(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(54)【発明の名称】亜鉛保有原料から亜鉛を回収するための改良された方法
(51)【国際特許分類】
C22B 19/20 20060101AFI20221222BHJP
C22B 3/22 20060101ALI20221222BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20221222BHJP
C22B 3/26 20060101ALI20221222BHJP
C22B 3/38 20060101ALI20221222BHJP
C22B 3/06 20060101ALI20221222BHJP
C22B 3/08 20060101ALI20221222BHJP
C22B 3/10 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
C22B19/20 101
C22B3/22
C22B3/44 101A
C22B3/26
C22B3/38
C22B3/06
C22B3/08
C22B3/10
C22B3/44
C22B3/44 101Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521622
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2020078734
(87)【国際公開番号】W WO2021074124
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522142615
【氏名又は名称】テクニカス、レウニダス、ソシエダッド、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】TECNICAS REUNIDAS, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(74)【代理人】
【識別番号】100217294
【氏名又は名称】内山 尚和
(72)【発明者】
【氏名】アナ、ベレン、メヒアス、コルデロ
(72)【発明者】
【氏名】エミリオ、ペチャロマン、メルカド
(72)【発明者】
【氏名】マリア、フラデス、タピア
(72)【発明者】
【氏名】セルヒオ、サンギリンダ、ソラン
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001AA03
4K001AA06
4K001AA07
4K001AA09
4K001AA10
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4K001DB17
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4K001DB31
4K001DB34
(57)【要約】
本発明は、一次および二次原料から亜鉛を回収するための改良された方法であって、原料に含有される亜鉛重量と浸出用溶液の体積との比が、酸水溶液1m3当たり亜鉛少なくとも20kgである、第1の浸出工程;中和工程;ならびに温度が47~52℃に維持される、有機抽出剤の存在下での溶媒抽出段階を含む方法について言及する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛を含有する原料から金属亜鉛または亜鉛含有化合物を回収するための方法であって、
a)亜鉛を少なくとも3重量%含有する、固体または液体の亜鉛保有原料を用意することと、
b)前記亜鉛保有原料が固体の場合、pHが0~4の酸水溶液を用いて前記固体原料を浸出させて、前記固体原料に含有される前記亜鉛を溶解させ、これにより、溶解亜鉛を含有する浸出溶液と非浸出固体残渣とを含むパルプを得ることであって、
前記固体原料に含有される亜鉛重量と、この浸出工程で使用される前記酸水溶液の体積との比が、酸水溶液1m
3当たり亜鉛少なくとも20kgである、ことと、
c)任意に、前記溶解亜鉛を含有する前記浸出溶液から、前記非浸出固体残渣を分離することと、
d)工程b)で得られた前記パルプ、または工程c)を行う場合は前記浸出溶液、または前記亜鉛保有原料が液体の場合には前記亜鉛保有原料を、中和剤の存在下で中和し、これにより、可溶化された亜鉛および固体残渣を含有する、中和された亜鉛リッチ溶液を得て、前記亜鉛リッチ溶液を前記固体残渣から分離することであって、
前記亜鉛保有原料が液体の場合、前記亜鉛保有原料は、前記原料中に溶解した亜鉛を少なくとも40g/L含有する、ことと、
e)前記亜鉛リッチ溶液に含有される前記可溶化された亜鉛を、有機抽出剤を用いて溶媒抽出し、これにより、亜鉛充填有機液体相と、不純物を含有する水性ラフィネートとを得ることであって、
前記有機相と水相の量の重量比(O/A比)が1.3~1.6の範囲であり、この工程での温度が47~52℃の範囲である、ことと、
f)温度を47~52℃に維持しながら前記亜鉛充填有機液体相を洗浄およびスクラビングすることを含む方法によって、前記亜鉛充填有機液体相を精製することと、
g)酸水溶液を用いて前記有機液体相に充填された前記亜鉛を除去し、これにより、亜鉛を含有する酸水溶液と、不純物を含有する有機流とを得ることと、
h)電解採取、結晶化、および沈殿から選択される方法により、工程g)で得られた前記酸水溶液に含有される前記亜鉛を回収し、これにより、金属亜鉛または亜鉛含有化合物と酸水溶液とを得ることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記固体原料に含有される亜鉛重量と、この浸出工程で使用される前記酸水溶液の体積との比が、酸水溶液1m
3当たり亜鉛20~30kgの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記亜鉛保有原料が、前記亜鉛保有原料の総重量に対して3~80重量%の亜鉛を含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)で使用される前記酸水溶液が、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、およびこれらの混合物から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程b)で使用される前記酸水溶液のpHが、1.5~2.5である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記浸出工程b)での温度が、45~65℃の範囲である、請求項1~5にいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程d)で使用される前記中和剤が、水酸化物、