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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】スカンジウム濃縮物の精製
(51)【国際特許分類】
   C22B 3/24 20060101AFI20221221BHJP
   B01D 15/04 20060101ALI20221221BHJP
   B01J 39/05 20170101ALI20221221BHJP
   B01J 47/014 20170101ALI20221221BHJP
   B01J 47/10 20170101ALI20221221BHJP
   B01J 49/53 20170101ALI20221221BHJP
   C22B 59/00 20060101ALI20221221BHJP
   C22B 3/06 20060101ALI20221221BHJP
   C01F 17/212 20200101ALI20221221BHJP
【FI】
C22B3/24 101
B01D15/04
B01J39/05
B01J47/014
B01J47/10
B01J49/53
C22B59/00
C22B3/06
C01F17/212
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022524924
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 CA2020051432
(87)【国際公開番号】W WO2021081629
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】62/926,708
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520432853
【氏名又は名称】リオ・ティント・アイアン・アンド・チタニウム・カナダ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】パカン,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,シモン
【テーマコード(参考)】
4D017
4G076
4K001
【Fターム(参考)】
4D017AA13
4D017BA11
4D017BA13
4D017CA17
4D017CB01
4D017DA07
4D017DB10
4D017EA03
4G076AA02
4G076AB06
4G076AB09
4G076AB26
4G076BA13
4G076BA38
4G076BC02
4G076BC07
4G076BD02
4G076BE03
4G076BE04
4G076BE08
4G076CA36
4G076CA37
4K001AA39
4K001BA04
4K001DB02
4K001DB04
4K001DB36
(57)【要約】
酸化スカンジウム製品の汚染を低減する目的で、本開示は、スカンジウム(Sc)濃縮物から少なくとも1つの金属汚染物質を除去するための方法を提供する。方法は、Sc濃縮物をイオン交換樹脂と接触させて、精製Sc溶出液又はラフィネートを得ることに基づく。第一のイオン交換樹脂及び第二のイオン交換樹脂は、カリウム又はナトリウム型のスルホン酸官能基を有する強酸性カチオン樹脂である。精製Sc溶出液又はラフィネートを用いて、金属イオン汚染物質の量が低減された酸化スカンジウム製品を製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカンジウム(Sc)濃縮物から少なくとも1つの金属汚染物質を除去するための方法であって、
a)前記Sc濃縮物を酸性溶液と接触させて、未精製Sc溶液を生成することと、
b)前記未精製Sc溶液を、前記少なくとも1つの金属汚染物質を捕捉するものである、Scに対するよりも前記少なくとも1つの金属汚染物質に対して高い親和性を有する第一のイオン交換樹脂と接触させて、第一のイオン交換樹脂複合体及び精製Scラフィネート溶液を生成すること、並びに所望に応じて、第一の溶離液で前記第一のイオン交換樹脂複合体からScを溶出して第一のSc溶出液を得ること、及び前記第一のSc溶出液を前記第一のScラフィネートと組み合わせること、又は
前記未精製Sc溶液を、前記少なくとも1つの金属汚染物質及びScを捕捉するものである第二のイオン交換樹脂と接触させて、第二のイオン交換樹脂複合体を生成すること、及び第二の溶離液で前記第二のイオン交換樹脂複合体からScを溶出して、精製Sc溶出液を生成することと、
を含み、
前記精製Sc溶出液又は前記精製Scラフィネート中の前記少なくとも1つの金属汚染物質の濃度は、前記未精製Sc溶液中の前記少なくとも1つの金属汚染物質の濃度よりも低く、及び
前記第一のイオン交換樹脂及び前記第二のイオン交換樹脂は、カリウム型又はナトリウム型のスルホン酸官能基を有する強酸性カチオン樹脂である、
方法。
【請求項2】
