IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カンパニー ジェネラレ デ エスタブリシュメンツ ミシュランの特許一覧

<>
  • 特表-改良されたトレッドを有するタイヤ 図1
  • 特表-改良されたトレッドを有するタイヤ 図2
  • 特表-改良されたトレッドを有するタイヤ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】改良されたトレッドを有するタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20221221BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B60C11/00 C
B60C11/00 B
B60C11/00 D
B60C11/03 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523445
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 FR2020051839
(87)【国際公開番号】W WO2021079047
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】1911784
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】シャハ レジス
(72)【発明者】
【氏名】ラブリュニー フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ロンシャンボン カリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】トビ アレクサンドル
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BA02
3D131BA03
3D131BA05
3D131BA09
3D131BB01
3D131BB11
3D131BC02
3D131BC09
3D131BC18
3D131BC33
3D131EA02U
3D131EA03U
3D131EA04V
3D131EA04X
3D131EA10U
3D131EB07U
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131LA15
(57)【要約】
本発明は、雪道で使用するように設計され、トレッド(21)を有する外側ストリップ(2)を備えた乗用車タイヤである。外側ストリップ(2)は、中央部分と2つの軸方向外側部分とを有する。外側ストリップは少なくとも2つのゴム配合物(M1,M2)を備え、これら2つのゴム配合物は外側ストリップ(2)の体積の少なくとも90%を構成する。第1のゴム配合物(M1)は第2のゴム配合物(M2)の半径方向外側にあり、第2のゴム配合物M2は外側ストリップ(2)の軸方向外側部分の体積の少なくとも60%を構成し、外側ストリップの軸方向外側部分の一方から他方まで実質的に連続する層で配置され、その層は最小の半径方向厚さが少なくとも0.3mmに等しい。ゴム配合物M1は、ゴム配合物M2の弾性係数G*の少なくとも1.35倍で、3倍未満である弾性係数G*を有する。配合物M1は、0℃での動的損失が0.5より大きく、配合物M2は、0℃での動的損失が0.3未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用車用のタイヤであって、雪道で使用するように設計されていることを示す刻印をサイドウォールに有し、トレッド面(SR)を介して地面と接触することが意図されたトレッド(21)を有する外側ストリップ(2)を備えたクラウン(1)と、リムと接触することが意図された2つのビードと、前記クラウンを前記ビードに連結する2つのサイドウォール(4)と、を備え、
・前記外側ストリップ(2)は、補強要素を有するクラウン層(31,32,33)を備えたクラウン補強材(3)の半径方向外側にあり、前記トレッドは、前記クラウン補強材(3)の半径方向外側にある部分の前記サイドウォール(4)の軸方向内側にあり、
・前記外側ストリップ(2)は、中央部分と2つの軸方向外側部分とから構成され、
・前記外側ストリップの前記中央部分は、前記トレッド面(SR)の軸方向幅(LA)の80%に等しい軸方向幅を有し、
・前記外側ストリップは、少なくとも2つのゴム配合物を備え、前記2つのゴム配合物(M1,M2)は、前記外側ストリップの体積の少なくとも90%を構成し、
・前記第1のゴム配合物(M1)は、前記第2のゴム配合物(M2)の半径方向外側にあり、前記第2のゴム配合物(M2)は、前記外側ストリップ(2)の軸方向外側部分の体積の少なくとも60%を構成し、前記外側ストリップ(2)の軸方向外側部分の一方から他方まで実質的に連続する層で配置され、前記層は最小の半径方向厚さが少なくとも0.3mmに等しく、
前記第1のゴム配合物(M1)は、ASTM規格D 5992-96に準拠して測定される、23℃、10Hzでの10%変形時の動的剪断弾性係数G*が、前記第2のゴム配合物(M2)について、ASTM規格D 5992-96に準拠して測定される、23℃、10Hzでの10%変形時の前記動的剪断弾性係数G*の少なくとも1.35倍に等しく、且つ、前記第2のゴム配合物(M2)について、ASTM規格D 5992-96に準拠して測定される、23℃、10Hzでの10%変形時の前記動的剪断弾性係数G*の最大で3倍に等しく、
前記第1のゴム配合物(M1)は、ASTM規格D 5992-96に準拠して、-10℃、10Hzでの0.7MPaの応力下で測定される動的損失tanD-10_1が少なくとも0.5に等しく、
