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特表2022-554216プロピレンおよび低硫黄燃料油成分の製造法
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  • 特表-プロピレンおよび低硫黄燃料油成分の製造法 図1
  • 特表-プロピレンおよび低硫黄燃料油成分の製造法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】プロピレンおよび低硫黄燃料油成分の製造法
(51)【国際特許分類】
   C10G 69/04 20060101AFI20221221BHJP
   C10G 11/18 20060101ALI20221221BHJP
   C10G 45/08 20060101ALI20221221BHJP
   C10G 21/00 20060101ALI20221221BHJP
   B01J 27/132 20060101ALI20221221BHJP
   B01J 29/40 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C10G69/04
C10G11/18
C10G45/08 Z
C10G21/00
B01J27/132 M
B01J29/40 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524245
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 CN2020121012
(87)【国際公開番号】W WO2021078052
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】201911014995.6
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】許友好
(72)【発明者】
【氏名】白旭輝
(72)【発明者】
【氏名】謝▲シン▼宇
(72)【発明者】
【氏名】崔守業
(72)【発明者】
【氏名】王新
(72)【発明者】
【氏名】左巌芬
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA03A
4G169BA04A
4G169BA07A
4G169BA10A
4G169BA10B
4G169BB04A
4G169BC50A
4G169BC57A
4G169BC59B
4G169BC60B
4G169BC65A
4G169BC68B
4G169BD07A
4G169BD15A
4G169BD15B
4G169CC02
4G169CC07
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169ZA04A
4G169ZA11A
4G169ZA11B
4G169ZA12A
4G169ZA13A
4G169ZA16A
4G169ZA22A
4G169ZA32A
4G169ZC04
4G169ZF07A
4H129AA02
4H129CA08
4H129CA09
4H129CA10
4H129HB03
4H129KA02
4H129KA06
4H129KB03
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4H129KC03Y
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4H129KC13X
4H129KC14X
4H129KC16X
4H129KC16Y
4H129KC18X
4H129KC28X
4H129KC28Y
4H129KD10X
4H129KD13X
4H129KD15Y
4H129KD16Y
4H129KD18X
4H129KD24Y
4H129KD26X
4H129KD37X
4H129KD38X
4H129KD44X
4H129KD44Y
4H129MA01
4H129MA13
4H129MB03B
4H129MB05A
4H129MB15B
4H129NA02
4H129NA21
4H129NA26
(57)【要約】
重質原料油を溶剤と接触させて抽出および分離を行い、脱アスファルト油および脱油アスファルトを得る工程と、脱アスファルト油および任意選択で軽質原料油を接触転換触媒と接触および反応させてプロピレンを含む反応生成物を得る工程と、反応生成物から接触分解蒸留油を分離する工程と、接触分解蒸留油を水素化脱硫黄に供して低硫黄水素化蒸留油を得る工程とを含む、プロペンおよび低硫黄燃料油成分の製造方法である。低硫黄水素化蒸留油および/または脱油アスファルトは燃料油成分として適している。前記方法によれば、重質原料油中の飽和炭化水素のプロピレンへの転化を可能にし、これによって、燃料油成分としての飽和炭化水素の使用を回避し、良好な経済的及び社会的利益を達成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンおよび低硫黄燃料油成分を製造する方法であって、当該方法は、
(1)重質原料油と抽出分離用溶媒とを接触させ、脱アスファルト油および脱油アスファルトを得る工程と、
(2)前記脱アスファルト油および任意選択で軽質原料油を、接触転換反応器中で反応させるための接触転換触媒と水素非存在下で接触させて、プロピレンを含む反応生成物を得る工程と、
(3)工程(2)で得られた反応生成物を分離して、接触分解蒸留油を得る工程であって、当該接触分解蒸留油が約200℃以上の初留点、約550℃以下の最終沸点、および約12.0重量%以下の水素含有量を有する工程と、
(4)前記接触分解蒸留油を水素化脱硫黄化に供して、低硫黄水素化蒸留油を得る工程を含み、
前記低硫黄水素化蒸留油および/または前記脱油アスファルトは燃料油成分としての使用に好適であり、
ここで、前記工程(2)において使用される前記接触転換触媒は、触媒の総重量に対して、約1~50重量%のゼオライト、約5~99重量%の無機酸化物、および約0~70重量%の粘土を含み、
工程(2)の反応条件は、反応温度が約460~750℃、好ましくは約480~700℃であり;重量空間速度が約10~100h-1、好ましくは約30~100h-1であり、または、反応時間が約1~10秒、好ましくは約2~8秒であり;触媒の油に対する重量比率が約4~20、好ましくは約5~12である、方法。
【請求項2】
前記ゼオライトが、前記接触転換触媒中のゼオライトの総重量に対して、メソ多孔質ゼオライト約51~100重量%およびマクロ多孔質ゼオライト約0~49重量%を含み、前記メソ多孔質ゼオライトのシリカ-アルミナ比が約10を超え、より好ましくは約50を超え、特に好ましくは約100を超え、
好ましくは、前記メソ多孔質ゼオライトがZSM型ゼオライトおよびZRPゼオライトからなる群から選択され、前記マクロ多孔質ゼオライトはY型ゼオライトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(2)が、得られる反応生成物が約4以上、好ましくは約6以上、最も好ましくは約8以上のプロピレン/プロパン質量比、および/または約1以上、好ましくは約1.5以上、最も好ましくは約1.8以上のイソブテン/イソブタン質量比を有するように実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(2)が、得られる反応生成物中の接触分解蒸留油の収率が約15%以上、好ましくは約20%以上、より好ましくは約30%以上、および約50%以下となるように実施される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記重質原料油が、減圧残渣、劣等常圧残油、水素化重質油、またはこれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、プロパン、ブタン、ペンタンまたはこれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(1)の抽出分離条件は、温度が約10~200℃、好ましくは約20~180℃であり、作動圧力が約1.0~15.0MPa、好ましくは約2.0~10.0MPaであり、溶媒の供給原料油に対する質量比が約1~20、好ましくは約3~10である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(2)で使用される軽質原料油が石油炭化水素、他の鉱油、またはこれらの混合物からなる群から選択され、前記石油炭化水素が減圧軽油、常圧軽油、コーカー軽油、高品質残油、高品質水素化重油、またはこれらの任意の混合物からなる群から選択され、前記他の鉱油が石炭液化油、タールサンド油、シェール油、またはこれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(2)で使用される接触転換反応器が、単一流動床反応器、または直列もしくは並列に接続された複数の流動床反応器を含む複合反応器、好ましくは等直径ライザー反応器または様々なタイプの可変直径流動床反応器を含む流動床反応器である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(3)の接触分解蒸留油が、約250℃以上の初留点、約520℃以下、好ましくは約500℃以下の最終沸点、および約11.0重量%以下の水素含有量を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
