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特表2022-554114炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20221221BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20221221BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20221221BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/48
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523498
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 KR2020015348
(87)【国際公開番号】W WO2021091235
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】10-2019-0139764
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヒョ-ジュン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウン-ジュ・イ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050GA18
5H050HA19
(57)【要約】
炭素系負極活物質及び非炭素系負極活物質を含む炭素系ハイブリッド負極を備えた二次電池を準備する段階と、X線回折装置(X-ray diffractometer)を用いて、前記二次電池の充放電の間、前記炭素系ハイブリッド負極で炭素系負極活物質の格子間隔を測定し、充放電容量(X軸)に対する格子間隔値の変化をグラフにプロットする段階と、前記プロットされたグラフから、放電が行われる間、グラフの勾配の変曲点を確認し、前記二次電池の全体放電容量中で前記炭素系負極活物質及び非炭素系負極活物質が寄与した容量を定量化する段階と、を含むことを特徴とする、炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系負極活物質及び非炭素系負極活物質を含む炭素系ハイブリッド負極を備えた二次電池を準備する段階と、
X線回折装置を用いて、前記二次電池の充放電の間、前記炭素系ハイブリッド負極で炭素系負極活物質の格子間隔を測定し、充放電容量(X軸)に対する格子間隔値の変化をグラフにプロットする段階と、
前記プロットされたグラフから、放電が行われる間、グラフの勾配の変曲点を確認し、前記二次電池の全体放電容量中で前記炭素系負極活物質及び非炭素系負極活物質が寄与した容量を定量化する段階と、を含むことを特徴とする、炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法。
【請求項2】
前記変曲点以後の放電容量が、非炭素系負極活物質が寄与した容量部分に対応し、前記変曲点以前の放電容量が、炭素系負極活物質が寄与した容量部分に対応することを特徴とする、請求項1に記載の炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法。
【請求項3】
前記グラフの最大容量に対する変曲点以後の放電容量値の割合を計算し、前記炭素系ハイブリッド負極で非炭素系負極活物質が寄与した容量を定量化することを特徴とする、請求項1または2に記載の炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法。
【請求項4】
前記二次電池の充放電が複数回で行われて容量特性が劣化する場合、
最初充放電時のグラフ勾配の変曲点の位置に対し、前記複数回で充放電が行われて劣化した後の充放電時のグラフ勾配の変曲点の位置変化から、前記二次電池の劣化原因が炭素系負極活物質及び非炭素系負極活物質のいずれに起因したかを判断することができることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法。
【請求項5】
前記最初充放電時のグラフ勾配の変曲点の位置に対し、劣化した後の充放電時のグラフ勾配の変曲点の位置を分析した結果、前記変曲点を基準として前記変曲点から最大容量までの部分の容量が減少した場合、前記炭素系負極活物質が劣化したことであり、前記変曲点から容量0までの部分の容量が減少した場合、前記非炭素系負極活物質が劣化したことと判断することを特徴とする、請求項4に記載の炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法。
【請求項6】
前記炭素系負極活物質が、天然黒鉛、人造黒鉛、軟質炭素、硬質炭素、ピッチ炭化物、焼成されたコークス、グラフェン、炭素ナノチューブまたはこれらの二種以上を含むことを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法。
【請求項7】
前記非炭素系負極活物質が、リチウムと合金化可能な金属または半金属を含むことを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載の炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法。
【請求項8】
前記非炭素系負極活物質が、Si、Sn、In、Pb、Ga、Ge、Al、Bi、Sb、Ag、Mg、Zn、Pt、Ti及びこれらの組合せからなる群より選択された金属または半金属、その酸化物、その炭素複合体、前記金属または半金属酸化物の炭素複合体またはこれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載の炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法。
【請求項9】
前記非炭素系負極活物質が、Si、SiO(0<x<2)またはこれらの二種以上の混合物を含むことを特徴とする、請求項1から8の何れか一項に記載の炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法に関する。
