(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(54)【発明の名称】ローリングサークル増幅産物をマッピングするための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6816 20180101AFI20221221BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20221221BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20221221BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20221221BHJP
【FI】
C12Q1/6816 Z ZNA
C12Q1/6844 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022551433
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(85)【翻訳文提出日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 IB2020060062
(87)【国際公開番号】W WO2021084419
(87)【国際公開日】2021-05-06
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522169690
【氏名又は名称】ピクセルゲン テクノロジーズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】フレドリクソン,サイモン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR06
4B063QR08
4B063QR20
4B063QR32
4B063QR42
4B063QR56
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本明細書では、固有の識別子配列を含有するローリングサークル増幅(RCA)産物をマッピングするための方法が提供される。方法は、一般に、(a)グリッドオリゴヌクレオチド分子の集団、及び各々が固有のRCA産物識別子配列を有するRCA産物の集団を含む複合体を産生する工程であって、グリッドオリゴヌクレオチドが、RCA産物中の相補的部位にスプリントを介して直接的又は間接的にハイブリダイズされる工程と、(b)2つのRCA産物にハイブリダイズされるグリッドオリゴヌクレオチド分子を伸長させ、2つのRCA産物からの固有のRCA産物識別子配列の相補体をグリッドオリゴヌクレオチド分子に付加する工程と、(c)伸長したグリッドオリゴヌクレオチドを配列決定する工程と、(d)配列を分析し、どの固有のRCA産物識別子配列相補体の対がグリッドオリゴヌクレオチドに付加されているかを同定する工程と、(e)(d)で同定された配列の対を使用して、固定化RCA産物の1つ又はそれ以上の物理的マップを調製する工程とを伴う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローリングサークル増幅(RCA)産物の物理的マップを調製するための方法であって、
(a)グリッドオリゴヌクレオチド分子の集団、及び各々が固有のRCA産物識別子配列を有するRCA産物の集団を含む複合体を産生する工程であって、グリッドオリゴヌクレオチドが、前記RCA産物中の相補的部位にスプリントを介して直接的又は間接的にハイブリダイズされる工程と、
(b)2つのRCA産物にハイブリダイズされる前記グリッドオリゴヌクレオチド分子を伸長させ、前記2つのRCA産物からの前記固有のRCA産物識別子配列の相補体を前記グリッドオリゴヌクレオチド分子に付加する工程と、
(c)前記伸長したグリッドオリゴヌクレオチドを配列決定する工程と、
(d)前記配列を分析し、どの固有のRCA産物識別子配列相補体の対が前記グリッドオリゴヌクレオチドに付加されているかを同定する工程と、
(e)(d)で同定された前記配列の対を使用して、固定化RCA産物の1つ又はそれ以上の物理的マップを調製する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
工程(a)において、前記RCA産物中の固有のRCA産物識別子配列の少なくとも一部が、二本鎖であり、工程(b)が、前記グリッドオリゴヌクレオチド分子を前記RCA産物の前記二本鎖領域の鎖の末端に連結し、それによって前記2つのRCA産物からの前記固有のRCA産物識別子配列の前記相補体を前記グリッドオリゴヌクレオチドに付加する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)が、
(a)グリッドオリゴヌクレオチド分子の集団をRCA産物の集団とハイブリダイズさせる工程であって、前記グリッドオリゴヌクレオチド分子又は前記RCA産物のいずれかが、固定化される工程
を含み、
(i)前記RCA産物の集団の前記RCA産物が各々、固有のRCA産物識別子配列及びグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を有し、
(ii)前記グリッドオリゴヌクレオチド分子が各々、グリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第1の末端配列、及びグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第2の末端配列を含み、
(iii)前記グリッドオリゴヌクレオチド分子の少なくとも一部が、2つの隣接するRCA産物にハイブリダイズする、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記伸長させる工程が、前記2つの隣接するRCA産物からの前記固有のRCA産物識別子配列の相補体を前記グリッドオリゴヌクレオチドに付加する、ギャップ充填及び/又はライゲーション反応を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)において、
(i)前記RCA産物の集団が、
i.各々が固有のRCA産物識別子配列及び第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を含む反復配列を含む第1の組のRCA産物、並びに
ii.固有のRCA産物識別子配列及び第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を含む反復配列を含む第2の組のRCA産物
を含み、
(ii)グリッドオリゴヌクレオチド分子が各々、前記第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第1の末端配列、及び前記第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第2の末端配列を含み、
(iii)前記グリッドオリゴヌクレオチド分子の少なくとも一部が、2つの隣接するRCA産物にハイブリダイズする、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記伸長したグリッドオリゴヌクレオチドが、配列決定の前にPCRによって増幅される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記グリッドオリゴヌクレオチド分子が、固定化され、前記RCA産物が、前記固定化グリッドオリゴヌクレオチド分子にハイブリダイズされる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記グリッドオリゴヌクレオチドが、前記RCA産物とのハイブリダイゼーションの前に、細胞内又は細胞上にある配列にハイブリダイズされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記グリッドオリゴヌクレオチド分子が、前記RCA産物とのハイブリダイゼーションの前に、細胞内又は細胞上でインサイチュで調製される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記RCA産物が、固定化され、前記グリッドオリゴヌクレオチド分子が、前記固定化RCA産物にハイブリダイズされる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記RCA産物が、前記グリッドオリゴヌクレオチド分子とのハイブリダイゼーションの前に、細胞内又は細胞上にある配列にハイブリダイズされる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記RCA産物が、前記グリッドオリゴヌクレオチド分子とのハイブリダイゼーションの前に、細胞内又は細胞上でインサイチュで調製される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記グリッドオリゴヌクレオチド分子又は前記RCA産物が、抗体を介して固定化される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記グリッドオリゴヌクレオチド分子又は前記RCA産物が、核酸プローブを介して固定化される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記グリッドオリゴヌクレオチド分子又はRCA産物が、1つ又はそれ以上の表面上に固定化される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記グリッドオリゴヌクレオチド分子又はRCA産物が、1つ又はそれ以上の細胞の中又は上にある部位に固定化され、前記細胞が、懸濁液中にあるか又は支持体に結合される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記グリッドオリゴヌクレオチド分子又は前記RCA産物が、1つ又はそれ以上の結合剤を介して1つ又はそれ以上の細胞の中又は上にある部位に固定化され、前記結合剤が各々、グリッドオリゴヌクレオチド分子又はRCA産物中の配列及び前記1つ又はそれ以上の細胞の中又は上の部位に結合される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1つ又はそれ以上の結合剤とそれらが結合される前記RCA産物との間で近接アッセイを実施する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記近接アッセイが、結合剤識別子配列の相補体及び固有のRCA産物識別子配列の相補体を含有するアッセイ産物を産生する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、
どの固有のRCA産物識別子配列及びどの結合剤識別子配列が前記アッセイ産物中にあるかを分析することによって、前記結合剤を前記固定化RCA産物の前記物理的マップにマッピングする工程
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
結合剤識別子配列の前記相補体及び固有のRCA産物識別子配列の前記相補体が、工程(b)の前記伸長したグリッドオリゴヌクレオチドに組み込まれる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記グリッドオリゴヌクレオチド分子が、結合剤識別子配列に固有にハイブリダイズする、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
プローブシステムであって、
(a)RCA産物の集団であって、前記RCA産物の集団の前記RCA産物が各々、固有のRCA産物識別子配列及びグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を有するRCA産物の集団と、
(b)グリッドオリゴヌクレオチド分子の集団であって、前記グリッドオリゴヌクレオチド分子の一端の末端の配列が、グリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的であり、前記グリッドオリゴヌクレオチド分子の他端の末端の配列が、グリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的であり、前記グリッドオリゴヌクレオチド分子が、単一分子であるか又は分割されており、前記グリッドオリゴヌクレオチド分子が1つ又はそれ以上の配列に分割される場合、前記システムが、一緒に前記配列を保持する1つ又はそれ以上のスプリントオリゴヌクレオチドをさらに含むグリッドオリゴヌクレオチド分子の集団と
を含み、
(a)と(b)のハイブリダイゼーションが、前記グリッドオリゴヌクレオチドが隣接するRCA産物にハイブリダイズする複合体を産生する、
プローブシステム。
【請求項24】
(a)の前記RCA産物の集団が、
(i)各々が固有のRCA産物識別子配列及び第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を含む反復配列を含む第1の組のRCA産物、並びに
(ii)固有のRCA産物識別子配列及び第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を含む反復配列を含む第2の組のRCA産物
を含み、
(b)の前記グリッドオリゴヌクレオチド分子の集団において、前記グリッドオリゴヌクレオチド分子の一端の前記末端の前記配列が、前記第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的であり、前記グリッドオリゴヌクレオチド分子の他端の前記末端の前記配列が、前記第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的であり、前記グリッドオリゴヌクレオチド分子が、単一分子であるか又は分割されており、前記グリッドオリゴヌクレオチド分子が1つ又はそれ以上の配列に分割される場合、前記システムが、一緒に前記配列を保持する1つ又はそれ以上のスプリントオリゴヌクレオチドをさらに含む、
請求項13に記載のプローブシステム。
【請求項25】
前記第1及び第2の組のRCA産物が各々、少なくとも10個のメンバーを含む、請求項24に記載のプローブシステム。
【請求項26】
前記RCA産物中の前記グリッドオリゴヌクレオチド結合配列が、前記RCA産物中の前記固有のRCA産物識別子配列に隣接しており、前記グリッドオリゴヌクレオチド分子の前記末端が、前記固有のRCA産物識別子配列ではなく前記グリッドオリゴヌクレオチド結合配列とハイブリダイズする、請求項23から25のいずれか一項に記載のプローブシステム。
【請求項27】
各々が固有のRCA産物識別子配列を有するRCA産物の集団であって、前記RCA産物中の固有のRCA産物識別子配列の少なくとも一部が、二本鎖であり、その間に一本鎖領域ギャップが存在する、RCA産物の集団。
【請求項28】
(i)各々が固有のRCA産物識別子配列及び第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を含む反復配列を含む第1の組のRCA産物、並びに
(ii)固有のRCA産物識別子配列及び第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を含む反復配列を含む第2の組のRCA産物
を含む、RCA産物の集団。
【請求項29】
前記RCA産物中の前記グリッドオリゴヌクレオチド結合配列が、前記固有のRCA産物識別子配列に隣接している、請求項28に記載のRCA産物の集団。
【請求項30】
前記第1及び第2の組のRCA産物が各々、少なくとも10個のメンバーを含む、請求項28又は29に記載のRCA産物の集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月28日に出願された米国仮出願第62/926,907号の利益を主張し、この出願は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
細胞極性、すなわち、細胞内又は細胞の表面上の1つ又はそれ以上の面積へのマーカのゆがみは一般的な現象であるが、ハイスループットで研究することは困難である。例えば、単一細胞上の細胞表面マーカの発現を分析するためのいくつかの方法(例えば、フローサイトメトリーを伴う方法、又は個々の細胞を区画に入れ、次いで個々の細胞に対してアッセイを実施する方法)があるが、それらの方法は、個々の細胞上の細胞表面マーカの空間的関係に関する情報を提供しない。細胞内又は細胞上の生物学的分子間の空間的関係を分析するためのより最近の方法、例えば、近接ライゲーションアッセイ(例えば、Soderberg et al Nature Methods.2006 3:995-1000参照)、ワインスタインの拡散ベースの方法(例えば、Cell 2019 178:229-241及び米国特許出願公開第20160265046号明細書参照)、及びアレイベースの方法(例えば、Vickovic et al,Nature Methods 2019 16:987-990参照)は、細胞表面マーカの分析に容易に適合しないか、又は細胞極性に関する情報を提供しない。顕微鏡法は、単一細胞上のマーカ間の空間的関係を分析するためのゴールドスタンダードである。しかしながら、顕微鏡法は、本質的に非常にスループットが低く、自動化するのが困難である。
