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特表2022-554187キメラサイトカイン改変抗体およびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】キメラサイトカイン改変抗体およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20221221BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 15/26 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221221BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20221221BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20221221BHJP
   C07K 14/55 20060101ALI20221221BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20221221BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221221BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/13
C12N15/26
C12N15/24
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
C07K16/18
C07K14/55
C07K14/54
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524084
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 US2020057209
(87)【国際公開番号】W WO2021081440
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】62/925,740
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522163643
【氏名又は名称】ミノトール セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】フアン ルイキ
(72)【発明者】
【氏名】スミデル ボーン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB17
4C085CC23
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
重鎖のCDR3の一部がインターロイキン(IL-15)またはIL-2によって置換されている、例えば、ウシ(bovine)抗体配列またはそのヒト化配列に基づく超長CDR3を含有するキメラサイトカイン改変抗体、および関連する抗体が提供される。提供される抗体には、IL15Rα sushiドメインなどのIL15Rαの細胞外部分とさらに連結または複合体化されたキメラIL-15サイトカイン改変抗体分子がある。キメラサイトカイン改変抗体を作製および使用する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウシ(bovine)抗体もしくは抗原結合断片またはそのヒト化配列の重鎖の超長CDR3領域の少なくとも一部を置換するインターロイキン-15(IL-15)サイトカイン配列またはその生物学的に活性な部分を含む、改変超長CDR3
を含む、キメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項2】
前記IL-15サイトカイン配列がヒトIL-15である、請求項1記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項3】
前記IL-15サイトカイン配列が、SEQ ID NO:1に対して少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、少なくとも96%もしくは少なくとも約96%、少なくとも97%もしくは少なくとも約97%、少なくとも98%もしくは少なくとも約98%、または少なくとも99%もしくは少なくとも約99%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む、請求項1または2記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項4】
前記IL-15サイトカイン配列が、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸の配列を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項5】
ウシ(bovine)抗体もしくは抗原結合断片またはそのヒト化配列の重鎖の超長CDR3領域の少なくとも一部を置換するインターロイキン-2(IL-2)サイトカイン配列またはその生物学的に活性な部分を含む、改変超長CDR3
を含む、キメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項6】
前記IL-2サイトカイン配列がヒトIL-2である、請求項5記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項7】
前記IL-2サイトカイン配列が、SEQ ID NO:165に対して少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、少なくとも96%もしくは少なくとも約96%、少なくとも97%もしくは少なくとも約97%、少なくとも98%もしくは少なくとも約98%、または少なくとも99%もしくは少なくとも約99%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む、請求項5または6記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項8】
前記IL-2サイトカイン配列が、SEQ ID NO:165に示されるアミノ酸の配列を含む、請求項5~7のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項9】
前記サイトカイン配列が、ウシ(bovine)抗体または抗原結合断片の重鎖の超長CDR3領域の少なくとも一部を置換する、請求項1~8のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項10】
前記ウシ(bovine)抗体または抗原結合断片が、ウシ(bovine)抗体BLV1H12またはその抗原結合断片である、請求項9記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項11】
前記ウシ(bovine)抗体または抗原結合断片が、SEQ ID NO:5に示される配列によってコードされる可変重鎖アミノ酸配列およびSEQ ID NO:8に示される配列によってコードされる可変軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項9または10記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項12】
前記ウシ(bovine)抗体または抗原結合断片が、SEQ ID NO:167に示される配列によってコードされる可変重鎖アミノ酸配列およびSEQ ID NO:168に示される配列によってコードされる可変軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項9または10記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項13】
前記ウシ(bovine)抗体または抗原結合断片が、SEQ ID NO:26に示される可変重鎖およびSEQ ID NO:27に示される可変軽鎖を含む、請求項9または10記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項14】
前記サイトカイン配列が、ヒト化ウシ(bovine)抗体またはその抗原結合断片の重鎖の超長CDR3領域の少なくとも一部を置換する、請求項1~8のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項15】
前記ヒト化ウシ(bovine)抗体またはその抗原結合断片が、
ヒト重鎖生殖細胞系配列であるか、またはヒト重鎖生殖細胞系配列に由来する重鎖またはその一部と、
ヒト軽鎖生殖細胞系配列であるか、またはヒト軽鎖生殖細胞系配列に由来する軽鎖またはその一部と
を含む、請求項14記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項16】
前記ヒト重鎖生殖細胞系配列が、VH4-39、VH4-59*03、VH4-34*02もしくはVH4-34*09生殖細胞系配列であるか、またはSEQ ID NO:68~71のいずれか1つに示される配列である、請求項15記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項17】
前記ヒト軽鎖生殖細胞系配列が、VL1-51生殖細胞系配列であるか、または1つもしくは複数の変異を含む前記VL1-51生殖細胞系配列に基づく配列であり、任意で、前記VL1-51生殖細胞系配列がSEQ ID NO:156に示されている、請求項15または請求項16記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項18】
前記1つまたは複数の変異が、以下:
Kabatナンバリングに基づくアミノ酸置換S2A、T5N、P8S、A12G、A13SおよびP14Lの1つまたは複数;
Kabatナンバリングに基づくアミノ酸置換S2A、T5N、P8S、A12G、A13SおよびP14L;
アミノ酸置換I29VおよびN32Gを含む、CDR1における変異;
DNNのGDTへの置換を含む、CDR2における変異;
DNNKRPのGDTSRAへの置換を含む、CDR2における変異;または
前述のいずれかの組み合わせ
より選択される、請求項17記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項19】
前記抗体が、可変重鎖および可変軽鎖を含む抗原結合断片である、請求項1~18のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項20】
前記抗体が、重鎖定常ドメイン(CH1-CH2-CH3)に結合された可変重鎖と、軽鎖定常ドメイン(CL1)に結合された可変軽鎖とを含む、請求項1~19のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項21】
前記重鎖定常ドメインがヒトIgG1に由来する、請求項20記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項22】
前記軽鎖定常ドメインがラムダ軽鎖領域である、請求項20または21記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項23】
前記超長CDR3領域の少なくとも一部がノブ領域を含み、前記サイトカイン配列が、前記改変超長CDR3の上行性ストークドメインと下行性ストークドメインとの間に存在する、請求項1~22のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項24】
前記サイトカイン配列が、柔軟なリンカー、任意でGGSまたはGSGリンカーを介して前記上行性ストークドメインおよび/または前記下行性ストークドメインに連結されている、請求項23記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項25】
前記上行性ストークドメインが、SEQ ID NO:158またはSEQ ID NO:159に示される配列を含む、請求項23または24記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項26】
前記下行性ストークドメインが、SEQ ID NO:161に示される配列を含む、請求項23~25のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項27】
SEQ ID NO:7に示されるヌクレオチドの配列、またはSEQ ID NO:7に示されるヌクレオチド配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、少なくとも96%もしくは少なくとも約96%、少なくとも97%もしくは少なくとも約97%、少なくとも98%もしくは少なくとも約98%、少なくとも99%もしくは少なくとも約99%の配列同一性を示すヌクレオチドの配列によってコードされる可変重鎖配列を含み、IL-15配列を含有する改変超長CDR3を含有する、請求項1~4および9~26のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項28】
IL15Rα sushiドメインを含むIL15Rαの細胞外ドメインと複合体化されている、請求項1~4および9~27のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項29】
前記IL15Rα sushiドメインを含む前記IL15Rαの前記細胞外ドメインが、前記IL-15配列と非共有結合的に会合している、請求項28記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項30】
前記IL15Rα sushiドメインを含む前記IL15Rαの前記細胞外ドメインが前記可変軽鎖に連結されている、請求項28記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項31】
ペプチドリンカーを介して連結されている、請求項30記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項32】
前記ペプチドリンカーが、グリシンリンカーまたはグリシン-セリンリンカーであり、任意で、前記リンカーがGSである、請求項31記載のキメラサイトカイン改変抗体。
【請求項33】
前記IL15Rα sushiドメインを含む前記IL15Rαの前記細胞外ドメインが、SEQ ID NO:2に示される配列を含む、請求項28~32のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体。
【請求項34】
前記可変軽鎖が、SEQ ID NO:3によってコードされるアミノ酸の配列を含む、請求項30~33のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項36】
請求項1~34のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片の重鎖またはその可変領域をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項37】
請求項1~34のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片の軽鎖またはその可変領域をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項38】
請求項35~37のいずれか一項記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項39】
請求項35~37のいずれか一項記載のポリヌクレオチドまたは請求項37記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項40】
前記IL15Rα sushiドメインを含む前記IL15Rαの細胞外ドメインを発現するポリヌクレオチドまたはベクターをさらに含む、請求項39記載の宿主細胞。
【請求項41】
前記IL15Rα sushiドメインを含む前記IL15Rαの前記細胞外ドメインが、SEQ ID NO:2に示される配列を含む、請求項40記載の宿主細胞。
【請求項42】
請求項39~41のいずれか一項記載の宿主細胞を、前記細胞による抗体または抗原結合断片の発現のための条件下で培養する工程を含み、任意で、前記抗体または抗原結合断片を精製することの回収する工程をさらに含む、キメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片を産生する方法。
【請求項43】
請求項42記載の方法によって産生される、キメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
【請求項44】
請求項1~34または43のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片を含む、薬学的組成物。
【請求項45】
治療有効量の請求項1~34または43のいずれか一項記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片を投与する工程を含む、対象のがんを治療する方法。
【請求項46】
治療有効量の請求項44記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、対象のがんを治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月24日に出願された「CHIMERIC CYTOKINE MODIFIED ANTIBODIES AND METHODS OF USE THEREOF」と題する米国仮出願第62/925,740号の優先権を主張し、その内容はすべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本出願は、電子形式の配列表と共に出願されている。配列表は、サイズが79,015バイトである、2020年10月22日に作成された165772000140SeqList.txtという表題のファイルとして提供されている。配列表の電子形式の情報は、その全体が参照により組み入れられる。
【0003】
分野
本開示は、重鎖のCDR3の一部がインターロイキン(IL-15)またはIL-2によって置換されている、ウシ(bovine)抗体配列またはそのヒト化配列などに基づく超長CDR3を含有するキメラサイトカイン改変抗体、および関連する抗体に関する。本開示の分子には、IL15Rα sushiドメインなどのIL15Rαの細胞外部分とさらに連結または複合体化されたキメラIL-15サイトカイン改変抗体分子がある。本開示はまた、キメラサイトカイン改変抗体を作製および使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
背景
抗体は、主に感染に対する防御のために、脊椎動物の免疫系が異物(抗原)に応答して形成する天然タンパク質である。抗体は、標的抗原への結合を媒介する相補性決定領域(CDR)を含有する。いくつかのウシ(bovine)抗体は、最大70アミノ酸長であり得る他の脊椎動物と比較して、異常に長いVH CDR3配列を有する。長いCDR3は、抗体表面から突出する独特のドメインを形成することができ、それによって独特の抗体プラットフォームを可能にする。
【0005】
インターロイキン(IL)15およびIL-2は、細胞傷害性Tリンパ球およびナチュラルキラー(NK)細胞の増殖および細胞傷害性を刺激するサイトカインであり、したがってがん治療の免疫療法候補である。しかしながら、そのようなサイトカインは、安定な可溶性タンパク質として発現することが困難であり得、インビトロおよびインビボで短い半減期を有することが多い。特にがん治療に使用するための、IL-2またはIL-15治療薬などの改善されたサイトカイン治療薬が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
概要
ウシ(bovine)抗体もしくは抗原結合断片またはそのヒト化配列の重鎖の超長CDR3領域の少なくとも一部を置換するインターロイキン-15(IL-15)サイトカイン配列またはその生物学的に活性な部分を含む改変超長CDR3を含む、キメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片が本明細書で提供される。
【0007】
いくつかの態様では、上記IL-15サイトカイン配列はヒトIL-15である。いくつかの態様では、上記IL-15サイトカイン配列は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、少なくとも96%もしくは少なくとも約96%、少なくとも97%もしくは少なくとも約97%、少なくとも98%もしくは少なくとも約98%、または少なくとも99%もしくは少なくとも約99%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。いくつかの態様では、上記IL-15サイトカイン配列は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸の配列を含む。いくつかの態様では、上記IL-15サイトカイン配列は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸の配列からなる。
【0008】
ウシ(bovine)抗体もしくは抗原結合断片またはそのヒト化配列の重鎖の超長CDR3領域の少なくとも一部を置換するインターロイキン-2(IL-2)サイトカイン配列またはその生物学的に活性な部分を含む改変超長CDR3を含む、キメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片が本明細書で提供される。
【0009】
いくつかの態様では、上記IL-2サイトカイン配列はヒトIL-2である。いくつかの態様では、上記IL-2サイトカイン配列は、SEQ ID NO:165に対して少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、少なくとも96%もしくは少なくとも約96%、少なくとも97%もしくは少なくとも約97%、少なくとも98%もしくは少なくとも約98%、または少なくとも99%もしくは少なくとも約99%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。いくつかの態様では、上記IL-2サイトカイン配列は、SEQ ID NO:165に示されるアミノ酸の配列を含む。いくつかの態様では、上記IL-2サイトカイン配列は、SEQ ID NO:165に示されるアミノ酸の配列からなる。
【0010】
任意の態様のいくつかでは、上記サイトカイン配列は、ウシ(bovine)抗体または抗原結合断片の重鎖の超長CDR3領域の少なくとも一部を置換する。いくつかの態様では、上記ウシ(bovine)抗体または抗原結合断片は、ウシ(bovine)抗体BLV1H12またはその抗原結合断片である。
【0011】
