, 2H), 6.69 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.52 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 5.43 (t, J = 5.0 Hz, 1H), 4.59 (d, J = 5.0 Hz, 2H), 4.27 (qt, J = 5.0 H, 2H), 1.31 (t, J = 5.0 Hz, 3H)
【0104】
工程4:N-[4-({2-[5-(クロロメチル)ピリジン-2-イル]チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル}オキシ)-3-フルオロフェニル]-4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミドの合成
【化51】
工程3で製造した化合物(296mg、0.49mmol)をジクロロメタンに溶解し、次いで、塩化チオニル(0.07mL、0.97mmol)を加えた。室温で3時間、撹拌を行った。0℃の飽和重炭酸ナトリウム水溶液で反応を停止し、ジクロロメタンで抽出した。得られたものを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して、表題の化合物(240mg、収率:78%、黄色の固体)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.63 (s, 1H), 8.72 (s, 1H), 8.52 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.40 (s, 1H), 8.32 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 8.04 (dd, J = 10.0 and 5.0 Hz, 1H), 7.94 (d, J = 15.0 Hz, 1H), 7.87 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.50-7.46 (m, 4H), 7.39-7.36 (m, 2H), 6.71 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.53 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 4.88 (s, 2H), 4.27 (qt, J = 5.0 H, 2H), 1.31 (t, J = 5.0 Hz, 3H)
【0105】
工程5:4-エトキシ-N-[3-フルオロ-4-({2-[5-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル]チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル}オキシ)フェニル]-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の合成
【化52】
工程4で製造した化合物(40mg、0.06mmol)をアセトニトリルに溶解し、モルホリン(0.01mL、0.12mmol)および炭酸カリウム(13mg、0.09mmol)を加えた。80℃で5時間、撹拌を行った。得られたものを室温に冷却し、減圧下で濃縮した。次いで、ジクロロメタンと少量のメタノールで抽出した。分離した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、その後、0.2mLの4M塩酸の1,4-ジオキサン液を用いて、表題の化合物(16.6mg、収率:30%、オフホワイトの固体)を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.66 (s, 1H), 8.81 (s, 1H), 8.60 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.48 (s, 1H), 8.43 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.23 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.96 (d, J = 15.0 Hz, 1H), 7.87 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.52-7.45 (m, 4H), 7.39-7.36 (m, 2H), 6.83 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.53 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 4.44 (s, 2H), 4.26 (qt, J = 5.0 H, 2H), 3.96-3.94 (m, 2H), 3.77 (t, J = 10.0 Hz, 2H), 3.32-3.30 (m, 2H), 3.14 (qt, J = 10.0 2H), 1.31 (t, J = 5.0 Hz, 3H)
【0106】
実施例19:4-エトキシ-N-[3-フルオロ-4-({2-[5-(モルホリノメチル)ピリジン-2-イル]チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル}オキシ)フェニル]-2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の製造
工程1の出発物質として、製造例2の4-エトキシ-2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボン酸を用いたことを除いて、実施例18の合成経路に従って製造を行い、表題の化合物(収率:52.3%)を得た。
