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特表2022-554417ポリオーマJC感染の阻害剤としてのCRISPR/CAS9システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】ポリオーマJC感染の阻害剤としてのCRISPR/CAS9システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20221221BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20221221BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20221221BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20221221BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221221BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20221221BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20221221BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20221221BHJP
【FI】
A61K31/7088
C12N15/09 110
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/864 100Z
A61K48/00
A61K31/7105
A61P31/20
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527174
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(85)【翻訳文提出日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 US2020059945
(87)【国際公開番号】W WO2021096912
(87)【国際公開日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】62/933,929
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591135163
【氏名又は名称】テンプル・ユニバーシティ-オブ・ザ・コモンウェルス・システム・オブ・ハイアー・エデュケイション
【氏名又は名称原語表記】TEMPLE UNIVERSITY-OF THE COMMONWEALTH SYSTEM OF HIGHER EDUCATION
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】カメル カリリ
(72)【発明者】
【氏名】ハッセン エス.ウォレボ
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】イルカー ケー.サリヤー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB33
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB33
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB33
(57)【要約】
本明細書において提供されるのは、JCVゲノムを有効にモジュレート及び/又は編集する遺伝子編集組成物及び方法である。有効なモジュレーション及び/又は編集は、態様において、NCCR領域、早期コーディング遺伝子、及び/又は後期コーディング遺伝子を標的化する遺伝子編集組成物により達成される。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ又は前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;
(b)ジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の中又はその近くの第1の標的核酸配列に相補的な第1のガイドRNA(gRNA)又は前記第1のgRNAをコードする核酸配列;及び
(c)前記JCVゲノムのT抗原遺伝子又は前記JCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNA又は前記第2のgRNAをコードする核酸配列
を含む、組成物。
【請求項2】
前記第2のgRNAが、前記JCVゲノムの前記T抗原遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記JCVゲノムの前記VP遺伝子の中又はその近くの第3の標的核酸配列に相補的な第3のgRNA又は前記第3のgRNAをコードする核酸配列を更に含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2のgRNAが、前記JCVゲノムの前記VP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、I型、II型、又はIII型Casエンドヌクレアーゼである、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、Cas9エンドヌクレアーゼ、Cas12エンドヌクレアーゼ、CasXエンドヌクレアーゼ、又はCasΦエンドヌクレアーゼである、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼがCas9ヌクレアーゼである、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記Cas9ヌクレアーゼがスタフィロコッカス・アウレウスCas9ヌクレアーゼである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記T抗原遺伝子がラージT抗原遺伝子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記VP遺伝子が、VP1遺伝子、VP2遺伝子、又はVP3遺伝子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記VP遺伝子がVP1遺伝子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1の標的核酸配列が、配列番号2に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1の標的核酸配列が、配列番号2に記載の配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記第1の標的核酸配列が、配列番号3に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記第1の標的核酸配列が、配列番号3に記載のPAM配列を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記第1の標的核酸配列が、配列番号4に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記第1の標的核酸配列が、配列番号4に記載の配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記第1のgRNAが、配列番号2に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記第1のgRNAが、配列番号2に記載の配列によりコードされる、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記第1のgRNAが、配列番号5に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記第1のgRNAが、配列番号5に記載のRNA配列の配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記第2の標的核酸配列が、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項23】
前記第2の標的核酸配列が、配列番号6に記載の配列を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項24】
前記第2の標的核酸配列が、配列番号7に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む、請求項2~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記第2の標的核酸配列が、配列番号7に記載のPAM配列を含む、請求項2~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記第2の標的核酸配列が、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項27】
前記第2の標的核酸配列が、配列番号6に記載の配列を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項28】
前記第2のgRNAが、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる、請求項2に記載の組成物。
【請求項29】
前記第2のgRNAが、配列番号6に記載の配列によりコードされる、請求項2に記載の組成物。
【請求項30】
前記第2のgRNAが、配列番号9に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項31】
前記第2のgRNAが、配列番号9に記載のRNA配列を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項32】
前記第3の標的核酸配列が、配列番号10に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項33】
前記第3の標的核酸配列が、配列番号10に記載の配列を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項34】
前記第3の標的核酸配列が、配列番号11に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む、請求項3~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
前記第3の標的核酸配列が、配列番号11に記載のPAM配列を含む、請求項3~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
前記第3の標的核酸配列が、配列番号12に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項37】
前記第3の標的核酸配列が、配列番号12に記載の配列を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項38】
前記第3のgRNAが、配列番号10に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる、請求項3に記載の組成物。
【請求項39】
前記第3のgRNAが、配列番号10に記載の配列によりコードされる、請求項3に記載の組成物。
【請求項40】
前記第3のgRNAが、配列番号13に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項41】
前記第3のgRNAが、配列番号13に記載のRNA配列を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項42】
(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ;及び
(b)配列番号2又はその逆相補鎖を含むジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の中又はその近くの第1の標的核酸配列に相補的な第1のガイドRNA(gRNA)
を含む、CRISPR-Casシステム。
【請求項43】
配列番号6を含む前記JCVゲノムのT抗原遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNAを更に含む、請求項42に記載のCRISPR-Casシステム。
【請求項44】
配列番号10を含む前記JCVゲノムのVP1遺伝子の中又はその近くの第3の標的核酸配列に相補的な第3のgRNAを更に含む、請求項43に記載のCRISPR-Casシステム。
【請求項45】
配列番号10を含む前記JCVゲノムのVP1遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNAを更に含む、請求項42に記載のCRISPR-Casシステム。
【請求項46】
(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ;及び
(b)配列番号10又はその逆相補鎖を含むJCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの標的核酸配列に相補的なガイドRNA(gRNA)
を含む、CRISPR-Casシステム。
【請求項47】
(a)配列番号6又はその逆相補鎖を含むJCVゲノムのラージT抗原遺伝子を標的化する第1のガイドRNA(gRNA);及び
(b)配列番号10又はその逆相補鎖を含む前記JCVゲノムのVP遺伝子を標的化する第2のgRNA
を含む、CRISPR-Casシステム。
【請求項48】
請求項42~47のいずれか1項に記載のCRISPR-Casシステムをコードする核酸。
【請求項49】
(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ;
(b)ジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の中又はその近くの第1の標的核酸配列に相補的な第1のガイドRNA(gRNA);及び
(c)前記JCVゲノムのT抗原遺伝子又は前記JCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNA
をコードする核酸を含む、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター。
【請求項50】
前記第2のgRNAが、前記JCVゲノムの前記T抗原遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的である、請求項49に記載のAAVベクター。
【請求項51】
前記JCVゲノムの前記VP遺伝子の中又はその近くの第3の標的核酸配列に相補的な第3のgRNA又は前記第3のgRNAをコードする核酸配列を更に含む、請求項50に記載のAAVベクター。
【請求項52】
前記第2のgRNAが、前記JCVゲノムの前記VP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的である、請求項49に記載のAAVベクター。
【請求項53】
前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、I型、II型、又はIII型Casエンドヌクレアーゼである、請求項49~52のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項54】
前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、Cas9エンドヌクレアーゼ、Cas12エンドヌクレアーゼ、CasXエンドヌクレアーゼ、又はCasΦエンドヌクレアーゼである、請求項49~52のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項55】
前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼがCas9ヌクレアーゼである、請求項49~52のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項56】
前記Cas9ヌクレアーゼがスタフィロコッカス・アウレウスCas9ヌクレアーゼである、請求項55に記載のAAVベクター。
【請求項57】
前記T抗原遺伝子がラージT抗原遺伝子である、請求項49に記載のAAVベクター。
【請求項58】
前記VP遺伝子が、VP1遺伝子、VP2遺伝子、又はVP3遺伝子である、請求項49に記載のAAVベクター。
【請求項59】
前記VP遺伝子がVP1遺伝子である、請求項49に記載のAAVベクター。
【請求項60】
前記第1の標的核酸配列が、配列番号2に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、請求項49に記載のAAVベクター。
【請求項61】
前記第1の標的核酸配列が、配列番号2に記載の配列を含む、請求項49に記載のAAVベクター。
【請求項62】
前記第1の標的核酸配列が、配列番号3に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む、請求項49~61のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項63】
前記第1の標的核酸配列が、配列番号3に記載のPAM配列を含む、請求項49~61のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項64】
前記第1の標的核酸配列が、配列番号4に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、請求項49に記載のAAVベクター。
【請求項65】
前記第1の標的核酸配列が、配列番号4に記載の配列を含む、請求項49に記載のAAVベクター。
【請求項66】
前記第1のgRNAが、配列番号2に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる、請求項49に記載のAAVベクター。
【請求項67】
前記第1のgRNAが、配列番号2に記載の配列によりコードされる、請求項49に記載のAAVベクター。
【請求項68】
前記第1のgRNAが、配列番号5に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む、請求項49に記載のAAVベクター。
【請求項69】
前記第1のgRNAが、配列番号5を含むRNA配列を含む、請求項49に記載のAAVベクター。
【請求項70】
前記第2の標的核酸配列が、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、請求項50に記載のAAVベクター。
【請求項71】
前記第2の標的核酸配列が、配列番号6を含む配列を含む、請求項50に記載のAAVベクター。
【請求項72】
前記第2の標的核酸配列が、配列番号7に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む、請求項50~71のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項73】
前記第2の標的核酸配列が、配列番号7を含むPAM配列を含む、請求項50~71のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項74】
前記第2の標的核酸配列が、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、請求項50に記載のAAVベクター。
【請求項75】
前記第2の標的核酸配列が、配列番号6を含む配列を含む、請求項50に記載のAAVベクター。
【請求項76】
前記第2のgRNAが、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる、請求項50に記載のAAVベクター。
【請求項77】
前記第2のgRNAが、配列番号6に記載の配列によりコードされる、請求項50に記載のAAVベクター。
【請求項78】
前記第2のgRNAが、配列番号9に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む、請求項50に記載のAAVベクター。
【請求項79】
前記第2のgRNAが、配列番号9を含むRNA配列を含む、請求項50に記載のAAVベクター。
【請求項80】
前記第3の標的核酸配列が、配列番号10に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、請求項51に記載のAAVベクター。
【請求項81】
前記第3の標的核酸配列が、配列番号10を含む配列を含む、請求項51に記載のAAVベクター。
【請求項82】
前記第3の標的核酸配列が、配列番号11に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む、請求項51~81のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項83】
前記第3の標的核酸配列が、配列番号11を含むPAM配列を含む、請求項51~81のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項84】
前記第3の標的核酸配列が、配列番号12に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、請求項51に記載のAAVベクター。
【請求項85】
前記第3の標的核酸配列が、配列番号12を含む配列を含む、請求項51に記載のAAVベクター。
【請求項86】
前記第3のgRNAが、配列番号10に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる、請求項51に記載のAAVベクター。
【請求項87】
前記第3のgRNAが、配列番号10に記載の配列によりコードされる、請求項51に記載のAAVベクター。
【請求項88】
前記第3のgRNAが、配列番号13に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む、請求項51に記載のAAVベクター。
【請求項89】
前記第3のgRNAが、配列番号13を含むRNA配列を含む、請求項51に記載のAAVベクター。
【請求項90】
前記核酸がプロモーターを更に含む、請求項49~89のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項91】
前記プロモーターが遍在性プロモーターである、請求項90に記載のAAVベクター。
【請求項92】
前記プロモーターが組織特異的プロモーターである、請求項90に記載のAAVベクター。
【請求項93】
前記プロモーターが構成的プロモーターである、請求項90に記載のAAVベクター。
【請求項94】
前記プロモーターがヒトサイトメガロウイルスプロモーターである、請求項90に記載のAAVベクター。
【請求項95】
前記核酸がエンハンサーエレメントを更に含む、請求項49~94のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項96】
前記エンハンサーエレメントがヒトサイトメガロウイルスエンハンサーエレメントである、請求項95に記載のAAVベクター。
【請求項97】
前記核酸が5’ITRエレメント及び3’ITRエレメントを更に含む、請求項49~96のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項98】
前記アデノ随伴ウイルスがAAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、又はAAV9である、請求項49~97のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項99】
前記核酸が、配列番号14に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む、請求項49~98のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項100】
AAV6ベクター又はAAV9ベクターである、請求項49~97のいずれか1項に記載のAAVベクター。
【請求項101】
細胞からジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)配列の部分又は全体を切除する方法であって、前記細胞に、請求項1~42のいずれか1項に記載の組成物、請求項42~47のいずれか1項に記載のCRISPR-Casシステム、又は請求項49~100のいずれか1項に記載のAAVベクターを提供することを含む、方法。
【請求項102】
細胞中でのジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)複製を阻害し又は低減させる方法であって、前記細胞に、請求項1~42のいずれか1項に記載の組成物、請求項42~47のいずれか1項に記載のCRISPR-Casシステム、又は請求項49~100のいずれか1項に記載のAAVベクターを提供することを含む、方法。
【請求項103】
前記細胞が対象中にある、請求項101~102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
前記対象がヒトである、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記JCV配列が前記細胞に組み込まれている、請求項101~104のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2019年11月11日に出願された米国仮出願第62/933,929号の利益を主張し、該出願は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
