(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】軽質オレフィンおよび低硫黄燃料油成分の製造方法
(51)【国際特許分類】
C10G 69/04 20060101AFI20221221BHJP
C10G 11/18 20060101ALI20221221BHJP
C10G 45/08 20060101ALI20221221BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20221221BHJP
C07C 17/361 20060101ALI20221221BHJP
B01J 29/40 20060101ALI20221221BHJP
B01J 23/888 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C10G69/04
C10G11/18
C10G45/08 Z
C07C11/06
C07C17/361
B01J29/40 M
B01J23/888 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524232
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 CN2020121005
(87)【国際公開番号】W WO2021078051
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】201911014993.7
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】許友好
(72)【発明者】
【氏名】王新
(72)【発明者】
【氏名】左巌芬
(72)【発明者】
【氏名】崔守業
(72)【発明者】
【氏名】白旭輝
(72)【発明者】
【氏名】謝▲シン▼宇
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA03A
4G169BA07A
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4H129NA02
4H129NA21
4H129NA26
(57)【要約】
工程i)水素の非存在下、接触転換反応器における有効な条件下で、炭化水素含有供給原料油を接触転換触媒と接触させて、プロピレンを含む反応生成物を得る工程と、工程ii)工程i)からの反応生成物を分離して接触分解蒸留油を得る工程と、iii)接触分解蒸留油を水素化脱硫に供して、燃料油成分としての低硫黄水素化蒸留油を得る工程と、を含む、プロピレンおよび低硫黄燃料油成分を製造する方法を提供する。当該方法は、より多くの燃料油成分を製造する一方で、プロピレン選択性およびプロピレン収率を大幅に増加させることができ、乾燥ガスおよびコークスの収率を明らかに低下させ、したがって、より良好な経済的および社会的利益を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程i)水素の非存在下、接触転換反応器における反応のために、炭化水素含有供給原料油を接触転換触媒と接触させて、プロピレンを含む反応生成物を得る工程;
工程ii)工程i)からの前記反応生成物を分離して、接触分解蒸留油を得る工程であって、前記接触分解蒸留油は、約200℃以上である初留点、約550℃以下である最終沸点、および、約12.0重量%以下である水素含有量を有する工程;および
工程iii)前記接触分解蒸留油を水素化脱硫に供して、燃料油成分として使用するのに適した低硫黄水素化蒸留油を得る工程、を含み、
前記接触転換触媒は、前記触媒の総重量に基づいて、約1~50重量%のゼオライト、約5~99重量%の無機酸化物、および約0~70重量%の粘土を含み、
工程i)の前記反応条件は、約460~750℃の反応温度、約10~100h
-1の重量空間速度または約1~10秒の反応時間、および約4~20の、油に対する触媒の重量比を含み、
好ましくは、工程i)で得られる前記反応生成物は、前記炭化水素含有供給原料油の前記重量に対して、約8~25重量%のプロピレンおよび約15~50重量%の前記接触分解蒸留油を含む、プロピレンおよび低硫黄燃料油成分を製造する方法。
【請求項2】
前記接触転換触媒において、前記ゼオライトは、前記ゼオライトの総重量に基づいて、約51~100重量%のメソ多孔質ゼオライトおよび約0~49重量%のマクロ多孔質ゼオライトを含み、前記メソ多孔質ゼオライトは、約10を超える、好ましくは約50を超える、最も好ましくは約100を超えるシリカ-アルミナ比を有し;
好ましくは、前記メソ多孔質ゼオライトは、ZSM型ゼオライトおよびZRPゼオライトからなる群から選択され、前記マクロ多孔質ゼオライトはY型ゼオライトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
得られる前記反応生成物が、約4以上、好ましくは約6以上、最も好ましくは約8以上のプロピレン/プロパン質量比;および/または約1以上、好ましくは約1.5以上、最も好ましくは約1.8以上のイソブテン/イソブタン質量比を有する程度まで、工程i)が実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