【0002】
本出願は、2019年11月4日出願の韓国特許出願第10-2019-0139764号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、電気自動車、ロボット、電力装置に対する市場が急速に発展するにつれ、高いエネルギー密度、安定性、小型化、軽量化、長寿命の二次電池が求められている。このような大規模分野に対する適用可否は、現水準のエネルギー密度よりも高い、重さ当たりまたは体積当たりのエネルギー密度の二次電池性能の確保にかかっているといえる。
【0004】
現在、商用化しているリチウムイオン電池の負極活物質である黒鉛は、理論容量が372mAh/g(約160Wh/kg)に制限されている。なお、次世代型非水電解質二次電池の負極材料として、このような黒鉛の10倍以上の容量(4200mAh/g)を有するケイ素(Si)が注目されている。また、黒鉛などの炭素系材料に代わる新規材料としてリチウムと合金化して高い理論容量を示すケイ素の外にも多様な非炭素系材料を負極活物質に用いることが提案されている。
【0005】
しかし、ケイ素系材料は、リチウムと合金化をなす過程で高い体積膨張率によって電極内部と表面にクラックが発生し、活物質が脱落して電気的接触性の低下によって二次電池のサイクル容量が急激に劣化し得る。このようなケイ素系材料の問題点を解決するために、ケイ素系材料などの非炭素系材料と炭素系材料を混合したハイブリッド型負極を適用しようとする試みが盛んである。
【0006】
このようなハイブリッド負極を備える二次電池のエネルギー密度を高めるなどの電池性能を改善するために、二次電池の充電/放電の間にリチウムイオンの挿入及び脱離((de)lithiation)挙動時、ハイブリッド負極を構成する炭素系材料と非炭素系材料を各々分離し、分析及び劣化を診断する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施例によってより明らかに理解されるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するため、本発明の一面によると、下記の具現例の炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法が提供される。
【0010】
第1具現例によると、
炭素系負極活物質及び非炭素系負極活物質を含む炭素系ハイブリッド負極を備えた二次電池を準備する段階と、
X線回折装置(X-ray diffractometer)を用いて、前記二次電池の充放電の間、前記炭素系ハイブリッド負極で炭素系負極活物質の格子間隔を測定し、充放電容量(X軸)に対する格子間隔値の変化をグラフにプロットする段階と、
前記プロットされたグラフから、放電が行われる間、グラフの勾配の変曲点を確認し、前記二次電池の全体放電容量中で前記炭素系負極活物質及び非炭素系負極活物質が寄与した容量を定量化する段階と、を含むことを特徴とする、炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法が提供される。
【0011】
第2具現例によると、第1具現例において、
前記変曲点以後の放電容量は、非炭素系負極活物質が寄与した容量部分に対応し、前記変曲点以前の放電容量は、炭素系負極活物質が寄与した容量部分に対応し得る。
【0012】
第3具現例によると、第1具現例または第2具現例において、
前記グラフの最大容量に対する変曲点以後の放電容量値の割合を計算し、前記炭素系ハイブリッド負極で非炭素系負極活物質が寄与した容量を定量化し得る。
【0013】
第4具現例によると、第1具現例から第3具現例のいずれか一具現例において、
前記二次電池の充放電が複数回で行われて容量特性が劣化する場合、
最初充放電時のグラフ勾配の変曲点の位置に対し、前記複数回で充放電が行われて劣化した後の充放電時のグラフ勾配の変曲点の位置変化から、前記二次電池の劣化原因が炭素系負極活物質及び非炭素系負極活物質のいずれに起因したかを判断することができる。
【0014】
第5具現例によると、第1具現例から第4具現例のいずれか一具現例において、
前記最初充放電時のグラフ勾配の変曲点の位置に対し、劣化した後の充放電時のグラフ勾配の変曲点の位置を分析した結果、前記変曲点を基準として前記変曲点から最大容量までの部分の容量が減少した場合、前記炭素系負極活物質が劣化したことであり、前記変曲点から容量0までの部分の容量が減少した場合、前記非炭素系負極活物質が劣化したことと判断することができる。
【0015】
第6具現例によると、第1具現例から第3具現例のいずれか一具現例において、
前記炭素系負極活物質が、天然黒鉛、人造黒鉛、軟質炭素、硬質炭素、ピッチ炭化物、焼成されたコークス、グラフェン、炭素ナノチューブまたはこれらの二種以上を含み得る。
【0016】
第7具現例によると、第1具現例から第3具現例のいずれか一具現例において、
前記非炭素系負極活物質が、リチウムと合金化可能な金属または半金属を含み得る。
【0017】
第8具現例によると、第1具現例から第7具現例のいずれか一具現例において、
前記非炭素系負極活物質が、Si、Sn、In、Pb、Ga、Ge、Al、Bi、Sb、Ag、Mg、Zn、Pt、Ti及びこれらの組合せからなる群より選択された金属または半金属、その酸化物、その炭素複合体、前記金属または半金属酸化物の炭素複合体またはこれらの混合物を含み得る。
【0018】
第9具現例によると、第1具現例から第8具現例のいずれか一具現例において、
前記非炭素系負極活物質が、Si、SiO(0<x<2)またはこれらの二種以上の混合物を含み得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一具現例によると、炭素系材料と非炭素系材料を含む炭素系ハイブリッド負極を備えるフルセル二次電池において、非破壊的な分析方法で充放電を行いながら炭素系材料の格子間隔の増減変化を観察し、炭素系材料と非炭素系材料との混合挙動から非炭素系材料の単独挙動を分離し、非炭素系材料の主反応区間及び寄与容量を定量化することができる。
【0020】
また、前記炭素系ハイブリッド負極を備えた二次電池が劣化する場合、従来には、劣化の原因が炭素系材料と非炭素系材料のいずれかあるかを確認しにくかったが、本発明の一具現例によると、負極の劣化原因が炭素系材料と非炭素系材料のいずれに起因するかを分離して分析することができる。
