(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】トーショナルダンパを備えた流体トルクコンバータおよびこれを含む自動車
(51)【国際特許分類】
F16H 45/02 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
F16H45/02 Y
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524274
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 CN2020123120
(87)【国際公開番号】W WO2021078238
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】201911022770.5
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911023452.0
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911023454.X
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522048982
【氏名又は名称】ヴァレオ、カペック、トルク、コンバーターズ、(ナンジン)、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VALEO KAPEC TORQUE CONVERTERS(NANJING) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】リー、マオホイ
(72)【発明者】
【氏名】フー、シュン
(72)【発明者】
【氏名】イン、イン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ルー
(72)【発明者】
【氏名】モン、トン
(72)【発明者】
【氏名】イン、シュエチュン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、トンメイ
(57)【要約】
本開示は、カバーと、インペラと、タービンと、ピストンディスクと、1つ以上のトーショナルダンパとを含み、前記カバーは、流体トルクコンバータの回転軸線を中心に回転するように自動車のエンジン側の駆動部材によって駆動され、前記インペラは、カバーに回転可能に固定連結され、前記タービンは、回転軸線を中心に回転するように駆動され、トルクを自動車の変速機の入力軸に出力し、前記ピストンディスクは、摩擦面を含み、流体トルクコンバータが流体式伝動モードと機械式伝動モードとの間で切り替えられるように作動することができ、機械式伝動モードで、摩擦面は、カバーがピストンディスクと一体に回転するようにカバーに密着し、前記1つ以上のトーショナルダンパは、ピストンディスクとタービンとの間にホールディングされ、1つ以上のスプリングを含む、自動車用流体トルクコンバータに関する。本開示はまた、前記流体トルクコンバータを含む自動車に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用流体トルクコンバータにおいて、
前記流体トルクコンバータは、カバー(1)と、インペラ(2)と、タービン(3)と、ピストンディスク(4)と、1つ以上のトーショナルダンパ(5)とを含み、
前記カバー(1)は、流体トルクコンバータの回転軸線(RO)を中心に回転するように自動車のエンジン側の駆動部材によって駆動され、
前記インペラ(2)は、カバー(1)に回転可能に固定連結され、
前記タービン(3)は、タービンハウジング(31)およびブレード(32)を含み、前記タービン(3)は、前記回転軸線(RO)を中心に回転するように駆動され、自動車の変速機の入力軸にトルクを出力し、
前記ピストンディスク(4)は、摩擦面(41)を含み、前記ピストンディスク(4)は、流体トルクコンバータが流体式伝動モードと機械式伝動モードとの間で操作可能に切り替えられるように作動することができ、流体式伝動モードで、回転軸線(RO)を中心としたインペラ(2)の回転は、流体の流れを発生させてタービン3を駆動し、機械式伝動モードで、前記摩擦面(41)は、カバー(1)がピストンディスク(4)と一体に回転するようにカバー(1)に密着し、
前記1つ以上のトーショナルダンパ(5)は、ピストンディスク(4)とタービン(3)との間にホールディングされ、ピストンディスク(4)からトルクをタービン(3)に伝達し、1つ以上のスプリング(51)を含む、自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項2】
前記ピストンディスク(4)には、前記ピストンディスク(4)と一体に形成された環状凹溝(42)が設けられ、
前記環状凹溝(42)は、前記スプリング(51)を収容および案内するためのものであり、
前記スプリング(51)は、タービン(3)によって前記環状凹溝(42)にホールディングされる、請求項1に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項3】
前記環状凹溝(42)は、
半径方向内側に位置する内側壁(42a)と、
半径方向外側に位置する外側壁(42b)と、
前記内側壁と外側壁とを連結する底面(42c)とを含む、請求項2に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項4】
前記外側壁(42b)は、ピストンディスク4の半径方向外側周縁を構成する、請求項3に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項5】
前記底面(42c)は、平らであり、摩擦面(41)は、前記底面の軸方向の反対面に設けられる、請求項3または4に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項6】
前記環状凹溝(42)の外側壁(42b)の端部は、内側に向かうカーリング部(43)を含む、請求項3~5のいずれか1項に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項7】
前記環状凹溝(42)には、1つ以上のスプリング駆動部(44)が設けられる、請求項2~6のいずれか1項に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項8】
前記スプリング駆動部(44)は、環状凹溝の内側壁(42a)から半径方向外側に突出した内側ボス(44a)と、環状凹溝の外側壁(42b)から半径方向内側に突出した外側ボス(44b)とを含み、
前記内側ボス(44a)と外側ボス(44b)は、半径方向で互いに対向する、請求項7に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項9】
前記内側ボス(44a)および外側ボス(44b)の対応する側壁は、流体トルクコンバータの回転軸線(RO)を通過する同一の半径方向平面に位置する、請求項8に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項10】