前記第2のゴム配合物(M2)は、同じASTM規格D 5992-96に準拠して、23℃、10Hzでの10%の変形下で測定される動的損失tanD23_2が最大で0.3に等しい、
ことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記第2のゴム配合物(M2)は、ASTM規格D 5992-96に準拠して測定される、23℃、10Hzでの10%変形時の動的剪断弾性係数G*が、少なくとも0.8MPaに等しく、最大で4MPaに等しい、好ましくは少なくとも1MPaに等しく、最大で2.5MPaに等しい、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1のゴム配合物(M1)は、ASTM規格D 5992-96に準拠して、0℃、10Hzでの0.7MPaの応力下で測定される動的損失tanD-10_1が少なくとも0.7に等しい、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第2のゴム配合物(M2)は、ASTM規格D 412-16に準拠して23℃で測定される300%変形時の割線弾性係数MA300が少なくとも1.4MPaに等しく、好ましくは少なくとも1.7MPaに等しい、請求項1から3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第2のゴム配合物(M2)の総体積は、前記外側ストリップの体積の少なくとも25%、最大で50%を占める、請求項1から4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第2のゴム配合物(M2)は、前記外側ストリップ(2)の軸方向外側部分の一方から他方まで実質的に連続する層で配置され、前記層は最小の半径方向厚さが少なくとも0.6mmに等しい、好ましくは1mmに等しい、請求項1から5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1のゴム配合物は、前記第2のゴム配合物の軸方向内側にあり、前記第1のゴム配合物と前記第2のゴム配合物との界面は、前記外側ストリップ(2)の外面との界面の交点において、前記外面に対する法線(27)と絶対値で最大で60°に等しい、好ましくは絶対値で最大で20°に等しい角度を成す、請求項1から6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記トレッド(21)が溝又は周方向筋を備えるので、前記外側ストリップ(2)の外側部分の一方から他方まで連続する前記第2のゴム配合物(M2)の層は、前記外側ストリップ(2)の中央部分において、前記トレッド(21)の前記溝の底面又は前記周方向筋の底面の半径方向内側にある、請求項1から7のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項9】
前記トレッド(21)が溝又は周方向筋を備えるので、前記溝又は周方向筋は、前記タイヤの摩耗に伴って前記トレッド面の表面空隙率が増加するように構成される、請求項1から8のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1及び第2のゴム配合物は、補強充填材の総質量に対する割合として表した場合に、少なくとも80%のシリカで構成された前記補強充填材を有する、請求項1から9のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項11】
前記外側ストリップ(2)の前記第1及び第2のゴム配合物(M1,M2)の前記体積は、赤道面に関して実質的に対称である、請求項1から9のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項12】
前記外側ストリップ(2)が2つのゴム配合物(M1,M2)で構成され、前記ゴム配合物の1つが電気伝導体であり、ISO規格16392:2017に準拠して測定される前記タイヤの電気抵抗が最大で1010オームに等しいように、好ましくは最大で108オームに等しいように構成される、請求項1から9のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項13】
前記外側ストリップが3つのゴム配合物(M1,M2,M3)で構成され、前記第3のゴム配合物(M3)が、前記クラウン補強材(3)の補強要素の半径方向最外層(33)と前記トレッド面(SR)との間に配置され、ISO規格16392:2017に準拠して測定される前記タイヤの電気抵抗が最大で1010オームに等しいように、好ましくは最大で108オームに等しいよう構成される、請求項1から11のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項14】
前記外側ストリップが3つのゴム配合物で構成され、前記第3のゴム配合物が前記クラウン補強材の前記補強要素の半径方向最外層と第2のゴム配合物(M2)との間に配置され、前記第3のゴム配合物の最大厚さが最大で0.6mmに等しく、好ましくは最大で0.4mmに等しい、請求項1から11のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項15】