炭酸塩、および重炭酸塩から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出工程e)で使用される前記有機抽出剤が、アルキルリン酸、アルキルホスホン酸、アルキルホスフィン酸、およびこれらの混合物である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記抽出工程e)での温度が50℃である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記精製工程f)において、前記亜鉛充填有機液体相の前記洗浄が、有機/水性の体積比が5~100であり、0.01~4g/lの当量H+の酸性度を有する酸性化水を用いて行われる、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記精製工程f)において、前記亜鉛充填有機液体相の前記スクラビングが、工程h)で生じる前記酸水溶液から来る酸性再循環溶液を用いて行われる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記除去工程で使用される前記酸水溶液の酸性度が、0.5~5.5g/lの当量H
+であり、この工程の温度が47~52℃に維持される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記除去工程g)で生じる有機流のブリードを酸性度が2~10mol/lの酸で処理することによって、前記ブリードを再生工程に供し、これにより、前記抽出工程e)に再循環される再生有機相と、前記浸出工程b)に再循環される減損酸溶液とを生じさせることをさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程d)で得られる前記中和された亜鉛リッチ水溶液の一部、および/または工程e)で得られる前記水性ラフィネートの一部を、アルカリ剤の存在下、pH6~8および温度70~90℃で沈殿工程に供し、これにより、前記中和工程d)に再循環される亜鉛リッチ固体部分を生じさせることをさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
- 工程d)で得られる前記中和された亜鉛リッチ水溶液および/または工程e)で得られる前記水性ラフィネートを、pH2~4でアルカリ剤でまず処理し、次に温度を20~90℃に維持しながら金属亜鉛粉末を添加することによって、前記溶液の一部および/または前記ラフィネートの一部をセメンテーション工程に供し、これにより、溶解亜鉛を含有する液体流と、金属不純物を含有する固体部分とを生成することと、
- 溶解亜鉛を含有する前記液体流を、請求項14に記載の沈殿工程に供して、前記中和工程d)に再循環される亜鉛リッチ固体部分を得ることと、をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
- 工程d)で得られる前記中和された亜鉛リッチ水溶液の一部、および/または工程e)で得られる前記水性ラフィネートの一部を、請求項15に記載のセメンテーション工程に供し、これにより、溶解亜鉛を含有する液体流と、金属不純物を含有する固体部分とを生成することと、
- 前記得られた溶解亜鉛を含有する液体流を有機抽出剤と接触させることによって、前記液体流を減損工程に供し、これにより、前記抽出工程e)に再循環される亜鉛充填有機溶液と、減損水溶液とを生成することと、
- 前記減損水溶液を別の請求項15に記載のセメンテーション工程に供し、これにより、溶解亜鉛をまだ含有する液体流と、金属不純物を含有する固体部分とを生成することと、
- 溶解亜鉛をまだ含有する前記液体流を、請求項14に記載の沈殿工程に供して、前記中和工程d)に再循環される亜鉛リッチ固体部分を得ることと、をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛回収方法の分野に関し、より詳細には、電解亜鉛または高純度亜鉛化合物を得ることを可能にする、様々な亜鉛一次および/または二次原料を使用した湿式冶金処理に関する。
【背景技術】
【0002】
一次または二次いずれかの種々の亜鉛源を原料として使用する手順は、数十年にわたり広く知られている。これらの大半は湿式冶金処理に基づくものであり、その主な目的は、亜鉛またはその塩を高度の純度で得ることである。
【0003】
第1の方法は一次原料(硫化亜鉛精鉱)を焙焼することを含み、これにより不純物を含む酸化亜鉛が得られた。次にこれを、硫酸を用いた浸出工程に供し、これにより、まだ高レベルの不純物を含有する亜鉛含有水溶液を生成し、これを、亜鉛粉末を用いたセメンテーションによって精製した。精製した溶液を電解採取工程に送り、金属亜鉛を生成した。しかしながらこの方法は、特に原料が高含量のMn;Na、K、およびMgの可溶塩;ならびに/またはハロゲン化物を含有する場合に高純度の亜鉛をもたらさず、異なるおよび/または高価なさらなる段階も必要とされた。
【0004】
他の一般的な手順も、亜鉛を溶解させるための原料の酸浸出工程を含むが、これに続く有機酸抽出剤による亜鉛の選択的抽出が組み入れられている。除去として一般に知られている手順により、得られた亜鉛充填有機相を処理して、亜鉛を水溶液の形態で回収する。
【0005】
この技術に基づく第1の方法は、主な欠点として、多くの用途で必要とされる純度からは遠い純度を有する亜鉛をもたらすことが共通である。
【0006】
これは、抽出段階後に得られる有機相または除去段階後に生じる水相のいずれかの適切な精製/洗浄段階が存在しないことに主に起因する。
【0007】
文献EP1361296は、主に、浸出段階後に得られるパルプまたは溶液の中和段階、および不純物に対する連続障壁からなる精製段階を導入することにより、上記の現存する手順にいくつかの改良を組み入れている。これらの精製段階は、抽出後に得られる亜鉛充填有機相および/または前述の中和段階から生じる液体相の一部に行われる。
【0008】
これらの改良は高度の純度を有する亜鉛を得ることを可能にし、いまだ現行で使用されている手順である。
【0009】
文献US2013/0220824も、特にアンチモンの存在下で、不純物のレベルを減らす方法を記載しているが、アンチモンは、抽出段階中に有機抽出剤を用いて亜鉛から分離することが難しいという結果となる。これを行うため、この方法は、アンチモンが可溶化されずに不純物として固相に保持される第1の穏やかな浸出(中性浸出とも呼ばれる)と、その後の標準的な酸条件下での第2の浸出とが組み入れられている。しかしながらこの方法は、原料の予洗浄工程も導入することによって塩化物およびフッ化物のレベルも減少させるが、亜鉛に加えてアンチモンを含有する原料の処理のみに限定されている。
【0010】