【0021】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。なお、本明細書に添付の図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などは、より明確な説明を強調するために誇張され得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】炭素系ハイブリッド負極を備えた二次電池の充放電時、容量変化による負極に含まれた炭素系負極活物質の格子間隔の変化を示したグラフである。
図2a】製造例7で製造された三極式二次電池(full cell)に対して0.1Cで充放電し、電圧に対する容量の変化を示したグラフである。
図2b図2aから負極のプロファイルを分離して示したグラフである。
図2c図2aから正極のプロファイルを分離して示したグラフである。
図3a】製造例7で製造された三極式二次電池(full cell)に対して0.1Cで充放電し、電圧に対する容量の変化を示すグラフである。
図3b図3aから負極のプロファイルを分離して示したグラフである。
図3c図3aから正極のプロファイルを分離して示したグラフである。
図4】製造例4~6で製造されたコイン型ハーフセルで各負極に対する正規容量(%)と電圧変化のプロファイルを示したグラフである。
図5】透過X線回折装置(transmission x-ray diffractometer)を示した写真である。
図6】製造例2の二次電池の負極において、人造黒鉛の(002)格子界面ピーク(2θ=7.5~11(Ag λ=0.56))をスキャンした結果及びこれから計算された格子間隔(lattice d-spacing)を示したグラフである。
図7a】製造例1の二次電池に対し、充放電時における容量変化による負極に含まれた人造黒鉛の格子間隔の変化を示したグラフである。
図7b】製造例2の二次電池に対し、充放電時における容量変化による負極に含まれた人造黒鉛の格子間隔の変化を示したグラフである。
図7c】製造例3の二次電池に対し、充放電時における容量変化による負極に含まれた人造黒鉛の格子間隔の変化を示したグラフである。
図8】製造例1~3の二次電池に対し、充放電時における正規容量変化による各負極に含まれた人造黒鉛の格子間隔の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0024】
本発明は、炭素系ハイブリッド負極を備える二次電池の充放電駆動環境で、炭素系材料と非炭素系材料の充放電中のリチウムの挿入と脱離((de)lithiation)挙動を各々分離して、分析及び劣化を診断しにくかった従来の問題点を解決するために開発された。
【0025】
本発明は、フルセルの二次電池を活用した非破壊的な分析方法であって、炭素系ハイブリッド負極を備える二次電池の充放電を行いながらオペランド(operando)分析で実際の炭素系材料と非炭素系材料の混合電極の挙動を直接観察したものである。
【0026】
炭素系負極活物質を単独で使用する二次電池においては、負極活物質へのリチウムイオンの挿入及び脱離が競争的に起こらない。しかし、炭素系負極活物質と非炭素系負極活物質を共に含むハイブリッド負極条件においては、炭素系負極活物質へのリチウムイオンの挿入及び脱離が反応電圧に応じて非炭素系負極活物質と競争的に反応するため、前記リチウムイオンの挿入及び脱離の減速/加速が観察され得る。
【0027】
炭素系負極活物質の炭素層の格子間隔(d-spacing)の増減は、このような変化を直接的に反映する。これによって、ハイブリッド負極から炭素系負極活物質と非炭素系負極活物質の単独挙動を分離することができ、非炭素系負極活物質の主反応区間及び容量を定量化することができる。
【0028】
本発明の一面による炭素系ハイブリッド負極の定量的分析方法は、
炭素系負極活物質及び非炭素系負極活物質を含む炭素系ハイブリッド負極を備えた二次電池を準備する段階と、
X線回折装置を用いて、前記二次電池の充放電の間、前記炭素系ハイブリッド負極で炭素系負極活物質の格子間隔(d-spacing)を測定し、充放電容量(X軸)に対する格子間隔値の変化をグラフにプロットする段階と、
前記プロットされたグラフから、放電が行われる間、グラフの勾配の変曲点(勾配が大きい値から小さい値へ変化する変曲点)を確認し、前記二次電池の全体放電容量中で前記炭素系負極活物質及び非炭素系負極活物質が寄与した容量を定量化する段階と、を含む。
【0029】
先ず、炭素系負極活物質及び非炭素系負極活物質を含む炭素系ハイブリッド負極を備えた二次電池を準備する。
【0030】
前記炭素系ハイブリッド負極とは、負極活物質として炭素系負極活物質のみを含むことではなく、非炭素系負極活物質も共に含む負極を意味する。
【0031】
前記炭素系負極活物質は、電池の充放電時にリチウムが挿入及び脱離する炭素系材料であれば、特に制限されない。前記炭素系負極活物質は、非晶質炭素、結晶質炭素、または非晶質相及び結晶質相の混合物であり得る。具体的に、天然黒鉛、人造黒鉛、軟質炭素、硬質炭素、ピッチ炭化物、焼成されたコークス、グラフェン、炭素ナノチューブまたはこれらの二種以上の混合物を含み得る。特に、黒鉛は、既存のリチウム二次電池において使用されていた負極材であって、シリコンと混合して電極を製造しても自身の容量が安定的に具現され、初期効率が優秀であり、シリコン系負極材の低い初期効率を補償できるという長所がある。これによって、電極の初期効率を高めるのに寄与できるため、人造黒鉛または天然黒鉛などのような黒鉛系物質が望ましい。
【0032】
前記非炭素系負極活物質は、リチウムと合金化可能な物質であれば、特に制限されない。具体的に、前記非炭素系負極活物質は、Si、Sn、In、Pb、Ga、Ge、Al、Bi、Sb、Ag、Mg、Zn、Pt、Ti及びこれらの組合せからなる群より選択された金属または半金属;SiO(0<x<2)、SnO、SnO、TiOなどの前記金属または半金属の酸化物;前記金属または半金属の炭素複合体;前記金属または半金属酸化物の炭素複合体またはこれらの混合物であり得る。
【0033】
本発明の一具現例によると、前記非炭素系負極活物質は、Si、SiO(0<x<2)、またはこれらの二種以上の混合物を含み得る。