進行性多巣性白質脳症(PML)は、JCウイルス(JCV)により引き起こされる脳の脱髄疾患である。迅速な介入がPMLについて重要であり、その理由は、PMLは20~50%の3か月死亡率を有するからである。概しては、免疫系の再構成又は活性化は、PMLの処置について最良の予後をもたらす。しかしながら、免疫系再構成療法は、望ましくない効果、例えば免疫再構成炎症症候群(IRIS)に繋がり得る。そのため、有効な療法がPMLに対して必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に開示されるのは、ある特定の実施形態において、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ又はCRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;(b)ジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の中又はその近くの第1の標的核酸配列に相補的な第1のガイドRNA(gRNA)又は第1のgRNAをコードする核酸配列;及び(c)JCVゲノムのT抗原遺伝子又はJCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNA又は第2のgRNAをコードする核酸配列を含む、組成物である。一部の実施形態において、第2のgRNAは、JCVゲノムのT抗原遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的である。一部の実施形態において、組成物は、JCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第3の標的核酸配列に相補的な第3のgRNA又は第3のgRNAをコードする核酸配列を更に含む。一部の実施形態において、第2のgRNAは、JCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的である。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、I型、II型、又はIII型Casエンドヌクレアーゼである。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9エンドヌクレアーゼ、Cas12エンドヌクレアーゼ、CasXエンドヌクレアーゼ、又はCasΦエンドヌクレアーゼである。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼはCas9ヌクレアーゼである。一部の実施形態において、Cas9ヌクレアーゼはスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)Cas9ヌクレアーゼである。一部の実施形態において、T抗原遺伝子はラージT抗原遺伝子である。一部の実施形態において、VP遺伝子は、VP1遺伝子、VP2遺伝子、又はVP3遺伝子である。一部の実施形態において、VP遺伝子はVP1遺伝子である。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号2に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号2に記載の配列を含む。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号3に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号3に記載のPAM配列を含む。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号4に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号4に記載の配列を含む。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号2に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号2に記載の配列によりコードされる。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号5に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号5に記載のRNA配列の配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号6に記載の配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号7に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号7に記載のPAM配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号6に記載の配列を含む。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号6に記載の配列によりコードされる。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号9に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号9に記載のRNA配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号10に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号10に記載の配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号11に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号11に記載のPAM配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号12に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号12に記載の配列を含む。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号10に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号10に記載の配列によりコードされる。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号13に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号13に記載のRNA配列を含む。
【0004】
本明細書に開示されるのは、ある特定の実施形態において、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ;及び(b)配列番号2又はその逆相補鎖を含むジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の中又はその近くの第1の標的核酸配列に相補的な第1のガイドRNA(gRNA)を含む、CRISPR-Casシステムである。一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、配列番号6を含むJCVゲノムのT抗原遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNAを更に含む。一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、配列番号10を含むJCVゲノムのVP1遺伝子の中又はその近くの第3の標的核酸配列に相補的な第3のgRNAを更に含む。一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、配列番号10を含むJCVゲノムのVP1遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNAを更に含む。
【0005】
本明細書に開示されるのは、ある特定の実施形態において、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ;及び(b)配列番号10又はその逆相補鎖を含むJCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの標的核酸配列に相補的なガイドRNA(gRNA)を含む、CRISPR-Casシステムである。
【0006】
本明細書に開示されるのは、ある特定の実施形態において、(a)配列番号6又はその逆相補鎖を含むJCVゲノムのラージT抗原遺伝子を標的化する第1のガイドRNA(gRNA);及び(b)配列番号10又はその逆相補鎖を含むJCVゲノムのVP遺伝子を標的化する第2のgRNAを含む、CRISPR-Casシステムである。
【0007】
本明細書に開示されるのは、ある特定の実施形態において、本明細書に記載のCRISPR-Casシステムをコードする核酸である。
【0008】
本明細書に開示されるのは、ある特定の実施形態において、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ;(b)ジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の中又はその近くの第1の標的核酸配列に相補的な第1のガイドRNA(gRNA);及び(c)JCVゲノムのT抗原遺伝子又はJCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNAをコードする核酸を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。一部の実施形態において、第2のgRNAは、JCVゲノムのT抗原遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的である。一部の実施形態において、AAVベクターは、JCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第3の標的核酸配列に相補的な第3のgRNA又は第3のgRNAをコードする核酸配列を更に含む。一部の実施形態において、第2のgRNAは、JCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的である。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、I型、II型、又はIII型Casエンドヌクレアーゼである。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9エンドヌクレアーゼ、Cas12エンドヌクレアーゼ、CasXエンドヌクレアーゼ、又はCasΦエンドヌクレアーゼである。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼはCas9ヌクレアーゼである。一部の実施形態において、Cas9ヌクレアーゼはスタフィロコッカス・アウレウスCas9ヌクレアーゼである。一部の実施形態において、T抗原遺伝子はラージT抗原遺伝子である。一部の実施形態において、VP遺伝子は、VP1遺伝子、VP2遺伝子、又はVP3遺伝子である。一部の実施形態において、VP遺伝子はVP1遺伝子である。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号2に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号2に記載の配列を含む。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号3に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号3を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号4に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号4に記載の配列を含む。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号2に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号2に記載の配列によりコードされる。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号5に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号5を含むRNA配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号6を含む配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号7に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号7を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号6を含む配列を含む。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号6に記載の配列によりコードされる。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号9に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号9を含むRNA配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号10に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号10を含む配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号11に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号11を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号12に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号12を含む配列を含む。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号10に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号10に記載の配列によりコードされる。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号13に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号13を含むRNA配列を含む。一部の実施形態において、核酸はプロモーターを更に含む。一部の実施形態において、プロモーターはユビキタスプロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは組織特異的プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは構成的プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはヒトサイトメガロウイルスプロモーターである。一部の実施形態において、核酸はエンハンサーエレメントを更に含む。一部の実施形態において、エンハンサーエレメントはヒトサイトメガロウイルスエンハンサーエレメントである。一部の実施形態において、核酸は5’ITRエレメント及び3’ITRエレメントを更に含む。一部の実施形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、又はAAV9である。一部の実施形態において、核酸は、配列番号14に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む。一部の実施形態において、AAVベクターはAAV6ベクター又はAAV9ベクターである。
【0009】
本明細書に開示されるのは、ある特定の実施形態において、細胞からジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)配列の部分又は全体を切除(excising)する方法であって、細胞に本明細書に記載の組成物、本明細書に記載のCRISPR-Casシステム、又は本明細書に記載のAAVベクターを提供することを含む、方法である。
【0010】
本明細書に開示されるのは、ある特定の実施形態において、細胞中でのジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)複製を阻害し又は低減させる方法であって、細胞に本明細書に記載の組成物、本明細書に記載のCRISPR-Casシステム、又は本明細書に記載のAAVベクターを提供することを含む、方法である。一部の実施形態において、細胞は対象中にある。一部の実施形態において、対象はヒトである。一部の実施形態において、JCV配列は細胞に組み込まれている。
【0011】
参照による組込み
本明細書において言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各個々の刊行物、特許、又は特許出願が、参照により援用されることを特に及び個々に指し示されたのと同じ程度まで参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲において具体性と共に示される。本開示の特徴及び利点のより良好な理解は、本開示の原理が利用される実例的な実施形態を示す以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照することにより得られる。
【0013】
図1A図1AはJCV(Mad-1)ゲノムの図式的な表現を示す。
図1B図1BはJCV(Mad-1)ゲノムの図式的な表現を示す。
図1C図1CはJCV(Mad-1)ゲノムの図式的な表現を示す。
図2図2は、CRISPR-Casシステムを宿すAAV6/AAV9ベクターの図式的な表現を示す。
図3図3は、細胞へのAAV媒介性の送達でのCasタンパク質発現を確認したデータを示す。
図4A図4A~4Dは、CRISPR-Cas DNA切除アッセイの結果を示す。
図4B図4A~4Dは、CRISPR-Cas DNA切除アッセイの結果を示す。
図4C図4A~4Dは、CRISPR-Cas DNA切除アッセイの結果を示す。
図4D図4A~4Dは、CRISPR-Cas DNA切除アッセイの結果を示す。
図5A図5Aは、細胞へのAAV6GFP及びAAV9媒介性の形質導入の効率を示す。
図5B図5Bは、細胞へのAAV6GFP及びAAV9媒介性の形質導入の効率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本明細書において提供されるのは、JCV感染を阻害し、低減させ、又は寛解させるために有用な遺伝子編集システム(例えばCRISPR-Cas9)である。例えば、提供されるのは、JCV DNAを有効に編集する遺伝子編集システムによりJCV感染を阻害し、低減させ、又は寛解させる方法である。本明細書において提供されるのは、宿主細胞のゲノムに組み込まれている又は染色体外に維持されている(例えば宿主細胞のゲノムに組み込まれていない)JCVウイルスゲノムDNAを標的化するプログラム可能なヌクレアーゼである。例えば、一部の事例において、JCVゲノムの特有の遺伝子又はエレメントを標的化することは、感染性ウイルスゲノムの枯渇及び/又はウイルス複製を不活性化するためのウイルスゲノム内のコーディング配列若しくは調節領域における領域の切除に繋がる。ある特定の事例において、遺伝子編集システムが、組み込まれたウイルス及び/又はプロウイルスゲノムを有効に切除することを特徴とする追加の利益がある。ウイルス配列は概しては宿主ゲノムに対して配列類似性を殆ど有しないので、記載される組成物及び処置方法はまた、細胞にとって内因性の座位を標的化する編集療法よりも小さいオフターゲット効果を生成し得る。
【0015】
JCVは、非エンベロープのT=7正二十面体ポリオーマウイルスであり、閉じた環状の超らせん二本鎖DNAゲノムを有する。カプシドは3つのウイルス構造タンパク質、VP1、VP2、及びVP3から構成され、VP1が主要な構成要素である。72個の五量体があり、各々は、5つのVP1分子及び1分子のVP2又はVP3のいずれかから構成される。VP1のみがカプシドの表面に露出されており、VP1はそのため受容体特異性を決定する。ポリオーマウイルスDNAはヌクレオソームの構造であり、概しては、各ミニ染色体中に含有されたウイルスDNA及び宿主細胞ヒストンから構成される約25個のヌクレオソームを有する。
【0016】
プロトタイプJCVゲノムは概しては5,130bpからなるが、個々のバリアントは、それらの非コーディング領域における変更に起因して、長さが異なる。ゲノムは、6つの主要なウイルスタンパク質(ラージT及びスモールt抗原、VP1、VP2、VP3、並びにアグノプロテイン)の他に、T抗原のいくつかのスプライスバリアントをコードする。ゲノムの早期及び後期転写側は、超可変調節領域(HVRR)又は調節領域(RR)とも称される非コーディング制御領域(NCCR)により物理的に分離されており、DNAの反対鎖から反対方向に転写される。ウイルスDNA複製が始まる前に転写されるゲノムの早期側は、ラージT抗原及びスモールt抗原遺伝子の他に、ある特定のスプライスバリアントから構成される。ゲノムの後期側は、DNA複製と随伴的に転写され、3つのウイルス構造タンパク質、VP1、VP2、及びVP3の他に、補助的なアグノプロテインをコードする。
【0017】
JCVを含めて、ポリオーマウイルスは、溶解感染について制限された細胞種特異性を示す。更には、JCVは、ある特定の細胞種において低レベルの持続又は潜伏感染を確立することができる。中枢神経系(CNS)に存在すると、ウイルスは乏突起膠細胞中で活発に複製され、脱髄疾患PMLに繋がる。インビボで観察されるJCVの細胞種特異的なトロピズムは、インビトロでのトロピズムを忠実に反映し、ウイルスは、骨髄由来細胞、扁桃間質細胞、及び大膠細胞に生産的に感染する。インビボで、JCV感染は、概しては、腎臓上皮細胞、扁桃間質細胞、骨髄由来細胞系列、乏突起膠細胞、及び星状膠細胞に制限される。効率的なJCV複製は、初代膠細胞培養物及びある特定のヒト膠細胞系において最大である。ヒト膠細胞に対するJCVの主要なトロピズムは完全には理解されていないが、複数の要因が、この細胞種における堅牢なウイルス複製への寄与の原因となっているようである。例えば、宿主細胞特異的な転写及び複製因子の多様性は、JCVにより示される制限された特異性に差次的に影響を及ぼす。
【0018】
本明細書において提供される遺伝子編集システム(例えばCRISPR-Cas9)は、JCVゲノム内の新規の標的及び/又は標的の組合せを利用してJCV DNAを効率的及び有効に編集し、それにより、JCV感染を阻害し、低減させ、又は予防する。例えば、NCCR並びに追加の後期(例えばVP遺伝子)及び/又は早期遺伝子(例えばT抗原遺伝子)を含む標的の組合せは、JCVゲノム又はその領域の有効な編集及び/又は切除をもたらし、それにより複製インコンピテントのJCVゲノムをもたらす。よって、遺伝子編集機構(例えばCas9エンドヌクレアーゼ)及び標的化核酸分子(targeting nucleic molecules)(例えば標的配列に対応するガイドRNA)をコードする開示されるベクターの設計及び合成は、細胞中のJCVの効率的な編集を可能にする。更には、本明細書に記載の遺伝子編集システムは、組み込まれた又は組み込まれていないJCVゲノムを有効及び/又は効率的に編集し、それにより、細胞中でのJCVの一次感染及び潜伏感染の両方を阻害し、低減させ、又は寛解させるための解決策を提供する。
【0019】
プログラム可能なヌクレアーゼは精密なゲノム編集を可能にし、これは一部の事例において、DNA二本鎖切断(DSB)を特有のゲノム座位に導入し、それにより遺伝子編集を開始させることにより為される。概しては、本明細書において具体化されるように、様々な遺伝子編集システムを用いて、本明細書に記載のJCV遺伝子、エレメント、又は領域を標的化する(例えばNCCR領域並びにT抗原遺伝子及びVP遺伝子のうちの1つ又は両方を標的化する)ことができる。一部の実施形態において、遺伝子編集システムはCRISPR-Casシステムを含む。一部の実施形態において、遺伝子編集システムはメガヌクレアーゼを含む。一部の実施形態において、遺伝子編集システムはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む。一部の実施形態において、遺伝子編集システムは転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)を含む。これらの遺伝子編集システムは、DNA認識の態様に基づいて大まかに2つのカテゴリーに分類することができる。ZFN、TALEN及びメガヌクレアーゼは、タンパク質-DNA相互作用を介して特異的なDNA結合を達成する一方、CRISPR-Casシステムは、直接的に標的DNAと塩基対合する短いRNAガイド分子により及びタンパク質-DNA相互作用により特有のDNA配列に標的化される。よって、タンパク質標的化又は核酸標的化を用いて、本明細書に記載のJCV DNA座位を標的化することができる。
【0020】
例えば、本明細書において記載及び提供されるのは、細胞内のJCV複製を低減させ又は阻害するために有用なCRISPR-Cas組成物及び方法である。更なる例として、記載及び提供されるCRISPR-Cas組成物は、細胞中のゲノムJCV DNAをモジュレート(例えば変更、除去等)及び/又は編集(例えば切除)し、それによりJCV複製を阻害するために有用である。細胞中のJCV DNAをモジュレート及び/又は編集することによるJCVの阻害は、JCVウイルスの複製を許容しないインコンピテント及び/又は欠損型JCVゲノム構造をもたらす。そのため、本明細書に記載のCRISPR-Cas組成物及び方法を使用して、細胞中のJCVゲノムを有効にモジュレート及び/又は編集することができる。一部の実施形態において、細胞はJCV感染を既に含んでいる。一部の実施形態において、本明細書において提供されるCRISPRシステムは、潜伏感染した細胞を排除し又は低減させる。一部の実施形態において、本明細書において提供されるCRISPRシステムは、潜伏感染した細胞中のJCV DNAをモジュレート及び/又は編集する。一部の実施形態において、本明細書において提供されるCRISPRシステムはJCV感染を予防する。関心対象の細胞は、JCV感染に感受性の細胞である(例えば、Molecular Biology, Epidemiology, and Pathogenesis of Progressive Multifocal Leukoencephalopathy, the JC Virus-Induced Demyelinating Disease of the Human Brain. Michael W. Ferenczy et. al, Clinical Microbiology Reviews Jul 2012, 25 (3) 471-506を参照)。そのような細胞としては、神経系内の細胞、例えば膠細胞(例えば乏突起膠細胞、星状膠細胞等)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0021】
Casヌクレアーゼ
操作されたCRISPRシステムは、概しては、2つの成分:ガイドRNA(gRNA又はsgRNA)及びCRISPR関連エンドヌクレアーゼ(Casタンパク質)を含有する。天然において、CRISPR/CRISPR関連(Cas)システムは、CRISPR RNA(crRNA)を使用して侵入核酸のサイレンシングをガイドすることによりウイルス及びプラスミドに対する適応免疫を細菌及び古細菌に提供する。CRISPR-Casは、外来核酸の配列特異的な検出及びサイレンシングのために小RNA分子に依拠するRNA媒介性の適応防御システムである。CRISPR/Casシステムは、オペロンに編成されたcas遺伝子及びゲノム標的化配列からなるCRISPRアレイ(スペーサーと呼ばれる)から構成される。本明細書において提供されるのは、細胞中のJCV DNAを検出してサイレンシングする操作されたCRISPRシステムである。
【0022】
