(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】HLA拘束性HORMAD1 T細胞受容体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20221221BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20221221BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20221221BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20221221BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221221BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221221BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221221BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221221BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221221BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20221221BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20221221BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20221221BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20221221BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20221221BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221221BHJP
A61K 51/00 20060101ALI20221221BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20221221BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221221BHJP
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A61P 11/00 20060101ALI20221221BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20221221BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221221BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20221221BHJP
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A61P 1/02 20060101ALI20221221BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20221221BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20221221BHJP
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A61K 48/00 20060101ALI20221221BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20221221BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221221BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20221221BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20221221BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20221221BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20221221BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C07K14/47
C07K7/06
C07K7/08
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/0783
C07K14/725
C12N15/867 Z
A61K38/16
A61K35/17 Z
A61K45/00
A61K51/00 100
A61P37/04
A61P35/00
A61P15/00
A61P11/00
A61P19/08
A61P35/02
A61P1/00
A61P17/00
A61P25/00
A61P13/10
A61P21/00
A61P1/02
A61P11/02
A61P11/04
A61P43/00 105
A61K48/00
A61P1/04
A61K9/08
A61K9/127
A61K9/16
A61K9/12
A61K47/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525984
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 US2020059178
(87)【国際公開番号】W WO2021092223
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】イー カシアン
(72)【発明者】
【氏名】パン ケ
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトハースト アンジェリーク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
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4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AA97X
4B065AA97Y
4B065AB01
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4B065CA24
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4C084AA19
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4C084MA66
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4C087ZA89
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4C087ZA96
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA15
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4H045BA17
4H045BA18
4H045BA40
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4H045CA40
4H045DA50
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
Hormad1ペプチド/MHC複合体に選択的に結合することができるT細胞受容体(TCR)およびTCR可変領域が提供される。TCRは、Hormad1を発現する固形腫瘍などのがんを処置するための自己由来Hormad1-TCR養子T細胞療法のような、さまざまな療法において利用されうる。関連するT細胞集団を拡大増殖するための方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) SEQ ID NO:5、
(ii) SEQ ID NO:5と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
(iii) SEQ ID NO:5の少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列、または
(iv) SEQ ID NO:5に対して1つの置換変異のみを有するアミノ酸配列
を含む、35アミノ酸長またはそれ以下の単離されたHormad1ペプチド。
【請求項2】
30アミノ酸長またはそれ以下である、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
15アミノ酸長またはそれ以下である、請求項2記載のペプチド。
【請求項4】
10アミノ酸長またはそれ以下である、請求項3記載のペプチド。
【請求項5】
SEQ ID NO: 5からなる、請求項1記載のペプチド。
【請求項6】
免疫原性であり、および/または
細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導することができ、かつ、HLA-A2に選択的に結合する、
請求項1~5のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項7】
修飾されている、請求項1~6のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項8】
修飾が分子への結合を含む、請求項7記載のペプチド。
【請求項9】
前記分子が抗体、脂質、アジュバント、または検出部分を含む、請求項7または8記載のペプチド。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項記載の単離されたペプチドおよび薬学的担体を含む、薬学的組成物。
【請求項11】
薬学的組成物が、非経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、または皮下注射用に製剤化されている、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
薬学的組成物が、リポソーム、脂質含有ナノ粒子、または脂質に基づく担体を含む、請求項10または11記載の組成物。
【請求項13】
薬学的調製物が注射用に製剤化されている、請求項10~12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項14】
薬学的調製物が吸入用に製剤化されている、請求項10~12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項15】
薬学的調製物が、鼻腔用スプレーを含むかまたは鼻腔用スプレーからなる、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか一項記載のHormad1由来ペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項17】
請求項16記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項18】
請求項16記載の核酸または請求項17記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項19】
請求項16記載の核酸または請求項17記載のベクターを細胞に移入する段階を含む、細胞を作製する方法。
【請求項20】
請求項1~9のいずれか一項記載のペプチドの有効量を哺乳動物対象に投与する段階を含む、該対象における免疫応答を刺激する方法。
【請求項21】
対象ががんを有する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
がんが、乳がん、肺がん、骨がん、子宮内膜がん、造血系もしくはリンパ系がん、消化管がん、卵巣がん、皮膚がん、神経芽腫、精巣がん、胸腺腫、膀胱がん、子宮がん、黒色腫、肉腫、子宮頸がん、または頭頸部がんである、請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
がんが、前記ペプチドの発現について陽性であるがんを含む、請求項20~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
前記方法が、自己由来樹状細胞を対象に投与する段階をさらに含み、前記ペプチドが、該自己由来樹状細胞に結合されるかまたは該自己由来樹状細胞によって提示される、請求項20~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
前記ペプチドおよび人工抗原提示細胞(aAPC)が、対象に投与され、該ペプチドが、該aAPCに結合されるかまたは該aAPCによって提示される、請求項20~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
前記ペプチドが、人工抗原提示細胞(aAPC)に機能的に連結されている、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記ペプチドが、ペプチド結合を通じてまたはファンデルワールス力を通じて連結されている、請求項26記載の方法。
【請求項28】
対象がヒトである、請求項20~27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
前記ペプチドが、対象におけるHormad1特異的T細胞の増殖を誘導、活性化、または刺激する、請求項20~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
少なくとも第2の抗がん療法を施す段階をさらに含む、請求項20~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
第2の抗がん療法が、化学療法、放射線療法、免疫療法、または外科手術からなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
以下の段階を含む、Hormad1特異的T細胞を活性化または拡大増殖する方法:
(a) 哺乳動物対象から、好ましくは該哺乳動物対象由来の血液サンプルから、細胞の出発集団を得る段階であって、該細胞の出発集団がT細胞を含む、段階; ならびに
(b) 該細胞の出発集団をエクスビボで請求項1~9のいずれか一項記載のHormad1由来ペプチドと接触させる段階であって、それにより該出発集団中のHormad1特異的T細胞を活性化する、その増殖を刺激する、および/または拡大増殖する段階。
【請求項33】
接触させる段階が、T細胞の出発集団を抗原提示細胞(APC)と共培養することとしてさらに定義され、該APCが、それらの表面上に請求項1記載のHormad1由来ペプチドを提示することができる、請求項32記載の方法。
【請求項34】
APCが樹状細胞である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
樹状細胞が、前記哺乳動物対象から得られた自己由来樹状細胞である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
接触させる段階が、T細胞の出発集団を人工抗原提示細胞(aAPC)と共培養することとしてさらに定義される、請求項32記載の方法。
【請求項37】
人工抗原提示細胞(aAPC)が、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド) (PLGA)、K562細胞、CD3およびCD28アゴニスト抗体でコーティングされた常磁性ビーズ、HLA二量体および抗CD28とカップリングされたビーズもしくはマイクロ粒子、または好ましくは直径100 nm未満であるナノサイズ-aAPC (ナノ-aAPC)を含むかまたはそれからなる、請求項36記載の方法。
【請求項38】
T細胞がCD8
+ T細胞またはCD4
+ T細胞である、請求項32~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
T細胞が細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である、請求項32~38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
細胞の出発集団が末梢血単核細胞(PBMC)を含むかまたは末梢血単核細胞(PBMC)からなる、請求項32~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
末梢血単核細胞(PBMC)からT細胞を単離または精製する段階をさらに含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
哺乳動物対象がヒトである、請求項32~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
活性化または拡大増殖されたHormad1特異的T細胞を対象に再注入または投与する段階をさらに含む、請求項32~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
請求項32~43のいずれか一項に従って活性化または拡大増殖された、Hormad1特異的T細胞。
【請求項45】
請求項32~43のいずれか一項に従って活性化または拡大増殖されたHormad1特異的T細胞を含む、薬学的組成物。
【請求項46】
Hormad1またはSEQ ID NO: 5に対する抗原特異性を有する操作されたT細胞受容体(TCR)であって、SEQ ID NO: 6、7、8、9、10、および/もしくは11のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 6、7、8、9、10、および/もしくは11のアミノ酸配列と少なくとも60%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、該TCR。
【請求項47】
SEQ ID NO:8と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むTCRα CDR3、および
SEQ ID NO:11と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むTCRβ CDR3
を含む、請求項46記載の操作されたTCR。
【請求項48】
それぞれSEQ ID NO:6および/または7と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、TCRα CDR1および/またはCDR2、ならびに
それぞれSEQ ID NO:9および/または10と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、TCRβ CDR1および/またはCDR2
を含む、請求項47記載の操作されたTCR。
【請求項49】
操作されたTCRが、
(i) SEQ ID NO:13もしくは2のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:13もしくは2と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を有する、α鎖可変領域; ならびに/あるいは
(ii) SEQ ID NO: 15もしくは4のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 15もしくは4と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を有する、β鎖可変領域
を含む、請求項46~48のいずれか一項記載のTCR。
【請求項50】
操作されたTCRが、HLA-A2に結合されている場合のSEQ ID NO:5に結合する、請求項46~49のいずれか一項記載のTCR。
【請求項51】
SEQ ID NO: 13もしくは2のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するα鎖可変領域、および/または
SEQ ID NO: 15もしくは4のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するβ鎖可変領域
を含む、請求項46~50のいずれか一項記載のTCR。
【請求項52】
SEQ ID NO: 13もしくは2のアミノ酸配列と少なくとも99%の同一性を有するα鎖可変領域、および/または
SEQ ID NO: 15もしくは4のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するβ鎖可変領域
を含む、請求項51記載のTCR。
【請求項53】
SEQ ID NO: 13もしくは2のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するα鎖可変領域、および/または
SEQ ID NO: 15もしくは4のアミノ酸配列と少なくとも99%の同一性を有するβ鎖
を含む、請求項51記載のTCR。
【請求項54】
SEQ ID NO: 13もしくは2のα鎖可変領域、およびSEQ ID NO: 15もしくは4のβ鎖を含む、請求項46~50のいずれか一項記載のTCR。
【請求項55】
修飾を含む、および/またはキメラである、請求項46~54のいずれか一項記載のTCR。
【請求項56】
可溶性TCRが、一本鎖TCR (scTCR)としてさらに定義され、α鎖およびβ鎖が、可動性リンカーを介して共有結合されている、請求項46~55のいずれか一項記載のTCR。
【請求項57】
二重特異性TCRを含むかまたは二重特異性TCRからなる、請求項46~56のいずれか一項記載のTCR。
【請求項58】
二重特異性TCRが、CD3を標的とするまたはCD3に選択的に結合するscFvを含む、請求項57記載のTCR。
【請求項59】
請求項46~58のいずれか一項記載の複数のTCRを含む、多価TCR複合体。
【請求項60】
多価TCRが、互いに結び付いている2つ、3つ、4つまたはそれ以上のTCRを含む、請求項59記載の複合体。
【請求項61】
多価TCRが、脂質二重層中に存在するか、リポソーム中にあるか、またはナノ粒子に付着されている、請求項60記載の複合体。
【請求項62】
TCRが、リンカー分子または非天然ジスルフィド結合を介して互いに結び付いている、請求項60記載の複合体。
【請求項63】
請求項46~58のいずれか一項記載のTCRをコードするヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなる、1つまたは複数の核酸。
【請求項64】
前記TCRをコードするcDNAを含む、請求項63記載の核酸。
【請求項65】
請求項63または64記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項66】
TCRα遺伝子およびTCRβ遺伝子を含む、請求項65記載の発現ベクター。
【請求項67】
前記TCRをコードするヌクレオチド配列がプロモーターの制御下にある、請求項65または66記載の発現ベクター。
【請求項68】
ウイルスベクターである、請求項65~67のいずれか一項記載の発現ベクター。
【請求項69】
ウイルスベクターがレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターである、請求項68記載の発現ベクター。
【請求項70】
請求項46~58のいずれか一項記載のTCRを発現するように操作された宿主細胞であって、好ましくは請求項63もしくは64記載の核酸または請求項65~69のいずれか一項記載の発現ベクターを含む、該宿主細胞。
【請求項71】
T細胞、NK細胞、インバリアントNK細胞、NKT細胞、間葉系幹細胞(MSC)、または誘導多能性幹(iPS)細胞である、請求項70記載の宿主細胞。
【請求項72】
免疫細胞である、請求項70または71記載の宿主細胞。
【請求項73】
臍帯から単離される、請求項70~72のいずれか一項記載の宿主細胞。
【請求項74】
T細胞が、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、またはγδ T細胞である、請求項71~73のいずれか一項記載の宿主細胞。
【請求項75】
T細胞が調節性T細胞(Treg)である、請求項71~73のいずれか一項記載の宿主細胞。
【請求項76】
自己由来である、請求項70~75のいずれか一項記載の宿主細胞。
【請求項77】
同種異系である、請求項70~75のいずれか一項記載の宿主細胞。
【請求項78】
請求項63もしくは64記載の核酸または請求項65~69のいずれか一項記載の発現ベクターと免疫細胞を接触させる段階を含む、請求項70~77のいずれか一項記載の宿主細胞を操作するための方法。
【請求項79】
免疫細胞がT細胞または末梢血リンパ球である、請求項78記載の方法。
【請求項80】
接触させる段階が、トランスフェクトまたは形質導入することとしてさらに定義される、請求項78または79記載の方法。
【請求項81】
トランスフェクトすることが、請求項46~58のいずれか一項記載のTCRをコードするRNAを免疫細胞にエレクトロポレーションすることを含む、請求項78~80のいずれか一項記載の方法。
【請求項82】
免疫細胞を形質導入する前に請求項68記載の発現ベクターからウイルス上清を作製する段階をさらに含む、請求項80または81のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
免疫細胞が、刺激されたリンパ球である、請求項78~82のいずれか一項記載の方法。
【請求項84】
刺激されたリンパ球がヒトリンパ球である、請求項83記載の方法。
【請求項85】
刺激することが、免疫細胞をOKT3および/もしくはIL-2と接触させること、または免疫細胞をOKT3および/もしくはIL-2中でインキュベートすることを含む、請求項83記載の方法。
【請求項86】
