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特表2022-554282生成物関連不純物を除去するためのカチオン交換クロマトグラフィー中の高塩分負荷コンディショニング
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  • 特表-生成物関連不純物を除去するためのカチオン交換クロマトグラフィー中の高塩分負荷コンディショニング 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】生成物関連不純物を除去するためのカチオン交換クロマトグラフィー中の高塩分負荷コンディショニング
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/18 20060101AFI20221221BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20221221BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 1/13 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 1/11 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221221BHJP
   C07K 1/20 20060101ALI20221221BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20221221BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20221221BHJP
【FI】
C07K1/18
C07K16/00
C12P21/08
C12N1/13
C12N1/11
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K1/20
C07K1/22
A61K39/395 K
A61K39/395 J
A61K39/395 M
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525306
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 US2020058772
(87)【国際公開番号】W WO2021091932
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/931,863
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディアス,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス,ナタリア
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064CE11
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA26X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065BA02
4B065BD14
4B065BD16
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB36
4C085BB41
4C085DD23
4C085DD34
4H045AA20
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA21
4H045GA23
4H045GA24
4H045GA25
(57)【要約】
本発明は、組み換え多重特異性タンパク質の製造中の等電点の低い生成物関連不純物を除去するためのカチオン交換クロマトグラフィー中の高塩分負荷コンディショニングに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重特異性タンパク質を、前記多重特異性タンパク質及び少なくとも1種の生成物関連不純物を含む組成物から精製する方法であって:
94~105mMの塩化ナトリウムを含む平衡化緩衝液を用いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体を平衡化する工程;
94~105mMの塩化ナトリウムを含む負荷緩衝液中において前記カチオン交換媒体上に前記組成物を負荷する工程;
94~105mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の洗浄緩衝液を用いて前記カラムを洗浄する工程;及び前記カチオン交換クロマトグラフィー媒体から前記多重特異性タンパク質を溶出させる工程を含む方法。
【請求項2】
前記負荷緩衝液は、94~96mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記負荷緩衝液は、94~105mMの塩化ナトリウムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記負荷緩衝液は、94mMの塩化ナトリウムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記負荷緩衝液は、96mMの塩化ナトリウムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記負荷緩衝液は、98mMの塩化ナトリウムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記負荷緩衝液は、105mMの塩化ナトリウムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記負荷緩衝液は、酢酸塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記負荷緩衝液は、pH4.9~5.1の酢酸塩を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記負荷緩衝液は、pH5.0±0.05~5.0±0.1の酢酸塩を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記負荷緩衝液は、酢酸塩、94~105mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、94~105mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、94~96mMの塩化ナトリウムを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、96~105mMの塩化ナトリウムを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、94mMの塩化ナトリウムを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、96mMの塩化ナトリウムを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、98mMの塩化ナトリウムを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、105mMの塩化ナトリウムを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.9~5.1の酢酸塩を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH5.0±0.05~5.0±0.1の酢酸塩を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、第2の洗浄緩衝液である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、0~26mMの塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94~105mMの塩化ナトリウムを含み、その後に、酢酸塩、0~25mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液が続く、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1種の平衡化緩衝液は、94~105mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1種の平衡化緩衝液は、94~96mMの塩化ナトリウムを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1種の平衡化緩衝液は、96~105mMの塩化ナトリウムを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1種の平衡化緩衝液は、94mMの塩化ナトリウムを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1種の平衡化緩衝液は、96mMの塩化ナトリウムを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1種の平衡化緩衝液は、98mMの塩化ナトリウムを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1種の平衡化緩衝液は、105mMの塩化ナトリウムを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記平衡化緩衝液は、酢酸塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記平衡化緩衝液は、pH4.9~5.1の酢酸塩を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記平衡化緩衝液は、pH5.0±0.05~5.0±0.1の酢酸塩を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記平衡化緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記組成物は、10~27g/Lで負荷される、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記組成物は、15~27g/Lで負荷される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記多重特異性タンパク質は、前記カチオン交換樹脂から勾配によって溶出される、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記勾配は、線形である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記勾配は、塩勾配である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記多重特異性タンパク質は、二重特異性タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記多重特異性タンパク質は、二重特異性抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
請求項1に記載の方法によって調製された、精製された多重特異性タンパク質。
【請求項48】
前記カチオン交換クロマトグラフィー媒体は、樹脂である、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
カチオン交換クロマトグラフィーからの前記溶出液中のpIの低い不純物を減少させる方法であって:
94~105mMの塩化ナトリウムを含む平衡化緩衝液を用いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体を平衡化する工程;
94~105mMの塩化ナトリウムを含む負荷緩衝液中において前記カチオン交換媒体上に組成物を負荷する工程;
94~105mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の洗浄緩衝液を用いてカラムを洗浄する工程;及び
前記カチオン交換クロマトグラフィー媒体から前記多重特異性タンパク質を溶出させる工程を含み;ここで前記カチオン交換クロマトグラフィー溶出液は、前記平衡化、負荷及び洗浄工程において塩化ナトリウムが使用されない対応する方法において回収された前記カチオン交換クロマトグラフィー溶出液と比較して、減少したpIの低い不純物を有する方法。
【請求項50】
前記pIの低い不純物は、生成物関連不純物である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも1種の生成物関連不純物は、半抗体又は2X、3X若しくは4Xの軽鎖ミスアセンブリである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
生成物関連不純物を減少させるために高塩分負荷条件下でカチオン交換クロマトグラフィーを実施する方法であって:
平衡化緩衝液を用いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体を平衡化する工程;負荷緩衝液中において前記カチオン交換媒体上に前記組成物を負荷する工程;
前記カラムを第1及び第2の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程;及び
前記カチオン交換クロマトグラフィー媒体から前記多重特異性タンパク質を溶出させる工程を含み、ここで前記平衡化、負荷及び前記第1の洗浄緩衝液が94~105mMの塩化ナトリウムを含む方法。
【請求項53】
前記第2の洗浄緩衝液は、0~26mMの塩化ナトリウムを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
単離され精製された組み換え多重特異性タンパク質を製造する方法であって:
前記多重特異性タンパク質を発現する宿主細胞を用いてバイオリアクター内で細胞培養を確立する工程;前記多重特異性タンパク質を発現させるために前記宿主細胞を培養する工程;
前記組み替え多重特異性タンパク質を収穫する工程;
前記収穫した組み換え多重特異性タンパク質を親和性精製する工程;
前記親和性精製からの前記溶出液プール中の低pHでウイルスを不活性化し、前記プールを中和する工程;
94~105mMの塩化ナトリウムを含む平衡化緩衝液を用いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体を平衡化する工程;
94~105mMの塩化ナトリウムを含む負荷緩衝液中において前記平衡化したカチオン交換媒体上に前記中和され親和性精製された組み換え多重特異性タンパク質を負荷する工程;
94~105mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて、その後に0~26mMの塩化ナトリウムを含む第2の洗浄緩衝液を用いてカチオン交換媒体を洗浄する工程;
前記カチオン交換クロマトグラフィー媒体から前記多重特異性タンパク質を溶出させる工程;
前記組み換え多重特異性タンパク質を含む前記カチオン交換クロマトグラフィー溶出液をフロースルーモードで第2のクロマトグラフィー樹脂上に負荷する工程;及び
処方緩衝液中で前記精製された組み換え多重特異性タンパク質を濃縮する工程を含む方法。
【請求項55】
前記第2のクロマトグラフィー樹脂は、アニオン交換クロマトグラフィー樹脂、カチオン交換クロマトグラフィー樹脂、マルチモーダルクロマトグラフィー樹脂、疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー樹脂から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項56】
請求項55に記載の方法によって調製された、単離され精製された組み換え多重特異性タンパク質。
【請求項57】
請求項55に記載の方法によって調製された、単離され精製された組み換え多重特異性タンパク質を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照により本明細書に組み込まれる2019年11月7日に出願された、米国仮特許出願第62/931,863号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、バイオ医薬品製造の分野に関する。詳細には、本発明は、カチオン交換精製作業中の等電点の低い生成物関連不純物を除去するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