前記スプリング駆動部(44)は、環状凹溝(42)の内側壁(42a)および/または外側壁(42b)から環状凹溝の内部に延びた突出板である、請求項7に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項11】
前記環状凹溝(42)は、円周方向に均一に分布した3つのスプリング駆動部(44)が設けられる、請求項7~10のいずれか1項に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項12】
前記タービンハウジング(31)は、曲げ型本体(31A)を含み、前記曲げ型本体(31A)は、曲率を有し、軸方向でブレード(32)に対応し、前記タービンハウジング(31)は、ピストンディスク(4)がトーショナルダンパ(5)を介して伝達するトルクを受けるように曲げ型本体(31A)に前記タービンハウジング(31)と一体に形成された突起(33)が設けられている、請求項1~11のいずれか1項に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項13】
前記突起(33)は、タービンハウジング(31)の曲げ型本体(31A)に形成されたボス(33A)である、請求項12に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項14】
前記ボス(33A)の側壁は、流体トルクコンバータの回転軸線(RO)を通過する半径方向平面に位置する、請求項13に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項15】
前記突起(33)は、タービンハウジング(31)の曲げ型本体(31A)に形成されたフック部(33B)である、請求項12に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項16】
前記フック部(33B)の側辺は、流体トルクコンバータの回転軸線(RO)を通過する半径方向平面に位置する、請求項15に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項17】
前記タービンハウジング(31)には、円周方向に均一に分布した3つの突起(33)が設けられる、請求項12~16のいずれか1項に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項18】
前記ピストンディスク(4)には、前記ピストンディスク(4)と一体に形成された1つ以上の第1ストップ突起(8)が設けられ、前記タービンハウジング(31)には、前記タービンハウジング(31)と一体に形成された1つ以上の第2ストップ突起(9)が設けられ、前記第1ストップ突起(8)と第2ストップ突起(9)は、前記スプリング(51)の圧縮量を制限するように互いに結合される、請求項1~17のいずれか1項に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項19】
前記第1ストップ突起(8)は、ピストンディスク(4)からタービンハウジング(31)に向かって突出した第1ストップボス(81)であり、前記第2ストップ突起(9)は、タービンハウジング(31)からピストンディスク(4)に向かって突出した第2ストップボス(91)である、請求項18に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項20】
前記第1ストップボス(81)および第2ストップボス(91)の側壁は、流体トルクコンバータの回転軸線(RO)を通過する半径方向平面に位置する、請求項19に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項21】
前記ピストンディスク(4)は、半径方向内側周縁からタービン(3)に向かって延びた軸方向延長部(42)を含み、前記第1ストップ突起(8)は、軸方向延長部(42)の端部から軸方向に延びた第1ストップ歯(82)であり、前記第2ストップ突起(9)は、タービンハウジング(31)の半径方向内側周縁から半径方向に延びた第2ストップ歯(92)である、請求項18に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項22】
前記第1ストップ歯(82)および第2ストップ歯(92)の側壁は、流体トルクコンバータの回転軸線(RO)を通過する半径方向平面に位置する、請求項21に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項23】
前記ピストンディスク(4)は、円周方向に均一に分布した3つの第1ストップ突起(8)を有し、前記タービンハウジング(31)は、円周方向に均一に分布した3つの第2ストップ突起(9)を有する、請求項18~22のいずれか1項に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項24】
前記トーショナルダンパ(5)は、第1トーショナルダンパであり、
前記流体トルクコンバータは、前記第1トーショナルダンパ(5)の半径方向内側に位置した第2トーショナルダンパ(7)をさらに含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項25】
前記タービンハウジング(31)および/またはピストンディスク(4)は、パンチングにより製造される、請求項1~24のいずれか1項に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項26】
前記タービンハウジング(31)および/またはピストンディスク(4)は、パンチングされた後、熱処理工程により強化される、請求項25に記載の自動車用流体トルクコンバータ。
【請求項27】
自動車において、
前記請求項のいずれか1項に記載の流体トルクコンバータを含む、自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トーショナルダンパを備えた流体トルクコンバータに関する。本開示はまた、このような流体トルクコンバータを含む自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動変速自動車のエンジンと変速機との間には流体トルクコンバータが設けられる。流体トルクコンバータは、エンジンの駆動力を変速機に伝達するためのもので、トルクを伝達し、トルクを変更する役割を果たすことができる。流体トルクコンバータは、エンジン側の駆動部材によって駆動されるカバーと、カバーに回転可能に固定連結されるインペラと、変速機入力軸に連結されるタービンとを含み、ピストンディスクを介して流体式伝動モードと機械式伝動モードとの間で切り替え可能である。自動車の始動段階で、流体トルクコンバータは、流体式伝動モードで作動する。この時、流体トルクコンバータのインペラは、流体(一般に、オイル)によりタービンを駆動する。エンジンが高い回転速度に到達すれば、流体トルクコンバータは、機械式伝動モードに切り替えられる。機械式伝動モードで、トルクは、インペラを経る必要なく、ピストンディスクおよび/またはその他の伝動機構を介してカバーからタービンに機械的に伝達される。
