(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】硫化亜鉛と硫化銅に二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを組み合わせて含む等速ジョイント用グリース組成物、それの使用、及びそれを含む等速ジョイント
(51)【国際特許分類】
C10M 125/22 20060101AFI20221221BHJP
C10M 169/06 20060101ALI20221221BHJP
C10M 117/00 20060101ALI20221221BHJP
C10M 115/08 20060101ALI20221221BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20221221BHJP
C10M 107/02 20060101ALI20221221BHJP
C10M 107/34 20060101ALI20221221BHJP
C10M 105/32 20060101ALI20221221BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20221221BHJP
C10N 10/12 20060101ALN20221221BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20221221BHJP
C10N 10/02 20060101ALN20221221BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20221221BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20221221BHJP
【FI】
C10M125/22
C10M169/06
C10M117/00
C10M115/08
C10M101/02
C10M107/02
C10M107/34
C10M105/32
C10N10:04
C10N10:12
C10N50:10
C10N10:02
C10N30:06
C10N40:04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525558
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(85)【翻訳文提出日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2019079682
(87)【国際公開番号】W WO2021083511
(87)【国際公開日】2021-05-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507334967
【氏名又は名称】ゲーカーエン ドライブライン インターナショナル ゲゼルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】GKN DRIVELINE INTERNATIONAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エー, ジーシェン
(72)【発明者】
【氏名】リンドラー, クリストフ
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104AA19C
4H104BA07A
4H104BB14B
4H104BB33A
4H104BB41A
4H104BE13B
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104FA01
4H104FA02
4H104FA06
4H104LA03
4H104PA03
4H104QA18
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、主にCVジョイントに使用するグリース組成物を提供し、ラバー(CR)または熱可塑性エラストマー(TPC-ET)からできたシーリングブーツとの適合性を有し、また、CVジョイント全体での耐久性の向上を図ることである。
【解決手段】 本発明は、主に自動車の駆動ラインに使用される等速ジョイント(CVジョイント)、特にボールジョイントおよび/または三脚ジョイント用のグリース組成物に関する。等速ジョイント用のグリース組成物は、少なくとも1種のベースオイル、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
等速ジョイント用グリース組成物であって、
a)少なくとも1種のベースオイル、
b)少なくとも1種の増粘剤、
c)硫化亜鉛、
d)少なくとも1種の硫化銅、および
e)二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステン、
からなることを特徴とするグリース組成物。
【請求項2】
硫化亜鉛、硫化銅、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングブジンの合計量が、グリース組成物全量に対する重量%で、約0.5重量%と約7重量%の間の量であることを特徴とする請求項1に記載のグリース組成物。
【請求項3】
グリース組成物全量に対する重量%で、約0.05重量%と約2.0重量%の間の量の硫化亜鉛を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のグリース組成物。
【請求項4】
少なくとも1種の硫化銅が、銅(II)硫化物(CuS)であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の1項に記載のグリース組成物。
【請求項5】
グリース組成物全量に対する重量%で約0.01重量%と約1.5重量%の間の量の少なくとも1種の硫化銅を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4の1項に記載のグリース組成物。
【請求項6】
グリース組成物全量に対する重量%で約0.5重量%と約5.0重量%の間の量の二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5の1項に記載のグリース組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の有機硫黄添加物を、グリース組成物全量に対する重量%で約0.1重量%と約1.5重量%の間の量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のグリース組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の有機硫黄添加剤が、硫黄を、有機硫黄添加剤全量に対する重量%で、少なくとも10重量%の量で含むことを特徴とする請求項7に記載のグリース組成物。
【請求項9】
少なくとも1種の有機リン添加剤を、グリース組成物全量に対する重量%で約0.1重量%と約1.5重量%の間の量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のグリース組成物。
【請求項10】
グリース組成物が、さらに少なくとも1種の抗酸化剤を、グリース組成物全量に対する重量%で約0.1重量%と約2.0重量%の間の量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のグリース組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の尿素増粘剤、少なくとも1種のリチウム石鹸および/または少なくとも1種のリチウム錯体石鹸の群から選ばれる少なくとも1種の増粘剤を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のグリース組成物。
【請求項12】
グリース組成物が、さらに少なくとも1種のリンを含まないモリブデン錯体を、グリース組成物全量に対する重量%で約0.1重量%と約3.0重量%の間の量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載のグリース組成物。
【請求項13】
少なくとも1種のベースオイルが、ポリ-α-オレフィン、金属ポリ-α-オレフィン、ナフテンオイル、パラフィンオイル、ポリエーテルポリオールおよび/または合成有機エステルを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載のグリース組成物。
【請求項14】
少なくとも1種のベースオイルが、少なくとも1種のパラフィンを、ベースオイル全量に対する重量%で約30重量%と約85重量%の間の量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載のグリース組成物。
【請求項15】
少なくとも1種のベースオイルが、少なくとも1種のナフテンオイルを、ベースオイル全量に対する重量%で約15重量%と約80重量%の間の量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載のグリース組成物。
【請求項16】
それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、
少なくとも1種のベースオイルを約60重量%と約95重量%の間の量、
少なくとも1種の増粘剤を約2重量%と約20重量の間の量%、
硫化亜鉛を約0.05重量%と約2.0重量%の間の量、
少なくとも1種の硫化銅を約0.01重量%と約1.5重量%の間の量、
二硫化モリブデンおよび/または二硫化物タングステンを約0.5重量%と5.0重量%の間の量、
有機硫黄添加物を約0.1重量%と約1.5重量%の間の量、
および少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.1重量%と約1.5重量%の間の量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか1項に記載のグリース組成物。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16のいずれか1項に記載のグリース組成物を、等速ジョイント、特にボールジョイントおよび/または三脚ジョイントに使用することを特徴とするグリース組成物の使用。
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のいずれか1項に記載のグリース組成物を含むことを特徴とする等速ジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車の駆動ラインに使用される等速ジョイント(CVジョイント)、特にボールジョイントおよび/または三脚ジョイント用のグリース組成物に関する。また、本発明は、このグリース組成物を含む等速ジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
前輪駆動車は、ドライブシャフト(ハーフシャフト)の両端にCVジョイントを有している。内側CVジョイントは、ドライブシャフトをトランスミッションに接続している。外側CVジョイントは、ドライブシャフトを車輪に接続している。多くの後輪駆動車および四輪駆動車やトラックは、CVジョイントを有している。CVジョイントまたはホモキネティックジョイントは、ドライブシャフトが角度を変えて、好ましくは摩擦または遊びをさほど大きくせずに一定の回転速度でパワーを伝達できるようにしている。前輪駆動車では、CVジョイントは曲るときに前輪にトルクを与える。
【0003】
最も一般的に使用されているCVジョイントには、ボール型と三脚型の2種類がある。前輪駆動車では、ボールタイプCVジョイントをドライブシャフト(外側CVジョイント)の外側に使用し、三脚型CVジョイントを主に内側(内側CVジョイント)に使用する。CVジョイント内の構成部品の動きは、ローリングとスライディングの組み合わせで複雑である。ジョイントにトルクがかかっているとき、その部品にも負荷がかかり、その部品の接触面で摩耗するだけでなく、表面間でローリング接触疲労と大きな摩擦力を生じることがある。
CVジョイントには、通常ベローズ形状のエラストマー素材のシーリングブーツがあり、一端がジョイントの外側に接続され、他端がCVジョイントの相互接続または出力シャフトに接続されている。このシーリングブーツは、ジョイントのグリースを保持し、汚れや水の侵入を防いでいる。
【0004】
グリースは、摩耗や摩擦を減らし、早期にCVジョイントのローリング接触疲労が始まるのを防ぐのに必要であるのみならず、シーリングブーツを形成するエラストマー材との適合性も必要である。そうでないと、シーリングブーツ材の劣化でシーリングブーツが早期に破損を起こし、グリースの離散と最終的にCVジョイントの破損となる。これは、保護シーリングブーツに亀裂や破損があったときCVジョイントがもつ最も一般的な問題の1つである。これが起こると、グリースの剥離に加え、水分や汚れが入り、CVジョイントがより速く摩耗し、最終的に潤滑不良と腐食により駄目になる。通常、外側CVジョイントシーリングブーツは、内側のものより多くの動きに耐えなければならないので先に破壊する。CVジョイント自体は、摩耗すると修復が出来ず、新しいまたは再調整した部品と置き換える必要がある。CVジョイントシーリングブーツに使用される材料の主要な2つのタイプは、ポリクロロプレンラバー(CR)と熱可塑性エラストマー(TPE)、特にエーテル-エステルブロック共重合熱可塑性エラストマー(TPC-ET)である。
【0005】
典型的なCVジョイントグリースは、ナフテン(飽和環)とパラフィン(直鎖および分岐の飽和鎖)の鉱物オイルをブレンドしたベースオイルを含んでいる。合成オイルを添加してもよい。このベースオイルは、CRとTPC-ETで作られたシーリングブーツの劣化(膨張または収縮)に大きな影響を与える事が知られている。鉱物オイルと合成オイルのベースオイルは、シーリングブーツ材から可塑剤およびその他油溶性保護剤を抽出する。パラフィン系鉱物オイルとポリ-α-オレフィン(PAO)合成ベースオイルは、特にシーリングブーツにほとんど拡散しないが、ナフテン系鉱物オイルや合成エステルはラバーやTPC-ETなどのシーリングブーツ材中に拡散し、可塑剤として作用し、膨潤を引き起こすことがある。可塑剤または可塑剤組成物がナフテン系鉱物オイルに置き換わると、特に低温でのシーリングブーツ性能を大幅に低下させ、低温クラッキングによってシーリングブーツを破損させ、最終的にCVジョイントの破損となることがある。大きな膨潤や軟化が起きたとき、速度安定性の悪さおよび/または過度な径方向の拡張によってシーリングブーツの最大高速能力が低下する。
【0006】