したがって、上述の方法は全て、亜鉛をより高度の純度で得ることを可能にするが、亜鉛の抽出収率をあまり改良するものではない手順の探求に焦点を当てている。
【0011】
実際、原料から回収される亜鉛の百分率は、技術的、および主に経済的観点から望まれるものほど高くはないため、上記で言及した方法は必ずしも満足いくものではない。
【0012】
これらの全ての理由から、亜鉛の回収において純度レベルを保ちながらより高い収率を得ることができるように、新しい手順を開発すること、または現存する手順を改良することが依然として必要とされている。これらの手順が、プラントで必須の基幹設備を実装するのにより高いコストを必要としないことも望ましい。
【発明の概要】
【0013】
本発明の著者らは、従来技術で既に公知の超純粋亜鉛または亜鉛含有化合物を回収する方法にいくつかの改良を加えた。
【0014】
前述の改良により、原料から抽出される亜鉛の量の増加が可能になった。実際、新しい方法で課される条件により、亜鉛のスループットは最大45%増加させることができる。
【0015】
全体として、本発明による方法に導入された改良、特にZn濃縮および温度を増加させることにより、プラントで必要とされる装置の大半のもの、例えばタンク、ポンプ、ミキサー容器、沈降機、フィルターなど、ならびに配管、継手、および機器のサイズを小さくすることも可能になる。
【0016】
これに由来する別の利点は、稼働に必要な有機相の量がより少ないことである。有機物の流量がより低いので、管内の有機物の体積、ミキサー容器、沈降機、およびタンク内の作動中の体積もより小さく、したがってプラントを動かすための総体積、および消防パッケージ要件が最適化される。
【0017】
元の方法と比較して同様の滞留時間を考慮すると、様々なユニットで必要とされる体積および表面もより小さく、これは流量もより低いためであり、こうして資本および稼働費用に関してより高度の最適化を得ることに寄与している。
【0018】
したがって本発明は、亜鉛を含有する原料から金属亜鉛または亜鉛含有化合物を回収するための方法であって、
a)亜鉛を少なくとも3重量%含有する、固体または液体の亜鉛保有原料を用意することと、
b)亜鉛保有原料が固体の場合、pHが0~4の酸水溶液を用いて前述の固体原料を浸出させて、固体原料に含有される亜鉛を溶解させ、これにより、溶解亜鉛を含有する浸出溶液と非浸出固体残渣とを含むパルプを得ることであって、
固体原料に含有される亜鉛重量と、この浸出工程で使用される酸水溶液の体積との比が、酸水溶液1m3当たり亜鉛少なくとも20kgである、ことと、
c)任意に、溶解亜鉛を含有する浸出溶液から、非浸出固体残渣を分離すること、
d)工程b)で得られたパルプ、または工程c)を行う場合は浸出溶液、または亜鉛保有原料が液体の場合には亜鉛保有原料を、中和剤の存在下で中和し、これにより、可溶化された亜鉛および固体残渣を含有する、中和された亜鉛リッチ溶液を得て、前述の亜鉛リッチ溶液を固体残渣から分離することであって、
亜鉛保有原料が液体の場合、亜鉛保有原料は、原料中に溶解した亜鉛を少なくとも40g/L含有する、ことと、
e)亜鉛リッチ溶液に含有される可溶化された亜鉛を、有機抽出剤を用いて溶媒抽出し、これにより、亜鉛充填有機液体相と、不純物を含有する水性ラフィネートとを得ることであって、
有機相と水相の量の重量比(O/A比)が1.3~1.6の範囲であり、この工程での温度が47~52℃の範囲である、ことと、
f)温度を47~52℃に維持しながら亜鉛充填有機液体相を洗浄およびスクラビングすることを含む方法によって、前述の亜鉛充填有機液体相を精製することと、
g)酸水溶液を用いて有機液体相に充填された亜鉛を除去し、これにより、亜鉛を含有する酸水溶液と、不純物を含有する有機流とを得ることと、
h)電解採取、結晶化、および沈殿から選択される方法により、工程g)で得られた酸水溶液に含有される亜鉛を回収し、これにより、金属亜鉛または亜鉛含有化合物と酸水溶液とを得ることと
を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の方法の工程を概略的に表すフロー図である。
【
図2】
図2は、さらなる精製処理のフロー図である。
【
図3】
図3は、前の方法の条件に対応するマッケーブ・シール図である。
【
図4】
図4は、本発明による方法に対応するマッケーブ・シール図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の方法は、亜鉛を含有する原料(亜鉛保有原料とも呼ばれる)の処理に適用可能である。特に、前述の原料は、固体または液体のいずれかの一次または二次亜鉛源由来でありうる。固体には、酸化亜鉛鉱石、カルシン、製鉄所ダスト、亜鉛ドロス、亜鉛スキミング、炭酸塩鉱物、ケイ酸塩鉱物、硫酸塩、溶錬スラグ、亜鉛めっき残渣、アーク炉からのダスト、ウェルツ酸化物、化学沈殿物などが含まれ、全てが不定量の不純物、例えばケイ素、アルミニウム、鉄、カルシウム、マグネシウム、マンガン、ナトリウム、カリウム、銅、アンチモン、ヒ素、コバルト、ニッケル、カドミウム、塩化物、フッ化物、ならびに他の元素および混合物を含有する。
【0021】
これらの様々な固体に含有される亜鉛は、約3重量%の低さから約80重量%の高さまで、例えば10~60重量%の範囲としてもよい。
【0022】
液体原料については、亜鉛イオンは、必ずしも少数ではない無制限の多量および多様な量の塩化物、硝酸塩、ケイ酸塩などを含む硫酸塩として存在することができる。
【0023】
固体原料は、本発明の方法による供給材料として使用する前に、最大サイズが2ミリメートルの適切な粒子サイズに達するまで微粉砕してもよい。
【0024】
本発明の方法の様々な工程が以下に詳述され、またこれらは
図1に図示されたフロー図において概略的に表されている。
【0025】
浸出工程(工程b)
本発明の方法の第1の工程は、供給材料として使用される原料が固体である場合のみに適用され、酸水溶液(L1、浸出用水溶液とも呼ばれる)を用いて亜鉛保有原料(R1)を浸出することにある。
【0026】
固体原料(R1)に含有される亜鉛を浸出するのに使用される浸出用水溶液(L1)は強酸性であり、より詳細には、酸水溶液を用いた浸出は0~4、好ましくは0~3、より好ましくは1.5~2.5の範囲のpHで行われる。
【0027】
これらの条件下で、固体原料に含有される亜鉛は、固体原料中に存在する亜鉛に対して80%超、好ましくは90%超の収率で、水溶性亜鉛塩の形態で徐々に浸出される。
【0028】
好ましくは、浸出工程は、亜鉛を他の金属成分よりも優先して溶解させる条件下で行う。実際、浸出工程は、亜鉛に付随する不純物、例えば鉄、アルミニウム、ケイ素の溶解を制限する目的で、穏やかな温度、酸性度、および圧力で行ってもよい。
【0029】
