(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】抗CD19抗体及びガンマデルタT細胞を含む抗腫瘍併用療法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20221221BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221221BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221221BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20221221BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221221BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221221BHJP
【FI】
C07K16/28
A61K39/395 T
A61P35/02
A61K35/17 Z
A61K35/17 A
A61P43/00 121
C12N15/13 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525535
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(85)【翻訳文提出日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2020080494
(87)【国際公開番号】W WO2021084063
(87)【国際公開日】2021-05-06
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316005432
【氏名又は名称】モルフォシス・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】エンデル,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ボクスハンマー,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】プレッチャー,ドミニク
【テーマコード(参考)】
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085EE03
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087DA18
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB27
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
(57)【要約】
本開示は、白血病またはリンパ腫の治療に使用するための、抗CD19抗体またはその抗体フラグメントとガンマデルタT細胞(γδT細胞)とを含む併用療法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液癌の治療に使用するための抗CD19抗体またはその抗体フラグメントであって、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントがγδT細胞と組み合わせて投与される、前記抗CD19抗体または抗体フラグメント。
【請求項2】
請求項1に記載の使用のための請求項1に記載の前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントであって、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントが、γδT細胞と組み合わせて投与され、前記γδT細胞が濃縮されたγδT細胞集団を含む、前記抗CD19抗体または抗体フラグメント。
【請求項3】
先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための先行請求項のいずれか1項に記載の抗CD19抗体またはその抗体フラグメントであって、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントが、γδT細胞と組み合わせて投与され、前記γδT細胞が、操作されていないか、または操作されたγδT細胞及び/またはそれらの混合物を含む、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメント。
【請求項4】
先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための先行請求項のいずれか1項に記載の抗CD19抗体またはその抗体フラグメントであって、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントが、γδT細胞と組み合わせて投与され、前記γδT細胞が、がんの治療における使用のために末梢血、腫瘍組織または非造血組織から単離される、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメント。
【請求項5】
先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための先行請求項のいずれか1項に記載の抗CD19抗体またはその抗体フラグメントであって、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントが、γδT細胞と組み合わせて投与され、前記γδT細胞が、末梢血から単離され、IL-2及びZOLの存在下において培養された、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメント。
【請求項6】
先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための先行請求項のいずれか1項に記載の抗CD19抗体またはその抗体フラグメントであって、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントが、γδT細胞と組み合わせて投与され、前記γδT細胞が、血液由来Vγ9Vδ2T細胞である、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメント。
【請求項7】
血液癌の治療における使用のための先行請求項のいずれか1項に記載の抗CD19抗体またはその抗体フラグメントであって、前記血液癌が慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、または急性リンパ芽球性白血病(ALL)であり、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントが、先行請求項のいずれか1項に記載のγδT細胞と組み合わせて投与される、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメント。
【請求項8】
先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための先行請求項のいずれか1項に記載の抗CD19抗体またはその抗体フラグメントであって、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントが、先行請求項のいずれか1項に記載のγδT細胞と組み合わせて投与され、前記抗CD19に特異的な抗体またはその抗体フラグメント及び前記γδT細胞が、別個の方法で投与される、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメント。
【請求項9】
先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための先行請求項のいずれか1項に記載の抗CD19抗体またはその抗体フラグメントであって、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントが、先行請求項のいずれか1項に記載のγδT細胞と組み合わせて投与され、前記抗CD19に特異的な抗体またはその抗体フラグメント及び前記γδT細胞が、同時の方法で投与される、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメント。
【請求項10】
先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための前記請求項のいずれか1項に記載の抗CD19抗体またはその抗体フラグメントであって、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントが、先行請求項のいずれか1項に記載のγδT細胞と組み合わせて投与され、前記抗CD19抗体または抗体フラグメントが、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、及び配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域を含む重鎖可変領域、ならびに配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む軽鎖可変領域、を含む前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメント。
【請求項11】
先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための請求項10に記載の抗CD19抗体またはその抗体フラグメントであって、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントが、先行請求項のいずれか1項に記載のγδT細胞と組み合わせて投与され、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントが、以下の重鎖可変領域
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)
及び以下の軽鎖可変領域
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)、を含む、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメント。
【請求項12】
先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための請求項11に記載の抗CD19抗体であって、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントが、先行請求項のいずれか1項に記載のγδT細胞と組み合わせて投与され、前記抗CD19抗体が以下の重鎖
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)、を含む、前記抗CD19抗体。
【請求項13】
先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための請求項11に記載の抗CD19抗体またはその抗体フラグメントであって、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントが、先行請求項のいずれか1項に記載のγδT細胞と組み合わせて投与され、前記抗CD19抗体が以下の軽鎖
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)を含む、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメント。
【請求項14】
先行請求項のいずれか1項に記載の治療のためのキットであって、先行請求項のいずれか1項に記載の抗CD19抗体またはその抗体フラグメントと、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントを先行請求項のいずれか1項に記載のγδT細胞と組み合わせて投与するための説明書と、を備える、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、白血病またはリンパ腫の治療に使用するための、抗CD19抗体またはその抗体フラグメントとガンマデルタT細胞(γδT細胞)とを含む併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
