(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】アルギン酸オリゴサッカリン二酸を含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/734 20060101AFI20221221BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221221BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20221221BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20221221BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221221BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221221BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20221221BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20221221BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221221BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221221BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221221BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221221BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221221BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20221221BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20221221BHJP
【FI】
A61K31/734
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/04
A61P3/10
A61P29/00
A61K9/16
A61K9/48
A61K9/20
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/44
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525528
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(85)【翻訳文提出日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 CN2020123750
(87)【国際公開番号】W WO2021083089
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】201911057518.8
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521539731
【氏名又は名称】グリーン、バレー、(シャンハイ)、ファーマスーティカルズ、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GREEN VALLEY (SHANGHAI) PHARMACEUTICALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】チン、インシェン
(72)【発明者】
【氏名】シン、シャンリャン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ、チョンピン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チェンチン
(72)【発明者】
【氏名】ゲン、メイユ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA37
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC21
4C076DD28C
4C076DD29C
4C076DD41C
4C076EE16G
4C076EE31A
4C076EE32A
4C076EE32G
4C076EE38A
4C076EE38G
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4C076GG12
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA25
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4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA08
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZB11
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は、アルツハイマー病、パーキンソン病、炎症、疼痛、糖尿病、または血管性認知症を治療するための薬剤を製造するために使用することができる、式(IV)のアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩を含んでなる医薬組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
40~90重量%の式(IV):
【化1】
〔式中、nは、1~9から選択される整数であり、mは、0、1、または2から選択され、m’は、0または1から選択される〕
に示す構造のアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩、および8~50重量%のフィラーを含んでなる医薬組成物であって、該フィラーがデンプンおよび/またはセルロースから選択される、医薬組成物。
【請求項2】