結果として、Zn2+の形態の亜鉛の主画分を含有する水相(A1)(貴浸出溶液とも呼ばれる)が、非溶解元素を含有する非浸出固体残渣と共に得られ、非浸出固体残渣は本発明の方法の工程c)に従って固体液体分離工程によって後ほど除去することができる。
【0030】
特定の実施形態において、酸水溶液(L1)を構成してもよい酸は、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、これらの混合物、および廃酸溶液から選択されるが、ただし得られる酸水溶液のpHは0~3である。
【0031】
浸出工程で使用される酸水溶液(L1)は、好ましくは、重量で過半量の硫酸を、任意に他の酸、例えば塩酸と組み合わせて含有する水性媒体である。浸出用水溶液が1種のみの酸を含有するある特定の場合には、この酸は好ましくは硫酸である。
【0032】
浸出用水溶液で硫酸が使用される場合、固体原料中に含有される亜鉛は、水溶性の硫酸亜鉛の形態で浸出される。
【0033】
有利なことに、固体原料を浸出するのに使用される酸水溶液は、本発明の方法の工程e)による亜鉛の溶媒抽出から生じる再循環溶液、すなわち、少なくとも強酸を含有する工程e)から生じる水性ラフィネート(L2)とすることができる。
【0034】
特定の実施形態において、固体亜鉛保有原料(R1)は、酸水溶液中、95℃未満、好ましくは45℃~65℃の範囲の温度で浸出される。
【0035】
酸水溶液を用いた前述の第1の浸出工程は、好ましくは0.5~7h、より好ましくは0.5~2hの滞留時間で行われる。
【0036】
別の特定の実施形態において、固体原料の浸出工程は、少なくとも1つの撹拌反応器で行われる。
【0037】
別の特定の実施形態において、固体原料の浸出工程は、縦続の複数の区域で行われ、区域の数は少なくとも2つであるが、好ましくは3~5である。
【0038】
各縦続区域で測定される温度は、全般的に所定値に設定され、維持される。しかしながら浸出温度は、昇温設定スケールに従って、考慮される縦続の各区域に対して厳密な値で設定することが可能である。
【0039】
供給材料として使用される固体原料(R1)は、この工程b)で使用される浸出用水溶液1m3当たり亜鉛少なくとも20kgを含有すべきである。好ましくは、固体原料中の亜鉛の含量は、浸出用水溶液1m3当たり20~30kg、より好ましくは20~25kgの範囲である。
【0040】
供給速度については、これは、固体原料中の亜鉛の含量に関係なく、この工程に供給される酸水溶液1m3/h当たり亜鉛が少なくとも20kg/hの速度で浸出工程に供給されるべきである、と言うのと同じである。好ましくは、亜鉛は、酸水溶液1m3/h当たり20~30kg/h、より好ましくは20~25kg/hの速度で供給される。
【0041】
したがって、例えば固体原料が80重量%の亜鉛を含有する場合、固体原料は、浸出工程に供給される酸水溶液1m3/h当たり少なくとも25kg/hの速度で浸出工程に供給されるべきである。同様に、固体原料が20重量%の亜鉛を含有する場合、固体原料は、浸出工程に供給される酸水溶液1m3/h当たり少なくとも100kg/hの速度で浸出工程に供給されるべきである。
【0042】
これにより、浸出溶液中に溶解亜鉛30g/Lのみしか得られなかった以前の亜鉛回収方法とは対照的に、溶液中に溶解した亜鉛を少なくとも40g/L含有する浸出溶液(A1)がもたらされる。
【0043】
この浸出溶液中の亜鉛濃度の増加は、後続の溶媒抽出工程に移される不純物のレベルに悪影響を及ぼしうる副作用なしで得られている。
【0044】
したがって、浸出工程後、より多い量の溶解亜鉛を含む亜鉛リッチ溶液(A1、貴浸出溶液)と、いくつかの不純物を含有する非浸出固体残渣とが得られる。
【0045】
固体-液体分離工程(工程c)
任意に、本発明の方法の工程c)において、溶解亜鉛を含有する貴浸出溶液(A1)を非浸出固体残渣から分離するために固体-液体分離処理を行ってもよい。前述の分離処理は、当業者に公知の任意の方法、例えば物理的分離処理によって行ってもよい。
【0046】
貴浸出溶液から非溶解残渣を分離後、前述の貴浸出溶液(A2)は中和工程d)に供し、非浸出固体残渣はさらなる処理にかけることによって評価するか、またはさらなる処理なしでこの段階で流れから単に分離することができる。
【0047】
中和工程(工程d)
貴浸出溶液中に充填された亜鉛は、パルプ(A1)として、または前述の固体-液体分離工程を経た場合には溶液(A2)として、浸出エリアを出る。パルプまたは溶液としての、可溶化不純物を含有する前述の浸出溶液は、制御された中和工程からなる処理を経る。前述の中和処理は、ケイ素、鉄、アルミニウム、アンチモン、およびヒ素で主に構成される各不純物の沈殿と適合するpHで行われる。
【0048】
亜鉛保有原料が液体(R2)の場合、これは前の処理、すなわち浸出工程b)は必要ではなく、まずこの中和工程に供される。この特定の場合には、液体亜鉛保有原料は、原料中に溶解した亜鉛を少なくとも40g/L含有すべきである。好ましくは、液体亜鉛保有原料は、原料中に溶解した亜鉛を40~100g/L含有すべきである。
【0049】
浸出溶液または液体原料のいずれかに対する前述の中和は、中和剤の存在下で行われる。
【0050】
中和剤は、任意の典型的なアルカリ剤、例えば水酸化物、原料、炭酸塩、重炭酸塩、特に炭酸カルシウムまたは水酸化カルシウム、より詳細にはチョークまたは石灰としてもよい。
【0051】
中和工程は、浸出工程で達した温度に近い温度、すなわち95℃未満、より好ましくは40~60℃の温度で行われる。滞留時間は、浸出工程での滞留時間と同程度の大きさ、すなわち0.5~7時間、好ましくは1~4時間である。中和工程の最後に、中和された浸出溶液のpHを3~5、好ましくは3.5~4.3の値にする。
【0052】
原料の特徴およびプラントの生産能力に応じて、中和処理は縦続のいくつかの段階で行うことができる。
【0053】
中和をいくつかの工程で行う場合、不純物を選択的に沈殿させるために、中和後の最終pHは、異なる工程に対し設定された値に達するまで、制御された方式で徐々に増進させることができる。
【0054】
特定の実施形態において、また原料(例えば酸化Zn、水酸化Zn、および都市廃棄物焼却残渣)の特徴に応じて、浸出工程および中和工程は、1つの工程のみで同時に行うことができる。この特定の実施形態において、pHは4となるよう制御される。
【0055】
中和を完了したら、固体-液体分離を行って、沈殿した不純物を含有する固体残渣から、中和された亜鉛リッチ溶液(A3)を分離させることができ、固体残渣はさらに除去される。
【0056】
分離されたら、中和された亜鉛リッチ溶液(A4)は部分的または全体的に、以下で詳述する溶媒抽出工程に送られる。
【0057】
溶媒抽出工程(工程e)
中和工程d)およびこれに続く分離を行った後に得られる中和された亜鉛リッチ溶液(A4)は次に、溶液中に存在する他の金属不純物の含量をさらに減少させるため、液体-液体抽出工程に部分的または全体的に供して、これにより、より高純度の亜鉛の入手をもたらす。
