(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】抗PD-1抗体による癌を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221221BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221221BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221221BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221221BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525207
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 US2020058808
(87)【国際公開番号】W WO2021091960
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517333392
【氏名又は名称】ジョンス セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュ, ジアン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA13
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
抗PD-1抗体を用いて癌を治療する方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における癌の治療方法であって、1000mg/kgを6週間に1回または400~600mg/kgを3週間に1回のいずれかで、抗PD-1抗体の用量を前記対象に投与することを含み、前記抗PD-1抗体は、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1)、配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、方法。
【請求項2】
前記抗PD-1抗体が配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗PD-1抗体が配列番号28のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号29のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記用量が、1000mg/kgで6週間毎に投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記用量が、400~600mg/kgで3週間毎に投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記用量が、400mg/kgで3週間毎に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記用量が、500mg/kgで3週間毎に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記用量が、600mg/kgで3週間毎に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記対象は、前記抗PD-1抗体を約12週間投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象は、前記抗PD-1抗体を約18週間投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象は、前記抗PD-1抗体を約24週間投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象は、前記抗PD-1抗体を約52週間投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象は、黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、腎細胞癌(RCC)(例えば、透明細胞RCC)、胃癌、膀胱癌、子宮内膜癌、任意の臓器のMSI-H癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、ホジキンリンパ腫、卵巣癌(例えば、類内膜卵巣癌)、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、急性骨髄性白血病(AML)、直腸癌、難治性の精巣癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、転移性皮膚扁平上皮癌、子宮頸癌、MSI高結腸癌、食道癌、中皮腫、乳癌およびトリプルネガティブ乳癌(TNBC)から選択される癌を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記癌が、黒色腫、胃癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、非小細胞肺癌(NSCLC)およびトリプルネガティブ乳癌(TNBC)から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、抗PD-1抗体および少なくとも一つの追加の治療薬を投与することを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記追加の治療薬が、前記抗PD-1抗体と同時に、または順次投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記追加の治療薬が、抗ICOS抗体である、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗ICOS抗体が、GSK3359609、BMS-986226またはKY1044である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗ICOS抗体が、ボプラテリマブである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗ICOSアゴニスト抗体の各用量が、0.1mg/kgである、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記抗ICOSアゴニスト抗体の各用量が、0.03mg/kgである、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象はヒトである、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月5日に出願された米国仮特許出願第62/930,955号の優先権の利益を主張するものであり、当該仮特許出願は、参照によりその全体が任意の目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
特定の用量の抗PD-1抗体を用いて癌を治療する方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
プログラム死1(PD-1)タンパク質は、受容体のCD28ファミリーの阻害性メンバーであり、CD28、CTLA-4、ICOSおよびBTLAも含む。PD-1は、活性化B細胞、T細胞、および骨髄細胞の表面に発現される。PD-1は、膜近位免疫受容体チロシン阻害モチーフ(ITIM)および膜遠位チロシンベーススイッチモチーフ(ITSM)を含有する。CTLA-4に構造的に類似するが、PD-1は、B7-1およびB7-2結合に重要なMYPPYモチーフを欠く。さらに、CD28、ICOSおよびCTLA-4(CD28ファミリーの他のメンバー)はすべて、ホモ二量体形成を可能にする不対のシステイン残基を有し、PD-1は単量体として存在し、他のCD28ファミリーメンバーに特徴的な不対のシステイン残基を欠くと考えられる。PD-1受容体は、PD-リガンド-1(PD-L1)およびPD-リガンド-2(PD-L2)の二つのリガンドを有する。用語「PD-L1」は、CD274およびB7H 1としても知られるPD-1受容体のリガンドを指す。PD-L1は、細胞外IgV様ドメイン、細胞外IgC様ドメイン、膜貫通ドメインおよび約30個のアミノ酸の高度保存細胞内ドメインを有する290アミノ酸タンパク質である。PD-L1は、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージおよびB細胞)などの多くの細胞、ならびに造血細胞および非造血細胞(例えば、血管内皮細胞、膵島および免疫特権部位)に構成的に発現される。「PD-L2」という用語は、CD273およびB7-DCとしても知られるPD-1受容体のリガンドを指す。PD-L2は、ヒトにおいて、細胞外IgV様ドメイン、細胞外IgC様ドメイン、膜貫通ドメインおよび約30個のアミノ酸の細胞内ドメインを有する。PD-L2はPD-L1よりも発現が制限されており、その発現は、マクロファージ、樹状細胞、一部のB細胞サブセットおよび骨髄由来マスト細胞を含む造血細胞に主に限定される。
【0004】
PD-1は免疫チェックポイントとして機能し、T細胞の活性化を防ぐ働きをする。PD-1拮抗薬は、免疫系を活性化して腫瘍を攻撃し、癌の治療に成功し、場合によっては、他の化学療法治療薬よりも毒性が少ないことが示されている。PD-1拮抗薬はまた、他の化学療法薬との併用レジメンに使用することができる。現在承認されているPD-1拮抗薬には、抗PD-1抗体、オプジーボ(登録商標)およびキイトルーダ(登録商標)ならびに抗PD-L1抗体、テセントリック(商標)が含まれる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書において、抗PD-1抗体を定期的に投与することによって、癌を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、癌治療を必要とする対象(例えば、ヒト患者)における癌を治療する方法が提供され、方法は、複数回用量の抗PD-1抗体を対象に投与することを含む。
【0006】
一部の実施形態では、対象において癌を治療する方法が提供され、方法は、1000mg/kgを6週間に1回または400~600mg/kgを3週間に1回のいずれかで、抗PD-1抗体の用量を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR2、配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR3、配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1)、配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2および配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。
【0007】
一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、配列番号28のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号29のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0008】
一部の実施形態において、用量は、6週間毎に、1000mg/kgを投与される。一部の実施形態において、用量は、3週間毎に、400~600mg/kgを投与される。一部の実施形態において、用量は、3週間毎に、400mg/kgを投与される。
【0009】
一部の実施形態において、用量は、3週間毎に、500mg/kgを投与される。一部の実施形態において、用量は、3週間毎に、600mg/kgを投与される。
【0010】
一部の実施形態では、対象は、約12週間、抗PD-1抗体を投与される。一部の実施形態では、対象は、約18週間、抗PD-1抗体を投与される。一部の実施形態では、対象は、約24週間、抗PD-1抗体を投与される。一部の実施形態では、対象は、約52週間、抗PD-1抗体を投与される。
【0011】
一部の実施形態では、対象は、黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、腎細胞癌(RCC)(例えば、透明細胞RCC)、胃癌、膀胱癌、子宮内膜癌、任意の臓器のMSI-H癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、ホジキンリンパ腫、卵巣癌(例えば、類内膜卵巣癌)、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、急性骨髄性白血病(AML)、直腸癌、難治性の精巣癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、転移性皮膚扁平上皮癌、子宮頸癌、MSI高結腸癌、食道癌、中皮腫、乳癌およびトリプルネガティブ乳癌(TNBC)から選択される癌を有する。一部の実施形態では、癌は、黒色腫、胃癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、非小細胞肺癌(NSCLC)およびトリプルネガティブ乳癌(TNBC)から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、方法は、抗PD-1抗体および少なくとも一つの追加の治療薬を投与することを含む。一部の実施形態では、追加の治療薬は、抗PD-1抗体と同時に、または順次投与される。一部の実施形態では、追加の治療薬は、抗ICOS抗体である。一部の実施形態では、抗ICOS抗体は、GSK3359609、BMS-986226またはKY1044である。いくつかの実施形態では、抗ICOS抗体は、ボプラテリマブである。
【0013】
一部の実施形態において、抗ICOSアゴニスト抗体の各用量は、0.1mg/kgである。一部の実施形態において、抗ICOSアゴニスト抗体の各用量は、0.03mg/kgである。
【0014】
一部の実施形態では、対象はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、JTX-2014を、80mg、240mg、400mg、500mg、800mg、1000mgおよび1200mgをそれぞれ、3週間間隔で投与した後の抗PD-1抗体(JTX-4014)の濃度の経時的な変化を示す。
【0016】
【
図2】
図2は、JTX-2014を、800mg、1000mgおよび1200mgをそれぞれ、6週間間隔で投与した後の抗PD-1抗体(JTX-4014)の濃度の経時的な変化を示す。
【0017】
【
図3】
図3は、800、1000および1200mg/kgのQ6Wを18週間、3用量投与した場合のシミュレートした経時的な血清濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一般に、プログラム死1(PD-1)に対する抗体を使用する治療方法が提供される。かかる方法には、癌を治療する方法が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、癌を治療する方法は、抗PD-1抗体(例えば、以下に記載されるJTX-4014)を定期的に投与することを含む。一部の実施形態では、抗PD-1抗体の用量は、3週間に1回投与される。一部の実施形態では、抗PD-1抗体の用量は、6週間に1回投与される。一部の実施形態では、400~600mg/kgまたは500mg/kgの抗PD-1抗体の用量は、3週間に1回投与される。一部の実施形態では、1000mg/kgの用量の抗PD-1抗体が、6週間に1回投与される。
【0019】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、組織的な目的のためのみであり、記載される主題を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0020】
特許出願、特許公報、およびGenbank受託番号を含む、本明細書に引用されるすべての参考文献は、各個別の参考文献が、参照によりその全体が組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
本明細書に記述または参照される技術および手順は、一般的によく理解されており、当業者によって従来の方法論を使用して広く使用され、広く使用される方法論は、以下に記載される、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3rd.edition(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M.Ausubel,et al.eds.,(2003));the series METHODS IN ENZYMOLOGY(Academic Press,Inc.):PCR2:A PRACTICAL APPROACH(M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor eds.(1995)),Harlow and Lane,eds.(1988)ANTIBODIES,A LABORATORY MANUAL,and ANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney,ed.(1987));Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney),ed.,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993-8)J.Wiley and Sons;Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989);Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995);and Cancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVita et al.,eds.,J.B.Lippincott Company,1993);and updated versions thereof。
