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特表2022-554284CD38ノックアウト初代および増殖ヒトNK細胞の生成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】CD38ノックアウト初代および増殖ヒトNK細胞の生成
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20221221BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221221BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221221BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221221BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20221221BHJP
   A61K 31/4035 20060101ALI20221221BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20221221BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20221221BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20221221BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20221221BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20221221BHJP
【FI】
A61K35/17 Z
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 N
A61K31/454
A61K31/4035
A61K31/573
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/13
C12N15/09 Z
C12N5/10
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525329
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(85)【翻訳文提出日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 US2020058565
(87)【国際公開番号】W WO2021087466
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】62/928,524
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515041446
【氏名又は名称】リサーチ インスティテュート アット ネイションワイド チルドレンズ ホスピタル
【氏名又は名称原語表記】RESEARCH INSTITUTE AT NATIONWIDE CHILDREN’S HOSPITAL
(71)【出願人】
【識別番号】508280195
【氏名又は名称】ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】リー,ディーン アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】カララウディ,メイサム ナエイミ
(72)【発明者】
【氏名】ギオール,ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】永井 雄也
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C085AA14
4C085CC23
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC11
4C086BC22
4C086DA10
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、または芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)を含むがこれらに限定されない、がんを治療するための、表面抗原分類38(CD38)遺伝子のノックアウトを含む遺伝子改変NK細胞およびそれを使用する方法が開示される。
【選択図】図12‐3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんを治療する方法であって、前記対象に、CD38遺伝子のノックアウトを含むように改変されているNK細胞を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記がんが、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、または芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)を含む、請求項1に記載のがんを治療する方法。
【請求項3】
前記対象に、CD38を標的とする小分子、抗体、ペプチド、タンパク質、またはsiRNAを含む抗がん剤を投与することをさらに含む、請求項1または2に記載のがんを治療する方法。
【請求項4】
前記抗がん剤が、ダラツムマブ、イサツキシマブ、TAK-079、またはMOR202を含む、請求項3に記載のがんを治療する方法。
【請求項5】
前記対象に、血管新生阻害剤およびステロイドを投与することをさらに含む、請求項3または4に記載のがんを治療する方法。
【請求項6】
前記血管新生阻害剤が、ポマリドミド、レナリドミド、またはアプレミラストを含む、請求項5に記載のがんを治療する方法。
【請求項7】
前記ステロイドが、グルココルチコイドを含む、請求項5に記載のがんを治療する方法。
【請求項8】
前記グルココルチコイドが、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、メソッドルプレニゾロン、トリアムシノロン、または酢酸フルドロコルチゾンを含む、請求項7に記載のがんを治療する方法。
【請求項9】
操作されたNK細胞を、それを必要とする対象に養子移植する方法であって、
a)改変される標的NK細胞を得ることと、
b)標的DNA配列に特異的なgRNAを得ることと、
c)エレクトロポレーションを介して、前記標的NK細胞に、前記標的NK細胞のゲノムDNA内の標的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/CasガイドRNAと複合体化したクラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas9)を含むRNP複合体を導入して、操作されたNK細胞を生成することと、
d)前記操作されたNK細胞を前記対象に移植することと、を含む、方法。
【請求項10】
前記対象が、がんを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記NK細胞が、エクスビボで改変されており、かつ改変後に前記対象に移植される、初代NK細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記NK細胞が、自己NK細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記NK細胞が、同種ドナー源由来である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記NK細胞を、前記対象に投与する前に、照射されたmbIL-21発現フィーダー細胞とともに増殖させる、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記対象への前記NK細胞の移植後に、前記NK細胞を、IL-21または照射されたmbIL-21発現フィーダー細胞の投与を介して、前記対象において増殖させる、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記RNP複合体が、前記CD38遺伝子を標的とする、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
請求項9~16のいずれか一項に記載の方法によって作製された表面抗原分類38(CD38)をコードする遺伝子のノックアウトを含む、遺伝子改変NK細胞。
【請求項18】
対象におけるがんを治療する方法であって、前記対象に、請求項17に記載の遺伝子改変NK細胞を投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記対象に、CD38を標的とする小分子、抗体、ペプチド、タンパク質、またはsiRNAを含む抗がん剤を投与することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗がん剤が、抗CD38抗体を含む、請求項19に記載のがんを治療する方法。
【請求項21】
前記抗CD38抗体が、ダラツムマブ、イサツキシマブ、TAK-079、またはMOR202を含む、請求項20に記載のがんを治療する方法。
【請求項22】
前記がんが、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、または芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)を含む、請求項18~21のいずれか一項に記載のがんを治療する方法。
【請求項23】
抗CD38免疫療法を受ける対象においてNK細胞のフラトリサイドを低減する方法であって、前記対象に、請求項17に記載の遺伝子改変NK細胞を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
I.関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月31日に出願された、米国仮特許出願第62/928,524号の利益を主張し、参照により本明細書に明示的に援用される。
【0002】
II.背景技術
がん免疫療法は、近年進歩している。遺伝子改変キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、がん免疫療法で成功裏に展開された操作された免疫細胞の優れた例である。これらの細胞は、最近、CD19B細胞悪性腫瘍に対する治療のためにFDAによって承認されたが、これまでのところ、成功は、少数の標的化可能な抗原を有する疾患に限定され、そのような限られた抗原レパートリーを標的にすることは、免疫逃避によって失敗しやすい。さらに、CAR T細胞は、同種T細胞によって引き起こされる移植片対宿主病のリスクのために、自己T細胞の使用に焦点が当てられてきた。対照的に、NK細胞は、抗原非依存的な様式で腫瘍標的を死滅させることができ、移植片対宿主病(GvHD)を引き起こさないため、がん免疫療法の優れた候補となる。抗体と組み合わせた場合、NK細胞および抗体の標的化およびエフェクター機構は、CAR T細胞のものと類似している。残念なことに、一部のがんについては、現在の治療は、がんを標的とするだけでなく、患者のNK細胞集団も枯渇させる可能性がある。例えば、ダラツムマブは、多発性骨髄腫細胞および白血病でレベルの上昇が見られるCD38を標的とする。ダラツムマブの抗腫瘍活性は、NK細胞に依存する。しかしながら、CD38はまた、NK細胞の表面でも高レベルで発現され、ダラツムマブの投与により、NK細胞のフラトリサイドがもたらされ、ダラツムマブの有効性が制限される。したがって、必要なのは、NK細胞のフラトリサイドの問題を克服することができる新しい免疫療法および/または治療方法である。
III.
【発明の概要】
【0003】
CD38遺伝子のノックアウトを含む遺伝子改変NK細胞に関連する方法および組成物が開示される。
【0004】
一態様では、対象におけるがんおよび/または転移(例えば、多発性骨髄腫、白血病(急性骨髄性白血病(AML)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、または芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)を含むが、これらに限定されない)を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法が本明細書に開示され、対象に、CD38遺伝子のノックアウトを含むように改変されているNK細胞を投与することを含む。一部の態様では、がんおよび/または転移を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法は、対象に、CD38を標的とする小分子、抗体、ペプチド、タンパク質、またはsiRNA(例えば、これらに限定されないが、ダラツムマブ、イサツキシマブ、TAK-079、および/またはMOR202を含む抗CD38抗体など)を投与することをさらに含み得る。
【0005】
また、任意の先行する態様のがんおよび/または転移(例えば、多発性骨髄腫、白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、または芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)を含むが、これらに限定されない)を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法が本明細書に開示され、対象に、血管新生阻害剤(例えば、ポマリドミド、レナリドミド、またはアプレミラスト)およびステロイド(例えば、これらに限定されないが、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、メソッドルプレニゾロン、トリアムシノロン、酢酸フルドロコルチゾンを含むグルコルチコイドなど)を投与することをさらに含む。
【0006】
一態様では、CD38を直接発現しないが、がん微小環境内の他の細胞(骨髄由来抑制細胞(MDSC)を含むが、これに限定されない)が標的とされ得るがんおよび/または転移を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法が、本明細書に開示され、対象に、CD38遺伝子のノックアウトを含むように改変されているNK細胞を投与することを含む。
【0007】
一態様では、NK細胞(例えば、初代または増殖NK細胞など)を遺伝子改変する方法が本明細書に開示され、NK細胞(例えば、CD38など)の標的DNA配列に特異的なガイドRNA(gRNA)を取得することと、b)エレクトロポレーションを介して、標的NK細胞に、NK細胞のゲノムDNA内の標的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/CasガイドRNAと複合体化したクラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas9)を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体を導入して、CD38ノックアウト初代または増殖NK細胞を生成することと、を含む。
【0008】
また、任意の先行する態様の方法であって、NK細胞のゲノムが、1つ以上の塩基対の挿入もしくは欠失、異種DNA断片(例えば、ドナーポリヌクレオチド)の挿入、内因性DNA断片の欠失、内因性DNA断片の反転もしくは転座、またはこれらの組合せによって改変される方法も、本明細書に開示される。
【0009】
一態様では、任意の先行する態様のNK細胞を遺伝子改変する方法であって、NK細胞(例えば、初代または増殖NK細胞)が、形質導入(エレクトロポレーションなど)の前の4、5、6、または7日間、IL-2および/または照射されたフィーダー細胞の存在下でインキュベートされる方法が、本明細書に開示される。
【0010】
また、任意の先行する態様のNK細胞を遺伝子改変する方法であって、エレクトロポレーション後に、照射された膜結合インターロイキン-21(mbIL-21)発現フィーダー細胞とともに、改変NK細胞を増殖することをさらに含む方法も、本明細書に開示される。
【0011】
一態様では、任意の先行する態様の方法で作製される改変NK細胞が、本明細書に開示される。一態様では、改変NK細胞は、CD38をコードする遺伝子のノックアウトを含むことができる。例えば、別の態様では、遺伝子改変NK細胞が本明細書に開示され、薬剤として使用するための、好ましくは、がんおよび/または転移を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法で使用するための、本明細書に開示される表面抗原分類38(CD38)をコードする遺伝子のノックアウトを含む。別の態様では、遺伝子改変NK細胞が本明細書に開示され、(i)それを必要とする対象における酸化呼吸能を増加させる方法、または(ii)それを必要とする対象における細胞外NADの加水分解を制限し、酸化還元的呼吸能を改善する方法で使用するための、本明細書に開示される表面抗原分類38(CD38)をコードする遺伝子のノックアウトを含む。同様に、遺伝子改変NK細胞の使用も本明細書に開示され、薬剤の製造において、好ましくは、がんおよび/または転移を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防するための薬剤の製造において、本明細書に開示される表面抗原分類38(CD38)をコードする遺伝子のノックアウトを含む。別の態様では、遺伝子改変NK細胞の使用が本明細書に開示され、(i)それを必要とする対象における酸化呼吸能を増加させるための、または(ii)それを必要とする対象における細胞外NADの加水分解を制限し、酸化還元呼吸能を改善するための薬剤の製造における、本明細書に開示される表面抗原分類38(CD38)をコードする遺伝子のノックアウトを含む。
【0012】
また、がんおよび/または転移(例えば、多発性骨髄腫、白血病(急性骨髄性白血病(AML)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、または芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)を含むが、これらに限定されない)を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法が本明細書に開示され、がんを有する対象に、任意の先行する態様の改変NK細胞(例えば、CD38ノックアウトNK細胞)を投与することを含む。一部の態様では、がんおよび/または転移を治療、減少、阻害、低減、緩和および/または予防する方法は、対象に、CD38を標的とする小分子、抗体、ペプチド、タンパク質、またはsiRNA(例えば、これらに限定されないが、ダラツムマブ、イサツキシマブ、TAK-079、および/またはMOR202を含む抗CD38抗体など)を投与することをさらに含み得る。
【0013】
一態様では、がんおよび/または転移(例えば、多発性骨髄腫、白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、または芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)を含むが、これらに限定されない)を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法が本明細書に開示され、対象に、任意の先行する態様の改変NK細胞(例えば、CD38ノックアウトNK細胞)と、CD38を標的とする小分子、抗体、ペプチド、タンパク質、またはsiRNA(例えば、これらに限定されないが、ダラツムマブ、イサツキシマブ、TAK-079、および/またはMOR202を含む抗CD38抗体など)とを投与することを含み、対象に、血管新生阻害剤(例えば、ポマリドミド、レナリドミド、またはアプレミラスト)と、ステロイド(例えば、これらに限定されないが、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、メソッドルプレニゾロン、トリアムシノロン、または酢酸フルドロコルチゾンを含むグルコルチコイドなど)とを投与することをさらに含む。
【0014】
また、抗CD38免疫療法を受ける対象において、NK細胞のフラトリサイドを低減する方法も本明細書に開示され、対象に、任意の先行する態様の遺伝子改変NK細胞を投与することを含む。一態様では、抗CD38免疫療法は、対象に、ダラツムマブ、イサツキシマブ、TAK-079、および/またはMOR202を含むが、これらに限定されない抗CD38抗体を投与することを含み得る。
【0015】
一態様では、操作されたNK細胞を、それを必要とする対象に養子移植する方法が本明細書に開示され、当該方法は、a)改変される標的NK細胞(初代NK細胞または増殖NK細胞など)を得ることと、b)標的DNA配列に特異的なgRNAを得ることと、c)エレクトロポレーションを介して、標的NK細胞に、標的NK細胞のゲノムDNA内の標的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/Cas gRNAと複合体化したクラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas9)を含むRNP複合体を導入して、操作されたNK細胞(例えば、CD38遺伝子をノックアウトするように改変されているNK細胞など)を生成することと、d)操作されたNK細胞を対象に移植することと、を含む。
【0016】
また、操作されたNK細胞を、それを必要とする対象に養子移植する方法も本明細書に開示され、NK細胞は、初代NK細胞(例えば、自己NK細胞、または同種ドナー源由来のNK細胞など)であり、エクスビボで改変され、改変後に対象に移植される(例えば、CD38遺伝子をノックアウトするように改変されているNK細胞など)。
【0017】
一態様では、操作されたNK細胞を、任意の先行する態様の操作されたNK細胞を必要とする対象に養子移植する方法が本明細書に開示され、NK細胞は、対象に改変NK細胞を投与する前に、投与すると同時に、または投与した後に、インビトロで(例えば、mbIL-21を発現する照射されたフィーダー細胞とともに)またはインビボで(例えば、IL-21を投与して)増殖される。
【0018】
一態様では、操作されたNK細胞(例えば、CD38ノックアウトNK細胞)を、それを必要とする対象に養子移植する方法が本明細書に開示され、養子移植される改変NK細胞を受ける対象は、がんを有する。
【0019】
また、がんおよび/または転移(例えば、多発性骨髄腫、白血病(急性骨髄性白血病(AML)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、または芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)を含むが、これらに限定されない)を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防するために対象に投与される抗CD38免疫療法(例えば、CD38を標的とする小分子、抗体(ダラツムマブ、イサツキシマブ、TAK-079、および/またはMOR202を含むが、これらに限定されない)、ペプチド、タンパク質、またはsiRNAなど)の有効性を増加させる方法も本明細書に開示され、対象に、任意の先行する態様の改変NK細胞(例えば、CD38ノックアウトNK細胞など)を投与することを含む。
IV.
