IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国石油化工股▲ふん▼有限公司の特許一覧 ▶ 中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院の特許一覧

<>
  • 特表-軽質芳香族化合物の製造方法 図1
  • 特表-軽質芳香族化合物の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】軽質芳香族化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 4/00 20060101AFI20221221BHJP
   C07C 15/04 20060101ALI20221221BHJP
   C07C 15/06 20060101ALI20221221BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20221221BHJP
   C07C 15/24 20060101ALI20221221BHJP
   B01J 38/12 20060101ALI20221221BHJP
   B01J 38/10 20060101ALI20221221BHJP
   B01J 29/80 20060101ALI20221221BHJP
   B01J 29/90 20060101ALI20221221BHJP
   B01J 29/12 20060101ALI20221221BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221221BHJP
【FI】
C07C4/00
C07C15/04
C07C15/06
C07C15/08
C07C15/24
B01J38/12 C
B01J38/10 C
B01J29/80 M
B01J29/90 M
B01J29/12 M
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525353
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(85)【翻訳文提出日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 CN2020106771
(87)【国際公開番号】W WO2021082579
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】201911047207.3
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】王迪
(72)【発明者】
【氏名】魏暁麗
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼剣洪
(72)【発明者】
【氏名】于敬川
(72)【発明者】
【氏名】張久順
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA10
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA03A
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA09A
4G169BA10A
4G169BA10B
4G169BB02B
4G169BB09B
4G169BC29A
4G169BC39A
4G169BC40A
4G169BC41A
4G169BC68B
4G169BC72B
4G169BC75B
4G169CC01
4G169CC11
4G169DA08
4G169EA02Y
4G169EA04Y
4G169EB18Y
4G169FA01
4G169FA02
4G169FA08
4G169FB19
4G169FB44
4G169FB50
4G169FC08
4G169GA05
4G169GA06
4G169GA19
4G169ZA04A
4G169ZA04B
4G169ZA05A
4G169ZA11A
4G169ZA11B
4G169ZA19A
4G169ZD06
4G169ZF02A
4G169ZF02B
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4G169ZF07B
4H006AA02
4H006AD11
4H006AD18
4H006BA21
4H006BA25
4H006BA26
4H006BA36
4H006BA55
4H006BA81
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BC31
4H006BC32
4H006BD33
4H006BD36
4H006BD52
4H006BD81
4H006BD84
4H006BE20
4H006DA12
4H006DA15
4H039CK10
(57)【要約】
i)水素の存在下での芳香族化合物軽質化反応のために、流動化反応器中で、重質芳香族化合物を含む原料を触媒と接触させて、C6~C8軽質芳香族化合物に富む生成物と使用済み触媒とを得る工程であり、ここでは、前記重質芳香族化合物は、C9+芳香族化合物から選択される1つ以上である工程;ii)得られた前記C6~C8軽質芳香族化合物に富む生成物を分離して、水素、非芳香族成分、C6~C8軽質芳香族化合物およびC9+芳香族成分を得る工程;ならびにiii)前記C9+芳香族成分の少なくとも一部を前記流動化反応器に再循環させる工程を含む、軽質芳香族化合物を製造する方法。この方法は、原料への強力な適応性および運転操作における高いフレキシビリティーを有し、長期間の安定した運転操作を可能にする。この方法は、処理および利用が困難な重質芳香族化合物から高価値の軽質芳香族化合物を生成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)水素の存在下での芳香族化合物軽質化反応のために、流動化反応器中で、重質芳香族化合物を含む原料を触媒と接触させて、C6~C8軽質芳香族化合物に富む生成物と使用済み触媒とを得る工程であり、ここでは、前記重質芳香族化合物は、C9+芳香族化合物から選択される1つ以上である工程;
ii)得られた前記C6~C8軽質芳香族化合物に富む生成物を分離して、水素、非芳香族成分、C6~C8軽質芳香族化合物およびC9+芳香族成分を得る工程;ならびに
iii)前記C9+芳香族成分の少なくとも一部を前記流動化反応器に再循環させる工程、
を含み、
ここで、
工程i)の反応条件は、約250~750℃の温度と、約0~6MPaの圧力(ゲージ圧)と、約0.1~120h-1の重量空間速度または約0.1~40秒の反応時間と、約1~15の水素/炭化水素モル比と、を含み、
工程i)において使用される前記触媒は、担体と、前記触媒の総重量に基づいて約0.01~50重量%の量で前記担体上に担持された活性金属成分と、を含み、
ここで、前記担体は、前記担体の総重量に基づいて、約1重量%~約80重量%のゼオライト、約5重量%~約99重量%の無機酸化物、および約0重量%~約70重量%のクレイを含み、ここで、前記ゼオライトは、メソポーラスゼオライト、マクロポーラスゼオライト、またはそれらの組合せを含み;前記無機酸化物は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、および非晶質シリカ-アルミナから選択される1つ以上であり;前記クレイは、カオリン、モンモリロナイト、珪藻土、アタパルジャイト、セピオライト、ハロイサイト、ハイドロタルサイト、ベントナイト、およびレクトライトから選択される1つ以上であり、
前記活性金属成分は、希土類金属および遷移金属から選択される1つ以上である、
軽質芳香族化合物の製造方法。
【請求項2】
工程i)の前記反応条件は、約320~600℃の温度と、約0~4.5MPaの圧力と、約1~80h-1の重量空間速度または約0.5~30秒の反応時間と、約2~10の水素/炭化水素モル比と、を含み、
好ましくは、前記反応条件は、約360~550℃の温度と、約1~3MPaの圧力と、約1.5~50h-1の重量空間速度または約1~15秒の反応時間と、約3~8の水素/炭化水素モル比と、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程ii)の前記分離は、以下の工程をさらに含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法:
