(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用複合正極材料、その調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20221222BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20221222BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221222BHJP
C01B 25/45 20060101ALI20221222BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01B25/45 Z
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521739
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 CN2020135525
(87)【国際公開番号】W WO2021238152
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】202010448907.X
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522139349
【氏名又は名称】蜂巣能源科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】許 ▲金▼培
(72)【発明者】
【氏名】楊 紅新
(72)【発明者】
【氏名】江 衛軍
(72)【発明者】
【氏名】喬 斉斉
(72)【発明者】
【氏名】孫 明珠
(72)【発明者】
【氏名】施 澤濤
(72)【発明者】
【氏名】王 鵬飛
(72)【発明者】
【氏名】馬 加力
(72)【発明者】
【氏名】陳 思賢
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA06
4G048AB01
4G048AB04
4G048AB06
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
5H050AA08
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050DA02
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA06
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、リチウムイオン電池用複合正極材料、その調製方法および使用を提供する。前記複合正極材料は、正極材料の内部コアと、前記正極材料の内部コアの表面に被覆されたハロゲン化物被覆層とを備え、前記ハロゲン化物はLi
3YX
6を含み、ただし、Xはハロゲンのうちの少なくとも1種である。ハロゲン化物被覆層の被覆により、正極材料のイオン導電性および構造安定性を大きく向上させ、材料の表面抵抗を低減する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極材料の内部コアと、前記正極材料の内部コアの表面に被覆されたハロゲン化物の被覆層とを備え、前記ハロゲン化物はLi
3YX
6を含み、ただし、Xはハロゲンのうちの少なくとも1種である、リチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項2】
前記ハロゲン化物は、Li
3YCl
6および/またはLi
3YBr
6である、請求項1に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項3】
前記正極材料の内部コアはコバルトフリー正極材料を含む、請求項1または2に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項4】
前記正極材料の内部コアはニッケルマンガン酸リチウム正極材料を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項5】
前記ニッケルマンガン酸リチウム正極材料の化学式はLiNi
xMn
yO
2であり、0.55≦x≦0.95で、0.05≦y≦0.45である、請求項4に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項6】
正極材料の内部コアの質量が100%で計算すると、前記Li
3YX
6内のY元素の含有量は0.1%~1%である、請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項7】
正極材料の内部コアの質量が100%で計算すると、前記Li
3YX
6内のY元素の含有量は0.1%~0.3%である、請求項1~6のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項8】
前記正極材料の内部コアの粒径D50は1μm~5μmである、請求項1~7のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項9】
前記正極材料の内部コアの粒径D50は1μm~3μmである、請求項1~8のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項10】
前記Li
3YX
6の粒径D50は5nm~500nmである、請求項1~9のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項11】
前記Li
3YX