いくつかの態様では、上記ウシ(bovine)抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:5に示される配列によってコードされる可変重鎖アミノ酸配列およびSEQ ID NO:8に示される配列によってコードされる可変軽鎖アミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、上記ウシ(bovine)抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:167に示される配列によってコードされる可変重鎖アミノ酸配列およびSEQ ID NO:168に示される配列によってコードされる可変軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0012】
いくつかの態様では、上記ウシ(bovine)抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:26に記載の可変重鎖およびSEQ ID NO:27に記載の可変軽鎖を含む。
【0013】
任意の態様のいくつかでは、上記サイトカイン配列は、ヒト化ウシ(bovine)抗体またはその抗原結合断片の重鎖の超長CDR3領域の少なくとも一部を置換する。いくつかの態様では、上記ヒト化ウシ(bovine)抗体またはその抗原結合断片は、ヒト重鎖生殖細胞系配列であるか、またはヒト重鎖生殖細胞系配列に由来する重鎖またはその一部と、ヒト軽鎖生殖細胞系配列であるか、またはヒト軽鎖生殖細胞系配列に由来する軽鎖またはその一部とを含む。いくつかの態様では、上記ヒト重鎖生殖細胞系配列は、VH4-39、VH4-59*03、VH4-34*02もしくはVH4-34*09生殖細胞系配列であるか、またはSEQ ID NO:68~71のいずれか1つに示される配列である。
【0014】
任意の態様のいくつかでは、上記ヒト軽鎖生殖細胞系配列は、VL1-51生殖細胞系配列であるか、または1つもしくは複数の変異を含む上記VL1-51生殖細胞系配列に基づく配列であり、任意で、上記VL1-51生殖細胞系配列はSEQ ID NO:156に示されている。いくつかの態様では、上記1つまたは複数の変異は、以下より選択される:Kabatナンバリングに基づくアミノ酸置換S2A、T5N、P8S、A12G、A13SおよびP14Lの1つまたは複数;Kabatナンバリングに基づくアミノ酸置換S2A、T5N、P8S、A12G、A13SおよびP14L;アミノ酸置換I29VおよびN32Gを含むCDR1における変異;DNNのGDTへの置換を含むCDR2における変異;GDTSRAへの置換DNNKRPを含むCDR2における変異;または前述のいずれかの組み合わせ。
【0015】
任意の態様のいくつかでは、提供される上記抗体は可変重鎖および可変軽鎖を含む抗原結合断片である。いくつかの態様では、上記抗体は、重鎖定常ドメイン(CH1-CH2-CH3)に結合された可変重鎖と、軽鎖定常ドメイン(CL1)に結合された可変軽鎖とを含む。いくつかの態様では、上記重鎖定常ドメインはヒトIgG1に由来する。いくつかの態様では、上記軽鎖定常ドメインはラムダ軽鎖領域である。
【0016】
任意の態様のいくつかでは、上記超長CDR3領域の少なくとも一部はノブ領域を含み、上記サイトカイン配列は、上記改変超長CDR3の上行性ストークドメインと下行性ストークドメインとの間に存在する。いくつかの態様では、上記サイトカイン配列は、柔軟なリンカー、任意でGGSまたはGSGリンカーを介して上記上行性ストークドメインおよび/または上記下行性ストークドメインに連結されている。任意の態様のいくつかでは、上記上行性ストークドメインは、SEQ ID NO:158またはSEQ ID NO:159に示される配列を含む。任意の態様のいくつかでは、上記下行性ストークドメインは、SEQ ID NO:161に示される配列を含む。
【0017】
いくつかの態様では、提供される上記抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:7に示されるヌクレオチドの配列、またはSEQ ID NO:7に示されるヌクレオチド配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、少なくとも96%もしくは少なくとも約96%、少なくとも97%もしくは少なくとも約97%、少なくとも98%もしくは少なくとも約98%、少なくとも99%もしくは少なくとも約99%の配列同一性を示すヌクレオチドの配列によってコードされる可変重鎖配列を含み、IL-15配列を含有する改変超長CDR3を含有する。いくつかの態様では、提供される上記抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:7に示されるヌクレオチドの配列によってコードされる可変重鎖配列を含む。いくつかの態様では、提供される上記抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:7に示されるヌクレオチドの配列によってコードされる可変重鎖配列からなる。
【0018】
任意の態様のいくつかでは、上記抗体または抗原結合断片は、IL15Rα sushiドメインを含むIL15Rαの細胞外ドメインと複合体化されている。いくつかの態様では、上記IL15Rα sushiドメインを含む上記IL15Rαの上記細胞外ドメインは、上記IL-15配列と非共有結合的に会合している。いくつかの態様では、上記IL15Rα sushiドメインを含む上記IL15Rαの上記細胞外ドメインは、上記可変軽鎖に連結されている。いくつかの態様では、上記IL15Rα sushiドメインを含む上記IL15Rαの上記細胞外ドメインは、ペプチドリンカーを介して上記可変軽鎖に連結されている。任意の態様のいくつかでは、上記ペプチドリンカーは、グリシンリンカーまたはグリシン-セリンリンカーであり、任意で上記リンカーはGSである。
【0019】
任意の態様のいくつかでは、上記IL15Rα sushiドメインを含む上記IL15Rαの上記細胞外ドメインは、SEQ ID NO:2に示される配列を含む。任意の態様のいくつかでは、上記IL15Rα sushiドメインを含む上記IL15Rαの上記細胞外ドメインは、SEQ ID NO:2に示される配列からなる。
【0020】
いくつかの態様では、上記可変軽鎖は、SEQ ID NO:3によってコードされるアミノ酸の配列を含む。
【0021】
先の態様のいずれかに記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドが、本明細書で提供される。
【0022】
先の態様のいずれかに記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片の重鎖またはその可変領域をコードするポリヌクレオチドが、本明細書で提供される。
【0023】
先の態様のいずれかに記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片の軽鎖またはその可変領域をコードするポリヌクレオチドが、本明細書で提供される。
【0024】
先の態様のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクターが本明細書で提供される。
【0025】
先の態様のいずれかに記載のポリヌクレオチドまたは発現ベクターを含む宿主細胞が本明細書で提供される。任意の態様のいくつかでは、上記宿主細胞は、上記IL15Rα sushiドメインを含む上記IL15Rαの細胞外ドメインを発現するポリヌクレオチドまたはベクターをさらに含む。任意の態様のいくつかでは、上記IL15Rα sushiドメインを含む上記IL15Rαの上記細胞外ドメインは、SEQ ID NO:2に示される配列を含む。
【0026】
先の態様のいずれかに記載の宿主細胞を、上記細胞による上記抗体または抗原結合断片の発現のための条件下で培養する工程を含み、任意で、上記抗体または抗原結合断片を精製することの回収する工程をさらに含む、キメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片を産生する方法が、本明細書で提供される。
【0027】
先の態様のいずれかに記載の方法によって産生されるキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片が、本明細書で提供される。
【0028】
先の態様のいずれかに記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片を含む薬学的組成物が、本明細書で提供される。
【0029】
治療有効量の先の態様のいずれかに記載のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片を投与する工程を含む、対象のがんを治療する方法が、本明細書で提供される。
【0030】
治療有効量の先の態様のいずれかに記載の薬学的組成物を投与する工程を含む、対象のがんを治療する方法が、本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1Aおよび図1Bは、生成された構築物の概略図を示す。図1Aは、2本のβストランドストークがどのようにしてウシ(bovine)VH免疫グロブリンドメインから突出し、異常な3つのジスルフィド連結ノブドメインで終結するかを示すBLV1H12の結晶構造(左)、およびノブ領域がIL-15サイトカインドメインで置換され、IL15Rα sushiドメインをさらに含有する、BLV1H12のB15_IL15Rα sushi変異体の結晶構造(右)を示す。図1Bは、異なる融合抗体構築物BLV1H12-IL-15(B15)、BLV1H12-IL-15-Rαsushi(B15_Rαsushi)およびBLV1H12-IL-15-GS-Rαsushi(B15_GS_Rαsushi)を示す。
図2】HEK 293細胞BLV1H12-IL-15(B15)、BLV1H12-IL-15-Rαsushi(B15_Rαsushi)およびBLV1H12-IL-15-GS-Rαsushi(B15_GS_Rαsushi)から発現され、SDS-PAGEゲル電気泳動によって分析された精製B15融合抗体構築物の発現を示す。
図3図3Aおよび図3Bは、ELISAアッセイによって示されるような、IL2/15Rβ受容体に結合するキメラBLV1H12-IL-15(B15)融合抗体の能力を示す。図3Aは、B15抗体がIL2RαまたはIL15Rα受容体サブユニットに結合する能力を示す。図3Bは、B15抗体がIL15Rαサブユニットの存在下または非存在下でIL2/15Rβ受容体サブユニットに結合する能力を示す。
図4】HEK-Blue IL2レポーター細胞におけるSTAT5誘導性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子の誘導および分泌を通して、キメラB15分子によるIL2/15Rβおよびγc受容体の活性化ならびにSTAT5シグナル伝達を示す。
図5】HEK-Blue IL2レポーター細胞におけるSTAT5誘導性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子の誘導および分泌を通して、IL15Rαsushiドメインと会合した代替的なキメラB15分子によるIL2/15Rβおよびγc受容体の活性化ならびにSTAT5シグナル伝達を示す。
図6】NK-92ナチュラルキラー細胞を増大させるキメラB15分子の能力を示す。NK-92細胞を、2倍段階希釈(1.33nM~0.005nM)のIL2もしくはIL15モノマー(R&D Systems)、またはキメラB15、キメラ変異体B15_RαsushiもしくはキメラB15変異体B15_GS_Rαsushi抗体のいずれかとインキュベートし、MTTアッセイによって分析した。
図7】MTTアッセイによって示されるように、キメラB15変異体B15-RαsushiまたはB15-GS-Rαsushi抗体と比較したキメラB15抗体がNK-92ナチュラルキラー細胞を増大させる能力を示す。
図8図8Aおよび図8Bは、生成された構築物の概略図を示す。図8Aは、2本のβストランドストークがどのようにしてウシ(bovine)VH免疫グロブリンドメインから突出し、異常な3つのジスルフィド連結ノブドメインで終結するかを示すBLV1H12の結晶構造(左)、およびキメラB15抗体のIL15領域をIL-2で置換することによって生成されたキメラBLV1H12-IL-2(B2)融合抗体の結晶構造(右)を示す。図8Bは、ノブドメインにIL-2配列を含有するBLV1H12-IL-2(B2)融合抗体の図を示す。
図9】HEK 293細胞から発現され、SDS-PAGEゲル電気泳動によって分析された精製融合抗体構築物BLV1H12-IL-2(B2)の発現を示す。
図10】酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)によって示されるような、IL2RαおよびIL15Rαに結合するキメラBLV1H12-IL-2(B2)融合抗体の能力を示す。
図11】HEK-Blue IL2レポーター細胞におけるSTAT5誘導性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子の誘導および分泌を通して、キメラB2分子によるIL2/15Rβおよびγc受容体の活性化ならびにSTAT5シグナル伝達を示す。
図12】NK-92ナチュラルキラー細胞を増大させるキメラB2分子の能力を示す。NK-92細胞を、2倍段階希釈(1.33nM~0.005nM)のIL2モノマー(R&D Systems)またはキメラB2抗体のいずれかとインキュベートし、MTTアッセイによって分析した。
図13】キメラB15分子がインビトロでヒトPBMC中のNK細胞およびT細胞を刺激する能力を示す。PBMCを250nM~0.016nMの最終濃度でB15およびB15_Rαsushiと共にインキュベートし、その後、PBMCを抗CD3-FITC(SK7)、抗CD4-PE(OKT4)、抗CD8a-eFluor 450(SK1)および抗CD56-APC(AF12-7H3)で染色し、続いて、Novocyte Advanteon Flow Cytometer(Agilent,Santa Clara,CA)を使用して分析した。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
IL-15もしくはIL-2配列またはその生物学的に活性な部分がウシ(bovine)(ウシ(cow))抗体またはそのヒト化配列の重鎖の超長CDR3領域の一部を置換しているキメラサイトカイン改変抗体融合分子が、本明細書で提供される。いくつかの態様では、超長CDR3領域は、ウシ(bovine)抗体に存在するような上行性ストーク領域、ノブ領域および下行性ストーク領域を含有し、ノブ領域の全部または一部はサイトカイン配列によって置換されている。いくつかの態様では、サイトカイン配列は、IL-2またはその生物学的に活性な部分であり、例えば、IL-2は、SEQ ID NO:165に示される配列を有する。いくつかの態様では、サイトカイン配列は、IL-15またはその生物学的に活性な部分であり、例えば、IL-15は、SEQ ID NO:1に示される配列を有する。IL15Rαの細胞外部分、例えばIL15Rα sushiドメイン(例えば、SEQ ID NO:2に示される)と連結または複合体化されたそのような抗体を含む変異体キメラIL-15改変抗体も本明細書で提供される。
【0033】
IL-15およびIL-2は、自然免疫および適応免疫の両方において重要な役割を果たす多面的サイトカインである。元来、IL-15は、IL-2と同様に、T細胞成長因子として記載された。例えば、IL-15は、ナチュラルキラー(NK)、NK-T細胞およびメモリーCD8 T細胞を含む複数のリンパ球サブセットの生成に関与している。IL-15はまた、T細胞にとって走化性であり、好中球に作用して形態学的細胞形状変化を誘導し、IL-8産生を刺激する。両サイトカインは4つのαヘリックスバンドルファミリーに属し、それらの膜受容体は、シグナル伝達を担う2つのサブユニット(IL-2R/IL-15R β鎖およびγ鎖)を共有する。IL-15は、高親和性結合α鎖(IL-15Rα)ならびに共通のIL-2R β鎖およびγ鎖から構成される3量体IL-15R複合体を介して機能する。IL-2Rβ/γ複合体は、大部分のNK細胞によって発現され、ナノモル濃度のIL-2またはIL-15によってインビトロで活性化され得る両方のサイトカインに対する中間親和性受容体である(Wei et al. J Immunol. 2001,167(1)277-282;Mortier et al. J Biol Chem. 2006,281(3):1612-1619)。
【0034】
IL-15RαおよびIL-2Rαサブユニットは、補体または接着分子にも見られる、そのN末端にいわゆる「sushi」構造ドメイン(IL-15Rαに1つおよびIL-2Rαに2つ)である細胞外部分を含有するサイトカイン受容体のサブファミリーを形成する。IL-15Rα Sushiドメインは、タンパク質-タンパク質相互作用における一般的なモチーフである。Sushiドメインは、ショートコンセンサスリピートまたは1型糖タンパク質モチーフとしても知られている。それらは、補体成分C1r、C1s、H因子およびC2mならびに非免疫学的分子である第XIII因子およびβ2-糖タンパク質を含むいくつかのタンパク質結合分子で同定されている。典型的なSushiドメインは、約60個のaa残基を有し、4つのシステインを含有する。第1のシステインは、第3のシステインとジスルフィド結合を形成し、第2のシステインは、第4のシステインとジスルフィド架橋を形成する。2つのジスルフィド結合は、タンパク質の三次構造を維持するために必須である(Kato et al. Biochemistry. 1991,30:11687、Bottenus et al. Biochemistry 1990,29:11195、Ranganathan et al. Pac. Symp. Biocomput. 2000,00:155)。高親和性受容体α(IL15Rα)は、受容体βおよびγサブユニット(IL2/15Rβおよびγc)へのIL15媒介トランスシグナリングの増加に関与している。
【0035】
いくつかの態様では、IL-2は、細胞傷害性Tリンパ球およびナチュラルキラー(NK)細胞の増殖、活性化、および場合によっては細胞傷害性を刺激する。いくつかの態様では、IL-15は、細胞傷害性Tリンパ球およびナチュラルキラー(NK)細胞の増殖、活性化、および場合によっては細胞傷害性を刺激する。IL-15は、血管漏出症候群を引き起こさず、制御性T細胞を刺激しないので、IL-2よりも良好な候補薬物であり得る。これらの活性により、IL-2およびIL-15は治療用途に望ましいが、IL-2およびIL-15は安定な可溶性タンパク質として発現することが困難であり、インビトロおよびインビボでの半減期が短い。
【0036】
提供される態様は、これらの問題に対処する。提供される態様には、IL-2もしくはIL-15サイトカイン配列またはその生物学的に活性な部分が、ウシ(bovine)抗体またはそのヒト化変異体のノブ領域の全部または一部を置換する、キメラ抗体がある。IL-15サイトカイン配列またはその生物学的に活性な部分を含有する提供される抗体は、IL15活性をさらに媒介するために、IL15Rα sushiドメインなどのIL15Rαの細胞外部分とさらに連結または複合体化され得る。IL15Rαの細胞外部分と複合体化または連結されたキメラIL2分子(例えば、B2)またはキメラIL15分子(例えば、B15)およびそれらの変異体を含む提供されるキメラ分子は、典型的なヒト抗体と同様に発現および精製することができ、IL2/15Rβおよびγcサブユニットに対する効率的な結合および活性を示すことが本明細書において見出される。特に、提供される分子は、インビトロシグナル伝達アッセイにおいてそれぞれのIL-2またはIL15可溶性モノマーサイトカインと同様に機能するが、哺乳動物細胞において容易に産生され得、安定性が増加し得る。
【0037】
そのような抗体は、炎症性疾患、障害または状態、自己免疫疾患、障害または状態、代謝性疾患、障害または状態、新生物性疾患、障害または状態、およびがんを含む様々な疾患、障害または状態の治療または予防に有用であり得る。
【0038】
本開示はまた、キメラIL-15改変抗体およびキメラIL-2改変抗体を含む提供されるキメラサイトカイン改変抗体の調製のための方法および材料を提供する。
【0039】
本出願で言及される特許文献、科学論文およびデータベースを含むすべての刊行物は、あたかも各個々の刊行物が参照により個別に組み入れられたと同程度に、すべての目的のためにその全体が参照により組み入れられる。本明細書に記載の定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、出願、公開出願および他の刊行物に記載の定義に反するかまたは矛盾する場合、本明細書に記載の定義は、参照により本明細書に組み入れられる定義よりも優先する。
【0040】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成上の目的のためだけであり、記載された主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【0041】
I. 定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語、表記ならびに他の技術的および科学的用語または用法は、特許請求される主題が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有することが意図される。場合によっては、一般に理解される意味を有する用語は、明確にするためおよび/または容易に参照するために本明細書で定義され、本明細書にそのような定義を含めることは、当技術分野で一般に理解されるものとの実質的な違いを表すと必ずしも解釈されるべきではない。
【0042】
本明細書で使用される場合、冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、冠詞の文法的対象の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例として、「要素」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0043】
本開示を通して、特許請求される主題の様々な局面は、範囲形式で提示される。範囲形式での説明は、単に便宜および簡潔さのためのものであり、特許請求される主題の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示したと見なされるべきである。例えば、値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の各介在値、およびその記載された範囲内の任意の他の記載値または介在値は、特許請求される主題内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、より小さい範囲に独立して含まれてもよく、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界を条件として、特許請求される主題内に包含される。記載された範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値の一方または両方を除外した範囲も、特許請求される主題に含まれる。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0044】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当業者によって理解され、それが使用される文脈上である程度変化する。本明細書で使用される場合、量、持続時間などの測定可能な値を指す場合の「約」は、指定された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味し、そのような変動は開示された方法を実施するのに適している。
