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特表2022-554147フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20221221BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20221221BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20221221BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20221221BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221221BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221221BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221221BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20221221BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
A61K31/137
A61K47/30
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/10
A61P37/06
A61P25/00
A61K9/70 401
A61K47/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523874
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(85)【翻訳文提出日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 EP2020079549
(87)【国際公開番号】W WO2021078761
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】19205133.2
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・ハムズ
(72)【発明者】
【氏名】アンヤ・トメレリ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・クロイドゲン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA74
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD34
4C076DD37
4C076EE03
4C076EE09
4C076EE11
4C076EE13
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE27
4C076EE31
4C076FF67
4C076FF68
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA10
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA06
4C206NA10
4C206ZA02
4C206ZB08
(57)【要約】
本発明は、フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システム(TTS)に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィンゴリモド含有層構造を含む、フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システムであって、
前記フィンゴリモド含有層構造が、
A)裏打ち層、及び、
B)フィンゴリモド含有層
を含み、
前記フィンゴリモド含有層が、
a)治療有効量のフィンゴリモドと、
b)少なくとも1つのポリマーと、
c)ドデカン-1-オールと、
を含み、
ドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比が、1.5:1~5:1の範囲である、
前記システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポリマーが、シリコーンアクリルハイブリッドポリマー、ポリシロキサンをベースとするポリマー、ポリイソブチレンをベースとするポリマー、及びアクリレートポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の経皮治療システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリマーが、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で約40%~約99%、好ましくは重量で約50%~約99%、より好ましくは重量で約60%~約99%の量で、前記フィンゴリモド含有層中に含有される、請求項1または2に記載の経皮治療システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのポリマーが、ポリマーベースの感圧接着剤である、請求項1~3のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項5】
前記フィンゴリモド含有層が、フィンゴリモド含有マトリックス層である、請求項1~4のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項6】
前記ドデカン-1-オールが、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で2%~40%、好ましくは重量で2%~30%、より好ましくは重量で4%~20%の量で含有される、請求項1~5のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項7】
前記フィンゴリモドが、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で1%~20%、好ましくは重量で1%~15%、より好ましくは重量で2%~10%の量で含有される、請求項1~6のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項8】
前記フィンゴリモド含有層構造が、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、0.1mg/cm~2.0mg/cm、好ましくは0.1mg/cm~1.5mg/cm、より好ましくは0.2mg/cm~1.2mg/cmのフィンゴリモドを含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項9】
前記フィンゴリモド含有層が、前記少なくとも1つのポリマー、ならびに1.5:1~5:1のドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比で前記ドデカン-1-オール及び前記治療有効量のフィンゴリモドを含む、フィンゴリモド含有コーティング組成物をコーティング及び乾燥することによって、得ることが可能である、請求項1~8のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項10】
前記フィンゴリモド含有層が、好ましくはアルキルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸エステルコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリド-ン酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー、セルロース誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはセルロース誘導体から選択される、補助ポリマーをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項11】
前記補助ポリマーが、前記フィンゴリモド含有層の重量に基づいて、約0.5%~約20%、好ましくは重量で約0.5%~約10%、より好ましくは重量で約1%~約5%の量で含有される、請求項10に記載の経皮治療システム。
【請求項12】
前記フィンゴリモド含有層が、ポリビニルピロリドンを含まない、請求項1~11のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項13】
前記フィンゴリモド含有層が、ドデカノールのエステル、有機硫黄化合物、及び/または脂肪酸エステルを含まない、請求項1~12のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項14】
好ましくは投与の少なくとも72時間、約84時間、約96時間、または約168時間にわたって、0.1~1.0mg/日のフィンゴリモドの平均放出速度を提供する、請求項1~13のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項15】
デルマトーム採取ヒト皮膚によりFranz拡散セル中で測定される時、投与の最初の24時間以内に1.5μg/cmを超えるフィンゴリモドの累積透過量、及び/または、投与の最初の36時間以内に6.0μg/cmを超えるフィンゴリモドの累積透過量を提供する、請求項1~14のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項16】
デルマトーム採取ヒト皮膚によりFranz拡散セル中で測定される時、投与16時間後で0.1μg/cm-時間を超えるフィンゴリモドの皮膚透過速度を提供する、請求項1~15のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項17】
対象集団への単回用量投与後の約168時間の投与にわたって、0.2:1~0.8:1のCmaxフィンゴリモドリン酸塩:Cmaxフィンゴリモドの比を提供する、請求項1~16のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項18】
免疫障害(好ましくは多発性硬化症)を治療する方法における使用のための、請求項1~17のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の経皮治療システムの製造方法であって、
1)フィンゴリモド含有コーティング組成物であって、
a)フィンゴリモドと、
b)少なくとも1つのポリマーと、
c)ドデカン-1-オールと、
d)任意選択で溶媒と、
を含む、前記組成物を提供するステップ、
2)前記フィンゴリモド含有コーティング組成物を、所望される面積重量を提供する量で、剥離ライナーの上へコーティングするステップ、
3)前記コーティングされたフィンゴリモド含有コーティング組成物を乾燥して、前記フィンゴリモド含有層を提供するステップ、
4)前記フィンゴリモド含有層を裏打ち層へ積層して、フィンゴリモド含有層構造を提供するステップ、
5)任意選択で、ステップ2及び3に従って、活性剤不含有コーティング組成物または活性剤含有コーティング組成物をコーティング及び乾燥することによって追加の皮膚接触層を提供し、前記フィンゴリモド含有層の前記剥離ライナーを除去し、前記フィンゴリモド含有層の接着性側の上へ皮膚接触層の接着性側を積層して、フィンゴリモド含有層構造を提供するステップ、
6)前記フィンゴリモド含有層構造から個別のシステムを打ち抜くステップ、
7)任意選択で、裏打ち層及び活性剤不含有感圧接着剤層も含む活性剤不含有自己接着性層構造を、個別のシステムへ接着し、それが、前記フィンゴリモド含有層構造の個別のシステムよりも大きいステップ、
を含む、前記方法。
【請求項20】
フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システムにおける、フィンゴリモドの透過のラグタイムの低減のためのドデカン-1-オールの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システム(TTS)、その製造及び使用のプロセス、ならびにそれによる治療の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性成分フィンゴリモド(2-アミノ-2-[2-(4-オクチルフェニル)エチル]プロパン-1,3-ジオール)は、スフィンゴシン-1-リン酸受容体調節物質である。免疫調節薬はリンパ節中のリンパ球を隔離し、それらが自己免疫反応に寄与することを予防する。
【0003】
フィンゴリモド含有製品は、再発寛解型多発性硬化症の患者を治療するために商業的に入手可能である。商業的に入手可能な製品GILENYA(登録商標)は、経口投与のためのハードカプセル中に0.5mgのフィンゴリモド塩酸塩を含有する。
【0004】
複数の副作用が経口投与用の製品と関連していた。活性剤の経皮投与のための経皮治療システム(TTS)については、経口投薬形態に比較してより低い副作用が予想される。さらに、TTSの適用の単純な様式に起因して、より高い利便性が患者のために達成される。特に、ヒト患者の皮膚上へのより長い投与期間(例えば1週間)は、遵守に有益である。しかしながら、必要に応じた期間での活性剤の十分な透過速度及び所望される物理的特性を備えたTTSを提供することは、技術的に挑戦的なことである。特に、フィンゴリモドが、スフィンゴシン-1-リン酸受容体の内在化を引き起こすために細胞中の酵素的活性化(リン酸化)を要求し、当該内在化が、リンパ節中のリンパ球を隔離するという、フィンゴリモドの事例において、問題は、TTSが全身的な効果の達成のために十分な量及び速さでリン酸化のための酵素へフィンゴリモドを送達し得るかどうかである。
【0005】
活性剤の経皮透過性を促進する物質に関する報告が公知であるが、かかる皮膚透過促進物質は、場合によっては活性剤の物理的または化学的な変換に起因して活性剤の放出を遅らせ、追加で皮膚の刺激を引き起こし、TTSの物理的特性(例えば接着性及び低温流動特性)に負に影響し得る。アミノ-ジオール構造を有するフィンゴリモドは官能基と反応する傾向があるので、フィンゴリモドの経皮投与のための延長された期間にわたって十分な透過速度を備えたTTSの供与は、特に挑戦的なことである。
【0006】
上で言及された問題を有していないフィンゴリモドTTSについての当技術分野における必要性がある。特に、治療効果の早期の開始、及び延長された期間にわたるフィンゴリモドの連続的な送達、それによる患者遵守の改善を提供する、フィンゴリモドの経皮投与のためのTTSについての必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明のある特定の実施形態の目的は、フィンゴリモド(例えばフィンゴリモド塩基)の経皮投与のためのTTSを提供することである。
【0008】
本発明のある特定の実施形態のさらなる目的は、治療有効用量の達成のために十分な透過速度を提供する、フィンゴリモド(例えばフィンゴリモド塩基)の経皮投与のためのTTSを提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、高い活性剤利用率を備えた、フィンゴリモド(例えばフィンゴリモド塩基)の経皮投与のためのTTS(すなわち投与期間の最中の十分な放出性能を提供するために高過剰量の活性剤を要求しないTTS)を提供することである。
【0010】
本発明のある特定の実施形態の目的は、フィンゴリモドの透過の早期の開始を提供する、フィンゴリモド(例えばフィンゴリモド塩基)の経皮投与のためのTTSを提供することである。
【0011】
本発明のある特定の実施形態の目的は、所望される投与期間にわたって(例えば84時間または168時間にわたって)フィンゴリモドの十分な透過速度を提供する、フィンゴリモド(例えばフィンゴリモド塩基)の経皮投与のためのTTSを提供することである。
【0012】
本発明のある特定の実施形態の目的は、比較的少量のフィンゴリモドがその中に含有されることを要求し、フィンゴリモドの透過の早期の開始を提供し、投与期間にわたって(例えば84時間または168時間にわたって)フィンゴリモドの十分な透過速度を提供する、フィンゴリモド(例えばフィンゴリモド塩基)の経皮投与のためのTTSを提供することである。
【0013】
本発明のある特定の実施形態の目的は、製造することが容易である、フィンゴリモドの経皮投与のためのTTSを提供することである。
【0014】
これらの目的及びその他は、1つの態様に記載のフィンゴリモド含有層構造を含み、フィンゴリモド含有層構造が、裏打ち層、及び治療有効量のフィンゴリモド(例えばフィンゴリモド塩基)と、少なくとも1つのポリマーと、ドデカン-1-オールとを含む、フィンゴリモド含有層を含み、ドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比が、1.5:1~5:1の範囲である、フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システムに関する本発明によって達成される。
【0015】
本発明に従うフィンゴリモド(例えばフィンゴリモド塩基)含有TTSは、TTSの適用に続いて、フィンゴリモドの透過の短いラグタイムで、延長された期間にわたって有利なフィンゴリモド送達を提供することが見出された。
【0016】
さらなる態様によれば、本発明に従うTTSは、免疫障害(好ましくは多発性硬化症)を治療する方法における使用のためのものである。したがって、1つの態様によれば、本発明は、医薬品の製造のための(好ましくは多発性硬化症を治療するための医薬品の製造のための)本発明に従うTTSの使用、及び免疫障害を治療する方法(好ましくは多発性硬化症を治療する方法)に関する。
【0017】
さらに別の態様によれば、本発明は、
1)フィンゴリモド含有コーティング組成物であって、
a)フィンゴリモド(例えばフィンゴリモド塩基)と、
b)少なくとも1つのポリマーと、
c)ドデカン-1-オールと、
d)任意選択で溶媒と、
を含む、前記組成物を提供するステップ、
2)フィンゴリモド含有コーティング組成物を、所望される面積重量を提供する量で、剥離ライナーの上へコーティングするステップ、
3)コーティングされたフィンゴリモド含有コーティング組成物を乾燥して、フィンゴリモド含有層を提供するステップ、
4)フィンゴリモド含有層を裏打ち層へ積層して、フィンゴリモド含有層構造を提供するステップ、
5)任意選択で、ステップ2及び3に従って、活性剤不含有コーティング組成物または活性剤含有コーティング組成物をコーティング及び乾燥することによって追加の皮膚接触層を提供し、フィンゴリモド含有層の剥離ライナーを除去し、フィンゴリモド含有層の接着性側の上へ皮膚接触層の接着性側を積層して、フィンゴリモド含有層構造を提供するステップ、
6)フィンゴリモド含有層構造から個別のシステムを打ち抜くステップ、
7)任意選択で、裏打ち層及び活性剤不含有感圧接着剤層も含む活性剤不含有自己接着性層構造を、個別のシステムへ接着し、それが、フィンゴリモド含有層構造の個別のシステムよりも大きいステップ、
を含む、本発明に従うTTSの製造の方法に関する。
【0018】
さらに別の態様によれば、本発明は、フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システムにおける、フィンゴリモド(例えばフィンゴリモド塩基)の透過のラグタイムの低減のためのドデカン-1-オールの使用に関する。
【0019】
特定の態様によれば、本発明は、フィンゴリモド含有層構造を含む、フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システムであって、フィンゴリモド含有層構造が、A)裏打ち層及びB)フィンゴリモド含有層を含み、フィンゴリモド含有層が、a)治療有効量のフィンゴリモド(例えばフィンゴリモド塩基)と、b)少なくとも1つのシリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤と、c)ドデカン-1-オールとを含み、ドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比が、1.5:1~5:1の範囲である、前記システムに関する。
【0020】
