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特表2022-554273経カテーテル大動脈弁治療のためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】経カテーテル大動脈弁治療のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20221221BHJP
   A61F 2/24 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
A61M25/06 556
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525253
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(85)【翻訳文提出日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 US2020058588
(87)【国際公開番号】W WO2021087480
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】63/014,979
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/929,357
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/039,101
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510015338
【氏名又は名称】シルク・ロード・メディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SILK ROAD MEDICAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】クメ,ステュワート エム
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド,スマイラ
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース,エリカ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】キャリソン,ハロルド
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097MM10
4C267AA05
4C267AA15
4C267AA28
4C267AA55
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB26
4C267CC08
4C267HH08
(57)【要約】
装置及び方法は、生来の大動脈弁への総頸動脈を介した経頸動脈または鎖骨下アクセスと、人工大動脈弁の心臓への移植とを可能にするように構成されている。装置及び方法はまた、そのような血管内大動脈弁移植処置中に、塞栓防止を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左または右の総頸動脈或いは左または右の鎖骨下動脈のアクセス部位に導入されるように適合された動脈アクセスシースであって、前記動脈アクセスシースが、前記動脈アクセスシースを通して心臓または大動脈に人工弁を送達するように構成された弁送達システムを受容するサイズ及び形状の第1管腔を有し、前記第1管腔は、前記動脈アクセスシースの近位領域に第1開口を有し、前記動脈アクセスシースの遠位領域に遠位開口を有し、前記第1管腔は、そこを通る前記弁送達システムに適合する大きさである前記動脈アクセスシースと、
前記動脈アクセスシースの前記第1管腔内に適合し、人工大動脈弁を送達するように構成された前記弁送達システムと、
前記動脈アクセスシースに結合された塞栓防止要素であって、前記塞栓防止要素が、血流を、大動脈から分岐する動脈の開口部から離れるように方向転換させるよう、前記大動脈に配置されるように構成された前記塞栓防止要素と、
前記動脈アクセスシースに結合された少なくとも1つの捕捉フィルタであって、前記塞栓防止要素に相対する位置で前記大動脈に配置されるように構成された少なくとも1つの前記捕捉フィルタと、を備える、経カテーテル大動脈弁治療のためのシステム。
【請求項2】
前記塞栓防止要素が、前記動脈アクセスシースに取り付けられたフィルタである請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記塞栓防止要素が、前記動脈アクセスシースを通して送達可能なフィルタである請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記塞栓防止要素は、上行大動脈に少なくとも部分的に配置されるように構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記塞栓防止要素は、無名動脈の開口部付近の血流パターンを乱す請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記塞栓防止要素は、少なくとも部分的に大動脈弓に配置されるように構成されている請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記捕捉フィルタは、前記捕捉フィルタの遠位領域の円周の周りに延びる遠位バンドを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記遠位バンドは、少なくとも1つのプルワイヤに取り付けられている請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記弁送達システムは、
内側シャフトと、
前記内側シャフトと同軸に調整され、前記内側シャフトの上にスライド可能に配置された外側スリーブと、
前記内側シャフトに取り外し可能に取り付けられた弁と、
前記外側シャフトに結合されたアクチュエータであって、前記外側シャフトを第1位置から前記人工大動脈弁を露出させる第2位置まで引っ込めるように作動させることができるアクチュエータと、を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記アクセスシースは、前記アクセスシースの遠位端部にある閉塞バルーンをさらに備える請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記塞栓防止要素は、前記大動脈において血液を層流から乱流に移行させる請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記塞栓防止要素はフィルタでない請求項1記載のシステム。
【請求項13】
血管内大動脈弁移植処置の際に塞栓防止を提供する方法であって、
左または右の総頸動脈或いは左または右の鎖骨下動脈のアクセス部位を介して大動脈に塞栓防止要素を送達することと、
前記塞栓防止要素の少なくとも一部を前記大動脈に配置することと、
前記塞栓防止要素を、前記大動脈から分岐する動脈の開口部から離れるように前記大動脈内の血流を方向転換させることと、
捕捉フィルタが前記大動脈内の塞栓性デブリを捕捉するように、前記捕捉フィルタを前記大動脈内に配置することと、を含む方法。
【請求項14】
前記塞栓防止要素が上行大動脈に配置される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記塞栓防止要素は、無名動脈の開口部付近の血流パターンを乱すように配置される請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記塞栓防止要素は、動脈アクセスシースを介して前記大動脈に送達される請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記塞栓防止要素は、前記動脈アクセスシースに取り付けられる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記塞栓防止要素は、前記動脈アクセスシースの内部管腔を介して送達される請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記捕捉フィルタは、血流の方向に対して前記大動脈内の前記塞栓防止要素の下流に配置される請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記捕捉フィルタは、血流の方向に対して前記大動脈内の前記塞栓防止要素の上流に配置される請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、2019年11月1日に出願された「経カテーテル大動脈弁治療のためのシステム及び方法」と題する米国特許出願第62/929,357号、2020年4月24日に出願された「経カテーテル大動脈弁治療のためのシステム及び方法」と題する米国特許出願第63/014,979号、2020年6月15日に出願された「経カテーテル大動脈弁治療のためのシステム及び方法」と題する米国特許出願第63/039,101号の優先権を主張し、その内容は参照によりこれらの全体が本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
本開示は、心臓弁を交換または治療するための方法及び装置に関する。
【0003】
欠陥のある大動脈心臓弁を有する患者達は、しばしば置換心臓弁処置の候補である。従来の治療は、心臓弁を人工弁に外科的に置換することである。この外科的処置には、総胸部切開または胸骨中央部切開、心肺バイパス及び心停止、疾患した心臓弁の外科的アクセス及び切除、並びに心臓弁を人工機械弁または組織弁に置換することが含まれる。この方法で移植された弁は、組織弁では10-15年、機械弁では更に長い耐久性を有し、歴史的にこれらの患者達に良好な長期的成果を提供している。しかし、心臓弁置換術は侵襲性が高く、回復に時間がかかり、短期及び長期の合併症を伴う。外科的リスクの高い患者達や手術不可能な患者達の場合、この処置を選択できない場合がある。
【0004】
心臓弁置換術に対する低侵襲的アプローチが開発されている。このアプローチは、経カテーテル大動脈弁移植術(TAVI)または経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)として知られており、カテーテルベースの送達システムに取り付けられる折りたたみ可能な人工弁の開発に依存している。このタイプの補綴物は、比較的小さな切開部位や血管アクセス部位から患者に挿入することができ、心停止することなく拍動している心臓に移植され得る。このアプローチの利点は、外科的外傷が少ないこと、回復時間が早いこと、合併症の発生率が低いことである。外科的リスクが高い患者達や手術ができない患者達にとって、このアプローチは従来の外科的措置に代わる良い選択肢を提供する。この技術の例として、サピエン経カテーテル弁(エドワーズ生命科学、アーバイン、カリフォルニア州)やコア弁システム(メドトロニック、ミネアポリス、ミネソタ州)がある。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,454,799号は、この技術の例を説明している。
【0005】
TAVIアプローチを使用して挿入される弁には、大きく分けて2つの経路がある。第1は、経皮的に、または大腿動脈の外科的切開及び動脈切開を通して、大腿動脈を経由する血管アプローチ(経大腿アプローチと呼ばれる)である。送達システムに搭載された弁は、大腿動脈に配置された後に、下行大動脈を上り、大動脈弓を回り、上行大動脈を横切って、逆方向(血流と逆の方向)に進み、生来の大動脈弁を横切るように配置される。経大腿動脈弁送達システムは、通常90cmを超える長さであり、大動脈弓の周囲をナビゲートする能力を必要とする。大腿動脈の直径が比較的小さく、腸大腿解剖学的に動脈硬化性疾患の頻度が高いため、送達システムの最大直径は約24フレンチ(0.312インチ)に制限される。2つ目の経路は経心尖と呼ばれ、ミニ開胸術により心尖部から左心室にアクセスすることと、弁送達システムを大動脈弁の位置まで順方向(血流と同じ方向)で前進させることを含む。この経路は、経大腿経路よりはるかに短く直線的であるが、外科的な穿刺とその後の心臓壁の閉鎖を伴う。
【0006】
鎖骨下動脈からのアクセスや、ミニ開胸術による上行大動脈の直接穿刺を含む他のアプローチが説明されている。鎖骨下アプローチ(経鎖骨下アプローチ)は、経大腿ルートが禁忌の場合に使用されてきたが、同側の総頸動脈を通る脳血管への流れを遮断する可能性がある。血管疾患を含む解剖学的問題のために他の全てのルートを除外しなければならない場合、通常、直接の大動脈穿刺が考慮される。大動脈壁の穿刺とその後の閉鎖は、大動脈解離や破裂を含む関連する外科的リスクを伴う。
【0007】
大動脈弁への経大腿動脈からのアプローチは、経心尖からのアプローチやその他の代替アプローチとは反対に、一般的に医学界でより親しまれている。大腿動脈から上行大動脈にアクセスすることは、介入性の循環器専門医にとって標準的な処置である。経大腿動脈アプローチによるバルーン弁形成処置は、長年行われている。経心尖アクセスや大動脈直接穿刺などの外科的アプローチはあまり馴染みがなく、外科的技術と血管内治療技術の両方を持つ医師が必要である。外科的アプローチの技術はまだ発展途上で、それらが経大腿法及び経鎖骨下法に勝る利点を提供するかどうかはまだ決定されていない。しかし、経大腿アプローチや経鎖骨下アプローチにも問題はある。1つは、アクセスしたい血管がしばしば小さすぎて及び/またはアテローム性動脈硬化症で圧迫されていて、アクセスポイントとして動脈を使用できないことである。第2の問題は、アクセスポイントから大動脈弁までの経路は、通常、曲率半径が0.5インチ以下の比較的狭い、少なくとも90°の1つ以上の大きなターンを含み、送達システムにある程度の可撓性が必要になることである。この可撓性の要件は、弁と送達システムの両方の設計パラメータを制限し、送達システムの必要な長さが加わって、弁を正確に配置する際の制御レベルを低下させる。
【0008】
経大腿アプローチ及び経心尖アプローチはともに、アクセス操作、疾患した弁の事前拡張、人工弁の移植の際に、アテローム硬化性及び/または血栓性のデブリ(いわゆる「塞栓」や「塞栓性デブリ」の生成)の脱落を潜在的な合併症として有する。塞栓性デブリの最も深刻な影響は、塞栓性デブリが脳循環への4本の主要な導管、すなわち左右の頸動脈と左右の椎骨動脈のうちの1つまたは複数を経由して、血流とともに脳へ移動することである。経大腿TAVI処置では、装置や送達システムの構成要素を、大動脈弓を通過させ、頸動脈と椎骨動脈に血流を供給する頭頸部血管の起始部を横切らせる必要があり、大動脈弁に到達するまでの間に、デブリの緩み、断片化、及び脱落の可能性がある。経心尖TAVI処置では、心室の壁または上行大動脈から塞栓性デブリを生成する可能性があり、心尖穿刺位置で血栓や凝固物を形成する可能性がある心臓壁の穿刺を伴う。この血栓は、心臓の拍動の激しい動きの間に遊離して、脳に移動する可能性がある。どちらのアプローチも、人工弁を配置する際に重要な操作が必要である。TAVI移植と送達システムは、生来の大動脈弁上を行ったり来たりするため、疾患した弁自体からより多くのデブリが脱落する可能性がある。弁移植の拡張に伴い、生来の大動脈弁は圧縮され、心拍出量の流れから外れるが、この時、生来の弁の剪断や破れが、脳への塞栓の原因となるデブリをより多く自由にし得る。
