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特表2023-500043帯域幅が改善されたメンブレントランスデューサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(54)【発明の名称】帯域幅が改善されたメンブレントランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/10 20060101AFI20221222BHJP
   H04R 19/00 20060101ALI20221222BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
H04R17/10 330
H04R19/00 330
H04R17/00 330K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521975
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 NL2020050670
(87)【国際公開番号】W WO2021086184
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】19206202.4
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508351406
【氏名又は名称】ネダーランゼ・オルガニサティ・フォーア・トゥーゲパスト-ナトゥールヴェテンシャッペリーク・オンデルゾエク・ティーエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ニール,ポール ルイス マリア ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー,アルノ ウィレム フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】アッカーマン,ヒルケ ブロアー
(72)【発明者】
【氏名】ゲリンク,ゲルウィン ヘルマナス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン モル,アントニウス マリア ベルナルデュス
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA09
5D019DD01
(57)【要約】
メンブレンベースの超音波トランスデューサの有効帯域幅が制御要素(C)によって改善される。制御要素(C)は、第1のメンブレン(10)の、第1の側(10a)及び/又は反対側の、第2の側(10b)に向かう変位振幅を増加又は減少させるために、トランスデューサの第1のメンブレン(10)の第1の側(10a)に配置されている。これにより、第1のメンブレン(10)の第1の振動(V1)の間に、第2の側(10b)と比較して、第1の側(10a)への第1のメンブレン(10)の動きに変位非対称性(Za<>Zb)が誘発される。この変位非対称性の結果として帯域幅を改善し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波トランスデューサ(100)であって、
-超音波(W)を送受信するために第1の振動(V1)を呈するように構成された少なくとも第1のメンブレン(10)と、
-前記第1のメンブレン(10)に結合されているとともに、前記第1の振動(V1)を引き起こしたり、前記第1の振動(V1)によって引き起こされたりする電気信号(E1)を送受信するように構成された電子回路(30)と、
-前記第1のメンブレン(10)の第1の側(10a)に配置されているとともに、前記第1の側(10a)への前記第1の振動(V1)の間に、反対側の、第2の側(10b)と比較して、前記第1のメンブレン(10)の動きに変位非対称性(Za<>Zb)を誘発するように構成された制御要素(C)と、
を含む超音波トランスデューサ(100)。
【請求項2】
前記制御要素(C)が、第1のメンブレンに平行に配置され、その間にポケット(15)を有する第2のメンブレン(20)を含むとともに、前記変位非対称性を誘発するために、前記ポケット(15)が流体を含んでおり、前記ポケット(15)が収縮すると、圧縮に抵抗し、前記第2のメンブレン(20)の方に向かうその変位の関数として前記第1のメンブレン(10)に非線形の力を引き起こす、請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記電子回路(30)が、前記第1の振動(V1)と逆位相にある第2の振動(V2)を呈するように前記第2のメンブレン(20)を作動させるように構成され、前記メンブレンが同時に、互いに離れていくように移動するか、又は、互いに直接接触せずに互いの方に向かって移動するように構成されている、請求項1又は2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