【0022】
I.定義
別途定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者に一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の必要がない限りまたは明示的に示されていない限り、単数形用語は複数形を含み、複数形用語は単数形を含むものとする。さまざまな情報源または参考文献の間で定義に矛盾がある場合は、本明細書に提供される定義が優先される。
【0023】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、「からなる」実施形態および/または「本質的にからなる」実施形態を含むことが理解される。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、別段の指示がない限り、複数の参照を含む。本明細書の「または」という用語の使用は、代替物が相互に排他的であることを意味するものではない。
【0024】
本出願では、「または」の使用は、当業者によって明示的に記載または理解されない限り、「および/または」を意味する。複数の従属請求項の文脈において、「または」の使用は、複数の先行する独立請求項または従属請求項を遡って指す。
【0025】
当業者に理解されるように、本明細書における値またはパラメータの「約」への言及は、その値またはパラメータ自体に向けられた実施形態を含む(および説明する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0026】
本明細書で使用される場合、「PD-1」および「プログラム死1」は、細胞におけるPD-1の発現およびプロセシングから生じる任意の天然PD-1を指す。用語は、特に指示がない限り、霊長類(例えば、ヒトおよびカニクイザル)および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含む、任意の脊椎動物源由来のPD-1を含む。用語はまた、例えば、スプライスバリアントまたはアレルバリアントなどの、PD-1の天然に存在するバリアントを含む。(シグナル配列、アミノ酸1~20を有する)例示的なヒトPD-1前駆体タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1に示される。例示的な成熟ヒトPD-1のアミノ酸配列は、配列番号4に示される。(シグナル配列、アミノ酸1~20を有する)例示的なマウスPD-1前駆体タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2に示される。例示的な成熟マウスPD-1のアミノ酸配列は、配列番号5に示される。(シグナル配列、アミノ酸1~20)を有する例示的なカニクイザルPD-1前駆体タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号3に示される。例示的な成熟カニクイザルPD-1のアミノ酸配列は、配列番号6に示される。
【0027】
抗原またはエピトープに「特異的に結合する」という用語は、当該技術分野でよく理解される用語であり、かかる特異的結合を決定する方法も当該技術分野で周知である。分子は、代替の細胞または物質とよりも、特定の細胞または物質と、より頻繁に、より速く、より長い持続時間で、および/またはより高い親和性で反応または会合する場合、「特異的結合」または「優先結合」を示すと言われる。抗体は、他の物質に結合するよりも、より高い親和性、結合力、より容易に、および/またはより長い持続時間で結合する場合、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。例えば、PD-1エピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、他のPD-1エピトープまたは非PD-1エピトープに結合するよりも、より高い親和性、結合力、より容易に、および/またはより長い持続時間でこのエピトープに結合する抗体である。また、この定義を読むことにより、例えば、第一の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分またはエピトープ)は、第二の標的に特異的または優先的に結合する場合がある、または結合しない場合があることも理解される。したがって、「特異的結合」または「優先結合」は、必ずしも排他的結合(それを含むことができるが)を必要としない。一般的に、必ずしもそうとは限らないが、結合への言及は優先結合を意味する。「特異性」とは、抗原に選択的に結合する結合タンパク質の能力を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗原結合分子(例えば、抗体、抗体断片、または抗体結合領域を含有する足場タンパク質)が結合する標的分子(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物、または脂質などの抗原)上の部位を指す。エピトープは、アミノ酸、ポリペプチド、または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面群を含むことが多く、特定の三次元構造特性および特定の電荷特性を有する。エピトープは、標的分子の隣接および/または並置された非隣接残基(例えば、アミノ酸、ヌクレオチド、糖、または脂質部分)の両方から形成され得る。隣接残基(例えば、アミノ酸、ヌクレオチド、糖、脂質部分)から形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒への曝露時に保持されるが、三次フォールディングによって形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒での処理時に失われる。エピトープは、少なくとも3個、少なくとも5個または8~10個の残基(例えば、アミノ酸またはヌクレオチド)を含み得るが、これらに限定されない。一部の例では、エピトープは、長さが20残基未満(例えば、アミノ酸またはヌクレオチド)、15残基未満または12残基未満である。二つの抗体は、抗原に対して競合結合を示す場合、抗原内の同エピトープに結合してもよい。いくつかの実施形態では、エピトープは、抗原結合分子上のCDR残基に対してある一定の最小距離によって識別され得る。いくつかの実施形態では、エピトープは、上記の距離によって識別されてもよく、抗体残基と抗原残基との間の結合(例えば、水素結合)に関与する残基にさらに限定されてもよい。エピトープは、様々なスキャンによっても特定されてもよく、例えば、アラニンまたはアルギニンのスキャンは、抗原結合分子が相互作用することができる一つまたは複数の残基を示してもよい。明示的に示されない限り、エピトープとしての残基のセットは、他の残基が特定の抗体のエピトープの一部であることを除外しない。むしろ、このようなセットの存在は、エピトープの最小限の系列(または種のセット)を示す。したがって、一部の実施形態では、エピトープとして識別される残基のセットは、抗原上のエピトープの残基の排他的リストではなく、抗原に関連する最小限のエピトープを示す。
【0029】
本明細書の「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体(二重特異性T細胞誘導など)および三重特異性抗体)ならびに抗体断片を含むがこれらに限定されない、さまざまな抗体構造を包含する。
【0030】
抗体という用語は、Fv、一本鎖Fv(scFv)、Fab、Fab’、di-scFv、sdAb(単一ドメイン抗体)、および(Fab’)2(化学的に連結されたF(ab’)2を含む)などの抗原に結合することができる断片を含むが、これらに限定されない。抗体のパパイン消化により、それぞれが単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と称される二つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化できることが名称に反映されている残りの「Fc」断片とが生じる。ペプシン処理は、二つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができるF(ab’)2断片を生成する。抗体という用語はまた、限定されないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびマウス、ヒト、カニクイザルなどのさまざまな種の抗体を含む。さらに、本明細書に提供されるすべての抗体構築物について、他の生物からの配列を有するバリアントも企図される。したがって、抗体のヒトバージョンが開示される場合、当業者であれば、ヒト配列ベースの抗体をマウス、ラット、ネコ、イヌ、ウマなどの配列へと形質転換する方法を理解するであろう。抗体断片はまた、一本鎖scFv、タンデムdi-scFv、ダイアボディ、タンデムtri-sdcFv、ミニボディなどのいずれかの配向も含む。抗体断片はまた、ナノボディ(軽鎖を含まない重鎖の可変ドメインの対などの単一の単量体ドメインを有する抗体である、sdAb)を含む。一部の実施形態では、抗体断片を、特異的な種(例えば、ヒトscFvまたはマウスscFv)と呼ぶことができる。これは、構築物の源ではなく、非CDR領域の少なくとも一部の配列を示す。
【0031】
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体集団の一抗体を指し、すなわち、その集団を含む個々の抗体は、わずかな量で存在し得る自然に発生する可能性のある変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位に向けられている。さらに、異なる決定因子(エピトープ)に向けられている異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調合剤とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原の単一の決定因子に向けられている。したがって、モノクローナル抗体の試料は、抗原の同じエピトープに結合することができる。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特性を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,1975,Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてもよく、または米国特許 第4,816,567号に記載されるように組換えDNA法によって作製されてもよい。モノクローナル抗体はまた、例えばMcCafferty et al.,1990,Nature 348:552-554に記載される技術を使用して生成されたファージライブラリから単離することもできる。
【0032】
「CDR」という用語は、当業者に対する少なくとも一つの識別方法によって定義される相補性決定領域を示す。一部の実施形態では、CDRは、Chothia番号付けスキーム、Kabat番号付けスキーム、KabatとChothiaとの組み合わせ、AbM定義、接触定義、ならびに/またはKabat、Chothia、AbM、および/もしくは接触定義の組み合わせのいずれかに従って定義され得る。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)は、L1のアミノ酸残基24~34、L2の50~56、L3の89~97、H1の31~35B、H2の50~65、およびH3の95~102において生じる(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))。AbM定義は、例えば、L1のアミノ酸残基24~34、L2の50~56、L3の89~97、H1のH26~H35B、H2の50~58、およびH3の95~102におけるCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)を含み得る。接触定義は、例えば、L1のアミノ酸残基30~36、L2の46~55、L3の89~96、H1の30~35、H2の47~58、およびH3の93~101におけるCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)を含み得る。Chothia定義は、例えば、L1のアミノ酸残基24~34、L2の50~56、L3の89~97、H1の26~32…34、H2の52~56、およびH3の95~102におけるCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3)を含み得る。VH中のCDR1を除き、CDRは、一般に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。抗体内のさまざまなCDRを適切な数字および鎖の種類によって指定することができ、限定されることなく、a)CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3、b)CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3、c)LCDR-1、LCDR-2、LCDR-3、HCDR-1、HCDR-2、およびHCDR-3、またはd)LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3などが含まれる。本明細書で使用される「CDR」という用語は、超可変ループを含むHVRまたは「超可変領域」を包含する。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、および96~101(H3)に生じる (Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)。
【0033】
「重鎖可変領域」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも三つの重鎖CDRを含む領域を指す。一部の実施形態では、重鎖可変領域は、三つのCDRと、少なくともFR2およびFR3とを含む。一部の実施形態では、重鎖可変領域は、少なくとも重鎖HCDR1、フレームワーク(FR)2、HCDR2、FR3、およびHCDR3を含む。一部の実施形態では、重鎖可変領域はまた、FR1の少なくとも一部および/またはFR4の少なくとも一部を含む。
【0034】
「重鎖定常領域」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも三つの重鎖定常ドメインのCH1、CH2およびCH3を含む領域を指す。当然ながら、ドメイン内の非機能変更的欠失および変更は、別段の指定がない限り、「重鎖定常領域」という用語の範囲内に包含される。非限定的な例示的重鎖定常領域は、γ、δ、およびαを含む。非限定的な例示的重鎖定常領域は、ε、およびμも含む。各重定常領域は、抗体アイソタイプに対応する。例えば、γ定常領域を含む抗体はIgG抗体であり、δ定常領域を含む抗体はIgD抗体であり、α定常領域を含む抗体はIgA抗体である。さらに、μ定常領域を含む抗体はIgM抗体であり、ε定常領域を含む抗体はIgE抗体である。特定のアイソタイプは、サブクラスにさらに細分化することができる。例えば、IgG抗体には、IgG1(γ1定常領域を含む)抗体、IgG2(γ2定常領域を含む)抗体、IgG3(γ3定常領域を含む)抗体、およびIgG4(γ4定常領域を含む)抗体が含まれるが、これらに限定されず、IgA抗体には、IgA1(α1定常領域を含む)抗体およびIgA2(α2定常領域を含む)抗体が含まれるがこれらに限定されず、IgM抗体にはIgM1およびIgM2が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
「重鎖」という用語は、本明細書で使用される場合、リーダー配列を伴う、または伴わない、少なくとも重鎖可変領域を含むポリペプチドを指す。一部の実施形態では、重鎖は、重鎖定常領域の少なくとも一部を含む。「完全長重鎖」という用語は、本明細書で使用される場合、リーダー配列を伴う、または伴わない、重鎖可変領域および重鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0036】
「軽鎖可変領域」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも三つの軽鎖CDRを含む領域を指す。一部の実施形態では、軽鎖可変領域は、三つのCDRと、少なくともFR2およびFR3とを含む。一部の実施形態では、軽鎖可変領域は、少なくとも軽鎖LCR1、フレームワーク(FR)2、LCD2、FR3、およびLCD3を含む。例えば、軽鎖可変領域は、軽鎖CDR1、フレームワーク(FR)2、CDR2、FR3、およびCDR3を含むことができる。一部の実施形態では、軽鎖可変領域はまた、FR1の少なくとも一部および/またはFR4の少なくとも一部を含む。