免疫細胞を選別して、TCR操作されたT細胞を単離する段階をさらに含む、請求項78~85のいずれか一項記載の方法。
【請求項87】
段階希釈によってT細胞クローニングを実施する段階をさらに含む、請求項86記載の方法。
【請求項88】
急速拡大増殖プロトコルによるT細胞クローンの拡大増殖をさらに含む、請求項87記載の方法。
【請求項89】
請求項70~77のいずれか一項記載のTCR操作された細胞の有効量を対象に投与する段階を含む、哺乳動物対象において、Hormad1を発現するがんを処置する方法。
【請求項90】
TCR操作された細胞が、T細胞または末梢血リンパ球である、請求項89記載の方法。
【請求項91】
T細胞がCD8+ T細胞、NK T細胞、iNKT細胞、CD4+ T細胞、またはTregである、請求項89記載の方法。
【請求項92】
がんが、乳がん、肺がん、食道がん腫(食道がん)、骨がん、子宮内膜がん、造血系もしくはリンパ系がん、消化管がん、卵巣がん、皮膚がん、神経芽腫、精巣がん、胸腺腫、膀胱がん、子宮がん、黒色腫、肉腫、子宮頸がん、頭部がんまたは頸部がんである、請求項89~91のいずれか一項記載の方法。
【請求項93】
がんが固形腫瘍である、請求項89~92のいずれか一項記載の方法。
【請求項94】
対象がヒトである、請求項89~93のいずれか一項記載の方法。
【請求項95】
TCR操作された細胞が、対象に対して自己由来または同種異系である、請求項89~94のいずれか一項記載の方法。
【請求項96】
Hormad1特異的T細胞の投与前の対象のリンパ球枯渇をさらに含む、請求項89~95のいずれか一項記載の方法。
【請求項97】
リンパ球枯渇が、シクロホスファミドおよび/またはフルダラビンの投与を含む、請求項96記載の方法。
【請求項98】
第2の抗がん療法を対象に施す段階をさらに含む、請求項89~97のいずれか一項記載の方法。
【請求項99】
第2の療法が、化学療法、免疫療法、外科手術、放射線療法、または生物学的療法である、請求項97記載の方法。
【請求項100】
TCR操作された細胞および/または少なくとも第2の治療剤が、静脈内に、腹腔内に、気管内に、腫瘍内に、筋肉内に、内視鏡的に、病変内に、経皮的に、皮下に、局所的に、または直接注射もしくは灌流により投与される、請求項89~97のいずれか一項記載の方法。
【請求項101】
対象が、Hormad1を過剰発現するがん細胞を有すると判定または診断される、請求項89~100のいずれか一項記載の方法。
【請求項102】
それぞれSEQ ID NO:6、7、および8のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を有するTCRα鎖可変領域、ならびに
それぞれSEQ ID NO:9、10、および11のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を有するTCRβ鎖可変領域
を含む、操作されたTCR。
【請求項103】
請求項102記載のTCRα鎖可変領域およびTCRβ鎖可変領域をコードするcDNAを含む、1つまたは複数の核酸。
【請求項104】
請求項102記載のTCRα鎖可変領域およびTCRβ鎖可変領域の両方をコードする、RNA分子。
【請求項105】
請求項103記載の核酸または請求項104記載のRNA分子を含む、T細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年11月5日付で出願された米国特許仮出願第62/930,892号の優先権の恩典を主張するものであり、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
1. 発明の分野
本発明は広くは、免疫学および医学の分野に関する。より具体的には、本発明は抗原ペプチドおよび組換えT細胞受容体(TCR)に関係する。いくつかの態様において、TCRはがんを処置するために用いられうる。
【背景技術】
【0003】
2. 関連技術の説明
T細胞に基づく治療法は種々のがんの処置に有望であることが示されているが、免疫療法または化学療法薬の投与後の再発は、依然として重大な臨床的問題である。侵攻性B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)および慢性リンパ性白血病(CLL)は、化学療法および抗CD20モノクローナル抗体の組み合わせに応答性であることが多い(Plosker and Figgitt, 2003)が、患者の約3分の1が繰り返し再発を経験し、最終的にはその疾患が原因で死亡する(Chao MP, 2013)。CD19を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)修飾T細胞療法を用いた最近の研究では、難治性B細胞悪性腫瘍を有する患者の60~90%の完全寛解(CR)率が得られた(Porter et al., 2011; Kochenderfer et al., 2015; Turtle et al., 2016a; Neelapu et al., 2017; Schuster et al., 2015; Turtle et al., 2016b; Locke et al., 2017)。さらに、これらの患者の一部は長期的な寛解を経験し、養子T細胞療法は有効な処置として用いることができ、一部の患者では治癒的でありうるという考えを支持するものであった。それにもかかわらず、処置した患者の半数以上がCD19 CAR T細胞療法後に再発し、これは腫瘍上のCD19発現の消失に主に起因していた(Sotillo et al., 2015; Topp et al., 2014; Neelapu et al., 2017)。明らかに、臨床転帰をさらに改善するために、養子T細胞治療アプローチの新規の標的が必要である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、いくつかの局面において、HLA-A2によって認識されるHormad1ペプチド(例えば、SEQ ID NO:5)、およびHormad1ペプチド/MHC I複合体に結合することができるT細胞受容体(TCR)を提供することにより先行技術における制限を克服する。このペプチドおよびTCRは、例えば、がんを処置するための養子T細胞療法または可溶性T細胞療法において用いられうる。
【0005】
本開示の1つの局面は、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:5と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列、SEQ ID NO:5の少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を含む、またはSEQ ID NO:5に対して1つの置換変異のみを有するアミノ酸配列を含む、35アミノ酸長またはそれ以下の単離されたHormad1ペプチドに関する。
【0006】
いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:5と少なくとも60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:5の少なくとも5、6、7、8、または9個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列を含む。
【0007】
ペプチドは、長さが30アミノ酸未満、より好ましくは29アミノ酸未満、より好ましくは28アミノ酸未満、より好ましくは27アミノ酸未満、より好ましくは26アミノ酸未満、より好ましくは25アミノ酸未満、より好ましくは24アミノ酸未満、より好ましくは23アミノ酸未満、より好ましくは22アミノ酸未満、より好ましくは21アミノ酸未満、より好ましくは20アミノ酸未満、19アミノ酸未満、18アミノ酸未満、17アミノ酸未満、16アミノ酸未満、15アミノ酸未満、14アミノ酸未満、13アミノ酸未満、12アミノ酸未満、11アミノ酸未満、または10アミノ酸未満でありうる。いくつかの態様において、ペプチドは、SEQ ID NO: 5からなる。ペプチドは、免疫原性ペプチドおよび/または細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導することができ、HLA-A2に選択的に結合するペプチドとしてさらに定義されうる。免疫原性という用語は、防御免疫応答などの免疫応答を生じることを指しうる。いくつかの態様において、ペプチドは修飾される。いくつかの態様において、修飾は分子への結合を含む。分子は抗体、脂質、アジュバント、または検出部分(タグ)でありうる。
【0008】
本開示の別の局面は、本明細書にまたは上記に記述の単離されたペプチド(例えば、SEQ ID NO:5)および薬学的担体を含む薬学的組成物に関する。薬学的組成物は、非経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、または皮下注射用に製剤化されうる。いくつかの態様において、薬学的組成物は、リポソーム、脂質含有ナノ粒子、または脂質に基づく担体を含む。いくつかの態様において、薬学的調製物は注射用に製剤化される。いくつかの態様において、薬学的調製物は、吸入用に製剤化される。薬学的調製物は、鼻腔用スプレーを含むかまたは鼻腔用スプレーからなりうる。
【0009】
本開示のさらに別の局面は、本明細書にまたは上記に記述のHormad1由来ペプチド(例えば、SEQ ID NO:5)をコードする単離された核酸に関する。
【0010】
本開示の別の局面は、本明細書にまたは上記に記述される核酸を含むベクターに関する。
【0011】
本開示の核酸、ペプチド、TCR、およびベクターを含む単離された宿主細胞も提供される。
【0012】
さらなる局面は、本開示の核酸またはベクターを細胞に移入する段階を含む、細胞を作製する方法に関する。
【0013】
本開示のさらに別の局面は、本明細書にまたは上記に記述されるペプチド(例えば、SEQ ID NO:5)の有効量を対象に投与する段階を含む、哺乳動物対象における免疫応答を刺激する方法に関する。いくつかの態様において、該ペプチドは、対象におけるHormad1特異的T細胞の増殖を誘導、活性化、または刺激する。対象は、例えば、乳がん、肺がん、骨がん、子宮内膜がん、造血系もしくはリンパ系がん、消化管がん、卵巣がん、皮膚がん、神経芽腫、精巣がん、胸腺腫、膀胱がん、子宮がん、黒色腫、肉腫、子宮頸がん、または頭頸部がんなどのがんを有しうる。乳がん、肺がん、骨がん、子宮内膜がん、造血系もしくはリンパ系がん、消化管がん、卵巣がん、皮膚がん、神経芽腫、精巣がん、胸腺腫、膀胱がん、子宮がん、黒色腫、肉腫、子宮頸がん、または頭頸部がんなどの本明細書において記述されるがんは、本開示の方法から除外されうることも企図される。がんは、該ペプチドの発現について陽性であるがんを含みうる。いくつかの態様において、対象は、該ペプチドの発現または過剰発現について陽性である細胞を有すると判定されている。いくつかの態様において、本方法は、自己由来樹状細胞を対象に投与する段階をさらに含み、該ペプチドは、自己由来樹状細胞に結合されるかまたは自己由来樹状細胞によって提示される。いくつかの態様において、該ペプチドおよび人工抗原提示細胞(aAPC)が対象に投与され、該ペプチドは、aAPCに結合されるかまたはaAPCによって提示される。いくつかの態様において、該ペプチドは、人工抗原提示細胞(aAPC)に機能的に連結されている。「機能的に連結された(operatively linked)」という用語は、2つの成分が組み合わされているか、または組み合わされて複合体を形成することができる状況を指す。例えば、成分は、融合タンパク質などの、同じポリペプチド上に共有結合されても、および/または同じポリペプチド上にあってもよく、あるいは成分は、ファンデルワールス力によって生じる結合親和性などの、互いにある程度の結合親和性を有していてもよい。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、本方法は、少なくとも第2の抗がん療法を施す段階をさらに含む。第2の抗がん療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、または外科手術からなる群より選択されうる。
【0014】
本開示の別の局面は、(a) 哺乳動物対象から、好ましくは哺乳動物対象由来の血液サンプルから、細胞の出発集団を得る段階であって、該細胞の出発集団がT細胞を含む、段階; ならびに(b) 細胞の出発集団をエクスビボで本明細書にまたは上記に記述のHormad1由来ペプチド(例えば、SEQ ID NO:5)と接触させる段階であって、それにより出発集団中のHormad1特異的T細胞を活性化する、その増殖を刺激する、および/または拡大増殖する段階を含む、Hormad1特異的T細胞を活性化または拡大増殖する方法に関する。いくつかの態様において、接触させる段階は、T細胞の出発集団を抗原提示細胞(APC)と共培養することとしてさらに定義され、APCは、それらの表面上にHormad1由来ペプチドを提示することができる。いくつかの態様において、APCは樹状細胞である。いくつかの態様において、樹状細胞は、哺乳動物対象から得られた自己由来樹状細胞である。いくつかの態様において、接触させる段階は、人工抗原提示細胞(aAPC)とT細胞の出発集団を共培養することとしてさらに定義される。いくつかの態様において、人工抗原提示細胞(aAPC)は、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド) (PLGA)、K562細胞、CD3およびCD28アゴニスト抗体でコーティングされた常磁性ビーズ、HLA二量体および抗CD28とカップリングされたビーズもしくはマイクロ粒子、または好ましくは直径が100 nm未満であるナノサイズ-aAPC (ナノ-aAPC)を含むか、またはそれからなる。いくつかの態様において、T細胞はCD8+ T細胞またはCD4+ T細胞である。いくつかの態様において、T細胞は細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である。いくつかの態様において、細胞の出発集団は、末梢血単核細胞(PBMC)を含むか、または末梢血単核細胞(PBMC)からなる。いくつかの態様において、本方法は、末梢血単核細胞(PBMC)からT細胞を単離または精製する段階をさらに含む。いくつかの態様において、哺乳動物対象はヒトである。本方法は、活性化または拡大増殖されたHormad1特異的T細胞を対象に再注入または投与する段階をさらに含みうる。
【0015】
本発明のさらに別の局面は、本明細書にまたは上記に記述される方法によって活性化または拡大増殖されたHormad1特異的T細胞に関する。
【0016】
本発明の別の局面は、本明細書にまたは上記に記述される方法によって活性化または拡大増殖されたHormad1特異的T細胞を含む薬学的組成物に関する。
【0017】
本開示のさらに別の局面は、Hormad1またはSEQ ID NO: 5に対する抗原特異性を有する操作されたT細胞受容体(TCR)に関し、ここでTCRはSEQ ID NO: 6、7、8、9、10、および/または11のアミノ酸配列を含む。操作されたTCRは、SEQ ID NO:8と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むTCRα CDR3、およびSEQ ID NO:11と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むTCRβ CDR3を含みうる。操作されたTCRは、SEQ ID NO:8と少なくとも60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むTCRα CDR3、およびSEQ ID NO:11と少なくとも60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むTCRβ CDR3を含みうる。いくつかの態様において、TCRは、それぞれSEQ ID NO:6および/または7と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むTCRα CDR1および/またはCDR2ならびにそれぞれSEQ ID NO:9および/または10と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むTCRβ CDR1および/またはCDR2を含む。いくつかの態様において、TCRは、それぞれSEQ ID NO:6および/または7と少なくとも60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むTCRα CDR1および/またはCDR2ならびにそれぞれSEQ ID NO:9および/または10と少なくとも60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むTCRβ CDR1および/またはCDR2を含む。いくつかの態様において、操作されたTCRは、(i) SEQ ID NO:13もしくは2のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:13もしくは2と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を有するα鎖可変領域; ならびに/あるいは(ii) SEQ ID NO: 15もしくは4のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 15もしくは4と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を有するβ鎖可変領域を含む。操作されたTCRは、HLA-A2に結合されている場合のSEQ ID NO:5に結合しうる。操作されたTCRは、HLA-A2に結合されたSEQ ID NO:5のMHC/ペプチドに結合しうる。いくつかの態様において、TCRは、SEQ ID NO: 13もしくは2のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するα鎖可変領域、および/またはSEQ ID NO: 15のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するβ鎖可変領域を含む。いくつかの態様において、TCRは、SEQ ID NO: 13もしくは2のアミノ酸配列と少なくとも99%の同一性を有するα鎖可変領域、および/またはSEQ ID NO: 15のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するβ鎖可変領域を含む。いくつかの態様において、TCRは、SEQ ID NO: 13もしくは2のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するα鎖可変領域、および/またはSEQ ID NO: 15もしくは4のアミノ酸配列と少なくとも99%の同一性を有するβ鎖を含む。いくつかの態様において、TCRは、SEQ ID NO: 13もしくは2のα鎖可変領域、およびSEQ ID NO: 15もしくは4のβ鎖を含む。いくつかの態様において、可溶性TCRは、α鎖およびβ鎖が可動性リンカーを介して共有結合されている一本鎖TCR (scTCR)としてさらに定義される。いくつかの態様において、TCRは、二重特異性TCRを含むか、または二重特異性TCRからなる。二重特異性TCRは、CD3を標的とするまたはCD3に選択的に結合するscFvを含みうる。
【0018】
本開示の別の局面は、本明細書にまたは上記に記述の複数のTCRを含む多価TCR複合体に関する。いくつかの態様において、多価TCRは、互いに結び付いている2つ、3つ、4つまたはそれ以上のTCRを含む。いくつかの態様において、多価TCRは、脂質二重層中に存在するか、リポソーム中にあるか、またはナノ粒子に付着されている。いくつかの態様において、TCRは、リンカー分子または非天然ジスルフィド結合を介して互いに結び付いている。
【0019】
本発明のさらに別の局面は、本明細書にまたは上記に記述されるTCRをコードするヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなる核酸に関する。いくつかの態様において、核酸は、TCRをコードするcDNAを含む。
【0020】
本開示の別の局面は、上記の核酸を含む発現ベクターに関する。ベクターは、同じ核酸上にTCRα遺伝子およびTCRβ遺伝子の両方を含みうる。いくつかの態様において、TCRをコードするヌクレオチド配列は、プロモーターの制御下にある。いくつかの態様において、発現ベクターは、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクター)である。
【0021】
本発明の別の局面は、本明細書にまたは上記に記述されるTCRを発現するように操作された宿主細胞に関し、好ましくはここで、宿主細胞は、本明細書にまたは上記に記述される発現ベクターを含む。いくつかの態様において、細胞はT細胞、NK細胞、インバリアントNK細胞、NKT細胞、間葉系幹細胞(MSC)、または誘導多能性幹(iPS)細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は免疫細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は臍帯から単離される。いくつかの態様において、T細胞は、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、またはγδ T細胞である。いくつかの態様において、T細胞は調節性T細胞(Treg)である。いくつかの態様において、細胞は自己由来である。いくつかの態様において、細胞は同種異系である。
【0022】
本開示のさらに別の局面は、本明細書にもしくは上記に記述の核酸または本明細書にもしくは上記に記述の発現ベクターと免疫細胞を接触させる段階を含む、上記の宿主細胞を操作するための方法に関する。いくつかの態様において、免疫細胞はT細胞または末梢血リンパ球である。いくつかの態様において、接触させる段階は、トランスフェクトまたは形質導入することとしてさらに定義される。トランスフェクトすることは、本明細書にまたは上記に記述のTCRをコードするRNAを、免疫細胞にエレクトロポレーションすることを含みうる。本方法は、本明細書にもしくは上記に記述される発現ベクターからウイルス上清を作製して、免疫細胞を形質導入する段階をさらに含みうる。いくつかの態様において、免疫細胞は、刺激されたリンパ球(例えば、ヒトリンパ球)である。いくつかの態様において、刺激することは、免疫細胞をOKT3および/もしくはIL-2と接触させること、または免疫細胞をOKT3および/もしくはIL-2中でインキュベートすることを含む。いくつかの態様において、本方法は、免疫細胞を選別して、TCR操作されたT細胞を単離する段階をさらに含む。本方法は、段階希釈によってT細胞クローニングを実施する段階をさらに含みうる。いくつかの態様において、本方法は、急速拡大増殖プロトコルによるT細胞クローンの拡大増殖をさらに含む。
【0023】
本開示の別の局面は、本明細書にまたは上記に記述のTCR操作された細胞の有効量を対象に投与する段階を含む、哺乳動物対象において、Hormad1を発現するがんを処置する方法に関する。いくつかの態様において、TCR操作された細胞は、T細胞または末梢血リンパ球である。いくつかの態様において、T細胞はCD8+ T細胞、CD4+ T細胞、またはTregである。いくつかの態様において、がんは乳がん、肺がん、食道がん腫(食道がん)、骨がん、子宮内膜がん、造血系もしくはリンパ系がん、消化管がん、卵巣がん、皮膚がん、神経芽腫、精巣がん、胸腺腫、膀胱がん、子宮がん、黒色腫、肉腫、子宮頸がん、頭部がんまたは頸部がんである。いくつかの態様において、がんは固形腫瘍である。対象はヒトでありうる。いくつかの態様において、TCR操作された細胞は、対象に対して自己由来または同種異系である。本方法は、Hormad1特異的T細胞の投与前の対象のリンパ球枯渇をさらに含みうる。いくつかの態様において、リンパ球枯渇は、シクロホスファミドおよび/またはフルダラビンの投与を含む。本方法は、第2の抗がん療法を対象に施す段階をさらに含みうる。いくつかの態様において、第2の療法は、化学療法、免疫療法、外科手術、放射線療法、または生物学的療法である。いくつかの態様において、TCR操作された細胞、および/または少なくとも第2の治療剤は、静脈内に、腹腔内に、気管内に、腫瘍内に、筋肉内に、内視鏡的に、病変内に、経皮的に、皮下に、局所的に、または直接注射もしくは灌流により投与される。いくつかの態様において、対象は、Hormad1を過剰発現するがん細胞を有すると判定または診断される。
【0024】
いくつかの局面において、精製された腫瘍抗原または免疫優性腫瘍抗原特異的ペプチド、例えばHormad1ペプチド(SEQ ID NO:5)で対象を免疫する段階を含む、がん(例えば、乳がん、肺がんなど)の処置のための方法が提供される。いくつかの態様において、ペプチドは、ワクチンとして、またはペプチドに対する免疫応答を引き起こすために、溶液(例えば、生理食塩水溶液)中で注入することができる。例えば、ペプチドの可溶性を増強するために、および/または対象における免疫応答を増加させるために、アジュバントを製剤または溶液に含めることができる(例えば、Massarelli et al. 2019)。ペプチドパルス成熟樹状細胞を、いくつかの態様において対象に投与することができる。対象においてペプチドに対する免疫応答または抗がん応答を引き起こすために用いられうるアプローチには、例えば、Wen et al. (2019)およびMassarelli et al. (2019)が含まれる。いくつかの態様において、Hormad1ペプチド(SEQ ID NO:5)は、対象またはヒト患者に再注入することができる自己由来樹状細胞に結合されるか、またはそれによって提示される。
【0025】
本出願の全体を通じて、「約」という用語は、値にはその値を決定するために利用される装置または方法に対しての誤差の標準偏差が含まれることを示すために、細胞分子生物学の分野におけるその平易で通常の意味にしたがって用いられる。
【0026】
「含む(comprising)」という用語とともに用いられる時には、「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語の使用は、「1つ」を意味しうるが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」および「1つまたは2つ以上」の意味とも一致する。
