(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20221221BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H04R17/00 330Y
H04R3/00 330
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523885
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(85)【翻訳文提出日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 GB2020052712
(87)【国際公開番号】W WO2021079160
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519463455
【氏名又は名称】シンテフ・テーテーオー・アクシェセルスカプ
【氏名又は名称原語表記】SINTEF TTO AS
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】タイホルト,フローデ
(72)【発明者】
【氏名】フォーグル,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ダール,トビアス
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA26
5D019BB07
5D019BB09
5D019BB17
(57)【要約】
単一の共通の半導体ダイ上に専用の超音波送信機および少なくとも1つの別個の専用の超音波受信機を備える、圧電微細加工超音波トランスデューサ(PMUT)が提供される。複数のPMUTが、碁盤目状のアレイで構成され得る。また、単一の共通の半導体ダイ上の少なくとも1つのPMUTと、第1の超音波信号を送信するように構成された専用の超音波送信機と、第2の超音波信号を受信するように構成された少なくとも1つの別個の専用の超音波受信機と、を備える、システムも開示され、提供される。システムは、信号処理サブシステムをさらに備え、信号処理サブシステムは、アナログドメインと、デジタルドメインと、デジタル-アナログ変換器と、アナログ-デジタル変換器と、をさらに備える。信号処理サブシステムは、該デジタルドメインの推定直接経路信号を生成することと、該デジタル-アナログ変換器を使用して、該推定直接経路信号をアナログ推定直接経路信号に変換することと、該第2の信号から該アナログ推定直接経路信号を減算して、修正された受信信号を生成することと、該アナログ-デジタル変換器を使用して、該修正された受信信号をデジタル修正された受信信号に変換することと、を行うように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の共通の半導体ダイ上に専用の超音波送信機および少なくとも1つの別個の専用の超音波受信機を備える、圧電微細加工超音波トランスデューサ(PMUT)。
【請求項2】
前記ダイが、正方形または長方形である、請求項1に記載のPMUT。
【請求項3】
前記超音波送信機が、前記ダイの実質的に中央に位置し、前記超音波受信機が、前記ダイの実質的に隅部に、またはそれぞれの隅部に位置する、請求項1または2に記載のPMUT。
【請求項4】
前記ダイの前記隅部の各々に1つの超音波受信機を備える、請求項3に記載のPMUT。
【請求項5】
前記超音波送信機が、前記超音波受信機の幅の少なくとも2倍の幅を有する、請求項1~4のいずれかに記載のPMUT。
【請求項6】
前記超音波送信機が、主波長を有する信号を送信するように構成され、前記半導体ダイが、前記主波長の半分に実質的に等しい幅を有する、請求項1~5のいずれかに記載のPMUT。
【請求項7】
前記超音波送信機と前記超音波受信機との間に構成された1つ以上の音響経路バリアを備える、請求項1~6のいずれかに記載のPMUT。
【請求項8】
碁盤目状のアレイで構成された先行請求項のいずれかに記載の複数のPMUTを備える、構成。
【請求項9】
前記アレイが、長方形アレイである、請求項8に記載の構成。
【請求項10】
請求項1~7のいずれかに記載の少なくとも1つのPMUTと、前記超音波送信機を駆動するように構成された送信機回路と、前記超音波受信機からの信号を検出するように構成された受信機回路と、を備える、超音波信号を送信および受信するためのシステム。
【請求項11】
受信信号から直接経路信号を減算して、修正された受信信号を生成するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
デジタルに変換する前に、アナログ受信信号から前記直接経路信号を減算して、修正された受信信号を生成するように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記専用の超音波送信機から第1の超音波信号を送信するように構成され、かつ前記専用の超音波受信機から第2の超音波信号を受信するように構成されており、前記システムが、信号処理サブシステムをさらに備え、前記信号処理サブシステムが、
アナログドメインと、
デジタルドメインと、
デジタル-アナログ変換器と
アナログ-デジタル変換器と、を備え、
前記信号処理サブシステムが、前記デジタルドメインの推定直接経路信号を生成することと、前記デジタル-アナログ変換器を使用して、前記推定直接経路信号をアナログ推定直接経路信号に変換することと、前記第2の信号から前記アナログ推定直接経路信号を減算して、修正された受信信号を生成することと、前記アナログ-デジタル変換器を使用して、前記修正された受信信号をデジタル修正された受信信号に変換することと、を行うように構成される、請求項10~12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
少なくとも1つの圧電微細加工超音波トランスデューサ(PMUT)を備えるシステムであって、前記PMUTが、単一の共通の半導体ダイ上に、第1の超音波信号を送信するように構成された専用の超音波受信機、および第2の超音波信号を受信するように構成された少なくとも1つの別個の専用の超音波送信機を備え、前記システムが、信号処理サブシステムをさらに備え、前記信号処理サブシステムが、
アナログドメインと、
デジタルドメインと、
デジタル-アナログ変換器と
アナログ-デジタル変換器と、を備え、
前記信号処理サブシステムが、前記デジタルドメインの推定直接経路信号を生成することと、前記デジタル-アナログ変換器を使用して、前記推定直接経路信号をアナログ推定直接経路信号に変換することと、前記第2の信号から前記アナログ推定直接経路信号を減算して、修正された受信信号を生成することと、前記アナログ-デジタル変換器を使用して、前記修正された受信信号をデジタル修正された受信信号に変換することと、を行うように構成される、システム。