前記Sc濃縮物が、乾燥固体形態である、又は水性固体懸濁液の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スルホン酸官能基が、前記ナトリウム型である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの金属汚染物質が、少なくとも3の酸化数を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの金属汚染物質が、トリウム(Th)又はジルコニウム(Zr)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの金属汚染物質が、Thである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記未精製Sc溶液が、約1.5乃至約3.5のpHを有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記未精製Sc溶液が、約3.0乃至約3.5のpHを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酸性溶液が、HCl溶液である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第一の溶離液で前記第一のイオン交換樹脂複合体からScを溶出して前記第一のSc溶出液を得ること、及び前記第一のSc溶出液を前記第一のScラフィネートと組み合わせること、を含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第二の溶離液又は前記第二の溶離液が、HCl溶液である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第二のイオン交換樹脂が、ゲルである、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第一のイオン交換樹脂が、マクロ多孔質樹脂である、請求項1乃至9又は11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第一のイオン交換樹脂複合体又は前記第二のイオン交換樹脂複合体から、前記少なくとも1つの金属汚染物質を溶出することをさらに含む、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第一のイオン交換樹脂又は前記第二のイオン交換樹脂を、前記ナトリウム型又は前記カリウム型に再生することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1乃至9、11、12、14、及び15のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる又は得られる精製スカンジウム(Sc)溶出液。
【請求項17】
請求項1乃至11、及び13乃至15のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる又は得られる精製スカンジウム(Sc)ラフィネート。
【請求項18】
純化した酸化スカンジウム(Sc)製品の製造方法であって、
(i)請求項16に記載の精製Sc溶出液又は請求項17に記載の精製Scラフィネートをシュウ酸で析出させて、固体画分及び液体画分を有する析出スラリーを得ることと、
(ii)前記析出スラリーの前記液体画分から前記析出スラリーの前記固体画分を分離して、分離固体画分を得ることと、
(iii)前記分離固体画分をか焼して、前記純化した酸化Sc製品を得ることと、
を含み、
前記純化した酸化Sc製品の少なくとも1つの金属汚染物質濃度は、500ppm未満である、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法によって得ることができる又は得られる純化した酸化スカンジウム(Sc)製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月28日に出願された、全内容が本明細書に援用される米国特許仮出願第62/926,708号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、イオン交換樹脂を用いた、スカンジウム濃縮物中の汚染を低減するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
酸化スカンジウム(Sc)製品は、いくつかの実施形態では放射性であり得る金属汚染物で汚染されている可能性がある。汚染、特に放射性金属汚染物質による汚染は、酸化Sc製品の輸送を制限してその市場価値を低下させ得ることから、問題である。
【0004】
金属汚染物質のレベルが500ppm(又は500ppm未満)である酸化Sc製品を製造するために、Sc濃縮物中の金属汚染物質の汚染を低減するための方法が用意されていることが強く望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、スカンジウム濃縮物中の汚染を低減するための、強酸性カチオン樹脂(スルホン酸イオン交換樹脂など)の使用に関する。
