(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】神経血管インターベンションシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20221221BHJP
A61M 39/06 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
A61B17/00
A61M39/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525526
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(85)【翻訳文提出日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 US2020058365
(87)【国際公開番号】W WO2021087363
(87)【国際公開日】2021-05-06
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510015338
【氏名又は名称】シルク・ロード・メディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SILK ROAD MEDICAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース,エリカ ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】チウ,シンシア
(72)【発明者】
【氏名】ハク,ネダ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン,ナターシャ
(72)【発明者】
【氏名】ペイジ,マーク シー
【テーマコード(参考)】
4C066
4C160
【Fターム(参考)】
4C066JJ02
4C066JJ04
4C066QQ15
4C066QQ94
4C160MM33
4C160MM36
(57)【要約】
本方法及び装置は、神経インターベンション処置のために構成される。本方法及び装置は、脳卒中及び/又は他の疾患状態を治療するインターベンション装置の導入のための脳動脈又は頭蓋内動脈への安全且つ迅速なアクセスを可能にする。本方法及び装置は、神経インターベンション処置において安全且つ迅速に使用可能な血管アクセス及び逆行流システムを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経血管状態の治療のために構成された経頸動脈アクセスシステムであって、
内側ルーメンを形成するシース本体を有する動脈アクセスシースであって、前記シース本体が総頸動脈の開口部に導入されて前記総頸動脈から血流を受け入れるように大きさ及び形状を有する動脈アクセスシースと、
前記シース本体の近位端部に配置されたアダプタであって、フローシャントラインに着脱可能に接続されるように構成されたハブと、前記経頸動脈アクセスシステムの内側ルーメンに隣接して配置された弁とを有し、前記弁が前記動脈アクセスシースの内側ルーメンから前記ハブに向かって流出する流体を調節するアダプタと、
前記アダプタの近位端部に接続された近位延長部であって、前記アダプタを介して前記動脈アクセスシースの内側ルーメンと流体連通している内側ルーメンを有し、当該近位延長部の内側ルーメンと連通する近位開口部を形成する細長い胴体で形成され、前記近位開口部が妨げられないようにされている近位延長部と、
を備える、経頸動脈アクセスシステム。
【請求項2】
前記アダプタ及び前記近位延長部は、接続部位において前記動脈アクセスシースに着脱可能に接続されている、請求項1に記載の経頸動脈アクセスシステム。
【請求項3】
前記シース本体の近位端部に配置された第1のコネクタ部品と、前記アダプタの遠位端部に配置された第2のコネクタ部品とを更に備える、請求項2に記載の経頸動脈アクセスシステム。
【請求項4】
前記接続部位は、前記アダプタと前記動脈アクセスシースとの間に配置されている、請求項2に記載の経頸動脈アクセスシステム。
【請求項5】
前記第1のコネクタ部品及び前記第2のコネクタ部品の少なくとも一方は、止血弁アダプタである、請求項2に記載の経頸動脈アクセスシステム。
【請求項6】
前記経頸動脈アクセスシースは、全長20cm未満である、請求項1に記載の経頸動脈アクセスシステム。
【請求項7】
前記コネクタ上に配置され、細長いチューブを前記アダプタに接続するアイレットを更に備える、請求項1に記載の経頸動脈アクセスシステム。
【請求項8】
前記弁は、前記動脈アクセスシースの内側ルーメンからの流出を許容する開放状態と、前記経頸動脈アクセスシステムの内側ルーメンからの流出を阻害する閉塞状態との間で変位する、請求項1に記載の経頸動脈アクセスシステム。
【請求項9】
前記動脈アクセスシースを介して神経血管系に挿入されるように構成されたインターベンションカテーテルを更に備える、請求項1に記載の経頸動脈アクセスシステム。
【請求項10】
前記ハブを介して前記アダプタに着脱可能に接続された逆流シャントを更に備える、請求項1に記載の経頸動脈アクセスシステム。
【請求項11】
前記逆流シャントに連結された流量制御アセンブリを更に備え、前記流量制御アセンブリは、前記逆流シャントを通る血流を調節するように構成されている、請求項10に記載の経頸動脈アクセスシステム。
【請求項12】
前記逆流シャントに流体的に連結された静脈還流装置を更に備え、前記静脈還流装置は、静脈内に挿入可能である、請求項11に記載の経頸動脈アクセスシステム。
【請求項13】
前記静脈還流装置は、大腿静脈に挿入可能である、請求項12に記載の経頸動脈アクセスシステム。
【請求項14】
頭蓋内動脈を治療する方法であって、
患者の首の頸動脈及びアクセス位置の開口部を介して頸動脈内に動脈アクセス装置を挿入するステップであって、前記動脈アクセス装置が、
内側ルーメンを形成するシース本体を有する動脈アクセスシースであって、前記シース本体が総頸動脈の開口部に導入されて前記頸動脈からの血流を受け入れる大きさ及び形状を有する動脈アクセスシースと、
前記シース本体の近位端部に配置されたアダプタであって、フローシャントラインに着脱可能に接続されるように構成されたハブと、前記経頸動脈アクセスシステムの内側ルーメンに隣接して配置された弁とを有し、前記弁が前記動脈アクセスシースの内側ルーメンから前記ハブに向かって流出する流体を調節するアダプタと、
前記アダプタの近位端部に接続された近位延長部であって、前記アダプタを介して前記動脈アクセスシースの内側ルーメンと流体連通している内側ルーメンを有し、当該近位延長部の内側ルーメンと連通する近位開口部を形成する細長い胴体で形成され、前記近位開口部が妨げられないようにされている近位延長部と、を備えるステップと、
前記動脈アクセス装置を介して前記頸動脈にインターベンション装置を配置するとともに、前記インターベンション装置を用いて頭蓋内動脈を治療するステップと、
前記アダプタ及び近位延長部を前記動脈アクセスシースから取り外し、前記動脈アクセスシースが前記アダプタ及び近位延長部なしで前記頸動脈内に挿入されたままにするステップと、
前記閉塞部材を前記動脈アクセスシース内に挿入するステップと、
前記閉塞部材を展開して前記動脈の開口部を止血するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記頸動脈の開口部は、前記総頸動脈内にある、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記頸動脈の開口部は、経皮的に形成される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記動脈アクセスシースは、20cmの長さを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記動脈アクセスシースは、16cmの長さを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記シース本体の近位端部に配置された第1のコネクタ部品と、前記アダプタの遠位端部に配置された第2のコネクタ部品とを更に備え、前記第1のコネクタ部品と第2のコネクタ部品とが互いに着脱可能に取り付けられる、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のコネクタ部品及び前記第2のコネクタ部品の少なくとも一方は、止血弁アダプタである、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、2019年10月31日に出願された「神経血管インターベンションシステム及び方法」というタイトルの米国特許出願第62/928,556号、2020年1月14日に出願された「神経血管インターベンションシステム及び方法」というタイトルの米国特許出願第62/960,899号、及び、2020年3月9日に出願された「神経血管インターベンションシステム及び方法」というタイトルの米国特許出願第62/987,099号の利益を主張するものであり、これらの内容は参照により全体に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、一般に、医療方法及び装置に関する。より詳細には、本開示は、脳卒中、頭蓋内アテローム性動脈硬化症(ICAD)、一過性脳虚血発作(TIA)、急性虚血性脳卒中(AIS)、重複病変、破裂及び未破裂の頭蓋内外動脈瘤塞栓症、慢性閉塞、及び他の神経血管系の疾患状態の治療などの脳動脈血管にアクセスして治療する方法及びシステムに関する。
【発明の概要】
【0003】
神経インターベンション処置のための方法及び装置が開示されている。この方法及び装置は、脳卒中及び/又は他の疾患状態を治療するためのインターベンション装置の導入のために、脳又は頭蓋内動脈への安全且つ迅速なアクセスを可能にする。この方法及び装置は、神経インターベンション処置において安全且つ迅速に使用される血管アクセス逆行流システムを備える。更に、本開示の方法及び装置は、経頸部(transcervical)の血腫の潜在的に破壊的な結果を回避するために、脳動脈へのアクセス部位を確実に閉塞する手段を提供する。
【0004】
本開示のシステム及び方法は、頸部のアクセス位置、例えば頸動脈(総頸動脈、外頸動脈、又は外頸動脈を含んでもよい)の領域を介して脳血管系にアクセスする。アクセス位置は、経皮的アプローチ又は外科的アプローチ(開放外科的切開又は切断を介するなど)であり得る。このような経頸動脈アクセス位置は、大腿動脈アクセス位置などの他のアクセス位置と比較して、頭蓋内動脈への短い経路を可能にする。また、経頸動脈アクセス位置は、著しく短いインターベンション装置を使用することを可能にする。より短い経路及びインターベンション装置の長さは、割合が高いガイドワイヤ穿孔などの装置関連の合併症を減少又は最小化する高いレベルの制御を提供し、ステントなどのインターベンション装置を正確に配置することを可能にする。
【0005】
以下で更に議論するように、本開示のシステム及び方法は、神経インターベンション処置中に遊離され得る塞栓破片から脳を保護するために、血流が脳から離れるように少なくとも頸動脈を介して血流反転を任意に利用することが可能である。ICADなどの疾患状態を治療する処置の間、ガイドワイヤ、バルーン、及びステントは、動脈硬化性の狭窄部を通過し、塞栓破片が遊離して脳へ「北上」し、脳卒中及び一過性虚血発作を引き起こすリスクが増大する。血流反転は、そのようなリスクを低減又は排除する。
【0006】
一態様において、神経血管状態の治療のために構成された経頸動脈アクセスシステムであって、内側ルーメンを形成するシース本体を有する動脈アクセスシースであって、前記シース本体が総頸動脈の開口部に導入されて前記総頸動脈から血流を受け入れるように大きさ及び形状を有する動脈アクセスシースと、前記シース本体の近位端部に配置されたアダプタであって、フローシャントラインに着脱可能に接続されるように構成されたハブと、前記経頸動脈アクセスシステムの内側ルーメンに隣接して配置された弁とを有し、前記弁が前記動脈アクセスシースの内側ルーメンから前記ハブに向かって流出する流体を調節するアダプタと、前記アダプタの近位端部に接続された近位延長部であって、前記アダプタを介して前記動脈アクセスシースの内側ルーメンと流体連通している内側ルーメンを有し、当該近位延長部の内側ルーメンと連通する近位開口部を形成する細長い胴体で形成され、前記近位開口部が妨げられない(unimpeded)ようにされている近位延長部と、を備える、経頸動脈アクセスシステムが開示されている。
【0007】
別の態様において、頭蓋内動脈を治療する方法であって、患者の首の頸動脈及びアクセス位置の開口部を介して頸動脈内に動脈アクセス装置を挿入するステップであって、前記動脈アクセス装置が、内側ルーメンを形成するシース本体を有する動脈アクセスシースであって、前記シース本体が総頸動脈の開口部に導入されて前記頸動脈からの血流を受け入れる大きさ及び形状を有する動脈アクセスシースと、前記シース本体の近位端部に配置されたアダプタであって、フローシャントラインに着脱可能に接続されるように構成されたハブと、前記経頸動脈アクセスシステムの内側ルーメンに隣接して配置された弁とを有し、前記弁が前記動脈アクセスシースの内側ルーメンから前記ハブに向かって流出する流体を調節するアダプタと、前記アダプタの近位端部に接続された近位延長部であって、前記アダプタを介して前記動脈アクセスシースの内側ルーメンと流体連通している内側ルーメンを有し、当該近位延長部の内側ルーメンと連通する近位開口部を形成する細長い胴体で形成され、前記近位開口部が妨げられないようにされている近位延長部と、を備えるステップと、前記動脈アクセス装置を介して前記頸動脈にインターベンション装置を配置するとともに、前記インターベンション装置を用いて頭蓋内動脈を治療するステップと、前記アダプタ及び近位延長部を動脈アクセスシースから取り外し、前記動脈アクセスシースが前記アダプタ及び近位延長部なしで前記頸動脈内に挿入されたままにするステップと、前記閉塞部材を前記動脈アクセスシース内に挿入するステップと、前記閉塞部材を展開して前記動脈の開口部を止血するステップと、を含む、方法。
【0008】
他の特徴及び利点は、本発明の原理を例として説明する以下の様々な実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】左中大脳動脈の血栓性閉塞を伴う正常な順方向の脳循環又は頭蓋内循環を概略的に示す図である。
【
図2】本明細書に記載の逆行流システムを用いて逆行流が確立された後の血流循環を示す図である。
【
図3】例示的な動脈アクセス装置を通じて挿入された機械的血栓除去装置などのインターベンション装置を有する脳血管系を示す図である。
【
図4】二次インターベンション装置が動脈アクセス装置を通じて側副大脳動脈に進められる代替実施形態を示す図である。
【
図5】インターベンション中に逆行流を確立するために使用される血管アクセス逆流システムの例示的な実施形態を示す図である。
【
図6】インターベンション中に逆行流を確立するために使用される血管アクセス逆流システムの別の例示的な実施形態を示す図である。
【
図7】動脈アクセス装置及び血栓除去装置が配置された総頸動脈(CCA)、内頸動脈(ICA)、及び中大脳動脈の拡大図である。
【
図8A】本開示の方法及びシステムにおいて有用な動脈アクセス装置又はシステムの実施形態を示す図である。
【
図8B】本開示の方法及びシステムにおいて有用な動脈アクセス装置又はシステムの実施形態を示す図である。
【
図9A】本開示の方法及びシステムにおいて有用な動脈アクセス装置又はシステムの実施形態を示す図である。
【
図9B】本開示の方法及びシステムにおいて有用な動脈アクセス装置又はシステムの実施形態を示す図である。
【
図10A】動脈アクセス装置の別の実施形態を示す図である。
【
図10B】縮径された遠位端部を有する付加的な動脈アクセス装置の構造を示す図である。
【
図11A】シースストッパチューブを示す図である。
【
図11B】シースストッパチューブを示す図である。
【
図11C】シースストッパチューブの他の実施形態を示す図である。
【
図11D】シースストッパチューブの他の実施形態を示す図である。
【
図11E】シースストッパチューブの他の実施形態を示す図である。
【
図11F】シースストッパチューブの他の実施形態を示す図である。
【
図11G】シースストッパチューブの他の実施形態を示す図である。
【
図12A】拡張可能な閉塞部材を備える付加的な動脈アクセス装置の構造を示す図である。
【
図12B】拡張可能な閉塞部材及び縮径された遠位端部を備える付加的な動脈アクセス装置の構造を示す図である。
【
図13】本開示の方法及びシステムにおいて有用な静脈還流装置の第1実施形態を示す図である。
