IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノヴォ ノルディスク アー/エスの特許一覧

特表2023-500032認知症におけるGLP-1受容体作動薬
<>
  • 特表-認知症におけるGLP-1受容体作動薬 図1
  • 特表-認知症におけるGLP-1受容体作動薬 図2
  • 特表-認知症におけるGLP-1受容体作動薬 図3
  • 特表-認知症におけるGLP-1受容体作動薬 図4
  • 特表-認知症におけるGLP-1受容体作動薬 図5A
  • 特表-認知症におけるGLP-1受容体作動薬 図5B
  • 特表-認知症におけるGLP-1受容体作動薬 図6A
  • 特表-認知症におけるGLP-1受容体作動薬 図6B
  • 特表-認知症におけるGLP-1受容体作動薬 図6C
  • 特表-認知症におけるGLP-1受容体作動薬 図7
  • 特表-認知症におけるGLP-1受容体作動薬 図8
  • 特表-認知症におけるGLP-1受容体作動薬 図9
  • 特表-認知症におけるGLP-1受容体作動薬 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(54)【発明の名称】認知症におけるGLP-1受容体作動薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/26 20060101AFI20221222BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221222BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221222BHJP
   C12N 15/16 20060101ALN20221222BHJP
   C07K 14/605 20060101ALN20221222BHJP
【FI】
A61K38/26 ZNA
A61P25/28
A61K38/16
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/20
A61K47/18
C12N15/16
C07K14/605
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521146
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2020081087
(87)【国際公開番号】W WO2021089678
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】19207501.8
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20186623.3
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】509091848
【氏名又は名称】ノヴォ ノルディスク アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ、サラ
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、シャーロット クリスティーン シム
(72)【発明者】
【氏名】クヌーセン、ロデ ベール
(72)【発明者】
【氏名】セシェル、アンナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA22
4C076AA36
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB16
4C076CC01
4C076DD51N
4C076FF34
4C076FF70
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA19
4C084MA17
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA16
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA18
4H045DA30
4H045EA21
4H045EA27
4H045FA30
(57)【要約】
本発明は、(i)代謝症候群を有する対象者へのGLP-1受容体作動薬、または(ii)セマグルチドの投与を含む、すべての形態および段階の認知症に対する改善された医学療法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
認知症の治療のための方法であって、前記方法が、GLP-1受容体作動薬セマグルチドを、それを必要とする対象者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
治療が、認知症の発症リスクを低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記認知症が、すべての形態およびすべての段階の認知症である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記認知症が、軽度の認知障害またはアルツハイマー病である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記認知症が、前臨床アルツハイマー病、アルツハイマー型の軽度の認知障害、早発性家族性アルツハイマー病、および前駆期アルツハイマー病から成る群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記GLP-1受容体作動薬が、前記対象者に投与される唯一の薬学的に活性な成分である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記GLP-1受容体作動薬が、溶液または懸濁液の形態などで、および任意選択で、少なくとも90%の水を含む7.0~9.0の範囲のpHを有する溶液の形態で、皮下投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記GLP-1受容体作動薬が、錠剤の形態などで、経口投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記GLP-1受容体作動薬が、少なくとも30%(w/w)の、SNACなどのN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩を含む錠剤の形態で投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
GLP-1受容体作動薬の前記投与が、セマグルチドが少なくとも16か月または少なくとも18か月など、少なくとも12か月投与される慢性治療である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
認知症の治療のための方法であって、前記方法が、GLP-1受容体作動薬を、それを必要とするヒト対象者に投与することを含み、前記対象者が、代謝症候群を有し、前記GLP-1受容体作動薬が、任意選択で1つ以上の置換、欠失、付加、および/または修飾を含む、GLP-1(7-37)(配列番号1)を含む、方法。
【請求項12】
前記代謝症候群が、前糖尿病、糖尿病、心血管疾患、肥満、および高血圧から成る群から選択される1つ以上の適応症である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記GLP-1受容体作動薬が、GLP-1(7-37)(配列番号1)と比較して、例えば、置換、欠失、挿入、および/または修飾によって改変された最大10個のアミノ酸を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記GLP-1受容体作動薬が、リラグルチドまたはセマグルチドである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、請求項1~10のいずれか一項に定義されるとおりである、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、すべての形態および段階の認知症の治療で使用するためのGLP-1受容体作動薬に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、認知症の進行を積極的に予防または遅延させるための治療選択肢はなく、過去20年以内に認知症の治療のために承認された新しい薬理学的療法はない。WHOによれば、世界中で約5000万人が認知症を有し、この数は2050年までに3倍になると予想されており、アルツハイマー病は、認知症の最も一般的な形態であり、症例の60~70%に寄与し得る。これまでのところ、集中的な取り組みによって、認知症の疾患の経過を予防、遅延、または修正するいかなる医学的処置も特定できておらず、これには、アミロイド-βの産生の低減またはクリアランスの増強に焦点を当てた最近の失敗に終わった試験が含まれる。したがって、認知症を有する患者のための改善された薬理学的療法が望ましい。GLP-1受容体作動薬がヒトの認知症に効果を有するかどうかを決定することは、重要な未回答の質問である。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、GLP-1受容体作動薬の投与を含む、認知症に対する改善された医学療法に関する。
【0004】
いくつかの実施形態では、本発明は、認知症の治療のための方法に関し、当該方法は、GLP-1受容体作動薬を、それを必要とする対象者に投与することを含み、当該対象者は、代謝症候群を有し、当該GLP-1受容体作動薬は、任意選択で1つ以上の置換、欠失、付加、および/または修飾を任意に含む、GLP-1(7-37)(配列番号:1)を含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、本発明は、認知症の治療のための方法に関し、当該方法は、セマグルチドをそれを必要とする対象者に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、プールされたRCTにおける、GLP-1受容体作動薬対プラセボを用いた認知症までの時間を示し、プールされたRCTでは、GLP-1受容体作動薬に無作為化された15人の患者(1000人の患者-年当たり0.66)およびプラセボに無作為化された32人の患者(1000人の患者-年当たり1.41)が、認知症を発症した。GLP-1RA=GLP-1受容体作動薬。
図2図2は、全国コホートにおけるGLP-1受容体作動薬および他の二次糖尿病治療への曝露期間の1年毎の増加を伴う認知症に対するハザード比を示す。各治療への曝露に対して実施されたCox比例ハザード回帰モデル。推定値は、曝露期間の1年の増加に対するハザード比を示す。モデルを、脳卒中、心筋梗塞、高血圧、教育的達成、および糖尿病期間の履歴について調整した。性別、年齢、および暦日は、マッチングを介して含まれた。
図3図3は、全国コホートのサブグループによる、GLP-1受容体作動薬への曝露期間の1年毎の増加を伴う認知症に対するハザード比を示す。様々なサブグループにおけるGLP-1への曝露に対して実施されたCox比例ハザード回帰モデル。推定値は、曝露期間の1年の増加に対するハザード比を示す。モデルを、脳卒中、心筋梗塞、高血圧、教育的達成、および糖尿病期間の履歴について調整した。性別、年齢、および暦日は、マッチングを介して含まれた。
図4図4は、全国コホートで使用された研究設計を示す。*初めての二次糖尿病治療=メトホルミンを含まない糖尿病治療による最初の治療、適格=糖尿病患者のコホートに適格、症例日=認知症を有さない10の対照との各症例のマッチングを含む認知症診断日、症例日の5年前の曝露期間(累積糖尿病治療の期間が評価される場合)。
図5A図5Aは、GLP-1受容体作動薬および他の二次糖尿病への曝露期間の1年毎の増加を伴う認知症に対するハザード比を示す。症例日の前の過去2年を除く、全国コホートにおける治療。各治療への曝露に対して実施されたCox比例ハザード回帰モデル。推定値は、曝露期間の1年の増加に対するハザード比を示す。モデルを、脳卒中、心筋梗塞、高血圧、教育的達成、および糖尿病期間の履歴について調整した。性別、年齢、および暦日は、マッチングを介して含まれた。
図5B図5Bは、糖尿病期間が「メトホルミンまたは二次糖尿病治療による最初の治療からの時間」として定義された場合の、全国コホートにおけるGLP-1受容体作動薬および他の二次糖尿病治療への曝露期間の1年毎の増加を伴う認知症に対するハザード比を示す。各治療への曝露に対して実施されたCox比例ハザード回帰モデル。推定値は、曝露期間の1年の増加に対するハザード比を示す。モデルを、脳卒中、心筋梗塞、高血圧、教育的達成、および糖尿病期間の履歴について調整した。性別、年齢、および暦日は、マッチングを介して含まれた。
図6A図6Aは、全国コホートにおける、認知症の診断の3、5、および10年前に評価されたGLP-1受容体作動薬への曝露期間の1年毎の増加を伴う認知症に対するハザード比を示す。*主要解析。Cox比例ハザード回帰モデルは、GLP-1受容体作動薬曝露のために実施され、認知症の前の3、5、および10年間の曝露ウインドウの期間中に評価された。推定値は、曝露期間の1年の増加に対するハザード比を示す。モデルを、脳卒中、心筋梗塞、高血圧、教育的達成、および糖尿病期間の履歴について調整した。性別、年齢、および暦日は、マッチングを介して含まれた。