前記C6~C8軽質芳香族化合物に富む生成物を気液分離に供して、水素と液体生成物とを得る工程;
前記液体生成物を芳香族化合物抽出に供して、非芳香族成分と芳香族成分とを得る工程;および
前記芳香族成分を第1の分留に供して、C6~C8軽質芳香族化合物とC9+芳香族成分とを得る工程;または、前記芳香族成分を第2の分留に供して、C6~C8軽質芳香族化合物と、C9芳香族化合物と、C10+芳香族成分と、を得る工程。
【請求項4】
前記工程ii)の後に、前記方法が、以下の工程のうちの1つ以上をさらに含む、請求項3に記載の方法:
前記C6~C8軽質芳香族化合物を第3の分留に供して、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを得る工程;
前記トルエンと前記C9芳香族化合物とを混合して混合リサイクル供給物を得、前記混合リサイクル供給物を前記流動化反応器に再循環させる工程;および
前記C10+芳香族成分を、前記重質芳香族化合物を含む原料と混合し、その結果物を前記流動化反応器に再循環させる工程。
【請求項5】
前記混合リサイクル供給物は、前記流動化反応器内における前記重質芳香族化合物を含む原料の流れ方向に沿って、前記C10+芳香族成分が再循環させられる位置の下流の位置で、流動化反応器に再循環させられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
使用済み触媒を流動床再生器中で再生し、得られた再生触媒を流動化反応器に再循環させる工程をさらに含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記流動床再生器はロックホッパーを含み、および
前記再生は、前記使用済み触媒を、前記ロックホッパーを経由して再生のために前記流動床再生器に送り、且つ得られた再生触媒を、前記ロックホッパーを経由して前記流動化反応器に再循環させることによって実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記流動床再生器は、反応器受入器、再生器受入器、再生器供給タンク、および任意選択的に還元器をさらに含み、および
前記再生は、
前記使用済み触媒を前記流動化反応器から取り出し、それを前記反応器受入器に送り、次いで前記ロックホッパーを経由して前記再生器供給タンクに送り、次いで前記再生器供給タンクから前記流動床再生器に送ること;
前記使用済み触媒を、酸素含有雰囲気下、前記再生器内で、コークス燃焼による再生に供して、再生触媒を得ること;および
前記再生触媒を前記流動床再生器から取り出し、それを、前記再生器受入器を直接経由して、再使用のために前記流動化反応器に再循環させるか、または還元器内で還元した後に、再使用のために前記流動化反応器に再循環させること、
によって実施され、
好ましくは、前記方法は、前記ロックホッパー内の前記使用済み触媒を減圧する工程、および前記ロックホッパー内の前記再生触媒を加圧する工程をさらに含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記重質芳香族化合物を含む原料は、約120℃~約150℃の初期沸点および約200℃~約250℃の最終沸点を有し、
好ましくは、前記重質芳香族化合物を含む原料は、約20重量%~約100重量%のC9+芳香族化合物の合計含有量を有する、
先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記重質芳香族化合物を含む原料は、水蒸気分解ガソリンから得られる重質芳香族化合物、深接触分解ガソリンから得られる重質芳香族化合物、接触分解ガソリンから得られる重質芳香族化合物、接触改質から得られる重質芳香族化合物、および芳香族化合物複合プラントにおけるキシレン塔の底部からのC9+重質芳香族化合物から選択される少なくとも1つである、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記流動化反応器は、搬送床反応器、濃密相流動床反応器、搬送床反応器と濃密相流動床反応器とから構成された複合反応器、2つ以上の搬送床反応器から構成された複合反応器、または2つ以上の濃密相流動床反応器から構成された複合反応器から選択される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記搬送床反応器は、ライザー反応器であり、および
前記濃密相流動床反応器は、気泡流動床反応器、乱流流動床反応器などである、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記メソポーラスゼオライトは、ZSMゼオライトおよびZRPゼオライトから選択される1つ以上であり、および
前記マクロポーラスゼオライトは、βゼオライト、REYゼオライト、REHYゼオライト、超安定Yゼオライト、および高シリカYゼオライトから選択される1つ以上である、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記ゼオライトの総重量に基づいて、
前記メソポーラスゼオライトは、約0重量%~約100重量%、好ましくは約50重量%~約100重量%、より好ましくは約70重量%~約90重量%の量で存在し、および
前記マクロポーラスゼオライトは、約0重量%~約100重量%、好ましくは約0重量%~約50重量%、より好ましくは約10重量%~約30重量%の量で存在する、
先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本願は、「軽質芳香族化合物の製造方法」と題され、2019年10月30日に出願された、特許出願第201911047207.3号の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本願は軽質芳香族化合物の製造方法に関し、特に、重質芳香族化合物を含む原料から軽質芳香族化合物を製造する方法に関する。
【0003】
〔背景技術〕
BTX(ベンゼン、トルエンおよびキシレン)は重要な石油化学基礎製品であり、合成ゴム、合成繊維および合成樹脂などの種々の化学製品の重要な出発材料であり、トルエンおよびキシレンはガソリンのオクタン価を改善するための添加剤としても使用することができる。中国におけるテリレン、ポリエステルおよびPTA産業の継続的な発展により、世界的な芳香族炭化水素産業チェーンの成長は北東アジア地域に集中し、BTXの需要は継続的に増加している。しかしながら、芳香族化合物製造プロセスはC9+重質芳香族化合物の生成を伴う。価値が低く且つ利用が限られているC9+重質芳香族化合物の現状の生成が非常に多く、資源の浪費の元となっている。したがって、より多くの軽質オレフィンの同時生成を伴うガソリンの接触分解におけるC9+重質芳香族化合物のBTXへの変換は、資源を十分に利用し且つ企業の品質および効率を改善するための有効な方法であることは疑いの余地がない。
【0004】
CN1217370Aは、重質芳香族化合物の水素化脱アルキル化およびトランスアルキル化のための方法を開示しており、当該方法は、C10および/またはC11芳香族化合物を原料として使用し、鉄、コバルト、ニッケルもしくはモリブデンまたはそれらの酸化物から選択される少なくとも1種の金属と、ビスマスとを共に担持した水素型モルデナイトを触媒として使用し、300~600℃の温度および1.5~4.0MPaの圧力下、固定床反応器中で反応を行って、C6~C9芳香族化合物およびC1~C4パラフィンを製造する。この方法は、C10+重質芳香族化合物の水素化脱アルキル化およびトランスアルキル化に特に適しており、工業的製造に使用することができる。
【0005】
CN101362669Aは、エチレン、プロピレンおよび芳香族化合物を調製するための触媒による変換方法を開示しており、当該方法は、異なる分解挙動を有する炭化水素原料を接触分解用触媒と接触させて流動床反応器中で分解反応を行う工程、使用済み触媒と反応石油ガスとを分離する工程、使用済み触媒を再生後に反応器に再循環させる工程、および反応石油ガスを分離して目的生成物、すなわち軽質オレフィンと芳香族化合物とを得る工程を含むことを特徴とし、この方法では、160~260℃の留分を再使用するために接触分解工程に再循環させ、エタン、プロパンおよびブタンを水蒸気分解に供してエチレンとプロピレンとをさらに生成させている。この方法は、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物の同時生成を伴いながら、重質原料からエチレン、プロピレンなどの軽質オレフィンを最大限に生産することを可能とし、それによって、エチレンおよびプロピレンの収率は、両方とも20重量%を超えることが可能である。