【0027】
本明細書において用いられる場合、「または」および「および/または」という用語は、複数の構成要素を組み合わせて、または互いに排他的に記述するために利用される。例えば、「x、y、および/またはz」は、「x」のみ、「y」のみ、「z」のみ、「x、y、およびz」、「(xおよびy)またはz」、「xまたは(yおよびz)」または「xまたはyまたはz」を指しうる。x、y、またはzが態様から特に除外されうることが特に企図される。
【0028】
「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの、含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの、有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの、含む(including)の任意の形態)、「によって特徴付けられる」(および「として特徴付けられる」などの、含む(including)の任意の形態)または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの、含有する(containing)の任意の形態)という単語は、包括的または非制限的であり、さらなる、引用していない要素または方法の段階を除外しない。
【0029】
その使用のための組成物および方法は、本出願の全体に開示されている成分または段階のいずれか「を含む」、「から本質的になる」または「からなる」ことができる。「からなる」という語句は、指定されていない任意の要素、段階、または成分を除外する。「から本質的になる」という語句は、記述された主題の範囲を、特定の材料または段階およびその基本かつ新規の特徴に実質的に影響を与えないものに限定する。「含む(comprising)」という用語の文脈のなかで記述された態様はまた、「からなる(consisting of)」または「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語の文脈のなかで実施されうることが企図される。
【0030】
本発明の1つの態様に関して論じられた任意の制限が、本発明の他の任意の態様に適用されうることが特に企図される。さらに、本発明の任意の組成物が本発明の任意の方法において用いられてもよく、本発明の任意の組成物を作製または利用するために本発明の任意の方法が用いられてもよい。実施例に記載された態様の局面はまた、異なる実施例中の他所にまたは本出願中の他所に、例えば発明の概要、態様の詳細な説明、特許請求の範囲、および図の凡例の説明に論じられている態様の文脈において実施されうる態様である。
【0031】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の特定の態様を示しているが、この詳細な説明から本発明の趣旨および範囲の中でさまざまな修正および変更が当業者には明らかになるので、例示にすぎないことが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
特許または出願ファイルには、カラーで実行された少なくとも1つの図面が含まれる。カラー図面を含むこの特許または特許出願公開のコピーは、請求と必要な手数料の支払によって当局から提供されよう。
【0033】
以下の図面は、本明細書の一部を構成し、本発明のある種の局面をさらに実証するために含められている。本発明は、これらの図面の1つまたは複数を本明細書に提示した具体的な態様の詳細な説明と併せて参照することによってよりよく理解されうる。
【0034】
【
図1A】
図1A~1D. 正常組織および腫瘍組織におけるHormad1の発現。(
図1A) 正常組織におけるHormad1の発現。(
図1B) 食道がん、肺がん、および頭頸部がんにおけるHormad1高発現。(
図1C) 子宮頸がん、膀胱がん、および急性骨髄性がんにおけるHormad1高発現。(
図1D) 黒色腫および胃がんにおけるHormad1高発現。
【
図2】Hormad1-56 A12 CTL細胞株のT細胞受容体(TCR)レパートリー分析。5'-RACE PCRを用いてHormad1-56 A12 CTLからTCRα鎖およびβ鎖をクローニングした。α鎖もβ鎖もともに配列決定し、IMGT/V-QUESTツールを用いて配列に注釈付けした。α鎖とβ鎖のCDR3配列およびTCR用法を示す。
【
図3】Hormad1-56抗原特異的T細胞受容体操作されたT細胞(TCR-T)作出。完全長TCRα鎖およびβ鎖をレトロウイルスベクターpMSGV3に挿入し、次いでこの組換えレトロウイルスベクターを用いて末梢血単核細胞(PBMC)に感染させた。空のレトロウイルスベクターを対照として用いた。感染後、CD8+/四量体+ 集団がフローサイトメトリー(FCM)検出で観察された。四量体誘導選別および拡大増殖の後、高純度のTCR-T細胞が作出された。
【
図4A】
図4A~4F. 異なる標的を用いたHormad1-56 TCR-T細胞死滅化アッセイ。(
図4A) ペプチド力価測定アッセイ: T2細胞に、標的としてさまざまな濃度のHormad1-56ペプチドをパルスした。エフェクタと標的(E:T)の比率は20:1であった。(
図4B~F) 腫瘍標的死滅化アッセイ: (
図4B) 腫瘍細胞株H1395 (HLA-A2+, Hormad1+)およびH522 (HLA-A2+, Hormad1-)、(
図4C) 腫瘍細胞株H1299 (HLA-A2-, Hormad1+)およびH1299-A2 (HLA-A2強制発現, Hormad1+)、(
図4D) 腫瘍細胞株H1355 (HLA-A2+, Hormad1+)およびH1755 (HLA-A2+, Hormad1-)、(
図4E) eGFP対照遺伝子もしくはHormad1遺伝子の強制発現を有するK562-A2細胞株、または(
図4F) eGFP対照遺伝子もしくはHormad1遺伝子の強制発現を有するH522腫瘍細胞株をHormad1-56 TCR-T細胞と共培養した。腫瘍標的死滅化アッセイの場合、エフェクタと標的(E:T)の比率は40:1から1.25:1であった。異なる標的に対するHormad1-56 TCR-Tの溶解能力をCr51放出アッセイ(CRA)で検出した。
【
図5-1】細胞内サイトカイン染色(ICS)アッセイによるHormad1-56 TCR-T細胞の機能的検出。Hormad1-56 TCR-T細胞をH522、H1395、H1755、H1355、DFC1032、HSAEC2-KT、H1299、H1299-A2、H522-eGFP、H522-Hormad1、K562-A2-eGFP、K562-A2-Hormad1とともにE:T=10:1の比率で共培養した。終夜の共培養後、TCR経路下流の活性化マーカーCD137、CD69、IFN-γおよびTNF-αをICSアッセイで検出した。Hormad1-56 TCR-T細胞を陽性標的H1395、H1355、H1299-A2、H522-Hormad1、K562-A2-Hormad1と共培養した場合に、陰性対照と比較してHormad1-56 TCR-T細胞のCD137、CD69、IFN-γおよびTNF-αのレベルが有意に増強された。
【
図6A】
図6A~6B. Hormad1-TCRの完全長配列。(
図6A) Hormad1 CTL A12 TCR (TRAV4
*01 F, TRBV13
*01 F)α鎖全配列。(SEQ ID NO: 2) (
図6B) Hormad1 CTL A12 TCR (TRAV4
*01 F, TRBV13
*01 F)β鎖全配列。(SEQ ID NO: 4) 青色: シグナルペプチド; 黄色: 可変領域; 赤色: CDR1、CDR2、CDR3; 黒色: 定常領域。
【発明を実施するための形態】
【0035】
例示的態様の説明
いくつかの局面において、MHC I (HLA-A2)によって認識されるHormad1由来のペプチドが提供され、がんの処置のための方法において用いられうる。例えば、HLA-A2拘束性T細胞エピトープYLDDLCVKI (SEQ ID NO: 5)を用いて、インビトロで抗原特異的T細胞を拡大増殖または活性化することができる。拡大増殖または活性化された抗原特異的T細胞は、養子細胞移入療法などのがん治療において用いることができる。したがって、例えば、肺がん、子宮頸がん、食道がん腫、頭頸部がん、白血病、または固形腫瘍などのHormad1を発現する種々のがんが、哺乳動物対象(例えば、ヒト)において処置されうる。
【0036】
さらなる局面において、Hormad1由来ペプチド/HLA-A2複合体に結合することができるクローニングされたT細胞受容体(TCR)配列(例えば、SEQ ID NO:1~4)が提供される。本開示のTCRは、Hormad1由来ペプチド/HLA-A2複合体を認識するT細胞を作出するために用いられうる。そのようなT細胞は、TCRを発現する操作されたT細胞(TCR-T)を含む。それらの操作されたT細胞は、がんを処置するために用いることができる。関連する可溶性TCR (sTCR)および一本鎖TCR (scTCR)も提供され、がんを処置するための養子細胞移入療法において利用することができる操作されたT細胞を産生するために用いることもできる。
【0037】
提供されるペプチドおよびTCR、またはTCRの抗原結合ドメインもしくは機能的断片を、さまざまなさらなる構築体に含めることができる。例えば、いくつかの態様において、TCRの抗原結合ドメインをキメラ抗原受容体(CAR)に含めることができる。ペプチド(例えば、SEQ ID NO:5)を用いて、MHC-ペプチド多量体または四量体(例えば、HLA-A2/ペプチド四量体)を作製することもでき、ペプチドを免疫原性組成物に含めることができる。
【0038】
I. 操作されたT細胞受容体
さまざまな局面において、Hormad1由来ペプチド(例えば、SEQ ID NO: 5)/MHC I (HLA-A2)複合体に特異的に結合するT細胞受容体(TCR)が提供される。したがって、これらのTCRを用いて、Hormad1タンパク質を発現するがん細胞にT細胞を標的指向させることができる。TCRの抗原結合領域(
図6A~Bに示されるCDR1、CDR2、およびCDR3などの)は、抗原結合領域を含む細胞外ドメインとして、可溶性TCR(sTCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)に含まれうる。いくつかの局面において、TCRは単離または精製されたTCRである。TCRをコードするポリヌクレオチドは、「養子細胞療法」ともいわれる養子細胞移入療法において用いられうる細胞(例えば、自己由来または同種異系細胞)にトランスフェクトされうる。
【0039】
いくつかの態様において、例えば、本開示のT細胞(例えば、CD4
+ T細胞、CD8
+ T細胞、αβ T細胞、γδ T細胞、およびTreg)、NK細胞、インバリアントNK細胞、NKT細胞、間葉系幹細胞(MSC)、または誘導多能性幹(iPS)細胞などの宿主細胞を遺伝子操作して、操作されたTCRおよび/またはキメラ抗原受容体(CAR)などの受容体を発現させることができる。例えば、自己由来または同種異系細胞(例えば、臍帯から、または健常ドナーから単離された)は、例えば、特定のMHC対立遺伝子(例えば、HLA-A2)との関連で提示されている場合の、がん抗原に由来する短いペプチド(例えば、Hormad1およびSEQ ID NO:5)に対する抗原特異性を有するT細胞受容体(TCR)を発現するように改変される。特定の態様において、TCRは、Hormad1由来ペプチド(SEQ ID NO: 5)/HLA-A2複合体に対する抗原特異性を有する。いくつかの態様において、操作されたTCRは、
図6A~Bに示されるように、TCRα鎖およびTCRβ鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含む。いくつかの態様において、操作されたTCRは、SEQ ID NO:2と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むα鎖および/またはSEQ ID NO:4と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むβ鎖を有する。いくつかの態様において、TCRは、SEQ ID NO: 1と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100%の配列同一性を有するα鎖および/またはSEQ ID NO: 3と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100%の配列同一性を有するβ鎖を有する。アミノ酸配列を修飾する適当な方法(例えば、置換、欠損、または挿入変異を導入するために)は、当技術分野において公知である。
【0040】
A. T細胞受容体(TCR)
いくつかの局面において、組換えT細胞受容体(TCR)が本明細書において提供される。「T細胞受容体」または「TCR」は一般に、可変α鎖およびβ鎖(それぞれTCRαおよびTCRβとしても知られる)または可変γ鎖およびδ鎖(それぞれTCRγおよびTCRδとしても知られる)を含み、MHC受容体に結合された抗原ペプチドに特異的に結合することができる。いくつかの態様において、TCRはαβ形態であり、TCRαβといわれる。ある種の態様において、操作されたTCRは、SEQ ID NO: 2のα鎖可変領域および/またはSEQ ID NO: 4のβ鎖可変領域を有する。いくつかの態様において、それぞれ、TCRα鎖は、SEQ ID NO: 1を含むまたはSEQ ID NO: 1からなる核酸によりコードされ、β鎖は、SEQ ID NO: 3を含むまたはSEQ ID NO: 3からなる核酸によりコードされる。
【0041】
本開示の態様は、操作されたT細胞受容体に関する。「操作された」という用語は、本開示のペプチドおよび抗原に結合するキメラポリペプチドを作製するために、TCR定常領域にグラフトされたTCR可変領域を有するT細胞受容体をいう。ある種の態様において、TCRは、クローニング、発現の増強、検出のために、または構築体の治療的制御のために用いられるが、しかし内因性TCRには存在しない介在配列、例えばマルチクローニング部位、リンカー、ヒンジ配列、修飾されたヒンジ配列、修飾された膜貫通配列、検出ポリペプチドもしくは分子、またはTCRを含む細胞の選択もしくはスクリーニングを可能にしうる治療的制御を含む。
【0042】
いくつかの態様において、TCRは非TCR配列を含む。したがって、ある種の態様は、TCR遺伝子に由来しない配列を有するTCRに関する。いくつかの態様において、TCRは、TCR遺伝子に通常見出される配列を含むが、自然界で必ずしも一緒に見出されない少なくとも2つのTCR遺伝子からの配列を含むという点で、キメラである。
【0043】
以下に提供されるTCRは、Hormad1由来ペプチド(例えば、SEQ ID NO: 5) / HLA-A2複合体に選択的に結合するものとして本明細書において同定された。
α鎖DNA配列(SEQ ID NO: 1)
α鎖タンパク質配列(SEQ ID NO: 2):
β鎖DNA配列(SEQ ID NO: 3):
β鎖タンパク質配列(SEQ ID NO: 4):
Hormad1に由来するHLA-A2拘束性ペプチド (SEQ ID NO: 5): YLDDLCVKI
α鎖CDR1ペプチド (SEQ ID NO: 6): NIATNDY
α鎖CDR2ペプチド (SEQ ID NO: 7): GYKTK
α鎖CDR3ペプチド(SEQ ID NO: 8): LVGARGTALIF
β鎖CDR1ペプチド(SEQ ID NO: 9): PRHDT
β鎖CDR2ペプチド(SEQ ID NO: 10): FYEKMQ
β鎖CDR3ペプチド(SEQ ID NO: 11): ASSPTGQGSYEQY
α鎖可変領域DNA配列(SEQ ID NO: 12):
α鎖可変領域タンパク質配列(SEQ ID NO: 13):
β鎖可変領域DNA配列(SEQ ID NO: 14):
β鎖可変領域タンパク質配列(SEQ ID NO: 15):
【0044】
特に明記しない限り、「TCR」という用語は、完全長の天然TCRポリペプチドと、αβ型またはγδ型を含むさまざまな組み合わせのそれらの機能的断片との両方を包含すると理解されるべきである。本明細書において用いられる場合、「機能的」TCRまたはその断片は、その同族サブユニットと結合(例えば、αがβと結合、またはγがδと結合)して、適切なMHC対立遺伝子(例えば、HLA-A2)との関連で提示されるその同族ペプチドを結合する能力を保持している完全長または短縮型TCRを形成することができる。
【0045】
したがって、本明細書における目的のために、TCRへの言及は、MHC分子において結合されている特定の抗原ペプチド(すなわちMHC-ペプチド複合体)に結合するTCRの抗原結合部分などの、抗原ペプチドに結合できる任意のTCRまたはTCR断片を含む。TCRの「抗原結合部分」または「抗原結合断片」という用語は、全長TCRが結合する抗原(例えば、MHC-ペプチド複合体)に結合するTCRの部分を含む分子を指すように本明細書において互換的に用いられる。
【0046】
TCR鎖の可変ドメインは、抗原認識を付与する免疫グロブリンに存在するものと同様のループまたは相補性決定領域(CDR)を形成すると一般に理解されている; TCRでは、CDRはTCR分子の結合部位を形成することによってペプチド特異性を決定する。典型的には、免疫グロブリンと同様に、CDRはフレームワーク領域(FR)によって分離されている(例えば、Jores et al., 1990; Chothia et al., 1988を参照のこと; Lefranc et al., 2003も参照のこと)。TCRのα鎖およびβ鎖上のCDR3領域は、プロセッシングされた抗原ペプチドの結合に関与すると一般に理解されている。いくつかの態様において、β鎖の可変領域は、さらなる超可変性(HV4)領域を含むことができる。
【0047】
α/βおよびγ/δ TCRは構造的に類似しているが、それらを発現するT細胞は異なる解剖学的位置または機能を有しうる。該当分野の当業者によって理解されるように、TCRは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合した抗原由来ペプチドを認識しうるT細胞(またはTリンパ球)の表面に見出される。TCRは、定常ドメイン、膜貫通ドメインおよび/または短い細胞質尾部を含む異なる領域を含む(例えば、Janeway et al, Immunobiology: The Immune System in Health and Disease, 3rd Ed., Current Biology Publications, p. 433, 1997を参照のこと)。TCR α鎖およびβ鎖は、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体の不変タンパク質と会合することができる。
【0048】
いくつかの態様において、TCRはHormad1-TCRの機能的断片を含む。いくつかの態様において、機能的断片は、Hormad1-TCRの定常ドメインおよび可変ドメインを含む。免疫グロブリンと同様に、TCR鎖(例えば、α鎖、β鎖)の細胞外部分は、2つの免疫グロブリンドメイン、つまりN末端の可変ドメイン(例えば、Va; 典型的にはKabat付番 Kabat et al., 「Sequences of Proteins of Immunological Interest」, US Dept. Health and Human Services, Public Health Service National Institutes of Health, 1991, 5th ed. に基づいてアミノ酸番号1~116)、および細胞膜に隣接する1つの定常ドメイン(例えば、α鎖定常ドメインまたはCa、典型的にはKabatに基づいてアミノ酸番号117~259、β鎖定常ドメイン、典型的にはKabatに基づいてアミノ酸117~295)を含むことができる。例えば、場合によっては、2本の鎖(例えば、αβ形態またはγδ形態のいずれか)によって形成されたTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメイン、および2つのCDR含有膜遠位可変ドメインを含む。TCRドメインの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成して2本の鎖の間に連結を生じる短い連結配列を含む。いくつかの態様において、例えば、Cohen et al. (2007)に記述されているように、各受容体鎖に単一のシステインを付加してさらなる鎖間ジスルフィド結合の形成を促進することにより、TCR遺伝子移入を改善することが可能でありうる。
【0049】
CDRはまた、TCR-aまたはTCR-bポリペプチドの可変領域の文脈で特定のCDR配列の片側または両側に隣接する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、16、18、19、20、21、22、23個、もしくはそれ以上の連続するアミノ酸残基(またはその中で導出可能な任意の範囲)を含みうる; それゆえ、SEQ ID NO:13および15の可変領域に示されるものなどの、特定のCDR配列のN末端またはC末端に1つまたは複数のさらなるアミノ酸が存在しうる。あるいは、または組み合わせて、CDRは、本明細書において記述されるCDRの断片であってもよく、特定のCDR配列のC末端またはN末端から少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸を欠きうる。
【0050】
いくつかの態様において、TCR鎖はそれぞれ、膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様において、膜貫通ドメインは正に帯電している。場合によっては、TCR鎖は細胞質尾部を含む。場合によっては、TCRはCD3のような他の分子と会合することができる。例えば、定常ドメインおよび膜貫通ドメインを含むTCRは、タンパク質を細胞膜中に固定し、CD3シグナル伝達装置または複合体の不変サブユニットと会合することを可能にすることができる。
【0051】
CD3は、γ鎖、δ鎖、ε鎖、およびζ鎖という異なる鎖を含む多サブユニット複合体である。例えば、哺乳動物では、この複合体は1本のCD3γ鎖、1本のCD3δ鎖、2本のCD3ε鎖、およびCD3ζ鎖のホモ二量体を含みうる。CD3γ鎖、CD3δ鎖、およびCD3ε鎖は、免疫グロブリンスーパーファミリーの高度に関連した細胞表面タンパク質である。CD3γ鎖、CD3δ鎖、およびCD3ε鎖の膜貫通ドメインは負に帯電しており、この特性によって、これらの鎖は正に帯電したT細胞受容体鎖と会合することが可能である。CD3γ鎖、CD3δ鎖、CD3ε鎖、およびCD3ζ鎖の細胞内尾部は、それぞれ、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)として知られる保存されたモチーフを含む。ITAMは、繰り返される可能性のある保存されたアミノ酸配列であり、TCR複合体のシグナル伝達能またはシグナル伝達に関与している。これらの補助分子は、負に帯電した膜貫通ドメインを有しており、TCRから細胞にシグナルを伝える役割を果たしている。CD3鎖およびζ鎖は、TCRと一緒になって、T細胞受容体複合体(TCR複合体)として知られるものを形成する。
【0052】
いくつかの態様において、TCRは、1つのTCRαポリペプチドおよび1つのTCRβポリペプチドを含むヘテロ二量体を含む。TCRは、1つのTCRγポリペプチドおよび1つのTCRδポリペプチドを含むヘテロ二量体を含みうる。いくつかの態様において、TCRは一本鎖TCR(scTCR)を含む。いくつかの態様において、TCRヘテロ二量体のポリペプチドは、共有結合している。いくつかの態様において、共有結合は、1つまたは複数のジスルフィド結合によるものである。いくつかの態様において、1つまたは複数のジスルフィド結合は、天然TCRに見られるような天然に存在するジスルフィド結合を含む。いくつかの態様において、1つまたは複数のジスルフィド結合は、天然TCRには見られない、天然に存在しないジスルフィド結合を含む。
【0053】
本開示のTCRは、当業者によって理解されるように、種々の方法を用いてTCRをコードする核酸で細胞をトランスフェクトすることにより、T細胞などの細胞において発現させることができる。例えば、T細胞をトランスフェクトするためにウイルスベクターを用いることができる(例えば、Levine et al., 2017)。いくつかの態様において、エレクトロトランスフェクション法(例えば、Zhang et al., 2018)を含む、非ウイルス法を用いて、(例えば、Riet et al., 2013に記述されているように) T細胞をトランスフェクトする。
【0054】
B. 可溶性TCR
いくつかの態様において、本開示は、本明細書において提供されるHormad1由来ペプチドに特異的なTCRの可変領域(例えば、SEQ ID NO:13および15)を含みうる可溶性TCRを提供する。可溶性TCRは、特定のTCR-MHC相互作用を調査する目的だけでなく、感染を検出するための、または自己免疫疾患バイオマーカーを検出するための診断ツールとしても潜在的に、有用である。可溶性TCRは、例えば、MHCとの関連で提示される特定のペプチド抗原の存在について細胞を染色するために、染色においても用途がある。同様に、可溶性TCRは、特定の抗原を提示している細胞に、治療剤、例えば細胞傷害性化合物または免疫賦活性化合物を送達するために用いることができる。可溶性TCRは、T細胞、例えば、自己免疫ペプチド抗原に反応するT細胞を阻害するためにも用いられうる。
【0055】
本出願の文脈において、「可溶性」は、TCRが1 mg/mlの濃度でリン酸緩衝生理食塩水(PBS) (KCL 2.7 mM、KH2PO4 1.5 mM、NaCl 137 mMおよびNa2PO4 8 mM, pH 7.1-7.5. Life Technologies, Gibco BRL)中にて単分散ヘテロ二量体として精製され、該TCRの90%超が1時間25℃でのインキュベーション後に単分散ヘテロ二量体として残存する能力として定義される。
【0056】