【図面の簡単な説明】
【0020】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、一部の実施形態を例示し、説明とともに、開示される組成物および方法を例示する。
【0021】
図1】野生型およびCD38ノックアウトNK細胞でのCD38の発現を示す。
図2】野生型およびCD38ノックアウトNK細胞におけるダラツムマブ媒介性フラトリサイドに対する耐性の比較を示す。
図3図4~6からのデータに基づいて、ADCC(左)および多発性骨髄腫(右)を殺傷する際の全体的な有効性における計算された変化を示す。
図4】ダラツムマブの存在下または不在下で、野生型およびCD38ノックアウトNK細胞の両方について様々なNK細胞比でRPMI8226ヒト多発性骨髄腫細胞を殺傷する有効性を示す。
図5】ダラツムマブの存在下または不在下で、野生型およびCD38ノックアウトNK細胞の両方について様々なNK細胞比でMM.1sヒト多発性骨髄腫細胞を殺傷する有効性を示す。
図6】ダラツムマブの存在下または不在下で、野生型およびCD38ノックアウトNK細胞の両方について様々なNK細胞比でH929ヒト多発性骨髄腫細胞を殺傷する有効性を示す。
図7】7A~7Bは、エクスビボで増殖したNK細胞の免疫表現型を示す。図7Aは、図示される刺激後14日目のNK細胞の純度を示す。図7Bは、図示される同じドナーのCD38WTおよびCD38KONK細胞上のCD16発現の代表的なFACS分析を示す。各図は、CD16を発現するNK細胞の割合を示す。アイソタイプ対照は、塗りつぶしたヒストグラムで示されている。
図8A図8A~8Dは、Cas9リボ核タンパク質複合体(Cas9/RNP)を使用して、エクスビボで増殖した末梢血NK(PB-NK)細胞からのCD38KONK細胞の生成が成功したことを示す。
図8-2】図8Aと同じである。
図9】Cas9/RNPによって影響を受ける遺伝子の発現を示す。表3の高度に影響を受けた遺伝子のRNA-seqによる相対的mRNA発現。
図10-1】図10A~10Fは、DARA誘発性フラトリサイドに対するCD38KONK細胞の耐性を示す。図10Aは、コンジュゲーションアッセイの代表的なFACS分析を示す。図10Bは、図示されるコンジュゲーションアッセイの要約データを示す(n=3、平均値±SD)。図10Cは、フラトリサイドアッセイの代表的なFACS分析を示す。図10Dは、対照試料(n=3、平均値±SD)と比較した、DARAで処理されたCD38WTおよびCD38KONK細胞の生存率を示す。図10Eは、DARAまたは生理食塩水による処置後7日目のNSGマウスの末梢血(PB)の代表的なFACS分析を示す。図10Fは、処置中のNSGマウスにおけるNK細胞の持続性の要約データを示す。7日目のPBにおけるヒトNK細胞の頻度、および9日目の脾臓および骨髄におけるそれらの絶対数を示す(n=5、平均値±SD)。
図10-2】図10―1と同じである。
図10-3】図10―1と同じである。
図10F図10―1と同じである。
図11-1】図11A~11Dは、DARA誘発性フラトリサイドに対するCD16KONK細胞の耐性を示す。図11Aは、CD16WTおよびCD16KONK細胞のFACS分析を示す。図11Bは、H929細胞株を、DARA(10μg/mL)の存在下または不在下で、CD16WTまたはCD16KONK細胞と4時間インキュベートしたことを示す。図11Cは、図示されるDARAの存在下での、H929細胞株に対する対のCD16WTおよびCD16KONK細胞のADCC活性を示す。図11Dは、DARA(10μg/ml)の存在下で4時間または24時間培養されたCD16KONK細胞が、フラトリサイドの証拠を示すことを示す。
図11-2】図11―1と同じである。
図12-1】図12A~12Fは、MM細胞株および初代MM細胞に対するCD38KONK細胞のDARA媒介性ADCC活性の増強を示す。図12Aは、NK細胞および骨髄腫細胞株のCD38発現の代表的なFACS分析を示す。各図は、平均蛍光強度(MFI)を示す。アイソタイプ対照は、塗りつぶしたヒストグラムで示されている。骨髄腫細胞株(図12B~12C)、ならびに代表的な初代MM試料(図12D)に対する対のCD38WTおよびCD38KONK細胞の細胞傷害性およびDARA媒介性ADCC活性の代表的なデータ。図12Eは、初代MM試料に対する、対のCD38WTおよびCD38KONK細胞のADCC活性を示す(E:T比は、0.1:1)。図12Fは、DARAの存在下での、初代DARA耐性MM細胞に対する対のCD38WTおよびCD38KONK細胞の細胞傷害性を示す。
図12-2】図12―1と同じである。
図12-3】図12―1と同じである。
図13】CD38WTNK細胞と比較したCD38KONK細胞のADCCの改善を示し、MM細胞標的上のCD38発現レベルと相関する。X軸は、CD38WTNK細胞に対する標的細胞のMFI(CD38)の相対比を示す。Y軸は、CD38WTNK細胞と比較した、CD38KONK細胞のADCCの相対的な増加を示す。MM.1S、H929、およびOPM-2には、ADCCの値(E/T=5、4時間のアッセイ)を使用し、RPMI8226および患者試料には、ADCCの値(E/T=0.1、24時間のアッセイ)を使用する。Spearmanの順位相関係数(r)とp値を提示する。
図14】ATRAとのインキュベーションの48時間後のMM細胞株におけるCD38発現を示す。対照試料およびATRA処理試料は、それぞれ黒色および灰色の線で示されている。未染色対照は、塗りつぶしたヒストグラムで示されている。
図15-1】図15A~15Gは、DARA媒介性NK細胞の細胞傷害性に対するATRAの阻害効果を示す。図15A~15Bは、50nMのATRAで48時間前処理した骨髄腫細胞株に対する、対のCD38WTおよびCD38KONK細胞の細胞傷害性およびDARA媒介性ADCC活性を示す(平均値±SD)。図15Cでは、左パネルは、ATRA処置中または療法なしの患者由来のNK細胞(CD3CD56細胞)におけるCD38発現の代表的なFACS分析データを示す。凍結した末梢血単核細胞を解凍し、一度に分析した。右パネルは、3人の異なる患者について、療法なしと比較した、ATRA療法中のNK細胞のMFI(CD38)の倍率の増加を示す。図15は、50nMのATRAまたは溶媒対照で48時間インキュベーションした後のCD38WTおよびCD38KONK細胞におけるCD38発現の代表的なFACS分析データを示す。対照試料およびATRA処理試料は、それぞれ黒色および灰色の線で示されている。未染色対照は、塗りつぶしたヒストグラムで示されている。図15Eは、対照試料の生存率と比較した、50nMのATRAまたは溶媒対照の存在下、DARAで48時間処理されたCD38WTおよびCD38KONK細胞の生存率を示す(平均値±SD)。図15F~15G、50nMのATRAまたは溶媒対照の存在下での48時間の細胞傷害性アッセイにおける、骨髄腫細胞株に対する対CD38WTおよびCD38KONK細胞の細胞傷害性およびDARA媒介性ADCC活性。E:T比は、MM.1Sでは0.25:1、KMS-11では0.5:1である(平均値±SD)。
図15-2】図15―1と同じである。
図15-3】図15―1と同じである。
図16-1】図16A~16Gは、CD38KONK細胞の好ましい代謝リプログラミングを示す。図16Aは、対のCD38WTおよびCD38KONK細胞(n=6)の正規化RNA-seqデータに基づいて、インジェニュイティ経路解析(IPA)によって決定される、有意に変化した経路(コレステロール生合成およびOXPHOS)のDEGのヒートマップを示す。図16Bは、DEGの主成分分析を示し、広範なドナー間の変動にもかかわらず、各ドナーに対するCD38欠失の一貫した効果を示す。図16Cは、対のCD38WTおよびCD38KONK細胞の代謝分析の要約データを示す(n=3、平均値±SD)。図16Dは、図16Cに由来する基底OCR、ECAR、OCR/ECAR、およびSRCのグラフィック分析を示す。すべての実験は、5重複を使用して達成された。図16E~16Fは、OCRおよびSRC(図16E)、ならびにECARおよび予備解糖能(図16F)を含む、追加の3つのドナーの分析を示す。図16Gは、6つすべてのドナーのOCRおよびSRCの分析を示す。
図16-2】図16―1と同じである。
図16E図16―1と同じである。
図16F図16―1と同じである。
図16G図16―1と同じである。
図17】6つの異なる対のCD38WTおよびCD38KONK細胞の正規化RNA-seqデータのボルケーノプロットを示す。CD38WTNK細胞と比較して、CD38KONK細胞における最も有意に変化した遺伝子を示す。
図18】DARA処理中の再発症例からのMM細胞のCD38発現を示す。DARA耐性症例由来のNK細胞およびBMSCを、FITCで標識されたマルチエピトープ抗CD38抗体で染色した後、APCで標識された抗FITC抗体で染色した。MM細胞を、CD138細胞と定義した。染色試料のMFI(CD38)および蛍光マイナス1(FMO)対照(マルチエピトープ抗CD38抗体なし)を示す。
図19】CD38の欠失は、NADリサイクリングを低減し、NAD/NADH比の増加をもたらす。
図20】ミトコンドリア活性の増加を示唆する酸化的代謝への著しい代謝のシフトにもかかわらず、CD38ノックアウトでは、ミトコンドリアの膜電位が変化しないことを示す。
図21】酸化的代謝への著しい代謝のシフトにもかかわらず、CD38ノックアウトでは、低グルコース設定におけるNK細胞の機能が変化しないことを示す。V.
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法が開示および説明する前に、それらは、特に明記しない限り、特定の合成方法または特定の組換えバイオテクノロジー方法に限定されず、特に明記しない限り、特定の試薬(当然、変化し得るため)に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0023】
A.定義
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「1つの」(「a」、「an」、および「the」)は、文脈上別段明らかに指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「薬学的担体」への言及は、2つ以上のそのような担体の混合物などを含む。
【0024】
本明細書では、範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値まで、のように表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、ある特定の値から、および/または他の特定の値まで、を含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行詞の「約」を使用することによって、特定の値は別の実施形態を形成することが理解されよう。さらに、範囲の各終点は、他の終点と関連して、および他の終点とは独立して、両方とも重要であることが理解されよう。本明細書に開示されるいくつかの値が存在し、各値は、値自体に加えて、その特定の値を「約」として本明細書に開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、次いで「約10」も開示される。当業者によって適切に理解されるように、値が「値以下」であることが開示される場合、「値以上」および値間の可能な範囲も開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「10以下」ならびに「10以上」も開示される。また、本出願全体にわたって、データは、いくつかの異なる形式で提供され、このデータは、終点および始点、ならびにデータポイントの任意の組合せの範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータポイント「10」および特定のデータポイント15が開示される場合、10と15との間に加えて、10超、10以上、10に等しい、15未満、15以下、および15に等しいが開示されるとみなされることが理解される。また、2つの特定のユニット間の各ユニットも開示されることが理解される。例えば、10および15が開示される場合、11、12、13、および14も開示される。
【0025】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、以下の意味を有するべく定義されたいくつかの用語を参照されたい。
【0026】
「任意選択的」または「任意選択的に」とは、後で説明する事象または状況が生じても生じなくてもよいことを意味し、説明には、当該事象または状況が生じる事例および生じない事例を含む。
【0027】
「プライマー」は、ある種の酵素マニピュレーションを支持することができ、酵素マニピュレーションが生じ得るように標的核酸とハイブリダイズすることができるプローブのサブセットである。プライマーは、酵素マニピュレーションを妨げない、当該技術分野で入手可能なヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体または類似体の任意の組合せから作製することができる。
【0028】
「プローブ」は、典型的には、例えばハイブリダイゼーションを通して、配列特異的な様式で標的核酸と相互作用することができる分子である。核酸のハイブリダイゼーションは、当該技術分野で十分に理解され、本明細書で論じられる。典型的には、プローブは、当該技術分野で入手可能なヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体または類似体の任意の組合せから作製することができる。
【0029】
特定のRNAを「コードする」DNA配列は、RNAに転写されるDNA核酸配列である。DNAポリヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されたRNA(mRNA)をコードしてもよく(したがって、DNAおよびmRNAはともにタンパク質をコードする)、またはDNAポリヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されないRNA(例えば、tRNA、rRNA、マイクロRNA(miRNA)、「非コード」RNA(ncRNA)、ガイドRNAなど)をコードしてもよい。
【0030】
「タンパク質コード配列」または特定のタンパク質もしくはポリペプチドをコードする配列は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合、mRNAに転写され、(DNAの場合)、インビトロまたはインビボでポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸配列である。コード配列の境界は、5’末端(N末端)での開始コドンおよび3’末端(C末端)での翻訳停止ナンセンスコドンによって決定される。コード配列には、原核生物または真核生物mRNA由来のcDNA、原核生物または真核生物DNA由来のゲノムDNA配列、および合成核酸が挙げられるが、これらに限定されない。転写終結配列は、通常、コード配列の3’に位置する。
【0031】
本明細書で使用される場合、核酸、ポリペプチド、細胞、または生物に適用される「天然に存在する」または「未改変」または「野生型」という用語は、天然に見出される核酸、ポリペプチド、細胞、または生物を指す。例えば、自然界の供給源から単離することができ、かつ実験室内でヒトによって意図的に改変されていない生物(ウイルスを含む)中に存在するポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、野生型である(および天然に存在する)。
【0032】
「増加」は、より大きな量の症状、疾患、組成物、状態、または活性をもたらす任意の変化を指すことができる。増加は、統計的に有意な量の状態、症状、活性、組成物の任意の個別、中央値、または平均の増加であり得る。よって、増加は、増加が統計的に有意である限り、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%の増加であり得る。
【0033】
「減少」は、より小さな量の症状、疾患、組成物、状態、または活性をもたらす任意の変化を指すことができる。物質を含む遺伝子産物の遺伝子出力が、物質を含まない遺伝子産物の出力と比較して少ない場合、物質は、遺伝子の遺伝子出力を減少させるとも理解される。また、例えば、減少は、症状が以前に観察されたものよりも少ないように、障害の症状の変化であり得る。減少は、統計的に有意な量の状態、症状、活性、組成物の任意の個別、中央値、または平均の減少であり得る。よって、減少は、減少が統計的に有意である限り、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%の減少であり得る。
【0034】
「対象」という用語は、投与または治療の標的である任意の個体を指す。対象は、脊椎動物、例えば、哺乳動物であり得る。一態様では、対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、またはネコであり得る。対象は、モルモット、ラット、ハムスター、ウサギ、マウス、またはモグラであり得る。よって、対象は、ヒトまたは獣医患者であり得る。「患者」という用語は、臨床医、例えば、医師の治療下にある対象を指す。
【0035】
「治療」という用語は、疾患、病理学的状態、または障害を治癒、改善、安定化、または予防する意図を有する患者の医学的管理を指す。この用語は、能動的治療、すなわち、疾患、病理学的状態、または障害の改善に特異的に向けられた治療を含み、また因果的治療、すなわち、関連する疾患、病理学的状態、または障害の原因の除去に向けられた治療を含む。加えて、この用語は、姑息的治療、すなわち、疾患、病理学的状態、または障害の治癒ではなく、症状の緩和のために設計された治療、予防的治療、すなわち、関連する疾患、病理学的状態、または障害の発症を最小限に抑えるか、または部分的に、もしくは完全に阻害することを目的とした治療、および支持的治療、すなわち、関連する疾患、病理学的状態、または障害の改善に向けられた別の特定の療法を補足するために使用される治療を含む。
【0036】
「対象への投与」には、対象に薬剤を導入または送達する任意の経路が含まれる。投与は、経口、局所、静脈内、皮下、経皮(transcutaneous)、経皮(transdermal)、筋肉内、関節内、非経口、動脈内、皮内、心室内、頭蓋内、腹腔内、病巣内、鼻腔内、直腸、膣、吸入による、移植リザーバー経由、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、腹腔内、肝臓内、病巣内、および頭蓋内注射または注入技術)などを含む、任意の好適な経路によって実施することができる。本明細書で使用される「同時投与」(concurrent administration、administration in combination、simultaneous administration、またはadministered simultaneously)は、化合物が、時間的に同じ時点で投与されるか、または本質的に互いの直後に投与されることを意味する。後者の場合、2つの化合物は、観察された結果が、時間的に同じ時点で投与された場合に得られる結果と区別できないような十分近い時間に投与される。「全身投与」とは、例えば、循環系またはリンパ系への入口を通して、対象の身体の広範な領域(例えば、身体の50%超の領域)に薬剤を導入または送達する経路を介して、対象に薬剤を導入または送達することを指す。対照的に、「局所投与」は、投与点の領域またはそれに直接隣接する領域に薬剤を導入または送達し、治療上有意な量で薬剤を全身的に導入しない経路を介して、対象に薬剤を導入または送達することを指す。例えば、局所投与される薬剤は、投与点の局所的な近傍で容易に検出可能であるが、対象の身体の遠位部分では検出不能であるか、または無視できる量で検出可能である。投与には、自己投与および他者による投与が含まれる。
【0037】
薬剤の「有効量」とは、所望の効果を提供するのに十分な量の薬剤を指す。「有効」である薬剤の量は、対象の年齢および一般状態、特定の薬剤(複数可)などの多くの要因に応じて、対象によって異なるであろう。したがって、定量化された「有効量」を指定することは必ずしも可能ではない。しかしながら、任意の対象の場合における適切な「有効量」は、日常的な実験を使用して当業者によって決定されてもよい。また、本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、薬剤の「有効量」とは、治療上有効量および予防上有効量の両方をカバーする量も指すことができる。治療効果を達成するのに必要な薬剤の「有効量」は、対象の年齢、性別、および体重などの要因に従って変化し得る。投与計画は、最適な治療応答を提供するように調整することができる。例えば、一日に用量をいくつかに分割して投与してもよく、または治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例して低減してもよい。
【0038】
「薬学的に許容される」構成要素は、生物学的または他の望ましくないものではない構成要素、すなわち、著しく望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、またはそれが含有される製剤の他の構成要素のいずれかと有害な様式で相互作用することなく、本発明の医薬製剤に組み込んで、本明細書に記載のように対象に投与することができる構成要素を指すことができる。ヒトへの投与に関して使用される場合、この用語は、一般に、構成要素が毒性試験および製造試験の必要な基準を満たしているか、またはそれが、米国食品医薬品局によって調製された不活性成分ガイドに含まれることを意味する。
【0039】