【
図14A】本開示の方法及びシステムにおいて有用な代替的な静脈還流装置を示す図である。
【
図14B】本開示の方法及びシステムにおいて有用な代替的な静脈還流装置を示す図である。
【
図14C】本開示の方法及びシステムにおいて有用な代替的な静脈還流装置を示す図である。
【
図15】流量制御アセンブリの概略図を含む逆流システムの一例を示す図である。
【
図16A】本開示の方法及びシステムにおいて有用な可変流れ抵抗部材の実施形態を示す図である。
【
図16B】本開示の方法及びシステムにおいて有用な可変流れ抵抗部材の実施形態を示す図である。
【
図17】段差のある構成を有する動脈アクセス装置を示す図である。
【
図18A】動脈アクセス装置の例示的なYコネクタの断面の詳細を示す図である。
【
図18B】動脈アクセス装置の例示的なYコネクタの断面の詳細を示す図である。
【
図19A】例示的な動脈閉塞システム及び方法を示す図である。
【
図19B】例示的な動脈閉塞システム及び方法を示す図である。
【
図19C】例示的な動脈閉塞システム及び方法を示す図である。
【
図19D】例示的な動脈閉塞システム及び方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
頭蓋内血管系における疾患状態又は他の状態を治療するためのインターベンション装置の導入のために、脳動脈への安全、迅速、且つ比較的短いアクセスを可能にする方法及び装置が開示されている。本開示のシステム及び方法は、脳動脈、神経血管系、及び頭蓋内動脈で使用されるように構成されている。これらの用語は、本明細書において交換可能に使用され得る。更に、本開示の方法及び装置は、脳動脈へのアクセス部位をより確実に閉塞するように構成されている。本方法及び装置は、神経インターベンション処置において安全且つ迅速に使用される血管アクセス逆行流システムを備える。
【0011】
本開示の方法は、患者の血管系への経皮的又は外科的アクセスに従って使用されてもよい。実施態様において、血管系へのアクセス位置は、例えば、総頸動脈、内頸動脈、又は外頸動脈を含む頸動脈などの頸部の領域内にある。本開示のシステム及び方法は、頸動脈の少なくとも一部を通じて逆流(逆行流とも呼ばれる)を発生させるように構成された神経保護システムを使用する。また、神経保護システムは、頸動脈の少なくとも一部において流れを停滞させるように構成されてもよい。逆行流が生成される範囲では、以下でより詳細に説明するように、受動的な態様又は能動的な態様で生成されてもよい。本開示のシステム及び方法は、頭蓋内動脈及び/又は頸動脈における吸引を利用してもよい。
【0012】
本開示のシステム及び方法は、例えば、脳卒中、急性脳卒中、大血管閉塞、頭蓋内アテローム性動脈硬化症(ICAD)、重複病変、動脈瘤、動静脈奇形(AVM)、動静脈瘻、急性及び慢性頚動脈全閉塞症などの様々な頭蓋内及び神経血管状態のうちの任意のものを、本明細書に記載のいくつかの例を含む様々なインターベンション装置を用いて治療するのに使用されてもよい。更に、アクセス位置での止血を達成するように、アクセス位置の閉塞に関して、様々な閉塞装置及び方法が使用されてもよい。本開示の方法は、動脈内のステントの配置に関連して、又はステントの配置なしに使用されてもよい。
【0013】
例示的な方法において、アクセス位置は、内頸動脈、外頸動脈、及び/又は総頸動脈を含む頸動脈の領域などの頚部のレベルで提供又はその他の方法で形成される。一実施例におけるアクセス位置は、総頸動脈内にある。その後、本明細書に記載された動脈アクセス装置などの動脈アクセスシース(動脈アクセス装置とも呼ばれる)が、アクセス位置を通じて動脈内に挿入される。シースは、動脈内に挿入され、シースの遠位先端部が所望の位置に配置されるまで、動脈内を通される。一実施形態において、シースの遠位先端部は、内頸動脈内に配置される。別の実施形態において、シースの遠位先端部は、外頸動脈又は総頸動脈内に配置される。その後、圧力差を達成するために頸動脈の一部をクランプ又は閉塞することなどによって、任意に逆流状態が確立される。逆流血液状態は、血液を動脈(頸動脈など)からシース内に流入させ、そこで、外部容器などの返還位置又は血管系(静脈又は動脈)に、迂回又は分流させることができる。別の実施態様において、以下でより詳細に説明するように、ポンプ又はシリンジを使用することなどによって、能動的な流れ状態が達成されてもよい。また、前述したように、停滞流状態も達成されてもよい。逆流状態は、以下でより詳細に説明するように、神経保護システムとして作用する。以下で議論されるように、治療処置の終了時などにおいて止血を確立するために、閉塞装置がアクセス位置に適用されてもよい。一実施形態において、閉塞装置は、アクセス位置を通じて動脈に任意の装置(ガイドワイヤ、シース、又はインターベンション装置など)を導入する前に、アクセス位置に予め配置される。
【0014】
動脈アクセス装置は、脳の血管などの標的治療位置にインターベンションツールをルーティングできるように、インターベンションツールを血管系に挿入するための通路を提供する。移植において、逆流は、カテーテルなどのインターベンション装置内及び/又は動脈アクセスシース内に物質(血栓性物質など)を吸引するために吸引カテーテルを備えるインターベンションツールとの組み合わせで使用される。この点に関して、インターベンション装置及び/又は動脈アクセス装置は、装置の遠位先端部が吸引されるべき位置のすぐ近位に位置するように又は吸引されるべき位置に相対する任意の他の位置に位置するように、挿入されてもよい。インターベンションツールが治療に使用された後、逆流状態又は停滞流状態が順行流を回復するために停止される。処置の間、逆流状態は、インターベンションの領域において物質が順方向に流れることを制限又は防止する神経保護として機能する。以下に説明するように、動脈アクセス装置をアクセス位置から取り外すことなく、又は動脈アクセス装置を別の装置と交換することなく、処置中又は処置後にアクセス位置に、閉塞装置が配置されてもよい。
【0015】
図1は、例えば、左中大脳動脈LMCAにおける例示的な疾患状態(血栓性閉塞物10)を伴う正常な順方向の脳循環を模式的に示す図である。インターベンションを必要とする他の疾患状態が本開示の範囲内であることは理解すべきである。左中大脳動脈LMCAは、左内頸動脈LICAから分岐している。中大脳動脈は、脳の各半球の外側面全体に血液をもたらすツリー状の枝を有する大きな動脈である。血栓性閉塞物10は、左中大脳動脈の血流を閉塞又は制限する。従って、脳への血液供給は、左中大脳動脈における血栓性閉塞物10が存在することによって著しく中断され、虚血性脳卒中状態を生じさせる。
【0016】
本明細書に記載された方法及びシステムの使用に従い、治療方法は、血栓性閉塞を治療するために、脳動脈への血管アクセスを得ることと、脳循環の少なくとも一部及び/又は頸動脈に逆行流を確立することとを含む。例示的な手順において、以下に説明するように、機械的血栓除去装置(ステントリーバー(stentriever)など)を備えるインターベンション装置を脳血管系に挿入し、逆行流条件下で血栓性閉塞を除去又は他の方法で治療する。
図2は、本明細書に記載される逆行流システムを用いて逆行流が確立された後の血流循環を示す図である。このシステムは、左総頸動脈LCCA(又は右総頸動脈)に入り、大脳血管系へのアクセスを提供する動脈アクセス装置110を備える。動脈は、クランプされてもよい。或いは、動脈アクセス装置110上の拡張可能な閉塞部材129が、以下でより十分に説明されるように、脳血管系の動脈を閉塞し、逆行流を確立するために使用されてもよい。例えば、総頸動脈、内頸動脈、及び/又は椎骨動脈を含む様々な動脈が閉塞されてもよい。本システム及びその構成要素の例示的な実施形態が、以下に詳細に説明される。
【0017】
図3は、動脈アクセス装置110を通じて挿入された機械的血栓除去装置15が設けられた脳血管系を示す図である。血栓除去装置15は、動脈アクセス装置110を通じて血栓性閉塞物10の位置まで進められることが可能な細長いカテーテルを備えている。血栓除去装置15は、以下でより十分に説明されるように、血栓性閉塞物10と相互作用して除去するように適合された血栓係合部材68を備える遠位領域を有する。血栓除去装置の種類は、様々である。別の実施形態において、インターベンション装置は、動脈アクセス装置110を介して標的位置と相互作用するように配置される吸引カテーテルである。
【0018】
図4は、バルーンカテーテル25などの二次インターベンション装置が、動脈アクセス装置110を通じて前大脳動脈ACAなどの側副大脳動脈に進められる、別の実施形態を示す図である。バルーンカテーテル25は、その動脈を閉塞するために側副大脳動脈内で拡張可能な拡張可能バルーン30を備える。側副大脳動脈を閉塞することにより、脳血管系を通る吸引及び逆流を促進してもよい。
【0019】
図5は、血栓性閉塞物10の除去中に逆行流を確立するために使用可能な血管アクセス逆流システム100の例示的な実施形態を示す図である。システム100は、動脈アクセス装置110と、静脈還流装置115などの血管還流装置と、動脈アクセス装置110から静脈還流装置115への逆行流のための通路を提供するシャント120(体外シャントであってもよい)とを備えている。シャント120には、流量制御アセンブリ125が相互作用する。流量制御アセンブリ125は、以下でより詳細に説明するように、シャント120を通る逆行流を調節及び/又は監視するように構成されている。流量制御アセンブリ125は、シャント120を通る流路の外部、流路の内部、又はその両方と相互作用する。
図6は、患者に結合された血管アクセス逆流システム100の別の図である。
【0020】
一実施形態において、以下に更に詳細に説明されるように、動脈アクセス装置110は、少なくとも部分的に総頸動脈CCAに挿入され、静脈還流装置115は、少なくとも部分的に大腿静脈又は内頸静脈などの静脈還流部位に挿入される。静脈還流装置115は、鼠径部における経皮的穿刺を通じて大腿静脈FVに挿入されてもよい。動脈アクセス装置110と静脈還流装置115とは、コネクタでシャント120の両端部に連結される。
【0021】
図7に示されるように、動脈アクセス装置110の遠位端部(オプションの閉塞部材129(存在する場合)を有する)は、ICA又は頸動脈の他の部分に配置されてもよい。また、ICAへのアクセスが極度に蛇行している状況では、閉塞部材を総頸動脈により近接して配置することが好ましい場合がある。前述したように、ICAは、閉塞部材を介して閉塞されるのではなく、クランプされることもある。従って、動脈は、動脈の外部の位置を介して、及び/又は、動脈の内部の位置を介して閉塞されることがある。内頸動脈を通る流れが(閉塞部材129又は臍帯テープ、血管ループ等のクランプを用いて)遮断されると、内頸動脈と静脈系との間の自然な圧力勾配が、血液を脳血管系から内頸動脈及びシャント120を通じて静脈系内に逆行又は逆方向に流れさせる。流量制御アセンブリ125は、逆行血流を、調節し、増加し、補助し、監視し、及び/又は他の方法で調整する。
【0022】
その後、インターベンション装置(吸引カテーテル又は他のインターベンション装置など)は、動脈アクセス装置110を通り、内頸動脈を介して、左中大脳動脈などの標的位置で展開される。インターベンション装置15の遠位領域は、血栓性閉塞物又は他の疾患状態との相互作用などで中大脳動脈内に配置される。インターベンション装置の近位領域は、動脈アクセス装置110内のアクセスポートから突出する。このことは、動脈アクセス装置110及びインターベンション装置15が展開された状態の総頸動脈CCA、内頸動脈ICA、及び中大脳動脈MCAの拡大図を示す
図7を参照してより詳細に説明される。動脈アクセス装置110は、総頸動脈CCAへの直接切断又はCCAの経皮的穿刺などの経頸部アプローチによって総頸動脈にアクセスする。インターベンション装置15は、動脈アクセス装置110内へのアクセスを提供する近位開口部に挿入されるなど、動脈アクセス装置110の内側ルーメンを通る挿入によって内頸動脈ICAへのアクセスを獲得する。
【0023】
議論したように、動脈アクセス装置110は、経頸部アプローチを用いて、総頸動脈CCAを通じた前大脳動脈及び中大脳動脈へのアクセスを提供する。経頸部アクセスは、血管アクセス点から標的治療部位までの短い長さ及び曲がりくねらない経路を提供し、それによって、例えば経大腿アプローチと比較して、処置の時間及び難易度を緩和させる。更に、このアクセス経路は、病的で角張った又は曲がりくねった大動脈弓又は総頸動脈の組織構造のナビゲーションから塞栓が発生するリスクを低減させる。別の実施形態において、動脈アクセス装置は、椎骨動脈内への切開又は椎骨動脈の経皮的穿刺によって、脳底動脈BA又は後大脳動脈PCAへのアクセスを提供する。
【0024】
一実施形態において、動脈アクセス装置110は、直接外科的経頸部アプローチによって総頸動脈CCAにアクセスする。外科的アプローチにおいて、総頸動脈は、止血帯又は他の装置を用いてクランプ又は閉塞されてもよい。
【0025】
別の実施形態において、総頸動脈への経頸部アクセスは、動脈アクセス装置110が挿入される皮膚における切開又は穿刺によって経皮的に達成される。切開が用いられる場合、切開は、例えば、約0.5cmの長さである。動脈アクセス装置110の遠位先端部の近位の位置で内頸動脈ICA又は総頸動脈CCAを閉塞するために、拡張性バルーンなどの閉塞部材129が使用されてもよい。閉塞部材129は、動脈アクセス装置110上に配置されても、別個の装置上に配置されてもよい。
【0026】
別の実施形態において、動脈アクセス装置110は、経頸部アプローチによって総頸動脈CCAにアクセスする一方、静脈還流装置115は、内頸静脈など大腿静脈以外の静脈還流部位にアクセスする。
【0027】
別の実施形態において、本システムは、頸動脈から、静脈還流部位ではなく外部容器への逆行流を提供する。動脈アクセス装置110は、シャント120を介して容器に接続される。シャント120は、流量制御アセンブリ125に連通する。血液の逆行流は、容器130に集められる。必要に応じて、血液は、濾過されて患者に戻される。容器130の圧力は、血液が脳血管系から容器130へ逆方向に流れるように、ゼロ圧力(大気圧)又はより低く設定されてもよい。任意で、内頚動脈からの逆流を達成又は強化するために、外頚動脈からの流れは、典型的には内頚動脈との分岐部の真上の外頚動脈にバルーン又は他の閉塞部材を配置することによって遮断されてもよい。
【0028】
別の実施形態において、逆流は、フローシャント120と連通するポート(活栓など)に吸引源を適用することによって置換又は増強してもよい。吸引源の例には、シリンジ、ポンプなどが含まれる。また、本システムは、流量制御アセンブリ125の一部として能動ポンプを備え、ポンプ流量及び/又は流量監視のための制御がアセンブリに含まれてもよい。
【0029】
更に別の実施形態において、本システムは、例えば、動脈アクセス装置110の側枝を通じて、動脈内血栓溶解療法を行うように使用されてもよい。例えば、血栓溶解療法は、フラッシュライン635を介して、動脈アクセス装置110を通じて血栓性閉塞部10に注入されてもよい。別の実施形態において、本システムは、動脈アクセス装置110内に挿入されるマイクロカテーテルを介して動脈内血栓溶解療法を行うように使用されてもよい。マイクロカテーテルは、血栓溶解薬を注入するために血栓閉塞部10に送られる。血栓溶解療法は、血栓除去装置15などの機械的血栓除去術と併用して、又はその代替として行われてもよい。
【0030】
別の実施形態において、システム100は、例えば、動脈アクセス装置110を介して血栓性閉塞物10に対して遠位の部位に送られる灌流カテーテルによって脳血管系及び虚血脳組織を灌流する手段を備えてもよい。灌流カテーテルは、灌流溶液を所望の位置に送るように構成されている。灌流溶液は、例えば、AVシャント120から又は別の動脈からの自己動脈血、酸素化溶液、又は他の神経保護剤であってもよい。また、灌流溶液は、脳組織を冷却するために低温であってもよい。これは、虚血期間中の脳損傷を最小化することが示されている別の戦略である。また、灌流カテーテルは、血栓溶解療法に従って動脈内血栓溶解剤のボーラスを送るために使用されてもよい。通常、血栓溶解療法は、ボーラスを投与した後、閉塞を解消するのに1~2時間以上かかる。また、機械的血栓除去術も閉塞した血管を十分に再開通するのに1~2時間かかることがある。虚血領域の遠位灌流は、脳卒中治療処置中の脳損傷のレベルを最小化し得る。
【0031】