図6B図6Bは、マッチングを介して年齢、性別、および暦日に対して調整された全国コホートにおけるGLP-1受容体作動薬への曝露期間の1年毎の増加を伴う認知症に対するハザード比を示す。GLP-1受容体作動薬への曝露に対して実施されたCox比例ハザード回帰モデル。推定値は、曝露期間の1年の増加に対するハザード比を示す。モデルを、マッチングを介して性別、年齢、および暦日に対して調整した。
図6C図6Cは、全国コホートにおけるGLP-1受容体作動薬への曝露期間の1年毎の増加を伴う死亡による競合リスクに対するハザード比を示す。GLP-1受容体作動薬への曝露に対して実施されたCox比例ハザード回帰モデル。推定値は、曝露期間の1年の増加に対するハザード比を示す。モデルを、脳卒中、心筋梗塞、高血圧、教育的達成、および糖尿病期間の履歴について調整した。性別、年齢、および暦日は、マッチングを介して含まれた。
図7図7は、ビヒクルと比較した、SAMP8マウスのセマグルチド投与におけるY字型迷路交替行動への効果を示す。
図8図8は、ビヒクルと比較した、ステップスルー潜時(図8)および脱出潜時(図9)を表す、セマグルチド投与後のステップスルー型受動的回避試験で測定された場合の、SAMP8マウスにおける長期記憶の改善を示す。
図9図9は、ビヒクルと比較した、ステップスルー潜時(図8)および脱出潜時(図9)を表す、セマグルチド投与後のステップスルー型受動的回避試験で測定された場合の、SAMP8マウスにおける長期記憶の改善を示す。
図10図10は、海馬におけるミクログリア炎症マーカーIba1に対する、げっ歯類におけるアルツハイマー病の非遺伝的モデルであるリポ多糖(LPS)誘発神経炎症におけるセマグルチドの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体作動薬の投与が、代謝症候群を有する対象者における認知症のリスクを低減したことを発見した。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、セマグルチドが、動物モデルにおいて認知症を改善したことを発見した。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、認知症の治療のための方法に関し、当該方法は、GLP-1受容体作動薬をそれを必要とする対象者に投与することを含み、当該対象者は、代謝症候群を有する。いくつかの実施形態では、本発明は、認知症の治療のための方法に関し、当該方法は、GLP-1受容体作動薬をそれを必要とするヒト対象者に投与することを含み、当該対象者は、前糖尿病、糖尿病、心血管疾患、肥満、および高血圧から成る群から選択される1つ以上の適応症を有する。いくつかの実施形態では、本発明は、認知症の治療のための方法に関し、当該方法は、セマグルチドをそれを必要とする対象者に投与することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明は、認知症の発症リスクを低減する方法に関し、当該方法は、GLP-1受容体作動薬をそれを必要とする対象者に投与することを含み、当該対象者は、代謝症候群を有する。いくつかの実施形態では、本発明は、認知症の発症リスクを低減するための方法に関し、当該方法は、GLP-1受容体作動薬をそれを必要とする対象者に投与することを含み、当該対象者は、前糖尿病、糖尿病、心血管疾患、肥満、および高血圧から成る群から選択される1つ以上の適応症を有する。いくつかの実施形態では、本発明は、認知症の発症リスクを低減する方法に関し、当該方法は、セマグルチドをそれを必要とする対象者に投与することを含む。
【0010】
認知症は様々な程度の重症度で存在する。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される「認知症」という用語は、認知症疾患連続体におけるすべての形態および段階を指す。いくつかの実施形態では、認知症は、ICD-11に定義される適応症の群から選択される:アルツハイマー病による認知症;早発性アルツハイマー病による認知症;常染色体優性アルツハイマー型認知症、プレセニリン1の変異;常染色体優性アルツハイマー型認知症、プレセニリン2の変異;常染色体優性アルツハイマー型認知症、アミロイド前駆体タンパク質の変異;遅発性アルツハイマー病による認知症;脳血管疾患を伴うアルツハイマー型認知症、混合型;他の非血管系の病因を伴うアルツハイマー型認知症、混合型;非健忘性アルツハイマー型認知症サブタイプ;非健忘性アルツハイマー型認知症、ロゴペニックバリアント;原発性進行性失語を伴う非健忘性アルツハイマー病、ロゴペニックバリアント;非健忘性アルツハイマー型認知症、視空間バリアント;後部皮質萎縮を伴う非健忘性アルツハイマー病、視空間バリアント;非健忘性アルツハイマー型認知症、前頭葉バリアント;精神病を伴うアルツハイマー型認知症;うつ病を伴うアルツハイマー型認知症;脳血管疾患により認知症;血管性認知症出血サブタイプ;血管性認知症虚血サブタイプ;多発梗塞性認知症;戦略的部位の単一梗塞性認知症;皮質下性血管性脳症による認知症;低酸素脳症による認知症;遺伝的原因による認知症;中枢神経系血管炎による認知症;高血圧性脳症による認知症;高血圧性脳内出血による認知症;脳アミロイドアンギオパチーによる認知症;レビー小体病による認知症;前頭側頭型認知症;前頭側頭型認知症、行動バリアント;前頭側頭型認知症、言語バリアント;前頭側頭型認知症、非流暢または失文法バリアント;前頭側頭型認知症、意味性バリアント;前頭側頭型認知症、ロゴペニックバリアント;運動ニューロン疾患を伴う前頭側頭型認知症;骨パジェット病を伴う家族性封入体ミオパチーを伴う前頭側頭型認知症;遺伝子変異による前頭側頭型認知症;C9orf72変異による前頭側頭型認知症;MAPT変異による前頭側頭型認知症;VCP変異による前頭側頭型認知症;GRN変異による前頭側頭型認知症;CHMP2B変異による前頭側頭型認知症;FUS変異による前頭側頭型認知症;TARDBP変異による前頭側頭型認知症;他のまたは新しい変異による前頭側頭型認知症;医薬を含む精神活性物質による認知症;アルコールの使用による認知症;鎮静剤、睡眠薬、または抗不安薬の使用による認知症;幻覚剤後知覚障害;揮発性吸入剤の使用による認知症;放射線後認知症;一酸化炭素中毒による認知症;薬物中毒による認知症;マンガン毒性による認知症またはパーキンソニズム;他に分類される疾患による認知症;ある特定の指定の中枢神経系変性疾患による認知症;パーキンソン病による認知症;ハンチントン病による認知症;大脳皮質基底核変性症による認知症;進行性核上性麻痺による認知症;ニューロフィラメント封入体病による認知症;進行性皮質下グリオーシスによる認知症;多系統萎縮症による認知症;脊髄小脳失調症による認知症;脳内の鉄沈着を伴う神経変性による認知症;白質ジストロフィーによる認知症;グアムのパーキンソニズム-認知症複合による認知症;ある特定の指定の感染性疾患による認知症;ヒト免疫不全ウイルスによる認知症;神経梅毒による認知症;ヘルペス脳炎による認知症;トリパノソーマ症による認知症;神経嚢虫症による認知症;ライム病による認知症;ウィップル病による認知症;進行性多巣性白質脳症による認知症;ある特定の指定の原発性変性認知症;神経原線維変化認知症;家族性多系統タウオパチー;嗜銀性顆粒病;ある特定の指定の中枢神経系障害による認知症;多発性硬化症による認知症;プリオン病による認知症;孤発性クロイツフェルトヤコブ病による認知症;バリアントクロイツフェルトヤコブ病による認知症;家族性クロイツフェルトヤコブ病による認知症;医原性クロイツフェルトヤコブ病による認知症;孤発性致死性不眠症による認知症;致死性家族性不眠症による認知症;ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群による認知症;クールー病による認知症;急性脱髄脳脊髄炎による認知症;亜急性硬化性全脳炎による認知症;橋本脳症による認知症;傍腫瘍性脳炎による認知症;自己免疫性脳炎による認知症;原発性中枢神経系新生物による認知症;転移性脳腫瘍による認知症;てんかんによる認知症;正常圧水頭症による認知症;脳に関与する代謝障害による認知症;頭部傷害による認知症;慢性硬膜下血腫による認知症;閉塞性水頭症による認知症;重金属および他の毒素への曝露による認知症;栄養欠乏症による認知症;チアミン欠乏症による認知症;ビタミンB12欠乏症による認知症;葉酸欠乏症による認知症;ビタミンE欠乏症による認知症;鉄欠乏症による認知症;他の栄養欠乏症による認知症;ペラグラによる認知症;代謝異常による認知症;高カルシウム血症による認知症;後天性甲状腺機能低下症による認知症;ウィルソン病による認知症;透析による認知症;肝不全による認知症;腎不全による認知症;染色体異常による認知症;ダウン症候群による認知症;脆弱X症候群による認知症;リウマチ性疾患による認知症;結節性多発動脈炎による認知症;全身性エリテマトーデスによる認知症;ベーチェット病による認知症;ある特定の指定の原因による認知症;認知症における行動または心理学的障害;認知症における精神病症状;認知症における気分症状;認知症における不安症状;認知症におけるアパシー;認知症における焦燥または攻撃性;認知症における脱抑制;認知症における徘徊;末期認知症;変性性認知症;初老期精神病精神障害;妄想性認知症;特に指定のない初老期認知症;老年期認知症;ならびに高齢者認知症。いくつかの実施形態では、認知症は、軽度の認知障害、アルツハイマー病、混合型認知症、血管性認知症、レビー小体病を伴う認知症、前頭側頭型認知症、初老期認知症、および老年期認知症から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、認知症は、軽度の認知障害または軽度の認知症を伴うアルツハイマー病連続体である。いくつかの実施形態では、認知症は、アルツハイマー型の軽度の認知障害などの軽度の認知障害である。いくつかの実施形態では、認知症は、前臨床アルツハイマー病、アルツハイマー型の軽度の認知障害、早発性家族性アルツハイマー病、または前駆期アルツハイマー病などのアルツハイマー病である。いくつかの実施形態では、認知症は、アルツハイマー型の軽度の認知障害である。いくつかの実施形態では、認知症は、混合型認知症である。いくつかの実施形態では、認知症は、血管性認知症である。いくつかの実施形態では、認知症は、レビー小体を伴う認知症である。いくつかの実施形態では、認知症は、前頭側頭型認知症である。いくつかの実施形態では、認知症は、初老期認知症である。いくつかの実施形態では、認知症は、老年期認知症である。
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用される「治療」という用語は、参照される医学的適応症を予防、遅延、発症のリスクを低減、改善、または治癒的に治療することを包含する。治療は、症候性治療または疾患修飾治療であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される治療という用語は、参照される医学的適応症を予防することを指す。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される治療という用語は、参照される医療適応症を遅延させること(例えば、発症を遅延させること)を指す。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される治療という用語は、参照される医学的適応症を発症するリスクを低減することを指す。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される治療という用語は、参照される医学的適応症を改善することを指す。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される治療という用語は、参照される医学的適応症を治癒的に治療することを指す。
【0012】
サブ集団
本発明に従ってGLP-1受容体作動薬を投与される対象者は、成人のヒト(大人とも呼ばれる)などのヒトであり得る。いくつかの実施形態では、対象者は、代謝症候群を有する。本明細書で使用される場合、「代謝症候群」という用語は、前糖尿病、糖尿病、心血管疾患、肥満、および高血圧から成る群から選択される1つ以上の適応症を指す。いくつかの実施形態では、「代謝症候群」は、前糖尿病、糖尿病、心血管疾患、肥満、および高血圧から成る群から選択される少なくとも2つの適応症を指す。いくつかの実施形態では、「代謝症候群」は、前糖尿病、糖尿病、心血管疾患、肥満、および高血圧から成る群から選択される少なくとも3つの適応症を指す。いくつかの実施形態では、対象者は、前糖尿病を有する。いくつかの実施形態では、対象者は、糖尿病を有する。いくつかの実施形態では、糖尿病は、2型糖尿病である。いくつかの実施形態では、対象者は、肥満を有する。いくつかの実施形態では、対象者は、心血管疾患を有する。いくつかの実施形態では、対象者は、肥満を有する。いくつかの実施形態では、肥満は、少なくとも27kg/mまたは少なくとも30kg/mなど、少なくとも25kg/mのBMIである。いくつかの実施形態では、対象者は、高血圧を有する。いくつかの実施形態では、心血管疾患は、冠動脈疾患(狭窄および心筋梗塞など)、脳卒中、心不全、高血圧性心疾患、リウマチ性心疾患、心筋症、心拍リズム異常、先天性心疾患、心臓弁膜症、心臓炎、大動脈瘤、末梢動脈疾患、血栓塞栓性疾患、および静脈血栓症のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、対象者は、以前にインスリンを投与されたことがある。