本明細書に記載されるように、CRISPR-Casシステムは、概しては、標的ポリヌクレオチド(例えばJCVゲノムDNA)の領域に相補的な又は実質的に相補的なヌクレオチド配列を含有するガイドRNA配列、及びヌクレアーゼ活性を有するタンパク質を含む酵素システムを指す。CRISPR-Casシステムとしては、I型CRISPR-Casシステム、II型CRISPR-Casシステム、III型CRISPR-Casシステム、及びこれらの誘導体が挙げられる。CRISPR-Casシステムとしては、天然に存在するCRISPR-Casシステムに由来する操作された及び/又はプログラムされたヌクレアーゼシステムが挙げられる。ある特定の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、操作及び/又は突然変異されたCasタンパク質を含有する。一部の実施形態において、ヌクレアーゼは、概しては、核酸のヌクレオチドサブユニットの間のホスホジエステル結合を切断することができる酵素を指す。一部の実施形態において、エンドヌクレアーゼは、概しては、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合を切断することができる。ニッカーゼは、DNAデュプレックスの単一の鎖のみを切断するエンドヌクレアーゼを指す。
【0023】
一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現又は活性の指令に関与する転写物及び他のエレメントを更に含み、これには、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えばtracrRNA若しくは活性の部分的tracrRNA)、tracrメイト配列(内因性CRISPRシステムの文脈において「直接反復」及びtracrRNA処理された部分的な直接反復を包含する)、ガイド配列(内因性CRISPRシステムの文脈において「スペーサー」とも称される)、又はCRISPR座位からの他の配列及び転写物が含まれる。概しては、CRISPRシステムは、標的配列(内因性CRISPRシステムの文脈においてプロトスペーサーとも称される)の部位においてCRISPR複合体の形成を促進するエレメントにより特徴付けられる。CRISPR複合体の形成の文脈において、「標的配列」は、ガイド配列が相補性を有するように設計される配列を指し、標的配列及びガイド配列の間のハイブリダイゼーションはCRISPR複合体の形成を促進する。ある特定の実施形態において、標的配列は、任意のポリヌクレオチド、例えばDNA又はRNAポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、標的配列は細胞の核又は細胞質中に位置する。
【0024】
一部の実施形態において、本明細書において使用されるCRISPR/Casシステムは、I型、II型、又はIII型システムであることができる。好適なCRISPR/Casタンパク質の非限定的な例としては、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(又はCasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas10d、CasF、CasG、CasH、CasX、CasΦ、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1(又はCasA)、Cse2(又はCasB)、Cse3(又はCasE)、Cse4(又はCasC)、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csz1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、及びCu1966が挙げられる。更なる例として、一部の実施形態において、CRISPR-Casタンパク質は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cash、Cas7、Cas8、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cas9、Cas12(例えば、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d、Cas12k、Cas12j/CasΦ、Cas12L等)、Cas13(例えば、Cas13a、Cas13b(例えばCas13b-t1、Cas13b-t2、Cas13b-t3)、Cas13c、Cas13d等)、Cas14、CasX、CasY、又は操作された形態のCasタンパク質である。一部の実施形態において、CRISPR/Casタンパク質又はエンドヌクレアーゼはCas9である。一部の実施形態において、CRISPR/Casタンパク質又はエンドヌクレアーゼはCas12である。ある特定の実施形態において、Cas12ポリペプチドは、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d、Cas12e、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12L又はCas12Jである。一部の実施形態において、CRISPR/Casタンパク質又はエンドヌクレアーゼはCasXである。一部の実施形態において、CRISPR/Casタンパク質又はエンドヌクレアーゼはCasYである。一部の実施形態において、CRISPR/Casタンパク質又はエンドヌクレアーゼはCasΦである。
【0025】
一部の実施形態において、Cas9タンパク質は、スタフィロコッカス・アウレウス、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)属菌、ノカルジオプシス・ダソンビレイ(Nocardiopsis dassonvillei)、ストレプトミセス・プリスチナスピラリス(Streptomyces pristinaespiralis)、ストレプトミセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)、ストレプトミセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)、ストレプトスポランギウム・ロセウム(Streptosporangium roseum)、アリシクロバシラス・アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)、バシラス・シュードミコイデス(Bacillus pseudomycoides)、バシラス・セレニチレデュセンス(Bacillus selenitireducens)、エキシグオバクテリウム・シビリカム(Exiguobacterium sibiricum)、ラクトバシラス・デルブルエッキー(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバシラス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ミクロシラ・マリナ(Microscilla marina)、バークホルデリア目(Burkholderiales)細菌、ポラロモナス・ナフタレニボランス(Polaromonas naphthalenivorans)、ポラロモナス(Polaromonas)属菌、クロコスファエラ・ワトソニー(Crocosphaera watsonii)、シアノテセ(Cyanothece)属菌、ミクロシスチス・エルギノーサ(Microcystis aeruginosa)、シネココッカス(Synechococcus)属菌、アセトハロビウム・アラバチカム(Acetohalobium arabaticum)、アンモニフェクス・デジェンシー(Ammonifex degensii)、カルジセルロシルプトル・ベシー(Caldicelulosiruptor becscii)、カンジダツス・デスルフォルディス(Candidatus Desulforudis)、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、フィネゴルディア・マグナ(Fine goldia magna)、ナトラナエロビウス・サーモフィラス(Natranaerobius thermophilus)、ペロトマクラム・サーモプロピオニカム(Pelotomaculum thermopropionicum)、アシディチオバシラス・カルダス(Acidithiobacillus caldus)、アシディチオバシラス・フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferrooxidans)、アロクロマチウム・ビノスム(Allochromatium vinosum)、マリノバクター(Marinobacter)属菌、ニトロソコッカス・ハロフィルス(Nitrosococcus halophilus)、ニトロソコッカス・ワトソニー(Nitrosococcus watsoni)、シュードアルテロモナス・ハロプランクティス(Pseudoalteromonas haloplanktis)、クテドノバクター・ラセミフェル(Ktedonobacter racemifer)、メタノハロビウム・エベスチガータム(Methanohalobium evestigatum)、アナベナ・バリアビリス(Anabaena variabilis)、ノドゥラリア・スプミゲナ(Nodularia spumigena)、ノストク(Nostoc)属菌、アルスロスピラ・マキシマ(Arthrospira maxima)、アルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)、アルスロスピラ(Arthrospira)属菌、リングビア(Lyngbya)属菌、ミクロコレウス・クソノプラステス(Microcoleus chthonoplastes)、オシラトリア(Oscillatoria)属菌、ペトロトガ・モビリス(Petrotoga mobilis)、サーモシフォ・アフリカヌス(Thermosipho africanus)、又はアカリオクロリス・マリナ(Acaryochloris marina)からのものであるか、又はそれに由来するものであることができる。
【0026】
一部の実施形態において、組成物は、CRISPR関連(Cas)タンパク質、又はその機能性断片若しくは誘導体を含む。一部の実施形態において、Casタンパク質はエンドヌクレアーゼであり、これにはCas9ヌクレアーゼが含まれるがそれに限定されない。一部の実施形態において、Cas9タンパク質は、野生型ストレプトコッカス・ピオゲネス又はスタフィロコッカス・アウレウスCas9アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、Casタンパク質は、他の種、例えば他のストレプトコッカス種、例えばサーモフィラス(thermophilus);シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、又は他のシークエンシングされた細菌ゲノム及び古細菌、又は他の原核微生物からのCasタンパク質のアミノ酸配列を含む。本開示のために有用な他のCasタンパク質は公知であり、又は当該技術分野において公知の方法を使用して同定することができる(例えば、Esvelt et al., 2013, Nature Methods, 10: 1116-1121を参照)。一部の実施形態において、Casタンパク質は、その天然の供給源と比較して、改変されたアミノ酸配列を含む。
【0027】
CRISPR/Casタンパク質は、少なくとも1つのRNA認識及び/又はRNA結合性ドメインを含む。RNA認識及び/又はRNA結合性ドメインはガイドRNA(gRNA)と相互作用する。CRISPR/Casタンパク質はまた、ヌクレアーゼドメイン(即ち、DNase又はRNaseドメイン)、DNA結合性ドメイン、ヘリカーゼドメイン、RNAseドメイン、タンパク質-タンパク質相互作用ドメイン、二量体化ドメイン、及び他のドメインを含むことができる。
【0028】
CRISPR/Cas様タンパク質は、野生型CRISPR/Casタンパク質、改変されたCRISPR/Casタンパク質、又は野生型若しくは改変されたCRISPR/Casタンパク質の断片であることができる。CRISPR/Cas様タンパク質は、核酸結合の親和性及び/若しくは特異性を増加させるため、酵素活性を変更するため、並びに/又はタンパク質の別の特性を変化させるために改変され得る。例えば、CRISPR/Cas様タンパク質のヌクレアーゼ(即ち、DNase、RNase)ドメインは、改変、欠失、又は不活性化され得る。代替的に、CRISPR/Cas様タンパク質は、Casタンパク質の機能のために必須でないドメインを除去するために切断され得る。CRISPR/Cas様タンパク質はまた、Casタンパク質のエフェクタードメインの活性を最適化するために切断又は改変され得る。
【0029】
一部の実施形態において、CRISPR/Cas様タンパク質は、野生型Casタンパク質又はその断片に由来することができる。一部の実施形態において、CRISPR/Cas様タンパク質は、改変されたCas9タンパク質である。例えば、Cas9タンパク質のアミノ酸配列は、野生型又は別のCasタンパク質と比べてタンパク質の1つ又は複数の特性(例えば、ヌクレアーゼ活性、親和性、安定性等)を変更するために改変され得る。代替的に、RNAにガイドされる切断に関与しないCas9タンパク質のドメインは、タンパク質から排除することができ、その結果、改変されたCas9タンパク質は野生型Cas9タンパク質よりも小さくなる。
【0030】
開示されるCRISPR-Cas組成物はまた、本明細書に開示されるCasタンパク質(例えば、Cas9、saCas9、Cas9タンパク質)に対して実質的な相同性を有するタンパク質の任意の形態を含むと解釈されるべきである。一部の実施形態において、「実質的に相同の」タンパク質は、本明細書に開示されるCasタンパク質のアミノ酸配列に対して約50%相同、約70%相同、約80%相同、約90%相同、約95%相同、又は約99%相同である。
【0031】
JCV標的化
本明細書に記載のCRISPR-Casシステムは、一部の実施形態において、gRNA標的及びgRNA標的の組合せの使用を通じてJCV DNA(例えばJCVゲノム)の有効なモジュレーション及び/又は編集を達成する。記載されるgRNA標的は、JCVゲノムの新規の配列及び/又は領域を標的化し、一部の実施形態において、標的配列及び/又は領域は、細胞中のJCV DNA分子及び/又はJCVゲノムの有効な編集を可能にすることにより利益を付与する。追加的に、別の態様において、更なる利点は、組合せでの新規の標的配列の使用により提供される。例えば、本明細書に記載のgRNAは、JCVゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)、後期コーディング遺伝子、及び/又は早期コーディング遺伝子を標的化して、JCV DNAをモジュレート及び/又は編集し、JCV複製を予防/阻害する。ある特定の実施形態において、標的化は、NCCR領域、ラージT抗原遺伝子、及び/又はVP1遺伝子の任意の編集(例えば切除、欠失等)の促進又は誘導を含む。ある特定の実施形態において、
【0032】
JCVゲノムは、閉じた環状超らせん染色体であり、「早期」及び「後期」遺伝子から構成されており、これらの遺伝子は非コーディング制御領域(NCCR)により分離されており、NCCRは、複製起点(ORI)、プロモーター、及びエンハンサーエレメントを含有する。早期領域は、感染後且つDNA複製前にデノボで発現され、NCCRのORI近位側にある。後期遺伝子は、最適には、DNA複製と並行して又はその後に発現され、NCCRのORI遠位側に見出される。ポリオーマウイルスNCCRは、単一のウイルス内の他にウイルスの属間においてウイルスゲノムの最も可変の部分である。顕著なことに、本明細書に開示されるgRNAは、JCVゲノムの配列ブロックエレメント及びタンデムリピートエレメントの位置と比べて5’の近位(又はJCVゲノムが環状であることを考慮して3’の遠位)(例えばMad-1ゲノムの約5000~約5130の位置内)の領域を標的化する。図1はJCV(Mad-1)ゲノムの図表を示し、NCCR標的の位置を表す。一部の実施形態において、利点は、JCVゲノムの配列ブロックエレメント及びタンデムリピートエレメントの位置と比べて5’の近位(又はJCVゲノムが環状であることを考慮して3’の遠位)(例えばMad-1ゲノムの約5000~約5130の位置内)の領域を標的化することにより提供される。一部の実施形態において、gRNAは、CRISPR-CasシステムをJCVゲノムのNCCR領域に標的化する。一部の実施形態において、gRNAは、CRISPR-Casシステムを、配列番号2を含むJCVゲノムの配列に標的化する。一部の実施形態において、NCCRを標的化する第1のgRNAは、1つ又は複数のコーディング領域(例えばラージT及びスモールt抗原、VP1、VP2、VP3、並びにアグノプロテイン)を標的化するgRNAとの組合せで使用される。
【0033】
JCVゲノムは、6つの主要なウイルスタンパク質(ラージT及びスモールt抗原、VP1、VP2、VP3、並びにアグノプロテイン)の他に、T抗原のいくつかのスプライスバリアントをコードする。ゲノムの早期及び後期転写側は、多くの場合に超可変調節領域(HVRR)又は調節領域(RR)と呼ばれる非コーディング制御領域(NCCR)により物理的に分離されており、DNAの反対鎖から反対方向に転写される。DNA複製が始まる前に転写されるゲノムの早期コーディング遺伝子は、ラージT抗原及びスモールt抗原遺伝子の他に、T抗原スプライスバリアントから構成される。ゲノムの後期コーディング遺伝子は、DNA複製と随伴的に転写され、3つのウイルス構造タンパク質、VP1、VP2、及びVP3の他に、補助的なアグノプロテインをコードする。一部の実施形態において、gRNAは、CRISPR-Casシステムを早期コーディング遺伝子に標的化する。一部のある特定の実施形態において、早期コーディング遺伝子はT抗原遺伝子である。一部のある特定の実施形態において、T抗原はラージT抗原遺伝子である。一部の実施形態において、gRNAは、CRISPR-Casシステムを、配列番号6を含むJCVゲノムの配列に標的化する。一部の実施形態において、gRNAは、CRISPR-Casシステムを後期コーディング遺伝子に標的化する。一部のある特定の実施形態において、早期コーディング遺伝子はVP遺伝子である。一部のある特定の実施形態において、VP遺伝子はVP1遺伝子である。一部の実施形態において、gRNAは、CRISPR-Casシステムを、配列番号10を含むJCVゲノムの配列に標的化する。
【0034】
概しては、標的配列はプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含む。一部の事例において、PAMは、Cas/sgRNAがRループを形成するために要求されるDNA配列であって、ゲノムとのそのガイドRNAのワトソン-クリック対合を通じて特異的なDNA配列を調べるためのものを指す。ある特定の事例において、PAM特異性は、Casタンパク質(例えば、CasのPAM認識ドメイン)のDNA結合特異性の機能であり、プロトスペーサー隣接モチーフ認識ドメインは、一部の事例において、DNA標的PAM配列に対する結合性部位を含むCasアミノ酸配列を指す。S.ピオゲネスに由来するCRISPR-Casシステム(spCas9)において、標的DNAは、典型的には、5’-NGG又はNAGプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の直前にある。他のCas9オルソログは異なるPAM特異性を有し得る。例えば、S.サーモフィラスからのCas9(stCas9)は、CRISPR 1のために5’-NNAGAA及びCRISPR3のために5’-NGGNGを要求し、髄膜炎菌(Neiseria menigiditis)からのCas9(nmCas9)は5’-NNNNGATTを要求する。スタフィロコッカス・アウレウス亜種アウレウスからのCas9(saCas9)は5’-NNGRRT(R=A又はG)を要求する。本明細書において提供されるJCV標的は、gRNAの文脈において更に同定され得る。
【0035】
gRNAは、改変されるべきゲノム標的を定義する短いRNAヌクレオチドスペーサーである。本明細書において使用される場合、ガイドRNA(gRNA又はsgRNA)という用語は、標的JCV配列に対応する及び/又はハイブリダイズする配列を含有するRNAを指す。例えば、配列番号2は、gRNAが配列番号5、標的配列のRNA同等物を含む、JCV標的配列を含む。ガイドRNA配列はセンス又はアンチセンス配列であることができる。ガイドRNAは、一部の実施形態において、標的DNA配列の領域に相補的な又は実質的に相補的な領域以外のヌクレオチド配列を含むことができる。例えば、一部の事例において、ガイドRNAは、crRNAの部分である若しくは該部分と考えられ、又はcrRNA中に含まれる、例えば、crRNA:tracrRNAキメラである。本明細書において使用される場合、標的核酸という用語は、作用(例えば編集又はモジュレーション)の目的である核酸を意味することが意図される。
【0036】
一部の実施形態において、gRNAは合成オリゴヌクレオチドである。一部の実施形態において、合成ヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチドを含む。ヌクレオシド間リンカー(即ち骨格)の修飾を利用して、安定性又は薬力学的特性を増加させることができる。例えば、ヌクレオシド間リンカー修飾は、細胞ヌクレアーゼによる分解を予防し又は低減させるため、gRNAの薬物動態及びバイオアベイラビリティを増加させる。概しては、修飾されたヌクレオシド間リンカーは、2つのヌクレオシドを共有結合的に連結する、ホスホジエステル(PO)リンカー(liners)以外の任意のリンカーを含む。一部の実施形態において、修飾されたヌクレオシド間リンカーは、ホスホジエステルリンカーと比較してgRNAのヌクレアーゼ耐性を増加させる。天然に存在するオリゴヌクレオチドについて、ヌクレオシド間リンカーは、隣接するヌクレオシドの間のホスホジエステル結合を生成するリン酸基を含む。一部の実施形態において、gRNAは、天然のホスホジエステルから修飾された1つ又は複数のヌクレオシド間リンカーを含む。一部の実施形態において、gRNA、又はその連続するヌクレオチド配列のヌクレオシド間リンカーの全ては、修飾されている。例えば、一部の実施形態において、ヌクレオシド間連結は硫黄(S)を含み、例えばホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。
【0037】
リボース糖又は核酸塩基に対する修飾もまた本発明において利用することができる。概しては、修飾されたヌクレオシドは、糖部分又は核酸塩基部分の1つ又は複数の修飾の導入を含む。一部の実施形態において、記載されるようなgRNAは、修飾された糖部分を含む1つ又は複数のヌクレオシドを含み、修飾された糖部分は、デオキシリボース核酸(DNA)及びRNA中に見出されるリボース糖部分と比較した場合に糖部分の修飾である。リボース糖部分の修飾を有する多数のヌクレオシドを利用することができ、これは主に、オリゴヌクレオチドのある特定の特性、例えば親和性及び/又は安定性を向上させる目的を有する。そのような修飾としては、リボース環構造が修飾されるものが挙げられる。これらの修飾としては、ヘキソース環(HNA)、リボース環上のC2及びC4炭素の間にビラジカル架橋を有する二環式環(例えばロックド核酸(LNA))、又は典型的にはC2及びC3炭素の間の結合を欠いた非連結リボース環(例えばUNA)での置換えが挙げられる。他の糖修飾ヌクレオシドとしては、例えば、ビシクロヘキソース核酸又は三環式核酸が挙げられる。修飾されたヌクレオシドとしてはまた、糖部分が非糖部分で置き換えられたヌクレオシド、例えばペプチド核酸(PNA)、又はモルホリノ核酸の場合が挙げられる。
【0038】
糖修飾としてはまた、リボース環上の置換基を、水素、又はDNA及びRNAヌクレオシド中に天然に見出される2’-OH基以外の基に変更することにより為される修飾が挙げられる。置換基は、例えば、2’位、3’位、4’位又は5’位に導入されてもよい。修飾された糖部分を有するヌクレオシドとしてはまた、2’修飾ヌクレオシド、例えば2’置換ヌクレオシドが挙げられる。実際に、2’置換ヌクレオシドを開発するために多くの集中が費やされており、多数の2’置換ヌクレオシドは、オリゴヌクレオチドに組み込まれた場合に有益な特性、例えばヌクレオシド耐性の増強及び親和性の増強を有することが見出されている。2’糖修飾ヌクレオシドは、2’位(2’置換ヌクレオシド)にH若しくは-OH以外の置換基を有するヌクレオシド(2’置換ヌクレオシド)又は2’連結ビラジカル(biradicle)を含むヌクレオシドであり、2’置換ヌクレオシド及びLNA(2’-4’ビラジカル架橋)ヌクレオシドが挙げられる。2’置換された修飾ヌクレオシドの例は、2’-O-アルキル-RNA、2’-O-メチル-RNA、2’-アルコキシ-RNA、2’-O-メトキシエチル-RNA(MOE)、2’-アミノ-DNA、2’-フルオロ-RNA、及び2’-F-ANAヌクレオシドである。更なる例として、一部の実施形態において、リボース基中の修飾はリボース基の2’位における修飾を含む。一部の実施形態において、リボース基の2’位における修飾は、2’-O-メチル、2’-フルオロ、2’-デオキシ、及び2’-O-(2-メトキシエチル)からなる群から選択される。
【0039】
一部の実施形態において、gRNAは、1つ又は複数の修飾された糖を含む。一部の実施形態において、gRNAは、修飾された糖のみを含む。ある特定の実施形態において、gRNAは、10%、25%、50%、75%、又は90%より多くの修飾された糖を含む。一部の実施形態において、修飾された糖は二環式糖である。一部の実施形態において、修飾された糖は2’-O-メトキシエチル基を含む。一部の実施形態において、gRNAは、ヌクレオシド間リンカー修飾及びヌクレオシド修飾の両方を含む。
【0040】
標的特異性は、ガイドRNA、又は標的ポリヌクレオチド配列若しくは領域(例えばJCVゲノムのNCCR)に特異的なcrRNAに関して使用されることがあり、(例えば標的に対応する)標的ポリヌクレオチド、例えば、標的DNAの標的(配列又は領域)に選択的にアニーリング/ハイブリダイズすることができるヌクレオチドの配列を更に含む。一部の実施形態において、crRNA又はその誘導体は、標的DNA配列の領域に相補的な標的特異的ヌクレオチド領域を含有する。一部の実施形態において、crRNA又はその誘導体は、標的特異的ヌクレオチド領域以外に他のヌクレオチド配列を含有する。一部の実施形態において、他のヌクレオチド配列はtracrRNA配列からのものである。
【0041】
gRNAは概してはスキャフォールドによりサポートされ、スキャフォールドは、天然の生物学的種の間で実質的に同一の又は高度に保存された(例えば標的特異性を付与しない)配列を含むgRNA又はcrRNA分子の部分を指す。スキャフォールドは、ネイティブなcrRNA及びtracrRNA中で保存されていない配列を含む任意の非天然の部分を除いて、tracrRNAセグメント、及びcrRNAセグメントの5’末端又はその近くのポリヌクレオチド標的化ガイド配列以外のcrRNAセグメントの部分を含む。一部の実施形態において、crRNA又はtracrRNAは、修飾された配列を含む。ある特定の実施形態において、crRNA又はtracrRNAは、少なくとも1、2、3、4、5、10、又は15個の修飾された塩基(例えば修飾されたネイティブな塩基配列)を含む。
【0042】