いくつかの局面において、本開示は、(i) TCRα鎖(例えば、SEQ ID NO: 1または2)の全部または部分を、その膜貫通ドメインを除いて、および(ii) TCRβ鎖(例えば、SEQ ID NO: 3または4)の全部または部分を、その膜貫通ドメインを除いて含む可溶性T細胞受容体(sTCR)を提供し、ここで(i)および(ii)はそれぞれ、TCR鎖の機能的可変ドメインおよび定常ドメインの少なくとも一部を含み、天然TCRには存在しない定常ドメイン残基間のジスルフィド結合によって連結されている。いくつかの局面において、可溶性TCRは、ロイシンジッパーなどの一対のC末端二量化ペプチドにより、それぞれTCRβ鎖またはδ鎖細胞外ドメインに二量体化されたTCRα鎖またはγ鎖細胞外ドメインを含む(国際特許公開番号WO 99/60120; 米国特許第7,666,604号)。
【0057】
いくつかの態様において、TCRの可変領域を含む抗原結合領域全体(例えば、
図6A~Bを参照のこと)を、sTCRに含めることができる。sTCRは、一本鎖T細胞受容体(scTCR)であってもよく、ここでα鎖およびβ鎖からの可変領域(VαおよびVβ)は、可動性のリンカーを介して共有結合されており、可変領域の末端(典型的にはリンカーに結合していないVβの末端)は、治療用化合物(例えば、毒素、化学療法剤など)または造影剤に共有結合されている。sTCRは、MHCによって提示されている場合の細胞内または細胞外エピトープを認識することができ、sTCRは疾患における天然ペプチドリガンドの同定のために用いることができる(例えば、Walseng et al., 2015; Boulter et al., 2005)。したがって、sTCRは、ヒト患者などの対象に投与されて腫瘍細胞を可視化し、またはがん細胞に治療用化合物を送達し、がんを処置することが可能である。
131I、オーリスタチン、メイタンシン、カリケアマイシン、STINGアゴニスト、サイトカイン、ケモカイン、共刺激アゴニスト(例えば、OX40)、または他の化学治療薬などの、種々の治療用分子または毒素が、Hormad1由来ペプチド/HLA-A2複合体を発現するがん細胞などの細胞にsTCRによって送達されうる。このようにして、sTCRは、腫瘍部位への治療用分子の標的指向型送達のために用いることができる。いくつかの態様において、sTCRは、蛍光性または放射性プローブを含むか、またはそれらに共有結合している。
【0058】
本開示の、ヒトのものでありうるまたはヒト細胞において産生されうる可溶性TCRは、実質的に純粋な形態で、または精製もしくは単離された調製物として提供されうる。例えば、それは、他のタンパク質を実質的に含まない形態で提供されうる。
【0059】
本開示の複数の可溶性TCRは、多価複合体で提供されうる。したがって、本開示は、1つの局面において、本明細書において記述される複数の可溶性T細胞受容体を含む多価T細胞受容体(TCR)複合体を提供する。複数の可溶性TCRの各々は、好ましくは同一である。多価TCRは、2つまたはそれ以上のリガンド結合TCRα/βサブユニットを含みうる(例えば、Schamel et al., 2005参照)。
【0060】
多価TCR複合体は一般に、好ましくはリンカー分子を介して、互いに結合した(例えば、共有結合したまたは他の方法で連結した) 2つもしくは3つもしくは4つまたはそれ以上のT細胞受容体分子の多量体を含む。適当なリンカー分子は、各々がビオチンに対する4つの結合部位を有するアビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジンおよびエクスラアビジンなどの多価付着分子を含むが、これらに限定されることはない。したがって、ビオチン付加TCR分子によって、複数のTCR結合部位を有するT細胞受容体の多量体を形成させることができる。多量体中のTCR分子の数は、多量体を作製するために用いられるリンカー分子の量に対するTCRの量に依存し、また、任意の他のビオチン付加分子の存在または非存在に依存するであろう。好ましい多量体は、二量体、三量体または四量体TCR複合体である。
【0061】
TCRまたは多価TCR複合体は、膜構造体(例えば、リポソーム)または好ましくはビーズ(例えば、ラテックスビーズ)などの粒子である固体構造体に付着されうる。いくつかの態様において、構造体は、個々のT細胞受容体分子ではなく、T細胞受容体多量体でコーティングされる。リポソームの場合、T細胞受容体分子またはその多量体は、膜に付着され、またはそうでなければ膜と会合されうる。このための技法は、当業者には周知である。
【0062】
標識または別の部分、例えば毒性部分または治療部分が多価TCR複合体に含まれうる。例えば、標識または他の部分が混合分子多量体に含まれうる。そのような多量体分子の例は、3つのTCR分子および1つのペルオキシダーゼ分子を含む四量体である。これは、四量体複合体を生じさせるために、TCRと酵素を約3:1のモル比で混合し、正しい比率の分子を含まない複合体から所望の複合体を単離することによって達成されうる。これらの混合分子は、立体障害が分子の所望の機能を損なわない、または著しく損なわないという条件で、任意の組み合わせの分子を含みうる。ストレプトアビジン分子上の結合部位の配置は、立体障害が起こる可能性が高くないため、混合四量体に適当でありうる。
【0063】
いくつかの態様において、本明細書において提供されるペプチド(例えば、SEQ ID NO:5)は、MHC-ペプチド四量体(例えば、HLA-A2/ペプチド四量体)を作製するために用いることができる。これらの四量体は、患者サンプルから、またはインビトロで特定のHormad1ペプチド、Hormad1タンパク質、または特定のHormad1ペプチドもしくはHormad1タンパク質をコードするヌクレオチド配列でプロフェッショナルAPCをパルスした後に、エピトープ特異的T細胞(例えば、腫瘍浸潤リンパ球、またはTIL)を単離するために用いることができる。場合によっては、MHC-ペプチド四量体は、組織中のT細胞を可視化するために用いることができる(例えば、Dileepan et al., 2015)。MHC多量体誘導法は、免疫療法において用いられうる単一細胞からの機能的T細胞受容体の単離を促進するために用いることもできる。例えば、非拡大増殖抗原特異的T細胞からのペアの完全長TCR配列の直接単離は、PCRに基づくT細胞受容体単細胞分析法(TCR-SCAN)を用いて達成することができる(例えば、Dossinger et al., 2013)。したがって、多量体誘導選別戦略を用いて、Hormad1ペプチド(例えば、SEQ ID NO:5)を選択的に識別するT細胞を、HLA-A2陽性患者のPBMCからまたは(例えば、ペプチド、もしくはaAPCを用いて)刺激されたT細胞から単離することができる。注入後、インビボでの長期持続性の評価のために、抗原特異的T細胞を四量体または多量体で追跡することができる。
【0064】
本開示のTCR (またはその多価複合体)は、代替的または追加的に、例えば、細胞死滅化で用いるための毒性部分、またはインターロイキンもしくはサイトカインなどの免疫賦活剤でありうる治療剤に結び付けられうる(例えば、共有結合的にまたは他の方法で連結されうる)。本開示の多価TCR複合体は、非多価T細胞受容体ヘテロ二量体と比較して、TCRリガンドに対する増強された結合能力を有しうる。したがって、多価TCR複合体は、いくつかの態様において、インビトロまたはインビボで特定の抗原を提示している細胞を追跡またはターゲティングするために用いられうる。それゆえ、TCRまたは多価TCR複合体は、インビボで用いるために薬学的に許容される製剤中で提供されうる。
【0065】
本開示は、治療剤を標的細胞に送達するための方法も提供し、本方法は、潜在的な標的細胞をTCRまたは多価TCR複合体と、TCRまたは多価TCR複合体の標的細胞への付着を可能にする条件の下で接触させる段階を含み、TCRまたは多価TCR複合体は、TCRリガンドに特異的であり、治療剤が結び付けられている。
【0066】
いくつかの態様において、可溶性TCRまたは多価TCR複合体は、特定の抗原を提示する細胞の場所に治療剤を送達するために用いることができる。これは、例えば、腫瘍の処置のために有用でありうる。治療剤は、それが結合する細胞に対してだけでなく、局所的にその効果を発揮するように送達されうる(例えば、化学療法剤、放射性物質、または酵素剤は、腫瘍近傍でまたは腫瘍上で局所効果をもたらしうる)。したがって、1つの特定の戦略では、腫瘍抗原に特異的なT細胞受容体または多価TCR複合体に連結された抗腫瘍分子を想定している。
【0067】
この用途のためには多くの治療剤、例えば放射性化合物、酵素(例えばパーフォリン)または化学療法剤(例えばシスプラチン)を利用することができる。所望の場所での毒性効果を低減または制限するために、毒素は、化合物がゆっくり放出されるようにストレプトアビジンに連結されたリポソーム内で提供されうる。これは、体内での運搬中の損傷効果を低減し、関連する抗原提示細胞またはHormad1抗原を発現する細胞(例えば、がん細胞)へのTCRの結合後まで毒性効果を制限するのに役立ちうる。
【0068】
他の適当な治療剤は、(1) 小分子細胞傷害剤、すなわち、700ダルトン未満の分子量を持つ哺乳動物細胞を死滅化する能力を有する化合物を含む。そのような化合物はまた、細胞傷害効果を有することができる毒性金属を含みうる。さらに、これらの小分子細胞傷害剤は、プロドラッグ、すなわち、生理学的条件の下で崩壊してまたは変換されて細胞傷害剤を放出する化合物も含むことが理解されるべきである。そのような薬剤の例としては、シスプラチン、メイタンシン誘導体、ラケルマイシン、カリケアマイシン、ドセタキセル、エトポシド、ゲムシタビン、イホスファミド、イリノテカン、メルファラン、ミトキサントロン、ソルフィマーソディウムフォトフリンII (sorfimer sodiumphotofrin II)、テモゾロマイド、トポテカン、グルクロン酸トリメトレキサート、オーリスタチンEビンクリスチンおよびドキソルビシン; (2) ペプチド細胞毒、すなわち哺乳動物細胞を死滅化する能力を有するタンパク質またはその断片が挙げられる。例としては、リシン、ジフテリア毒素、シュードモナス細菌外毒素A、DNAaseおよびRNAase; (3) 放射性核種、すなわちαもしくはβ粒子またはγ線の1つまたは複数の同時放出とともに崩壊する元素の不安定同位体が挙げられる。例としては、ヨウ素131 (131I)、レニウム186 (186Re)、インジウム111 (111In)、イットリウム90 (90Yt)、ビスマス210および213 (210Biおよび213Bi)、アクチニウム225 (225Ac)、ならびにアスタチン213 (213At); (4) 抗体指向酵素プロドラッグなどのプロドラッグ; ならびに(5) 免疫賦活薬、すなわち免疫応答を刺激する部分が挙げられる。例としては、IL-2などのサイトカイン、IL-8などのケモカイン、血小板因子4、黒色腫成長刺激タンパク質など、抗CD3抗体またはその断片などの抗体またはその断片、補体活性化因子、異種タンパク質ドメイン、同種タンパク質ドメイン、ウイルス/細菌タンパク質ドメインおよびウイルス/細菌ペプチドが挙げられる。
【0069】
本開示の可溶性TCRは、特定のTCRリガンドに結合することにより、およびそれによってT細胞活性化を阻害することによりT細胞活性化を調節するために用いられうる。T細胞を介した炎症および/または組織損傷(例えば、I型糖尿病)を伴う自己免疫疾患は、このアプローチを用いて処置されうる。この用途のためには、関連するpMHCによって提示される特異的なペプチドエピトープに関する知識が必要とされる。
【0070】
本開示の可溶性TCRおよび/または多価TCR複合体は、がんまたは自己免疫疾患の処置のための組成物の調製において用いられうる。
【0071】
がん(例えば、白血病、肺がん、食道がん、頭頸部がん、もしくは子宮頸がんなど)または本明細書において記述されるHormad1を発現する他のがん)あるいは自己免疫疾患を処置する方法であって、それを必要とする患者への、本発明の可溶性TCRおよび/または多価TCR複合体の有効量の投与を含む方法も提供される。
【0072】
抗がんおよび自己免疫療法において一般的であるように、本開示のTCRは、がんまたは自己免疫疾患の処置のために他の薬剤と組み合わせて用いられてもよく、患者群に見られる他の関連症状を処置するために1つまたは複数のさらなる治療用物質または治療法が投与されてもよい。
【0073】
C. 二重特異性TCR
いくつかの態様において、本開示のTCRは、二重特異性T細胞受容体(TCR)に含まれる。二重特異性TCRは一般に、scFvまたは抗体のいずれかに融合、ライゲーション、または共有結合されているTCRを含む(例えば、McCromack et al., 2013)。いくつかの態様において、本開示の二重特異性TCRは、Hormad1指向性TCRおよびT細胞動員抗体ドメインまたはscFv (例えば、CD3または他の免疫調節T細胞表面タンパク質に対するscFv)を含む。二重特異性TCRは、T細胞の固有の特異性に関係なく、T細胞が活性化され、腫瘍を攻撃することを可能にしうる。本開示のTCRで使用できる二重特異性プラットフォームは、TCER(登録商標)分子を含む(Immatics, Houston, Texas)。二重特異性TCRのさらなる例は、ImmTACである(例えば、Oates et al., 2013)。
【0074】
D. キメラ抗原受容体
キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞によって発現されることができ、がん細胞上の抗原などの抗原に結合することができる操作された受容体である。CARは一般に、抗原結合領域ドメイン、膜貫通ドメイン、およびエンドドメインを含む、異なるドメインを含む。エンドドメインは、抗原認識により、活性化および共刺激シグナルをT細胞に伝達する。キメラ抗原受容体分子は、天然に存在しておらず、抗原に結合すること、およびその細胞質エンドドメインに存在する免疫受容体活性化モチーフ(ITAM's)を介して活性化シグナルを伝達することの両方のその能力によって区別される。CAR T細胞は、CARを発現するように遺伝子改変されたT細胞である。
【0075】
可溶性TCR構築体は、例えば、Walseng et al. (2017)に記述されているように、T細胞に抗原を認識するよう指令するために、CARシグナル伝達尾部(すなわち、膜貫通ドメインおよびエンドドメイン)に融合させることができる。そのようなCAR構築体は、「TCR-CAR」といわれている。したがって、CARは、膜貫通ドメインおよびエンドドメインに共有結合されるかまたは膜貫通ドメインおよびエンドドメインとの融合タンパク質として発現される本開示のTCR結合領域(例えば、
図6A~Bに示される)または可溶性TCRを含みうる。エンドドメインは、例えば、CD3ζ、CD28細胞内シグナル伝達ドメイン、4-1BB (CD137)、(CD3ζおよびCD28)、CD27、OX-40 (CD134)、DAP10、または4-1BBを含みうる。
【0076】
II. 養子細胞移入療法
Hormad1特異的細胞療法などの、抗原特異的免疫細胞または幹細胞(例えば、自己由来または同種異系T細胞(例えば、調節性T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、α-β T細胞もしくはγ-δ T細胞)、NK細胞、インバリアントNK細胞、NKT細胞、間葉系幹細胞(MSC)、または誘導多能性幹(iPS)細胞)療法の有効量を個体に投与する段階を含む、個体におけるがんの進行を処置するまたは遅延させるための方法が、本明細書において提供される。遺伝子操作されたTCR遺伝子導入T細胞(例えば、SEQ ID NO: 2およびSEQ ID NO: 4などの、SEQ ID NO:1~4の1つまたは複数を含むTCRを発現する)による養子T細胞療法も本明細書において提供される。いくつかの態様において、養子細胞移入療法は、化学療法、放射線療法、外科手術、または第2の免疫療法などの、第2の療法と組み合わせて対象(例えば、ヒト患者)に提供される。
【0077】
本明細書において提供されるペプチド(例えば、SEQ ID NO:5)は、養子免疫療法において用いることができる抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)細胞株またはクローンを作出するために用いることもできる。該ペプチド、または該ペプチドをコードする対応するポリヌクレオチドを、樹状細胞、リンパ芽球様細胞株(LCL)、PBMCまたは人工抗原提示細胞(aAPC)に負荷し、その後、数ラウンドの刺激のためにT細胞と共培養して抗原特異的CTL細胞株またはクローンを作出することができる(例えば、Neal et al., 2017)。種々の抗原提示細胞(APC)を用いてT細胞をエクスビボで拡大増殖してもよく、抗腫瘍応答を増強するための樹状細胞の抗原負荷に向けたさまざまな戦略を用いることができる(例えば、Strome et al., 2002を参照のこと)。得られた自己由来CTL細胞株またはクローンを、がん患者の処置のための養子細胞移入免疫療法において用いることができる。
【0078】
本開示の態様は、対象から自己由来T細胞を得る方法、TCR操作された免疫細胞または幹細胞を作出する方法、およびがん細胞をターゲティングする免疫療法として対象にTCR操作された細胞を投与する方法を含む。特に、TCR操作された免疫細胞または幹細胞(例えば、自己由来または同種異系T細胞(例えば、調節性T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、α-β T細胞もしくはγ-δ T細胞)、NK細胞、インバリアントNK細胞、NKT細胞、間葉系幹細胞(MSC)、または誘導多能性幹(iPS)細胞)細胞は、抗原特異的細胞(例えば、Hormad1特異的細胞)である。機能的な抗腫瘍エフェクタ細胞の誘導、活性化および拡大増殖のためのいくつかの基本的なアプローチが、過去20年間に記述されてきた。これらには、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のような、自己由来細胞; 自己由来DC、リンパ球、人工抗原提示細胞(APC)またはT細胞リガンドおよび活性化抗体でコーティングされたビーズ、または標的細胞膜を捕捉することによって単離された細胞を用いてエクスビボで活性化されたT細胞; 抗宿主腫瘍T細胞受容体(TCR)を天然に発現する同種異系細胞; ならびに「Tボディ」として知られる抗体様腫瘍認識能を示す腫瘍反応性TCRまたはキメラTCR分子を発現するように遺伝的に再プログラム化または「再指令された」腫瘍特異的ではない自己由来細胞または同種異系細胞が含まれる(例えば、Eshhar et al., 1995)。これらのアプローチは、本明細書において記述される方法で用いることができるT細胞の調製および免疫化のための多数のプロトコルを生み出した。
【0079】
A. T細胞調製および投与
いくつかの態様において、操作されたT細胞は自己由来である(すなわち、処置される患者から単離されている)。いくつかの態様において、操作されたT細胞は同種異系である。いくつかの態様において、同種異系T細胞は、複数のドナーからプールされたT細胞を含む。
【0080】
いくつかの態様において、T細胞は、血液、骨髄、リンパ、臍帯、またはリンパ器官に由来する。T細胞は、最も好ましくはヒト細胞である。いくつかの態様において、臍帯血から得られたT細胞は、成人ドナーから得られたT細胞と比較して改善された抗腫瘍特性を有することができる(例えば、Hiwarkar et al., 2015)。細胞は典型的には、対象から直接単離されたもの、および/または対象から単離されて凍結されたものなどの初代細胞である。いくつかの態様において、細胞には、T細胞または他の細胞型の1つまたは複数のサブセット、例えば全血由来T細胞、CD4+細胞、CD8+細胞、およびそれらの亜集団、例えば機能、活性化状態、成熟度、分化、拡大増殖、再循環、局在化の可能性および/もしくは持続能、抗原特異性、抗原受容体のタイプ、特定の臓器もしくは区画における存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロファイル、ならびに/または分化の程度によって定義されるものが含まれる。処置される対象に関して、細胞は同種異系および/または自己由来でありうる。いくつかの局面において、例えば既製の技術の場合、細胞は多能性および/または複能性であり、例えば誘導多能性幹(iPS)細胞などの幹細胞である; 例えば、幹細胞またはiPS細胞を、さまざまなT細胞集団に分化させうる。いくつかの態様において、本方法は、本明細書において記述されるように、対象から細胞を単離する段階、それらを調製する段階、処理する段階、培養する段階、および/または操作する段階、ならびに凍結保存の前または後に、それらを同じ患者に(それらが自己由来である場合)または異なる患者に(それらが同種異系である場合)再導入する段階を含む。
【0081】
T細胞(例えば、CD4+および/またはCD8+ T細胞)のサブタイプおよび亜集団の中には、ナイーブT (TN)細胞、エフェクタT細胞(TEFF)、記憶T細胞(TMEM)およびそれらのサブタイプ、例えば幹細胞記憶T (TSCM)、中央記憶T (TCM)、エフェクタ記憶T (TEM)、または最終分化エフェクタ記憶T細胞(TEMRA)、腫瘍浸潤リンパ球由来T細胞(TIL)、未成熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT (MAIT)細胞、自然発生および適応調節性T (Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えばTH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、α/β T細胞、ならびにδ/γ T細胞がある。
【0082】
いくつかの態様において、T細胞の亜集団は、細胞表面マーカーなどの特定のマーカーについて陽性または陰性である細胞を分離する、濃縮する、または枯渇させることにより作製することができる。場合によっては、そのようなマーカーは、T細胞のある種の集団(例えば、非記憶細胞)に存在しないか、または比較的低いレベルで発現されるが、しかしT細胞のある種の他の集団(例えば、記憶細胞)に存在するか、または比較的高いレベルで発現されるものである。
【0083】
いくつかの態様において、T細胞は、CD14のような、B細胞、単球、または他の白血球などの非T細胞上に発現されるマーカーの陰性選択によって、PBMCサンプルから分離される。いくつかの局面において、CD4+またはCD8+選択段階は、CD4+ヘルパーおよびCD8+細胞傷害性T細胞を分離するために用いられる。そのようなCD4+およびCD8+集団は、1つまたは複数のナイーブ、記憶、および/またはエフェクタT細胞亜集団にて発現されるまたは比較的高度に発現されるマーカーの陽性または陰性選択により亜集団にさらに分類することができる。磁気活性化細胞選別(MACS)および蛍光活性化細胞選別(FACS)を含めて、マーカーの発現に基づく細胞の分離のために種々の方法が用いられうる。
【0084】
いくつかの態様において、CD8+ T細胞は、例えばそれぞれの亜集団に関連する表面抗原に基づく陽性または陰性選択によって、ナイーブ、中央記憶、エフェクタ記憶、および/または中央記憶幹細胞の濃縮または枯渇がさらに行われる。いくつかの態様において、中央記憶T (TCM)細胞の濃縮は、投与後の長期生存、拡大増殖、および/または生着を改善するためになど、有効性を高めるために実行される(例えば、Terakura et al., 2012; Wang et al., 2012を参照のこと)。
【0085】
いくつかの態様において、T細胞は自己由来T細胞である。この方法では、生体サンプル(例えば、血液サンプル、または骨髄サンプル)が患者から得られる。いくつかの態様において、細胞懸濁液または培養液は、患者から(例えば、腫瘍から)得られた生体サンプルから調製される。単細胞懸濁液は、任意の適当な方法で、例えば、機械的に(例えば、腫瘍を、例えばgentleMACS(商標) Dissociator, Miltenyi Biotec, Auburn, Calif.を用いてバラバラにして)または酵素的に(例えば、コラゲナーゼもしくはDNaseを用いて)得ることができる。腫瘍酵素消化物の単細胞懸濁液を、インターロイキン-2 (IL-2)中で培養する。細胞は集密まで(例えば、約2×106個のリンパ球)、例えば、約5~約21日、好ましくは約10~約14日培養される。例えば、細胞は5日、5~6日、または5~21日、または10~14日培養されうる。
【0086】
いくつかの態様において、本開示のTCRまたはCARをコードする裸のDNAまたは適当なベクターは、対象のT細胞(例えば、がんまたは他の疾患を有するヒト患者から得られたT細胞)に導入することができる。裸のDNAを用いたエレクトロポレーションによってT細胞を安定的にトランスフェクトする方法は、当技術分野において公知である。例えば、米国特許第6,410,319号を参照されたい。裸のDNAは一般に、発現のための適切な配向でプラスミド発現ベクターに含まれる本発明のキメラ受容体をコードするDNAを指す(例えば、Zhang et al., 2018)。いくつかの態様において、裸のDNAの使用は、本発明の方法を介して作製されたTCRを発現するT細胞を産生するのに必要な時間を低減しうる。Heemskerk et al., 2008およびJohnson et al., 2009に記述される形質導入技法を用いることができる。全長TCRαおよびβ(またはγおよびδ)鎖をコードするRNAのエレクトロポレーションは、レトロウイルスにより形質導入されたTCR鎖と内因性TCR鎖の対合によって引き起こされる自己反応性の長期的問題を克服するための代替手段として用いることが可能である。いくつかの態様において、非ウイルスRNAトランスフェクションが、例えば、Rietら(Methods Mol Biol. 2013;969:187-201)に記述されているように、T細胞を一過性に修飾するために用いられうる。
【0087】
あるいは、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター)を用いて、TCRまたはキメラ構築体をT細胞に導入することができる。一般に、対象からのT細胞をトランスフェクトするために用いられるTCRまたはCARをコードするベクターは一般に、対象のT細胞において複製しないはずである。ウイルスに基づく多数のベクターが知られており、細胞内に維持されているウイルスのコピー数は、細胞の生存能力を維持するよう十分に低い。例示的なベクターとしては、pFB-neoベクター(STRATAGENE(登録商標))、およびHIV、SV40、EBV、HSV、またはBPVに基づくベクターが挙げられる。
【0088】