【請求項15】
前記送信機から前記受信機への前記直接経路信号を記録して、直接経路信号のデータベースを作成するように構成されている、請求項13または14に記載のシステム。
【請求項16】
前記データベースから前記推定直接経路信号を選択するように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記デジタル修正された受信信号の品質パラメータを監視することと、前記品質パラメータに基づいて、前記推定直接経路信号を使用すること、前記推定直接経路信号を修正すること、前記データベースから新しい推定直接経路信号を選択すること、または前記超音波送信機から前記超音波受信機への1つ以上の新しい直接経路信号を記録すること、のうちの1つと、を実行するように構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
請求項10~17のいずれかに記載の、超音波信号を送信および受信するためのシステムを動作させる方法であって、前記方法が、動作期間の少なくとも一部にわたって、同時に、前記超音波送信機から信号を送信することと、前記超音波受信機を使用して信号を受信することと、を含む、方法。
【請求項19】
請求項10~17のいずれかに記載の、超音波信号を送信および受信するためのシステムを動作させる方法であって、前記方法が、前記該超音波送信機から、前記半導体ダイの実質的に2倍の幅である主波長を有する信号を送信することを含む、方法。
【請求項20】
請求項10~17のいずれかに記載の、超音波信号を送信および受信するためのシステムを動作させる方法であって、前記方法が、前記超音波送信機から信号を周期的に送信することを含み、各送信期間が、0.1ミリ秒超である、方法。
【請求項21】
各々が単一の共通の半導体ダイ上に専用の超音波送信機および少なくとも1つの別個の専用の超音波受信機を備える、圧電微細加工超音波トランスデューサ(PMUT)の非平面状アレイを備える、超音波信号を送信および受信するためのシステムを動作させる方法であって、前記方法が、前記非平面状アレイ内の前記PMUTの第1のものの送信機から1つ以上の信号を送信することと、前記非平面状アレイの前記PMUTの第2のものの少なくとも1つの受信機を使用して、前記信号を受信することと、前記受信信号を使用して、前記第1および第2のPMUTの相互の相対位置を判定することと、を含む、方法。
【請求項22】
前記第1および第2のPMUT上の1つ以上の受信機によって受信した信号の後続の信号処理において、前記相互の相対位置を使用することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
各々が単一の共通の半導体ダイ上に専用の超音波送信機および少なくとも1つの別個の専用の超音波受信機を備える、圧電微細加工超音波トランスデューサ(PMUT)の非平面状アレイを備える、超音波信号を送信および受信するためのシステムであって、請求項21または22に記載の方法を実行するように構成される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサに関し、すなわち、人間に聞こえる周波数よりも高い周波数を有する音波を生成して受信するためのデバイスに関する。超音波トランスデューサは、超音波信号の送信と反射エコー信号の受信との間の時間を測定することによって物体までの距離を推定することができる単純な測距用途から、複雑な医療用撮像用途まで、数多くの用途で使用することができる。
【背景技術】
【0002】
数多くの用途では、小型のデバイスにトランスデューサを合わせる、または大型のアレイの使用を可能にする、といった理由で、トランスデューサをできる限り小さくすることが重要である。この目的のために開発されてきた1つの技術は、圧電微細加工超音波トランスデューサ(PMUT)であり、典型的には、各PMUT要素は、適切な回路に結合されたときに送信機および受信機の両方として作用する。
【発明の概要】
【0003】
PMUTは、小型の超音波トランスデューサを生成するという目的を達成するが、本出願人は、それらと関連付けられた欠点があると認識するに至った。
【0004】
第1の態様から見ると、本発明は、単一の共通の半導体ダイ上に専用の超音波送信機および少なくとも1つの別個の専用の超音波受信機を備える、圧電微細加工超音波トランスデューサ(PMUT)を提供する。
【0005】
本発明は、本明細書で説明される少なくとも1つのPMUTと、該超音波送信機を駆動するように構成された送信機回路と、該超音波受信機からの信号を検出するように構成された受信機回路と、を備える、超音波信号を送信および受信するためのシステムにまで及ぶ。
【0006】
したがって、当業者には、本発明によれば、単一のダイが別個の専用の送信機および受信機を有することが分かるであろう。これは、出願人によって識別された従来技術の方法に関する欠点のうちの1つに対処するが、同じ要素が送信機および受信機の両方として作用する場合、典型的には非常に短く、急峻で、かつ高電力であるバーストモードで信号を送信することが必要である。
【0007】
短いバーストは、送信機および受信機の両方として作用する要素を送信から受信へ切り替えることができ、近傍の物体からの反射信号を捕捉するために必要とされる。バーストは、十分なエネルギーが送信されて十分な解像度を提供することを確実にするために、比較的高い電力でなければならない。これは、送信機として作用している間に切り替えるために、関連する電子部品が必要とされること、およびバースト送信の高い電力出力に対処することが必要であるためこれらの電子部品が複雑になることを意味する。
【0008】
対照的に、本発明によれば、単一の半導体ダイ上に1つの専用の送信機および複数の専用の受信機を有することで、信号の同時の送信および受信を可能にし、したがって、いかなる切り替え電子部品も必要としない。これは、システム電子部品の複雑さを低減させ得る。さらに、バースト送信に必要とされるパワーエレクトロニクスの作成に対する必要性が存在しないので、送信機自体および駆動回路に対する需要を低減させる、より長く、より低い電力送信によって、所与の送信エネルギーを達成することができる。また、これは、受信機での「ブランキング期間」を、すなわち、そのときに送信機として作用するため受信機が「シャットダウンされる」時間窓を、しばしば回避することができることも意味する。これは次に、従来の切り替えシステムによって、センサ/送信機設定の非常に近くにある物体までの距離を測定することが困難なことを意味する。より長く、より低い電力送信が使用されるとき、送信が進行中である間、受信機は、「聞く」ことができ、送信機と受信機との間のエコーおよび直接経路音の重ね合わせをピックアップする。その結果、これは、近傍の物体の検出および撮像を可能にすることができる。