【0034】
本発明の一具現例による炭素系ハイブリッド負極は、負極集電体の上に前述した炭素系負極活物質及び非炭素系負極活物質を含む負極活物質、導電材及びバインダーの混合物を塗布した後、乾燥して製造することができ、必要に応じて、前記混合物に充填材をさらに含んでもよい。
【0035】
本発明の一具現例において、前記集電体は通常、3μm~500μmの厚さにする。このような集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ高い導電性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものを用い得る。このうち、正極または負極の極性に応じて適切に選択して使用すればよい。
【0036】
前記バインダーは、活物質と導電材などとの結合と、集電体に対する結合を助ける成分であって、通常、正極合剤の全体重量を基準に1~50重量%添加される。このようなバインダーとして、高分子量のポリアクリロニトリル-アクリル酸共重合体を用い得るが、これに限定されない。他の例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、でん粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸、アルカリ陽イオンまたはアンモニウムイオンで置き換えられたポリアクリル酸、アルカリ陽イオンまたはアンモニウムイオンで置き換えられたポリ(アルキレン-無水マレイン酸)共重合体、アルカリ陽イオンまたはアンモニウムイオンで置き換えられたポリ(アルキレン-マレイン酸)共重合体、ポリエチレンオキサイド、フッ素ゴム、またはこれらの二種以上を用い得る。より具体的に、前記アルカリ陽イオンで置き換えられたポリアクリル酸としては、リチウム-ポリアクリレート(Li-PAA,リチウムで置き換えられたポリアクリル酸)などがあり、前記アルカリ陽イオンに置き換えられたポリ(アルキレン-無水マレイン酸)共重合体としては、リチウムで置き換えられたポリイソブチレン-無水マレイン酸などがある。
【0037】
前記導電材は、電池に化学的変化を誘発しない成分であって、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(商品名)、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスカー;酸化チタンなどの導電性酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを用い得る。
【0038】
本発明の一具現例によると、前記負極集電体の上に、炭素系負極活物質及び非炭素系負極活物質を含む負極活物質、導電材及びバインダーの混合物を塗布して負極を製造するに際し、乾式方法で、負極活物質、導電材及びバインダーからなる固相混合物を直接塗布して製造することもでき、湿式方法で、負極活物質、導電材及びバインダーを分散媒に添加して撹拌してスラリー形態で塗布し、分散媒を乾燥などで除去して製造することもできる。この際、湿式方法の場合に使われる分散媒としては、水(脱イオン水など)の水系溶媒を使ってもよく、またはN-メチル-ピロリドン(NMP,N-methyl-2-pyrrolidone)、アセトンなどの有機系溶媒を使ってもよい。
【0039】
本発明の一具現例によると、前記負極構造は、炭素系負極活物質及び非炭素系負極活物質を含む単一層構造であり得、活物質として炭素系負極活物質のみを含む層と非炭素系負極活物質のみを含む層とを別に形成し、これら層が積層されてなる二層構造であり得、または、活物質として炭素系負極活物質のみを含む層と非炭素系負極活物質のみを含む層のうち少なくとも一つ以上が複数層になって交互に積層された構造であり得る。
【0040】
本発明の一具現例による二次電池は、前記炭素系ハイブリッド負極及び正極と、前記正極と負極の間に介在された分離膜と、を含む。
【0041】
前記正極は、正極集電体の上に、正極活物質、導電材及びバインダーの混合物を塗布してから乾燥することで製造することができ、必要に応じて、前記混合物に充填剤をさらに含み得る。前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や1またはそれ以上の遷移金属で置き換えられた化合物;化学式Li1+xMn2-x(ここで、xは、0~0.33である。)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-x(ここで、M=Co,Mn,Al,Cu,Fe,Mg,BまたはGaであり、x=0.01~0.3である。)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-x(ここで、M=Co,Ni,Fe,Cr,ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1である。)またはLiMnMO(ここで、M=Fe,Co,Ni,CuまたはZnである。)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンに置き換えられたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
正極について、導電材、集電体及びバインダーは前述した負極の内容を参照し得る。
【0043】
前記分離膜は、正極と負極との間に挟まれ、高いイオン透過度及び機械的強度を有する絶縁性の薄膜が使われる。分離膜の気孔の直径は、通常0.01~10μmであり、厚さは、通常5~300μmである。このような分離膜としては、例えば、耐化学性及び疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維またはポリエチレンなどで作られたフィルム、シートや不織布などが使われる。一方、前記分離膜は、最外側の表面に無機物粒子とバインダー樹脂との混合物を含む多孔層をさらに含み得る。
【0044】