【0037】
「軽鎖定常領域」という用語は、本明細書で使用される場合、軽鎖定常ドメイン、CLを含む領域を指す。非限定的な例示的な軽鎖定常領域には、λ およびκを含む。当然ながら、ドメイン内の非機能変更的欠失および変更は、別段の指定がない限り、「軽鎖定常領域」という用語の範囲内に包含される。
【0038】
「軽鎖」という用語は、本明細書で使用される場合、リーダー配列を伴う、または伴わない、少なくとも軽鎖可変領域を含むポリペプチドを指す。一部の実施形態では、軽鎖は、軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む。「完全長軽鎖」という用語は、本明細書で使用される場合、リーダー配列を伴う、または伴わない、軽鎖可変領域および軽鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0039】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の合計の強度を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般的に解離定数(KD)によって表され得る。親和性は、当該技術分野で公知の一般的方法によって測定することができる(例えば、ELISA KD、KinExA、生体層干渉計(BLI)、および/または本明細書に記載されるものを含む表面プラズモン共鳴デバイス(BIAcore(登録商標)デバイスなど)など)。
【0040】
本明細書で使用される場合、「KD」という用語は、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。
【0041】
一部の実施形態では、抗体の「KD」、「Kd」または「Kd」、または「Kd値」は、約10応答単位(RU)で、固定化抗原CM5チップを用いて、25℃でBIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、N.J.)を使用した表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。簡潔に述べると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore,Inc.)は、サプライヤーの説明書に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化される。抗原は、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.8に希釈で5μg/ml(約0.2μM)に希釈されて、その後、5μL/分の流速で注入されて、約10応答単位(RU)の結合タンパク質を達成する。抗原の注射後、1Mのエタノールアミンを注射して、未反応の基を遮断する。動態測定については、ポリペプチドの連続希釈、例えば全長抗体を、0.05%のTWEEN-20(商標)界面活性剤(PBST)を有するPBSに、25℃、約25μL/分の流速で注入する。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、会合および解離センサーグラムを同時に適合させることによって、単純な1対1のLangmuir結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用して計算される。平衡解離定数(Kd)は、比koff/konとして計算される。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。上述の表面プラズモン共鳴アッセイによって会合速度(on速度)が106M-1s-1を超える場合、on速度は、蛍光消光技術を使用することによって決定することができ、この技術は、蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nmのバンドパス)の増加または減少を、ストップフロー装備の分光光度計(Aviv Instruments社)または攪拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic社)のような分光計で測定した場合、増加した濃度の抗原の存在下で、PBS中の25℃の20nMの抗抗原抗体、pH7.2で測定する。
【0042】
「表面プラズモン共鳴」は、例えば、BIAcore(商標)システム(BIAcore International AB、GE Healthcare社、ウプサラ、スウェーデン、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによって、リアルタイムの生体特異性相互作用の分析を可能にする光学現象を示す。さらなる説明については、Jonsson et al.(1993)Ann.Biol.Clin.51:19-26を参照されたい。
【0043】
「Biolayer interferometry」は、バイオセンサーチップおよび内部参照層上の固定化タンパク質の層から反射された光の干渉パターンを分析する光学分析技術を指す。バイオセンサーチップに結合された分子の数の変化は、リアルタイムで測定することができる干渉パターンのシフトを引き起こす。バイオレイヤー干渉法のための非限定的な例示的な装置は、ForteBio Octet(登録商標)RED96システム(Pall Corporation)である。例えば、Abdiche et al.,2008,Anal.Biochem.377:209-277を参照されたい。
【0044】
「生物学的活性」という用語は、分子の任意の一つまたは複数の(インビボで天然に存在するか、または組み換え手段によって提供される、もしくは可能になる)生物学的特性を指す。生物学的特性としては、限定されないが、受容体に結合すること、細胞増殖を誘導すること、細胞増殖を阻害すること、他のサイトカインを誘導すること、アポトーシスを誘導すること、および酵素活性が挙げられる。一部の実施形態では、PD-1タンパク質の生物活性には、例えば、抗原特異的T細胞のアポトーシスの促進、制御性T(Treg)細胞のアポトーシスの低減、T細胞の活性化の阻害、T細胞の増殖の阻害およびT細胞アネルギーまたは消耗の促進が含まれる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」は、非ヒト可変領域のフレームワーク領域中の少なくとも一つのアミノ酸が、ヒト可変領域由来の対応するアミノ酸で置換された抗体を指す。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも一つのヒト定常領域またはその断片を含む。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、Fab、scFv、(Fab’)2などの抗体断片である。ヒト化という用語はまた、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(Fv、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の抗原結合サブ配列など)である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態も示し、これは非ヒト免疫グロブリンの最小限の配列を含有する。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換される、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含み得る。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも存在しないが、抗体の性能をさらに精密化し、最適化するために含有される残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、実質的にすべての少なくとも一つの、典型的には二つの可変ドメインを含んでもよく、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのドメインに対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のドメインである。一部の実施形態では、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部を含んでもよい。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体に関して変更された一つ以上のCDR(CDR L1、CDR L2、CDR L3、CDR H1、CDR H2および/またはCDR H3)を有し、これはまた、元の抗体から一つ以上のCDRから「誘導された」一つ以上のCDRとも呼ばれる。理解されるように、ヒト化配列は、その一次配列によって識別することができ、抗体が作製された過程を必ずしも示すものではない。
【0046】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」は、ヒトに産生される抗体、例えばXenoMouse(登録商標)マウスなどのヒト免疫グロブリン遺伝子を含む非ヒト動物に産生される抗体およびファージディスプレイなどのインビトロ方法を使用して選択される抗体を包含する(Vaughan et al.,1996,Nature Biotechnology,14:309-314;Sheets et al.,1998,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:6157-6162;Hoogenboom and Winter,1991,J.Mol.Biol.,227:381;Marks et al.,1991,J.Mol.Biol.,222:581)、抗体レパートリーはヒト免疫グロブリン配列に基づく。用語「ヒト抗体」は、ヒト配列である配列の属を示す。したがって、この用語は、抗体が作製されたプロセスではなく、関連する配列の属を標示している。
【0047】
「機能性Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。例示的な「エフェクター機能」には、Fc受容体結合、C1q結合、CDC、ADCC、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)の下方制御などが含まれる。こうしたエフェクター機能は、概して、Fc領域を結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わせ、様々なアッセイを用いて評価することができる。
【0048】
「天然配列Fc領域」は、自然界に存在するFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1 Fc領域(非AおよびAアロタイプ)、天然配列ヒトIgG2 Fc領域、天然配列ヒトIgG3 Fc領域、および天然配列ヒトIgG4 Fc領域ならびにそれらの天然型バリアントが含まれる。
【0049】
「バリアントFc領域」は、少なくとも一つのアミノ酸改変によって、天然配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、「バリアントFc領域」は、少なくとも一つのアミノ酸改変によって天然配列Fc領域のそれとは異なるアミノ酸配列を含み、なおかつ天然配列Fc領域の少なくとも一つのエフェクター機能を保持する。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、天然配列のFc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して、少なくとも1個のアミノ酸置換を有し、例えば、約1個~約10個のアミノ酸置換および好ましくは、天然配列のFc領域または親ポリペプチドのFc領域における約1個~約5個のアミノ酸置換を有する。一部の実施形態では、本明細書のバリアントFc領域は、天然配列Fc領域および/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の配列同一性を有し、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%の配列同一性を有する。
【0050】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述する。一部の実施形態では、FcγRは天然ヒトFcRである。一部の実施形態では、FcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、対立遺伝子バリアントおよび代替的にそれらの受容体のスプライス型を含む、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体を含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(活性化受容体)およびFcγRIIB(阻害受容体)を含み、それらは、その細胞質ドメインが主に異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を含有する(例えば、Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)を参照されたい)。FcRは、例えば、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991);Capel et al.,Immunomethods 4:25-34(1994);and de Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330-41(1995)に概説されている。将来特定されるものを含む他のFcRは、本明細書の用語「FcR」によって包含される。
【0051】
用語「Fc受容体」または「FcR」はまた、新生児受容体、FcRnも含み、これは、母体IgGの胎児への移動(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)およびKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))および免疫グロブリンのホメオスタシスの調節に関与する。FcRnへの結合を測定する方法は知られている(例えば、Ghetie and Ward.,Immunol.本日18(12):592-598(1997);Ghetie et al.,Nature Biotechnology,15(7):637-640(1997);Hinton et al.,J.Biol.Chem.279(8):6213-6216(2004);WO2004/92219(Hinton et al.)。
【0052】
「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因する生物活性を指し、抗体アイソタイプによって変化する。抗体エフェクター機能の例としては、以下が挙げられる:Clq結合および補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方制御およびB細胞活性化。
【0053】
「ヒトエフェクター細胞」は、一つ以上のFcRを発現し、エフェクター機能を実行する白血球である。いくつかの実施形態では、細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を行う。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞および好中球が挙げられる。エフェクター細胞は、天然源、例えば血液から単離されてもよい。
【0054】
「Antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity」または「ADCC」は、特定の細胞傷害性細胞(例えば、NK細胞、好中球およびマクロファージ)に存在するFc受容体(FcR)に結合された分泌Igが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞を抗原担持標的細胞に特異的に結合させ、その後、標的細胞をサイトトキシンで殺傷する、一形態の細胞傷害を意味する。ADCC、NK細胞を媒介するための初代細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、一方、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)のp.464の表3にまとめられている。対象分子のADCC活性を評価するために、例えば、米国特許第5,500,362号または5,821,337号または米国特許第6,737,056号(Presta)に記載のインビトロADCCアッセイを実施することができる。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、PBMC細胞およびNK細胞が含まれる。あるいはまたは追加的に、対象分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al.Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:652-656(1998)に開示される動物モデルにおいて、インビボに評価されてもよい。改変されたFc領域アミノ酸配列(バリアントFc領域を有するポリペプチド)を有する追加のポリペプチドバリアントおよびADCC活性の増加または減少は、例えば、米国特許第7,923,538号および米国特許第7,994,290号に記載される。
