(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(54)【発明の名称】表面コーティングされたセルロース系フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 7/043 20200101AFI20221222BHJP
D21H 11/18 20060101ALI20221222BHJP
D21H 15/02 20060101ALI20221222BHJP
B32B 23/04 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
C08J7/043 Z
D21H11/18
D21H15/02
B32B23/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521741
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 IB2020060347
(87)【国際公開番号】W WO2021090190
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク、カイ
(72)【発明者】
【氏名】リーティケイネン、カーチャ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン、イスト
(72)【発明者】
【氏名】ニーレン、オットー
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
4F006AA01
4F006AA02
4F006AB03
4F006AB64
4F006BA05
4F006BA16
4F006CA00
4F006CA07
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4F100AH02B
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4F100YY00A
4F100YY00B
4L055AF09
4L055AF36
4L055AG34
4L055AG46
4L055AH50
4L055BE08
4L055EA04
4L055EA30
4L055EA32
4L055FA14
(57)【要約】
MFCを含むセルロース系フィルムであって、その少なくとも一方の表面が少なくとも1つの硬化バリア層でコーティングされているものが提供される。硬化バリア層は、架橋剤で架橋されたCMCを含む。また、セルロース系フィルムのバリア性を向上させる方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含むセルロース系フィルムのバリア性を向上させる方法であって、以下の工程:
a.MFCを含むセルロース系フィルムを提供すること;
b.前記セルロース系フィルムの少なくとも一方の表面にバリアコーティング組成物を塗布すること;前記バリアコーティング組成物は、架橋剤とカルボキシメチルセルロース(CMC)とを含むこと、
または
架橋剤を含む水溶液と、カルボキシメチルセルロース(CMC)を含む水溶液及び/又は懸濁液とを、前記セルロース系フィルムの同じ表面に塗布し;それによって、前記セルロース系フィルムの表面上にバリアコーティング組成物を形成すること;及び
c.前記セルロース系フィルム上にコーティングされたバリア層を形成するように、前記バリアコーティング組成物を硬化させること、
を含む前記方法。
【請求項2】
前記セルロース系フィルムが、少なくとも20%w/wのMFC、好ましくは少なくとも40%w/wのMFC、より好ましくは少なくとも60%w/wのMFC、さらに好ましくは少なくとも80%w/wのMFC、最も好ましくは100%MFCを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記架橋剤が、有機酸、好ましくは有機ポリ酸、好適にはクエン酸、乳酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、マロン酸、酒石酸、尿酸、またはリンゴ酸から選択される有機酸、好ましくはクエン酸である、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記バリアコーティング組成物が、CMCおよび前記架橋剤の水溶液または水性懸濁液である、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記バリアコーティング組成物中の架橋剤の濃度が、前記バリアコーティング組成物中のCMCの乾燥重量に基づいて、1~100wt%または好ましくは5~80wt%、より好ましくは10~70wt%である、前記請求項のいずれか1項に従う方法。
【請求項6】