【0013】
GLP-1受容体作動薬
本明細書で使用される「GLP-1受容体作動薬」という用語は、ヒトGLP-1受容体を完全または部分的に活性化する化合物を指す。いくつかの実施形態では、本発明で使用するためのGLP-1受容体作動薬は、アシル化GLP-1受容体作動薬である。GLP-1受容体作動薬に関連して使用される場合、「アシル化」という用語は、脂肪酸または脂肪二酸などの親油性部分を含む少なくとも1つの置換基を共有結合されたGLP-1受容体作動薬を指す。いくつかの実施形態では、置換基は、脂肪酸または脂肪二酸を含む。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬という用語、ならびに本明細書に記載の特定のGLP-1受容体作動薬はまた、その塩形態も包含する。
【0014】
したがって、GLP-1受容体作動薬は、「GLP-1活性」を示すべきであるということになり、GLP-1活性は、化合物、すなわち、GLP-1受容体作動薬の、GLP-1受容体に結合し、かつシグナル伝達経路を開始し、その結果インスリン分泌促進作用または当該技術分野で既知であるような他の生理学的効果をもたらす能力を指す。いくつかの実施形態では、「GLP-1受容体作動薬」は、当該技術分野で公知の方法(例えば、WO98/08871を参照されたい)によって測定したときに1μM未満、例えば100nM未満の、例えば、親和性定数(K)で、GLP-1受容体に結合するか、またはその効力(EC50)で受容体を活性化し、インスリン分泌促進活性を示し、ここで、インスリン分泌促進活性は、当業者に公知のインビボまたはインビトロアッセイで測定され得る。例えば、GLP-1受容体作動薬は、血中グルコースが増加した(例えば、静脈内グルコース負荷試験(IVGTT)を使用して得られる)動物に投与され得る。当業者であれば、好適なグルコース用量および好適な採血方法を決定し(例えば、IVGTTに関する動物種に応じて)、経時的な血漿インスリン濃度を測定することができるであろう。好適なアッセイは、WO2015/155151などに記載されている。
【0015】
50%効果濃度(EC50)という用語は一般的に、用量反応曲線を参照することにより、ベースラインと最大との中間の反応を誘発する濃度を指す。EC50は、化合物の効力の尺度として使用され、その最大効果の50%が観察される濃度を表す。本明細書に記載の置換基を含むGLP-1受容体作動薬のアルブミン結合効果のために、アッセイがヒト血清アルブミンを含むかどうかに注意することが重要である。
【0016】
GLP-1受容体作動薬のインビトロ効力は、WO2015/155151、実施例29に記載されるようにヒト血清アルブミン(HSA)を含まずに決定され得、かつEC50が決定され得る。EC50値がより低いほど、効力がより良好である。いくつかの実施形態では、(HSAなしで)決定された効力(EC50)は、5~1000pM、例えば10~750pM、10~500pM、または10~200pMである。いくつかの実施形態では、EC50(HSAなし)は、最大500pM、例えば最大300pM、例えば最大200pMである。いくつかの実施形態では、EC50(HSAなし)は、ヒトGLP-1(7-37)と同等である。いくつかの実施形態では、EC50(HSAなし)は、最大50pMである。さらなるそのような実施形態では、EC50は、最大40pM、例えば最大30pM、例えば最大20pM、例えば最大10pMである。いくつかの実施形態では、EC50は、約10pMである。
【0017】
同様に、または代替的に、GLP-1受容体作動薬のアルブミンへの結合が、HSAを含むWO2015/155151の実施例29のインビトロ効力アッセイを使用して測定されてもよい。血清アルブミンの存在下でのインビトロ効力、EC50値の増加は、血清アルブミンとの親和性を反映する。いくつかの実施形態では、決定された効力(EC50)(1%HSAを有する)は、5~1000pM、例えば100~750pM、200~500pM、または100~400pMである。いくつかの実施形態では、EC50(1%HSAを有する)は、最大750pM、例えば最大500pM、例えば最大400pM、例えば最大300、または例えば最大250pMである。
【0018】
必要な場合、既知のGLP-1受容体作動薬に関する倍数変動は、EC50(試験化合物)/EC50(既知の化合物)として計算され得、この比が0.5~1.5または0.8~1.2などである場合、効力は、同等であるとみなされる。いくつかの実施形態では、効力、EC50(HSAなし)は、リラグルチドの効力と同等である。いくつかの実施形態では、効力、EC50(HSAなし)は、セマグルチドの効力と同等である。いくつかの実施形態では、効力、EC50(1%HSAを有する)は、リラグルチドの効力と同等である。いくつかの実施形態では、効力、EC50(1%HSAを有する)は、セマグルチドの効力と同等である。
【0019】
いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、1つ以上の置換、欠失、付加、および/または修飾を含む。いくつかの実施形態では、修飾は、共有結合した置換基である。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、ヒトGLP-1(GLP-1(7-37))またはそのバリアントであるペプチドを含む。本明細書では「GLP-1(7-37)」とも呼ばれる、ヒトGLP-1は、配列HAEGTFTSDV SSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG(配列番号1)を有する。いくつかの実施形態では、「バリアント」という用語は、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、付加、および/または修飾を含む化合物を指す。アミノ酸残基のそのような付加または欠失は、ペプチドのN末端および/またはペプチドのC末端に発生し得る。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬を記載するために単純な用語体系が使用され、例えば、[Aib8]GLP-1(7-37)は、GLP-1(7-37)受容体作動薬を示し、8位の自然発生のAlaは、Aibで置換されている。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、例えば、GLP-1(7-37)(配列番号1)と比較して、置換、欠失、挿入、および/または修飾によって改変された最大12個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、例えば、GLP-1(7-37)(配列番号1)と比較して、置換、欠失、挿入、および/または修飾によって改変された最大10個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、例えば、GLP-1(7-37)(配列番号1)と比較して、置換、欠失、挿入、および/または修飾によって改変された最大9個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、例えば、GLP-1(7-37)(配列番号1)と比較して、置換、欠失、挿入、および/または修飾によって改変された最大8個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、例えば、GLP-1(7-37)(配列番号1)と比較して、置換、欠失、挿入、および/または修飾によって改変された最大7個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、例えば、GLP-1(7-37)(配列番号1)と比較して、置換、欠失、挿入、および/または修飾によって改変された最大6個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、例えば、GLP-1(7-37)(配列番号1)と比較して、置換、欠失、挿入、および/または修飾によって改変された最大5個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、例えば、GLP-1(7-37)(配列番号1)と比較して、置換、欠失、挿入、および/または修飾によって改変された最大4個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、例えば、GLP-1(7-37)(配列番号1)と比較して、置換、欠失、挿入、および/または修飾によって改変された最大3個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、例えば、GLP-1(7-37)(配列番号1)と比較して、置換、欠失、挿入、および/または修飾によって改変された最大2個のアミノ酸を含む。別段の定めのない限り、GLP-1は、L-アミノ酸のみを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、GLP-1(7-37)の全長にかけて、GLP-1(7-37)に対して少なくとも60%、65%、70%、80%、または90%の配列同一性を示す。2つの化合物間の配列同一性を決定するための方法の一例として、2つのペプチド[Aib8]GLP-1(7-37)およびGLP-1(7-37)を整列させる。GLP-1(7-37)に対する[Aib8]GLP-1(7-37)の配列同一性は、整列された同一の残基の数から異なる残基の数を減算し、GLP-1(7-37)中の残基の総数で除算することによって得られる。したがって、当該例では、配列同一性は、(31-1)/31である。
【0021】
いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬のC末端は、アミドである。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、GLP-1(7-37)またはGLP-1(7-36)アミドである。
【0022】
GLP-1受容体作動薬の効果を延長するために、GLP-1受容体作動薬が、延長された半減期を有することが好ましい。半減期は、WO2012/140117に記載されるように、雄Sprague Dawleyラットまたはミニブタなどの適切なモデルにおいて、当該技術分野で既知の方法によって決定され得る。ラットの半減期は、その中の実施例39のように決定されてもよく、ミニブタの半減期は、実施例37のように決定されてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明によるGLP-1受容体作動薬は、ラットにおいて2時間超の半減期を有する。いくつかの実施形態では、本発明によるGLP-1受容体作動薬は、ラットにおいて、4時間超、例えば6時間超、例えば8時間超、例えば10時間超、例えば12時間超、または例えば15時間超の半減期を有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明によるGLP-1受容体作動薬は、ミニブタにおいて24時間超の半減期を有する。いくつかの実施形態では、本発明によるGLP-1受容体作動薬は、ミニブタにおいて、30時間超、例えば36時間超、例えば42時間超、例えば48時間超、例えば54時間超、または例えば60時間超の半減期を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、最大12000Da、例えば最大7500Da、例えば最大5000Daの分子量を有する。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、最大10000g/mol、例えば最大8000g/mol、例えば最大6000g/molのモル質量を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、ペプチドに共有結合した1つまたは2つの置換基を含み、当該置換基は、親油性部分を含む。いくつかの実施形態では、置換基は、脂肪酸または脂肪二酸を含む。いくつかの実施形態では、置換基は、C16、C18、またはC20脂肪酸を含む。いくつかの実施形態では、置換基は、C16、C18、またはC20脂二肪酸を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、置換基は、式(X)、
【化1】
を含み、式中、nは、少なくとも13であり、例えば、nは、13、14、15、16、17、18、または19である。いくつかの実施形態では、置換基は、式(X)を含み、式中、nは、13~19の範囲、例えば13~17の範囲である。いくつかの実施形態では、置換基は、式(X)を含み、式中、nは、13、15、または17である。いくつかの実施形態では、置換基は、式(X)を含み、式中、nは、13である。いくつかの実施形態では、置換基は、式(X)を含み、式中、nは、15である。いくつかの実施形態では、置換基は、式(X)を含み、式中、nは、17である。いくつかの実施形態では、置換基は、式(XIa)、
