(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】長鎖組成物、長鎖組成物の組合せ、ならびにその製造方法および応用
(51)【国際特許分類】
C07C 9/15 20060101AFI20221221BHJP
C07C 53/126 20060101ALI20221221BHJP
C07C 51/16 20060101ALI20221221BHJP
C07C 55/21 20060101ALI20221221BHJP
C12P 7/44 20060101ALI20221221BHJP
C12N 1/00 20060101ALN20221221BHJP
C12N 1/16 20060101ALN20221221BHJP
【FI】
C07C9/15
C07C53/126
C07C51/16
C07C55/21
C12P7/44
C12N1/00 F
C12N1/16 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525052
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(85)【翻訳文提出日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 CN2020123700
(87)【国際公開番号】W WO2021083079
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】201911033697.1
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】518405289
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司大連石油化工研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】張霖
(72)【発明者】
【氏名】樊亜超
(72)【発明者】
【氏名】師文静
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H006
【Fターム(参考)】
4B064AD15
4B064CA06
4B064CC03
4B064CD04
4B064CD07
4B065AA75X
4B065AC14
4B065BB04
4B065BB08
4B065CA10
4H006AA02
4H006AA05
4H006AB84
4H006AC46
4H006BC53
4H006BE10
4H006BE60
4H006BS10
(57)【要約】
長鎖組成物または長鎖組成物の組合せ、その製造方法、および発酵による長鎖二塩基酸の製造におけるその利用を開示する。長鎖組成物は、1つ以上の長鎖アルカンおよび1つ以上の長鎖カルボン酸を含んでいる。1つ以上の長鎖アルカンは、C9~18であり、直鎖または分枝であるアルカンからなる群より選択される。1つ以上の長鎖カルボン酸は、C9~18であり、直鎖または分枝であり、飽和または不飽和である脂肪族モノカルボン酸からなる群より選択される。長鎖アルカンの長鎖カルボン酸に対する質量比は、(1:1)~(40:1)である。この長鎖組成物の利点は、発酵による長鎖二塩基酸の製造の開始物質に使用したときに、発酵度または基質利用率が高い点などにある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の長鎖アルカンおよび1つ以上の長鎖カルボン酸を含んでいる、長鎖組成物(好ましくは、発酵における使用のための長鎖組成物)であって、
上記1つ以上の長鎖アルカンは、C9~18であり、直鎖または分枝である(好ましくは直鎖である)アルカンからなる群より選択され、
好ましくは、n-ドデカン、n-テトラデカンおよびn-ヘキサデカンからなる群より選択される1つ以上の長鎖アルカンであり、特にn-ドデカンであり、
1つ以上の長鎖カルボン酸は、C9~18であり、直鎖または分枝であり(好ましくは直鎖であり)、飽和または不飽和である(好ましくは飽和である)脂肪族モノカルボン酸からなる群より選択され、
好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸からなる群より選択される1つ以上の長鎖カルボン酸であり、特にラウリン酸であり、
上記長鎖アルカンの上記長鎖カルボン酸に対する質量比は、(1:1)~(40:1)である(好ましくは、(2:1)~(20:1)または(5:1)~(10:1)である)、
長鎖組成物。
【請求項2】
水をさらに含んでおり、
上記水の質量は、上記長鎖アルカンおよび上記長鎖カルボン酸の合計質量の0.5~10倍である(好ましくは、1~5倍または1~3倍である)、
請求項1に記載の長鎖組成物。
【請求項3】
下記(i)~(iii)のうち1つ以上を満たしている、請求項1に記載の長鎖組成物:
(i)pHが5~12である(好ましくは、7~10、7.5~9または7.5~8.0である);
(ii)32℃において液体または固液混合物の形態で存在する(好ましくは液体の形態で存在し、特に水性液体である);
(iii)上記長鎖アルカンの炭素原子数と、上記長鎖カルボン酸の炭素原子数が同数である。
【請求項4】
n種類の請求項1~3のいずれか1項に記載の長鎖組成物が互いに独立して存在している(例えば、互いに独立して梱包または区分けされている)、長鎖組成物の組合せであって、
上記nは、2~40の正の整数であり(好ましくは、4~20または5~10であり)、
第i長鎖組成物における上記長鎖アルカンの上記長鎖カルボン酸に対する質量比をR
iとし(iは、2~nの任意の正の整数である)、第1長鎖組成物における上記長鎖アルカンの上記長鎖カルボン酸に対する質量比をR
1とし、第n長鎖組成物における上記長鎖アルカンの上記長鎖カルボン酸に対する質量比をR
nとすると、
R
i-1/R
i≧1であり(好ましくは、R
i-1/R
iの値は、1~20、1.0001~10、1.001~10、1.01~10、1.1~5または1.5~2であり)、
R
1/R
n>1である(好ましくは、R
1/R
nの値は、1.0001~30、1.001~20、1.01~10、1.1~5または1.5~2である)、
長鎖組成物の組合せ。
【請求項5】
下記(i)~(iii)のうち1つ以上を満たしている、請求項4に記載の長鎖組成物の組合せ:
(i)n種類の上記長鎖組成物は、別々に製造されたものである;
(ii)長鎖組成物の量に基づいて計算した、n種類の上記長鎖組成物のうち任意の2つの重量比は同一または異なっており、好ましくは同一または実質的に同一である;
(iii)長鎖アルカンの量に基づいて計算した、n種類の上記長鎖組成物のうち任意の2つの重量比は、同一または実質的に同一である。
【請求項6】
1つ以上の長鎖アルカンおよび1つ以上の長鎖カルボン酸を含んでいる長鎖組成物(好ましくは、発酵における使用のための長鎖組成物)の製造方法であって、
上記1つ以上の長鎖アルカンは、C9~18であり、直鎖または分枝である(好ましくは直鎖である)アルカンからなる群より選択され、
好ましくは、n-ドデカン、n-テトラデカンおよびn-ヘキサデカンからなる群より選択される1つ以上の長鎖アルカンであり、特にn-ドデカンであり、
上記1つ以上の長鎖カルボン酸は、C9~18であり、直鎖または分枝であり(好ましくは直鎖であり)、飽和または不飽和である(好ましくは飽和である)脂肪族モノカルボン酸からなる群より選択され、
好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸からなる群より選択される1つ以上の長鎖カルボン酸であり、特にラウリン酸であり、
上記長鎖アルカンの上記長鎖カルボン酸に対する質量比は、(1:1)~(40:1)であり(好ましくは、(2:1)~(20:1)または(5:1)~(10:1)であり)、
上記製造方法は、上記長鎖アルカンおよび上記長鎖カルボン酸を上記質量比にて混合して(好ましくは、均一になるまで混合して)上記長鎖組成物を得る、混合工程を少なくとも含み、
任意構成で、上記混合工程を、加熱(好ましくは、45~70℃または50~60℃に加熱)および攪拌(好ましくは、50~250rpmまたは150~250rpmで攪拌)しながら行う、
製造方法。
【請求項7】
下記(i)および/または(ii)を満たしており、
(i)上記混合工程において、水およびpH調整剤(塩基など、特に水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される1つ以上)をさらに加える;
(ii)水およびpH調整剤(塩基など、特に水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される1つ以上)を上記長鎖組成物に加える工程を含み、任意構成で、当該工程を、加熱(好ましくは、45~70℃または50~60℃に加熱)および攪拌(好ましくは、50~250rpmまたは150~250rpmで攪拌)しながら行う;
上記水の質量は、上記長鎖アルカンおよび上記長鎖カルボン酸の合計質量の0.5~10倍(好ましくは、1~5倍または1~3倍)であり、
上記pH調整剤の使用量は、上記長鎖組成物のpHを5~12(好ましくは、7~10、7.5~9または7.5~8.0)に調整する量である、
請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
長鎖二塩基酸の製造方法であって、
上記長鎖二塩基酸は、C9~18であり、直鎖または分枝であり(好ましくは直鎖であり)、飽和または不飽和である(好ましくは飽和である)脂肪族ジカルボン酸からなる群より選択される1つ以上の長鎖二塩基酸であり、
好ましくは、ドデカン二酸、テトラデカン二酸およびヘキサデカン二酸からなる群より選択される1つ以上の長鎖二塩基酸であり、特にドデカン二酸であり、
上記製造方法は、下記工程(1)および(2)を含む、製造方法:
(1)請求項6に記載の製造方法によって長鎖組成物を製造して、請求項1に記載の長鎖組成物または請求項4に記載の長鎖組成物の組合せ(これらを長鎖組成物と総称する)を提供する工程;