【0058】
この工程は、好ましくは向流条件下で、工程d)で得られた中和された亜鉛リッチ溶液(A4)を有機抽出剤と接触させることによる亜鉛の抽出を含む。
【0059】
この工程中、以下の化学反応に従ってH+イオンを放出しながら、亜鉛が有機液体相中に選択的に徐々に充填される。
Zn2++2HR→ZnR2+2H+
式中、HRは有機酸抽出剤を表し、ZnR2は抽出された亜鉛を含有する亜鉛充填有機溶液を指す。
【0060】
抽出工程に供給される亜鉛リッチ溶液のpHは、2超、好ましくは3.5~4.5である。しかしながら、亜鉛抽出中、得られた水溶液の酸性度は0.01~3.0g/lの当量H+に増加する。これは、上記の反応に従って、抽出工程にわたってプロトンが有機相から水相に移されるため起こる。アルカリ剤を添加して、pHをわずかに増加させることができる。
【0061】
最も良好な選択的抽出を達成するため、酸有機抽出剤へのより高い親和性を有する陽イオン、例えば鉄および亜鉛のみを抽出することができるように酸条件を使用する。これらの酸条件下では、他の陽イオン不純物に対して選択性の増加がある。
【0062】
したがって、溶解亜鉛を含有する有機抽出相(O1)が、不純物を含有する酸水相(L2)(水性ラフィネートとも呼ばれる)と共に得られる。抽出エリアに存在する水溶液(L2)は、抽出された亜鉛の酸性度と等しい酸性度を有し、この酸性度が浸出工程で使用される。実際、水溶液および有機溶液両方における亜鉛濃度の増加は、抽出工程から去り浸出エリアに戻る水性ラフィネートがより高い酸性度を有することを意味し、したがって、ここでの酸の添加が減る。
【0063】
特に、亜鉛リッチ溶液(A4)が有機抽出剤と接触するこの抽出工程中、亜鉛はH+イオン、より詳細には保持される各Zn2+イオン1つあたり2つのH+イオンを放出しながら抽出される。抽出工程で生成し、残留亜鉛およびかなりの量の溶解不純物をまだ含有する酸水溶液(L2)は、全体的または部分的に、しかし常に大半は、固体原料を浸出するための浸出用溶液として工程b)に再循環させることができる。
【0064】
この抽出工程は、有利にはいくつかの段階で行ってもよく、例えば前述の抽出工程を最大3回繰り返す。
【0065】
有機抽出剤は、好ましくは、アルキルリン酸、アルキルホスホン酸、アルキルホスフィン酸、およびこれらの混合物から選択され、より好ましくは、有機抽出剤は、ジ-(2-エチルヘキシル)リン酸(D2EPHAとも呼ばれる)、ジ-(2-エチルヘキシル)ホスホン酸、およびジ-(2,4,4-トリメチル-ペンチル)ホスフィン酸からなる群から選択される。
【0066】
亜鉛抽出における有機抽出剤の使用では、有機抽出剤は、好ましくは、C11~C14パラフィンおよびナフタレンなどの油部分由来の有機化合物または有機化合物の混合物、例えばケロシン中に溶解させる。有機抽出剤の有機化合物中の重量比率は、5~75%、好ましくは30~50重量%の範囲である。
【0067】
特定の実施形態において、前述の有機抽出剤は、任意の他の有機化合物中に溶解させずに使用することもできる。
【0068】
抽出工程での有機相と水相の量の体積比(O/A比)は、有機相中に可能な限り多くの抽出亜鉛が得られるように選択される。すなわち、体積O/A比は、1.3~1.6の範囲である。亜鉛が13~14g/Lのみしか得られない以前の亜鉛抽出方法と比較して、前述の範囲内のO/A比は、有機相中に溶解した亜鉛約18~20g/Lを含有する亜鉛充填有機相をもたらす。好ましくは、体積O/A比は、1.4~1.6の範囲である。
【0069】
実際、浸出用水溶液1m3当たり少なくとも20kgの亜鉛、または浸出用水溶液1m3/h当たり少なくとも20kg/hの亜鉛供給速度を、抽出工程におけるO/A比1.3~1.6と共に使用することが、全体的な亜鉛回収を増加させる重要な因子である。したがって、亜鉛を回収するための方法で課される新しい条件により、亜鉛のスループットは30~45%増加させることができる。
【0070】
さらに、上記の条件および改良を満たすために、かつ有機相中の亜鉛のより高い濃度に起因して、温度は抽出工程全体にわたって増加させるべきである。
【0071】
典型的には、以前の方法において、全ての溶媒抽出工程での温度は約40℃である。これにより、亜鉛充填および有機相の物理特性が、最終工程(電解採取工程)において必要とされる性質を有する充填された電解質を生成するのに十分良好であることが確保される。
【0072】
しかしながら本発明による方法において、抽出工程での温度は47℃~52℃、より好ましくは約50℃とすべきである。より低い温度は有機相の粘度を適切に減少させるのに十分ではなく、より高い温度は必要とされる加熱/冷却プロセスに由来するより高いコストを伴うことになる。
【0073】
全体として、本発明による方法に導入された改良、特にZn濃度および温度を増加させることにより、プラントで必要とされる装置の大半のもの、例えばタンク、反応器、ポンプ、ミキサー容器、沈降機、フィルターなど、ならびに配管、継手、および機器のサイズを小さくすることも可能になる。
【0074】
これに由来する別の利点は、稼働に必要な有機相の量がより少ないことである。有機物の流量がより低いので、管内の有機物の体積、ミキサー容器、沈降機、およびタンク内の作動中の体積もより小さく、したがってプラントを動かすための総体積、および消防パッケージ要件が最適化される。
【0075】
元の方法と比較して同様の滞留時間を考慮すると、様々なユニットで必要とされる体積および表面もより小さく、これは流量もより低いためであり、こうして資本および稼働費用に関してより高度の最適化を得ることに寄与している。
【0076】
したがって、抽出工程を行った後、有機相中に溶解したより高い濃度の亜鉛を含有する亜鉛充填有機相(O1)および酸水性抽出相(L2、水性ラフィネート)が形成され、酸水性抽出相は、本発明の方法の浸出工程に再循環させてもよい。
【0077】
精製工程(工程f)
抽出工程e)から生じた亜鉛充填有機溶液(O1)は、共抽出された同伴不純物を少量であるがまだ含有するので、さらなる精製のための工程f)に送る。
【0078】
有機相(O1)中のこれらの残留不純物は、極めて純粋なはずである本発明による方法から生じる最終生成物(亜鉛または亜鉛含有化合物)の汚染を避けるために除去してもよい。これは、なぜ亜鉛充填有機溶液を精製処理にかけて、まだ存在する全ての微量の残留不純物を除去するのかについての理由である。
【0079】
精製工程は、酸水溶液を用いて亜鉛充填有機相(O1)を洗浄およびスクラビングすることを含む。これにより、抽出工程に存在する亜鉛充填有機相中にppmまたはppbの濃度で共抽出または同伴しうる不純物が除去される。
【0080】