前述の問題を解決するために、特許文献1は、高温で使用する潤滑グリースを開示している。このグリースは、グリース組成物全量に対して、少なくとも1種の鉱物オイルと少なくとも1種の合成オイルからなるベースオイル混合物を60から90重量%、増粘剤として少なくとも1種の脂肪族アミンと少なくとも1種のイソシアネートまたは少なくとも1種のジイソシアネートとの反応生成物である少なくとも1種の尿素化合物を5から16重量%、カルシウム錯体グリースを2から20%重量、二硫化モリブデンを1から4重量%、グラファイト粉末を0.2から1重量%、ポリテトラフルオロエチレン粉末を0.2から1重量%;モリブデンジチオカルバメート(MoDTC)およびモリブデンジチオフォスフェートから選ばれる少なくとも1種の有機モリブデン化合物の固体粒子を0.2から1重量%、金属不活性化剤を2重量%以下、および腐食抑制剤を2重量%以下、からなっている。
しかしながら、特許文献1によるグリース組成物のブーツ適合性テストで測定されたシーリングブーツ適合性、およびCVジョイント全体の寿命は、まだ改善する必要がある。これは、特に標準マルチブロックプログラム(SMBP)テストで測定されたCVジョイント寿命である。このグリース組成物に開示された添加剤は、シーリングブーツ材と反応して早期の老化となり、シーリングブーツの早すぎる破損となる虞があり、さらなる改善が必要である。特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、環境安定性が高く、また生殖毒性があるためにリサイクルされなければならないし、輸出は、今日では認可の対象となっている。さらに、PTFEは、機械的ストレスと高温で分解することが知られている。特に、アルカリ金属はPTFEと反応し、その反応分解生成物が潤滑油グリース中に見出されている。アルカリ金属は、増粘剤またはグリース製剤に使用され、例えば、特許文献1ではカルシウム錯体グリースが使用されている。CVジョイントの使用で生成した分解生成物は、シール材を攻撃して早期の破損につながるだけでなく、有毒であるPTFE蒸気となる虞もある。これらの事実に基づいて、グリースの適合性を改善し、シーリングブーツ材料の寿命を伸ばすことが望まれている。
【0007】
特許文献1のように、市販のCVジョイント潤滑剤のほとんどは、モリブデンジチオフォスフェート(MoDTP)またはモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)を含んでおり、耐摩擦、耐摩耗、EP性能を与え、特にCVジョイントの走行早期(ラン-イン)での耐摩擦特性を改善している。さらに、しばしば使用されるモリブデンジアルキルジチオフォスフェート(MoDTP)、亜鉛ジアルキルジチオフォスフェート(ZnDTP)および銅ジアルキルジチオフォスフェート(CuDTP)は、CVジョイントの金属面上の摩擦化学反応に基づいた耐摩耗性能を与えている。これにより、金属表面に層が形成され、銅含有添加剤が関与する場合にはその形成された層が金属表面を修復する。
【0008】
特に、ZnDTP、CuDTP、MoDTPなどの添加剤を含むジチオフォスフェート(DTP)を使用することの欠点は、これらが、シール材、特にシーリングブーツとの良好な適合性を示さないことである。ZnDTP、CuDTP、およびMoDTPのジチオフォスフェートは、高温でシーリングブーツ材と反応し、シーリングブーツ材を分解する。さらに、ZnDTPに含まれる硫黄およびリンは、化学的に活性化され、シーリングブーツ材のさらなる老化につながる。したがって、多量に含まれる場合には、グリースは、CVジョイントに使用されているシーリングブーツの早期の破損をもたらす虞がある。
【0009】
このように、全体の潤滑性を維持しつつ、CVジョイント全体の寿命を延ばすために、少なくとも、前述のグリース組成物の成分のシーリングブーツ材に及ぼす負の化学的影響を低減することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、主にCVジョイントに使用するグリース組成物を提供し、ラバー(CR)または熱可塑性エラストマー(TPC-ET)からできたシーリングブーツとの適合性を有し、また、CVジョイント全体での耐久性の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、等速ジョイント用グリース組成物、好ましくは少なくとも1種のTPE、さらにより好ましくは少なくとも1種のTPC-EPからなるブーツと共に用いて解決される。
このグリース組成物は、
a)少なくとも1種のベースオイル、
b)少なくとも1種の増粘剤、
c)硫化亜鉛、
d)少なくとも1種の硫化銅、および
e)二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステン、
からなっている。
【発明の効果】
【0013】
本発明による、硫化亜鉛と硫化銅を二硫化モリブデンおよび/または二硫化物タングステンと組み合わせたグリース組成物は、摩擦係数と摩耗の低下を示し、さらにCVジョイントの寿命耐久性および適合性が増す効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1a】表2に示した摩擦の実験結果で、組成物B1からB3および市販グリースC1およびC2における硫化銅と組み合わせた硫化亜鉛の添加効果について、本発明グリース組成物A1、A2およびA3と比較して示している。
【
図1b】表2に示した摩耗の実験結果で、組成物B1からB3および市販グリースC1およびC2における硫化銅と組み合わせた硫化亜鉛の添加効果について、本発明グリース組成物A1、A2およびA3と比較して示している。
【
図2】表2に示したCVジョイントの寿命耐久性の実験結果で、本発明グリース組成物A1、A2およびA3について、組成物B1からB3および市販グリースC1およびC2と比較して示している。
【
図3】表3に示した実験結果で、本発明グリース組成物A1、A2およびA3のシーリングブーツ材との適合性テストについて、組成物B1および市販グリースC1と比較して示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
CVジョイントに用いる本組成物の利点は、硫化亜鉛と少なくとも1種の硫化銅に二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを組み合わせた組成が、相乗効果を示す点である。硫化亜鉛は、硫黄により与えられる良好なEP性能と、亜鉛によって与えられる耐疲労性の2つの主要特性をもたらしている。また、硫化銅は、硫黄によって与えられる良好なEP性能と、銅によって与えられる潜在的な表面修復機能と改善されたトライボロジーの2つの主要特性ともたらしている。これにより、銅を含む硫化銅は、摩耗を減らし摩擦係数を低減させるだけでなく、高圧下で摩耗面を修復し、金属化合物、すなわちCVジョイント全体の寿命を延ばすことになると考えられる。さらに、二硫化モリブデンおよび二硫化タングステンは、摩擦を低減し、耐疲労性を与え、グリース組成物のEP性能を向上させることが証明されている。
本発明者らは、硫化亜鉛と少なくとも1種の硫化銅に二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを組み合わせたことを特徴とするグリース組成物は、添加剤ZnDTP、CuDTP、またはMoDTPを効果的に置き換えることを見出した。上記した相乗効果は、添加剤を低使用量で高い潤滑性能が得られ、シーリングブーツ材との適合性が良く、摩耗と摩擦係数を低くし、CVジョイントの寿命を伸ばす。これは、例えば標準マルチブロックプログラム(SMBP)テストによって証明できる。特に、CVジョイントの高負荷での耐久性、ならびにCVジョイントシーリングブーツ材との適合性は、本発明によるグリース組成物によって改善される。
【0016】
金属硫化物は、機械的せん断や熱を受けた際に、ZnDTP、CuDTP、MoDTPのような有機金属塩の場合より結合が安定しているという特徴がある。有機金属塩は、高負荷で無機塩や有機ラジカルに分解することはよく知られている。これとは対照的に、硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンと組み合わせた硫化亜鉛と硫化銅は、高負荷での適用下で分子内に臨界的な化学活性を持たない安定した化合物である。有利なのは、全ての硫化物のシーリングブーツ材との反応は、潤滑性が維持されている間最小限に抑えられることである。
【0017】
さらに、金属硫化物中の硫黄量は、ZnDTP、CuDTP、またはMoDTPなどの有機金属錯体中よりも多い。例えば、硫化亜鉛は、グリース組成物全量に対する重量%(本発明に関連して重量による%または重量パーセントを、以下重量%という用語を使用する)で硫化亜鉛0.25重量%中に約1700ppmの亜鉛を与え、一方、ZnDTP2重量%中に同量の亜鉛が存在する。硫化亜鉛は無機塩であるので、ZnDTP、CuDTP、およびMoDTPから知られている熱や高負荷での有機分解物を生成しない。それ故、硫化亜鉛とシーリングブーツ材の反応は最小限に抑えられ、かつ摩擦化学特性がある。
【0018】
本発明のグリース組成物は、添加剤として、その添加量が少ない点で有利である。硫化亜鉛と硫化銅は、相乗的に二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンの摩擦化学特性を増強することにより、これら添加剤の必要量をさらに少くしている。ここに述べた添加量の減少は、また本発明グリース組成物の製造コストの低下につながっている。
【0019】
本発明者らは、適量の二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンが、硫化亜鉛および硫化銅に耐摩耗性を与え、特に、耐摩擦特性を改善することを見出した。この点に関して、本発明者は、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを組み合わせた硫化亜鉛と硫化銅は、有機硫黄含有添加剤および有機リン含有添加剤と組み合わせて、CVジョイントの早期走行時(ラン-イン)での摩擦学的性能を向上することを見出した。その結果、有機硫黄含有添加剤と有機リン含有添加剤の公知の相乗効果が摩擦学的性能を向上させることのみならず、硫化亜鉛と硫化銅が二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンと組み合わさって相乗的に作用する。この相乗効果は、SMBP試験によって測定された等速ジョイントの耐久性によってよく示される。
【0020】
請求したグリース組成物に含まれる成分に関して「重量パーセント」または「重量%」の用語を使用しているが、この「重量パーセント」という用語は、別途指示している場合を除き、この仕様全体のグリース組成物全量に対する1つ以上の成分の量である。記載「重量%」は、別途指示しない場合に重量パーセントの略称として本発明全体を通して使用する。
【0021】
本発明の文脈において、数値または範囲に関連する「約」および「およそ」という記載は、許容範囲として理解されるべきであり、これは、当業者が一般的な知識に基づいて、発明全体の観点から共通または合理的と考えるであろう。特に、「約」と「およそ」という記載は、指定値に対して±20%、好ましく±10%、さらに好ましくは±5%の許容範囲を指している。また、様々な範囲の下端値と上端値、特に重量パーセント範囲は、これに限定されないが、本発明におけるクレームは、新たに、その範囲を定義するために互いに組み合わせてもよい。
【0022】
さらに、本発明の文脈において、数値または範囲が記載された規格、規範、または標準化プロトコル、例えば.ISO、ASTMの適用は、本発明の出願時での規格、規範、または標準化プロトコルの最新更新版を用いてるとして理解される。
【0023】
本発明によるグリース組成物に使用される少なくとも1種のベースオイルは、好ましくは、ポリ-α-オレフィン、金属ポリ-α-オレフィン、ナフテンオイル、パラフィンオイル、ポリオールおよび/または合成有機エステルを含んでいる。本発明に係る少なくとも1種のベースオイルとして、好ましくは米国特許第6,656,890号明細書に開示しているベースオイルを使用でき、その開示を引用して本明細書に組み込んでいる。しかし、さらなる任意の種類のベースオイル、特にミネラルオイルのブレンド、合成オイルのブレンド、またはミネラルオイルと合成オイルの混合物のブレンドが使用できる。この少なくとも1種のベースオイルは、好ましくは、動粘度が40℃で約32mm2/秒と約250mm2/秒の間、100℃で約5mm2/秒と約25mm2/秒の間である。
【0024】
ミネラルオイルは、好ましくは少なくとも1種のナフテンオイルおよび/または少なくとも1種のパラフィンオイルからなる群から選ばれる。本発明で使用できる合成オイルは、少なくとも1種のポリ-α-オレフィンおよび/または少なくとも1種の有機エステルからなる群から選ばれる。有機の合成エステルは、好ましくは脂肪族アルコールに基づくサブグループのジカルボン酸誘導体である。脂肪族アルコールは、好ましくは炭素原子2から20の第一級炭素鎖、直鎖または分岐炭素鎖を有している。
【0025】
有機合成エステルは、好ましくは、セバシン酸-ビス(2-エチルヘキシルエステル)(“ジオクチルセバケート”(DOS))(sebacicacid-bis(2-ethylhexylester))(“dioctyl sebacate”(DOS))、アジピン酸-ビス(2-エチルヘキシルエステル(“ジオクチルアゼレート”(DOA))(adipic acid-bis-(2-ethylhexylester))(“dioctyl adipate”(DOA))、ジオクチルフタレート(DOP)(dioctyl phthalate(DOP))および/またはアゼライン酸-ビス(2-エチルヘキシルエステル)(“ジオクチルアゼレート”(DOZ))(azelaic acid-bis(2-ethylhexylester))(“dioctyl azelate”(DOZ))からなる群から選ばれる。
【0026】
ポリ-α-オレフィンがベースオイル中に存在する場合、このポリ-α-オレフィンは、1-ドデセンオリゴマー(1-dodecene oligomer)、1-デセンオリゴマー(1-decene oligomer)、1-オクテン(1-octene)またはそれらの混合物からなる群から選択され、さらに好ましくは1-オクテン(1-octene)、ポリ-1-デセンオリゴマー(poly-1-decene oligomer)、ポリ-1-ドデセンオリゴマー(poly-1-dodecene oligomer)またはこれらの混合物を含むコポリマーであり、ポリ-1-デセンオリゴマー(poly-1-decene oligomer)とポリ-1-ドデセンオリゴマー(poly-1-dodecene oligomer)はダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、またはさらに大きいオリゴマーであることができる。ポリ-α-オレフィンは、好ましくは40℃で約2センチストークスから約60センチストークスの範囲の動粘度(ASTM-D445に従って測定される)を有しているものが選ばれる。