CD19は、2つの細胞外免疫グロブリン様ドメイン及び広範な細胞質尾部を含む免疫グロブリンスーパーファミリーの95kDa膜貫通糖タンパク質である。このタンパク質は汎Bリンパ球表面受容体であり、プレB細胞の発達以降の初期段階から形質細胞への最終分化中にダウンレギュレーションされるまで遍在的に発現される。これはBリンパ球系統に特異的であり、一部の濾胞樹状細胞を除いて、造血幹細胞及び他の免疫細胞では発現されない。CD19は、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達の正の調節因子として機能し、B細胞の活性化及び増殖、ならびに体液性免疫応答の発生に重要である。これは、CD21及びCD81と連携して共刺激分子として機能し、T細胞依存性抗原に対するB細胞の応答に重要である。CD19の細胞質尾部は、タンパク質チロシンキナーゼのsrcファミリーを介して下流のシグナル伝達経路を誘発するチロシンキナーゼのファミリーと物理的に関連している。CD19は、ほぼ全ての慢性リンパ性白血病(CLL)及び非ホジキンリンパ腫(NHL)、ならびに急性リンパ性白血病(ALL)及び有毛細胞白血病(HCL)を含む多くの他の異なる種類の白血病で高度に発現されるので、リンパ起源のがんの魅力的な標的である。
【0003】
タファシタマブ(旧名:MOR00208及びXmAb(登録商標)5574)は、B細胞受容体シグナル伝達に関与する膜貫通タンパク質である抗原CD19を標的とするヒト化モノクローナル抗体である。タファシタマブは、IgG Fc領域で操作され、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を増強し、これにより、腫瘍細胞を殺すための重要な機構が改善され、従来の抗体、すなわち非増強抗体と比較して有効性が向上する可能性がもたらされる。タファシタマブは、CLL、ALL、及びNHLなどのいくつかの臨床試験で研究されているか、現在研究されている。これらの試験のいくつかでは、タファシタマブはイデラリシブ、レナリドマイド、またはベネトクラクスと組み合わせて使用される。
【0004】
近年いくつかの抗がん剤が発見及び開発されているにもかかわらず、CD19発現腫瘍を含む多くの種類のがんの予後不良のせいで、このような種類のがんを治療するための改善された方法または治療薬が依然として必要である。したがって、本発明者らは、γδT細胞及びCD19に特異的な抗体または抗体のフラグメントの併用投与が、B細胞由来の悪性リンパ腫の治療に対して優れた効果を有することを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメント及びγδT細胞を含む、がんの治療に使用するための新規の組み合わせを提供する。
【0006】
1980年代に発見されて以来、それと同時にγδT細胞は感染症及びがんなどの悪性腫瘍に重要な役割を果たしていることが認められている。活性化されたγδT細胞は、標的細胞に存在する主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子とは無関係に、強力な細胞毒性及び広範な腫瘍認識能力を備えている。さらに、γδT細胞は、抗体依存性細胞介在性傷害(ADCC)の強力な媒介因子であることが示された。今日の時点で、γδT細胞の抗腫瘍効果は、抗CD20抗体によって実質的に増強できることが示された(Tokuyama et al.2008;Hoeres et al.2018)。さらに、Fc増強抗CD20抗体オビヌツズマブは、γδT細胞と組み合わせると、リツキシマブのような非Fc増強抗体と比較して腫瘍細胞死滅の増加を示す。
【0007】
しかし、γδT細胞の存在下でのCD20以外の表面抗原に特異的な抗体の腫瘍細胞殺傷活性はまだ評価されていない。したがって、本開示の目的は、抗体及びγδT細胞を含む代替の併用療法を提供することである。
【0008】
上記の目的を達成するために、本開示は、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメント及びγδT細胞を含む、がんの治療に使用するための組み合わせを提供する。
【0009】
本開示において、本発明者らは、γδT細胞をCD19標的化抗体タファシタマブ(Fc増強)及びXmab5603(非Fc増強)と組み合わせ、患者由来のCLL、MCL及びB-ALL試料、ならびにさまざまなリンパ腫及び白血病細胞株におけるそれらの抗腫瘍活性をADCCアッセイにおいて評価した。全体として、γδT細胞をFc増強抗CD19抗体タファシタマブと組み合わせた場合、Fc増強されていないXmab5603または陰性対照IgG1抗体と比較して、細胞溶解速度の増加が観察された。
【0010】
要約すると、γδT細胞は、この研究でFc増強CD19標的抗体タファシタマブについて実証されたとおり抗体ベースの腫瘍治療において潜在的なエフェクター細胞集団であることが示されている。タファシタマブは、いくつかのリンパ腫及び白血病細胞株、ならびに初代患者由来のCLL、MCL及びBALL細胞に対してγδT細胞によって媒介される強力な抗腫瘍活性を示し、リンパ腫及び白血病治療のための有望なアプローチを保持し得る。
【0011】
γδT細胞は、任意の適切な自己または同種異系のγδT細胞またはその集団に由来し得る。いくつかの実施形態では、現在記載されているγδT細胞の供給源として使用するのに適したγδT細胞としては、Vδ1細胞、Vδ2細胞、Vδ3細胞、Vδ5細胞、及びVδ8細胞が挙げられる。例えば、本明細書で提供されるのは、皮膚または腸などの非造血組織からVδ1細胞を分離及び増殖するための方法である。例えば、Vδ1細胞は、US2018/0312808に記載されているように、ヒト皮膚生検から単離してもよく、これは、参照によりその全体が、特に組織からVδ1細胞を単離する方法のために本明細書に組み込まれる。
【0012】
他の実施形態では、適切なγδT細胞は、血液(例えば、末梢血)に由来し得る。血液からVδ1細胞を単離及び増殖させる方法としては、例えば、米国特許第9,499,788号及び国際特許公開番号WO2016/198480に記載されている方法が挙げられ、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。また、Vγ9Vδ2T細胞は末梢血から分離し、エキソビボでさらに培養してもよい。Vγ9Vδ2T細胞の培養は、IL-2及びゾレドロン酸(ZOL)の存在下で最適化され得る。血液からVγ9Vδ2T細胞を単離及び増殖させる方法としては、例えば、Hoeres et al.2018に記載されている方法が挙げられる。
【0013】
いくつかの実施形態において、適切なγδT細胞は、腫瘍組織に由来し得る(例えば、腫瘍浸潤γδT細胞)。あるいは、異種標的構築物を発現するように操作され得る適切なγδT細胞は、以下に記載する方法に従って非造血組織から誘導し得る。これらの細胞は、最大21日以上までのガス透過性バイオリアクターバッグ中の1つ以上の因子(例えば、TCRアゴニスト、補助受容体アゴニスト、及び/またはサイトカイン、例えば、IL-4、IL-1 5、及び/またはIFN-g)の存在下で培養し得る。この方法の変形、及びVδ1 T細胞を取得する他の方法は、本発明の一部として適切である。例えば、血液由来のVδ1T細胞は、代替的に、例えば、国際特許公開WO2017/197347及びWO2016/081518(米国特許出願公開第2016/0175338号)(参照によりその全体が組み込まれる)に記載される方法を用いて得てもよい。
【0014】
本開示は、がんの治療に使用するための、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメント及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含む医薬の組み合わせを提供する。
【0015】
一態様では、本開示は、がんの治療に使用するためのCD19に特異的な抗体または抗体フラグメント及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含む医薬の組み合わせを提供し、この抗体は、がんの治療における使用のための配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、及び配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域を含む重鎖可変領域、ならびに配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含む配列LCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む軽鎖可変領域を含む。
【0016】
一態様では、本開示は、がんの治療に使用するためのCD19に特異的な抗体または抗体フラグメント及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含む医薬の組み合わせを提供し、この抗体は、がんの治療における使用のためのSYVMH(配列番号1)のHCDR1領域、NPYNDG(配列番号2)のHCDR2領域、及びGTYYYGTRVFDY(配列番号3)のHCDR3領域を含む重鎖可変領域、ならびにRSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)のLCDR1領域、RMSNLNS(配列番号5)のLCDR2領域、及びMQHLEYPIT(配列番号6)のLCDR3領域を含む軽鎖可変領域を含む。
【0017】
別の態様において、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメントは、以下の重鎖可変領域EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)
及び以下の軽鎖可変領域
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)を含む。
【0018】
別の態様において、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメントは、エフェクター機能を有する。別の態様において、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメントは、増強されたエフェクター機能を有する。一実施形態では、エフェクター機能はADCCである。一実施形態では、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメントは、増強されたADCC活性を有する。さらなる実施形態において、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメントは、位置S239及び/またはI332にアミノ酸置換を含むFcドメインを含み、番号付けは、Kabatの場合のようにEUインデックスに従う。
【0019】
さらに別の態様において、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメントは、以下の重鎖定常領域
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号9)を含む。
【0020】
さらなる態様において、CD19に特異的な抗体は、以下の軽鎖定常領域
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号10)を含む。
【0021】
さらに別の態様において、CD19に特異的な抗体は、以下の重鎖定常領域
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号9)及び以下の軽鎖定常領域
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号10)を含む。
【0022】
さらに別の態様において、CD19に特異的な抗体は、以下の重鎖定常領域
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11) 及び以下の軽鎖定常領域
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)を含む。
【0023】
一態様では、本開示は、がんの治療に使用するためのCD19に特異的な抗体及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含む医薬の組み合わせを提供し、ここで、このγδT細胞は、濃縮されたγδT細胞集団を含む。一実施形態では、濃縮されたγδT細胞集団は、操作されていないか、または操作されたγδT細胞及び/またはそれらの混合物を含む。さらなる実施形態において、本開示は、CD19に特異的な抗体及びがんの治療に使用するための濃縮されたγδT細胞集団を含む医薬の組み合わせを提供する。
【0024】
別の態様では、本開示は、がんの治療に使用するためのCD19に特異的な抗体及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含む医薬の組み合わせを提供し、ここで、このγδT細胞は操作されていないか、または操作されたγδT細胞及び/またはその混合物を含む。別の実施形態では、γδT細胞は、操作されていないγδT細胞の集団である。別の実施形態では、γδT細胞は、操作されたγδT細胞の集団である。
【0025】