【0006】
CN1752058Aは、重質芳香族化合物の水素化脱アルキル化およびトランスアルキル化の方法を開示しており、この方法は、原料中の重質芳香族化合物の許容含有率が低く、重質芳香族化合物の利用率が低いという先行技術における問題の解決を主目的としている。この方法は、C10および/またはC11芳香族化合物を原料として使用し、金属ビスマスとモリブデンまたはそれらの酸化物とを担持させたマクロポーラスゼオライトを触媒として使用して、300~600℃の温度および1.0~4.0MPaの圧力にて固定床反応器中で反応を行い、混合キシレンを生成することによって、上記の問題を解決している。この方法は、簡単なプロセス、混合キシレンの高い収率、低い水素-炭化水素の比率などの特徴を有しており、混合キシレンを重質芳香族化合物から工業的に製造するために利用することができる。
【0007】
CN1906272Aは、C4~C9脂肪族化合物および脂環式化合物製品が混合される場合もある、C8~C13アルキル芳香族化合物を含む炭化水素の、分離した触媒による水素化脱アルキル化プロセスを開示する。このプロセスは、ZSM-5ゼオライトからなり、且つ第IIB族、第VIB族、および第VIII族金属から選択される少なくとも1つの金属で修飾された触媒を用いて、水素の存在下、400~650℃の温度、2~4MPaの圧力、およびH/原料のモル比が3~6で、炭化水素組成物を連続的に処理することを含む。このプロセスが提供できることは、ベンゼンおよびトルエンの全収率を75%まで上げることである。
【0008】
CN101348733Aは、炭化水素原料から軽質芳香族化合物と軽質パラフィンとを製造するプロセスを開示する。このプロセスは、PtまたはPdを含むゼオライト触媒の存在下、炭化水素原料を30~250℃の沸点で反応させる工程と、炭化水素原料中の重質芳香族化合物を水素化脱アルキル化および軽質芳香族化合物とのトランスアルキル化反応に供する工程と、軽質芳香族化合物を異性化反応に供してBTX(Bはベンゼンであり、Tはトルエンであり、Xはキシレンである)軽質芳香族化合物に富む成分に変換する工程と、非芳香族化合物を水素化分解反応に供して軽質パラフィンを生成させる工程と、液体生成物を蒸留塔中で沸点の差に従ってベンゼン、トルエン、キシレンおよびC9+芳香族化合物に分離する工程と、軽質パラフィンをガス生成物から分離する工程とを含む。このプロセスは、伝統的な炭化水素原料の分離プロセスにおいて遭遇する諸問題、例えば、溶媒抽出の必要性、プロセスの複雑性、高いコスト、および分離後に得られる重質芳香族化合物および非芳香族化合物の価値が低いこと、を解決する。
【0009】
CN101734986Aは、分解ガソリンの水素化分解によってより多くのベンゼン及びキシレンを製造するプロセスを開示している。このプロセスは、触媒の存在下でC7+分解ガソリン原料を反応させること、重質芳香族化合物を水素化脱アルキル化に供し、かつ、軽質芳香族化合物と共にトランスアルキル化反応に供すること、軽質芳香族化合物を異性化反応に供してそれらをBTX軽質芳香族化合物に富む成分に変換すること、沸点の差に従って液体生成物をベンゼン、トルエン、キシレンおよびC9+留分に分離し、これによってトルエンとC9+留分とをさらなる処理のためにリサイクルさせることができるようにすること、並びに軽質パラフィンをガス生成物から分離することを含む。このプロセスは、分解ガソリンを処理する伝統的なプロセスにおいて遭遇する諸問題、すなわち、BTX(Bはベンゼンであり、Tはトルエンであり、Xはキシレンである)芳香族化合物の分離のみが行われること、軽質芳香族生成物は大量のトルエンを含むこと、および分離された重質芳香族化合物および非芳香族化合物の価値が低いこと、を解決する。
【0010】
CN103930524Aは、バイオマスを製品に変換するプロセスを開示し、このプロセスは、水素化熱分解条件化での流動床反応容器において、水素化熱分解触媒の存在下、バイオマスを水素に接触させる工程;および前記反応容器から生成物と炭素とを除去する工程を含み、ここでは炭素と触媒とは、沈下速度の差に応じて分離される。
【0011】
上記特許出願に開示された技術は、既存の重質芳香族化合物軽質化技術のほとんどが固定床水素化脱アルキル化プロセスを採用すること、並びに過酷な反応条件、触媒の再生およびリサイクルの困難性、および触媒の初期活性に対する厳しい要求といった欠点を有していることを示している。
【0012】
〔発明の概要〕
本願の目的は、C9+重質芳香族化合物をC6~C8軽質芳香族化合物に効率的に変換することができ、長期間安定な運転操作を可能にする、軽質芳香族化合物の製造方法を提供することである。
【0013】
上記目的を達成するために、本願は、以下の工程を含む軽質芳香族化合物の製造方法を提供する:
i)水素の存在下での芳香族化合物軽質化反応のために、流動化反応器中で重質芳香族化合物を含む原料を触媒と接触させて、C6~C8軽質芳香族化合物に富む生成物と使用済み触媒とを得る工程、ここで前記重質芳香族化合物は、C9+芳香族化合物から選択される1つ以上である;
ii)得られた前記C6~C8軽質芳香族化合物に富む生成物を分離して、水素、非芳香族成分、C6~C8軽質芳香族化合物およびC9+芳香族成分を得る工程;および
iii)前記C9+芳香族成分の少なくとも一部を流動化反応器に再循環させる工程、
ここで:
工程i)の反応条件は:約250~750℃の温度、約0~6MPaの圧力、約0.1~120h-1の重量空間速度、および約1~15の水素/炭化水素モル比を含み、
工程i)で使用される前記触媒は、担体、および前記触媒の総重量に対して約0.01~50重量%の量で前記担体上に担持された活性金属成分を含み、
ここで、前記担体は、前記担体の総重量に対して、約1~約80重量%のゼオライト、約5~約99重量%の無機酸化物、および約0~約70重量%のクレイを含み、ここで、前記ゼオライトはメソポーラスゼオライト、マクロポーラスゼオライト、またはそれらの組合せを含み;前記無機酸化物は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、および非晶質シリカ-アルミナから選択される1つ以上であり;前記クレイは、カオリン、モンモリロナイト、珪藻土、アタパルジャイト、セピオライト、ハロイサイト、ハイドロタルサイト、ベントナイト、およびレクトライトから選択される1つ以上であり、
前記活性金属成分は希土類金属および遷移金属から選択される1つ以上である。
【0014】
本願による方法は、C9+重質芳香族化合物を含む原料に対して水素化脱アルキル化およびトランスアルキル化処理を実施するために流動化反応系を使用し、これは、強力な原料適合性および運転操作における高いフレキシビリティーを有し、長期間安定な操作を可能にし、そして処理および利用が困難な重質芳香族化合物を高価値の軽質芳香族化合物に変換することができる。
【0015】
本願のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明において詳細に記載される。
【0016】
〔図面の簡単な説明〕
本明細書の一部を形成している図面は、本願の理解を助けるために提供されるものであって、限定的であると考えられるべきではない。本願は、以下の詳細な説明と組み合わせて図面を参照して解釈することができる。図面において:
図1は、本願による方法の一実施形態のプロセスフロー図を示し、
図2は、本願による方法の一実施形態による再生器の概略図を示す。
【0017】
〔発明の詳細な説明〕
以下、本願の具体的な実施形態および添付図面を参照して、本願をさらに詳細に説明する。本願の特定の実施形態は、例示目的のみのために提供され、いかなる方法においても限定することを意図したものではないことに留意されたい。
【0018】