別の特定の態様によれば、本発明は、フィンゴリモド含有層構造を含む、フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システムであって、フィンゴリモド含有層構造が、A)裏打ち層及びB)フィンゴリモド含有層を含み、フィンゴリモド含有層が、a)治療有効量のフィンゴリモド(例えばフィンゴリモド塩基)と、b)少なくとも1つのポリマーベースの感圧接着剤と、c)ドデカン-1-オールと、d)少なくとも1つのセルロース誘導体(例えばエチルセルロース)とを含み、ドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比が、1.5:1~5:1の範囲である、前記システムに関する。
【0021】
さらに別の特定の態様によれば、本発明は、フィンゴリモド含有層構造を含む、フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システムであって、フィンゴリモド含有層構造が、A)裏打ち層及びB)フィンゴリモド含有層を含み;フィンゴリモド含有層が、a)治療有効量のフィンゴリモド(例えばフィンゴリモド塩基)と、b)少なくとも1つのアクリレートベースの感圧接着剤と、c)ドデカン-1-オールとを含み、ドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比が、1.5:1~5:1の範囲であり、フィンゴリモド含有層が、アルキルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸エステルコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択されるポリマーを含まず、フィンゴリモド含有層が、有機硫黄化合物を含まない、前記システムに関する。
【0022】
さらに別の特定の態様によれば、本発明は、フィンゴリモド含有層構造を含む、フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システムであって、フィンゴリモド含有層構造が、A)裏打ち層及びB)フィンゴリモド含有層を含み、フィンゴリモド含有層が、a)治療有効量のフィンゴリモド(例えばフィンゴリモド塩基)と、b)ポリイソブチレンまたはポリシロキサンをベースとする少なくとも1つの感圧接着剤と、c)ドデカン-1-オールとを含み、ドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比が、1.5:1~5:1の範囲であり、フィンゴリモド含有層が、アルキルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸エステルコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択されるポリマーを含まず、フィンゴリモド含有層が、有機硫黄化合物を含まない、前記システムに関する。
【0023】
定義
本発明の意味の範囲内で、「経皮治療システム」(TTS)という用語は、活性剤(例えばフィンゴリモド)が経皮送達を介して全身循環へ投与されるシステムを指し、任意選択で存在する剥離ライナーを除去した後に患者の皮膚へ適用され、活性剤含有層構造及び任意選択で活性剤含有層構造の上部の上の追加の接着剤オーバーレイ中に治療有効量の活性剤を含む、個別の投薬単位全体を指す。活性剤含有層構造は、剥離ライナー(脱着可能な保護層)上に設置され得、したがってTTSは剥離ライナーをさらに含み得る。本発明の意味の範囲内で、「TTS」という用語は、例えばイオントフォレシスまたはマイクロポレーションを介する能動的送達を除外する、経皮送達を提供するシステムを特に指す。経皮治療システムが、経皮薬物送達システム(TDDS)または経皮送達システム(TDS)とも称され得る。
【0024】
本発明の意味の範囲内で、「フィンゴリモド含有層構造」という用語は、治療有効量のフィンゴリモドを含有する層構造を指し、裏打ち層及び少なくとも1つの活性剤含有層を含む。好ましくは、フィンゴリモド含有層構造は、フィンゴリモド含有自己接着性層構造である。
【0025】
本発明の意味の範囲内で、「治療有効量」という用語は、TTSによって患者へ投与されるならば、免疫障害(例えば多発性硬化症)の治療を提供するのに十分なTTSにおける活性剤の量を指す。TTSは、通常、皮膚及び全身循環へ実際に提供されるよりも多くの活性物質をシステム中に含有する。この過剰量の活性剤は、通常、TTSから全身循環への送達に十分な駆動力を提供するのに必要である。
【0026】
本発明の意味の範囲内で、「活性物質」、「活性剤」という用語、及び同種のもの、そして「フィンゴリモド」という用語は、任意の薬学的に許容される化学形態及びモルフォロジー形態ならびに物理状態のフィンゴリモドを指す。これらの形態としては、その遊離塩基形態のフィンゴリモド、プロトン化または部分的にプロトン化されたフィンゴリモド、フィンゴリモド塩、及び特に無機酸または有機酸の添加によって形成された酸付加塩(フィンゴリモド塩酸塩またはフィンゴリモド硫酸塩、フィンゴリモドリン酸塩、フィンゴリモド酒石酸塩、フィンゴリモドマレイン酸塩、フィンゴリモドシュウ酸塩、フィンゴリモド酢酸塩、フィンゴリモド乳酸塩等)、溶媒和物、水和物、クラスレート、錯体など、そして微粉化、結晶性、及び/または非晶性であり得る粒子の形態のフィンゴリモド、ならびに前述の形態の任意の混合物が、限定されずに挙げられる。フィンゴリモドは、溶媒等の媒質中に含有される場合に、溶解もしく分散され得るか、または部分的に溶解及び部分的に分散され得る。本発明において、フィンゴリモド塩基は、好ましくはポリマーの溶媒中に溶解または分散されて、フィンゴリモド含有コーティング組成物を形成し、乾燥されたマトリックス層中に、溶解もしくは分散された形態でまたは部分的に溶解及び部分的に分散された形態で含有される。
【0027】
フィンゴリモドがTTSの製造において特定の形態で使用されることが言及される場合に、これは、最終的なTTSにおける、この形態のフィンゴリモドとフィンゴリモド含有層構造の他の成分との間の相互作用(例えば塩形成または錯体形成)を除外するものではない。これは、フィンゴリモドがその遊離塩基形態で含まれていても、それはプロトン化もしくは部分的にプロトン化された形態で、または酸付加塩の形態で、最終的なTTSにおいて存在し得ること、あるいは、それが塩の形態で含まれるならば、その一部分は最終的なTTSにおいて遊離塩基として存在し得ることを意味する。別段指示されない限り、特に層構造中のフィンゴリモドの量は、TTSの製造の間にTTSにおいて含まれるフィンゴリモドの量に関しており、遊離塩基の形態フィンゴリモドに基づいて計算される。例えば、a)0.1mmol(30.75mgに等しい)フィンゴリモド塩基またはb)0.1mmol(34.39mgに等しい)フィンゴリモド塩酸塩が、製造の間にTTSにおいて含まれる場合に、層構造中のフィンゴリモドの量は、本発明の意味の範囲内で、両方の事例において、30.75mg(すなわち0.1mmol)である。
【0028】
TTSの製造の間にTTSにおいて含まれるフィンゴリモド出発材料は、粒子の形態であり得る。フィンゴリモドは、例えば活性剤含有層構造内に好ましくは均一に分散された粒子の形態で、活性剤含有層構造中に存在し得る。
【0029】
本発明の意味の範囲内で、「粒子」という用語は、個別の粒子を含む固体の粒子状の材料であって、その寸法が、材料に比較して無視できるものを指す。特に、粒子は固体であり、プラスチック/変形可能な固体が挙げられ、非晶質材料及び結晶性材料を含む。
【0030】
本発明の意味の範囲内で、「分散すること」という用語は、出発材料(例えばフィンゴリモド)が溶解されないか、または完全に溶解されない、ステップまたはステップの組み合わせを指す。本発明の意味における、分散することは、出発材料の溶解度(例えばコーティング組成物中のフィンゴリモドの溶解度)に依存する、出発材料の一部分(例えばフィンゴリモド粒子)の溶出を含む。
【0031】
活性剤送達のための2つの主な型のTTS(すなわちマトリックス型TTS及びリザーバー型TTS)がある。マトリックス型TTSにおける活性剤の放出は、活性剤自体を含むマトリックスによって主に制御される。これに対して、リザーバー型TTSは、典型的には、活性剤の放出を制御する速度制御膜を必要とする。原理上は、マトリックス型TTSも速度制御膜を含有し得る。しかしながら、マトリックス型TTSは、通常、リザーバー型TTSに比較して、速度決定膜が必要でなく、膜破裂に起因する用量ダンピングが起こり得ないという点で有利である。要約すると、マトリックス型経皮治療システム(TTS)は、製造の複雑さが少なく、患者による使用が容易で好都合である。
【0032】
本発明の意味の範囲内で、「マトリックス型TTS」は、活性物質が、ポリマー担体(すなわちマトリックス)内に均一に溶解及び/または分散されたシステムまたは構造であって、活性剤及び任意選択で残存する成分によりマトリックス層を形成するものを指す。かかるシステムにおいて、マトリックス層は、TTSからの活性剤の放出を制御する。好ましくは、マトリックス層は、他の層間の封止が要求されないように、自己支持性であるのに十分な密着性を有する。したがって、活性剤含有層は、本発明の一実施形態において、活性剤がポリマーマトリックス内に均一に分布する活性剤含有マトリックス層であり得る。ある特定の実施形態において、活性剤含有マトリックス層は、一緒に積層され得る2つの活性剤含有マトリックス層を含み得る。マトリックス型TTSは、特に活性物質が感圧接着剤マトリックス内に均一に溶解及び/または分散されたシステムを指す、「接着剤中薬物(drug-in-adhesive)」型TTSの形態であり得る。これに関連して、活性剤含有マトリックス層は、活性剤含有感圧接着剤層または活性剤含有感圧接着剤マトリックス層とも称されてもよい。ポリマーゲル(例えばハイドロゲル)内に溶解及び/または分散された活性剤を含むTTSも、本発明に従うマトリックス型であると判断される。
【0033】
液体活性剤含有リザーバーを備えたTTSは、「リザーバー型TTS」という用語で称される。かかるシステムにおいて、活性剤の放出は、好ましくは速度制御膜によって制御される。特に、リザーバーは、裏打ち層と速度制御膜との間に封止される。したがって、活性剤含有層は、一実施形態において、活性剤含有リザーバー層であり得、好ましくは当該層は、活性剤を含む液体リザーバーを含む。さらに、リザーバー型TTSは、典型的には皮膚接触層を追加で含み、リザーバー層及び皮膚接触層は、速度制御膜によって分離され得る。リザーバー層において、活性剤は、好ましくは溶媒(エタノールまたは水等)中に、またはシリコーンオイル中に溶解される。皮膚接触層は典型的には接着特性を有する。
【0034】
リザーバー型TTSは、本発明の意味の範囲内で、マトリックス型であるとして理解されるべきではない。しかしながら、薬物輸送及び薬物送達の概念における均一の単一相マトリックス型TTS及びリザーバー型TTSとは異なる、マトリックス型TTS及びリザーバー型TTSの混合形態であると当技術分野において考えられる、マイクロリザーバーTTS(外側ポリマー相中に分散された内側活性物質含有相の堆積物(例えば球体、液滴)を有する二相性システム)は、本発明の意味の範囲内でマトリックス型であると判断される。マイクロリザーバー液滴のサイズは、要求される検出限界に依存して、10~400倍の間のエンハンスメントファクターで異なる位置でマイクロリザーバーの写真を撮ることによって光学的顕微鏡測定(例えばカメラ(例えばLeica DSC320)を含むLeica MZ16によって)決定され得る。画像解析ソフトウェアを使用することによって、マイクロリザーバーのサイズが決定され得る。
【0035】
本発明の意味の範囲内で、「活性剤含有層」という用語は、活性剤を含有し、放出領域を提供する層を指す。当該用語は、活性剤含有マトリックス層及び活性剤含有リザーバー層を包含する。活性剤含有層が活性剤含有マトリックス層であるならば、前記層はマトリックス型TTS中に存在する。ポリマーが感圧接着剤であるならば、マトリックス層は、追加の皮膚接触層が存在しないように、TTSの接着剤層も提示し得る。代替的に、追加の皮膚接触層は接着剤層として存在し得る、及び/または、接着剤オーバーレイは提供される。追加の皮膚接触層は、典型的には、活性剤不含有であるように製造される。しかしながら、濃度勾配に起因して、活性剤は、平衡に到達するまで、マトリックス層から追加の皮膚接触層へ経時的に移動するだろう。追加の皮膚接触層は、活性剤含有マトリックス層上に存在し得るか、または膜(好ましくは速度制御膜)によって活性剤含有マトリックス層から分離され得る。好ましくは、活性剤含有マトリックス層は、追加の皮膚接触層は存在しないように、十分な接着特性を有する。活性剤含有層が活性剤含有リザーバー層であるならば、前記層は、リザーバー型TTS中に存在し、当該層は、液体リザーバー中に活性剤を含む。加えて、接着特性を提供するために、好ましくは追加の皮膚接触層が存在する。好ましくは、速度制御膜は、リザーバー層を追加の皮膚接触層から分離する。追加の皮膚接触層は、活性剤不含有または活性剤含有であるように製造され得る。追加の皮膚接触層が活性剤不含有であるならば、活性剤は、濃度勾配に起因して、平衡に到達するまで、リザーバー層から皮膚接触層へ経時的に移動するだろう。加えて、接着剤オーバーレイが提供され得る。
【0036】
本明細書において使用される時、活性剤含有層は、好ましくは活性剤含有マトリックス層であり、それは最終固化層と称される。好ましくは、活性剤含有マトリックス層は、本明細書において記載されるような溶媒含有コーティング組成物をコーティング及び乾燥した後に得られる。代替的に、活性剤含有マトリックス層は、溶融コーティング及び冷却の後に得られる。活性剤含有マトリックス層は、所望される面積重量を提供するために、同じ組成物の2つ以上のかかる固化層(例えば乾燥層または冷却層)を積層することによっても製造され得る。マトリックス層は、自己接着性(感圧接着剤マトリックス層の形態)であり得るか、またはTTSは、十分な粘着性を提供するために感圧接着剤の追加の皮膚接触層を含み得る。好ましくは、マトリックス層は、感圧接着剤マトリックス層である。任意選択で、接着剤オーバーレイが存在し得る。本発明に従うマトリックス層は、マトリックス層に基づいて重量で40%超の量で不揮発性溶媒を含有しない。本発明のある特定の実施形態において、活性剤含有マトリックス層は、活性剤含有マトリックス層に基づいて重量で約5%~約20%の量で不揮発性溶媒を含有する。好ましくは、活性剤含有マトリックス層は、不揮発性溶媒を含有しない。
【0037】
本発明の意味の範囲内で、「感圧接着剤」(「PSA」とも省略される)という用語は、特に指の圧力により接着し、恒久的に粘着性であり、強い保持力を発揮し、残留物を残さずに平滑表面から除去可能であるべき材料を指す。感圧接着剤層は、皮膚と接触している場合に、「自己接着性」であり、すなわち典型的には、皮膚上での固定のためのさらなる補助が必要でないように、皮膚への接着性を提供する。「自己接着性」層構造は、感圧接着剤マトリックス層の形態または追加の層の形態で提供され得る、皮膚接触のための感圧接着剤層(すなわち感圧接着剤皮膚接触層)を含む。接着剤オーバーレイは、接着性を助長するために依然として利用され得る。感圧接着剤の感圧接着特性は、使用されるポリマーまたはポリマー組成物に依存する。
【0038】
本発明の意味の範囲内で、「シリコーンアクリルハイブリッドポリマー」という用語は、シリコーン亜種及びアクリレート亜種の反復単位を含む重合生成物を指す。シリコーンアクリルハイブリッドポリマーは、したがってシリコーン相及びアクリル相を含む。「シリコーンアクリルハイブリッド」という用語は、シリコーンベースの亜種及びアクリレートベースの亜種の単純な混和物を越えるものを表わすことが意図される。その代りに、当該用語は、一緒に重合されたシリコーンベースの亜種及びアクリレートベースの亜種を含む、重合ハイブリッド種を表わす。本発明において使用されるハイブリッドポリマーの文脈において、アクリレート及びアクリルという用語は概して互換的に使用されるので、シリコーンアクリルハイブリッドポリマーは、「シリコーンアクリレートハイブリッドポリマー」とも称され得る。
【0039】
本発明の意味の範囲内で、「シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤」という用語は、感圧接着剤の形態のシリコーンアクリルハイブリッドポリマーを指す。シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤は、例えばEP2599 847及びWO2016/130408中で記載される。シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤の例としては、Dow Corningによってn-ヘプタンまたは酢酸エチル中で製造及び供給される、PSAシリーズ7-6100及び7-6300(7-610X及び7-630X;X=1、n-ヘプタンベース/X=2、酢酸エチルベース)が挙げられる。シリコーンアクリルハイブリッドPSAが供給される溶媒に依存して、シリコーンまたはアクリルの連続的な外相及び対応する不連続的な内相を提供するシリコーン相及びアクリル相の配置が異なることが見出された。シリコーンアクリルハイブリッドPSAがn-ヘプタン中で供給されるならば、組成物は連続的なシリコーン外相及び不連続的なアクリル内相を含有する。シリコーンアクリルハイブリッドPSAの組成物が酢酸エチル中で供給されるならば、組成物は連続的なアクリル外相及び不連続的なシリコーン内相を含有する。
【0040】
本発明の意味の範囲内で、「アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物」という用語は、シリコーン樹脂と、シリコーンポリマーと、前記アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を提供するケイ素含有キャッピング剤との縮合反応生成物を含む。アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物は、アクリレート官能基のみ、メタクリレート官能基のみ、またはアクリレート官能基及びメタクリレート官能基の両方を含み得ることを理解されたい。
【0041】
本明細書において使用される時、活性剤含有マトリックス層は、少なくとも1つのポリマー中で溶解もしくは分散された活性剤を含有する層、または少なくとも1つのポリマー中で堆積物(特に液滴)の形態で分散された活性剤-溶媒混合物を形成するために溶媒中で溶解された活性剤を含有する層である。好ましくは、少なくとも1つのポリマーは、ポリマーベースの感圧接着剤(例えばシリコーン感圧接着剤またはシリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤)である。本発明の意味の範囲内で、「感圧接着剤層」という用語は、フィルム上にコーティングし、溶媒を蒸発させた後に、溶媒含有接着剤コーティング組成物から得られる感圧接着剤層を指す。
【0042】
本発明の意味の範囲内で、「皮膚接触層」という用語は、投与の最中に患者の皮膚と直接接触する活性剤含有層構造中に含まれる層を指す。これは活性剤含有層であり得る。TTSが追加の皮膚接触層を含む場合に、活性剤含有層構造の他の層は、皮膚に接触せず、必ずしも自己接着特性を有するものではない。上で概説されるように、活性剤含有層へ付着された追加の皮膚接触層は、経時的に活性剤の一部分を吸収し得る。追加の皮膚接触層は、接着の促進に使用され得る。追加の皮膚接触層及び活性剤含有層のサイズは、通常同延であり、放出領域に対応する。しかしながら、追加の皮膚接触層の領域は、活性剤含有層の領域よりも大きくもなり得る。かかる事例において、放出領域は、依然として活性剤含有層の領域を指す。
【0043】
本発明の意味の範囲内で、「面積重量」という用語は、g/mで提供される、特定の層(例えばマトリックス層の)の乾燥重量を指す。面積重量値は、製造の変動に起因して、±10%(好ましくは±7.5%)の許容差を生じる。
【0044】
別段指示されなければ、「%」は、重量で~%を指す。
【0045】
本発明の意味の範囲内で、「ポリマー」という用語は、1つまたは複数のモノマーの重合によって得られる、いわゆる反復単位からなる任意の物質を指し、1つの型のモノマーからなるホモポリマー及び2つ以上の型のモノマーからなるコポリマーを包含する。ポリマーは、線状ポリマー、星型ポリマー、櫛型ポリマー、ブラシ型ポリマー等の任意の構造であり得、コポリマーの事例において、任意のモノマー配置、例えば交互コポリマー、統計コポリマー、ブロックコポリマー、またはグラフトポリマーであり得る。最小分子量はポリマー型に依存して変動し、当業者に公知である。ポリマーは、例えば2000ダルトン超、好ましくは5000ダルトン超、及びより好ましくは10,000ダルトン超の分子量を有し得る。これに対応して、2000ダルトン未満、好ましくは5000ダルトン未満、より好ましくは10,000ダルトン未満の分子量の化合物は、通常オリゴマーと称される。