バリアコーティング組成物中のCMCの乾燥含量が、少なくとも5wt%、好ましくは少なくとも8wt%、より好ましくは少なくとも10wt%である、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記バリアコーティング組成物が、2種以上の架橋剤の混合物を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記バリアコーティング組成物が、前記架橋剤を含む水溶液に乾燥CMCを添加することによって形成される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記バリアコーティング組成物が、2~10、好ましくは2.5~8、より好ましくは3~7の間のpHを有する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記バリアコーティング組成物が、0.5~10gsm、好ましくは1~5gsm、より好ましくは約2gsmの量で塗布される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記CMCが、50000mol/g未満、好ましくは30000mol/g未満、より好ましくは20000mol/g未満の重量平均分子量を有する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記バリアコーティング組成物が、前記セルロース系フィルムの両対向面に塗布される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
1つよりも多い、例えば2、3、4、5又は10個のバリア層がセルロース系フィルム上に形成されるように、工程b及びcが繰り返される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
セルロース系フィルムが、コーティング前に、10~70gsm、好ましくは15~60gsm、より好ましくは20~50gsm、さらに好ましくは20~35gsmの重量を有する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
セルロース系フィルムが、ISO 5636-5に従って、少なくとも1000s/100mlで42300s/100ml未満のコーティングされる前のガーレーヒル値、及び、10000s/100ml超、好ましくは20000s/100ml超、より好ましくは42300s/100ml超のコーティングされた後のガーレーヒル値を有する、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
コーティングされたセルロース系フィルムが、25wt%未満、好ましくは20wt%未満、より好ましくは15wt%未満、さらに好ましくは10wt%未満の水分含有量に乾燥される、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
コーティングされたセルロースフィルムを後硬化させる追加の工程を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
MFCを含むセルロース系フィルムであって、前記セルロース系フィルムは、その少なくとも一方の表面上が少なくとも1つの硬化バリア層でコーティングされており、前記硬化バリア層が、架橋剤で架橋されたCMCを含むことを特徴とするセルロース系フィルム。
【請求項19】
バリアコーティング組成物であって、前記バリアコーティング組成物は、架橋剤とカルボキシメチルセルロース(CMC)とを含むことを特徴とするバリアコーティング組成物。
【請求項20】
前記架橋剤が、有機酸、好ましくは有機ポリ酸、好適にはクエン酸、乳酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、マロン酸、酒石酸、尿酸、またはリンゴ酸から選択される有機酸、好ましくはクエン酸である、請求項19記載のバリアコーティング組成物。
【請求項21】
前記バリアコーティング組成物が、CMCと前記架橋剤との水溶液または水性懸濁液、好ましくは水溶液である、請求項19~20のいずれか1項に記載のバリアコーティング組成物。
【請求項22】
請求項19~21のいずれか1項に記載のバリアコーティング組成物の製造方法であって、前記架橋剤を含む水溶液に乾燥CMCを添加する工程を含む、前記製造方法。
【請求項23】
架橋剤が酸、好ましくはクエン酸であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
MFCを含むコーティングセルロースフィルムであって、その少なくとも一方の表面上が少なくとも1つの硬化バリア層でコーティングされているコーティングセルロースフィルムが提供される。硬化バリア層は、架橋剤で架橋されたCMCを含む。このMFCフィルムは、改善されたバリア性、特にグリースに対する改善されたバリア性を有する。セルロース系フィルムのバリア性を向上させる方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
背景
微小繊維状セルロース(MFC)フィルムの製造における問題の一つは、フィルムの品質がほぼ脱水・乾燥工程で決定されることである。製造速度が速くなると、フィルム成形に悪影響を及ぼし、バリア性の低下につながる。
【0003】
技術的な解決策が常にあるわけではないが、例えば、プレス脱水の延長、製造速度の低下、多層膜の使用などが考えられる。
【0004】
また、化学物質による表面コーティング(サイジング)も解決策の一つである。コーティング組成物には様々なポリマーが使用されるが、これは通常、逆行現象や制御不能な架橋挙動により、保存安定性に限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、セルロース(MFC)フィルム用に、特に以下の問題を解決するコーティング組成物を見つけることが必要である:
-保存安定性
-低粘度及び高コンシステンシー
-水蒸気移動速度(WVTR)と酸素移動速度(OTR)の向上。
【0006】