【0009】
例えば、100kHzのシステムには、例えば、毎秒送信されるチャープなどの100個の信号が存在し得る。チャープの各々は、全期間に、すなわち最長1/100秒または10ミリ秒にわたり得る。しかしながら、これはより短くもなり得るが、任意の有意なコード、すなわち、単なるスパイクまたはバーストを作成するために、少なくともこの期間の1/100または0.1ミリ秒を満たさなければならないことが予期される。例えば、200kHzのサンプリング周波数を使用すると、これは、200,000×0.0001秒または20サンプルになる。20サンプルよりも短いコードは、チャープなどの有用な実際の符号化信号よりもバーストに類似することになる。コードはまた、および好ましくは、あまり高速なトラッキングを必要としないのであれば、20サンプルよりも長く、すなわち50サンプルまたは100サンプルになり得るか、またはさらに長くなり得る。主に緩やかに移動する物体に対応するモーショントラッキングシステムの場合、30Hzのフレームレートで十分であり得、これは、300ミリ秒が良好なチャープ長さであることを意味する。
【0010】
一組の実施形態では、直接経路信号が受信信号から減算されて、修正された受信信号を生成する。直接経路信号は、関心対象の物体から反射されることなく、超音波送信機から超音波受信機へと直接進む信号である。直接経路信号は、空中直接音響経路信号、および/または信号が半導体ダイを通して送信機から受信機へと直接送信される信号を含むことができる。直接経路信号の減算は、例えば、好適なデジタル信号プロセッサを使用して、デジタル受信信号がアナログ-デジタル変換を受けた時点で、デジタル受信信号に対して実行することができる。
【0011】
しかしながら、出願人は、この手法に伴う欠点を理解している。典型的には、直接経路信号は、関心対象の物体からの所望の受信反射信号よりもはるかに強い。したがって、超音波受信機からの受信信号が、アナログ-デジタル(A/D)変換器によってアナログ-デジタル変換を受けるとき、A/D変換器は、所望の受信信号、すなわち関心対象の物体からの反射、ならびにはるかに強い直接経路信号の両方を変換するために、高いダイナミックレンジを必要とする。高いダイナミックレンジのA/D変換器、すなわち飽和を回避するために十分なビット分解能を有するものは、より複雑であり、したがってより高コストで、より多くの電力を使用し、それによって望ましくないものにする。
【0012】
したがって、一組の実施形態では、デジタルに変換する前に直接経路信号がアナログ受信信号から減算されて、修正された受信信号を生成する。次いで、これは、デジタル修正された受信信号に変換され得る。修正された受信信号は、直接経路信号を含まないので、したがって、A/D変換器は、そのような高いダイナミックレンジを必要としなくなり得、したがって比較的単純で安価であり得る。
【0013】
一組のそのような実施形態では、専用の超音波送信機は、第1の超音波信号を送信するように構成され、専用の超音波受信機は、第2の超音波信号を受信するように構成され、システムは、信号処理サブシステムをさらに備え、信号処理サブシステムは、
アナログドメインと、
デジタルドメインと、
デジタル-アナログ変換器と
アナログ-デジタル変換器と、を備え、
信号処理サブシステムは、該デジタルドメイン内の推定直接経路信号を生成することと、該デジタル-アナログ変換器を使用して、該推定直接経路信号をアナログ推定直接経路信号に変換することと、該第2の信号から該アナログ推定直接経路信号を減算して、修正された受信信号を生成することと、該アナログ-デジタル変換器を使用して、該修正された受信信号をデジタル修正された受信信号に変換することと、を行うように構成される。
【0014】
そのような構成は、それ自体が新規かつ発明的である。したがって、さらなる態様から見ると、本発明は、少なくとも1つの圧電微細加工超音波トランスデューサ(PMUT)を備えるシステムを提供し、PMUTは、単一の共通の半導体ダイ上に、第1の超音波信号を送信するように構成された専用の超音波送信機、および第2の超音波信号を受信するように構成された少なくとも1つの別個の専用の超音波受信機を備え、本システムは、信号処理サブシステムをさらに備え、信号処理サブシステムは、
アナログドメインと、
デジタルドメインと、
デジタル-アナログ変換器と
アナログ-デジタル変換器と、を備え、
信号処理サブシステムは、該デジタルドメイン内の推定直接経路信号を生成することと、該デジタル-アナログ変換器を使用して、該推定直接経路信号をアナログ推定直接経路信号に変換することと、該第2の信号から該アナログ推定直接経路信号を減算して、修正された受信信号を生成することと、該アナログ-デジタル変換器を使用して、該修正された受信信号をデジタル修正された受信信号に変換することと、を行うように構成される。
【0015】
したがって、上述の実施形態および本発明の態様によれば、直接経路信号の推定は、デジタルドメイン内で計算することができるが、上で説明したようにA/D変換器に必要とされるダイナミックレンジを制限するために、アナログドメイン内で減算することができることが分かるであろう。
【0016】
一組の実施形態では、送信機から受信機への直接経路信号が記録されて、例えば、デジタルドメイン内に直接経路信号のデータベースを作成する。これは、例えば、環境からの反射を除外するために、受信信号を時間ゲートすることによって行うことができる。直接経路信号は、直接経路信号の測定値のより信頼性の高いデータベースを作成するために、ある期間にわたって記録され得る。追加的または代替的に、直接経路信号は、異なる温度などの異なる環境条件下で記録され得る。一組の実施形態では、推定直接経路信号は、データベースから選択される。推定信号は、ランダム推測であり得るか、または直接経路信号データベースの作成において使用される温度センサなどの環境センサからの入力に応じて選択され得る。
【0017】
一組の実施形態では、デジタル修正された受信信号の品質パラメータが監視される。これは、受信信号から減算するための推定直接経路信号が良好な選択であったかどうかを示し得る。品質パラメータの一例は、最小エネルギーであり、これは、最も強い構成要素の直接経路が受信信号から除去された範囲を示すことができる。品質を監視するために使用され得る別のパラメータは、スパース性であり、信号の最大スパース性は、「明瞭なエコー」が受信されていることを示す。
【0018】
一組の実施形態では、推定直接経路信号は、品質パラメータが第1の閾値よりも高い場合に、修正される。例えば、フィルタは、直接経路推定にコンボリューションを適用し得る。