【0003】
自動車のエンジンから生成されるトルクは一般に一定でない。特に、機械式伝動モードで、このような一定でないトルクは変速機に伝達されて変速機ギヤボックスの振動を起こすことがあり、また、これによって特に望まない騒音や衝撃などが発生することがある。振動の不利な影響を低減し、自動車の運転快適性を高めるために、流体トルクコンバータにトーショナルダンパを配置することはすでに知られている。トーショナルダンパは、自動車のエンジンから発生する振動を吸収して減少させることができる。トーショナルダンパは、一般に、ピストンディスクとタービンとの間に配置され、両者の間でトルクを伝達するためのスプリングのような弾性部材を含む。
【0004】
中国特許第104235301B号は、ピストンディスクにトーショナルダンパが装着された流体トルクコンバータを開示した。スプリングをホールディングするためのホールディング板は、リベットを介してピストンディスクに固定される。また、ホールディング板には、半径方向に延びたホールディング部が形成されており、タービンには、ピストンディスクとタービンとの間でトルクを伝達するための複数の伝達クローが溶接固定されている。
【0005】
日本国特許出願第H06147294A号も、ピストンディスクにトーショナルダンパが装着された類似の流体トルクコンバータを開示した。具体的には、トーショナルダンパのスプリングをホールディングし、トルクを伝達する環状駆動ディスクは、リベットを介してピストンディスクに固定され、タービンには、トルクを伝達するための複数の突出板が固定設置されている。ピストンディスクに環状駆動ディスクを固定するためには専用リベット工程が必要であり、タービンに突出板を固定するためには専用溶接工程が必要である。これによって、流体トルクコンバータの製造工程が複雑になる。また、タービンに溶接された突出板は変形したり、離れやすい。
【0006】
韓国特許出願第20070096471A号も、ピストンディスクにトーショナルダンパが装着された流体トルクコンバータを開示した。類似して、トーショナルダンパのスプリングをホールディングし、トルクを伝達するための環状駆動ディスクは、リベットを介してピストンディスクに固定される。タービンは、タービンハウジングと一体に形成されてトルクを伝達するための複数の突出板がタービンハウジングに設けられているので、トルク伝達素子の溶接工程を省略することができる。しかし、韓国特許出願第20070096471A号において、突出板は、タービンハウジングの半径方向周縁に設けられるので、タービンハウジングのプロファイル直径が増加し、タービンハウジングの製造に消耗する材料が増加して費用が増加する。
【0007】
上述のように、トーショナルダンパは、一般に、ピストンディスクとタービンとの間に配置される。しかし、トーショナルダンパを流体トルクコンバータのトルク伝達経路の他の位置に配置することも構想できる。米国特許出願第US6056093A号は、流体トルクコンバータを開示し、トーショナルダンパは、タービンと出力ハブとの間に設けられる。具体的には、トーショナルダンパのスプリングをホールディングするためのカバーディスク素子は、タービンハウジングに固定され、前記カバーディスク素子は、ピストンディスクと接合される突起部を含むことによって、タービンにトルクを伝達する。出力ハブは、半径方向に外部に向かって一体に延びたフランジを含み、前記フランジは、タービンハウジングの突起と共に円周方向でスプリングをホールディングし、トルクを伝達する。
【0008】
また、トーショナルダンパの過度なトルク伝達によってトーショナルダンパの寿命が短縮されるのを防止するために、弾性部材の圧縮量が所定の閾値を超えないようにストップ機構を設けることはすでに知られている。上述した中国特許第CN104235301B号は、2つのトーショナルダンパおよび2つのストップ機構を含む流体トルクコンバータを開示した。トーショナルダンパのスプリングをホールディングするためのホールディング板は、リベットを介してピストンディスクおよびタービンにそれぞれ固定される。ホールディング板には貫通する切開部が形成されており、タービンには複数の伝達クローが溶接固定され、伝達クローは切開部内に延びて切開部に係止結合され、両者は第1ストップ機構を構成する。また、タービンにおいてホールディング板を固定するためのリベットは、タービンハブの出力側板に形成された貫通孔内に延びて、第2ストップ機構を構成する。周知のように、第1ストップ機構および第2ストップ機構に含まれている2つのストップ部材は互いに異なる類型であり、互いに異なる工程により製造しなければならないので、例えば、伝達クローは溶接連結しなければならず、リベットはリベット連結しなければならず、切開部はパンチングまたは機械加工しなければならないので、流体トルクコンバータの製造工程が複雑で、損傷しやすい。また、ホールディング板および入力側板のような別途の部材を軸方向にさらに配置しなければならないので、流体トルクコンバータの軸方向の大きさが増加し、変速機のような他のトルク伝達部材の装着空間が圧縮される。
【0009】
したがって、従来の流体トルクコンバータにおいて、トーショナルダンパをホールディングし、トルクを伝達するためには、一般に、複数のホールディング素子およびトルク伝達素子を設けなければならない。これによって、流体トルクコンバータの製造工程が複雑で、損傷しやすい。また、軸方向に配置されたホールディング素子およびトルク伝達素子によって流体トルクコンバータの軸方向の大きさが増加し、変速機のような他のトルク伝達部材の装着空間が圧縮される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本開示は、一般的な流体トルクコンバータに存在する上述した問題点を解決するためのものであり、その目的は、製造費用を節減し、大きさを圧縮し、他のトルク伝達部材の装着空間を拡大させることができる流体トルクコンバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的は、本開示の一実施例によるトーショナルダンパを含む流体トルクコンバータを介して実現され、前記流体トルクコンバータは、カバーと、インペラと、タービンと、ピストンディスクと、1つ以上のトーショナルダンパとを含み、前記カバーは、流体トルクコンバータの回転軸線を中心に回転するように自動車のエンジン側の駆動部材によって回転駆動され、前記インペラは、カバーと共に回転するようにカバーに回転可能に固定連結され、前記タービンは、タービンハウジングおよびブレードを含み、前記回転軸線を中心に回転するように駆動され、自動車の変速機の入力軸にトルクを伝達し、前記ピストンディスクは、摩擦面を含み、流体トルクコンバータが流体式伝動モードと機械式伝動モードとの間で操作可能に切り替えられるように作動することができ、流体式伝動モードで、回転軸線を中心としたインペラの回転は、流体の流れを発生させてタービンを駆動し、機械式伝動モードで、前記摩擦面は、カバーがピストンディスクと一体に回転するようにカバーに密着し、前記1つ以上のトーショナルダンパは、ピストンディスクとタービンとの間にホールディングされ、トルクをピストンディスクからタービンに伝達し、前記トーショナルダンパは、1つ以上のスプリングを含む。
