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特表2022-554215気液バブリング床反応器、反応系、及びカーボネートエステルを合成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】気液バブリング床反応器、反応系、及びカーボネートエステルを合成するための方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/08 20060101AFI20221221BHJP
   C07D 317/38 20060101ALI20221221BHJP
   C07D 317/36 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
B01J8/08
C07D317/38
C07D317/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524244
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 CN2020123128
(87)【国際公開番号】W WO2021078239
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】201911025449.2
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509128052
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
【住所又は居所原語表記】NO.1658 PUDONG BEI ROAD,PUDONG NEW AREA,SHANGHAI 201208,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】劉銀川
(72)【発明者】
【氏名】楊衛勝
(72)【発明者】
【氏名】李娜
(72)【発明者】
【氏名】孫▲ディ▼宗
(72)【発明者】
【氏名】何文軍
【テーマコード(参考)】
4G070
【Fターム(参考)】
4G070AA05
4G070AB05
4G070AB10
4G070BB11
4G070CA06
4G070CA11
4G070CB02
4G070CB17
(57)【要約】
本発明は、液体分配器と、前記液体分配器の下に位置する気体分配器と、触媒床層と、触媒支持プレートと、任意選択の遮断スクリーンと、を備える気液バブリング床反応器を開示する。前記反応器の頂部に気体出口が設けられ、前記反応器には、前記液体分配器に接続された供給口、前記気体分配器に接続された気体入口が設けられ、底部には、排出口が設けられている。本発明はさらに、主反応器及び副反応器としての気液バブリング床反応器を含む反応系を提供する。本発明の前記系及び方法により、カーボネート合成法における低転化率、循環ポンプのガスバインディング、不安定な運転、電子グレード生成物の低収率等の問題が意図的に解決される。本発明は、関連する工業的製造に適用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体分配器と、前記液体分配器の下に位置する気体分配器と、触媒床層と、触媒支持プレートと、任意選択の遮断スクリーンと、を備える気液バブリング床反応器であって、前記反応器の頂部に気体出口が設けられ、前記反応器には前記液体分配器に接続された供給口、前記気体分配器に接続された気体入口が設けられ、底部には、排出口が設けられており、好ましくは、前記触媒床には不均一触媒が装填される、気液バブリング床反応器。
【請求項2】
前記液体分配器は前記反応器の上部に位置し、前記気体分配器は前記反応器の中央又は下部に位置し、前記遮断スクリーンは前記触媒床の上に位置しており、好ましくは、前記気体分配器は管状分配器である、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記反応器の前記排出口と前記供給口との間に位置する循環ポンプと、前記循環ポンプと前記反応器の前記供給口との間に位置し、反応物入口を備えた混合器と、前記混合器と前記反応器の前記供給口との間に位置し、反応気体入口を備えた溶解器と、をさらに備え、前記循環ポンプ、前記混合器、及び前記溶解器は、パイプラインによって連続的に接続されている、請求項1又は2に記載の反応器。
【請求項4】
前記排出口から前記反応器の前記供給口への再循環流の前記パイプライン上に位置する冷却器をさらに備え、前記冷却器は、好ましくは、前記反応器の前記排出口と前記循環ポンプとの間の前記パイプライン上に位置する、請求項1~3のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項5】
前記反応器の前記気体出口に接続される凝縮器をさらに備え、好ましくは、前記凝縮器の気体入口は前記反応器の前記気体出口に接続され、前記凝縮器の液体出口は前記反応器の液体入口に接続される、請求項1~4のいずれか1項に記載の反応器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の前記気液バブリング床反応器と副反応器とを含む反応系であって、前記副反応器の前記供給口は、前記気液バブリング床反応器の前記排出口に接続され、好ましくは、前記副反応器は、固定床反応器であり、好ましくは、前記気液バブリング床反応器の気体空間は、前記副反応器の気体空間と連通している、反応系。
【請求項7】
前記副反応器の頂部には気体出口が設けられ、底部には排出口が設けられ、前記気体出口は前記凝縮器に接続されており、好ましくは、前記副反応器には反応気体入口が設けられておらず、好ましくは、前記副反応器の前記供給口は、接続パイプラインを介して前記バブリング床反応器の前記排出口と前記循環ポンプとの間の位置に接続され、より好ましくは、前記バブリング床反応器の前記冷却器と前記循環ポンプとの間の位置に接続され、好ましくは、前記副反応器の前記供給口の前記位置は、前記気液バブリング床反応器の前記触媒床層の充填高さより低く、前記気液バブリング床反応器の前記液体分配器の高さより上ではない、請求項6に記載の反応系。
【請求項8】
前記副反応器の前記排出口に接続された分離ユニットをさらに含む、請求項6又は7に記載の反応系。
【請求項9】
前記分離ユニットは、供給口が前記副反応器の前記排出口に接続されたフラッシュ装置と、供給口が前記フラッシュ装置の前記排出口に接続された軽質除去カラムと、供給口が前記軽質除去カラムの前記排出口に接続された重質除去カラムと、供給口が前記軽質除去カラム及び前記重質除去カラムの液体出口に接続されたバッチカラムと、を備える、請求項8に記載の反応系。
【請求項10】
請求項1~5のいずれかに記載の前記気液バブリング床反応器を使用する、カーボネートの合成方法であって、以下の工程を含む、方法:
アルキレンオキシド及び第1の二酸化炭素ガスを前記反応器からの再循環流と混合し、得られた混合物を、前記供給口を介して前記反応器の液体分配器に送る工程;
第2の二酸化炭素ガスを、気体入口を介して前記反応器の気体分配器に送る工程;
上方へ移動する前記第2の二酸化炭素ガスを、触媒の存在下で反応させてカーボネート含有液体流を得るために、下方へ移動する流れと混合する工程であって、好ましくは、前記触媒は不均一触媒である工程。
【請求項11】
前記反応器の前記排出口から流出する前記再循環流は、冷却器及び循環ポンプを通って流れ、次いで、混合器の入口から導入されたアルキレンオキシドと前記混合器内で混合され、次いで、溶解器の入口から導入された第1の二酸化炭素と前記溶解器内で混合され、次いで、供給口を介して前記反応器の前記液体分配器に入る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応器からの気体物質を凝縮器に入れて気液分離を行い、得られた液体を、液体入口を介して前記気液バブリング床反応器に戻す、請求項10又は11に記載のカーボネートを合成するための方法。
