(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】都市型タイヤのためのクラウン補強材
(51)【国際特許分類】
B60C 9/18 20060101AFI20221221BHJP
B60C 9/20 20060101ALI20221221BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20221221BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20221221BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B60C9/18 K
B60C9/18 G
B60C9/20 E
B60C9/22 G
B60C11/00 F
B60C11/03 100C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523446
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 FR2020051881
(87)【国際公開番号】W WO2021079051
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ド ベネディッティス エリック
(72)【発明者】
【氏名】オレゾン ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】サラ ジル
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA39
3D131BA02
3D131BB03
3D131BC33
3D131BC34
3D131DA34
3D131DA43
3D131DA52
3D131EA10V
3D131EB11V
3D131EB11X
(57)【要約】
本発明は、ラジアルカーカス補強材を有し、交差した金属補強要素の2つのワーキングクラウン層を備えるクラウン補強材を有するタイヤに関する。本発明によれば、クラウン補強材は、2つのワーキング層の外側に半径方向に少なくとも1つの層の金属製周方向補強要素も備え、赤道面に軸方向に最も近い切れ目の半径方向最内点と、少なくとも1つの層の周方向補強要素の外面上の点との距離Dは8mm未満である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアルカーカス補強材(2)を備える高速輸送タイプの車両用のタイヤ(1)であって、前記タイヤは、1つの層から次の層まで交差し、周方向に対して10°から45°の間の角度をなす金属補強要素を有する2つのワーキングクラウン層(51、52)を含むクラウン補強材(5)を備え、前記角度は、周方向の両側に配向され、前記クラウン補強材(5)は、少なくとも1つの周方向切れ目(10)を有するトレッド(6)によって半径方向に覆われており、前記トレッドは、2つのサイドウォールを介して2つのビード(3)に接合されているタイヤにおいて、
前記クラウン補強材は、2つのワーキング層の外側で半径方向に少なくとも1つの層の金属周方向補強要素(53)を備え、
前記2つのワーキングクラウン層及び前記少なくとも1つの層の周方向補強要素は、前記クラウン補強材の軸方向幅全体にわたって前記クラウン補強材を構成するために存在する唯一の層であり、
子午面において、赤道面に軸方向に最も近い周方向切れ目の半径方向最内点と前記少なくとも1つの層の周方向補強要素の外面上の点との距離Dが8mm未満であり、前記距離Dは、前記赤道面(XX’)に軸方向に最も近い前記周方向切れ目(10)の前記半径方向最内点(8)の、前記少なくとも1つの層の周方向補強要素(53)の前記半径方向外面上への直交投影(9)の投影方向に沿って測定される、
ことを特徴とするタイヤ(1)。
【請求項2】
前記赤道面に軸方向に最も近い切れ目(10)は、周方向溝である、
請求項1に記載のタイヤ(1)。
【請求項3】
距離Dは5mm未満である、
請求項1又は2に記載のタイヤ(1)。
【請求項4】
前記ワーキングクラウン層(51、52)の前記補強要素は、非伸長性である、
請求項1から3のいずれか1項に記載のタイヤ(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの層の周方向補強要素(53)の前記補強要素は、0.7%伸長時の割線弾性係数が10から120GPaの間、最大接線弾性係数が150GPa未満の金属補強要素である、
