(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】高収量生産のための巨大ベクターおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/70 20060101AFI20221221BHJP
C12N 15/69 20060101ALI20221221BHJP
C12N 1/21 20060101ALN20221221BHJP
【FI】
C12N15/70 Z ZNA
C12N15/69 Z
C12N1/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519402
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2020076864
(87)【国際公開番号】W WO2021058722
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522119020
【氏名又は名称】カトリーケ、ユニベルシテート、ルーベン
【氏名又は名称原語表記】KATHOLIEKE UNIVERSITEIT LEUVEN
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】メロディ、ヤンセン
(72)【発明者】
【氏名】ユーリ、アウウェルクス
(72)【発明者】
【氏名】カイ、ドルマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス、オンジュナー
(72)【発明者】
【氏名】セドリック、バンサレン
(72)【発明者】
【氏名】ネスヤ、ゴリス
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA26X
4B065AB01
4B065BA02
4B065BB15
4B065BB29
4B065CA44
4B065CA45
(57)【要約】
本明細書において、細菌細胞から少なくとも16kbのサイズのベクターを製造するための方法であって、連続した、
a)誘導性複製起点を含む、少なくとも16kbのサイズのベクターを含む細菌細胞を得る工程、
b)前記ベクターを含む細菌細胞を培地に接種する工程、
c)前記培地で前記細菌細胞を培養する工程、
d)前記細菌培養物の600nmの光学密度(OD600)が少なくとも20に達したときに、前記誘導性複製起点の1種以上の誘導物質を培地に添加する工程、
e)前記培地で前記細菌細胞をさらに培養する工程、
f)任意に前記細菌細胞を前記培地から分離する工程、および
g)前記細菌細胞からプラスミドを回収する工程
を含む方法が提供される。また、本明細書において、このような方法において用いるための、誘導性複製起点を含む少なくとも16kbのサイズのベクターも提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌細胞から少なくとも16kbのサイズのベクターを製造するための方法であって、連続した、
a)誘導性複製起点を含む、少なくとも16kbのサイズのベクターを含む細菌細胞を得る工程、
b)前記ベクターを含む細菌細胞を培地に接種する工程、
c)前記培地で前記細菌細胞を培養する工程、
d)前記細菌培養物の600nmの光学密度(OD
600)が少なくとも20に達したときに、前記誘導性複製起点の1種以上の誘導物質を培地に添加する工程、
e)前記培地で前記細菌細胞をさらに培養する工程、
f)任意に前記細菌細胞を前記培地から分離する工程、および
g)前記細菌細胞からプラスミドを回収する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記工程d)の後かつ前記工程f)の前に、細菌タンパク質合成の阻害剤を前記培地に添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培地で前記細菌細胞を培養する間に、グルコースおよび/または酵母抽出物が培地に添加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記グルコースを含む培地が、前記プラスミド複製の1種以上の誘導物質を培地に添加する少なくとも30分前に、0.50~2.0%(v/v)のグリセロールを含む培地と交換される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記培地で前記細菌細胞を培養する前記工程c)が約30℃の温度で行われ、前記温度を、前記プラスミド複製の1種以上の誘導物質を培地に添加する少なくとも2時間前に、約30℃から36.0~38.0℃に上昇させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記誘導性複製起点が少なくとも1つのLacO1オペレーターを含み、前記誘導性複製起点の誘導物質がイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)および/またはα-D-ラクトースである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記細菌タンパク質合成の阻害剤がクロラムフェニコールまたはスペクチノマイシン、好ましくはクロラムフェニコールである、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記細菌タンパク質合成の阻害剤が、前記誘導性複製起点の1種以上の誘導物質の添加の少なくとも1時間後に培地に添加される、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記細菌細胞が、前記誘導性複製起点の1種以上の誘導物質の添加の最大6時間後に前記培地から分離される、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記誘導性複製起点を含む少なくとも16kbのサイズのベクターであって、前記誘導性複製起点が:
-RNAIプロモーターの機能が無効となるかまたは大幅に低下するように前記RNAIプロモーターが欠失または変異して、切断型RNAIIプレプライマーが形成されており、かつ
-RNAIの機能が無効となるかまたは大幅に低下するように前記RNAIをコードする核酸配列が欠失または変異して、切断型RNAIIプレプライマーが形成されており、かつ
-少なくとも1つのLacO1オペレーターが前記切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列の上流に導入され、前記少なくとも1つのLacO1オペレーターが前記切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列に作動可能に連結されている
pMB1複製起点を含む、ベクター。
【請求項11】
前記pMB1複製起点の内因性RNAIIプロモーターが、前記pMB1複製起点のRNAIIプレプライマーの内因性プロモーターではないプロモーターによって置換されており、前記pMB1複製起点のRNAIIプレプライマーの内因性プロモーターではないプロモーターが、前記少なくとも1つのLacO1オペレーターに作動可能に連結されている、請求項10に記載のベクター。
【請求項12】
前記pMB1複製起点の内因性RNAIIプロモーターが、RNAIのプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーターおよびT7プロモーターからなる群から選択されるプロモーター、好ましくはlacプロモーター、より好ましくはL8/UV5 lacプロモーターによって置換されている、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
-RNAIプロモーターの機能が無効となるかまたは大幅に低下するように前記RNAIプロモーターが欠失または変異して、切断型RNAIIプレプライマーが形成されており、かつ
-RNAIの機能が無効となるかまたは大幅に低下するように前記RNAIをコードする核酸配列が欠失または変異して、切断型RNAIIプレプライマーが形成されており、かつ
-少なくとも1つのLacO1オペレーターが前記切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列の上流に導入され、前記少なくとも1つのLacO1オペレーターが前記切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列に作動可能に連結されており、かつ
-野生型pMB1複製起点の322位の核酸に対応する核酸がAからGに変異しており、かつ/または野生型pMB1複製起点の543位の核酸に対応する核酸がCからTに変異している
pMB1複製起点を含む、誘導性複製起点。
【請求項14】
前記誘導性複製起点が、配列番号9で示される核酸配列と少なくとも95%、好ましくは100%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載のベクター、または請求項13に記載の誘導性複製起点。。
【請求項15】
前記少なくとも16kbのサイズのベクターが、請求項10~12のいずれか一項または請求項14に記載のベクターである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベクターおよび巨大ベクターの高収率生産のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療およびDNAワクチンは、癌や後天性免疫不全症候群(AIDS)等の疾患の予防、処置および治療のための有望なツールである。遺伝子治療およびDNAワクチンは、構造形態およびDNA配列が均質でなければならない大量の高度に精製されたプラスミドDNA(pDNA)を必要とする。さらに、遺伝子治療、および複雑な病原体に対するDNAワクチン等のDNAワクチンは、大きなゲノムDNA挿入に許容することができるプラスミドを必要とする。バイオ医薬の用途では、収量と品質とがプラスミドの製造プロセスのための主要な原動力である。収量の増大を求めて、高いコピー数をもたらすプラスミドが開発されており、これは、細胞当たりプラスミドの複数のコピーをもたらすことを意味する(細胞当たり>500コピー、例えば、pUC18、pUC19ベクター)。そのような細胞当たりのプラスミドの高いコピー数は、小さなプラスミド(<10kb)で達成することができる。しかしながら、プラスミドが大きいほど、細菌細胞の代謝負荷が大きくなるため、複製が遅くなる。細菌細胞は、プラスミドに突然変異を導入することによって代謝負荷に応答する。その結果、プラスミドDNAの品質が低下する。これは、細菌人工染色体(BAC)等の低コピー数ベクターを用いることにより最適化することができ、BACは、100世代以上の連続的な細菌増殖の後であっても、宿主細胞内で単一コピー(SC)ベクター内の個々のDNAフラグメントを安定して維持できるため、大きなゲノムDNAフラグメントを維持するための好ましいプラスミドである。
【0003】
最近の進歩は、BACのコピー数の最適化に関連するものである。例えば、WO2014174078には、細菌細胞当たり10コピーを超えるまでBACを増幅するための誘導性細菌複製起点(ori)配列を含むBACが記載されている。しかしながら、これらのBACでは、商業的に実施可能な高いBACの収量を得ることができない。その結果、かなりの量のBACを得るために非常に大規模な培養が必要になる。
【0004】
高品質のプラスミドを高収量で得るための新しいベクターおよびプロトコルを開発することが不可欠である。
【0005】
細菌における誘導性細菌複製起点(ori)配列を含むベクターの条件付き増幅が当技術分野で記載されている。増幅の誘導は、通常、細菌の初期指数増殖期、より具体的には、細菌増殖曲線の初期対数(算術)期(すなわち、低OD)で行われる(Wild et al. 2002, Genome Research 12:1434-1444)。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、最適な発酵条件に達するまで細胞当たりのプラスミド数を低く維持し、次いで系を高コピー状態に切り替える誘導系を用いることにより、細菌細胞の高代謝負荷への曝露が最小限に抑制されることを見出した。その結果、巨大プラスミドをより高い収量で得ることができ、巨大プラスミドは高い品質を有する。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、誘導性複製起点を含み、それにより細菌細胞が少なくとも20のODに達したときに誘導が行われるベクターを用いて、細菌細胞からの少なくとも16kbのサイズのベクターを製造する方法が提供される。特定の実施形態によれば、細菌細胞から少なくとも16kbのサイズのベクターを製造するための方法であって、連続した、
a)誘導性複製起点を含む、少なくとも16kbのサイズのベクターを含む細菌細胞を得る工程、
