(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】生成物関連不純物を除去するためのカチオン交換クロマトグラフィー中の高塩分洗浄
(51)【国際特許分類】
C07K 1/18 20060101AFI20221221BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20221221BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221221BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221221BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221221BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221221BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20221221BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C07K1/18
C12P21/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12M1/00 D
A61K39/395 D
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525320
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 US2020058774
(87)【国際公開番号】W WO2021091933
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンバイカル,マルハール・アール
(72)【発明者】
【氏名】ディアス,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス,ナタリア
(72)【発明者】
【氏名】ティロットソン,ベンジャミン・ジェイ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB02
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4H045AA10
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4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、カチオン交換精製操作中の等電点の低い生成物関連不純物を除去するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重特異性タンパク質を精製するための方法であって:
多重特異性タンパク質を含む試料をカチオン交換クロマトグラフィー媒体上に負荷する工程;
前記カチオン交換媒体を100~147mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程;及び
前記多重特異性タンパク質を前記カチオン交換クロマトグラフィー樹脂から溶出させる工程を含む方法。
【請求項2】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100~125mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100~105mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、105~147mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、105~125mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、125~147mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の酢酸塩を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.9~5.1の酢酸塩を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.9、5.0若しくは5.1の酢酸塩を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、100~125mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、100~105mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、105~147mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、105~125mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、125~147mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記カチオン交換媒体は、少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて洗浄される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記カチオン交換媒体は、少なくとも3種の洗浄緩衝液を用いて洗浄される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記カチオン交換媒体は、少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、前記洗浄緩衝液の少なくとも1種は0~147mMの塩化ナトリウムを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記カチオン交換媒体は、少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、前記洗浄緩衝液の少なくとも1種は0~70mMの塩化ナトリウムを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記カチオン交換媒体は、少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、前記洗浄緩衝液の少なくとも1種は、酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含み、次に酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む前記洗浄緩衝液が続く、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記カチオン交換媒体は、酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄され、次に洗浄緩衝液は、酢酸塩、100mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液、酢酸塩、105mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液、又は酢酸塩、125mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液から成る群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記カチオン交換媒体は、酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄され、次に酢酸塩、0~70mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液が続く、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記カチオン交換媒体は、酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄され、次に酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液が続く、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記カチオン交換媒体は、酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄され、次に70mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液が続く、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記カチオン交換媒体は、
酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含む第1の洗浄緩衝液、次に
酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む第2の洗浄緩衝液、次に
酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含む第3の洗浄緩衝液である少なくとも3種の洗浄緩衝液、又は酢酸塩、70mMの塩化ナトリウムを含む1つの洗浄緩衝液を用いて洗浄される、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記カチオン交換媒体は、
酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含む第1の洗浄緩衝液、次に
酢酸塩、100mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液、酢酸塩、105mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液、又は酢酸塩、125mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液から成る群から選択される第2の洗浄緩衝液、次に
酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含む第3の洗浄緩衝液を用いて洗浄される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記カチオン交換媒体は、
酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含む第1の洗浄緩衝液、次に
酢酸塩、147mMの塩化ナトリウムを含む第2の洗浄緩衝液、次に
酢酸塩、70mMの塩化ナトリウムを含む第3の洗浄緩衝液を用いて洗浄される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記カチオン交換媒体は、147mMの塩化ナトリウムを含む2.5mM/CVの洗浄緩衝液を用いて洗浄される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記多重特異性タンパク質は、前記カチオン交換媒体から勾配によって溶出される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記勾配は、線形又は段階的勾配である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記勾配は、塩勾配である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
溶出勾配を形成するために使用された前記緩衝液の少なくとも1種は、0~1Mの塩化ナトリウムを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記溶出勾配を形成するために使用された前記緩衝液の少なくとも1種は、70~500mMの塩化ナトリウムを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記溶出勾配を形成するために使用された前記緩衝液の少なくとも1種は、125mMの塩化ナトリウムを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1種の洗浄緩衝液及び1種の溶出緩衝液は、125mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記カチオン交換媒体に、少なくとも10g/Lの前記多重特異性タンパク質が負荷される、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記カチオン交換媒体には、10g/L~40g/Lの前記多重特異性タンパク質が負荷される、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記カチオン交換媒体には、15g/L~30g/Lの前記多重特異性タンパク質が負荷される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記カチオン交換媒体には、25g/L~40g/Lの前記多重特異性タンパク質が負荷される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記カチオン交換媒体は、10g/Lの前記多重特異性タンパク質が負荷され、105mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄され、8mM/CVでの塩勾配で溶出させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記カチオン交換媒体は、15g/L~30g/Lの前記多重特異性タンパク質が負荷され、147mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄される、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記カチオン交換媒体に、25g/L~40g/Lの前記多重特異性タンパク質が負荷されるが、ここで少なくとも1種の洗浄緩衝液及び1種の溶出緩衝液は、125mMの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1種の生成物関連不純物は、ホモ二量体、高分子量種、半抗体、凝集体、低分子量種、抗体断片又は軽鎖ミスアセンブリである、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
請求項1に記載の方法に従って実施されたカチオン交換クロマトグラフィーを含む装置操作を含む精製プロセス。
【請求項46】
さらに、前記カチオン交換クロマトグラフィー工程の前及び/又は後に、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム及び/又は混合モードクロマトグラフィーカラムを含む、前記多重特異性タンパク質を精製するための1つ以上の装置操作を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記多重特異性タンパク質は、二重特異性タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記多重特異性タンパク質は、二重特異性抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
請求項1に記載の方法に従って製造された、精製された多重特異性タンパク質。
【請求項50】
前記カチオン交換クロマトグラフィー媒体は、樹脂である、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
カチオン交換クロマトグラフィーからの前記溶出液中のpIの低い生成物関連不純物を減少させるための方法であって:
多重特異性タンパク質及び前記多重特異性タンパク質より低いpIを有する少なくとも1つの生成物関連不純物を含む組成物をカチオン交換クロマトグラフィー媒体上に負荷する工程;
前記カチオン交換媒体を第1の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程;
前記カチオン交換媒体を100~147mMの塩化ナトリウムを含む第2の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程;
前記多重特異性タンパク質を前記カチオン交換クロマトグラフィー樹脂から溶出させる工程を含み;
ここで前記カチオン交換クロマトグラフィー溶出液は、塩化ナトリウムが洗浄緩衝液調製物に含まれていない対応する方法において回収されたカチオン交換クロマトグラフィー溶出液と比較して低いpIの生成物関連不純物を減少させた方法。
【請求項52】
前記カチオン交換媒体は、第3の洗浄緩衝液を用いて洗浄される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
生成物関連不純物を減少させるために高塩分洗浄条件下でカチオン交換クロマトグラフィーを実施する方法であって:
多重特異性タンパク質及び少なくとも1種の生成物関連不純物を含む組成物を平衡化したカチオン交換カラム上に負荷する工程;
少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて前記カチオン交換媒体を洗浄する工程であって、ここで少なくとも1種の洗浄緩衝液は100~147mMの塩化ナトリウムを含む工程;及び