アルミナおよび/または非晶質シリカ-アルミナ担体上に担持された第VIB族金属および/または第VIII族金属を含む触媒が、水素化脱硫黄化工程(4)において使用される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
水素化脱硫黄化工程(4)で使用される触媒が、約0~10重量%の添加剤と、約1~40重量%の少なくとも1種の第VIII族金属(金属酸化物として計算)と、約1~50重量%の少なくとも1種の第VIB族金属(金属酸化物として計算)とを含み、残りはアルミナおよび非晶質シリカ-アルミナから選択される担体であり、添加剤は、フッ素、リン、チタン、白金またはそれらの組み合わせからなる群から選択される元素を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
水素化脱硫黄化処理(4)の条件は、反応圧力が約2.0~24.0MPaであり、反応温度が約200~500℃であり、水素の油に対する体積比が約50~5000N/mであり、および液空間速度が約0.1~30.0h-1であり、
好ましくは、水素化脱硫黄化工程(4)の条件は、反応圧力が約3.0~15.0MPaであり、反応温度が約300~400℃、水素の油に対する体積比が約200~2000N/mであり、および液空間速度が約0.2~10.0h-1である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程(4)で得られる水素化蒸留油は、硫黄含有量が約0.1%以下、好ましくは約0.05%以下である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
(関連出願への相互参照)
本出願は「より多くのプロピレンおよび低硫黄燃料油成分を製造する方法」と題する、令和1年10月24日に出願された特許出願第201911014995.6号の優先権を主張し、前記特許出願は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本出願は炭化水素油の接触転換(catalytic conversion)の分野に関し、特に、重質原料油を軽質オレフィンおよび低硫黄燃料油成分に転化するための接触転換の方法に関する。
〔背景技術〕
社会経済の急速な発展に伴い、環境保護の概念は、環境汚染後の処置から、汚染源からの汚染防止に置き換えられつつある。環境汚染問題はますます注目されており、対応する法律による規制がますます厳しくなっている。国際海事機関(IMO)の船舶による汚染防止のための国際条約によれば、2020年1月1日から、世界中の船舶は、硫黄含有量が0.5%以下の船舶用燃料を使用しなければならない。BP予測によれば、2020年の船舶用燃料の世界消費量は約3億トンに達する可能性がある。船舶用燃料は、世界の燃料市場及び主要な石油加工企業に大きな課題をもたらし得る。
【0003】
一方、原油がより重くなり、劣化するという問題が世界中で発生している。重質原油の埋蔵量は、2020年以降に回収可能な世界中の原油の埋蔵量の約50%を占めると推定されている。粗悪な原油と高品質な原油との価格差が拡大しており、いかに粗悪な重油を効率的に利用および加工して高価値製品を製造し、収率を向上させ、より高い環境保全要件を満たす低硫黄船舶用燃料を製造するかという問題は、製油所および供給業者が直面している緊急の問題となっている。また、従来の原油加工技術においても同様に問題となっている。
【0004】
CN102746890Aは、船舶用燃料の製造方法を開示しており、当該方法では、原油はビスブレーキング(visbreaking)および分画処理され、ビスブレーキング混合成分を得る。この方法は、船舶用燃料の生産コストを低減することができる。この方法は、1)重油成分をビスブレーキングする工程と、2)ビスブレーキング生成物を分留し、高い蒸留範囲を有する留分を収集する工程と、3)高い蒸留範囲を有する留分を軽油成分と混合して、船舶用燃料を得る工程とを含む。
【0005】
船舶用燃料の価格は車両用ディーゼル油の価格よりも低いので、船舶用燃料の製造において良好な経済的利益を提供することは困難である。そのため、原料油の成分特性に注目しながら、軽質オレフィンを高収率で製造する方法によって、プロピレンのような高価値の製品を製造しつつ、船舶用燃料を製造することは重大な意味を有する。
【0006】
そのため、油質の悪化、および世界中での厳しい環境保全の要件を鑑みて、高品質の燃料油に対する需要を満たし、かつ企業の経済的利益を向上できるように、低硫黄船舶用燃料成分を製造しながら、高収率で高価値のプロピレンを製造する方法を開発することが求められている。
〔発明の概要〕
本願の目的は、重油からプロピレンおよび低硫黄燃料油成分を製造する方法を提供することである。この方法は重質原料油中の飽和炭化水素のプロピレンへの転化を可能にし、芳香族核構造を含む多環式芳香族化合物が燃料油成分へと転化されることにより、燃料油成分中の飽和炭化水素の使用が解消される。したがって、前記方法は、より良好な経済的および社会的利益を有する。
【0007】
上記の目的を達成するために、本願は、プロピレンおよび低硫黄燃料油成分を製造する方法を提供する。本願は、以下の工程を含む:
(1)重質原料油と抽出分離用溶媒とを接触させ、脱アスファルト油および脱油アスファルトを得る工程;
(2)前記脱アスファルト油および任意選択で軽質原料油を、接触転換反応器中で反応させるための接触転換触媒と水素非存在下で接触させて、プロピレンを含む反応生成物を得る工程;
(3)工程(2)で得られた反応生成物を分離して、接触分解蒸留油を得る工程であって、当該接触分解蒸留油が約200℃以上の初留点、約550℃以下の最終沸点(final boiling point)、および約12.0重量%以下の水素含有量を有する工程;
(4)前記接触分解蒸留油を水素化脱硫黄化に供して、低硫黄水素化蒸留油を得る工程を含み、
前記低硫黄水素化蒸留油および/または前記脱油アスファルトは燃料油成分としての使用に好適であり、
ここで、前記工程(2)において使用される前記接触転換触媒は、触媒の総重量に対して、約1~50重量%のゼオライト、約5~99重量%の無機酸化物、および約0~70重量%の粘土を含み、
工程(2)の反応条件は、反応温度が約460~750℃、好ましくは約480~700℃であり;重量空間速度が約10~100h-1、好ましくは約30~100時間-1であり、または、反応時間が約1~10秒、好ましくは約2~8秒であり;触媒の油に対する重量比率が約4~20、好ましくは約5~12である。
【0008】
本願の方法では、溶媒脱アスファルト化によってアスファルト質および樹脂を重質原料油から分離した後、脱油アスファルトは燃料油成分として使用することができ、脱アスファルト油は選択的接触分解のための原料として使用される。その結果、短い側鎖多環芳香族を含むプロピレン及び接触分解蒸留油を最大限に得ることができる。接触分解蒸留油は、燃料油成分として単独で、または脱油アスファルトまたは重質脱アスファルト油と混合して使用することができる。本出願の方法を用いることにより、乾燥気体およびコークスの収率を大幅に低下させると共に、重質原料油をプロピレン、ブチレンおよび燃料成分に転化することができる。その結果、石油資源を効果的に利用することができる。