【請求項13】
請求項6~9のいずれか1項に記載の反応系を使用し、以下の工程を含む、カーボネートを合成するための方法:
前記カーボネート含有液体流を冷却器によって冷却し、次いで、第1の流れと第2の流れとに分割する工程;
再循環流としての前記第1の流れが、循環ポンプ、混合器、及び溶解器を通って、前記気液バブリング床反応器の前記供給口に連続的に入る工程;
アルキレンオキシドを前記混合器に導入して前記再循環流と混合する工程;
第1の二酸化炭素ガスを前記溶解器に導入し、前記再循環流と混合する工程;
第2の二酸化炭素ガスが前記気液バブリング床反応器の前記気体分配器に入る工程;
上方へ移動する第2の二酸化炭素ガスと下方へ移動する液相流とを混合し、触媒の存在下で反応させ、カーボネート含有液体流を得る工程であって、好ましくは、前記触媒は不均一触媒である工程;
前記第2の流れを前記副反応器に入れて反応を継続させ、カーボネートを生成する工程。
【請求項14】
前記気液バブリング床反応器及び前記副反応器からの気体物質を凝縮器に入れて気液分離を行い、得られた液体を、液体入口を介して前記気液バブリング床反応器に戻す、請求項13に記載のカーボネートを合成するための方法。
【請求項15】
前記気液バブリング床反応器に導入される二酸化炭素の総質量に基づいて、前記第1の二酸化炭素ガスと前記第2の二酸化炭素ガスとの分配比は、(1~50):(50~99)、好ましくは、(10~50):(50~90)である、請求項10又は13に記載の方法。
【請求項16】
反応物(アルキレンオキシドとカーボネートとの混合物)の密度に対する前記触媒の密度の比は、0.3~2であり、好ましくは、0.5~1.5であり;二酸化炭素とアルキレンオキシドとのモル比は、1:1~10:1であり、好ましくは、1:1~2:1であり;反応圧力は、1~10MPaであり、反応温度は、80~300℃である、請求項10又は13に記載の方法。
【請求項17】
前記副反応器から得られたカーボネート生成物が分離ユニットに入る工程をさらに含み、以下の工程を含む、請求項13に記載の方法:
粗カーボネート生成物をフラッシュ装置に入れて処理し、液体流及び気体を得る工程;
軽質成分及び底液を得る処理のために、前記フラッシュ装置から得られた前記液体流を軽質除去カラムに入れる工程;
軽質成分、電子グレードカーボネート、高グレードカーボネート、及び、カーボネートと重質成分との混合物、を製造する処理のために、又は、軽質成分、電子グレードカーボネート、及び、カーボネートと重質成分との混合物を製造する処理のために、前記軽質除去カラムから得られた前記底液を重質除去カラムに入れる工程;
前記軽質除去カラム及び前記重質除去カラムから得られた前記軽質成分、並びに前記重質除去カラムから得られた前記底液を、軽質成分、高グレードカーボネート、電子グレードカーボネート、及び重質成分を製造するためにバッチカラムに入れる工程。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、気液バブリング床反応器、より具体的にはカーボネートを合成するための気液バブリング床反応器;反応系;前記反応系を使用してカーボネートを合成する方法、より具体的にはアルキレンオキシド及び二酸化炭素を使用してカーボネートを合成する方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
カーボネートは、炭酸分子中の2つの水酸基(-OH)の水素原子の一部又は全部がアルキル基で置換された化合物である。強酸の存在下では、カーボネートは二酸化炭素とアルコールに分解する。
【0003】
カーボネートは、多くの態様で使用され得る。ジメチルカーボネートは、メチル化剤として使用され得る。ジメチルピロカーボネートは、保存剤として使用され得る。ポリカーボネートは、ポリマー材料として使用され得る。炭酸エチレン及び炭酸プロピレンは、極性溶媒として使用され得る。
【0004】
カーボネートを例に挙げれば、従来技術では、主にホスゲン法、エステル交換法、アルキレンオキシドと二酸化炭素との付加法の3つの合成法がある。
【0005】
ホスゲン法とは、アルコール又はフェノールとホスゲンとを反応させてカーボネートを調製する方法を指す。この方法は、過去にカーボネートを調製するために一般的に使用されていた方法である。しかしながら、ホスゲンは毒性が高く、環境に深刻な汚染を引き起こすので、この方法は先進国では禁止されている。それゆえ、この方法は、次第に他のより汚染の少ない方法に置き換えられている。
【0006】
エステル交換法とは、ジアルキルカーボネート及びアルカンジオールのエステル交換によってカーボネートを調製する方法を指す。この方法の鍵は、適切な触媒を見つけることである。しかしながら、この方法の原料は比較的高価であり、触媒の効率は比較的低い。
【0007】
アルキレンオキシドと二酸化炭素との付加法は、触媒の作用下でアルキレンオキシドと二酸化炭素とが反応してカーボネートを生成する方法を指す。この反応は、発熱性及び体積減少性であり、この反応を進行させるためには低温及び高圧が好ましい。反応系は主に、均一触媒系と不均一触媒系とを含む。触媒の選択も、この反応の円滑な進行の鍵である。
【0008】
現在、エネルギー危機は深刻化しており、二酸化炭素の合理的な使用は、省エネルギーの持続可能な発展につながっている。二酸化炭素はカーボネート合成の原料として使用され、これは良好な実用的意義を有する。アルキレンオキシドを二酸化炭素と反応させることによってカーボネートを調製するための2つの系、すなわち均質系及び不均質系がある。均質系は、生成物の分離が困難であること、使用される触媒の量が多いこと等の問題を有しているため、その開発はある程度制限される。不均質法は、反応生成物と触媒との分離に有利であり、触媒は容易に再生され、何度も再循環することができるので、比較的良好な工業的価値を有する。
【0009】
CN106588862Aは、連続精留カラム及びバッチ精留カラムをそれぞれ採用した、エチレンカーボネートの精製プロセスと精製システムとを開示している。まず、粗生成物を連続精留カラムに通し、軽質成分を頂部で除去し、重質成分を底部で除去し、精製生成物を側管路から抽出してバッチ精留カラムに通し、軽質成分を頂部で除去し、エチレンカーボネート生成物を側管路から抽出する。技術プロセスの製造運転において、除去された軽質成分中のエチレンカーボネートは回収されず、生成物収率は低い。
【0010】
CN102675276Aは、自動的に制御される安定的かつ継続的な、エチレンカーボネートのための製造プロセスを開示している。その制御センタは、センサによって測定された、流速(flow speed)、流速(flow rate)、濃度、圧力、温度等を含むデータを、データフィードバック回路を通して収集し、次いで、データを統合し、命令出力回路を通してエフェクターに送信して、高圧計量ポンプのオン-オフ、流速(flow speed)、及び流速(flow rate)を制御し、バランスのとれた連続的生産の目的を達成する。しかしながら、この製造プロセスは、均質な触媒を使用するが、これには大きな制約がある。
【0011】
既存の気液反応器でカーボネートを製造する場合、原料の反応が不十分であり、転化効率が低いという問題が依然としてある。加えて、二酸化炭素は、反応物として反応器に導入される必要があるため、二酸化炭素の導入は、結果として、ポンプのガスバインディングを起こし得る。さらに、気液反応における気体の導入により、液面が大きく変動し、従来の液面計を用いて反応器の実際の液面を正確に決定することが困難であり、このことは、「フルタンク」状態に容易につながるため、反応操作に悪影響を及ぼす可能性がある。これらの全ては、反応物の転化率に影響を与え、さらに、最終合成カーボネートの収率、純度等に影響を与える。
【0012】
〔発明の概要〕