【0003】
上記を考慮して、ハイスループット方式で細胞極性を分析する方法に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0004】
とりわけ、細胞内又は細胞上に存在し得るマーカの分布を分析するための配列決定ベースの方法が本明細書に記載される。この方法は、標的(例えば、細胞又は基質)中又は標的上にローリングサークル増幅(RCA)産物を固定化し、互いに対してRCA産物をマッピングし、次いで近接アッセイを介してマーカの位置及び量をRCA産物上にマッピングすることに依存する。
【0005】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)グリッドオリゴヌクレオチド分子の集団、及び各々が固有のRCA産物識別子配列を有するRCA産物の集団を含む複合体を産生する工程であって、グリッドオリゴヌクレオチドが、RCA産物中の相補的部位にスプリントを介して直接的又は間接的にハイブリダイズされる工程と、(b)2つのRCA産物にハイブリダイズされるグリッドオリゴヌクレオチド分子を伸長させ、2つのRCA産物からの固有のRCA産物識別子配列の相補体をグリッドオリゴヌクレオチド分子に付加する工程と、(c)伸長したグリッドオリゴヌクレオチドを配列決定する工程と、(d)配列を分析し、どの固有のRCA産物識別子配列相補体の対がグリッドオリゴヌクレオチドに付加されているかを同定する工程と、(e)(d)で同定された配列の対を使用して、固定化RCA産物の1つ又はそれ以上の物理的マップを調製する工程とを含むことができる。この方法は、
図2に概念的に示されているが、いくつかの変形が可能である。
【0006】
方法は、いくつかの異なる方法で実践することができる。例えば、
図13及び
図14に示されるように、方法は、工程(a)において、RCA産物中の固有のRCA産物識別子配列の少なくとも一部が、二本鎖であり、工程(b)が、グリッドオリゴヌクレオチド分子をRCA産物の二本鎖領域の鎖の末端に連結し、それによって2つのRCA産物からの固有のRCA産物識別子配列の相補体をグリッドオリゴヌクレオチドに付加する工程を含むように実施されてもよい。
【0007】
他の例では、
図6、
図7、及び
図9~
図12に示されるように、方法は、工程(a)が、グリッドオリゴヌクレオチド分子の集団をRCA産物の集団とハイブリダイズさせる工程であって、グリッドオリゴヌクレオチド分子又はRCA産物のいずれかが、固定化される工程を含み、(i)RCA産物の集団のRCA産物が各々、固有のRCA産物識別子配列及びグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を有し、(ii)グリッドオリゴヌクレオチド分子が各々、グリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第1の末端配列、及びグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第2の末端配列を含み、(iii)グリッドオリゴヌクレオチド分子の少なくとも一部が、2つの隣接するRCA産物にハイブリダイズするように実施されてもよい。これらの実施形態では、伸長させる工程が、2つの隣接するRCA産物からの固有のRCA産物識別子配列の相補体をグリッドオリゴヌクレオチドに付加する、ギャップ充填及び/又はライゲーション反応を含んでもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、グリッドオリゴヌクレオチド分子が、インサイチュで調製されてもよい(すなわち、スプリント媒介ライゲーション反応において2つ以上のより短いオリゴヌクレオチドのライゲーションによって産生される)。例えば、
図12を参照されたい。他の実施形態では、インタクトなグリッドオリゴヌクレオチド分子が、試料中の部位にハイブリダイズされる。例えば、
図10を参照されたい。他の実施形態では、予め調製されたRCA産物が、試料中の部位にハイブリダイズされる(例えば、
図6及び
図7参照)。他の実施形態では、RCA産物が、細胞内又は細胞上でインサイチュで調製されてもよい。RCA産物のインサイチュ産生は、様々な刊行物に記載されている。例えば、Soderberg et al(Nat.Methods 2006 3:995-1000)は、オリゴヌクレオチドに結合した2つの抗体の同時入射結合からインサイチュでRCA産物を生成するインサイチュ近接ライゲーションアッセイ(PLA)を記載しており、Leuchowius et al(Cytometry A.2009 75:833-9)は、フローサイトメトリーのための細胞表面上でのインサイチュPLAを記載しており、Larsson et al.(Nat.Methods.2010 7:395-7)は、パドロックプローブ及びインサイチュRCAによる細胞内のmRNAの検出を記載しており、Gusev et al(Am.J.Pathol.2001 159:63-69)は、免疫RCAによって増幅された組織内及び細胞の表面上での微小タンパク質検出を記載しており、Lizardi et al.(Nat Genet.1998 19:225-32)は、インサイチュRCAを使用する細胞内の点突然変異を検出するための方法を記載している。
【0009】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)グリッドオリゴヌクレオチド分子の集団をRCA産物の集団とハイブリダイズさせる工程であって、グリッドオリゴヌクレオチド分子又はRCA産物のいずれかが、細胞内又は1つ又はそれ以上の表面、例えば、ガラススライド又は細胞上に固定化され、(i)RCA産物の集団のRCA産物が各々、固有のRCA産物識別子配列及びグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を有し、(ii)グリッドオリゴヌクレオチド分子が各々、グリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第1の末端配列、及びグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第2の末端配列を含み、(iii)グリッドオリゴヌクレオチド分子の少なくとも一部が、2つの隣接するRCA産物にハイブリダイズする工程と、(b)2つの隣接するRCA産物にハイブリダイズされるグリッドオリゴヌクレオチド分子を伸長させ、2つの隣接するRCA産物からの固有のRCA産物識別子配列の相補体をグリッドオリゴヌクレオチドに付加し、それによって伸長したグリッドオリゴヌクレオチドを産生する工程と、(c)伸長したグリッドオリゴヌクレオチドを配列決定する工程と、(d)配列を分析し、どの固有のRCA産物識別子配列相補体の対が伸長したグリッドオリゴヌクレオチドに付加されているかを同定する工程とを含んでもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)グリッドオリゴヌクレオチド分子の集団をRCA産物の集団とハイブリダイズさせる工程であって、グリッドオリゴヌクレオチド分子又はRCA産物のいずれかが、細胞内又は1つ又はそれ以上の表面、例えば、ガラススライド又は細胞上に固定化され、(i)RCA産物の集団が、i.各々が固有のRCA産物識別子配列及び第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を含む反復配列を含む第1の組のRCA産物、並びにii.固有のRCA産物識別子配列及び第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を含む反復配列を含む第2の組のRCA産物を含み、(ii)グリッドオリゴヌクレオチド分子が各々、第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第1の末端配列、及び第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第2の末端配列を含み、(iii)グリッドオリゴヌクレオチド分子の少なくとも一部が、2つの隣接するRCA産物にハイブリダイズする工程と、(b)2つの隣接するRCA産物にハイブリダイズされるグリッドオリゴヌクレオチド分子を伸長させ、2つの隣接するRCA産物からの固有のRCA産物識別子配列の相補体をグリッドオリゴヌクレオチドに付加し、それによって伸長したグリッドオリゴヌクレオチドを産生する工程と、(c)伸長したグリッドオリゴヌクレオチドを配列決定する工程と、(d)配列を分析し、どの固有のRCA産物識別子配列相補体の対がグリッドオリゴヌクレオチドに付加されているかを同定する工程とを含んでもよい。
【0011】
任意の実施形態(及び
図10~
図16に示されるように)では、グリッドオリゴヌクレオチド分子は、プローブを介して細胞内又は1つ又はそれ以上の表面上に固定化されてもよい。他の実施形態(及び
図6、
図7、及び
図9に示されるように)では、RCA産物は、プローブを介して細胞内又は1つ又はそれ以上の表面上に固定化されてもよい。
【0012】
(d)で同定された配列の対の配列を使用して、固定化RCA産物の1つ又はそれ以上の物理的マップ(重複及び/又は非重複マップを含み得る)を調製することができ、マップは、細胞内又は、例えば、細胞の1つ又はそれ以上の表面上の固定化RCA産物の位置を提供する。上述したように、方法がどのように実施されるかに応じて、マップは、二次元又は三次元マップであってもよい。
【0013】
以下により詳細に記載されるように、RCA産物は、1つ又はそれ以上の結合剤(例えば、抗体)を介して固定化され得、結合剤は各々、RCA産物中の配列並びに細胞内又は細胞上の部位(例えば、細胞表面マーカ)に結合(すなわち、ハイブリダイズ)される。これらの実施形態では、方法は、1つ又はそれ以上の結合剤とそれらが結合されるRCA産物との間で近接アッセイを実施する工程をさらに含み、それによって表面上の結合剤を特定のRCA産物にマッピングすることを可能にしてもよい。
【0014】
結合剤が特定のRCA産物にマッピングされると、上述のように、個々の結合剤の位置及び量を固定化RCA産物の物理的マップにマッピングすることができる。マップ上の結合剤の分布及び結合剤が豊富な部位を、分析することができる。
【0015】
プローブシステムもまた、提供される。いくつかの実施形態では、プローブシステムは、(a)RCA産物の集団であって、RCA産物の集団のRCA産物が各々、固有のRCA産物識別子配列及びグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を有するRCA産物の集団と、(b)グリッドオリゴヌクレオチド分子の集団であって、グリッドオリゴヌクレオチド分子の一端の末端の配列が、グリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的であり、グリッドオリゴヌクレオチド分子の他端の末端の配列が、グリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的であるグリッドオリゴヌクレオチド分子の集団とを含むことができ、(a)と(b)のハイブリダイゼーションが、グリッドオリゴヌクレオチドが隣接するRCA産物にハイブリダイズする複合体を産生する。グリッドオリゴヌクレオチド分子は、単一分子(ヌクレオチドが互いに共有結合的に連結している)であってもよく、又は1つ又はそれ以上の配列に分割されてもよい。これらの実施形態では、グリッドオリゴヌクレオチド分子が1つ又はそれ以上の配列に分割される場合、システムが、一緒に配列を保持する1つ又はそれ以上のスプリントオリゴヌクレオチドをさらに含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、プローブシステムは、(a)RCA産物の集団であって、(i)各々が固有のRCA産物識別子配列及び第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を含む反復配列を含む第1の組のRCA産物、並びに(ii)固有のRCA産物識別子配列及び第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を含む反復配列を含む第2の組のRCA産物を含むRCA産物の集団と、(b)グリッドオリゴヌクレオチド分子の集団であって、グリッドオリゴヌクレオチド分子の一端の末端の配列が、第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的であり、グリッドオリゴヌクレオチド分子の他端の末端の配列が、第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的であるグリッドオリゴヌクレオチド分子の集団とを含んでもよい。これらの実施形態では、(a)と(b)のハイブリダイゼーションが、グリッドオリゴヌクレオチドが隣接するRCA産物にハイブリダイズする複合体を産生する。
【0017】
当業者は、以下に記載される図面が例示のみを目的としていることを理解するであろう。図面は、本教示の範囲を決して限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】隣接するRCA産物からの固有の分子識別子をグリッドオリゴヌクレオチドにどのように付加することができるかの一例を概略的に示す。この例では、固有の分子識別子の一方(例えば、UID2)の相補体は、テンプレートとしてRCA産物を使用してグリッドオリゴヌクレオチドの3’末端を伸長させることによってグリッドオリゴヌクレオチドの3’末端に付加することができ、固有の分子識別子の他方(例えば、UID1)の相補体は、例えば、上流のオリゴヌクレオチド(
図3に示され、以下により詳細に説明される)のギャップ充填/ライゲーションによって、又は固有の分子識別子に相補的であり、RCA産物にハイブリダイズされるオリゴヌクレオチドへのグリッドオリゴヌクレオチドのライゲーションによって、グリッドオリゴヌクレオチドの5’末端に付加することができる。後者の実施形態では、RCA産物は、ライゲーションのためのスプリントとして作用する。
【
図3】UMIをグリッドオリゴヌクレオチドに付加することができる1つの方法を概略的に示す。
【
図4】グリッドオリゴヌクレオチドにコピーされた固有の分子識別子を対にしてマッピングし、RCA産物の物理的マップを産生することができる方法を概略的に示す。
【
図5】UMIタグ化ローリングサークル増幅産物、抗体-オリゴヌクレオチドプローブ、及び細胞の相対的なサイズを概略的に示す。
【
図8】
図7に示す方法を使用して産生されたPCRアンプリコンを概略的に示す。
【
図13】本方法の第7の実施態様の第1の部分を概略的に示す。
【
図14】本方法の第7の実施態様の第2の部分を概略的に示す。
【
図15】本方法の第8の実施態様の第1の部分を概略的に示す。
【
図16】本方法の第8の実施態様の第2の部分を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
例示的な実施形態をより詳細に説明する前に、説明で使用される用語の意味及び範囲を例示及び定義するために、以下の定義が記載される。
数値範囲は、範囲を定義する数を含む。別段示されない限り、核酸は、5’から3’への向きで左から右に書かれ、アミノ酸配列は、それぞれアミノからカルボキシへの向きで左から右に書かれている。
【0020】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。Singleton,et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY,2D ED.,John Wiley and Sons,New York(1994)、及びHale&Markham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY,Harper Perennial,N.Y.(1991)は、本明細書で使用される用語の多くの一般的な意味を当業者に提供している。さらに、明確さ及び参照の容易さのために、特定の用語を以下に定義する。
【0021】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。例えば、「プライマー」という用語は、1つ又はそれ以上のプライマー、すなわち、単一のプライマー及び複数のプライマーを指す。請求項は、任意の要素を除外するように起草され得ることにさらに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙、又は「否定的な」限定の使用に関連して、「もっぱら(solely)」、「のみ(only)」などの排他的な専門用語を使用するための先行詞としての役割を果たすことを意図している。
【0022】