第一の態様では、本開示は、スカンジウム(Sc)濃縮物から少なくとも1つの金属汚染物質を除去するための方法を提供する。方法は、Sc濃縮物を酸性溶液と接触させて、未精製Sc溶液を生成することを含む。方法の1つの実施形態では、方法は、未精製Sc溶液を、少なくとも1つの金属汚染物質を捕捉するものである、Scに対するよりも少なくとも1つの金属汚染物質に対して高い親和性を有する第一のイオン交換樹脂と接触させて、第一のイオン交換樹脂複合体及び精製Scラフィネート溶液を生成すること、並びに所望に応じて、第一の溶離液で第一のイオン交換樹脂複合体からScを溶出して第一のSc溶出液を得ること、及び第一のSc溶出液を第一のScラフィネートと組み合わせること、を含む。方法の別の実施形態では、方法はまた、未精製Sc溶液を、少なくとも1つの金属汚染物質及びScを捕捉するものである第二のイオン交換樹脂と接触させて、第二のイオン交換樹脂複合体を生成すること;及び第二の溶離液で第二のイオン交換樹脂複合体からScを溶出して、精製Sc溶出液を生成することも含む。本開示の方法において、精製Sc溶出液又は精製Scラフィネート中の少なくとも1つの金属汚染物質の濃度は、未精製Sc溶液中の少なくとも1つの金属汚染物質の濃度よりも低い。さらに、本開示の方法において、第一のイオン交換樹脂及び第二のイオン交換樹脂は、カリウム又はナトリウム型のスルホン酸官能基を有する強酸性カチオン樹脂である。一実施形態では、Sc濃縮物は、乾燥固体形態である、又は水性固体懸濁液若しくはスラリー形態である。なお別の実施形態では、スルホン酸官能基は、ナトリウム型である。なおさらなる実施形態では、少なくとも1つの金属汚染物質は、少なくとも3の酸化数を有する。なおさらなる実施形態では、少なくとも1つの金属汚染物質は、トリウム(Th)又はジルコニウム(Zr)である。具体的な実施形態では、少なくとも1つの金属汚染物質は、Thである。なお別の実施形態では、未精製Sc溶液は、約1.5~約3.5のpHを有し、例えば約3.0~約3.5のpHなどである。なお別の実施形態では、酸性溶液は、HCl溶液である。さらなる実施形態では、方法は、第一の溶離液で第一のイオン交換樹脂複合体からScを溶出して第一のSc溶出液を得ること、及び第一のSc溶出液を精製Scラフィネートと組み合わせること、を含む。なお別の実施形態では、第二の溶離液又は第二の溶離液は、HCl溶液である。なお別の実施形態では、第二のイオン交換樹脂は、ゲルである。なお別の実施形態では、第一のイオン交換樹脂は、マクロ多孔質樹脂である。一実施形態では、方法はさらに、第一のイオン交換樹脂複合体又は第二のイオン交換樹脂複合体から、少なくとも1つの金属汚染物質を溶出することを含む。別の実施形態では、方法はさらに、第一のイオン交換樹脂又は第二のイオン交換樹脂を、ナトリウム型又はカリウム型に再生することを含む。
【0006】
第二の態様によると、本開示は、本明細書で述べる方法によって得ることができる又は得られる精製スカンジウム(Sc)溶出液を提供する。
第三の態様によると、本開示は、本明細書で述べる方法によって得ることができる又は得られる精製スカンジウム(Sc)ラフィネートを提供する。
【0007】
第四の態様によると、本開示は、純化した酸化スカンジウム(Sc)製品の製造方法を提供する。この方法は、本明細書で述べる精製Sc溶出液又は本明細書で述べる精製Scラフィネートをシュウ酸で析出させ、固体画分及び液体画分を有する析出スラリーを得ることを含む。方法はまた、析出スラリーの液体画分から析出スラリーの固体画分を分離して、分離固体画分を得ることを含む。方法はさらに、分離固体画分をか焼して、純化した酸化Sc製品を得ることを含む。得られた純化した酸化Sc製品の少なくとも1つの金属汚染物質濃度は、500ppm未満である。
【0008】
第五の態様によると、本開示は、本明細書で述べる方法によって得ることができる又は得られる純化した酸化スカンジウム(Sc)製品を提供する。純化した酸化Sc製品の少なくとも1つの金属汚染物質濃度は、500ppm未満である。
【0009】
本発明の性質について全般的に記載してきたが、その好ましい実施形態を実例として示す添付の図面を以降で参照する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本明細書で述べるスカンジウム(Sc)濃縮物から金属汚染物質を除去する方法の1つの実施形態に従う、第一のイオン交換法のプロセスフロー図である。
図2図2は、本明細書で述べるスカンジウム(Sc)濃縮物から金属汚染物質を除去する方法の別の実施形態に従う、第二のイオン交換法のプロセスフロー図である。
図3図3は、ゲルタイプ樹脂上における、スカンジウム(各条件における左の棒グラフ)及びトリウム(各条件における右の棒グラフ)の保持パーセントを、処理サイクル数の関数として示す。保持パーセントは、各棒グラフの上に数値として記載してある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、スカンジウム濃縮物中の汚染金属元素の存在を低減するための方法に関する。本開示の文脈で用いられる場合、「スカンジウム濃縮物」の表現は、アモルファス(例:水性固体懸濁液又はスラリー)又は結晶(例:乾燥固体形態)の炭酸-炭酸水素-水酸化スカンジウム析出物を意味する。この析出物は、二酸化チタン(TiO)供給原料アップグレーディングプラント(UGSプロセスなど)、TiO顔料製造(硫酸法又は塩素法)、アルミナ(Al)製造(バイヤー法)、ニッケル鉱石処理、ジルコニウム供給原料処理、ウラン鉱石処理、タングステン鉱石処理などからの液体排出物及び固体残渣などのスカンジウム含有供給材料の処理から得ることができる。「スカンジウム濃縮物」の表現はまた、著しい量のトリウム、ジルコニウムなどの不純物を含有する酸化スカンジウム又は他のいずれかのスカンジウム含有固体化合物も意味する。