【0019】
一組の実施形態では、超音波送信機から超音波受信機への新しい直接経路信号が記録されて、品質パラメータが第2の閾値よりも低い場合に、直接経路信号の新しいデータベースを作成する。非常に低い品質は、送信機の挙動または環境における大きな変化を示し得る。一組の実施形態では、品質パラメータが第2の閾値よりも高いが、第1の閾値よりも低い場合に、データベースから新しい推定直接経路信号が選択される。
【0020】
したがって、一組の実施形態では、システムは、デジタル修正された受信信号の品質パラメータを監視し、品質パラメータに基づいて、推定直接経路信号を使用すること、推定直接経路信号を修正すること、データベースから新しい推定直接経路信号を選択すること、または超音波送信機から超音波受信機への1つ以上の新しい直接経路信号を記録すること、のうちの1つを実行する。
【0021】
したがって、受信信号は、品質パラメータが第1の閾値よりも高く、かつ受信信号から減算するための推定直接経路信号が良好な選択であった場合に、近接、存在、またはジェスチャ検知などのさらなる分析に使用され得る。
【0022】
本発明の任意の態様の一組の実施形態では、PMUTは、超音波送信機と超音波受信機との間に構成された1つ以上の音響経路バリアを備える。これらの音響経路バリアは、送信機および受信機要素間の信号の空気伝播を弱めることによって、空気中の直接音響経路信号の強度を物理的に低減させるように作用し得る。
【0023】
別の態様から見ると、本発明は、本明細書で説明される少なくとも1つのPMUTを備える、超音波信号を送信および受信するためのシステムを動作させる方法を提供し、方法は、動作期間の少なくとも一部にわたって、同時に、該超音波送信機から信号を送信することと、該超音波受信機を使用して信号を受信することと、を含む。
【0024】
さらなる態様から見ると、本発明は、本明細書で説明される少なくとも1つのPMUTを備える、超音波信号を送信および受信するためのシステムを動作させる方法を提供し、方法は、該超音波送信機から信号を周期的に送信することを含み、各送信期間は、0.1ミリ秒超、例えば0.2ミリ秒超である。
【0025】
一組の実施形態では、符号化送信が使用される。これは、受信機が、信号の一部分が送信された時間を識別し、したがって、反射信号が物体から進んだ距離を計算することを可能にすることができる。符号化送信の1つの単純な例は、チャープ-例えば、連続的に増加/減少する周波数送信-である。よって、特定周波数での受信信号は、信号が最初に送信された時間に関する情報を提供し、信号が進行した距離を計算することができる。
【0026】
システムインパルス応答は、送信信号を受信信号と相関させることによって、受信チャープ信号から計算され得、またはデコンボリューションなどの、インパルス応答推定のより高度な技術を使用することができる。
【0027】
具体的には、送信信号がs(t)である場合、受信信号は、次式のようになる。
y(t)=h(t)×s(t)+n(t)
式中、h(t)は、チャネルインパルス応答であり、n(t)は、ノイズ項である。次いで、送信信号がほぼ白色である、すなわち、
であると仮定し、式中、∂(t)は、近似ディラックパルスであり、次式のようにインパルス応答の推定を得ることができる。
式中、n
2(t)=s(-t)*n(t)、である。
【0028】
同様にまたは代替的に、デコンボリューションによって、すなわち、信号s(t)のサンプルからマトリックスSを構築してマトリックス-ベクトル式セットを得ることによって、インパルス応答を計算することができる。
y=Sh+n
式中、ベクトルyは、時系列y(t)のスタックされたサンプルおよびインパルス応答h(t)のh個のスタックされたサンプルを含み、任意の好適なノルムまたは制約の下で、この式セットの解としてhを計算する。インパルス応答は、既知のDSP技術を使用して一義化することができる情報というよりは、直接経路信号およびエコーの両方に関する情報を含む。
【0029】
送信機および受信機を製造するために典型的に必要とされる異なるプロセスから見ると、当業者には直観に反するが、出願人は、より多くの要素がより小さい領域内にあることを可能にし、したがって、複数のダイの任意のアレイのサイズを低減させることができるという点で、単一の共通のダイまたはチップ上にこれらの異なる専用の要素を有するという利点を認識している。これは、数多くの分野で有益であるが、特に、例えばより小さい領域に高い解像度が必要とされる、スマートウェアラブルの分野で有益である。
【0030】
ダイは任意の好都合な形状とすることができるが、一組の実施形態では、ダイは正方形または長方形である。送信機は、任意の形状であり得るが、好ましくは円形である。同様に、このまたは各受信機は、好ましくは円形である。
【0031】
ダイ上の送信機および受信機の配置は、任意の好都合な方法で実装することができる。一組の実施形態では、超音波送信機がダイの実質的に中央に位置し、超音波受信機がダイの実質的に隅部に、またはそれぞれの隅部に位置する。ダイが正方形または長方形である一実施例では、1つの超音波受信機が、該ダイの隅部の各々に提供され、すなわち、4つの受信機が存在する。
【0032】
一組の実施形態では、超音波送信機またはシステムは、主波長(λ)を有する信号を送信するように構成され、該半導体ダイは、該主波長(λ/2)の半分に実質的に等しい幅を有する。同様に、本発明は、本明細書で説明される少なくとも1つのPMUTを備える、超音波信号を送信および受信するためのシステムを動作させる方法にまで及び、方法は、該超音波送信機から、該半導体ダイの実質的に2倍の幅である主波長を有する信号を送信することを含む。
【0033】
幅λ/2のダイを有することは、その送信機がそのように実質的にλ/2だけ離間されるので、本明細書に記載された種類の複数のダイが碁盤目状のアレイで構成されるときに有益であり得る。当該技術またはアレイ信号処理技術の当業者によって理解されるように、これは、ビーム形成などを実行するために最適である。上記のように、受信機がダイの隅部にある場合、それぞれのダイ上の対応する受信機もまた、実質的にλ/2だけ離間される。受信機が各隅部にある場合、受信機は、タイル状のダイの各頂点にまたがる2×2のミニアレイを形成し、これらのミニアレイの各々は、他のそのようなミニアレイからλ/2の間隔を有する。この構成は、それが空間Nyqvistサンプリング基準を破らず、いわゆる格子ローブを生じさせないので、高い解像度およびビーム操縦能力を与えることを理論的に示すことができる。ミニアレイは、「1つの共通センサ」として、すなわち、ミニアレイに由来する信号を合計または平均することによって使用することができ、または代替的に、ミニアレイの入力は、各要素を個々に処理するアレイ処理方法への入力として個々に使用することができる。これは、特定の方向から来る音をより良好に集束させるまたは相殺する能力などの、特定の利益を有する。一例として、アレイのブロードサイドに入って来る信号が存在する場合、信号s1(t)、s2(t)、s3(t)、s4(t)は、例えばs1(t)-s2(t)+s3(t)-s4(t)または同様にs1(t)+s2(t)-s3(t)-s4(t)になるように組み合わせることができ、これらはどちらも、往路方向において0の応答を有するが、他の方向からのものにはない。