(2)発酵菌および発酵培地の存在下において上記長鎖組成物を発酵させて、上記長鎖組成物を長鎖二塩基酸に転化させる工程。
【請求項9】
下記(i)および/または(ii)を満たしている、請求項8に記載の製造方法:
(i)上記発酵菌は、完全α,ω酸化経路を有している酵母であり、
好ましくは、Candida属、Cryptococcus属、Neurospora属、Hansenula属、Pichia属、Rhodotorula属、Torulopsis属およびTrichosporon属からなる群より選択される1種類以上の酵母であり、
より好ましくは、Candida属から選択される1種類以上の酵母であり、
特にCandida tropicalisであり、
より特にCandida tropicalisの変異株PF-UV-56(China General Microbiological Culture Collection Centerに寄託、寄託番号:CGMCC No. 0356)である;
(ii)上記発酵培地は、下記を含んでいる:
20~28g/Lのスクロース;
0.8~1.5g/Lのコーンスティープリカー;
2.0~4.0g/Lの酵母抽出物;
0.8~1.2g/Lの塩化ナトリウム;
3.0~3.5g/Lのリン酸二水素カリウム;
1.2~1.8g/Lの硫酸マグネシウム;
1.2~4.8g/Lの尿素;
1.5~2g/Lの硫酸アンモニウム;および、
1.5~1.8g/Lの酢酸ナトリウム。
【請求項10】
上記発酵は、下記工程(i)および(ii)を含む、請求項8に記載の製造方法:
(i)上記発酵菌および上記発酵培地を混合し、5~60時間(好ましくは10~40時間、より好ましくは20~30時間または24時間)発酵させて、発酵原料溶液を得る予備工程;
(ii)上記発酵原料溶液に上記長鎖組成物を加えて60~400時間(好ましくは100~300時間、より好ましくは100~160時間または100~140時間)発酵させることにより、上記長鎖組成物を上記長鎖二塩基酸に転化させる転化工程。
【請求項11】
下記(i)~(vii)のうち1つ以上を満たしている、請求項8に記載の製造方法:
(i)上記発酵菌の種培養液を、総液体保持体積の2~30体積%(好ましくは5~20体積%または10~15体積%)加える;
(ii)上記発酵反応の反応温度は、25~37℃(好ましくは、28~32℃)である;
(iii)上記発酵反応を、100~1000rpm(好ましくは、120~500rpmまたは150~300rpm)にて攪拌しながら行う;
(iv)上記発酵反応の通気速度は、0.2~10.0VVM(好ましくは、0.2~2.0VVMまたは0.5~1.0VVM)である;
(v)上記発酵反応の反応時間は、65時間以上(好ましくは120時間超、より好ましくは130~400時間、130~300時間、130~200時間または138~160時間)である;
(vi)上記長鎖組成物の投入量は、総液体保持体積1Lあたり100~1000g(好ましくは、総液体保持体積1Lあたり100~500gまたは150~250g)である;
(vii)上記発酵培地の投入量は、総液体保持体積1Lあたり12~80g(好ましくは、総液体保持体積1Lあたり32~50g、35~45gまたは37~42g)である。
【請求項12】
下記(i)および/または(ii)を満たしている、請求項10に記載の製造方法:
(i)上記予備工程において(好ましくは、上記予備工程の開始から24時間以内において)、上記長鎖組成物を加えず、上記発酵反応のpHを自己調整させる(すなわち、pHを調整しない);
(ii)上記転化工程の開始時点において(好ましくは、上記予備工程の開始から24時間後において)、上記発酵反応のpHを6.0~7.5(好ましくは、6.8~7.0)に調整し、その後、発酵反応の終了まで5~60時間(好ましくは、10~40時間、20~30時間または24時間)間隔で、pHを0.05~0.4(好ましくは、0.1~0.3)ずつ増加させる。
【請求項13】
下記(i)または(ii)を満たしている、請求項10に記載の製造方法:
(i)上記転化工程において、上記長鎖組成物をn個のバッチで加え、
2つの隣接するバッチの時間間隔は、同じであっても異なっていてもよく、
好ましくは、5~60時間、10~40時間、20~30時間、または24時間であり、
上記nは、2~40(好ましくは、4~20または5~10)の正の整数である;
(ii)上記転化工程において、上記長鎖組成物を、反応時間に応じて連続的に加える。
【請求項14】
請求項4に記載の長鎖組成物の組合せを使用し、下記(i)または(ii)を満たしている、請求項13に記載の製造方法:
(i)n種類の上記長鎖組成物を、n個のバッチに分けて加える(好ましくは、第1長鎖組成物から第n長鎖組成物の順番になるように加える);
(ii)n種類の上記長鎖組成物を、R=f(t)の関数に従って連続的に加える;
式中、
Rは、上記長鎖アルカンの上記長鎖カルボン酸に対する質量比であり、
tは、上記転化工程の反応時間であり、
f()は、任意の非増加関数(好ましくは、任意の減少関数、任意の単調減少関数または任意の線形減少関数)を表す。
【請求項15】
上記発酵反応の反応産物から、上記長鎖二塩基酸を分離する工程をさらに含む、請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、生化学工学の分野に属している。具体的には、長鎖組成物または長鎖組成物の組合せに関する。本出願はまた、長鎖組成物または長鎖組成物の組合せの製造方法と、長鎖二塩基酸の製造におけるその応用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ドデカン二酸(略称:DDDA)は、脂肪族ジカルボン酸の一種であり、炭素鎖には12個の炭素原子が含まれている。DDDAは、重要かつ産業上広く応用されているファインケミカル製品である。加えて、DDDAは、化学工業において高品質な香料、高性能なナイロン系エンジニアリングプラスチック、高品質なナイロン系ホットメルト接着剤、高温誘電体、高品質な塗料およびコーティング剤、高品質な潤滑油、耐寒性可塑剤、樹脂、医薬、農薬などを合成する際の重要な開始物質でもある。
【0003】
長鎖二塩基酸の発酵による製造方法においては、長鎖n-アルカンの2箇所の末端メチル基を、それぞれα,ω酸化によりカルボキシル基に転化させる。この酸化は、微生物の細胞内酵素の特異的な酸化能および酸化作用を利用して、常温・常圧で行う。その結果、対応する鎖の長さを有している様々な長鎖二塩基酸が合成される。多種多様な細菌、カビおよび放線菌が、発酵により長鎖二塩基酸を製造できる。その中でも、Candida属の酵母は、n-アルカンを発酵させて二塩基酸を製造する生産性の非常に高い微生物である。
【0004】
先行技術においては、一般的な酵母を発酵株に使用し、n-アルカンを基質に使用して、対応する炭素数の長鎖二塩基酸を製造している。例えば、CN102115767A、CN102115768Aなどは、ウンデカ二酸およびヘキサデカン二酸の製造スキームをそれぞれ開示している。また、CN103805643Aが開示している長鎖二塩基酸の製造方法は、二塩基酸株を増殖培養して種培養液を得る工程、種培養液を増殖発酵させる工程、発酵プロセスの間に乳化させたアルカンを加える工程、反応の完了後に微生物タンパク質を除去する工程、得られた長鎖二塩基酸生成物を結晶化させる工程、を含む。
【発明の概要】
【0005】
本出願の発明者らが見出したところによると、先行技術には、依然として問題があった。その問題とは、n-アルカンを基質に使用して長鎖二塩基酸を製造する際に、発酵度および基質利用率が低くなるという問題である。本出願は、この知見に基づいて完成されたものである。
【0006】
具体的に、本出願は、下記態様の解決手段に向けられている。
[態様1]
1つ以上の長鎖アルカンおよび1つ以上の長鎖カルボン酸を含んでいる、長鎖組成物(好ましくは、発酵における使用のための長鎖組成物)であって、
上記1つ以上の長鎖アルカンは、C9~18であり、直鎖または分枝である(好ましくは直鎖である)アルカンからなる群より選択され、
好ましくは、n-ドデカン、n-テトラデカンおよびn-ヘキサデカンからなる群より選択される1つ以上の長鎖アルカンであり、特にn-ドデカンであり、
1つ以上の長鎖カルボン酸は、C9~18であり、直鎖または分枝であり(好ましくは直鎖であり)、飽和または不飽和である(好ましくは飽和である)脂肪族モノカルボン酸からなる群より選択され、
好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸からなる群より選択される1つ以上の長鎖カルボン酸であり、特にラウリン酸であり、
上記長鎖アルカンの上記長鎖カルボン酸に対する質量比は、(1:1)~(40:1)である(好ましくは、(2:1)~(20:1)または(5:1)~(10:1)である)、
長鎖組成物。
[態様2]
水をさらに含んでおり、
上記水の質量は、上記長鎖アルカンおよび上記長鎖カルボン酸の合計質量の0.5~10倍である(好ましくは、1~5倍または1~3倍である)、
上述または後述のいずれかの態様に記載の長鎖組成物。
[態様3]
下記(i)~(iii)のうち1つ以上を満たしている、上述または後述のいずれかの態様に記載の長鎖組成物:
(i)上記組成物のpHが5~12である(好ましくは、7~10、7.5~9または7.5~8.0である);
(ii)32℃において液体または固液混合物の形態で存在する(好ましくは液体の形態で存在し、特に水性液体である);
(iii)上記長鎖アルカンの炭素原子数と、上記長鎖カルボン酸の炭素原子数が同数である。
[態様4]
n種類の上述または後述のいずれかの態様に記載の長鎖組成物が互いに独立して存在している(例えば、互いに独立して梱包または区分けされている)、長鎖組成物の組合せであって、
上記nは、2~40の正の整数であり(好ましくは、4~20または5~10であり)、