システム100の別の実施形態は、急性脳卒中治療処置中に脳血管を再灌流させるための手段を備える。Frazeeらによって記載された脳再灌流は、虚血性脳卒中の治療中に、内頸静脈を介して横静脈洞を選択的にカニュレーションして閉塞し、上矢状静脈洞を介して脳組織へ血液を注入することを含む。脳内逆灌流を説明した以下の論文は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。Frazee,J.G.及び X.Luo (1999)「逆行性経静脈灌流」Crit Care Clin 15(4): 777-88,vii及びFrazee,J.G.及びX.Luoら (1998)「逆行性経静脈的神経灌流:脳卒中に対する裏口治療」Stroke 29(9): 1912-6。この灌流は、脳組織の保護に加え、脳動脈に逆行流勾配を生じさせる。逆流システム100と共に使用される逆行性灌流部材は、脳組織に酸素を提供するだけでなく、血栓性閉塞物10の再開通中に塞栓破片を逆流シャント内に捕捉することを補助してもよい。
【0032】
様々なインターベンション装置が使用されてもよい。例えば、インターベンション装置は、ステントリーバー装置のような血栓除去装置であってもよい。ステントリーバーは、例えば、ワイヤに取り付けられた自己拡張型メッシュチューブであり、動脈アクセス装置(及び場合によっては二次カテーテル)を介して、装置が血栓又は他の疾患状態に関与できるように血管系内に誘導されるものである。ユーザは、脳内の血栓などの治療位置まで、様々な血管を通じて装置を誘導する。その後、ステントリーバーは、血栓をつかむために使用され、ユーザがカテーテルを取り外すと、血栓が引き抜かれる。例示的な一実施形態において、インターベンション装置は、治療部位に送達され、物質を部位に送達し、物質を部位から除去し、及び/又は任意の方法で治療部位と相互作用することなどによって治療するように構成された任意の装置である。例えば、ステント、バルーン、コイル、接着剤、液体、固体、又はゲルは、治療部位に送達されてもよい。血栓除去装置は、遠位血管系内への装置の送達を補助するために、マイクロカテーテルを備えるか、或いはマイクロカテーテルに連結されてもよい。
【0033】
血栓除去装置15は特定の実施形態に限定されず、血栓除去装置又は治療装置の様々な実施形態も使用可能であることは理解されるべきである。例えば、本装置は、血栓閉塞を捕捉し除去するために使用される拡張可能なケージ、バスケット、スネア、又は把持具であってもよい。また、本装置は、より容易な吸引及び除去のために血栓を破壊するように使用される血栓破壊装置であってもよい。血栓破壊装置は、例えば、血栓を破壊するための機械的破壊器、音波又は超音波エネルギー源、他のエネルギー源、或いは、液圧又は渦エネルギー源であってもよい。また、血栓除去装置は、血栓の閉塞を除去するための吸引手段を備えてもよい。
【0034】
血栓性閉塞物を通る流れを提供するための他の手段には、例えば、バルーンカテーテルを送達して閉塞物を通る通路を拡張する再開通手段、又は血栓性閉塞物を通るステントを配置して当該閉塞物を通るルーメンを形成する手段が含まれる。ステント装置は、永久的な埋込み型ステントであってもよいし、回収されるまでの一定期間、閉塞された通路を開放するための一時的なステントであってもよい。閉塞物は、ステントによって除去されてもよいし、他の何らかの血栓除去手段によって除去されてもよい。血栓除去装置及び再開通装置は、血栓溶解剤の注入と組み合わせて使用されてもよい。いくつかの例示的なステント関連装置及び方法は、米国特許第5,964,773号及び米国特許第5,456,667号に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0035】
次に、血栓除去装置15を備えた血管アクセス逆流システムの使用例について説明する。動脈アクセス装置110は、
図7に示されるように、患者の総頸動脈CCA内に導入され、遠位総頸動脈又は内頸動脈に少なくとも部分的(遠位シースの遠位端部など)に配置される。その後、血栓除去装置15は、マイクロカテーテル60と共に、又はマイクロカテーテル60なしで、動脈アクセス装置110を通じて頸動脈内に進められる。血栓除去装置15を更に進める前に、動脈アクセス装置110上の閉塞部材129を拡張して、血管を通る順行流を減少させるか、停止させてもよい。別の実施形態において、血管を外部からクランプすることによって、逆行流が停止される。血管内の流れを停止させることは、血栓塞栓又はその一部が、血栓除去装置15の位置決め又は血栓の回収の間の順行流によって下流に移動することを防止するのに役立つ。その後、血栓除去装置15は、マイクロカテーテル60を介して又は動脈アクセス装置110内でそれ自体によって、血栓性閉塞物10の近位、内部、又は遠位の位置まで血管系内へ更に前進される。処置の任意の部分の間、逆流は、逆行流システム(以下に記載)を介して及び/又は能動的吸引を介して、血管内で開始される。一実施形態において、装置15が動脈アクセス装置の遠位開口部から突出して出る位置で、装置15の外径部と動脈アクセス装置110の内径部との間に隙間が存在する。当該隙間は、装置15の外径部と動脈アクセス装置110の内径部との間にシールが存在しないような大きさである。これにより、逆流する血液が、装置15が突出している動脈アクセス装置の遠位開口部に流れ込むことが許容される。
【0036】
その後、血栓除去装置15は、血栓性閉塞物10と接触するように、場合によっては血栓性閉塞物を貫通するように配置される。
【0037】
血栓除去装置15は、血栓性閉塞物に関与するように、任意の適切な方法で使用されてもよい。例えば、マイクロカテーテル60又はシース65は、血栓性閉塞物を通じて進められた後、血栓除去装置15を露出させるように後退されてもよい。その後、血栓除去装置15は、血栓閉塞物に関与するように、血栓閉塞物内に後退される。血栓除去装置15は、血栓閉塞物内に移動される際に回転されてもよい。また、血栓除去装置15は、血栓閉塞物内で拡張した状態で、マイクロカテーテル60又はシース65を単に後退させることによって、血栓閉塞物に関与するように使用されてもよい。
【0038】
血栓性閉塞物の機械的捕捉を補助する別の方法は、血栓性閉塞物、特に血栓を装置又は構成要素に付着させるのを補助する物質で、装置及び装置の構成要素を被覆することである。この材料は、例えば、フィブリンであってもよいし、他の適切な材料であってもよい。
【0039】
他の機械的血栓除去カテーテルが上記のような血管アクセス逆流システムと共に同様の方法で使用され得ることは、理解されるであろう。機械的血栓除去装置は、拡張可能なケージ、ワイヤ又はフィラメントループ、把持具、ブラシ等の、上述の血栓回収装置の変形を備えてもよい。これらの血栓回収装置は、塞栓破片が虚血性合併症を引き起こすリスクを低下させるために吸引ルーメンを備えてもよい。また、血栓除去装置は、血栓を除去するためのフラッシング及び吸引と連結された、流体渦、超音波又はレーザーエネルギ部、バルーンなどの血栓破壊部を備えてもよい。いくつかの例示的な装置及び方法は、以下の米国特許及び特許刊行物に記載されており、これらは全て参照によりその全体が組み込まれる。米国特許第6,663,650号、米国特許第6,730,104号、米国特許第6,428,531号、米国特許第6,379,325号、米国特許第6,481,439号、米国特許第6,929,632号、米国特許第5,938,645号、米国特許第6,824,545号、米国特許第6,679,893号、米国特許第6,685,722号、米国特許第6,436,087号、米国特許第5,794,629号、米国特許出願公開第2008/0177245号、米国特許出願公開第2009/0299393号、米国特許出願公開第2004/0133232号、米国特許出願公開第2020/183783号、米国特許出願公開第2007/0198028号、米国特許出願公開第2006/0058836号、米国特許出願公開第2006/0058837号、米国特許出願公開第2006/0058838号、米国特許出願公開第2003/0212384号、及び米国特許出願公開第2002/0133111号。
【0040】
(逆行血流システムの例示的な実施形態)
議論したように、システム100は、動脈アクセス装置110と、還流装置115と、動脈アクセス装置110から還流装置115への逆行流のための通路を提供するシャント120とを備える。また、本システムは、シャント120と相互作用してシャント120を通る逆行血流を調整及び/又は監視する流量制御アセンブリ125を備える。ここで、システム100の構成要素の例示的な実施形態について説明する。本システムは、神経インターベンション装置を備えてもよいし、神経インターベンション装置と組み合わせてもよい。
【0041】
(動脈アクセス装置)
図8A及び
図8Bは、動脈アクセス装置110の例示的な実施形態を示している。この装置は、
図9Bに示されるように、遠位シース605(シース本体605とも呼ばれる)と、近位延長部610と、シャント120などの流路に流体接続可能なアダプタ又はYコネクタ620とを備える。動脈アクセス装置110は、任意に、シースストッパ705(以下で更に説明する)と、ガイドワイヤ611とを備えてもよい。
【0042】
遠位シース605は、頸動脈内に挿入されるように大きさを設定され且つ使用中に実際に動脈に挿入される動脈アクセス装置110の部分である。遠位シース605は、一般的な頸動脈の壁における切開又は穿刺、例えばセルディンガー法を用いて設けられた開放外科的切開又は経皮的穿刺によって導入されるように構成されている。遠位シースの長さは様々であってもよい。非限定的な例において、前記長さは、18cm以上である。別の実施形態において、遠位シースは、5cmから15cmの範囲内、例えば10cmから12cmであってもよい。内径は、7Fr(1Fr=0.33mm)から10Frの範囲内、例えば8Frであってもよい。遠位シース605は、非限定的な例において、4Frシース、6Frシース、5Frシース、又は8Frシースであってもよい。実施態様において、遠位シースは、4Fr~8Fr、又は最大10.5Fr、又は最大12Frの外径を有する。
【0043】
シースが鎖骨の上であって頸動脈分岐部の下にある経頸部アプローチを通じて導入される場合、シース605は、よじれ及び座屈に抵抗するフープ強度を保持しながら、高い柔軟性を有することが望ましい。このため、遠位シース605は、ブレード、螺旋リボン、螺旋ワイヤなどによって、周方向に補強されてもよい。代替実施形態において、遠位シースは、鼠径部などの大腿動脈内への経皮的穿刺を通じて、大動脈弓を上がって標的総頸動脈CCA内に導入されるように構成される。
【0044】
図8Aは、動脈アクセスシース605、シース拡張器645、シースストッパ705、及びシースガイドワイヤ611を備える動脈アクセス装置110の構成要素を分解した状態で示す図である。
図8Bは、頸動脈へのシースガイドワイヤ611の上に挿入するために組み立てられる動脈アクセス装置110を示す図である。シースが動脈内に挿入された後で且つ処置中に、シースガイドワイヤ611及びシース拡張器705は取り外される。フラッシュライン635は、動脈アクセス装置110に接続され、その近位端部に活弁640を備えてもよい。フラッシュライン635は、処置中に、生理食塩水、造影剤などを導入することを可能にする。また、フラッシュライン635は、処置中に、圧力監視を可能にしてもよい。一実施形態において、拡張器645は、拡張器がシース内に配置されたときに、シース605の遠位端部を越えて遠位側に1.5cm突出する遠位領域を有する。
【0045】
近位延長部610は、Yアダプタ620から動脈アクセス装置110の近位端部(存在する場合にはフラッシュライン635の位置など)まで延在する。近位延長部610は、シース本体605の内側ルーメンと流体連通する内側ルーメンを有する。
図8Aの実施形態は、動脈アクセス装置110の最も近位の端部に近位止血弁625を備える。
図9Aを参照して以下に説明する一実施形態において(又は本明細書に記載する任意の実施形態において)、動脈アクセス装置110は、止血弁を備えず、止血弁に着脱可能に接続されてもよい。また、止血弁は、
図8A及び
図8Bの実施形態から排除されてもよい。
【0046】
図8Aを更に参照すると、Yアダプタ620(Yコネクタとも呼ばれる)は、シース本体605の遠位部分を近位延長部610に接続する。Yコネクタ620は、シャント120などの流路を、着脱可能に接続するか、或いは、少なくとも部分的に形成し得るコネクタ又はハブ680への流体接続を開閉するように操作される弁670を備えてもよい。すなわち、ハブは、逆行シャント120(
図5及び
図6)に接続され、その少なくとも一部を形成する。
【0047】
弁670(活弁など)は、シース本体605の内側ルーメンと連通するYアダプタ620の内側ルーメンにすぐ隣接して配置される。
図18A及び
図18Bは、弁670及びハブ680を備えるYアダプタ620の一例の断面の詳細を示す図である。
図18Aは、弁がコネクタに対して閉じている状態を示している。これは、動脈シースの前処理中に弁が存在する位置である。弁は、シースの前処理中に空気が閉じ込められる可能性がないように構成されている。
図18Bは、弁がコネクタに対して開いている状態を示している。この位置は、フローシャント120がハブ680に接続されて動脈シースからシャントへの血流が可能になったときに使用される。この構成は、フラッシュライン及び流路の両方を準備する必要性を排除し、代わりに1つのフラッシュライン635及び活弁640から準備することを可能にする。この1つの準備は、シャントラインへの接続を有しない従来の導入シースの準備と同じであり、ユーザにとってより身近で便利である。更に、シース上に流路がないため、動脈内への準備及び挿入時に動脈シースの取り扱いが容易になる。
【0048】
図8Aを再び参照すると、シース本体605は、チューブ665のセグメントによってYアダプタ620から分離されている第2の遠位コネクタ690を備えてもよい。この第2の遠位コネクタ及びチューブ665の目的は、弁670をシースの遠位先端部から更に近位に配置することを可能にする一方で、シース605の挿入可能部分の長さを依然として制限し、それにより、処置中にフローシャントが動脈シースに接続されるときに、放射線源に対するユーザの被曝レベルを低減させることを可能にすることである。一実施形態において、遠位コネクタ690は、配置されたときに患者に対するシースの固定を補助するために縫合アイレットを有する。
【0049】
本明細書に記載された動脈アクセス装置110の任意の実施形態の代替実施態様において、動脈アクセス装置は、その近位端部に止血弁を備えてない。むしろ、動脈アクセス装置は、止血弁がそこに配置される場合よりも広いアクセスを提供するために、止血弁のない開放近位端部(妨げにならない又は完全に塞がれていない近位開口部など)を有する。一実施形態において、近位開口部は、0.071インチの外径のカテーテルを受け入れる大きさに設定されているが、この設定は変更されてもよい。
【0050】
図9Aは、動脈アクセス装置110の別の実施形態を示す図である。これは、シース本体605の最遠位端部から各深度マーカー3205までのシース本体605の挿入の深さに関する表示をユーザに提供するために、シース本体605に沿って寸法決めされ且つ間隔を置かれた1以上の深度マーカー3205を有するシース本体605を備える。一実施形態において、深度マーカーは、少なくとも10cmまでの深さの表示を提供するように構成されている。一実施形態において、シース本体605は、18cm、少なくとも18cm、又は18cm未満の長さを有する。
【0051】
図9Aを更に参照すると、近位延長部610は、Yアダプタ620から、雌ルアーコネクタなどのコネクタ部品3210が配置された最近位端部まで延在する。前述したように、止血弁は、最近位端部には配置されていない。コネクタ部品3210は、動脈アクセス拡張器645の近位端部上の対応するコネクタに着脱可能に取り付けられるように構成されてもよい。
図9Bに示されるように、コネクタ部品3210は、止血を達成するために回転止血弁(RHV)3220に着脱可能に取り付けられるように構成されてもよい。RHVは、接続されたときに動脈アクセス装置110の内側ルーメンと連通する流体ライン3225を有するYコネクタを備えてもよい。流体ライン3225は、例えば、フラッシュ流体に使用されるフラッシュラインとして機能してもよく、活弁などの流れを制御する部材を備えてもよい。前述したように、シャント120は、
図9Bに示されるように、動脈アクセス装置110に着脱可能に且つ流体的に接続されてもよい。遠位シース605の近位端部には、1以上の縫合アイレットが配置されてもよい。
【0052】
遠位シース605の遠位先端部は、全体的に又は少なくとも部分的に、より柔らかい材料又はより柔軟な材料など、シースの近位部分とは異なる材料で作製されてもよい。遠位シース605の遠位先端部は、シース本体の長手方向軸に対して垂直な平面に沿って配置又は整列されている最遠位エッジを画定してもよい。或いは、遠位シース605の遠位先端部は、シース本体の長手方向軸に対して角度を有する(すなわち、法線ではない)平面に沿って配置又は整列される最遠位エッジを画定してもよい。一実施形態において、シース本体605は、6フレンチ又は8フレンチのシースである。一実施形態において、シース本体605は、0.071インチ、0.058インチ、又は0.045インチの内径、及び58cmの長さを有するが、これらの仕様は変更されてもよい。