6の粒径D50は50nm~100nmである、請求項1~10のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項12】
被覆剤と基体正極材料とを混合させた後、酸素含有雰囲気において400℃~800℃で高温処理を行い、複合正極材料を取得するステップを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料の調製方法であって、
前記被覆剤はLi
3YX
6を含み、Xはハロゲンのうちの少なくとも1種である、調製方法。
【請求項13】
前記酸素含有雰囲気において、酸素ガスの体積濃度は20%~100%である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記酸素含有雰囲気において、酸素ガスの体積濃度は50%~90%である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記混合の方式は乾式混合である、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記混合は、被覆剤と基体正極材料とを混合機器にて2000rpm~3000rpmの回転数で混合させることを含む、請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記混合の時間は10min~20minである、請求項12~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記高温処理の温度は400℃~700℃である、請求項12~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記高温処理の時間は4h~8hである、請求項12~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
高温処理後に研磨および篩分けを行うステップを更に含む、請求項12~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記基体正極材料はニッケルマンガン酸リチウムであり、前記ニッケルマンガン酸リチウムの調製方法は、
(a)リチウム源と前駆体Ni
xMn
y(OH)
2(0.55≦x≦0.95、0.05≦y≦0.45)とを均一に混合させることと、
(b)800℃~1000℃で高温反応させ、ニッケルマンガン酸リチウムを取得することと、
を含む、請求項12~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(a)に記載のリチウム源はLiOHである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(a)に記載の混合は、高速混合機器にて、2000rpm~3000rpmの回転数で10min~20min混合させることである、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(b)に記載の高温反応の時間は8h~12hである、請求項21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(b)に記載の高温反応は、酸素ガスの体積濃度が90%よりも大きい酸素含有雰囲気で行われる、請求項21~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
酸素含有雰囲気のガス流量は2L/min~20L/minである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(b)に記載の高温反応の後に降温冷却して破砕するステップを行う、請求項21~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
(1)基体正極材料であるニッケルマンガン酸リチウムを調製するステップであって、
(a)LiOHと前駆体Ni
xMn
y(OH)
2(0.55≦x≦0.95、0.05≦y≦0.45)とを高速混合機器にて2000rpm~3000rpmの回転数で10min~20min混合させ、
(b)酸素ガスの体積濃度が90%よりも大きい酸素含有雰囲気において、800℃~1000℃で8h~12h高温反応させ、酸素含有雰囲気のガス流量が2L/min~20L/minであり、ニッケルマンガン酸リチウムを取得し、降温冷却して破砕し、使用に備える
ステップと、
(2)Li
3YCl
6および/またはLi
3YBr
6である被覆剤と基体正極材料とを混合機器にて2000rpm~3000rpmの回転数で10min~20min混合させた後、酸素ガスの体積濃度が20%~100%である酸素含有雰囲気において400℃~700℃で高温処理を4h~8h行い、研磨して300メッシュ~400メッシュの篩を用いて篩分けし、複合正極材料を取得し、前記複合正極材料は、ニッケルマンガン酸リチウムと、前記ニッケルマンガン酸リチウムの表面に被覆された被覆層とを備え、前記被覆層はLi
3YCl
6および/またはLi
3YBr
6であるステップと、
を含み、
正極材料の内部コアの質量が100%で計算すると、前記被覆層内のY元素の含有量は0.1%~1%である、請求項12~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
請求項1~11のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料を含む、正極。
【請求項30】