前記結合した多重特異性タンパク質を前記カチオン交換クロマトグラフィー樹脂から溶出させる工程を含む方法。
【請求項54】
前記組成物を負荷する前に、前記カチオン交換媒体は、塩化ナトリウムを含有しない緩衝液を用いて平衡化される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
単離され、精製された組み換え多重特異性タンパク質を製造するための方法であって:
前記多重特異性タンパク質を発現する宿主細胞を用いてバイオリアクター内で細胞培養を確立する工程;
前記多重特異性タンパク質を発現するように前記宿主細胞を培養する工程;
前記組み替え多重特異性タンパク質を前記細胞培養から収穫する工程;
前記組み換え多重特異性タンパク質を親和性精製する工程;
前記親和性精製組み換え多重特異性タンパク質をカチオン交換クロマトグラフィー樹脂上に負荷する工程;
前記カチオン交換樹脂を100~147mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程;
前記多重特異性タンパク質を前記カチオン交換クロマトグラフィー樹脂から溶出させる工程;及び
前記組み換え多重特異性タンパク質を含む前記カチオン交換クロマトグラフィー溶出液をフロースルーモードで追加のクロマトグラフィー媒体上に負荷する工程を含む方法。
【請求項56】
前記追加のクロマトグラフィー媒体は、カチオン交換クロマトグラフィー媒体、マルチモーダルクロマトグラフィー媒体、疎水性相互作用クロマトグラフィー媒体及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー媒体から選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記親和性精製された多重特異性タンパク質は、溶出液プール中にあり、低pHウイルス不活性化にかけられ、次に前記カチオン交換媒体上に負荷する工程の前に中和が続く、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記第3クロマトグラフィー媒体からの前記フロースルーは、限外濾過及び透析装置操作を受ける、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
請求項55に記載の方法による単離され、精製された多重特異性タンパク質。
【請求項60】
請求項55に記載の方法によって製造された、単離され精製された組み換え多重特異性タンパク質を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照により本明細書に組み込まれる2019年11月7日に出願された、米国仮特許出願第62/931,874号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、バイオ医薬品製造の分野に関する。詳細には、本発明は、カチオン交換クロマトグラフィー精製操作中の多重特異性タンパク質の生成物関連不純物を除去するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
抗体製品は、バイオ医薬品市場の最大セクターであり、今後10年以内には数千億ドルの売上高に容易に達するであろう。治療用抗体の商業的開発は、最初の治療用モノクローナル抗体の認可に伴って1980年代に始まり、その後ずっと進化且つ拡大し続けてきた。モノクローナル抗体は、高い親和性及び特異性で標的に結合し、一部の適応にとっては極めて好結果の得られる治療処置ではあったが、それらにはさらに限界もある。モノクローナル抗体は、単一の標的にしか結合できない;しかしながら、多数の疾患は、多因子性である。癌免疫療法では、単一の標的を目的とする治療は、癌細胞を破壊又は固定化するためには十分ではない可能性がある。さらに、モノクローナル抗体療法を受けている一部の患者は、治療に応答できない場合がある、又はやがて薬物耐性を発生する場合がある。
【0004】
これらの課題を解決するために、抗体Fab断片、Fc融合タンパク質、抗体-薬物コンジュゲート、グリコール改変抗体、並びに最も特別には二重特異性及び他の多重特異性抗体様構造等の新規な抗体様構造が開発されてきた。これらの抗体様構造、特に二重特異性抗体は、多重標的親和性等の、伝統的なモノクローナル抗体治療薬に比して改良を提供し、さらにいっそう困難な治療適応に対応するように開発することのできる極めて大量のフォーマットを備える効果的な次世代の生物学的治療薬であることが証明されつつある。
【0005】
二重特異性抗体は、一層広範囲の治療適応の課題に対応するために増え続ける様々なフレームワークを備える、これらの抗体様構造の最も多様な群である。これらの構造は、抗体の結合特性を標的の疾患適応のニーズに適合するようにフレームワーク内に改変された追加の分子特性と結び付ける。二重特異性抗体は、癌に対する免疫反応のために、例えば免疫エフェクター細胞を腫瘍細胞にリダイレクトすること、シグナル伝達経路を遮断すること、腫瘍血管新生を標的とすること、サイトカインを遮断すること、血液脳関門を横断すること、診断アッセイ、病原菌の治療及び送達剤として等の様々な適応及び使用のために開発されている。(Sedykh et al.,Drug Design,Development and Therapy 18(12),195-208,2018;Walsh,Nature Biotechnology,32(10),992-1000,2014;Ecker et al.,mAbs 7(1),9-14,2015;Spiess et al.,Mol Immunol 67,95-106,2015;Fan et al.,J Hematol&Oncology 8:130-143,2015;Williams et al.,Process Design for Bispecific Antibodies,Biopharmaceutical Processing,Development,Design and Implementation of Processes,Jagschies et al.,editors,Elsevier Ltd,pages 837-855,2018)。
【0006】
これらの多重特異性タンパク質の開発は、特に生成物の不安定性及び低い発現収率に関して、新規なバイオ医薬品製造の課題をもたらす。詳細には、多重特異性タンパク質の精製は、ホモ二量体、半抗体、凝集体、高分子量種及び低分子量種等の生成物関連変異体の形成によって複雑化される。これらの生成物関連変異体は、関心対象の多重特異性タンパク質と類似の構造的特性及び電荷等の物理的特性を共有しており、それらを精製中に分離することを困難にさせる。これらの生成物関連不純物は、多重得異性薬物製剤の収率及び活性を低下させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Sedykh et al.,Drug Design,Development and Therapy 18(12),195-208,2018;
【非特許文献2】Walsh,Nature Biotechnology,32(10),992-1000,2014;
【非特許文献3】Ecker et al.,mAbs 7(1),9-14,2015;
【非特許文献4】Spiess et al.,Mol Immunol 67,95-106,2015;
【非特許文献5】Fan et al.,J Hematol & Oncology 8:130-143,2015;
【非特許文献6】Williams et al.,Process Design for Bispecific Antibodies,Biopharmaceutical Processing,Development,Design and Implementation of Processes,Jagschies et al.,editors,Elsevier Ltd,pages 837-855,2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
関心対象の多重特異性タンパク質と類似の電荷(等電点、pI)を有する生成物関連不純物は、カチオン交換クロマトグラフィー装置操作中に多重特異性タンパク質と共溶出する可能性があり、精製を複雑にして、収率を低下させる。溶出の前に、pIの低い生成物関連不純物を分離できれば有益であろう。本明細書に記載した本発明は、カチオン交換クロマトグラフィー中にこれらのpIの低い不純物を除去するための高塩分洗浄コンディショニングを提供することによって、このニーズを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、多重特異性タンパク質を精製するための方法であって:多重特異性タンパク質を含む試料をカチオン交換クロマトグラフィー媒体上に負荷する工程;カチオン交換媒体を100~147mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程;及び多重特異性タンパク質をカチオン交換クロマトグラフィー樹脂から溶出させる工程を含む方法を提供する。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100~125mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、105~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、105~125mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、125~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩を含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の酢酸塩を含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.91~5.1の酢酸塩を含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.9、5.0若しくは5.1の酢酸塩を含む。別の関連実施形態では、洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、100~125mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、100~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、105~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、105~125mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、125~147mMの塩化ナトリウムを含む。
【0010】
一実施形態では、カチオン交換媒体は、少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて洗浄される。一実施形態では、カチオン交換媒体は、少なくとも3種の洗浄緩衝液を用いて洗浄される。
【0011】
一実施形態では、カチオン交換媒体は、少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、洗浄緩衝液の少なくとも1種は0~147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、カチオン交換媒体は、少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、洗浄緩衝液の少なくとも1種は0~70mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、カチオン交換媒体は、少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含み、次の洗浄緩衝液は、酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、カチオン交換媒体は、酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄され、次に洗浄緩衝液は、酢酸塩、100mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液、酢酸塩、105mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液、又は酢酸塩、125mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液から成る群から選択される。一実施形態では、カチオン交換媒体は、酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄され、次に酢酸塩、0~70mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄される。一関連実施形態では、カチオン交換媒体は、酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄され、次に、酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄される。別の関連実施形態では、カチオン交換媒体は、酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄され、次に70mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄される。
【0012】
一実施形態では、カチオン交換媒体は、少なくとも3種の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、第1の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含み、次に酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む第2の洗浄緩衝液が続き、次に酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含む第3の洗浄緩衝液、又は酢酸塩、70mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液が続く。一関連実施形態では、カチオン交換媒体は、酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含む第1の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、次に、酢酸塩、100mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液、酢酸塩、105mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液、次に酢酸塩を含む洗浄緩衝液、又は酢酸塩、125mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液から成る群から選択される第2の洗浄緩衝液、次に酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含む第3の洗浄緩衝液が続く。一関連実施形態では、カチオン交換媒体は、酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含む第1の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、次に酢酸塩、147mMの塩化ナトリウムを含む第2の洗浄緩衝液、次に酢酸塩を含む洗浄緩衝液、次に酢酸塩、70mMの塩化ナトリウムを含む第3の洗浄緩衝液が続く。
【0013】
一実施形態では、カチオン交換媒体は、147mMの塩化ナトリウムを含む2.5mM/CVの洗浄緩衝液を用いて洗浄される。
【0014】
一実施形態では、多重特異性タンパク質は、カチオン交換樹脂から勾配によって溶出される。一関連実施形態では、勾配は、線形又は段階的勾配である。一関連実施形態では、勾配は、塩勾配である。一関連実施形態では、溶出勾配を形成するために使用される緩衝液は、0~1Mの塩化ナトリウムを含む。別の関連実施形態では、溶出勾配を形成するために使用される少なくとも1種の緩衝液は、70~500mMの塩化ナトリウムを含む。別の関連実施形態では、溶出勾配を形成するために使用される少なくとも1種の緩衝液は、125mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液及び1種の溶出緩衝液は、125mMの塩化ナトリウムを含む。
【0015】
一実施形態では、カチオン交換媒体には、少なくとも10g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。一実施形態では、カチオン交換媒体には、10g/L~40g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。一関連実施形態では、カチオン交換媒体には、15g/L~30g/Lが負荷される。一関連実施形態では、カチオン交換媒体には、25g/L~40g/Lが負荷される。一実施形態では、カチオン交換媒体は、10g/Lの多重特異性タンパク質が負荷され、105mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄され、8mM/CVでの塩勾配で溶出させられる。一実施形態では、カチオン交換媒体は、15g/L~30g/Lの多重特異性タンパク質が負荷され、147mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄される。一実施形態では、カチオン交換媒体は、25g/L~40g/Lの多重特異性タンパク質が負荷されるが、ここで少なくとも1種の洗浄緩衝液及び1種の溶出緩衝液は、125mMの塩化ナトリウムを含む。