相補的は、本明細書において使用される場合、概しては、ある特定の条件下で標的ポリヌクレオチドの同定領域に選択的にアニーリングすることができるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを指す。本明細書において使用される場合、「実質的に相補的」という用語及び文法的同等物は、ある特定の条件下で標的ポリヌクレオチドの同定領域に特異的にアニーリングすることができるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを意味することが意図される。アニーリングは、1つの核酸の別の核酸とのヌクレオチド塩基対合性相互作用であって、デュプレックス、トリプレックス、又は他のより高次の構造の形成を結果としてもたらすものを指す。主要な相互作用は典型的にはヌクレオチド塩基特異的であり、これは例えば、A:T、A:U、及びG:Cであり、ワトソン-クリック及びフーグスティーン型水素結合による。一部の実施形態において、塩基スタッキング及び疎水性相互作用もまたデュプレックス安定性に寄与することができる。ポリヌクレオチドが標的核酸の相補的な又は実質的に相補的な領域にアニールする条件は当該技術分野において周知であり、例えば、Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach, Hames and Higgins, eds., IRL Press, Washington, D.C. (1985)及びWetmur and Davidson, Mol. Biol. 31:349 (1968)に記載される通りである。アニーリング条件は特定の応用に依存し、当業者により過度の実験なしに常法により決定され得る。ハイブリダイゼーションは、概しては、2つの一本鎖ポリヌクレオチドが非共有結合的に結合して安定な二本鎖ポリヌクレオチドを形成するプロセスを指す。結果としてもたらされる二本鎖ポリヌクレオチドは「ハイブリッド」又は「デュプレックス」である。ある特定の事例において、100%の配列同一性はハイブリダイゼーションのために要求されず、ある特定の実施形態において、ハイブリダイゼーションは、おおよそ、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%よりも高い配列同一性において起こる。ある特定の実施形態において、配列同一性は、非同一の核酸塩基に加えて、挿入及び/又は欠失を含む配列を含む。
【0043】
一部の実施形態において、組成物は、複数の異なるgRNA分子であって、各々が異なる標的配列に標的化されるものを含む。一部の実施形態において、このマルチプレックス戦略は有効性の増加を提供する。これらのマルチプレックスgRNA又はgRNAの組合せは、異なるベクター中で別々に発現され得る、又は1つの単一のベクター中で発現され得る。
【0044】
一部の実施形態において、gRNAはCRISPR RNA(crRNA):トランス活性化cRNA(tracrRNA)デュプレックスを含む。一部の実施形態において、gRNAは、crRNA及びtracrRNAの間の天然のデュプレックスを模倣するステムループを含む。一部の実施形態において、ステムループは、AGAAAUを含むヌクレオチド配列を含む。例えば、一部の実施形態において、組成物は、crRNA、ステム、及びtracrRNAを含む合成又はキメラガイドRNAを含む。一部の実施形態において、組成物は、ハイブリダイズして天然のデュプレックスを形成する単離されたcrRNA及び/又は単離されたtracrRNAを含む。例えば、一部の実施形態において、gRNAは、標的化配列を含むcrRNA又はcrRNA前駆体(プレcrRNA)を含む。
【0045】
本明細書に記載されるのは、NCCR、VP1遺伝子、ラージT抗原遺伝子、又はこれらの組合せを標的化する(例えばそれにハイブリダイズ又はアニーリングする)gRNAである。一部の実施形態において、gRNAは、NCCR、VP1遺伝子、及びラージT抗原遺伝子を標的化する。ある特定の実施形態において、NCCR、VP1遺伝子、及び/又はラージT抗原遺伝子を標的化するgRNAは、NCCR、VP1遺伝子、及び/又はラージT抗原遺伝子の中又はその近くの領域にハイブリダイズする。ある特定の実施形態において、NCCR、VP1遺伝子、及び/又はラージT抗原遺伝子の中の領域は、NCCR、VP1遺伝子、及び/又はラージT抗原遺伝子の中の少なくとも1つのヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、NCCR、VP1遺伝子、及び/又はラージT抗原遺伝子の近くの領域は、NCCR、VP1遺伝子、及び/又はラージT抗原遺伝子の周囲の5、10、15、20、25、30、又は35塩基の位置を含む。
【0046】
一部の実施形態において、gRNAはJCVゲノムのNCCRを標的化する。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号2又は配列番号2に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列に対応するNCCR配列を標的化する。一部の実施形態において、NCCRの中又はその近くの標的核酸配列は、配列番号2に記載の配列又は配列番号2に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号5又は配列番号5に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列のRNA配列を含む。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号2に相補的なNCCR配列又は配列番号2に相補的なNCCR配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を標的化する。一部の実施形態において、gRNAにより標的化されるNCCRのNCCR配列は、配列番号3又は配列番号3に対して少なくとも70%、80%、若しくは90%の配列同一性を有する配列によるPAM配列を含む。一部の実施形態において、gRNAにより標的化されるNCCRのNCCR配列は、配列番号4又は配列番号4に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0047】
一部の実施形態において、gRNAはJCVゲノムのT抗原遺伝子を標的化する。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号6又は配列番号6に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列に対応するT抗原配列を標的化する。一部の実施形態において、T抗原遺伝子の中又はその近くの標的核酸配列は、配列番号6に記載の配列又は配列番号6に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号9又は配列番号9に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列のRNA配列を含む。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号6に相補的なT抗原配列又は配列番号6に相補的なT抗原配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を標的化する。一部の実施形態において、gRNAにより標的化されるT抗原遺伝子のT抗原配列は、配列番号7又は配列番号7に対して少なくとも70%、80%、若しくは90%の配列同一性を有する配列を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、gRNAにより標的化されるT抗原遺伝子のT抗原配列は、配列番号6又は配列番号6に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0048】
一部の実施形態において、gRNAはJCVゲノムのNCCRにハイブリダイズする。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号2又は配列番号2に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列に対応するNCCR配列にハイブリダイズする。一部の実施形態において、NCCRの中又はその近くの標的核酸配列は、配列番号2に記載の配列又は配列番号2に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号5又は配列番号5に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列のRNA配列を含む。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号2に相補的なNCCR配列又は配列番号2に相補的なNCCR配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列にハイブリダイズする。一部の実施形態において、gRNAにより標的化されるNCCRのNCCR配列は、配列番号3又は配列番号3に対して少なくとも70%、80%、若しくは90%の配列同一性を有する配列によるPAM配列を含む。一部の実施形態において、gRNAにより標的化されるNCCRのNCCR配列は、配列番号4又は配列番号4に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0049】
一部の実施形態において、gRNAはJCVゲノムのT抗原遺伝子にハイブリダイズする。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号6又は配列番号6に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列に対応するT抗原配列にハイブリダイズする。一部の実施形態において、T抗原遺伝子の中又はその近くの標的核酸配列は、配列番号6に記載の配列又は配列番号6に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号9又は配列番号9に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列のRNA配列を含む。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号6に相補的なT抗原配列又は配列番号6に相補的なT抗原配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列にハイブリダイズする。一部の実施形態において、gRNAにより標的化されるT抗原遺伝子のT抗原配列は、配列番号7又は配列番号7に対して少なくとも70%、80%、若しくは90%の配列同一性を有する配列を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、gRNAにより標的化されるT抗原遺伝子のT抗原配列は、配列番号6又は配列番号6に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0050】
一部の実施形態において、gRNAはJCVゲノムのVP遺伝子にハイブリダイズする。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列に対応するVP配列にハイブリダイズする。一部の実施形態において、VP遺伝子の中又はその近くの標的核酸配列は、配列番号10に記載の配列又は配列番号10に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号9又は配列番号9に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列のRNA配列を含む。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号10に相補的なVP配列又は配列番号10に相補的なVP配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列にハイブリダイズする。一部の実施形態において、gRNAにより標的化されるVP遺伝子のVP配列は、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも70%、80%、若しくは90%の配列同一性を有する配列を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、gRNAにより標的化されるVP遺伝子のVP配列は、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0051】
一部の実施形態において、gRNAはJCVゲノムのVP遺伝子を標的化する。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列に対応するVP配列を標的化する。一部の実施形態において、VP遺伝子の中又はその近くの標的核酸配列は、配列番号10に記載の配列又は配列番号10に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号9又は配列番号9に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列のRNA配列を含む。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号10に相補的なVP配列又は配列番号10に相補的なVP配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を標的化する。一部の実施形態において、gRNAにより標的化されるVP遺伝子のVP配列は、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも70%、80%、若しくは90%の配列同一性を有する配列を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、gRNAにより標的化されるVP遺伝子のVP配列は、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0052】
一部の実施形態において、組成物は、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ、前記gRNA、並びにgRNA及びgRNAの1つ又は両方をコードする核酸を含む。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号2又は配列番号2に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によりコードされる。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号6又は配列番号6に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によりコードされる。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によりコードされる。一部の実施形態において、核酸は、両方のgRNA及びgRNAをコードする。
【0053】
「配列同一性」という用語は、2つのポリヌクレオチド配列が比較のウィンドウにかけて同一の(即ち、ヌクレオチド対ヌクレオチドを基準にして)であることを意味する。「配列同一性の百分率」という用語は、2つの最適にアライメントされた配列を比較のウィンドウにかけて比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、又はI)が両方の配列において起こる位置の数を決定してマッチした位置の数を得、マッチした位置の数を比較のウィンドウ中の位置の総数(即ち、ウインドウサイズ)で割り、結果に100を掛けて配列同一性の百分率を得ることにより算出される。
【0054】
2つのタンパク質の間の「相同性」又は「類似性」という用語は、1つのタンパク質配列のアミノ酸配列及びその保存されたアミノ酸置換を第2のタンパク質配列と比較することにより決定される。類似性は、当該技術分野において周知の手順、例えば、BLASTプログラム(the National Center for Biological InformationのBasic Local Alignment Search Tool)により決定され得る。
【0055】
一部の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、約1個のgRNA~約6個のgRNAを利用する。一部の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、少なくとも約1個のgRNAを利用する。一部の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、最大で約6個のgRNAを利用する。一部の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、約1個のgRNA~約2個のgRNA、約1個のgRNA~約3個のgRNA、約1個のgRNA~約4個のgRNA、約1個のgRNA~約5個のgRNA、約1個のgRNA~約6個のgRNA、約2個のgRNA~約3個のgRNA、約2個のgRNA~約4個のgRNA、約2個のgRNA~約5個のgRNA、約2個のgRNA~約6個のgRNA、約3個のgRNA~約4個のgRNA、約3個のgRNA~約5個のgRNA、約3個のgRNA~約6個のgRNA、約4個のgRNA~約5個のgRNA、約4個のgRNA~約6個のgRNA、又は約5個のgRNA~約6個のgRNAを利用する。一部の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、約1個のgRNA、約2個のgRNA、約3個のgRNA、約4個のgRNA、約5個のgRNA、又は約6個のgRNAを利用する。
【0056】
一部の実施形態において、gRNAは、約15個のヌクレオチド~約28個のヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、gRNAは、少なくとも約15個のヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、gRNAは、最大で約28個のヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、gRNAは、約15個のヌクレオチド~約16個のヌクレオチド、約15個のヌクレオチド~約17個のヌクレオチド、約15個のヌクレオチド~約18個のヌクレオチド、約15個のヌクレオチド~約19個のヌクレオチド、約15個のヌクレオチド~約20個のヌクレオチド、約15個のヌクレオチド~約21個のヌクレオチド、約15個のヌクレオチド~約22個のヌクレオチド、約15個のヌクレオチド~約23個のヌクレオチド、約15個のヌクレオチド~約24個のヌクレオチド、約15個のヌクレオチド~約25個のヌクレオチド、約15個のヌクレオチド~約28個のヌクレオチド、約16個のヌクレオチド~約17個のヌクレオチド、約16個のヌクレオチド~約18個のヌクレオチド、約16個のヌクレオチド~約19個のヌクレオチド、約16個のヌクレオチド~約20個のヌクレオチド、約16個のヌクレオチド~約21個のヌクレオチド、約16個のヌクレオチド~約22個のヌクレオチド、約16個のヌクレオチド~約23個のヌクレオチド、約16個のヌクレオチド~約24個のヌクレオチド、約16個のヌクレオチド~約25個のヌクレオチド、約16個のヌクレオチド~約28個のヌクレオチド、約17個のヌクレオチド~約18個のヌクレオチド、約17個のヌクレオチド~約19個のヌクレオチド、約17個のヌクレオチド~約20個のヌクレオチド、約17個のヌクレオチド~約21個のヌクレオチド、約17個のヌクレオチド~約22個のヌクレオチド、約17個のヌクレオチド~約23個のヌクレオチド、約17個のヌクレオチド~約24個のヌクレオチド、約17個のヌクレオチド~約25個のヌクレオチド、約17個のヌクレオチド~約28個のヌクレオチド、約18個のヌクレオチド~約19個のヌクレオチド、約18個のヌクレオチド~約20個のヌクレオチド、約18個のヌクレオチド~約21個のヌクレオチド、約18個のヌクレオチド~約22個のヌクレオチド、約18個のヌクレオチド~約23個のヌクレオチド、約18個のヌクレオチド~約24個のヌクレオチド、約18個のヌクレオチド~約25個のヌクレオチド、約18個のヌクレオチド~約28個のヌクレオチド、約19個のヌクレオチド~約20個のヌクレオチド、約19個のヌクレオチド~約21個のヌクレオチド、約19個のヌクレオチド~約22個のヌクレオチド、約19個のヌクレオチド~約23個のヌクレオチド、約19個のヌクレオチド~約24個のヌクレオチド、約19個のヌクレオチド~約25個のヌクレオチド、約19個のヌクレオチド~約28個のヌクレオチド、約20個のヌクレオチド~約21個のヌクレオチド、約20個のヌクレオチド~約22個のヌクレオチド、約20個のヌクレオチド~約23個のヌクレオチド、約20個のヌクレオチド~約24個のヌクレオチド、約20個のヌクレオチド~約25個のヌクレオチド、約20個のヌクレオチド~約28個のヌクレオチド、約21個のヌクレオチド~約22個のヌクレオチド、約21個のヌクレオチド~約23個のヌクレオチド、約21個のヌクレオチド~約24個のヌクレオチド、約21個のヌクレオチド~約25個のヌクレオチド、約21個のヌクレオチド~約28個のヌクレオチド、約22個のヌクレオチド~約23個のヌクレオチド、約22個のヌクレオチド~約24個のヌクレオチド、約22個のヌクレオチド~約25個のヌクレオチド、約22個のヌクレオチド~約28個のヌクレオチド、約23個のヌクレオチド~約24個のヌクレオチド、約23個のヌクレオチド~約25個のヌクレオチド、約23個のヌクレオチド~約28個のヌクレオチド、約24個のヌクレオチド~約25個のヌクレオチド、約24個のヌクレオチド~約28個のヌクレオチド、又は約25個のヌクレオチド~約28個のヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、gRNAは、約15個のヌクレオチド、約16個のヌクレオチド、約17個のヌクレオチド、約18個のヌクレオチド、約19個のヌクレオチド、約20個のヌクレオチド、約21個のヌクレオチド、約22個のヌクレオチド、約23個のヌクレオチド、約24個のヌクレオチド、約25個のヌクレオチド、又は約28個のヌクレオチドを含む。
【0057】
本明細書において更に提供されるのは、NCCR領域、早期コーディング遺伝子、及び/又は後期コーディング遺伝子を標的化する遺伝子編集組成物である。一部の実施形態において、単独又は組合せでの開示される領域の標的化は、細胞中でのJCV複製及び/又は病理発生を有効に排除し、阻害し、低減させ、及び/又は予防するための利益を提供する。
【0058】
本明細書において更に提供されるのは、NCCR領域、早期コーディング遺伝子、及び/又は後期コーディング遺伝子を標的化する遺伝子編集組成物である。一部の実施形態において、単独又は組合せでの開示される領域の標的化は、細胞中でのJCV複製及び又は病理発生を有効に排除し、阻害し、低減させ、及び/又は予防するための利益を提供する。本明細書において提供されるのは、ある特定の実施形態において、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ又はCRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;(b)ジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の中又はその近くの第1の標的核酸配列に相補的な第1のガイドRNA(gRNA)又は第1のgRNAをコードする核酸配列;及び(c)JCVゲノムのT抗原遺伝子又はJCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNA又は第2のgRNAをコードする核酸配列を含む、組成物である。
【0059】
本明細書において提供されるのは、ある特定の実施形態において、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ;及び(b)配列番号2又はその逆相補鎖を含むジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の中又はその近くの第1の標的核酸配列に相補的な第1のガイドRNA(gRNA)を含む、CRISPR-Casシステムである。一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、配列番号6に記載のJCVゲノムのT抗原遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNAを更に含む。一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、配列番号6に対して少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は95%より高い配列同一性を含む配列を含むJCVゲノムのT抗原遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNAを更に含む。一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、配列番号10に記載のJCVゲノムのVP1遺伝子の中又はその近くの第3の標的核酸配列に相補的な第3のgRNAを更に含む。一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、配列番号10に対して少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は95%より高い配列同一性を含む配列を含むJCVゲノムのVP1遺伝子の中又はその近くの第3の標的核酸配列に相補的な第3のgRNAを更に含む。
【0060】
一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9エンドヌクレアーゼ、Cas12エンドヌクレアーゼ、CasXエンドヌクレアーゼ、又はCasΦエンドヌクレアーゼである。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼはCas9ヌクレアーゼである。一部の実施形態において、Cas9ヌクレアーゼはスタフィロコッカス・アウレウスCas9ヌクレアーゼである。一部の実施形態において、T抗原遺伝子はラージT抗原遺伝子である。一部の実施形態において、VP遺伝子は、VP1遺伝子、VP2遺伝子、又はVP3遺伝子である。一部の実施形態において、VP遺伝子はVP1遺伝子である。
【0061】
一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号2又は配列番号2に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列に対応するNCCR配列を標的化する。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号5又は配列番号5に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によるRNA配列を含む。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号2に相補的なNCCR配列又は配列番号2に相補的なNCCR配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を標的化する。一部の実施形態において、第1のgRNAにより標的化されるNCCRのNCCR配列は、配列番号3又は配列番号3に対して少なくとも70%、80%、若しくは90%の配列同一性を有する配列によるPAM配列を含む。一部の実施形態において、第1のgRNAにより標的化されるNCCRのNCCR配列は、配列番号4又は配列番号4に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0062】