【化53】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.66 (s, 1H), 8.80 (s, 1H), 8.58 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.47 (s, 1H), 8.43 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 8.20 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.96 (d, J = 15.0 Hz, 1H), 7.87 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.56-7.47 (m, 5H), 7.43-7.40 (m, 2H), 6.80 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.52 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 4.44 (s, 2H), 4.26 (qt, J = 5.0 H, 2H), 3.97-3.95 (m, 2H), 3.74 (t, J = 10.0 Hz, 2H), 3.33-3.30 (m, 2H), 3.14 (qt, J = 10.0 2H), 1.31 (t, J = 5.0 Hz, 3H)
【0107】
実施例20:4-エトキシ-N-{3-フルオロ-4-[(2-{5-[(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル]ピリジン-2-イル}チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル)オキシ]フェニル}-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の製造
工程5でモルホリンの代わりにN-メチルピペラジンを用いたことを除いて、実施例18の合成経路に従って製造を行い、表題の化合物(収率:22.2%)を得た。
【化54】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.67 (s, 1H), 8.81 (brs, 1H), 8.60 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.46 (s, 1H), 8.41 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 8.20 (s, 1H), 7.96 (d, J = 15.0 Hz, 1H), 7.87 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.52-7.45 (m, 4H), 7.39-7.36 (m, 2H), 6.84 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.53 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 4.26 (qt, J = 5.0 H, 2H), 4.07 (brs, 8H), 3.56 (brs, 2H), 2.80 (s, 3H), 1.31 (t, J = 5.0 Hz, 3H)
【0108】
実施例21:4-エトキシ-N-{3-フルオロ-4-[(2-{5-[(4-メチルピペラジン-1-イル)メチル]ピリジン-2-イル}チエノ[3,2-b]ピリジン-7-イル)オキシ]フェニル}-2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド塩酸塩の製造
工程5でモルホリンの代わりにN-メチルピペラジンを用いたことを除いて、実施例18の合成経路に従って製造を行い、表題の化合物(収率:31.4%)を得た。
【化55】
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6) δ 10.68 (s, 1H), 8.82 (brs, 1H), 8.61 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.47 (s, 1H), 8.41 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 8.23 (s, 1H), 7.97 (d, J = 15.0 Hz, 1H), 7.87 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.56-7.46 (m, 5H), 7.42-7.40 (m, 2H), 6.86 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.52 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 4.26 (qt, J = 5.0 H, 2H), 3.93 (brs, 8H), 3.58 (brs, 2H), 2.81 (s, 3H), 1.31 (t, J = 5.0 Hz, 3H)
【0109】
さらに、以下の公知の化合物を比較のために使用した。
比較例1
US8,536,200B2の化合物1、N-{4-[(2-アミノ-3-クロロ-4-ピリジニル)オキシ]-3-フルオロフェニル}-4-エトキシ-1-(4-フルオロフェニル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-3-ピリジンカルボキサミド;比較例1の化合物は、RON阻害剤として知られているBMS-777607である。
【0110】
比較例2
US8,088,794B2の実施例73の化合物、N-(3-フルオロ-4-(7-メトキシキノリン-4-イルオキシ)フェニル)-1-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-5-エチル-3-オキソ-2-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド。
【0111】
比較例3
US8,030,302B2の実施例1の化合物、N-(3-フルオロ-4-(1-メチル-6-(1H-ピラゾール-4-イル)-1H-インダゾール-5-イルオキシ)フェニル)-1-(4-フルオロフェニル)-6-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-カルボキサミド。
【0112】
実験例1.RON活性阻害アッセイ:実施例1および5