「ヌクレオチド」という用語は、公知のプリン塩基及びピリミジン塩基だけでなく、修飾された他の複素環塩基も含有する部分を含むことを意図している。そのような修飾としては、メチル化プリン又はピリミジン、アシル化プリン又はピリミジン、アルキル化リボース又は他の複素環が挙げられる。加えて、「ヌクレオチド」という用語は、ハプテン又は蛍光標識を含有し、従来のリボース及びデオキシリボース糖だけでなく、他の糖も含有し得る部分を含む。修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドはまた、例えば、ヒドロキシル基の1つ又はそれ以上がハロゲン原子又は脂肪族基で置き換えられ、エーテル、アミンなどとして官能化される、糖部分の修飾も含む。
【0023】
「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書では互換的に使用され、ヌクレオチド、例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドで構成される任意の長さ、例えば、約2塩基超、約10塩基超、約100塩基超、約500塩基超、1000塩基超、最大約10,000又はそれ以上の塩基のポリマーを説明し、酵素的又は合成的に産生され得(例えば、米国特許第5,948,902号明細書及びそこに引用されている参考文献に記載されているようなPNA)、2つの天然に存在する核酸の配列と類似の配列特異的に天然に存在する核酸とハイブリダイズすることができ、例えば、ワトソン-クリック塩基対合相互作用に関与することができる。天然に存在するヌクレオチドには、グアニン、シトシン、アデニン、チミン、ウラシル(それぞれG、C、A、T、及びU)が挙げられる。DNA及びRNAは、それぞれデオキシリボース及びリボース糖骨格を有するが、PNAの骨格は、ペプチド結合によって連結された反復N-(2-アミノエチル)-グリシン単位で構成される。PNAでは、様々なプリン塩基及びピリミジン塩基がメチレンカルボニル結合によって骨格に連結される。ロックド核酸(LNA)は、しばしばアクセス不能RNAと呼ばれ、修飾RNAヌクレオチドである。LNAヌクレオチドのリボース部分は、2’酸素と4’炭素を接続する余分な架橋で修飾されている。架橋は、A型二重鎖に多く見られる3’-エンド(ノース)コンホメーションでリボースを「ロック」する。LNAヌクレオチドは、所望されるときはいつでもオリゴヌクレオチド中のDNA又はRNA残基と混合され得る。「非構造化核酸」又は「UNA」という用語は、安定性が低下した状態で互いに結合する非天然ヌクレオチドを含有する核酸である。例えば、非構造化核酸は、G’残基及びC’残基を含有し得、これらの残基は、天然に存在しない形態、すなわち、安定性が低下した状態で互いに塩基対を形成するが、天然に存在するC及びG残基とそれぞれ塩基対を形成する能力を保持するG及びCの類似体に対応する。非構造化核酸は、UNAの開示のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20050233340号明細書に記載されている。
【0024】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、約2~200ヌクレオチド、最大500ヌクレオチド長のヌクレオチドの一本鎖多量体を意味する。オリゴヌクレオチドは、合成であってもよく、又は酵素的に調製されてもよく、いくつかの実施形態では、30~150ヌクレオチド長である。オリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチドモノマー(すなわち、オリゴリボヌクレオチドであってもよい)又はデオキシリボヌクレオチドモノマーを含有し得る。オリゴヌクレオチドは、例えば、10~20、21~30、31~40、41~50、51~60、61~70、71~80、80~100、100~150、又は150~200ヌクレオチド長であり得る。
【0025】
本明細書で使用される「プライマー」という用語は、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下、すなわち、ヌクレオチド及び誘導剤、例えばDNAポリメラーゼの存在下で、適切な温度及びpHで配置された場合に、合成の開始点として作用することが可能なオリゴヌクレオチドを指す。プライマーは一本鎖であり得、誘導剤の存在下で所望の伸長産物の合成をプライミングするのに十分な長さでなければならない。プライマーの正確な長さは、温度、プライマーの供給源、及び方法の使用を含む多くの因子に依存する。例えば、診断用途では、標的配列又は断片の複雑さに応じて、オリゴヌクレオチドプライマーは、典型的には15~25又はそれを超えるヌクレオチドを含有するが、より少ないヌクレオチドを含有してもよい。本明細書のプライマーは、特定の標的DNA配列の異なる鎖に実質的に相補的であるように選択される。これは、プライマーがそれらのそれぞれの鎖とハイブリダイズするのに十分に相補的でなければならないことを意味する。したがって、プライマー配列は、テンプレートの正確な配列を反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチド断片をプライマーの5’末端に結合させることができ、プライマー配列の残りは鎖に相補的である。あるいは、プライマー配列が鎖の配列とハイブリダイズし、それによって伸長産物の合成のためのテンプレートを形成するのに十分な相補性を有する限り、非相補的な塩基又はより長い配列をプライマーに散在させることができる。
【0026】
「ハイブリダイゼーション」又は「ハイブリダイズする」という用語は、核酸鎖が、第2の相補的な核酸鎖との通常のハイブリダイゼーション条件下で、ホモ二重鎖又はヘテロ二重鎖のいずれかの安定な二重鎖にアニーリングしてそれを形成し、同じ通常のハイブリダイゼーション条件下で無関係の核酸分子と安定な二重鎖を形成しないプロセスを指す。二重鎖の形成は、ハイブリダイゼーション反応において2つの相補的な核酸鎖をアニーリングすることによって達成される。ハイブリダイゼーション反応は、ハイブリダイゼーション反応が起こるハイブリダイゼーション条件(しばしばハイブリダイゼーションストリンジェンシーと呼ばれる)を調整することによって高度に特異的にすることができ、その結果、2つの核酸鎖間のハイブリダイゼーションは、2つの核酸鎖が特定の配列中に実質的に又は完全に相補的な一定数のヌクレオチドを含有しない限り、安定な二重鎖、例えば、通常のストリンジェンシー条件下で二本鎖の領域を保持する二重鎖を形成しない。「通常のハイブリダイゼーション又は通常のストリンジェンシー条件」は、任意の所与のハイブリダイゼーション反応について容易に決定される。例えば、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.,New York、又はSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。本明細書で使用される場合、「ハイブリダイズする」又は「ハイブリダイゼーション」という用語は、核酸の鎖が塩基対合を介して相補鎖と結合する任意のプロセスを指す。
【0027】
核酸は、2つの配列が中程度~高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション及び洗浄条件下で互いに特異的にハイブリダイズする場合、参照核酸配列に「選択的にハイブリダイズ可能」であると見なされる。中程度及び高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、公知である(例えば、Ausubel,et al.,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley&Sons 1995、及びSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,2001 Cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい)。高ストリンジェンシー条件の一例には、50% ホルムアミド、5X SSC、5X デンハルト溶液、0.5% SDS、及び100ug/ml 変性担体DNA中、約42℃におけるハイブリダイゼーション、その後の室温における2X SSC及び0.5% SDS中での2回の洗浄、並びに42℃における0.1X SSC及び0.5% SDS中での2回のさらなる洗浄が挙げられる。
【0028】
本明細書で使用される「配列決定」という用語は、ポリヌクレオチドの少なくとも10個の連続するヌクレオチドの同一性(例えば、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも100個、又は少なくとも200個以上の連続するヌクレオチドの同一性)が得られる方法を指す。
【0029】
「次世代配列決定」という用語は、例えば、illumina、Life Technologies、BGI Genomics(Complete Genomics technology)、及びRocheなどによって現在用いられている、いわゆる並列化された合成による配列決定又はライゲーションによる配列決定のプラットフォームを指す。次世代配列決定方法はまた、ナノポア配列決定方法又は電子検出に基づく方法、例えばLife Technologiesによって商品化されたIon Torrent技術を含み得る。
【0030】
本明細書で使用される「二重鎖」又は「二重鎖の」という用語は、塩基対合した、すなわち、互いにハイブリダイズしている2つの相補的なポリヌクレオチドを説明する。
【0031】
「決定する」、「測定する」、「評価する」、「調査する」、「アッセイする」、及び「分析する」という用語は、測定の形態を指すために本明細書では互換的に使用され、要素が存在するか否かを決定することを含む。これらの用語は、定量的及び/又は定性的決定の両方を含む。調査は、相対的又は絶対的であり得る。
【0032】
本明細書で使用される「ライゲーションする」という用語は、第1のDNA分子の5’末端の末端ヌクレオチドと第2のDNA分子の3’末端の末端ヌクレオチドの酵素によって触媒される連結を指す。
【0033】
「複数」、「組」、及び「集団」という用語は、少なくとも2つのメンバーを含有するものを指すために互換的に使用される。特定の場合には、複数は、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1,000、少なくとも10,000、又は少なくとも100,000個のメンバーを有することができる。
【0034】
「プライマー結合部位」は、標的ポリヌクレオチド又は断片においてオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする部位を指す。オリゴヌクレオチドがプライマーのために結合部位を「提供する」場合、プライマーは、そのオリゴヌクレオチド又はその相補体にハイブリダイズし得る。
【0035】
本明細書で使用される「鎖」という用語は、共有結合、例えば、ホスホジエステル結合によって互いに共有結合的に連結したヌクレオチドで構成される核酸を指す。
【0036】
本明細書で使用される「伸長する」という用語は、ポリメラーゼを使用したヌクレオチドの付加によるプライマーの伸長を指す。核酸にアニーリングされたプライマーが伸長すると、核酸は、伸長反応のためのテンプレートとして作用する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ローリングサークル増幅」又は略して「RCA」という用語は、鎖置換ポリメラーゼを使用して環状核酸テンプレートの線形コンカテマー化コピーを生成する等温増幅を指す。RCAは分子生物学分野で周知であり、限定はしないが、Lizardi et al(Nat.Genet.1998 19:225-232)、Schweitzer et al(Proc.Natl.Acad.Sci.2000 97:10113-10119)、Wiltshire et al(Clin.Chem.2000 46:1990-1993)、及びSchweitzer et al(Curr.Opin.Biotech 2001 12:21-27)を含む様々な刊行物に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「ローリングサークル増幅産物」という用語は、ローリングサークル増幅反応のコンカテマー化産物を指す。本明細書で使用される場合、「蛍光標識されたローリングサークル増幅産物」という用語は、例えば、蛍光標識されたオリゴヌクレオチドをローリングサークル増幅産物にハイブリダイズさせることによって、又は他の手段によって(例えば、増幅中に蛍光ヌクレオチドを産物に組み込むことによって)蛍光標識されたローリングサークル増幅産物を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「表面」という用語は、細胞、又は細胞に由来する生体分子、例えばタンパク質、核酸、脂質、オリゴ/多糖類、生体分子複合体、細胞オルガネラ、細胞残屑、又は排泄物(エキソソーム、微小胞)などの任意の組み合わせを含有し得る任意の固体材料(例えば、ガラス、金属、セラミック、有機ポリマー表面、又はゲル)を指す。組織ブロット、ウェスタンブロット、及びガラススライドは、表面を有する固体材料の例である。細胞、例えば、哺乳動物細胞の懸濁液は、表面の別の例である。
【0040】
本明細書で使用される場合、「スプリント」という用語は、2つの他のオリゴヌクレオチドの末端にハイブリダイズし、それらの末端を一緒にしてライゲーション可能な接合部を産生するオリゴヌクレオチドを指す。
他の用語の定義は、本明細書全体にわたって出現する場合がある。
【0041】
様々な実施形態が説明される前に、本開示の教示は、説明された特定の実施形態に限定されず、したがって当然のことながら変化し得ることが理解されるべきである。本教示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0042】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成上の目的のためだけであり、決して記載された主題を限定するものと解釈されるべきではない。本教示は様々な実施形態に関連して説明されているが、本教示がそのような実施形態に限定されることを意図するものではない。逆に、本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替物、改変物、及び均等物を包含する。
【0043】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料と同様又は同等の任意の方法及び材料も本教示の実践又は試験に使用することができるが、いくつかの例示的な方法及び材料をここで説明する。
【0044】
任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示のためであり、本特許請求の範囲が先行発明によってそのような刊行物に先行する権利がないことの承認として解釈されるべきではない。さらに、提供される公開日は、実際の公開日とは異なり得、実際の公開日は、自主的に確認されることを必要とし得る。
【0045】
本開示を読めば当業者には明らかなように、本明細書に記載及び図示された個々の実施形態の各々は、本教示の範囲又は精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され又はそれらと組み合わせられ得る個別の構成要素及び特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序で、又は論理的に可能な任意の他の順序で実行することができる。
【0046】
本明細書で言及される全ての特許及び刊行物(そのような特許及び刊行物内に開示される全ての配列を含む)は、参照により明示的に組み込まれる。
【0047】
以下の開示は、隣接するRCA産物をマッピングする方法を提供する。方法によって産生されるマップは、方法がどのように実施されるかに応じて、三次元マップ又は二次元マップであってもよい。例えば、RCA産物が細胞内に固定化される(例えば、細胞内でインサイチュで産生される)場合、産生されるマップは三次元であり得る。他の実施形態では、例えば、RCA産物が1つ又はそれ以上の表面(例えば、懸濁液中にあるか、又は支持体に取り付けられ得る1つ又はそれ以上の細胞の表面)に固定化される場合、方法によって産生されるマップは二次元であり得る。方法は(以下に記載されるように)細胞に適用することができるが、方法は、任意の表面に固定化された隣接するRCA産物、例えば、組織ブロット又はウェスタンブロットなどを有するガラススライドをマッピングするように適合させることができる。同様に、RCA産物又はRCA産物が結合し得るグリッドオリゴヌクレオチド分子は、抗体(例えば、RCA産物又はグリッドオリゴヌクレオチド分子中の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされた抗体)を介して細胞内又は細胞又は表面上の部位に固定することができるが、RCA産物又はグリッドオリゴヌクレオチド分子は、任意のタイプの相互作用、例えば、共有結合又は非共有結合相互作用を使用して、直接的又は間接的に固定化することができる。例えば、いくつかの実施形態では、RCA産物又はグリッドオリゴヌクレオチド分子は、結合剤(例えば、アプタマー、抗体、又はオリゴヌクレオチドなど)を介して細胞に結合され得、結合剤は、RCA産物又はグリッドオリゴヌクレオチド分子中の配列及び細胞内又は1つ又はそれ以上の細胞の表面上の部位に結合する。いくつかの実施形態では、RCA産物又はグリッドオリゴヌクレオチド分子は、核酸にもハイブリダイズするオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーション(例えば、細胞RNAへの)を介して固定化されてもよく、又はRCA産物は、静電相互作用を介して、ストレプトアビジン/ビオチン相互作用を介して、又は共有結合(例えば、クリックカップリングを介して)によって部位に非共有結合的に固定化されてもよい。