前記フィラーが、乾燥デンプン、コーンスターチ、アルファ化デンプン、微晶質セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびクロスカルメロースナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の粒径が、100%が60メッシュの篩を通過し、70%超が100メッシュの篩を通過し、好ましくは80%超が100メッシュの篩を通過し、より好ましくは90%超が100メッシュの篩を通過するように制御される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
0~10重量%の結合剤、好ましくは1~10重量%、より好ましくは2~8重量%の結合剤、および0.1~3重量%の滑沢剤をさらに含み、ここで、前記結合剤は、デンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンの少なくとも1つであり;前記滑沢剤は、タルカムパウダー、ステアリン酸マグネシウム、シリカゲルマイクロパウダー、および硬化植物油から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
n=1~5であるアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の総重量が、前記アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の総重量の60%超であり;グルロン酸二酸(guluronic acid diacid)の総重量が、アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の総重量の0~50%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
アルギン酸オリゴサッカリン二酸におけるn=1~3のマンヌロン酸および/またはグルロン酸の総重量が、アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の総重量の20~70%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記グルロン酸の総重量が、前記アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の総重量の5~50%、好ましくは10~40%、より好ましくは15~35%である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
各重合度のアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の重量が、アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の総重量に対して、二糖類は5~30%、三糖類は15~35%、四糖類は15~35%、五糖類、六糖類、七糖類、八糖類、九糖類、および十糖類の合計含有率は20~45%である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
各重合度のアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の重量が、アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の総重量に対して、二糖類は5~30%、三糖類は15~35%、四糖類は15~35%、五糖類は10~25%、六糖類は5~15%、七糖類は3~10%、八糖類は2~5%、九糖類は1~5%、および十糖類は1~5%というパーセントである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
各重合度のアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の重量が、アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の総重量に対して、二糖類は10~29%、三糖類は18~32%、四糖類は15~30%、五糖類は15~20%、六糖類は5~10%、七糖類は3~5%、八糖類は2~3%、九糖類は1~3%、および十糖類は1~3%である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ギ酸またはその塩の含有率が、0.2%未満、好ましくは0.1%未満、より好ましくは0.05%未満である、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記薬学上許容可能な塩が、ナトリウム塩またはカリウム塩である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
アルツハイマー病、パーキンソン病、炎症、疼痛、糖尿病、および血管性認知症からなる群から選択される疾患の治療のための薬剤または栄養補助食品の製造における、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項14】
アルツハイマー病、パーキンソン病、炎症、疼痛、糖尿病、または血管性認知症からなる群から選択される疾患を有する患者を治療する方法であって、それを必要とする対象に単位投与形の請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含んでなる、方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物を含んでなる、医薬製剤。
【請求項16】
前記製剤が経口投与される、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記製剤が錠剤、顆粒剤、またはカプセル剤である、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項18】
請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物を製造するための方法であって、以下の工程:
(1)40~90重量%のアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩と、8~50重量%のフィラーを均一に混合すること;
(2)前記均一に混合した材料を造粒して前記医薬組成物を得ること;または工程(1)で得た前記均一に混合した材料を直接的に打錠して前記医薬組成物を得ること;
ここで、場合により、工程(1)または工程(2)において、工程(1)で得た混合物に対して0~10重量%の量の結合剤を加えること、
を含んでなる、方法。
【請求項19】