前記外側ストリップが4つのゴム配合物で構成され、前記第3のゴム配合物が前記クラウン補強材(2)の補強要素の前記半径方向最外層(33)と前記第2のゴム配合物(M2)との間に配置されて、前記第3のゴム配合物の最大厚さが最大で0.4mmに等しく、前記第4のゴム配合物が、前記クラウン補強材(3)の補強要素の半径方向最外層と前記トレッド面(SR)との間に配置され、ISO規格16392:2017に準拠して測定される前記タイヤの電気抵抗が最大で1010オームに等しいように、好ましくは最大で108オームに等しいように構成される、請求項1から11のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車への装着を意図したタイヤに関し、より詳細には、そのようなタイヤのクラウンに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、回転軸に関して回転対称性を示す幾何学的形状を有するので、タイヤの幾何学的形状は一般に、タイヤの回転軸を含む子午面で表される。所与の子午面について、半径方向、軸方向、及び周方向はそれぞれ、タイヤの回転軸と垂直な方向、タイヤの回転軸と平行な方向、及び子午面と垂直な方向を表す。赤道面と呼ばれる中央周面は、タイヤを実質的に対称な2つの半円環体形状に分割し、タイヤは、製造精度又は寸法と関連があるトレッド又は構造の非対称性を示すことが見込まれる。
【0003】
以下の本文において、「~の半径方向内側に」及び「~の半径方向外側に」という表現は、それぞれ、「~よりも、半径方向においてタイヤの回転軸に近い」及び「~よりも、半径方向においてタイヤの回転軸から遠い」を意味する。「~の軸方向内側に」及び「~の軸方向外側に」という表現は、それぞれ、「~よりも、軸方向において赤道面に近い」及び「~よりも、軸方向において赤道面から遠い」を意味する。「半径方向距離」とは、タイヤの回転軸に対する距離であり、「軸方向距離」とは、タイヤの赤道面に対する距離である。「半径方向厚さ」は半径方向に測定され、「軸方向幅」は軸方向に測定される。
【0004】
タイヤは、クラウン補強材を有するクラウンと、このクラウン補強材の外側に半径方向に設けられたゴム配合物とを備え、これらは外側ストリップと呼ばれる。
【0005】
また、タイヤは、リムと接触することを意図した2つのビードと、クラウンをビードに連結する2つのサイドウォールとを備える。さらに、タイヤは、クラウンの半径方向内側にあって、2つのビードを連結する少なくとも1つのカーカス層を備えたカーカス補強材を備える。
【0006】
外側ストリップは、トレッド面を介して地面と接触することを目的としたトレッドと、保護ストリップと呼ばれる、トレッドとクラウン補強材との間のゴム配合物とを備える。トレッドのゴム配合物は、ドライ及びウェットグリップ、ロードホールディング及び摩耗の点でタイヤに許容できる性能を与えるヒステリシス及び剛性特性を有する。これらの特性は、温暖な地域の道路向けのタイヤと、雪道で使用できるように設計されたタイヤとでは異なる。これらの違いを明確に示すために、立法府はタイヤメーカに対して、M+S、MS、M&S、MS又はM-S(泥と雪)の刻印、或いは当業者には3PMSFとして知られる、雪を戴く3つの山頂と雪の結晶を表すピクトグラムなど、特定の刻印の使用を求めている。これらの様々な刻印は、雪道でのグリップ試験に耐えるのに適したタイヤに対応している。
【0007】
外側ストリップは、タイヤのサイドウォール上に配置されたゴム配合物を含まず、その一部は、クラウン補強材の半径方向外側及び軸方向外側とすることができる。特に紫外線に耐えるため、非常に特殊な組成物を有するサイドウォール配合物は、外側ストリップの表面及び体積から排除される。子午断面上表面の30%以上が半径方向最内クラウン層の半径方向内側にあるタイヤのゴム配合物は、外側ストリップの配合物ではなく、サイドウォール配合物である。
【0008】
タイヤのトレッドは、半径方向に2つの周面で画定され、その内の半径方向最外面がトレッド面であり、半径方向最内面がトレッドパターン底面と呼ばれる。
【0009】
トレッドパターン底面とクラウン補強材の間の部分は、保護ストリップと呼ばれる。保護ストリップは、少なくとも1.5mmに等しく、多くの場合、2~3mmの半径方向厚さを有し、その利点の1つは、道路上に存在する様々な障害物に起因する攻撃からクラウン補強材を保護することである。
【0010】
外側ストリップは、1又は2以上のゴム配合物を備える。「ゴム配合物」という表現は、少なくともエラストマ及び充填材を備えたゴムの組成物を意味する。
【0011】
クラウンは、外側ストリップの半径方向内側に少なくとも1つのクラウン補強材を備える。クラウン補強材は、周方向と15°~50°の角度を成す互いに平行な補強要素から構成された少なくとも1つのワーキング層を備えた、少なくとも1つのワーキング補強材を備える。クラウン補強材はまた、周方向と0°~10°の角度を成す補強要素から構成された少なくとも1つのフーピング層からなるフープ補強材を備えることができ、必須ではないが、フープ補強材は通常、ワーキング層の半径方向外側に存在する。
【0012】
濡れた路面で良好なグリップ力を得るために、トレッドには切れ目が入れられる。切れ目とは、穴、又は溝、又はサイプ、又は周方向筋のいずれかを意味し、トレッド面に空間的な開口部を形成する。
【0013】
サイプ又は溝は、トレッド面上に2つの特徴的な主寸法、幅Wと長さLoとを有し、長さLoが幅Wの2倍に少なくとも等しいようになっている。従って、サイプ又は溝は、その長さLoを決定し、底面によって連結される少なくとも2つの主側面によって画定され、その2つの主側面は、サイプ又は溝の幅Wと呼ばれるゼロでない距離だけ互いに離間している。
【0014】
切れ目の深さは、トレッド面と切れ目の底面との最大半径方向距離である。切れ目深さの最大値は、トレッドパターンの高さDと呼ばれる。この深さは、トレッドのショルダと呼ばれる軸方向最外周部に亘って徐々に減少するのが普通である。トレッドパターン底面、又は底面は、切れ目の半径方向最内点を通る円環状面である。
【0015】