本発明の発明者らは、本発明に係る気液バブリング床反応器を用いることにより、先行技術における上記技術的課題を解決することが可能であること、さらに、本発明に係る反応系を用いることにより、先行技術における上記技術的課題を解決することが可能であることを詳細に調査し、見出した。さらに、本発明の発明者らは、カーボネートを製造するための方法(process)も見出した。
【0013】
具体的には、本発明は、以下の技術的解決策を提供する。
【0014】
本発明の一態様によれば、液体分配器と、前記液体分配器の下に位置する気体分配器と、触媒床層と、触媒支持プレートと、任意選択の遮断スクリーンと、を備える気液バブリング床反応器が提供される。前記気液バブリング床反応器において、前記反応器の頂部に気体出口が設けられ、前記反応器には、前記液体分配器に接続された供給口、前記気体分配器に接続された気体入口が設けられ、底部には、排出口が設けられており、好ましくは、前記触媒床には不均一触媒が装填される。
【0015】
本発明の一態様によれば、本発明に係る前記気液バブリング床反応器と副反応器とを含む反応系が提供される。前記反応系において、前記副反応器の前記供給口は、前記気液バブリング床反応器の前記排出口に接続され、好ましくは、前記副反応器は、固定床反応器であり、好ましくは、前記気液バブリング床反応器の気体空間は、前記副反応器の気体空間と連通している。
【0016】
本発明の一態様によれば、上記の本発明に係る気液バブリング床反応器を使用し、アルキレンオキシド及び第1の二酸化炭素ガスを前記反応器からの再循環流と混合し、得られた混合物を、前記供給口を介して前記反応器の液体分配器に送る工程と、第2の二酸化炭素ガスを、気体入口を介して前記反応器の気体分配器に送る工程と、上方へ移動する前記第2の二酸化炭素ガスを、触媒の存在下で反応させてカーボネート含有液体流を得るために、下方へ移動する流れと混合する工程であって、好ましくは、前記触媒は不均一である工程とを含む、カーボネートを合成するための方法が提供される。
【0017】
本発明の一態様によれば、上記の本発明に係るカーボネートを合成するための方法であって、前記カーボネート含有液体流を冷却器によって冷却し、次いで、第1の流れと第2の流れとに分割する工程;再循環流としての前記第1の流れが、循環ポンプ、混合器、及び溶解器を通って、前記気液バブリング床反応器の前記供給口に連続的に入る工程;アルキレンオキシドを前記混合器に導入し、前記再循環流と混合する工程;第1の二酸化炭素ガスを前記溶解器に導入し、前記再循環流と混合する工程;第2の二酸化炭素ガスが前記気液バブリング床反応器の前記気体分配器に入る工程:上方へ移動する第2の二酸化炭素ガスと下方へ移動する液相流とを混合し、触媒の存在下で反応させ、カーボネート含有液体流を得る工程であって、好ましくは、前記触媒は不均一触媒である工程;前記第2の流れを前記副反応器に入れて反応を継続させ、カーボネートを生成する工程を含む、カーボネートを合成するための方法が提供される。
【0018】
〔発明の効果〕
本発明に係る気液バブリング床反応器、及び気液バブリング床反応器を用いたカーボネートの合成方法によれば、再循環流中に二酸化炭素ガスを十分に溶解させることができるので、反応器における二酸化炭素の溶解時間を短縮又は回避することができ、二酸化炭素及びアルキレンオキシドの転化効率を向上させることができ、反応時間を短縮することができ、カーボネートの収率を向上させることができる。これにより、カーボネートを効率よく高収率で製造することができ、高純度のカーボネート生成物を得ることができる。さらに、本発明に係る気液バブリング床反応器は、二酸化炭素ガスによって引き起こされる循環ポンプへのガスバインディングを回避することも可能である。
【0019】
本発明に係る反応系、及びこの反応系を用いることによるカーボネートの合成方法によれば、上述した本発明に係る気液反応器の優れた効果を奏しつつ、二酸化炭素による循環ポンプへのガスバインディングを効果的に防止することができ、バブリング床反応器のオーバフローによる生産性への影響を抑制することができ、カーボネートの収率を向上させることができる。また、本発明に係る反応系は、気液バブリング床での反応過程における逆混合の問題を解決できるため、アルキレンオキシド材料を十分に変換することができ、カーボネートの収率を高めることができる。
【0020】
また、本発明に係る反応系、及びこの反応系を用いたカーボネートの合成方法によれば、粗カーボネート生成物を2つのカラム(軽質除去カラム及び重質除去カラム)で連続的に精留することができる。大部分の電子グレード生成物は重質除去カラムの頂部及び側管路から得られ、軽質成分及び重質成分はバッチカラムでさらに精製されるので、カーボネートの収率を向上させるだけでなく、種々のグレードのカーボネートの純度を向上させることができる。
【0021】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明に係る、カーボネートを合成するための系の概略図である。
【0022】
図2は、本発明に係る、カーボネートを合成するための分離ユニットの概略図である。
【0023】
同図における各部は、以下である。
【0024】
【表1】
【0025】
〔発明の詳細な説明〕
ここで、本発明の実施形態について詳細に言及するが、本発明の範囲は実施形態によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されることを理解されたい。
【0026】
本明細書において、「当業者に公知の」、「先行技術」、又はその同義語等の表現を用いて、材料(material)、物質(substance)、方法(process)、工程(step)、装置、要素等を導く場合、そのような接頭辞によって導かれる対象には、本出願の出願時において当該技術分野で従来から適用されているもの、及び、現在ではそれほど一般的に適用されていない可能性があるが、同様の用途に適しているものとして当該技術分野において公知のものを含むことが意図される。
【0027】
本明細書の文脈において、明示的に記載されているものを除いて、記載されていない任意の部材又は事項は、いかなる変更もなしに、当該技術分野において公知のものに直接的に適用可能である。さらに、本明細書において説明されるいずれの実施形態も、本明細書で説明される1つ又は複数の他の実施形態と自由に組み合わせることができ、結果として生じる技術的解決策又は技術的思想は、元の開示又は本発明の元のレコードの一部と見なされ、その組合せが不合理であると当業者が信じない限り、本明細書で開示又は予想されていない新しい内容と見なされるべきではない。
【0028】
本発明は、液体分配器と、液体分配器の下に位置する気体分配器と、触媒床層と、触媒支持プレートと、任意選択の遮断スクリーンと、を備える気液バブリング床反応器を提供する。気液バブリング床反応器において、反応器の頂部には気体出口が設けられ、反応器には液体分配器に接続された供給口、気体分配器に接続された気体入口が設けられ、底部には、排出口が設けられており、好ましくは、触媒床には不均一触媒が装填される。
【0029】
本発明において、気液反応は、出発材料が気相及び液相である必要がある場合に限定されない。気液反応は、その反応が気液様式で行われることを意味し、例えば、反応物質の一方が気相であり、反応物質の他方が液相で存在する反応であってもよい。本発明に係る気液反応器は、好ましくは、カーボネートの調製のために、特に、好ましくは、不均一触媒の存在下でのアルキレンオキシド及び二酸化炭素の付加法によるカーボネートの調製のために使用される。
【0030】
本発明に係る気液バブリング床反応器には触媒床層が配置されており、該触媒床層は、バブリング型反応における触媒床での触媒として、気相、液相、及び固相の3つの相の接触を強化することができる。反応は、触媒床層の内部温度が均一になるように行われ、アルキレンオキシドの転化率を向上させることができる。
【0031】
より具体的には、本発明に係る気液バブリング床反応器によれば、頂部には気体出口が設けられ、反応器には供給口及び気体入口が設けられ、反応器底部には排出口が設けられ、気体入口は供給口と比較して下に位置する。