【0048】
明確にするために、「グリッドオリゴヌクレオチド分子の集団をRCA産物の集団とハイブリダイズさせる工程であって、グリッドオリゴヌクレオチド分子又はRCA産物のいずれかが、固定化される」という語句は、(a)
図6、
図7、及び
図9に示されるように、グリッドオリゴヌクレオチドが固定化RCA産物にハイブリダイズされる(この場合、グリッドオリゴヌクレオチドがハイブリダイズされる前に、RCA産物が最初に固定化されるか、又はインサイチュで産生される)実施態様、又は(b)
図10~
図12及び
図14~
図16に示されるように、RCA産物が固定化グリッドオリゴヌクレオチドにハイブリダイズされる(この場合、RCA産物がハイブリダイズされる前に、グリッドオリゴヌクレオチドが最初に固定化されるか、又はインサイチュで産生される)実施態様を覆うことを意図している。
【0049】
任意の実施形態では、RCA産物又はグリッドオリゴヌクレオチド分子は、溶液中にある細胞、支持体(例えば、スライド)上にある細胞、組織の三次元試料中にある細胞、又は組織切片中にある細胞の中又は上に固定化され得る。溶液中の細胞を含有する試料は、例えば、細胞懸濁液として増殖させた培養細胞の試料であり得る。他の実施形態では、解離細胞(この細胞は、培養細胞、又は固体組織、例えば、肝臓または脾臓などの軟組織中にある細胞をトリプシンなどを使用して解離させることによって産生されたものであり得る)が使用されてもよい。特定の実施形態では、RCA産物は、血液中に見られ得る細胞、例えば、全血中の細胞又はその細胞の亜集団に固定化され得る。全血中の細胞の亜集団には、血小板、赤血球(red blood cells)(赤血球(erythrocytes))、血小板、及び白血球(すなわち、好中球、リンパ球、好酸球、好塩基球、及び単球で構成される末梢血白血球)が挙げられる。これら5つのタイプの白血球は、顆粒球(多形核白血球としても公知であり、好中球、好酸球、及び好塩基球を含む)及び単核白血球(単球及びリンパ球を含む)の2つのグループにさらに分けることができる。リンパ球は、T細胞、B細胞、及びNK細胞にさらに分けることができる。末梢血細胞は血液の循環プールに見られ、リンパ系、脾臓、肝臓、又は骨髄内に隔離されていない。支持体に固定化された細胞が使用される場合、試料は、例えば、平坦な表面上で細胞を増殖させること、平坦な平面上に細胞を沈着させること、例えば、遠心分離によって、細胞を含有する三次元物体を切片に切断し、切片を平坦な表面上に取り付けること、すなわち、組織切片を産生することによって調製され得る。代替的な実施形態では、表面は、細胞成分を表面上に吸収することによって調製されてもよい。
【0050】
任意の実施形態では、方法は、各細胞上でRCA産物が細胞を被覆するように、数千、数万、数十万、又は少なくとも100万個のRCA産物(各々が固有の識別子を有する)を細胞の集団(例えば、抗体を介して)に固定化することを含み得る。RCA産物で被覆された細胞が、
図1に概略的に示される。明らかなように、この図は概略図であり、示されるように、細胞は完全に球形ではなく、RCA産物は完全に球形ではなく、同じサイズであるか、又は規則的なパターンで均一に分布している。RCA産物は、例えば、
図6、
図7、
図9、及び
図10に示されるように、抗体を介して、又は例えば、
図11に示されるように、核酸プローブを介して細胞に固定され得るが、他の方法も可能である。場合により、RCA産物は、
図10に示すように、グリッドオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションによって細胞に固定化され得る。以下により詳細に記載されるように、RCA産物の各々は、固有の識別子配列並びにグリッドオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする配列を有する。グリッドオリゴヌクレオチド及びRCA産物は、ハイブリダイズしてRCA産物及びグリッドオリゴヌクレオチドを含むマトリックスを産生し、グリッドオリゴヌクレオチドは、隣接するRCA産物にハイブリダイズされる。ハイブリダイゼーション後、隣接するRCA産物の固有の識別子配列は、RCA産物からグリッドオリゴヌクレオチドにコピーされる。以下により詳細に記載されるように、グリッドオリゴヌクレオチドは、配列決定することができる。RCA産物の物理的マップは、グリッドオリゴヌクレオチドに付加された配列に基づいて構築することができる。
【0051】
図2に示されるように、方法の第1の工程では、グリッドオリゴヌクレオチド2(すなわち、グリッドオリゴヌクレオチド分子の集団)とRCA産物の集団は、ハイブリダイズさせることができ、グリッドオリゴヌクレオチド又はRCA産物は、1つ又はそれ以上の細胞に固定化することができる。この工程は、単一グリッドオリゴヌクレオチド(すなわち、分子識別子としての役割を果たし得るグリッドオリゴヌクレオチドの中央に任意の縮重配列、例えば、ランダム配列を有する、同じ配列を有するグリッドオリゴヌクレオチド分子の集団)を使用して実施することができる。実施例のセクションで説明されるように、この方法は、固有の識別子配列を除いて他の点では同じであるRCA産物の集団を使用して実施することができる。しかし、他の実施形態では、方法は、少なくとも固有の識別子配列並びにそれらのグリッドオリゴヌクレオチド結合配列が異なる2つ以上のタイプのRCA産物を使用して実施されてもよい。この後者の実施形態が、
図2に示される。図示の実施形態では、RCA産物の集団は、i.各々が固有のRCA産物識別子配列(図示の「UID1」)及び第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(図示の「GOBS1」)を含む反復配列を含む第1の組のRCA産物4と、ii.図示の固有のRCA産物識別子配列「UID2」及び第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(図示の「GOBS2」)を含む反復配列を含む第2の組のRCA産物6とを含む。第1の組には少なくとも100、少なくとも1,000、又は少なくとも10,000個のRCA産物が存在し得、第2の組には同様の数(すなわち、少なくとも100、少なくとも1,000、又は少なくとも10,000個)のRCA産物が存在し得、各RCA産物は、固有のRCA産物識別子配列を有する。第1及び第2の組のRCA産物は、第1の組からのRCA産物が第2の組からの少なくとも1つ、しかし時には2つ、3つ、又は4つのRCA産物に近接している可能性があるように、互いに散在している。
【0052】
図2では、RCA産物を円として示す。RCA産物は、典型的には0.1~1umの範囲の直径を有する、コンパクトでほぼ球形の粒子である。所望に応じて、各RCA産物内の2つ以上の部位にハイブリダイズする収縮オリゴヌクレオチドを付加することによって、方法で使用されるRCA産物のサイズを小さくすることができ、これによりRCA産物のサイズが小さくなる。より小さいRCA産物は、方法によって産生されるマップの解像度を高め得る。収縮オリゴヌクレオチドは、例えば、Clausson,(Sci Rep.2015;5:12317)に記載されている。
図2における円としてのRCA産物の例示は、RCA産物のDNAがそれ自体円であることを意味するものではないが、RCAは環状テンプレートを使用して行われる。
【0053】
RCA産物は、例えば、縮重配列を有する初期オリゴヌクレオチドを合成し、スプリントを使用して初期オリゴヌクレオチドを環状化し、環状化オリゴヌクレオチドをRCAによって増幅することによって調製することができる。いくつかの実施形態では、初期オリゴヌクレオチドは、必要とされる固有のRCA産物の数に応じて、6~10ヌクレオチド、又はさらに多くのランダムヌクレオチドの縮重(例えば、ランダム)配列を含有し得る。縮重配列を有する環状化オリゴヌクレオチドの増幅は、各々が固有の識別子(すなわち、集団中の他のRCA産物とは異なる配列)を有するRCA産物の集団を産生するはずである。固有の識別子を有するRCA産物を生成するための方法は、例えば、Wu et al(Nat.Comm.2019 10:3854)及び米国特許出願公開第20160281134号明細書に記載されており、本明細書での使用に容易に適合される。いくつかの実施形態では、第1及び第2の組のRCA産物を調製するために使用される異なるオリゴヌクレオチドは、別々に調製され、次いで一緒に混合される。他の実施形態では、異なるオリゴヌクレオチドは、アレイの形態で平面支持体上に並行して調製され、次いでアレイから切断され得る。そのような方法の例は、例えば、Cleary et al.(Nature Methods 2004 1:241-248)及びLeProust et al.(Nucleic Acids Research 2010 38:2522-2540)に記載されている。
【0054】
図2に示すように、方法で使用されるグリッドオリゴヌクレオチド分子は各々、第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(GOBS1)に相補的な第1の末端配列と、第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(GOBS2)に相補的な第2の末端配列とを含むことができる。グリッドオリゴヌクレオチド分子の少なくとも一部は、それらの配列を介して2つの隣接するRCA産物にハイブリダイズする。
図2は、2つの隣接するRCA産物にハイブリダイズされるグリッドオリゴヌクレオチドを示す。連続する塩基が約0.3nmだけ離れていると仮定すると、100merのグリッドオリゴヌクレオチドは、理論的には、30nm延伸することができなければならず、200merのグリッドオリゴヌクレオチドは、理論的には、60nm延伸することができなければならず、500merのグリッドオリゴヌクレオチドは、理論的には、150nm延伸することができなければならない。したがって、グリッドオリゴヌクレオチドの分子がハイブリダイズするRCA産物は、100nm未満又は50nm未満離れていてもよい。
【0055】
方法の次の工程では、2つの隣接するRCA産物にハイブリダイズされるグリッドオリゴヌクレオチド分子を伸長させ、2つの隣接するRCA産物からの固有のRCA産物識別子配列の相補体をグリッドオリゴヌクレオチドの末端に付加し、それによって伸長したグリッドオリゴヌクレオチド8を産生する。
図2に示す例では、UID1’(すなわち、UID1の相補体)がグリッドオリゴヌクレオチドの一端に付加され、UID2’(UID2の相補体)がグリッドオリゴヌクレオチドの他端に付加される。いくつかの実施形態では、グリッドオリゴヌクレオチドは、2つの隣接するRCA産物からの固有のRCA産物識別子配列の相補体をグリッドオリゴヌクレオチドに付加するギャップ充填/ライゲーション反応(例えば、Mignardi et al,Nucleic Acids Res.2015 43:e151参照)を使用して伸長され得る。他の実施形態では、上述のようにライゲーションによって付加を行ってもよい。
【0056】
2つの隣接するRCA産物からの固有のRCA産物識別子配列の相補体をグリッドオリゴヌクレオチドに付加するための1つの方法を
図3に示すが、いくつかの方法を使用することもできる。
図3に示すように、UID配列は、(a)第1の組のローリングサークル増幅(RCA)産物が、5’から3’に向かって順に:第1の近接プローブ結合配列(図示のようなPPBS1)、第1の固有のRCA産物識別子配列(図示のようなUMI1)、及び第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(図示のようなGOBS1)を含む反復配列を含む少なくとも第1のタイプのRCA産物を含み、(b)第2組のRCA産物が、5’から3’に向かって順に:第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(図示のようなGOBS2)、第2の固有のRCA産物識別子配列(図示のようなUMI2)、及び第2の近接プローブ結合配列(図示のようなPPBS2)を含む反復配列を含む少なくとも第2の第1のタイプのRCA産物を含む系を使用してグリッドオリゴヌクレオチドに付加され得る。
図3に示すように、この実施態様で使用されるグリッドオリゴヌクレオチドは、第1の固有のRCA産物識別子配列の上流に、第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(GOBS2)に相補的な5’末端配列と、第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(GOBS1)に相補的な3’末端配列とを有する。この実施態様は、第1の近接プローブ結合配列(PPBS1)に相補的な5’末端配列を有する第1の近接プローブ、及び第2の近接プローブ結合配列(PPBS2)に相補的な3’末端配列を有する第2の近接プローブを利用する。
図3に示すように、これらの成分のハイブリダイゼーションは、ギャップ充填/ライゲーション反応を介してグリッドオリゴヌクレオチド及び第2の近接プローブの3’末端をそれぞれ伸長させることによって、第1及び第2の固有のRCA産物識別子配列がコピーされ得る複合体を共に産生する。明らかなように、この実施形態では、第1組のRCA産物は、少なくとも1000、少なくとも10,000、少なくとも100,000、少なくとも1M、少なくとも10M、少なくとも100M、少なくとも1B、又は少なくとも10Bのローリングサークル増幅(RCA)産物を含み得、第1の組の各RCA産物は、5’から3’に向かって順に:第1近接プローブ結合配列(PPBS1)、RCA産物を同定する固有の配列(図示のようなUMI)、及び第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(GOBS1)を含む反復配列を含み、(b)の第2組のRCA産物は、少なくとも1000、少なくとも10,000、少なくとも100,000、少なくとも1M、少なくとも10M、少なくとも100M、少なくとも1B、又は少なくとも10Bのローリングサークル増幅(RCA)産物を含み得、第2の組の各RCA産物は、5’から3’に向かって順に:第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(GOBS2)、RCA産物を同定する固有の配列(図示のようなUMI)、及び第2の近接プローブ結合配列(PPBS2)を含む反復配列を含む。
【0057】
図3に示すように、UMIは、(a)(i)第1の近接プローブの5’末端が、第1のRCA産物の第1の近接プローブ結合配列(PPBS1)にハイブリダイズされ、(ii)第2の近接プローブの3’末端配列が、RCA産物を同定する固有の配列(それぞれUMI1及びUMI2)の上流で、第2の組のRCA産物の第2の近接プローブ結合配列(PPBS2)にハイブリダイズされ、(iii)グリッドオリゴヌクレオチドの3’及び5’末端配列が、それぞれ第1及び第2のRCA産物の第1及び第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(GOBS1及びGOBS2)にハイブリダイズされる複合体を産生する工程と、(b)ポリメラーゼ及びリガーゼで(a)の複合体を処理することによって、第1及び第2の固有のRCA産物識別子配列の相補体をグリッドオリゴヌクレオチド及び第2の近接プローブの3’末端にそれぞれコピーし(ギャップ充填/ライゲーション反応を介して)、第1及び第2の固有のRCA産物識別子配列の相補体を含む産物分子(伸長したグリッドオリゴヌクレオチド)を産生する工程とを伴う反応においてグリッドオリゴヌクレオチドに付加され得る。
【0058】
これらの実施形態では、第1及び第2の組のRCA産物が互いに散在し、細胞に固定化され、第1の近接プローブの5’末端配列が、第1の組のRCA産物の第1の近接プローブ結合配列にハイブリダイズされ、第2の近接プローブの3’末端配列が、RCA産物を同定する固有の配列の上流で、第2の組のRCA産物の第2の近接プローブ結合配列にハイブリダイズされ、グリッドオリゴヌクレオチドの3’及び5’末端配列が、互いに隣接するRCA産物の対の第1及び第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列にハイブリダイズされる。ここでも、ポリメラーゼ、dNTP、及びリガーゼで複合体を処理することにより、隣接するRCA産物を同定する固有の配列の対をグリッドオリゴヌクレオチド及び第2の近接プローブの末端にコピーすることが可能になり、隣接するRCA産物を同定する固有の配列の対の相補体を含む産物分子(本明細書では伸長したグリッドオリゴヌクレオチドと呼ばれる)が得られる。
