(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】二軸配向MDPEフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20221221BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
B32B27/32 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523881
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(85)【翻訳文提出日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 IB2020059816
(87)【国際公開番号】W WO2021079255
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505382548
【氏名又は名称】ノバ ケミカルズ(インターナショナル)ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オウビー、ノーマン
(72)【発明者】
【氏名】ライトボディー、オーウェン
(72)【発明者】
【氏名】フェレイドゥーン、マリアム
(72)【発明者】
【氏名】ギロン、ブロンウィン
(72)【発明者】
【氏名】ラム、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ゴヤール、シヴェンドラ
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
4F071AA17
4F071AA81
4F071AA82
4F071AA88
4F071AE05
4F071AF08
4F071AF15
4F071AF16
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4F071AF30
4F071AF32
4F071AH04
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F100AK04B
4F100AK62A
4F100AK62C
4F100AL09A
4F100AL09C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100EH20
4F100EJ38
4F100JA06B
4F100JA07B
4F100JA13B
4F100YY00B
(57)【要約】
二軸配向ポリエチレン(BOPE)プロセスは、中程度の密度と非常に広い分子量分布とを有する選択されたポリエチレンを使用する。この選択されたポリエチレンを使用することにより、以前に使用されていたより高い密度及び/又はより狭い分子量分布を有するポリエチレン樹脂と比較して、BOPEプロセスにおける延伸が容易になる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも60重量%の中密度ポリエチレンを含む二軸配向ポリエチレンフィルムであって、前記中密度ポリエチレンが、
1)0.94~0.95g/cm
3の密度;
2)0.2~5g/10分のメルトインデックスI
2(2.16kgの荷重を用いて190℃でASTM D1238によって測定);及び
3)10~50の分子量分布Mw/Mn
を有する、上記フィルム。
【請求項2】
前記中密度ポリエチレンが、550,000~1,500,000のMzを有することをさらに特徴とする、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
機械方向に約3:1~約10:1の程度まで延伸されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
横方向に約3:1~約10:1の程度まで延伸されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載のフィルム。
【請求項5】
少なくとも3つの層を有するベース構造から調製される場合、前記ベース構造の少なくとも1つのコア層が前記中密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項6】
以下の工程を含む、二軸配向ポリエチレンフィルムの調製方法:
A)少なくとも60重量%の中密度ポリエチレンを含むベース構造を提供する工程であり、前記中密度ポリエチレンは、
1)0.94~0.95g/cm
3の密度;
2)0.2~5g/10分のメルトインデックスI
2(2.16kgの荷重を用いて190℃でASTM D1238によって測定);及び
3)10~50の分子量分布Mw/Mn
を有する、工程、
B)前記ベース構造を機械方向に約3:1~約10:1の程度まで延伸する工程、並びに
C)前記ベース構造を横方向に約3:1~約10:1の程度まで延伸する工程。
【請求項7】