本願の文脈において説明される、数値範囲の終点を含む任意の特定の数値は、その厳密な値に限定されないが、厳密な値の±5%以内のあらゆる可能な値などの前記厳密な値に近いすべての値をさらに包含すると解釈されるべきである。さらに、本明細書に記載されるあらゆる数値範囲に関して、範囲の終点間、範囲内の各終点と任意の特定の値との間、または範囲内の任意の2つの特定の値の間で任意の組合せを行って、1つ以上の新しい数値範囲を提供することができる。この場合、前記新しい数値範囲はまた、本願に具体的に記載されていると見なされるべきである。
【0019】
特に明記しない限り、本明細書において使用される用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有し、用語が本明細書において定義され、且つそれらの定義が当技術分野における通常の理解と異なる場合、本明細書において提供される定義が優先されるものとする。
【0020】
本願において、用語「C9+芳香族化合物」は、9個以上の炭素原子を有する芳香族の化合物の総称であり、9個以上の炭素原子を有するあらゆる既存の芳香族の化合物を包含することを意図する。同様に、本願において、用語「C10+芳香族化合物」は、10個以上の炭素原子を有する芳香族の化合物の総称であり、10個以上の炭素原子を有するあらゆる既存の芳香族の化合物を包含することが意図される。
【0021】
本願において、用語「C6~C8軽質芳香族化合物」は、6~8個の炭素原子を有する芳香族の化合物の総称であり、6個、7個、または8個の炭素原子を有するあらゆる既存の芳香族の化合物を包含することが意図される。
【0022】
本願において、用語「流動化反応器」および用語「流動床反応器」は互換的に使用され、気体のプロセス流によって固体触媒粒子が懸濁流の状態にされて気体-固体反応プロセスを実施する反応器を指し、これには様々な形態の希釈相搬送床、濃密相搬送床、気泡流動床、乱流流動床、高速流動床などが含まれる。
【0023】
本願の文脈において、明示的に述べられている事項に加えて、言及されていないあらゆる事項は、変更されることなく当技術分野で公知のものと同じであると見なされる。さらに、本明細書において説明される実施形態のいずれも、本明細書において説明される他の1つ以上の実施形態と自由に組み合わせることができ、このようにして得られる技術的解決策または概念は、本願の元の開示または元の説明の一部と見なされ、そのような組合せが明らかに不合理であることが当業者に明らかでない限り、本明細書において開示または予想されなかった新規事項であると見なされるべきではない。
【0024】
本明細書において引用されたすべての特許文献並びに教科書および雑誌論文をそれらに限定されることなく含む非特許文献は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
本願は、以下の工程を含む、軽質芳香族化合物を製造する方法を提供する:
i)重質芳香族化合物を軽質芳香族化合物に変換するための効果的な条件下で、水素の存在下での反応のために、流動化反応器中で重質芳香族化合物を含む原料を触媒と接触させて、C6~C8軽質芳香族化合物に富む生成物と使用済み触媒とを得る工程、ここで前記重質芳香族化合物は、C9+芳香族化合物から選択される1つ以上である;
ii)得られた前記C6~C8軽質芳香族化合物に富む生成物を分離して、水素、非芳香族成分、C6~C8軽質芳香族化合物およびC9+芳香族成分を得る工程;および
iii)前記C9+芳香族成分の少なくとも一部を流動化反応器に再循環させる工程。
【0026】
本願による方法は、流動化反応系を使用するので、原料および触媒を流動化反応器内で連続的に反応させることができ、したがって、強力な原料適合性および運転操作における高いフレキシビリティーを有し、長期間安定な運転操作を可能にする。
【0027】
本願による方法は、軽質芳香族化合物の供給と需要との間の矛盾を除去し、様々な石油精製プロセスおよび化学工学プロセスが遭遇する、価値が低く利用困難性を有する重質芳香族化合物が多量に生成するという問題を解決し、石油化学産業の経済的利益および社会的利益を改善することができる。
【0028】
本願によれば、工程i)において、C6~C8軽質芳香族化合物を得るために、C9+重質芳香族化合物は、脱アルキル化およびトランスアルキル化反応を受けてもよい。工程i)における反応条件は、広い範囲内で変わってもよい。好ましい実施形態において、反応温度は、約250~750℃、好ましくは約320~600℃、より好ましくは約360~550℃であってもよく、例えば約380~500℃または約400~480℃などであってもよく;圧力(ゲージ圧力)は約0~約6MPa、好ましくは約0~約4.5MPa、より好ましくは約1~約3MPaであってもよく;重量空間速度(例えば、濃密相流動床に関して)は、約0.1~約120h-1、好ましくは約1~約80h-1、より好ましくは約1.5~約50h-1であってもよく、例えば約1~約30h-1、約1.5~約15h-1、約1~約10h-1または約1.5~約10h-1などであってもよく、あるいは反応時間(例えば、搬送床反応器に関して)は、約0.1~約40秒、好ましくは約0.5~約30秒、より好ましくは約1~約15秒であり、例えば約0.2~約20秒または約0.6~約10秒などであり;および水素/炭化水素モル比は、約1~約15、好ましくは約2~約10、より好ましくは約3~約8であってもよく、例えば約3~約5などでもよい。
【0029】
本願によれば、流動化反応器から得られた石油ガスを使用済み触媒から分離した後、C6~C8軽質芳香族化合物に富む反応生成物が得られ、反応生成物をさらに分離して、水素、非芳香族成分、C6~C8軽質芳香族化合物およびC9+芳香族成分を得ることができ、前記分離は、当技術分野で従来使用されている任意の方法によって実施することができる。好ましい実施形態において、C6~C8軽質芳香族化合物に富む生成物を気液分離に供して水素および液体生成物を得ることができ、次いで、液体生成物を芳香族化合物抽出に供して非芳香族成分および芳香族成分を得ることができる。好ましくは、分離された水素を工程i)の流動化反応器に再循環させてもよい。
【0030】
さらに好ましい実施形態においては、C6~C8軽質芳香族化合物を分離するために、芳香族成分を第1の分留に供して、C6~C8軽質芳香族化合物およびC9+芳香族成分を生じさせてもよく;ここで、さらなる反応のために、C9+芳香族成分の少なくとも一部を、流動化反応器に再循環させることができ、特に好ましくは、さらなる反応のために、C9+芳香族成分全体を流動化反応器に再循環させることができる。第1の分留を実施するための装置および条件は、当技術分野で従来使用されているものであってもよく、例えば第1の分留のための装置は、分留塔、またはフラッシュドラムであってもよく、第1の分留のための条件は、当技術分野で従来使用されているものであってもよい。
【0031】
別のさらに好ましい実施形態においては、C9+芳香族成分の内のC9芳香族化合物およびC10+芳香族成分は分離されてもよく、例えば、芳香族成分に対して第2の分留を実施することによって分離されて、C6~C8軽質芳香族化合物、C9芳香族化合物、およびC10+芳香族成分を生じさせてもよい。第2の分留を実施するための装置および条件は当技術分野で従来使用されているものであってもよく、例えば第2の分留のための装置は、分留塔であってもよく、第2の分留のための条件は、当技術分野で従来使用されているものであってもよい。
【0032】
本願によれば、生成物から分離されたC6~C8軽質芳香族化合物は、一つの生成物としてシステムから送出することができ、または別の方法でさらに分離して、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを得ることができる。分離方法は、当技術分野で従来使用されているものであってよく、例えば、C6~C8軽質芳香族化合物を第3の分留に供して、ベンゼン、トルエン、およびキシレンを生じさせてもよい。第3の分留を実施するための装置および条件は、当技術分野で従来使用されているものであってもよく、例えば第3の分留のための装置は、分留塔であってもよく、第3の分留のための条件は、当技術分野で従来使用されているものであってもよい。
【0033】