b)ベクターを含む細菌細胞を培地に接種する工程、
c)600nmの光学密度(OD600)が少なくとも20に達するまで培地で細菌細胞を培養する工程、
d)誘導性複製起点の1種以上の誘導物質を培地に添加する工程、
e)任意に細菌細胞を培地から分離する工程、および
f)細菌細胞からプラスミドを回収する工程
を含む方法が提供される。
【0008】
プラスミドの製造を可能にするために、工程(d)の後に細胞の培養が継続されることが理解されよう。
【0009】
より具体的には、本発明は、培地で細菌細胞を培養し、細菌培養物の600nmの光学密度(OD600)が少なくとも20に達したときに、誘導性複製起点の1種以上の誘導物質を培地に添加し、その後、細菌細胞を培地でさらに培養することを含む。その後、任意に細菌細胞を培地から分離し、プラスミドを細菌細胞から回収する。
【0010】
特定の実施形態において、この方法は、工程d)の後かつ工程e)の前等の、誘導性複製起点の1種以上の誘導物質が添加された後において、細菌タンパク質合成の阻害剤を培地に添加することをさらに含む。
【0011】
特定の実施形態において、培地で細菌細胞を培養する間に、グルコースおよび/または酵母抽出物が培地に添加される。
【0012】
特定の実施形態において、グルコースを含む培地は、1種以上のプラスミド複製の誘導物質を培地に添加する少なくとも30分前に、0.50~2.0%(v/v)のグリセロールを含む培地と交換される。
【0013】
特定の実施形態において、培地で細菌細胞を培養する工程c)は約30℃の温度で行われ、温度を、1種以上のプラスミド複製の誘導物質を培地に添加する少なくとも2時間前に、約30℃から36.0~38.0℃の温度に上昇させる。
【0014】
特定の実施形態において、誘導性複製起点は少なくとも1つのLacO1オペレーターを含み、誘導性複製起点の誘導物質はイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)および/またはアルファ-D-ラクトースである。
【0015】
特定の実施形態において、細菌タンパク質合成の阻害剤はクロラムフェニコールまたはスペクチノマイシン、好ましくはクロラムフェニコールである。
【0016】
特定の実施形態において、細菌タンパク質合成の阻害剤は、誘導性複製起点の1種以上の誘導物質の添加の少なくとも1時間後に培地に添加される。
【0017】
特定の実施形態において、細菌細胞は、誘導性複製起点の1種以上の誘導物質の添加の最大6時間後に培地から分離される。
【0018】
さらなる実施形態によれば、誘導性複製起点を含む少なくとも16kbのサイズのベクターが提供される。
【0019】
特定の実施形態において、誘導性複製起点は:
-RNAIプロモーターの機能が無効となるかまたは大幅に低下するようにRNAIプロモーターが欠失または変異して、切断型RNAIIプレプライマーが形成されており、かつ
-RNAIの機能が無効となるかまたは大幅に低下するようにRNAIをコードする核酸配列が欠失または変異して、切断型RNAIIプレプライマーが形成されており、かつ
-少なくとも1つのLacO1オペレーターが切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列の上流に導入され、少なくとも1つのLacO1オペレーターが切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列に作動可能に連結されている
pMB1複製起点を含む。
【0020】
特定の実施形態において、pMB1複製起点の内因性RNAIIプロモーターは、pMB1複製起点のRNAIIプレプライマーの内因性プロモーターではないプロモーターによって置換されており、pMB1複製起点のRNAIIプレプライマーの内因性プロモーターでないプロモーターは、少なくとも1つのLacO1オペレーターに作動可能に連結されている。
【0021】
特定の実施形態において、pMB1複製起点の内因性RNAIIプロモーターは、RNAIのプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーターおよびT7プロモーターからなる群から選択されるプロモーター、好ましくはlacプロモーター、より好ましくはL8/UV5 lacプロモーターによって置換されている。
【0022】
さらなる態様によれば、
-RNAIプロモーターの機能が無効となるかまたは大幅に低下するようにRNAIプロモーターが欠失または変異して、切断型RNAIIプレプライマーが形成されており、かつ
-RNAIの機能が無効となるかまたは大幅に低下するようにRNAIをコードする核酸配列が欠失または変異して、切断型RNAIIプレプライマーが形成されており、かつ
-少なくとも1つのLacO1オペレーターが切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列の上流に導入され、少なくとも1つのLacO1オペレーターが切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列に作動可能に連結されており、かつ
-野生型pMB1複製起点の322位の核酸に対応する核酸がAからGに変異しており、かつ/または野生型pMB1複製起点の543位の核酸に対応する核酸がCからTに変異している
pMB1複製起点を含む、誘導性複製起点が提供される。
【0023】
特定の実施形態において、誘導性複製起点は、配列番号9に示される核酸配列と少なくとも95%、好ましくは100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0024】
特定の実施形態において、この方法は、細菌細胞から少なくとも16kbのサイズのベクターを製造するために用いられる。さらなる実施形態において、少なくとも16kbのサイズのベクターは、本明細書に示されれるベクターである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、pViroVet-4-YFV17DプラスミドおよびiOriの概略図を示す。oriS:F因子のori2レプリコン;iOri:誘導性複製起点;repE:複製イニシエーター遺伝子;parB:分割タンパク質B遺伝子;parC:分割タンパク質C遺伝子;KanR:カナマイシン耐性遺伝子;HDrz:肝炎ウイルスδリボザイム;UTR:非翻訳領域;YFV17D:黄熱病ウイルスクローン17D;Lac-L8-UV:L8-UV5改変を伴うlacプロモーター;LacO1:lacオペレーター;pMB1ori:改変されたpMB1(ColE1)の複製起点。
【
図2】
図2は、RNAII配列中に2つの点突然変異を含む、完全なpMB1(ColE1)Oriおよび完全なiOriの核酸配列を示す。
【
図3】
図3(A)pMB1(ColE1)Oriでは、RNAII DNAはその同族の上流プロモーターRNAIIpから転写され、RNAII転写産物を生成する。RNAIIは、プラスミドDNAのOri+1開始点におけるDNA合成を開始するためのプライマーとして機能する。RNAIIの発現は、相補的なアンチセンスRNAIの結合によって転写後に調節される。RNAIは、RNAII遺伝子内で逆方向に存在するRNAI遺伝子から、そのRNAIpプロモーターから発現される。プラスミドにコードされたROPタンパク質はRNAI-RNAII二本鎖を安定化し、これによりプラスミドDNAの複製がさらに制限される。(B)iOriでは、5’末端切断型RNAII
*の発現は、異種LacUVpプロモーターから開始される。RNAI遺伝子全体が欠失し、RNAIは発現しない。5’末端切断型RNAII
*(すなわち切断型RNAIIプレプライマー)の発現は、異種プロモーターと元の野生型RNAII
*配列との間に挿入されたLacO1リプレッサー結合配列へのLACIタンパク質の結合によって転写レベルで調節される。iOriでは、LacO1 DNA配列とRNAII DNA配列との転写融合であるRNAII
*が、プラスミドDNA合成を開始するためのプライマーとして機能する。Ori+1はDNA複製起点;遺伝子を通常の文字、転写産物を斜体、タンパク質を太字の大文字;負の調節因子を影付き文字;転写産物を相対的な方向を示す波線矢印で示す。
【
図4】
図4は、本明細書に示すプラスミドのIPTGおよびα-D-ラクトースの両方による誘導性を示す。
【
図5】
図5は、野生型iOriと比較した変異型iOriのベクター産生に対する有益な効果を示す。pVV4
*は、
図1に示すpViroVet-4-YFV17Dプラスミドの第1のクローンを意味し、pVV4は、
図1に示すpViroVet-4-YFV17Dプラスミドの第2のクローンを意味し、pVV-wt iOriは、変異型iOriが野生型(すなわち変異していない)iOriで置換されていないpViroVet-4-YFV17Dプラスミドを意味し、NIは誘導されていないことを意味し;Iは誘導されていることを意味する。
【
図6】
図6は、供給物(feed)への補助剤(supplement)としてグルコースまたはグリセロールを添加することによるベクター製造への有益な効果を示す。
【
図7】
図7は、1リットルの発酵槽でのプラスミド製造に対するクロラムフェニコールの効果を示す。操作(a)は細菌細胞の接種;操作(b)はグリセロールの供給の開始;操作(c)はIPTGによる細菌細胞の誘導;操作(d)は培地へのクロラムフェニコールの添加;および操作(e)は細菌細胞の回収である。
【
図8】
図8は、1リットルの発酵槽でのプラスミド製造に対する温度シフトの影響を示す。操作(a)は細菌細胞の接種;操作(b)はグルコースの供給の開始;操作(c)は37℃への温度上昇およびグルコース供給からグリセロール供給への変更;操作(d)はIPTGによる細菌細胞の誘導;(e)は培地へのクロラムフェニコールの添加;および操作(f)は細菌細胞の回収である。
【
図9】
図9は、配列番号によって示される核酸配列を示す。
【発明の詳細な説明】
【0026】
「約」という用語は、数値に関連して用いられる場合、関連する技術において一般的に理解される意味を有する。特定の実施形態において、「約」という用語は省略されてもよく、または数値+10%;または+5%;または+2%;または+1%を意味すると解釈されてもよい。
【0027】
本明細書でパーセンテージに関して用いられる場合は常に、w/wは重量/重量を意味し、w/vは重量/体積を意味する。
【0028】
本明細書で用いられる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、単数および複数の指示対象の両方を含む。
【0029】
本明細書で用いられる「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「含まれる(comprised of)」という用語は、「含む(including)」、「含む(includes)」または「含む(containing)」、「含む(contains)」と同義であり、包括的(inclusive)または制約的(open-ended)であり、追加の、記載されていない成員(member)、要素または方法の工程を排除するものではない。記載された成員、要素または方法の工程を意味する場合の「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「含まれる(comprised of)」という用語は、記載された成員、要素または方法の工程「からなる(consist of)」実施形態も含む。
【0030】
また、明細書および特許請求の範囲における第1、第2、第3等の用語は、特に明記しない限り、類似の要素または工程を区別するために用いられ、必ずしも連続的または時系列の順序を説明するために用いられるわけではない。そのように用いられる用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載の実施形態は、本明細書に記載または図示されている以外の順序で運用できることを理解されたい。
【0031】
本明細書全体を通して「一つの実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴(feature)、構造または特性(characteristic)が、本明細書で想定される少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な部分における「一つの実施形態において」または「実施形態において」という表現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を意味するとは限らず、そうである場合もある。また、特定の特徴、構造または特性は、1つ以上の実施形態において、本開示から当業者に明らかであるように、任意の適切な方法で組み合わせることができる。また、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴であって他の特徴ではない特徴を含むが、異なる実施形態の特徴の組み合わせは本発明の範囲内にあり、当業者によって理解されるように異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、以下の特許請求の範囲では、請求項に記載の実施形態のいずれかを任意の組み合わせで用いることができる。