【0034】
本発明は、碁盤目状の、好ましくは長方形のアレイで構成されている、本明細書で説明される複数のPMUTを備える構成にまで及ぶ。
【0035】
送信機および受信機のサイズは、特定の用途に合うように選択することができる。一組の実施形態では、送信機は、受信機よりも大きい。これは、必要な送信エネルギーを効率的に生成する際に有益であり得る。一組の実施形態では、超音波送信機は、超音波受信機の幅の少なくとも2倍の幅を有する。この幅は、例えば、受信機の少なくとも3倍、4倍、5倍、またはそれ以上の幅になり得る。出願人は、特に有益な構成が、正方形のダイ上の中央に円形の送信機内のより大きい送信機およびその縁部の円形の受信機を有することであると認識するに至った。そのような幾何学形状は、送信機のサイズを最大にすることを可能にしながら、ダイの全体的なサイズをコンパクトにすることを可能にする。
【0036】
一組の実施形態では、複数のダイが可撓性基板上に提供される。各ダイが、送信機および受信機両方の要素を備えているので、ダイは、互いの相対位置を計算するように構成することができる。したがって、ダイは、可撓性PCBに装着することができ、次にこれをいくつかの異なる表面のうちのいずれかに取り付けることができる。これは、マイクロボット、ドローンなどの、可撓性で低電力のスーパーマウント可能な3D撮像システムを作製することができる。また、複数のダイを使用して、自己構成可能なアレイまたはセンサネットワークを構築することもできる。これらは、各ダイが少なくとも送信機および受信機の両方を有するので、ダイレイアウトの知識と組み合わせて、同じダイ上にない送信機および受信機対の間の、飛行時間測定または方向測定(到着方向)または相対的時間差(到達時間差)またはそれらの組み合わせを使用することによって、各要素の相対位置をもたらすことができるという事実を利用することによって、自己構成可能にすることができる。
【0037】
そのような構成は、それ自体が新規かつ発明的であり、したがって、さらなる態様から見ると、本発明は、各々が単一の共通の半導体ダイ上に専用の超音波送信機および少なくとも1つの別個の専用の超音波受信機を備える圧電微細加工超音波トランスデューサ(PMUT)の非平面状アレイを備える、超音波信号を送信および受信するためのシステムを動作させる方法を提供し、方法は、該非平面状アレイ内の該PMUTの第1のものの送信機から1つ以上の信号を送信することと、該非平面状アレイの該PMUTの第2のものの少なくとも1つの受信機を使用して、該信号を受信することと、該受信信号を使用して、該第1および第2のPMUTの相互の相対位置を判定することと、を含む。
【0038】
本発明のこの態様は、上述した方法を実行するように構成されたシステムにまで及ぶ。
【0039】
一組の実施形態では、相互の相対位置は、該第1および第2のPMUT上の1つ以上の受信機によって受信した信号の後続の信号処理において使用される。
【0040】
PMUTは、任意の好適な圧電材料から形成され得るが、一組の実施形態では、超音波送信機および/または超音波受信機は、窒化アルミニウムまたは窒化アルミニウム-スカンジウムから製造される。上述のように、慣習的に、共通のダイ上に送信機および受信機を製造することは困難であるとみなされていたが、本出願人は、送信機および受信機の両方にこれらの材料を使用することが、過度に性能を損なうことなくこれを容易にすると認識するに至った。本出願人は、例えば、AlNで製造された送信機が、いくつかの状況では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を蒸着させたものよりも高い電圧で駆動させることができること、さらには、アルミニウムの一部の代わりにスカンジウムを用いることが、PMUTの性能を大幅に高め得ることを見出した。送信機および受信機はどちらも、同じ材料で作製することができ、または非常に効率の高い送信および受信のいずれかのために最適化される材料の組み合わせを使用することも可能である。
【0041】
他の実施形態では、超音波送信機および/または超音波受信機は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、KNN((K,Na)NbO3)、ZnO(酸化亜鉛)、BaTiO3(チタン酸バリウム)、またはPMN-PT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3)から製造される。
【0042】
一組の実施形態では、送信機および受信機は、異なる材料から製造される。例えば、超音波送信機は、PZTから製造され得、超音波受信機は、AlNから製造され得る。PZTは、典型的には、AlNよりも低い電圧で、より高い音圧を出力する。
【0043】
実際には、AlNが送信機に使用される場合、複雑で高価な増幅出力回路を構築することなく十分に強い出力信号を提供するPMUTシステムを構築することは困難であり得る。例えば、超音波システムが大きい部屋の天井に装着される室内監視用途では、送信機にPZTの代わりにAlNが使用される場合に有用なエコーバックを得るために、より下位の層に向かって送信される不十分なエネルギーが存在し得る。したがって、超音波送信機を製造するためにPZTを使用することが望ましくなり得る。
【0044】
環境から受信される十分に強いエコーを提供するように送信信号が生成されると、できる限り高い信号対ノイズ比(SNR)を有するエコーを受信することが望ましい。AlNは、超音波信号に対して、PZTよりも高い感度を有し、したがって、この目的により良好に適する。より良好なSNRは、アレイビーム形成用途において、より良好な超音波検出、およびより良好で有効なビーム形成につながる。これに加えて、良好なSNRを有する十分に高感度な超音波受信機は、過剰な出力に対する必要性を低くし(すなわち、SNRを改善するための強い信号に対する必要性がより少なくなる)、また、デバイスにおける過剰な電力に対する必要性を低くする。例えば、室内監視用途では、PMUTを使用するデバイスは、バッテリ給電され得るが、不必要に高い電力出力レベルは、バッテリ寿命を低減させる。
【0045】