第i長鎖組成物における上記長鎖アルカンの上記長鎖カルボン酸に対する質量比をRiとし(iは、2~nの任意の正の整数である)、第1長鎖組成物における上記長鎖アルカンの上記長鎖カルボン酸に対する質量比をR1とし、第n長鎖組成物における上記長鎖アルカンの上記長鎖カルボン酸に対する質量比をRnとすると、
Ri-1/Ri≧1であり(好ましくは、Ri-1/Riの値は、1~20、1.0001~10、1.001~10、1.01~10、1.1~5または1.5~2であり)、
R1/Rn>1である(好ましくは、R1/Rnの値は、1.0001~30、1.001~20、1.01~10、1.1~5または1.5~2である)、
長鎖組成物の組合せ。
[態様5]
下記(i)~(iii)のうち1つ以上を満たしている、上述または後述のいずれかの態様に記載の長鎖組成物の組合せ:
(i)n種類の上記長鎖組成物は、別々に製造されたものである;
(ii)長鎖組成物の量に基づいて計算した、n種類の上記長鎖組成物のうち任意の2つの重量比は同一または異なっており、好ましくは同一または実質的に同一である;
(iii)長鎖アルカンの量に基づいて計算した、n種類の上記長鎖組成物のうち任意の2つの重量比は、同一または実質的に同一である。
[態様6]
1つ以上の長鎖アルカンおよび1つ以上の長鎖カルボン酸を含んでいる長鎖組成物(好ましくは、発酵における使用のための長鎖組成物)の製造方法であって、
上記1つ以上の長鎖アルカンは、C9~18であり、直鎖または分枝である(好ましくは直鎖である)アルカンからなる群より選択され、
好ましくは、n-ドデカン、n-テトラデカンおよびn-ヘキサデカンからなる群より選択される1つ以上の長鎖アルカンであり、特にn-ドデカンであり、
上記1つ以上の長鎖カルボン酸は、C9~18であり、直鎖または分枝であり(好ましくは直鎖であり)、飽和または不飽和である(好ましくは飽和である)脂肪族モノカルボン酸からなる群より選択され、
好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸からなる群より選択される1つ以上の長鎖カルボン酸であり、特にラウリン酸であり、
上記長鎖アルカンの上記長鎖カルボン酸に対する質量比は、(1:1)~(40:1)であり(好ましくは、(2:1)~(20:1)または(5:1)~(10:1)であり)、
上記製造方法は、上記長鎖アルカンおよび上記長鎖カルボン酸を上記質量比にて混合して(好ましくは、均一になるまで混合して)上記長鎖組成物を得る、混合工程を少なくとも含み、
任意構成で、上記混合工程を、加熱(好ましくは、45~70℃または50~60℃に加熱)および攪拌(好ましくは、50~250rpmまたは150~250rpmで攪拌)しながら行う、
製造方法。
[態様7]
下記(i)および/または(ii)を満たしており、
(i)上記混合工程において、水およびpH調整剤(アルカリなど、特に水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される1つ以上)をさらに加える;
(ii)水およびpH調整剤(アルカリなど、特に水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される1つ以上)を上記長鎖組成物に加える工程を含み、任意構成で、当該工程を、加熱(好ましくは、45~70℃または50~60℃に加熱)および攪拌(好ましくは、50~250rpmまたは150~250rpmで攪拌)しながら行う;
上記水の質量は、上記長鎖アルカンおよび上記長鎖カルボン酸の合計質量の0.5~10倍(好ましくは、1~5倍または1~3倍)であり、
上記pH調整剤の使用量は、上記長鎖組成物のpHを5~12(好ましくは、7~10、7.5~9または7.5~8.0)に調整する量である、
上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法。
[態様8]
長鎖二塩基酸の製造方法であって、
上記長鎖二塩基酸は、C9~18であり、直鎖または分枝であり(好ましくは直鎖であり)、飽和または不飽和である(好ましくは飽和である)脂肪族ジカルボン酸からなる群より選択される1つ以上の長鎖二塩基酸であり、
好ましくは、ドデカン二酸、テトラデカン二酸およびヘキサデカン二酸からなる群より選択される1つ以上の長鎖二塩基酸であり、特にドデカン二酸であり、
上記製造方法は、下記工程(1)および(2)を含む、製造方法:
(1)上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法によって長鎖組成物を製造して、上述または後述のいずれかの態様に記載の長鎖組成物または長鎖組成物の組合せ(これらを長鎖組成物と総称する)を提供する工程;
(2)発酵菌および発酵培地の存在下において上記長鎖組成物を発酵させて、上記長鎖組成物を長鎖二塩基酸に転化させる工程。
[態様9]
下記(i)および/または(ii)を満たしている、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法:
(i)上記発酵菌は、完全α,ω酸化経路を有している酵母であり、
好ましくは、Candida属、Cryptococcus属、Endomyces属、Hansenula属、Pichia属、Rhodotorula属、Torulopsis属およびTrichosporon属からなる群より選択される1種類以上の酵母であり、
より好ましくは、Candida属から選択される1種類以上の酵母であり、
特にCandida tropicalisであり、
より特にCandida tropicalisの変異株PF-UV-56(China General Microbiological Culture Collection Centerに寄託、寄託番号:CGMCC No. 0356)である;
(ii)上記発酵培地は、下記を含んでいる:
20~28g/Lのスクロース;
0.8~1.5g/Lのコーンスティープリカー;
2.0~4.0g/Lの酵母抽出物;
0.8~1.2g/Lの塩化ナトリウム;
3.0~3.5g/Lのリン酸二水素カリウム;
1.2~1.8g/Lの硫酸マグネシウム;
1.2~4.8g/Lの尿素;
1.5~2g/Lの硫酸アンモニウム;および、
1.5~1.8g/Lの酢酸ナトリウム。
[態様10]
上記発酵は、下記工程(i)および(ii)を含む、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法:
(i)上記発酵菌および上記発酵培地を混合し、5~60時間(好ましくは10~40時間、より好ましくは20~30時間または24時間)発酵させて、発酵原料溶液を得る予備工程;
(ii)上記発酵原料溶液に上記長鎖組成物を加えて60~400時間(好ましくは100~300時間、より好ましくは100~160時間または100~140時間)発酵させることにより、上記長鎖組成物を上記長鎖二塩基酸に転化させる転化工程。
[態様11]
下記(i)~(vii)のうち1つ以上を満たしている、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法:
(i)上記発酵菌の種培養液を、総液体保持体積の2~30体積%(好ましくは5~20体積%または10~15体積%)加える;
(ii)上記発酵反応の反応温度は、25~37℃(好ましくは、28~32℃)である;
(iii)上記発酵反応を、100~1000rpm(好ましくは、120~500rpmまたは150~300rpm)にて攪拌しながら行う;
(iv)上記発酵反応の通気速度は、0.2~10.0VVM(好ましくは、0.2~2.0VVMまたは0.5~1.0VVM)である;
(v)上記発酵反応の反応時間は、65時間以上(好ましくは120時間超、より好ましくは130~400時間、130~300時間、130~200時間または138~160時間)である;
(vi)上記長鎖組成物の投入量は、総液体保持体積1Lあたり100~1000g(好ましくは、総液体保持体積1Lあたり100~500gまたは150~250g)である;
(vii)上記発酵培地の投入量は、総液体保持体積1Lあたり12~80g(好ましくは、総液体保持体積1Lあたり32~50g、35~45gまたは37~42g)である。
[態様12]
下記(i)および/または(ii)を満たしている、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法:
(i)上記予備工程において(好ましくは、上記予備工程の開始から24時間以内において)、上記長鎖組成物を加えず、上記発酵反応のpHを自己調整させる(すなわち、pHを調整しない);
(ii)上記転化工程の開始時点において(好ましくは、上記予備工程の開始から24時間後において)、上記発酵反応のpHを6.0~7.5(好ましくは、6.8~7.0)に調整し、その後、発酵反応の終了まで5~60時間(好ましくは、10~40時間、20~30時間または24時間)間隔で、発酵反応のpHを0.05~0.4(好ましくは、0.1~0.3)ずつ増加させる。
[態様13]
下記(i)または(ii)を満たしている、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法:
(i)上記転化工程において、上記長鎖組成物をn個のバッチで加え、
2つの隣接するバッチの時間間隔は、同じであっても異なっていてもよく、
好ましくは、5~60時間、10~40時間、20~30時間、または24時間であり、
上記nは、2~40(好ましくは、4~20または5~10)の正の整数である;
(ii)上記転化工程において、上記長鎖組成物を、反応時間に応じて連続的に加える。
[態様14]
上述または後述のいずれかの態様に記載の長鎖組成物の組合せを使用し、下記(i)または(ii)を満たしている、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法:
(i)n種類の上記長鎖組成物を、n個のバッチに分けて加える(好ましくは、第1長鎖組成物から第n長鎖組成物の順番になるように加える);
(ii)上記長鎖組成物を、R=f(t)の関数に従って連続的に加える;
式中、
Rは、上記長鎖アルカンの上記長鎖カルボン酸に対する質量比であり、