【0032】
本明細書で引用される参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
細菌において巨大ベクター(例えば、プラスミド、細菌人工染色体(BAC))の収量を増大させる場合、複製系の活性が大幅に増大することによるベクターDNAの変異頻度の増大するというもっともな懸念があある。したがって、巨大ベクターの製造には、高収量のベクターが得られるが、耐えられないほどの突然変異の導入なしにベクターの複製が起こる製造プロセスが必要である。
【0034】
本発明者らは、巨大ベクターの高収量生産を確実にするためのツールおよび方法を特定した。これは、例えば、巨大な挿入が必要とされることが多いワクチン接種において用いられるベクトルの生成において重要である。本発明者らは、ベクターを含む宿主細胞の培養中に誘導性複製起点(ori)を戦略的に利用することによって、これが確実になり得ることを特定した。より具体的には、誘導性oriを含む少なくとも16kbのサイズのベクターを含む細菌細胞を、高い培養密度(例えば、600nmの光学密度(OD600)が少なくとも20)に達するまで培養し、次いで、誘導性oriの1種以上の誘導物質を培地に添加することにより複製を誘導することによって、大量の上記ベクターが得られることを見出した。より具体的には、本発明者らは、増殖期中の細胞単位当たりのベクターのコピー数を制限し(例えば、600nmの光学密度(OD600)で20未満)、高バイオマス(例えば、OD600で少なくとも20)で複製を誘導することによって、例えばDNAベースのワクチンで用いるための、高品質の医薬品グレードの(すなわち、変異頻度が低い)ベクターを高収率(例えば、少なくとも55mg/Lのベクター)で得ることができることを見出した。本明細書に示される少なくとも16kbのサイズのベクターを製造するための方法は拡張性がある(例えば、少なくとも1000L、少なくとも1500Lまたは少なくとも2000Lまで)。また、本発明者らは、誘導性プロモーターと、ColE1型oriの切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列とを含む誘導性oriを含み、ColE1型oriの切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列が誘導性プロモーターに作動可能に連結されている少なくとも16kbのサイズのベクターが、そのような高収量のベクターを得るのに特に有利であることを見出した。本発明者らは、(i)誘導前に約30℃から36~38℃への温度シフトを導入すること;(ii)誘導後に細菌タンパク質合成の阻害剤を添加すること;および/または(iii)グルコースおよび/または酵母抽出物、または補助剤としてのグリセロールを培地に添加することによって、収量がさらに(例えば、少なくとも120mg/ベクターLまで)増大し得ることを見出した。
【0035】
したがって、第1の態様によれば、細菌細胞から少なくとも16kbのサイズのベクターを製造するための方法であって、連続した、
a)誘導性oriを含む、少なくとも16kbのサイズのベクターを含む細菌細胞を得る工程、
b)ベクターを含む細菌細胞を培地に接種する工程、
c)600nmの光学密度(OD600)が少なくとも20に達するまで培地で細菌細胞を培養する工程、
d)誘導性oriの1種以上の誘導物質を培地に添加する工程、
e)任意に細菌細胞を培地から分離する工程、および
f)細菌細胞からベクターを回収する工程
を含む方法が提供される。
【0036】
プラスミドの製造を可能にするために、工程(d)の後に細胞の培養が継続されることが理解されよう。
【0037】
したがって、細菌細胞から少なくとも16kbのサイズのベクターを製造するための方法はまた、連続した、
-誘導性oriを含む、少なくとも16kbのサイズのベクターを含む細菌細胞を得る工程、
-ベクターを含む細菌細胞を培地に接種する工程、
-培地で細菌細胞を培養する工程、
-細菌培養物の600nmの光学密度(OD600)が少なくとも20に達したときに、誘導性oriの1種以上の誘導物質を培地に添加する工程、
-培地で細菌細胞をさらに培養する工程、
-任意に細菌細胞を培地から分離する工程、および
-細菌細胞からベクターを回収する工程
を含むものとしても説明することができる。
【0038】
特定の実施形態において、これらの工程は連続した順序で行われる。
【0039】
本明細書で用いられる「ベクター」という用語は、核酸フラグメント、好ましくは本明細書で定義される組換え核酸分子が挿入およびクローン化され得る、すなわち増殖され得る環状の二本鎖DNA分子を意味する。したがって、ベクターは、典型的には1つ以上の固有の制限部位を含み、クローン化された配列が再生産可能であるようような定義された細胞または媒体生物において自律複製が可能である。本発明の場合、ベクターは、細菌細胞において複製することができるベクターであることを当業者は理解するであろう。ベクターはまた、ベクターを含むレシピエント細胞の選択を可能にするために、例えば、抗生物質耐性遺伝子等の選択マーカーを含んでいてもよい。ベクターとしては、必要に応じて、プラスミド、コスミド、ファージミド、バクテリオファージ由来ベクター、PAC、BAC等が挙げられるが、これらに限定されない。プラスミドは、とりわけレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターまたはアデノ関連ウイルスベクター等のウイルスベクターの構築を目的としたプラスミドであり得る。発現ベクターは、一般に、所望の発現系、例えば、in vitro、細胞、器官および/または生物において、核酸またはそれに導入されたオープンリーディングフレームの発現を可能にし、かつ/またはもたらすように構成される。例えば、発現ベクターは、適切な調節配列を有利に含み得る。
【0040】
特定の実施形態において、ベクターは、少なくとも16kb、少なくとも17kb、少なくとも18kb、少なくとも19kb、少なくとも20kb、少なくとも21kbまたは少なくとも22kb、好ましくは少なくとも16kbのサイズのベクター等の巨大ベクターである。本明細書において用いられる「kb」、「kbp」または「キロ塩基対」とは、1000塩基対(bp)のDNAを意味する。
【0041】
「細菌細胞」または「細菌」という用語は、ベクターの宿主細胞として適切な細菌を意味する。バクテリア中でベクターを製造することの利点は、とりわけバクテリア細胞の比較的安全で簡単な取り扱いと微生物の迅速な複製サイクルでにある。
【0042】
特定の実施形態において、例えば、誘導性oriがLac O1オペレーターを含む場合、細菌細胞は、Lacリプレッサー(LacI)を含む細菌細胞である。より具体的な実施形態において、細菌細胞は、十分な量のLacリプレッサー(LacI)を有する細胞である。十分な量のLacリプレッサーは、誘導性oriの1つ以上の誘導物質がない場合に細菌細胞内でのベクターの漏出複製を防ぐ量のLacリプレッサーである。好ましくは、十分な量のLacリプレッサーは、誘導性oriの1つ以上の誘導物質が存在しない場合において0.5~4mg/L、0.5~3mg/L、0.5~2mg/Lまたは0.5~1mg/Lのベクターの複製を抑制することができる量のLacリプレッサーである。
【0043】
特定の実施形態において、細菌細胞は、E.coli、好ましくはBL21コンピテントE.Coli、またはWilliam Studier and Barbara A. Moffatt, Use of bacteriophage T7 RNA polymerase to direct selective high-level expression of cloned genes, J. Mol. Biol. 1986 May 5;189(1):113-30により記載されているBL21(DE3)コンピテントE.coliおよびDH5-α細胞等の誘導体である。
【0044】
少なくとも16kbのサイズのベクターを含む細菌細胞は、当技術分野で公知の細菌の形質転換、例えば熱ショックにより得ることができる。
【0045】
本明細書で用いられる「誘導性複製起点」、「誘導性ori」、「iori」、「条件付き複製起点」または「条件付きori」という用語は、細菌宿主細胞で機能し、該宿主細胞(すなわち、細菌細胞)にとって外来である誘導性複製起点の1種以上の誘導物質に応答するベクターori配列を意味する。好ましくは、誘導性oriの複製機能は、該誘導性複製起点の1つ以上の誘導物質が存在しない場合、著しく抑制されるかまたは存在しない。特定の実施形態において、誘導性oriは、誘導性複製起点の1つ以上の誘導物質の存在下で、ベクターを高コピー数まで、好ましくは細胞当たり少なくとも20コピー、少なくとも30コピー、少なくとも40コピー、少なくとも50コピー、少なくとも60コピー、少なくとも70コピー、少なくとも80コピー、少なくとも90コピー、少なくとも100コピー、少なくとも110コピー、少なくとも120コピー、少なくとも130コピー、少なくとも140コピー、少なくとも150コピー、少なくとも200コピーまたは少なくとも300コピー、より好ましくは細胞当たり50コピー超、より一層好ましくは細胞当たり100コピー超まで増殖させる。好ましくは、誘導性oriは、誘導性複製起点の1種の誘導物質に応答する。
【0046】
「誘導性複製起点の誘導物質」、「ベクター複製の誘導物質」または「複製開始剤」という用語は、リプレッサーを(例えば、除去によって)不活性化することができる薬剤を意味する。リプレッサーは、通常、DNAのオペレーター配列に結合することにより、1種以上の転写産物の発現を阻害または減少させる。リプレッサーのオペレーターへの結合は、RNAポリメラーゼのプロモーターへの結合を妨げ、それによって転写を阻害する。誘導性複製起点の誘導物質は、リプレッサーのオペレーターへの結合を妨げることができ、それによって転写が可能になる。
【0047】
当業者であれば、誘導性oriが、ベクター複製の既知の誘導物質との適合性、選択された宿主細胞におけるベクター複製の適合性誘導物質の非存在下でのその通常の厳密なダウンレギュレーション、およびそのベクター複製の誘導物質の存在下でのその強力な誘導操作性で選択されることを理解するであろう。誘導性oriの非限定的な例としては、L-アラビノースの添加によって誘導され得るL-アラビノース誘導性パラプロモーター(araC-PBAD)によって厳密に調節されるoriV/TrfA増幅システム、例えば、Wild J. et al., Conditionally amplifiable BACs: switching from single-copy to high-copy vectors and genomic clones. Genome Res. 2002.12(9):1434-1444に記載されているようなシャトルBACベクターの増幅が挙げられる。さらなる例において、oriV/TrfAは、Wild J. et al., Copy-control tightly regulated expression vectors based on pBAC/oriV. 2004.267:155-167に記載されているようなラムノース誘導性Prhaプロモーター(rhaS-Prha)によって厳密に調節され得る。
【0048】
ColEl型プラスミドは当技術分野において公知であり、天然に存在するプラスミド(pMB1、pl5A、pJHCMW1等)、および一般的に用いられる多くのクローニング媒体(pBR322および関連ベクター、pUCプラスミド、pETプラスミドならびにpBluescriptベクター等)が挙げられる。これらのプラスミドの複製の開始および調節は、当技術分野においてよく知られている。より具体的には、ColEl型プラスミドは、複製の調節に関与する2種のRNA分子(すなわち、RNAIおよびRNAII)の合成、一方におけるそれらのRNA分子の相互作用、および他方におけるテンプレートプラスミドDNAとの相互作用を含む共通のメカニズムを用いてDNAを複製する。ColEl領域には、RNAI用とRNAII用の2種のプロモーターが含まれる。ColEl型プラスミドからの複製は、宿主のRNAポリメラーゼによる、複製起点の555bp上流に位置するプレプライマーRNAIIの転写から開始される。伸長中、RNAIIは特定のヘアピン構造に折りたたまれ、約550ヌクレオチドの重合後、テンプレートDNAとのハイブリッドを形成し始める。続いて、RNAIIプレプライマーはRNase Hによって切断され、DNAポリメラーゼIがアクセスできる遊離の3’OH末端を有する活性RNAIIプライマーを形成する。ColEl型の起点鎖の反対側において、RNAI、アンチセンスRNAIIの5’末端に相補的な108ヌクレオチドのRNAが転写される。RNAIの転写は、複製起点から445bp上流で開始され、RNAII転写のほぼ開始点まで継続される。RNAIは、RNA/DNAハイブリッドが形成される前に、伸長するRNAII分子に結合することにより、プライマーの形成を阻害し、したがって複製を阻害する。RNAI/RNAIIの相互作用とは別に、ColElのrom/rop転写産物は、RNAIIとRNAIとの間の複合体形成の速度を上げることにより、プラスミドのコピー数の調節に寄与する。