酵素反応を、RON酵素の基質として機能する、2ng/uLの250uMのG4Y1ペプチド、および50μMのATPを含むアッセイ緩衝液(40mMのトリス-HCl、pH7.5、20mMのMgCl2、0.1mg/mLのウシ血清アルブミン、50uMのDTT)を用いて行った。得られたものを、実施例および比較例で製造した化合物で濃度を変えて処理し、室温で1時間、反応を進行させた。その後、ADP-Glo(商標)試薬およびキナーゼ検出試薬を順次添加し、室温でそれぞれ40分および30分、反応させた。
続いて、Wallaac Victor 2TM(PerkinElmer Life Sciences、1420-042)を使用して発光を測定した。データは、RON阻害剤の活性を確認するために測定したRLU値を用いて分析した。化合物で処理されていないサンプルのRLU値を100%対照(control)として設定し、RON阻害活性を、試験された濃度で化合物により処理されたサンプル中のRON酵素の残留活性のパーセンテージとして評価した。対照と比較して50%のRON酵素活性阻害が起こる化合物の濃度を、RON阻害剤のIC50値(nM)として求めた。結果を表1に示す。
【0113】
【0114】
実験例2.RON活性阻害能アッセイ:実施例12~21
チエノピリジン誘導体の酵素活性阻害能(IC50)は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)技術を用いて測定した。
RONキナーゼ(カルナバイオサイエンス)を、キナーゼアッセイ緩衝液(50mM HEPES pH7.5、1mMのEGTA、10mMのMgCl2、2mMのDTT、および0.01%のTween-20)で、最終反応濃度の2倍(0.4nM)の濃度に希釈し、希釈液を5μL/ウェルで384ウェルプレートに加えた。
サンプル化合物として、本発明の実施例で合成した化合物および比較例の化合物を使用した。サンプル化合物をそれぞれ100%DMSOに溶解し、1mMのストック溶液を得て、これを8回の10倍段階希釈にかけた。各サンプル化合物を、最終反応濃度の4倍の濃度にキナーゼアッセイ緩衝液で希釈し、次いで希釈液を2.5μL/ウェルで384ウェルプレートに加えた。続いて、プレートを室温で15分間インキュベートした。
次に、0.25M濃度で調製したATP溶液(シグマアルドリッチ)を、キナーゼ反応緩衝液で、最終反応濃度の4倍(60μM)の濃度に希釈し、チロシンペプチド基質(パーキン-エルマー)を、最終反応濃度の4倍(400nM)の濃度に希釈した。希釈液を2.5μL/ウェルで384ウェルプレートに加えた。次に、384ウェルプレートを室温でインキュベートし、反応を60分間進行させた。60分後、EDTA(シグマアルドリッチ)を、TR-FRET検出緩衝液(パーキン-エルマー)で、最終反応濃度の4倍(40mM)の濃度に希釈した。
ユーロピウム含有抗ホスホチロシン抗体(パーキン-エルマー)をEDTA希釈溶液で最終反応濃度の4倍(8nM)の濃度に希釈し、RONキナーゼ反応の停止溶液を調製した。調製した停止溶液を384ウェルプレートに10μL/ウェルで加えて反応を停止させ、次いで、プレートを室温で60分間インキュベートした。60分後、プレートをVictor X5プレートリーダー(パーキン-エルマー)で測定した。このとき、励起波長は340nm、発光波長は620nmおよび665nm、とした。サンプル化合物のIC50値は、GraphPad Prism(商標)5を用いて、665nmでの発光エネルギーをサンプル化合物の濃度の関数として表してIC50値を計算することで、算出した。結果を表2に示す。
【0115】
【表2】
表2に示すように、実施例の化合物は、RONチロシンキナーゼ酵素に対して非常に優れた阻害効果を有する。
【0116】
実験例3.細胞増殖阻害アッセイ:実施例1~11
本発明の化合物が、細胞外シグナル調節キナーゼ活性の阻害を介して癌細胞増殖阻害効果を有するかどうかを確認するために、MTSエッセイを行った。
以下のアッセイは、ヒト胃癌細胞株であるMKN45細胞株(活性RONを発現する細胞株)で実施した。MKN45細胞株を、10%FBSを含むRPMI-1640培地(Gibco、Invitrogen)を含む96ウェルプレートに、5,000細胞/ウェルの濃度で分注し、5%CO2、37℃の条件で、プレートを24時間インキュベートした。次に、各ウェルを、実施例で製造した化合物で、それぞれ10μMの高濃度から段階希釈したもので、処理した。溶媒対照として、各ウェルを、化合物の処理で用いたものと同じ濃度(%(V/V))のジメチルスルホキシド(DMSO)で処理した。その後、各細胞を48時間インキュベートした。
細胞の生存率を確認するために、CellTiter 96 AQuous Non-Radioactive Cell Proliferation Assay Kit(Promega)で提供されるフェナジンメトサルフェート(PMS)とMTSとの混合物を、各培養細胞培地に加えた。インキュベーションをさらに、37℃の条件で2時間30分、行った。次に、490nmで吸光度を測定した。各化合物の処理濃度に応じた細胞増殖阻害度を、化合物で処理されていない溶媒対照の細胞の吸光度に基づいて計算し、癌細胞の増殖を50%阻害する各化合物の濃度をIC50(nM)値として求めた。結果を表3に示す。以下において、Aは<10nM、Bは10~50nM、Cは>50nMを表す。
【0117】
【0118】
実験例4.細胞殺傷効果の測定:実施例12~21
変異体(Δ160)を保有するKM12C(80015、KCLB、MEM+10%FBS)結腸癌細胞を、6ウェルプレートに5×10
4細胞/ウェルで調製した。24時間後、培地交換を行い、細胞を各濃度(1μM、5μM)のサンプル化合物で48時間処理した。
サンプル化合物として、本発明の実施例で合成した化合物および比較例の化合物を使用した。48時間後、細胞懸濁液を収集し、遠心分離(1,500rpm、4分)して細胞を採取し、トリパンブルー(15250-061、Gibco)排除アッセイによって、生細胞および死細胞を定量した(n=2)。統計分析は、マイクロソフトのExcel(商標)のT検定を使用して行った。比較例1~3および実施例1の化合物の細胞死(%)を測定した結果を
図1に示す。さらに、実施例および比較例の化合物の細胞死をそれぞれ測定し、比較例1と比較した比率として、その結果を表4に示す。
【0119】
【表4】
表4および
図1に示すように、実施例の化合物は、従来の化合物と比較して、RON変異体(Δ160)を保有する結腸癌細胞株(KM12C)において比較的高い抗癌効果を示す。