tは、上記転化工程の反応時間であり、
f()は、任意の非増加関数(好ましくは、任意の減少関数、任意の単調減少関数または任意の線形減少関数)を表す。
[態様15]
上記発酵反応の反応産物から、上記長鎖二塩基酸を分離する工程をさらに含む、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法。
【0007】
本出願はまた、下記態様の解決手段にも向けられている。
<態様1>
下記工程(1)~(3)を含むことを特徴とする、ドデカン二酸の製造方法:
(1)ドデカンおよびラウリン酸を所定の比率で混合し、加熱および攪拌して上記ラウリン酸を完全に溶解させた後、混合物に水を加え、均一に混合し、アルカリを加えてpHを7~9に調整して、混合基質を得る工程;
(2)発酵菌および発酵培地を発酵用の発酵タンクに投入し、発酵プロセスにおいて発酵が終了するまでの間、工程(1)で得られた混合基質を加える工程;
(3)上記発酵の完了後に得られた反応物を、解乳化、膜濾過、酸析、濾過および乾燥に教師、上記長鎖二塩基酸生成物を得る工程。
<態様2>
上記工程(1)において、
上記ドデカンの上記ラウリン酸に対する質量比は、(2:1)~(10:1)であり、好ましくは(5:1)~(10:1)である、
ことを特徴とする、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法。
<態様3>
上記工程(1)において、
上記加熱の温度は、45~70℃であり、好ましくは50~60℃であり、
上記攪拌の速度は、50~250rpmであり、好ましくは150~250rpmである、
ことを特徴とする、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法。
<態様4>
上記工程(1)において、
上記混合物の質量の1~3倍の量の水を加える、
ことを特徴とする、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法。
<態様5>
上記工程(1)において、
均一に混合した後に上記アルカリを加えて、pHを7~9に調整し、好ましくは7.5~8.0に調整し、
上記アルカリは、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの1つ以上である、
ことを特徴とする、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法。
<態様6>
上記工程工程(2)において使用する上記発酵菌は、完全α,ω酸化経路を有している酵母であり、
好ましくは、Candida属、Cryptococcus属、Endomyces属、Hansenula属、Pichia属、Rhodotorula属、Torulopsis属またはTrichosporon属の1つ以上である、
ことを特徴とする、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法。
<態様7>
上記工程(2)において使用する上記発酵培地の組成は、下記であることを特徴とする、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法:
20~28g/Lのサッカロース;
0.8~1.5g/Lのコーンスティープリカー;
2.0~4.0g/Lの酵母抽出物;
0.8~1.2g/Lの塩化ナトリウム;
3.0~3.5g/Lのリン酸二水素カリウム;
1.2~1.8g/Lの硫酸マグネシウム;
1.2~4.8g/Lの尿素;
1.5~2g/Lの硫酸アンモニウム;および、
1.5~1.8g/Lの酢酸ナトリウム。
<態様8>
上記工程(2)において、
上記発酵菌の種培養液の投入量は、発酵液の体積に対して5~20%であり、好ましくは10~15%である、
ことを特徴とする、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法。
<態様9>
上記工程(2)において、
発酵温度は、25~37℃であり、好ましくは28~32℃であり、
攪拌速度は、120~500rpmであり、好ましくは150~300rpmであり、
通気速度は、0.2~1.0VVMであり、好ましくは0.5~1.0VVMであり、
発酵時間は、138~144時間である、
ことを特徴とする、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法。
<態様10>
上記工程(2)において、pHを下記のように調整することを特徴とする、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法:
発酵から0~24時間:pHを調整しない;
24時間後:pH6.8~7.0の中性域に調整する;
その後:反応の終了時まで、24時間間隔で、pHを0.1~0.3ずつ増加させる。
<態様11>
上記工程(2)において、
発酵プロセスの間、上記工程(1)で得られた上記混合基質を、断続供給モードまたは連続供給モードにより加える、
ことを特徴とする、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法。
<態様12>
上記工程(2)において、下記(i)または(ii)を満たしていることを特徴とする、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法:
断続供給モードを採用し、5~10回のバッチにより供給を完了させる;
連続供給モードを採用し、発酵時間に応じて供給速度を計算する。
<態様13>
上記工程(3)における解乳化では、
発酵液のpHを8.5~10に調整し、好ましくは9~9.5に調整し、
発酵液を75~90℃に加熱して20~40分間保持する、
ことを特徴とする、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法。
<態様14>
上記工程(3)における膜濾過では、
解乳化した培養液を膜によって濾過し、固液分離して清澄な発酵液を得、
濾過温度は、30~50℃であり、好ましくは40~50℃であり、
上記膜の孔径は、10~50nmであり、好ましくは20~25nmである、
ことを特徴とする、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法。
<態様15>
上記工程(3)における酸析では、
上記清澄な発酵液のpHを酸性pH調整剤により調整し、
pHを3~5に調整し、好ましくは3~4に調整して、上記長鎖二塩基酸を沈澱させる、
ことを特徴とする、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法。
<態様16>
上記工程(3)における濾過では、
板枠式濾過により濾過を行い、
濾過圧力は、0.5~1.0MPaであり、
濾過温度は、20~30℃であり、
乾燥温度は、80~105℃であり、
乾燥時間は、5~20時間である、
ことを特徴とする、上述または後述のいずれかの態様に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
先行技術と比較すると、本出願は、下記の技術的効果のうち1つ以上を実現し、好ましくは全てを実現する。
(1)本出願の長鎖組成物においては、長鎖アルカンの長鎖カルボン酸に対する質量比が、本出願に記載の要求を満たしている。長鎖組成物を発酵プロセスに使用すると、発酵度を向上させられる。また、長鎖カルボン酸は水溶性が低く発酵システムにおいて利用しにくいという問題も解決できる。
(2)本出願の長鎖組成物においては、好ましい態様において、物理的溶解および化学的解離という2つの工程が採用されている。そのため、長鎖カルボン酸の溶解効果が向上し、長鎖アルカンおよび長鎖カルボン酸による極性かつ可溶性のミセルの形成を促進でき、発酵度をさらに向上させられる。
(3)本出願の長鎖組成物の製造方法においては、好ましい態様において、アルカリ調整スキームが採用されている。そのため、材料供給に起因する発酵プロセスにおけるpHの変動を低減できる。また、連続供給モードにおいては材料がさらに供給されるので、基質利用率および発酵度を向上させられる。
(4)本出願の発酵方法においては、長鎖カルボン酸は、炭素源としての機能も果たす。また、一部の長鎖カルボン酸を、脂肪酸代謝によって直接、重要な中間体代謝産物(アセチル補酵素A)に転化させられる。そのため、バイオマスを迅速に蓄積でき、発酵時間を短縮でき、長鎖ジカルボン酸の生産強度を高められる。
(5)本出願の発酵方法においては、好ましい態様において、発酵の際に加える長鎖脂肪酸の量を増加させることにより、長鎖ジカルボン酸の発酵度および生産強度をさらに向上させられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を参照しながら本出願を詳細に説明する。しかし、留意されたいことには、本出願の範囲は、下記実施形態には限定されない。そうではなく、本出願の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0010】
本明細書において言及されている全ての出版物、特許出願、特許および他の参照文献は、その全体が参照により組み込まれる。別途定義のない限り、本明細書で使用されている全ての技術用語および科学用語は、当業者により通常に理解される意味と同じ意味を有している。もしも齟齬が生じる場合は、定義も含め本明細書に記載の内容が優先する。
【0011】
本明細書に記載の物質、方法、成分、機器または装置が、「当業者に知られた」「本技術分野で周知の」などの表現で修飾されているとき、当該物質、方法、成分、機器または装置には、本出願の出願時において当該技術分野で従前使用されていたもののみならず、現在のところは通常に使用されていないが後に本技術分野で周知となる、同様の目的のために好適なものも含まれると理解される。
【0012】
本出願に関連して、用語「実質的に」とは、許容できる偏差または当業者にとって合理的と考えられる偏差を意味している。例えば、±10%以内、±5%以内、±1%以内、±0.5%以内または±0.1%以内は、存在が許容される。