少なくとも前記第1のメンブレン(10)が、前記メンブレンの中心部で、前記メンブレンの総区域の50パーセントから90パーセントの間の前記メンブレンの小区分を網羅する相対的に厚く、且つ/又は堅い区分(10e)を有するとともに、前記メンブレンの前記中心部が、前記メンブレンの縁部と比較して、厚さ及び/又は剛性が少なくとも1.1倍になっている、請求項1~3のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記電子回路(30)が、前記第1の振動(V1)を引き起こすために第1の電気信号(E1)を前記第1のメンブレン(10)に送信するように構成されているとともに、前記電子回路(30)が、前記第1の電気信号(E1)によって引き起こされた前記第1の振動(V1)のそれぞれの振動サイクルの間に前記メンブレン変位に動的に影響を与えるために、異なった、第2の電気信号(E2)を前記制御要素(C)に送信するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記制御要素(C)が、前記第1のメンブレン(10)の表面上、及び前記第1のメンブレン(10)に隣接する、別の反対側の表面上に静電荷を発生させるように構成された静電デバイスを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
前記静電荷が第2のメンブレン(20)で発生する、請求項1~6のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記静電デバイスが、静電荷の交流信号を発生させるように構成されているとともに、前記静電荷の印加が、前記第1のメンブレン(10)の前記第1の振動(V1)と同期されている、請求項6又は7に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項9】
前記静電デバイスが、前記静電荷を印加するために、連続信号又は交流信号にオフセットを含むように構成されており、前記静電荷が、少なくとも前記第1のメンブレン(10)の平衡位置を変化させるように構成されている、請求項6~8のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項10】
前記メンブレンが、前記第1のメンブレン(10)の前記第1の振動(V1)に関する前記電気信号(E1)を送受信するための第1の圧電層(10p)を含み、前記制御要素(C)が第2の圧電層(10q)を含み、前記電子回路(30)が、前記第2の圧電層(10q)を作動させて、その振動サイクル(V1)の一部の間に、前記第1のメンブレン(10)の特性を動的に変化させるように構成され、第1の電気信号が、前記第1の圧電層(10p)に送られ、異なる第2の電気信号(E2)が、前記第2の圧電層(10q)に送られる、請求項1~9のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項11】
前記静電荷又は前記第2の圧電層(10q)が、前記第1のメンブレン(10)の剛性に影響を与える、請求項6~10のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項12】
前記制御要素(C)が、反対方向と比較して、前記第1のメンブレン(10)の、前記第1の側(10a)又は前記第2の側(10b)に向かう方向のうちの一方での振幅(Za、Zb)を低減させるように構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項13】
前記制御要素(C)が、前記第1の側(10a)に、前記第1のメンブレン(10)の中心部に排他的に接続された接続構造を含み、前記接続構造が、前記第1の側(10a)に向かう前記第1のメンブレン(10)の前記変位を可能にするが、前記第2の側(10b)への前記変位を拘束する、請求項1~12のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項14】
前記第1の振動(V1)が、
-前記第1のメンブレン(10)の平衡位置(Z1)と、前記第1の側(10a)への前記第1のメンブレン(10)の最大拡張位置との間の第1の振幅(Za)と、
-前記平衡位置と、前記第2の側(10b)への前記第1のメンブレン(10)の最大拡張位置との間の第2の振幅(Zb)と、を有するとともに、
-前記制御要素(C)が、前記第1の振幅(Za)と、前記第2の振幅(Zb)との間に少なくとも5パーセントの差異を誘発するために、前記第1のメンブレン(10)の前記動きに影響を与えるように構成されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項15】
メンブレンベースの超音波トランスデューサの有効帯域幅を増強する方法であって、
前記トランスデューサの第1のメンブレン(10)の第1の側(10a)に配置された制御要素(C)を使用して、前記第1の側(10a)及び/又は反対側の、第2の側(10b)に向かう前記第1のメンブレン(10)の変位振幅を増加又は減少させて、前記第1のメンブレン(10)の第1の振動(V1)の間に、前記第2の側(10b)と比較して、前記第1の側(10a)への前記第1のメンブレン(10)の動きに変位非対称性(Za<>Zb)を誘発すること、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野及び背景
本開示は、メンブレンベースの超音波トランスデューサ、及びこのようなトランスデューサの有効帯域幅を増強するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波トランスデューサ、例えば、発生源及び/又は受信器には、医療用画像、流量計等々といった、様々な用途がある。送信及び/又は受信効率を増強するために、メンブレンなどの共振ベースの超音波発生源/受信器を使用することができる。しかしながら、トランスデューサが共振の付近でしか効果がない場合には、システムの帯域幅及び性能が制限される場合がある。例えば、このようなトランスデューサの正確度又は画像解像度は、システム帯域幅に左右される場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