得られる前記反応生成物中の前記接触分解蒸留油の前記収率が、前記炭化水素含有供給原料油の重量に対して、約15%以上、好ましくは約20%以上、より好ましくは約25%以上、および約50重量%以下である程度まで、工程i)が実施される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記炭化水素含有供給原料油は、石油炭化水素、他の鉱油、またはそれらの混合物からなる群から選択され、前記石油炭化水素は、減圧軽油、常圧軽油、コーカーガス油、脱アスファルト油、減圧残油、常圧残油、水素化重油またはそれらの任意の混合物からなる群から選択され、前記他の鉱油は、石炭液化油、タールサンド油、シェール油またはそれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記接触転換反応器は、単一流動床反応器、または直列もしくは並列に接続された複数の流動床反応器を含む複合反応器、を含む流動床反応器であり、好ましくは等直径ライザー反応器または様々な種類の可変直径流動床反応器である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程i)の前記反応条件は、約480~700℃の反応温度、約30~100h
-1の重量空間速度または約2~8秒の反応時間、および約5~12の、油に対する触媒の重量比を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記接触分解蒸留油は、約250℃以上である初留点、約520℃以下、好ましくは約500℃以下である最終沸点、および約11.5重量%以下の水素含有量を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記水素化脱硫工程iii)において、アルミナおよび/または非晶質シリカ-アルミナ担体上に担持された第VIB族金属および/または第VIII族金属を含む触媒が使用される、前記1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記水素化脱硫工程iii)において使用される前記触媒は、約0~10重量%の添加剤と、約1~40重量%の少なくとも1つの第VIII族金属(金属酸化物として計算)と、約1~50重量%の少なくとも1つの第VIB族金属(金属酸化物として計算)と、を含み、残りは、アルミナおよび非晶質シリカ-アルミナから選択される担体であり、前記添加剤は、フッ素、リン、チタン、白金またはそれらの組合せからなる群から選択される元素を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記水素化脱硫工程iii)の前記条件は、約2.0~24.0MPaの反応圧力、約200~500℃の反応温度、約50~5000Nm
3/m
3の、油に対する水素の体積比、および約0.1~30.0h
-1の液空間速度を含み、
好ましくは、前記水素化脱硫工程iii)の前記条件は、約3.0~15.0MPaの反応圧力;約300~400℃の反応温度;約200~2000Nm
3/m
3の、油に対する水素の体積比;および約0.2~10.0h
-1の液空間速度を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程iii)で得られる前記水素化蒸留油は、約0.1%以下、好ましくは約0.05%以下の硫黄含有量を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本願は、「軽質オレフィンおよび低硫黄燃料油成分の製造方法」と題する、2019年10月24日に出願された特許出願第201911014993.7号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本願は、炭化水素油の接触転換(catalytic conversion)の分野に関し、特に、炭化水素含有供給原料油を軽質オレフィンおよび低硫黄燃料油成分に触媒的に変換する方法に関する。
【0003】
〔従来の技術〕
国家経済の急速な発展に伴い、環境汚染問題がますます注目を集め、環境規制がますます厳しくなっている。当該規制である、国際海事機関(IMO)の船舶による汚染防止のための国際条約によれば、2020年1月1日から、世界中の船舶は、硫黄含有量が0.5%以下である船舶用燃料を使用しなければならず、これは、間違いなく船舶用燃料の世界市場に非常に大きな革命をもたらし得る。BP予測によれば、2020年の船舶用燃料の世界消費量は、約3億トンに到達し得、これは、低硫黄燃料油の供給に対して、非常に大きな課題を間違いなくもたらし得る。そして、主要な世界の石油加工企業が引き続き発表した供給能力と、世界の市場需要との間には、依然として大きなギャップがある。
【0004】
CN109722303Aは、高硫黄重油から低硫黄船舶用燃料用の混合成分(blending component)を製造する方法を開示している。当該方法は、工程a)ビスブレーキング(visbreaking)用のビスブレーキング装置に、高硫黄重油原料を供給してビスブレーキング残渣を得る工程;工程b)工程a)で得られたビスブレーキング残渣に対して複合改質剤を添加し、次いで、前記混合物を連続沈降させて、上部でオーバーフローを得、下部でボトムフローを得る工程;および、工程c)工程b)で得られたオーバーフローを水素化脱硫のための固定床残渣水素化装置に送り、低硫黄船舶用燃料用の混合成分を得る工程を含む。
【0005】
原油の生産が増加するにつれて、原油の品質は不十分になってきており、その主な発現は、原油の密度、粘度、重金属含有量、硫黄含有量、窒素含有量、コロイド含有量およびアスファルテン含有量の増加である。現在、石油資源の不足がますます深刻になるにつれて、粗悪な原油と高品質な原油との価格差が拡大している。粗悪な原油からできるだけ多くの高価値製品を製造することは、伝統的な原油処理技術に大きな課題をもたらした。しかしながら、粗悪な原油の処理の鍵は、原油留分の中で最も重い常圧残油(atmospheric residue)留分をどのように処理するかである。