【0013】
本出願に関連して、用語「総液体保持体積」とは、発酵容器中における液相の総体積を意味する。通常は、発酵容器の容量の70~80%である。
【0014】
本出願に関連して、そうではないと具体的に明示がない限り、百分率、部、比率などは全て、重量に基づいて表す。また、圧力は全て、ゲージ圧で表す。
【0015】
本出願に関連して、本出願の2つ以上の任意の実施形態は、組合せてもよい。組合せによって生じる技術的解決手段も、本出願の当初開示の一部を形成しており、本出願の範囲に含まれる。
【0016】
実施形態によると、本出願は、長鎖組成物に関する。長鎖組成物は、好ましくは、発酵における使用のための長鎖組成物である。とりわけ、長鎖組成物は、発酵による長鎖二塩基酸の製造における開始物質としての使用に適している。
【0017】
本出願の実施形態によると、長鎖組成物は、1つ以上の長鎖アルカンおよび1つ以上の長鎖カルボン酸を含んでいる。1つ以上の長鎖アルカンは、C9~18であり、直鎖または分枝であるアルカンからなる群より選択される。1つ以上の長鎖カルボン酸は、C9~18であり、直鎖または分枝であり、飽和または不飽和である脂肪族モノカルボン酸からなる群より選択される。長鎖アルカンは、好ましくは、C9~18である直鎖アルカンからなる群より選択される1つ以上の長鎖アルカンである。長鎖アルカンは、より好ましくは、n-ドデカン、n-テトラデカンおよびn-ヘキサデカンからなる群より選択される1つ以上の長鎖アルカンである。長鎖アルカンは、特に好ましくは、n-ドデカンである。長鎖カルボン酸は、好ましくは、C9~18の直鎖飽和脂肪族モノカルボン酸からなる群より選択される1つ以上の長鎖カルボン酸である。長鎖カルボン酸は、特に好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸およびパルミチン酸からなる群より選択される1つ以上の長鎖カルボン酸である。とりわけ、長鎖カルボン酸は、ラウリン酸である。
【0018】
本出願の実施形態によると、長鎖アルカンの長鎖カルボン酸に対する質量比は、一般的には(1:1)~(40:1)であり、好ましくは(2:1)~(20:1)または(5:1)~(10:1)である。
【0019】
本出願の実施形態によると、長鎖組成物は水をさらに含んでいる。水の質量は、長鎖アルカンおよび長鎖カルボン酸の合計質量に対して、一般的には0.5~10倍であり、好ましくは1~5倍または1~3倍である。
【0020】
本出願の実施形態によると、長鎖組成物のpHは、一般的には5~12であり、好ましくは7~10、7.5~9または7.5~8.0である。本出願に関連して、長鎖組成物のpHの測定方法は、pH試験紙法またはガラス電極法であってもよい。
【0021】
本出願の実施形態によると、長鎖組成物は、32℃において、液体または固液混合物の状態で存在しており、好ましくは液体で存在しており、とりわけ水性液体でそんざいしている。本出願に関連して、用語「液体」には、均質な液体および均質でない液体の両方が含まれる。後者の例としては、2種類以上の液体による多相の液体様混合物が挙げられる。
【0022】
本出願の実施形態によると、長鎖組成物において、長鎖アルカンおよび長鎖カルボン酸は、同数個の炭素原子を有している(n-ドデカンおよびラウリン酸の組合せなど)。
【0023】
本出願の実施形態によると、本出願はまた、長鎖組成物の組合せにも関する。長鎖組成物の組合せは、本出願の実施形態に係る複数の長鎖組成物を含んでいる。具体的に、長鎖組成物の組合せは、本出願の任意の実施形態に係るn種類の長鎖組成物を、互いに独立して含んでいる。ここで、nは、一般的には2~40の正の整数であり、好ましくは4~20または5~10の正の整数である。また、「互いに独立して」との表現が具体的に意味しているのは、例えば、組成物が互いに独立して梱包されていることや、互いに独立して分離されていること(すなわち、同じパッケージの中で複数の分画に分けられていること)である。
【0024】
この実施形態によると、第i長鎖組成物における長鎖アルカンの長鎖カルボン酸に対する質量比をRiとし、第1長鎖組成物における長鎖アルカンの長鎖カルボン酸に対する質量比をR1とし、第n長鎖組成物における長鎖アルカンの長鎖カルボン酸に対する質量比をRnとすると、Ri-1/Riは、一般的には1以上であり、好ましくは1~20、1.0001~10、1.001~10、1.01~10、1.1~5または1.5~2である。ここで、iは、2~nの任意の正の整数である。
【0025】
本出願のこの実施形態によると、好適には、R1/Rnは1超であり、好ましくは1.0001~30、1.001~20、1.01~10、1.1~5または1.5~2である。
【0026】
本出願の実施形態によると、長鎖組成物の組合せにおいて、n種類の長鎖組成物は、それぞれ別々に製造されたものである。長鎖組成物の製造方法は、本明細書において後述する。
【0027】
本出願の実施形態によると、長鎖組成物の組合せにおいて、n種類の長鎖組成物のうち任意の2種類の重量比(長鎖組成物の量に基づいて計算する)は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。好ましくは、同一または実質的に同一である。
【0028】
本出願の他の実施形態によると、長鎖組成物の組合せに含まれているn種類の長鎖組成物のうち任意の2種類の重量比(長鎖アルカンの量に基づいて計算する)は、同一または実質的に同一であってもよい。
【0029】
本出願の実施形態によると、長鎖組成物を1種類の方法により製造してもよい。具体例を挙げると、この製造方法は、下記の混合工程を少なくとも含む。
混合工程:長鎖アルカンおよび長鎖カルボン酸を上述の質量比で混合して、長鎖組成物を得る工程。任意構成で、加熱および攪拌しながら混合する。加熱について、加熱温度としては、45~70℃または50~60℃が挙げられる。また、攪拌について、攪拌速度としては、50~250rpmまたは150~250rpmが挙げられる。さらに、均一になるまで混合することが好ましく、このとき均一な液体混合物が得られる。
【0030】
本出願の実施形態によると、製造方法の混合工程において、水およびpH調整剤をさらに加える。pH調整剤は、例えばアルカリであり、とりわけ水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される1つ以上である。
【0031】
本出願の実施形態によると、製造方法は、長鎖組成物に対して水およびpH調整剤を加える工程をさらに含む。任意構成で、この工程は、加熱および攪拌しながら行う。加熱について、加熱温度としては、45~70℃または50~60℃が挙げられる。さらに、攪拌について、攪拌速度としては、50~250rpmまたは150~250rpmが挙げられる。pH調整剤は、例えばアルカリであり、とりわけ水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される1つ以上である。
【0032】
本出願の実施形態によると、加える水の質量は、長鎖アルカンおよび長鎖カルボン酸の合計質量に対して、一般的には0.5~10倍であり、好ましくは1~5倍または1~3倍である。
【0033】
本出願の実施形態によると、加えるpH調整剤の量は、一般的には長鎖組成物のpHが5~12となる量であり、好ましくはpHが7~10、7.5~9または7.5~8.0となる量である。
【0034】
本出願の実施形態によると、本出願はまた、長鎖二塩基酸の製造方法にも関する。この長鎖二塩基酸は、C9~18であり、直鎖または分枝であり、飽和または不飽和である脂肪族ジカルボン酸からなる群より選択される1つ以上の長鎖二塩基酸である。長鎖二塩基酸は、好ましくは、C9~18の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸からなる群より選択される1つ以上の長鎖二塩基酸である。長鎖二塩基酸は、好ましくは、ドデカン二酸、テトラデカン二酸およびヘキサデカン二酸からなる群より選択される1つ以上の長鎖二塩基酸である。とりわけ、長鎖二塩基酸は、ドデカン二酸である。
【0035】
本出願の実施形態によると、上述の製造方法は、下記工程を含む。
(1)本出願のいずれか1つの実施形態に係る長鎖組成物または長鎖組成物の組合せ(総称して長鎖組成物と呼ぶ)を提供する工程。
(2)発酵菌および発酵培地の存在下で長鎖組成物を発酵させて、長鎖組成物を長鎖二塩基酸に転化させる工程。
【0036】
本出願の実施形態によると、上述の製造方法において、発酵菌は、完全α,ω酸化経路を有している酵母である。好ましくは、発酵菌は、Candida属、Cryptococcus属、Endomyces属、Hansenula属、Pichia属、Rhodotorula属、Torulopsis属およびTrichosporon属からなる群より選択される1種類以上の酵母である。より好ましくは、発酵菌は、Candida属から選択される1種類以上の酵母である。とりわけ、発酵菌は、Candida tropicalisである。さらにとりわけ、発酵菌は、Candida tropicalisの変異株PF-UV-56である(China General Microbiological Culture Collection Centerに寄託、寄託番号:CGMCC No. 0356、1998年8月31日)。
【0037】