特定の実施形態において、精製工程は一連の向流段階を含み、より詳細には少なくとも1つの物理的処理と少なくとも1つの化学的処理とを含む。
【0081】
亜鉛充填有機相の物理的処理(洗浄工程とも呼ばれる)は、有機相中の水性同伴を避けるようになされ、0.01~4g/lの当量H+の範囲の酸性度を有する酸性化水を加えることによって達成される。有機/水性の体積比は5~100、好ましくは15~25の範囲である。この物理的処理は、数回、好ましくは最大4回行うことができる。
【0082】
化学的処理(スクラビング工程とも呼ばれる)は、本発明の方法の最終工程で生じる酸水相(L4’)から来る酸性再循環溶液(主に溶解亜鉛を含有する)を使用することによって行う。この溶液は、10g/l~100g/lの亜鉛および0.1~5g/lの当量H+を有する。
【0083】
この処理は、以下の平衡反応に従って、共抽出された不純物を追加の亜鉛抽出により水相へ置換し、純粋な亜鉛の有機溶液(O2)を達成することに基づいている。
MeRn+Zn2+→ZnR2+Men+
式中、Men+は金属不純物陽イオンであり、nはその原子価である。
【0084】
このスクラビング工程も、数回、好ましくは最大4回行うことができる。
【0085】
物理的および化学的処理の両方の温度は、抽出工程のように、47~52℃の範囲、好ましくは50℃で維持されるべきである。
【0086】
物理的および化学的処理の組合せにより、極めて高い純度レベルの亜鉛充填有機相(O2)がもたらされる。
【0087】
除去工程(工程g)
精製工程後に得られる清浄亜鉛充填有機相(O2)は、以下の化学反応に従って、前述の清浄有機相を酸水溶液で処理することにある除去工程に供する。
ZnR2+2H+→2HR+Zn2+
【0088】
除去工程での条件により、抽出工程で亜鉛と共に抽出された不純物、例えば鉄およびアルミニウムは有機相から除去されず、よって亜鉛のみが除去され、したがって前述の不純物を含有する有機流(O3)と共に、精製された亜鉛の水溶液(A5)が得られる。
【0089】
特定の実施形態において、除去工程で使用される酸水溶液は、本発明の方法の最終工程で生じる酸水相(L4)から来る酸性再循環溶液またはその少なくとも部分的な流れである。
【0090】
除去工程で使用される酸溶液の酸性度は、0.5~5.5g/lの当量H+であり、0~250g/lの亜鉛を含有する。
【0091】
上述のように、これらの条件下で、亜鉛陽イオンと一緒に有機溶液に抽出された陽イオン、例えば鉄およびアルミニウムは亜鉛陽イオンほど容易に除去されず、したがって除去工程後に有機相(O3)中に残り、得られる精製された水溶液(A5)を汚染しない。しかしながら、それらの蓄積を防ぐために、本発明の方法は、除去工程で生じる有機流(O3)のブリード(O3’)を再生工程に送ることをさらに含んでもよい。前述の再生工程に送られるブリード(O3’)は、有機流(O3)の総体積の最大20%、好ましくは1~5%の体積に相当する。
【0092】
この再生工程において、ブリード(O3’)は、2~10mol/l、好ましくは4~8mol/lの酸性度を有する強酸溶液、好ましくは塩酸溶液で処理してそれらのイオンを除去し、好適な性質および溶液中の純度レベルを維持する有機溶液を再生する。既に再生された有機ブリード(O4)は、抽出工程e)、またはもし適用する場合には以下に記載する減損工程に再循環させることができ、減損酸(L3)は、浸出工程b)または酸回収システムに送ることができる。
【0093】
再生工程に送られていない残りの有機流(O3)は、部分的または全体的に再循環させて、抽出工程e)において、およびもし適用する場合には以下に記載する減損工程において使用する。
【0094】
より詳細には、再生工程から生じる有機ブリード(O4)および除去工程から生じる有機溶液(O3)を含有する混合物は、抽出工程に、およびもし適用する場合には以下に記載する減損工程に再循環させる。
【0095】
方法の変形形態において、除去工程で生じる全有機流(O3)を再生に通し、その後に抽出、およびもし適用する場合には減損に再循環させる。
【0096】
別の特定の実施形態において、抽出工程から生じる水性ラフィネート(L2)および再生工程からの減損酸(L3)を活性炭カラムに通して、これらの流れに同伴される有機含有物を除去し、これにより有機物の損失を最小限にする。この処理は、全水溶液の全体としての、しかしより詳細には純粋な除去された酸水溶液の、有機物汚染を防ぐ追加の精製工程と考えることができる。
【0097】
亜鉛の回収(工程h)
除去工程で生じた亜鉛含有精製水溶液(A5)は、超純粋亜鉛を回収するため、本発明の方法の最終工程に供給する。
【0098】
超純粋亜鉛は、電解採取、結晶化、沈殿、およびこれらの組合せから選択される方法に従って回収することができる。しかしながら、亜鉛化合物を生成するための他の公知の方法を使用することもできる。
【0099】
特定の実施形態において、亜鉛の回収は電解採取によって行う。この方法により、99.995%よりも高い亜鉛純度が得られ、これにより、最高品質基準に従ったロンドン金属取引所の最良品質等級を生成する。
【0100】
亜鉛が回収されると強酸性水溶液(L4)が残るが、これは再循環させて本発明の方法の他の工程で使用することができる。したがって、特定の実施形態において、この最終工程から生じる酸水溶液(L4)は、除去エリアに供給して、有機相から亜鉛を除去するのに必要な酸性度をもたらすことができる。
【0101】
また特定の実施形態において、前述の酸水溶液(L4)の小流(L4’)を洗浄/スクラビング工程に送り、精製システムとして作用する水性流の優れた性質を維持する。これにより、不純物を全く含まない超純粋酸水溶液を洗浄/スクラビング工程に供給することが可能となり、よって亜鉛充填有機相の極限精製用の媒体として作用する、必要とされる極めて低い不純物レベルを確実にすることに寄与する。したがって、除去工程での総純度が維持され、最終の亜鉛生成工程での外部汚染を防ぐ有用なツールと考えることができる。
【0102】
さらなる精製処理
このさらなる精製処理の様々な工程が以下に詳述され、またこれらは
図2に図示されるフロー図において概略的に表されている。
【0103】
亜鉛回収効率をさらに増加させるため、本発明の方法は、抽出工程e)前の中和された亜鉛リッチ水溶液の小部分(A4’)および/または前述の抽出工程後に生成される水性ラフィネートの小部分(L2’)を使用したさらなる精製処理を含むこともできる。この処理により水の除去が可能となり、方法の様々な相互に関連する工程から生じる様々な可溶性不純物、例えばナトリウム、カリウム、塩化物、フッ化物、マグネシウム、銅、ニッケル、コバルト、およびカドミウムの蓄積を、それらを確認して除去することにより防ぐ。
【0104】