請求項1から4のいずれか1項に記載のタイヤ(1)。
【請求項6】
前記ワーキングクラウン層(51、52)の前記補強要素が周方向となす角度は、30度未満、好ましくは25度未満である、
請求項5に記載のタイヤ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジアルカーカス補強材を有するタイヤに関し、より詳細には、専用レーンを走行可能な大量輸送案内車両、より詳細には、大型又は小型、モノレール、タイプの高速輸送車両、又はこのタイプの他の車両に装着されることが意図されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
重量物輸送のためのラジアルカーカス補強材を有するタイヤにおいて、カーカス補強材は、一般にビードの領域で両側に固定され、重ね合わされ、各層で平行であり、周方向に対して10から45°の間の角度をなし、1つの層から次の層に交差するスレッド又はコードで形成された少なくとも2つの層からなるクラウン補強材を半径方向に載せている。また、ワーキング補強材を形成するワーキング層は、保護層と呼ばれる少なくとも1つの層で覆うことができる。また、クラウン補強材は、周方向と45°から90°の間の角度をなす低伸長性の金属スレッド又はコードの層を含むことができ、この層は、三角格子層と呼ばれ、カーカス補強材と、ワーキング層と呼ばれる半径方向最内部のクラウン層との間に半径方向に位置する。
【0003】
コードが、破断力の10%に等しい引張力の下で、最大でも0.2%に等しい伸び率を示す場合に、コードは、非伸長性であると言われる。
【0004】
コードが、破断荷重に等しい引張力の下で、最大接線弾性係数が150GPa未満で、少なくとも3%に等しい伸び率を示す場合、コードは弾性であると言われる。
【0005】
周方向補強要素は、周方向にタイして+2.5°、-2.5°の範囲内の角度をなす補強要素である。
【0006】
タイヤの周方向、又は長手方向は、タイヤの外周に対応する方向であり、タイヤの走行方向によって規定される。
【0007】
タイヤの回転軸は、通常の使用においてタイヤが回転する軸である。
【0008】
半径方向平面又は子午面は、タイヤの回転軸を含む平面である。
【0009】
周方向正中面又は赤道面は、タイヤの回転軸に垂直であり、タイヤを二等分する平面である。
【0010】
タイヤの横方向又は軸方向は,タイヤの回転軸に平行である。軸方向距離は,軸方向に沿って測定される。「それぞれ、~の軸方向内側、又は~の軸方向外側」という表現は、「赤道面から測定された軸方向距離が、それぞれ、より小さい、又はより大きい」という意味である。
【0011】
半径方向は、タイヤの回転軸と交差し、それに直交する方向である。半径方向距離は、半径方向に沿って測定される。「それぞれ、~の半径方向内側、又は~の半径方向外側」という表現は、「タイヤの回転軸から測定した半径方向の距離が、それぞれ、より小さい又はより大きい」という意味である。
【0012】
金属スレッド又はコードに関して、破断力(最大荷重、N)、破断強度(MPa)、破断伸び率(全伸び率、%)、弾性係数(GPa)は、1984年の規格ISO6892に基づき、引張下で測定される。
【0013】
タイヤ内部構造と組み合わせて、トレッド、すなわち走行中に地面と接触し、走行中に摩耗することが意図されたタイヤの部分に、溝、特に周方向に配向した溝によって区画された隆起要素で形成されたトレッドパターンを設けることは公知である。
【0014】
トレッド表面に複数の横方向又は斜め方向に配向したエッジコーナーを形成することも知られている。このようなエッジコーナーを得るための1つの手段は、トレッドに複数の切れ目を設けることであり、これらの切れ目は、溝の形態又はサイプの形態を有する。本出願では、サイプは、走行中に、これらのサイプを区画する向かい合った壁の間の少なくとも部分的な接触を可能にするのに適した幅を有し、特に、地面に接触する接触面において、タイヤの通常の使用条件では溝の状況ではないであろうという点において、サイプと溝との間の区別がなされる。
【0015】
トレッドの横方向又は斜め方向のエッジコーナーは、特に、高速輸送車両が走行する走行レーン上でのタイヤのグリップを保証する。
【0016】
クラウン補強材が2つのワーキング層で構成され、各補強要素が互いに交差して10°から45°の間の角度を形成する場合、使用中にクラウン補強材で応力が生じ、特にクラウン層の間でせん断応力が生じ、その結果、特定の使用条件下で、タイヤのショルダーでワーキング層が分離し、これがタイヤの劣化につながる可能性がある。