【0049】
rom/ropを欠失させたColEl型プラスミドの誘導体が開発されている。そのような誘導体はコピー数が増大している。そのような誘導体の例としては、pBR322の誘導体、例えばpUC18およびpUC19が挙げられる。pUC18およびpUC19プラスミドは、RNAIIにおける単一の点突然変異、より具体的には、RNAIを説明する領域(region commentary to)に直接隣接するセグメントにおけるRNAIIの転写産物の第112ヌクレオチドにおけるGA点突然変異をさらに含み、プラスミド複製開始能を増強する。
【0050】
宿主細胞内でのプラスミドの増殖には、宿主の複製機構によるプラスミドの複製が必要である。複製起点(ori)は、宿主細胞にプラスミド複製を開始するように指示するする、プラスミドに担持されたDNA配列であり、そのためプラスミドの増殖に不可欠である。これは、oriを構成する配列に結合する様々なタンパク質(イニシエーターとリプレッサー)によって達成される。
【0051】
pMB1(ColE1)oriには、上述したように、RNAIおよびRNAIIの合成を促進する領域が含まれる。プラスミドの複製は、通常、oriの550ヌクレオチド(nt)上流のプラスミドから転写され、プラスミドに強くハイブリダイズするRNAIIによって開始される。起点におけるこのハイブリッドの形成は、プラスミド複製の重要な前提条件である。このハイブリッドのRNA部分は、RNAIIを消化してするRNaseHの基質になり、プラスミド全体の複製を開始するためのDNAポリメラーゼIのプライマーとして用いられ得る550ntの分子を生成する。
【0052】
当業者は、本明細書で教示または記載される少なくとも16kbのサイズのベクターが、誘導性oriに加えて、誘導性oriとは異なる複製機構を利用するoriを含み得、2種のoriが同じ構造をめぐって競合するため、不安定で予測不可能な環境が創出されることを理解するであろう。例えば、誘導性oriがColE1型oriまたはそれに由来するoriに由来する場合、第2のoriはF1またはP1oriまたはそれに由来するoriであり得る。したがって、特定の実施形態において、ベクターは、ColE1型oriまたはそれに由来するori(好ましくは、pMB1 oriまたはそれに由来するori)とは異なるoriによって複製されるベクターであって、本明細書に記載されるように、その中にColE-1型ori(好ましくは、pMB1 oriに由来する)に由来する誘導性oriが導入されるベクターである。ColE-1型ori(好ましくは、pMB1 oriに由来する)とは異なるoriによって複製されるベクターの非限定的な例としては、F1またはP1 oriまたはそれらから誘導されるoriによって複製されたベクター、またはそれらから誘導される当技術分野で公知のベクターが挙げられる。より具体的な実施形態において、本明細書に記載される誘導性oriが導入されるベクターは、ColE1型プラスミドではなく、好ましくは、本明細書に記載される誘導性oriが導入されるベクターは、pBR322ベクターまたはpUCベクターではない。
【0053】
ベクターを含む細菌細胞の培地への接種は、培養培地に細菌細胞を接種するための当技術分野で公知の任意の方法によって行うことができる。例えば、ベクターを含む細菌細胞の単一コロニーは、滅菌ピペットチップまたはつまようじを用いて寒天プレートから選択することができ、その後、該チップまたはつまようじを液体培地に投入し、該チップまたはつまようじを含む液体培地を回転させる。あるいは、培地に、ベクターを含む細菌細胞のグリセロールストックを接種することができる。
【0054】
培地は、細菌細胞を培養するための当技術分野で公知の任意の培養培地であり得る。非限定的な例としては、Luria-Bertaniブロス培地(LB)(ATCC培地製剤1065)、またはM9最小培地等の最小培地が挙げられる。当業者は、最小培地が用いられる場合、アミノ酸、塩および/または栄養素の補充が必要となる可能性があることを理解するであろう。最小培地を用いることにより、細菌細胞に供給される栄養素を厳密に調節できるという利点がある。
【0055】
特定の実施形態において、培地は、少なくとも50mM、少なくとも60mM、少なくとも70mM、少なくとも80mMまたは少なくとも90mMのリン酸塩が添加されたLB培地である。例えば、培地は、90mMのリン酸塩が添加されたLB培地である。
【0056】
特定の実施形態において、培養培地は液体(ブロス)培地である。
【0057】
細菌によるグルコース等の炭水化物の生物学的酸化によって、化学エネルギー源としてのATPの合成がもたらされ、生合成または同化反応のために細菌が必要とするよりも単純な有機化合物が生成される。
【0058】
したがって、特定の実施形態において、グリセロール、グルコースおよび/または酵母抽出物は、培地に接種する工程(工程b)の後、かつ培地で細菌細胞を培養する工程(工程c)の前に、培地に添加される。より具体的な実施形態において、グリセロール、グルコースおよび/または酵母抽出物は、培地で細菌細胞を培養する工程(工程c)の間に培養培地に添加される。
【0059】
特定の実施形態において、グリセロール、グルコースおよび酵母抽出物の1種以上(例えば、グリセロール;グルコース;酵母抽出物;グリセロールおよびグルコース;グリセロールおよび酵母抽出物;グルコースおよび酵母抽出物;またはグリセロール、グルコースおよび酵母抽出物)が、総濃度0.50~1.0%(w/vまたはグリセロールについてはv/v)、0.50~5.0%(w/vまたはグリセロールについてはv/v)、1.0~5.0%(w/vまたはグリセロールについてはv/v)、1.0~4.0%(w/vまたはグリセロールについてはv/v)、1.0~3.0%(w/vまたはグリセロールについてはv/v)、1.0~2.0%(w/vまたはグリセロールについてはv/v)、好ましくは0.50~2.0%(w/vまたはグリセロールについてはv/v)で培地に添加される。例えば、グリセロール、グルコースおよび酵母抽出物の1種以上が1.0%(w/vまたはグリセロールについてはv/v)培地に添加される。
【0060】
特定の実施形態において、グリセロールは、0.50~5.0%(v/v)、1.0~5.0%(v/v)、1.0~4.0%(v/v)、1.0~3.0%(v/v)または1.0~2.0%(v/v)、好ましくは0.5~2.0%(v/v)の濃度で培地に添加される。例えば、グリセロールは、1.0%(v/v)の濃度で培地に添加される。
【0061】
特定の実施形態において、グルコースは、0.50~5.0%(w/v)、1.0~5.0%(w/v)、1.0~4.0%(w/v)、1.0~3.0%(w/v)、1.0~2.0%(w/v)、好ましくは0.5~2.0%(w/v)の濃度で培地に添加される。例えば、グルコースは、1.0%(w/v)の濃度で培地に添加される。
【0062】
特定の実施形態において、酵母抽出物は、0.50~10.0%(w/v)、0.50~5.0%(w/v)、1.0~5.0%(w/v)、1.0~4.0%(w/v)、1.0~3.0%(w/v)または1.0~2.0%(w/v)の濃度で培地に添加される。
【0063】
グリセロール、グルコースおよび/または酵母抽出物の消費は、細菌細胞の代謝状態に依存する。短時間の間に細菌細胞を高濃度のグリセロール、グルコースおよび/または酵母抽出物に曝露すると、細菌細胞の浸透圧溶解につながる可能性がある。
【0064】
したがって、特定の実施形態において、グルコースおよび/または酵母抽出物は、培地で細菌細胞を培養する間、例えば流加培養によって培地に連続的に添加される。
【0065】
特定の実施形態において、グリセロールは、1時間当たり最大0.750%(v/v)、1時間当たり最大0.70%(v/v)、1時間当たり最大0.650%(v/v)、1時間当たり最大0.60%(v/v)、1時間当たり最大0.550%(v/v)、1時間当たり最大0.50%(v/v)、1時間当たり最大0.40%(v/v)、1時間当たり最大0.30%(v/v)、1時間当たり最大0.20%(v/v)または1時間当たり最大0.10%(v/v)の供給速度で培養培地に連続的に添加される。特定の実施形態において、グルコースは、1時間当たり最大0.60%(w/v)、1時間当たり最大0.50%(w/v)、1時間当たり最大0.40%(w/v)、1時間当たり最大0.30%(w/v)、1時間当たり最大0.20%(w/v)または1時間当たり最大0.10%(w/v)の供給速度で培地に添加される。
【0066】
特定の実施形態において、酵母抽出物は、1時間当たり最大0.30%(w/v)、1時間当たり最大0.20%(w/v)、1時間当たり最大0.10%(w/v)または1時間当たり最大0.050%(w/v)の供給速度で培地に添加される。
【0067】
細菌細胞は、特に増殖期の間にエネルギー源を必要とする。したがって、特定の実施形態において、グリセロール、グルコースおよび酵母抽出物の1種以上が、細菌細胞の増殖期中に培地に添加される。
【0068】
細菌細胞の増殖期は、細菌細胞を含む培地の光学密度によって決定することができる。培地中の細菌の濃度が高いほど、測定時の培養物の光学密度が高くなる。有機材料は、600nmの波長の光で高い光学密度を示すため、600nmの波長で分光光度計を用いて培養密度を測定することができる。600nmでの培地サンプルの光学密度は「OD600」とも呼ばれる。好ましくは、培地サンプルは希釈されない。したがって、特定の実施形態において、グルコースおよび/または酵母抽出物は、培地中の細菌細胞を、600nmの光学密度(OD600)が0~20、0~21、0~22、0~23、0~24、0~25、0~30、5~20、5~25、5~30、10~20、10~25または10~30、好ましくは0~30で培養しながら培地に添加される。
【0069】
培地での細菌細胞の培養は、培地で細菌細胞を培養するための当技術分野で公知の任意の方法によって行うことができる。例えば、細菌細胞を含む液体培地は、30℃の振とうインキュベーター内に静置することができる。
【0070】
特定の実施形態において、細菌細胞は、少なくとも500ml、少なくとも600ml、少なくとも700ml、少なくとも800ml、少なくとも900ml、少なくとも1000ml、少なくとも1250ml、少なくとも1500ml、少なくとも1750ml、少なくとも2000mlまたは少なくとも2500ml、好ましくは少なくとも800mlの培地で培養される。より具体的な実施形態において、細菌細胞は、500~2500ml、500~2000ml、500~1500mlまたは500~1000ml、好ましくは500~2500mlで培養される。典型的には、培地は、細菌細胞が培養される発酵槽の最大85%、好ましくは最大80%の容積である。したがって、特定の実施形態において、細菌細胞は、400~2000ml、400~1600ml、400~1200mlまたは400~800mlの容量を有する容器内で培養される。
【0071】
好ましくは、細菌培養は、低い培養密度で開始される。細菌の増殖および培養密度は、細菌を含む培地の光学密度を測定することによって決定することができる。
【0072】
特定の実施形態において、培地で細菌細胞を培養する工程は、600nmの光学密度(OD600)が、最大3、最大2、最大1、最大0.5、最大0.4、最大0.3、最大0.2、最大0.1、好ましくは最大0.1で開始される。
【0073】
特定の実施形態において、培地で細菌細胞を培養する工程は、600nmの光学密度(OD600)が、0.10~3.0、0.10~2.0、0.40~3.0、0.40~2.0または0.50~2.0で開始される。例えば、細菌細胞は、開始OD600が0.1、0.4または2となるように希釈することができる。
【0074】
細菌細胞の培養物が高い培養密度(例えば、少なくともOD600が20)に達したとき、誘導性複製起点の1種以上の誘導物質が培地に添加される。
【0075】
細菌の増殖は、通常、誘導期、対数期、静止期および死滅期の4つの異なる増殖期に分けることができる。これらの期の経過は、細菌の増殖曲線にまとめられるデータを提供する。
【0076】
一般に、細菌細胞の培養は、細菌の増殖曲線の指数期または対数(算術)期の後期に高い培養密度に達する。したがって、特定の実施形態において、細菌細胞の数が該細菌細胞の培養について決定された細菌の増殖曲線の対数期の推定最大細菌細胞数の70~95%、75~95%、80~95%、85~95%または85~90%、好ましくは85~90%であるときに、誘導性複製起点の1種以上の誘導物質が培地に添加される。