一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号6又は配列番号6に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列に対応するT抗原配列を標的化する。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号9又は配列番号9に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列のRNA配列を含む。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号6に相補的なT抗原配列又は配列番号6に相補的なT抗原配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を標的化する。
【0063】
一部の実施形態において、第1のgRNAにより標的化されるT抗原遺伝子のT抗原配列は、配列番号7又は配列番号7に対して少なくとも70%、80%、若しくは90%の配列同一性を有する配列を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第1のgRNAにより標的化されるT抗原遺伝子のT抗原配列は、配列番号6又は配列番号6に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列に対応するVP配列を標的化する。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号9又は配列番号9に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列のRNA配列を含む。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号10に相補的なVP配列又は配列番号10に相補的なVP配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を標的化する。一部の実施形態において、第1のgRNAにより標的化されるVP遺伝子のVP配列は、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも70%、80%、若しくは90%の配列同一性を有する配列を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第1のgRNAにより標的化されるVP遺伝子のVP配列は、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0064】
一部の実施形態において、組成物は、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ、前記第1のgRNA、並びに第2のgRNA及び第3のgRNAのうちの1つ又は両方をコードする核酸を含む。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号2又は配列番号2に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によりコードされる。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号6又は配列番号6に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によりコードされる。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によりコードされる。一部の実施形態において、核酸は、第1のgRNA、第2のgRNA、及び第3のgRNAをコードする。一部の実施形態において、核酸は、第1のgRNA、第2のgRNA、及び第3のgRNAをコードし、第1のgRNAは、配列番号2又は配列番号2に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によりコードされ;第2のgRNAは、配列番号6又は配列番号6に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によりコードされ;且つ第3のgRNAは、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によりコードされる。
【0065】
提供されるのは、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ;(b)JCVゲノムのNCCRを標的化する第1のガイドRNA(gRNA);並びに(c)JCVゲノムのラージT抗原遺伝子を標的化する第2のgRNA及びJCVゲノムのVP1遺伝子を標的化する第3のgRNAのうちの少なくとも1つ又は両方をコードする核酸である。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号2又は配列番号2に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によりコードされる。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号6又は配列番号6に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によりコードされる。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によりコードされる。
【0066】
一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9エンドヌクレアーゼ、Cas12エンドヌクレアーゼ、CasXエンドヌクレアーゼ、又はCasΦエンドヌクレアーゼである。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼはCas9ヌクレアーゼである。一部の実施形態において、Cas9ヌクレアーゼはスタフィロコッカス・アウレウスCas9ヌクレアーゼである。
【0067】
一部の実施形態において、核酸はプロモーターを更に含む。一部の実施形態において、プロモーターはユビキタスプロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは組織特異的プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは構成的プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはヒトサイトメガロウイルスプロモーターである。一部の実施形態において、核酸はエンハンサーエレメントを更に含む。一部の実施形態において、エンハンサーエレメントはヒトサイトメガロウイルスエンハンサーエレメントである。
【0068】
一部の実施形態において、核酸は5’ITRエレメント及び3’ITRエレメントを更に含む。一部の実施形態において、核酸は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターにパッケージングされるように構成される。一部の実施形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、又はAAV9である。一部の実施形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVDJ、又はAAVDJ/8である。
【0069】
更に提供されるのは、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ;(b)JCVゲノムのNCCRを標的化する第1のガイドRNA(gRNA);並びに(c)JCVゲノムのラージT抗原遺伝子を標的化する第2のgRNA及びJCVゲノムのVP1遺伝子を標的化する第3のgRNAのうちの少なくとも1つ又は両方をコードする核酸を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号2又は配列番号2に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によりコードされる。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号6又は配列番号6に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によりコードされる。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によりコードされる。
【0070】
一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9エンドヌクレアーゼ、Cas12エンドヌクレアーゼ、CasXエンドヌクレアーゼ、又はCasΦエンドヌクレアーゼである。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼはCas9ヌクレアーゼである。一部の実施形態において、Cas9ヌクレアーゼはスタフィロコッカス・アウレウスCas9ヌクレアーゼである。一部の実施形態において、AAVベクターはAAV6ベクター又はAAV9ベクターである。一部の実施形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVDJ、又はAAVDJ/8である。
【0071】
提供される組成物は、細胞からジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの部分又は全体を切除する方法における使用のために好適である。追加的に、提供される組成物は、細胞からジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの部分又は全体を切除する方法における使用のために好適である。更には、提供される組成物は、細胞中の感染性ジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)の発現を低減させ又は排除する方法において有用である。一部の実施形態において、方法は、ラージT抗原遺伝子、VP1遺伝子、又はこれらの組合せの発現を低減させ又は排除することを含む。一部の実施形態において、NCCRは、1つ又は複数のJCV遺伝子の発現を阻害し、且つ方法は、1つ又は複数のJCV遺伝子の発現を低減させ又は排除することを含む。一部の実施形態において、NCCRを編集すること並びに早期コーディング遺伝子及び後期コーディング遺伝子を編集することは、1つ又は複数のJCV遺伝子の発現を阻害し、且つ方法は、早期JCV遺伝子及び後期JCV遺伝子の発現を低減させ又は排除することを含む。
【0072】
ベクター
本開示は、CRISPR成分、例えば1つ又は複数のgRNA及びCasエンドヌクレアーゼの発現用の1つ又は複数のカセットを含むベクターを含む。ベクターは、当該技術分野において公知の、所望の発現カセットを発現させるために好適な任意のベクターであることができる。多数のベクターが公知であり、又は当該技術分野において公知且つ本明細書に記載されるように、哺乳動物細胞への遺伝子産物の移入を媒介できるように設計され得る。ある特定の態様において、ベクターは、インビトロ又はインビボのいずれかで、宿主細胞に送達される核酸ポリヌクレオチドを指す。ある特定の実施形態において、送達されるポリヌクレオチドは、遺伝子療法において関心対象となるコーディング配列を含む(例えばCasタンパク質及びgRNA)。一部の実施形態において、遺伝子編集システムは単一のベクター上で提供される。一部の実施形態において、遺伝子編集システムは、2つ又はそれより多くのベクター上で提供される。一部の実施形態において、遺伝子編集システムは、遺伝子編集システムの1つ又は複数のエレメントをコードする単離された核酸を含む1つ又は複数のベクターにより提供される。一部の実施形態において、CRISPR-Cas又はSAM編集システムは、CRISPR-Cas又はSAM編集システムの1つ又は複数のエレメントをコードする単離された核酸を含む1つ又は複数のベクターにより提供される。例えば、一部の実施形態において、組成物は、Casタンパク質及び少なくとも1つのガイド核酸(例えば、gRNA)をコードする単離された核酸を含む。一部の実施形態において、組成物は、Cas9タンパク質、又はその機能性断片若しくは誘導体をコードする単離された核酸を含む。一部の実施形態において、組成物は、本明細書の他に箇所に記載されるCas9タンパク質、又はその機能性断片若しくは誘導体をコードする少なくとも1つの単離された核酸を含む。一部の実施形態において、組成物は、本明細書の他の箇所に記載されるCas9タンパク質と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸配列相同性を有するCas9タンパク質をコードする少なくとも1つの単離された核酸を含む。ある特定の実施形態において、単離された核酸は、任意の種類の核酸を含み、これにはDNA及びRNAが含まれるがこれらに限定されない。例えば、一部の実施形態において、組成物は、単離されたDNA分子を含み、これには、例えば、記載されるCRISPR-Casシステム若しくは組成物のgRNA若しくはタンパク質、又はその機能性断片をコードする単離されたcDNA分子が含まれる。一部の実施形態において、組成物は、記載されるCRISPR-Casシステム若しくは組成物のタンパク質、又はその機能性断片をコードする単離されたRNA分子を含む。ある特定の実施形態において、単離された核酸は、当該技術分野において公知の任意の方法を使用して合成される。
【0073】
一部の事例において、RNA及び/又はペプチドをコードする天然又は合成核酸の発現は、典型的には、RNA及び/若しくはペプチド又はその部分をコードする核酸をプロモーターに作動可能に連結し、構築物を発現ベクターに組み込むことにより達成される。使用されるベクターは、真核細胞中での複製及び任意選択的に組込みのために好適である。典型的なベクターは、所望の核酸配列の発現の調節のために有用な転写及び翻訳ターミネーター、開始配列、並びにプロモーターを含有する。
【0074】
一部の実施形態において、本開示のベクターはまた、標準的な遺伝子送達プロトコールを使用して、核酸免疫化及び遺伝子療法のために使用される。遺伝子送達の方法は当該技術分野において公知である。別の実施形態において、本開示は遺伝子療法ベクターを提供する。
【0075】
開示される単離された核酸は、多数の種類のベクター中にクローニングされ得る。例えば、核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、及びコスミドが挙げられるがこれらに限定されないベクター中にクローニングされ得る。特に関心対象となるベクターとしては、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及びシークエンシングベクターが挙げられる。
【0076】
追加のプロモーターエレメント、例えば、エンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。一部の実施形態において、ベクターはまた、プラスミドベクターをトランスフェクトされた、又は記載されるCRISPR-Casシステム若しくは組成物を構成する核酸を含むウイルスに感染した細胞中での導入遺伝子の転写、翻訳及び/又は発現を可能とする方式で該導入遺伝子に作動可能に連結された従来の制御エレメントを含む。本明細書において使用される場合、「作動可能に連結された」配列は、関心対象の遺伝子と連続する発現制御配列及び関心対象の遺伝子を制御するためにトランスで又は距離を置いて作用する発現制御配列の両方を含む。発現制御配列としては、適切な転写開始、終結、プロモーター及びエンハンサー配列;効率的なRNAプロセシングシグナル、例えばスプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増強する配列(即ち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を増強する配列;並びに所望の場合、コードされる産物の分泌を増強する配列が挙げられる。ネイティブな、構成的な、誘導性の及び/又は組織特異的なプロモーターを含めて、多数の発現制御配列が当該技術分野において公知であり、利用され得る。
【0077】
典型的には、これらは、開始部位の30~110bp上流の領域に位置するが、多数のプロモーターは、開始部位の下流に機能性エレメントを含有することもまた最近示されている。プロモーターエレメントの間の間隔は頻繁に柔軟であり、その結果、エレメントが逆位となるか又は互いに対して相対的に移動した場合にプロモーター機能は保存される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターにおいて、プロモーターエレメントの間の間隔は、活性が低下し始める前に50bpの間隔まで増加させることができる。プロモーターに依存して、個々のエレメントは、転写を活性化させるために協同的又は独立的のいずれかで機能できるようである。
【0078】
適切なプロモーターの選択は容易に達成され得る。ある特定の態様において、高発現プロモーターが使用される。好適なプロモーターの1つの例は最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに作動可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動することができる強い構成的プロモーター配列である。ある特定の実施形態において、ラウス肉腫ウイルス(RSV)及びMMTプロモーターもまた使用される。ある特定のタンパク質は、それらのネイティブなプロモーターを使用して発現され得る。発現を増強することができる他のエレメントもまた含めることができ、これは例えば高レベルの発現を結果としてもたらすエンハンサー又はシステム、例えばtat遺伝子及びtarエレメントである。このカセットは次にベクター、例えば、例えばE.コリ複製起点を含む、プラスミドベクター、例えばpUC19、pUC118、pBR322、又は他の公知のプラスミドベクターに挿入され得る。
【0079】
好適なプロモーターの別の例は伸長増殖因子-1α(EF-1α)である。しかしながら、一部の実施形態において、他の構成的プロモーター配列が使用され、これには、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長鎖末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーターの他に、ヒト遺伝子プロモーター、以下に限定されないが例えば、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、及びクレアチンキナーゼプロモーターが含まれるがこれらに限定されない。更に、開示されるのは、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターもまた、開示の部分として想定される。誘導性プロモーターの使用は分子スイッチを提供し、これは、そのような発現が所望される場合にそれが作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現をオンにし、又は発現が所望されない場合に発現をオフにすることができる。誘導性プロモーターの例としては、メタロチオネイン(metallothionine)プロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、及びテトラサイクリンプロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。
【0080】
ベクター上に見出されるエンハンサー配列もまた、それに含有される遺伝子の発現を調節する。典型的には、エンハンサーは、遺伝子の転写を増強するためにタンパク質因子と結合している。一部の事例において、エンハンサーは、それが調節する遺伝子の上流又は下流に位置する。一部の事例において、エンハンサーはまた組織特異的であり、特有の細胞又は組織種において転写を増強する。一部の実施形態において、本開示のベクターは、ベクター内に存在する遺伝子の転写をブーストするための1つ又は複数のエンハンサーを含む。一部の事例において、核酸及び/又はタンパク質の発現、細胞に導入される発現ベクターはまた、ウイルスベクターを通じてトランスフェクト又は感染させようとする細胞の集団からの発現性細胞の同定及び選択を促すために選択マーカー遺伝子若しくはレポーター遺伝子のいずれか又は両方を含有することができる。他の実施形態において、選択マーカーは、DNAの別々の断片上に担われ、共トランスフェクション手順において使用される。選択マーカー及びレポーター遺伝子の両方は、宿主細胞中での発現を可能にするために適切な調節配列に隣接され得る。有用な選択マーカーとしては、例えば、抗生物質耐性遺伝子、例えばneo及び同種のものが挙げられる。
【0081】
本明細書において提供されるのは、ある特定の実施形態において、本明細書に記載のCRISPR-Casシステムのいずれかをコードする核酸である。例えば、提供されるのは、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ;ジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の中又はその近くの第1の標的核酸配列に相補的な第1のガイドRNA(gRNA);及びJCVゲノムのT抗原遺伝子又はJCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNAをコードする核酸を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。一部の実施形態において、第2のgRNAは、JCVゲノムのT抗原遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的である。一部の実施形態において、ベクターは、JCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第3の標的核酸配列に相補的な第3のgRNA又は第3のgRNAをコードする核酸配列を更に含む。一部の実施形態において、第2のgRNAは、JCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的である。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、I型、II型、又はIII型Casエンドヌクレアーゼである。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9エンドヌクレアーゼ、Cas12エンドヌクレアーゼ、CasXエンドヌクレアーゼ、又はCasΦエンドヌクレアーゼである。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼはCas9ヌクレアーゼである。一部の実施形態において、Cas9ヌクレアーゼはスタフィロコッカス・アウレウスCas9ヌクレアーゼである。
【0082】
一部の実施形態において、T抗原遺伝子はラージT抗原遺伝子である。一部の実施形態において、VP遺伝子は、VP1遺伝子、VP2遺伝子、又はVP3遺伝子である。一部の実施形態において、VP遺伝子はVP1遺伝子である。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号2に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号2に記載の配列を含む。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号3に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号3に記載のPAM配列を含む。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号4に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号4に記載の配列を含む。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号2に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号2に記載の配列によりコードされる。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号5に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号5を含むRNA配列を含む。
【0083】
一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号6を含む配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号7に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号7を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号6を含む配列を含む。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号6に記載の配列によりコードされる。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号9に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号9を含むRNA配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号10に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号10を含む配列を含む。
【0084】
一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号11に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号11を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号12に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号12を含む配列を含む。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号10に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号10に記載の配列によりコードされる。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号13に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号13を含むRNA配列を含む。
【0085】
