(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】CRISPR CASシステムを含むファージ組成物および溶原性モジュール
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20221221BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20221221BHJP
C12N 15/34 20060101ALI20221221BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221221BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N7/01 ZNA
C12N15/34
A61K35/76
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525902
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-07-04
(86)【国際出願番号】 US2020059213
(87)【国際公開番号】W WO2021092249
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520429509
【氏名又は名称】ローカス バイオサイエンシーズ,インク.
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】オースターアウト,デビッド ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ガロフォロ,ポール エム.
(72)【発明者】
【氏名】セル,カート
(72)【発明者】
【氏名】テュソン,ハンナ ヒューイット
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA98X
4B065AA98Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA31
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
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4C087MA13
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4C087NA14
4C087ZB35
(57)【要約】
本明細書に開示されるのは、細菌集団を改変するための組成物および方法である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるのは、第1のスペーサー配列またはそこから転写されるcrRNAをコードする第1の核酸配列を含むバクテリオファージであり、第1のスペーサー配列は、バクテリオファージが溶解性にされるという条件で、標的細菌中の標的遺伝子からの標的ヌクレオチド配列に相補的である。
【選択図】
図6D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスペーサー配列またはそこから転写されたcrRNAをコードする第1の核酸配列を含むバクテリオファージであって、ここで、前記第1のスペーサー配列は、バクテリオファージが溶菌性にされるという条件で、標的細菌の標的遺伝子からの標的ヌクレオチド配列に相補的である、バクテリオファージ。
【請求項2】
前記バクテリオファージが溶原性バクテリオファージに由来する、請求項1に記載のバクテリオファージ。
【請求項3】
溶原性遺伝子の除去、置き換え、または不活性化によって前記バクテリオファージが溶菌性にされる、請求項1-2のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項4】
前記バクテリオファージが、1247cIリプレッサー領域の除去によって溶菌性にされる、請求項1-3のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項5】
前記バクテリオファージが、1249cIリプレッサー領域の除去によって溶菌性にされる、請求項1-3のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項6】
前記バクテリオファージが、1224cIリプレッサー領域の除去によって溶菌性にされる、請求項1-3のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項7】
前記バクテリオファージが、溶原性遺伝子の調節エレメントの除去によって溶菌性にされる、請求項1-3のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項8】
前記バクテリオファージが、溶原性遺伝子のプロモーターの除去、改変または置き換えによって溶菌性にされる、請求項1-3のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項9】
前記バクテリオファージが、溶原性遺伝子の機能的要素の除去によって溶菌性にされる、請求項1-3のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項10】
前記バクテリオファージが、溶原性遺伝子に向けられた第2のスペーサーを含む第2のCRISPRアレイを介して溶菌性にされる、請求項1-2のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項11】
前記バクテリオファージが複数の細菌系統に感染する、請求項1-10のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項12】
前記標的ヌクレオチド配列が、前記標的遺伝子のプロモーター配列の全部または一部を含む、請求項1-11のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項13】
前記標的ヌクレオチド配列が、前記標的遺伝子の転写領域のコード鎖上に位置するヌクレオチド配列の全部または一部を含む、請求項1-11のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項14】
前記標的ヌクレオチド配列が、前記標的細菌の生存に必要とされる必須細菌遺伝子の少なくとも一部を含む、請求項1-11のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項15】
前記必須細菌遺伝子が、Tsf、acpP、gapA、infA、secY、csrA、trmD、ftsA、fusA、glyQ、eno、nusG、dnaA、pheS、rplB、gltX、hisS、rplC、aspS、gyrB、dnaE、rpoA、rpoB、pheT、infB、rpsC、rplF、alaS、leuS、serS、rplD、gyrA、またはmetKである、請求項14に記載のバクテリオファージ。
【請求項16】
前記標的ヌクレオチド配列が、非必須細菌遺伝子またはゲノム遺伝子座にある、請求項1-11のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項17】
前記第1の核酸配列が、少なくとも1つの反復配列をさらに含む第1のCRISPRアレイである、請求項1-16のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項18】
前記少なくとも1つの反復配列が、その5‘末端またはその3’末端のいずれかで前記第1のスペーサー配列に作動可能に連結されている、請求項17に記載のバクテリオファージ。
【請求項19】
前記第1の核酸が、非必須バクテリオファージ遺伝子または他のゲノム遺伝子座に挿入されている、請求項1-18のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項20】
非必須遺伝子が、gp49、gp75、hoc、gp0.7、gp4.3、gp4.5、gp4.7、gp0.6、gp0.65、gp0.7、gp4.3、またはgp4.5である、請求項19に記載のバクテリオファージ。
【請求項21】
前記標的細菌がC.difficileである、請求項1-20のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項22】
前記バクテリオファージがφCD146またはφCD24-2である、請求項1-21のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項23】
前記標的細菌が、前記バクテリオファージの溶菌活性によって、第1のスペーサー配列またはそこから転写されたcrRNAを使用するCRISPR-Casシステムの活性によって、あるいはその両方によって殺傷される、請求項1-22のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項24】
前記CRISPR-Casシステムが標的細菌に対して内因性である、請求項23に記載のバクテリオファージ。
【請求項25】
前記CRISPR-Casシステムが標的細菌に対して外因性である、請求項23に記載のバクテリオファージ。
【請求項26】
前記CRISPR-Casシステムが、I型CRISPR-Casシステム、II型CRISPR-Casシステム、またはIII型CRISPR-Casシステムである、請求項23-25のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項27】
前記CRISPR-CasシステムがI型CRISPR-Casシステムである、請求項23-26のいずれか一項に記載のバクテリオファージ。
【請求項28】
第1のスペーサー配列またはそこから転写されたcrRNAをコードする第1の核酸配列を含む溶原性バクテリオファージであって、ここで、前記第1のスペーサー配列は、前記バクテリオファージが1247cIリプレッサー領域の除去によって溶菌性にされるという条件で、標的細菌における標的遺伝子からの標的ヌクレオチド配列に相補的である、溶原性バクテリオファージ。
【請求項29】
複数の細菌系統に感染する、請求項28に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項30】
前記標的ヌクレオチド配列が、前記標的遺伝子のプロモーター配列の全部または一部を含む、請求項28-29のいずれか一項に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項31】
前記標的ヌクレオチド配列が、前記標的遺伝子の転写領域のコード鎖上に位置するヌクレオチド配列の全部または一部を含む、請求項28-29のいずれか一項に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項32】
前記標的ヌクレオチド配列が、前記標的細菌の生存に必要とされる必須細菌遺伝子の少なくとも一部を含む、請求項28-29のいずれか一項に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項33】
前記必須細菌遺伝子が、Tsf、acpP、gapA、infA、secY、csrA、trmD、ftsA、fusA、glyQ、eno、nusG、dnaA、pheS、rplB、gltX、hisS、rplC、aspS、gyrB、dnaE、rpoA、rpoB、pheT、infB、rpsC、rplF、alaS、leuS、serS、rplD、gyrA、またはmetKである、請求項32に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項34】
前記標的ヌクレオチド配列が非必須細菌遺伝子またはゲノム遺伝子座にある、請求項28-29のいずれか一項に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項35】
前記第1の核酸配列が、少なくとも1つの反復配列をさらに含む第1のCRISPRアレイである、請求項28-34に記載のいずれか一項に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項36】
前記少なくとも1つの反復配列が、その5’末端またはその3’末端のいずれかで前記第1のスペーサー配列に作動可能に連結されている、請求項35に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項37】
前記第1の核酸が、非必須バクテリオファージ遺伝子または他のゲノム遺伝子座に挿入されている、請求項28-36のいずれか一項に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項38】
前記非必須バクテリオファージ遺伝子が、gp49、gp75、hoc、gp0.7、gp4.3、gp4.5、gp4.7、gp0.6、gp0.65、gp0.7、gp4.3、またはgp4.5である、請求項37に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項39】
前記標的細菌がC.difficileである、請求項28-38のいずれか一項に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項40】
前記溶原性バクテリオファージがφCD146またはφCD24-2である、請求項28-39のいずれか一項に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項41】
前記標的細菌が、前記溶原性バクテリオファージの溶菌活性によって、前記第1のスペーサー配列またはそこから転写されたcrRNAを使用するCRISPR-Casシステムの活性によって、またはこれらの両方によって殺傷される、請求項28-40のいずれか一項に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項42】
前記CRISPR-Casシステムが標的細菌に対して内因性である、請求項41に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項43】
前記CRISPR-Casシステムが標的細菌に対して外因性である、請求項41に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項44】
前記CRISPR-Casシステムが、I型CRISPR-Casシステム、II型CRISPR-Casシステム、またはIII型CRISPR-Casシステムである、請求項41-43のいずれか一項に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項45】
前記CRISPR-Casシステムが、I型CRISPR-Casシステムである、請求項41-44のいずれか一項に記載の溶原性バクテリオファージ。
【請求項46】
医薬組成物であって、
(a)請求項1-27のいずれか1つに記載のバクテリオファージ、または請求項28-45のいずれか1つに記載の溶原性バクテリオファージと、
(b)薬学的に許容される賦形剤と
を含む、医薬組成物。
【請求項47】
錠剤、液体、シロップ、経口製剤、静脈内製剤、鼻腔内製剤、眼製剤、耳製剤、皮下製剤、吸入可能な呼吸製剤、坐剤、またはそれらの任意の組み合わせの形態にある、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
標的細菌を殺傷するための方法であって、前記方法は、前記第1のスペーサー配列をコードする第1の核酸配列またはそこから転写されたcrRNAを含む溶原性バクテリオファージを標的細菌に導入する工程を含み、前記バクテリオファージは1247cIリプレッサー領域ノックアウトによって溶菌性にされ、それによって前記標的細菌を殺傷するという条件で、前記第1のスペーサー配列は、前記標的細菌の標的遺伝子からの標的ヌクレオチド配列に相補的である、方法。
【請求項49】
前記溶原性バクテリオファージは複数の細菌系統に感染する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記標的ヌクレオチド配列が、前記標的遺伝子のプロモーター配列の全部または一部を含む、請求項48-49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記標的ヌクレオチド配列が、前記標的遺伝子の転写領域のコード鎖上に位置するヌクレオチド配列の全部または一部を含む、請求項48-49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記標的ヌクレオチド配列が、前記標的細菌の生存に必要とされる必須細菌遺伝子の少なくとも一部を含む、請求項48-49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記必須細菌遺伝子が、Tsf、acpP、gapA、infA、secY、csrA、trmD、ftsA、fusA、glyQ、eno、nusG、dnaA、pheS、rplB、gltX、hisS、rplC、aspS、gyrB、dnaE、rpoA、rpoB、pheT、infB、rpsC、rplF、alaS、leuS、serS、rplD、gyrA、またはmetKである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記標的ヌクレオチド配列が非必須細菌遺伝子またはゲノム遺伝子座にある、請求項48-49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記第1の核酸配列が、少なくとも1つの反復配列をさらに含む第1のCRISPRアレイである、請求項48-54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記少なくとも1つの反復配列が、その5’末端またはその3’末端のいずれかで前記第1のスペーサー配列に作動可能に連結されている、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記第1の核酸が非必須バクテリオファージ遺伝子に挿入されている、請求項48-56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記非必須バクテリオファージ遺伝子が、gp49、gp75、hoc、gp0.7、gp4.3、gp4.5、gp4.7、gp0.6、gp0.65、gp0.7、gp4.3、またはgp4.5である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記標的細菌がC.difficileである、請求項48-58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記溶原性バクテリオファージがφCD146またはφCD24-2である、請求項48-59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記標的細菌が、前記溶原性バクテリオファージの溶菌活性によって、前記第1のスペーサー配列もしくはそこから転写されたcrRNAを使用するCRISPR-Casシステムの活性によって、またそれらの両方によって殺傷される、請求項48-60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記標的細菌が、前記溶原性バクテリオファージの溶菌活性とは無関係に、前記CRISPR-Casシステムの活性によって殺傷される、請求項48-61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記CRISPR-Casシステムの活性が、前記溶原性バクテリオファージの溶菌活性を補足または増強する、請求項48-62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記溶原性バクテリオファージの溶菌活性および前記CRISPR-Casシステムの活性が相乗的である、請求項48-63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記溶原性バクテリオファージの溶菌活性、前記CRISPR-Casシステムの活性、またはそれらの両方が、前記溶原性バクテリオファージの濃度によって調節される、請求項48-64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記CRISPR-Casシステムが標的細菌に対して内因性である、請求項48-65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記CRISPR-Casシステムが標的細菌に対して外因性である、請求項48-65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記CRISPR-Casシステムが、I型CRISPR-Casシステム、II型CRISPR-Casシステム、またはIII型CRISPR-Casシステムである、請求項48-67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記CRISPR-CasシステムがI型CRISPR-Casシステムである、請求項48-68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記溶原性バクテリオファージが、前記溶原性バクテリオファージの溶解活性によって引き起こされる細胞死を超えて、前記CRISPR-Casアレイの活性を超えて、またはそれらの両方を超えて、標的細菌にいかなる新しい特性も付与しない、請求項48-69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
必要とする個体の疾患を治療する方法であって、前記方法は、請求項46-47のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項72】
前記個体が哺乳動物である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記疾患が細菌感染症である、請求項71-72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記細菌感染を引き起こす細菌が、Escherichia coli、Salmonella enterica、Bacillus subtilis、Clostridium acetobutylicum、Clostridium ljungdahlii、Clostridioides difficile、Clostridium bolteae、Acinetobacter baumannii、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium abscessus、Mycobacterium intracellulare、Mycobacterium fortuitum、Mycobacterium chelonae、Mycobacterium avium、Mycobacterium gordonae、Myxococcus xanthus、Streptococcus pyogenes、cyanobacteria、Staphylococcus aureus、メチシリン耐性Staphylococcus aureus、Streptococcus pneumoniae、カルバペネブ耐性Enterobacteriaceae、拡大スペクトルベータ-ラクタマーゼ、(ESBL)-産生Enterobacteriaceae、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus salivarius、Corynebacterium minutissimum、Corynebacterium pseudodiphtheriticum、Corynebacterium striatum、Corynebacterium グループG1、Corynebacterium グループG2、Streptococcus mitis、Streptococcus sanguinis、Klebsiella pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Burkholderia cepacia、Serratia marcescens、Haemophilus influenzae、Moraxella sp.、Neisseria meningitidis、Neisseria gonorrhoeae、Salmonella typhimurium、Actinomyces israelii.、Porphyromonas gingivalis.、Prevotella melaninogenicus、Helicobacter pylori、Helicobacter felis、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Enterococcus gallinarum、Bacteroides fragilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Fusobacterium nucleatum、Ruminococcus gnavus、もしくはCampylobacter jejuni、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記細菌が、少なくとも1つの抗生物質に対して耐性である薬剤耐性細菌である、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記細菌が、少なくとも1つの抗生物質に対して耐性である多剤耐性細菌である、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
前記少なくとも1つの抗生物質が、セファロスポリン、フルオロキノロン、カルバペネム、コリスチン、アミノグリコシド、バンコマイシン、ストレプトマイシン、またはメチシリンを含む、請求項75-76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記投与する工程が、動脈内、静脈内、筋肉内、経口、皮下、吸入、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項71-77のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2019年11月6日に出願された米国特許出願第62/931,793号の利益を主張し、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0002】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるのは、第1のスペーサー配列またはそこから転写されるcrRNAをコードする第1の核酸配列を含むバクテリオファージであり、バクテリオファージが溶菌性にされるという条件で、第1のスペーサー配列は、標的細菌中の標的遺伝子からの標的ヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、溶原性バクテリオファージに由来する。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、溶原性遺伝子の除去、置き換え、または不活性化によって溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、1247 cIリプレッサー領域の除去によって溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、1249cIリプレッサー領域の除去によって溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、1224cIリプレッサー領域の除去によって溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、溶原性遺伝子の調節要素の除去によって溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、溶原性遺伝子のプロモーターの除去、改変または置き換えによって溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、溶原性遺伝子の機能的要素の除去によって溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、溶原性遺伝子に向けられた第2のスペーサーを含む第2のCRISPRアレイを介して溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、複数の細菌株に感染する。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、標的遺伝子のプロモーター配列の全部または一部を含む。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、標的遺伝子の転写領域のコード鎖上に位置するヌクレオチド配列の全部または一部を含む。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、標的細菌の生存に必要とされる必須細菌遺伝子の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、必須の細菌遺伝子は、Tsf、acpP、gapA、infA、secY、csrA、trmD、ftsA、fusA、glyQ、eno、nusG、dnaA、pheS、rplB、gltX、hisS、rplC、aspS、gyrB、dnaEである。 、rpoA、rpoB、pheT、infB、rpsC、rplF、alaS、leuS、serS、rplD、gyrA、またはmetKである。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、必須ではない細菌遺伝子またはゲノム遺伝子座にある。いくつかの実施形態において、第1の核酸配列は、少なくとも1つのリピート配列をさらに含む第1のCRISPRアレイである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのリピート配列は、その5’末端またはその3’末端のいずれかで第1のスペーサー配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、第1の核酸は、必須ではないバクテリオファージ遺伝子または他のゲノム遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態において、非必須遺伝子は、gp49、gp75、hoc、gp0.7、gp4.3、gp4.5、gp4.7、gp0.6、gp0.65、gp0.7、gp4.3、またはgp4である。 .5。いくつかの実施形態において、標的細菌は、C.difficileである。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、φCD146またはφCD24-2である。いくつかの実施形態において、標的細菌は、バクテリオファージの溶菌活性によって、第1のスペーサー配列またはそこから転写されるcrRNA、あるいはその両方を使用するCRISPR-Casシステムの活性によって殺傷される。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、標的細菌に対して内因性である。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、標的細菌に対して外因性である。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I型CRISPR-Casシステム、II型CRISPR-Casシステム、またはIII型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I型CRISPR-Casシステムである。
【0003】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、第1のスペーサー配列またはそこから転写されるcrRNAをコードする第1の核酸配列を含む溶原性バクテリオファージであり、第1のスペーサー配列は、バクテリオファージが1247cIリプレッサー領域の除去によって溶菌性にされるという条件で、標的細菌中の標的遺伝子からの標的ヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、溶原性バクテリオファージは、複数の細菌株に感染する。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、標的遺伝子のプロモーター配列の全部または一部を含む。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、標的遺伝子の転写領域のコード鎖上に位置するヌクレオチド配列の全部または一部を含む。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、標的細菌の生存に必要とされる必須細菌遺伝子の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、必須の細菌遺伝子は、Tsf、acpP、gapA、infA、secY、csrA、trmD、ftsA、fusA、glyQ、eno、nusG、dnaA、pheS、rplB、gltX、hisS、rplC、aspS、gyrB、dnaEである。 、rpoA、rpoB、pheT、infB、rpsC、rplF、alaS、leuS、serS、rplD、gyrA、またはmetK。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、必須ではない細菌遺伝子またはゲノム遺伝子座にある。いくつかの実施形態において、第1の核酸配列は、少なくとも1つのリピート配列をさらに含む第1のCRISPRアレイである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのリピート配列は、その5’末端またはその3’末端のいずれかで第1のスペーサー配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、第1の核酸は、必須ではないバクテリオファージ遺伝子または他のゲノム遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態において、非必須バクテリオファージ遺伝子は、gp49、gp75、hoc、gp0.7、gp4.3、gp4.5、gp4.7、gp0.6、gp0.65、gp0.7、gp4.3、またはgp4.5。いくつかの実施形態において、標的細菌は、C.difficileである。いくつかの実施形態において、溶原性バクテリオファージは、φCD146またはφCD24-2である。いくつかの実施形態において、標的細菌は、溶原性バクテリオファージの溶菌活性によって、第1のスペーサー配列またはそこから転写されるcrRNA、あるいはその両方を使用するCRISPR-Casシステムの活性によって殺傷される。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、標的細菌に対して内因性である。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、標的細菌に対して外因性である。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I型CRISPR-Casシステム、II型CRISPR-Casシステム、またはIII型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、以下を含む医薬組成物である:(a)本明細書に開示されるバクテリオファージ、または本明細書に開示される溶原性バクテリオファージ、(b)製薬上許容される賦形剤。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、錠剤、液体、シロップ、経口製剤、静脈内製剤、鼻腔内製剤、眼製剤、耳製剤、皮下製剤、吸入可能な呼吸製剤の形態である。坐剤、またはそれらの任意の組み合わせ。
【0004】
いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムの活性は、溶原性バクテリオファージの溶菌活性を補足または増強する。いくつかの実施形態において、溶原性バクテリオファージの溶菌活性およびCRISPR-Casシステムの活性は相乗的である。いくつかの実施形態において、溶原性バクテリオファージの溶菌活性、CRISPR-Casシステムの活性、またはその両方は、溶原性バクテリオファージの濃度によって調節される。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、標的細菌に対して内因性である。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、標的細菌に対して外因性である。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I型CRISPR-Casシステム、II型CRISPR-Casシステム、またはIII型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、溶原性バクテリオファージは、溶原性バクテリオファージの溶菌活性によって引き起こされる細胞死を超えて、CRISPR-Casアレイの活性を超えて、またはその両方を超えて、標的細菌にいかなる新しい特性も与えない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるのは、それを必要とする個体の疾患を治療する方法であり、この方法は、本明細書に開示される医薬組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、個体は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、疾患は細菌感染症である。いくつかの実施形態において、細菌感染を引き起こす細菌は、Escherichia coli、Salmonella enterica、Bacillus subtilis、Clostridium acetobutylicum、Clostridium ljungdahlii、Clostridioides difficile、Clostridium bolteae、Acinetobacter baumannii、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium abscessus、Mycobacterium intracellulare、Mycobacterium fortuitum、Mycobacterium chelonae、Mycobacterium avium、Mycobacterium gordonae、Myxococcus xanthus、Streptococcus pyogenes、cyanobacteria、Staphylococcus aureus、methicillin resistant Staphylococcus aureus、Streptococcus pneumoniae、carbapenem-resistant Enterobacteriaceae、extended spectrum beta-lactamase (ESBL)-producing Enterobacteriaceae、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus salivarius、Corynebacterium minutissimum、Corynebacterium pseudodiphtheriticum、Corynebacterium striatum、Corynebacterium group G1、Corynebacterium group G2、Streptococcus mitis、Streptococcus sanguinis、Klebsiella pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Burkholderia cepacia、Serratia marcescens、Haemophilus influenzae、Moraxella sp.、Neisseria meningitidis、Neisseria gonorrhoeae、Salmonella typhimurium、Actinomyces israelii.、Porphyromonas gingivalis.、Prevotella melaninogenicus、Helicobacter pylori、Helicobacter felis、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Enterococcus gallinarum、Bacteroides fragilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Fusobacterium nucleatum、Ruminococcus gnavus、もしくはCampylobacter jejuni、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、細菌は、少なくとも1つの抗生物質に耐性である薬剤耐性細菌である。いくつかの実施形態において、細菌は、少なくとも1つの抗生物質に耐性である多剤耐性細菌である。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗生物質は、セファロスポリン、フルオロキノロン、カルバペネム、コリスチン、アミノグリコシド、バンコマイシン、ストレプトマイシン、またはメチシリンを含む。いくつかの実施形態において、投与は、動脈内、静脈内、筋肉内、経口、皮下、吸入、またはそれらの任意の組み合わせである。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に具体的に記載されている。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、およびその添付の図面を参照することによって得られる。
【
図1】I-B型Clostridium difficile標的化CRISPRアレイの接合効率を例示する。crRNAはpMTL84151にクローニングされ、モデルC.difficile系統630およびR20291にコンジュゲートされた。crRNAプラスミドの生存可能なトランスコンジュゲートは、空のpMTL84151プラスミド対照よりも約1-log低い頻度で回収された。データは、平均値±平均値の標準誤差として表される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、t検定Holm-Sidak法。
【
図2】CRISPRファージ工学および作用機序の概要である。ファージCD24-2のゲノムは、保存されたC.difficile I-B型システムの要件を満たすリピート-スペーサー-リピートで構成される細菌ゲノム標的化CRISPRアレイをコードするように改変された。ゲノムを標的とするCRISPRアレイは、感染中に細菌細胞に形質導入され、バクテリオファージの溶菌遺伝子と同時に発現する。細胞死は、2つの独立した作用メカニズムによって発生し、これらは、CRISPR RNAによって方向付けられるネイティブに発現されるI-B型Casエフェクタータンパク質による修復不可能なゲノム損傷と、溶菌複製中に発現するホリンおよびエンドリシンによる細胞溶解である。
【
図3】野生型およびCRISPRファージバリアントの例示的な透過型電子顕微鏡写真である。野生型とcrPhage(crファージ)の形態を比較すると、カプシドのサイズや鞘の長さの違いは示されない。
【
図4A】
図4A-
図4Cは、野生型および操作されたファージバリアントの活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図4Aは、0.1の入力MOIでのバクテリオファージによるインビトロ感染中のCFU減少の時間経過を例示する。CRISPRで操作されたファージは、2-6時間の間でCFUの低下を改善するが、24時間までに、ファージで処理されたすべての培養物が回復する。ファージの活性に対する溶原性遺伝子ノックアウトの観察可能な効果は存在しなかった。データは、平均値±平均値の標準誤差として表される。
【
図4B】
図4A-
図4Cは、野生型および操作されたファージバリアントの活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図4Bは、ファージ感染後の生存細菌コロニーにおける溶原性(lysogeny)のPCRベースの検出の時間経過を例示する。CRISPR増強されたファージは、溶原菌形成が損なわれたことを示す。重要な溶原性遺伝子を欠くファージバリアントは、インビトロで検出可能な溶原性を示さない。
【
図4C】
図4A-
図4Cは、野生型および操作されたファージバリアントの活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図4Cは、ファージバリアントの入力MOIに対するCFU減少の依存性を例示する。MOI≧1は、CFUの急速な減少に有利に働くが、結果は24時間までに回復する。対照的に、MOI≦0.01の場合、CFUは中程度に減少し、24時間まで減少し続ける。データは、平均値±平均値の標準誤差として表される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図5A】
図5A-
図5Dは、C.difficile CD19がコロニーを形成し、セフォペラゾンで処理したマウスに疾患を引き起こすことを示す。
図5Aは、実験計画およびタイムラインを示す例示的な概略図である。n=16匹のマウスである。
【
図5B】
図5A-
図5Dは、C.difficile CD19がコロニーを形成し、セフォペラゾンで治療したマウスに病気を引き起こすことを示す。
図5Bは、C.difficile CD19でチャレンジされたマウスにおける経時的な体重の変化を例示する。
図5Bおよび
図5Cの場合、データは平均値±平均値の標準誤差として表される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、多重比較のためのDynnの補正を使用したKruskal-Wallis一元配置分散分析(
図5Bの場合)、および
図5Dについては両側Mann-Whitney。
【
図5C】
図5A-
図5Dは、C.difficile CD19がコロニーを形成し、セフォペラゾンで治療したマウスに病気を引き起こすことを示す。
図5Cは、チャレンジ後4日目および9日目の感染マウス(1日あたりn=8)からの盲腸内容物中の総CFUおよび胞子CFUを例示する。
図5Bおよび
図5Cの場合、データは平均値±平均値の標準誤差として表される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、多重比較のためのDynnの補正を使用したKruskal-Wallis一元配置分散分析(
図5Bの場合)、および
図5Dについては両側Mann-Whitney。
【
図5D】
図5A-
図5Dは、C.difficile CD19がコロニーを形成し、セフォペラゾンで治療したマウスに病気を引き起こすことを示す。
図5Dは、チャレンジ後4日からの非感染および感染マウス目(1日あたりn=8)からの盲腸組織の総組織学的スコアを例示する。
図5Bおよび
図5Cの場合、データは平均値±平均値の標準誤差として表される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、多重比較のためのDynnの補正を使用したKruskal-Wallis一元配置分散分析(
図5Bの場合)、および
図5Dについては、両側Mann-Whitney。
【
図6A】
図6A-
図6Lは、C.difficileゲノムを標的とするCRISPRをコードするバクテリオファージが、C.difficileの負荷とインビボでの疾患の臨床的兆候を軽減することを例示する。
図6Aは、実験計画、タイムライン、および治療群を示す例示的な概略図である。ビヒクル、wtPhage、およびcrPhage(3回の実験でn=20匹のマウス);wtPhage ΔlysおよびcrPhage Δlys(n=8マウス)。
【
図6B】
図6A-
図6Lは、C.difficileゲノムを標的とするCRISPRをコードするバクテリオファージが、C.difficileの負荷とインビボでの疾患の臨床的兆候を軽減することを例示する。
図6Bは、チャレンジ後2日目および4日目の各治療群のマウスからの糞便C.difficile栄養性CFUを例示する。2日目については、ビヒクルn=13、wtPhage n=12、crPhage n=13、wtPhage ΔlysおよびcrPhage Δlys n=8。4日目については、ビヒクル n=12、wtPhage n=10、wtPhage Δlys n=2、crPhage Δlys n=8。
図6B、
図6F、および
図6Jのデータは、平均値±平均値の標準誤差として提示されている。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、多重比較のためのDunnの補正を使用したKruskal-Wallis一元配置分散分析、およびSidakのGeisser-Greenhouse双方向ANOVA
図6Jの多重比較の補正。
【
図6C】
図6A-
図6Lは、C.difficileゲノムを標的とするCRISPRをコードするバクテリオファージが、C.difficileの負荷とインビボでの疾患の臨床的兆候を軽減することを例示する。
図6Cは、チャレンジの4日後に採取された盲腸内容物からの栄養C.difficile CFUを例示する。ビヒクル、wtPhage n=10、crPhage n=9、wtPhage ΔlysおよびcrPhage Δlys n=8。
図6H、
図6C、
図6D、および
図6Kのデータは、平均値±平均値の標準誤差として表される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、多重比較のためのDynnの補正を使用したKruskal-Wallis一元配置分散分析(
図6H、
図6C、図。6D、および
図6K)。
【
図6D】
図6A-
図6Lは、C.difficileゲノムを標的とするCRISPRをコードするバクテリオファージが、C.difficileの負荷とインビボでの疾患の臨床的兆候を軽減することを例示する。
図6Dは、チャレンジの4日後に採取された盲腸組織の全組織学的スコアを例示する。各変数のスケールは0-4で、組織学的要約スコアの最大値は12である。非感染ビヒクル、wtPhage ΔlysおよびcrPhage Δlys n=8;ビヒクル、wtPhage、およびcrPhage n=4。
図6H、
図6C、
図6D、および
図6Kのデータは、平均値±平均値の標準誤差として表される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、多重比較のためのDynnの補正を使用したKruskal-Wallis一元配置分散分析(
図6H、
図6C、図。6D、および
図6K)。
【
図6E】
図6A-
図6Lは、C.difficileゲノムを標的とするCRISPRをコードするバクテリオファージが、C.difficileの負荷とインビボでの疾患の臨床的兆候を軽減することを例示する。
図6Eは、チャレンジ後4日目に各処理群のマウスから採取された盲腸組織の代表的な画像を示す。スケールバーは500μmである。
【
図6F】
図6A-
図6Lは、C.difficileゲノムを標的とするCRISPRをコードするバクテリオファージが、C.difficileの負荷とインビボでの疾患の臨床的兆候を軽減することを例示する。
図6Fは、チャレンジ後4日目に採取された結腸の全組織学的スコアを例示する。結腸組織に対するビヒクルの効果を制御するために、非感染ビヒクル処置群を含めた。非感染ビヒクル、wtPhage ΔlysおよびcrPhage Δlys n=8;ビヒクル、wtPhage、およびcrPhage n=4。各変数は0-4のスケールでスコア付けされるため、最大組織損傷の合計スコアは12である。
図6B、
図6F、および
図6Jのデータは、平均値±平均値の標準誤差として提示されている。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、多重比較のためのDunnの補正を使用したKruskal-Wallis一元配置分散分析、およびSidakのGeisser-Greenhouse双方向ANOVA
図6Jの多重比較の補正。
【
図6G】
図6A-
図6Lは、C.difficileゲノムを標的とするCRISPRをコードするバクテリオファージが、C.difficileの負荷とインビボでの疾患の臨床的兆候を軽減することを例示する。
図6Gは、
図6Fのチャレンジ4日後のヘマトキシリンおよびエオシン染色結腸組織の代表的な画像を示す。スケールバーは500μmである。
【
図6H】
図6A-
図6Lは、C.difficileゲノムを標的とするCRISPRをコードするバクテリオファージが、C.difficileの負荷とインビボでの疾患の臨床的兆候を軽減することを例示する。
図6Hは、チャレンジの4日後の各治療群からのマウスの体重の変化を例示する。非感染ビヒクル n=4、ビヒクル、wtPhage、およびcrPhage n=14、ならびにwtPhage ΔlysとcrPhage Δlysの両方 n=8。
図6H、
図6C、
図6D、および
図6Kのデータは、平均値±平均値の標準誤差として表される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、多重比較のためのDynnの補正を使用したKruskal-Wallis一元配置分散分析(
図6H、
図6C、図。6D、および
図6K)。
【
図6I】
図6A-
図6Lは、C.difficileゲノムを標的とするCRISPRをコードするバクテリオファージが、C.difficileの負荷とインビボでの疾患の臨床的兆候を軽減することを例示する。
図6Iは、実験の過程でwtPhage ΔlysまたはcrPhage Δlysのいずれかで処理されたマウスの糞便から分離された溶原菌の割合を示す(n=8マウス/日、マウスあたり6コロニーをPCRでスクリーニング)。
【
図6J】
図6A-
図6Lは、C.difficileゲノムを標的とするCRISPRをコードするバクテリオファージが、C.difficileの負荷とインビボでの疾患の臨床的兆候を軽減することを例示する。
図6Jは、C.difficileCD19およびwtPhageで溶原化されたCD19における毒素遺伝子発現を例示する。結果は、各時点での各系統のn=3の生物学的複製からのものである。
図6B、
図6F、および
図6Jのデータは、平均値±平均値の標準誤差として提示されている。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、多重比較のためのDunnの補正を使用したKruskal-Wallis一元配置分散分析、およびSidakのGeisser-Greenhouse双方向ANOVA
図6Jの多重比較の補正。
【
図6K】
図6A-
図6Lは、C.difficileゲノムを標的とするCRISPRをコードするバクテリオファージが、C.difficileの負荷とインビボでの疾患の臨床的兆候を軽減することを例示する。
図6Kは、チャレンジ後2日および4日での糞便含有量からのPFUを例示する。排便がないことに起因する4日目のwtPhage Δlys(n=2)を除いて、すべての処理のn=8-12の糞便サンプルをテストした。
図6H、
図6C、
図6D、および
図6Kのデータは、平均値±平均値の標準誤差として表される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、多重比較のためのDynnの補正を使用したKruskal-Wallis一元配置分散分析(
図6H、
図6C、
図6D、および
図6K)。
【
図6L】
図6A-
図6Lは、C.difficileゲノムを標的とするCRISPRをコードするバクテリオファージが、C.difficileの負荷とインビボでの疾患の臨床的兆候を軽減することを例示する。
図6Lは、crPhageがwtPhageよりもインビボでゆっくりと溶原化することを例示する。
【
図7A】
図7A-
図7Cは、野生型(WT)および操作されたファージバリアント(WT cI)の活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図7Aは、この例で削除されたゲノムの領域を例証する。
【
図7B】
図7A-
図7Cは、野生型(WT)および操作されたファージバリアント(WT cI)の活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図7Bは、バクテリオファージによるインビトロ感染中のCFU減少の時間経過を例証する。
【
図7C】
図7A-
図7Cは、野生型(WT)および操作されたファージバリアント(WT cI)の活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図7Cは、ファージ感染後の生存細菌コロニーにおける溶原性のPCRベースの検出の時間経過を例証する。操作されたファージバリアントは、溶原形成率またはファージ殺傷に影響を与えなかった。
【
図8A】
図8A-
図8Cは、野生型(WT)および操作されたファージバリアント(WT ΔcI)の活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図8Aは、この例で除去されたファージゲノムの領域を示す。
【
図8B】
図8A-
図8Cは、野生型(WT)および操作されたファージバリアント(WT ΔcI)の活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図8Bは、バクテリオファージによるインビトロ感染中のCFU減少の時間経過を示す。
【
図8C】
図8A-
図8Cは、野生型(WT)および操作されたファージバリアント(WT ΔcI)の活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図8Cは、ファージ感染後の生存細菌コロニーにおける溶原性のPCRベースの検出の時間経過を示す。操作されたファージバリアントは、溶原形成率をわずかに低下させるが、ファージの殺傷を改善しない。
【
図9A1】
図9A-
図9Dは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図9Aは、この例で除去されたファージゲノムの領域を図示する。
【
図9A2】
図9A-
図9Dは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図9Aは、この例で除去されたファージゲノムの領域を図示する。
【
図9A3】
図9A-
図9Dは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図9Aは、この例で除去されたファージゲノムの領域を図示する。
【
図9A4】
図9A-
図9Dは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図9Aは、この例で除去されたファージゲノムの領域を図示する。
【
図9A5】
図9A-
図9Dは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図9Aは、この例で除去されたファージゲノムの領域を図示する。
【
図9B】
図9A-
図9Dは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図9Bは、バクテリオファージによるインビトロ感染中のCFU減少の時間経過を図示する。
【
図9C】
図9A-
図9Dは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図9Cは、ファージ感染後の生存細菌コロニーにおける溶原性のPCRベースの検出の時間経過を図示する。操作されたファージバリアント(WT cI)は、溶原性形成速度を大幅に低下させ、ファージの殺傷を改善する。
【
図9D】
図9A-
図9Dは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性および溶原菌形成率のインビトロ比較を例示する。
図9Dは、CRISPR RNA(gp75×1249)と組み合わせた溶原性モジュールノックアウトが溶原性を防ぐことを例示する。
【
図10A1】
図10A-
図10Eは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性と溶原性形成率のインビトロ比較を例示する(gp75-CRISPR増強、WT cI-溶原性ノックアウト、gp75 ΔcI-CRISPR増強溶原性ノックアウト)。
図10Aは、溶原性領域を標的とする逆選択的crRNAの設計を図示する。
【
図10A2】
図10A-
図10Eは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性と溶原性形成率のインビトロ比較を例示する(gp75-CRISPR増強、WT cI-溶原性ノックアウト、gp75 ΔcI-CRISPR増強溶原性ノックアウト)。
図10Aは、溶原性領域を標的とする逆選択的crRNAの設計を図示する。
【
図10A3】
図10A-
図10Eは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性と溶原性形成率のインビトロ比較を例示する(gp75-CRISPR増強、WT cI-溶原性ノックアウト、gp75 ΔcI-CRISPR増強溶原性ノックアウト)。
図10Aは、溶原性領域を標的とする逆選択的crRNAの設計を図示する。
【
図10A4】
図10A-
図10Eは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性と溶原性形成率のインビトロ比較を例示する(gp75-CRISPR増強、WT cI-溶原性ノックアウト、gp75 ΔcI-CRISPR増強溶原性ノックアウト)。
図10Aは、溶原性領域を標的とする逆選択的crRNAの設計を図示する。
【
図10A5】
図10A-
図10Eは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性と溶原性形成率のインビトロ比較を例示する(gp75-CRISPR増強、WT cI-溶原性ノックアウト、gp75 ΔcI-CRISPR増強溶原性ノックアウト)。
図10Aは、溶原性領域を標的とする逆選択的crRNAの設計を図示する。
【
図10B】
図10A-
図10Eは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性と溶原性形成率のインビトロ比較を例示する(gp75-CRISPR増強、WT cI-溶原性ノックアウト、gp75 ΔcI-CRISPR増強溶原性ノックアウト)。
図10Bおよび
図10Dは、バクテリオファージによるインビトロ感染中のCFU減少の時間経過を図示する。
【
図10C】
図10A-
図10Eは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性と溶原性形成率のインビトロ比較を例示する(gp75-CRISPR増強、WT cI-溶原性ノックアウト、gp75 ΔcI-CRISPR増強溶原性ノックアウト)。
図10Cおよび
図10Eは、ファージ感染後の生存細菌コロニーにおける溶原性のPCRベースの検出の時間経過を図示する。操作されたファージバリアント(WT cI)は、溶原性形成率を無効にし、ファージの殺傷を改善する。さらに、溶原性ノックアウトにCRISPRを追加すると、ファージ殺傷がさらに改善される。
【
図10D】
図10A-
図10Eは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性と溶原性形成率のインビトロ比較を例示する(gp75-CRISPR増強、WT cI-溶原性ノックアウト、gp75 ΔcI-CRISPR増強溶原性ノックアウト)。
図10Bおよび
図10Dは、バクテリオファージによるインビトロ感染中のCFU減少の時間経過を図示する。
【
図10E】
図10A-
図10Eは、野生型(WT)および操作されたファージバリアントの活性と溶原性形成率のインビトロ比較を例示する(gp75-CRISPR増強、WT cI-溶原性ノックアウト、gp75 ΔcI-CRISPR増強溶原性ノックアウト)。
図10Cおよび
図10Eは、ファージ感染後の生存細菌コロニーにおける溶原性のPCRベースの検出の時間経過を図示する。操作されたファージバリアント(WT cI)は、溶原性形成率を無効にし、ファージの殺傷を改善する。さらに、溶原性ノックアウトにCRISPRを追加すると、ファージ殺傷がさらに改善される。
【
図11A】
図11A-11Cは、ファージp1473における予測される溶原性領域の欠失の効果を示す。
図11Aは、p1473の予測される溶原性領域を示す。
【
図11B】
図11A-11Cは、ファージp1473における予測される溶原性領域の欠失の効果を示す。
図11Bは、Staphylococcus aureusのローンに播種された野生型p1473、Var002、Var006、Var010、およびVar012の希釈系列を示す。
【
図11C】
図11A-11Cは、ファージp1473における予測される溶原性領域の欠失の効果を示す。
図11Cは、野生型-1473、Var010、およびVar012のより大きなプラーク形態を示すクローズアップ画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書に開示されるのは、特定の実施形態において、第1のスペーサー配列またはそこから転写されるcrRNAをコードする第1の核酸配列を含むバクテリオファージであり、第1のスペーサー配列は、標的細菌中の標的遺伝子からの標的ヌクレオチド配列に相補的である。バクテリオファージが溶解性にされるという条件で。本明細書でさらに開示されるのは、特定の実施形態において、第1のスペーサー配列またはそこから転写されるcrRNAをコードする第1の核酸配列を含む溶原性バクテリオファージであり、第1のスペーサー配列は、標的細菌中の標的遺伝子からの標的ヌクレオチド配列に相補的である。
図10aで「1247欠失」(1247cI欠失とも呼ばれる)と記された領域を除去することにより、バクテリオファージが溶解性になること。特定の実施形態において、本明細書に開示されるのは、(a)本明細書に開示されるバクテリオファージ、または本明細書に開示される溶原性バクテリオファージ、および(b)薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物である。本明細書でさらに開示されるのは、特定の実施形態において、標的細菌を殺傷するための方法であり、この方法は、第1のスペーサー配列をコードする第1の核酸配列またはそこから転写されるcrRNAを含む溶原性バクテリオファージを標的細菌に導入することを含む。
図10aで「1247欠失」と記された領域の除去によってバクテリオファージが溶解性になり、それによって標的細菌を殺傷するという条件で、標的細菌の標的遺伝子からの標的ヌクレオチド配列に相補的である。また、特定の実施形態において、本明細書に開示されるのは、それを必要とする個体の疾患を治療する方法であり、この方法は、本明細書に開示される医薬組成物を投与することを含む。
【0007】
特定の用語
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書の開示の説明に使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本開示を限定することを意図するものではない。
【0008】
文脈が別のことを示さない限り、本明細書に記載の本開示の様々な特徴は、任意の組み合わせで使用することができることが具体的に意図されている。さらに、本開示はまた、いくつかの実施形態において、本明細書に記載される任意の特徴または特徴の組み合わせが除外または省略されることを企図する。例証するために、組成物が成分A、BおよびCを含むと明細書に述べられている場合、A、BもしくはCのいずれか、またはそれらの組み合わせのいずれかが、単独でまたは任意の組み合わせで、省略され、特許請求されないことが具体的に意図される。
【0009】
当業者は、文献における一貫性の欠如および用語を統一するための当技術分野における継続的な努力のために、様々なCRISPR-Casシステムおよびそれらの構成要素を指定するそのような用語の互換性を理解する。同様に、当該技術分野の当業者は、文献の一貫性の欠如およびそのような用語を統一するための当該技術分野における継続的な努力のために、様々な抗CRISPRタンパク質を指定する用語の互換性も理解する。
【0010】
明細書中の説明および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。また、本明細書で使用される場合、「および/または」は、関連する列挙された項目の1つ以上のありとあらゆる可能な組み合わせ、ならびに代替(「または」)で解釈される場合の組み合わせの欠如を指し、包含する。
【0011】
投与量または期間などの測定可能な値を指すときに本明細書で使用される「約」という用語は、指定された量の±20%、±10%、±5%、±1%、+0.5%、また±0.1%でさえの変動を指す。本明細書で使用される場合、「XとYの間」および「約XとYの間」などの語句は、XおよびYを含むと解釈されるべきである。本明細書で使用される場合、「約XとYの間」などの語句は「約Xと約Yの間」を意味し、「約XからYまで」などの語句は「約Xから約Yまで」を意味する。
【0012】
本明細書で使用される「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含むこと」、「含有する(include)」、「含有すること(includes)」、「有する(have)」および「有すること(having)」という用語は、言及された特徴、工程、操作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の機能、工程、操作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。
【0013】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という移行句は、特許請求の範囲が、特許請求の範囲に列挙された特定の材料または工程、および特許請求された開示の基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼさないものを包含すると解釈されるべきであることを意味する。したがって、本開示の請求項において使用される場合の「から本質的になる」という用語は、「含む」と等価であると解釈されることを意図するものではない。
【0014】
本明細書で使用される「からなる」および「からなり」という用語は、他に直接述べられていない、いかなる機能、工程、操作、要素、および/または構成要素も除外する。「からなる」の使用は、その節に記載されている機能、工程、操作、要素、および/または構成要素のみの範囲内に限定し、他の機能、工程、操作、要素、および/または構成要素を全体として特許請求の範囲から除外する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「キメラ」は、少なくとも2つの構成要素が異なる供給源(例えば、異なる生物、異なるコード領域)に由来する核酸分子またはポリペプチドを指す。
【0016】
「相補性」は、本明細書で使用される場合、コンパレーターヌクレオチド配列との100%の相補性または同一性を意味するか、またはそれは、100%未満の相補性(例えば、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%などの相補性)を意味する。相補的または相補可能は、変異に対して「相補的」または変異を「相補すること」の観点で使用することもできる。
【0017】
「相補的」または「相補性」という用語は、本明細書で使用される場合、塩基対形成による、許容される塩および温度条件下でのポリヌクレオチドの自然な結合を指す。例えば、配列「A-G-T」は相補的配列「T-C-A」に結合する。2つの一本鎖分子間の相補性は「部分的」であり、ヌクレオチドの一部のみが結合するか、または一本鎖分子間に完全な相補性が存在する場合に完全である。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に顕著な影響を及ぼす。
【0018】
本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、mRNA、tRNA、rRNA、miRNA、抗マイクロRNA、調節RNAなどを生成するために使用することができる核酸分子を指す。遺伝子は、機能的なタンパク質または遺伝子産物を産生するために使用できる場合とできない場合がある。遺伝子には、コード領域と非コード領域(例えば、イントロン、調節エレメント、機能的エレメント、プロモーター、エンハンサー、終結配列、および/または5’および3’非翻訳領域)の両方が含まれる。遺伝子は「単離された」ものであり、これは、その天然状態の核酸に関連して通常見出される成分を実質的または本質的に含まない核酸を意味する。そのような成分には、他の細胞材料、組換え産生からの培養培地、および/または核酸を化学的に合成する際に使用される様々な化学物質が含まれる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「標的ヌクレオチド配列」とは、組換えCRISPRアレイのスペーサー配列に相補的である標的遺伝子の部分を指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「標的ヌクレオチド配列」とは、標的遺伝子の部分(すなわち、ゲノム内の標的領域、またはプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に隣接する「プロトスペーサー配列」)を指し、これは、CRISPRアレイのスペーサー配列に対して、完全に相補的または実質的に相補的である(例えば、少なくとも70%相補的(例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上))。
【0021】