【0006】
残渣の接触分解は、現在、現代の石油精製所において軽質オレフィンおよびオクタン価の高いガソリンを生成するための重要な方法であり、当該方法では、ライトサイクル油(light cycle oil、LCO)が副生成物の一部として生成される。近年、LCOは、船舶用燃料のための潜在的な混合成分として考慮されている。減圧残油(vacuum residue)のLCOとの混合は、低硫黄船舶用燃料を製造することができるが、燃料油成分として使用されるLCOの割合は、LCOのより低い粘度のために高すぎず、2つの材料の単純な混合は、LCOと減圧残油との蒸留範囲が互いに重ならないことから、長期間の貯蔵中に層分離をもたらし得る。また、減圧残油の飽和炭化水素の水素含有量が高すぎるため、燃料油成分としての減圧残油の使用は、企業の経済的利益に影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
ポリプロピレンのような誘導体の需要が急速に増加するにつれて、中国におけるプロピレンの需要は依然としてその供給を上回り、重油の接触分解による、より多くのプロピレンの製造が、より重要な役割を果たしている。船舶用燃料の価格は車両用ディーゼル油(diesel oil)の価格よりも低いので、船舶用燃料の製造は、良好な経済的利益を提供することができない。供給原料油の成分特性に目を向け、例えばプロピレンおよびブチレンのような高価値製品とともに、船舶用燃料を製造することは、重要な意義を有している。
【0008】
中国における現在の余剰油精製能力を考慮すると、コアオイル(core oil)精製装置、すなわち接触分解装置を使用することにより、より高価値のプロピレンを製造し、低硫黄船舶用燃料成分を提供する方法の開発は、油精製産業の構造調整のための重要な戦略であり、それ故、環境保全基準および市場需要の向上の要件を満たすことができ、企業競争力を向上させることができる。
〔発明の概要〕
本願の目的は、より多くの燃料油成分を製造する一方で、プロピレン選択性およびプロピレン収率を大幅に改善することができ、ならびに、乾燥ガスおよびコークスの収率を有意に低減することができ、良好な経済的および社会的利益をもたらす、プロピレンおよび低硫黄燃料油成分を製造するための接触転換方法を提供することである。
【0009】
上記目的を達成するために、本願は、
工程i)水素の非存在下、接触転換反応器における反応のために、炭化水素含有供給原料油を接触転換触媒と接触させて、プロピレンを含む反応生成物を得る工程;
工程ii)工程i)からの前記反応生成物を分離して、接触分解蒸留油を得る工程であって、前記接触分解蒸留油は、約200℃以上である初留点、約550℃以下である最終沸点(final boiling point)、および、約12.0重量%以下である水素含有量を有する工程;および
工程iii)前記接触分解蒸留油を水素化脱硫に供して、燃料油成分として使用するのに適した低硫黄水素化蒸留油を得る工程、を含み、
前記接触転換触媒は、前記触媒の総重量に基づいて、約1~50重量%のゼオライト、約5~99重量%の無機酸化物、および約0~70重量%の粘土を含み、
工程i)の前記反応条件は、約460~750℃の反応温度、約10~100h-1の重量空間速度または約1~10秒の反応時間、および約4~20の、油に対する触媒の重量比を含む、プロピレンおよび低硫黄燃料油成分を製造する方法を提供する。
【0010】
好ましくは、工程i)で得られる前記反応生成物は、前記炭化水素含有供給原料油の重量に対して、約8~25重量%のプロピレンおよび約15~50重量%の前記接触分解蒸留油を含む。
【0011】
本願の方法は、前記炭化水素含有供給原料油中に存在するアルカン、アルキル側基を有する炭化水素等を選択的に分解し、最大限にプロピレンを製造し、同時に、燃料油成分として使用するのに適した、前記接触分解蒸留油中に保持される短い側鎖を有する多環芳香族炭化水素を生成することができる。本願の方法により、前記炭化水素含有供給原料油は、プロピレン、ブチレンおよび船舶用燃料の成分へと変換され得、乾燥ガスおよびコークスの収率を大幅に低減することができる。その結果、石油資源の有効利用が実現され得る。
【0012】
特に、従来技術と比較した場合、本願の方法は、以下の利点の少なくとも1つを提供する:
利点1.より多くの燃料油成分を製造する一方で、プロピレンの選択性およびプロピレンの収率を大幅に改善することができ、したがって、いくつかの経済的および社会的利益を達成することができる;
利点2.プロピレン等の高価値生成物の製造を大幅に増加させる一方で、乾燥ガスおよびコークスの収率を著しく減少させることができる;および
利点3.全液体収率を著しく増加させることができ、その結果、石油資源の利用効率を改善させることができる。
【0013】
〔図面の簡単な説明〕
本明細書の一部を形成する図面は、本願の理解を助けるために提供され、限定的であると考えられるべきではない。本願は、以下の詳細な説明と組み合わせて図面を参照して解釈することができる。図面において:
図1は、本願のプロピレンおよび低硫黄燃料油成分を製造する方法の、好ましい実施形態の概略流れ図である。
【0014】
〔発明の詳細な説明〕
以下、本願の具体的な実施形態および添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。本願の特定の実施形態は、例証目的のみのために提供され、いかなる様式においても限定することを意図されないことに留意されたい。
【0015】