前記中密度ポリエチレンが、550,000~1,500,000のMzを有することをさらに特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ベース構造が少なくとも3つの層であり、前記ベース構造の少なくとも1つのコア層が前記中密度ポリエチレンを含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記MDPEが、11,000~15,000のMn、600,000~800,000のMz、10~12のMw/Mnを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記MDPEが、チーグラーナッタ触媒の存在下での溶液重合プロセスで作製される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ベース構造の少なくとも1つのスキン層が、エチレン-オクテンプラストマーを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ベース構造の両方のスキン層が、エチレン-オクテンプラストマーを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
二軸配向ポリエチレン(BOPE)フィルムは、非常に広い分子量分布を有する中密度ポリエチレン(MDPE)から作製される。
【背景技術】
【0002】
フィルムを二方向に延伸することによってポリマーフィルムを配向させることができることは、よく知られている。フィルムは、最初に「機械」方向(MD:machine direction)に、次いで「横」方向(TD:transverse direction)に、順次延伸してもよく、あるいは同時に(両方向に同時に加えられる延伸力を用いて)延伸してもよい。一般的な延伸プロセスの1つは、「テンターフレーム」プロセスとして知られている。得られたフィルムは、一般に「二軸配向(biaxially oriented)」又は「二配向(bi-oriented)」と呼ばれる。テンターフレームプロセスは、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、特にポリプロピレン(PP)から作製されたフィルムを用いて、一般的に使用される。ただし、ポリエチレン(PE)は比較的は延伸するのが難しいため、PEではテンターフレームプロセスはあまり成功していない。テンターフレームプロセスにおいて、高密度ポリエチレン(HDPE)を使用することで、ある程度の技術的成功が達成された(米国特許第6,946,203号(Lockhart他)に記載)。
【0003】
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を使用してBOPEを調製することも提案されている(米国特許第6,469,137号(Joyner他)及び米国特許第10,363,700号(Yun他)を参照されたい)。
【0004】
本発明者らは、異なるタイプのポリエチレン、すなわち中密度ポリエチレン(MDPE:medium density polyethylene)を使用してBOPEフィルムを調製することができることを発見した(当該MDPEが非常に広い分子量分布を有することを条件として)。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態では、本発明は、少なくとも60重量%の中密度ポリエチレンを含む二軸配向ポリエチレンフィルムを提供し、前記中密度ポリエチレンは、
1)0.94~0.95g/cm3の密度;
2)0.2~5g/10分のメルトインデックスI2(2.16kgの荷重を用いて190℃でASTM D1238によって測定);及び
3)10~50の分子量分布Mw/Mn
を有する。
【0006】
別の実施形態では、本発明は、以下の工程を含む、二軸配向ポリエチレンフィルムの調製方法を提供する:
A)少なくとも60重量%の中密度ポリエチレンを含むベース構造を提供する工程であり、前記中密度ポリエチレンは、
1)0.94~0.95g/cm3の密度;
2)0.2~5g/10分のメルトインデックスI2(2.16kgの荷重を用いて190℃でASTM D1238によって測定);及び
3)10~50の分子量分布Mw/Mn
を有する、工程、
B)前記ベース構造を機械方向に約3:1~約10:1の程度まで延伸する工程、並びに
C)前記ベース構造を横方向に約3:1~約10:1の程度まで延伸する工程。
【発明を実施するための形態】
【0007】
テンターフレームプロセスは、二軸配向フィルムを調製するために一般的に使用され、本発明に適している。テンターフレームプロセスは、フィルム製造の当業者によく知られているので、本明細書では簡単な説明のみを行う。このプロセスは、シートを形成するためのスロットダイを備えた押出機から開始する。便宜上、本明細書では、この押出されたシートをベース構造(base structure)と呼ぶ。ベース構造がチルロールで急冷されると、MD延伸又はMD配向(MDO)は、表面速度を徐々に増加させながら回転するいくつかのロールを用いてベース構造を引っ張ることによって実現される。MD延伸に続いて、クリップ(チェーンに取り付けられている)が移動ウェブのエッジをつかみ、オーブンに運ぶ。オーブン内では、ベース構造のエッジが引き離されてシートが広くなり、これによりTD配向(TDO)が提供される。この配向/延伸により、配向比又は延伸比に比例して、フィルムが薄くなる。例えば、MDにおいて5:1の延伸比、TDにおいて8:1の延伸比の1ミルの完成フィルムを調製するには、40ミルのシートを用いてプロセスを開始しなければならない。さらなる詳細は、教科書「Film Processing Advances」(Kanai他、2014年、Hanser Publishers)に記載されている。