共振ベースの効率を少なくともある程度維持しつつ、メンブレンベースのトランスデューサの帯域幅を改善させることがやはり必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本開示のいくつかの態様は、超音波トランスデューサに関する。トランスデューサは、その共振周波数において、又はその共振周波数の付近で第1の振動を呈するように構成された少なくとも第1のメンブレンを含み、この第1のメンブレンと、例えば(共振して)相互作用する超音波を送受信(すなわち、送信及び/又は受信)するように構成されている。電子回路は、第1のメンブレンに結合されているとともに、第1の振動を引き起こしたり、第1の振動によって引き起こされたりする電気信号を送受信する。制御要素は、第1のメンブレンの第1の側に配置されているとともに、第1の側への第1の振動の間に、反対の、第2の側と比較して、第1のメンブレンの動きに変位非対称性を誘発するように構成されている。他の態様又はさらなる態様は、メンブレンベースの超音波トランスデューサの有効帯域幅を増強する方法に関する。例えば、制御要素が、トランスデューサの第1のメンブレンの第1の側に配置されて、第1の側及び/又は反対側の、第2の側に向かう第1のメンブレンの変位振幅を増加又は減少させて、第1のメンブレンの第1の振動の間に、第2の側と比較して、第1の側への第1のメンブレンの動きに変位非対称性を誘発する。
【0005】
本明細書で説明するように、本発明者らは、非線形の変位、特に、共振振動の間のメンブレンの一方側への移動が、もう一方側への移動と比較して非対称であることを強制することで、その帯域幅を改善し得ることを見出した。非対称性は、例えば、その振動サイクルの間にメンブレンに非対称の力を加えることによって誘発することができる。このような力は、例えば、圧力上昇、静電力、及び/又は物理的接続を伴う場合がある。様々な組み合わせを使用して、本明細書に記載されているような相乗作用的利点を提供することができる。
【0006】
図面の簡単な説明
本開示の装置、システム及び方法のこれら並びに他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面から一層よく理解されることになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】2つのメンブレンを相互に密接して垂直に積み重ねることによって変位非対称性を誘発することを図示したものである。
図1B】効果をさらに高めるためのメンブレンのエンボスを図示したものである。
図2A】静電荷を使用して変位非対称性を誘発することを図示したものである。
図2B】第2のメンブレンと組み合わせて静電荷を使用することを図示したものである。
図3A】折り畳み可能な構造を使用して閾値を上回る一方向の移動を拘束することによって、変位非対称性を誘発することを図示したものである。
図3B】折り畳み可能な構造を使用して閾値を上回る一方向の移動を拘束することによって、変位非対称性を誘発することを図示したものである。
図3C】折り畳み可能な構造を使用して閾値を上回る一方向の移動を拘束することによって、変位非対称性を誘発することを図示したものである。
図4A】第1のメンブレンに第2の圧電層を使用してメンブレン変位に非対称的に影響を与えることによって、変位非対称性を誘発することを図示したものである。
図4B】時間の関数としての異なる電気信号の印加、及び結果として生じる振動を図示したものである。
図5A-5B】時間、及び関連する周波数スペクトル(F)の強度の関数としての、対称的な圧力パルスと非対称的な圧力パルスの間の比較を図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態の説明
特定の実施形態を説明するために使用される専門用語は、本発明を限定するものであるようには意図されていない。本明細書で使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈により、そうでないことがはっきりと示されていない限り、複数形も同様に含むように意図されている。用語「及び/又は(and/or)」は、関連する列挙項目の1つ又は複数のありとあらゆる組み合わせを含む。用語「含む(comprises)」及び/又は「含んでいる(comprising)」は、述べられる特徴の存在を明示するが、1つ又は複数の他の特徴の存在又は追加を排除しないことが理解されよう。方法の特定のステップが、別のステップの後に続くものとして言及されるとき、特に指定されていない限り、それは、前記他のステップのすぐ後に続く場合もあれば、1つ又は複数の中間ステップが、この特定のステップを行う前に行われる場合もあることが、さらに理解されよう。同様に、構造又は構成部品間の接続が記述されるとき、特に指定されていない限り、この接続は、直接確立されていてもよいし、中間構造又は構成部品を介して確立されていてもよいことが理解されよう。
【0009】