タイヤは、摩耗などの現象、様々な路面でのグリップ力、転がり抵抗、動的挙動、及び質量に関連して、数多くの性能基準を満たす必要がある。これらの性能基準は、時に他の基準を損なう解決策をもたらすことがある。従って、良好なグリップ力を得るためには、トレッドのゴム材料は、散逸性で柔らかい必要がある。対照的に、挙動に関して、特に、車両の横荷重、ひいてはタイヤの回転軸に沿う荷重に対する動的応答に関して良好に機能するタイヤを得るためには、タイヤは、特に横荷重下で、十分に高レベルの剛性を有する必要がある。所与のサイズについて、タイヤの剛性は、トレッド、クラウン補強材、サイドウォール、及びビードという、タイヤの様々な要素の剛性に依存する。トレッドは従来、ゴム材料を堅くする、又はトレッドパターンの深さを減少させる、又はトレッドパターンの溝対ゴム比を減少させる、又は保護層の厚さを減少させることのいずれかによって、剛性が高められる。保護ストリップは、長い間トレッドと同じゴム配合物で作製されてきたが、特に転がり抵抗の点で、性能を向上させる必要から、それぞれの機能に特化した2つの材料が使用されるようになった。従って、保護層は地面と接触することが想定されていないので、あまり散逸性でなく、それゆえグリップ力が非常に低く、摩耗性能も非常に劣る配合物で構成されている。
【0016】
絶え間ない改良の必要性から、製造業者は常に、様々な動作点に従ってトレッド内のゴム配合物の数を増やす方向に進んできた。性能を向上させる目的で、欧州特許第3007911号には、一方がドライグリップの点でより良好であり、他方がウェットグリップの点でより良好である2つのゴム配合物を備え、それらがトレッドのリブの異なる軸方向縁部に配置されたタイヤが記載されている。
【0017】
これらの解決策は、必ずしも満足できるものではない。トレッド内のゴム配合物の数を増やすことは、リサイクルに対する問題を引き起こす。ゴム配合物は、工業用ミキサにおいて有意な最小限の量で時効期限(ageing deadline)を伴って生産されるので、ゴム配合物の数が多くなればなるほど、その使用に適さない材料を抱えるリスクが高まり、ひいては廃棄物又はスクラップの個数が増加する。これらの損失を減らす可能性の1つは、スクラップを製造工程に再導入することである。さらに、複数のゴム配合物で構成されるトレッドは共押出しで製造されるので、押出し後のスクラップは、それを構成する配合物が性能の点で互いに適合している場合にのみ再度組み入れることができる。保護ストリップと、トレッドの組成物に組み込むのに適した材料との間では必ずしもそうではないため、このような解決策は廃棄物を増加させる。製造業者は天然資源の保護に大きな関心を寄せており、それゆえこれらの損失を減らすための解決策を模索している。同時に、タイヤの転がり抵抗を低下させることはできず、その理由は、この特性がタイヤによるエネルギの消耗に直接関係し、タイヤが環境に与える影響の本質的な要因であるからである。さらに、この解決策は寿命末期のグリップ力に関して完全に満足できるものではなく、保護ストリップはこの性能面に悪影響を与える。これらの点は全て、雪道での使用を意図したタイヤにも有効であるが、外側ストリップの材料は、その特殊な使用特性を反映した温度で試験する必要がある。
【0018】
他のタイヤは、欧州特許第1431078号、国際公開第2018/079799号、及び欧州特許第2928707号の各文献に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】欧州特許第3007911号
【特許文献2】欧州特許第1431078号
【特許文献3】国際公開第2018/079799号
【特許文献4】欧州特許第2928707号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、本発明の主な目的は、雪道で使用されるように設計されたタイヤのリサイクル能力、転がり抵抗、及びグリップ力の間の妥協点を、特にその寿命末期に高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的は、乗用車用のタイヤであって、雪道で使用するように設計されていることを示す刻印をサイドウォールに有し、トレッド面を介して地面と接触することが意図されたトレッドを有する外側ストリップを備えたクラウンと、リムと接触することを意図された2つのビードと、クラウンをビードに連結する2つのサイドウォールと、を備えるタイヤによって実現され、
・外側ストリップは、補強要素を有するクラウン層を備えたクラウン補強材の半径方向外側にあり、トレッドは、クラウン補強材の半径方向外側にある部分のサイドウォールの軸方向内側にあり、
・外側ストリップは、中央部分と2つの軸方向外側部分とから構成され、
・外側ストリップの中央部分は、トレッド面の軸方向幅の80%に等しい軸方向幅を有し、
・外側ストリップは少なくとも2つのゴム配合物を備え、これら2つのゴム配合物は外側ストリップの体積の少なくとも90%を構成し、
・第1のゴム配合物は、第2のゴム配合物の半径方向外側にあり、第2のゴム配合物は、外側ストリップの軸方向外側部分の体積の少なくとも60%を構成し、外側ストリップの軸方向外側部分の一方から他方まで実質的に連続する層で配置され、その層は最小の半径方向厚さが少なくとも0.3mmに等しく、
・第1のゴム配合物は、ASTM規格D 5992-96に準拠して測定される、23℃、10Hzでの10%変形時の動的剪断弾性係数G*が、第2のゴム配合物について、ASTM規格D 5992-96に準拠して測定される、23℃、10Hzでの10%変形時の動的剪断弾性係数G*の少なくとも1.35倍に等しく、且つ、第2のゴム配合物について、ASTM規格D 5992-96に準拠して測定される、23℃、10Hzでの10%変形時の動的剪断弾性係数G*の最大で3倍に等しく、
・第1のゴム配合物は、ASTM規格D 5992-96に準拠して、-10℃、10Hzでの0.7MPaの応力下で測定される動的損失tanD-10_1が少なくとも0.5に等しく、
・第2のゴム配合物は、同じASTM規格D 5992-96に準拠して、23℃、10Hzでの10%の変形下で測定される動的損失tanD23_2が最大で0.3に等しい。