好ましくは、コーティング組成物は、少なくとも2つのバリア特性を同時に改善し、例えば、グリースバリアの改善、並びにOTR及び/又はWVTRの改善を行う。これは、熱帯条件(38℃/85%RH)で決定されたバリア特性も向上した。親水性の紙やコーティングは、低相対湿度で測定した場合、通常、良好なガスバリア性とアロマバリア性を発揮する。しかし、問題はその湿度感受性であり、バリア層の膨潤や欠陥の原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本発明者らは、低粘度のCMCをクエン酸などの架橋剤中に分散させると、低粘度または中程度の粘度を維持したまま、高いコンシステンシーでコーティング組成物を調製できることを見出した。この組成物は、さらに保存安定性、温度安定性に優れ、廃棄物も少なくなる。
【0008】
そこで、第1の態様では、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含むセルロース系フィルムのバリア性を向上させる方法が提供される。本方法は、以下の工程を含む:
a.MFCを含むセルロース系フィルムを提供すること;
b.前記セルロース系フィルムの少なくとも一方の表面にバリアコーティング組成物を塗布すること;前記バリアコーティング組成物は、架橋剤とカルボキシメチルセルロース(CMC)とを含むこと、
または
架橋剤を含む水溶液と、カルボキシメチルセルロース(CMC)を含む水溶液及び/又は懸濁液とを、前記セルロース系フィルムの同じ表面に塗布し;それによって、前記セルロース系フィルムの表面上にバリアコーティング組成物を形成すること;及び
c.前記セルロース系フィルム上にコーティングされたバリア層を形成するように、前記バリアコーティング組成物を硬化させる工程。
【0009】
第2の態様では、MFCを含むコーティングされたセルロース系フィルムが提供され、前記セルロース系フィルムは、その少なくとも一方の表面上が少なくとも1つの硬化バリア層でコーティングされており、前記硬化バリア層は、架橋剤で架橋されたCMCを含むことを特徴とする。
【0010】
さらなる態様において、バリアコーティング組成物が提供され、前記バリアコーティング組成物は、架橋剤とカルボキシメチルセルロース(CMC)とを含む。
【0011】
本発明の更なる詳細は、以下の説明文、例及び特許請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な記述
本発明は、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含むセルロース系フィルムのバリア性を向上させる方法、およびMFCを含むコーティングされたセルロース系フィルムを提供するものである。本技術に用いられるセルロース系フィルムは、好適には、コーティング前の重量が10~70gsm、好ましくは15~60gsm、より好ましくは20~50gsm、さらに好ましくは20~35gsmのものである。なお、「セルロース系フィルム」には、各種包装紙や梱包紙のような薄紙バリアが含まれる。コーティングされたセルロース系フィルムは、工業用包装に加えて、グリース/オイルに対するバリアが望まれる食品包装、化粧品及びパーソナルケア、電子機器等にも使用することができる。コーティングされたフィルムは、特に、様々なラミネートに使用することに関心がある。
【0013】
本方法の第一工程では、MFCを含むセルロース系フィルムが提供される。セルロースミクロフィブリル、フィブリル化セルロース、ナノセルロース、ナノフィブリル化セルロース、フィブリル集合体、ナノスケールセルロースフィブリル、セルロースナノファイバー、セルロースナノフィブリル、セルロースミクロファイバー、セルロースフィブリル、ミクロフィブリルセルロース、ミクロフィブリル集合体、セルロースミクロフィブリル集合体などMFCに対する異なる同義語が存在する。セルロース繊維は、好ましくは、形成されたミクロフィブリル化セルロースの最終比表面積が、溶媒交換され凍結乾燥された材料についてBET法で測定した場合、約1~約400m2/g、例えば10~300m2/g、より好ましくは50~200m2/gとなる程度にフィブリル化されている。MFCの平均フィブリル径は、1~1000nm、好ましくは10~1000nmである。実施形態において、MFCは、少なくとも50wt%、例えば少なくとも60wt%、好適には少なくとも70wt%の、100nm未満の平均フィブリル径を有するフィブリルを含む。MFCは、高解像度SEMまたはESEM画像を分析することによって特徴付けることができる。
【0014】
ミクロフィブリル化セルロースの製造には、シングルパスまたはマルチパス精製、予備加水分解後の精製、高せん断によるフィブリルの分解または遊離など、さまざまな方法が存在する。ミクロフィブリル化セルロースの製造をエネルギー効率的かつ持続可能なものにするためには、通常、1つまたは複数の前処理工程が必要である。したがって、供給されるパルプのセルロース繊維は、例えばヘミセルロースまたはリグニンの量を減らすために、酵素的または化学的に前処理されてもよい。セルロース繊維は、フィブリル化の前に化学的に修飾されてもよく、その場合、セルロース分子は、元のセルロースに見られる以外の(又はそれ以上の)官能基を含む。そのような基としては、特に、カルボキシメチル、アルデヒド及び/又はカルボキシル基(N-オキシル媒介酸化によって得られるセルロース、例えば「TEMPO」)、又は第4級アンモニウム(カチオン性セルロース)などがある。上記のいずれかの方法で改質または酸化された後、繊維をミクロフィブリル化したセルロースに分解することが容易である。
【0015】