本発明は、本発明の実施形態がそこに示されている添付の図面を参照して、以下でより完全に記述される。図面では、システム、構成部品、層、及び領域の絶対的サイズ及び相対的サイズは、分かり易くするために誇張されている場合がある。実施形態は、本発明の場合によっては理想化された実施形態及び中間構造の、概略図及び/又は断面図の実例を参照して記述される場合がある。説明及び図面では、全体を通して類似した数字は、類似した要素を指す。相対的な用語だけでなくその派生語も同様に、その時に記述されているような、又は検討中の図面に示されているような向きを指すように解釈されるものとする。これらの相対的な用語は、特に記述されていない限り、説明の便宜上のものであり、システムが、特定の向きで構築されていること、又は動作することを必要としない。
【0010】
図1図4は、メンブレンベースの超音波トランスデューサ100の有効帯域幅を増大させることを図示したものである。本明細書に記載の実施形態では、超音波トランスデューサ100は、少なくとも第1のメンブレン10を含む。例えば、第1のメンブレン10は、(その共振周波数において、又はその共振周波数の付近で)第1の振動V1を呈して、例えば、第1のメンブレン10と(共振して)相互作用する超音波Wを送受信する(すなわち、送信及び/又は受信する)ように構成されている。有利には、制御要素Cをメンブレンの片側又は両側に設けて、第1のメンブレン10の動きに変位非対称性Za<>Zbを誘発することができる。例えば、非対称性は、第1の振動V1の間に、反対側の、第2の側10bと比較して、第1の側10aに誘発される。
【0011】
いくつかの実施形態、例えば、示されているような実施形態では、第1のメンブレン10は、第1のメンブレン10の平面XYを横断する方向Zにそれぞれの振幅Za、Zbで、第1の側及び第2の側に向かって振動するように構成されている。いくつかの実施形態では、第1の振動V1は、第1のメンブレン10の(中心)平衡位置Z1と、第1の側10aへの第1のメンブレン10の最大拡張位置との間に、第1の振幅Zaを有する。他の実施形態又はさらなる実施形態では、第1の振動V1は、平衡位置と、第2の側10bへの第1のメンブレン10の最大拡張位置との間に、異なった第2の振幅Zbを有する。好ましくは、制御要素Cは、第1の振幅Zaと第2の振幅Zbとの間に差異を誘発するために、第1のメンブレン10の動きに影響を与えるように構成され、例えば、この差異は、少なくとも5パーセントであり、好ましくは、少なくとも10パーセントであり、さらには20パーセントを超え、例えば、最大50パーセントにもなり、さらには100パーセント(2倍)にもなる。例えば、振幅は、平衡位置(メンブレンを作動させない状態)から、それぞれの側(電気信号E又は超音波Wによってメンブレンを作動させた場合)への、メンブレンの中心点のそれぞれの移動の範囲を表す。
【0012】
一実施形態では、制御要素Cは、反対方向と比較して、第1の側10a又は第2の側10bに向かう方向のうちの一方での第1のメンブレン10の動きを低減する(例えば、抵抗、拘束、及び/又は制限する)ように構成されている。例えば、動きの範囲は、少なくとも1/1.05倍に、1/1.1倍に、1/1.2倍以上に、例えば、最大1/1.5倍に、さらには1/2倍にまで低減される(すなわち、第2の振幅Zbは、第1の振幅Zaよりも少なくとも10パーセント高い)。いくつかの実施形態では、制御要素Cは、例えば、抵抗を加えることによって、一方の方向でのメンブレン変位を排他的に低減させるが、もう一方の方向ではほとんど、又はまったく影響を及ぼさない。他の実施形態又はさらなる実施形態では、制御要素Cは、例えば、一方の方向に加える抵抗をもう一方よりも大きくして、両方向に、ただし異なる程度でメンブレン変位を低減させることができる。一方の方向での変位を低減させる代わりに、又は低減させることに加えて、制御要素Cは、例えば、後述するようにアクティブ制御によって、もう一方の方向にメンブレン変位を増強することもまた想定され得る。
【0013】
好ましくは、電子回路30が第1のメンブレン10に結合されている。一実施形態では、電子回路30は、第1の振動V1を引き起こす電気信号E1を送信するように構成されている。別の実施形態又はさらなる実施形態では、電子回路30は、第1の振動V1によって引き起こされた電気信号E1を受信するように構成されている。いくつかの実施形態では、電子回路30は、第1のメンブレン10の共振周波数において、又はその共振周波数の付近で1つ又は複数の周波数を含む電気信号E1を発生させるように構成された信号発生器(図示せず)を含む。他の実施形態又はさらなる実施形態では、電子回路30は、第1のメンブレン10の共振周波数において、又はその共振周波数の付近で1つ又は複数の周波数を含む電気信号E1を検出するように構成された信号検出器(図示せず)を含む。
【0014】
原則として、メンブレンは様々な共振振動に対応することができるが、好ましくは、最も低い共振周波数を有する基本モード(例えば、u01又は1sとして指定される)は、音波を効率的に発生させたり、受信したりするために使用される。例えば、共振周波数Frは、例えば、メンブレンの材料特性の1つ又は複数、及び音響メンブレンの直径によって、求められる。他のパラメータ又はさらなるパラメータ、例えば、密度、ポアソン比(Poisson ratio)及びヤング率(Young’s modulus)を使用することもまた可能である。いくつかの実施形態では、基本周波数Fr(Hz)は、メンブレン張力T(N/m)、密度σ(kg/m)、直径D(m)などのパラメータを使用して表現することができる。メンブレン厚さ、弾性率、等々といったような他のパラメータ又はさらなるパラメータを使用することもまた可能である。代替的に、又は追加的に、任意の他の分析モデル化又は数値モデル化によって、メンブレンの基本周波数を求めることができる。一実施形態では、特定の共振周波数Frは、メンブレンの張力及び密度に関して特定の直径Dを設定することによって求められる。例えば、直径Dは、メンブレン内を伝わって定在波を発生させる波の共振周波数における半波長に対応し得る。