【0032】
とりわけ、反応器の頂部の気体出口は、反応流中の気体物質の排出のために使用される。ここで、反応器の頂部は、気体出口が反応器の上壁に位置しなければならないという意味ではなく、反応器の上部に近い側壁上の位置(反応液面より上に位置する限り)、例えば、できるだけ反応器の頂部に近い反応器の側壁上の位置、に位置してもよいことを意味し得る。
【0033】
供給口は、液流(例えば、反応物質及び反応再循環流)を供給するために使用される。供給口を、反応器の側壁又は反応器の頂部、好ましくは、反応器の側壁上に配置してもよい。
【0034】
気体入口は、ガス流(例えば、二酸化炭素)を供給するために使用される。気体入口を供給口の下に気体入口を配置することによって、ガス流が反応器に入った後、気液流の充分な混合を達成することができる。気体入口を反応器の側壁上に配置することもできるし、反応器の底部に配置することもできる。気体入口を、好ましくは、反応器の側壁上であって、供給口の下の位置に配置することもできる。
【0035】
反応器の底部の排出口は、反応生成物流及び再循環流を排出するために使用される。ここで、反応器の底部は、排出口が反応器の底壁に位置しなければならないという意味ではなく、(反応液面より下に位置する限り)反応器の下部に近い側壁上の位置、例えば、できるだけ反応器の底部に近い反応器の側壁上の位置、に位置してもよいことを意味し得る。
【0036】
本発明に係る気液バブリング床反応器において、供給口に接続された液体分配器と、気体入口に接続された気体分配器とが配置されている。気体分配器は、液体分配器の下に位置している。気体分配器と液体分配器との両方を配置する目的は、ガス流と液体流との間の十分な接触を達成するためである。
【0037】
本発明の一実施形態において、前記液体分配器は、前記反応器の上部に位置しており、反応中に反応の液面より上に露出したり、反応の液面より下に沈んで隠れたりすることができる。
【0038】
本発明の一実施形態において、前記気体分配器は、前記反応器の中央又は下部に位置しており、反応が実施されるとき、前記気体分配器は反応の液面より下に沈んで隠れる。
【0039】
本発明に係る気液バブリング床反応器において、触媒床層も配置されており、触媒床層は、反応のための不均一触媒を支持するために使用される。アルキレンオキシドと二酸化炭素との反応においては、均一触媒又は不均一触媒が用いられ得るが、不均一触媒の使用が好ましい。
【0040】
本発明の一実施形態において、反応器内に、触媒床を支持するための触媒支持プレートが配置される。また、触媒支持プレートは、二酸化炭素が循環ポンプに入るのを効果的に防止し、循環ポンプのガスバインディングを回避することができる。
【0041】
触媒支持プレートは、好ましくは、ステンレス鋼から作られ、グリッド又はワイヤメッシュの形状であり得、そして平面又は非平面に配置され得る。
【0042】
本発明の一実施形態において、遮断スクリーンを反応器内に配置してもよい。遮断スクリーンは、ガス放出中に同伴される固体触媒がパイプラインを遮断するのを防止するために、触媒床よりも高い反応器の上部に配置される。
【0043】
本発明の一実施形態において、反応器は、液体入口をさらに備えていてもよい。液体入口は、気体出口から排出される気体物質を凝縮することによって得られる反応物流を還流するために使用される。液体入口は、反応器の頂又は反応器の側壁に位置してもよい。液体入口は、好ましくは、反応器の側壁上に位置する。
【0044】
本発明の一実施形態において、前記気体分配器は、好ましくは管状である。前記管状分配器を使用することによって、気体上昇及び液体降下のための通路が保証され、床の圧力降下が低減される。
【0045】
本発明の一実施形態において、攪拌装置を気液バブリング床反応器内に設けることができる。本発明の効果を損なわない範囲内で、撹拌装置は、当該技術分野において公知の任意の撹拌装置であってもよい。
【0046】
本発明の一実施形態において、前記気液バブリング床反応器は、前記反応器の前記排出口と前記供給口との間に位置する循環ポンプと、前記循環ポンプと前記反応器の前記供給口との間に位置し、反応物入口を備えた混合器と、前記混合器と前記反応器の前記供給口との間に位置し、反応気体入口を備えた溶解器と、をさらに備え、前記循環ポンプ、前記混合器、及び前記溶解器は、パイプラインによって連続的に接続されている。
【0047】
本発明の一実施形態において、前記気液バブリング床反応器は、前記排出口から前記反応器の前記供給口への再循環流のパイプライン上に位置する冷却器をさらに備える。前記冷却器は、前記反応器内の反応系を冷却するために使用される。前記冷却器は、好ましくは、前記反応器の前記排出口と前記循環ポンプとの間の前記パイプライン上に位置する。
【0048】
本発明の一実施形態において、循環ポンプには供給口と排出口が設けられており、供給口は、反応器の排出口に接続され、排出口は、混合器の供給口に接続されている。本発明の一実施形態において、冷却器が反応器の排出口と循環ポンプとの間に位置する場合、冷却器には供給口と排出口とが設けられ、供給口は、反応器の排出口に接続され、排出口は循環ポンプの供給口に接続される。
【0049】
本発明の一実施形態において、混合器は、供給口、排出口、及び反応物入口を備え、供給口は、循環ポンプの排出口に接続され、排出口は、溶解器の供給口に接続され、反応物入口は反応物原料を受け取るために使用される。
【0050】
本発明の一実施形態において、溶解器は、供給口、排出口、及び反応気体入口を備え、供給口は、混合器の排出口に接続され、排出口は、反応器の供給口に接続され、反応気体入口は、反応気体を受け取るために使用される。
【0051】
本発明の一実施形態において、当該技術分野において公知の化学工学的充填方法を、溶解器及び混合器にて使用し、攪乱混合を増大させることができる。
【0052】
本発明において、溶解器は、循環ポンプの下流に設けられる。気体による循環ポンプのガスバインディングを回避することができ、反応プロセス中のガスバインディングによる不安定な動作の問題を回避することができる。さらに、循環ポンプの前に冷却器を配置することにより、循環ポンプのガスバインディングをさらに回避することができる。
【0053】
二酸化炭素及びアルキレンオキシドからカーボネートを合成するために本発明に係る気液バブリング床反応器を使用する場合、アルキレンオキシドを混合器の入口にて導入し、二酸化炭素の一部を溶解器の入口で導入する。
【0054】
二酸化炭素及びアルキレンオキシドからカーボネートを合成する場合、二酸化炭素とアルキレンオキシドとの間の反応は溶解反応であり、溶解プロセスは、反応全体の制御工程である。バブリング反応器を単純に使用する場合、反応時間は比較的長い。さらに、二酸化炭素はカーボネート及びアルキレンオキシドの両方に溶解し、カーボネートへの溶解度は10~20質量%の濃度に達し得る。さらに、本発明に係る気液バブリング床反応器を用いてカーボネートの調製を実施する場合、二酸化炭素が反応器に入る前に溶解器によって、二酸化炭素ガスの一部が再循環流中に十分に溶解される。その結果、再循環流中の二酸化炭素含有量が増加し、それによって、反応器内の二酸化炭素の溶解時間が減少又は回避され、反応転化率が改善され、その結果、反応転化率が99%以上に達し得る。加えて、本発明において、溶解器が混合器の下流に設けられている。溶質(アルキレンオキシド)中の二酸化炭素の溶解を増加させることができ、反応器に入る再循環流中の二酸化炭素の濃度を増加させることができ、それによって反応転化率をさらに増加させることができる。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、前記気液バブリング床反応器は、前記反応器の気体出口に接続された凝縮器をさらに備える。前記凝縮器は、前記反応器からの前記気体物質を凝縮させ、前記反応器の液体入口を介して凝縮させることによって得られた液体物質を前記バブリング床反応器内に還流させるために使用される。