【0045】
本明細書で互換的に使用される「超長CDR3」または「超長CDR3配列」は、ヒト抗体配列に由来しないCDR3またはCDR3配列を含む。超長CDR3は、35アミノ酸長以上、例えば40アミノ酸長以上、45アミノ酸長以上、50アミノ酸長以上、55アミノ酸長以上、または60アミノ酸長以上であり得る。典型的には、超長CDR3は重鎖CDR3(CDR-H3またはCDRH3)である。超長CDR3H3は、反芻動物(例えば、ウシ(bovine))配列のCDRH3の特徴を示す。超長CDR3の長さは、サイトカイン配列、例えばIL-15などの非抗体配列を含み得る。
【0046】
「実質的に同様」または「実質的に同じ」は、2つの数値の間の十分に高い類似度(一般に、一方は本明細書に開示される抗体に関連し、他方は参照/比較抗体に関連する)を指し、それにより、当業者は、2つの値の間の差が、前記値(例えば、Kd値)によって測定される生物学的特性の文脈内で生物学的および/または統計的有意性がほとんどまたは全くないと考えるであろう。前記2つの値の間の差は、参照/比較抗体の値の関数として、好ましくは約50%未満、好ましくは約40%未満、好ましくは約30%未満、好ましくは約20%未満、好ましくは約10%未満である。
【0047】
「結合親和性」は、一般に、分子の単一の結合部位(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の総和の強さを指す。別段示されない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体および抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数によって表すことができる。低親和性抗体は一般に抗原にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向があるのに対して、高親和性抗体は一般に抗原に速く結合し、より長く結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当技術分野で公知であり、そのいずれも本開示の目的のために使用することができる。
【0048】
ペプチドまたはポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、最大パーセント配列同一性を達成するために配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、特定のペプチドまたはポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合を指す。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するための整列は、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegAlign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者の技術の範囲内にある様々な方式で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0049】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」、および「タンパク質断片」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために互換的に使用され得る。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーに適用される。
【0050】
「アミノ酸」は、天然アミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似物およびアミノ酸模倣物を指す。天然アミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、ならびに後に改変されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、ガンマ-カルボキシグルタメートおよびO-ホスホセリンである。アミノ酸類似物は、天然アミノ酸、例えば水素に結合したアルファ炭素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基と同じ基本化学構造を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似物は、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変されたペプチド骨格を有することができるが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様に機能する化学化合物を指す。
【0051】
「保存的に改変された変異体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。「アミノ酸変異体」は、アミノ酸配列を指す。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変異体は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一または関連する(例えば、天然に隣接している)配列を指す。遺伝暗号の縮重のために、多数の機能的に同一の核酸がほとんどのタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって指定されるすべての位置で、コードされたポリペプチドを変更することなく、コドンを記載の対応するコドンの別のものに変更することができる。そのような核酸変異は、保存的に改変された変異の一種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする本明細書のすべての核酸配列は、核酸のサイレント変異も記載する。当業者は、ある特定の状況では、核酸(通常はメチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)中の各コドンを改変して、機能的に同一の分子を得ることができることを認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸のサイレント変異は、発現産物に関しては記載された配列に含まれるが、実際のプローブ配列に関しては含まれない。アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列中の単一のアミノ酸またはわずかな割合のアミノ酸を変更、付加または欠失する核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列への個々の置換、欠失または付加が、変更がアミノ酸の化学的に類似したアミノ酸による置換をもたらす場合を含む「保存的に改変された変異体」であることを認識するであろう。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野で周知である。そのような保存的に改変された変異体は、本明細書に開示される多型変異体、種間ホモログおよび対立遺伝子に加えられ、それらを排除しない。典型的には保存的置換には、1)アラニン(A)、グリシン(G)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リジン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、7)セリン(S)、トレオニン(T)、および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins(1984)を参照のこと)が含まれる。
【0052】
非ヒト(例えば、ウシ(bovine))抗体の「ヒト化」または「ヒト操作」形態は、例えば最小配列が非ヒト免疫グロブリンに由来するものを含む、ヒト免疫グロブリン配列に表されるアミノ酸を含有するキメラ抗体である。例えば、ヒト化またはヒト操作抗体は、いくつかの残基がヒト抗体の類似部位からの残基で置換された(例えば、米国特許第5,766,886号明細書を参照のこと)非ヒト(例えば、ウシ(bovine))抗体であり得る。ヒト化抗体はまた、任意で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含み得る。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、およびPresta,Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596(1992)を参照されたい。以下の総説論文およびそこに引用されている参考文献、Vaswani and Hamilton,Ann. Allergy,Asthma&Immunol. 1:105-115(1998)、Harris,Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038(1995)、Hurle and Gross,Curr. Op. Biotech. 5:428-433(1994)も参照されたい。
【0053】
抗体に関する「可変ドメイン」とは、異なる抗体間で相違するアミノ酸の配列を含有する抗体の重鎖または軽鎖の特異的Igドメインを指す。各軽鎖および各重鎖は、1つの可変領域ドメイン(VL、および、VH)を有する。可変ドメインは抗原特異性を提供し、したがって抗原認識を担う。各可変領域は、抗原結合部位ドメインおよびフレームワーク領域(FR)の一部であるCDRを含有する。
【0054】
「定常領域ドメイン」は、可変領域ドメインよりも抗体間で比較的保存されているアミノ酸の配列を含有する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。各軽鎖は、単一の軽鎖定常領域(CL)ドメインを有し、各重鎖は、CH1、CH2、CH3、および場合によってCH4を含む1つまたは複数の重鎖定常領域(CH)ドメインを含有する。全長IgA、IgDおよびIgGアイソタイプはCH1、CH2 CH3およびヒンジ領域を含有し、IgEおよびIgMはCH1、CH2 CH3およびCH4を含有する。CH1およびCLドメインは、抗体分子のFabアームを伸ばし、したがって抗原との相互作用および抗体アームの回転に寄与する。抗体定常領域は、限定されないが、例えば、様々な細胞、生体分子および組織との相互作用を介して、抗体が特異的に結合する抗原、病原体および毒素のクリアランスなどのエフェクター機能を果たすことができる。
【0055】
タンパク質の位置に関して「~に対応する」という用語は、例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸位置が配列表に記載されているような開示された配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸位置「に対応する」という記載など、構造配列整列に基づいて、またはGAPアルゴリズムなどの標準的な整列アルゴリズムを使用して、開示された配列と整列したときに同定されるヌクレオチドまたはアミノ酸位置を指す。例えば、類似の配列(例えば、断片または種変異体)の対応する残基は、構造アラインメント法による参照配列への整列によって決定することができる。配列を整列させることによって、当業者は、例えば、保存された同一のアミノ酸残基をガイドとして使用して、対応する残基を同定することができる。
【0056】
本明細書で使用される場合の「有効量」または「治療有効量」という用語は、治療される症状および/または状態を有意かつ積極的に改変する(例えば、肯定的な臨床応答を提供する)のに十分な薬学的組成物の量を意味する。薬学的組成物に使用するための活性成分の有効量は、治療される特定の状態、状態の重症度、治療期間、併用療法の性質、使用される特定の活性成分、利用される特定の薬学的に許容される賦形剤および/または担体、ならびに主治医の知識および専門的技術に伴う同様の要因によって変化する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、化合物の生物学的活性または特性を無効にせず、比較的非毒性である、担体または希釈液などの材料を指し、すなわち、材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、またはそれが含有される組成物の成分のいずれとも有害な様式で相互作用することなく個体に投与され得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、組成物は、細胞を含む2つ以上の産物、物質、または化合物の任意の混合物を指す。それは、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0059】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、本発明の少なくとも1つの化合物と、担体、安定剤、希釈液、分散剤、懸濁剤、増粘剤、および/または賦形剤などの他の化学成分との混合物を指す。薬学的組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。限定されないが、静脈内、経口、エアロゾル、非経口、眼、肺および局所投与を含む、化合物を投与する複数の技術が当技術分野に存在する。
【0060】
本明細書で使用される場合、「疾患または障害」は、限定されないが、感染、後天性状態、遺伝的状態を含む原因または状態から生じ、同定可能な症状を特徴とする生物における病理学的状態を指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、「治療する(treat)」、「治療する(treating)」または「治療(treatment)」という用語は、疾患または障害を改善すること、例えば、疾患または障害、例えば障害の根本原因またはその臨床症状の少なくとも1つの発症を遅延または停止または低減することを指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトなどの哺乳動物を含む動物を指す。対象および患者という用語は、互換的に使用することができる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「任意の(optional)」または「任意で(optionally)」は、続いて記載される事象または状況が発生するか、または発生しないことを意味し、その説明は、前記事象または状況が発生する場合と発生しない場合とを含む。例えば、任意で置換されている基は、その基が非置換であるかまたは置換されていることを意味する。
【0064】
II. キメラサイトカイン改変抗体
IL-2配列もしくはその生物学的に活性な部分、またはIL-15配列もしくはその生物学的に活性な部分などのサイトカイン配列が、ウシ(bovine)(ウシ(cow))抗体またはそのヒト化配列の重鎖の超長CDR3領域の一部を置換しているキメラ改変抗体が、本明細書で提供される。提供されるキメラ改変IL-15抗体はまた、IL15Rαの細胞外部分、例えば、IL15Rα sushiドメイン(例えば、SEQ ID NO:2に示される)に連結または複合体化された、そのような抗体を含む。
【0065】
提供される抗体は、最大70アミノ酸長以上の超長CDR3配列を含有する独特の重鎖可変領域配列を有するウシ(bovine)またはウシ(cow)抗体の特徴を示す。ウシ(cattle)において同定されたCDR3配列には、BLV1 H12(SEQ ID NO:25を参照)、BLV5B8(SEQ ID NO:30を参照)、BLV5D3(SEQ ID NO:31を参照)およびBLV8C1 1(SEQ ID NO:32を参照)(例えば、Saini,et al.(1999)Eur. Immunol. 29:2420-2426、およびSaini and Kaushik(2002)Scand. J. Immunol. 55:140-148を参照)、BF4E9(SEQ ID NO:33を参照)およびBF1 H1(SEQ ID NO:34を参照)(例えば、Saini and Kaushik(2002)Scand. J. Immunol. 55:140-148を参照)、およびF18(SEQ ID NO:35を参照)(例えば、Berens,et al.(1997)Int. Immunol. 9:189-199を参照)と呼ばれるものが含まれる。ウシ(cattle)において同定された超長CDR3配列を含む例示的な抗体可変領域配列としては、BLV1H12が挙げられる。いくつかの態様では、BLV1H12超長CDR3配列は、SEQ ID NO:25によってコードされる。例示的なウシ(bovine)抗体としては、ウシ(bovine)抗体BLVH12(例えば、SEQ ID NO:26に示される重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:27に示される軽鎖可変領域)、ならびにウシ(bovine)抗体BLV5B8(例えば、SEQ ID NO:28に示される重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:29に示される軽鎖可変領域)が挙げられる。
【0066】
ウシ(cow)抗体では、超長CDR3配列は、2つの12残基の逆平行βストランド(上行性ストランドおよび下行性ストランド)から構成される「ストーク」と、ストークの上に存在する39残基のジスルフィドに富む「ノブ」とから、標準的な抗体パラトープとは大幅に異なる異常なアーキテクチャを有するサブドメインが形成される、構造を形成する。長い逆平行βリボンは、ノブドメインを抗体の主要な骨格と連結するブリッジとして機能する。超長CDR3の独特の「ストークおよびノブ」構造は、2つの逆平行βストランド、すなわち上行性および下行性ストークストランドをもたらし、抗体表面から突出してミニ抗原結合ドメインを形成するジスルフィド結合ノブを支持する。いくつかの態様では、超長CDR3抗体は、順に、上行性ストーク領域、ノブ領域および下行性ストーク領域を含む。
【0067】
独特の「ストーク」およびノブの構造的特徴は、異なるウシ(bovine)またはウシ(cow)の超長CDR3配列にわたって保存されている。ストークの上行性ストランドは、主に疎水性側鎖と、上行性ストランドを開始させる比較的保存された「T(T/S)VHQ」モチーフおよびその変異体を基部に含む。この保存されたT(T/S)VHQモチーフおよびその変異体は、典型的には、様々なウシ(bovine)またはウシ(cow)配列の可変領域配列中の最初のシステイン残基の後に見出される。保存されたT(T/S)VHQモチーフは、可変数の残基によって、各ノブの基部でβターンを形成するモチーフ(BLV1H12のCPDG)に接続されている。ストークは可変長であり得、ストーク部の下行性ストランドは、長い溶媒露出した2本のストランドのβリボン(Wang et al. Cell. 2013,153(6):1379-1393)の安定性に寄与し得る、スタッキング相互作用によってラダーを形成する交互の芳香族を含む。
【0068】
本明細書で提供されるキメラ抗体の重鎖の超長CDR3配列は、IL-2配列もしくはその生物学的に活性な部分またはIL-15配列もしくはその生物学的に活性な部分などのサイトカイン配列を含有するノブドメインによって互いに結合された、上行性ストランドおよび下行性ストランドを含有するストーク成分を含有する。いくつかの態様では、提供される抗体は、重鎖に超長CDR3を有するが、超長CDR3が抗体配列に由来する超長CDR3と比較して非抗体サイトカイン配列を含有するように改変されている、ウシ(bovine)もしくはウシ(cow)配列またはそのヒト化配列に抗体配列が基づくかまたは由来するサイトカイン(例えば、IL-2またはIL-15)改変超長CDR3融合物を含む。いくつかの態様では、非抗体配列は、IL-2またはその生物学的に活性な部分であり、IL-2またはその生物学的に活性な部分は、超長CDR3の部分に挿入され得る。いくつかの態様では、非抗体配列は、IL-15またはその生物学的に活性な部分であり、IL-15またはその生物学的に活性な部分は、超長CDR3の部分に挿入され得る。例えば、抗体骨格は、ウシ(bovine)抗体配列またはそのヒト化配列に由来するかまたは基づくことができるが、ウシ(bovine)抗体配列またはそのヒト化配列の重鎖の超長CDR3のノブドメインの一部に挿入されるかまたは置換するサイトカイン配列、例えばIL-2配列もしくはその生物学的に活性な部分またはIL-15配列もしくはその生物学的に活性な部分を含む。
【0069】
いくつかの態様では、IL-15配列またはその生物学的に活性な部分は、CDR3の一部(例えば、CDR3の1つまたは複数のアミノ酸)またはCDR3配列全体(例えば、CDR3のアミノ酸の全部または実質的に全部)を任意で除去することを含めて、抗体のCDR3配列のノブ領域に挿入される。いくつかの態様では、IL-15またはその生物学的に活性な部分は、超長CDR3(図1Aおよび図1B)のノブドメインに挿入され得る。いくつかの態様では、IL-15またはその生物学的に活性な部分は、上行性ストークストランドと下行性ストークストランドとの間に含有される。
【0070】
いくつかの態様では、IL-2配列またはその生物学的に活性な部分は、CDR3の一部(例えば、CDR3の1つまたは複数のアミノ酸)またはCDR3配列全体(例えば、CDR3のアミノ酸の全部または実質的に全部)を任意で除去することを含めて、抗体のCDR3配列のノブ領域に挿入される。いくつかの態様では、IL-2またはその生物学的に活性な部分は、超長CDR3(図8Aおよび図8B)のノブドメインに挿入され得る。いくつかの態様では、IL-2またはその生物学的に活性な部分は、上行性ストークストランドと下行性ストークストランドとの間に含有される。
【0071】
いくつかの態様では、超長CDR3は、35アミノ酸長以上(例えば、40以上、45以上、50以上、55以上、60以上)であり得る。
【0072】
本明細書で提供される態様のいずれも、PCT/US2013/020910、PCT/US2014/047315またはPCT/US2013/020903に記載されている特徴のいずれかを含有することができ、これらのすべては、参照によりその全体が組み入れられる。
【0073】
A. 重鎖領域
提供される態様では、提供されるキメラサイトカイン改変抗体の重鎖は、サイトカイン配列、例えばIL-2もしくはその生物学的に活性な部分またはIL-15もしくはその生物学的に活性な部分が、超長CDR3配列の少なくとも一部に挿入されるかまたはそれを置換する、超長CDR3を有するフレームワーク配列に基づくかまたは由来する。抗体フレームワークは、VH-VLなどのウシ(bovine)配列、ヒト生殖細胞系配列、または改変ヒト生殖細胞系配列に由来し得る。
【0074】
いくつかの態様では、提供されるキメラサイトカイン改変抗体の重鎖は、サイトカイン配列、例えばIL-2もしくはその生物学的に活性な部分またはIL-15もしくはその生物学的に活性な部分が、ウシ(bovine)またはウシ(cow)配列の超長CDR3配列の少なくとも一部に挿入され得るかまたはそれを置換し得る、ウシ(bovine)またはウシ(cow)フレームワーク配列に基づくかまたは由来する。抗体は、サイトカイン配列を含有する超長CDR3融合物を含有するBLV1H12抗体の少なくとも一部を含み得る。代替的にまたは追加的に、抗体は、サイトカイン配列を含有する超長CDR3融合物を含有するBLV5D3、BLV8C11、BF1H1、BLV5B8および/またはF18抗体の少なくとも一部を含む。いくつかの態様では、IL-15またはその生物学的に活性な部分は、SEQ ID NO:26またはSEQ ID NO:28に示される配列の超長CDR3の少なくとも一部に挿入され得るかまたは置換し得る。