本願の文脈において記載される、数値範囲の終点を含む任意の具体的な数値は、その正確な値に限定されないが、前記正確な値に近いすべての値、例えば、前記正確な値の±5%以内の全ての値をさらに包含すると解釈されるべきである。さらに、本明細書に記載される任意の数値範囲に関して、範囲の終点間、各終点と範囲内の任意の特定の値との間、または範囲内の任意の2つの特定の値の間で任意の組み合わせを行って、1つまたは複数の新しい数値範囲を提供することができ、この場合、前記新しい数値範囲はまた、本願に具体的に記載されていると考えられるべきである。
【0016】
特に明記しない限り、本明細書で使用される用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有し;用語が本明細書で定義され、それらの定義が当技術分野における通常の理解と異なる場合、本明細書で提供される定義が優先されるものとする。
【0017】
本願によれば、用語「接触分解蒸留油」は、反応生成物中の初留点が、約200℃以上、好ましくは約250℃以上、および、最終沸点が約550℃以下、好ましくは約520℃以下、最も好ましくは約500℃以下である留分、すなわち蒸留域が約200~550℃、好ましくは約250~520℃、より好ましくは約250~500℃である留分を指す。
【0018】
本願では、「流動反応器」ともまた呼ばれる、用語「流動床反応器」が、その最も広い意味で理解されるべきであり、化学反応のためにそこに流動状態で、気体の供給原料を固体触媒粒子と接触させることができるすべての種類の反応器を包含し、濃厚相床、バブリング床、沸騰床、乱流床、高速床、気相輸送床(例えば、上昇流流動床および下降流流動床)などを含むが、これらに限定されない。流動床反応器は、一定線速度流動床反応器、等直径流動床反応器、可変直径(varied-diameter)流動床反応器などであってもよく、また、例えば、ライザー反応器、または濃厚相床と組み合わせたライザー反応器を含む複合反応器のような、直列または並列に接続された2つ以上の異なる種類の流動床を含む複合反応器であってもよい。典型的には、濃厚相床の気体速度は約0.1~2m/sの範囲とすることができる一方、ライザー反応器のガス速度は約1~30m/sの範囲とすることができる(触媒を除く)。
【0019】
本願の文脈において、明示的に記載された内容に加えて、任意の内容または記載されていない内容は、いかなる変更もなしに、当技術分野で知られているものと同じであるとみなされる。さらに、本明細書で説明される実施形態のいずれも、本明細書で説明される別の1つ以上の実施形態と自由に組み合わせることができ、このようにして得られる技術的解決策または概念は、本願の元の開示または元の説明の一部と見なされ、そのような組み合わせが明らかに不合理であることが当業者に明らかでない限り、本明細書で開示も予想もされなかった新しい事項であると見なされるべきではない。
【0020】
教科書および雑誌論文を含むがこれらに限定されない、本明細書に引用された特許および非特許文献のすべては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0021】
接触分解中の重油の変換率が高いほど良好であることが、当業者には長い間理解されてきた。しかしながら、本願の発明者らは、創造的な考え方および反復実験を通して、接触分解中の重油の変換率ができるだけ高くなく、変換がある度合いに達すると、所望の生成物の増加はほとんどないが、副生成物の乾燥ガスおよびコークスの収率は大幅に増加することを見出した。したがって、本発明者らは、アルカン基の選択的分解の概念に基づく穏やかな接触分解方法を開発した。当該方法において、炭化水素供給原料は最適範囲内の段階まで変換され、前記変換率に対する乾燥ガスおよびコークスの総収率の比が最小限に抑えられ、プロピレン選択性が良好であり、変換されることが困難な多環式芳香族炭化水素は分解生成物の蒸留範囲300~500℃(「触媒ガス油」と呼ばれる)を有する留分中に保持され、コークスの生成は最大限に制限される。触媒ガス油の物理化学的特性に依存して、それは、船舶用燃料のための有効な混合成分として使用することができる。
【0022】
したがって、本願は、以下の工程
工程i)水素の非存在下、接触転換反応器における有効な条件下での反応のために、炭化水素含有供給原料油を接触転換触媒と接触させて、プロピレンを含む反応生成物を得る工程;
工程ii)工程i)からの前記反応生成物を分離して、接触分解蒸留油を得る工程;および
工程iii)前記接触分解蒸留油を水素化脱硫に供して、低硫黄水素化蒸留油を得る工程、を含み、
前記低硫黄水素化蒸留油は、低硫黄燃料油成分として使用可能である、プロピレンおよび低硫黄燃料油成分を製造する方法を提供する。
【0023】
本願によれば、炭化水素含有供給原料油は、石油炭化水素、他の鉱油またはそれらの混合物からなる群から選択することができ、前記石油炭化水素は、減圧軽油(VGOs)、常圧軽油、コーカーガス油、脱アスファルト油、減圧残油(VRs)、常圧残油、水素化重油またはそれらの任意の混合物からなる群から選択することができ、前記他の鉱油は、石炭液化油、タールサンド油、シェール油またはそれらの任意の混合物からなる群から選択することができる。
【0024】
本願によれば、前記接触転換反応器は、単一流動床反応器、または直列もしくは並列に接続された複数の流動床反応器を含む複合反応器などの、様々な種類の流動床反応器から選択することができる。特定の好ましい実施形態では、前記流動床反応器は、中国特許第1078094C号に開示されている反応器などの、様々な種類の可変直径流動床反応器または等直径ライザー反応器であり得る。
【0025】