いくつかの態様において、本開示のα鎖およびβ鎖をコードするTCRヌクレオチド配列(例えば、DNAまたはRNA配列) (例えば、
図6A~B; SEQ ID NO 1~4参照)を、レトロウイルス、レンチウイルスもしくはMSCV (マウス幹細胞ウイルス)などの他の発現ベクターまたはプラスミド(例えば、アデノ随伴ウイルス由来プラスミド)にクローニングすることができる。T細胞は、TCRを発現するように遺伝的に改変することができる。PBMCは、抗原提示細胞とT細胞の両方の供給源である。TCRを発現するT細胞は、がん患者に対する養子細胞移入療法において用いることができる。
【0089】
トランスフェクトまたは形質導入されたT細胞がTCRまたはCARを表面膜タンパク質としておよび所望のレベルで発現できることが確立されたら、TCRまたはキメラ受容体が宿主細胞において機能して所望のシグナル誘導を提供するかどうか判定することができる。その後、形質導入されたT細胞を対象に再導入または投与して、対象での抗腫瘍応答を活性化する、実施する、および/またはもたらすことができる。投与を容易にするため、形質導入されたT細胞は、薬学的に許容される適切な担体または希釈剤を用いて、薬学的組成物にされてもよく、またはインビボでの投与に適したインプラントにされてもよい。そのような組成物またはインプラントを作製する手段は、当技術分野において記述されている(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 22nd edition, Pharmaceutical Press, 2012を参照のこと)。適切な場合には、TCRまたはCARを発現する形質導入されたT細胞を、各投与経路のための通常の方法で、カプセル、溶液、注射液のような、半固体または液体形態の調製物に処方することができる。当技術分野において公知の手段を利用して、組成物が標的組織もしくは臓器に達するまで組成物の放出および吸収を抑止もしくは最小化することができ、または組成物の持続放出を確実にすることができる。一般に、TCRまたはキメラ受容体を発現する細胞に有意に悪影響を及ぼさない、薬学的に許容される形態が好ましく利用される。いくつかの態様において、形質導入されたT細胞は、ハンクスの平衡塩類溶液などの平衡塩類溶液、または通常の生理食塩水を含有する薬学的組成物にすることができる。
【0090】
培養されたT細胞をプールし、急速に拡大増殖させることができる。急速な拡大増殖は、約10日~約14日の期間にわたり、少なくとも約50倍(例えば、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、もしくは100倍またはそれ以上)の抗原特異的T細胞の数の増加を提供する。より好ましくは、急速な拡大増殖は、約10日~約14日の期間にわたり、少なくとも約200倍(例えば、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、またはそれ以上)の増加を提供する。いくつかの態様において、同種異系T細胞を数名のドナーからプールすることができる。
【0091】
拡大増殖は、当技術分野において公知の種々の方法によって達成することができる。例えば、T細胞は、フィーダーリンパ球およびインターロイキン-2 (IL-2)またはインターロイキン-15 (IL-15)のいずれかの存在下で非特異的TCR刺激を用いて急速に拡大増殖させることができ、IL-2が好ましい。非特異的TCR刺激は、30 ng/ml前後のOKT3、つまりマウスモノクローナル抗CD3抗体(Ortho-McNeil(登録商標), Raritan, N.J.から入手可能)を含むことができる。あるいは、T細胞は、がんの1つまたは複数の抗原(エピトープのような、その抗原部分、または細胞を含む)でのインビトロにおける末梢血単核細胞(PBMC)の刺激により急速に拡大増殖させることができ、これは、例えばヒト白血球抗原A2 (HLA-A2)結合ペプチドなど、300 IU/ml IL-2またはIL-15のような、T細胞成長因子の存在下において、ベクターから任意で発現されてもよく、IL-2が好ましい。インビトロで誘導されたT細胞は、HLA-A2を発現する抗原提示細胞にパルスされたがんの同じ抗原での再刺激によって急速に拡大増殖される。あるいは、T細胞は、例えば照射された自己由来リンパ球で、または照射されたHLA-A2+同種異系リンパ球およびIL-2で再刺激することができる。
【0092】
自己由来T細胞は、自己由来T細胞の成長および活性化を促進するT細胞成長因子を発現するように修飾することができる。適当なT細胞成長因子には、例えば、インターロイキン(IL)-2、IL-7、IL-15、およびIL-12が含まれる。例えば、Sambrook et al., 2001; およびAusubel et al., 1994を含む適当な修飾方法が当技術分野において公知である。いくつかの態様において、修飾された自己由来T細胞は、T細胞成長因子を高レベルで発現する。IL-12のものなどのT細胞成長因子コード配列は、高レベル発現を促進するために用いることができるプロモーターと同様に、当技術分野において容易に利用可能である。
【0093】
ある種の態様において、自己由来または同種異系T細胞の成長および活性化を促進するT細胞成長因子が、自己由来T細胞と同時に、または自己由来T細胞の後に対象に投与される。T細胞成長因子は、自己由来T細胞の成長および活性化を促進する任意の適当な成長因子でありうる。適当なT細胞成長因子の例としては、インターロイキン(IL)-2、IL-7、IL-15、およびIL-12が挙げられ、これらは単独でまたはさまざまな組み合わせで、例えばIL-2およびIL-7、IL-2およびIL-15、IL-7およびIL-15、IL-2、IL-7およびIL-15、IL-12およびIL-7、IL-12およびIL-15、またはIL-12およびIL2で用いることができる。IL-12が好ましいT細胞成長因子である。
【0094】
T細胞は、静脈内に、筋肉内に、皮下に、経皮的に、腹腔内に、髄腔内に、非経口的に、髄腔内に、腔内に、脳室内に、動脈内に、脳脊髄液を介して、または任意の移植可能もしくは半移植可能な、永続性もしくは分解性の装置によって投与されうる。T細胞療法の適切な投与量は、処置される疾患の種類、疾患の重症度および経過、個体の臨床状態、個体の病歴および処置への応答、ならびに主治医の裁量に基づいて決定されうる。
【0095】
腫瘍内注入または腫瘍血管系への注入は、接近可能な孤立型の固形腫瘍に対して特に企図される。局所的、部位的または全身的投与も適切でありうる。4 cmを超える腫瘍の場合、約4~10 ml (特に10 ml)の体積を投与することができるが、4 cm未満の腫瘍の場合、約1~3 ml (例えば、3 ml)の体積を用いることができる。単回用量として送達される頻回注入は、約0.1~約0.5 mlの体積を含みうる。
【0096】
B. 抗原提示細胞
抗原提示細胞(APC)は、T細胞などのある種のリンパ球による認識のために抗原をプロセッシングおよび提示することにより細胞性免疫応答を媒介する異種免疫細胞群である。APCは、樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞およびB細胞を含む。APCは、タンパク質抗原をプロセッシングし、それをペプチドに分解し、それを、適切なT細胞受容体と相互作用しうる細胞表面の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子と組み合わせて提示することができる。APCは、特定のMHC分子のその発現によって区別される。MHCは、複数の座位を有する大きな遺伝子複合体である。MHC座位は、クラスI MHCおよびクラスII MHCといわれる、2つの主要なクラスのMHC膜分子をコードする。Tヘルパーリンパ球は一般にMHCクラスII分子と会合した抗原を認識し、T細胞傷害性リンパ球はMHCクラスI分子と会合した抗原を認識する。ヒトではMHCはHLA複合体といわれ、マウスではH-2複合体といわれる。
【0097】
いくつかの態様において、ペプチド(例えば、SEQ ID NO:5)は、HLA-A2により認識され、インビトロで抗原特異的T細胞を拡大増殖するために用いることができる。該ペプチド、または該ペプチドをコードする核酸を、抗原提示細胞(APC)を刺激するために用いて、免疫応答開始を誘発することができる。いくつかの態様において、該ペプチド、または該ペプチドをコードする対応するポリヌクレオチドを、樹状細胞、リンパ芽球様細胞株(LCL)、PBMCまたは人工抗原提示細胞(aAPC)に負荷し、その後、数ラウンドの刺激のためにT細胞と共培養して抗原特異的CTL細胞株またはクローンを作出することができる。したがって、Hormad1由来ペプチド/HLA-A2複合体を選択的に認識する拡大増殖T細胞集団を、患者に養子移入して、がんを処置することまたは腫瘍退縮を誘導することができる。
【0098】
いくつかの場合には、人工抗原提示細胞(aAPC)は、TCRまたはCARに基づく治療用組成物および細胞療法製品を調製するのに有用である。抗原提示システムの調製および使用に関する一般的なガイドラインとしては、例えば、米国特許第6,225,042号、同第6,355,479号、同第6,362,001号および同第6,790,662号; 米国特許出願公開第2009/0017000号および同第2009/0004142号; ならびに国際公開番号WO2007/103009)を参照されたい。
【0099】
aAPCは、TCRまたはCARを発現するT細胞を拡大増殖するために用いられうる。腫瘍抗原との遭遇中に、抗原提示細胞によってT細胞に送達されるシグナルは、T細胞プログラミングおよびその後続の治療効力に影響を与えうる。これは、T細胞に提供されるシグナルの最適な制御を可能にする人工抗原提示細胞を開発する取り組みを刺激した(Turtle et al., 2010)。関心対象の抗体または抗原に加えて、aAPCシステムは、少なくとも1つの外因性補助分子を含んでもよい。任意の適当な数および組み合わせの補助分子が利用されうる。補助分子は、共刺激分子または接着分子でありうる。例示的な共刺激分子としては、CD70およびB7.1 (B7またはCD80とも呼ばれる)が挙げられ、これらはT細胞の表面上のCD28および/またはCTLA-4分子に結合し、それによって、例えば、T細胞拡大増殖、Th1分化、短期T細胞生存、およびインターロイキン(IL)-2などのサイトカイン分泌を促進することができる(Kim et al., 2004参照)。接着分子には、セレクチンのような炭水化物結合糖タンパク質、インテグリンのような膜貫通結合糖タンパク質、カドヘリンのようなカルシウム依存性タンパク質、ならびに、例えば細胞と細胞または細胞と基質の接触を促進する、細胞間接着分子(ICAM)のような、1回膜貫通免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリータンパク質が含まれうる。例示的な接着分子としては、LFA-3およびICAM、例えばICAM-1が挙げられる。共刺激分子および接着分子を含む、例示的な補助分子の選択、クローニング、調製、および発現に有用な技法、方法、および試薬は、例えば、米国特許第6,225,042号、同第6,355,479号、および同第6,362,001号に例示されている。
【0100】
C. 核酸
1つの局面において、本開示は、本明細書において開示される単離されたTCR (例えば、sTCR)、CAR、またはペプチドをコードする核酸を提供する。例えば、核酸は、本明細書において開示されるTCR可変領域(例えば、SEQ ID NO: 1~4)と約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の配列同一性を有するTCR可変領域、またはSEQ ID NO: 1~4のいずれか1つと比較して1、2、3、もしくは4個の点変異(例えば、置換変異)を有するTCR可変領域を含むポリペプチドをコードしうる。「核酸」という用語は、DNAおよびRNAを含むよう意図されており、二本鎖または一本鎖のいずれかであることができる。
【0101】
したがって、TCR (例えば、sTCR)、CAR、またはペプチドをコードする核酸は、プロモーターに機能的に連結され、および/または発現ベクターに含まれうる。TCR、CARまたはペプチドは、分子生物学の分野において周知の方法を用いて、適切な発現システムにおいて産生することができる。本明細書において開示される腫瘍抗原特異的ペプチドをコードする核酸は、所望の環境における(例えば、ヒト免疫細胞における)該ペプチドの良好な発現を確実にする任意の発現ベクターに組み込まれうる。使用できる可能なベクターは、該ベクターが宿主細胞の形質転換に適している限り、コスミド、プラスミド、または修飾ウイルス(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を含むが、これらに限定されることはない。
【0102】
「宿主細胞の形質転換に適している」組換え発現ベクターとは、その発現ベクターが本開示の核酸分子と、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択された調節配列とを含み、そのような調節配列が該核酸分子に機能的に連結されている、ことを意味する。「機能的に連結された(operatively linked)」または「機能的に連結された(operably linked)」という用語は、互換的に用いられ、核酸がその核酸の発現をそれらの調節配列の制御下で可能にする方法で調節配列に連結されることを意味するよう意図される。
【0103】
したがって、本発明は、Hormad1に選択的に結合するTCR、CAR、または可溶性ペプチドをコードする核酸、ならびに挿入されたタンパク質配列の転写および翻訳に必要な調節配列を含む組換え発現ベクターを提供する。適当な調節配列は、細菌、真菌、またはウイルスの遺伝子を含む種々の供給源に由来しうる(例えば、Goeddel, 1990に記述されている調節配列を参照のこと)。
【0104】
適切な調節配列の選択は一般に、選択された宿主細胞に依存しており、当業者が容易に行うことができる。そのような調節配列の例には、転写プロモーターおよびエンハンサーまたはRNAポリメラーゼ結合配列、リボソーム結合配列、例えば翻訳開始シグナル、が含まれる。さらに、選択した宿主細胞および利用するベクターに応じて、複製起点、追加のDNA制限部位、エンハンサー、および転写誘導性を付与する配列などの他の配列を、発現ベクターに組み込むこともできる。また、必要な調節配列は天然タンパク質および/またはその隣接領域によって供給されうることも理解されよう。実際、いくつかの態様において、TCRを得た生物におけるTCRの発現に関連する天然の調節配列(例えば、プロモーター)を利用することが好ましい。
【0105】
組換え発現ベクターはまた、本明細書において開示されるHormad1に選択的に結合するTCR、CAR、または可溶性ペプチドで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞の選択を容易にする選択マーカー遺伝子を含みうる。選択マーカー遺伝子の例は、G418およびハイグロマイシンなどのある種の薬物に対する耐性を付与するタンパク質、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、またはホタルルシフェラーゼをコードする遺伝子である。選択マーカー遺伝子の転写は、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、またはホタルルシフェラーゼなどの選択マーカータンパク質の濃度変化によってモニターされる。選択マーカー遺伝子がネオマイシン耐性などの抗生物質耐性を付与するタンパク質をコードする場合には、G418 (ジェネティシン)を用いて形質転換された細胞を選択することができる; したがって、抗生物質に曝露されると、選択マーカー遺伝子を組み込んでいる細胞は生存するが、他の細胞は死滅する。これによって、組換え発現ベクターの発現を可視化して、その発現をアッセイすること、また、変異が発現および表現型に及ぼす影響を判定することが可能になる。
【0106】
組換え発現ベクターを宿主細胞に導入して、形質転換された宿主細胞を作製することができる。「形質転換された宿主細胞」という用語は、本発明の組換え発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされている原核細胞および真核細胞を含むよう意図される。「で形質転換された」、「でトランスフェクトされた」、「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、当技術分野において公知の多くの可能な技法のうちの1つによる細胞への核酸(例えば、ベクター)の導入を包含するものである。適当な宿主細胞には、多種多様な原核および真核宿主細胞が含まれる。例えば、本開示のタンパク質は、大腸菌(E. coli)などの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルスを使用)、酵母細胞または哺乳動物細胞において発現されうる。
【0107】
本開示の核酸分子はまた、標準的な技法を用いて化学的に合成されうる。ポリデオキシヌクレオチドを化学的に合成するさまざまな方法が知られており、これには、ペプチド合成と同様に、市販のDNA合成機で自動化された固相合成が含まれる(例えば、米国特許第4,598,049号; 同第4,458,066号; 同第4,401,796号; および同第4,373,071号参照)。
【0108】
III. ペプチドワクチン
いくつかの局面において、精製された腫瘍抗原またはHormad1ペプチド(SEQ ID NO:5)などの免疫優勢腫瘍抗原特異的ペプチドで対象を免疫する段階を含む、がん(例えば、乳がん、肺がんなど)の処置のための方法が提供される。Hormad1ペプチドは、種々の経路(例えば、筋肉内、静脈内、皮下など)を介して、ヒト患者などの哺乳動物対象に投与することができる。いくつかの態様において、ペプチドは、ワクチンとして、またはペプチドに対する免疫応答を引き起こすために、溶液(例えば、生理食塩水溶液)中で注入することができる。例えば、ペプチドの可溶性を増強するために、および/または対象における免疫応答を増加させるために、アジュバントを製剤または溶液に含めることができる(例えば、Massarelli et al., 2019に記述の通り)。ペプチドパルス成熟樹状細胞を、いくつかの態様において対象に投与することができる。対象においてペプチドに対する免疫応答または抗がん応答を引き起こすために用いられうるアプローチには、例えば、Wen et al. (2019)およびMassarelli et al. (2019)に記述されているものが含まれる。いくつかの態様において、Hormad1ペプチド(SEQ ID NO:5)は、対象またはヒト患者に再注入することができる自己由来樹状細胞に結合されるか、またはそれによって提示される。
【0109】
IV. 抗がん療法
本開示の態様は、さらなる抗がん療法の投与に関する。 いくつかの態様において、さらなる抗がん療法は、本明細書において記述されるものである。さらなる抗がん療法の例を以下に提供する。
【0110】
A. 免疫賦活剤
いくつかの態様において、本方法はさらなる薬剤の投与をさらに含む。いくつかの態様において、さらなる薬剤は免疫賦活剤である。本明細書において用いられる「免疫賦活剤」という用語は、対象における免疫応答を刺激することができる化合物をいい、アジュバントを含みうる。いくつかの態様において、免疫賦活剤は、特定の抗原を構成しないが、抗原に対する免疫応答の強度および有用な期間(longevity)を高めることができる薬剤である。そのような免疫賦活剤は、トール様受容体、RIG-1およびNOD様受容体(NLR)などの、パターン認識受容体の賦活剤、ミョウバン、大腸菌(Escherihia coli)、サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)もしくはシゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri)などの腸内細菌のモノホスホリル脂質(MPL) Aと組み合わせたミョウバンまたは特にMPL(登録商標)と組み合わせたミョウバン(ASO4)、上記細菌のMPL Aを別々に組み合わせたミョウバンなどの、無機塩、QS-21、Quil-A、ISCOM、ISCOMATRIXなどのサポニン、MF59、モンタニド、ISA 51およびISA 720、AS02 (QS21+スクアレン+MPL)などの乳濁液、AS01などのリポソームおよびリポソーム製剤、淋菌(N. gonorrheae)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)などの細菌由来外膜小胞(OMV)などの合成されたまたは特別に調製されたマイクロ粒子およびマイクロキャリア、あるいはキトサン粒子、プルロニックブロック共重合体などのデポー形成剤、ムラミルジペプチドなどの、特別に修飾または調製されたペプチド、RC529などのアミノアルキルグルコサミニド4-リン酸、あるいは細菌トキソイドまたは毒素断片などのタンパク質を含みうるが、これらに限定されることはない。
【0111】
いくつかの態様において、さらなる薬剤は、トール様受容体(TLR)、具体的にはTLR 2、3、4、5、7、8、9および/またはその組み合わせを含むがこれらに限定されない、パターン認識受容体(PRR)に対するアゴニストを含む。いくつかの態様において、さらなる薬剤は、トール様受容体3に対するアゴニスト、トール様受容体7および8に対するアゴニスト、またはトール様受容体9に対するアゴニストを含み; 好ましくは、引用されている免疫賦活剤は、イミダゾキノリン; 例えばR848; アデニン誘導体、例えば米国特許第6,329,381号、米国公開特許出願第2010/0075995号、もしくはWO 2010/018132に開示されているもの; 免疫賦活性DNA; または免疫賦活性RNAを含む。いくつかの態様において、さらなる薬剤はまた、限定されるものではないが、dsRNA、ポリI:CもしくはポリI:ポリC12U (Ampligen(登録商標)として入手可能、ポリI:CもポリI:ポリC12UもともにTLR3刺激剤として知られている)、および/またはF. Heil et al., 「Species-Specific Recognition of Single-Stranded RNA via Toll-like Receptor 7 and 8」 Science 303(5663), 1526-1529 (2004); J. Vollmer et al., 「Immune modulation by chemically modified ribonucleosides and oligoribonucleotides」 WO 2008033432 A2; A. Forsbach et al., 「Immunostimulatory oligoribonucleotides containing specific sequence motif(s) and targeting the Toll-like receptor 8 pathway」 WO 2007062107 A2; E. Uhlmann et al., 「Modified oligoribonucleotide analogs with enhanced immunostimulatory activity」 米国特許出願公開第US 2006241076号; G. Lipford et al., 「Immunostimulatory viral RNA oligonucleotides and use for treating cancer and infections」 WO 2005097993 A2; G. Lipford et al., 「Immunostimulatory G,U-containing oligoribonucleotides, compositions, and screening methods」 WO 2003086280 A2に開示されているものなどの、免疫賦活性RNA分子を含みうる。いくつかの態様において、さらなる薬剤は細菌性リポ多糖(LPS)、VSV-G、および/またはHMGB-1などの、TLR-4アゴニストでありうる。いくつかの態様において、さらなる薬剤は、限定されるものではないが、米国特許第6,130,082号、同第6,585,980号、および同第7,192,725号に開示されているものを含む、フラジェリンなどのTLR-5アゴニスト、またはその部分もしくは誘導体を含みうる。
【0112】
いくつかの態様において、さらなる薬剤は、壊死細胞から放出される炎症誘発性刺激(例えば、尿酸塩結晶)でありうる。いくつかの態様において、さらなる薬剤は、補体カスケードの活性化された成分(例えば、CD21、CD35など)でありうる。いくつかの態様において、さらなる薬剤は、免疫複合体の活性化された成分でありうる。さらなる薬剤は、CD21またはCD35に結合する分子などの、補体受容体アゴニストも含む。いくつかの態様において、補体受容体アゴニストは、合成ナノキャリアの内因性補体オプソニン化を誘導する。いくつかの態様において、免疫賦活剤は、細胞により放出され、細胞間の相互作用、伝達および他の細胞の挙動に特定の効果を及ぼす小タンパク質または生物学的因子(5 kD~20 kDの範囲内)である、サイトカインである。いくつかの態様において、サイトカイン受容体アゴニストは、小分子、抗体、融合タンパク質、またはアプタマーである。
【0113】
B. 免疫療法
いくつかの態様において、さらなる治療法は、がん免疫療法を含む。がん免疫療法(免疫腫瘍学と呼ばれることもあり、IOと略される)は、がんを処置するための免疫系の使用である。免疫療法は能動的、受動的またはハイブリッド(能動的および受動的)に分類することができる。これらのアプローチは、がん細胞がその表面に、腫瘍関連抗原(TAA)として知られる、免疫系により検出されうる分子を有することが多いという事実を利用しており; それらはタンパク質または他の高分子(例えば炭水化物)であることが多い。能動免疫療法は、TAAをターゲティングすることによって腫瘍細胞を攻撃するように免疫系に指令する。受動免疫療法は、既存の抗腫瘍応答を増強し、モノクローナル抗体、リンパ球およびサイトカインの使用を含む。免疫療法は当技術分野において公知であり、いくつかを以下に記述する。
【0114】
1. 共刺激分子の阻害