工程(2)における造粒が、乾式造粒、湿式造粒、または沸騰造粒である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程(2)における造粒が完了した後、0.1~3重量%の滑沢剤がさらに添加される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程(2)の後に、工程(3):工程(2)における打錠によって得られる素錠をコーティングして医薬組成物を得る工程、が続く、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
以下の工程:
(1)40~90重量%のアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩と、8~50重量%のフィラーを均一に混合すること;
(2)前記混合した材料に結合剤を加えて軟質材料を作成し、4±0.5mmメッシュの篩で造粒し、60~70℃で乾燥させ、1.2±0.2mmメッシュの篩で顆粒剤を仕上げ、滑沢剤を加え、均一に混合し、カプセルに充填する、または薄膜コーティング錠に打錠すること、
を含んでなる、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩を原料として用いて調製される医薬組成物、およびその調製方法に関し、医薬の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
アルギン酸オリゴ糖は、その潜在的な医学的価値のために広く注目を集めている。アルギン酸オリゴ糖は通常、アルギン酸を原料として用いる多段階方法により調製される。
【0003】
アルギン酸オリゴ糖分子には、β-1,4-グルコシド結合により連結されたD-マンヌロン酸から形成されるMセグメント、α-1,4-グルコシド結合により連結されたL-グルロン酸から形成されるGセグメント、およびこの2つの糖(sacchorides)のハイブリダイゼーションにより形成されるMGセグメントが存在する。D-マンヌロン酸およびL-グルロン酸の構造式を以下の式(I)および式(II)に示す。アルギンオリゴ糖は、下記式(III)として示す構造式を有する。
【0004】
【0005】
アルギン酸オリゴ糖の構造式は、以下の式(III)により示される。
【化2】
【0006】
先行特許出願CN201711467596.6は、式(V)のマンヌロン酸またはその薬学上許容可能な塩:
【化3】
〔式中、nは、1~9から選択される整数である、mは、0、1、または2から選択され、m’は、0または1から選択され、
ここで、
n=1~5であるマンヌロン酸の総重量は、前記複合物の総重量の80~95%であり、n=4~7であるマンヌロン二酸の総重量に対するn=1~3であるマンヌロン二酸の総重量の日は、1.0~3.5である〕
を含んでなるマンヌロン酸オリゴ糖の組み合わせを開示している。
【0007】
前記マンヌロン二酸オリゴ糖の組み合わせは、細胞傷害を阻害すること、神経細胞を保護すること、および細胞生存率を向上させることができる。前記マンヌロン二酸オリゴ糖の組み合わせは、アルツハイマー病を予防および治療する潜在的な効果を有する。
【0008】
先行文献に開示されている、抗アルツハイマー病(AD)および抗糖尿病効果を有するオリゴマンナル酸を得るためには、原料アルギン酸中のグルロン酸を除去する必要がある。アルギン酸中のグルロン酸の含有率は通常30%を超え、最大約70%である。よって、高純度のオリゴマンナル酸を得るためには、実際の生産コストは極めて高い。したがって、使用に好適なアルギン酸オリゴサッカリン二酸の医薬組成物の開発は、産業の喫緊の要求にかなう。
【発明の概要】
【0009】
本発明の1つの側面は、40~90重量%の式(IV)〔式中、nは、1~9から選択される整数であり、mは、0、1、または2から選択され、m’は、0または1から選択され、〕に示す構造のアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩、および8~50重量%のフィラーを含んでなる医薬組成物であって;フィラーは、デンプンおよび/またはセルロースから選択され;
ここで、n=1~5であるアルギン酸オリゴサッカリン二酸の総重量は、前記複合物の総重量の60%超であり、グルロン酸二酸(guluronic acid diacid)は、前記組成物の重量の50%未満である、医薬組成物を提供する。
【0010】
本発明のアルギン酸オリゴサッカリン酸組成物は、マンヌロン酸とグルロン酸の種々の重合度の混合物であり、その主成分は、2~10の重合度のオリゴ糖、β-1,4-グルコシド結合により連結されたマンヌロン酸から形成されるMセグメント、α-1,4-グルコシド結合により連結されたグルロン酸から形成されるGセグメント、およびこの2つの糖のハイブリダイゼーションにより形成されるMGセグメントである。マンヌロン二酸はアルツハイマー病(AD)および糖尿病に対して特定の薬理活性を有することが知られている。最も活性の高い糖類は、五糖類~十糖類、特に、六糖類である。しかしながら、本発明者らは、マンヌロン酸とグルロン酸の、2~10の重合度のオリゴサッカリン二酸混合物もまたアルツハイマー病(AD)および糖尿病に対して薬理活性を有することを見出しているが、その前提はグルロン酸含有率が特定の範囲内で制御されるということである。言い換えれば、本発明のアルギン酸オリゴサッカリン二酸組成物は、大幅に低減された生産コストで調製することができ、これは実際の生産の実現より容易にし、工業的大量生産の実現を容易にする。
【0011】
さらに、アルギン酸オリゴサッカリン二酸は、非常に吸湿性であり、高温、強アルカリ、酸化などの条件下で大部分が分解され得る。一方、マンヌロン酸およびグルロン酸は、処理過程の間に分解され得ることから、人体に有害なギ酸不純物が生成され、よって高い安全性および有効性を有する経口製剤を得るためには原料の品質管理が必要である。本出願の発明者らは、より安定で、迅速に溶解し得るアルギン酸オリゴサッカリン二酸の新たな医薬組成物を研究し、開発した。
【0012】
本発明で使用されるアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の純度は、90%超、好ましくは95%超、より好ましくは98%超である。不純物の起源は複雑であり、本発明者らは、アルギン酸オリゴサッカリン二酸の調製過程において、以下の物質:アルギン酸オリゴサッカリン二酸:ギ酸、グリコール酸、シュウ酸、マロン酸、ヒドロキシマロン酸、酒石酸などの1つ以上が生成され得ることを見いだした。理論に縛られるものではなく、また本発明の不純物の種類を限定するものではないが、これらの不純物の起源は、酸化工程、または容易に検出することができない最初の藻類供給原料中の不純物、もしくは最初の藻類供給原料の処理であり得る。本発明者らは、これらの不純物のうち、ギ酸は、分子量が小さいために除去がより困難であり、また製剤の安定性に対して重要な影響を及ぼすことを見いだした。したがって、アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩のギ酸含有率を制御することが、本発明の重要な側面の1つである。理論に縛られるものではないが、製剤中の有効成分の粒径をある特定の範囲内に制御することで、よりギ酸不純物が少ないより安定な製剤がもたらされる。