本発明の一具現例において、前記電解液は、有機溶媒及び所定量のリチウム塩が含まれたものであって、前記有機溶媒の成分としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピオネート(MP)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ビニレンカーボネート(VC)、ガンマブチロラクトン(GBL)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、またはこれらの混合物などがあり、また、前記有機溶媒のハロゲン誘導体も使用可能であり、線状エステル物質も使用できる。前記リチウム塩は、前記非水系電解質に溶解されやすい物質として、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、(CFSONLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウムが用いられ得る。
【0045】
本発明の一具現例による二次電池は、前記正極、負極を分離膜と交互に積層した電極組立体を電池ケースなどの外装材に電解液とともに収納及び密封することで製造され得る。二次電池の製造方法は、通常の方法を制限なく用いることができる。
【0046】
本発明の他の具現例によると、前記二次電池を単位セルで含む電池モジュール及びこれを含む電池パックを提供する。前記電池モジュール及び電池パックは、高ローディングにおいて優れた急速充電特性を示す二次電池を含むので、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車及び電力貯蔵用システムの電源として使うことができる。
【0047】
一方、本明細書で詳述しない電池素子、例えば、導電材などについては、電池分野、特にリチウム二次電池分野で通常使用される素子についての内容を参照し得る。
【0048】
次に、X線回折装置(X-ray diffractometer)を用いて、前記二次電池の充放電の間、前記炭素系ハイブリッド負極で炭素系負極活物質の格子間隔(d-spacing)を測定し、充放電容量(X軸)に対する格子間隔値の変化をグラフにプロットする。
【0049】
本発明の一具現例によると、前記二次電池を充放電しながら、前記二次電池の炭素系ハイブリッド負極に含まれた炭素系負極活物質(例えば、黒鉛など)の(002)格子界面ピーク(2θ=7.5~11(Agλ=0.56))をトラッキングしてスキャンし得る。このようにスキャンして得られた負極に含まれた炭素系負極活物質の(002)格子界面ピークをフィッティング(fitting)して炭素系負極活物質の格子間隔(lattice d-spacing)を計算することができる(具体的な適用例は、図5を参考)。
【0050】
次に、前記プロットされたグラフから、放電が行われる間におけるグラフの勾配の変曲点(勾配が大きい値から小さい値へ変化する変曲点)を確認し、前記二次電池の全体放電容量中で前記炭素系負極活物質及び非炭素系負極活物質が寄与した容量を定量化する。
【0051】
前記変曲点以後(勾配が小さい部分)放電容量は非炭素系負極活物質が寄与した容量部分に対応し、変曲点以前(勾配が大きい部分)の放電容量は炭素系負極活物質が寄与した容量部分に対応し得る。
【0052】
図1を参照すると、前記変曲点以後(勾配が小さい部分)の放電容量である非炭素系負極活物質が寄与した容量部分はa(mAh)になり、変曲点以前(勾配が大きい部分)の放電容量である炭素系負極活物質が寄与した容量部分は、b-a(mAh)になり得る。
【0053】
したがって、前記グラフの最大容量(c)に対する変曲点以後の放電容量値(a)の割合(a/c)を計算し、前記炭素系ハイブリッド負極で非炭素系負極活物質が寄与した容量の割合を定量化することができる。
【0054】
前記二次電池の充放電が複数回で行われて容量特性が劣化する場合、最初充放電時のグラフ勾配の変曲点の位置に対して、前記複数回で充放電が行われて劣化した後の充放電時のグラフ勾配の変曲点の位置変化から、前記二次電池の劣化原因が炭素系負極活物質及び非炭素系負極活物質のいずれに起因したかを判断することができる。
【0055】
前記最初充放電時のグラフ勾配の変曲点の位置に対し、劣化した後の充放電時のグラフ勾配の変曲点位置を分析した結果、前記最初充放電時のグラフに比べ、前記変曲点から最大容量までの部分(図1のB+C部分=(B:勾配が大きい部分)+(C:平坦部分))の容量、即ち、c-a[=(b-a)+(c-b)]値が減少した場合、前記炭素系負極活物質が劣化したことを意味し、前記変曲点から容量0までの部分(図1のA部分(勾配が小さい部分))の容量、即ち、a値が減少した場合、前記非炭素系負極活物質が劣化したと判断し得る。
【0056】
即ち、前記変曲点から最大容量までの部分は、前記炭素系負極活物質が寄与する容量に対応する部分であり、前記変曲点から容量0までの部分は、前記非炭素系負極活物質が寄与する容量に対応する部分である。したがって、前記変曲点から最大容量までの部分が減少したということは、前記炭素系負極活物質が寄与する容量が減少したことであるので、前記炭素系負極活物質が劣化したと判断できる。これに対して、前記変曲点から容量0までの部分が減少したということは、前記非炭素系負極活物質が寄与する容量が減少したことであるので、前記非炭素系負極活物質が劣化したと判断できる。
【0057】
以下、本発明の理解を助けるために、製造例と実験例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0058】
製造例1
<負極の製造:人造黒鉛の単一層構造>
炭素系活物質として人造黒鉛と、バインダー高分子(SBR(スチレン-ブタジエンゴム)及びCMC(カルボキシメチルセルロース))と、導電材としてカーボンブラックと、を95:3.5:1.5の重量比で混合した混合物と、分散媒として水を使用し、混合物と分散媒を1:2の重量比で混合して活物質層用のスラリーを準備した。この際、SBRとCMCの重量比は2.3:1.2であった。
【0059】
スロットダイを用いて、厚さ10μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜の片面に前記活物質層用のスラリーをコーティングし、130℃の真空下で1時間乾燥し、銅薄膜の上に活物質層を形成した。
【0060】
このように形成された活物質層をロールプレス方式で圧延し、80μm厚さの単層構造の活物質層を備える負極を製造した。ここで、負極活物質層の乾燥重量基準でロード量は17mg/cmであった。
【0061】
<正極の製造>