いくつかの態様において、免疫療法は共刺激分子の阻害剤を含む。いくつかの態様において、阻害剤は、B7-1 (CD80)、B7-2 (CD86)、CD28、ICOS、OX40 (TNFRSF4)、4-1BB (CD137; TNFRSF9)、CD40L (CD40LG)、GITR (TNFRSF18)の阻害剤、およびその組み合わせを含む。阻害剤は、阻害性の抗体、ポリペプチド、化合物、および核酸を含む。
【0115】
2. 樹状細胞療法
樹状細胞療法は、樹状細胞に腫瘍抗原をリンパ球へ提示させ、それによってリンパ球を活性化し、抗原を提示している他の細胞を死滅化するようにリンパ球を刺激することによって抗腫瘍応答を惹起する。樹状細胞は、哺乳動物免疫系における抗原提示細胞(APC)である。がん処置において、樹状細胞はがん抗原のターゲティングを助ける。樹状細胞に基づく細胞がん治療の一例は、シプリューセル-Tである。
【0116】
樹状細胞に腫瘍抗原を提示するように誘導する1つの方法は、自己由来腫瘍溶解物または短いペプチド(がん細胞上のタンパク質抗原に対応するタンパク質の小さな部分)をワクチン接種することによるものである。これらのペプチドは、免疫および抗腫瘍応答を高めるためにアジュバント(免疫原性の高い物質)と組み合わせて与えられることが多い。他のアジュバントは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などの、樹状細胞を誘引および/または活性化するタンパク質または他の化学物質を含む。
【0117】
樹状細胞は腫瘍細胞にGM-CSFを発現させることによりインビボで活性化することもできる。これは、腫瘍細胞を遺伝子操作してGM-CSFを産生させることにより、またはGM-CSFを発現する腫瘍溶解性ウイルスを腫瘍細胞に感染させることにより達成することができる。
【0118】
別の戦略は、樹状細胞を患者の血液から除去し、それらを体外で活性化することである。樹状細胞は、単一の腫瘍特異的ペプチド/タンパク質または腫瘍細胞溶解物(破壊された腫瘍細胞の溶液)でありうる、腫瘍抗原の存在下で活性化される。これらの細胞(選択的なアジュバントを有する)が注入され、免疫応答を惹起する。
【0119】
樹状細胞療法は、樹状細胞の表面の受容体に結合する抗体の使用を含む。抗原を抗体に加えることができ、樹状細胞を成熟へ誘導し、腫瘍に対する免疫を提供することができる。TLR3、TLR7、TLR8またはCD40などの樹状細胞受容体が抗体標的として用いられている。
【0120】
3. CAR-T細胞療法
キメラ抗原受容体(キメラ免疫受容体、キメラT細胞受容体または人工T細胞受容体としても知られている、CAR)は、がん細胞をターゲティングする免疫細胞と新しい特異性を組み合わせた操作された受容体である。通常、これらの受容体はモノクローナル抗体の特異性をT細胞へ移植する。受容体は、異なる供給源からの部分が融合しているため、キメラと呼ばれる。CAR-T細胞療法は、がん治療のためにそのような形質転換細胞を用いる処置を指す。
【0121】
CAR-T細胞デザインの基本原理には、抗原結合機能とT細胞活性化機能を組み合わせた組換え受容体が含まれる。CAR-T細胞の一般的な前提は、がん細胞に見られるマーカーをターゲティングするようにされたT細胞を人工的に作出することである。科学者らは人からT細胞を取り除き、それらを遺伝的に改変し、がん細胞を攻撃するためにそれらを患者に戻すことができる。T細胞がCAR-T細胞になるように操作されると、それは「生きている薬物」として作用する。CAR-T細胞は、細胞外リガンド認識ドメインと細胞内シグナル伝達分子との間にリンクを作出し、これがT細胞を活性化する。細胞外リガンド認識ドメインは通常、一本鎖可変断片(scFv)である。CAR-T細胞療法の安全性の重要な局面は、正常細胞ではなく、がん性腫瘍細胞だけがターゲティングされることを確実にする方法である。CAR-T細胞の特異性は、ターゲティングされる分子の選択によって決定される。
【0122】
例示的なCAR-T療法としてはチサゲンレクルユーセル(Tisagenlecleucel) (キムリア(Kymriah))およびアキシカブタゲンシロルユーセル(Axicabtagene ciloleucel) (イエスカルタ(Yescarta))が挙げられる。いくつかの態様において、CAR-T療法はCD19を標的とする。
【0123】
4. サイトカイン療法
サイトカインは、腫瘍内に存在する多くのタイプの細胞によって産生されるタンパク質である。それらは免疫応答を調節することができる。腫瘍は、多くの場合、サイトカインを利用して腫瘍を成長させ、免疫応答を低減させる。これらの免疫調節効果により、免疫応答を惹起させる薬物としてそれらを用いることが可能になる。一般的に用いられる2つのサイトカインは、インターフェロンおよびインターロイキンである。
【0124】
インターフェロンは免疫系によって産生される。それらは通常、抗ウイルス応答に関与しているが、がんにも使われている。それらは3つの群に分類される: タイプI (IFNαおよびIFNβ)、タイプII (IFNγ)ならびにタイプIII (IFNλ)。
【0125】
インターロイキンは、数々の免疫系効果を有する。IL-2は例示的なインターロイキンサイトカイン療法である。
【0126】
5. 養子T細胞療法
養子T細胞療法は、T細胞の輸血(養子細胞移入)による受動免疫の一形態である。T細胞は血液および組織中に見られ、通常、外来病原体を見つけると活性化する。具体的には、T細胞の表面受容体が、表面抗原上に外来タンパク質の一部を提示する細胞に遭遇すると、T細胞は活性化する。これらは感染細胞または抗原提示細胞(APC)のいずれかであることができる。それらは正常組織中および腫瘍組織中に見られ、その場合、それらは腫瘍浸潤リンパ球(TIL)として知られている。それらは、腫瘍抗原を提示する樹状細胞などのAPCの存在により活性化される。これらの細胞は腫瘍を攻撃しうるが、腫瘍内の環境は免疫抑制性が高く、免疫介在性の腫瘍死を防ぐ。
【0127】
腫瘍を標的としたT細胞を産生および取得する複数の方法が開発されている。腫瘍抗原に特異的なT細胞は、腫瘍サンプルから除去する(TIL)か、血液からろ過することができる。その後の活性化および培養はエクスビボで実施され、その結果、再注入される。活性化は、遺伝子治療を通じて、またはT細胞を腫瘍抗原に曝露することによって行うことができる。
【0128】
6. チェックポイント阻害剤および併用処置
いくつかの態様において、さらなる治療法は、免疫チェックポイント阻害剤を含む。ある種の態様を以下にさらに記述する。
【0129】
PD-1は、T細胞が感染または腫瘍に遭遇する腫瘍微小環境において作用することができる。活性化されたT細胞はPD-1を上方制御し、末梢組織においてPD-1を発現し続ける。IFN-ガンマなどのサイトカインは、上皮細胞および腫瘍細胞でのPDL1の発現を誘導する。PDL2はマクロファージおよび樹状細胞に発現する。PD-1の主な役割は、末梢でのエフェクタT細胞の活性を制限し、免疫応答中の組織への過度の損傷を防ぐことである。本開示の阻害剤は、PD-1および/またはPDL1活性の1つまたは複数の機能を遮断しうる。
【0130】
「PD-1」の代替名には、CD279およびSLEB2が含まれる。「PDL1」の代替名には、B7-H1、B7-4、CD274、およびB7-Hが含まれる。「PDL2」の代替名には、B7-DC、Btdc、およびCD273が含まれる。いくつかの態様において、PD-1、PDL1、およびPDL2は、ヒトPD-1、PDL1、およびPDL2である。
【0131】
いくつかの態様において、PD-1阻害剤は、PD-1とそのリガンド結合パートナーの結合を阻害する分子である。特定の局面において、PD-1リガンド結合パートナーはPDL1および/またはPDL2である。別の態様において、PDL1阻害剤は、PDL1とそのリガンド結合パートナーの結合を阻害する分子である。特定の局面において、PDL1結合パートナーはPD-1および/またはB7-1である。別の態様において、PDL2阻害剤は、PDL2とそのリガンド結合パートナーの結合を阻害する分子である。特定の局面において、PDL2結合パートナーはPD-1である。阻害剤は抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドでもよい。例示的な抗体は米国特許第8,735,553号、同第8,354,509号、および同第8,008,449号に記述されており、全てが参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において提供される方法および組成物で用いるための他のPD-1阻害剤は、米国特許出願公開第US2014/0294898号、同第US2014/022021号、および同第US2011/0008369号に記述のように当技術分野において公知であり、これらは全て参照により本明細書に組み入れられる。
【0132】
いくつかの態様において、PD-1阻害剤は抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの態様において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、およびピディリズマブからなる群より選択される。いくつかの態様において、PD-1阻害剤は、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)と融合したPDL1またはPDL2の細胞外部分またはPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの態様において、PDL1阻害剤はAMP-224を含む。ニボルマブはMDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、およびOPDIVO(登録商標)としても知られ、WO2006/121168に記述の抗PD-1抗体である。ペンブロリズマブはMK-3475、Merck3475、ランブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)、およびSCH-900475としても知られ、WO2009/114335に記述の抗PD-1抗体である。ピディリズマブはCT-011、hBAT、またはhBAT-1としても知られ、WO2009/101611に記述の抗PD-1抗体である。AMP-224はB7-DCIgとしても知られ、WO2010/027827およびWO2011/066342に記述のPDL2-Fc融合可溶性受容体である。さらなるPD-1阻害剤は、AMP-514としても知られるMEDI0680、およびREGN2810を含む。
【0133】
いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、MEDI4736としても知られるデュルバルマブ、MPDL3280Aとしても知られるアテゾリズマブ、MSB00010118Cとしても知られるアベルマブ、MDX-1105、BMS-936559、またはそれらの組み合わせなどのPDL1阻害剤である。ある種の局面において、免疫チェックポイント阻害剤は、rHIgM12B7などのPDL2阻害剤である。
【0134】
いくつかの態様において、阻害剤はニボルマブ、ペンブロリズマブ、またはピディリズマブの重鎖および軽鎖CDRまたはVRを含む。したがって、1つの態様において、阻害剤は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、またはピディリズマブのVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメイン、ならびにニボルマブ、ペンブロリズマブ、またはピディリズマブのVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の態様において、前記抗体は、前述した抗体と同じ、PD-1、PDL1、もしくはPDL2上のエピトープとの結合において競合する、および/または前述した抗体と同じ、PD-1、PDL1、もしくはPDL2上のエピトープに結合する。別の態様において、前記抗体は、上述した抗体と少なくとも約70、75、80、85、90、95、97、もしくは99% (またはその中で導出可能な範囲)の可変領域アミノ酸配列同一性を有する。
【0135】
本明細書において提供される方法において標的にされることができる別の免疫チェックポイントは、CD152としても知られる細胞傷害性Tリンパ球タンパク質4 (CTLA-4)である。ヒトCTLA-4の完全cDNA配列はGenbankアクセッション番号L15006を有する。CTLA-4はT細胞表面に見出され、抗原提示細胞の表面上のB7-1 (CD80)またはB7-2 (CD86)に結合すると「オフ」スイッチとして働く。CTLA4は、ヘルパーT細胞表面に発現し、阻害シグナルをT細胞に伝達する免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CTLA4はT細胞補助刺激タンパク質であるCD28に類似し、両分子とも、抗原提示細胞上のB7-1およびB7-2に結合する。CTLA-4は阻害シグナルをT細胞に伝達するのに対して、CD28は刺激シグナルを伝達する。細胞内CTLA-4は調節性T細胞の中にも見出され、その機能にとって重要である可能性がある。T細胞受容体およびCD28を介してT細胞が活性化されると、B7分子に対する抑制性受容体であるCTLA-4の発現が増加する。本開示の阻害剤は、CTLA-4、B7-1、および/またはB7-2活性の1つまたは複数の機能を遮断しうる。いくつかの態様において、阻害剤はCTLA-4およびB7-1相互作用を遮断する。いくつかの態様において、阻害剤はCTLA-4およびB7-2相互作用を遮断する。
【0136】
いくつかの態様において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、もしくはキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドである。
【0137】
本発明の方法で用いるのに適した抗ヒト-CTLA-4抗体(またはそれに由来するVHドメインおよび/もしくはVLドメイン)は、当技術分野において周知の方法を用いて作製することができる。あるいは、当技術分野において認められている抗CTLA-4抗体を用いることができる。例えば、米国特許第8,119,129号、WO01/14424、WO98/42752;WO00/37504 (CP675,206、トレメリムマブ; 以前はチシリムマブ(ticilimumab)としても知られる)、米国特許第6,207,156号; Hurwitz et al., 1998に開示される抗CTLA-4抗体は、本明細書において開示される方法において用いることができる。前述した刊行物のそれぞれの開示は参照により本明細書に組み入れられる。CTLA-4との結合では、これらの当技術分野において認められている任意の抗体と競合する抗体も用いることができる。例えば、ヒト化CTLA-4抗体は、国際特許出願番号WO2001/014424、WO2000/037504、および米国特許第8,017,114号に記述されており、全てが参照により本明細書に組み入れられる。
【0138】
本開示の方法および組成物においてチェックポイント阻害剤として有用なさらなる抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(10D1、MDX-010、MDX-101、およびYervoy(登録商標)としても知られる)またはその抗原結合断片および変種である(例えば、WO01/14424を参照されたい)。
【0139】
いくつかの態様において、阻害剤はトレメリムマブまたはイピリムマブの重鎖および軽鎖CDRまたはVRを含む。したがって、1つの態様において、阻害剤は、トレメリムマブまたはイピリムマブのVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメイン、ならびにトレメリムマブまたはイピリムマブのVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3ドメインを含む。別の態様において、前記抗体は、前述した抗体と同じ、PD-1、B7-1、もしくはB7-2上のエピトープとの結合において競合する、および/または前述した抗体と同じ、PD-1、B7-1、もしくはB7-2上のエピトープに結合する。別の態様において、前記抗体は、上述した抗体と少なくとも約70、75、80、85、90、95、97、もしくは99% (またはその中で導出可能な範囲)の可変領域アミノ酸配列同一性を有する。
【0140】
C. 腫瘍溶解性ウイルス
いくつかの態様において、さらなる治療法は、腫瘍溶解性ウイルスを含む。腫瘍溶解性ウイルスは、選択的にがん細胞に感染し、がん細胞を死滅化するウイルスである。感染したがん細胞が腫瘍溶解によって破壊されると、それらは新しい感染性ウイルス粒子またはビリオンを放出して、残存している腫瘍を破壊するのを助ける。腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞の直接破壊を引き起こすだけでなく、長期免疫療法のために宿主の抗腫瘍免疫応答を刺激すると考えられている。
【0141】
D. 多糖類
いくつかの態様において、さらなる治療法は多糖類を含む。キノコに見出されるある種の化合物、主に多糖類は、免疫系を上方制御することができ、抗がん特性を持ちうる。例えば、レンチナンなどのベータ-グルカンは、マクロファージ、NK細胞、T細胞および免疫系サイトカインを刺激することが実験室での研究において示されており、免疫学的アジュバントとして臨床試験で調べられている。
【0142】
E. 新生抗原
いくつかの態様において、さらなる治療法は新生抗原の投与を含む。多くの腫瘍は変異を発現している。これらの変異は、T細胞免疫療法で用いるための新しくターゲティング可能な抗原(新生抗原)を潜在的に作出する。RNA配列決定データを用いて特定された、がん病変におけるCD8+ T細胞の存在は、変異負荷の高い腫瘍において高くなる。ナチュラルキラー細胞およびT細胞の細胞溶解活性に関連する転写物のレベルは、多くのヒト腫瘍における変異負荷と正の相関がある。
【0143】
F. 化学療法
いくつかの態様において、さらなる治療法は化学療法を含む。化学療法剤の適当なクラスは、(a) アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド(cylophosphamide)、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えば、ヘキサメチルメラミン、チオテパ)、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、ロムスチン、クロロゾトシン(chlorozoticin)、ストレプトゾシン)およびトリアジン(例えば、ジカルバジン)、(b) 代謝拮抗薬、例えば葉酸類似体(例えば、メトトレキサート)、ピリミジン類似体(例えば、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、アザウリジン)およびプリン類似体ならびに関連物質(例えば、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、ペントスタチン)、(c) 天然産物、例えばビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、テニポシド)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシンおよびミトキサントロン)、酵素(例えば、L-アスパラギナーゼ)、ならびに生物学的応答修飾物質(例えば、インターフェロン-α)、ならびに(d) 種々の作用物質(Miscellaneous Agents)、例えば白金配位錯体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、置換尿素(例えば、ヒドロキシ尿素)、メチルヒドラジン(methylhydiazine)誘導体(例えば、プロカルバジン)、および副腎皮質抑制剤(adreocortical suppressant) (例えば、タキソールおよびミトタン)を含む。いくつかの態様において、シスプラチンは特に適当な化学療法剤である。
【0144】
シスプラチンは、例えば、転移性精巣がんもしくは卵巣がん、進行性膀胱がん、頭頸部がん、子宮頸がん、肺がんまたは他の腫瘍などのがんを処置するために広く用いられてきた。シスプラチンは経口的に吸収されず、それゆえ、例えば、静脈内、皮下、腫瘍内または腹腔内注射などの他の経路を介して送達しなければならない。シスプラチンは単独でまたは他の薬剤との組み合わせで用いることができ、ある種の態様では計3過程について3週間ごとに5日間、約15 mg/m2から約20 mg/m2を含め臨床用途において用いられる有効用量が企図される。いくつかの態様において、治療用ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたEgr-1プロモーターを含む構築体と併せて細胞および/または対象に送達されるシスプラチンの量は、シスプラチンを単独で用いる場合に送達されるであろう量よりも少ない。
【0145】
他の適当な化学療法剤は、抗微小管剤、例えば、パクリタキセル(「タキソール」)および塩酸ドキソルビシン(「ドキソルビシン」)を含む。アデノウイルスベクターおよびドキソルビシンを介して送達されるEgr-1プロモーター/TNFα構築体の組み合わせは、化学療法および/またはTNF-αに対する耐性を克服するのに効果的であることが確認されており、このことから、構築体およびドキソルビシンによる併用処置がドキソルビシンおよびTNF-αの両方に対する耐性を克服することが示唆される。
【0146】
ドキソルビシンは吸収が不十分であり、好ましくは静脈内投与される。ある種の態様において、成体に適切な静脈内用量は、約21日間隔で約60 mg/m2から約75 mg/m2または約3週間から約4週間間隔で繰り返される2日もしくは3日連続のそれぞれで約25 mg/m2から約30 mg/m2または週に1回、約20 mg/m2を含む。最低用量は、以前の化学療法によって引き起こされた以前の骨髄抑制もしくは腫瘍性骨髄浸潤がある場合、または薬物が他の骨髄造血抑制薬と組み合わされている場合、高齢患者において用いられるべきである。
【0147】
ナイトロジェンマスタードは、本開示の方法において有用な別の適当な化学療法剤である。ナイトロジェンマスタードは、メクロレタミン(HN2)、シクロホスファミドおよび/またはイホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)、ならびにクロラムブシルを含みうるが、これらに限定されることはない。シクロホスファミド(シトキサン(CYTOXAN)(登録商標))はMead Johnsonから入手可能であり、NEOSTAR(登録商標)はAdriaから入手可能であり)、別の適当な化学療法剤である。成体に適した経口用量は、例えば、約1 mg/kg/日から約5 mg/kg/日を含み、静脈内用量は、例えば、最初に約2日から約5日にわたり分割用量で約40 mg/kgから約50 mg/kg、または約7日から約10日ごとに約10 mg/kgから約15 mg/kgまたは週2回、約3 mg/kgから約5 mg/kg、または約1.5 mg/kg/日から約3 mg/kg/日を含む。胃腸への悪影響のため、静脈内経路が好ましい。薬物はまた、筋肉内に、浸潤によりまたは体腔内に投与されることもある。
【0148】
さらなる適当な化学療法剤は、シタラビン(シトシンアラビノシド)、5-フルオロウラシル(フルオロウラシル; 5-FU)およびフロクスウリジン(フルオロデ-オキシウリジン; FudR)などの、ピリミジン類似体を含む。5-FUは、約7.5から約1000 mg/m2のどこかの投与量で対象に投与されうる。さらに、5-FU投薬スケジュールは種々の期間、例えば、最大6週間、または本開示が関連する当業者によって決定されるものでありうる。
【0149】
別の適当な化学療法剤であるゲムシタビン二リン酸(GEMZAR(登録商標), Eli Lilly & Co., 「ゲムシタビン」)は、進行性および転移性膵臓がんの処置に推奨され、それゆえ、同様にこれらのがんに対し本開示において有用であろう。
【0150】
患者に送達される化学療法剤の量は可変でありうる。1つの適当な態様において、化学療法剤は、化学療法が構築体とともに投与される場合、宿主におけるがんの停止または退行を引き起こすのに有効な量で投与されうる。他の態様において、化学療法剤は、化学療法剤の化学療法有効量よりも2から10,000倍少ないどこかの量で投与されうる。例えば、化学療法剤は、化学療法剤の化学療法有効量よりも約20倍少ない、約500倍少ない、またはさらには約5000倍少ない量で投与されうる。本開示の化学療法薬は、構築体との組み合わせでの所望の治療活性について、および有効な投与量の決定について、インビボで試験することができる。例えば、そのような化合物はヒトでの試験の前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギなどを含むが、これらに限定されない、適当な動物モデル系で試験することができる。実施例に記述されているように、インビトロ試験を用いて、適当な組み合わせおよび投与量を決定することもできる。
【0151】
G. 放射線療法
いくつかの態様において、さらなる治療法または以前の治療法は、電離放射線などの放射線を含む。本明細書において用いられる場合、「電離放射線」は、十分なエネルギーを有するか、または電離(電子の獲得もしくは喪失)を生み出すための核相互作用を介して十分なエネルギーを生み出すことができる粒子または光子を含む放射線を意味する。例示的なかつ好ましい電離放射線は、x線である。標的組織または細胞にx線を送達するための手段は、当技術分野において周知である。
【0152】