【0012】
本開示による流体トルクコンバータはまた、下記の特徴の1つ以上を単独でまたは組み合わせて有することができる。
【0013】
本開示の一実施例によれば、ピストンディスクは、前記ピストンディスクと一体に形成された環状凹溝が設けられており、トルク伝達過程で、スプリングの圧縮と復帰は前記環状凹溝によって案内される。また、前記ピストンディスクは、トーショナルダンパのスプリングを前記環状凹溝内にホールディングするようにタービンと結合可能である。ピストンディスク自体がスプリングを案内することができ、トーショナルダンパをホールディングするようにタービンと結合可能なため、流体トルクコンバータにトーショナルダンパをホールディングおよび案内するための専用部材を設ける必要がない。このような設計によって流体トルクコンバータの大きさ、特に軸方向の大きさを小さくし、必要な部品の数量を減少させて、流体トルクコンバータの製造費用を低減し、設置をより簡便にする。
【0014】
本開示の一実施例によれば、前記環状凹溝は、略長方形の断面形状を有し、半径方向内側に位置する内側壁と、半径方向外側に位置する外側壁と、前記内側壁と外側壁とを連結する底面とを含む。好ましくは、環状凹溝の外側壁は、ピストンディスクの半径方向外側周縁を構成する。つまり、環状凹溝は、ピストンディスクの半径方向の最外郭に位置する。環状凹溝の底面は、平らな底面であり、摩擦面は、前記底面の軸方向の反対面に設けられる。このような配置により、前記ピストンディスクに摩擦面を配置するための専用突出部を構成する必要がなくて、ピストンディスクの製造工程が省かれる。
【0015】
本開示の好ましい一実施例によれば、前記環状凹溝の外側壁の端部は、内側に向かうカーリング部を含む。前記内側に向かうカーリング部は、環状凹溝の開口を狭めることができる。例えば、環状凹溝の開口は、カーリング部を介してスプリングが入れられるように狭くなる。このような設計は、スプリングを装着できるだけでなく、タービンと共にスプリングが環状凹溝から離脱するのを防止しやすくする。
【0016】
選択的に、前記環状凹溝は、他の形状の横断面を有してもよい。例えば、前記環状凹溝の横断面は半円形であり、直径は前記スプリングの収容およびホールディングを容易にするようにトーショナルダンパのスプリングの直径よりやや大きい。このような構造において、摩擦面は、ピストンディスクの他の位置に設けられる。
【0017】
本開示の一実施例によれば、前記環状凹溝は、1つ以上のスプリング駆動部が設けられており、スプリング駆動部は、スプリングベース部を支持することによって、環状凹溝内に収容されたスプリングを駆動してトルクを伝達することができる。つまり、前記ピストンディスク自体がスプリングを駆動可能で、スプリングを駆動するための専用駆動ディスクまたはその他のトルク伝達部材を追加的に提供する必要がない。これは流体トルクコンバータの部品の数量を追加的に減少させることが可能で製造費用を減少させる。
【0018】
選択的に、前記スプリング駆動部は、環状凹溝の内側壁から半径方向外側に突出した内側ボスと、環状凹溝の外側壁から半径方向内側に突出した外側ボスとを含む。前記内側ボスと外側ボスは、半径方向で互いに対向する。つまり、内側ボスと外側ボスの円周方向の位置は同一である。したがって、前記内側ボスおよび外側ボスは、環状凹溝の狭い部分を限定し、前記狭い部分の幅は、スプリングの直径より小さい。スプリングベース部は、内側ボスおよび外側ボスの対応する側壁に密着することができる。好ましくは、前記内側ボスおよび外側ボスの対応する側壁は、流体トルクコンバータの回転軸線を通過する同一の半径方向平面に位置する。つまり、平面図において、前記内側ボスおよび外側ボスは、ピストンディスクの同一の円心角に対応する。これによって、内側ボスおよび外側ボスの対応する側壁に密着するスプリングベース部の底面も前記半径方向平面に位置するので、スプリングベース部が均一に力を受けられるようにして、トルク伝達の安定性を向上させるのに有利である。
【0019】
選択的に、前記スプリング駆動部は、環状凹溝の内側壁および/または外側壁から環状凹溝の内部に延びた突出板であってもよい。前記突出板の側壁は、スプリングのベース部を支持することによって、スプリングを駆動してトルクを伝達する。このような配置は、スプリング駆動部の設計を簡素化可能で、ピストンディスクの製造に必要な段階を省く。
【0020】
本開示の一実施例によれば、前記環状凹溝は、円周方向に均一に分布した3つのスプリング駆動部が設けられている。前記3つのスプリング駆動部は、環状凹溝を3つの凹溝区間に分けることができ、各凹溝区間は、1つのスプリングを収容できる。したがって、前記トーショナルダンパは、3つのスプリングを含む。前記環状凹溝は、2つのスプリング駆動部、4つのスプリング駆動部、5つのスプリング駆動部、または5つ以上の駆動部といった多様な数量のスプリング駆動部が設けられてもよいことが分かる。相応して、トーショナルダンパに含まれているスプリングの数量もこれによって異なる。
【0021】
本開示の一実施例によれば、前記タービンハウジングは、曲げ型本体を含み、前記曲げ型本体は、曲率を有し、軸方向でブレードと互いに対応し、前記曲げ型本体には、ピストンディスクがトーショナルダンパを介して伝達するトルクを受けるようにタービンハウジングと一体に形成された突起が設けられており、つまり、前記突起は、トルク伝達部の役割を果たすことができる。上述した設計により、タービンハウジング自体がトーショナルダンパを介して伝達されるトルクを受けることが可能で、専用駆動ディスクを提供する必要がなく、タービンハウジングに溶接またはその他の方式でトルク伝達素子を付着させる必要もない。このような設計は必要な部品の数量を減少させて、流体トルクコンバータの軸方向の大きさおよび半径方向の大きさを含む大きさを小さくすることによって、タービンハウジングの製造に消耗する材料を省いて、流体トルクコンバータの製造費用を減少させる。
【0022】
本開示の一実施例によれば、前記突起は、タービンハウジングの曲げ型本体のボスに形成される。前記ボスの半径方向の位置は、トーショナルダンパのスプリングの半径方向の位置に対応する。前記スプリングのベース部は、ボスに円周接線方向に沿った偏向力を加えてトルク伝達を実現するようにボスの側壁に密着することができる。好ましくは、前記ボスの側壁は、流体トルクコンバータの回転軸線を通過する半径方向平面に位置する。これによって、ボスの前記側壁に密着するスプリングベース部の底面も前記半径方向平面に位置するので、スプリングベース部が均一に力を受けられるようにして、トルク伝達の安定性を向上させるのに有利である。
【0023】
本開示の一実施例によれば、前記突起は、タービンハウジングの曲げ型本体のフック部に形成される。前記フック部の半径方向の位置は、トーショナルダンパのスプリングの半径方向の位置に対応する。前記スプリングのベース部は、フック部に円周接線方向に沿った偏向力を加えてトルク伝達を実現するようにフック部の側辺に密着することができる。好ましくは、前記フック部の側辺は、流体トルクコンバータの回転軸線を通過する半径方向平面に位置する。これによって、ボスの前記側辺に密着するスプリングベース部の底面も前記半径方向平面に位置するので、スプリングベース部が均一に力を受けられるようにして、トルク伝達の安定性を向上させるのに有利である。