本明細書で使用される場合、「プロトスペーサー隣接モチーフ」または「PAM」という用語は、スペーサー配列に一致するヌクレオチド配列に隣接する標的DNA分子上に存在するDNA配列を指す。このモチーフは、スペーサー配列がその領域に相補的である結果として結合する領域の隣の標的遺伝子において見られ、スペーサーヌクレオチド配列との塩基対形成が始まる点を特定する。必要である正確なPAM配列は、異なるCRISPR-Casシステム間で各々変動する。PAMの非限定的な例には、CCA、CCT、CCG、TTC、AAG、AGG、ATG、GAG、および/またはCCが含まれる。いくつかの場合において、I型システムにおいて、PAMはスペーサーに一致する配列のすぐ5’に位置し、したがってスペーサーヌクレオチド配列と塩基対を形成する配列に対して3’に位置し、カスケードによって直接認識される。いくつかの場合において、B.halodurans I-C型システムについては、PAMはYYCであり、ここで、YはTまたはCのいずれかであり得る。いくつかの場合において、P.aeruginosa I-C型システムについては、PAMはTTCである。一旦、同族のプロトスペーサーとPAMが認識されると、Cas3が動員され、次いで標的DNAが切断および分解される。II型システムについては、Cas9/sgRNAがRループを形成して、ガイドRNAとゲノムのWatson-Crick対形成を通して特定のDNA配列を調べるために、PAMが必要とされる。PAM特異性は、Cas9タンパク質のDNA結合特異性の関数である(例えば、Cas9のC末端におけるプロトスペーサー隣接モチーフ認識ドメイン)。
【0022】
本明細書で使用される場合、抗ウイルス防御(カスケード)のためのI型クラスター化規則的間隔の短いパリンドロームリピート(CRISPR)関連複合体は、プレcrRNAのプロセシングおよびその後のI型CRISPR-Casシステムの標的DNAへの結合に関与するポリペプチドの複合体を指す。これらのポリペプチドには、I型サブタイプI-A、I-B、I-C、I-D、I-E、I-F、およびI-Uのカスケードポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。I-A型ポリペプチドの非限定的な例には、Cas7(Csa2)、Cas8a1(Csx13)、Cas8a2(Csx9)、Cas5、Csa5、Cas6a、Cas3’’および/またはCas3’’が含まれる。I-B型ポリペプチドの非限定的な例には、Cas6b、Cas8b(Csh1)、Cas7(Csh2)および/またはCas5が含まれる。I-C型ポリペプチドの非限定的な例には、Cas5d、Cas8c(Csd1)、および/またはCas7(Csd2)が含まれる。I-D型ポリペプチドの非限定的な例には、Cas10d(Csc3)、Csc2、Csc1、および/またはCas6dが含まれる。I-E型ポリペプチドの非限定的な例には、Cse1(CasA)、Cse2(CasB)、Cas7(CasC)、Cas5(CasD)および/またはCas6e(CasE)が含まれる。タイプI-Fポリペプチドの例には、Cys1、Cys2、Cas7(Cys3)および/またはCas6f(Csy4)が含まれる。いくつかの場合において、本明細書に記載される組換え核酸は、CRISPRアレイをプロセスし、続いてプロセスされたCRISPR RNAのスペーサーをガイドとして使用して標的DNAに結合するように機能するI型カスケードポリペプチドのサブセットをコードするヌクレオチドを含み、これらから本質的になり、またはこれらからなる。
【0023】
本明細書で使用される「CRISPRアレイ」は、少なくとも2つのリピート配列、または前記リピート配列のそれぞれの一部、および少なくとも1つのスペーサー配列を含む核酸分子を意味する。2つのリピート配列の1つまたはその一部は、スペーサー配列の5’末端に連結されており、2つのリピート配列の他方、またはその一部は、スペーサー配列の3’末端に連結されている。組換えCRISPRアレイでは、リピート配列とスペーサー配列の組み合わせは合成であり、人が作ったものであり、自然界には見られない。いくつかの実施形態では、「CRISPRアレイ」は、5’から3’までの少なくとも1つのリピートスペーサー配列(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25以上のリピートスペーサー配列、およびその中の任意の範囲または値)を含む核酸構築物を指す。アレイの3’の最もリピートスペーサー配列の3’末端はリピート配列に連結され、それにより、前記アレイのすべてのスペーサーは、リピート配列によって5’末端および3’末端の両方に隣接している。
【0024】
本明細書で使用される場合、「スペーサー配列」または「スペーサー」は、標的DNA(すなわち、ゲノム中の標的領域またはプロトスペーサー隣接モチーフに隣接する「プロトスペーサー配列」)に相補的なヌクレオチド配列を指す。(PAM)シーケンス)。スペーサー配列は、標的DNAに対して、完全に相補的または実質的に相補的である(例えば、少なくとも約70%相補的(例えば、約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上))。
【0025】
本明細書で使用される「リピート(反復)配列」は、例えば、「スペーサー配列」によって分離された野生型CRISPR遺伝子座の任意のリピート配列または合成CRISPRアレイのリピート配列(例えば、リピート-スペーサー-リピート配列)を指す。本開示で有用なリピート配列は、CRISPR遺伝子座の任意の既知のまたは後で同定されたリピート配列であるか、またはCRISPRシステム、例えば、CRISPRタイプIシステムで機能するように設計された合成リピートである。
【0026】
本明細書で使用される場合、「CRISPRファージ」、「CRISPR増強ファージ」、および「crPhage」という用語は、CRISPR-Casシステムの少なくとも1つの成分をコードする少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドを含むバクテリオファージDNAを含むバクテリオファージ粒子を指す(例えば、CRISPRアレイ、crRNA;例えば、標的化crRNAの挿入を含むP1バクテリオファージ)。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、CRISPR-Casシステムの少なくとも1つの転写活性化因子をコードする。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、CRISPR-Casシステムの抗CRISPRポリペプチドの少なくとも1つの成分をコードする。
【0027】
本明細書で使用される場合、2つの核酸分子、ヌクレオチド配列またはタンパク質配列の状況における「実質的に同一」または「実質的な同一性」という語句は、以下の配列比較アルゴリズムのいずれかを使用して、または目視検査によって測定されるような、最大の一致のために比較および整列された場合に、少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および/または100%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の同一性を有する2つ以上の配列または部分配列を指す。いくつかの実施形態において、実質的な同一性は、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、96%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する2つ以上の配列または部分配列を指す。いくつかの実施形態において、実質的な同一性とは、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する2つ以上の配列または部分配列を指す。配列比較のために、通常、1つの配列が参照配列として機能し、これに対してテスト配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、テスト配列と参照配列がコンピュータに入力され、必要に応じて部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。次に、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対するテスト配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0028】
比較ウィンドウを整列させるための配列の最適な整列は、SmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunschの相同性整列アルゴリズム、PearsonおよびLipmanの類似性方法の検索などのツールによって、および任意選択で、GCG(登録商標)Wisconsin Package(登録商標)(Accelrys Inc.,San Diego,CA)の一部として利用可能なGAP、BESTFIT、FASTA、TFASTAなどのこれらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装によって行われる。テスト配列と参照配列の整列されたセグメントの「同一性の割合」は、2つの整列された配列によって共有される同一の構成要素の数を、参照配列セグメント内の構成要素の総数、つまり参照配列全体、または参照配列のより小さな定義された部分で除算したものである。配列同一性パーセントは、同一性の割合に100を掛けたものとして表される。1つ以上のポリヌクレオチド配列の比較は、完全長ポリヌクレオチド配列またはその一部、あるいはより長いポリヌクレオチド配列に対するものである。いくつかの場合において、「同一性パーセント」は、翻訳されたヌクレオチド配列についてはBLASTXバージョン2.0を使用し、ポリヌクレオチド配列についてはBLASTNバージョン2.0を使用して決定される。
【0029】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組換え核酸分子、ヌクレオチド配列およびポリペプチドは、「単離されている」。「単離された」核酸分子、「単離された」ヌクレオチド配列または「単離された」ポリペプチドは、その本来の環境から離れて存在する核酸分子、ヌクレオチド配列またはポリペプチドである。いくつかの場合において、単離された核酸分子、ヌクレオチド配列またはポリヌクレオチドは、天然に存在する生物またはウイルスの他の成分の少なくともいくつか、例えば、細胞またはウイルスの構造成分、または、ポリヌクレオチドに関連して一般的に見られる他のポリペプチドまたは核酸から少なくとも部分的に分離された精製形態で存在する。代表的な実施形態において、単離された核酸分子、単離されたヌクレオチド配列および/または単離されたポリペプチドは、少なくとも約1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%純粋、またはより純粋である。
【0030】
「治療する」、「治療すること」、または「治療」という用語によって、対象の状態の重症度が減少されるか、少なくとも部分的に改善または修正されること、ならびに、少なくとも1つの臨床症状における、ある程度の軽減、緩和または減少が達成されること、ならびに/あるいは疾患もしくは状態の進行の遅延、および/または疾患もしくは病気の発症の遅延が存在することが意図される。感染、疾患または状態に関して、この用語は、感染、疾患または状態の症状または他の徴候の減少を指す。いくつかの実施形態において、治療は、感染、疾患または状態の症状または他の徴候の少なくとも約5%、例えば、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%以上の減少を提供する。
【0031】
本明細書で使用される「感染症」、「疾患」、または「状態」に関する用語は、対象における任意の不都合な、ネガティブな、または有害な生理学的状態を指す。いくつかの実施形態において、「感染症」、「疾患」、または「状態」の原因は、対象内および/または対象上の標的細菌集団の存在である。いくつかの実施形態において、細菌集団は、1つ以上の標的細菌種を含む。いくつかの実施形態において、細菌集団中の1つ以上の細菌種は、1つ以上の細菌の1つ以上の系統を含む。いくつかの実施形態において、標的細菌集団は、急性または慢性である「感染」、「疾患」、または「状態」を引き起こす。いくつかの実施形態において、標的細菌集団は、局所的または全身性である「感染」、「疾患」、または「状態」を引き起こす。いくつかの実施形態において、標的細菌集団は、特発性である「感染」、「疾患」、または「状態」を引き起こす。いくつかの実施形態において、標的細菌集団は、呼吸器吸入、摂取、皮膚および創傷感染症、血流感染症、中耳感染症、胃腸管感染症、腹膜感染症、尿路感染症、泌尿生殖器管感染症、口腔軟組織感染症、腹腔内感染症、表皮または粘膜吸収、眼感染症(コンタクトレンズレンズ汚染を含む)、心内膜炎、嚢胞性線維症における感染症、関節プロテーゼ、歯科用インプラント、カテーテルおよび心臓インプラントなどの留置医療機器の感染、性的接触、ならびに/または院内および換気装置に関連する細菌性肺炎を含むがこれらに限定されない手段を通じて獲得される「感染症」、「疾患」、または「状態」を引き起こす。
【0032】
本明細書で使用される場合、「バイオフィルム」という用語は、多糖のマトリックスに埋め込まれた微生物の蓄積を意味する。バイオフィルムは、固体の生物学的または非生物学的表面に形成され、医学的に重要であり、体内の微生物感染の80%以上を占める。
【0033】
「予防する」、「予防すること」、および「予防」という用語(およびそれらの文法的変形)は、対象における感染、疾患、状態、および/もしくは臨床症状の発症の予防および/もしくは遅延、ならびに/または、疾患、状態、および/もしくは臨床症状の発症前に本明細書に開示された方法を実施しない場合に起こるであろうものと比較した、感染、疾患、状態および/または臨床症状の発症の重症度の低下を指す。したがって、いくつかの実施形態において、感染を防ぐために、食品、表面、医療器具およびデバイスは、本明細書に開示される組成物を用いて、および本明細書に開示される方法によって処理される。
【0034】
本明細書で使用される「個体」または「対象」という用語は、細菌が関与する感染症、疾患、または状態を有するか、または細菌に感受性である任意の動物を含む。したがって、いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、甲殻類、または軟体動物である。哺乳動物の対象には、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、ゴリラ、サル、ヒヒ、およびチンパンジーなど)、イヌ、ネコ、ヤギ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジなど、および実験動物(例えば、ラット、モルモット、マウス、アレチネズミ、ハムスターなど)が含まれるが、これらに限定されない。鳥類の対象には、ニワトリ、アヒル、シチメンチョウ、ガチョウ、ウズラ、キジ、ペットとして飼われている鳥(インコ、オウム、コンゴウインコ、コカトゥー、カナリアなど)が含まれるが、これらに限定されない。魚類の対象には、水産養殖で使用される種(マグロ、サケ、ティラピア、ナマズ、コイ、トラウト、タラ、バス、スズキ、フエダイなど)が含まれるが、これらに限定されない。甲殻類の対象には、水産養殖で使用される種(例えば、エビ、クルマエビ、ロブスター、ザリガニ、カニなど)が含まれるが、これらに限定されない。軟体動物の対象には、水産養殖で使用される種(例えば、アワビ、ムール貝、カキ、アサリ、ホタテなど)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、適切な対象は、雄性および雌性の両方、ならびに胚性(例えば、子宮内または卵内)、乳児、若年、青年、成人および老人の対象を含む、任意の年齢の対象を含む。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【0035】
本明細書で使用される場合、核酸配列の文脈で「単離された」という用語は、その天然の環境から離れて存在する核酸配列である。
【0036】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」とは、生物学的ではなく、または他の方法で望ましくない材料を意味し、すなわち、この材料は、毒性などの望ましくない、いかなる生物学的効果も引き起こすことなく対象に投与される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「インビボ」という用語は、対象の体内で起こる事象を説明するために使用される。
【0038】
本明細書で使用される場合、「インビトロ」という用語は、材料が得られる生物学的供給源から分離されるように、実験用試薬を保持するための容器に含まれて起こる事象を説明するために使用される。インビトロアッセイは、生細胞または死細胞が利用される細胞ベースのアッセイを包含することができる。インビトロアッセイはまた、無傷の細胞が利用されない無細胞アッセイを包含することができる。
【0039】
CRISPR/CASシステム
CRISPR-Casシステムは、細菌および古細菌に見出される自然に適応性のある免疫システムである。CRISPRシステムは、獲得免疫の一形態を提供する、侵入するファージやプラスミドに対する防御に関与するヌクレアーゼシステムである。一連のcas遺伝子およびそれらの系統発生的関係に基づいた、CRISPR-Casシステムの多様性が存在する。少なくとも6つの異なる型(IからVI)が存在し、I型は細菌と古細菌の両方で同定されたすべてのシステムの50%以上を表す。いくつかの実施形態において、I型、II型、II型、IV型、V型、またはVI型のCRISPR-Casシステムが本明細書で使用される。
【0040】
I型システムは、I-A型、I-B型、I-C型、I-D型、I-E型、I-F型、およびI-U型を含む7つのサブタイプに分けられる。I型CRISPR-Casシステムには、カスケードと呼ばれるマルチサブユニット複合体(抗ウイルス防御に関連する複合体用)、Cas3(標的DNAの分解の原因となるヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、およびエキソヌクレアーゼ活性を有するタンパク質)、およびcrRNAをコードするCRISPRアレイ(カスケード複合体を安定化し、カスケードとCas3をDNA標的に方向付ける)が含まれる。カスケードはcrRNAと複合体を形成し、タンパク質-RNA対は、crRNA配列の5’末端と事前定義されたプロトスペーサーとの間の相補的な塩基対形成によってそのゲノム標的を認識する。この複合体は、crRNA内にコードされた領域および病原体ゲノム内のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を介して、病原体DNAの相同遺伝子座に方向付けられる。塩基対形成は、crRNAと標的DNA配列の間で起こり、コンフォメーション変化を引き起こす。I-E型システムにおいて、PAMはカスケード内のCasAタンパク質によって認識され、次に隣接するDNAを巻き戻して、標的とcrRNAのスペーサー部分との間の塩基対形成の程度を評価する。十分な認識により、カスケードはCas3を動員および活性化する。次に、Cas3は非標的鎖にニックを入れ、この鎖を3’から5’の方向に分解し始める。
【0041】
I-C型システムにおいて、タンパク質Cas5、Cas8c、およびCas7は、カスケードエフェクター複合体を形成する。Cas5はプレ-crRNA(これは、マルチスペーサーアレイ、または2つのリピート間の単一スペーサーの形をとることができる)を処理して、残りのリピート配列と線形スペーサーから形成されたヘアピン構造で形作られる個々のcrRNAを生成する。次に、エフェクター複合体は処理されたcrRNAに結合し、DNAをスキャンしてPAM部位を特定する。I-C型システムにおいて、PAMはCas8cタンパク質によって認識され、次いでこれは、DNA二重鎖をほどくように作用する。PAMの3’の配列がエフェクター複合体に結合しているcrRNAスペーサーと一致する場合、複合体のコンフォメーション変化が起こり、Cas3がその部位に動員される。次に、Cas3は非標的鎖にニックを入れ、DNAの分解を開始する。
【0042】
いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、標的細菌に対して内因性である。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、標的細菌に対して外因性である。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I-A型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I-B型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I-C型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、P.aeruginosaに由来するI-C型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I-D型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I-E型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I-F型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I-U型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、II型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、III型CRISPR-Casシステムである。
【0043】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるCRISPRアレイのプロセシングは、以下のプロセスを含むが、これらに限定されない:1)プレ-crRNAをコードする核酸の転写、2)カスケードおよび/または、Cas6などのカスケードの特定のメンバーによるプレ-crRNAの認識、および(3)カスケードまたはCas6などのカスケードのメンバーによるプレ-crRNAの成熟型crRNAへのプロセシング。いくつかの実施形態において、I型CRISPRシステムの作用機序は、以下のプロセスを含むが、これらに限定されない:4)カスケードとの成熟crRNA複合体形成、5)複合体化した成熟crRNA/カスケード複合体による標的認識、および6)DNA分解をもたらす標的におけるヌクレアーゼ活性。
【0044】
いくつかの実施形態において、I型CRISPR-Casシステムは、I-A型システム、I-B型システム、I-C型システム、I-D型システム、I-E型システム、またはI-F型システムである。いくつかの実施形態において、I型CRISPR-Casシステムは、I-A型システムである。いくつかの実施形態において、I型CRISPR-Casシステムは、I-B型システムである。いくつかの実施形態において、I型CRISPR-Casシステムは、I-C型システムである。いくつかの実施形態において、I型CRISPR-Casシステムは、I-D型システムである。いくつかの実施形態において、I型CRISPR-Casシステムは、I-E型システムである。いくつかの実施形態において、I型CRISPR-Casシステムは、I-F型システムである。いくつかの実施形態において、I型CRISPR-Casシステムは、カスケードポリペプチドを含む。I型カスケードポリペプチドは、CRISPRアレイをプロセシングして、プロセシングされたRNAを生成し、これは、プロセシングされたRNAのスペーサーに相補的な標的配列に複合体を結合するために使用される。いくつかの実施形態において、I型カスケード複合体は、I-A型カスケードポリペプチド、I-B型カスケードポリペプチド、I-C型カスケードポリペプチド、I-D型カスケードポリペプチド、I-E型カスケードポリペプチド、I-F型カスケードポリペプチド、またはI-U型カスケードポリペプチドである。
【0045】
いくつかの実施形態において、I型カスケード複合体は、以下を含む:(a)Cas6bポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、Cas8b(Csh1)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、Cas7(Csh2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、およびヌクレオチドCas5ポリペプチド(I-B型)をコードする配列;(b)Cas5dポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、Cas8c(Csd1)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、およびCas7(Csd2)ポリペプチド(I-C型)をコードするヌクレオチド配列、(c)Cse1(CasA)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、Cse2(CasB)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、Cas7(CasC)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、Cas5(CasD)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、およびヌクレオチドCas6e(CasE)ポリペプチド(I-E型)をコードする配列、(d)Cys1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、Cys2ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、Cas7(Cys3)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、およびCas6fポリペプチド(I-F型)をコードするヌクレオチド配列、(e)Cas7(Csa2)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、Cas8a1(Csx13)ポリペプチドまたはCas8a2(Csx9)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、Cas5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、Csa5ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、ヌクレオチドCas6aポリペプチドをコードする配列、Cas3’ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、およびヌクレアーゼ活性を有さないCas3’’ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(I-A型);および/または(f)Cas10d(Csc3)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、Csc2ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、Csc1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、およびCas6dポリペプチド(I-D型)をコードするヌクレオチド配列。いくつかの実施形態において、I型カスケード複合体は、本明細書に開示されるカスケードポリペプチドを含む。
【0046】
CRISPRアレイ
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるCRISPRアレイ(cr配列)は、スペーサー配列および少なくとも1つのリピート配列を含む。いくつかの実施形態では、CRISPRアレイは、処理された成熟crRNAをコードする。いくつかの実施形態において、成熟crRNAは、本明細書に記載のファージまたは標的細菌に導入される。いくつかの実施形態では、ファージは、処理された成熟crRNAをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、内因性または外因性のCas6は、CRISPRアレイを成熟したcrRNAに処理する。いくつかの実施形態において、外因性Cas6は、ファージに導入される。いくつかの実施形態において、ファージは、外因性のCas6を含む。いくつかの実施形態において、外因性Cas6は、標的細菌に導入される。
【0047】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるCRISPRアレイのプロセシングは、以下のプロセスを含むが、これらに限定されない。1)プレ-crRNAをコードする核酸の転写、2)Cascadeおよび/またはCascadeの特定のメンバー(Cas6など)によるpre-crRNAの認識、および(3)CascadeまたはCascadeのメンバー(Cas6など)によるpre-crRNAの成熟したcrRNAへの処理。いくつかの実施形態において、I型 CRISPRシステムの作用機序は、以下のプロセスを含むが、これらに限定されない。4)カスケードとの成熟crRNA複合体形成。 5)複合体化した成熟crRNA/カスケード複合体による標的認識。 6)DNA分解につながる標的でのヌクレアーゼ活性。
【0048】
いくつかの実施形態において、CRISPRアレイは、スペーサー配列を含む。いくつかの実施形態において、CRISPRアレイは、少なくとも1つのリピート配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのリピート配列は、その5’末端またはその3’末端のいずれかでスペーサー配列に作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、CRISPRアレイは任意の長さであり、1つ以上の必須遺伝子を標的とすることによって標的細菌の所望のレベルの殺傷を達成するために必要なリピートヌクレオチド配列と交互になっている任意の数のスペーサーヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、CRISPRアレイは、1から約100のスペーサーヌクレオチド配列を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、それぞれがその5’末端およびその3’末端でリピートヌクレオチド配列に連結される。いくつかの実施形態において、CRISPRアレイは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、またはそれ以上のスペーサーヌクレオチド配列を含むか、本質的になるか、またはそれからなる。
【0049】
スペーサー配列
いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、標的細菌における標的ヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、コード領域である。いくつかの実施形態において、コード領域は必須遺伝子である。いくつかの実施形態において、コード領域は、非必須遺伝子である。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、非コード配列である。いくつかの実施形態において、非コード配列は遺伝子間配列である。いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、標的細菌において高度に保存された配列の標的ヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、標的細菌に存在する配列の標的ヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、必須遺伝子のプロモーター配列の全部または一部を含む標的ヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、標的ヌクレオチド配列と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つのミスマッチを含む。いくつかの実施形態において、ミスマッチは隣接している。いくつかの実施形態において、ミスマッチは連続していない。いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、標的ヌクレオチド配列に対して70%の相補性を有する。いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、標的ヌクレオチド配列に対して80%の相補性を有する。いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、標的ヌクレオチド配列に対して85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の相補性である。いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、標的ヌクレオチド配列に対して100%の相補性を有する。いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、長さが少なくとも約8ヌクレオチドから約150ヌクレオチドである標的ヌクレオチド配列の領域にわたって完全な相補性または実質的な相補性を有する。いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、長さが少なくとも約20ヌクレオチドから約100ヌクレオチドである標的ヌクレオチド配列の領域にわたって完全な相補性または実質的な相補性を有する。いくつかの実施形態において、スペーサー配列の5’領域は、標的ヌクレオチド配列に対して100%相補的であり、一方、スペーサーの3’領域は、標的ヌクレオチド配列に対して実質的に相補的であり、したがって、標的ヌクレオチドに対するスペーサー配列の全体的な相補性は100%未満である。例えば、いくつかの実施形態において、20ヌクレオチドスペーサー配列(シード領域)の3’領域の最初の7、8、9、10、11、12、13、14、15、16ヌクレオチドは、標的ヌクレオチド配列に対して100%相補的であり、一方、スペーサー配列の5’領域の残りのヌクレオチドは、標的ヌクレオチド配列に対して実質的に相補的である(例えば、少なくとも約70%相補的である)。いくつかの実施形態において、スペーサー配列の3’末端の最初の7から12ヌクレオチドは、標的ヌクレオチド配列に100%相補的であり、一方、スペーサー配列の5’領域の残りのヌクレオチドは、標的ヌクレオチド配列に対して実質的に相補的である(例えば、少なくとも約50%相補的(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上))。いくつかの実施形態において、スペーサー配列の3’末端の最初の7から10ヌクレオチドは、標的ヌクレオチド配列に対して75%-99%相補的であり、一方、スペーサー配列の5’領域の残りのヌクレオチドは、標的ヌクレオチド配列に対して少なくとも約50%から約99%相補的である。いくつかの実施形態において、スペーサー配列の3’末端の最初の7から10ヌクレオチドは、標的ヌクレオチド配列に対して100%相補的であり、一方、スペーサー配列の5’領域の残りのヌクレオチドは、実質的に相補的である(例えば、少なくとも標的ヌクレオチド配列に対して約70%相補的)。いくつかの実施形態において、スペーサー配列の最初の10ヌクレオチド(シード領域内)は、標的ヌクレオチド配列に対して100%相補的であり、一方、スペーサー配列の5’領域の残りのヌクレオチドは、実質的に相補的である(例えば、標的ヌクレオチド配列に対して少なくとも約70%相補的)。いくつかの実施形態において、スペーサー配列の5’領域(例えば、5’末端の最初の8ヌクレオチド、5’末端の最初の10ヌクレオチド、5’末端の最初の15ヌクレオチド、5’末端の最初の20ヌクレオチド)は、標的ヌクレオチド配列に対して約75%以上の相補性(75%から約100%の相補性)を有し、一方、スペーサー配列の残りは、標的ヌクレオチド配列に対して約50%以上の相補性を有する。いくつかの実施形態において、スペーサー配列の5’末端の最初の8ヌクレオチドは、標的ヌクレオチド配列に対して100%の相補性を有するか、または1つまたは2つの変異を有し、したがって、標的ヌクレオチド配列に対して、それぞれ、約88%相補的または約75%相補的であり、一方。スペーサーヌクレオチド配列の残りは、標的ヌクレオチド配列に対して少なくとも約50%以上相補的である。
【0050】
いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、長さが約15ヌクレオチドから約150ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、スペーサーヌクレオチド配列は、長さが約15ヌクレオチドから約100ヌクレオチドである(例えば、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100ヌクレオチド以上)。いくつかの実施形態において、スペーサーヌクレオチド配列は、約8から約150ヌクレオチド、約8から約100ヌクレオチド、約8から約50ヌクレオチド、約8から約40ヌクレオチド、約8から約30ヌクレオチド、約8から約25ヌクレオチド、約8から約20ヌクレオチド、約10から約150ヌクレオチド、約10から約100ヌクレオチド、約10から約80ヌクレオチド、約10から約50ヌクレオチド、約10から約40ヌクレオチド、約10から約30ヌクレオチド、約10から約25ヌクレオチド、約10から約20ヌクレオチド、約15から約150ヌクレオチド、約15から約100ヌクレオチド、約15から約50ヌクレオチド、約15から約40ヌクレオチド、約15から約30ヌクレオチド、約20から約150ヌクレオチドヌクレオチド、約20から約100ヌクレオチドヌクレオチド、約20から約80ヌクレオチドヌクレオチド、約20から約50ヌクレオチドヌクレオチド、約20から約40ヌクレオチド、約20から約30ヌクレオチド、約20から約25ヌクレオチド、少なくとも約8ヌクレオチド、少なくとも約10ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド、少なくとも約32ヌクレオチド、少なくとも約35ヌクレオチド、少なくともt約40ヌクレオチド、少なくとも約44ヌクレオチド、少なくとも約50ヌクレオチド、少なくとも約60ヌクレオチド、少なくとも約70ヌクレオチド、少なくとも約80ヌクレオチド、少なくとも約90ヌクレオチド、少なくとも約100ヌクレオチド、少なくとも約110ヌクレオチド、少なくとも約120ヌクレオチド、少なくとも約130ヌクレオチド、少なくとも約140ヌクレオチド、少なくとも約150ヌクレオチドの長さ、またはそれ以上、およびその中の任意の値または範囲である。いくつかの実施形態において、P.aeruginosa I-C型Casシステムは、約30から39ヌクレオチド、約31から約38ヌクレオチド、約32から約37ヌクレオチド、約33から約36ヌクレオチド、約34から約35ヌクレオチド、または約35ヌクレオチドのスペーサー長を有する。いくつかの実施形態において、P.aeruginosa I-C型 Casシステムは、約34ヌクレオチドのスペーサー長を有する。いくつかの実施形態において、P.aeruginosa I-C型Casシステムは、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約21、少なくとも約22、少なくとも約23、少なくとも約24、少なくとも約25、少なくとも約26、少なくとも約27、少なくとも約29、少なくとも約29、少なくとも約30、少なくとも約31、少なくとも約32、少なくとも約33、少なくとも約34、少なくとも約、少なくとも約35、少なくとも約36、少なくとも約37、少なくとも約38、少なくとも約39、少なくとも約20、少なくとも約41、少なくとも約42、少なくとも約43、少なくとも約44、少なくとも約45、または約45ヌクレオチド超のスペーサー長を有する。
【0051】
いくつかの実施形態において、CRISPRアレイの2つ以上のスペーサー配列の同一性は同じである。いくつかの実施形態において、CRISPRアレイの2つ以上のスペーサー配列の同一性は異なる。いくつかの実施形態において、CRISPRアレイの2つ以上のスペーサー配列の同一性は異なるが、1つ以上の標的ヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、CRISPRアレイの2つ以上のスペーサー配列の同一性は異なり、重複する配列である1つ以上の標的ヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、CRISPRアレイの2つ以上のスペーサー配列の同一性は異なり、重複する配列ではない1つ以上の標的ヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、生物のゲノム中のPAM配列(標的領域のすぐ3’に位置するPAM配列)に直接隣接して位置する長さ約10から約40の連続したヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、PAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)に隣接して位置しているか(located adjacent)または側面に隣接している(flanked)。
【0052】
PAM配列は、その領域に対して相補的であることの結果としてスペーサー配列が結合する領域の隣の標的遺伝子に見出され、スペーサーヌクレオチド配列との塩基対形成が開始する点を特定する。必要である正確なPAM配列は、異なるCRISPR-Casシステムごとに変動し、確立されたバイオインフォマティクスと実験の手順によって識別される。PAMの非限定的な例には、CCA、CCT、CCG、TTC、AAG、AGG、ATG、GAG、および/またはCCが含まれる。I型システムの場合、PAMはスペーサーに一致する配列のすぐ5’に位置し、したがってスペーサーヌクレオチド配列と塩基対を形成する配列の3’に位置し、カスケードによって直接認識される。一旦プロトスペーサーが認識されると、カスケードは一般にエンドヌクレアーゼCas3を動員し、標的DNAを切断および分解する。II型システムの場合、Cas9/sgRNAがRループを形成して、ガイドRNAとゲノムのWatson-Crickペアリングを介して特定のDNA配列を調べるには、PAMが必要である。PAM特異性は、Cas9タンパク質のDNA結合特異性の関数である(例えば、Cas9のC末端にあるプロトスペーサー隣接モチーフ認識ドメイン)。
【0053】
いくつかの実施形態において、殺傷される細菌中の標的ヌクレオチド配列は、関心対象の任意の必須の標的ヌクレオチド配列である。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、必須ではない配列である。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、必須遺伝子のプロモーターをコードするヌクレオチド配列またはその相補体の全部または一部を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、スペーサーヌクレオチド配列は、必須遺伝子のプロモーターまたはその一部に相補的である。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、必須遺伝子のコード鎖または非コード鎖に位置するヌクレオチド配列の全部または一部を含む。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、必須遺伝子の転写領域のコーディング上に位置するヌクレオチド配列の全部または一部を含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、必須遺伝子は、その生存のために決定的に重要である生物の任意の遺伝子である。しかし、必須であることは、生物が住んでいる状況に大きく依存する。例えば、デンプンを消化するために必要とされる遺伝子は、デンプンが唯一のエネルギー源である場合にのみ必須である。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、標的遺伝子のプロモーター配列の全部または一部を含む。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、標的遺伝子の転写領域のコード鎖上に位置するヌクレオチド配列の全部または一部を含む。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、標的細菌の生存に必要とされる必須遺伝子の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、必須遺伝子は、Tsf、acpP、gapA、infA、secY、csrA、trmD、ftsA、fusA、glyQ、eno、nusG、dnaA、dnaS、pheS、rplB、gltX、hisS、rplC、aspS、gyrB、glnS、dnaE、rpoA、rpoB、pheT、infB、rpsC、rplF、alaS、leuS、serS、rplD、gyrA、またはmetK。いくつかの実施形態において、非必須遺伝子は、生存にとって決定的に重要ではない生物の任意の遺伝子である。しかし、本質的でないことは、生物が生きている状況に大きく依存する。
【0055】
いくつかの実施形態において、関心対象の標的ヌクレオチド配列の非限定的な例には、転写調節因子、翻訳調節因子、ポリメラーゼ遺伝子、代謝酵素、トランスポーター、RNase、プロテアーゼ、DNA複製酵素、DNA修飾または分解酵素、調節RNA、転移RNA、またはリボソームRNAをコードする標的ヌクレオチド配列が含まれる。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、細胞分裂、細胞構造、代謝、運動性、病原性、毒性、または抗生物質耐性に関与する遺伝子に由来する。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、その機能がまだ特徴付けられていない仮想の遺伝子に由来する。したがって、例えば、これらの遺伝子は、任意の細菌からの任意の遺伝子である。
【0056】
完全な構築物ファージのための適切なスペーサー配列は、代表的なゲノムの検索セットを位置付けすること、関連するパラメーターでゲノムを検索すること、CRISPR操作ファージにおける使用のためのスペーサーの品質を決定することによって特定され得る。
【0057】
最初に、代表的なゲノムの適切な検索セットが位置付けされ、関心対象の生物/種/標的のために取得される。代表的なゲノムのセットは、NCBI genbankまたはPATRICデータベースを含むがこれらに限定されない、さまざまなデータベースで見つけることができる。NCBI genbankは、利用可能な最大のデータベースの1つであり、これまでに配列決定されたほぼすべての生物の参照ゲノムと提出されたゲノムの混合物が含まれている。具体的には、病原性原核生物の場合、PATRIC(Pathosystems Resource Integration Center)データベースは、ゲノムの追加の包括的なリソースを提供し、臨床的に関連する系統および医薬品に関連するゲノムに焦点を当てる。上記のデータベースは両方とも、FTP(ファイル転送プロトコル)サーバーを介したゲノムの一括ダウンロードを許容し、迅速かつプログラム可能なデータセットの取得を可能にしている。
【0058】
次に、適切なスペーサー配列を位置付けするために、関連するパラメーターを用いてゲノムを検索する。ゲノムは、順方向と逆方向の両方の相補鎖の方向で最初から最後まで読み取られ、PAM(Protospacer Adjacent Motif)部位を含むDNAの連続したストレッチを位置付けすることができる。スペーサー配列は、PAMサイトに3’または5’で隣接するN長のDNA配列になり(CRISPRシステム型によって異なる)、ここで、Nは関心対象のCasシステムに固有であり、一般的に事前に知られている。PAM配列とスペーサー配列の特性評価は、Casシステムの発見と初期調査中に実行し得る。観察されたすべてのPAM隣接スペーサーは、ダウンストリームで使用するためにファイルおよび/またはデータベースに保存し得る。必要とされる正確なPAM配列は、異なるCRISPR-Casシステム間で変動し、確立されたバイオインフォマティクスおよび実験の手順によって識別される。
【0059】
次に、CRISPR操作されたファージで使用するためのスペーサーの品質が決定される。観察された各スペーサーは、それらが存在する評価されたゲノムの数を決定するために評価され得る。観察されたスペーサーは、それらが所与の各ゲノムにおいて何回存在し得るかを見るために評価され得る。Casシステムは、変異が発生した場合に標的部位を認識できない可能性があり、追加の「バックアップ」部位の各々が、適切な非変異標的位置存在する可能性を増大するために、ゲノムあたり1つより多く存在するスペーサーは有利であり得る。観察されたスペーサーは、それらがゲノムの機能的に注釈が付けられた領域で発生するかどうかを決定するために評価され得る。そのような情報が利用可能である場合、機能注釈をさらに評価して、ゲノムのそれらの領域が生物の生存および機能に「必須」であるかどうかを決定し得る。関心対象となるすべてまたはほぼすべての評価済みゲノム(>=99%)に存在するスペーサーに焦点を当てることにより、スペーサーの選択は多くの標的化ゲノムに対して広く適用可能であり得る。保存されたスペーサーの大規模な選択プールが存在する場合、既知の機能を有するゲノムの領域で発生するスペーサーが優先され、それらのゲノム領域が生存に「必須」であり、ゲノムあたりに1回以上存在する場合は優先度が高くなる。
【0060】
リピートヌクレオチド配列
いくつかの実施形態において、CRISPRアレイのリピートヌクレオチド配列は、CRISPR-Casシステムの任意の既知のリピートヌクレオチド配列のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、リピートヌクレオチド配列は、CRISPR-Casシステム(例えば、内部ヘアピン)からのネイティブリピートの二次構造を含む合成配列のものである。いくつかの実施形態において、リピートヌクレオチド配列は、CRISPR-Casシステムの既知のリピートヌクレオチド配列に基づいて互いに異なる。いくつかの実施形態において、リピートヌクレオチド配列はそれぞれ、CRISPR-Casシステム(例えば、内部ヘアピン)からのネイティブリピートの別個の二次構造から構成される。いくつかの実施形態において、リピートヌクレオチド配列は、CRISPR-Casシステムで操作可能な別個のリピートヌクレオチド配列の組み合わせである。
【0061】
いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、その5’末端でリピート配列の3’末端に連結される。いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、その5’末端で、リピート配列の3’末端の約1から約8、約1から約10、または約1から約15ヌクレオチドに連結される。いくつかの実施形態において、リピート配列の約1から約8、約1から約10、約1から約15ヌクレオチドは、リピート配列の3’末端の一部である。いくつかの実施形態において、スペーサーヌクレオチド配列は、その3’末端でリピート配列の5’末端に連結される。いくつかの実施形態において、スペーサーは、その3’末端で、リピート配列の5’末端の約1から約8、約1から約10、または約1から約15ヌクレオチドに連結される。いくつかの実施形態において、リピート配列の約1から約8、約1から約10、約1から約15ヌクレオチドは、リピート配列の5’末端の一部である。
【0062】
いくつかの実施形態において、スペーサーヌクレオチド配列は、その5’末端で第1のリピート配列に連結され、その3’末端で第2のリピート配列に連結されて、リピート-スペーサー-リピート配列を形成する。いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、その5’末端で第1のリピート配列の3’末端に連結され、その3’末端で第2のリピート配列の5’に連結され、ここで、スペーサー配列および第2のリピート配列が反復されて、nが1から100までの任意の整数であるようにリピート-(スペーサー-リピート)n配列を形成する。いくつかの実施形態において、リピート-(スペーサー-リピート)n配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、またはそれ以上、のスペーサーヌクレオチド配列を含み、これらから本質的になり、またはこれらからなる。
【0063】
いくつかの実施形態において、リピート配列は、野生型CRISPR遺伝子座からのリピート配列と同一であるか、または実質的に同一である。いくつかの実施形態において、リピート配列は、表3に見出されるリピート配列である。いくつかの実施形態において、リピート配列は、本明細書に記載の配列である。いくつかの実施形態において、リピート配列は、野生型リピート配列の一部(例えば、野生型リピート配列の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、またはそれ以上の連続ヌクレオチド)を含む。いくつかの実施形態において、リピート配列は、少なくとも1つのヌクレオチド(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、またはそれ以上のヌクレオチド、またはその中の任意の範囲)を含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態において、リピート配列は、最大約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100ヌクレオチドを含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態において、リピート配列は、約20から40、21から40、22から40、23から40、24から40、25から40、26から40、27から40、28から40、29から40、30から30、31から40、32から40、33から40、34から40、35から40、36から40、37から40、38から40、39から40、20から39、20から38、20から37、20から36、20から35、20から34、20から33、20から32、20から31、20から30、20から29、20から28、20から26、20から25、20から24、20から23、20から22、または20から21ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、リピート配列は、約20から35、21から35、22から35、23から35、24から35、25から35、26から35、27から35、28から35、29から35、30から30、31から35、32から35、33から35、34から35、25から40、25から39、25から38、25から37、25から36、25から35、25から34、25から33、25から32、25から31、25から30、25から29、25から28、25から26ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、システムは、P.aeruginosa I-C型Casシステムである。いくつかの実施形態において、P.aeruginosaI-C型Casシステムは、約25から38ヌクレオチドのリピート長を有する。
【0064】
転写活性化因子
いくつかの実施形態において、核酸配列は、転写活性化因子をさらに含む。いくつかの実施形態において、コードされた転写活性化因子は、標的細菌内の関心対象の遺伝子の発現を調節する。いくつかの実施形態において、転写活性化因子は、外因性であるか内因性であるかに関わらず、標的細菌内の関心対象の遺伝子の発現を活性化する。いくつかの実施形態において、転写活性化因子は、標的細菌内の1つ以上の阻害要素の活性を破壊することによって、標的細菌内の関心対象の発現遺伝子を活性化する。いくつかの実施形態において、阻害要素は、転写抑制因子を含む。いくつかの実施形態において、阻害要素は、グローバル転写抑制因子を含む。いくつかの実施形態において、阻害要素は、ヒストン様核様体構造化(H-NS)タンパク質またはそのホモログまたは機能的断片である。いくつかの実施形態において、阻害要素は、ロイシン応答性調節タンパク質(LRP)である。いくつかの実施形態において、阻害要素は、CodYタンパク質である。
【0065】
いくつかの細菌において、CRISPR-Casシステムは、ほとんどの環境条件下で、発現が不十分であり、サイレントであると見なされる。これらの細菌においては、CRISPR-Casシステムの調節は、転写調節因子、例えば、宿主ゲノムの転写調節に広く関与しているヒストン様核様体構造化(H-NS)タンパク質の活性の結果である。H-NSは、DNAの曲がりを生じるATに富む部位に沿った多量体化によって宿主の転写調節に対する制御を発揮する。E.coliなどの一部の細菌では、CRISPR-Cas3オペロンの調節はH-NSによって調節されている。
【0066】
同様に、いくつかの細菌では、CRISPR-Casシステムの抑制は、阻害要素、例えば、ロイシン応答性調節タンパク質(LRP)によって制御される。LRPは、転写開始部位の上流および下流領域への結合に関与する。特に、CRISPR-Casシステムの発現調節におけるLRPの活性は、細菌によって異なる。種間抑制活性が広いH-NSとは異なり、LRPは宿主のCRISPR-Casシステムの発現を示差的に調節することが示されてきた。そのため、いくつかの場合において、LRPはさまざまな細菌においてCRISPR-Casシステムの発現を調節する宿主特異的な手段を反映する。
【0067】
いくつかの場合において、CRISPR-Casシステムの抑制はまた、抑制性要素CodYによって制御される。CodYは、DNA結合を介して作用するGTP感知転写リプレッサーである。GTPの細胞内濃度は、環境の栄養状態の指標として機能する。通常の培養条件下では、GTPは豊富であり、CodYと結合して転写活性を抑制する。しかし、GTP濃度が低下すると、CodYはDNAの結合活性が低下し、以前は抑制されていた遺伝子の転写が起こる。そのため、CodYは厳格なグローバル転写抑制因子(リプレッサー)として機能する。
【0068】
いくつかの実施形態において、転写活性化因子は、LeuOポリペプチド、その任意のホモログまたは機能的フラグメント、LeuOコード配列、またはLeuOをアップレギュレートする薬剤である。いくつかの実施形態において、転写活性化因子は、LeuOの任意のオルソログまたは機能的同等物を含む。いくつかの細菌では、LeuOは、細菌の環境栄養状態に応答するグローバル転写調節因子として作用することにより、H-NSに反対に作用する。通常の状態では、LeuOの発現は不十分である。しかし、アミノ酸の飢餓および/または細菌のライフサイクルにおける定常期の到達下では、LeuOはアップレギュレーションされる。LeuOの発現の増加は、重複するプロモーター領域においてこれはH-NSに拮抗することをもたらし、遺伝子発現に影響を及ぼす。LeuOの過剰発現は、CRISPR-Casシステムの発現をアップレギュレートする。E.coliおよびS.typhimuriumにおいて、LeuOはCasAの上流におけるLeuOとH-NSの結合配列と予想されているcasABCDEオペロンの発現増加を促進する。
【0069】
いくつかの実施形態において、LeuOの発現は、阻害要素の破壊をもたらす。いくつかの実施形態において、LeuOの発現による阻害要素の破壊は、CRISPR-Casシステムの転写抑制を取り除く。いくつかの実施形態において、LeuOの発現は、H-NSの活性に起因するCRISPR-Casシステムの転写抑制を取り除く。いくつかの実施形態において、LeuOの発現による阻害要素の破壊は、CRISPR-Casシステムの発現の増加を引き起こす。いくつかの実施形態において、LeuOの発現によって引き起こされる阻害要素の破壊によるCRISPR-Casシステムの発現の増加は、CRISPRアレイを含む核酸配列のCRISPR-Casプロセシングの増加を引き起こす。いくつかの実施形態において、LeuOの発現による阻害要素の破壊によるCRISPR-Casシステムの発現の増加は、CRISPRアレイを含む核酸配列のCRISPR-Casプロセシングの増加を引き起こし、その結果、細菌に対するCRISPRアレイの致死性のレベルを増加させる。いくつかの実施形態において、転写活性化因子は、バクテリオファージおよび/またはCRISPR-Casシステムの活性の増加を引き起こす。
【0070】
調節エレメント
いくつかの実施形態において、核酸配列は、様々な生物または細胞における発現のための様々なプロモーター、ターミネーターおよび他の調節エレメントと作動可能に関連している。いくつかの実施形態において、核酸配列は、リーダー配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、核酸配列は、プロモーター配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのプロモーターおよび/またはターミネーターは、CRISPRアレイに作動可能に連結される。本開示を用いて有用な任意のプロモーターが使用され、例えば、本明細書に開示されるように、関心対象の生物で機能するプロモーター、ならびに構成的、誘導性、発生調節、組織特異的/好ましいプロモーターなどが含まれる。本明細書で使用される調節エレメントは、内因性または異種である。いくつかの実施形態において、対象生物に由来する内因性調節エレメントは、それが自然に生じない遺伝的状況に挿入され(例えば、自然界に見られるものとは異なるゲノム内の位置)、それにより、組換えまたは非ネイティブ核酸を生成する。
【0071】
いくつかの実施形態において、核酸配列の発現は、構成的であり、誘導可能であり、時間的に調節され、発達的に調節され、または化学的に調節される。いくつかの実施形態において、核酸配列の発現は、核酸配列を関心対象の生物において機能的なプロモーターに作動可能に連結することによって、構成的にされ、誘導可能にされ、時間的に調節され、発達的に調節され、または化学的に調節される。いくつかの実施形態において、抑制は、核酸配列を、関心対象の生物において機能的である誘導性プロモーターに作動可能に連結することによって可逆的にされる。本明細書に開示されるプロモーターの選択は、発現のための量的、時間的および空間的要件に応じて、また形質転換される宿主細胞に応じて変化する。
【0072】
本明細書に開示される方法、バクテリオファージおよび組成物と共に使用するための例示的なプロモーターには、細菌において機能的であるプロモーターが含まれる。例えば、L-アラビノース誘導性(araBAD、PBAD)プロモーター、任意のlacプロモーター、L-ラムノース誘導性(rhaPBAD)プロモーター、T7 RNAポリメラーゼプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、ラムダファージプロモーター(pLpL-9G-50)、アンヒドロテトラサイクリン-誘導性(tetA)プロモーター、trp、Ipp、phoA、recA、proU、cst-1、cadA、nar、Ipp-lac、cspA、11-lacオペレーター、T3-lacオペレーター、T4遺伝子32、T5-lacオペレーター、nprM-lacオペレーター、Vhb、プロテインA、コリネバクテリア-E.coli様プロモーター、thr、horn、ジフテリア毒素プロモーター、sig A、sig B、nusG、SoxS、katb、a-アミラーゼ(Pamy)、Ptms、P43(2つの重複するRNAポリメラーゼσ因子認識部位、σΑ、σΒで構成される)、Ptms、P43、rplK-rplA、フェレドキシンプロモーター、および/またはキシロースプロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、BBa_J23102プロモーターである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、BBa_J23104、BBa_J23109などの広範囲の細菌で機能する。いくつかの実施形態において、プロモーターは、内因性CRISPRプロモーター、内因性Casオペロンプロモーター、p16、plpp、またはptatなどの標的細菌に由来するものである。いくつかの実施形態において、プロモーターは、gp105またはgp245のプロモーターなどのファージプロモーターである。
【0073】
いくつかの実施形態において、誘導性プロモーターが使用される。いくつかの実施形態において、化学調節プロモーターが、外因性化学調節因子の適用を通じて、生物における遺伝子の発現を調節するために使用される。化学調節プロモーターの使用は、例えば、生物が誘導化学物質で処理される場合にのみ、核酸配列によってコードされるRNAおよび/またはポリペプチドが合成されることを可能にする。化学物質誘導性プロモーターが使用されるいくつかの実施形態において、化学物質の適用は遺伝子発現を誘導する。化学的に抑制可能なプロモーターが使用されるいくつかの実施形態において、化学物質の適用が遺伝子発現を抑制する。いくつかの実施形態において、プロモーターは、光誘導性プロモーターであり、特定の波長の光の適用が遺伝子発現を誘導する。いくつかの実施形態において、プロモーターは、光抑制性プロモーターであり、特定の波長の光の適用が遺伝子発現を抑制する。
【0074】
発現カセット
いくつかの実施形態において、核酸配列は、発現カセットであるか、または発現カセット内にある。いくつかの実施形態において、発現カセットは、本明細書に開示される核酸配列を発現するように設計される。いくつかの実施形態において、核酸配列は、CRISPR-Casシステムの構成要素をコードする発現カセットである。いくつかの実施形態において、核酸配列は、I型CRISPR-Casシステムの構成要素をコードする発現カセットである。いくつかの実施形態において、核酸配列は、操作可能なCRISPR-Casシステムをコードする発現カセットである。いくつかの実施形態において、核酸配列は、カスケードおよびCas3を含む、I型CRISPR-Casシステムの操作可能な構成要素をコードする発現カセットである。いくつかの実施形態において、核酸配列は、crRNA、カスケードおよびCas3を含む、I型CRISPR-Casシステムの操作可能な構成要素をコードする発現カセットである。
【0075】
いくつかの実施形態において、関心対象の核酸配列を含む発現カセットはキメラであり、これは、その構成要素の少なくとも1つが、他の構成要素の少なくとも1つに関して異種であることを意味する。いくつかの実施形態において、発現カセットは天然に存在するが、異種発現に有用な組換え形態で得られている。
【0076】
いくつかの実施形態において、発現カセットは、選択された宿主細胞において機能的である転写および/または翻訳終結領域(すなわち、終結領域)を含む。いくつかの実施形態において、終結領域は、関心対象の異種核酸配列を超えた転写の終結、および正しいmRNAポリアデニル化に関与する。いくつかの実施形態において、終結領域は、転写開始領域に天然であるか、関心対象の作動可能に連結された核酸配列に対してネイティブであるか、宿主細胞に対してネイティブであるか、または別の供給源に由来する(すなわち、プロモーターに対して、関心対象の核酸配列に対して、宿主に対して、またはそれらの任意の組み合わせに対して、外来性または異種である)。いくつかの実施形態において、ターミネーターは、本明細書に開示される核酸配列に作動可能に連結される。
【0077】
いくつかの実施形態において、発現カセットは、選択可能なマーカーのためのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、ヌクレオチド配列は、マーカーが、選択剤(例えば、抗生物質)を使用することによるなどの化学的手段によって選択される形質を付与するかどうか、またはマーカーは、スクリーニングによる(例えば、蛍光)などの観察もしくはテストを通じて特定される単なる特性であるかに依存して、選択可能であるか、またはスクリーニング可能なマーカーのいずれかをコードする。
【0078】
ベクター
発現カセットに加えて、本明細書に開示される核酸配列(例えば、CRISPRアレイを含む核酸配列)は、ベクターに関連して使用される。ベクターは、移入、送達、または導入されるヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む。ベクターの一般的なクラスの非限定的な例には、二本鎖または一本鎖の線状または環状の、自己伝達性または可動性である場合とそうでない場合がある、ウイルスベクター、プラスミドベクター、ファージベクター、ファージミドベクター、コスミドベクター、フォスミドベクター、バクテリオファージ、人工染色体、またはアグロバクテリウムバイナリベクターである。ベクターは、細胞ゲノムに組み込まれるか、または染色体外に存在するかのいずれかによって、原核生物または真核生物の宿主を形質転換する(例えば、複製起点を有する自律複製プラスミド)。さらに、シャトルベクターが含まれ、これは、天然にまたは設計により、2つの異なる宿主生物において複製することができるDNAビヒクルを意味する。いくつかの実施形態において、シャトルベクターは、放線菌および細菌および/または真核生物において複製する。いくつかの実施形態において、ベクター中の核酸は、宿主細胞における転写のための適切なプロモーターまたは他の調節エレメントの制御下にあり、そしてそれらに作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、ベクターは、複数の宿主において機能する二機能性発現ベクターである。
【0079】
コドン最適化
いくつかの実施形態において、核酸配列は、関心対象の任意の種における発現のためにコドン最適化されている。コドン最適化には、種固有のコドン使用表を使用したコドン使用バイアスのヌクレオチド配列の変更が含まれる。コドン使用表は、関心対象の種で最も高度に発現している遺伝子の配列分析に基づいて生成される。ヌクレオチド配列が核内で発現される場合、コドン使用表は、関心対象の種について高度に発現された核遺伝子の配列分析に基づいて生成される。ヌクレオチド配列の修飾は、種特異的コドン使用表をネイティブなポリヌクレオチド配列に存在するコドンと比較することによって決定される。ヌクレオチド配列のコドン最適化は、ネイティブなヌクレオチド配列に対して、100%未満の同一性(例えば、50%、60%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%などの同一性)を有するヌクレオチド配列であるが、それでも、元のヌクレオチド配列によってコードされるものと同じ機能を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をもたらす。いくつかの実施形態において、本開示の核酸配列は、関心対象の生物/種における発現のために最適化されたコドンである。
【0080】
形質転換
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸配列、および/または発現カセットは、一過性におよび/または安定して、宿主生物のゲノムに組み込まれる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される核酸配列および/または発現カセットは、当業者に知られている任意の方法によって細胞に導入される。形質転換の例示的な方法には、コンピテントセルのエレクトロポレーションによる形質転換、コンピテントセルによる受動的取り込み、コンピテントセルの化学的形質転換、ならびに核酸の細胞への導入をもたらす任意の他の電気的、化学的、物理的(機械的)および/または生物学的メカニズムが含まれる。それらの任意の組み合わせを含むセルに。いくつかの実施形態において、細胞の形質転換は、核形質転換を含む。いくつかの実施形態において、細胞の形質転換は、プラスミド形質転換および接合を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、1つより多くの核酸配列が導入される場合、ヌクレオチド配列は、単一の核酸構築物の一部として、または別個の核酸構築物として組み立てられ、同じかまたは異なる核酸構築物上に位置する。いくつかの実施形態において、ヌクレオチド配列は、単一の形質転換事象において、または別個の形質転換事象において、関心対象の細胞に導入される。
【0082】
バクテリオファージ
本明細書に開示されるのは、特定の実施形態において、溶解性にされた溶原性バクテリオファージであって、これは、溶原性バクテリオファージの溶原性領域の除去、置き換え、または不活性化を含み、ここで、溶原性領域の除去、置換、または不活性化は、溶原性バクテリオファージを溶解性にする。
【0083】
バクテリオファージまたは「ファージ」は、一群の細菌ウイルスを表し、環境源から操作または供給される。個々のバクテリオファージの宿主範囲は通常狭く、このことは、ファージは細菌種の1つの系統または少数の系統に非常に特異的であり、この特異性により抗菌作用が独特になることを意味する。バクテリオファージは、宿主の細胞機構に応じて複製する細菌ウイルスである。バクテリオファージは、一般的に、ライフスタイルに応じて毒性または溶原性ファージに分類される。溶菌性バクテリオファージとしても知られる毒性バクテリオファージは、溶菌性複製のみを受けることができる。溶菌性バクテリオファージは宿主細胞に感染し、複製を何度も繰り返し、細胞溶解を引き起こして新しく作られたバクテリオファージ粒子を放出する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される溶菌性バクテリオファージは、それらの複製能力を保持している。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される溶菌性バクテリオファージは、細胞溶解を引き起こすそれらの能力を保持している。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される溶菌性バクテリオファージは、それらの複製能力および細胞溶解を引き起こす能力の両方を保持している。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、CRISPRアレイを含む。いくつかの実施形態において、CRISPRアレイは、細胞溶解を複製および/または引き起こすバクテリオファージの能力に影響を及ぼさない。テンペレート(temperate)または溶原性(lysogenic)バクテリオファージは、細菌ゲノムを統合しないか、または染色体外プラスミドとして維持されるかのいずれかで、ファージが複製を停止し、宿主細胞内に安定して存在する溶原性を受ける可能性がある。溶原性(temperate)ファージも、対応する溶菌性バクテリオファージと同様に溶菌性複製を受ける可能性がある。溶原性ファージが溶解的に複製するか、感染時に溶原性を示すかは、増殖条件や細胞の生理学的状態を含むさまざまな要因に依存する。溶原性ファージがゲノムに組み込まれている細菌細胞は、溶原性細菌または溶原菌と呼ばれる。有害条件への曝露は、溶原性ファージの再活性化、溶原性状態の終了、およびファージによる溶菌性複製の再開を引き起こす可能性がある。このプロセスは誘導と呼ばれる。溶原状態の終了に有利な有害条件には、乾燥、UVまたは電離放射線への曝露、および変異原性化学物質への曝露が含まれる。これは、ファージ遺伝子の発現、組み込みプロセスの逆転、および溶菌増殖につながる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される溶原性バクテリオファージは、溶菌性にされる。「溶原性遺伝子」という用語は、その遺伝子産物が溶原性ファージの溶原性を促進する任意の遺伝子を指す。溶原性遺伝子は、バクテリオファージの宿主ゲノムへの組み込みを促進するインテグラーゼタンパク質の場合のように、直接促進することができる。溶原性遺伝子は、溶菌性複製に必要な遺伝子の転写を防ぎ、溶原性の維持を促進するCI転写調節因子の場合のように、間接的に溶原性を促進することもできる。