抗体製品は、バイオ医薬品市場の最大セクターであり、今後10年以内には容易に数千億ドルの売上高に達するであろう。治療用モノクローナル抗体の商業的開発は、最初の治療用モノクローナル抗体の認可に伴って1980年代に始まり、その後ずっと進化且つ拡大し続けてきた。モノクローナル抗体は、高い親和性及び特異性で標的に結合し、一部の適応にとっては極めて好結果の得られる治療処置ではあったが、それらにはさらに限界もある。モノクローナル抗体は、単一の標的に結合する;しかしながら多数の疾患は、多因子性である。癌免疫療法では、単一標的治療は、癌細胞を破壊又は固定化するためには十分ではない可能性がある。さらに、モノクローナル抗体療法を受けている一部の患者は、治療に応答できない場合がある、又は薬物耐性を発生する場合がある。
【0004】
抗体Fab断片、Fc融合タンパク質、抗体-薬物コンジュゲート、グリコール改変抗体、並びに最も特別には二重特異性及び他の多重特異性抗体様構造等の新規な抗体様構造が、これらの課題を解決するために開発されてきた。これらの抗体様構造、特に二重特異性抗体は、伝統的なモノクローナル抗体治療薬に比して改善を提供し、さらに一層より困難な治療適応に対応するように開発することのできる極めて大量のフォーマットを備える効果的な次世代の生物学的治療薬であることが証明されつつある。
【0005】
二重特異性抗体は、治療適応のニーズを満たすために増え続ける様々なフレームワークを備える、これらの抗体様構造の最も多様な群である。これらの構造は、抗体の結合特性を所望の疾患適応に適合するように改変された追加の分子特性と結び付ける。二重特異性抗体は、癌に対する免疫反応のために、例えば免疫エフェクター細胞を腫瘍細胞にリダイレクトすること、シグナル伝達経路を遮断すること、腫瘍血管新生を標的とすること、サイトカインを遮断すること、血液脳関門を横断すること、診断アッセイ、病原菌の治療及び送達剤として等の様々な適応及び使用のために開発されている。(Sedykh et al.,Drug Design,Development and Therapy 18(12),195-208,2018;Walsh,Nature Biotechnology,32(10),992-1000,2014;Ecker et al.,mAbs 7(1),9-14,2015;Spiess et al.,Mol Immunol 67,95-106,2015;Fan et al.,J Hematol&Oncology 8:130-143,2015;Williams et al.,Process Design for Bispecific Antibodies,Biopharmaceutical Processing,Development,Design and Implementation of Processes,Jagschies et al.,editors,Elsevier Ltd,pages 837-855,2018)。
【0006】
これらの多重特異性タンパク質の開発は、特に生成物の不安定性及び低い発現収率に関して、新規なバイオ医薬品製造の課題をもたらす。詳細には、多重特異性タンパク質の精製は、ホモ二量体、半抗体、凝集体、高分子量種及び低分子量種等の生成物関連変異体の形成によって複雑化される。これらの変異体は、関心対象の多重特異性タンパク質と類似の構造的特性及び電荷等の物理的特性を共有しており、それらを精製中に分離することを困難にさせる。これらの生成物関連不純物は、多重特異性製剤の収率及び活性を低下させ、製造プロセスのロバスト性に影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Sedykh et al.,Drug Design,Development and Therapy 18(12),195-208,2018
【非特許文献2】Walsh,Nature Biotechnology,32(10),992-1000,2014
【非特許文献3】Ecker et al.,mAbs 7(1),9-14,2015
【非特許文献4】Spiess et al.,Mol Immunol 67,95-106,2015
【非特許文献5】Fan et al.,J Hematol & Oncology 8:130-143,2015
【非特許文献6】Williams et al.,Process Design for Bispecific Antibodies,Biopharmaceutical Processing,Development,Design and Implementation of Processes,Jagschies et al.,editors,Elsevier Ltd,pages 837-855,2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
関心対象の多重特異性タンパク質と類似の電荷(等電点)を有する生成物関連不純物は、カチオン交換クロマトグラフィー装置操作中に多重特異性タンパク質と共溶出される可能性があり、精製を複雑にして、収率を低下させる。溶出の前に、pIの低い生成物関連不純物を分離できれば有益であろう。本明細書に記載した本発明は、カチオン交換クロマトグラフィー中にこれらのpIの低い不純物を除去するための高塩分負荷コンディショニングを提供することによって、このニーズを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、多重特異性タンパク質及び少なくとも1種の生成物関連不純物を含む組成物から多重特異性タンパク質を精製する方法であって:94~105mMの塩化ナトリウムを含む平衡化緩衝液を用いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体を平衡化する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む負荷緩衝液中においてカチオン交換媒体上に組成物を負荷する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の洗浄緩衝液を用いてカラムを洗浄する工程;及びカチオン交換クロマトグラフィー媒体から多重特異性タンパク質を溶出させる工程を含む方法を提供する。一実施形態では、負荷緩衝液は、94~96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、96~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、94mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩を含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、pH4.9~5.1の酢酸塩を含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、pH5.0±0.05~5.0±0.1の酢酸塩を含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩及び94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、94~96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、96~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、94mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.0~5.1の酢酸塩を含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH5.0±0.05~5.0~0.1の酢酸塩を含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩及び94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、0~26mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩及び94~96mMの塩化ナトリウムを含み、その後に酢酸塩及び25mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液が続く。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩及び105mMの塩化ナトリウムを含み、その後に酢酸塩を含む少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液が続く。一実施形態では、少なくとも1種の平衡化緩衝液は、94~96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の平衡化緩衝液は、96~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の平衡化緩衝液は、94mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の平衡化緩衝液は、96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の平衡化緩衝液は、105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、酢酸塩を含む。一関連実施形態では、平衡化緩衝液は、pH4.9~5.1の酢酸塩を含む。一関連実施形態では、平衡化緩衝液は、pH5.0±0.05~5.0±0.1の酢酸塩を含む。一関連実施形態では、平衡化緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、酢酸塩及び94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、組成物は、10~27g/Lで負荷される。一実施形態では、組成物は、15~27g/Lで負荷される。一実施形態では、多重特異性タンパク質は、カチオン交換樹脂から勾配によって溶出される。一関連実施形態では、勾配は、線形である。一実施形態では、勾配は、塩勾配である。一実施形態では、多重特異性タンパク質は、二重特異性タンパク質である。一実施形態では、多重特異性タンパク質は、二重特異性抗体である。一実施形態では、上記の方法によって調製された、精製された多重特異性タンパク質が提供される。一実施形態では、カチオン交換クロマトグラフィー媒体は、樹脂である。
【0010】
本発明は、カチオン交換クロマトグラフィーからの溶出液中のpIの低い不純物を減少させる方法であって:94~105mMの塩化ナトリウムを含む平衡化緩衝液によりカチオン交換クロマトグラフィー媒体を平衡化する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む負荷緩衝液中においてカチオン交換媒体上に組成物を負荷する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の洗浄緩衝液を用いてカラムを洗浄する工程;及びカチオン交換クロマトグラフィー媒体から多重特異性タンパク質を溶出させる工程を含み;ここでカチオン交換クロマトグラフィー溶出液は、平衡化、負荷及び洗浄工程において塩化ナトリウムが使用されない対応する方法において回収されたカチオン交換クロマトグラフィー溶出液と比較して、減少したpIの低い不純物を有する方法を提供する。一実施形態では、pIの低い不純物は、生成物関連不純物である。一実施形態では、少なくとも1種の生成物関連不純物は、半抗体又は2X、3X若しくは4Xの軽鎖ミスアセンブリである。
【0011】
本発明は、生成物関連不純物を減少させるために高塩分負荷条件下でカチオン交換クロマトグラフィーを実施する方法であって:平衡化緩衝液を用いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体を平衡化する工程;負荷緩衝液中においてカチオン交換媒体上に組成物を負荷する工程;第1及び第2の洗浄緩衝液を用いてカラムを洗浄する工程;及びカチオン交換クロマトグラフィー媒体から多重特異性タンパク質を溶出させる工程を含み、ここで平衡化、負荷及び洗浄緩衝液が94~105mMの塩化ナトリウムを含む方法を提供する。一実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、0~26mMの塩化ナトリウムを含む。
【0012】
本発明は、単離され精製された組み換え多重特異性タンパク質を製造する方法であって:多重特異性タンパク質を発現する宿主細胞を用いてバイオリアクター内の細胞培養を確立する工程;多重特異性タンパク質を発現させるために宿主細胞を培養する工程;組み替え多重特異性タンパク質を収穫する工程;収穫した組み換え多重特異性タンパク質を親和性精製する工程;親和性精製からの溶出液プール中の低pHでウイルスを不活性化し、プールを中和する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む平衡化緩衝液を用いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体を平衡化する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む負荷緩衝液中において平衡化したカチオン交換媒体上に中和され親和性精製された組み換え多重特異性タンパク質を負荷する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて、続いて0~26mMの塩化ナトリウムを含む第2の洗浄緩衝液を用いてカチオン交換媒体を洗浄する工程;カチオン交換クロマトグラフィー媒体から多重特異性タンパク質を溶出させる工程;組み換え多重特異性タンパク質を含むカチオン交換クロマトグラフィー溶出液をフロースルーモードで第2のクロマトグラフィー樹脂上に負荷する工程;及び処方緩衝液中で精製された組み換え多重特異性タンパク質を濃縮する工程を含む方法を提供する。一実施形態では、第2のクロマトグラフィー樹脂は、アニオン交換クロマトグラフィー樹脂、カチオン交換クロマトグラフィー樹脂、マルチモーダルクロマトグラフィー樹脂、疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー樹脂から選択される。一関連実施形態では、上記の方法によって調製された、単離され精製された組み換え多重特異性タンパク質が提供される。一関連実施形態では、上記の方法によって調製された、単離され精製された組み換え多重特異性タンパク質を含む医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】不純物(半抗体及び2X LC)が主生成物である二重特異性#1とともに溶出されることを示す図である。
図2】高塩分負荷コンディショニング後に、負荷工程と第1の洗浄工程との間にpIの低い不純物がカラムを通過したことを示す図である。第2の洗浄は、UVベースラインを溶出前のゼロに復帰させた。二重特異性#1の溶出中、溶出ピークは、4つのピークから1つのピークに減少した。
図3】二重特異性#2についての、急勾配の溶出での、高い負荷密度、無塩分負荷コンディショニングから生じた1つの溶出ピークを示す図である。pIの低い生成物関連不純物は、高い負荷密度下では主生成物から分解せず、大部分が画分1~3内にある。
図4】より低い負荷密度(10対25g/L)及びより緩やかな勾配(8対16mM/CV)は、主要なpIの低い生成物不純物を二重特異性#2についての画分1~4によって形成された別個のピークへの分離を可能にしたことを示す図である。
図5】高い塩分負荷条件下では、依然として幾つかの誤対合種(LC1/LC2=2~3)を含有する小さな肩(画分1~3)を伴って、二重特異性#2について2つのピークから単一ピークへの溶出プロファイルにおける不純物ピークの数の減少が生じたことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