【0016】
一実施形態では、少なくとも1種の生成物関連不純物は、ホモ二量体、高分子量種、半抗体、凝集体、低分子量種、抗体断片又は軽鎖ミスアセンブリである。一実施形態では、カチオン交換クロマトグラフィーを含む装置操作を含む精製プロセスは、上述した方法に従って実施した。
【0017】
一実施形態では、上記の方法はさらに、カチオン交換クロマトグラフィー工程の前及び/又は後に、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム及び/又は混合モードクロマトグラフィーカラムを含む、多重特異性タンパク質を精製するための1つ以上の装置操作を含む。
【0018】
一実施形態では、多重特異性タンパク質は、二重特異性タンパク質である。一実施形態では、多重特異性タンパク質は、二重特異性抗体である。一実施形態では、精製された多重特異性タンパク質は、上述した方法に従って製造される。一実施形態では、カチオン交換クロマトグラフィー媒体は、樹脂である。
【0019】
本発明は、カチオン交換クロマトグラフィーからの溶出液中のpIの低い生成物関連不純物を減少させるための方法であって、多重特異性タンパク質及び多重特異性タンパク質より低いpIを有する少なくとも1種の生成物関連不純物を含む組成物をカチオン交換クロマトグラフィー媒体上に負荷する工程;カチオン交換媒体を第1の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程、カチオン交換媒体を100~147mMの塩化ナトリウムを含む第2の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程;カチオン交換クロマトグラフィー樹脂から多重特異性タンパク質を溶出させる工程を含み;ここでカチオン交換クロマトグラフィー溶出液は、洗浄緩衝液調製物中に塩化ナトリウムが含まれていない対応する方法において回収されたカチオン交換クロマトグラフィー溶出液に比較して減少したpIの低い生成物関連不純物を有する方法を提供する。一実施形態では、カチオン交換媒体は、3種の洗浄緩衝液を用いて洗浄される。
【0020】
本発明は、生成物関連不純物を減少させるために高塩分洗浄条件下でカチオン交換クロマトグラフィーを実施するための方法であって、多重特異性タンパク質及び少なくとも1種の生成物関連不純物を含む組成物を平衡化されたカチオン交換カラム上に負荷する工程;カチオン交換媒体を少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程であって、ここで1種の洗浄緩衝液は100~147mMの塩化ナトリウムを含む工程;及び結合した多重特異性タンパク質をカチオン交換クロマトグラフィー樹脂から溶出させる工程を含む方法を提供する。一実施形態では、組成物を負荷する前に、カチオン交換媒体は、塩化ナトリウムを含有しない緩衝液を用いて平衡化される。
【0021】
本発明は、単離、精製された組み換え多重特異性タンパク質を製造するための方法であって、多重特異性タンパク質を発現する宿主細胞を用いてバイオリアクター内の細胞培養を確立する工程;多重特異性タンパク質を発現するように宿主細胞を培養する工程;細胞培養から組み換え多重特異性タンパク質を収穫する工程;組み換え多重特異性タンパク質を親和性精製する工程;親和性精製された組み換え多重特異性タンパク質をカチオン交換クロマトグラフィー樹脂上に負荷する工程;カチオン交換樹脂を、100~147mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程;多重特異性タンパク質をカチオン交換クロマトグラフィー樹脂から溶出させる工程;及び組み換え多重特異性タンパク質を含むカチオン交換クロマトグラフィー溶出液をフロースルーモードで追加のクロマトグラフィー媒体上に負荷する工程を含む方法を提供する。一実施形態では、追加のクロマトグラフィー媒体は、カチオン交換クロマトグラフィー媒体、マルチモーダルクロマトグラフィー媒体、疎水性相互作用クロマトグラフィー媒体及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー媒体から選択される。一実施形態では、親和性精製された多重特異性タンパク質は、溶出液プール中にあり、低pHウイルス不活性化にかけられ、次にカチオン交換媒体上に負荷する工程の前に中和が続く。一実施形態では、第3クロマトグラフィー媒体からのフロースルーは、限外濾過及び透析装置操作を受ける。一実施形態では、単離、精製された組み換え多重特異性タンパク質は、上述した方法に従って生成される。一実施形態では、単離され、精製された組み換え多重特異性タンパク質を含む医薬組成物は、上記の方法を用いて生成された。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】主生成物である二重特異性#1とともに溶出される生成物関連不純物(ホモ二量体、NCG)を示す図である。
【
図2】主生成物よりもpIが低かった全生成物関連不純物は、高塩分洗浄条件後には、第2の洗浄工程と第3の洗浄工程との間でカラムから洗い流された。ベースラインは、溶出前にゼロに回復した。溶出ピークは、1つのピークに減少した。
【
図3】複数の不純物がカラム上に残留し、主生成物とともに溶出されたことを示す図である。これらの不純物は、半抗体(約50%の半抗体を有する画分1~4)、2Xの軽鎖ミスアセンブリ(画分5及び6)及び高分子量(画分12~21)を含んでいた。
【
図4】高塩分洗浄が溶出プロファイル内の、4つのピークから依然として2XのLC2誤対合種を含有している小さな肩を備える単一のピークへ減少した数のピーク(1の予測比と比較して<0.11のLC1/LC2)を生じさせたことを示す図である。
【
図5】急勾配の溶出で高い負荷密度から生じた1つの溶出ピークを示す図である。pIの低い生成物関連不純物は、高い負荷密度下では主生成物から消散せず、減少したCE-SDSによって証明されるように、大部分は画分1~3内にある。
【
図6】より緩やかな勾配を用いて負荷密度を減少させる工程は、pIの低い主生成物不純物の誤対合LC1種を含有する明確なピークへの分離を生じさせた。
【
図7】高塩分洗浄の結果を示す図である。溶出プロファイルにおいて不純物ピークの数が減少し、不純物の大部分は第2及び第3の洗浄工程中に除去された。第3の洗浄工程は、溶出の開始前にUVベースラインをゼロに再確立し、溶出プロファイルを固定し、結果として主生成物のはるかに効率的な収集及びより良好な品質を提供した。
【
図8】高塩分洗浄条件後には、pIの低い生成物関連不純物の全部(6.8のpI及びpIの低い任意の凝集種を備えるホモ二量体種)は、廃棄物にカラムを通って流れた、又はそれらの含量を試験するために「洗浄プール」内に別個に収集された。ベースラインは、溶出前にゼロに回復した。溶出ピークは、1つのピークに減少した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
多重特異性タンパク質の下流プロセシングに関する文献においては情報が少ないため、モノクローナル抗体のために開発されたプラットフォームが適用されることが多い(Shulka and Norman,Chapter 26 Downstream Processing of Fc Fusion Proteins,Bispecific Antibodies,and Antibody-Drug Conjugates,in Process Scale Purification of Antibodies Second Edition,Uwe Gottswchalk editor,p559-594,John Wiley&Sons,2017)。多重特異性タンパク質は、高度に改変されており、抗体にとって典型的な条件下でそのようなタンパク質を結合及び溶出モードでカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)にかける工程は、多重特異性タンパク質を安定化させるため、及び/又は主生成物とともに溶出される生成物関連不純物を管理するためには十分ではない可能性がある。これらの生成物関連不純物は、主生成物よりも低い及び高い両方の等電点を有している。主生成物より低いpIを備えるそれらの生成物関連不純物は、プレピークとして、主生成物とともに溶出することが見出された。そのような溶出プロファイルは、ロバストな、持続可能な商業的規模の製造方法の開発を支持しない。
【0024】
高塩分洗浄戦略の使用は、主生成物のより良好な収率及び純度を生じさせ、製造プロセスを改良することが見出された。高塩分洗浄の追加は、それらを溶出工程の前に除去することによって、溶出液プール内のより低いpI生成物関連不純物を減少させた。105~147mMの範囲内の塩化ナトリウムを用いる洗浄工程の追加は、主生成物よりも低いpIを備える生成物関連不純物が溶出工程の前に洗い流される、又はカチオン交換媒体から溶出されることを生じさせ、溶出プロファイル内のピーク数を減少させた。ODに基づく溶出液の自動プーリングは、プレピークが存在する場合は困難になる。高塩分洗浄工程をカチオン交換クロマトグラフィープロトコルに組み込むことは、溶出前のpIの低い生成物関連不純物と関連するプレピークを減少させ、より低い収率及よりロバストではない製造プロセスを生じさせる可能性が高いであろう、より保存的戦略を溶出中の主生成物の収集中に使用する必要を減少させることが見出された。
【0025】
本発明は、多重特異性タンパク質を精製するための方法であって:多重特異性タンパク質を含む試料をカチオン交換クロマトグラフィー媒体上に負荷する工程;カチオン交換媒体を100~147mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程;及び多重特異性タンパク質をカチオン交換クロマトグラフィー樹脂から溶出させる工程を含む方法を提供する。
【0026】
本発明は、カチオン交換クロマトグラフィーからの溶出液中のpIの低い生成物関連不純物を減少させるための方法であって、多重特異性タンパク質及び多重特異性タンパク質より低いpIを有する少なくとも1種の生成物関連不純物を含む組成物をカチオン交換クロマトグラフィー媒体上に負荷する工程;カチオン交換媒体を第1の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程;カチオン交換媒体を100~147mMの塩化ナトリウムを含む第2の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程;カチオン交換クロマトグラフィー樹脂から多重特異性タンパク質を溶出させる工程を含み;ここでカチオン交換クロマトグラフィー溶出液が、洗浄緩衝液調製物中に塩化ナトリウムが含まれていない対応する方法において回収されるカチオン交換クロマトグラフィー溶出液に比較して減少したpIの低い生成物関連不純物を有する方法を提供する。
【0027】
本発明は、生成物関連不純物を減少させるために高塩分洗浄条件下でカチオン交換クロマトグラフィーを実施するための方法であって、多重特異性タンパク質及び少なくとも1種の生成物関連不純物を含む組成物を平衡化されたカチオン交換カラム上に負荷する工程;カチオン交換媒体を少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程であって、ここで1種の洗浄緩衝液は100~147mMの塩化ナトリウムを含む工程;及び結合した多重特異性タンパク質をカチオン交換クロマトグラフィー樹脂から溶出させる工程を含む方法を提供する。
【0028】
本発明は、単離、精製された組み換え多重特異性タンパク質を製造するための方法であって、多重特異性タンパク質を発現する宿主細胞を用いてバイオリアクター内の細胞培養を確立する工程;多重特異性タンパク質を発現するように宿主細胞を培養する工程;細胞培養から組み換え多重特異性タンパク質を収穫する工程組み換え多重特異性タンパク質を親和性精製する工程;親和性精製された組み換え多重特異性タンパク質をカチオン交換クロマトグラフィー樹脂上に負荷する工程;カチオン交換樹脂を、100~147mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の洗浄緩衝液を用いて洗浄する工程;多重特異性タンパク質をカチオン交換クロマトグラフィー樹脂から溶出させる工程;及び組み換え多重特異性タンパク質を含むカチオン交換クロマトグラフィー溶出液をフロースルーモードで第3のクロマトグラフィー媒体上に負荷する工程を含む方法を提供する。
【0029】
本発明は、上述した方法に従って実施されるカチオン交換クロマトグラフィーを含む装置操作を含む精製プロセスを提供する。
【0030】
本発明は、本明細書に開示の方法に従って製造された、精製された多重特異性タンパク質を提供する。
【0031】
本発明は、本明細書に記載の方法の何れかに従って製造された、単離され、精製された組み換え多重特異性タンパク質を含む医薬組成物を提供する。
【0032】
一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、0~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、70~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100~125mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、105~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、105~125mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、125~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、0、70、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146若しくは147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、0mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、70mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、125mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、147mMの塩化ナトリウムを含む。
【0033】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH5.0±0.05~5.0±0.1の酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.9~5.1の酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.9、5.0若しくは5.1で酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.9~5.1の酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH4.9、5.0若しくは5.1で酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH5.0で酢酸塩を含む。洗浄緩衝液は、生成物関連不純物をロバストに除去するためには導電率の変動を伴って、0.05~0.1のpH単位高い及び低い可能性がある。
【0034】
一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、70~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、100~125mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、100~105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、105~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、105~125mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、125~147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、酢酸塩の濃度は、100mMである。
【0035】
一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、70mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、100mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、125mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、酢酸塩の濃度は、100mMである。