ミクロフィブリル化セルロースは、ヘミセルロースを多少含んでいてもよく、その量は植物由来に依存する。前処理された繊維、例えば加水分解、前膨潤、又は酸化されたセルロース原料の機械的崩壊は、リファイナー、グラインダー、ホモジナイザー、コロライダー、摩擦グラインダー、超音波ソニケーター、単軸又は二軸押出機、マイクロフルイダイザー、マクロフルイダイザー又は他の流動体タイプのホモジナイザーなどの適切な装置により実施される。MFCの製造方法によっては、製品に微粉末やナノ結晶セルロース、木材繊維や製紙工程に存在するその他の化学物質が含まれる場合がある。また、効率的にフィブリル化されていないミクロンサイズの繊維粒子も含まれている可能性がある。
【0016】
ミクロフィブリル化セルロースは、広葉樹、針葉樹のいずれの木材セルロース繊維からも製造することができる。また、微生物源、麦わらパルプなどの農業繊維、竹、バガス、または他の非木材繊維源からも製造することができる。好ましくは、バージン繊維からのパルプを含むパルプ、例えば機械的パルプ、化学的パルプ及び/又は熱機械的パルプから作られる。また、破砕紙または再生紙、すなわち消費者前および消費者後の廃棄物から製造することもできる。
【0017】
ミクロフィブリル化セルロースは、ネイティブ(すなわち化学的に未修飾)であることも、化学的に修飾されていることも可能である。リン酸化ミクロフィブリル化セルロース(P-MFC)は、通常、NH4H2PO4、水および尿素の溶液に浸したセルロース繊維を反応させ、その後、繊維をフィブリル化してP-MFCとすることで得られる。一つの特定の方法は、水中のセルロースパルプ繊維の懸濁液を提供し、前記水懸濁液中のセルロースパルプ繊維をリン酸化剤でリン酸化し、その後、当技術分野で一般的な方法でフィブリル化することを含む。好適なリン酸化剤としては、リン酸、五酸化リン、オキシ塩化リン、リン酸水素二アンモニウムおよびリン酸二水素ナトリウムが挙げられる。
【0018】
セルロース系フィルムの形成には、ミクロフィブリル化セルロースの懸濁液が使用される。典型的には、セルロース系フィルムは、全固形分に基づいて0.01~100wt%の量、例えば30~100wt%、好適には40~100wt%、例えば50~100wt%、又は70~100wt%でミクロフィブリル化セルロースを含む。
【0019】
セルロース系フィルムを形成するために使用される懸濁液は、典型的には水性懸濁液である。懸濁液は、製紙工程から知られている追加の化学成分を含んでいてもよい。これらの例は、ナノクレー、ベントナイト、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、SiO2、Al2O3、TiO2、石膏などのナノフィラーまたはフィラーであってもよい。繊維状基材は、セルロース誘導体またはネイティブなデンプンまたは例えばカチオン性デンプン、ノニオン性デンプン、アニオン性デンプンまたは両性デンプンなどの変性デンプンなどの強化剤も含んでもよい。強化剤はまた、合成ポリマーであってもよい。さらなる実施形態において、繊維状基材は、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、シリカ、ナノクレー、ミョウバン、PDADMAC、PEI、PVAmなどの保持及び排水化学物質を含むこともできる。さらにさらなる実施形態において、セルロース系フィルムは、染料又は蛍光増白剤、消泡剤、湿潤強度樹脂、殺生物剤、疎水性剤、バリア化学物質等の他の典型的なプロセス又は性能化学物質も含有してもよい。
【0020】
ミクロフィブリル化セルロース懸濁液は、さらに、カチオン性またはアニオン性のミクロフィブリル化セルロース;例えばカルボキシメチル化ミクロフィブリル化セルロースを含んでいてもよい。実施形態において、カチオン性又はアニオン性のミクロフィブリル化セルロースは、ミクロフィブリル化セルロースの総量の50wt%未満の量、好ましくは40wt%未満の量、又はより好ましくは30wt%未満の量で存在する。
【0021】
懸濁液からのセルロース系フィルムの形成工程は、セルロース系フィルムが除去されない基材上に自立したフィルム又はコーティングを形成するために、キャスティング又は湿式積層であってもよい。本発明の方法で形成されるセルロース系フィルムは、2つの対向する主表面を有すると理解されるべきである。したがって、セルロース系フィルムは、フィルムであってもコーティングであってもよく、最も好ましくはフィルムである。セルロース系フィルムは、1~80の間のグラム数、好ましくは10~50gsm、例えば10~40gsmの間のグラム数を有する。特にコーティングの場合、グラム数は低くてもよく、例えば0.1~20gsm、より好ましくはさらに0.1~10gsmである。
【0022】
本明細書に記載の方法の一態様では、セルロース系フィルムは、乾燥させた後、例えば、40~99.5重量%、例えば、60~99重量%、80~99重量%又は90~99重量%の固体含有量を有する間に表面処理される。
【0023】
本明細書に記載の方法の別の態様では、セルロース系フィルムは、脱水及び乾燥される前に、例えば0.1~80重量%、例えば0.5~75重量%又は1.0~50重量%の固体含有量を有する間に表面処理される。
【0024】
本明細書に記載の方法の1つの態様において、セルロース系フィルムは、湿式積層によって、好ましくは紙または板紙マシンの多孔質ワイヤ上に形成されており、50~99重量%の固体含有量を有する。
【0025】
本明細書に記載の方法の別の態様では、セルロース系フィルムは、キャスティングによって形成されており、50~99重量%の固体含有量を有する。
【0026】
本明細書に記載の方法の別の態様では、セルロース系フィルムは、それが乾燥された後、例えば50~99重量%、例えば60~99重量%、80~99重量%又は90~99重量%の固体含有量を有する間に表面処理される。
【0027】