【0084】
バクテリオファージは、3つの一般的なアプローチを使用して合成DNAをパッケージ化し、送達する。第1のアプローチでは、合成DNAは、通常は選択可能なマーカーを含む、標的化された様式でバクテリオファージゲノムに組換えられる。第2のアプローチでは、ファージ内の制限部位を使用して、インビトロで合成DNAを導入する。第3のアプローチでは、一般に、ファージパッケージング部位および溶菌性複製起点をコードするプラスミドがバクテリオファージ粒子のアセンブリーの一部としてパッケージングされる。得られるプラスミドは新造された(coined)「ファージミド」と呼ばれる。
【0085】
ファージは、進化の理由から、所与の細菌系統に限定されている。いくつかの場合において、それらの遺伝物質を不適合系統に注入することは逆効果である。したがって、ファージは、限られた断面の細菌系統に特異的に感染するように進化してきた。しかし、遺伝物質を広範囲の細菌に注入するファージがいくつか発見されている。古典的な例はP1ファージであり、これはさまざまな範囲のグラム陰性菌にDNAを注入することが示されている。
【0086】
本明細書に開示されるのは、いくつかの実施形態において、第1のスペーサー配列をコードする第1の核酸配列、またはそこから転写されるcrRNAを含むバクテリオファージであり、第1のスペーサー配列は、標的細菌中の標的遺伝子からの標的ヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、第1のスペーサー配列をコードする第1の核酸配列、またはそこから転写されるcrRNAを含み、第1のスペーサー配列は、バクテリオファージが溶菌性にされるという条件で、標的細菌中の標的遺伝子からの標的ヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは溶原性バクテリオファージである。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、溶原性遺伝子の除去、置き換え、または不活性化によって溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、溶原性遺伝子は、バクテリオファージにおける溶原性サイクルの維持において役割を果たす。いくつかの実施形態において、溶原性遺伝子は、バクテリオファージにおける溶原性サイクルを確立することにおいて役割を果たす。いくつかの実施形態において、溶原性遺伝子は、溶原性サイクルの確立と、バクテリオファージにおける溶原性サイクルの維持の両方において役割を果たす。いくつかの実施形態において、溶原性遺伝子は、リプレッサー(抑制因子)遺伝子である。いくつかの実施形態において、溶原性遺伝子は、cIリプレッサー遺伝子である。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、
図10aにおいて「1247欠失」として注釈が付けられた1247cIリプレッサー領域の除去によって溶解性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、
図9aにおいて「1249欠失」として注釈が付けられた1249cIリプレッサー領域の除去によって溶解性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、
図8aにおいて「1224欠失」として注釈が付けられた1224cIリプレッサー領域の除去によって溶解性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、溶原性遺伝子の調節エレメントの除去によって溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、溶原性遺伝子のプロモーターの除去によって溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、溶原性遺伝子の機能的エレメントの除去によって溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、溶原性遺伝子は、活性化因子遺伝子である。いくつかの実施形態において、溶原性遺伝子は、cII遺伝子である。いくつかの実施形態において、溶原性遺伝子は、lexA遺伝子である。いくつかの実施形態において、溶原性遺伝子は、int(インテグラーゼ)遺伝子である。いくつかの実施形態において、2つ以上の溶原性遺伝子は、バクテリオファージ溶原性サイクルの停止および/または溶菌サイクルの誘導を引き起こすために、除去、置き換え、または不活性化される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、溶原性遺伝子に向けられた第2のスペーサーを含む第2のCRISPRアレイを介して溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、1つ以上の溶菌性遺伝子の挿入によって溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、溶菌サイクルの誘導に寄与する1つ以上の遺伝子の挿入によって溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、溶菌サイクルの誘導に寄与する1つ以上の遺伝子の発現を変化させることによって溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、表現型的に、溶原性バクテリオファージから溶菌性バクテリオファージに変化する。いくつかの実施形態において、表現型の変化は、溶原性が不可能であるため、バクテリオファージを溶菌性にするための自己標的化CRISPR-Casシステムを介する。いくつかの実施形態において、自己標的化CRISPR-Casは、プロファージゲノムからの自己標的化crRNAを含み、溶原菌を殺傷する。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、環境変化によって溶菌性にされる。いくつかの実施形態において、環境変化には、温度、pH、または栄養素の変化、抗生物質、過酸化水素、外来DNA、またはDNA損傷剤への曝露、有機炭素の存在、および重金属(例えば、クロム(VI)の形で)の存在が含まれるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、溶菌性にされるバクテリオファージは、溶原性状態に戻ることが防止される。いくつかの実施形態において、溶菌性にされるバクテリオファージは、追加のCRIPSRアレイを導入することによって、溶原性状態に戻ることが防止される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、バクテリオファージの溶菌活性および/または第1のもしくは第2のCRISPRアレイの活性によって引き起こされる細胞死を超えて、標的細菌にいかなる新たな特性も付与しない。
【0087】
さらに本明細書で開示されるのは、いくつかの実施形態において、第1のスペーサー配列をコードする第1の核酸配列またはそこから転写されるcrRNAを含む溶原性バクテリオファージであり、第1のスペーサー配列は、
図10aにおいて「1247欠失」として注釈が付けられた領域の除去によって、バクテリオファージが溶菌性にされるという条件下で、標的細菌中の標的遺伝子からの標的ヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、複数の細菌系統に感染する。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、標的遺伝子のプロモーター配列の全部または一部を含む。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、標的遺伝子の転写領域のコード鎖上に位置するヌクレオチド配列の全部または一部を含む。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、標的細菌の生存に必要とされる必須遺伝子の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態において、必須遺伝子は、Tsf、acpP、gapA、infA、secY、csrA、trmD、ftsA、fusA、glyQ、eno、nusG、dnaA、dnaS、pheS、rplB、gltX、hisS、rplC、aspS、gyrB、glnS、dnaE、rpoA、rpoB、pheT、infB、rpsC、rplF、alaS、leuS、serS、rplD、gyrA、またはmetKである。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、非必須遺伝子または他のゲノム遺伝子座の中にある。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は非必須遺伝子の中にある。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、非必須ゲノム遺伝子座の中にある。いくつかの実施形態において、標的ヌクレオチド配列は、非コード配列である。いくつかの実施形態において、非コード配列は遺伝子間配列である。いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、標的細菌において高度に保存された配列の標的ヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、標的細菌に存在する配列の標的ヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、スペーサー配列は、必須遺伝子のプロモーター配列の全部または一部を含む標的ヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、第1の核酸配列は、少なくとも1つのリピート配列をさらに含む第1のCRISPRアレイを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのリピート配列は、その5’末端またはその3’末端のいずれかで第1のスペーサー配列に作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、標的細菌は、C.difficileである。
【0088】
いくつかの実施形態において、バクテリオファージまたはファージミドDNAは、溶原性(lysogenic)またはテンペレート(temperate)バクテリオファージに由来する。いくつかの実施形態において、バクテリオファージまたはファージミドには、P1ファージ、M13ファージ、λファージ、T4ファージ、T7ファージ、T7mファージ、φC2ファージ、φCD27ファージ、φNM1ファージ、Bc431 v3ファージ、φ10ファージ、φ25ファージ、φ151ファージ、A511様ファージ、B054、0176様ファージ、またはCampylobacterファージ(NCTC12676およびNCTC12677など)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、φCD146 C.difficileバクテリオファージである。
【0089】
いくつかの実施形態において、複数のバクテリオファージが一緒に使用される。いくつかの実施形態において、一緒に使用される複数のバクテリオファージは、サンプルまたは対象内の同じまたは異なる細菌を標的とする。いくつかの実施形態において、一緒に使用されるバクテリオファージは、T4ファージ、T7ファージ、T7mファージ、または本明細書に記載のバクテリオファージの任意の組み合わせを含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、関心対象のバクテリオファージは、環境源または商業研究ベンダーから得られる。いくつかの実施形態において、得られたバクテリオファージは、細菌のライブラリーおよびそれらの関連系統に対する溶菌活性についてスクリーニングされる。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、スクリーニングされた細菌において一次耐性を生成するそれらの能力について、細菌のライブラリーおよびそれらの関連系統に対してスクリーニングされる。
【0091】
いくつかの実施形態において、核酸は、バクテリオファージゲノムに挿入される。いくつかの実施形態において、核酸は、crArray(アレイ)、Casシステム、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、核酸は、関心対象のオペロンの末端の転写ターミネーター部位でバクテリオファージゲノムに挿入される。いくつかの実施形態において、核酸は、他のゲノム遺伝子座の非必須細菌遺伝子に挿入される。いくつかの実施形態において、核酸は、1つ以上の除去された非必須遺伝子の置き換えとしてバクテリオファージゲノムに挿入される。いくつかの実施形態において、核酸は、1つ以上の除去された溶原性遺伝子の置き換えとしてバクテリオファージゲノムに挿入される。いくつかの実施形態において、非必須および/または溶原性遺伝子の核酸による置き換えは、バクテリオファージの溶菌活性を増強する。いくつかの実施形態において、非必須および/または溶原性遺伝子の核酸による置き換えは、溶原性バクテリオファージを溶菌性にする。
【0092】
いくつかの実施形態において、核酸は、第1の位置でバクテリオファージゲノムに導入され、一方、1つ以上の非必須および/または溶原性遺伝子は、別個の位置でバクテリオファージゲノムから別個に除去および/または不活化される。いくつかの実施形態において、1つ以上の非必須および/または溶原性遺伝子の除去は、溶原性バクテリオファージを溶菌性バクテリオファージにする。同様に、いくつかの実施形態において、1つ以上の溶菌性遺伝子がバクテリオファージに導入されて、非溶菌性の溶原性バクテリオファージを溶菌性バクテリオファージにする。
【0093】
いくつかの実施形態において、1つ以上の非必須および/または溶原性遺伝子の置き換え、除去、不活性化、またはそれらの任意の組み合わせは、化学的、生化学的、および/または任意の適切な方法によって達成される。いくつかの実施形態において、1つ以上の溶菌性遺伝子の挿入は、任意の適切な化学的、生化学的、および/または相同組換えによる物理的方法によって達成される。
【0094】
いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、φCD146 C.difficileバクテリオファージである。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、φCD24-2 C.difficileバクテリオファージである。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、p1473 Staphylococcus aureusバクテリオファージである。
【0095】
いくつかの実施形態において、バクテリオファージから除去および/または置き換えされる非必須遺伝子は、バクテリオファージの生存に必須ではない遺伝子である。いくつかの実施形態において、バクテリオファージから除去および/または置き換えされる非必須遺伝子は、溶菌サイクルの誘導および/または維持に必須ではない遺伝子である。いくつかの実施形態において、バクテリオファージから除去および/または置き換えされる非必須遺伝子は、φCD146 C.difficileバクテリオファージからのgp49である。いくつかの実施形態において、バクテリオファージから除去および/または置き換えされる非必須遺伝子は、φCD24-2 C.difficileバクテリオファージからのgp75である。いくつかの実施形態において、バクテリオファージから除去および/または置き換えされる非必須遺伝子は、p1473 Staphylococcus aureusバクテリオファージであるからの可能性のあるインテグラーゼの上流の可能性がある抑制因子および/または抗抑制因子である。
【0096】
いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、溶原性遺伝子が除去、置き換え、または不活性化され、それによってバクテリオファージを溶菌性にする溶原性バクテリオファージである。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、Pseudomonas spp.を標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはPseudomonas aeruginosaを標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、Escherichia spp.を標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、Escherichia coli.を標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはStaphylococcus spp.を標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはStaphylococcus aureusを標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはKlebsiella spp.を標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはKlebsiella pneumoniaeを標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはEnterococcus spp.を標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはEnterococcus faeciumを標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはEnterococcus faecalisを標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはEnterococcus gallinarumを標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはClostridioides spp.を標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはClostridioides difficileを標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはBacteroides spp.を標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはBacteroides fragilisを標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはBacteroides thetaiotaomicronを標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはFusobacterium spp.を標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはFusobacterium nucleatumを標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはStreptococcus spp.を標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはStreptococcus pneumoniaeを標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはAcinetobacter spp.を標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはAcinetobacter baumanniiを標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはMycobacterium spp.を標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはMycobacterium tuberculosisを標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはHaemophilus spp.を標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはHaemophilus influenzaeを標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはNeisseria spp.を標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはNeisseria gonorrhoeaeを標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはRuminococcus spp.を標的とする。いくつかの実施形態において、バクテリオファージはRuminococcus gnavusを標的とする。
【0097】
本明細書に開示されるのは、特定の実施形態において、完全な外因性CRISPR-Casシステムを含むバクテリオファージである。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I型CRISPR-Casシステム、II型CRISPR-Casシステム、III型CRISPR-Casシステム、IV型CRISPR-Casシステム、V型CRISPR-Casシステム、またはVI型CRISPR-Casシステムである。特定の実施形態において、本明細書に開示されるのは、(a)CRISPRアレイ、(b)カスケードポリペプチド、および(c)Cas3ポリペプチドを含むI型CRISPR-Casシステムをコードする核酸配列を含むバクテリオファージである。
【0098】
非必須遺伝子
いくつかの実施形態において、バクテリオファージから除去および/または置き換えされる非必須遺伝子は、バクテリオファージの生存に必須ではない遺伝子である。いくつかの実施形態において、バクテリオファージから除去および/または置き換えされる非必須遺伝子は、溶菌サイクルの誘導および/または維持に必須でない遺伝子である。
【0099】
標的細菌を殺傷する方法
本明細書に開示されるのは、特定の実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージのいずれかを標的細菌に導入することによって細菌を殺傷する方法である。いくつかの実施形態において、この方法は、第1のスペーサー配列またはそこから転写されるcrRNAをコードする第1の核酸配列を含むバクテリオファージを標的細菌に導入することを含み、第1のスペーサー配列は、バクテリオファージが溶解性にされ、それによって標的細菌を殺傷するという条件で、標的細菌中の標的遺伝子からの標的ヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、この方法は、第1のスペーサー配列またはそこから転写されるcrRNAをコードする第1の核酸配列を含む溶原性バクテリオファージを標的細菌に導入することを含み、第1のスペーサー配列は、
図10aで「1247欠失」と注射が付けられた領域の除去によってバクテリオファージが溶解性にされ、それによって標的細菌を殺傷するという条件で、標的細菌中の標的遺伝子からの標的ヌクレオチド配列に相補的である。
【0100】
いくつかの実施形態において、標的細菌は、溶原性バクテリオファージの溶解活性によって、第1のスペーサー配列もしくはそこから転写されるcrRNA、またはその両方を使用するCRISPR-Casシステムの活性によって殺傷される。いくつかの実施形態において、標的細菌は、溶原性バクテリオファージの溶解活性とは無関係に、CRISPR-Casシステムの活性によって殺傷される。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムの活性は、溶原性バクテリオファージの溶解活性を補足または増強する。いくつかの実施形態において、溶原性バクテリオファージの溶解活性およびCRISPR-Casシステムの活性は相乗的である。いくつかの実施形態において、溶原性バクテリオファージの溶解活性、CRISPR-Casシステムの活性、またはその両方は、標的細菌の濃度に対する溶原性バクテリオファージの濃度によって調節される。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、標的細菌に対して内因性である。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、標的細菌に対して外因性である。
いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I型CRISPR-Casシステム、II型CRISPR-Casシステム、またはIII型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、CRISPR-Casシステムは、I型CRISPR-Casシステムである。いくつかの実施形態において、溶原性バクテリオファージは、溶原性バクテリオファージの溶解活性によって引き起こされる細胞死を超えて、CRISPR-Casアレイの活性を超えて、またはその両方を超えて、標的細菌にいかなる新しい特性も与えない。
【0101】
使用方法
細菌感染症
本明細書に開示されるのは、細菌感染症を治療する方法である。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、ヒトまたは動物の対象において、本明細書に開示されるように、細菌によって媒介されるかまたは引き起こされる疾患または状態を治療または予防する。このような細菌は、通常、腸、口腔、肺、脇腹、眼、膣、肛門、耳、鼻、または喉の組織を含む対象の組織と接触している。いくつかの実施形態において、細菌感染は、細菌の活性を調節することによって、および/または細菌を直接殺傷することによって治療される。
【0102】
いくつかの実施形態において、細菌集団に存在する1つ以上の標的細菌は病原性である。いくつかの実施形態において、病原性細菌は尿路病原性である。いくつかの実施形態では、病原性細菌は尿路病原性大腸菌(UPEC)である。いくつかの実施形態において、病原性細菌は下痢原性である。いくつかの実施形態において、病原性細菌は糖尿病誘発性大腸菌(DEC)である。いくつかの実施形態において、病原性細菌はShiga毒素産生性である。いくつかの実施形態において、病原性細菌はShiga毒素産生大腸菌(E.coli)(STEC)である。いくつかの実施形態において、病原性細菌はShiga毒素産生性である。いくつかの実施形態において、病原性細菌はShiga毒素産生大腸菌(STEC)である。いくつかの実施形態において、病原性細菌は様々な0抗原:H抗原血清型大腸菌である。いくつかの実施形態において、病原性細菌は腸内病原性である。いくつかの実施形態において、病原性細菌は、腸内病原性大腸菌(EPEC)である。
【0103】
いくつかの実施形態において、病原性細菌は、CD043、CD05、CD073、CD093、CD180、CD106、CD128、CD199、CD111、CD108、CD25、CD148、CD154、FOBT195、CD03、CD038、CD112、CD196、CD105、UK1、UK6、BI-9、CD041、CD042、CD046、CD19、またはR2029lを含むC.difficileの様々な系統である。
【0104】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるバクテリオファージは、対象の胃腸管における感染症、疾患、または状態を治療するために使用される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、対象のマイクロバイオームまたは腸内細菌叢内の標的細菌を調節および/または殺傷するために使用される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、対象のマイクロバイオームまたは腸内細菌叢内の複数の細菌から1つ以上の標的細菌を選択的に調節および/または殺傷するために使用される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、対象のマイクロバイオームまたは腸内細菌叢内の複数の細菌から1つ以上の標的腸内病原性細菌を選択的に調節および/または殺傷するために使用される。いくつかの実施形態において、標的腸内病原性細菌は、腸内病原性大腸菌(EPEC)である。いくつかの実施形態では、バクテリオファージは、対象のマイクロバイオームまたは腸内細菌叢内の複数の細菌から1つ以上の標的下痢原性細菌を選択的に調節および/または殺傷するために使用される。いくつかの実施形態において、標的下痢原性細菌は、下痢原性大腸菌(E.coli)(DEC)である。いくつかの実施形態では、バクテリオファージは、対象のマイクロバイオームまたは腸内細菌叢内の複数の細菌から1つ以上の標的Shiga毒素産生細菌を選択的に調節および/または殺傷するために使用される。いくつかの実施形態において、標的のShiga毒素産生細菌は、Shiga毒素産生大腸菌(STEC)である。
【0105】
いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、CD043、CD05、CD073、CD093、CD180、CD106、CD128、CD199、CD111、CD108、CD25、CD148、CD154、FOBT195、CD03、CD038、CD112、CD196、CD105、UK1、UK6、BI-9、CD041、CD042、CD046、CD19、またはR2029lを含む対象のマイクロバイオームまたは腸内細菌叢内の1つ以上の標的腸内病原性C.difficile細菌株を選択的に調節および/または殺傷するために使用される。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるバクテリオファージは、対象の尿路における感染症、疾患、または状態を治療するために使用される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、対象の尿路細菌叢内の標的細菌を調節および/または殺傷するために使用される。尿路細菌叢には、Staphylococcus epidermidis、Enterococcus faecalis、および一部のアルファ溶血性Streptococciが含まれるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、対象の尿路細菌叢内の複数の細菌から1つ以上の標的尿路病原性細菌を選択的に調節および/または殺傷するために使用される。いくつかの実施形態において、標的細菌は、尿路病原性大腸菌(UPEC)である。
【0107】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、対象の皮膚上の感染症、疾患、または状態を治療するために使用される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、対象の皮膚上の標的細菌を調節および/または殺傷するために使用される。
【0108】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるバクテリオファージは、対象の疾患または状態を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるバクテリオファージは、対象の粘膜上の感染症、疾患、または状態を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、感染症または疾患は、呼吸器吸入、摂取、皮膚および創傷感染症、血流感染症、中耳感染症、胃腸管感染症、腹膜感染症、尿路感染症、尿生殖路感染症、口腔軟組織感染症、腹腔内感染症、表皮または粘膜吸収、眼感染症(コンタクトレンズレンズ汚染を含む)、中枢神経系の感染症、心内膜炎、嚢胞性線維症の感染症、関節プロテーゼなどの留置医療機器の感染症、歯科用インプラント、カテーテルおよび心臓用インプラント、性的接触、および/または病院で取得した換気装置に関連する細菌性肺炎を含むがこれらに限定されない手段によって獲得される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、対象の粘膜上の標的細菌を調節および/または殺傷するために使用される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、にきびおよび他の関連する皮膚感染症を治療する。
【0109】
いくつかの実施形態において、病原性細菌は抗生物質耐性である。一実施形態では、病原性細菌は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)である。
【0110】
いくつかの実施形態において、細菌集団に存在する1つ以上の標的細菌は、バイオフィルムを形成する。いくつかの実施形態において、バイオフィルムは、病原性細菌を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、バイオフィルムを処置するために使用される。
【0111】
いくつかの実施形態において、標的細菌は、標的細菌の1つ以上の種を含む。いくつかの実施形態において、標的細菌は、標的細菌の1つ以上の系統を含む。いくつかの実施形態において、標的細菌の非限定的な例には、Escherichia spp.、Salmonella spp.、Bacillus spp.、Corynebacterium spp.、Clostridium spp.、Clostridioides spp.、Pseudomonas spp.、Lactococcus spp.、Acinetobacter spp.、Mycobacterium spp.、Myxococcus spp.、Staphylococcus spp.、Streptococcus spp.、Enterococcus spp.、Bacteroides spp.、Fusobacterium spp.、Actinomyces spp.、Porphyromonas spp.、またはcyanobacteriaが含まれる。いくつかの実施形態において、細菌の非限定的な例には、Escherichia coli、Salmonella enterica、Bacillus subtilis、Clostridium acetobutylicum、Clostridium ljungdahlii、Clostridioides difficile、Clostridium bolteae、Acinetobacter baumannii、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium abscessus、Mycobacterium intracellulare、Mycobacterium fortuitum、Mycobacterium chelonae、Mycobacterium avium、Mycobacterium gordonae、Myxococcus xanthus、Streptococcus pyogenes、またはcyanobacteriaが含まれる。いくつかの実施形態において、細菌の非限定的な例には、Staphylococcus aureus、メチシリン耐性Staphylococcus aureus、Streptococcus pneumoniae、カルバペネム耐性Enterobacteriaceae、拡張スペクトルベータラクタマーゼ(ESBL)産生Enterobacteriaceae、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus salivarius、Corynebacterium minutissimum、Corynebacterium pseudodiphtheriticum、Corynebacterium striatum、CorynebacteriumグループG1、CorynebacteriumグループG2、Streptococcus mitis、Streptococcus sanguinis、Klebsiella pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Burkholderia cepacia、Serratia marcescens、Haemophilus influenzae、Moraxella sp.、Neisseria meningitidis、Neisseria gonorrhoeae、Salmonella typhimurium、Actinomyces israelii.、Porphyromonas gingivalis.、Prevotella melaninogenicus、Helicobacter pylori、Helicobacter felis、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Enterococcus gallinarum、Bacteroides fragilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Fusobacterium nucleatum、Ruminococcus gnavus、またはCampylobacter jejuniが含まれる。細菌のさらなる非限定的な例には、Lactobacillus spp.およびBifidobacterium spp.を含むがこれに限定されない乳酸菌、Geobacter spp.、Clostridium spp.、もしくはRalstonia eutrophaを含むがこれらに限定されない合成液体燃料(electrofuel)細菌系統、または、例えば、植物および動物に対して病原性である細菌が含まれる。いくつかの実施形態において、細菌はPseudomonas aeruginosaである。いくつかの実施形態において、細菌はEscherichia coliである。いくつかの実施形態において、細菌はClostridioides difficileである。いくつかの実施形態において、細菌はStaphylococcus aureusである。いくつかの実施形態において、細菌はKlebsiella pneumoniaeである。いくつかの実施形態において、細菌はEnterococcus faecalisである。いくつかの実施形態において、細菌はEnterococcus faeciumである。いくつかの実施形態において、細菌はBacteroides fragilisである。いくつかの実施形態において、細菌はBacteroides thetaiotaomicronである。いくつかの実施形態において、細菌はFusobacterium nucleatumである。いくつかの実施形態において、細菌はEnterococcus gallinarumである。いくつかの実施形態において、細菌はRuminococcus gnavusである。いくつかの実施形態において、細菌はAcinetobacter baumanniiである。いくつかの実施形態において、細菌はMycobaterium tuberculosisである。いくつかの実施形態において、細菌はStreptococcus pneumoniaeである。いくつかの実施形態において、細菌はHaemophilus influenzaeである。いくつかの実施形態において、細菌はNeisseria gonorrhoeaeである。