【0120】
実験例5.MTSアッセイを用いた細胞毒性の確認
薬剤の特異的な細胞毒性を確認するために、培養細胞を0.05%トリプシン/EDTA(0.5%トリプシンEDTA(10X)、製品番号:15400-054、Gibco)で処理して培養皿から剥がし、3,000細胞(KM12C)または2,000細胞(HT29、Colo320HSR)を各ウェルに分注した。24時間後、サンプル化合物を溶媒としてDMSO(製品番号:D8418-250ML、SIGMA)に溶解し、10mMのストック溶液を調製し、これを希釈して使用した。サンプル化合物として、本発明の実施例で合成した化合物および比較例の化合物を使用した。ストック溶液をそれぞれDMSOで、10mMから開始して1/10倍していく8つの濃度(KM12Cの場合)に、および10mMから開始して1/2倍していく9つの濃度(HT29の場合)に、希釈した。希釈した薬剤は、最高濃度に基づくと100μMの濃度となった。細胞を薬剤で処理し、次いで、5%CO2インキュベーターで、37℃で72時間、インキュベートした。
72時間後、20μLのMTS溶液(CellTiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay、製品番号:G3581、Promega)を各ウェルに分注し、よく混合した。次いで、5%CO2インキュベーターにおいて、37℃で1~4時間、インキュベーションを行った。次いで、Victor X5プレートリーダー(Perkin-Elmer)を用いて、波長490nmで吸光度を測定し、IC50値を計算した。結果を表5に示す。
【0121】
【表5】
表5に示すように、従来の化合物と比較して、実施例の化合物は、RON変異体(Δ160)を保有する結腸癌細胞株(KM12C)において、比較的高い抗癌効果を示す。
【0122】
実験例6.RON変異体(Δ160)を保有するKM12Cにおける実施例18の効果の分析
実施例18および比較例1のMTSアッセイにおいて、KM12C細胞を、1ウェルあたり1,000細胞で96ウェルプレートに播種した。24時間後、細胞を、さまざまな濃度(0.000001μM~10μM)の実施例18および比較例1を含む、10%FBS-MEM培地(Welgene)により、1ウェルあたり100μlで処理した。次いで、細胞を72時間インキュベートした。次に、20μlのMTS溶液(Promega)を加え、インキュベーションを2時間行った。次に、490nmで吸光度を測定した。実施例18及び比較例1のIC50値をGraphPad Prism(商標)5を用いて計算し、細胞毒性を調べた。
実施例18および比較例1の細胞死誘導能を、セツキシマブ耐性細胞株であるRON変異体(Δ160)を有するKM12C、およびRONを発現しない細胞株であるColo320HSR細胞株において、測定した。2つの結腸癌細胞株を、それぞれ、2×105個の細胞で、60mmのプレート上に播種した。24時間後、培地交換を行い、細胞を各濃度(1μM、5μM)のサンプル化合物で48時間処理した。48時間後、細胞および細胞懸濁液を収集し(1,500rpm、3分)、トリパンブルー(15250-061、Gibco)排除アッセイによって、生細胞および死細胞を定量した(n=2)。
実施例18および比較例1の細胞殺傷効果を分析し、次いで、細胞を収集した。ウエスタンブロッティングを実施して、活性RONに対する実施例18の阻害能力を確認した。溶解のため、RIPA溶解バッファー(T&I)を各細胞に加えた。次いで、BCAキット(Pierce)を用いてタンパク質を定量した。タンパク質を、タンパク質濃度40μgで6%SDS-ポリアクリルアミドにロードし、電気泳動を125Vで行った。
電気泳動で分離したタンパク質を、転写バッファー(20%メタノール、25mMのトリスHCl、192mMのグリシン)を用いて、270mAで90分間、PVDFメンブレン(Millipore)に転写し、5%無脂肪スキムミルク-TBST溶液で1時間、ブロッキングを行った。次いで、タンパク質を、5%無脂肪スキムミルク-TBST溶液で1:1,000に希釈した一次抗体(活性RON、ベータアクチン)で、4℃で24時間または48時間、反応させた。その後、TBSTによる洗浄を3回行った。得られたものを、1:1,000に希釈した抗ウサギおよび抗マウスIgG結合ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)二次抗体で、室温で2時間、反応させた。その後、TBSTによる洗浄を3回行った。次いで、メンブレンをECL溶液(GE Healthcare)で処理し、X線フィルムに曝露して現像した。その後、バンドをチェックした。
【0123】
結果は、表6、表7、および
図2に示すとおりである。
【表6】
比較例:BMS777607
【表7】
表6、表7、および
図3により、セツキシマブ耐性細胞株である、RON変異体(Δ160)を保有して活性RONを発現するKM12Cを、実施例18で処理した場合に、細胞殺傷効果が観察されることが示された。実施例18のRONキナーゼアッセイの結果から、実施例18は、比較例1と比較して、キナーゼに対して高い阻害効果を示すことが分かった。MTSアッセイによる比較分析の結果、実施例18は、6.9nMの高い細胞増殖阻害効果を示すことが確認された。
上記の結果に見られるように、RONネガティブのColo320HSRの場合、薬剤との反応性は観察されなかった。さらに、活性RONを発現する細胞株であるKM12Cを実施例18で処理した場合、比較例1と比較して、細胞殺傷効果が観察された。ここで、ウエスタンブロッティングにより、活性RONの発現が減少することが確認された(
図2)。
【0124】
実験例7.RON変異体のキナーゼアッセイ
RON変異体と置き換え可能な方法として、各変異体(Δ160、Δ155)を、RON陰性細胞株であるColo320HSRに導入し、細胞を各濃度の実施例18および比較例1で処理した。次に、免疫沈降およびウエスタンブロッティングによって、活性RONの発現が減少するかどうかを確認した。詳細な方法は以下のとおりである。RON陰性Colo320SHR結腸癌細胞株に、リポフェクタミン2000(Invitrogen、cat#11668-019)を用いて、RONΔ160およびRONΔ155のそれぞれ12ugを導入した。同じ導入(transfection)効率のために、24時間後、形質転換された株を60mmディッシュに分注した。導入後48時間に、比較例1および実施例18の薬剤による処理を、用量依存的にそれぞれ行った。薬剤処理の2時間後、細胞を収集し、PBSで洗浄した。次に、洗浄した細胞をRIPA溶解バッファー(T&I、cat#BRI-9001)で溶解した。