請求項29に記載の正極を備える、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の技術分野に関し、例えば、リチウムイオン電池用複合正極材料、その調製方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、良好なサイクル性能を有するため、既に生活中の様々な面に浸透している。リチウムイオン電池のコアとして、正極材料の発展は、リチウムイオン電池の発展の見通しに直接影響を及ぼし、三元正極材料の高密度、良好なサイクル寿命により、自動車、電子業界に広く適用されている。そのうち、NCM(NixCoyMnz)、NCA(NixCoyAlz)等がよく知られているが、コバルト元素は高価で環境を汚染し、これらの不利な要素が三元材料の発展を制限する。
【0003】
コバルトフリー正極材料は、高い可逆比容量、価格が安い等の利点を有し、研究開発者に広く注目されている。
【0004】
CN107546385Aは、LiNixMn1-xO2二元正極材料の調製方法および調製されたLiNixMn1-xO2を開示し、前記方法は、(1)二元ニッケル、マンガン塩水溶液および混合アルカリ水溶液を調製することと、(2)二元ニッケル、マンガン塩水溶液および混合アルカリ水溶液を、それぞれ一定の流速で窒素ガスが流通されて保護されたマイクロ波反応器に入れ、定温で撹拌反応させることと、(3)反応物を水熱反応釜に移して水熱反応を行うことと、(4)共沈物を濾過、洗浄、乾燥することと、(5)乾燥後の共沈物をリチウム塩に加えて混合して研磨した後、焼成炉に置いて高温固相反応させ、二元正極材料を取得することとを含む。調製されたニッケルマンガン系二元正極材料は初期放電容量が170mAh/g以上と高く、サイクル性能が良好である。
【0005】
CN109811412Aは、単結晶形態の層状ニッケルマンガン酸リチウム正極材料およびその調製方法を開示し、前記方法は、(1)ニッケル塩とマンガン塩とで湿式化学法によりニッケルマンガン前駆体を調製し、そのうちのNiとMnとのモル比が1:1であることと、(2)ニッケルマンガン前駆体を予備焼結し、ニッケルマンガン酸化物前駆体を取得することと、(3)ニッケルマンガン酸化物前駆体を、リチウム源、M源添加剤と混合させてから焼成し、単結晶形態の層状ニッケルマンガン酸リチウム正極材料を取得することとを含む。
【0006】
しかし、その中のコバルト元素が欠損しているため、その導電性は低く、従来のNCMおよびNCA等の三元材料に対し、導電性能および構造安定性が悪いことは大きな問題となり、更に、電気化学的性能では一定の制約を受けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、リチウムイオン電池用複合正極材料、その調製方法および使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例において、正極材料の内部コアと、前記正極材料の内部コアの表面に被覆されたハロゲン化物被覆層とを備え、前記ハロゲン化物はLi3YX6を含み、ただし、Xはハロゲンのうちの少なくとも1種であるリチウムイオン電池用複合正極材料を提供する。
【0009】
本発明に係る一実施例において、ハロゲン化物は正極材料を被覆し、ハロゲン化物被覆層の被覆により、正極材料のイオン導電性および構造安定性を大きく向上させ、材料の表面抵抗を低減し、その技術原理は以下のとおりである。まず、本発明に係るハロゲン化物内のハロゲンの-1価の陰イオンとリチウムイオンとの相互作用が弱く、より良好なリチウムイオン伝導能力を有し、次に、ハロゲンイオンの半径が大きいため、リチウムイオンのマイグレーションに寄与し、更に、該ハロゲン化物の安定性が良く、基材と安定で強固な接続を形成しやすく、且つ、該ハロゲン化物被覆層の化学的安定性が良く、正極材料と電解液との接触を遮断し、副反応の発生を低減する。上記要因の総合作用により、得られる複合正極材料は、極めて高いイオン導電性および構造安定性を有し、材料の容量、初回効率およびサイクル性能を向上させる。
【0010】
被覆層の化学組成については、硫化物固体電解質または酸化物固体電解質が良好なイオン伝導率を有するが、硫化物の化学的安定性が悪いため、本発明の達成しようとする技術的効果を実現できない。酸化物固体電解質に関する反応が複雑であり、酸化物固体電解質が空気および水分と接触すると反応が発生し、サイクル安定性が低下する。酸化物粒子が硬く、固体界面の接触が良くなく、密度が大きく、質量エネルギー密度が低く、規模的な生産過程に適しない。
【0011】
一実施例において、前記ハロゲン化物は、Li3YCl6および/またはLi3YBr6であり、例えば、ハロゲン化物はLi3YCl6であってもよいし、Li3YBr6であってもよいし、Li3YCl6とLi3YBr6との混合物であってもよい。
【0012】
一実施例において、前記正極材料の内部コアはコバルトフリー正極材料を含む。
【0013】
一実施例において、前記正極材料の内部コアはニッケルマンガン酸リチウム正極材料を含む。
【0014】
一実施例において、前記ニッケルマンガン酸リチウム正極材料の化学式はLiNixMnyO2であり、0.55≦x≦0.95で、0.05≦y≦0.45であり、ただし、xは、例えば、0.55、0.6、0.65、0.7、0.72、0.75、0.8、0.9、または0.95等である。yは、例えば、0.05、0.08、0.1、0.2、0.3、0.35、0.4、または0.45等である。
【0015】
本発明に係る一実施例において、ハロゲン化物は、本分野でよく使用される様々なリチウムイオン電池の正極材料(例えば、リン酸鉄リチウム、NCM三元、NCA三元、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム等)に対していずれもイオン導電性を向上させて構造を安定させる作用を果たすことができる。