【0046】
本発明の意味の範囲内で、「架橋剤」という用語は、ポリマー内に含有される官能基を架橋することが可能な物質を指す。
【0047】
本発明の意味の範囲内で、「接着剤オーバーレイ」という用語は、活性剤不含有であり、活性剤含有構造よりも面積が大きく、皮膚へ接着する追加の領域を提供するが、活性剤の放出領域を提供しない、自己接着性層構造を指す。それによって、TTSの全体的な接着特性を促進する。接着剤オーバーレイは、閉鎖性または非閉鎖性の特性を提供し得る裏打ち層、及び接着剤層を含む。好ましくは、接着剤オーバーレイの裏打ち層は、非閉鎖性の特性を提供する。
【0048】
本発明の意味の範囲内で、「裏打ち層」という用語は、活性剤含有層を支持するか、または接着剤オーバーレイの裏打ちを形成する層を指す。TTSにおける少なくとも1つの裏打ち層、及び、通常、活性剤含有層の裏打ち層は、貯蔵及び投与の期間の最中に、層中に含有される活性剤に対して実質的に不透過性であり、したがって規制要求事項に従って活性物質喪失または交差汚染を防止する。好ましくは、裏打ち層は、閉鎖性(水及び水蒸気に対して実質的に不透過性であることを意味する)でもある。裏打ち層に好適な材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、エチレン酢酸ビニル-コポリマー(EVA)、ポリウレタン、及びそれらの混合物が挙げられる。したがって好適な裏打ち層は、例えばPETラミネート、EVA-PETラミネート、及びPE-PETラミネートである。織布または不織布の裏打ち材も好適である。
【0049】
本発明に従うTTSは、インビトロ皮膚透過試験において測定されるような特定のパラメーターを特徴とし得る。
【0050】
別段指示されない場合、インビトロ透過試験は、500μmの厚さで表皮がインタクトなデルマトーム採取分層ヒト皮膚で、レセプター媒質としてpH5.5のリン酸バッファー(0.1%のメチル-β-シクロデキストリン及び0.1%の食塩水アジド(saline azide)を用いて、32℃で)により遂行される。レセプター媒質の中へ透過した活性物質の量は、サンプル体積を採取することによってUV光度検出器により検証済のHPLC方法を使用して、規則的間隔で決定される。レセプター媒質は、サンプル体積を採取する場合に、新鮮媒質によって完全にまたは部分的に置き換えられ、透過した活性物質の測定された量は、それまで透過した全量ではなく、2つの直前のサンプリング点の間に透過した量に関する。
【0051】
したがって、本発明の意味の範囲内で、「透過量」というパラメーターは、μg/cmで提供され、特定の経過時間でのサンプル間隔において透過した活性物質の量に関する。例えば、レセプター媒質の中へ透過した活性物質の量が、例えば0、8、24、36、48、72、104、144、及び168時間目で測定される、上で記載されるインビトロの透過試験において、「活性物質」の透過量は、例えば36時間目から48時間目のサンプル間隔について与えることができ、48時間目での測定値に対応し、ここで、レセプター媒質は36時間目で完全に交換されている。
【0052】
透過量は、特定の時点での透過した活性物質の累積量に対応する、「累積透過量」としても与えられ得る。例えば、レセプター媒質の中へ透過した活性物質の量が、例えば0、8、24、36、48、72、104、144、及び168時間目で測定される、上で記載されるインビトロの透過試験において、「活性物質」の48時間での累積透過量は、0時間目~8時間目、8時間目~24時間目、24時間目~36時間目、及び36時間目~48時間目の透過量の総計に対応する。
【0053】
本発明の意味の範囲内で、特定の経過時間での特定のサンプル間隔についての「皮膚透過速度」というパラメーターは、μg/cm-時間で提供され、上で記載されるインビトロの透過試験によって測定された前記サンプル間隔における透過量(μg/cmでの)を、前記サンプル間隔の時間で割ることにより計算される。例えば、レセプター媒質の中へ透過した活性物質の量が、例えば0、8、24、36、48、72、104、144、及び168時間目で測定される、上で記載されるインビトロの透過試験における皮膚透過速度では、48時間目での「皮膚透過速度」は、36時間目から48時間目までのサンプル間隔における透過量を、12時間で割ったものとして計算される。
【0054】
「累積皮膚透過速度」は、累積透過量を経過時間によって割ることによって、それぞれの累積透過量から計算され得る。例えば、レセプター媒質の中へ透過した活性物質の量が、例えば0、8、24、32、48、72、104、144、及び168時間目で測定される、上で記載されるインビトロの透過試験において、48時間目での「累積皮膚透過速度」は、別段指示されない限り、48時間目での累積透過量(上を参照)を48時間で割ったものとして計算される。
【0055】
本発明の意味の範囲内で、「活性剤利用率」という用語は、特定の経過時間後の(例えば72時間後の)累積透過量を活性剤の初期装填量によって割ったものを指す。
【0056】
本発明の意味の範囲内で、「透過量」及び「皮膚透過速度」(そして「累積透過量」及び「累積皮膚透過速度」)という上記のパラメーターは、少なくとも3回のインビトロの透過試験実験から計算された平均値を指す。別段指示されない場合、これらの平均値の標準偏差(SD)は、式:
【数1】
(式中、nは、サンプルサイズであり、
【数2】
は、観察された値であり、
【数3】
は、観察された値の平均値である)
を使用して計算される、補正されたサンプル標準偏差を指す。
【0057】
本発明に従うTTSは、インビボの臨床試験において測定されるような特定のパラメーターも特徴とすることができる。
【0058】
本発明の意味の範囲内で、「平均放出速度」というパラメーターは、活性剤がヒト皮膚を介して全身循環の中へ放出される投与期間(例えば1~7日)にわたる、μg/時間またはmg/日での平均放出速度を指し、臨床試験における前記投与期間にわたって得られたAUCに基づく。
【0059】
本発明の意味の範囲内で、「延長された期間」という用語は、少なくとももしくは約72時間(3日)、約84時間(3.5日)、少なくとももしくは約96時間(4日)、または約168時間(7日)の期間に関する。
【0060】
本発明の意味の範囲内で、「室温」という用語は、実験が遂行される研究室の屋内で見出される修飾されない温度を指し、通常、15~35℃、好ましくは約18~25℃以内に収まる。
【0061】
本発明の意味の範囲内で、「患者」という用語は、治療についての必要性を示唆する特定の症状(複数可)の臨床症状を提示している対象、病態について防止的もしくは予防的に治療される対象、または治療される予定の病態が診断された対象を指す。
【0062】
本発明の意味の範囲内で、「薬物動態パラメーター」という用語は、臨床試験において、活性剤含有TTS(例えばフィンゴリモド含有TTS)を、健康なヒト対象へ、例えば単回用量、複数回用量、または定常的に投与することによって得られる血液曲線(例えばCmax、C、及びAUCt1-t2)を記載するパラメーターを指す。個別の対象の薬物動態パラメーターは、算術平均及び幾何平均(例えば平均Cmax、平均AUCt、及び平均AUCINF)、ならびに追加の統計値(それぞれの標準偏差及び標準誤差、最小値、最大値、ならびに値のリストがランク付けられた場合の中央値(メジアン)等)を使用して要約される。本発明の文脈において、薬物動態パラメーター(例えばCmax、C、及びAUCt1-t2)は、別段指示されなければ、幾何平均値を指す。臨床試験において特定のTTSについて得られた絶対平均値は、試験間で特定の程度で変動することを排除することができない。試験間の絶対平均値の比較を可能にするために、参照製剤(例えば本発明に基づく将来の任意の製品)が、内部標準として使用され得る。試験間の差を考慮した補正係数を得るために、以前及び以降の試験におけるそれぞれの参照製品の放出面積あたりAUCの比較が使用され得る。
【0063】
本発明に従う臨床試験は、International Conference for Harmonization of Clinical Trials(ICH)及びすべての現地の適用可能なGood Clinical Practices(GCP)及び規制を全面遵守して遂行された試験を指す。
【0064】
本発明の意味の範囲内で、「対象集団」という用語は、少なくとも5名、好ましくは少なくとも10名の個別の対象を指す。
【0065】
本発明の意味の範囲内で、「幾何平均」という用語は、元のスケールへ逆変換された対数変換データの平均を指す。
【0066】
本発明の意味の範囲内で、「算術平均」という用語は、観察したすべての値の総計を、観察した全数によって割ったものを指す。
【0067】
本発明の意味の範囲内で、「AUC」というパラメーターは、濃度-時間曲線下面積に対応する。AUC値は、血液循環の中へ吸収される活性剤の合計量に比例し、したがって生物学的利用能についての尺度である。
【0068】
本発明の意味の範囲内で、「AUCt1-t2」というパラメーターは、(ng/ml)時間で提供され、別段の指示のない限り、時間t1からt2までの濃度-時間曲線下面積に関し、線形台形法によって計算される。他の計算方法は、例えば対数台形法及び線形対数台形法である。
【0069】
本発明の意味の範囲内で、「Cmax」というパラメーターは、(ng/ml)で提供され、活性剤の観察された最大血中濃度に関する。
【0070】
本発明の意味の範囲内で、「C」というパラメーターは、(ng/ml)で提供され、時間tで観察された活性剤の血中濃度に関する。
【0071】
本発明の意味の範囲内で、「tmax」というパラメーターは、時間で提供され、Cmax値に到達する時間点に関する。換言すれば、tmaxは、観察された最高濃度の時間点である。
【0072】
本発明の意味の範囲内で、「コーティング組成物」という用語は、裏打ち層または剥離ライナーの上へコーティングされて、乾燥に際してマトリックス層を形成され得る、溶媒中のマトリックス層のすべての構成要素を含む組成物を指す。
【0073】
本発明の意味の範囲内で、「感圧接着剤組成物」という用語は、少なくとも溶媒(例えばn-ヘプタンまたは酢酸エチル)との混合物中の感圧接着剤を指す。
【0074】
本発明の意味の範囲内で、「溶解する」という用語は、清澄で、肉眼で見える任意の粒子を含有しない溶液を得るプロセスを指す。
【0075】
本発明の意味の範囲内で、「溶媒」という用語は、好ましくは揮発性有機液体(メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、塩化メチレン、ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、及びそれらの混合物等)である、任意の液体物質を指す。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1a】実施例1、比較例A、実施例2、及び比較例Bに従って調製されたTTSについての、168時間の時間的間隔にわたるフィンゴリモドの累積透過量を図示する。
図1b】実施例1、比較例A、実施例2、及び比較例Bに従って調製されたTTSについての、168時間の時間的間隔にわたるフィンゴリモドの皮膚透過速度を図示する。
図2a】実施例3、比較例C、実施例4、及び比較例Dに従って調製されたTTSについての、168時間の時間的間隔にわたるフィンゴリモドの累積透過量を図示する。
図2b】実施例3、比較例C、実施例4、及び比較例Dに従って調製されたTTSについての、168時間の時間的間隔にわたるフィンゴリモドの皮膚透過速度を図示する。
図3a】実施例4、比較例D、実施例5、及び比較例Eに従って調製されたTTSについての、168時間の時間的間隔にわたるフィンゴリモドの累積透過量を図示する。
図3b】実施例4、比較例D、実施例5、及び比較例Eに従って調製されたTTSについての、168時間の時間的間隔にわたるフィンゴリモドの皮膚透過速度を図示する。
図4a】実施例1、比較例A、及び比較例Fに従って調製されたTTSについての、168時間の時間的間隔にわたるフィンゴリモドの累積透過量を図示する。
図4b】実施例1、比較例A、及び比較例Fに従って調製されたTTSについての、168時間の時間的間隔にわたるフィンゴリモドの皮膚透過速度を図示する。
図5a】実施例7-1及び実施例7-2に従って調製されたTTSについての、168時間の時間的間隔にわたるフィンゴリモドの累積透過量を図示する。
図5b】実施例7-1及び実施例7-2に従って調製されたTTSについての、168時間の時間的間隔にわたるフィンゴリモドの皮膚透過速度を図示する。
図6】0.5mgのフィンゴリモドのGilenya(商標)カプセル毎日の経口投与後の、168時間の時間的間隔にわたるミニブタ全血液中のフィンゴリモド及びフィンゴリモドリン酸塩の濃度を図示する。
図7】実施例9-1~9-4に従って調製されたTTSの適用後の、168時間の時間的間隔にわたるミニブタ全血液中のフィンゴリモドの濃度を図示する。
図8】実施例9-1~9-4に従って調製されたTTSの適用後の、168時間の時間的間隔にわたるミニブタ全血液中のフィンゴリモドリン酸塩の濃度を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0077】
TTS構造
本発明は、フィンゴリモド含有層構造を含む、フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システムに関する。
【0078】
本発明に従うフィンゴリモド含有層構造は、A)裏打ち層、及びB)治療有効量のフィンゴリモドと、少なくとも1つのポリマーと、ドデカン-1-オールとを含む、フィンゴリモド含有層を含む。フィンゴリモド含有層構造は、好ましくはフィンゴリモド含有自己接着性層構造である。
【0079】
裏打ち層は、好ましくは実質的にフィンゴリモド不透過性である。さらに、上で概説されるように、裏打ち層が閉鎖性であるということが好ましい。
【0080】
フィンゴリモド含有層は、裏打ち層とフィンゴリモド含有層との間にさらなる層が存在しないように、裏打ち層へ直接付着され得る。
【0081】
本発明に従うTTSは、マトリックス型TTSまたはリザーバー型TTSであり得、好ましくはマトリックス型TTSである。
【0082】
本発明に従うフィンゴリモド含有層構造は、通常は、脱着可能な保護層(剥離ライナー)上に設置され、それは患者の皮膚の表面への適用の直前に除去される。したがって、TTSは、剥離ライナーをさらに含み得る。このように保護されたTTSは、ブリスターパックまたはシーム封止パウチ中で通常保存される。包装は、子供に安全なもの及び/または高齢者に優しいものであり得る。
【0083】
本発明の好ましい実施形態において、フィンゴリモド含有層は、フィンゴリモド含有感圧接着剤層であり、皮膚接触層を提示する。すなわち、フィンゴリモド含有層構造は、フィンゴリモド含有層へ付着された追加の皮膚接触層を含まない。これに関連して、フィンゴリモド含有層は、好ましくは自己接着性のフィンゴリモド含有マトリックス層である。フィンゴリモド含有層構造の自己接着特性は、好ましくはポリマーによって提供される。したがって、本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つのポリマーは、感圧接着剤である。本発明に従うフィンゴリモド含有層及び少なくとも1つのポリマーに関するさらなる詳細は、以下でさらに提供される。
【0084】
本発明の別の実施形態において、フィンゴリモド含有層構造は、追加の皮膚接触層をさらに含む。皮膚接触層は、好ましくは自己接着性であり、接着特性を提供する。したがって、本発明の1つの実施形態において、フィンゴリモド含有層構造は、フィンゴリモド含有層上に、C)皮膚接触層をさらに含む。これに関連して、追加の皮膚接触層は、フィンゴリモド含有層中で含有される少なくとも1つのポリマーと同じポリマーまたは異なるポリマーであり得る、少なくとも1つのポリマーも含有し得る。例えば、追加の皮膚接触層がポリシロキサンをベースとする感圧接着剤を含む場合に、フィンゴリモド含有層は、ポリシロキサンをベースとする同じ感圧接着剤、またはポリシロキサンをベースとする異なる感圧接着剤、または異なる非ハイブリッドポリマーもしくはハイブリッドポリマーを含み得る。追加の皮膚接触層は、好ましくは接着剤コーティング組成物をコーティング及び乾燥することによって得ることが可能である。
【0085】
フィンゴリモド含有層構造が追加の皮膚接触層を含む、本発明のある特定の実施形態において、追加の皮膚接触層は、約10~約160g/m、約10~約100g/m、または約10~約60g/mの面積重量を有する。皮膚接触層中に含有されるポリマーの全量は、皮膚接触層に基づいて、重量で約40%~約100%、好ましくは重量で約50%~約100%、より好ましくは重量で約60%~約100%の範囲であり得る。皮膚接触層は、活性剤を含み得る。活性剤は、同様にフィンゴリモドであり得る。皮膚接触層中の活性剤は、フィンゴリモドと一緒に投与するために合理的な追加の活性剤でもあり得る。好ましい実施形態において、皮膚接触層は、活性剤不含有であり、すなわち活性剤の添加無しに調製される。
【0086】
本発明のある特定の実施形態によれば、TTSは、接着剤オーバーレイをさらに含み得る。この接着剤オーバーレイは、特にフィンゴリモド含有構造よりも面積が大きく、経皮治療システム全体の接着特性の促進のためにそれへ付着される。前記接着剤オーバーレイは、裏打ち層及び接着剤層を含む。接着剤オーバーレイは、皮膚に接着する追加の面積を提供するが、フィンゴリモドの放出領域を追加しない。接着剤オーバーレイは、シリコーンアクリルハイブリッドポリマー、アクリルポリマー、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、自己接着性ポリマーまたは自己接着性ポリマー混合物を含み、これらは、フィンゴリモド含有層構造中に含まれる任意のポリマーまたはポリマー混合物に同一または異なり得る。一実施形態において、TTSは、フィンゴリモド含有層構造の上部の上に、接着剤オーバーレイを不含有である。
【0087】
投薬量に依存して、TTSの放出領域は、約1cm~約50cm、好ましくは約1cm~50cm未満の範囲である。
【0088】
本発明に従うTTSは、1つまたは複数の抗酸化物質をさらに含み得る。抗酸化物質は、フィンゴリモド含有層もしくは追加の皮膚接触層、またはフィンゴリモド含有層及び追加の皮膚接触層の両方中に含有され得る。好適な抗酸化物質は、メタ重亜硫酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール及びそのエステル、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールまたは没食子酸プロピル、好ましくはブチルヒドロキシトルエン、パルミチン酸アスコルビル、及びトコフェロールである。抗酸化物質は、好都合にはフィンゴリモド含有層中に、好ましくはフィンゴリモド含有層の約0.001~約1.0%の量で、より好ましくはフィンゴリモド含有層の約0.02~約0.5%の量で存在し得る。
【0089】
本発明に従うTTSは、上で記載された成分に加えて、例えば架橋剤、可溶化物質、充填物質、粘着性付与物質、フィルム形成剤、可塑性物質、安定化物質、軟化物質、スキンケア用物質、透過促進物質、pH調節物質、及び防腐物質の群からの少なくとも1つの賦形剤または添加物をさらに含み得る。概して、本発明によれば、追加の賦形剤または添加物は要求されないことが好ましい。したがって、TTSは、複雑度の低い組成物を有する。ある特定の実施形態において、さらなる添加物(例えば皮膚透過促進物質)は、TTS中に存在しない。
【0090】
フィンゴリモド含有層
上でより詳細が概説されるように、本発明に従うTTSは、フィンゴリモド含有層を含むフィンゴリモド含有層構造を含む。本発明に従うフィンゴリモド含有層は、治療有効量のフィンゴリモド、少なくとも1つのポリマー及びドデカン-1-オールを含む。フィンゴリモド含有層中のドデカン-1-オール対フィンゴリモドの重量比は、1.5対1~5対1の範囲である。
【0091】
特定の実施形態によれば、フィンゴリモド含有層は、1.5対1~4対1、1.5対1~2.5対1、3対1~4対1、約2.0対1、または約3.3対1のドデカン-1-オール対フィンゴリモドの重量比でドデカン-1-オール及びフィンゴリモドを含有する。
【0092】