本願によれば、前記接触転換触媒は、前記触媒の総重量に基づいて、約1~50重量%のゼオライト、約5~99重量%の無機酸化物、および約0~70重量%の粘土を含み得る。好ましくは、前記触媒は、約5~45重量%のゼオライト、より好ましくは約10~40重量%のゼオライト、約5~80重量%の無機酸化物および約10~70重量%の粘土を含み得る。
【0026】
好ましい実施形態において、前記ゼオライトは、前記ゼオライトの総重量に基づいて、約51~100重量%、好ましくは約70~100重量%のメソ多孔質ゼオライト、および約0~49重量%、好ましくは約0~30重量%のマクロ多孔質ゼオライトを含み得る。好ましくは、前記メソ多孔質ゼオライトは、約10を超える、好ましくは約50を超える、より好ましくは約100を超えるシリカ-アルミナ比を有する。前記メソ多孔質ゼオライトは、好ましくはZSM型ゼオライトおよびZRPゼオライトからなる群から選択され;前記マクロ多孔質ゼオライトは、好ましくはY型ゼオライトである。任意に、前記ゼオライトは、リンなどの非金属元素、および/または、鉄、コバルト、ニッケルなどの遷移金属元素で修飾され得る。前記無機酸化物は、好ましくはシリカ、アルミナ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され;前記粘土は、好ましくはカオリンおよび/またはハロイサイトから選択される。
【0027】
本願によれば、前記「有効な条件」とは、前記炭化水素含有供給原料油の重量に対して、好ましくは約8~25重量%のプロピレンおよび約15~50重量%の接触分解蒸留油を含む、プロピレンおよび接触分解蒸留油を含む反応生成物を得るために、前記炭化水素含有供給原料が接触転換反応を受けることを可能にする条件を指す。好ましい実施形態において、前記接触転換工程i)の前記反応条件は、約460~750℃、好ましくは約480~700℃、より好ましくは約480~600℃、最も好ましくは約500~560℃の反応温度;約5~100h-1、好ましくは約10~70h-1、より好ましくは約15~50h-1、最も好ましくは約18~40h-1の重量空間速度(例えば、濃厚相床反応器、高速床反応器の場合などの場合)、または、約1~10秒、好ましくは約1.5~10秒、より好ましくは約2.0~8.0秒、最も好ましくは約4~8秒の反応時間(例えば、ライザー反応器の場合);および約1~30、好ましくは約5~15、より好ましくは約5~10の、油に対する触媒の重量比を含む。
【0028】
好ましい実施形態において、前記工程i)は、得られる前記反応生成物が、約4以上、好ましくは約6以上、最も好ましくは約8以上のプロピレン/プロパン質量比;および/または約1以上、好ましくは約1.5以上、最も好ましくは約1.8以上のイソブテン/イソブタン質量比を有する程度まで実施される。
【0029】
好ましい実施形態において、前記工程i)は、得られる前記反応生成物中の前記接触分解蒸留油の前記収率が、前記炭化水素含有供給原料油の重量に対して、約15%以上、好ましくは約20%以上、より好ましくは約25%以上、および約50%以下である程度まで実施される。
【0030】
当業者には周知のように、接触転換方法における供給原料油の前記変換率は、一般的にはガス、ガソリンおよびコークスの収率の合計として表される。本願の方法では、接触転換方法の最終生成物は、乾燥ガス、液化ガス、ガソリン、接触分解蒸留油およびコークスのみを含む。したがって、本願では、供給原料油の変換率は、100%から接触分解留蒸留油の収率を引いたものと実質的に等しい。次に、本願による接触転換方法の変換率は、約85%以下、好ましくは約80%以下、最も好ましくは約75%以下、および約50%以上の段階に制御される。
【0031】
特定の好ましい実施形態では、前記方法は、工程i)の反応生成物を、使用済み触媒から分離する工程をさらに含み、前記使用済み触媒は、コークス燃焼による除去(stripping)および再生後に反応器に再循環され、前記分離された反応生成物は、プロピレン、ガソリンおよび接触分解蒸留油を含む。プロピレンのような物質を前記反応生成物から分離する方法は当業者に周知であり、本明細書では詳細に説明しない。
【0032】
好ましい実施形態において、アルミナおよび/または非晶質シリカ-アルミナ担体上に担持された第VIB族金属および/または第VIII族金属を含む触媒が、前記水素化脱硫工程iii)において使用される。さらに好ましくは、前記水素化脱硫工程iii)において使用される前記触媒は、約0~10重量%の添加剤と、約1~40重量%の少なくとも1つの第VIII族金属(金属酸化物として計算)と、約1~50重量%の少なくとも1つの第VIB族金属(金属酸化物として計算)とを含み、残りは、アルミナおよび非晶質シリカ-アルミナから選択される担体であり、前記添加剤は、フッ素、リン等から選択される非金属元素、チタン、白金等から選択される金属元素、またはそれらの組み合わせを含む。例えば、前記添加剤は、リン含有補助剤またはフッ化アンモニウム等のフッ素含有補助剤であり得る。前記第VIB族金属は、好ましくはモリブデン、タングステンまたはそれらの組み合わせから選択され;前記第VIII族金属は好ましくはニッケル、コバルトまたはそれらの組み合わせから選択される。
【0033】
好ましい実施形態において、前記水素化脱硫工程iii)の前記条件は、約2.0~24.0MPa、好ましくは約3.0~15.0MPaの反応圧力;約200~500℃、好ましくは約300~400℃の反応温度;約50~5000Nm3/m3、好ましくは約200~2000Nm3/m3の、油に対する水素の体積比;および約0.1~30.0h-1、好ましくは約0.2~10.0h-1の液空間速度を含む。