【0027】
少なくとも1種のベースオイルに対して選ばれるナフテンオイルは、好ましくは動粘度が40℃で約3mm2/秒から約370mm2/秒、より好ましくは約20mm2/sから約150mm2/秒の範囲である。密度(ASTM-D1250に従って測定)は、15.6℃で約0.9g/cm3から約1.0g/cm3である。
【0028】
少なくとも1種のベースオイル中に存在するパラフィンオイルは、好ましくは、ポリオレフィンの直鎖、分岐および環状の飽和アルカン、水素異性化フィッシャー・トロプシュワックス(Fischer-Tropsch wax)、フィッシャー・トロプシュオリゴマー化オレフィン(Fischer-Tropsch oligomerized olefins)を含む群から選ばれ、好ましくは、イソパラフィン、単環および/または多環構造を含むシクロパラフィンである。パラフィンオイルは、好ましくは動粘度が40℃で約9mm2/秒から約170mm2/秒、さらに好ましくは40℃で約50mm2/秒から約130mm2/秒の範囲である。
【0029】
本発明によるグリース組成物中に存在する少なくとも1種のベースオイルは、本発明によるグリース組成物全量に対して約60重量%から約95重量%、さらに好ましくは約63重量%から約93重量%、さらに好ましくは約75重量%から約92.5重量%、さらに好ましくは約78重量%から約92重量%、そしてさらに好ましくは約79重量%から約92重量%である。少なくとも1種のベースオイルは、好ましくはベースオイル全量に対して、少なくとも1種のパラフィンオイルを約30重量%から約85重量%、さらに好ましくは約35重量%から約75重量%、さらに好ましくは約37重量%から約72重量%含んでいる。少なくとも1種のベースオイルは、好ましくは、少なくとも1種のナフテンオイルを、ベースオイル全量に対して約15重量%から約80重量%、さらに好ましくは約15重量%から約75重量%、さらに好ましくは約15重量%から約70重量%の量で含んでいる。
【0030】
本発明で使用されるベースオイルという用語は、ベースオイルが種々の成分からなるベースオイル組成物、特に、ポリ-α-オレフィン、ナフテンオイル、パラフィンオイル、および/または合成有機エステルを含むベースオイル組成物であってもよいという意味で理解される。少なくとも1種のベースオイルは、好ましくは、少なくとも1種のパラフィンオイルを、ベースオイル全量に対して約30重量%から約85重量%の量で、さらに好ましくは約35重量%から約75重量%の量で、さらに好ましくは約37重量%から約72重量%の量で含み、そして少なくとも1種のナフテンオイルを、ベースオイル全量に対して約15重量%から約70重量%の量で、さらに好ましくは約15重量%から約65重量%の量で、さらに好ましくは約15重量%から約62重量%の量で含んでいる。
【0031】
少なくとも1種の増粘剤は、好ましくはリチウム石鹸増粘剤または尿素増粘剤であり、そのうちリチウム石鹸増粘剤の使用が最も好ましい。リチウム石鹸増粘剤は、少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムの反応生成物である。増粘剤は、好ましくは、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、水素化ヒマシ油から形成される、または他の同様の脂肪酸またはこれら酸の混合物、またはこれら酸のメチルエステルから形成される単純リチウム石鹸であることができる。
【0032】
別に、リチウム錯体石鹸は、例えば、長鎖脂肪酸と錯化剤、例えば1種以上のジカルボン酸のホウ酸塩の混合物から形成して使用することができる。リチウム錯体石鹸の使用は、本発明によるグリース組成物を約180.℃の温度まで作動させることができ、一方、単純リチウム石鹸では、グリース組成物は約120℃の温度までしか作動できない。
【0033】
尿素増粘剤は、二尿素化合物やポリ尿素化合物から選ぶことができる。例えば、ジ尿素化合物は、モノアミンを、フェニレンジイソシアネート(phenylene diisocyanate)、ジフェニルジイソシアネート(diphenyl diisocyanate)、フェニルジイソシアネート(phenyl diisocyanate)、ジフェニルメタンジイソシアネート(diphenylmethane diisocyanate)、オクタデカンジイソシアネート(octadecane diisocyanate)、デカンジイソシアネート(decane diisocyanate)、およびヘキサンジイソシアネート(hexane diisocyanate)などのジイソシアネート化合物と反応させて得られる群から選ばれる。モノアミンの例は、オクチルアミン(octylamine)、ドデシルアミン(dodecylamine)、ヘキサデシルアミン(hexadecylamine)、オクタデシルアミン(octadecylamine)、オレイルアミン(oleylamine)、アニリン(aniline)、p-トルイジン(p-toluidine)、およびシクロヘキシルアミン(cyclohexylamine)である。ポリ尿素化合物は、ジアミンを、上述したジイソシアネートなどのジイソシアネートと反応させて得られる群から選ばれる。ジアミンは、エチレンジアミン(ethylenediamine)、プロパンジアミン(propanediamine)、ブタンジアミン(butanediamin)、ヘキサンジアミン(hexanediamine)、オクタンジアミン(octanediamine)、フェニレンジアミン(phenylenediamine)、トリレンジアミン(tolylenediamine)、およびキシレンジアミン(xylenediamine)がある。または尿素増粘剤は、p-トルイジンまたはアニリンなどのアリールアミン、シクロヘキシルアミンまたはこれらの混合物をジイソシアネートと反応して得られる群から選ばれる。ジ尿素化合物のアリール基は、存在する場合、好ましくは炭素原子が6または7からなっている。
【0034】
しかしながら、リチウム石鹸増粘剤や尿素増粘剤など前述の増粘剤全ての混合物も使用できる。少なくとも1種の増粘剤は、好ましくは本発明によるグリース組成物全量に対して約2重量%から約20重量%、さらに好ましくは約4.0重量%から約17.0重量%の量である。
【0035】
硫化亜鉛は、固体状態で存在する。硫化亜鉛は、自然界に立方晶閃亜鉛鉱または六方晶ウルツ鉱とし存在する。好ましくは工業的に製造された硫化亜鉛粉末が使用されるが、結晶構造は、それ以上区別しない。好ましい硫化亜鉛は、ISO-13320に関するCLIAS 1064 Nassによって主粒径D90が0.80μmの無色無臭の粉末である。さらに、20.℃の密度が最大4.0g/cm3、融点が800℃以上(昇華)である。分解温度が600℃以上である。本発明によれば、硫化亜鉛は、本発明によるグリース組成物全量に対して約0.05重量%から約2.0重量%の量で存在し、さらに好ましくは約0.1重量%から約1.0重量%の量である。
【0036】
少なくとも1種の硫化銅は、好ましくは硫化銅(II)である。このグリース組成物は、硫化銅(I)(二硫化銅、Cu2S)を含んでいてもよい。少なくとも1種の硫化銅は、固体状態で存在する。自然界で一硫化銅は、鉱物銅藍として存在する。二硫化銅は、自然界では、銅光沢としても知られる単斜晶系結晶化鉱物輝銅鉱と正方晶結晶鉱物ウィヤンジィト(Wuyanzhiite)として存在する。好ましくは工業的に生産された硫化銅粉末が使用されるが、結晶構造は、それ以上区別しない。
【0037】
グリース組成物において、硫化銅粉末は、好ましくは、結晶、分散、または水またはエタノール中の溶液としても用いられる。グリース組成物において、硫化銅(II)は、好ましくはISO-13320に関するCLIAS 1064 Nassで測定した粒径D90が15μmの粉末として使用される。さらに、20℃の密度が4.6g/cm3以下である。使用される硫化銅(I)は、好ましくは、ISO-13320に関するCLIAS 1064 Nassで測定された粒径D90が53.6μmに粉末化する。さらに、20℃の密度が5.5g/cm3以下である。少なくとも1種の硫化銅は、本発明によるグリース組成物全量に対する重量%で約0.01重量%から約1.5重量%、さらに好ましくは約0.1重量%から約1.0重量%の間の量である。
【0038】
本発明のグリース組成物は、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを含んでいる。二硫化モリブデン(硫化モリブデン(IV)、MoS2)は、好ましくは硫化モリブデン(VI)(MoS3)および/またはモ硫化リブデン(V)(Mo2S5)で使用される。グリース組成物において、好ましくは、二硫化モリブデン超微粉末が、結晶、分散、または水またはエタノール中の溶液としても用いられる。好ましく使用される超微細の二硫化モリブデン粉末は、純度が97重量%、フィッシャー数が0.40μmから0.50μm、さらにISO-13320標準化レーザー回折器マイクロトラック(Microtrac)X1002による粒径分布D90が7.0μm、および嵩密度が0.4cm3/gを有するものである。硫化モリブデンを酸化する前に保護するために、好ましくは抗酸化剤が使用される。
【0039】
二硫化タングステン(硫化タングステン(IV)、WS2)は、二硫化モリブデン(MoS2)のような固体状態、好ましくは結晶、分散または水またはエタノール中の溶液であるより濃い灰色の粉末として存在しているのがよい。濃い灰色の粉末は、好ましくは平均粒径D90が4μm、密度が7.5g/cm3である。二硫化タングステンは、熱安定性の化合物である。二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンは、摩擦減少および耐摩耗性能、そしてEP性能を与える。
【0040】
本発明によるグリース組成物において、硫化亜鉛と硫化銅の二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンとの組合わせは、CVジョイントの耐摩耗性および耐摩擦特性に対するSRV試験において相乗効果を示す。二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンは、本発明のグリース組成物全量に対して約0.5重量%から約5.0重量%、さらに好ましくは約1.0重量%から約3.0重量%の量で存在している。硫化亜鉛、硫化銅、および二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンの合計量は、好ましくは本発明によるグリース組成物全量に対して約0.5重量%から約7重量%、さらに好ましくは約1.0重量%から約4重量%の間の量である。
【0041】
本発明のグリース組成物は、抗酸化剤、防錆剤、極圧(EP)調整剤、耐摩耗剤、およびオイル改質剤等の種々の公知グリース添加剤を含めることもできる。好ましくは、このグリース組成物中に以下のグリース添加剤が含まれる。
【0042】
本発明の好ましい実施形態で、硫黄含有EP改質剤および/またはリン含有EP改質剤を含む少なくとも1種のグリース添加剤は、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンの必要量を好ましく同時に下げることにより、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを組合せた硫化亜鉛と硫化銅の摩擦学的効果を高めている。本発明の文脈において、以下の説明では、硫黄含有EP改質剤の記載を有機硫黄添加剤とし、リン含有EP修飾剤の記載を有機リン添加剤としている。
【0043】
本発明の更なる好ましい実施形態で、少なくとも1種の有機硫黄添加剤がグリース組成物に含まれる。ZnDTP、CuDTPおよびMoDTPは、本発明では有機硫黄添加剤の用語に包含されると考えていない。さらに好ましい実施形態では、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、少なくとも1種の硫化オレフィン、アルキルチアジアゾールまたはその組合せを含む群から選ばれる。硫化オレフィンは、エチレン、プロピレン、1-ブタンおよび/または4-メチルペンテンのオレフィンモノマーを含んでいてもよい。アルキルチアジアゾールは、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾールおよび/または1,3,4-チアジアゾールのチアジアゾールモノマーであることができる。
【0044】
少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、本発明によるグリース組成物全量に対して約0.2重量%から約1.0重量%、さらに約0.5重量%から約0.7重量%の量で含まれている。少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは有機硫黄添加剤全量に対しての重量%で、硫黄を少なくとも10重量%、さらに好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含んでいる。
【0045】
さらに好ましい実施形態で、本発明によるグリース組成物は、少なくとも1種の有機リン添加剤を有する。添加した有機リン添加剤は、金属塩でも、ZnDTP、CuDTPまたはMoDTPのような硫黄を含有するものでない。本発明の組成物に含有するリンは、避けるべき前述の添加剤に比べて活性が低くなければならない。。最も重要なことは、少なくとも1種の有機リン添加剤はシーリングブーツ材と適合しており、有機リン添加剤がシーリングブーツの分解やシーリングブーツ材の膨潤または収縮を引き起こさないことである。
【0046】
少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくはリン酸(H3PO4)の誘導体であり、例えば全水素原子がイソブチルによって置換されたイソブチルフォスフェート(TiBP)など三置換有機リン酸塩を含む群から選ばれる。この特別な設計は、リン酸の1つまたは2つの水素原子が有機側鎖によって置換された通常のリン添加剤と比較して比較的不活性である少なくとも1種の有機リン添加剤を提供する。三置換有機リン添加剤の好ましい例としてのトリ-イソブチルリン酸(TiBP)は、高いEP性能および温度に依存しない粘度を提供し、SMBPテストによって確かめられたCVジョイントの長寿命をもたらすシーリングブーツ材との相互作用が小さい。少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは本発明によるグリース組成物全量に対して約0.05重量%から約1.5重量%、さらに好ましくは約0.2重量%から約1.0重量%までの間の量で含まれる。