【0036】
一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の0~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の70~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の100~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の100~125mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の100~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の105~147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の105~125mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の125~147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、酢酸塩の濃度は、100mMである。
【0037】
一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の0mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の70mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の100mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の125mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、酢酸塩の濃度は、100mMである。
【0038】
一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の0~147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の70~147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の100~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の100~125mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の100~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の105~147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の105~125mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の125~147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、酢酸塩の濃度は、100mMである。
【0039】
一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の0mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の70mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の100mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、4.9~5.1の105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の125mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9~5.1の147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、酢酸塩の濃度は、100mMである。
【0040】
一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の0~147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の70~147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の100~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の100~125mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の100~105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の105~147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の105~125mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の125~147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、酢酸塩の濃度は、100mMである。
【0041】
一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の0mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の70mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の100mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の125mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、pH4.9、5.0若しくは5.1の147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、酢酸塩の濃度は、100mMである。
【0042】
一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.5%~pH5.0±0.1の100mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.5%~pH5.0±0.1の105mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.5%~pH5.0±0.1の125mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.5%~pH5.0±0.1の147mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.5%~pH5.0±0.1の70mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.5%~pH5.0±0.1の100mMの塩化ナトリウムを含む。
【0043】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の0mM~147mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の70mM~147mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の100mM~125mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の100mM~105mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の105mM~147mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の105mM~125mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の125mM~147mMの塩化ナトリウムを含む。洗浄緩衝液は、生成物関連不純物をロバストに除去するためには導電率の変動を伴って、0.05~0.1のpH単位高い及び低い可能性がある。
【0044】
一実施形態では、カチオン交換媒体は、少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて洗浄される。一実施形態では、洗浄緩衝液は、0~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、0、70、100、105、125若しくは147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、洗浄緩衝液は、酢酸塩を含む。一実施形態では、洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液のpHは、5.0±0.05%~pH5.0±0.1%である。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液のpHは、4.9~5.1である。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液のpHは、4.9、5.0若しくは5.1である。一実施形態では、カチオン交換媒体は、少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0~70mMの塩化ナトリウムを含み、及び少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、カチオン交換クロマトグラフィー媒体は、少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含み、次に酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液が続く。一実施形態では、カチオン交換クロマトグラフィー媒体は、少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含み、次に酢酸塩、0~70mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液が続く。一実施形態では、カチオン交換クロマトグラフィー媒体は、少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、第1の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含み、第2の洗浄緩衝液は、酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、第2の洗浄緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、100、105、125及び147mMの塩化ナトリウムから選択される。一実施形態では、カチオン交換クロマトグラフィー媒体は、少なくとも2種の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、第1の洗浄緩衝液は、酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含み、第2の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0~70mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、第1の洗浄緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、100、105及び147mMの塩化ナトリウムから選択される。一実施形態では、第1の洗浄緩衝液の濃度は、100mMの酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムであり、第2の洗浄緩衝液の濃度は、100mMの酢酸塩、125mMの塩化ナトリウムである。
【0045】
一実施形態では、カチオン交換媒体は、少なくとも3種の洗浄緩衝液を用いて洗浄される。一実施形態では、洗浄緩衝液は、0~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、0、70、100、105、125若しくは147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、洗浄緩衝液は、酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液のpHは、5.0±0.05%~pH5.0±0.1%である。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液のpHは、4.9~5.1である。一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液のpHは、4.9、5.0若しくは5.1である。
【0046】
一実施形態では、カチオン交換媒体は、少なくとも3種の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、少なくとも2種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0~70mMの塩化ナトリウムを含み、及び少なくとも1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、カチオン交換クロマトグラフィー媒体は、少なくとも3種の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含み、次に酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液が続き;次に酢酸塩、0~70mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液が続く。一実施形態では、第1の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0mMのNaClを含み;第2の洗浄緩衝液は、酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含み;及び第3の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0~70mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、第1の洗浄緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、0mMの塩化ナトリウムである。一実施形態では、第2の洗浄緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、100、105及び147mMの塩化ナトリウムから選択される。一実施形態では、第3の洗浄緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、0及び70mMの塩化ナトリウムから選択される。一実施形態では、第1の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムであり;第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、100mMの塩化ナトリウム及び100mMの酢酸塩、105mMの塩化ナトリウムから選択され;及び第3の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムである。一実施形態では、第1の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムであり;第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、147mMの塩化ナトリウムであり、及び第3の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、70mMの塩化ナトリウムである。
【0047】
一実施形態では、カチオン交換樹脂は、147mMの塩化ナトリウムを含む2.5mM/CVの洗浄緩衝液を用いて洗浄される。
【0048】
一実施形態では、多重特異性タンパク質は、カチオン交換樹脂から勾配によって溶出される。一関連実施形態では、勾配は、線形又は段階的勾配である。一関連実施形態では、勾配は、塩勾配である。一関連実施形態では、溶出勾配を形成するために使用される少なくとも1種の緩衝液は、0~1Mの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、溶出勾配を形成するために使用される少なくとも1種の緩衝液は、70~500mMの塩化ナトリウムを含む。
【0049】
一関連実施形態では、溶出勾配を形成するために使用される少なくとも1種の緩衝液は、125mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液及び1種の溶出緩衝液は、125mMの塩化ナトリウムを含む。
【0050】