【0012】
いくつかの実施形態では、スカンジウム濃縮物は、炭酸スカンジウム溶液を、最初のpH約11.0から最終的なpH6.5まで、例えばHClなどの強酸を添加して中和することによって得ることができる。スカンジウム濃縮物は、脱イオン水でリパルプ及び洗浄されてよく、所望に応じてろ過によって回収されてもよい。スカンジウム濃縮物を得るためのプロセスの実施形態は、その全内容が本明細書に援用される国際公開第2019/213753号に記載されている。
【0013】
方法の第一の工程では、Sc濃縮物が、例えばHClなどの強酸で処理されて、約1.5~3.5(いくつかの実施形態では、約3.0~約3.5、又は約3.0)のpHを有する溶液(本明細書において、未精製Sc溶液と称される)が得られる。一実施形態では、未精製Sc溶液は、少なくとも約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、又は3.4のpHを有する。別の実施形態では、未精製Sc溶液は、約3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、3.0、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2.0、1.9、1.8、1.7、又は1.6以下のpHを有する。さらなる実施形態では、未精製Sc溶液は、約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、又は3.4から、約3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、3.0、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2.0、1.9、1.8、1.7、又は1.6までのpHを有する。一実施形態では、未精製Sc溶液は、少なくとも約3.0、3.1、3.2、3.3、又は3.4のpHを有する。別の実施形態では、未精製Sc溶液は、約3.5、3.4、3.3、3.2、又は3.1の以下のpHを有する。さらなる実施形態では、未精製Sc溶液は、約3.0、3.1、3.2、3.3、又は3.4から、約3.5、3.4、3.3、3.2、又は3.1までのpHを有する。なお別の実施形態では、未精製Sc溶液は、約3.0のpHを有する。一実施形態では、未精製Sc溶液は、約1~20g/LのSc濃度を、いくつかの実施形態では、約1~10g/L、2~6g/L、又は4~5g/LのSc濃度を有する。
【0014】
本開示の方法は、未精製Sc溶液を処理することによって、少なくとも部分的に、Sc濃縮物から金属汚染物質の一部を除去するように設計されている。本開示の方法によって未精製Sc溶液から除去することができる金属汚染物質は、少なくとも3の酸化数(未精製Sc溶液中で)を有する。例えば、それらとしては、限定されるものではないが、トリウム(Th)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、及びジルコニウム(Zr)が挙げられ得る。具体的な実施形態では、本開示の方法によって未精製Sc溶液から除去することができる金属汚染物質は、トリウム(Th)及びジルコニウム(Zr)を含み得る(いくつかの実施形態では、これらに限定され得る)。具体的な実施形態では、本開示の方法によって未精製Sc溶液から除去することができる金属汚染物質は、トリウム(Th)を含み得る(いくつかの実施形態では、これに限定され得る)。いくつかの実施形態では、Sc未精製溶液中の各金属汚染物質の濃度は、約10~500mg/Lである。一実施形態では、Sc未精製溶液中の各金属汚染物質の濃度は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450mg/mL、又はそれ以上である。別の実施形態では、Sc未精製溶液中の各金属汚染物質の濃度は、500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20mg/L以下、又はそれ未満である。別の実施形態では、Sc未精製溶液中の各金属汚染物質の濃度は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450mg/mLから、約500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20mg/Lまでである。
【0015】