【0022】
上記のタイヤは、2つのゴム配合物を有する外側ストリップを備え、一方は、タイヤの新品状態において中央及び半径方向外側に配置され、硬さの劣る他方は、
・保護ストリップの特定の割合を占めて、トレッドの赤道面の周りに半径方向内側に配置され、
・ショルダと呼ばれるクラウン層の端部付近の外側ストリップ及びトレッドの横方向外側の部分に、保護ストリップ及びトレッドの目標とする性能態様に応じて、より大きな又はより小さな割合で配置される。
【0023】
この構成は、赤道面の両側で必ずしも対称ではなく、2つのショルダの片方だけに有効な場合がある。
【0024】
転がり抵抗を改善するためには、それを可能にするタイヤの部分に可能な限りヒステリシスの小さい材料を用いて、ゴム材料の数を増やすことが通例である。従って、保護ストリップは通常、障害物を乗り越えることに起因する衝撃エネルギを吸収することができると同時に、この機能に適した特性を有するトレッドの材料によってこの障害物との接触という攻撃から保護される、非常にヒステリシスの小さい配合物である。
【0025】
また、特定の条件下で材料の剛性を下げることで転がり抵抗を改善することも可能である。クラウン層は、その軸方向端部において二重の湾曲を有し、一方はトレッドの中央部分に相当して周方向であり、他方はカーカス層の湾曲、ひいてはこの部分の上にあるクラウン層の湾曲に起因して軸方向である。それゆえ、必要な平坦化エネルギはより一層高くなる。従って、トレッドの中央部分用に所与のゴム配合物を備えたタイヤについて、転がり抵抗の点で性能を改善するために、外側ストリップの最外部上のショルダにおける配合物の剛性をトレッド面の限界内又は限界を越えて低くすることができる。
【0026】
転がり抵抗を大幅に改善するためには、この第2のゴム配合物の割合が、少なくとも外側ストリップの軸方向外側部分の体積の60%に等しいことが必要である。この第2のゴム配合物は、タイヤが新品状態か摩耗状態のいずれかで走行する地面と接触することができるような、従ってこの機能と適合し、従って転がり抵抗を下げるために通常使用される保護配合物よりも好ましくないヒステリシス特性を有するような、剛性及びグリップ特性を有する必要がある。
【0027】
3つの配合物(その内の1つは保護配合物であり、その特性は他の2つのゴム配合物と非常に異なる)を伴う解決策は、その組成が非常に厳密なタイヤに関係した用途のためにこれらの配合物をリサイクルする能力を容認できないほど低下させる。さらに、保護ストリップにこのような配合物を使用すると、特にタイヤの寿命末期にタイヤのグリップ力が低下する。具体的には、驚くべきことに、グリップ力は、地面と接触する材料に依存するだけでなく、保護ストリップの材料にも依存する。
【0028】
従って、本発明は、保護ストリップと、外側ストリップの軸方向外側部分の最大部分とに対して単一のゴム配合物を使用することにある。この配合物は、トレッドの中央で半径方向最外側にあるゴム配合物よりも剛性が低くなければならない。このゴム配合物は,タイヤが新品状態か摩耗状態のいずれかで走行する地面との接触に適したものでなければならない。保護ストリップの最小厚さは、少なくとも0.3mm、好ましくは少なくとも0.6mm、少なくとも1mmに等しく、外側ストリップの2つの軸方向外側部分の間で当該配合物によって構成される実質的に連続した部分は、同じ特性を有していなければならない。
【0029】
摩耗の挙動及び均一性の点で性能を最適化するために、並びにスクラップのリサイクルを可能にするために、第1のゴム配合物は、ASTM規格D 5992-96に準拠して測定される、23℃、10Hzでの10%変形時の動的剪断弾性係数G*が、第2のゴム配合物について、ASTM規格D 5992-96に準拠して測定される、23℃、10Hzでの10%変形時の動的剪断弾性係数G*の少なくとも1.35倍に等しく、第2のゴム配合物について、ASTM規格D 5992-96に準拠して測定される、23℃、10Hzでの10%変形時の動的剪断弾性係数G*の最大で3倍に等しい。
【0030】
雪で覆われた地面でのグリップ力の点で性能を最適化するために、第1のゴム配合物は、ASTM規格D 5992-96に準拠して、-10℃、10Hzでの0.7MPaの応力下で測定される動的損失tanD-10_1が少なくとも0.5に等しい、好ましくは少なくとも0.7に等しい。
【0031】
転がり抵抗の点で性能を最適化するために、第2のゴム配合物は、同じASTM規格D 5992-96に準拠して、23℃、10Hzでの10%の変形下で測定される動的損失tanD23_2が最大で0.3に等しい。
【0032】
好ましくは、地面と接触することのできるゴム配合物で、より剛性の低いものが存在するが、第2のゴム配合物は、ASTM規格D 5992-96に準拠して、23℃、10Hzでの10%変形時に測定される動的剪断弾性係数G*が、摩耗及び挙動に関して良い性能を得るには、少なくとも0.8MPaに等しく、最大で4MPaに等しい、好ましくは少なくとも1MPaに等しく、最大で2.5MPaに等しい。
【0033】
高速での用途、従って一般にドリフト率も高い用途の場合、この用途で外側ストリップの軸方向外側部分に対する正しい摩耗パターンを保証するために、第2のゴム配合物は、ASTM規格D 412-16に準拠して23℃で測定される300%変形時の割線弾性係数MA300が少なくとも1.7に等しいことが好ましい。
【0034】