多重特異性タンパク質の下流プロセシングに関する文献においては情報が少ないため、モノクローナル抗体のために開発されたプラットフォームが適用されることが多い(Shulka and Norman,Chapter 26 Downstream Processing of Fc Fusion Proteins,Bispecific Antibodies,and Antibody-Drug Conjugates,in Process Scale Purification of Antibodies Second Edition,Uwe Gottswchalk editor,p559-594,John Wiley&Sons,2017)。多重特異性タンパク質に、抗体及び抗体様タンパク質に対して典型的である条件下で結合及び溶出モードでカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)を受けさせると、溶出プロファイルにおいて多数の不純物ピークが生じた。これらの不純物は、主生成物よりも低い等電点及び高い等電点の両方を有していた。pIの低い不純物は、プレピークとして、主生成物に先行して溶出された。この溶出プロファイルは、ロバストで持続可能な、商業的規模の製造方法の開発を支持しないであろう。
【0015】
多重特異性タンパク質の性質は、それらを生成物関連不純物の形成に感受性にさせる可能性があり、細胞培養条件は、そのような不純物の量に大きな影響を与え得る。これらの不純物は、精製を複雑にし、所望の多重特異性タンパク質の収率及び活性を低下させ得る。高塩分負荷戦略は、溶出工程に先行してpIの低い不純物を除去することによって、CEX溶出液プール中の主生成物の収率を改善することが見出された。平衡化緩衝液、最終コンディショニング負荷緩衝液及び第1の洗浄緩衝液のために94~105mMの最終塩化ナトリウム濃度を目標とすることによって、pIの低い不純物はカラムを通過し、溶出プロファイル内のピーク数が減少し、CEX溶出液中の生成物関連不純物の量が減少する。第2の洗浄工程はさらに、所望の多重特異性タンパク質のための完全結合条件を保証し、溶出の開始前にUVベースラインをゼロに再確立し、それによって溶出プロファイルを固定し、結果として主生成物のはるかに効率的な収集及びより良好な品質を生じさせるために、追加された。例えば、高塩分負荷コンディショニングは、44CV(カラム体積)~20.3CVへ二重特異性タンパク質についての溶出の長さを予想外に減少させたが、これは時間及び資源の節約並びに中間下流装置操作におけるプロセス有効性及びロバスト性のために高度に望ましいCEX溶出液プール体積の減少であった。両方の二重特異性種に対して、高塩分負荷条件は、溶出前の不純物の効率的な除去を可能にし、CEX溶出液中の生成物関連不純物の量を減少させ、並びに溶出収集基準を単純化し、従ってロバストな製造プロセスを提供する。
【0016】
本発明は、多重特異性タンパク質を、その多重特異性タンパク質及び少なくとも1種の生成物関連不純物を含む組成物から精製する方法であって:94~105mMの塩化ナトリウムを含む平衡化緩衝液を用いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体を平衡化する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む負荷緩衝液中においてカチオン交換媒体上に組成物を負荷する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の洗浄緩衝液を用いてカラムを洗浄する工程;及びカチオン交換クロマトグラフィー媒体から多重特異性タンパク質を溶出させる工程を含む方法を提供する。
【0017】
本発明は、カチオン交換クロマトグラフィーからの溶出液中のpIの低い不純物を減少させる方法であって:94~105mMの塩化ナトリウムを含む平衡化緩衝液を用いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体を平衡化する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む負荷緩衝液中においてカチオン交換媒体上に組成物を負荷する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の洗浄緩衝液を用いてカラムを洗浄する工程;及びカチオン交換クロマトグラフィー媒体から多重特異性タンパク質を溶出させる工程を含み;ここでカチオン交換クロマトグラフィー溶出液は平衡化、負荷及び洗浄工程において塩化ナトリウムが使用されない対応する方法において回収されたカチオン交換クロマトグラフィー溶出液と比較して、減少したpIの低い不純物を有する方法も提供する。
【0018】
本発明は、生成物関連不純物を減少させるために高塩分負荷条件下でカチオン交換クロマトグラフィーを実施する方法であって:平衡化緩衝液を用いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体を平衡化する工程;負荷緩衝液中においてカチオン交換媒体に組成物を負荷する工程;カラムを第1及び第2の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程;及びカチオン交換クロマトグラフィー媒体から多重特異性タンパク質を溶出させる工程を含み、ここで平衡化、負荷及び第1の洗浄緩衝液が94~105mMの塩化ナトリウムを含む方法も提供する。
【0019】
本発明は、関心対象の単離されて精製された組み換え多重特異性タンパク質を製造する方法であって:多重特異性タンパク質を発現する宿主細胞を用いてバイオリアクター内の細胞培養を確立する工程;多重特異性タンパク質を発現させるために宿主細胞を培養する工程;組み替え多重特異性タンパク質を収穫する工程;収穫した組み換え多重特異性タンパク質を親和性精製する工程;親和性精製からの溶出液プール中の低pHでウイルスを不活性化し、プールを中和する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む平衡化緩衝液を用いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体を平衡化する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む負荷緩衝液中において平衡化したカチオン交換媒体上に中和され親和性精製された組み換え多重特異性タンパク質を負荷する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて、続いて0~26mMの塩化ナトリウムを含む第2の洗浄緩衝液を用いてカチオン交換媒体を洗浄する工程;カチオン交換クロマトグラフィー媒体から多重特異性タンパク質を溶出させる工程;組み換え多重特異性タンパク質を含むカチオン交換クロマトグラフィー溶出液をフロースルーモードで第2のクロマトグラフィー樹脂上に負荷する工程;及び処方緩衝液中で精製した組み換え多重特異性タンパク質を濃縮する工程を含む方法も提供する。
【0020】
一実施形態では、負荷緩衝液は、94~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104若しくは105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、94mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、96mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、98mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、105mMの塩化ナトリウムを含む。
【0021】
本発明の一実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、pH4.9~5.1の酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、pH4,9、5.0若しくは5.1で酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、pH、4.9、4.95、5.0、5.05若しくは5.1で酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、pH、5.0±0.05~5.0±0.1の酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、pH5.0で酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、pH4.9~5.1の100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、pH4,9、5.0若しくは5.1で100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、pH4.9、4.95、5.0、5.05若しくは5.1で100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の100mMの酢酸塩を含む。
【0022】
一実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩及び94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩及び94mM~96mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩及び96mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩及び94mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩及び96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩及び98mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩及び105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、酢酸塩の濃度は、100mMである。
【0023】
一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の94~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、4.95、5.0、5.05若しくは5.1の94~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩、pH5.0の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、酢酸塩の濃度は、100mMである。
【0024】
一実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05~5.0±0.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH4.9~5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH4.9、4.95、5.0、5.05若しくは5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。
【0025】
一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、94~96mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、96~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104若しくは105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、94mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、96mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、98mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、105mMの塩化ナトリウムを含む。
【0026】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.9~5.1の酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.9、5.0若しくは5.1で酢酸塩を含む。一実施形態では、洗浄緩衝液は、pH4.9、4.95、5.0、5.05若しくは5.1で酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH5.0±0.05~5.0±0.1の酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.9~5.1の100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.9、5.0若しくは5.1で100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、pH4.9、4.95、5.0、5.05若しくは5.1で100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%で100mMの酢酸塩を含む。
【0027】
一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94mM~96mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、96mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、98mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、酢酸塩の濃度は、100mMである。
【0028】
一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05~5.0±0.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、4.95、5.0、5.05若しくは5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、酢酸塩の濃度は、100mMである。
【0029】
一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05~5.0±0.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH4.9~5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH4.9、4.95、5.0、5.05若しくは5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。
【0030】
一実施形態では、異なる洗浄緩衝液を用いる少なくとも1回の追加の洗浄工程がある。一実施形態では、少なくとも1回の追加の洗浄は、第2の洗浄である。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、0~26mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、0、23、24、25若しくは26mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、0mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、23mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、24mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、25mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、26mMの塩化ナトリウムを含む。
