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特表2023-500010熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20221222BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20221222BHJP
   C08K 5/5353 20060101ALI20221222BHJP
   C08K 5/02 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
C08L23/16
C08K5/5313
C08K5/5353
C08K5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505460
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 KR2020013019
(87)【国際公開番号】W WO2021085868
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0137273
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520087103
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジ コォン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ヒョン ムン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン キョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソン エ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB151
4J002EB048
4J002EB098
4J002EB138
4J002EW136
4J002EW157
4J002FD136
4J002FD137
4J002FD138
4J002GF00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ01
(57)【要約】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、エチレン-プロピレンブロック共重合体約100重量部;金属ホスフィナート化合物約0.3重量部~約5重量部;リン窒素系難燃剤約0.5重量部~約5重量部;およびブロム系難燃剤約0.01重量部~約0.2重量部;を含むことを特徴とする。前記熱可塑性樹脂組成物は、難燃性、耐衝撃性等に優れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン-プロピレンブロック共重合体約100重量部;
金属ホスフィナート化合物約0.3重量部~約5重量部;
リン窒素系難燃剤約0.5重量部~約5重量部;および
ブロム系難燃剤約0.01重量部~約0.2重量部;を含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、エチレン約20重量%~約60重量%およびプロピレン約40重量%~約80重量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体約60重量%~約95重量%およびゴム成分のエチレン-プロピレン共重合体約5重量%~約40重量%を含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、ASTM D1238によって、230℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローインデックス(Melt-flow Index:MI)が約5g/10分~約100g/10分であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記金属ホスフィナート化合物は、下記化学式1で表すことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物:
【化1】

前記式1で、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~12のアリール基であり、MはAl、Zn、Mg、Ca、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、又はNaであり、nは1~4の整数である。
【請求項6】
前記リン窒素系難燃剤は、メラミンポリホスフェート、メラムピロホスフェート、メレムピロホスフェート、メロンピロホスフェート、メラミンピロホスフェート、ジメラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、メラムポリホスフェート、メロンポリホスフェート及び/又はメレムポリホスフェート及び/又はその混合された多重塩及び/又はアンモニウムハイドロゲンホスフェート、アンモニウムジハイドロゲンホスフェート、アンモニウムポリホスフェートの1種以上を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ブロム系難燃剤は、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルオキサイド、デカブロミネーティッドジフェニルエタン、1,2-ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)エタン、オクタブロモ-1,3,3-トリメチル-1-フェニルインダン、及び2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジンの1種以上を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記金属ホスフィナート化合物および前記リン窒素系難燃剤の重量比は、約1:0.2~約1:5であることを特徴とする、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記金属ホスフィナート化合物および前記ブロム系難燃剤の重量比は、約1:0.01~約1:0.6であることを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記リン窒素系難燃剤および前記ブロム系難燃剤の重量比は、約1:0.01~約1:0.4であることを特徴とする、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂組成物は、UL-94 vertical test方法で測定した1.5mm厚の射出試片の難燃度がV-2であることを特徴とする、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂組成物は、UL746Aによって測定した100mm×100mm×1.5mmの大きさの試片のGWIT(Glow Wire Ignitability Temperature)が約730℃以上、GWFI(Glow Wire Flammability Index)が約870℃以上であることを特徴とする、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