【0053】
図9Aを再び参照すると、近位延長部610(存在する場合)は、少なくとも1つの連結器又はコネクタアセンブリ3215を介して遠位シース605に着脱可能に接続される。コネクタアセンブリ3215は、接続部位において、シース本体の遠位端部のすぐ近位及びYアーム620の遠位に配置されてもよい。この実施形態において、近位延長部が取り付けられていないときに止血が維持されるように、Yアームコネクタ620への近位延長部610の接続部位に、付加的な止血弁を備えてもよい。それにより、近位延長部610及び取り付けられたYコネクタ620は、コネクタアセンブリ3215の位置で遠位シース605からまとめて取り外すことができる。
【0054】
コネクタアセンブリ3215は、着脱可能に取り付けられる多種多様なコネクタ部品のいずれかを備えてもよい。動脈アクセス装置110は、Yアームアダプタ620の遠位端部又は近位延長部610の遠位端部にある第2のコネクタ部品3219に着脱可能に取り付けられる(遠位シース605の近位端部にある)第1のコネクタ部品3217を備えてもよい。第1のコネクタ部品3217及び第2のコネクタ部品3219は、例えば、ねじ山などの回転式機構によって互いに連結される回転式継手であってもよい。一実施形態において、コネクタ部品は、1以上のルアーコネクタで構成される。コネクタ部品の少なくとも1つは、止血弁又は止血弁アダプタであってもよい。例えば、第1のコネクタ部品3217は、第2のコネクタ部品3219に着脱可能に取り付けられるように構成された止血弁アダプタであってもよい。また、第1のコネクタ部品3217は、一実施形態において、止血弁に着脱可能に取り付けられてもよい。それにより、第2のコネクタ部品3219は、第1のコネクタ部品3217から取り外されて、Yアームアダプタ620及び近位延長部610を取り外すことができる。その後、第1のコネクタ3217に、止血弁アセンブリが取り付けられてもよい。一実施形態において、第1のコネクタ部品3217及び/又は第2のコネクタ部品3219は、第1のコネクタ部品が第2のコネクタ部品から取り外される際に自動的に止血を達成する自動止血部材を備える。例示的な実施形態において、動脈アクセスシースは、20cm未満又は16cm未満の全長を有する。一実施形態において、動脈アクセスシースの長さは、11cmの作業長及び10.5Frの外径を有する。
【0055】
一実施形態において、動脈アクセス装置110は、32cm以上の全長を有する。例示的な一実施形態において、遠位シース605の全長は、16cm、20cm、又は32cm未満の他の長さである。着脱可能な近位延長部610(シャント120に接続するYアームコネクタ又はアダプタ620も着脱する)は、近位延長部610が遠位シース605から取り外されたときに、動脈アクセス装置110の長さを短くすることを可能にする。例示的な方法において、この動脈アクセス装置は、近位延長部110及び取り付けられた遠位シース605の両方を備えるように完全に組み立てられた状態である動脈アクセス装置110を用いた治療方法に従って使用される。この状態において、動脈アクセス装置110は、近位延長部の近位端部における近位開口部を介してインターベンション装置を挿入することによって、1以上のインターベンション装置の血管系への導入のために使用されてもよい。
【0056】
インターベンション装置を介した治療が完了した後など、前記方法中のある時点で、Yアームアダプタ620及び近位延長部610は、(第2のコネクタ部品2319を第1のコネクタ部品3217から連結解除することによって)遠位シース605から取り外される一方、遠位シース605は、Yアームアダプタ620及び近位延長部610なしで動脈内に挿入されたままである。従って、遠位シース605は、近位延長部610が遠位シース605に取り付けられているときと比較して、動脈内へのより短いアクセス経路を提供する。その後、より短いアクセス経路は、動脈アクセス装置110の全体を除去してより短いアクセス装置と交換することなく、動脈内にアクセス及び/又はインターベンションするための1以上の装置を挿入するために使用され得る。一実施形態において、遠位シース605は、
図19A及び
図19Bに関連して以下に説明する閉塞送達システムなどの閉塞送達システムを動脈内に挿入するためのアクセス経路として使用される。その後、閉塞装置は、アクセス位置で止血を達成するために適用される。その後、遠位シース605は、除去される。或いは、近位延長部は、除去の前に遠位シース605に再接続されてもよい。一実施形態において、より短いアクセス経路は、遠位シース及び近位延長部の両方を有するより長いアクセス経路が取り付けられた状態にある場合よりも、動脈にアクセス及び/又はインターベンションするための1以上の装置の挿入及び使用を可能にする。
【0057】
図10A~
図10Bは、動脈アクセス装置110の代替実施形態を示す図である。遠位シース605は、シース605の遠位領域630の拡大図を示す
図10Bに示されるように、縮径された遠位領域630を有する段付き構成又は他の構成を任意に有してもよい。シースの遠位領域630は、頸動脈内に挿入するための大きさに設定されてもよい。シースの遠位領域630は、典型的には、2.16mm(0.085インチ)から2.92mm(0.115インチ)の範囲の内径を有し、シースの残りの近位領域は、より大きな外径及び管腔径を有する。前記内径は、典型的には2.794mm(0.110インチ)から3.43mm(0.135インチ)の範囲である。近位領域のより大きな管腔径は、シースを通る全体的な流れ抵抗を最小化する。一実施形態において、縮径された遠位セクション630は、約2cm~4cm又は3cm~5cmの長さを有する。別の実施形態において、縮径された遠位セクション630は、約10cm~15cmの長さを有している。縮径された遠位セクション630の比較的短い長さは、シース605の遠位端部が分岐部Bに接触するリスクを低減しながら、このセクションを経頸部アプローチによって総頸動脈CCA内に配置することを可能にする。更に、縮径されたセクション630は、流れ抵抗のレベルにおいて最小限の影響を有する一方で、動脈内にシース605を導入するための開口部の大きさの縮小を可能する。
【0058】
図10Aを再び参照すると、近位延長部610は、シース605の内側ルーメンと流体的に連続する内側ルーメンを有している。近位延長部610及びシース本体605の各ルーメンは、流路615のルーメンをシースに接続するYコネクタ620によって接続されている。組み立てられたシステムにおいて、流路615は、逆行シャント120(
図5及び
図6)の第1の脚部に接続して第1の脚部を形成する。任意の実施形態において、近位延長部610は、近位止血弁625(又は動脈アクセス装置の近位端部)を、経皮的又は外科的挿入部位に隣接するYコネクタ620から離して配置するのに十分な長さを有してもよい。止血弁625を経皮的挿入部位から離すことによって、医師は、蛍光透視が行われているときに、透視野から外れたまま、近位延長部610及びシース605内にインターベンションシステム(ステント送達システム又は他の作動カテーテルなど)を導入することができる。
【0059】
テーパ状の遠位端部650を有する拡張器645は、遠位シース605の総頸動脈内への導入を容易にするために提供されてもよい。拡張器645は、
図11Aに最もよく見られるように、テーパ状の遠位端部650がシース605の遠位端部を通じて延在するように、止血弁625を通じて導入されてもよい。拡張器645は、ガイドワイヤを収容するための中央ルーメンを有してもよい。典型的には、まず、ガイドワイヤが血管内に配置され、ガイドワイヤが血管に導入されているときに、拡張器/シースの組み合わせがガイドワイヤの上を移動する。
【0060】
拡張器は、長さが変更されてもよい。一実施形態において、拡張器は、拡張器が遠位シース605の内側ルーメン内に配置されたときに、拡張器の遠位領域と同様にテーパ状の遠位端部650が遠位シース605の遠位端部から外側に突出するような長さを有する。例示的な実施形態において、拡張器の長さは、76cmの作業長で79cmであるが、当該長さは変更されてもよい。
【0061】
(シースストッパ)
任意で、
図11Aに見られるように、遠位シース605の外側に同軸的に受け入れられる管形状のシースストッパ705が設けられてもよい。シースストッパ705は、シースが血管内に過度に挿入されるのを抑えるための機械的装置として機能するように構成されている。シースストッパ705は、シース本体605の一部を覆い、シース本体605の遠位部分を露出したままにするように、シース本体605上に配置されるように大きさ及び形状が設定されている。シースストッパ705は、アダプタ620に係合するフレア状の近位端部710と、遠位端部715とを有してもよい。任意で、遠位端部715は、
図11Bに示されるように、面取りされてもよい。
【0062】
シースストッパ705は、様々な目的を果たすことができる。例えば、シースストッパ705の長さは、シース605の導入をシース605の露出した遠位部分に制限し、シースの挿入長さがシースの露出した遠位部分に制限されるようにする。一実施形態において、シースストッパは、露出した遠位部分を2cmと3cmとの間の範囲に制限する。一実施形態において、シースストッパは、露出した遠位部分を2.5cmに制限する。言い換えれば、シースストッパは、動脈内へのシースの挿入を約2cmと3cmとの間の範囲に制限してもよいし、2.5cmに制限してもよい。別の例において、シースストッパ705は、(存在する場合)頸動脈壁に予め配置された穿刺閉塞装置に係合させて、閉塞装置を外すことなくシース605を引き抜くことを可能にしてもよい。
【0063】
シースストッパ705は、シース本体がシースストッパ705の下に明確に見えるように、透明な材料で作製されてもよい。また、シースストッパ705は、柔軟な材料で作製されてもよいし、動脈内に挿入されると適切な位置で必要に応じてシースを曲げることができるように柔軟性を向上させた関節部又はセクションを有してもよい。シースストッパは、ユーザによって解放されたときにその形状を保持するように、所望の形状に曲げることができるように、塑性的に曲げ可能であってもよい。シースストッパの遠位部分は、より硬い材料で作製されてもよく、近位部分は、より柔軟な材料で作製されてもよい。一実施形態において、より硬い材料は、85Aデュロメータであり、より柔軟なセクションは、50Aデュロメータである。一実施形態において、より硬い遠位部分は、シースストッパ705の1~4cmである。シースストッパ705は、ユーザがより大きなシース挿入長を望む場合、シースから着脱可能であってよい。これにより、ユーザは、シースストッパ705を取り外して、(シースストッパの)長さをより短く切り、挿入可能なシースの長さがシースストッパ705から突出するように、シースストッパ705をシースに再組み立てすることができる。
【0064】
図11Cは、拡張器645が内側に配置されたシース605に隣接して配置されるシースストッパ705の別の実施形態を示す図である。
図11Cのシースストッパ705は、直線形状などの第1の形状から、第1の形状とは異なる第2の形状に変形されてもよい。シースストッパは、十分な外力がシースストッパに作用してその形状が変化するまで、第2の形状を保持する。第2の形状は、例えば、非直線状、曲線状、その他の輪郭を有する形状、又は不規則な形状であってよい。例えば、
図11Cは、直線セクションだけでなく複数の屈曲部を有するシースストッパ705を示している。
図11Cは単なる一例を示しており、シースストッパ705は、その長手方向軸に沿って任意の量の屈曲部を有するように形成されてもよいと理解されるべきである。
図11Dは、シースストッパ705がシース605上に配置された状態を示している。シースストッパ705は、シース605がシースストッパ705の輪郭の形状に適合する形状又は輪郭となるように、シース605よりも大きな剛性を有する。
【0065】
シースストッパ705は、シースの動脈内への挿入角度と、動脈の深さ又は患者の体格とに応じた形状であってもよい。この特徴は、特に、シースが血管内に急角度で挿入される場合に、シースの先端部が血管壁にかける力を軽減する。シースストッパは、動脈切開部への進入角度が比較的急であっても、進入される動脈と同軸にシースを方向付けることを補助する形状に曲げられるか、変形されてもよい。シースストッパは、シースを患者に挿入する前に、操作者によって成形されてもよい。或いは、シースストッパは、シースが動脈内に挿入された後、その場で成形及び/又は再成形されてもよい。
図11E及び
図11Fは、可鍛性を有するシースストッパ705の使用例を示す図である。
図11Eは、シースストッパ705が直線形状でシース605に位置決めされた状態を示している。シース605は、シースストッパ705の直線形状を取り、シース605の遠位先端部が動脈の壁に接する又は面するように、比較的急な角度で動脈Aに進入している。
図11Fにおいて、ユーザは、シース605の長手方向軸が動脈Aの軸とより一致するようにシース605の進入角度を調整するよう、シースストッパ705を曲げる。このようにして、シースストッパ705は、ユーザによって、
図11Eの形状に対してシース605を動脈Aの対向壁から離して動脈Aの軸とより同軸な方向へ向けるのを補助する形状に形成される。
【0066】
一実施形態において、シースストッパ705は、可鍛性材料で作製されるか、シースストッパ上又はシースストッパ内に配置された一体型可鍛性部品を有する。別の実施形態において、シースストッパは、同心円チューブ、プルワイヤなどのアクチュエータを用いて関節運動するように構成されている。シースストッパの壁は、シースストッパが動脈又は入口の曲げに遭遇したときなどの外力に対して形状を保持するのを補助するために、延性を有するワイヤ又はリボンによって補強されてもよい。或いは、シースストッパは、金属及びポリマーを含む均質な可鍛性チューブ材料で構成されてもよい。また、シースストッパ本体は、少なくとも部分的に、変形後にその形状を保持可能な強化された組紐又はコイルで構成されてもよい。
【0067】
別のシースストッパの実施形態は、シースが容器内に配置された後でも、シースストッパの位置(シースに対する相対位置)を容易に調整するように構成されている。シースストッパの一実施形態は、シースストッパがシース本体から剥がされ、必要に応じて前方又は後方に移動し、その後、シース本体の長さに沿って再配置されるように、その長さのほとんど又は全てに沿ってスリットを有するチューブを備える。当該チューブは、把持してより容易に剥がすことができるように、近位端部にタブ又は特徴を有してもよい。
【0068】
別の実施形態において、シースストッパは、シース本体の遠位セクションに存在する非常に短いチューブ(バンドなど)、又はリングである。シースストッパは、例えば鉗子によって容易に把持され、シース挿入長を処置に適したものに設定するために、必要に応じて新しい位置に引き戻されたり、前方に引き抜かれたりし得る特徴を有してもよい。シースストッパは、チューブ材料からの摩擦、又はシース本体に対して開閉可能なクランプのいずれかによって、シース本体に固定されてもよい。クランプは、通常シース本体にクランプされているバネ式のクランプであってもよい。シースストッパを移動させるために、ユーザは、自身の指や器具でクランプを開いて、クランプの位置を調整した後、クランプを開放してもよい。当該クランプは、シース本体と干渉しないように設計されている。
【0069】
別の実施形態において、シースストッパは、シースの固定を改善し、シースが外れるリスクを低減するために、シースストッパ及びシースを患者の組織に縫合することを可能にする特徴を有する。この特徴は、シースストッパのチューブに取り付け又は成形される縫合アイレットであってよい。
【0070】
別の実施形態において、
図8Aに示されるように、シースストッパ705は、シースストッパの力を血管壁上のより大きな領域にわたって分散させ、それによって血管損傷又はシースストッパが動脈切開部を通り血管内に誤って挿入されるリスクを低減するための大きさ及び形状を有する遠位フランジ710を備える。フランジ710は、血管壁上の広い領域にわたってシースストッパの力を分散させるために、十分に大きい丸みを帯びた形状又は他の非外傷性の形状を有してもよい。実施形態において、フランジは、膨張可能又は機械的に拡張可能である。例えば、動脈シース及びシースストッパは、皮膚の小さな穿刺を通じて手術部位に挿入され、その後、シースを動脈に挿入する前に拡張させてもよい。
【0071】