主流から分離され、このさらなる精製処理に供される、中和された亜鉛リッチ水溶液の小部分(A4’)および/または前述の抽出工程後に生成される水性ラフィネートの小部分(L2’)は、流れ全体の体積の最大25%、好ましくは体積で8~15%に相当する。
【0105】
第1の特定の実施形態において、このさらなる精製処理は、中和された亜鉛リッチ水溶液の一部(A4’)および/または水性ラフィネートの一部(L2’)を、亜鉛が溶液から沈殿するように制御中和による沈殿工程に供し、その後に固体-液体分離に供することを含む。得られた亜鉛リッチ固体部分(S1)は次いで中和工程d)に再循環させ、得られた液体部分(L5)は制御中和による不純物除去工程にかけることができる。
【0106】
前述の沈殿は、アルカリ剤の存在下、pH6~8および温度70~90℃で行うことができる。
【0107】
第2の特定の実施形態において、さらなる精製処理は、
- 中和された亜鉛リッチ水溶液の一部(A4’)および/または水性ラフィネートの一部(L2’)をセメンテーション工程に供し、これにより、溶解亜鉛を含有する液体流(L6)と、金属不純物を含有する固体部分とを生成することと、
- 溶解亜鉛を含有する液体流(L6)を沈殿工程に供して、中和工程c)に再循環される亜鉛リッチ固体部分(S1)を得ることと、を含む。
【0108】
セメンテーション工程により、pHを2~4に維持するように制御するアルカリ剤を用いて、中和された亜鉛リッチ水溶液の一部(A4’)および/または水性ラフィネートの一部(L2’)をまず処理し、その後、温度を20~90℃に維持しながら金属亜鉛粉末を加える。前述の金属亜鉛は可溶化金属不純物を置換し、したがって金属不純物、例えば銅、カドミウム、コバルト、およびニッケルの沈殿を引き起こし、これらは分離されて除去される。
【0109】
結果として、溶解亜鉛を含有する液体流(L6)を生成し、沈殿した金属不純物から分離し、次いで上述の第1の特定の実施形態に記載されるような沈殿工程に供する。前述の沈殿工程の後に生成した、得られた亜鉛リッチ固体部分(S1)も中和工程d)に再循環させ、得られた液体部分(L5)は制御中和による不純物除去工程にかけることができる。
【0110】
第3の特定の実施形態において、さらなる精製処理は、
- 中和された亜鉛リッチ水溶液の一部(A4’)および/または水性ラフィネートの一部(L2’)をセメンテーション工程に供し、これにより、溶解亜鉛を含有する液体流(L7)と、金属不純物を含有する固体部分とを生成することと、
- 得られた溶解亜鉛を含有する液体流(L7)を有機抽出剤と接触させることにより、前述の液体流(L7)を減損工程に供し、これにより、抽出工程e)に再循環される亜鉛充填有機溶液(O5)と、減損水溶液(L8)とを生成することと、
- 減損水溶液(L8)をセメンテーション工程に供し、これにより、溶解亜鉛をまだ含有する液体流(L6)と、金属不純物を含有する固体部分とを生成することと、
- 液体流(L6)を沈殿工程に供して、中和工程d)に再循環される亜鉛リッチ固体部分(S1)を得ることと、を含む。
【0111】
この第3の特定の実施形態におけるセメンテーション工程は、上記の第2の特定の実施形態に記載されたものと同じである。
【0112】
セメンテーション工程から生じ、溶解亜鉛を含有する液体流(L7)は、前述の液体流に存在する亜鉛を抽出するために有機抽出剤と接触させる。使用する有機抽出剤は、溶媒抽出工程d)に関して言及した有機抽出剤のうちの任意のものとすることができる。加えて、または代替的に、有機抽出剤は、除去工程で生じる有機流から来る、および/または行った場合には再生工程で得られる有機流(O4)から来る、再循環された有機抽出剤(O3)としてもよい。抽出された亜鉛を含有する、得られた有機相(O5)は溶媒抽出工程e)に送り、減損水溶液(L8)はセメンテーション工程に再循環させる。
【0113】
セメンテーション工程後に生じた、得られた液体流(L6)は沈殿工程に送り、ここでは上記の第1の特定の実施形態において規定されたものと同じ手順に従う。
【0114】
第4の特定の実施形態において、さらなる精製処理は、第1の特定の実施形態の処理と、第2~第3の実施形態の2つのうちの1つとを組み合わせる。この場合、さらなる精製処理は、第1の変形形態において、
- 中和された亜鉛リッチ水溶液の一部および/または水性ラフィネートの一部を第1および第2のブリードに分割することと、
- 第1のブリードを沈殿工程に供して、中和工程d)に再循環される亜鉛リッチ固体部分を得ることと、
- 第2のブリードをセメンテーション工程に供し、これにより、溶解亜鉛を含有する液体流と、金属不純物を含有する固体部分とを生成すること、
- 溶解亜鉛を含有する液体流を沈殿工程に供して、中和工程d)に再循環される亜鉛リッチ固体部分を得ることと、を含む。
【0115】
この特定の第4の実施形態において、さらなる精製処理は、第2の変形形態において、
- 中和された亜鉛リッチ水溶液の一部および/または水性ラフィネートの一部を第1および第2のブリードに分割すること、
- 第1のブリードを沈殿工程に供して、中和工程d)に再循環される亜鉛リッチ固体部分を得ることと、
- 第2のブリードをセメンテーション工程に供し、これにより、溶解亜鉛を含有する液体流と、金属不純物を含有する固体部分とを生成することと、
- 得られた溶解亜鉛を含有する液体流を有機抽出剤と接触させることにより、前述の液体流を減損工程に供し、これにより、抽出工程e)に再循環される亜鉛充填有機溶液と、減損水溶液とを生成することと、
- 減損水溶液をセメンテーション工程に供し、これにより、溶解亜鉛をまだ含有する液体流と、金属不純物を含有する固体部分とを生成することと、
- 溶解亜鉛をまだ含有する液体流を沈殿工程に供して、中和工程d)に再循環される亜鉛リッチ固体部分を得ることと、を含む。
【0116】
上述の様々な工程に従った亜鉛回収後、亜鉛沈殿工程、セメンテーション工程、および任意に減損工程から生じる液体流(L5)は、制御中和による不純物除去段階に送ることができる。より詳細には、それらはアルカリ剤を用いてpH8~12で処理することができ、次に得られた固体沈殿を温度30~90℃で分離する。ここから生成する液体の大半は、試薬の調製のための塩基として、またプロセス水として、本発明の方法の主回路に再循環させうる。残りの液体は、もしある場合は、最終排液として排除することができる。
【0117】
金属不純物の沈殿を含有し、セメンテーション工程から生じる固体残渣は、方法から除去するか、またはそれ自体の排除処理にかける。
【0118】
さらなる精製処理の上記の特定の実施形態に記載された全ての工程は、本発明の方法の工程d)を行った後に得られる中和された亜鉛リッチ水溶液(A4)、および/または本発明の方法の抽出工程e)から生じる水性ラフィネート(L2)のいずれにも適用することができる。
【0119】