【0017】
車両に電力を供給するために必要な電気導体の近接は、上記の劣化の場合にこれらの導体とタイヤの金属片の間に電気アークが発生するゼロでないリスクをもたらす。
【0018】
このリスクを排除し、金属片の存在を回避するために、繊維材料からなる補強要素のみを有するクラウン補強材の解決策が開発されている。国際公開第97/15463号には、周方向に配向した繊維製の補強要素の1又は2以上の層で構成されるクラウン補強材が記載されている。
【0019】
このようなタイヤは、金属片の存在に関連するリスクに対する解決策を効果的に提供するが、走行によって、タイヤの摩耗関連の問題、より具体的には不規則な摩耗が明らかになっている。具体的には、この種の車両の使用に伴う強い牽引力、及び、特に、例えば、最大積載量の混雑時と、乗客がほとんど又は全くいない車両が走行する混雑していない時間との間に存在する非常に大きな荷重変動(これらの荷重変動は、集中的かつ反復的な制動及び加速フェーズに関連する)は、タイヤのショルダーに非常に顕著な摩耗をもたらし、頻繁なタイヤ交換を必要とする。
【0020】
さらに、大型車両用タイヤの分野では、せん断応力を制限するためにワーキング層の端部の間に減結合部を形成するために、この端部の間にゴム化合物の層を導入することが知られている。しかしながら、このような減結合層は、非常に優れた結合を呈する必要がある。そのようなゴム化合物の層は、例えば、国際公開第2004/076204号に記載されている。
【0021】
仏国特許第2 222 232号には、クラウン補強材プライの間の分離を回避するために、補強材の端部を、補強材の上に載せられるトレッドのショアA硬度とは異なり、クラウン補強材とカーカス補強プライの端部との間に配置されたゴム化合物の輪郭付き要素のショアA硬度より大きいゴムクッションで被覆することが教示されている。
【0022】
さらに、非常に広いトレッドを有するタイヤを製造するために、又は所定の寸法のタイヤに大きな耐荷重性を付与するために、周方向補強要素の層を導入することが知られている。例えば、国際公開第99/24269号には、そのような周方向補強要素の層の存在が記載されている。
【0023】
さらに、国際公開第99/00260号には、周方向補強要素の層からなる保護補強材がワーキング補強材の外側に半径方向に配置されている大型車両用タイヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】国際公開第97/15463号
【特許文献2】国際公開第2004/076204号
【特許文献3】仏国特許第2 222 232号
【特許文献4】国際公開第99/24269号
【特許文献5】国際公開第99/00260号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
従って、本発明者らは、電気導体の近接に関連するリスクがなく、摩耗の点で満足な性能を示す高速輸送タイプの車両用タイヤを提供するという課題を定めた。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明によれば、この目的は、ラジアルカーカス補強材を備える高速輸送タイプの車両用のタイヤで達成され、タイヤは、1つの層から次の層まで交差し、周方向に対して10°から45°の間の角度をなす金属補強要素を有する2つのワーキングクラウン層を含むクラウン補強材を備え、角度は、周方向の両側に配向され、クラウン補強材は、少なくとも1つの周方向切れ目を有するトレッドによって半径方向に覆われており、トレッドは、2つのサイドウォールを介して2つのビードに接合され、クラウン補強材は、2つのワーキング層の外側で半径方向に少なくとも1つの層の金属周方向補強要素を備え、2つのワーキングクラウン層及び少なくとも1つの層の周方向補強要素は、クラウン補強材の軸方向幅全体にわたってクラウン補強材を構成するために存在する唯一の層であり、子午面において、赤道面に軸方向に最も近い周方向切れ目の半径方向最内点と少なくとも1つの層の周方向補強要素の外面上の点との距離Dが8mm未満であり、距離Dは、赤道面に軸方向に最も近い周方向切れ目の半径方向最内点の、少なくとも1つの層の周方向補強要素の半径方向外面上への直交投影の投影方向に沿って測定される。
【0027】
本発明の意義の範囲内で、周方向補強要素の層の半径方向外面は、周方向補強要素の層を構成する補強要素の半径方向最外点から補外される表面によって定義される。