シースストッパは、動脈壁に対するシースストッパの前進力を可能にする軸方向強度を維持しながら、シースストッパの曲げ性を増加させるように、ジグザグ構造でパターン化されたシースストッパの長さに沿った1以上の切欠き部又は窪み部720を有してもよい。また、窪み部は、縫合糸による患者へのシースの固定を容易にし、シースの移動を軽減するために使用されてもよい。また、シースストッパは、シースストッパが動脈シースからロック又はロック解除され得るように動脈シース上の特徴に対応するコネクタ部材730を近位端部に備えてもよい。例えば、コネクタ部材は、バヨネットマウント型接続部を作製するためにハブ上のピン750に対応する概ねL字状のスロット740を有するハブである。このようにして、シースストッパをハブにしっかりと取り付けて、ハブからロックを解除しない限り、シースストッパが不用意にハブから取り外される可能性を低減させてもよい。
【0072】
遠位シース605は、総頸動脈上の概ね前方-後方アプローチから総頸動脈内の概ね軸上の管腔方向への曲線的移行を確立するように構成されてもよい。真直ぐな外科的静脈切開部又は経皮的アクセスのいずれかから総頸動脈の動脈壁を通る動脈アクセスは、動脈アクセスの他の部位よりも一般的に大きいアクセス角度を必要とする場合がある。これは、総頸動脈の挿入部位が他のアクセスポイントよりも治療部位(すなわち、頸動脈分岐部)にはるかに近いという事実による。シース遠位先端部が頸動脈分岐部に達することなく適切な距離でシースを挿入できるように、挿入部位から治療部位までの距離を長くするために、より大きなアクセス角が必要とされる場合がある。例えば、大腿動脈へのアクセスにおいて、シースの挿入角度は、15~20度であるが、経頸動脈へのアクセスにおいて、シースの挿入角度は、通常30~45度又は更に大きい。従って、シースは、イントロデューサシースと比較して、よじれることなく、且つ、対向する動脈壁に過度の力を加えることなく、より大きく曲がらなければならない。更に、シース先端部は、シース内への流れを制限するような方法で、挿入後に動脈壁に突き当たったり接触したりしないようにすることが望ましい。シース挿入角は、動脈の管腔軸とシースの長手方向軸との間の角度で定義される。
【0073】
シース本体605は、アクセス角によって要求される大きな曲げを可能にするために様々な方法で形成されてもよい。例えば、シース及び/又は拡張器は、典型的なイントロデューサシースよりも小さい複合可撓性曲げ剛性(combined flexible bending stiffness)を有してもよい。一実施形態において、シース/拡張器の組み合わせ(すなわち、シースの内部に拡張器が配置されたシース)は、約80から100N-m2×10-6の範囲の複合可撓性剛性(E*I)を有する。ここで、Eは、弾性係数であり、Iは、装置の領域慣性モーメントである。シースは、単独で約30~40N-m2×10-6の範囲の曲げ剛性を有し、拡張器は、単独で約40~60N-m2×10-6の範囲の曲げ剛性を有していてもよい。典型的なシース/拡張器の曲げ剛性は、150~250N-m2×10-6の範囲である。より大きな可撓性は、材料の選択又は補強材の設計によって達成されてもよい。例えば、シースは、厚さ0.002インチから0.003インチ、幅0.005インチから0.015インチの寸法で、40から55Dの間の外側被覆硬度を有するステンレス鋼のリボンコイル補強材を備えてもよい。一実施形態において、コイルリボンは、0.003インチ×0.010インチであり、外側被覆硬度は、45Dである。一実施形態において、シース605は、先端部からある設定距離、典型的には0.5~1cmの曲線又は角度を有するように予め形成されてもよい。予め形成された曲線又は角度は、典型的には、5°~90°、好ましくは10°~30°の範囲内の旋回を提供してもよい。最初の導入のために、シース605は、そのルーメン内に配置された拡張器645などの閉塞具又は他の直線状の器具で真っ直ぐにされてもよい。シース605が経皮的又は他の動脈壁貫通部を通じて少なくとも部分的に導入された後、閉塞具は、その予め成形された構成をシース605が動脈ルーメン内に再び取り込むことを可能にするように引き抜かれてもよい。挿入中に真っ直ぐにされた後、シース本体の湾曲した又は角度のある形状を保持するために、シースは、製造中に角度のある又は湾曲した形状で熱セットされてもよい。また、補強構造体が、ニチノールから構成され、製造中に湾曲又は角度のある形状に熱成形されてもよい。また、付加的なバネ部材がシース本体に追加されてもよい。例えば、正確な形状を有するバネ鋼又はニチノールの帯板が、シースの補強層に追加されてもよい。
【0074】
他のシース構成は、シースを配置し、カテーテルをその場で所望の展開角度に偏向可能な偏向機構を有する。更に他の構成において、カテーテルは、総頸動脈のルーメン内に配置されたときに、非剛性の構成を有する。所定位置に配置されると、シースをその所望の構成に成形して硬くするために、プルワイヤ又は他の補剛機構が展開されてもよい。このような機構の1つの特定の例は、医学の特許文献によく記載されているように、「形状ロック」機構として一般に知られている。
【0075】
他のシース構成は、直線状であるが可撓性を有するシース内に挿入される湾曲した拡張器を備え、挿入中に拡張器とシースとが湾曲するようになっている。シースは、拡張器の除去後に組織構造に適合するのに十分な可撓性を有する。
【0076】
他のシースの実施形態は、一旦挿入されて角度のある構成になると、シースがよじれることなく且つ対向する動脈壁に過度の力を与えることなく、大きな角度で曲がることができるように、1以上の可撓性を有する遠位セクションを有するシースである。一実施形態において、シース本体の残りの部分よりも可撓性を有するシース本体605の最遠位セクションが存在する。例えば、最遠位セクションの曲げ剛性は、シース本体605の残りの部分の曲げ剛性の2分の1から10分の1である。一実施形態において、最遠位セクションは、30~300N-mm
2の範囲の曲げ剛性を有し、シース本体605の残りの部分は、500~1500N-mm
2の範囲の曲げ剛性を有する。CCAアクセス部位用に構成されたシースに対して、可撓性を有する最遠位セクションは、比率として表され得るシース本体の重要な部分を構成する。一実施形態において、シース本体の全長に対する柔軟な最遠位セクションの長さの比率は、シース本体全体の長さの少なくとも10分の1、最大で2分の1である。この可撓性の変化は、様々な方法によって達成されてもよい。例えば、外側被覆部は、様々なセクションにおいて、硬度及び/又は材料が変化してもよい。また、補強構造又は材料は、シース本体の長さにわたって変化してもよい。一実施形態において、可撓性を有する最遠位セクションは、1cm~3cmの範囲である。1以上の可撓性セクションを有する一実施形態において、(最遠位セクションに対して)可撓性が低いセクションは、最遠位セクションから1cm~2cmの範囲であってもよい。一実施形態において、可撓性を有する遠位セクションは、約30~50N-mm
2×10
-6の範囲の曲げ剛性を有し、可撓性の低いセクションは、約50~100N-mm
2×10
-6の範囲の曲げ剛性を有している。別の実施形態において、より可撓性を有するセクションは、1~2cmの長さに対して0.5~1.5cmの間に配置され、シースが斜めに動脈に入るがシースの遠位セクションが血管軸とより容易に整列するようにする関節セクションを形成する。可撓性を有する可変セクションを備えるこれらの構成は、いくつかの態様で製造されてもよい。例えば、補強された可撓性の低いセクションは、近位セクションにおいてより硬い補強部を有し、遠位セクション又は関節セクションにおいてより可撓性を有する補強部を有するように、変化してもよい。一実施形態において、シースの最外層の被覆材は、近位セクションにおいて硬度45D~70Dであり、最外層の遠位セクションにおいて硬度80A~25Dである。一実施形態において、シースの可撓性は、シース本体の長さに沿って連続的に変化する。
図11Gは、動脈に挿入されたそのようなシースを示している。可撓性を有する遠位セクションは、シース本体が曲がり、遠位先端部が血管ルーメンと概ね一致することを可能にする。一実施形態において、遠位セクションは、コイル又はブレードのピッチを変えるか、又は異なる切断パターンを有する皮下管を組み込むことによって、より可撓性を有する補強構造で作製される。また、遠位セクションは、近位セクションとは異なる補強構造を有する。
【0077】
一実施形態において、遠位シースのテーパ状先端部は、遠位シース本体よりも硬い材料で作製される。この目的は、シース上に滑らかなテーパを可能にすることによってシース挿入を容易にし、血管内へのシースの挿入中及び挿入後のシース先端部の歪み又は楕円化の変化を減少させることにある。一実施例において、遠位テーパ状先端部材は、より高い硬度の材料、例えば60~72Dショア材料で作製される。別の例において、遠位先端部は、別の材料、例えば、HDPE、ステンレス鋼、又は他の適切なポリマー若しくは金属で作製される。付加的な一実施形態において、遠位先端部は、例えばタングステン又は硫酸バリウムのようなポリマー材料への添加物として、又は材料の固有の特性として(ほとんどの金属材料の場合のように)、放射線不透過性材料で作製される。
【0078】
別の実施形態において、拡張器645は、可変剛性を有してもよい。例えば、シース及び拡張器が動脈に挿入されるときに血管損傷のリスクを最小化するために、拡張器のテーパ先端部650は、拡張器の近位部分よりも可撓性を有する材料で作製されてもよい。一実施形態において、可撓性を有する遠位セクションは、約45~55N-m2×10-6の範囲の曲げ剛性を有し、より可撓性の低い近位セクションは、約60~90N-m2×10-6の範囲の曲げ剛性を有する。また、拡張器のテーパ形状は、経頸動脈アクセスのために最適化されてもよい。例えば、動脈に入るシース及び拡張器の先端部の量を制限するために、テーパの長さ及びシースを越えて延びる拡張器の量は、典型的なイントロデューサシースより短いことが好ましい。例えば、テーパの長さは、1~1.5cmであってよく、シース本体の端部から1.5~2cm延在してもよい。一実施形態において、拡張器は、先端部の位置が蛍光透視下で容易に見えるように、遠位先端部に放射線不透過性マーカーを有する。
【0079】
別の実施形態において、イントロデューサガイドワイヤは、経頸動脈アクセスのために最適に構成されている。典型的には、イントロデューサシースを血管に挿入するとき、イントロデューサガイドワイヤが最初に血管に挿入される。これは、微小穿刺法又は修正セルディンガー法のいずれかで行われてもよい。通常、シースが挿入される方向には、例えば、大腿動脈のようにイントロデューサガイドワイヤが挿入される可能性のある長い長さの血管がある。この場合、ユーザはシースを挿入する前に、10cmから15cm以上のガイドワイヤを血管内に導入してもよい。ガイドワイヤは、動脈に導入される際に血管を傷つけないように、遠位セクションが可撓性を有するように設計されている。イントロデューサシースガイドワイヤの可撓性を有するセクションは、通常5~6cmで、徐々に硬いセクションへと移行する。ガイドワイヤを10~15cm挿入することは、ガイドワイヤの硬い部分が穿刺領域に位置し、その後のシース及び拡張器の血管内への挿入を安定的に支持可能にすることを意味する。しかしながら、総頸動脈内への経頸動脈シース挿入の場合、頸動脈内へのガイドワイヤの挿入量に限界がある。分岐部や内頚動脈に頚動脈疾患がある場合、外頚動脈(ECA)内にワイヤを挿入して塞栓のリスクを最小化することが望ましいため、ガイドワイヤ挿入量は、5~7cm程度、或いは、分岐部に達する前に止めて3~5cm程度でよい。従って、経頸動脈シースガイドワイヤは、3~4cmの可撓性を有する遠位セクション、及び/又は、より硬いセクションへのより短い移行セクションを有してもよい。また、経頸動脈シースガイドワイヤは、非外傷性の先端セクションを有するが、より硬いセクションへの非常に遠位で短い移行セクションを有する。例えば、柔軟な先端セクションは、1.5~2.5cmであり、次いで長さが3~5cmの移行セクションがあり、次いでワイヤの残部を構成する硬い近位セクションがある。
【0080】
別の実施形態において、シース拡張器は、経皮的アクセスのために0.018インチのガイドワイヤ上に挿入されるように構成されている。マイクロ穿刺キットを用いた標準的なシース挿入では、まず22Ga針を通じて0.018インチのガイドワイヤを挿入し、その後、マイクロ穿刺カテーテルを用いてガイドワイヤを0.035インチ又は0.038インチのガイドワイヤに交換し、最後にシース及び拡張器を0.035インチ又は0.038インチのガイドワイヤ上に挿入する必要がある。0.014インチのガイドワイヤが使用されてもよい。0.018インチのガイドワイヤ上に挿入可能なシースもあり、ワイヤ交換は不要である。これらのシースは、橈骨動脈内に挿入するように設計されているため、通常 「経橈骨動脈(transradial)」と表示され、0.018インチのワイヤからシース本体まで十分に径が大きくなるように、通常、拡張器のテーパが長くなっている。残念ながら経頸動脈アクセスでは、シース及び拡張器の挿入長に制限があるため、これらの既存のシースは、適切ではない。別の欠点は、0.018 インチのガイドワイヤが、より鋭い角度を有するシースを頸動脈内に挿入するために必要な支持を有しない可能性があることである。ここに開示された実施形態において、経頸動脈シースシステムは、シース本体と、シース拡張器と、シース拡張器内に摺動可能に適合し、0.018インチのガイドワイヤを収容可能なテーパ状の遠位端部を有するインナーチューブとを備える。
【0081】
このシースシステムの実施形態を使用するために、0.018インチのガイドワイヤが、まず22Ga針を通じて血管内に挿入される。同軸に組み立てられたシースシステムは、0.018インチのワイヤ上に挿入される。インナーチューブは、まず0.018インチのワイヤ上に進められる。当該ワイヤは、外径と機械的支持との両方において0.035 インチ又は0.038インチのガイドワイヤの同等物内へインナーチューブを本質的に変形させる。インナーチューブは、近位端部で0.018インチのワイヤに固定される。シース及び拡張器は、0.018インチのワイヤ及びインナーチューブを介して、血管内へ挿入される。この構成により、現在の経橈骨シースのように拡張器のテーパを長くする必要がなく、標準的なイントロデューサシースと同じガイドワイヤの支持で、ワイヤ交換工程を省くことができる。上記のように、シースシステムのこの構成は、シース挿入中に0.018インチのガイドワイヤ及び/又はインナーチューブの不注意な前進を防止するストッパ機能を備えてもよい。シースが挿入されると、拡張器、インナーチューブ、及び0.018インチのガイドワイヤが取り外される。
【0082】
図12Aは、動脈アクセス装置110の別の実施形態を示す図である。この実施形態は、遠位シース605が、例えば総頸動脈を通る流れを閉塞するための閉塞部材129を備えることを除いて、
図8Aに示される実施形態と実質的に同じである。動脈アクセス装置の実施形態のいずれもが、閉塞部材を備えてもよい。閉塞部材129がバルーンなどの膨張可能な構造体である場合、シース605は、閉塞部材129と連通する膨張ルーメンを備えてもよい。閉塞部材129は、膨張可能なバルーンであってもよいが、膨張可能なカフ、総頸動脈又は内頸動脈の内壁に係合するように外側にフレアしてその先の流れを遮断する円錐状又は他の円周状部材、膜被覆ブレード、軸方向に圧縮すると径方向に拡大するスロット付きチューブ、又は機械的手段によって展開可能な類似構造等であってもよい。バルーン閉塞の場合、バルーンは、コンプライアント、非コンプライアント、弾性、強化、又は他の様々な特性を有してもよい。一実施形態において、バルーンは、膨張前にシースの遠位端部の外側を覆って密接に受け入れられる弾性バルーンである。膨張すると、弾性バルーンは、総頸動脈の内壁に拡張して適合し得る。一実施形態において、弾性バルーンは、非展開構成の少なくとも2倍の直径まで拡張することができ、非展開構成の少なくとも3倍の直径まで頻繁に展開することができ、より好ましくは非展開構成の少なくとも4倍、又はより大きくなるように展開することができる。
【0083】
図12Bに示されるように、閉塞部材129を有する遠位シース605は、縮径された遠位領域630を有する段付き又は他の構成を有してもよい。遠位領域630は、シース605の残りの近位領域がより大きな外径及び管腔径を有する頸動脈への挿入のためのサイズであってもよい。内径は、典型的には2.794mm(0.110インチ)~3.43mm(0.135インチ)の範囲である。近位領域のより大きな管腔径は、シースの全体的な流れ抵抗を最小にする。一実施形態において、縮径された遠位セクション630は、約2cm~4cm又は3cm~5cmの長さを有する。別の実施形態において、縮径された遠位セクション630の長さは、約10cm~15cmである。縮径された遠位セクション630の比較的短い長さは、シース605の遠位端部が分岐部Bに接触するリスクを低減して、このセクションを経頸部アプローチを介して総頸動脈CCAに配置することを可能にする。