ゴム配合物の特性は、ASTM規格D 5992-96に準拠して測定される。例えば、動的剪断弾性係数G*及びtanδは、ASTM規格D 5992-96に準拠して、23℃に、10Hzでの10%変形時に測定される。ASTM規格D 5992-96に準拠して23℃、周波数10Hzでの単純な交番正弦波の剪断応力を受ける、架橋組成物の試料(好ましくは厚さ4mmで断面積400mm2の円柱形試験片)の応答が記録される。ピーク間歪み振幅掃引が、0.1%から100%まで(往路サイクル)、次いで100%から0.1%まで(復路サイクル)行われる。利用されるこの結果が損失因子(tan(δ))である。復路サイクルに対して、tan(δ)の観察される最大値(23℃でのtan(δ)max)と弾性係数G*が示される。
【0035】
驚くべきことに、単一の材料の使用によって外側ストリップ及び保護ストリップの軸方向外側部分を結合することによって、転がり抵抗は、トレッド用と保護ストリップ用の2つのゴム配合物を用いた解決策と比べて改善され、保護ストリップ用の特定配合物を含む3つのゴム化合物を用いた解決策と比べて維持される又は僅かに改善される。さらに、本発明はリサイクル能力の明らかな改善をもたらす。
【0036】
タイヤは円環状であるため、外側ストリップの2つのゴム配合物間の体積比は、トレッドパターンの体積空隙率を考慮して、1又は2以上の子午断面で測定されるこれらの材料の表面積から評価される。この実施要領は、当業者にはよく知られている。
【0037】
第1のゴム配合物が第2のゴム配合物の軸方向内側にある場合、タイヤの外側ストリップについて第1及び第2の2つの配合物間の界面を確実に維持することが必要である。このため、第1のゴム配合物と第2のゴム配合物との界面は、トレッド面との界面の交点において、トレッド面に対する法線と絶対値で最大で60°に等しい、好ましくは絶対値で最大で20°に等しい角度を成す必要がある。これらの範囲外の角度では、横方向コーナリング力下での剪断力が、2つの製造物の界面に変形を与え、タイヤが走行する地面との接触ゾーンにおいて界面の進行性微小クラックの危険をもたらす。これらの微小クラックの軸方向外側にある部分は、徐々に引き裂かれ、不規則な摩耗ゾーンを発生させる。
【0038】
その挙動が特別優遇の性能態様であるスポーツカー向けのタイヤに適用するためには、外側ストリップの外側部分の一方から他方まで連続する第2のゴム配合物の層は、トレッドの中央部分において、トレッドの溝の底面又は周方向筋の底面の半径方向内側にあることが好ましい。この場合、外側ストリップの中央部分は、最も硬い第1のゴム配合物で主に構成されており、これにより、トレッドパターンの高い剛性が確保される。
【0039】
寿命末期における摩耗及びグリップ力を改善するために、本発明は、液滴形状のナイフカット、新品状態では隠れている空隙、カットの表面空隙率が摩耗に伴って増加するように構成されたカットの側面角度など、タイヤの摩耗に伴ってトレッド面の空隙率が増加するように構成された溝又は周方向筋を備えることができる。
【0040】
第1及び第2のゴム配合物の目標とする機械的特性、特に転がり抵抗及びグリップ力に関する特性を達成するために、第1及び第2のゴム配合物は、補強充填材の総質量に対する割合として表した場合に、少なくとも80%のシリカで構成された補強充填材を有することが好ましい。
【0041】
車両に装着しやすいように、特に左右対称な無方向性タイヤの場合、外側ストリップの第1及び第2のゴム配合物の体積は、赤道面に関して実質的に対称であることが好ましい。
【0042】
本発明は、外側ストリップが、少なくとも90体積%まで、2つのゴム配合物で構成されることを必要とし、残りの10%は、例えばタイヤの電気伝導度などの他の機能を果たすため、或いは外側ストリップのクラウン補強材への接着を保証するために、他のゴム配合物の可能性のある使用に提供される。
【0043】
最適な解決策は、トレッドが2つのゴム配合物で構成され、これらのゴム配合物の1つが電気伝導体であり、ISO規格16392:2017に準拠して測定されるタイヤの電気抵抗が最大で1010オームに等しいように、好ましくは最大で108オームに等しいように構成される。
【0044】
外側ストリップの第1及び第2のゴム配合物が、ISO規格16392:2017に適合するほどに導電性でない場合、好都合な解決策は、外側ストリップが3つのゴム配合物で構成され、第3のゴム配合物が、クラウン補強材の補強要素の半径方向最外層とトレッド面との間に配置され、ISO規格16392:2017に準拠して測定されるタイヤの電気抵抗が最大で1010オームに等しい、好ましくは最大で108オームに等しいよう構成される。このゴム配合物は、トレッドに組み込まれるが、同時に、導電性充填材、通常はカーボンブラックを一部含有するように設計された配合物である。その特性は、トレッドの第1又は第2のゴム配合物と共にリサイクルできることを示し、その体積が小さい場合はなおさらである。この場合、第2のゴム配合物の層には、導電性機能に関して偶発的な、非常に局所的な不連続性があり、これが、「実質的に」連続するという用語で示されるこの層の連続性に対する唯一の例外である。
【0045】
転がり抵抗の点で最適な性能を得るために、タイヤが新品状態又は摩耗状態で走行する地面と接触することのできるゴム配合物は、シリカの含有量を高くすることが一般的であり、これは、タイヤの製造中、硬化させる前のクラウン層への接着に関して不十分な性能をもたらす可能性がある。この場合、保護ストリップ及びトレッドの配合物をクラウン層に付着させるために、接着ゴムと呼ばれる中間ゴムを使用することが通例である。この接着層は、0.6mmを超える半径方向厚さを持つことはない。
【0046】
第2のゴム配合物と半径方向最外クラウン層との間に製造上の粘着の問題があり、第1及び第2の配合物がISO規格16392:2017に準拠する程度に導電性である場合、好ましい解決策は、外側ストリップが3つのゴム配合物で構成され、第3のゴム配合物が、クラウン補強材の補強要素の半径方向最外層と第2のゴム配合物との間に配置されて、この第3のゴム配合物の最大厚さが最大で0.6mmに等しく、好ましくは最大で0.4mmに等しい。
【0047】