一部の実施形態において、核酸はプロモーターを更に含む。一部の実施形態において、プロモーターはユビキタスプロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは組織特異的プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターは構成的プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーターはヒトサイトメガロウイルスプロモーターである。一部の実施形態において、核酸はエンハンサーエレメントを更に含む。一部の実施形態において、エンハンサーエレメントはヒトサイトメガロウイルスエンハンサーエレメントである。一部の実施形態において、核酸は5’ITRエレメント及び3’ITRエレメントを更に含む。
【0086】
一部の実施形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、又はAAV9カプシドタンパク質を含む。一部の実施形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVDJ、又はAAVDJ/8カプシドタンパク質である。一部の実施形態において、核酸は、配列番号14に対して少なくとも約80、85、90、又は95%の配列同一性を含む。一部の実施形態において、AAVベクターはAAV6ベクター又はAAV9ベクターである。
【0087】
遺伝子を細胞に導入して発現させる方法は当該技術分野において公知である。発現ベクターの文脈において、ベクターは、宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、又は昆虫細胞に当該技術分野における任意の方法により容易に導入され得る。例えば、発現ベクターは、宿主細胞に物理的、化学的、又は生物学的手段により移入され得る。
【0088】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子ボンバードメント、微量注射、エレクトロポレーション、及び同種のものが挙げられる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を製造する方法は当該技術分野において周知である(例えば、Sambrook et al. (2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)を参照)。ポリヌクレオチドの宿主細胞への導入の好ましい方法はリン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0089】
外因性核酸を宿主細胞に導入するために使用される方法にかかわらず、宿主細胞中の組換え核酸配列の存在を確認するために、様々なアッセイを行うことができる。そのようなアッセイとしては、例えば、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ、例えばサザン及びノーザンブロッティング、RT-PCR並びにPCR;「生化学的」アッセイ、例えば特定のタンパク質の存在又は非存在の検出、例えば、免疫学的手段(ELISA及びウエスタンブロット)によるもの又は本開示の範囲内に入る作用因子を同定するための本明細書に記載のアッセイによるものが挙げられる。
【0090】
一部の実施形態において、ベクターは、細胞にウイルスベクターの形態で提供される。ウイルスベクター技術は当該技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al. (2001, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)、並びに他のウイルス学及び分子生物学マニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられるがこれらに限定されない。本明細書に記載されるように、好適なベクターは、概しては、少なくとも1つの生物において機能的な複製起点、プロモーター配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1つ又は複数の選択マーカーを含有する。
【0091】
関心対象のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するウイルス方法としては、DNA及びRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、遺伝子を哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞に挿入するために有用である。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス、並びに同種のものに由来し得る。多数のウイルスベースのシステムが、哺乳動物細胞への遺伝子移入のために開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムのための好都合なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、当該技術分野において公知の技術を使用してベクターに挿入され、レトロウイルスベクター中にパッケージングされ得る。組換えウイルスは次に単離され、対象の細胞にインビボ又はエクスビボのいずれかで送達され得る。多数のレトロウイルスシステムが当該技術分野において公知である。一部の実施形態において、アデノウイルスベクターが使用される。多数のアデノウイルスベクターが当該技術分野において公知である。一部の実施形態において、レンチウイルスベクターが使用される。別の実施形態において、非AAVベクターが使用され、これには組込みウイルス、例えば、ヘルペスウイルス又はレンチウイルスが含まれるが、他のウイルスが選択される。好適には、これらの他のベクターの1つが生成される場合、それは複製欠陥性ウイルスベクターとして製造される。ある特定の事例において、複製欠陥性ウイルス又はウイルスベクターは、合成又は人工ウイルス粒子であって、関心対象の遺伝子を含有する発現カセットがウイルスカプシド又はエンベロープ中にパッケージングされ、これもまたウイルスカプシド又はエンベロープ内にパッケージングされた任意のウイルスゲノム配列が複製欠損性であり、即ち、それらは子孫ビリオンを生成できないが標的細胞に感染する能力を保持しているものを指す。一部の実施形態において、ウイルスベクターのゲノムは、複製のために要求される酵素をコードする遺伝子を含まないが(ゲノムは、人工ゲノムの増幅及びパッケージングのために要求されるシグナルにより隣接された関心対象の導入遺伝子のみを含有する「ガットレス」であるように操作され得る)、これらの遺伝子は製造の間に供給され得る。
【0092】
例えば、レトロウイルス、例えばレンチウイルスに由来するベクターは、長期間の遺伝子移入を達成するための好適なツールであり、その理由は、それらは、導入遺伝子の長期間の安定な組込み及び娘細胞中のその伝播を可能とするからである。レンチウイルスベクターは、非増殖性細胞、例えば肝細胞への形質導入が可能であるという点で、オンコレトロウイルス、例えばマウス白血病ウイルスに由来するベクターに対して付加的な利点を有する。それらはまた、低い免疫原性という付加的な利点を有する。
【0093】
更に提供されるのは、本明細書に記載のCRISPR-Casシステムをコードする核酸である。本明細書において提供されるのは、本明細書に記載のCRISPR-Casシステムをコードする核酸を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。ある特定の事例において、AAVベクターは、AAVの成分を含み又はそれに由来し、且つ、インビトロ又はインビボのいずれであれ、多数の組織種のいずれか、例えば脳、心臓、肺、骨格筋、肝臓、腎臓、脾臓、又は膵臓の、ヒト細胞を含めて、哺乳動物細胞に感染させるために好適な任意のベクターを含む。ある特定の事例において、AAVベクターは、関心対象のタンパク質(例えば本明細書に記載のCRISPR-Casシステム)をコードする核酸を含むAAV型ウイルス粒子(又はビリオン)を含む。一部の実施形態において、本明細書に更に記載されるように、本明細書に開示されるAAVは、血清型の組合せ(例えば,「シュードタイプ」AAV)を含めて、様々な血清型、又は様々なゲノム(例えば、一本鎖若しくは自己相補的なもの)に由来する。一部の実施形態において、AAVベクターはヒト血清型AAVベクターである。そのような実施形態において、ヒト血清型AAVは、任意の公知の血清型、例えば、AAV1、AAV2、AAV4、AAV6、又はAAV9に由来する。一部の実施形態において、血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVDJ、又はAAVDJ/8である。
【0094】
一部の実施形態において、組成物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターを含む。AAVベクターは、それらを遺伝子療法のために理想的に適したものとする多数の特徴を有し、これには、病原性の欠如、最小の免疫原性、及び安定且つ効率的な方式で有糸分裂後の細胞に形質導入する能力が含まれる。AAVベクター内に含有される特定の遺伝子の発現は、AAV血清型、プロモーター、及び送達方法の適切な組合せを選択することにより1つ又は複数の種類の細胞に特異的に標的化され得る。
【0095】
様々な異なるAAVカプシドが記載されており、使用することができるが、肝臓を優先的に標的化し且つ/又は遺伝子を高い効率で送達するAAVが特に所望される。AAV8の配列は様々なデータベースから入手可能である。実施例は同じカプシドを有するAAVベクターを利用するが、遺伝子編集ベクター及びAAV標的化ベクターのカプシドは同じAAVカプシドである。別の好適なAAVは、例えば、rh10である(国際公開第2003/042397号パンフレット)。更に他のAAV供給源としては、例えば、AAV9(例えば、米国特許第7,906,111号明細書;米国特許出願公開第2011-0236353(A1)号明細書を参照)、及び/又はhu37(例えば、米国特許第7,906,111号明細書;米国特許出願公開第2011-0236353(A1)号明細書を参照)、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、(米国特許第7,790,449号明細書;米国特許第7,282,199号明細書、国際公開第2003/042397号パンフレット;国際公開第2005/033321号パンフレット、国際公開第2006/110689号パンフレット;米国特許第7,790,449号明細書;米国特許第7,282,199号明細書;米国特許第7,588,772号明細書)が挙げられる。更に他のAAVは、選択されたAAVカプシドの組織選好性を任意選択的に考慮に入れて、選択され得る。
【0096】
一部の実施形態において、本明細書に開示されるAAVベクターは、本明細書に記載のCRISPR-Casシステムをコードする核酸を含む。一部の実施形態において、核酸はまた、関心対象のタンパク質の発現及び、一部の実施形態において、分泌を可能とする1つ又は複数の調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、内部リボソーム進入部位(「IRES」)、タンパク質形質導入ドメイン(「PTD」)をコードする配列、及び同種のものを含む。そのため、一部の実施形態において、核酸は、感染細胞中での関心対象のタンパク質の発現を引き起こす又は向上させるためのコーディング配列に作動可能に連結されたプロモーター領域を含む。そのようなプロモーターは、遍在的、細胞又は組織特異的、強い、弱い、調節性、キメラ等であることができ、例えば、感染した組織中でのタンパク質の効率的且つ安定な製造を可能とし得る。ある特定の実施形態において、プロモーターは、コードされるタンパク質と同種、又は異種であるが、概しては、開示される方法において使用されるプロモーターはヒト細胞中で機能的である。調節性プロモーターの例としては、非限定的に、Tet on/offエレメント含有プロモーター、ラパマイシン誘導性プロモーター、タモキシフェン誘導性プロモーター、及びメタロチオネインプロモーターが挙げられる。ある特定の実施形態において、使用される他のプロモーターは、組織、例えば腎臓、脾臓、及び膵臓について組織特異的なプロモーターを含む。ユビキタスプロモーターの例としては、ウイルスプロモーター、特にはCMVプロモーター、RSVプロモーター、SV40プロモーター等、並びに細胞プロモーター、例えばホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター及びb-アクチンプロモーターが挙げられる。
【0097】
一部の実施形態において、組換えAAVベクターは、AAVカプシド内にパッケージングされる、概しては5’ AAV ITR、本明細書に記載の発現カセット及び3’ AAV ITRを含有する、核酸を含む。本明細書に記載されるように、一部の実施形態において、発現カセットは、各発現カセット内のオープンリーディングフレーム用の調節エレメントを含有し、且つ核酸は追加の調節エレメントを任意選択的に含有する。AAVベクターは、一部の実施形態において、全長AAV 5’逆末端反復(ITR)及び全長3’ITRを含む。ΔITRと称される、短縮バージョンの5’ITRが記載されており、これにおいては、D配列及び末端分解部位(trs)が欠失している。略語「sc」は自己相補的を指す。「自己相補的AAV」は、組換えAAV核酸配列により担われるコーディング領域が分子内二本鎖DNA鋳型を形成するように設計された構築物を指す。感染すると、第2鎖の細胞媒介性の合成を待つのではなく、scAAVの2つの相補的半分が会合して、即時の複製及び転写の準備済みの1つの二本鎖DNA(dsDNA)単位を形成する(例えば、D M McCarty et al, “Self-complementary recombinant adeno-associated virus (scAAV) vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis”, Gene Therapy, (August 2001)を参照;例えば、米国特許第6,596,535号明細書;同第7,125,717号明細書;及び同第7,456,683号明細書も参照)。シュードタイプAAVが製造されるべき場合、ITRは、カプシドのAAV供給源とは異なる供給源から選択される。例えば、一部の実施形態において、AAV2 ITRは、選択された細胞受容体、標的組織又はウイルス標的のために特定の効率を有するAAVカプシドとの使用のために選択される。一部の実施形態において、AAV2からのITR配列、又はその欠失バージョン(ΔITR)が、簡便性のため及び規制当局の承認を加速させるために使用される(即ちシュードタイプ)。一部の実施形態において、一本鎖AAVウイルスベクターが使用される。
【0098】
対象への送達のために好適なAAVウイルスベクターを生成及び単離する方法は当該技術分野において公知である(例えば、米国特許第7,790,449号明細書;米国特許第7,282,199号明細書;国際公開第2003/042397号パンフレット;国際公開第2005/033321号パンフレット、国際公開第2006/110689号パンフレット;並びに米国特許第7,588,772(B2)号明細書、米国特許第5,139,941号明細書;同第5,741,683号明細書;同第6,057,152号明細書;同第6,204,059号明細書;同第6,268,213号明細書;同第6,491,907号明細書;同第6,660,514号明細書;同第6,951,753号明細書;同第7,094,604号明細書;同第7,172,893号明細書;同第7,201,898号明細書;同第7,229,823号明細書;及び同第7,439,065号明細書を参照)。1つのシステムにおいて、プロデューサー細胞系に、ITRにより隣接された導入遺伝子をコードする構築物並びにrep及びcapをコードする構築物が一過的にトランスフェクトされる。第2のシステムにおいて、rep及びcapを安定的に供給するパッケージング細胞系に、ITRにより隣接された導入遺伝子をコードする構築物が(一過的又は安定的に)トランスフェクトされる。これらのシステムの各々において、AAVビリオンは、ヘルパーアデノウイルス又はヘルペスウイルスによる感染に応答して製造され、夾雑性ウイルスからのrAAVの分離を要求する。より最近において、AAVを回収するためにヘルパーウイルスによる感染を要求しないシステムが開発されており、要求されるヘルパー機能(即ち、アデノウイルスE1、E2a、VA、及びE4又はヘルペスウイルスUL5、UL8、UL52、及びUL29、並びにヘルペスウイルスポリメラーゼ)もまた、システムにより、トランスで供給される。これらのより新しいシステムにおいて、ヘルパー機能は、要求されるヘルパー機能をコードする構築物での細胞の一過性トランスフェクションにより供給することができ、又は細胞は、ヘルパー機能をコードする遺伝子を安定的に含有するように操作され得、該遺伝子の発現は転写又は転写後レベルで制御され得る。更に別のシステムにおいて、ITRにより隣接された導入遺伝子及びrep/cap遺伝子は、バキュロウイルスベースのベクターの感染により昆虫細胞に導入される。
【0099】
CRISPR-Casシステム、例えばCas9、及び/又は存在するRNAのいずれか、例えばガイドRNAは、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、アデノウイルス若しくは他のウイルスベクター種、又はこれらの組合せを使用して送達され得る。Cas9及び1つ又は複数のガイドRNAは、1つ又は複数のウイルスベクターにパッケージングされ得る。一部の実施形態において、ウイルスベクターは、関心対象の組織に、例えば筋肉内注射により、送達されるが、他の場合には、ウイルス送達は、静脈内、経皮、鼻腔内、経口、粘膜、又は他の送達方法を介して為される。そのような送達は、単回用量、又は複数用量のいずれかを介して為され得る。本発明において送達されるべき実際の投薬量は、様々な要因、例えば選択されたベクター、標的細胞、生物、又は組織、処置される対象の一般的条件、求められる形質転換/改変の程度、投与経路、投与の態様、求められる形質転換/改変の種類等に依存して大きく変動し得ることを当業者は理解する。
【0100】
一部の実施形態において、投薬量は、例えば、担体(水、食塩水、エタノール、グリセロール、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油等)、希釈剤、薬学的に許容される担体(例えば、リン酸緩衝化食塩水)、薬学的に許容される賦形剤、抗原性を増強するためのアジュバント、免疫賦活性化合物若しくは分子、及び/又は当該技術分野において公知の他の化合物を更に含有する。本発明におけるアジュバントは、抗原が吸着された鉱物(ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム)の懸濁液;又は抗原溶液が油中に乳化された油中水エマルション(MF-59、フロイント不完全アジュバント)を含有することができ、場合により、抗原性を更に増強する(抗原の分解を阻害し且つ/又はマクロファージの流入を引き起こす)ために殺傷されたマイコバクテリアが含められる(フロイント完全アジュバント)。アジュバントとしてはまた、免疫賦活性分子、例えばサイトカイン、共刺激分子、及び例えば、免疫賦活性DNA又はRNA分子、例えばCpGオリゴヌクレオチドが挙げられる。そのような投薬用製剤は、当業者により容易に確認可能である。一部の実施形態において、投薬量は、1つ又は複数の薬学的に許容される塩、例えば、鉱酸塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等;及び有機酸の塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等を更に含む。追加的に、助剤物質、例えば湿潤又は乳化剤、pH緩衝化物質、ゲル又はゲル化材料、香味剤、着色剤、マイクロスフェア、ポリマー、懸濁剤等も、本発明において存在することができる。追加的に、1つ又は複数の他の従来の薬学的成分、例えば防腐剤、湿潤剤、懸濁化剤、界面活性剤、抗酸化剤、固化防止剤、充填剤、キレート剤、コーティング剤、化学的安定化剤等もまた存在することができ、これは特に、投薬形態が再構成可能な形態である場合に該当する。好適な例示的な成分としては、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリソルベート80、フェニルエチルアルコール、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、パラクロロフェノール、ゼラチン、アルブミン及びこれらの組合せが挙げられる。薬学的に許容される賦形剤の徹底的な議論は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)において利用可能である。
【0101】
本開示はまた、本明細書に記載の組成物のうちの1つ又は複数を含む医薬組成物を提供する。製剤は、従来の賦形剤、即ち、創傷又は処置部位への投与のために好適な薬学的に許容される有機又は無機担体物質と混合して用いられ得る。医薬組成物は滅菌が可能であり、所望される場合、助剤、例えば、滑沢剤、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩、緩衝剤、着色剤、及び/又は芳香物質並びに同種のものと混合され得る。それらはまた、所望の場合、他の活性剤、例えば、他の鎮痛剤と組み合わせられ得る。
【0102】
一部の実施形態において、記載されるCRISPR-Casシステム又は組成物の投与は、例えば、非経口により、静脈内、腫瘍内、皮下、筋肉内、若しくは腹腔内注射により、又は注入により又は任意の他の許容される全身性の方法により実行される。組成物の投与のための製剤としては、直腸、経鼻、経口、外用(頬側及び舌下を含む)、経膣又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)投与のために好適なものが挙げられる。一部の実施形態において、製剤は、好都合には、単位投薬形態、例えば錠剤及び持続放出カプセルにおいて提供され、当該技術分野において周知の任意の方法により調製される。
【0103】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段としては、コロイド分散体システム、例えば高分子複合体、ナノカプセル、ナノ粒子、マイクロスフェア、ビーズ、並びに脂質ベースのシステム、例えば水中油エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームが挙げられる。インビトロ及びインビボでの送達媒体としての使用のための例示的なコロイドシステムはリポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0104】
非ウイルス送達システムが利用される場合、例示的な送達媒体はリポソームである。脂質製剤の使用は、核酸の宿主細胞への導入(インビトロ、エクスビボ又はインビボ)のために想定される。別の態様において、核酸は、脂質と関連付けられ得る。脂質と関連付けられた核酸は、リポソームの水性内部中に被包され、リポソームの脂質二重層内に散在し、リポソーム及びオリゴヌクレオチドの両方と会合した連結性分子を介してリポソームに取り付けられ、リポソーム中に封入され、リポソームと複合体化され、脂質を含有する溶液中に分散され、脂質と混合され、脂質と合わせられ、脂質中に懸濁物として含有され、ミセルと共に含有若しくは複合体化され、又はそれ以外に脂質と関連付けられ得る。脂質、脂質/DNA又は脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液中での任意の特定の構造に限定されない。例えば、それらは、二重層構造中に、ミセルとして、又は「崩壊した」構造と共に、存在することができる。それらはまた、単純に溶液中に散在することができ、場合により、サイズ又は形状が均一でない凝集物を形成し得る。脂質は、天然に存在する又は合成の脂質であり得る、脂肪物質である。例えば、脂質としては、細胞質中に天然に存在する脂肪小滴の他に、長鎖脂肪族炭化水素並びにそれらの誘導体、例えば脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒドを含有する化合物のクラスが挙げられる。
【0105】
本明細書に記載の組成物は、上記の様々なベクターシステムにおける使用のために好適である。追加的に、投与された化合物のインビボ血清半減期を増強するために、組成物は、被包され、リポソームの内腔に導入され、コロイドとして調製されることができ、又は組成物の延長された血清半減期を提供する他の従来技術が用いられ得る(例えば、Szoka, et al.、米国特許第4,235,871号明細書、同第4,501,728号明細書及び同第4,837,028号明細書を参照)。使用のために好適な脂質は、商業的供給元から入手することができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)はSigma、St. Louis、Mo.から入手することができ、ジセチルホスフェート(「DCP」)はK & K Laboratories(Plainview、N.Y.)から入手することができ、コレステロール(「Choi」)はCalbiochem-Behringから入手することができ、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及び他の脂質はAvanti Polar Lipids, Inc.(Birmingham、Ala.)から入手することができる。クロロホルム又はクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は、約-20℃で貯蔵することができる。クロロホルムは唯一の溶媒として使用され、その理由は、メタノールよりも容易に蒸発するからである。「リポソーム」は一般的な用語であり、閉じた脂質二重層又は凝集物の生成により形成される様々なシングル及びマルチラメラ脂質媒体を包含する。リポソームは、リン脂質二重層膜及び内部水性媒体を有する小胞構造を有するとして特徴付けられ得る。マルチラメラリポソームは、水性媒体により分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が過剰な水性溶液中に懸濁された場合に自然発生的に形成される。脂質成分は、閉じた構造の形成の前に自己再編成を起こし、水及び溶解した溶質を脂質二重層の間に封入する(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5: 505-10)。しかしながら、通常の小胞構造とは異なる溶液中の構造を有する組成物もまた包含される。例えば、脂質は、ミセル構造を取るか、又は単に脂質分子の不均一な凝集物として存在することができる。リポフェクタミン-核酸複合体もまた想定される。
【0106】
処置方法
本明細書において提供される遺伝子編集システムは、細胞(例えば宿主細胞)のゲノム中のJCV DNA分子(例えばJCVゲノム)を改変及び/又は編集する方法のために有用である。一部の実施形態において、NCCR、早期コーディング遺伝子(例えばT抗原遺伝子)、及び/又は後期コーディング遺伝子(例えばVP遺伝子)の標的化。一部の実施形態において、遺伝子編集システムはNCCRを標的化する。一部の実施形態において、遺伝子編集システムはVP遺伝子を標的化する。一部の実施形態において、遺伝子編集システムはT抗原遺伝子を標的化する。一部の実施形態において、遺伝子編集システムはNCCR及びT抗原遺伝子を標的化する。一部の実施形態において、遺伝子編集システムはNCCR及びVP抗原遺伝子を標的化する。一部の実施形態において、遺伝子編集システムは、NCCR、T抗原遺伝子、及びVP抗原遺伝子を標的化する。一部の実施形態において、T抗原遺伝子はラージT抗原である。一部の実施形態において、VP遺伝子はVP1である。