図28に示す別の実施形態において、縮径された遠位セクション630は、テーパ状又は段付きであり、遠位先端部が内頸動脈ICAに配置されるように、約10cmから15cmの長さを有している。
【0084】
経頸動脈アクセス処置で見られるような、鋭いシース挿入角度及び/又は動脈内に挿入されるシースの短い長さを有する状況において、シースの遠位先端部は、血管壁に対して部分的に又は完全に配置される可能性が高く、それによってシース内への流れが制限される。一実施形態において、シースは、先端部を血管のルーメン内に中心を合わせるように構成される。そのような一実施形態は、上述した閉塞部材129のようなバルーンを備える。別の実施形態において、バルーンは、流れに対して閉塞性でなくても、膨張性バンパーのように、シースの先端部を血管壁から離して中心を合わせられてもよい。別の実施形態において、拡張可能な特徴は、シースの先端部に位置し、シースが所定位置にあるときに機械的に拡張される。機械的に拡張可能な特徴の例には、編組構造又はらせん構造、又は短縮されると半径方向に拡張する長手方向の支柱が含まれる。
【0085】
一実施形態において、シースの遠位先端部に近接する血管の閉塞は、ルンメル(Rummel)止血帯又はシース挿入部位に近接する血管ループのように、血管の外側から行われてもよい。代替実施形態において、閉塞装置は、例えば、弾性ループ、膨張可能なカフ、又は血管及び遠位シース先端部の周りに締め付けられる機械的クランプなど、シース先端部の周りの血管に外部から適合し得る。流れの反転のシステムにおいて、血管のこの閉塞方法は、静的な血流の領域を最小限にし、それによって血栓形成のリスクを低減し、また、シース先端部が血管と軸方向に整列し、血管壁によって部分的又は完全に遮断されないことを保証する。
【0086】
一実施形態において、シース本体の遠位部分は、シースの先端部が動脈壁によって部分的又は完全に遮断されてもシースへの流れが維持されるように、側孔を有してもよい。
【0087】
(静脈還流装置)
ここで
図13を参照すると、静脈還流装置115は、遠位シース910と、システムが使用されているときにシャント120の脚部に接続され当該脚部を形成する流路915とを備える。遠位シース910は、頸静脈又は大腿静脈などの静脈還流位置内への切開又は穿刺を通じて導入されるように適合される。遠位シース910及び流路915は、恒久的に取り付けられてもよいし、
図13に示されるように、従来のルアー継手を用いて取り付けられてもよい。任意に、
図14Aに示されるように、シース910は、Yコネクタ1005によって流路915に接合されてもよい。Yコネクタ1005は、内頸静脈又は他の静脈への静脈還流装置の導入を容易にするために、拡張器1015の挿入を可能にする止血弁1010を備えてもよい。動脈アクセス拡張器645と同様に、静脈拡張器1015は、中心ガイドワイヤルーメンを有するので、静脈シースと拡張器との組み合わせは、ガイドワイヤ上に配置されてもよい。任意で、静脈シース910は、その近位端部又は遠隔端部に活弁1025を有するフラッシュライン1020を備えてもよい。
【0088】
図14B及び
図14Cには、代替構成が示されている。
図14Bは、静脈還流シース910、シース拡張器1015、及びシースガイドワイヤ611を備える静脈還流装置115の構成要素を示す図である。
図14Cは、中心静脈へのシースガイドワイヤ611上に挿入するために組み立てられるような静脈還流装置115を示す図である。シースが静脈に挿入されると、拡張器及びガイドワイヤが取り外される。静脈シースは、止血弁1010及び流路915を備えてもよい。流路の端部に設けられた活弁1025は、使用前に流路を介して静脈シースを洗浄することを可能にする。この構成により、従来のイントロデューサシースと同様に、シースを1点から準備することができる。フローシャント120への接続は、活弁1025に設けられたコネクタ1030(止血弁など)を用いて行われる。静脈還流装置115は、静脈還流装置115を患者に固定するための縫合糸に結合するために使用できる1以上のアイレットを備えてもよい。
【0089】
全体的なシステムの流れ抵抗を低減するために、動脈アクセス流路615、Yコネクタ620(
図8A)、静脈還流流路915、及びYコネクタ1005(
図13又は14)はそれぞれ、比較的大きなフロールーメン内径、典型的には2.54mm(0.100インチ)~5.08mm(0.200インチ)の範囲の内径を有し、比較的短い長さ、典型的には10cm~20cmの範囲の長さを有してもよい。システムの流れ抵抗が低いことは、塞栓のリスクが最も大きい処置の部分において流体を最大にすることを可能にするので望ましい。また、システムの低い流れ抵抗は、以下でより詳細に説明するように、システム内の流量を制御するための可変流れ抵抗の使用を可能にする。静脈還流シース910の寸法は、上記の動脈アクセスシース605について説明した寸法と概ね同じであってもよい。静脈還流シースにおいて、止血弁1010のための延長部は、必要がない。
【0090】
(逆行性シャント又は流路)
シャント120は、動脈アクセスカテーテル110と静脈還流カテーテル115との間に流体連通してその間に逆行血流のための経路を提供する単一のチューブ又は複数の接続されたチューブで形成されてもよい。
図5及び
図6に示されるように、シャント120は、一端部が動脈アクセス装置110の流路615に接続され、反対側端部が静脈還流カテーテル115の流路915に接続される。
【0091】
一実施形態において、シャント120は、流量制御アセンブリ125と連通する少なくとも1つのチューブで形成されてもよい。シャント120は、血流のための流体経路を提供する任意の構造体であってもよい。シャント120は、単一のルーメン又は複数のルーメンを有してもよい。シャント120は、流量制御アセンブリ125、動脈アクセス装置110、及び/又は静脈還流装置115に着脱可能に取り付けられてもよい。使用前に、ユーザは、動脈アクセス位置及び静脈還流部位での使用に最も適切な長さを有するシャント120を選択してもよい。一実施形態において、シャント120は、シャント120の長さを変えるために使用可能な1以上の延長チューブを備えてもよい。延長チューブは、所望の長さを達成するためにシャント120にモジュール式に取り付けられてもよい。シャント120のモジュール式の態様は、静脈還流部位に応じて、ユーザが必要に応じてシャント120を長くすることを可能にする。例えば、一部の患者では、内頸静脈IJVが小さく、且つ/又は蛇行している。この部位における合併症のリスクは、他の組織構造に近接しているために、他のいくつかの部位よりも高くなる可能性がある。更に、頸部の血腫は、気道閉塞や脳血管の合併症を引き起こす可能性がある。従って、そのような患者に対しては、静脈還流部位を内頸静脈IJV以外の部位、例えば大腿静脈に配置することが望ましい場合がある。大腿静脈還流部位は、重篤な合併症のリスクが低く、経皮的に達成することができ、また、内頸静脈IJVが利用できない場合には、中心静脈への代替静脈アクセスを提供することができる。更に、大腿静脈還流は、シャント制御部が、装置が導入され且つ造影剤注入ポートが配置されるインターベンションの「作業領域」に近い位置に配置され得るように、逆流シャントのレイアウトを変更する。
【0092】
一実施形態において、シャント120は、4.76mm(3/16インチ)の内径を有し、40~70cmの長さを有している。前述のように、シャントの長さは、調整することができ、本明細書に記載されているものと異なってもよい。
【0093】
一実施形態において、シャントは、シリンジ、吸引ポンプなどの吸引源に接続可能なポートを有してもよい。
【0094】
付加的な一実施形態において、シャントは、例えば、蠕動ポンプ、ダイヤフラムポンプ、インペラポンプ、又はシリンジポンプなどの能動ポンプに接続する部材を備えてもよい。
【0095】
(流量制御アセンブリ-逆行流の調節及び監視)
流量制御アセンブリ125は、逆行性シャント120と相互作用して、総頸動脈から内頸静脈などの静脈還流部位又は外部容器への逆行性流量を調節及び/又は監視する。この点に関して、流量制御アセンブリ125は、ユーザが、既存のシステムよりも高い最大流量を達成し、逆行流量を選択的に調整、設定、又は他の方法で調節することを可能にする。逆行流量を調節するために、以下でより十分に説明するように、様々な機構が使用されてもよい。流量制御アセンブリ125は、以下に説明するように、ユーザが様々な治療レジメに適した方法で逆行血流を構成することを可能にする。
【0096】
一般に、連続的な逆行流量を制御する能力によって、医師は、個々の患者及び処置の段階に対してプロトコルを調整することができる。逆行血流量は、典型的には、低レートから高レートまでの範囲にわたって制御される。高レートは、低レートより少なくとも2倍高く、典型的には低レートより少なくとも3倍高く、しばしば低レートより少なくとも5倍高く、又はそれ以上高くてもよい。一実施形態において、高レートは、低レートより少なくとも3倍高い。別の実施形態において、高レートは、低レートより少なくとも6倍高い。頸動脈からの塞栓の抽出を最大化するために、高い逆行血流量を有することが一般に望ましいが、逆行血流に耐える患者の能力は様々である。従って、逆行血流量を容易に調節可能なシステム及びプロトコルを有することによって、治療医は、流量がその患者の許容レベルを超えたときを判断し、それに応じて逆行血流量を設定してもよい。連続的な高逆流量に耐えられない患者に対して、医師は、塞栓物のリスクが最も高くなる処置の短時間で重要な部分のみ高流量をオンにすることを選択することができる。短い間隔、例えば15秒から1分の間では、患者の許容限界は、通常、要因にはならない。
【0097】
特定の実施形態において、連続的な逆行血液流量は、10ml/分~200ml/分、典型的には20ml/分~100ml/分の範囲の基準流量で制御されてもよい。これらの流量は、大多数の患者にとって許容可能である。処置のほとんどの間、流量は、基準流量に維持されるが、塞栓の放出のリスクが増大する時には、そのような塞栓を捕捉する能力を改善するために、流量を短い時間だけ基準よりも増加させてもよい。例えば、ステントカテーテルの導入時、ステントの展開時、ステントの拡張前後、総頸動脈の閉塞の除去時等に、逆行血流量が基準よりも増加されてもよい。
【0098】
流量制御システムは、順行流を再確立する前に頸動脈分岐部の領域で頸動脈を「フラッシュ」するために、比較的低い流量と比較的高い流量との間で循環されてもよい。このようなサイクルは、低流量よりも約2~6倍大きく、典型的には約3倍大きい高流量で確立されてもよい。当該サイクルは、典型的には、0.5秒から10秒、通常は2秒から5秒の範囲の長さである。サイクルの総持続時間は、5秒から60秒、通常は10秒から30秒の範囲である。
【0099】
図15は、逆行血流が流量制御アセンブリ125の少なくとも一部を通過又は流量制御アセンブリ125の少なくとも一部と連通するように、シャント120に沿って配置される流量制御アセンブリ125の概略図を有するシステム100の一例を示す図である。流量制御アセンブリ125は、逆行流を調節及び/又は監視するための様々な制御可能な機構を備えてもよい。当該機構は、1以上のポンプ1110、弁1115、シリンジ1120、及び/又は可変抵抗要素1125を含む、逆行流を制御する様々な手段を備えてもよい。流量制御アセンブリ125は、シャント120を通る流れを変化させるために、ユーザによって手動で制御され、及び/又はコントローラ1130を介して自動的に制御されてもよい。例えば、流れ抵抗を変化させることで、シャント120を通る逆行血流量が制御されてもよい。以下でより詳細に説明するコントローラ1130は、流量制御アセンブリ125に統合されてもよいし、流量制御アセンブリ125の構成要素と通信する別個の構成要素としてもよい。
【0100】
更に、流量制御アセンブリ125は、逆行流の1以上の態様を検知する1以上の流れセンサ1135及び/又は組織データセンサ1140(以下で詳述する)を備えてもよい。血液が静脈還流部位に戻される前に塞栓を除去するために、フィルタ1145がシャント120に沿って配置されてもよい。フィルタ1145がコントローラ1130の上流に配置される場合、フィルタ1145は、塞栓がコントローラ1145に入り、可変流れ抵抗要素1125を詰まらせる可能性を抑えることができる。流量制御アセンブリ125の様々な構成要素(ポンプ1110、弁1115、シリンジ1120、可変抵抗要素1125、センサ1135/1140、及びフィルタ1145を含む)は、シャント120に沿った様々な位置で、互いに関連して様々な上流又は下流の位置で配置されてもよいと理解されるべきである。流量制御アセンブリ125の構成要素は、
図15に示される位置に限定されない。更に、流量制御アセンブリ125は、必ずしも全ての構成要素を含む必要はなく、構成要素の様々な部分的組合せを含んでもよい。例えば、シリンジは、任意に、流れを調節する目的で流量制御アセンブリ125内で使用されてもよいし、シャント120を介して放射線不透過性造影剤などの流体を動脈内に順方向に導入するような流量調節以外の目的でアセンブリの外側で使用されてもよい。
【0101】
可変抵抗要素1125及びポンプ1110の両方がシャント120に結合されて、逆行流量が制御されてもよい。可変抵抗要素1125は、流れ抵抗を制御する一方、ポンプ1110は、シャント120を介した血液の積極的な置換を提供する。従って、ポンプは、ECA及びICAの灌流幹圧力及び静脈背圧に頼らず、逆行流を駆動するために作動されてもよい。ポンプ1110は、蠕動チューブポンプ又は容積式ポンプを含む任意のタイプのポンプであってもよい。ポンプ1110は、シャント120を通る血液の変位を選択的に実現し、シャント120を通る流量を制御するために、(手動又はコントローラ1130を介して自動的に)作動及び作動停止してもよい。また、シャント120を通る血液の変位は、吸引シリンジ1120の使用を含む他の方法で達成されてもよい。或いは、バキュテナー、バクロックシリンジ、又は壁吸引などの吸引源が使用されてもよい。ポンプ1110は、コントローラ1130と通信してもよい。
【0102】
1以上の流量制御弁1115は、シャントの経路に沿って配置されてもよい。弁は、手動で作動又は(コントローラ1130を介して)自動的に作動されてもよい。流量制御弁1115は、例えば、シャント120内の順行流を抑える一方向弁、逆止弁、又は、例えば(動脈血管系に順方向に入ることが意図されている)高圧造影剤注入の間、シャント120を閉塞する高圧弁であってもよい。
【0103】
コントローラ1130は、(例えば、シャント120、動脈アクセス装置110、静脈還流装置115、及び流量制御アセンブリ125を含む)システム100の構成要素を通る逆行流の手動及び/又は自動での調節及び/又は監視を可能にするために流量制御アセンブリ125を含むシステム100の構成要素と通信を行う。例えば、ユーザは、コントローラ1130上の1以上のアクチュエータを作動させて、流量制御アセンブリ125の構成要素を手動で制御してもよい。手動制御部は、コントローラ1130上に直接配置されたスイッチ、ダイヤル、又は同様の構成要素、或いは、フットペダル又は同様の装置などのコントローラ1130から離れた位置に配置された構成要素を備えてもよい。また、コントローラ1130は、ユーザからの入力を必要とせずに、システム100の構成要素を自動的に制御してもよい。一実施形態において、ユーザは、そのような自動制御を可能にするように、コントローラ1130内のソフトウェアをプログラムしてもよい。コントローラ1130は、流量制御アセンブリ125の機械的部分の作動を制御してもよい。コントローラ1130は、コントローラ1130がセンサによって生成されたそのような信号に応答して流量制御アセンブリ125の作動を制御できるように、センサ1135/1140によって生成された信号を解釈する回路又はプログラミングを含んでもよい。
【0104】
流量制御アセンブリ125は、ローラポンプ用のポンプヘッド、インペラ式ポンプ用の回転モータなど、血液の能動的な逆行ポンプを可能にするために、シャント内の部材とインターフェースで接続する能動ポンプアクチュエータを備えてもよい。コントローラ1130は、ポンプ速度の制御を提供することになる。
【0105】
図15におけるコントローラ1130の表示は、単なる例示的である。コントローラ1130は、外観及び構造を変更可能であると理解されるべきである。
図15において、コントローラ1130は、単一のハウジングに統合されているように示されている。これにより、ユーザは、1つの位置から流量制御アセンブリ125を制御することが可能である。コントローラ1130の任意の構成要素は、別個のハウジングに分離されてもよいと理解されるべきである。更に、