【0016】
本発明は、ハロゲン化物被覆層を導入することにより、コバルトフリー正極材料の性能に対する改善は特に顕著であり、前記コバルトフリー正極材料は、三元材料に基づくコバルトフリー正極材料である。
【0017】
本発明は、コバルトフリー正極材料の表面にハロゲン化物被覆層を被覆することにより、残留アルカリを低減することもでき、その技術原理は以下のとおりである。高い温度(700~800℃)で、ハロゲン化物被覆層がコバルトフリー正極材料の表面と接触する位置において、ハロゲン化物内のハロゲン(例えば、Cl)は一部のリチウムと反応し、高温で酸化物を形成して材料の内部に嵌め込み、残留アルカリを低減するとともに製品の性能を向上させる。
【0018】
一実施例において、正極材料の内部コアの質量が100%で計算すると、前記Li3YX6内のY元素の含有量は0.1%~1%で、例えば、0.1%、0.3%、0.5%、0.7%、0.8%、0.9%、または1%等である。
【0019】
本発明に係る一実施例において、Li3YX6内のY元素の含有量が0.1%よりも小さい場合、導電性の向上効果は顕著でなくなり、Li3YX6内のY元素の含有量が1%よりも大きい場合、リチウムイオンの嵌め込みおよび脱出を阻害し、電気化学的性能を低減する。
【0020】
一実施例において、正極材料の内部コアの質量が100%で計算すると、前記Li3YX6内のY元素の含有量は0.1%~0.3%である。
【0021】
一実施例において、前記正極材料の内部コアの粒径D50は1μm~5μmであり、例えば、1μm、2μm、2.5μm、3μm、3.5μm、4μm、または5μm等である。
【0022】
一実施例において、前記正極材料の内部コアの粒径D50は1μm~3μmである。
【0023】
一実施例において、前記Li3YX6の粒径D50は5nm~500nmであり、例えば、5nm、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、35nm、40nm、50nm、65nm、80nm、100nm、15nm、130nm、150nm、180nm、200nm、230nm、260nm、300nm、350nm、375nm、400nm、450nm、または500nm等である。
【0024】
一実施例において、前記Li3YX6の粒径D50は50nm~100nmである。
【0025】
本発明に係る一実施例において、正極材料の内部コア粒径D50は1μm~5μmで、Li3YX6の粒径D50は5nm~500nmであり、この範囲内で、被覆された基材の表面に良好な被覆層をより良く形成することができる。本発明の一実施例に係る複合正極材料において、ハロゲン化物被覆層は、良好な化学的安定性を有し、空気中の酸素および水と反応せず、複合正極材料の残留アルカリおよび遊離水の含有量が低く、材料の残留炭酸リチウムと水酸化リチウムとの総量は0.3%(wt)よりも低く、材料中の遊離水含有量は200ppmよりも低く、その比表面積の範囲は0.2m2/g~0.9m2/gであり、材料のpH≦12である。
【0026】
本発明の一実施例において、
被覆剤と基体正極材料とを混合させた後、酸素含有雰囲気において400℃~800℃で、例えば、400℃、425℃、450℃、460℃、480℃、500℃、525℃、550℃、580℃、600℃、650℃、700℃、730℃、750℃、または800℃等で高温処理を行い、複合正極材料を取得するステップを含む前記リチウムイオン電池用複合正極材料の調製方法であって、
前記被覆剤はLi3YX6を含み、Xはハロゲンのうちの少なくとも1種である調製方法を提供する。
【0027】
本発明に係る一実施例において、400℃~800℃で高温処理を行い、温度が400℃よりも低い場合、被覆層と正極材料の内部コアとの結合性は悪くなり、温度が800℃よりも高い場合、ハロゲン化物の構造は大きく変化し、更に、三元材料またはコバルトフリー正極材料に対してリチウムニッケル混合配列を促進し、導電性の向上効果を低減し、好ましくは400℃~700℃である。
【0028】
なお、高温処理の温度が700℃よりも高くて800℃以下である場合、Li3YX6の構造は僅かに破壊され、そのイオン導電性に対する改良効果を低減するとともに、正極材料、特にコバルトフリー正極材料の表面と接触する位置において、Li3YX6内のハロゲン(例えば、Cl)は一部のリチウムと反応し、高温で酸化物を形成して材料の内部に嵌め込み、残留アルカリを低減するとともに製品の性能を向上させる。
【0029】
一実施例において、前記酸素含有雰囲気において、酸素ガスの体積濃度は20%~100%で、例えば、20%、25%、30%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%等である。
【0030】
一実施例において、前記酸素含有雰囲気において、酸素ガスの体積濃度は50%~90%である。
【0031】
一実施例において、前記混合の方式は乾式混合である。
【0032】
一実施例において、前記混合は、被覆剤と基体正極材料とを混合機器にて2000rpm~3000rpmの回転数で、例えば、2000rpm、2250rpm、2500rpm、2700rpm、2800rpm、または3000rpm等の回転数で混合させることを含む。
【0033】
一実施例において、前記混合時間は10min~20minで、例えば、10min、15min、18min、または20min等である。
【0034】
一実施例において、前記高温処理の温度は400℃~700℃である。
【0035】
一実施例において、前記高温処理の時間は4h~8hで、例えば、4h、4.2h、4.5h、5h、5.5h、5.7h、6h、6.5h、7h、7.5h、または8h等である。
【0036】