【0009】
最近、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,460,335号に参照されているように、TAVI処置で使用するための塞栓フィルタ保護装置が記載されている。この装置は、頭頸部血管の小孔に一時的なスクリーンを配置して、血管への血流を可能にしながら塞栓小片の通過を防ぐ。この装置は、より大きな塞栓小片からある程度保護することができるが、追加の血管アクセスや装置の配置が必要であり、処置の費用と時間を増加させ、人工弁自体の通過を容易にするものではない。さらに、フィルタ装着時や回収時の保護を提供しない。フィルタは大動脈壁に接触して配置されるため、フィルタ操作自体が塞栓性合併症の原因となる可能性が高い。
【発明の概要】
【0010】
現在のシステム及び方法よりも一般的に短く直線的なアクセス経路を提供する、血管内人工大動脈弁移植のためのアクセスシステムが必要である。これにより、より短く、より硬い送達システムを使用することができ、より高度な制御と大動脈弁の配置が容易になる。また、処置中の脳塞栓性合併症からの保護を提供するアクセスシステムも必要である。
【0011】
本明細書で開示するのは、総頸動脈を介して生来の大動脈弁への経頸動脈または鎖骨下アクセス、ならびに心臓または大動脈への人工大動脈弁の経カテーテル移植を可能にする装置および方法である。また、装置及び方法は、このような血管内大動脈弁移植処置中に塞栓防止を行う手段も提供する。
【0012】
一態様では、左または右の総頸動脈或いは左または右の鎖骨下動脈のアクセス部位に導入されるように適合された動脈アクセスシースであって、前記動脈アクセスシースが、前記動脈アクセスシースを通して心臓または大動脈に人工弁を送達するように構成された弁送達システムを受容するサイズ及び形状の第1管腔を有し、前記第1管腔は、前記動脈アクセスシースの近位領域に第1開口を有し、前記動脈アクセスシースの遠位領域に遠位開口を有し、前記第1管腔は、そこを通る前記弁送達システムに適合する大きさである前記動脈アクセスシースと、前記動脈アクセスシースの前記第1管腔内に適合し、人工大動脈弁を送達するように構成された前記弁送達システムと、前記動脈アクセスシースに結合された塞栓防止要素であって、前記塞栓防止要素が、血流を、大動脈から分岐する動脈の開口部から離れるように方向転換させるよう、前記大動脈に配置されるように構成された前記塞栓防止要素と、前記動脈アクセスシースに結合された少なくとも1つの捕捉フィルタであって、前記塞栓防止要素に相対する位置で前記大動脈に配置されるように構成された少なくとも1つの前記捕捉フィルタと、を備える、経カテーテル大動脈弁治療のためのシステムが記載されている。
【0013】
別の態様では、血管内大動脈弁移植処置の際に塞栓防止を提供する方法であって、左または右の総頸動脈或いは左または右の鎖骨下動脈のアクセス部位を介して大動脈に塞栓防止要素を送達することと、前記塞栓防止要素の少なくとも一部を前記大動脈に配置することと、前記塞栓防止要素を、前記大動脈から分岐する動脈の開口部から離れるように前記大動脈内の血流を方向転換させることと、捕捉フィルタが前記大動脈内の塞栓性デブリを捕捉するように、前記捕捉フィルタを前記大動脈内に配置することと、を含む方法が記載されている。
【0014】
他の態様、特徴及び利点は、本開示の原理を例として説明する様々な実施形態の以下の説明から明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、シース上に取り付けられた閉塞要素を有する例示的なアクセスシースの側面図を示す。
図2図2は、シース上に取り付けられたフィルタ要素を有する例示的なアクセスシースの側面図を示す。
図3図3は、フィルタ要素の正面図を示す。
図4図4は、アクセスシースの代替の実施形態を示す。
図5A図5Aは、アクセスシースの代替の実施形態を示す。
図5B図5Bは、アクセスシースの代替の実施形態を示す。
図6図6は、正常な循環を示す血管系を概略的に示す図である。
図7A図7Aは、血管系に配置されたアクセスシースの他の実施形態を示す。
図7B図7Bは、血管系に配置されたアクセスシースの他の実施形態を示す。
図8A図8Aは、血管系に配置されたアクセスシースの他の実施形態を示す。
図8B図8Bは、血管系に配置されたアクセスシースの他の実施形態を示す。
図9図9は、血管系に配置されたアクセスシースの別の実施形態を示す。
図10図10は、血管系に配置されたアクセスシースの別の実施形態を示す。
図11図11は、左総頸動脈を閉塞する閉塞要素を有する血管系に配置されたアクセスシースの別の実施形態を示す。
図12図12は、右総頸動脈を閉塞する閉塞要素を有する血管系に配置されたアクセスシースの別の実施形態を示す。
図13図13は、無名動脈を閉塞する閉塞要素を有する血管系に配置されたアクセスシースの別の実施形態を示す。
図14図14は、アクセスシース110とガイドワイヤ119を介して血管内人工弁を配置する送達システムを示す。
図15A図15Aは、フィルタが動脈の小孔を横切って配置されるサイズ及び形状である実施形態を示す。
図15B図15Bは、フィルタが動脈の小孔を横切って配置されるサイズ及び形状である実施形態を示す。
図15C図15Cは、フィルタが、動脈の小孔に対して遠位の動脈内に配置されるサイズ及び形状である代替の実施形態を示す。
図16A図16Aは、フィルタがアクセスシースを通して送達される実施形態を示す。
図16B図16Bは、フィルタがアクセスシースを通して送達される実施形態を示す。
図16C図16Cは、フィルタがアクセスシースを通して送達される実施形態を示す。
図17A図17Aは、全ての頭頸部の血管の小孔を横切ってまたは大動脈弓を横切って、大動脈弓に配置されるようにサイズ及び形状が決められているフィルタを有するアクセスシースの実施形態を示す。
図17B図17Bは、全ての頭頸部の血管の小孔を横切ってまたは大動脈弓を横切って、大動脈弓に配置されるようにサイズ及び形状が決められているフィルタを有するアクセスシースの実施形態を示す。
図17C図17Cは、全ての頭頸部の血管の小孔を横切ってまたは大動脈弓を横切って、大動脈弓に配置されるようにサイズ及び形状が決められているフィルタを有するアクセスシースの実施形態を示す。
図17D図17Dは、全ての頭頸部血管の小孔を横切ってまたは大動脈弓を横切って、大動脈弓に配置されるサイズ及び形状であるフィルタを有するアクセスシースの実施形態を示す。
図18A図18Aは、上行大動脈に配置されるサイズ及び形状であるフィルタを有するアクセスシースの代替の実施形態を示す。
図18B図18Bは、上行大動脈に配置されるサイズ及び形状であるフィルタを有するアクセスシースの代替の実施形態を示す。
図19図19は、上行大動脈に配置されるサイズ及び形状である閉塞要素を有するアクセスシースの一実施形態を示す。
図20A図20Aは、人工弁を送達するための代替の実施形態を示す。
図20B図20Bは、人工弁を送達するための代替の実施形態を示す。
図21図21は、人工弁を送達するための別の実施形態を示す。
図22図22は、経頸動脈人工大動脈弁及び送達システムの一実施形態を示す。
図23図23は、経頸動脈人工大動脈弁及び送達システムの代替の実施形態を示す。
図24図24は、フィルタ要素を有する経頸動脈人工大動脈弁及び送達システムの一実施形態を示す。
図25図25は、閉塞要素を有する経頸動脈人工大動脈弁及び送達システムの一実施形態を示す。
図26A図26Aは、フィルタ構成の代替の実施形態を示す。
図26B図26Bは、フィルタ構成の代替の実施形態を示す。
図26C図26Cは、フィルタ構成の代替の実施形態を示す。
図26D図26Dは、フィルタ構成の代替の実施形態を示す。
図26E図26Eは、フィルタ構成の代替の実施形態を示す。
図26F図26Fは、フィルタ構成の代替の実施形態を示す。
図26G図26Gは、フィルタ構成の代替の実施形態を示す。
図27A図27Aは、フィルタ構成の代替の実施形態を示す。
図27B図27Bは、フィルタ構成の代替の実施形態を示す。
図28A図28Aは、フィルタ構成の代替実施形態を示す。
図28B図28Bは、フィルタ構成の代替実施形態を示す。
図29A図29Aは、フィルタ構成の代替の実施形態を示す。
図29B図29Bは、フィルタ構成の代替の実施形態を示す。
図29C図29Cは、フィルタ構成の代替の実施形態を示す。
図29D図29Dは、フィルタ構成の代替の実施形態を示す。
図30図30は、大動脈フィルタシステムの一実施形態を示す。
図31A図31Aは、大動脈フィルタシステムの代替の実施形態を示す。
図31B図31Bは、大動脈フィルタシステムの代替の実施形態を示す。
図31C図31Cは、大動脈フィルタシステムの代替の実施形態を示す。
図32図32は、アクセスシースの代替の実施形態を示す。
図33図33は、フィルタを有するアクセスシースの別の代替の実施形態を示す。
図34A図34Aは、大動脈フィルタの一実施形態を示す。
図34B図34Bは、大動脈フィルタの一実施形態を示す。
図35A図35Aは、大動脈フィルタ及び支持ワイヤシステムの一実施形態を示す。
図35B図35Bは、大動脈フィルタ及び支持ワイヤシステムの一実施形態を示す。
図36図36は、大動脈フィルタ及びサポートワイヤの代替の実施形態を示す。
図37A図37Aは、フィルタを有するアクセスシースの代替の実施形態を示す。
図37B図37Bは、フィルタを有するアクセスシースの代替の実施形態を示す。
図38図38は、フィルタを有するアクセスシースの代替の実施形態である。
図39図39は、複数のフィルタを有するアクセスシースの一実施形態を示す。
図40図40は、複数のフィルタを有するアクセスシースの一実施形態を示す。
図41図41は、複数のフィルタを有するアクセスシースの代替の実施形態を示す。
図42図42は、アクセスシース及びフィルタの代替の実施形態を示す。
図43図43は、アクセスシース及びフィルタの追加の代替の実施形態を示す。
図44図44は、アクセスシース及びフィルタの代替の実施形態を示す。
図45A図45Aは、アクセスシース及びフィルタの代替の実施形態を示す。
図45B図45Bは、アクセスシース及びフィルタの代替の実施形態を示す。
図46図46は、アクセスシース及びフィルタの代替の実施形態を示す。
図47図47は、アクセスシース及びフィルタの代替の実施形態を示す。
図48図48は、アクセスシース及び大動脈フィルタの代替の実施形態を示す。
図49図49は、アクセスシース、大動脈フィルタ、及びガイドワイヤアセンブリの代替の実施形態を示す。
図50A図50Aは、ガイドワイヤを介してアクセスシース内に引っ込められている大動脈フィルタの一実施形態を示す。
図50B図50Bは、ガイドワイヤを介してアクセスシース内に引っ込められている大動脈フィルタの一実施形態を示す。
図50C図50Cは、ガイドワイヤを介してアクセスシース内に引っ込められている大動脈フィルタの一実施形態を示す。
図51A図51Aは、支持ワイヤを有する大動脈フィルタの代替の実施形態を示す。
図51B図51Bは、支持ワイヤを有する大動脈フィルタの代替の実施形態を示す。
図51C図51Cは、支持ワイヤを有する大動脈フィルタの代替の実施形態を示す。
図52図52は代替の実施形態を示す。
図53図53は代替の実施形態を示す。
図54図54は代替の実施形態を示す。
図55図55は代替の実施形態を示す。
図56図56は代替の実施形態を示す。
図58図58は代替の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で開示されるのは、生来の大動脈弁への(左または右の)総頸動脈を介した経頸動脈アクセスまたは鎖骨下動脈を介した鎖骨下アクセス等の動脈アクセスを可能にし、心臓または大動脈への人工大動脈弁の移植を可能にする装置及び方法である。また、その装置及び方法は、そのような血管内大動脈弁移植処置中に塞栓防止を行う手段も提供する。
【0017】
一実施形態では、大動脈弁への経頸動脈または鎖骨下アクセスは、動脈への経皮的穿刺または直接的な切開のいずれかを介して達成される。総頸動脈におけるより大きな動脈切開の経皮的血管閉鎖が困難なため、切開が有利になる場合がある。必要であれば、処置の終了時に閉塞を容易にするために、動脈切開部位にプレステッチを配置することができる。総頸動脈または鎖骨下動脈に適合するサイズの、関連する拡張器及びガイドワイヤを有するアクセスシースが提供される。アクセスシースは、大動脈弓に向かって下向きに動脈に挿入される。左又は右の総頸動脈又は鎖骨下動脈のいずれかが、例えば、近位動脈及び/又は大動脈の疾患状態、並びに頸動脈又は無名動脈の大動脈への進入角度を含む要因に基づいて、アクセス部位として選択され得る。その場合、頸動脈はアクセス部位の遠位で閉塞され得る。アクセスが直接的な外科的切開及び動脈切開を介して行われる場合、閉塞は血管クランプ、血管ループ、またはランメル止血帯を介して達成され得る。代替的に、アクセスシース自体は、処置中に塞栓微粒子がアクセス部位の遠位の頸動脈に入るのを防止するために、動脈を閉塞するように適合された閉塞要素、例えば閉塞バルーンを含み得る。
【0018】
図1は、内部管腔を有する細長い本体で形成された例示的な動脈アクセスシース110(または動脈シース110)の側面図を示す。一実施形態では、シースは、10-60cmの作動長を有し、作動長は、使用中に動脈に挿入可能なシースの部分である。シースの管腔は、18フレンチから22フレンチ(0.236インチから0.288インチ)のシステム等の、血管内弁送達システムの挿入に十分な大きさの内径を有する。一実施形態では、送達システムは、約0.182インチという低い内径を有する。アクセスシース110は、アクセスシース上に配置された拡張可能な閉塞要素129を有することができる。閉塞要素129は、動脈を通る流れを閉塞するためのサイズに拡張されるように構成されている。閉塞要素129は、動脈または大動脈のどこにでも配置することができる。一実施形態では、閉塞要素は閉塞バルーンである。
【0019】
シース110が動脈内に配置されると、閉塞要素129は動脈内で拡張されて動脈を閉塞し、場合によってはシースを定位置に固定する。動脈アクセスシース110は、造影剤又は生理食塩水フラッシュの送達のため、吸引のためのYアームを含み得、及び/またはシャントに流体的に接続され得る。シャントは、動脈アクセスシース110から静脈戻り部位または収集リザーバ等の戻り部位に血液が流れるためのシャント管腔または経路を提供する。この点について、動脈の少なくとも一部に逆行性または逆流性の血流状態が確立され得る。シース110は、また、膨張管腔を介して閉塞バルーンを膨張させるためのYアームと、血管内弁送達システムをシース内に導入するための止血弁を備え得る。代替的に、閉塞要素が機械的閉塞構造である場合に、シース110は作動要素を備え得る。血管内弁送達システムは、人工弁と送達カテーテルとを備え得る。一実施形態では、送達カテーテルは、30、40、60、70、または80cmの作動長を有する。
【0020】
実施形態では、吸引は、アクセスシース110を介して動脈に適用され得る。この点について、アクセスシース110は、Yアーム112を介して吸引源に接続することができ、そのため、塞栓性デブリが捕捉され得る。塞栓性デブリが補足されなければ、塞栓性デブリは、残りの頭頸部血管に入る可能性があり、または下流に移動して末梢血管内に留まる可能性がある。吸引源は、例えば、心臓切開吸引源、ポンプ、またはシリンジ等、能動的なものであり得る。代替的に、例えば、Yアーム112をシャントに流体的に接続し、このシャントを大気圧または負圧の収集リザーバ、或いは患者の静脈戻り部位等の低圧源に接続することによって、受動流状態が確立され得る。受動的な流量は、例えば、シャント内の流路の制限を制御することによって調整され得る。