【0059】
図2に示されるように、グリッドオリゴヌクレオチドを伸長させて隣接するRCA産物からのUIDをそれらの末端に付加した後、伸長したグリッドオリゴヌクレオチド8を配列決定し、次いで、どの固有のRCA産物識別子配列相補体の対がグリッドオリゴヌクレオチドに付加されているかを同定するために分析する。このプロセスが、
図4に示される。
図4に示されるように、各伸長したグリッドオリゴヌクレオチドは、一端に第1の固有のRCA産物識別子配列の相補体(例えば、UID1)を有し、他端に第1の固有のRCA産物識別子配列の相補体(例えば、UID3)を有するべきである。これらの配列は、各細胞の表面上にあるRCA産物の二次元マップを調製するために使用することができる対合RCA産物識別子配列(例えば、UID1~UID3、UID1~UID13など)のリストを編集するために分析することができる。
図4に示されるように、方法は、配列の対合RCA産物識別子配列のリストを使用して、固定化RCA産物の1つ又はそれ以上の物理的マップ(関係マップ)を調製する工程を伴い得る。明らかなように、マップは、1つ又はそれ以上の細胞の表面のマップであり得る。場合によっては、物理的マップは、重複及び/又は非重複マップを含むことができる。
【0060】
任意の実施形態では、伸長したグリッドオリゴヌクレオチドは、配列決定の前にPCRによって増幅され得る。これらの実施形態のいくつかでは、PCRプライマーの結合部位は、
図3に示されるように、それぞれ第1及び第2の近接プローブの3’及び5’末端に付加されてもよく、又は理論的には、PCRプライマーの結合部位は、RCA産物にコードされ、伸長反応中にグリッドオリゴヌクレオチドの末端にコピーされ得る。
【0061】
RCA産物のマップを調製することに加えて、方法は、細胞内の部位又は細胞の表面上の部位に結合している1つ又はそれ以上の結合剤(例えば、細胞上の細胞表面マーカに結合する抗体)間の近接アッセイを実施することを伴い得る。これらの実施形態では、固有のRCA産物識別子配列を、捕捉剤に連結されたオリゴヌクレオチドにコピーすることができる。いくつかの実施形態では、捕捉剤は、
図6、
図7、
図9、及び
図10に示されるように、抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートであり、他の実施形態では、捕捉剤は、オリゴヌクレオチドプローブ(
図11に示される)であってもよい。これらの実施形態では、「抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲート」及び「オリゴヌクレオチドに連結された捕捉剤」という用語は、捕捉剤が依然としてその結合部位に結合することができるように一本鎖オリゴヌクレオチドに非共有結合的に(例えば、ストレプトアビジン/ビオチン相互作用を介して)又は共有結合的に(例えば、クリック反応などを介して)連結された捕捉剤、例えば、抗体又はアプタマーを指す。オリゴヌクレオチド及び捕捉剤は、システイン反応性であるマレイミド又はハロゲン含有基を使用する方法を含む、いくつかの異なる方法を介して連結されてもよい。捕捉剤及びオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの5’末端の近位若しくは5’末端で、オリゴヌクレオチドの3’末端の近位若しくは3’末端で、又はその間のどこにでも連結され得る。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、捕捉剤からオリゴヌクレオチドを離間させるリンカーによって捕捉剤に連結され得る。オリゴヌクレオチドは、任意の好都合な方法(例えば、Gong et al.,Bioconjugate Chem.2016 27:217-225、及びKazane et al.Proc Natl Acad Sci 2012 109:3731-3736参照)を使用して捕捉剤に連結することができる。多くの実施形態において、結合剤にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドの配列は、結合剤が結合するエピトープ又は配列を固有に同定する。例えば、方法が10個の異なる抗体を使用して実施される場合、各抗体は、抗体が結合するエピトープを同定する異なる配列に繋がれる。この特徴は、方法が多重化されることを可能にし、いくつかの実施形態では、細胞内又は細胞の表面上の異なるマーカに結合する少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、又は少なくとも50個の異なる抗体を方法に使用することができる。各抗体は、異なる抗体識別子配列にコンジュゲートされ、抗体識別子配列は、特定の抗体の結合事象をマッピングすることを可能にする。そのようなタグ化抗体は、例えば、Wu et al(Nat.Comm.2019 10:3854)及び米国特許出願公開第20160281134号明細書などに記載されている。
【0062】
図6、図、7及び
図9~
図16に示されるように、近接アッセイは、様々な異なる方法で実施することができる。任意の実施形態では、近接アッセイは、結合剤識別子配列の相補体及び固有のRCA産物識別子配列の相補体を含有する産物を産生し得る。いくつかの実施形態では、近接アッセイの産物(伸長した近接プローブ)は、伸長したグリッドオリゴヌクレオチドとは別個の分子(
図6に示されるように)であり得る。他の実施形態では、近接アッセイの産物(伸長した近接プローブ)は、伸長したグリッドオリゴヌクレオチドの一部であり得る(例えば、
図7及び
図9参照)。任意の実施形態では、アッセイで使用される捕捉剤の一部は、オリゴヌクレオチドの5’末端に連結されていてもよく、捕捉剤の残りは、オリゴヌクレオチドの3’末端に連結されてもよい(
図7及び
図9に示されるように)。例えば、いくつかの実施形態では、方法は、1つ又はそれ以上の抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを含む混合物を使用することができ、いくつかの実施形態では、特定の細胞表面マーカに結合する抗体のいくつか(例えば、抗体分子の30%~70%)は、オリゴヌクレオチドの5’末端にコンジュゲートされ、その細胞表面マーカに結合する抗体の残りは、オリゴヌクレオチドの3’末端にコンジュゲートする。これらの実施形態では、オリゴヌクレオチドは各々、PCRプライマー結合部位(抗体に連結されたオリゴヌクレオチドのいずれの末端において)を含有してもよく、アッセイによって産生された産物は、
図8に示されるように、PCRによって増幅可能であり得る。
【0063】
図10~
図16に示されるように、いくつかの実施形態では、グリッドオリゴヌクレオチド分子は、RCA産物の付加前に細胞の表面に固定化され得る。これらの実施形態では、方法は、(a)RCA産物の集団を1つ又はそれ以上の表面に固定化されたグリッドオリゴヌクレオチド分子の集団とハイブリダイズさせる工程であって、(i)RCA産物の集団のRCA産物が各々、固有のRCA産物識別子配列及びグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を有し、(ii)グリッドオリゴヌクレオチド分子が各々、グリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第1の末端配列、及びグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第2の末端配列を含み、(iii)グリッドオリゴヌクレオチド分子の少なくとも一部が、2つの隣接するRCA産物にハイブリダイズする工程と、(b)2つの隣接するRCA産物にハイブリダイズされるグリッドオリゴヌクレオチド分子を伸長させ、2つの隣接するRCA産物からの固有のRCA産物識別子配列の相補体をグリッドオリゴヌクレオチドに付加し、それによって伸長したグリッドオリゴヌクレオチドを産生する工程と、(c)伸長したグリッドオリゴヌクレオチドを配列決定する工程と、(d)配列を分析し、どの固有のRCA産物識別子配列相補体の対がグリッドオリゴヌクレオチドに付加されているかを同定する工程とを含んでもよい。
図12に示すように、いくつかの実施形態では、グリッドオリゴヌクレオチドは、それ自体が近接ライゲーションアッセイの産物であり得る。これらの実施形態では、グリッドオリゴヌクレオチドは、各部分が異なるプローブにハイブリダイズするように分割されてもよい。これらの実施形態では、インタクトなグリッドオリゴヌクレオチドは、グリッドオリゴヌクレオチドの2つの部分が互いに近位にあり、スプリントライゲーション反応で互いに連結することが可能な場合にのみ産生される。したがって、いくつかの実施形態では、方法は、配列リードの分析によって同定された固有のRCA識別子配列の対を使用して固定化RCA産物の物理的マップを調製する工程と、また、どの固有のRCA産物識別子配列及びどの結合剤識別子配列がアッセイ産物中にあるかを分析することによって、結合剤を固定化RCA産物の物理的マップにマッピングする工程とを含み得る。
図7及び
図9に示すように、結合剤識別子配列の相補体及び固有のRCA産物識別子配列の相補体は、伸長したグリッドオリゴヌクレオチドに組み込むことができる。他の実施形態では、結合剤識別子配列の相補体及び固有のRCA産物識別子配列の相補体は、伸長したグリッドオリゴヌクレオチドとは別個のアッセイ産物に組み込まれる。近接アッセイでアッセイ産物にコピーされる固有のRCA産物識別子配列の分析は、細胞に結合した各捕捉剤の結合部位を特定のRCA産物にマッピングすることを可能にする。具体的には、各結合事象をRCA産物にマッピングすることができるが、これは、そのRCA産物の固有のRCA識別子配列が、そのRCA産物の近位にある結合剤連結オリゴヌクレオチドに付加されるからである。次いで、結合剤を上述のRCA産物のマップ上に配置することによって、結合事象の二次元マップを提供することができ、二次元は、1つ又はそれ以上の細胞の表面に対応する。同様の方法を使用して、結合事象の二次元マップを産生することができる。
【0064】
明らかなように、各RCA産物は同じ配列の複数のコピーを含有し、したがって、複数の結合事象を単一RCA産物にマッピングすることができ、それによってRCA産物を定量する方法を提供する。例えば、100個の抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートが全て特定のRCA産物の近位にある部位に結合する場合、100個全ての結合部位が潜在的に単一RCA産物にマッピングされ得る。結合部位を、それ自体が二次元でマッピングされたRCA産物にマッピングすることは、細胞内又は細胞の表面上の結合部位の分布を検査する方法を提供する。これにより、顕微鏡法なしで細胞極性を検査する方法が提供される。
【0065】
本明細書では、プローブシステムも提供される。いくつかの実施形態では、プローブシステムは、(a)RCA産物の集団であって、(i)各々が固有のRCA産物識別子配列及び第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を含む反復配列を含む第1の組のRCA産物、並びに(ii)固有のRCA産物識別子配列及び第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を含む反復配列を含む第2の組のRCA産物を含むRCA産物の集団と、(b)グリッドオリゴヌクレオチド分子の集団であって、グリッドオリゴヌクレオチド分子の一端の末端の配列が、第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的であり、グリッドオリゴヌクレオチド分子の他端の末端の配列が、第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的であるグリッドオリゴヌクレオチド分子の集団とを含んでもよい。上述したように、(a)と(b)のハイブリダイゼーションは、
図2に示すように、グリッドオリゴヌクレオチドが隣接するRCA産物にハイブリダイズする複合体を産生する。第1及び第2の組のRCA産物は各々、少なくとも10個のメンバー(例えば、少なくとも100、少なくとも1,000、少なくとも1,000、少なくとも10,000、少なくとも100,000、少なくとも1M、少なくとも10M、少なくとも100M、少なくとも1B、又は少なくとも10Bのメンバー)を含む。いくつかの実施形態では、RCA産物中のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列は、RCA産物中の固有のRCA産物識別子配列に隣接しており、グリッドオリゴヌクレオチド分子の末端は、固有のRCA産物識別子配列ではなくグリッドオリゴヌクレオチド結合配列とハイブリダイズする。プローブシステムのさらなる詳細は、上記の方法のセクションに見出すことができる。
【0066】
各々が固有のRCA産物識別子配列を有するRCA産物の集団も提供され、RCA産物中の固有のRCA産物識別子配列の少なくとも一部が、二本鎖であり、その間に一本鎖領域ギャップが存在する。そのような集団の例が、
図13に示される。この集団は、上述のようにRCAテンプレートを増幅し、RCA産物を変性させ、2つ以上のオリゴヌクレオチドを産物にハイブリダイズさせ、ここで1つのオリゴヌクレオチドが固有のRCA産物識別子配列の上流の部位にハイブリダイズし、別のオリゴヌクレオチドが固有のRCA産物識別子配列の下流の部位にハイブリダイズし、次いで、ギャップ充填-ライゲーション反応を介してオリゴヌクレオチドを連結することによって調製することができる。これにより、オリゴヌクレオチド間のギャップが密封され、RCA産物中の固有のRCA産物識別子配列が二本鎖になる。示すように、産物の二本鎖部分の末端は、
図14に示されるように、グリッドオリゴヌクレオチドに連結することができる。
【0067】
各々が固有のRCA産物識別子配列及び第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(少なくとも約10、12、又は15ヌクレオチド長である)を含む反復配列を含む第1の組のRCA産物と、(ii)固有のRCA産物識別子配列及び第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(少なくとも約10、12、又は15ヌクレオチド長である)を含む反復配列を含む第2の組のRCA産物とを含むRCA産物の集団も提供される。これらの実施形態では、RCA産物中のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列は、固有のRCA産物識別子配列に隣接していてもよい。任意の実施形態では、RCA産物の集団、第1及び第2の組のRCA産物は各々、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1,000、少なくとも1,000、少なくとも10,000、少なくとも100,000、少なくとも1M、少なくとも10M、少なくとも100M、少なくとも1B、又は少なくとも10Bのメンバーを含む。
【0068】
上述のように、本開示によって、対象の方法を実践するためのキットも提供される。特定の実施形態では、キットは、プローブシステムの構成要素又は産物を調製するための出発産物を含み得る。キットは、リガーゼ、ヌクレオチド、ローリングサークル増幅を実施するための鎖置換ポリメラーゼ、及び/又はギャップ充填ライゲーション反応のためのポリメラーゼをさらに含有し得る。キットの様々な構成要素は、別個の容器に存在してもよく、又は特定の適合する構成要素は、所望に応じて単一の容器に予め組み合わされてもよい。上述の構成要素に加えて、対象のキットは、対象の方法を実践するためにキットの構成要素を使用するための指示をさらに含み得る。
【0069】
実施形態
実施形態1.隣接するローリングサークル増幅(RCA)産物を同定するための方法であって、
(a)グリッドオリゴヌクレオチド分子の集団を1つ又はそれ以上の細胞に固定化されたRCA産物の集団にハイブリダイズさせる工程であって、(i)RCA産物の集団のRCA産物が各々、固有のRCA産物識別子配列及びグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を有し、(ii)グリッドオリゴヌクレオチド分子が各々、グリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第1の末端配列、及びグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第2の末端配列を含み、(iii)グリッドオリゴヌクレオチド分子の少なくとも一部が、2つの隣接するRCA産物にハイブリダイズする工程と、
(b)2つの隣接するRCA産物にハイブリダイズされるグリッドオリゴヌクレオチド分子を伸長させ、2つの隣接するRCA産物からの固有のRCA産物識別子配列の相補体をグリッドオリゴヌクレオチドに付加し、それによって伸長したグリッドオリゴヌクレオチドを産生する工程と、
(c)伸長したグリッドオリゴヌクレオチドを配列決定する工程と、
(d)配列を分析し、どの固有のRCA産物識別子配列相補体の対がグリッドオリゴヌクレオチドに付加されているかを同定する工程と
を含む、方法。
【0070】
実施形態2.