【0031】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、pH4.9~5.1の酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、pH4.9、5.0若しくは5.1で酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、pH4.9、4.95、5.0、5.05若しくは5.1で酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、5.0±0.05~5.0±0.1のpHの酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、pH4.9~5.1の100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、pH4.9、5.0若しくは5.1で100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、pH4.9、4.95、5.0、5.05若しくは5.1で100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の100mMの酢酸塩を含む。
【0032】
一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩及び塩化ナトリウムを含み、その後に少なくとも1回の追加の洗浄が続く。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94~105mMの塩化ナトリウムを含み、その後に少なくとも1回の追加の洗浄が続く。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94~105mMの塩化ナトリウムを含み、その後に0~26mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液が続く。一関連実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、23~26mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、0mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、23mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、24mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、25mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、26mMの塩化ナトリウムを含む。
【0033】
一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩及び塩化ナトリウムを含み、その後に少なくとも1回の追加の洗浄が続く。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94~105mMの塩化ナトリウムを含み、その後に酢酸塩を含む少なくとも1回の追加の洗浄が続く。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94~105mMの塩化ナトリウムを含み、その後に、0~26mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液が続く。一関連実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、酢酸塩、23~26mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、酢酸塩、23mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、酢酸塩、24mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、酢酸塩、25mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、酢酸塩、26mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94mMの塩化ナトリウムを含み、その後に、23~24mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液が続く。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、96mMの塩化ナトリウムを含み、その後に酢酸塩、25mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液が続く。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、98mMの塩化ナトリウムを含み、その後に酢酸塩、26mMの塩化ナトリウムを含む追加の洗浄緩衝液が続く。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、105mMの塩化ナトリウムを含み、その後に酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液が続く。一実施形態では、酢酸塩の濃度は、100mMである。
【0034】
一実施形態では、追加の洗浄は、第2の洗浄である。一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、0~26mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94~105mMの塩化ナトリウムを含み、その後に酢酸塩、0~26mMの塩化ナトリウムを含む第2の洗浄緩衝液が続く。一実施形態では、酢酸塩の濃度は、100mMである。
【0035】
一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94~105mMの塩化ナトリウムを含み、その後に、0~26mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液が続くが、ここで緩衝液のpHは同一又は異なる。一実施形態では、1種以上の洗浄緩衝液のpHは、pH4.9~5.1である。一実施形態では、1種以上の洗浄緩衝液のpHは、pH4.9、4.95、5.0、5.05若しくは5.1である。一実施形態では、1種以上の洗浄緩衝液のpHは、pH4.9、5.0若しくは5.1である。一実施形態では、1種以上の洗浄緩衝液のpHは、pH5.0である。一実施形態では、1種以上の洗浄緩衝液のpHは、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%である。一実施形態では、1種以上の洗浄緩衝液の酢酸塩濃度は、100mMである。
【0036】
一実施形態では、平衡化緩衝液は、94~96mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、96~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104若しくは105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、94mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、96mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、105mMの塩化ナトリウムを含む。
【0037】
本発明の一実施形態では、平衡化緩衝液は、酢酸塩を含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、pH4.9~5.1の酢酸塩を含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、pH4,9、5.0若しくは5.1で酢酸塩を含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、pH5.0で酢酸塩を含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、5.0±0.05~5.0±0.1のpHの酢酸塩を含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、pH4.9~5.1の100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、pH4.9、4.95、5.0、5.05若しくは5.1で100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、pH4,9、5.0若しくは5.1で100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の100mMの酢酸塩を含む。
【0038】
一実施形態では、平衡化緩衝液は、酢酸塩、94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、酢酸塩、94mM~96mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、酢酸塩、96mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、平衡化緩衝液は、酢酸塩、94mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、平衡化緩衝液は、酢酸塩、96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、平衡化緩衝液は、酢酸塩、105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、酢酸塩の濃度は、100mMである。
【0039】
一実施形態では、平衡化緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05~5.0±0.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、平衡化緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、平衡化緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、4.95、5.0、5.05若しくは5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、平衡化緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、平衡化緩衝液は、酢酸塩、pH5.0の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、酢酸塩の濃度は、100mMである。
【0040】
一実施形態では、平衡化緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05~5.0±0.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、平衡化緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH4.9~5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、平衡化緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH4.9、4.95、5.0、5.01若しくは5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、平衡化緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、平衡化緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。
【0041】
一実施形態では、組成物は、10~27g/Lで負荷される。一関連実施形態では、組成物は、10~25g/Lで負荷される。一関連実施形態では、組成物は、10~23g/Lで負荷される。一関連実施形態では、組成物は、10~15g/Lで負荷される。一関連実施形態では、組成物は、15~27g/Lで負荷される。一関連実施形態では、組成物は、15~25g/Lで負荷される。一関連実施形態では、組成物は、15~23g/Lで負荷される。一関連実施形態では、組成物は、23~27g/Lで負荷される。一関連実施形態では、組成物は、23~25g/Lで負荷される。一関連実施形態では、組成物は、25~27g/Lで負荷される。一実施形態では、組成物は、10、15、23、25若しくは27g/Lで負荷される。一実施形態では、組成物は、10g/Lで負荷される。一実施形態では、組成物は、15g/Lで負荷される。一実施形態では、組成物は、23g/Lで負荷される。一実施形態では、組成物は、25g/Lで負荷される。一実施形態では、組成物は、27g/Lで負荷される。
【0042】
一実施形態では、多重特異性タンパク質は、カチオン交換樹脂から勾配によって溶出される。一関連実施形態では、勾配は、線形である。一関連実施形態では、勾配は、塩勾配である。
【0043】
一関連実施形態では、pIの低い不純物は、生成物関連不純物である。一関連実施形態では、少なくとも1種の生成物関連不純物は、半抗体又は2X、3X若しくは4Xの軽鎖ミスアセンブリである。
【0044】
一実施形態では、多重特異性タンパク質は、二重特異性タンパク質である。一実施形態では、多重特異性タンパク質は、二重特異性抗体である。
【0045】
一実施形態では、カチオン交換クロマトグラフィー媒体は、樹脂である。一実施形態では、第2のクロマトグラフィー媒体は、樹脂である。一関連実施形態では、第2のクロマトグラフィー樹脂は、アニオン交換クロマトグラフィー樹脂、カチオン交換クロマトグラフィー樹脂、マルチモーダルクロマトグラフィー樹脂、疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー樹脂から選択される。
【0046】
本発明は、本明細書に記載の方法に従って生成された、精製された多重特異性タンパク質を提供する。本発明は、本明細書に記載の方法に従って作成された、単離され精製された組み換え多重特異性タンパク質を提供する。
【0047】
本発明は、本明細書に記載の方法に従って、単離され精製された関心対象の組み換え多重特異性タンパク質を含む医薬組成物を提供する。
【0048】
「多重特異性」、「多重特異性タンパク質」及び「多重特異性抗体」は、本明細書では、同じ抗原上の少なくとも2つの異なる抗原又は少なくとも2つの異なるエピトープに同時に結合し、それらを中和するように組み換え改変されているタンパク質を指すために互換的に使用される。例えば、多重特異性タンパク質は、免疫エフェクター及び細胞傷害性物質を腫瘍又は感染性因子に標的化するように改変することができる。これらの多重特異性タンパク質は、免疫エフェクター細胞を腫瘍細胞にリダイレクトすること、シグナル伝達経路を遮断して細胞シグナル伝達を改変すること、腫瘍血管新生を標的化すること、サイトカインを遮断することによる癌免疫療法における、並びに化学療法剤の送達、放射性標識(検出感度を向上させるため)及びナノ粒子(癌細胞等の特定の細胞/組織に向けられる)等の薬物のプレターゲティング送達ビヒクルとして等の様々な用途に有用であることが見出されている。
【0049】
最も一般的且つ最も多様な多重特異性タンパク質は、2つの抗原に結合するものであり、本明細書では「二重特異性」、「二重特異性タンパク質」及び「二重特異性抗体」と呼ばれる。二重特異性タンパク質は、2つの広範なカテゴリー:免疫グロブリンG(IgG)様分子及び非IgG様分子に分類され得る。IgG様分子は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)及び抗体依存性細胞貪食(ADCP)等のFc媒介性エフェクター機能を保持しており、Fc領域は、可溶性及び安定性を向上させ、一部の精製操作を促進するのに役立つ。非IgG様分子は、より小さいので、組織透過性を増強する。(Sedykh et al.,Drug Design,Development and Therapy 18(12),195-208,2018;Fan et al.,J Hematol&Oncology 8:130-143,2015;Spiess et al.,Mol Immunol 67,95-106,2015;Williams et al.,Chapter 41 Process Design for Bispecific Antibodies in Biopharmaceutical Processing Development,Design and Implementation of Manufacturing Processes,Jagschies et al.,eds.,2018,pages 837-855を参照のこと)。二重特異性タンパク質は、異なる抗原又は幾つかのエピトープへの結合特異性を有し、分子の結合特異性を増大させる追加の成分のためのフレームワークとして使用される場合がある。