【0021】
一実施形態では、アクセスシステムは、一方または両方の頸動脈の塞栓防止を行うために、1つまたは複数の塞栓防止要素を備え得る。例えば、一方または両方の頸動脈の塞栓防止を行うために、フィルタがアクセスシステムに備えられ得る。この実施形態の変形例では、フィルタは、対側の頸動脈、上腕動脈、または鎖骨下動脈を介して配置され、小孔を横切って大動脈弓に配置される。シースアクセス部位が左総頸動脈である場合、フィルタは、無名動脈(腕頭動脈としても知られている)の小孔を横切って配置され得る。シースアクセス部位が右総頸動脈である場合、フィルタは左総頸動脈の小孔を横切って配置され得る。この実施形態の変形例では、フィルタは、無名動脈と左総頸動脈の両方にわたって、または3つの頭頸部血管全て(無名動脈、左総頸動脈、及び左鎖骨下動脈)にわたって配備される。フィルタ要素は、アクセスシース110に組み込まれ得る。一実施形態では、フィルタ要素は、アクセスシース110と互換性のある別個の要素であり得る。例えば、フィルタ要素は、アクセスシースにスライド可能に接続された同軸要素であり得るし、アクセスシースと並べて配置された要素であり得る。フィルタ要素は拡張可能なフレームを備えてもよく、その結果、それはたたまれた状態で動脈に挿入され得るが、次いで標的部位で拡張されて、1つまたは複数の動脈の開口部を横切ってフィルタ要素を配置し得る。
【0022】
図2は、シース上に取り付けられたフィルタ要素111を有する例示的なアクセスシース110の側面図を示す。図3は、フィルタ要素111の例示的な外形を示す正面図を示す。図3の実施形態では、フィルタ要素111は、頭頸部血管内に適合して遮断するサイズ及び形状である。一実施形態では、配置されたフィルタは、約2、3、4、または5cmの長手寸法と、約1、1.5、または2cmの短手寸法とを有する。図3に示す外形は一例であり、フィルタ要素111の形状が異なり得ることは理解されるべきである。例えば、フィルタ要素の形状は、長円形、円形、楕円形、長方形のいずれでもよい。フィルタの材料は、織られた又は編まれた繊維材料であり得るし、ポリウレタン等の多孔質ポリマー膜であり得る。フィルタの孔隙は、40、100、150、200、300ミクロン、またはその間の任意の孔隙であり得る。フィルタ要素の拡張可能なフレームは、ステンレス鋼やニチノールワイヤやリボン等のバネ材料から作られ得る。
【0023】
フィルタ要素を備えた実施形態では、閉塞手段及び/又は吸引手段は、弁移植前のフィルタ配置中及び弁移植後のフィルタ回収中に塞栓防止を提供するため、依然としてシステムの一部であり得る。フィルタ要素自体が、移植処置中の塞栓予防の主要な方法となり得る。シース110はまた、図4に示すように、閉塞要素129及びフィルタ要素111の両方を備え得る。
【0024】
図5Aに示されるこの実施形態の別の変形例では、シース110は、大動脈フィルタ要素113を備える。大動脈フィルタ要素113は、上行大動脈を横切って配置されるサイズ及び形状であり、したがって、塞栓性デブリから全ての頭頸部血管を保護する。フィルタ要素の形状は、様々であり得る。一実施形態では、フィルタ要素の形状は、円錐または閉端管であり得る。フィルタフレームの拡張可能なフレームは、配置時に大動脈の直径全体を横切るサイズ及び形状である。例えば、拡張可能なフレームは、直径12から30mmまで拡張可能なループであり得る。代替的に、拡張可能なフレームは、一端部または両端部で接続され、大動脈の直径全体にフィルタ要素を配置するために外側に拡張する一連のストラットであり得る。フィルタの材料は、織られた又は編まれた繊維材料であり得るし、ポリウレタン等の多孔質ポリマー膜であり得る。フィルタの孔隙は、約40、100、150、200、300ミクロン、またはその間の任意の孔隙であり得る。
【0025】
フィルタ要素の拡張可能なフレームは、ステンレス鋼やニチノールワイヤやリボン等のバネ材料から作られ得る。前の変形例と同様に、フィルタ配置中及びフィルタ回収中に保護を提供するために、閉塞手段及び吸引手段は、この変形例に備えられ得る。大動脈フィルタ要素113は、シースと一体であり得、シースと互換性のある別個の装置であり得、例えば、アクセスシースと同軸または並んでいてもよい。図5Bに示すように、シース110の実施形態は、大動脈フィルタ要素113及び閉塞要素129の両方を備え得る。
【0026】
図6は、正常な順方向の循環を示す血管系を概略的に示す図である。図6では、血管は以下のようにラベル付けされている。ACA:前大脳動脈、MCA:中大脳動脈、PCA:後大脳動脈、ICA:内頸動脈、ECA:外頸動脈、LCCA:左総頸動脈、RCCA:右総頸動脈、LSCA:左鎖骨下動脈、RSCA:右鎖骨下動脈、IA:無名動脈、AAo: 上行大動脈、DAo:下行大動脈、AV:大動脈弁。
【0027】
特定の状況では、アクセスシース110の頸動脈または無名動脈への進入点の上流で頸動脈を灌流するための機構を提供することが望ましい場合がある。アクセスシース110が頸動脈または無名動脈と同様のサイズである場合、シースが動脈に挿入されるときに、動脈を通る流れはアクセスシースによって本質的に遮断され得る。この状況では、シースによる頸動脈の閉塞のために、上流の脳血管が適切に灌流されない可能性がある。アクセスシース110の一実施形態では、シースは、上流の頸動脈及び脳血管を灌流するための機構を備える。
【0028】
図7Aは、血管系に配置されたそのようなアクセスシース110の例示的な実施形態を示す。アクセスシースの近位部には、アクセスシースの単一のモノリシック構造の一部である2つの平行な内部管腔がある。第1管腔775は、シースの近位端部からシースの遠位先端部まで延び、シースの近位端部で、シースの近位端部に配置されたシャントYアーム755及び止血弁777に流体的に接続されている。第1管腔775は、止血弁777を介して経カテーテル大動脈弁及び送達システムを受容し、送達できるサイズ及び形状である。例えば、第1管腔は、その遠位開口部が心臓または大動脈に配置されるような長さを有する。第2管腔769は、第1管腔に隣接して配置され、シースの近位端部からシャフトの中間の位置765の遠位開口部まで延び、近位端部で第2の灌流Yアーム767に流体的に接続されている。第2管腔の遠位端部には、位置765に開口部がある。第2管腔769は、アクセスシース挿入部位の遠位にある頸動脈への血液のシャントを可能にするサイズ及び形状である。透視下でのユーザへのこの開口部の視覚化を容易にするために、放射線不透過性のシャフトマーカーがこの位置のシース上に配置され得る。灌流管腔は、灌流管腔の遠位開口部が使用時に遠位頸動脈内に配置され、遠位頸動脈を灌流できるような長さを有する。第1管腔の近位端部には、止血弁777及びYアームを有する近位コネクタが設けられている。前述のように、止血弁は、そこを通る動脈弁送達システムに適合するサイズである。また、灌流管腔の近位端部にも、近位コネクタが設けられている。近位コネクタ及び/またはYアームは、シャントの取り付けを可能にする。
【0029】
Yアーム755は、流れシャント760に取り外し可能に接続されており、流れシャント760は、第2のYアーム767に取り外し可能に接続されている。シャントは、第1管腔775を第2管腔769に流体的に接続する内部シャント管腔を規定する。シャント760が接続された状態でフラッシング及び造影剤の注入を可能にするために、Yアーム755と流れシャント760との間に栓779が配置され得る。シースが動脈内に配置されると、動脈圧は、血流を、動脈アクセスシースの第1管腔775の遠位端部に送り、Yアーム755から第1管腔を出て、次にシャント760に送り、そしてYアーム767を介してシース内に戻す。次に、血液は、平行管腔769に流入し、位置765において遠位頸動脈に流入し、動脈シース110の遠位の血管系を灌流する。処置中に発生した塞栓が脳動脈に灌流されないように、インラインフィルタ要素762が流れシャント760に備えられ得る。シース110、シャント760、及び管腔769が適切な灌流を制限する流れの制限を作り出す場合、流れシャント760は、血流を駆動して必要なレベルの脳灌流を提供するための能動ポンプ770を組み込んでもよい。これは、弁がアクセスシース110の第1管腔775を通って送達される場合に特に当てはまり得る。
【0030】
図7Bは、図7Aの実施形態の変形例を示す。Yアーム767は、動脈内に配置されたときに、シャント760からの血液を位置765で動脈内に再導入する平行管腔769にシャント760を流体的に接続する。この実施形態におけるシャント760は、シース内の第1管腔775に流体的に接続されていない。シャント760は、Yアーム755を介してアクセスシースから血液を受け取るのではなく、第2のシース、例えば大腿動脈、鎖骨下動脈、または対側の頸動脈を介して別の動脈血源に接続され得る。この変形例では、シャントされた血流は、アクセスシースの第1管腔775を通る弁の送達によって制限されない。この実施形態では、血液源が治療領域から遠く、シャントされた血液中における遠位塞栓のリスクが最小限であるため、シャントラインにフィルタ762を設ける必要はない。Yアーム755は、依然として、シースへのフラッシングや造影剤注入のために使用され得る。図8Aに示す別の変形例では、動脈アクセスシース110は、近位領域でYアーム755に流体的に接続される単一の管腔775を備える。管腔775は、止血弁777を介して経カテーテル大動脈弁及び送達システムを受容し、送達できるサイズ及び形状である。Yアーム755は、流れシャント760に接続され、この流れシャントは、アクセスシース110が導入される動脈アクセスポイントから遠位の頸動脈に導入されるサイズ及び形状である第2の動脈シース802に接続されている。栓779は、シャント760が接続された状態でフラッシングや造影剤の注入を可能にするために、Yアーム755と流れシャント760との間に配置され得る。シースが動脈内に適切に配置されると、動脈圧によって流れがシース110の管腔775に入り、Yアーム755を介して第1管腔から出て、次にシャント760を通り、第2のカテーテル802を通り、動脈アクセスポイントの上流の頸動脈に戻り、動脈シース110の遠位の血管系を灌流する。上記のように、処置中に発生した塞栓が脳動脈に灌流されないように、フィルタ要素762が流れシャント760に備えられ得る。シース110及びシャント760が、適切な灌流を制限する流れの制限を経験する場合、例えば、弁がアクセスシース110の管腔775を通って送達される場合、流れシャントは、血流を駆動して必要なレベルの脳灌流を提供するための能動ポンプ770を組み込んでもよい。
【0031】
図8Bは、図8Aの実施形態の変形例を示す。ここで、第2の動脈シース802は、シャントまたは流れライン760に取り外し可能にまたは固定的に接続されており、シャントまたは流れライン760は、別のシース、例えば大腿動脈または鎖骨下動脈または対側の頸動脈を介して別の動脈源に接続されている。この変形例では、シャントされた血流は、アクセスシースの管腔775を通る弁の送達によって制限されない。この実施形態では、血液源が治療部位から遠く、シャントされた血液中における遠位塞栓の危険性が最小限であるため、シャントラインにフィルタ762を設ける必要はない。Yアーム755は、依然として、シースへのフラッシングや造影剤注入のために使用され得る。
【0032】
図7A及び7B並びに図8A及び8Bにおいて上述した実施形態では、動脈アクセスシース110は、シースの遠位端部に閉塞要素(図示せず)を備え得る。閉塞要素は、頸動脈を閉塞し、塞栓が頸動脈に入ることを防止することを助けるように構成されている。さらに、これらの実施形態では、流れシャント760、及び適用可能な場合にはポンプ770及び/または第2のシース820は、カテーテルベースの大動脈弁置換処置中に経頸動脈アクセス及び頸動脈シャントを可能にするために、単一のキット内の別々の構成要素として提供され得る。
【0033】
図では総頸動脈へのシースの挿入を示しているが、同様のシースやシース/シャントシステムが鎖骨下アクセス用に設計され得る。
【0034】
別の実施形態では、アクセスシース110は、図9に示すように、シース110の遠位端部と近位端部との間に位置する少なくとも1つの側面開口部805を有し得る。シースの挿入中に側面開口部805を塞ぐために、シース110の内部に拡張器が配置され得る。拡張器は、動脈へのシースの挿入を補助するために使用される。アクセスシース110が動脈に挿入され、拡張器が取り外されると、拡張器はもはや開口部805を塞がないので、血液はアクセスシース110から側面開口部805を通って遠位頸動脈に流れ出すことができる。アクセスシース110を通り、動脈に血管内弁送達システムを導入する間、送達システムは、シース及び動脈を通る流れを制限し得、脳灌流のレベルを低下させ得る。しかし、処置のこの期間は一過性であり、この限られた期間中の脳灌流の減少は臨床上問題とならないはずである。図10に示すようなこの実施形態の変形例では、側面開口部805は、開口部805を覆うフィルタ905を有し得る。フィルタ905は、塞栓性デブリを捕捉して、デブリが脳動脈に向かって下流に通過しないように構成されている。フィルタ905は、血管内弁がシース110に挿入されたときに、デブリが前方に押し出されてシースの遠位端部から動脈に入らないように、シース110から膨出するサイズ及び形状であり得る。一実施形態では、フィルタは、塞栓性遠位フィルタ材料と同様の組成の、非常に薄い、孔のあいたフィルムまたは織物材料である。フィルタの孔隙は、約150、200、または250ミクロンであり得る。図9及び図10では総頸動脈にシースを挿入しているが、同様のシースが鎖骨下アクセス用に設計され得る。シース挿入部位は、頸動脈から離れ、それに対応して側面開口部は更にシース先端部に向かって配置され得る。
【0035】
図7-10に示す実施形態におけるシースは、任意選択で、シースが血管に挿入されると配置され得る位置決め要素を備え得る。位置決め要素は、側面開口部805が血管内の所望の位置に留まるように、シースを血管内に位置決めするために使用することができる。この位置決めの特徴は、ループ、組紐、アーム、または他の突出機能等の配置可能な突出部材の形をとり得る。この特徴は、シースが動脈に挿入される際には引っ込められ得、シースが挿入され開口部が血管壁の内側に入った後に配置され得る。シースの保持はまた、例えば、アクセスシース110のYアームのアイレットまたは他の特徴によって達成され得、これにより、シースをいったん正しく位置付けると患者に固定することができる。
【0036】
経頸動脈アクセスシース110を通って送達されるように構成された例示的な弁及び送達システムが図22に示されている。経頸動脈アクセス部位からのルートは、経大腿動脈や鎖骨下アプローチと比較して、かなり短く、直線的である。その結果、送達システムをより短くすることができ、近位部をかなり硬くすることができる。この両方が、より大きな押し力とトルク制御を可能にし、人工弁の位置決めと配置の精度を高める。遠位部は、可撓性が増加しており、上行大動脈の周囲及び大動脈弁輪の位置を正確に追跡できるようになっている。送達システムの材料は、この増加した剛性を提供するために、現在の送達システムと比較して、強化された、より高いデュロメータ、及び/またはより厚い壁の材料を含み得る。