フィンゴリモド含有層は、フィンゴリモド含有マトリックス層またはフィンゴリモド含有リザーバー層であり得る。フィンゴリモド含有層が、ポリマーマトリックス中に均一に分散または溶解されたフィンゴリモドを含むフィンゴリモド含有マトリックス層であることが好ましい。別の好ましい実施形態において、フィンゴリモド含有層は、治療有効量のフィンゴリモドを含む内側相、及び少なくとも1つのポリマーを含む外側相を含む、フィンゴリモド含有二相性マトリックス層であり、内側相は、外側相中に分散された堆積物を形成する。二相性マトリックス層中の内側相の含有量は、二相性マトリックス層の体積に基づいて、約5%~40%の体積であり得る。
【0093】
ある特定の好ましい実施形態によれば、フィンゴリモド含有層は、自己接着性フィンゴリモド含有マトリックス層である。
【0094】
特定の実施形態において、フィンゴリモド含有層は、遊離塩基の形態でのフィンゴリモドを含むフィンゴリモド含有コーティング組成物をコーティング及び乾燥することによって(好ましくは少なくとも1つのポリマー、ならびに1.5:1~5:1のドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比でドデカン-1-オール及び治療有効量のフィンゴリモドを含む、フィンゴリモド含有コーティング組成物をコーティング及び乾燥することによって)、得ることが可能である。
【0095】
特定の実施形態によれば、フィンゴリモド含有層は、約50~約200g/m、好ましくは約60~約180g/m、より好ましくは約80~約160g/m、約100g/m、または約150g/mの面積重量を有する。
【0096】
特定の実施形態によれば、フィンゴリモド含有層は、フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で、2%~40%、好ましくは2%~30%、より好ましくは4%~20%、約10%、または約15%の量でドデカン-1-オールを含有する。
【0097】
特定の実施形態によれば、フィンゴリモド含有層は、フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で、1%~20%、好ましくは1%~15%、より好ましくは2%~10%、約3%、または約7.5%の量でフィンゴリモドを含有する。
【0098】
ある特定の実施形態において、フィンゴリモド含有層中のフィンゴリモドとしては、薬学的に許容される化学形態及びモルフォロジー形態ならびに物理状態(その薬学的に許容される塩等)の形態が挙げられ得る。一実施形態において、フィンゴリモド含有層は、フィンゴリモドの薬学的に許容される塩(フィンゴリモド塩酸塩等)を含む。しかしながら、本発明によれば、フィンゴリモド含有層中のフィンゴリモドは遊離塩基の形態で含まれることが好ましい。
【0099】
特定の実施形態によれば、フィンゴリモド含有層は、フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で約40%~約99%、好ましくは重量で約50%~約99%、より好ましくは重量で約60%~約99%の量で少なくとも1つのポリマーを含有する。少なくとも1つのポリマーは、好ましくはシリコーンアクリルハイブリッドポリマー、ポリシロキサンをベースとするポリマー、ポリイソブチレンをベースとするポリマー、及びアクリレートポリマーからなる群から選択される。本発明に従う少なくとも1つのポリマーに関するさらなる詳細は、以下でさらに提供される。
【0100】
一実施形態において、フィンゴリモド含有層は、シリコーンアクリルハイブリッドポリマー、ポリシロキサンをベースとするポリマー、ポリイソブチレンをベースとするポリマー、及びアクリレートポリマーからなる群から選択される、さらなるポリマーを含む。フィンゴリモド含有層は、したがって異なる化学的特性または物理的特性を特徴とする、少なくとも2つのポリマーの混和物を含み得る。特定の実施形態において、フィンゴリモド含有層は、異なる物理的特性を特徴とする、少なくとも2つポリイソブチレンの混和物を含む。
【0101】
ある特定の実施形態において、フィンゴリモド含有層は、補助ポリマーをさらに含む。補助ポリマーは、フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で、約0.5%~約20%、約0.5%~約10%、または約1%~約5%の量で含有され得る。補助ポリマーは、好ましくはアルキルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸エステルコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリド-ン酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー、セルロース誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態において、補助ポリマーは、セルロース誘導体(好ましくはエチルセルロース)である。
【0102】
ある特定の他の実施形態において、フィンゴリモド含有層は、ポリビニルピロリドンを含まず、好ましくはフィンゴリモド含有層は、アルキルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸エステルコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択されるポリマーを含まない。
【0103】
特定の実施形態によれば、フィンゴリモド含有層中に含有されるポリマーの全量は、フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で約50%~約99%、好ましくは重量で約60%~約99%、より好ましくは重量で約70%~約99%の範囲である。
【0104】
追加の皮膚接触層を使用する場合に、フィンゴリモド含有層の成分(フィンゴリモド及び任意選択の追加の活性剤、任意選択の補助ポリマー、任意選択の抗酸化物質、及び任意選択の追加の賦形剤または添加物等)は、追加の皮膚接触層の中へ経時的に移動し得る。しかしながら、これは成分、及び皮膚接触層の材料に依存する。
【0105】
特定の実施形態によれば、フィンゴリモド含有層は、脂肪酸エステルを含まない。
【0106】
特定の実施形態によれば、フィンゴリモド含有層は、ドデカノールのエステル(例えば乳酸ラウリル)を含まない。
【0107】
特定の実施形態によれば、フィンゴリモド含有層は、有機硫黄化合物(例えばDMSO)を含まない。
【0108】
特定の実施形態によれば、フィンゴリモド含有層は、ドデカノールのエステル、有機硫黄化合物、及び脂肪酸エステルを含まない。
【0109】
本発明の一実施形態において、フィンゴリモド含有層は、フィンゴリモド、ドデカン-1-オール、及びポリマー(例えばポリマーベースの感圧接着剤)からなる。
【0110】
ポリマー
本発明に従うフィンゴリモド含有層は、少なくとも1つのポリマーを含む。ポリマーは、シリコーンアクリルハイブリッドポリマー、ポリシロキサンをベースとするポリマー、ポリイソブチレンをベースとするポリマー、及びアクリレートポリマーからなる群から選択され得る。
【0111】
好ましい実施形態において、少なくとも1つのポリマーは、ポリマーベースの感圧接着剤である。
【0112】
本発明の1つの実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーは、シリコーンアクリルハイブリッドポリマーである。シリコーンアクリルハイブリッドポリマーは、一緒に重合されたシリコーンベースの亜種及びアクリレートベースの亜種を含む、重合ハイブリッド種を含む。シリコーンアクリルハイブリッドポリマーは、したがってシリコーン相及びアクリル相を含む。好ましくは、シリコーンアクリルハイブリッドポリマーは、シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤である。
【0113】
シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤は、n-ヘプタン及び酢酸エチルのような溶媒中で通常供給及び使用される。感圧接着剤の固形分含有量は、通常30%~80%の間である。当業者は、好適な量の溶媒の添加によって、固形分含有量が修飾され得ることを承知している。
【0114】
好ましくは、シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤中のシリコーン対アクリレートの重量比は、5:95~95:5、または20:80~80:20、より好ましくは40:60~60:40であり、最も好ましくは、シリコーン対アクリレートの比は約50:50である。50:50のシリコーン対アクリレートの重量比を有する好適なシリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤は、例えばDow Corningによって酢酸エチル中で供給される、商業的に入手可能な、シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤7-6102、シリコーン/アクリレート比50/50、及び7-6302、シリコーン/アクリレート比50/50である。
【0115】
商業的に入手可能な好適なシリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤としては、Dow Corningによってn-ヘプタンまたは酢酸エチル中で製造及び供給される、PSAシリーズ7-6100及び7-6300(7-610X及び7-630X;X=1、n-ヘプタンベース/X=2、酢酸エチルベース)が挙げられる。例えば、50/50のシリコーン/アクリレート比を有する7-6102シリコーンアクリルハイブリッドPSAは、25℃及び酢酸エチル中で約50%の固形分含有量での2,500cPの溶液粘度ならびに30℃の0.1rad/sでの1.0e7ポアズの複素粘度を特徴とする。50/50のシリコーン/アクリレート比を有する7-6302シリコーンアクリルハイブリッドPSAは、25℃及び酢酸エチル中で約50%の固形分含有量での1,500cPの溶液粘度ならびに30℃の0.1rad/sでの4.0e6ポアズの複素粘度を有する。
【0116】
シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤が供給される溶媒に依存して、シリコーンまたはアクリル連続的な外相及び対応する不連続的な内相を提供するシリコーン相及びアクリル相の配置は、異なる。シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤がn-ヘプタン中で提供されるならば、組成物は、連続的なシリコーン外相及び不連続的なアクリル内相を含有する。シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤が酢酸エチル中で提供されるならば、組成物は、連続的なアクリル外相及び不連続的なシリコーン内相を含有する。シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤が提供される溶媒を蒸発させた後に、もたらされる感圧接着剤のフィルムまたは層の相配置は、溶媒含有接着剤コーティング組成物の相配置に対応する。例えば、シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤組成物中での相配置の反転を誘導し得る任意の物質の非存在下において、n-ヘプタン中のシリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤から調製された感圧接着剤層は、連続的なシリコーン外相及び不連続的なアクリル内相を提供し、酢酸エチル中のシリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤から調製された感圧接着剤層は、連続的なアクリル外相及び不連続的なシリコーン内相を提供する。組成物の相配置は、例えばシリコーン化された剥離ライナーへ付着されているシリコーンアクリルハイブリッドPSAの組成物から調製された、感圧接着剤のフィルムまたは層による剥離力試験において決定され得る。感圧接着剤フィルムは、シリコーン化された剥離ライナーが、2つのシリコーン表面のブロッキングに起因して感圧接着剤フィルム(裏打ちフィルムへ積層される)から除去され得ないか、またはほとんど除去され得ないならば、連続的なシリコーン外相を含有する。ブロッキングは、類似する表面エネルギーを含む2つのシリコーン層の接着から生じる。接着剤は、シリコーン化されたライナー上での良好な伸展を示し、したがってライナーへの良好な接着性を生成し得る。シリコーン化された剥離ライナーが容易に除去され得るならば、感圧接着剤フィルムは連続的なアクリル外相を含有する。アクリル接着剤は、異なる表面エネルギーに起因して良好な伸展を有しておらず、したがってシリコーン化されたライナーへの接着性が低いか、またはほとんどない。
【0117】
本発明の好ましい実施形態によれば、シリコーンアクリルハイブリッドポリマーは、アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物から得ることが可能なシリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤である。アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物は、アクリレート官能基のみ、メタクリレート官能基のみ、またはアクリレート官能基及びメタクリレート官能基の両方を含み得ることを理解されたい。
【0118】
本発明のある特定の実施形態によれば、シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤は、(a)アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物と、(b)エチレン性不飽和モノマーと、(c)開始物質との反応生成物を含む。すなわち、シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤は、これらの反応物((a)と(b)と(c))間の化学反応の生成物である。特に、シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤は、(a)アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物と、(b)(メタ)アクリレートモノマーと、(c)開始物質(すなわち開始物質の存在下における)との反応生成物を含む。すなわち、シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤は、これらの反応物((a)と(b)と(c))間の化学反応の生成物を含む。
【0119】
(a)アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物と、(b)エチレン性不飽和モノマーと、(c)開始物質との反応生成物は、連続的なシリコーン外相及び不連続的なアクリル内相を含有し得るか、または(a)と(b)と(c)との反応生成物は、連続的なアクリル外相及び不連続的なシリコーン内相を含有し得る。
【0120】
アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物(a)は、典型的には、100重量部のハイブリッド感圧接着剤に基づいて、5~95(より典型的には25~75)重量部の量でシリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤中に存在する。
【0121】
エチレン性不飽和モノマー(b)は、典型的には、100重量部のハイブリッド感圧接着剤に基づいて、5~95(より典型的には25~75)重量部の量でシリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤中に存在する。
【0122】
開始物質(c)は、典型的には、100重量部のハイブリッド感圧接着剤に基づいて、0.005~3(より典型的には0.01~2)重量部の量でシリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤中に存在する。
【0123】
本発明のある特定の実施形態によれば、アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物(a)は、(a1)シリコーン樹脂と、(a2)シリコーンポリマーと、(a3)前記アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を提供するケイ素含有キャッピング剤との縮合反応生成物を含む。シリコーン樹脂(a1)は、シリケート樹脂またはシリカ樹脂とも称され得る。好ましくは、シリコーンポリマー(a2)は、ポリシロキサン、好ましくはポリジメチルシロキサンである。(a1)及び(a2)は、シリコーンベースの感圧接着剤を重縮合によって形成し、アクリレート官能基またはメタクリレート官能基は、(a3)との反応によって導入されることを理解されたい。
【0124】
本発明のある特定の実施形態によれば、アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物(a)は、
(a1)シリコーン樹脂と、
(a2)シリコーンポリマーと、
(a3)前記アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を提供するケイ素含有キャッピング剤であって、一般式XYR’SiZ3-b(式中、
Xは、一般式AE-の一価ラジカルであり、
Eは、-O-または-NH-であり、Aは、アクリル基またはメタクリル基であり、
Yは、1~6の炭素原子を有する二価アルキレンラジカルであり、
R’は、メチル基またはフェニル基であり、
Zは、一価の加水分解可能な有機ラジカルまたはハロゲンであり、
bは、0または1である)
である前記ケイ素含有キャッピング剤と、
の縮合反応生成物を含み;
シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーを反応させて感圧接着剤を形成し、ケイ素含有キャッピング剤は、シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーを反応させる前、その最中、またはその後に導入され、
シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーを縮合反応させて感圧接着剤を形成した後に、ケイ素含有キャッピング剤は、感圧接着剤と反応するか;または
ケイ素含有キャッピング剤は、シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーとインサイチューで反応する。
【0125】
本発明のある特定の実施形態によれば、アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物は、感圧接着剤と、前記アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を提供するケイ素含有キャッピング剤との縮合反応生成物を含む。すなわち、アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物は、本質的に前記アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を提供するケイ素含有キャッピング剤によりキャッピングまたは末端ブロックされた感圧接着剤であり、感圧接着剤は、シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーの縮合反応生成物を含む。好ましくは、シリコーン樹脂は30~80重量部の量で反応して感圧接着剤を形成し、シリコーンポリマーは20~70重量部の量で反応して感圧接着剤を形成する。これらの重量部は、両方とも感圧接着剤の100重量部に基づく。要求されるものではないが、感圧接着剤は、触媒量の縮合触媒を含み得る。多様なシリコーン樹脂及びシリコーンポリマーが感圧接着剤を構成するのに好適である。
【0126】
本発明のある特定の実施形態によれば、シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤は、
(a)アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物であって、
(a1)シリコーン樹脂と、
(a2)シリコーンポリマーと、
(a3)前記アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を提供するケイ素含有キャッピング剤であって、一般式XYR’SiZ3-b(式中、
Xは、一般式AE-の一価ラジカルであり、
Eは、-O-または-NH-であり、Aは、アクリル基またはメタクリル基であり、
Yは、1~6の炭素原子を有する二価アルキレンラジカルであり、