【0050】
二重特異性抗体を含む二重特異性タンパク質に関する形式は、常に進化しており、クアドローマ、ノブ・イン・ホール、交差-Mab、二重可変ドメインIgG(DVD-IgG)、IgG-一本鎖Fv(scFv)、scFv-CH3 KIH、二重作用Fab(DAF)、半分子交換、κλ-ボディ、タンデム型scFv、scFv-Fc、ダイアボディ、一本鎖ダイアボディ(scダイアボディ)、scダイアボディ-CH3、トリプルボディ、ミニ抗体、ミニボディ、TriBiミニボディ、タンデム型ダイアボディ、scダイアボディ-HAS、タンデム型scFv-毒素、二重親和性再標的化分子(DART)、ナノボディ、ナノボディ-HSA、ドック・アンド・ロック(DNL)、鎖交換改変ドメインSEEDボディ、Triomab、ロイシンジッパー(LUZ-Y)、XmAb(登録商標);Fab-アーム交換、DutaMab、DT-IgG、荷電対、Fcab、直交性Fab、IgG(H)-scFv、scFV-(H)IgG、IgG(L)-scFV、IgG(L1H1)-Fv、IgG(H)-V、V(H)-IgG、IgG(L)-V V(L)-IgG、KIH IgG-scFab、2scFV-IgG、IgG-2scFv、scFv4-Ig、Zybody、DVI-Ig4(4つの機能)、Fab-scFv、scFv-CH-CL-scFV、F(ab’)2-scFv2、scFv-KIH、Fab-scFv-Fc、四価HCAb、scダイアボディ-Fc、ダイアボディ-Fc、イントラボディ、ImmTAC、HSABody、IgG-IgG、Cov-X-Body、scFv1-PEG-scFv2、一本鎖二重特異性抗体構築物、一本鎖二重特異性T細胞エンゲージャー(BITE)、二重特異性T細胞エンゲージャー及び半減期が延長された二重特異性T細胞エンゲージャー(HLE BiTE)(Fan 上記;Spiess 上記;Sedykh 上記;Seimetz et al.,Cancer Treat Rev 36(6)458-67,2010;Shulka and Norman,Chapter 26 Downstream Processing of Fc Fusion Proteins,Bispecific Antibodies,and Antibody-Drug Conjugates,in Process Scale Purification of Antibodies Second Edition,Uwe Gottswchalk editor,p559-594,John Wiley&Sons,2017;Moore et al.,MAbs 3:6,546-557,2011)を含むが、これらに限定されない。
【0051】
幾つかの実施形態では、二重特異性タンパク質は、ブリナツモマブ、カツマキソマブ、エルツマキソマブ、ソリトマブ、targomiR、ルチキズマブ(ABT981)、バヌシズマブ(RG7221)、メムトルマブ(ABT122)、オゾラリズマブ(ATN103)、フロテツズマブ(MGD006)、パソツキシズマブ(AMG112、MT112)、リンホマン(lymphomun)(FBTA05)、(ATN-103)、AMG211(MT111、Medi-1565)、AMG330、AMG420(B1836909)、AMG-110(MT110)、MDX-447、TF2、rM28、HER2Bi-aATC、GD2Bi-aATC、MGD006、MGD007、MGD009、MGD010、MGD011(JNJ64052781)、IMCgp100、インジウム標識IMP-205、xm734、LY3164530、OMP-305BB3、REGN1979、COV322、ABT112、ABT165、RG-6013(ACE910)、RG7597(MEDH7945A)、RG7802、RG7813(RO6895882)、RG7386、BITS7201A(RG7990)、RG7716、BFKF8488A(RG7992)、MCLA-128、MM-111、MM141、MOR209/ES414、MSB0010841、ALX-0061、ALX0761、ALX0141;BII034020、AFM13、AFM11、SAR156597、FBTA05、PF06671008、GSK2434735、MEDI3902、MEDI0700、MEDI7352並びにそれらの分子又は変異体若しくはアナログ及び上記の何れかのバイオシミラーを含み得る。
【0052】
多重特異性タンパク質はまた、複数の標的に結合できる三重特異性抗体、四価二重特異性抗体、例えばダイアボディ、トリアボディ又はテトラボディ、ミニボディ等の抗体成分を伴わない多重特異性タンパク質及び一本鎖タンパク質を含む。(Coloma,M.J.,et. al.,Nature Biotech.15(1997)159-163)。
【0053】
幾つかの実施形態では、関心対象の多重特異性タンパク質は、1つ以上のCDタンパク質、HER受容体ファミリータンパク質、細胞接着分子、成長因子、神経成長因子、線維芽細胞増殖因子、トランスフォーム成長因子(TGF)、インスリン様成長因子、骨誘導性因子、インスリン及びインスリン関連タンパク質、凝固及び凝固関連タンパク質、コロニー刺激因子(CSF)、他の血液及び血清タンパク質血液型抗原;受容体、受容体関連タンパク質、成長ホルモン、成長ホルモン受容体、T細胞受容体;神経栄養因子、ニューロトロフィン、リラキシン、インターフェロン、インターロイキン、ウイルス抗原、リポタンパク質、インテグリン、リウマチ因子、免疫毒素、表面膜タンパク質、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、調節タンパク質及びイムノアドヘシンに特異的に結合する、中和する及び/又は相互作用する。
【0054】
幾つかの実施形態では、関心対象の多重特異性タンパク質は、単独で又は任意の組み合わせで、以下の:CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD19、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD34、CD38、CD40、CD70、CD123、CD133、CD138、CD171及びCD174を含むがこれらに限定されないCDタンパク質、例えばHER2、HER3、HER4を含むHER受容体ファミリータンパク質、EGF受容体であるEGFRvIII、細胞接着分子、例えばLFA-1、Mol、p150,95、VLA-4、ICAM-1、VCAM及びαv/β3インテグリン、例えば、血管内皮成長因子(「VEGF」)を含むがこれらに限定されない成長因子;VEGFR2、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、ミュラー抑制物質、ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α)、エリスロポエチン(EPO)、NGF-β等の神経成長因子、血小板由来成長因子(PDGF)、例えばaFGF及びbFGFを含む線維芽細胞成長因子、上皮成長因子(EGF)、クリプト、数ある中でもTGF-α及びTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4又はTGF-β5を含むTGF-βを含むトランスフォーム成長因子(TGF)、インスリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II)、des(1-3)-IGF-I(脳内IGF-I)及び骨形成促進因子、インスリン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン及びインスリン様成長因子結合タンパク質を含むがこれらに限定されないインスリン及びインスリン関連タンパク質、数ある中でも、第VIII因子、組織因子、フォンウィルブランド因子等の凝固及び凝固関連タンパク質、プロテインC、α-1-アンチトリプシン、ウロキナーゼ及び組織プラスミノーゲン活性化因子(「t-PA」)等のプラスミノーゲン活性化因子、ボンバジン、トロンビン、トロンボポエチン、トロンボポエチン受容体、数ある中でも、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSFを含むコロニー刺激因子(CSF)、アルブミン、IgE及び血液型抗原を含むがこれらに限定されない他の血液及び血清タンパク質、例えば、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、成長ホルモン受容体、及びT細胞受容体を含む受容体及び受容体関連タンパク質、骨由来神経栄養因子(BDNF)及びニューロトロフィン-3、-4、-5若しくは-6(NT-3、NT-4、NT-5若しくはNT-6)を含むがこれらに限定されない神経栄養因子;リラキシンA鎖、リラキシンB鎖及びプロレラキシン、例えば、インターフェロン-α、-β及び-γを含むインターフェロン、インターロイキン(IL)、例えば、IL-1~IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-23、IL-12/IL-23、IL-2Ra、IL1-R1、IL-6受容体、IL-4受容体及び/又はIL-13から受容体であるIL-13RA2、又はIL-17受容体であるIL-1RAP、エイズエンベロープウイルス抗原、リポタンパク質、カルシトニン、グルカゴン、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、腫瘍壊死因子-α及び-βを含むがこれらに限定されないウイルス抗原、エンケファリナーゼ、BCMA、IgKappa、ROR-1、ERBB2、メソセリン、RANTES(regulated on activation normal T-cell expressed and secreted)、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、Dnase、FR-α、インヒビン及びアクチビン、インテグリン、プロテインA又はD、リウマチ因子、免疫毒素、骨形成タンパク質(BMP)、スーパーオキシドディスムターゼ、表面膜タンパク質、崩壊促進因子(DAF)、AIDSエンベロープ、輸送タンパク質、ホーミング受容体、MIC(MIC-a、MIC-B)、ULBP 1-6、EPCAM、アドレシン、制御タンパク質、イムノアドヘシン、抗原結合タンパク質、ソマトロピン、CTGF、CTLA4、エオタキシン-1、MUC1、CEA、c-MET、クローディン-18、GPC-3、EPHA2、FPA、LMP1、MG7、NY-ESO-1、PSCA、ガングリオシドGD2、グラングリオシドGM2、BAFF、OPGL(RANKL)、ミオスタチン、Dickkopf-1(DKK-1)、Ang2、NGF、IGF-1受容体、肝細胞増殖因子(HGF)、TRAIL-R2、c-Kit、B7RP-1、PSMA、NKG2D-1、プログラムされた細胞死タンパク質1及びリガンド、PD1及びPDL1、マンノース受容体/hCGβ、C型肝炎ウイルス、メソセリンdsFv[PE38コンジュゲート、レジオネラニューモフィラ(lly)、IFNガンマ、インターフェロンガンマ誘導タンパク質10(IP10)、IFNAR、TALL-1、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、幹細胞因子、Flt-3、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、OX40L、α4β7、血小板特異的(血小板糖タンパクIib/IIIb(PAC-1)、トランスフォーミング成長因子β(TFGβ)、透明帯精子結合タンパク質3(ZP-3)、TWEAK、血小板由来成長因子受容体α(PDGFRα)、スクレロスチン及び前記の何れかの生物活性断片又は変異体のうちの1つ以上に結合する、中和する、及び/又は相互作用する。
【0055】
幾つかの実施形態では、関心対象の多重特異性タンパク質は、CD3及びCD19、EpCAM、CEA、PSA、CD33、BCMA、Her2、CD20、P-カドヘリン、CD123、gpA33又はB7H3を含む組み合わせに特異的に結合する二重特異性抗体を含み得る。幾つかの実施形態では、関心対象の二重特異性抗体は、IL1α+IL1βを含む組み合わせに特異的に結合する二重特異性抗体を含み得る。
【0056】
多重特異性タンパク質は、科学的又は商業的に関心対象のタンパク質、特に二重特異性ベースの治療薬であり得る。多重特異性タンパク質は、様々な方法、最も一般的には細胞培養法を用いて組み換え動物細胞株によって生成することができる。多重特異性タンパク質は、細胞内で生成され得る、又はそれから回収及び/又は収集され得る培養培地内に分泌され得、及び互換的に「組み換え多重特異性タンパク質」、「組み換え多重特異性抗体」と呼ぶことができる。用語「単離された多重特異性タンパク質」、「単離された組み換え多重特異性抗体」は、タンパク質、ポリペプチド、DNA及び/又はその治療的、診断的、予防的、研究用又はその他の使用を妨害するであろう他の汚染物質若しくは不純物から精製されている多重特異性タンパク質を指す。さらに含まれるのは、「組み換え二重特異性タンパク質」、「組み換え二重特異性抗体」、「単離された組み換え二重特異性単離」及び「単離された組み換え二重特異性抗体」である。関心対象の多重特異性タンパク質は、特に以下に列挙し、それらに由来する標的、それらに関連する標的及びそれらの改変を含む2つ以上の標的に結合することによって、治療効果を発揮する多重特異性抗体を含む。
【0057】
本発明は、多重特異性タンパク質及び少なくとも1種の生成物関連不純物を含む組成物から多重特異性タンパク質を精製する方法であって:94~105mMの塩化ナトリウムを含む平衡化緩衝液を用いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体を平衡化する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む負荷緩衝液中においてカチオン交換媒体上に組成物を負荷する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の洗浄緩衝液を用いてカラムを洗浄する工程;及びカチオン交換クロマトグラフィー媒体から多重特異性タンパク質を溶出させる工程を含む方法を提供する。
【0058】
「精製すること」は、生成物から少なくとも1種の不純物を(部分的又は完全に)除去することによって、組成物中の多重特異性タンパク質の純度を増加させることを意味する。多重特異性タンパク質の回収及び精製は、収率及び生成物の品質目標(例えば減少した生成物関連不純物、増加した生成物の品質等)を満たす、より「均質な」多重特異性タンパク質組成物を生じさせる下流装置操作、特にイオン交換クロマトグラフィーを包含するそれらの作業によって実施される。
【0059】
「生成物関連不純物」は、関心対象の多重特異性タンパク質の生成物関連変異体を指す。一部の例では、これらの不純物は、溶出ピーク内の主生成物より低いpIを有する。生成物関連不純物としては、例えば、ホモ二量体、半抗体、凝集体、抗体断片及び抗体断片の様々な組み合わせ、並びに例えば2XLC、3XLC若しくは4XLC等の軽鎖ミスアセンブリ、高分子量(HMW)種、低分子量(LMW)種等が挙げられる。「半抗体」は、例えば、不完全なアセンブリ又は2つの重鎖ポリペプチド間の相互作用の崩壊に起因して形成し得る生成物関連不純物を指す。半抗体は、一般に、一本の軽鎖ポリペプチド及び一本の重鎖ポリペプチドを含む。「ホモ二量体」は、例えば、同一標的に対して特異性を有する場合に、所望の二重特異性ヘテロ二量体を形成するために異なる標的に対する特異性を有する重鎖及び軽鎖と対合する代わりに相互に再結合する場合に形成し得る生成物関連不純物を指す。これは、典型的には宿主細胞中での発現中に発生する。改変残基(荷電対合突然変異、ノブ-ホール等)を介して正しく対合するためには複数の鎖(軽鎖、LC等)を必要とする多重特異性構築物については、依然としてLCとHCとの間にミスマッチが存在する不純物を有する可能性があるが、ここでLC1はHC1と対合する代わりに、HC2(2×LC1)と不正確に対合し、及びその逆(2×LC2)もあり得る。多重特異性タンパク質が、関心対象の各抗原に結合するための2つの部位を有する二価である場合、3XLC1、4XLC1及び誤対合種の他の組み合わせを有することが考えられる。