第2のゴム配合物と半径方向最外クラウン層との間に製造上の粘着の問題があり、第1及び第2の配合物がISO規格16392:2017に適合するほどに導電性でない場合、好都合な解決策は、外側ストリップが4つのゴム配合物で構成され、第3のゴム配合物がクラウン補強材の補強要素の半径方向最外層と第2のゴム配合物との間に配置されて、この第3のゴム配合物の最大厚さが最大で0.4mmに等しく、第4のゴム配合物が、クラウン補強材の補強要素の半径方向最外層とトレッド面との間に配置され、ISO規格16392:2017に準拠して測定されるタイヤの電気抵抗が最大で1010オームに等しく、好ましくは最大で108オームに等しい。
【0048】
配合物のリサイクル性を向上させるために、第2のゴム配合物の総体積は、外側ストリップの体積の少なくとも25%、最大で50%を占める。
【0049】
タイヤを製造すると、スクラップと呼ばれるタイヤの製造に使用されないゴム配合物の押出し材が発生する。例えば、サイズ変更時の機械調整により、このようなスクラップ、特に、外側ストリップ、詳細にはトレッド及び保護ストリップのゴム配合材で構成されたスクラップが発生する。複数のゴム配合物が外側ストリップ内にある構成の場合、スクラップは混合スクラップと呼ばれる。タイヤで有益に利用されないスクラップを減らすために、外側ストリップの配合物には、「ホスト」化合物と呼ばれるゴム配合物内の受入容量が規定されている。当業者は、ホスト化合物と混合スクラップを混ぜ合わせるステップの複雑さを認識しており、ホスト化合物とスクラップの均質化には機械占有時間が必要とされる。これは、生産性の損失がなければ、単一のゴム配合物が「ホスト」化合物となり、リサイクル率が高くなることを示唆する。
【0050】
道路と高レベルの接触がある半径方向外側の配合物の部分は、タイヤの性能を変えたり損なったりしないように、スクラップを組み入れるためには使用できない。従って、保護ストリップ用とトレッド用の2つの材料を備えた構成の場合、保護ストリップだけがホスト化合物となることができ、ホスト化合物の体積は外側ストリップの体積の最大で20%に等しい。1つの保護ストリップとトレッド内の2つの異なる配合物という3つのゴム配合物を備えた構成の場合、保護ストリップだけがホスト化合物となることができ、ホスト化合物の体積は外側ストリップの体積の最大で20%に等しい。本発明によるタイヤでは、保護ストリップとトレッドの一部の体積を占め、大きな横力下のコーナリング時にだけ低レベルの接触がある第2のゴム配合物は、外側ストリップの体積の少なくとも25%、好ましくは少なくとも40%に等しい体積を占める。このように体積が大きくなると、当然、混合スクラップの体積をより多く組み入れることができる。
【0051】
タイヤ1本当たりの混合スクラップの使用可能量は、受入容量とこのゴム配合物中の混合スクラップの最大許容含有量とによって規定され、それは、混合スクラップをホストゴム配合物に組み入れることは可能であるが、その特性が望ましいものを超えて変わると予想されるリスクを冒して、あまりに高すぎる含有量を組み込むことはできないからである。従って、リサイクル能力Prを計算することが可能であり、それは、外側ストリップの総体積における混合スクラップの許容割合に等しい。Prは、ホストゴム配合物の体積に、ホスト化合物中の混合スクラップの最大割合を掛けたものに等しい。
【0052】
ホスト化合物中の混合スクラップの最大割合を10体積%とすることにより、本発明は、先行技術と比較して少なくとも20%以上、最大で100%以上の混合スクラップをリサイクルすることを可能にする。
【0053】
本発明の特徴及び他の利点は、図1~3の助けを借りてより良く理解されることになるが、図は縮尺通りではなく、本発明の理解をより容易にするために簡略化して描かれている。図1~3はタイヤの部品、特にそのクラウン補強材、外側ストリップ、及びサイドウォールである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明によるタイヤのクラウンを通る子午半断面の概略図である。
図2図1に関する本発明の変形形態を示す。
図3】外側ストリップ2と、その軸方向外側部分における第1のゴム配合物M1と第2のゴム配合物M2との界面27とに関する詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、本発明によるタイヤのクラウンを通る子午半断面を概略的に示す。これは特に、幅LAのトレッド面SRを介して地面と接触するように意図されたトレッド21を有する外側ストリップ2を備えたクラウン1を図示している。クラウン1はまた、カーカス層30の半径方向外側に3層の補強要素31、32、33を有するクラウン補強材3を備える。外側ストリップ2は、クラウン補強材3の補強要素の半径方向最外層33の半径方向外側にあり、さらにクラウン補強材3の半径方向外側にある部分のサイドウォール4の軸方向内側にある。
【0056】
外側ストリップは、この例では、3つのゴム配合物M1、M2、M3から構成されている。第1のゴム配合物M1は第2のゴム配合物M2の半径方向外側にあり、それらは外側ストリップ2の体積の少なくとも90%-この例では97%を占め、残りの3%がM3から成る。外側ストリップは、トレッド面SRの80%に等しい幅を備えた中央部分と、2つの軸方向外側部分とを有する。外側ストリップの軸方向外側部分は、少なくとも60体積%の第2の配合物M2で構成される。第2の配合物M2は、外側ストリップの一方の外側部分から他方の外側部分まで実質的に連続しており、すなわち、タイヤの電気伝導度に関する規格へのタイヤの適合を保証するために、配合物M3がクラウン層をトレッド面に結び付ける場合を除き、連続である。
【0057】