【0055】
「Complement dependent cytotoxicity」または「CDC」は、補体の存在下で標的細胞の溶解を意味する。古典的補体経路の活性化は、補体系(C1q)の第一の成分を(適切なサブクラスの)抗体に結合することによって開始され、抗体は同族抗原に結合される。補体活性化を評価するために、例えばGazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されるCDCアッセイを実施することができる。改変されたFc領域アミノ酸配列(バリアントFc領域を有するポリペプチド)を有するポリペプチドバリアントおよびC1q結合能力の増加または減少は、例えば、米国特許第6,194,551B1号、米国特許第7,923,538号、米国特許第7,994,290号およびWO1999/51642に記載されている。例えば、Idusogie et al.,J.Immunol.164:4178-4184(2000)を参照されたい。
【0056】
「改変」されたFcR結合親和性またはADCC活性を有するポリペプチドバリアントは、親ポリペプチドまたは天然配列Fc領域を含むポリペプチドと比較して、FcR結合活性および/またはADCC活性が増強または減少のいずれかを有するものである。FcRへの「結合の増加を示す」ポリペプチドバリアントは、親ポリペプチドよりも良好な親和性で少なくとも一つのFcRに結合する。FcRへの「結合の減少を示す」ポリペプチドバリアントは、親ポリペプチドよりも低い親和性で少なくとも一つのFcRに結合する。FcRへの結合の減少を示すこうしたバリアントは、認識できるFcRへの結合がほとんどまたは全くない場合があり、例えば、天然配列のIgG Fc領域と比較して、FcRへの結合が0~20%である。
【0057】
アッセイで使用されるポリペプチドバリアントおよび親抗体の量が本質的に同じである場合、親抗体よりも「ヒトエフェクター細胞の存在下で、抗体依存性細胞傷害(ADCC)をより効果的に媒介する」ポリペプチドバリアントは、インビトロまたはインビボでADCCを媒介するのにより効果的であるものである。一般的に、こうしたバリアントは、本明細書に開示されるインビトロADCCアッセイを使用して特定されるが、例えば、動物モデルなどで、ADCC活性を決定するための他のアッセイまたは方法が企図される。
【0058】
用語「実質的に類似している」または「実質的に同じ」は、本明細書で使用される場合、当業者が、二つ以上の値の差に、当該値によって測定される生物学的特性の文脈内で、生物学的および/または統計的有意性がほとんどまたは全くないと見なすような、二つ以上の数値の間の十分に高度な類似性を示す。一部の実施形態では、二つ以上の実質的に類似した値は、約5%以下、約10%以下、約15%以下、約20%以下、約25%以下、または約50%以下のうちのいずれか一つによる差がある。
【0059】
語句「実質的に異なっている」は、本明細書で使用される場合、当業者が、二つの値の差に、当該値によって測定される生物学的特性の文脈内で、統計的有意性があると見なすような、二つの数値の間の十分に高度な差を示す。一部の実施形態では、二つの実質的に異なる数値は、約10%超、約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、または約100%超のうちのいずれか一つによる差がある。
【0060】
語句「実質的に低減された」は、本明細書で使用される場合、当業者が、二つの値の差に、当該値によって測定される生物学的特性の文脈内で、統計的有意性があると見なすような、数値と基準数値との間の十分に高度な低減を示す。一部の実施形態では、実質的に低減された数値は、基準値と比較して、約10%超、約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、または約100%超のうちのいずれか一つによる低減がある。
【0061】
本明細書で使用される場合、ペプチド、ポリペプチドまたは抗体配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」および「相同性」は、特定のペプチドまたはポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義され、必要に応じて配列を調整し、ギャップを導入した後,最大パーセントの配列同一性を達成し、配列同一性の一部として保存的置換を考慮しない。アミノ酸配列同一性の割合を判定する目的のためのアライメントは、当技術分野の範囲内のさまざまな方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどの公開されているコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0062】
アミノ酸置換は、ポリペプチド中の一つのアミノ酸を別のアミノ酸と置換することを含みうるが、これに限定されない。例示的な置換を表1に示す。アミノ酸置換を目的の抗体に導入し、生成物を所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングすることができる。
【表1】
【0063】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従ってグループ化されうる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0064】
非保存的な置換は、これらのクラスの一つのメンバーを別のクラスに交換することを伴う。
【0065】
「単離された」という用語は、本明細書で使用される場合、それが一般的に天然に見られる、または生成される構成要素の少なくとも一部から分離された分子を指す。例えば、ポリペプチドは、それが産生された細胞の構成要素の少なくとも一部から分離されたときに「単離された」と称される。ポリペプチドが発現後に細胞によって分泌され、ポリペプチドを含有する上清を、それを産生した細胞から物理的に分離する場合、ポリペプチドを「単離する」と見なされる。同様に、ポリヌクレオチドは、それが典型的に天然に見出される大きなポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチドの場合には、ゲノムDNAまたはミトコンドリアDNAなど)の一部ではないとき、または、例えば、RNAポリヌクレオチドの場合、産生された細胞の少なくとも一部の構成要素から分離されるとき、「単離された」と称される。したがって、宿主細胞内のベクターに含まれるDNAポリヌクレオチドは、「単離された」と呼称され得る。
【0066】
「個体」または「対象」という用語は、本明細書では、動物、例えば哺乳動物を指すために互換的に使用される。一部の実施形態では、ヒト、齧歯類、サル、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、哺乳類実験動物、哺乳類家畜、哺乳類競技用動物、および哺乳類愛玩動物を含むがこれに限定されない、哺乳動物を治療する方法が提供される。一部の例では、「個体」または「対象」は、疾患または障害の治療を必要とする個体または対象を指す。一部の実施形態では、治療を受ける対象は、対象が治療に関連する障害を有する、または障害を発症する十分なリスクがあると特定されたという事実を指定する患者であり得る。
【0067】
「試料」または「患者試料」という用語は本明細書で使用される場合、例えば、物理的、生化学的、化学的、および/または生理学的特性に基づいて、特徴付けられるおよび/または特定される細胞および/または他の分子実体を含む、関心のある対象から得られるまたは誘導される組成物を指す。例えば、「疾患試料」という語句およびその変形は、特徴付けられるべき細胞および/または分子実体を含むことが予想される、または知られている、関心のある対象から得られた任意の試料を指す。「組織または細胞試料」とは、対象または患者の組織から得られた類似の細胞の集まりを意味する。組織または細胞試料の供給源は、新鮮、凍結および/または保存された器官または組織試料または生検もしくは吸引物からの固形組織;血液もしくは任意の血液成分;脳脊髄液、羊水、腹膜液、または間質液などの体液;対象の妊娠中または発達中の任意の時点の細胞であり得る。組織試料はまた、初代細胞または培養細胞または細胞株であってもよい。任意で、組織または細胞試料は、疾患組織/器官から得られる。組織試料は、保存剤、抗凝固剤、緩衝剤、固定剤、栄養剤、抗生物質など、自然界では組織と自然に混合されない化合物を含み得る。
【0068】
本明細書で使用される場合、「参照」は、比較の目的で使用される任意の試料、標準、またはレベルを指す。
【0069】
本明細書で使用される場合、「参照試料」、「参照細胞」または「参照組織」は、本発明の方法または組成物が識別に使用される疾患または状態を患わないことが既知であるか、または信じられている供給源から得られた試料、細胞、または組織を指す。一部の実施形態では、参照試料、参照細胞または参照組織は、本発明の組成物または方法を使用して、疾患または状態が特定されている同じ対象または患者の身体の健康な部分から取得される。一部の実施形態では、参照試料、参照細胞または参照組織は、本発明の組成物または方法を使用して、疾患または状態が特定されている対象または患者ではない1名以上の個体の身体の健康な部分から取得される。
【0070】
「疾患」または「障害」は、本明細書で使用される場合、治療が必要および/または望ましい状態を指す。
【0071】
「癌」および「腫瘍」は、本明細書で使用される場合、動物における任意の異常な細胞または組織の成長または増殖を指す互換性のある用語である。本明細書で使用される場合、「癌」および「腫瘍」という用語は、固形癌および血液/リンパ性癌を包含し、また悪性、前癌性、および異形成などの良性の増殖も包含する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。このような癌のより特定の非限定的な例としては、肺癌、小細胞肺癌(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、尿道癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、下垂体癌、食道癌、星状細胞腫、軟部組織肉腫、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化器癌、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌(子宮体部子宮内膜癌を含む)、唾液腺癌、腎臓癌、腎癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、脳癌、精巣癌、胆管癌、胆嚢癌、胃癌、黒色腫、中皮腫およびさまざまなタイプの頭頸部癌が挙げられる。
【0072】
本明細書で使用される場合、「治療」は、有益なまたは望ましい臨床結果を得るためのアプローチである。本明細書で使用される場合、「治療」は、ヒトを含む哺乳動物における疾患に対する治療薬の任意の投与または適用を網羅する。本開示の目的上、有益な、または望ましい臨床結果としては:一つまたは複数の症状の緩和、疾患の程度の減少、疾患の拡散(例えば、転移、例えば、肺またはリンパ節への転移)の予防または遅延、疾患の再発の予防または遅延、疾患の進行の遅延または緩徐、病状の改善、疾患または疾患の進行の阻害、疾患またはその進行の阻害または遅延、発生の阻止、および緩解(部分または完全)のいずれか一つまたは複数を含まれるが、これらに限定されない。また、「治療」には、増殖性疾患の病理学的結果の低減も含まれる。本明細書に提供される方法は、治療のこれらの態様のうちのいずれか一つまたは複数を企図する。上記に沿って、治療という用語は、障害のあらゆる側面の100%の除去を必要としない。
【0073】
「寛解」とは、抗PD-1抗体を投与しないことと比較して、一つまたは複数の症状の軽減または改善を意味する。「寛解」には、症状の持続時間の短縮または低減も含まれる。
【0074】
癌の文脈において、「治療する」という用語は、癌細胞の増殖の抑制、癌細胞の複製の抑制、全体的な腫瘍量の減少、および疾患に関連する一つまたは複数の症状の寛解のいずれかまたはすべてを含む。
【0075】
用語「生物学的試料」は、生物またはかつての生物由来の物質の量を意味する。かかる物質には、血液、(例えば、全血)、血漿、血清、尿、羊水、滑液、内皮細胞、白血球、単球、他の細胞、臓器、組織、骨髄、リンパ節および脾臓が含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
用語「対照」は、分析物を含有しないことが知られている組成物(「陰性対照」)または分析物を含有することが知られている組成物(「陽性対照」)を指す。陽性対照は、既知の濃度の分析物を含むことができる。「対照」、「陽性対照」および「較正器」は、本明細書では交換可能に使用され、既知の濃度の分析物を含む組成物を指す場合がある。「陽性対照」は、アッセイ性能特性を確立するために使用することができ、試薬(例えば、分析物)の完全性の有用な指標である。
【0077】
「抑制」または「抑制する」という用語は、任意の表現型特性の減少もしくは停止、またはその特性の発生率、程度、もしくは可能性の減少または停止を指す。「低減する」または「抑制する」とは、基準と比較して、活性、機能、および/または量を減少させる、低減する、または阻止することである。一部の実施形態では、「低減する」または「抑制する」とは、20%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。一部の実施形態では、「低減する」または「抑制する」とは、50%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。一部の実施形態では、「低減する」または「抑制する」とは、75%、85%、90%、95%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。一部の実施形態では、上述の量は、同じ期間にわたる対照用量(プラセボなど)と比較して、一定期間にわたって抑制または減少する。特に明記されていない限り、「低減する」、「抑制する」または「防止する」という用語は、常に完全な防止を示すものではなく、または要求とするものでもない。
【0078】
本明細書で使用される場合、「疾患の発症を遅延する」は、疾患(癌など)の発症を延期、阻害、緩徐、遅延、安定化、抑圧、および/または順延することを意味する。この遅延は、疾患および/または治療される個体の病歴に応じて、さまざまな時間の長さであり得る。当業者には明らかであるように、十分または有意な遅延は、実質的に、個体が疾患を発症しないことにおいて予防を包含し得る。例えば、転移の発生などの後期ステージの癌を遅延させることができる。
【0079】
「防止」は、本明細書で使用される場合、疾患にかかりやすいが、まだ疾患と診断されていない対象における疾患の発生または再発に関して、予防を提供することを含む。特に明記されていない限り、「低減する」、「抑制する」または「防止する」という用語は、常に完全な防止を示すものではなく、または要求とするものでもない。
【0080】
本明細書で使用される場合、機能または活性を「抑圧する」ことは、目的の条件またはパラメータを除く以外は、同一の条件で比較して、あるいは別の条件で比較して、機能または活性を低減することである。例えば、腫瘍増殖を抑圧する抗体は、抗体の非存在下での腫瘍の増殖速度と比較して、腫瘍の増殖速度を低減する。
【0081】
物質/分子、アゴニスト、またはアンタゴニストの「治療有効量」は、個体の病態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の反応を誘発するための物質/分子、アゴニスト、またはアンタゴニストの能力などの要因によって変化し得る。治療有効量はまた、物質/分子、アゴニスト、またはアンタゴニストの任意の毒性または有害効果を、治療有益効果が上回るものである。治療有効量は、一回または複数回の投与で送達され得る。治療有効量は、望ましい治療および/または予防結果を、必要な用量および期間で達成するための有効な量を指す。
【0082】
「予防有効量」は、望ましい予防結果を達成するのに必要な用量および期間の有効な量を指す。典型的には、必ずしもではないが、予防用量は、疾患の前または早期の対象に使用されるため、予防有効量は、治療有効量よりも少ないであろう。
【0083】
用語「医薬製剤」および「医薬組成物」は、活性成分の生物学的活性が効果的であることを可能にするような形態で、製剤が投与される対象に対して許容できないほど有毒である追加の成分を含有しない、調製物を指す。こうした製剤は、滅菌されていてもよい。「滅菌」製剤は、無菌であるか、または生きた微生物およびその胞子を本質的に含まない。
【0084】
「薬学的に許容可能な担体」とは、対象に投与するための「医薬組成物」を一緒に含む治療剤と共に、当技術分野で従来的に使用される非毒性の固体、半固体、または液体充填剤、希釈剤、封入材料、製剤補助剤、または担体を指す。薬学的に許容可能な担体は、使用される用量および濃度でレシピエントにとって非毒性であり、製剤の他の成分と適合性がある。薬学的に許容可能な担体は、使用される製剤に適切である。
【0085】
一つまたは複数のさらなる治療剤と「組み合わせた」投与には、同時(同時発生的)投与および任意の順序での連続投与または順次投与が含まれる。