【0060】
本発明は、カチオン交換クロマトグラフィーからの溶出液中のpIの低い不純物を減少させる方法であって:94~105mMの塩化ナトリウムを含む平衡化緩衝液を用いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体を平衡化する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む負荷緩衝液中においてカチオン交換媒体上に組成物を負荷する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の洗浄緩衝液を用いてカラムを洗浄する工程;及びカチオン交換クロマトグラフィー媒体から多重特異性タンパク質を溶出させる工程を含み;ここでカチオン交換クロマトグラフィー溶出液は、平衡化、負荷及び洗浄工程において塩化ナトリウムが使用されない対応する方法において回収されたカチオン交換クロマトグラフィー溶出液と比較して、減少したpIの低い不純物を有する方法を提供する。
【0061】
本明細書に開示したように、生成物関連不純物のpIは、所望の多重特異性タンパク質のpIに類似する可能性がある。これらの生成物関連不純物は、主生成物を備える溶出液ピーク内で見出される。それらはわずかに低いpIを有するので、それらはプレピークとして、主生成物の直前に溶出される。タンパク質の「等電点」若しくは「pI」は、陽電荷がタンパク質の陰電荷と平衡する時点のpHを指す。pIは、タンパク質のアミノ酸残基の正味電荷から、又は等電点電気泳動によって等の公知の方法を用いて計算/決定することができる。主生成物よりも低いpIを有する生成物関連不純物は、主生成物よりはるかに酸性である。
【0062】
本発明は、単離され精製された関心対象の組み換え多重特異性タンパク質を製造する方法であって:多重特異性タンパク質を発現する宿主細胞を用いてバイオリアクター内の細胞培養を確立する工程;多重特異性タンパク質を発現させるために宿主細胞を培養する工程;組み替え多重特異性タンパク質を収穫する工程;収穫した組み換え多重特異性タンパク質を親和性精製する工程;親和性精製からの溶出液プール中の低pHでウイルスを不活性化し、プールを中和する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む平衡化緩衝液を用いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体を平衡化する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む負荷緩衝液中において平衡化したカチオン交換媒体上に、中和され親和性精製された組み換え多重特異性タンパク質を負荷する工程;94~105mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて、続いて0~26mMの塩化ナトリウムを含む第2の洗浄緩衝液を用いてカチオン交換媒体を洗浄する工程;カチオン交換クロマトグラフィー媒体から多重特異性タンパク質を溶出させる工程;組み換え多重特異性タンパク質を含むカチオン交換クロマトグラフィー溶出液をフロースルーモードで第2のクロマトグラフィー樹脂上に負荷する工程;及び処方緩衝液中で精製した組み換え多重特異性タンパク質を濃縮する工程を含む方法を提供する。
【0063】
本明細書では、多重特異性タンパク質をコードする少なくとも1つの核酸を含むプラスミド、発現ベクター、転写カセット又は発現カセットの形態にある発現系及び構築物並びにそのような発現系又は構築物を含む宿主細胞もまた提供される。本明細書で使用する「ベクター」は、情報をコードする多重特異性タンパク質を宿主細胞及び/又は特定の位置及び/又は宿主細胞内の区画に移行させ且つ/又は輸送する使用に好適な任意の分子又は実体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ウイルスカプシド、ビリオン、裸DNA、複合体を形成したDNA等)を意味する。ベクターには、ウイルス及び非ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクターが含まれ得る。ベクターは、発現ベクター、例えば、組み換え発現ベクター及びクローニングベクターと呼ばれる場合が多い。ベクターを宿主細胞に導入して、ベクター自体の複製を可能にし、それによって、それに含有されるポリヌクレオチドのコピーを増幅させてもよい。クローニングベクターは、複製開始点、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列及び選択可能なマーカーが一般的に挙げられるが、これらに限定されない配列成分を含有し得る。これらの要素は、当業者により必要に応じて選択され得る。
【0064】
「細胞」としては、任意の原核細胞又は真核細胞が挙げられる。細胞は、ex vivo、in vitro又はin vivoの何れかで、分離しているか、又は組織若しくは臓器等の高次構造の一部として存在し得る。細胞には、商業的又は化学的関心対象の多重特異性タンパク質を発現するように改変されている、「細胞株」とも称される「宿主細胞」を含む。宿主細胞は典型的には、時間が制限されずに培養で維持され得る初代培養から生じる系統に由来する。宿主細胞の遺伝子組み換えは、宿主細胞に所望の組み換え多重特異性タンパク質を発現させるように、細胞を組み換えポリヌクレオチド分子でトランスフェクト、形質転換若しくは形質導入すること、及び/又は別の方法で(例えば、相同組み換え及び遺伝子活性化、又は組み換え細胞と非組み換え細胞との融合によって)改変することを含む。関心対象の多重特異性タンパク質を発現するように細胞及び/又は細胞株を遺伝子改変するための方法及びベクターは、当業者には周知である。
【0065】
宿主細胞は、任意の原核細胞(例えば、大腸菌(E.coli))又は真核細胞(例えば、酵母細胞、昆虫細胞若しくは哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞))であり得る。ベクターDNAは、従来の形質転換技術又はトランスフェクション技術によって原核細胞又は真核細胞中に導入することができる。
【0066】
一実施形態では、細胞は、宿主細胞である。宿主細胞は、適切な条件下で培養されると、関心対象の多重特異性タンパク質を発現し、これはその後、培養培地(宿主細胞がそれを培地中に分泌する場合)から、又はそれを産生する宿主細胞(それが分泌されない場合)から直接的に回収され得る。適切な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、活性に望ましいか又は必須であるタンパク質修飾(グリコシル化又はリン酸化等)及び生物活性分子へのフォールディングの容易さ等の種々の要因によって決まることとなる。
【0067】
「培養」又は「培養すること」は、多細胞生物又は組織の外部での細胞の増殖及び増殖を意味する。哺乳動物細胞に好適な培養条件は、当該技術分野において知られている。細胞培養培地及び組織培養培地は、互換的に使用され、in vitroでの細胞培養中の宿主細胞の増殖に好適な培地を指す。典型的には、細胞培養培地は、緩衝液、塩、エネルギー供給源、アミノ酸、ビタミン及び微量必須元素を含有する。培養における適切な宿主細胞の増殖を助ける能力のある任意の培地が使用され得る。特定の培養宿主細胞における細胞増殖、細胞生存率、及び/又は組み換えタンパク質産生を最大化する他の成分がさらに補充され得る細胞培養培地は、市販されており、とりわけ、RPMI-1640培地、RPMI-1641培地、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地イーグル、F-12K培地、ハムF12培地、イスコフ改変ダルベッコ培地、マッコイ5A培地、リーボビッツL-15培地、及びEX-CELL(商標)300シリーズ等の無血清培地を含み、これらは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション又はSAFC Biosciences及び他のベンダーから得ることができる。細胞培養培地は、無血清、無タンパク質、無増殖因子及び/又は無ペプトン培地であり得る。細胞培養物はまた、栄養分の添加によって富栄養化されてもよく、且つその通常の推奨濃度より高い濃度で使用されてもよい。
【0068】
様々な培地配合物が、例えば、1つの段階(例えば、増殖段階又は期)から別の段階(例えば、産生段階又は期)への転移を促進させ、且つ/又は細胞培養(例えば、灌流培養中に提供される濃縮培地)中の条件を最適化するために、培養期間の間に使用されてもよい。増殖培地調製物は、細胞増殖を促進し、且つタンパク質発現を最小化するために使用され得る。産生培地調製物は、最小の新たな細胞増殖とともに、関心対象のタンパク質の産生及び細胞の維持を促進するために使用され得る。細胞培養の産生期の期間の間に消費される供給培地、通常、栄養分及びアミノ酸等のより濃縮された成分を含有する培地は、活性の培養、特に、フェドバッチ、半灌流又は灌流様式で操作された培養を補い且つ維持するために使用され得る。そのような濃縮された供給培地は、細胞培養培地の成分の大部分を、例えば、それらの通常の量の約5×、6×、7×、8×、9×、10×、12×、14×、16×、20×、30×、50×、100×、200×、400×、600×、800×、或いは約1000×で含有し得る。
【0069】
増殖期は、産生期より高温で起こり得る。例えば、増殖期は、約35℃~約38℃の第1の温度で起こってもよく、且つ産生期は、約29℃~約37℃、任意選択により、約30℃~約36℃又は約30℃~約34℃の第2の温度で起こってもよい。加えて、例えば、カフェイン、酪酸塩、及びヘキサメチレンビスアセトアミド(HMBA)等のタンパク質産生の化学誘導剤が、温度転換と同時に、その前に、及び/又はその後に加えられ得る。誘導剤が温度転換の後に加えられる場合、それらは、温度転換の1時間~5日後、任意選択により、温度転換の1~2日後に加えられ得る。pHは、さらに独立して、又は他の方法と組み合わせての何れかで、培養中に変化させられ得る。
【0070】
宿主細胞は、懸濁液中で又は固形の培養基に結合された付着形態で培養され得る。細胞培養は、マイクロキャリアを伴うか又は伴わない流動床バイオリアクター、中空繊維バイオリアクター、ローラーボトル、振盪フラスコ、又は撹拌タンクバイオリアクター中で確立され得る。
【0071】
細胞培養は、バッチ、フェドバッチ、連続、半連続又は灌流様式で操作されてもよい。CHO細胞等の哺乳動物細胞は、100ml未満~1000ml未満の小規模にてバイオリアクター中で培養されてもよい。或いは、1000ml~20,000リットルを超える培地を含有する大規模バイオリアクターが使用されてもよい。臨床及び/又は商業規模のタンパク質治療薬のバイオ製造のためのもの等の大規模細胞培養は、細胞が所望のタンパク質を産生する間、数週間及び数カ月間維持され得る。
【0072】
ホモ二量体、半抗体、2X LC-ミスアラインメント等の生成物関連不純物は、所望の多重特異性タンパク質に類似し得るので、例えばノブ及びホール、CrossMab、DVD IgG及びその他等の戦略及び技術は、細胞培養中の所望の多重特異性タンパク質に対する選択性を増加させるために開発されてきた。しかしながら、依然として、幾らかの量の、下流プロセシング中に除去されなければならない、生成された生成物関連不純物が存在するであろう。
【0073】
次に、結果として生じる発現した組み換え多重特異性タンパク質は、細胞培養培地から獲得され得る。懸濁細胞からタンパク質を収集するための方法は、当該技術分野で知られており、且つ酸沈殿、綿状沈殿等の加速された沈降、重力を使用する分離、遠心分離、音波分離、膜濾過を含み、限外濾過膜、マイクロフィルター、タンジェンシャルフローフィルター、代替のタンジェンシャルフロー、デプス及び堆積濾過フィルターを使用する濾過が挙げられるが、これらに限定されない。原核生物によって発現される組み換えタンパク質は、当該技術分野で知られる酸化還元フォールディングプロセスによって細胞質において封入体から回収される。
【0074】
次に、獲得された多重特異性タンパク質は、1つ以上の下流精製操作を使用して、残留している細胞培養培地、細胞抽出物、望まれない成分、宿主細胞タンパク質、不適切に発現したタンパク質、生成物関連不純物等の任意の不純物から精製され得るか、又は部分的に精製され得る。
【0075】
収穫された細胞培養液からの多重特異性タンパク質の精製は、関心対象の組み換えタンパク質に結合することになる作用物質を含有する樹脂及び/又は膜を利用する捕捉クロマトグラフィー、例えば、親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)等を用いて開始し得る。そのような材料は、当該技術分野において知られており、且つ市販されている。親和性クロマトグラフィーの選択肢は、基質-結合捕捉機構、アプタマー結合捕捉機構及び補因子結合捕捉機構を含み得る。Fc成分を含有する多重特異性タンパク質については、プロテインA、プロテインG及びプロテインA/G、プロテインL等の抗体結合又は抗体断片結合捕捉機構を使用することができる。
【0076】
下流プロセスにおける任意の時点に、精製された多重特異性タンパク質溶液からウイルス物質を除去するために、ウイルス不活性化及び/又はウイルス濾過を実施することができる。ウイルス不活性化を達成するための1つの方法は、低pHでのインキュベーション又はウイルスの不活性化を達成するための他の溶液条件である。低pHのウイルス不活性化の後には、ウイルスが不活性化された溶液を次の装置操作の要件とより適合するpHに再調整する中和装置操作を続けることができる。典型的には、中和は、pH5~7で生じる。ウイルス不活性化若しくは中和されたウイルス不活性化プールは、さらにその後に、デプス濾過等の濾過にかけられ、結果として生じる濁り又は沈殿が除去され得る。無菌濾過は、典型的には、デプス濾過と一緒に実施される。ウイルス濾過は、旭化成(Plavona(登録商標))及びEDMミリポア(VPro(登録商標))から入手可能なもの等のマイクロ濾過膜又はナノ濾過膜を使用して実施することができる。
【0077】
用語「ポリッシング」は、本明細書では、最終的に所望の純度に近い組み換え多重特異性タンパク質を含む液体から、DNA、宿主細胞タンパク質、生成物特異的不純物、変異体生成物及び凝集体等の残留している混入物及び不純物並びにウイルス吸着を除去するために実施される1つ以上のクロマトグラフィー工程を指すために使用される。ポリッシュクロマトグラフィーは、フロースルーモード(関心対象のタンパク質が樹脂/膜を通過し、汚染物質及び不純物がクロマトグラフィー媒体に結合し、関心対象のタンパク質が溶出液中に含有される)、フロンタル若しくはオーバーロード・クロマトグラフィーモード(関心対象のタンパク質を含有する溶液は吸着部位が専有されるまでカラム上に負荷され、固定相(関心対象のタンパク質)に対する最小の親和性を備える種が溶出され始める、又は結合及び溶出モード(関心対象のタンパク質がクロマトグラフィー媒体に結合され、汚染物質及び不純物がクロマトグラフィー媒体に通過した後、又はクロマトグラフィー媒体から洗い流された後に溶出される)で使用できる作用物質を含有する樹脂及び/又は膜を利用する。このようなクロマトグラフィー法の例としては、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)及びカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)等のイオン交換クロマトグラフィー(IEX);疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC);混合様式又は多様式クロマトグラフィー(MM)、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー(HA);逆相クロマトグラフィー及びゲル濾過が挙げられる。一実施形態では、クロマトグラフィー法は、カチオン交換クロマトグラフィーである。一実施形態では、カチオン交換媒体は、樹脂である。
【0078】