一実施形態では、組成物を負荷する前に、カチオン交換媒体は、塩化ナトリウムを含有しない緩衝液を用いて平衡化される。
【0051】
一実施形態では、カチオン交換媒体は、10g/Lの多重特異性タンパク質が負荷され、105mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄され、8mM/CVでの塩勾配で溶出させられる。
【0052】
一実施形態では、少なくとも1種の生成物関連不純物は、ホモ二量体、高分子量種、半抗体、凝集体、低分子量種、抗体断片又は軽鎖ミスアセンブリである。
【0053】
一実施形態では、親和性精製多重特異性タンパク質は、溶出液プール中にあり、低pHウイルス不活性化にかけられ、次にカチオン交換媒体上に負荷する工程の前に中和が続く。
【0054】
一実施形態では、カチオン交換クロマトグラフィー媒体は、樹脂である。
【0055】
一実施形態では、第3のクロマトグラフィー媒体は、カチオン交換クロマトグラフィー媒体、マルチモーダルクロマトグラフィー媒体、疎水性相互作用クロマトグラフィー媒体及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー媒体から選択される。一実施形態では、第3クロマトグラフィー媒体からのフロースルーは、限外濾過及び透析装置操作を受ける。
【0056】
一実施形態では、カチオン交換クロマトグラフィー工程の前及び/又は後に、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム及び/又は混合モードクロマトグラフィーカラムを含む、多重特異性タンパク質を精製するための1つ以上の装置操作が提供される。
【0057】
一実施形態では、多重特異性タンパク質は、二重特異性タンパク質である。一実施形態では、多重特異性タンパク質は、二重特異性抗体である。
【0058】
「多重特異性」、「多重特異性タンパク質」及び「多重特異性抗体」は、同じ抗原上の少なくとも2つの異なる抗原又は少なくとも2つの異なるエピトープに同時に結合し、それらを中和するように組み換え改変されているタンパク質を指すために本明細書で使用される。例えば、多重特異性タンパク質は、標的化細胞傷害性薬剤と組み合わせて免疫エフェクターを腫瘍又は感染病原体に標的化するように改変され得る。これらの多重特異性タンパク質は、免疫エフェクター細胞を腫瘍細胞にリダイレクトすること、シグナル伝達経路を遮断して細胞シグナル伝達を改変すること、腫瘍血管新生を標的化すること、サイトカインを遮断することによって癌免疫療法において、並びに化学療法剤の送達、放射性標識(検出感度を向上させるための)及びナノ粒子(癌細胞等の特定の細胞/組織に誘導される)等の薬物のプレターゲティング送達媒体として等、様々な適用に有用であることが見出されている。
【0059】
多重特異性タンパク質の最も一般的且つ最も多様な群は、2つの抗原に結合するものであり、本明細書では、「二重特異性」、「二重特異性タンパク質」及び「二重特異性抗体」と称される。二重特異性タンパク質は、2つの広範なカテゴリー:免疫グロブリンG(IgG)様分子及び非IgG様分子に分類され得る。IgG様分子は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)及び抗体依存性細胞貪食(ADCP)等のFc媒介性エフェクター機能を保持し、Fc領域は、可溶性及び安定性を向上させ、一部の精製操作を促進する助けとなる。非IgG様分子は、より小さく、組織透過を増強する(Sedykh et al.,Drug Design,Development and Therapy 18(12),195-208,2018;Fan et al.,J Hematol&Oncology 8:130-143,2015;Spiess et al.,Mol Immunol 67,95-106,2015;Williams et al.,Chapter 41 Process Design for Bispecific Antibodies in Biopharmaceutical Processing Development,Design and Implementation of Manufacturing Processes,Jagschies et al.,eds.,2018,pages 837-855を参照のこと)。二重特異性タンパク質は、異なる抗原又は幾つかのエピトープへの結合特異性を有し、分子の結合特異性を増大させる追加の成分のためのフレームワークとして使用される場合がある。
【0060】
二重特異性抗体を含む二重特異性タンパク質に関する形式は、常に進化しており、クアドローマ、ノブ・イン・ホール、交差-Mab、二重可変ドメインIgG(DVD-IgG)、IgG-一本鎖Fv(scFv)、scFv-CH3 KIH、二重作用Fab(DAF)、半分子交換、κλ-ボディ、タンデム型scFv、scFv-Fc、ダイアボディ、一本鎖ダイアボディ(scダイアボディ)、scダイアボディ-CH3、トリプルボディ、ミニ抗体、ミニボディ、TriBiミニボディ、タンデム型ダイアボディ、scダイアボディ-HAS、タンデム型scFv-毒素、二重親和性再標的化分子(DART)、ナノボディ、ナノボディ-HSA、ドック・アンド・ロック(DNL)、鎖交換改変ドメインSEEDボディ、Triomab、ロイシンジッパー(LUZ-Y)、XmAb(登録商標);Fab-アーム交換、DutaMab、DT-IgG、荷電対、Fcab、直交性Fab、IgG(H)-scFv、scFV-(H)IgG、IgG(L)-scFV、IgG(L1H1)-Fv、IgG(H)-V、V(H)-IgG、IgG(L)-V V(L)-IgG、KIH IgG-scFab、2scFV-IgG、IgG-2scFv、scFv4-Ig、Zybody、DVI-Ig4(4つの機能)、Fab-scFv、scFv-CH-CL-scFV、F(ab’)2-scFv2、scFv-KIH、Fab-scFv-Fc、四価HCAb、scダイアボディ-Fc、ダイアボディ-Fc、イントラボディ、ImmTAC、HSABody、IgG-IgG、Cov-X-Body、scFv1-PEG-scFv2、二重特異性T細胞エンゲージャー(BITE(登録商標))及び半減期が延長された二重特異性T細胞エンゲージャー(HLE BiTE(登録商標))(Fan 上記;Spiess 上記;Sedykh 上記;Seimetz et al.,Cancer Treat Rev 36(6)458-67,2010;Shulka and Norman,Chapter 26 Downstream Processing of Fc Fusion Proteins,Bispecific Antibodies,and Antibody-Drug Conjugates,in Process Scale Purification of Antibodies Second Edition,Uwe Gottswchalk editor,p559-594,John Wiley & Sons,2017;Moore et al.,MAbs 3:6,546-557,2011)を含むが、これらに限定されない。
【0061】
幾つかの実施形態では、二重特異性タンパク質は、ブリナツモマブ、カツマキソマブ、エルツマキソマブ、ソリトマブ、targomiR、ルチキズマブ(ABT981)、バヌシズマブ(RG7221)、メムトルマブ(ABT122)、オゾラリズマブ(ATN103)、フロテツズマブ(MGD006)、パソツキシズマブ(AMG112、MT112)、lymphomun(FBTA05)、(ATN-103)、AMG211(MT111、Medi-1565)、AMG330、AMG420(B1836909)、AMG-110(MT110)、MDX-447、TF2、rM28、HER2Bi-aATC、GD2Bi-aATC、MGD006、MGD007、MGD009、MGD010、MGD011(JNJ64052781)、IMCgp100、インジウム標識IMP-205、xm734、LY3164530、OMP-305BB3、REGN1979、COV322、ABT112、ABT165、RG-6013(ACE910)、RG7597(MEDH7945A)、RG7802、RG7813(RO6895882)、RG7386、BITS7201A(RG7990)、RG7716、BFKF8488A(RG7992)、MCLA-128、MM-111、MM141、MOR209/ES414、MSB0010841、ALX-0061、ALX0761、ALX0141;BII034020、AFM13、AFM11、SAR156597、FBTA05、PF06671008、GSK2434735、MEDI3902、MEDI0700、MEDI7352並びにそれらの分子又は変異体若しくはアナログ及び上記の何れかのバイオシミラーを含み得る。
【0062】
多重特異性タンパク質はまた、複数の標的に結合できる三重特異性抗体、四価二重特異性抗体、例えばダイアボディ、トリアボディ若しくはテトラボディ、ミニボディ等の抗体成分を伴わない多重特異性タンパク質及び一本鎖タンパク質を含む。(Coloma,M.J.,et. al.,Nature Biotech.15(1997)159-163)。
【0063】
幾つかの実施形態では、関心対象のタンパク質は、1つ以上のCDタンパク質、HER受容体ファミリータンパク質、細胞接着分子、成長因子、神経成長因子、線維芽細胞増殖因子、トランスフォーム成長因子(TGF)、インスリン様成長因子、骨誘導性因子、インスリン及びインスリン関連タンパク質、凝固及び凝固関連タンパク質、コロニー刺激因子(CSF)、他の血液及び血清タンパク質血液型抗原;受容体、受容体関連タンパク質、成長ホルモン、成長ホルモン受容体、T細胞受容体;神経栄養因子、ニューロトロフィン、リラキシン、インターフェロン、インターロイキン、ウイルス抗原、リポタンパク質、インテグリン、リウマチ因子、免疫毒素、表面膜タンパク質、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、調節タンパク質及びイムノアドヘシンに特異的に結合する、中和する及び/又は相互作用する。
【0064】
幾つかの実施形態では、関心対象の多重特異性タンパク質は、単独で又は任意の組み合わせで、以下の:CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD19、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD34、CD38、CD40、CD70、CD123、CD133、CD138、CD171及びCD174を含むがこれらに限定されないCDタンパク質、例えばHER2、HER3、HER4を含むHER受容体ファミリータンパク質、EGF受容体であるEGFRvIII、細胞接着分子、例えばLFA-1、Mol、p150,95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、αv/β3インテグリン、例えば、血管内皮成長因子(「VEGF」)を含むがこれらに限定されない成長因子;VEGFR2、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、ミュラー抑制物質、ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α)、エリスロポエチン(EPO)、NGF-β等の神経成長因子、血小板由来成長因子(PDGF)、例えばaFGF及びbFGFを含む線維芽細胞成長因子、上皮成長因子(EGF)、クリプト、数ある中でも、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含むTGF-α及びTGF-βを含むトランスフォーム成長因子(TGF)、インスリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II)、des(1-3)-IGF-I(脳内IGF-I)及び骨形成促進因子、インスリン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン及びインスリン様成長因子結合タンパク質を含むがこれらに限定されないインスリン及びインスリン関連タンパク質、数ある中でも、第VIII因子、組織因子、フォンウィルブランド因子等の凝固及び凝固関連タンパク質、プロテインC、α-1-アンチトリプシン、ウロキナーゼ及び組織プラスミノーゲンアクチベーター(「t-PA」)等のプラスミノーゲンアクチベーター、ボンバジン、トロンビン、トロンボポエチン及びトロンボポエチン受容体、数ある中でも、M-CSF、GM-CSF及びG-CSFを含むコロニー刺激因子(CSF)、アルブミン、IgE、及び血液型抗原を含むがこれらに限定されない他の血液及び血清タンパク質、例えば、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、成長ホルモン受容体及びT細胞受容体を含む受容体及び受容体関連タンパク質、骨由来神経栄養因子(BDNF)及びニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5又はNT-6)を含むがこれらに限定されない神経栄養因子;リラキシンA鎖、リラキシンB鎖及びプロレラキシン、例えば、インターフェロン-α、-β及び-γを含むインターフェロン、インターロイキン(IL)、例えば、IL-1~IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-23、IL-12/IL-23、IL-2Ra、IL1-R1、IL-6受容体、IL-4受容体及び/又はIL-13から受容体であるIL-13RA2、又はIL-17受容体であるIL-1RAP;AIDSエンベロープウイルス抗原、リポタンパク質、カルシトニン、グルカゴン、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、腫瘍壊死因子-α及び-βを含むがこれらに限定されないウイルス抗原、エンケファリナーゼ、BCMA、STEAP1、IgKappa、ROR-1、ERBB2、メソセリン、RANTES(regulated on activation normal T-cell expressed and secreted)、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、Dnase、FR-α、インヒビン及びアクチビン、インテグリン、プロテインA又はD、リウマチ因子、免疫毒素、骨形成タンパク質(BMP)、スーパーオキシドディスムターゼ、表面膜タンパク質、崩壊促進因子(DAF)、AIDSエンベロープ、輸送タンパク質、ホーミング受容体、MIC(MIC-a、MIC-B)、ULBP 1-6、EPCAM、アドレシン、制御タンパク質、イムノアドヘシン、抗原結合タンパク質、ソマトロピン、CTGF、CTLA4、エオタキシン-1、MUC1、CEA、c-MET、クローディン-18、GPC-3、EPHA2、FPA、LMP1、MG7、NY-ESO-1、PSCA、ガングリオシドGD2、グラングリオシドGM2、BAFF、OPGL(RANKL)、ミオスタチン、Dickkopf-1(DKK-1)、Ang2、NGF、IGF-1受容体、肝細胞増殖因子(HGF)、TRAIL-R2、c-Kit、B7RP-1、PSMA、NKG2D-1、プログラムされた細胞死タンパク質1及びリガンド、PD1及びPDL1、マンノース受容体/hCGβ、TNF、TL1A、C型肝炎ウイルス、メソセリンdsFv[PE38コンジュゲート、レジオネラニューモフィラ(lly)、IFNγ、インターフェロンγ誘導タンパク質10(IP10)、IFNAR、TALL-1、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、幹細胞因子、Flt-3、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、OX40L、α4β7、血小板特異的(血小板糖タンパクIib/IIIb(PAC-1)、トランスフォーミング成長因子β(TFGβ)、透明帯精子結合タンパク質3(ZP-3)、TWEAK、血小板由来成長因子受容体α(PDGFRα)、スクレロスチン及び前記の何れかの生物活性断片又は変異体のうちの1つ以上に結合する、中和する、及び/又は相互作用する。
【0065】
幾つかの実施形態では、関心対象の多重特異性タンパク質は、CD3及びCD19、EpCAM、CEA、PSA、CD33、BCMA、Her2、CD20、P-カドヘリン、CD123、gpA33又はB7H3を含む組み合わせに特異的に結合する二重特異性抗体を含み得る。幾つかの実施形態では、関心対象の二重特異性抗体は、IL1α+IL1βを含む組み合わせに特異的に結合する二重特異性抗体を含み得る。
【0066】
多重特異性タンパク質は、科学的又は商業的に関心対象のタンパク質、特に二重特異性ベースの治療薬であり得る。多重特異性タンパク質は、様々な方法、最も一般的には細胞培養法を用いて組み換え動物細胞株によって生成することができる。多重特異性タンパク質は、細胞内で生成され得る、又はそれから回収及び/又は収集され得る培養培地内に分泌され得る、及び互換的に「組み換え多重特異性タンパク質」、「組み換え多重特異性抗体」、「組み換え二重特異性タンパク質」及び「組み換え二重特異性抗体」と呼ぶことができる。用語「単離された多重特異性タンパク質」、「単離された組み換え多重得異性抗体」、「単離された二重特異性タンパク質」及び「単離された二重特異性抗体」は、例えば、その治療的、診断的、予防的、研究又は他の使用を妨害するであろう生成物関連不純物、特にpIの低い生成物関連不純物等のタンパク質、ポリペプチド、DNA及び/又は他の汚染物質若しくは不純物から精製されていた二重特異性タンパク質を含む多重特異性タンパク質を指す。関心対象の多重特異性タンパク質は、特に以下に列挙し、それらに由来する標的、それらに関連する標的及びそれらの改変を含む2つ以上の標的に結合することによって、治療効果を発揮する多重特異性抗体を含む。