【0013】
本発明の別の側面は、アルツハイマー病、パーキンソン病、炎症、疼痛、糖尿病、および血管性認知症からなる群から選択される疾患の治療ための薬剤の製造における、医薬組成物の使用に関する。
【0014】
本発明のさらに別の側面は、アルツハイマー病、パーキンソン病、炎症、疼痛、糖尿病、または血管性認知症からなる群から選択される疾患を有する患者を治療する方法であって、それを必要とする患者に単位投与形の本発明による医薬組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0015】
本発明のさらに別の側面は、本発明による医薬組成物を含んでなる医薬製剤に関する。
【0016】
本発明の別の側面は、本発明の医薬組成物を製造するための方法であって、以下の工程:
(1)40~90重量%のアルギン酸オリゴ糖二酸またはその薬学上許容可能な塩と、8~50重量%のフィラーを均一に混合すること;
(2)前記均一に混合した材料を造粒し、パッケージ袋に定量的に充填する、もしくはカプセルに充填する、もしくは打錠して医薬組成物を得ること;または工程(1)で得た前記均一に混合した材料を直接的に打錠して上記の医薬組成物を得ること
を含んでなる方法に関する。
【0017】
前記アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその塩の製剤は、優れた調製安定性を有し、in vivo環境中で急速に溶解し得、またアルギン酸オリゴサッカリン二酸の有効成分が人体によって急速に吸収され得ることを確実にし得る。さらに、本発明者らは、また、高充填アルギン酸オリゴサッカリン二酸の製造工程から生じる問題も、前記調製の組成物設計(製剤の均一性、均一な粒度分布などを含む)によって解決した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図2は、アルギン酸オリゴサッカリン二酸API中の二糖類、三糖類、四糖類の質量スペクトルを示す。
【
図3】
図3は、アルギン酸オリゴサッカリン二酸API中の五糖類、六糖類、および七糖類の質量スペクトルを示す。
【
図4】
図4は、アルギン酸オリゴサッカリン二酸API中の八糖類、九糖類、および十糖類の質量スペクトルを示す。
【
図5】
図5は、アルギン酸オリゴサッカリン二酸APIのNMRスペクトルを示す。
【発明の具体的説明】
【0019】
本発明の種々の側面を以下に詳細に説明するが、本発明はこれらの特定の実施形態に限定されない。以下の開示の趣旨の範囲内である本発明の改変および調節は、当業者によって行われ得、それらは本発明の範囲内である。
【0020】
本発明は、40~90重量%の式(IV)に示す構造のアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩(前記アルギン酸オリゴサッカリン二酸の構造は、式(IV):
【化4】
〔式中、nは、1~9から選択される整数であり、mは、0、1、または2から選択され、m’は、0または1から選択される〕
に示される)、および8~50重量%のフィラーを含んでなる医薬組成物であって;フィラーが、デンプンおよびセルロースから選択される少なくとも1つである、医薬組成物を提供する。
【0021】
好ましくは、フィラーは、乾燥デンプン、コーンスターチ、アルファ化デンプン、微晶質セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびクロスカルメロースナトリウムからなる群の少なくとも1つから選択される。
【0022】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、0~10重量%の結合剤、および0.1~3重量%の滑沢剤をさらに含み;ここで、結合剤は、デンプンスラリー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンの少なくとも1つであり;滑沢剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、シリカゲルマイクロパウダー、および硬化植物油から選択される少なくとも1つである。
【0023】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、60~75重量%のアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩、25~35重量%のフィラー、および1~3重量%の滑沢剤を含む。
【0024】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、80~90重量%のアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩、8~16重量%のフィラー、および1~3重量%の滑沢剤を含む。
【0025】
好ましくは、本発明の医薬組成物において使用されるアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩(API)の粒径は、100重量%が60メッシュの篩を通過し、かつ70重量%超が100メッシュの篩を通過するように制御される。好ましくは、80重量%超が100メッシュの篩を通過し、より好ましくは、90重量%超が100メッシュの篩を通過する。前記有効成分は、易溶解性および吸湿性であるという特徴を有するため、医薬有効成分がより優れた役割を果たすために、本発明者は、100メッシュ粉末を下回る粒径のAPIの割合を制御することが、カプセル剤の溶解速度の改善に、および60メッシュより大きい粗大な原料を適切に低減することが、造粒後の中間体粒子の形状の改善に役立つであろうことを見いだした。
【0026】
好ましくは、本発明の医薬組成物において、n=1~5のアルギン酸オリゴサッカリン二酸の総重量は、アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の総重量の60%超であり;グルロン酸二酸(guluronic acid diacid)の総重量は、アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の総重量の0~50%である。
【0027】