【0047】
本発明の更なる好ましい実施形態で、グリース組成物に少なくとも1種の抗酸化剤が存在する。少なくとも1種の抗酸化剤として、本発明のグリース組成物は、アミン、好ましくは芳香族アミン、より好ましくはベンザミン(benzamine)、2,4,4-トリメチルペンテンと反応して得たN-フェニル化合物、またはオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選ばれ、より好ましくは、ジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、またはそれらの混合物を含んでいる。
【0048】
少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくは動粘度(ASTM-D445による)が40℃で約250mm2/秒から約370mm2/秒の範囲で選ばれ、および密度(ASTM-D1298による)が約0.9から約1.0g/cm3であるものが選ばれる。酸化に伴うグリース組成物の劣化を防止するため、少なくとも1種の抗酸化剤が使用される。本発明によるグリース組成物は、少なくとも1種のベースオイルおよび/または二硫化モリブデンの酸化劣化を抑え、グリース組成物の寿命を延ばし、従ってCVジョイントの寿命を延ばすために、少なくとも1種の抗酸化剤を、グリース組成物全量に対して約0.1重量%から約2重量%の範囲で含むことができる。少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくは本発明によるグリース組成物全量に対して約0.1重量%から約2.0重量%、さらに好ましくは約0.2重量%から約1.5重量%の間の量で含まれる。
【0049】
本発明の更なる好ましい実施形態で、本発明において少なくとも1種のリンを含まないモリブデン錯体、好ましくはモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)を含むことができる。MoDTCは、好ましくは以下の化学式1である。
【化1】
ここで、XまたはYはSまたはOを表し、R
9からR
12のそれぞれは同じまたは異なるものでそれぞれ炭素原子数が3から20の第一級(直鎖)または第二級(分岐鎖)アルキル基を表す。少なくとも1種のリンを含まないモリブデン錯体は、固体MoDTCとして存在する。MoDTCは、本発明によるグリース組成物全量に対する重量%で、好ましくは約0.1重量%から約3.0重量%、更に好ましくは約0.5重量%から約2.0重量%、さらに好ましくは約0.8重量%から約2.0重量%の量である。本発明の更に好ましい実施形態で、この組成物は、有機モリブデン含有化合物を含んでいない。
【0050】
さらに、本発明は、特許請求の範囲に記載したように、本発明よるグリース組成物を、CVジョイント、特にボールジョイントおよび/または三脚ジョイントに使用すること、さらにグリース組成物を含むCVジョイントに及んでいる。CVジョイントは、特に、シーリングブーツを包含し、本発明によるグリース組成物で充填したシーリングブーツを少なくとも部分的に、ジョイントに割り当てられた第1の接触領域を有するシーリングブーツと、シャフトに割り当てられた第2の取付け領域を包含する。
シーリングブーツは、ジョイントおよび/またはシャフトの通常のクランプ装置で固定することができる。
【0051】
本発明の特に好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約60重量%から約95重量%、少なくとも1種の増粘剤を約2重量%から約20重量%、硫化亜鉛を約0.05重量%から約2.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.01重量%から約1.5重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約0.5重量%から約5.0%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.1重量%から約1.5重量%、および少なくとも1種の有機リン添加剤を0.05重量%から約1.5重量%の間の量を含むことを定義している。
【0052】
本発明の更なる好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約60重量%から約95重量%、少なくとも1種の増粘剤を約2重量%から約20重量%、硫化亜鉛を約0.05重量%から約2.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.01重量%から約1.5重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約0.5重量%から約5.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.1重量%から約1.5重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.05重量%から約1.5重量%、そして少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2.0重量%の間の量を含むことを定義している。
【0053】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約60重量%から約95重量%、少なくとも1種の増粘剤を約2重量%から約20重量%、硫化亜鉛を約0.05重量%から約2.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.01重量%から約1.5重量%、二硫化物モリブデンおよび/または二硫化物タングステンを約0.5重量%から約5.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.1重量%から約1.5重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.05重量%から約1.5重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2.0重量%の間の量を含んでいる。ここで、少なくとも1種のベースオイルは、ポリ-α-オレフィンおよび/または金属ポリ-αオレフィンおよび/またはナフテンオイルおよび/またはパラフィンオイルおよび/またはポリエーテルポリオールおよび/または合成有機エステルである。
【0054】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物の総量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約60重量%から約95重量%、
少なくとも1種の増粘剤を約2重量%から約20重量%、硫化亜鉛を約0.05重量%から約2.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.01重量%から約1.5重量%、二硫化物モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約0.5重量%から約5.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.1重量%から約1.5重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.05重量%から約1.5重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2.0重量%の間の量を含んでいる。
【0055】
ここで、少なくとも1種のベースオイルは、少なくとも1種のパラフィンオイルを、ベースオイル総量に対して約30重量%から約85重量%の間の量を含んでいる。パラフィンオイルは、好ましくはポリオレフィンの直鎖、分岐および環状の飽和アルカン、水素異性化フィッシャー・トロプシュワックス、フィッシャー・トロプシュオリゴマーオレフィンの群から選ばれ、好ましくはイソパラフィン、単環および/または多環構造を含むシクロパラフィンである。
【0056】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物の総量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約60重量%から約95重量%、少なくとも1種の増粘剤を約2重量%から約20重量%、硫化亜鉛を約0.05重量%から約2.0重量%、少なくとも1個の硫化銅を約0.01重量%から約1.5重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約0.5重量%から約5.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.1重量%から約1.5重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.05重量%から約1.5重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2.0重量%の間の量を含んでいる。ここで、少なくとも1種のベースオイルは、少なくとも1種のナフテンオイルを、ベースオイルの総量に対して約15重量%から約80重量%の間の量で含み、ナフテンオイルは、好ましくは飽和環状アルカン類を含む群から選ばれる。
【0057】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物の総量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約60重量%から約95重量%、少なくとも1種の増粘剤を約2重量%から約20重量%、硫化亜鉛を約0.05重量%から約2.0重量%、少なくとも1個の銅を含む硫化銅を約0.01重量%から約1.5重量%、二硫化物モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約0.5重量%から約5.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.1重量%から約1.5重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.05重量%から約1.5重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2.0重量%の間の量で含んでいる。ここで、少なくとも1種の増粘剤は、リチウム石鹸増粘剤と尿素増粘剤を含む群から選ばれ、リチウム石鹸増粘剤は、好ましくは少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムの反応生成物であり、そして尿素増粘剤は、ジウレアおよび/またはポリウレアの少なくとも1種の化合物である。
【0058】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物の総量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約60重量%から約95重量%、少なくとも1種の増粘剤を約2重量%から約20重量%、硫化亜鉛を約0.05重量%から約2.0重量%、少なくとも1個の硫化銅を約0.01重量%から約1.5重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約0.5重量%から約5.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.1重量%から約1.5重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.05重量%から約1.5重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2.0重量%の間の量で含んでいる。ここで、硫化亜鉛は固体状態である。
【0059】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物の総量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約60重量%から約95重量%、少なくとも1種の増粘剤を約2重量%から約20重量%、硫化亜鉛を約0.05重量%から約2.0重量%、少なくとも1個の硫化銅を約0.01重量%から約1.5重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約0.5重量%から約5.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.1重量%から約1.5重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.05重量%から約1.5重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2.0重量%の間の量で含んでいる。ここで、好ましくは少なくとも1種の硫化銅は、固体状態の硫化銅(II)(CuS)である。
【0060】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物の総量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約60重量%から約95重量%、少なくとも1種の増粘剤を約2重量%から約20重量%、硫化亜鉛を約0.05重量%から約2.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.01重量%から約1.5重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約0.5重量%から約5.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.1重量%から約1.5重量%、有機リン添加剤を約0.05重量%から約1.5重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2.0重量%の間の量で含んでいる。ここで、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンは、固体状態である。