HOOC-(C)-O-(CH-CO-*(XIa)を含み、式中、mは、6~14の範囲の整数である。いくつかの実施形態では、置換基は、式(XIb)、
【化2】
を含み、式中、カルボキシ基は、(C)基の位置2、3、または4であり、式中、mは、8~11の範囲の整数である。いくつかの実施形態では、置換基は、式(XIa)または式(XIb)を含み、式中、mは、6~14の範囲、例えば8~11の範囲である。いくつかの実施形態では、置換基は、式(XIa)または式(XIb)を含み、式中、mは、8、10、または12である。いくつかの実施形態では、置換基は、式(XIa)または式(XIb)を含み、式中、mは、9である。いくつかの実施形態では、置換基は、式(XIa)または式(XIb)を含み、式中、mは、11である。
【0028】
いくつかの実施形態では、置換基は、当該置換基において、当該置換基とGLP-1受容体作動薬中のペプチドとの間の付着点の近位に位置するリンカー(スペーサーとも呼ばれる)を含む。いくつかの実施形態では、置換基は、当該置換基において、当該置換基と当該GLP-1受容体作動薬中のペプチドとの間の付着点の近位に位置するリンカーを含む。いくつかの実施形態では、置換基は、2つのOEGなどの1つ以上の8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(OEG)を含む。1つ以上のOEGは、リンカーであり得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、置換基は、[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]である。いくつかの実施形態では、置換基は、[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]である。いくつかの実施形態では、置換基は、[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-({トランス-4-[(19-カルボキシノナデカノイルアミノ)メチル]シクロヘキサンカルボニル}アミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]である。いくつかの実施形態では、置換基は、{2-[2-(2-{2-[2-(2-{(S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブチリルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]-アセチル}である。いくつかの実施形態では、置換基は、{2-[2-(2-{2-[2-(2-{(S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブチリルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]-アセチル}である。いくつかの実施形態では、置換基は、[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]-ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]である。
【0030】
いくつかの実施形態では、置換基は、ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミンを含む。いくつかの実施形態では、置換基は、Fcドメインまたは修飾IgG4 Fcドメインなどのイムノグロブリンドメインまたは断片を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、リラグルチド、セマグルチド、化合物A、および化合物Bから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、リラグルチドである。リラグルチドは、GLP-1受容体作動薬Arg34,Lys26-(N-エプシロン-(ガンマ-L-グルタミル(N-アルファ-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)である。リラグルチドは、WO98/08871の実施例37に記載されるように調製され得る。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、セマグルチドである。セマグルチドは、GLP-1受容体作動薬N-エプシロン26-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル][Aib8,Arg34]GLP-1-(7-37)である。セマグルチドは、WO2006/097537の実施例4に記載されるように調製され得る。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、化合物Aであり、これは、WO2011/080103の実施例2に示され、かつNε26{2-[2-(2-{2-[2-(2-{(S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブチリルアミノ}-エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチル}、Nε37-{2-[2-(2-{2-[2-(2-{(S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブチリルアミノ}エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ}エトキシ)エトキシ]-アセチル}-[Aib,Arg34,Lys37]GLP-1(7-37)-ペプチドと名付けられている、ジアシル化[Aib8,Arg34,Lys37]GLP-1(7-37)である。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、化合物Bであり、これは、WO2012/140117の実施例31に示され、かつNε27-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]-アセチル]、Nε36-[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[10-(4-カルボキシフェノキシ)デカノイルアミノ]-ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]-[Aib8,Glu22,Arg26,Lys27,Glu30,Arg34,Lys36]-GLP-1-(7-37)-ペプチジル-Glu-Glyと名付けられている、ジアシル化[Aib8,Glu22,Arg26,Lys27,Glu30,Arg34,Lys36]-GLP-1-(7-37)-ペプチジル-Glu-Glyである。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、デュラグルチドまたはアルビグルチドである。
【0032】
いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、その薬学的に許容可能な塩、アミド、またはエステルの形態である。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、1つ以上の薬学的に許容可能な対イオンを含む。
【0033】
医薬組成物
GLP-1受容体作動薬は、医薬組成物の形態で投与され得る。医薬組成物は、液体または固体形態であり得る。
【0034】
非経口投与
医薬組成物は、0.1mg/ml~100mg/mlの濃度のGLP-1受容体作動薬を含み得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.01~50mg/ml、または0.01~20mg/ml、または0.01~10mg/mlのGLP-1受容体作動薬を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.1~20mg/mlのGLP-1受容体作動薬を含む。
【0035】
本明細書に記載される医薬組成物は、例えば、緩衝液系、防腐剤、張性剤、キレート剤、安定剤、および界面活性剤から成る群から選択される、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、緩衝液、等張剤、および防腐剤から成る群から選択される1つ以上などの、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含む。様々な賦形剤を伴った薬学的に活性な成分の製剤は、当該技術分野で既知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(例えば、第19版(1995年)、および任意のそれ以降の版)を参照されたい。「賦形剤」という用語は、例えば、GLP-1受容体作動薬など、活性治療成分以外の任意の成分を幅広く指す。賦形剤は、不活性物質、非活性物質、および/または医薬的に活性でない物質であってもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、7.0~9.5または7.2~9.5など、7.0~10.0の範囲内のpHを有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、7.0~7.8または7.8~8.2など、7.0~8.5の範囲内のpHを有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、7.4のpHを有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、8.15のpHを有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、リン酸ナトリウム緩衝剤などのリン酸緩衝剤、例えば、リン酸二ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、プロピレングリコールなどの等張剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、フェノールなどの防腐剤を含む。
【0037】
医薬組成物は、溶液または懸濁液の形態とすることができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、水溶液または水性懸濁液などの水性組成物である。「水性組成物」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む組成物として定義される。同様に、「水溶液」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む溶液として定義され、「水性懸濁液」という用語は、少なくとも50%w/wの水を含む懸濁液として定義される。水性組成物は、少なくなくとも50%w/wの水、または少なくとも60%、70%、80%、もしくはさらに少なくとも90%w/wの水を含み得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、約0.1~20mg/mlのGLP-1受容体作動薬、約2~15mMのリン酸緩衝液、約2~25mg/mlのプロピレングリコールを含む医薬組成物の形態で投与され、7.0~9.0の範囲内のpHを有する。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、約0.1~20mg/mlのGLP-1受容体作動薬、約2~15mMのリン酸緩衝液、約2~25mg/mlのプロピレングリコール、約1~18mg/mlのフェノールを含む医薬組成物の形態で投与され、7.0~9.0の範囲内のpHを有する。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、約1.34mg/mlのGLP-1受容体作動薬(例えば、セマグルチド)、約1.42mg/mlのリン酸二ナトリウム二水和物、約14.0mg/mlのプロピレングリコール、約5.5mg/mlのフェノールを含む医薬組成物の形態で投与され、約7.4のpHを有する。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬(例えば、セマグルチド)は、約1.34mg/mlのGLP-1受容体作動薬、1.42mg/mlのリン酸二ナトリウム二水和物、14.0mg/mlのプロピレングリコール、5.5mg/mlのフェノールを含む医薬組成物の形態で投与され、7.4のpHを有する。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬(例えば、リラグルチド)は、GLP-1受容体作動薬(例えば、3~8mg/ml)、リン酸二ナトリウム二水和物、プロピレングリコール、フェノールを含む医薬組成物の形態で投与され、約8.0~8.3のpHを有する。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬(例えば、リラグルチド)は、GLP-1受容体作動薬(例えば、約6.0mg/ml)、リン酸二ナトリウム二水和物、プロピレングリコール、フェノールを含む医薬組成物の形態で投与され、約8.15のpHを有する。