好ましくは、本発明の医薬組成物において、n=1~3のマンヌロン酸および/またはグルロン酸の総重量は、アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の総重量の20~70%である。
【0028】
好ましくは、本発明の医薬組成物において、グルロン酸二酸(guluronic acid diacid)の総重量は、アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の総重量の5~50%、好ましくは10~40%、より好ましくは15~35%である。
【0029】
好ましくは、本発明の医薬組成物において、各重合度のアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の重量は、アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の総重量に対して、二糖類(n=1)は5~30%、三糖類(n=2)は15~35%、四糖類(n=3)は15~35%、五糖類(n=4)、六糖類(n=5)、七糖類(n=6)、八糖類(n=7)、九糖類(n=8)、および十糖類(n=9)の合計含有率は20~45%という重量パーセントである。
【0030】
好ましくは、本発明の医薬組成物において、各重合度のアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の重量は、アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の総重量に対して、二糖類は5~30%、三糖類は15~35%、四糖類は15~35%、五糖類は10~25%、六糖類は5~15%、七糖類は3~10%、八糖類は2~5%、九糖類は1~5%、および十糖類は1~5%という重量パーセントである。
【0031】
好ましくは、本発明の医薬組成物において、各重合度のアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の重量は、アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩の総重量に対して、二糖類は10~29%、三糖類は18~32%、四糖類は15~30%、五糖類は15~20%、六糖類は5~10%、七糖類は3~5%、八糖類は2~3%、九糖類は1~3%、および十糖類は1~3%という重量パーセントである。
【0032】
好ましい実施形態において、前記請求項いずれか一項に記載の医薬組成物は、ギ酸またはその塩の含有率が、0.2%未満、好ましくは0.1%未満、より好ましくは0.05%未満であることを特徴とする。
【0033】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、薬学上許容可能な塩として、アルギン酸オリゴサッカリン二酸ナトリウム塩またはカリウム塩を含む。
【0034】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、薬学上許容可能な塩として、約100mg~500mg、好ましくは150mg~450mgの量のアルギン酸オリゴサッカリン二酸ナトリウム塩を含む。
【0035】
本発明の別の側面は、アルツハイマー病、パーキンソン病、炎症、疼痛、糖尿病、および血管性認知症からなる群から選択される状態を治療するための薬剤を製造するための医薬組成物の使用に関する。
【0036】
中国特許出願CN201810721327.6は、マンヌロン酸とグルロン酸のオリゴサッカリン二酸混合物(本発明に記載されているアルギン酸オリゴサッカリン二酸API)が、アルツハイマー病、パーキンソン病、炎症、疼痛、糖尿病、または血管性認知症に対する薬理活性を有することが判明したことを開示している。したがって、アルギン酸由来オリゴサッカリン二酸またはその塩を含有する医薬組成物は、アルツハイマー病、パーキンソン病、炎症、疼痛、糖尿病、または血管性認知症に対する薬理活性も有する。
【0037】
本明細書で言及される疼痛には、それらに限定されないが、急性疼痛、慢性疼痛、神経因性疼痛、術後痛、慢性腰痛、群発性頭痛、ヘルペス神経痛、幻肢痛、中枢痛、歯痛、オピオイド耐性疼痛、内臓痛、術後痛、骨損傷痛、分娩中の疲労および疼痛、日焼けを含む火傷により引き起こされる疼痛、分娩後痛、片頭痛、アンギナ、および尿生殖路関連疼痛(膀胱炎を含む)、血管痛、三叉神経痛、肋間神経痛、外科的切開痛、慢性筋膜炎痛、踵痛、筋肉痛、骨痛、関節痛、癌性疼痛、非癌性疼痛などを含む、様々な疼痛が含まれる。
【0038】
本明細書で言及される炎症には、急性炎症、慢性炎症、血管炎症、神経炎症、中枢神経系炎症(例えば脳脊髄炎を含む多発性硬化症など)、末梢神経炎症、関節炎(例えば変形性関節症、仙腸骨炎など、乾癬性関節炎、関節リウマチ、関節リウマチなど)、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患(例えばクローン病および潰瘍性大腸炎)、炎症性糖尿病性潰瘍、全身性紅斑性狼瘡、炎症性皮膚疾患(例えば乾癬、アトピー性皮膚炎、湿疹)などを含む様々な炎症が含まれる。
【0039】
本発明の別の側面は、アルツハイマー病、パーキンソン病、炎症、疼痛、糖尿病、または血管性認知症からなる群から選択される疾患を有する患者を治療する方法であって、それを必要とする患者に単位投与形の本発明による医薬組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0040】
好ましくは、単位用量は、100mg~500mg、好ましくは150mg~450mgのアルギン酸オリゴサッカリン二酸ナトリウム塩を含有する。単位用量は、対象に1日1回以上投与され得る。
【0041】
本発明の別の側面は、本発明による医薬組成物を含んでなる医薬製剤に関する。
【0042】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、経口投与に好適である。本発明による医薬組成物の使用、および好ましい経口投与形は、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤、コーティング錠、および他の固形経口投与形である。
【0043】
本発明の別の側面は、本発明の医薬組成物を製造するための方法であって、以下の工程:
(1)40~90重量%のアルギン酸由来オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩と、8~50重量%のフィラーを均一に混合すること;
(2)前記均一に混合した材料を造粒し、パッケージ袋に定量的に充填する、もしくはカプセルに充填する、もしくは打錠して医薬組成物を得ること;または工程(1)で得た前記均一に混合した材料を直接的に打錠して前記医薬組成物を得ること