本出願の実施形態によると、上述の製造方法において、発酵培地は、本技術分野において発酵により長鎖二塩基酸を製造する際に用いられる、従来の発酵培地であってよい。発酵培地は、一般的に、10~60g/Lの炭素源、1~10g/Lの窒素源、1~10g/Lのリン源、0.1~50ppmの微量金属元素源などを含んでいる。炭素源の例としては、グルコース、スクロース、マルトース、フルクトース、糖蜜、グリセロール、ソルビトール、アラビノース、ラムノース、メタノールおよびエタノールからなる群より選択される1つ以上が挙げられる。窒素源の例としては、酵母抽出物、ペプトン、コーンスティープリカー、尿素、アンモニウム塩および硝酸塩からなる群より選択される1つ以上が挙げられる。リン源の例としては、オルトリン酸塩、リン酸一水素塩およびリン酸二水素塩からなる群より選択される1つ以上が挙げられる。好ましくは、リン源は、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素ナトリウムおよびリン酸水素二ナトリウムからなる群より選択される1つ以上である。微量金属元素源の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛およびマンガンの、硫酸塩、塩酸塩、酢酸塩および硝酸塩からなる群より選択される1つ以上が挙げられる。微量金属元素源は、好ましくは、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化鉄および硫酸銅からなる群より選択される1つ以上である。特に好ましくは、発酵培地は、次の成分を含んでいる:20~28g/Lのスクロース、0.8~1.5g/Lのコーンスティープリカー、2.0~4.0g/Lの酵母抽出物、0.8~1.2g/Lの塩化ナトリウム、3.0~3.5g/Lのリン酸二水素カリウム、1.2~1.8g/Lの硫酸マグネシウム、1.2~4.8g/Lの尿素、1.5~2g/Lの硫酸アンモニウムおよび1.5~1.8g/Lの酢酸ナトリウム。
【0038】
本出願の実施形態によると、上述の製造方法において、発酵反応は、下記2つの工程を少なくとも含む。
予備工程:発酵菌および発酵培地を混合し、5~60時間発酵させて、発酵原料溶液を得る工程。予備工程の反応時間は、好ましくは10~40時間であり、より好ましくは20~30時間または24時間である。
転化工程:長鎖組成物を発酵原料溶液に加え、60~400時間発酵させて、長鎖組成物を長鎖二塩基酸に転化させる工程。転化工程の反応時間は、好ましくは100~300時間であり、より好ましくは100~160時間または100~140時間である。
【0039】
本出願の実施形態によると、上述の製造方法において、発酵菌の種培養液の投入量は、総液体保持体積に対して、一般的には2~30体積%であり、好ましくは5~20体積%または10~15体積%である。
【0040】
本出願の実施形態によると、上述の製造方法において、発酵反応の反応温度は、一般的には25~37℃であり、好ましくは28~32℃である。
【0041】
本出願の実施形態によると、上述の製造方法において、発酵反応の攪拌速度は、一般的には100~1000rpmであり、好ましくは120~500rpmまたは150~300rpmである。
【0042】
本出願の実施形態によると、上述の製造方法において、発酵反応における通気速度は、一般的には0.2~10.0VVMであり、好ましくは0.2~2.0VVMまたは0.5~1.0VVMである。
【0043】
本出願の実施形態によると、上述の製造方法において、発酵反応の反応時間は、一般的には65時間以上であり、好ましくは120時間超であり、より好ましくは130~400時間、130~300時間、130~200時間または138~160時間である。ここで、反応時間には、予備工程の反応時間および転化工程の反応時間が含まれる。
【0044】
本出願の実施形態によると、上記の製造方法において、長鎖組成物の投入量は、総液体保持体積1Lあたり、一般的には100~1000gであり、好ましくは100~500gまたは150~250gである。
【0045】
本出願の実施形態によると、上述の製造方法において、発酵培地の投入量は、総液体保持体積1Lあたり、通常は12~80gであり、好ましくは32~50g、35~45gまたは37~42gである。
【0046】
本出願の実施形態によると、上述の製造方法においては、予備工程において(好ましくは、予備工程の開始から24時間以内において)長鎖組成物を加えず、発酵反応のpHを自己調整状態とする。すなわち、この工程または期間においては、pHを調整しない。
【0047】
本出願の実施形態によると、上述の製造方法においては、転化工程の開始時において(好ましくは、予備工程の開始から24時間後において)、発酵反応のpHを6.0~7.5に調整し、好ましくは6.8~7.0に調整する。より好ましくは、その後、発酵反応のpHを0.05~0.4ずつ増加させ、好ましくは0.1~0.3ずつ増加させる。pHを増加させる時間間隔は、発酵反応の終了時までの間、5~60時間であり、好ましくは10~40時間、20~30時間または24時間である。
【0048】
本出願の実施形態によると、上述の製造方法においては、転化工程において、長鎖組成物をn個のバッチで加える(このことを、断続供給とも称する)。隣接するバッチの間の時間間隔は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。好ましくは、時間間隔は、同じである。時間間隔の例としては、5~60時間、10~40時間、20~30時間、24時間が挙げられる。nは、2~40の正の整数であり、好ましくは4~20または5~10の正の整数である。
【0049】
本出願の実施形態によると、上述の製造方法においては、転化工程において、本出願の実施形態のいずれか1つの長鎖組成物の組合せを使用し、n種類の長鎖組成物をn個のバッチにて加える。好ましくは、n種類の長鎖組成物を、第1長鎖組成物から第n長鎖組成物の順に加える。
【0050】
本出願の実施形態によると、上述の方法においては、転化工程において、長鎖組成物を反応時間に応じて連続的に加える(このことを、連続供給とも称する)。連続供給は、一定流速であってもよいし、そうでなくてもよい。好ましくは、連続供給は、一定流速である。
【0051】
本出願の実施形態によると、上述の製造方法においては、転化工程において、長鎖組成物を関数R=f(t)に従って連続的に加える。式中、Rは、長鎖アルカンの長鎖カルボン酸に対する質量比を表す。tは、転化工程の反応時間を表す。f()は、任意の非増加関数を表す。好ましくは、f()は、任意の減少関数、任意の単調減少関数または任意の線形減少関数を表す。
【0052】
本出願の実施形態によると、上述の製造方法は、発酵反応の反応産物(発酵液と称する)から長鎖二塩基酸を分離する工程をさらに含む。例えば、発酵反応の完了後において、得られた反応物を解乳化、膜濾過、酸析、濾過および乾燥に供して、長鎖二塩基酸生成物を得る。
【0053】
本出願の実施形態によると、本技術分野で周知の任意の従来の方法により解乳化を行ってよく、その方法は特に限定されない。例えば、発酵液のpHを8.5~10(好ましくは9~9.5)に調整し、温度を75~90℃に上昇させ、20~40分間保持することにより、解乳化を行ってもよい。
【0054】
本出願の実施形態によると、本技術分野で周知の任意の従来の方法により膜濾過を行ってよく、その方法は特に限定されない。例えば、発酵液を解乳化させて膜濾過した後、固液分離して清澄な発酵液を得ることにより、膜濾過を行ってもよい。濾過温度は、一般的には30~50℃であり、好ましくは40~50℃である。膜の孔径は、一般的には10~50nmであり、好ましくは20~25nmである。
【0055】
本出願の実施形態によると、本技術分野で周知の任意の従来の方法により酸析を行ってよく、その方法は特に限定されない。例えば、酸性pH調整剤を使用して清澄な発酵液のpHを3~5(好ましくは3~4)に調整し、長鎖二塩基酸を沈澱させることにより、酸析を行ってもよい。酸性pH調整剤は、一般的には強酸であり、硫酸、塩酸、硝酸などの1つ以上であってもよい。
【0056】
本出願の実施形態によると、本技術分野で周知の任意の従来の方法により濾過を行ってもよく、その方法は特に限定されない。例えば、板枠式濾過により濾過を行ってもよい。濾過圧力は、一般的には、0.5~1.0MPaである。濾過温度は、一般的には室温である(例えば20~30℃)。
【0057】
本出願の実施形態によると、本技術分野で周知の任意の従来の方法により感想を行ってもよく、その方法は特に限定されない。例えば、乾燥温度は、80~105℃であってよい。乾燥時間は、5~20時間であってよい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により、本出願をさらに詳細に説明する。しかし、本出願は、下記の実施例には限定されない。
【0059】
下記の実施例および比較例で採用している実験手順は、別途記載のない限り、本技術分野において従来採用されている物である。下記の実施例および比較例で使用している実験材料は、別途記載のない限り、生化学関係の販売者により市販されているものである。
【0060】
長鎖二塩基酸の総抽出率Tは、下記式により計算する。式中、Vは、長鎖二塩基酸の発酵液を膜濾過して未反応のアルカンを除去した後の、清澄な発酵液の体積(L)を表す。Mは、抽出した長鎖二塩基酸の乾燥重量(g)を表す。Cは、長鎖二塩基酸の下部タンクにおける濃度(g/L)を表す。
【0061】
【0062】
混合基質のモル転化率Kは、下記式により計算する。式中、Mは、抽出した長鎖二塩基酸の乾燥重量(g)を表す。M1は、アルカンの質量を表す。M2は、ラウリン酸の質量(g)を表す。mは、長鎖二塩基酸の分子量を表す。m1は、アルカンの分子量を表す。m2は、ラウリン酸の分子量を表す。
【0063】
【0064】
長鎖ジカルボン酸の生産強度Qは、下記式により計算する。式中、Cは、長鎖二塩基酸の下部タンクにおける濃度(g/L)を表す。Hは、発酵時間(h)を表す。
【0065】
【0066】
本出願の実施例においては、発酵菌の株としてCandida tropicalisの変異体PF-UV-56を選択し、長鎖アルカンを発酵させて長鎖二塩基酸を製造した。この変異体は、China General Microbiological Culture Collection Centerに寄託されており、寄託番号はCGMCC No. 0356である。
【0067】
[発酵種培養液の調製]
斜面培養で維持されている株を、4個の5L入り振盪フラスコに播種し、株を活性化させた(振盪フラスコの液体保持体積は、300mLとした)。培養温度:32℃、振盪インキュベーターの回転数:200rpmにて、株を培養した。48時間の培養後、1.2の活性化させた種培養液を、発酵種培養液とした。