タンパク質濃度を、ブラッドフォード法(BioRad、cat#5000205)を用いて定量化した。次いで、500ugのタンパク質、および1ugのmyc抗体(Cell Signaling Technology、Inc.、cat#2276)をRIPAバッファーと混合し、4℃で一晩、反応させた。免疫沈降した溶液に、20μlのプロテインGアガロースビーズ(Santa Cruz Biotechnology、sc-2002)を加えた。次に、スターラーを用いて、反応を4℃で2時間進行させた。RIPAバッファーにより洗浄を5回行った。その後、20μlの2XSDSサンプルバッファーを添加し、100℃で5分間反応を進行させた。
SDS-PAGEを用いて電気泳動を行った後、タンパク質をPVDFメンブレンに転写した。次いで、ホスホチロシン抗体(Cell Signaling Technology、Inc.、cat#9411)、およびmyc抗体(Cell Signaling Technology、Inc.、cat#2276)を、5%スキムミルクTBS-T(T&I、cat#BTT-9120)溶液で、それぞれ1:1,000に希釈し、4℃で一晩反応させた。TBS-T溶液による洗浄を、それぞれ10分間、3回行った。次に、抗マウスHRP抗体(Cell Signaling Technology、Inc.、cat#7076)を、5%スキムミルク含有1XTBS-T溶液で、1:2,000に希釈し、室温で2時間反応させた。1X TBS-T溶液による洗浄を3回行った後、ECL溶液(GE Healthcare、cat#RPN2108)を使用してフィルムを現像した。現像したフィルムをImage-Jを用いたデンシトメトリーで分析した後、Graphpad Prism(GraphPad Software、Inc.)を用いて、IC
50を計算した。
その結果、比較例1と比較して、実施例18で処理した群では、薬剤処理による急激な減少が観察された(
図3および
図4)。これらの結果に基づき、RON活性の程度に基づくIC
50値を計算した。その結果、実施例18は、比較例1と比較して、高い阻害効果を示すことが確認された。
【0125】
実験例8.Colo320HSR細胞株におけるRON変異体(mt#1:Δ160、mt#2:Δ155)の過剰発現後の薬剤効果の分析
RON変異体の効果の分析を、RON変異体を過剰発現させ、ウエスタンブロッティングにより細胞死誘導能を確認することにより行った。Colo320HSR細胞株を100mmプレートに播種し、次いで、トランスフェクション溶液(Polyplus)を用いて、RON変異体#1(Δ160)またはRON変異体#2(Δ155)を発現するベクターを細胞株に導入した。24時間後、細胞株を60mmのプレートに2×10
5細胞で播種した。24時間後、培地交換を行い、細胞を、各濃度(1μM、5μM)の実施例18で、48時間処理した。
48時間後、細胞および細胞懸濁液を収集し(1,500rpm、3分間)、生細胞と死細胞をトリパンブルー排除アッセイによって定量した(n=2)。次いで、活性RONの阻害能および細胞死誘導能をウエスタンブロッティングによって確認するために、残存する細胞を収集し、RIPA溶解バッファー(T&I)を各細胞に添加して細胞を溶解した。次に、タンパク質をBCAキット(Pierce)で定量した。タンパク質を、タンパク質濃度40μgで8%または15%SDS-ポリアクリルアミドにロードし、電気泳動を125Vで行った。電気泳動で分離したタンパク質を、転写バッファー(20%メタノール、25mMのトリスHCl、192mMのグリシン)を用いて、270mAで90分間、PVDFメンブレン(Millipore)に転写し、5%無脂肪スキムミルク-TBST溶液で1時間、ブロッキングを行った。
その後、タンパク質を、5%無脂肪スキムミルク-TBST溶液で1:1,000に希釈した一次抗体(活性RON、切断カスパーゼ3、ベータアクチン)で、24時間または48時間、反応させた。次いで、TBSTによる洗浄を3回行った。得られたものを、1:1000に希釈した抗ウサギおよび抗マウスIgG結合ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)二次抗体で、室温で2時間反応させた。次に、TBSTによる洗浄を3回行った。その後、メンブレンをECL溶液(GE Healthcare)で処理し、X線フィルムに曝露して現像した。その後、バンドをチェックした。
その結果、RON陰性でKRAS wtである細胞株であるColo320SHRに、リポフェクタミン2000を用いて、RON変異体#1(Δ160)またはRON変異体#2(Δ155)が導入され、実施例18の薬剤の効果が分析された。細胞を各濃度の実施例18で処理し、48時間後に収集した。細胞死を、トリパンブルー排除アッセイによって確認した。その結果、RON変異体が導入された群では、各濃度での細胞死誘導が観察された(
図5)。ここで、タンパク質発現の変化をウエスタンブロッティングで分析した。その結果、活性RONは発現レベルの低下を示し、切断カスパーゼ3は発現レベルの増加を示すことが確認された(
図6)。
【0126】
実験例9.RON変異体(Δ160)を保有するKM12C細胞株における実施例18の作用機構の分析
KM12C細胞株を、100mmプレートに5×10
5細胞で播種した。24時間後、細胞を、48時間、各濃度(1μM、5μM)の実施例18で処理した。48時間後、細胞および細胞懸濁液を収集し(1,500rpm、3分)、関連するタンパク質の発現の変化をウエスタンブロッティングで確認した。溶解させるため、RIPA溶解バッファー(T&I)を各細胞に加えた。次いで、BCAキット(Pierce)を用いてタンパク質を定量した。次に、タンパク質を8%SDS-ポリアクリルアミドにロードし、電気泳動を125Vで行った。