【0039】
経口投与
固体組成物は、本明細書にさらに記載される経口経路による投与に好適な固体組成物であり得る。いくつかの実施形態では、固体組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含む。本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、活性治療成分または活性医薬成分(API)以外の任意の成分を幅広く指す。賦形剤は、不活性物質、非活性物質、および/または治療的もしくは医薬的に活性でない物質であり得る。賦形剤は、例えば、担体、ビヒクル、充填剤、結合剤、潤滑剤、滑剤、崩壊剤、流量制御剤、結晶化抑制剤可溶化剤、安定剤、着色剤、香味剤、界面活性剤、乳化剤、もしくはそれらの組み合わせとして、ならびに/または治療活性物質もしくは活性医薬成分の投与および/もしくは吸収を改善するために、様々な目的を果たし得る。使用される各賦形剤の量は、当該技術分野において慣行である範囲内で変化してもよい。経口剤形を製剤化するために使用され得る技法および賦形剤については、Handbook of Pharmaceutical Excipients,8th edition,Sheskey et al.,Eds.,American Pharmaceuticals Association and the Pharmaceutical Press,publications department of the Royal Pharmaceutical Society of Great Britain(2017)、およびRemington:the Science and Practice of Pharmacy,22nd edition,Remington and Allen,Eds.,Pharmaceutical Press(2013)に記載されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は、結合剤、例えば、ポリビニルピロリドン(ポビドン)など;充填剤、例えば、セルロース粉末、微結晶性セルロース、セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、二塩基性リン酸カルシウム、コーンスターチ、アルファ化デンプンなど;潤滑剤および/または滑剤、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、トリベヘン酸グリセロールなど;流量制御剤、例えば、コロイダルシリカ、タルクなど;結晶化抑制剤、例えば、ポビドンなど;可溶化剤、例えば、プルロニック、ポビドンなど;着色剤、染料および色素、例えば、赤色または黄色酸化鉄、二酸化チタン、タルクなどを含む;pH調整剤、例えば、クエン酸、酒石酸、フマル酸、クエン酸ナトリウム、二塩基性リン酸カルシウム、二塩基性リン酸ナトリウムなど;界面活性剤および乳化剤、例えば、プルロニック、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエトキシ化および水添ヒマシ油など;ならびにこれらの賦形剤および/またはアジュバントのうちの2つ以上の混合物から選択され得る。
【0040】
固体組成物は、結合剤、例えば、ポビドン;デンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、微結晶性セルロース、例えば、FMC(Philadelphia,PA)製のAvicel PH、Dow Chemical Corp.(Midland,MI)製のヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースMETHOCEL;スクロース;デキストロース;コーンシロップ;ポリサッカライド;ならびにゼラチンを含んでもよい。結合剤は、乾燥結合剤および/または湿式造粒結合剤から成る群から選択されてもよい。好適な乾燥結合剤は、例えば、セルロース粉末および微結晶性セルロース、例えば、Avicel PH 102およびAvicel PH 200である。いくつかの実施形態では、固体組成物は、Aavicel PH 102などのAvicelを含む。湿式造粒または乾式造粒に好適な結合剤は、コーンスターチ、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー(コポビドン)、ならびにセルロース誘導体、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシ-プロピルメチルセルロースである。いくつかの実施形態では、固体組成物は、ポビドンを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、ラクトース、マンニトール、エリスリトール、スクロース、ソルビトール、リン酸カルシウム、例えば、カルシウム水素リン酸、微結晶性セルロース、粉末セルロース、粉砂糖、圧縮性糖、デキストレート、デキストリン、およびデキストロースから選択され得る充填剤を含む。いくつかの実施形態では、固体組成物は、Avicel PH 102またはAvicel PH 200などの微結晶性セルロースを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、潤滑剤および/または滑剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、潤滑剤および/または滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸グリセリル、デベヘン酸グリセリル、ベヘノイルポリオキシル-8グリセリド、ポリエチレンオキシドポリマー、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、水添植物油、二酸化ケイ素、および/またはポリエチレングリコールなどを含む。いくつかの実施形態では、固体組成物は、ステアリン酸マグネシウムまたはデベヘン酸グリセリル(製品Compritol(登録商標)888ATOなど)を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、崩壊剤、例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、または乾燥コーンスターチを含む。固体組成物は、1つ以上の界面活性剤、例えば、界面活性剤、少なくとも1つの界面活性剤、または2つの異なる界面活性剤を含んでもよい。「界面活性剤」という用語は、水溶性(親水性)部分、および脂溶性(親油性)部分から成る、任意の分子またはイオンを指す。界面活性剤は、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、および/または両性イオン界面活性剤から成る群から選択されてもよい。
【0044】
固体組成物は、送達剤または吸収促進剤をさらに含み得、本発明に関しては、GLP-1受容体作動薬の経口曝露量を増加させることができる賦形剤である。送達剤は、アニオンN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリレートを含む、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩(本明細書ではNACの塩とも呼ばれる)であり得る。N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリレートの構造式を式(I)に示す。
【化3】
【0045】
いくつかの実施形態では、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩は、1つの一価カチオン、2つの一価カチオン、または1つの二価カチオンを含む。いくつかの実施形態では、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩は、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸のナトリウム塩、カリウム塩、およびカルシウム塩から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、および/またはアンモニウム塩から成る群から選択される。いくつかの実施形態では、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩は、ナトリウム塩またはカリウム塩である。N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリレートの塩は、例えば、WO96/030036、WO00/046182、WO01/092206、またはWO2008/028859に記載される方法を使用して調製され得る。N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩は、結晶性であってもよく、かつ/または非晶質であってもよい。いくつかの実施形態では、送達剤は、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩の無水物、一水和物、二水和物、三水和物、溶媒和物、または水和物の3分の1、ならびにそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、送達剤は、WO2007/121318に記載されるように、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩である。いくつかの実施形態では、送達剤は、8-(サリチロイルアミノ)オクタン酸ナトリウムとしても既知である、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸ナトリウム(本明細書では「SNAC」と呼ばれる)である。
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明で使用するための組成物は、経口投与のために、錠剤などの固体組成物の形態である。
【0047】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、0.5~40mgまたは1~30mgなど、0.1~50mgの範囲内の量のGLP-1受容体作動薬を含む。いくつかの実施形態では、固体組成物は、3~18mgまたは5~15mgなど、2~20mgの範囲内の量のGLP-1受容体作動薬を含む。いくつかの実施形態では、固体組成物は、約7mgまたは約14mgなど、約3mgの範囲内の量のGLP-1受容体作動薬を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、固体組成物(例えば、錠剤)の少なくとも30%(w/w)は、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩である。いくつかの実施形態では、固体組成物(例えば、錠剤)の少なくとも50%(w/w)は、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩である。いくつかの実施形態では、組成物の用量単位当たりのN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩の量は、0.20~.5mmol、0.25~1.0mmol、0.30~0.75mmol、または0.45~0.65mmolなどの範囲内である。いくつかの実施形態では、組成物中のSNACの量は、75~600mgの範囲内である。いくつかの実施形態では、組成物中のSNACの量は、用量単位当たり、約100~約300mgなど、80~350mgなど、75~400mgの範囲内である。
【0049】
いくつかの実施形態では、固体組成物は、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤を含む。いくつかの実施形態では、固体組成物の単位用量は、0.1~50mgのGLP-1受容体作動薬、25~600mgのN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸(NAC)(NAC(SNAC)のナトリウム塩など)、および0~25mgの潤滑剤を含む。
【0050】
投与レジメン
GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病を治療するために治療的に有効な量など、治療有効量で投与され得る。治療有効量のGLP-1受容体作動薬は、医師によって評価され得る。GLP-1受容体作動薬の用量は、1~30mgまたは3~20mgなど、0.01~50mgの範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、1日の任意の時間で投与される。
【0051】