本明細書に記載の方法の別の態様では、セルロース系フィルムは、乾燥させる前に、例えば0.1~50重量%、例えば1~40重量%又は10~30重量%の固体含有量を有する間に表面処理される。
【0028】
セルロース系フィルムは、他のセルロース系成分を含んでいてもよい。例えば、セルロース系フィルムは、1~50wt%の範囲で他のアニオン性ミクロフィブリル化セルロース(アニオン性ポリマーで誘導体化又は物理的にグラフト化)を含んでいてもよい。
【0029】
表面処理されるセルロース系フィルムは、5~99wt%のネイティブ(非誘導体化)なミクロフィブリル化セルロースを含んでいてもよい。
【0030】
パルプ繊維および粗微粉の量は、0~60wt%の範囲とすることができる。パルプ繊維及び微粉の量は、例えば、乾燥又は湿潤試料を解砕し、次いで分画及び分画の粒子径の分析により、後から推定することができる。好ましくは、微粉と繊維の量を決定するために、未乾燥の試料を分取し、分析することである。
【0031】
セルロース系フィルムはまた、1~50重量%の範囲で、ナノフィラーなどの1つ以上のフィラーを含んでもよい。典型的なナノフィラーは、ナノクレー、ベントナイト、シリカまたはケイ酸塩、炭酸カルシウム、タルカムなどであり得る。好ましくは、フィラーの少なくとも1部は、プラティフィラーである。好ましくは、フィラーの一次元は、1nm~10μmの平均厚さまたは長さを有することが好ましい。フィラーの粒度分布を例えば光散乱法で決定する場合、好ましい粒度は、90%超が2μm未満であることであるべきである。
【0032】
表面処理されたセルロース系フィルムは、好ましくは表面pHが3~12、より好ましくは表面pHが5.5~11のものである。より具体的には、表面処理セルロース系フィルムは、3より高い表面pH、好ましくは5.5より高い表面pHを有していてもよい。特に、表面処理されたセルロース系フィルムは、表面pHが12未満、好ましくは11未満であってもよい。
【0033】
セルロース膜の表面のpHは、最終製品、つまり乾燥した製品で測定される。「表面pH」は、表面に置いた新鮮な純水で測定する。5回の測定を並行して行い、平均pH値を算出する。センサーを純水または超純水で流し、湿った/濡れたセンサー表面に紙試料を置き、30秒後にpHを記録する。測定には標準的なpHメーターが使用される。
【0034】
表面処理前のセルロース系フィルムは、好適には、ASTM D-3985による酸素透過率(OTR)値が、10~50gsmの間のグラム数で100~5000cc/m2/24h(38℃、85%RH)、より好ましくは100~1000cc/m2/24hの範囲のものである。
【0035】
基板は、好適には10~100wt%のMFCを含み、例えば少なくとも40wt%のMFC、好ましくは少なくとも60wt%のMFC、より好ましくは少なくとも80wt%のMFCを含む。
【0036】
セルロース系フィルムのグラム数は、好ましくは10~50gsmである。典型的には、そのような基材は、基本的にWVTRバリアを有さないか、または非常に低い。したがって、基材は、100g/m2/dより大きい、好ましくは200g/m2/dより大きい、より好ましくは500g/m2/dより大きい、前記第1表面処理組成物の塗布前のWVTR(23℃、50%RHにおいて)を有していてもよい。
【0037】
基材は、半透明であってもよいし、透明であってもよい。いくつかの実施形態では、MFCフィルムは、規格DIN 53147に従って測定した場合に、少なくとも65%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%の透明性を有する。
【0038】
基材のプロファイルは、例えば均等な水分プロファイルによって、またはスーパーカレンダー処理によって、または再加湿および再乾燥によって制御される。したがって、本明細書に開示される方法は、前記第1の表面処理組成物を塗布する前に、セルロース系フィルムをカレンダー処理する工程をさらに含んでもよい。
【0039】
セルロース系フィルムは、少なくとも20%w/wのMFC、好ましくは少なくとも40%w/wのMFC、より好ましくは少なくとも60%w/wのMFC、さらに好ましくは少なくとも80%w/wのMFC、最も好ましくは100%MFCを含む。
【0040】
バリアコーティング組成物
本方法の第2工程では、セルロース系フィルムの表面上にバリアコーティング組成物を塗布する。これは、下記の1つの工程:
a)前記セルロース系フィルムの少なくとも1つの表面にバリアコーティング組成物を塗布すること;前記バリアコーティング組成物は、架橋剤およびカルボキシメチルセルロース(CMC)を含むこと;
または、下記の2つの別個の工程:
b)前記セルロース系フィルムの同一面に、架橋剤を含む水溶液と、カルボキシメチルセルロース(CMC)を含む水溶液及び/又は懸濁液とを塗布すること、
により、行うことができる。
【0041】
好ましくは、バリアコーティング組成物は1つの工程で塗布される;すなわち、架橋剤とカルボキシメチルセルロース(CMC)とを含むバリアコーティング組成物を塗布することによってである。2つの工程が存在する場合、CMC溶液/懸濁液が最初に塗布され、次いで架橋剤を含む水溶液が塗布されることが好ましい。場合により、架橋剤を含む水溶液は、親水性ポリマー例えばCMCも含んでいる。
【0042】
バリアコーティング組成物も提供され、前記バリアコーティング組成物は、架橋剤およびカルボキシメチルセルロース(CMC)を含む。
【0043】
本発明のバリアコーティング組成物は、CMCと架橋剤の溶液であることが好ましいが、1成分の懸濁液の形態であってもよい(典型的には、置換度の低いCMC、DSは溶解しにくい)。
【0044】