芳香族成分に対して第2の分留を実施する場合の好ましい実施形態においては、第2の分留によって分離されたC9芳香族化合物を、トルエンと一緒にトランスアルキル化に供して、より多くのキシレンを生成させてもよい。なおさらなる好ましい実施形態においては、図1に示されるように、C9芳香族化合物をC6~C8軽質芳香族化合物から分離されたトルエンと混合することによって、混合リサイクル供給物を得てもよく、前記混合リサイクル供給物は流動化反応器に再循環させてもよい。混合リサイクル供給物中のトルエンおよびC9芳香族化合物は、流動化反応器中において、トルエン不均化およびC9芳香族化合物と一緒にトランスアルキル化を受けて、キシレンを生成してもよく、その結果、軽質芳香族生成物中のキシレン含有量が増加する。また、この実施形態において、C10+芳香族成分は、反応のために流動化反応器へ再循環させられる前に、重質芳香族化合物を含む原料と混合されてもよい。
【0034】
さらに好ましくは、流動化反応器中の反応変換を増加させるために、特に好適な実施形態においては、図1に示すように、C10+芳香族成分および混合リサイクル供給物は、流動化反応器中における原料の流れ方向に沿って、流動化反応器中に連続的に供給されてもよく、すなわち、C10+芳香族成分は、流動化反応器の上流位置で供給されてもよく、トルエンおよびC9芳香族化合物を含む混合リサイクル供給物は、重質芳香族原料のための入口の下流で、流動化反応器へ再循環させられてもよい。図1に示す反応器では、流動化反応器はライザー反応器であり、混合リサイクル供給物の入口の位置は、重質芳香族化合物を含む原料の入口の位置よりも高く;流動化反応器がダウナー反応器である実施形態では、混合リサイクル供給物の入口の位置は、重質芳香族化合物を含む原料の入口の位置よりも低い。
【0035】
本願によれば、石油ガスからの使用済み触媒の分離は、当業者に周知のサイクロンによって、または当業者に周知のフィルターによって実施することができる。使用済み触媒の分離後に得られる石油ガス、すなわちC6~C8軽質芳香族化合物に富む反応生成物は、後続の分離システムに供されて、ガス、非芳香族成分、C6~C8軽質芳香族化合物、および比較的重質なC9+芳香族成分を分離し、さらにBTXなどの所望の生成物を分離することができる。そして、この分離は、本願において、特定の方法に限定されることなく当技術分野で従来使用されている方法によって実施することができ、その詳細な説明は本明細書では省略する。
【0036】
本願によれば、分離された使用済み触媒は、再生のために再生反応器に送られ、そして再循環させることができ、C6~C8軽質芳香族化合物に富む生成物は、気液分離に供されて水素を分離することができる。図1に示すように、C6~C8軽質芳香族化合物に富む生成物は、2段階の冷却気液分離器を通されて、例えば、分離のために、熱生成物用気液分離タンクおよび冷生成物用気液分離タンクに順次送られる。水素は冷生成物用気液分離タンクの頂部から得られるが、得られた水素をリサイクル水素として流動化反応器へ再循環させることもでき、2つの気液分離タンクの底部から得られた液体生成物を、さらに分離することができる。
【0037】
本願の好ましい実施形態において、使用済み触媒は、再生のために流動床再生器に送られてもよく、得られた再生触媒は、流動化反応器へ再循環させられてもよい。使用済み触媒の再生は、当業者に周知の方法で実施してもよく、工程i)において使用される触媒の全部または少なくとも一部は、再生された触媒から得られてもよい。再生工程では、酸素含有ガス、例えば大気は、典型的には再生器の底部から再生器に導入されてもよい。再生器への酸素含有ガスの導入後、使用済み触媒は、コークス燃焼による再生のために酸素と接触させられ、触媒の再生から生成した燃焼ガスは、再生器の上部で気固分離に供され、続いて次のエネルギー回収システムに通される。触媒の活性金属成分の性質に応じて、還元および硫化のような再生プロセスが組み込まれてもよい。
【0038】
触媒再生中の水素含有ガス流と酸素含有ガス流との間の接触を回避するために、そしてプラントの安全性を改善するために、好ましい実施形態では、図2に示すように、流動床再生器は、ロックホッパーをさらに含んでいてもよく、再生方法は、以下を含んでいてもよい:再生のために、使用済み脱アルキル化触媒を、ロックホッパーを経由して流動床再生器の中に通すこと、および再生された脱アルキル化触媒を、前記ロックホッパーを経由して流動化反応器に再循環すること。この実施形態において、ロックホッパーは、反応器内の高圧な炭化水素または水素の環境から再生器内の低圧な酸素の環境へと、および再生器内の低圧な酸素の環境から反応器内の高圧な炭化水素または水素の環境へと、安全且つ効率的に触媒を移送することを可能とする。好ましい実施形態において、本願の方法は、ロックホッパー内で使用済み触媒を減圧し、続いて再生触媒を加圧する工程をさらに含む。
【0039】
本願によれば、ロックホッパーを用いることにより、反応器および再生触媒供給タンク中の還元雰囲気(水素雰囲気)を、コークス燃焼再生用の再生器中の酸素含有雰囲気から、十分に隔離することができ、その結果、プロセスおよび方法の安全性を確保することができ、反応器および再生器の運転圧力をフレキシブルに調整および制御することができる。詳細には、再生器の運転圧力を上昇させることなく、反応器の運転圧力を上昇させることができ、その結果、プラントの処理能力を増加させることができる。本明細書に記載されるロックホッパーは、異なる雰囲気間(例えば、酸化雰囲気および還元雰囲気)で、および/または異なる圧力環境間(例えば、高圧から低圧、またはその逆)で、流れを切り替えることを可能にする装置であり、その構成および動作は、本明細書の記載に基づいて当業者によって容易に実現される。
【0040】
さらなる好ましい実施形態において、図2に示されるように、流動床再生器は、反応器受入器19、再生器受入器23、再生器供給タンク21、および任意に還元器24をさらに含んでいてもよく、流動化反応器から回収された使用済み触媒は、反応器受入器19に移送され、次いでロックホッパー20を経由して再生器供給タンク21に移送されてもよく、次いで再生器供給タンク21から流動床再生器22に移送され、酸素含有雰囲気下、再生器中でコークス燃焼による再生に供されて再生脱アルキル化触媒を得てもよく;再生された触媒は、流動床再生器22から連続的に回収され、再生器受入器23を通って還元器24を通され、還元された後に再使用のために流動化反応器に再循環させられる。なお更に好ましくは、使用済み触媒はロックホッパー20内で減圧され、再生された触媒は必要に応じてロックホッパー20内で加圧されてもよい。
【0041】
本願の他の実施形態では、再生器と反応器との間の触媒移送は、再生触媒スタンドパイプおよび使用済み触媒スタンドパイプを使用して行ってもよい。
【0042】
本願によれば、重質芳香族化合物を含む原料は、少なくとも1つのC9+芳香族炭化水素を含み、これは、原料が純粋なC9+芳香族炭化水素であるかまたはC9+芳香族炭化水素を含む原料であってもよく、好ましくはC9+芳香族化合物に富む原料であってもよいことを意味し;重質芳香族化合物を含む原料中のC9+芳香族化合物の含有量は、広範囲にわたって変化することができ、好ましくはC9+芳香族化合物の含有量は、約20重量%~約100重量%の範囲、より好ましくは約30重量%~約100重量%の範囲であることができる。
【0043】
本願によれば、重質芳香族化合物を含む原料は、約120~150℃、好ましくは約130~140℃の初期沸点と、約200~250℃、好ましくは約205~240℃の最終沸点と、約120~250℃、好ましくは約140~220℃の蒸留範囲と、を有していてもよい。
【0044】
本願によれば、重質芳香族化合物を含む原料は、水蒸気分解、接触分解、接触改質、PX製造などのプロセスから、またはC9+芳香族化合物を生産することができる他のプロセスから得られてもよく、例えば、上記の要件を満たす原料は、水蒸気分解ガソリンから得られる重質芳香族化合物、接触分解ガソリンから得られる重質芳香族化合物、接触改質から得られる重質芳香族化合物、および芳香族化合物複合ユニット中のキシレン塔の底部からのC9+重質芳香族化合物のうちの少なくとも1つであり得る。
【0045】
本願によれば、工程i)において使用される触媒は、担体および担体上に担持された活性金属成分を含んでいてもよく、触媒の組成および含有量は、広範囲にわたって変化させてもよい。好ましい実施形態では、触媒の総重量に基づいて、担体は、約50~約99.99重量%、好ましくは約55~約85重量%の量で触媒中に存在することができ;活性金属成分は、約0.01~約50重量%、好ましくは約0.01~約45重量%の量で存在することができる。
【0046】