【0009】
特に、従来技術と比較した場合、本願の方法は、以下の利点の少なくとも1つを提供することができる:
1.高価値な生成物であるプロピレンを、重質原料油から、燃料油成分と共に高収率で製造することができる。前記方法を使用することにより、原料油(重質原料油+軽質原料油)の重量に対して約5~20重量%のプロピレンおよび約30~80重量%の燃料油成分を製造することができる。したがって、燃料油を混合するために原料油を単純に使用する場合と比較して、より経済的な利益を得ることができる;
2.乾燥ガス及びコークスの収率を大幅に減少させると共に、プロピレン等の高価値製品の生産を著しく増加させることができる;
3.実質的にスラリー油が排出されないため、全液体収率を大幅に増加させることができる。その結果、石油資源の利用効率を向上させることができる;
4.接触転換ユニットは溶媒脱アスファルトユニットと一体化されている。また、接触転換ユニットから得られる接触分解蒸留油の特性は、溶媒脱アスファルトユニットで使用される溶媒および使用される軽質原料油の量を調整することによって変更することができる。その結果、この方法は、種々の量の重質原料油および燃料油成分に適用可能である。
【0010】
〔図面の簡単な説明〕
本明細書の一部を形成する図面は、本願の理解を助けるために提供されるものであり、これに限定されるべきではない。本願は、後述の詳細な説明と組み合わせて、図面を参照して解釈され得る。
【0011】
図1は、本出願による方法の好ましい実施形態の概略フロー図を示す;
図2は、本出願による方法の別の好ましい実施形態の概略フロー図を示す;
図3は、本出願で使用される溶媒脱アスファルト化ユニットの好ましい実施形態の概略図を示す;
図4は、本出願で使用される接触転換ユニットの好ましい実施形態の概略図を示す。
〔発明の詳細な開示〕
以下、特定の実施形態および添付する図面を参照して、本願をさらに詳細に説明する。なお、本願の特定の実施形態は、単に例示する目的で提供され、いかなる方法であっても限定することを目的としない。
【0012】
本明細書において記載される、数値範囲の終点を含む任意の具体的な数値は、その厳密な数値に限定されない。しかしながら、例えば全ての値が前記正確な値の±5%以内であるといったように、厳密な値に近い全ての値をさらに包含すると解釈されるべきである。さらに、本願明細書に記載された任意の数値範囲について、当該範囲の終点間、各終点と当該範囲内の任意の特定値との間、または当該範囲内の任意の二つの特定値間で任意に組み合わせ得、一つ以上の新たな数値範囲を供する。前記新たな数値範囲もまた、本願にて特定して記載されているとみなす。
【0013】
特に明記しない限り、本明細書に使用される用語は、当業者によって共通に理解されているものと同様の意味を有する。本明細書にて用語が定義され当該用語の定義が当該技術分野で通常理解されているものと異なる場合、本明細書に供された定義を優先する。
【0014】
本願によれば、「接触分解蒸留油」という語は、接触慣習(convention)反応の生成物中の初留点が約200℃以上、好ましくは約250℃以上、最終沸点が約550℃以下、好ましくは約520℃以下、最も好ましくは約500℃以下の留分、すなわち蒸留範囲が約200~550℃、好ましくは約250~520℃、より好ましくは約250~500℃の留分を指す。
【0015】
本出願では「流動床反応器」(「流動反応器」とも記載される。)という用語は、その中での化学反応のために気体供給原料を流動状態で固体触媒粒子と接触させることを可能にするすべてのタイプの反応器を包含する、最も広い意味に理解されるべきである。用語「流動床反応器」には、濃厚相床、バブリング床、沸騰床、乱流床、高速床、気相輸送床(例えば、上昇流流動床および下降流流動床など)が含まれるが、これらに限定されない。流動床反応器は、定線速度流動床反応器、等直径流動床反応器、可変直径(varied-diameter)流動床反応器などであってもよく、ライザー反応器または濃厚相床と組み合わせたライザー反応器を含む複合反応器のような、直列または並列に接続された2つ以上の異なる種類の流動床を含む複合反応器であってもよい。典型的には、濃厚相床のガス速度が約0.1~2m/sの範囲とすることができ、一方、ライザー反応器のガス速度は約1~30m/sの範囲とすることができる(触媒を除く)。
【0016】
本願の内容において、明記された事項に加え、記述されていない任意の事項は、一切変更することなく、当該技術分野で知られたものと同じであるとみなされる。また、本明細書に記載されたいずれの実施形態も、本明細書に記載された他の一つ以上の実施形態と自由に組み合わせることができ、これによって得られる技術的解決または技術思想は、本明細書の当初の開示または当初の記載の一部であるとみなし、組み合わせが明らかに妥当でないことが当業者にとって明確である場合を除いては、本明細書に記載されていない、あるいは予期されない新規事項であるとみなされない。
【0017】
本明細書に引用された特許および非特許文献は、教科書および雑誌論文を含むがこれらに限定されず、その全てが参照され、全体が本明細書に組み込まれる。
【0018】
上記のように、本願は、以下の工程を含むプロピレンおよび燃料油成分の製造方法を提供する:
(1)重質原料油と抽出分離用溶媒とを接触させて脱アスファルト油及び脱油アスファルトを得る工程;
(2)前記脱アスファルト油および任意選択で軽質原料油を、接触転換反応器中で反応させるための接触転換触媒と水素非存在下で接触させて、プロピレンを含む反応生成物を得る工程;
(3)工程(2)で得られた反応生成物を分離して、接触分解蒸留油、および任意にプロピレンおよびガソリンを含む液化ガスを得る工程;
(4)前記接触分解蒸留油を水素化脱硫黄化に供して、低硫黄水素化蒸留油を得る工程;
ここで、低硫黄水素化蒸留油および/または脱油アスファルトは、燃料油成分として使用することができる。
【0019】
本願によれば、工程(1)は溶媒脱アスファルト化工程である。工程(1)は、1段階または2段階で実施することができる。特定の好ましい実施形態では、工程(1)が軽質脱アスファルト油、重質脱アスファルト油、および脱油アスファルトを得るために2段階で実施される。ここで、軽質脱アスファルト油は、接触転換工程(2)のための原料油として使用される。また、重質脱アスファルト油は燃料油成分として、または他の目的のために使用することができる。さらに、脱油アスファルトは、その硫黄含有量に応じて、燃料油成分として、または道路用アスファルトとして使用することができる。
【0020】
本願において、工程(1)で使用される重質原料油は、接触転換工程での使用に適した任意の重質油であり得る。重質油としては例えば、減圧残渣、劣等常圧残油、水素化重質油、またはこれらの任意の混合物から選択することができる。
【0021】
本願において、工程(1)で使用される溶媒は、重質油の溶媒脱アスファルト法での使用に適した任意の溶媒であることができる。前記溶媒としては例えば、プロパン、ブタン、ペンタンなどの低級アルカン、またはこれらの任意の混合物から選択することができる。また、脱アスファルト溶媒は、接触転換ユニットから得られる接触分解蒸留油の特性に応じて選択することができる。
【0022】
好ましい実施形態では、溶媒脱アスファルト工程(1)の条件は、以下を含み得る:反応温度が約10~200℃、好ましくは約20~180℃、反応圧力が約1.0~15.0MPa、好ましくは約2.0~10.0MPa、重質原料油に対する溶媒の質量比(「溶媒比」とも記載する)が約1~20、好ましくは約3~10。
【0023】
本願によれば、工程(2)で使用される軽質原料油は、石油炭化水素、他の鉱油、またはこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。前記石油炭化水素は、減圧軽油、常圧軽油、コーカー軽油、高品質残油、高品質水素化重油、またはこれらの任意の混合物からなる群から選択されてもよい。前記他の鉱油は、石炭液化油、タールサンド油、シェール油、またはこれらの任意の混合物からなる群から選択されてもよい。前記「高品質残留物」および「高品質水素化重油」はそれぞれ、11.2%以上、好ましくは12.0%以上、最も好ましくは12.5%以上の水素含有量を有する残油および水素化重油を指す。