本発明は、生成物関連不純物を減少させるために高塩分負荷条件下でカチオン交換クロマトグラフィーを実施する方法であって:平衡化緩衝液を用いてカチオン交換クロマトグラフィー媒体を平衡化する工程;負荷緩衝液中においてカチオン交換媒体に組成物を負荷する工程;カラムを第1及び第2の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程;及びカチオン交換クロマトグラフィー媒体から多重特異性タンパク質を溶出させる工程を含み、ここで平衡化、負荷及び洗浄緩衝液が94~105mMの塩化ナトリウムを含む方法を提供する。
【0079】
「カチオン交換クロマトグラフィー」は、陰荷電しており、固相の上又は中を通過した水溶液中のカチオンとの交換のための遊離カチオンを有する固相材料上で実施されるクロマトグラフィーを指す。電荷は、1つ以上の荷電リガンドを固相に付着させることによって、例えば共有結合によって提供され得る。或いは、又は加えて、電荷は、(例えば、全陰電荷を有するシリカについての場合と同様に)固相の固有の特性であり得る。商業的に利用できるカチオン交換材料を利用することができ、樹脂及び膜吸収体媒体、弱カチオン交換体、強カチオン交換体、寒天上に固定化したスルホプロピル(SP)(例えば、とりわけSP-SEPHAROSE FAST FLOW(商標)、SP-SEPHAROSE FAST FLOW XL(商標)若しくはSP-SEPHAROSE HIGH PERFORMANCE(商標)、GE Healthcare製)、CAPTO S(商標)、CAPTO SP ImpRes(商標)、CAPTO S ImpAct(商標)(GE Healthcare)、FRACTOGEL-SO3(商標)、FRACTOGEL-SE HICAP(商標)、FRACTOPREP(商標)(EMD Merck)、Fractogel(登録商標)EMD SO3-(M)、Fractogel(登録商標)EMD SE Hicap(M)、Eshmuno(登録商標)CPX、Eshmuno(登録商標)S樹脂、Fractogel(登録商標)EMD COO-(M)、Mustang S Acrodisc with Mustang S AcroPrep with Mustang S、CM Ceramic HyperD(登録商標)F AcroSep with CM Ceramic HyperD(登録商標)Fが挙げられるが、それらに限定されない。
【0080】
本発明の方法のためには、カチオン交換クロマトグラフィーは、結合及び溶出モードで実施される。対象の多重特異性タンパク質を含有する溶出液又は貯蔵プールは、関心対象の多重特異性タンパク質がカチオン交換媒体に結合するように、平衡化したカチオン交換媒体上に負荷される。多重特異性タンパク質をカチオン交換材料に「結合させること」は、多重特異性タンパク質が関心対象の多重特異性タンパク質とカチオン交換材料の1つ若しくは複数の荷電基との間のイオン性相互作用によってカチオン交換材料中又は上に可逆性で固定化されるような適切な条件(pH/導電率)下で多重特異性タンパク質をカチオン交換材料に暴露させることを意味する。多重特異性タンパク質は、例えば親和性クロマトグラフィー、中和された低pHウイルス不活性化、デプス濾過又はポリッシュクロマトグラフィー操作等の以前の装置操作が起源である溶出液又はプール中に存在し得る。
【0081】
本発明の方法のための結合及び溶出モードにおけるカチオン交換クロマトグラフィーの性能は、幾つかの工程から成る。カチオン交換媒体上への多重特異性タンパク質を負荷するための準備において、媒体は、多重特異性タンパク質組成物と同一の緩衝液組成物を用いた負荷前に、平衡化される。「平衡化緩衝液」は、関心対象の多重特異性タンパク質を含む組成物を負荷する前にクロマトグラフィー材料を平衡化するために使用される緩衝液である。
【0082】
平衡化後、以前の装置操作からの関心対象の多重特異性タンパク質を含有する溶出液又は貯蔵プールは、組成物の最終コンディショニング負荷緩衝液が所望の濃度で塩化ナトリウムを含有するように高塩分負荷調製物を用いて滴定される。「負荷緩衝液」及び「最終コンディショニング負荷緩衝液」は、本明細書では互換的に使用される。負荷緩衝液は、関心対象の多重特異性タンパク質がカチオン交換材料に結合するように好適な調製物を有する。
【0083】
負荷及び結合したカチオン交換クロマトグラフィー材料は、次に複数回の洗浄を受ける。カチオン交換材料を洗浄することは、適切な洗浄緩衝液をカチオン交換材料に通して、又はその上を通過させることを意味する。洗浄緩衝液は、カチオン交換材料からの関心対象の多重特異性タンパク質の実質的な溶出を伴わずに、生成物関連不純物を含む1種以上の汚染物質を除去する。本発明の一実施形態によると、2種の洗浄工程がある。一実施形態では、「第1の洗浄緩衝液」及び「第2の洗浄緩衝液」がある。洗浄緩衝液は、関心対象の多重特異性タンパク質を溶出させる前にカチオン交換材料を洗浄又は再平衡化するために使用される。1種以上の洗浄緩衝液調製物は、平衡化及び/又は最終コンディショニング負荷緩衝液調製物と同一であってよい。用語「第1の洗浄」及び「第2の洗浄」は、負荷と第1及び/又は第2の洗浄工程との間での1回以上の追加の洗浄又は他の緩衝液であると解釈すべきではない。好ましくは第2の洗浄工程の終了時までに、UVベースラインは。溶出の開始前に、ほぼゼロからゼロに復帰した、又はほぼゼロからゼロである。
【0084】
本発明は、平衡化緩衝液、最終コンディショニング負荷緩衝液及び少なくとも1種の洗浄緩衝液が、高塩分負荷調製物を有することを提供するが、一実施形態では、それら全部が同一の高塩分負荷調製物緩衝液を有する。一実施形態では、平衡化緩衝液、最終コンディショニング負荷緩衝液及び少なくとも1種の洗浄緩衝液は、94~105mMの塩化ナトリウムを提供する。
【0085】
「緩衝液」は、その酸塩基コンジュゲート成分の作用によってpHにおける変化に抵抗する溶液である。一実施形態では、緩衝液は、酢酸緩衝液である。一実施形態では、緩衝液は、100mMの酢酸緩衝液である。一実施形態では、緩衝液のpHは、5±0.05~5.0±0.1の範囲内にある。一実施形態において、その範囲は、pH4.9~5.1である。一実施形態において、その範囲は、pH4.95~5.05である。
【0086】
平衡化緩衝液、最終コンディショニング負荷緩衝液及び少なくとも1種の洗浄緩衝液は、それぞれさらに塩を含む。一実施形態では、塩は、塩化ナトリウムである。一実施形態では、塩は、約94mM~約105mMの量にある塩化ナトリウムである。
【0087】
一実施形態では、負荷緩衝液は、96~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104若しくは105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、94mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、96mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、105mMの塩化ナトリウムを含む。
【0088】
本発明の一実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、pH4.9~5.1の酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、pH4,9、5.0若しくは5.1で酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、pH、5.0±0.05~5.0±0.1の酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、pH4.9~5.1の100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、pH4,9、5.0若しくは5.1で100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の100mMの酢酸塩を含む。
【0089】
一実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩及び94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩及び94mM~96mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩及び96mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩及び94mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩及び96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩及び105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、平衡化緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05~5.0±0.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05の94~96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05の96~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05の96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.1の105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の94~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩、pH5.0の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の94~96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05の96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.1の105mMの塩化ナトリウムを含む。
【0090】
一実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05~5.0±0.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05の94~96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05の96~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05の96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.1の105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH4.9~5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH4.9~5.1の94~96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05の96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、負荷緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.1の105mMの塩化ナトリウムを含む。
【0091】
一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、94~96mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、96~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104若しくは105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、94mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、96mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、105mMの塩化ナトリウムを含む。
【0092】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.9~5.1の酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.9、5.0若しくは5.1で酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH5.0±0.05~5.0±0.1の酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.9~5.1の100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.9、5.0若しくは5.1で100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%で100mMの酢酸塩を含む。
【0093】
一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94mM~96mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、96mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05~5.0±0.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05の94~96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05の96mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05の96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.1の105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の94mM~96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05の96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.1の105mMの塩化ナトリウムを含む。
【0094】
一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05~5.0±0.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05の94~96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05の96mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05の96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.1の105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH4.9~5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の94mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH4.9~5.1の94mM~96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05の96mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.1の105mMの塩化ナトリウムを含む。
【0095】