「薬学的に許容される担体」(「担体」と称されることがある)は、一般に安全かつ無毒の薬学的または治療組成物の調製において有用な担体または賦形剤を意味し、獣医学的および/またはヒトの薬学的または治療的使用が許容される担体を含む。「担体」または「薬学的に許容される担体」という用語は、限定されないが、リン酸緩衝食塩水、水、エマルジョン(油/水もしくは水/油エマルジョンなど)、および/または様々な種類の湿潤剤を含むことができる。本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、脂質、安定剤、または医薬製剤で使用するために当該技術分野でよく知られた他の材料、および本明細書にさらに記載される材料を包含するが、これらに限定されない。
【0040】
「薬理学的活性」(または単に「活性」)は、「薬理学的活性」誘導体または類似体において、親化合物と同じ種類の薬理学的活性を有し、程度がほぼ同等な誘導体または類似体(例えば、塩、エステル、アミド、複合体、代謝産物、異性体、断片など)を指し得る。
【0041】
「治療剤」は、有益な生物学的効果を有する任意の組成物を指す。有益な生物学的効果としては、治療効果、例えば、障害または他の望ましくない生理学的状態の治療、および予防効果、例えば、障害または他の望ましくない生理学的状態(例えば、非免疫原性がん)の予防の両方が挙げられる。これらの用語はまた、本明細書に具体的に言及される有益な薬剤の薬理学的に許容される活性な誘導体を包含し、限定されないが、塩、エステル、アミド、前駆薬剤、活性代謝産物、異性体、断片、類似体などを含む。「治療剤」という用語が使用される場合、次いで、または特定の薬剤が具体的に同定される場合、この用語は、薬剤自体、ならびに薬学的に許容される薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、前駆薬剤、複合体、活性代謝産物、異性体、断片、類似体などを含むことを理解されたい。
【0042】
組成物(例えば、薬剤を含む組成物)の「治療上有効量」または「治療上有効用量」は、所望の治療結果を得るのに有効な量を指す。一部の実施形態では、所望の治療結果は、I型糖尿病の制御である。一部の実施形態では、所望の治療結果は、肥満の制御である。所与の治療剤の治療上有効量は、典型的には、治療される障害または疾患の種類および重症度、ならびに対象の年齢、性別、および体重などの要因に関して異なるであろう。この用語はまた、疼痛緩和などの所望の治療効果を促進するのに有効な、治療剤の量、または治療剤の送達の速度(例えば、経時的な量)を指すこともできる。正確な所望の治療効果は、治療される状態、対象の耐容性、投与される薬剤および/または薬剤製剤(例えば、治療剤の効力、製剤中の薬剤の濃度など)、ならびに当業者によって理解される様々な他の因子に従って異なるであろう。場合によっては、所望の生物学的応答または医学的応答は、数日、数週間、または数年にわたって、組成物を対象に複数回投与した後に達成される。
【0043】
本出願全体を通して、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、本出願に関係する技術水準をより完全に説明するために参照により本出願に援用される。開示される参考文献はまた、参考文献に依る文章で論じられ、それらに含まれる材料について、個別にかつ具体的に参照により本明細書に援用される。
【0044】
B.CD38ノックアウトNK細胞を投与することを含む、がんを治療する方法
多発性骨髄腫は、最も頻繁に診断される血液がんの1つである。最近、FDAは、多発性骨髄腫を治療するための治療用モノクローナル抗体であるダラツムマブを承認した。ダラツムマブは、標的がん細胞上のCD38分子に結合し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および他の機構を介して細胞死を媒介する。イサツキシマブ、TAK-079、およびMOR202を含む他の抗CD38抗体も、がんの治療のために開発されている。これらの抗体によって誘導されるADCCは、NK細胞によって媒介される。しかしながら、CD38を標的とする薬剤の使用は、その有効性を制限する負の効果を有する。NK細胞がその細胞表面でCD38を発現するため、これらの抗CD38抗体の使用により、それらの有効性の活性成分であるNK細胞の殺傷(フラトリサイド)がもたらされる。
【0045】
これらの抗CD38療法によるNK細胞のフラトリサイドの問題を克服し、がんを治療するために、CD38の発現をノックアウトするように操作されたNK細胞の投与は、これらの両方の問題に対処することができることが認識された。要するに、操作されたNK細胞は、抗CD38免疫療法によって引き起こされるNK細胞枯渇に対して耐性であり、抗CD38抗体の有効性を増加させる。したがって、一態様では、がんおよび/または転移(例えば、多発性骨髄腫、白血病(急性骨髄性白血病(AML)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、または芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)を含むが、これらに限定されない)を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防するために対象に投与される抗CD38免疫療法(例えば、CD38を標的とする小分子、抗体(ダラツムマブ、イサツキシマブ、TAK-079、および/またはMOR202を含むが、これらに限定されない)、ペプチド、タンパク質、またはsiRNAなど)の有効性を増加させる方法も本明細書に開示され、対象に、任意の先行する態様の改変NK細胞(例えば、CD38ノックアウトNK細胞など)を投与することを含む。
【0046】
この増加した有効性は、がん患者にとって非常に有益であることが理解され、本明細書で企図される。したがって、一態様では、対象におけるがんおよび/または転移(例えば、多発性骨髄腫、白血病(急性骨髄性白血病(AML)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、または芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)を含むが、これらに限定されない)を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法が本明細書に開示され、対象に、CD38遺伝子のノックアウトを含むように改変されているNK細胞を投与することを含む。一部の態様では、がんおよび/または転移を治療、減少、阻害、低減、緩和および/または予防する方法は、対象に、CD38を標的とする小分子、抗体、ペプチド、タンパク質、またはsiRNA(例えば、これらに限定されないが、ダラツムマブ、イサツキシマブ、TAK-079、および/またはMOR202を含む抗CD38抗体など)を投与することをさらに含み得る。
【0047】
「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」、「治療(treatment)」、およびそれらの文法的変形は、本明細書で使用される場合、1つ以上の疾患または状態の強度または頻度、疾患または状態の症状、あるいは疾患または状態の根本的な原因を、部分的または完全に予防、遅延、治癒、快癒、緩和、軽減(relieving)、変更、治療(remedying)、改善(ameliorating)、改善(improving)、安定化、軽減(mitigating)、および/または低減することを、意図または目的とする組成物の投与が含まれる。本発明による治療は、防止的、予防的、姑息的、または治療的に適用され得る。予防的治療は、発症前(例えば、がんの明らかな兆候の前)、早期発症中(例えば、がんの初期の兆候および症状時)、または確立されたがんの発達後に対象に投与される。予防的投与は、感染症の症状の発現の1日(数日)から数年前に行われ得る。
【0048】
「阻害する」、「阻害すること」、および「阻害」とは、活性、応答、状態、疾患、または他の生物学的パラメータを減少させることを意味する。これには、活性、応答、状態、または疾患の完全な除去が含まれ得るが、これらに限定されない。これはまた、例えば、天然または対照レベルと比較して、活性、応答、状態、または疾患の10%低減を含んでもよい。よって、低減は、天然または対照レベルと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、またはその間の任意の量の低減であり得る。
【0049】
「低減する」または単語の他の形態、例えば、「低減すること」または「低減」とは、事象または特徴(例えば、腫瘍成長)の低下を意味する。これは典型的には、いくつかの標準値または期待値に関し、換言すれば、それは相対的であるが、標準値または相対値が参照されることが必ずしも必要ではないことが理解される。例えば、「腫瘍成長を低減する」とは、標準または対照と比較して、腫瘍の成長速度を低減することを意味する。
【0050】
「予防する」または単語の他の形態、例えば、「予防すること」または「予防」とは、特定の事象もしくは特徴を停止すること、特定の事象もしくは特徴の発生もしくは進行を安定もしくは遅延させること、または特定の事象もしくは特徴が生じる可能性を最小限に抑えることを意味する。予防するとは、典型的には、例えば、低減するよりも絶対的であるため、対照との比較を必要としない。本明細書で使用される場合、何かは予防されないが低減することができるが、低減される何かは予防することもできる。同様に、何かは低減されないが予防することができるが、予防される何かは低減することもできる。低減または予防が使用される場合、特に具体的に指示されない限り、他の単語の使用も明示的に開示されることが理解される。
【0051】
遺伝子改変NK細胞(本明細書に開示されるCD38ノックアウトNK細胞のうちのいずれかなど)および抗CD38剤(例えば、ダラツムマブ、イサツキシマブ、TAK-079、および/もしくはMOR202など)、ならびに/または血管新生阻害剤(例えば、ポマリドミド、レナリドミド、もしくはアプレミラストなど)およびステロイド(例えば、これらに限定されないが、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレニゾロン、トリアムシノロン、もしくは酢酸フルドロコルチゾンを含むグルコルチコイドなど)、ならびに/またはATRAを投与することを含む、がんおよび/もしくは転移(例えば、多発性骨髄腫、AML、T-ALL、および/もしくはBPDCNなど)を治療、減少、阻害、低減、緩和および/もしくは予防する方法は、任意の抗CD38剤を投与する前に、投与するのと同時に、および/もしくは投与した後に、投与され得ることが理解され、かつ本明細書で企図される。一部の態様では、遺伝子改変NK細胞(例えば、本明細書に開示されるCD38ノックアウトNK細胞のうちのいずれか)は、任意の抗CD38剤の投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120分、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13 14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96時間、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、35、42、49、54、もしくは60日前または後に、対象に投与することができる。
【0052】
また、本明細書に記載されるがんおよび/または転移(例えば、多発性骨髄腫、白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、または芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)を含むが、これらに限定されない)を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法が本明細書に開示され、対象に、血管新生阻害剤(例えば、ポマリドミド、レナリドミド、またはアプレミラスト)およびステロイド(例えば、これらに限定されないが、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、メソッドルプレニゾロン、トリアムシノロン、酢酸フルドロコルチゾンを含むグルコルチコイドなど)を投与することをさらに含む。
【0053】
開示される改変NK細胞および改変NK細胞の養子移植の方法は、がんに対する効果的な免疫療法であり得ることが理解され、本明細書で企図される。本開示の方法および組成物を使用して、がんなどの未制御な細胞増殖が生じる任意の疾患を治療することができる。異なる種類のがん(cancers)の非限定的なリストは、以下のとおりである:リンパ腫(ホジキンおよび非ホジキン)、白血病、がん(carcinomas)、固形組織のがん、扁平上皮細胞がん、腺がん、肉腫、神経膠腫、高悪性度神経膠腫、芽細胞腫、神経芽細胞腫、形質細胞腫、組織球腫、黒色腫、腺腫、低酸素腫瘍、骨髄腫、AIDS関連リンパ腫もしくは肉腫、転移性がん、または一般的ながん。
【0054】
開示される組成物を使用して治療することができる代表的だが、非限定的ながんのリストは、以下のとおりである:リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉症、ホジキン病、骨髄性白血病(AMLを含むが、これに限定されない)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、膀胱がん、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)、脳がん、神経系がん、頭頸部がん(head and neck cancer)、頭頸部扁平上皮がん、肺がん(lung cancer)(例えば、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん)、神経芽腫/神経膠芽腫、卵巣がん、皮膚がん、多発性骨髄腫、肝臓がん、黒色腫、(口腔、咽頭、喉頭、および肺の)扁平上皮がん、子宮頸がん(cervical cancer)、子宮頸がん(cervical carcinoma)、乳がん、および上皮がん、腎臓がん、泌尿生殖器がん、肺がん(pulmonary cancer)、食道がん、頭頸部がん(head and neck carcinoma)、大腸がん、造血がん、精巣がん、結腸がん、直腸がん、前立腺がん、または膵臓がん。したがって、一態様では、対象におけるがんおよび/または転移を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法が本明細書に開示され、対象に、CD38遺伝子のノックアウトを含むように改変されているNK細胞を投与することを含む。したがって、一態様では、対象におけるがんおよび/または転移(例えば、多発性骨髄腫、白血病(急性骨髄性白血病(AML)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、または芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)を含むが、これらに限定されない)を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法が本明細書に開示され、対象に、CD38遺伝子のノックアウトを含むように改変されているNK細胞を投与することを含む。一部の態様では、本方法は、対象に、CD38を標的とする薬剤(例えば、これらに限定されないが、ダラツムマブ、イサツキシマブ、TAK-079、およびMOR202を含む抗CD38など)を投与することをさらに含み得る。さらに、本方法はまた、対象に、血管新生阻害剤(例えば、ポマリドミド、レナリドミド、またはアプレミラストなど)およびグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、メソッドルプレニゾロン、トリアムシノロン、または酢酸フルドロコルチゾンなど)を投与することもできる。
【0055】
当該NK細胞の使用、または本明細書に開示される当該NK細胞の使用の一部の実施形態では、当該NK細胞は、(i)CD38(例えば、これらに限定されないが、ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR202、および/もしくはTAK-079を含む抗CD38抗体など)、ならびに/または(ii)血管新生阻害剤(例えば、ポマリドミド、レナリドミド、もしくはアプレミラスト)およびステロイド(例えば、これらに限定されないが、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレニゾロン、トリアムシノロン、または酢酸フルドロコルチゾンを含むグルココルチコイドなど)、ならびに/または(iii)ATRAから選択される抗がん剤と組み合わせて投与するためのものである。
【0056】
実施形態では、抗がん剤は、イサツキシマブまたはダラツムマブなどの抗CD38抗体である。
【0057】
C.NK細胞を遺伝子改変する方法
CRISPR/CRISPR関連(Cas)タンパク質9(Cas9)技術は、最近、免疫細胞を操作する際に使用されているが、プラスミドを用いてNK細胞を遺伝的にリプログラミングすることは、レンチウイルス形質導入およびレトロウイルス形質導入などのDNA依存的な様式での導入遺伝子の送達が、実質的な手順に関連するNK細胞のアポトーシスを引き起こし、遺伝子操作されたNK細胞の産生を限定することから、常に困難であった。エンドヌクレアーゼリボ核タンパク質複合体(例えば、Cas9/RNPなど)を利用してNK細胞を再プログラムする(すなわち、操作するまたは改変する)、初代および増殖ヒトNK細胞のDNAフリーのゲノム編集を使用する方法が、本明細書に記載される。
【0058】
エンドヌクレアーゼ/RNP(例えば、Cas9/RNP)は、CRISPR遺伝子座と複合体化した3成分性の組換えエンドヌクレアーゼタンパク質(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼ)からなる。CRISPR遺伝子座と複合体化したエンドヌクレアーゼは、CRISPR/CasガイドRNAと称され得る。CRISPR遺伝子座は、標的配列と複合体化した相補的反復RNA(crRNA)およびトランス相補的反復RNA(tracrRNA)にハイブリダイズし得るRNAからなる合成単一ガイドRNA(gRNA)を含む。したがって、CRISPR/CasガイドRNAは、細胞のゲノムDNA内の標的配列にハイブリダイズする。一部の場合では、クラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼは、II型CRISPR/Casエンドヌクレアーゼである。一部の場合では、クラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼは、Cas9ポリペプチドであり、対応するCRISPR/CasガイドRNAは、Cas9ガイドRNAである。これらのCas9/RNPは、機能複合体としてそれらが送達されるために、外来DNAに依存したアプローチと比較して、より高い効率でゲノム標的を切断することができる。加えて、細胞からのCas9/RNPの迅速なクリアランスは、アポトーシスの誘導などのオフターゲット効果を低減することができる。したがって、一態様では、NK細胞を遺伝子改変する方法が本明細書に開示され、NK細胞の標的DNA配列に特異的なガイドRNA(gRNA)を得ることと、b)NK細胞のゲノムDNA内の標的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/CasガイドRNAと複合体化したクラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ9(Cas9)を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体を、標的NK細胞に形質導入する(例えば、エレクトロポレーションを介して導入する)ことと、を含む。
【0059】
本明細書で使用されるエンドヌクレアーゼは、典型的に合成Cas9に使用されるStreptococcus pyogenesのCas9(SpCas9)に限定されないことが理解され、本明細書で企図される。一態様では、Cas9は、異なる細菌源に由来し得る。Cas9の置換を使用して、標的特異性を増やすこともできるため、gRNAを使用する必要がより少なくなる。したがって、例えば、Cas9は、Staphylococcus aureus(SaCas9)、Acidaminococcus属種(AsCpf1)、Prevotellaに由来するクラスター化された規則的な間隔の短い回文反復、およびLachnospiracase細菌に由来するFrancisella 1(Cpf1)(LbCpf1)、Neisseria meningitidis(NmCas9)、Streptococcus thermophilus(StCas9)、Campylobacter jejuni(CjCas9)、強化SpCas9(eSpCas9)、SpCas9-HF1、Fokl融合dCas9、増殖Cas9(xCas9)、および/または触媒不活性Cas9(dCas9)に由来し得る。さらに、Cas9システムの代わりに、他のCasエンドヌクレアーゼ、例えば、CasX、CasY、Cas14、Cas4、Csn2、Cas13a、Cas13b、Cas13c、Cas13d、C2c1、もしくはC2c3などを使用するか、またはプライム編集を含む任意の他の種類の操作されたCasタンパク質を使用することができる。
【0060】