【0112】
いくつかの実施形態において、標的細菌は、感染または疾患を引き起こす。いくつかの実施形態において、感染または疾患は、急性または慢性である。いくつかの実施形態において、感染または疾患は、局所的または全身性である。いくつかの実施形態において、感染または疾患は特発性である。いくつかの実施形態において、感染または疾患は、呼吸器吸入、摂取、皮膚および創傷感染症、血流感染症、中耳感染症、胃腸管感染症、腹膜感染症、尿路感染症、泌尿生殖器管感染症、口腔軟組織感染症、腹腔内感染症、表皮または粘膜吸収、眼感染症(コンタクトレンズレンズ汚染を含む)、心内膜炎、嚢胞性線維症における感染症、関節プロテーゼ、歯科用インプラント、カテーテルおよび心臓インプラントなどの留置医療機器の感染、性的接触、ならびに/または院内および換気装置に関連する細菌性肺炎を含むがこれらに限定されない手段を通じて獲得される。いくつかの実施形態において、標的細菌は、尿路感染症を引き起こす。いくつかの実施形態において、E.coliは、尿路感染症を引き起こす。いくつかの実施形態において、標的細菌は、炎症性疾患を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、自己免疫疾患を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、炎症性腸疾患(IBD)を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、E.coliは、炎症性腸疾患(IBD)を引き起こす。いくつかの実施形態において、標的細菌は、乾癬を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、乾癬性関節炎(PA)を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、関節リウマチ(RA)を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、全身性エリテマトーデス(SLE)を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、多発性硬化症(MS)を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、グレーブス病を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、橋本甲状腺炎を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、重症筋無力症を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、血管炎を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、癌を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、癌の進行を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、癌転移を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、癌治療に対する耐性を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、癌に対処するために使用される療法には、化学療法、免疫療法、ホルモン療法、標的薬物療法、および/または放射線療法が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、癌は、肛門、膀胱、血液および血液成分、骨、骨髄、脳、乳房、子宮頸部、結腸および直腸、食道、腎臓、喉頭、リンパ系、筋肉(すなわち、軟組織)、口腔および咽頭、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、小腸、胃、精巣、甲状腺、子宮、および/または外陰部を含むがこれらに限定されない器官で発生する。いくつかの実施形態において、標的細菌は、中枢神経系(CNS)の障害を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、注意欠陥/多動性障害(ADHD)を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、自閉症を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、双極性障害を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、大うつ病性障害を引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、てんかんを引き起こし、および/または悪化させる。いくつかの実施形態において、標的細菌は、アルツハイマー病、ハンチントン病、および/またはパーキンソン病を含むがこれらに限定されない神経変性障害を引き起こし、および/または悪化させる。
【0113】
嚢胞性線維症および嚢胞性線維症に関連する気管支拡張症は、Pseudomonas aeruginosaによる感染に関連している。例えば、P.Farrell,et al,Radiology,Vol.252,No.2、pp.534-543(2009)を参照。いくつかの実施形態において、1つ以上のバクテリオファージは、嚢胞性線維症または嚢胞性線維症に関連する気管支拡張症を有する患者に投与される。いくつかの実施形態において、2つ以上のバクテリオファージの組み合わせが、嚢胞性線維症または嚢胞性線維症に関連する気管支拡張症を有する患者に投与される。いくつかの実施形態において、嚢胞性線維症または嚢胞性線維症に関連する気管支拡張症を有する患者へのバクテリオファージの投与は、患者における細菌負荷の減少をもたらす。いくつかの実施形態において、細菌負荷の減少は、嚢胞性線維症または嚢胞性線維症に関連する気管支拡張症を有する患者の臨床的改善をもたらす。
【0114】
非嚢胞性線維症気管支拡張症は、P.aeruginosaによる感染に関連している。例えば、R.Wilson,et al,Respiratory Medicine、Vol.117,pp.179-189(2016)を参照。いくつかの実施形態において、1つ以上のバクテリオファージは、非嚢胞性線維症気管支拡張症を有する患者に投与される。いくつかの実施形態において、2つ以上のバクテリオファージの組み合わせが、非嚢胞性線維症気管支拡張症の患者に投与される。いくつかの実施形態において、非嚢胞性線維症気管支拡張症を有する患者へのバクテリオファージの投与は、患者における細菌負荷の減少をもたらす。いくつかの実施形態において、細菌負荷の減少は、非嚢胞性線維症気管支拡張症の患者の臨床的改善をもたらす。
【0115】
いくつかの実施形態において、標的細菌は、多剤耐性(MDR)細菌株である。MDR株は、少なくとも1つの抗生物質に耐性のある細菌株である。いくつかの実施形態において、細菌株は、セファロスポリン、フルオロキノロン、カルバペネム、コリスチン、アミノグリコシド、バンコマイシン、ストレプトマイシン、およびメチシリンなどの抗生物質クラスに耐性がある。いくつかの実施形態において、細菌株は、セフトビプロール、セフタロリン、クリンダマイシン、ダルババンシン、ダプトマイシン、リネゾリド、ムピロシン、オリタバンシン、テジゾリド、テラバンシン、チゲサイクリン、バンコマイシン、アミノグリコシド、セフタジジム、セフェピム、ピペラシリン、チカルシリン、リネゾリド、ストレプトグラミン、チゲサイクリン、ダプトマイシン、などの抗生物質またはそれらの任意の組み合わせに耐性がある。MDR株の例には、バンコマイシン耐性Enterococci(VRE)、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)、拡張スペクトルβ-ラクタマーゼ(ESBL)産生グラム陰性菌、およびKlebsiella pneumoniae carbapenemase(KPC)産生グラム陰性菌、多剤耐性グラム陰性桿菌(MDR GNR)、およびEnterobacter種E.coli、Klebsiella pneumoniae、Acinetobacter baumannii、またはPseudomonas aeruginosaなどのMDRGN細菌が含まれる。
【0116】
いくつかの実施形態では、標的細菌はKlebsiella pneumoniaeである。いくつかの実施形態では、標的細菌はStaphylococcus aureusである。いくつかの実施形態では、標的細菌はEnterococciである。いくつかの実施形態では、標的細菌はAcinetobacterである。いくつかの実施形態では、標的細菌はPseudomonasである。いくつかの実施形態では、標的細菌はEnterobacterである。いくつかの実施形態では、標的細菌はClostridium difficileである。いくつかの実施形態において、標的細菌は、E.coliである。いくつかの実施形態において、標的細菌は、クロストリジウム・ボルテエ(Clostridium bolteae)である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法および組成物は、獣医および医療用途、ならびに研究用途で使用するためのものである。
【0117】
マイクロバイオーム
「マイクロバイオーム」、「マイクロバイオータ」、および「微生物生息地」は、本明細書以下で交換可能に使用され、対象の体表面、空洞、および体液上またはその中に生息する微生物の生態学的群集を指す。マイクロバイオームの生息地の非限定的な例には、腸、結腸、皮膚、皮膚表面、皮膚孔、膣腔、臍帯領域、結膜領域、腸領域、胃、鼻腔および通路、胃腸管、泌尿生殖器管、唾液、粘液、および糞便が含まれる。いくつかの実施形態では、マイクロバイオームは、細菌、古細菌、原生生物、真菌、およびウイルスを含むがこれらに限定されない微生物材料を含む。いくつかの実施形態では、微生物材料は、グラム陰性菌を含む。いくつかの実施形態では、微生物材料は、グラム陽性菌を含む。いくつかの実施形態では、微生物材料は、Proteobacteria、Actinobacteria、Bacteroidetes、またはFirmicutesを含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるバクテリオファージは、対象のマイクロバイオーム内の標的細菌を調節または殺傷するために使用される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、CRISPR-Casシステム、溶解活性、またはそれらの組み合わせによって、マイクロバイオーム内の標的細菌を調節および/または殺傷するために使用される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、対象のマイクロバイオーム内の標的細菌を調節および/または殺傷するために使用される。いくつかの実施形態では、バクテリオファージは、対象のマイクロバイオーム内の複数の細菌から1つ以上の標的細菌を選択的に調節および/または殺傷するために使用される。いくつかの実施形態において、標的細菌は、大腸菌(E.coli)である。いくつかの実施形態では、大腸菌は多剤耐性(MDR)系統である。いくつかの実施形態において、E.coliは、拡張スペクトルベータラクタマーゼ(ESBL)系統である。いくつかの実施形態において、E.coliは、カルバペネム耐性系統である。いくつかの実施形態において、E.coliは、非多剤耐性(非MDR)系統である。いくつかの実施形態において、E.coliは、非カルバペネム耐性系統である。いくつかの実施形態において、病原性細菌は尿路病原性である。いくつかの実施形態において、病原性細菌は、尿路病原性大腸菌(UPEC)である。いくつかの実施形態において、病原性細菌は下痢原性である。いくつかの実施形態において、病原性細菌は、下痢原性大腸菌(DEC)である。いくつかの実施形態において、病原性細菌は、Shiga毒素産生性である。いくつかの実施形態において、病原性細菌は、Shiga毒素産生大腸菌(STEC)である。
【0119】
いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、CD043、CD05、CD073、CD093、CD180、CD106、CD128、CD199、CD111、CD108、CD25、CD148、CD154、FOBT195、CD03、CD038、CD112、CD196、CD105、UK1、UK6、BI-9、CD041、CD042、CD046、CD19、またはR2029lを含む対象のマイクロバイオーム内の1つ以上の標的腸内病原性C.difficile細菌株を選択的に調節および/または殺傷するために使用される。
【0120】
いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、対象の胃腸管のマイクロバイオームまたは腸内細菌叢内の標的の単一以上の細菌を調節または殺傷するために使用される。マイクロバイオームまたは腸内細菌叢の改変(例えば、腸内毒素症)は、糖尿病、精神障害、潰瘍性大腸炎、結腸直腸癌、自己免疫障害、肥満、糖尿病、中枢神経系の疾患および炎症性腸疾患などの健康状態のリスクを高める。胃腸管の疾患および状態に関連し、バクテリオファージによって調節または殺傷さられる細菌の例示的なリストには、enterobacteriaceae、pasteurellaceae、fusobacteriaceae、neisseriaceae、veillonellaceae、gemellaceae、bacteriodales、clostridiales、erysipelotrichaceae、bifidobacteriaceae bacteroides、faecalibacterium、roseburia、blautia、ruminococcus、coprococcus、streptococcus、dorea、blautia、ruminococcus、lactobacillus、enterococcus、streptococuccus、escherichia coli、fusobacterium nucleatum、haemophilus parainfluenzae(pasteurellaceae)、veillonella parvula、eikenella corrodens(neisseriaceae)、gemella moribillum、bacteroides vulgatus、bacteroides caccae、bifidobacterium bifidum、bifidobacterium longum、bifidobacterium adolescentis、bifidobacterium dentum、blautia hansenii、ruminococcus gnavus、Clostridium nexile、faecalibacterium prausnitzii、ruminoccus torques、clostridium bolteae、eubacterium rectale、roseburia intestinalis、coprococcus comes、actinomyces、lactococcus、roseburia、streptococcus、blautia、dialister、desulfovibrio、escherichia、lactobacillus、coprococcus、clostridium、bifidobacterium、klebsiella、granulicatella、eubacterium、anaerostipes、parabacteroides、coprobacillus、gordonibacter、collinsella、bacteroides、faecalibacterium、anaerotruncus、alistipes、haemophilus、anaerococcus、veillonella、arevotella、akkermansia、bilophila、sutterella、eggerthella、holdemania、gemella、peptoniphilus、rothia、enterococcus、pediococcus、citrobacter、odoribacter、enterobacteria、fusobacterium、およびproteusが含まれる。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるバクテリオファージは、健康なマイクロバイオームを促進するために対象に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、対象のマイクロバイオームの健康を促進するマイクロバイオーム組成物に回復するために対象に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるバクテリオファージを含む組成物は、プレバイオティクスまたは第3の薬剤を含む。いくつかの実施形態において、マイクロバイオーム関連の疾患または障害は、本明細書に開示されるバクテリオファージによって治療される。
【0122】
環境療法
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるバクテリオファージは、食品および農業の衛生(肉、果物および野菜の衛生を含む)、病院の衛生、家庭の衛生、車両および設備の衛生、工業的衛生などのためにさらに使用される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、抗生物質耐性または他の望ましくない病原体を、医学、獣医、畜産、または、細菌がヒトもしくは動物に感染する任意の追加の環境から除去するために使用される。
【0123】
医療機関でのファージの環境への適用は、消毒が困難または不可能な病原体による院内感染の潜在的な原因である、内視鏡などの機器やICUなどの環境向けである。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるファージは、一般的に使用される消毒剤に対して耐性となるPseudomonasなどの細菌属が生息する機器または環境を処理するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるファージ組成物は、無生物を消毒するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される環境は、ファージ力価を有する水溶液で噴霧、塗装、または注がれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の溶液は、101-1020の間のプラーク形成単位(PFU)/mlを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、バクテリオファージの環境への分布を容易にするために、乾燥分散剤を含むエアロゾル化剤によって適用される。いくつかの実施形態では、物体は、本明細書に開示されるバクテリオファージを含む溶液に浸漬される。
【0124】
衛生
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、様々な分野において、衛生剤として使用される。「ファージ」または「バクテリオファージ」という用語が使用され得るが、適切な場合、この用語は、単一のバクテリオファージ、バクテリオファージ混合物などの複数のバクテリオファージ、およびバクテリオファージと、消毒剤、洗剤、界面活性剤、水などの薬剤との混合物を含むと広く解釈されるべきであることに留意されるべきである。
【0125】
いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、手術室、病室、待合室、実験室、または他の雑多な病院設備を含む病院施設を消毒するために使用される。いくつかの実施形態では、この機器は、心電計、呼吸器、心臓血管補助装置、大動脈内バルーンポンプ、注入装置、他の患者ケア装置、テレビ、モニター、リモコン、電話、ベッドなどを含む。いくつかの状況において、バクテリオファージはエアロゾルキャニスターを介して適用される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、移入ビヒクルで物体上のファージを拭くことによって適用される。
【0126】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のバクテリオファージは、患者ケアデバイスと組み合わせて使用される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、従来の換気装置または呼吸療法装置と組み合わせて使用されて、患者間の内面および外面を洗浄する。換気装置の例には、手術中の換気をサポートするデバイス、無能力の患者の換気をサポートするデバイス、および同様の機器が含まれる。いくつかの実施形態において、従来の治療法には、自動または電動装置、または救急治療室や救急車で一般的に見られるような手動のバッグタイプの装置が含まれる。いくつかの実施形態において、呼吸療法は、慢性閉塞性肺疾患または喘息で一般的に使用される気管支拡張薬などの薬物を導入するための吸入器、または持続的気道陽圧装置などの気道開存性を維持するための装置を含む。
【0127】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のバクテリオファージは、髄膜炎または腸管感染症などの伝染性の高い細菌性疾患が存在する領域において、表面を洗浄し、コロニー形成した人々を治療するために使用される。
【0128】
いくつかの実施形態において、給水は、本明細書に開示される組成物で処理される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、汚染された水、貯水槽、井戸、貯水池、貯蔵タンク、水道、導管、および同様の配水装置に見られる水を処理するために使用される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、水、油、冷却液、および他の液体が収集プールに蓄積する工業用貯蔵タンクに適用される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、細菌の増殖を低減するために、定期的に工業用貯蔵タンクに導入される。
【0129】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、家、アパート、マンション、コンドミニアム、寮、または任意の生活領域などの生活領域を消毒するために使用される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、劇場、コンサートホール、美術館、駅、空港、ペット用ベッドなどのペットエリア、またはトイレなどの公共エリアを消毒するために使用される。この能力において、バクテリオファージは、ポンプ噴霧器、エアゾール容器、噴出ボトル、事前に湿らせたタオルなどを含む従来の装置から分配され、消毒される領域に直接適用される(例えば、噴霧される)か、またはタオル、スポンジなどの輸送ビヒクルを介して、その領域に移される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるファージは、台所、寝室、浴室、ガレージ、地下室などを含む、家の様々な部屋に適用される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるファージは、従来のクリーナーと同じ方法で使用される。いくつかの実施形態において、ファージは、従来のクリーナーが適切なバクテリオファージの生物学的活性を維持するように製剤化されるという条件で、従来のクリーナーと組み合わせて(その前に、その後に、または同時に)適用される。
【0130】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、紙製品の処理中または処理の完了後のいずれかで、紙製品の成分に添加される。本明細書に開示されるバクテリオファージが添加される紙製品には、ペーパータオル、トイレットペーパー、ウェットティッシュが含まれるがこれらに限定されない。
【0131】
食品安全
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のバクテリオファージは、汚染を防止するために、任意の食品または栄養補助食品に使用される。食品または医薬品の例としては、牛乳、ヨーグルト、カード、チーズ、発酵乳、牛乳ベースの発酵製品、アイスクリーム、発酵シリアルベースの製品、牛乳ベースの粉末、乳児用調合乳または錠剤、液体懸濁液、乾燥経口サプリメント、湿式経口サプリメント、またはドライチューブ給餌である。
【0132】
バクテリオファージの衛生に関する幅広い概念は、他の農業用途や生物にも適用できる。果物や野菜、乳製品、その他の農産物を含む生産品は、バクテリオファージを用いて殺菌される。例えば、切りたての農産物は、病原菌で汚染された加工工場に頻繁に到着する。これは、追跡可能な食品媒介性疾患の発生につながった。いくつかの実施形態において、バクテリオファージ調製物の農産物への適用は、食品媒介性疾患に関連する細菌の種に対して特異性を有する単一のファージまたはファージ混合物の適用を通じて、食品媒介性疾患の可能性を実質的に低減または排除する。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、その時点での細菌汚染を低減するために、またはその後の時点での汚染から保護するために、生産および処理の様々な段階で適用される。
【0133】
いくつかの実施形態において、特定のバクテリオファージは、レストラン、食料品店、農産物流通センターでの農産物に適用される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、サラダバーの果物および野菜の内容物に定期的または継続的に適用される。いくつかの実施形態において、サラダバーへの、または食品の外部を消毒するためのバクテリオファージの適用は、ミスト化またはスプレープロセスまたは洗浄プロセスである。
【0134】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のバクテリオファージは、肉、農産物、果物や野菜のカット、および他の食品を含むパッケージに伴うマトリックスまたは支持媒体で使用される。いくつかの実施形態において、包装に適したポリマーは、バクテリオファージ調製物で含浸される。
【0135】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のバクテリオファージは、農家および家畜飼料において使用される。いくつかの実施形態において、家畜を飼育している農場では、家畜は、飲料水、食物、またはその両方にバクテリオファージが提供される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のバクテリオファージは、死骸に噴霧され、と畜場を消毒するために使用される。
【0136】
農産物の生物的防除剤として特定のバクテリオファージを使用すると、多くの利点が得られる。例えば、バクテリオファージは、一般的な化学消毒剤のように天然の微生物叢の生態学的バランスを乱すことはない、対象となる食品由来の病原菌を特異的に溶解する、天然の無毒な製品であるが、しかしこれは、標的化された食品由来の病原体を特異的に溶解する。バクテリオファージは、化学消毒剤とは異なり、宿主細菌とともに進化する天然物であるため、最近出現した耐性菌に対して活性のある新しいファージが必要に応じて迅速に特定されるのに対して、新しい効果的な消毒剤の特定ははるかに長いプロセスであり、数年を要する。
【0137】
医薬組成物
本明細書に開示されるのは、特定の実施形態において、(a)本明細書に開示されるような核酸配列、および(b)薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物である。また、本明細書に開示されるのは、特定の実施形態において、(a)本明細書に開示されるようなバクテリオファージ、および(b)薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物である。明細書にさらに開示されるのは、特定の実施形態において、(a)本明細書に開示されるような組成物、および(b)薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物である。
【0138】
いくつかの実施形態において、本開示は、細菌もしくは古細菌感染症を治療するため、または領域を消毒するための、医薬組成物およびそれを投与する方法を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体中に上記で論じられた試薬のいずれかを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される医薬組成物または方法は、肺感染症(例えば、嚢胞性線維症関連肺炎(CFP)、非嚢胞性線維症関連気管支拡張症(NCFB)、病院関連肺炎(HAP)、換気装置関連肺炎(VAP))、全身感染症(例:細菌血症、皮膚および軟部 組織感染症(SSSI))、GIミクロビオーム ジスバイオシス(CDI)、尿路感染症(例えば、慢性尿路感染症(cUTI))、および/または炎症性疾患(例えば、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎)を治療する。
【0139】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、薬剤、医薬剤、担体、アジュバント、分散剤、希釈剤などを含む。
【0140】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、適切な方法に従って、医薬担体中での投与のために製剤化される。いくつかの実施形態において、本開示による医薬組成物の製造において、バクテリオファージは、とりわけ、許容可能な担体と混合される。いくつかの実施形態において、担体は、固体(粉末を含む)または液体、あるいはそれらの両方であり、好ましくは、単位用量組成物として製剤化される。いくつかの実施形態において、1つ以上のバクテリオファージは、薬学の任意の適切な方法によって調製される、本明細書に開示される組成物に組み込まれる。
【0141】
いくつかの実施形態において、対象をインビボで治療する方法であって、本明細書に開示されるバクテリオファージを含む医薬組成物を薬学的に許容される担体中で投与することを含み、医薬組成物は治療有効量で投与される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージの必要とするヒト対象または動物へのその投与は、当該技術分野で知られている任意の手段による。
【0142】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、経口投与用である。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、カプセル、錠剤、および散剤などの固体剤形、またはエリキシル、シロップ、および懸濁液などの液体剤形で投与される。いくつかの実施形態において、口腔(舌下)投与に適した組成物および方法は、フレーバーベース、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカント中にバクテリオファージを含むロゼンジ、ならびに、ゼラチンとグリセリンまたはスクロースとアカシアなどの不活性塩基にバクテリオファージを含むトローチを含む。
【0143】
いくつかの実施形態において、本開示の方法および組成物は、バクテリオファージの滅菌水性および非水性注射溶液を含む非経口投与に適している。いくつかの実施形態において、これらの調製物は、意図されたレシピエントの血液と等張である。いくつかの実施形態において、これらの調製物は、組成物を、意図されたレシピエントの血液と等張にする抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および溶質を含む。いくつかの実施形態において、水性および非水性の滅菌懸濁液は、懸濁剤および増粘剤を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物は、単位用量以上用量の容器、例えば密封されたアンプルおよびバイアルに提示され、例えば、使用直前に注射用の生理食塩水または水滅菌液体担体の添加のみを必要とする凍結乾燥(凍結乾燥)状態で保存される。
【0144】
いくつかの実施形態において、直腸投与に適した方法および組成物は、単位用量坐剤として提示される。いくつかの実施形態において、これらは、バクテリオファージを1つ以上の従来の固体担体、例えば、カカオバターと混合し、次いで、得られた混合物を成形することによって調製される。いくつかの実施形態において、皮膚への局所適用に適した方法および組成物は、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル、または油の形態である。いくつかの実施形態において、使用される担体には、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、経皮増強剤、およびそれらの2つ以上の組み合わせが含まれる。
【0145】
いくつかの実施形態において、経皮投与に適した方法および組成物は、レシピエントの表皮と長期間密接に接触したままであるように適合された別個のパッチとして提示される。
【0146】
いくつかの実施形態において、対象の鼻投与に適した、または他の方法で肺に投与される方法および組成物は、例えば、対象が吸入するバクテリオファージ組成物を含む呼吸可能な粒子のエアロゾル懸濁液によって投与される任意の適切な手段を含む。いくつかの実施形態において、呼吸可能な粒子は液体または固体である。本明細書で使用される場合、「エアロゾル」は、細気管支または鼻腔に吸入することができる任意のガス媒介懸濁相を含む。いくつかの実施形態において、液体粒子のエアロゾルは、圧力駆動エアロゾルネブライザーまたは超音波ネブライザーなどの任意の適切な手段によって生成される。いくつかの実施形態において、組成物を含む固体粒子のエアロゾルは、製薬分野で知られている技術によって、任意の固体粒子状薬剤エアロゾル発生器で生成される。
【0147】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージを物体または対象の表面に投与するために適した方法および組成物は、水溶液を含む。いくつかの実施形態において、そのような水溶液は、物体または対象の表面に噴霧される。いくつかの実施形態において、水溶液を使用して、細菌を含む異物の破片を形成する対象の物理的創傷を洗浄および清浄にする。
【0148】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、治療上有効な量で対象に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される少なくとも1つのバクテリオファージ組成物は、医薬製剤として製剤化される。いくつかの実施形態において、製剤は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上のバクテリオファージを含む。本明細書に開示される。いくつかの場合において、医薬製剤は、本明細書に記載のバクテリオファージと、賦形剤、希釈剤、または担体のうちの少なくとも1つを含む。