【0008】
二軸配向により、フィルムの靭性、バリア性、光学特性、耐熱性、及び剛性が改善する可能性がある。しかし、従来のPEは、(ポリプロピレンやPETと比較して)延伸性に乏しいため、テンターフレームプロセスにはあまり適していないと考えられている。
【0009】
本開示に従って調製されたBOPEフィルムは、多種多様な包装用途に使用するのに適している。一実施形態では、BOPEフィルムは、ラミネート構造で使用することができ、例えば、BOPEフィルムは、より低密度のポリエチレンから作製されたシーラントウェブにラミネートされるときに、印刷ウェブとして使用することができる。このタイプのラミネート構造は、ポリエチレンの層にラミネートされたポリエステル又はポリプロピレンの層を含む従来のラミネート構造と比較して、より容易にリサイクルすることができる。
【0010】
<MDPE>
本開示で使用される中密度ポリエチレン(MDPE)は、0.94~0.95g/cm3(g/cc)の密度を有する(ASTM D972によって測定)。
【0011】
MDPEはまた、10~50(特に10~30)の多分散度指数Mw/Mnを有する。
【0012】
一実施形態では、MDPEは、550,000~1,500,000、特に600,000~1,500,000のMzを有する。
【0013】
一実施形態では、本開示のBOPEフィルムは、上記の全ての特性を有する60~100重量%のMDPEを用いて作製される。一実施形態では、BOPEフィルムは、このMDPEを70~90%含む。一実施形態では、BOPEフィルムは、このMDPEの80~95%含み、BOPEフィルムを調製するために使用される残りのポリマーもポリエチレンである(BOPEフィルムの調製にポリエチレンのみを使用すると、ポリマーの混合物を用いて作製されたフィルムと比較して、フィルムをより簡単にリサイクルすることができるためである)。
【0014】
一実施形態では、MDPEは、気相重合においてクロム触媒を用いて作製される。得られたMDPEは、長鎖分岐(LCB)を含む場合がある。別の実施形態では、MDPEはチーグラーナッタ触媒を用いて作製され、得られたMDPEは、LCBをほとんど含まないか、全く含まない。
【0015】
<他のポリマーとのブレンド>
本開示のBOPEフィルムは、少なくとも60重量%の上記で定義されたMDPEを含むポリマー組成物から調製される。ポリマーのブレンドを使用してBOPEフィルムを調製することは当技術分野で知られており、これも本開示によって企図されている。本開示によるブレンドに使用するのに適したポリマーの例としては、以下が挙げられる:
1)直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)。一実施形態では、LLDPEは、0.1~10(特に0.9~2.3)g/10分のメルトインデックス(I2)及び0.89~0.935g/cm3の密度を有する;
2)高密度ポリエチレン(HDPE)、特にメルトインデックス(I2)が0.1~10(特に0.4~0.9)g/10分で、密度が少なくとも0.95g/cm3であるHDPE;
3)高圧低密度ポリエチレン(HPLD)であって、エチレンのフリーラジカル重合によって調製されるHPLD、特にメルトインデックス(I2)が0.1~10g/10分で、密度が0.92~0.94g/cm3であるHPLD。
【0016】
明確にするために、本明細書で使用されるLLDPEという用語は、「プラストマー」を含むことを意味し、ここで、プラストマーという用語は、0.89~0.91g/ccの比較的低い密度を有するLLDPEファミリーのサブセットである。
【0017】
<多層ベース構造体>
BOPEフィルムを調製する技術において、多層フィルムを、(未延伸の)出発フィルムとして使用することが知られている。これらの出発フィルムは、延伸される前は比較的厚く、フィルムではなく「シート」と呼ばれることが多い。便宜上、そのような未延伸の多層シートを、「ベース構造」と呼ぶことができる。本開示による適切なベース構造は、ベース構造の総重量に基づいて、少なくとも60重量%の上記で定義されたMDPEを含む。一実施形態では、MDPEは、「コア」層(すなわち、多層ベース構造の内側層)を形成する。
【0018】
他の層を調製するために使用できるポリマーの例には、上記のLLDPE、HDPE、及びHPLDが含まれる。
【0019】
一実施形態では、多層ベース構造は、2つのスキン層(すなわち、ベース構造の各々の外側表面上の層)と1つ以上のコア層とを含む少なくとも3つの層を含む。一実施形態では、米国特許出願公開第2016/0031191号(以下「Paulino‘191」と呼ぶ)に開示されているように、一方のスキン層はHDPEから作製することができ、他方のスキン層はシール層である。Paulino‘191に開示されているように、シール層は、LLDPE(特にメタロセン触媒で重合した場合)、「プラストマー」、エラストマー及びそれらのブレンドを含んでもよい。エチレン-オクテンプラストマー(並びに、それらのエラストマーと別のLLDPE、HDPE及び/又はHPLDとのブレンド)を、シール層に使用することもできる。さらに、スキン層にプラストマーを使用すると、BOPEフィルムの光学特性が改善する可能性があるため、両方のスキン層にこれらのプラストマー(又はプラストマーを含むブレンド)を使用することも考えられる。一実施形態では、コア層は、請求項1に規定されたMDPEを含み、両方のスキン層は、エチレン-オクテンプラストマーを含む。別の実施形態では、少なくとも5つの層を含む多層構造は、プラストマーから作製された2つの外側スキン層と、プラストマーとより高密度のポリエチレンとのブレンドから作製された2つの「スキン層に隣接する」層を含んでもよい。