(e)(d)で同定された配列の対を使用して、固定化RCA産物の1つ又はそれ以上の物理的マップを調製する工程をさらに含む、
実施形態1に記載の方法。
【0071】
実施形態3.伸長させる工程が、2つの隣接するRCA産物からの固有のRCA産物識別子配列の相補体をグリッドオリゴヌクレオチドに付加する、ギャップ充填及び/又はライゲーション反応を含む、実施形態1又は2のいずれかに記載の方法。
【0072】
実施形態4.工程(a)において、
(i)RCA産物の集団が、i.各々が固有のRCA産物識別子配列及び第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を含む反復配列を含む第1の組のRCA産物、並びにii.固有のRCA産物識別子配列及び第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を含む反復配列を含む第2の組のRCA産物を含み、
(ii)グリッドオリゴヌクレオチド分子が各々、第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第1の末端配列、及び第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第2の末端配列を含み、
(iii)グリッドオリゴヌクレオチド分子の少なくとも一部が、2つの隣接するRCA産物にハイブリダイズする、
実施形態1に記載の方法。
【0073】
実施形態5.RCA産物が、抗体を介して細胞に固定化される、実施形態1から4のいずれかに記載の方法。
【0074】
実施形態6.伸長したグリッドオリゴヌクレオチドが、配列決定の前にPCRによって増幅される、実施形態1から5のいずれかに記載の方法。
【0075】
実施形態7.RCA産物が、1つ又はそれ以上の結合剤を介して1つ又はそれ以上の細胞に固定化され、結合剤が各々、RCA産物中の配列及び1つ又はそれ以上の細胞の表面上の部位に結合される、実施形態1から6のいずれかに記載の方法。
【0076】
実施形態8.1つ又はそれ以上の結合剤とそれらが結合されるRCA産物との間で近接アッセイを実施する工程をさらに含む、実施形態7に記載の方法。
【0077】
実施形態9.近接アッセイが、結合剤識別子配列の相補体及び固有のRCA産物識別子配列の相補体を含有するアッセイ産物を産生する、実施形態8に記載の方法。
【0078】
実施形態10.前記方法が、
(e)(d)で同定された配列の対を使用して、固定化RCA産物の物理的マップを調製する工程と、どの固有のRCA産物識別子配列及びどの結合剤識別子配列がアッセイ産物中にあるかを分析することによって、結合剤を固定化RCA産物の物理的マップにマッピングする工程と
を含む、実施形態9に記載の方法。
【0079】
実施形態11.結合剤識別子配列の相補体及び固有のRCA産物識別子配列の相補体が、工程(b)の伸長したグリッドオリゴヌクレオチドに組み込まれる、実施形態10に記載の方法。
【0080】
実施形態12.結合剤識別子配列の相補体及び固有のRCA産物識別子配列の相補体が、工程(b)の伸長したグリッドオリゴヌクレオチドとは別個のアッセイ産物に組み込まれる、実施形態10に記載の方法。
【0081】
実施形態13.プローブシステムであって、
(a)RCA産物の集団であって、RCA産物の集団のRCA産物が各々、固有のRCA産物識別子配列及びグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を有するRCA産物の集団と、
(b)グリッドオリゴヌクレオチド分子の集団であって、グリッドオリゴヌクレオチド分子の一端の末端の配列が、グリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的であり、グリッドオリゴヌクレオチド分子の他端の末端の配列が、グリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的であるグリッドオリゴヌクレオチド分子の集団と
を含み、
(a)と(b)のハイブリダイゼーションが、グリッドオリゴヌクレオチドが隣接するRCA産物にハイブリダイズする複合体を産生する、
プローブシステム。
【0082】
実施形態14.(a)のRCA産物の集団が、
(i)各々が固有のRCA産物識別子配列及び第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を含む反復配列を含む第1の組のRCA産物、並びに
(ii)固有のRCA産物識別子配列及び第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列を含む反復配列を含む第2の組のRCA産物
を含み、
(b)のグリッドオリゴヌクレオチド分子の集団において、グリッドオリゴヌクレオチド分子の一端の末端の配列が、第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的であり、グリッドオリゴヌクレオチド分子の他端の末端の配列が、第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的である、
実施形態13に記載のプローブシステム。
【0083】
実施形態15.第1及び第2の組のRCA産物が各々、少なくとも10個のメンバーを含む、実施形態14に記載のプローブシステム。
【0084】
実施形態16.RCA産物中のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列が、RCA産物中の固有のRCA産物識別子配列に隣接しており、グリッドオリゴヌクレオチド分子の末端が、固有のRCA産物識別子配列ではなくグリッドオリゴヌクレオチド結合配列とハイブリダイズする、実施形態13から15のいずれかに記載のプローブシステム。
【実施例】
【0085】
以下の実施例は、当業者に本発明を作製及び使用する方法の追加の開示及び説明を提供するために記載されており、本発明者らが本発明と見なすものの範囲を限定することを意図するものではなく、以下の実験が実施された全て又は唯一の実験であることを表すことを意図するものでもない。
【0086】
実施例1
以下の実施例は、単一細胞又は顕微鏡法を区画化する必要なしに、単一細胞内のタンパク質及び/又はRNAを分析する方法を提供する。方法は、懸濁液中の細胞、例えば、体液、血液、若しくは組織から単離された免疫細胞、又は表面(例えば、ガラススライドなど)に固定化された固定組織若しくは組織切片を分析するために使用することができる。そのような方法は、細胞を画像化するために従来から顕微鏡法を使用してきた。ここでは、顕微鏡法を排除し、代わりに、結合パターンをDNA配列決定によって分析することができる。この方法では、RCA産物間の空間的関係が決定されてマップが提供され(各RCA産物は「ピクセル」と考えることができる)、捕捉剤が結合する部位がRCA産物にマッピングされる。方法は、ランダムバーコード(「固有のRCA産物識別子配列」又は固有の分子識別子又は「UMI」とも呼ばれる)RCA産物を利用し、これは自然に凝縮して数百nmの直径を有するコンパクトなほぼ球形になる。本方法は近位拡散に依存せず、むしろ、本方法は、隣接するRCA産物にハイブリダイズするグリッドオリゴヌクレオチドに依存する。
【0087】
ローリングサークル複製産物は、タグとしてDNA配列を担持する複数の合成オリゴヌクレオチドの環状化によって予め調製することができる。本方法では、ローリングサークル複製産物(RCP)のプールは、少なくとも数百万のRCA産物からなり、各々が各RCA産物を同定する1つ又はそれ以上のランダムバーコードでコードされている。100ヌクレオチドのDNA環は、phi-29 DNAポリメラーゼ(Wu et al Nature Comm.2019 10:3854)を使用して、10分で約200コピーのコンカテマーにRCAによって複製することができる。得られたRCA産物は、サブマイクロメートルサイズを有する。必要に応じて、複数のRCA産物が使用される場合、どのUMIが1つの分子と対になっているのかを決定するために、RCPのプールを事前に配列決定することができる。場合によっては、この情報は、分析中に生成されたデータの最終的なデコンボリューションにおいて必要とされ得る。分子設定に応じて、RCPごとに1つのランダムバーコードのみを使用することもできる。
【0088】
標的分析物タンパク質及び/又はRNAは、DNAタグに連結されたタンパク質特異的抗体及び/又はRNA結合核酸プローブのいずれかによって結合される。各分析物特異的プローブタイプは、標的同定のための固有の固定された公知の(ランダムではない)バーコードを担持する。これらの標的特異的プローブは、RCP中の固定領域1に対して親和性を有する。プローブは、典型的には、RCP領域1へのハイブリダイゼーションを通した結合によって媒介されるポリメラーゼ伸長のための遊離3’末端を有する。このギャップ充填伸長反応の後に、UMIコード化された配列を統合するライゲーション事象が続き、その後、ハイスループットDNA配列決定のためにPCR増幅される。
【0089】
全てのRCA産物は、いわゆる「グリッドオリゴヌクレオチド」にハイブリダイズすることができる固定領域2も含有する。グリッドオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションを介して2つの近くのRCA産物を接続し、それによってそれらのランダムバーコードを連結して互いに対する「ピクセル」位置のデコンボリューションを可能にする。それによって、どのRCPが互いに近接しているかを見つける。
【0090】
実施例2
以下の説明は、細胞、例えば、リンパ球の懸濁液を分析する方法を提供する。
【0091】
平均リンパ球は、130um^3の体積及び約124um^2の表面積を有する。RCPの平均直径は約200nmであり、面積は0.12um^2である。この例示的なリンパ球は、細胞の表面上にRCPの単層を想定して、それを覆う約1000個のRCPを有し得る。
V=4/3 pi r^3
A=pi^1/3×(6V)^2/3
【0092】
したがって、典型的な細胞は、約1000個のRCPに結合すると推定される。
【0093】
この例では、懸濁液中の細胞は、各単一細胞の表面上の標的タンパク質の空間分解能でも分析され、おそらく貴重な診断情報を提供する。そのような情報は、しばしば細胞極性と呼ばれ、多くの免疫細胞機能を調節する(Russel et al.Journal of Cell Science 2008 121:131-136、及びOliaro J.et al PNAS December 5,2006 103(49)18685-18690)。現在利用可能な方法を使用すると、細胞極性の分析には、免疫細胞を分析するための顕微鏡法が必要であり、分析スループットはほんの数試料中の少数の細胞及び少数の標的に制限される。本方法は、数百万の免疫細胞上の数百から数千の細胞表面マーカの存在量及び相対位置を定量することが可能である。細胞極性(すなわち、細胞上の細胞表面タンパク質の不均一な分布)は、多くの重要な機能を調節し、多くの細胞上の多くのタンパク質を分析することは非常に困難である。分極は、細胞遊走だけでなく、免疫細胞活性、例えば抗原提示及びエフェクタ機能も調節する。
【0094】
実施例3
材料及び方法
近接プローブの産生。抗体(又は他のタンパク質結合剤)は、遊離3’末端又は遊離5’末端、又はさらには遊離3’及び5’末端の両方をもたらす特定の核酸配列と連結される。抗体へのオリゴヌクレオチドの共有結合は、多くの方法、例えば抗体中のランダムリジンへのNHS-エステル/マレイミド化学で行うことができる。他の連結は、抗体上に存在するチオール又は炭水化物を通じて行うこともできる。近接配列は、抗体に直接、又は抗体に共有結合的に連結した別のオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションを介して連結することができる(Lundberg et al.Nucleic Acids Research 2011 39:e1022011)。ホモ二官能性(BS3など)又はヘテロ二官能性(NHS-エステル/マレイミド)又はクリック化学もまた、使用することができる(Fredriksson et al 2007 Nature Methods 2007 4:327-329)。
【0095】
抗体とのカップリングのために合成された配列は、標的タンパク質同定バーコード配列(すなわち、抗体に特異的なバーコード配列)を含有するべきである。いくつかのアッセイ設計はまた、抗体にカップリングされた配列中にグリッドオリゴヌクレオチド配列を含み得る(
図10参照)。特定の標的タンパク質に特異的な複数の抗体は、固有の配列で官能化される。次いで、これらを保存のためにプールする。
【0096】
RCA産物の産生。このアッセイで使用されるローリングサークル複製産物は、ランダムバーコードを含有する固有の分子(固有の分子識別子、UMI)として予め調製される。これらのRCA産物は、最初にDNAオリゴヌクレオチド、又はアレイから切断された配列のプールを合成することによって調製される。次いで、これらのDNA分子は、ライゲーションDNAテンプレート(すなわち、オリゴヌクレオチドの末端にハイブリダイズする「スプリント」)及びDNAリガーゼ酵素へのハイブリダイゼーション後、ライゲーションによって環状化される。次に、この環状分子は、DNAポリメラーゼ及びdNTPを使用したローリングサークル複製によってコピーされる。ポリメラーゼはphi29 DNAポリメラーゼであってもよいが、他のものが使用されてもよい。重合反応は、例えば約60度の加熱によって停止され、Pixel-RCPのプールは、アッセイに使用するための検出試薬として保存される。
【0097】
RCA産物は、環状化テンプレートの相補体のコンカテマーコピーを含有する。設計に応じて、RCA産物は、UMIだけでなく、近接プローブ配列及びグリッドオリゴのハイブリダイゼーションのための配列を含有し得る(図の一部に示されるように)。
【0098】
ギャップ充填重合。アッセイ中、UMI配列はDNA重合によってコピーされ、その後のDNA配列決定のためにPCRアンプリコンに組み込まれる。ギャップ充填重合は、dNTP、DNAポリメラーゼ、及びDNAリガーゼを反応に付加することによって達成される。T4 DNAポリメラーゼ及びクレノウ断片、並びにギャップを共有結合的に密封するためのT4 DNAリガーゼが、この目的のためにしばしば使用される。使用されるDNAポリメラーゼは、3’エキソヌクレアーゼ活性を伴っても伴わなくてもよいが、GAPが閉鎖されるべきオリゴヌクレオチドを置換するので、好ましくは鎖置換活性を伴わない。フュージョンDNAポリメラーゼとアンプリガーゼの組み合わせもまた、ギャップ充填反応によく使用される(Niedzicka et al Scientific Reports 2016 6:24051)。
【0099】
実施例4
方法の第1の実施態様が、