前記熱可塑性樹脂組成物は、KS C IEC 62321-3-2によって、イオンクロマトグラフィーで測定した試片15mg中のハロゲン含量が約100ppm~約900ppmであることを特徴とする、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項14】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256によって測定した6.4mm厚の試片のノッチアイゾット衝撃強度が、約7kgf・cm/cm~約30kgf・cm/cmであることを特徴とする、請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物から形成されることを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品に関するものである。より具体的には、本発明は、難燃性、耐衝撃性等に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、耐薬品性、耐候性、加工性等に優れるため、射出成形品、フィルム、ブロー成形品の形態への製造が容易であり、自動車、建築材料、電気部品等の分野に幅広く使用される材料である。
【0003】
ポリプロピレン樹脂は、化学的構造上、引火性物質であるため、難燃特性を付与するために各種有機系または無機系難燃剤の併用添加が行われている。但し、環境問題に対する関心が台頭しながら、既存のハロゲン系難燃剤に対する規制が次第に強化されつつあり、熱可塑性樹脂組成物を環境にやさしい素材として使用するためには、ハロゲン系難燃剤の低減または排除が要求されている。
【0004】
しかし、熱可塑性樹脂組成物に非ハロゲン系難燃剤のみを適用する場合、ハロゲン系難燃剤の適用時に比べて、難燃性が大きく低下するという問題点がある。また、熱可塑性樹脂組成物の難燃性の向上のために難燃剤を過量使用すると、機械的物性等が低下するおそれがある。
【0005】
よって、難燃性、耐衝撃性、これらの物性のバランス等に優れた熱可塑性樹脂組成物の開発が必要な実情にある。
【0006】
本発明の背景技術は、韓国特許第10-1863421号等に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、難燃性、耐衝撃性等に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供するためのものである。
【0008】
本発明の別の目的は、前記熱可塑性樹脂組成物から形成された成形品を提供するためのものである。
【0009】
本発明の前記およびその他の目的は、下記で説明する本発明によって全て達成できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1.本発明の一つの観点は、熱可塑性樹脂組成物に関するものである。前記熱可塑性樹脂組成物は、エチレン-プロピレンブロック共重合体約100重量部;金属ホスフィナート化合物約0.3重量部~約5重量部;リン窒素系難燃剤約0.5重量部~約5重量部;およびブロム系難燃剤約0.01重量部~約0.2重量部;を含むことを特徴とする。
【0011】
2.前記1の具体例において、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、エチレン約20重量%~約60重量%およびプロピレン約40重量%~約80重量%を含み得る。
【0012】
3.前記1又は2の具体例において、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体約60重量%~約95重量%およびゴム成分のエチレン-プロピレン共重合体約5重量%~約40重量%で含まれ得る。
【0013】
4.前記1乃至3の具体例において、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、ASTM D1238によって、230℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローインデックス(Melt-flow Index:MI)が約5g/10分~約100g/10分になり得る。
【0014】
5.前記1乃至4の具体例において、前記金属ホスフィナート化合物は、下記化学式1で表すことができる:
【0015】
【化1】
【0016】
前記式1で、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~12のアリール基であり、MはAl、Zn、Mg、Ca、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、又はNaであり、nは1~4の整数である。
【0017】
6.前記1乃至5の具体例において、前記リン窒素系難燃剤は、メラミンポリホスフェート、メラムピロホスフェート、メレムピロホスフェート、メロンピロホスフェート、メラミンピロホスフェート、ジメラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、メラムポリホスフェート、メロンポリホスフェート及び/又はメレムポリホスフェート及び/又はその混合された多重塩及び/又はアンモニウムハイドロゲンホスフェート、アンモニウムジハイドロゲンホスフェート、アンモニウムポリホスフェートの1種以上を含み得る。
【0018】
7.前記1乃至6の具体例において、前記ブロム系難燃剤は、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルオキサイド、デカブロミネーティッドジフェニルエタン、1,2-ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)エタン、オクタブロモ-1,3,3-トリメチル-1-フェニルインダン、及び2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジンの1種以上を含み得る。
【0019】
8.前記1乃至7の具体例において、前記金属ホスフィナート化合物および前記リン窒素系難燃剤の重量比は、約1:0.2~約1:5になり得る。