本願によれば、活性金属成分は、例えばFe、Ni、Pt、Pd、CoおよびMoなど、好ましくはNi、PtおよびPdなどの希土類金属および遷移金属のうちの1つ以上であることが好ましい。活性金属成分が貴金属である場合、それは好ましくは約0.01~約5重量%の量で存在し;活性金属成分が非貴金属である場合、それは好ましくは約0.01~約30重量%の量で存在し、これらの値は金属元素を基準として、触媒の総重量に基づいて計算される。
【0047】
本願によれば、活性金属成分が貴金属である場合、脱アルキル化触媒は予備硫化される必要はなく;活性金属成分が非貴金属である場合、触媒は予備硫化されていても、されていなくてもよい。
【0048】
本願によれば、担体の組成および含有量もまた、広い範囲内で変化させてよい。好ましい実施形態では、担体は、担体の乾燥重量に基づいて、約1~約80重量%のゼオライト、約5~約99重量%の無機酸化物、および約0~約70重量%のクレイを含んでいてもよく;さらに好ましくは、担体は、約10~約50重量%のゼオライト、約10~約90重量%の無機酸化物、および約1~約60重量%のクレイを含んでいてもよい。好ましくは、ゼオライトは、メソポーラスゼオライト、マクロポーラスゼオライト、またはそれらの組合せを含んでいてもよく、好ましくは、メソポーラスゼオライト、マクロポーラスゼオライト、またはそれらの組合せからなる群から選択される。さらに好ましくは、ゼオライトの総重量に基づいて、メソポーラスゼオライトは、約0~約100重量%、好ましくは約50~約100重量%、より好ましくは約70~約90重量%の量で存在し;マクロポーラスゼオライトは、約0~約100重量%、好ましくは約0~約50重量%、より好ましくは約10~約30重量%の量で存在する。
【0049】
本願によれば、触媒の担体において、メソポーラスゼオライトおよびマクロポーラスゼオライトは、当技術分野で従来使用されているタイプのものであってもよい。例えば、メソポーラスゼオライトは、好ましくはZSMゼオライトおよびZRPゼオライトから選択される1つ以上であり、マクロポーラスゼオライトは、好ましくはβゼオライト、REYゼオライト、REHYゼオライト、超安定Yゼオライトおよび高シリカYゼオライトから選択される1つ以上である。
【0050】
本願によれば、触媒の担体において、無機酸化物およびクレイは、それぞれ当技術分野で従来使用されているタイプのものであってよく、例えば、無機酸化物は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアおよび非晶質シリカ-アルミナのうちの1つ以上であってよく、好ましくはシリカおよび/またはアルミナであってよく;クレイは、カオリン、モンモリロナイト、珪藻土、アタパルジャイト、セピオライト、ハロイサイト、ハイドロタルサイト、ベントナイト、およびレクトライトから選択される1つ以上であってよく、好ましくはカオリンおよび/またはハロイサイトであってよい。
【0051】
本願によれば、担体は、約700℃~約850℃の温度および100%までの水蒸気の雰囲気の条件下で水熱エージング処理に供されてもよく、または水熱エージングなしで使用されてもよい。
【0052】
本願によれば、触媒は、以下の粒度分布を有している微小球状粒子の形状であることが好ましい:約5%未満の0~20μmの粒子の質量分率、約30%未満の0~40μmの粒子の質量分率、約80%超の0~149μmの粒子の質量分率、および約50~約90μm、好ましくは約60~約80μmの平均粒径;および約10%/h未満、好ましくは約5%/h未満の触媒摩耗指数。
【0053】
本願によれば、流動化反応器は、好ましくは搬送床反応器、濃密相流動床反応器、搬送床反応器と濃密相流動床反応器とから構成された複合反応器、2つ以上の搬送床反応器から構成された複合反応器、または2つ以上の濃密相流動床反応器から構成された複合反応器からなる群から選択され;ここで、搬送床反応器は、例えばライザー反応器であってもよく;濃密相流動床反応器は、例えば気泡床反応器、乱流流動床反応器などであってもよい。好ましい実施形態では、使用される流動化反応器は、濃密相流動床反応器でり、濃密相流動床反応器は拡張セグメントを上部に備えていてもよく、その中に、ガス流中に取り込まれた触媒を回収するためのサイクロンまたは触媒フィルターを設けてもよい。濃密相流動床反応器またはライザー反応器を使用する場合、その供給および操作方式は、既存の濃密相流動床反応器およびライザー反応器において従来採用されているものと同じであってもよく、本願において特に限定されない。
【0054】
特に好ましい実施態様においては、図1に示すように、本願に係る軽質芳香族化合物の製造方法は、次のように実施される:重質芳香族化合物を含む原料8および水素9は、流動化反応器1の下部から流動化反応器1に別々に供給され、流動化反応器1中の触媒と接触して芳香族化合物軽質化反応が行われる。気固分離後に得られるC6~C8軽質芳香族化合物に富む生成物は、気液分離を行うための熱生成物用気液分離タンク2および冷生成物用気液分離タンク3を順次通されて、リサイクル水素11および液体生成物10が得られる。リサイクル水素11は、さらなる反応のために、処理後に流動化反応器1へ再循環させられる。液体生成物10は、芳香族化合物抽出のために芳香族化合物抽出ユニット4に送られて、分離によって非芳香族成分12および芳香族成分13が得られる。芳香族成分13は、芳香族化合物分離塔5に送られる。塔の底部から得られるC10+芳香族成分15は、原料8と混合され、次いでさらなる反応のために流動化反応器1に再循環させられる。C9芳香族化合物14は、芳香族化合物分離塔5の下部で得られる。BTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンおよびキシレン)は、塔の頂部で得られる。BTEXは、さらなる分離のために生成物分離ユニット6に送られて、ベンゼン18、トルエン16およびキシレン17が得られる。C9芳香族化合物14およびトルエン16は、混合されて混合リサイクル供給物7が得られる。混合リサイクル供給物7は、さらなる反応のために、原料8の供給位置の下流の位置から流動化反応器1に送られる。
【0055】
図2に示すように、さらなる好ましい実施態様においては、重質芳香族化合物を含む原料8および水素9は、流動化反応器1の下部から流動化反応器1に供給され、触媒と接触して芳香族化合物軽質化反応が行われる。反応生成物は、気液分離を行うために気液分離タンク25に送られて、反応液生成物10および水素が得られる。使用済み触媒は、流動化反応器1から連続的に回収され、反応器受入器19を通ってロックホッパー20に送られ、次いで再生器供給タンク21に送られ、次いで流動床再生器22に送られ、その中で、酸素含有雰囲気中でコークス燃焼による再生に供され、得られた再生触媒は、再生器受入器23に連続的に排出され、次いで還元のためにロックホッパー20を通って還元器24に送られ、そして再使用のために流動化反応器1に連続的に再循環させられる。
【0056】
いくつかの好ましい実施形態では、本願は、以下の技術的解決策を提供する:
項目1、以下の工程を含む、軽質芳香族化合物を製造する方法:
水素の存在下での芳香族化合物軽質化反応のために、流動化反応器中で重質芳香族化合物を含む原料を触媒と接触させて、軽質芳香族化合物に富む生成物と使用済み触媒とを得る工程;
軽質芳香族化合物に富む生成物を分離して、水素、非芳香族成分、C6~C8軽質芳香族化合物およびC9+芳香族成分を得る工程、およびC9+芳香族成分の少なくとも一部を流動化反応器に再循環させる工程。
【0057】
項目2、軽質化反応は、250~750℃の温度、0~6MPaの圧力、0.1~7h-1の重量空間速度、および1~15の水素/炭化水素モル比を含む条件下で実施される;好ましくは、軽質化反応は、320~600℃の温度、0~4.5MPaの圧力、1~6h-1の重量空間速度、および2~10の水素/炭化水素モル比を含む条件下で実施される;より好ましくは、軽質化反応は、360~550℃の温度、1~3MPaの圧力、1.5~4.5h-1の重量空間速度、および3~8の水素/炭化水素モル比を含む条件下で実施される、項目1に記載の方法。
【0058】
項目3、分離することは以下を含む、項目1に記載の方法:軽質芳香族化合物に富む生成物を気液分離に供して、水素と液体生成物とを得ること、および液体生成物を芳香族化合物抽出に供して、非芳香族成分と芳香族成分とを得ること;