両方の溶液は、個々に、または組み合わせて処理することができる。両方の場合において、上述の特定の実施形態のいずれかに従って亜鉛リッチ固体部分(S1)を中和工程d)に再循環させることにより、全体の亜鉛回収が増加する。
【実施例】
【0120】
実施例1 本発明の方法による超純粋亜鉛の回収
発明は、本発明による改良された方法が記載される実施例、およびEP1361296に規定される前の方法と比較した結果により、はるかによく理解されることになる。
図1および
図2も、様々な工程およびこの実施例に記載される方法から生じる流れの理解の助けとして役立ち、ここで全ての稼働ユニットは大文字で表されている。
【0121】
この実施例は、以下の稼働ユニット:
- Znを固体から液体状態に移す原料浸出
- 水溶液から有機抽出剤(D2EHPA)へのZnの抽出
- 有機溶液を抽出へと再循環させて戻すことができるように、酸性処理を使用した抽出剤からのZn除去
- Zn電解採取または結晶化ユニットを実行するSHG Znの生成
を使用する、二次Zn保有材料からの特別高品質亜鉛の生成について言及する。
【0122】
供給材料として使用する固体原料(R1)は、亜鉛20重量%を含有した。固体原料に存在する主な不純物は、主にSi、Al、Fe、Ca、Mg、Mn、Cl、Cu、Cd、Ni、F、およびKであった。
【0123】
まず、原料を100%が1.3mm未満になるまで粉砕し、パルプ形態で調製し、次いで浸出エリア(B)に供給した。すなわち、前述の固体原料10.5トン/hを浸出用供給原料として浸出エリア(B)に加えた。固体原料の浸出は、縦続配列で配置された一連の反応器により行った。各浸出反応器は撹拌機を備えた。浸出エリア(B)には浸出用溶液100m3/hも同時に供給した。前述の浸出用溶液は、硫酸(L1)と、抽出エリア(E)から来る水性ラフィネート(L2)とを含有した。
【0124】
反応器内の平均の浸出pHは2.5の値に維持し、温度は約50℃の一定値に設定し、原料が最適収率に達するのに必要な時間は2hであった。
【0125】
浸出エリア(B)を去る、得られた浸出パルプ(A1)を次に、固体-液体分離に供さずに中和工程(D)に直接供給した。
【0126】
浸出パルプ(A1)を4つの中和反応器で中和し、同時にチョークを加えて平均pHを4.2の値に設定した。第1~最終中和反応器の間で温度を最大50℃で保った。供給材料に伴ってくる重要な不純物の一部が沈殿するのに必要な時間は2hであった。
【0127】
かき寄せ機構を備えた一連の濃縮器に、中和エリア(D)を去るパルプ(A3)を流し入れた。底流をろ過パッケージに送り、ろ過パッケージはケークを生成した。ケークはEP3049542で規定の方法(ECOLEAD法とも呼ばれる)などの方法で処理して、例えば売却可能な銀-鉛精鉱を得ることができる。
【0128】
濃縮器からの清澄液体(ろ過されていない貴浸出溶液、PLSとも呼ばれる)をタンクに収集し、ポリッシングろ過装置にポンプを使って通して、方法の下流に影響を及ぼしうるわずかな懸濁固体を除去した。
【0129】
ポリッシング済みの中和された浸出溶液(A4)を熱交換器に供給して、抽出エリア(E)での抽出工程に必要な稼働温度(50℃)に到達させた。浸出溶液(A4)をミキサー容器内で数回の抽出段階で処理した。各ミキサー容器内で、比1.46の有機抽出剤D2EHPAおよび水溶液(A4)を十分に混合して物質移動を促進し、化学平衡を達成させた。次いで連結した沈降機に混合相を送り、ここでそれらを分離させて、別の流れとして流出させた。この流体方法は、溶媒抽出エリア(E)内の各ミキサー-沈降機において同一であった。流出流は、酸性水性亜鉛ラフィネート(L2)および20g/L亜鉛充填有機相(O1)であった。
【0130】
このユニットに沿った水相(A4)および有機相(D2EHPA)のフローパターンは向流であり、中和された貴浸出溶液を抽出段階のミキサー容器に供給し、ここで、有機物貯蔵タンクから第1の抽出段階のミキサー容器へ入った有機相と接触させた。
【0131】
抽出段階を去る水相(L2)はバッファータンクに流し、ここからポンプを使って活性炭素フィルターに通して、最終的な微量の有機物同伴を除去した。
【0132】
ろ過された亜鉛ラフィネートを収集してラフィネートタンクに貯蔵し、最終的に浸出ユニット(B)へ再循環させて戻し、方法のループを閉じた。
【0133】
小ブリード(L2’)(
図2参照)を使用して、水および不純物の均衡を保った。このブリードを、下流のエリア(M)において従来の中和処理工程によって処理し、これによりZnを回収し、好適な溶液(L6)を生成し、この溶液をエリア(K)で沈殿工程に供した。前述の沈殿工程後に形成した固体亜鉛(S1)を中和エリア(D)に再循環させ、エリア(M)での中和後に形成した固体は、環境規制に従って廃棄した。
【0134】
抽出エリア(E)から生じる亜鉛充填有機相(O1)を、一連のミキサー-沈降機から主に構成される後続の洗浄/スクラビングユニット(F)に流し、一連のミキサー-沈降機の各々は直列の異なる撹拌ミキサーおよび沈降機を含んだ。
【0135】
このユニットにおいて、亜鉛充填有機相(O1)を脱塩水および最終加工エリア(電解採取エリア)(H)から来る使用済み電解質(L4’)と接触させた。電解採取からの使用済み電解質および脱塩水を洗浄ミキサー容器に供給した。
【0136】
洗浄/スクラビングユニット(F)において、物理的および化学的洗浄方法により、共抽出された不純物および水性同伴中に存在する不純物を亜鉛充填有機相(O1)から除去した。
【0137】
洗浄段階を去る使用済み洗浄液を抽出段階に戻して、そこに含有される亜鉛を回収した。
【0138】
洗浄された亜鉛充填有機相(O2)を除去ユニット(G)に流し入れた。洗浄ユニットにおいては、介在ポンプも貯蔵タンクも不要であった。
【0139】
洗浄された有機相(O2)を使用済み電解質(L4)と向流で接触させた。除去ユニット(G)の最終結果は、亜鉛充填有機相(O2)から使用済み電解質(L4)への亜鉛の選択的移動、および対応する酸性度の逆方向の移動であり、使用済み電解質(L4)は亜鉛充填電解質(A5)になる。
【0140】
亜鉛含量の低い、除去された有機相(O3)は除去段階(G)を去り、有機物タンクへと流れ、方法の有機相回路を閉じた。
【0141】
連続的な小流(O3’、約3%)を有機物タンクから取り出し、有機物再生ユニット(I)で処理し、有機再生相(O4)を抽出エリア(E)に導いた。
【0142】
充填された電解質、超純粋亜鉛溶液(A5)を収集し、最終の微量の有機物同伴を除去した。除去工程からの充填された電解質は、電解採取によって特別高品質亜鉛めっき、または結晶化技術によって超純粋亜鉛塩を生成するのに完全に好適であった。
【0143】
次の表には、前の方法と本発明による改良された方法との比較が示されている。
図3および
図4には、示された改良を支持するマッケーブ・シール図が表されている。
【表1】
【表2】
【国際調査報告】