【0020】
9.前記1乃至8の具体例において、前記金属ホスフィナート化合物および前記ブロム系難燃剤の重量比は、約1:0.01~約1:0.6になり得る。
【0021】
10.前記1乃至9の具体例において、前記リン窒素系難燃剤および前記ブロム系難燃剤の重量比は、約1:0.01~約1:0.4になり得る。
【0022】
11.前記1乃至10の具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、UL-94 vertical test方法で測定した1.5mm厚の射出試片の難燃度がV-2になり得る。
【0023】
12.前記1乃至11の具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、UL746Aによって測定した100mm×100mm×1.5mmの大きさの試片のGWIT(Glow Wire Ignitability Temperature)が約730℃以上になり得、GWFI(Glow Wire Flammability Index)が約870℃以上になり得る。
【0024】
13.前記1乃至12の具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、KS C IEC 62321-3-2によって、イオンクロマトグラフィーで測定した試片15mg中のハロゲン含量が約100ppm~約900ppmになり得る。
【0025】
14.前記1乃至13の具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256によって測定した6.4mm厚の試片のノッチアイゾット衝撃強度が、約7kgf・cm/cm~約30kgf・cm/cmになり得る。
【0026】
15.本発明の別の観点は、成形品に関するものである。前記成形品は、前記1~14のいずれかにかかる熱可塑性樹脂組成物から形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、難燃性、耐衝撃性等に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれにより形成された成形品を提供する発明の効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[発明を実施するための最善の形態]
以下、本発明を詳しく説明する。
【0029】
本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物は、(A)エチレン-プロピレンブロック共重合体;(B)ホスフィナート化合物;(C)リン窒素系難燃剤;及び(D)ブロム系難燃剤;を含む。
【0030】
本明細書において、数値範囲を表す「a~b」は
【0031】
【数1】
【0032】
と定義する。
【0033】
(A)エチレン-プロピレンブロック共重合体
本発明の一具体例にかかるエチレン-プロピレンブロック共重合体は、軽く、機械的物性等に優れたものであり、通常の熱可塑性樹脂組成物に使用されるエチレン-プロピレンブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)を使用することができる。例えば、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、プロピレン単独重合部分とエチレン-プロピレン共重合部分が反応器内で段階的に重合された樹脂になり得る。
【0034】
具体例において、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、エチレン約20重量%~約60重量%、例えば約30重量%~約50重量%、及びプロピレン約40重量%~約80重量%、例えば約50重量%~約70重量%を含むことができる。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の成形性、耐衝撃性等に優れ得る。
【0035】
具体例において、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、連続相(マトリックス)であるプロピレン単独重合体約60重量%~約95重量%、例えば約70重量%~約90重量%、及び分散相であるゴム成分のエチレン-プロピレン共重合体約5重量%~約40重量%、例えば約10重量%~約30重量%を含むことができる。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の剛性、耐衝撃性等に優れ得る。
【0036】
具体例において、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、ASTM D1238によって、230℃、2.16kg荷重の条件で測定したメルトフローインデックス(Melt-flow Index:MI)が約5g/10分~約100g/10分、例えば約15g/10分~約50g/10分になり得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性等に優れ得る。
【0037】
(B)金属ホスフィナート化合物
本発明の一具体例にかかる金属ホスフィナート化合物は、リン窒素系難燃剤およびブロム系難燃剤と一緒に適用され、少ない含量でもエチレン-プロピレンブロック共重合体(熱可塑性樹脂)組成物の難燃性、耐熱性等を向上させることができるものであり、下記化学式1で表される化合物を使用することができる。
【0038】
【化2】
【0039】
前記式1で、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~12のアリール基であり、MはAl、Zn、Mg、Ca、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、又はNaであり、nは1~4の整数である。
【0040】
具体例において、前記金属ホスフィナート化合物としては、アルミニウムジエチルホスフィナート、亜鉛ジエチルホスフィナートを使用することができる。
【0041】
具体例において、前記金属ホスフィナート化合物は、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体約100重量部に対して、約0.3重量部~約5重量部、例えば約0.5重量部~約4重量部で含まれ得る。前記金属ホスフィナート化合物の含量が、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体約100重量部に対して、約0.3重量部未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物の難燃性等が低下するおそれがあり、約5重量部を超える場合は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性等が低下するおそれがある。