【0056】
本発明の一実施形態において、前記凝縮器は、気体入口、気体出口、及び液体出口を備え、前記気体入口は、前記反応器の前記気体出口に接続され、前記液体出口は、前記反応器の前記液体入口に接続される。
【0057】
本発明の別の態様によれば、本発明に係る上記気液バブリング床反応器を使用する、カーボネートを合成するための方法であって、以下の工程を含む方法が提供される:
アルキレンオキシド及び第1の二酸化炭素ガスを前記反応器からの再循環流と混合し、得られた混合物を、前記供給口を介して前記反応器の液体分配器に送る工程;
第2の二酸化炭素ガスを、気体入口を介して前記反応器の気体分配器に送る工程;
上方へ移動する第2の二酸化炭素ガスを、触媒の存在下で反応させてカーボネート含有液流を得るために、下方へ移動する流れと混合する工程。
【0058】
本発明の一実施形態において、前記反応器の排出口から流出する前記再循環流は、冷却器及び循環ポンプを通って流れ、次いで、混合器内で、混合器の入口から導入されたアルキレンオキシドと混合され、次いで、溶解器内で、溶解器の入口から導入された前記第1の二酸化炭素と混合され、次いで、供給口を介して前記反応器の液体分配器に入る。
【0059】
本発明の一実施形態において、前記反応器からの気体物質を凝縮器に入れて気液分離を行い、得られた液体を、液体入口を介して前記気液バブリング床反応器に戻す。
【0060】
本発明の一実施形態において、前記反応器に導入される二酸化炭素の総質量に基づいて、前記第1の二酸化炭素ガスと前記第2の二酸化炭素ガスとの分配比は、(1~50):(50~99)、好ましくは、(10~50):(50~90)である。
【0061】
本発明の一実施形態において、カーボネートの最初の調製において、溶媒を使用しても使用しなくてもよい。種々のカーボネートを溶媒として用いることができ、好ましくは、溶媒は、調製されるカーボネートと同じである。調製開始後、調製したカーボネート自体を反応溶媒として用いることができる。調製プロセスの間、新たな溶媒を別々に添加してもよいし、あるいは、調製したカーボネートを新たな溶媒を添加せずに直接反応溶媒として用いてもよい。
【0062】
本発明において、再循環流は、反応溶媒、反応原料、反応中間体、反応生成物(反応溶媒であってもよい)等を含有する、バブリング床反応器からの流れを指す。本発明において、反応物流が主反応器の外部で循環される場合、再循環流の構成は、温度変化、及び反応物としてのアルキレンオキシド及び二酸化炭素の導入により変化する。再循環流の構成は、本発明を限定することを意図するものではない。
【0063】
本発明において、アルキレンオキシドとして、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、1,3-プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が用いられ得るが、アルキレンオキシドはこれらに限定されない。
【0064】
本発明の一実施形態において、上述のカーボネートを合成するための方法にて、バブリング床反応器に使用される触媒は不均一であり、触媒の密度と反応物(アルキレンオキシドとカーボネートとの液状混合物)の密度との比率は、0.3~2であり、好ましくは、0.5~1.5である。触媒の種類としては、樹脂系触媒等、従来から用いられているものを用いることができる。
【0065】
触媒の密度は、反応物の密度に近く、触媒は、気液混合及び反応の間、懸濁状態にある。このことは、反応器内の気体の分布に有益である。もし、触媒の密度が高すぎる場合、気体分配器は、触媒によって包まれ、触媒反応の効果は乏しい。
【0066】
アルキレンオキシドと二酸化炭素とからカーボネートを合成する反応において、産業で最も一般的に使用される触媒は均一触媒である。したがって、再循環流及び反応生成物の両方に触媒が存在する。したがって、反応後、触媒を分離し、再循環させる必要があり、このことがプロセスの複雑さ及び操作の困難さを増大させる。本発明は、不均一触媒を採用し、反応器内の反応物及び反応生成物から触媒を直接的に分離する。これにより、追加の装置の増加及び触媒のその後の分離によるエネルギー消費を回避する。さらに、本発明の反応器に触媒床層を配置することにより、触媒床における触媒としての気相、液相、および固相の3相の接触を強化することができる。反応は、触媒床層の内部温度が均一になるように行われ、アルキレンオキシドの転化率を向上させることができる。
【0067】
本発明の一実施形態において、バブリング床反応器は、外部循環熱の除去によって、冷却器により熱量調節及び制御がなされる。触媒床層の温度は、循環ポンプの循環量によって制御される。質量基準で、再循環量は、アルキレンオキシド供給量の10~100倍である。
【0068】
反応器頂部からの気体は、少量のアルキレンオキシド及びカーボネートを同伴する。カーボネートは、40℃未満の温度で容易に結晶化及び沈殿し、パイプライン及び/又はバルブの閉塞を引き起こす。したがって、本発明においては、バブリング床反応器の頂部からの気体は、凝縮器によって凝縮され、その後、気体圧制御器を介して気体吸収装置から排出される。凝縮温度は40℃以上である。
【0069】
本発明の一実施形態において、反応におけるアルキレンオキシドと二酸化炭素とのモル比は、当該技術分野で一般に使用される範囲内であり、例えば、二酸化炭素とアルキレンオキシドとのモル比は、1:1~10:1であってもよく、好ましくは、1:1~2:1であってもよい。
【0070】
本発明の一実施形態において、アルキレンオキシドと二酸化炭素とを反応させるための温度、圧力等は、当該技術分野で通常のものとすることができる。例えば、反応圧力は、1~10MPa(ゲージ圧)であってもよく、反応温度は、80~300℃であってもよい。
【0071】
本発明の別の態様において、本発明に係る上述の気液バブリング床反応器(本発明において主反応器とも呼ばれる)及び副反応器を含み、副反応器の供給口が気液バブリング床反応器の排出口に接続される反応系が提供される。
【0072】
本発明の一実施形態において、反応流中の反応物(例えば、二酸化炭素及びアルキレンオキシド)の反応を完了させることが可能であれば、副反応器は、当該技術分野で通常選択される反応器であってもよい。副反応器に気体反応物を導入しなくてもよいため、副反応器は反応気体入口を有していなくてもよい。本発明の一実施形態において、副反応器は、好ましくは、固定床反応器である。
【0073】
本発明の一実施形態において、新しい(追加の)反応原料を副反応器に導入する必要はない。
【0074】
本発明の一実施形態において、副反応器の供給口は、接続パイプラインを介して、主反応器の排出口と循環ポンプとの間の位置に接続される。本発明の一実施形態において、主反応器が冷却器を備える場合、副反応器の供給口は、接続パイプラインを介して、主反応器の冷却器と循環ポンプとの間の位置に接続される。
【0075】
本発明の一実施形態において、副反応器の頂部には気体出口が設けられ、副反応器の底部には排出口が設けられ、供給口は、主反応器の排出口に接続されている。ここで、副反応器頂部の気体排気口は、気体排気口を副反応器の上壁に配置しなければならないという意味ではなく、(反応液面より上に位置する限り)副反応器の上部に近い側壁上の位置、例えば、できるだけ副反応器の頂部に近い副反応器の側壁上の位置、に位置してもよいことを意味し得る。副反応器の底部の排出口は、排出口を副反応器の底壁に配置しなければならないという意味ではなく、(反応液面より下に位置する限り)副反応器の下部に近い側壁上の位置、例えば、できるだけ副反応器の底部に近い副反応器の側壁上の位置、に位置してもよいことを意味し得る。副反応器の供給口は、反応器の側壁又は反応器の頂部、好ましくは、反応器の側壁上に配置してもよい。
【0076】