【0020】
さらに、BOPEフィルムのバリア特性を改善するために「バリア樹脂」の層を使用することも知られている。適切なバリア樹脂の例としては、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)及びポリアミドが挙げられる。
【0021】
本開示で使用されるポリマーは、当業者によく知られているように、典型的には、従来の量で抗酸化剤(ヒンダードフェノール、ホスファイト又は両方のブレンドなど)を含む。その他の任意選択の添加剤としては、アンチブロック、スリップ剤及び核形成剤(Paulino‘191に開示されているものなど)が挙げられる。さらに、グリセリン酸亜鉛を、(任意選択の)核形成剤として使用することも考えられる(この核形成剤は、例えば、IRGASTAB(登録商標)287という商標で市販されている)。
【実施例】
【0022】
本発明を、以下の非限定的な例によってさらに説明する。
【0023】
<試験方法>
メルトインデックスは、ASTM D1238に従って決定した(190℃で、2.16kgの荷重を用いて、「条件I2」で、g/10分で報告する)。
【0024】
密度は、ASTM D972に従って決定し、g/ccとして報告する。
【0025】
Mn、Mw、及びMz(g/モル)は、ユニバーサルキャリブレーション(例えば、ASTM-D6474-99)を用いた示差屈折率(DRI)検出を備えた高温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。GPCデータは、140℃で移動相として1,2,4-トリクロロベンゼンを用い、「Waters 150c」という商品名で販売されている機器を使用して取得した。この溶媒にポリマーを溶解することにより試料を調製し、濾過せずに試験を行った。分子量は、数平均分子量(「Mn」)の相対標準偏差が2.9%、重量平均分子量(「Mw」)の相対標準偏差が5.0%のポリエチレン当量として表される。分子量分布(MWD)は、重量平均分子量を数平均分子量で割ったもので、Mw/Mnである。「多分散度指数」という用語も、Mw/Mnを指す。z平均分子量分布は、Mz/Mnである。ポリマー試料溶液(1~2mg/mL)は、1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)中でポリマーを加熱し、オーブン内において150℃で4時間、ホイール上で回転させることによって調製した。酸化劣化に対してポリマーを安定化させるために、酸化防止剤の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を混合物に添加した。BHT濃度は250ppmであった。試料溶液は、4つのShodexカラム(HT803、HT804、HT805、及びHT806)を備えた高温クロマトグラフィーユニットPL220を用いて140℃でクロマトグラフィー処理を行い、移動相としてTCBを1.0mL/分の流速で使用し、濃度検出器として示唆屈折率(DRI)を用いた。カラムを酸化劣化から保護するために、BHTを250ppmの濃度で移動相に添加した。試料の注入量は200mLであった。生データをCIRRUS(登録商標)GPCソフトウェアで処理した。カラムは、狭い分布のポリスチレン標準で較正した。ポリスチレンの分子量は、ASTM標準試験方法D6474に記載されているように、Mark-Houwinkの式を用いてポリエチレンの分子量に変換した。
【0026】
BOPEフィルムを特徴付けるために使用することができる他の試験方法を、表1に要約する。
【0027】
【0028】
<パートB:BOPEフィルムの調製>
二軸配向ポリエチレン(BOPE)フィルムを、以下に説明する条件を用いて、テンターフレームプロセスで調製した。
【0029】
<A. 未延伸フィルム(又は「ベース構造」の調製)>
多層(3層)シートは、3つの単軸押出機から12インチのキャスティングダイを通して共押出される。溶融ストリームは、押出前にマルチキャビティダイ内で結合される。ダイから押し出された多層シートは、エアナイフを備えた2ロール式の水平設計で冷却され急冷される。便宜上、この未延伸の多層シートは、本明細書では「ベース構造」と呼ばれることがある。3つの層のそれぞれで使用されるポリマーの重量は、A/B/Cの形式で示される。例えば、ポリマー全体の5重量%をそれぞれの層が含む2つの外側層(又はスキン層)と、90%を含むコア層とを有するベース構造は、5/90/5と記述される。
【0030】
<B. Biaxプロセス>
この例では、順次延伸プロセスを使用した。まず、機械方向の延伸/配向を行った。次いで、「配向」シートを横方向に延伸した。一部の(比較)例では、MD方向とTD方向の両方にフィルムを延伸することができなかった。
【0031】
機械方向配向(MDO:Machine direction orientation)は、最大275°Fの温度及び最大7.5:1の延伸比で、1段又は2段の圧縮ロール延伸(CRD:Compression Roll Drawing)を使用して生成することができる。
【0032】