【0034】
本願によれば、前記接触分解蒸留油は、約200℃以上である初留点、約550℃以下である最終沸点、および約12.0重量%以下である水素含有量を有し;好ましくは、前記接触分解蒸留油は、約250℃以上である初留点、約520℃以下であり、より好ましくは、約500℃以下である最終沸点、および、約11.5重量%以下である水素含有量を有する。
【0035】
好ましい実施形態において、前記接触分解蒸留油の水素化脱硫を介して得られる前記低硫黄水素化蒸留油は、約0.1%以下、好ましくは約0.05%以下の硫黄含有量を有し、燃料油の混合成分として使用される。
【0036】
本願による前記方法の、特定の実施形態を、
図1を参照して以下に説明する。
【0037】
プレ上昇媒体(pre-lifting medium)は、パイプライン1を通して可変直径流動床反応器2(例えば、中国特許第1078094C号に開示された反応器)の底部に導入され、再生触媒傾斜パイプ16からの再生触媒は、プレ上昇媒体の作用の下で、前記反応器に沿って上方に移動し、供給原料油は、パイプライン4からの霧状水蒸気と共にパイプライン3を通して可変直径流動床反応器2の第1の反応ゾーン8の底部に供給され、前記反応器内の既存の流れと混合される。前記供給原料油は高温触媒上で分解され、さらなる反応のために、前記可変直径流動床反応器2の第2の反応ゾーン9に上方に移動する。得られた油ガス(oil gas)および不活性化された使用済み触媒は、前記使用済み触媒と前記油ガスとの分離を達成するために、分離器(disengager)7内のサイクロン分離器(cyclone separator)に通される。油ガスは主要油ガスパイプライン17に通され、前記触媒の微粉末は、前記サイクロン分離器のディップレグ(dipleg)を通って前記分離器7に戻される。前記分離器7内の前記使用済み触媒は、除去部(stripping section)10に通され、パイプライン11からの除去水蒸気(stripping steam)と接触する。前記使用済み触媒から除去された前記油ガスは、前記サイクロン分離器を通って主要油ガスパイプライン17に送られる。除去された使用済み触媒は、使用済み触媒傾斜パイプ12を通って再生器13に送られ、主要空気(main air)がパイプライン14を通って前記再生器に導入されて、前記使用済み触媒上に堆積したコークスを燃焼させる。その結果、不活性化された使用済み触媒を再生することができる。排ガスは、パイプライン15を通って排出される。前記再生触媒は、前記再生触媒傾斜パイプ16を通って、再使用のために、前記可変直径流動床反応器2に再循環される。
【0038】
前記油ガスは、前記主要油ガスパイプライン17を通って、次の分留装置18に送られ、分離後、得られた乾燥ガスはパイプライン19を通って排出され;得られた液化ガスは、パイプライン20を通って排出され、ガス分離装置25においてプロピレン、プロパンおよびC4炭化水素に分離され、プロピレン、プロパンおよびC4炭化水素はそれぞれパイプライン26、27および28を通って排出され;得られたガソリンは、パイプライン21を通って排出され;200~250℃の蒸留域を有する、得られたライトサイクル油留分は、パイプライン22を通って回収され、次いで、パイプライン32からの霧状水蒸気と共に、パイプライン31を通って、前記可変直径流動床反応器2の第1の反応ゾーン8の中央上部に再循環され;得られたスラリー油は、パイプライン24を通って回収され、前記触媒の微粉末を再生するために、精製のために前記可変直径流動床反応器2の第1の反応ゾーン8に再循環され(任意に、供給原料ノズルを通ってパイプライン3からの前記供給原料油と共に、前記第1の反応ゾーン8に通される);得られた接触分解蒸留油は、パイプライン23を通って、水素化処理装置29に通され、前記水素化処理後に得られた前記水素化蒸留油は、パイプライン30を通って排出される。各留分の蒸留範囲および処理計画(processing scheme)は、精製所の実際の必要性に応じて調整することができ、例えば、ガソリンは、軽質ガソリン留分を得るために分割することができ、軽質ガソリン留分は、精製のためにパイプライン5からの霧状水蒸気と共に、パイプライン6を通って前記可変直径流動床反応器2の前記第2の反応帯ゾーン9に再循環させて、プロピレンの収率を増大させることができる。
【0039】
特定の好ましい実施形態において、本願は、以下の技術的解決策を提供する:
1.軽質オレフィン(特にプロピレン)および低硫黄燃料油成分を製造する方法は、供給原料油を、接触転換反応器中で、8~25重量%のプロピレンおよび15~50重量%の接触分解蒸留油を含む反応生成物を製造するのに十分な温度、重量空間速度および供給原料油に対する触媒の重量比で、反応のための触媒と接触させること、および前記接触分解蒸留油を水素化脱硫に供して、燃料油成分として使用するのに適した低硫黄水素化蒸留油を得ることを含む。
【0040】
2.前記供給原料油は、減圧軽油、常圧軽油、コーカーガス油、脱アスファルト油、減圧残油、常圧残油、水素化重油またはそれらの2つ以上の混合物から選択される石油炭化水素、および/または、石炭液化油、タールサンド油、シェール油またはそれらの2つ以上の混合物から選択される他の鉱油からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
【0041】
3.前記接触転換反応器は、ライザー反応器、一定線速度流動床、等直径流動床、上昇流コンベヤライン、下降流コンベヤライン、または、直列および/または並列に接続された反応器の組み合わせを含む、それらの2つ以上の組み合わせ、または同じ種類の2つ以上の反応器の組み合わせ、からなる群から選択され、前記ライザー反応器は、従来の等直径ライザー反応器または様々な種類の可変直径流動床である、項目1に記載の方法。