【0061】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物の総量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約60重量%から約95重量%、少なくとも1種の増粘剤を約2重量%から約20重量%、硫化亜鉛を約0.05重量%から約2.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.01重量%から約1.5重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約0.5重量%から約5.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.1重量%から約1.5重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.05重量%から約1.5重量%、および約少なくとも1種の抗酸化剤を0.1重量%から約2.0重量%の間の量で含んでいる。ここで、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅の合計量は、グリース組成物の総量に対する重量%で、約0.5重量%から約7重量%の間、さらに好ましくは約1.0重量%から約4重量%の間の量である。
【0062】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物の総量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約60重量%から約95重量%、少なくとも1種の増粘剤を約2重量%から約20重量%、硫化亜鉛を約0.05重量%から約2.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.01重量%から約1.5重量%、二硫化物モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約0.5重量%から約5.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.1重量%から約1.5重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.05重量%から約1.5重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2.0重量%含んでいる。ここで、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を、有機硫黄添加剤全量に対する重量%で少なくとも10重量%、より好ましくは約20重量%から約70重量%の間の量で含んでいる。少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは少なくとも1つのアルキルチアジアゾール、またはエチレン、プロピレン、1-ブタンおよび/または4-メチルペンテンなどのオレフィンモノマーとの反応生成物から得られる硫化オレフィンを含む群から選ばれる。
【0063】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物の総量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約60重量%から約95重量%、少なくとも1種の増粘剤を約2重量%から約20重量%、硫化亜鉛を約0.05重量%から約2.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.01重量%から約1.5重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約0.5重量%から約5.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.1重量%から約1.5重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.05重量%から約1.5重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2.0重量%の間の量で含んでいる。ここで、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換有機フォスフェートから選ばれ、さらに好ましくはイソブチルフォスフェート(TiBP)である。
【0064】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルの約60重量%から約95重量%、少なくとも1種の増粘剤を約2重量%から約20重量%、硫化亜鉛を約0.05重量%から約2.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.01重量%から約1.5重量、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約0.5重量%から約5.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.1重量%から約1.5重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.05重量%から約1.5重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2.0重量%の間の量で含んでいる。ここで、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミンであり、より好ましくは芳香族アミン、さらに好ましくはベンザミンおよび/または2,4,4-トリメチルペンテンと反応したN-フェニル化合物、またはオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選ばれ、より好ましくは、ジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、またはこれらの混合物である。
【0065】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約60重量%から約95重量%、少なくとも1種の増粘剤を約2重量%から約20重量%、硫化亜鉛を約0.05重量%から約2.0重量%、硫化銅を約0.01重量%から約1.5重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約0.5重量%から約5.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.1重量%から約1.5重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤約0.05重量%から約1.5重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2.0重量%の間の量で含んでいる。ここで、少なくとも1種のリンを含まないモリブデン錯体は、好ましくは固体状態のモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)であり、MoDTCは、本発明よるグリース組成物全量に対して好ましくは約0.1重量%から約3.0重量%、さらに好ましくは約0.5重量%から約2.0重量%の間の量である。
【0066】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約1.0重量%から約3.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%の間の量で含んでいる。
【0067】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量%、二硫化モリブデンおよびタングステン二硫化物を約1.0重量%から約3.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%の間の量で含んでいる。ここで、少なくとも1種のベースオイルは、ポリ-α-オレフィンおよび/または金属ポリ-α-オレフィンおよび/またはナフテンオイルおよび/またはパラフィンオイルおよび/またはポリエーテルポリオールおよび/または合成有機エステルを含んでいる。
【0068】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステを約1.0重量%から約3.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%の間の量で含んでいる。ここで、少なくとも1種のベースオイルは、好ましくはベースオイル全量に対して少なくとも1種のパラフィンオイルを約30重量%から約85重量%の間の量を含み、その少なくとも1種のパラフィンオイルは、好ましくはポリオレフィンの直鎖、分岐および環状の飽和アルカン、水素異性化フィッシャー・トロプシュワックス、フィッシャー・トロプシュオリゴマー化オレフィンを含む群から選ばれ、好ましくはイソパラフィン、単環および/または多環構造を含むシクロパラフィンである。
【0069】
さらに好ましい実施形態では、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約1.0重量%から約3.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%の間の量で含んでいる。ここで少なくとも1種のベースオイルは、ベースオイル全量に対する重量%で、ナフテンオイルを約15重量%から約80重量%の間の量を含み、その少なくとも1種のナフテンオイルは、好ましくは飽和環状アルカン類を含む群から選ばれる。
【0070】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約1.0重量%から約3.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%の間の量で含んでいる。ここで少なくとも1種の増粘剤は、リチウム石鹸増粘剤と尿素増粘剤を含む群から選ばれ、リチウム石鹸増粘剤は、好ましくは少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、少なくともジウレアおよび/またはポリウレア化合物である。
【0071】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約1.0重量%から約3.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%の間の量で含んでいる。
【0072】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約1.0重量%から約3.0重量、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%の間の量で含んでいる。ここで、少なくとも1種の硫化銅は、好ましくは固体状態の硫化銅(II)(CuS)である。
【0073】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約1.0重量%から約3.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%の間の量で含んでいる。ここで、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンは固体状態で含まれている。
【0074】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約1.0重量%から約3.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量含んでいる。ここで、二硫化水素および/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅の合計量は、グリース組成物全量に対する重量%で約0.5重量%から約7重量%、好ましくは約1.0重量%から約4重量%の間の量である。
【0075】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約1.0重量%から約3.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%の間の量を含んでいる。ここで、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を、有機硫黄添加剤全量に対する重量%で少なくとも10重量%、さらに好ましくは約20重量%から約70重量%の間の量を含んでいる。この少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、またはエチレン、プロピレン、1-ブタンおよび/または4-メチルペンテンなどのオレフィンモノマーとの反応生成物からなる硫化オレフィンから選ばれる。
【0076】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約1.0重量%から約3.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%で含み、ここで少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換有機フォスフェート類から選ばれ、さらに好ましくはイソブチルフォスフェート(TiBP)である。
【0077】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約1.0重量%から約3.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%含んでいる。ここで少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミンであり、より好ましくは芳香族アミン、さらに好ましくはベンザミンおよび/または2,4,4-トリメチルペンテンと反応したN-フェニル化合物、またはオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選ばれ、より好ましくは、ジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、またはこれらの混合物である。
【0078】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルの約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約1.05重量%から約3.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%含んでいる。ここで、少なくとも1種のリンを含まないモリブデン錯体は、好ましく固体状態のモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)であり、MoDTCは、好ましくは本発明によるグリース組成物全量に対して約0.1重量%から約3.0重量%、さらに好ましくは約0.5重量%から約2.0重量%で含まれている。