図15は、コントローラ1130及び流量制御アセンブリ125を別個のハウジングとして示している。コントローラ1130及び流量制御調整器125は、単一のハウジングに統合されてもよいし、複数のハウジング又は構成要素に分割さてもよいと理解されるべきである。
【0106】
(流れ状態インジケータ)
コントローラ1130は、逆行流の状態に関して、視覚信号及び/又は音声信号をユーザに提供する1以上のインジケータを含んでもよい。音声表示は、ユーザが流量コントローラ1130を視覚的に確認することを必要とせずに、ユーザに流れ状態を思い出させるのに有利である。インジケータは、スピーカ1150及び/又は光1155、或いは、逆行流の状態をユーザに伝えるための任意の他の手段を含んでもよい。コントローラ1130は、インジケータの作動を制御するために、システムの1以上のセンサと通信してもよい。或いは、インジケータの作動は、ユーザが流量制御アクチュエータ1165の1つを作動させることに直接結び付けられてもよい。インジケータは、スピーカ又は光である必要はない。インジケータは、逆行流の状態を視覚的に示す単なるボタン又はスイッチであってもよい。例えば、ある状態(押された状態や下がった状態など)にあるボタンが、逆行流が高い状態であることを視覚的に示すものであってよい。或いは、特定のラベルを付けられた流れ状態を指しているスイッチ又はダイヤルが、逆行流がラベルを付けられた状態にあることを視覚的に示すものであってよい。
【0107】
インジケータは、逆行流の1以上の状態を示す信号を提供してもよい。一実施形態において、インジケータは、「高」流量の状態及び「低」流量の状態という2つの個別の状態のみを識別する。別の実施形態において、インジケータは、「高」流量、「中」流量、及び「低」流量を含む、2よりも多い流量を識別する。インジケータは、逆行流の個別の状態の任意の量を識別するように構成されてもよく、又は逆行流の状態に対応する目盛信号を識別してもよい。この点に関して、インジケータは、ml/分又は任意の他の単位などの逆行流量の値を示すデジタル又はアナログメータ1160であってもよい。
【0108】
一実施形態において、インジケータは、逆行流量が「高」流量の状態にあるか又は「低」流量の状態にあるかをユーザに示すように構成される。例えば、インジケータは、流量が高いときに第1の態様(例えば、輝度のレベル)で照明し及び/又は第1の音声信号を発し、その後、流量が低いときに第2の態様の照明に変更し及び/又は第2の音声信号を発してもよい。或いは、インジケータは、流量が高いときのみ、又は流量が低いときのみ、照明及び/又は音声信号を発してもよい。患者の中には、高流量に耐えられない者、又は長期間にわたる高流量に耐えられない者がいることを考慮すると、流量が高状態にあるときに、インジケータがユーザに通知を提供することが望ましい場合がある。これは、フェールセーフ機能として役立つであろう。
【0109】
別の実施形態において、インジケータは、流量が高から低に変化したとき及び/又はその逆のように、流量が状態を変えたときに信号(音声及び/又は視覚)を提供する。別の実施形態において、インジケータは、シャント120が遮断されたとき、又はシャント120内の活弁の1つが閉じられたときなど、逆行流が存在しないときに信号を提供する。
【0110】
(流量アクチュエータ)
コントローラ1130は、逆行流量を調節するため及び/又は流量を監視するために、ユーザが押す、切り替える、操作する、又は他の方法で作動可能な1以上のアクチュエータを備えてもよい。例えば、コントローラ1130は、逆行流の様相を選択的に変化させるためにユーザが作動可能な流量制御アクチュエータ1165(1以上のボタン、ノブ、ダイヤル、スイッチなど)を備えてもよい。例えば、図示された実施形態において、流量制御アクチュエータ1165は、システム100に特定の逆流状態を達成させるコントローラ1130に各々対応する様々な別個の位置に回転可能なノブである。それらの状態は、例えば、(a)オフ、(b)低流量、(c)高流量、及び(d)吸引を含む。前述の状態は単なる例示であり、異なる状態又は状態の組み合わせが使用されてもよいと理解されるべきである。コントローラ1130は、センサ、弁、可変抵抗要素、及び/又はポンプを含むシステムの1以上の構成要素と相互作用することによって、様々な逆行流状態を達成する。また、コントローラ1130は、ユーザがコントローラ1130を積極的に作動させる必要がないように、逆行流量を調節する及び/又は流量を監視する回路及びソフトウェアも含んでもよいと理解されるべきである。
【0111】
オフ状態は、シャント120を通る逆行血流が存在しない状態に対応する。ユーザが流量制御アクチュエータ1165をオフに設定すると、コントローラ1130は、シャント120内の弁を締めたり、活弁を閉じたりすることなどにより、逆行流を停止させる。低流量状態及び高流量状態は、それぞれ、低い逆行流量及び高い逆行流量に対応する。ユーザが流量制御アクチュエータ1165を低流量又は高流量に設定すると、コントローラ1130は、ポンプ1110、弁1115及び/又は可変抵抗要素1125を含む流量制御レギュレータ125の構成要素と相互作用して流量を適宜増加又は減少させる。最後に、吸引状態は、能動的な逆行流が望まれる場合、バキュテナー又は吸引ユニットなどの吸引源に回路を開くことに対応する。吸引源は、シャント120又は動脈アクセス装置110を含む回路の任意の部分に連結されてもよい。
【0112】
システムは、能動状態、受動状態、吸引状態、及びオフ状態を含む様々な状態の間で血流を変化させるために使用されてもよい。能動状態は、逆行血流を能動的に駆動する手段を使用するシステムに対応する。そのような能動的な手段としては、例えば、ポンプ、シリンジ、真空源などが挙げられる。受動状態は、逆行血流がECA及びICAの灌流幹圧力及び場合によっては静脈圧力によって駆動されるときに対応する。吸引状態は、逆行血流を駆動するために、バキュテナー又は吸引ユニットなどの吸引源を使用するシステムに相当する。オフ状態は、活弁又は弁を閉じた結果など、逆行血流がゼロとなるシステムに対応する。低流量及び高流量は、受動的又は能動的な流れ状態のいずれでもよい。一実施形態において、低流量及び/又は高流量のいずれかの特定の値(ml/分など)は、ユーザが実際に値を設定又は入力しないように、コントローラに予め設定及び/又は予めプログラムされてもよい。むしろ、ユーザは、単に「高流量」及び/又は「低流量」を(例えば、コントローラ1130のボタンなどのアクチュエータを押すことによって)選択し、コントローラ1130は、流量制御アセンブリ125の1以上の構成要素と相互作用して、流量が所定の高流量値又は低流量値を達成するようにさせる。別の実施形態において、ユーザは、低流量及び/又は高流量の値を、例えばコントローラに設定又は入力する。別の実施形態において、低流量及び/又は高流量は、実際には設定されない。むしろ、外部データ(組織データセンサ1140からのデータなど)が、流量に影響を及ぼす基準として使用される。
【0113】
流量制御アクチュエータ1165は、状態を低流量から高流量に切り替えるためのボタン又はスイッチなどの1つのアクチュエータと、例えば造影剤が頸動脈に順方向に向けられる造影剤の注入中に、流量ループを閉じてオフ状態にする別のアクチュエータなどの、複数のアクチュエータであってよい。一実施形態において、流量制御アクチュエータ1165は、複数のアクチュエータを含んでもよい。例えば、1つのアクチュエータを操作して流量を低から高に切り替え、別のアクチュエータを操作して一時的に流れを止め、第3のアクチュエータ(活弁など)を操作してシリンジを用いた吸引を行ってもよい。別の例においては、1つのアクチュエータを操作して低流量に切り替え、別のアクチュエータを操作して高流量に切り替える。或いは、流量制御アクチュエータ1165は、低流量から高流量に状態を切り替えるための複数のアクチュエータと、高流量状態及び低流量状態内で流量を微調整するための付加的なアクチュエータとを含んでもよい。低流量と高流量との間の切り替え時に、これらの付加的なアクチュエータは、これらの状態内で流量を微調整するために使用されてもよい。このように、各状態(すなわち、高流量状態及び低流量状態)内において、様々な流量が、ダイヤルを回されて微調整されてもよいと理解されるべきである。多種多様なアクチュエータを使用して、流れの状態に対する制御が達成されてもよい。
【0114】
コントローラ1130又はコントローラ1130の個々の構成要素は、患者に対して及び/又はシステム100の他の構成要素に対して、様々な位置に配置されてもよい。例えば、流量制御アクチュエータ1165は、ツールの導入中に流量制御アクチュエータ1165へのアクセスを容易にするために、任意のインターベンションツールが患者に導入される止血弁の近くに配置されてもよい。当該位置は、例えば、経大腿アプローチ又は経頚部アプローチのいずれが使用されるかに基づいて変更されてもよい。コントローラ1130は、システム100の遠隔制御を可能にするために、システム100の残りの部分に対する無線接続及び/又は調節可能な長さの有線接続を有してもよい。コントローラ1130は、流量制御レギュレータ125との無線接続、及び/又は流量制御レギュレータ125の遠隔制御を可能にするための長さ調節可能な有線接続を有してもよい。また、コントローラ1130は、流量制御レギュレータ125に統合されてもよい。コントローラ1130が流量制御アセンブリ125の構成要素に機械的に接続される場合、機械的な作動能力を有するテザー(tether)が、コントローラ1130を構成要素のうちの1以上に接続されてもよい。一実施形態において、コントローラ1130は、蛍光透視が使用されているときに放射線場の外側にコントローラ1130を配置することを可能にするために、システム100から十分な距離を置いて配置されている。
【0115】
コントローラ1130及びその構成要素のいずれかは、システムの他の構成要素(ポンプ、センサ、シャントなど)と様々な態様で相互作用してもよい。例えば、コントローラ1130とシステムの構成要素との間の通信を可能にするために、様々な機械的接続のうちのいずれかが使用されてもよい。また、コントローラ1130は、システムの構成要素と電気的又は磁気的に通信してもよい。また、電気機械的な接続が使用されてもよい。コントローラ1130は、コントローラがシステムの構成要素を制御する機能を実施することを可能にする制御ソフトウェアを備えてもよい。コントローラ自体は、機械的、電気的、又は電気機械的な装置であってもよい。コントローラは、機械的、空気圧的、又は水力的に作動されてもよく、或いは、(例えば、流量制御状態のソレノイド作動の場合)電気機械的に作動されてもよい。コントローラ1130は、データ記憶機能だけでなく、コンピュータ、コンピュータプロセッサ、及びメモリを含んでもよい。
【0116】
(センサ)
前述のように、流量制御アセンブリ125は、システム100及び/又は患者の組織構造と通信する、1以上のセンサを含むか、或いは1以上のセンサと相互作用してもよい。センサの各々は、物理的刺激(例えば、熱、光、音、圧力、磁気、動きなどを含む)に応答し、測定若しくは表示のため又はコントローラ1130を操作するための結果信号を送信するように構成されてもよい。一実施形態において、流量センサ1135は、シャント120と相互作用して、血流の流速又は容積流量など、シャント120を通る流れの態様を検知する。流量センサ1135は、容積流量又は流速の値を直接表示するディスプレイに直接連結されてもよい。或いは、流量センサ1135は、容積流量又は流速を表示するためにコントローラ1130にデータを供給してもよい。
【0117】
流量センサ1135のタイプは、変更されてもよい。流量センサ1135は、パドルホイール、フラッパー弁、回転ボール、又はシャント120を通る流れに応答する任意の機械的構成要素などの機械的装置であってもよい。シャント120を通る流れに応答する機械的装置の動きは、流体の流れの視覚的表示として役に立つことができるとともに、流体の流量の視覚的表示としてスケールを較正することができる。機械的装置は、電気部品に連結されてもよい。例えば、パドルホイールは、流体の流れがパドルホイールを回転させるようにシャント120内に配置されてもよい。流体の流れの速度が大きくなると、パドルホイールの回転速度が大きくなる。パドルホイールは、シャント120を通る流体流量を示す回転速度を検出するために、ホール効果センサに磁気的に連結されてもよい。
【0118】
一実施形態において、流量センサ1135は、シャント120の壁を通じて血液に接触することなく血流を測定することが可能である超音波式又は電磁式の流量計である。超音波式又は電磁式の流量計は、シャント120の内側ルーメンに接触する必要がないように構成されてもよい。一実施形態において、流量センサ1135は、シャント120を通る流体の流れを測定する遷音速流量計などのドップラー流量計を少なくとも部分的に含む。超音波流量計及びトランスデューサを含む多種多様なセンサタイプのいずれかが使用されてもよいと理解されるべきである。更に、システムは、複数のセンサを備えてもよい。
【0119】
システム100は、シャント120内に配置される流量センサ1135、或いは、静脈還流装置115又は動脈アクセス装置110と相互作用するセンサを使用することに限定されない。例えば、組織データセンサ1140は、患者の神経組織構造などの患者の組織構造と通信するか、或いは相互作用してもよい。この態様において、組織データセンサ1140は、頸動脈からの逆行流の速度に直接的又は間接的に関連する測定可能な組織態様を検知してもよい。例えば、組織データセンサ1140は、脳内の血流状態(例えば、中大脳動脈内の流速)を測定し、所定の基準に基づいて逆行流速を調整するために、ディスプレイ及び/又はコントローラ1130にそのような状態を伝達してもよい。一実施形態において、組織データセンサ1140は、反射された音波を用いて脳内を流れる血液を評価する超音波検査である経頭蓋ドップラー超音波検査(TCD)を含む。TCDの使用は、所望のTCDプロファイルを達成又は維持するために、逆行流量を制御するためのコントローラ1130に伝達されるTCD信号をもたらす。組織データセンサ1140は、逆流速度、中大脳動脈を通る血流、塞栓粒子のTCD信号、又は他の神経モニタリング信号を含む、任意の生理学的測定に基づいてもよい。
【0120】
一実施形態において、システム100は、閉ループ制御システムを構成する。閉ループ制御システムにおいて、1以上のセンサ(流量センサ1135又は組織データセンサ1140など)は、システム100又は組織の所定の態様(例えば、逆流量及び/又は神経モニタリング信号など)を検知又は監視する。センサは、関連データをコントローラ1130に供給し、コントローラ1130は、所望の逆流量を維持するために必要に応じてシステムの態様を連続的に調整する。センサは、システム100がどのように動作しているかについてのフィードバックをコントローラ1130に伝達し、コントローラ1130は、そのデータを翻訳して、流量制御レギュレータ125の構成要素を作動させて逆行流量の外乱を動的に補う。例えば、コントローラ1130は、患者からの血圧が異なるにもかかわらず流量が一定の状態に維持されるように、コントローラ1130に流量制御アセンブリ125の構成要素へ信号を送らせて流量を調整させるソフトウェアを含んでもよい。この実施形態において、システム100は、いつ、どのくらいの時間、及び/又はどのような値で、逆流量を高状態又は低状態のいずれかに設定するかを決定するために、ユーザに頼る必要がない。むしろ、コントローラ1130内のソフトウェアが、そのような要因を支配してもよい。閉ループシステムにおいて、コントローラ1130は、センサ1135によって検知された逆行流量に基づいて逆行流のレベル又は状態(アナログレベルか、或いは高、低、ベースライン、中間などの個別の状態のいずれか)を確立するために、流量制御アセンブリ125の構成要素を制御してもよい。
【0121】
一実施形態において、(患者の生理学的測定値を測定する)組織データセンサ1140は、コントローラ1130に信号を伝達し、コントローラ1130は、当該信号に基づいて流量を調節する。例えば、生理学的測定値は、MCAを通る流速、TCD信号、又は他の脳血管信号に基づいてもよい。TCD信号の場合、TCDは、脳の流量の変化を監視し、微小塞栓を検出するために使用されてもよい。コントローラ1130は、TCD信号を所望のプロファイル内に維持するように流量を調整してもよい。例えば、TCD信号は、微小塞栓の存在(「TCDヒット」)を示す場合があり、コントローラ1130は、TCDヒットをヒットの閾値より下に維持するように逆行流量を調節してもよい。
【0122】