PZTは、超音波送信機を製造するために使用される場合、AlNよりも高い音圧を提供するが、超音波送信機にPZTを使用し、超音波受信機にAlNを使用することに関する欠点も存在し得る。PZTが高い感度を有する場合、材料は、PZTに圧電特性を示させるために、使用前に極性を与えなければならない。しかしながら、大量生産のシナリオでは、材料の極性形成の追加のステップは、より高いコストで複雑な製造をもたらし得る。
【0046】
したがって、一組の実施形態では、送信機および受信機は、同じ材料から製造される。これは、材料の極性形成が必要とされない場合があるので、特にAlNが超音波送信機および超音波受信機で使用される場合、製造の容易さを高め得る。
【0047】
一組の実施形態では、超音波受信機は、光受信機である。超音波送信機および超音波受信機が異なる材料から作製されている場合、光受信機は、別のタイプの送信機と組み合わせて使用され得る。光受信機の2つの好適な例示的なタイプは、光学多相読み出しおよび光共振器を使用するものである。光学多相読み出しは、例えば、WO2014/202753に記載されており、光学共振器は、例えば、Shnaiderman,R.らの"A submicrometre silicon-on-insulator resonator for ultrasound detection", Nature, 2020, 585, 372-378に記載されている。
【0048】
これらの光受信機の手法は、受信信号のSNRを改善し得る。これは、光受信機要素を、受信機要素の間に使用される典型的なλ/2の間隔よりも互いに極めて近づけることを可能にし、高い解像度の撮像が超指向性の原理に従って達成される。このように、好適な送信機を有する単一のダイ上に複数の密に離間された光受信機を使用することを通して、コンパクトな超音波撮像構成要素が製造され得る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
以下、本発明の特定の実施形態を、単なる例として、添付図面を参照しながら説明する。
【0050】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるPMUTの図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態によるPMUTの図である。
【
図4】超音波信号を送信および受信するためのシステムのブロック図である。
【
図5】
図2に示されるPMUTの長方形アレイの図である。
【
図6】可撓性基板に取り付けられた
図2に示されるPMUTのアレイの図である。
【
図7】
図6のアレイが取り付けられた無人航空機の図である。
【
図8】PMUTおよび直接経路信号を低減させるための関連するシステムの概略図である。
【
図9】
図8および
図9に示されるシステムの直接経路信号の推定を生成する方法を示すフローチャートである。
【
図10】直接経路信号を低減させるためのPMUTおよび関連するシステムのさらなる概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、本発明の一実施形態による圧電微細加工超音波トランスデューサ(PMUT)2の簡略図である。PMUT2は、超音波送信機6および超音波受信機8がその上に形成される、正方形のシリコンダイ4を備える。製造プロセスに関するさらなる詳細を、
図3を参照しながら以下に提供する。
【0052】
送信機6は、円形であり、ダイの中央に位置することが分かるであろう。
【0053】
受信機6は、送信機6よりもはるかに小さく、ダイの1つの隅部の未使用空間に位置する。
図2は、それぞれの受信機8がダイ4の各隅部に位置する、変形実施形態を示す。当然ながら、他の数-例えば、2つ、3つ、またはそれ以上-の受信機を提供することができる。受信機は、他の場所に位置し得るか、または2つ以上が所与の隅部に位置し得る。送信機は異なる形状であり得るか、または異なって位置し得、かつ/または複数の送信機が提供され得る。
【0054】
送信機6は、例えば、40kHz以上の周波数で信号を送信するように設計され得る。ダイ4は、約4mmの幅を有するが、これは、空気中でのこれらの信号の波長の半分である。送信機6は、約3mmの直径を有するが、受信機は、約0.1mmの直径を有する。
【0055】
図3は、
図2に示されるPMUT2の層をより詳細に示す、概略対角断面図である。これは、送信機に対応するその中心の開口106および受信機に対応する隅部のより小さい開口108を有する、シリコン基板100を備える。シリコン基板100には、シリコン膜102が敷設される。
【0056】
送信機の開口106および受信機の開口108の上には、2つの電極110の間に挟まれた-例えば、AlN、AIScN、またはPZTの-圧電薄膜材料層104を備える、それぞれの圧電スタックがある。
【0057】
デバイスは、典型的な微細加工技術を使用して製造することができる。送信機およびマイクロホンの構造は、典型的には、薄膜の(1次元または2次元の)片持ち梁構造またはブリッジとすることができる。これらの機械的構造の主要部分は、典型的には、シリコンを含む。これらの構造は、例えば、シリコンバルク微細加工-すなわち、シリコンウエハから開始した場合、シリコンの大部分を除去し、意図した機械的(薄い)構造を残すことによって、またはシリコン表面微細加工-すなわち、(構造化された)犠牲層およびシリコン薄膜を堆積させ、シリコン膜を構造化して犠牲層を除去した後に、機械的構造を残すことによって、製造することができる。
【0058】
送信機またはマイクロホン要素の主な機械的部品以外に、これらの要素は、薄膜金属電極および圧電薄膜を含む。これは、送信機およびマイクロホンデバイスの一部のための同じ圧電薄膜材料、または送信および検知に最適化された特性を有する異なる圧電薄膜材料であり得る。薄膜電極材料および圧電薄膜材料は、典型的には、機械的構造のシリコン部品を構造化する前に構造化される。作動および読み出しの概念に応じて、2つの電極-31モードを使用する圧電層の下側の層に1つ、およびその頂部に1つ-、または1つの電極-33モードを使用する圧電層の頂部-、のいずれかを使用することができる。
【0059】
電極材料は、典型的には、スパッタリングプロセスによって堆積される。圧電薄膜材料はまた-材料に依存して-、スパッタリングなどの物理的方法によって、またはパルスレーザ堆積プロセスによって、または化学気相堆積(CVD)もしくは化学溶液堆積(CSD)などの化学的方法を使用して堆積させることもできる。
【0060】
図4は、本明細書で説明される、PMUTを使用する超音波送信および受信システムの典型的な構成要素6、8の非常に単純化された概略ブロック図を示す。システムは、メモリ22を有するCPU20と、典型的にはシステムの全ての構成要素に電力を供給するバッテリ24と、を含む。CPU20は、信号生成器26および信号サンプラ28に接続される。これらは、実際には、好適なデジタル信号プロセッサ(DSP)によって提供され得る。信号生成器26は、超音波送信機6を駆動する送信増幅器30に接続される。