芳香族成分を第1の分留に供して、軽質芳香族化合物とC9+芳香族成分とを得るか、又は代わりに芳香族成分を第2の分留に供して、軽質芳香族化合物とC9芳香族化合物と、C10+芳香族成分とを得ること。
【0059】
項目4、前記方法はさらに以下を含む、項目3に記載の方法:軽質芳香族化合物を第3の分留に供して、ベンゼン、トルエンおよびキシレンを得ること、トルエンとC9芳香族化合物とを混合して、混合リサイクル供給物を得ること、および混合リサイクル供給物を流動化反応器に再循環させること;並びにC10+芳香族成分を、重質芳香族化合物を含む前記供給物と混合し、次いで、軽質化反応のために流動化反応器に再循環させること。
【0060】
項目5、C10+芳香族成分および混合リサイクル供給物は、流動化反応器内における重質芳香族化合物を含む原料の流れ方向に沿って、連続的に流動化反応器に供給される、項目4に記載の方法。
【0061】
項目6、前記方法は、再使用のために水素を流動化反応器に再循環させることを含む、項目1に記載の方法。
【0062】
項目7、前記方法は、再生のために使用済み触媒を流動床再生器に送ること、および得られた再生触媒を流動化反応器に再循環させることをさらに含む、項目1に記載の方法。
【0063】
項目8、流動床再生器はロックホッパーを含み、再生は、次のことによって実施される、項目7に記載の方法:再生のために、使用済み触媒をロックホッパーを経由して流動床再生器に送ること、および再生触媒をロックホッパーを経由して流動化反応器に再循環させること。
【0064】
項目9、重質芳香族化合物を含む原料は、120~150℃の初期沸点および200~250℃の最終沸点を有する、項目1に記載の方法。
【0065】
項目10、重質芳香族化合物を含む原料は、20~100重量%のC9+芳香族化合物含有量を有する、項目1に記載の方法。
【0066】
項目11、前記原料は、水蒸気分解ガソリンから得られる重質芳香族化合物、深接触分解ガソリンから得られる重質芳香族化合物、接触分解ガソリンから得られる重質芳香族化合物、接触改質から得られる重質芳香族化合物、およびPXプラントにおけるキシレン塔の底部からのC9+重質芳香族化合物から選択される少なくとも1つである、項目1に記載の方法。
【0067】
項目12、流動化反応器は、希釈相搬送床反応器、濃密相流動床反応器、希釈相搬送床反応器と濃密相流動床反応器とから構成された複合反応器、2つ以上の希釈相搬送床反応器から構成された複合反応器、または2つ以上の濃密相流動床反応器から構成された複合反応器である、項目1に記載の方法。
【0068】
項目13、希釈相搬送床反応器はライザー反応器であり、濃密相流動床反応器は気泡流動床反応器、乱流流動床反応器などである、項目12に記載の方法。
【0069】
項目14、流動化反応器は、ライザー反応器またはダウナー反応器である、項目1に記載の方法。
【0070】
項目15、触媒は、担体、および担体上に担持された活性金属成分を、触媒の総重量に基づいて0.01~50重量%の量で含む、項目1に記載の方法。
【0071】
項目16、担体の総重量に基づいて、担体は、1~60重量%のゼオライト、5~99重量%の無機酸化物、および0~70重量%のクレイを含み、;
ここで、ゼオライトは、メソポーラスゼオライトおよび/またはマクロポーラスゼオライトを含み;無機酸化物は、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアおよび非晶質シリカ-アルミナのうちの少なくとも1つであり;クレイは、カオリン、モンモリロナイト、珪藻土、アタパルジャイト、セピオライト、ハロイサイト、ハイドロタルサイト、ベントナイトおよびレクトライトから選択される少なくとも1つである、項目15に記載の方法。
【0072】
項目17、前記メソポーラスゼオライトは、ZSMゼオライトおよび/またはZRPゼオライトであり、マクロポーラスゼオライトは、βゼオライト、REYゼオライト、REHYゼオライト、超安定Yゼオライト、および高シリカYゼオライトから選択される1つ以上である、項目16に記載の方法。
【0073】
項目18、活性金属成分は、希土類金属および遷移金属のうちの1つであるか、または希土類金属および遷移金属のうちの2つ以上の組合せである、項目15に記載の方法。
【0074】
〔実施例〕
本願は、以下の実施例を参照してさらに説明される。しかし、本願はそれらに限定されるものではない。
【0075】
担体調製例1
アルミナゾル(Qilu Branch of Sinopec Catalyst Co. ltd.)を同量ずつの2部に分け、1部をカオリン(Qilu Branch of Sinopec Catalyst Co. ltd.)と混合し、脱イオン水を用いて40重量%の固形分を有するスラリーを形成させ、均一に撹拌した。このスラリーを塩酸を用いてpH3.5に調整し、このpH値に維持し、60℃で1.5時間静置およびエージングした。残りのアルミナゾルを添加し、1.0時間撹拌してコロイドを形成させた。ZSM-5モレキュラーシーブ(Qilu Branch of Sinopec Catalyst Co. ltd.から入手可能)およびYモレキュラーシーブ(Qilu Branch of Sinopec Catalyst Co. ltd.から入手可能)を加えて、担体のスラリー(35重量%の固形分を有する)を形成させ、さらに撹拌し、噴霧乾燥させて、微小球担体を得た。この微小球担体における重量比率は、ZSM-5モレキュラーシーブ:Yモレキュラーシーブ:カオリン:アルミニウムゾル=30:10:39:21であった。
【0076】
次に、微小球担体を500℃で1時間焼成し、0.25重量%未満の酸化ナトリウム含有量となるように60℃で硫酸アンモニウムを用いて洗浄し(硫酸アンモニウム:微小球担体:水=0.5:1:10)、脱イオン水ですすぎ、濾過し、次いで110℃で乾燥させて、担体C1を得た。
【0077】
担体調製例2
アルミナゾルを同量ずつの2部に分け、1部をカオリンと混合し、脱イオン水を用いて40重量%の固形分を有するスラリーを形成させ、均一に攪拌した。このスラリーを塩酸を用いてpH3.5に調整し、このpH値に維持し、60℃で1.5時間静置およびエージングした。残りのアルミナゾルを添加し、1.0時間攪拌してコロイドを形成させた。Yモレキュラーシーブを加えて、担体のスラリー(35重量%の固形分を有する)を形成させ、さらに攪拌し、噴霧乾燥させて、微小球担体を得た。この微小球担体における重量比率は、Yモレキュラーシーブ:カオリン:アルミニウムゾル=40:39:21であった。
【0078】
次に、微小球担体を500℃で1時間焼成し、0.25重量%未満の酸化ナトリウム含量となるように60℃で硫酸アンモニウムを用いて洗浄し(硫酸アンモニウム:微小球担体:水=0.5:1:10)、し、脱イオン水ですすぎ、濾過し、次いで110℃で乾燥させて、担体C2を得た。
【0079】
触媒調製例1
担体C1を水熱エージング(800℃、水蒸気100%、12時間)に供し、次いでPdCl溶液中に加えて、80℃の含浸温度で120分間、初期湿式含侵を行い、2時間、150℃の温度で乾燥させた。次いでPd含侵担体を塩化白金酸溶液中に加えて、80℃の含浸温度で120分間、初期湿式含侵を行った;結果物を脱イオン水で洗浄し、150℃の温度で2時間乾燥させ、500℃の温度で4時間焼成した。焼成した触媒を、水素含有ガス中で、100℃の温度で2時間還元して、活性金属のPdおよびPtを担持した触媒H1を得た。この触媒において、PdおよびPtの担持量は、それぞれ、0.04重量%および0.04重量%であり(触媒の総重量に対して、金属元素を基準として算出)、摩耗指数は3.2%/hであり、粒度分布は以下の通りであった:0~20μmの粒径を有する粒子の質量分率は3%であり、0~40μmの粒径を有する粒子の質量分率は22%であり、0~149μmの粒径を有する粒子の質量分率は89%であり、平均粒径は75μmであった。
【0080】
触媒調製例2
担体C1を水熱エージング(800℃、水蒸気100%、12時間)に供し、NiCl溶液中に加えて、80℃の含侵温度で120分間、初期湿式含侵を行い、脱イオン水で洗浄し、150℃で2時間乾燥させ、500℃で4時間焼成した。焼成した触媒を予備硫化処理に供して、NiSを担持した触媒H2を得た。この触媒において、NiSの担持量は6.5%であり(触媒の総重量に対して、Niを基準として算出)、摩耗指数は3.2%/hであり、粒度分布は以下の通りであった:0~20μmの粒径を有する粒子の質量分率は3%であり、0~40μmの粒径を有する粒子の質量分率は22%であり、0~149μmの粒径を有する粒子の質量分率は89%であり、平均粒径は75μmであった。