本明細書では、Cas9ヌクレアーゼ活性を標的部位に標的化し、またドナープラスミドを切断して、ドナー導入遺伝子の宿主DNAへの組換えを可能にするために、crispr RNA(crRNA)を使用することが理解され、企図される。一部の場合では、crRNAをtracrRNAと組み合わせて、ガイドRNA(gRNA)を形成する。開示されるプラスミドは、AAVS1と称される、ヒトの19番染色体上のタンパク質ホスファターゼ1の調節サブユニット12C(PPP1R12C)遺伝子のイントロン1を、導入遺伝子の組込みの標的部位とした、AAV組込みを使用する。この遺伝子座は、「セーフハーバー遺伝子」であり、多くの細胞型において安定した長期の導入遺伝子発現を可能にする。PPP1R12Cの破壊は、いかなる既知の疾患とも関連しないため、AAVS1遺伝子座は、導入遺伝子の標的化のための安全なハーバーとみなされることが多い。AAVS1部位が標的位置として使用されているため、CRSPR RNA(crRNA)は、当該DNAを標的にしなければならない。ここで、開示されるプラスミドで使用されるガイドRNAは、GGGGCCACTAGGGACAGGAT(配列番号2)、またはその任意の10ヌクレオチドのセンスもしくはアンチセンスの連続した断片を含む。AAVS1は、本明細書で例示的な目的のために使用されるが、他の「セーフハーバー遺伝子」が、同等の結果で使用され得、トランスフェクトされる特定の細胞型または導入遺伝子を考慮してより適切であれば、AAVS1に置換され得ることが理解され、本明細書で企図される。他のセーフハーバー遺伝子の例としては、限定されないが、C-Cケモカイン受容体5型(CCR5)、ROSA26遺伝子座、およびTRACが挙げられる。
【0061】
標的ゲノムに送達されるドナー導入遺伝子構築物のサイズには、サイズ制限が存在し得ることが理解され、本明細書で企図される。導入遺伝子の許容サイズを増加させる1つの方法は、典型的に使用されるStreptococcus pyogenes(SpCas9)のCas9を、異なる細菌源からの合成Cas9またはCas9に交換することによって、追加の余地を生成することである。Cas9の置換を使用して、標的特異性を増やすこともできるため、gRNAを使用する必要がより少なくなる。したがって、例えば、Cas9は、Staphylococcus aureus(SaCas9)、Acidaminococcus属種(AsCpf1)、Lachnospiracase bacterium(LbCpf1)、Neisseria meningitidis(NmCas9)、Streptococcus thermophilus(StCas9)、Campylobacter jejuni(CjCas9)、強化SpCas9(eSpCas9)、SpCas9-HF1、Fokl融合dCas9、増殖Cas9(xCas9)、および/または触媒不活性Cas9(dCas9)、に由来し得る。
【0062】
特定のCas9を使用すると、Cas9エンドヌクレアーゼ(または代替物)を使用して標的をスクリーニングするPAM配列を変えることができることが理解され、本明細書で企図される。本明細書で使用される場合、好適なPAM配列は、NGG(SpCas9 PAM)、NNGRRT(SaCas9 PAM)、NNNNGATT(NmCAs9 PAM)、NNNNRYAC(CjCas9 PAM)、NNAGAAW(St)、TTTV(LbCpf1 PAMおよびAsCpf1 PAM)、TYCV(LbCpf1 PAMバリアントおよびAsCpf1 PAMバリアント)を含む(式中、Nは、任意のヌクレオチドであり、Vは、A、C、またはGであり、Yは、CまたはTであり、Wは、AまたはTであり、Rは、AまたはGである)。
【0063】
RNP複合体を作製するために、crRNAおよびtracrRNAを、約50μM~約500μM(例えば、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、35、375、400、425、450、475、または500μM)、好ましくは100μM~約300μM、最も好ましくは約200μMの濃度の1:1、2:1、または1:2の比で、95℃で約5分間混合して、crRNA:tracrRNA複合体(すなわち、ガイドRNA)を形成することができる。次いで、crRNA:tracrRNA複合体を、Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9など)の約20μM~約50μM(例えば、21、22、23,24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47 48、49、または50μM)の最終希釈で混合することができる。
【0064】
標的細胞中の標的配列に結合すると、CRISPR遺伝子座は、標的DNAに、1つ以上の塩基対の挿入もしくは欠失、異種DNA断片(例えば、ドナーポリヌクレオチド)の挿入、内因性DNA断片の欠失、内因性DNA断片の反転もしくは転座、またはそれらの組合せ、を導入することによってゲノムを改変することができる。したがって、本開示の方法を使用して、相同組換えのためにDNAと組み合わせた場合、ノックアウトまたはノックインを生成することができる。本明細書では、エレクトロポレーションを介したCas9/RNPの形質導入は、NK細胞における遺伝子改変の以前の制約を克服する容易かつ比較的効率的な方法であることが示される。
【0065】
本開示の方法は、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、T細胞、B細胞、マクロファージ、線維芽細胞、骨芽細胞、肝細胞、神経細胞、上皮細胞、および/または筋肉細胞を含む任意の細胞型で利用できることが理解され、本明細書で企図される。ヒトNK細胞は、CD56またはCD16の発現およびT細胞受容体(CD3)の不在によって定義される末梢血リンパ球のサブセットである。NK細胞は、主要組織適合複合体(MHC)のクラスI分子を欠く標的細胞を感知し、死滅させる。NK細胞活性化受容体には、とりわけ、自然細胞毒性受容体(NKp30、NKp44およびNKp46)、ならびにレクチン様受容体NKG2DおよびDNAM-1が含まれる。それらのリガンドは、ストレスを受けた細胞、形質転換した細胞、または感染した細胞で発現されるが、正常細胞では発現されないため、正常細胞は、NK細胞殺傷に対して耐性となる。一態様では、標的細胞は、ドナー源(例えば、養子移植療法のための同種ドナー源もしくは自己ドナー源(すなわち、改変NK細胞の最終レシピエント)、NK細胞株(NK RPMI8866、HFWT、K562、およびEBV-LCLを含むが、これらに限定されない)、または初代NK細胞源もしくはNK細胞株に由来する増殖NK細胞源からの初代NK細胞であり得る。
【0066】
NK細胞の形質導入の前に、NK細胞を、NK細胞の増殖に好適な培地中でインキュベートすることができる。培養条件は、サイトカイン、抗体、および/またはフィーダー細胞の添加を含み得ることが理解され、本明細書で企図される。したがって、一態様では、NK細胞を遺伝子改変する方法が本明細書に開示され、細胞を形質導入する前に、NK細胞の増殖を支持する培地中で、NK細胞を1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日間インキュベートすることをさらに含み、培地は、サイトカイン、抗体、および/またはフィーダー細胞をさらに含む。例えば、培地は、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、および/またはIL-21を含むことができる。一態様では、培地はまた、抗CD3抗体を含むことができる。一態様では、フィーダー細胞は、NK細胞を刺激するフィーダー細胞から精製され得る。本明細書に開示される、請求項に記載の発明において使用するためのNK細胞刺激フィーダー細胞は、照射された自己もしくは同種末梢血単核細胞(PBMC)または照射されていない自己もしくはPBMC、RPMI8866、HFWT、K562、膜結合IL-15および41BBL、もしくはIL-21、もしくはこれらの任意の組合せでトランスフェクトされたK562細胞、あるいはEBV-LCL、のいずれかであり得る。一部の態様では、NK細胞フィーダー細胞は、IL-21、IL-15、および/または41BBLの溶液と組み合わせて提供される。フィーダー細胞は、1:2、1:1、または2:1の比率で、NK細胞の培養に播種することができる。培養期間は、エレクトロポレーション後1~14日間(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日間)、好ましくは3~7日間、最も好ましくは4~6日間であり得ることが理解され、本明細書で企図される。
【0067】
初代NK細胞および増殖NK細胞のインキュベーション条件は、異なる場合があることを理解され、本明細書で企図される。一態様では、エレクトロポレーション前の初代NK細胞の培養は、培地、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、および/またはIL-21など)、および/または抗CD3抗体を5日間未満(例えば、1、2、3、または4日間)含む。増殖NK細胞について、培養は、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、および/またはIL-21など)および/または抗CD3抗体に加えて、またはそれに代えて、NKフィーダー細胞の存在下で(例えば、1:1の比率で)行われ得る。増殖NK細胞の培養は、形質導入前に1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間行うことができる。したがって、一態様では、NK細胞を遺伝子改変する方法が本明細書に開示され、エレクトロポレーションの前に、初代NK細胞を、IL-2の存在下で、4日間インキュベートすること、またはエレクトロポレーションの前に、照射されたフィーダー細胞の存在下で、増殖NK細胞を、4、5、6、または7日間インキュベートすること、を含む。
【0068】
本開示の方法において、NK細胞を改変するために形質導入する方法が限定されることが理解され、本明細書で企図される。それらの免疫機能により、NK細胞は、ウイルスおよび細菌ベクター、ならびに当該ベクターによるNK細胞のアポトーシスの誘導に耐性がある。したがって、本方法以前は、NK細胞のCRISPR/Cas改変は成功していなかった。ウイルスベクターに関する問題を回避するために、開示される方法は、エレクトロポレーションを使用して標的NK細胞を形質転換する。エレクトロポレーションは、細胞に電場を適用して、細胞膜の透過性を増加させる技術である。電場の適用は、細胞膜を横切る電荷勾配を引き起こし、細胞膜を横切って核酸などの電荷分子を引き出す。したがって、一態様では、NK細胞を遺伝子改変する方法が本明細書に開示され、NK細胞の標的DNA配列に特異的なガイドRNA(gRNA)を得ることと、b)NK細胞のゲノムDNA内の標的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/CasガイドRNAと複合体化したクラス2のCRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas9)を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体を、標的NK細胞にエレクトロポレーションを介して導入することと、を含む。
【0069】
NK細胞の形質導入(例えば、エレクトロポレーション)後、改変NK細胞は、ようやく、改変NK細胞を刺激するフィーダー細胞を含む培地で増殖させることができる。したがって、改変細胞は、照射されたフィーダー細胞を使用してエレクトロポレーション後に増殖することができるため、生存能および増殖可能性を保持する。本明細書に開示される、請求項に記載の発明において使用するためのNK細胞刺激フィーダー細胞は、照射された自己もしくは同種末梢血単核細胞(PBMC)または照射されていない自己もしくはPBMC、RPMI8866、HFWT、K562、膜結合IL-15および41BBL、もしくはIL-21、もしくはこれらの任意の組合せでトランスフェクトされたK562細胞、あるいはEBV-LCL、のいずれかであり得る。一部の態様では、NK細胞フィーダー細胞は、IL-21、IL-15、および/または41BBLの溶液と組み合わせて提供される。フィーダー細胞は、1:2、1:1、または2:1の比率で、NK細胞の培養に播種することができる。培養期間は、エレクトロポレーション後1~14日間(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日間)、好ましくは3~7日間、最も好ましくは4~6日間であり得ることが理解され、本明細書で企図される。一部の態様では、改変NK細胞を培養するための培地は、例えば、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、および/またはIL-21などのサイトカインをさらに含むことができる。
【0070】
一態様では、NK細胞を遺伝子改変する開示された方法の1つの目的は、改変NK細胞を生成することであることが理解され、本明細書において企図される。したがって、開示される方法によって作製される遺伝子改変NK細胞が、本明細書に開示される。例えば、別の態様では、遺伝子改変NK細胞が本明細書に開示され、薬剤として使用するための、好ましくは、がんおよび/または転移を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法で使用するための、本明細書に開示される表面抗原分類38(CD38)をコードする遺伝子のノックアウトを含む。別の態様では、遺伝子改変NK細胞が本明細書に開示され、(i)それを必要とする対象における酸化呼吸能を増加させる方法、または(ii)それを必要とする対象における細胞外NADの加水分解を制限し、酸化還元的呼吸能を改善する方法で使用するための、本明細書に開示される表面抗原分類38(CD38)をコードする遺伝子のノックアウトを含む。同様に、遺伝子改変NK細胞の使用も本明細書に開示され、薬剤の製造において、好ましくは、がんおよび/または転移を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防するための薬剤の製造において、本明細書に開示される表面抗原分類38(CD38)をコードする遺伝子のノックアウトを含む。別の態様では、遺伝子改変NK細胞の使用が本明細書に開示され、(i)それを必要とする対象における酸化呼吸能を増加させるための、または(ii)それを必要とする対象における細胞外NADの加水分解を制限し、酸化還元呼吸能を改善するための薬剤の製造における、本明細書に開示される表面抗原分類38(CD38)をコードする遺伝子のノックアウトを含む。
【0071】
上記のように、多発性骨髄腫、白血病(急性骨髄性白血病(AML)、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、または芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)を含むが、これらに限定されない)のようながんを治療するための、ダラツムマブなどの抗CD38療法を受ける対象におけるNK細胞のフラトリサイドは、NK細胞がその細胞表面上で高レベルのCD38を発現するため、重大な問題である。したがって、がんの治療に有利であろうNK細胞の1つの改変は、抗CD38治療中にNK細胞のフラトリサイドに感受性のないNK細胞集団を産生するためのCD38のノックアウトであることが理解され、本明細書で企図される。かかる改変細胞は、NK細胞の添加で治療され得る任意の疾患または状態の免疫療法において、非常に有用であり得る。したがって、一態様では、CD38をコードする遺伝子のノックアウトを含む遺伝子改変NK細胞が本明細書に開示される。
【0072】
本開示全体を通して指摘されるように、開示される改変NK細胞は、理想的には、改変(すなわち、操作された)NK細胞を、それ必要とする対象に養子移植するなどの免疫療法における使用に好適である。したがって、一態様では、操作されたNK細胞を、それを必要とする対象に養子移植する方法が、本明細書に開示され、当該方法は、a)改変される標的NK細胞を得ることと、b)標的DNA配列に特異的なgRNAを得ることと、c)エレクトロポレーションを介して、標的NK細胞に、標的NK細胞のゲノムDNA内で標的配列にハイブリダイズする対応するCRISPR/Cas gRNAと複合体化したクラス2 CRISPR/Casエンドヌクレアーゼ(Cas9)を含むRNP複合体を導入して、操作されたNK細胞を生成することと、d)操作されたNK細胞を対象に移植することと、を含む。
【0073】
一態様では、本開示の免疫療法の方法で使用される改変NK細胞は、ドナー源(例えば、養子移植療法のための同種ドナー源もしくは自己ドナー源(すなわち、改変NK細胞の最終レシピエント)、NK細胞株(NK RPMI8866、HFWT、K562、およびEBV-LCLを含むが、これらに限定されない)、または初代NK細胞源もしくはNK細胞株に由来する増殖NK細胞の供与源からの初代NK細胞であり得る。初代NK細胞を使用することができるため、NK細胞の開示された改変がエクスビボまたはインビトロで生じ得ることが理解され、本明細書で企図される。
【0074】
NK細胞の形質導入後、改変NK細胞は、改変(すなわち、操作された)NK細胞を対象に投与する前に増殖および刺激され得る。例えば、NK細胞を、それを必要とする対象に養子移植する方法が本明細書に開示され、NK細胞を、対象に投与する前に照射されたmbIL-21発現フィーダー細胞とともに増殖させる。一部の態様では、改変(すなわち、操作された)NK細胞の刺激および増殖は、対象への改変NK細胞の投与後または投与と同時に、インビボで生じ得ることが理解され、本明細書で企図される。したがって、IL-21または照射されたmbIL-21発現フィーダー細胞の投与を介して対象にNK細胞を移植した後で、対象においてNK細胞を増殖させる免疫療法の方法が、本明細書に開示される。
【0075】
1.ハイブリダイゼーション/選択的ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーションという用語は、典型的には、プライマーまたはプローブと遺伝子などの、少なくとも2つの核酸分子間の、配列駆動性の相互作用を意味する。配列駆動性の相互作用とは、2つのヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体もしくはヌクレオチド誘導体間で、ヌクレオチド特異的な様式で生じる相互作用を意味する。例えば、Cと相互作用するG、またはTと相互作用するAは、配列駆動性の相互作用である。典型的には、配列駆動性の相互作用は、ヌクレオチドのワトソン-クリック面またはフーグスティーン面上で生じる。2つの核酸のハイブリダイゼーションは、当業者に既知のいくつかの条件およびパラメータによって影響される。例えば、反応の塩濃度、pH、および温度はすべて、2つの核酸分子がハイブリダイズするかどうかに影響する。
【0076】
2つの核酸分子間の選択的ハイブリダイゼーションのパラメータは、当業者に既知である。例えば、一部の実施形態では、選択的ハイブリダイゼーションの条件は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件として定義することができる。例えば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーションおよび洗浄ステップのいずれかまたは両方の温度および塩濃度の両方によって制御される。例えば、選択的ハイブリダイゼーションを達成するためのハイブリダイゼーションの条件は、Tm(分子の半分がそれらのハイブリダイゼーションパートナーから解離する融解温度)より約12~25℃低い温度での高イオン強度溶液(6X SSCまたは6X SSPE)中のハイブリダイゼーション、続いて、洗浄温度がTmより約5℃~20℃低いように選択される温度および塩濃度の組合せでの洗浄、を伴い得る。フィルタ上に固定化された参照DNAの試料を目的の標識核酸にハイブリダイズし、次いで異なるストリンジェンシーの条件下で洗浄する予備実験において、温度および塩条件を容易に経験的に決定する。ハイブリダイゼーション温度は、典型的には、DNA-RNAおよびRNA-RNAハイブリダイゼーションに関してより高い。上述のように、または当該技術分野で知られているように、これらの条件を使用して、ストリンジェンシーを達成することができる。DNA:DNAハイブリダイゼーションの好ましいストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、6X SSCまたは6X SSPE中で約68℃(水溶液中)で、続いて68℃で洗浄することができる。所望により、ハイブリダイゼーションおよび洗浄のストリンジェンシーは、所望の相補性の程度が減少するにつれて、さらに、可変性が検索される任意の領域のG-CまたはA-T豊富さに応じて、低減させることができる。所望により、ハイブリダイゼーションおよび洗浄のストリンジェンシーは、所望の相補性の程度が増加するにつれて、さらに、すべて当該技術分野で知られているように高い相補性が望まれる任意の領域のG-CまたはA-T豊富さに応じて、増加させることができる。
【0077】
選択的ハイブリダイゼーションを定義する別の方法は、他方の核酸に結合した核酸の一方の量(パーセンテージ)を見ることによるものである。例えば、一部の実施形態では、選択的ハイブリダイゼーション条件は、少なくとも約60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%の制限核酸が非制限核酸に結合されるときである。典型的には、非制限プライマーは、例えば、10または100または1000倍過剰である。この種類のアッセイは、制限プライマーおよび非制限プライマーの両方が、例えば、それらのkの10倍もしくは100倍もしくは1000倍未満であるか、または核酸分子のうちの1つのみが10倍もしくは100倍もしくは1000倍であるか、または片方もしくは両方の核酸分子がそれらのkを上回る条件下で実施することができる。
【0078】