【0024】
本願によれば、工程(2)で使用される接触転換反応器は、単一流動床反応器、または直列もしくは並列に接続された複数の流動床反応器を含む複合反応器などの様々なタイプの流動床反応器から選択することができる。特定の好ましい実施形態では、流動床反応器が、中国特許第1078094C号に開示されている反応器などの、等直径ライザー反応器、または様々なタイプの可変直径流動床反応器であってもよい。
【0025】
本願によれば、工程(2)で使用される接触転換触媒は、触媒の総重量に対して、約1~50重量%のゼオライトと、約5~99重量%の無機酸化物と、約0~70重量%の粘土とを含むことができる。好ましくは、前記触媒は、約5~45重量%のゼオライト、より好ましくは約10~40重量%のゼオライト、約5~80重量%の無機酸化物および約10~70重量%の粘土を含むことができる。
【0026】
好ましい実施形態では、ゼオライトは、ゼオライトの総重量に対して、約51~100重量%、好ましくは約70~100重量%のメソ多孔質ゼオライトと、約0~49重量%、好ましくは約0~30重量%のマクロ多孔質ゼオライトとを含むことができる。好ましくは、メソ多孔質ゼオライトは、約10を超える、好ましくは約50を超える、より好ましくは約100を超えるシリカ-アルミナ比を有する。メソ多孔質ゼオライトは、好ましくはZSM型ゼオライトおよびZRPゼオライトからなる群から選択され、マクロ多孔質ゼオライトは好ましくはY型ゼオライトである。任意選択で、ゼオライトは、リンなどの非金属元素、および/または鉄、コバルト、ニッケルなどの遷移金属元素で修飾されていてもよい。無機酸化物は好ましくはシリカ、アルミナ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、粘土は好ましくはカオリンおよび/またはハロイサイトから選択される。
【0027】
本願によれば、工程(2)は有効な条件下で実施される。前記「有効な条件」とは、反応原料が、反応原料それ自体(すなわち、脱アスファルト油+任意の軽質原料油)の重量に対して、プロピレンおよび接触分解蒸留油(好ましくは約8~25重量%のプロピレンおよび約15~50重量%の接触分解蒸留油を含む)を含む反応生成物を得るために、反応原料が接触転換反応を受けることを可能にする条件を指す。好ましい実施形態では、工程(2)の反応条件は、以下の条件を含む:反応温度が約460~750℃、好ましくは約480~700℃、より好ましくは約480~600℃、最も好ましくは約500~560℃;(例えば濃厚相床反応器、高速床反応器などの場合)重量空間速度が約5~100h-1、好ましくは約10~70h-1、より好ましくは約15~50h-1、最も好ましくは約18~40h-1、または(例えば、ライザー反応器の場合)反応時間が約1~10秒、好ましくは約2~8秒、より好ましくは約2.5~8秒、最も好ましくは約3~8秒;接触転換される原料油に対する接触転換触媒の重量比(「触媒対油の重量比率」または「触媒対油比」とも記載する)が、約4~20、好ましくは約5~12、好ましくは約5~10、より好ましくは約5~9。
【0028】
好ましい実施形態において、工程(2)は、得られる反応生成物が約4以上、好ましくは約6以上、最も好ましくは約8以上のプロピレン/プロパン質量比;および/または約1以上、好ましくは約1.5以上、最も好ましくは約1.8以上のイソブテン/イソブタン質量比を有するように実施される。
【0029】
好ましい実施形態において、工程(2)は、得られる反応生成物中の接触分解蒸留油の収率、すなわち接触転換反応のための原料油(すなわち、脱アスファルト油および任意の軽質原料油)に対する接触分解蒸留油の重量比率が、約15%以上、好ましくは約20%以上、より好ましくは約30%以上、および約50%以下となるように実施される。
【0030】
当業者には周知の通り、接触転換法における原料油の転化率は、典型的にはガス、ガソリンおよびコークスの収率の合計として表される。本願の方法では、接触転換法の最終生成物が乾燥ガス、液化ガス、ガソリン、接触分解蒸留油およびコークスのみを含む。したがって、本願では、原料油の転化率は、接触分解蒸留油の収率を差し引くと、実質的に100%となる。次に、本出願による接触転換法の転化率は、約85%以下、好ましくは約80%以下、最も好ましくは約70%以下、および約50%以上のレベルに制御される。
【0031】
特に好適な実施形態では、前記方法は、工程(2)の反応生成物を使用済み触媒から分離する工程をさらに含む。前記使用済み触媒は、コークスの燃焼によるストリッピングおよび再生を経て、反応器へと再循環される。また、前記分離された工程(2)の反応生成物は、プロピレン、ガソリンおよび接触分解蒸留油を含む。反応生成物からプロピレンのような物質を分離する方法は当業者に周知であり、重質原料油の溶媒脱アスファルト化のための方法もまた、当業者に周知であるため、本明細書では詳細に説明しない。
【0032】
本願によれば、工程(3)で得られる接触分解蒸留油は、約200℃以上の初留点、約550℃以下の最終沸点、および約12.0重量%以下の水素含有量を有する。好ましくは、接触分解蒸留油は、約250℃以上の初留点、約520℃以下、より好ましくは500℃以下の最終沸点、および約11.0重量%以下の水素含有量を有する。
【0033】
本願によれば、燃料油成分は、任意に、水素化脱硫黄化接触分解蒸留油と、溶媒脱アスファルトユニットで得られた脱油アスファルトまたは重質脱アスファルト油とを混合することによって形成することができる。
【0034】
本願によれば、水素化脱硫黄化工程(4)で使用される触媒は、好ましくはアルミナおよび/または非晶質シリカ-アルミナの担体上に担持された、第VIB族金属および/または第VIII族金属を含む触媒である。より好ましくは、水素化処理工程(4)で使用される触媒が、約0~10重量%の添加剤、約1~40重量%の少なくとも1つの第VIII族金属(金属酸化物として計算)、および約1~50重量%の少なくとも1つの第VIB族金属(金属酸化物として計算)を含み、残りはアルミナおよび非晶質シリカ-アルミナから選択される担体であり、添加剤はフッ素、リンなどから選択される非金属元素、チタン、白金などから選択される金属元素、またはそれらの組み合わせを含む。例えば、添加剤は、リン含有補助剤またはフッ化アンモニウムなどのフッ素含有補助剤であってもよい。第VIB族金属は、好ましくはモリブデン、タングステンまたはそれらの組み合わせから選択され、第VIII族金属は、好ましくはニッケル、コバルトまたはそれらの組み合わせから選択される。
【0035】
好ましい実施形態では、水素化脱硫黄化工程(4)が、以下の条件を含む:反応圧力が約2.0~24.0MPa、好ましくは約3.0~15MPa;反応温度が約200~500℃、好ましくは約300~400℃;水素の油に対する体積比が約50~5000N/m、好ましくは約200~2000N/m;液空間速度が約0.1~30.0h-1、好ましくは約0.2~10.0h-1
【0036】
好ましい実施形態において、接触分解蒸留油の水素化脱硫黄化を介して工程(4)で得られる低硫黄水素化蒸留油の硫黄含有量は、約0.1%以下、好ましくは約0.05%以下である。
【0037】
特に好適な実施形態において、本願の方法は、以下の工程を含む:
(1)1段階溶媒脱アスファルトユニット中で、重質原料油と溶媒とを接触させて抽出分離し、脱アスファルト油および脱油アスファルトを得る工程;
(2)脱アスファルト油および任意選択で軽質原料油を、接触転換反応器中で、反応のための接触転換触媒と、水素の非存在下で接触させて、プロピレンを含む反応生成物を得る工程;
(3)工程(2)で得られた反応生成物を分離して、乾燥ガス、プロピレン、ガソリンおよび接触分解蒸留油を含む液化ガスを得る工程、前記液化ガスはさらに分離することでプロピレン、プロパンおよびC4炭化水素を得ることができる;
(4)接触分解蒸留油を水素化脱硫黄化に供し、低硫黄水素化蒸留油を得る工程;
ここで、低硫黄水素化蒸留油は燃料油成分として単独で使用、または脱油アスファルトと混合してから燃料油成分として使用できる;
好ましくは、低硫黄水素化蒸留油を脱油アスファルトと混合して、燃料油成分または製品とされる。
【0038】