【0107】
本明細書において提供されるのは、ある特定の実施形態において、本明細書に記載のCRISPR-Casシステム又は組成物を使用して細胞(例えば宿主細胞)のゲノム中のJCV DNA分子(例えばJCVゲノム)を改変及び/又は編集する方法である。概しては、細胞(例えば宿主細胞)のゲノム中のJCV DNA分子(例えばJCVゲノム)を改変及び/又は編集することは、NCCR、早期コーディング遺伝子(例えばT抗原遺伝子)、及び/又は後期コーディング遺伝子(例えばVP遺伝子)を標的化するCRISPR-Casシステム又は組成物を細胞に接触させる、又は細胞に提供することを含む。ある特定の事例において、JCV DNA分子及び/又はゲノムをモジュレート又は編集することは、DNA分子及び/又はゲノムのポリヌクレオチド配列及び/又は領域を除去及び/又は切除することを含む。ある特定の事例において、モジュレート及び編集することは、JCV DNA分子及び/又はゲノムが機能的なJCV遺伝子産物及び/又はコンピテントなJCVウイルス(例えば宿主細胞中で複製することができる機能的なJCVウイルス)をもたらすことをアブレート(ablate)又は予防するために充分にポリヌクレオチド配列及び/又は領域を除去及び/又は切除することを含む。
【0108】
本明細書において提供されるのは、ある特定の実施形態において、JCV DNAをCRISPR-Casシステムと接触させることを含む、JCV DNAをモジュレート又は編集する方法である。一部の実施形態において、JCV DNAはJCVウイルスのゲノムである。一部の実施形態において、JCV DNAは細胞中にあり、細胞はCRISPR-Casシステムと接触させられる。本明細書において更に提供されるのは、細胞をCRISPR-Casシステムと接触させることを含む、細胞中のJCV DNAを阻害及び/又は排除する方法である。更に提供されるのは、細胞をCRISPR-Casシステムと接触させることを含む、細胞中のJCV感染及び/又はJCV複製を阻害又は予防する方法である。一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは核酸(例えばベクター)によりコードされ、且つ細胞は(例えば感染又はトランスフェクションを介して)核酸を提供される。一部の実施形態において、核酸はウイルスベクター中にパッケージングされる。
【0109】
一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ又はCRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;(b)(i)JCVゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)を標的化するガイドRNA(gRNA)並びに/又は(ii)JCVゲノムのVP遺伝子を標的化するgRNA及び/若しくはJCVゲノムのT抗原遺伝子を標的化するgRNAを含む。一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ又はCRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;(b)JCVゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)を標的化するガイドRNA(gRNA);及び(c)JCVゲノムのVP遺伝子を標的化する第2のgRNAを含む。一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、(d)JCVゲノムのT抗原遺伝子を標的化する第3のgRNAを更に含む。
【0110】
一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ又はCRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;(b)JCVゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)を標的化する第1のガイドRNA(gRNA);及び(c)JCVゲノムのVP遺伝子を標的化する第2のgRNAを含む。一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、(d)JCVゲノムのT抗原遺伝子を標的化する第3のgRNAを更に含む。
【0111】
一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ又はCRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;(b)JCVゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)を標的化する第1のガイドRNA(gRNA);及び(c)JCVゲノムのラージT抗原遺伝子を標的化する第2のgRNAを含む。
【0112】
一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ又はCRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;(b)配列番号2又はその逆相補鎖を含むJCVゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)を標的化する第1のガイドRNA(gRNA);及び(c)配列番号10又はその逆相補鎖を含むJCVゲノムのVP遺伝子を標的化する第2のgRNAを含む。一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、(c)配列番号6を含むJCVゲノムのT抗原遺伝子を標的化する第3のgRNAを更に含む。
【0113】
一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、(a)配列番号6又はその逆相補鎖を含むJCVゲノムのラージT抗原遺伝子を標的化する第1のガイドRNA(gRNA);及び(b)配列番号10又はその逆相補鎖を含むJCVゲノムのVP遺伝子を標的化する第2のgRNAを含む。
【0114】
一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連;及び(b)配列番号2又はその逆相補鎖を含むJCVゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の配列を標的化するガイドRNA(gRNA)を含む。一部の実施形態において、CRISPR-Casシステムは、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連;及び(b)配列番号10又はその逆相補鎖を含むJCVゲノムのVP遺伝子の配列を標的化するガイドRNA(gRNA)を含む。
【0115】
本明細書において提供されるのは、ある特定の実施形態において、細胞からジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)核酸の部分又は全体を切除する方法であって、細胞に、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ又はCRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;(b)ジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の中又はその近くの第1の標的核酸配列に相補的な第1のガイドRNA(gRNA)又は第1のgRNAをコードする核酸配列;及び(c)JCVゲノムのT抗原遺伝子又はJCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNA又は第2のgRNAをコードする核酸配列を含む組成物を提供することを含む、方法である。一部の実施形態において、方法は、細胞に、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ;(b)ジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の中又はその近くの第1の標的核酸配列に相補的な第1のガイドRNA(gRNA);及び(c)JCVゲノムのT抗原遺伝子又はJCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNAを含むCRISPR-Casシステムを提供することを含む。
【0116】
本明細書において提供されるのは、ある特定の実施形態において、細胞中でのジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)遺伝子の発現をモジュレートする方法であって、細胞に、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ又はCRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;(b)ジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の中又はその近くの第1の標的核酸配列に相補的な第1のガイドRNA(gRNA)又は第1のgRNAをコードする核酸配列;及び(c)JCVゲノムのT抗原遺伝子又はJCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNA又は第2のgRNAをコードする核酸配列を含む組成物を提供することを含む、方法である。一部の実施形態において、方法は、細胞に、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ;(b)ジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の中又はその近くの第1の標的核酸配列に相補的な第1のガイドRNA(gRNA);及び(c)JCVゲノムのT抗原遺伝子又はJCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNAを含むCRISPR-Casシステムを提供することを含む。
【0117】
一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号2に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、又は99%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第1の標的核酸配列は、配列番号2に記載の配列を含む。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号2又は配列番号2に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列に対応するNCCR配列を標的化する。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号5又は配列番号5に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列によるRNA配列を含む。一部の実施形態において、第1のgRNAは、配列番号2に相補的なNCCR配列又は配列番号2に相補的なNCCR配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を標的化する。一部の実施形態において、gRNAは、配列番号3又は配列番号3に対して少なくとも70%、80%、若しくは90%の配列同一性を有する配列によるPAM配列を含む。一部の実施形態において、第1のgRNAにより標的化されるNCCRのNCCR配列は、配列番号4又は配列番号4に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0118】
一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号6に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、又は99%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第2の標的核酸配列は、配列番号6に記載の配列を含む。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号6又は配列番号6に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列に対応するT抗原配列を標的化する。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号9又は配列番号9に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列のRNA配列を含む。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号6に相補的なT抗原配列又は配列番号6に相補的なT抗原配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を標的化する。一部の実施形態において、第2のgRNAにより標的化されるT抗原遺伝子のT抗原配列は、配列番号7又は配列番号7に対して少なくとも70%、80%、若しくは90%の配列同一性を有する配列を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第2のgRNAにより標的化されるT抗原遺伝子のT抗原配列は、配列番号6又は配列番号6に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0119】
一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号10に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、又は99%の配列同一性を含む配列を含む。一部の実施形態において、第3の標的核酸配列は、配列番号10に記載の配列を含む。一部の実施形態において、第3のgRNAは、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列に対応するVP配列を標的化する。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号9又は配列番号9に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列のRNA配列を含む。一部の実施形態において、第2のgRNAは、配列番号10に相補的なVP配列又は配列番号10に相補的なVP配列に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を標的化する。一部の実施形態において、第3のgRNAにより標的化されるVP遺伝子のVP配列は、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも70%、80%、若しくは90%の配列同一性を有する配列を含むPAM配列を含む。一部の実施形態において、第3のgRNAにより標的化されるVP遺伝子のVP配列は、配列番号10又は配列番号10に対して少なくとも90%、95%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0120】
一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9エンドヌクレアーゼ、Cas12エンドヌクレアーゼ、CasXエンドヌクレアーゼ、又はCasΦエンドヌクレアーゼである。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼはCas9ヌクレアーゼである。一部の実施形態において、Cas9ヌクレアーゼはスタフィロコッカス・アウレウスCas9ヌクレアーゼである。
【0121】
一部の実施形態において、組成物は、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ、前記第1のgRNA、第2のgRNA、及び第3のgRNAをコードする核酸を含む。一部の実施形態において、核酸は、配列番号14に記載の配列を含む。一部の実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ、前記第1のgRNA、第2のgRNA、及び第3のgRNAをコードする核酸は、AAVベクター中にパッケージングされるように構成され、AAVベクターはAAV6ベクター又はAAV9ベクターである。
【0122】
一部の実施形態において、本明細書に開示される方法は、細胞に、配列番号1又は配列番号14のCRISPR-Casシステムを含むベクター(例えばウイルス又は非ウイルス)を提供し又は接触させることを含む。
【0123】
一部の実施形態において、細胞は対象内にある。一部の実施形態において、対象はヒトである。一部の実施形態において、細胞は、神経系内の細胞、例えば膠細胞(例えば乏突起膠細胞、星状膠細胞等)を含むがこれに限定されない。
【0124】
本明細書に開示される方法は、一部の実施形態において、CRISPR-Casシステム又は組成物を投与することを更に包含する。ある特定の事例において、本明細書に記載されるようなCRISPR-Casシステム又は組成物を含む医薬組成物が投与される。ある特定の事例において、細胞培養アッセイ及び動物研究から得られるデータは、ヒトにおける使用のための投薬量の範囲の定式化において使用され得る。そのような組成物の投薬量は、好ましくは、殆ど又は全く毒性を有さずにED50を含む循環濃度の範囲内にある。一部の実施形態において、投薬量は、用いられる投薬形態及び利用される投与の経路に依存してこの範囲内で変動する。記載されるCRISPR-Casシステム又は組成物の方法において使用される任意の組成物のために、治療的に有効な用量は、最初に細胞培養アッセイから概算され得る。ある特定の実施形態において、用量は、細胞培養における決定でIC50(即ち、症状の半数最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて定式化される。そのような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定され得る。
【0125】
そのような量に対応する所与の剤の量は、要因、例えば特定の化合物、疾患の重症度、処置を必要とする対象又は宿主の素性(例えば、体重)に依存して変動するが、それにもかかわらず、症例を取り巻く特定の状況、例えば、投与される特有の剤、投与の経路、及び処置される対象又は宿主に従って当該技術分野において公知の方式で常法により決定され得る。ある特定の事例において、化合物の治療有効量及び有効量は、疾患の処置、予防及び/又は管理において治療的な利益を提供し、処置されるべき疾患又は障害と関連付けられる1つ又は複数の症状を遅延させ又は最小化するために充分な量を指す。ある特定の事例において、治療有効量及び有効量は、全体的な療法を向上させ、疾患若しくは障害の症状若しくは原因を低減させ若しくは回避し、又は別の治療剤の治療有効性を増強する量を包含する。一部の実施形態において、所望の用量は、好都合には、単回用量において、又は同時に(若しくは短い時間的期間にかけて)若しくは適切な間隔で、例えば1日当たり2、3、4若しくはそれより多くの部分用量として、投与される分割用量として、提供される。
【0126】
一部の実施形態において、ウイルスベクター媒介性の送達のために、用量は、少なくとも1×105個の粒子~約1×1015個の粒子を含む。一部の実施形態において、送達はアデノウイルスを介して為され、例えば単回用量はアデノウイルスベクターの少なくとも1×105個の粒子(粒子単位、puとも称される)を含有する。一部の実施形態において、用量は、アデノウイルスベクターの少なくとも約1×106個の粒子(例えば、約1×106~1×1012個の粒子)、少なくとも約1×107個の粒子、少なくとも約1×108個の粒子(例えば、約1×108~1×1011個の粒子若しくは約1×108~1×1012個の粒子)、少なくとも約1×100個の粒子(例えば、約1×109~1×1010個の粒子若しくは約1×109~1×1012個の粒子)、又は少なくとも約1×1010個の粒子(例えば、約1×10~1×1012個の粒子)である。代替的に、用量は、約1×1014個以下の粒子、約1×1013個以下の粒子、約1×1012個以下の粒子、約1×1011個以下の粒子、及び約1×1010個以下の粒子(例えば、約1×109個以下の粒子)を含む。そのため、一部の実施形態において、用量は、例えば、アデノウイルスベクターの約1×106個の粒子単位(pu)、約2×106pu、約4×106pu、約1×107pu、約2×107pu、約4×107pu、約1×108pu、約2×108pu、約4×108pu、約1×109pu、約2×109pu、約4×109pu、約1×1010pu、約2×1010pu、約4×1010pu、約1×1011pu、約2×101pu、約4×1011pu、約1×1012pu、約2×1012pu、又は約4×1012puを含む、アデノウイルスベクターの単回用量を含有する。一部の実施形態において、アデノウイルスは、複数用量を介して送達される。
【0127】
一部の実施形態において、送達はAAVを介する。AAVのヒトへのインビボ送達のための治療有効投薬量は、溶液1ml当たり約1×1010~約1×1010個の機能的なAAVを含有する約20~約50mlの食塩水溶液の範囲内にあると考えられる。投薬量は、治療的な利益を任意の副作用に対して均衡させるように調整され得る。一部の実施形態において、AAV用量は、概しては、約1×105~1×1050個のゲノムAAV、約1×108~1×1020個のゲノムAAV、約1×1010~約1×1016個のゲノム、又は約1×1011~約1×1016個のゲノムAAVの濃度の範囲内にある。一部の実施形態において、ヒト投薬量は約1×1013個のゲノムAAVである。一部の実施形態において、そのような濃度は、約0.001ml~約100ml、約0.05~約50ml、又は約10~約25mlの担体溶液中で送達される。他の有効な投薬量は、当業者により用量応答曲線を確立する常法の試験を通じて容易に確立され得る(例えば、米国特許第8,404,658号明細書を参照)。
【0128】
一部の実施形態において、細胞は、療法が意図される対象においてインビボで遺伝子改変される。ある特定の態様において、インビボでの送達のために、核酸は対象に直接的に注射される。例えば、一部の実施形態において、核酸は、組成物が要求される部位に送達される。インビボ核酸移入技術としては、ウイルスベクター、例えばアデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス、アデノ随伴ウイルス)を用いるトランスフェクション、脂質ベースのシステム(遺伝子の脂質媒介性の移入のために有用な脂質は、例えば、DOTMA、DOPE及びDC-Cholである)、ネイキッドDNA、並びにトランスポゾンベースの発現システムが挙げられるがこれらに限定されない。例示的な遺伝子療法プロトコールについて、Anderson et al., Science 256:808-813 (1992)を参照。国際公開第93/25673号パンフレット及びそれにおいて参照される参考文献も参照。一部の実施形態において、方法は、RNA、例えばmRNAを、直接的に対象に投与することを含む(例えば、Zangi et al., 2013 Nature Biotechnology, 31: 898-907を参照)。
【0129】
エクスビボでの処置のために、単離された細胞はエクスビボ又はインビトロ環境において改変される。一部の実施形態において、細胞は、療法が意図される対象にとって自己細胞である。代替的に、細胞は、対象に関して同種異系、同系、又は異種であることができる。改変された細胞は次に対象に直接的に投与され得る。
【0130】
異なる送達の方法を利用して、単離された核酸を細胞に投与できることを当業者は認識する。例としては、(1)物理的手段を利用する方法、例えばエレクトロポレーション(電気)、遺伝子銃(物理的な力)又は大きい体積の液体の適用(圧力);及び(2)核酸又はベクターが、別の実体、例えばリポソーム、凝集タンパク質又はトランスポーター分子に複合体化される方法が挙げられる。
【0131】
細胞当たりで加えられるベクターの量は、ベクター中に挿入される治療遺伝子の長さ及び安定性の他に、配列の性質に伴って変動する可能性があり、特には経験的に決定される必要があるパラメーターであり、本開示の方法に固有ではない要因(例えば、合成と関連付けられるコスト)に起因して変更され得る。当業者は、特定の状況の緊急性に従って任意の必要な調整を容易に行うことができる。
【0132】
実施形態