【0081】
触媒調製例3
担体C2を水熱エージング(800℃、水蒸気100%、12時間)に供し、次いでPdCl溶液中に加えて、80℃の含浸温度で120分間、初期湿式含侵を行い、150℃で2時間乾燥させた。次いでPd含侵担体を塩化白金酸溶液中に加えて、80℃の含浸温度で120分間、初期湿式含侵を行い、脱イオン水で洗浄し、150℃で2時間乾燥させ、500℃で4時間焼成した。焼成した触媒を、水素含有ガス中で、100℃で2時間還元して、活性金属のPdおよびPtを担持した触媒H3を得た。この触媒において、PdおよびPtの担持量は、それぞれ、0.04重量%および0.04重量%であり(触媒の総重量に対して、金属元素を基準として算出)、摩耗指数は2.8%/hであり、粒度分布は以下の通りであった:0~20の粒径を有する粒子の質量分率は2.5%であり、0~40μmの粒径を有する粒子の質量分率は19%であり、0~149μmの粒径を有する粒子の質量分率は91%であり、平均粒径は73μmであった。
【0082】
触媒調製例4
担体C1を水熱エージング(800℃、水蒸気100%、12時間)に供し、NiCl溶液中に加えて、80℃の含侵温度で120分間、初期湿式含侵を行い、脱イオン水で洗浄し、150℃で2時間乾燥させ、500℃で4時間焼成した。焼成した触媒を、予備硫化処理を行わずに、水素含有ガス中で、100℃で2時間還元して、Niを担持した触媒H4を得た。この触媒において、Niの担持量は6.5%であり(触媒の総重量に対して、Niを基準として算出)、摩耗指数は3.2%/hであり、粒度分布は以下の通りであった:0~20μmの粒径を有する粒子の質量分率は3%であり、0~40μmの粒径を有する粒子の質量分率は22%であり、0~149μmの粒径を有する粒子の質量分率は89%であり、平均粒径は75μmであった。
【0083】
触媒調製例5
担体C1を、水熱エージングを行わずにPdCl溶液中に加えて、80℃の含浸温度で120分間、初期湿式含侵を行い、150℃の温度で2時間乾燥させた。次いでPd含侵担体を塩化白金酸溶液に加えて、80℃の含浸温度で120分間、初期湿式含侵を行い、脱イオン水で洗浄し、150℃の温度で2時間乾燥させ、500℃の温度で4時間焼成した。焼成した触媒を、水素含有ガス中で、100℃の温度で2時間還元して、活性金属のPdおよびPtを担持した触媒H5を得た。この触媒において、PdおよびPtの担持量は、それぞれ、0.04重量%および0.04重量%であり(触媒の総重量に対して、金属元素を基準として算出)、摩耗指数は3.2%/hであり、粒度分布は以下の通りであった:0~20μmの粒径を有する粒子の質量分率は2.5%であり、0~40μmの粒径を有する粒子の質量分率は16%であり、0~149μmの粒径を有する粒子の質量分率は87%であり、平均粒径は78μmであった。
【0084】
以下の実施例および比較例を、本願による軽質芳香族化合物の製造方法と、本願によらない軽質芳香族化合物の製造方法と、を例示するために提供する。
【0085】
使用した重質芳香族化合物原料の特性を表1に列挙する。表1中、原料Aは、深接触分解ガソリンから得られる重質芳香族化合物であり、原料Bは、水蒸気分解ガソリンから得られる重質芳香族化合物であり、原料Cは、接触改質から得られる重質芳香族化合物である。
【0086】
【表1】
【0087】
それぞれの実施例および比較例の結果において:
変換率%=100%-原料中の成分と同じである生成物中の全成分の百分率で表現した総質量含有量;
BTX選択率=BTX収率/変換率;
キシレン選択率=キシレン収率/変換率。
【0088】
実施例1
実験は、図1および図2に示すフロースキームに従い、原料Aおよび触媒H1を用い、パイロット濃密相流動床反応器上で連続再生を行いながら実施した。関連する条件および生成物を表2に列挙する。
【0089】
実施例2
反応温度が480℃であったことを除き、実施例1に記載したように実験を行った。関連する条件および生成物を表2に列挙する。
【0090】
実施例3
触媒H2を使用したことを除き、実施例1に記載したように実験を行った。関連する条件および生成物を表2に列挙する。
【0091】
実施例4
触媒H3を使用したことを除き、実施例1に記載したように実験を行った。関連する条件および生成物を表2に列挙する。
【0092】
実施例5
原料Bを使用したことを除き、実施例1に記載したように実験を行った。関連する条件および生成物を表2に列挙する。
【0093】
実施例6
原料Cを使用したことを除き、実施例1に記載したように実験を行った。関連する条件および生成物を表2に列挙する。
【0094】
【表2】
【0095】
実施例7
分離したC9芳香族化合物をトルエンと混合せずに、供給ノズルの下流で反応のために反応器に別々に供給したこと、およびトルエンをリサイクルせずに、生成物として直接的に回収したことを除き、実施例1に記載したように実験を行った。関連する条件および生成物を表3に列挙する。
【0096】
実施例8
濃密相流動床反応器における反応条件を変更したことを除き、実施例1に記載したように実験を行った。関連する条件および生成物を表3に列挙する。
【0097】
実施例9
触媒H4を使用したことを除き、実施例1に記載したように実験を行った。関連する条件および生成物を表3に列挙する。
【0098】
実施例10
触媒H5を使用したことを除き、実施例1に記載したように実験を行った。関連する条件および生成物を表3に列挙する。
【0099】
実施例11
反応器としてライザー反応器を使用したことを除き、実施例1に記載したように実験を行った。関連する条件および生成物を表3に列挙する。
【0100】
実施例12
反応器としてライザー反応器と濃密相流動床反応器との複合反応を使用したことを除き、実施例1に記載したように実験を行った。関連する条件および生成物を表3に列挙する。
【0101】
【表3】
【0102】
比較例1
生成物から分離されたトルエンおよびC9+重質芳香族化合物を反応器に再循環させなかったことを除き、実施例1に記載したように実験を行った。関連する条件および生成物を表4に列挙する。
【0103】
比較例2
固定床反応器を反応器として使用したこと、触媒と石油ガスとを分離するために追加の装置を使用しなかったこと、および触媒を連続的に再生しなかったことを除き、実施例1に記載したように実験を行った。関連する条件および生成物を表4に列挙する。
【0104】
比較例3
触媒として水熱エージングされた担体C2を使用して水素が存在しない条件下で反応を実施したことを除き、実施例1に記載したように実験を行った。関連する条件および生成物を表4に列挙する。
【0105】
【表4】
【0106】
上記の実施例および比較例の結果から分かるように、本願の軽質芳香族化合物の製造方法は、種々の重質芳香族原料から軽質芳香族化合物を製造することができ、高い原料変換率およびBTX選択率を示す;この方法は、C9芳香族化合物およびトルエンをリサイクルすることによってキシレン選択率をさらに改善することができ、運転操作に大きなフレキシビリティーを有し、長期間安定な運転操作を可能にする。この運転操作においては、触媒が容易に再生され、質量および熱伝達が均一である。
【0107】
本願は、好ましい実施形態を参照して上記に詳細に説明されるが、これらの実施形態に限定されることを意図していない。本願の発明のコンセプトに従い、種々の変更が可能であり、これらの変更は本願の範囲内である。
【0108】
なお、上記の実施形態で説明した種々の技術的特徴は、矛盾することなくあらゆる適切な方法で組み合わせることが可能である。不必要な繰り返しを避けるために、本願では、種々の可能な組合せを記載しないが、このような組合せも本願の範囲内である。
【0109】
また、本願の精神から逸脱しない限り、本願の種々の実施形態を任意に組み合わせることができ、そのような組み合わせた実施形態は、本願の開示として考慮されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0110】
図1図1は、本願による方法の一実施形態のプロセスフロー図を示す。
図2図2は、本願による方法の一実施形態による再生器の概略図を示す。
図1
図2
【国際調査報告】