【0028】
本発明によれば、クラウン補強材は、金属周方向補強要素の1又は2以上の層を備えることができる。金属周方向補強要素の層が複数ある場合、2つのワーキングクラウン層及び複数の周方向補強要素の層は、クラウン補強材の軸方向の幅全体にわたってクラウン補強材を形成するために存在する唯一の層である。
【0029】
距離Dは、タイヤの断面上で測定され、従って、タイヤは非膨張状態である。2つのワーキング層の外側に金属周方向補強要素の複数の層が半径方向にある場合、距離Dは、赤道面に軸方向に最も近い切れ目の半径方向最内点と、周方向補強要素の半径方向最外層の外面上の点との間で測定される。
【0030】
度で表される角度は、タイヤの断面上で測定される。本発明によれば、角度は、周方向正中面で測定される。
【0031】
好都合には、本発明によれば、タイヤは、11.5bar以上の膨張圧力に膨張されることが意図されている。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、赤道面に軸方向の最も近い切れ目は、円周方向の溝である。
【0033】
好都合には、本発明によれば、距離Dは、5mm未満である。
【0034】
また、好都合には、ワーキングクラウン層の補強要素が周方向となす角度は、30度未満、好ましくは25度未満である。
【0035】
本発明によるタイヤで得られた結果は、耐久性の点で性能が改善され、その結果、タイヤは環境中に存在する電気伝導体に関してリスクを示さず、さらに摩耗の点で性能が満足できることを効果的に示す。
【0036】
具体的には、本発明者らは、2つのワーキング層の外側に半径方向に配置された少なくとも1つの層の金属周方向補強要素と関連する金属補強要素と、2つのワーキング層との組み合わせが、ワーキング層に課せられるせん断応力にもかかわらず、クラウン補強材の耐久性を保証することを可能にすることを示すことができた。従って、本発明によるタイヤは、導電体の近傍に金属片を発生させるリスクがない。
【0037】
さらに、クラウン補強材の半径方向最外側に位置する少なくとも1つの層の周方向補強要素の存在により、タイヤ全体を封じ込めることが可能となり、従って、せん断応力を受けるワーキング層が万一分離した場合でも金属片の発生を回避することができる。
【0038】
さらに、少なくとも1つの層の周方向補強要素の位置と、従来のタイヤ設計と比較してかなり低減された、トレッドパターン空隙の底部の半径方向内側の領域におけるゴム材料の厚さに相当する距離Dとの組み合わせは、タイヤの摩耗という点で性能に好ましい影響を与える。具体的には、本発明者らは、周方向補強要素の層と、地面と接触するタイヤのトレッドの半径方向外面とを結果として近づけることにより、走行時にトレッドを構成する化合物が受けるせん断を制限し、トレッド上の力をより均一にすることが可能になり、それによって、高速輸送車両の荷重条件又は荷重変動にかかわらず、摩耗の面でより良い性能に寄与することを示すことができた。
【0039】
本発明の1つの実施形態によれば、ワーキングクラウン層の補強要素は、非伸長性の金属コードである。
【0040】
本発明の好都合な実施形態の変形例によれば、少なくとも1つの層の周方向補強要素は、0.5xLより大きい軸方向幅を有する。
【0041】
Lは、タイヤがそのサービスリムに取り付けられ、その推奨圧力まで膨張された場合のタイヤの最大軸方向幅である。
【0042】
補強要素の層の軸方向幅は、タイヤの断面上で測定され、従って、タイヤは膨張していない状態である。
【0043】
本発明の好ましい実施形態によれば、2つのワーキングクラウン層は異なる軸方向幅を有し、軸方向に最も広いワーキングクラウン層の軸方向幅と軸方向に最も狭いワーキングクラウン層の軸方向幅の差は、10から30mmの間である。
【0044】
本発明の好都合な実施形態によれば、少なくとも1つの層の周方向補強要素の補強要素は、0.7%伸長時の割線弾性係数が10から120GPaの間、最大接線弾性係数が150GPa未満である金属補強要素である。
【0045】
好ましい実施形態によれば、補強要素の0.7%伸長時の割線弾性係数は、100GPa未満かつ20GPa以上、好ましくは30から90GPaの間、より好ましくは80GPa未満である。
【0046】
また、好ましくは、補強要素の最大接線弾性係数は、130GPa未満、より好ましくは120GPa未満である。
【0047】