図6に示される。グリッドオリゴが2つの近位ローリングサークル増幅産物(図ではRCPピクセルとして示されている)に結合し、1つの同じローリングサークル増幅産物には結合しないようにするための方法(及び潜在的に他の方法)のこの実施態様では、ローリングサークル増幅産物タイプは、それらのグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(GOBS)が異なる1型及び2型として示される少なくとも2つの異なるタイプとして製造される。これらの配列は、GOBS1及びGOBS2として示されている。この設計は、場合によっては検出効率を低下させる可能性のある競合的ハイブリダイゼーション反応を緩和する。
【0100】
この方法では、全てのローリングサークル増幅産物を事前に配列決定し、どのUMIの対が各ローリングサークル増幅産物内にあるかを同定することができる。方法のこの実施態様では、UMIは、隣接するローリングサークル増幅産物からのものであり、ギャップ充填/ライゲーション反応によってオリゴヌクレオチドに付加され、末端にフォワード及びリバースPCRプライマー部位を有する伸長したグリッドオリゴヌクレオチドを産生する。同様に、抗体にコンジュゲートさせたオリゴヌクレオチドに隣接するUMIがギャップ充填/ライゲーション反応を介してそれらのオリゴヌクレオチドに付加され、同様に末端にフォワード及びリバースPCRプライマー部位を有する伸長した抗体オリゴヌクレオチドを産生する。次いで、伸長したグリッドオリゴヌクレオチド及び抗体オリゴヌクレオチドを増幅し、配列決定することができる。
【0101】
グリッドPCR分子の配列決定により、同じグリッドオリゴヌクレオチド分子にハイブリダイズされ、ギャップ充填DNA重合事象及びそれに続くライゲーションによって同じ2つの近位RCPピクセルからのUMIによってコードされるようになった近位RCA産物が同定される。
【0102】
実施例5
方法の第2の実施態様が、
図7に示される。方法(及び潜在的に他の方法)のこの実施態様では、1)標的細胞は、近接プローブ(遊離3’末端又は遊離5’末端のいずれかを含有する標的タンパク質同一性についてバーコード化されたオリゴヌクレオチドにカップリングされた抗体)又は特異的RNA配列に結合することが可能な核酸プローブによって結合され、2)少なくとも2つのタイプの予め形成されたRCA産物が試料に付加され、「近接プローブ結合配列」(PPBS)を介して近接プローブの末端にハイブリダイズすることが可能にされ、3)グリッドオリゴヌクレオチドが試料に付加され、いずれかのRCA産物タイプのGOBS1及びGOBS2にハイブリダイズすることが可能にされる。工程1、2、3の間に任意の洗浄工程を実行し、未結合試薬を除去することができる。5)次に、方法は、DNAポリメラーゼ及びdNTPがハイブリダイズした3’末端を伸長させ、リガーゼが配列を統合させ、それによってPCRアンプリコンをRCA産物からのUMIとコードし、2つのRCA産物を介して1つの近接プローブから別の近接プローブにまたがる標的アンプリコンを産生することを可能にする工程を含み得、UMIは、それらの相対位置を提供する。RCA産物は同じ配列の複数のコピーを有するので、多くの標的タンパク質バーコードを同じUMIと統合し、そのRCA産物によって覆われる1つの面積内の複数のタンパク質の位置を提供することができる。産物が少なくとも2つのRCA産物にまたがると、近位RCPのグリッドを得ることができる。6)次に、方法は、統合されたアンプリコンをPCRで増幅し、次いでそれを配列決定してタンパク質がどこにあるかの画像を復号する工程を含む。
【0103】
実施例Iと同様に、グリッドオリゴヌクレオチドが2つの近位RCA産物及び同じRCA産物に結合するようにするために、それらのグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(GOBS1及びGOBS2)が異なる少なくとも2つのRCPピクセルタイプが製造される。UMIは、RCA産物から伸長したグリッドオリゴヌクレオチドにコードされる。
【0104】
図8は、方法のこの実施態様における伸長したグリッドオリゴヌクレオチドの構造を概略的に示している。
【0105】
実施例6
方法の第3の実施態様が、
図9に示される。方法のこの実施態様では、1)標的細胞は、近接プローブ(遊離3’末端又は遊離5’末端のいずれかを含有する標的タンパク質同一性についてバーコード化されたオリゴヌクレオチドにカップリングされた抗体)又は特異的RNA配列に結合することが可能な核酸プローブによって結合される。2)1つのタイプの予め形成されたRCA産物が試料に付加され、グリッドオリゴヌクレオチド及び近接プローブ結合配列(GO&PPBS)を介して近接プローブの末端にハイブリダイズすることが可能にされる。コンカテマーPixel-RCP中にGO&PPBSが過剰であるので、次の工程で付加されるグリッド-オリゴのための結合部位が残される。3)グリッドオリゴヌクレオチドが試料に付加され、RCPピクセルのGO&PPBSにハイブリダイズすることが可能にされる。未結合試薬を除去するために、工程1、2、3の間に任意の洗浄工程を実施してもよい。次の工程は、5)DNAポリメラーゼ及びdNTPがハイブリダイズした3’末端を伸長させ、リガーゼが配列を統合させ、それによってPCRアンプリコンをPixel-UMIとコードさせることを可能にする工程を含み得る。このライゲーションは、2つのRCA産物を介して1つの近接プローブから別の近接プローブにまたがる標的アンプリコンを産生し、それらの相対位置を提供する。RCA産物は同じ配列の複数のコピーを有するので、多くの標的タンパク質バーコードを(RCA産物からの)同じUMIと統合し、そのRCA産物によって覆われる1つの面積内の複数のタンパク質の位置を提供することができる。産物が少なくとも2つのRCA産物にまたがるので、近位RCA産物のグリッドを得ることができる。6)次に、方法は、統合されたアンプリコンをPCRによって増幅し、次いでそれを配列決定してタンパク質がどこにあるかの画像を復号する工程を伴う。ここでも、UMIは、RCA産物から伸長したグリッドオリゴヌクレオチドにコードされる。
【0106】
実施例7
方法の第4の実施態様が、
図10に示される。方法のこの実施態様では、1)標的細胞は、近接プローブ(遊離3’末端又は遊離5’末端のいずれかを含有する標的タンパク質同一性についてバーコード化されたオリゴヌクレオチドにカップリングされた抗体)又は特異的RNA配列に結合することが可能な核酸プローブによって結合され、2)少なくとも2つのタイプの予め形成されたRCA産物が試料に付加され、「近接プローブ結合配列」(PPBS)を介して近接プローブの末端にハイブリダイズすることが可能にされ、3)グリッドオリゴヌクレオチドが試料に付加され、いずれかのRCA産物タイプのGOBS1及びGOBS2にハイブリダイズすることが可能にされる。未結合試薬を除去するために、工程1、2、3の間に任意の洗浄工程を実施してもよい。5)次に、方法は、DNAポリメラーゼ及びdNTPがハイブリダイズした3’末端を伸長させ、リガーゼが配列を統合させ、それによってPCRアンプリコンをRCA産物からのUMIとコードし、したがって2つのRCA産物を介して1つの近接プローブから別の近接プローブにまたがる標的アンプリコンを形成してそれらの相対位置を提供することを可能にする工程を含む。RCPは同じ配列の複数のコピーを有するので、多くの標的タンパク質バーコードを同じRCA産物UMIと統合し、そのRCA産物によって覆われる1つの面積内の複数のタンパク質の位置を提供する。産物が少なくとも2つのPixel-RCPにまたがると、近位RCPのグリッドが得られる。6)次に、方法は、統合されたアンプリコンをPCRで増幅し、次いでそれを配列決定してタンパク質がどこにあるかの画像を復号する工程を含む。上記の例と同様に、グリッドオリゴヌクレオチドが2つの近位RCA産物に結合し、同じRCA産物に結合しないようにするために、これらのRCA産物が異なる配列の少なくとも2つの領域として製造される。示されている実施形態では、それらはGOBS配列が異なる。ここでも、UMIは、RCA産物から伸長したグリッドオリゴヌクレオチドにコードされる。
【0107】
実施例8
以下の例は、上述の
図10(「設計4」)及び実施例7に示す設計の実施態様を説明する。
【0108】
抗体結合配列
標的特異的プローブ又は抗体は、その遊離3’末端を介して以下の配列に連結されることになる:3’AAAAA-ATCCGCAGCTACGGCTAGGGCT 5’(配列番号1)。抗体への化学的カップリングは、オリゴヌクレオチドの3’-アミン修飾を使用して達成することができるが、いくつかの他の化学を使用することもできる。Aストレッチは柔軟な一本鎖リンカー領域であるが、配列の残りは標的バーコードにハイブリダイズする。
【0109】
グリッドオリゴヌクレオチド
グリッドオリゴヌクレオチド(又は「架橋」オリゴヌクレオチド)は、架橋グリッドオリゴヌクレオチドが結合する標的を同定するバーコード(すなわち、「TP-BC」)と、RCA産物中の対応する第1及び第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列に相補的な第1及び第2の末端配列(「PPBS1」及び「PPBS2」)とを含有する。このオリゴヌクレオチドを、抗体カップリング配列に1:1の比でハイブリダイズさせる。6×A領域は、柔軟な一本鎖リンカーである。中央領域TP-BCは、抗体に連結されたオリゴヌクレオチドに相補的であり、それによってグリッドオリゴヌクレオチドを抗体に連結されたオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせることを可能にする。以下の配列は、グリッドオリゴヌクレオチドの例である:5’(PPBS1)P-TGAAGGTAGACGGAGGATTTAT-AAAAAAA-TAGGCGTCGATGCCGATCCCGA(TP-BC)-AAAAAAA-CAACATCAGTATTCCCAGGCTA(PPBS2)-3’(配列番号2)。
【0110】
RCA産物の製造及び使用
この例では、方法は、2つのタイプのRCA産物(「1型」及び「2型」RCA産物と呼ばれ得る)を使用する。
図10に示すように、これらの産物は、第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(PPBS1)と、1つの増幅プライマー結合部位(F-PCR)又は第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(PPBS2)とを有する。これらのRCA産物はまた、固有のRCA産物識別子配列Nx22を有する。
【0111】
1型RCA産物
以下のオリゴヌクレオチド:5’P-TGGTTCGCAGGATGAG-GCCGGGAGTCTAACTCAAATAC-NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN-TGAAGGTAGACGGAGGATTTAT-CGCTTCGGTGAGATAG-3’(配列番号3)が、環状化スプリントとして作用する配列5’-CTCATCCTGCGAACCA-CTATCTCACCGAAGCG-3’(配列番号4)のライゲーションテンプレートオリゴヌクレオチドにハイブリダイゼーションによって環状化される。環状化オリゴヌクレオチドはまた、ランダムに生成されたUMIバーコード「Nx22」並びにPPBS1及びForward PCRプライマー部位(F-PCR)を含有する。1型RCA産物のライゲーションテンプレートオリゴヌクレオチドを使用して、RCA反応をプライミングすることもできる。
【0112】
増幅後、1型RCA産物は、以下の配列:5’CTATCTCACCGAAGCG ATAAATCCTCCGTCTACCTTCA NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN GTATTTGAGTTAGACTCCCGGC CTCATCCTGCGAACCA-3’(配列番号5)のコンカテマーである。
【0113】
この例では、1型RCA産物中のF-PCR(配列GCCGGGAGTCTAACTCAAATAC;配列番号6)に結合するプライマーを伸長させ、それによってギャップ充填重合/ライゲーション反応においてUMIをコピーする。この反応により、第1のRCA産物中のUMIの相補体がグリッドオリゴヌクレオチドの5’末端に付加される。
【0114】
2型RCA産物
以下のオリゴヌクレオチド:5’-P-TAGTGAGTGTACGGAC CAACATCAGTATTCCCAGGCTA NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN GTGCTGACCAATCGACCAAGAT CGCCTAGTCTCTACTA-3’(配列番号7)が、環状化スプリントとして作用する配列5-GTCCGTACACTCACTATAGTAGAGACTAGGCG-3(配列番号8)のライゲーションテンプレートオリゴヌクレオチドにハイブリダイゼーションによって環状化される。環状化オリゴヌクレオチドはまた、ランダムに生成されたUMIバーコード「Nx22」並びにPPBS2及びReverse PCRプライマー部位(「R-PCR」)を含有する。2型RCA産物のライゲーションテンプレートオリゴヌクレオチドを使用して、RCA反応をプライミングすることもできる。
【0115】
増幅後、2型RCA産物は、以下の配列:5’-TAGTAGAGACTAGGCG-ATCTTGGTCGATTGGTCAGCAC-NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN-TAGCCTGGGAATACTGATGTTG-GTCCGTACACTCACTA-3’(配列番号9)のコンカテマーである。
【0116】
この例では、グリッドオリゴヌクレオチドの3’末端は、2型産物(PPBS2)中のその結合部位にハイブリダイズし、伸長し、それによってギャップ充填重合/ライゲーション反応においてUMIをコピーする。グリッドオリゴヌクレオチドの3’末端は、配列5’-P-GTGCTGACCAATCGACCAAGAT(配列番号10)のオリゴヌクレオチドの5’末端と出会うまで伸長される。この伸長産物の3’末端は、オリゴヌクレオチドの5’-P末端に連結する。
【0117】
PCR増幅
ギャップ充填重合/ライゲーション反応は、グリッドオリゴヌクレオチド(したがって、TP-BC配列)を、1つは1型RCA産物からのものであり、もう1つは1型RCA産物からのものである2つのUMIの相補体と統合させる。この産物を、以下のプライマー:F-PCRプライマー5’GTATTTGAGTTAGACTCCCGGC-3’(配列番号11)及びR-PCRプライマー5’ATCTTGGTCGATTGGTCAGCAC-3’(配列番号12)を使用してPCRによって増幅する。
【0118】