一実施例において、前記方法は、高温処理後に研磨および篩分けを行うステップを更に含む。
【0037】
一実施例において、前記基体正極材料はニッケルマンガン酸リチウムであり、前記ニッケルマンガン酸リチウムの調製方法は、
(a)リチウム源と前駆体NixMny(OH)2(0.55≦x≦0.95、0.05≦y≦0.45)とを均一に混合させることと、
(b)800℃~1000℃で、例えば、800℃、820℃、850℃、900℃、950℃、970℃、または1000℃等で高温反応させ、ニッケルマンガン酸リチウムを取得することと、
を含む。
【0038】
一実施例において、ステップ(a)に記載のリチウム源はLiOHである。
【0039】
一実施例において、ステップ(a)に記載の混合は、高速混合機器にて、2000rpm~3000rpmの回転数で10min~20min混合させることである。
【0040】
一実施例において、ステップ(b)に記載の高温反応の時間は8h~12hで、例えば、8h、9h、9.5h、10h、11h、または12h等である。
【0041】
一実施例において、ステップ(b)に記載の高温反応は、酸素ガスの体積濃度が90%よりも大きい酸素含有雰囲気で行われる。
【0042】
一実施例において、酸素含有雰囲気のガス流量は2L/min~20L/minで、例えば、2L/min、5L/min、7L/min、10L/min、12L/min、14L/min、15L/min、または20L/min等である。
【0043】
一実施例において、ステップ(b)に記載の高温反応の後に降温冷却して破砕するステップを行う。
【0044】
一実施例において、前記方法は、
(1)基体正極材料であるニッケルマンガン酸リチウムを調製するステップであって、
(a)LiOHと前駆体NixMny(OH)2(0.55≦x≦0.95、0.05≦y≦0.45)とを高速混合機器にて2000rpm~3000rpmの回転数で10min~20min混合させ、
(b)酸素ガスの体積濃度が90%よりも大きい酸素含有雰囲気において、800℃~1000℃で8h~12h高温反応させ、酸素含有雰囲気のガス流量が2L/min~20L/minであり、ニッケルマンガン酸リチウムを取得し、降温冷却して破砕し、使用に備える
ステップと、
(2)Li3YCl6および/またはLi3YBr6である被覆剤と基体正極材料とを混合機器にて2000rpm~3000rpmの回転数で10min~20min混合させた後、酸素ガスの体積濃度が20%~100%である酸素含有雰囲気において400℃~700℃で高温処理を4h~8h行い、研磨して300メッシュ~400メッシュの篩を用いて篩分けし、複合正極材料を取得し、前記複合正極材料は、ニッケルマンガン酸リチウムと、前記ニッケルマンガン酸リチウムの表面に被覆された被覆層とを備え、前記被覆層はLi3YCl6および/またはLi3YBr6であるステップと、
を含み、
正極材料の内部コアの質量が100%で計算すると、前記被覆層内のY元素の含有量は0.1%~1%である。
【0045】
本発明の一実施例において、本発明の一実施例に係るリチウムイオン電池用複合正極材料を含む正極を提供する。
【0046】
本発明の一実施例において、本発明の一実施例に係る正極を備えるリチウムイオン電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図面は、本発明の技術案に対する更なる理解を提供するためのものであり、明細書の一部を構成し、本発明の実施例と共に本発明の技術案を解釈するために用いられ、本発明の技術案を限定するものではない。
【0048】
【
図1】
図1aは被覆前の材料(本発明に係る比較例で調製された正極材料)の異なる倍数でのSEM図である。
図1bは被覆前の材料(本発明に係る比較例で調製された正極材料)の異なる倍数でのSEM図である。
【
図2】
図2aは被覆後の材料(本発明に係る実施例で調製された正極材料)の異なる倍数でのSEM図である。
図2bは被覆後の材料(本発明に係る実施例で調製された正極材料)の異なる倍数でのSEM図である。
【
図3】被覆前後の材料の初回充放電の曲線であり、ここで、図中の矢印で示された2本の曲線は被覆後の複合正極材料に対応し、矢印で示されていない2本の曲線は被覆前の正極材料に対応し、被覆前は比較例の正極材料に対応し、被覆後は実施例の複合正極材料に対応する。
【
図4】被覆前後の材料のサイクル性能の曲線であり、ここで、被覆前は比較例の正極材料に対応し、被覆後は実施例の複合正極材料に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、図面および具体的な実施形態を参照しながら本発明の技術案について更に説明する。
【実施例1】
【0050】
本実施例は、リチウムイオン電池用複合正極材料を提供し、前記複合正極材料は、正極材料の内部コアと、前記正極材料の内部コアの表面に被覆されたハロゲン化物被覆層とを備え、前記正極材料の内部コアはLiNi0.75Mn0.25O2で、前記ハロゲン化物はLi3YCl6であり、正極材料の内部コアの質量が100%で計算すると、前記Li3YCl6内のY元素の含有量は0.5%であり、前記正極材料の内部コアの粒径D50は3μmであった。
【0051】
本実施例は、前記複合正極材料の調製方法を更に提供し、以下のステップを含んだ。
【0052】
(1)基体正極材料であるニッケルマンガン酸リチウムを調製した。
(a)LiOHと前駆体Ni0.75Mn0.25(OH)2とを高速混合機器にて2500rpmの回転数で15min混合させた。
(b)酸素ガス雰囲気において、900℃で10h高温反応させ、酸素ガスのガス流量は10L/minであり、ニッケルマンガン酸リチウムLiNi0.75Mn0.25O2を取得し、降温冷却して破砕し、使用に備えた。