主反応器内の気体と液体との向流接触のために、反応プロセス中に逆混合工程があり、その結果、流れ(例えば、アルキレンオキシドを含有する流れ)を完全に変換することができない。したがって、本発明は、新たな(追加の)反応原料(例えば、二酸化炭素、アルキレンオキシド)を副反応器に導入する必要はない。しかし、本発明は、主反応器からの反応生成物中の飽和溶解反応物(例えば、二酸化炭素、アルキレンオキシド)が、栓流と同様の様式で、副反応器内において反応し続けることを可能にする。これにより、反応物の転化率をさらに向上させることができる。
【0077】
一方、本発明に係る反応系を用いて二酸化炭素とアルキレンオキシドとからカーボネートを合成する場合、二酸化炭素を反応器に流入させた後、濃度差の影響により液面が大きく変動する。反応器の実際の液面を正確に決定するために伝統的な液面計を使用することは困難であり、それゆえ、容易に「満タン」状態に至り得る。したがって、本発明の好ましい実施形態において、主反応器の排出口は、パイプラインを介して副反応器の供給口に接続されている。これにより、主反応器と副反応器とは直列に接続され、2つの反応器の気相空間が連通され、主反応器の液体がオーバーフロー様式で副反応器に入る。このとき、副反応器の供給口の位置は、主反応器の触媒床層の充填高さを下回っておらず、主反応器の液体分配器の高さを上回っていない。
【0078】
本発明の一実施形態において、主反応器と副反応器とが直列に接続され、気相空間が連通され、主反応器の液体がオーバーフロー様式で副反応器に入る。本発明の一実施形態では、副反応器の供給口の位置が主反応器の触媒床層の充てん高さよりも低くなく、主反応器の液分配器の高さよりも高くない。
【0079】
本発明の一実施形態において、副反応器の気体出口は、上述の凝縮器に接続される。より具体的には、凝縮器は、副反応器からの気体物質を凝縮させ、凝縮された液体物質を主反応器の液体入口を通して主反応器内に還流させるために使用される。
【0080】
本発明の一実施形態において、凝縮器の気体入口は、副反応器の気体出口に接続される。副反応器頂部からの気体は、少量のアルキレンオキシド及びカーボネートを同伴する。カーボネートは、40℃未満の温度で容易に結晶化して沈殿し、パイプライン及びバルブの閉塞を引き起こす。本発明において、副反応器の頂部からの気体は、凝縮器によって凝縮され、その後、気体圧制御器を介して気体吸収装置から排出される。凝縮温度は40℃以上である。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、反応系は、副反応器の排出口に接続された分離ユニットをさらに含む。
【0082】
本発明の一実施形態において、分離ユニットは以下を含む:
その供給口が前記副反応器の前記排出口に接続されているフラッシュ装置;
その供給口が前記フラッシュ装置の前記排出口に接続されている軽質除去カラム;
その供給口が前記軽質除去カラムの前記排出口に接続されている重質除去カラム;
その供給口が前記軽質除去カラム及び前記重質除去カラムの前記液体出口に接続されているバッチカラム。
【0083】
本発明の一実施形態において、フラッシュ装置は、好ましくは、フラッシュドラム、フラッシュカラム、及びフィルム蒸発器から選択され、大気圧又は負圧にて連続的に作動する、当該技術分野における従来のフラッシュ装置を採用することができる。フラッシュ装置は、コイルパイプ又はジャケットによって加熱されることが好ましく、加熱温度は110~160℃である。
【0084】
本発明の一実施形態において、軽質除去カラム、重質除去カラム、及びバッチカラムはすべて、当該技術分野の従来の軽質除去カラム、重質除去カラム、及びバッチカラムを採用することができる。
【0085】
本発明の一実施形態において、軽質除去カラムは、当該技術分野の従来の軽質除去カラムを採用することができる。軽質除去カラムの操作圧は0~5KPaであり、カラム底温度は160℃未満、好ましくは、150℃未満である。軽質除去カラムは、連続的に操作される。
【0086】
本発明の一実施形態において、重質除去カラムは、当該技術分野の従来の重質除去カラムを採用することができる。重質除去カラムの操作圧は0~5KPaであり、カラム底温度は160℃未満、好ましくは150℃未満である。重質除去カラムは、連続的に操作される。本発明の一実施形態において、生成物を、必要に応じて重質除去カラムの側管路から取り出すことができる。
【0087】
本発明の一実施形態において、軽質除去カラム及び重質除去カラムから得られる軽質成分、ならびに重質除去カラムのカラム底液はそれぞれ、さらなる分離のためにバッチカラムに入る。軽質成分は、カラム頂部から得られ、重質成分はカラム底部から得られる。バッチカラムは、当該技術分野の従来のバッチカラムを採用することができ、その操作圧力は0~5KPaであり、カラム底温度は160℃未満、好ましくは、150℃未満である。バッチカラムは、バッチ様式で操作される。
【0088】
上記分離ユニットの構造形態及び充填材選択は、分離システムの圧力降下が最小であり、カラム底の温度が最低であることを前提に設計されている。
【0089】
一方、本発明は、上述した本発明に係る反応系を用い、以下の工程を含むカーボネートを合成するための方法を提供する:
カーボネート含有液体流を冷却器によって冷却し、次いで、第1の流れと第2の流れとに分割する工程;
再循環流としての前記第1の流れが、循環ポンプ、混合器、及び溶解器を通って、前記気液バブリング床反応器(本発明において主反応器としても知られる)の前記供給口に連続的に入る工程;
アルキレンオキシドを前記混合器に添加し、前記再循環流と混合する工程;
第1の二酸化炭素ガスを前記溶解器に添加し、前記再循環流と混合する工程;
第2の二酸化炭素ガスが前記気液バブリング床反応器の前記気体分配器に入る工程;
上方へ移動する第2の二酸化炭素ガスと下方へ移動する液相流とを混合し、触媒の存在下で反応させ、カーボネート含有液体流を得る工程と、前記第2の流れを前記副反応器に入れて反応を継続させ、カーボネートを生成する構成。
【0090】
本発明の一実施形態において、カーボネートを合成するための方法は、前記主反応器及び前記副反応器からの気体物質を凝縮器に入れて気液分離を行い、得られた液体を、液体入口を介して主反応器に戻す工程をさらに含む。
【0091】
本発明の一実施形態において、原料としての新鮮な(追加の)二酸化炭素及びアルキレンオキシドは、副反応器に通されない。本発明の一実施形態において、ジャケット及び/又はコイルパイプによって除熱されることが好ましく、副反応器の反応生成物は、触媒を含まない粗カーボネート生成物である。
【0092】
本発明において、上記の本発明に係る反応系を用いてカーボネートを合成する方法では、主反応器に導入される二酸化炭素の総質量に基づいて、第1の二酸化炭素ガスと第2の二酸化炭素ガスとの分配比は、(1~50):(50~99)、好ましくは、(10~50):(50~90)である。
【0093】
上述した本発明に係る反応系を用いてカーボネートを合成するための方法において、再循環流は、反応溶媒、反応原料、反応中間体、反応生成物(反応溶媒であってもよい)等を含有する、主反応器からの流れを指す。本発明において、反応物流が主反応器の外部で循環される場合、再循環流の構成は、温度変化、及び反応物としてのアルキレンオキシド及び二酸化炭素の導入により変化する。再循環流の構成は、本発明を限定することを意図するものではない。
【0094】
上述した本発明に係る反応系を用いてカーボネートを合成するための方法において、アルキレンオキシドとして、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、1,3-プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が用いられ得るが、アルキレンオキシドはこれらに限定されない。
【0095】
本発明の一実施形態において、上述のカーボネートを合成するための方法において、主反応器で使用される触媒は不均一であり、触媒の密度と反応物(アルキレンオキシドとカーボネートとの液状混合物)の密度との比率は、0.3~2であり、好ましくは、0.5~1.5である。触媒の種類としては、樹脂系触媒等、従来から用いられているものを用いることができる。