【0079】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルの約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約1.0重量%から約3.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%含んでいる。ここで、少なくとも1種のベースオイルは、ポリ-α-オレフィンおよび/または金属ポリ-α-オレフィンおよび/またはナフテンオイルおよび/またはパラフィンオイルおよび/またはポリエーテルポリオールおよび/または合成有機エステルを含み、この少なくとも1種のベースオイルは、好ましくは少なくとも1種のパラフィンオイルを、ベースオイル全量に対する重量%で30重量%から85重量%含んでいる。少なくとも1種のパラフィンオイルは、好ましくはポリオレフィンの直鎖、分岐および環状の飽和アルカン、水素異性化フィッシャー・トロプシュワックス、フィッシャー・トロプシュオリゴマー化オレフィンを含む群から選ばれ、さらに好ましくはイソパラフィン、単環および/または多環構造を含むシクロパラフィンである。さらにこの少なくとも1種のベースオイルは、少なくとも1種のナフテンオイルを、好ましくはベースオイル全量に対する重量%で15重量%から約80重量%含んでいる。この少なくとも1種のナフテンオイルは、好ましくは飽和環状のアルカン類を含む群から選ばれる。
【0080】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルの約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約1.0重量%から約3.0重量、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%含んでいる。ここで、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅は、好ましくは固体状態で含まれ、そして二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅は、グリース組成物全量に対する重量%で、約0.5重量%から約7重量%、さらに好ましくは約1.0重量%から約4重量%で含まれている。
【0081】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルの約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約1.0重量%から約3.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%含んでいる。
【0082】
ここで、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を、有機硫黄添加剤全量に対して少なくとも10重量%、より好ましくは約20重量%から約70重量%までの間で含んでいる。この少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、またはエチレン、プロピレン、1-ブタンおよび/または4-メチルペンテンなどのオレフィンモノマーと反応して得られる硫化オレフィンからなる群から選ばれる。少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは、グリース組成物全量に対する重量%で約0.2重量%から約2.0重量%、さらに好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%の間の量で含まれる。この少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換有機フォスフェートからなる群から選ばれ、さらに好ましくはイソブチルフォスフェート(TiBP)である。少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミンであり、さらに好ましくはベンザミンおよび/または2,4,4-トリメチルペンテンとの反応で得られるN-フェニル化合物、またはオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選ばれ、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、またはその混合物から選ばれる。ここで、少なくとも1種のリンを含まないモリブデン錯体は、好ましくは、固体のモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)である。MoDTCは、本発明のグリース組成物全量に対して約0.1重量%から約3.0重量%、さらに好ましくは約0.5重量%から約2.0重量%の間の量である。
【0083】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約1.0重量%から約3.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%含んでいる。
【0084】
ここで、少なくとも1種のベースオイルは、ポリ-α-オレフィンおよび/または金属ポリ-α-オレフィンおよび/またはナフテンオイルおよび/またはパラフィンオイルおよび/またはポリエーテルポリオールおよび/または合成有機エステルを含んでいる。少なくとも1種のベースオイルは、好ましくは少なくとも1種のパラフィンオイルをベースオイル全量に対する重量%で30重量%から85重量%含んでいる。少なくとも1種のパラフィンオイルは、好ましくは、ポリオレフィンの直鎖、分岐および環状の飽和アルカン、水素異性化フィッシャー・トロプシュワックス、およびフィッシャー・トロプシュオリゴマー化オレフィンの群から選ばれ、好ましくは、イソパラフィン、単環および/または多環構造のシクロパラフィンである。この少なくとも1種のベースオイルは、好ましくは少なくとも1種のナフテンオイルをベースオイル全量に対する重量%で15重量%から80重量%含んでいる。ナフテンオイルは、好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選ばれる。
【0085】
二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅は、好ましくは固体の状態で含まれている。二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅の合計量は、好ましくはグリース組成物全量に対する重量%で約0.5重量%から約7%の間、さらに好ましくは約1.0重量%から約4重量%である。また、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を、有機硫黄添加剤全量に対する重量%で少なくとも10重量%、好ましくは約20重量%から約70重量%の間で含んでいる。
【0086】
少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、またはエチレン、プロピレン、1-ブタンおよび/または4-メチルペンテンなどのオレフィンモノマーとの反応生成物でなる硫化オレフィンを含むグループから選ばれる。少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくはグリース組成物全量に対する重量%で約0.2重量%から約2.0重量%、さらに好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%の間の量で存在する。
【0087】
少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換有機フォスフェートからなる群から選ばれ、さらに好ましくはイソブチルフォスフェート(TiBP)である。少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミンであり、さらに好ましくはベンザミンおよび/または2,4,4-トリメチルペンテンと反応して得られるN-フェニル化合物、またはオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選ばれ、より好ましくは、ジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、またはその混合物である。少なくとも1種のリンを含まないモリブデン錯体は、好ましくは、モリブデンジチオカルバメート(MoDTC)であり、少なくとも1種のMoDTCは、好ましくは固体状態で含まれる。少なくとも1種のMoDTCは、本発明によるグリース組成物全量に対する重量%で好ましくは約0.1重量%から約3.0重量%、さらに好ましくは約0.5重量%から約2.0重量%の間の量で存在する。
【0088】
等速ジョイント用グリース組成物は、少なくとも1種のベースオイル、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、少なくとも1種の有機リン添加剤、および少なくとも1種の抗酸化剤を含んで、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅の合計量が、好ましくはグリース組成物全量に対する重量%で約0.5重量%から約7重量%の間の量である。
【0089】
等速ジョイント用グリース組成物は、少なくとも1種のベースオイル、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、少なくとも1種の有機リン添加剤、および少なくとも1種の抗酸化剤を含んで、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅の合計量が、好ましくはグリース組成物全量に対する重量%で約0.5重量%から約7重量%であり、少なくとも1種のベースオイルが、グリース組成物全量に対する重量%で約60重量%から約90重量%の間の量である。
【0090】
等速ジョイント用グリース組成物は、少なくとも1種のベースオイル、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、少なくとも1種の有機リン添加剤、および少なくとも1種の抗酸化剤を含んでいて、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅の合計量が、好ましくはグリース組成物全量に対する重量%で約0.5重量%から約7重量%の間の量であり、少なくとも1種のベースオイルが、ポリ-α-オレフィン、金属ポリ-α-オレフィン類、ナフテンオイル、パラフィンオイル、ポリエーテルポリオールおよび/または合成有機エステルを含んでいる。
【0091】
少なくとも1種のベースオイル、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、少なくとも1種の有機リン添加剤、および少なくとも1種の抗酸化剤を含んでなる等速ジョイント用グリース組成物は、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅の合計量が、好ましくはグリース組成物全量に対する重量%で約0.5重量%から約7重量%の間の量である。この少なくとも1種のベースオイルは、ベースオイル全量に対する重量%で、パラフィンオイルを約30重量%から約85重量%含み、および/またはこの少なくとも1種のベースオイルは、さらにナフテンオイルを約15重量%から約70重量%の間の量で含んでいる。
【0092】
少なくとも1種のベースオイル、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、少なくとも1種の有機リン添加剤、および少なくとも1種の抗酸化剤を含んでなる等速ジョイント用グリース組成物は、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅の合計量が、好ましくはグリース組成物全量に対する重量%で約0.5重量%から約7重量%であり、硫化亜鉛が、グリース組成物全量に対する重量%で約0.05重量%から約2.0重量%の間の量であることを特徴としている。
【0093】
少なくとも1種のベースオイル、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、少なくとも1種の有機リン添加剤、および少なくとも1種の抗酸化剤を含んでなる等速ジョイント用グリース組成物は、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅の合計量が、好ましくはグリース組成物全量に対する重量%で約0.5重量%から約7重量%であり、少なくとも1種の硫化銅が、グリース組成物全量に対する重量%で約0.01重量%から約1.5重量%の間の量であることを特徴としている。
【0094】
少なくとも1種のベースオイル、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、少なくとも1種の有機リン添加剤、および少なくとも1種の抗酸化剤を含んで、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅の合計量がグリース組成物全量に対する重量%で約0.5重量%から最大約7重量%である等速ジョイント用のグリース組成物は、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステン物が約0.5重量%から約5.0重量%の間の量で構成されることを特徴としている。
【0095】
少なくとも1種のベースオイル、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、少なくとも1種の有機リン添加剤、および少なくとも1種の抗酸化剤を含んで、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅の合計量がグリース組成物全量に対する重量%で約0.5重量%から最大約7重量%である等速ジョイント用のグリース組成物は、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を、グリース組成物全量に対する重量%で、約0.2重量%から約1.0重量%含み、その少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を、有機硫黄添加剤全量に対する重量%で少なくとも10重量%含んでいる。
【0096】