【0024】
本開示の一実施例によれば、前記タービンは、円周方向に均一に分布した3つの突起が設けられている。具体的には、前記3つの突起のタービンハウジングの曲げ型本体における半径方向の位置は同一であり、トーショナルダンパのスプリングは、隣接した2つの突起の間に位置する。したがって、前記トーショナルダンパは、3つのスプリングを含む。前記タービンは、2つの突起、4つの突起、5つの突起、または5つ以上の突起といった多様な数量の突起を設けてもよいことが分かる。相応して、トーショナルダンパに含まれているスプリングの数量もこれによって異なる。
【0025】
本開示の一実施例によれば、前記ピストンディスクは、前記ピストンディスクと一体に形成された1つ以上の第1ストップ突起が設けられており、前記タービンハウジングは、前記タービンハウジングと一体に形成された1つ以上の第2ストップ突起が設けられており、第1ストップ突起と第2ストップ突起は、トーショナルダンパのスプリングの圧縮量を制限するように互いに結合可能である。具体的には、スプリングの圧縮量が所定の閾値に到達すれば、第1ストップ突起と第2ストップ突起が干渉して、タービンハウジングとピストンディスクとの間の円周方向に沿った相対的変位を制限して、スプリングが継続して圧縮できないようにする。第1ストップ突起と第2ストップ突起は同一の類型であるので、同一の工程で製造可能で、流体トルクコンバータの製造段階を簡素化する。同時に、第1ストップ突起および第2ストップ突起は、ピストンディスクおよびタービンハウジングにそれぞれ一体に設けられ、ストップ機構を設けるために、専用ホールディング素子およびトルク伝達素子を追加的に提供する必要がないので、流体トルクコンバータの軸方向の大きさを小さくして、他のトルク伝達部材の装着空間を拡大させる。
【0026】
本開示の一実施例によれば、前記第1ストップ突起は、ピストンディスクからタービンハウジングに向かって突出した第1ストップボスであり、前記第2ストップ突起は、タービンハウジングからピストンディスクに向かって突出した第2ストップボスである。前記第1ストップボスと第2ストップボスの半径方向の位置は互いに対応する。スプリングの圧縮量が所定の閾値に到達すれば、第1ストップボスと第2ストップボスの対向する側壁が互いに密着しかつ、トーショナルダンパのスプリングの圧縮量を制限する機能が実現される。好ましくは、前記第1ストップボスおよび第2ストップボスの側壁は、流体トルクコンバータの回転軸線を通過する半径方向平面に位置する。これによって、第1ストップボスおよび第2ストップボスの対向する側壁が緊密に密着しかつ、接触面積を増加させて、トルクが過度に大きい時、ストップボスに与えうる損傷を低減することができる。
【0027】
本開示の他の実施例によれば、前記ピストンディスクは、半径方向内側周縁からタービンに向かって延びた軸方向延長部を含み、前記第1ストップ突起は、軸方向延長部の端部から軸方向に延びた第1ストップ歯であり、前記第2ストップ突起は、タービンハウジングの半径方向内側周縁から半径方向に延びた第2ストップ歯である。スプリングの圧縮量が所定の閾値に到達すれば、第1ストップ歯と第2ストップ歯の対向する側壁が互いに密着しかつ、トーショナルダンパのスプリングの圧縮量を制限する機能が実現される。好ましくは、前記第1ストップ歯および第2ストップ歯の側壁は、流体トルクコンバータの回転軸線を通過する半径方向平面に位置する。これによって、第1ストップ歯と第2ストップ歯の対向する側壁が緊密に密着しかつ、接触面積を増加させて、トルクが過度に大きい時、ストップ歯に与えうる損傷を低減することができる。
【0028】
本開示の一実施例によれば、前記ピストンディスクは、円周方向に均一に分布した3つの第1ストップ突起が設けられており、前記タービンハウジングは、円周方向に均一に分布した3つの第2ストップ突起が設けられている。前記ピストンディスクは、多様な数量の第1ストップ突起が設けられてもよく、および/またはタービンハウジングは、多様な数量の第2ストップ突起が設けられてもよい。
【0029】
流体トルクコンバータは、ダンピング効果をさらに向上させるために、複数のトーショナルダンパを含んでもよい。例えば、半径方向外側に位置するトーショナルダンパは、第1トーショナルダンパであり、流体トルクコンバータは、半径方向内側に位置する第2トーショナルダンパをさらに含む。前記第2トーショナルダンパは、第1トーショナルダンパと類似の構造を有することができる。
【0030】
本開示の一実施例によれば、前記流体トルクコンバータのピストンディスクおよび/またはタービンハウジングは、パンチングにより製造される。具体的には、前記第1ストップボスおよび第2ストップボスは、ピストンディスクおよびタービンハウジングを軸方向にそれぞれパンチングして形成される。ピストンディスクおよびタービンハウジングはパンチング過程で突き抜かれず、使用されるパンチは、第1ストップボスおよび第2ストップボスに適した形状として選択される。前記第1ストップ歯は、ピストンディスクの軸方向延長部の一部の材料を半径方向にパンチングおよび除去して形成され、前記第2ストップ歯は、タービンハウジングの半径方向内側周縁の一部の材料を軸方向にパンチングおよび除去して形成される。パンチング後、ピストンディスクおよび/またはタービンハウジングの特定部分の厚さは相応して減少する。好ましくは、ピストンディスクおよび/またはタービンハウジングの強度を増加させるために、パンチング後、前記ピストンディスクおよび/またはタービンハウジングは、熱処理工程により強化される。
【0031】
本開示はまた、上述した流体トルクコンバータを含む自動車に関する。
【0032】
本発明の上述した特徴と長所およびその他の特徴と長所は、下記の図面と結合して詳細に説明される本発明の最も好ましい形態により明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本開示の一実施例による流体トルクコンバータの概略的な部分断面図である。
【
図2A】
図2A~
図2Cは、本開示の一実施例によるピストンディスクを示し、
図2Aは、タービンに向かったピストンディスクの一面を示し、
図2Bは、カバーに向かったピストンディスクの一面を示し、
図2Cは、ピストンディスクの環状凹溝部分の断面図を示した。
【
図2B】
図2A~
図2Cは、本開示の一実施例によるピストンディスクを示し、
図2Aは、タービンに向かったピストンディスクの一面を示し、
図2Bは、カバーに向かったピストンディスクの一面を示し、
図2Cは、ピストンディスクの環状凹溝部分の断面図を示した。
【
図2C】
図2A~
図2Cは、本開示の一実施例によるピストンディスクを示し、
図2Aは、タービンに向かったピストンディスクの一面を示し、
図2Bは、カバーに向かったピストンディスクの一面を示し、
図2Cは、ピストンディスクの環状凹溝部分の断面図を示した。
【
図4A】
図4Aおよび
図4Bは、本開示の2つの異なる実施例による流体トルクコンバータの部分断面図を示し、タービンハウジングに設けられて、ピストンディスクがトーショナルダンパを介して伝達するトルクを受けるための突起を詳しく示した。