【0096】
触媒の密度は、反応物の密度に近く、触媒は、気液混合及び反応の間、懸濁状態にある。このことは、反応器内の気体の分布に有益である。もし、触媒の密度が高すぎる場合、気体分配器は、触媒によって包まれ、触媒反応の効果は乏しい。
【0097】
本発明の一実施形態において、カーボネートを合成するための方法は、前記副反応器から得られた粗カーボネート生成物が分離ユニットに入る工程をさらに含む方法であって、以下の工程を含む:
前記粗カーボネート生成物をフラッシュ装置に入れて処理し、液体流及び気体を得る工程であって、該気体は排出される工程;
カラム頂部軽質成分、及び底液を得る処理のために、フラッシュ装置から得られた前記液体流を軽質除去カラムに入れる工程;
カラム頂部軽質成分、電子グレードカーボネート、高グレードカーボネート、及び、カーボネートと重質成分との混合物を製造する処理のために、又は、軽質成分、電子グレードカーボネート、及び、カーボネートと重質成分との混合物を製造する処理のために、前記軽質除去カラムから得られた前記底液を重質除去カラムに入れる工程;
前記軽質除去カラム及び前記重質除去カラムから得られた前記軽質成分、並びに前記重質除去カラムから得られた前記底液を、軽質成分、高グレードカーボネート、電子グレードカーボネート、及び重質成分を製造するためにバッチカラムに入れる工程。
【0098】
本発明の一実施形態において、フラッシュ装置は、好ましくは、フラッシュドラム、フラッシュカラム、及びフィルム蒸発器から選択され、大気圧又は負圧にて連続的に作動する、当該技術分野における従来のフラッシュ装置を採用することができる。フラッシュ装置は、コイルパイプ又はジャケットによって加熱されることが好ましく、加熱温度は110~160℃である。
【0099】
本発明の一実施形態において、軽質除去カラムは、当該技術分野の従来の軽質除去カラムを採用することができる。軽質除去カラムの操作圧は0~5KPaであり、カラム底温度は160℃未満、好ましくは、150℃未満である。軽質除去カラムは、連続的に操作される。軽質除去カラムのカラム頂部軽質成分は、ジオール及びその同族体を含む。
【0100】
本発明の一実施形態において、重質除去カラムは、当該技術分野の従来の重質除去カラムを採用することができる。重質除去カラムの操作圧は0~5KPaであり、カラム底温度は160℃未満、好ましくは150℃未満である。重質除去カラムは、連続的に操作される。重質除去カラムのカラム頂部軽質成分は、ジオール及びカーボネートを含む。電子グレードカーボネートは、供給位置の上方の側管路から回収され、高グレードカーボネートは、供給位置の下方の側管路から回収され、重質成分は、カラム底部から回収され、又は、カーボネートと重質成分との混合物は、カラム底部から直接的に回収される。
【0101】
本発明の一実施形態において、軽質除去カラム及び重質除去カラムから得られる軽質成分、ならびに重質除去カラムのカラム底液はそれぞれ、さらなる分離のためにバッチカラムに入る。軽質成分、高グレードカーボネート、及び電子グレードカーボネートはカラム頂部から得られ、重質成分はカラム底部から得られる。バッチカラムは、当該技術分野の従来のバッチカラムを採用することができ、その操作圧力は0~5KPaであり、カラム底温度は160℃未満、好ましくは150℃未満であり、バッチ様式で操作される。
【0102】
上記分離ユニットの構造形態及び充填材選択は、分離システムの圧力降下が最小であり、カラム底の温度が最低であることを前提に設計されている。
【0103】
より具体的には、本発明に係るカーボネートを合成するための系の処理の流れは以下のように記載される:
原料アルキレンオキシドは、流速に関して計量され、主反応器の再循環流と混合され、その後、主反応器の液体分配器に入る;原料二酸化炭素の一部は、流速に関して制御され、主反応器の再循環流に溶解され、別の部分は流速に関して制御され、主反応器の気体分配器に送られ、主反応器の反応熱は、外部循環冷却によって除去され、反応生成物は、オーバーフロー様式で副反応器に送られて、反応を継続し、主反応器及び副反応器の気相空間は連絡され、気相生成物は、凝縮器によって凝縮され、気相圧力制御を介して排出され、凝縮液は主反応器に還流される;副反応器の反応生成物は、次の分離システムに送られる。ここで、反応生成物は、最初にフラッシュタンクを通過し、得られた非凝縮性気体は処理のために送られる。得られた液相は、軽質除去カラムに送られ、これにより重質成分が得られる。重質成分は、さらなる分離のために、軽質除去カラムの底部又は側管路から重質除去カラムに送られる;高グレードカーボネートと重質成分との混合物を重質除去カラムの底部から得る、又は、高グレードカーボネートを重質除去カラムの供給位置の下にて得て、カーボネートと重質成分との混合物をカラム底部から得て、パワーリチウム電池に有用な電子グレードカーボネート生成物を側管路から得る;軽質除去カラム及び重質除去カラムから得た軽質成分、及び重質除去カラムから得たカラム底液は、さらなる処理のためにバッチカラムに送られ、カラム頂部非凝縮性気体は処理のために送られる。高グレードカーボネート及び電子グレードカーボネート等の生成物を、カラム頂部からさらに得ることができ、又は側管路からの液体切断によって、さらに得ることができる。
【0104】
本発明に係る方法によれば、得られる電子グレードカーボネート生成物の収率は70%以上、より好ましくは85%以上である。本発明に係る方法によれば、カーボネート合成法における転化率の低さ、循環ポンプのガスバインディング、不安定な運転、電子グレード生成物の低収率等の問題が意図的に解決される。本発明は、関連する工業的製造に本発明を適用することができる。
【0105】
〔実施例〕
本発明は、実施例を通して以下にさらに説明されるが、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0106】
(実施例1)
100kg/hのエチレンオキシドを流速に関して計量し、主反応器の再循環流と混合して主反応器に送った。原料の二酸化炭素を流速に関して制御し、5kg/hを主反応器の再循環流に溶解し、115kg/hを主反応器の気体分配器に送った。気体分配器には管状分配器を採用した。主反応器の圧力は1.5MPa、温度は100℃、循環速度は3000kg/h、反応器の温度上昇は40℃であった。反応生成物をオーバーフロー様式で副反応器に送り、反応を継続した。副反応器の作動条件を主反応器の作動条件と同一とした。温度上昇は10℃未満、主反応器と副反応器との気相空間を連通し、気相生成物を外部凝縮器によって45℃に凝縮させ、気相圧力制御を介して排出し、凝縮物を主反応器に還流した。主反応器のEO転化率は85%以上であった。
【0107】
副反応器の反応生成物は、99%のエチレンカーボネート、0.5%のエチレングリコール、0.3%のジエチレングリコール、及び0.2%の他の同族体を含んでいた。生成物を次の分離システムに送った。最初に、生成物をフラッシュカラムに送った。フラッシュカラムは充填剤を採用しており、充填剤のタイプは、BX500であり、充填剤の高さは3mであった。フラッシュカラムは常圧で作動し、水蒸気で加熱した。カラム底温度を160℃に制御した。フラッシュ分離後、得られた非凝縮性気体を処理のために送り、得られた液相を軽質除去カラムに送った。軽質除去カラムの操作圧力は5kPa、カラム底温度は160℃に制御した。軽質除去カラムのカラム底液を、さらなる分離のために重質除去カラムに送った。重質除去カラムの操作圧力は5kPa、カラム底温度は160℃に制御した。高グレードエチレンカーボネートを重質除去カラムのカラム底部から得た。パワーリチウム電池に有用な電子グレードエチレンカーボネート生成物を側管路のみから回収した。軽質除去カラム及び重質除去カラムから得られた軽質成分、ならびに重質除去カラムから得られたカラム底液を、さらなる処理のためにバッチカラムに送った。バッチカラムの操作圧力は5kPaであり、カラム底温度は160℃に制御した。カラム頂部非凝縮性気体を処理のために送り、高グレードエチレングリコールカーボネート及び電子グレードエチレングリコールカーボネートのような生成物をカラム頂部又は側管路液からさらに得ることができた。軽質除去カラム、重質除去カラム、バッチカラムの充填材のタイプはBX500であり、充填材の高さは12mであった。