少なくとも1種のベースオイル、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、少なくとも1種の有機リン添加剤、および少なくとも1種の抗酸化剤を含んで、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅の合計量がグリース組成物全量に対する重量%で約0.5重量%から最大約7重量%である等速ジョイント用のグリース組成物は、少なくとも1種の有機リン添加剤を、グリース組成物全量に対する重量%で約0.05重量%から約1.5重量%の間の量を含んでいる。
【0097】
少なくとも1種のベースオイル、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、少なくとも1種の有機リン添加剤、および少なくとも1種の抗酸化剤を含んで、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅の合計量がグリース組成物全量に対する重量%で約0.5重量%から最大約7重量%である等速ジョイント用のグリース組成物は、少なくとも1種の抗酸化剤を、グリース組成物全量に対する重量%で約0.1重量%から約2.0重量%の間の量で含んでいる。
【0098】
少なくとも1種のベースオイル、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、少なくとも1種の有機リン添加剤、および少なくとも1種の抗酸化剤を含んで、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを加えた硫化亜鉛と硫化銅の合計量がグリース組成物全量に対する重量%で約0.5重量%から最大約7重量%である等速ジョイント用のグリース組成物は、少なくとも1つのリンを含まないモリブデン錯体、好ましくはモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)が、グリース組成物全量に対する重量%で約0.1重量%から約3.0重量%の間の量で存在している。
【実施例】
【0099】
種々のグリース組成物について、本発明の限定しない実施例と比較例を参照し、以下、本発明をより詳細に説明する。
【0100】
本発明グリース組成物による摩擦係数と摩耗の低下効果を判断するために、SRVテスト(Schwingungs-Reibverschleiss)を、オプティモール・インストルメンツ(Optimol Instruments)SRVテスターを用いて行った。オプティモール・インストルメンツ・プリュフテヒニーク(Optimol Instruments Pruftechnik)GmbH〔Westendstrasse 125, Munich〕から入手の100Cr6標準軸受鋼から製作した平円板下部検体を、溶剤で適切に洗浄して調製し、検査対象のグリース組成物と接触させた。SRVテストは業界標準のテストであり、特にCVジョイントのグリーステストに関連している。このテストは、100Cr6軸受鋼から作られた径が10mmの上部球状検体を、上記した平円板下部検体の上で負荷をかけて往復運動させることからなっている。
【0101】
ボールジョイントを模倣するテストでは、80℃で60分間(ランニング-インを含む)、500Nの負荷をかけて40Hzの周波数で行った。ストロークは1.5mmであった。得られた摩擦係数をコンピュータに記録した。各グリースについて、報告した値は、2回実施のテスト終了時に2つのデータの平均である。摩擦係数の走行測定では、上記の条件下で1分間、50Nの荷重をかけて開始した。その後、適用負荷を30秒間で50Nから500Nまで増加させた。摩耗は、プロフィロメータ(profilometer)とデジタルプラニメーター(digital planimeter)を使用して測定する。プロフィロメータを使用することで、摩耗表面の中央断面のプロファイルを得ることができる。この断面の面積(S)は、デジタル平面計を用いて測定することができる。摩耗量は、Vを摩耗体積、Iをストロークとして、V=SIによって評価される。摩耗速度(Wr)は、Lをテストの合計滑走距離としてWr=V/L[μm3/m]で得られる。
【0102】
標準マルチブロックプログラムSMBPテストは、CVジョイントの寿命耐久性を比較、評価するのに使用した。CVジョイントを、加速率が250Nm/秒でのトルク、速度が100mm/秒でのジャウンス偏差、加速率が少なくとも40rpm/秒で少なくとも最大値1000Nmまでと2000rpmの回転速度に曝した。プログラム中、実際のトルク、速度、およびジャウンス偏向(角度)の永久記録はテストリグによって与えられる。このプログラムは、CVジョイントに有意な障害が最初に現れるまで、所定負荷サイクルを行った。1サイクルを、51.3分および39973回転によって定義する。寿命耐久性は、CVジョイントの破損まで達したサイクルによって評価した。破損は、温度が過度に上るか、摩耗を示すノイズの発生と定義される。CVジョイントの寿命耐久性は、CVジョイントの破損まで達したサイクル数によって評価した。同じグリース組成物を含む4つのCVジョイントまでのより良好な統計的検出力を同時にテストした。4つのCVジョイントの4つが破損したとき、テストを完了し、全体のサイクルをカウントする。比較として市販のグリースを使用した。
【0103】
さらに、熱可塑性エラストマーシーリングブーツとの適合特性に関する試験、すなわちピビフレックス(Pibiflex)B5050MWRを、本発明によるグリース組成物および1つの市販グリース組成物で行った。すなわち、市販グリース組成物C1(表3参照)は、シーリングブーツ材を125℃で336時間グリースに浸漬してその前後の硬度(ショアD)の変化、および引張り、伸び、および体積の百分率変化に関して行った。これらの値を、ISO-868(ショアD)、ISO-37(引張変化と伸び変化)、およびISO-2781(体積変化)に従って測定した。
【0104】
グリース組成物A1とA2、およびB1からB3に使用したベースオイルは、ベースオイル全量に対する重量%でパラフィンオイルが82.8重量%から83.2重量%、ナフテンオイルが16.8重量%から17.2重量%である。グリース組成物A3に使用したベースオイルは、ベースオイル総量に対する重量%で、ポリ-α-オレフィンが23.9重量%と、ナフテンオイルが76.1重量%である。
【0105】
表1から表3のグリース組成物では、以下の化合物を用いた。市販グリースC1は、ベースオイルと、それぞれ市販グリース全量に対する重量%でリチウム石鹸オイルを8重量%、MoS2を約2.7重量%、および抗酸化剤を約0.5重量%含んでいる。市販グリースC2は、ベースオイルと、尿素増粘剤と、それぞれ市販グリース全量に対する重量%でMoS2を約1.0重量%、MoDTCを約1.5重量%、有機硫黄添加剤を約0.5重量%、および抗酸化剤を約0.3重量%含んでいる。市販のグリースC1およびC2は、明白に定義したあるいは言及していない添加剤を含め100重量%正確に定義していない全ての化合物の合計である。
【0106】
純度が97重量%、平均粒径が0.80μmの硫化亜鉛(ZnS)粉末を使用した。銅(II)として、粒径D90が15μmの硫化銅(CuS)粉末を使用した。銅(II)硫化物は、トリボテック(Tribotecc)GmbH〔Kearntner Str.7,1010 Vienna,Austria〕からCB700として入手し、これを使用した。超微細二硫化モリブデン(MoS2)粉末は、純度が97重量%、粒径が0.40μmから0.50μm(フィッシャーNo.)のものを使用した。二硫化タングステン(WS2)粉末は、平均粒径D90が7μmのものを使用した。有機硫黄添加剤として、ルブリゾール・フランス(Lubrizol France)〔25 Quai de France,76173 Rouen Cedex,France〕のアングラモール(Anglamol)33を使用した。有機リン添加剤は、ランセス(Lanxess)AG〔Kennedyplatz 1,50569 Cologne,Germany〕からの純度が99重量%のトリイソブチルフォスフェートを採用した、リチウム石鹸増粘剤は、12-ヒドロキシステアリン酸とリチウム水酸化リチウム(LiOH)との反応により得られたリチウムステアレートを使用した。使用した尿素増粘剤は、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと水素化タロー脂肪族アミンとの反応により得た。抗酸化剤は、BASF SE〔67056 Ludwigshafen,Germany〕からのイルガノックス(Irganox)L57を使用した。リンを含まないモリブデン錯体は、アデカ(Adeka)からサクラルベ(Sakuralube)600という商品名で入手可能なジチオカルバメート(MoDTC)を使用した。
【0107】
以下、市販のグリースをC1およびC2とし、一方、本発明のグリース組成物は、硫化亜鉛と硫化銅に二硫化モリブデンを加えた本発明のグリース組成物をA1およびA2、硫化亜鉛と硫化銅にタングステンを加えた本発明のグリース組成物をA3とし、グリース組成物の比較サンプルをB1からB3とした。
【0108】
【0109】
本発明のグリース組成物の摩擦係数、本発明グリース組成物の摩耗と寿命耐久性(SMBPテスト)に関する実験結果を、市販グリースC1およびC2と比較して、表2および
図1a、1b、2および3に示す。図を以下に示している。
図1aおよび
図1b:表2に示した摩擦および摩耗それぞれの実験結果で、組成物B1からB3および市販グリースC1およびC2における硫化銅と組み合わせた硫化亜鉛の添加効果について、本発明グリース組成物A1、A2およびA3と比較して示している。
図2:表2に示したCVジョイントの寿命耐久性の実験結果で、本発明グリース組成物A1、A2およびA3について市販グリースC1およびC2と比較して示している。
図3:表3に示した実験結果で、本発明グリース組成物A1、A2およびA3のシーリングブーツ材との適合性テストについて、市販グリースC1と比較して示している。
【0110】
3つの本発明グリース組成物A1、A2およびA3のCVジョイントの摩擦係数、疲労度および寿命耐久性に関する実験結果を、グリース組成物B1~B3および市販グリースC1とC2と比較して表2に示す。
【0111】
【0112】
表2および
図1a、
図1bおよび2は、本発明による硫化亜鉛、硫化銅およびモリブデンを含むグリース組成物A1およびA2の実験結果を、亜鉛を含まないグリースB1、銅を含まないグリースB2および市販のグリースC1と比較して示す。
【0113】
本発明のグリース組成物A1およびA2は、摩擦および摩耗に関して良好な値を示している。しかしながら、硫化亜鉛を、硫化銅、二硫化モリブデン、有機硫黄添加剤、有機リン添加剤、およびリンを含まないモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)を組み合わせて加えると、摩擦係数が0.052から摩擦係数が最小の0.043に低減した。A1、A2、およびB1、B2は、市販のグリース組成物C1と比較して、摩擦係数が低く、抗摩耗性能が高く、寿命耐久性が大幅に改善されたことを示している。本発明のグリース組成物A1における硫化亜鉛と硫化銅の組み合わせは、亜鉛を含まないグリース組成物B1と比較して、抗摩耗性能がかなりの改善され、寿命耐久性が有意に高く、および摩擦係数が低くなり、硫化亜鉛と硫化銅との相乗効果を示唆している。
【0114】
表2および
図1a、
図1bおよび
図2は、硫化亜鉛、硫化銅および二硫化タングステンを含む本発明によるグリース組成物A3の実験結果を、銅を含まないグリースB3および市販グリースC2と比較して示している。本発明グリースA3、銅を含まないグリースB3と市販グリース組成物C1およびC2の摩擦係数は類似している。本発明グリースA3と銅を含まないグリースB3の抗摩耗性能は、市販のグリース組成物C1およびC2と比較して大幅に改善されている。本発明グリースA3の寿命耐久性は、銅を含まないグリースB3と比較してかなり改善されている。A3に、硫化銅を添加するだけでなく、リチウム石鹸増粘剤に代えて尿素増粘剤を使用すると、CVジョイントの寿命耐久性を大幅に向上させている。これらの結果は、グリース組成物中の硫化亜鉛、硫化銅および二硫化タングステンとの相乗効果を示している。
【0115】
本発明グリース組成物のシールブーツ材との適合性に関する実験結果を、市販グリースC1と比較して表3および
図3に示す。
【0116】
【0117】
表3および
図3は、シーリングブーツ材を使用したときの寿命に関連した材料劣化を示す適合性テストにおいて、本発明のグリース組成物A1、A2およびA3でテストしたシーリングブーツ材の実験結果を、亜鉛を含まないグリース組成物B1および市販グリースC1と比較して示している。
【0118】
3つの本発明のグリース組成物A1、A2およびA3の全ては、シーリングブーツ材との適合性にかなりの改善を示している。硫化亜鉛(ZnS)と銅(II)硫化物(CuS)のポジティブな効果を、亜鉛を含まないグリース組成物B1と比較して示している。特にA3は、本発明グリース組成物のシーリングブーツ材との適合性の全体的な改善を示している。
【0119】
本発明によるグリース組成物の例は、硫化亜鉛と硫化銅を二硫化モリブデンおよび/または二硫化物タングステンと組み合わせたグリース組成物が、グリース組成物の一般的な潤滑性を保持し、さらにCVジョイントの寿命耐久性および適合性が増すことを明確に示している。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
等速ジョイント用グリース組成物であって、
a)少なくとも1種のベースオイル、
b)少なくとも1種の増粘剤、
c)
グリース組成物全量に対する重量%で、0.05重量%~2.0重量%の硫化亜鉛、
d)
グリース組成物全量に対する重量%で、0.01重量%~1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、および
e)
グリース組成物全量に対する重量%で、0.5重量%~5.0重量%の二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステン、
からなることを特徴とする
等速ジョイント用グリース組成物。
ここで、重量%の全ての数値は±10%の誤差を含む数値である。
【請求項2】
前記硫化亜鉛、
前記硫化銅、
前記二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンの合計量が、
等速ジョイント用グリース組成物全量に対する重量%
で、0.5重量%
~7.0重量
%であることを特徴とする請求項1に記載の
等速ジョイント用グリース組成物。
ここで、重量%の全ての数値は±10%の誤差を含む数値である。
【請求項3】
前記少なくとも1種の硫化銅が、銅(II)硫化物(CuS)であることを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載の