R’は、メチル基またはフェニル基であり、
Zは、一価の加水分解可能な有機ラジカルまたはハロゲンであり、
bは、0または1である)
である前記ケイ素含有キャッピング剤と、
の縮合反応生成物を含み;
シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーを反応させて感圧接着剤を形成し、ケイ素含有キャッピング剤が、シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーを反応させる前、その最中、またはその後に導入され、
シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーを縮合反応させて感圧接着剤を形成した後に、ケイ素含有キャッピング剤が、感圧接着剤と反応するか;または
ケイ素含有キャッピング剤が、シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーとインサイチューで反応する、
前記組成物;
(b)エチレン性不飽和モノマー;及び
(c)開始物質
の反応生成物である。
【0127】
本発明において使用されるシリコーンアクリルハイブリッド組成物は、
(i)アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物であって、
シリコーン樹脂と、
シリコーンポリマーと、
前記アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を提供するケイ素含有キャッピング剤であって、一般式XYR’SiZ3-b(式中、
Xは、一般式AE-の一価ラジカルであり、
Eは、-O-または-NH-であり、Aは、アクリル基またはメタクリル基であり、
Yは、1~6の炭素原子を有する二価アルキレンラジカルであり、
R’は、メチル基またはフェニル基であり、
Zは、一価の加水分解可能な有機ラジカルまたはハロゲンであり、
bは、0または1である)
である前記ケイ素含有キャッピング剤と、
の縮合反応生成物を含み;
シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーを反応させて感圧接着剤を形成し、ケイ素含有キャッピング剤が、シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーを反応させる前、その最中、またはその後に導入され、
シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーを縮合反応させて感圧接着剤を形成した後に、ケイ素含有キャッピング剤が、感圧接着剤と反応するか;または
ケイ素含有キャッピング剤が、シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーとインサイチューで反応する、
前記組成物を提供するステップ;
(ii)エチレン性不飽和モノマーとステップ(i)のアクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物とを、任意選択で50℃~100℃または65℃~90℃の温度で、開始物質の存在下において重合させて、シリコーンアクリルハイブリッド組成物を形成するステップ、
を含む方法によって調製されることによって記載され得る。
【0128】
アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むエチレン性不飽和モノマー及びケイ素含有感圧接着剤組成物の重合の最中に、シリコーン対アクリルの比は、所望に応じて制御及び最適化され得る。シリコーン対アクリルの比は、本方法における様々なメカニズム及びその最中の様々なメカニズムによって制御され得る。1つのかかるメカニズムの例示的な例は、アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物へのエチレン性不飽和モノマー(複数可)の速度制御された添加である。ある特定の適用において、アクリレートベースの亜種またはアクリル含有量全体を越えるように、シリコーンベースの亜種またはシリコーン含有量全体を有することが所望され得る。他の適用においては、その逆が当てはまることが所望され得る。最終用途に依存せず、既に上で記載されるように、アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物は、100重量部のシリコーンアクリルハイブリッド組成物に基づいて、好ましくは約5~約95、より好ましくは約25~約75、さらにより好ましくは約40~約60の重量部の量で、シリコーンアクリルハイブリッド組成物中に存在することが概して好ましい。
【0129】
本発明のある特定の実施形態によれば、本発明において使用されるシリコーンアクリルハイブリッド組成物は、
(i)アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物であって、
シリコーン樹脂と、
シリコーンポリマーと、
前記アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を提供するケイ素含有キャッピング剤であって、一般式XYR’SiZ3-b(式中、
Xは、一般式AE-の一価ラジカルであり、
Eは、-O-または-NH-であり、Aは、アクリル基またはメタクリル基であり、
Yは、1~6の炭素原子を有する二価アルキレンラジカルであり、
R’は、メチル基またはフェニル基であり、
Zは、一価の加水分解可能な有機ラジカルまたはハロゲンであり、
bは、0または1である)
である前記ケイ素含有キャッピング剤と、
の縮合反応生成物を含み;
シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーを反応させて感圧接着剤を形成し、ケイ素含有キャッピング剤が、シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーを反応させる前、その最中、またはその後に導入され、
シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーを縮合反応させて感圧接着剤を形成した後に、ケイ素含有キャッピング剤が、感圧接着剤と反応するか;または
ケイ素含有キャッピング剤が、シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーとインサイチューで反応する、
前記組成物を提供するステップ:
(ii)エチレン性不飽和モノマーとステップ(i)のアクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物とを、50℃~100℃の温度で、開始物質の存在下において第1の溶媒中で重合させて、シリコーンアクリルハイブリッド組成物を形成するステップ;
(iii)第1の溶媒を除去するステップ;ならびに
(iv)第2の溶媒を添加して、シリコーンアクリルハイブリッド組成物を形成し、シリコーンアクリルハイブリッド組成物の相配置が、第2の溶媒の選択によって選択的に制御されるステップ、
を含む方法によって調製されることによって記載され得る。
【0130】
本発明において使用されるシリコーンアクリルハイブリッドPSA組成物は、
(i)アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物であって、
シリコーン樹脂と、
シリコーンポリマーと、
前記アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を提供するケイ素含有キャッピング剤であって、一般式XYR’SiZ3-b(式中、
Xは、一般式AE-の一価ラジカルであり、
Eは、-O-または-NH-であり、Aは、アクリル基またはメタクリル基であり、
Yは、1~6の炭素原子を有する二価アルキレンラジカルであり、
R’は、メチル基またはフェニル基であり、
Zは、一価の加水分解可能な有機ラジカルまたはハロゲンであり、
bは、0または1である)
である前記ケイ素含有キャッピング剤と、
の縮合反応生成物を含み;
シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーを反応させて感圧接着剤を形成し、ケイ素含有キャッピング剤が、シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーを反応させる前、その最中、またはその後に導入され、
シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーを縮合反応させて感圧接着剤を形成した後に、ケイ素含有キャッピング剤が、感圧接着剤と反応するか;または
ケイ素含有キャッピング剤が、シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーとインサイチューで反応する、
前記組成物を提供するステップ:
(ii)エチレン性不飽和モノマーとステップ(i)のアクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物とを、50℃~100℃の温度で、開始物質の存在下において第1の溶媒中で重合させて、シリコーンアクリルハイブリッド組成物を形成するステップ;
(iii)処理溶媒を添加し、処理溶媒が第1の溶媒よりも高い沸点を有するステップ、ならびに
(iv)第1の溶媒の大部分が選択的に除去されるように、70℃~150℃の温度で熱を適用するステップ;
(v)処理液を除去するステップ;ならびに
(vi)第2の溶媒を添加して、シリコーンアクリルハイブリッド組成物を形成し、シリコーンアクリルハイブリッド組成物の相配置が、第2の溶媒の選択によって選択的に制御されるステップ、
のステップを含む方法によって調製されることによっても記載され得る。
【0131】
先の段落に従うシリコーン樹脂は、式R SiO1/2のトリオルガノシロキシ単位及び式SiO4/2の四官能性シロキシ単位を、各々の四官能性シロキシ単位について0.1~0.9(好ましくは約0.6~0.9)のトリオルガノシロキシ単位の比で含むコポリマーを含有し得る。好ましくは、各々のRは、1~6の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカル、ビニル基、ヒドロキシル基、またはフェニル基を独立して表わす。
【0132】
先の段落に従うシリコーンポリマーは、少なくとも1つのポリジオルガノシロキサンを含み得、好ましくはヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドリド基、ビニル基、またはそれらの混合物からなる群から選択される官能基により末端キャップ(末端ブロック)される。ジオルガノ置換基は、ジメチル、メチルビニル、メチルフェニル、ジフェニル、メチルエチル、(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチル、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。好ましくは、ジオルガノ置換基は、メチル基をのみを含有する。ポリジオルガノシロキサンの分子量は、典型的には、約50,000~約1,000,000(好ましくは約80,000~約300,000)の範囲であろう。好ましくは、ポリジオルガノシロキサンは、末端ブロックTRASiO1/2単位により終結したARSiO単位を含み、ポリジオルガノシロキサンは、25℃で約100センチポアズ~約30,000,000センチポアズの粘度を有し、各々のAラジカルは、R、または1~6の炭素原子を有するハロ炭化水素ラジカルから独立して選択され、各々のTラジカルは、R、OH、H、またはORからなる群から独立して選択され、各々のRは、独立して1~4の炭素原子を有するアルキルラジカルである。
【0133】
好ましいシリコーン樹脂及び好ましいシリコーンポリマーの形態を使用する例として、1つの型の感圧接着剤は、
(i)ケイ素結合ヒドロキシルラジカルを含有し、各々の存在するSiO4/2単位について0.6~0.9のR SiO1/2単位のモル比でのR SiO1/2単位及びSiO4/2単位から本質的になる、少なくとも1つの樹脂コポリマーを、30~80重量部(両端の値を含む)で、(ii)末端ブロックTRASiO1/2単位により終結したARSiO単位を含む少なくとも1つのポリジオルガノシロキサンであって、ポリジオルガノシロキサンが、25℃で約100センチポアズ~約30,000,000センチポアズの粘度を有し、各々Rが、1~6の炭素原子(両端の値を含む)の炭化水素ラジカルからなる群から選択される一価の有機ラジカルであり、各々のAラジカルが、R、または1~6の炭素原子(両端の値を含む)を有するハロ炭化水素ラジカルから独立して選択され、各々のTラジカルが、R、OH、H、またはORからなる群から独立して選択され、各々のRが、独立して1~4の炭素原子(両端の値を含む)のアルキルラジカルである、前記ポリジオルガノシロキサンを、約20~約70重量部で、(iii)5,000~15,000(より典型的には8,000~13,000)ppmの範囲中のシラノール含有量または濃度を提供することが可能な、下で記載されるケイ素含有キャッピング剤(全体を通して末端ブロック剤とも称される)のうちの少なくとも1つを、十分な量で、所望される場合には(iv)穏やかなシラノール縮合触媒を、追加の触媒量((ii)よって提供されない場合)、ならびに、必要な場合には(v)(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の混合物の粘度を低減するための(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)に関して不活性な有機溶媒を、有効量で、これらを混合し、少なくとも実質的な量のケイ素含有キャッピング剤(複数可)が、(i)及び(ii)のケイ素結合ヒドロキシルラジカル及びTラジカルと反応するまで、(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の混合物を縮合すること、によって作製される。追加の有機ケイ素末端ブロック剤は、本発明のケイ素含有キャッピング剤(複数可)(iii)と併用して使用され得る。
【0134】
先の段落に従うケイ素含有キャッピング剤は、アクリレート官能性シラン、アクリレート官能性シラザン、アクリレート官能性ジシラザン、アクリレート官能性ジシロキサン、メタクリレート官能性シラン、メタクリレート官能性シラザン、メタクリレート官能性ジシラザン、メタ-アクリレート官能性ジシロキサン、及びそれらの組み合わせの基から選択され得、一般式XYR’SiZ3-b(式中、Xは、一般式AE-の一価ラジカルであり、Eは、-O-または-NH-であり、Aは、アクリル基またはメタクリル基であり、Yは、1~6の炭素原子を有する二価アルキレンラジカルであり、R’は、メチル基またはフェニル基であり、Zは、一価の加水分解可能な有機ラジカルまたはハロゲンであり、bは、0、1または2である)として記載され得る。好ましくは、一価の加水分解可能な有機ラジカルは、一般式R’’0-(式中、R’’はアルキレンラジカルである)である。最も好ましくは、この特定の末端ブロック剤は、3-メタクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、3-メタクリロキシプロピルジクロロシラン、3-メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)メチルジメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)トリメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)ジメチルエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)メチルジエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシ-プロピルトリイソプロポキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルシラザン、3-アクリロキシ-プロピルジメチルクロロシラン、3-アクリロキシプロピルジクロロシラン、3-アクリロキシプロピル-トリクロロシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3-アクリロキシ-プロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピル-ジメチルシラザン、及びそれらの組み合わせの群から選択される。
【0135】
先の段落に従うエチレン性不飽和モノマーは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する任意のモノマーであり得る。好ましくは、先の段落に従うエチレン性不飽和モノマーは、脂肪族アクリレート、脂肪族メタクリレート、脂環式アクリレート、脂環式メタクリレート、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物であり得る。当該化合物の各々(脂肪族アクリレート、脂肪族メタクリレート、脂環式アクリレート、及び脂環式メタクリレート)は、アルキルラジカルを含むことを理解されたい。これらの化合物のアルキルラジカルは、最大20までの炭素原子を含み得る。エチレン性不飽和モノマーのうちの1つとして選択され得る脂肪族アクリレートは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソ-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソ-オクチルアクリレート、イソ-ノニルアクリレート、イソ-ペンチルアクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。エチレン性不飽和モノマーのうちの1つとして選択され得る脂肪族メタクリレートは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソ-ブチルメタ-アクリレート、tert-ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソ-オクチルメタクリレート、イソ-ノニルメタクリレート、イソ-ペンチルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。エチレン性不飽和モノマーのうちの1つとして選択され得る脂環式アクリレートは、シクロヘキシルアクリレートであり、エチレン性不飽和モノマーのうちの1つとして選択され得る脂環式メタクリレートは、シクロヘキシルメタクリレートである。
【0136】
シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤を調製するために使用されるエチレン性不飽和モノマーは、2つ以上のエチレン性不飽和モノマーであり得ることを理解されたい。すなわち、エチレン性不飽和モノマーの組み合わせは、アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物、及び開始物質と共に重合(より具体的には共重合)され得る。本発明のある特定の実施形態によれば、シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤は、少なくとも2つの異なるエチレン性不飽和モノマー(好ましくは2-エチルヘキシルアクリレート及びメチルアクリレートの群から選択される)を、好ましくは40:60~70:30の比で、より好ましくは65:35~55:45または55:45~45:50の比で、特に好ましくはアクリルモノマーとして、50%の2-エチルヘキシルアクリレート及び50%のメチルアクリレートの比で、または60%の2-エチルヘキシルアクリレート及び40%のメチルアクリレートの比で、使用することによって調製される。
【0137】
先の段落に従う開始物質は、アクリレート官能基またはメタクリレート官能基を含むケイ素含有感圧接着剤組成物、及びエチレン性不飽和モノマーの重合を開始させて、シリコーンアクリルハイブリッドを形成するのに好適な任意の物質であり得る。例えば、過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始物質、及び光開始物質の群から選択されるフリーラジカル開始物質が使用され得る。
【0138】
先の段落に従って使用され得るさらに好適なシリコーン樹脂、シリコーンポリマー、ケイ素含有キャッピング剤、エチレン性不飽和モノマー、及び開始物質は、WO2007/145996、EP2599847A1、及びWO2016/130408中で詳述される。
【0139】