未精製Sc溶液が得られると、それは、イオン交換樹脂と接触される。「イオン交換樹脂」は、目的の金属イオンに対する親和性を有する樹脂として理解される。本開示の方法に用いることができるイオン交換樹脂は、いわゆる「クロマトグラフィ用サイズ」(例:約200~400μmの平均径)の粒子、又は「標準サイズ」(例:約300~1200μmの平均径)の粒子で作製され得る。イオン交換樹脂の粒子は、方法に供される前に架橋されてもよい。
【0016】
本開示の方法に用いられるイオン交換樹脂は、スルホン酸カチオン樹脂などの強酸性カチオン樹脂である。本開示の文脈において、そのようなイオン交換樹脂は、金属イオン汚染物質を、及びいくつかの実施形態ではScも捕捉することができるスルホン酸部分を含む。本技術分野において公知であるように、強カチオン樹脂は、pHの変化によるイオン交換容量(例:電荷)の変動を、ほどんと又はまったく示さない。いくつかの実施形態では、強カチオン交換樹脂は、2~14を例とする1~14のpH範囲にわたって、ほどんと又はまったく変動を示さない。これは、限定されたpH範囲(例えば2~9)でしかイオン化されない弱カチオン交換樹脂とは対照的である。
【0017】
本開示の方法に用いられるイオン交換樹脂は、カリウム型又はナトリウム型である。本技術分野において公知であるように、イオン交換樹脂の「型」とは、方法の前にスルホン酸官能基上に吸収されている対イオンを意味する。本開示において、イオン交換樹脂は、カリウム又はナトリウム対イオンを含むことが好ましい。具体的な実施形態では、本開示のイオン交換樹脂は、ナトリウム対イオンを含む(例:ナトリウム型の樹脂中に)。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態では、ゲルの形態のイオン交換樹脂を用いることが可能である。ゲル樹脂は、一般に、小細孔(例:水和時に約1~2nm)を有する。本開示の文脈で用いることができるゲルイオン交換樹脂の実施形態としては、限定されるものではないが、Purolite PCR642(商標)又はSSTC60(商標)、Diaion UBK(8)(商標)が挙げられる。
【0019】
本開示の他の実施形態では、マクロ多孔質の形態のイオン交換樹脂を用いることが可能である。マクロ多孔質樹脂は、一般に、大細孔(例:水和時に約20~100nm)を有する。本開示の文脈で用いることができるマクロ多孔質イオン交換樹脂の実施形態としては、限定されるものではないが、Purolite C150(商標)又はPCR145K(商標)が挙げられる。
【0020】
本開示の方法において、2つの異なる種類のイオン交換樹脂が用いられてもよい。第一の実施形態では、方法は、金属汚染物質を優先的に捕捉するが、Scは捕捉しない(少なくとも実質的には捕捉しない)第一のイオン交換樹脂を用いる。この第一の実施形態では、金属汚染物質は、第一のイオン交換樹脂と複合体を形成する(例:吸着樹脂、又は第二のイオン交換樹脂複合体)。さらに、第一のイオン交換樹脂が用いられる場合、Scラフィネートが得られる。この第一の態様では、一部のScが樹脂に捕捉され得ることから、第一のイオン交換樹脂複合体(例:吸着樹脂)からScを溶出して、所望に応じてScラフィネートと組み合わされ得る第一のSc溶出液を得ることが可能である。第一のイオン交換樹脂を用いる方法の第一の態様では、マクロ多孔質樹脂が用いられ得る。
【0021】
第二の実施形態では、方法は、未精製Sc溶液中に存在する金属汚染物質及びScの両方を捕捉し、これらと複合体形成することができる第二のイオン交換樹脂を用いる。第二のイオン交換樹脂が用いられる場合、捕捉されたScを樹脂から溶出して第二のSc溶出液を得ることが必要である。溶出工程は、例えば、第二のイオン交換樹脂複合体(例:吸着樹脂)を第二の溶離液と接触させることによって行われ得る。当業者であれば、第二のSc溶出液を得るのに適する溶離液の選択方法を知っているであろう。一実施形態では、溶離液は、強酸溶離液であり、例えば、HCl溶液(例えば、1NのHCl溶液、2NのHCl溶液、又は3NのHCl溶液)である。第一のイオン交換樹脂を用いる方法の第二の実施形態では、マクロ多孔質樹脂又はゲル樹脂が用いられ得る。
【0022】
本開示の方法において、Sc溶出液及び/又はScラフィネートが得られると、新たなイオン交換サイクルを行うために樹脂を再生することが可能である。そのような実施形態では、第一及び/又は第二のイオン交換樹脂は、さらなる溶離液による溶出工程に供されて、樹脂によって捕捉された可能性のある金属汚染物質が除去されてよい。当業者であれば、捕捉された金属汚染物質を少なくとも部分的に、又はその大部分を除去するのに適する溶離液の選択方法を知っているであろう。一実施形態では、溶離液は、強酸溶出液であり、例えば、HCl溶液(例えば、4NのHCl溶液、5NのHCl溶液、6NのHCl溶液、又は8NのHCl溶液)である。溶出された金属汚染物質は、さらに処理されてよく、又は廃棄されてもよい。
【0023】