【0068】
[発酵培地の組成]
・スクロース :20g/L
・コーンスティープリカー:0.8g/L
・酵母抽出物 :2.0g/L
・塩化ナトリウム :0.8g/L
・リン酸二水素カリウム :3.0g/L
・硫酸マグネシウム :1.2g/L
・尿素 :1.2g/L
・硫酸アンモニウム :1.5g/L
・酢酸ナトリウム :1.5g/L
【0069】
〔実施例1〕
(1)1650gのドデカンを準備し、330gのラウリン酸を加えた。得られた混合物を60℃に加熱し、150rpmで攪拌しながら混合および溶解させた。次に、1980の水を加えた。次に、混合を続けながら固体の水酸化ナトリウムを加えて、系のpHを8に調整し、混合基質を得た。
(2)15Lの発酵タンクで、長鎖二塩基酸へと発酵させた。総液体保持体積は、12Lであった。発酵菌の種培養液の体積は、1.2Lであった。発酵温度は、32℃であった。通気速度は、1.0VVMであった。攪拌速度は、250rpmであった。発酵の開始から0~24時間は、pHを調整しなかった。発酵の開始から24時間後にpHを7.0に調整し、その後、24時間ごとにpHを0.15ずつ増加させた。工程(1)で調製したアルカン/ラウリン酸混合基質を、5個のバッチに分けて発酵系に加えた。混合基質を加えた時刻は、発酵の開始から、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後および120時間後の時点であった。
(3)発酵時間は、合計で145時間であった。発酵の完了後、発酵液のpHを9.5に調整し、90℃に加熱して、20分間保持した。解乳化させた発酵液を膜濾過により固液分離して、清澄な水性発酵液を得た。濾過条件は、膜の孔径:20nm、濾過温度:40℃とした。清澄な水性発酵液に濃硫酸を加えて、pHを3に調整した。これにより、清澄な水性発酵液に含まれている長鎖二塩基酸を結晶化させて分離させた。分離させた長鎖二塩基酸を板枠式濾過して乾燥させ、長鎖二塩基酸の粗生成物を得た。濾過条件は、濾過圧力:0.5MPa、濾過温度:30℃とした。乾燥条件は、温度:80℃、乾燥時間:20時間とした。
【0070】
発酵の結果は、次の通りであった。工程(2)における長鎖二塩基酸の発酵濃度は、152.0g/Lであった。工程(3)における膜濾過の後で得られた清澄な発酵液は、13.4Lであった。酸析の後で得られた長鎖二塩基酸の粗生成物の質量は、1914.5gであった。酸の粗生成物の抽出率は、94%であった。アルカンおよびラウリン酸の混合基質のモル転化率は、62.4%であった。
【0071】
〔実施例2〕
(1)1900gのドデカンを準備し、190gのラウリン酸を加えた。得られた混合物を60℃に加熱し、250rpmで攪拌しながら混合および溶解させた。次に、2090の水を加えた。次に、混合を続けながら固体の水酸化ナトリウムを加えて、系のpHを7.5に調整し、混合基質を得た。
(2)15Lの発酵タンクで、長鎖二塩基酸へと発酵させた。総液体保持体積は、12Lであった。発酵菌の種培養液の体積は、1.2Lであった。発酵温度は、32℃であった。通気速度は、1.0VVMであった。攪拌速度は、250rpmであった。発酵の開始から0~24時間は、pHを調整しなかった。発酵の開始から24時間後にpHを7.0に調整し、その後、24時間ごとにpHを0.2ずつ増加させた。工程(1)で調製したアルカン/ラウリン酸混合基質を、5個のバッチに分けて発酵系に加えた。混合基質を加えた時刻は、発酵の開始から、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後および120時間後であった。
(3)発酵時間は、合計で150時間であった。発酵の完了後、発酵液のpHを9に調整し、75℃に加熱して、40分間保持した。解乳化させた発酵液を膜濾過により固液分離して、清澄な水性発酵液を得た。濾過条件は、膜の孔径:25nm、濾過温度:50℃とした。清澄な水性発酵液に濃硫酸を加えて、pHを4に調整した。これにより、清澄な水性発酵液に含まれている長鎖二塩基酸を結晶化させて分離させた。分離させた長鎖二塩基酸を、板枠式濾過して乾燥させ、二塩基酸の粗生成物を得た。濾過条件は、濾過圧力:1.0MPa、濾過温度:20℃とした。乾燥条件は、温度:105℃、乾燥時間:5時間とした。
【0072】
発酵の結果は、次の通りであった。工程(2)における長鎖二塩基酸の発酵濃度は、156.0g/Lであった。工程(3)における膜濾過の後で得られた清澄な発酵液は、13.6Lであった。酸析の後で得られた長鎖二塩基酸の粗生成物の質量は、1973.0gであった。酸の粗生成物の抽出率は、93%であった。アルカンおよびラウリン酸の混合基質のモル転化率は、60.2%であった。
【0073】
〔実施例3〕
(1)の1650gのドデカンを準備し、330gのラウリン酸を加えた。得られた混合物を60℃に加熱し、150rpmで攪拌しながら混合および溶解させた。次に、5940の水を加えた。次に、混合を続けながら固体の水酸化ナトリウムを加えて、系のpHを8に調整し、混合基質を得た。
(2)15Lの発酵タンクで、長鎖二塩基酸へと発酵させた。総液体保持体積は、12Lであった。発酵菌の種培養液の体積は、1.2Lであった。発酵温度は、32℃であった。通気速度は、1.0VVMであった。攪拌速度は、250rpmであった。発酵開始から0~24時間は、pHを調整しなかった。発酵の開始から24時間後にpHを7.0に調整し、その後、24時間ごとにpHを0.15ずつ増加させた。発酵開始から24時間後以降、工程(1)で調製したアルカン/ラウリン酸混合基質を連続供給モードで発酵系に加えた。流速は、66g/時間とした。
(3)発酵時間は、合計で144であった。発酵の完了後、発酵液のpHを9.5に調整し、90℃に加熱して、20分間保持した。解乳化させた発酵液を、膜濾過により固液分離して、清澄な水性発酵液を得た。濾過条件は、膜の孔径:20nm、濾過温度:40℃とした。清澄な水性発酵液に濃硫酸を加えて、pHを3に調整した。これにより、清澄な水性発酵液に含まれている長鎖二塩基酸を結晶化させて分離させた。分離させた長鎖二塩基酸を、板枠式濾過して乾燥させ、長鎖二塩基酸の粗生成物を得た。濾過条件は、濾過圧力:0.5MPa、濾過温度:30℃とした。乾燥条件は、温度:80℃、乾燥時間:20時間とした。
【0074】
発酵の結果は、次の通りであった。工程(2)における長鎖二塩基酸の発酵濃度は、153.0g/Lであった。工程(3)における膜濾過の後で得られた清澄な発酵液は、13.5Lであった。酸析の後で得られた長鎖二塩基酸の粗生成物の質量は、1941.6gであった。酸の粗生成物の抽出率は、94%であった。アルカンおよびラウリン酸の混合基質のモル転化率は、63.3%であった。
【0075】
〔比較例1〕
次の点を変更した以外は、実施例1に記載の通りに実験を行った:工程(1)においてアルカンおよびラウリン酸の混合基質を使用せず、工程(2)の発酵の際にアルカンのみをバッチで加えた(合計質量:1980g)。発酵時間は、合計で158時間であった。発酵の結果は、次の通りであった。工程(2)における長鎖二塩基酸の発酵濃度は、150.0g/Lであった。工程(3)における膜濾過の後で得られた清澄な発酵液は、13.0Lであった。酸析の後で得られた長鎖二塩基酸の粗生成物の質量は、1833gであった。酸の粗生成物の抽出率は、94%であった。アルカンおよびラウリン酸の混合基質のモル転化率は、58.2%であった。
【0076】
〔比較例2〕
次の点を変更した以外は、実施例1に記載の通りに実験を行った:工程(1)においてアルカンおよびラウリン酸の混合基質を使用せず、工程(2)においてラウリン酸のみをバッチで加えた(合計質量:1980g)。発酵時間は、合計で155時間であった。発酵の結果は、次の通りであった。工程(2)における長鎖二塩基酸の発酵濃度は、15.0g/Lであった。工程(3)における膜濾過の後で得られた清澄な発酵液は、12.0Lであった。酸析の後で得られた長鎖二塩基酸の粗生成物の質量は、169.2gであった。酸の粗生成物の抽出率は、94%であった。アルカンおよびラウリン酸の混合基質のモル転化率は、6.3%であった。
【0077】
〔比較例3〕
次の点を変更した以外は、実施例1に記載の通りに実験を行った:工程(1)においてアルカンおよびラウリン酸の混合基質を使用せず、工程(2)の発酵の際にアルカンのみをバッチで加えた(合計質量:1848g)。発酵時間は、合計で150時間であった。発酵の結果は、次の通りであった。工程(2)における長鎖二塩基酸の発酵濃度は、141.0g/Lであった。工程(3)における膜濾過の後で得られた清澄な発酵液は、12.9Lであった。酸析の後で得られた長鎖二塩基酸の粗生成物の質量は、1709.8gであった。酸の粗生成物の抽出率は、94%であった。アルカンおよびラウリン酸の混合基質のモル転化率は、58.2%であった。
【0078】
〔実施例4〕
次の点を変更した以外は、実施例1に記載の通りに実験を行った:工程(1)において、アルカンおよびラウリン酸を室温にて攪拌しながら混合し、1980gの水を加えた後、混合しながら固体の水酸化ナトリウムを加えて系のpHを8に調整し、混合基質を得た。発酵時間は、合計で144時間であった。発酵の結果は、次の通りであった。測定および計算の結果、工程(2)における長鎖二塩基酸の発酵濃度は、142.0g/Lであった。工程(3)における膜濾過の後で得られた清澄な発酵液は、13.2Lであった。酸析の後で得られた長鎖二塩基酸の粗生成物の質量は、1762gであった。酸の粗生成物の抽出率は、94%であった。アルカンおよびラウリン酸の混合基質のモル転化率は、57.4%であった。
【0079】
〔実施例5〕
次の点を変更した以外は、実施例1に記載の通りに実験を行った:工程(1)において、アルカンおよびラウリン酸を60℃にて攪拌しながら溶解させ、水を加えて水溶液とすることなく、得られた混合物をアルカリでpH調整せずに、直接工程(2)における発酵プロセスで使用した。発酵時間は、合計で144時間であった。発酵の結果は、次の通りであった。工程(2)における長鎖二塩基酸の発酵濃度は、135.0g/Lであった。工程(3)における膜濾過の後で得られた清澄な発酵液は、13.0Lであった。酸析の後で得られた長鎖二塩基酸の粗生成物の質量は、1650gであった。酸の粗生成物の抽出率は、94%であった。アルカンおよびラウリン酸の混合基質のモル転化率は、53.8%であった。