【0077】
当業者は、細菌の細菌増殖曲線を決定する方法を理解するであろう。例えば、細菌の増殖曲線は、Todarの細菌学のオンライン教科書http://textbookofbacteriology.net/growth_3.htmlで説明されているように決定することができる。
【0078】
同様に、特定の実施形態において、誘導性複製起点の1種以上の誘導物質は、600nmの光学密度(OD600)(または細菌培養物または細菌細胞を含む培養培地の達するOD600)が、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39または少なくとも40、好ましくは少なくとも25、より好ましくは少なくとも30で培地に添加される。
【0079】
特定の実施形態において、誘導性複製起点の1種以上の誘導物質は、600nmの光学密度(OD600)(または細菌培養物または細菌細胞を含む培養培地の達するOD600)が、20~100、20~90、20~80、20~70、20~60、20~50、20~45、20~40、25~35または30~40、好ましくは30~40、例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38または39で培地に添加される。例えば、誘導性複製起点の1種以上の誘導物質は、600nmの光学密度(OD600)が30で培地に添加することができる。
【0080】
当業者は、本発明の方法において、600nmの光学密度(OD600)が少なくとも20で誘導性複製起点の1種以上の誘導物質を培地に添加する工程(工程d)の前に、誘導性複製起点の誘導物質が培地中に存在しないか、または培地に添加されないことを理解するであろう。
【0081】
同様に、特定の実施形態において、誘導性複製起点の1種以上の誘導物質は、ベクターを含む細菌細胞を培地に接種する工程(工程b)の20~30時間後、20~27時間後、23~27時間後または25~27時間後、例えば25時間後、26時間後または27時間後に培地に添加される。
【0082】
特定の実施形態において、誘導性複製起点の1種以上の誘導物質は、該誘導性複製起点の1種以上の誘導物質を培地に添加した後、細菌細胞とともに少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間または少なくとも5時間、好ましくは少なくとも2時間インキュベートされる。
【0083】
特定の実施形態において、誘導性複製起点の1種以上の誘導物質は、該誘導性複製起点の1種以上の誘導物質を培地に添加した後、細菌細胞とともに1~7時間、2~6時間、2~5時間、2~4時間、3~6時間または3~5時間、好ましくは2~6時間インキュベートされる。
【0084】
誘導性複製起点の1種以上の誘導物質は、当技術分野で公知の方法によって培地に添加することができる。例えば、誘導性複製起点の誘導物質が化学物質である場合、その化学物質を培地に直接添加することができる。別の例において、ベクター複製の誘導物質がポリヌクレオチドによってコードされる場合、そのポリヌクレオチドはプロモーターの転写調節下の発現カセットに提供され得る。
【0085】
グルコースは、プラスミド複製の1種以上の誘導物質を妨げ得る。したがって、プラスミド複製の1種以上の誘導物質を細菌培養物に添加する前に、グルコースを培地から除去し、かつ/または細菌細胞によって完全に消費することが好ましい。
【0086】
特定の実施形態において、細菌細胞が培養される培地にグルコースが補充される場合、培地に存在する実質的にすべて(例えば、少なくとも99.0%、好ましくは少なくとも99.90%)、またはすべてのグルコースが細菌細胞によって消費されるときに、プラスミド複製の1種以上の誘導物質が培地に添加される。
【0087】
特定の実施形態において、細菌細胞が培養される培地にグルコースが補充される場合、培地は、プラスミド複製の1種以上の誘導物質を培地に添加する前に、培地に存在する実質的にすべて(例えば、少なくとも99.0%、好ましくは少なくとも99.90%)、またはすべてのグルコースが細菌細胞によって消費されるときに、0.50~2.0%(v/v)、0.50~1.50%(v/v)または0.50~1.0%(v/v)のグリセロール、好ましくは0.50~1.0%(v/v)のグリセロールを含み、かつ最大0.010%(v/w)、好ましくは最大0.0010を含む%(v/w)のグルコースを含む培地と交換または置換される。培地中のグルコースの量は、当技術分野で知られているように、例えば、培地サンプルの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)またはGlucCell(登録商標) Glucose Monitoring System(Cesco Bioproducts)を用いて決定することができる。
【0088】
特定の細菌培養物については、グルコースを補充した培地を、グリセロールを含むがグルコースを含まない(例えば、最大0.010%(v/w)、好ましくは最大0.0010%(v/w)グルコース)培地と交換または置換した後、細菌細胞が、細菌細胞に残っているグルコースを消費するのに少なくとも30分かかる場合がある。
【0089】
同様に、特定の実施形態において、細菌細胞が培養される培地にグルコースが補充される場合、培地は、プラスミド複製の1種以上の誘導物質を培地に添加する少なくとも30分前に、0.50~2.0%(v/v)、0.50%~1.50%(v/v)または0.50~1.0%(v/v)、好ましくは0.50~1.0%(v/v)のグリセロールを含む培地と交換または置換される。例えば、グルコースおよび酵母抽出物を含む培地は、プラスミド複製の1種以上の誘導物質を培地に添加する少なくとも30分前に、1.0%(v/v)のグリセロールおよび酵母抽出物を含む培地と交換または交換される。例えば、培地中で細菌細胞を培養する間、グルコースおよび酵母抽出物が補充された培地が連続的に、例えば流加培養によって培地に添加される場合、培地の供給は、グルコースおよび酵母抽出物が補充された培地から、グリセロールおよび酵母抽出物が補充された培地に切り替えられる。
【0090】
特定の実施形態において、グルコースを含む培地は、細菌細胞を含む培地(または細菌培養物)の600nmの光学密度(OD600)が13~20、14~20、15~20、16~20、17~20、18~20、19~20、13~18、13~~18、好ましくは13~18であるときに、0.50~2.0%(v/v)のグリセロールを含む培地と交換または置換される。例えば、グルコースを含む培地は、細菌細胞を含む培地(または細菌培養物)の600nmの光学密度(OD600)が15であるときに、0.50~2.0%(v/v)のグリセロールを含む培地と交換または置換される。
【0091】
特定の実施形態において、例えば、細菌細胞が培養される培地にグルコースが補充される場合、細菌細胞の培養は約30℃の温度で行われ、グルコースが補充された培地を、グリセロールを含むがグルコースを含まない(例えば、最大0.010%(v/w)、好ましくは最大0.0010%(v/w)グルコース)培地と交換する際に、温度を、約30℃の温度から36.0~38.0℃の温度に上昇させる。
【0092】
特定の実施形態において、細菌細胞の培養は約30℃の温度で行われ、プラスミド複製の1種以上の誘導物質を培地に添加する少なくとも3時間前、少なくとも2時間前、少なくとも1.5時間前、少なくとも1時間前、少なくとも0.5時間前、好ましくは少なくとも2時間に、温度を、約30℃の温度から36.0~38.0℃の温度に上昇させる。
【0093】
特定の実施形態において、温度を、約30℃の温度から36.0~38.0℃の温度、例えば、36.0℃、36.50℃、37.0℃、37.50℃または38.0℃、好ましくは37.0℃の温度まで上昇させる。
【0094】
特定の実施形態において、温度を、プラスミド複製の1種以上の誘導物質を培地に添加する前に、OD600が、15~35、20~35、25~35または30~35で、約30℃の温度から36.0~38.0℃の温度に上昇させる。
【0095】
細菌の増殖率の低下は、プラスミドのコピー数の増加に関連している。したがって、本明細書で教示されるように、細菌タンパク質合成を阻害することにより、少なくとも16kbのサイズのベクターの製造のための方法の収量をさらに高めることができる。
【0096】
したがって、特定の実施形態において、この方法は、誘導性複製起点の1種以上の誘導物質を培地に添加する工程(工程d)の後、かつ任意の工程である培地から細菌細胞を分離する工程(工程e)の前、かつ細菌細胞からプラスミドを回収する工程(工程f)の前に、細菌タンパク質合成の1種以上の阻害剤を培地に添加することをさらに含む。
【0097】
特定の実施形態において、この方法は、培地中での細菌細胞をさらに培養する間に、細菌タンパク質合成の1種以上の阻害剤を培地に添加することをさらに含む。
【0098】
当業者は、誘導性複製起点の1種以上の誘導物質を培地に添加する工程(工程d)の前に、細菌タンパク質合成の阻害剤が培地に添加されないことを理解するであろう。
【0099】
本明細書で用いられる「細菌タンパク質合成の阻害剤」または「細菌タンパク質合成阻害剤」という用語は、ポリペプチドまたはタンパク質の生成を直接的にもたらすプロセスを阻害することによって細菌細胞の成長または増殖を阻害または減速させる薬剤を意味する。細菌タンパク質合成の阻害剤は、細菌の内部機構を抑制し、細菌がプラスミド産生に完全に集中するようにする。さらに、細菌タンパク質合成の阻害剤は、細菌の酸素の必要性を安定化させる。
【0100】
特定の実施形態において、細菌タンパク質合成の1種以上の阻害剤は、1~10mM、1~9mM、1~8mM、1~7mM、1~6mM、1~5mM、1~4mM、1~3mMまたは1~2mMの濃度で培地に添加される。
【0101】
特定の実施形態において、細菌タンパク質合成の1種以上の阻害剤は、細菌リボソームに結合する薬剤である。そのような阻害剤の非限定的な例としては、クロラムフェニコール、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、アミノグリコシド、テトラサイクリン、マクロライド、リンコサミドおよびオキサゾリジノンが挙げられる。
【0102】
特定の実施形態において、細菌タンパク質合成の1種以上の阻害剤は、細菌リボソームのペプチジルトランスフェラーゼ活性を阻害する薬剤である。好ましくは、細菌タンパク質合成の阻害剤は、細菌リボソームの50Sまたは30Sリボソームサブユニットに結合する薬剤である。より一層好ましくは、細菌タンパク質合成の阻害剤は、細菌リボソームの50Sサブユニットの23SrRNAの第2451番および第2452番のアミノ酸残基に結合する薬剤である。
【0103】
特定の実施形態において、細菌タンパク質合成の阻害剤は、クロラムフェニコール、スペクチノマイシン、アミノグリコシド、テトラサイクリン、マクロライド、リンコサミドおよびオキサゾリジノンからなる群から選択される細菌タンパク質合成の阻害剤、好ましくはクロラムフェニコールまたはスペクチノマイシン、より好ましくはクロラムフェニコールである。
【0104】
特定の実施形態において、細菌タンパク質合成の1種以上の阻害剤は、培地中の溶存酸素量が5%超、10%超、15%超、20%超または25%超、好ましくは5%超低下するときに培地に添加される。
【0105】
より具体的な実施形態において、例えば、細菌培養物のOD600が、誘導後に10%超、15%超、20%超または25%超増大する場合、培地中の溶存酸素量が40%未満、35%未満または30%未満になる前、好ましくは培地中の溶存酸素量が30%未満になる前に、細菌タンパク質合成の1種以上の阻害剤が培地に添加される。
【0106】
より具体的な実施形態において、例えば、細菌培養物のOD600が誘導後に1時間当たり1~10%または1時間当たり5~10%増大する場合、細菌細胞を回収する2時間前に細菌タンパク質合成の1種以上の阻害剤が培地に添加される。
【0107】
より具体的な実施形態において、例えば、細菌培養物のOD600が誘導後に1時間当たり10~25%増大する場合であって、培地中の溶存酸素が35%超または30%超である場合、細菌細胞を回収する2時間前に細菌タンパク質合成の1種以上の阻害剤が培地に添加される。
【0108】
特定の実施形態において、細菌タンパク質合成の1種以上の阻害剤は、該細菌タンパク質合成の1種以上の阻害剤が培地に添加された後、少なくとも1時間、少なくとも2時間または少なくとも3時間、好ましくは少なくとも1時間の期間にわたり細菌細胞と共にインキュベートされる。
【0109】
特定の実施形態において、細菌タンパク質合成の1種以上の阻害剤は、該細菌タンパク質合成の1種以上の阻害剤が培地に添加された後、1~5時間、1~4時間、1~3時間、2~3時間または1~2時間、好ましくは1~4時間にわたり細菌細胞と共にインキュベートされる。