一態様では、本開示は、がんの治療に使用するためのCD19に特異的な抗体及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含む医薬の組み合わせを提供し、ここで、γδT細胞は、末梢血、腫瘍組織または非造血組織から単離される。一実施形態では、γδT細胞は、末梢血から単離される。別の実施形態において、γδT細胞は、末梢血から単離されたγδT細胞の集団である。別の実施形態において、γδT細胞は、末梢血から単離されたVγ9Vδ2T細胞の集団である。さらなる実施形態において、γδT細胞は、末梢血から単離されたVγ9Vδ2 T細胞の集団であり、このVγ9Vδ2 T細胞は、IL-1及びゾレドロン酸(ZOL)の存在下でエクスビボで培養された。
【0026】
一態様では、本開示は、血液癌である、がんの治療に使用するための、CD19に特異的な抗体及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含む医薬の組み合わせを提供する。一実施形態では、血液癌は、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、または急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。別の実施形態では、血液癌は非ホジキンリンパ腫(NHL)である。さらなる実施形態において、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群より選択される。
【0027】
一態様では、本開示は、がんの治療に使用するためのCD19に特異的な抗体及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含む医薬の組み合わせを提供し、ここで、CD19に特異的な抗体及びγδT細胞は、別々の方式で投与される。
【0028】
一態様では、本開示は、がんの治療に使用するためのCD19に特異的な抗体及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含む医薬の組み合わせを提供し、ここで、CD19に特異的な抗体及びγδT細胞は、同時方式で投与される。
【0029】
一態様では、本開示は、CD19に特異的な抗体及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含む、がんの治療に使用するためのキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】エフェクター対標的細胞(E:T)の比率を漸増させた場合のMOR00208の代表的なADCCアッセイ。MOR00208(黒)またはIgG1陰性対照(白)と健康なドナー由来のγδT細胞によって媒介される死んだ標的細胞の%として表される特定の細胞殺傷の結果が、2つの標的細胞株Mino及びJekoについて示されている。0.7:1~20:1の間の4つの異なるE:T比を試験した。
【
図2】エフェクター対標的細胞(E:T)の比率を漸増させた場合のMOR00208の代表的なADCCアッセイ。MOR00208(黒)またはIgG1対照(白)と健康なドナー由来のγδT細胞によって媒介される死んだ標的細胞の%として表される特定の細胞殺傷の結果が、3つの標的細胞株U2932、REH、及びDaudiについて示されている。0.7:1~20:1の間の4つの異なるE:T比を試験した。
【
図3】標的細胞として2人のCLL患者と1人のB-ALL患者由来の原発性腫瘍細胞を用いたエフェクター対標的細胞(E:T)の比率を漸増させた場合のMOR00208の代表的なADCCアッセイ。MOR00208(黒)またはIgG1対照(白)と健康なドナー由来のγδT細胞によって媒介される死んだ標的細胞の%として表される特定の細胞殺傷の結果を、標的細胞として原発性腫瘍細胞を使用する3つの実験について示している。0.7:1~20:1の間の4つの異なるE:T比を試験した。
【
図4】標的細胞として2人のMCL患者由来の原発性腫瘍細胞を用いたエフェクター対標的細胞(E:T)の比率を漸増させた場合のMOR00208の代表的なADCCアッセイ。MOR00208(黒)またはIgG1対照(白)と健康なドナー由来のγδT細胞によって媒介される死んだ標的細胞の%として表される特定の細胞殺傷の結果を、標的細胞として原発性腫瘍細胞を使用する2つの実験について示している。0.7:1~20:1の間の4つの異なるE:T比を試験した。
【発明を実施するための形態】
【0031】
定義
「CD19」という用語は、以下の同義語、B4、Bリンパ球抗原CD19、Bリンパ球表面抗原B4、CVID3、分化抗原CD19、MGC12802及びT細胞表面抗原Leu-12を有するCD19として公知のタンパク質を示す。
【0032】
ヒトCD19のアミノ酸配列は次のとおりである:
MPPPRLLFFLLFLTPMEVRPEEPLVVKVEEGDNAVLQCLKGTSDGPTQQLTWSRESPLKPFLKLSLGLPGLGIHMRPLAIWLFIFNVSQQMGGFYLCQPGPPSEKAWQPGWTVNVEGSGELFRWNVSDLGGLGCGLKNRSSEGPSSPSGKLMSPKLYVWAKDRPEIWEGEPPCLPPRDSLNQSLSQDLTMAPGSTLWLSCGVPPDSVSRGPLSWTHVHPKGPKSLLSLELKDDRPARDMWVMETGLLLPRATAQDAGKYYCHRGNLTMSFHLEITARPVLWHWLLRTGGWKVSAVTLAYLIFCLCSLVGILHLQRALVLRRKRKRMTDPTRRFFKVTPPPGSGPQNQYGNVLSLPTPTSGLGRAQRWAAGLGGTAPSYGNPSSDVQADGALGSRSPPGVGPEEEEGEGYEEPDSEEDSEFYENDSNLGQDQLSQDGSGYENPEDEPLGPEDEDSFSNAESYENEDEELTQPVARTMDFLSPHGSAWDPSREATSLGSQSYEDMRGILYAAPQLRSIRGQPGPNHEEDADSYENMDNPDGPDPAWGGGGRMGTWSTR(配列番号13)。
【0033】
「MOR00208」及び「XmAb5574」及び「タファシタマブ」は、表1に従って抗CD19抗体の同義語として使用される。表1は、MOR00208/タファシタマブのアミノ酸配列を示している。MOR00208抗体は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願シリアル番号12/377,251に記載されている。米国特許出願のシリアル番号12/377,251は、4G7H1.52ハイブリッドS239D/I332E/4G7L1.155(後にMOR00208及びタファシタマブと命名)と命名された抗体について説明している。
【0034】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、抗原と相互作用するジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重鎖(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含むタンパク質を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書でVHと略記される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2、及びCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書でVLと略記される)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLから構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存されている領域と共に散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に、さらに細分され得る。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、これはアミノ末端からカルボキシ末端へと、次の順序で配列される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4。重鎖及び軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれている。「抗体」という用語は、例えば、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、及びキメラ抗体を含む。抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)またはサブクラスの抗体であってもよい。軽鎖と重鎖の両方とも、構造的及び機能的相同性の領域に分けられる。
【0035】
本明細書で使用される「抗体フラグメント」という句は、抗原と特異的に相互作用する(例えば、結合、立体障害、空間分布の安定化によって)能力を保持する抗体の1つ以上の部分を指す。結合フラグメントの例としては、限定するものではないが、Fabフラグメント、すなわち、VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価のフラグメント;F(ab)2フラグメント、すなわち、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結される2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメント;VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント;VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,(1989)Nature 341 :544-546);ならびに単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組み換え法を使用して、それらが単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって接合され得、このVL及びVH領域は対となって、一価の分子(一本鎖Fv(scFv)として公知)を形成する;例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883を参照のこと)。かかる一本鎖抗体もまた、「抗体フラグメント」という用語に包含されることが意図される。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来の技術を使用して得られ、そしてこのフラグメントは、インタクトな抗体と同じ様式で有用性についてスクリーニングされる。抗体フラグメントはまた、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トライアボディ、テトラボディ、v-NAR及びbis-scFvに組み込まれてもよい(例えば、Hollinger and Hudson,(2005)Nature Biotechnology 23:1126-1136を参照のこと)。抗体フラグメントは、フィブロネクチンタイプIII(Fn3)などのポリペプチドに基づく足場にグラフトされてもよい(フィブロネクチンポリペプチドモノボディを記載している米国特許第6,703,199号を参照のこと)。抗体フラグメントは、相補的な軽鎖ポリペプチドと一緒になって一対の抗原結合部位を形成する一対のタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む一本鎖分子に組み込まれてもよい(Zapata et al.,(1995) Protein Eng.8:1057-1062;及び米国特許第5,641,870号)。
【0036】
「投与される」または「投与」とは、限定するものではないが、注射可能な形態、例えば、静脈内、筋肉内、皮内または皮下経路などによる、または粘膜経路、例えば吸入用の鼻腔用スプレーもしくはエアロゾルとして、または摂取可能な溶液、カプセル、もしくは錠剤としての薬物の送達が挙げられる。好ましくは、投与は注射可能な形態によるものである。
【0037】
「エフェクター機能」という用語は、抗体アイソタイプにより変化する、抗体のFc領域に起因し得る生物活性を指す。抗体エフェクター機能の非限定的な例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害作用(CDC);Fc受容体結合及び抗体依存性細胞媒介性細胞傷害作用(ADCC)および/または抗体依存性細胞貪食作用(ADCP);細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;ならびにB細胞活性化が挙げられる。
【0038】