正極活物質層としてLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O(NCM-811)と、導電材としてカーボンブラック(carbon black)と、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド(PVdF)とを、96:2:2の重量比で、溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)に添加して正極スラリーを準備した。前記スラリーを厚さ15μmのアルミニウム集電体の片面にコーティングし、前記負極と同様の条件で乾燥及び圧延を行って正極を製造した。この際、正極活物質の乾燥重量を基準でローディング量は20mg/cmであった。
【0062】
<リチウム二次電池の製造>
エチレンカーボネート(EC)と、プロピレンカーボネート(PC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを、3:1:6(体積比)の組成で混合した有機溶媒に、LiPFを1.0Mの濃度になるように溶解して非水電解液を製造した。
【0063】
前記製造された正極と負極との間にポリオレフィンセパレータを介在した後、前記電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。
【0064】
製造例2
<負極の製造:人造黒鉛層/SiO層の二層構造(SiOが全体活物質に対して5重量%含まれる)>
炭素系活物質として人造黒鉛と、バインダー高分子(SBR及びCMC)と、導電材としてカーボンブラックとを95:3.5:1.5の重量比で混合した混合物と、分散媒として水を使用して混合物と分散媒を1:2の重量比で混合して第1活物質層用のスラリーを準備した。この際、SBRとCMCの重量比は2.3:1.2であった。
【0065】
人造黒鉛の代りに、非炭素系活物質として、0.1Cで充放電したときのクーロン効率が80%以上であるSiO(酸化ケイ素)を使用し、SiOの含量が人造黒鉛とSiOの総重量に対して5重量%であることを除いては、第1活物質層用のスラリーと同様の方法で第2活物質層用のスラリーを準備した。
【0066】
二重スロットダイを用いて、厚さが10μmである負極集電体である銅(Cu)薄膜の片面に前記第1活物質層用のスラリーコーティングし、続いて、前記第1活物質層用のスラリーの上に前記第2活物質層用のスラリーをコーティングし、130℃の真空下で1時間乾燥し、銅薄膜の上に第1活物質層及び第2活物質層を形成した。
【0067】
このように形成された第1活物質層及び第2活物質層を同時にロールプレス方式で圧延し、80μm厚さの二重層構造の活物質層を備えた負極を製造した。負極活物質層の乾燥重量を基準でローディング量は17mg/cmであった。
【0068】
<正極の製造>
製造例1と同様の方法で正極を製造した。
【0069】
<リチウム二次電池の製造>
製造例1と同様の方法で非水電解液を製造した。
【0070】
前記製造された正極と負極との間にポリオレフィンセパレータを介在した後、前記電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。
【0071】
製造例3
<負極の製造:人造黒鉛層/SiO層の二層構造(SiOが全体活物質に対して15重量%で含まれる>
炭素系活物質として人造黒鉛と、バインダー高分子(SBR及びCMC)と、導電材としてカーボンブラックと、を95:3.5:1.5の重量比で混合した混合物と、分散媒として水を使用し、混合物と分散媒を1:2の重量比で混合して活物質層用のスラリーを準備した。この際、SBRとCMCの重量比は2.3:1.2であった。
【0072】
人造黒鉛の代りに、非炭素系活物質として、0.1Cで充放電したときのクーロン効率が80%以上であるSiO(酸化ケイ素)を使用し、SiOの含量が人造黒鉛とSiOの総重量に対して15重量%であることを除いては、第1活物質層用のスラリーと同様の方法で第2活物質層用のスラリーを準備した。
【0073】
二重スロットダイを用いて、厚さが10μmである負極集電体である銅(Cu)薄膜の片面に前記第1活物質層用のスラリーコーティングし、続いて、前記第1活物質層用のスラリーの上に前記第2活物質層用のスラリーをコーティングし、130℃の真空下で1時間乾燥し、銅薄膜の上に第1活物質層及び第2活物質層を形成した。
【0074】
このように形成された第1活物質層及び第2活物質層を同時にロールプレス方式で圧延し、80μm厚さの二重層構造の活物質層を備えた負極を製造した。負極活物質層の乾燥重量を基準でローディング量は17mg/cmであった。
【0075】
<正極の製造>
製造例1と同様の方法で正極を製造した。
【0076】
<リチウム二次電池の製造>
製造例1と同様の方法で非水電解液を製造した。
前記製造された正極と負極との間にポリオレフィンセパレータを介在した後、前記電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。
【0077】
製造例4
<負極の製造:SiO単一層構造の負極>
0.1Cで充放電したときのクーロン効率が80%以上であるSiO(酸化ケイ素)と、バインダー高分子(SBR及びCMC)と、導電材としてカーボンブラックと、を95:3.5:1.5の重量比で混合した混合物と、分散媒として水を使用し、混合物と分散媒を1:2の重量比で混合して活物質層用のスラリーを準備した。この際、SBRとCMCの重量比は2.3:1.2であった。
【0078】
スロットダイを用いて、厚さ10μmの負極集電体である銅(Cu)薄膜の片面に前記活物質層用のスラリーをコーティングし、130℃の真空下で1時間乾燥し、銅薄膜の上に活物質層を形成した。
【0079】
このように形成された活物質層を同時にロールプレス方式で圧延し、80μm厚さの活物質層を備えるSiO単一層構造の負極を製造した。ここで、負極活物質層の乾燥重量基準でロード量は17mg/cmであった。
【0080】
<コイン型ハーフセルの製造>
前記製造された負極を用いたことを除いては、製造例5と同様の方法でコイン型ハーフセルを製造した。
【0081】
製造例5
<負極の製造>
製造例1と同様の方法で人造黒鉛の単一層構造の負極を製造した。
【0082】
<コイン型ハーフセルの製造>