を含んでなる方法に関する。
【0044】
好ましくは、調製の間に、0~10重量%、好ましくは1~10重量%、より好ましくは2~8重量%の結合剤も加えてもよい。結合剤は、工程(1)においてフィラーとアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩が混合される時に加えてもよく;また工程(2)における造粒の間に加えてもよい。結合剤は、デンプンスラリー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンからなる群から選択される少なくとも1つである。あるいは、結合剤は、低級アルカノール、例えばメタノール、エタノール、またはイソプロパノールなどの水溶液であり得る。
【0045】
好ましくは、本発明の製造方法において、工程(2)における造粒は、乾式造粒、湿式造粒、または沸騰造粒である。
【0046】
好ましくは、本発明の製造方法において、工程(2)における造粒が完了した後、0.1~3重量%の滑沢剤をさらに加えてもよい。
【0047】
好ましくは、本発明の製造方法において、工程(2)の後に、工程(3):工程(2)における打錠によって得られる素錠をコーティングして医薬組成物を得る工程、が続く。
【0048】
好ましくは、本発明の製造方法は、以下の工程を含む:
(1)40~90重量%のアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩と、8~50重量%のフィラーを均一に混合すること;
(2)前記均一に混合した材料に結合剤を加えて軟質材料を作成し、目開きが4±0.5mmの篩で造粒し、60~70℃で乾燥させ、目開きが1.2±0.2mmのメッシュで造粒し、滑沢剤を加え、均一に混合し、カプセル剤にするか、または薄膜コーティング錠に打錠すること。
【0049】
本発明の医薬組成物は、特定のフィラー、結合剤、または滑沢剤を選択し、また特定の比率でアルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩と組み合わされ、前記組成物は、良好な安定性および高崩壊溶解速度を有する。例えば、溶解速度は、30分で90%超に達し得る。
【0050】
本発明の利点を、以下の限定されない例においてさらに示す。しかしながら、実施例で使用される特定の材料およびその量、ならびに他の実験条件は、本発明を限定するものと解釈してはならない。特に断りのない限り、本発明における部、割合、パーセンテージ、および同様のものは総て、質量で算出する。
【実施例】
【0051】
以下の特定の実施例において採用される測定方法は、以下の通りである。
【0052】
溶解速度検出方法:カルバゾール硫酸法
溶解速度および放出の決定方法(0931 2015年版「中国薬局方」の4番目の一般的規則における1番目の方法)に従い、900mLの酢酸・酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)を溶解媒体として使用し、回転速度は50回/分であり、前記方法に従ってこの方法を実施した。30分後、適切な量の溶液を採取した。カルバゾール硫酸法に従い、グルクロン酸ナトリウムを標準物質として使用して標準曲線を作成し、溶解液および標準溶液の含有率を計算し、溶解速度を得た。
【0053】
ギ酸含有率の決定方法:
2015年版の中国薬局方「一般原則」における0521 ガスクロマトグラフィー参照。
【0054】
重量平均分子量および分子量分布の決定方法:
サイズ排除クロマトグラフィー-光散乱システム
クロマトグラフィー条件:Waters SECクロマトグラフィーカラム(Waters ACQUITY UPLC、BEH125 SEC 1.7μm 4.6×300mmカラム付き、カラム温度25℃;移動相は、メタノール:80mmol/L酢酸アンモニウム(1:4(V/V))であった;流束は、0.1mL/分であった;検出器:18角度レーザー検出器(LS)および示差屈折率検出器(RI、35℃)。
【0055】
検出するサンプルは、移動相に溶解し、試験溶液として10mg/mLアルギン酸オリゴ糖(alginate oligosacchride)の溶液を調製した;試験溶液20μlを液体クロマトグラムにインジェクトし、解析して、多角度レーザー散乱-示差屈折率クロマトグラムスペクトルを得た;このデータをスペクトル処理ソフトウェア(ASTRA)によって処理し、サンプルの重量平均分子量および分子量分布を得た。
【0056】
実施例1:アルギン酸オリゴサッカリン二酸またはその薬学上許容可能な塩(API)の調製
工程1):アルギン酸オリゴ糖混合物の調製
5Kgのアルギン酸ナトリウム(sodium alginicate)を約10%の溶液に調製し、希塩酸を加えることにより、pHを約3.0に調整した。この溶液を80℃に加熱し、撹拌した。これを10時間反応させた後、加熱を停止した。室温に冷却した後、NaOHを加えることによりpHを9.0に調整し、希塩酸を加えることにより、さらに3.2に調整した。この溶液を5000rpmで10分間遠心分離した。上清を回収し、HClを加えることによりpHを1.0に調整した。遠心分離後、沈殿を回収し、ロータリーエバポレーターで濃縮し、真空乾燥して、1500gの中間体を得た。
【0057】
中間体のNMRスペクトルについては
図1を参照。NMR解析は以下のとおりに行った:サンプル調製:30mgの供試サンプルを秤量し、0.5mlのD2Oに溶解させ、凍結乾燥させ;溶解のために0.5mlの重水素化重水をさらに加え;再び凍結乾燥を行い;最後に、凍結乾燥させたサンプル粉末を適当量の重水で溶解させ、NMRチューブに移し、100mg/mlの供試溶液として調製し;0.01%(w/v)の重水素化TSP(トリメチルシリルプロピオン酸)ナトリウム塩を内部標準として加えた。核磁気データの取得および処理:400Mフーリエ変換核磁気共鳴装置により60℃で一次元水素スペクトルを収集した。パルスシーケンスは45°パルスで、各取得は4秒であり、緩和時間は1秒であり、蓄積は20回であり、スペクトル幅は2ppm~10ppmであった。データ収集の後、フーリエ変換を用いて一次元水素スペクトルを得、TSPメチル水素シグナルを0.00ppmに設定した。
【0058】
中間体がマンヌロン酸セグメント(M-ブロック、化学シフト5.1ppm)およびグルロン酸セグメント(G-ブロック、化学シフト5.5ppm)、ならびにマンヌロン酸とグルロン酸のキメラセグメント(MG-ブロック、化学シフト5.3ppm)を含んでいたことが