【0067】
「精製する工程」は、生成物から少なくとも1種の不純物を(部分的又は完全に)除去することによって組成物中の多重特異性タンパク質の純度を増加させることを意味する。多重特異性タンパク質の回収及び精製は、収率及び生成物の品質標的(例えば減少した生成物関連不純物及び増加した生成物の品質等)を満たすより「均質な」多重特異性タンパク質組成物を生じさせる下流装置操作、特にイオン交換クロマトグラフィーを包含するそれらの操作によって実施される。
【0068】
「生成物関連不純物」は、関心対象の多重特異性タンパク質の生成物関連変異体を指す。一部の例では、これらの不純物は、溶出ピーク内の主生成物より低いpIを有する。生成物関連不純物としては、例えば、ホモ二量体、高分子量(HMW)種、半抗体、凝集体、低分子量(LMW)種、抗体断片及び抗体断片の様々な組み合わせ、並びに例えば2XLC、3XLC若しくは4XLC等の軽鎖ミスアセンブリ等が挙げられる。「半抗体」は、例えば、不完全なアセンブリ又は2つの重鎖ポリペプチド間の相互作用の崩壊に起因して形成し得る生成物関連不純物を指す。半抗体は、一般に、一本の軽鎖ポリペプチド及び一本の重鎖ポリペプチドを含む。「ホモ二量体」は、例えば、同一標的に対して特異性を有する場合に、所望の二重特異性ヘテロ二量体を形成するために対合する代わりに相互に再結合する場合に形成し得る生成物関連不純物を指す。これは、典型的には宿主細胞中での発現中に発生する。改変残基(荷電対合突然変異、ノブ・ホール等)を介して正しく対合するためには複数の鎖(軽鎖、LC等)を必要とする多重特異性構築物については、依然としてLCとHCとの間にミスマッチが存在する不純物を有する可能性があるが、ここでLC1はHC1と対合する代わりに、HC2(2×LC1)と不正確に対合し、及びその逆(2×LC2)もあり得る。多重特異性タンパク質が、関心対象の各抗原に結合するための2つの部位を有する二価である場合、3XLC1、4XLC1及び誤対合種の他の組み合わせを有することが考えられる。
【0069】
本明細書に開示したように、生成物関連不純物のpIは、所望の多重特異性タンパク質のpIより低く、主生成物とともに溶出する可能性がある。pIの低い生成物関連不純物は、主生成物に先行して、プレピークとして溶出する。タンパク質の「等電点」若しくは「pI」は、陽電荷がタンパク質の陰電荷と平衡する時点のpHを指す。pIは、タンパク質のアミノ酸残基の正味電荷から、又は等電点電気泳動によって等の公知の方法を用いて計算/決定することができる。一実施形態では、生成物関連不純物と主生成物のpI間の差は、少なくとも0.5pI単位である。別の実施形態では、差は、0.5~3pI単位である。別の実施形態では、差は、0.5~2pI単位である。別の実施形態では、差は、0.5~1pI単位である。別の実施形態では、差は、1~3pI単位である。別の実施形態では、差は、2~3pI単位である。別の実施形態では、差は、0.5、1、2、3pI単位以上である。
【0070】
本明細書では、関心対象の多重特異性タンパク質をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含むプラスミド、発現ベクター、転写カセット又は発現カセットの形態にある発現系及び構築物並びにそのような発現系又は構築物を含む宿主細胞が提供される。本明細書で使用する「ベクター」は、情報をコードする多重特異性タンパク質を宿主細胞及び/又は特定の位置及び/又は宿主細胞内の区画に移行させ且つ/又は輸送する使用に好適な任意の分子又は実体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ウイルスカプシド、ビリオン、裸DNA、複合体を形成したDNA等)を意味する。ベクターには、ウイルス及び非ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクターが含まれ得る。ベクターは、発現ベクター、例えば、組み換え発現ベクター及びクローニングベクターと呼ばれる場合が多い。ベクターを宿主細胞に導入して、ベクター自体の複製を可能にし、それによって、それに含有されるポリヌクレオチドのコピーを増幅させてもよい。クローニングベクターは、複製開始点、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列及び選択可能なマーカーが一般的に挙げられるが、これらに限定されない配列成分を含有し得る。これらの要素は、当業者により必要に応じて選択され得る。
【0071】
「細胞」としては、任意の原核細胞又は真核細胞が挙げられる。細胞は、エクスビボで、インビトロで若しくはインビボの何れかで、別々に又は組織若しくは器官等のより高次の構造の一部として存在し得る。細胞は、商業的又は化学的関心対象の多重特異性タンパク質を発現するように改変されている「細胞株」とも称される「宿主細胞」を含む。宿主細胞は典型的には、時間が制限されずに培養で維持され得る初代培養から生じる系統に由来する。宿主細胞の遺伝子操作は、宿主細胞に所望の組み換え多重特異性タンパク質を発現させるように、細胞を組み換えポリヌクレオチド分子でトランスフェクト、形質転換若しくは形質導入すること、及び/又は別の方法で(例えば、相同組み換え及び遺伝子活性化、又は組み換え細胞と非組み換え細胞との融合によって)改変することを含む。関心対象の多重特異性タンパク質を発現するように細胞及び/又は細胞株を遺伝子操作するための方法及びベクターは、当技術分野の当業者には周知である。
【0072】
宿主細胞は、任意の原核細胞(例えば、大腸菌(E.coli))又は真核細胞(例えば、酵母細胞、昆虫細胞若しくは動物細胞(例えば、CHO細胞))であり得る。ベクターDNAは、従来の形質転換手法又は遺伝子導入手法によって原核細胞又は真核細胞に導入することができる。
【0073】
宿主細胞は、適切な条件下で培養されると、関心対象のタンパク質を発現し、これはその後、培養培地(宿主細胞がそれを培地中に分泌する場合)から、又はそれを産生する宿主細胞(それが分泌されない場合)から直接的に回収され得る。適切な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、活性に望ましいか又は必須であるタンパク質修飾(グリコシル化又はリン酸化等)及び生物活性分子へのフォールディングの容易さ等の種々の要因によって決まることとなる。
【0074】
「培養」又は「培養すること」は、多細胞生物又は組織の外部での細胞の増殖及び増殖を意味する。哺乳動物細胞に好適な培養条件は、当該技術分野において知られている。細胞培養培地及び組織培養培地は、インビトロ細胞培養中の宿主細胞の増殖に好適な培地を指すために互換的に使用される。通常、細胞培養培地は、緩衝液、塩、エネルギー源、アミノ酸、ビタミン及び微量の必須元素を含有する。培養における適切な宿主細胞の増殖を助ける能力のある任意の培地が使用され得る。特定の培養宿主細胞における細胞増殖、細胞生存率及び/又は組み換えタンパク質産生を最大化する他の成分がさらに補充され得る細胞培養培地は、市販されており、とりわけ、RPMI-1640培地、RPMI-1641培地、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、最小必須培地イーグル、F-12K培地、ハムF12培地、イスコフ改変ダルベッコ培地、マッコイ5A培地、リーボビッツL-15培地及びEX-CELL(商標)300シリーズ等の無血清培地を含み、これらは、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション又はSAFC Biosciences及び他のベンダーから得ることができる。細胞培養培地は、無血清、無タンパク質、無増殖因子及び/又は無ペプトン培地であり得る。細胞培養物はまた、栄養分の添加によって富栄養化されてもよく、且つその通常の推奨濃度より高い濃度で使用されてもよい。
【0075】
様々な培地配合物が、例えば、1つの段階(例えば、増殖段階又は期)から別の段階(例えば、産生段階又は期)への転移を促進させ、且つ/又は細胞培養(例えば、灌流培養中に提供される濃縮培地)中の条件を最適化するために、培養期間の間に使用されてもよい。増殖培地配合物は、細胞増殖を促進し、且つタンパク質発現を最小化するために使用され得る。産生培地配合物を使用すると、関心対象のタンパク質の産生及び細胞の維持を促進し、新しい細胞の増殖を最小限に抑えることができる。細胞培養の産生期の期間の間に消費される供給培地、通常、栄養分及びアミノ酸等のより濃縮された成分を含有する培地は、活性の培養、特に、フェドバッチ、半灌流又は灌流様式で操作された培養を補い且つ維持するために使用され得る。そのような濃縮された供給培地は、細胞培養培地の成分の大部分を、例えば、それらの通常の量の約5×、6×、7×、8×、9×、10×、12×、14×、16×、20×、30×、50×、100×、200×、400×、600×、800×或いは約1000×で含有し得る。
【0076】
増殖期は、産生期より高温で起こり得る。例えば、増殖期は、約35℃~約38℃の第1の温度で起こってもよく、且つ産生期は、約29℃~約37℃、任意選択により、約30℃~約36℃又は約30℃~約34℃の第2の温度で起こってもよい。加えて、例えば、カフェイン、酪酸塩及びヘキサメチレンビスアセトアミド(HMBA)等のタンパク質産生の化学誘導剤が、温度転換と同時に、その前に、及び/又はその後に加えられ得る。誘導剤が温度転換の後に加えられる場合、それらは、温度転換の1時間~5日後、任意選択により、温度転換の1~2日後に添加することができる。
【0077】
宿主細胞は、懸濁液中で又は固形の培養基に結合された付着形態で培養され得る。細胞培養は、マイクロキャリアを伴うか又は伴わない流動床バイオリアクター、中空繊維バイオリアクター、ローラーボトル、振盪フラスコ、又は撹拌タンクバイオリアクター中で確立され得る。
【0078】
細胞培養は、バッチ、フェドバッチ、連続、半連続又は灌流様式で操作されてもよい。CHO細胞等の哺乳動物細胞は、100ml未満~1000ml未満の小規模にてバイオリアクター中で培養されてもよい。或いは、1000ml~20,000リットルを超える培地を含有する大規模バイオリアクターが使用されてもよい。臨床及び/又は商業規模のタンパク質治療薬のバイオ製造のためのもの等の大規模細胞培養は、細胞が所望のタンパク質を産生する間、数週間及び数カ月間維持され得る。
【0079】
ホモ二量体、半抗体等の生成物関連不純物は、所望の多重特異性タンパク質に類似し得るので、例えばノブ及びホール、CrossMab、DVD IgG及びその他等の戦略及び技術が、細胞培養中の所望の多重特異性タンパク質に対する選択性を増加させるために開発されてきた。しかしながら、依然として、下流工程中に除去されなければならない、生成された一部分の生成物関連不純物が存在するであろう。
【0080】
結果として生じる発現した組み換え多重特異性タンパク質は、次に細胞培養培地から収穫され得る。懸濁細胞からタンパク質を収集するための方法は、当該技術分野で知られており、且つ酸沈殿、綿状沈殿等の加速された沈降、重力を使用する分離、遠心分離、音波分離、膜濾過を含み、限外濾過膜、マイクロフィルター、タンジェンシャルフローフィルター、代替のタンジェンシャルフロー、デプス及び堆積濾過フィルターを使用する濾過が挙げられるが、これらに限定されない。原核生物によって発現される組み換えタンパク質は、当該技術分野で知られる酸化還元フォールディングプロセスによって細胞質において封入体に回収される。
【0081】
次に、獲得された多重特異性タンパク質は、1つ以上の下流装置操作を使用して、残留している細胞培養培地、細胞抽出物、望まれない成分、宿主細胞タンパク質、不適切に発現したタンパク質、生成物関連不純物等の任意の不純物から精製され得るか、又は部分的に精製され得る。
【0082】
収穫した細胞培養液からの多重特異性タンパク質の精製は、捕捉クロマトグラフィーを用いて開始することができる。例えば親和性クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)等の捕捉クロマトグラフィーは、関心対象の組み換え多重特異性タンパク質に結合するであろう樹脂、膜、ゲル等の媒体を利用する。そのような材料は、当該技術分野において知られており、且つ市販されている。親和性クロマトグラフィーの選択肢は、例えば、基質-結合補足機構、アプタマー結合補足機構及び補因子結合捕捉機構を含み得る。Fc成分を含有する多重特異性及びタンパク質については、プロテインA、プロテインG及びプロテインA/G及びプロテインL等の抗体結合又は抗体断片結合捕捉機構を使用することができる。関心対象の組み換えタンパク質は、ポリヒスチジンタグ又はFLAG(登録商標)等のエピトープを使用して標識することができ、続いてそのようなエピトープに向けられた特異的抗体を使用することによって精製され得る。
【0083】
下流プロセスにおける任意の時点には、ウイルス不活性化及び/又はウイルス濾過は、関心対象の多重特異性タンパク質を含む組成物からウイルス物質を除去するために実施することができる。ウイルス不活性化を達成するための1つの方法は、低pHでのインキュベーション又はウイルスの不活性化を達成するための他の溶液条件である。低pHのウイルス不活性化の後には、ウイルスが不活性化された溶液を次の装置操作の要件とより適合するpHに再調整する中和操作が続き得る。典型的には、中和は、pH5~7で生じる。ウイルス不活性化若しくは中和されたウイルス不活性化プールは、さらにその後に、デプス濾過等の濾過にかけられて、結果として生じる濁り又は沈殿が除去され得る。ウイルス濾過は、旭化成(Plavona(登録商標))及びEDMミリポア(VPro(登録商標))から入手可能なもの等のマイクロ濾過膜又はナノ濾過膜を使用して実施することができる。
【0084】
用語「ポリッシング」は、本明細書では、最終的に所望の純度に近い組み換え多重特異性タンパク質を含む液体組成物から、DNA、宿主細胞タンパク質、生成物特異的不純物、変異体組成物及び凝集体等の残留している汚染物質及び不純物並びにウイルス吸着を除去するために実施される1つ以上のクロマトグラフィー工程を指すために使用される。例えば、ポリッシングは、結合及び溶出液モードで、組み換え多重特異性タンパク質を含む液体を、標的組み換え多重特異性タンパク質又は液体組成物中に存在する汚染物質若しくは不純物の何れかに選択的に結合するクロマトグラフィーカラム又は膜吸収体を通過させることによって実施され得る。このような例では、クロマトグラフィーカラム又は膜吸収体の溶出液/濾液には、組み換え多重特異性タンパク質が含まれる。
【0085】
ポリッシュクロマトグラフィーは、フロースルーモード(この場合、多重特異性タンパク質は樹脂/膜を通過してフロースルー溶出液中に含有されるが、汚染物質及び不純物はクロマトグラフィー媒体に結合する)、フロンタル若しくはオーバーロードクロマトグラフィーモード(この場合は、関心対象のタンパク質を含有する溶液は吸着部位が専有されるまでカラム上に負荷され、固定相(関心対象のタンパク質)に対する最小の親和性を備える種が溶出し始める)、又は結合及び溶出モード(この場合は、関心対象のタンパク質がクロマトグラフィー媒体に結合され、汚染物質及び不純物がクロマトグラフィー媒体を通過した後、又はクロマトグラフィー媒体から洗い流された後に溶出する)で使用できる物質を含有する樹脂及び/又は膜等の媒体を利用する。このようなクロマトグラフィー法の例としては、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)及び/又はカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)等のイオン交換クロマトグラフィー(IEX);疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC);混合様式又は多様式クロマトグラフィー(MM)、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー(HA);逆相クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及びゲル濾過が挙げられる。一実施形態では、クロマトグラフィー法は、カチオン交換クロマトグラフィーである。一実施形態では、カチオン交換媒体は、樹脂である。
【0086】
「カチオン交換クロマトグラフィー」は、陰荷電しており、固相の上又は中を通過した水溶液中でのカチオンとの交換のための遊離カチオンを有する固相媒体上で実施されるクロマトグラフィーを指す。電荷は、1つ以上の荷電リガンドを固相に付着させることによって、例えば共有結合によって提供され得る。或いは、又は加えて、電荷は、(例えば、全陰電荷を有するシリカについての場合と同様に)固相の固有の特性であり得る。商業的に利用できるカチオン交換媒体を利用することができ、寒天上に固定化されたスルホプロピル(SP)(例えば、GE Healthcare製のSP-SEPHAROSE FAST FLOW(商標)、SP-SEPHAROSE FAST FLOW XL(商標)若しくはSP-SEPHAROSE HIGH PERFORMANCE(商標))、CAPTO S(商標)、CAPTO SP ImpRes(商標)、CAPTO S ImpAct(商標)(GE Healthcare)、FRACTOGEL-SO3(商標)、FRACTOGEL-SE HICAP(商標)、FRACTOPREP(商標)(EMD Merck)、Fractogel(登録商標)EMD SO3-(M)、Fractogel(登録商標)EMD SE Hicap(M)、Eshmuno(登録商標)CPX、Eshmuno(登録商標)S樹脂、Fractogel(登録商標)EMD COO-(M)、Mustang S Acrodisc with Mustang S AcroPrep with Mustang S、CM Ceramic HyperD(登録商標)F AcroSep with CM Ceramic HyperD(登録商標)Fが挙げられるが、それらに限定されない。