上述の係数は、20MPaの予荷重で決定された伸びの関数としての引張応力の曲線上で測定され、その引張応力は、補強要素の金属の断面に対して補正された測定張力に対応する。測定は、50mmの軸方向幅にわたって層の軸方向端部から層の内側に向かって延びる周方向補強要素の層の一部にわたってタイヤから取り出されたコードに対して行われる。
【0048】
同じ補強要素に対する係数は、10MPaの予荷重で決定された伸びの関数としての引張応力の曲線上で測定することができ、引張応力は、補強要素の全断面に対して補正した測定張力に対応する。補強要素の全断面は、金属及びゴムで構成される複合材要素の断面であり、後者は、特に、タイヤの硬化フェーズの間に補強要素に浸透する状態にあり、対象とする補強要素のこの全断面は、補強要素の金属の断面の約2倍である。
【0049】
補強要素の全断面に関するこの式によれば、少なくとも1つの層の周方向補強要素の軸方向外側部分及び中央部分の補強要素は、0.7%伸長時の割線弾性係数が5から60GPaの間、最大接線弾性係数が75GPa未満である金属補強要素である。
【0050】
好ましい実施形態によれば、0.7%伸長時の補強要素の割線弾性係数は、50GPa未満かつ10GPaより大きく、好ましくは15から45GPaの間、より好ましくは40GPa未満である。
【0051】
また、好ましくは、補強要素の最大接線弾性係数は、65GPa未満、より好ましくは60GPa未満である。
【0052】
好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの層の周方向補強要素の補強要素は、金属補強要素であり、これは、伸び率の関数としての引張応力の曲線を有し、この曲線は、小さい伸びに対しては浅い勾配を示し、大きい伸びに対しては実質的に一定で急な勾配を示す。
【0053】
補強要素の様々な上記特性は、タイヤから取り出した補強要素で測定される。
【0054】
本発明による少なくとも1つの層の円周方向補強要素の生成により特に適した補強要素は、例えば、式21.23のアセンブリであり、その構造は、3x(0.26+6x0.23) 4.8/7. 5 SSであり、この撚り線コードは、3本の基本スレッドを撚り合わせた式3x(1+6)の21本の基本スレッドで構成され、各ストランドは、中心コアを形成する26/100mmに等しい直径の1本のスレッドと、23/100mmに等しい直径の6本の巻きスレッドとからなる7本のスレッドで構成される。このようなコードは、45GPaに等しい0.7%で割線弾性係数と、98GPaに等しい最大接線弾性係数とを有し、これらは、20MPaの予荷重を補強要素の金属の断面に対して補正して決定される伸び率の関数としての引張応力の曲線上で測定され、引張応力は、補強要素の金属の断面に対して補正した測定張力に対応する。この式21.23のコードは、10MPaの予荷重を補強要素の全断面に対して補正して決定される伸び率の関数としての、測定張力を補強要素の全断面に対して補正したものに対応する引張応力の曲線上では、23GPaに等しい0.7%で割線弾性係数と、49GPaに等しい最大接線弾性係数とを有する。
【0055】
同様に、補強要素の別の例は、その構造は、3x(0.32+6x0.28) 5.6/9.3 SSの構成を有する式21.28のアセンブリである。このコードは、56GPaに等しい0.7%の割線弾性係数と、102GPaに等しい最大接線弾性係数とを有し、これらは、20MPaの予荷重を補強要素の金属の断面に対して補正して決定される伸び率の関数としての、測定張力を補強要素の金属の断面に対して補正したものに対応する引張応力の曲線上で測定される。この式21.28のコードは、10MPaの予荷重を補強要素の全断面に対して補正して決定される伸び率の関数としての、測定張力を補強要素の断面に対して補正したものに対応する引張応力の曲線では、27GPaに等しい0.7%の割線弾性係数と、49GPaに等しい最大接線弾性係数とを有する。
【0056】
周方向補強要素の少なくとも1つの層においてこのような補強要素を使用すると、特に従来の製造方法における成形段階及び硬化段階の後であっても満足できる層の剛性を維持することができる。
【0057】
本発明の第2の実施形態によれば、周方向補強要素は、非伸長性であり、最短層の周長よりも非常に小さいが、好ましくは周長の0.1倍よりも大きい長さの部分を形成するように切断された金属要素で形成することができ、各部分の間の切断は互いに軸方向にオフセットしている。この場合も、好ましくは、追加層の単位幅当たりの引張弾性係数は、最も伸長可能なワーキングクラウン層の、同じ条件下で測定された引張弾性係数よりも小さい。このような実施形態は、簡単な方法で、周方向補強要素の層に弾性係数を付与することができ、弾性係数は、(1つの同じ列の部分の間の間隔の選択によって)容易に調整することができるが、すべての場合に、同じ金属要素からなるが後者が連続している層の弾性係数よりも小さく、追加層の弾性係数は、タイヤから取り外された切断要素の加硫層で測定される。