【0108】
上記分離により、電子グレード生成物は≧70%の収率、≧99.99%の純度、≦10の色度を有し、高グレード生成物は≧25%の収率、≧99.95%の純度、≦20の色度を有した。
【0109】
(実施例2)
この実施例は、原料二酸化炭素を流速に関して制御し、その20kg/hを主反応器の再循環流に溶解し、その115kg/hを主反応器の気体分配器に送ったことを除いて、実施例1と同じであった。副反応器の温度上昇は≦6℃である。主反応器のEO転化率は≧87%であり、副反応器の反応生成物中のエチレンカーボネートの含有量は≧95%であった。
【0110】
分離プロセスにより、電子グレード生成物生成物は≧70%の収率、≧99.99%の純度、≦10の色度を有し、高グレード生成物は≧25%の収率、≧99.95%の純度、≦20の色度を有していた。
【0111】
(実施例3)
この実施例は、主反応器の圧力が2.0MPa、温度が80℃、循環速度が4000kg/h、反応器の温度上昇が25℃であったことを除いて、実施例1と同一であった。主反応器のEO転化率は≧90%であり、副反応器の反応生成物中のエチレンカーボネートの含有量は≧95%であった。
【0112】
分離プロセスにより、電子グレード生成物は≧70%の収率、≧99.99%の純度、≦10の色度を有し、高グレード生成物は≧25%の収率、≧99.95%の純度、≦20の色度を有していた。
【0113】
(実施例4)
この実施例は、バッチカラムの操作圧が1kPaであり、カラム底温度が≦155℃であり、充填剤のタイプがCY900であり、充填剤の高さが12mであり、カラム頂部軽質成分が排出されて回収され、サイドライン又は/及びカラム底が軽質除去カラムに戻されたことを除いて、実施例1と同一であった。
【0114】
分離プロセスにより、電子グレード生成物は≧70%の収率、≧99.99%の純度、≦10の色度を有し、高グレード生成物は≧28%の収率、≧99.95%の純度、≦20の色度を有していた。
【0115】
(実施例5)
この実施例は、フラッシュ装置がフラッシュドラムであり、作動圧力が10kPa、温度が120℃に制御され、軽質除去カラム及びバッチカラム:作動圧力3kPa、カラム底部温度≦155℃、充填材タイプCY700、充填材高さ15mであったことを除き、実施例1と同一であった。上述の整流カラムの凝縮器は、全て、精留カラムのカラム頂部に内部配置され、カラム底部はフィルム蒸発器を採用し、循環性が施行された。
【0116】
上記分離により、電子グレード生成物は収率≧75%、純度≧99.99%、色度≦10を有し、高グレード生成物は収率≧23%、純度≧99.95%、色度≦20を有していた。
【0117】
(実施例6)
この実施例は、原料二酸化炭素を流速に関して制御し、そのうちの15kg/hを主反応器の再循環流に溶解し、そのうちの100kg/hを主反応器の気体分配器に送ったことを除いて、実施例1と同じであった。主反応器の圧力は2.0MPa、温度は80°C、循環速度は5000kg/h、反応器の温度上昇は15°Cであった。主反応器のEO転化率は≧95%であり、副反応器の反応生成物中のエチレンカーボネートの含有量は≧99.5%であった。
【0118】
フラッシュカラム、操作圧力:0.5kPa、カラム底温度:≦150℃、充填材タイプ:BX500、充填材高さ:4m;
軽質除去カラム、操作圧力:0.5kPa、カラム底温度:≦150℃、充填材タイプ:CY900、充填材高さ:18m;
重質除去カラム、操作圧力:0.5kPa、カラム底温度:≦150℃、充填材タイプ:CY900、充填材高さ18m;
バッチカラム、操作圧力:0.5kPa、カラム底温度:≦150℃、充填剤タイプ:CY900、充填材高さ:10m、軽質成分を切り取り、濃縮したエチレンカーボネートを軽質除去カラムに戻した。
【0119】
上記精留カラムの凝縮器は、全て精留カラムのカラム頂部に内部配置され、カラム底は膜蒸発器を採用し、循環性が施行された。
【0120】
上記分離により、電子グレード生成物は収率≧85%、純度≧99.99%、色度≦10を有し、高グレード生成物は収率≧13%、純度≧99.95%、色度≦20を有していた。
【0121】
(実施例7)
この実施例は、原料がプロピレンオキシド及び二酸化炭素であり、これらが反応してプロピレンカーボネートを生成したことを除いて、実施例1と同一であった。主反応器のPO転化率は≧85%であり、副反応器の反応生成物中のプロピレンカーボネートの含有量は≧95%であった。
【0122】
フラッシュ装置は、フラッシュドラム、操作圧力は10kPa、温度は120℃に制御した。軽質除去カラム及びバッチカラム:操作圧力1kPa、カラム底温度≦160℃、充填材タイプCY700、充填材高さ20m。上記精留カラムの凝縮器は、全て精留カラム頂部に内部配置され、カラム底部は、フィルム蒸発器を採用し、循環性が施行された。
【0123】
上記分離により、電子グレード生成物は、≧70%の収率、≧99.99%の純度、≦10の色度を有しており、高グレード生成物は≧25%の収率、≧99.5%の純度、≦30の色度を有していた。
【0124】
(実施例8)
この実施例は、流速を84kg/h(すなわち70%)に制御する混合器と、流速を36kg/h(すなわち30%)に制御する気体分配器とを用いて、二酸化炭素を導入したことを除いて、実施例1と同じであった。主反応器のEO転化率は、主反応器内の二酸化炭素の溶解が減少したために減少した。主反応器のEO転化率は、≧80%であり、副反応器の温度上昇は10℃であった。
【0125】
(比較実施例1)
この実施例は、混合器を通して二酸化炭素を導入せずに、全ての二酸化炭素を反応器の気体入口に通し、気体分配器を通して主反応器に導入し、主反応器のEO転化率を3%低下させたことを除いて、実施例1と同じであった。副反応器の温度上昇は10℃であった。
【0126】
本明細書中の任意の数値へのいかなる言及も、任意の最低値と任意の最高値との間に少なくとも2つの単位についての間隙が存在した場合、最低値から最高値までの1単位の増分におけるすべての値を含む。例えば、構成要素の量が記載されている場合、又は、温度、気圧、時刻等のプロセス変数が50~90の値を有する場合、それは、本明細書において、51~89、52~88、・・・、69~71、及び70~71等の数値が具体的に列挙されたことを意味する。非整数値の場合、0.1、0.01、0.001、又は0.0001が、必要に応じて、1つの単位として考慮されてもよい。これらは、特別に指定された例にすぎない。本出願では、同様に、列挙された最低値と最高値との間の数値の全ての可能な組み合わせが開示されたとみなされた。
【0127】
なお、上記実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、例示的な実施形態に関して説明されてきたが、その中で使用される用語は限定の用語ではなく、記述及び説明の用語であることを理解されたい。本発明は、特定された本発明の前記の範囲内で修正されてもよく、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく修正されてもよい。本明細書で説明される本発明は、特定の方法、材料、及び実施形態に言及するが、本明細書で開示される特定の実施例に限定されることを意図するものではなく、むしろ、本発明は、同じ機能を有する他のすべての方法及び応用に拡張され得る。
【図面の簡単な説明】
【0128】
図1図1は、本発明に係る、カーボネートを合成するための系の概略図である。
図2図2は、本発明に係る、カーボネートを合成するための分離ユニットの概略図である。
図1
図2
【国際調査報告】