【
図4B】
図4Aおよび
図4Bは、本開示の2つの異なる実施例による流体トルクコンバータの部分断面図を示し、タービンハウジングに設けられて、ピストンディスクがトーショナルダンパを介して伝達するトルクを受けるための突起を詳しく示した。
【
図5A】
図5Aおよび
図5Bは、本開示の一実施例による、第1ストップ突起が設けられたピストンディスクおよび第2ストップ突起が設けられたタービンハウジングをそれぞれ示した。
【
図5B】
図5Aおよび
図5Bは、本開示の一実施例による、第1ストップ突起が設けられたピストンディスクおよび第2ストップ突起が設けられたタービンハウジングをそれぞれ示した。
【
図6A】
図6Aおよび
図6Bは、組み立てられた構造状態であり、スプリングの圧縮量が所定の閾値に到達した流体トルクコンバータの部分断面図を示した。
【
図6B】
図6Aおよび
図6Bは、組み立てられた構造状態であり、スプリングの圧縮量が所定の閾値に到達した流体トルクコンバータの部分断面図を示した。
【
図7A】
図7A~
図7Cは、本開示の他の実施例による第1ストップ突起および第2ストップ突起を示した。
【
図7B】
図7A~
図7Cは、本開示の他の実施例による第1ストップ突起および第2ストップ突起を示した。
【
図7C】
図7A~
図7Cは、本開示の他の実施例による第1ストップ突起および第2ストップ突起を示した。
【
図8】
図8は、本開示の他の実施例による流体トルクコンバータの概略的な部分断面図を示した。 各図面において、同一または類似の部材は、同一の図面符号で表示される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の実施例の目的、技術方策および長所をより明確にするために、以下、本開示の実施例の図面を結合して本開示の実施例の技術方策を明確かつ、完全に説明する。
【0035】
他に定義されない限り、本文で使用される技術用語または科学用語は、本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者が理解する一般的な意味である。本開示の特許出願明細書および特許請求の範囲に使用された「1つ」、「一」または「前記」のような単語も、数量に対する制限を意味するのではなく、1つ以上存在することを意味する。「包括」または「包含」のような単語は、前記単語の前に出る構成要素または物品が前記単語の後ろに例示される構成要素または物品およびその等価物を含み、その他の構成要素または物品を排除しないことを意味する。「軸方向」、「半径方向」および「円周方向」などの方向は、流体トルクコンバータの回転軸線ROに対して定義され、軸方向は、すなわち回転軸線ROが延びた方向であり、半径方向は、回転軸線ROに垂直な方向であり、円周方向は、回転軸線ROを中心とする円周方向である。
【0036】
図1は、本開示の一実施例による流体トルクコンバータの概略的な部分断面図である。明確性のために、流体トルクコンバータの構造中、本開示の技術方策を理解するのに関連のない諸部材は省略した。
【0037】
図1に示されているように、前記流体トルクコンバータは、カバー1と、インペラ2と、タービン3と、ピストンディスク4と、タービンとピストンディスクとの間に配置されるトーショナルダンパ5と、固定子6とを含む。カバー1は、自動車のエンジン側の駆動部材によって回転駆動され、インペラ2は、例えば、溶接によってカバー1に回転可能に固定連結される。この方式により、トルクは、カバー1およびインペラ2を介して流体トルクコンバータに入力される。タービン3は、回転軸線ROを中心に回転するように駆動され、タービンハブ30を介してトルクを自動車の変速機の入力軸に伝達する。つまり、トルクは、タービン3およびタービンハブ30を介して流体トルクコンバータから出力される。
【0038】
自動車の多様な走行状況に応じて、カバー1およびインペラ2からタービン3へのトルク伝達は、流体式伝動モードと機械式伝動モードとの間で切り替え可能である。このような切り替えは、ピストンディスク4を軸方向に作動(例えば、油圧作動)させることによって実現される。
【0039】
具体的には、インペラ2、タービン3および固定子6は、環状チャネルを限定し、流体トルクコンバータの作動流体は、前記環状チャネル内で循環する。流体式伝動モードで、ピストンディスク4は、カバー1と接触しないように作動し、両者は互いに対して自由に回転することができる。この時、インペラ2が回転軸線ROを中心に回転しながら作動流体の流れを駆動して、タービン3を駆動する。つまり、流体式伝動モードで、流体トルクコンバータのトルク伝達経路は、トルク入力→カバー1→インペラ2→(作動流体)→タービン3→タービンハブ30→トルク出力である。
図1の実線は、流体式伝動モードにおけるトルク伝達経路を示す。
【0040】
機械式伝動モードで、ピストンディスク4は、摩擦面41がカバー1と密着するようにカバー1を向けて作動する。ピストンディスク4とカバー1との間の摩擦接触により、両者は一体に回転する。ピストンディスク4は、トーショナルダンパ5を介してタービン3にトルクを伝達する。つまり、機械式伝動モードで、流体トルクコンバータのトルク伝達経路は、トルク入力→カバー1→ピストンディスク4→(トーショナルダンパ5)→タービン3→タービンハブ30→トルク出力である。
図1の点線は、機械式伝動モードにおけるトルク伝達経路を示す。
【0041】
トルクを伝達し、トルク出力で伝達されるトルク変動を低減するために、トーショナルダンパ5は、螺旋状圧縮スプリングのような1つ以上のスプリング51を含む。ピストンディスク4は、スプリング51を圧縮し、前記スプリング51は、タービン3に弾性力をさらに加えることによって、ピストンディスク4からタービン3へのトルク伝達を実現する。
図2A~
図2Cおよび
図4A~
図4Bに示されているように、スプリング51は、ピストンディスク4およびタービン3によってピストンディスク4の環状凹溝42内にホールディングされ、スプリング51の圧縮および復帰は前記環状凹溝42によって案内される。ピストンディスク4がスプリング51を圧縮すれば、前記スプリング51は、タービン3のタービンハウジング31に設けられた突起33に弾性力をさらに加えることによって、ピストンディスク4からタービン3へのトルク伝達を実現する。特に、前記突起33は、タービンハウジング31の曲げ型本体31Aに設けられる。
【0042】
図2Aは、タービン3に向かったピストンディスク4の一面を示し、
図2Bは、カバー1に向かったピストンディスク4の一面を示し、
図2Cは、ピストンディスク4の部分断面図を示した。周知のように、環状凹溝42は、タービン3からカバー1に向かって陥没する。前記環状凹溝42は、略長方形の断面形状を有し、半径方向内側に位置する内側壁42aと、半径方向外側に位置する外側壁42bと、内側壁42aと外側壁42bとを連結する底面42cとを含む。環状凹溝42の幅はスプリング51の直径より若干より大きいので、スプリング51を収容するのに適する。環状凹溝42はピストンディスク4の半径方向の最外郭に位置するので、環状凹溝42の外側壁42bは、ピストンディスク4の半径方向外側周縁を構成する。環状凹溝42の底面42cは、平らであり、軸方向でピストンディスク4のカバー1に最も近い部分を構成する。摩擦面41は、前記底面42cの軸方向の反対面に設けられる。このような配置により、ピストンディスク4がカバー1を向けて作動すれば、摩擦面41は、先にカバー1と密着して、ピストンディスク4とカバー1を回転ロックする。また、環状凹溝42をピストンディスク4の半径方向の最外郭に位置させると、摩擦面41もピストンディスク4の半径方向の最外郭に位置して、ピストンディスク4とカバー1との間のトルク伝達を容易にする。このような設計により、ピストンディスク4に摩擦面41を配置するための突出部を構成する必要がなくて、ピストンディスク4の製造工程が省かれる。