【0015】
好適な一実施形態では、圧電トランスデューサを使用して、メンブレンを作動させる。最も好ましくは、圧電材料が層として可撓性メンブレン上に配置される。他の層、例えば、電極層を設けて、それぞれの電気信号を圧電層に印加するために使用することもまた可能である。本明細書に記載されているように、静電荷を印加するための容量層及び/又は導電性層もまた想定され得る。これらの層は、他の電気信号又はさらなる電気信号によって、例えば、静電荷を印加すること、又はそれぞれの振動の部分的なサイクルの間に電荷を動的に印加することによって、帯電させることができる。
【0016】
トランスデューサのそれぞれの共振周波数における搬送周波数、又は共振周波数周辺の搬送周波数でトランスデューサを駆動することにより、性能を向上させることができる。例えば、メンブレンの第1の共振又は地上共振が使用される。トランスデューサの共振周波数は、比較的高周波であり、例えば、1キロヘルツを超える場合、10キロヘルツを超える場合、100キロヘルツを超える場合があり、さらには、1メガヘルツを超える場合さえある。このような高周波は、すべての用途に適しているとは限らない。例えば、800ヘルツを超える周波数は、触覚に関する用途の場合、感じることが困難な場合がある。例えば、触覚フィードバックに最適な周波数は、50ヘルツから500ヘルツの間、好ましくは、100ヘルツから300ヘルツの間とすることができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、電気信号は、トランスデューサの共振周波数に対応する搬送周波数(可能な限り最良)と、用途に応じてエンベロープ周波数又は変調周波数と、を含む複数の周波数を含む。例えば、触覚フィードバックデバイスは、200Hzの変調周波数によって変調された振幅である40kHzの搬送周波数を使用することができる。3つ以上の周波数、特に、例えば、それぞれのトランスデューサの共振周波数を含む帯域幅の周波数を使用することもまた想定され得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、音響デバイスは、本明細書に記載されているように、複数の音響トランスデューサのアレイを含んで形成される。例えば、トランスデューサは、可撓性基板上にパターン化されたスタックによって形成することができる。一実施形態では、スタックは、それぞれの下部電極層と、上部電極層との間に挟まれた圧電層を含む。いくつかの実施形態では、音響トランスデューサの作動面は、接触区域で可撓性基板の一部を含む。他の実施形態又はさらなる実施形態では、メンブレンは、周囲の基板に別々に取り付けることができる。
【0019】
ここで、様々なタイプの制御要素について説明する。いくつかの実施形態では、制御要素Cは、受動的な要素、例えば、第1のメンブレン10に隣接する構成要素を含む。好ましくは、隣接する制御要素Cは、第1のメンブレン10とは直接接触していない。例えば、第1のメンブレン10と制御要素Cとの間にポケット又は他の層を有していることにより、より円滑な相互作用が可能になる場合がある。他の実施形態又はさらなる実施形態では、制御要素Cは、能動的に制御される場合があり、例えば、第1のメンブレン10に及ぼすその効果が、第1の振動V1のそれぞれのサイクルの間に適合される。
【0020】
図1Aは、2つのメンブレン10、20を相互に密接して垂直に積み重ねることによって、変位非対称性(本図では、Za<Zb)を誘発することを図示したものである。いくつかの実施形態、例えば、示されているような実施形態では、制御要素Cは、第1のメンブレンに平行に配置された第2のメンブレン20を含み、それらの間には、(閉じた)ポケット15がある。例えば、変位非対称性は、ポケット15の膨張又は収縮間の非対称性によって引き起こすことが可能である。好ましくは、ポケット15は、流体、例えば、空気などの気体によって満たされ、ポケットが収縮すると、圧縮に抵抗し、第2のメンブレンの方に向かうポケットの変位の関数として第1のメンブレンに非線形の力を引き起こす。例えば、ポケット内の流体、例えば、空気は、外側に向かう圧力をメンブレンに加えているが、一方、周囲の媒体、例えば、空気は、内側に向かう圧力、例えば、気圧をメンブレンに加えている。通常、外側に向かう圧力は、ポケットが収縮すると大きくなり、ポケットが膨張すると小さくなる。例えば、外側に向かう圧力は、メンブレンが内側に向かって移動するときに、非線形に大きくすることができる。
【0021】
他の実施形態又はさらなる実施形態、例えば、示されているような実施形態では、平衡距離Zeだけその間を離して、平行なメンブレンが配置されている。好適な一実施形態では、距離Zeは、十分な効果を有するように比較的小さい。例えば、距離Zeは、総たわみ振幅Za+Zb、例えば、この総振幅の2倍未満と同等とすることができる。別の好適な実施形態又はさらなる好適な実施形態では、平行なメンブレンは、作動時であっても接触しない距離Zeで配置される。したがって、それらの間に隙間距離Zgを残したままにすることができる。例えば、(非作動時の)メンブレン間の平衡距離Zeは、内側に向かう(第1の)振幅Zaの2倍よりも大きい(すなわち、Ze>2*Za)。したがって、第2のメンブレン20の内側に向かう振幅Zcが、第1のメンブレン10の内側に向かう振幅Zaと同等である場合、それぞれの振動V1、V2が進行中に、それらが接触することはない。