【0086】
「同時発生的」という用語は本明細書では、投与の少なくとも一部が時間的に重複する場合、または一つの治療剤の投与が他の治療剤の投与と比較して短期間(例えば、一日以内)に収まる場合の、二つ以上の治療剤の投与を指すために使用される。例えば、二つ以上の治療剤は、ほぼ指定の分数以下の時間間隔で投与される。
【0087】
「順次」という用語は本明細書では、一つまたは複数の薬剤の投与が一つまたは複数の他の薬剤の投与を中断した後も続く、または一つまたは複数の薬剤の投与が一つまたは複数の他の薬剤の投与前に開始される、二つ以上の治療剤の投与を指すために使用される。例えば、二つ以上の治療剤の投与は、ほぼ指定の分数を超える時間間隔で投与される。
【0088】
本明細書で使用される場合、「併用」とは、ある治療法を別の治療法に加えて投与することを指す。したがって、「併用」とは、ある治療法を他の治療法の投与前、間、または後に、個体に投与することを指す。
【0089】
用語「添付文書」は、治療用製品の市販パッケージに通常含まれる説明書を指し、そのような治療用製品の使用に関する適応症、使用、用量、投与、併用療法、禁忌および/または警告に関する情報を含む。これらは、米国において製品の完全な処方情報とも呼ばれている。
【0090】
「製造品」は、疾患もしくは障害(例えば、癌)の治療のための少なくとも一つの試薬、例えば薬剤または本明細書に記載されるバイオマーカーを特異的に検出するためのプローブを含む任意の製品(例えば、パッケージまたは容器)またはキットである。一部の実施形態では、製造またはキットは、本明細書に記載される方法を実施するためのユニットとして、促進、流通または販売される。
【0091】
II.治療方法
抗PD-1抗体を投与することを含む、このような治療を必要とする対象における疾患を治療する方法。抗PD-1抗体で治療され得る非限定的な例示的な疾患には、癌が含まれるが、これらに限定されない。投与頻度の決定は、治療される状態、治療される対象の年齢、治療される状態の重症度、治療される対象の全般的な健康状態などの考慮に基づいて、担当医などの当業者によって行うことができる。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、癌の治療(予防を含む)に有効な量で投与される。治療有効量は、典型的には、治療される対象の体重、対象の身体的状態または健康状態、治療される状態の広がり、治療される対象の年齢、医薬製剤方法、および/または投与方法(例えば、投与時間および投与経路)に依存する。
【0092】
一部の実施形態では、対象における癌を治療する方法は、抗PD-1抗体を対象に定期的に投与することを含む。一部の実施形態では、抗PD-1抗体の用量は、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間ごと、9週間ごと、10週間ごと、11週間ごとまたは12週間ごとに投与される。
【0093】
一部の実施形態では、方法は、約18週間で、1、2、3、6、9、18用量の抗PD-1抗体を投与することを含む。一部の実施形態では、方法は、約18週間で、6用量の抗PD-1抗体を投与することを含む。一部の実施形態では、方法は、約18週間で、3用量の抗PD-1抗体を投与することを含む。
【0094】
一部の実施形態では、対象において癌を治療する方法は、抗PD-1抗体を対象に投与することを含み、抗PD-1抗体の用量は、6週間に1回投与される。一部の実施形態では、対象において癌を治療する方法は、抗PD-1抗体を対象に投与することを含み、抗PD-1抗体の用量は、5週間に1回投与される。一部の実施形態では、対象において癌を治療する方法は、抗PD-1抗体を対象に投与することを含み、抗PD-1抗体の用量は、4週間に1回投与される。一部の実施形態では、対象において癌を治療する方法は、抗PD-1抗体を対象に投与することを含み、抗PD-1抗体の用量は、3週間に1回投与される。一部の実施形態では、対象において癌を治療する方法は、抗PD-1抗体を対象に投与することを含み、抗PD-1抗体の用量は、2週間に1回投与される。一部の実施形態では、対象において癌を治療する方法は、抗PD-1抗体を対象に投与することを含み、抗PD-1抗体の用量は、1週間に1回投与される。
【0095】
一部の実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、約100mg/kg~約1500mg/kgである。一部の実施形態において、抗PD-1抗体の各用量は、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400または1500mg/kgである。
【0096】
一部の実施形態では、対象において癌を治療する方法は、抗PD-1抗体を対象に投与することを含み、1000mg/kgの抗PD-1抗体の用量は、6週間に1回投与される。一部の実施形態では、対象において癌を治療する方法は、抗PD-1抗体を対象に投与することを含み、400~600mg/kgの抗PD-1抗体の用量は、3週間に1回投与される。
【0097】
一部の実施形態では、対象において癌を治療する方法は、対象に、1000mg/kgの抗PD-1抗体の用量を6週間に1回投与することを含む。一部の実施形態では、対象において癌を治療する方法は、対象に、400~600mg/kgの抗PD-1抗体の用量を3週間に1回投与することを含む。一部の実施形態では、400mg/kgの用量の抗PD-1抗体が、3週間に1回投与される。一部の実施形態では、500mg/kgの用量の抗PD-1抗体が、3週間に1回投与される。一部の実施形態では、600mg/kgの用量の抗PD-1抗体が、3週間に1回投与される。
【0098】
一部の実施形態では、対象は、約12週間、抗PD-1抗体を投与される。一部の実施形態では、対象は、約18週間、抗PD-1抗体を投与される。一部の実施形態では、対象は、約24週間、抗PD-1抗体を投与される。一部の実施形態では、対象は、約36週間、抗PD-1抗体を投与される。一部の実施形態では、対象は、約48週間、抗PD-1抗体を投与される。一部の実施形態では、対象は、約52週間、抗PD-1抗体を投与される。
【0099】
一部の実施形態では、対象において免疫反応を増加させる方法が提供され、方法は、1000mg/kgの抗PD-1抗体の用量を6週間に1回、対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象において免疫反応を増加させる方法が提供され、方法は、400~600mg/kgの抗PD-1抗体の用量を3週間に1回、対象に投与することを含む。
【0100】
一部の実施形態では、哺乳動物においてT細胞の活性を増加させる方法が提供され、方法は、1000mg/kgの抗PD-1抗体の用量を6週間に1回、対象に投与することを含む。一部の実施形態では、哺乳動物においてT細胞の活性を増加させる方法が提供され、方法は、400~600mg/kgの抗PD-1抗体の用量を3週間に1回、対象に投与することを含む。
【0101】
一部の実施形態では、癌を有する哺乳動物において腫瘍量を減少させる方法が提供され、方法は、1000mg/kgの抗PD-1抗体の用量を6週間に1回、対象に投与することを含む。一部の実施形態では、癌を有する哺乳動物において腫瘍量を減少させる方法が提供され、方法は、400~600mg/kgの抗PD-1抗体の用量を3週間に1回、対象に投与することを含む。
【0102】
a.対象
本明細書に記載されるように治療され得る患者は、癌を有する患者である。癌のタイプは、本明細書に列挙された、または当技術分野で公知の任意のタイプの癌とすることができる。例示的な癌のタイプとして、限定されないが、黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、腎細胞癌(RCC)(例えば、透明細胞RCC)、胃癌、膀胱癌、子宮内膜癌、任意の臓器のMSI-H癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、ホジキンリンパ腫、卵巣癌(例えば、類内膜卵巣癌)、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、急性骨髄性白血病(AML)、直腸癌、難治性の精巣癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、転移性皮膚扁平上皮癌、子宮頸癌、MSI高結腸癌、食道癌、中皮腫、乳癌およびトリプルネガティブ乳癌(TNBC)が挙げられる。また、本発明の方法に従って治療できる追加の癌のタイプについては、上記の癌の定義も参照されたい。
【0103】
一部の実施形態では、癌を治療する方法が提供され、腫瘍の試料内の細胞は、PD-L1を発現する。一部のこうした実施形態では、腫瘍は、PD-L1陽性であるか、またはPD-L1を発現するとみなされうる。PD-L1の発現は、IHCによって、例えば、本明細書で論じるように決定されてもよい。一部の実施形態では、腫瘍からの試料がIHCによるPD-L1の1+、2+または3+の染色を示す場合、腫瘍はPD-L1を発現するとみなされる。一部の実施形態では、腫瘍からの試料は、IHCによるPD-L1の2+または3+の染色を示す。一部の実施形態では、対象からの腫瘍試料は、PD-L1発現について分析され、腫瘍試料がPD-L1発現を示す場合、対象は、本明細書に記載される抗体を用いた治療のために選択される。一部の実施形態では、腫瘍試料がPD-L1の発現上昇を示す場合、対象が選択される。
【0104】
一部の実施形態では、対象の腫瘍がPD-L1HIGHである場合、本明細書に提供される抗PD-1抗体による治療が対象に選択される。一部の実施形態では、対象の腫瘍がPD-L1LOWである場合、本明細書に提供される抗PD-1抗体による治療が対象に選択される。一部の実施形態では、対象の腫瘍がPD-1HIGH/PD-L1LOWである場合、本明細書に提供される抗PD-1抗体による治療が対象に選択される。一部の実施形態では、対象の腫瘍がPD-1HIGH/PD-L1HIGHである場合、本明細書に提供される抗PD-1抗体による治療が対象に選択される。
【0105】
本明細書に記載するように治療が可能である患者は、抗癌療法を以前に受けたことがない患者、および一つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5回以上)の抗癌療法の(例えば、1、2、3、4、5回以上の)用量またはサイクルを以前に受けたことがある患者を含む。
【0106】
b.医薬組成物
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体を含む組成物は、多様な薬学的に許容される担体を有する製剤に提供される(例えば、Gennaro,Remington:The Science and Practice of Pharmacy with Facts and Comparisons:Drugfacts Plus,20th ed.(2003);Ansel et al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7th ed.,Lippencott Williams and Wilkins(2004);Kibbe et al.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd ed.,Pharmaceutical Press(2000)を参照のこと)。ビヒクル、アジュバント、および希釈剤を含む、さまざまな薬学的に許容可能な担体が利用可能である。さらに、pH調整剤および緩衝剤、等張化調整剤、安定剤、湿潤剤などのさまざまな薬学的に許容可能な補助物質も利用可能である。非限定的で例示的な担体としては、生理食塩水、緩衝生理食塩水、ブドウ糖、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0107】
一部の実施形態では、抗PD-1抗体を含む医薬組成物が、本明細書に記載される方法に提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、キメラ抗体を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、ヒト化抗体を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載される宿主細胞または無細胞系に調製される抗体を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体を含む。
【0108】
一部の実施形態では、医薬組成物は、癌の治療(予防を含む)に有効な量で投与される。治療有効量は、典型的には、治療される対象の体重、対象の身体的状態または健康状態、治療される状態の広がり、または治療される対象の年齢に依存する。
【0109】
投与経路
一部の実施形態では、抗PD-1抗体および/または追加の治療薬は、静脈内、動脈内、非経口、腫瘍内、腹腔内、または皮下を含むが、これらに限定されないさまざまな経路によりインビボで投与され得る。適切な製剤および投与経路は、意図される用途に従って選択され得る。
【0110】
III.抗PD-1抗体
PD-1に対する抗体が提供される。抗PD-1抗体には、ヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体、ヒト抗体および本明細書に検討される重鎖および/または軽鎖CDRを含む抗体が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、PD-1に結合する単離された抗体が提供される。一部の実施形態では、PD-1に結合するモノクローナル抗体が提供される。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、抗PD-1拮抗薬抗体である。一部の実施形態では、本明細書に提供される抗PD-1抗体は、PD-1のPD-L1および/またはPD-L2への結合を阻害する。一部の実施形態では、本明細書に提供される抗PD-1抗体は、PD-1のPD-L1への結合を阻害する。一部の実施形態では、本明細書に提供される抗PD-1抗体は、PD-1のPD-L1およびPD-L2への結合を阻害する。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗PD-1抗体の投与は、対象における免疫応答を増強し、および/または対象におけるT細胞の活性化を増加させる。
【0111】
例示的な抗PD-1抗体は、例えば、WO2018/085358にさらに記載されており、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、JTX-4014(Juance Therapeutics;WO2018/085358)である。他のPD-1抗体には、ニボルマブ(抗PD-1抗体、BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538;OPDIVO(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)、ピジリズマブ(抗PD-1抗体、CureTech社)、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体、キイトルーダ(登録商標)、MK-3475、ラムロリズマブ);デュルバルマブ(抗PD-L1抗体、MEDI-4736、AstraZeneca/MedImmune);RG-7446、MSB-0010718C、AMP-224、BMS-936559(抗PD-L1抗体、Bristol-Myers Squibb)、AMP-514、MDX-1105;ANB-011;抗LAG-3/PD-1;抗PD-1 Ab(CoStim);抗-PD-1 Ab(Kadmon Pharm.);抗-PD-1 Ab(Immunovo);および抗TIM-3/PD-1 Ab(AnaptysBio)を含む。
【0112】
一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、PD-1に結合し、PD-1のPD-L1および/またはPD-L2への結合を阻害する。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、PD-1に結合し、対象における免疫応答を増強し、および/または対象への抗体の投与後の対象におけるT細胞の活性化を増加させる。
【0113】
特定の好ましい実施形態では、抗PD-1抗体は、それぞれ配列番号28および29に対応する軽鎖配列および重鎖配列を有する抗体である。一部の実施形態において、抗PD-1抗体は、JTX-4014である。
【0114】
一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR1、(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR2、(c)配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR3、(d)配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1、(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2、および(f)配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。
【0115】