いくつかの態様において、電離放射線の量は20 Gyより大きく、1回の線量で投与される。いくつかの態様において、電離放射線の量は18 Gyであり、3回の線量で投与される。いくつかの態様において、電離放射線の量は少なくとも2、4、6、8、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、18、19、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは40 Gy (またはその中で導出可能な任意の範囲)、多くとも2、4、6、8、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、18、19、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは40 Gy (またはその中で導出可能な任意の範囲)、あるいは正確に2、4、6、8、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、18、19、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは40 Gy (またはその中で導出可能な任意の範囲)である。いくつかの態様において、電離放射線は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回(またはその中で導出可能な任意の範囲)、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回(またはその中で導出可能な任意の範囲)、あるいは正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回(またはその中で導出可能な任意の範囲)の線量で投与される。2回以上の線量が投与される場合、線量は約1、4、8、12、もしくは24時間または1、2、3、4、5、6、7、もしくは8日または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、もしくは16週間、あるいはその中で導出可能な任意の範囲の間隔を空けてもよい。
【0153】
いくつかの態様において、IRの量はIRの総線量として提示されてもよく、それが分割線量で投与される。例えば、いくつかの態様において、総線量は、各5 Gyの10回の分割線量で投与される50 Gyである。いくつかの態様において、総線量は、各2~3 Gyの20~60回の分割線量で投与される50~90 Gyである。いくつかの態様において、IRの総線量は少なくとも20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、125、130、135、140、もしくは150 (またはその中で導出可能な任意の範囲)、多くとも20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、125、130、135、140、もしくは150 (またはその中で導出可能な任意の範囲)、あるいは約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、125、130、135、140、もしくは150 (またはその中で導出可能な任意の範囲)である。いくつかの態様において、総線量は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50 Gy (またはその中で導出可能な任意の範囲)、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50 Gy (またはその中で導出可能な任意の範囲)、あるいは正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、15、20、25、30、35、40、45、もしくは50 Gy (またはその中で導出可能な任意の範囲)の分割線量で投与される。いくつかの態様において、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100回(またはその中で導出可能な任意の範囲)、多くとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100回(またはその中で導出可能な任意の範囲)、あるいは正確に2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは100回(またはその中で導出可能な任意の範囲)の分割線量が投与される。いくつかの態様において、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12回(またはその中で導出可能な任意の範囲)、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12回(またはその中で導出可能な任意の範囲)、あるいは正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12回(またはその中で導出可能な任意の範囲)の分割線量が1日当たり投与される。いくつかの態様において、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30回(またはその中で導出可能な任意の範囲)、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30回(またはその中で導出可能な任意の範囲)、あるいは正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30回(またはその中で導出可能な任意の範囲)の分割線量が1週間当たり投与される。
【0154】
H. 外科手術
がんを有する人のおよそ60%は、予防手術、診断、または進行度診断のための手術、根治的手術、および姑息的手術を含む何らかの種類の外科手術を受ける。根治的手術は、がん組織の全てまたは一部が物理的に除去、切除、および/または破壊される切除を含み、本発明の態様の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、および/または代替療法などの他の療法とともに用いられる場合がある。腫瘍切除とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を指す。腫瘍切除に加えて、外科手術による処置は、レーザー手術、凍結手術、電気手術、および顕微鏡的に管理される手術(microscopically-controlled surgery) (モース術)を含む。
【0155】
がんの細胞、組織、または腫瘍の一部または全てを切除すると体内に空洞が形成されることがある。処置は、その領域にさらなる抗がん療法を灌流、直接注射、または局所適用することによって行われてもよい。そのような処置は、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、もしくは7日ごとに、または1週間、2週間、3週間、4週間、および5週間ごとに、または1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、もしくは12ヶ月ごとに繰り返されてもよい。これらの処置もさまざまな投与量の処置であってもよい。
【0156】
I. 他の作用物質
処置の治療有効性を改善するために、本発明の態様のある種の局面と組み合わせて他の作用物質が用いられうることが企図される。これらのさらなる作用物質には、細胞表面受容体およびギャップ結合の上方制御に影響を及ぼす作用物質、細胞分裂停止物質および分化物質、細胞接着阻害剤、アポトーシス誘導物質に対する過剰増殖性細胞の感受性を高める作用物質、または他の生物学的作用物質が含まれる。ギャップ結合数を増やすことで細胞間シグナル伝達を増大させると、付近の過剰増殖性細胞集団に対する抗過剰増殖作用が増大する。他の態様において、処置の抗過剰増殖有効性を改善するために、細胞分裂停止物質または分化物質は本発明の態様のある種の局面と組み合わせて用いることができる。細胞接着阻害剤は本発明の態様の有効性を改善することが企図される。細胞接着阻害剤の例は局所接着キナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンである。処置有効性を改善するために、アポトーシスに対する過剰増殖性細胞の感受性を高める他の作用物質、例えば、抗体c225を本発明の態様のある種の局面と併用できることがさらに企図される。
【0157】
V. タンパク質性組成物
本明細書において用いられる場合、「タンパク質」、「ペプチド」または「ポリペプチド」は、少なくとも5つのアミノ酸残基を含む分子を指す。本明細書において用いられる場合、「野生型」という用語は、生物において天然に存在する分子の内因性バージョンを指す。いくつかの態様において、タンパク質またはポリペプチドの野生型バージョンが利用されるが、しかし、本開示の多くの態様において、免疫応答をもたらすために修飾されたタンパク質またはポリペプチドが利用される。上記の用語は互換的に用いられうる。「修飾タンパク質」または「修飾ポリペプチド」または「変種」は、その化学構造、特にそのアミノ酸配列が野生型タンパク質またはポリペプチドに対して改変されているタンパク質またはポリペプチドを指す。いくつかの態様において、修飾/変種タンパク質またはポリペプチドは、少なくとも1つの修飾された活性または機能を有する(タンパク質またはポリペプチドが複数の活性または機能を有しうることを認識する)。修飾/変種タンパク質またはポリペプチドは、1つの活性または機能に関して改変されうるが、免疫原性などの他の点において野生型の活性または機能を保持しうることが特に企図される。
【0158】
タンパク質が本明細書において具体的に言及される場合、それは一般に、天然(野生型)もしくは組換え(修飾)タンパク質または、任意で、任意のシグナル配列が除去されたタンパク質への言及である。タンパク質は、それが天然である生物から直接単離され、組換えDNA/外因性発現法により産生され、または固相ペプチド合成(SPPS)もしくは他のインビトロ法により産生されうる。特定の態様においては、ポリペプチド(例えば、抗体またはその断片)をコードする核酸配列を組み込んだ単離された核酸セグメントおよび組換えベクターがある。「組換え」という用語は、ポリペプチドまたは特定のポリペプチドの名称と組み合わせて用いられうるが、これは一般に、インビトロで操作されたまたはそのような分子の複製産物である、核酸分子から産生されるポリペプチドを指す。
【0159】
ある種の態様において、SEQ ID NO:5のペプチド、またはSEQ ID NO:2、4、6~11、13、もしくは15のTCRの態様を含む本開示のペプチドまたはタンパク質などの、ペプチド、タンパク質、またはポリペプチド(野生型または修飾型)のサイズは、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1750、2000、2250、2500個のアミノ酸残基もしくはそれ以上、およびその中で導出可能な任意の範囲、多くとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1750、2000、2250、2500個のアミノ酸残基もしくはそれ以上、およびその中で導出可能な任意の範囲、または約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1750、2000、2250、2500個のアミノ酸残基もしくはそれ以上、およびその中で導出可能な任意の範囲を含みうるが、これらに限定されることはない。ポリペプチドは、トランケーションにより変異され、対応するその野生型の形態よりも短くされることもあり、また、異種タンパク質またはポリペプチド配列を特定の機能(例えば、ターゲティングまたは局在化のための、免疫原性の増強のための、精製目的のためなどの)と融合またはコンジュゲートすることにより改変されうることが企図される。
【0160】
本開示のポリペプチド、タンパク質、またはそのようなポリペプチドもしくはタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは50個(またはその中で導出可能な任意の範囲)またはそれ以上、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは50個(またはその中で導出可能な任意の範囲)またはそれ以上、正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは50個(またはその中で導出可能な任意の範囲)またはそれ以上、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは50個(またはその中で導出可能な任意の範囲)またはそれ以上の変種アミノ酸または核酸置換を含みうるか、あるいはSEQ ID NO:1~15の、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、もしくは1000個、または多くとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、もしくは1000個の連続するアミノ酸または核酸と配列が少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100% (またはその中で導出可能な任意の範囲)類似、同一、または相同でありうる。ある種の態様において、ペプチドまたはポリペプチドは、天然に存在しない、および/またはペプチドもしくはポリペプチドの組み合わせにおけるものである。
【0161】
いくつかの態様において、タンパク質もしくはポリペプチドまたは核酸は、SEQ ID NO:1~15の1つのアミノ酸または核酸1~2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、もしくは300個(またはその中で導出可能な任意の範囲)を含みうる。いくつかの態様において、本開示のペプチドは、SEQ ID NO: 2、4、5~11、13、または15の1つの3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、または270個の連続するアミノ酸を含むまたはからなるペプチドのカルボキシ末端に隣接するおよび/またはアミノ末端に隣接する少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは50個(またはその中で導出可能な任意の範囲)、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは50個(またはその中で導出可能な任意の範囲)、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは50個(またはその中で導出可能な任意の範囲)、あるいは正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、もしくは50個(またはその中で導出可能な任意の範囲)を含む。
【0162】
いくつかの態様において、タンパク質、ポリペプチド、または核酸はSEQ ID NO: 2、4、5~11、13、または15の1つの少なくとも1、2、3、44、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、もしくは270個(またはその中で導出可能な任意の範囲)、多くとも1、2、3、44、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、もしくは270個(またはその中で導出可能な任意の範囲)、正確に1、2、3、44、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、もしくは270個(またはその中で導出可能な任意の範囲)、あるいは約1、2、3、44、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、もしくは270個(またはその中で導出可能な任意の範囲)の連続するアミノ酸を含みうる。
【0163】
いくつかの態様において、ポリペプチド、タンパク質、または核酸はSEQ ID NO:1~15の1つと少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100% (またはその中で導出可能な任意の範囲)、多くとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100% (またはその中で導出可能な任意の範囲)、あるいは正確に60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100% (またはその中で導出可能な任意の範囲)類似、同一、または相同であるSEQ ID NO:1~15の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20個(またはその中で導出可能な任意の範囲)、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20個(またはその中で導出可能な任意の範囲)、あるいは正確に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20個(またはその中で導出可能な任意の範囲)の連続するペプチドアミノ酸または核酸を含みうる。
【0164】
いくつかの局面においては、SEQ ID NO:1~15の1つの位置番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、または270で始まり、かつSEQ ID NO:1~15の1つの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、もしくは270個(またはその中で導出可能な任意の範囲)、多くとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、もしくは270個(またはその中で導出可能な任意の範囲)、あるいは正確に2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、もしくは270個(またはその中で導出可能な任意の範囲)の連続するアミノ酸を含むポリペプチド、核酸(またはそのようなポリペプチドをコードする核酸分子)がある。
【0165】
本開示の組成物において、1 ml当たり約0.001 mgから約10 mgの総ポリペプチド、ペプチド、および/またはタンパク質が存在するものと企図される。組成物中のタンパク質の濃度は、約0.001、0.010、0.050、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0 mg/mlもしくはそれ以上(またはその中で導出可能な任意の範囲)、少なくとも約0.001、0.010、0.050、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0 mg/mlもしくはそれ以上(またはその中で導出可能な任意の範囲)あるいは多くとも約0.001、0.010、0.050、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0 mg/mlもしくはそれ以上(またはその中で導出可能な任意の範囲)であることができる。
【0166】
以下は、等価なまたは場合によっては改善された、第二世代の変種ポリペプチドまたはペプチドを作製するためにタンパク質のアミノ酸サブユニットを変化させることについての考察である。例えば、ある特定のアミノ酸が、例えば、抗体の抗原結合領域または基質分子上の結合部位などの構造との相互作用結合能のかなりの喪失を伴うまたは伴わないように、タンパク質またはポリペプチド配列中の他のアミノ酸の代わりに用いられうる。タンパク質の機能活性を規定するのはタンパク質の相互作用能および性質であることから、タンパク質配列の中におよび対応するそのDNAコード配列の中にある特定のアミノ酸置換を施し、それでも、類似のまたは望ましい特性を有するタンパク質を産生させることができる。このように、タンパク質をコードする遺伝子のDNA配列において、その生物学的有用性または活性をさほど失わないようにさまざまな変化が施されうるものと本発明者らは企図している。
【0167】
「機能的に等価なコドン」という用語は、アルギニンに対する6種類の異なるコドンなどの同じアミノ酸をコードするコドンを指すために本明細書において用いられる。生物学的に等価なアミノ酸をコードするコドンの変化を指す「中性置換」または「中性変異」も考慮される。
【0168】
本開示のアミノ酸配列変種は、置換変種、挿入変種、または欠失変種であることができる。本開示のポリペプチドの変異は、野生型と比較して、タンパク質またはポリペプチドの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50個、またはそれ以上の非連続または連続アミノ酸に影響を与えうる(またはその中で導出可能な任意の範囲)。変種は、本明細書において提供または言及される任意の配列と、間にある全ての値および範囲を含めて、少なくとも50%、60%、70%、80%、または90%同一である、アミノ酸配列を含むことができる。変種は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個、またはそれ以上の置換アミノ酸を含むことができる。
【0169】
アミノ酸および核酸の配列は、タンパク質の発現が関与している生物学的タンパク質活性の維持を含む上記の基準を満たす限り、それぞれ、さらなるN末端もしくはC末端アミノ酸、または5'もしくは3'配列などのさらなる残基を含むこともあり、それでも本明細書において開示されている配列の1つに記載の通り本質的に同一でありうることも理解されると考えられる。末端配列の付加は核酸配列に特に当てはまり、例えば、コード領域の5'部分または3'部分のいずれか一方に隣接する種々の非コード配列を含むことができる。
【0170】
欠失変種は、典型的には、天然または野生型タンパク質の1つまたは複数の残基を欠損している。個々の残基を欠失させてもよく、またはいくつかの隣接アミノ酸を欠失させてもよい。終止コドンを(置換または挿入により)コード化核酸配列に導入して、切断型タンパク質を作製することができる。
【0171】
挿入変異体は、典型的には、ポリペプチドにおける非末端点でのアミノ酸残基の付加を伴う。これには1つまたは複数のアミノ酸残基の挿入を含めることができる。末端付加体を作製することも可能であり、これらは、本明細書において記述または参照される1つまたは複数のペプチドまたはポリペプチドの多量体または鎖状体である融合タンパク質を含むことができる。
【0172】
置換変種は、典型的には、タンパク質またはポリペプチド内の1つまたは複数の部位での1つのアミノ酸と別のアミノ酸との交換を含み、他の機能または特性を失ってかまたは失うことなく、ポリペプチドについての1つまたは複数の特性を修飾するようにデザインされてもよい。置換は保存的であってもよく、すなわち、1つのアミノ酸が、類似の化学的特性のアミノ酸に置換されてもよい。「保存的アミノ酸置換」は、1つのアミノ酸クラスの成員と同じクラスの別の成員との交換を伴いうる。保存的置換は当技術分野において周知であり、これには、例えば、アラニンのセリンへの、アルギニンのリジンへの、アスパラギンのグルタミンまたはヒスチジンへの、アスパラギン酸のグルタミン酸への、システインのセリンへの、グルタミンのアスパラギンへの、グルタミン酸のアスパラギン酸への、グリシンのプロリンへの、ヒスチジンのアスパラギンまたはグルタミンへの、イソロイシンのロイシンまたはバリンへの、ロイシンのバリンまたはイソロイシンへの、リジンのアルギニンへの、メチオニンのロイシンまたはイソロイシンへの、フェニルアラニンのチロシン、ロイシンまたはメチオニンへの、セリンのスレオニンへの、スレオニンのセリンへの、トリプトファンのチロシンへの、チロシンのトリプトファンまたはフェニルアラニンへの、および、バリンのイソロイシンまたはロイシンへの変化が含まれる。保存的アミノ酸置換は、天然に存在しないアミノ酸残基を包含してもよく、それらは、通常、生物学的システムでの合成によってではなく化学的ペプチド合成によって組み入れられる。これらには、ペプチド模倣体または他の逆型もしくは反転型のアミノ酸部分が含まれる。
【0173】
あるいは、置換はポリペプチドの機能または活性が影響を受けるように「非保存的」であってもよい。非保存的変化は、典型的には、非極性アミノ酸または非荷電アミノ酸の代わりに極性アミノ酸または荷電アミノ酸を用いておよびその逆など、1つのアミノ酸残基を化学的に異なる残基に置換することを含む。非保存的置換は、アミノ酸クラス1つの成員と別のクラスからの成員との交換を伴いうる。
【0174】
当業者は、周知の技法を用いて、本明細書において記載されるようなポリペプチドの適当な変種を決定することができる。当業者は、活性にとって重要であるとは考えられていない領域をターゲティングすることにより、活性を破壊することなく変えられうる分子の適当な領域を同定しうる。当業者はまた、類似のタンパク質またはポリペプチド間で保存されているアミノ酸残基および分子の部分を同定することができるであろう。さらなる態様において、生物学的活性にとってまたは構造にとって重要でありうる領域は、生物学的活性を有意に変化させることなく、またはタンパク質もしくはポリペプチド構造に悪影響を与えることなく、保存的アミノ酸置換を受けうる。
【0175】
そのような変化を加える際には、アミノ酸のヒドロパシー指数が考慮されうる。タンパク質のヒドロパシープロファイルは、各アミノ酸に数値(「ヒドロパシー指数」)を割り当て、次にペプチド鎖に沿ってこれらの値を繰り返し平均することによって計算される。各アミノ酸には、その疎水性および電荷特性に基づいて値が割り当てられている。それらは、イソロイシン(+4.5); バリン(+4.2); ロイシン(+3.8); フェニルアラニン(+2.8); システイン/システイン(+2.5); メチオニン(+1.9); アラニン(+1.8); グリシン(-0.4); スレオニン(-0.7); セリン(-0.8); トリプトファン(-0.9); チロシン(-1.3); プロリン(1.6); ヒスチジン(-3.2); グルタミン酸(-3.5); グルタミン(-3.5); アスパラギン酸(-3.5); アスパラギン(-3.5); リシン(-3.9); およびアルギニン(-4.5)である。相互作用的な生物機能をタンパク質に付与する際のヒドロパシーアミノ酸指数の重要性が当技術分野において一般に理解されている(Kyte et al., J. Mol. Biol. 157:105-131 (1982))。アミノ酸の相対的なヒドロパシー特徴は、結果として生じるタンパク質またはポリペプチドの二次構造に寄与し、その結果として、これが、タンパク質またはポリペプチドと、他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を定義すると受け入れられている。ある種のアミノ酸は、類似のヒドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸に置換され、それでも、類似の生物学的活性を保持しうることも知られている。ヒドロパシー指数に基づいて変化を加える際には、ある種の態様において、ヒドロパシー指数が±2以内であるアミノ酸の置換が含まれる。本発明のいくつかの局面において、±1以内であるものが含まれ、および本発明の他の局面において、±0.5以内のものが含まれる。