【0042】
4.前記接触転換触媒は、前記触媒の総重量に基づいて、1~50重量%のゼオライト、5~99重量%の無機酸化物および0~70重量%の粘土を含み、前記ゼオライトは、メソ多孔質ゼオライトおよび任意にマクロ多孔質ゼオライトであり、前記メソ多孔質ゼオライトは、前記ゼオライトの総重量の51~100重量%を占め、前記メソ多孔質ゼオライトは、50を超える、好ましくは80を超えるシリカ-アルミナ比を有し、および、前記マクロ多孔質ゼオライトは、前記ゼオライトの総重量の0~49重量%を占める、項目1に記載の方法。
【0043】
5.前記接触転換の前記条件は、460~750℃の反応温度、10~100h-1の重量空間速度、および4~20の、前記接触転換供給原料油に対する前記触媒の重量比を含む、項目1に記載の方法。
【0044】
6.前記接触転換の前記条件は、480~700℃の反応温度、30~80h-1の重量空間速度、および5~12の、前記接触転換供給原料油に対する前記触媒の重量比を含む、項目5に記載の方法。
【0045】
7.前記接触分解蒸留油は、200℃以上である初留点および12.0重量%以下の水素含有量を有する、項目1に記載の方法。
【0046】
8.前記接触分解蒸留油は、250℃以上である初留点および11.5重量%以下の水素含有量を有する、項目7に記載の方法。
【0047】
9.前記水素化脱硫のために、アルミナおよび/または非晶質シリカ-アルミナ担体上に担持された、第VIB族金属および/または第VIII族金属を含む触媒が使用される、項目1に記載の方法。
【0048】
10.水素化脱硫のための前記用触媒は、0~10重量%の添加剤、1~40重量%の1つ以上の第VIII族金属、1~50重量%の1つ以上の第VIB族金属、および残りの量のアルミナおよび/または非晶質シリカ-アルミナ担体からなり、前記添加剤は、フッ素、リンなどの非金属元素、およびチタン、白金などの金属元素からなる群から選択される、項目9に記載の方法。
【0049】
11.前記水素化脱硫条件は、2.0~24.0MPaの反応圧力、200~500℃の反応温度、50~5000Nm3/m3の、油に対する水素の体積比、および0.1~30.0h-1の液空間速度を含む、項目1に記載の方法。
【0050】
12.前記水素化脱硫条件は、3.0~15.0MPaの反応圧力;300~400℃の反応温度;200~2000Nm3/m3の、油に対する水素の体積比;0.2~10.0h-1の液空間速度を含む、項目11に記載の方法。
【0051】
13.工程(3)の前記水素化蒸留油中の前記硫黄含有量は、0.1%以下、好ましくは0.05%以下である、項目1に記載の方法。
【0052】
〔実施例〕
本願は、以下の実施例に関連してさらに説明されるが、これに限定されるものではない。
【0053】
以下の実施例および比較例において用いた供給原料油および触媒の特性を、それぞれ表1および表2に示す。比較例で使用した接触転換触媒は、Sinopec Catalyst Co., Ltd.のQilu Branchによって製造された触媒である、MMC-1であった。
【0054】
それぞれの実施例で得られた接触分解蒸留油の水素含有量は、NB/SH/T 0656-2017規格に従った炭素および水素分析計により測定される。
【0055】
本実施例で使用した接触転換触媒は、以下のように調製した:
969gのハロイサイト(固形分73%のChina Kaolin clay Co., Ltd.から入手可能)を、4300gの脱カチオン化水中でスラリー化し、781gの擬ベーマイト(64%の固形分を有する、Shandong Zibo Bauxite Plantから入手可能)および144mlの塩酸(30%の濃度および1.56の比重を有する)を添加し、均一に撹拌した。混合物を静置し、60℃で1時間熟成し、pHの値を2~4に保ち、次いで、混合物を室温に冷却した。化学水(chemical water)を含み、150を超えるシリカ-アルミナ比を有する、メソ多孔質形状選択性ZSM-5ゼオライト(Sinopec Catalyst Co., Ltd.のQilu Branchから入手可能)1600gを含む予め調製したスラリー5000gを添加し、均一に撹拌し、その結果生じたものを噴霧乾燥し、遊離Na+を洗い流して触媒を得た。得られた触媒を100%水蒸気で800℃で熟成し、熟成した触媒を触媒Aと表し、その特性を表2に示す。
【0056】
本実施例で使用した水素化脱硫触媒は、以下のように調製した:
Sinopec Catalyst Co.,Ltd.のChangLing Branchによって製造された擬ベーマイト1000gを秤量し、次いで、10mlの硝酸(化学的に純粋)を含む1000mlの水溶液を添加した。混合物は、二軸押出機で帯状に押出す(band extrusion)ことにより成形し、120℃で4時間乾燥し、800℃で4時間焼成して触媒担体を得た。当該担体を、120gのフッ化アンモニウムを含む水溶液900ml中に2時間浸漬し、120℃で3時間乾燥し、600℃で3時間焼成した;室温まで冷却した後、その結果生じたものを、133gのメタモリブデン酸アンモニウムを含む、950mlの水溶液中にさらに3時間浸漬し、120℃で3時間乾燥し、600℃で3時間焼成した;再度室温まで冷却した後、その結果生じたものを、最後に、180gの硝酸ニッケルと320gのメタタングステン酸アンモニウムとを含む、900mlの水溶液に4時間浸漬し、120℃で3時間乾燥し、600℃で4時間焼成して触媒Bを得た。
【0057】