【0053】
(2)被覆剤Li3YCl6と基体正極材料とを混合機器にて2200rpmの回転数で20min混合させた後、酸素含有雰囲気において600℃で5h高温処理し、前記酸素含有雰囲気は酸素ガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気であり、窒素ガスの体積濃度は40%で、酸素ガスの体積濃度は60%であり、研磨し、300メッシュの篩を用いて篩分けし、複合正極材料を取得した。
【実施例2】
【0054】
本実施例は、リチウムイオン電池用複合正極材料を提供し、前記複合正極材料は、正極材料の内部コアと、前記正極材料の内部コアの表面に被覆されたハロゲン化物被覆層とを備え、前記正極材料の内部コアはLiNi0.6Mn0.4O2で、前記ハロゲン化物はLi3YBr6であり、正極材料の内部コアの質量が100%で計算すると、前記Li3YBr6内のY元素の含有量は0.3%であり、前記正極材料の内部コアの粒径D50は3μmであった。
【0055】
本実施例は、前記複合正極材料の調製方法を更に提供し、以下のステップを含んだ。
【0056】
(1)基体正極材料であるニッケルマンガン酸リチウムを調製した。
(a)LiOHと前駆体Ni0.6Mn0.4(OH)2とを高速混合機器にて2000rpmの回転数で20min混合させた。
(b)酸素ガス雰囲気において、1000℃で8h高温反応させ、酸素ガスのガス流量は5L/minであり、ニッケルマンガン酸リチウムLiNi0.6Mn0.4O2を取得し、降温冷却して破砕し、使用に備えた。
【0057】
(2)被覆剤Li3YBr6と基体正極材料とを混合機器にて2750rpmの回転数で10min混合させた後、酸素含有雰囲気において500℃で5.5h高温処理し、前記酸素含有雰囲気は酸素ガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気であり、窒素ガスの体積濃度は60%で、酸素ガスの体積濃度は40%であり、研磨し、300メッシュの篩を用いて篩分けし、複合正極材料を取得した。
【実施例3】
【0058】
本実施例は、リチウムイオン電池用複合正極材料を提供し、前記複合正極材料は、正極材料の内部コアと、前記正極材料の内部コアの表面に被覆されたハロゲン化物被覆層とを備え、前記正極材料の内部コアはLiNi0.7Mn0.3O2で、前記ハロゲン化物はLi3YCl6であり、正極材料の内部コアの質量が100%で計算すると、前記Li3YCl6内のY元素の含有量は0.8%であり、前記正極材料の内部コアの粒径D50は3μmであった。
【0059】
本実施例は、前記複合正極材料の調製方法を更に提供し、以下のステップを含んだ。
【0060】
(1)基体正極材料であるニッケルマンガン酸リチウムを調製した。
(a)Li2CO3と前駆体Ni0.7Mn0.3(OH)2とを高速混合機器にて2800rpmの回転数で16min混合させた。
(b)酸素ガス雰囲気において、800℃で12h高温反応させ、酸素ガスのガス流量は15L/minであり、ニッケルマンガン酸リチウムLiNi0.7Mn0.3O2を取得し、降温冷却して破砕し、使用に備えた。
【0061】
(2)被覆剤Li3YCl6と基体正極材料とを混合機器にて2250rpmの回転数で15min混合させた後、酸素含有雰囲気において450℃で8h高温処理し、前記酸素含有雰囲気は酸素ガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気であり、窒素ガスの体積濃度は15%で、酸素ガスの体積濃度は85%であり、研磨し、400メッシュの篩を用いて篩分けし、複合正極材料を取得した。
【実施例4】
【0062】
本実施例は、リチウムイオン電池用複合正極材料を提供し、前記複合正極材料は、正極材料の内部コアと、前記正極材料の内部コアの表面に被覆されたハロゲン化物被覆層とを備え、前記正極材料の内部コアはリン酸鉄リチウムで、前記ハロゲン化物はLi3YCl6であり、正極材料の内部コアの質量が100%で計算すると、前記Li3YCl6内のY元素の含有量は0.7%であり、前記正極材料の内部コアの粒径D50は3.5μmであった。
【0063】
基材リン酸鉄リチウムの調製:
(1)リン酸と硫酸第一鉄とを三つ口フラスコに加えて撹拌し、300rpmの回転数で約15min撹拌した後、過剰な過酸化水素水を加え、白色沈殿が現れたまでアンモニア水で溶液のpHを調整した。(2)白色沈殿を濾過、洗浄し、60℃で真空乾燥してリン酸鉄(FePO4・2H2O)粉末を取得した。(3)白色粉末と、水酸化リチウムと、アセチレンブラックとを混合機器にて混合させ、窒素ガス雰囲気において600℃で12h高温反応し、窒素ガスのガス流量は15L/minであり、リン酸鉄リチウム粉末基材を取得し、降温冷却して粉砕し、使用に備えた。
【0064】
被覆過程:被覆剤(Li3YCl6)と基材とを混合機器にて混合させた後、酸素含有雰囲気において450℃で8h高温処理し、前記酸素含有雰囲気は酸素ガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気であり、窒素ガスの体積濃度は15%で、酸素ガスの体積濃度は85%であり、研磨し、400メッシュの篩を用いて篩分けし、複合正極材料を取得した。
【実施例5】
【0065】
本実施例は、リチウムイオン電池用複合正極材料を提供し、前記複合正極材料は、正極材料の内部コアと、前記正極材料の内部コアの表面に被覆されたハロゲン化物被覆層とを備え、前記正極材料の内部コアはLiNi0.8Mn0.2O2で、前記ハロゲン化物はLi3YCl6であり、正極材料の内部コアの質量が100%で計算すると、前記Li3YCl6内のY元素の含有量は0.15%であり、前記正極材料の内部コアの粒径D50は5μmであった。