【0176】
親水性に基づいて、類似するアミノ酸を効果的に置換できることも当技術分野において理解される。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,554,101号には、隣接するアミノ酸の親水性によって支配されるタンパク質の最大局所平均親水性(greatest local average hydrophilicity)はタンパク質の生物学的特性と相関関係にあることが述べられている。ある種の態様において、隣接するアミノ酸の親水性によって支配されるタンパク質の最大局所平均親水性は、その免疫原性および抗原結合と、すなわち、タンパク質の生物学的特性として相関関係にある。これらのアミノ酸残基には以下の親水性値が割り当てられている: アルギニン(+3.0); リジン(+3.0); アスパラギン酸(+3.0±1); グルタミン酸(+3.0±1); セリン(+0.3); アスパラギン(+0.2); グルタミン(+0.2); グリシン(0); スレオニン(-0.4); プロリン(-0.5±1); アラニン(-0.5); ヒスチジン(-0.5); システイン(-1.0); メチオニン(-1.3); バリン(-1.5); ロイシン(-1.8); イソロイシン(-1.8); チロシン(-2.3); フェニルアラニン(-2.5); およびトリプトファン(-3.4)。類似の親水性値に基づいて変化を加える際には、ある種の態様において、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換が含まれ、他の態様において、±1以内であるものが含まれ、およびさらに他の態様において、±0.5以内のものが含まれる。場合によっては、親水性に基づいて一次アミノ酸配列からエピトープを同定することもできる。これらの領域は「エピトープコア領域」ともいわれる。アミノ酸は、類似の親水性値を有する別のアミノ酸に置換され、それでも、生物学的に等価かつ免疫学的に等価なタンパク質をもたらしうるものと理解される。
【0177】
さらに、当業者は、活性または構造にとって重要である類似のポリペプチドまたはタンパク質中の残基を同定する構造機能研究を再考することができる。そのような比較の見地から、類似のタンパク質の活性または構造に重要なアミノ酸残基に対応するタンパク質中のアミノ酸残基の重要性を予測することができる。当業者は、そのような予測される重要なアミノ酸残基に対しての化学的に類似したアミノ酸置換を選択しうる。
【0178】
当業者は、類似のタンパク質またはポリペプチドにおけるその構造との関連で三次元構造およびアミノ酸配列を分析することもできる。そのような情報を考慮して、当業者は、その三次元構造に関してポリペプチドのアミノ酸残基のアライメントを予測しうる。当業者は、タンパク質の表面にあると予測されるアミノ酸残基については、そのような残基が他の分子との重要な相互作用に関与している可能性があるため、変化を加えないという選択をすることもある。さらに、当業者は、各所望のアミノ酸残基の位置に単一のアミノ酸置換を含む試験変種を作製することが可能である。これらの変種を次に、結合および/または活性についての標準的なアッセイ法を用いてスクリーニングし、かくしてそのような日常的な実験から収集された情報を得ることができ、それにより、当業者は、単独でまたは他の変異との組み合わせでさらなる置換を避けるべきアミノ酸位置を決定することが可能になる。二次構造を決定するために利用できるさまざまなツールは、ワールド・ワイド・ウェブのexpasy.org/proteomics/protein_structureで見出すことができる。
【0179】
本発明のいくつかの態様において、(1) タンパク質分解に対する感受性を低減する、(2) 酸化に対する感受性を低減する、(3) タンパク質複合体を形成するための結合親和性を改変する、(4) リガンドもしくは抗原結合親和性を改変する、および/または(5) そのようなポリペプチドに対して他の物理化学的または機能的特性を付与もしくは修飾する、アミノ酸置換が行われる。例えば、単一または複数のアミノ酸置換(ある種の態様において、保存的アミノ酸置換)が、天然に存在する配列において行われうる。分子間接触を形成するドメインの外側にある抗体のその部分において置換を行うことができる。そのような態様において、タンパク質またはポリペプチドの構造的特徴を実質的に変化させない保存的アミノ酸置換(例えば、天然抗体を特徴付ける二次構造を破壊しない1つまたは複数の置換アミノ酸)を用いることができる。
【0180】
VI. 薬学的調製物
選択された態様において、Hormad1由来ペプチド(例えば、SEQ ID NO:5)、本明細書において開示されるTCR (例えば、SEQ ID NO: 1~4のいずれか)を発現する細胞(例えば、T細胞)、または本開示のTCRの可変領域を含むタンパク質は、がん(例えば、Hormad1を発現する固形腫瘍)に対する対象での治療的免疫応答を誘導するために対象に投与されうることが企図される。対象で用いるための薬学的組成物は、可溶性TCR (造影剤もしくは治療剤に任意で付着されていてもよい)または二重特異性TCRなどの、本明細書において開示されるTCR、および薬学的に許容される担体を含みうる。必要に応じて、薬学的組成物は、さらなる免疫刺激化合物または抗がん剤を含有しうる。
【0181】
「薬学的」、「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という語句は、必要に応じて、例えばヒトなどの、動物に投与される場合に副反応、アレルギー反応または他の有害反応を生じることのない分子的実体および組成物をいう。本明細書において用いられる場合、「薬学的に許容される担体」は、当業者には公知であるように、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存料(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存料、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料、そのような類似の材料およびそれらの組み合わせを含む(例えば、参照により本明細書に組み入れられるRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 22nd edition, Pharmaceutical Press, 2012を参照のこと)。任意の従来の担体が本開示のタンパク質(例えば、Hormad1ペプチド、可溶性TCR)または細胞(例えば、TCRを発現するT細胞)と不適合であるような場合を除き、本発明のワクチン組成物または養子細胞移入療法におけるその使用が企図される。
【0182】
本明細書において用いられる場合、「治療的免疫応答」または「防御的免疫応答」は、がんに対する哺乳類宿主の免疫系による応答を指す。防御的免疫応答は、がんの処置のための治療効果、例えば、腫瘍サイズの減少、生存性の向上などを提供しうる。
【0183】
医学技術分野における通常の技能を有する者は、動物またはヒト患者に投与される治療用組成物の実際の投与量が、体重、状態の重症度、処置される疾患の種類、以前のまたは同時の治療的介入、患者の特発性疾患および投与経路などの、物理的および生理学的要因によって決定されうることを理解するであろう。いずれにせよ、投与に責任を負う実践者が、組成物中の有効成分の濃度および個々の対象に適した用量を決定するであろう。
【0184】
本明細書において開示される治療用組成物は、静脈内に、皮内に、動脈内に、腹腔内に、病変内に、脳内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、鼻腔内に、硝子体内に、膣内に、直腸内に、局所に、腫瘍内に、筋肉内に、腹腔内に、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、眼内に、経口に、局所に、局部に、または注射、注入、連続注入、洗浄、および局所灌流によって投与することができる。治療用組成物はまた、当業者に公知であるように、カテーテルを介して、脂質組成物中で、または他の方法もしくは前記の任意の組み合わせによって対象に投与されうる(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 22nd Ed., Pharmaceutical press, 2012を参照のこと)。
【0185】
当業者に公知の任意の適当な担体が本発明の薬学的組成物において利用されうるが、担体のタイプは、投与の様式に依って変化するであろう。静脈内、腫瘍内または皮下注射などの非経口投与の場合、担体は、水、生理食塩水、アルコール、脂肪、ワックスまたは緩衝液を含みうる。生分解性ミクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ガラクチド)も、いくつかの態様において担体として利用されうる。適当な生分解性ミクロスフェアは、例えば、米国特許第4,897,268号および同第5,075,109号に開示されている。
【0186】
いくつかの態様において、ワクチン組成物は、微細構造化された経皮微粒子送達または弾道微粒子送達によって投与されうる。ワクチン製剤のための担体としての微細構造は、ワクチン用途に望ましい構成であり、当技術分野において広く知られている(例えば、米国特許第5,797,898号、同第5,770,219号および同第5,783,208号、ならびに米国特許出願第2005/0065463号)。本明細書において開示される、可溶性TCRなどの、TCRの支持基材として機能する微細構造または弾道粒子は、生分解性材料および非生分解性材料で構成されてもよく、そのような支持基材は、合成重合体、シリカ、脂質、糖質、タンパク質、レクチン、イオン剤、架橋剤、および当技術分野において利用可能な他の微細構造成分で構成されてもよい。そのような材料で構成される支持基材への本発明のペプチドの固定化のためのプロトコルおよび試薬は、広く市販されている。
【0187】
他の態様において、ワクチン組成物は、本明細書において開示される固定化またはカプセル化されたTCRまたは可溶性TCRおよび支持基材を含む。支持基材は、脂質ミクロスフェア、脂質ナノ粒子、エトソーム、リポソーム、ニオソーム、リン脂質、スフィンゴソーム、界面活性剤、トランスフェロソーム、乳濁液、またはそれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されることはない。リポソームならびに他の脂質ナノキャリアおよびマイクロキャリア製剤の形成および使用は、当業者に一般に知られており、リポソーム、マイクロ粒子、ナノカプセルなどの使用は、治療用物質の送達において広く普及している(例えば、参照により全体が本明細書に具体的に組み入れられる米国特許第5,741,516号)。ペプチドのカプセル化を含めて、潜在的な薬物担体としてのリポソームおよびリポソーム様調製物の多数の方法が公知であり、さまざまな態様において用いられうる(例えば、米国特許第5567434号、同第5552157号、同第5565213号、同第5738868号、および同第5795587号)。
【0188】
いずれの場合でも、組成物は、1つまたは複数の成分の酸化を遅らせるためのさまざまな抗酸化剤を含みうる。さらに、微生物の作用の防止は、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、さまざまな抗菌剤および抗真菌剤などの保存料によってもたらすことができる。
【0189】
組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の混入作用に対して保存されなければならない。エンドトキシン混入は、例えば、0.5 ng/mgタンパク質未満の安全なレベルで最小限に維持すべきであることが理解されよう。
【0190】
A. 併用療法
ある種の態様において、抗原特異的細胞(例えば、自己由来または同種異系T細胞(例えば、調節性T細胞、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、α-β T細胞もしくはγ-δ T細胞)、NK細胞、インバリアントNK細胞、NKT細胞、間葉系幹細胞(MSC)、または誘導多能性幹(iPS)細胞)集団を含む本態様の組成物および方法は、少なくとも1つのさらなる療法と組み合わせて哺乳動物対象(例えば、ヒト)に投与されうる。さらなる療法は、放射線療法、外科手術(例えば、一次的手術、腫瘍除去、乳腺腫瘍摘出術、もしくは乳房切除術)、化学療法、コンディショニング化学療法、遺伝子治療、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ治療(nanotherapy)、モノクローナル抗体療法、または前記の組み合わせでありうる。さらなる療法は補助療法または術前補助療法の形態でありうる。
【0191】
いくつかの態様において、さらなる療法は小分子酵素阻害剤または抗転移剤の投与である。いくつかの態様において、さらなる療法は1つまたは複数の副作用制限剤(例えば、制吐剤などのような、処置の副作用の発生および/または重症度を緩和しうる薬剤)の投与である。いくつかの態様において、さらなる療法は放射線療法である。いくつかの態様において、さらなる療法は外科手術である。いくつかの態様において、さらなる療法は放射線療法と外科手術の組み合わせである。いくつかの態様において、さらなる療法はガンマ線照射である。いくつかの態様において、さらなる療法は、例えば、ダカルバジンまたはテモゾロミドなどの、化学療法である。さらなる療法は、当技術分野において公知の化学療法剤の1つまたは複数でありうる。
【0192】
T細胞療法または養子細胞移入療法は、免疫チェックポイント療法またはコンディショニング化学療法などの、さらなるがん療法に対して、その前、その間、その後に、またはさまざまな組み合わせで投与することができる。そうした投与は、同時から数分、数日、数週間までの範囲の間隔でありうる。T細胞療法がさらなる治療剤とは別に患者に提供される態様では、一般に、2つの化合物が依然として患者に有利な複合効果を発揮することができるように、各送達時間の間に有効期限切れにならないことを確認する必要があろう。そのような場合、抗体療法と抗がん療法を互いに約12~24または72時間以内、特に互いに約6~12時間以内に、患者に提供することが考えられる。いくつかの状況では、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6または7日)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8週)が経過する場合、治療期間を大幅に延長することが望ましい場合もある。
【0193】
さまざまな組み合わせが利用されうる。以下の例の場合、抗原特異的T細胞療法、ペプチド、またはTCRが「A」であり、抗がん療法が「B」である。
【0194】
本態様の任意の化合物または療法の患者への投与は、薬剤の、もしあれば、毒性を考慮に入れて、そのような化合物を投与するための一般的なプロトコルに従うであろう。それゆえ、いくつかの態様において、併用療法に起因する毒性をモニタリングする段階が存在する。
【実施例】
【0195】
VII. 実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技法は、本発明者らが発見した技法が本発明の実践において十分に機能することを示し、したがって、その実践に好ましい様式を構成すると考えられると当業者に理解されるはずである。しかしながら、本開示を考慮すれば、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、開示された特定の態様において多くの変更を加えることができ、それでもなお類似または同様の結果を得ることができると当業者に理解されるはずである。
【0196】
実施例1
Hormad1特異的T細胞受容体はT細胞を腫瘍細胞に向け直す
臨床免疫療法の治療標的としてのHormad1 T細胞エピトープの可能性をさらに探索するために、全長Hormad1-56 TCR α鎖およびβ鎖をレトロウイルスベクターpMSGV3に挿入し、次にこの組換えレトロウイルスベクターを用いてPBMCに感染させた(
図3)。空のレトロウイルスベクターを対照として用いた。感染後、FCM検出によりCD8+/四量体+ 集団を観察した。四量体誘導選別および拡大増殖の後、高純度のTCR-T細胞が作製された。Hormad1の過剰発現は、試験した非小細胞肺がん(NSCLC)患者の約50%の腫瘍組織において観察され、Hormad1の発現上昇は健常組織において観察されず(Hormad1は精巣以外の健常組織において発現されず)、Hormad1の高発現は肺腺がん患者集団での変異負荷の上昇と相関していた(Nichols et al., 2018)が、このタンパク質を免疫療法の標的として使用できるかどうかは不明であった。
【0197】
TCR形質導入T細胞は、Hormad1ペプチドをパルスしたT2細胞を高い結合力で特異的に認識し、HLA-A2+ Hormad1発現腫瘍細胞株を溶解するが、Hormad1-、もしくはHLA-A2-、または正常細胞を溶解しないことが観察された(
図4)。Hormad1特異的TCR形質導入T細胞は、これらの固形腫瘍細胞を認識することができるが、対照腫瘍細胞を認識することができない(
図4)。これらの結果は、Hormad1由来ペプチドが腫瘍細胞上のHLA-A2分子との関連で発現され、Hormad1-TCR形質導入T細胞をがん免疫療法のために使用できることを示唆している。
【0198】
Hormad1-56 TCR-T機能アッセイ
Hormad1-56 TCR-T機能をさらに探索するために、サイトカイン産生を細胞内染色アッセイによって検出した(Pala Pietro, et al., J Immunol Methods. 2010;243(1-2):107-124)。Hormad1-56 TCR-Tを、いくつかの腫瘍細胞株と共培養した。HLA-A2+ Hormad1発現腫瘍細胞株と共培養した場合、TCR-Tにより発現されるCD137、CD69、TNF-α、IFN-γのレベルは、有意に増強されるが、対照腫瘍細胞株と同様に、抗原陰性細胞ではそうでないことが観察された(
図5)。
【0199】
TCR配列は、親のHormad1-56 CTL細胞株A12に由来していた。Hormad1-56 TCR (以下、Hormad1-TCRという)は、TRAV4
*01 F、TRBV13
*01 FおよびTRAV4
*01 F、TRBV13
*01 F 2サブファミリー配列で構成されていることが明らかにされた(
図6)。
【0200】
実施例2
材料および方法
健常ドナーPBMCサンプル
テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの施設審査委員会により、本研究は承認された。健常ドナーPBMCサンプルの収集の前に、ヘルシンキ宣言にしたがってインフォームドコンセントを得た。末梢血単核細胞(PBMC)は、血液サンプルから白血球分離法によって分離した。
【0201】
細胞株
T2ハイブリドーマ細胞、肺がん細胞株H1395、H522、H1299、H1299-A2、H1355、H1755、DFC1032、K562-A2、K562-A2-eGFP、K562-A2-Hormad1、H522-eGFP、H522-Hormad1を、10%ウシ胎児血清、10 mM HEPES、1×Glutamax、50μM β-メルカプトエタノール、1 mMピルビン酸ナトリウム、100 U/mLペニシリン + 100μg/mLストレプトマイシン、および10μg/mLゲンタマイシン(全てInvitrogen, Carlsbad, CAから)を補充したRPMI 1640培地中において37℃および空気中5% CO2で培養した。正常肺細胞株HSAEC2-KTを無血清小気道上皮細胞増殖培地(Small Airway Epithelial Cell Growth Medium) (PromoCell, Heidelberg, Germany)中で培養した。
【0202】
腫瘍および免疫細胞サブセット単離
CD25- T細胞を磁気細胞分離(MACS, Miltenyi Biotec, Auburn, CA)によって単離し、純度をフロー(flow)によって確認した。この手順により、純度90%超のCD25- T細胞を得た。
【0203】
試薬
CD3、CD4、CD8、CD69、CD137、IFN-γ、TFN-αに対するマウス抗ヒト抗体は、Biolegend, San Diego, CAから入手した。全てのペプチドはGenscript, Piscataway, NJにより、純度90%超にまで合成され、ジメチルスルホキシド(Sigma-Aldrich)に溶解された。PE結合四量体は、ワシントン州シアトルのフレッドハッチンソンがん研究センターの免疫モニタリングセンター(Immune Monitoring Center of Fred Hutchinson Cancer Research Center, Seattle, WA)によって合成された。
【0204】
PCR
RNeasy Kit (Qiagen)を用いてT細胞から全RNAを抽出した。全RNA約3μgをSMARTer(登録商標) RACE 5'/3'キット(ClonTech)でcDNAに逆転写した。PCRによるTCR断片のクローニングを、以下の条件を用いてQ5(登録商標) High-Fidelity 2X Master Mixキット(NEB)で実施した: Bio-Rad PCR Systemにて、2分間98℃、その後に15秒間98℃、30秒間63℃、45秒間72℃を40サイクル。PCR産物をIn Fusionクローンキット(ClonTech)でpRACEベクターにクローニングし、次にBigDye(登録商標) Direct Cycle Sequencing Kits (Thermo)でDNA配列決定した。
【0205】
フローサイトメトリー
細胞内染色の場合、Fixation/Permeabilizationキット(eBioscience)を製造元の使用説明書にしたがって用い細胞を固定および透過処理した。細胞を次に、マウス抗ヒトフロー(flow)抗体(前記の通り; 00114)により4℃で30分間染色した。2回の洗浄後、サンプルをFACS Calibur (BD Biosciences)にて取得し、Cell Quest Pro (BD Biosciences)またはFlowJo (Tree Star, Inc., Ashland, OR)ソフトウェアを用いて分析した。細胞内サイトカイン染色を既述(Weng et al., 2016b)のように実施した。四量体染色の場合、PE結合Hormad1四量体およびAPC-Cy7結合マウス抗ヒトCD8抗体を、50μlの体積中、室温で30分間細胞と混合し、2回洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0206】
Hormad1-56ペプチド特異的CTL株の作製
HLA-A0201+健常ドナーに由来する成熟DCをHormad1-56ペプチド(YLDDLCVKI; SEQ ID NO:5)でパルスし、自己由来CD25- T細胞刺激した。2ラウンドの刺激後、Hormad1-56特異的T細胞株を検出し、対応するHormad1-56四量体および抗CD8抗体で選別した。CD8+/四量体+ T細胞を急速拡大増殖プロトコル(rapid expansion protocol; REP)で拡大増殖し、Hormad1-56特異的T細胞の純度を抗CD8抗体および四量体染色で決定した。
【0207】
レトロウイルスによるHormad1特異的TCR-T細胞の作製
Hormad1 T細胞株の完全なTCRαβ配列は、5-RACE RT-PCRにより得られ、コドン最適化された。α鎖およびβ鎖の定常領域をシステイン変異させた; TCRαβ鎖をフューリンおよびP2Aとライゲーションし、レトロウイルス産生ベクターにクローニングした。TCRを含むレトロウイルスを293T細胞において産生し、ろ過し、濃縮し、-80℃で貯蔵した。HLA-A2+健常ドナーT細胞をOKT3抗体およびIL-2によって72時間活性化し、レトロウイルスによる形質導入を2000 g遠心機にて32℃で2時間行い、続いて終夜インキュベーションを行った。48時間後に四量体染色によって抗原特異的TCRの発現を分析した。四量体陽性T細胞をフロー(flow)によって選別し、既述(Pollack et al., 2014)のようにさらなる機能アッセイのためREPによりさらに拡大増殖した。
【0208】
細胞傷害アッセイ
T2細胞を漸減濃度のペプチド(10μg/ml~10 pg/ml)でパルスし、標準的な4時間Cr51放出細胞傷害アッセイでの標的として用いた。腫瘍細胞株(2×103個の細胞/ウェル)を96ウェル丸底プレート中37℃で4時間、指示した比率(E:T = 40:1から1.25:1まで)でエフェクタT細胞とともにインキュベートし、標的細胞の溶解をCr51放出アッセイによって決定した。アッセイは全て3重のウェルで実施し、少なくとも2回繰り返した。
【0209】
統計分析
スチューデントのt検定を用いて、さまざまな実験群を比較した。P値<0.05を統計的に有意と見なした。特に明記しない限り、平均および標準偏差を示す。
【0210】
本明細書において開示および主張される方法は全て、本発明を考慮すれば過度の実験なく作製および実施することができる。本発明の組成物および方法を好ましい態様に関して記述してきたが、本発明の概念、趣旨、および範囲から逸脱することなく、本明細書において記述される方法および本明細書において記述される方法の段階または段階の順序に変更を加えることができることは当業者に明らかである。さらに具体的には、本明細書において記述される薬剤の代わりに、化学的および生理学的に関連している、ある種の薬剤を用いることができ、それと同時に、同一の結果または類似の結果が得られることが明らかである。当業者に明らかな、このような類似の代用および変更は全て、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の趣旨、範囲、および概念の範囲内だと考えられる。
【0211】
参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書において記載されたものを補足する例示的な手順または他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【配列表】
【国際調査報告】