セマグルチドなどのGLP-1受容体作動薬は、週に1回、または1日1回などより頻繁に投与され得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、週当たり0.5または1.0mgなど、週当たり0.05~30mgの範囲内の量で、任意選択で週1回投与によって投与される。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、週当たり少なくとも0.5mgまたは週当たり少なくとも1mgなど、週当たり少なくとも0.1mgの量で、任意選択で週1回投与によって投与される。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、週当たり20mg以下または週当たり15mg以下など、週当たり25mg以下の量で、任意選択で週1回投与によって投与される。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、週当たり6mg以下または週当たり3mg以下など、週当たり10mg以下の量で、任意選択で週1回投与によって投与される。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、0.5または1.0mgの量で週に1回投与される。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、死亡のリスクを低減する。
【0054】
いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬の投与は、セマグルチドが少なくとも16か月または少なくとも18か月など、少なくとも12か月投与される慢性治療である。
【0055】
非経口投与
GLP-1受容体作動薬は、非経口投与、例えば、皮下注射を介して投与され得る。GLP-1受容体作動薬は、3mlの使い捨てペン型注射器などのペン型注射器を使用して投与され得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬の用量は、0.1~3.0mgの範囲内など、0.1~5.0mgの範囲内である。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬の1日用量は、0.5および1.0mgから成る群から選択される。
【0057】
経口投与
GLP-1受容体作動薬は、例えば、錠剤、コーティングされた錠剤、小袋、または硬質もしくは軟質ゼラチンカプセルなどのカプセルの形態で、経口投与され得、そのようなすべての組成物は、固体経口剤形とみなされる。経口投与は、1日1回投与とすることができる。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬の用量は、2~20mgまたは3~15mgなど、1~30mgの範囲内である。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬の用量は、3、7、または14mgである。組成物は、錠剤などの用量単位の形態であり得る。いくつかの実施形態では、単位用量の重量は、50~750mgの範囲内など、または約100~500mgなど、50mg~1000mgの範囲内である。いくつかの実施形態では、単位用量の重量は、50~300mgまたは100~400mgの範囲内など、75~350mgの範囲内である。経口投与のための錠剤は、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸(SNAC)のナトリウム塩など、30%(w/w)のN-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、錠剤へと圧縮される前に造粒され得る。組成物は、顆粒部分および/または顆粒外部分を含み得、顆粒部分は造粒されており、顆粒外部分は造粒後に添加されている。GLP-1受容体作動薬は、顆粒部分または顆粒外部分に含まれ得る。いくつかの実施形態では、顆粒外部分は、GLP-1受容体作動薬を含む。一実施形態では、顆粒外部分は、潤滑剤および/または滑剤をさらに含み得る。一実施形態では、顆粒部分は、潤滑剤および/または滑剤をさらに含み得る。一実施形態では、顆粒部分および顆粒外部分は、潤滑剤および/または滑剤を含み得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、本発明に従って投与される唯一の薬学的に活性な成分である。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、本発明において1つ以上のさらに薬学的に活性な成分と組み合わされる。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、リバスチグミン、メナンチン(メナンチン塩酸塩など)、ドネペジル、およびガランタミンから成る群から選択される1つ以上のさらに薬学的に活性な成分と組み合わされる。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、リバスチグミンと組み合わされる。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、メナンチン塩酸塩などのメナンチンと組み合わされる。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、ドネペジルと組み合わされる。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬は、ガランタミンと組み合わされる。
【0059】
いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬に関して本明細書で使用される「慢性治療」という用語は、治療効果をもたらすための量および頻度での投与を意味する。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬に関して本明細書で使用される「慢性治療」という用語は、0.5または1.0mgなど、0.1~3.0mgのGLP-1受容体作動薬(例えば、セマグルチド)の週1回投与を意味する。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬に関して本明細書で使用される「慢性治療」という用語は、0.05、0.1、0.2、または0.3mgなど、0.05~0.3mgのGLP-1受容体作動薬(例えば、セマグルチド)の1日1回投与を意味する。いくつかの実施形態では、GLP-1受容体作動薬に関して本明細書で使用される「慢性治療」という用語は、0.5~4mgなど、0.1~6mgのGLP-1受容体作動薬(例えば、リラグルチド)の1日1回投与を意味する。本明細書で使用される「慢性治療」という用語は、長期間(例えば、少なくとも2年または少なくとも5年)の、処方された投与レジメンによる薬剤の投与(例えば、週1回投与)を指し、最大5%などの最大10%の用量が逃されてもよく、但し、連続する用量が10回を超えて逃されないことを条件とする。
【0060】
別段の記載がない限り、範囲は、その終点を含む。いくつかの実施形態では、「1つ(a)」という用語は、「1つ以上」を意味する。いくつかの実施形態では、本明細書に別段示されない限り、単数形で提示される用語は、複数の状況も含む。本明細書では、「約」という用語は、言及される値の±10%を意味し、その値を含む。
【0061】
本発明の非限定的な実施形態
本発明の非限定的な実施形態には、以下が含まれる。
1.認知症の治療のための方法であって、当該方法が、GLP-1受容体作動薬をそれを必要とする対象者に投与することを含み、当該対象者が、代謝症候群を有する、方法。
2.認知症の治療のための方法であって、当該方法が、セマグルチドをそれを必要とする対象者に投与することを含む、方法。
3.認知症の発症リスクを低減するための方法であって、当該方法が、GLP-1受容体作動薬をそれを必要とするヒト対象者に投与することを含み、当該対象者が、前糖尿病、糖尿病、心血管疾患、肥満、および高血圧から成る群から選択される1つ以上の適応症を有する、方法。
4.認知症の発症リスクを低減するための方法であって、当該方法が、GLP-1受容体作動薬をそれを必要とする対象者に投与することを含み、当該対象者が、代謝症候群を有する、方法。
5.認知症の発症リスクを低減するための方法であって、当該方法が、GLP-1受容体作動薬をそれを必要とする対象者に投与することを含み、当該対象者が、前糖尿病、糖尿病、心血管疾患、肥満、および高血圧から成る群から選択される1つ以上の適応症を有する、方法。
6.認知症の発症リスクを低減するための方法であって、当該方法が、セマグルチドをそれを必要とする対象者に投与することを含む、方法。
7.治療が、認知症の発症リスクを低減する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.当該代謝症候群が、前糖尿病、糖尿病、心血管疾患、肥満、および高血圧から成る群から選択される1つ以上の適応症である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
9.当該対象者が、前糖尿病を有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
10.当該対象者が、糖尿病を有する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
11.当該対象者が、心血管疾患を有する、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
12.当該対象者が、肥満を有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
13.当該対象者が、高血圧を有する、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
14.当該GLP-1受容体作動薬が、任意選択で、1つ以上の置換、欠失、付加、および/または修飾を含む、GLP-1(7-37)(配列番号1)を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
15.当該GLP-1受容体作動薬が、例えば、GLP-1(7-37)(配列番号1)と比較して、置換、欠失、挿入、および/または修飾によって改変された最大12個のアミノ酸を含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
16.当該GLP-1受容体作動薬が、例えば、GLP-1(7-37)(配列番号1)と比較して、置換、欠失、挿入、および/または修飾によって改変された最大10個のアミノ酸を含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
17.当該GLP-1受容体作動薬が、例えば、GLP-1(7-37)(配列番号1)と比較して、置換、欠失、挿入、および/または修飾によって改変された最大8個のアミノ酸を含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
18.当該GLP-1受容体作動薬が、例えば、GLP-1(7-37)(配列番号1)と比較して、置換、欠失、挿入、および/または修飾によって改変された最大6個のアミノ酸を含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
19.当該GLP-1受容体作動薬が、1つ以上の置換基を含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
20.当該置換基が、1つ以上のOEGなどのリンカーを含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
21.当該リンカーが、当該置換基において、当該置換基と当該GLP-1受容体作動薬中のペプチドとの間の付着点の近位に位置する、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
22.当該GLP-1受容体作動薬が、最大500pMのEC50(HSAなし)を有する、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
23.当該GLP-1受容体作動薬が、12kDa以下である、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
24.当該GLP-1受容体作動薬が、リラグルチド、セマグルチド、ならびに化合物Aおよび化合物Bから成る群から選択される、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
25.当該GLP-1受容体作動薬が、リラグルチドである、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
26.当該GLP-1受容体作動薬が、セマグルチドである、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
27.当該GLP-1受容体作動薬が、化合物Aである、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
28.当該GLP-1受容体作動薬が、化合物Bである、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
29.当該GLP-1受容体作動薬が、デュラグルチドである、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