【0066】
本実施例は、前記複合正極材料の調製方法を更に提供し、以下のステップを含んだ。
【0067】
(1)基体正極材料であるニッケルマンガン酸リチウムを調製した。
(a)LiOHと前駆体Ni0.8Mn0.2(OH)2とを高速混合機器にて2000rpmの回転数で20min混合させた。
(b)酸素ガス雰囲気において、950℃で9h高温反応し、酸素ガスのガス流量は12L/minであり、ニッケルマンガン酸リチウムLiNi0.8Mn0.2O2を取得し、降温冷却して破砕し、使用に備えた。
(2)被覆剤Li3YCl6と基体正極材料とを混合機器にて2600rpmの回転数で15min混合させた後、酸素含有雰囲気において550℃で7h高温処理し、前記酸素含有雰囲気は酸素ガスとアルゴンガスとの混合ガス雰囲気であり、アルゴンガスの体積濃度は10%で、酸素ガスの体積濃度は90%であり、研磨し、250メッシュの篩を用いて篩分けし、複合正極材料を取得した。
【実施例6】
【0068】
正極材料の内部コアの質量が100%で計算すると、前記Li3YCl6内のY元素の含有量は1.5%である以外、他の調製方法および条件は実施例1と同じであった。
【実施例7】
【0069】
正極材料の内部コアの質量が100%で計算すると、前記Li3YCl6内のY元素の含有量は0.05%である以外、他の調製方法および条件は実施例1と同じであった。
【0070】
[比較例1]
本比較例は、被覆されていない正極材料LiNi0.75Mn0.25O2であった。
【0071】
[比較例2]
Li3YCl6を酸化物固体電解質LLZO(Li7La3Zr2O12)に置き換えた以外、他の調製方法および条件は実施例1と同じであった。
【0072】
[比較例3]
Li3YCl6を硫化物固体電解質LGPS(Li10GeP2S12)に置き換えた以外、他の調製方法および条件は実施例1と同じであった。
【0073】
[比較例4]
ステップ(2)の高温処理の温度を300℃に調整した以外、他の調製方法および条件は実施例1と同じであった。
【0074】
[比較例5]
ステップ(2)の高温処理の温度を820℃に調整した以外、他の調製方法および条件は実施例1と同じであった。
【0075】
検出:
走査型電子顕微鏡を用いて被覆前後の材料の形態を分析し、
図1aおよび
図1bは、被覆前の材料(比較例1の正極材料)の異なる倍数でのSEM図であり、
図2aおよび
図2bは、被覆後の材料(実施例1の複合正極材料)の異なる倍数でのSEM図であった。図から見られるように、被覆後のサンプル粒子にチップ状の被覆物が分布されている。
【0076】
定電流間欠性滴定法(GITT)を用いて材料のリチウムイオン拡散係数を計算し、データは表1を参照した。
【0077】
【0078】
表1から分かるように、Li3YCl6で被覆した後、リチウムイオンの拡散速度が増大し、材料の導電性が向上した。
【0079】
各実施例および比較例の材料を用いて電池を調製して初回充放電性能およびサイクル性能の試験を行った。電池の調製は以下のとおりであった。まず、取得された正極材料と、導電剤SPと、ポリフッ化ビニリデンと、N-メチルピロリドンとを混合させてスラリーを調製し、正極材料と導電剤とポリフッ化ビニリデンとの質量比は92:4:4であり、N-メチルピロリドンの添加量は、スラリーの固形分を50%にする量であり、次に、スラリーをアルミ箔に均一に塗布し、100℃で12h乾燥して極シートを調製し、その後、極シートを直径14μmの円形の極シートに打ち抜き、グローブボックスでコイン型ハーフセルを製造し、最後に、コイン電池を放置、充放電試験を行い、初回充放電性能試験およびサイクル試験は、同じ試験工程で得られた。試験条件は、25℃の定温オーブンで、初回効率試験の充電倍率が0.1Cで、放電倍率が0.1Cであり、サイクル試験の充電倍率が0.5Cで、放電倍率が1Cであった。試験結果は表2を参照した。
【0080】
【0081】
図3は、被覆前後の材料の初回充放電の曲線であり、図中の矢印で示された2本の曲線は被覆後の複合正極材料に対応し、矢印で示されていない2本の曲線は被覆前の正極材料に対応し、ここで、被覆前は比較例1の正極材料に対応し、被覆後は実施例1の複合正極材料に対応した。図から見られるように、被覆されていない材料の0.1C放電容量は183.4mAh/gで、初回効率は86.7%であり、本形態の被覆された材料の0.1C放電容量は192.2mAh/gで、初回効率は87.29%であった。従って、Li
3YCl
6で被覆した後、材料の電気化学的性能が向上した。
【0082】
図4は、被覆前後の材料のサイクル性能の曲線であり、ここで、被覆前は比較例1の正極材料に対応し、被覆後は実施例1の複合正極材料に対応した。曲線から見られるように、被覆された後、材料は良好なサイクル安定性を有し、安定性が向上した原因は、材料の表面に形成されたハロゲン化物被覆層の安定性が良く、基材と安定で強固な接続を形成し、正極材料と電解液との接触を遮断し、副反応の発生を低減するためである。初回効率が向上した原因は、ハロゲン化物内のハロゲンの-1価の陰イオンとリチウムイオンとの相互作用が弱く、より良好なリチウムイオン伝導能力を有し、表面阻抗を低減し、更に、ハロゲンイオンの半径が大きいため、リチウムイオンのマイグレーションに寄与するためである。
【0083】
実施例1と比較例2との比較により、被覆物が酸化物固体電解質である場合、イオン導電性は悪いので、材料の電気化学的性能は低下した。
【0084】
実施例1と比較例3との比較により、被覆物が硫化物固体電解質である場合、サイクル過程において安定性は悪いので、材料のサイクル性能は低下した。
【0085】
実施例1と比較例4との比較により、被覆温度が300℃である場合、被覆物質と基材との結合は緊密ではないので、材料のサイクル安定性は低下した。