【0075】
いくつかの態様では、提供されるキメラIL-15改変抗体の重鎖は、ウシ(bovine)またはウシ(cow)配列と比較してヒト化されているヒト化重鎖フレームワーク配列に基づくかまたは由来する。いくつかの態様では、提供されるキメラサイトカイン改変抗体の重鎖は、ウシ(bovine)またはウシ(cow)配列に対する配列または構造類似性を示すヒト重鎖フレームワーク配列に基づくかまたは由来する。場合によっては、ヒト化は、上記のいずれかなどのウシ(bovine)超長CDR3に由来する超長CDR3配列をヒトフレームワークへと操作することを含み得る。ヒトフレームワークは、生殖細胞系起源のものであり得るか、または非生殖細胞系(例えば、変異または親和性成熟)配列に由来し得る。本明細書に開示されるものを含む、当業者に周知の遺伝子操作技術を使用して、ヒトフレームワークおよび非ヒト超長CDR3を含有するハイブリッドDNA配列を生成することができる。7つのファミリーのうちの1つに由来するV領域遺伝子によってコードされ得るヒト抗体とは異なり、超長CDR3配列を産生するウシ(bovine)抗体は、ヒトVH4ファミリーに最も相同であると考えられ得る単一のV領域ファミリーを利用するようである。特にウシ(cattle)由来の超長CDR3配列をヒト化して超長CDR3を含む抗体を産生する態様では、VH4ファミリー由来のヒトV領域配列をウシ(bovine)由来の超長CDR3配列に遺伝的に融合することができる。ヒト抗体遺伝子座における例示的なVH4生殖細胞系遺伝子配列としては、限定されないが、VH4-39、VH4-59*03、VH4-34*02またはVH4-34*09ヒト重鎖生殖細胞系配列が挙げられる。いくつかの態様では、ヒト重鎖生殖細胞系配列は、SEQ ID NO:68~71のいずれか1つに示される配列である。いくつかの態様では、ヒト重鎖生殖細胞系配列は、SEQ ID NO:169~172のいずれか1つに示される配列によってコードされる配列である。
【0076】
いくつかの態様では、IL-2もしくはその生物学的に活性な部分またはIL-15もしくはその生物学的に活性な部分などのサイトカイン配列は、SEQ ID NO:68~71に示される配列を含むヒト生殖細胞系配列の超長CDR3の少なくとも一部に挿入され得るかまたはそれを置換し得る。
【0077】
いくつかの態様では、提供される抗体は、ヒトVH4フレームワーク配列と、ウシ(bovine)由来の超長CDR3との融合物を含み、ノブの少なくとも一部がIL-15もしくはIL-2またはその生物学的に活性な部分で置換されている。いくつかの局面では、そのような融合物は、以下の段階によって生成することができる。最初に、V領域遺伝子配列の第2のシステインが、第2のシステインをコードするヌクレオチド配列と共に同定される。一般に、第2のシステインは、CDR3の2残基上流(N末端)のフレームワークとCDR3との境界をマークする。第2に、同様にCDR3の2残基上流(N末端)をマークする、ウシ(bovine)由来V領域配列中の第2のシステインが同定される。第3に、ヒトV領域をコードする遺伝物質を、超長CDR3をコードする遺伝子配列と組み合わせる。このように、ヒトV領域配列のフレーム内に超長CDR3配列が配置される遺伝子融合を行うことができる。好ましくは、超長CDR3を含むヒト化抗体は、アミノ酸組成が可能な限りヒトに近い。任意で、J領域配列は、ウシ(bovine)由来配列からヒト配列に変異され得る。また、任意で、ヒト化重鎖をヒト軽鎖と対にしてもよい。
【0078】
いくつかの態様では、抗体またはその結合断片は、式V1-X-V2の配列を含む重鎖可変領域を含み、重鎖のV1領域は、2つのCDR領域(CDR1およびCDR3)を隔てる3つのフレームワーク領域(例えばFR-1、FR-2およびFR-3)を含有する重鎖配列部分を含み、Xは、IL-2配列もしくはその生物学的に活性な部分またはIL-15配列もしくはその生物学的に活性な部分を含むことができる超長CDR3配列を含み、V2は、FR-4を含む重鎖の一部を含む。
【0079】
いくつかの態様では、V1領域は、式FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3を含む。いくつかの態様では、V1領域は、(i)SEQ ID NO:26(SEQ ID NO:5のヌクレオチドによってコードされる)のアミノ酸を含むウシ(bovine)重鎖領域、または(i)SEQ ID NO:12~19を含むヒト生殖細胞系可変領域を含むヒト化重鎖領域からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0080】
いくつかの態様では、Xは、IL-15配列またはその生物学的に活性な部分(例えば、ヒトIL-15配列またはその生物学的に活性な部分)を含むことができる超長CDR3配列を含む。いくつかの態様では、IL-15配列は、SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも86%もしくは少なくとも約86%、少なくとも87%もしくは少なくとも約87%、少なくとも88%もしくは少なくとも約88%、少なくとも89%もしくは少なくとも約89%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも91%もしくは少なくとも約91%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも93%もしくは少なくとも約93%、少なくとも94%もしくは少なくとも約94%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、少なくとも96%もしくは少なくとも約96%、少なくとも97%もしくは少なくとも約97%、少なくとも98%もしくは少なくとも約98%、少なくとも99%もしくは少なくとも約99%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。いくつかの態様では、IL-15配列は、SEQ ID NO:1に見出されるアミノ酸配列を含む。
【0081】
いくつかの態様では、IL-15配列は、インビトロアッセイまたはインビボなどで、細胞傷害性Tリンパ球およびナチュラルキラー(NK)細胞の増殖、活性化または細胞傷害性を刺激する活性を示す。いくつかの態様では、IL-15配列は、インビトロ結合アッセイなどにおいて、IL2/15Rβおよび/またはγcサブユニットへの結合を示す。いくつかの態様では、活性または結合は、組換えIL-15モノマーと類似しているか、または組換えIL-15モノマーと比較して保持されている。
【0082】
いくつかの態様では、IL-15配列または生物学的に活性な部分は、上行性ストーク領域と下行性ストーク領域との間の超長CDR3のノブに挿入される。IL-15配列は、ストーク領域同士の間に配置されてもよく、IL-15配列は、各ストーク領域に直接的または間接的に連結される。いくつかの態様では、ストーク配列の一方または両方への連結は、リンカーを介して間接的である。リンカーは、(GGGGS)のアミノ酸配列を含むことができ、式中、n=1~5である。あるいは、リンカーは、(GSG)n、GGGSGGGGSまたはGGGGSGGGSのアミノ酸配列を含む。場合によっては、リンカーは配列GGSまたはGSGを有する。
【0083】
いくつかの態様では、Xは、IL-2配列またはその生物学的に活性な部分(例えば、ヒトIL-2配列またはその生物学的に活性な部分)を含むことができる超長CDR3配列を含む。いくつかの態様では、IL-2配列は、SEQ ID NO:165に示すアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:165に示すアミノ酸配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも86%もしくは少なくとも約86%、少なくとも87%もしくは少なくとも約87%、少なくとも88%もしくは少なくとも約88%、少なくとも89%もしくは少なくとも約89%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも91%もしくは少なくとも約91%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも93%もしくは少なくとも約93%、少なくとも94%もしくは少なくとも約94%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、少なくとも96%もしくは少なくとも約96%、少なくとも97%もしくは少なくとも約97%、少なくとも98%もしくは少なくとも約98%、少なくとも99%もしくは少なくとも約99%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。いくつかの態様では、IL-2配列は、SEQ ID NO:165に見出されるアミノ酸配列を含む。
【0084】
いくつかの態様では、IL-2配列は、インビトロアッセイまたはインビボなどで、細胞傷害性Tリンパ球およびナチュラルキラー(NK)細胞の増殖、活性化または細胞傷害性を刺激する活性を示す。いくつかの態様では、IL-2配列は、インビトロ結合アッセイなどにおいて、IL2/15Rβおよび/またはγcサブユニットへの結合を示す。いくつかの態様では、活性または結合は、組換えIL-2モノマーと類似しているか、または組換えIL-2モノマーと比較して保持されている。
【0085】
いくつかの態様では、IL-2配列または生物学的に活性な部分は、上行性ストーク領域と下行性ストーク領域との間の超長CDR3のノブに挿入される。IL-2配列は、ストーク領域同士の間に配置されてもよく、IL-2配列は、各ストーク領域に直接的または間接的に連結される。いくつかの態様では、ストーク配列の一方または両方への連結は、リンカーを介して間接的である。リンカーは、(GGGGS)のアミノ酸配列を含むことができ、式中、n=1~5である。あるいは、リンカーは、(GSG)n、GGGSGGGGSまたはGGGGSGGGSのアミノ酸配列を含む。場合によっては、リンカーは配列GGSまたはGSGを有する。
【0086】
超長CDR3は、CDR3のノブドメインの少なくとも一部、CDR3のストークドメインの少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを含み得る。CDR3のノブドメインの一部は、超長CDR3のノブドメインに由来する1つまたは複数の保存されたモチーフを含み得る。CDR3のストークドメインは、超長CDR3のストークドメインに由来する1つまたは複数の保存されたモチーフを含み得る。
【0087】
上記または下記の態様の各々またはいずれかの局面では、超長CDR3は、35アミノ酸長以上、40アミノ酸長以上、45アミノ酸長以上、50アミノ酸長以上、55アミノ酸長以上、または60アミノ酸長以上である。上記または下記の態様の各々またはいずれかのいくつかの態様では、超長CDR3は、35アミノ酸長以上である。
【0088】
いくつかの態様では、超長CDR3を含む重鎖のX部分は、モチーフX1X2X3X4X5-[サイトカイン配列]-(XaXb)zモチーフを含む。いくつかの態様では、超長CDR3は、45アミノ酸長以上である。いくつかの態様では、1つまたは複数のさらなるアミノ酸が、X1X2X3X4X5モチーフとサイトカイン配列との間および/または(XaXb)zモチーフとサイトカイン配列との間に存在し得る。
【0089】
いくつかの態様では、X1X2X3X4X5モチーフは、上行性ストークストランドの全部または一部である。いくつかの態様では、上行性ストークストランド上のX1X2X3X4X5モチーフは、TTVHQ(SEQ ID NO:36)、TSVHQ(SEQ ID NO:37)またはSEQ ID NO:38~67のいずれか1つから選択される配列を含む。いくつかの態様では、上行性ストークストランドは、SEQ ID NO:72~75またはSEQ ID NO:158から選択される配列を含む。いくつかの態様では、超長CDR3は、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:81~121またはSEQ ID NO:157によってコードされる上行性ストーク領域を含む。いくつかの態様では、モチーフは、CX1X2X3X4X5で示されるなどの、N末端システイン(CysまたはC)残基を含む。例えば、場合によっては、SEQ ID NO:36~67、72~75またはSEQ ID NO:158のいずれかによってコードされる上行性ストーク領域は、N末端Cys残基をさらに含有し得る。そのような例示的な上行性ストーク領域は、SEQ ID NO:159に示されている。
【0090】
いくつかの態様では、(XaXb)zモチーフは、下行性ストークストランドの一部であり、式中、Xaは任意のアミノ酸残基であり、Xbは、チロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、およびヒスチジン(H)からなる群から選択される芳香族アミノ酸であり、zは1~4である。いくつかの態様では、下行性ストークストランドは、式YXYXYXを有する交互の芳香族を含み、式中、Xは任意のアミノ酸である。いくつかの態様では、下行性ストークストランドは、SEQ ID NO:76~80またはSEQ ID NO:161に含有される配列を含む。いくつかの態様では、超長CDR3は、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:122~149またはSEQ ID NO:160によってコードされる下行性ストーク領域を含む。
【0091】
いくつかの態様では、超長CDR3は、SEQ ID NO:9によってコードされるアミノ酸配列を有する上行性ストーク領域、SEQ ID NO:1によって示されるIL15サイトカイン配列、およびSEQ ID NO:10によってコードされるアミノ酸配列を有する下行性ストーク領域を順に含む。いくつかの態様では、超長CDR3は、SEQ ID NO:157によってコードされるアミノ酸配列を有する上行性ストーク領域、SEQ ID NO:1によって示されるIL15サイトカイン配列、およびSEQ ID NO:160によってコードされるアミノ酸配列を有する下行性ストーク領域を順に含む。
【0092】
いくつかの態様では、超長CDR3は、SEQ ID NO:9によってコードされるアミノ酸配列を有する上行性ストーク領域、SEQ ID NO:165によって示されるIL2サイトカイン配列、およびSEQ ID NO:10によってコードされるアミノ酸配列を有する下行性ストーク領域を順に含む。いくつかの態様では、超長CDR3は、SEQ ID NO:157によってコードされるアミノ酸配列を有する上行性ストーク領域、SEQ ID NO:165によって示されるIL2サイトカイン配列、およびSEQ ID NO:160によってコードされるアミノ酸配列を有する下行性ストーク領域を順に含む。
【0093】
いくつかの態様では、重鎖のV2領域は、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0094】
特定の態様では、本明細書で提供されるキメラIL-15改変抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:7に示されるヌクレオチドの配列によってコードされる可変重鎖配列、またはSEQ ID NO:7に示されるヌクレオチド配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも86%もしくは少なくとも約86%、少なくとも87%もしくは少なくとも約87%、少なくとも88%もしくは少なくとも約88%、少なくとも89%もしくは少なくとも約89%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも91%もしくは少なくとも約91%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも93%もしくは少なくとも約93%、少なくとも94%もしくは少なくとも約94%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、少なくとも96%もしくは少なくとも約96%、少なくとも97%もしくは少なくとも約97%、少なくとも98%もしくは少なくとも約98%、少なくとも99%もしくは少なくとも約99%の配列同一性を示すヌクレオチドの配列を含有し、IL-15配列を含有する改変超長CDR3が含有される。いくつかの態様では、本明細書で提供されるキメラIL-15改変抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:7に示されるヌクレオチドの配列によってコードされる可変重鎖配列を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供されるキメラIL-15改変抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:7に示されるヌクレオチドの配列によってコードされる可変重鎖配列からなるか、またはそれから本質的になる。
【0095】
いくつかの態様では、重鎖は、ヒト定常領域に結合している記載の可変重鎖を含む。いくつかの態様では、ヒト定常領域は、CH1-CH2-CH3定常ドメインを含む。いくつかの態様では、ヒト定常領域はヒトIgG1のものである。
【0096】
B. 軽鎖領域
いくつかの態様では、抗体または抗原結合断片は軽鎖可変領域をさらに含む。いくつかの態様では、キメラサイトカイン改変抗体可変鎖は、ウシ(bovine)配列に基づき、ウシ(bovine)抗体の可変軽鎖と対になる。別の態様では、本開示は、ヒト化超長CDR3重鎖とウシ(bovine)軽鎖との対形成を提供する。特定の態様では、軽鎖はラムダ軽鎖である。
【0097】
いくつかの態様では、可変軽鎖は、ウシ(bovine)抗体の可変軽鎖、例えばBLVH12、BLV5D3、BLV8C11、BF1H1、BLV5B8および/またはF18の可変軽鎖である。いくつかの態様では、軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:27または29のポリペプチド配列に基づくかまたは由来する配列を含み得る。いくつかの態様では、軽鎖ポリペプチド配列は、SEQ ID NO:8のDNA配列に基づくかまたは由来するDNA配列によってコードされる。いくつかの態様では、軽鎖ポリペプチド配列は、SEQ ID NO:168のDNA配列に基づくかまたは由来するDNA配列によってコードされる。
【0098】
いくつかの態様では、軽鎖は、ヒトラムダ軽鎖定常領域(例えば、SEQ ID NO:155に示される)に結合しているウシ(bovine)抗体の可変軽鎖を含む。いくつかの態様では、BLV1H12軽鎖可変領域の一部(例えば、SEQ ID NO:8またはSEQ ID NO:168に示される)は、ヒトラムダ軽鎖定常領域と結合される。
【0099】
いくつかの態様では、軽鎖は、ヒト化軽鎖であるか、またはヒト軽鎖である。態様では、本開示は、超長CDR3を含むヒト化重鎖とヒト軽鎖との対形成を提供する。いくつかの態様では、軽鎖は、ウシ(bovine)超長CDR3重鎖と対形成することが知られているウシ(bovine)軽鎖と相同である。ウシ(Bos Taurus)由来のラムダ領域に相同なVL1-47、VL1-40、VL1-51、VL2-18を含むいくつかのヒトVL配列を上記の配列と対にするために使用することができる。いくつかの態様では、軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:156または173~176のいずれか1つに示される配列である。いくつかの態様では、軽鎖可変配列は、SEQ ID NO:177~180のいずれか1つに示される配列によってコードされる配列である。いくつかの態様では、軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:156に示されるVL1-51生殖細胞系配列の可変領域を含む。
【0100】
いくつかの態様では、軽鎖可変領域は、1つまたは複数のアミノ酸改変を含有する、上記のいずれかなどのヒト生殖細胞系軽鎖配列である。そのような改変は、ヒト軽鎖中の特定のアミノ酸残基の、ウシ(bovine)軽鎖配列中の対応する位置の残基への置換を含み得る。改変軽鎖は、超長CDR3を含む抗体の収率を改善し、および/またはその結合特異性を増加させ得る。いくつかの態様では、改変は、Kabatナンバリングに基づくアミノ酸置換S2A、T5N、P8S、A12G、A13SおよびP14Lの1つまたは複数を含む。いくつかの態様では、改変は、Kabatナンバリングに基づくアミノ酸置換S2A、T5N、P8S、A12G、A13SおよびP14Lを含む。いくつかの態様では、改変はCDR1にあり、アミノ酸置換I29VおよびN32Gを含む。いくつかの態様では、改変はCDR2にあり、DNNのGDTへの置換を含む。いくつかの態様では、改変は、n個のCDR2であり、GDTSRAに対する置換DNNKRPを含む。いくつかの態様では、改変は、前述のいずれかの組み合わせを含む。例えば、ヒト生殖細胞系軽鎖配列の提供される改変は、Kabatナンバリングに基づくアミノ酸置換S2A、T5N、P8S、A12G、A13SおよびP14LならびにCDR2におけるDNNのGDTへの置換を含む。
【0101】
いくつかの態様では、軽鎖は、ヒトラムダ軽鎖定常領域(例えば、SEQ ID NO:155に示される)に結合している記載のヒト化可変軽鎖を含む。いくつかの態様では、改変ヒト生殖細胞系軽鎖などの軽鎖可変領域の一部は、ヒトラムダ軽鎖定常領域と結合される。
【0102】
C. IL-15Rα sushiドメイン
いくつかの態様では、本明細書で提供されるキメラインターロイキン15抗体分子は、IL-15高親和性受容体α(IL15Rα)の全部または一部、例えばIL15Rαの細胞外ドメインを含有する部分、例えばIL15Rα sushiドメインとさらに連結または複合体化され得る。いくつかの態様では、IL-15サイトカイン配列は、IL-15高親和性受容体α(IL15Rα)の全部または一部に連結されている。いくつかの態様では、IL15Rαは、受容体βおよびγサブユニット(IL2/15Rβおよびγc)へのトランスシグナリングを増加させるように発現される。IL-15高親和性受容体は、IL15Rα sushiドメインを含む。いくつかの態様では、IL15Rα sushiドメインは、SEQ ID NO:2に示される配列を含む。
【0103】
いくつかの態様では、IL15Rαの細胞外ドメイン、例えばIL15Rα sushiドメインなどと複合体化されている、超長CDR3のノブの全部または一部を置換する(例えば、上行性ストークと下行性ストークとの間のノブ領域に挿入される)IL-15配列を重鎖またはその可変配列が含むキメラIL-15改変抗体または抗原結合断片が、本明細書で提供される。いくつかの態様では、キメラIL-15改変抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:15に示されるIL15Rα sushiドメインと複合体化されている。そのような抗体分子は、IL15Rα細胞外ドメイン、例えば、SEQ ID NO:2に示されるものなどのsushiドメインを、宿主細胞における重鎖領域および軽鎖領域と共発現させることによって生成され得る。
【0104】