本発明のある特定の実施形態によれば、シリコーンアクリルハイブリッドポリマーは、シリコーンポリマー、シリコーン樹脂、及びアクリルポリマーの反応生成物を含み、アクリルポリマーは、共有結合で自己架橋され、シリコーンポリマー及び/またはシリコーン樹脂へ共有結合される。
【0140】
本発明のある特定の他の実施形態によれば、シリコーンアクリルハイブリッドポリマーは、シリコーンポリマー、シリコーン樹脂、及びアクリルポリマーの反応生成物を含み、シリコーン樹脂は、トリオルガノシロキシ単位RSiO1/2(式中、Rは有機基である)及び四官能性シロキシ単位SiO4/2を、各々のSiO4/2について0.1~0.9のRSiO1/2単位のモル比で含有する。
【0141】
アクリルポリマーは、少なくともアルコキシシリル官能性モノマー、ポリシロキサン含有モノマー、ハロシリル官能性モノマー、またはアルコキシハロシリル官能性モノマーを含み得る。好ましくは、アクリルポリマーは、トリアルコキシシリル(メタ)アクリレート、ジアルコキシアルキルシリル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択されるアルコキシシリル官能性モノマーから調製されるか、または末端キャップされたアルコキシシリル官能基を含む。アルコキシシリル官能基は、好ましくはトリメトキシルシリル基、ジメトキシメチルシリル基、トリエトキシルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0142】
アクリルポリマーは、ポリシロキサン含有モノマーを含む混合物から(好ましくはポリジメチルシロキサンモノ(メタ)アクリレートを含む混合物から)も調製され得る。
【0143】
シリル官能性モノマーは、典型的にはアクリルポリマーの重量で0.2~20%の量で使用され、より好ましくはシリル官能性モノマーの量は、アクリルポリマーの重量で約1.5~約5%の範囲であろう。
【0144】
ポリシロキサン含有モノマーの量は、典型的にはアクリルポリマーの重量で1.5~50%の量で使用され、より好ましくはポリシロキサン含有モノマーの量は、アクリルポリマーの重量で約5~約15%の範囲であろう。
【0145】
代替的に、アクリルポリマーは、アクリル及びポリシロキサンのブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーを含む。ポリシロキサンブロックコポリマーの例は、ポリジメチルシロキサン-アクリルブロックコポリマーである。シロキサンブロックの好ましい量は、ブロックポリマー全体の重量で10~50%である。
【0146】
アクリルポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む。使用され得る好ましいアルキル(メタ)アクリレートは、アルキル基中に最大約18までの炭素原子(好ましくはアルキル基中に1~約12の炭素原子)を有する。約0℃未満のホモポリマーTgの好ましい低ガラス転移温度(Tg)のアルキルアクリレートは、アルキル基中に約4~約10の炭素原子を有し、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、デシルアクリレート、それらの異性体、及びそれらの組み合わせを含む。ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びイソオクチルアクリレートが特に好ましい。アクリルポリマー構成要素は、高いTgを有する(メタ)アクリレートモノマー(メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、及びイソブチルメタクリレート等)をさらに含み得る。
【0147】
アクリルポリマー構成要素は、もたらされた接着剤の低温流動特性を改善するためにポリイソブチレン基をさらに含み得る。
【0148】
アクリルポリマー構成要素は、窒素含有極性モノマーを含み得る。例としては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-第三級オクチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N-第三級ブチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、シアノエチルアクリレート、N-ビニルアセトアミド、及びN-ビニルホルムアミドが挙げられる。
【0149】
アクリルポリマー構成要素は、1つまたは複数のヒドロキシル含有モノマー(2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、及び/またはヒドロキシプロピルメタクリレート等)を含み得る。
【0150】
アクリルポリマー構成要素は、所望されるならば、カルボン酸含有モノマーを含み得る。有益なカルボン酸は、好ましくは約3~約6の炭素原子を含有し、とりわけ、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、β-カルボキシエチルアクリレート、及び同種のものが挙げられる。アクリル酸が、特に好ましい。
【0151】
他の有益な周知のコモノマーとしては、酢酸ビニル、スチレン、シクロヘキシルアクリレート、アルキルジ(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、及びアリルグリシジルエーテル、そして例えばポリ(スチリル)メタクリレート等のマクロマーが挙げられる。
【0152】
本発明の実践において使用され得る1つのアクリルポリマー構成要素は、重量で約90~約99.5%のブチルアクリレート及び重量で約0.5~約10%のジメトキシメチルシリルメタクリレートを含むアクリルポリマーである。
【0153】
本発明のある特定の実施形態によれば、シリコーンアクリルハイブリッドポリマーは、a)シリコーンポリマーをシリコーン樹脂と反応させて結果の生成物を形成すること、b)a)の結果の生成物を反応性官能基を含有するアクリルポリマーと反応させることによって調製され得、そこで、構成要素は有機溶媒中で反応する。
【0154】
本発明のある特定の実施形態によれば、シリコーンアクリルハイブリッドポリマーは、a)シリコーン樹脂を反応性官能基を含有するアクリルポリマーと反応させて結果の生成物を形成すること、b)a)の結果の生成物をシリコーンポリマーと反応させることによって調製され得、そこで、構成要素は有機溶媒中で反応する。
【0155】
本発明のある特定の実施形態によれば、シリコーンアクリルハイブリッドポリマーは、a)シリコーンポリマーを反応性官能基を含有するアクリルポリマーと反応させて結果の生成物を形成すること、b)a)の結果の生成物をシリコーン樹脂と反応させることによって調製され得、そこで、構成要素は有機溶媒中で反応する。
【0156】
シリコーンポリマー、シリコーン樹脂、及びアクリルポリマーを一緒に化学的に反応させて、先の段落に従うシリコーンアクリルハイブリッドポリマーを提供するために使用され得る、さらに好適なアクリルポリマー、シリコーン樹脂、及びシリコーンポリマーは、WO2010/124187中で詳述される。
【0157】
本発明のある特定の実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーは、非ハイブリッドポリマーである。非ハイブリッドポリマー(例えば非ハイブリッド感圧接着剤)は、ハイブリッド種を含まないポリマー(例えばポリマーベースの感圧接着剤)である。ポリシロキサン、ポリイソブチレン、及びアクリレートをベースとする非ハイブリッドポリマー(例えば非ハイブリッド感圧接着剤)が好ましい。
【0158】
非ハイブリッドポリマー(例えば非ハイブリッド感圧接着剤)は、活性剤含有層構造中で、及び/または接着剤オーバーレイ中で含有され得る。
【0159】
非ハイブリッド感圧接着剤は、通常n-ヘプタン及び酢酸エチルのような溶媒中で供給及び使用される。感圧接着剤の固形分含有量は、通常30%~80%の間である。
【0160】
本発明に従う好適な非ハイブリッドポリマーは、例えば商標名BIO-PSA(ポリシロキサンをベースとする感圧接着剤)、Oppanol(商標)(ポリイソブチレン)、またはDuro-Tak(商標)(アクリルポリマー)下で、商業的に入手可能である。
【0161】
本発明の1つの実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーは、ポリシロキサンをベースとするポリマーである。ポリシロキサンをベースとするポリマーは、シリコーンベースのポリマーまたはポリシロキサンベースのポリマーとも称され得る。ポリシロキサンをベースとする好適なポリマーは、好ましくはポリシロキサンをベースとする感圧接着剤である。ポリシロキサンをベースとする感圧接着剤は、シリコーンベースの接着剤、シリコーンベースの感圧接着剤、ポリシロキサンベースの接着剤、またはポリシロキサンベースの感圧接着剤とも称され得る。これらのポリシロキサンをベースとする感圧接着剤は、様々な皮膚の型(濡れた皮膚を含む)への好適な粘着性及び迅速な結合、好適な接着性及び密着性の質、皮膚への持続的な接着性、高度の柔軟性、水分への透過性、ならびに多くの活性物質及びフィルム基質への適合性を提供する。当該接着剤に、十分なアミン抵抗性、及びしたがってアミンの存在下における安定性の促進を提供することは可能である。かかる感圧接着剤は、ポリマー中樹脂(resin-in-polymer)の概念に基づき、その場合は、シラノールで末端ブロックされたポリジメチルシロキサンをシリカ樹脂(シリケート樹脂とも称される)と縮合反応し、残存するシラノール官能基が、アミン安定性のためにトリメチルシロキシ基により追加でキャッピングされることによって、ポリシロキサンをベースとする感圧接着剤は調製される。シラノールで末端ブロックされたポリジメチルシロキサンの含有量は、粘稠な構成要素の粘弾性挙動に寄与し、接着剤の湿潤特性及び展延性特性に影響を与える。樹脂は、粘着性付与剤及び補強剤として作用し、弾性構成要素に関与する。シラノールで末端ブロックされたポリジメチルシロキサンと樹脂との間の適正なバランスは、適正な接着特性を提供する。
【0162】
商業的に入手可能なシリコーンベースのPSAの組成物の例としては、典型的にはDow Corningによってn-ヘプタンまたは酢酸エチル中で製造及び供給される、標準的BIO-PSAシリーズ(7-4400、7-4500、及び7-4600シリーズ)及びアミン適合性の(末端キャップされた)BIO-PSAのシリーズ(7-4100、7-4200、及び7-4300シリーズ)が挙げられる。例えば、BIO-PSA 7(4201)は、25℃及びヘプタン中で約60%の固形分含有量での450mPasの溶液粘度ならびに30℃の0.01rad/sでの1×10ポアズの複素粘度を特徴とする。BIO-PSA 7-4301は、25℃及びヘプタン中で約60%の固形分含有量での500mPasの溶液粘度ならびに30℃の0.01rad/sでの1×10ポアズの複素粘度を有する。
【0163】
ポリシロキサンをベースとする感圧接着剤は、n-ヘプタン、酢酸エチル、または他の揮発性シリコーン液のような溶媒中で供給及び使用される。溶媒中のポリシロキサンをベースとする感圧接着剤の固形分含有量は、通常60~85%の間(好ましくは70~80%の間または60~75%の間)である。当業者は、好適な量の溶媒の添加によって、固形分含有量が修飾され得ることを承知している。
【0164】
本発明の1つの実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーは、ポリイソブチレンをベースとするポリマー(好ましくはポリイソブチレンにベースとする感圧接着剤)である。本発明に従う好適なポリイソブチレンは、商品名Oppanol(登録商標)下で利用可能である。高分子量のポリイソブチレン(例えばN100、N80)及び中間分子量のポリイソブチレン(例えばB10、B12)の組み合わせが使用され得る。中間分子量ポリイソブチレン対高分子量ポリイソブチレンの好適な比は、100:1~1:100、好ましくは95:5~40:60、より好ましくは90:10~80:20の範囲である。ポリイソブチレン組み合わせのための好ましい例は、85:15の比のB10:N100である。Oppanol(登録商標)N100は、1,110,000の粘度平均分子量M及び1,550,000の重量平均分子量M及び2.9の平均分子量分布M/Mを有する。Oppanol(登録商標)B10は、40,000の粘度平均分子量Mv及び53,000の重量平均分子量Mw及び3.2の平均分子量分布M/Mを有する。ある特定の実施形態において、ポリブテンは、ポリイソブチレンに添加され得る。溶媒中のポリイソブチレンの固形分含有量は、通常30~50%の間(好ましくは35~40%の間)である。当業者は、好適な量の溶媒の添加によって、固形分含有量が修飾され得ることを承知している。
【0165】
本発明の1つの実施形態によれば、少なくとも1つのポリマーは、アクリレートをベースとするポリマー(好ましくはアクリレートをベースとする感圧接着剤)である。アクリレートをベースとする感圧接着剤は、アクリレートベースの感圧接着剤またはアクリレート感圧接着剤とも称され得る。アクリレートをベースとする感圧接着剤は、好ましくは30%~60%の間の固形分含有量を有し得る。かかるアクリレートベースの感圧接着剤は、官能基(ヒドロキシ基、カルボン酸基、中和カルボン酸基、及びそれらの混合物等)を含んでも含まなくてもよい。したがって、「官能基」という用語は、特にヒドロキシ基及びカルボン酸基、ならびに脱プロトン化カルボン酸基を指す。
【0166】
対応する商業製品は、例えば商品名Duro Tak(登録商標)下でHenkelから利用可能である。かかるアクリレートベースの感圧接着剤は、アクリル酸、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t-オクチルアクリルアミド、及び酢酸ビニルの1つまたは複数から選択されるモノマーをベースとして、酢酸エチル、ヘプタン、n-ヘプタン、ヘキサン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2,4-ペンタンジオン、トルエン、もしくはキシレンまたはそれらの混合物中で提供される。好適なアクリレートベースの感圧接着剤は、アクリル酸、ブチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t-オクチルアクリルアミド、及び酢酸ビニルのうちの2つ以上から選択されるモノマーをベースとする。
【0167】
好ましい実施形態において、アクリレートベースの感圧接着剤は、酢酸ビニルを含有しない。
【0168】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのポリマーは、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチル-アクリレート、及びメチルアクリレートをベースとするコポリマーである、アクリレートベースの感圧接着剤である。
【0169】
具体的なアクリレートベースの感圧接着剤は、
Duro-Tak(商標)387-2510またはDuro-Tak(商標)87-2510(酢酸エチル及びヘキサン中の溶液として提供される、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチル-アクリレート、及びメチルアクリレートをベースとするコポリマー)、
Duro-Tak(商標)87-4287、(架橋剤無しの酢酸エチル中の溶液として提供される、酢酸ビニル、2-エチルヘキシルアクリレート、及び2-ヒドロキシエチル-アクリレートをベースとするコポリマー)、
Duro-Tak(商標)387-2287またはDuro-Tak(商標)87-2287(架橋剤無しの酢酸エチル中の溶液として提供される、酢酸ビニル、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチル-アクリレート、及びグリシジル-メタクリレートをベースとするコポリマー)、
Duro-Tak(商標)387-2516または、Duro-Tak(商標)87-2516(チタン架橋剤を含む酢酸エチル、エタノール、n-ヘプタン、及びメタノール中の溶液として提供される、酢酸ビニル、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチル-アクリレート、及びグリシジル-メタクリレートをベースとするコポリマー)、
Duro Tak(商標)387-2051またはDuro Tak(商標)87-2051(酢酸エチル及びヘプタン中の溶液として提供される、アクリル酸、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート及び酢酸ビニルをベースとするコポリマー)、
Duro-Tak(商標)387-2353またはDuro-Tak(商標)87-2353(酢酸エチル及びヘキサン中の溶液として提供される、アクリル酸、2-エチルヘキシルアクリレート、グリシジルメタクリレート、及びメチルアクリレートをベースとするコポリマー)、
Duro-Tak(商標)87-4098(酢酸エチル中の溶液として提供される、2-エチルヘキシルアクリレート及び酢酸ビニルをベースとするコポリマー)
として利用可能である。
【0170】
好ましい実施形態において、アクリレートベースの感圧接着剤は、架橋剤を含有しない。
【0171】
本発明の好ましい実施形態において、アクリレートベースの感圧接着剤は、官能基としてカルボキシル基を含有しない。
【0172】
一実施形態において、アクリレートベースの感圧接着剤は、官能基を不含有である。
【0173】
補助ポリマーが添加されて、例えば密着性及び/または接着性を促進し得るか、あるいは可溶化物質として、または結晶化阻害物質として、ポリマー層の低温流動性を低減し得る。
【0174】
補助ポリマーは、アルキルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸エステルコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー、セルロース誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態において、補助ポリマーは、セルロース誘導体(好ましくはエチルセルロース)である。
【0175】
放出特徴
本発明に従うTTSは、フィンゴリモドを、所定の延長された期間(例えば少なくともまたは約72時間、約84時間、または約96時間、好ましくは約168時間)で、全身循環へ経皮投与するためにデザインされる。
【0176】
一態様において、上で記載される本発明に従うTTSは、延長された期間(例えば少なくともまたは約72時間、約84時間、約96時間、または約168時間)にわたって、0.1~1.0mg/日、好ましくは0.3~0.7mg/日、より好ましくは0.4~0.6mg/日のフィンゴリモドの平均放出速度を提供する。例えば、上で記載される本発明に従うTTSは、少なくとも72時間にわたって0.1~1.0mg/日のフィンゴリモドの平均放出速度を提供する。
【0177】
ある特定の実施形態において、上で記載される本発明に従うTTSは、デルマトーム採取ヒト皮膚によりFranz拡散セル中で測定されるように、投与の最初の24時間以内に、1.5μg/cm超、または1.5μg/cm超~15.0μg/cm、約2.0μg/cm~15.0μg/cm、2.5~15.0μg/cm、3.0~15.0μg/cm、もしくは5.0~15.0μg/cmのフィンゴリモドの累積透過量を提供し、好ましくは、0.1%のメチル-β-シクロデキストリン及び抗菌剤として0.1%の食塩水アジドを含むpH5.5のリン酸バッファー溶液が、32±1℃の温度で使用されて、500μmの厚さのデルマトーム採取ヒト皮膚でFranz拡散セル中を透過した量のフィンゴリモドを測定することによって決定される。
【0178】
ある特定の実施形態において、上で記載される本発明に従うTTSは、デルマトーム採取ヒト皮膚によりFranz拡散セル中で測定されるように、投与の最初の36時間以内に、6.0μg/cm超、または6.0μg/cm超~40.0μg/cm、約7.0μg/cm~40.0μg/cm、9.0~40.0μg/cm、10.0~40.0μg/cm、もしくは15.0~40μg/cmのフィンゴリモドの累積透過量を提供し、好ましくは、0.1%のメチル-β-シクロデキストリン及び抗菌剤として0.1%の食塩水アジドを含むpH5.5のリン酸バッファー溶液が、32±1℃の温度で使用されて、500μmの厚さのデルマトーム採取ヒト皮膚でFranz拡散セル中を透過した量のフィンゴリモドを測定することによって決定される。
【0179】