【0086】
実施例1と比較例5との比較により、被覆温度が820℃である場合、被覆物質の構造は変化する可能性があり、材料のサイクル安定性に影響を及ぼした。
【0087】
実施例1と実施例6との比較により、被覆層の厚さが増えると、リチウムイオンは充放電過程で脱離しにくくなった。
【0088】
実施例1と実施例7との比較により、実施例7のハロゲン化物被覆量が少ないので、イオン導電性に対する向上は低くなった。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極材料の内部コアと、前記正極材料の内部コアの表面に被覆されたハロゲン化物の被覆層とを備え、前記ハロゲン化物はLi
3YX
6を含み、ただし、Xはハロゲンのうちの少なくとも1種である、リチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項2】
前記ハロゲン化物は、Li
3YCl
6および/またはLi
3YBr
6である、請求項1に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項3】
前記正極材料の内部コアはコバルトフリー正極材料を含む、請求項1または2に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項4】
前記正極材料の内部コアはニッケルマンガン酸リチウム正極材料を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項5】
前記ニッケルマンガン酸リチウム正極材料の化学式はLiNi
xMn
yO
2であり、0.55≦x≦0.95で、0.05≦y≦0.45である、請求項4に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項6】
正極材料の内部コアの質量が100%で計算すると、前記Li
3YX
6内のY元素の含有量は0.1%~1%であり、
好ましくは、正極材料の内部コアの質量が100%で計算すると、前記Li
3YX
6内のY元素の含有量は0.1%~0.3%である、請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項7】
前記正極材料の内部コアの粒径D50は1μm~5μmであり、
好ましくは1μm~3μmである、請求項1~6のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項8】
前記Li
3YX
6の粒径D50は5nm~500nmであり、
好ましくは50nm~100nmである、請求項1~7のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料。
【請求項9】
被覆剤と基体正極材料とを混合させた後、酸素含有雰囲気において400℃~800℃で高温処理を行い、複合正極材料を取得するステップを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料の調製方法であって、
前記被覆剤はLi
3YX
6を含み、Xはハロゲンのうちの少なくとも1種である、調製方法。
【請求項10】
前記酸素含有雰囲気において、酸素ガスの体積濃度は20%~100%である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基体正極材料はニッケルマンガン酸リチウムであり、前記ニッケルマンガン酸リチウムの調製方法は、
(a)リチウム源と前駆体Ni
xMn
y(OH)
2(0.55≦x≦0.95、0.05≦y≦0.45)とを均一に混合させることと、
(b)800℃~1000℃で高温反応させ、ニッケルマンガン酸リチウムを取得することと、
を含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(a)に記載のリチウム源はLiOHである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(1)基体正極材料であるニッケルマンガン酸リチウムを調製するステップであって、
(a)LiOHと前駆体Ni
xMn
y(OH)
2(0.55≦x≦0.95、0.05≦y≦0.45)とを高速混合機器にて2000rpm~3000rpmの回転数で10min~20min混合させ、
(b)酸素ガスの体積濃度が90%よりも大きい酸素含有雰囲気において、800℃~1000℃で8h~12h高温反応させ、酸素含有雰囲気のガス流量が2L/min~20L/minであり、ニッケルマンガン酸リチウムを取得し、降温冷却して破砕し、使用に備える
ステップと、
(2)Li
3YCl
6および/またはLi
3YBr
6である被覆剤と基体正極材料とを混合機器にて2000rpm~3000rpmの回転数で10min~20min混合させた後、酸素ガスの体積濃度が20%~100%である酸素含有雰囲気において400℃~700℃で高温処理を4h~8h行い、研磨して300メッシュ~400メッシュの篩を用いて篩分けし、複合正極材料を取得し、前記複合正極材料は、ニッケルマンガン酸リチウムと、前記ニッケルマンガン酸リチウムの表面に被覆された被覆層とを備え、前記被覆層はLi
3YCl
6および/またはLi
3YBr
6であるステップと、
を含み、
正極材料の内部コアの質量が100%で計算すると、前記被覆層内のY元素の含有量は0.1%~1%である、請求項9~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用複合正極材料を含む、正極。
【請求項15】
請求項14に記載の正極を備える、リチウムイオン電池。
【国際調査報告】