【0043】
図2Cに示されているように、前記環状凹溝42の外側壁42bの端部は、内側に向かうカーリング部43を含む。つまり、外側壁42bから内側壁42aに向かって巻かれる。したがって、前記内側に向かうカーリング部43は、環状凹溝42の開口を狭めることができる。例えば、環状凹溝42の開口は、カーリング部43を介してスプリングが入れられるように狭くなる。このような設計は、スプリングの装着を容易にするだけでなく、タービン3と共にスプリングが環状凹溝42から離脱するのを防止することができる。
【0044】
図示しないが、当業者は、前記環状凹溝42は他の形状の横断面を有してもよいことが分かる。例えば、前記環状凹溝42の横断面は半円形であってもよく、直径は前記スプリング51の収容およびホールディングを容易にするようにトーショナルダンパ5のスプリング51の直径よりやや大きい。
【0045】
図2Aに示されているように、環状凹溝42は、3つのスプリング駆動部44がさらに設けられており、環状凹溝42を3つの区間に分けて、各区間には1つのスプリング51が配置される。図示しないが、多様な数量のスプリング駆動部も構想できる。スプリング駆動部44は、環状凹溝42の狭い部分を限定し、前記狭い部分の幅は、スプリング51の直径より小さい。したがって、スプリング駆動部44は、スプリング51のベース部を支持することによって、スプリング51を駆動して、トルクを伝達することができる。この方式により、前記ピストンディスク4自体がスプリング51を駆動可能で、スプリングを駆動するための専用駆動ディスクまたはその他のトルク伝達部材を追加的に提供する必要がない。
【0046】
図3Aは、1つのスプリング駆動部44を詳しく示した。図示の実施例において、スプリング駆動部44は、環状凹溝42の内側壁42aから半径方向外側に突出した内側ボス44aと、環状凹溝42の外側壁42bから半径方向内側に突出した外側ボス44bとを含む。前記内側ボス44aと外側ボス44bは、半径方向で互いに対向する。同一のスプリング駆動部44の内側ボス44aおよび外側ボス44bの角度および位置は同一である。
【0047】
内側ボス44aおよび外側ボス44bは、異なる円周長さを有することができる。
図3Bに示されているように、前記内側ボス44aおよび外側ボス44bは、ピストンディスク4の同一の円心角に対応する。この方式により、内側ボス44aおよび外側ボス44bの対応する側壁は、流体トルクコンバータの回転軸線ROを通過する同一の半径方向平面に位置する。これによって、内側ボス44aおよび外側ボス44bの対応する側壁に密着するスプリングベース部も、前記半径方向平面に位置する。この方式により、スプリングベース部は均一に力を受けることが可能で、トルク伝達の安定性を向上させるのに有利である。
【0048】
図示しないが、当業者は、スプリング駆動部44は他の形態を有してもよいことが分かる。例えば、環状凹溝42の内側壁および/または外側壁の一部は、環状凹溝の内部に延びた突出板を形成し、環状凹溝42の対応する側壁に開口または開孔を残す。前記突出板は、スプリング駆動部を形成することができる。
【0049】
図4Aおよび
図4Bは、タービンハウジング31に設けられて、ピストンディスク4がトーショナルダンパ5を介して伝達するトルクを受けるための突起33を詳しく示した。
【0050】
図4Aに示された実施例において、前記突起33は、タービンハウジング31の曲げ型本体31Aからピストンディスク4に突出したボス33Aの形態を有する。曲げ型本体31Aは、タービンハウジング31の軸方向でブレード32に対向する曲率のある部分を意味する。前記ボス33Aの半径方向の位置は、トーショナルダンパ5のスプリング51の半径方向の位置に対応する。スプリング51のベース部は、ボス33Aの側壁に密着して、円周接線方向に沿ってボス33Aに偏向力を加えることができる。ボス33Aの側壁は、流体トルクコンバータの回転軸線ROを通過する半径方向平面に位置する。これによって、ボス33Aの側壁に密着するスプリングベース部の底面も、前記半径方向平面に位置する。この方式により、スプリングベース部は均一に力を受けることが可能で、トルク伝達の安定性を向上させるのに有利である。
【0051】
図4Bに示された実施例において、前記突起33は、タービンハウジング31の曲げ型本体31Aからピストンディスク4に向かって突出したフック部33Bの形態を有する。前記フック部33Bの半径方向の位置は、トーショナルダンパ5のスプリング51の半径方向の位置に対応する。スプリング51のベース部は、フック部33Bの側辺に密着して、円周接線方向に沿ってフック部33Bに偏向力を加えることができる。ボス33Aと類似に、フック部33Bの側辺も流体トルクコンバータの回転軸線ROを通過する半径方向平面に位置するので、スプリングベース部の底面も前記半径方向平面に位置して、トルク伝達の安定性を向上させる。
【0052】
図5Bは、タービンハウジング31上の突起33の配置を全体的に示す。図示のように、スプリング51に対応する半径方向の位置で、タービンハウジング31は、円周方向に均一に分布した3つの突起33が配置されている。流体トルクコンバータの組み立てられた構造において、トーショナルダンパ5のスプリングは、隣接した2つの突起33の間に位置する。したがって、前記トーショナルダンパ5は、3つのスプリングを含む。図示しないが、当業者は、前記タービン3は2つの突起、4つの突起、5つの突起、または5つ以上の突起といった多様な数量の突起33を含んでもよいことが分かる。相応して、トーショナルダンパ5に含まれているスプリングの数量も異なる。
【0053】
トーショナルダンパの寿命を延ばすためには、スプリング51の圧縮量が所定の閾値を超えてはならない。このために、ピストンディスク4およびタービンハウジング31には第1ストップ突起8および第2ストップ突起9がそれぞれ設けられている。スプリング51の圧縮量が所定の閾値に到達すれば、第1ストップ突起8と第2ストップ突起9とが互いに密着しかつ、タービンハウジング31とピストンディスク4との間の円周方向に沿った相対的変位を制限して、スプリング51が継続して圧縮できないようにする。
【0054】
図5Aおよび