好適には、前記バリアコーティング組成物は、CMCと前記架橋剤との水溶液である。一態様では、バリアコーティング組成物は、乾燥CMCを、前記架橋剤を含む水溶液に添加することによって形成される。バリアコーティング組成物は、典型的には、2~10、好ましくは2.5~8、より好ましくは3~7の間のpHを有する。バリアコーティング組成物のpHは、CMCを添加する前、または添加中、または添加後に調整することができる。pH調整のための好ましい化学物質は、例えば、NaOH、KOHまたはCa(OH)2または他の塩基性化学物質である。
【0045】
一態様では、コーティング組成物は、追加の水溶性ポリマーを含んでいる。好適には、この追加の水溶性ポリマーは、本発明の架橋剤(例えばクエン酸のような有機酸)によって架橋することも可能である。これらの例としては、ポリ酢酸ビニル(PVA)またはポリビニルアルコール(PVOH)を挙げることができる。
【0046】
CMCとクエン酸を1:1の重量比で含むバリアコーティング組成物は、典型的には、固形分が少なくとも10wt%、より好ましくは少なくとも12wt%または最も好ましくは少なくとも15wt%のとき、室温で100rpmで測定したときに2000mPas未満であるブルックフィールド粘度を有する。
【0047】
バリアコーティング組成物を製造する好ましい方法の1つは、乾燥CMCを水と架橋剤(酸、好ましくはクエン酸など)の溶液に混合することである。既知の方法では、架橋剤は、CMCの湿潤スラリーに添加される。
【0048】
バリアコーティング組成物を作成するために、従来のブレードミキサー、ローターステーターミキサー、高せん断ホモジナイザー、超音波ミキサー、または1つまたは複数のミキサーの組み合わせなど、様々な種類のミキサーを使用することができる。混合の利点は、高せん断および効率的な混合により、より均一な流動性およびより少ない凝集物(例えば、非溶解CMC)を可能にすることである。低DS CMCの高せん断混合は、粒子がより効率的な増粘効果を有する微量成分に分解されるという事実に起因する粘度を実際に増加させる可能性がある。
【0049】
コーティング組成物の全乾燥分量は、好ましくは5wt%超、より好ましくは8wt%超、最も好ましくは10wt%超である。コーティング組成物の全乾固形分量は、典型的には約14wt%である。これは、CMCと塩の両方と、場合によっては他の添加剤を含むことを意味する。コーティング組成物に含まれ得る他の添加物としては、例えばナノ粒子、充填剤、補強繊維、デンプンのような他の多糖類が挙げられる。ソルビトールまたはグリセロールのような潤滑剤または軟化剤もまた、含まれ得る。さらなる添加剤は、アルキルケテンダイマー(AKD)またはロジンサイズであってもよく、これらはバリアコーティング組成物の疎水性を増加させる。
【0050】
コーティング組成物の一つの目的は、無機フィラーを添加することなく、高いコンシステンシーを実現することである。したがって、コーティング組成物中の無機フィラーの含有量は、20wt%未満であることが好ましく、10wt%未満であることがより好ましい。
【0051】
高いコンシステンシー(すなわち高い固形分)を達成するためには、一般的に以下のパラメータが関連する:
-低Mw CMC、
-化学的、機械的、熱的、生物学的にNaCMCを分解する、またはそれらの組み合わせを行う、
-有機酸を使用する
-正しい組み合わせの順番、
-CMC中の高い塩分含有量(好ましくは1wt%超、より好ましくは5wt%超、最も好ましくは10wt%超)
-高い混合温度(好ましくは20℃超、より好ましくは30℃超、最も好ましくは40℃超)
【0052】
コンシステンシー(固形分)は、105℃のオーブンで3時間以上乾燥させた後、デシケーターで冷却して重量を測定するなど、製紙業における通常の基準で測定することができる。高い均一性が求められるのは、乾燥コストの削減が主な理由であるが、製造能力の向上や水の使用量を少なくするためでもある。また、理論にとらわれることなく、高いコンシステンシーは塗膜の保持力、ひいてはバリア性に影響すると考えられている。
【0053】
本発明で用いられるCMCは、好適には重量平均分子量が50000mol/g未満、好ましくは30000mol/g未満、より好ましくは20000mol/g未満である。そのような市販品の例としては、例えば、CPKelco社のFinnfix 10、またはFinnfix 5またはFinnfix 2が挙げられる。Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いるなど、種々の手法で測定することができる。
【0054】
興味深いパラメータの1つは、置換度、すなわちセルロースがどの程度まで誘導体化されているかである。一態様によるCMCは、0.05~0.5、好ましくは0.1~0.3の置換度(DS)を有する。典型的には、置換度(DS)は、例えば、Ambjornsson et al., (2013), Bioresources, 8(2), 1918-1932に開示されるような滴定方法によって決定される。塩分などが滴定結果に影響を与えるため、ブランクや洗浄済み製品についてDSを試験する必要があることは理解されるべきである。いかなる理論にも縛られることなく、我々は、特徴的な繊維およびフィブリル構造により、低DSのCMCはより良いホールドアウトを提供し、したがって、より効果的な保護コーティングを提供すると信じている。より良い「ホールドアウト」は、コーティングが表面により良く留まることを意味し、したがって、より低い重量のコーティングでより効果的なコーティングを達成することができる。
【0055】
架橋剤