【0058】
本発明の第3の実施形態によれば、周方向補強要素は波状金属要素であり、波長に対する波の振幅の比a/λは最大で0.09に等しい。好ましくは、追加層の単位幅当たりの引張弾性係数は、最も伸張性の高いワーキングクラウン層の、同じ条件下で測定された引張弾性係数よりも小さい。
【0059】
本発明のさらなる詳細内容及び好都合な特徴は、特に本発明によるタイヤ設計の子午線図を示す図を参照する本発明の例示的な実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【発明を実施するための形態】
【0061】
図面は、理解を容易にするために縮尺通りに描かれていない。
【0062】
図において、タイヤ1のサイズは305/70 R 22.5である。タイヤ1は、図示しない2つのビーズに固定されたラジアルカーカス補強材2を備える。カーカス補強材は、単層の金属コードで形成されている。このカーカス補強材2には、内側から外側に半径方向に形成されたクラウン補強材5が載っており、
-その第1のワーキング層51は、層の全幅にわたって連続し、18°に等しい角度で配向し、非被覆の11.35非伸縮性金属コードで形成される。
-その第2のワーキング層52は、層の全幅にわたって連続し、18°に等しい角度で配向し、層51の金属コードと交差する、非被覆の11.35非伸縮性金属コードで形成される。
-その周方向補強要素層53は、21x28本のスチール金属コードからなる。
【0063】
クラウン補強材は、それ自体、トレッド6によって覆われている。
【0064】
金属コードの単層によって形成されたカーカス補強材2は、ビード3のそれぞれにおいて、ビードワイヤ4の周りに巻かれ、ビード3のそれぞれにおいて、折り返し7を形成する。
【0065】
タイヤは、圧力11.5barになるように膨張される。
【0066】
第1のワーキング層51の軸方向幅L51は、200mmに等しい。
【0067】
第2のワーキング層52の軸方向幅L52は、180mmに等しい。
【0068】
周方向補強要素の層53の軸方向幅L53は、136mmに等しい。
【0069】
トレッドの軸方向幅L6は、221mmに等しい。
【0070】
距離Dは、赤道面XX’に軸方向に最も近い切れ目10の半径方向最内点8と、周方向補強要素の層53の外面上の点9との間で測定される。距離Dは、点8の周方向補強部材の層53の外周面への直交投影方向に沿って測定される。距離Dは、2.1mmに等しく、従って、8mm未満である。
【0071】
試験は、本発明に従って製造されたタイヤI及び基準タイヤTに関して行った。
【0072】
基準タイヤTは、芳香族ポリアミドで作られている3層の円周方向補強要素のスタックで構成されるクラウン補強材を有する点で本発明によるタイヤと異なっている。
【0073】
耐久試験は,7000daNの荷重で,13.5barの圧力で膨張させたタイヤを時速40kmで、ローラー式試験道路上で走行させることによって行った。同じタイプの試験を様々な圧力及び荷重のサイクルで、やはり40km/hで行った。
【0074】
試験時、本発明によるタイヤIは、基準タイヤTよりも優れた結果を示した。本発明によるタイヤIは,基準タイヤTで達成された距離の2倍に近い距離を走行した。
【0075】
別のタイプの試験は、摩耗の観点から異なるタイヤを試験するために行った。
【0076】
これらの試験は,平坦な地面で行われ,接触面の形状及び応力を測定するものであった。これらの試験は,車両での直接的な比較によって補完され,タイヤの寿命の観点からタイヤの性能を評価することを可能にした。
【0077】
基準タイヤTに関しては,不規則な摩耗が生じ,トレッドのエッジが高度に摩耗しており,これは,センターとショルダーとの間の不均一な平坦化の結果であると思われる。
【0078】
本発明によるタイヤIでは、平坦化の間の接触面の変形はより均一であり、それによって規則的な摩耗が保証される。従って、このタイヤは、タイヤ交換を必要とする過度に顕著な不規則摩耗を呈することなく、より長い距離を走行することができる。従って、本発明によるタイヤIは、基準タイヤTによって達成された距離よりも40%長い距離を走行することができる。
【図】
【国際調査報告】