【0087】
本発明の方法のためには、カチオン交換クロマトグラフィーは、結合及び溶出モードで実施される。以前の下流工程からの溶出液及び貯蔵プール中の多重特異性タンパク質は、関心対象の多重特異性タンパク質がカチオン交換媒体に結合するようにカチオン交換媒体上に負荷される。多重特異性タンパク質をカチオン交換媒体に「結合させること」は、多重特異性タンパク質が関心対象の多重特異性タンパク質とカチオン交換媒体の1つ若しくは複数の荷電基との間のイオン性相互作用によってカチオン交換媒体中又は上に可逆性で固定化される適切な条件(pH/導電率)下で、多重特異性タンパク質をカチオン交換媒体に暴露させることを意味する。溶出液若しくはプールは、例えば親和性クロマトグラフィー、中和された低pHウイルス不活性化、デプス濾過若しくは収穫及び/又はポリッシュクロマトグラフィー操作等の以前の装置操作から生じる可能性がある。追加の緩衝液は、多重特異性タンパク質の最終負荷が所望の濃度にあるように溶出液若しくはプールに追加され得る。
【0088】
負荷されたカチオン交換クロマトグラフィー媒体は、次に少なくとも1回の洗浄工程にかけられる。カチオン交換媒体を洗浄することは、適切な洗浄緩衝液をカチオン交換媒体に通して、又はその上を通過させることを意味する。洗浄緩衝液の機能は、関心対象の多重特異性タンパク質の実質的な溶出を伴わずに1種以上の汚染物質をカチオン交換媒体から除去することである。「緩衝液」は、その酸塩基コンジュゲート成分の作用によってpHにおける変化に抵抗する溶液を意味する。一実施形態では、緩衝液は、酢酸塩である。一実施形態では、100mMの酢酸塩が提供される。一実施形態では、洗浄緩衝液のpHは、5.0±0.05%~5.0±0.1%の範囲内にある。一実施形態では、緩衝液のpHは、4.9~5.1の範囲内にある。一実施形態では、洗浄緩衝液のpHは、4.9、5.0若しくは5.1である。本発明の一実施形態では、少なくとも1種の洗浄緩衝液は、pH5.0の酢酸塩を含む。洗浄緩衝液は、生成物関連不純物をロバストに除去するためには導電率の変動を伴って、0.05~0.1のpH単位高い及び低い可能性がある。
【0089】
少なくとも1種の洗浄緩衝液は、さらに塩を含む。一実施形態において、塩は、塩化ナトリウムである。一実施形態では、洗浄緩衝液中の塩化ナトリウムの濃度は、0mM~147mMである。一実施形態では、洗浄緩衝液中の塩化ナトリウムの濃度は、70mM~147mMである。一実施形態では、洗浄緩衝液中の塩化ナトリウムの濃度は、100mM~147mMである。一実施形態では、洗浄緩衝液中の塩化ナトリウムの濃度は、100mM~125mMである。一実施形態では、洗浄緩衝液中の塩化ナトリウムの濃度は、100mM~105mMである。一実施形態では、洗浄緩衝液中の塩化ナトリウムの濃度は、105mM~147mMである。一実施形態では、洗浄緩衝液中の塩化ナトリウムの濃度は、105mM~125mMである。一実施形態では、洗浄緩衝液中の塩化ナトリウムの濃度は、125mM~147mMである。一実施形態では、洗浄緩衝液中の塩化ナトリウムの濃度は、0mMである。一実施形態では、洗浄緩衝液中の塩化ナトリウムの濃度は、70mMである。一実施形態では、洗浄緩衝液中の塩化ナトリウムの濃度は、100mMである。一実施形態では、洗浄緩衝液中の塩化ナトリウムの濃度は、105mMである。一実施形態では、洗浄緩衝液中の塩化ナトリウムの濃度は、125mMである。一実施形態では、洗浄緩衝液中の塩化ナトリウムの濃度は、147mMである。
【0090】
洗浄工程は、関心対象の多重特異性タンパク質の負荷後及び溶出前にカチオン交換媒体を洗浄する。本発明は、高塩分濃度の洗浄緩衝液を含む少なくとも1回の洗浄工程を提供する。高塩分洗浄緩衝液は、主生成物の溶出前にカチオン交換媒体からpIの低い生成物関連不純物を洗浄する、又は溶出させることが見出された。高塩分洗浄工程に加えて、無塩及び/又は高塩分洗浄緩衝液に比較して低い濃度の塩を含有する緩衝液を使用する1回以上の追加の洗浄工程があってよい。好ましくは、UVベースラインは、溶出の開始前の最終洗浄工程の終了時に、ゼロの極めて近くに回復した、又はゼロに極めて近い。本発明の一実施形態によると、少なくとも2回の洗浄工程がある。一実施形態では、「第1の洗浄緩衝液」及び「第2の洗浄緩衝液」がある。本発明の一実施形態によると、少なくとも3回の洗浄工程がある。一実施形態では、「第1の洗浄緩衝液」、「第2の洗浄緩衝液」及び「第3の洗浄緩衝液」がある。用語「第1の洗浄」、「第2の洗浄」及び/又は「第3の洗浄」は、1回以上の追加の工程間の1回以上の追加の洗浄又は他の緩衝液の使用を除外すると解釈すべきではない。洗浄緩衝液は、関心対象の多重特異性タンパク質を溶出させる前にカチオン交換材料を洗浄又は再平衡化するために使用される。1種以上の洗浄緩衝液調製物は、平衡化及び/又は最終コンディショニング負荷緩衝液調製物と同一であってよい。
【0091】
本発明の一実施形態では、第1の洗浄は、pH5.0±0.5~pH5.0±0.1%の酢酸塩を含む洗浄緩衝液を含む。本発明の一実施形態では、第1の洗浄緩衝液は、4.9~5.1のpHで酢酸塩を含む。本発明の一実施形態では、第1の洗浄緩衝液は、4.9、5.0若しくは5.1のpHで酢酸塩を含む。本発明の一実施形態では、第1の洗浄緩衝液は、5.0のpHで酢酸塩を含む。本発明の一実施形態では、第1の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む。本発明の一実施形態では、第1の洗浄緩衝液は、pH5.0の100mMの酢酸塩を含む。本発明の一実施形態では、第1の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0~147mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、第1の洗浄は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.5~pH5.0±0.1%の0mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液を含む。
【0092】
本発明の一実施形態では、第2の洗浄は、pH5.0±0.5~pH5.0±0.1%の酢酸塩を含む洗浄緩衝液を含む。本発明の一実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、4.9~5.1のpHで酢酸塩を含む。本発明の一実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、4.9、5.0若しくは5.1のpHで酢酸塩を含む。本発明の一実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む。本発明の一実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、pH5.0の100mMの酢酸塩を含む。
【0093】
本発明の一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、0~147mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、70~147mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100~147mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100~125mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100~105mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、105~147mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、105~125mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、125~147mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は125mMの塩化ナトリウムを含む。
【0094】
本発明の一実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05~pH5.0±0.1の0~147mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05~pH5.0±0.1の70~147mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05~pH5.0±0.1の100~147mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05~pH5.0±0.1の100~125mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05~pH5.0±0.1の100~105mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05~pH5.0±0.1の105~147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05~pH5.0±0.1の105~125mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05~pH5.0±0.1の125~147mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.05~pH5.0±0.1の125mMの塩化ナトリウムを含む。
【0095】
一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の0mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の70mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の100mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の105mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の125mMの塩化ナトリウムを含む。一関連実施形態では、第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0の147mMの塩化ナトリウムを含む。
【0096】
本発明の一実施形態では、第3の洗浄は、pH5.0±0.05%~pH5.0±0.1%の酢酸塩を含む洗浄緩衝液を含む。本発明の一実施形態では、第3の洗浄緩衝液は、4.9~5.1のpHで酢酸塩を含む。本発明の一実施形態では、第3の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩を含む。本発明の一実施形態では、第3の洗浄緩衝液は、pH5.0±0.5%~pH5.0±0.1の100mMの酢酸塩を含む。本発明の一実施形態では、第3の洗浄緩衝液は、0~147mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、第3の洗浄緩衝液は、0mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、第3の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.5%~pH5.0±0.1の0mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、第3の洗浄緩衝液は70mMの塩化ナトリウムを含む。本発明の一実施形態では、第3の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、pH5.0±0.5%~pH5.0±0.1の70mMの塩化ナトリウムを含む。
【0097】
一実施形態では、カチオン交換クロマトグラフィー媒体は、少なくとも3種の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、1種の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムを含み、次に酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液が続き;次に酢酸塩、0~70mMの塩化ナトリウムを含む洗浄緩衝液が続く。一実施形態では、第1の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0mMのNaClを含み;第2の洗浄緩衝液は、酢酸塩、100~147mMの塩化ナトリウムを含み;及び第3の洗浄緩衝液は、酢酸塩、0~70mMの塩化ナトリウムを含む。一実施形態では、第1の洗浄緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、0mMの塩化ナトリウムである。一実施形態では、第2の洗浄緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、100、105及び147mMの塩化ナトリウムから選択される。一実施形態では、第3の洗浄緩衝液の塩化ナトリウム濃度は、0及び70mMの塩化ナトリウムから選択される。一実施形態では、第1の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムであり;第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、100mMの塩化ナトリウム及び100mMの酢酸塩、105mMの塩化ナトリウムから選択され;及び第3の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムである。一実施形態では、第1の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、0mMの塩化ナトリウムであり;第2の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、147mMの塩化ナトリウムであり、及び第3の洗浄緩衝液は、100mMの酢酸塩、70mMの塩化ナトリウムである。
【0098】
本発明の一実施形態では、カチオン交換媒体には、少なくとも10g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。本発明の一実施形態では、カチオン交換媒体には、10g/L~40g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。本発明の一関連実施形態では、カチオン交換媒体には、15g/L~40g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。本発明の一関連実施形態では、カチオン交換媒体には、少なくとも20g/L~40g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。本発明の一関連実施形態では、カチオン交換媒体には、25g/L~40g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。本発明の一関連実施形態では、カチオン交換媒体には、35g/L~40g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。一関連実施形態では、カチオン交換媒体には、15g/L~35g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。一関連実施形態では、カチオン交換媒体には、15g/L~25g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。一実施形態では、カチオン交換媒体には、15g/L~20g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。一関連実施形態では、カチオン交換媒体には、15g/L~35g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。一関連実施形態では、カチオン交換媒体には、20g/L~35g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。一関連実施形態では、カチオン交換媒体には、20g/L~30g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。一関連実施形態では、カチオン交換媒体には、20g/L~25g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。一関連実施形態では、カチオン交換媒体には、25g/L~35g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。一関連実施形態では、カチオン交換媒体には、25g/L~30g/Lの多重特異性タンパク質が負荷される。