選択的ハイブリダイゼーションを定義する別の方法は、ハイブリダイゼーションが所望の酵素マニピュレーションを促進するために必要とされる条件下で、酵素的にマニピュレートされるプライマーのパーセンテージを調べることによるものである。例えば、一部の実施形態では、選択的ハイブリダイゼーションの条件は、少なくとも約60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%のプライマーが酵素マニピュレーションを促進する条件下で酵素的にマニピュレートされるときであり、例えば、酵マニピュレーションがDNA伸長であれば、選択的ハイブリダイゼーションの条件は、少なくとも約60、65、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%のプライマー分子が伸長されるときである。また、好ましい条件には、製造業者によって示唆される条件、またはマニピュレーションを実施する酵素に適切な当該技術分野で示された条件、も含まれる。
【0079】
正に相同性と同様に、2つの核酸分子間のハイブリダイゼーションのレベルを決定するための様々な方法が、本明細書に開示されていることが理解される。これらの方法および条件は、2つの核酸分子間のハイブリダイゼーションの異なるパーセンテージを提供し得ることが理解されるものの、特に指示しない限り、いずれかの方法のパラメータを満たすことは十分であろう。例えば、80%のハイブリダイゼーションが必要であった場合、これらの方法のいずれか1つで必要なパラメータ内で、ハイブリダイゼーションが生じる限り、本明細書に開示されているものとみなされる。
【0080】
当業者であれば、組成物または方法が、いずれか集合的にまたは個別に、ハイブリダイゼーションを決定するためのこれらの基準のいずれか1つを満たす場合、それが、本明細書に開示された組成物または方法であることを理解するであろう。
【0081】
2.核酸
核酸に基づく本明細書に開示される様々な分子が存在し、例えば、核酸(例えば、CD38をコードする核酸、またはCD38ノックアウトを作製するための本明細書に開示される核酸のいずれか)、またはその断片、ならびに様々な機能性核酸が含まれる。開示される核酸は、例えば、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、またはヌクレオチド代替物から構成される。これらおよび他の分子の非限定的な例が、本明細書で論じられる。例えば、ベクターが細胞内で発現される場合、発現したmRNAは典型的にはA、C、G、およびUから構成されることが理解される。同様に、例えば、アンチセンス分子が、例えば外因性送達を通して細胞または細胞環境に導入される場合、アンチセンス分子が、細胞環境中のアンチセンス分子の分解を低減するヌクレオチド類似体から構成されることが有利であることが理解される。
【0082】
a)ヌクレオチドおよび関連分子
ヌクレオチドは、塩基部分、糖部分、およびリン酸部分を含有する分子である。ヌクレオチドは、それらのリン酸部分および糖部分を通して、一緒に連結され、ヌクレオシド間結合を生成することができる。ヌクレオチドの塩基部分は、アデニン-9-イル(A)、シトシン-1-イル(C)、グアニン-9-イル(G)、ウラシル-1-イル(U)、およびチミン-1-イル(T)であり得る。ヌクレオチドの糖部分は、リボースまたはデオキシリボースである。ヌクレオチドのリン酸部分は、五価リン酸である。ヌクレオチドの非限定的な例は、3’-AMP(3’-アデノシン一リン酸)または5’-GMP(5’-グアノシン一リン酸)であろう。当該技術分野で入手可能であり、本明細書で入手可能である、多種多様なこれらの種類の分子が存在する。
【0083】
ヌクレオチド類似体は、塩基、糖、またはリン酸部分のいずれかに、何らかの種類の改変を含有するヌクレオチドである。ヌクレオチドに対する改変は、当該技術分野で既知であり、例えば、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、および2-アミノアデニン、ならびに糖またはリン酸部分における改変を含むであろう。当該技術分野で入手可能であり、本明細書で入手可能である、多種多様なこれらの種類の分子が存在する。
【0084】
ヌクレオチド代替物は、ヌクレオチドと同様の機能特性を有するが、ペプチド核酸(PNA)などのリン酸部分を含有しない分子である。ヌクレオチド代替物は、ワトソン-クリックまたはフーグスティーン様式で核酸を認識するが、リン酸部分以外の部分を通して一緒に連結される分子である。ヌクレオチド代替物は、適切な標的核酸と相互作用するときに、二重らせん型構造に適合することができる。当該技術分野で入手可能であり、本明細書で入手可能である、多種多様なこれらの種類の分子が存在する。
【0085】
他の種類の分子(複合体)をヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に連結して、例えば、細胞取り込みを増強することも可能である。複合体は、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に化学的に連結され得る。そのような複合体としては、限定されないが、脂質部分、例えば、コレステロール部分が挙げられる(Letsinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989,86,6553-6556)。当該技術分野で入手可能であり、本明細書で入手可能である、多種多様なこれらの種類の分子が存在する。
【0086】
ワトソン-クリック相互作用は、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、またはヌクレオチド代替物のワトソン-クリック面との少なくとも1つの相互作用である。ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、またはヌクレオチド代替物のワトソン-クリック面は、プリン系のヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、またはヌクレオチド代替物のC2、N1、およびC6位、ならびにピリミジン系のヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、またはヌクレオチド代替物のC2、N3、C4位を含む。
【0087】
フーグスティーン相互作用は、二重鎖DNAの主溝に曝されるヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体のフーグスティーン面上で起こる相互作用である。フーグスティーン面は、プリンヌクレオチドのN7位およびC6位の反応性基(NH2またはO)を含む。
【0088】
b)配列
本明細書に開示されるシグナル伝達経路に関与するタンパク質分子、例えば、CD38、に関連する様々な配列が存在し、これらのすべては、核酸によってコードされるか、または核酸である。これらの遺伝子のヒト類似体、ならびに他の類似体、およびこれらの遺伝子のアレル、ならびにスプライスバリアントおよび他の種類のバリアントの配列は、Genbankを含む様々なタンパク質および遺伝子データベースで入手可能である。当業者は、配列の不一致および相違を解析する方法、ならびに特定の配列に関連する組成物および方法を、他の関連配列に調整する方法を理解している。プライマーおよび/またはプローブは、本明細書に開示され当該技術分野で既知の情報を与える任意の所与の配列について設計され得る。
【0089】
c)プライマーおよびプローブ
プライマーおよびプローブを含む組成物が開示され、本明細書に開示されるCD38などの開示される核酸と相互作用することができる。特定の実施形態では、プライマーを使用して、DNA増幅反応を支持する。典型的には、プライマーは、配列特異的な様式で伸長され得るであろう。配列特異的な様式でのプライマーの伸長は、プライマーがハイブリダイズするかもしくは別途会合する核酸分子の配列および/または組成物が、プライマーの伸長によって産生される産物の組成物もしくは配列を誘導または影響する任意の方法を含む。したがって、配列特異的な様式でのプライマーの伸長には、PCR、DNA配列決定、DNA伸長、DNA重合、RNA転写、または逆転写が含まれるが、これらに限定されない。配列特異的な様式でプライマーを増幅する技術および条件が好ましい。特定の実施形態では、プライマーは、PCRまたは直接配列決定などのDNA増幅反応に使用される。特定の実施形態では、プライマーはまた、非酵素技術を使用して伸長することができ、例えば、プライマーを伸長するために使用されるヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、それらが化学反応して配列特異的な様式でプライマーを伸長するように改変されることを理解されたい。典型的には、開示されるプライマーは、開示される核酸もしくは核酸の領域にハイブリダイズするか、またはそれらは、核酸の相補体もしくは核酸の領域の相補体とハイブリダイズする。
【0090】
特定の実施形態では、核酸と相互作用するためのプライマーもしくはプローブのサイズは、DNA増幅、またはプローブもしくはプライマーの単なるハイブリダイゼーションなどのプライマーの所望の酵素マニピュレーションを支持する任意のサイズであり得る。典型的なプライマーまたはプローブは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3500、または4000ヌクレオチド長である。
【0091】
他の実施形態では、プライマーまたはプローブは、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3500、または4000ヌクレオチド長以下であり得る。
【0092】
CD38遺伝子のプライマーは、典型的には、CD38遺伝子の領域または完全長の遺伝子を含む増幅DNA産物を産生するために使用され得る。一般に、典型的には、この産物のサイズは、サイズが3ヌクレオチド以内、または2ヌクレオチド以内、または1ヌクレオチド以内に正確に決定され得るようになる。
【0093】
特定の実施形態では、この産物は、少なくとも20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3500、または4000ヌクレオチド長である。
【0094】
他の実施形態では、産物は、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1250、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3500、または4000ヌクレオチド長以下である。
【0095】
3.発現系
細胞に送達される核酸は、典型的には、発現制御系を含有する。例えば、ウイルスおよびレトロウイルス系における挿入遺伝子は、通常、所望の遺伝子産物の発現を制御するのに役立つプロモーター、および/またはエンハンサーを含有する。プロモーターは、一般に、転写開始部位に関して相対的に固定された位置にあるときに機能するDNAの配列である。プロモーターは、RNAポリメラーゼおよび転写因子の基本的な相互作用に必要なコア要素を含有し、上流要素および応答要素を含有し得る。
【0096】
a)ウイルスプロモーターおよびエンハンサー
哺乳動物宿主細胞内のベクターからの転写を制御する好ましいプロモーターは、様々な供給源、例えば、ポリオーマ、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、および最も好ましくはサイトメガロウイルスなどのウイルスのゲノムから、または異種哺乳動物プロモーター、例えば、βアクチンプロモーターから得ることができる。SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として好都合に得られる(Fiers et al.,Nature,273:113(1978))。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限断片として好都合に得られる(Greenway,P.J.et al.,Gene 18:355-360(1982))。もちろん、宿主細胞または関連種由来のプロモーターも、本明細書で有用である。
【0097】
エンハンサーは、一般に、転写開始部位から一定距離になくても機能し、転写単位に対して5’側(Laimins,L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.78:993(1981))または3’側(Lusky,M.L.,et al.,Mol.Cell Bio.3:1108(1983))のいずれかであり得るDNAの配列を指す。さらに、エンハンサーは、イントロン内(Banerji,J.L.et al.,Cell 33:729(1983))、およびコード配列自体内(Osborne,T.F.,et al.,Mol.Cell Bio.4:1293(1984))にあってもよい。これらは、通常、10~300bpの長さで、シスで機能する。エンハンサーは、近くのプロモーターからの転写を増加させるように機能する。エンハンサーはまた、しばしば、転写の調節を媒介する応答要素を含有する。プロモーターは、転写の調節を媒介する応答要素も含有し得る。エンハンサーは、しばしば、遺伝子の発現の調節を決定する。多くのエンハンサー配列は、現在、哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、フェトプロテイン、およびインスリン)から既知であるが、典型的には、一般的な発現用に真核生物細胞のウイルス由来のエンハンサーを使用する。好ましい例は、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100~270bp)、サイトメガロウイルスの初期プロモーターのエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマのエンハンサー、およびアデノウイルスのエンハンサーである。
【0098】
プロモーターおよび/またはエンハンサーは、それらの機能を引き起こす光または特定の化学的事象のいずれかによって特異的に活性化され得る。系は、テトラサイクリンおよびデキサメタゾンなどの試薬によって、調節することができる。また、ガンマ線照射などの照射への曝露、またはアルキル化の化学療法薬によって、ウイルスベクターの遺伝子発現を増強する方法も存在する。
【0099】
特定の実施形態では、プロモーターおよび/またはエンハンサー領域は、転写される転写単位の領域の発現を最大化するための構成的プロモーターおよび/またはエンハンサーとして作用することができる。特定の構築物では、プロモーターおよび/またはエンハンサー領域は、特定の時間に特定の種類の細胞でのみ発現する場合であっても、すべての真核生物の細胞型において活性である。この種類の好ましいプロモーターは、CMVプロモーター(650塩基)である。他の好ましいプロモーターは、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(全長プロモーター)、およびレトロウイルスベクターのLTRである。
【0100】
すべての特定の調節要素は、クローニングされ、黒色腫細胞などの特定の細胞型において選択的に発現される発現ベクターを構築するために使用され得ることが示されてきた。グリア線維酢酸タンパク質(GFAP)プロモーターは、グリア起源の細胞で、遺伝子を選択的に発現するために使用されてきた。
【0101】
また、真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または有核細胞)で使用される発現ベクターは、mRNAの発現に影響を及ぼし得る転写の終結に必要な配列を含有してもよい。これらの領域は、組織因子タンパク質をコードするmRNAの非翻訳部分において、ポリアデニル化セグメントとして転写される。3’非翻訳領域には、転写終結部位も含まれる。転写単位は、ポリアデニル化領域も含有することが好ましい。この領域の利点の1つは、転写単位が、mRNAのようにプロセシングおよび輸送される可能性を増加させることである。発現構築物におけるポリアデニル化シグナルの同定および使用は、十分に確立されている。相同的なポリアデニル化シグナルが、導入遺伝子構築物に使用されることが好ましい。特定の転写単位において、ポリアデニル化領域は、SV40初期ポリアデニル化シグナルに由来し、約400塩基からなる。また、転写単位は、単独で、または上記配列と組み合わせて、構築物からの発現または安定性を改善する、他の標準的な配列を含有することも好ましい。
【0102】
b)マーカー
ウイルスベクターは、マーカー産物をコードする核酸配列を含むことができる。このマーカー産物を使用して、遺伝子が細胞に送達され、送達されると発現されているかどうかを決定する。好ましいマーカー遺伝子は、E.Coli lacZ遺伝子(β-ガラクトシダーゼをコードする)、および緑色蛍光タンパク質である。
【0103】
一部の実施形態では、マーカーは、選択可能なマーカーであってもよい。哺乳動物細胞に好適な選択可能なマーカーの例は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジンキナーゼ、ネオマイシン、ネオマイシン類似体G418、ヒドロマイシン、およびピューロマイシンである。このような選択可能なマーカーが哺乳動物宿主細胞に成功裏に移行されると、形質転換された哺乳動物宿主細胞は、選択圧下に置かれた場合、生存することができる。選択的レジームには、広く使用される2つの異なるカテゴリが存在する。第1のカテゴリは、細胞の代謝、および補充培地から独立して成長する能力を欠く変異細胞株の使用、に基づく。2つの例としては、CHO DHFR細胞およびマウスLTK細胞、がある。これらの細胞は、チミジンまたはヒポキサンチンなどの栄養素を添加せずに成長する能力を欠いている。これらの細胞は、完全なヌクレオチド合成経路に必要な特定の遺伝子を欠いているため、欠損したヌクレオチドが補充培地に提供されない限り、生存することはできない。培地を補充する代替手段は、それぞれの遺伝子を欠く細胞に、無傷のDHFRまたはTK遺伝子を導入することで、それらの成長要件を変化させることである。DHFRまたはTK遺伝子で形質転換されなかった個々の細胞は、非補充培地において生存することができないであろう。
【0104】
第2のカテゴリは、任意の細胞型で使用される選択スキームを指し、変異細胞株の使用を必要としない優性選択である。これらのスキームは、典型的には、宿主細胞の成長を停止するために薬物を使用する。新規遺伝子を有するそれらの細胞は、薬剤耐性を伝達するタンパク質を発現し、選択で生き残るであろう。かかる優性選択の例は、薬物であるネオマイシン、(Southern P.and Berg,P.,J.Molec.Appl.Genet.1:327(1982))、ミコフェノール酸(Mulligan,R.C.and Berg,P.Science 209:1422(1980))、またはハイグロマイシン(Sugden,B.et al.,Mol.Cell.Biol.5:410-413(1985))を使用する。3つの実施例は、真核細胞の制御下の細菌遺伝子を用いて、それぞれ適切な薬物G418またはネオマイシン(ジェネティシン)、xgpt(ミコフェノール酸)またはハイグロマイシン、への耐性を伝達する。他には、ネオマイシン類似体G418およびピュラマイシンが含まれる。
【0105】
4.ペプチド
a)タンパク質バリアント
タンパク質バリアントおよび誘導体は、当業者によく理解され、アミノ酸配列改変を含むことができる。例えば、アミノ酸配列改変は、典型的には、置換、挿入、または欠失バリアントの3つのクラスのうちの1つ以上に分類される。挿入には、アミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一もしくは複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。挿入は、通常、例えば、1~4個の残基程度で、アミノ末端またはカルボキシル末端の融合の挿入よりは小さいであろう。実施例に記載されるものなどの免疫原性融合タンパク質の誘導体は、インビトロで架橋することによって、またはその融合体をコードするDNAで形質転換された組換え細胞培養物によって、標的配列に免疫原性を付与するのに十分な大きさのポリペプチドを融合することによって作製される。欠失は、タンパク質の配列から、1個以上のアミノ酸残基を除去することを特徴とする。典型的には、約2~6個以下の残基が、タンパク質分子内の任意の1つの部位で欠失される。これらのバリアントは、通常、タンパク質をコードするDNA内のヌクレオチドの部位特異的変異誘発によって調製され、それによって、バリアントをコードするDNAを産生し、その後、組換え細胞培養物中でDNAを発現する。既知の配列を有するDNA中の所定の部位で置換変異を作製するための技術、例えば、M13プライマー変異誘発およびPCR変異誘発がよく知られている。アミノ酸置換は、典型的には、単一残基のものであるが、一度にいくつかの異なる場所で生じ得、挿入は、通常、約1~10個のアミノ酸残基程度であり、欠失は約1~30個の残基の範囲である。欠失または挿入は、好ましくは、隣接する対、すなわち、2個の残基の欠失または2個の残基の挿入で行われる。置換、欠失、挿入、またはそれらの任意の組合せ、を組み合わせて、最終構築物に到達することができる。変異は、配列をリーディングフレームから外れさせてはならず、好ましくは、二次mRNA構造を産生し得る相補的領域を生成しない。置換バリアントは、少なくとも1個の残基が除去され、その位置に、異なる残基が挿入されているバリアントである。このような置換は、概して、以下の表1および2に従って行われ、保存的置換と称される。
【表1】

【表2】
【0106】