別の特に好適な具体例では、本願による方法が以下の工程を含む:
(1)2段階溶媒脱アスファルトユニット中で、重質原料油を溶媒と接触させて抽出分離し、軽質脱アスファルト油、重質脱アスファルト油および脱油アスファルトを得る工程;
(2)接触転換反応器中で、軽質脱アスファルト油および任意に軽質原料油を接触転換触媒と水素の非存在下で接触させて反応させ、プロピレンを含む反応生成物を得る工程;
(3)工程(2)から反応生成物を分離して乾燥ガス、プロピレン、ガソリンおよび接触分解蒸留油を含む液化ガスを得る工程。ここで、液化ガスをさらに分離してプロピレン、プロパンおよびC4炭化水素を得ることができる。
【0039】
(4)接触分解蒸留油を水素化脱硫黄化に供し、低硫黄水素化蒸留油を得る工程;
ここで、低硫黄水素化蒸留油は、燃料油成分として単独で使用、または重質脱アスファルト油または脱油アスファルトと混合してから燃料油成分として使用することができる;
好ましくは、低硫黄水素化蒸留油は、重質脱アスファルト油と混合して、燃料油成分または製品とされる。
【0040】
本願に係る方法の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
【0041】
特に好適な実施形態では、図1に示すように、パイプライン1″を介して重質原料油を1段階溶媒脱アスファルトユニット2″に供給し、溶媒(図示せず)と接触させて分離させ、脱アスファルト油および脱油アスファルトを得る。脱油アスファルトはパイプライン4″を介して排出され、溶媒は再循環される(図示せず)。脱アスファルト油はパイプライン5″からの軽質原料油と任意選択で混合された後、パイプライン3″を通って接触転換ユニット6″に送られ、接触転換触媒と接触し反応する。接触転換生成物の分離後、得られた乾燥ガスはパイプライン7″を通して排出される;得られた液化ガスはパイプライン8″を通して回収され、さらにプロピレン、プロパンおよびC4炭化水素に分離される;得られたガソリンはパイプライン9″を通して排出される;得られた接触分解蒸留油はパイプライン10″を通して回収され、水素化脱硫黄ユニット11″において水素化脱硫黄処理に供される。水素化接触分解蒸留油はパイプライン12″を通して燃料油成分として回収されるか、またはパイプライン13″を通してパイプライン4″から脱油アスファルトと混合されるか、または、任意で、パイプライン15″からの軽質蒸留油とさらに混合されて、燃料油成分または製品とされる。
【0042】
別の特に好適な具体例では、図2に示すように、重質原料油を、パイプライン1″を介して、2段階溶媒脱アスファルト化ユニット2″に供給し(2段階溶媒脱アスファルト化のプロセススキームを図3に概略的に示す)、溶媒(図示せず)と接触させて分離させ、軽質脱アスファルト油、重質脱アスファルト油および脱油アスファルトを得る。重質脱アスファルト油および脱油アスファルトは、それぞれパイプライン14″および4″を介して排出され、溶媒は再循環される(図示せず)。軽質脱アスファルト油はパイプライン5″からの軽質原料油と任意に混合された後に、パイプライン3″を通って接触転換ユニット6″に送られ、接触転換触媒と接触し反応する。接触転換生成物の分離後、得られた乾燥ガスはパイプライン7″を通して排出される;得られた液化ガスはパイプライン8″を通して回収され、さらにプロピレン、プロパンおよびC4炭化水素に分離することができる;得られたガソリンはパイプライン9″を通して排出される;得られた接触分解蒸留油は、パイプライン10″を通して回収され、そして水素化脱硫黄ユニット11″において水素化脱硫黄処理に供される。水素化接触分解蒸留油はパイプライン12″を通して燃料油成分として回収されるか、またはパイプライン13″を通じて、パイプライン14″からの重質脱アスファルト油と混合され、燃料油成分または製品とされる。
【0043】
図3は、原料油がパイプライン1'を通して脱アスファルト化ユニットの抽出塔Iに供給され、パイプライン2'からの溶媒との接触により分離され、脱アスファルト油および溶媒を含有する脱アスファルトを得るための、2段階溶媒脱アスファルト化処理を示す。溶媒を含む脱油アスファルトは、パイプライン5'を通してアスファルト蒸発器に送られて分離され、得られた脱油アスファルトはパイプライン11'を通して排出され、溶媒はパイプライン8'を通して排出される。脱アスファルト油は、パイプライン3'を通って抽出塔IIに送られ、パイプライン4'からの溶媒と接触して分離され、軽質脱アスファルト油および重質脱アスファルト油が得られる。軽質脱アスファルト油は、パイプライン6'を通して軽油蒸発器に送られて分離され、溶剤はパイプライン8'を通して排出され、軽質脱アスファルト油はパイプライン9'を通して排出され、重質脱アスファルト油は、パイプライン7'を通して重油蒸発器に送られて分離され、溶剤はパイプライン8'を通して排出され、重質脱アスファルト油はパイプライン10'を通して排出される。
【0044】
図4に示すように、特に好適な実施形態では、プレ上昇媒体(pre-lifting medium)を、パイプライン1を通して可変直径流動床反応器2(例えば、中国特許第1078094C号に開示された反応器)の底部に注入し、再生触媒傾斜パイプ16からの再生触媒を、前記プレ上昇媒体の作用下で反応器に沿って上方に移動させる。パイプライン9’からの軽質脱アスファルト油を、パイプライン4からの霧化水蒸気と共にパイプライン3を通して可変直径流動床反応器2の第1反応帯域8の底部に供給し、反応器中に存在するストリームと混合する。原料油は高温触媒上で分解され、可変直径流動床反応器2の第2の反応ゾーン9に上方に移動され、さらなる反応に供される。得られた油ガスおよび不活性化された使用済み触媒は、使用済み触媒と油ガスとを分離させるために、分離器(disengager)7内のサイクロン分離器に通される。油ガスはメイン油ガスパイプライン17に通され、触媒の微粉末はサイクロン分離器のディップレッグを通って分離器7に戻される。分離器7内の使用済み触媒は、ストリッピングセクション10に送られて、パイプライン11からのストリップされた水蒸気と接触させられる。使用済み触媒から除去された油ガスは、サイクロン分離器を通過して、メイン油ガスパイプライン17に送られる。除去された使用済み触媒が、使用済み触媒傾斜パイプ12を通って再生器13に送られた後、主空気(main air)がパイプライン14を介して再生器に導入されて、使用済み触媒上に堆積したコークスを燃焼させる。その結果、不活性化された使用済み触媒を再生することができる。排ガスはパイプライン15を通って排出される。再生された触媒は再生触媒傾斜パイプ16を通って、可変直径流動床反応器2に再循環され、再使用される。
【0045】
油ガスはメイン油ガスパイプライン17を通過して次の分留ユニット18に送られ、分離後、得られた乾燥ガスはパイプライン19を通って排出される。得られた液化ガスはパイプライン20を通って排出され、ガス分離ユニット25においてプロピレン、プロパンおよびC4炭化水素に分離され、プロピレン、プロパンおよびC4炭化水素はそれぞれパイプライン26、27および28を通って排出される。得られたガソリンはパイプライン21を通って排出される。200~250℃の蒸留範囲を有する得られた軽質循環油留分はパイプライン22を通って回収され、次いでパイプライン32からの霧化水蒸気と共にパイプライン31を通って、可変直径流動床反応器2の第1の反応ゾーン8の中央上部に再循環される。得られたスラリー油はパイプライン24を通って回収され、精製のために可変直径流動床反応器2の第1の反応ゾーン8に再循環され(任意選択で、原料ノズルを通してパイプライン3からの原料油と共に第1の反応ゾーン8に通される)、触媒の微粉末が回収される。得られた接触分解蒸留油は、パイプライン23を通って水素化処理ユニット29に送られる。水素化処理後に得られた水素化蒸留油はパイプライン10’からの重質脱アスファルト油と共に、パイプライン30を通って、船舶用燃料用の混合成分として取り出される。それぞれの留分の蒸留範囲およびプロセススキームは、精製所の実際の必要性に応じて調整することができる。例えば、軽質ガソリン留分を得るためにガソリンを分離することができるし、軽質ガソリン留分は、精製によりプロピレンの収率を増大させるために、パイプライン5からの霧化水蒸気と共にパイプライン6を通して、可変直径流動床反応器2の第2の反応ゾーン9に再循環させることができる。