MCAの流れの場合、コントローラ1130は、脳への灌流によって評価されるように、患者によって許容される「最大」流量に逆行流量を設定してもよい。従って、コントローラ1130は、ユーザの仲裁に頼ることなく、患者に対する保護レベルを最適化するように逆流量を制御してもよい。別の実施形態において、フィードバックは、システム100内の装置又は使用されているインターベンションツールの状態に基づいている。例えば、システム100が高リスク状態にあるとき(例えば、インターベンションカテーテルがシース605内に配置されているとき)、センサは、コントローラ1130に通知してもよい。その後、コントローラ1130は、そのような状態を補うために流量を調整する。
【0123】
コントローラ1130は、様々な様式で逆行流を選択的に増大させるために使用されてもよい。例えば、逆流量が大きくなると、結果として脳への血流がより大きく降下することが観測されている。ここで、最も重要なことは、同側のMCAが、ウィリス動脈輪からの側副流で十分に補償されない可能性があることである。従って、逆流量が高い状態が長時間続くと、患者の脳に十分な血流が供給されなくなり、神経症状によって示される患者の不耐症につながる可能性がある。研究によると、10cm/sec未満のMCA血流速度は、患者が神経学的な血液不足に陥るリスクがある閾値であることが示されている。脳への適切な灌流を監視するための指標として、EEG(脳波)信号などの他の指標がある。しかしながら、高流量は、約15秒から1分までの短時間のMCAの流れの完全停止まででさえ、許容される場合がある。
【0124】
このように、コントローラ1130は、処置中の塞栓発生のリスクが高い期間に対応する限られた期間中にのみ、逆流を自動的に増加させることによって、塞栓破片の捕捉を最適化することができる。これらのリスクが高い期間は、インターベンション装置(血栓除去装置15など)が血栓性閉塞部10を横切る期間を含む。リスクが低い期間の間、コントローラは、逆流量をより低いベースラインレベルに戻すようにしてもよい。この低いレベルは、ICA内の低い逆流量、又は、ECAに対するICAの高い灌流圧比を伴う患者内のわずかな順行流に対応してもよい。
【0125】
流れの状態をユーザが手動で設定する流量調節システムにおいては、ユーザが逆行流の状態(高又は低)に注意を払わず、誤って回路を高流量に維持するリスクがある。このことは、患者の有害な反応につながる可能性がある。一実施形態において、安全機構として、初期の流量は、低流量である。これは、高流量に耐えられない患者のためのフェールセーフ手段として役立つ。この点に関して、コントローラ1130は、高流量で所定期間の経過後に、システムを低流量に戻すように、初期の流量へ付勢してもよい。低流量への付勢は、電子機器又はソフトウェアによって達成されてもよいし、機械的構成要素又はその組合せを用いて達成されてもよい。一実施形態において、コントローラ1130の流量制御アクチュエータ1165及び/又は流量制御レギュレータ125の弁1115及び/又はポンプ1110は、低流量を達成する状態に向けてバネ荷重がかけられる。コントローラ1130は、必要に応じて、システムを低流量の状態に手動で戻せるように、ユーザがコントローラ1130に対して優先するように構成される。
【0126】
別の安全機構において、コントローラ1130は、流量が高流量であった時間に関して、時間を記録するタイマ1170(
図15)を備える。コントローラ1130は、高流量で所定の時間期間経過後(例えば、15、30、又は60秒以上)、システム100を低流量に自動的に戻らせるようにプログラムされてもよい。コントローラが低流量に戻した後、ユーザは、必要に応じて、高流量の別の所定期間を開始してもよい。更に、ユーザは、システム100が所望の低流量(又は高流量)に移行するように、コントローラ1130に対して優先してもよい。
【0127】
例示的な処置において、最初に逆行流のレベルを低流量に設定し、その後、処置の重要な段階の間に個別の期間だけ高流量に切り替えることによって、患者の許容問題を引き起こさないようにしながら、塞栓破片の捕捉を最適化する。或いは、最初に流量を高流量に設定し、その後、残りの処置を進める前に、そのレベルに対する患者の耐性を確認する。患者が耐えられない兆候を示した場合、逆行流の流量が下げられる。患者の耐性は、組織データセンサ1140からのフィードバックに基づいて、コントローラによって自動的に決定されてもよいし、患者の観察に基づいてユーザによって決定されてもよい。逆行流量の調整は、コントローラによって自動的に行われてもよいし、ユーザによって手動で行われてもよい。また、ユーザは、例えばTCDを用いて中大脳動脈(MCA)を通る流速を監視し、MCA流速を閾値以上に維持する逆流の最大レベルに設定するようにしてもよい。この際、流速の状態を変更することなく、全処置が行われてもよい。処置の途中でMCA流速が変化したり、患者に神経症状が現れたりした場合、適宜調整が行われてもよい。
【0128】
(逆流を調節する例示的な機構)
システム100は、様々な様式で逆行流を調節するように構成されている。ポンプ1110、弁1115、シリンジ1120、及び/又は可変抵抗要素1125の任意の組み合わせは、逆行流量を調整するために、ユーザによって手動で制御されてもよいし、コントローラ1130によって自動的に制御されてもよい。これにより、システム100は、能動的な流れ構成要素(例えば、ポンプ、シリンジなど)の制御、流量制限の低減、吸引源(予め設定されたバクロックシリンジ、バキュテナー、吸引システムなど)への切り替え、又はその任意の組み合わせなどの様々な様式で逆行流を調整することが可能である。
【0129】
外部容器又はリザーバが使用される状況では、逆行流は様々な方法で増大されてもよい。リザーバは、リザーバ内の血液の高さと、患者に対するリザーバの高さとからなるヘッド高さを有する。リザーバ内への逆流は、リザーバの高さを設定して、CCAからリザーバへの圧力勾配の量を増加又は減少させることによって調節されてもよい。一実施形態において、リザーバは、リザーバ圧力を静脈圧より大きい圧力まで増加させるために上昇される。或いは、リザーバは、リザーバ圧力を静脈圧又は大気圧より低い圧力に低下させるために、床のレベルまで下げるなど、患者の下方に配置されてもよい。
【0130】
シャント120内の可変流れ抵抗は、多種多様な方法で提供されてもよい。この点に関して、流れ抵抗要素1125は、流れ条件を変化させ、それによって流量を変化させるために、シャントの大きさ又は形状を変化させてもよい。或いは、流れ抵抗要素1125は、流れ条件を変化させるために、シャント内の1以上の代替流路を介して血流を別経路に変えてもよい。ここで、流れ抵抗要素1125のいくつかの例示的な実施形態について説明する。
【0131】
非限定的な実施形態において、シャント120を通る流れ抵抗は、2以上の代替的な流路を提供することによって変更してもよい。
図16A及び
図16Bに示されるように、シャント120を通る流れは、主ルーメン1700だけでなく、副ルーメン1705も通過する。副ルーメン1705は、主ルーメン1700よりも長く、及び/又は、より小さな直径を有している。それにより、副ルーメン1705は、主ルーメン1700よりも高い流れ抵抗を有する。これらの両方のルーメンに血液を通すことによって、流れ抵抗は、最小になる。血液は、副ルーメン1705の入口と出口とに跨って主ルーメン1700に生じる圧力損失により、両方のルーメン1700,1705を流れることができる。このことは、血液の停滞を抑える利点を有する。
図20Bに示されるように、シャント120の主ルーメン1700を通る流れを遮断することによって、流れを副ルーメン1705に完全に迂回させることができ、それにより、流れ抵抗を増加させて血液流量を減少させることができる。また、3つ、4つ、又はそれ以上の個別の流れ抵抗を可能にするために、付加的なフロールーメンが並列に提供されてもよいと理解されるべきである。シャント120は、主ルーメン1700及び副ルーメン1705への流れを制御する弁1710を備え、弁1710は、コントローラ1130によって制御されるか、又はユーザによって手動で制御されてもよい。
図16A及び
図16Bの実施形態は、この実施形態が、可変流れ抵抗機構の他の実施形態のように、所望の逆行流量を達成するためにルーメンの大きさを小さくする必要がない点で有利である。このことは、血流ラインにおいて、小さいルーメンサイズよりも大きいルーメンサイズの方が、詰まって血栓を引き起こす可能性が低いという点で有利である。
【0132】
(閉塞)
処置の終わりでシース605を引き抜く前に、自己閉塞部材を含む任意のタイプの閉塞部材が、総頸動脈の壁における貫通部の周囲に配置されてもよい。閉塞部材は、処置の開始時又はその近くで配置されてもよいが、任意で、閉塞部材は、シースが引き抜かれるときに配置され、シースの遠位端部から、貫通部が生じる動脈(総頸動脈など)の壁上に解放されてもよい。自己閉塞部材の使用は、シースが引き抜かれているときに総頸動脈における貫通部の迅速な閉塞に実質的に影響を与えるので有利である。このような迅速な閉塞によって、処置の終了時又はシースが偶発的に外れている間、意図しない血液損失を低減又は排除することができる。更に、このような自己閉塞部材は、アクセス中の動脈壁解離のリスクを低減することができる。更に、自己閉塞部材は、処置中にシースに対して摩擦力又は他の保持力を及ぼすように構成されてもよい。このような保持力は、有利であり、処置中にシースが誤って外れる可能性を低減することができる。自己閉塞部材は、シースの除去後に縫合糸で動脈を血管外科的に閉塞する必要性を排除し、広い術野の必要性を低減し、処置に必要な外科的技能を大幅に低減する。
【0133】
本開示のシステム及び方法は、アンカー部と自己閉塞部などの閉塞部とを含む機械的部材など、多種多様な閉塞部材を使用してもよい。アンカー部は、フック、ピン、ステープル、クリップ、歯、縫合糸などを含んでよく、これらは、貫通部が完全に開いているときに自己閉塞部材を固定するために貫通部の周囲で総頸動脈の外面に係合される。また、自己閉塞部材は、シースの除去時に、動脈壁の組織を一緒に引き寄せて閉塞を提供するために、アンカー部を閉じることになるバネ状又は他の自己閉塞部を含んでもよい。通常、この閉塞は、貫通部を閉塞又は封止するために更なる手段を講じる必要がないほど十分なものである。しかしながら、任意で、シースが引き抜かれた後に自己閉塞部材の補助的な封止を提供することが望ましい場合がある。例えば、自己閉塞部材及び/又は当該部材の領域内の組織管は、生体吸収性ポリマー、コラーゲンプラグ、接着剤、シーラント、凝固因子、又は他の凝固促進剤などの止血材で処理されてもよい。また、組織又は自己閉塞部材は、電気焼灼、縫合、クリッピング、ステープル留めなどの他の封止プロトコルを用いて封止されてもよい。別の方法において、自己閉塞部材は、クリップ、接着剤、バンド、又は他の手段で血管の外壁に取り付けられる自己封止膜又はガスケット材料であってもよい。自己封止膜は、血圧に対して通常閉じられるスリットやクロスカットなどの内側開口部を有してもよい。これらの自己閉塞部材は、開放外科手術で配置されるように、或いは、経皮的に展開されるように設計されてもよい。以下に説明する閉塞例は、動脈開口部を充填して止血を達成するように、動脈に配置されると広がる又は拡張する拡張可能なコラーゲンプラグを送達するために変更されてもよい。
【0134】
一実施形態において、閉塞部材は、動脈切開穿刺の拡張を行うことができ、それにより、別の装置又は処置用シース拡張器による動脈切開穿刺の事前の拡張を必要としない、縫合糸ベースの血管閉塞装置である。縫合糸ベースの血管閉塞装置は、シースの除去後に縫合糸端部が結ばれたときに縫合糸がアクセス部位に止血を提供するように、血管アクセス部位にわたって1以上の縫合糸が配置されてもよい。縫合糸は、動脈切開部を通じて処置用シースを挿入する前、又は動脈切開部からシースを除去した後に適用されてもよい。この装置は、縫合糸の配置後、処置用シースの配置前及び配置中に、動脈切開部の一時的な止血を維持することができるとともに、処置用シースの引き抜き後、縫合糸を結ぶ前に、一時的な止血を維持することができる。いくつかの例示的な縫合糸ベースの血管閉塞装置は、米国特許第7,001,400号及び米国特許第7,004,952号に記載されており、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0135】
図19A~
図19Dを参照して説明した一実施形態において、止血を達成するように構成された装置を展開するように構成された細長い胴体である止血送達装置1902を使用して頸動脈などの動脈における穿刺部位を止血するシステム及び方法が示されている。ユーザは、イントロデューサシース1905(別個のシースであり得るか、又は動脈アクセス装置110であり得る)を首などの動脈のアクセス位置に配置する。イントロデューサシースは、動脈に経皮的に展開されてもよい。アクセス位置は、皮膚1910及び頸動脈CAの外壁を通じて延在してもよい。シース1905の遠位端部は、頸動脈CAのルーメン1915に配置される。その後、
図19Bに示されるように、ユーザは、止血送達装置の遠位端部又は遠位領域などに連結された止血部材を有するイントロデューサシース1905を通じて、止血送達装置1902を挿入する。止血部材は、例えば、膨張可能な止血部材1920であってもよい。止血送達装置1902は、止血部材1920がシース1905の遠位先端部の外側で且つルーメン1915内に配置されるように、シース1905を通じて展開される。
【0136】
ここで
図19C及び
図19Dを参照すると、止血部材1920が展開される。止血部材1920は、外側に展開された後、止血装置1902が近位に引かれて、止血部材1920を動脈の壁と係合させてもよい。その後、イントロデューサシース1905は、拡張可能な止血部材1920を頸動脈CA内への入口を形成する位置1925に着座させたまま除去され、止血が達成されてもよい。膨張可能な止血部材1920を所定の位置に保持するための張力を維持するために、クリップ1920などの外部張力部材が、皮膚表面に配置されてもよい。参照により組み込まれる米国特許第7,993,366号には、例示的な閉塞システムが記載されている。
【0137】
(インターベンション装置)
多種多様なインターベンション装置が、動脈アクセス装置110を介した挿入のような本開示のシステムと組み合わせて使用されてもよい。例えば、インターベンション装置は、細長い胴体で形成された吸引カテーテルであって、任意の近位端部と遠位端部とを有し、近位端部又はその近傍に少なくとも1つの開口部が形成され、遠位端部又はその近傍に少なくとも1つの開口部が形成され、それらを通るルーメンを有するカテーテルを構成してもよい。非限定的な例において、吸引カテーテルは、0.071インチ、0.058インチ、0.045インチ、又はその程度の範囲の内径を有する。別の非限定的な例において、吸引カテーテルは、58センチメートル又は約58センチメートルの長さを有する。吸引カテーテルは、約67cm又は約63cmの全長及び/又は約62cm又は58cmの作業長を有してもよい。吸引カテーテルは、約0.069インチ又は約0.082インチの外径を有してもよい。一実施形態において、インターベンション装置は、カテーテルの内側ルーメンに関して0.088インチのカテーテルである。動脈アクセス装置110の遠位シース605は、0.088インチの内径、又は0.058インチの内径を有してもよい。或いは、非限定的な例において、前記内径は、0.07xインチの範囲であってもよい。
【0138】
本明細書は多くの具体的な内容を含むが、これらは、請求される発明の範囲又は請求され得る発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではなく、むしろ特定の実施形態に特有の特徴の記述として解釈されるべきである。別々の実施形態の文脈で本明細書に記載されている特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実施されてもよい。逆に、単一の実施形態の文脈で説明される様々な特徴は、複数の実施形態において別々に又は任意の適切な部分的組合せで実施されてもよい。更に、特徴は、特定の組み合わせで作用するものとして上記で説明され、当初はそのように主張されることがあるが、請求された組み合わせからの1以上の特徴は、場合によっては組み合わせから削除され、請求された組み合わせは、部分的組合せ又は部分的組合せの変形に向けられてもよい。同様に、動作は、特定の順序で図面に描かれているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような動作が、示された特定の順序で、又は連続的な順序で、或いは図示された全ての動作を行うことを要求していると理解されるべきではない。
【0139】
様々な方法及び装置の実施形態は、特定のバージョンを参照して本明細書に詳細に記載されているが、他のバージョン、実施形態、使用方法、及びそれらの組み合わせも可能であることが理解されるべきである。従って、添付の請求項の精神及び範囲は、本明細書に含まれる実施形態の記載に限定されるべきではない。
【国際調査報告】