いくつかの態様では、IL-15配列が超長CDR3のノブの全部または一部を置換する(例えば、上行性ストークと下行性ストークとの間のノブ領域に挿入される)重鎖またはその可変配列と、IL15Rαの細胞外ドメイン、例えばIL15Rα sushiドメインに連結されている軽鎖またはその可変配列とを含有する、キメラIL-15改変抗体または抗原結合断片が、本明細書で提供される。いくつかの態様では、キメラIL-15改変抗体または抗原結合断片は、SEQ ID NO:2に示されるIL15Rα sushiドメインに連結される。IL15Rαの細胞外ドメイン(例えば、IL15Rα sushiドメイン、例えば、SEQ ID NO:2に示されるもの)間の連結は、ペプチドリンカーを介する。いくつかの態様では、リンカーは、グリシンリンカーまたはグリシン-セリン(GS)リンカーなどの柔軟なリンカーである。いくつかの態様では、ペプチドリンカーはGSリンカーである。例示的なGSリンカーとしては、限定されないが、SEQ ID NO:150~154に示される配列、またはSEQ ID NO:163もしくはSEQ ID NO:164に示されるヌクレオチド配列によってコードされる配列のいずれかが挙げられる。いくつかの態様では、リンカーはGSである。
【0105】
いくつかの態様では、本明細書で提供されるキメラIL-15改変抗体または抗原結合断片は、IL-15配列が超長CDR3のノブの全部または一部を置換する(例えば、上行性ストークと下行性ストークとの間のノブ領域に挿入される)重鎖またはその可変配列と、SEQ ID NO:3によってコードされるアミノ酸の配列を含む軽鎖またはその可変配列とを含有する。
【0106】
D. ベクター、宿主細胞および組換え方法
本明細書に開示される抗体またはその断片の組換え産生のために、それをコードする核酸を単離し、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入する。抗体をコードするDNAは、従来の手順(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)を用いて容易に単離され、配列決定される。例示的な態様では、超長CDR3を含む抗体、超長CDR3を含む可変領域、または超長CDR3をコードする核酸を単離し、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入する。多くのベクターが利用可能である。ベクターの選択は、使用される宿主細胞に部分的に依存する。一般に、好ましい宿主細胞は、原核生物または真核生物(一般に哺乳動物)起源のものである。IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE定常領域を含む任意のアイソタイプの定常領域をこの目的のために使用することができ、そのような定常領域は任意のヒトまたは動物種から得ることができることが理解されよう。
【0107】
真核生物ウイルス由来の調節要素を含有する発現ベクターは、典型的には、真核生物発現ベクター、例えばSV40ベクター、パピローマウイルス(papilloma virus)ベクター、およびエプスタインバーウイルス(Epstein-Barr virus)由来のベクターにおいて使用される。他の例示的な真核生物ベクターとしては、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルス(baculovirus)pDSVE、およびCMVプロモーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(murine mammary tumor virus)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(Rous sarcoma virus)プロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核生物細胞での発現に有効であることが示されている他のプロモーターの指示下でタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが挙げられる。
【0108】
いくつかの発現系は、チミジンキナーゼおよびジヒドロ葉酸レダクターゼなどの遺伝子増幅を提供するマーカーを有する。あるいは、遺伝子増幅を伴わない高収率発現系も適しており、例えば、昆虫細胞においてバキュロウイルスベクターを使用し、ポリヘドリンプロモーターまたは他の強力なバキュロウイルスプロモーターの指示下で部分的にヒト超長CDR3抗体鎖をコードする核酸配列を用いる。
【0109】
本明細書に開示される抗体のポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチド配列は、標準的な組換え技術を使用して得ることができる。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成装置またはPCR技術を使用して合成することができる。得られたら、ポリペプチドをコードする配列を、原核生物宿主において異種ポリヌクレオチドを複製および発現することができる組換えベクターに挿入する。本開示の目的のために、当技術分野において入手可能かつ公知の多くのベクターを使用することができる。適切なベクターの選択は、ベクターに挿入される核酸のサイズおよびベクターで形質転換される特定の宿主細胞に主に依存する。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅もしくは発現、またはその両方)およびそれが存在する特定の宿主細胞とのその適合性に応じて、様々な成分を含有する。ベクター成分には、一般に、限定されないが、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸挿入物および転写終結配列が含まれる。さらに、超長CDR3を含むV領域を、任意でC領域に融合して、定常領域を含む抗体を産生することができる。
【0110】
一般に、宿主細胞に適合する種に由来するレプリコンおよび制御配列を含有するプラスミドベクターが、これらの宿主に関連して使用される。ベクターは、通常、複製部位、ならびに形質転換細胞において表現型選択を提供することができるマーキング配列を有する。例えば、大腸菌(E.coli)は、典型的には、大腸菌種に由来するプラスミドであるpBR322を使用して形質転換される。pBR322は、アンピシリン(Amp)およびテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含有し、したがって形質転換した細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBR322、その誘導体、または他の微生物プラスミドもしくはバクテリオファージはまた、内因性タンパク質の発現のために微生物によって使用され得るプロモーターを含有し得るか、または含有するように改変され得る。特定の抗体の発現に使用されるpBR322誘導体の例が記載されている(例えば、米国特許第5,648,237号明細書を参照)。
【0111】
さらに、宿主微生物に適合するレプリコンおよび制御配列を含有するファージベクターを、これらの宿主に関連して形質転換ベクターとして使用することができる。例えば、λGEM(商標)-11などのバクテリオファージを、大腸菌LE392などの感受性宿主細胞を形質転換するために使用することができる組換えベクターの作製に利用することができる。
【0112】
本明細書に開示される発現ベクターは、ポリペプチド成分の各々をコードする2つ以上のプロモーター-シストロン対を含み得る。プロモーターは、その発現を変調するシストロンの上流(5’)に位置する非翻訳調節配列である。原核生物プロモーターは、典型的には、誘導性および構成性の2つのクラスに分類される。誘導性プロモーターは、培養条件の変化、例えば栄養素の有無または温度の変化に応答して、その制御下でシストロンの転写レベルの増加を開始するプロモーターである。
【0113】
様々な潜在的な宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが周知である。選択されたプロモーターは、制限酵素消化を介してソースDNAからプロモーターを除去し、単離されたプロモーター配列を本明細書に開示されるベクターに挿入することによって、軽鎖または重鎖をコードするシストロンDNAに機能的に連結され得る。天然プロモーター配列および多くの異種プロモーターの両方を、標的遺伝子の増幅および/または発現を指示するのに使用することができる。いくつかの態様では、天然の標的ポリペプチドプロモーターと比較して、発現された標的遺伝子のより大きな転写およびより高い収率を一般に可能にするので、異種プロモーターが利用される。
【0114】
原核生物宿主での使用に適したプロモーターとしては、ara Bプロモーター、PhoAプロモーター、β-ガラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ならびにtacまたはtrcプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。しかしながら、細菌において機能性である他のプロモーター(他の公知の細菌またはファージプロモーターなど)も同様に適している。それらのヌクレオチド配列は公開されており、それにより、当業者は、リンカーまたはアダプターを使用して標的軽鎖および重鎖をコードするシストロンにそれらを機能的にライゲーションして(例えば、Siebenlist et al.(1980)Cell 20:269)、任意の必要な制限部位を供給することが可能になる。
【0115】
適切な細菌プロモーターは当技術分野で周知であり、上記のSambrookおよびRussell、ならびに上記のAusubelらの科学文献に十分に記載されている。組換え触媒ポリペプチドの抗体鎖を発現させるための細菌発現系は、例えば、大腸菌、バチルス属(Bacillus)種、およびサルモネラ菌(Salmonella)(Palva et al.,Gene,22:229-235(1983)、Mosbach et al.,Nature,302:543-545(1983))において利用可能である。
【0116】
本明細書に開示される一局面では、組換えベクター内の各シストロンは、発現されたポリペプチドの、膜を横切る転座を指示する分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの成分であってもよいし、ベクターに挿入された標的ポリペプチドDNAの一部であってもよい。シグナル配列は、宿主細胞によって認識および処理される(例えば、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものでなければならない。異種ポリペプチドにもともとあるシグナル配列を認識および処理しない原核生物宿主細胞の場合、シグナル配列は、例えばPelB、OmpA、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、または熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、およびMBPから選択される原核生物シグナル配列で置換される。本明細書に開示される一態様では、発現系の両方のシストロンで使用されるシグナル配列は、STIIシグナル配列またはその変異体である。
【0117】
別の局面では、本開示による免疫グロブリンの産生は、宿主細胞の細胞質で起こり得、したがって、各シストロン内の分泌シグナル配列の存在を必要としない。その点に関して、免疫グロブリン軽鎖および重鎖は、発現され、折り畳まれ、組み立てられて、細胞質内に機能性免疫グロブリンを形成する。特定の宿主株(例えば、大腸菌trxB株)は、ジスルフィド結合形成に有利な細胞質条件を提供し、それによって、発現されたタンパク質サブユニットの適切な折畳みおよび組立てを可能にする(例えば、Proba and Pluckthun Gene,159:203(1995)を参照)。
【0118】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に適した宿主細胞には、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞が含まれる。一態様では、宿主細胞は真核生物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovary,CHO)細胞、ヒト胚性腎臓(Human Embryonic Kidney,HEK)細胞またはリンパ系細胞(例えば、YO、NSO、Sp20細胞)である。例えば、抗体は、特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要でない場合、細菌において産生され得る。細菌における抗体断片およびポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、第5,789,199号、および第5,840,523号明細書を参照されたい(大腸菌における抗体断片の発現について記載しているCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol. 248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.,2003),pp. 245-254も参照されたい)。発現後、抗体は、可溶性画分中で細菌細胞ペーストから単離され得、さらに精製され得る。原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物は、抗体をコードするベクターのための適切なクローニングまたは発現宿主であり、これは、グリコシル化経路が「ヒト化」された真菌および酵母株を含み、結果として、部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす。Gemgross,Nat. Biotech. 22:1409-1414(2004),and Li et al.,Nat .Biotech. 24:210-215(2006)を参照されたい。グリコシル化抗体の発現に適した宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞および昆虫細胞が挙げられる。昆虫細胞、特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞の形質移入に関連して使用され得る多数のバキュロウイルス(baculoviral)株が同定されている。これらの例は、限定ではなく例示である。定義された遺伝子型を有する上記の細菌のいずれかの誘導体を構築する方法は当技術分野で公知であり、例えば、Bass et al.,Proteins,8:309-314(1990)に記載されている。一般に、細菌の細胞内でのレプリコンの複製性を考慮して適切な細菌を選択する必要がある。例えば、pBR322、pBR325、pACYC177またはpKN410などの周知のプラスミドを使用してレプリコンを供給する場合、大腸菌、セラチア(Serratia)またはサルモネラ種を宿主として好適に使用することができる。典型的には、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌すべきであり、さらなるプロテアーゼ阻害剤が望ましくは細胞培養物に組み込まれ得る。
【0119】
植物細胞培養物を宿主として利用することもできる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、および第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載)を参照されたい。脊椎動物細胞も宿主として使用され得る。例えば、懸濁状態で成長するように適合された哺乳動物細胞系が有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞系の他の例は、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1系、ヒト胚性腎臓系(例えば、Graham et al.,Gen VlI’0l. 36:59(1977)に記載の293または293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol. Reprod. 23:243-251(1980)に記載のTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK、バッファローラット肝細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562)、例えばMather et al.,Annals NI’. Acad. Sci. 383:44-68(1982)に記載のTR1細胞、MRC 5細胞、およびFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞系としては、DHFR’CHO細胞(Urlaub et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、およびYO、NSOおよびSp2/0などの骨髄腫細胞系が挙げられる。抗体産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞系の総説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol. 248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.].),pp. 255-268(2003)を参照されたい。
【0120】
そのような一態様では、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクターおよび抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、形質転換されている)。
【0121】
使用される宿主細胞に応じて、形質転換は、そのような細胞に適した標準的な技術を使用して行われる。塩化カルシウムを使用するカルシウム処理は、一般に、実質的な細胞壁バリアを含有する細菌細胞に使用される。形質転換のための別の方法は、ポリエチレングリコール/DMSOを使用する。使用されるさらに別の技術はエレクトロポレーションである。
【0122】
本開示の発現されたポリペプチドは、宿主細胞のペリプラズムに分泌され、そこから回収されるか、または培地に輸送される。ペリプラズムからのタンパク質回収は、典型的には、一般に浸透圧ショック、超音波処理または溶解などの手段によって微生物を破壊することを含む。細胞が破壊されると、細胞残屑または細胞全体が遠心分離または濾過によって除去され得る。タンパク質は、例えば、アフィニティー樹脂クロマトグラフィーによってさらに精製され得る。あるいは、培地中に輸送されるタンパク質は、その中で単離され得る。産生されたタンパク質のさらなる精製のために、細胞を培養物から除去し、培養上清を濾過し、濃縮することができる。発現されたポリペプチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびウエスタンブロットアッセイなどの一般的に公知の方法を使用してさらに単離および同定することができる。
【0123】
抗体産生は、発酵工程によって大量に行われ得る。様々な大規模フェドバッチ発酵手順が組換えタンパク質の産生に利用可能である。大規模発酵は、少なくとも1000リットルの容量、好ましくは約1,000~100,000リットルの容量を有する。これらの発酵槽は、酸素および栄養素、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を分散させるために撹拌インペラを使用する。小規模発酵は、一般に、容積が約100リットル以下であり、約1リットル~約100リットルの範囲であり得る発酵槽における発酵を指す。
【0124】
発酵工程では、タンパク質発現の誘導は、典型的には、細胞が適切な条件下で、所望の密度、例えば約180~220のOD550まで成長した後に開始され、その段階で細胞は初期静止期にある。当技術分野で公知であり、上記で記載されるように、使用されるベクター構築物に従って、様々な誘導物質が使用され得る。細胞は、誘導前により短い期間成長させることができる。細胞は、通常、約12~50時間誘導されるが、より長いまたはより短い誘導時間を使用してもよい。
【0125】
本明細書に開示されるポリペプチドの産生収率および品質を改善するために、様々な発酵条件に修正することができる。例えば、分泌された抗体ポリペプチドの適切な組立ておよび折畳みを改善するために、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD、および/またはDsbG)またはFkpA(シャペロン活性を有するペプチジルプロリルcis,transイソメラーゼ)などのシャペロンタンパク質を過剰発現するさらなるベクターを使用して、宿主原核細胞を共形質転換することができる。シャペロンタンパク質は、細菌宿主細胞で産生された異種タンパク質の適切な折畳みおよび可溶性を促進することが実証されている(例えば、Chen et al.(1999)J Bio Chem 274:19601-19605、米国特許第6,083,715号明細書、米国特許第6,027,888号明細書、Bothmann and Pluckthun(2000)J. Biol. Chem. 275:17100-17105、Ramm and Pluckthun(2000)J. Biol. Chem. 275:17106-17113、Arie et al.(2001)Mol. Microbiol. 39:199-210を参照)。
【0126】
発現された異種タンパク質(特にタンパク質分解感受性のもの)のタンパク質分解を最小限に抑えるために、タンパク質分解酵素が欠損した特定の宿主株を本開示に使用することができる。例えば、宿主細胞株は、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVIおよびそれらの組み合わせなどの公知の細菌プロテアーゼをコードする遺伝子に遺伝子変異をもたらすように改変され得る。いくつかの大腸菌プロテアーゼ欠損株が入手可能である(例えば、Joly et al.(1998)、上記参照、米国特許第5,264,365号明細書、米国特許第5,508,192号明細書、Hara et al.,Microbial Drug Resistance,2:63-72(1996)を参照)。
【0127】
タンパク質分解酵素が欠損しており、1つまたは複数のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドで形質転換された大腸菌株は、本明細書に開示される発現系における宿主細胞として使用され得る。
【0128】
当技術分野で公知の標準的なタンパク質精製方法を使用することができる。以下の手順は、適切な精製手順の例である。免疫親和性またはイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカまたはカチオン交換樹脂、例えばDEAEでのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、および例えばSephadex G-75を使用したゲル濾過。
【0129】
一局面では、固相に固定されたプロテインAが、本明細書に開示される全長抗体産物の免疫親和性精製に使用される。プロテインAは、抗体のFc領域に高い親和性で結合する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureas)由来の41 kD細胞壁タンパク質である(例えば、Lindmark et al(1983)J. Immunol. Meth. 62:1-13を参照)。プロテインAが固定される固相は、好ましくはガラスまたはシリカ表面を含むカラム、より好ましくは制御された細孔ガラスカラムまたはケイ酸カラムである。いくつかの用途では、カラムは、混入物質の非特異的付着を防止するためにグリセリンなどの試薬でコーティングされている。