電気泳動で分離したタンパク質を、転写バッファー(20%メタノール、25mMのトリスHCl、192mMのグリシン)を用いて、270mAで90分間、PVDFメンブレン(Millipore)に転写した。次いで、5%無脂肪スキムミルク-TBST溶液で1時間ブロッキングを行った。次に、タンパク質を、5%無脂肪スキムミルク-TBST溶液で1:1,000に希釈した一次抗体で、4℃で24時間または48時間、反応させた。その後、TBSTによる洗浄を3回行った。得られたものを、1:1,000に希釈した抗ウサギおよび抗マウスIgG結合HRP二次抗体で、室温で2時間、反応させた。その後、TBSTによる洗浄を3回行った。次いで、メンブレンをECL溶液(GE Healthcare)で処理し、X線フィルムに曝露して現像した。その後、バンドをチェックした。
その結果、セツキシマブ耐性細胞株であるRON変異体(Δ160)を保有して活性RONを発現するKM12Cは、各濃度の実施例18で処理され、関連タンパク質の発現の変化がウエスタンブロッティングで確認された。その結果、活性RONが減少し、そして、p-ERK、p-Src、p-Akt、およびp-Gab1が減少することが確認された(
図7)。
【0127】
実験例10.KM12C細胞株を移植した動物モデルにおける腫瘍増殖阻害効果の確認
5週齢の雌BALB/cヌードマウスを購入し、1週間順応させた。その後、ヒト由来結腸癌細胞株KM12C(1.5×10
6細胞/マウス)(活性RON/RON変異(Δ160)発現細胞株)をPBSで希釈し、マウスの右背部に皮下注射(100μl)した。腫瘍が約100mm
3のサイズに達したときに、比較例1および実施例18を経口投与した。薬剤を1日1回2週間投与し、腫瘍のサイズと体重を週2回測定した。その結果、薬剤投与による腫瘍増殖阻害効果が、実施例18を摂取した群で観察された(
図8)。さらに、薬剤投与の終了後、実験動物を屠殺し、腫瘍を摘出して秤量した。その結果、ビヒクル群と比較して、実施例18の処置群では腫瘍重量の減少が観察された(
図9)。ここで、マウスの体重に変化がないことが確認された(
図10)。
さらに、摘出した腫瘍組織の一部を10%ホルマリンで固定し、パラフィンブロックを作製した。次に、免疫化学染色により各タンパク質の発現の変化を確認した。その結果、実施例18を摂取した群では、活性RONおよびp-ERKの発現が減少するのに対し、切断カスパーゼ3の発現が誘導されることが確認された(
図11)。ビヒクル群および5mpk(mg/kg)処置群から腫瘍組織を収集し、タンパク質発現の変化をウエスタンブロッティングによって比較した。その結果、活性RONは発現レベルの低下を示し、切断カスパーゼ3は発現レベルの上昇を示すことが確認された(
図12)。
【0128】
実験例11.KM12C細胞株を移植した動物モデルにおける実施例18の有効性分析
5週齢の雌BALB/cヌードマウスを購入し、1週間順応させた。次に、ヒト由来結腸癌細胞株KM12C(1.5×10
6細胞/マウス)をPBSで希釈し、マウスの右背部に皮下注射(100μl)した。腫瘍が約100mm
3のサイズに達したときに、比較例1および実施例18を経口投与した。薬剤を30mpkおよび50mpkで1日1回2週間投与し、腫瘍のサイズと体重を週2回測定した。その結果、比較例1および実施例18の両方が非常に高い腫瘍増殖阻害効果を示すことが確認された(
図13と
図14、および表8)。ここで、マウスの体重にほとんど変化がないことが確認された(
図15)。薬剤投与の終了後、実験動物を屠殺し、次に腫瘍を摘出し、秤量して比較分析を行った。その結果、高い腫瘍増殖阻害(TGI)効果が、比較例1と比較して、薬剤投与群において観察された。
【表8】
【0129】
実験例12.KM12C細胞株を移植した動物モデルにおける有効用量濃度の確認
5週齢の雌BALB/cヌードマウスを購入し、1週間順応させた。次に、ヒト由来結腸癌細胞株KM12C(1.5×10
6細胞/マウス)をPBSで希釈し、マウスの右背部に皮下注射(100μl)した。腫瘍が約100mm
3のサイズに達したときに、実施例18を各用量で経口投与した。薬剤を1日1回2週間投与し、腫瘍のサイズと体重を週2回測定し、比較分析を行った。薬剤投与の終了後、実験動物を屠殺し、腫瘍を摘出し、秤量して比較分析を行った。
その結果、腫瘍の増殖が濃度依存的に抑制されることが確認された(
図16)。ここで、腫瘍組織のサイズと重量も投与濃度とともに減少することが確認された。これらの結果から、有効用量濃度は5.214mpkであることが確認された(
図17)。
【0130】
実験例13.結腸癌患者の組織の腫瘍細胞を移植した動物モデルにおける実施例18の有効性分析
5週齢の雌BALB/cヌードマウスを購入し、1週間順応させた。次に、結腸癌患者由来の癌組織をマウスの右背部に移植した。腫瘍が約100mm
3のサイズに達したときに、実施例18を経口投与した。薬剤を1日1回4週間投与し、腫瘍のサイズと体重を週2回測定して、比較分析を行った。薬剤投与の終了後、実験動物を屠殺し、次に腫瘍を摘出し、秤量して比較分析を行った。
その結果、結腸癌患者の腫瘍細胞が移植された動物モデル(RON変異体:Δ160)に実施例18を投与した場合、腫瘍の増殖が阻害されることが確認された。薬剤は毎日経口投与され、使用された用量は50mpkであった。4週間の薬剤投与の結果、腫瘍の増殖が80%以上抑制されることが確認された(
図18)。さらに、薬剤投与の終了後、腫瘍組織を摘出し、秤量して比較分析を行った。その結果、ビヒクルと比較して、腫瘍増殖が約83%抑制されることが確認された(
図19および
図18)。
図19の下の写真は、各群の代表的な個体から摘出した腫瘍を示している。
【0131】
実験例14.結腸癌患者の組織の腫瘍細胞を移植した動物モデルにおける実施例18の有効性分析
結腸癌患者の組織の腫瘍細胞を移植した動物モデルにおけるのと同じ患者の組織(活性RON/RON変異体#1:Δ160)の細胞を移植した動物モデルに、実施例18および比較例1を、30mpkで4週間、投与した。その結果、実施例18を摂取した群は、約73%の腫瘍増殖抑制効果を示すことが確認された(
図20)。一方、比較例1を摂取した群は、実施例18と比較して約18%の低い効果を示すことが確認された(
図21)。
図21の下の写真は、各群の代表的な個体から摘出した腫瘍を示している。
【0132】
実験例15.結腸癌患者由来の細胞株における活性RONの発現に応じた実施例18の有効性分析
次の条件および方法を用いて、本実験を行った。2つのヒト結腸癌由来細胞株(KRAS正常、RON活性および不活性)をREBM(Lonza)培地で培養した。次いで、各細胞株を、24ウェルプレートに5×10