【0058】
【0059】
〔実施例1-a〕
当該実施例は、供給原料油としてVGO+30%VR-1、接触転換触媒として触媒Aを使用し、可変直径流動床反応器を含む中型の接触分解装置上で、
図1に示す方法計画(process scheme)に従って実施した。得られた油ガスおよび使用済み触媒を分離器で分離し、油ガス生成物を、分留装置におけるこれらの留分の蒸留範囲に従って、プロピレン、ブチレン、ガソリンおよび接触分解蒸留油(蒸留範囲250~500℃、および水素含有量11.2重量%)に分離した。反応条件および生成物分布を表3に記載する。
【0060】
得られた接触分解蒸留油を、水素と共に水素化脱硫反応器に送り、水素化脱硫触媒Bと接触させ、反応圧力6.0MPa、反応温度350℃、油に対する水素の体積比350、および液空間速度2.0h-1で反応させて、低硫黄水素化蒸留油を得た。低硫黄水素化蒸留油を燃料油成分として使用し、別の燃料油成分「減圧残油VR-2」と混合して、国家規格GB 17411-2015、船舶用燃料油を満たすRMG 380燃料油生成物を得た。その特性を表4に示す。
【0061】
〔実施例1-b〕
当該実施例は、供給原料油としてVGO、接触転換触媒として触媒Aを使用して、可変直径流動床反応器を含む中型の接触分解装置上で、
図1に示す方法計画に従って実施した。得られた油ガスおよび使用済み触媒を分離器で分離し、油ガス生成物を、分留装置におけるこれらの留分の蒸留範囲に従って、プロピレン、ブチレン、ガソリンおよび接触分解蒸留油(蒸留範囲250~500℃、および水素含有量11.3重量%)に分離した。反応条件および生成物分布を表3に記載する。
【0062】
〔実施例1-c〕
当該実施例は、供給原料油としてVGO+30%VR-1、接触転換触媒として触媒Aを使用して、等直径ライザー反応器を含む中型の接触分解装置上で、
図1に示す方法計画に従って実施した。得られた油ガスおよび使用済み触媒を分離器で分離し、油ガス生成物を、分留装置におけるこれらの留分の蒸留範囲に従って、プロピレン、ブチレン、ガソリンおよび接触分解蒸留油(蒸留範囲250~500℃、および水素含有量11.2重量%)に分離した。反応条件および生成物分布を表3に記載する。
【0063】
〔比較例1〕
当該比較例は、CN1004878Bに記載されている従来のはるか昔の(deep)接触分解法に従って、供給原料油としてVGO、接触分解触媒として触媒MMC-1を使用して、濃厚相流動床と組み合わされたライザー反応器を含む中型装置上で実施した。得られた油ガスおよび使用済み触媒を分離器で分離し、油ガス生成物を、分留装置におけるこれらの留分の蒸留範囲に従って、プロピレン、ブチレン、ガソリンおよびライトサイクル油(蒸留範囲200~350℃、および水素含有量9.8重量%)に分離した。反応条件および生成物分布を表3に記載する。
【0064】
〔実施例2〕
当該実施例は、供給原料油として水素化重油、接触転換触媒として触媒Aを使用して、
可変直径流動床反応器を含む中型の接触分解装置上で、
図1に示す方法計画に従って、実施した。
得られた油ガスおよび使用済み触媒を分離器で分離し、油ガス生成物を、分留装置におけるこれらの留分の蒸留範囲に従って、プロピレン、ブチレン、ガソリンおよび接触分解蒸留油(蒸留範囲250~500℃、および水素含有量10.9重量%)に分離した。反応条件および生成物分布を表3に記載する。
【0065】
得られた接触分解蒸留油を、水素と共に水素化脱硫反応器に送り、水素化脱硫触媒Bと接触させ、反応圧力9.0MPa、反応温度330℃、油に対する水素の体積比650、および液空間速度8.0h-1で反応させて、低硫黄水素化蒸留油を得た。低硫黄水素化蒸留油を燃料油成分として使用し、別の燃料油成分「減圧残油VR-3」と混合して、国家規格GB 17411-2015、船舶用燃料油を満たすRMG 180燃料油生成物を得た。その特性を表5に示す。
【0066】
【0067】
表3の結果から分かるように、比較例1と比較した場合、実施例1-aおよび実施例1-cは、それぞれ14.42重量%および13.45重量%もの高いプロピレン収率を提供するだけでなく、それぞれ29.32重量%および28.32重量%もの高い接触分解蒸留油収率も提供することができ、より劣る供給原料油を使用しているが、乾燥ガスおよびコークスの収率は著しく減少し、全液体収率が著しく増加する;一方、実施例1-bは、15.00重量%もの高いプロピレン収率および27.73重量%の接触分解蒸留油収率を提供することができ、同じ供給原料油を使用して、乾燥ガスおよびコークスの収率は著しく減少し、全液体収率は著しく増加する。
【0068】
【0069】
【0070】
以上、本願の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本願は、これらの実施形態の詳細に限定されるものではない。本願の精神から逸脱することなく、様々な修正を行うことができ、これらの修正も本願の範囲内にある。
【0071】
なお、上記実施形態で説明した様々な技術的特徴は、矛盾することなく、いかなる適当な方法によっても組み合わせることができる。簡潔にするために、様々な可能な組み合わせは、本願において別々に記載されないが、そのような組み合わせもまた、本願の範囲内にある。
【0072】
加えて、本願の様々な実施形態は、本願の精神から逸脱しない限り、任意の方法で組み合わせることができ、そのような組み合わせは、本願の開示の一部と見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】本願のプロピレンおよび低硫黄燃料油成分を製造する方法の、好ましい実施形態の概略流れ図である。
【国際調査報告】