【0149】
いくつかの実施形態において、医薬製剤は、賦形剤を含む。賦形剤は、Handbook of Pharmaceutical Excipients,American Pharmaceutical Association(1986)に記載されており、これらには、溶媒、分散媒体、希釈剤、またはその他の液体ビヒクル、分散または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘または乳化剤、が含まれるが、これらに限定されない。薬剤、保存剤、固体結合剤、および潤滑剤が挙げられるがこれらに限定されない。適切な賦形剤の非限定的な例には、緩衝剤、保存剤、安定剤、結合剤、圧縮剤、潤滑剤、キレート剤、分散促進剤、崩壊剤、香味剤、甘味料、着色剤が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、賦形剤は、緩衝剤である。適切な緩衝剤の非限定的な例には、クエン酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、および重炭酸カルシウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0150】
いくつかの実施形態において、医薬製剤は、以下の列挙された任意の1つ以上の緩衝剤を含む:重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化マグネシウム、乳酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、メタリン酸カリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酢酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、および他のカルシウム塩。
【0151】
いくつかの実施形態において、賦形剤は保存剤である。適切な保存剤の非限定的な例には、アルファ-トコフェロールおよびアスコルビン酸塩などの抗酸化剤、ならびにパラベン、クロロブタノール、およびフェノールなどの抗菌剤が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、抗酸化剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、亜硫酸ナトリウム、p-アミノ安息香酸、グルタチオン、没食子酸プロピル、システイン、メチオニン、エタノールおよびN-アセチルシステインが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、保存剤は、バリダマイシンA、TL-3、オルトバナジン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、N-a-トシル-Phe-クロロメチルケトン、N-a-トシル-Lys-クロロメチルケトン、アプロチニン、フェニルメチルスルホニルフルオリド、ジイソプロピルフルオロホスフェート、プロテアーゼ阻害剤、還元剤、アルキル化剤、抗菌剤、オキシダーゼ阻害剤、または他の阻害剤を含む。
【0152】
いくつかの実施形態において、医薬製剤は、賦形剤として結合剤を含む。適切な結合剤の非限定的な例には、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルオキソアゾリドン、ポリビニルアルコール、C12-C18脂肪酸アルコール、ポリエチレングリコール、ポリオール、糖類、オリゴ糖類、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0153】
いくつかの実施形態において、製剤に使用される結合剤は、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、コムギデンプンなどのデンプン;ショ糖、グルコース、デキストロース、ラクトース、マルトデキストリンなどの糖;天然および合成ガム;ゼラチン;微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体。ポリビニルピロリドン(ポビドン);ポリエチレングリコール(PEG);ワックス;炭酸カルシウム;リン酸カルシウム;ソルビトール、キシリトール、マンニトールなどのアルコール、および水またはそれらの組み合わせから選択される。
【0154】
いくつかの実施形態において、医薬製剤は、賦形剤として潤滑剤を含む。適切な潤滑剤の非限定的な例には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、水素化植物油、ステロテックス(sterotex)、ポリオキシエチレンモノステアレート、タルク、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、および軽質鉱物油が含まれる。いくつかの実施形態において、医薬製剤中にある潤滑剤は、金属ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、脂肪酸エステル(ステアリルフマル酸ナトリウムなど)、脂肪酸(ステアリン酸など)、脂肪アルコール、ベヘン酸グリセリル、ミネラルオイル、パラフィン、水素化植物油、ロイシン、ポリエチレングリコール(PEG)、金属ラウリル硫酸塩(ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムなど)、塩化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、タルクまたはそれらの組み合わせから選択される。
【0155】
いくつかの実施形態において、賦形剤は、香味料を含む。いくつかの実施形態において、香味料は、天然油植物、葉、花、および果物からの抽出物、ならびにそれらの組み合わせを含む。
【0156】
いくつかの実施形態において、賦形剤は甘味料を含む。適切な甘味料の非限定的な例には、グルコース(コーンシロップ)、デキストロース、転化糖、フルクトース、およびそれらの混合物(担体として使用されない場合);サッカリンおよびナトリウム塩などのそのさまざまな塩;アスパルテームなどのジペプチド甘味料;ジヒドロカルコン化合物、グリチルリチン;Stevia Rebaudiana(ステビオシド);スクラロースなどのスクロースのクロロ誘導体;ならびにソルビトール、マンニトール、キシリトールなどの糖アルコールが含まれる。
【0157】
いくつかの場合において、医薬製剤は着色剤を含む。適切な着色剤の非限定的な例には、食品、薬物および化粧品の色(FD&C)、薬物および化粧品の色(D&C)、および外部の薬物および化粧品の色(Ext.D&C)が含まれる。
【0158】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される医薬製剤は、キレート剤を含む。いくつかの実施形態において、キレート剤は、エチレンジアミン-N,N,N’、N’-四酢酸(EDTA)、EDTAの二ナトリウム塩、三ナトリウム塩、四ナトリウム塩、二カリウム塩、三カリウム塩、二リチウム塩および二アンモニウム塩;EDTAのバリウム、カルシウム、コバルト、銅、ジスプロシウム、ユーロピウム、鉄、インジウム、ランタン、マグネシウム、マンガン、ニッケル、サマリウム、ストロンチウム、または亜鉛のキレートを含む。
【0159】
いくつかの場合において、医薬製剤は希釈剤を含む。希釈剤の非限定的な例には、水、グリセロール、メタノール、エタノール、および他の同様の生体適合性希釈剤が含まれる。いくつかの実施形態において、希釈剤は、酢酸、クエン酸、マレイン酸、塩酸、リン酸、硝酸、硫酸、または同様のものなどの水性酸である。
【0160】
いくつかの実施形態において、医薬製剤は、界面活性剤を含む。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ドキュセートナトリウム、四級アンモニウム化合物、L-ロイシンなどのアミノ酸、脂肪酸の糖エステル、脂肪酸のグリセリド、またはそれらの組み合わせから選択されるが、これらに限定されない。
【0161】
いくつかの場合において、医薬製剤は追加の薬剤を含む。いくつかの実施形態において、追加の医薬製剤は抗生物質である。いくつかの実施形態において、抗生物質は、アミノグリコシド、アンサマイシン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン(第1、第2、第3、第4および第5世代セファロスポリンを含む)、リンコサミド、マクロライド、モノバクタム、ニトロフラン、キノロン、ペニシリン、スルホンアミド、ポリペプチドまたはテトラサイクリンからなる群のものである。
【0162】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗生物質は、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシンまたはパロモマイシンなどのアミノグリコシドである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗生物質は、ゲルダナマイシンまたはハービマイシンなどのアンサマイシンである。
【0163】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗生物質は、ロラカルベフなどのカルバセフェムである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗生物質は、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチンまたはメロペネムなどのカルバペネムである。
【0164】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗生物質は、セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチンもしくはセファロチンなどのセファロスポリン(第1世代)、またはセファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジルもしくはセフロキシムなどのセファロスポリン(第2世代)である。いくつかの実施形態において、抗生物質は、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフチブテン、セフチゾキシムおよびセフトリアキソンなどのセファロスポリン(第3世代)、またはセフェピムもしくはセフトビプロールなどのセファロスポリン(第4世代)である。
【0165】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗生物質は、クリンダマイシンおよびアジスロマイシンなどのリンコサミド、またはアジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシンおよびスペクチノマイシンなどのマクロライドである。
【0166】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗生物質は、アズトレオナムなどのモノバクタム、またはフラゾリドンまたはニトロフラントインなどのニトロフランである。
【0167】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗生物質は、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンGまたはV、ピペラシリン、テモシリンおよびチカールなどのペニシリンである。
【0168】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗生物質は、マフェニド、スルホナミドクリソイジン、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファジアジン銀、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファニルイミド、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリム、またはトリメトプリム-スルファメトキサゾール(コ-トリモキサゾール)(TMP-SMX)などのスルホンアミドである。
【0169】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗生物質は、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジキシン酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシンおよびテマフロキサシンなどのキノロンである。
【0170】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗生物質は、バシトラシン、コリスチンまたはポリミキシンBなどのポリペプチドである。
【0171】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗生物質は、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリンまたはオキシテトラサイクリンなどのテトラサイクリンである。
【0172】
用量
本明細書に開示される組成物の用量および投与期間は、対象の年齢、対象の体重、およびファージの耐性を含む様々な要因に依存する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、動脈内、静脈内、尿道内、筋肉内、経口、皮下、吸入、またはそれらの任意の組み合わせで患者に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるバクテリオファージは、経口投与によって患者に投与される。いくつかの実施形態において、103から1020PFUの間のファージの用量が与えられる。いくつかの実施形態において、103から1010PFUの間のファージの用量が与えられる。いくつかの実施形態において、106から1020PFUの間のファージの用量が与えられる。いくつかの実施形態において、106から1010PFUの間のファージの用量が与えられる。例えば、いくつかの実施形態では、バクテリオファージは、103から1011PFUの間の量の組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、約103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1016、1017、1018、1019、1020、1021、1022、1023、l024PFU以上の量で組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、101PFU未満の量で組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、101から108、104と109、105と1010、または107と1011PFUの間で量の組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、バクテリオファージまたは混合物は、1日に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24回、それを必要とする対象に投与される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージまたは混合物は、週に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21回、それを必要とする対象に投与される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージまたは混合物は、1ヶ月に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、または90回、それを必要とする対象に投与される。
【0173】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組成物(バクテリオファージ)は、疾患または状態の発生前、発生中、または発生後に投与される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージを含む組成物を投与するタイミングは変化する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は予防薬として使用され、疾患または状態の発生を予防するために、状態または疾患の傾向がある対象に継続的に投与される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、症状の発症中または発症後できるだけ早く対象に投与される。いくつかの実施形態において、組成物の投与は、症状の発症の最初の48時間以内、症状の発症の最初の24時間以内、症状の発症の最初の6時間以内、または症状の発症の3時間以内に開始される。いくつかの実施形態において、組成物の最初の投与は、本明細書に記載の任意の製剤を使用する本明細書に記載の任意の経路によるなど、実用的な任意の経路を介する。いくつかの実施形態において、組成物は、疾患または状態の発症が検出されたかまたは疑われた後、実行可能であるとすぐに、そして疾患の治療に必要な期間、例えば、約1ヶ月から約3ヶ月までなどで投与される。いくつかの実施形態において、治療の長さは、対象ごとに異なる。
【0174】
キット
本明細書に開示されるのは、使用するためのキットである。いくつかの実施形態において、キットは、細胞への導入および/または対象への投与に適した形態で、CRISPRアレイのための核酸構築物、ならびにバクテリオファージおよび/または本明細書に開示される任意の他のベクター/発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、キットは、他の治療薬、担体、緩衝液、容器、投与用デバイスなどを含む。いくつかの実施形態において、キットは、標的遺伝子の発現の抑制および/または標的遺伝子の発現の抑制の調節のための標識および/または指示を含む。いくつかの実施形態において、標識および/または指示は、例えば、CRISPRアレイ、転写活性化因子、および抗CRISPRポリペプチドのための核酸構築物の導入および/または投与の量、頻度および方法、ならびにバクテリオファージおよび/またはその他のベクター/発現カセットに関する情報を含む。
【0175】
いくつかの実施形態において、1つの標的細菌を殺傷するためのキットが提供され、このキットは、本明細書に開示される任意の実施形態による標的細菌の殺傷を達成するために必要な、CRISPRアレイ、転写活性化因子、および/または抗CRISPRポリペプチドのための核酸構築物、ならびにバクテリオファージおよび/または任意の他のベクター/発現カセットを含み、これらから本質的に構成され、これらからなる。
【0176】
いくつかの実施形態において、標的細菌におけるCRISPR-Casシステムの活性を調節するためのキットが提供され、このキットは、本明細書に開示される任意の実施形態による標的細菌におけるCRISPR-Casシステムの調節を達成するために必要な、CRISPRアレイのための核酸構築物、転写活性化因子、および抗CRISPRポリペプチド、ならびにバクテリオファージおよび/または他の任意のベクター/発現カセットを含み、これらから本質的に構成され、これらからなる。
【0177】
いくつかの実施形態において、上記キットのCRISPRアレイ、転写活性化因子、および/または抗CRISPRポリペプチドのための核酸構築物は、単一のベクターもしくは発現カセット上、または別個のベクターもしくは発現カセット上、または単一のバクテリオファージもしくは複数のバクテリオファージ内に含まれる。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に開示される1つ以上のバクテリオファージを含む。いくつかの実施形態では、キットは使用説明書を含む。いくつかの実施形態では、方法を実施するための説明書は、適切な記録媒体に記録される。いくつかの実施形態では、説明書は、紙またはプラスチックなどの基板上に印刷される。いくつかの実施形態では、説明書は、パッケージインサートとして、またはキットもしくはその構成要素の容器のラベルに存在する(すなわち、パッケージングまたはサブパッケージングに付随する)。いくつかの実施形態では、説明書は、適切なコンピュータ可読記憶媒体、例えば、CD-ROM、ディスケット、フラッシュドライブなどに存在する電子記憶データファイルとして存在する。いくつかの実施形態では、実際の説明書はキットに含まれていないが、リモートソースから(たとえばインターネット経由で)説明書を取得するための手段が提供されています。いくつかの実施形態では、キットは、説明書が表示される、および/または説明書がダウンロードされるウェブアドレスを含む。
【0178】
本明細書に開示される特定の実施形態は、それらの方法および組成物の両方において、以下の実施例を参照して説明される。これらの実施例は、特許請求の範囲を実施例の開示に限定することを意図するものではなく、むしろ特定の実施形態の例示を意図するものであることを理解されたい。当業者によって想定される例示された方法の任意のバリエーションは、本開示の範囲内に入ることが意図されている。
【0179】
番号付きの実施形態
番号付きの実施形態1は、第1のスペーサー配列またはそこから転写されるcrRNAをコードする第1の核酸配列を含むバクテリオファージを含み、第1のスペーサー配列は、バクテリオファージが溶解性になるという条件で、標的細菌中の標的遺伝子からの標的ヌクレオチド配列に相補的である。番号付きの実施形態2は、溶原性バクテリオファージに由来する実施形態1のバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態3は、溶原性遺伝子の除去、置換、または不活性化によってバクテリオファージが溶解性にされる、実施形態1-2のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態4は、1247cIリプレッサー領域の除去によって溶解性にされる、実施形態1-3のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態5は、1249cIリプレッサー領域の除去によって溶解性にされる、実施形態1-4のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態6は、1224cIリプレッサー領域の除去によって溶解性にされる、実施形態1-5のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態7は、溶原性遺伝子の調節エレメントの除去によってバクテリオファージが溶解性にされる、実施形態1-6のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態8は、溶原性遺伝子のプロモーターの除去、改変または置換によってバクテリオファージが溶解性にされる、実施形態1-7のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態9は、溶原性遺伝子の機能的要素の除去によってバクテリオファージが溶解性にされる、実施形態1-8のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態10は、溶原性遺伝子に向けられた第2のスペーサーを含む第2のCRISPRアレイを介して溶解性にされる、実施形態1-9のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態11は、複数の細菌株に感染する、実施形態1-10のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態12は、標的ヌクレオチド配列が、標的遺伝子のプロモーター配列の全部または一部を含む、実施形態1-11のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態13は、標的ヌクレオチド配列が、標的遺伝子の転写領域のコード鎖上に位置するヌクレオチド配列の全部または一部を含む、実施形態1-12のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態14は、標的ヌクレオチド配列が、標的細菌の生存に必要とされる必須細菌遺伝子の少なくとも一部を含む、実施形態1-13のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態15は、必須の細菌遺伝子が、Tsf、acpP、gapA、infA、secY、csrA、trmD、ftsA、fusA、glyQ、eno、nusG、dnaA、pheS、rplB、gltX、 hisS、rplC、aspS、gyrB、dnaE、rpoA、rpoB、pheT、infB、rpsC、rplF、alaS、leuS、serS、rplD、gyrA、またはmetKである、実施形態1-14のバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態16は、標的ヌクレオチド配列が非必須の細菌遺伝子またはゲノム遺伝子座にある、実施形態1-15のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態17は、第1の核酸配列は、少なくとも1つのリピート配列をさらに含む第1のCRISPRアレイである、実施形態1-16のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態18は、少なくとも1つのリピート配列は、その5’末端またはその3’末端のいずれかで第1のスペーサー配列に作動可能に連結されている、実施形態1-17のバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態19は、第1の核酸が非必須バクテリオファージ遺伝子または他のゲノム遺伝子座に挿入される、実施形態1-18のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態20は、非必須遺伝子が、gp49、gp75、ホック、gp0.7、gp4.3、gp 4.5、gp4.7、gp0.6、gp0.65、gp0.7、gp4.3、またはgp4.5である、実施形態1-19のバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態21は、標的細菌がC.difficileである、実施形態1-20のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態22は、φCD146またはφCD24-2である、実施形態1-21のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態23は、標的細菌が、バクテリオファージの溶解活性によって、第1のスペーサー配列もしくはそこから転写されるcrRNAを使用するCRISPR-Casシステムの活性によって、またはその両方によって殺傷される、実施形態1-22のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態24は、CRISPR-Casシステムが標的細菌に対して内因性である、実施形態1-23のバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態25は、CRISPR-Casシステムが標的細菌に対して外因性である、実施形態1-24のバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態26は、CRISPR-CasシステムがI型CRISPR-Casシステム、II型CRISPR-Casシステム、またはIII型CRISPR-Casシステムである、実施形態1-25のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態27は、CRISPR-CasシステムがI型CRISPR-Casシステムである、実施形態1-26のいずれか1つのバクテリオファージを含む。番号付きの実施形態28は、第1のスペーサー配列またはそこから転写される第1の核酸配列を含む溶原性バクテリオファーを含み、第1のスペーサー配列は、バクテリオファージが1247cIリプレッサー領域の除去により溶解性になるという条件で、標的細菌中の標的遺伝子からの標的ヌクレオチド配列に相補的である。番号付きの実施形態29は、溶原性バクテリオファージが複数の細菌系統に感染する、実施形態1-28の溶原性バクテリオファージを含む。番号付きの実施形態30は、標的ヌクレオチド配列が、標的遺伝子のプロモーター配列の全部または一部を含む、実施形態1-29のいずれか1つの溶原性バクテリオファージを含む。番号付きの実施形態31は、標的ヌクレオチド配列が、標的遺伝子の転写領域のコード鎖上に位置するヌクレオチド配列の全部または一部を含む、実施形態1-30のいずれか1つの溶原性バクテリオファージを含む。番号付きの実施形態32は、標的ヌクレオチド配列が、標的細菌の生存に必要とされる必須細菌遺伝子の少なくとも一部を含む、実施形態1-31のいずれか1つの溶原性バクテリオファージを含む。番号付けされた実施形態33は、必須細菌遺伝子が、Tsf、acpP、gapA、infA、secY、csrA、trmD、ftsA、fusA、glyQ、eno、nusG、dnaA、pheS、rplB、gltX、hisS、rplC、aspS、gyrB、dnaE、rpoA、rpoB、pheT、infB、rpsC、rplF、alaS、leuS、serS、rplD、gyrA、またはmetKである、実施形態1-32の溶原性バクテリオファージを含む。番号付きの実施形態34は、標的ヌクレオチド配列が非必須細菌遺伝子またはゲノム遺伝子座にある、実施形態1-33のいずれか1つの溶原性バクテリオファージを含む。番号付きの実施形態35は、第1の核酸配列は、少なくとも1つのリピート配列をさらに含む第1のCRISPRアレイである、実施形態1-34のいずれか1つの溶原性バクテリオファージを含む。番号付きの実施形態36は、少なくとも1つのリピート配列が、その5’末端またはその3’末端のいずれかで第1のスペーサー配列に作動可能に連結されている、実施形態1-35の溶原性バクテリオファージを含む。番号付きの実施形態37は、第1の核酸が非必須バクテリオファージ遺伝子または他のゲノム遺伝子座に挿入される、実施形態1-36のいずれか1つの溶原性バクテリオファージを含む。番号付きの実施形態38は、非必須バクテリオファージ遺伝子は、gp49、gp75、hoc、gp0.7、gp4.3、gp4.5、gp4.7、gp0.6、gp0.65、gp0.7、gp4.3、またはgp4.5である、実施形態1-37の溶原性バクテリオファージを含む。番号付きの実施形態39は、標的細菌がC.difficileである、実施形態1-38のいずれか1つの溶原性バクテリオファージを含む。番号付きの実施形態40は、φCD146またはφCD24-2である、実施形態1-39のいずれか1つの溶原性バクテリオファージを含む。番号付きの実施形態41は、標的細菌が、溶原性バクテリオファージの溶解活性によって、第1のスペーサー配列もしくはそこから転写されるcrRNAによって、またはその両方を使用するCRISPR-Casシステムの活性によって殺傷される、実施形態1-40のいずれか1つの溶原性バクテリオファージを含む。番号付きの実施形態42は、CRISPR-Casシステムが標的細菌に対して内因性である、実施形態1-41の溶原性バクテリオファージを含む。番号付きの実施形態43は、CRISPR-Casシステムが標的細菌に対して外因性である、実施形態1-42の溶原性バクテリオファージを含む。番号付きの実施形態44は、CRISPR-CasシステムがI型CRISPR-Casシステム、II型CRISPR-Casシステム、またはIII型CRISPR-Casシステムである実施形態1-43のいずれか1つの溶原性バクテリオファージを含む。番号付きの実施形態45は、CRISPR-CasシステムがI型CRISPR-Casシステムである、実施形態1-44のいずれか1つの溶原性バクテリオファージを含む。番号付きの実施形態46は、番号付きの実施形態(a)実施形態1-27のいずれか1つのバクテリオファージ、もしくは実施形態28-45のいずれか1つの溶原性バクテリオファージ、または(b)製薬上許容される賦形剤を含む医薬組成物を含む。番号付けされた実施形態47は、錠剤、液体、シロップ、経口製剤、静脈内製剤、鼻腔内製剤、眼製剤、耳製剤、皮下製剤、吸入可能な呼吸器製剤、坐剤、またはそれらの任意の組み合わせの形態である、実施形態46の医薬組成物を含む。番号付けされた実施形態48は、標的細菌を殺傷するための方法を含み、この方法は、第1のスペーサー配列またはそこから転写されるcrRNAをコードする第1の核酸配列を含む溶原性バクテリオファージを標的細菌に導入することを含み、第1のスペーサー配列は、バクテリオファージが1247cIリプレッサー領域ノックアウトによって溶解性にされ、それによって標的細菌を殺傷するという条件で、標的細菌の標的遺伝子からのヌクレオチド配列に相補的である。番号付きの実施形態49は、溶原性バクテリオファージが複数の細菌株に感染する、実施形態1-48の方法を含む。番号付きの実施形態50は、標的ヌクレオチド配列が標的遺伝子のプロモーター配列の全部または一部を含む、実施形態1-49のいずれか1つに記載の方法を含む。番号付きの実施形態51は、標的ヌクレオチド配列が、標的遺伝子の転写領域のコード鎖上に位置するヌクレオチド配列の全部または一部を含む、実施形態1-50のいずれか1つに記載の方法を含む。番号付きの実施形態52は、標的ヌクレオチド配列が、標的細菌の生存に必要とされる必須細菌遺伝子の少なくとも一部を含む、実施形態1-51のいずれか1つの方法を含む。番号付けされた実施形態53は、必須の細菌遺伝子がTsf、acpP、gapA、infA、secY、csrA、trmD、ftsA、fusA、glyQ、eno、nusG、dnaA、pheS、rplB、gltX、hisS、rplC、aspS、gyrB、dnaE、rpoA、rpoB、pheT、infB、rpsC、rplF、alaS、leuS、serS、rplD、gyrA、またはmetKである、実施形態1-52の方法を含む。番号付きの