実施形態1は、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ又は前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼをコードする核酸配列;(b)ジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の中又はその近くの第1の標的核酸配列に相補的な第1のガイドRNA(gRNA)又は前記第1のgRNAをコードする核酸配列;及び(c)前記JCVゲノムのT抗原遺伝子又は前記JCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNA又は前記第2のgRNAをコードする核酸配列を含む、組成物を含む。実施形態2は、前記第2のgRNAが、前記JCVゲノムの前記T抗原遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的である、実施形態1の組成物を含む。実施形態3は、前記JCVゲノムの前記VP遺伝子の中又はその近くの第3の標的核酸配列に相補的な第3のgRNA又は前記第3のgRNAをコードする核酸配列を更に含む、実施形態1~2のいずれか1つの組成物を含む。実施形態4は、前記第2のgRNAが、前記JCVゲノムの前記VP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的である、実施形態1~3のいずれか1つの組成物を含む。実施形態5は、前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、I型、II型、又はIII型Casエンドヌクレアーゼである、実施形態1~4のいずれか1つの組成物を含む。実施形態6は、前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、Cas9エンドヌクレアーゼ、Cas12エンドヌクレアーゼ、CasXエンドヌクレアーゼ、又はCasΦエンドヌクレアーゼである、実施形態1~5のいずれか1つの組成物を含む。実施形態7は、前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼがCas9ヌクレアーゼである、実施形態1~6のいずれか1つの組成物を含む。実施形態8は、前記Cas9ヌクレアーゼがスタフィロコッカス・アウレウスCas9ヌクレアーゼである、実施形態1~7のいずれか1つの組成物を含む。実施形態9は、前記T抗原遺伝子がラージT抗原遺伝子である、実施形態1~8のいずれか1つの組成物を含む。実施形態10は、前記VP遺伝子が、VP1遺伝子、VP2遺伝子、又はVP3遺伝子である、実施形態1~9のいずれか1つの組成物を含む。実施形態11は、前記VP遺伝子がVP1遺伝子である、実施形態1~10のいずれか1つの組成物を含む。実施形態12は、前記第1の標的核酸配列が、配列番号2に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、実施形態1~11のいずれか1つの組成物を含む。実施形態13は、前記第1の標的核酸配列が、配列番号2に記載の配列を含む、実施形態1~12のいずれか1つの組成物を含む。実施形態14は、前記第1の標的核酸配列が、配列番号3に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む、実施形態1~13のいずれか1つの組成物を含む。実施形態15は、前記第1の標的核酸配列が、配列番号3に記載のPAM配列を含む、実施形態1~14のいずれか1つの組成物を含む。実施形態16は、前記第1の標的核酸配列が、配列番号4に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、実施形態1~15のいずれか1つの組成物を含む。実施形態17は、前記第1の標的核酸配列が、配列番号4に記載の配列を含む、実施形態1~16のいずれか1つの組成物を含む。実施形態18は、前記第1のgRNAが、配列番号2に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる、実施形態1~17のいずれか1つの組成物を含む。実施形態19は、前記第1のgRNAが、配列番号2に記載の配列によりコードされる、実施形態1~18のいずれか1つの組成物を含む。実施形態20は、前記第1のgRNAが、配列番号5に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む、実施形態1~19のいずれか1つの組成物を含む。実施形態21は、前記第1のgRNAが、配列番号5に記載のRNA配列の配列を含む、実施形態1~20のいずれか1つの組成物を含む。実施形態22は、前記第2の標的核酸配列が、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、実施形態1~21のいずれか1つの組成物を含む。実施形態23は、前記第2の標的核酸配列が、配列番号6に記載の配列を含む、実施形態1~22のいずれか1つの組成物を含む。実施形態24は、前記第2の標的核酸配列が、配列番号7に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む、実施形態1~23のいずれか1つの組成物を含む。実施形態25は、前記第2の標的核酸配列が、配列番号7に記載のPAM配列を含む、実施形態1~24のいずれか1つの組成物を含む。実施形態26は、前記第2の標的核酸配列が、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、実施形態1~25のいずれか1つの組成物を含む。実施形態27は、前記第2の標的核酸配列が、配列番号6に記載の配列を含む、実施形態1~26のいずれか1つの組成物を含む。実施形態28は、前記第2のgRNAが、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる、実施形態1~27のいずれか1つの組成物を含む。実施形態29は、前記第2のgRNAが、配列番号6に記載の配列によりコードされる、実施形態1~28のいずれか1つの組成物を含む。実施形態30は、前記第2のgRNAが、配列番号9に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む、実施形態1~29のいずれか1つの組成物を含む。実施形態31は、前記第2のgRNAが、配列番号9に記載のRNA配列を含む、実施形態1~30のいずれか1つの組成物を含む。実施形態32は、前記第3の標的核酸配列が、配列番号10に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、実施形態1~31のいずれか1つの組成物を含む。実施形態33は、前記第3の標的核酸配列が、配列番号10に記載の配列を含む、実施形態1~32のいずれか1つの組成物を含む。実施形態34は、前記第3の標的核酸配列が、配列番号11に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む、実施形態1~33のいずれか1つの組成物を含む。実施形態35は、前記第3の標的核酸配列が、配列番号11に記載のPAM配列を含む、実施形態1~34のいずれか1つの組成物を含む。実施形態36は、前記第3の標的核酸配列が、配列番号12に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、実施形態1~35のいずれか1つの組成物を含む。実施形態37は、前記第3の標的核酸配列が、配列番号12に記載の配列を含む、実施形態1~36のいずれか1つの組成物を含む。実施形態38は、前記第3のgRNAが、配列番号10に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる、実施形態1~37のいずれか1つの組成物を含む。実施形態39は、前記第3のgRNAが、配列番号10に記載の配列によりコードされる、実施形態1~38のいずれか1つの組成物を含む。実施形態40は、前記第3のgRNAが、配列番号13に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む、実施形態1~39のいずれか1つの組成物を含む。実施形態41は、前記第3のgRNAが、配列番号13に記載のRNA配列を含む、実施形態1~40のいずれか1つの組成物を含む。実施形態42は、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ;及び(b)配列番号2又はその逆相補鎖を含むジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の中又はその近くの第1の標的核酸配列に相補的な第1のガイドRNA(gRNA)を含む、CRISPR-Casシステムを含む。実施形態43は、配列番号6を含む前記JCVゲノムのT抗原遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNAを更に含む、実施形態1~42のいずれか1つのCRISPR-Casシステムを含む。実施形態44は、配列番号10を含む前記JCVゲノムのVP1遺伝子の中又はその近くの第3の標的核酸配列に相補的な第3のgRNAを更に含む、実施形態1~43のいずれか1つのCRISPR-Casシステムを含む。実施形態45は、配列番号10を含む前記JCVゲノムのVP1遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNAを更に含む、実施形態1~44のいずれか1つのCRISPR-Casシステムを含む。実施形態46は、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ;及び(b)配列番号10又はその逆相補鎖を含むJCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの標的核酸配列に相補的なガイドRNA(gRNA)を含む、CRISPR-Casシステムを含む。実施形態47は、(a)配列番号6又はその逆相補鎖を含むJCVゲノムのラージT抗原遺伝子を標的化する第1のガイドRNA(gRNA);及び(b)配列番号10又はその逆相補鎖を含む前記JCVゲノムのVP遺伝子を標的化する第2のgRNAを含む、CRISPR-Casシステムを含む。実施形態48は、本明細書に記載のCRISPR-Casシステムをコードする核酸分子を含む。実施形態49は、(a)Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼ;(b)ジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)ゲノムの非コーディング制御領域(NCCR)の中又はその近くの第1の標的核酸配列に相補的な第1のガイドRNA(gRNA);及び(c)前記JCVゲノムのT抗原遺伝子又は前記JCVゲノムのVP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的な第2のgRNAをコードする核酸分子を含む、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む。実施形態50は、前記第2のgRNAが、前記JCVゲノムの前記T抗原遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的である、実施形態1~49のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態51は、前記JCVゲノムの前記VP遺伝子の中又はその近くの第3の標的核酸配列に相補的な第3のgRNA又は前記第3のgRNAをコードする核酸配列を更に含む、実施形態1~50のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態52は、前記第2のgRNAが、前記JCVゲノムの前記VP遺伝子の中又はその近くの第2の標的核酸配列に相補的である、実施形態1~51のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態53は、前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、I型、II型、又はIII型Casエンドヌクレアーゼである、実施形態1~52のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態54は、前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼが、Cas9エンドヌクレアーゼ、Cas12エンドヌクレアーゼ、CasXエンドヌクレアーゼ、又はCasΦエンドヌクレアーゼである、実施形態1~53のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態55は、前記CRISPR関連エンドヌクレアーゼがCas9ヌクレアーゼである、実施形態1~54のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態56は、前記Cas9ヌクレアーゼがスタフィロコッカス・アウレウスCas9ヌクレアーゼである、実施形態1~55のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態57は、前記T抗原遺伝子がラージT抗原遺伝子である、実施形態1~56のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態58は、前記VP遺伝子が、VP1遺伝子、VP2遺伝子、又はVP3遺伝子である、実施形態1~57のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態59は、前記VP遺伝子がVP1遺伝子である、実施形態1~58のいずれか1つのAAVベクターを含む。
実施形態60は、前記第1の標的核酸配列が、配列番号2に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、実施形態1~59のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態61は、前記第1の標的核酸配列が、配列番号2に記載の配列を含む、実施形態1~60のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態62は、前記第1の標的核酸配列が、配列番号3に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む、実施形態1~61のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態63は、前記第1の標的核酸配列が、配列番号3を含むPAM配列を含む、実施形態1~62のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態64は、前記第1の標的核酸配列が、配列番号4に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、実施形態1~63のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態65は、前記第1の標的核酸配列が、配列番号4に記載の配列を含む、実施形態1~64のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態66は、前記第1のgRNAが、配列番号2に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる、実施形態1~65のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態67は、前記第1のgRNAが、配列番号2に記載の配列によりコードされる、実施形態1~66のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態68は、前記第1のgRNAが、配列番号5に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む、実施形態1~67のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態69は、前記第1のgRNAが、配列番号5を含むRNA配列を含む、実施形態1~68のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態70は、前記第2の標的核酸配列が、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、実施形態1~69のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態71は、前記第2の標的核酸配列が、配列番号6を含む配列を含む、実施形態1~70のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態72は、前記第2の標的核酸配列が、配列番号7に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む、実施形態1~71のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態73は、前記第2の標的核酸配列が、配列番号7を含むPAM配列を含む、実施形態1~72のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態74は、前記第2の標的核酸配列が、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、実施形態1~73のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態75は、前記第2の標的核酸配列が、配列番号6を含む配列を含む、実施形態1~74のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態76は、前記第2のgRNAが、配列番号6に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる、実施形態1~75のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態77は、前記第2のgRNAが、配列番号6に記載の配列によりコードされる、実施形態1~76のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態78は、前記第2のgRNAが、配列番号9に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む、実施形態1~77のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態79は、前記第2のgRNAが、配列番号9を含むRNA配列を含む、実施形態1~78のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態80は、前記第3の標的核酸配列が、配列番号10に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、実施形態1~79のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態81は、前記第3の標的核酸配列が、配列番号10を含む配列を含む、実施形態1~80のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態82は、前記第3の標的核酸配列が、配列番号11に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むPAM配列を含む、実施形態1~81のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態83は、前記第3の標的核酸配列が、配列番号11を含むPAM配列を含む、実施形態1~82のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態84は、前記第3の標的核酸配列が、配列番号12に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列を含む、実施形態1~83のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態85は、前記第3の標的核酸配列が、配列番号12を含む配列を含む、実施形態1~84のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態86は、前記第3のgRNAが、配列番号10に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む配列によりコードされる、実施形態1~85のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態87は、前記第3のgRNAが、配列番号10に記載の配列によりコードされる、実施形態1~86のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態88は、前記第3のgRNAが、配列番号13に対して少なくとも約90%の配列同一性を含むRNA配列を含む、実施形態1~87のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態89は、前記第3のgRNAが、配列番号13を含むRNA配列を含む、実施形態1~88のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態90は、前記核酸分子がプロモーターを更に含む、実施形態1~89のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態91は、前記プロモーターがユビキタスプロモーターである、実施形態1~90のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態92は、前記プロモーターが組織特異的プロモーターである、実施形態1~91のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態93は、前記プロモーターが構成的プロモーターである、実施形態1~92のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態94は、前記プロモーターがヒトサイトメガロウイルスプロモーターである、実施形態1~93のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態95は、前記核酸分子がエンハンサーエレメントを更に含む、実施形態1~94のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態96は、前記エンハンサーエレメントがヒトサイトメガロウイルスエンハンサーエレメントである、実施形態1~95のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態97は、前記核酸分子が5’ITRエレメント及び3’ITRエレメントを更に含む、実施形態1~96のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態98は、アデノ随伴ウイルスがAAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、又はAAV9である、実施形態1~97のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態99は、前記核酸分子が、配列番号14に対して少なくとも約90%の配列同一性を含む、実施形態1~98のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態100は、AAV6ベクター又はAAV9ベクターである、実施形態1~99のいずれか1つのAAVベクターを含む。実施形態101は、細胞からジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)配列の部分又は全体を切除する方法であって、前記細胞に本明細書に記載の組成物、本明細書に記載のCRISPR-Casシステム、又は本明細書に記載のAAVベクターを提供することを含む、前記方法を含む。実施形態102は、細胞中でのジョン・カニンガム・ウイルス(JCV)複製を阻害し又は低減させる方法であって、前記細胞に本明細書に記載の組成物、本明細書に記載のCRISPR-Casシステム、又は本明細書に記載のAAVベクターを提供することを含む、前記方法を含む。実施形態103は、前記細胞が対象中にある、請求項1~102のいずれか1項に記載の方法を含む。実施形態104は、前記対象がヒトである、請求項1~103のいずれか1項に記載の方法を含む。実施形態105は、前記JCV配列が前記細胞に組み込まれている、請求項1~104のいずれか1項に記載の方法を含む。
【実施例
【0133】
実施例1 - 遺伝子編集によるJCVの阻害
現行の療法の制限を考慮して、JCV複製を有効に抑制及び/又は阻害するだけでなく、潜伏性ウイルスゲノムを根絶する新たな治療アプローチに対する必要性が存在する。よって、本明細書において記載及び提供されるように、ウイルス複製のために重要なウイルスDNA配列をモジュレート又は編集する目的と共にJCVゲノムを特異的に標的化するCRISPR/Cas9システムを利用してJCV複製を阻害することができる。顕著なことに、JCVのNCCR、ラージT抗原遺伝子、及びVP1遺伝子を標的化することは、細胞中のインタクトなNCCR、ラージT抗原遺伝子、及びVP1遺伝子JCVを劇的に減少させ、JCV感染の抑制に繋がる。本明細書において提供されるように、JCVゲノム内の遺伝子編集/アブレーションにおける標的化戦略(例えばNCCR、ラージT抗原遺伝子、及びVP1遺伝子の標的化)の特異性を、細胞モデルにおける遺伝学的分析により検証した。
【0134】
図1A~1Cは、CRISPR Cas9遺伝子編集システムにより標的化されるウイルス遺伝子と共にJCV(Mad-1)ゲノム(図1A)及びpBluescript-KS(+)-BamHI-JCVMad1プラスミド(pMad1)(図1B)の図式的な表現を示す。PAM(赤)を含むgRNAの位置及びヌクレオチド組成を示す。ヌクレオチド位置は、RefSeq NC_001699.1(ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/9628642/)が参照される。図1Cは、JCV構築物のグラフィカルな表現を示す。プラスミドは、T抗原をコードする早期遺伝子(TAg)、VP1をコードする後期遺伝子(VP1)及び調節領域NCCR(NCCR)をそれぞれ標的化する3つのgRNAを含有する。各gRNAは、U6プロモーターの下流にクローニングされ、1コピーのSaCas9遺伝子もまたプラスミド中に含まれる。JCV構築物をAAV6及びAAV9ベクターにパッケージングした。図2は、SaCas9及びTAg、VP1及びNCCR関連gRNAの発現並びに各々の遺伝子配列における切除活性を確認するためにpBluescript-KS(+)-BamHI-JCVMad1(pMad1)により一過的にトランスフェクトされたSVGA細胞系のAAV6/AAV9 JCV構築物形質導入の図式的な表現である。
【0135】
AAV送達性のCas9は膠細胞中で発現される。図3は、それぞれAAV6-及びAAV9-JCV構築物によるSVGA細胞系の形質導入後のSaCas9の発現を確認したウエスタンブロット分析を示す。ハウスキーピングアルファチューブリンの発現も示す。
【0136】
NCCR、ラージT抗原遺伝子、及びVP1遺伝子を標的化するgRNAを有するCRISPR-Casシステムは、JCVゲノムの標的化された領域を有効に切除(例えば除去)する。図4A~4Dは、CRISPR-Cas DNA切除アッセイからのデータを示す。ゲル分析は、AAV6-JCV構築物及びAAV9-JCV構築物を用いた形質導入後のpBluescript-KS(+)-BamHI-JCVMad1プラスミド(pMad1)によりトランスフェクトされたSVGA細胞系においてJCV Mad1特異的プライマーにより得られたアンプリコンを示す。(図4A)NCCR及びVP1(図4B)、TAg及びVP1(図4C)並びにTAg及びNCCR(図4C~4D)のゲノム配列に対する切除活性の生成物を確認するためにこの研究において使用されたpMad1プラスミド中の3つのgRNAの位置及び特異的なプライマーの図式的な表現。各標的遺伝子において特異的なgRNA及びSaCas9により誘導された特異的な切除で同定されたDNAシークエンシングも示す。
【0137】
AAV6及びAAV9は、DNAベクターを膠細胞に有効に送達する。図5A~5Bは、SVGA細胞系の細胞へのAAV6GFP及びAAV9媒介性の形質導入の効率を示す。(図5A)アデノ随伴ウイルスベクターにより有効に形質導入された細胞の百分率をアッセイするためのフローサイトメトリー読取り(ヨウ化プロピジウムでの染色後)並びに(図5B)それぞれAAV6GFP及びAAV9GFPにより形質導入されたSVGA細胞の免疫蛍光評価。
【0138】
実施例2.配列
本明細書に記載されるような組成物及び方法において使用される配列を表1に提供する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【0139】
本開示の好ましい実施形態を本明細書に示し、記載してきたが、そのような実施形態は例としてのみ提供されていることは当業者に自明である。多数のバリエーション、変更、及び置換が、本発明から離れることなく当業者に想起されるであろう。本明細書に記載のCRISPR-Casシステム、組成物、及び方法の実施形態に対する様々な代替物が本発明の実施において用いられ得ることが理解されるべきである。以下の請求項は本開示の範囲を定義すること、並びにこれらの請求項及びそれらの均等の範囲内の方法及び構造はそれによりカバーされることが意図される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
【配列表】
2022554417000001.app
【国際調査報告】