【0037】
バルーン拡張可能な人工大動脈弁205は、血管内弁送達システム200の遠位端部に取り付けられる。送達システムは、遠位テーパ先端部220と、内側シャフト210の遠位端部にある拡張可能なバルーン215とを備える。一実施形態では、システムはまた、例えばプッシャースリーブ230のような、装置の長軸に沿ってスライド可能であり、送達中にバルーン上の位置に弁を維持する外側スリーブを備える。近位制御アセンブリは、近位ハンドル240上のスライドボタン270のような、プッシャースリーブを引っ込めるための機構を含む。図20において、プッシャースリーブ230は、バルブがプッシャースリーブ230からの干渉なしに拡張可能なように、バルブ及び近位バルーンから引っ込められた状態で示されている。コネクタ250は、バルーン215のバルーン膨張管腔に膨張装置を接続することを可能にする。近位回転止血弁260は、弁送達システムがガイドワイヤ(図示せず)上を前進して所定の位置に入るときに、ガイドワイヤの周りの密封だけでなくシステムのフラッシングを可能にする。
【0038】
弁送達システムの作動長は、経頸動脈アクセス部位から大動脈弁輪への弁の送達を可能にするように構成されている。具体的には、弁送達システム200の作動長は、45cm以上60cm以下とすることができる。送達システムシャフトはまた、右または左の頸動脈アクセス部位から送達のために構成されている。具体的には、シャフトは、近位剛性部280と、より撓みやすい遠位部290とを備える。一実施形態では、遠位部は、近位剛性部よりも2から4倍撓みやすい。一実施形態ではて、遠位可撓性部は、弁送達システムの全作動長の4分の1から3分の1の間である。具体的には、遠位可撓性部は10cmから20cmの範囲である。代替の実施形態では、弁送達システムは、遠位可撓性部と近位可撓性部の可撓性の間にある1つ以上の曲げやすい長さの移行部を有する。
【0039】
経頸動脈送達のために構成された別の例示的な弁及び送達システムが、図23に示される。自己拡張型人工大動脈弁305は、血管内弁送達システム300の遠位端部に取り付けられている。送達システムは、内側シャフト310の遠位端部に遠位テーパ先端部320を備える。弁305は、内側シャフト310上に配置され、装置の長手方向軸に沿ってスライド可能な格納式スリーブ330に包含されている。近位制御アセンブリは、スライドボタン370のような格納式スリーブを引き込むための機構を含む。一実施形態では、弁305及びスリーブ330の設計は、弁を隣接させ且つたたませるためにスリーブを遠位方向に再前進させることができるようなものである。そのため、弁305は、最初の位置が不正確だった場合に再配置可能である。近位回転止血弁360は、弁送達システムがガイドワイヤ(図示せず)上を進み、所定の位置に入るときに、ガイドワイヤの周りを密封するだけでなく、システムのフラッシングを可能にする。
【0040】
先の実施形態と同様に、弁送達システムの作動長は、経頸動脈アクセス部位から大動脈弁輪への弁の送達を可能にするように構成されている。具体的には、バルブ送達システム300の作動長は、45cm以上60cm以下である。送達システムシャフトはまた、右または左の頸動脈アクセス部位から送達のために構成されている。具体的には、シャフトは、近位剛性部380と、より撓みやすい遠位部390とを備える。一実施形態では、遠位部は、近位剛性部よりも2から4倍撓みやすい。一実施形態では、遠位可撓性部は、弁送達システムの全作動長の4分の1から3分の1の間である。具体的には、遠位可撓性部は10cmから20cmの範囲である。代替の実施形態では、弁送達システムは、遠位可撓性部と近位可撓性部の可撓性の間にある1つ以上の曲げやすい長さの移行部を有する。
【0041】
次に、例示的な使用方法について説明する。一実施形態では、一般的な方法は、患者の首または肩領域から総頸動脈の壁への貫通部を形成するステップと、先端部が動脈の小孔に向かって下方に向いたアクセスシースを貫通部を通して導入するステップと、ガイドワイヤを上行大動脈にアクセスシースを通して挿入し、生来の大動脈弁を横切って挿入するステップと、アクセスシースを通して人工弁を導入し、人工弁を生来の大動脈弁の位置またはその近くに経皮的に配置するステップとを含む。一実施形態では、動脈はシースの先端部から遠位(上流)で閉塞される。
【0042】
特に、アクセスシース110は、最初に、経皮的穿刺と頸動脈の直接的な外科的切開及び穿刺とのいずれかを介する等して、血管系に挿入される。前述のように、大動脈弁への経頸動脈アプローチは、LCCAを介して達成され得る。適切に配置されると、図11に示すように、閉塞要素129は、LCCAを閉塞するために拡張され得る。別の実施形態では、大動脈弁への経頸動脈アプローチは、図12に示すように、閉塞要素129がRCCAを閉塞して、RCCAを介して達成され得る。別の実施形態では、大動脈弁への経頸動脈アプローチは、図13に示すように、閉塞要素129が無名動脈IAを閉塞して、RCCAを介して達成され得る。閉塞要素129を介して達成される閉塞は、例えば、血管クランプ、血管ループまたはランメル止血を用いた頸動脈の直接クランプを介して達成することも可能である。
【0043】
アクセスシースが配置されると、塞栓防止システムまたは手段を大動脈またはアクセスシースの管腔の他の部位に配置することができる。塞栓防止手段は、閉塞、吸引、及び/またはフィルタ要素を介して配置され、大動脈弁へのアクセスは、シース110に挿入され、上行大動脈に下方に向けられ、生来の大動脈弁を横切るガイドワイヤ119(例えば.035インチまたは.038インチのガイドワイヤ)を介して得られる。生来の大動脈弁の事前拡張は、弁移植の前に、適切なサイズの拡張バルーン、例えば弁形成バルーンを用いて行うことができる。ガイドワイヤ119は、弁を横切ってバルーンを配置するために使用され、バルーンは、ガイドワイヤが所定の位置に留まっている間に、膨張され、収縮され、それから取り外される。
【0044】
次に、血管内人工弁205及び送達システム200が、ガイドワイヤ119上にアクセスシース110を通して挿入され、弁205が生来の大動脈弁の部位に配置される。次に、人工弁205が移植される。移植ステップの終了後、移植された人工弁205の機能は、超音波、透視下での造影剤注入、または他の画像手段を介してアクセス可能である。送達システム200の設計に応じて、人工弁205は、最終的な配置の前に最適な弁の機能及び位置を達成するために必要に応じて調整され得る。次に、送達システム200及びガイドワイヤ119は、アクセスシース110から取り外される。送達システム200及びガイドワイヤ119を取り外した後、塞栓防止要素が取り外される。この間、シース先端部、閉塞要素及び/またはフィルタ要素に捕らえられた塞栓性デブリを捕捉するために、吸引が継続され得る。
【0045】
次に、アクセスシース110が取り外され、アクセス部位が閉じられる。アクセスが外科的切開直接穿刺であった場合、以下に詳述するように、血管は、予め配置されたステッチを結ぶこと、手動で縫合すること、または外科的血管閉鎖装置を用いることのいずれかによって閉鎖される。アクセスが経皮的であった場合、アクセス部位の止血を達成するために経皮的な閉鎖方法及び装置が採用され得る。一実施形態では、閉鎖装置は、貫通部を通して動脈アクセスシースを導入する前に、貫通部の部位に適用される。閉塞装置のタイプは様々である。
【0046】
上記のアクセス部位は、左または右の総頸動脈のいずれかである。他のアクセス部位は、例えば、左または右の鎖骨下動脈或いは左または右の上腕動脈も可能である。これらの動脈は、大動脈弁へのより長い及び/またはより曲がりくねった経路を必要とし得る。しかし、これらの動脈は、頸動脈へのアクセスに比べて他の利点を提供し得る。他の利点は、例えば、患者の頭部から離れた位置で作業できること、頸部内膜切除術やその他の頸部手術または放射線照射の既往がある等の好ましくない頸部の解剖学的構造を回避できること、アクセス部位の合併症のリスクが低いことである。さらに、頸動脈疾患または小さな頸動脈は、総頸動脈へのアクセスを妨げ得る。これらのアクセス部位のいずれにおいても、TAVI中に頭頸部血管を閉塞、吸引、及び/またはフィルタリングすると、処置のスピードと精度が向上し、塞栓性合併症の発生率が減少し得る。
【0047】
閉塞要素及びフィルタを含む塞栓防止の様々なシステムが上述された。次に、全ての頭頸部血管の塞栓防止手段としてフィルタを組み込んだ追加の実施形態について説明する。図15A及び15Bは、フィルタ123が、アクセスされる頸動脈に対して対側(反対側)の動脈(右頸動脈がアクセスされる場合は左頸動脈、左頸動脈がアクセスされる場合は無名動脈)の小孔を横切って配置されるサイズ及び形状である実施形態を示す。図15Cは、代替の実施形態を示し、ここで、フィルタ123は、動脈の小孔に対して遠位の動脈に配置されるようなサイズ及び形状である。フィルタ123は、対側の頸動脈アクセス部位を介して、或いは上腕動脈または鎖骨下動脈アクセス部位を介して配置することができる。血流は、塞栓小片が頭頸部循環へ流入するのを防ぎながら、フィルタを通して対側動脈に順方向に進み得る。
【0048】
図16A、16B、及び16Cは、フィルタが、主管腔または別個の管腔のいずれかであるアクセスシース110の管腔を通して送達されるサイズ及び形状である代替の実施形態を示す。図16Aにおいて、フィルタ124は、上行大動脈に配置されるサイズ及び形状である。この実施形態では、弁は、フィルタ材料を通って大動脈弁の位置に送達される。フィルタは、弁がフィルタを通過できるように、事前に形成されたスリットまたは開口部を有し得る。事前に形成された(1つまたは複数の)スリットは、スリットから生じる(1つまたは複数の)穴のサイズを最小限に抑えながら、弁がフィルタを通過できるように、フィルタ材料に形成することができる。例えば、一方通行の弁を作るための(1つまたは複数の)スリットのパターンは、弁システムが心臓に向かって通過することはできるが、スリットは心臓から離れる方向に流れる血液によって閉じられる。あるいは、材料は、例えば導入針によって穿刺され得、次に、ガイドワイヤを、フィルタ材料を通して、生来の弁を横切って送達させることができる。次に、弁送達システムは、ガイドワイヤを介してフィルタ材料を通って目的部位まで前進される。
【0049】
図16Bにおいて、フィルタ124は、大動脈弓の壁に接触するように大動脈弓内に送達されるサイズ及び形状である。図16Cにおいて、フィルタ124は、頭頸部血管の両方の開口部を同時に横切って送達されるサイズ及び形状である。この実施形態では、フィルタは、大動脈弓の上側にフィルタを配置するのを補助するために、サイドポートを通してアクセスシースを出ることができる。図16B及び16Cに示す実施形態では、フィルタ124はシース開口部の下流にあり、弁は送達されるためにフィルタを横切る必要はない。図16B及び16Cの実施形態は、主シース管腔を通って送達され得、心臓を出る脈動血流の助けによって大動脈内に配置され得る。図16B及び16Cのフィルタがシースから大動脈に送達されるとき、血流はフィルタ材料を引っ張ったり引き寄せたりして、シースの遠位にフィルタを配置するのを自然に助ける。処置の最後にシースから取り外されるまで、装置はその位置にある。
【0050】
図17A、17B、17C及び17Dに示す別の実施形態では、塞栓フィルタがアクセスシース110の上方にまたはアクセスシース110上に接触して組み込まれ、大動脈弓に配置される。図17A及び17Bにおいて、フィルタ111は、大動脈弓の上側面を横切って配置されるサイズ及び形状であり、一部または全ての頭頸部血管の小孔を覆う。この実施形態では、アクセス部位の頸動脈と対側の頸動脈の両方がフィルタ111によって保護されているので、弁移植処置中にシース上で塞栓防止のために閉塞バルーンは不要である。しかし、フィルタの配置中や回収中に塞栓性デブリのリスクがあり得るため、弁移植前のフィルタの配置中や弁移植後のフィルタの回収中に、塞栓防止として閉塞バルーンと吸引機能を保持することが望ましい場合がある。図17C及び17Dでは、大動脈フィルタ113は、大動脈弓内の大動脈を横切って配置されるサイズ及び形状であり、その結果、全ての下流の血管は、弁移植処置中に塞栓性デブリからフィルタ113によって保護される。
【0051】
図18A及び18Bに示す別の実施形態では、大動脈フィルタは、アクセスシース110の上方またはアクセスシース110上に接触して組み込まれ、上行大動脈に配置される。図18Aに示すように、大動脈フィルタ113は、シースの遠位部においてシース110に取り付けられている。使用中に、アクセスシースの遠位部は上行大動脈に配置され、次にフィルタ113が大動脈を横切って拡張され、その結果、全ての下流の血管がフィルタによって保護される。フィルタの配置は、例えば、シースの外側にある格納式スリーブによって達成され得、引っ込められると、拡張可能なフィルタが露出する。1つの構成では、フィルタの配置長は、格納式スリーブの引き戻し量に応じて変化され得る。この制御により、ユーザは、フィルタの長さ及び直径に応じて、フィルタを異なるサイズに拡張させ得る。あるいは、フィルタを配置するために、ワイヤフレームや構造物によってフィルタを前方に押し出し得る。上記のように、配置されるフィルタの量は、露出するフレームの量を変えることによって、患者の解剖学的構造に応じて変化させ得る。図18Aに示されるこの実施形態の変形例では、フィルタ113は、代わりに、血液を濾過するためではなく、弁送達中に大動脈を閉塞するために閉塞することができる。図18Bに示すこの実施形態の変形例では、フィルタ113は、大動脈内で遠位に延びるように形作られている。この実施形態では、フィルタはより大きな表面積を有し、流量への影響が低くなる可能性がある。
【0052】
図15A-18Bに示すシナリオのいずれにおいても、アクセスされた頸動脈を遮断するために、閉塞バルーン129がシース110に取り付けられ得る。さらに、弁が送達された後のフィルタ回収のステップ中に、塞栓性デブリが下流の血管に移動するリスクを最小限とするために、Yアーム112を介してアクセスシースに受動または能動吸引が適用され得る。任意選択で、シース内のチャネルまたは別の灌流カテーテルを介して、緩んだデブリを洗い流すのを補助するために灌流を適用することもできる。上述したように、大動脈フィルタがアクセス血管を保護するので、閉塞バルーン129並びに吸引及び/または灌流機能は処置中に必要とされない。しかしながら、上述したように、フィルタの配置及び回収中に保護を提供するために閉塞、吸引及び/または灌流機能がシステムに含まれ得る。
【0053】
図15A-18Bに示す全てのシナリオにおいて、塞栓フィルタ材料は、有孔ポリマーフィルム、織物または編まれたメッシュ材料、或いは特定の孔隙を有する他の材料であり得る。一実施形態では、フィルタ材料の孔隙は、80ミクロン以上150ミクロン以下である。一実施形態では、フィルタ材料の孔隙は、100ミクロン以上120ミクロン以下である。一実施形態では、フィルタ材料は、処置中に材料上での血栓形成を防止するために、ヘパリンまたは他の抗凝固剤でコーティングされている。
【0054】