対極として0.3mmのリチウム箔を使用し、分離膜としてポリプロピレン素材の多孔性フィルム(30μm、Celgard社)を使用し、電解液としてエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を3:7(体積比)の組成で混合した有機溶媒に、LiPFを1.0Mの濃度になるように溶解し、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を2重量%になるように溶解して製造した。先立って製造された負極と対極との間に分離膜を介在した後、前記電解液を注入して、厚さ2mm、直径32mmのいわゆる2032型のコイン型ハーフセルを製造した。
【0083】
製造例6
<負極の製造>
製造例2と同様の方法で人造黒鉛層/SiO層の二層構造(SiOが全体活物質に対して5重量%含まれる)の負極を製造した。
【0084】
<コイン型ハーフセルの製造>
前記製造された負極を使用したことを除いては、製造例5と同様の方法でコイン型ハーフセルを製造した。
【0085】
製造例7
<負極の製造>
製造例2と同様の方法で人造黒鉛層/SiO層の二層構造(SiOが全体活物質に対して5重量%で含まれる)の負極を製造した。
【0086】
<正極の製造>
正極活物質としてLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O(NCM-811)、導電材としてカーボンブラックと、バインダーとしてポリビニリデンフルオライド(PVdF)とを96:2:2の重量比で、溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)に添加して、正極スラリーを準備した。前記スラリーを厚さ15μmのアルミニウム集電体の片面にコーティングし、前記負極と同様の条件で乾燥及び圧延を行って正極を製造した。この際、正極活物質層の乾燥重量基準でローディング量は20mg/cmであった。
【0087】
<三極式二次電池の製造>
エチレンカーボネート(EC)と、プロピレンカーボネート(PC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを3:1:6(体積比)の組成で混合した有機溶媒に、LiPFを1.0Mの濃度になるように溶解して非水電解液を製造した。
【0088】
その後、基準電極プローブをパウチ内部の正極と分離膜との間に挿入して設置することで、電池の構成状態をそのまま維持しながら所望する電極の電位を測定できるように三極式二次電池を製造した。この際、基準電極プローブは、基準電極材料としてLTO(リチウムチタン化合物)を使用し、基準電極プローブの下端部にLTOを塗布する方式で製造された。
【0089】
(参考までに、基準電極プローブの針状部材としては、電解液と反応性がないか、または非常に低い伝導性の物質であれば、特に限定されない。針状部材自身が基準電極として使用され得る物質からなることも可能であり、場合によっては基準電極プローブの下端部に基準電極として使用され得る物質を塗布するなどの方法で製造することも可能である。)
【0090】
実験例
実験例1
製造例7で製造された三極式二次電池(フルセル(full cell))に対して0.1Cで充放電して電圧に対する容量の変化を確認し、これを図2aに示した。図2aでフルセル電位を基準電極の針状部材であるLTOの基準電位である1.53Vを用いて相対電位を読み出す方式で負極と正極のプロファイルを各々分離して図2b及び図2cに示した。
【0091】
実験例2
製造例7で製造された三極式二次電池(フルセル(full cell))に対して0.33Cで充放電して電圧に対する容量の変化を確認し、これを図3aに示した。図3aでフルセル電位を基準電極の針状部材であるLTOの基準電位である1.53Vを用いて相対電位を読み出す方式で負極と正極のプロファイルを各々分離して図3b及び図3cに示した。
【0092】
図2b及び図3bを参照すると、人造黒鉛層/SiO層の二層構造(SiOが全体活物質に対して5重量%で含まれる)の負極で、人造黒鉛とSiOの各挙動を区分して把握することが困難であった。特に、図3bのように高いC-レートを適用する場合には、その区分がさらに困難であった。
【0093】
即ち、図2a~図2c及び図3a~図3cのように従来の充放電-電圧プロファイルグラフにおいては、負極と正極を分離して見てもハイブリッド負極においてSiOと黒鉛が電池の全体容量でどのくらい寄与するかを確認することができなかった。
【0094】
実験例3
製造例4で製造されたSiO単一層負極のコイン型ハーフセル、製造例5で製造された人造黒鉛単一層負極のコイン型ハーフセル及び製造例6で製造された人造黒鉛層/SiO層の二層構造(SiOが全体活物質に対して5重量%で含まれる)の負極のコイン型ハーフセルにおいて、各負極に対する正規容量(%)と電圧変化によるプロファイルを図4に示した。
【0095】
図4を参照すると、製造例6のハイブリッド負極のプロファイルからSiOと黒鉛のプロファイルを明確に分離して分析しにくいという点を確認することができる。
【0096】
実験例4
図5に示した透過X線回折装置(transmission x-ray diffractometer)(製造社:Bruker,製品名:D8 Advance)を用いて、製造例1~3の二次電池をサイクルテストと同じ条件である0.33CC/CV充電、0.33CC放電条件で充放電しながら、各二次電池の負極に含まれた人造黒鉛の(002)格子界面ピーク(2θ=7.5~11(Agλ=0.56))をトラッキングしてスキャンした。このようにスキャンして得られた製造例1~3の負極に含まれた人造黒鉛の(002)格子ピークを、ブラッグの法則(Bragg’s Law)に基づいてフィッティング(fitting)して人造黒鉛の格子間隔(lattice d-spacing)を計算した。
【0097】
図6は、代表的に製造例2の二次電池の負極(SiOが全体活物質に対して5重量%で含まれる)に対して、X線回折装置で人造黒鉛の(002)格子界面ピーク(2θ=7.5~11(Ag λ=0.56))をスキャンした結果と、これから計算された格子間隔を示したグラフである。
【0098】
図7a~7cは、製造例1~3の二次電池に対し、前述した充放電時における容量変化による各負極に含まれた人造黒鉛の格子間隔の変化を各々示したグラフである。