一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列と、配列番号24のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)と、を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(たとえば、保存的置換)、挿入または欠失を含み、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(たとえば、保存的置換)、挿入または欠失を含むが、その配列を含む抗PD-1抗体は、PD-1に結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号20において、合計1~10個のアミノ酸が、置換、挿入および/または欠失されている。一部の実施形態では、配列番号24において、合計1~10個のアミノ酸が、置換、挿入および/または欠失されている。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域(すなわち、FR内)で発生する。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、配列番号20のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列、および配列番号24のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)配列を含み、抗体は、(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHCDR1、(b)配列番号22のアミノ酸配列を含むHCDR2、(c)配列番号23のアミノ酸配列を含むHCDR3、(d)配列番号25のアミノ酸配列を含むLCDR1、(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むLCDR2、および(f)配列番号27のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。
【0116】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、配列番号20のVH配列と、配列番号24のVL配列とを含み、一方または両方の配列の翻訳後修飾を含む。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、配列番号28の重鎖配列と、配列番号29の軽鎖配列とを含み、一方または両方の配列の翻訳後修飾を含む。
【0117】
一部の実施形態では、抗PD-1への結合について本明細書に記載される抗PD-1抗体と競合する抗PD-1抗体が提供される。
【0118】
IV.抗体の発現および産生
抗PD-1抗体をコードする核酸分子
本明細書において、抗PD-1抗体の一つ以上の鎖をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子が提供される。一部の実施形態では、核酸分子は、抗PD-1抗体の重鎖または軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、核酸分子は、抗PD-1抗体の重鎖をコートするポリヌクレオチドと、軽鎖をコードするポリヌクレオチドの両方を含む。一部の実施形態では、第一の核酸分子は、重鎖をコードする第一のポリヌクレオチドを含み、第二の核酸分子は、軽鎖をコードする第二のポリヌクレオチドを含む。
【0119】
一部の実施形態では、重鎖および軽鎖は、一つの核酸分子から発現し、または二つの別個の核酸分子から、二つの別個のポリペプチドとして発現される。一部の実施形態では、例えば抗体がscFvである場合、単一ポリヌクレオチドは、一緒に連結された重鎖と軽鎖の両方を含む単一ポリペプチドをコードする。
【0120】
一部の実施形態では、抗PD-1抗体の重鎖または軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、本明細書に提供されるCDRの少なくとも一つをコードするヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、抗PD-1抗体の重鎖または軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、本明細書に提供されるCDRの少なくとも三つをコードするヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、抗PD-1抗体の重鎖または軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、本明細書に提供されるCDRの少なくとも6つをコードするヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、抗PD-1抗体の重鎖または軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、リーダー配列をコードするヌクレオチド配列を含み、当該リーダー配列は、翻訳されると、重鎖または軽鎖のN末端に位置する。上で論じたように、リーダー配列は、天然の重鎖または軽鎖のリーダー配列であってもよく、または別の異種リーダー配列であってもよい。
【0121】
一部の実施形態では、核酸は、本明細書の配列表の抗体のアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸である。一部の実施形態では、核酸は、例えば、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である、本明細書の配列表の抗体のアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸に対し、少なくとも80%同一である核酸である。一部の実施形態では、核酸は、本明細書に提供される核酸配列のうちのいずれか一つ以上にハイブリダイズする核酸である。実施形態の一部では、ハイブリダイゼーションは中程度の条件下で行われる。一部の実施形態では、ハイブリダイゼーションは、例えば、少なくとも約6XのSSCおよび65℃の1%のSDSにおいて、0.1XのSSC中、約20%(v/v)ホルムアミドを用いて、約42℃で10分間第一の洗浄を行い、その後、0.2XのSSCおよび0.1%のSDSで65℃で洗浄するなど、非常に厳しい条件下にある。
【0122】
核酸分子は、当技術分野で従来的な組換えDNA技術を使用して構築することができる。一部の実施形態では、核酸分子は、選択された宿主細胞における発現に適した発現ベクターである。
【0123】
抗PD-1重鎖および/または抗PD-1軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。抗PD-1重鎖および/または抗PD-1軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含むベクターも提供される。かかるベクターには、DNAベクター、ファージベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、ベクターは、重鎖をコードする第一のポリヌクレオチド配列と、軽鎖をコードする第二のポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、重鎖および軽鎖は、ベクターから二つの別個のポリペプチドとして発現される。一部の実施形態では、重鎖および軽鎖は、例えば、抗体がscFvである場合など、単一ポリペプチドの一部として発現される。
【0124】
一部の実施形態では、第一のベクターは、重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、第二のベクターは、軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、第一のベクターおよび第二のベクターは、同量(例えば、同じモル量または同じ質量量)で宿主細胞にトランスフェクトされる。一部の実施形態では、第一のベクターと第二のベクターの5:1~1:5のモル比または質量比は、宿主細胞にトランスフェクトされる。一部の実施形態では、重鎖をコードするベクターと軽鎖をコードするベクターとの1:1~1:5の質量比が使用される。一部の実施形態では、重鎖をコードするベクターと軽鎖をコードするベクターとの1:2の質量比が使用される。
【0125】
一部の実施形態では、CHOもしくはCHO由来細胞またはNSO細胞におけるポリペプチドの発現に最適化されたベクターが選択される。そのようなベクターの例は、例えば、Running Deer et al.,Biotechnol.Prog.20:880-889(2004)を参照されたい。
【0126】
宿主細胞
一部の実施形態では、抗PD-1抗体重鎖および/または抗PD-1抗体軽鎖は、細菌細胞などの原核細胞、または真菌細胞(酵母など)、植物細胞、昆虫細胞および哺乳類細胞などの真核細胞に発現され得る。こうした発現は、例えば、当技術分野で公知の手順に従って実施されてもよい。ポリペプチドを発現するために使用され得る例示的な真核細胞としては、以下に限定されないが、COS7細胞を含むCOS細胞、293-6E細胞を含む293細胞、CHO-S、DG44を含むCHO細胞、Lec13 CHO細胞およびFUT8 CHO細胞、PER.C6(登録商標)細胞(Crucell);およびNSO細胞が挙げられる。一部の実施形態では、抗PD-1抗体重鎖および/または抗PD-1抗体軽鎖は、酵母に発現されてもよい。例えば、米国特許出願公開第US2006/0270045A1号を参照されたい。一部の実施形態では、特定の真核宿主細胞は、抗PD-1抗体重鎖および/または抗PD-1抗体軽鎖に所望の翻訳後修飾を行う能力に基づいて選択される。例えば、一部の実施形態では、CHO細胞は、293細胞で産生される同ポリペプチドよりも高いレベルのシアル化を有するポリペプチドを産生する。
【0127】
所望の宿主細胞への一つまたは複数の核酸の導入は、限定されないが、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン介在性トランスフェクション、カチオン性脂質介在性トランスフェクション、電気穿孔、形質導入、感染など、任意の方法によって達成され得る。非限定的な例示的な方法は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd ed.Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)に記載されている。核酸は、任意の適切な方法に従って、所望の宿主細胞において一過性または安定的にトランスフェクトされてもよい。
【0128】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドまたはベクターのいずれかを含む宿主細胞も提供される。一部の実施形態では、抗PD-1抗体を含む宿主細胞が提供される。異種DNAを過剰発現することができる任意の宿主細胞を、抗体、ポリペプチドまたは対象タンパク質をコードする遺伝子を単離する目的で使用することができる。哺乳類宿主細胞の非限定的な例としては、COS細胞、HeLa細胞、およびCHO細胞が挙げられるが、これらに限定されない。PCT公開WO87/04462も参照のこと。好適な非哺乳類宿主細胞には、原核生物(大腸菌(E.coli)または枯草菌(B.subtillis)など)および酵母(出芽酵母(S.cerevisae)、分裂酵母(S.pombe)またはクルイベロミセス・ラクチス(K.lactisなど)が含まれる。
【0129】
抗体の精製
抗PD-1抗体は、任意の適切な方法によって精製することができる。こうした方法には、限定されないが、親和性マトリックスまたは疎水性相互作用クロマトグラフィーの使用が含まれる。適切な親和性リガンドには、ROR1 ECDおよび抗体定常領域に結合するリガンドが含まれる。例えば、タンパク質A、タンパク質G、タンパク質A/Gまたは抗体親和性カラムを使用して、定常領域を結合し、抗PD-1抗体を精製してもよい。疎水性インタラクティブクロマトグラフィー、例えばブチルまたはフェニルカラムは、抗体などの一部のポリペプチドを精製するのにも好適であり得る。イオン交換クロマトグラフィー(例えば、アニオン交換クロマトグラフィーおよび/またはカチオン交換クロマトグラフィー)はまた、抗体などの一部のポリペプチドを精製するのに好適であり得る。混合モードクロマトグラフィー(例えば、逆相/アニオン交換、逆相/カチオン交換、親水性相互作用/アニオン交換、親水性相互作用/カチオン交換など)も、抗体などの一部のポリペプチドを精製するのに好適であり得る。ポリペプチドを精製する多くの方法は、当該技術分野で公知である。
【0130】
抗体の細胞を含まない産生
一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、無細胞系で産生される。非限定的な例示的な無細胞系は、例えば、Sitaraman et al.,Methods Mol.Biol.498:229-44(2009);Spirin,Trends Biotechnol.22:538-45(2004);Endo et al.,Biotechnol.Adv.21:695-713(2003に記載されている)。
【0131】
組成物
一部の実施形態では、上述の方法によって調製された抗体が提供される。一部の実施形態では、抗体は宿主細胞に調製される。一部の実施形態では、抗体は無細胞系に調製される。一部の実施形態では、抗体は精製される。一部の実施形態では、宿主細胞または無細胞系に調製される抗体はキメラ抗体である。一部の実施形態では、宿主細胞または無細胞系に調製される抗体はヒト化抗体である。一部の実施形態では、宿主細胞または無細胞系に調製される抗体はヒト抗体である。一部の実施形態では、抗PD-1抗体を含む細胞培養培地が提供される。一部の実施形態では、抗PD-1抗体を含む宿主細胞培地が提供される。
【0132】
一部の実施形態では、上述の方法によって調製された抗体を含む組成物が提供される。一部の実施形態では、組成物は宿主細胞に調製された抗体を含む。一部の実施形態では、組成物は無細胞系に調製された抗体を含む。一部の実施形態では、組成物は、精製抗体を含有する。一部の実施形態では、組成物は、宿主細胞または無細胞系に調製されたキメラ抗体を含む。一部の実施形態では、組成物は、宿主細胞または無細胞系に調製されたヒト化抗体を含む。一部の実施形態では、組成物は、宿主細胞または無細胞系に調製されたヒト抗体を含む。
【0133】
一部の実施形態では、約10mg/mL、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、125mg/mL、150mg/mL、175mg/mL、200mg/mL、225mg/mLまたは250mg/mLのいずれか一つを超える濃度の抗PD-1抗体を含む組成物が提供される。一部の実施形態では、組成物は、宿主細胞または無細胞系に調製されたキメラ抗体を含む。一部の実施形態では、組成物は、宿主細胞または無細胞系に調製されたヒト化抗体を含む。一部の実施形態では、組成物は、宿主細胞または無細胞系に調製されたヒト抗体を含む。
【0134】
V.併用療法
抗PD-1抗体は、単独でまたは他の治療様式と共に投与することができる。これらは、例えば、手術、化学療法、放射線療法の他の治療様式または別の治療用抗体などの生物学的薬剤の投与の前、実質的に同時期および/または後に提供され得る。
【0135】
一部の実施形態では、抗PD-1抗体および少なくとも一つの追加の治療薬を投与することを含む、対象における癌を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、追加の治療薬は、抗PD-1抗体と同時に、および/または順次投与される。一部の実施形態では、追加の治療薬は、抗ICOS抗体、抗CTLA4抗体、OX40抗体、TIGIT抗体、IDO阻害剤、RORγアゴニスト、化学療法、および癌ワクチンから選択され、それら各々が本明細書にさらに記載される。一部の実施形態では、追加の治療薬は、抗ICOS抗体である。
【0136】
一部の実施形態では、抗PD-1抗体および抗ICOS抗体を投与することを含む対象における癌を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、抗PD-1抗体および抗CTLA4抗体を投与することを含む対象における癌を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、抗PD-1抗体および抗OX40抗体を投与することを含む対象における癌を治療する方法が提供される。
【0137】
一部の実施形態では、追加の治療薬は、抗PD-1抗体と同時に、または順次投与される。一部の実施形態では、抗PD-1抗体の第一の用量は、少なくとも一つの追加の治療薬の第一の用量の後に投与される。一部の実施形態では、抗PD-1抗体の第一の用量は、少なくとも一つの追加の治療薬の第一の用量の前に投与される。一部の実施形態では、抗PD-1抗体の第一の用量は、追加の治療薬の第一の用量から1、2、3、4、5または6週間後に投与される。一部の実施形態では、対象において癌を治療する方法は、複数回用量の抗PD-1抗体を対象に投与すること、および複数回用量の少なくとも一つの追加の治療薬を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも一つの追加の治療薬よりも多い数の用量の抗PD-1抗体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも一つの追加の治療薬よりも少ない数の用量の抗PD-1抗体を投与することを含む。