別の実施形態では、図19に示すように、アクセスシース110は、大動脈閉塞要素114を備える。閉塞要素は上行大動脈を閉塞するサイズ及び形状である。使用中に、アクセスシース110は、右または左の頸動脈を介して導入され、遠位部は上行大動脈に配置される。事前拡張バルーンは、弁を横切って配置される。弁の事前拡張の前に、心臓の流れは、例えば、急速ペーシングまたはアトロピンを介して、停止または著しく減速され、閉塞要素114は、上行大動脈を閉塞するために膨張または拡張される。次に、遠位塞栓のリスクなしに、弁の事前拡張ステップが実行される。閉塞要素114の収縮の前に、シース110のサイドアーム112を介して上行大動脈に吸引が加えられ得る。任意選択で、シース内のチャネルまたは別の灌流カテーテルを介して、緩んだデブリを洗い流すのを補助するために灌流を適用することもできる。
【0055】
閉塞要素114が収縮された後、心臓の流れが再開され得る。次に、弁が移植のために配置される。前のステップと同様に、心臓の流れは、例えば、急速ペーシングまたはアトロピンを介して、停止または著しく減速され、閉塞要素114は、拡張する大動脈を閉塞するために膨張または拡張される。次に、遠位塞栓のリスクなしに、弁の移植ステップが実行される。閉塞要素114の収縮の前に、シース110のサイドアーム112を介して上行大動脈に吸引が加えられ得る。次に、閉塞要素が収縮され、所定の位置に新たに移植された弁で心臓の流れが再開される。バルーンの材料は、非適合、適合、または部分適合の構造を形作るために形成することができる。バルーンは、PET、シリコン、エラストマー、ナイロン、ポリエチレン、まあたその他の重合体や共重合体から形成され得る。
【0056】
この構成では、閉塞要素114は、流体造影剤で膨張させることで拡張するバルーンであり得る。この構成では、シースは、膨張装置に接続可能な追加の膨張管腔を備えている。あるいは、閉塞要素は、組紐、ケージ、または拡張したときに血管内に密封を作り出す被覆を有する他の膨張可能な機械的構造等の機械的に拡張可能な閉塞要素であり得る。
【0057】
図20A及び20Bに示す別の構成では、第1のアクセスシース110は、大動脈弁へのアクセスを提供するように、経頸動脈的に(すなわち、内頸動脈、外頸動脈、及び/または総頸動脈を含み得る頸動脈を介して)動脈に配置される。第1のアクセスシース110は、脳塞栓保護を提供するために、及びガイドワイヤ119を血管系に及び大動脈弁を横切って導入するために使用できるように、上記のように構成される。さらに、第2のアクセスシース1805は、反対側から大動脈弁輪にアクセスするための代替のアクセス部位、例えば左心室への経心尖アクセス部位を介して導入される。第2のアクセスシース1805は、人工弁405を移植するために経心尖アクセス用に構成された送達システム400を導入するために使用され得る。この実施形態では、第2のアクセスシース1805は、最初に、図20Aのように、第1のアクセスシース110を通して挿入されたガイドワイヤ119の遠位端部1815を把持するか、さもなければスネアするように構成されたスネア装置1810を導入するために使用され得る。あるいは、図20Bのように、スネア1810は、第1のアクセスシース110を介して導入され得、ガイドワイヤ119は、第2のアクセスシース1805を介して導入され得る。ガイドワイヤがどちらの端部に導入されたかまたはスネアされたかには関係なく、スネアは引き戻され得、その結果、ガイドワイヤの両端部は外部に固定され得る。ガイドワイヤ119のそのような両端部固定は、ガイドワイヤ遠位端部が固定されていない処置よりも、人工弁405の配置のために、より中央の軸方向に向けられた安定したレールを提供する。次に、人工弁405は、第2のアクセスシース1805を介してガイドワイヤ119上に配置されることが可能であり、大動脈弁輪に配置されることが可能である。この実施形態では、第1のシース110が経カテーテル弁の通過を必要としないので、第1のシース110は第2のアクセスシース1805より小さくてもよい。
【0058】
図20A及び20Bの実施形態の変形例では、図21に示すように、経頸動脈弁送達システム200及び弁205は、第1のシース110を介して送達され得る。このアプローチの利点は、図20A及び20Bのアプローチよりも心尖部の穿刺が小さくて済むことである。しかし、第1のアクセス部位には、より大きなシースが必要である。この方法の実施形態では、第1のアクセス部位は、図20及び21において経頸動脈アクセスとして示されているが、鎖骨下または経大腿アクセス部位でもあり得る。
【0059】
別の実施形態では、経頸動脈弁送達システムはまた、遠位塞栓防止要素を含む。図24に示すように、弁送達システム200は、弁送達システム200が所望の位置に弁を配置するために位置決めされるとき、上行を横切って拡張されるサイズ及び形状である拡張可能なフィルタ要素211を備える。フィルタの配置は、シースの外側にある格納可能なスリーブによって達成され得、引っ込められると、拡張可能なフィルタが露出する。あるいは、フィルタを配置するために、フィルタは、ワイヤフレームまたは構造物によって、前方に押し出され得る。フィルタ要素は、弁送達システムのプッシャースリーブ230に貼り付けられ得るか、それが弁に対して独立して位置決めできるように可動式外側スリーブに貼り付けられ得る。後者の変形例では、弁が生来の弁の位置を横切る前にフィルタが配置及び拡張され得る。したがって、処置の交差ステップ中に、下流の流れを遠位塞栓から保護することができる。
【0060】
この実施形態の変形例では、図25に示すように、弁送達システム200は、弁送達システム200が所望の位置に弁を配備するために位置決めされるとき、上行を閉塞するサイズ及び形状である閉塞要素212を備える。閉塞要素212は、流体造影剤による膨張によって拡張されるバルーンであり得る。この構成では、弁送達システム200は、膨張装置に接続することができる追加の膨張管腔を備える。あるいは、閉塞要素は、組紐、ケージ、または拡張したときに血管内に密封を作り出す被覆を有する他の拡張可能な機械的構造等の機械的に拡張可能な閉塞要素であり得る。閉塞要素は、弁送達システムのプッシャースリーブ230に貼り付けられ得るか、それが弁に対して独立して位置決めできるように可動式外側スリーブに貼り付けられ得る。
【0061】
頸動脈へのアクセスが外科的切開によるものであった場合、アクセス部位は標準的な血管外科技術を使用して閉鎖され得る。巾着縫合糸の縫合は、シース挿入前に適用され得、次にシース抜去後にアクセス部位を結ぶために使用され得る。アクセス部位が経皮的アクセスであった場合、多種多様な血管閉鎖要素が利用され得る。一実施形態では、血管閉鎖要素は、アンカー部と自動閉鎖部分等の閉鎖部とを含む機械的要素である。アンカー部は、フック、ピン、ステープル、クリップ、タイン、縫合糸等を含み得、これらは、貫通部が完全に開いているときに自己閉鎖要素を固定するために、貫通部の周囲の総頸動脈の外面に係合する。自己閉鎖要素はまた、バネ状または他の自己閉鎖部分を備え得、これは、シースを除去すると、動脈壁内の組織を引き寄せて閉鎖を提供するためにアンカー部を閉鎖することになる。通常、この閉鎖は十分なものであり、貫通部を閉鎖または密封するためにそれ以上の手段を講じる必要はないであろう。しかし、任意選択として、シースが引き出された後、自己閉鎖要素の補足的な密封を提供することが望ましい場合があり得る。例えば、自己閉鎖要素及び/または要素の領域の組織路は、生体吸収性ポリマー、コラーゲンプラグ、接着剤、シーラント、凝固因子、または他の凝固促進剤等の止血材料で処理することができる。あるいは、組織または自己閉鎖要素は、電気メス、縫合、クリッピング、ステープル等の他の密封プロトコルを用いて密封することができる。別の方法では、自己閉鎖要素は、クリップ、接着剤、バンド、または他の手段で血管の外壁に取り付けられる自己密封膜またはガスケット材料である。自己密封膜は、スリットやクロスカット等の通常は血圧に対して閉じられている内側の開口部を備え得る。これらの自動閉鎖要素のいずれも、開腹処置で配置するように設計することも、経皮的に配置するように設計することも可能である。
【0062】
代替の実施形態では、血管閉鎖要素は、縫合糸ベースの血管閉鎖装置である。縫合糸ベースの血管閉鎖装置は、血管アクセス部位を横切って1つまたは複数の縫合糸を配置することができ、その結果、シース除去後に縫合糸の端部が結ばれるとき、1つまたは複数のステッチがアクセス部位に止血を提供する。縫合糸は、動脈切開部を通して処置用シースを挿入する前、または動脈切開部からシースを除去した後に行うことができる。装置は、縫合の配置後であるが処置用シースの配置前及び配置中に、動脈切開部の一時的な止血を維持することができ、また、処置用シースの引き出し後であるが縫合糸を結ぶ前に、一時的な止血を維持することができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「頸動脈治療のためのシステム及び方法」と題する米国特許出願第12/834,869号は、例示的な閉鎖装置を記載し、また、本明細書に開示される装置、システム、及び方法に関連し且つこれと組み合わせられ得る様々な他の装置、システム、及び方法について記載する。
【0063】
図26A-26Eに示す別の実施形態では、大動脈フィルタ2603は、円錐形または円錐形に類似した形状として構成され、拡張可能な遠位バンド2604を備える。遠位バンド2604は、大動脈フィルタ2603の周りに少なくとも部分的に延びるように、または大動脈フィルタ2603内に配置されるように、大動脈フィルタ2603に取り付けられる。図26A-26Eに示すように、大動脈フィルタ2603は、近位端部が患者の体外に配置されている内側送達カテーテル(IDC)2600に接続された近位端部を備える。IDC2600は、細長いボディで、デュアル内部管腔等の1つ以上の内部管腔を備えることができる。IDC2600は、外側シース2601a,b(図26Aに断面として示されている)によって囲まれ得る。外側シース2601は、本明細書に記載の動脈シース110に対応することができる。1つ以上のプルワイヤ2602a及び2602b(図26Bの部分図に示されている)は、大動脈フィルタ2603に接続する。プルワイヤ2602a及び2602bの遠位部は、大動脈フィルタ2603の遠位部に接続されている。プルワイヤ2602a及び2602bはまた、デュアル管腔内等のIDC2600の遠位領域内に配置される。
【0064】
図26Cに示すように、IDC2600の外側管腔は、プルワイヤ2602a及び2602bの両方が配置され得る単一の円形開口部2605aを有することができる。あるいは、図26Dに示すように、IDC2600の外側管腔は、プルワイヤ2602a及び2602bのそれぞれが別々の開口部に配置されるように、2つの細長い開口2605b及び2605c、または図26Eに示すように、2つの円形開口部2605d及び2605eを有することが可能である。
【0065】
図26F及び26Gに示すように、IDC2600の管腔内のプルワイヤ2602a,bの異なる構成が使用され得る。IDC2600は、最も遠位の開口部2606の近位にある1つまたは2つの遠位開口部を有し得る。図26Fに示すように、IDC2600は、外側管腔と連絡する遠位開口部2607を有し得る。その結果、プルワイヤ2602a,bが大動脈フィルタ2603の遠位端部に接続され、IDC2600の最も遠位の開口部2606及び内側管腔に戻り、外側管腔を通過するために遠位開口部2607を通ってIDC2600を出ることができる。あるいは、図26Gに示すように、IDC2600は、横方向通路を形成する外側管腔に第1の遠位開口部2608及び第2の遠位開口部2609を有し得る。その結果、プルワイヤ2602a,bは、大動脈フィルタ2603の遠位端部に接続され、IDC2600の第1の遠位開口部2608に戻り、横方向通路を通り、第2の遠位開口部2609から出て、IDC2600を出ることができる。
【0066】
大動脈フィルタ2603は、外側シース2601a,b及び/またはプルワイヤ2602a,bを使用してたたむことができる。プルワイヤ2602a,bは、大動脈フィルタ2603の遠位端部に接続されることができ、IDC2600の遠位端部の内側に戻って延びることができる。プルワイヤ2602a,b用に別々の管腔2605a-eを有するデュアル管腔のIDC2600が使用され得る。プルワイヤ2602a,bの使用、または大動脈フィルタ2603の遠位端部のIDC2600への接続は、取り外しのために、大動脈フィルタ2603をIDC2600の周りにたたむことを可能にする。たたむことは、外側シース2601a,bが大動脈フィルタ2603の外面上を移動し、IDC2600内で回転するときに外側シース2601a,bの摩擦によって引き起こされる巻き付け動作を介して発生する。IDC2600が所定の位置に保持されている間、外側シース2601a,bは大動脈フィルタ2603上に配置され得る。
【0067】
次に図27A-27Cを参照すると、この実施形態の変形例では、大動脈フィルタ2703は、拡張しているまたは拡張可能な遠位バンド2704を有する円錐体として構成される。遠位バンド2704は、大動脈フィルタ2703の周りに延びるように、または大動脈フィルタ2703内に配置されるように、大動脈フィルタ2703に取り付けられる。大動脈フィルタ2703は、内側送達カテーテル(IDC)2600に接続された近位端部を備える。IDC2600は、外側シース2601(参照番号2601a,2601bで断面を示す)によって囲まれ得る。大動脈フィルタ2703は、図27Aに示すように、大動脈弁の近くまで延びるように構成されており、したがって、より大きなフィルタ面積を有する。大動脈フィルタ2703をたたむために、大動脈フィルタ2703の遠位端部に接続されたプルワイヤ2602a,b(図27B参照)が使用され得るか、大動脈フィルタ2703の遠位端部がIDC2600に接続され得る。プルワイヤ2602a,b、または大動脈フィルタ2703のIDC2600への接続は、取り外しのために、IDC2600の周りに大動脈フィルタ2703をたたむために使用され得る。このとき、巻き付け動作を発生させてたたむことと取り外すことを容易にするために、大動脈フィルタ2703の外面上を移動しIDC2600の周りに回転されるときの外側シース2601の摩擦を利用する。プルワイヤ閉鎖構成または直接接続閉鎖構成2701bのいずれかが、大動脈フィルタをたたんで取り外すために使用され得る。
【0068】
図28A-28Cに示す別の実施形態では、大動脈フィルタ2803は、拡張しているまたは拡張可能な遠位バンド2804を有する円錐体として構成される。遠位バンド2804は、大動脈フィルタ2803の周りに延びるように、または大動脈フィルタ2803内に配置されるように、大動脈フィルタ2803に取り付けられる。大動脈フィルタ2803は、ラップジョイント2805を介して内側送達カテーテル(IDC)2600に接続された近位端部を備える。IDC2600は、外側シース2601によって囲まれ得る。図28A及び28Bに示すように、大動脈フィルタ2803の近位端部は、外側シース2601に接続され、大動脈フィルタ2803の遠位端部は、IDC2600の遠位端部に接続されている。この構成は、IDC2600を静止させたまま外側シース2601を近位に移動させることによって、大動脈フィルタ2803を引き寄せて閉じるか、さもなければより小さなサイズにたたむことを可能にする。これにより、大動脈フィルタ2803を、外側シース2601とIDC2600との間で直接回転することによって巻き付けることが可能になり、シース2601を大動脈フィルタ2803上に配置する必要がない。
【0069】