架橋剤は、硬化工程の間にCMCを架橋する役割を果たす。架橋剤は、MFCを架橋し、CMCとMFCの間を架橋し、それによってコーティングされたセルロース系フィルムの完全性を高めることもできることが好ましい。したがって、架橋剤は、特にコーティングを架橋するが、コーティングとベース基材(MFCを含むセルロース系フィルム)、さらにはベース基材自体内をある程度架橋する。好適には、架橋剤は、有機酸、好ましくは有機ポリ酸から選択される。有機酸」は、カルボン酸部分(-CO2H)を含む有機分子であり、「有機ポリ酸」は、そのようなカルボン酸部分を2つ以上含む有機分子である。好適には、有機酸又はポリ酸は、クエン酸、乳酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、マロン酸、酒石酸、尿酸、又はリンゴ酸から選択され、好ましくはクエン酸が挙げられる。バリアコーティング組成物は、2種以上の架橋剤の混合物を含んでいてもよい。
【0056】
バリアコーティング組成物中の架橋剤の濃度は、前記バリアコーティング組成物中のCMCの乾燥重量に基づいて、典型的には1~100wt%、好ましくは5~80wt%、より好ましくは10~70wt%である。
【0057】
バリアコーティング組成物の塗布
バリアコーティング組成物は、0.5~10gsm、好ましくは1~5gsm、より好ましくは約2gsmの量でセルロース系フィルムに塗布される。バリアコーティング組成物が塗布されると、それは、前記セルロース系フィルム上にコーティングされたバリア層;すなわちコーティングされたセルロース系フィルムを形成するように硬化される。
【0058】
「硬化」とは、架橋反応が起こる程度に試料を加熱し、水分を除去することを意味する。架橋の程度は、例えば分光学的手段によって決定することができる。硬化は、典型的には、例えば少なくとも100℃、好ましくは少なくとも120℃に加熱するか、または水を除去する他の方法によって行われる。
【0059】
コーティング塗布の代表的な技術は、製紙または紙加工分野で一般的なものである。塗布は、浸漬、スプレー、カーテン、サイズプレス、フィルムプレス、ブレードコーティング、グラビア印刷、インクジェット、または他の非衝撃または衝撃コーティング方法によって行われてもよい。また、塗布は、加圧下及び/又は超音波下で行ってもよい。このようにして、セルロース系フィルムへのコーティング組成物の浸透の程度を制御することができる。コーティングは、オンラインまたはオフラインで塗布することができる。
【0060】
本明細書に記載の方法は、1つ以上の追加の工程を含んでもよい。例えば、それらは、コーティング塗布の後に、コーティングされた又はコーティングされていないセルロース系フィルムをリンス液中にリンス又は浸漬する工程を更に含んでもよい。好ましくは、方法は、表面処理及び/又はすすぎ工程の後に、高温及び/又は高圧で乾燥する工程をさらに含む。
【0061】
前記バリアコーティング組成物は、-一態様によれば-前記セルロース系フィルムの両対向面に塗布される。別の態様では、1つより多い、例えば2、3、4、5又は10のバリア層がセルロース系フィルム上に形成されるように、本方法の工程b及びcが繰り返されてもよい。好ましい一態様において、異なるバリア層は、異なる量の架橋剤を含む。
【0062】
セルロース系フィルムは、好適には、ISO5636-5に従って、コーティングされる前のガーレーヒル値が1000s/100ml以上42300s/100ml未満であり、コーティングされた後のガーレーヒル値が10000s/100ml超、好ましくは20000s/100ml超、より好ましくは42300s/100ml超とされる。別の実施形態では、ガーレーヒル値は、測定不能、すなわちISO 5636-5に従って測定するには高すぎる値である。
【0063】
コーティングされたセルロース系フィルムは、好適には、25wt%未満、好ましくは20wt%未満、より好ましくは15wt%未満、さらに好ましくは10wt%未満の含水率に乾燥される。
【0064】
本方法は、コーティングされたセルロースフィルムを後硬化させる工程を追加で含んでいてもよい。以下の実験では、サンプルをオーブンに5分間入れることによって、後硬化をシミュレートした。後硬化は、好ましくは、延長乾燥で行われる。後硬化後のコーティングセルロース系フィルムの含水率は、6%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは4%未満である。延長乾燥処理の例としては、以下のものが挙げられる。
・ドライヤーや赤外線に接触させる、
・ヤンキードライヤー、
・拡張乾燥ベルト(例:コンデベルト)。
【0065】
コーティングされたセルロース系フィルム
MFCを含むコーティングされたセルロース系フィルムが提供され、前記セルロース系フィルムは、その少なくとも一方の表面上が少なくとも1つの硬化バリア層でコーティングされており、前記硬化バリア層は、架橋剤で架橋されているCMCを含む。上記のCMC、架橋剤、MFC及びフィルムに関する全ての詳細は、本発明のコーティングされたセルロース系フィルムに関連しており、準用される。
【0066】
したがって、様々な好ましい態様において、
-セルロース系フィルムが、少なくとも20%w/wのMFC、好ましくは少なくとも40%w/wのMFC、より好ましくは少なくとも60%w/wのMFC、さらに好ましくは少なくとも80%w/wのMFC、最も好ましくは100%のMFCを含み、
-架橋剤は、有機酸、好ましくは有機ポリ酸、好適にはクエン酸、乳酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、尿酸、フマル酸またはリンゴ酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、マロン酸または酒石酸から選ばれる有機酸、好ましくはクエン酸であり、