本開示の方法は、さらに、純化した酸化スカンジウム製品を作製するための工程を含み得る。本明細書で述べる精製Sc溶出液及び/又はScラフィネートを用いて得られる酸化スカンジウムの各金属イオン汚染物質(例:金属汚染物質)レベルは、いくつかの実施形態では、約500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、又は10ppm未満であり得る。スカンジウム濃縮物が金属イオン汚染物質としてThを含む実施形態では、本明細書で述べる精製Sc溶出液及び/又はScラフィネートを用いて得られる酸化スカンジウムのThレベルは、いくつかの実施形態では、約500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、又は10ppm未満であり得る。
【0024】
金属汚染物質を優先的に、及びScを捕捉することができる第一のイオン交換樹脂を用いる方法の第一の実施形態の一実施形態を、図1の工程130に示す。予備工程では、未処理のSc濃縮物105は、pH3.0を例とする1.5~3.5のpHで工程110で溶解され、例えば約90℃などの20~100℃の温度に加熱され得る。溶解工程110は、例えばHClなどの濃縮酸を用いて行われ得る。溶解工程によって、スラリー115が生成され、これは、固液分離工程120に供される。工程120後に得られる固体残渣(例えば、Fe、Ti、Zr、Thなどを含み得る)は、廃棄物固体として廃棄され得る。工程120で得られる分離された液体は、未精製Sc溶液125と見なされる。図1では、Thを金属イオン汚染物質として含有する未精製Sc溶液が示される。未精製Sc溶液を、工程130で第一のイオン交換樹脂に吸着させて、金属イオン汚染物質(図1ではTh)を含む吸着樹脂133-A(第一のイオン交換樹脂複合体とも称される)が生成される。第一のイオン交換樹脂は実質的にScを捕捉しないことから、工程130は、精製Scラフィネート135-Bを生成する。吸着樹脂133-Aは、第一のイオン交換樹脂上に捕捉された可能性のあるSc金属イオンを集めるために、溶出工程に供され得る(図1には示さず)。精製Scラフィネート135-B(所望に応じて、得られたSc溶出液と組み合わされる)は、シュウ酸143が添加される析出工程140に供され得る。析出工程140は、例えば約60℃などの20~100℃の温度で行われ得る。析出工程によって、固液分離工程150に供され得るスラリー145が生成され得る。分離工程150から得られた固体155は、か焼工程160に供されてよく、使用済みのシュウ酸溶液は、廃棄又は再使用されてもよい。か焼工程160は、固体155を、純化した酸化スカンジウム製品165が得られるまで、600~1000℃の温度(例えば約900℃など)に掛ける工程を含み得る。
【0025】
図1はまた、精製Scラフィネート135-B及び所望に応じてSc溶出液が得られた後に、樹脂を再生するためのいくつかの工程も含む。それを行うために、樹脂133-Aは、図1に示されるように例えば6NのHCl溶液などの強酸溶液を用いた溶出工程134に供され得る。工程134からの溶出液は、さらに処理され得る。工程134の後に得られた樹脂133-Bは、工程136において、図1に示されるように例えば水などの水溶液で洗浄され得る。工程136から得られた洗浄された樹脂133-Cは、例えば5~10%のNaOH溶液などの塩基性溶液を用いて、工程138で再生され得る。工程138で添加される塩基性溶液は、ナトリウムイオン又はカリウムイオンを含む。再生された樹脂139は、イオン交換工程を行うために、工程130で用いられ得る。
【0026】
金属汚染物質及びScの両方を捕捉することができる第二のイオン交換樹脂を用いる方法の第二の実施形態の一実施形態を、図2の工程130及び132に示す。工程130及び132の前に、未処理のSc濃縮物105は、pH3.0を例とする1.5~3.5のpHで工程110で溶解されてよく、例えば約90℃などの20~100℃の温度に加熱され得る。溶解工程110は、例えばHClなどの濃縮酸を用いて行われ得る。溶解工程によって、固液分離工程120に供され得るスラリー115が生成される。工程120後に得られる固体残渣(例えば、Fe、Ti、Zr、Thなどを含み得る)は、廃棄物固体として廃棄され得る。工程120で得られる分離された液体は、未精製Sc溶液125と見なされる。図2では、Thを金属イオン汚染物質として含有する未精製Sc溶液が示される。未精製Sc溶液を、工程130で第一のイオン交換樹脂に吸着させて、Sc及びThの両方を含む吸着樹脂131-A(第二のイオン交換樹脂複合体とも称される)が生成される。Scを金属イオン汚染物質(例:図2ではTh)から分離するために、樹脂は、溶出工程132に供される。溶出工程132では、図2に示されるように3NのHCl溶液などの強酸が、吸着樹脂131-Aに適用されて、精製Sc溶出液135-Aが得られる。Scの溶出に用いられる酸は、樹脂からScを除去し、金属イオン汚染物質(例:図2ではTh)のほとんど及び他の汚染物質のほとんどは残すのにちょうど充分な強さでなければならない。精製Sc溶出液135-Aは、シュウ酸143が添加される析出工程140に供され得る。析出工程140は、例えば約60℃などの20~100℃の温度で行われ得る。析出工程140によって、固液分離工程150に供され得るスラリー145が生成される。分離工程150から得られた固体155は、か焼工程160に供されてよく、使用済みのシュウ酸溶液は、廃棄又は再使用されてもよい。か焼工程160は、固体155を、純化した酸化スカンジウム製品165が得られるまで、例えば約900℃などの600~1000℃の温度に掛ける工程を含み得る。