【0110】
特定の実施形態において、細菌タンパク質合成の1種以上の阻害剤は、誘導性複製起点の1種以上の誘導物質の添加の少なくとも1時間後に培地に添加される。
【0111】
当業者は、細菌からより質の低いベクターが産生されるのを防ぐために、細菌中のRNAポリメラーゼが枯渇する前、および/または溶存酸素濃度が40%未満、35%未満または30%未満、好ましくは30%未満に達する前に細菌細胞を回収する必要があることを理解する。好ましくは、培地のpHは6.5~7.5、好ましくは6.9~7.1である。
【0112】
したがって、特定の実施形態において、細菌細胞は、最大4時間、最大5時間、最大6時間、最大7時間、最大8時間、好ましくは最大6時間、例えば6時間、5時間、4時間、3時間、2時間または1時間さらに(工程eにおいて)培養される。特定の実施形態において、細菌細胞は、誘導性複製起点の1種以上の誘導物質を添加した後、最大4時間、最大5時間、最大6時間、最大7時間、最大8時間、好ましくは最大6時間、例えば6時間、5時間、4時間、3時間、2時間または1時間で培地から分離される。
【0113】
特定の実施形態において、細菌細胞は、培地中の溶存酸素濃度が40%未満、35%未満または30%未満、好ましくは30%未満に達する前に培地から分離される。
【0114】
特定の実施形態において、細菌細胞は、細菌培養物の600nmの光学密度(OD600)が低下するとき、好ましくは細菌培養物のOD600が1~20%、1~15%、1~10%または5~10%低下するときに培地から分離される。
【0115】
細菌細胞は、培地から細胞を分離するための当技術分野で公知の任意の方法によって培地から分離することができる。例えば、細菌細胞を含む培地を遠心分離し、ペレットを回収することができる。
【0116】
ベクターは、細菌からベクターを回収するための当技術分野で公知の任意の方法によって細菌細胞または細菌環境から回収することができる。例えば、最初に溶解緩衝液(例えば、アルカリを含む緩衝液)および/または超音波処理を用いることによって細菌細胞が溶解され、続いてエタノール沈殿、スピンカラムベースの核酸精製またはフェノール-クロロホルム抽出等によってベクターDNAが精製される。細菌タンパク質が哺乳類細胞に毒性を示す可能性があることから、精製されたベクターDNAをフェノール、クロロホルムおよびエーテルを用いて広範囲に抽出することにより、プラスミドDNA調製物中に細菌タンパク質が存在しないようにすることができる。
【0117】
ベクター内に誘導性複製起点が存在することにより、細胞内での転写を誘導することが可能となり、したがって、細菌培養中の任意の時点において低コピー数から高コピー数への切り替えを調節することが可能となる。
【0118】
誘導性複製起点およびそれらの適合性誘導物質は、当技術分野においてよく知られている。
【0119】
複製起点は、誘導性プロモーター/リプレッサー系を複製起点に作動可能に連結することによって誘導可能にされる。
【0120】
例えば、誘導性複製起点は、例えばWild J. et al., Conditionally amplifiable BACs: switching from single-copy to high-copy vectors and genomic clones. Genome Res. 2002.12(9):1434-1444においてシャトルBACの増幅について記載されているように、1-アラビノースの添加によって誘導することができる1-アラビノース誘導性パラプロモーター(araC-PBAD)によって厳密に調節されるoriV/TrfA増幅系である。さらなる例において、誘導性複製起点は、Wild J. et al., Copy-control tightly regulated expression vectors based on pBAC/oriV. 2004.267:155-167に記載されているラムノース誘導性Prhaプロモーター(rhaS-Prha)によって厳密に調節される。
【0121】
好ましい実施形態において、誘導性複製起点は、本明細書の他の箇所において説明されているように:
-誘導性プロモーター(すなわち、誘導性プロモーター/リプレッサー系);好ましくは、誘導性プロモーターは、lacプロモーターおよび少なくとも1つのLacO1オペレーターを含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、少なくとも1つのLacO1オペレーターは、lacプロモーターに作動可能に連結されている;および
-ColE1型複製起点の切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列であって、誘導性プロモーターに作動可能に連結されている;好ましくはLacプロモーターおよびLacO1オペレーターに作動可能に連結されているColE1型複製起点の切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列
を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0122】
特定の実施形態において、本明細書で教示される方法により、細菌細胞におけるベクターのコピー数を調節することが可能となる。
【0123】
特定の実施形態において、本明細書で教示される方法により、得られるベクターにおける突然変異率および/または望ましくない突然変異の数が低減する。細菌集団における突然変異率は、Rosche et al., Determining mutation rates in bacterial populations, Methods, 2000, 20(1):4-17に記載されているような、当技術分野で公知の方法によって決定することができる。
【0124】
本発明者らは、本明細書で教示される方法によってベクターが産生される場合に、特に高いプラスミド産生をもたらす誘導性oriを含む巨大ベクターを開発した。さらに、本発明者らは、野生型誘導性oriを含む巨大ベクターよりもさらに高いプラスミド産生をもたらす改良された誘導性oriを開発した。
【0125】
したがって、さらなる態様によれば、誘導性複製起点を含む少なくとも16kbのベクターが提供される。
【0126】
特定の実施形態において、誘導性oriは、
-誘導性プロモーター(すなわち、プロモーター/リプレッサー系);好ましくは、誘導性プロモーターは、lacプロモーターおよび少なくとも1つのLacO1オペレーターを含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、少なくとも1つのLacO1オペレーターは、lacプロモーターに作動可能に連結されている;および
-ColE1型ori切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列であって、誘導性プロモーター、好ましくはLacO1オペレーターおよびLacプロモーターに作動可能に連結されているColE1型ori切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列
を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0127】
「作動可能な結合」は、調節配列および転写または発現が求められる配列が、それらの転写または発現が可能であるような方法で接続されている結合である。例えば、プロモーターおよびORF等の配列は、それらの配列間の結合の性質が:(1)フレームシフト突然変異の導入をもたらすものでない場合、(2)プロモーターがORFの転写を指示する能力を阻害するものでない場合、(3)プロモーター配列から転写されるORFの能力を阻害するものでない場合、作動可能に結合されていると言うことができる。したがって、「作動可能に連結された」とは、プロモーター等の発現調節配列が目的の配列の転写/発現を効果的に調節するように、遺伝子構築物に組み込まれることを意味する。
【0128】
本明細書で用いられる「野生型RNAIIプレプライマー」という用語は、一般に、RNAIIをコードする配列、アンチセンスRNAIプロモーター、およびRNAIをコードするアンチセンス配列を含む核酸配列を意味する。
【0129】
本明細書で用いられる「切断型RNAIIプレプライマー」という用語は、一般に、機能的RNAIをコードする配列が存在しないという事実、すなわち、RNAIIと相互作用することができる配列が存在せず、かつ/またはRNAIをコードする配列に作動可能に連結された機能的RNAIプロモーターをコードする配列が存在しないという事実を意味する。RNAIは、RNAIIの断片の逆転写産物である。典型的には、RNAIをコードする配列および/またはRNAIプロモーターの欠失は、RNAIIプレプライマー配列が、RNAI配列および/またはRNAIプロモーターを含む野生型RNAIIプレプライマー配列よりも短いことを意味する。しかしながら、本明細書でさらに説明されるように、RNAIをコードする配列の一部の欠失および/または該配列の突然変異も非機能的RNAI配列をもたらすことは、当業者には明らかであろう。同様に、RNAIプロモーターの一部の欠失および/または該配列の突然変異も非機能的RNAIプロモーターをもたらすことは、当業者には明らかであろう。例えば、切断型RNAIIプレプライマーは、配列番号6または7に示される配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり得る。
【0130】
したがって、特定の実施形態において、誘導性複製起点は、ColE1型oriの機能的(すなわち、RNAIIと相互作用することができる)RNAIをコードする核酸配列を含まず、好ましくは、誘導性複製起点は、pMB1(ColE1)oriの機能的(すなわちRNAIIと相互作用することができる)RNAIをコードする核酸配列を含まない。
【0131】
より具体的な実施形態において、誘導性oriは、配列番号1で示される核酸配列を含まない。
【0132】
特定の実施形態において、誘導性oriは、ColE1型oriの機能的RNAIプロモーターを含まず、好ましくは、誘導性oriは、pMB1(ColE1)oriの機能的RNAIプロモーターを含まない。より具体的な実施形態において、誘導性oriは、配列番号2に示される核酸配列を含まない。
【0133】
特定の実施形態において、誘導性oriおよび/または誘導性プロモーターは、RNAIIプレプライマーの内因性プロモーターを含まない。より具体的な実施形態において、誘導性oriおよび/または誘導性プロモーターは、pMB1 oriのRNAIIプレプライマーの内因性プロモーターを含まない。より一層具体的な実施形態において、誘導性oriおよび/または誘導性プロモーター/リプレッサー系は、配列番号3に示される核酸配列を含まない。
【0134】
特定の実施形態において、ベクターは、rop遺伝子を含まないか、または不活性なropをコードするrop遺伝子を含む。
【0135】
本明細書で用いられる場合、「プロモーター」という用語は、遺伝子の転写を可能にするDNA配列を意味する。プロモーターはRNAポリメラーゼによって認識され、RNAポリメラーゼにより転写が開始される。したがって、プロモーターには、RNAポリメラーゼに直接結合するか、RNAポリメラーゼの動員に関与するDNA配列が含まれる。プロモーター配列には、タンパク質(すなわち、トランス作用因子)と結合して遺伝子クラスター内の遺伝子の転写レベルを増大させることができる1つ以上のDNA領域である「エンハンサー領域」が含まれ得る。エンハンサーは、典型的にはコード領域の5’末端にあるが、プロモーター配列から分離することもでき、例えば、遺伝子のイントロン領域内または遺伝子のコード領域の3’に存在し得る。本明細書において「誘導性プロモーター」に言及する場合、誘導性プロモーター/リプレッサー系は、プロモーター領域、および1つ以上の調節タンパク質(リプレッサーおよび/またはアクチベーター)が結合することができるオペレーター領域(すなわち、オペレーター)を含むことが意図される。1種以上の調節タンパク質のオペレーター領域への結合によって、RNAポリメラーゼに対するプロモーターの親和性を増大または低下させることができる。本明細書において「プロモーター」に言及する場合、プロモーター自体が意図され、すなわち、オペレーター領域を含まないことを意味する。
【0136】
特定の実施形態において、誘導性プロモーターは、RNAIのプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーターおよびT7プロモーターからなる群から選択されるプロモーター、好ましくはlacプロモーターを含む。
【0137】