図29Aに示されるこの実施形態の変形例では、大動脈フィルタ2903は、拡張しているまたは拡張可能な遠位バンド2904を有する円錐体として構成される。遠位バンド2904は、大動脈フィルタ2903の周りに延びるように、または大動脈フィルタ2903内に配置されるように、大動脈フィルタ2903に取り付けられる。大動脈フィルタ2903は、内側送達カテーテル(IDC)2600に接続された近位端部を備える。IDC2600は、外側シース2601によって囲まれ得る。大動脈フィルタ2903を断面で示す図29B-29Dに示すように、IDC2600の遠位端部または領域は、大動脈フィルタ2903の遠位領域及び中央のIDC2600に接続された放射状のストラット2900、2901、及び2902を備え得る。ストラット2900,2901,及び2902は、大動脈フィルタ2903を閉じるか、またはたたむために、張力をかけるか、または巻き付けることができる。追加的または代替的に、ストラット2900、2901、及び2902は、大動脈フィルタ2903に安定した力を提供するために圧縮することができる。ストラット2900、2901、及び2902は、少なくとも部分的に螺旋状の形状または輪郭とすることができる。これは、大動脈血管の中央部にIDC2600を中心付けるのに役立つ。同様に、血管壁上の単一の力点ではない大動脈フィルタ2903上に外向きの力を提供するのに役立ち、血栓が大動脈フィルタ2903の表面の大きな部分を塞ぐ前に血栓を分解し及び/または補足する能力を提供するのに役立つ。
【0070】
上述し、図26Aから29Dに示す実施形態は、RCCAを介して導入されるものとして図示され、議論されているが、これらの実施形態は、LCCAを介して導入するために適合され及び/または修正され得ることが理解されるべきである。本明細書で説明する実施形態のいずれも、RCCAまたはLCCAを介して送達することができる。
【0071】
図30は、大動脈弓とそこから延びる3本の動脈、すなわち右鎖骨下動脈(RSCA)と無名動脈(IA)を含む右総頸動脈(RCCA)、左総頸動脈(LCCA)、及び左鎖骨下動脈(LSCA)の概略図を示す。複数の大動脈フィルタ3003a,3003b,3003c,及び3003dは、それぞれの動脈にフィルタ保護を提供するために、1つ以上の動脈に配置されることが可能である。例えば、RCCAには、フィルタ3003aが配置されている。経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)ツール3001は、様々な経路のいずれかを介して、フィルタ3003aの遠位のRCCAに配置することができる。RSCAには、フィルタ3003bが配置されている。LCCAには、フィルタ3003cが配置されている。LSCAには、フィルタ3003dが配置されている。フィルタ3003a-3003dは、最初に3003a、次いで3003d、3003c、及び3003bの順序で配置することができる。あるいは、フィルタ3003a-3003dは、最初に3003d、次いで3003c、3003b、及び3003aの順序で配置することができる。他の配置順序も可能である。
【0072】
図31A-31Cは、腕頭フィルタ3100を備える大動脈フィルタシステムの実施形態を示す。腕頭フィルタ3100は、遠位頸領域3105を有する本体3103と、フィルタの近位領域に設けられた第1のフォーク部材3104aと、第2のフォーク部材3104bとを備える。第2のフォーク部材3104bは、可変長であってもよいし、存在しなくてもよい。腕頭フィルタ3100は、例えば、頸領域3105がRCCAに接触し、本体3103がRCCAの全長に接触しないように、右RCCAに配置され得る。追加のフィルタ3106及び3107は、それぞれLCCA及びLSCAに配備され得る。腕頭フィルタ3100の別の実施形態が、図31Bに示されている。腕頭フィルタ3100の更に別の実施形態は、図31Cに示されており、第2のフォーク部材3104bを有しない。図31Cに示すように、腕頭フィルタ3100は、示される矢印の方向に本体3103の壁を通って血流を可能にする。
【0073】
図32は、細長い本体と大動脈フィルタ3203とを有する腕頭フィルタ3201の別の実施形態を示す。細長い本体は、RCCAを通って延び(RSCAを閉塞する可能性もある)、大動脈フィルタ3203に接続されている。大動脈フィルタ3203は、大動脈弓に位置し、そこから延びる動脈の小孔を保護するサイズ及び形状である。
【0074】
図33は、細長い本体と別の大動脈フィルタ3303とを有する腕頭フィルタ3301のさらに別の実施形態を示す。腕頭フィルタ3301の細長い本体は、RCCAを通って大動脈弓内に延び、そこで大動脈フィルタ3303の縁部に接続されている。大動脈フィルタは、大動脈弓に位置し、そこから延びる動脈の小孔を保護するサイズ及び形状である。
【0075】
図34A-34Cは、大動脈フィルタ3403の一実施形態の概略図である。ツール3001は、(様々な経路のいずれかを介して)RCCAに入り、RCCAを通過して大動脈弓に到達し、大動脈弓に配置された大動脈フィルタ3403を通過することができる。大動脈フィルタ3403は、大動脈弓に位置し、そこから延びる動脈を保護するサイズ及び形状である。大動脈フィルタ3403は、大動脈フィルタ3405の外径の周りに配置された遠位スリーブ3405と、スリーブ3405の基部にあるリング3402とを備え得る。リング3402は放射線不透過性であり得る。スリーブ3405は、例えばニチノール及び/又はウレタンを含み得る。スリーブ3405は、外部支持体として機能し得る。図34Bに示すように、スリーブ3405は、挿入後に、TAVRツール3001の外径の周りに滑らかにフィットすることができる。
【0076】
図35A-35Bは、支持ワイヤ3501に取り付けられた大動脈フィルタ3503の一実施形態の概略図である。この実施形態は、例えば経頸動脈アクセス及び/または大腿アクセスに使用するのに適している。図35Aに示すように、支持ワイヤ3501は、RCCAを通って延び、アクセス位置3504の一端部で大動脈フィルタ3503に取り付けられている。アクセス位置3504は、TAVRツール3001の挿入によって開かれるまで閉じたままであるタイトメッシュを含み得る。図35Bは、TAVRツール3001をアクセス位置3504のメッシュに挿入し、大動脈フィルタ3503を通過させる様子を示す。
【0077】
図36は、支持ワイヤ3601を有する大動脈フィルタ3603の別の実施形態の概略図である。この実施形態はまた、経頸動脈アクセス及び/または大腿アクセスでの使用にも適している。支持ワイヤは、RCCAを通って延び、大動脈フィルタ3603とアクセス窓3604の一方の縁部とに接続する。支持ワイヤ3601は、様々な材料のいずれで作られてもよい。材料は、ステンレス鋼、ニチノール、及びアルミニウム等が挙げられるが、特に限定されない。大動脈フィルタ3603は、大動脈弓に位置し、そこから延びる動脈を保護するサイズ及び形状である。大動脈フィルタ3603は、大動脈フィルタ3603の直径の周りに配置された遠位ループ3602と、アクセス窓3604とを備える。アクセス窓3604は、大動脈フィルタ3603よりも目が詰まった孔隙を有することができ、TAVRツール3001がアクセス窓3604を通して挿入されるときにその空隙を緩めることができる。アクセス窓3604は、その空隙を緩めて、TAVRツール3001が大動脈フィルタ3603を通過することを可能にすることができる。
【0078】
上述し、図32から36に示す実施形態は、RCCAを介して導入されるものとして図示されているが、これらの実施形態は、LCCAまたは他の経路を介して導入するために適合され及び/または修正され得ることが理解されるべきである。
【0079】
図37A-37Bは、支持ワイヤ3701を有する大動脈フィルタ3703のさらに別の実施形態の概略図である。図37Aに示すように、支持ワイヤ3701は、RCCAを通って延び、大動脈フィルタ3703上のアクセス位置3702に接続する。大動脈フィルタ3703は、上行大動脈に位置し、大動脈弓を通過して拡張するサイズ及び形状である。図37Bは、大動脈フィルタ3703とアクセス位置3702の断面を示す。
【0080】
図38は、大動脈フィルタシステムの別の実施形態の概略図である。支持ワイヤ3801は、RCCAを通って延び、大動脈フィルタ3803に接続する。大動脈フィルタ3803は、大動脈弓に位置し、LCCA及びLSCAを保護するサイズ及び形状である。別のフィルタ3802は、RSCAに配置される。この実施形態では、大動脈フィルタ3803もフィルタ3802も、RCCAを覆わない。
【0081】
図39は、大動脈フィルタシステムの概略図である。フィルタシステムは、RCCAを通って延びるサイズ及び形状である第1の細長い部分3902aを備える。第1の部分3902aは、ガイドワイヤ3901を受容するための管腔を備える。第1の部分3902aはまた、第1の部分3902aの膨張を可能にする膨張ポートと、ループ構造3905とを備える。ループ構造3905は膨張可能であり、送達カテーテルの周りに密封を作成することができる。密封は、送達カテーテルと無名動脈(IA)の内壁との間に作り出される。この密封は、送達カテーテルの周りのRCCAへの塞栓材料の進入を防ぐことができる。密封性を維持しつつ、送達カテーテルの軸方向の移動を可能にするために、膨張圧を調節することができる。フィルタシステムは、第1の部分3902aに結合された第2の部分3902bを備える。その結果、第2の部分3902bは、LCCAを通って延びるサイズ及び形状である。また、フィルタシステムは、LSCAを通って延び、第2の部分3902bに結合された第3の部分3902cを備える。
【0082】
第1の部分3902aは、RCCAの小孔に位置するサイズ及び形状であるループ構造3905に結合される。第1の部分3902aは、RCCAを通って近位に延び、第2の部分3902bに結合する。第2の部分3902bは、ブリッジに取り付けられたフィルタ3903bを備え、フィルタ3903bはLCCA内に配置される。第3の部分3902cはまた、LSCA内に配置され、第2のブリッジを介して第2の部分3902bに接続されるフィルタ3903aを備える。フィルタシステムは、RCCAに配置されるサイズ及び形状であり、LCCAに配置されるサイズ及び形状であるフィルタ3903bと、LSCAに配置されるサイズ及び形状であるフィルタ3903aとを備えている。
【0083】
図40は、大動脈フィルタシステムの別の実施形態の概略図である。システムは、RCCAを通って延び上腕大動脈フィルタ4003aに接続する第1の部分を有するガイドワイヤ4001を備える。システムは、第1のブリッジによってガイドワイヤ4001に接続されたフィルタ4003bと、第2のブリッジによってガイドワイヤ4001に接続されたフィルタ4003cとを更に備える。上腕大動脈フィルタ4003aは、RCCAの小孔に位置するサイズ及び形状である。上腕大動脈フィルタ4003aは、内部に拡張可能なフィルタを有するステントとして構成され得る。フィルタ4003bは、LCCAに配置されるサイズ及び形状である。フィルタ4003cは、LSCAに配置されるサイズ及び形状である。
【0084】
図41は、大動脈フィルタシステムの別の実施形態の概略図である。フィルタシステムは、RCCAを通って延びるサイズ及び形状である第1の細長い部分4102aを有する。第1の部分4102aは、ガイドワイヤ4101を受容するための管腔を備える。第1の部分4102aはまた、第1の部分4102aの膨張を可能にする膨張ポートを備え、さらにフック構造4105を備える。フック構造4105は膨張可能であり、送達カテーテル(図示せず)の周りに密封を形作ることができる。密封は、送達カテーテルと無名動脈(IA)の内壁との間に作り出される。この密封は、送達カテーテルの周りのRCCAへの塞栓材料の進入を防ぐことができる。密封性を維持しつつ、送達カテーテルの軸方向の移動を可能にするために、膨張圧を調節することができる。フィルタシステムは、第1の部分4102aに結合された第2の部分4102bを備える。第2の部分4102bは、LCCAを通って延びるサイズ及び形状である。また、フィルタシステムは、LSCAを通って延び、第2の部分4102bに結合された第3の部分4102cを備える。
【0085】
第1の部分4102aは、RCCAの小孔に位置するサイズ及び形状であるフック構造4105に結合される。フック構造4105は、ループ形状を形成するために互いに巻き付く2つ以上のアームを備える。第1の部分4102aは、RCCAを通って近位に延び、第2の部分4102bに結合する。第2の部分4102bは、ブリッジに取り付けられたフィルタ4103aを備え、フィルタ4103aはLCCA内に配置される。第3の部分3902cはまた、LSCA内に配置され、第2のブリッジを介して第2の部分4102bに接続されるフィルタ4103bを備える。フィルタシステムは、RCCAに配置されるサイズ及び形状であり、LCCAに配置されるサイズ及び形状であるフィルタ4103aと、LSCAに配置されるサイズ及び形状であるフィルタ4103bとを備えている。
【0086】
図42は、塞栓防止フィルタシステムの概略図を示す。システムは、TAVRシステム用の経頸動脈送達シース4201を備える。送達シース4201は、任意選択で、送達シース4201の遠位先端部付近に閉塞バルーン4202を備える。バルーン4202及び送達シース4201は、無名動脈(IA)内に配置されるサイズ及び形状である。バルーン4202の膨張は、大動脈弁や上行大動脈や大動脈弓から遊離した塞栓材料が総頸動脈に進入することを防ぐ。フィルタ4203は、送達シース4201の遠位端部に取り付けられている。RCCAを介したアクセスのために、フィルタ4203はLCCAとLSCAの小孔を横切って配置される。フィルタ4203は、塞栓材料が脳に進入するのを防ぐ。塞栓材料は大動脈弓を通過してシャントされる。送達中、フィルタ4203は、送達シース4201の本体から遠位にある前方位置でたたまれ得る。
【0087】
図43は、塞栓防止フィルタシステムの別の実施形態の概略図を示す。システムは、TAVRシステム用の経頸動脈送達シース4301を備える。送達シース4301は、任意選択で、送達シース4301の遠位先端部付近に閉塞バルーン4302を備える。任意の実施形態では、動脈は、ランメル止血帯を使用すること等によって外部から閉塞することができる。バルーン4302及び送達シース4301は、LCCA内に配置されるサイズ及び形状である。バルーン4302の膨張は、大動脈弁や上行大動脈や大動脈弓から遊離した塞栓材料が総頸動脈に進入することを防ぐ。フィルタ4303a及び4303bは、送達シース4301の遠位端部に取り付けられている。LCCAを介したアクセスのために、フィルタ4303aは無名動脈(IA)の小孔を横切って配置され、フィルタ4303bはLSCAの小孔を横切って配置される。フィルタ4303a及び4303bは、塞栓材料が脳に進入するのを防ぐ。塞栓材料は大動脈弓を通過してシャントされる。送達中、フィルタ4303a及び4303bは、送達シース4301の本体から遠位にある前方位置でたたまれ得る。
【0088】
図42及び43に示す塞栓防止フィルタシステムは、可動式の薄壁チューブ(図示せず)を介して所定の位置に固定され得る。したがって、送達シースの外面に対してフィルタの全長をたたむことに比べて、システムの全体的な送達外形を減らすことができる。これらのフィルタシステムの使用による塞栓防止は、完全なフィルタバスケットが必要とされないため、塞栓材料が脳に到達するのを防ぐことができる。塞栓材料は、IA及びLCCAの小孔を通過して、患者へのリスクが大幅に低い遠位血管床にシャントされる。解剖学的構造は典型的にLCCAの小孔から大動脈弁までの比較的直接的な直線経路を提供するため、デュアルフィルタ構成は特定の用途に有利であると考えられ得る。