【0027】
図2はまた、精製Sc溶出液135-Aが得られた後に、樹脂を再生するためのいくつかの工程も含む。それを行うために、樹脂133-Aは、図2に示されるように例えば6NのHCl溶液などの強酸溶液を用いた溶出工程134に供され得る。第二のイオン交換樹脂は、Scに対するよりも金属イオン汚染物質に対して高い親和性を有することから、樹脂133-Aの金属イオン汚染物質を溶出するために用いられる酸性溶液は、樹脂131-AのScを溶出するために用いられる酸性溶液よりも高い規定度の溶液である。工程134からの溶出液は、さらに処理され得る。工程134の後に得られた樹脂133-Bは、工程136において、図2に示されるように例えば水などの水溶液で洗浄され得る。工程136から得られた洗浄された樹脂133-Cは、例えば5~10%のNaOH溶液などの塩基性溶液を用いて、工程138で再生され得る。工程138での塩基性溶液は、ナトリウムイオン又はカリウムイオンを含む(図2では具体的に示さず)。再生された樹脂139は、イオン交換工程を行うために、工程130で用いられ得る。
【0028】
当業者であれば、酸化スカンジウム製品165の最終純度が、イオン交換工程130(及び所望に応じて132)の後に得られるスカンジウム溶出液又はラフィネートの初期純度に直接影響されることは理解される。本明細書で述べる方法は、スカンジウム溶出液の純度を高めることによって、酸化スカンジウム製品の最終純度を高めるものである。
【0029】
実施例
例I - 樹脂条件(H型又はNa型)のスカンジウム及びトリウムに対するその選択性への影響
選択性試験を、H型(すなわち、樹脂の活性部位をプロトンが占有)及びNa型(すなわち、樹脂の活性部位をナトリウムカチオンが占有)の2つの強カチオン(スルホン酸)ゲルタイプ樹脂を用いて行った。各試験において、15mLの樹脂、及び4~5g/LのScを含有しpH3.0である100mLの未精製スカンジウム溶液を、周囲温度下、ビーカー中で12時間混合して平衡に到達させた。樹脂は、最初はH型で受け入れたものであった。Na型の樹脂での試験の場合、樹脂を、水酸化ナトリウム溶液(5重量/重量%のNaOH)で数時間にわたって予備コンディショニングした。各試験の後、ろ過によって溶液を回収し、そのスカンジウム含有量及びトリウム含有量について分析した。表1に示されるように、Na型の樹脂は、トリウムと比較して、スカンジウムに対してより選択的であった。H型の樹脂では、トリウムの約98%が吸着され、一方Na型の樹脂では、僅かに15%~20%のトリウムが吸着されただけであった。
【0030】
【表1】
【0031】
例II - 未精製スカンジウム溶液のpHの、スカンジウム及びトリウムに対する樹脂選択性への影響
未精製スカンジウム溶液のpHの、スカンジウム及びトリウムに対する強カチオン(スルホン酸)樹脂の選択性への影響を評価するために、ゲルタイプのクロマトグラフィ樹脂Purolite PCR642及び4~5g/LのScを含有し、様々なpH値にHClで酸性化した未精製スカンジウム溶液を用いて試験を行った。試験はすべて、15mLの樹脂及び100mLの未精製スカンジウム溶液を、周囲温度下、ビーカー中で12時間一緒に混合して平衡に到達させることで行った。試験の前に、樹脂を、数時間にわたって水酸化ナトリウム溶液(5重量/重量%のNaOH)と接触させることによって、Na型にコンディショニングしておいた。各試験の後、ろ過によって溶液を回収し、そのスカンジウム含有量及びトリウム含有量について分析した。表2に示されるように、スカンジウムに対する樹脂の選択性は、相対的に高いpH値の方が高い。最良の選択性に対する最適pHは、pH3.0~3.5の間に存在する。これらのpH値において、25%未満のトリウムが吸着されたことと比較して、75%のスカンジウムが吸着された。pH>3.5では、スカンジウムが固体の形態に析出し始めたことから、スカンジウムが著しく失われた。
【0032】
【表2】
【0033】
例III - 樹脂タイプ(ゲルタイプ又はマクロ多孔質)及び粒径(標準又はクロマトグラフィ用)の、スカンジウム及びトリウムに対するその選択性への影響
樹脂タイプ(ゲルタイプ又はマクロ多孔質)及び樹脂粒径(標準300~1200μm又はクロマトグラフィ用200~400μm)の、スカンジウム及びトリウムに対する選択性への影響を評価するために、様々な強カチオン(スルホン酸)樹脂及び4~5g/LのScを含有し、HClでpH3.0に酸性化した未精製スカンジウム溶液を用いて試験を行った。試験はすべて、15mLの樹脂及び100mLの未精製スカンジウム溶液を、周囲温度下、ビーカー中で12時間一緒に混合して平衡に到達させることで行った。試験の前に、樹脂を、数時間にわたって塩化ナトリウム(5重量/重量%のNaOH)溶液と接触させることによって、Na型にコンディショニングしておいた。各試験の後、ろ過によって溶液を回収し、そのスカンジウム含有量及びトリウム含有量について分析した。表3に示されるように、マクロ多孔質樹脂は、溶液中のほぼ100%のトリウムを吸着した。また、表3の結果から、クロマトグラフィ用粒径の樹脂は、スカンジウムに対するよりもトリウムに対して高い選択性を呈したことも示された。