【0138】
例として、本明細書に検討される、または当技術分野で公知の任意の一つ以上の追加の抗癌治療法を、本明細書に記載される方法に関連して使用することができる。例示的な抗癌療法を以下に説明する。
【0139】
a.抗ICOS抗体
一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、抗ICOSアゴニスト抗体などの抗ICOS抗体と組み合わせて投与される。抗ICOS抗体は、誘導性T細胞共刺激性(ICOS)の活性を阻害することができ、それによって免疫系を活性化することができる薬剤を指す。抗ICOS抗体は、ICOSに結合することができ、対象において、Teff細胞の数を増加させ、および/またはTeff細胞を活性化し、および/またはTeff細胞を減少させ、および/またはTreg細胞に対するTeff細胞の比を増加させる。
【0140】
一部の実施形態では、抗ICOS抗体は、アゴニスト抗体である。WO2016/154177およびWO2017/070423を参照されたい、これらはそれぞれ参照により本明細書に明確に組み込まれる。例示的な抗ICOS抗体としては、限定されないがボプラテリマブ(Jounce Therapeutics;US2016/0304610;WO2016/154177;WO 2017/070423);GSK-3359069(GSK);KY1044(Kymab);KY1055(Kymab);およびBMS-986226(Bristol-Myers Squibb)が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗ICOS抗体は、ボプラテリマブである。特定の好ましい実施形態では、抗ICOS抗体は、配列番号30に対応する軽鎖配列および配列番号31に対応する重鎖配列を有する抗体である。
【0141】
b.抗CTLA4抗体
一部の実施形態では、抗ICOS抗体は、抗CTLA4アンタゴニスト抗体などの抗CTLA4抗体と組み合わせて投与される。抗CTLA-4アンタゴニスト抗体は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)の活性を阻害し、それによって免疫系を活性化することができる薬剤を指す。CTLA-4抗体は、CTLA4に結合し、CTLA-4媒介性免疫抑制を逆転させる可能性がある。非限定的で例示的な抗CTLA4抗体は、イピリムマブ(YERVOY(登録商標)、BMS)であり、これは、例えば、米国FDAによって承認された、当技術分野で公知の方法に従って投与され得る。例えば、イピリムマブは、3mg/kgの量を三週間毎に90分かけて計4回(切除不能または転移性黒色腫)、または10mg/kgを三週間毎に90分かけて計4回、その後、10mg/kgを12週間毎に、最長3年間、または再発もしくは許容できない毒性(アジュバント黒色腫)が確認されるまで、静脈内投与することができる。
【0142】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法に使用される抗CTLA4抗体は、イピリムマブである。一部の実施形態において、抗CTLA4アンタゴニスト抗体の各用量は、3mg/kgである。一部のこうした実施形態では、抗CTLA4抗体は、6週間毎に投与される。
【0143】
さらなる非限定的な例示的な抗CTLA4抗体としては、トレメリムマブ、AGEN1181(Agenus)、AGEN1884(Agenus)、AGEN2041(Agenus)およびIBI310(Innovent Biologics)が挙げられる。一部の実施形態では、方法は、本明細書に提供される治療スケジュールに従って、トレメリムマブと組み合わせた抗ICOS抗体を投与することを含む。
【0144】
c.OX40抗体
一部の実施形態では、追加の抗癌治療薬は、抗OX40アゴニスト抗体である。OX40アゴニスト抗体は、OX40の活性を誘導し、それによって免疫系を活性化し、抗腫瘍活性を強化する薬剤を指す。非限定的な、例示的なアゴニスト抗OX40抗体として、Medi6469(Medlmmune)およびMOXR0916/RG7888(Roche)が挙げられる。これらの抗体は、当業者によって適切であると決定された方法およびレジメンに従って投与され得る。
【0145】
d.TIGIT抗体
いくつかの実施形態において、追加の抗癌治療薬は、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)の活性を拮抗または阻害し、それによってTIGIT介在性免疫抑制を逆転する抗TIGIT抗体である。非限定的な例示的なTIGIT抗体として、OMP-313M32、BMS-986207およびPCT公開番号WO2016028656およびWO2017053748ならびに米国公開番号US20170281764およびUS20160376365に開示される抗体が挙げられる。これらの薬剤は、当業者によって適切であると判断された方法およびレジメンに従って投与され得る。
【0146】
e.IDO阻害剤
一部の実施形態では、追加の抗癌治療薬は、IDO阻害剤である。IDO阻害剤とは、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)の活性を阻害し、それによってIDO介在性免疫抑制を逆転することができる薬剤を指す。IDO阻害剤は、IDO1および/またはID02(INDOL1)を阻害し得る。IDO阻害剤は、可逆的または不可逆的なIDO阻害剤であってもよい。可逆的IDO阻害剤は、触媒部位または非触媒部位のいずれかでIDO酵素活性を可逆的に阻害する化合物である一方、不可逆的IDO阻害剤は、酵素との共有結合を形成することによってIDO酵素活性を不可逆的に阻害する化合物である。非限定的で例示的なIDO阻害剤は、例えば、米国特許出願公開第2016/0060237号、および米国特許出願公開第2015/0352206号に記載される。非限定的で例示的なIDO阻害剤としては、Indoximod(New Link Genetics)、INCB024360(Incyte Corp)、1-メチル-D-トリプトファン(New Link Genetics)およびGDC-0919/navoximod(Genentech/New Link Genetics)が挙げられる。これらの薬剤は、当業者によって適切であると判断された方法およびレジメンに従って投与され得る。
【0147】
f.RORγアゴニスト
一部の実施形態では、追加の抗癌治療薬は、RORγアゴニストである。RORγアゴニストは、レチノイン酸関連オーファン受容体ガンマ(RORγ)の活性を誘導することができ、それによって免疫抑制機構を減少させる薬剤を指す。非限定的で例示的なRORγアゴニストとしては、限定されないが、LYC-55716(Lycera/Celgene)およびINV-71(Innovimmune)が挙げられる。これらの薬剤は、当業者によって適切であると判断された方法およびレジメンに従って投与され得る。
【0148】
g.化学療法
一部の実施形態では、追加の治療薬は化学療法剤である。抗ICOS抗体と併用することができる例示的な化学療法剤としては、カペシタビン、シクロホスファミド、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、エピルビシン、エリブリン、5-FU、ゲムシタビン、イリノテカン、イクサベピロン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、ABRAXANE(登録商標)(タンパク質結合パクリタキセル)、ペメトレキセド、ビノレルビンおよびビンクリスチン、が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗ICOS抗体は、少なくとも一つのキナーゼ阻害剤と共に投与される。非限定的な例示的なキナーゼ阻害剤としては、エルロチニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、ベムラフェニブおよびコビメタニブが挙げられる。これらの薬剤は、当業者によって適切であると判断された方法およびレジメンに従って投与され得る。
【0149】
h.癌ワクチン
一部の実施形態では、追加の治療薬は癌ワクチンである。癌ワクチンは、樹状細胞の抗原移動および活性化に対する潜在的なアプローチとして研究されている。特に、免疫チェックポイントまたは共刺激経路のアゴニストと組み合わせたワクチン接種は、耐性を克服し、抗腫瘍応答の増加をもたらすエビデンスを示している。腫瘍に対する免疫応答を促進するための異なるアプローチを用いたさまざまな癌ワクチンが試験されている(例えば、Emens LA、Expert Opin Emerg Drugs 13(2):295-308(2008)を参照)。アプローチは、腫瘍に対するB細胞、T細胞、またはプロフェッショナル抗原提示細胞の応答を強化するように設計されている。癌ワクチンの例示的な型としては、ペプチド/タンパク質として、または遺伝子操作されたDNAベクター、ウイルス、細菌などとして送達され得る、別個の腫瘍抗原を標的とすることを採用するペプチドベースのワクチン、および 例えば、患者由来の樹状細胞、自家腫瘍細胞または腫瘍細胞溶解物、同種腫瘍細胞などから開発されたワクチンを含むが、これらに限定されない、あまり明確に定義されていない標的に対する癌ワクチン開発のための細胞生物学的アプローチが挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
例示的な癌ワクチンとしては、限定されないが、樹状細胞ワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、腫瘍細胞ワクチンなどが挙げられる。一部の実施形態では、かかるワクチンは、抗腫瘍応答を増強する。抗ICOS抗体と併用して使用することができる癌ワクチンの例には、MAGE3ワクチン(例えば、黒色腫および膀胱癌)、MUC1ワクチン(例えば、乳癌)、EGFRv3(Rindopepimut、例えば、多形性膠芽腫を含む脳癌)、またはALVAC-CEA(例えば、CEA+癌)が含まれるが、これらに限定されない。
【0151】
非限定的で例示的な癌ワクチンはまた、抗原提示細胞を含む自家末梢血単核球(PBMC)に由来する、Sipuleucel-Tを含む(例えば、Kantoff PW et al.,N Engl J Med.363:411-22(2010)を参照)。Sipuleucel-T世代では、患者のPBMCは、前立腺酸性ホスファターゼ(前立腺抗原)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(免疫細胞活性化因子)の組換え融合タンパク質であるPA2024を用いてエクスビボで活性化される。癌ワクチン候補への別のアプローチは、黒色腫などの腫瘍組織で変異した特定のペプチドに対する免疫応答を生成することである(例えば、Carreno BM et al.,Science 348:6236(2015)を参照)。かかる変異ペプチドは、一部の実施形態では、ネオ抗原と称され得る。腫瘍ワクチンにおけるネオ抗原の使用の非限定的な例として、主要組織適合性複合体タンパク質HLA-A*02:01に結合すると予測される腫瘍内のネオ抗原が、黒色腫などの癌を有する個々の患者について特定される。患者由来の樹状細胞をエクスビボで成熟させ、その後ネオ抗原と共にインキュベートする。次いで、活性化した樹状細胞を患者に投与する。一部の実施形態では、癌ワクチンの投与後、ネオ抗原に対する頑強なT細胞免疫が検出可能である。
【0152】
一部のこのような実施形態では、癌ワクチンは、ネオ抗原を使用して開発される。一部の実施形態では、癌ワクチンは、DNAワクチンである。一部の実施形態では、癌ワクチンは、PROSTVAC(rilimogene galvacirepvec/rilimogene glafolivec)などの癌抗原を含む操作されたウイルスである。一部の実施形態では、癌ワクチンは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)遺伝子をトランスフェクトした腫瘍細胞ワクチンである、GVAXなどの操作された腫瘍細胞を含む(例えば、Nemunaitis、2005、Expert Rev Vaccines、4:259-74を参照)。
【0153】
ワクチンは、当業者によって適切であると判断される方法およびレジメンに従って投与され得る。
【0154】
i.追加の例示的な抗癌療法
さらなる非限定的で例示的な抗癌療法としては、Luspatercept(Acceleron Pharma/Celgene)、Motolimod(Array BioPharma/Celgene/VentiRx Pharmaceuticals/Ligand)、GI-6301(GlobeImmune/Celgene/NantWorks)、GI-6200(GlobeImmune/Celgene/NantWorks)、BLZ-945(Celgene/Novartis)およびARRY-382(Array BioPharma/Celgene)が挙げられる。これらまたは他の薬剤は、当業者によって適切であると判断された方法およびレジメンに従って投与され得る。一部の実施形態では、一つまたは複数の抗癌療法は、手術および/または放射線療法を含む。したがって、抗癌療法は、アジュバントまたはネオアジュバント設定で任意に利用することができる。
【0155】
一部の実施形態では、追加の治療薬は、免疫修飾薬(IMiD)である。非限定的な例示的なIMiDには、サリドマイド、レナリドミドおよびポマリドマイドが含まれる。
【0156】
一部の実施形態では、追加の抗癌療法は、セツキシマブ(例えば、ERBITUX(登録商標))、エロツズマブ(例えば、EMPLICITI(登録商標))、リツキシマブ(例えば、RITUXIN(登録商標))、トラスツズマブ(例えば、HERCEPTIN(登録商標))およびアテゾリズマブ(例えば、TECENTRIQ(登録商標))から選択される治療用抗体である。
【0157】
いくつかの実施形態では、追加の抗癌療法は、キメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T療法)である。
【0158】
一部の実施形態では、追加の抗癌療法は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体阻害剤であり、例えば限定されるものではないが、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、アキシチニブ(Inlyta(登録商標));ブリバニブアラニネート(BMS-582664、(S)-((R)-1-(4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イルオキシ)-5-メチルピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-6-イルオキシ)プロパン-2-イル)2-アミノプロパノエート; ソラフェニブ(Nexavar(登録商標));パゾパニブ(Votrient(登録商標));スニチニブリンゴ酸塩(Sutent(登録商標));セジラニブ(AZD2171、CAS 288383-20-1)、vargatef(BIBF1120、CAS 928326-83-4);foretinib(GSK1363089);テラチニブ(BAY57-9352、CAS 332012-40-5);アパチニブ(YN968D1、CAS 811803-05-1)、イマチニブ(Gleevec(登録商標));ポナチニブ(AP24534、CAS 943319-70-8);チボザニブ(AV951、CAS 475108-18-0);レゴラフェニブ(BAY73-4506、CAS 755037-03-7);バタラニブ二塩酸塩(PTK787、CAS 212141-51-0);ブリバニブ(BMS-540215、CAS 649735-46-6);ファンデタニブ(Caprelsa(登録商標)またはAZD6474);モテサニブ二リン酸(AMG706、CAS 857876-30-3、N-(2,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-1H-インドール-6-yl)-2-[(4-ピリジニルメチル)アミノ]-3-ピリジンカルボキサミド、PCT公報WO 02/066470に記載);ドビチニブジ乳酸(TKI258、CAS 852433-84-2)、リンファニブ(ABT869、CAS 796967-16-3);カボザンチニブ(XL184、CAS 849217-68-1);レスタウルチニブ(CAS 111358-88-4);N-[5-[[5-(1,1-ジメチルエチル)-2-オキサゾリル〕メチル〕チオ]-2-チアゾリル]-4-ピペリジンエカルボキサミド(BMS38703、CAS 345627-80-7);(3R,4R)-4-アミノ-1-((4-(3-メトキシフェニル)アミノ)ピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン-5-イル)メチル)ピペリジン-3-オール(BMS690514);N-(3,4-ジクロロ-2-フルオロフェニル)-6-メトキシ-7-[(3aα,5β,6aα)-オクタヒドロ-2-メチルシクロペンタ[c]ピロール-5-イル〕メトキシ]-4-キナゾリンアミン(XL647、CAS 781613-23-8);4-メチル-3[[1-メチル-6-ベータ-ピリジニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル〕アミノ]-N-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-ベンズアミド(BHG712、CAS 940310-85-0);およびアフリベルセプト(Eylea(登録商標))である。