「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」または「ADCC」とは、ある特定の細胞毒性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)と結合した抗体が、これらの細胞毒性エフェクター細胞が抗原保有標的細胞と特異的に結合して、続いて細胞毒を用いて標的細胞を死滅させ得る細胞毒性の形態を指す。ADCCを媒介する初代細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球はFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。
【0039】
「補体依存性細胞傷害性」または「CDC」とは、補体の存在下での標的細胞の溶解を指す。従来の補体経路の活性化は、本開示の(適切なサブクラスの)抗体への補体系(C1q)の第1の成分の結合から始まり、これらの抗体は、それらの同族抗原に結合している。
【0040】
「抗体依存性細胞貪食作用」または「ADCP」とは、マクロファージまたは樹状細胞などの食細胞による内在化による抗体被覆標的細胞の排除の機構を指す。
【0041】
「血液癌」 という用語は、リンパ腫、白血病、及び骨髄腫などの造血起源の組織における異常な細胞増殖及び/または増殖を伴う血液媒介性腫瘍及び疾患または障害を含む。
【0042】
非ホジキンリンパ腫(「NHL」) とは、リンパ球に起因する不均一な悪性腫瘍である。米国(US)では、発生率は65,000/年と推定され、死亡率は約20,000である(American Cancer Society、2006;及びSEER Cancer Statistics Review)。この疾患は全ての年齢で発生する可能性があり、通常の発症は40歳以上の成人で始まり、発生率は年齢とともに増大する。NHLは、リンパ節、血液、骨髄、及び脾臓に蓄積するリンパ球のクローン増殖を特徴としているが、任意の主要な臓器が関与している可能性がある。病理学者及び臨床医によって使用されている現在の分類システムは、世界保健機関(WHO)の腫瘍分類であり、NHLを前駆体及び成熟B細胞またはT細胞新生物に分類する。PDQは現在、NHLを、臨床試験への参加をインドレント(低悪性度)またはアグレッシブ(侵攻性)に分けている。インドレントNHL群は、主に濾胞性サブタイプ、小リンパ球性リンパ腫、MALT(粘膜関連リンパ組織)、及び辺縁帯で構成されている。インドレントは、新たに診断されたB細胞NHL患者の約50%を含む。アグレッシブNHLとしては、主にびまん性大細胞型B細胞(DLBL、「DLBCL」、またはDLCL)(新たに診断された全患者の40%がびまん性大細胞型)、バーキットリンパ腫、及びマントル細胞(「MCL」)の組織学的診断を受けた患者が含まれる。NHLの臨床経過は非常に多様である。臨床経過の主要な決定要因は、組織学的サブタイプである。ほとんどのインドレントタイプのNHLは不治の疾患であると考えられている。患者は最初に化学療法または抗体療法のいずれかに反応し、ほとんどが再発する。これまでの研究では、早期介入による生存率の改善は実証されていない。無症候性の患者では、患者が症候性になるか、疾患のペースが加速しているように見えるまで、「観察して待つ」ことが許容される。時間の経過につれて、この疾患はよりアグレッシブ(侵攻性)の組織学に変わり得る。生存期間の中央値は8年から10年であり、インドレント(低悪性度)患者は、疾患の治療段階で3回以上の治療を受けることが多い。症候性のインドレントNHL患者の初期治療は、歴史的に併用化学療法であった。最も一般的に使用される薬剤としては、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン(CVP);またはシクロホスファミド、アドリアマイシン、ビンクリスチン、プレドニゾン(CHOP)が挙げられる。患者の約70%から80%が最初の化学療法に反応し、寛解期間は2~3年程度続く。最終的に、患者の大多数は再発する。抗CD20抗体であるリツキシマブの発見及び臨床使用により、反応及び生存率が有意に改善された。ほとんどの患者の現在の標準治療は、リツキシマブ+ CHOP(R-CHOP)またはリツキシマブ+ CVP(R-CVP)である。リツキシマブ療法は、いくつかのタイプのNHLで有効であることが示され、現在、インドレント(濾胞性リンパ腫)とアグレッシブNHL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)の両方の第一選択治療として承認されている。ただし、抗CD20モノクローナル抗体(mAb)には、一次耐性(再発したインドレント患者で50%の奏功)、後天性耐性(再治療時に50%の奏功率)、まれな完全奏功(再発集団で2%の完全奏功)、及び再発の継続的なパターンなど、重大な制限がある。最後に、多くのB細胞はCD20を発現しないため、多くのB細胞障害は抗CD20抗体療法を使用して治療することはできない。
【0043】
NHLに加えて、B細胞の調節不全に起因する白血病にはいくつかの種類がある。慢性リンパ性白血病(「慢性リンパ性白血病」または「CLL」としても公知)は、Bリンパ球の異常な蓄積によって引き起こされる成人白血病の一種である。CLLでは、悪性リンパ球は、正常で成熟しているように見える場合があるが、感染に効果的に対処することはできない。CLLは、成人の白血病の最も一般的な形態である。男性は女性の2倍のCLLを発症する可能性がある。ただし、主要な危険因子は年齢である。新しい症例の75%以上が、50歳以上の患者で診断されている。毎年10,000を超える症例が診断され、死亡率は年間ほぼ5,000である(American Cancer Society,2006;及びSEER Cancer Statistics Review)。CLLは不治の病であるが、ほとんどの場合ゆっくりと進行する。CLLの人の多くは、何年もの間、正常で活動的な生活を送っている。発症が遅いため、早期のCLL介入は生存期間も生活の質も改善しないと考えられているため、初期のCLLは一般的に治療されない。代わりに、その状態を経時的に監視する。最初のCLL治療は、正確な診断及び疾患の進行によって異なる。CLL療法に使用される薬剤は数十ある。FCR(フルダラビン、シクロホスファミド、及びリツキシマブ)、及びBR(イブルチニブ、及びリツキシマブ)などの併用化学療法レジメンは、新たに診断されたCLL及び再発したCLLの両方に有効である。同種骨髄(幹細胞)移植は、そのリスクに起因して、CLLの第一選択治療として使用されることはめったにない。
【0044】
別のタイプの白血病は、CLL診断に必要なクローン性リンパ球増加症を欠くが、それ以外は病理学的及び免疫表現型の特徴を共有するCLLバリアントと見なされる小リンパ球性リンパ腫(「SLL」)である(Campo et al.,2011)。SLLの定義には、リンパ節腫脹及び/または脾腫の存在が必要である。さらに、末梢血中のBリンパ球の数は5×109/Lを超えてはならない。SLLでは、診断は可能な限りリンパ節生検の組織病理学的評価によって確認されるべきである(Hallek et al.,2008)。SLLの発生率は米国のCLLの約25%である(Dores et al.,2007)。
【0045】
別のタイプの白血病は急性リンパ芽球性白血病(ALL)であり、急性リンパ性白血病としても公知である。ALLは、骨髄における悪性及び未成熟の白血球(リンパ芽球としても公知)の過剰産生及び継続的な増殖を特徴としている。「急性」とは、循環リンパ球(「芽球」)の未分化で未成熟な状態であって、治療せずに放置すると、平均余命が数週間から数か月と急速に進行する状態を指す。ALLは、小児期に最も一般的であり、発生率のピークは4~5歳である。12~16歳の子供は、他の子供よりも容易に死亡する。現在、小児ALLの少なくとも80%が治癒可能と見なされている。毎年4,000を下回る症例が診断され、死亡件数は年間ほぼ1,500である(American Cancer Society,2006;及びSEER Cancer Statistics Review)。
【0046】
この文脈で使用される「対象」または「患者」とは、マウスまたはラットなどの齧歯動物、及びカニクイザル(Macaca fascicularis)、アカゲザル(Macaca mulatta)またはヒト(Homo sapiens)などの霊長類を含む任意の哺乳類を指す。好ましくは、対象または患者は霊長類であり、最も好ましくはヒト患者であり、さらにより好ましくは成人ヒト患者である。
【0047】
本明細書で使用される「操作された」または「修飾された」という用語は、合成手段による(例えば、組換え技術、インビトロペプチド合成、ペプチドの酵素的もしくは化学的カップリング、またはこれらの技術のいくつかの組み合わせによる)核酸またはポリペプチドの操作を含む。好ましくは、本開示による抗体または抗体フラグメントは、抗原結合、安定性、半減期、エフェクター機能、免疫原性、安全性などのような1つ以上の特性を改善するように操作または改変される。好ましくは、本開示による抗体または抗体フラグメントは、ADCCなどのエフェクター機能を改善するように操作または改変される。
【0048】
「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリンのFc領域は一般に、2つの定常ドメイン、すなわちCH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。本明細書において別段明記されない限り、Fc領域のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載される、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。
【0049】
本開示に従って投与される抗体は、治療有効量で患者に投与される。「治療上有効な量」とは、所与の疾患または障害の臨床症状をある程度改善するのに十分な量を指す。特定の治療目的に有効な量は、対象の体重及び一般的な状態だけでなく、疾患または傷害の重症度に依存する。適切な投与量の決定は、日常的な実験を使用して、値のマトリックスを構築し、マトリックス内の異なるポイントを試験することによって達成できることが理解されるが、これらは全て、訓練を受けた医師または臨床科学者の通常の技術の範囲内である。
【0050】
「組み合わせ」 または「医薬の組み合わせ」という用語は、別の治療に加えてある治療の投与を指す。したがって、「組み合わせた」とは、同時(例えば、同時期)及び任意の順序の連続した投与を含む。非限定的な例として、第1の治療薬(例えば、抗CD19抗体などの薬剤)は、患者に対する第2の治療(例えば、γδT細胞などの医薬品)の投与の前(例えば、1分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間または12週間前)、同時に、または投与後(例えば、1分、15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、または12週間以上後)に、投与され得る。
【0051】
本明細書で使用される「γδT細胞(ガンマデルタT細胞)」という用語は、1つのγ鎖及び1つのδ鎖から構成される、それらの表面上に別個のT細胞受容体(TCR)、γδTCRを発現するT細胞のサブセットを指す。「γδT細胞」という用語は、具体的には、γδT細胞の全てのサブセットを含み、これらに限定されないが、vδ1、vδ2、vδ3及びVγ9Vδ2T細胞、ならびにナイーブ、エフェクター記憶、中央記憶、及び最終分化γδT細胞を含む。さらなる例として、「γδT細胞」という用語は、vδ4、vδ5、vδ7、及びvδ8Τ細胞を含む。
【0052】
本明細書で使用される場合、「Tリンパ球」または「T細胞」という用語は、CD3(CD3 +)及びT細胞受容体(TCR+)を発現する免疫細胞を指す。T細胞は細胞性免疫において中心的な役割を果たす。
【0053】
本明細書で使用される場合、「TCR」または「T細胞受容体」という用語は、アルファ-ベータまたはガンマ-デルタ受容体を形成する二量体の異種細胞表面シグナル伝達タンパク質を指す。αβTCRは、MHC分子によって提示される抗原を認識するが、γδTCRはMHC提示とは無関係に抗原を認識する。
【0054】
本明細書で使用される場合、「細胞集団」という用語は、多数の細胞を指す。細胞集団とは、例えば、末梢血試料、臍帯血試料、腫瘍、幹細胞前駆体、腫瘍生検、組織、リンパ液に由来するか、または外部環境に直接接触する対象の上皮部位に由来するか、または幹前駆細胞に由来する混合細胞集団であり得る。あるいは、混合細胞集団は、哺乳動物細胞インビトロ培養物由来であっても、末梢血試料、臍帯血試料、腫瘍、幹細胞前駆体、腫瘍生検、組織、リンパ液から樹立されても、または外部環境に直接接触する対象の上皮部位に由来しても、または幹前駆細胞に由来してもよい。
【0055】
「濃縮された、富化された」細胞集団または調製物とは、開始集団におけるその細胞型のパーセンテージよりも高いパーセンテージの特定の細胞型を含む、開始混合細胞集団に由来する細胞集団を指す。例えば、開始混合細胞集団は、特定のγδT細胞集団について濃縮され得る。全ての実施形態において、濃縮されたγδT細胞集団は、より少ないパーセンテージのαβT細胞集団を含む。