-バリア層は、2種類以上の架橋剤の混合物で架橋されたCMCを含み、
-バリアコーティング組成物は、0.5~10gsm、好ましくは1~5gsm、より好ましくは約2gsmの量で塗布され、
-前記セルロース系フィルムの両対向面にバリアコーティング組成物が塗布され、
-セルロース系フィルム上に形成された2層、3層、4層、5層または10層などの複数層のバリア層を含み、
-セルロース系フィルムは、コーティング前の重量が10~70gsm、好ましくは15~60gsm、より好ましくは20~50gsm、さらにより好ましくは20~35gsmであり、
-コーティングされたセルロース系フィルムは、ISO 5636-5によるGurley Hill値が10000s/100ml超、好ましくは20000s/100ml超、より好ましくは42300s/100ml超であり、
-コーティングされたセルロース系フィルムは、25wt%未満、好ましくは20wt%未満、より好ましくは15wt%未満、さらに好ましくは10wt%未満の水分含有量を有する。
【0067】
本発明のコーティングされたセルロース系フィルムは、例えば以下のような、脂取り紙やグラシン紙とは異なる特徴を有する:
-より高い透明性、
-より低いWVTR(または水蒸気バリアの改善・向上)、
-より低いOTR(または酸素バリア性の向上・改善)。
【0068】
本発明は、多くの側面および実施形態を参照して説明された。これらの態様および実施形態は、特許請求の範囲に含まれるまま、当業者によって場合により組み合わされ得る。
【0069】
例
例1(比較例)
本例では、MFCを含む32gsmのセルロース系フィルムを使用した。今回使用したベース基材は、MFCと針葉樹繊維を75/25で混合したものである。MFCは晒クラフトパルプを原料とし、Schopper-Riegler値が94になるようにフィブリル化したものである。針葉樹繊維は晒しクラフトパルプで、SR20に精製されている。原紙は、5wt%未満の灰分を有する無機材料を実質的に含まないものであった。
【0070】
例2
この例では、表面サイジング組成物として水のみを用いて、パイロット機で上記ウェブを表面サイジングして、ブランク実験を行った。23℃および50%RHで測定したときのWVTRは、硬化処理前が149g/m2/d、硬化処理後が53g/m2/dであった。硬化とは、バリア性を評価する前に実験室のオーブンで加熱(150℃/5分)することを意味する。
【0071】
例3
この例では、クエン酸は、ブルックフィールドLV粘度計で測定した場合、25℃、濃度2wt%で150~300mPasの範囲の高い粘度を有する高純度グレードCMC(Cekol 150, CP Kelco)と混合された。NaCMCの含有量は99.5wt%以上であり、置換度は0.75~0.85である(供給元による)。
【0072】
この懸濁液は固形分7.23wt%、pH4であった。コーティングは例2で用いたのと同じ表面サイズプレスで作成した。コーティング後、基材を乾燥させたが、カレンダー処理は行わなかった。後硬化は、例2と同様に行った。WVTR(23℃、50%RH)の結果、大幅な低減が得られていることがわかる。
【0073】
例4
この例では、例3と同じレシピと条件を使用したが、懸濁液の乾燥固体含有量を約50%減少させた点が異なっている。これにより、懸濁液の粘度も低下したが、WVTR値への正の影響は見られなかった。
【0074】
例5
この例では、高純度グレードのNaCMCを、残留塩類を多く含むテクニカルグレードである低DS NaCMCグレードに置き換えた。置換の程度は0.25であった。低DS NaCMC/クエン酸溶液のpHはコーティング前に4に調整し、これまでの例と同様の方法で乾燥させた。測定されたWVTR値は、これまでの例と同レベルであった。
【0075】
例6
この例では、低DS CMCの乾燥粉末を1wt%のクエン酸溶液に分散させた後、残りのクエン酸を加えて50:50(w/w)の比率にするように、上記の製剤手順を変更した。溶液のpHは4であり,固形分は12%超に増加しても,走行性や流動性に悪影響はなかった。測定されたWVTRは、例5と比較してわずかに改善されていた。
【0076】
例7
本例では、高コンシステンシーNaCMCを用い(Finnfix300, CP Kelco)、例3と同様の方法でクエン酸(50:50、w/w)と混合して使用した。製品仕様書によると、ブルックフィールドLV粘度計で測定したところ、2wt%(25℃)で150~400mPasの粘度であった。これは、例3と同等である。WVTRの結果は、例3の知見を確認するものである。
【0077】
例8
この例では、例7で使用したレシピと同じものを使用したが、表面サイジングプレスで塗布する前に約50%に希釈した。
【0078】
例9
この例では、低粘度のNaCMC(25℃、濃度4wt-%で50~200mPasの範囲の粘度を有する、Finnfix 10)溶液をクエン酸とともに使用した。前の実験と同じ手順が用いられ、すなわちクエン酸の量は50%(w/w)であった。NaCMC-CA混合物の粘度は,固形分12.2wt%で447mPasであった。測定されたWVTR値は、より高い粘度を有するNaCMCグレードを含む試行点について測定されたWVTRよりも有意に低い値であった。
【0079】
例10
この例では、例9と同じ処方を使用したが、今度はNaOHを使用してpHを4に調整した。WVTR値は例9と同レベルであり、後硬化後はさらに約14g/m2/日まで減少した。
【0080】
【国際調査報告】