機能または免疫学的同一性の実質的な変化は、表2のものよりも保存性が低い置換を選択することによって、すなわち、(a)例えば、シートもしくはヘリックスの立体構造としての置換エリアにおけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ、を維持することに対するそれらの効果が著しく異なる残基、を選択することによって行われる。一般に、タンパク質特性において最大の変化をもたらすことが予想される置換は、(a)親水性残基、例えば、セリルまたはスレオニルが、疎水性残基、例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリル、またはアラニルに(またはそれによって)置換され、(b)システインまたはプロリンが、任意の他の残基に(またはそれによって)置換され、(c)電気陽性側鎖、例えば、リシル、アルギニル、またはヒスチジルを有する残基が、電気陰性残基、例えば、グルタミルまたはアスパルチルに(またはそれによって)置換されるか、あるいは(d)かさばった側鎖、例えば、フェニルアラニンを有する残基が、側鎖を有しない残基、例えば、グリシンに(またはそれによって)置換され、この場合、(e)硫酸化および/またはグリコシル化の部位の数を増加させることによって置換される、置換であろう。
【0107】
例えば、あるアミノ酸残基を、生物学的および/または化学的に類似する別のアミノ酸残基に置き換えることは、保存的置換として当業者には既知である。例えば、保存的置換は、ある疎水性残基を別の疎水性残基に置き換えること、またはある極性残基を別の極性残基に置き換えることである。置換は、例えば、Gly、Ala、Val、Ile、Leu、Asp、Glu、Asn、Gln、Ser、Thr、Lys、Arg、およびPhe、Tyrなどの組合せを含む。このような、各明示的に開示された配列の保存的に置換されたバリエーションは、本明細書に提供されるモザイクポリペプチドに含まれる。
【0108】
置換または欠失変異誘発を用いて、N-グリコシル化(Asn-X-Thr/Ser)またはO-グリコシル化(SerまたはThr)のための部位を挿入することができる。システインまたは他の不安定な残基の欠失も望ましい場合がある。潜在的なタンパク質分解部位(例えば、Arg)の欠失または置換は、例えば、塩基性残基のうちの1つを欠失させるか、またはグルタミニルまたはヒスチジル残基で置換することによって達成される。
【0109】
特定の翻訳後の誘導体化は、発現したポリペプチドに対する組換え宿主細胞の作用の結果である。グルタミニルおよびアスパラギニル残基は、翻訳後、対応するグルタミルおよびアスパリル残基にしばしば脱アミド化される。あるいは、これらの残基は、弱酸性条件下で脱アミド化される。他の翻訳後修飾としては、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリルまたはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のo-アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman&Co.,San Francisco pp 79-86[1983])、N末端アミンのアセチル化、および、場合によっては、C末端カルボキシルのアミド化、が挙げられる。
【0110】
本明細書に開示されるタンパク質のバリアントおよび誘導体を定義する1つの方法は、特定の既知の配列に対する相同性/同一性の観点からバリアントおよび誘導体を定義することによるものであることを理解されたい。記載の配列と、少なくとも70%または75%または80%または85%または90%または95%の相同性を有する、これらのバリアントおよび本明細書に開示される他のタンパク質が、具体的に開示される。当業者であれば、2つのタンパク質の相同性を決定する方法を、容易に理解することができる。例えば、相同性は、相同性が最も高いレベルにあるように、2つの配列を整列した後に計算することができる。
【0111】
相同性を計算する別の方法は、公開されたアルゴリズムによって実施することができる。比較のための配列の最適整列は、Smith and Waterman Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch,J.MoL Biol .48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444(1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装によって(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package上で、Genetics Computer Group、575 Science Dr、Madison、WI)、または検査によって、行ってもよい。
【0112】
核酸に関して、同じ種類の相同性は、例えば、Zuker,M.Science 244:48-52,1989,Jaeger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:7706-7710,1989、Jaeger et al.Methods Enzymol.183:281-306,1989.に開示されているアルゴリズムによって、得ることができる。
【0113】
保存的変異および相同性の説明は、任意の組合せで、例えば、バリアントが保存的変異である特定の配列に対して少なくとも70%の相同性を有する実施形態のように、一緒に組み合わせることができることが理解される。
【0114】
本明細書は、様々なタンパク質およびタンパク質配列を論じるため、それらのタンパク質配列をコードすることができる核酸もまた開示されることが理解される。これには、特定のタンパク質配列に関連するすべての縮重配列、すなわち、1つの特定のタンパク質配列をコードする配列を有するすべての核酸、ならびにタンパク質配列の開示されたバリアントおよび誘導体をコードする縮重核酸を含むすべての核酸、が含まれるであろう。したがって、各特定の核酸配列が本明細書に記載されていない場合があるが、各配列およびすべての配列が、開示されたタンパク質配列を介して、実際に本明細書に開示および記載されていることが理解される。また、開示されたタンパク質の特定のバリアントが本明細書に開示されている生物内のタンパク質をコードする特定のDNA配列を示すアミノ酸配列はないが、そのタンパク質をコードする既知の核酸配列もまた、本明細書に既知であり、開示され、記載されていることも理解される。
【0115】
開示された組成物に組み込まれ得る多数のアミノ酸およびペプチド類似体が存在することが理解される。例えば、表1および表2に示されるアミノ酸とは異なる機能的置換基を有する多数のDアミノ酸またはアミノ酸が存在する。天然に存在するペプチドの反対の立体異性体、ならびにペプチド類似体の立体異性体が開示される。これらのアミノ酸は、tRNA分子に選択したアミノ酸を負荷することによって、および、例えば、アンバーコドンを利用して、部位特異的な方法で、類似体アミノ酸をペプチド鎖に挿入する遺伝子構築物を操作することによって、容易にポリペプチド鎖に組み込まれ得る。
【0116】
ペプチドに似ているが、天然のペプチド結合を介して結合されていない分子を産生することができる。例えば、アミノ酸またはアミノ酸類似体についての結合としては、CHNH--、--CHS--、--CH--CH--、--CH=CH--(シスおよびトランス)、--COCH--、--CH(OH)CH--、および--CHHSO-が挙げられる(これらおよび他のものは、Spatola,A.F.in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides,and Proteins,B.Weinstein,eds.,Marcel Dekker,New York,p.267(1983)、Spatola,A.F.,Vega Data(March 1983),Vol.1,Issue 3,Peptide Backbone Modifications(general review)、Morley,Trends Pharm Sci(1980)pp.463-468;Hudson,D.et al.,Int J Pept Prot Res 14:177-185(1979)(--CHNH--、CHCH--)、Spatola et al.Life Sci 38:1243-1249(1986)(--CH H--S)、Hann J.Chem.Soc Perkin Trans.I 307-314(1982)(--CH--CH--、シスおよびトランス)、Almquist et al.J.Med.Chem.23:1392-1398(1980)(--COCH--)、Jennings-White et al.Tetrahedron Lett 23:2533(1982)(--COCH--)、Szelke et al.European Appln,EP 45665 CA(1982):97:39405(1982)(--CH(OH)CH--)、Holladay et al.Tetrahedron.Lett 24:4401-4404(1983)(--C(OH)CH--)、およびHruby Life Sci 31:189-199(1982)(--CH--S--)に見出され得、これらの各々は、参照により本明細書に援用される。特に好ましい非ペプチド結合は、--CHNH--である。ペプチド類似体は、b-アラニン、g-アミノ酪酸などの結合原子間に2つ以上の原子を有し得ることが理解される。
【0117】
アミノ酸類似体および類似体ならびにペプチド類似体は、しばしば、より経済的な産生、より大きな化学的安定性、より強化された薬理学的特性(半減期、吸収、効力、有効性など)、特異性の変化(例えば、広域の生物学的活性)、抗原性の低減などを有する。
【0118】
D-アミノ酸は、ペプチダーゼなどによって認識されないため、D-アミノ酸は、より安定なペプチドを生成するために使用され得る。コンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸を同じ種類のD-アミノ酸(例えば、L-リジンの代わりにD-リジン)で系統的に置換することを使用して、より安定なペプチドを生成することができる。システイン残基は、2つ以上のペプチドを一緒に環化するまたは結合するために使用され得る。これは、ペプチドを、特定の立体構造に拘束するのに有益であり得る。
【0119】
5.医薬担体/医薬製品の送達
上述のように、組成物は、薬学的に許容される担体中でインビボで投与することもできる。「薬学的に許容される」とは、任意の望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、またはそれと接触する薬学的組成物の他の構成要素のいずれとも有害な様式で相互作用することなく、生物学的にまたは別途望ましくないものではない材料、すなわち、核酸またはベクターとともに、対象に投与され得る材料、を意味する。担体は、当業者には周知であるように、活性成分の任意の分解を最小限に抑え、対象における任意の有害な副作用を最小限に抑えるために当然選択されるであろう。
【0120】
組成物は、経口的に、非経口的に(例えば、静脈内に)、筋肉内注射によって、腹腔内注射によって、経皮的に、体外的に、局所的に(局所鼻腔内投与または吸入剤による投与を含む)などで、投与され得る。本明細書で使用される場合、「局所鼻腔内投与」とは、鼻孔の一方または両方を介して組成物を鼻および鼻道に送達することを意味し、噴霧機構もしくは液滴機構による、または核酸もしくはベクターのエアロゾル化による送達を含むことができる。吸入剤による組成物の投与は、噴霧または液滴機構による送達を介して鼻または口を通して行うことができる。送達は、挿管を介して呼吸器系の任意の領域(例えば、肺)に直接送達することもできる。必要とされる組成物の正確な量は、対象の種、年齢、体重、および一般状態、治療されるアレルギー障害の重症度、使用される特定の核酸またはベクター、その投与方法などに応じて、対象によって異なるであろう。したがって、すべての組成物に対して正確な量を指定することは不可能である。しかしながら、適切な量は、本明細書の教示を与える日常的な実験のみを使用して、当業者によって決定され得る。
【0121】
組成物の非経口投与は、使用される場合、概して、注射を特徴とする。注射剤は、液体溶液または懸濁液、注射前の液体中の懸濁液の溶液に適した固体形態、あるいはエマルジョンのいずれかとして、従来の形態で調製され得る。最近改訂された非経口投与のアプローチでは、一定の投与量が維持されるような徐放または持続放出系の使用を伴う。例えば、米国特許第3,610,795号を参照されたい(参照により本明細書に援用される)。
【0122】
材料は、溶液、懸濁液(例えば、微小粒子、リポソーム、または細胞に組み込まれる)中であってもよい。これらは、抗体、受容体、または受容体リガンドを介して、特定の細胞型を標的にし得る。以下の参考文献は、腫瘍組織に特定のタンパク質を標的化するための本技術の使用例である(Senter,et al.,Bioconjugate Chem.,2:447-451,(1991)、Bagshawe,K.D.,Br.J.Cancer,60:275-281,(1989)、Bagshawe,et al.,Br.J.Cancer,58:700-703,(1988)、Senter,et al.,Bioconjugate Chem.,4:3-9,(1993)、Battelli,et al.,Cancer Immunol.Immunother.,35:421-425,(1992)、Pietersz and McKenzie,Immunolog.Reviews,129:57-80,(1992)、およびRoffler,et al.,Biochem.Pharmacol,42:2062-2065,(1991))。ビヒクル、例えば、「ステルス」および他の抗体コンジュゲートリポソーム(結腸がんを標的化する脂質媒介性薬物を含む)、細胞特異的リガンドを通したDNAの受容体媒介性標的化、リンパ球特異的腫瘍標的化、ならびにインビボでのマウス神経膠腫細胞の高度に特異的な治療用レトロウイルス標的化。以下の参考文献は、腫瘍組織に特定のタンパク質を標的にするための本技術の使用例である(Hughes et al.,Cancer Research,49:6214-6220,(1989)、およびLitzinger and Huang,Biochimica et Biophysica Acta,1104:179-187,(1992))。一般に、受容体は、構成的またはリガンド誘導のいずれかのエンドサイトーシスの経路に関与する。これらの受容体は、クラスリン被覆ピット内でクラスター化し、クラスリン被覆小胞を介して細胞内に入り、受容体が選別される酸性化エンドソームを通過し、次いで細胞表面にリサイクルされるか、細胞内に貯蔵されるか、またはリソソーム中で分解されるかのいずれかである。内部移行経路は、栄養素の取り込み、活性化タンパク質の除去、巨大分子のクリアランス、ウイルスおよび毒素の日和見進入、リガンドの解離および分解、ならびに受容体レベルの調節などの様々な機能を果たす。多くの受容体は、細胞型、受容体濃度、リガンドの種類、リガンド価、およびリガンド濃度に応じて、2つ以上の細胞内経路に従う。受容体媒介性エンドサイトーシスの分子および細胞機構が概説されている(Brown and Greene,DNA and Cell Biology 10:6,399-409(1991))。
【0123】
開示される改変NK細胞および改変NK細胞の養子移植の方法は、がんに対する効果的な免疫療法であり得ることが理解され、本明細書で企図される。本開示の方法および組成物を使用して、がんなどの未制御な細胞増殖が生じる任意の疾患を治療、阻害、低減、および/または予防することができる。異なる種類のがん(cancers)の非限定的なリストは、以下のとおりである:リンパ腫(ホジキンおよび非ホジキン)、白血病、がん(carcinomas)、固形組織のがん、扁平上皮細胞がん、腺がん、肉腫、神経膠腫、高悪性度神経膠腫、芽細胞腫、神経芽細胞腫、形質細胞腫、組織球腫、黒色腫、腺腫、低酸素腫瘍、骨髄腫、AIDS関連リンパ腫もしくは肉腫、転移性がん、または一般的ながん。開示される組成物を使用して治療することができる代表的だが、非限定的ながんのリストは、以下のとおりである:リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉症、ホジキン病、骨髄性白血病(AMLを含むが、これに限定されない)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、膀胱がん、脳がん、神経系がん、頭頸部がん(head and neck cancer)、頭頸部扁平上皮がん、肺がん(lung cancer)(例えば、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん)、神経芽腫/神経膠芽腫、卵巣がん、皮膚がん、BPDCN、多発性骨髄腫、肝臓がん、黒色腫、(口腔、咽頭、喉頭、および肺の)扁平上皮がん、子宮頸がん(cervical cancer)、子宮頸がん(cervical carcinoma)、乳がん、および上皮がん、腎臓がん、泌尿生殖器がん、肺がん(pulmonary cancer)、食道がん、頭頸部がん(head and neck carcinoma)、大腸がん、造血がん、精巣がん、結腸がん、直腸がん、前立腺がん、または膵臓がん。したがって、一態様では、対象におけるがんおよび/または転移(例えば、多発性骨髄腫、白血病(急性骨髄性白血病(AML)、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、または芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)を含むが、これらに限定されない)を治療、減少、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法が本明細書に開示され、対象に、CD38遺伝子のノックアウトを含むように改変されているNK細胞を投与することを含む。一部の態様では、本方法は、対象に、CD38を標的とする薬剤(例えば、これらに限定されないが、ダラツムマブ、イサツキシマブ、TAK-079、およびMOR202を含む抗CD38など)を投与することをさらに含み得る。さらに、本方法はまた、対象に、血管新生阻害剤(例えば、ポマリドミド、レナリドミド、またはアプレミラストなど)およびグルココルチコイド(例えば、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン、メソッドルプレニゾロン、トリアムシノロン、または酢酸フルドロコルチゾンなど)、および/またはATRAを投与することもできる。
【0124】
本明細書に記載されるように、開示される改変NK細胞(例えば、本明細書に開示されるCD38ノックアウトNK細胞は、本明細書に開示される方法によって作製されるCD38ノックアウトNK細胞を含むが、これに限定されない)は、対象に投与される抗CD38療法がNK細胞のフラトリサイドをもたらす可能性があるか、またはそれがもたらされた治療に使用され得る。したがって、一態様では、抗CD38免疫療法を受ける対象において、NK細胞のフラトリサイドを低減する方法も本明細書に開示され、対象に、本明細書に開示される任意の遺伝子改変NK細胞(本明細書に開示されるCD38ノックアウトNK細胞を含む)を投与することを含む。一態様では、抗CD38免疫療法は、対象に、ダラツムマブ、イサツキシマブ、TAK-079、および/またはMOR202を含むが、これらに限定されない抗CD38抗体を投与することを含み得る。
【0125】
D.実施例
以下の実施例は、当業者に、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法の作製方法および評価方法の完全な開示および説明を提供するために示されるものであり、純粋に例示的であることを意図するものであって、本開示を限定するものではない。数値(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するように努力がなされてはいるが、いくらかの誤差および偏差が考慮されるべきである。特に指定しない限り、部(parts)は重量部であり、温度は℃、または周囲温度であり、圧力は、大気圧またはその付近である。
【0126】
1.実施例1:フラトリサイドを克服し、ADCCを増強するための、CD38-KO NK細胞の生成
ナチュラルキラー細胞は、抗CD38モノクローナル抗体であるダラツマブ(DARA)による、CD38発現多発性骨髄腫(MM)の標的化において重要な役割を果たす。DARA療法におけるNK細胞のフラトリサイドを克服するために、Cas9/RNPを使用したノックアウトNK細胞を生成した。具体的には、gRNA配列は、CD38を標的とし、Cas9/RNPを使用して欠失させる。以下の配列を標的とするgRNA(CD38の開始コドン付近のエクソン1で)は、Integrated DNA Technologiesから商業的に産生された:5’-CTGAACTCGCAGTTGGCCAT-3’(配列番号1)
NK細胞をCas9/RNPでエレクトロポレーションし、14日間増殖させた。得られた遺伝子欠失は、90%超有効であり、KO集団の陽性選択のためのいかなる方法も使用せずに、NK細胞におけるCD38の発現を、対照NK細胞での87%からCD38欠失NK細胞での7%に減少させた(図1)。NK細胞を、ダラツムマブ媒介性フラトリサイドに対する感受性について試験した。未改変対照NK細胞は、77%のフラトリサイドに対する感受性を示した(生存率は64%から14.6%に低下した)。対照的に、CD38-KO NK細胞は、フラトリサイドに対する感受性が11%しか示さなかった(生存率は55.8%から49.9%に低下した)(図2)。
【0127】
次に、NK細胞を、多発性骨髄腫に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)の改善について試験した。3つの異なる標的細胞および3つのE:T比にわたって測定した場合、CD38-KO NK細胞は、野生型対照と比較して、ADCCを37.9%増加させ(中央値、p=0.004)、最終生存がん細胞集団を22.3%減少させた(中央値、p=0.004)(図3)。図4~6に、個々の結果を示す。
2.実施例2:導入.