【0022】
いくつかの実施形態では、メンブレンは、直径が0.5ミリメートルから0.5センチメートルの間であり、好ましくは、1ミリメートルから3ミリメートルの間であり、例えば、2ミリメートルである。通常、共振時のメンブレンのたわみ又は総振幅は、直径よりもはるかに小さく、例えば、少なくとも10分の1、又は100分の1である。例えば、総振幅Za+Zbは、10ナノメートルから100マイクロメートルの間であり、好ましくは、10マイクロメートル未満であり、さらには1マイクロメートル未満にもなる。一実施形態では、メンブレン間の距離Zeは、5ナノメートルから50マイクロメートルの間の範囲にあり、好ましくは、10マイクロメートル未満であり、5マイクロメートル未満であり、さらには1マイクロメートル未満にもなる。距離が小さいほど、例えば、メンブレンが接触し始める距離(隙間距離Zg=0)に到達するまで非線形効果が大きくなる。ただし、この到達点は含まないことが好ましい。
【0023】
好適な一実施形態では、第1の振動V1と逆位相にある第2の振動V2を呈するように第2のメンブレン20を作動させる。言いかえれば、隣接するメンブレンは、同時に互いの方に向かって、又は互いから離れていくように、移動するように構成されている。理解されるように、このように第2のメンブレンを移動させることにより、膨張/収縮するポケットの効果を著しく高めることができる。他の実施形態又はさらなる実施形態(図示せず)では、第2のメンブレン20を静止した、又は固定された層/壁に置き換えることもまた想定され得る。例えば、ポケットは、第1のメンブレンと静止した壁との間に形成することができる。
【0024】
図1Bは、効果をさらに高めるためのメンブレンのエンボスを図示したものである。いくつかの実施形態、例えば、示されているような実施形態では、少なくとも第1のメンブレン10は、メンブレンの中心部に、メンブレンの(半径方向の)縁部と比較して相対的に厚く、且つ/又は堅い区分10eを有する。例えば、図1A図1Bとの間の比較により図示されているように、これにより、メンブレンのピーク面外変位と比較して、総変位体積を増加させる効果を有することが可能になっている。例えば、図1Bの相対的に厚い、又は堅い中心部の区分は、たわみ中の湾曲が小さくなる(例えば、ガウス形(Gaussian)よりもブロック状である)場合があるため、内側に向かう収縮の効果は、図1Aと比較して、中心部のピークだけよりも大きな区域にわたって広がることが可能である。
【0025】
いくつかの実施形態では、メンブレンの中心部は、例えば、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍以上、縁部よりも厚くなっている。他の実施形態又はさらなる実施形態では、メンブレンの中心部の材料は、縁部よりも堅く、例えば、曲げ剛性[Pa・m]及び/又はヤング率[Pa]が、少なくとも1.1倍、1.2倍、1.5倍、2倍以上、高くなっている。好ましくは、厚くした領域及び/又は堅くした領域は、総区域の小区分にわたって広がり、例えば、その区域の50パーセントから90パーセントを、好ましくは、60パーセントから80パーセントを網羅している。いくつかの実施形態では、メンブレンは、少なくとも一方の側、好ましくは、内側の方向に向かう第1の側10aに層又はエンボスが別途設けられている。理解されるように、一方の側に、メンブレンの中心面に対して中心から外れて材料を別途有していることもまた、変位非対称性に寄与する場合がある。
【0026】
図2Aは、静電荷を使用して変位非対称性を誘発することを図示したものである。いくつかの実施形態、例えば、示されているような実施形態では、制御要素Cは、第1のメンブレン10の表面上、及び第1のメンブレン10に隣接する別の対向する表面上で、静電荷を発生させるように構成された静電デバイス(図示せず)を含む。理解されるように、静電荷間の引力及び/又は斥力(+-、++、--)が、一方向又は両方向でその変位に影響を与える第1のメンブレン10への非対称の力に寄与する場合がある。本図は、反発し合う(同様の)電荷を示しているが、例えば、反対方向に非対称性を誘発するのであれば、引き寄せ合う電荷を使用することもまた可能である。組み合わせることもまた可能である。
【0027】
いくつかの実施形態、例えば、本図に示されているような実施形態では、また同様に、本明細書に記載の他の実施形態に適用可能な実施形態でも、第1のメンブレン10は、圧電層10pを含む。例えば、圧電層10pは、電気信号E1を受信し、且つ/又は発生させるための電子回路30に結合されている。例えば、交流電気信号を圧電層10pに印加すると、メンブレンを作動させる圧電材料を収縮/膨脹させることができ、その逆も同様である。
【0028】
他の実施形態又はさらなる実施形態、例えば、示されているような実施形態では、第1のメンブレン10は、静電荷を印加するための、例えば、導電性材料からなる静電層10sを含む。好ましくは、示されているように、静電層10sは、第1のメンブレン10の、例えば、隣接する第2の静電層10tに面する第1の側10aにある。最も好ましくは、示されているように、静電層10sは、第1のメンブレン10の第1の側10aに配置され、一方、圧電層10pは、例えば、反対側の、第2の側10bに配置することができる。他の構成もまた可能である。