特定の実施形態において、lacプロモーターは、野生型lacプロモーターまたは改変されたlacプロモーターである。より具体的な実施形態において、lacプロモーターは、lacUV5プロモーターまたはL8-UV5 lacプロモーターとしても知られているlacL8プロモーターを含む。lacL8プロモーターは、野生型lacプロモーターと比較して、-10六量体領域(-10 hexamer region)に2つの塩基対変異を含む。lacL8プロモーターは、これまでにMagasanik, The lactose operon, Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Harbour, NY, 1972に記載されている。
【0138】
特定の実施形態において、lacプロモーターは、、配列番号4に示される核酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%、好ましくは100%の配列同一性を有する核酸配列を含むか、実質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0139】
当業者は、最終的な転写開始が、誘導性oriに存在するプロモーターによって決定されることを理解するであろう。
【0140】
特定の実施形態において、誘導性プロモーターは、少なくとも1つ(例えば、1つ、2つまたは3つ)のLacO1オペレーターを含む。切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列の上流の複数のLacO1オペレーターを用いることにより、ベクターの複製をより厳密に調節し得る。
【0141】
特定の実施形態において、LacO1オペレーターは、配列番号5に示される核酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%、好ましくは100%の配列同一性を有する核酸配列を含むか、実質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0142】
特定の実施形態において、ColE1型複製起点の切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列は、pMB1(ColE1)複製起点の切断型RNAIIプレプライマーをコードする。
【0143】
当業者は、RNAIがRNAIIの断片に対する逆転写産物であるため、ColE1型oriのRNAIIをコードする核酸配列が、ColE1型oriのRNAIをコードする逆転写産物を含まないように切断されることを理解するであろう。さらに、ColE1型oriのRNAIIをコードする核酸配列は、ColE1型oriのアンチセンスRNAIプロモーターを含まないようにさらに切断することもできる。切断型RNAIIプレプライマーは、負のRNAI-RNAII二重化フィードバックループを無効にするか、少なくとも減少させる。
【0144】
特定の実施形態において、pMB1(ColE1)複製起点の切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列は、配列番号6に示される核酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくともの80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%、好ましくは100%の配列同一性を有する核酸配列を含むか、実質的にそれからなるか、またはそれからなる。好ましくは、切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列は、配列番号6に示される核酸配列を含むか、またはそれからなる核酸配列を有する。
【0145】
本発明者らは、切断型RNAIIプレプライマー内に2つの突然変異が存在することによって、野生型の切断型pMB1複製起点と比較して、ベクター産生が増大することを見出した。
【0146】
特定の実施形態において、切断型RNAIIプレプライマーは、完全な(すなわち、切断前の)RNAIIプレプライマー転写産物の第543番目の核酸に対応する位置の核酸におけるCからTへの点突然変異、および/または完全な(すなわち、切断前の)RNAIIプレプライマー転写産物の第322番目の核酸に対応する位置の核酸におけるAからGへの点突然変異を含む。特定の実施形態において、切断型RNAIIプレプライマーは、配列番号10の第543番目の核酸に対応する位置の核酸におけるCからTへの点突然変異、および/または配列番号10の第322番目の核酸に対応する位置の核酸におけるAからGへの点突然変異を含む。
【0147】
特定の実施形態において、切断型RNAIIプレプライマーは、切断型RNAII転写産物の第306番目の核酸におけるC-T点突然変異、および/または切断型RNAII転写産物の第85番目の核酸におけるA-G点突然変異を含む。
【0148】
特定の実施形態において、切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列は、配列番号7と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%、好ましくは100%の配列同一性を有する核酸配列を含むか、またはそれからなる。好ましくは、切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列は、配列番号7で示される核酸配列を含むか、またはそれからなる核酸配列を有する。本明細書に開示される誘導性oriは、
(i)pMB1 oriからRNAIをコードする核酸配列を欠失させるか、またはpMB1 ori内のRNAIをコードする核酸配列を変異させてRNAIの機能を無効にするかもしくは大幅に低下させ;
(ii)pMB1 oriからRNAIプロモーターを欠失させるか、またはpMB1 ori内のRNAIプロモーターを変異させてRNAIプロモーターの機能を無効にするかもしくは大幅に低下させ;
(iii)任意に、pMB1 oriのRNAIIプロモーターを、pMB1 oriのRNAIIプレプライマーの内因性プロモーターではないプロモーターで置換し、好ましくは、pMB1 oriのRNAIIプレプライマーの内因性プロモーターではないプロモーターが、RNAIプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーターおよびT7プロモーターからなる群から選択されるプロモーターであり、より好ましくは、pMB1 oriのRNAIIプレプライマーの内因性プロモーターではないプロモーターがlacプロモーターであり;pMB1 oriのRNAIIプレプライマーの内因性プロモーターではないプロモーターが、切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列に作動可能に連結されている;かつ
(iv)切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列の上流(5’)に、少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つまたはそれ以上)のオペレーターであって、切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列に作動可能に連結されており、内因性RNAIIプロモーターまたは内因性RNAIIプロモーターの任意の置換プロモーターと組み合わせて切断型RNAIIプレプライマーの条件付き転写を可能にする少なくとも1つのオペレーターを導入することによって、
pUC18プラスミド等のpMB1(ColE1型)oriを含むプラスミドから誘導され得る。
【0149】
上述したように、RNAIはRNAIIの断片の逆転写産物であるため、pMB1 oriからRNAIをコードする核酸配列を欠失させることにより、切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列がもたらされる。
【0150】
より具体的な実施形態において、本明細書に開示される誘導性複製起点は、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許EP0179786B1、およびPanayotatos et al., DNA replication regulated by the priming promoter, Nucleic Acids Research, 1984, Volume 12(8):2641-2648に記載されているように、pMB1 oriを変更することによりpMB1 oriから誘導され得る。
【0151】
特定の実施形態において、誘導性複製起点は:
-RNAIプロモーターの機能が無効になるかまたは大幅に低下するようにRNAIプロモーターが欠失または変異されており;これにより切断型RNAIIプレプライマーを得ることができ;
-RNAI/RNAII相互作用の親和性を低下させるRNAI/RNAII重複の核酸配列に変異が導入され;好ましくは、RNAIの機能が無効になるかまたは大幅に低下するようにRNAIをコードする核酸配列が欠失または変異されており;これにより切断型RNAIIプレプライマーを得ることができ;
-切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列の上流(5’)に少なくとも1つ(1つ、2つ、3つまたはそれ以上等)のオペレーターが導入され、少なくとも1つのオペレーターが、切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列に作動可能に連結されており、少なくとも1つのオペレーターが、内因性RNAIIプロモーターまたは内因性RNAIIプロモーターの任意の置換プロモーターと組み合わせて切断型RNAIIプレプライマーの条件付き転写を可能にすし;かつ/または
-任意にRNAIIプロモーターがRNAIIプレプライマーの内因性プロモーターではないプロモーターに置換されている、好ましくはRNAIIプロモーターが、RNAIプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーターまたはT7プロモーターからなる群から選択されるプロモーターに置換されており;RNAIIプレプライマーの内因性プロモーターではないプロモーターは、切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列に作動可能に連結されている
pMB1複製起点である。
【0152】
RNAI/RNAII相互作用の親和性を低下させるRNAI/RNAII重複の領域における突然変異は当技術分野でで公知であり、例えば、Camps et al., Modulation of ColE1-like plasmid replication for recombinant gene expression. Recent Pat DNA Gene Seq. 2010, 4(1):58-73の表2に記載されている。
【0153】
好ましい実施形態において、誘導性複製起点は、
-RNAI遺伝子およびRNAIプロモーターをコードする核酸配列が欠失されており;
-RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列の上流(5’)に少なくとも1つ(1つ、2つ、3つまたはそれ以上等)のLacO1オペレーターが導入され、少なくとも1つのLacO1オペレーターが(切断型)RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列と作動可能に連結されており;かつ
-RNAIIプロモーターが、RNAIIプレプライマーの内因性プロモーターではないプロモーターで置換されており、好ましくは、RNAIIプロモーターが、RNAIプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーターおよびT7プロモーターからなる群から選択されるプロモーターで置換されており;RNAIIプレプライマーの内因性プロモーターではないプロモーターが、切断型RNAIIプレプライマーをコードする核酸配列に作動可能に連結されている
pMB1複製起点である。
【0154】
特定の実施形態において、誘導性複製起点は、配列番号8の配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0155】
上述したように、本発明者らは、切断型pMB1複製起点への1つまたは2つの突然変異の導入により、野生型の切断型pMB1複製起点と比較してベクター産生が増大することを見出した。
【0156】
したがって、特定の実施形態において、誘導性oriは、配列番号8に示されるアミノ酸配列の第176番目の核酸位置におけるAからGへの突然変異、および/または配列番号8に示されるアミノの第397番目の核酸位置におけるCからTへの突然変異を含む。
【0157】