図1から見て取れる。500gを秤量し、蒸留水に溶かして、5Lの容量の溶液を調製した。溶液をNaOHでpH6.5に調整し、水浴中で加熱して、反応温度を75℃に制御した。オゾンを質量濃度流速8g/時で反応溶液に導入するように、酸素ボンベの出口のガス流速およびオゾン発生器の出力を調整した。4時間の反応の後、オゾンの導入を停止し、好適な量の水を加えて、溶液の濃度を約10%に調整した。2,000Daの分子量カットオフを有する限外濾過膜で溶液を濾過し、保持液を回収した。回収した液体を、ロータリーエバポレーターで濃縮し、真空下で乾燥させ、350gのアルギン酸オリゴサッカリン二酸のAPIを得た。
【0059】
工程2):アルギン酸オリゴサッカリン二酸APIにおける種々の重合度を有するオリゴ糖の割合および構造の分析
上記乾燥アルギン酸オリゴサッカリン二酸生成物API100mgを正確に秤量し、濃度10mg/mLまで水に溶かし、0.22μm濾過膜に通して試験サンプル溶液を得た。組成物における異なる重合度を有するオリゴ糖の割合を、多角度光散乱(MALS,Wyatt Co.)と組み合わせたSuperdexペプチド分子排除クロマトグラフィー(GE Co.)により測定した。実験条件は、以下のとおりであった。
クロマトグラフィーカラム:Superdexペプチド10/300Gl
移動相:0.1mol/L NaCl
注入量:10μL
流速:0.3mL/分
試験結果:二糖類~十糖類は、それぞれdp2~dp10で表し、dp2は18%、dp3は24%、dp4は23%、dp5は14%、dp6は8%、dp7は7%、dp8は2%、dp9は2%およびdp10は2%であった。
【0060】
工程3):アルギン酸オリゴサッカリン二酸APIにおける種々の重合度を有するオリゴ糖の構造のLC-MS分析
実験条件:
クロマトグラフィーカラム:Superdexペプチド10/300Gl
移動相:20%メタノール+80% 80mmol/L NH4Ac
流速:0.1mL/分
カラム温度:25℃±0.8℃
質量分析条件:Agilent 6540 QTOF;イオン源:ESI衝突電圧120V;陰イオンモード。取得したシグナルの幅(m/z)は、100~1000であった。
【0061】
種々の重合度を有するオリゴ糖の質量スペクトルを
図2~4に示す。質量スペクトルにおける種々のシグナルピークを割り当て、原料における全オリゴ糖の分子構造、すなわち一般式(III)に示される構造を確認した。シグナルの割り当ておよびシグナルに対応する構造は、以下の表1を参照。
【0062】
【0063】
上記の質量分析構造解析から、原料における糖鎖の還元末端のマンヌロン酸または グルロン酸は、サッカリン酸構造(構造は一般式IVを参照)に酸化され、この構造は、含有率が約10~30%である6個の炭素原子を含んでなるマンナル酸(mannaric acid)またはグルロン酸構造(m+m’=3)であり得るか、または、マンナル酸またはグルロン酸の脱炭酸生成物、すなわち、5個の炭素原子を含んでなるサッカリン二酸(saccharic dacid)(m+m’=2)(30~50%)および4個の炭素原子を含んでなるサッカリン二酸(m+m’=1)(30~40%)であり得ることが分かった。
【0064】
工程4)アルギン酸オリゴサッカリン二酸原料のグルロン酸含有率のNMR分析
サンプル調製:50mgの供試サンプルを秤量し、0.5mlのD2Oに溶解させ、凍結乾燥させ;溶解のために0.5mlの重水素化重水をさらに加え;再び凍結乾燥を行い;最後に、凍結乾燥させたサンプル粉末を適当量の重水で溶解させ、それらを総てNMRチューブに移し、100mg/mlの供試溶液として調製し;0.01%(w/v)の重水素化TSP(トリメチルシリルプロピオン酸)ナトリウム塩を内部標準として加えた。
【0065】
核磁気データの取得および処理:400Mフーリエ変換核磁気共鳴装置により室温で一次元水素スペクトルを収集した。パルスシーケンスは45°パルスで、各取得は4秒であり、緩和時間は1秒であり、蓄積は20回であり、スペクトル幅は2ppm~10ppmであった。データ収集の後、フーリエ変換を用いて一次元水素スペクトルを得、TSPメチル水素シグナルを0.00ppmに設定した。AIのプロトン核磁気共鳴スペクトルを
図5に示す。
図5において、化学シフト4.6ppmの多重線はマンヌロン酸(M)C-1位の水素シグナルであり、5.0ppmはグルロン酸(G)のC-1位の水素シグナルであり、4.9ppmはマンヌロン酸およびグルロン酸(MG)のキメラセグメントのC-1水素シグナルである。グルロン酸含有率を計算するための式は以下のとおりである。
【0066】
【0067】
上式において、I4.6、I5.0およびI4.9はそれぞれ、マンヌロン酸(M)、グルロン酸(G)、ならびにマンヌロン酸とグルロン酸キメラのキメラセグメント(MG)のC-1位の水素シグナル積分値である。計算により、APIのグルロン酸含有率は30%である。
【0068】
実施例2:アルギン酸オリゴサッカリン二酸APIの吸湿性
実施例1で調製したアルギン酸オリゴサッカリン二酸API(純度99.2%)は、高湿度(RH75%、25℃)中に5日間置いた後、均一に分散した淡黄色微粉末状態から、黄褐色ペーストに変わり、表面は滑らかで光沢があった。秤量したところ、30重量%超の増加があったことがわかった。
【0069】
実施例3:製剤例
実施例1に従って調製した150gのアルギン酸オリゴサッカリン二酸API(粒径検出:100%が60メッシュの篩を通過し、80%が100メッシュの篩を通過した)と、55gのコーンスターチ(市販品(中国薬局方の基準に適合)、粒径:全てが100メッシュの篩を通過)を均一に混合し、85%のエタノールを結合剤として使用して軟質材料を調製し、目開きが4±0.5mmの篩を使用して造粒し、60~70℃で乾燥させ、目開きが1.2±0.2mmの篩を使用して顆粒剤を仕上げ、2gのステアリン酸マグネシウムおよび2gのタルカムパウダーを加え、この混合物を均一に混合してカプセルに充填し、約1000の顆粒剤を得た。
【0070】
上記の検出方法によれば、主要な有効成分の溶解速度は、30分で91.6%であり、ギ酸含有率は、0.037%であり、重量平均分子量は、925.1Daであり、分子量分布は、1.051であった。
【0071】
実施例4:
実施例1に従って調製した150gのアルギン酸オリゴサッカリン二酸API(粒径検出:100%が60メッシュの篩を通過し、80%が100メッシュの篩を通過した)と、65gのコーンスターチを均一に混合し、85%のエタノールを結合剤として使用して軟質材料を調製し、目開きが4±0.5mmの篩を使用して造粒し、60~70℃で乾燥させ、目開きが1.2±0.2mmの篩を使用して顆粒剤を仕上げ、3gのステアリン酸マグネシウムおよび3gのタルカムパウダーを加え、この混合物を均一に混合してカプセルに充填し、約1000の顆粒剤を得た。上記の検出方法によれば、主要な有効成分の溶解速度は、30分で93.8%であり、ギ酸含有率は、0.041%であり、重量平均分子量は、907.9Daであり、分子量分布は、1.048であった。