【0056】
本明細書で使用される「増殖された(expanded)」とは、濃縮調製物中の所望のまたは標的細胞型(例えば、δ1、δ2T細胞及び/またはVγ9Vδ2T細胞)の数が、初期または開始時の細胞集団の数よりも多いことを意味する。
【0057】
発明の詳細な説明
【0058】
抗CD19抗体
非特異的B細胞リンパ腫におけるCD19抗体の使用は、WO2007076950(米国特許出願公開第2007154473号)で考察されており、どちらも参照により組み込まれている。CLL、NHL及びALLにおけるCD19抗体の使用は、参照によりその全体が組み込まれる、Scheuermann et al.,CD19 Antigen in Leukemia and Lymphoma Diagnosis and Immunotherapy,Leukemia and Lymphoma,Vol.18,385-397(1995)に記載される。
【0059】
CD19に特異的な追加の抗体は、全てが参照により全体が組み込まれている、WO2005012493(米国特許第7109304号)、WO2010053716(US12/266,999)(Immunomedics);WO2007002223(US US8097703)(Medarex);WO2008022152(12/377,251) 及びWO2008150494(Xencor)、WO2008031056(US11/852,106)(Medimmune);WO 2007076950(US11/648,505)(Merck Patent GmbH);WO 2009/052431(US12/253,895)(Seattle Genetics);ならびにWO2010095031(12/710,442)(Glenmark Pharmaceuticals)、WO2012010562及びWO2012010561(International Drug Development)、WO2011147834(Roche Glycart)、及びWO2012156455(Sanofi)に記載されている。
【0060】
医薬組成物は、活性剤、例えば、ヒトにおける治療的使用のための抗体を含む。医薬組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含んでもよい。
【0061】
患者に投与される本開示による医薬組成物に含まれる抗体または抗体フラグメントの用量は、患者の年齢及びサイズ、症状、状態、投与経路などに応じて変化し得る。用量は通常、体重、体表面積、年齢、または個人ごとに計算される。状態の重症度に応じて、治療の頻度及び期間を調整し得る。CD19に特異的な抗体または抗体フラグメントを含む医薬組成物を投与するための有効な投与量及びスケジュールは、経験的に決定し得る。例えば、患者の進行は定期的な評価によって監視して、それに応じて用量を調整し得る。さらに、投与量の種間スケーリングは、当技術分野で周知の方法を使用して実施し得る(例えば、Mordenti et al.,1991,Pharmaceut.Res.8:1351)。
【0062】
医薬組成物は、静脈内、皮下、皮内及び筋肉内注射などのための剤形を含み得る。これらの注射可能な調製物は、既知の方法によって調製され得る。例えば、注射可能な調製物は、例えば、注射に従来使用される無菌の水性媒体または油性媒体に上記の抗体またはその塩を溶解、懸濁または乳化することによって調製し得る。本開示の文脈で使用し得るCD19に特異的な抗体または抗体フラグメントを含む例示的な医薬組成物は、例えば、WO2008/022152またはWO2018/002031に開示されている。
【0063】
静脈内投与などの特定の投与方法では、患者の体重に応じて薬物を投与することが好ましい。他の投与方法、例えば皮下投与では、一定の固定用量で薬物を投与することが好ましい。当業者は、ある投与方法では、どの用量が別の投与方法での別の用量と同等であるかを知っている。必要な効果的な用量から必要な用量で必要に応じて薬物を投与するための合理的な決定では、通常、特定の薬物の薬力学が考慮される。
【0064】
本開示に従って投与される抗体は、治療有効量で患者に投与される。「治療上有効な量」とは、所与の疾患または障害、すなわちNHL及びその合併症の臨床症状を治癒、緩和、または部分的に阻止するのに十分な量を指す。ある特定の実施形態において、本開示の抗体は、9mg/kgで投与される。代替の実施形態において、本開示の抗体は、12mg/kgで投与される。さらに他の実施形態では、本開示の抗体は、15mg/kg以上で投与される。
【0065】
本開示の抗体は、異なる時点で投与されてもよく、治療サイクルは異なる長さを有してもよい。抗体は、毎日、隔日、週に3回、毎週または隔週で投与されてもよい。抗体はまた、少なくとも4週間以上、少なくとも5週間以上、少なくとも6週間以上、少なくとも7週間以上、少なくとも8週間以上、少なくとも9週間以上、少なくとも10週間以上、少なくとも11週間以上または少なくとも12週間以上にわたって投与されてもよい。本開示の特定の実施形態において、抗体は、少なくとも8週間にわたって少なくとも週に1回投与される。
【0066】
血液からのγδT細胞の分離及び増殖
いくつかの実施形態において、本開示のγδT細胞は、対象の血液(例えば、末梢血)に由来する。例えば、γδT細胞は、血液由来のVδ2細胞または血液由来のVδ1細胞に由来し得る。別の例では、γδT細胞は血液由来のVγ9Vδ2T細胞に由来し得る。Vγ9Vδ2T細胞は末梢血から分離して、エキソビボでさらに培養してもよい。Vγ9Vδ2T細胞の培養は、IL-2及びゾレドロン酸(ZOL)の存在下で最適化され得る。血液からVγ9Vδ2T細胞を単離及び増殖させる方法としては、例えばHoeres et al.2018に記載されている方法、または以下の手順が挙げられる:
【0067】
末梢血由来のVγ9Vδ2T細胞のエキソビボ増殖:
末梢血はドナーから採取される。PBMCは、Lymphoprep(商標)(Axis Shield,Norway)を使用した密度勾配遠心分離により、製造元の指示に従って直ちに分離する。OpTmizer(商標)T細胞 Expansion Supplement(1:38希釈)(Life Technologies,Australia)、10%熱不活化FBS(HI-FBS)、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、2mmol L-グルタミン(Life Technologies,Australia)、25mM HEPES、0.1%β-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich,USA)、100IU/mLの組換えヒトインターロイキン2(rhIL-2)(BD Pharmingen,USA)を補充したCTS(商標)OpTmizer(商標)T細胞Expansion SFM(Life Technologies,Australia)でPBMCを1×106/mLに再懸濁させ、5μMのZOLで活性化し、6ウェルプレートに播種する。細胞培養密度は、1~2×106細胞/mLに維持して、2~3日ごとに100IU/mL rhIL-2のみ(ZOLなし)を含む新鮮な培地を補充する。7~8日間の培養後、細胞を収集し、以下に説明するように濃縮した。
【0068】
Vγ9Vδ2T細胞の濃縮:
エクスビボで増殖させたVγ9Vδ2T細胞を、TCRγ/δ+T細胞分離キット(ヒト)(Miltenyi Biotec,Germany)を備えたネガティブセレクションMACSを使用して濃縮する。濃縮後の細胞生存率及び総細胞数は、トリパンブルー排除を使用して評価する。Vγ9Vδ2T細胞のパーセンテージは、PeCy5コンジュゲート抗CD3(クローンUCHT1)(eBioscience,San Diego,CA,USA)及びBD Biosciences(San Jose,CA,USA)のFITCコンジュゲート抗Vγ9TCRを使用したフローサイトメトリーによって決定する。Vγ9Vδ2T細胞のパーセンテージは、前方散乱/側方散乱を使用してリンパ球集団をゲーティングし、次にVγ9+CD3+ダブルポジティブ細胞をゲーティングすることによって特定される。
【0069】
いくつかの実施形態において、末梢血単核細胞(PBMC)は、当技術分野で公知の任意の適切な方法に従って、対象から得てもよい。PBMCは、アミノビスホスホネート(例えば、ゾレドロン酸)、合成リン酸化抗原(例えば、ブロモヒドリンピロリン酸;BrHPP)、2M3B1PP、または2-メチル-3-ブテニル-1-ピロリン酸の存在下で、IL-2の存在下で1~2週間培養して、Vδ2細胞の濃縮された集団を生成してもよい。あるいは、固定された抗TCRγδ(例えば、汎TCRγδ)は、IL-2の存在下で、例えば、約14日間、PBMCの集団からのVδ2細胞の優先的な増殖を誘導し得る。いくつかの実施形態において、PBMCからのVδ2細胞の優先的な増殖は、IL-2及びIL-4の存在下で固定化された抗CD3抗体(例えば、OKT3)の培養時に達成され得る。いくつかの実施形態において、前述の培養物は、可溶性抗CD3、IL-2、及びIL-4における継代培養の前に約7日間維持される。あるいは、人工抗原提示細胞を使用して、Vδ2細胞などのγδT細胞の優先的な増殖を促進し得る。例えば、照射されたaAPC、IL-2、及び/またはIL-21の存在下で培養されたPBMC由来のγδT細胞を増殖して、高い割合のVδ2細胞、中程度の割合のVδ1細胞、及びいくつかのダブルネガティブ細胞を含むγδT細胞の集団を生成してもよい。前述の方法のいくつかの実施形態では、PBMCは、事前に濃縮してもよく、または後で濃縮してもよい(例えば、TCRyd特異的薬剤による陽性選択またはTCRa特異的薬剤の陰性選択による)。そのような方法及びVδ2細胞などのγδT細胞の増殖のための他の適切な方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Deniger et al.,Frontiers in Immunology 2014,5,636:1-10に詳細に記載される。さらに、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Almeida et al.( Clinical Cancer Research 2016,22,23;5795-5805)は、本明細書に記載の異種標的構築物を発現するように操作され得るVδ1T細胞の集団を取得する適切な方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、PBMCは、90%を超えるγδT細胞を産生し得る磁気ビーズソーティングを使用して事前に濃縮されている。
【0070】
非造血組織からの非造血組織に存在するγδT細胞の分離及び増殖
本明細書に記載されるように得られた非造血組織に存在するγδT細胞は、良好な腫瘍浸透及び保持能力を示す。非造血組織に存在するγδT細胞の単離及び増殖のためのより詳細な方法は、例えば、GB出願番号1707048.3(WO2018/202808)及び国際特許公開番号WO2017/072367(米国特許出願公開第2018/0312808号)(参照によりその全体が組み込まれる)に見出され得る。
【0071】
非造血組織に存在するγδT細胞(例えば、皮膚由来のγδT細胞及び/または非Vδ2T細胞、例えば、Vδ1T細胞及び/またはDN T細胞)は、任意のヒトまたは非ヒト動物の非造血組織(本発明の方法による操作に適した細胞を得るために患者から取得され得る)から単離してもよい。いくつかの実施形態では、非造血組織(それからγδT細胞を取り出し増殖する)は皮膚(例えばヒトの皮膚)であり、当該技術分野で公知の方法で得ることができる。いくつかの実施形態では、皮膚はパンチ生検によって得られる。あるいは、本明細書で提供されるγδT細胞の単離及び増殖の方法は、胃腸管(例えば、結腸)、乳腺、肺、前立腺、肝臓、脾臓、及び膵臓に適用され得る。γδT細胞はまた、ヒトのがん組織、例えば、乳房または前立腺の腫瘍に存在し得る。いくつかの実施形態において、γδT細胞は、ヒトのがん組織(例えば、固形腫瘍組織)に由来し得る。他の実施形態において、γδT細胞は、ヒトのがん組織以外の非造血組織(例えば、実質的な数の腫瘍細胞を有さない組織)に由来し得る。例えば、γδT細胞は、近くまたは隣接するがん組織から離れた皮膚の領域(例えば、健康な皮膚)に由来し得る。
【0072】
血液中で優勢なγδT細胞は主にVδ2T細胞であり、非造血組織で優勢なγδT細胞は主にVδ1T細胞であり、Vδ1T細胞には非造血組織に存在するγδT細胞集団の約70~80%を含む。ただし、一部のVδ2T細胞は、非造血組織、例えば腸にも見られ、ここではγδT細胞の約10~20%を含み得る。非造血組織に存在するいくつかのγδT細胞はVδ1TCRもVδ2TCRも発現せず、本発明者らは、それらをダブルネガティブ(DN)γδT細胞と名付けた。これらのDNγδT細胞は、ほとんどがVδ3を発現しており、少数のVδ5を発現しているT細胞である可能性がある。したがって、通常は非造血組織に存在し、本発明の方法によって増殖されるγδT細胞は、好ましくは、少量のDNγδT細胞を含む非Vδ2T細胞、例えば、Vδ1T細胞である。