5細胞で播種し、滅菌した12mmφの顕微鏡用カバーガラスを各ウェル上に配置し、インキュベートした。インキュベーション下において、それぞれの結腸癌患者由来細胞株に、各5ugの実施例18および比較例1による処理を施し、48時間インキュベートした。インキュベートした各プレートをPBSで2回洗浄した後、100%メタノールで室温で5分間固定した。
メタノールを除去し、PBSによる洗浄を5分間、3回行った。次に、100μlの0.1%トリトンX-100(PBS中)を分注し、透過処理を5分間行った。PBSによる洗浄を5分間、3回行った後、乾燥を防ぐためにPBSを加えた。パラフィルムを24ウェルプレートカバーに取り付けた後、3%BSAを含むPBS-T(PBS+0.1%ツイーン20)を20μlずつパラフィルムに滴下した。各結腸癌患者由来細胞株を固定したカバーガラスを、細胞が付着している面を下に向けて3%BSA上に置き、室温で30分間ブロッキングを行った。
次いで、パラフィルムを新しい24ウェルプレートカバーに取り付けた。一次抗体(サイトケラチン18、切断カスパーゼ3)を、1%BSAを含むPBS-T(PBS+0.1%ツィーン20)で希釈し、希釈液をパラフィルム上に10uLで滴下した。次に、ブロックされたカバーガラスを、細胞が付着している面を下に向けてその上に置き、4℃で一晩、反応を進行させた。
一次抗体反応終了後の各カバーガラスを、PBS-T(PBS+0.1%ツィーン20)を含む24ウェルプレートに、細胞を付着させた面を上に向けて置き、洗浄を各5分間で3回行った。次いで、新しい24ウェルプレートカバーにパラフィルムを取り付けた。二次抗体(免疫蛍光二次抗体)を、1%BSAを含むPBS-T(PBS+0.1%ツィーン20)で希釈し、希釈液を10ulでパラフィルムに滴下した。次に、細胞が付着している面を下に向けてカバーガラスを置き、室温で2時間反応させた。
二次抗体反応終了後の各カバーガラスを、PBS-T(PBS+0.1%ツィーン20)を含む24ウェルプレートに、細胞が付着している面を上に向けて置き、洗浄を各5分間で3回行った。次いで、1μg/mLのヘキスト染色剤(DAPI)をPBS-T(PBS+0.1%ツィーン20)と混合し、混合物を24ウェルプレートの各ウェルに100ulで添加した。反応を1分間進行させた。次に、PBS-T(PBS+0.1%ツィーン20)で2回洗浄し、蛍光顕微鏡を用いて染色を確認した。その後、5μlのマウント溶液をスライドガラスに滴下して染色を行った。その後、カバーガラスをその上に置き、蛍光顕微鏡を用いて蛍光画像を撮影した。
その結果、結腸癌患者由来細胞株のうち、活性RONを発現する細胞株を実施例18および比較例1で処理した場合、実施例18で処理した群が細胞死誘導効果を示すことが確認された(
図22および
図23)。さらに、活性RONが陰性の場合、薬剤処理による反応性は生じないことが確認された(
図24および
図25)。ここで、サイトケラチン18は結腸癌のマーカーとして使用された。
【0133】
実験例16.結腸癌細胞株のRONバイオマーカー遺伝子の分析
35種のヒト結腸癌細胞株(19種のKRAS正常型、および16種のKRAS変異型)を培養し、収集した。各細胞株を1×106~2×106細胞で、1.5mlチューブに入れ、細胞ペレットを得た。次いで、各サンプルに1mlのTrizolを加え、ピペッティングにより細胞を粉砕した。次に、200μlのクロロホルムを加え、15秒間穏やかに混合した後、室温で3分間反応を進行させた。反応サンプルを12,000×g、4℃で15分間、遠心分離機を用いて遠心分離した。透明な上清を新しい1.5mlチューブに入れた。次に、0.5mlのイソプロパノールを加え、15秒間穏やかに混合した後、室温で10分間反応を進行させた。
反応サンプルを、12,000×g、4℃で1分間、遠心分離機を用いて遠心分離し、チューブの底にある白色のRNAペレットを確認した。次いで、上澄みを除去した。次に、1mlの75%エタノールを加え、ボルテックスミキサーを用いて10秒間混合し、得られたものを、12,000×g、4℃で10分間、遠心分離した。次に、RNAペレットを確認し、上清を除去した。チューブを逆さにし、室温で乾燥させて、液体を除去した。水分を除去したRNAペレットを、50ul~100ulのRNaseフリー水に溶解した。次に、抽出したトータルRNAをナノドロップ装置で測定し、1ugのトータルRNAおよび1ulのオリゴdTを新しいチューブで混合し、ヒートブロックまたは水浴を用いて70℃の温度で5分間反応させた。次に、混合物を氷で冷却した。
cDNA合成キットチューブ(AccuPower CycleScript RT PreMix、BIONEER CORPORATION)を用いて、cDNAを合成した。合成したcDNAについて、RT-PCRのプレミックスキットチューブ(AccuPower Gold Multiplex PCR PreMix、BIONEER CORPORATION)、および、RONのエクソン(exon)5-6(RON d5_6)またはエクソン11(RON d11)の増幅のためのフォワードプライマー(10pmol)およびリバースプライマー(10pmol)を用いて、RT-PCRを行った。その後、増幅生成物を電気泳動し、シーケンシングを行った。
【0134】
【表9】
その結果、
図26に示すように、35種の結腸癌細胞株のうち、RON正常遺伝子(野生型)およびRON活性変異遺伝子(変異型;Δ160、Δ155、Δ165)の割合は次のとおりであることが分析された:RON正常遺伝子を保有する細胞株11(31.4%)、RON活性変異遺伝子を保有する細胞株21(60%)、およびRON遺伝子を発現しない細胞株3(8.6%)。
さらに、KRAS遺伝子型(正常型と変異型)に基づいて分類した場合、19種のKRAS正常細胞株のうち、RON正常遺伝子を保有する細胞株が5(26.3%)、RON活性変異遺伝子を保有する細胞株が11(57.9%)、およびRON遺伝子を発現しない細胞株が3(15.8%)、であることが分析された。16種のKRAS変異型細胞株のうち、RON正常遺伝子を保有する細胞株が6(37.5%)、およびRON活性変異遺伝子を保有する細胞株が10(62.5%)であり、RON遺伝子を発現しない細胞株は見られなかったことが分析された。
【0135】
実験例17.結腸癌患者におけるRONおよびKRASバイオマーカー遺伝子の分析:韓国人患者からの組織
ソウルアサン病院施設内審査委員会(IRB)によって承認された研究計画にしたがい、ソウルアサン病院のバイオリソースセンター(BRC)により提供された韓国人結腸癌患者からの401個のがん組織を、0.5cm