【0072】
実施例5:
実施例1に従って調製した450gのアルギン酸オリゴサッカリン二酸API(粒径検出:100%が60メッシュの篩を通過し、85%が100メッシュの篩を通過した)と、65gのコーンスターチを均一に混合し、85%のエタノールを結合剤として使用して軟質材料を調製し、目開きが4±0.5mmの篩を使用して造粒し、60~70℃で乾燥させ、目開きが1.2±0.2mmの篩を使用して顆粒剤を仕上げ、2.5gのステアリン酸マグネシウムおよび5gのタルカムパウダーを加え、この混合物を均一に混合してカプセルに充填し、約1000の顆粒剤を得た。検出により、主要な有効成分の溶解速度は、30分で94.6%であり、ギ酸含有率は、0.039%であり、重量平均分子量は、915.2Daであり、分子量分布は、1.044であることが示された。
【0073】
実施例6:
実施例1に従って調製した450gのアルギン酸オリゴサッカリン二酸API(粒径検出:100%が60メッシュの篩を通過し、90%が100メッシュの篩を通過した)と、45gのカルボキシメチルセルロースナトリウムを均一に混合し、85%のエタノールを結合剤として使用して軟質材料を調製し、目開きが4±0.5mmの篩を使用して造粒し、60~70℃で乾燥させ、目開きが1.2±0.2mmの篩を使用して顆粒剤を仕上げ、2.5gのステアリン酸マグネシウムおよび5gのタルカムパウダーを加え、この混合物を均一に混合して薄膜コーティング錠に打錠し、約1000の顆粒剤を得た。検出により、主要な有効成分の溶解速度は、30分で93.8%であり、ギ酸含有率は、0.037%であり、重量平均分子量は、918.9Daであり、分子量分布は、1.046であることが示された。
【0074】
実施例7:
実施例1に従って調製した450gのアルギン酸オリゴサッカリン二酸API(粒径検出:100%が60メッシュの篩を通過し、90%が100メッシュの篩を通過した)と、85gのコーンスターチを均一に混合し、煮沸し、5%のコーンスターチスラリーと共に造粒し、目開きが1.2±0.2mmの篩を使用して顆粒剤を仕上げ、次いで2.5gのステアリン酸マグネシウムおよび5gのタルカムパウダーを加え、均一に混合し、薄膜コーティング錠に打錠し、約1000の顆粒剤を得た。検出により、主要な有効成分の溶解速度は、30分で95.1%であり、ギ酸含有率は、0.032%であり、重量平均分子量は、919.3Daであり、分子量分布は、1.049であることが示された。
【0075】
実施例8:
実施例1に従って調製した150gのアルギン酸オリゴサッカリン二酸API(粒径検出:100%が60メッシュの篩を通過し、90%が100メッシュの篩を通過した)と、75gの微晶質セルロースを均一に混合し、85%のエタノールを結合剤として使用して軟質材料を調製し、目開きが4±0.5mmの篩を使用して造粒し、60~70℃で乾燥させ、目開きが1.2±0.2mmの篩を使用して顆粒剤を仕上げ、3gのステアリン酸マグネシウムおよび3gのタルカムパウダーを加え、この混合物をカプセルに充填し、約1000の顆粒剤を得た。検出により、主要な有効成分の溶解速度は、30分で93.8%であり、ギ酸含有率は、0.041%であり、重量平均分子量は、907.9Daであり、分子量分布は、1.048であることが示された。
【0076】
比較例:
450gのアルギン酸オリゴサッカリン二酸API(粒径検出(practicle size detection):100%のアルギン酸オリゴサッカリン二酸原料が、60メッシュの篩で篩過され、30%のアルギン酸オリゴサッカリン二酸原料が、100メッシュの篩で篩過された)と、20gのコーンスターチを均一に混合し、85%のエタノールを結合剤として使用して軟質材料を調製し、目開きが4±0.5mmの篩を使用して造粒し、80~90℃で乾燥させ、目開きが1.2±0.2mmの篩を使用して顆粒剤を仕上げ、10gのステアリン酸マグネシウムおよび5gのタルカムパウダーを加え、均一に混合し、薄膜コーティング錠に打錠し、約1000の顆粒剤を得た。検出により、主要な有効成分の溶解速度は、30分で62.5%であり、ギ酸含有率は、0.27%であり、重量平均分子量は、905.4Daであり、分子量分布は、1.046であることが示された。
【0077】
実施例8:加速安定性試験
実施例3~8および比較例において調製した組成物を、40℃±2℃/75%RH±5%RHの条件下で加速試験に供し、下記の表に示す:
【表2】
【0078】
臨床試験:
試験は36週間、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設臨床試験であり、818人の患者が群に無作為化され、450mgのアルギン酸オリゴサッカリン二酸組成物を、1日2回経口投与した。対象の年齢は50~85歳であり、MMSEスケールにおけるスコアが11~26であった。MRIによって、内側側頭葉萎縮視覚的評価スケール(MTA)はグレード2以下、白質希薄化Fazekasスケール(leukosis Fazekas scale)はグレード3未満、直径が2cmを超える梗塞は2個以下、致命的な脳領域における梗塞は存在しないことが示され、軽度から中等度アルツハイマー病の臨床診断基準に合致した。第1の有効性指数は、36週間の治療後における、プラセボ群と比較した、認知機能評価スケールADAS-cog12におけるベースラインからの変化の群間差であった;第2の有効性指数は、36週間の治療における、臨床医の質問に基づく所見変化スケールCIBIC-plus、および日常生活動作ADCS-ADLスケール、および行動・心理症状質問票NPIにおけるベースラインからの変化の群間差であった。安全性評価指標は、有害事象、実験室検査、バイタルサイン、心電図、理学的検査などを含む。
【0079】
臨床研究結果は、アルギン酸オリゴサッカリン二酸組成物は、AD患者の認知機能障害を明らかに改善し得ることを示す。プラセボ群と比較して、ADAS-cog12スケールの平均改善値は2.54であり、極めて顕著な統計的有意性(p=0.0001)を有している。有効性は、疾患重症度が高い(MMSEスケールスコアが11~14)サブグループにおいて特に著しく、プラセボ群と比較して、ADAS-cog12スケールの平均改善値が4.55であった。アルギン酸オリゴサッカリン二酸組成物は、第2の治療効果指数CIBIC-plusについて顕著な改善傾向(pが0.059)を有している;しかしながら、ADCS-ADL表およびNPI質問票については、統計的有意性は観察されなかった。プラセボ群と比較して、アルギン酸オリゴサッカリン二酸組成物群は、有害事象または重篤有害事象の発生において統計的有意差がなく、良好な安全性および高い耐容性を有している。
【国際調査報告】