【0034】
【表3】
【0035】
例IV - ゲルタイプ樹脂を用いた未精製スカンジウム溶液のカラム精製
DiaionからのUBK(8)樹脂(ジビニルベンゼン架橋ポリスチレンゲル製の強カチオン樹脂(Na型のスルホン酸))を用いて連続カラム試験を行った。直径1.5cmで12mLの樹脂体積を含有するカラム中、約5mL/分の未精製スカンジウム溶液流量で吸着を行った。100mLの水を10mL/分の流量で用いて樹脂を洗浄した。スカンジウムを、5mL/分の流量で100mLの3N HCl溶液を用いて溶出した。未精製スカンジウム溶液からスカンジウム溶出液へのスカンジウムの総回収率は、73%であったが、トリウムについては僅かに2.7%であり、トリウムと比較したスカンジウムの高い選択性が示される。トリウムは、最終的に、300mLの6N HCl溶液により、5mL/分の流量で溶出した。
【0036】
吸着(80mLの酸性化した未精製スカンジウム溶液、5mL/分)、洗浄(30mLの水、5mL/分)、スカンジウム溶出(100mLの3N HCl溶液、5mL/分)、トリウム溶出(300mLの6N HCl溶液、5mL/分)、洗浄(100mLの水、5mL/分)、及びコンディショニング(50mLの5重量%NaOH溶液、5mL/分)の4サイクルを、同じカラムで行った。スカンジウム溶出液を1つにまとめ、240g/Lの熱シュウ酸溶液を50mL添加することによって、スカンジウムをシュウ酸スカンジウムとして析出させた。析出物をろ過し、脱イオン水で洗浄し、850℃で一晩か焼した。最終製品(酸化スカンジウム)のトリウム含有量を、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によって特定し、410±25ppm(mg/kg)であることが分かった。初期溶液(酸性化した未精製スカンジウム溶液)、樹脂で処理した溶液(ラフィネート)、スカンジウム溶出液、及び得られた析出生成物の化学分析を、表4に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
上記で述べた4サイクルの処理後の樹脂の安定性を特定した。図3に示されるように、スカンジウムの吸着は、各パスにおいて、81±3%の吸着Scで安定に維持され、それは、約21g/LのScの平均樹脂容量に相当する。さらに図3に示されるように、トリウムの吸着は低く、各パスにおいて14±3%であった。
【0039】
例V - マクロ多孔質樹脂を用いた選択性試験及び未精製スカンジウム溶液のカラム精製
PuroliteからのPCR145K樹脂(ジビニルベンゼン架橋マクロ多孔質ポリスチレンビーズ製の強カチオン樹脂(Na型のスルホン酸))を用いて、選択性試験を行った。
【0040】
選択性試験では、5~15mLの樹脂を、100~200mLの未精製スカンジウム溶液(pH3.0で約5g/LのSc)と、周囲温度下、12~16時間にわたって混合した。各試験の後、溶液を、そのスカンジウム含有量及びトリウム含有量について再度分析した。こうして、樹脂は、97%のトリウム及び僅かに7%のスカンジウムを吸着したことが観察された(以下の表5、試験4参照)。
【0041】
【表5】
【0042】
トリウムに対するPCR145K樹脂の選択性は、対応するゲルタイプ樹脂(例IVで述べた樹脂など、表6参照)の選択性と比較して優れていた。
【0043】
【表6】
【0044】
連続カラム試験も、樹脂PCR145Kを用いて行った。直径1.5cmで12mLの樹脂を含有するカラム中、200mLの未精製スカンジウム溶液を1mL/分の流量で用いて吸着を行った。30mLの水を10mL/分の流量で用いて樹脂を洗浄した。トリウムを、300mLの6N HCl溶液を5mL/分の流量で用いて溶出した。100mLの5重量/重量%のNaOH溶液を5mL/分の流量で用いてコンディショニングを行った。
【0045】
シュウ酸をラフィネート(ThをPCR145K樹脂に吸着させた後の溶液)に添加してシュウ酸スカンジウムを析出させ、最終酸化スカンジウム製品の純度を特定した。シュウ酸スカンジウムの析出は、約200mLのスカンジウム含有ラフィネートに240g/Lの熱シュウ酸溶液50mLを添加することで行った。シュウ酸スカンジウム析出物をろ過し、水で洗浄し、850℃で一晩か焼して、それを酸化スカンジウムに変換した。初期供給溶液(pH3.0の未精製スカンジウム溶液)、ラフィネート、及びシュウ酸スカンジウム析出後のろ液を、ICP-MSで分析した。物質収支(化学分析に基づく)を、表7に示す。
【0046】
【表7】
【0047】
最終酸化スカンジウム製品を、そのトリウム含有量について分析し、僅かに56±13ppm(mg/kg)と、商業的用途に対する仕様(典型的には150ppm未満のTh)よりも充分に低いことが分かった。
【0048】
本発明を、その具体的な実施形態と関連して記載してきたが、請求項の範囲は、例で示した好ましい実施形態によって限定されるべきではなく、記載内容全体と一致する最も広い解釈が与えられるべきであることは理解されるであろう。
図1
図2
図3
【国際調査報告】