30.当該GLP-1受容体作動薬が、アルビグルチドである、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
31.当該対象者が、ヒトである、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
32.当該認知症が、認知症疾患連続体におけるすべての形態および段階である、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
33.当該認知症が、軽度の認知障害である、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
34.当該認知症が、アルツハイマー病である、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
35.当該認知症が、前臨床アルツハイマー病、アルツハイマー型の軽度の認知障害、早発性家族性アルツハイマー病、および前駆期アルツハイマー病から成る群から選択される、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
36.当該認知症が、前臨床アルツハイマー病である、実施形態1~35のいずれか1つに記載の方法。
37.当該認知症が、アルツハイマー型の軽度の認知障害である、実施形態1~36のいずれか1つに記載の方法。
38.当該認知症が、早発性家族性アルツハイマー病である、実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法。
39.当該認知症が、前駆期アルツハイマー病である、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法。
40.当該GLP-1受容体作動薬が、当該対象者に投与される唯一の薬学的に活性な成分である、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法。
41.当該GLP-1受容体作動薬が、皮下投与される、実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法。
42.当該GLP-1受容体作動薬が、溶液または懸濁液の形態である組成物で投与される、実施形態1~41のいずれか1つに記載の方法。
43.当該組成物が、少なくとも90%の水を含む、実施形態1~42に記載の方法。
44.当該GLP-1受容体作動薬が、セマグルチドであり、皮下投与され、少なくとも90%の水を含む7.0~9.0の範囲のpHを有する溶液の形態である、実施形態1~43のいずれか1つに記載の方法。
45.当該GLP-1受容体作動薬が、経口投与される、実施形態1~44のいずれか1つに記載の方法。
46.当該GLP-1受容体作動薬が、錠剤の形態で投与される、実施形態1~45のいずれか1つに記載の方法。
47.当該錠剤の少なくとも30%(w/w)が、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩である、実施形態1~46に記載の方法。
48.当該錠剤の少なくとも50%(w/w)が、N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の塩である、実施形態1~47に記載の方法。
49.N-(8-(2-ヒドロキシベンゾイル)アミノ)カプリル酸の当該塩が、SNACである、実施形態1~48に記載の方法。
50.当該対象者が、以前にインスリンを投与されたことがある、実施形態1~49のいずれか1つに記載の方法。
51.当該方法が、当該対象者の死亡のリスクを低減する、実施形態1~50のいずれか1つに記載の方法。
52.当該GLP-1受容体作動薬の当該投与が、セマグルチドが少なくとも16か月または少なくとも18か月など、少なくとも12か月投与される慢性治療である、実施形態1~51のいずれか1つに記載の方法。
【実施例
【0062】
実施例1-代謝症候群を有する対象者における認知症リスク低減
方法
GLP-1受容体作動薬への曝露、およびその後の認知症の診断は、3つのプールされた二重盲検無作為化対照試験(RCT)および糖尿病を有する患者の全国コホートを含む、長期治療曝露を用いたデータソースで評価された。これは、GLP-1受容体作動薬の使用が、糖尿病を有する患者における認知症の発症を低減するかどうかを調査する目的で行われた。
【0063】
試験および登録
研究設計およびデータソースを、潜在的な付勢の異なる主要なソースに統合する三角測量アプローチを採用して、より信頼性の高い回答を得た。最初に、3つの大型RCTから、GLP-1受容体作動薬、リラグルチド(LEADER;9,340人の患者)、皮下セマグルチド(SUSTAIN-6;3,297人の患者)、および経口セマグルチド(PINEER 6;3,183人の患者)のデータをプールした。3つの試験すべては、多施設、二重盲検、プラセボ対照心血管転帰試験であった。標準治療に加えて、プラセボもしくはリラグルチド(LEADER)、またはセマグルチド(SUSTAIN-6;PIONEER 6)を投与するために、確立された心血管疾患のリスクが高い、またはそれを有する2型糖尿病を有する患者を1:1の比率で無作為に割り当てた。これらの試験では、以前に記載されるように、糖尿病(GLP-1受容体作動薬、ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害剤(DPP4阻害剤)、およびプラムリンチドを除く)の治療を、治験責任医師の裁量で、両群で調整または追加した。LEADERで試験された製剤は、リラグルチド、リン酸二ナトリウム二水和物、プロピレングリコール、およびフェノールをpH8.15で含む水性組成物であった。SUSTAIN-6で試験された製剤は、セマグルチド、リン酸二ナトリウム二水和物、プロピレングリコール、およびフェノールをpH7.4で含む水性組成物であった。PIONEERで試験された製剤は、セマグルチドおよびSNACを含む錠剤であった。
【0064】
次に、1995年1月1日以降にデンマークで償還されたすべての処方薬に関する情報を保持しているデンマーク国家処方登録簿(表S1)を使用して、糖尿病の治療を受けた患者の全国コホートを識別した。1995年1月1日から2017年12月31日の間に、二次糖尿病治療(表S2)の初回処方を受けた全員が識別された。
【0065】
認知症の発症に関する追跡は、2009年1月1日に開始され(図4)、これは、GLP-1受容体作動薬が、デンマークで糖尿病に対する周知の利用可能な治療であると考えられ得た時期であったためである。二次糖尿病治療のために初めて処方された患者を正しく識別するため、1995年1月1日から1995年6月30日までの間に処方された患者を除外した。さらに、追跡開始前に確立された認知症を有する患者、または50歳以前に認知症を発現した患者は除外された。
【0066】
主な分析には、少なくとも5年間の二次糖尿病治療に曝露を有した全員が含まれた。
【0067】
GLP-1受容体作動薬への曝露
3つのRCTに対する所定の治療期間を、補足表S4に列挙する。全国コホートでは、GLP-1受容体作動薬のすべての処方薬が識別され(表S2)、追跡期間を通して累積GLP-1受容体作動薬曝露の年数が更新された。患者は、いずれかのGLP-1受容体作動薬に対して少なくとも1回の処方が償還された場合、曝露されたとみなされた。曝露期間は、少なくとも1回の処方が償還された6か月の長い間隔に従って蓄積された。
【0068】
他の糖尿病治療への曝露
全国コホートにおいて、認知症予防に対するGLP-1受容体作動薬の潜在的な影響が、GLP-1受容体作動薬による治療に特異的であるかどうかを試験するために、「他の二次糖尿病治療」を評価した。追跡期間中にGLP-1受容体作動薬の代替的な治療選択肢として利用可能であった、他の二次糖尿病治療、すなわち、インスリン、スルホニル尿素、DPP4阻害剤、アカルボース、およびメグリチニドを特定した(表S2)。曝露時間は、少なくとも1回の処方が償還された6か月の長い間隔に従って蓄積された。メトホルミンを用いた単剤療法は、糖尿病に対する一次治療とみなされ、したがってGLP-1受容体作動薬と同等の治療選択肢とならないため、評価されなかった。
【0069】
認知症
RCTでは、規制目的のための標準化された医学用語集(MedDRA、バージョン21.1)を使用して、認知症の狭い範囲の検索用語を使用して認知症関連有害事象を識別した(表S3)。全国コホートにおいて、認知症は、全国患者登録簿における認知症の診断として、または全国登録簿(コリンエステラーゼ阻害剤およびメマンチン)における承認された認知症特異的治療のための最初の処方薬として定義された(表S1およびS2は、ICD10およびATCコードを列挙する)。
【0070】
統計分析
プールされたRCTについて、治療割り当てを唯一の説明変数として、Cox回帰を使用して治療企図解析を行い、GLP-1受容体作動薬対プラセボの認知症の発症に対するハザード比を決定した。GLP-1受容体作動薬対プラセボに無作為化された患者の認知症に対するハザード比を報告した。競合リスクとしての死亡を伴う認知症の発生率は、Aalen-Johansen推定量を使用して計算した。
【0071】
全国コホートにおいて、症例日(認知症診断日)の各患者が、認知症なしの10の対照に年齢、性別、および暦日で一致したコホート内症例対照研究設計を採用した。認知症の発症に対するGLP-1受容体作動薬への累積曝露における差異の効果を、症例日前の5年間の曝露ウインドウでCox回帰を用いてモデル化し(図4)、症例対対照に対するGLP-1受容体作動薬曝露の1年毎の増加に対するハザード比として報告した。期間に1年毎の増加に対するハザード比が報告された。モデルは、マッチングを介して、年齢、性別、および暦日について、ならびに曝露ウインドウ開始時の糖尿病期間(任意の二次糖尿病治療の初めての処方以降の年数)、脳卒中、心筋梗塞、高血圧、慢性腎疾患、および教育的達成(表S1およびS2)の情報について調整した。類似のCox回帰モデルを、他の二次糖尿病治療の各々に採用した。さらに、GLP-1受容体作動薬への曝露を伴う認知症に対するハザード比を、性別、年齢、インスリン曝露、および心血管状態を含むサブグループにわたって調査したが、ここで心血管疾患は、以前の脳卒中または心筋梗塞として定義された。全国コホートにおいて、1)症例日の2年前の曝露が無視された逆因果、2)「メトホルミンまたは二次糖尿病治療による最初の治療からの時間」として定義される糖尿病期間、3)曝露ウインドウの短縮および延長(それぞれ、3および10年)、4)年齢、性別、および暦日でのマッチングのみを介する調節、ならびに5)死亡による競合リスクの影響を決定するために、予め指定された感度分析を行った。統計的有意性のレベルは5%に設定された。
【0072】
結果
研究集団
合計で、確立された心血管疾患のリスクが高い、またはそれを有する15,820人の患者を、プールされたRCTでGLP-1受容体作動薬またはプラセボに無作為化した。ベースライン特性を表1に表す。
【0073】
二次糖尿病治療の開始から少なくとも5年経過した120,054人の患者の全国コホートでは、2009年から2017年の追跡期間中に4,849人の患者が認知症を発症した。症例および対照患者の特性を表2に表す。リラグルチドは、GLP-1受容体作動薬のすべての処方薬の95%を占めた。
【0074】
プールされたRCTにおける認知症
プールされたRCTでは、GLP-1受容体作動薬に無作為化された15人の患者、およびプラセボに無作為化された32人の患者は、中央値3.61年の追跡中に認知症を発症した(表S4)。
【0075】
GLP-1受容体作動薬に無作為化された患者は、プラセボに無作為化された患者と比較して、認知症を発症するリスクがより低かった(ハザード比0.47;95%信頼区間(CI)、0.25~0.86)(図1および表S5)。GLP-1受容体作動薬の有益な効果は、12か月の治療後に明らかとなった(図1)。
【0076】
全国コホートにおける認知症
全国コホートにおける追跡期間の中央値は7.4年であった。全国コホート内分析は、少なくとも5年間の二次糖尿病療法による治療を確実にすることにより、長期的効果を検討するように具体的に設計した。結果は、GLP-1受容体作動薬曝露の期間の増加を伴う認知症のハザードの低減であった(図2)。他の二次糖尿病治療への曝露は、ハザード比の減少と関連しないことが判明した(図2)。GLP-1受容体作動薬への曝露を伴う認知症に対するハザード比の低減は、性別、年齢、インスリンへの同時曝露、および心血管状態によって階層化されたサブグループ間で類似していた(図3)。
【0077】
結果は、認知症の診断に至るまでの2年間で曝露を除外することによって変化しなかったが(図5A)、糖尿病の期間が「メトホルミンまたは二次糖尿病治療による最初の治療からの時間」として評価された場合、DDP4阻害剤との関連が認知症に対する保護であることが見出された(図5B)。さらに、認知症の診断前の3および10年以内にGLP-1受容体作動薬への曝露が評価された場合、認知症の結果は変化しないままであった(図6A)。マッチングを介して年齢、性別、および暦日のみを調整することによっても、同じ結果がもたらされた(図6B)。最後に、以前の認知症診断がない死亡に対するハザード比を評価した競合リスクとしての死亡の分析は、GLP-1受容体作動薬への曝露を伴う死亡に対するより低いハザード比を示した(図6C)。