図1では、トレッド面の軸方向境界は子午面において決定され、この軸方向境界により、この子午面においてトレッド幅を測定することが可能である。場合により、赤道面のいずれかの側にあるトレッドの軸方向最外リブが、単純な測定を可能にする明確な不連続性を有するので、トレッド面の幅は、当業者によって自明に決定される。図1では、トレッド面SRがサイドウォールの外面と連続する乗用車用タイヤの事例を示しており、サイドウォールに向かう移行領域におけるトレッド面SRのいずれかの点でのトレッド面に対する接線24がタイヤの子午断面にプロットされ、このタイヤは装着位置にあって公称圧力まで膨らんでいる。赤道面の各側において、軸方向境界は、接線24と軸方向ZZ’の成す角度が60°に等しくなる点を通過する。子午面において、赤道面の一方の側で且つ同じ側に、当該接線と軸方向ZZ''の成す角度が60°に等しい点が複数存在する場合、採用されるのは、半径方向最外点である。トレッドの幅は、子午面において、トレッド面に関する2つの軸方向境界の2点間の軸方向距離である。タイヤのトレッド幅は、全ての子午線に亘るトレッド幅の最大値である。
【0058】
図2は、図1に関する本発明の変形形態を与えるもので、ゴム配合物M2がトレッド面に面しており、ゴム配合物M1との界面が周方向筋及び溝25の底面の半径方向最内点の外側にある。転がり抵抗が最も望ましい性能態様となる形態では、この界面は、摩耗インジケータ26の半径方向外側にあるであろう。具体的には、M2は、タイヤが走行している地面と接触するように構成される。
【0059】
図3は、外側ストリップ2と、その軸方向外側部分における第1のゴム配合物M1と第2のゴム配合物M2との界面27とに関する詳細を示す。第1のゴム配合物M1は第2のゴム配合物M2の軸方向内側にあり、従って第2のゴム配合物M2は、トレッド面SRで外側ストリップ2の外面に面する、又はトレッド面の外側で外側ストリップの外面に面する。第1のゴム配合物と第2のゴム配合物との界面は、外側ストリップ外面との界面の交点において、トレッド面に対する法線28と絶対値で最大で60°に等しい角度を成す。
【0060】
タイヤを通る子午断面は、タイヤを2つの子午面で切断することによって得られる。
【0061】
本発明は、欧州地域の雪道での使用を許可する記号3PMSFの刻印の条件を満たす、乗用車に装着されることが意図されたサイズ225/45 ZR17のタイヤに対して実施されたものである。トレッドパターンの溝の深さDは、4~8mmである。
【0062】
本発明者らは、同じ製造技術と同じ原材料とに由来し、外側ストリップの中央部分を構成することのできる複数のゴム配合物を所有する。当該材料は、特性の点で、かなり硬く、粘着性があり、ヒステリシスのあるゴム配合物MT1と、MT1よりも硬くなく、粘着性が小さく、ヒステリシスの小さい材料MT2との間で変化する。
【0063】
ゴム配合物MT1は、ASTM規格D 5992-96に準拠して23℃、10Hzでの10%変形時に測定される剪断弾性係数G*が2.65MPaに等しく、ASTM規格D 5992-96に準拠して-10℃、10Hzでの0.7MPaの応力下で測定される動的損失tanD-10_1が0.73であり、ASTM規格D 5992-96に準拠して23℃、10Hzでの10%変形下で測定される動的損失tanD23_2が0.55に等しい。
【0064】
ゴム配合物MT2は、ASTM規格D 5992-96に準拠して23℃、10Hzでの10%変形時に測定される剪断弾性係数G*が1.45MPaに等しく、ASTM規格D 5992-96に準拠して-10℃、10Hzでの0.7MPaの応力下で測定される動的損失tanD-10_2が0.31であり、ASTM規格D 5992-96に準拠して23℃、10Hzでの10%変形下で測定される動的損失tanD23_2が0.19に等しい。
【0065】
先行技術によるタイヤでは、地面と接触することのできる配合物は、平均で2.1mmに等しいほぼ一定の厚さの、外側ストリップの体積の20%を占める保護ストリップ用のゴム配合物と組み合わせられ、その動的損失tanD23_2は、転がり抵抗を最良に最適化する目的で、同じASTM規格D 5992-96に準拠して温度23℃、10Hzでの10%変形下で測定された場合に0.12に等しい。
【0066】
ゴム配合物MT1及びMT2の特性の間で、地面と接触することのできる材料の特性を変化させることにより、当業者は、転がり抵抗とグリップ力の間の或る妥協点に従って、タイヤを設計することができる。
【0067】
また、本発明者らは、半径方向外側の配合物が第1のゴム配合物MT1と第2のゴム配合物MT2とで構成される本発明によるタイヤを作り出した。タイヤの外側ストリップの軸方向外側部分は、少なくとも85体積%の第2の配合物M2を備える。ゴム配合物MT2は、外側ストリップ2の軸方向外側部分の一方から他方まで、2.1mmを超えるほぼ一定の厚さで連続している。全体で、第1のゴム配合物MT1の体積は、外側ストリップの総体積の57%を占める。
【0068】
先行技術によるタイヤと比較して、本発明は、その性能をサーキットで測定した場合に、同一のグリップ力、特に雪で覆われた地面でのグリップ力について、転がり抵抗の観点から妥協点を約5%改善するか、又は雪で覆われた地面での同じ転がり抵抗及び同じグリップ力について、ウェットグリップを3%改善する。
【0069】
さらに、MT1及びMT2配合物のリサイクル能力は、本発明以外のタイヤと比較して100%向上している。
【符号の説明】
【0070】
1 クラウン
2 外側ストリップ
3 クラウン補強材
4 サイドウォール
24 トレッド面に対する接線
25 周方向筋及び溝
26 摩耗インジケータ
30 カーカス層
31 補強要素
32 補強要素
33 最外補強要素
LA トレッド面の軸方向幅
M1 第1のゴム配合物
M2 第2のゴム配合物
M3 第3のゴム配合物
SR トレッド面
ZZ’ 軸方向
図1
図2
図3
【国際調査報告】