【0029】
いくつかの実施形態では、静電デバイスは、静電荷の交流信号(AC)を発生させるように構成されている。例えば、静電荷の印加は、メンブレンの振動と同期される。一実施形態では、交流電気信号E1は、第1のメンブレン10の圧電層10pを作動させるために使用することができ、一方、交流電荷は、変位非対称性を誘発するために(別個の)静電層10s、10tに印加される。例えば、電気(静電気)信号E3及び/又はE4は、それぞれの静電層10s、10tに印加することができる。好ましくは、静電荷又は信号E3、E4は、振動するメンブレンの各サイクルの間に、例えば、メンブレンが一緒にあるときのサイクルの半分の間だけ、又は離れているときの半分の間だけ、非対称的に印加される。
【0030】
他の実施形態又はさらなる実施形態では、制御要素Cは、それぞれの振動サイクルの間にメンブレン変位に動的に影響を与えるように構成されている。例えば、静電荷を動的に変化させ、振動サイクルの一部の間にのみ力を加える。一実施形態では、静電荷は、少なくとも第1のメンブレン10の剛性(stiffness)に影響を与える。
【0031】
図2Bは、第2のメンブレンと組み合わせて静電荷を使用することを図示したものである。いくつかの実施形態では、静電荷は、第2のメンブレン20に発生する。このような組み合わせは、先の実施形態による非対称性を誘発するという相乗作用的利点を提供することができる。代替的に、又は追加的に、それぞれのメンブレンの中心部に相対的に厚く、且つ/又は堅い区分10eを有する第1のメンブレン10及び/又は第2のメンブレン20と組み合わせることによって、さらなる効果を実現することさえ可能である。理解されるように、振動しているメンブレンの相対的に平らな部分により、ポケット内の変位を大きくするだけでなく、電荷が互いから有効な距離内に入ることができる区域を大きくすることもまた可能である。他の有利な組み合わせ、例えば、第1のメンブレン10の区分のみ、厚くすることもまた可能である。例えば、これは、第2のメンブレン20の代わりに固定された壁と組み合わせて、図2Aの単一のメンブレン10に適用することができる。
【0032】
静電荷を発生させるために交流信号(AC)を使用する代わりに、又は使用することに加えて、連続信号(DC)を印加することもまた想定され得る。いくつかの実施形態では、静電デバイスは、静電荷を印加するために、連続信号(DC)を含むか、又は交流信号(AC)にオフセット(DC成分)を含むように構成されており、静電荷は、少なくとも第1のメンブレン10の平衡位置を変化させるように構成されている。例えば、1つ又は複数のメンブレン上の固定又はオフセットされた静電荷を使用して、中心から外れている可能性がある平衡距離を調整することができる。この場合も、中心部を厚くするか、又は堅くした区分と組み合わせると、効果がより大きくなる場合があり、例えば、よりブロック状のたわみがもたらされる。
【0033】
図3A図3Cは、折り畳み可能な構造を使用して閾値を上回る一方向の移動を拘束することによって、変位非対称性を誘発することを図示したものである。
【0034】
いくつかの実施形態、例えば、示されているような実施形態では、制御要素Cは、第1の側10aに、第1のメンブレン10の中心部への(物理的)接続を含む。例えば、この接続により、第1のメンブレン10の第1の側10aに向かう(内側に向かう)変位は可能になるが、第2の側10bへの変位は拘束される。一実施形態では、変位は、物理的接続によって、第2の側10bの方向に閾値変位を超えて、例えば、中心位置を超えて、又はそれ以上、拘束される。一実施形態では、接続は、閾値を超える変位に抵抗するか、又は閾値を超える変位を実質的に妨害する。このような接続の例には、例えば、可撓性の糸/ロープ、支柱のような、より堅い要素、ばねのような弾力性のある要素、等々が含まれる場合がある。いくつかの実施形態では、接続は、一方の方向に折り畳まれ(又は弛んで)、もう一方の方向に閾値変位を超えてきつく引っ張られるように構成された折り畳み可能な構造を含む。
【0035】
一実施形態、例えば、図3A図3Bに図示されているような実施形態では、接続は、第1のメンブレン10を第2のメンブレン20(の中心部)に接続している。別の実施形態又はさらなる実施形態、例えば、図3Cに示されているような実施形態では、接続は、第1のメンブレン10を静電層に接続している。接続構造を有する他の実施形態又はさらなる実施形態を想定することもまた可能である。
【0036】
図4Aは、第1のメンブレン10に第2の圧電層10qを使用してメンブレン変位に非対称的に影響を与えることによって、変位非対称性を誘発することを図示したものである。いくつかの実施形態では、メンブレンは、第1のメンブレン10の第1の振動V1に関する電気信号E1を送受信するための第1の圧電層10pを含む。他の実施形態又はさらなる実施形態では、制御要素Cは、第2の圧電層10qを含み、電子回路は、第2の圧電層10qを作動させて、その振動サイクルV1の一部の間に、第1のメンブレン10の特性を動的に変化させるように構成されている。
【0037】