ある特定の実施形態において、上で記載される本発明に従うTTSは、デルマトーム採取ヒト皮膚によりFranz拡散セル中で測定されるように、投与の16時間後に、0.1μg/cm-時間を超える、または0.1μg/cm-時間を超える~1.0μg/cm-時間、約0.15μg/cm-時間~1.0μg/cm-時間、0.2~1.0μg/cm-時間、もしくは0.2μg/cm-時間~1.0μg/cm-時間のフィンゴリモドの皮膚透過速度を提供し、好ましくは、0.1%のメチル-β-シクロデキストリン及び抗菌剤として0.1%の食塩水アジドを含むpH5.5のリン酸バッファー溶液が、32±1℃の温度で使用されて、500μmの厚さのデルマトーム採取ヒト皮膚でFranz拡散セル中を透過した量のフィンゴリモドを測定することによって決定される。
【0180】
本発明のある特定の態様によれば、TTSは、対象集団への単回用量投与後の約168時間の投与にわたって、0.2:1~0.8:1、0.3:1~0.7:1、または約0.5:1の、Cmaxフィンゴリモドリン酸塩:Cmaxフィンゴリモドの比を提供する。
【0181】
治療の方法/医学的使用
本発明の特定の態様によれば、本発明に従うTTSは、免疫障害(多発性硬化症等)を治療する方法における使用のためのものである。
【0182】
本発明のある特定の態様によれば、TTSは、免疫障害を治療する方法における使用のためのものであり、経皮治療システムは、少なくともまたは約72時間(3日間)、約84時間(3.5日間)、または約168時間(7日間)で、患者の皮膚上に適用される。好ましくは、TTSは約168時間(7日間)適用される。
【0183】
本発明のある特定の態様によれば、TTSは、対象集団への単回用量投与後の約168時間の投与にわたって、0.2:1~0.8:1、0.3:1~0.7:1、または約0.5:1の、Cmaxフィンゴリモドリン酸塩:Cmaxフィンゴリモドの比を提供する。
【0184】
一態様によれば、本発明は、免疫障害(好ましくは多発性硬化症)を治療する方法における使用のためのフィンゴリモド塩基に関し、フィンゴリモド塩基は、本発明に従う経皮治療システムにおいて患者の皮膚へ投与される。
【0185】
一態様によれば、本発明は、免疫障害を治療するための医薬品の製造のための本発明に従うTTSの使用に関する。特に、本発明は、多発性硬化症を治療するための医薬品の製造のための本発明に従うTTSの使用に関し、好ましくは、TTSは、少なくとも約72時間(3日間)、約84時間(3.5日間)、または約168時間(7日間)で、患者の皮膚へ適用される。
【0186】
別の態様によれば、本発明は、本発明に従って患者の皮膚へ経皮治療システムを適用することによって、免疫障害(好ましくは多発性硬化症)を治療する方法に関する。これに関連して、上で記載されるTTSは、好ましくは少なくとも約72時間(3日間)、約84時間(3.5日間)、または約168時間(7日間)で、患者の皮膚へ適用される。
【0187】
製造方法
本発明は、
1)フィンゴリモド含有コーティング組成物であって、
a)フィンゴリモド(例えばフィンゴリモド塩基)と、
b)少なくとも1つのポリマー(例えばポリマーベースの感圧接着剤)と、
c)ドデカン-1-オールと、
d)任意選択で溶媒と、
を含む、前記組成物を提供するステップ、
2)フィンゴリモド含有コーティング組成物を、所望される面積重量を提供する量で、剥離ライナーの上へコーティングするステップ、
3)コーティングされたフィンゴリモド含有コーティング組成物を乾燥して、フィンゴリモド含有層を提供するステップ、
4)フィンゴリモド含有層を裏打ち層へ積層して、フィンゴリモド含有層構造を提供するステップ、
5)任意選択で、ステップ2及び3に従って、活性剤不含有コーティング組成物または活性剤含有コーティング組成物をコーティング及び乾燥することによって追加の皮膚接触層を提供し、フィンゴリモド含有層の剥離ライナーを除去し、フィンゴリモド含有層の接着性側の上へ皮膚接触層の接着性側を積層して、フィンゴリモド含有層構造を提供するステップ、
6)フィンゴリモド含有層構造から個別のシステムを打ち抜くステップ、
7)任意選択で、裏打ち層及び活性剤不含有感圧接着剤層も含む活性物質不含有自己接着性層構造を、個別のシステムへ接着し、それが、フィンゴリモド含有自己接着性層構造の個別のシステムよりも大きいステップ、
を含む、本発明に従う経皮治療システムの製造方法にさらに関する。
【0188】
好ましい実施形態において、少なくとも1つのポリマーは感圧接着剤ポリマーであり、好ましくは酢酸エチル、n-ヘプタン、またはヘキサン中の溶液として提供される。
【0189】
一実施形態において、ステップ1)において、フィンゴリモドは、フィンゴリモド塩基の形態で存在し、ドデカノール及び少なくとも1つのポリマーと酢酸エチル、n-ヘプタン、またはヘキサン中で組み合わせて、フィンゴリモド含有コーティング組成物を提供する。
【0190】
上記の製造方法のステップ3)及び任意選択でステップ5)において、乾燥は、好ましくは20~90℃の温度で遂行される。
【実施例
【0191】
本発明は、ここで、付随する実施例を参照してより完全に記載されるだろう。しかしながら、以下の記載は例示的なものにすぎず、決して本発明の制限として解釈されるべきでないことを理解されたい。
【0192】
実施例1
コーティング組成物
フィンゴリモド塩基含有コーティング組成物の配合を、以下で要約する。
【表1】
【0193】
コーティング組成物の調製
フィンゴリモド塩基を好適な混合容器(ビーカー)中に置き、n-ヘプタンを添加した。後続して、感圧接着剤(n-ヘプタン中の混合物の形態でポリイソブチレンをベースとし、重量で38%の固形分含有量を有する、Henkelから購入されたDURO-TAK 87-6908)を、スラリーへ添加した。エチルセルロース(IMCDから購入された)を撹拌しながら混合物へ添加し、塊をおよそ3時間撹拌した。
【0194】
比較例Fについては、オクチルドデカノール(Sigma Aldrichから購入されたEutanol(商標)G)を添加し、その後n-ヘプタンを添加した。
【0195】
実施例1については、1-ドデカノール(Alfa Aesarから購入された)を添加し、その後n-ヘプタンを添加した。
【0196】
コーティング組成物のコーティング
フィンゴリモド塩基含有コーティング組成物を、滑りやすくしたポリエチレンテレフタレート(PET)箔(剥離ライナーとして機能し得る)上に24時間以内にコーティングし、室温及び60℃で各々15分間乾燥した。
【0197】
コーティング厚は、溶媒を除去すると、およそ100g/mのマトリックス層の面積重量をもたらすように選ばれた。次いで乾燥したフィルムを、裏打ち層(ポリエチレンテレフタレート(PET)箔19μm)と積層して、フィンゴリモド含有自己接着性層構造を提供した。
【0198】
TTSの調製(すべての例)
次いで個別のシステム(TTS)を、フィンゴリモド含有自己接着性層構造から打ち抜いた。
【0199】
特定の実施形態において、上で記載されるTTSは、活性成分を不含有の感圧接着剤マトリックス層及び好ましくは皮膚色の裏打ち層を含む、好ましくは丸みを帯びた角部の有る接着剤オーバーレイ(すなわちより大きな表面領域のさらなる自己接着性層構造)を備えて提供され得る。次いでTTSを打ち抜き、一次包装材のパウチの中へ封入する。
【0200】
実施例2
コーティング組成物
フィンゴリモド塩基含有コーティング組成物の配合を、以下で要約する。
【表2】
【0201】
コーティング組成物の調製
フィンゴリモド塩基を好適な混合容器(ビーカー)中に置き、n-ヘプタンを添加した。感圧接着剤(n-ヘプタン中の混合物の形態でポリイソブチレンをベースとし、重量で38%の固形分含有量を有する、Henkelから購入されたDURO-TAK 87-6908)を、スラリーへ添加した。ポリビニルピロリドン(BASFから購入されたKollidon(商標))を撹拌しながら混合物へ添加し、塊をおよそ3時間撹拌した。
【0202】
実施例2については、1-ドデカノール(Alfa Aesarから購入された)を添加し、その後n-ヘプタンを添加した。
【0203】
コーティング組成物のコーティング
実施例1を参照されたい。
【0204】
TTSの調製
実施例1を参照されたい。
【0205】
実施例3
コーティング組成物
フィンゴリモド塩基含有コーティング組成物の配合を、以下で要約する。
【表3】
【0206】
コーティング組成物の調製
フィンゴリモド塩基を好適な混合容器(ビーカー)中に置き、n-ヘプタンを添加した。感圧接着剤(n-ヘプタン中の混合物の形態でポリイソブチレンをベースとし、重量で38%の固形分含有量を有する、Henkelから購入されたDURO-TAK 87-6908)を、スラリーへ添加した。クロスポビドンを撹拌しながら混合物へ添加し、塊をおよそ3時間撹拌した。
【0207】
実施例3については、1-ドデカノール(Alfa Aesarから購入された)を添加し、その後n-ヘプタンを添加した。
【0208】
コーティング組成物のコーティング
実施例1を参照されたい。
【0209】
TTSの調製
実施例1を参照されたい。
【0210】
実施例4
コーティング組成物
フィンゴリモド塩基含有コーティング組成物の配合を、以下で要約する。
【表4】
【0211】
コーティング組成物の調製
フィンゴリモド塩基を好適な混合容器(ビーカー)中に置き、n-ヘプタンを添加した。感圧接着剤(酢酸エチル及びヘキサン中のアクリル接着剤、重量で41.2%の固形分含有量を有する、Henkelから購入されたDURO-TAK 387-2510)を、スラリーへ添加した。塊をおよそ3時間撹拌した。
【0212】
実施例4については、1-ドデカノール(Alfa Aesarから購入された)を添加し、その後溶媒n-ヘプタンを添加した。
【0213】
コーティング組成物のコーティング
実施例1を参照されたい。
【0214】
TTSの調製
実施例1を参照されたい。
【0215】
実施例5
コーティング組成物
フィンゴリモド含有コーティング組成物の配合を、以下で要約する。
【表5】
【0216】
コーティング組成物の調製
フィンゴリモド塩基を好適な混合容器(ビーカー)中に置き、n-ヘプタンを添加した。感圧接着剤(酢酸エチル及びヘキサン中のアクリル接着剤、重量で41.2%の固形分含有量を有する、Henkelから購入されたDURO-TAK 387-2510)を、スラリーへ添加した。ポリビニルピロリドン(BASFから購入されたKollidon(商標))を撹拌しながら混合物へ添加し、塊をおよそ3時間撹拌した。
【0217】
実施例5については、1-ドデカノール(Alfa Aesarから購入された)を添加し、その後n-ヘプタンを添加した。
【0218】
コーティング組成物のコーティング
実施例1を参照されたい。
【0219】
TTSの調製
実施例1を参照されたい。
【0220】
実施例6
皮膚透過の測定
実施例1~5に従って調製されたTTSのフィンゴリモドの透過量及び対応する皮膚透過速度を、7.0mlのFranz拡散セルにより実行されたOECDのガイドライン(2004年4月13日に採択)に従って、インビトロの実験によって決定した。美容整形手術からの分層ヒト皮膚(女性腹部、1996年生まれ)を使用した。デルマトームを使用して、すべてのTTSのためのインタクトな表皮の有る500μmの厚さの皮膚を調製した。TTSから1.16cmの面積のダイカットを打ち抜いた。Franz拡散セルのレセプター媒質(0.1%のメチル-β-シクロデキストリン及び抗菌剤として0.1%の食塩水アジドを含むpH5.5のリン酸バッファー溶液)中の32±1℃の温度でのフィンゴリモドの透過量を測定し、対応する累積透過量及び皮膚透過速度を計算した。
【0221】
結果を、以下の表6-1~6-4、及び図1a~4b中で示す。
【表6-1】
【表6-2】
【表7-1】
【表7-2】
【表8】
【表9】
【0222】
実施例7-1及び実施例7-2
コーティング組成物
フィンゴリモド含有コーティング組成物の配合を、以下で要約する。
【表10】
【0223】
コーティング組成物の調製
フィンゴリモド塩基を好適な混合容器(ビーカー)中に置き、1-ドデカノールを添加した。溶媒n-ヘキサンをスラリーへ添加し、エチルセルロース(IMCDから購入された)を撹拌しながら混合物へ添加した。塊をおよそ1.5時間撹拌した。感圧接着剤(n-ヘプタン中の混合物の形態でポリイソブチレンをベースとし、重量で41.28%の固形分含有量を有し、BASFからのもので、85/15の比のOppanol(商標) B10/N100))を添加し、塊をおよそ1時間撹拌した。
【0224】
コーティング組成物のコーティング
実施例1を参照されたい。
【0225】
TTSの調製
実施例1を参照されたい。
【0226】
実施例8
皮膚透過の測定
実施例7-1及び7-2に従って調製されたTTSのフィンゴリモドの透過量及び対応する皮膚透過速度を、7.0mlのFranz拡散セルにより実行されたOECDのガイドライン(2004年4月13日に採択)に従って、インビトロの実験によって決定した。美容整形手術からの分層ヒト皮膚(女性腹部、1991年生まれ)を使用した。デルマトームを使用して、すべてのTTSのためのインタクトな表皮の有る500μmの厚さの皮膚を調製した。TTSから1.16cmの面積のダイカットを打ち抜いた。Franz拡散セルのレセプター媒質(0.1%のメチル-β-シクロデキストリン及び抗菌剤として0.1%の食塩水アジドを含むpH5.5のリン酸バッファー溶液)中の32±1℃の温度でのフィンゴリモドの透過量を測定し、対応する累積透過量及び皮膚透過速度を計算した。
【0227】
結果を、以下の表8-1及び8-2、及び図5a及び5b中で示す。
【表11】
【表12】
【0228】
実施例9
コーティング組成物
フィンゴリモド含有コーティング組成物の配合を、以下で要約する。
【表13-1】
【表13-2】
【0229】
コーティング組成物の調製
実施例9-1については、フィンゴリモド塩基を好適な混合容器(ビーカー)中に置き、1-ドデカノールを添加する。溶媒酢酸エチルをスラリーへ添加し、感圧接着剤(酢酸エチル、エタノール、nヘプタン、及びメタノール中のアクリル接着剤、重量で42.8%の固形分含有量を有する、Henkelから購入されたDURO-TAK(商標)387-2516)を、スラリーへ添加した。塊をおよそ3時間撹拌した。
【0230】
実施例9-2については、フィンゴリモド塩基を好適な混合容器(ビーカー)中に置き、1-ドデカノールを添加する。溶媒酢酸エチルをスラリーへ添加し、感圧接着剤(n-ヘプタン中の混合物の形態でポリイソブチレンをベースとし、重量で41.28%の固形分含有量を有し、BASFからのもので、85/15の比のOppanol(商標) B10/N100))を添加した。ポリビニルピロリドン(BASFから購入されたKollidon(商標))を撹拌しながら混合物へ添加し、塊をおよそ4時間撹拌した。
【0231】
実施例9-3については、フィンゴリモド塩基を好適な混合容器(ビーカー)中に置き、1-ドデカノールを添加する。溶媒酢酸エチルをスラリーへ添加し、感圧接着剤(酢酸エチル中のシリコーンアクリルハイブリッドPSA、重量で50%の固形分含有量、Dow Corning HealthcareからのSilAc-PSA 7-6302)を、添加した。ポリビニルピロリドン(BASFから購入されたKollidon(商標))を撹拌しながら混合物へ添加し、塊をおよそ3.5時間撹拌した。
【0232】
実施例9-4については、フィンゴリモド塩基を好適な混合容器(ビーカー)中に置き、乳酸ラウリルを添加する。1,2-プロパンジオールそして溶媒酢酸エチルをスラリーへ添加する。ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト(PCL-PVAc-PEG、Soluplus(商標))を撹拌しながら混合物を添加し、塊をおよそ1時間撹拌した。感圧接着剤(酢酸エチル中のシリコーンアクリルハイブリッドPSA、重量で50%の固形分含有量、Dow Corning HealthcareからのSilAc-PSA 7-6302)を、添加し、塊をおよそ3.5時間撹拌した。
【0233】
コーティング組成物のコーティング
フィンゴリモド塩基含有コーティング組成物を、滑りやすくしたポリエチレンテレフタレート(PET)箔(剥離ライナーとして機能し得る)上に24時間以内にコーティングし、室温及び60℃で各々15分間乾燥した。
【0234】
コーティング厚は、溶媒を除去すると、およそ150g/mのマトリックス層の面積重量をもたらすように選ばれた。次いで乾燥したフィルムを、裏打ち層(ポリエチレンテレフタレート(PET)箔19μm)と積層して、フィンゴリモド含有自己接着性層構造を提供した。
【0235】
TTSの調製
実施例1を参照されたい。
【0236】
Goettingenミニブタを使用するインビボの試験
第1ステージにおいて、フィンゴリモドのフィンゴリモドリン酸塩への代謝を、1日あたり0.5mgのフィンゴリモド(Gilenya(商標)カプセル)の7日間の経口投与後のGoettingenミニブタ(オス、約3~4か月)において調査して、研究モデルの適合性を示した。
【0237】
1匹のGoettingenミニブタを、1日1用量の0.5mgのフィンゴリモドのために使用した。
【0238】
試験を、21℃±3℃の温度の濾過空気が提供される動物飼育室中で行った。動物飼育室中の温度及び湿度を試験の最中に1時間ごとに記録し、記録を保持した。Special Diets Services(Witham Essex及びCM8 3AD、英国)からのSDSミニブタ飼料(SMP(E)SQC)を、1食あたり1匹の動物あたりおよそ125gの量で毎日2回提供した。
【0239】
3mlの血液サンプルを、0時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、168時間で採取した。ミニブタK3EDTA全血液中の分析物の測定について、適格なLC-MS/MS方法により、分析を遂行した。AUC値を全血中濃度から計算した。結果を、表9-2及び9-3、ならびに図6中で示す。
【表14】
【表15】
【0240】
比較の目的のために、0.5mg/日の投与後の定常状態でのヒトにおけるCmaxフィンゴリモドリン酸塩/Cmaxフィンゴリモドの比は、約0.5である。定常状態の曝露は1日1回の投薬の間の1~2か月の間に到達し、第1の用量から定常状態までに血中レベルの推定11倍の蓄積がある。
【0241】
第2ステージにおいて、実施例9-1~9-4に従って調製されたTTSを、Goettingenミニブタ(オス、約6-7か月)を使用して、インビボの試験(単純無作為サンプル法によって無作為化された)において試験した。TTSから10cmの面積のダイカットを打ち抜き、1匹のGoettingenミニブタを、1つのTTS製剤のために使用した。TTSを含有する7つの薬物、及び2つの偽薬TTS(各々10cm)を、1匹のミニブタごとに使用した。ミニブタごとのすべての9つのパッチ(7つの活性物質及び2つの偽薬)のパッチ全着用時間は、168時間であった。
【0242】
試験を、21℃±3℃の温度の濾過空気が提供される動物飼育室中で行った。動物飼育室中の温度及び湿度を試験の最中に1時間ごとに記録し、記録を保持した。Special Diets Services(Witham Essex及びCM8 3AD、英国)からのSDSミニブタ飼料(SMP(E)SQC)を、毎日2回提供した。到着から1日目の第1の給餌まで、飼料の量は1食あたり1匹の動物あたりおよそ125gであり、その後は、動物に1食あたり150gの飼料を与えた。
【0243】
TTSの上記の単回用量適用(7つの活性物質及び2つの偽薬、各々10cm)に続いて、3mlの血液サンプルを、0時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、168時間(パッチ除去)、及び192時間で採取した。ミニブタK3EDTA全血液中の分析物の測定について、適格なLC-MS/MS方法により、分析を遂行した。AUC値を全血中濃度から計算した。結果を、表9-4~9-6、ならびに図7及び8中で示す。
【表16】
【表17】
【表18】
【0244】
TTSの除去後に、皮膚状態を肉眼で決定し、Draizeスコアを以下のスコアスキームに基づいて得た。表皮及び真皮の組織病理学的検査から、最少から軽度/中等度の局所刺激が明らかにされた。フィンゴリモドの残存量を、定量的HPLCによって取り出したTTSで決定し、真皮に送達されたフィンゴリモドの量を、TTS中に含まれたフィンゴリモドの初期量に対する差として計算した。結果を表10中で示す。
【表19】
【0245】
本発明は、特に以下のさらなる条項に関する。
1.フィンゴリモド含有層構造を含む、フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システムであって、
前記フィンゴリモド含有層構造が、
A)裏打ち層、及び、
B)フィンゴリモド含有層