3~1cm
3のサイズにカットし、1.5mlチューブに入れた。これに1mlのTrizolを加え、塊が見えなくなるまで、パワードリル式のホモジナイザーを用いて5~10分間、組織を粉砕した。その後、クロロホルム200μlを加え、15秒間穏やかに混合した後、室温で3分間反応を進行させた。反応サンプルを遠心分離機を用いて、12,000×g、4℃で15分間、遠心分離し、次いで、透明な上清を新しい1.5mlチューブに入れた。これにイソプロパノール0.5mlを加え、15秒間穏やかに混合した後、室温で10分間、反応を進行させた。
cDNA合成キットチューブ(AccuPower CycleScript RT PreMix、BIONEER CORPORATION)を使用して、患者組織のmRNAからcDNAを合成した。合成したcDNAについて、RT-PCRプレミックスキットチューブ(AccuPower Gold Multiplex PCR PreMix、BIONEER CORPORATION)、およびRONエクソン5-6またはエクソン11の増幅のためのフォワードプライマー(10pmol)およびリバースプライマー(10pmol)を用いて、RT-PCRを行った。次に、増幅生成物を電気泳動し、シーケンシングを行った。
その結果、
図27に示すように。、401個の結腸癌患者組織のうち、KRAS正常型および変異型、RON正常遺伝子(野生型)およびRON活性変異遺伝子(変異型;Δ160、Δ155、Δ165)の割合は、次のとおり:262(65.33%)のKRAS正常患者組織、および139(34.67%)のKRAS変異患者組織、であることが確認された。さらに、262のKRAS正常患者組織の中では、110(41.98%)のRON正常遺伝子保有組織、および152(58.02%)のRON活性変異遺伝子保有組織があり、139のKRAS変異患者組織の中では、63(45.32%)のRON正常遺伝子保有組織、および76(54.67%)のRON活性変異遺伝子保有組織があることが、分析された(
図28)。
【0136】
実験例18.結腸癌患者におけるRON変異体の分析:白人患者組織
外国企業(Proteogenex)を通じて購入した白人結腸癌患者からの182個の癌組織を、0.5cm
3~1cm
3のサイズにカットし、1.5mlチューブに入れた。これに1mlのTrizolを加え、塊が見えなくなるまで、パワードリル式のホモジナイザーを用いて5~10分間、組織を粉砕した。その後、クロロホルム200μlを加え、15秒間穏やかに混合した後、室温で3分間反応を進行させた。反応サンプルを遠心分離機を用いて、12,000×g、4℃で15分間、遠心分離し、次いで、透明な上清を新しい1.5mlチューブに入れた。これにイソプロパノール0.5mlを加え、15秒間穏やかに混合した後、室温で10分間、反応を進行させた。
cDNA合成キットチューブ(AccuPower CycleScript RT PreMix、BIONEER CORPORATION)を使用して、患者組織のmRNAからcDNAを合成した。合成したcDNAについて、RT-PCRプレミックスキットチューブ(AccuPower Gold Multiplex PCR PreMix、BIONEER CORPORATION)、およびRONエクソン5-6またはエクソン11の増幅のためのフォワードプライマー(10pmol)およびリバースプライマー(10pmol)を用いて、RT-PCRを行った。次に、増幅生成物を電気泳動し、シーケンシングを行った。
その結果、
図29に示すように、白人患者組織の合計182例においてKRASおよびRON変異体を分析した場合、正常なKRAS患者ではRON変異体が約34.3%の割合で存在することが確認された。さらに、KRAS変異体を保有する患者組織ではRON変異体が約40%の割合で存在することが確認された。図に示すように、各変異体の割合は、Δ160で18.1%、Δ155で9.4%、Δ165で8.2%である(
図30)。
【0137】
実験例19.結腸癌患者の腫瘍細胞を移植した動物モデルからの組織におけるRONおよびKRASバイオマーカー遺伝子の分析
韓国人の結腸癌患者からの癌組織を移植した動物モデルからの5つの癌組織を、0.5cm
3~1cm
3のサイズにカットし、1.5mlチューブに入れた。これに1mlのTrizolを加え、塊が見えなくなるまで、パワードリル式のホモジナイザーを用いて5~10分間、組織を粉砕した。その後、クロロホルム200μlを加え、15秒間穏やかに混合した後、室温で3分間反応を進行させた。反応サンプルを遠心分離機を用いて、12,000g、4℃で15分間、遠心分離した。透明な上清を新しい1.5mlチューブに入れた。これにイソプロパノール0.5mLを加え、15秒間穏やかに混合した後、室温で10分間、反応を進行させた。
cDNA合成キットチューブ(AccuPower CycleScript RT PreMix、BIONEER CORPORATION)を使用して、患者組織のmRNAからcDNAを合成した。合成したcDNAについて、RT-PCRプレミックスキットチューブ(AccuPower Gold Multiplex PCR PreMix、BIONEER CORPORATION)、およびRONエクソン5-6またはエクソン11の増幅のためのフォワードプライマー(10pmol)およびリバースプライマー(10pmol)を用いて、RT-PCRを行った。次に、増幅生成物を電気泳動し、シーケンシングを行った。
その結果、
図31に示すように、結腸癌患者の腫瘍細胞を移植した動物モデルからの5つの組織の中で、KRAS正常型および変異型、およびRON正常遺伝子(野生型)およびRON活性変異遺伝子(変異型;Δ160、Δ155、Δ165)の割合は次のとおり:4つ(80%)のKRAS正常結腸癌患者の腫瘍細胞を移植した動物モデルからの組織、および、1つ(20%)のKRAS変異患者からの組織、であることが確認された。一方、4つのKRAS正常患者組織のうち、RON正常遺伝子を保有する結腸癌患者の腫瘍細胞を移植した動物モデルの組織はなく、4つの組織すべて(100%)が、RON活性変異遺伝子を保有する結腸癌患者の腫瘍細胞を移植した動物モデルの組織であった。1つのKRAS変異患者の組織について、RON正常遺伝子を保有する結腸癌患者の腫瘍細胞を移植した動物モデルの組織は1つ(100%)であり、RON活性変異遺伝子を保有する結腸癌患者の腫瘍細胞を移植した動物モデルの組織はなかった。
【配列表】
【国際調査報告】