【0128】
多発性骨髄腫(MM)は、骨髄(BM)における悪性形質細胞のクローン蓄積によって特徴付けられる。自己幹細胞移植およびプロテアソーム阻害剤(PI-ボルテゾミブ/カルフィルゾミブ)、ならびに免疫調節IMiD剤(レナリドミド/ポマリドミド)などの新規薬剤の導入は、MM患者における生存率を有意に改善したが、ほぼすべての患者が再発し、その後、予後不良に悩まされ、全生存期間の中央値はわずか13ヶ月であった。
【0129】
最近では、CD38、ダラツムマブ(DARA)、およびイサツキシマブを標的とするモノクローナル抗体は、MM患者の管理に対して著しい影響を与えている。DARAは、新たに診断された、ならびに再発/難治性のM患者について、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。DARAは、いくつかの機構:補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞性貪食(ADCP)、標的細胞上のCD38の架橋によって誘導されるアポトーシス、ならびにCD38免疫抑制細胞の排除による免疫調節効果を介して、標的細胞を殺傷する。これらの作用はすべて、抗腫瘍活性に関与するが、どの機構がMM患者で見られる臨床応答に主要な役割を果たすのかは、未だ不明である。
【0130】
DARAの十分に確立された臨床的利益にもかかわらず、大多数の患者は、最終的に疾患再発を経験し、MMに屈し続ける。現在、DARAに対する耐性の機構を明らかにし、応答を深める/促進するための併用療法を開発するための研究および臨床的な取り組みが進行中である。臨床的証拠は、IMiDがDARAと相乗作用し、より良好な疾患制御をもたらすことを示す。これは、部分的には、Ikaros/Aiolosのセレブロン媒介性分解を介して、MM細胞上のDARA媒介性ADCC、ならびにIMiDs誘導性CD38上方制御を媒介するナチュラルキラー(NK)細胞の活性化に起因する可能性がある。
【0131】
追加の証拠は、標的細胞上のCD38発現レベルが、DARAに対する感受性と相関することを示す。より高いCD38の発現レベルを有するMM細胞は、DARAによって優先的に死滅するが、残りのMM細胞は、DARAによる処理中に、より低いCD38の発現レベルを示す。CD38の転写は、CD38遺伝子のイントロンIに存在するRA応答エレメントを介してレチノイン酸(RA)によって直接制御されるため、オールトランスレチノイン酸(ATRA)は、MM細胞を含む様々な造血細胞において、CD38の発現を上方制御する。さらに、ATRAは、補体阻害タンパク質(CD55およびCD59)の発現を下方制御し、DARAと相乗作用して、標的MM細胞を死滅させる。この戦略は、MM患者を対象としたATRAとDARAを組み合わせた臨床試験(NCT02751255)で現在試験中である。
【0132】
DARAに対する最適以下の応答の別の推定機構は、DARAによる治療後の患者におけるNK細胞の急速な枯渇である(NK細胞も比較的高いレベルのCD38を発現するため)。この循環NK細胞の減少は、治療中止後3~6ヶ月間継続し、MM細胞に対する非効率的なADCCをもたらす。NK細胞の養子移植は、この機構を克服するための戦略であり得る。前臨床モデルでは、エクスビボ増殖NK細胞の補充は、疾患負荷の制御において、わずかではあるが有意なDARAの改善をもたらす(これらのNK細胞もDARA媒介性除去を受けるため)。DARA媒介性除去を克服するためのアプローチは、NK細胞のCD38を欠失させることである(CD38KONK)。NK細胞の遺伝子編集は、そのDNA感知機構および関連するアポトーシスにより困難であったが、初代NK細胞における効率的な遺伝子の欠失は、Cas9リボ核タンパク質複合体(Cas9/RNP)によるDNAフリーの方法を使用して達成することができる。
【0133】
ここで、NK細胞におけるCD38欠失の生物学的影響を、DARA免疫療法に関して、インビトロおよびインビボでのコンジュゲーションおよびフラトリサイド、ならびにMM細胞に対するADCCを評価することによって探索した。最後に、NK細胞の代謝および転写における、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)のレベルを調節するエクト酵素としてのCD38の役割を探索した。
【0134】
3.実施例3:材料および方法
NK細胞の精製および増殖。末梢血NK細胞を、健常ドナーから単離した。精製したNK細胞(CD3/CD56)を、2:1の比率で膜結合型IL-21(mbIL21)/4-1BBLを発現する照射されたK562(CSTX002)を使用して刺激し、AIM-V/ICSR増殖培地(CTS(商標)AIMV(商標)SFM/CTS(商標)Immune Cell SR、Thermo Fisher Scientific)および50IUのヒト組換えIL-2(rIL-2)(Novartis)中で7日間増殖させた。刺激後、CD3、CD19、およびCD33細胞のいずれも検出されなかった(図7)。増殖の6日目に、エレクトロポレーションの前に、培地の半分を交換した。
【0135】
多発性骨髄腫細胞.MM細胞株H929,MM.1S、およびU266は、American Type Culture Collectionから購入した。OPM-2およびKMS-11細胞株は、German Collection of Microorganisms and Cell Culturesから入手した。初代MM細胞は、IRB承認プロトコルおよびJohns Hopkins Universityにおける書面による同意の下で、新たに診断されたMM患者または再発したMM患者から回収した。表1に、患者情報を示す。CD138MM細胞の精製および細胞培養は、以前に公表された。Ficoll-PaqueTM PLUS(GE Healthcare Bio-Sciences AB,Sweden)を使用した密度勾配遠心分離によって、新鮮なBM吸引物から単核細胞を単離した。CD138MM細胞を、磁気ビーズおよびカラムによって、製造元の説明書に従って選択した(Miltenyi Biotec,Auburn,CA)。すべてのMM細胞株および初代MM細胞を、10%熱不活性化FBS(Corning,Manassas,VA)、2mMのL-グルタミン(Gibco,Grand Island,NY)、100ユニット/mlのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシン(Gibco,Grand Island,NY)を補充したRPMI1640培地(Gibco,UK)で培養した。
【表3】
【0136】
マウス.NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスを、The Jackson Laboratoryから購入し、特定の病原体を含まない条件下で維持した。Johns Hopkins Universityの動物研究委員会によって承認された動物プロトコルに従って、6~10週齢の雄NSGマウスを実験に使用した。
【0137】
免疫表現型決定.NK細胞およびMM細胞を、フルオロフォアコンジュゲート抗体で染色した。表2に、抗体のリストを示す。細胞を洗浄し、LSR IIフローサイトメーター(Becton Dickinson Biosciences)およびFlowJoソフトウェア(Tree Star Inc,Ashland,OR)を使用して、フローサイトメトリーによって分析した。
【表4】
【0138】
CRISPR改変細胞の生成。CD38KOおよびCD16KONK細胞を生成するために、CD38遺伝子のエクソン1を標的とするcrisprRNA(crRNA)(5-CTGAACTCGCAGTTGGCCAT;配列番号1)34、およびCD16A遺伝子のエクソン5を標的とするcrRNA(5-AAAGAGACTTGGTACCCAGG;配列番号3)を使用した。Cas9/RNP複合体の生成については、以前に記載した。CD38KOおよびCD16KONK細胞を生成するために、CD38遺伝子のエクソン1を標的とするcrisprRNA(crRNA)(5-CTGAACTCGCAGTTGGCCAT;配列番号1)、およびCD16A遺伝子のエクソン5を標的とするcrRNA(5-AAAGAGACTTGGTACCCAGG;配列番号4)を使用した。Cas9/RNP複合体の生成については、以前に記載した。簡単に、事前に転写されたAlt-R(登録商標)CRISPR-Cas9 crRNAおよびAlt-R(登録商標)CRISPR-Cas9 tracrRNA(カタログ番号1072532)を、IDT(Integrated DNA Technologies,Inc.,Coralville,Iowa)から購入した。ガイドRNA(gRNA)は、総量が10μlのヌクレアーゼ不含IDTE、pH7.5(1×TE溶液、カタログ番号11-01-02-02)中に、各々200μMのcrRNAおよびtracrRNAを一緒に、95℃で5分間インキュベートすることによって調製した。Cas9/RNP複合体は、2μlのAlt-R(登録商標)S.p.HiFi Cas9ヌクレアーゼV3タンパク質(122pmol)(カタログ番号1081060)、2μlのgRNA(400pmol)、および1μlのPBSを、5μlの総量で、室温で15~20分間インキュベートすることによって形成した。7日目に、増殖したNK細胞を、20μlのP3初代細胞4D-NucleofectorTM X溶液、および5μlのCas9/RNP複合体、および1μlの100μMのAlt-R(登録商標)Cas9エレクトロポレーションエンハンサー(カタログ番号1075915)に再懸濁し、Lonza4D-Nucleofectorシステム使用して、pulse EN-138を用いてエレクトロポレーションした。野生型NK(CD38WT NK)細胞を、Cas9/RNP複合体なしでエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後、NK細胞を、50IUのrIL-2を補充したAIM-V/ICSR増殖培地中で2日間静置した後、フローサイトメトリーを使用して、CRISPR改変の効率を評価した。次いで、細胞を、CSTX002とともに増殖させた。残留するCD38+NK細胞を、ビオチン化抗CD38抗体(BioLegend)、続いて、抗ビオチンマイクロビーズ(Miltenyi Biotec,Auburn,CA)で標識し、LDカラム上で(Miltenyi Biotec,Auburn,CA)枯渇させることによって除去した。
【0139】
CD38標的化Cas9/RNPのオフターゲット効果の特定.全ゲノム配列決定を使用して、CD38を標的とするCas9/RNPのオフターゲット効果を特定した。DNeasy血液・組織キット(Qiagen,カタログ番号/ID:69504)を使用して、CD38WTおよびCD38KONK細胞から、ゲノムDNA(gDNA)を単離した。NEBNext Ultra II-FS DNAライブラリー調製キット(New England Biolabs,Ipswhich MA)を使用して、DNAライブラリーを構築した。試料を、酵素的に断片化し、5’リン酸化し、dAテール付加し、独自のデュアルインデックスアダプターアプローチでライゲーションして、試料のミスアサイメントを防止し、インデックスホッピングを解決した(Integrated DNA Technologies,Iowa)。アダプターが連結されたDNAを、限定サイクルPCRによって増幅し、磁気ビーズベースのアプローチを使用して精製した。ライブラリーの品質は、Tapestation高感度D1000 ScreenTape(Agilent Biotechonologies)上で分析し、KAPA qPCR(KAPA BioSystems)によって定量化した。Illumina HiSeq4000プラットフォーム上で、2×150bpのリード長で、約30倍のカバレッジの深度まで、ライブラリーを配列決定した。
【0140】
CD38標的化Cas9/RNPのオフターゲット効果の特定.全ゲノム配列決定を使用して、CD38を標的とするCas9/RNPのオフターゲット効果を特定した。DNeasy血液・組織キット(Qiagen,カタログ番号/ID:69504)を使用して、CD38WTおよびCD38KONK細胞から、ゲノムDNA(gDNA)を単離した。NEBNext Ultra II-FS DNAライブラリー調製キット(New England Biolabs,Ipswhich MA)を使用して、DNAライブラリーを構築した。試料を、酵素的に断片化し、5’リン酸化し、dAテール付加し、独自のデュアルインデックスアダプターアプローチでライゲーションして、試料のミスアサイメントを防止し、インデックスホッピングを解決した(Integrated DNA Technologies,Iowa)。アダプターが連結されたDNAを、限定サイクルPCRによって増幅し、磁気ビーズベースのアプローチを使用して精製した。ライブラリーの品質は、Tapestation高感度D1000 ScreenTape(Agilent Biotechonologies)上で分析し、KAPA qPCR(KAPA BioSystems)によって定量化した。Illumina HiSeq4000プラットフォーム上で、2×150bpのリード長で、約30倍のカバレッジの深度まで、ライブラリーを配列決定した。
【0141】
NK機能アッセイ.NK細胞コンジュゲーションアッセイは、以前に公表されたように、また、上で詳述されたように行った。フラトリサイドを定量化するために、CD38WTおよびCD38KONK細胞を、それぞれ10μg/mLのDARAまたは溶媒対照で4時間または24時間処理し、次いで、PO-PRO(商標)-1色素(Invitrogen,Eugene,Oregon)および7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)(Invitrogen,Eugene,Oregon)25で染色した。フローベースの死滅アッセイは、補足方法に詳述されるように実施した。簡潔に、CD38WTまたはCD38KONK細胞を、10μg/mLのDARAまたは対照としての溶媒の存在下で、CFSEで標識された標的MM細胞と、4時間または24時間共培養した。
【0142】
ヒトNK細胞のNSGマウスへの養子移植.同じ個々のドナーからのエクスビボ増殖CD38WTおよびCD38KONK細胞を、解凍し、照射されたCSTX002で1週間再刺激した。10個の各群のNK細胞を、Hankの平衡塩類溶液(Gibco,Grand Island,NY)に懸濁し、同じ日に、DARA(8mg/kg)または溶媒対照で腹腔内に前処理されたNSGマウスに、尾静脈を通して注入した。マウスに、rIL-2(50,000IU)を、腹腔内に隔日供給した。末梢血(7日後)、脾臓およびBM(9日後)を回収し、各マウスにおけるNK細胞の持続性について分析した。また、脾臓中の、および2つの大腿骨からのBM中のヒトNK細胞の絶対数も計算した。
【0143】
RNA配列決定およびIngenuity経路解析.鎖特異的RNA-seqライブラリーを、NEBNext Ultra II定方向RNAライブラリー調製キット(New England Biolabs,Ipswhich MA)を使用して、製造業者の推奨事項に従って調製した。要約すると、同じドナー(n=6)のCD38WTおよびCD38KONK細胞から単離された全RNA(合計12試料)の品質を、RNA6000ナノキットを使用して、Agilent 2100バイオアナライザー(Agilent Biotechnologies)で評価し、Qubit RNA HSアッセイキット(Life Technologies)を使用して、濃度を測定した。NEBのヒト/マウス/ラットRNAse-Hベースの枯渇キット(New England BioLabs)を使用して、40~500ngの全RNAのアリコートを、rRNA枯渇させた。rRNA除去後、mRNAを断片化し、次いで、ランダムヘキサマープライマーを用いた第1鎖および第2鎖のcDNA合成に使用した。二本鎖cDNA断片は、デュアルユニークアダプター(Integrated DNA Technologies)の末端修復およびAテール付加およびライゲーションを行った。アダプターが連結されたcDNAを、限定サイクルPCRによって増幅し、磁気ビーズベースのアプローチを使用して精製した。ライブラリーの品質は、Tapestation高感度D1000 ScreenTape(Agilent Biotechonologies)上で分析し、KAPA qPCR(KAPA BioSystems)によって定量化した。ライブラリーをプールし、Illumina HiSeq 4000プラットフォーム上で、2×150bpのリード長で配列決定して、1試料あたり約6000~8000万個のペアエンドリードを生成した。次に、正規化されたRNA-seqデータを使用し、Ingenuity経路解析(IPA)に入力する前にフィルタリングすることで、少なくとも1つの試料中に10FPM以上発現していない遺伝子を排除した。CD38WTとCD38KONK細胞との間の遺伝子発現レベルの対応のある両側t検定で0.05未満のp値が得られた遺伝子が、差次的発現遺伝子(DEG)として同定された。DEGのp値のカットオフを0.01または0.1に調整しても、最小の遺伝子発現のカットオフを5FPMに調整しても、定性的に、結論に影響を与えない。CD38WTおよびCD38KONK細胞にわたる各遺伝子の平均倍率変化は、報告された経路における平均値の倍率変化にほぼ等しく、そのため、個体間効果(同じドナーからのCD38WTおよびCD38KONK細胞)は、これらの結論に対して無視できるとみなすことができる。IPAのコア解析について、すべてデフォルト設定が実装された。DARA誘発性フラトリサイドによってCD38WTNK細胞が死滅するため、DARAの存在下でCD38WTおよびCD38KONK細胞のトランスクリプトームプロファイルを研究することはできなかった。
【0144】
CD38WTとCD38KONK細胞との間の遺伝子発現レベルの対応のある両側t検定で0.05未満のp値が得られた遺伝子が、差次的発現遺伝子(DEG)として同定された。DEGのp値のカットオフを0.01または0.1に調整しても、最小の遺伝子発現のカットオフを5FPMに調整しても、定性的に、結論に影響を与えない。CD38WTおよびCD38KONK細胞にわたる各遺伝子の平均倍率変化は、報告された経路における平均値の倍率変化にほぼ等しく、そのため、個体間効果(同じドナーからのCD38WTおよびCD38KONK細胞)は、これらの結論に対して無視できるとみなすことができる。IPAのコア解析について、すべてデフォルト設定が実装された。DARA誘発性フラトリサイドによってCD38WTNK細胞が死滅するため、DARAの存在下でCD38WTおよびCD38KONK細胞のトランスクリプトームプロファイルを研究することはできなかった。
【0145】
代謝アッセイ.酸素消費速度(OCR)および細胞外酸性化速度(ECAR)を測定するために、我々は、Seahorse XFe24(Agilent Technologies)で、Agilent細胞外フラックスアッセイキット(Agilent Technologies)を使用した。増殖したCD38WTおよびCD38KONK細胞を、測定の前に、XF RPMI中で1~2時間、非COインキュベーターで、37℃でインキュベートした。培地に、pH7.35~7.4で、フェノールレッドなしで、10μMのグルコースおよび2μMのL-グルタミンを補充した。1μMのオリゴマイシン、1.5μMのFCCP、および0.5μMのロテノン、およびアンチマイシンAを細胞培養物に添加することによって、基底条件下で、OCR(酸化的リン酸化(OXPHOS)の尺度)およびECARを分析した。
【0146】
コンジュゲーションアッセイ、フラトリサイドアッセイ、およびフローベースの細胞傷害性アッセイ.Burshtynらによって記載されているNK細胞のコンジュゲーションアッセイを、わずかな変更を加えて行った。簡潔に、2×10細胞の各NK細胞(1×10細胞/ml)を、5μMの緑色色素CFDA SE(CFSE)細胞トレーサー(Invitrogen,Eugene,Oregon)で、37℃で15分間染色するか、または5μMの赤色色素PKH26(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)で、室温で5分間染色した。細胞懸濁液に完全培地を添加することによって、染色を停止した。細胞を、完全培地で2回洗浄した。緑色および赤色で標識されたNK細胞を、1:1の比で、10μg/mLのDARAまたは溶媒対照(生理食塩水)を補充した総量200μl中に混合し、5%のCOインキュベーターで、37℃で4時間共培養した。次いで、細胞を穏やかに回収し、200μlの4%ホルムアルデヒドで固定し、20,000個の細胞を、フローサイトメトリーを使用して、コンジュゲーションについて分析した。
【0147】
フラトリサイドを定量化するために、CD38WTおよびCD38KONK細胞を、それぞれ10μg/mLのDARAまたは溶媒対照で4時間または24時間処理し、次いで、PO-PRO(商標)-1色素(Invitrogen,Eugene,Oregon)および7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)(Invitrogen,Eugene,Oregon)で染色した。生存NK細胞(PO-PRO(商標)-1陰性/7-AAD陰性)を、ビーズ(Becton Dickinson Biosciences)を使用して、頻度または絶対数に基づいて評価した。
【0148】
ADCCを評価するために、MM細胞株または精製された初代CD138MM細胞を、5μMのCFSEで標識し、平底96ウェルプレート(Falcon,USA)中で、10μg/mlのDARAまたは対照としての溶媒の存在下、示されたエフェクター対標的(E:T)比で、CD38WTまたはCD38KONK細胞と共培養した38。DARA耐性の初代試料が低頻度であったため(CD38陰性/低)、これらの細胞を精製せず、MM細胞をCD138CD45細胞として定義した。標的細胞の生存率を、MM細胞株については4時間後、初代試料については24時間後に分析した。一部の実験では、骨髄腫細胞株を、4時間の細胞傷害性アッセイの前に、2日間、50nMのATRAで前処理した。ATRAが全体的なDARA媒介性NK細胞の細胞傷害に及ぼす影響を研究するために、MM細胞およびNK細胞を、DARAおよび50nMのATRAの存在下で、48時間共培養した。全CFSE陽性細胞中の7-AAD陰性/CFSE陽性細胞の割合または絶対数から、またはビーズを使用して、生存する標的細胞を評価した。エフェクター細胞およびDARAの不在下でインキュベートした標的細胞から、バックグラウンドを決定した。DARA媒介性ADCCの割合(%)は、以下の式に従って計算した:(1-エフェクター細胞およびDARAの存在下での生存標的細胞の割合または絶対数/溶媒対照を含む対応する試料の割合)×100。すべてのアッセイは、2人または3人の独立したドナーを用いて、3連で実施した。
【0149】
統計解析.統計解析は、GraphPad Prism8(GraphPad Software,Inc)を使用して実施した。Student t検定を使用して、2つの独立した群を比較した。3つ以上の群は、一元配置ANOVA検定、続いて、Tukeyの多重比較検定で比較した。p<0.05は、統計的有意性を示すとみなした。
【0150】
4.実施例4:結果.