等速ジョイント用グリース組成物。
【請求項4】
前記等速ジョイント用グリース組成物が、さらに少なくとも1種の有機硫黄添加物を、グリース組成物全量に対する重量%
で、0.1重量%
~1.5重量%
の量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載の
等速ジョイント用グリース組成物。
ここで、重量%の全ての数値は±10%の誤差を含む数値である。
【請求項5】
前記少なくとも1種の有機硫黄添加剤が、硫黄を、有機硫黄添加剤全量に対する重量%で、少なくとも10重量%の量で含むことを特徴とする請求項
4に記載の
等速ジョイント用グリース組成物。
【請求項6】
前記等速ジョイント用グリース組成物が、さらに少なくとも1種の有機リン添加剤を、グリース組成物全量に対する重量%
で、0.05重量%
~1.5重量%
の量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項
5のいずれか1項に記載の
等速ジョイント用グリース組成物。
ここで、重量%の全ての数値は±10%の誤差を含む数値である。
【請求項7】
前記等速ジョイント用グリース組成物が、さらに少なくとも1種の抗酸化剤を、グリース組成物全量に対する重量%
で、0.1重量%
~2.0重量%
の量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項
6のいずれか1項に記載の
等速ジョイント用グリース組成物。
ここで、重量%の全ての数値は±10%の誤差を含む数値である。
【請求項8】
前記少なくとも1種の増粘剤は、少なくとも1種の尿素増粘剤、少なくとも1種のリチウム石鹸および/または少なくとも1種のリチウム錯体石鹸の群から選ばれ
ることを特徴とする請求項1乃至請求項
7のいずれか1項に記載の
等速ジョイント用グリース組成物。
【請求項9】
前記等速ジョイント用グリース組成物が、さらに少なくとも1種のリンを含まないモリブデン錯体を、グリース組成物全量に対する重量%で
、0.1重量%
~3.0重量%
の量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項
8のいずれか1項に記載の
等速ジョイント用グリース組成物。
ここで、重量%の全ての数値は±10%の誤差を含む数値である。
【請求項10】
前記少なくとも1種のベースオイルが、ポリ-α-オレフィン、金属ポリ-α-オレフィン、ナフテンオイル、パラフィンオイル、ポリエーテルポリオールおよび/または合成有機エステルを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項
9のいずれか1項に記載の
等速ジョイント用グリース組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種のベースオイルが、少なくとも1種のパラフィンを、ベースオイル全量に対する重量%
で、30重量%
~85重量%
の量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項
10のいずれか1項に記載の
等速ジョイント用グリース組成物。
ここで、重量%の全ての数値は±10%の誤差を含む数値である。
【請求項12】
前記少なくとも1種のベースオイルが、少なくとも1種のナフテンオイルを、ベースオイル全量に対する重量%
で、15重量%
~80重量%
の量で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項
11のいずれか1項に記載の
等速ジョイント用グリース組成物。
ここで、重量%の全ての数値は±10%の誤差を含む数値である。
【請求項13】
それぞれ
等速ジョイント用グリース組成物全量に対する重量%で、
前記少なくとも1種のベースオイル
を60重量%
~95重量
%、
前記少なくとも1種の増粘剤
を2重量%~20重量
%、
前記硫化亜鉛
を0.05重量%
~2.0重量
%、
前記少なくとも1種の硫化銅
を0.01重量%
~1.5重量
%、
前記二硫化モリブデンおよび/または二硫化物タングステン
を0.5重量%
~5.0重量%、
有機硫黄添加物
を0.1重量%
~1.5重量%、
および少なくとも1種の有機リン添加剤
を0.05重量%
~1.5重量%で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項
12のいずれか1項に記載の
等速ジョイント用グリース組成物。
ここで、重量%の全ての数値は±10%の誤差を含む数値である。
【請求項14】
請求項1乃至請求項
13のいずれか1項に記載の
等速ジョイント用グリース組成物を、等速ジョイント、特にボールジョイントおよび/または三脚ジョイントに使用することを特徴とする
等速ジョイント用グリース組成物の使用。
【請求項15】
請求項1乃至請求項
14のいずれか1項に記載の
等速ジョイント用グリース組成物を含むことを特徴とする等速ジョイント。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明の目的は、等速ジョイント用グリース組成物、好ましくは少なくとも1種のTPE、さらにより好ましくは少なくとも1種のTPC-EPからなるブーツと共に用いて解決される。
このグリース組成物は、
a)少なくとも1種のベースオイル、
b)少なくとも1種の増粘剤、
c)グリース組成物全量に対する重量%で、0.05重量%~2.0重量%の量の硫化亜鉛、
d)グリース組成物全量に対する重量%で、0.01重量%~1.5重量%の量の少なくとも1種の硫化銅、および、
e)グリース組成物全量に対する重量%で、0.5重量%~5.0重量%の量の二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステン、
からなっている。
ここで、重量%の全ての数値は±10%の誤差を含む数値である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
グリース組成物において、硫化銅粉末は、好ましくは、結晶、分散、または水またはエタノール中の溶液としても用いられる。グリース組成物において、硫化銅(II)は、好ましくはISO-13320に関するCLIAS 1064 Nassで測定した粒径D90が15μmの粉末として使用される。さらに、20℃の密度が4.6g/cm3以下である。使用される硫化銅(I)は、好ましくは、ISO-13320に関するCLIAS 1064 Nassで測定された粒径D90が53.6μmに粉末化する。さらに、20℃の密度が5.5g/cm3以下である。本発明によれば、少なくとも1種の硫化銅は、本発明によるグリース組成物全量に対する重量%で約0.01重量%から約1.5重量%、さらに好ましくは約0.1重量%から約1.0重量%の間の量である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
本発明によるグリース組成物において、硫化亜鉛と硫化銅の二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンとの組合わせは、CVジョイントの耐摩耗性および耐摩擦特性に対するSRV試験において相乗効果を示す。本発明によれば、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンは、本発明のグリース組成物全量に対して約0.5重量%から約5.0重量%、さらに好ましくは約1.0重量%から約3.0重量%の量で存在している。硫化亜鉛、硫化銅、および二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンの合計量は、好ましくは本発明によるグリース組成物全量に対して約0.5重量%から約7重量%、さらに好ましくは約1.0重量%から約4重量%の間の量である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
本発明の更なる好ましい実施形態で、少なくとも1種の有機硫黄添加剤がグリース組成物に含まれる。ZnDTP、CuDTPおよびMoDTPは、本発明では有機硫黄添加剤の用語に包含されると考えていない。さらに好ましい実施形態では、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、少なくとも1種の硫化オレフィン、アルキルチアジアゾールまたはその組合せを含む群から選ばれる。硫化オレフィンは、エチレン、プロピレン、1-ブテンおよび/または4-メチルペンテンのオレフィンモノマーを含んでいてもよい。アルキルチアジアゾールは、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾールおよび/または1,3,4-チアジアゾールのチアジアゾールモノマーであることができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物の総量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約60重量%から約95重量%、少なくとも1種の増粘剤を約2重量%から約20重量%、硫化亜鉛を約0.05重量%から約2.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.01重量%から約1.5重量%、二硫化物モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約0.5重量%から約5.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.1重量%から約1.5重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.05重量%から約1.5重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2.0重量%の間の量を含んでいる。ここで、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を、有機硫黄添加剤全量に対する重量%で少なくとも10重量%、より好ましくは約20重量%から約70重量%の間の量で含んでいる。少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは少なくとも1つのアルキルチアジアゾール、またはエチレン、プロピレン、1-ブテンおよび/または4-メチルペンテンなどのオレフィンモノマーとの反応生成物から得られる硫化オレフィンを含む群から選ばれる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
さらに好ましい実施形態で、グリース組成物は、それぞれグリース組成物全量に対する重量%で、少なくとも1種のベースオイルを約79重量%から約92重量%、少なくとも1種の増粘剤を約4重量%から約17重量%、硫化亜鉛を約0.1重量%から約1.0重量%、少なくとも1種の硫化銅を約0.1重量%から約1.0重量%、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを約1.0重量%から約3.0重量%、少なくとも1種の有機硫黄添加剤を約0.5重量%から約0.7重量%、少なくとも1種の有機リン添加剤を約0.2重量%から約1.0重量%、および少なくとも1種の抗酸化剤を約0.2重量%から約1.5重量%の間の量を含んでいる。ここで、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を、有機硫黄添加剤全量に対する重量%で少なくとも10重量%、さらに好ましくは約20重量%から約70重量%の間の量を含んでいる。この少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、またはエチレン、プロピレン、1-ブテンおよび/または4-メチルペンテンなどのオレフィンモノマーとの反応生成物からなる硫化オレフィンから選ばれる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
ここで、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を、有機硫黄添加剤全量に対して少なくとも10重量%、より好ましくは約20重量%から約70重量%までの間で含んでいる。この少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、またはエチレン、プロピレン、1-ブテンおよび/または4-メチルペンテンなどのオレフィンモノマーと反応して得られる硫化オレフィンからなる群から選ばれる。少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは、グリース組成物全量に対する重量%で約0.2重量%から約2.0重量%、さらに好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%の間の量で含まれる。この少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換有機フォスフェートからなる群から選ばれ、さらに好ましくはイソブチルフォスフェート(TiBP)である。少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミンであり、さらに好ましくはベンザミンおよび/または2,4,4-トリメチルペンテンとの反応で得られるN-フェニル化合物、またはオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選ばれ、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、またはその混合物から選ばれる。ここで、少なくとも1種のリンを含まないモリブデン錯体は、好ましくは、固体のモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)である。MoDTCは、本発明のグリース組成物全量に対して約0.1重量%から約3.0重量%、さらに好ましくは約0.5重量%から約2.0重量%の間の量である。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、またはエチレン、プロピレン、1-ブテンおよび/または4-メチルペンテンなどのオレフィンモノマーとの反応生成物でなる硫化オレフィンを含むグループから選ばれる。少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくはグリース組成物全量に対する重量%で約0.2重量%から約2.0重量%、さらに好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%の間の量で存在する。
【国際調査報告】