【0130】
精製の最初の段階として、上記のような細胞培養物に由来する調製物をプロテインA固定化固相に適用して、関心対象の抗体をプロテインAに特異的に結合させる。次いで、固相を洗浄して、固相に非特異的に結合した混入物質を除去する。最後に、関心対象の抗体を溶出によって固相から回収する。
【0131】
III. 薬学的組成物
本明細書に開示される超長CDR3、核酸またはベクターを含む抗体または抗原結合断片は、組成物、特に薬学的組成物に製剤化することができる。超長CDR3を含む抗体を有するそのような組成物は、本明細書に開示される超長CDR3、抗体断片、核酸またはベクターを含む治療有効量または予防有効量の抗体を、適切な担体、例えば薬学的に許容される剤と混合して含む。典型的には、本明細書に開示される超長CDR3、抗体断片、核酸またはベクターを含む抗体は、薬学的組成物に製剤化する前に、投与するために十分に精製される。
【0132】
本発明の薬学的組成物に使用するための薬学的に許容される剤としては、担体、賦形剤、希釈液、酸化防止剤、保存剤、着色剤、香味剤および希釈剤、乳化剤、懸濁剤、溶媒、充填剤、増量剤、緩衝液、送達ビヒクル、等張化剤、共溶媒、湿潤剤、錯化剤、緩衝剤、抗菌剤および界面活性剤が挙げられる。
【0133】
血清アルブミンと混合された中性緩衝食塩水または生理食塩水は、例示的な適切な担体である。薬学的組成物としては、酸化防止剤、例えばアスコルビン酸;低分子量ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;および/または非イオン性界面活性剤、例えば、Tween、プルロニクスまたはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。また、例として、適切な等張化増強剤としては、アルカリ金属ハロゲン化物(好ましくは、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム)、マンニトール、ソルビトールなどが含まれる。適切な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸などが挙げられる。過酸化水素も保存剤として使用され得る。適切な共溶媒としては、グリセリン、プロピレングリコール、およびPEGが挙げられる。適切な錯化剤としては、カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリンまたはヒドロキシ-プロピル-ベータ-シクロデキストリンが挙げられる。適切な界面活性剤または湿潤剤としては、ソルビタンエステル、ポリソルベート、例えばポリソルベート80、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパール(tyloxapal)などが挙げられる。緩衝液は、アセテート、ボレート、シトレート、ホスフェート、ビカルボネート、またはTris-HClなどの従来の緩衝液であってもよい。アセテート緩衝液は約pH4~5.5であり得、Tris緩衝液は約pH7~8.5であり得る。さらなる薬学的剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R. Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990に記載されている。
【0134】
組成物は、液体形態または凍結乾燥もしくはフリーズドライ形態であってもよく、1つまたは複数の凍結保護剤、賦形剤、界面活性剤、高分子量構造添加剤および/または増量剤を含んでもよい(例えば、米国特許第6,685,940号、第6,566,329号、および第6,372,716号明細書を参照)。一態様では、スクロース、ラクトースまたはトレハロースなどの非還元糖である凍結保護剤が含まれる。一般に含まれる凍結保護剤の量は、再構成時に得られる製剤が等張になるような量であるが、高張性またはわずかに低張性の製剤も適切であり得る。さらに、凍結保護剤の量は、凍結乾燥時のタンパク質の許容できない量の分解および/または凝集を防止するのに十分であるべきである。予備凍結乾燥製剤中の糖(例えば、スクロース、ラクトース、トレハロース)に対する例示的な凍結保護剤濃度は、約10mM~約400mMである。別の態様では、界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤およびイオン性界面活性剤、例えばポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテル(例えば、Triton);ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、またはステアリル-スルホベタイン;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-またはステアリル-サルコシン;リノレイル、ミリスチル-、またはセチル-ベタイン;ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノールアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアラミドプロピル-ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリストアミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン;ナトリウムメチルココイル-またはジナトリウムメチルオフェイル(ofeyl)-タウレート;およびMONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,N.J.)、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、ならびにエチレンとプロピレングリコールのコポリマー(例えば、プルロニクス、PF68など)が含まれる。予備凍結乾燥製剤中に存在し得る界面活性剤の例示的な量は、約0.001~0.5%である。高分子量構造添加剤(例えば、充填剤、結合剤)としては、例えば、アラビアゴム、アルブミン、アルギン酸、リン酸カルシウム(二塩基性)、セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、デキストラン、デキストリン、デキストレート、スクロース、チロース、アルファ化デンプン、硫酸カルシウム、アミロース、グリシン、ベントナイト、マルトース、ソルビトール、エチルセルロース、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二ナトリウム、ピロ亜硫酸二ナトリウム、ポリビニルアルコール、ゼラチン、グルコース、グアーガム、液体グルコース、圧縮糖、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリレート、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、トラガント微結晶セルロース、デンプンおよびゼインが挙げられる。高分子量構造添加剤の例示的な濃度は、0.1重量%~10重量%である。他の態様では、増量剤(例えば、マンニトール、グリシン)が含まれてもよい。
【0135】
組成物は、非経口投与に適し得る。例示的な組成物は、関節内、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、または病巣内経路などの、当業者が利用可能な任意の経路による動物への注射または注入に適している。非経口製剤は、典型的には、任意で薬学的に許容される保存剤を含有する、滅菌された、発熱物質を含まない、等張水溶液である。
【0136】
非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体としては、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール性/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、流体および栄養補充剤、リンゲルデキストロースに基づくものなどの電解質補充剤などが挙げられる。保存剤および他の添加剤、例えば、抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、不活性ガスなども存在し得る。概して、Remington’s Pharmaceutical Science,16th Ed.,Mack Eds.,1980を参照されたい。
【0137】
本明細書に記載の薬学的組成物は、産物の局所濃度(例えば、ボーラス、デポ効果)および/または特定の局所環境における安定性もしくは半減期の増加を提供する様式で、制御送達または持続送達のために製剤化され得る。組成物は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリマー化合物の微粒子調製物、ならびに、生分解性マトリックス、注射可能なミクロスフェア、マイクロカプセル粒子、マイクロカプセル、生体分解性粒子ビーズ、リポソーム、および活性作用物質の制御放出または持続放出を提供し、次いで、デポー注射として送達することができる埋め込み型送達デバイスなどの手段を有する、本明細書に開示される超長CDR3、抗体断片、核酸またはベクターを含む抗体の製剤を含むことができる。そのような持続送達または制御送達手段を製剤化するための技術は公知であり、薬物の制御放出および送達のために様々なポリマーが開発され、使用されている。そのようなポリマーは、典型的には生分解性および生体適合性である。鏡像体ポリマーまたはポリペプチドセグメントの複合体化によって形成されるものを含むポリマーヒドロゲル、および温度またはpH感受性特性を有するヒドロゲルは、生物活性タンパク質剤(例えば、超長CDR3を含む抗体)の捕捉に関与する穏やかで水性の条件のゆえに、薬物デポ効果を提供するために望ましい場合がある。例えば、国際公開第93/15722号における薬学的組成物の送達のための制御放出多孔質ポリマー微粒子の記載を参照されたい。
【0138】
この目的に適した材料としては、ポリラクチド(例えば、米国特許第3,773,919号明細書を参照)、ポリ-(a-ヒドロキシカルボン酸)のポリマー、例えばポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988A号明細書)、L-グルタミン酸とガンマエチル-L-グルタメートとのコポリマー(Sidman et al.,Biopolymers,22:547-556(1983))、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)(Langer et al.,J. Biomed. Mater. Res.,15:167-277(1981)、およびLanger,Chem. Tech.,12:98-105(1982))、エチレンビニルアセテート、またはポリ-D(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。他の生分解性ポリマーとしては、ポリ(ラクトン)、ポリ(アセタール)、ポリ(オルトエステル)およびポリ(オルトカーボネート)が挙げられる。持続放出組成物はまた、当技術分野で公知のいくつかの方法(例えば、Eppstein et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,82:3688-92(1985)を参照)のいずれかによって調製され得るリポソームを含み得る。担体自体またはその分解産物は、標的組織において非毒性であるべきであり、状態をさらに悪化させるべきではない。これは、標的障害の動物モデルにおける、またはそのようなモデルが利用できない場合には正常動物における、日常的なスクリーニングによって決定することができる。
【0139】
持続放出のための組換えタンパク質のマイクロカプセル化は、ヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン-(rhIFN-)、インターロイキン-2およびMN rgp120を用いて首尾よく行われている。Johnson et al.,Nat. Med.,2:795-799(1996);Yasuda,Biomed. Ther.,27:1221-1223(1993);Hora et al.,Bio/Technology. 8:755-758(1990);Cleland, "Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polylactide Polyglycolide Microsphere Systems", in Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach,Powell and Newman,eds,(Plenum Press:New York,1995),pp. 439-462;国際公開第97/03692号、国際公開第96/40072号、国際公開第96/07399号;および米国特許第5,654,010号明細書。これらのタンパク質の持続放出製剤は、その生体適合性および広範囲の生分解性特性のゆえに、ポリ乳酸-コグリコール酸(poly-lactic-coglycolic acid,PLGA)ポリマーを使用して開発された。PLGA、乳酸およびグリコール酸の分解産物は、人体内で迅速にクリアランスされ得る。さらに、このポリマーの分解性は、その分子量および組成に依存し得る。Lewis, "Controlled release of bioactive agents from lactide/glycolide polymer", in:M. Chasin and R. Langer(Eds.),Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems(Marcel Dekker:New York,1990),pp. 1-41。持続放出組成物のさらなる例としては、例えば、欧州特許第58,481A号明細書、米国特許第3,887,699号明細書、欧州特許第158,277A号明細書、カナダ特許第1176565号明細書、U. Sidman et al.,Biopolymers 22,547[1983]、R. Langer et al.,Chem. Tech. 12,98[1982]、Sinha et al.,J. Control. Release 90,261[2003]、Zhu et al.,Nat. Biotechnol. 18,24[2000]、およびDai et al.,Colloids Surf B Biointerfaces 41,117[2005]が挙げられる。
【0140】
生体接着性ポリマーもまた、本開示の組成物において、または本開示の組成物と共に使用するために企図される。生体接着剤は、長期間にわたって生体基質に接着することができる合成および天然の材料である。例えば、カーボポール(Carbopol)およびポリカルボフィルは両方とも、ポリ(アクリル酸)の合成架橋誘導体である。天然の物質に基づく生体接着剤送達系としては、例えば、ヒアルロナンとしても知られるヒアルロン酸が挙げられる。ヒアルロン酸は、D-グルクロン酸およびN-アセチル-D-グルコサミンの残基からなる天然のムコ多糖である。ヒアルロン酸は、結合組織、滑液、ならびに眼の硝子体液および房水を含む、脊椎動物の細胞外組織マトリックス中に見出される。ヒアルロン酸のエステル化誘導体は、生体適合性および生分解性である送達に使用するためのミクロスフェアを製造するために使用されてきた(例えば、Cortivo et al.,Biomaterials(1991)12:727-730、欧州特許第517,565号明細書、国際公開第96/29998号、Illum et al.,J. Controlled Rel.(1994)29:133-141を参照)。本開示の例示的なヒアルロン酸含有組成物は、ヒアルロン酸エステルポリマーを、超長CDR3を含む抗体がヒアルロン酸ポリマーに対して約0.1%~約40%(w/w)の量で含む。
【0141】
生分解性および非生分解性ポリマーマトリックスの両方を、本開示の組成物を送達するために使用することができ、そのようなポリマーマトリックスは、天然または合成ポリマーを含み得る。生分解性マトリックスが好ましい。放出が起こる期間は、ポリマーの選択に基づく。典型的には、数時間から3~12ヶ月までの範囲の期間にわたる放出が最も望ましい。生分解性送達系を形成するために使用され得る例示的な合成ポリマーとしては、乳酸およびグリコール酸のポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリ無水物、ポリウレタンおよびそれらのコポリマー、ポリ(ブチック酸(butic acid))、ポリ(吉草酸)、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル酸およびメタクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。例示的な天然ポリマーとしては、アルギネートならびにデキストランおよびセルロースを含む他の多糖類、コラーゲン、その化学誘導体(化学基、例えばアルキル、アルキレンの置換、付加、ヒドロキシル化、酸化、および当業者によって日常的に行われる他の改変)、アルブミンおよび他の親水性タンパク質、ゼインならびに他のプロラミンおよび疎水性タンパク質、コポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる。一般に、これらの物質は、酵素加水分解またはインビボでの水への曝露、表面またはバルク浸食のいずれかによって分解する。ポリマーは、任意で、その重量の約90%までを水中に吸収することができ、さらに任意で多価イオンまたは他のポリマーと架橋されているヒドロゲル(例えば、国際公開第04/009664号、国際公開第05/087201号、Sawhney,et al.,Macromolecules,1993,26,581-587)の形態である。
【0142】
送達系としては、コレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸などのステロール、またはモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドなどの中性脂肪を含む脂質である非ポリマー系;ヒドロゲル放出系;シラスティック系;ペプチドベース系;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤を使用した圧縮錠剤;部分的に融合した移植片なども挙げられる。具体例としては、限定されないが、(a)米国特許第4,452,775号、第4,675,189号および第5,736,152号明細書に記載されているようなマトリックス内の形態で産物が含有される浸食系、ならびに(b)米国特許第3,854,480号、第5,133,974号および第5,407,686号明細書に記載されているようなポリマーから制御された速度で産物が浸透する拡散系が挙げられる。産物を含有するリポソームは、公知の方法、例えば(独国特許第3,218,121号明細書;Epstein et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,82:3688-3692(1985);Hwang et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77:4030-4034(1980);欧州特許第52,322号明細書;欧州特許第36,676号明細書;欧州特許第88,046号明細書;欧州特許第143,949号明細書;欧州特許第142,641号明細書;JP 83-118008;米国特許第4,485,045号および第4,544,545号明細書;ならびに欧州特許第102,324号)などによって調製され得る。
【0143】
代替的にまたは追加的に、組成物は、本明細書に開示される超長CDR3、抗体断片、核酸またはベクターを含む抗体が吸収または封入されている膜、スポンジまたは他の適切な材料の患部への移植によって局所的に投与され得る。移植型デバイスが使用される場合、デバイスは、任意の適切な組織または器官に移植されればよく、本明細書に開示される超長CDR3抗体断片、核酸またはベクターを含む抗体の送達は、ボーラスを介して、または連続投与を介して、または連続注入を使用してカテーテルを介してデバイスを通して直接行うことができる。
【0144】
本明細書に開示される超長CDR3、抗体断片、核酸またはベクターを含む抗体を含む薬学的組成物は、吸入のために、例えば、乾燥粉末として製剤化され得る。吸入溶液もまた、エアロゾル送達のための液化推進剤に製剤化されてもよい。さらに別の製剤では、溶液を噴霧してもよい。肺投与のためのさらなる薬学的組成物としては、例えば、化学改変タンパク質の肺送達を開示する国際公開第94/20069号に記載されているものが挙げられる。肺送達の場合、粒径は遠位肺への送達に適しているべきである。例えば、粒径は、1μm~5μmであってもよい。しかしながら、例えば、各粒子がかなり多孔質である場合、より大きな粒子を使用してもよい。
【0145】
本明細書に開示される超長CDR3、抗体断片、核酸またはベクターを含む抗体を含有する特定の製剤は、経口投与されてもよい。この様式で投与される製剤は、錠剤およびカプセルなどの固体剤形の調合に通常使用される担体を用いてまたは用いずに製剤化され得る。例えば、カプセルは、生物学的利用能が最大であり全身前分解が最小である胃腸管内の時点で、製剤の活性部分を放出するように、設計することができる。選択的結合剤の吸収を促進するために、追加の剤を含めることができる。希釈液、香味剤、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤、および結合剤も使用することができる。
【0146】
別の調製物は、錠剤の製造に適した非毒性賦形剤との混合物中に、本明細書に開示される超長鎖CDR3、抗体断片、核酸またはベクターを含む有効量の抗体を含み得る。錠剤を滅菌水または別の適切なビヒクルに溶解することによって、溶液を単位用量形態で調製することができる。適切な賦形剤としては、限定されないが、不活性希釈液、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムもしくは重炭酸ナトリウム、ラクトース、またはリン酸カルシウム;または結合剤、例えばデンプン、ゼラチンまたはアラビアゴム;または潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクが挙げられる。
【0147】
適切なおよび/または好ましい薬学的製剤は、意図される投与経路、送達形式、および所望の投与量に応じて、本開示および製剤技術の一般知識を考慮して決定され得る。投与様式にかかわらず、有効用量は、患者の体重、体表面積または器官サイズに従って計算され得る。本明細書に記載される製剤の各々を含む治療のための適切な投与量を決定するための計算のさらなる改良は、当技術分野で日常的に行われており、当技術分野で日常的に行われる作業の範囲内である。適切な用量は、適切な用量反応データの使用によって確認され得る。
【0148】
いくつかの態様では、超長CDR3またはその断片を含む抗体は、生物学的環境における抗体または断片の半減期、例えば血清半減期またはインビトロアッセイによって測定される半減期を増加させるように天然のFc領域が改変された、改変Fc領域を備える。IgGのFc領域の元の形態を変更させるための方法もまた、米国特許第6,998,253号明細書に記載されている。