【0073】
一般に、非造血組織に存在するγδT細胞は、間質細胞(例えば、皮膚線維芽細胞)との物理的接触を取り除くと自発的に増殖し得る。したがって、上記の足場ベースの培養方法を使用して、そのような分離を誘導してもよく、その結果、γδT細胞が抑制解除されて増殖が引き起こされる。したがって、いくつかの実施形態では、増殖ステップ中に実質的なTCR経路活性化は存在しない(例えば、外因性TCR経路活性化因子は培養物に含まれない)。さらに、本発明は、非造血組織に存在するγδT細胞を増殖させる方法を提供し、この方法は、フィーダー細胞、腫瘍細胞、及び/または抗原提示細胞との接触を含まない。
【0074】
処置の方法
本明細書に記載されるように、操作されておらず、濃縮されたγδT細胞集団、操作された、濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物を含む医薬組成物は、予防的治療及び/または治療的治療のために投与され得る。治療的用途では、その組成物は、疾患または状態の症状を治癒するか、または少なくとも部分的に止めるのに十分な量で、すでにその疾患または状態に罹患している対象に投与され得る。操作されていない、濃縮されたγδT細胞集団、操作された、濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物もまた、ある状態を発症、罹患、または悪化させる可能性を低減するために投与され得る。治療的使用のための、操作されていない、濃縮されたγδT細胞集団の集団、操作された、濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物の有効量は、疾患もしくは状態の重症度及び経過、以前の治療、対象の健康状態、体重、及び/もしくは薬物への反応、ならびに/または治療する医師の判断に基づいて変化し得る。
【0075】
本開示の操作されていない、濃縮されたγδT細胞集団、操作された、濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物は、状態の治療を必要とする対象を治療するために使用され得る。
【0076】
濃縮されたγδT細胞集団及び本開示のCD19に特異的な抗体または抗体フラグメントを用いる対象の状態を治療する方法は、治療有効量の非操作の濃縮されたγδT細胞集団、操作され、濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物を対象に投与することを含み得る。本開示の濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物は、様々なレジメン(例えば、タイミング、濃度、投与量、治療間の間隔、及び/または製剤)で投与され得る。対象はまた、本開示の濃縮されたγδT細胞集団及び/またはそれらの混合物を受け取る前に、例えば、化学療法、放射線、または両方の組み合わせで前処理し得る。治療の一部として、非操作の濃縮γδT細胞集団、操作された濃縮γδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物を、第1のレジメンで対象に投与してもよく、対象をモニターして最初のレジメンでの治療が所定のレベルの治療効果を満たしているか否かを判断してもよい。
【0077】
本開示の濃縮されたγδT細胞集団、すなわち、非操作または操作、及び/またはそれらの混合物を使用して、様々な状態を治療し得る。場合によっては、本開示の操作されていない、濃縮されたγδT細胞集団、操作された、濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物は、固形腫瘍及び血液癌を含むがんを治療するために使用され得る。
【0078】
投与方法
本発明の1つ以上の操作されていない、濃縮されたγδT細胞集団、操作された、濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物は、任意の順序でまたは同時に対象に投与してもよい。同時に、本発明の複数の非操作、濃縮γδT細胞集団、操作、濃縮γδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物を、静脈内注射などの単一の統一された形態で、または複数の形態で、例えば、複数の静脈内注入、s.c、注射または丸薬として提供してもよい。本発明の操作されていない、濃縮されたγδT細胞集団、操作された、濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物は、一緒にまたは別々に、単一のパッケージまたは複数のパッケージに詰めることができる。本発明の操作されていない、濃縮されたγδT細胞集団、操作された、濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物のうちの1つまたは全ては、複数回の用量で与えられ得る。同時でない場合、複数回の投与間のタイミングは、約1週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、または約1年程度まで変化し得る。場合によっては、本発明の操作されていない、濃縮されたγδT細胞集団、操作された、濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物は、対象への投与後、インビボで、対象の体内で増殖し得る。操作されていない、濃縮されたγδT細胞集団、操作された、濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物を凍結して、同じ細胞調製物で複数の処理のための細胞を提供し得る。本開示の操作されていない、濃縮されたγδT細胞集団、操作された、濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物、ならびにそれを含む医薬組成物は、キットとしてパッケージングされ得る。キットは、操作されていない濃縮γδT細胞集団、操作された濃縮γδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物、ならびにそれらを含む組成物の使用に関する指示(例えば、書面による指示)を備えてもよい。
【0079】
場合によっては、がんを治療する方法は、治療有効量の操作されていない、濃縮されたγδT細胞集団、操作された、濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物を対象に投与することであって、この投与ががんを治療することを含む。いくつかの実施形態において、治療有効量の操作されていない、濃縮されたγδT細胞集団、操作された、濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物は、少なくとも約10秒、30秒、1分、10分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、24時間、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、または1年間、投与される。いくつかの実施形態において、治療有効量の操作されていない、濃縮されたγδT細胞集団、操作された、濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物は、少なくとも1週間投与される。いくつかの実施形態において、治療有効量の操作されていない、濃縮されたγδT細胞集団、操作された、濃縮されたγδT細胞集団、及び/またはそれらの混合物は、少なくとも2週間投与される。
【0080】
実施形態
本開示は、がんの治療に使用するための、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメント及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含む医薬の組み合わせを提供する。
【0081】
一態様では、本開示は、がんの治療に使用するための、CD19に特異的な抗体及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含む医薬の組み合わせであって、ここで、γδT細胞は、濃縮されたγδT細胞集団を含む組み合わせを提供する。一実施形態では、濃縮されたγδT細胞集団は、操作されていないか、または操作されたγδT細胞及び/またはそれらの混合物を含む。さらなる実施形態において、本開示は、がんの治療に使用するための、CD19に特異的な抗体及び濃縮されたγδT細胞集団を含む医薬の組み合わせを提供する。
【0082】
別の態様では、本開示は、がんの治療に使用するためのCD19に特異的な抗体及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含む医薬の組み合わせであって、ここで、γδT細胞が、操作されていないか、または操作されたγδT細胞及び/またはその混合物を含む組み合わせを提供する。別の実施形態では、γδT細胞は、操作されていないγδT細胞の集団である。さらに別の実施形態では、γδT細胞は、操作されたγδT細胞の集団である。
【0083】
一態様では、本開示は、がんの治療に使用するためのCD19に特異的な抗体及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含む医薬の組み合わせであって、ここで、γδT細胞が末梢血、腫瘍組織または非造血組織から単離される組み合わせを提供する。1つの実施形態では、γδT細胞は、末梢血から単離される。別の実施形態において、γδT細胞とは、末梢血から単離されたγδT細胞の集団である。
【0084】
一態様では、本開示は、血液癌であるがんの治療に使用するための、CD19に特異的な抗体及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含む医薬の組み合わせを提供する。一実施形態では、血液癌は、慢性リンパ性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、または急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。別の実施形態では、血液癌は、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。さらなる実施形態において、非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群より選択される。
【0085】
特定の実施形態において、本開示は、がんの治療に使用するための、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメント及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含み、CD19に特異的な前記抗体または抗体フラグメントが9mg/kgで投与される医薬の組み合わせを提供する。代替の実施形態において、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメント は、12mg/kgで投与される。さらに他の実施形態では、15mg/kg以上である。
【0086】
実施形態において、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメントは、細胞毒性活性を有する。実施形態において、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメントは、ADCC誘導活性を有する定常領域を含む。実施形態において、CD19に特異的な抗体は、ADCCを誘導する。
【0087】
特定の実施形態において、本開示は、がんの治療に使用するためのCD19に特異的な抗体または抗体フラグメント及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含む医薬の組み合わせであって、この組み合わせの構成要素、抗体CD19に特異的な抗体または抗体フラグメント及びγδT細胞は別々に投与される。ある実施形態では、γδT細胞は、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメントの投与の前に投与される。ある実施形態では、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメントは、γδT細胞の投与の前に投与される。実施形態において、組み合わせの構成要素は、いずれの構成要素(薬物)も同時に患者において活性な時点で投与される。「相乗作用」により、いずれの薬物も同時に患者に有効であることが暗示される。実施形態において、組み合わせの構成要素は、物理的または時間的いずれかで、一緒に、同時に、別々に、または連続して投与される。実施形態において、組み合わせの構成要素は同時に投与される。