実施形態54は、標的ヌクレオチド配列が非必須細菌遺伝子またはゲノム遺伝子座にある、実施形態1-53のいずれか1つに記載の方法を含む。番号付きの実施形態55は、第1の核酸配列が、少なくとも1つのリピート配列をさらに含む第1のCRISPRアレイである、実施形態1-54のいずれか1つの方法を含む。番号付きの実施形態56は、少なくとも1つのリピート配列は、その5’末端またはその3’末端のいずれかで第1のスペーサー配列に作動可能に連結されている、実施形態1-55の方法を含む。番号付きの実施形態57は、第1の核酸が非必須バクテリオファージ遺伝子に挿入される、実施形態1-56のいずれか1つに記載の方法を含む。番号付きの実施形態58は、非必須バクテリオファージ遺伝子がgp49、gp75、hoc、gp0.7、gp4.3、gp45.7、gp4.7、gp0.6、gp0.65、gp0.7、gp4.3、またはgp4.5である、実施形態1-57の方法を含む。番号付きの実施形態59は、標的細菌がC.difficileである、実施形態1-58のいずれか1つに記載の方法を含む。番号付きの実施形態60は、溶原性バクテリオファージがφCD146またはφCD24-2である、実施形態1-59のいずれか1つに記載の方法を含む。番号付きの実施形態61は、標的細菌が、溶原性バクテリオファージの溶解活性によって、第1のスペーサー配列またはそこから転写されるcrRNAを使用するCRISPR-Casシステムの活性によって、またはその両方によって殺傷される、実施形態1-60のいずれか1つの方法を含む。番号付きの実施形態62は、溶原性バクテリオファージの溶解活性とは無関係に、標的細菌がCRISPR-Casシステムの活性によって殺傷される、実施形態1-61のいずれか1つに記載の方法を含む。番号付きの実施形態63は、CRISPR-Casシステムの活性が溶原性バクテリオファージの溶解活性を補足または増強する、実施形態1-62のいずれか1つに記載の方法を含む。番号付きの実施形態64は、溶原性バクテリオファージの溶解活性およびCRISPR-Casシステムの活性が相乗的である、実施形態1-63のいずれか1つに記載の方法を含む。番号付きの実施形態65は、溶原性バクテリオファージの溶解活性、CRISPR-Casシステムの活性、またはその両方が溶原性バクテリオファージの濃度によって調節される、実施形態1-64のいずれか1つに記載の方法を含む。番号付きの実施形態66は、CRISPR-Casシステムが標的細菌に対して内因性である、実施形態1-65のいずれか1つに記載の方法を含む。番号付きの実施形態67は、CRISPR-Casシステムが標的細菌に対して外因性である、実施形態1-66のいずれか1つに記載の方法を含む。番号付きの実施形態68は、CRISPR-CasシステムがI型CRISPR-Casシステム、II型CRISPR-Casシステム、またはIII型CRISPR-Casシステムである、実施形態1-67のいずれか1つの方法を含む。番号付きの実施形態69は、CRISPR-CasシステムがI型CRISPR-Casシステムである、実施形態1-68のいずれか1つに記載の方法を含む。番号付きの実施形態70は、溶原性バクテリオファージが、CRISPR-Casアレイの活性を超えて、溶原性バクテリオファージの溶解活性によって引き起こされる細胞死を超えて、またはその両方を超えて、標的細菌にいかなる新しい特性も与えない、実施形態1-69のいずれか1つの方法を含む。番号付きの実施形態71は、実施形態46-47のいずれか1つの医薬組成物を投与することを含む、必要とする個体の疾患を治療する方法を含む。番号付きの実施形態72は、個体が哺乳動物である、実施形態1-71の方法を含む。番号付きの実施形態73は、疾患が細菌感染症である、実施形態1-72のいずれか1つに記載の方法を含む。番号付けされた実施形態74は、細菌感染を引き起こす細菌が、Escherichia coli、Salmonella enterica、Bacillus subtilis、Clostridium acetobutylicum、Clostridium ljungdahlii、Clostridioides difficile、Clostridium bolteae、Acinetobacter baumannii、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium abscessus、Mycobacterium intracellulare、Mycobacterium fortuitum、Mycobacterium chelonae、Mycobacterium avium、Mycobacterium gordonae、Myxococcus xanthus、Streptococcus pyogenes、cyanobacteria、Staphylococcus aureus、メチシリン耐性Staphylococcus aureus、Streptococcus pneumoniae、カルバペネブ耐性Enterobacteriaceae、拡大スペクトルベータ-ラクタマーゼ、(ESBL)-産生Enterobacteriaceae、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus salivarius、Corynebacterium minutissimum、Corynebacterium pseudodiphtheriticum、Corynebacterium striatum、Corynebacterium グループG1、Corynebacterium グループG2、Streptococcus mitis、Streptococcus sanguinis、Klebsiella pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Burkholderia cepacia、Serratia marcescens、Haemophilus influenzae、Moraxella sp.、Neisseria meningitidis、Neisseria gonorrhoeae、Salmonella typhimurium、Actinomyces israelii.、Porphyromonas gingivalis.、Prevotella melaninogenicus、Helicobacter pylori、Helicobacter felis、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Enterococcus gallinarum、Bacteroides fragilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Fusobacterium nucleatum、Ruminococcus gnavus、もしくはCampylobacter jejuni、またはそれらの任意の組み合わせである、実施形態1-73の方法を含む。番号付きの実施形態75は、細菌が少なくとも1つの抗生物質に耐性である薬剤耐性細菌である、実施形態1-74の方法を含む。番号付きの実施形態76は、細菌が少なくとも1つの抗生物質に耐性である多剤耐性細菌である、実施形態1-75の方法を含む。番号付きの実施形態77は、少なくとも1つの抗生物質が、セファロスポリン、フルオロキノロン、カルバペネム、コリスチン、アミノグリコシド、バンコマイシン、ストレプトマイシン、またはメチシリンを含む、実施形態1-76のいずれか1つの方法を含む。番号付きの実施形態78は、投与が動脈内、静脈内、筋肉内、経口、皮下、吸入、またはそれらの任意の組み合わせである、実施形態1-77のいずれか1つの方法を含む。
【実施例】
【0180】
実施例1.菌株と培養条件
すべての細菌株は、最終濃度15%のグリセロール(vol/vol)が補充されたそれぞれの培地において、または胞子ストックとして-80℃で保存された。本実施例で使用されているC.difficile系統は、Louis-CharlesFortierとSethWalkから提供された。菌株を冷凍庫ストックからブレインハートインフュージョン(BHI)寒天プレート(Teknova)に打ち込み、85%窒素、5-10%水素、および5%二酸化炭素を使用してCoy嫌気性チャンバー内にて37℃でインキュベートした。菌株は、BHIブロスに単一コロニーを接種し、37℃で培養することにより継代培養した。BHI寒天培地にサイクロセリン(8μg/mL)、セフォキシチン(25μg/mL)、およびチアンフェニコール(Tm)(15μg/mL)を添加して、組換えC.difficileを選択した。Escherichia coli(大腸菌)株をLB寒天プレート(Teknova)に画線し、37℃でインキュベートした。大腸菌株は、必要に応じてカルベニシリン(50μg/mL)、クロラムフェニコール(15μg/mL)、またはエリスロマイシン(200μg/mL)を添加したLB培地で培養した。
【0181】
表1は、本明細書に開示される実施例で使用される細菌株およびプラスミドを示す。
【0182】
【0183】
実施例2.DNAの単離および操作
すべてのキットおよび試薬は、製造業者の指示書に従って使用した。プラスミドおよびゲノムDNAの単離は、それぞれZymo ResearchプラスミドミニプレップキットおよびQuick DNA Fungal/Bacterial Miniprepキットを使用して行った。ファージDNA精製は標準的な手順を使用して実行した。制限酵素、T4 DNAリガーゼ、およびDNAポリメラーゼは、New England Biolabsから入手した。ルーチンのPCRはTaqDNAポリメラーゼを使用して実行し、高忠実度の増幅はPhusion DNAポリメラーゼを使用して実行した。すべてのPCR産物は、Gel Redを含む0.8%アガロースを使用したゲル電気泳動によって視覚化した。ファージゲノムの推定溶原制御モジュール内に、細菌ゲノムを標的とするCRISPR RNAおよび/または遺伝子ノックアウトをコードする発現カセットを含む組換えファージを作成した。
【0184】
実施例3.ファージの形態
ファージは、FortierおよびMoineauによって記載された方法の改変を使用して、TEMのために調製した。観察前に、1.5mLの粗溶解物を4℃および24,000×gで1時間遠心分離した。上澄みの一部(約1.4mL)を穏やかに廃棄し、1mLの酢酸アンモニウム(0.1M、pH 7.5)を残りの溶解物に加え、次いで上記のように遠心分離した。この工程は2回実行した。洗浄されたファージサンプルは、ネガティブ染色透過型電子顕微鏡によって視覚化された。グロー放電されたformvar/カーボンコーティングされた400メッシュの銅グリッド(Ted Pella,Inc.,Redding,CA)をサンプル懸濁液の25μLの液滴に5分間浮かせ、2滴の脱イオン水にすばやく移し、続いて2%酢酸ウラニル水溶液の液滴で30秒間染色した。グリッドを濾紙で吸い取り、風乾した。サンプルは、80kVで動作するJEOL JEM-1230透過型電子顕微鏡(JEOL USA,Peabody,MA)を使用して観察し、画像はGatan Microscopy Suite 3.0ソフトウェア(Gatan, Inc.,Pleasanton,CA)を備えたGatan Orius SC1000 CCDカメラを使用して撮影した。
【0185】
実施例4.ファージの取り扱い手順
プロファージ状態のφCD24-2は、UV照射(302nm)によってC.difficile CD24から誘導された。野生型φCD24-2(wtPhage)とCRISPR-増強ファージ(crPhage)の両方が、C.difficile CD19での増幅によって増殖された。C.difficile CD19の一晩培養物を1:100でBHIブロスに継代培養し、OD600が0.10になるまで37℃でインキュベートした。MgCl2およびCaCl2をそれぞれ最終濃度が10mMと1mMになるように添加した。バクテリオファージを感染多重度(MOI)0.02で添加し、培養物のある程度のクリアランスが観察されるまで、培養物を37℃で7-8時間インキュベートした。増幅培養物を嫌気性チャンバーから取り出し、4000gで20分間遠心分離した。上清を0.45μmフィルターでろ過した。0.2倍量の20%PEG8000、2.5M NaCl溶液(Teknovaカタログ#P4137)を添加すること、および4℃で一晩インキュベートすることにより、ファージをPEG沈殿させた。翌日、ファージ懸濁液を4℃、13,000gで10分間遠心分離した。上清をデカントし、ペレットを5mL BHIに再懸濁した。ファージ懸濁液を22℃にて13,000gで10分間遠心分離し、残留PEGを除去した。上清を新しいチューブに移し、10mM MgCl2および1mMCaCl2を加えた。溶解物は使用するまで4℃で保存した。ファージ力価は、軟寒天オーバーレイ法によって決定した。簡単に説明すると、800μLの2M MgCl2、20μLの2M CaCl2、500μLのOD600で0.3-0.6のC. difficile CD19、および100μLの希釈範囲のファージを3mLの0.375% BHI寒天(Teknova)に添加した。混合物を1.5%BHI寒天プレートに注ぎ、固化させ、37℃で嫌気的に一晩インキュベートした。翌日、プラークを計数し、1mlあたりのファージの数を計算した。
【0186】
実施例5.インビトロファージの有効性
ファージを、BHI+10mM MgCl2+1mM CaCl2において2.0×108PFU/mLの力価に希釈した。C.difficileの一晩培養物を1:100でBHIに継代培養し、37℃でOD600が0.20になるまで培養した。10mM MgCl2および1mM CaCl2を細菌培養物に添加し、培養物をファージまたはBHI+10mM MgCl2+1mM CaCl2と1:1で混合した。0、2、4、6、および22時間で、BHIで1:106まで10倍段階希釈を行った。各希釈液の5μLをBHI寒天上にスポットし、プレートの表面で乾燥させた。プレートを37℃で一晩インキュベートした。翌日、最も密度の高い可算スポットのコロニー数を測定し、1mlあたりの細胞数を計算するために使用した。この実験は、wtPhageおよびcrPhage;wtPhageおよびwtPhage Δlys;ならびにwtPhage、crPhage、wtPhage Δlys、およびcrPhages Δlysを用いて繰り返した。
【0187】
実施例6.インビトロでの毒素遺伝子発現
φCD24-2によって溶原化された野生型C.difficileCD19およびCD19を、TY培地中で一晩増殖させ、次いで、10mlの新鮮なTYに継代培養した。各菌株の3連の培養は、10mlの冷1:1エタノール:アセトンを添加することにより、24、48、および72時間で固定した。これらはすぐに嫌気性チャンバーから取り出し、-80℃で一晩保存した。解凍したサンプルを3,000gで10分間、4℃にて遠心分離した。ペレットを、2-メルカプトエタノールを1:100で補充した1mlの冷滅菌水に再懸濁し、5,000rpmで5分間、4℃にて遠心分離した。上清を除去し、PureLink RNA Mini Kit(Thermo Fisher、カタログ番号12183018A)を使用して、製造元のプロトコルに従ってRNAを抽出した。混入しているDNAをTurbo DNase(Thermo Fisher カタログ番号AM2238)で除去し、モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素を使用してcDNAを合成した。次に、cDNAを滅菌水で1:3に希釈した。定量的リアルタイムPCRは、SsoAdvanced SYBRGreen Supermixと表2の遺伝子に特異的なプライマーを使用して実行した。
【0188】
【0189】
PCR増幅は、技術的複製において実施した。コピー数は検量線を使用して計算し、相対コピー数はtcdAおよびtcdBのコピー数をrpoCのコピー数に正規化することによって得られた。
【0190】
実施例7.C.difficile胞子の調製
C.difficile株CD19の胞子を調製した。簡単に説明すると、コロンビアブロス中のCD19の一晩培養物2mLをClospore培地40mLに加え、37℃で7日間インキュベートした後、胞子を遠心分離し、冷滅菌水で5回洗浄した。あるいは、500μLのC.difficileの初期対数増殖期培養液を70%SMC-30%BHI寒天プレートに広げ、37℃で3-4日間培養した。次に、増殖物を寒天プレートからこすり落とし、10mLの滅菌PBSに再懸濁した。10mLの96%エタノールを加え、混合物をボルテックスし、ベンチトップに1時間置いた。次に、胞子混合物を3,000rpmで10分間遠心分離した。ペレットを10mLの滅菌PBSに懸濁し、再度遠心分離した。次に、ペレットを1mLの滅菌PBSに懸濁し、65℃で20分間加熱した。いずれかの方法で調製された胞子は、それらの調製時、および嫌気性チャンバーでの段階希釈を介した接種材料の調製前に、および0.1%タウロコール酸を補充したBHISへのプレーティングの前に数えられた。胞子接種物もまた、インビボチャレンジの直前に数えられた。
【0191】
実施例8.抗生物質の投与およびC.difficileによる感染
動物および飼育:雄性および雌性C57BL/6マウス(5週齢)を、感染実験で使用するためにJackson Labs(Bar Harbor,ME)から購入した。餌、ベッド、および水はオートクレーブ処理され、ケージの交換はすべて層流フードで行われた。マウスを12時間の明および12時間の暗サイクルに供した。動物実験は、North Carolina State University CVMキャンパスにある実験動物施設で実施された。動物施設には、NCSUのLaboratory Animal Resources(LAR)部門によって調整されたフルタイムの動物ケアスタッフが配備される。NCSU CVMは、国際実験動物管理協会(the Association for the Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care International)(AAALAC)の認定を受けている。施設内の訓練を受けた動物取扱者は、1日に数回動物に餌を与えて状態を評価した。瀕死と評価された動物は、CO2窒息によって人道的に安楽死させた。
【0192】
マウス(3回の実験でn=80、雄性および雌性)に、0.5mg/mLのセフォペラゾン(Gibco蒸留水、カタログ番号15230147に溶解)を5日間、それらをC.difficileコロニー形成に対して感受性にするためにそれらの飲料水に投与した。難しい植民地化。次に、すべてのマウスに蒸留水を与えて2日間飲ませた後、25μLのC.difficile株CD19の105個の胞子を経口的に強制飼養した。動物は、疾患の臨床的兆候(体重減少、食欲不振、湿った便、丸まった姿勢、毛皮の波打ち)について監視され、動物が初期体重の20%の減少の臨床的エンドポイントに達した場合、CO2窒息によって人道的に屠殺された。糞便ペレットを毎日収集し、秤量し、嫌気性チャンバーに通し、滅菌嫌気性PBS(Gibco、カタログ番号10010023)で1:10 w/vに希釈した。希釈したペレットを段階的に希釈し、C.difficile選択培地セフォキシチンd-シクロセリンフルクトース寒天培地(CCFA)にプレーティングして栄養細胞を数え、タウロコレート セフォキシチンd-シクロセリンフルクトース寒天培地(TCCFA)にプレーティングして総C.difficile負荷(栄養細胞および胞子)を数えた。剖検はチャレンジ後2日目と4日目に実施した。盲腸内容物は、CCFAおよびTCCFAでのC.difficileの列挙のために採取した。盲腸および結腸組織は、組織病理学的分析のために採取した。
【0193】
実施例9.ファージによる処理
C.difficile胞子によるチャレンジの約4時間後、マウスは、胃酸を中和するために100μLの6%w/v NaHCO
3溶液を経口的に強制飼養した。続いて、約30分後、100μLでの以下の5つの処理のうちの1つを行った。ビヒクル、これはBHI+10mM MgCl
2+1mM CaCl
2(CD19、n=20)である;wtPhage(n=20);組換えcrPhage(n=20);wtPhage溶原性変異体(wtPhage Δlys、n=8);またはcrPhage溶原変異体(n=8、crPhage Δlys)。1つのグループにはセフォペラゾンとビヒクルが与えられたが、C.difficile胞子はチャレンジされなかった(n=4)。このグループは、組織病理学的分析において腸組織に対するビヒクルの効果の対照として機能した。実験期間中、治療の強制飼養を1日2回、約8-9時間間隔で繰り返した(
図6A)。
【0194】
実施例10.溶原菌のスクリーニング
再懸濁された糞便ペレットを、サイクロセリンおよびセフォキシチンを補充したBHI寒天上にプレーティングした。個々のコロニーをBHI寒天上に2回再ストリークして、ファージ粒子から細菌を分離した。ファージ溶原菌の存在を検出するために、プライマーを使用してコロニーをPCRスクリーニングした。プロファージの存在が陽性のコロニーは、野生型ファージまたはCRISPRで操作されたファージに特異的なプライマーを使用してさらにスクリーニングした。糞便サンプル中のファージをタイトレーションするために、再懸濁した糞便ペレットを4000gで10分間遠心分離した。上清を0.45μmスピンフィルターでろ過し、軟寒天オーバーレイで使用した。
【0195】
実施例11.マウスの盲腸および結腸の組織病理学的検査
剖検時に、無傷の組織を組織学カセットの中に配置することによって盲腸および結腸を組織学のために調製し、10%緩衝ホルマリンに48時間保存し、次いで長期保存のために70%エチルアルコールに移した。組織カセットをさらに処理し、パラフィン包埋し、次に切片にした。ヘマトキシリンおよびエオシン染色されたスライドは、組織病理学的検査のために調製した(University of North Carolina Animal Histopathology & Lab Medicineコア)。組織学的切片は、理事会認定の獣医病理学者(SM)によって、盲目的にコード化、無作為化、およびスコア付けした。盲腸および結腸の浮腫、炎症(細胞浸潤)、および上皮損傷は、数値スコアリングスキームに基づいてそれぞれ0-4のスコアが付けられた。
【0196】
浮腫スコアは以下の通りであった:0、浮腫なし;1、最小限の(2x)多病巣性粘膜下組織拡張または中等度(2-3x)の粘膜下組織拡張の単一病巣を伴う軽度の浮腫;2、中等度(2-3倍)の多発性粘膜下拡張を伴う中等度の浮腫;3、重度の(3x)多発性粘膜下拡張を伴う重度の浮腫;4、スコア3と同じでびまん性粘膜下拡張を伴う。
【0197】
細胞浸潤スコアは以下の通りであった:0、炎症なし;1、クラスターを形成しない散乱細胞の最小限の多発性好中球性炎症;2、中等度の多発性好中球性炎症(粘膜下組織の関与が大きい);3、重度の多発性から合体する好中球性炎症(粘膜下組織±壁の関与が大きい);4、スコア3と同じで膿瘍または広範囲の壁の関与を伴う。
【0198】
上皮損傷は以下のようにスコア付けされた:0、上皮変化なし;1、最小限の多病巣性表在性上皮損傷(空胞化、アポトーシス像、絨毛先端の減衰/壊死);2、中等度の多発性表在性上皮損傷(空胞化、アポトーシス像、絨毛先端の減衰/壊死);3、重度の多発性上皮損傷(上記と同じ)+/-偽膜(管腔内好中球、線維性マトリックス中の脱落した上皮);4、スコア3と同じで有意な偽膜または上皮潰瘍(上皮の限局性完全喪失)を伴う。
【0199】
顕微鏡写真は、cellSens Dimensionソフトウェアを使用して、DP27カメラを備えたオリンパスBX43光学顕微鏡で捕捉された。
【0200】
実施例12.統計的手法
統計的試験は、Mac OS X用のPrismバージョン7.0b(GraphPad Software,La Jolla California USA)を使用して実施された。統計的有意性は、すべての分析でp値<0.05に設定した(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。インビボ実験では、Kruskal-Wallis一元配置分散分析とそれに続くDynnの事後検定の多重比較を使用して、治療グループ間の有意性を計算した。Sidakの多重比較事後検定を使用したGeisser-Greenhouse Two-WayANOVAを使用して、インビトロ毒素発現データ間の有意性を計算した。Holm-Sidak法を使用して複数の比較を補正したスチューデントのt検定を使用して、抱合効率のグループ間の有意性を計算し、Mann-Whitney両側t検定を使用して、CD19感染の組織学的スコアを評価した。
【0201】
実施例13.ゲノム標的化CRISPRアレイのファージ送達を介した抗菌剤としてのC.difficileのタイプI-BCRISPRCasシステム
C.difficileゲノム標的化CRISPRは、C.difficile630において高度に発現された内因性CR11アレイからのネイティブリーダーおよびコンセンサスCRISPRリピートを使用して構築された。リーダー配列の236ヌクレオチドが選択され、これはCRISPRアレイの発現を駆動する。標準的なσ70およびRNAポリメラーゼ認識モチーフから。リピート配列は、C.difficile630CR11アレイから15リピートの29ヌクレオチドコンセンサスを導出することによって生成した。スペーサー配列の最適な長さは、37ヌクレオチドであると決定された約220のクエリされたゲノム内のすべてのスペーサーの長さ分布によって定義した。したがって、スペーサー配列は、コンセンサスPAM配列5’-CCW-3’の37ヌクレオチド下流に拘束され、C.difficile株全体での高度な保存のために選択した。 CRISPR標的化配列は、リーダー配列(下線付き)、リピート配列(太字)、およびリボヌクレアーゼYを標的とするスペーサー配列(イタリック体)とともに以下に示されています。
【0202】
【0203】
次に、CRISPR発現構築物は、pMTL84151にクローニングすること、続いてモデルC.difficile系統R20291および630にコンジュゲーションすることによって検証した。CRISPRによる成功したゲノム標的化は、pMTL84151ベクター対照と比較した、pMTL84151:CRISPRの生存可能なトランスコンジュゲートの数の減少によって定義された。
【0204】
CRISPRプラスミドは、接合効率の約1対数(one-log)の減少を示した(
図1)。ゲノム標的化CRISPRは、生存可能なトランスコンジュゲートの有意な損失を引き起こし、C.difficileの内因性I-B型システムによって引き起こされる致命的なDNA分解を意味し、バクテリオファージを介した細菌抑制の有効性を改善するための使用を検証した。
【0205】
実施例14.ゲノムを標的とするCRISPRのファージ媒介送達は、野生型ファージ活性を増強して、C.difficileの標的集団をより効率的に殺傷する
ゲノム標的化CRISPRの有効性を考慮して、リーダー駆動リピート-スペーサー-リピート構築物をC.difficileバクテリオファージφCD24-2のゲノム上に移動させた(CRISPR増強ファージおよびcrPhageは交換可能に使用される)(
図2)。ファージの遺伝子改変がその超微細構造の完全性またはその安定性に影響を与えるかどうかを判断するために、野生型φCD24-2(wtPhage)のファージ形態をネガティブ染色TEMによってcrPhageの形態と比較した(
図3)。WTとcrPhageの両方が典型的なMyoviridae(マイオウイルス科)の形態を示した。宿主範囲に関して、wtPhageは、スポットプレーティングアッセイによって決定されたように、臨床的に関連する株パネルからの10/87株に感染することができた。crPhageはwtPhageと同じ10/87株に感染し、これは、ファージゲノムへのCRISPRの挿入が形態や宿主範囲に影響を与えなかったことを示す。達成された力価は、ルーチンの増幅によって評価され、crPhageの貯蔵安定性がwtPhageのそれと比較され、4週間にわたってそれらの間に差は見られなかった。
【0206】
次に、φCD24-2感染に非常に感受性の高い宿主であるC.difficile株CD19に対して、インビトロコロニー形成単位(CFU)減少実験を行った。wtPhageで処理された培養物は、2時間のインキュベーション後にCFUの約1ログ(one-log)の減少を示し、その後すぐにリバウンドした。対照的に、crPhageは、2時間の感染(約3ログ(three log))後の最大CFU減少の深さを増加させ、24時間にわたる培養の回復を減少させた(
図4A)。処理に使用された感染多重度(MOI)も、観察された殺傷の深さとリバウンドの遅延に影響を及ぼした。実験期間中、MOI≧1は、急速な細菌殺傷に有利に働くが、培養のリバウンドも容易にするのに対して、一方、MOI≧0.01の場合、実験の間にわたって、より深い殺傷を生じた(
図4C)。これらのCFUリバウンドデータは、バクテリオファージ非感受性変異体の発生と一致しており、高い初期MOIで選択される可能性がある。具体的には、溶原菌は再感染に鈍感であり、活性ファージが存在するにもかかわらず、溶原菌が増殖して集団を支配することを可能にする(
図4A-
図4B)。
【0207】
実施例15.インビボでのC.difficile感染症(CDI)のマウスモデルにおけるcrPhageによる治療および疾患の結果に対する効果。
最初に、C.difficile株CD19による感染の動態が決定された。マウスがCDIの影響を受けやすくするために、飲料水中の抗生物質セフォペラゾンを5日間投与し、0日目にC.difficile CD19胞子でチャレンジした(
図5A)。チャレンジの4日後、有意な体重減少、C.difficile CD19の高い盲腸負荷、および浮腫、炎症、上皮損傷を含む盲腸への有意な組織病理学的変化を観察した(
図5B-
図5D)。
【0208】
チャレンジの4日後が、実験的ファージ療法モデルのエンドポイントとして選択された。前述のように、マウスには水中のセフォペラゾンを投与され、胞子チャレンジの4時間後、胃を通過中の間に、胃のpHを上げ、投与したファージを分解から保護するために、マウスに100μlの水中6%NaHCO
3 w/vを経口的に強制飼養した。次に、マウスは強制経口投与による3つの治療のうちの1つを受けた:ビヒクル、wtPhage、またはcrPhage(
図6A)。crPhageで処理されたマウスは、C.difficileの負担が大幅に減少し、ビヒクルのみまたはwtPhageのいずれかを投与されたマウスと比較して、チャレンジの2日後に糞便中のC.difficile CFUが約10分の1に減少した(p=0.0013およびp=0.0232)(
図6B)。対照的に、wtPhageで処理されたマウスは、ビヒクルで処理されたマウスと同様に糞便中に栄養細胞CFUを有しており、wtPhageがインビボでそれほど毒性がないことを示唆する。4日目までに、栄養細胞のCFUは、crPhageで処理されたマウスでリバウンドしたが、CFUは、ビヒクルおよびwtPhageで処理されたマウスのCFUよりもまだ低かった。4日目の剖検時の盲腸CFUも、wtPhageで治療したマウスと比較して、crPhage治療群でC.difficile栄養細胞負荷の有意な減少を示した(p=0.0175、
図6C)。いくつかの場合において、インビトロでの観察から、4日目のCFUのリバウンドは溶原性によるものである。
【0209】
6つの個々のC.difficileコロニーを、チャレンジの2日後および4日後に各マウスの糞便からPCRスクリーニングした。2日目に、wtPhageを含む溶原菌で処理したマウスからスクリーニングしたコロニーの71%が、
図6Lに示すように、インビボでのC.difficile集団全体の効率的な感染を実証することがわかった。対照的に、crPhageで処理された2日目のマウスのコロニーはいずれも溶原菌を含んでいなかった。4日目までに、wtPhageで処理されたマウスからスクリーニングされたすべてのコロニーに溶原菌が含まれていた。同様に、crPhage処理マウスの4日目の糞便から得られたすべてのコロニーは溶原菌であった。溶原菌はPCRによって正しい同一性を持っていることが確認され、すなわち、wtPhageで処理されたグループの溶原菌は野生型ファージを含み、crPhageで処理された群の溶原菌は組換え体であった。しかし、4日目から35個のcrPhage溶原菌を配列決定すると(2回の実験で検出されたすべての溶原菌を表す)、そのうち30個が、CRISPR領域からスペーサーおよび1つのリピートを失ったことがわかった。4つは良好な配列決定データを生じることに失敗し、1つはスペーサーおよび両方のリピートを維持した。この観察結果は、リピートを介した組換えによるスペーサーの切除がゲノムおよびプラスミド標的化からの脱出の主要な形態であることを考えると、いくつかの場合おいて、インタクトなゲノム標的化CRISPRを備えた溶原菌が不安定であり、CRISPRスペーサーの切除を選択することを示す。
【0210】
実施例16.バクテリオファージの溶原性モジュールの削除
4日目までに広範な溶原性が与えられると、wtPhageおよびcrPhageにおいて重要な溶原性遺伝子を欠く変異ファージが構築された。CFU減少アッセイを実施し、インビトロでいずれかのファージで処理した培養物から22時間にわたって溶原菌は検出されなかった(
図4B)。CDIのインビボマウスモデルを繰り返し、マウスにいずれかのファージを治療として与えた。wtPhage Δlysで治療されたマウスは、ビヒクルまたはwtPhageのみを与えられたマウスと比較して、チャレンジ後2日で糞便C.difficile負荷がほぼ2対数(two logs)減少した(両方でp<0.0001、
図6B)。2日目までに、crPhage Δlysを投与されたマウスは、crPhageのみで治療されたマウスと比較して糞便CFUがほぼ4分の1に減少し、ビヒクルで治療されたマウスと比較してほぼ2ログ減少した(
図6B)。4日目までに、糞便CFUはすべての治療群で増加したが、crPhage Δlysを投与したマウスは、ビヒクルを投与したマウスまたはwtPhageで治療したマウスよりも糞便CFUが有意に低かった(p=0.0472およびp=0.0125、
図6B)。wtPhage ΔlysまたはcrPhage Δlysのいずれかで処理されたマウスからの4日目のC.difficile負荷は、ビヒクルを与えられたマウス、または親ファージ処理を与えられたマウスと有意に異ならなかった(
図6C)。有意な組織病理学的変化が、crPhageおよびwtPhage Δlysで処理されたマウスの盲腸(
図6D-
図6E)および結腸(
図6F-
図6G)で検出された。しかし、盲腸および結腸組織、ならびにcrPhage Δlysで処理されたマウスからの体重減少は、感染していないビヒクルで処理された対照マウスのそれと有意に異ならなかった(
図6D-
図6H)。このことは、この改変された組換えファージの活性が、CDIに関連する組織損傷から宿主を保護したことを示唆する。
溶原菌は、後者のファージでは頻度が低いものの、それぞれで処理されたマウスの糞便で検出された(
図6I)。PCRスクリーニングにより、それらがwtPhageまたはcrPhageによる汚染の結果ではないことが確認された。crPhage Δlys溶原菌はスペーサーおよび両方のリピートを維持した。CD19溶原性物質は、インビトロで時間の経過とともにtcdAおよびtcdBの発現が大幅に増加し(
図6J)、溶原性が、いくつかの場合において、毒素遺伝子発現の増加によってC.difficileの細菌生理学に影響を与えることを示す。毒素遺伝子発現の増加は、いくつかの場合において、組織病理の増加を引き起こした。
【0211】
実施例17.cIノックアウトC.difficileバクテリオファージの操作と検証
操作:φCD24-2の溶原性領域の異なる部分に隣接する相同性アームおよび溶原性領域を標的とする逆選択的crRNAを含むプラスミドをインシリコで設計し、BioBasicによって合成した。プラスミドをE.coliに形質転換し、C.difficile菌株CD19にコンジュゲートした。φCD24-2は、操作プラスミドを保持するCD19で増幅された。得られたファージ集団を、操作されたファージの存在についてPCRスクリーニングした。バルクPCRが陽性の場合、溶解物をプラーク化し、個々のプラークを適切な溶原性領域のノックアウトについてスクリーニングした。純粋に操作されたファージは、検証研究で使用するために高力価に増幅された。
【0212】
検証:対数増殖期中期のCD19培養物をWTまたはΔcICD24-2で処理した。生存細胞の数は、処理後のさまざまな時点でカウントされた。溶原化CD24-2の存在について生存細胞をスクリーニングした(
図7-10)。
【0213】
「1251欠失」は、
図7Aに示される。
図7Bに示すように、1251ファージバリアントはファージ殺傷に影響を与えなかった。
図7Cに示すように、1251ファージバリアントも溶原形成率に影響を与えなかった。
【0214】
「1224欠失」は、
図8Bに示される。
図8Bに示すように、この操作された変異体はファージの殺傷を改善しなかった。しかし、このバリアントは、
図8Cに示すように、溶原形成率を低下させた。
【0215】
「1249欠失」は、
図9Aに示される。この操作された変異体(「1249変異体」、本明細書では「WT cI」とも呼ばれる)は、
図9Bに示すように、ファージ殺傷を有意に改善した。さらに、
図9Cに示すように、1249バリアントは溶原形成速度も大幅に遅くする。1249バリアントは、CRISPR RNAと組み合わされた。
図9Dに示すように、1249バリアントをCRISPR RNA(gp75x1249)と組み合わせると、実験の時間経過全体で溶原性が発生するのを防いだ。
【0216】
「1247欠失」は、
図10Aに示される。
図10Bに示すように、この操作されたバリアント(「1247バリアント」)はファージ殺傷を増強した。さらに、
図10Cに示すように、1249バリアントは溶原性の発生を防いだ。
図10D-10Eに示すように、1249バリアントをCRISPR RNAを標的とするゲノムと組み合わせると、gp75遺伝子は同様のレベルのファージ殺傷を生成し、溶原菌の数に影響を与えなかった。
【0217】
実施例18:p1473における溶原性除去
溶原性領域の欠失は、ファージp1473で試験された。推定の抑制因子(リプレッサー)および抗抑制因子タンパク質をコードするオープンリーディングフレームおよび推定のインテグラーゼをコードするオープンリーディングフレームを
図11Aに示す。最初の組換えファージは、推定の抗抑制因子を含む領域のバクテリオファージゲノムの予測される溶原性モジュール領域に導入された遺伝子欠失を含み、2つのクローンが単離され、Var009およびVar010と名付けられた。2番目の組換えファージは、推定の抑制因子を含む領域のバクテリオファージゲノムの予測される溶原モジュール領域に導入された遺伝子欠失を含み、単一のクローンが単離され、Var012と名付けられた。2つの追加の対照バリアントが、対照として溶原領域の外側で異なる欠失を持って生成され(図示せず)、それぞれ分離され、Var002およびVar006と指定された。
【0218】
野生型p1473(WT)およびいくつかの変異体を、二重寒天オーバーレイ法を使用してStaphyloccocus aureusのローンにプレーティングした。結果を
図11Bに示す。WTファージとバリアントVar002およびVar006は小さなかすんだプラークを生成し、一方変異体Var009、Var010およびVar012はより大きな透明なプラークを生成した。バリアントVar002およびVar006には、溶原領域の外側に変異を含む。溶原性領域の外側に変異体がある変異体は、プラークの形態に変化を示さず、これらのファージバリアントが溶原性のままであることを示す。溶原性ゾーンに変異があるVar009、Var010、Var012は、示されている菌株でより明確なプラークとプラークの効率が高いことを示す。これらのデータは、明確なプラーク形態がS.aureusの溶菌性バクテリオファージの特徴であるため、Var010およびVar012が溶原性から溶菌性の表現型に正常に変換されたことを示す。より高い効率でプラークするVar010およびVar012の能力(すなわち、ファージがより希釈されている場合、プレートを下に下げる)は、改変されたファージが細菌株に存在する内因性プロファージからの干渉を受けにくくなっていることを示す可能性がある。
【0219】
図11Cは、野生型p1473、Var010、およびVar012のより大きなプラーク形態を示す拡大画像を示す。矢印は個々のプラークを指す。Var010およびVar012プラークは、野生型と比較してより明確な形態を示します。さらに、プラークが多すぎて数えられないクリアリングのゾーンは、Var010およびVar012ではWTファージよりも明確である。
【0220】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、説明されてきたが、そのような実施形態が単なる例として提供されることは当業者には明らかであろう。多数の変形、変更、および置換が、本発明から逸脱することなく、当技術分野の当業者に行われるであろう。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替案が、本発明を実施する際に使用され得ることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの同等物は、それによってカバーされることが意図されている。
【配列表】
【国際調査報告】