この拒絶で産生されたPCR産物は、これらの要素:Fプライマー、Pixel-1 UMI、PPBS1、pA-リンカー、TP-BC、pA-リンカー、PPBS2、Pixel-2 UMI、R-プライマーを含有する以下の配列を有する。この例では、産物は、配列GCCGGGAGTCTAACTCAAATAC-Nx22-TGAAGGTAGACGGAGGATTTAT-AAAAAAA-TAGGCGTCGATGCCGATCCCGA-AAAAAAA-CAACATCAGTATTCCCAGGCTA-Nx22-GTGCTGACCAATCGACCAAGAT(配列番号13)を有する。PCR増幅は、配列決定の前に複数の試料の下流プールを可能にするために固有に各試料を標識するのに有用な追加のプライマー配列、いわゆる試料バーコーディングを含有し得る。
【0119】
データ分析
得られたPCR産物がクローン配列決定されると、1型RCA産物からのUMIとピクセルRCA産物(その相補体がグリッドオリゴヌクレオチドに結合している)の組み合わせは、各RCA産物の相対位置を提供し、表面積のマップを産生するために使用することができる。UMIと標的バーコード(TP-BC)の組み合わせは、所与のピクセルのごく近傍(約100nm)にどの標的タンパク質(又はmRNA)が存在するかの情報を提供する。
【0120】
アッセイ手順
ガラススライド上又は溶液中の細胞は、プローブ(mRNA結合プローブ及び/又は核酸に連結された抗体)の結合前に固定されてもされなくてもよい。次いで、バルク非特異的抗体及びDNA、例えばサケ精子DNAの付加によって非特異的結合を減少させるために細胞をブロックすることができる。次に、典型的には低温で一晩行った試料にプローブを付加し、次いで細胞を洗浄して未結合プローブを除去する。次いで、プローブ配列中のそれぞれの結合部位にハイブリダイズするRCP産物を付加する。使用される配列設計に応じて、標的タンパク質バーコードを含むピクセル内のUMIの統合を可能にするための酵素(リガーゼ及びポリメラーゼ)及びdNTP、ATP、及びNAD、並びに適切な緩衝液条件及び温度。次いで、試料を洗浄して酵素並びに補因子及び緩衝液を除去し、PCR増幅成分、例えば熱安定性DNAポリメラーゼ及びdNTP及びプライマーのための空間を調製することができる。標準的な増幅の後、PCR産物を処理し、上述のように、ハイスループットでクローンアンプリコン配列決定を可能にする。
【0121】
実施例9
方法の第5の実施態様が、
図11に示される。方法のこの実施態様では、RNAが検出される。示すように、グリッドオリゴヌクレオチドは、細胞RNAとハイブリダイズするプローブ内の部位に結合するように設計されている。この実施態様では、配列決定結果は、mRNA1が細胞内のmRNA2に近接していることを示すはずである(これらのmRNAに(間接的に、プローブを介して)結合されるグリッドオリゴヌクレオチドが、ギャップ充填/ライゲーション反応で伸長されるときに両方とも左側のRCA産物のUMIを付加するため)。
【0122】
実施例10
方法の第6の実施態様が、
図12に示される。方法のこの実施態様では、グリッドオリゴヌクレオチドは2つの部分に分割され、それらはスプリントの存在下で互いに近接している場合にのみ共に結合する。
図12に示す実施態様は、スプリント媒介近接ライゲーションアッセイ(PLA)工程が、同じ標的分子に対する2つの結合事象が起こる場合にグリッドオリゴヌクレオチドが単一分子になることを確実にすることを除いて、上記の実施例7(及び
図10に示す)に記載される移植と同様である。これにより、アッセイの特異性が高まる。この例では、グリッドオリゴヌクレオチドは2つに分割され、PLAスプリントによって一緒にスプリントされる。PLAスプリントは、同じタンパク質を標的とする近接プローブ対のみをスプリントするように設計することができ、特異性及び多重性をさらに高める。
【0123】
実施例11
方法の第7の実施態様が、
図13及び
図14に示される。方法のこの実施態様では。
図13は、RCA産物がどのように調製され得るかを示す。この実施態様では、2つのタイプのRCA産物の各々が、UMIの1つの上流及び1つの下流の2つのオリゴヌクレオチドに予めハイブリダイズされる。ギャップがギャップ充填/ライゲーションアッセイによって充填された後、RCA産物は、複数の遊離3’及び/又は5’末端を有し、これを試料に付加して標的結合プローブと相互作用させることができる。
図14に示すように、これらのRCA産物(ライゲーションが可能な遊離3’及び/又は5’末端を有する)を、標的特異的プローブと予めハイブリダイズした試料にハイブリダイズさせる。この実施形態では、ライゲーション反応は、標的特異的プローブを介して、一方のRCA産物上のギャップ充填/ライゲーション産物を他方のRCA産物上のギャップ充填/ライゲーション産物に結合する。得られた産物は、2つのピクセル由来UMI、並びに特定の標的を示すバーコードを含有する。実施例11の利点の一つは、酵素ライゲーション反応のみが試料分析中に実施されることであり、反応は単純化されるが、バルクでのRCA産物の事前調製は幾分複雑になる。
【0124】
実施例12
以下のセクションは、上述の実施例11からの
図13及び
図14に示す一般的な設計の実施態様を説明する。
【0125】
抗体結合配列
標的特異的プローブ又は抗体は、その遊離3’末端を介して以下の配列に連結されることになる:3’AAAAA-ACCGTGGCCTGGCAGACTTTAC 5’(配列番号14)。抗体への化学的カップリングは、オリゴヌクレオチドの3’-アミン修飾を使用して達成することができるが、いくつかの他の化学を使用することもできる。Aストレッチは柔軟な一本鎖リンカー領域であるが、配列の残りは標的バーコードにハイブリダイズする。
【0126】
グリッドオリゴヌクレオチド
グリッドオリゴヌクレオチドは、アッセイ工程中にライゲーション反応によって統合された3つの部分で構築される。グリッドオリゴ部分1,5’P-ACATAGGAGACAATTGAATAGC-AAAAAAA-TGGCACCGGACCGTCTGAAATG-AAAAAAA-ATGAATTACGCGCGCTCAGACA-3’(配列番号15)は、抗体に共有結合的に連結したオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションによって結合し、抗体が結合する標的を同定するバーコードを含有する(すなわち、「TP-BC」)。ハイブリダイゼーションによるプローブのこの構築は、バルク産生において予め調製される。
【0127】
RCA産物の製造及び使用
この例では、方法は、2つのタイプのRCA産物(「1型」及び「2型」RCA産物と呼ばれ得る)を使用する。
図13に示すように、これらの産物は、第1のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(PPBS1)と、1つの増幅プライマー結合部位(F-PCR)又は第2のグリッドオリゴヌクレオチド結合配列(PPBS2)とを有する。これらのRCA産物はまた、固有のRCA産物識別子配列Nx22を有する。
【0128】
1型RCA産物
以下のオリゴヌクレオチド:5’P-TGGTTCGCAGGATGAG-GCCGGGAGTCTAACTCAAATAC-NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN-TGAAGGTAGACGGAGGATTTAT-CGCTTCGGTGAGATAG-3’(配列番号3)が、環状化スプリントとして作用する配列5’-CTCATCCTGCGAACCA-CTATCTCACCGAAGCG-3’(配列番号4)のライゲーションテンプレートオリゴヌクレオチドにハイブリダイゼーションによって環状化される。環状化オリゴヌクレオチドはまた、ランダムに生成されたUMIバーコード「Nx22」並びにPPBS1及びForward PCRプライマー部位(F-PCR)を含有する。1型RCA産物のライゲーションテンプレートオリゴヌクレオチドを使用して、RCA反応をプライミングすることもできる。
【0129】
増幅後、1型RCA産物は、以下の配列:5’CTATCTCACCGAAGCG ATAAATCCTCCGTCTACCTTCA NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN GTATTTGAGTTAGACTCCCGGC CTCATCCTGCGAACCA-3’(配列番号5)のコンカテマーである。
【0130】
この例では、1型RCA産物中のF-PCR(配列GCCGGGAGTCTAACTCAAATAC;配列番号6)に結合するプライマーをバルク製造工程中に伸長させ、それによってギャップ充填重合/ライゲーション反応においてUMIをPPBS1-オリゴ(5’P-TGAAGGTAGACGGAGGATTTAT-AAAAAAA-GATCATGCAACGTATTGAAACG(配列番号20))の5’末端上にコピーする。
【0131】
2型RCA産物
以下のオリゴヌクレオチド:5’-P-TAGTGAGTGTACGGAC CAACATCAGTATTCCCAGGCTA NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN GTGCTGACCAATCGACCAAGAT CGCCTAGTCTCTACTA-3’(配列番号7)が、環状化スプリントとして作用する配列5-GTCCGTACACTCACTATAGTAGAGACTAGGCG-3(配列番号8)のライゲーションテンプレートオリゴヌクレオチドにハイブリダイゼーションによって環状化される。環状化オリゴヌクレオチドはまた、ランダムに生成されたUMIバーコード「Nx22」並びにPPBS2及びReverse PCRプライマー部位(「R-PCR」)を含有する。2型RCA産物のライゲーションテンプレートオリゴヌクレオチドを使用して、RCA反応をプライミングすることもできる。
【0132】
増幅後、2型RCA産物は、以下の配列:5’-TAGTAGAGACTAGGCG-ATCTTGGTCGATTGGTCAGCAC-NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNN-TAGCCTGGGAATACTGATGTTG-GTCCGTACACTCACTA-3’(配列番号9)のコンカテマーである。
【0133】
この例では、RCA産物のバルク産生中、PPBS2-オリゴ(P-CTAGACGCTGTAGTTCTGTAGC-AAAAAAA-CAACATCAGTATTCCCAGGCTA-3’(配列番号16))の3’末端は、2型RCA産物中のその結合部位にハイブリダイズして伸長され、それによってギャップ充填重合/ライゲーション反応においてUMIをコピーする。PPBS2-オリゴの3’末端は、配列5’-P-GTGCTGACCAATCGACCAAGAT(配列番号10)のオリゴヌクレオチドの5’末端と出会うまで伸長される。この伸長産物の3’末端は、オリゴヌクレオチドの5’-P末端に連結する。
【0134】
これらの工程は、
図13に見られるように、反応することが可能であり、試料アッセイで使用する準備ができている複数の3’遊離又は5’遊離オリゴヌクレオチドを共に担持する2つのタイプのRCA産物のバルク産生をもたらす。
【0135】
完全なグリッド-オリゴを形成する試料上のライゲーション反応
図14に示すように、グリッド-オリゴは、スプリントライゲーション反応によって3つのオリゴヌクレオチドを統合することによって形成される。標的結合プローブは、試料に結合させることが可能である。ライゲーションスプリントオリゴヌクレオチド(PPBS1+プローブスプリント5’GCTATTCAATTGTCTCCTATGT-CGTTTCAATACGTTGCATGATC(配列番号17)、
及びPPBS2+プローブスプリントGCTACAGAACTACAGCGTCTAG-TGTCTGAGCGCGCGTAATTCAT(配列番号18)を標的結合プローブに付加し、PPBS1及びPPBS2オリゴへのそれらのライゲーションを可能にする。これらのスプリントは、好ましくは、偽PCRジャンピングの可能性を低減するために、ライゲーション後の酵素的ウラシル-N-グリコシラーゼ分解を可能にするためにチミジンの代わりにウラシル置換物を含有することができる。
【0136】
スプリントを含有する標的プローブが試料に結合した後、RCA産物の1型及び2型が上記の官能化として付加される。PPBS1及びPPBS2の自由端は、スプリントを介してグリッドオリゴ中間セクション(部分1)の各末端にそれぞれ結合する。DNAライゲーション酵素を付加し、RCA産物1型からのp-UMIを、RCA産物2型上のTP-BC及びP-UMIと共有結合的に統合させる。
【0137】
PCR増幅
ライゲーション反応は、グリッドオリゴヌクレオチド成分(したがって、TP-BC配列)を、1つは1型RCA産物からのものであり、もう1つは1型RCA産物からのものである2つのUMIの相補体と統合させている。この産物を、以下のプライマー:F-PCRプライマー5’GTATTTGAGTTAGACTCCCGGC-3’(配列番号11)及びR-PCRプライマー5’ATCTTGGTCGATTGGTCAGCAC-3’(配列番号12)を使用してPCRによって増幅する。
【0138】
この拒絶で産生されたPCR産物は、これらの要素:Fプライマー、Pixel-1 UMI、PPBS1、pA-リンカー、ライゲーション配列、pA-リンカー、TP-BC、pA-リンカー、ライゲーション配列、pA-リンカー、PPBS2、Pixel-2 UMI、R-プライマーを含有する以下の配列を有する。この例では、産物は、配列GCCGGGAGTCTAACTCAAATAC-Nx22-TGAAGGTAGACGGAGGATTTAT-AAAAAAA-GATCATGCAACGTATTGAAACG-ACATAGGAGACAATTGAATAGC-AAAAAAA-TGGCACCGGACCGTCTGAAATG-AAAAAAA-ATGAATTACGCGCGCTCAGACA-CTAGACGCTGTAGTTCTGTAGC-AAAAAAA-CAACATCAGTATTCCCAGGCTA-Nx22-GTGCTGACCAATCGACCAAGAT(配列番号19)を有する。PCR増幅は、配列決定の前に複数の試料の下流プールを可能にするために固有に各試料を標識するのに有用な追加のプライマー配列、いわゆる試料バーコーディングを含有し得る。
【0139】
実施例13
方法の第8の実施態様が、
図15及び
図16に示される。
図15は、RCA産物がどのように設計されるかを示し、これは
図10に示す方法と同様である。このバージョンでは、DNAライゲーションベースの試料の検知を可能にするために、使用される2つのタイプのRCPピクセルの事前調製工程を使用した。ピクセルは、最初にUMIにわたるギャップ充填重合によって部分的に二本鎖にされる。
図16に示すアッセイ工程では、グリッドオリゴヌクレオチドにハイブリダイズ可能なGOBS-1又は-2のいずれかの部位を有する2つのタイプのピクセルが調製される。
図16は、グリッドオリゴヌクレオチドを担持する標的分析物検知プローブによって試料が結合されることを示す。次いで、RCA産物を試料に付加し、GOBS1及びGOBS2をグリッドオリゴ末端にハイブリダイズさせてニックを形成し、PCRアンプリコンを形成するDNAライゲーション反応によって密封することが可能にされ得る。産物は、RCA産物のUMIを決定するために配列決定することができる。
【配列表】
【国際調査報告】