【0099】
図7aを参照すると、製造例1の負極のように負極活物質が全て黒鉛からなる場合には、黒鉛の格子間隔が充電時に一定に増加し、放電時にその経路のとおり減少することが分かる。黒鉛格子の間にリチウムイオンが挿入してから脱離するときに妨害されないので、容量が増加しながら格子間隔が一定に増加してから一定に減少するのである。
【0100】
図7bによると、人造黒鉛とSiOの負極活物質の総量に対してSiOが5重量%で含まれた負極を使用した製造例2の場合には、充電時に格子間隔の増加曲線と放電時の格子間隔の減少曲線とが一致せず経路が相違することが分かる。
【0101】
図7bの放電時、グラフの曲線において放電容量が約25mAhである地点を境界にして変曲点が生ずる。この変曲点における容量よりも容量が大きい部分では、容量変化に応じて黒鉛格子の変化が非常に大きく、この際の放電容量は、黒鉛から脱離するリチウムイオンに起因する。
【0102】
一方、この変曲点の容量よりも容量が小さい部分、即ち、放電容量が約25~0mAhである範囲では、容量変化による黒鉛の格子間隔の減少が相対的に少ないことが分かる。この放電容量区間は、黒鉛からリチウムイオンが脱離することではなく、SiOに挿入されたリチウムイオンが脱離する過程が反映された区間に当たる。したがって、この充放電に適用された二次電池でSiOが寄与する容量は、総放電容量である160mAhに対する25mAhとして計算すると、15.6%(=25/160×100)になる。これは、黒鉛とSiOの全体負極活物質においてSiOが5重量%で含まれる場合に全体容量の約15%を寄与する理論数値とほぼ一致することが分かる。
【0103】
これは、充電時にリチウムイオンが黒鉛とSiOに全て挿入された後、放電時にはリチウムイオンが変曲点の容量よりも大きい部分からは黒鉛に挿入されたリチウムイオンが脱離し、その後、変曲点の容量よりも小さい部分からはSiOに挿入されたリチウムイオンが脱離することで、容量変化にもかかわらず黒鉛の格子間隔が減少する傾向が著しく減少するようになる。
【0104】
図7cは、人造黒鉛とSiOの負極活物質の総量に対してSiOが15重量%で含まれた負極を使用した製造例3の二次電池の充電容量による黒鉛の格子間隔の変化を示したグラフである。
【0105】
図7cの放電時のグラフ曲線で放電容量が約24mAhである地点を境界にして変曲点が生ずる。この変曲点における容量よりも容量が大きい部分では、黒鉛の格子間隔の変化があると共に、容量も変化している。この際の放電容量は、黒鉛から脱離するリチウムイオンに起因する。
【0106】
一方、この変曲点よりも容量が小さい部分、即ち、放電容量が約24~0mAhである範囲では、黒鉛の格子間隔の変化がないか、または非常に小さいにもかかわらず容量が変化している。この放電中には、黒鉛からリチウムイオンが脱離することではなく、SiOに挿入されたリチウムイオンが脱離する過程を示す。したがって、この放電容量は、SiOに挿入されたリチウムイオンが脱離する過程で発現されるといえる。これに基づき、この充放電に適用された二次電池においてSiOが寄与する容量は、総放電容量である55mAh対する24mAhとして計算すると、43.6%(=24/55×100)になる。これは、黒鉛とSiOの全体負極活物質においてSiOが15重量%で含まれる場合に全体容量の約45%を寄与する理論数値とほぼ一致することが分かる。
【0107】
図8は、製造例1~3の二次電池について前述した充放電時における正規容量の変化による各負極に含まれた人造黒鉛の格子間隔の変化を示したグラフである。
【0108】
85重量%の黒鉛と15重量%のSiOを含む炭素系ハイブリッド負極を備えた製造例3の二次電池の充電容量において、後半部の扁平な区間である57~100%、即ち、43%がSiOから発現される容量値を示す。これは、図7cで計算された値と一致することが分かる。
【0109】
95重量%の黒鉛と5重量%のSiOを含む炭素系ハイブリッド負極を備えた製造例2の二次電池の充電容量において、後半部の扁平な区間である85~100%、即ち、15%がSiOから発現される容量値を示す。これは、図7bで計算された値と一致することが分かる。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-04-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
図1】炭素系ハイブリッド負極を備えた二次電池の充放電時、容量変化による負極に含まれた炭素系負極活物質の格子間隔の変化を示したグラフである。
図2a】製造例7で製造された三極式二次電池(full cell)に対して0.1Cで充放電し、電圧に対する容量の変化を示したグラフである。
図2b図2aから負極のプロファイルを分離して示したグラフである。
図2c図2aから正極のプロファイルを分離して示したグラフである。
図3a】製造例7で製造された三極式二次電池(full cell)に対して0.33Cで充放電し、電圧に対する容量の変化を示すグラフである。
図3b図3aから負極のプロファイルを分離して示したグラフである。
図3c図3aから正極のプロファイルを分離して示したグラフである。
図4】製造例4~6で製造されたコイン型ハーフセルで各負極に対する正規容量(%)と電圧変化のプロファイルを示したグラフである。
図5】透過X線回折装置(transmission x-ray diffractometer)を示した写真である。
図6】製造例2の二次電池の負極において、人造黒鉛の(002)格子界面ピーク(2θ=7.5~11(Ag λ=0.56))をスキャンした結果及びこれから計算された格子間隔(lattice d-spacing)を示したグラフである。
図7a】製造例1の二次電池に対し、充放電時における容量変化による負極に含まれた人造黒鉛の格子間隔の変化を示したグラフである。
図7b】製造例2の二次電池に対し、充放電時における容量変化による負極に含まれた人造黒鉛の格子間隔の変化を示したグラフである。
図7c】製造例3の二次電池に対し、充放電時における容量変化による負極に含まれた人造黒鉛の格子間隔の変化を示したグラフである。
図8】製造例1~3の二次電池に対し、充放電時における正規容量変化による各負極に含まれた人造黒鉛の格子間隔の変化を示したグラフである。
【国際調査報告】