図5Bは、本開示の第1実施例による、第1ストップ突起8が設けられたピストンディスク4および第2ストップ突起9が設けられたタービンハウジング31をそれぞれ示す。図示の実施例において、前記第1ストップ突起8は、ピストンディスク4から突出したボスの形態を有し、前記第1ストップ突起は、すなわち第1ストップボス81である。類似に、前記第2ストップ突起9は、タービンハウジング31から突出したボスの形態を有し、前記第2ストップ突起は、すなわち第2ストップボス91である。ピストンディスク4は、円周方向に均一に分布した3つの第1ストップボス81が設けられており、タービンハウジング31は、円周方向に均一に分布した3つの第2ストップボス91が設けられている。ピストンディスク4およびタービンハウジング31もそれぞれ多様な数量の第1ストップボス81および第2ストップボス91を有してもよいことが分かる。
【0055】
図6Aおよび
図6Bは、組み立てられた構造状態であり、スプリング51の圧縮量が所定の閾値に到達した流体トルクコンバータの部分断面図を示した。図示のように、第1ストップボス81および第2ストップボス91の半径方向の位置は互いに対応し、対向する側壁は互いに密着して、スプリング51がそれ以上圧縮できないようにする。
図6Bの拡大図において、第1ストップボス81および第2ストップボス91の側壁は、流体トルクコンバータの中心軸線を通過する半径方向平面に位置する。この方式により、両者の対向する側壁は緊密に密着しかつ、接触面積を増加させて、トルクが過度に大きい時、ストップボスに与えうる損傷を低減することができる。
【0056】
図7A~
図7Cは、本開示の第2実施例によるストップ歯形態を有する第1ストップ突起8および第2ストップ突起9を示す。前記第2実施例において、
図7Aに示されているように、ピストンディスク4は、半径方向内側周縁からタービン3に向かって延びた軸方向延長部42を含む。前記軸方向延長部42の端部には、軸方向に延びた突起、つまり、第1ストップ突起8としての第1ストップ歯82が設けられる。軸方向延長部42に対応して、
図7Bに示されているように、タービンハウジング31は、半径方向内側周縁から半径方向内側に延びた突起、つまり、第2ストップ突起9としての第2ストップ歯92が設けられる。ピストンディスク4は、軸方向延長部42に円周方向に均一に分布した3つの第1ストップ歯82が設けられており、タービンハウジング31は、円周方向に均一に分布した3つの第2ストップ歯92が設けられている。当業者は、ピストンディスク4およびタービンハウジング31は多様な数量の第1ストップ歯82および第2ストップ歯92をそれぞれ備えてもよいことが分かる。
図7Cは、タービンハウジング3およびピストンディスク4の組み立てられた構造を示す。図示のように、第1ストップ歯82は、隣接した第2ストップ歯92の間隔内に軸方向に延びる。スプリング51の圧縮量が所定の閾値に到達すれば、第1ストップ歯82の側壁は第2ストップ歯92の側壁に密着しかつ、スプリング51がそれ以上圧縮できないようにする。
図5A~
図5Bに示された実施例と類似に、第1ストップ歯82および第2ストップ歯92の側壁も流体トルクコンバータの中心軸線を通過する半径方向平面に位置して、接触面積を増加させて、トルクが過度に大きい時、ストップ歯に与えうる損傷を低減する。
【0057】
図示しないが、流体トルクコンバータは、本開示の第1実施例および第2実施例によるストップ突起が同時に設けられてもよいことが分かる。つまり、ピストンディスク4およびタービンハウジング3は、半径方向の中間位置に第1ストップボス81および第2ストップボス91がそれぞれ設けられており、半径方向の内部位置には第1ストップ歯82および第2ストップ歯92がそれぞれ設けられている。
【0058】
図5A~
図7Cに示されたストップ機構に含まれている2つのストップ部材は、第1ストップボス81および第2ストップボス91、または第1ストップ歯82および第2ストップ歯92のように同一の類型である。この方式により、当該2つのストップ部材は同一の工程で製造可能で、流体トルクコンバータの製造段階を簡素化する。
【0059】
図8は、ダンピング効果をさらに向上させるために、2つのトーショナルダンパを含む流体トルクコンバータを示す。上述したトーショナルダンパ5は、半径方向外側に位置し、第1トーショナルダンパである。第2トーショナルダンパ7は、半径方向内側に位置し、第1トーショナルダンパと類似の構造を有する。ピストンディスク4は、半径方向内側に第2トーショナルダンパ7のための別途の環状凹溝が配置されており、タービンハウジング3は、半径方向内側に第2トーショナルダンパ7のための別途の突起が配置されている。上述した第1ストップ突起8および第2ストップ突起9と同様に、第2トーショナルダンパ7のスプリング圧縮が所定の閾値を超えるのを防止することができる。上述した流体トルクコンバータが有する1つの特別なメリットは、ピストンディスク4および/またはタービンハウジング31はパンチングにより製造できるという点である。ピストンディスク4の本体を製造した後、ピストンディスク4の環状凹溝42は、ピストンディスク4をパンチングして形成され、スプリング駆動部44は、環状凹溝42の側壁をパンチングして形成される。特に、環状凹溝の側壁を突き抜けない場合、ボス形態のスプリング駆動部44を形成することができ、側壁を突き抜ける場合、突出板形態のスプリング駆動部44を形成することができる。類似に、タービンハウジング31を形成した後、突起33は、曲げ型本体31Aを軸方向にパンチングすることにより形成される。具体的には、タービンハウジング31の曲げ型本体31Aを突き抜けない場合、ボス形態の突起33を形成することができ、前記曲げ型本体31Aを突き抜ける場合、フック部形態の突起33を形成することができる。また、第1ストップボス81および第2ストップボス91は、軸方向にパンチングすることによりピストンディスク4およびタービンハウジング31に製造されてもよい。使用されるパンチは、第1ストップボス81および第2ストップボス91を形成するのに適した形状として選択可能である。第1ストップ歯82は、ピストンディスク4の軸方向延長部42の一部の材料を半径方向にパンチングおよび除去して形成され、第2ストップ歯92は、タービンハウジング31の半径方向内側周縁の一部の材料を軸方向にパンチングおよび除去して形成される。この方式により、ピストンディスク4とタービンハウジング31の本体およびこれらに具備された多様な構造はすべてパンチングにより製造可能で、その他の工程を必要とせず、専用トーショナルダンパのホールディング素子、トルク伝達素子およびストップ機構も用意する必要がない。また、突起33はタービンハウジングの曲げ型本体に位置して、外側周縁からタービンハウジングの曲げ型本体を外れないので、タービンハウジングの製造に消耗する材料を省くこともできる。タービンハウジング31上の特定部分の材料の厚さは、パンチングにより相応して減少する。パンチング後、ピストンディスク4および/またはタービンハウジング31上の特定部分の厚さは相応して減少する。好ましくは、ピストンディスク4および/またはタービンハウジング31の強度を増加させるために、前記ピストンディスク4および/またはタービンハウジング31は、パンチング後、熱処理工程により強化される。
【0060】
上述した説明および図面に示された構造は本開示の例示に過ぎず、所望の最終結果を得るための同一または類似の機能を行う他の構造に代替できることを理解しなければならない。また、上述した説明および図面に示された実施例は本開示の非制限的な例として見なされなければならず、特許請求の範囲内で多様な方式で変形できることを理解しなければならない。
【国際調査報告】