を含み、
前記フィンゴリモド含有層が、
a)治療有効量のフィンゴリモドと、
b)少なくとも1つのポリマーと、
c)ドデカン-1-オールと、
を含み、
ドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比が、1.5:1~5:1の範囲である、
前記システム。
【0246】
2.ドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比が、1.5:1~4:1の範囲である、条項1に記載の経皮治療システム。
【0247】
3.ドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比が、1.5:1~2.5:1の範囲である、条項2に記載の経皮治療システム。
【0248】
4.ドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比が、3:1~4:1の範囲である、条項2に記載の経皮治療システム。
【0249】
5.前記少なくとも1つのポリマーが、シリコーンアクリルハイブリッドポリマー、ポリシロキサンをベースとするポリマー、ポリイソブチレンをベースとするポリマー、及びアクリレートポリマーからなる群から選択される、条項1~4のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0250】
6.前記少なくとも1つのポリマーが、シリコーンアクリルハイブリッドポリマーである、条項1~4のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0251】
7.前記少なくとも1つのポリマーが、ポリイソブチレンまたはポリシロキサンをベースとするポリマーである、条項1~4のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0252】
8.前記少なくとも1つのポリマーが、アクリレートポリマーである、条項1~4のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0253】
9.前記少なくとも1つのポリマーが、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で約40%~約99%、好ましくは重量で約50%~約99%、より好ましくは重量で約60%~約99%の量で、前記フィンゴリモド含有層中に含有される、条項1~8のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0254】
10.前記少なくとも1つのポリマーが、ポリマーベースの感圧接着剤である、条項1~9のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0255】
11.前記シリコーンアクリルハイブリッドポリマーが、シリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤である、条項6に記載の経皮治療システム。
【0256】
12.前記ポリイソブチレンをベースとするポリマーが、ポリイソブチレンをベースとする感圧接着剤である、条項7に記載の経皮治療システム。
【0257】
13.前記ポリシロキサンをベースとするポリマーが、ポリシロキサンをベースとする感圧接着剤である、条項7に記載の経皮治療システム。
【0258】
14.前記アクリレートポリマーが、アクリレートベースの感圧接着剤である、条項8に記載の経皮治療システム。
【0259】
15.前記アクリレートベースの感圧接着剤が、アクリル酸、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t-オクチルアクリルアミド、及び酢酸ビニルのうちの1つまたは複数から選択されるモノマーをベースとし、好ましくは前記アクリレートベースの感圧接着剤が、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、及びメチルアクリレートをベースとする、条項14に記載の経皮治療システム。
【0260】
16.前記フィンゴリモド含有層が、シリコーンアクリルハイブリッドポリマー、ポリシロキサンをベースとするポリマー、ポリイソブチレンをベースとするポリマー、及びアクリレートポリマーからなる群から選択される、さらなるポリマーを含む、条項1~15のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0261】
17.前記フィンゴリモド含有層中に含有されるポリマーの全量が、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で約50%~約99%、好ましくは重量で約60%~約99%、より好ましくは重量で約70%~約99%の範囲である、条項1~16のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0262】
18.前記フィンゴリモド含有層が、フィンゴリモド含有マトリックス層である、条項1~17のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0263】
19.前記フィンゴリモド含有層の面積重量が、約50~約200g/mの範囲である、条項1~18のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0264】
20.前記フィンゴリモド含有層の面積重量が、約60~約180g/mの範囲である、条項19に記載の経皮治療システム。
【0265】
21.前記フィンゴリモド含有層の面積重量が、約80~約160g/mの範囲である、条項20に記載の経皮治療システム。
【0266】
22.前記フィンゴリモド含有層が、皮膚接触層を提示する、条項1~21のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0267】
23.前記フィンゴリモド含有層構造が、追加の皮膚接触層を含む、条項1~21のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0268】
24.前記フィンゴリモド含有層構造が、自己接着性である、条項1~23のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0269】
25.前記ドデカン-1-オールが、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で2%~40%の量で含有される、条項1~24のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0270】
26.前記ドデカン-1-オールが、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で2%~30%の量で含有される、条項25に記載の経皮治療システム。
【0271】
27.前記ドデカン-1-オールが、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で4%~20%の量で含有される、条項26に記載の経皮治療システム。
【0272】
28.前記フィンゴリモドが、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で1%~20%の量で含有される、条項1~27のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0273】
29.前記フィンゴリモドが、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で1%~15%の量で含有される、条項28に記載の経皮治療システム。
【0274】
30.前記フィンゴリモドが、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で2%~10%の量で含有される、条項29に記載の経皮治療システム。
【0275】
31.前記フィンゴリモド含有層構造が、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、0.1mg/cm~2.0mg/cmのフィンゴリモドを含有する、条項1~30のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0276】
32.前記フィンゴリモド含有層構造が、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、0.1mg/cm~1.5mg/cmのフィンゴリモドを含有する、条項31に記載の経皮治療システム。
【0277】
33.前記フィンゴリモド含有層構造が、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、0.2mg/cm~1.2mg/cmのフィンゴリモドを含有する、条項32に記載の経皮治療システム。
【0278】
34.前記フィンゴリモドが、遊離塩基の形態で存在する、条項1~33のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0279】
35.前記フィンゴリモド含有層が、前記少なくとも1つのポリマー、ならびに1.5:1~5:1のドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比で前記ドデカン-1-オール及び前記治療有効量のフィンゴリモドを含む、フィンゴリモド含有コーティング組成物をコーティング及び乾燥することによって、得ることが可能である、条項1~34のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0280】
36.前記フィンゴリモド含有層が、補助ポリマーをさらに含む、条項1~35のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0281】
37.前記補助ポリマーが、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で約0.5%~約20%の量で含有される、条項36に記載の経皮治療システム。
【0282】
38.前記補助ポリマーが、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で約0.5%~約10%の量で含有される、条項37に記載の経皮治療システム。
【0283】
39.前記補助ポリマーが、前記フィンゴリモド含有層に基づいて、重量で約1%~約5%の量で含有される、条項38に記載の経皮治療システム。
【0284】
40.前記補助ポリマーが、アルキルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸エステルコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリド-ン酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールコポリマー、セルロース誘導体、及びそれらの混合物からなる群から、好ましくはセルロース誘導体から選択される、条項36~39のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0285】
41.前記フィンゴリモド含有層が、ポリビニルピロリドンを含まない、条項1~40のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0286】
42.前記フィンゴリモド含有層が、アルキルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸エステルコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択されるポリマーを含まない、条項1~41のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0287】
43.前記フィンゴリモド含有層が、ドデカノールのエステルを含まない、条項1~42のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0288】
44.前記フィンゴリモド含有層が、有機硫黄化合物を含まない、条項1~43のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0289】
45.前記フィンゴリモド含有層が、脂肪酸エステルを含まない、条項1~44のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0290】
46.好ましくは投与の少なくとも72時間、約84時間、約96時間、または約168時間にわたって、0.1~1.0mg/日のフィンゴリモドの平均放出速度を提供する、条項1~45のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0291】
47.デルマトーム採取ヒト皮膚によりFranz拡散セル中で測定される時、投与の最初の24時間以内に1.5μg/cmを超えるフィンゴリモドの累積透過量、及び/または、投与の最初の36時間以内に6.0μg/cmを超えるフィンゴリモドの累積透過量を提供する、条項1~46のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0292】
48.デルマトーム採取ヒト皮膚によりFranz拡散セル中で測定される時、投与16時間後で0.1μg/cm-時間を超えるフィンゴリモドの皮膚透過速度を提供する、条項1~47のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0293】
49.対象集団への単回用量投与後の約168時間の投与にわたって、0.2:1~0.8:1のCmaxフィンゴリモドリン酸塩:Cmaxフィンゴリモドの比を提供する、条項1~48のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0294】
50.免疫障害を治療する方法における使用のための、条項1~49のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0295】
51.多発性硬化症を治療する方法における使用のための、条項1~49のいずれか1項に記載の経皮治療システム。
【0296】
52.免疫障害を治療する方法における使用のためのフィンゴリモド塩基であって、条項1~49のいずれか1項に記載の経皮治療システムにおいて患者の皮膚へ投与される、フィンゴリモド塩基。
【0297】
53.多発性硬化症を治療する方法における使用のためのフィンゴリモド塩基であって、条項1~49のいずれか1項に記載の経皮治療システムにおいて患者の皮膚へ投与される、フィンゴリモド塩基。
【0298】
54.免疫障害の治療のための医薬品の製造のための、条項1~49のいずれか1項に記載の経皮治療システムの使用。
【0299】
55.多発性硬化症の治療のための医薬品の製造のための、条項1~49のいずれか1項に記載の経皮治療システムの使用。
【0300】
56.条項1~49のいずれか1項に記載の経皮治療システムを患者の皮膚へ適用することによって、患者における免疫障害を治療する方法。
【0301】
57.条項1~49の任意の1項に記載の経皮治療システムを患者の皮膚へ適用することによって、多発性硬化症を治療する方法。
【0302】
58.条項1~51のいずれか1項に記載の経皮治療システムの製造方法であって、
1)フィンゴリモド含有コーティング組成物であって、
a)フィンゴリモドと、
b)少なくとも1つのポリマーと、
c)ドデカン-1-オールと、
d)任意選択で溶媒と、
を含む、前記組成物を提供するステップ、
2)前記フィンゴリモド含有コーティング組成物を、所望される面積重量を提供する量で、剥離ライナーの上へコーティングするステップ、
3)前記コーティングされたフィンゴリモド含有コーティング組成物を乾燥して、前記フィンゴリモド含有層を提供するステップ、
4)前記フィンゴリモド含有層を裏打ち層へ積層して、フィンゴリモド含有層構造を提供するステップ、
5)任意選択で、ステップ2及び3に従って、活性剤不含有コーティング組成物または活性剤含有コーティング組成物をコーティング及び乾燥することによって追加の皮膚接触層を提供し、前記フィンゴリモド含有層の前記剥離ライナーを除去し、前記フィンゴリモド含有層の接着性側の上へ皮膚接触層の接着性側を積層して、フィンゴリモド含有層構造を提供するステップ、
6)前記フィンゴリモド含有層構造から個別のシステムを打ち抜くステップ、
7)任意選択で、裏打ち層及び活性剤不含有感圧接着剤層も含む活性剤不含有自己接着性層構造を、個別のシステムへ接着し、それが、前記フィンゴリモド含有層構造の個別のシステムよりも大きいステップ、
を含む、前記方法。
【0303】
59.フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システムにおける、フィンゴリモドの透過のラグタイムの低減のためのドデカン-1-オールの使用。
【0304】
60.フィンゴリモド含有層構造を含む、フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システムであって、
前記フィンゴリモド含有層構造が、
A)裏打ち層、及び、
B)フィンゴリモド含有層
を含み;
前記フィンゴリモド含有層が、
a)治療有効量のフィンゴリモド塩基と、
b)少なくとも1つのシリコーンアクリルハイブリッド感圧接着剤と、
c)ドデカン-1-オールと、
を含み、
ドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比が、1.5:1~5:1の範囲である、
前記システム。
【0305】
61.フィンゴリモド含有層構造を含む、フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システムであって、
前記フィンゴリモド含有層構造が、
A)裏打ち層、及び、
B)フィンゴリモド含有層
を含み;
前記フィンゴリモド含有層が、
a)治療有効量のフィンゴリモド塩基と、
b)少なくとも1つのポリマーベースの感圧接着剤と、
c)ドデカン-1-オールと、
d)少なくとも1つのセルロース誘導体と、
を含み、
ドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比が、1.5:1~5:1の範囲である、
前記システム。
【0306】
62.フィンゴリモド含有層構造を含む、フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システムであって、
前記フィンゴリモド含有層構造が、
A)裏打ち層、及び、
B)フィンゴリモド含有層
を含み;
前記フィンゴリモド含有層が、
a)治療有効量のフィンゴリモド塩基と、
b)少なくとも1つのアクリレートベースの感圧接着剤と、
c)ドデカン-1-オールと、
を含み、
ドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比が、1.5:1~5:1の範囲であり、
前記フィンゴリモド含有層が、アルキルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸エステルコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択されるポリマーを含まず、
前記フィンゴリモド含有層が、有機硫黄化合物を含まない、
前記システム。
【0307】
63.フィンゴリモド含有層構造を含む、フィンゴリモドの経皮投与のための経皮治療システムであって、
前記フィンゴリモド含有層構造が、
A)裏打ち層、及び、
B)フィンゴリモド含有層
を含み;
前記フィンゴリモド含有層が、
a)治療有効量のフィンゴリモド塩基と、
b)ポリイソブチレンまたはポリシロキサンをベースとする少なくとも1つの感圧接着剤と、
c)ドデカン-1-オールと、
を含み、
ドデカン-1-オール:フィンゴリモドの重量比が、1.5:1~5:1の範囲であり、
前記フィンゴリモド含有層が、アルキルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸エステルコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、及びポリビニルピロリドンからなる群から選択されるポリマーを含まず、
前記フィンゴリモド含有層が、有機硫黄化合物を含まない、
前記システム。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
図8
【国際調査報告】