【0080】
〔実施例6〕
次の点を変更した以外は、実施例1に記載の通りに実験を行った:工程(1)において、アルカンおよびラウリン酸を60℃にて攪拌しながら溶解させ、水を加えて水溶液とし、この水溶液をアルカリでpH調整せずに、直接工程(2)における発酵プロセスで使用した。発酵時間は、合計で145時間であった。発酵の結果は、次の通りであった。工程(2)における長鎖二塩基酸の発酵濃度は、142.0g/Lであった。工程(3)における膜濾過の後で得られた清澄な発酵液は、13.5Lであった。酸析の後で得られた長鎖二塩基酸の粗生成物の質量は、1802gであった。酸の粗生成物の抽出率は、94%であった。アルカンおよびラウリン酸の混合基質のモル転化率は、58.7%であった。
【0081】
〔実施例7〕
(1)1800gのドデカンを準備し、300gのラウリン酸を加えた。得られた混合物を60℃に加熱し、150rpmで攪拌しながら混合および溶解させた。次に、4200gの水を加えた。次に、混合を続けながら固体の水酸化ナトリウムを加えて、系のpHを7.5に調整し、混合基質を得た。
(2)15Lの発酵タンクで、長鎖二塩基酸へと発酵させた。総液体保持体積は、12Lであった。発酵菌の種培養液の体積は、1.2Lであった。発酵温度は、32℃であった。通気速度は、1.0VVMであった。攪拌速度は、250rpmであった。発酵の開始から0~24時間は、pHを調整しなかった。発酵の開始から24時間後にpHを7.0に調整し、その後、24時間ごとにpHを0.2ずつ増加させた。工程(1)で調製したアルカン/ラウリン酸混合基質を、5個のバッチに分けて発酵系に加えた。混合基質を加えた時刻は、発酵の開始から、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後および120時間後の時点であった。
(3)発酵時間は、合計で153時間であった。発酵の完了後、実施例1の工程(1)と同じ方法により、長鎖二塩基酸を抽出した。
【0082】
発酵の結果は、次の通りであった。工程(2)における長鎖二塩基酸の発酵濃度は、160.0g/Lであった。工程(3)における膜濾過の後で得られた清澄な発酵液は、13.6Lであった。酸析の後で得られた長鎖二塩基酸の粗生成物の質量は、2030.4gであった。酸の粗生成物の抽出率は、94%であった。アルカンおよびラウリン酸の混合基質のモル転化率は、62.2%であった。
【0083】
〔実施例8〕
(1)1650gのドデカンを準備し、198gのラウリン酸を加えた。得られた混合物を60℃に加熱し、150rpmで攪拌しながら混合および溶解させた。次に、1848gの水を加えた。次に、混合を続けながら固体の水酸化ナトリウムを加えて、系のpHを8に調整し、混合基質を得た。
(2)15Lの発酵タンクで、長鎖二塩基酸へと発酵させた。総液体保持体積は、12Lであった。発酵菌の種培養液の体積は、1.2Lであった。発酵温度は、32℃であった。通気速度は、1.0VVMであった。攪拌速度は、250rpmであった。発酵の開始から0~24時間は、pHを調整しなかった。発酵の開始から24時間後に、pHを7.0に調整した。その後、24時間ごとにpHを0.2ずつ増加させた。工程(1)で調製したアルカン/ラウリン酸混合基質を、5個のバッチに分けて発酵系に加えた。混合基質を加えた時刻は、発酵開始から24時間後、48時間後、72時間後、96時間後および120時間後であった。
(3)発酵時間は、合計で142時間であった。発酵の完了後、実施例1の工程(1)と同じ方法により、長鎖二塩基酸を抽出した。
【0084】
発酵の結果は、次の通りであった。工程(2)における長鎖二塩基酸の発酵濃度は、148.0g/Lであった。工程(3)における膜濾過の後で得られた清澄な発酵液は、12.9Lであった。酸析の後で得られた長鎖二塩基酸の粗生成物の質量は、2048.9gであった。酸の粗生成物の抽出率は、94%であった。アルカンおよびラウリン酸の混合基質のモル転化率は、62.1%であった。
【0085】
〔実施例9〕
次の点を変更した以外は、実施例1に記載の通りに実験を行った:工程(1)において、アルカンおよびラウリン酸の組合せに代えて、テトラデカンおよびミリスチン酸の組合せを使用した。発酵時間は、合計で144時間であった。発酵の結果は、次の通りであった。工程(2)における長鎖二塩基酸の発酵濃度は、115.0g/Lであった。工程(3)における膜濾過の後で得られた清澄な発酵液は、13.0Lであった。酸析の後で得られた長鎖二塩基酸の粗生成物の質量は、1405.3gであった。酸の粗生成物の抽出率は、94%であった。アルカンおよびラウリン酸の混合基質のモル転化率は、53.2%であった。
【0086】
〔実施例10〕
次の点を変更した以外は、実施例1に記載の通りに実験を行った:工程(1)において、アルカンおよびラウリン酸の組合せに代えて、ヘキサデカンおよびパルミチン酸の組合せを使用した。発酵時間は、合計で144時間であった。発酵の結果は、次の通りであった。工程(2)における長鎖二塩基酸の発酵濃度は、98.0g/Lであった。工程(3)における膜濾過の後で得られた清澄な発酵液は、13.0Lであった。酸析の後で得られた長鎖二塩基酸の粗生成物の質量は、1197.6gであった。酸の粗生成物の抽出率は、94%であった。アルカンおよびラウリン酸の混合基質のモル転化率は、51.6%であった。
【0087】
〔実施例11〕
(1)1650gのドデカンを準備し、330gずつに5分割した。5分割したそれぞれに対して、33.0g、36.3g、39.6g、42.9gおよび46.2gのラウリン酸を加えて、組成比が異なるアルカンおよびラウリン酸の混合物を調製した(この混合物を、番号1~5と称する)。実施例1の工程(1)と同じ方法により、アルカンおよびラウリン酸の混合物を下処理した。
(2)実施例1の工程(2)と同じ方法により、長鎖二塩基酸へと発酵させた。工程(1)で調製したアルカン/ラウリン酸混合基質は、番号1~5の順番で発酵系に加えた。混合基質を加えた時刻は、発酵の開始から、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後および120時間後であった。
(3)発酵時間は、合計で140時間であった。発酵の完了後、実施例1の工程(3)と同じ方法により、長鎖二塩基酸の粗生成物を抽出した。
【0088】
発酵の結果は、次の通りであった。工程(2)における長鎖二塩基酸の発酵濃度は、149.0g/Lであった。工程(3)における膜濾過の後で得られた清澄な発酵液は、13.0Lであった。酸析の後で得られた長鎖二塩基酸の粗生成物の質量は、1820.8gであった。酸の粗生成物の抽出率は、94%であった。アルカンおよびラウリン酸の混合基質のモル転化率は、63.0%であった。
【0089】
〔実施例12〕
(1)1650gのドデカンを準備し、330gずつに5分割した。5分割したそれぞれに対して、52.8g、56.1g、59.4g、62.7gおよび66.0gのラウリン酸を加えて、組成比の異なるアルカンおよびラウリン酸の混合物を調製した(この混合物を、番号1~5と称する)。実施例1の工程(1)と同じ方法により、アルカンおよびラウリン酸の混合物を下処理した。
(2)実施例1の工程(2)と同じ方法により、長鎖二塩基酸へと発酵させた。工程(1)で調製したアルカン/ラウリン酸混合基質は、番号1~5の順番で発酵系に加えた。混合基質を加えた時刻は、発酵の開始から、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後および120時間後であった。
(3)発酵時間は、合計で140時間であった。発酵の完了後、実施例1の工程(3)と同じ方法により、長鎖二塩基酸の粗生成物を抽出した。
【0090】
発酵の結果は、次の通りであった。工程(2)における長鎖二塩基酸の発酵濃度は、154.0g/Lであった。工程(3)における膜濾過の後で得られた清澄な発酵液は、13.4Lであった。酸析の後で得られた長鎖二塩基酸の粗生成物の質量は、1939.8gであった。酸の粗生成物の抽出率は、94%であった。アルカンおよびラウリン酸の混合基質のモル転化率は、64.2%であった。
【0091】
〔実施例13〕
(1)1650gのドデカンを準備し、330ずつに5分割した。5分割したそれぞれに対して、33.0g、36.3g、39.6g、42.9gおよび46.2gのラウリン酸を加えた。実施例1の工程(1)と同じ方法により加熱して溶解させた。次に、それぞれに水を加えて、合計質量が768gになるようにした。固体の水酸化ナトリウムをさらに加えて、系のpHを7.5に調整し、組成比の異なるアルカンおよびラウリン酸の混合物を得た(この混合物を、番号1~5と称する)。
(2)実施例1の工程(2)に記載の通り、長鎖二塩基酸へと発酵させた。工程(1)で調製したアルカン/ラウリン酸混合基質は、番号1~5の順番で、一定の流速にて発酵系に連続供給した。番号1は発酵開始から24~48時間後に、番号2は発酵開始から48~72時間後に、番号3は発酵開始から72~96時間後に、番号4は発酵開始から96~120時間後に、番号5は発酵開始から120~144時間後に、それぞれ供給した。流速は、32g/時間とした。
(3)発酵時間は、合計で144時間であった。発酵の完了後、実施例1の工程(3)と同じ方法により、長鎖二塩基酸の粗生成物を抽出した。
【0092】
発酵の結果は、次の通りであった。工程(2)における長鎖二塩基酸の発酵濃度は、152.0g/Lであった。工程(3)における膜濾過の後で得られた清澄な発酵液は、13.2Lであった。酸析の後で得られた長鎖二塩基酸の粗生成物の質量は、1886.0であった。酸の粗生成物の抽出率は、94%であった。アルカンおよびラウリン酸の混合基質のモル転化率は、65.3%であった。
【国際調査報告】