図4Bは、時間Tの関数として、異なる電気信号E1、E2の印加、及び結果として生じる振動V1を図示したものである。いくつかの実施形態では、第1の電気信号は、第1の圧電層10pに送信(又はこの圧電層から受信)され、異なった、第2の電気信号E2が第2の圧電層10qに送信される。他の実施形態又はさらなる実施形態では、第2の電気信号E2は、第1の振動V1の特定の部分の間に第2の圧電層10qを作動させるように構成されている。一実施形態では、第2の電気信号E2は、振動サイクルの方向のうちの一方の方向でのそれぞれの半サイクルの間にメンブレンを排他的に作動させる。例えば、第2の圧電層を作動させて、一方の方向Zaでの変位を打ち消すか、又は鈍らせる。このようにして、第1の圧電層10pを介して作動させたメンブレンによって生じた圧力パルスは、もう一方の方向と比較して、前記一方の方向に(非線形に)変形させることができる。好ましくは、第2の圧電層は、第1の圧電層に対してメンブレンの反対側に配置される。例えば、可撓性のメンブレン材料が圧電層10p、10q間に配置されている。
【0038】
図5A及び図Bは、時間(T)、及び関連する周波数スペクトル(F)の強度(I)の関数として、対称的な圧力パルス(P)と、非対称的な圧力パルス(P)と、の間の比較を図示したものである。好適な一実施形態では、非対称的なパルス(図5B)では、例えば、メンブレン変位がより非線形であることを強制することによって、具体的には、変位非対称性を誘発することによって、有効帯域幅を広げることができる。
【0039】
本開示の態様は、メンブレンベースの超音波トランスデューサの有効帯域幅を増強する方法として具体化することができる。いくつかの実施形態は、メンブレンの片側又は両側に配置された制御要素Cを利用して、その側及び/又は反対側に向かうメンブレンの変位振幅を増加又は減少させる。これにより、その振動の間に、メンブレンの動きにいずれかの側に変位非対称性を誘発することができる。
【0040】
いくつかの実施形態、例えば、図1A及び図1Bで説明したような実施形態では、制御要素Cは、第1の側10aに形成されたポケットの変位により圧縮されている流体の圧力によって、第2の側10bと比較して、第1の側10aに向かう第1のメンブレン10の変位振幅Zaを変化させ、例えば、減少させる。
【0041】
他の実施形態又はさらなる実施形態、例えば、図2A及び図2Bで説明したような実施形態では、制御要素Cは、制御要素Cにより第1のメンブレン10に加えられる連続的な静電力及び/又は交流(動的な)静電力によって、第2の側10bと比較して、第1の側10aに向かう第1のメンブレン10の平衡位置及び/又は変位振幅Zaを変化させ、例えば、減少又は増加させ、その逆を行ったりする。
【0042】
他の実施形態又はさらなる実施形態、例えば、図3A及び図3Bで説明したような実施形態では、制御要素Cは、第1の側10aの第1のメンブレン10の中心部への(排他的)物理的接続によって、第1の側10aと比較して、第1のメンブレン10の、第2の側10bに向かう平衡位置及び/又は変位振幅Zbを変化させ、これにより、第1のメンブレン10の、第1の側10aに向かう内側に向かう変位は可能になるが、第2の側10bへの変位は拘束される。
【0043】
他の実施形態又はさらなる実施形態では、制御要素は、例えば、図4A及び図4Bで説明したような、それぞれの振動サイクルの間に異なって作動される複数の圧電層10p、10qを使用して、又は、図2A及び図2Bを参照して説明したような可変静電力によって、第1のメンブレン10の力及び/又は剛性に動的に影響を与える。
【0044】
明瞭且つ簡潔な説明を目的として、本明細書では、特徴が同じ実施形態又は別個の実施形態の一部として記載されているが、本発明の範囲は、記載されたすべての特徴又は一部の特徴の組み合わせを有する実施形態を含み得ることが理解されよう。当然ながら、上記の実施形態又はプロセスのいずれか1つは、設計及び利点を見出し、且つ合致させる際にさらなる改善を提供するために、1つ若しくは複数の他の実施形態又はプロセスと組み合わせてもよいことを理解されたい。本開示は、メンブレンベースのトランスデューサの帯域幅の増大に特定の利点を提示し、概して、共振型トランスデューサを使用する任意の用途に適用し得ることが理解される。
【0045】
添付の特許請求の範囲を解釈する際に、特に具体的に記述されていない限り、「含んでいる(comprising)」という語は、所与の請求項で列挙されているもの以外の他の要素又は行為の存在を除外するものではなく、ある要素に先行する「1つの(a)」又は「1つの(an)」という語は、このような要素が複数存在することを除外するものではなく、特許請求の範囲に記載されているどの参照符号も、その範囲を限定するものではなく、いくつかの「手段(means)」は、同じ若しくは異なる項目(複数も可)、又は実装される構造若しくは機能によって表される場合があり、開示されているデバイス又はその部分はいずれも、一緒に組み合わせられる場合もあれば、さらなる部分に分離される場合もある、と理解されるものとする。1つの請求項が別の請求項に言及している場合、これは、それぞれの特徴の組み合わせによって実現される相乗作用的利点を示している場合がある。しかし、ある特定の手段が相互に異なる請求項で引用されているからといって、これらの手段の組み合わせを使用して利点を得ることができないことを示すものではない。したがって、本実施形態は、請求項のすべての有効に働く組み合わせを含む場合があり、各請求項は、文脈によって明らかに除外されない限り、原則として任意の先行する請求項を参照することができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
【国際調査報告】