横方向配向(TDO:transverse direction orientation)は、複数の領域(予熱、延伸領域、アニーリング、及び1つの冷却領域)で生成された。延伸領域の温度は最大280°F、延伸比は最大12:1であった。
【0033】
MDOは、ベース構造を予備加熱し、異なる速度で回転している2つのロールの間でシートを延伸することによって実現される。ロールの速度の違いが、延伸比を決定する。延伸は、1組の延伸ロールで行うことも、一連の延伸ロールの上で行うこともできる。延伸は、一般に、フィルムの結晶融解温度(Tm)より低い温度で行われる。
【0034】
MDOフィルムは、レールに取り付けられたチェーン上のクリップを用いてテンターフレームオーブン内に供給され、予備加熱される。レールが互いに発散するにつれてフィルムが延伸され、フィルムのエッジが引っ張られてウェブが延伸される。フィルムが引き伸ばされ、フィルムの端が引っ張られてウェブが引き伸ばされる。フィルムの幅はレール間の距離によって設定され、所望の延伸比を達成するように調整することができる。TDOは、MDOと同等の温度か、わずかに高い温度で行われる。
【0035】
【0036】
[例1]
比較BOPEフィルムを、表2に示すHDPEポリマーを用いて作製した。
【0037】
【0038】
HDPEから作製した延伸フィルムの定性的特性を、表3に示す。これらのBOPEフィルムは比較用である。テンターフレームプロセスにおいてBOPEを調製するためにHDPEを使用することは、米国特許第6,946,203号に開示されている。この特許は、SCLAIR 19CがBOPEの調製に適していることを明確に示している(ただし、この特許は、密度を下げるためにBOPEフィルムのコア層に微粒子を充填する必要があることも教示している)。
【0039】
【0040】
前述のように、ベース構造を、A/B/Cフィルム構造を提供するために3つの押出機を使用して調製した(外側層ないし「スキン層」がAとC、コア層がBである)。表3の「MD延伸」と「TD延伸」の値は、それぞれ機械方向(縦方向)と横方向の延伸比を示し、NAは、ベース構造を適切に延伸することができなかったことを示す。
【0041】
最終列は、合格又は不合格のランキングを示す(合格は、表3に示されている程度までフィルムを延伸/配向させることができたことを示す)。「ランキング」は、フィルムの外観の定性的な評価であり、数値が大きいほど品質が良好であることを示す。
【0042】
[(比較)例2-MDPE]
この例で使用した中密度ポリエチレン(MDPE)の特性を、表4に示す。注目すべきことは、MDPEは、0.945g/ccの密度(これは、本開示のフィルムにおける使用に望ましい)を有し、4.52の多分散度指数(Mw/Mn)(これは、本開示のフィルムにおける使用には十分に広くない)を有することである。
【0043】
上記のパートBに記載の手順を用いて、このMDPEを使用してベース構造を調製した(このMDPEを、A、B、及びC層のそれぞれで使用して、A/B/C構造を生成するため)。BOPEフィルムを(上記の手順を用いて)調製する試みは成功せず、「不合格」の評価が与えられた。
【0044】
【0045】
[(発明)例3-MDPE]
この例で使用したMDPEの特性を、表5に示す。
【0046】
この例で使用したMDPEは、クロム触媒を用いた気相プロセスにおいて、エチレンとヘキセンとの共重合によって作製した。
【0047】
上記のパートBに記載の手順を用いて、このMDPEを使用してベース構造を調製した(このMDPEを、A、B、及びC層のそれぞれで使用して、A/B/C構造を生成するため)。
【0048】
上記のパートBに記載の手順を用いて、このベース構造から二軸配向ポリエチレン(BOPE)フィルムを調製した。
【0049】
MD延伸比4.75及びTD延伸比8で作製されたBOPEフィルムには、定性的な外観評価10が割り当てられた。すなわち、このBOPEフィルは、HDPEを用いて作製された比較BOPEフィルム(上記の例1)よりも明らかに優れていた。
【0050】
【0051】
表5の本発明のMDPEから作製したBOPEフィルムの特性を、表6に示す。
【0052】
【0053】
[(発明)例4-MDPE]
この例で使用したMDPEは、チーグラーナッタ触媒を用いた溶液重合プロセスにおいて、エチレンとブテンとの共重合によって調製した。この特定のMDPEの特性を、表7に示す。より一般的な実施形態では、11,000~15,000のMn、600,000~800,000のMz、及び10~12のMw/Mnを有するこの方法で作製されたMDPEが、本開示における使用に適している。
【0054】
【0055】
上記のパートBに記載の手順を用いて、このMDPEを使用してベース構造を調製した(このMDPEを、A、B、及びC層のそれぞれで使用して、A/B/C構造を生成するため)。
【0056】
上記のパートBに記載の手順を用いて、このベース構造から二軸配向ポリエチレン(BOPE)フィルムを調製した。
【0057】
MD延伸比6.5及びTD延伸比9で作製されたBOPEフィルムには、定性的な外観評価8が割り当てられた。表7の本発明のMDPEから作製したBOPEフィルムの特性を、表8に示す。
【0058】
【産業上の利用可能性】
【0059】
二軸配向ポリエチレン(BOPE)フィルムは、非常に広い分子量分布を有する中密度ポリエチレンから作製される。これらのBOPEフィルムは、多種多様な消費財を包装するために使用することができるパッケージの調製に適している。
【国際調査報告】