【0046】
特定の好ましい実施形態において、本出願は、以下の技術的解決策を提供する:
1.次の工程を含む、より多くのプロピレンおよび低硫黄燃料油成分を製造する方法:
(1)重質原料油と抽出分離用溶媒とを接触させて、脱アスファルト油及び脱油アスファルトを得る工程;
(2)前記脱アスファルト油および任意選択で軽質原料油を、接触転換原料油として接触転換反応器に供給して、反応のための接触転換触媒と接触させて、プロピレン、ガソリンおよび接触分解蒸留油を含む液化ガスを得る工程;
(3)前記接触分解蒸留油を水素化脱硫黄化に供し、低硫黄水素化蒸留油を得る工程;
ここで、前記低硫黄水素化蒸留油および/または前記脱油アスファルトは、燃料油成分として使用される。
【0047】
2.前記重質原料油が、減圧残渣、劣等常圧残油、水素化重質油、またはこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
【0048】
3.溶媒が低級アルカン、またはこれらの2つ以上の混合物から選択され、低級アルカンがプロパン、ブタンおよびペンタン、またはそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
【0049】
4.前記工程(1)は、作動温度が10~200℃、好ましくは20~180℃、作動圧力が1.0~15.0MPa、好ましくは2.0~10.0MPa、および原料油に対する溶剤の質量比率が1~20、好ましくは3~10で実施される、項目1に記載の方法。
【0050】
5.前記工程(2)で使用される軽質原料油が石油炭化水素および/または他の鉱油から選択され、石油炭化水素が、減圧軽油、常圧軽油、コーカー軽油、高品質残油、高品質水素化重油、またはこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され、前記他の鉱油が石炭液化油、タールサンド油、シェール油、またはこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
【0051】
6.前記工程(2)において、反応器が、ライザー反応器、定線速度流動床、等直径流動床、上昇流コンベアライン、下降流コンベアライン、これらの2つ以上の組み合わせ、または直列および/または並列に接続された反応器の組み合わせを含む、同じタイプの2つ以上の反応器の組み合わせからなる群から選択され、ライザー反応器は、従来の等直径ライザー反応器または様々なタイプの可変直径流動床である、項目1に記載の方法。
【0052】
7.前記工程(2)において使用される接触転換触媒が、触媒の総重量に対して、1~50重量%のゼオライト、5~99重量%の無機酸化物および0~70重量%の粘土を含み、ここで、ゼオライトはメソ細孔ゼオライトおよび任意選択でマクロ細孔ゼオライトであり、メソ細孔ゼオライトはゼオライトの総重量の51~100重量%を占め、メソ細孔ゼオライトは50を超える、好ましくは80を超えるシリカ-アルミナ比を有し、マクロ細孔ゼオライトはゼオライトの総重量の0~49重量%を占める、項目1に記載の方法。
【0053】
8.前記工程(2)における接触転換のための条件は、反応温度が460~750℃、好ましくは480~700℃、重量空間速度が10~100h-1、好ましくは30~80h-1、および接触転換供給原料油に対する触媒の重量比率が4~20、好ましくは5~12である、項目1に記載の方法。
【0054】
9.前記工程(2)で得られた接触分解蒸留油の初留点が200℃以上であり、かつ、水素含有量が12.0重量%以下である、項目1に記載の方法。
【0055】
10.接触分解蒸留油の初留点が250℃以上、水素含有量が11.0重量%以下である、項目9に記載の方法。
【0056】
11.水素化脱硫黄化工程(3)で使用される触媒が、VIB族金属および/またはアルミナおよび/または非晶質シリカ-アルミナ担体に担持されたVIII族金属を含む触媒である、項目1に記載の方法。
【0057】
12.前記水素化処理触媒が0~10重量%の添加剤と、1~40重量%の1つ以上のVIII族金属と、1~50重量%の1つ以上のVIB族金属と、残余のアルミナおよび/または非晶質シリカ-アルミナ担体とを含み、前記添加剤が、フッ素、リンなどの非金属元素、およびチタン、白金などの金属元素からなる群から選択される、項目11に記載の方法。
【0058】
13.前記水素化脱硫黄の条件は、反応圧力が2.0~24.0MPa、反応温度が200~500℃、水素の油に対する体積比が50~5000Nm/m、および液空間速度が0.1~30.0h-1であることを含む、項目1に記載の方法。
【0059】
14.前記水素化脱硫黄条件は、反応圧力が3.0~15.0MPa、反応温度が300~400℃、水素の油に対する体積比が200~2000Nm/m、および液空間速度が0.2~10.0h-1であることを含む、項目13に記載の方法。
【0060】
15.前記工程(3)で得られた水素化蒸留油の硫黄含有量が0.1%以下、好ましくは0.05%以下である、項目1に記載の方法。
【0061】
〔実施例〕
本願について、以下の実施例を参照してさらに説明する。しかし、本願はこれらに限定されるものではない。
【0062】
以下の実施例及び比較例で用いた原料油及び触媒の特性を、それぞれ表1及び表2に示す。前記比較例では、接触転換触媒として、シノペック触媒(株)のキルブランチ製の触媒であるMMC-1を使用した。
【0063】
それぞれの実施例で得られた接触分解蒸留油の水素含有量は、NB/SH/T 0656-2017規格に準拠した炭素および水素分析計により測定された。
【0064】
本実施例で使用した触媒は、以下の通りに調製した:
969gのハロイサイト(中国カオリンクレー株式会社から購入、固形分73%)を4300gの脱カチオン水中でスラリー化し、781gの擬ベーマイト(64%の固形分を有する。Shandong Zibo Bauxite Plantから購入)および144mlの塩酸(濃度30%、比重1.56)を添加し、均一に撹拌した。混合物を静置し、60℃で1時間熟成し、pHを2~4に保ち、次いで混合物を室温まで冷却した。化学水(chemical water)を含み、シリカ-アルミナ比が150を超えるメソ細孔形状選択性ZSM-5ゼオライト(シノペック触媒株式会社Qilu Branchから購入)1600gを含む、予め調製したスラリー5000gを添加し、均一に撹拌し、噴霧乾燥し、遊離Naを洗い流して触媒を得た。得られた触媒を100%水蒸気により、800℃でエージングし、エージングした触媒を触媒Aとした。触媒Aの特性を表2に示す。
【0065】
実施例で用いた水素化脱硫黄触媒Bは、以下の通りに調製した:
シノペック触媒株式会社のChangLing Branchによって製造された擬ベーマイト1000gを秤量し、次いで、硝酸(化学的に純粋)10mlを含有する水溶液1000mlを添加した。得られた混合物を、二軸押出機で帯状に押出す(band extrusion)ことにより成形し、120℃で4時間乾燥し、800℃で4時間焼成して触媒担体を得た。フッ化アンモニウム120gを含む水溶液900mlに、得られた担体を2時間浸漬し、120℃で3時間乾燥し、600℃で3時間焼成した。室温まで冷却した後、結果物をさらにメタモリブデン酸アンモニウム133gを含む水溶液950mlに3時間浸漬し、120℃で3時間乾燥し、600℃で3時間焼成した。再度室温まで冷却した後、最後に、結果物を、硝酸ニッケル180gおよびメタタングステン酸アンモニウム320gを含む水溶液900mlに4時間浸漬し、120℃で3時間乾燥し、600℃で4時間焼成して触媒Bを得た。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
(実施例1-a)
この実施例は、重質原料油として減圧残渣VR-1を使用して、図1に示すプロセススキームに従って実施した。重質原料油をプロパンで溶媒脱アスファルト処理して得られた脱アスファルト油及び脱油アスファルトの特性を表3に示す。
【0069】
触媒Aを接触転換触媒として使用して、100%プロパン-脱アスファルト油が入った可変直径流動床反応器を含む中サイズの接触分解装置を使用して試験を行った。得られた油ガスおよび使用済み触媒を分離器で分離し、油ガス生成物を、分留装置によって、各留分の蒸留範囲に従って、プロピレン、ブチレン、ガソリンおよび接触分解蒸留油(蒸留範囲250~500℃、水素含有量9.4重量%)に分けた。反応条件および生成物の分布を表4に示す。