【0089】
図44は、塞栓防止フィルタシステムの一実施形態の概略図を示す。図44に示すように、弁送達シース44401は、無名動脈内で終端するか、または配置されるように構成される。拡張可能なフィルタ4403は、大動脈弁置換処置中に遊離され得る任意の微粒子物質をろ過するために、下行大動脈内に延びている。ランメル止血帯4406、或いは同様の止血帯またはクランプ装置が、総頸動脈内で弁送達シース4401の近位部分を固定するために使用され得る。ランメル止血帯4406はまた、拡張可能なフィルタ4403によって捕捉されなかった塞栓材料が神経血管系に流れ込まない可能性を低くする。拡張可能なフィルタ4403は、例えばニチノールメッシュで構成され得る。メッシュは、自己拡張し、大動脈壁の内面に確認するように熱セットされ得る。メッシュは、改善された外向きの力を提供するため、及び大動脈の壁に対してメッシュを固定するのを補助するため、ワイヤやストラットで補強され得る。拡張可能なフィルタ4403を有する弁送達シース4401は、非限定的な例において、右または左の総頸動脈のいずれかを介して大動脈に導入され得る。
【0090】
ここで図45A-45Bを参照すると、代替の実施形態では、動脈シース110は、動脈シース110の開口部を介して、ICA及びECAから低圧静脈循環への逆流805を容易にするように構成されている。大動脈から遠位頸動脈への流れをシャントする代わりに、シースは、遠位頸動脈から血液を吸引する。ICA及びECAからの逆行性血流805は、ウィリス環及び他の側副血管を介して脳の対側からの血液を取り込み、その結果、脳の同側へ酸素化血液を供給する。この実施形態は、シースを越えて遠位CCAに順方向の血流を供給するための導管を提供するのではなく、逆方向の血流805を確立する。血管操作と組み合わせた順方向の血流中に塞栓が形成され得る分岐部またはICAに頸動脈疾患がある場合、これは同側循環に酸素を含んだ血液を供給する安全な方法であり得る。
【0091】
図45Bは、血管系に展開された動脈シース110を示す。動脈シース110の近位領域上のYアーム755は、頸動脈へのアクセス点から上流の位置765で頸動脈に血流を再導入するように構成された流れシャント760に接続されている。ICA及びECAからの逆行性血流は矢印で表される。第2のYアーム767は、シャント760と、シャント760から位置765で動脈に血液を再導入する平行管腔769とに流体的に接続されている。処置中に生成された塞栓が脳動脈に灌流しないように、フィルタ要素762がシャント760に備えられ得る。
【0092】
図46は、動脈シースの別の実施形態を示す。図46の例に示すように、シースは左総頸動脈(LCCA)に挿入される。フィルタ4603等の少なくとも1つの塞栓防止要素は、無名動脈の開口部に向かって延びている。フィルタ4603は、(シースの遠位領域に取り付けられるような)動脈シース110の一体部分であり得る。または、それは、動脈シース119を介して大動脈に送達できる細長い要素を有する塞栓防止システムに結合されるような別の構成要素であり得る。フィルタ4603は、必ずしも、無名動脈を直接閉塞したり、無名動脈に進入する血液を直接濾過したりする必要はない。むしろ、フィルタ4603は、無名動脈の開口部付近の血流パターンを乱す。フィルタは、上行大動脈の少なくとも一部のような、大動脈の任意の位置に配置することができる。
【0093】
フィルタ4603は、大動脈弓等の大動脈を通る血液の流れを修正するように選択されるサイズ、形状、外形、または表面輪郭を備えることができる。この点について、フィルタ4603は、大動脈を通る血流を乱す固体表面または(メッシュ等の)中断表面であり得る外面を備えることができる。一実施形態では、フィルタ4603は、特定の方向等の特定の態様で血流を誘導、方向付け、または乱すように形作られた、或いは流れパターンを生成するように形作られた別の構成要素を備えるか又はそれに結合されることができる。フィルタ4603は、大動脈内の位置に向かって流れを誘導するフィンまたは他の形状等の部分を備えることができる。流れ方向付け要素4612等の塞栓防止要素は、フィルタの上流等、フィルタ4603の遠位に配置することができる。流れ方向づけ要素4612は、フィルタ4603に向かって血流を方向づけることができる。フィルタ4603は、流れ方向づけ要素4612に対して大動脈内の任意の位置に配置することができる。流れ方向付け要素4612は、所望の方向に血流を向けるように構成された、凹面、凸面、(流れ方向に対して)角度のある面、曲面、またはそれらの組み合わせ等の輪郭面を備えることができる。フィルタ4603は、方向転換された血流にデブリが存在する場合、デブリを捕捉するために、方向転換された流れの経路に配置することができる。流れ方向づけ要素4612または第2の流れ方向づけ要素はまた、または代替的に、血液がフィルタを通って及び/またはフィルタを過ぎて流れた後に、流れ方向づけ要素が血流を大動脈から分岐する動脈から離れるようにさらに方向転換するように、フィルタ4603の下流に配置することができる。このようにして、流れ方向付け要素は、フィルタで補足されなかった任意のデブリを方向転換することができる。流れ方向付け要素4612は、フィルタに取り付けることができ、または、それは、別個の、切り離された構成要素であることができる。一実施形態では、流れ方向付け要素4612はまた、フィルタである。別の実施形態では、流れ誘導要素は、フィルタではない。流れ方向付け要素4612は、シースを通って所望の位置に送達することができ、あるいは、シースの遠位領域等、シースに取り付けることができる。流れ方向付け要素4612はまた、または代替的に、本明細書に記載される塞栓防止装置のいずれかと組み合わせて使用することができる。例えば、図44に示すフィルタ4403等のバスケットまたはバタフライネットと組み合わせて使用することができる。その場合、流れ方向付け要素は、フィルタ4403等の捕捉要素の上流または下流に配置される。
【0094】
フィルタは、大動脈の管腔に延びるように配置することもできるし、大動脈の壁と少なくとも部分的に同一平面になるように配置することもできる。一実施形態では、血液が通過してフィルタ及び/又は流れ方向付け要素に接触すると、フィルタまたは流れ方向付け要素が血流と相互作用して、血流の所望の外形を達成する。例えば、構成要素は、大動脈の壁またはその近く等で、血液を層流から乱流に移行させることができる。血流が乱れることで、大動脈から分岐した動脈の開口部から塞栓材料が流出する可能性がある。1つまたは複数の捕捉フィルタ(本明細書に記載するフィルタのいずれか等)は、そのような方向転換された血流を捕捉するために大動脈に配置することができる。ここで、第1のフィルタまたは他の要素が、血流中の任意の材料を捕捉するように、1つまたは複数のフィルタに乱れた血液を方向付けする方法で、血流を乱れさせる。
【0095】
フィルタ4603の存在は、層流から乱流への移行等、流れを変化させ得る。乱れた流体の流れパターンは、大動脈弁に由来する塞栓材料4610を、無名動脈の開口部から遠ざけるように方向付けする。装置は、あるいは、図47に示すように、RCCAを通って導入されように構成され得る。フィルタ4603はまた、図47に関して説明された流れ方向付け要素4612等の流れ方向付け要素と組み合わせて使用することができる。流れ方向付け要素はまた、大動脈の塞栓性デブリの全部または一部を捕捉する任意のタイプの塞栓捕捉装置と組み合わせて使用することができ、流れ方向付け要素は、そのような塞栓捕捉装置の上流及び/または下流に配置される。
【0096】
図47を参照すると、シースは、右CCAに挿入され得る。フィルタ4703は、大動脈弓内に延びている。フィルタ4703は、塞栓材料4710が血流を乱し、塞栓材料を左CCAから遠ざけるように方向付けする。
【0097】
図48は、大動脈フィルタ4803及びアクセスシース4801の別の実施形態を示す。図48に示すように、アクセスシース4801は、切開アクセス等の直接アクセスを介してIAを通って挿入され得る。また、アクセスシース4801は、アクセスシース4801の遠位先端部が上行大動脈で、上行大動脈の近くで、または上行大動脈内で、終端するか、そうでなければ位置決めされるように大動脈へ進められ得る。あるいは、アクセスシース4801は、直接切開アクセスを介して右CCAまたは左CCAを通って挿入され得、大動脈へ前進し得る。あるいは、アクセスシース4801の遠位先端部は、右CCA、左CCA、またはIAで、右CCA、左CCA、またはIAの近くで、或いは右CCA、左CCA、またはIAの中で終端するか、そうでなければ位置決めされ得る。
【0098】
依然として図48を参照すると、大動脈フィルタ4803は、アクセスシース4801の遠位端部から延び得、上行大動脈内に配置され得る。いくつかの実施形態では、アクセスシース4801が左CCAを介して挿入される場合、大動脈フィルタ4803はまた、大動脈弓の一部内に配置され得る。大動脈フィルタ4803を上行大動脈内に配置すると、大動脈弁から遊離した塞栓材料が脳循環に運ばれ、脳卒中を引き起こす可能性があることを防ぐことができる。大動脈フィルタ4803はまた、遠位血管床にデブリが運ばれることを防止し得る。
【0099】
図49は、アクセスシースシステム閉鎖フィラメントスリーブの遠位部の実施形態を示す。システムは、内側シャフト4910と(内側シャフト4910に取り付けられている)編んだメッシュフィルタ4903とが摺動可能かつ同軸に配置されている細長いスリーブで形成された外側捕捉スリーブ4901を備える。以下により詳細に説明するように、ユーザは、内側シャフト4910(及び取り付けられたメッシュフィルタ4903)と外側捕捉スリーブ4901との間に相対移動を引き起こして、編んだメッシュフィルタ4903が外側捕捉スリーブ4901によって拘束されないようにすることができる。これにより、編んだメッシュフィルタ4903は、より小さく制約された状態から、より大きく制約のない状態へと移行することができる。本明細書に記載されたいずれのフィルタも、その構造は様々であり、例えば、編み、メッシュ、穴あき等であることが可能である。
【0100】
内側シャフト4910は、そこを通して、TAVR送達シース等のシースをスライド可能に送達することを可能にするサイズの直径を有する内側管腔を備える。例えば、内側シャフト4910の内径は、約18Fであり得る。編んだメッシュフィルタ4903は、例えば形状が設定されたニチノールワイヤ組紐等のワイヤメッシュから構成され得る。
【0101】
編んだメッシュフィルタ4903は、内側シャフト4910の遠位端部または遠位領域等で、内側シャフトに取り付けられている。編んだメッシュフィルタ4903は、ニチノール線組紐等の形状が設定された材料で構成することができる。編んだメッシュフィルタ4903は、非拘束時または非抑制時に円錐形状または円錐台形状を有するように構成されている(図49参照)。編んだメッシュフィルタ4903は、以下でより詳細に説明するように、編んだメッシュフィルタ4903が外側捕捉スリーブ4901に引っ込められて拘束されるとき等に、より小さな形状にたたむことが可能にさらに構成されている。
【0102】
依然として図49を参照すると、閉鎖フィラメントスリーブ4904は、内側シャフト4910から外側に延び、(ワイヤの長さのような)閉鎖フィラメント4902が延びて突出する内部管腔を規定する。閉鎖フィラメント4902は、ユーザが閉鎖フィラメント4902を操作することによって編んだメッシュフィルタ4903の形状を修正することを可能にする方法で、編んだメッシュフィルタ4903に機械的に結合される。例えば、閉鎖フィラメント4902は、編んだメッシュフィルタ4903の遠位リムを取り囲み、閉鎖フィラメントスリーブ4904の管腔にループバックする。ユーザは、閉鎖フィラメント4902を閉鎖フィラメントスリーブ4904内に引き出しまたは引き込んで、編んだメッシュフィルタ4903の遠位部または遠位リムを径方向にたたんで閉じ、次に、編んだメッシュフィルタ4903を捕捉スリーブ4910内に引き込む(または捕捉スリーブ4910を編んだメッシュフィルタ4903上にスライドする)ことが可能である。このようにして、編んだメッシュフィルタ4910は、より小さなサイズにたたまれ、外側捕捉スリーブ4910内に拘束されることができる。
【0103】
いくつかの非限定的な実施形態では、編んだメッシュフィルタ4903は、例えば0.002インチ径のニチノールワイヤ等、約144本の個々のワイヤで構成される直径32mmの1×2構成の組紐を利用し得る。組紐は、二層メッシュを提供するためにそれ自体で折り返され得る。二層メッシュは、単層メッシュに比べて、ワイヤの端部が露出しない滑らかな遠位リムや縁部、メッシュの有効孔サイズが小さい、及び/または構造的剛性が高い等の利点を有する。メッシュのワイヤ径、ワイヤ数、及び組紐構成を変えることで、編んだメッシュフィルタ4903の剛性/適合性及び孔サイズを調整することができる。図49に示す編んだメッシュフィルタ4903は2層メッシュであるが、編んだメッシュフィルタ4903の所望の特性に応じて(例えば、1層、4層等に)層数を変え得る。編んだメッシュフィルタ4903の構造は、大動脈内の安定性を高めるために、例えばストラット、フープ、ループ、または編んだメッシュフィルタ4903の全体の構造的完全性および外向きの半径方向の力を高めるように構成された他の特徴等の追加の支持特徴によって補われ得る。追加的に及び/又は代替的に、編んだメッシュフィルタ4903の構造は、より小さな細孔サイズを有する追加のメッシュ材料(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)ワイヤ、細線ニチノールメッシュ等)で補われ得る。
【0104】
図50A、50B、及び50Cに示すように、閉鎖フィラメントスリーブ4904を介して閉鎖フィラメントを短くする、引く、または別の方法で作動させると、編んだメッシュフィルタ4903の遠位開口部を閉じるように引き寄せることができる。閉鎖フィラメントスリーブ4904は、閉鎖フィラメント4902と編んだメッシュフィルタ4903の取り付けられた遠位部分とを内側シャフト4910の内径に引き込むために引き出され得、編んだメッシュフィルタ4903を裏返してその外側外形を減らし得る。図50Aは、閉鎖フィラメントスリーブ4904を介して引き出された閉鎖フィラメントを示し、それによって、編んだメッシュフィルタ4903の遠位端部を閉鎖し、編んだメッシュフィルタ4903内の任意の塞栓材料を捕捉している状態を示す。編んだメッシュフィルタ4903を閉じるように引くことにより、捕捉した塞栓材料が、編んだメッシュフィルタ4903のたたみ中及び引き出し中に遊離することを防ぐことができる。
【0105】
図50Bは、閉鎖フィラメントスリーブ4904と閉鎖フィラメント4902とが部分的に引っ込められ、編んだメッシュフィルタ4903をたたんで裏返した状態を示す。すなわち、編んだメッシュフィルタ4903の円錐形状は、閉鎖フィラメントスリーブ4904および閉鎖フィラメント4902が引き込まれるにつれて、それ自身に裏返されてたたまれる。図50Cは、たたまれたフィルタコーン5003の上を前進した外側捕捉シース4901を示す。編んだメッシュフィルタ4903がたたまれた後、または編んだメッシュフィルタ4903のたたみ中に、外側捕捉スリーブ4901を編んだメッシュフィルタ4903上にスライドさせることができる。