【0149】
特定の態様では、血清半減期を増加させるために、抗体または断片を改変することが望ましい場合があり、例えば、PEGまたは多糖ポリマーを含む他の水溶性ポリマーなどの分子を抗体断片に付加して半減期を増加させる。これは、例えば、サルベージ受容体結合エピトープを抗体断片に(例えば、抗体断片中の適切な領域の変異によって、またはペプチドタグにエピトープを組み込み、その後、例えばDNAまたはペプチド合成によって末端または中間で抗体断片に融合されることによって)組み込むことによっても達成され得る(国際公開第96/32478号参照)。サルベージ受容体結合エピトープとは、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)のインビボ血清半減期の増加に関与するIgG分子のFc領域のエピトープを指す。
【0150】
サルベージ受容体結合エピトープは、Fcドメインの1つまたは2つのループからの任意の1つまたは複数のアミノ酸残基が抗体断片の類似の位置に転移される領域を含み得る。さらにより好ましくは、Fcドメインの1つまたは2つのループからの3つ以上の残基が転移される。さらにより好ましくは、エピトープは、(例えば、IgGの)Fc領域のCH2ドメインから取られ、抗体のCH1、CH3、もしくはVH領域、または1つより多いそのような領域に転移される。あるいは、エピトープは、Fc領域のCH2ドメインから取られ、抗体断片のCL領域もしくはVL領域、またはその両方に転移される。Fc変異体およびそれらのサルベージ受容体との相互作用を記載する国際公開第97/34631号および国際公開第96/32478号も参照されたい。
【0151】
IV. 治療方法および使用
疾患または状態を治療するための、キメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片を含有する組成物を使用するための方法およびその使用が、本明細書で提供される。特定の態様では、疾患または状態は、キメラ分子に存在するサイトカインで治療可能なものである。例えば、疾患または状態は、IL-2またはIL-15で治療可能である。いくつかの態様では、提供されるキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片は、免疫療法としての使用に特に適している。特定の局面では、提供されるキメラサイトカイン改変抗体もしくは抗原結合断片、またはそれらの組成物は、T細胞の活性化および/または増殖を促進することによって、がんなどのいくつかの腫瘍学的用途に使用される。いくつかの態様では、提供されるキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片は、それを必要とする対象においてがんを治療するための使用である。
【0152】
そのような方法および使用には、例えば、がんなどの疾患、状態または障害を有する対象に分子を投与して、疾患または障害の治療を行うことを含む治療方法および使用が含まれる。使用には、そのような方法および治療における組成物の使用、ならびにそのような治療方法を実施するための医薬の調製におけるそのような組成物の使用が含まれる。いくつかの態様では、方法および使用は、それによって、対象における疾患または状態または障害、例えば、腫瘍またはがんなどを治療する。
【0153】
いくつかの態様では、がんは、頭頸部、乳房、肝臓、結腸、卵巣、前立腺、膵臓、脳、子宮頸部、骨、皮膚、肺または血液のがんである。いくつかの態様では、がんは、異常なまたは制御されない細胞成長を特徴とする悪性腫瘍を含み得る。がんに関連し得る他の特徴としては、転移、隣接細胞の正常な機能への干渉、異常レベルでのサイトカインまたは他の分泌産物の放出、および炎症または免疫学的応答の抑制または悪化、周囲または離れた組織または器官、例えばリンパ節などの浸潤などが挙げられる。転移性疾患は、元の腫瘍部位を離れ、例えば血流またはリンパ系を介して身体の他の部分に移動したがん細胞を指し得る。
【0154】
いくつかの態様では、提供される方法は、がんなどの疾患または状態の改善およびまたは治療をもたらす。いくつかの局面では、提供される方法は、新生物細胞の数の減少、新生物細胞死の増加、新生物細胞生存の阻害、腫瘍成長の阻害(すなわち、ある程度の減速または停止)、患者生存率の上昇、および/または疾患もしくは状態に関連する1つまたは複数の症状からのいくらかの軽減など、疾患の1つまたは複数の改善をもたらす。
【0155】
提供される方法の局面において、応答は、疾患または状態に特異的な基準を使用して評価または判定することができる。いくつかの態様では、磁気共鳴画像(MRI)スキャン、X線画像、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、骨スキャン画像、内視鏡検査、ならびに骨髄吸引(BMA)および循環中の腫瘍細胞の計数を含む腫瘍生検サンプリングなどのスクリーニング技術を使用して、腫瘍形態の変化(すなわち、全体的な腫瘍量、腫瘍サイズ)について腫瘍応答を評価することができる。
【0156】
提供される方法は、治療有効量の本明細書で提供される組成物を、それを必要とする対象、例えばがん対象に投与することを含む。治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する医薬の能力などの要因に応じて変化し得る。治療有効量はまた、抗体または抗体部分の任意の毒または有害効果を、治療的に有益な効果が上回る量である。場合によっては、腫瘍またはがん療法の治療有効量はまた、疾患の進行を安定化させるその能力によって測定され得る。提供される抗体または抗原結合断片ががんを阻害する能力は、ヒト腫瘍における有効性を予測する動物モデル系において評価され得る。
【0157】
あるいは、組成物のこの特性は、当業者に公知のインビトロアッセイによって、細胞成長を阻害するかまたはアポトーシスを誘導する抗体または抗原結合断片の能力を検査することによって評価され得る。治療有効量の治療化合物は、対象において腫瘍サイズを減少させるか、そうでなければ症状を改善し得る。当業者であれば、対象のサイズ、対象の症状の重症度、および選択された特定の組成物または投与経路などの因子に基づいてそのような量を決定することができるであろう。
【0158】
いくつかの態様では、提供される抗体または抗原結合断片は、所望の応答を得るために必要に応じて、単回用量で、または数回用量で投与することができる。いくつかの態様では、有効量は、適用される供給源、治療される対象、治療される状態の重症度および種類、ならびに投与様式に依存する。
【0159】
投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよく、または治療状況の緊急性によって示されるように用量を比例的に減少または増加させてもよい。非経口組成物は、投与の容易さおよび投与量の均一性のために投与単位形態で製剤化され得る。本明細書で使用される場合、投与単位形態は、治療される対象のための単位投与量として適した物理的に別個の単位を指す。各単位は、必要とされる薬学的担体に関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含有する。
【0160】
いくつかの態様では、治療有効量は、0.1mg/kg~100mg/kgまたは約0.1mg/kg~100mg/kg、すなわち前述のいずれかの間の任意の値である。
【0161】
V. 例示的態様
提供される態様には以下がある:
1.ウシ(bovine)抗体もしくは抗原結合断片またはそのヒト化配列の重鎖の超長CDR3領域の少なくとも一部を置換するインターロイキン-15(IL-15)サイトカイン配列またはその生物学的に活性な部分を含む、改変超長CDR3
を含む、キメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
2.前記IL-15サイトカイン配列がヒトIL-15である、態様1のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
3.前記IL-15サイトカイン配列が、SEQ ID NO:1に対して少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、少なくとも96%もしくは少なくとも約96%、少なくとも97%もしくは少なくとも約97%、少なくとも98%もしくは少なくとも約98%、または少なくとも99%もしくは少なくとも約99%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む、態様1または態様2のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
4.前記IL-15サイトカイン配列が、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸の配列を含む、態様1~3のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
5.ウシ(bovine)抗体もしくは抗原結合断片またはそのヒト化配列の重鎖の超長CDR3領域の少なくとも一部を置換するインターロイキン-2(IL-2)サイトカイン配列またはその生物学的に活性な部分を含む、改変超長CDR3
を含む、キメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
6.前記IL-2サイトカイン配列がヒトIL-2である、態様5のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
7.前記IL-2サイトカイン配列が、SEQ ID NO:165に対して少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、少なくとも96%もしくは少なくとも約96%、少なくとも97%もしくは少なくとも約97%、少なくとも98%もしくは少なくとも約98%、または少なくとも99%もしくは少なくとも約99%の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む、態様5または態様6のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
8.前記IL-2サイトカイン配列が、SEQ ID NO:165に示されるアミノ酸の配列を含む、態様5~7のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
9.前記サイトカイン配列が、ウシ(bovine)抗体または抗原結合断片の重鎖の超長CDR3領域の少なくとも一部を置換する、態様1~8のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
10.前記ウシ(bovine)抗体または抗原結合断片が、ウシ(bovine)抗体BLV1H12またはその抗原結合断片である、態様9のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
11.前記ウシ(bovine)抗体または抗原結合断片が、SEQ ID NO:5に示される配列によってコードされる可変重鎖アミノ酸配列およびSEQ ID NO:8に示される配列によってコードされる可変軽鎖アミノ酸配列を含む、態様9または態様10のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
12.前記ウシ(bovine)抗体または抗原結合断片が、SEQ ID NO:167に示される配列によってコードされる可変重鎖アミノ酸配列およびSEQ ID NO:168に示される配列によってコードされる可変軽鎖アミノ酸配列を含む、態様9または態様10のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
13.前記ウシ(bovine)抗体または抗原結合断片が、SEQ ID NO:26に示される可変重鎖およびSEQ ID NO:27に示される可変軽鎖を含む、態様9または態様10のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
14.前記サイトカイン配列が、ヒト化ウシ(bovine)抗体またはその抗原結合断片の重鎖の超長CDR3領域の少なくとも一部を置換する、態様1~8のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
15.前記ヒト化ウシ(bovine)抗体またはその抗原結合断片が、
ヒト重鎖生殖細胞系配列であるか、またはヒト重鎖生殖細胞系配列に由来する重鎖またはその一部と、
ヒト軽鎖生殖細胞系配列であるか、またはヒト軽鎖生殖細胞系配列に由来する軽鎖またはその一部と
を含む、態様14のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
16.前記ヒト重鎖生殖細胞系配列が、VH4-39、VH4-59*03、VH4-34*02もしくはVH4-34*09生殖細胞系配列であるか、またはSEQ ID NO:68~71のいずれか1つに示される配列である、態様15のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
17.前記ヒト軽鎖生殖細胞系配列が、VL1-51生殖細胞系配列であるか、または1つもしくは複数の変異を含む前記VL1-51生殖細胞系配列に基づく配列であり、任意で、前記VL1-51生殖細胞系配列がSEQ ID NO:156に示されている、態様15または態様16のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
18.前記1つまたは複数の変異が、以下:
Kabatナンバリングに基づくアミノ酸置換S2A、T5N、P8S、A12G、A13SおよびP14Lの1つまたは複数;
Kabatナンバリングに基づくアミノ酸置換S2A、T5N、P8S、A12G、A13SおよびP14L;
アミノ酸置換I29VおよびN32Gを含む、CDR1における変異;
DNNのGDTへの置換を含む、CDR2における変異;
DNNKRPのGDTSRAへの置換を含む、CDR2における変異;または
前述のいずれかの組み合わせ
より選択される、態様17のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
19.前記抗体が、可変重鎖および可変軽鎖を含む抗原結合断片である、態様1~18のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
20.前記抗体が、重鎖定常ドメイン(CH1-CH2-CH3)に結合された可変重鎖と、軽鎖定常ドメイン(CL1)に結合された可変軽鎖とを含む、態様1~19のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
21.前記重鎖定常ドメインがヒトIgG1に由来する、態様20のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
22.前記軽鎖定常ドメインがラムダ軽鎖領域である、態様20または態様21のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
23.前記超長CDR3領域の少なくとも一部がノブ領域を含み、前記サイトカイン配列が、前記改変超長CDR3の上行性ストークドメインと下行性ストークドメインとの間に存在する、態様1~22のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
24.前記サイトカイン配列が、柔軟なリンカー、任意でGGSまたはGSGリンカーを介して前記上行性ストークドメインおよび/または前記下行性ストークドメインに連結されている、態様23のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
25.前記上行性ストークドメインが、SEQ ID NO:158またはSEQ ID NO:159に示される配列を含む、態様23または態様24のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
26.前記下行性ストークドメインが、SEQ ID NO:161に示される配列を含む、態様23~25のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
27.SEQ ID NO:7に示されるヌクレオチドの配列、またはSEQ ID NO:7に示されるヌクレオチド配列と少なくとも85%もしくは少なくとも約85%、少なくとも90%もしくは少なくとも約90%、少なくとも92%もしくは少なくとも約92%、少なくとも95%もしくは少なくとも約95%、少なくとも96%もしくは少なくとも約96%、少なくとも97%もしくは少なくとも約97%、少なくとも98%もしくは少なくとも約98%、少なくとも99%もしくは少なくとも約99%の配列同一性を示すヌクレオチドの配列によってコードされる可変重鎖配列を含み、IL-15配列を含有する改変超長CDR3を含有する、態様1~4および9~26のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
28.IL15Rα sushiドメインを含むIL15Rαの細胞外ドメインと複合体化されている、態様1~4および9~27のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
29.前記IL15Rα sushiドメインを含む前記IL15Rαの前記細胞外ドメインが、前記IL-15配列と非共有結合的に会合している、態様28のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
30.前記IL15Rα sushiドメインを含む前記IL15Rαの前記細胞外ドメインが前記可変軽鎖に連結されている、態様28のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
31.ペプチドリンカーを介して連結されている、態様30のキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
32.前記ペプチドリンカーが、グリシンリンカーまたはグリシン-セリンリンカーであり、任意で、前記リンカーがGSである、態様31のキメラサイトカイン改変抗体。
33.前記IL15Rα sushiドメインを含む前記IL15Rαの前記細胞外ドメインが、SEQ ID NO:2に示される配列を含む、態様28~32のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体。
34.前記可変軽鎖が、SEQ ID NO:3によってコードされるアミノ酸の配列を含む、態様30~33のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
35.態様1~34のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片をコードする、ポリヌクレオチド。
36.態様1~34のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片の重鎖またはその可変領域をコードする、ポリヌクレオチド。
37.態様1~34のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片の軽鎖またはその可変領域をコードする、ポリヌクレオチド。
38.態様35~37のいずれかのポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
39.態様35~37のいずれかのポリヌクレオチドまたは態様37の発現ベクターを含む、宿主細胞。
40.前記IL15Rα sushiドメインを含む前記IL15Rαの細胞外ドメインを発現するポリヌクレオチドまたはベクターをさらに含む、態様39の宿主細胞。
41.前記IL15Rα sushiドメインを含む前記IL15Rαの前記細胞外ドメインが、SEQ ID NO:2に示される配列を含む、態様40の宿主細胞。
42.態様39~41のいずれかの宿主細胞を、前記細胞による抗体または抗原結合断片の発現のための条件下で培養する工程を含み、任意で、前記抗体または抗原結合断片を精製することの回収する工程をさらに含む、キメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片を産生する方法。
43.態様42の方法によって産生される、キメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片。
44.態様1~34または43のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片を含む、薬学的組成物。
45.治療有効量の態様1~34または43のいずれかのキメラサイトカイン改変抗体または抗原結合断片を投与する工程を含む、対象のがんを治療する方法。
46.治療有効量の態様44の薬学的組成物を投与する工程を含む、対象のがんを治療する方法。
【実施例
【0162】
VI. 実施例
以下の実施例は、例示のみを目的として含まれ、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0163】
実施例1 キメラインターロイキン15融合抗体の生成
ウシ(bovine)BLV1H12抗体のノブ領域をインターロイキン(IL)-15で置換することによってBLV1H12の超長CDR3領域を操作したキメラBLV1H12-IL-15(B15)融合抗体を生成した。
【0164】
キメラBLV1H12ウシ(bovine)重鎖配列(SEQ ID NO:167)由来の可変重鎖(VH)領域をPCRによって増幅し、シグナル配列とヒトIgG1のCH1-CH2-CH3をコードするヌクレオチド配列との間にインフレームでサブクローニングして、SEQ ID NO:6に示す配列を作製した。キメラ超長ウシ(bovine)重鎖配列(SEQ ID NO:167)は、BLV1H12の重鎖由来のストーク配列であって、上行性ストークストランド中の最後のセリンがクローニング目的のためにトレオニンに変更されたストーク配列を含有し、ウシ(bovine)抗HIV抗体由来のノブ配列を含有する。IL-15サイトカイン配列(SEQ ID NO:1に示される)をキメラBLV1H12重鎖のCDR3に挿入するために、ノブ配列(SEQ ID NO:162)をN末端GGSリンカー(SEQ ID NO:163)およびC末端GSGリンカー(SEQ ID NO:164)をコードする配列と一緒にIL-15配列で置換することによって、B15可変領域全体およびそのシグナルペプチドをコードする配列(SEQ ID NO:7)を設計した。ここで、IL-15は、上行性ストーク(SEQ ID NO:159に示される配列をコードするSEQ ID NO:157)および下行性ストーク(SEQ ID NO:161に示される配列をコードするSEQ ID NO:160)と接続する。この配列を5’EcoRI部位と化学的に合成し、GenScript,Inc.によるpUC57ベクターにクローニングした。3’末端NheI部位は合成された配列に既に存在していた。合成した配列を、EcoRIおよびNheI制限酵素を使用してBLV1H12発現ベクター(SEQ ID NO:6)にサブクローニングした。
【0165】