一実施形態では、異なる洗浄緩衝液を用いる少なくとも1回の追加の洗浄工程が存在する。一実施形態では、少なくとも1回の追加の洗浄は、第2の洗浄である。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、0~26mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、23~26mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、23、24、25若しくは26mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、23mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、24mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、25mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、26mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液は、5.0±0.05のpHの25mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩及び塩化ナトリウムを含み、その後に少なくとも1回の追加の洗浄が続く。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94~105mMの塩化ナトリウムを含み、その後に少なくとも1回の追加の洗浄が続く。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94~105mMの塩化ナトリウムを含み、その後に0~26mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液が続く。一実施形態では、追加の洗浄は、第2の洗浄である。一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、0~26mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、94~96mMの塩化ナトリウムを含み、その後に25mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液が続く。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩及び105mMの塩化ナトリウムを含み、その後に酢酸塩を含む少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液が続く。
【0096】
一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、5.0±0.05のpHの94~105mMの塩化ナトリウムを含み、その後に少なくとも1回の追加の洗浄が続く。一関連実施形態では、追加の洗浄は、第2の洗浄である。一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、0~26mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、5.0±0.05のpHの94~96mMの塩化ナトリウムを含み、その後に100mMの塩酸塩、5.0±0.05のpHの25mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の追加の洗浄緩衝液が続く。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、5.0±0.1のpHの105mMの塩化ナトリウムを含み、その後に5.0±0.1のpHの100mMの塩酸塩を含む少なくとも1回の追加の洗浄が続く。
【0097】
結合した多重特異性タンパク質は、次にカチオン交換クロマトグラフィー材料から溶出される。多重特異性タンパク質は、勾配によって溶出され得る。多重特異性タンパク質は、線形若しくは段階的勾配によってカチオン交換材料から溶出され得る。好ましくは、勾配は、塩勾配である。勾配は、少なくとも2種の溶出緩衝液を用いて作成されるが、ここでこれらの緩衝液の組み合わせは、関心対象の多重特異性タンパク質がカチオン交換材料から溶出されるように、実質的に増加した導電率を有する。好ましくは、勾配の導電率は、平衡の導電率及び先行する緩衝液のそれぞれの平衡の導電率より大きい。
【0098】
カチオン交換クロマトグラフィー溶出液は、さらにポリッシュクロマトグラフィー精製操作を受けさせることができる。好ましくは、少なくとも1回の追加のポリッシュクロマトグラフィー操作を。好ましくは、関心対象の多重特異性タンパク質は、フロースルーモードでクロマトグラフィー材料に適用される。
【0099】
精製された多重特異性タンパク質の濃度及び原薬のバルク貯蔵のための所望の処方緩衝液への緩衝液交換は、限外濾過及びダイアフィルトレーション操作によって達成することができる。ウイルス濾過は、下流プロセス中の任意の時点に実施することもできる。
【0100】
精製された多重特異性タンパク質の重要な属性及び性能パラメーターは、製造中の各工程の性能に関する決定をより適切に伝えるために測定され得る。これらの重要な属性及びパラメーターは、リアルタイム、ほぼリアルタイム及び/又は事後に監視することができる。消費された培地成分(グルコース等)、蓄積している副生成物(乳酸塩及びアンモニア等)の代謝レベル並びに溶存酸素含量等の細胞維持及び生存に関連するもの等の重要なパラメーターは、細胞培養中に測定することができる。比生産性、生存細胞密度、pH、重量オスモル濃度、外観、色、凝集、収率、力価、濃度、生存率、活性等の重要な属性は、製造プロセスにおける適切な段階中にモニターされ得る。モニタリング及び測定は、既知の手法及び市販の装置を使用して行うことができる。
【0101】
医薬組成物(液剤、懸濁剤等)は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水等の緩衝液;グルコース、マンノース、スクロース若しくはデキストラン、マンニトール等の炭水化物;タンパク質;ポリペプチド又はグリシン等のアミノ酸;抗酸化剤;EDTA若しくはグルタチオン等のキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);及び保存料;注射用水、食塩液、好ましくは生理学的食塩水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム、溶媒若しくは懸濁媒として機能できる合成モノグリセリド若しくはジグリセリド等の不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の溶媒等の無菌希釈液;ベンジルアルコール若しくはメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸若しくは亜硫酸ナトリウム等の抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩若しくはリン酸塩等の緩衝液及び塩化ナトリウム若しくはデキストロース等の等張性を調製するための作用物質の1つ以上を含み得るが、これらに限定されない。非経口製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器又は複数回投与バイアルに封入することができる。
【0102】
本願で使用する用語法は、当該技術分野内で標準的であるが、所定の用語の定義は、特許請求の範囲の意味に対して明快さ及び明確さを保証するために本明細書で提供される。単位、接頭辞及び記号は、それらのSIで認められた形式で示され得る。本明細書で列挙される数の範囲は、範囲を定義する数を含み、且つ定義された範囲内の各整数を含み且つ裏付ける。別段の記載がない限り、本明細書に記載される方法及び手法は、一般に、当該技術分野においてよく知られる通常の方法に従って実施され、本明細書を通して引用され且つ議論される様々な一般の参考文献及び特定性の高い参考文献に記載されるとおりのものである。例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001)及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992)、並びにHarlow and Lane Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)を参照されたい。特許、特許出願、論文、書籍及び学術論文が挙げられるが、これらに限定されない、本願で引用される全ての文献又は文献の一部は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。本発明の実施形態において記載されるものは、本発明の他の実施形態と組み合わせてもよい。
【0103】
本発明は、本発明の個々の態様の単一の例示として意図されている本明細書に記載した特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではなく、機能的に同等の方法及び構成要素は、本発明の範囲内にある。実際に、本明細書中に示され、且つ記載されたものに加えて、本発明の様々な変更形態は、上記及び添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような変更形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【実施例
【0104】
実施例1 無塩分負荷の二重特異性#1
酢酸緩衝液中の完全ヒト二重特異性、改変免疫グロブリン(二重特異性#1)を含有する中和されたプロテインAプールを表1に略述した条件下でEshmuno CP-FT(登録商標)カチオン交換クロマトグラフィー樹脂(GE Healthcare Bio-Science、Marlborough、MA)上に負荷した。
【0105】
【表1】
【0106】
図1は、複数の不純物がカラム上に残留し、主生成物とともに溶出されたことを示している。これらの不純物は、主生成物と電荷において類似であり(等電点)、半抗体、2Xの軽鎖ミスアセンブリ及び高分子量(HMW)を含んでいた。
【0107】
実施例2 高塩分負荷コンディショニングの二重特異性#1
二重特異性#1を含有する中和されたウイルス不活性化プール(100mMの酢酸塩、pH5.0)を負荷緩衝液(100mMの酢酸塩、350mMの塩化ナトリウム、pH5.00)と1:0.378の比で結び付けると、100mMの酢酸塩、96mMの塩化ナトリウム、pH5.00の最終コンディショニング負荷が生じた。コンディショニング負荷は、表2に記載した条件下で、Capto-SP ImpRes(登録商標)カチオン交換クロマトグラフィー樹脂上に負荷した。
【0108】
【表2】
【0109】
高塩分負荷条件が使用された場合、pIの低い不純物が溶出前の樹脂から除去されることが見出された。図2は、高塩分負荷条件が、溶出プロファイル内の不純物ピークの数を4つのピークから1つのピークへの減少を生じさせたことを示している。(中心点の結果を示している)。不純物の大部分は、負荷と第2の洗浄工程との間で除去された。半mAbは負荷中に樹脂を通って流れた、又はカラムにほんのわずかに結合した。2XのLCはカラムから除去された、又は第1の洗浄工程後にカラムにほんのわずかに結合した。第2の洗浄工程は、残留しているタンパク質種のための完全結合条件を提供し、溶出の開始前にUVベースラインをゼロに再確立し、溶出プロファイルを固定し、結果として主生成物のはるかに効率的な収集及びより良好な品質を生じさせた。
【0110】
平衡化緩衝液、最終コンディショニング負荷、及び第1の洗浄緩衝液を94~98mMの塩化ナトリウムで試験して、類似の結果が得られた。平衡化緩衝液のpH、最終コンディショニング負荷、及び2種の洗浄緩衝液調製物を4.95~5.05の様々な濃度で試験して、類似の結果が得られた。負荷濃度を5~27mg/mlで試験して、類似の結果が得られた。
【0111】
全体的に見れば、高塩分負荷は、無塩分負荷条件と比較して、低い収率(約60%)を有していた。その理由は、無塩分負荷ランを用いると、溶出を分画化することができ、最終生成物の品質を調節する際により高度の精度及び精密度を可能にするからである。しかしながら、無塩分負荷は、ロバストな製造プロセスにとって最適ではない8mM[塩化ナトリウム]/CVの急勾配を有していたが、他方高塩分負荷は16mM[塩化ナトリウム]/CVの塩勾配を有していた。高塩分負荷コンディショニングは、44カラム体積から20カラム体積への溶出の長さの減少を可能にした。カラム体積におけるこの減少は、溶出勾配がより短くなるので、時間及び資源を節約し、さらによりロバストな製造プロセスを生じさせる。
【0112】
実施例3 高い負荷密度、無塩分負荷コンディショニング、二重特異性#2
完全ヒト、改変IgG/Fab融合タンパク質(二重特異性#2)を含有する中和されたプロテインA溶出液プールは、表3に略述した条件下で、Capto-SP ImpREs(登録商標)カチオン交換クロマトグラフィー樹脂(GE Healthcare Bio-Science、Marlborough、MA)上に負荷した。
【0113】
【表3】
【0114】
図3は、急勾配の溶出で、高い負荷密度、無塩分負荷コンディショニングから生じた1つの溶出ピークを示している。pIの低い生成物関連不純物は、4から7へ減少したCE-SDS LC1:LC2比(誤対合のLC1種)及び2~4%のLMW種によって証明されるように、高い負荷密度下では主生成物から分解せず、大部分が画分1、2及び3内にある。
【0115】
実施例4 低い負荷密度、無塩分負荷コンディショニング、二重特異性#2
完全ヒト、改変IgG/Fab融合タンパク質(二重特異性#2)を含有する中和されたプロテインA溶出液プールを、表4に略述した条件下で、Capto-SP ImpREs(登録商標)カチオン交換クロマトグラフィー樹脂(GE Healthcare Bio-Science、Marlborough、MA)上に負荷した。
【0116】
【表4】
【0117】
実施例3の高い負荷密度、急勾配の溶出条件は、pIの低い生成物関連不純物からの主生成物の十分な分解を提供しなかったので、負荷密度及び勾配条件を低下させた。図4は、より低い負荷密度(10対25g/L)及びより緩やかな勾配(8対16mM/CV)が、主要なpIの低い生成物不純物を画分1~4によって形成された別個のピークへの分離を可能にしたことを示している。この画分は、3:10のLC1:LC2の比率を示し、これは誤対合LC1種を示している。対照的に、主ピークは、1.2の蓄積LC1:LC2の比率を示した。分解能は、より良好で収率を44%から73%へ上昇させたが、依然としてODに基づく自動プーリングを必要としたため、プレピークに対する最高ODを超えて出発し、収率を低下させ、このプロセスを製造操作において使用するために不十分にさせることによって、溶出液を収集することが依然として必要となるであろう。
【0118】
実施例5 高塩分負荷コンディショニング、二重特異性#2
二重特異性#2を含有する中和されたウイルス不活性化プールを高塩分負荷緩衝液(100mMの酢酸塩、500mMの塩化ナトリウム、pH5.00)と結び付けると、100mMの酢酸塩、105mMの塩化ナトリウム、pH5.00の最終コンディショニング負荷緩衝液が生じた。コンディショニング負荷は、表4に略述した条件下で、Capto-SP ImpRes(登録商標)カチオン交換クロマトグラフィー樹脂(GE Healthcare Bio-Science、Marlborough、MA)上に負荷した。
【0119】
【表5】
【0120】
高塩分負荷条件が使用された場合は、pIの低い不純物が溶出前のCEXカラムから除去されることが見出された。これらの不純物は、LC1及びLC2が正確に類似して対合する場合は、1の予測比と比較して、収集された第1の洗浄及び第2の洗浄に関するLC1対LC2比が5.0であることを前提に、誤対合したLC1種に対応する可能性が高い。図5は、高塩分負荷条件下では、依然として誤対合種(LC1/LC2=2~3)を含有する小さな肩(画分1~3)を伴って、2つのピークから単一ピークへの溶出プロファイルにおける不純物ピークの数における減少が生じたことを示す図である。第2の洗浄工程は、溶出の開始前にUVベースラインをゼロに再確立し、溶出プロファイルを固定し、結果として主生成物のはるかに効率的な収集及びより良好な品質を提供した。高塩分コンディショニング負荷と結び付けた低負荷レベル及び緩やかな勾配を備える最適化された手技は、低レベルの誤対合LC1種(1に近いLC1対LC2比によって証明される)、HMW及びLMW、並びに吸光度をベースとするプーリング基準を用いて、精製プールを収集するための溶出プロファイルを可能にしながら44%から58%への増加したCEX精製収率を可能にした。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】