【0088】
特定の実施形態において、本開示は、抗CD19抗体が毎週、隔週または毎月投与される、がんの治療に使用するためのCD19に特異的な抗体または抗体フラグメント及びγδT細胞を含む医薬の組み合わせを提供する。
【0089】
特定の実施形態において、本開示は、がんの治療に使用するための、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメント及びγδT細胞を含み、CD19に特異的な前記抗体または抗体フラグメントが12mg/kgの濃度で投与される、医薬の組み合わせを提供する。
【0090】
特定の実施形態において、本開示は、がんの治療に使用するためのCD19に特異的な抗体または抗体フラグメント及びγδT細胞を含む医薬の組み合わせであって、ここで、CD19に特異的な前記抗体または抗体フラグメント が、1日目の最初の投与後、毎週、隔週または毎月投与され、BCL-2阻害剤が8日目に初めて投与される組み合わせを提供する。さらなる実施形態において、1日目の最初の投与後の抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、最初の3か月間は毎週、及び少なくとも次の3か月間は隔週投与される。
【0091】
一態様において、本開示は、血液癌患者の治療に使用するための抗CD19抗体またはその抗体フラグメントを提供し、ここで前記血液癌患者は、非ホジキンリンパ腫を有し、ここで前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、γδT細胞と組み合わせて投与される。
【0092】
一態様において、本開示は、血液癌患者の治療に使用するための抗CD19抗体またはその抗体フラグメントを提供し、ここで前記血液癌患者は、非ホジキンリンパ腫を有し、ここで前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、γδT細胞と組み合わせて投与される。血液癌患者が非ホジキンリンパ腫を有する一実施形態では、この非ホジキンリンパ腫は、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織、辺縁帯リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫からなる群より選択される。
【0093】
ある実施形態では、γδT細胞と組み合わせた、血液癌患者の治療に使用するための抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む。
【0094】
さらなる実施形態において、γδT細胞と組み合わせて血液癌患者の治療に使用するための抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、以下の配列の可変重鎖
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)
及び以下の配列の可変軽鎖
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)を含む。
【0095】
本開示の別の実施形態において、抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体または抗体フラグメントである。本開示の別の実施形態において、抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、IgGアイソタイプのものである。別の実施形態において、抗体または抗体フラグメントは、IgG1、IgG2またはIgG1/IgG2キメラである。本開示の別の実施形態において、抗CD19抗体のアイソタイプは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を増強するように操作される。別の実施形態では、抗CD19抗体の重鎖定常領域は、アミノ酸239D及び332Eを含み、ここで、Fc番号付けは、Kabatの場合のようにEUインデックスに従う。別の実施形態では、この抗体は、IgG1、IgG2、またはIgG1/IgG2であり、抗CD19抗体のキメラ重鎖定常領域は、アミノ酸239D及び332Eを含み、ここで、Fc番号付けは、Kabatの場合のようにEUインデックスに従う。
【0096】
さらなる実施形態において、γδT細胞と組み合わせて血液癌患者の治療に使用するための抗CD19抗体は、以下の配列を有する重鎖
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)
及び以下の配列を有する軽鎖
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)を含む。
【0097】
ある実施形態において、γδT細胞と組み合わせて血液癌患者の治療に使用するための抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、以下の配列の可変重鎖
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)
及び以下の配列の可変軽鎖
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)
または配列番号7の可変重鎖に対して、及び配列番号8の可変軽鎖に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する可変重鎖及び可変軽鎖を含む。
【0098】
ある実施形態において、γδT細胞と組み合わせて血液癌患者の治療に使用するための抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、以下の配列の可変重鎖
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSS(配列番号7)
及び以下の配列の可変軽鎖
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIK(配列番号8)
または配列番号7の可変重鎖に対して、及び配列番号8の可変軽鎖に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する可変重鎖及び可変軽鎖を含み、ここで、抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む。別の実施形態では、抗CD19抗体の重鎖領域は、アミノ酸239D及び332Eを含み、ここで、Fc番号付けは、Kabatの場合のようにEUインデックスに従う。
【0099】
さらなる実施形態において、γδT細胞と組み合わせて血液癌患者の治療に使用するための抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、以下の配列を有する重鎖
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)
及び以下の配列を有する軽鎖
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)
または配列番号7の重鎖に対して、及び配列番号8の軽鎖に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する重鎖及び軽鎖、を含む。
【0100】
さらなる実施形態において、γδT細胞と組み合わせて血液癌患者の治療に使用するための抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、以下の配列を有する重鎖
EVQLVESGGGLVKPGGSLKLSCAASGYTFTSYVMHWVRQAPGKGLEWIGYINPYNDGTKYNEKFQGRVTISSDKSISTAYMELSSLRSEDTAMYYCARGTYYYGTRVFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPDVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPEEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)
及び以下の配列を有する軽鎖
DIVMTQSPATLSLSPGERATLSCRSSKSLQNVNGNTYLYWFQQKPGQSPQLLIYRMSNLNSGVPDRFSGSGSGTEFTLTISSLEPEDFAVYYCMQHLEYPITFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号12)
または配列番号7の重鎖に対して、及び配列番号8の軽鎖に対して、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する重鎖及び軽鎖を含み、ここで、抗CD19抗体は、配列SYVMH(配列番号1)を含むHCDR1領域、配列NPYNDG(配列番号2)を含むHCDR2領域、配列GTYYYGTRVFDY(配列番号3)を含むHCDR3領域、配列RSSKSLQNVNGNTYLY(配列番号4)を含むLCDR1領域、配列RMSNLNS(配列番号5)を含むLCDR2領域、及び配列MQHLEYPIT(配列番号6)を含むLCDR3領域を含む。別の実施形態では、抗CD19抗体の重鎖領域は、アミノ酸239D及び332Eを含み、ここで、Fc番号付けは、Kabatの場合のようにEUインデックスに従う。
【0101】
一実施形態では、本開示は、抗CD19抗体またはその抗体フラグメントを提供し、ここで、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、12mg/kgの濃度で投与される。
【0102】
さらなる実施形態において、抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、毎週、隔週、または毎月投与される。さらなる実施形態において、抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、最初の3ヶ月間は毎週、そして少なくとも次の3ヶ月間は隔週で投与される。さらなる実施形態において、抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、最初の3ヶ月間は毎週投与される。さらなる実施形態において、抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、最初の3ヶ月間は毎週、そして少なくとも次の3ヶ月間は隔週で投与される。さらなる実施形態において、抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、最初の3ヶ月間は毎週、次の3ヶ月間は隔週で、そしてその後は毎月投与される。さらなる別の実施形態において、抗CD19抗体またはその抗体フラグメントは、最初の3ヶ月間は毎週、次の3ヶ月間は隔週で、そしてその後は毎月投与される。
【0103】
本開示は、がんの治療に使用するための、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメントであって、CD19に特異的な前記抗体または抗体フラグメントがγδT細胞と組み合わせて投与される抗体または抗体フラグメントを提供する。一実施形態では、γδT細胞は、末梢血、腫瘍組織または非造血組織から単離される。一実施形態では、γδT細胞は、末梢血から単離される。別の実施形態において、γδT細胞は、末梢血から単離されたγδT細胞の集団である。別の実施形態において、γδT細胞は、末梢血から単離され、IL-2及びZOLの存在下で培養されたγδT細胞の集団である。別の例では、γδT細胞は血液由来のVγ9Vδ2T細胞の集団である。
【0104】
本開示は、がんの治療における使用のためのCD19に特異的な抗体または抗体フラグメントであって、CD19に特異的な前記抗体または抗体フラグメントが、γδT細胞と組み合わせて投与され、ここで投与の前記ステップがCD19に特異的な抗体及びγδT細胞を組み合わせて同時に、順番に、または逆の順序で行われる、抗体または抗体フラグメントを提供する。
【0105】
別の実施形態において、本開示は、がんの治療のための医薬を調製するための、CD19に特異的な抗体または抗体フラグメント及びγδT細胞を含む医薬の組み合わせの使用を提供する。
【0106】
別の実施形態において、本開示は、がんの治療における使用のための方法であって、CD19に特異的な抗体及びγδT細胞を組み合わせて対象に投与するステップを含む方法を提供する。別の実施形態において、本開示は、CD19に特異的な抗体及びγδT細胞を組み合わせて、対象に投与するステップを含む、がんの治療に使用するための方法を提供し、この投与するステップは、CD19に特異的な抗体とγδT細胞を組み合わせて同時に、順番に、または逆の順序で投与することによって実施される。