NK細胞における、Cas9/RNPを使用した効率的な遺伝子標的化.Cas9/RNP法を使用して、CD38KONK細胞を、健常ドナーのエクスビボ増殖末梢血NK(PB-NK)細胞からうまく生成した(図8A)。フローサイトメトリー分析は、CD38のノックアウト効率が81.9±6.9%であることを明らかにした(n=5、平均値±SD、図8B)。磁気分離を使用して、NK細胞を99%超のCD38KOまで精製し、さらなる実験に使用した(図8C)。CD38WTおよびCD38KONK細胞は、同様の増殖速度を示し、CD38KONK細胞の純度は、その後の培養後でも維持された(図8D)。CD38WTとCD38KONK細胞との間のCD16の発現レベルに差は観察されなかった(図7B)。
【0151】
NK細胞における、Cas9/RNPの低いオフターゲット効果.高忠実度Cas9(HiFi-Cas9)は、それがエレクトロポレーション後に迅速に分解するため、低いオフターゲット編集を有することが示されている。CRISPR改変NK細胞におけるオフターゲット効果を研究するために、全ゲノム配列決定(WGS)を行い、CD38KONK細胞に限定されるSNPおよびINDELを有する26個の遺伝子を見出した。変異がコード領域に限定されていたため、すべての遺伝子は中程度または高度の潜在的影響の変異を有していた。SnpEffによって、18個の遺伝子が、中程度の影響として分類された(ミスセンスおよび非フレームシフト)変異を有し、8個の遺伝子(CD38を含む)が、高度の影響として分類された(スタートロス、ストップゲイン、およびフレームシフト)変異を有した(表3)。RNA-seqによって、高度の影響の変異を有する可能性のあるオフターゲット遺伝子のうちの4つのみが、NK細胞において有意義なレベルで発現される(CC2D1B、DENND4B、KMT2C、およびWDR89、図9)。これらの結果は、NK細胞におけるCD38標的化に対するこのgRNAの効率性および特異性を示す。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【0152】
DARA誘発性フラトリサイドに対するCD38KONK細胞の耐性.DARAは、CD38とCD16を架橋することにより、NK対NKのADCCを介してNK細胞のフラトリサイドを誘発する。CD38KONK細胞がDARA誘発性フラトリサイドに耐性であるかどうかを研究するために、対のCD38WTおよびCD38KONK細胞のコンジュゲーションおよび生存率を評価した。DARAは、CD38WTNK細胞コンジュゲートの形成を増加させたが、CD38KONK細胞コンジュゲートの形成には影響しなかった(図10A~10B)。この結果と一致して、DARAは、CD38WTNK細胞のADCC依存性アポトーシスを誘導し、一方、CD38KONK細胞は、DARAとのインキュベーションの全体を通してその生存率を維持した(図10C~10D)。同様に、NK細胞におけるCD16の欠失もまた、DARAによる処理後も、その生存能を維持した。さらに、NK細胞および補体の不在下では、DARA媒介性溶解は観察されなかった(図11B)。これらの結果は、CD16およびCD38が、DARA誘発性フラトリサイドに必要かつ十分であり、NK細胞におけるCD38の欠失により、DARA誘発性フラトリサイドに耐性になることを示す。
【0153】
次に、DARAに対するCD38KONK細胞の耐性がインビボにおける優れた持続性にも寄与し得るかどうかを研究するために、CD38WTまたはCD38KONK細胞を、DARAで処理したNSGマウスに融合させ、PB、脾臓、およびBM中のNK細胞の頻度を調べた。CD38WTまたはCD38KONK細胞は、対照マウスにおいて同等の生着を示した(図10E~10F)。対照的に、DARAでの処理は、CD38WTNK細胞の生着を有意に低減したが、CD38KONK細胞の持続性には影響を及ぼさなかった(図10E~10F)。CD38WTNK細胞は、脾臓およびBMならびに末梢血中のDARAによって枯渇したが、CD38KONK細胞は、対照とDARA処置マウスとの間のこれらの区画のいずれにおいても有意な枯渇を示さなかった(図10F)。まとめると、これらの結果は、CD38KO細胞が、インビトロおよびインビボで、DARAに耐性であることを示す。
【0154】
MM細胞に対するCD38KONK細胞の優れたDARA媒介性ADCC.NK細胞のDARA誘発性枯渇は、標的細胞に対する細胞依存性細胞傷害を鈍化させる可能性があるため、CD38KONK細胞はまた、CD38WTNK細胞よりも効率的に標的細胞を殺傷することができる。これを検討するために、高レベル、低レベル、または皆無のCD38発現を有する異なるMM細胞株に対して、対のCD38WTおよびCD38KONK細胞の細胞傷害性を、DARAの存在下または不在下で試験した(図12A)。各MM細胞株に対する直接的な細胞傷害性は、CD38WTとCD38KONK細胞との間で同等であったが、DARAの存在下では、CD38KONK細胞は、CD38標的細胞に対して有意に高い細胞傷害性を示し(図12B)、CD38KONK細胞のより高いADCCを示した(図12C)。CD38WTおよびCD38KONK細胞のいずれも、CD38細胞株U266に対してADCCを示さなかった。CD38WTNK細胞は、OPM-2およびKMS-11などの低レベルのCD38発現を有するMM細胞に対して、わずかなまたは皆無のADCCを示したが、CD38KONK細胞は、これらのMM細胞株に対して、有意により強いADCCを示した。細胞株による結果と同様に、CD38KONK細胞は、初代MM試料に対するより高いDARA媒介性ADCC活性を示し(図12D~12E)、DARA耐性症例からの初代CD38MM細胞に対する細胞傷害性の改善も含まれた(図12Fおよび18)。CD38WTNKと比較した、CD38KONKのCD38発現と改善されたADCCとの間の関係をさらに研究し(図13)、統計的に有意な逆相関を見出した(r=-0.786、p=0.048)。総じて、この結果は、CD38KONK細胞が、低いCD38発現に起因して、別様ではDARA耐性である再発性および難治性のMMに対するDARAの有効性を改善することができることを示す(図18)。
【0155】
NK細胞の細胞傷害性に対するATRAの阻害効果.MM細胞上のCD38の下方制御は、DARAに対する耐性の発達において重要な役割を果たすと考えられる。ATRAによる処理は、CD38標的細胞上のCD38レベルの上方制御を通して、この耐性を克服することができる。MM細胞でのCD38の上方制御およびNK細胞でのCD38の欠失における相乗作用を調べるために、MM細胞をATRAで前処理した後、DARAおよびNK細胞によるADCCを評価した。ATRAによる前処理が、MM標的細胞でのCD38レベルを上方制御することが確認され(図14)、CD38WTおよび対のCD38KONK細胞の両方の存在下で、DARA媒介性ADCCを改善することが示された(図15A~15B)。次いで、ATRAで処理した急性前骨髄球性白血病(APL)患者のPB-NKを使用して、インビボで、NK細胞上のCD38発現に対するATRAの直接的な効果を調べた。処理前に得られた試料と比較して、ATRAによる処理は、これらの患者のPB-NK上のCD38の有意な上方制御と関連付けられた(図15C)。同様に、ATRAによるエクスビボ処理は、CD38WTNK細胞でのCD38レベルを上方制御するが、対のCD38KONK細胞では上方制御しない(図15D)。さらに、ATRAはCD38WTNK細胞のフラトリサイドも増強した(図15E)。ATRAによるMM細胞の前処理とは対照的に、ATRAによるMM細胞とNK細胞の両方の同時処理は、CD38WTNK細胞のDARA媒介性ADCCを著しく損なったが、CD38KONK細胞のDARA媒介性ADCCには影響を与えなかった(図15F)。ATRAは、CD38WTおよび対のCD38KONK細胞の両方の直接的な細胞傷害性を、同程度に有意に低下させた(図15F)。したがって、MM標的細胞上のCD38のATRA誘発性上方制御は、NK細胞のフラトリサイドの増加およびNK細胞機能の障害によって相殺され、DARAの全体的な有効性を低下させる可能性があり、これは、CD38KONK細胞の使用によって緩和され得る(図15G)。
【0156】
CD38KONK細胞におけるより高いOXPHOS活性.CD38は、46kDaのII型膜貫通糖タンパク質であり、細胞内NADレベルを調節するNADヒドロラーゼとしてのエクト酵素活性を含む、複数の機能を有することが示されている。NADは、ATP産生に寄与する酵素触媒反応に不可欠な補助因子であるため、CD38は細胞代謝において重要な役割を果たす。最近の研究では、T細胞におけるCD38のノックアウトが、より高いレベルの細胞内NADをもたらし、これがOXPHOSおよびATP合成を促進し、その結果、がんに対するより高い細胞傷害性をもたらすことが報告されている。T細胞と同様に、代謝の関与は、腫瘍環境におけるNK細胞の細胞傷害性および生存に重要な役割を果たす。CD38ノックアウトがNK細胞代謝に及ぼす影響を調査した。まず、野生型およびCD38KONK細胞においてRNA-seqを行い、DEGを同定し、IPAを使用して、DEGと比べて差次的に制御されている経路を特定した。IPAは、CD38KONK細胞において、コレステロール生合成経路(p<0.00001)およびOXPHOS経路(p<0.00001)で有意な変化を示した。これらの経路における遺伝子の分析は、CD38KONK細胞におけるATP合成、NADリサイクリング、および電子伝達に特異的に関連するミトコンドリア遺伝子の発現の、わずかではあるが有意な増加を特定した(表1、図16Aおよび17)。主成分分析は、ベースラインにおけるドナー依存性の有意な変動を明らかにしたが、既にベースラインのスペクトルの最末端にあったドナー#10を除いて、すべてのドナー対の中のCD38の欠失に応答して一貫した定方向性の変化を明らかにした(図16B)。これらの代謝経路における遺伝子の上方制御を考慮して、CD38KONK細胞の細胞代謝を調査した。ミトコンドリアストレス試験アッセイを使用して、より高いOCRおよび同等のECARが観察され、CD38KONK細胞におけるOCR/ECAR比が、CD38WTNK細胞と比較して、有意に高い結果となった(図16C、16D、16E、16F、および16D)。この結果は、NK細胞が優先的にOXPHOSを使用して、それらの生体エネルギー的要求を達成するように、CD38の欠失がNK細胞を誘導することを示す。重要なことに、CD38KONK細胞はまた、CD38WTNK細胞と比較して、より高い予備呼吸能(SRC)およびミトコンドリア呼吸能を有した(図16D)。これらの有利な代謝シフトは、CD38KONK細胞のDARA媒介性細胞傷害の増強と一致する。
【表6】
【0157】
DARAの使用は、再発/難治性MM患者に有効である。しかし、先行レジメンに組み込まれ、MMの治療における標準治療として受け入れられているにもかかわらず、疾患の再発は避けられないことがますます明らかになっている。DARAによる治療に対するMM細胞の耐性機構が解明され始めている。これらの機構の一部は、腫瘍の不均一性および骨髄微小環境の役割などの、以前に提案されたIMiDまたはPIへの耐性の機構と重複するが、他の機構は、モノクローナル抗体療法に固有のものであり得る。
【0158】
モノクローナル抗体は、4つの機構:CDC、ADCC、ADCP、および受容体架橋を介した活性化誘発性の細胞死、を通して標的を排除する。したがって、抵抗機構は、これらの機構の抑制を通して生じる。例えば、DARA耐性は、MM細胞の表面の補体阻害タンパク質(CD55およびCD59)の過剰発現と関連しており、DARA媒介性CDCを損なう。ADCCに関しては、DARAで独特の状況が生じ、処理中に、高レベルのCD38を発現するNK細胞が除去され、DARA媒介性ADCCが損なわれる。エクスビボ増殖NK細胞の養子移植によるDARA媒介ADCCの救済は、CD38 NK細胞を使用する前臨床モデルにおいて成功した。しかしながら、これらのCD38 NK細胞は、エクスビボ増殖中にCD38発現を再獲得するため、DARA媒介性除去に対する感受性を回復し、臨床上の解釈(clinical translation)を不可能にした。さらに、多発性骨髄腫を有する患者(特に、DARAで治療された患者)は、NK細胞を含む免疫細胞の数が比較的少ない。したがって、本発明者らは、同種NK細胞に焦点を当て、サードパーティのユニバーサルドナー戦略により、最適なNK細胞機能について、望ましいKIR遺伝子型またはFCGR3A多型を有するドナーを選択することが可能になるであろう。
【0159】
ここでは、CRISPR/Cas9システムを使用してCD38KONK細胞を生成した。これらの細胞は、DARA誘発性コンジュゲーションおよびフラトリサイドに耐性であり、インビボで、DARAの存在下で維持された。CD38KONK細胞は、対のCD38WT細胞と比較した場合、MM細胞株および初代試料に対して優れたADCC活性を示した。CD38KONK細胞は、CD38の発現が低いMM細胞株、およびDARA治療中に再発した患者由来のMM細胞に対して特に有効であったが、CD38WTNK細胞は、それらの標的細胞に対する活性が最小限であったか、または全くなかった。DARAによる治療中の低CD38発現MM細胞に対する選択圧を考慮すると、CD38KONK細胞は、この残存疾患に対するDARAの治療効果を強化することができる。
【0160】
NK細胞上のCD38の欠失は、これらの細胞のミトコンドリア呼吸能の増加と、OXPHOS代謝およびコレステロール合成に有利な代償的転写因子プロファイルとに関連付けられた。CD38KONK細胞のエフェクター機能におけるこの代謝シフトの役割は直接的に調査されなかったが、以前の研究は、T細胞においてCD38をノックアウトすると、より高いOXPHOS活性および抗腫瘍効果がもたらされることを示した。
【0161】
抗原密度は、モノクローナル抗体による標的認識およびエフェクター機能における重要な因子であり、したがって、標的細胞上のCD38レベルの上方制御は、DARA活性を増強する可能性を有する。最近、IMiDとDARAとの間の臨床上の相乗効果は、部分的には、IMiDによるMM細胞上のCD38の上方制御に起因する。ATRAはまた、MM細胞上のCD38レベルを上方制御し、それらをDARA媒介性CDCおよびADCCに対して感作させることが示された。既知の好ましい免疫調節プロファイルを有するIMiDとは対照的に、NK細胞のADCC活性に対するATRAの効果についてはほとんど知られていない。ここで、ATRAによる処理は、MM細胞上のCD38のレベルを上方制御することが確認されたが、それはまた、APLを有する患者のエクスビボ増殖NK細胞およびインビボ循環NK細胞上のCD38を上方制御することも示した。NK細胞に対するこの調節効果は、インビボでDARA誘発性フラトリサイドを増強し、MM細胞に対するDARA媒介性ADCCを損なう可能性がある。CD38KONK細胞はフラトリサイドが見られなかったが、CD38WTおよびCD38KONK細胞の両方の直接的な細胞傷害は、ATRAによって有意に抑制された。したがって、MM細胞上のCD38レベルのATRA媒介性上方制御は、NK細胞機能へのその負の影響によって相殺された。まとめると、ATRAによる処理の正味の結果は、CD38WTNK細胞のDARA媒介性ADCC活性の全体的な障害であり、CD38KONK細胞の使用により、ADCCに対するATRAの負の影響が救済された。
【0162】
ATRAによる処理は、MM細胞上のCD55およびCD59の発現を減少させることによって、DARA媒介性CDCを増強させ得ることに言及しておくことが重要である。臨床開発用のほとんどのモノクローナル抗体は、それらのCDC活性に基づいて選択されるが、4つの作用機構のうちのどれが臨床環境で最も重要な役割を果たすのかは不明である。これらの機構を区別する前臨床モデルは、マウス異種移植におけるMMの根絶におけるDARA単独の高い有効性のために困難であり、エクスビボ増殖NK細胞の添加は、DARA単独と比べて、比較的小さな利益を有する。CD38MM患者由来異種移植片の開発は、DARA細胞とNK細胞との組合せの薬物動態モデリング、およびCD38KO細胞とCD38WTNK細胞との比較に有用であり得る。MM患者のためにATRAとDARAとの組合せを試験する現在の臨床試験(NCT02751255)は、独自の治療スケジュールを使用し、これらの薬物への一過的および交錯的な曝露を提供する。DARAの薬物動態は、治療中に比較的一定であり、ATRAレベルは、複雑な全身および組織依存性のフィードバック機構によって厳密に調節される。この組合せを使用した臨床転帰に加えて、この治療スケジュールがNK細胞数、機能、ならびにDARA媒介性ADCCおよびCDCに及ぼす影響を理解することは興味深い。さらに、抗KIR抗体は、ダラツムマブ媒介性の初代骨髄腫細胞の溶解を増強することが示されている。CD38KOおよびCD38WTNK細胞のADCC活性に対するKIR機能/遺伝子型およびFCRGIIIA多型の影響を調査することは、将来の研究の重要な分野であり、これらの所見の臨床上の解釈に必要なステップである。
【0163】
この研究は、CD38KONK細胞がMM細胞に対するDARAの効果を高めることができるという概念の実証を提供した。Cas9/RNPを使用した新たに開発されたDNAフリーのアプローチは、WGSによって評価されるように、非常に低い頻度のオフターゲット効果で、CD38KONK細胞の効率的な生成に成功した。
【0164】
臨床的に有意な数を達成するために重要な、遺伝子改変NK細胞の増殖も方法を適用した。集合的に、これらの結果は、MMだけでなく、潜在的に、急性骨髄性白血病、ならびにB細胞およびT細胞リンパ芽球性白血病およびリンパ腫などの他のCD38血液悪性腫瘍にも対する、DARAと組み合わせた養子免疫療法のための、エクスビボ増殖CD38KONK細胞の合理性および実現可能性を実証する。さらに、NK細胞におけるCD38欠失の方法を適用して、CD38キメラ抗原受容体-NK細胞を生成して、細胞製造中のそれらのフラトリサイドおよびインビボでの有効な抗腫瘍活性を回避することができる。
【0165】
5.実施例5:イサツキシマブを使用した併用療法
MMに対するDARAと組み合わせた養子免疫療法に対するNK CD38KONK細胞の有効性を認識することで、イサツキシマブなどのDARA以外の他の抗CD38免疫療法を、がんの治療に利用することができる。
【0166】
イサツキシマブ誘発性フラトリサイドに対するCD38KONK細胞の耐性。DARAと同様に、イサツキシマブは、CD38およびCD16を架橋することによって、NK対NKのADCCを介してNK細胞のフラトリサイドを誘導する。CD38KONK細胞がイサツキシマブ誘発性フラトリサイドに耐性であるかどうかを研究するために、対のCD38WTおよびCD38KONK細胞のコンジュゲーションおよび生存率を評価することができる。イサツキシマブは、CD38WTNK細胞コンジュゲートの形成を増加させ得るが、CD38KONK細胞コンジュゲートの形成には影響しない。また、イサツキシマブは、CD38WTNK細胞のADCC依存性アポトーシスを誘導することができ、CD38KONK細胞は、イサツキシマブとのインキュベーションの全体を通してその生存率を維持する。同様に、NK細胞におけるCD16の欠失もまた、イサツキシマブによる処理後のその生存率を維持する。これらの結果は、CD16およびCD38が、イサツキシマブ誘発性フラトリサイドに必要かつ十分であり、NK細胞におけるCD38の欠失により、イサツキシマブ誘発性フラトリサイドに耐性になることを示す。
【0167】
次に、イサツキシマブに対するCD38KONK細胞の耐性がインビボにおける優れた持続性にも寄与し得るかどうかを研究するために、CD38WTまたはCD38KONK細胞を、イサツキシマブで処理したNSGマウスに融合させ、PB、脾臓、およびBM中のNK細胞の頻度を調べることができる。CD38WTまたはCD38KOを調べることができる。イサツキシマブによる処理は、CD38WTNK細胞の生着を有意に低減することができるが、CD38KONK細胞の持続性には影響を及ぼさなかった。処理の結果として、CD38WTNK細胞は、脾臓およびBMならびに末梢血中のイサツキシマブによって枯渇するが、CD38KONK細胞は、対照とイサツキシマブ処置マウスとの間のこれらの区画のいずれにおいても有意な枯渇を示さない。
【0168】
MM細胞に対するCD38KONK細胞の優れたイサツキシマブ媒介性ADCC.NK細胞のDARA誘発性枯渇は、標的細胞に対する細胞依存性細胞傷害を鈍化させる可能性があるため、CD38KONK細胞はまた、CD38WTNK細胞よりも効率的に標的細胞を殺傷することができる。これがイサツキシマブにも適用されるかどうかを研究するために、高レベル、低レベル、または皆無のCD38発現を有する異なるMM細胞株に対して、対のCD38WTおよびCD38KONK細胞の細胞傷害性を、イサツキシマブの存在下または不在下で試験することができる。各MM細胞株に対する直接的な細胞傷害性は、CD38WTとCD38KONK細胞との間で同等であるが、イサツキシマブの存在下では、CD38KONK細胞は、CD38標的細胞に対して有意に高い細胞傷害性を示し、CD38KONK細胞のより高いADCCを示している。DARA実験と同様に、CD38WTNK細胞は、OPM-2およびKMS-11などの低レベルのCD38発現を有するMM細胞に対して、わずかなまたは皆無のADCCを示すが、CD38KONK細胞は、これらのMM細胞株に対して、有意により強いADCCを示す。細胞株を用いた結果と同様に、CD38KONK細胞は、初代MM試料に対して、より高いイサツキシマブ媒介性ADCC活性を示す。
【0169】
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図21
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【国際調査報告】