【0061】
一方で、受信機8は、信号をサンプラ28およびCPUへと通過させる受信増幅器32に接続される。送信機6が受信機8と別個であり、それを駆動するための経路が信号を受信するための経路から独立しているので、複雑な切り替え電子部品を必要とせず、送信および受信を同時に実行することができることに気が付くであろう。
【0062】
使用時に、送信機6は、シャープなバースト信号による駆動を必要とするのではなく、比較的長い低電力の信号-例えば、長さ0.1または0.2ミリ秒超の長さ-によって駆動することができる。
【0063】
図5は、
図2に示されるタイプのPMUT2の長方形アレイを示す。ここでは、個々のダイ4が、共通の基板(図示せず)上に相互に当接する関係で一緒に碁盤目状にされて、アレイを形成することが分かるであろう。ダイ4は、半波長の幅であるので、X方向およびY方向の両方における送信機6の中心間の間隔10もまた半波長である。また、隣接したダイのそれぞれの隅部の受信機8が、それぞれ2×2のミニアレイ12を形成することも分かるであろう。ダイ4のサイズのため、これらのミニアレイ12もまた、半波長だけ分離される。
【0064】
図5では、6つのダイ4だけが示されているが、例示的な実施形態では、アレイの一方または両方の次元に多数のダイが存在し得る。
【0065】
音の波長λは、音の速度cおよびその周波数fに依存する:λ=c/f。
【0066】
空気中の技術的に使用可能な超音波(イヌの可聴範囲よりも高いことを確実にするために、40kHzよりも高い)の場合、波長は、8.6mmよりも短く、波長の半分であり、これは超音波アレイの重要なパラメータであり、したがって、4.3mmよりも短い。これは、典型的には、本明細書で説明されるようなMEMS(微小電気機械システム)タイプのデバイスの典型的な寸法である。
【0067】
カンチレバーおよび膜などの典型的なMEMSタイプの構造の場合、基本的な振動モードの周波数は、以下の式によって表現することができる。
カンチレバー:
円形膜/ダイヤフラム:
式中、tは、機械的構造の厚さであり、Eは、ヤング率であり、ρは、密度であり、Lは、カンチレバーの長さであり、dは、円形膜の直径である。これらの式は、単一の材料に関するものであるが、多層構造用に非常に容易に修正することができる。
【0068】
これらの式は、MEMS超音波構造の実現可能性を例示する。MEMS構造の典型的な寸法である直径1250μmで厚さ8μmのシリコン膜の固有振動数は、約80kHzの固有振動数を有する。
【0069】
異なる角度または波数を有する他の入射波面から各入射波面を識別することができることを意味し、これが次に、いわゆる「グレーティングローブ」の問題が防止されることを意味するので、大部分の標準ビーム形成アルゴリズムがλ/2間隔の利益を享受する。λ/2(またはより密な)の間隔の利益を享受する古典的なビーム形成方法としては、(重み付けされた)遅延和ビームフォーマ、MVDR/Caponなどの適応ビームフォーマ、MUSICおよびESPRITのような方位探知方法、ならびにDUETのようなブラインドソース推定手法、ならびに無線通信方法、エントロピまたは情報最大化などの付加制約を有する超音波撮像方法が挙げられる。
【0070】
図6は、例えばポリウレタンで作製されたリボン16の形態の可撓性基板に取り付けられた、
図2に示されるタイプのいくつかのダイ4からなる、さらなるアレイ14を示す。このアレイ14は、任意の数の物体またはデバイスに取り付けることができ、またはウェアラブルデバイスの一部を形成し得る。
図7は、アレイ14が無人航空機またはドローン18の本体に取り付けられている、一実施例を示す。そのような配置では、その送信機および受信機を駆動するプロセッサ(図示せず)を、較正段階で動作するようにプログラムすることができ、それによって、アレイ14内の個々の送信機6が、異なる信号を、または異なる時間に信号を送信し、次いで、信号がアレイ内の他のダイ上の受信機8によって受信される。符号化信号(CDMAタイプ)またはチャープ信号を送信することなどの、好適なアルゴリズムを使用し、続いて、整合フィルタリングまたはデコンボリューション、およびすなわちCFARフィルタなどの信号ピーク検出を使用することで、そのような送信の飛行時間を使用して、個々のダイ4の相互の相対位置を確立することができる。いくつかの状況では、2つの受信機と1つの送信/反射信号との間の到着の相対時間差(TDOA)の計算に関係する。このために、一般化交差相関位相変換(GCC-PHAT)および被制御応答位相変換(SRP-PHAT)を含む、一連の一般的な方法が存在する。
【0071】
次いで、動作中にこれらを使用して、適切な位相差をそれぞれの受信機の信号に適用して、-例えばビーム形成のために-コヒーレントなアレイとして作用することを可能にすることができる。そのような手法は、正確な取り付けが重要でなくなるように、任意の数の不規則な形状の物体にアレイを取り付けることを可能にする際に有益である。
【0072】
ドローン18は、反響定位、衝突回避などのためにアレイ14を使用することができる。
【0073】
図8は、PMUT302および直接経路信号を補償することが可能である関連するシステムの概略図である。システムは、その上に送信機要素306および受信機要素308が形成される正方形のシリコンダイ304を備える、PMUT302を含む。
【0074】
ASIC(特定用途向け集積回路)またはDSP(デジタル信号プロセッサ)42は、主デジタル-アナログ(D/A)変換器34に接続される。この主D/A変換器34は、超音波送信機306を駆動する増幅器132に接続される。したがって、超音波送信機306は、超音波信号48を放射する。
【0075】
超音波受信機308は、関心対象の物体から反射される反射エコー50を受信する。超音波受信機308はまた、音響直接経路信号44、46も受信する。直接経路信号44のうちの1つは、空気中の直接音響経路信号である。他の直接経路信号46は、ダイ304の本体を通して、送信機306から受信機308へと送信される。他の送信機構は、受信機308によって受信した直接経路信号全体に関与し得る。
【0076】
ASIC/DSP42は、