【0070】
得られた接触分解蒸留油を、水素と共に水素化脱硫黄反応器に送り、水素化脱硫黄触媒Bと接触させて、反応圧力6.0MPa、反応温度350℃、水素の油に対する体積比350、液空間速度2.0h-1で反応させ、低硫黄水素化蒸留油を得た。得られた低硫黄水素化蒸留油を燃料油成分として使用し、第2の燃料油成分(すなわち、この実施例で得られた脱油アスファルト)および第3の燃料油成分、すなわち水素化ディーゼル油と混合して、船舶用燃料油の国家規格GB 17411-2015を満たす、RMG 180燃料油製品を得た。これらの燃料油製品の特性を表5に示す。
【0071】
(実施例1-b)
この実施例は、可変直径流動床反応器を含む中サイズの接触分解ユニットの代わりに、等直径ライザー反応器を含む中サイズのユニットを使用したことを除いて、実施例1に記載した通りに実施した。得られた油ガスおよび使用済み触媒を分離器で分離し、油ガス生成物を分留装置によって、各留分の蒸留範囲に従って、プロピレン、ブチレン、ガソリンおよび接触分解蒸留油(蒸留範囲250~500℃、水素含有量9.4重量%)に分けた。反応条件および生成物の分布を表4に示す。
【0072】
(実施例2)
この実施例は、重質原料油として減圧残渣VR-1を使用して、図1に示すプロセススキームに従って実施した。重質原料油をブタンで溶剤脱アスファルト処理して得られた脱アスファルト油及び脱油アスファルトの特性を表3に示す。
【0073】
触媒Aを接触転換触媒として使用して、80%ブタン脱アスファルト油と20%VGOとの混合物が入った可変直径流動床反応器を含む中サイズ接触分解ユニットを用いて試験を行った。得られた油ガスおよび使用済み触媒を分離器で分離し、油ガス生成物を分留装置によって、各留分の蒸留範囲に従って、プロピレン、ブチレン、ガソリンおよび接触分解蒸留油(蒸留範囲250~500℃、水素含有量10.1重量%)に分けた。反応条件および生成物の分布を表4に示す。
【0074】
得られた接触分解蒸留油を水素と共に水素化脱硫黄反応器に送り、水素化脱硫黄触媒Bと接触させ、反応圧力7.0MPa、反応温度380℃、水素の油に対する体積比500、液空間速度1.5h-1で反応させ、低硫黄水素化蒸留油を得た。低硫黄水素化蒸留油を燃料油成分として使用し、別の燃料油成分(すなわち、この実施例で得られた脱油アスファルト)と混合して、船舶用燃料油の国家規格GB 17411-2015を満足する、RMG 380燃料油製品を得た。得られた燃料油製品の特性を表6に示す。
【0075】
(実施例3)
この実施例は、重質原料油として減圧残渣VR-1を使用して、図1に示すプロセススキームに従って実施した。重質原料油をペンタンで溶媒脱アスファルト処理し、得られた脱アスファルト油及び脱油アスファルトの特性を表3に示す。
【0076】
触媒Aを接触転換触媒として使用して、60%のペンタン脱アスファルト油と40%のVGOとの混合物を有する可変直径流動床反応器を含む中サイズの接触分解ユニットを用いて試験を行った。得られた油ガスおよび使用済み触媒を分離器で分離し、油ガス生成物を、分留ユニットによって、各留分の蒸留範囲に従って、プロピレン、ブチレン、ガソリンおよび接触分解蒸留油(蒸留範囲250~500℃、水素含有量10.4重量%)に分けた。反応条件および生成物の分布を表4に示す。
【0077】
得られた接触分解蒸留油を水素と共に水素化脱硫黄反応器に送り、水素化脱硫黄触媒Bと接触させ、反応圧力8.0MPa、反応温度310℃、水素の油に対する体積比550、液空間速度4.0h-1で反応させて低硫黄水素化蒸留油を得た。低硫黄水素化蒸留油を燃料油成分として使用し、別の燃料油成分(すなわち、この実施例で得られた脱油アスファルト)と混合して、船舶用燃料の国家規格GB 17411-2015を満足するRMG 180燃料油製品を得た。得られた燃料油の特性を表7に示す。
【0078】
(比較例1)
この比較例は、CN1004878Bに記載されている従来の深接触分解法に従って、原料油としてVGOを使用し、接触分解触媒として触媒MMC-1を使用して、濃厚相流動床と組み合わせたライザー反応器を含む中型装置上で実施した。得られた油ガスおよび使用済み触媒を分離器で分離し、生成物を、分留装置によって、各留分の蒸留範囲に従って、プロピレン、ブチレン、ガソリンおよび軽質循環油(蒸留範囲200~350℃、水素含有量9.8重量%)に分留した。反応条件および生成物の分布を表4に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
【0082】
表4の結果から分かるように、実施例1-aおよび実施例1-bは、5重量%を超えるプロピレン収率だけでなく、約70重量%の燃料油成分収率(重質原料油として使用される減圧残渣VR-1に対して、水素化蒸留油+脱油アスファルトに基づいて計算される)も提供することができる。比較例1と比較した場合、実施例1-aおよび実施例1-bの乾燥気体の収率は著しく減少し、総液収率は著しく増加する。
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
【0085】
【表7】
【0086】
(実施例4)
この実施例は、重質原料油として水素化重質油を用いて、図2に示すプロセススキームに従って行った。重質原料油をブタンにより溶媒脱アスファルト処理し、軽質脱アスファルト油、重質脱アスファルト油および脱油アスファルトの特性を表8に示す。
【0087】
触媒Aを接触転換触媒として使用して、100%軽質ブタン脱アスファルト油が入った可変直径床反応器を含む中サイズ接触分解ユニットで試験を行った。得られた油性ガスおよび使用済み触媒を分離器で分離し、油性ガス生成物を、分留装置によって、各留分の蒸留範囲に従って、プロピレン、ブチレン、ガソリンおよび接触分解蒸留油(蒸留範囲250~500℃、水素含有量10.4重量%)に分けた。反応条件および生成物の分布を表9に示す。
【0088】
得られた接触分解蒸留油を、水素と共に水素化脱硫黄反応器に送り、水素化脱硫黄触媒Bと接触させ、反応圧9.0MPa、反応温度330℃、水素の油に対する体積比650、液空間速度8.0h-1で反応させて低硫黄水素化蒸留油を得た。低硫黄水素化蒸留油を燃料油成分として使用し、別の燃料油成分「減圧残渣VR-2」と混合して、船舶用燃料油の国家規格GB 17411-2015を満足する、RMG 180燃料油製品を得た。得られた燃料油製品の特性を表10に示す。
【0089】
(実施例5)
この実施例は、重質原料油として水素化重質油を用いて、図2に示すプロセススキームに従って行った。重質原料油をプロパンで溶媒脱アスファルト処理し、得られた軽質脱アスファルト油、重質脱アスファルト油および脱油アスファルトの特性を表8に示す。
【0090】
触媒Aを接触転換触媒として使用して、100%軽質プロパン脱アスファルト油が入った可変直径流動床反応器を含む、中サイズ接触分解装置で試験を実施した。得られた油性ガスおよび使用済み触媒を分離器で分離し、油性ガス生成物を、分留ユニットによって、各留分の蒸留範囲に従って、プロピレン、ブチレン、ガソリンおよび接触分解蒸留油(蒸留範囲250~500℃、水素含有量10.5重量%)に分けた。反応条件および生成物の分布を表9に示す。
【0091】
得られた接触分解蒸留油を水素と共に水素化脱硫黄反応器に送り、水素化脱硫黄触媒Bと接触させ、反応圧力6.0MPa、反応温度350℃、水素の油に対する体積比350、液空間速度4.0h-1で反応させ、低硫黄水素化蒸留油を得た。低硫黄水素化蒸留油を燃料油成分として使用し、第2の燃料油成分(すなわち、この実施例で得られた重質脱アスファルト油)および第3の燃料油成分「減圧残渣VR-3」とブレンドして、船舶用燃料油の国家規格GB 17411-2015を満たすRMG 380燃料油製品を得た。得られた燃料油製品の特性を表11に示す。
【0092】
【表8】
【0093】
【表9】
【0094】
【表10】
【0095】
【表11】
【0096】
上記の表に示す結果から分かるように、本願の方法は、ある量の燃料油成分を生成しながら、高価値の製品であるプロピレンを提供することができる。
【0097】