【0159】
一部の実施形態では、追加の抗癌療法は、一つ、二つ、三つまたはそれ以上のサイトカインとの組み合わせなど、サイトカイン療法である。一部の実施形態では、サイトカインは、IL-1、IL-2、IL-12、IL-15またはIL-21から選択される一つ、三つまたは三つ以上のインターロイキン(IL)である。
【0160】
一部の実施形態では、追加の抗癌療法は、PTENを標的とする薬剤と組み合わせたサイトカイン療法である。いかなる特定の理論にも束ねられることを意図しないが、強化されたPI3Kシグナル伝達は、Treg機能を減少させると考えられる。
【0161】
一部の実施形態では、追加の抗癌治療薬は、A2A受容体拮抗薬である。いくつかの実施形態では、A2aR拮抗薬は、A2aR経路拮抗薬(例えば、抗CD73抗体などのCD-73阻害剤)である。非限定的な例示的な抗CD73抗体は、MEDI9447である。いかなる特定の理論にも束ねられることを意図しないが、CD73によるアデノシンの細胞外産生を標的とすることは、アデノシンの免疫抑制効果を低減し得る。MEDI9447は、例えば、CD73エクトヌクレオチダーゼ活性の阻害、AMP媒介性リンパ球抑制からの緩和および同系腫瘍成長の阻害を含む、様々な活性を有することが報告されている。一部の実施形態では、本明細書に提供される抗ICOS抗体は、以下のうちの一つ以上と組み合わせて投与される:i)インターフェロン遺伝子の刺激因子(STINGアゴニスト)のアゴニスト、(ii)Toll様受容体TLR)のアゴニスト(TLR-3、-4、-5、-7、-8または-9)、(iii)TIM-3調節因子(抗TIM-3抗体など)、(iv)VEGF受容体阻害剤、(v)c-Met阻害剤、(vi)TGFβ阻害剤(抗TGFβ抗体など)、(vii)A2AR拮抗薬、および/または(viii)BTK阻害剤。
【0162】
いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、US2010/0178684Alに記載されるものなどの組換え腫瘍溶解性ウイルスであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、組み換え型腫瘍溶解性ウイルスは、例えばUS2010/0178684Alに記載されるように、免疫反応または炎症反応の阻害剤をコードする核酸配列(例えば、異種核酸配列)を含む。一部の実施形態では、腫瘍溶解性NDVなどの組換え腫瘍溶解性ウイルスは、アポトーシス促進タンパク質(例えば、アポプチン)をコードする核酸配列、サイトカイン(GM-CSF、CSF、インターフェロンガンマ、インターロイキン-2(IL-2)または腫瘍壊死因子-アルファ)、免疫グロブリン(例えば、ED-B firbonectinに対する抗体など)、腫瘍関連抗原、二特異性アダプタータンパク質(CD3またはCD28などのNDV HNタンパク質およびT細胞共刺激受容体に対する二特異性抗体または抗体断片など)または、NDV HNタンパク質に対するヒトIL-2と単鎖抗体との間の融合タンパク質)を含む。例えば、Zamarin et al.Future Microbiol.7.3(2012):347-67を参照のこと、当該文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、キメラ腫瘍溶解性NDVであり、例えば、US8591881B2、US2012/0122185Alおよび/またはUS2014/0271677Alに記述されるように、各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0163】
一部の実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、癌細胞において独占的に複製するよう設計された条件付き複製性アデノウイルス(CRAd)を含む。例えば、Alemany et al.Nature Biotechnol.18(2000):723-27を参照のこと、当該文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、腫瘍溶解性アデノウイルスは、Alemany et al.のp.725の表1に記載されているものを含む。
【0164】
例示的な腫瘍溶解性ウイルスには、以下が含まれるが、これらに限定されない:
グループB腫瘍溶解性アデノウイルス(ColoAdl)(PsiOxus Therapeutics Ltd.)(例えば、治験識別子:NCT02053220を参照);
ONCOS-102(旧称CGTG-102)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(Oncos Therapeutics社)を含むアデノウイルスである(例えば、治験識別子:NCT01598129を参照);
ヒトPH20ヒアルロニダーゼをコードする遺伝子改変腫瘍性ヒトアデノウイルス(VCN Biosciences,S.L.)であるVCN-01(例えば、治験識別子:NCT02045602およびNCT02045589を参照);
野生型ヒトアデノウイルス血清型5(Had5)に由来するウイルスであり、脱調節された網膜芽細胞腫/E2F経路(Institut Catala d’Oncologia)を用いて癌細胞において選択的に複製するように改変されている(例えば、治験識別子:NCT01864759を参照)条件付き複製性アデノウイルスICOVIR-5;
ICOVIR5に感染した骨髄由来自己間葉系幹細胞(MSC)、腫瘍溶解性アデノウイルス(Hospital Infantil Universitario Nino Jesus,Madrid,Spain/Ramon Alemany)を含むセリビル(例えば、治験識別子:NCT01844661を参照)、および
CG0070、ヒトE2F-1プロモーターが、必須Elaウイルス遺伝子の発現を駆動する条件付き複製腫瘍性血清型5アデノウイルス(Ad5)であり、それによって、ウイルス複製および細胞傷害をRb経路欠損腫瘍細胞(Cold Genesys,Inc.)(例えば、治験識別子:NCT02143804を参照のこと)に制限する;またはDNX-2401(旧称Delta- 24-RGD)、網膜芽細胞腫(Rb)経路欠損細胞において選択的に複製し、特定のRGD結合インテグリンをより効率的に発現する細胞を感染させるように操作されたアデノウイルスである(Clinica Universidad de Navarra、Universidad de Navarra/DNAtrix,Inc.)(例えば、治験識別子:NCT01956734を参照されたい)。
【0165】
例示的なBTK阻害剤としては、以下に限定されないが、イブルチニブ(PCI-32765)、GDC-0834、RN-486;CGI-560;CGI-1764;HM-71224;CC-292;ONO-4059;CNX-774またはLFM-A13が挙げられる。一部の実施形態では、BTK阻害剤は、インターロイキン-2-誘導性キナーゼ(ITK)のキナーゼ活性を減少または阻害しない。一部の実施形態では、BTK阻害剤は、GDC-0834;RN-486;CGI-560;CGI-1764;HM-71224;CC-292;ONO-4059;CNX-774、またはLFM-A13から選択される。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、イブルチニブ(PCI-32765)などのBTK阻害剤である。
【0166】
一部の実施形態では、追加の抗癌療法は、IL-33および/またはIL-33R阻害剤(例えば、抗IL-33抗体または抗IL-33R抗体など)である。
【0167】
いくつかの実施形態では、追加の抗癌療法は、アシルコエンザイムA-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤、例えばアバシミベ(CI-1011)である。
【0168】
いくつかの実施形態では、追加の抗癌療法は、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体2(CXCR2)の阻害剤である。いくつかの実施形態では、CXCR2阻害剤は、ダニリキシン(CAS登録番号:954126-98-8)である。ダニリキシンは、GSK1325756または1-(4-クロロ-2-ヒドロキシ-3-ピペリジン-3-イルスルホニルフェニル)-3-(3-フルオロ-2-メチルフェニル)尿素としても知られ、例えば、Miller et al.Eur J Drug Metab Pharmacokinet(2014)39:173-181;およびMiller et al.BMC Pharmacology and Toxicology(2015)、16:18に記載されている。いくつかの実施形態では、CXCR2阻害剤は、リパリキシン(CAS登録番号:266359-83-5)である。リパリキシンは、リパータキシンまたは(2R)-2-[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-N-メチルスルホニルプロパンアミドとしても知られ、CXCR1/2の非競合性アロステリック阻害剤である。リペリキシンは、例えば、Zarbock et al.British Journal of Pharmacology(2008)、1-8に記載されている。いくつかの実施形態では、CXCR2阻害剤は、ナバリキシンである。ナバリキシンは、MK-7123、SCH 527123、PS291822、または2-ヒドロキシ-N,N-ジメチル-3[[2-[(1R)-1-(5-メチルフラン-2-イル)プロピル]アミノ]-3,4-ジオキソシクロブテン-1-イル]アミノ〕ベンズアミドとしても知られ、例えば、Ning et al.Mol Cancer Ther.2012;11(6):1353-64に記載されている。
【0169】
一部の実施形態では、追加の抗癌治療薬は、CD27アゴニストである。一部の実施形態では、CD27アゴニストは、バルリルマブ(CAS登録番号:1393344-72-3)である。バルリルマブは、CDX-1127(Celldex)または1F5としても知られ、CD27を標的とする完全ヒトモノクローナル抗体である。バルリルマブは、T細胞受容体刺激との関連でヒトT細胞を活性化し、したがって抗腫瘍効果を媒介する。バルリルマブは、CD27を発現する腫瘍に対する直接的な治療効果も提供する。バルリルマブは、例えば、Vitale et al.、Clin Cancer Res.2012;18(14):3812-21、WO 2008/051424および米国特許 第8,481,029号に記載されている。一部の実施形態では、CD27アゴニストは、BION-1402(BioNovion)であり、これはhCD27.15としても知られる。BION-1402は、CD27+細胞の増殖および/または生存を刺激する抗ヒトCD27モノクローナル抗体である。BION-1402は、そのリガンドCD70よりも効果的にヒトCD27を活性化し、CD8+およびCD4+T細胞の増殖に有意な効果をもたらす。BION-1402は、例えば、WO2012/004367においてhCD27.15として開示されている。抗体は、ハイブリドーマhCD27.15によって産生され、これは2010年6月2日に番号PTA-11008でATCCに寄託された。
【実施例】
【0170】
以下で考察する実施例は、本発明の純粋な例示であることを意図しており、いかなる方法でも本発明を制限すると見なされるべきではない。実施例は、以下の実験がすべてであるか、または実施される唯一の実験であることを示すことを意図していない。使用した数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保するために努力してきたが、実験上の誤差や偏差はある程度考慮する必要がある。別段の指示がない限り、部品は重量部、分子量は重量平均分子量、温度は摂氏度、圧力は大気圧またはその付近である。
【0171】
実施例1:薬物動態試験
患者におけるJTX-4014の薬物動態試験を以下のように実施した。80、240、400、800および1200mg/kgのJTX-4014のQ3W(3週間に1回)投与ならびに800mg/kgのQ6W(6週間に1回)投与が実施された。1群当たり3人の患者が、静脈内注入による指示用量でJTX-4014の単回投与を受けた。血液試料をQ3W群については0、1、3、7、14および21日、Q6W群については42日で採取し、JTX-4014の血清濃度は、Meso Scale Discovery(MSD)システムによって決定された。MSDマルチアレイプレートを、0.5μg/mLの濃度でJTX-4014に対するモノクローナル抗体で一晩被覆した。JTX-4014を含有する試料を、コーティングされたプレート上で室温で60分間インキュベートした。結合されたJTX-4014を、0.125μg/mLのビオチン化マウス抗ヒト抗体で60分間検出し、続いて、0.125μg/mLのストレプトアビジン-ルテニウムを30分間添加した。電荷を印加すると、ECL信号が生成され、MSD機器で検出された。JTX-4014濃度は、ECLシグナルに基づいて定量された。JTX-4014濃度の経時変化を、Phoenix 8.0の非区画分析により分析した。
【0172】
図1に示されるように、中程度のPK変動が観察され、最小限から中程度のPK蓄積であった。曝露のおよその用量比例的増加が観察され、終末半減期は約11~17日であった。
【0173】
実施例2:薬物動態シミュレーション
異なる臨床投与レジメンでのJTX-4014の血清濃度-時間プロファイルは、集団薬物動態モデルに基づいて分析された。モデルは、実施例1に記載される6つのコホート(18名の対象)からのデータに基づいて開発された。モデルは、中央区画からの線形除去を有する2区画モデルとして構造化され、クリアランスおよび体積項を使用してパラメータ化された。対象間のJTX-4014薬物動態の変動を考慮するため、中央区画からのクリアランスおよび中央区画および末梢区画の両方に関連する体積条件に関する個体間変動を推定した。変動性の項は、対数正規分布の個々のパラメータに対応する、対象レベルで指数ランダム効果モデルとして実装された。JTX-4014血清濃度の残留変動は、観察レベルで比例ランダム効果モデルによって記述された。JTX-4014濃度時間データを記述するためのモデルの適切性は、様々な適合度プロットならびにモデルからのシミュレーションデータを実際の観察データと比較する視覚的予測チェックを通して確立された。
【0174】
確立されたモデルを使用して、JTX-4014血清濃度-時間プロファイルを、JTX-4014の複数回投与レジメンの範囲について予測/シミュレーションし、用量レベルの範囲(80~1200mg)ならびに異なる投与頻度(2、3、4または6週間ごと)を包含した。各投与レジメンについて、個体間および残差ランダム効果分布からのサンプリングにより、200名の対象について濃度-時間プロファイルを予測し、その後、予測中央値および95%予測間隔として投与レジメンごとに要約した。モデル開発およびシミュレーションは、NONMEM7.4(Icon Development Solutions、Hanover、MD)を使用して実施された。
【0175】
図2は、80、240、400、500、800、1000および1200mg/kgの6用量について、Q3Wの頻度で18週間投与した場合のシミュレートした経時的な血清濃度を示す。
【0176】
表2に示されるように、定常状態トラフ血清濃度(Ctrough,ss)は、以下の承認されている抗PD-1抗体の報告された平均/中央値Ctrough,ssと同程度であった:オプジーボ(240mg Q2W):69.5μg/mL、リブタヨ(350mg Q3W):58.7μg/mL、キイトルーダ(200mg Q3W):29.7μg/mL。例えば、Refreshresh et al.,J.Immunother.Canc.5:43(2017);Long et al.,Annals Oncology 29:2208-2213(2018);BLA 761097 for cemiplimab-RWLC(Libtayo)を参照されたい。400mg/kgのJTX-4014を投与した場合のCtrough,ssは、キイトルーダ(200 mg Q3W)を投与した場合のCtrough,ssと同じまたは高かった。
【0177】
【0178】
表3に示されるように、定常状態トラフ血清濃度(Ctrough,ss)は、以下の承認されている抗PD-1抗体の報告された平均/中央値Ctrough,ssと同程度であった:オプジーボ(240mg Q2W)、リブタヨ(350mg Q3W)、キイトルーダ(200mg Q3W)、上記。1000mg/kgのJTX-4014を投与した場合のCtrough,ssは、キイトルーダ(200 mg Q3W)を投与した場合のCtrough,ssと同じまたは高かった。
【0179】
【0180】
本開示は、その精神またはその本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化されてもよい。したがって、前述の実施形態は、本開示を限定するものではなく、あらゆる点において例示的であると見なされるべきである。したがって、本開示の範囲は、前述の説明よりもむしろ添付の特許請求の範囲によって示されており、したがって、特許請求の範囲の意味および同等性の範囲内に入るすべての変更は、本明細書に包含されることが意図されている。
【表4】
【配列表】
【国際調査報告】