【0042】
(C)リン窒素系難燃剤
本発明の一具体例にかかるリン窒素系難燃剤は、前記金属ホスフィナート化合物およびブロム系難燃剤と一緒に適用され、少ない含量でもエチレン-プロピレンブロック共重合体(熱可塑性樹脂)組成物の難燃性を向上させることができるものであり、通常の熱可塑性樹脂組成物に使用されるリン窒素系難燃剤を使用することができる。
【0043】
具体例において、前記リン窒素系難燃剤としては、メラミンポリホスフェート、メラムピロホスフェート、メレムピロホスフェート、メロンピロホスフェート、メラミンピロホスフェート、ジメラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、メラムポリホスフェート、メロンポリホスフェート及び/又はメレムポリホスフェート及び/又はその混合された多重塩及び/又はアンモニウムハイドロゲンホスフェート、アンモニウムジハイドロゲンホスフェート、アンモニウムポリホスフェートの1種以上を含むことができる。例えば、前記リン窒素系難燃剤としては、メラミンポリホスフェート、アンモニウムポリホスフェート等を使用できる。
【0044】
具体例において、前記リン窒素系難燃剤は、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体約100重量部に対して、約0.5重量部~約5重量部、例えば約1重量部~約4重量部で含まれ得る。前記リン窒素系難燃剤の含量が前記エチレン-プロピレンブロック共重合体約100重量部に対して、約0.5重量部未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物の難燃性等が低下するおそれがあり、約5重量部を超える場合は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性等が低下するおそれがある。
【0045】
具体例において、前記金属ホスフィナート化合物(B)および前記リン窒素系難燃剤(C)の重量比(B:C)は、約1:0.2~約1:5、例えば約1:0.3~約1:4になり得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の難燃性、耐衝撃性等がさらに優れたものになり得る。
【0046】
(D)ブロム系難燃剤
本発明の一具体例にかかるブロム系難燃剤は、前記金属ホスフィナート化合物およびリン窒素系難燃剤と一緒に適用され、少ない含量でもエチレン-プロピレンブロック共重合体(熱可塑性樹脂)組成物の難燃性を向上させることができるものであり、通常の熱可塑性樹脂組成物に使用されるブロム系難燃剤を使用することができる。
【0047】
具体例において、前記ブロム系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルオキサイド、デカブロミネーティッドジフェニルエタン、1,2-ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)エタン、オクタブロモ-1,3,3-トリメチル-1-フェニルインダン、2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、これらの組合せ等を使用することができる。
【0048】
具体例において、前記ブロム系難燃剤は、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体約100重量部に対して、約0.01重量部~約0.2重量部、例えば約0.05重量部~約0.13重量部で含まれ得る。前記ブロム系難燃剤の含量が前記エチレン-プロピレンブロック共重合体約100重量部に対して、約0.01重量部未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物の難燃性等が低下するおそれがあり、約0.2重量部を超える場合は、熱可塑性樹脂組成物のブロム含量が900ppmを超過して国際環境規格(RoHS)に符合しない場合があり、耐衝撃性等が低下するおそれがある。
【0049】
具体例において、前記金属ホスフィナート化合物(B)および前記ブロム系難燃剤(D)の重量比(B:D)は約1:0.01~約1:0.6、例えば約1:0.02~約1:0.5になり得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の難燃性等がさらに優れたものになり得る。
【0050】
具体例において、前記リン窒素系難燃剤(C)および前記ブロム系難燃剤(D)の重量比(C:D)は、約1:0.01~約1:0.4、例えば約1:0.02~約1:0.1になり得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の難燃性等がさらに優れたものになり得、国際環境規格(RoHS)に符合し得る。
【0051】
本発明の一具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物は、通常の熱可塑性樹脂組成物に含まれる添加剤をさらに含み得る。前記添加剤としては、衝撃補強剤、酸化防止剤、滴下防止剤、滑剤、離型剤、核剤、帯電防止剤、安定剤、顔料、染料、これらの混合物等を例示できるが、これに制限されるのではない。前記添加剤を使用する際、その含量は前記エチレン-プロピレンブロック共重合体約100重量部に対して、約0.001重量部~約40重量部、例えば約0.1重量部~約10重量部になり得る。
【0052】
本発明の一具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物は、前記構成成分を混合し、通常の二軸押出機を使用して、約180℃~約280℃、例えば約200℃~約260℃で溶融押出ししたペレット形態になり得る。
【0053】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、UL-94 vertical test方法で測定した1.5mm厚の射出試片の難燃度がV-2以上になり得る。
【0054】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、UL746Aによって測定した100mm×100mm×1.5mmの大きさの試片のGWIT(Glow Wire Ignitability Temperature)が約730℃以上、例えば約750℃~約800℃になり得、GWFI(Glow Wire Flammability Index)が約870℃以上、例えば約900℃~約960℃になり得る。
【0055】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、KS C IEC 62321-3-2によって、イオンクロマトグラフィーで測定した試片15mg中のハロゲン含量が約100ppm~約900ppm、例えば約200ppm~約850ppmになり得る。