次いで、各重鎖をコードする発現ベクターを、ウシ(bovine)軽鎖BLV1H12(SEQ ID NO:168)をコードするpFUSE発現ベクターと並行して、フリースタイルHEK 293細胞(ThermoScientific)に共形質移入した。細胞を37℃、8% CO2で成長させ、発現させたキメラBLV1H12-IL-15(B15)融合抗体を培地に分泌させ、形質移入の96時間後に回収した。キメラ融合抗体を、CaptureSelect CH1-XL親和性マトリックス(ThermoScientific)によって精製し、次いで、濃縮し、Amicon Ultra-4遠心フィルター(MWカットオフ=10,000kDa、Millipore Sigma)を使用してリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に緩衝液交換した。それらを、分子量および吸光係数に基づいてNanodropを使用して定量した。
【0166】
IL-15が受容体βおよびγサブユニット(IL2/15Rβおよびγc)へのトランスシグナリングの増加のためにその高親和性受容体α(IL15Rα)を必要とし得るかどうかを評価するために、IL-15キメラ融合抗体とIL15Rαのsushiドメインとの共発現によって2つのさらなる分子を産生した。IL15Rα sushiドメイン(SEQ ID NO:2)をフリースタイルHEK 293細胞(B15_Rαsushi)でキメラIgGと共発現させるか、またはGSリンカー(SEQ ID NO:3)(B15_GS_Rαsushi)を介してIL15Rαsushiドメインを軽鎖に融合するかのいずれかによって、2つのさらなる変異体分子を産生した。
【0167】
図1Aおよび図1Bは、生成された構築物の概略図を示す。
【0168】
B15融合抗体をSDS-PAGEゲルによって分析した。図2は、HEK 293細胞から発現された精製B15融合抗体構築物BLV1H12-IL-15(B15)、BLV1H12-IL-15-Rαsushi(B15_Rαsushi)およびBLV1H12-IL-15-GS-Rαsushi(B15_GS_Rαsushi)のSDS-PAGEゲルを示す。これらの結果は、キメラB15抗体またはIL15-Rαsushiドメインを含有する変異体を、典型的なヒト抗体と同様に発現および精製することができることを実証している。
【0169】
実施例2 キメラB15融合抗体-受容体結合アッセイ
IL2受容体α(IL2Rα)およびIL15Rαに対するキメラBLV1H12-IL-15(B15)融合抗体の結合を、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)で評価した。ウェルあたり50ngのIL2Rαまたは100ngのIL15Rαタンパク質(R&D systems)を、96ウェルの高結合プレートにおいて4℃で一晩、コーティングした。プレートを、0.1% Tween 20(TBST)を含有するtris緩衝生理食塩水(TBS)で3回洗浄した。プレート上の結合していない部位を、室温にて1時間、TBST中で調製した1%ウシ(bovine)血清アルブミン(BSA)でブロックした。ウェルあたり10ピコモルのB15(TBST中1% BSAで希釈)を添加し、BSAのみを添加した陰性対照ウェルもセットアップした。プレートを室温で1時間インキュベートし、次いでTBSTで4回洗浄して結合していないB15を除去した。使用した検出抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされたヤギ抗ヒトラムダ(Southern Biotech)であり、これをTBST中の1% BSAで1~5000に希釈し、ウェルあたり50ulの希釈液を添加した。二次抗体との30分間のインキュベーション後、プレートをTBSTで5回洗浄して、結合していない二次抗体を除去した。ウェルあたり50ulのTMB基質(TheromoScientific)を添加し、西洋ワサビペルオキシダーゼ-TMB反応を1分30秒間実行し、次いでウェルあたり50ulの1.0規定度の硫酸を添加することによって停止した。プレートをTecanプレートリーダーにおいて450nmで読み取り、プロットされた値は、バックグラウンド読み取り値を差し引いた3つの二重ウェルの平均であった。
【0170】
IL2/15Rβ受容体に対するキメラBLV1H12-IL-15(B15)融合抗体の結合をELISAアッセイで評価した。プレートをウェルあたり50ngのIL2/15Rβタンパク質(R&D systems)で4℃にて一晩コーティングした。プレートを、0.1% Tween 20(TBST)を含有するtris緩衝生理食塩水(TBS)で3回洗浄した。プレート上の結合していない部位を、室温にて1時間、TBST中で調製した1%ウシ(bovine)血清アルブミン(BSA)でブロックした。ウェルあたり10ピコモルのB15または予め混合した等モルのB15およびIL15Rα-Fc(R&D systems)を添加し、BSAのみを添加した陰性対照ウェルもセットアップした。プレートを室温で1時間インキュベートし、次いでTBSTで4回洗浄して結合していないB15または予め混合したB15およびIL15Rα-Fcを除去した。使用した検出抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされたヤギ抗ヒトラムダ(Southern Biotech)であり、これをTBST中の1% BSAで1~5000に希釈し、ウェルあたり50ulの希釈液を添加した。二次抗体との30分間のインキュベーション後、プレートをTBSTで5回洗浄して、結合していない二次抗体を除去した。ウェルあたり50ulのTMB基質(TheromoScientific)を添加し、ペルオキシダーゼ-TMB反応を3分間実行し、次いでウェルあたり50ulの1.0規定度の硫酸を添加することによって停止した。プレートをTecanプレートリーダーにおいて450nmで読み取り、プロットされた値は、バックグラウンド読み取り値を差し引いた3つの二重ウェルの平均であった。
【0171】
図3Aおよび図3Bに示されるように、キメラB15は、IL15RαサブユニットおよびIL2/15Rβサブユニットの両方に結合することができ、IL15Rα sushiドメインサブユニットは、IL2/15RβサブユニットへのB15の結合を改善することができた。B15とIL2Rαとの間の結合は検出されなかった。これらの結果は、IL15RαまたはそのsushiドメインがIL2/15Rβおよびγcサブユニットへの効率的な結合に関与することを実証した。
【0172】
実施例3 キメラB15融合抗体誘導受容体活性化およびシグナル伝達
実施例1に記載したように生成したキメラB15分子によるIL2/15Rβおよびγc受容体の活性化ならびにSTAT5シグナル伝達を、HEK-Blue IL2レポーター細胞(InvivoGen)を使用して試験し、STAT5誘導性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子の誘導および分泌を通して分析した。
【0173】
HEK-Blue IL2レポーター細胞において発現されるIL15Rαサブユニットは存在しないので、IL15Rα-Fc(R&D Systems)をIL15(またはB15)と混合して、IL2/15Rβおよびγcサブユニットに対するその結合を増加させた。最初に、HEK-Blue IL2レポーター細胞を、以下:予熱したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を2回穏やかにすすぎ、細胞スクレーパーを使用してPBSの存在下で細胞を剥離し、新鮮な予熱した試験培地(高グルコースおよび10%熱不活性化FBSを含むDMEM)に細胞を1mlあたり約280,000個になるまで再懸濁することによって、懸濁液に調製した。半モルのIL15Rα-Fcと共に4℃で一晩インキュベートしたIL15モノマー(予め混合したIL15&IL15Rα)か、またはアッセイの開始直前に混合したIL15モノマー(新たに混合したIL15&IL15Rα)、または等モルのIL15Rα-Fcとアッセイの開始直前に混合したキメラB15(新たに混合したB15&IL15Rα)を、PBS中で64nM~0.25nMに4倍段階希釈し、各サイトカイン希釈物を、希釈ごとに3回反復して96ウェル組織培養処理プレートにウェルあたり20ul添加した。次いで、50,000個の細胞を各ウェルに添加し、37℃、5% CO2で20時間培養した。キメラB15抗体は二価であるので、IL15モノマーと比較して、半モル濃度のみを使用した。分泌されたSEAPを含有する各ウェル由来の20ulの細胞培養上清を180ulのQuanti-Blue基質溶液と37℃で30分間混合し、色の変化(分泌されたSEAPの量に対応する)をTecanプレートリーダーを使用して590nmで測定した。
【0174】
図4に示されるように、インビトロSTAT5シグナル伝達アッセイは、キメラB15抗体がIL15モノマーよりもはるかに速くIL2/15Rβ受容体と会合し得ることを示した。
【0175】
次いで、HEK-Blue IL2レポーター細胞を使用して、IL15Rαsushiドメインと会合した代替的なキメラB15分子の存在下で受容体活性化およびSTAT5シグナル伝達を評価した。HEK-Blue IL2レポーター細胞を上記と同じように調製し、4倍段階希釈した(64nM~0.25nM)キメラB15抗体単独、アッセイ開始直前にIL15Rα-Fcと混合したキメラB15抗体(新たに混合したB15&IL15Rα)、キメラB15変異体B15_Rαsushi、またはキメラB15変異体B15_GS_Rαsushi抗体と共培養した。図5に示されるように、IL15Rα sushiドメインにより発現されるキメラB15変異体は、予め混合したB15およびIL15Rα-Fcと同じシグナル伝達効力を達成し、これらはすべて、IL15RαサブユニットのないキメラB15抗体よりも良好であった。
【0176】
実施例4 NK-92細胞の増大によるキメラB15融合抗体の活性の評価
実施例1に記載したように生成したキメラB15分子の活性を、NK-92ナチュラルキラー細胞を増大させる能力によって評価した。NK-92細胞は、IL2Rα、IL15Rα、IL2/15Rβおよびγcサブユニットを発現し、それらの成長および増殖は、受容体に結合して活性化するためのIL2またはIL15の外因性添加に依存する。
【0177】
NK-92細胞を、200U/mlのIL2を供給した成長培地中で維持した。増大アッセイの前に、NK-92細胞をIL2を含まない成長培地で2回洗浄して、残存する細胞結合IL2を取り除き、組織培養処理した96ウェルプレートにウェルあたり10,000個の細胞を播種した。これらの細胞を、2倍段階希釈(1.33nM~0.005nM)のIL2モノマーもしくはIL15モノマー(R&D Systems)、またはキメラB15、キメラ変異体B15_Rαsushi、もしくはキメラB15変異体B15_GS_Rαsushi抗体と共に、37℃、5% CO2で48時間インキュベートした。キメラB15抗体およびその変異体については、IL2およびIL15モノマーと比較して、半モル濃度のみを使用した。代謝的に活性なオキシドレダクターゼ酵素(MTTアッセイキット、Promega)の存在によるテトラゾリウム色素MTTのその不溶性ホルマザンへの還元によって、ウェルあたりの最終NK92細胞数を評価した。
【0178】
図6に示されるように、すべてのB15構築物がNK-92細胞を増大させることができたが、IL2モノマーまたはIL15モノマーのいずれよりも程度は低かった。IL15Rαsushiを有するキメラB15またはその変異体がNK-92細胞の増大においてそれほど強力でない理由は不明であった。理論に拘束されることを望むものではないが、1つの仮説は、キメラB15またはその変異体は二価であるが、NK-92細胞に一価でのみ結合することができ、一方、これらのアッセイでは、キメラB15またはその変異体の半モル濃度のみを使用したということである。第2の仮説は、キメラB15およびその変異体はHEK細胞において産生され、大腸菌産生IL2およびIL15モノマー(R&D systems)と比較して天然にグリコシル化され、IL15のグリコシル化がNK-92細胞上のIL15受容体へのその結合に負の影響を及ぼし得るというものである。第3の仮説は、キメラB15またはその変異体のサイズが、抗体構造とのその融合に起因して、IL2またはIL15モノマーよりも大きく、このことが、IL15を安定化させるがNK-92細胞上のIL15受容体へのその接近可能性を減少させるということである。
【0179】
次いで、NK-92細胞の増大を使用して、キメラB15変異体B15-RαsushiまたはB15-GS-Rαsushi抗体と比較した、キメラB15抗体の活性の差を評価した。実験は、図6と同じ方式でセットアップした。図7に示されるように、IL15Rαsushiドメインの存在は、キメラB15抗体がNK-92細胞を増大させる能力を改善した。
【0180】
実施例5 キメラインターロイキン2融合抗体の生成
キメラBLV1H12-IL-2(B2)融合抗体を、上記のキメラB15抗体のIL15領域をIL-2(SEQ ID NO:165)で置換することによって生成した。
【0181】
5’末端GGSリンカーコード配列(SEQ ID NO:163)および3’末端GSGリンカーコード配列(SEQ ID NO:164)を有するIL2コード配列(SEQ ID NO:166)は、GenScript Inc.が化学合成した。5’末端AgeI部位および3’末端BamHI部位も加えた。合成した配列をGenScript,Inc.によるpUC57ベクターにクローニングし、AgeIおよびBamHI制限酵素を使用してキメラB15重鎖可変領域(SEQ ID NO:7)にサブクローニングした。
【0182】
次いで、重鎖をコードする発現ベクターを、ウシ(bovine)軽鎖BLV1H12(SEQ ID NO:168)をコードするpFUSE発現ベクターと並行して、フリースタイルHEK 293細胞(ThermoScientific)に共形質移入した。細胞を37℃、8% CO2で成長させ、発現させたキメラBLV1H12-IL-2(B2)融合抗体を培地に分泌させ、形質移入の96時間後に回収した。キメラB2融合抗体を、CaptureSelect CH1-XL親和性マトリックス(ThermoScientific)によって精製し、次いで、濃縮し、Amicon Ultra-4遠心フィルター(MWカットオフ=10,000kDa、Millipore Sigma)を使用してリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に緩衝液交換した。それらを、分子量および吸光係数に基づいてNanodropを使用して定量した。
【0183】
図8Aおよび図8Bは、生成された構築物の概略図を示す。
【0184】
B2融合抗体をSDS-PAGEゲルによって分析した。図9は、HEK 293細胞から発現された精製融合抗体構築物BLV1H12-IL-2(B2)のSDS-PAGEゲルを示す。結果は、キメラB2抗体が典型的なヒト抗体と同様に発現および精製され得ることを実証している。
【0185】
実施例6 キメラB2融合抗体-受容体結合アッセイ
IL2RαおよびIL15Rαに対するキメラBLV1H12-IL-2(B2)融合抗体の結合を、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)で評価した。ウェルあたり50ngのIL2Rαまたは100ngのIL15Rαタンパク質(R&D systems)を、96ウェルの高結合プレートにおいて4℃で一晩、コーティングした。翌日、0.1% Tween 20(TBST)を含有するtris緩衝生理食塩水(TBS)でプレートを3回洗浄した。プレート上の結合していない部位を、室温にて1時間、TBST中で調製した1%ウシ(bovine)血清アルブミン(BSA)でブロックした。ウェルあたり10ピコモルのB2(TBST中1% BSAで希釈)を添加し、BSAのみを添加した陰性対照ウェルもセットアップした。プレートを室温で1時間インキュベートし、次いでTBSTで4回洗浄して結合していないB2抗体を除去した。使用した検出抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされたヤギ抗ヒトラムダ(Southern Biotech)であり、これをTBST中の1% BSAで1~5000に希釈し、ウェルあたり50ulの希釈液を添加した。二次抗体との30分間のインキュベーション後、プレートをTBSTで5回洗浄して、結合していない二次抗体を除去した。ウェルあたり50ulのTMB基質(TheromoScientific)を添加し、西洋ワサビペルオキシダーゼ-TMB反応を1分30秒間実行し、次いでウェルあたり50ulの1.0規定度の硫酸を添加することによって停止した。プレートをTecanプレートリーダーにおいて450nmで読み取り、プロットされた値は、バックグラウンド読み取り値を差し引いた3つの二重ウェルの平均であった。
【0186】
図10に示されるように、キメラB2はIL2Rαに結合することができたが、IL15Rαには結合することができなかった。
【0187】
実施例7 キメラB2融合抗体誘導受容体活性化およびシグナル伝達
実施例5に記載したように生成したキメラB2分子による、IL2/15Rβおよびγc受容体の活性化ならびにSTAT5シグナル伝達を、IL2モノマー(R&D systemsおよびMillipore Sigma)に対してHEK-Blue IL2レポーター細胞(InvivoGen)を使用して試験し、STAT5誘導性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子の誘導および分泌を通して分析した。
【0188】
最初に、HEK-Blue IL2レポーター細胞を、以下:予熱したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を2回穏やかにすすぎ、細胞スクレーパーを使用してPBSの存在下で細胞を剥離し、新鮮な予熱した試験培地(高グルコースおよび10%熱不活性化FBSを含むDMEM)に細胞を1mlあたり約280,000個になるまで再懸濁することによって、懸濁液に調製した。IL2モノマーまたはキメラB2抗体をPBS中で64nM~0.25nMに4倍段階希釈し、各サイトカイン希釈物を、希釈ごとに3回反復して96ウェル組織培養処理プレートにウェルあたり20ul添加した。次いで、50,000個の細胞を各ウェルに添加し、37℃、5% CO2で20時間培養した。キメラB2抗体は二価であるので、IL2モノマーと比較して、半モル濃度のみを使用した。分泌されたSEAPを含有する各ウェル由来の20ulの細胞培養上清を180ulのQuanti-Blue基質溶液と37℃で30分間混合し、色の変化(分泌されたSEAPの量に対応する)をTecanプレートリーダーを使用して590nmで測定した。
【0189】
図11に示されるように、インビトロSTAT5シグナル伝達アッセイは、キメラB2抗体が、大腸菌に由来するIL2モノマー(R&D systemsおよびMillipore Sigma)と同様に機能することを示した。
【0190】
実施例8 NK-92細胞の増大によるキメラ融合B2抗体の活性の評価
実施例5に記載したように生成したキメラB2分子の活性を、NK-92ナチュラルキラー細胞を増大させる能力によって評価した。NK-92細胞は、IL2Rα、IL15Rα、IL2/15Rβおよびγcサブユニットを発現し、それらの成長および増殖は、受容体に結合して活性化するためのIL2またはIL15の外因性添加に依存する。
【0191】
NK-92細胞を、200U/mlのIL2を供給した成長培地中で維持した。増大アッセイの前に、NK-92細胞を、IL2を含まない成長培地で2回洗浄して、残存する細胞結合IL2を取り除き、組織培養処理した96ウェルプレートにウェルあたり10,000個の細胞を播種した。これらの細胞を、2倍段階希釈(1.33nM~0.005nM)のIL2モノマー(R&D Systems)またはキメラB2抗体と共に37℃、5% CO2で48時間インキュベートした。キメラB2抗体については、IL2モノマーと比較して、半モル濃度のみを使用した。代謝的に活性なオキシドレダクターゼ酵素(MTTアッセイキット、Promega)の存在によるテトラゾリウム色素MTTのその不溶性ホルマザンへの還元によって、ウェルあたりの最終NK92細胞数を評価した。
【0192】
図12に示されるように、キメラB2抗体は、NK-92細胞増大においてIL2モノマーよりもほぼ二倍良好であった。
【0193】
実施例9 ヒトPBMCにおけるキメラB15融合抗体のインビトロ活性の評価
実施例1に記載したように生成したキメラB15分子の活性を、インビトロでヒトPBMC中のNK細胞およびT細胞を刺激する能力によって評価した。NK細胞およびT細胞の両方は、IL15Rα、IL2/15Rβおよびγcサブユニットを発現し、それらの成長および増殖は、受容体に結合して活性化するための内因性または外因性IL15に依存する。
【0194】
ヒトPBMCをPBSで2回洗浄し、血球計を使用して計数し、10% FBSを含むRPMI1640培地に再懸濁した。ウェルあたり100μl中100,000個の細胞を、組織培養処理した96ウェル平底またはU底プレート(細胞接触を促進する)に播種した。B15およびB15_Rαsushiを同じ培地で500nM~0.032nMに5倍段階希釈し、各希釈物100μlを対応する細胞に添加して、250nM~0.016nMの最終濃度を達成した。B15またはB15_Rαsushiを添加しない対照もセットアップした。これらの細胞を37℃、5% CO2で96時間インキュベートした。処置後、PBMCを抗CD3-FITC(SK7)、抗CD4-PE(OKT4)、抗CD8a-eFluor 450(SK1)および抗CD56-APC(AF12-7H3)で染色して、以下の細胞型、CD3+CD4+T細胞、CD3+CD8+T細胞およびNK細胞(CD3-CD56+)をゲーティングした。細胞増殖マーカーとしての細胞内Ki67を、抗Ki67-PE-Cy7(20Raj1)およびFoxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set(Thermo Fisher Scientific)を製造者のプロトコルに従って使用して染色した。続いて、染色された試料を、Novocyte Advanteon Flow Cytometer(Agilent,Santa Clara,CA)を使用して分析した。
【0195】
図13に示すように、B15およびB15_15Rαの両方は、インビトロでCD8+T細胞およびNK細胞の強力な増殖を誘導し、CD4+T細胞の程度ははるかに低い。増殖は、使用される異なるタイプの96ウェルプレート(平底対U底)とは無関係であり、B15またはB15_15Rαによってのみ増殖が誘導され、細胞間接触からの影響は最小限であることを示唆している。これらの実験では、B15_15Rαは、T細胞およびNK細胞増殖の誘導において低濃度でB15よりもわずかに良好に機能し、IL15Rαが低濃度でIL15機能を増強することができることを示唆した。B15およびB15_15Rαによって誘導されたNK細胞の増殖は0.4nMでプラトーに達するが、CD8+T細胞の増殖は10nMでプラトーに達し、B15およびB15_15RαはCD8+T細胞よりもNK細胞と高い親和性を有することを示している。
【0196】
本発明は、例えば本発明の様々な局面を説明するために提供される特定の開示された態様に範囲が限定されることを意図しない。記載される組成物および方法に対する様々な改変は、本明細書の記載および教示から明らかになるであろう。そのような変形は、本開示の真の範囲および精神から逸脱することなく実施することができ、本開示の範囲内に入ることが意図される。
【0197】
配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2022554187000001.app
【国際調査報告】