【0099】
一実施形態では、本発明は、カチオン交換媒体に、10g/Lの多重特異性タンパク質が負荷され、105mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の洗浄緩衝液を用いて洗浄され、8mM/CVでの塩勾配で溶出させられることを提供する。
【0100】
一実施形態では、本発明は、カチオン交換媒体に、15g/L~30g/Lの多重特異性タンパク質が負荷され、147mMの塩化ナトリウムを含む少なくとも1種の洗浄緩衝液を用いて洗浄されることを提供する。
【0101】
一実施形態では、本発明は、カチオン交換媒体に、25g/L~40g/Lの多重特異性タンパク質が負荷されることを提供するが、ここで少なくとも1種の洗浄緩衝液及び1種の溶出緩衝液は、125mMの塩化ナトリウムを含む。
【0102】
結合した多重特異性タンパク質は、次にカチオン交換クロマトグラフィー媒体の固相から溶出される。多重特異性タンパク質は、勾配によって溶出され得る。勾配は、線形又は段階的勾配であり得る。勾配は、塩勾配であり得る。勾配は、線形塩勾配又は段階的塩勾配であり得る。塩勾配については、塩濃度(イオン強度)は、勾配中に経時的に変動する。多重特異性タンパク質の結合を崩壊させ、溶出液中へ遊離させるために、適正な塩濃度が必要とされる。使用できる塩の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び酢酸塩が挙げられる。
【0103】
カチオン交換クロマトグラフィー溶出液は、その後の下流ポリッシュクロマトグラフィー精製装置操作を受けさせることができる。一実施形態では、カチオン交換クロマトグラフィー後に、関心対象の多重特異性タンパク質は、フロースルーモードでポリッシュクロマトグラフィーにかけられる。
【0104】
ポリッシュクロマトグラフィー操作後、精製された多重得異性タンパク質の濃縮及び製剤原料のバルク貯蔵のための所望の処方緩衝液への緩衝液交換は、限外濾過及びダイアフィルトレーション操作によって達成することができる。
【0105】
精製された多重特異性タンパク質の重要な属性及び性能パラメーターは、製造中の各工程の性能に関する決定をより適切に伝えるために測定され得る。これらの重要な属性及びパラメーターは、実時間、準実時間、及び/又は事後にモニターされ得る。消費された培地成分(グルコース等)、蓄積している副生成物(乳酸塩及びアンモニア等)の代謝レベル、並びに溶存酸素含量等の細胞維持及び生存に関連するもの等の重要なパラメーターは、細胞培養中に測定することができる。比生産性、生存細胞密度、pH、重量オスモル濃度、外観、色、凝集、収率及び力価等の重要な属性は、製造プロセスにおける適切な段階中にモニターされ得る。モニタリング及び測定は、既知の手法及び市販の装置を使用して行うことができる。
【0106】
医薬組成物(液剤、懸濁剤等)は、以下の:中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水等の緩衝液;グルコース、マンノース、スクロース若しくはデキストラン、マンニトール等の炭水化物;タンパク質;ポリペプチド又はグリシン等のアミノ酸;抗酸化剤;EDTA若しくはグルタチオン等のキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);及び保存料;注射用水、食塩液、好ましくは生理学的食塩水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム、溶媒若しくは懸濁媒として機能できる合成モノグリセリド若しくはジグリセリド等の不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の溶媒等の無菌希釈液;ベンジルアルコール若しくはメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸若しくは亜硫酸ナトリウム等の抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩若しくはリン酸塩等の緩衝液及び塩化ナトリウム若しくはデキストロース等の等張性を調製するための作用物質の1つ以上を含み得るが、これらに限定されない。非経口製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器又は複数回投与バイアルに封入することができる。
【0107】
本願で使用する用語法は、当該技術分野内で標準的であるが、ある種の用語の定義は、特許請求の範囲の意味に対して明快さ及び明確さを保証するために本明細書で提供される。単位、接頭辞及び記号は、それらのSIで認められた形式で示され得る。本明細書に記載の数値範囲は、範囲を定義する数を含み、定義された範囲内の各整数を含み、それを支持する。別段の記載がない限り、本明細書に記載の方法及び手法は、一般に、当技術分野においてよく知られる通常の方法に従って実施され、こうした方法及び手法は、本明細書を通して引用及び議論される様々な一般の参考文献及び特定性の高い参考文献に記載されるものである。例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001)及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992)、並びにHarlow and Lane Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)を参照されたい。特許、特許出願、論文、書籍及び学術論文が挙げられるが、これらに限定されない、本願で引用される全ての文献又は文献の一部は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0108】
本発明は、本発明の個々の態様の単一の説明として意図されている本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるものではなく、機能的に同等の方法及び構成要素は、本発明の範囲内である。本発明の一実施形態に記載されているものは、本発明の他の実施形態と組み合わせることができる。実際に、本明細書に図示され記載されるものに加えて、本発明の様々な変更形態は、上述の説明及び添付図面から当業者に明らかになるであろう。そのような変更形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0109】
実施された実験及び達成された結果を含む以下の実施例は、例示の目的のみのために提供されるものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0110】
実施例1 単一の無塩分負荷洗浄 二重特異性#1
酢酸緩衝液中の完全ヒト二重特異性、改変免疫グロブリン(二重特異性#1)を含有する中和されたプロテインAプールを、表1に略述した条件下でCapto-SP ImpRes(登録商標)カチオン交換クロマトグラフィー樹脂(GE Healthcare Bio-Science、Marlborough、MA)上に負荷した。
【0111】
【0112】
図1は、溶出プロファイルにおける3つのピークを示しており、これは複数の不純物がカラム上に残留して主生成物とともに溶出されたことを示している。これらの不純物は、ホモ二量体、NCG(非コンセンサスグリコシル化)及び高分子量種(HMW)を含んでいた。
【0113】
実施例2 高塩分洗浄、二重特異性#1
酢酸緩衝液中の二重特異性#1を含有する中和されたウイルス不活性化プールを表2に記載した条件下でCapto-SP ImpRes(登録商標)カチオン交換クロマトグラフィー樹脂上に負荷した。
【0114】
【0115】
高塩分洗浄が加えられると、以前は溶出液中で除去されたpIの低い不純物が、今では溶出前の洗浄において樹脂から除去されたことが見出された。
図2は、高塩分洗浄の添加が、溶出プロファイル中の不純物ピークの数を3つのピークから1つのピークへ減少させたことを示している。不純物の大部分は、≧68%のNCG及び≧80%のホモ二量体であり、第2の洗浄工程と第3の洗浄工程との間に除去された。ホモ二量体及びNCGは、第2の洗浄中に樹脂から大部分が除去された、又は樹脂にほんのわずかにしか結合しなかった。第3の洗浄工程は、溶出の開始前にUVベースラインをゼロに再確立し、溶出プロファイルを固定し、結果として主生成物のはるかに効率的な収集及びより良好な品質を提供した。高塩分洗浄工程の追加は、精製を最適化し、それをより製品品質についての使用結果から外れることを減少させて、許容可能な収率を維持するロバスト且つ製造に適したプロセスにした。
【0116】
これらの条件は、15~30g/Lの二重特異性#1の負荷濃度を用いて効果的であった。
【0117】
さらに、0.05pH単位より上及びpH5.0より下の洗浄緩衝液(pH4.95~5.05)を試験し、上記の結果と一致して、pIの低い生成物関連不純物を除去するために有効であることが見出された。
【0118】
カチオン交換媒体から生成物関連不純物を洗浄する/溶出させるためには、2.5カラム体積の第2の洗浄緩衝液を使用すれば十分であることが見出された。より少ないカラム体積は、生成物関連不純物を除去することに余り効果的ではなく、2.5カラム体積より大きいカラム体積を使用すると主生成物を溶出させ始めた。
【0119】
実施例3 単一の無塩分洗浄 二重特異性#2
改変された完全ヒト抗ヘテロ-IgG二重特異性抗体(二重特異性#2)を含有する中和されたプロテインA溶出液プール(100mMの酢酸塩、pH5.0)を表3に略述した条件下でCapto-SP ImpRE(登録商標)カチオン交換クロマトグラフィー樹脂(GE Healthcare Bio-Science、Marlborough、MA)上に負荷した。
【0120】
【0121】
図3は、複数の不純物がカラム上に残留し、主生成物とともに溶出されたことを示している。これらの不純物は、半抗体(約50%の半抗体を含む画分1、2、3、4)、2Xの軽鎖ミスアセンブリ(LC2がHC1と不正確に集合したことを示している<0.4のLC1対LC2比を備える画分5及び6)及び高分子量(HMW、画分12~21)を含んでいた。クロマトグラフィー分離の分解能は、不純物を含有する別個のプレピークを備えて容認可能であるが、製造プロセスは、ODに基づく自動プーリングを利用した;そのためには、プレピークについての最高ODより上方で開始する、収率を低下させる、及びこのプロセスを製造操作において使用するには不十分にさせることによって、溶出液を収集することが必要になるであろう。
【0122】
実施例4 高塩分洗浄 二重特異性#2
二重特異性#2を含有する中和されたプロテインA溶出液プール(100mMの酢酸塩、pH5.0)を表4に略述した条件下でCapto-SP ImpRE(登録商標)カチオン交換クロマトグラフィー樹脂(GE Healthcare Bio-Science、Marlborough、MA)上に負荷した。
【0123】
【0124】
高塩分洗浄工程が添加されると(100mMの塩化ナトリウムを用いた第2の洗浄)、半抗体不純物は、溶出前にCEX樹脂から除去された(100%の半抗体は、収集された第2の洗浄及び第3の洗浄中で検出された)。
図4は、高塩分の洗浄が、4つのピークから依然として2XのLC2誤対合種を含有している小さな肩を備える単一のピークへ、溶出プロファイル内のピーク数の減少を生じさせたことを示している(LC1及びLC2がそれぞれHC1及びHC2へ正確に集合した場合に1の予測比に集合した場合に比較して、LC1/LC2<0.11)。第3の洗浄工程はさらに、溶出の開始前にUVベースラインをゼロに再確立し、溶出プロファイルを固定し、結果として主生成物のはるかに効率的な収集及びより良好な品質を提供した。より高い塩分の洗浄を用いる最適化された手順は、製造現場上で使用するために好適である。CEXの精製収率は、低レベルの半抗体、誤対合したLC2種(1に近いLC1対LC2比によって証明されるように)、HMW及びLMW並びに吸光度に基づくプーリング基準を備える精製プールを収集するための適正な溶出プロファイルを伴って、65%から73%へ増加した。
【0125】
実施例5 単一の無塩分洗浄 二重特異性#3
完全ヒト、改変IgG/Fab融合タンパク質(二重特異性#3)を含有する中和されたプロテインA溶出液プールを表5に略述した条件下でCapto-SP ImpREs(登録商標)カチオン交換クロマトグラフィー樹脂(GE Healthcare Bio-Science、Marlborough、MA)上に負荷した。
【0126】
【0127】
図5は、急勾配の溶出で高い負荷密度から生じた1つの溶出ピークを示している。pIの低い生成物関連不純物は、4から7へ減少したCE-SDS LC1:LC2比(誤対合のLC種)及び2~4%のLMW種によって証明されるように、高い負荷密度下では主生成物から消散せず、大部分は画分1、2及び3内にある。
【0128】
実施例6 低い負荷密度、単一の無塩分洗浄、二重特異性#3
完全ヒト、改変IgG/Fab融合タンパク質(二重特異性#3)を含有する中和されたプロテインA溶出液プールを表6に略述した条件下でCapto-SP ImpREs(登録商標)カチオン交換クロマトグラフィー樹脂(GE Healthcare Bio-Science、Marlborough、MA)上に負荷した。
【0129】
【0130】
実施例5の高い負荷密度、急勾配の溶出条件は、pIの低い生成物関連不純物からの主生成物の十分な分解能を提供しなかったので、負荷密度及び勾配条件を低下させた。
図6は、より低い負荷密度(10対25g/L)及びより緩やかな勾配(8対16mM/CV)が、主要なpIの低い生成物不純物を画分1~4によって形成された別個のピークへの分離を可能にしたことを示している。この画分は、3:10のLC1:LC2の比率を示し、これは誤対合LC1種を示している。対照的に、主ピークは、1.2の蓄積LC1:LC2の比率を示した。分解能は、それが依然としてODに基づく自動プーリングを必要としたためにより良好で収率を44%から73%へ上昇させたが、プレピークに対する最高ODを超えて開始し、収率を低下させ、このプロセスを製造操作において使用するためには不十分にさせることによって、溶出液を収集することが依然として必要となるであろう。
【0131】
実施例7 高塩分洗浄、二重特異性#3
二重特異性#3を含有する中和されたウイルス不活性化プールを表7に略述した条件下でCapto-SP ImpRE(登録商標)カチオン交換クロマトグラフィー樹脂(GE Healthcare Bio-Science、Marlborough、MA)上に負荷した。
【0132】
【0133】
高塩分洗浄工程が追加された場合(第2の洗浄)、不純物は、溶出前にCEX樹脂から除去されることが見出された。これらの不純物は、LC1及びLC2が正確に類似して対合する場合は、1の予測比と比較して、収集された第2の洗浄及び第3の洗浄に関するLC1対LC2比が8.0であることを前提に、誤対合したLC1種に対応した可能性が高い。
図7は、高塩分洗浄が、依然として誤対合種(LC1/LC2=2~4)を含有した小さな肩を伴って、2つのピークから単一ピークへの溶出プロファイルにおける不純物ピークの数の減少が生じたことを示す図である。不純物の大部分は、第2の洗浄工程と第3の洗浄工程との間で除去された。第3の洗浄工程はさらに、溶出の開始前にUVベースラインをゼロに再確立し、溶出プロファイルを固定し、結果として主生成物のはるかに効率的な収集及びより良好な品質を提供した。低い負荷レベル及び緩やかな勾配と結び付けられた、高塩分洗浄を用いるこの最適化された手順は、製造現場上で使用するために好適である。CEXの精製収率は、低レベルの誤対合したLC1種(1に近いLC1対LC2比によって証明される)、HMW及びLMW並びに吸光度に基づくプーリング基準を備える精製プールを収集するための溶出プロファイルを伴って、44%から66%へ増加した。
【0134】
実施例8 高塩分洗浄 二重特異性#4
完全ヒト改変免疫グロブリン二重特異性抗体(二重特異性#4)を含有する中和された低pHのウイルス不活性化プロテインA溶出液プールを表7に記載した条件下でCapto-SP ImpREs(登録商標)カチオン交換クロマトグラフィー樹脂上に負荷した。
【0135】
【0136】
高い塩分濃度での洗浄工程が追加された場合(第2の洗浄)、pIの低い生成物不純物(ホモ二量体及び凝集種)は、溶出前のカチオン交換媒体から除去されることが見出された。
図8は、高塩分の洗浄が、溶出プロファイル内の不純物ピークの数を1つのピークへの減少を生じさせたことを示している。塩化ナトリウムを含まない第1の洗浄は、導電率をベースラインへ戻した。pIの低い生成物不純物は、高い塩分負荷洗浄工程中に除去され、導電率のベースラインを溶出前のゼロに復帰させた。導電率は、高い塩分の洗浄緩衝液と同じ高い塩分調製物を有していた溶出緩衝液Aを用いて維持された。これは、溶出を開始し、溶出プロファイルを固定する前に安定した導電率を維持することを可能にし、分離がpIに基づいたので、主生成物のはるかによりロバストで効率的な収集及びより優れた品質を生じさせた。
【0137】
さらに、0.1pH単位より上及びpH5.0より下の洗浄緩衝液(pH4.9~5.1)を試験し、pIの低い生成物関連不純物を除去するために有効であることが見出された。
【0138】
さらに、25~40g/L-rの二重特異性#4の負荷濃度を試験し、上述した35g/L-rの条件と類似のクリアランスを有することが見出された。
【国際調査報告】