図9を参照して下でより詳細に説明するように、受信した超音波信号に対する直接経路信号44、46の影響の推定をさらに生成する。ASIC/DSP42は、生成された推定を修正し得る、信号修正部52を備える。信号修正部52は、例えば、ASIC/DSP42からの出力信号にコンボリューションを適用するフィルタを組み込み得る。推定直接経路信号は、アナログ信号に変換するD/A変換器54へと通過する。このアナログ信号は、増幅器36を通過して混合器38に進む。混合器は、受信機308によって生成されたアナログ信号からアナログ推定直接経路信号を減算して、最終信号にアナログ-デジタル(A/D)変換器40を通過させて、例えば反響定位についてさらに分析され得る、記憶され得る、などのデジタル信号を生成する。
【0077】
典型的には、直接経路信号44、46は、受信したエコー50よりもはるかに強い。説明される実施形態は、デジタル信号に変換するために、サンプリング前に直接経路信号44、46を有利に取り出す。直接経路信号44、46が取り出されなかった場合、A/D変換器40は、受信したエコー50をデジタル信号ならびに直接経路信号44、46の両方に変換するために、高いダイナミックレンジを必要とすることになる。高いダイナミックレンジのA/D変換器は、より複雑であり、したがって、より高価であり、より多くの電力を消費する。
【0078】
図9は、
図8に示されるシステムにおいて直接経路信号44、46の推定を生成する方法を示すフローチャートである。ステップ58において、システムは、送信機要素306から個々の受信機308への直接経路信号44、46の記録を開始する。
図2に示されるように、複数の受信機がある場合、プロセスは、個々の受信機ごとに繰り返され得る。記録された信号は、(環境からの反射は、直接経路信号よりも長い飛行時間を有するので)環境からの反射を除外するために時間ゲート制御が使用されるため、環境からの反射を含まない。
【0079】
直接経路信号44、46は、温度などの条件によって変化し得るので、ステップ60で十分なデータベースを得るために、より長い期間にわたって、または1日の中の複数の時間インスタンス(システムが使用中でないとき)にわたって、いくつかの直接経路信号44、46を記録することが望ましくなり得る。任意選択的に、この記録を使用して、わずかに高いまたは低い周波数で再サンプリングすることによって、異なる温度および圧力レベルでの直接経路信号44、46を推定し得る。
【0080】
ステップ62において、直接経路信号の十分なデータベースが作成されたかどうかに関する基準が試験される。この基準は、予め記録された直接経路信号の自己反復の程度、すなわち過去の信号がそれら自体を繰り返しているかどうかなどの、任意の好適な品質パラメータに関連付けられ得るか、またはこの基準は、データベースを「完成させる」ために特定の温度範囲にわたって直接経路信号を収集させることを必要とする、温度センサに結び付けられ得る。データベースは、要素の周囲の物理的環境が変化し得るので、随時更新され得る。例えば、送信機306または受信機308は、異なるハウジングへ移動し得るか、または塵がセンサの上に降って、もしくはそれに近づいて、直接音響経路に影響を及ぼし得る。データベースの品質が十分でない場合は、直接経路信号のさらなる記録が実行される。
【0081】
データベースの品質が十分であると判定されると、ステップ64において、反射信号の記録セッションを開始する。ステップ66において、ランダム推測として、または直接経路信号のデータベース作成ステップ58~62で使用した温度センサ(図示せず)からの入力を考慮して、直接経路信号の初期推定が提供される。次いで、D/A変換器54は、ASIC/DSP42からの推定直接経路信号を、混合器38で減算することができるように変換する。
【0082】
ステップ70において、送信機306は、超音波信号を送信し、受信機308は、反射エコー50および直接経路信号44、46を受信する。ステップ72および74において、受信したデータの品質を監視して、ステップ66で選択した直接経路信号が良好な選択であったかどうかを識別する。品質のパラメータの一例は、受信した信号(直接経路44、46)の中の最も強い成分が成功裏に取り出されたことを示す最小のエネルギーである。代替的に、これは「明瞭なエコー」が受信されていることを示すので、最大のスパース性がパラメータとして使用され得る。概して、エコー50および直接経路信号44、46の混合は、それらの任意の1つの単独の場合よりも複雑になる傾向がある。反射エントロピまたは経時的な自己類似性などの他のパラメータも使用され得る。
【0083】
ステップ74において品質が良好であった場合、ステップ76において、混合器38からの受信信号が、A/D変換器40に通過され、近接、存在、またはジェスチャ検知などのさらなる分析に使用され得る。
【0084】
ステップ74で品質が低く、ステップ78で品質が第1の閾値よりも低くなかった場合、直接経路信号の推定には、わずかな修正だけしか必要としない。これらのわずかな修正は、ステップ80において、推定直接経路信号を調整しようとするために推定直接経路信号にコンボリューションを適用するフィルタ52によって組み込まれ得る。
【0085】
品質パラメータが、第2の臨界閾値よりも低い場合、ステップ82において、新しいデータベースを構築するためにシステムが直接経路信号を記録することを再度開始する。これは、送信機要素306の挙動または環境に大きい変化が存在する場合に必要になり得る。
【0086】
品質パラメータが第1の閾値よりも低いが、第2の閾値よりも低くない場合、ステップ84に示されるように、推定直接経路信号のために別の候補が選択され得る。
【0087】
図10は、PMUT302’および直接経路信号を補償するための関連するシステムの別の実施形態の概略図である。この実施形態は、
図8の実施形態とほぼ同一であり、同様の部品は、プライム記号を加えた同様の参照番号によって示される。しかしながら、この実施形態では、PMUT302’は、音響経路バリア56をさらに含む。これらの音響経路バリア56は、例えば、送信機306’の周りのシリンダ、受信機308’の周りのシリンダ、または送信機306’および受信機308’両方の周りのシリンダであり得る。音響経路バリア56は、送信機306’と受信機308’との間の信号44’の空気伝播を弱めることによって、空気中の直接音響経路信号44’の強度を物理的に低減させるように作用する。
【0088】
図11は、光受信機408を使用するPMUT402の図である。これらは、例えば、膜から反射される光を使用して、例えば回折格子を使用して、音響信号による膜の移動が読み出される、MEMS構造を備える。光受信機408は、光受信機が従来の受信機よりも非常に少ない自己雑音を有し、したがって非常に良好なSNRを有するので、
図2に示される受信機8よりもはるかに密に離間され得る。したがって、光受信機408は、λ/2よりもはるかに密に離間され得るが、それでも、高解像度の画像が得られる。このように、密に離間された光受信機408を使用することにより、コンパクトな超音波撮像構成要素が単一のダイ404上に形成される。
【国際調査報告】