【0078】
結論として、GLP-1受容体作動薬による治療は、糖尿病を有する患者における認知症のリスク低減と関連していることが見出された。
【表1】
【表2-1】
【表2-2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0079】
実施例2-セマグルチドは、老化促進プローン8(SAMP8)マウスにおける認知機能低下を防止する
近交系老化促進マウスプローン8(SAMP8)モデルは、測定可能な認知機能低下を含む、孤発性(定義された遺伝的原因によって駆動されない)アルツハイマー認知症と関連する表現型を示す非トランスジェニックマウス系統である。SAMP8マウスは、促進された加齢およびそれゆえにモデル加齢関連の代謝合併症を示す、酸化ストレスおよび炎症のマーカーの増加を示す。脳におけるアミロイドプラークの蓄積などの明白な神経病理学の存在の前に、このモデルでは認知障害を測定することができるため、このマウスモデルにより、認知機能低下の防止に対する薬剤効果の評価が可能になり、ヒトにおける疾患の早期段階をモデル化する。
【0080】
ここで、SAMP8マウスを利用して、記憶障害および認知機能低下に対するセマグルチド治療の影響を特徴付けた。げっ歯類における認知障害を評価するために一般的に使用される2つの行動試験を用いて、短期記憶(Y字型迷路試験)および長期記憶(ステップスルー型受動的回避試験)への効果をアッセイした。Y字型迷路は、短期記憶の試験であり、以前に訪問されたものに戻るのではなく、迷路の新しいアームに入る頻度である自発的交替を測定することによって空間作業記憶および探索的行動を評価する(方法に記載される)。ステップスルー型受動的回避試験は、特定の状況に対する嫌悪刺激の関連に関する学習を評価することによって、連想的長期記憶を測定する(方法に記載される)。SAMP8マウスは、加齢に伴い、両方の試験で測定可能な障害を有する。
【0081】
方法
実験は、以下の治療群を用いて、SAMP8マウスを使用して実施した:ビヒクル治療されたSAMP8(n=24)およびセマグルチド(30nmol/kg)治療されたSAMP8(n=11)。治療は6週齢で開始した。治療は、1日1回皮下に送達され、投与の初日には3nmol/kgのセマグルチドの初期滴定期間、投与の2日目には10nmol/kg、およびその後は30nmol/kgで進行した。
【0082】
Y字型迷路での試験は、8週齢および16週齢で、それぞれ治療開始の約15日後および71日後に行った。Y字型迷路は、等しい角度で上部収束部を幅10cmにし、底部に長さ40cm、高さ13cm、幅3cmの3本のアームを備えた灰色のポリ塩化ビニルから成る。各マウスを1つのアームの端に配置し、8分間のセッション中に迷路全体を自由に移動させた。同じアームへの可能な戻りを含む一連のアーム進入をモニタリングし、交替は、連続した場合での3つのアームすべてへの進入として定義した。したがって、最大交替の数は、アーム進入の総数から2を引いた数であり、交替の割合は、(実際の交替/最大交替)×100として計算した。
【0083】
ステップスルー型受動的回避行動を、18週齢で行った。試験は、2区画ボックス(15×20×15cm高)から構成される装置で行い、ここで一方の区画は白色のポリ塩化ビニル壁で照らされ、他方は黒色のポリ塩化ビニル壁およびグリッドフロアで暗くした。ギロチンドアが区画を分離した。装置より40cm上に位置付けられた60Wのランプは、実験中に白色の区画を照らした。衝撃発生器スクランブラー(Lafayette Instruments、Lafayette,USA)を使用して、スクランブルフットショック(3秒間に0.3mA)をグリッドフロアに送ることができた。最初に訓練セッションを行い、そこで最初にギロチンドアを閉じ、各マウスを白色の区画に配置した。5秒後、ドアを持ち上げた。マウスが暗い区画に進入し、4つの足すべてをグリッドフロアに置いたとき、ドアを閉じ、3秒間フットショックを送り、暗いチャンバーをフットショックと関連付けた。保持試験は、訓練の24時間後に実施した。各マウスを再び白色の区画に配置し、5秒後、ドアを持ち上げた。ステップスルー潜時を最大300秒まで記録し、保持試験中にマウスが暗い区画に進入するのにかかった時間として定義した。脱出潜時を記録し、フットショックの適用後に暗いチャンバーから脱出するための保持試験における時間として定義した。
【0084】
結果
図7のデータは、ビヒクル治療されたSAMP8マウスが、予期されたように、16週齢(平均±SEM:42.8%±2.1%)で、8週齢(平均±SEM:69.1%±1.3%)に対して、Y字型迷路における交替行動の有意に減少された割合を有したことを示す(p<0.0001、2元配置分散分析、シダックの多重比較検定)。16週齢のセマグルチド治療されたSAMP8マウスは、ビヒクル治療されたSAMP8(平均±SEM:42.8%±2.1%)対照と比較して、有意に改善された交替行動(平均±SEM:79.1%±1.6%)を有した(p<0.0001、2元配置分散分析、シダックの多重比較検定)。これらのデータは、Y字型迷路試験で測定された場合、セマグルチドが、SAMP8マウスの短期記憶機能の保存にプラスの効果を有することを示す。
【0085】
セマグルチドは、ステップスルー型受動的回避試験で測定された場合、SAMP8マウスの長期記憶も改善した(図8~9)。セマグルチド治療されたSAMP8マウスは、保持段階中に暗いチャンバーへの有意に増加したステップスルー潜時を有し、これは以前にフットショックと関連していた(図8;ビヒクル治療されたSAMP8平均±SEM:109.8秒±5.8秒;セマグルチド治療されたSAMP8平均±SEM:260.5秒±14.5秒、p<0.0001、マンホイットニー検定)。セマグルチド治療されたSAMP8マウスはまた、暗いチャンバーからの有意により低い脱出潜時を有した(図9、ビヒクル治療されたSAMP8平均±SEM:88.8秒±4.6秒、セマグルチド治療されたSAMP8平均±SEM:19.0秒±3.0秒、p=0.01、対応のないt検定)。
【0086】
セマグルチド治療は、ビヒクル治療された動物と比較して、体重(16週齢;ビヒクル治療されたSAMP8平均±SEM:31.0グラム±0.43グラムまたは148.0%±4.6%のベースラインからの体重変化;セマグルチド治療されたSAMP8平均±SEM:29.2グラム±0.7グラムまたは145.4%±4.2%の体重のベースラインからの変化)または血中グルコース(ビヒクル治療されたSAMP8平均SEM:±137.1mg/dL±5.6mg/dL;セマグルチド治療されたSAMP8平均±SEM:133.1mg/dL±2.2mg/dL)の差をもたらさなかった。
【0087】
結論
慢性セマグルチド治療は、SAMP8マウスの認知機能低下を防止した。セマグルチドは、Y字型迷路における交替行動の低下を防止し、ビヒクル治療されたSAMP8対照と比較して、改善された短期および空間記憶を示した。セマグルチドはまた、ステップスルー型受動的回避試験において、ステップスルー潜時を延長し、脱出潜時を短縮し、これは、より長期的な記憶性能および連想的学習のプラスの指標である。認知パラメータに対するこれらのプラスの効果は、さらに、血糖または体重の変化によって駆動されない、セマグルチドの新規の効果であるように思われる。実施例2は、驚くべきことに、同じ動物モデルにおいてリラグルチドについて公開されたものよりも良好なセマグルチドの効果を示す。
【0088】
実施例3-セマグルチドは、リポ多糖(LPS)炎症マウスモデルにおける脳の炎症(神経炎症)を低減する
神経炎症は、認知症およびアルツハイマー病を含む病理の一部であり、ヒト脳撮像研究は、アルツハイマー病における炎症のマーカー増加(例えば、トランスロケータータンパク質18kDaレベル)およびヒトにおける遺伝的関連研究を強調し、アルツハイマー病に関連する遺伝子が炎症経路の一部であることを強調している。炎症はまた、ヒトにおける代謝疾患(肥満、2型糖尿病、心血管疾患)にも関連しており、したがって、代謝疾患を有する人々の認知機能低下および認知症の進行に影響を及ぼし得る。
【0089】
LPS誘発神経炎症は、げっ歯類におけるアルツハイマー病の非遺伝的モデルとして使用される。LPSは、脳免疫細胞(神経免疫細胞)を活性化する持続的な炎症刺激を提供するグラム陰性菌由来のエンドトキシンである。ミクログリアは、LPSによって活性化される脳免疫細胞型であり、神経炎症の程度は、ミクログリア特異的マーカーイオン化カルシウム結合アダプター分子1(Iba1)によって測定される脳組織内のミクログリアの領域によって評価され得る。
【0090】
ここで、マウスにおけるLPS誘発神経炎症を使用して、アルツハイマー病で悪化する記憶および学習に関与する脳の領域である海馬における脳の炎症の減弱に対するセマグルチドの影響を評価した。
【0091】
方法
実験は、8~10週齢のC57BL/6マウスを使用して実施した。マウスは、研究の1日目から28日目まで、セマグルチド(30nmol/kg、1日1回皮下)またはビヒクルで治療した。炎症を誘発するために、LPSを、ビヒクルを投与された対照動物に、研究の15~17日目の3日間投与した(1.0mg/kg、1日1回腹腔内)。15日目のLPS投与の1時間後に、血漿腫瘍壊死因子アルファレベルを測定することによって、炎症性サイトカインの誘発を確認した。動物は、神経炎症のマーカーを測定するために、19日目(LPS治療後2日目)または28日目(LPS治療後11日目)のいずれかで屠殺した。すべての治療群はn=8~12を有した。
【0092】
屠殺直後、全脳を、神経炎症マーカーの免疫組織化学(IHC)分析のために収集した。脳を、10%中性緩衝ホルマリン中に約48時間浸漬固定し、次いで、70%エタノールに移し、ブロックにパラフィン包埋されるまで4℃で保存した。背側海馬の体軸を表す連続切片を4μmで切断し、Superfrost plusスライド上に収集した。パラフィン包埋切片をキシレン中で脱パラフィンし、一連の段階エタノール中で再水和した。Iba1のIHCは、Iba1一次抗体(Abcam、カタログ番号Ab178845)を使用して行った。内因性ペルオキシダーゼ活性の抗原回収および遮断に続いて、スライドを一次抗体とともにインキュベートした。一次抗体は、リンカー二次抗体を使用して検出され、続いて、高分子HRP-リンカー抗体コンジュゲートを使用して増幅された。次に、一次抗体をDABで色原体として可視化し、ヘマトキシリン中で対比染色した。
【0093】
Iba1シグナルの定量的評価を行い、組織切片の海馬におけるミクログリアの領域を測定した。評価は、VIS(Visiopharm、Denmark)ソフトウェアを用いた2ステップのプロトコルを使用して行った。まず、低倍率(1倍対物レンズ)での組織の粗検出と、関心領域(ROI)の描写を得た。次に、IHC陽性染色の検出を、ROI内のより高倍率(10倍対物レンズ)で行った。IHC陽性染色の定量的推定値は、以下である全組織領域の面積分画(AF)として計算した。
【数1】
【0094】
結果
セマグルチドは、LPS投与後、海馬においてミクログリア炎症マーカーIba1を減少させた。図10の結果は、ビヒクル/ビヒクルを投与された対照と比較して、LPS+ビヒクルを投与されたマウスにおいて、LPSが19日目に海馬Iba1領域を有意に増加させたことを示し(p<0.001、ダネットの検定1因子線形モデル;19日目ビヒクル/ビヒクル平均±SEM:8.98%±0.34%、19日目LPS+ビヒクル平均±SEM:14.25%±0.54%)、神経炎症がLPSによって誘発されたことを示す。28日目に、LPS+ビヒクル治療されたマウスが、海馬Iba1の領域が有意に高いことが続いていたが(p<0.05、対ビヒクル/ビヒクル対照、ダネットの検定1因子線形モデル;28日目ビヒクル/ビヒクル平均±SEM:9.77%±0.54%、28日目LPS+ビヒクル平均±SEM:12.17%±0.88%)、一方で、セマグルチド治療は、LPS+セマグルチド治療されたマウスにおいて、Iba1領域を有意に低減した(p<0.01、対LPS+ビヒクル治療されたマウス、ダネットの検定1因子線形モデル28日目LPS+ビヒクル平均±SEM:12.17%±0.88%、28日目LPS+セマグルチド平均±SEM:8.53%±0.49%)。
【0095】
28日目に、LPS+ビヒクルを投与されたマウス(平均±SEM:23.83g±0.33g)とLPS+セマグルチドを投与されたマウス(平均±SEM:22.98g±0.70g)との間に有意な体重差はなかった。
【0096】
結論
LPS誘発神経炎症モデルでは、セマグルチドは、ミクログリアの領域(Iba1)によって測定される両方の海馬における神経炎症を低減した。セマグルチド治療は、神経炎症を低減し、これがセマグルチドによる新規の機序であり得、認知に効果を有し得ることを示唆する。
【0097】
本発明のある特定の特徴が本明細書に例示および記載されているが、ここで、多くの修正、置換、変更、および均等物が当業者に想到されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲が、本発明の真の趣旨の範囲内にあるこうしたすべての修正および変更を網羅することを意図していることが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2023500032000001.app
【国際調査報告】