以上、本願の好ましい実施形態について詳細に説明した。しかし、本願は、これらの詳細な実施形態に限定されるものではない。本願の精神から逸脱することなく、様々な修正を行うことができ、これらの修正も本願の範囲内である。
【0098】
なお、上記実施の形態で説明した種々の技術的特徴は、矛盾することなく、適宜組み合わせることができる。簡潔にするために、存在し得る様々な組み合わせは、本願においては別々に記載されない。しかしながら、このような組み合わせも本願の範囲内である。
【0099】
加えて、本願の様々な実施形態は、本願の精神から逸脱しない限り、任意の方法で組み合わせることができ、そのような組み合わせは、本願の開示の一部と見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1】本出願による方法の好ましい実施形態の概略フロー図を示す。
図2】本出願による方法の別の好ましい実施形態の概略フロー図を示す。
図3】本出願で使用される溶媒脱アスファルト化ユニットの好ましい実施形態の概略図を示す。
図4】本出願で使用される接触転換ユニットの好ましい実施形態の概略図を示す。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンおよび低硫黄燃料油成分を製造する方法であって、当該方法は、
(1)重質原料油と抽出分離用溶媒とを接触させ、脱アスファルト油および脱油アスファルトを得る工程と、
(2)前記脱アスファルト油および任意選択で軽質原料油を、接触転換反応器中で反応させるための接触転換触媒と水素非存在下で接触させて、プロピレンを含む反応生成物を得る工程と、
(3)工程(2)で得られた反応生成物を分離して、接触分解蒸留油を得る工程であって、当該接触分解蒸留油が約200℃以上の初留点、約550℃以下の最終沸点、および約12.0重量%以下の水素含有量を有する工程と、
(4)前記接触分解蒸留油を水素化脱硫黄化に供して、低硫黄水素化蒸留油を得る工程を含み、
前記低硫黄水素化蒸留油および/または前記脱油アスファルトは燃料油成分としての使用に好適であり、
ここで、前記工程(2)において使用される前記接触転換触媒は、触媒の総重量に対して、約1~50重量%のゼオライト、約5~99重量%の無機酸化物、および約0~70重量%の粘土を含み、
工程(2)の反応条件は、反応温度が約460~750℃、好ましくは約480~700℃であり;重量空間速度が約10~100h-1、好ましくは約30~100h-1であり、または、反応時間が約1~10秒、好ましくは約2~8秒であり;触媒の油に対する重量比率が約4~20、好ましくは約5~12である、方法。
【請求項2】
前記ゼオライトが、前記接触転換触媒中のゼオライトの総重量に対して、メソ多孔質ゼオライト約51~100重量%およびマクロ多孔質ゼオライト約0~49重量%を含み、前記メソ多孔質ゼオライトのシリカ-アルミナ比が約10を超え、より好ましくは約50を超え、特に好ましくは約100を超え、
好ましくは、前記メソ多孔質ゼオライトがZSM型ゼオライトおよびZRPゼオライトからなる群から選択され、前記マクロ多孔質ゼオライトはY型ゼオライトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(2)が、得られる反応生成物が約4以上、好ましくは約6以上、最も好ましくは約8以上のプロピレン/プロパン質量比、および/または約1以上、好ましくは約1.5以上、最も好ましくは約1.8以上のイソブテン/イソブタン質量比を有するように実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(2)が、得られる反応生成物中の接触分解蒸留油の収率が約15%以上、好ましくは約20%以上、より好ましくは約30%以上、および約50%以下となるように実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記重質原料油が、減圧残渣、劣等常圧残油、水素化重質油、またはこれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、プロパン、ブタン、ペンタンまたはこれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(1)の抽出分離条件は、温度が約10~200℃、好ましくは約20~180℃であり、作動圧力が約1.0~15.0MPa、好ましくは約2.0~10.0MPaであり、溶媒の供給原料油に対する質量比が約1~20、好ましくは約3~10である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(2)で使用される軽質原料油が石油炭化水素、他の鉱油、またはこれらの混合物からなる群から選択され、前記石油炭化水素が減圧軽油、常圧軽油、コーカー軽油、高品質残油、高品質水素化重油、またはこれらの任意の混合物からなる群から選択され、前記他の鉱油が石炭液化油、タールサンド油、シェール油、またはこれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(2)で使用される接触転換反応器が、単一流動床反応器、または直列もしくは並列に接続された複数の流動床反応器を含む複合反応器、好ましくは等直径ライザー反応器または様々なタイプの可変直径流動床反応器を含む流動床反応器である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(3)の接触分解蒸留油が、約250℃以上の初留点、約520℃以下、好ましくは約500℃以下の最終沸点、および約11.0重量%以下の水素含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
アルミナおよび/または非晶質シリカ-アルミナ担体上に担持された第VIB族金属および/または第VIII族金属を含む触媒が、水素化脱硫黄化工程(4)において使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
水素化脱硫黄化工程(4)で使用される触媒が、約0~10重量%の添加剤と、約1~40重量%の少なくとも1種の第VIII族金属(金属酸化物として計算)と、約1~50重量%の少なくとも1種の第VIB族金属(金属酸化物として計算)とを含み、残りはアルミナおよび非晶質シリカ-アルミナから選択される担体であり、添加剤は、フッ素、リン、チタン、白金またはそれらの組み合わせからなる群から選択される元素を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
水素化脱硫黄化処理(4)の条件は、反応圧力が約2.0~24.0MPaであり、反応温度が約200~500℃であり、水素の油に対する体積比が約50~5000N/mであり、および液空間速度が約0.1~30.0h-1であり、
好ましくは、水素化脱硫黄化工程(4)の条件は、反応圧力が約3.0~15.0MPaであり、反応温度が約300~400℃、水素の油に対する体積比が約200~2000N/mであり、および液空間速度が約0.2~10.0h-1である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程(4)で得られる水素化蒸留油は、硫黄含有量が約0.1%以下、好ましくは約0.05%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
工程(2)が、得られる反応生成物が、約4以上、好ましくは約6以上、最も好ましくは約8以上のプロピレン/プロパン質量比、および/または約1以上、好ましくは約1.5以上、最も好ましくは約1.8以上のイソブテン/イソブタン質量比を有するように実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
工程(2)が、得られる反応生成物中の接触分解蒸留油の収率が約15%以上、好ましくは約20%以上、より好ましくは約30%以上、および約50%以下となるように実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
工程(2)が、得られる反応生成物中の接触分解蒸留油の収率が約15%以上、好ましくは約20%以上、より好ましくは約30%以上、および約50%以下となるように実施される、請求項15に記載の方法。
【国際調査報告】