【0107】
本開示は、がんの治療に使用するためのCD19に特異的な抗体または抗体フラグメント及びガンマデルタT細胞(γδT細胞)を含み、γδT細胞が治療有効量で投与される医薬の組み合わせを提供する。いくつかの実施形態では、上記の方法のいずれかによって得られた治療有効量のリンパ球(例えば、γδT細胞)を、治療有効量で対象に(例えば、血液癌などのがんの治療のために)投与し得る。場合によっては、リンパ球(例えば、γδT細胞)の治療有効量は、1用量あたり10×1012細胞未満(例えば、1用量あたり9×1012細胞未満、1用量あたり8×1012細胞未満、1用量あたり7×1012細胞未満、1用量あたり6×1012細胞未満、1用量あたり5×1012細胞未満、1用量あたり4×1012細胞未満、1用量あたり3×1012細胞未満、1用量あたり2×1012細胞未満、1用量あたり1×1012細胞未満、1用量あたり9×1011細胞未満、1用量あたり8×1011細胞未満、1用量あたり7×1011細胞未満、1用量あたり6×1011細胞未満、1用量あたり5×1011細胞未満、1用量あたり4×1011細胞未満、1用量あたり3×1011細胞未満、1用量あたり2×1011細胞未満、1用量あたり1×1011細胞未満、1用量あたり9×1010細胞未満、1用量あたり7.5×1010細胞未満、1用量あたり5×1010細胞未満、1用量あたり2.5×1010細胞未満、1用量あたり1×1010細胞未満、1用量あたり7.5×109細胞未満、1用量あたり5×109細胞未満、1用量あたり2.5×109細胞未満、1用量あたり1×109細胞未満、1用量あたり7.5×108細胞未満、1用量あたり5×108細胞未満、1用量あたり2.5×108細胞未満、1用量あたり1×108細胞未満、1用量あたり7.5×107細胞未満、1用量あたり5×107細胞未満、2.5×107細胞未満、1用量あたり1×107細胞未満、1用量あたり7.5×106細胞未満、1用量あたり5×106細胞未満、1用量あたり2.5×106細胞未満、1用量あたり1×106細胞未満、1用量あたり7.5×105細胞未満、1用量あたり5×105細胞未満、1用量あたり2.5×105細胞未満、または1用量あたり1×105細胞未満)である。
【0108】
いくつかの実施形態において、γδT細胞(例えば、皮膚由来のγδT細胞、血液由来のγδT細胞)の治療有効量は、治療の過程にわたって10×1012細胞未満(例えば、治療の経過にわたって9×1012細胞未満、8×1012細胞未満、7×1012細胞未満、6×1012細胞未満、5×1012細胞未満、4×1012細胞未満、3×1012細胞未満、2×1012細胞未満、1×1012細胞未満、9×1011細胞未満、8×1011細胞未満、7×1011細胞未満、6×1011細胞未満、未満5×1011細胞未満、4×1011細胞未満、3×1011細胞未満、2×1011細胞未満、1×1011細胞未満、9×1010細胞未満、7.5×1010細胞未満、5×1010細胞未満、2.5×1010細胞未満、1×1010細胞未満、7.5×109細胞未満、5×109細胞未満、2.5×109細胞未満、1×109細胞未満、7.5×108細胞未満、5×108細胞未満、2.5×108細胞未満、1×108細胞未満、7.5×107細胞未満、5×107細胞未満、2.5×107細胞未満、1×107細胞未満、7.5×106細胞未満、5×106細胞未満、2.5×106細胞未満、1×106細胞未満、7.5×105細胞未満、5×105細胞未満、2.5×105細胞未満、または1×105細胞未満)である。
【0109】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のγδT細胞の用量としては、約1×106、1.1×106、2×106、3.6×106、5×106、1×107、1.8×107、2×107、5×107、1×108、2×108、または5×108細胞/kgが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のγδT細胞の用量としては、少なくとも1×106、1.1×106、2×106、3.6×106、5×106、1×107、1.8×107、2×107、5×107、1×108、2×108、または5×108細胞/kgが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のγδT細胞の用量としては、最大で 1×106、1.1×106、2×106、3.6×106、5×106、1×107、1.8×107、2×107、5×107、1×108、2×108、または5×108細胞/kgが挙げられる。
【0110】
組み合わせ
本開示は、血液癌の治療に使用するためのγδT細胞と組み合わせた抗CD19抗体またはその抗体フラグメントを提供し、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメント及びγδT細胞は、1つ以上の医薬品と組み合わせて投与される。本開示の一実施形態では、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメント及びγδT細胞は、医薬品と組み合わせて投与される。本開示の別の実施形態において、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメント及びγδT細胞は、1つ以上の追加の薬剤または追加の医薬品と組み合わせて投与される。一態様では、前記医薬品は追加の医薬品である。本開示の一実施形態では、前記医薬品は生物学的または化学療法剤である。本開示の別の実施形態において、前記医薬品は、治療用抗体または抗体フラグメント、ナイトロジェンマスタード、プリン類似体、サリドマイド類似体、ホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤、BCL-2阻害剤 またはブルトンのチロシンキナーゼ( BTK)阻害剤である。さらなる実施形態において、前記医薬品は、リツキシマブ、R-CHOP、シクロホスファミド、クロラムブシル、ウラムスチン、イフォスファミド、メルファラン、ベンダムスチン、メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニン、フルダラビン、サリドミド、レナリドマイド、ポマリドミド、イデラリシブ、デュベリシブ、コパンリシブ、イブルチニブまたはベネトクラクスである。
【0111】
別の実施形態において、本開示は、血液癌の治療に使用するための抗CD19抗体またはその抗体フラグメント及びγδT細胞を提供し、前記抗CD19抗体またはその抗体フラグメント及びγδT細胞が、リツキシマブ、R-CHOP、シクロホスファミド、クロランブシル、ウラムスチン、イフォスファミド、メルファラン、ベンダムスチン、メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニン、フルダラビン、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、イデラリシブ、デュベリシブ、コパンリシブ、イブルチニブまたはベネトクラクスと併用して投与される。
【0112】
【実施例】
【0113】
実施例1:試験した細胞株でのCD19及びCD20発現の特性評価
この研究を行って、リンパ腫及び白血病細胞株ならびにCLL(慢性リンパ球性白血病)、MCL(マントル細胞リンパ腫)及びB-ALL(急性リンパ芽球性白血病)由来の原発性患者由来腫瘍材料に対する異なるドナー由来のγδT細胞によって媒介されるFc増強抗CD19抗体タファシタマブ(MOR00208)の細胞毒性活性を評価した。さらに、γδT細胞の存在下でのタファシタマブの抗体依存性細胞媒介性細胞毒性活性を評価した。
【0114】
さまざまなリンパ腫及び白血病細胞株、ならびにリンパ腫及び白血病患者由来の患者由来の原発性腫瘍細胞を、さまざまな濃度のタファシタマブ及びIgG1陰性対照抗体を用いた抗体依存性細胞傷害(ADCC)アッセイで評価した。γδT細胞を、7人の異なるドナーから単離して、異なるエフェクター対標的細胞比(E:T比0.7:1、2.2:1、6.7:1、及び20:1)でエフェクター細胞として使用した。
【0115】
材料、方法、及びデータ分析
γδT細胞:
γδT細胞は、αβT細胞のTCRに結合する主要組織適合遺伝子複合体(MHC)とは構造的及び機能的に異なるT細胞受容体(TCR)複合体の一部としてVγ及びVδ可変鎖を発現する。無制限で高い組み合わせの多様性にもかかわらず、Vδ2鎖はVγ9鎖と優先的に対になっている。Vγ9Vδ2T細胞は、末梢血T細胞の約5%を占め、この区画の主要なγδT細胞亜集団を表している。以下に列挙されているように、7人の異なるドナー由来のγδT細胞を単離し、刺激し、適用した。
【表2】
表に列挙されているように、説明された実験に使用された刺激された細胞集団は、3つの主要な集団から構成されていた。CD56+/CD3-NKエフェクター細胞のごく一部のみが存在し(<5%)、TCRγδneg/CD3+細胞は場合によってはより大きな集団を示したが、これらの細胞は標的細胞の溶解を引き起こさない。したがって、主にγδT細胞が抗体を介した細胞死滅の原因であった。
【0116】
細胞株及び患者試料
細胞株(DSMZから取得):Mino(マントル細胞リンパ腫)、Daudi(バーキットリンパ腫)、Jeko-1(マントル細胞リンパ腫)、U2932(DLBCL)、REH(B-ALL)
患者試料(末梢血):2×CLL(慢性リンパ性白血病)、2×MCL(マントル細胞リンパ腫)、1×B-ALL(急性リンパ芽球性白血病)
【0117】
結果
リンパ腫細胞株による用量滴定
有効なアッセイ設定を得るための初期用量滴定実験は、γδT細胞の4つのE:T比(0.7:1、2.2:1、6.7:1及び20:1)の存在下で0.001~10μg/mlの濃度のMOR00208を使用して実行し、溶解したJeko及びU2932標的細胞の割合の用量依存的な増加が観察された。予想通り、試験した抗体の殺傷活性は、より高いE:T比で増加し、最も明確な効果は、6.7:1及び20:1という試験された最高のE:T比で観察された。細胞溶解の最大効果は、2つの試験細胞株で0.1μg/ml、1μg/ml、及び10μg/mlのMOR00208の濃度で達成された。細胞溶解はγδT細胞依存性ドナー変動を示し、最大溶解は、それぞれJekoで34.0%~49.3%、U2392細胞で22.5%であった。1μg/mlのMOR00208(Fc増強)の濃度を、白血病及びリンパ腫細胞株及び患者由来腫瘍細胞に対するγδT細胞による抗体媒介細胞殺傷のFc依存性効果のさらに包括的な分析のための最適濃度として選択した。
【0118】
リンパ腫/白血病細胞株を用いた細胞毒性アッセイ
CD19抗体と組み合わせたγδT細胞の腫瘍細胞殺傷能を決定するために、タファシタマブを1μg/mlで、Mino、Daudi、Jeko、U2932、及びREH細胞を標的細胞として用いて試験した(
図1 及び
図2)。前述同様、0.7:1~20:1の間の4つの異なるE:T比を試験した。そして、全ての細胞株について、γδT細胞と組み合わせたMOR00208の効果は、γδT細胞と組み合わせたIgG1対照よりも優れていた(MOR00208>IgG1対照)。用量滴定実験中に観察されたように、試験された抗体の殺傷活性は増加し、最も明確な効果は、6.7:1及び20:1という試験された最高のE:T比で見出された。特に、非特異的殺傷が最も低い2つの細胞株(Mino及びJeko)では、細胞殺傷活性に対する抗体の特異的寄与が最も高いことが観察された。両方の細胞株において、MOR00208活性はIgG1対照と統計的に有意に異なっていた(
図1)。非特異的殺傷がより高い3つの細胞株では、活性プロファイルは類似していたが(MOR00208>IgG1対照)、特異的効果は限定的であった(
図2)。
【0119】
原発性患者細胞を用いた細胞毒性アッセイ
細胞株で行われたように2人のCLL、2人のMCL及び1人のB-ALL患者由来の原発性腫瘍細胞を分離して、さまざまなE:T比(0.7:1~20:1)の単一ドナーのγδT細胞、及び1μg/mlのCD19標的抗体とインキュベートした。(
図3及び
図4)。細胞株での観察と一致して、MOR00208は、γδT細胞の殺傷活性への明確な特異的寄与を示した。この寄与は、全ての原発性細胞のE:T比とともに増大し、試験された最高のE:T比である20:1で最も顕著であった。原発性の患者の細胞は、1回の実験でのみ試験した。
【0120】
結論
要約すると、γδT細胞は、この研究でFc増強CD19標的抗体MOR00208で実証されたように、抗体ベースの腫瘍治療における潜在的なエフェクター細胞集団であることが判明した。MOR00208は、いくつかのリンパ腫及び白血病細胞株、ならびに原発性の患者由来のCLL、MCL、及びB-ALL細胞に対するγδT細胞の存在によって媒介される強力な抗腫瘍活性を示し、リンパ腫及び白血病治療のための有望なアプローチとして、MOR00208とγδT細胞とを組み合わせるための妥当な根拠を提供する。
【配列表】
【国際調査報告】