【0106】
図51A、51B、及び51Cは、組紐支持体5100を有する布製メッシュフィルタ5103を備えるフィルタアセンブリの一実施形態を示す。布製メッシュフィルタ5103は、例えば約150マイクロメートルの孔を有する布製フィルタ等、多孔質であり得る。組紐支持体5100は、例えばニチノールワイヤ組紐等のワイヤ組紐であり得る。組紐支持体5100は、布製メッシュフィルタ5103等の二次フィルタ膜のための支持格子を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、0.010インチのニチノールワイヤが、組紐支持体5100を形成するために使用され得る。図51Bに示すように、布製メッシュフィルタ5103及び組紐支持体5100は、アクセスシース5101の遠位部分に取り付けられ得る。アクセスシース5101に対して組紐支持体5100を同軸方向に進めると、構造が血管壁に加える半径方向外向きの力を増加させ得る。追加的に及び/又は代替的に、組紐支持体5100は、大動脈壁に対する布製メッシュフィルタ5103の並置を改善し得、及び/又は大動脈内の布製メッシュフィルタ5103の安定性を改善し得る。
【0107】
図51Cに示すように、アクセスシース5101に対して組紐支持体5100を同軸に引き込むと、配置または回収を容易にするためにアセンブリの外形寸法を小さくし得る。例えば、組紐支持体5100の収縮は、布製メッシュフィルタ5103の遠位部を裏返させ、布製メッシュフィルタ5103によって捕捉された塞栓材料の保持を支援し得る。図51Aは、組紐支持体5100が布製メッシュフィルタ5103の内面に取り付けられた布製メッシュフィルタ5103を示す。図51Bは、布製メッシュフィルタ5103に追加の外向きの半径方向の力を提供するために、完全に前進した組紐支持体5100を示す。図51Cは、小片の捕捉及び回収のために布製メッシュフィルタ5103の遠位部を部分的に裏返すために、部分的に引っ込められた組紐支持体5100を示す。
【0108】
いくつかの実施形態では、組紐支持体5100は、図51A-51Cに示すように、布製メッシュフィルタ5103の内面ではなく、布製メッシュフィルタ5103の外面に取り付けられるように構成され得る。あるいは、組紐支持体5100は、フィルタ材料の2つの層の間、フィルタ材料内、または任意の他の適切な構成に配置され得る。追加的に及び/又は代替的に、布製メッシュフィルタ5103は、布製メッシュフィルタ5103のサイズ調整及び/又は拡張を可能にする等のように、柔軟であるか又は延びるように構成され得る。布製メッシュフィルタ5103の柔軟性または伸縮性はまた、大動脈の壁に対するより良い並置を達成するのに役立ち得る。追加的に及び/または代替的に、図に示すものより小さい直径、例えば直径0.006インチ-0.008インチのニチノールワイヤが、組紐支持体5100を構成するために使用され得る。これは、組紐支持体5100及び布製メッシュフィルタ5103の大動脈壁への適合性をより良くするために、より柔軟な及び/又はより撓みやすい構造を作成し得る。フィルタ及び組紐アセンブリの所望の特性(例えば、柔軟性、大動脈壁への適合性等)を達成するために、フィルタ材料及び組紐材料の他の組み合わせ、及び/または可撓性フィルタと剛性フィルタまたは組紐材料の組み合わせが使用され得ることを理解すべきである。追加的に及び/又は代替的に、布製メッシュフィルタ5103は、円錐または円錐台の漏斗形というよりむしろ、拡張された遠位円筒形を有するように構成され得る。そのような拡張された遠位円筒形状は、大動脈の壁との布製メッシュフィルタ5103の表面接触を増加させ得、大動脈内に配置されたときの布製メッシュフィルタ5103の安定性を改善させ得る。
【0109】
図52は、それぞれ内部管腔を有する一対の細長い同軸の伸縮するシースを備える塞栓防止システムを示す。シースは、外側シース5205と、外側シース5205内にスライド可能に配置された同軸の内側シース5210とを備える。外側シース5205は、外側シースを操作するためにユーザによって把持されることができる近位ハブ5230を備える。同様に、内側シース5210は、外側シース5205の近位端部から近位外側に延びる近位ハブ5235を備える。各ハブは、栓等の流量制御装置を備えることができるそれぞれの出口ライン5220を備えることができる。
【0110】
依然として図52を参照すると、可撓性のフィルタ構造5225は、位置5218等の内側シース5210の遠位領域に取り付けられている。内側シース5210と外側シース5205との間に、クリアランス5212が存在することができる。例示的な実施形態では、クリアランスは少なくとも0.005インチである。フィルタ構造5225は、フィルタ構造5225が大動脈内に配置されるときに、大動脈内の塞栓材料を捕捉するため又は方向転換するために使用することができるフィルタバスケットを形成する。フィルタ構造5225は、任意の様々な材料で製造することができる。一実施形態では、フィルタ構造5225は、たたむことが可能なニチノール組紐から構成され、ニチノール組紐は、二次マイクロメッシュ材料に結合される。ニチノール組紐は、フィルタ構造に構造と支持を提供する。組紐はまた、大動脈に配置されたときに、大動脈の壁に対するフィルタ構造の拡張を容易にすることができる。マイクロメッシュは、例えば、PET等の材料で編まれたり織られたりし得る。別の実施形態では、マイクロメッシュは、固体シート状の材料から構成され、穴が開けられている。マイクロメッシュの穴または孔のサイズは様々であり、一実施形態では100μmから300μmの範囲、または最大約500μmである。マイクロメッシュは、塞栓材料を捕捉しながらも、血液を通過させることができるように構成されている。
【0111】
内側カテーテル5210は、TAVR送達カテーテル(18Fまたはそれより小さいカテーテル等)をそこに配置するのに十分な大きさである。外側カテーテル5205は、外側カテーテル5205がフィルタ構造5225を捕捉、たたみ、又は拘束して、血管の管腔を通じたフィルタ構造5225の送達を容易にするように、内側カテーテル5210に対して遠位に前進され得る。システムが大動脈またはその近く等の標的位置に送達されると、外側カテーテルを内側カテーテルに対して近位に引き出して、フィルタ構造を所望の形状に拡張させることができる。
【0112】
図53Aは、大動脈内に配置されたフィルタ5305の概略図を示す。フィルタ5305は、本明細書に記載の円錐状の構成のいずれかのような円錐状の構成を有することができる。システムは、フィルタ5305に対して大動脈内に配置可能なウィングフィルタ5310を更に備える。フィルタ5305が上行大動脈または横行大動脈に配置されるとき、ウィングフィルタ5310は、大動脈弓から分岐する1つまたは複数の動脈の開口部を横切って位置するか、さもなければ開口部を覆うように展開及び配置されることが可能である。フィルタ5305は、大動脈内の塞栓性デブリを捕捉することによって一次的な塞栓防止を提供する一次フィルタとして機能する。ウィングフィルタ5310は、フィルタ5305によって捕捉されなかった塞栓性デブリを捕捉するか、または脳に繋がる大動脈の枝血管の開口部から塞栓性デブリを方向転換することができる二次的な保護要素として機能する。図53Aの実施形態及び同様に図53Bの実施形態は、左頸動脈または右頸動脈のいずれかから配置することができる。ウィングフィルタ5310の位置は、フィルタ5305の位置に対して相対的に変化させることができる。
【0113】
フィルタ5305またはウィングフィルタ5310の孔径は、フィルタによる血流のデブリ捕捉を最適化するように構成することができる。フィルタ5305の孔径は、塞栓性デブリを捕捉しつつ、強固な血流を可能にするように、調整またはその他の方法で構成することができる。ウィングフィルタ5310の孔径は、大動脈から分岐する動脈開口部から塞栓材料を方向転換する又は導くように構成することができる。ウィングフィルタ5310のより小さな孔径は、フィルタ5305によって捕捉されないより小さな塞栓性デブリが枝動脈に入るのを抑制することができる。ウィングフィルタ5310は、必ずしも動脈の開口部に対して同一平面上に位置する必要はないことを理解されたい。ウィングフィルタ5310は、血流及び任意の塞栓小片を下流に導き、枝動脈の開口部から遠ざける等、特定の血流パターンを形成又は促進するように構成することができる。孔のサイズは、そこを流れる血液の所望の流れパターンを達成するように、フィルタ5305とウィングフィルタ5310との間で異なることが可能である。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、1つまたは複数の開口部は、非対称な形状を有することができる。フィルタの孔のサイズは、フィルタを通過する小片を抑制する狭い幅(50μm等)を有し得ると同時に、そこを通過する血流への抵抗を減少させる追加の断面積を提供する比較的長い長さ(800μm等)を有し得る。
【0114】
図54は、フィルタ5410が、無名動脈、左頸動脈、及び/又は左鎖骨下動脈等の、大動脈弓から分岐する血管の複数の開口部を覆うように、大動脈弓内に完全に配置されるサイズ及び形状である別の実施形態を示す。フィルタ5410は複数の領域を有するように構成することができ、各領域はその領域に特有の孔サイズ及び形状を有し、ある領域の孔サイズ及び/又は形状は別の領域と異なり得る。例えば、1つの領域は、50μmから100μmの範囲の孔サイズを有する微細なメッシュであり得る。この領域は、分枝動脈に塞栓防止を提供するために、大動脈弓の上面にまたは大動脈弓の上面を横切って配置され得る。この領域の孔は、血液が膜を越えて枝動脈に流れ込むことを可能にし得る。孔は、塞栓がその領域を通過するのを防ぐために十分に小さくされ得る。
【0115】
フィルタ5410の別の領域は、150μmから130μmまたはより大きい範囲の孔サイズを有する粗いメッシュで構成され得る。この領域は、大動脈弓の下部と、フィルタ5410の囲まれた部分である遠位とを覆い得る。比較的大きな孔サイズにより、血液がその領域のフィルタを通って迅速に流れることができる。血液中に浮遊する塞栓小片は、血液とともに枝血管の開口部を通過して遠位に運ばれ得る。小片は、遠位血管床に流れ込まないように、フィルタで捕捉される。このように、大動脈弓の上面を横切って配置されたフィルタ5410の微細メッシュ領域は、流れダイバータとして動作する。フィルタ5410の各領域のサイズ、形状、及び量は、変化し得ることを理解されたい。
【0116】
依然として図54を参照すると、システムは、フィルタ5410に結合されたフレーム5405を備えることができる。フレーム5405は、非対称の形状を有し得、ニチノール組紐等の材料で製造され得る。一実施形態では、フレームは、ガイドワイヤ用の高速交換ポートを備える。
【0117】
図55は、フィルタ5510が、ニチノールワイヤ等の編んだチューブの一枚物等の、一枚物の材料で構成されている別の実施形態を示す。フィルタ5510は、血液がそこを通って流れるのを許容しながら塞栓材料を捕捉するように構成された、バスケットまたは円錐形等の形状に形成された遠位領域を備える。フィルタ5510は、図55及び56に示すように、右頸動脈または左頸動脈からの送達のために最適な位置決めを行うように構成することができる。フィルタ5510は、横行大動脈から分岐する全ての動脈に塞栓防止を提供するとともに、遠位血管床に対しても防止を提供するように構成されている。フィルタ5510は、大動脈の壁に対する並置を増加させるように、強化された、外側の、半径方向の力を提供するように構成される1つまたは複数の要素または領域5520を備え得る。
【0118】
フィルタ5510の近位領域5522は、左頸動脈または右頸動脈内に配置されることが可能であり、円形断面等、頸動脈の内径に適合する断面に拡張されることが可能である。フィルタ5510の近位部は、頸動脈の側壁を通って出てもよい。部分5515は、組紐の開いたセルを通って血液が出るのを防ぐポリマー層等の薄い材料層によって封入され得る。フィルタ5510は、小片が脳循環に移動することを抑制するように、小片のフィルタリング及び流れの方向転換を容易にするために、異なるコア寸法で構成され得る。
【0119】
図58は、シース5810の遠位端部に配置された一次フィルタ要素5815に結合される導入器シース5810の別の実施形態を示す。補助フィルタ要素5820は、一次フィルタ要素の下流の動脈に塞栓防止を提供することができる二次フィルタとして機能する。
【0120】
一実施形態では、フィルタは、少なくとも部分的に、レーザー切断されたニチノールチューブで形成されている。レーザー切断されたチューブは、円錐形等の所望の形状に形状設定され得る。所望の孔サイズのフィルタメッシュ、ネットまたは布地を、塞栓防止を提供するために、ニチノールフレームの内面または外面に取り付けることができる。
【0121】
本明細書には多くの具体的な内容が含まれているが、これらは、請求される発明の範囲や請求され得るものを制限するものとして解釈されるべきではなく、むしろ特定の実施形態に特有の特徴を説明するものとして解釈されるべきである。本明細書において別々の実施形態の文脈で記載されている特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて実施することができる。逆に、単一の実施形態の文脈で記載されている様々な特徴は、複数の実施形態において別々に、または任意の適切なサブコンビネーションで実施することもできる。さらに、特徴は、特定の組み合わせで作用するものとして上述され得、最初にそのように主張されたとしても、主張された組み合わせからの1つまたは複数の特徴は、場合によっては組み合わせから切除されることが可能であり、主張された組み合わせは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形に向けられ得る。同様に、図面には特定の順序で操作が描かれているが、これは、望ましい結果を得るために、そのような操作が示された特定の順序または連続した順序で行われること、或いは示された全ての操作が行われることを要求していると理解すべきではない。
【0122】
様々な方法及び装置の実施形態が、特定のバージョンを参照して本明細書で詳細に説明されているが、他のバージョン、実施形態、使用方法、及びそれらの組み合わせも可能であることを理解されたい。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲は、本明細書に含まれる実施形態の説明に限定されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図19
図20A
図20B
図21
図22
図23
図24
図25
図26A
図26B
図26C
図26D
図26E
図26F
図26G
図27A
図27B
図28A
図28B
図29A
図29B
図29C
図29D
図30
図31A
図31B
図31C
図32
図33
図34A
図34B
図35A
図35B
図36
図37A
図37B
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45A
図45B
図46
図47
図48
図49
図50A
図50B
図50C
図51A
図51B
図51C
図52
図53A
図53B
図54
図55
図56
図58
【国際調査報告】