【0056】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256によって測定した6.4mm厚の試片のノッチアイゾット衝撃強度が約7kgf・cm/cm~約30kgf・cm/cm、例えば約8kgf・cm/cm~約20kgf・cm/cmになり得る。
【0057】
本発明にかかる成形品は、前記熱可塑性樹脂組成物から形成される。前記の抗菌性熱可塑性樹脂組成物はペレット形態に製造でき、製造されたペレットは、射出成形、押出し成形、真空成形、キャスティング成形等の多様な成形方法を通じて多様な成形品(製品)に製造することができる。このような成形方法は、本発明の属する分野の通常の知識を有する者によってよく知られている。前記成形品は、難燃性、耐衝撃性、これらの物性のバランス等に優れ、ハロゲン含量が900ppm以下であって国際環境規格であるRoHS(Restriction of Hazardous Substances)を満たすため、各種電気、電子部品、特にコネクタ類の部品等に有用である。
【0058】
[発明を実施するための形態]
以下、実施例を通じて、本発明をより具体的に説明するが、このような実施例は単に説明の目的のためのものであり、本発明を制限するものと解釈してはならない。
【0059】
実施例
以下、実施例および比較例で使用した各成分の仕様は次の通りである。
【0060】
(A)熱可塑性樹脂
(A1)エチレン-プロピレンブロック共重合体(製造社:ロッテケミカル,製品名:JH-370A,メルトフローインデックス(Melt-flow Index:MI):35g/10分)を使用した。
【0061】
(A2)ポリプロピレン樹脂(製造社:ロッテケミカル,製品名:H1500,メルトフローインデックス(Melt-flow Index:MI):12g/10分)を使用した。MI:12
(A3)エチレン-プロピレンランダム共重合体(製造社:ロッテケミカル,製品名:J-560S,メルトフローインデックス(Melt-flow Index:MI):20g/10分)を使用した。
【0062】
(B)金属ホスフィナート化合物
アルミニウムジエチルホスフィナート(製造社:Clariant,製品名:OP1230)を使用した。
【0063】
(C)リン窒素系難燃剤
メラミンポリホスフェート(製造社:JLS,製品名:PNA350)を使用した。
【0064】
(D)ブロム系難燃剤
テトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)(製造社:Suzuhiro chemical,製品名:FCP-680G)を使用した。
【0065】
(E)リン系難燃剤
ビスフェノールAジホスフェート(bisphenol A diphosphate,製造社:DAIHACHI,製品名:CR-741)を使用した。
【0066】
実施例1~7および比較例1~9
前記各構成成分を下記表1および2に記載したような含量で添加した後、200℃で押出してペレットを製造した。押出したL/D=36、直径45mmの二軸押出機を使用し、製造されたペレットは80℃で4時間以上乾燥した後、6Oz射出機(成形温度260℃,金型温度:60℃)で射出して試片を製造した。製造された試片に対して、下記の方法で物性を評価し、その結果を下記表1および2に表した。
【0067】
物性の測定方法
(1)難燃度:UL-94 vertical test方法で1.5mm厚の射出試片の難燃度を測定した。
【0068】
(2)GWIT(Glow Wire Ignitability Temperature)(単位:℃):UL746Aによって、100mm×100mm×1.5mmの大きさの試片のGWITを測定した。
【0069】
(3)GWFI(Glow Wire Flammability Index)(単位:℃):UL746Aによって、100mm×100mm×1.5mmの大きさの試片のGWFIを測定した。
【0070】
(4)ハロゲン含量(単位:ppm):KS C IEC 62321-3-2によって、イオンクロマトグラフィー(製造社:DIONEX,製品名:IC-5000S)で試片15mg中のハロゲン含量を測定した。
【0071】
(5)ノッチアイゾット衝撃強度(単位:kgf・cm/cm):ASTM D256によって、6.4mm厚の試片のノッチアイゾット衝撃強度を測定した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
前記結果から、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、難燃性(UL94,GWIT,GWFR)、耐衝撃性(ノッチアイゾット衝撃強度)等が全て優れ、ハロゲン含量が900ppm以下であって国際環境規格であるRoHS(Restriction of Hazardous Substances)を満たすことが分かる。
【0075】
一方、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A1)の代わりにポリプロピレン樹脂(A2)を適用した比較例1の場合は、熱可塑性樹脂組成物の難燃性、耐衝撃性等が低下することが分かり、エチレン-プロピレンブロック共重合体(A1)の代わりにエチレン-プロピレンランダム共重合体(A3)を適用した比較例2の場合は、熱可塑性樹脂組成物の難燃性、耐衝撃性等が低下することが分かる。金属ホスフィナート化合物を本発明の含量範囲未満で適用する場合(比較例3)は、熱可塑性樹脂組成物の難燃性等が低下することが分かり、金属ホスフィナート化合物を本発明の含量範囲よりも超過して適用する場合(比較例4)は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性等が低下することが分かり、リン窒素系難燃剤を本発明の含量範囲未満で適用する場合(比較例5)は、熱可塑性樹脂組成物の難燃性等が低下することが分かり、リン窒素系難燃剤を本発明の含量範囲よりも超過して適用する場合(比較例6)は、熱可塑性樹脂組成物の難燃性、耐衝撃性等が低下することが分かり、ブロム系難燃剤を適用しない場合(比較例7)は、熱可塑性樹脂組成物の難燃性等が低下することが分かり、ブロム系難燃剤を本発明の含量範囲よりも超過して適用する場合(比較例8)は、熱可塑性樹脂組成物のハロゲン含量が大きく上昇して、国際環境規格に不適合であることが分かる。また、リン窒素系難燃剤(C)の代わりにリン系難燃剤を適用する場合(比較例9)は、熱可塑性樹脂組成物の難燃性等が低下することが分かる。
【0076】
本発明の単純な変形あるいは変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更は全て本発明の領域に含まれると見なすことができる。
【国際調査報告】