好ましい実施形態において、誘導性複製起点は、配列番号9と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%、好ましくは100%配列同一性を有するセットとしての配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。当業者は、配列番号9に示される配列が、これらに加えて、第176番目の核酸位置および/または第397番目の核酸位置における変異を含み得ることを理解するであろう。
【0158】
特定の実施形態において、本明細書に記載の誘導性複製起点がlacプロモーターに作動可能に連結されたLacO1オペレーターを含む場合、誘導物質はイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)および/またはα-D-ラクトースである。IPTGは内因性リプレッサーLacIをLacO1オペレーターから除去し、誘導性複製起点はプラスミド内に存在する他の複製起点を無効にする。
【0159】
当業者は、本明細書で教示される少なくとも16kbのベクターが、
-プラスミド複製およびコピー数の調節のためのrepE、
-分裂中にFプラスミドDNAを娘細胞に分配し、かつ/またはベクターの安定した維持を確保するためのparAおよびparB;および/または
-抗生物質耐性遺伝子または抗生物質非依存性選択マーカー(例えば、Ccda/ccdb 毒/抗毒システム(Staby(登録商標) Operating System;Delphi Genetics社製)または代謝依存性)等の選択マーカー
を含むがこれらに限定されない、ベクター複製、細胞分裂および/または選択に必要な他の因子をさらに含み得ることを理解するであろう。
【0160】
特定の実施形態において、本明細書に記載の誘導性oriがクローン化される空のバックボーンベクターは、pShuttleベクターおよび/またはBACベクター、またはそれらの組み合わせである。例えば、Addgene社製の製品番号#16402のpShuttleベクターである。
【0161】
本発明のベクターは、プラスミド放出(plasmid launched)弱毒化生ウイルス(PPLAV)ワクチン等の次世代ワクチンプラットフォーム技術で用いることができる。したがって、特定の実施形態において、ベクターは、弱毒化(フラビ)生ウイルスワクチンのcDNAを含むウイルス発現カセットを含む。より具体的な実施形態において、ベクターは、異種DNA配列が挿入されており、かつ/または天然のウイルス配列が欠失されている、弱毒化生黄熱病ウイルス(YFV)-17DワクチンのcDNAを含むウイルス発現カセットを含む。
【0162】
さらなる態様によれば、ワクチン接種、巨大なポリペプチドまたはタンパク質の製造、またはウイルスベクターの製造のための、本明細書で教示されるベクターの使用が提供される。以下の実施例は、本発明を説明することを意図するものであり、その範囲の限定として解釈されるべきではない。
【実施例】
【0163】
実施例1:pMB1(ColE1)OriとiOriとの比較
pMB1(ColE1)Ori(配列番号10を参照)において、RNAII DNAは、その同族の上流プロモーターRNAIIpから転写されて、RNAII転写産物を生じさせた。RNAIIは、プラスミドDNAのOri+1開始点におけるDNA合成を開始するためのプライマーとして機能した。RNAIIの発現は、相補的なアンチセンスRNAIの結合によって転写後に調節された。RNAIは、RNAII遺伝子内で逆方向に存在するRNAI遺伝子から、そのRNAIpプロモーターから発現された。プラスミドにコードされたROPタンパク質はRNAI-RNAII二本鎖を安定化し、これによりプラスミドDNAの複製がさらに制限された(
図2~3)。
【0164】
iOriでは、5’末端切断型RNAII
*の発現は、異種LacUVpプロモーターから開始された。RNAII配列はRNAI遺伝子全体を欠失させることによって切断され、RNAIは発現しなかった。RNAII
*の発現は、異種プロモーターと元のRNAII
*配列との間に挿入されたLacO1リプレッサー結合配列にLACIタンパク質が結合することによって転写レベルで調節された。iOriでは、LacO1 DNA配列とRNAII DNA配列との転写融合であるRNAII
*が、プラスミドDNA合成を開始するためのプライマーとして機能した。RNAII
*は、2つの点突然変異、第397番目の核酸位置におけるC→T、および第176番目の核酸位置におけるA→Gを含んでいた(配列番号9を参照)(
図2~3)。
【0165】
実施例2:プラスミド産生に対するiOriのRNAII
*
の点突然変異の影響
図1に示される構造のプラスミド(変異したiOriを有するpViroVet-4-YFV17D)、または変異したiOriが野生型iOri(すなわち、
図2に示すように、第397番目の核酸位置におけるC→T、および第176番目の核酸位置におけるA→Gの点突然変異を含まないiOri)(変異していないiOri)に置換された
図1に示される構造のプラスミドを用いてBL21細菌を形質転換した。
【0166】
リン酸緩衝LB培地に、変異したiOriを含むpViroVet-4-YFV17Dで形質転換した2種の異なる細菌クローン(pVV*およびpVV4)、および変異していないiOriを含むpViroVet-4-YFV17Dで形質転換した1種の細菌クローン(pVV-wt iOri))を接種し、シェーカーフラスコで一晩インキュベートした。
【0167】
翌朝、細菌培養物のOD600を測定し、発酵槽内で1%グリセロールを添加した新鮮な培地で細菌をOD600が2となるように希釈した。細菌を37℃で2時間増殖させた後、IPTGで誘導した。誘導の2時間後、クロラムフェニコールを添加して、a)細菌の内部機構を抑制し、プラスミドの産生に完全に集中させ、b)細菌の酸素必要量を安定させた。クロラムフェニコール添加の2時間後、細胞を回収し、収量を測定した。
【0168】
図5は、細菌クローンpVV4
*またはpVV4の誘導(I)によって、細菌クローンpVV-wt iOriの誘導と比較して、より高いプラスミド産生がもたらされたことを示す。したがって、iOriの第397番目の核酸位置における点突然変異C→T、およびiOriの第176番目の核酸位置における点突然変異A→Gの2つの突然変異が、プラスミド産生に有益な効果を有する。
【0169】
実施例3:本明細書で教示されるベクターの収量に対する複製誘導時のバイオマスのレベルの影響
図1に示される構造(pViroVet-4-YFV17D)を有し、iOriを含むプラスミドを用いてBL21細菌を形質転換し、例えば、
https://international.neb.com/Protocols/0001/01/01/transformation-protocol-for-bl21-de3-competent-cells-c2527のNew England BioLabs Inc.のTransformation Protocol for BL21(DE3) competent cellsや、Addgene社のホームページ
https://www.addgene.org/protocols/create-glycerol-stock/に記載されているような最先端の技術を用いて、グリセロールストックを調製した。
【0170】
表1は、本発明のプラスミドの収量に対する複製誘導時のバイオマスのレベルの影響を示す。
【0171】
【0172】
LB培地に、pViroVet-4-YFV17Dで形質転換された細菌(
図1)のグリセロールストックを接種し、シェーカーフラスコで一晩インキュベートした。翌朝、OD
600値に反映されるバイオマスを測定し、細菌を開始時のOD
600が0.1、0.4および2となるように希釈した。1つの培養物にOD
600が0.2となった時に播種し、さらに一晩インキュベートして誘導時にOD
600を10に到達させた。細菌密度が1、2、3.78および10に達した後、培養物に1mMのIPTGを添加してプラスミド複製を誘導した。誘導の2時間後に細胞を回収して、プラスミド産生の収量(mg/lとして表される)を決定した。より具体的には、アルカリを添加して細胞を溶解させ、その後、混合物を中和し、細胞破片を接線流濾過(tangential flow)によって除去した。次いで、イオン交換クロマトグラフィー、限外濾過および接線流濾過(可能なバッファー交換のため)、それらに続くて最終精製カラムによりプラスミドを単離および精製した。
【0173】
温度は常に37℃に保たれた。
【0174】
収量は、シェーカーフラスコの限界と比較してはるかに高いバイオマスを達成した発酵槽の作動を含む誘導時のバイオマスの増加とともに増加した(表1を参照)。細菌バイオマスが高いほど、プラスミド生産の収量が高くなると結論付けられた。
【0175】
実施例4:IPTGおよびα-D-ラクトースの両方による本明細書で教示されるiOriを含むベクターの誘導
培地に、pViroVet-4-YFV17Dで形質転換された細菌(
図1)のグリセロールストックを接種し、シェーカーフラスコ内で一晩インキュベートした。翌朝、OD
600を測定し、細菌をOD
600が2になるように希釈し、さらに2時間増殖させた。次いで、一方の細胞培養物をプラスミド誘導物質の非存在下で増殖させ(NI=非誘導)、他方の培養物を1mMのIPTGまたは増加量のα-D-ラクトース(すなわち、0.5%、1%、2%および5%)で誘導した。4時間後にすべての培養物を回収し、DNAを単離し、制限酵素で消化し、ゲルに適用して視覚化した。温度は常に37℃に保たれた。
【0176】
誘導されたすべての培養物はプラスミドの存在を示し、IPTGと様々な濃度のα-D-ラクトースとの間に明らかな違いはなかった(
図4)。プラスミドはIPTGおよびα-D-ラクトースの両方で誘導できると結論付けられた。
【0177】
実施例5.培地へのグリセロールまたはグルコースの添加による細菌の増殖の増大
培地に、pViroVet-4-YFV17Dで形質転換された細菌(
図1)のグリセロールストックを接種し、シェーカーフラスコ内で一晩インキュベートした。翌朝、OD
600を測定し、細菌をOD
600が0.1になるように、1%グリセロール、1%グルコースのいずれかを補充した、または補充していない新鮮な培地で希釈した。細胞を8時間増殖させ、OD
600を1時間ごとに測定した。細胞は誘導されなかった。温度は常に37℃に保たれた。
【0178】
グリセロールまたはグルコースの添加により、細菌の増殖が2~2.5倍増加した(
図6)。
【0179】
実施例6.細菌タンパク質合成の阻害剤クロラムフェニコールの添加によるプラスミド産生への有益性
培地に、pViroVet-4-YFV17Dで形質転換された細菌(
図1)のグリセロールストックを接種し、37℃のシェーカーフラスコで一晩インキュベートした。翌朝、OD
600を測定し、発酵槽内でグルコースを補充した新鮮な培地で細菌をOD
600が0.1になるように希釈し、37℃で一晩インキュベートした(
図7、操作(a):播種)。朝、供給物(feed)にグリセロールを補充した(
図7、操作(b))。
【0180】
細菌をこれらの条件下で約1.5時間増殖させた後、IPTGで誘導した(
図7、操作(c))。誘導後約2時間後、クロラムフェニコールを添加して、i)細菌の内部機構を抑制し、プラスミドの生成に完全に集中させ、ii)細菌の酸素必要量を安定させた(
図7、操作(d))。クロラムフェニコールを添加してから約4時間後に細胞を回収し(
図7、操作(e))、収量を測定した。
【0181】
クロラムフェニコールの添加後すぐに細菌の増殖はプラトーに達し、これは、内部の細菌機構の停止を示唆するものです(
図7)。同時に、収量とDNA含有量とは指数関数的に増大し、これは、細菌が主にプラスミド産生に集中していることを示唆するものです(
図7)。これにより、クロラムフェニコールの添加がプラスミド生産に有益であるという結論に至った。
【0182】
実施例7.誘導性複製起点の誘導前の30℃から37℃への切り替えの製造プロセスへの有益性
培地に、pViroVet-4-YFV17Dで形質転換された細菌(
図1)のグリセロールストックを接種し、37℃のシェーカーフラスコで一晩インキュベートした。翌朝、OD
600を測定し、発酵槽内でグルコースを補充した新鮮な培地で細菌をOD
600が0.1になるように希釈し、30℃で一晩インキュベートした(
図8、操作(a):播種および操作(b))。
【0183】
朝、誘導を阻害しないように、グルコースに代えてグリセロールを供給物(feed)に補充した。さらに、温度を30℃から37℃に切り替えて、プラスミドの生成に最適な環境を作り出した(
図8、操作(c))。
【0184】
細菌をこれらの条件下で約1.5時間増殖させた後、IPTGで誘導した(
図5、操作(d))。誘導後約2時間後、クロラムフェニコールを添加し(
図5、操作(e))、約4時間後、細胞を回収し(
図5、操作(f))、収量を測定した。
【0185】
温度の切り替えにより、
図7に示される実施と比較してさらに高い収量(26mg/l対45mg/l)が得られ、30℃から37℃への切り替えが製造方法に有益であるという結論に至った(
図8)。
【配列表】
【国際調査報告】