(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(54)【発明の名称】生体電気シグナルの取得及び監視のためのデバイス、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/30 20210101AFI20221222BHJP
【FI】
A61B5/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522405
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(85)【翻訳文提出日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 GB2020052741
(87)【国際公開番号】W WO2021084261
(87)【国際公開日】2021-05-06
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518440659
【氏名又は名称】ビー-セキュア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100226263
【氏名又は名称】中田 未来生
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー クロットワージー
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127AA03
4C127AA04
4C127EE01
4C127EE05
4C127EE08
(57)【要約】
生体電気シグナルを取得するための、少なくとも2つの電極を備えるデバイスが提供される。前記デバイスは、更に、直流電源と、交流電源と、直流電源及び交流電源の間を選択的に切り替えるように作動可能なスイッチと、を含む電源回路を備える。前記デバイスは、更に、各電極を電源回路に結合するための容量性結合手段、各電極を電源回路に結合するための直接結合手段、並びに、前記直接結合手段及び容量性結合手段の間を選択的に切り換えるように作動可能なスイッチ、を備える。前記デバイスは、更に、データ取得モジュールを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体電気シグナルを取得するためのデバイスであって、
少なくとも2つの電極、
直流電源と、交流電源と、前記直流電源及び前記交流電源の間を選択的に切り替えるように作動可能なスイッチと、を備える電源回路、
各電極を前記電源回路に結合する容量性結合手段、及び各電極を前記電源回路に結合する直接結合手段、
前記直接結合手段及び容量性結合手段の間を選択的に切り換えるように作動可能なスイッチ、並びに、
データ収集モジュール、
を備える、デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記DC電源及び前記直接結合手段が選択され、直流が各電極に供給され、直接電気接続が前記電極と前記データ収集モジュールの間でされる第1の動作モードと、
前記AC電源及び容量性結合手段が選択され、交流が各電極に供給される第2の動作モードと、
の間で切り替え可能であるように構成された、デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載のデバイスであって、使用中に前記電極と対象の皮膚との間に接触があったとき、前記第1の動作モード及び第2の動作モードとの間で自動的に切り替えるように適合された、デバイス。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のデバイスであって、ユーザーの指示により、前記第1の動作モード及び第2の動作モードの間で切り替えるように適合された、デバイス。
【請求項5】
請求項1~4に記載のデバイスであって、電池電源を更に備える、デバイス。
【請求項6】
請求項1~5に記載のデバイスであって、前記電極がドライ電極としての使用に適合されている、デバイス。
【請求項7】
請求項1~6に記載のデバイスであって、前記電極が、
クロムメッキされた金属又はプラスチック、
着色された/着色可能な窒化物、
ステンレス鋼、
を備える、又は備える表面コーティングを有する、デバイス。
【請求項8】
請求項1~7に記載のデバイスであって、各電極には、前記電極を前記電流供給に結合するための容量性結合手段と、選択的に閉鎖可能なスイッチが更に設けられている前記容量性結合手段に並列に結合する直接結合手段と、が設けられている、デバイス。
【請求項9】
請求項1~8に記載のデバイスであって、前記容量性結合手段は、AC結合コンデンサを備える、デバイス。
【請求項10】
請求項1~9に記載のデバイスであって、離散的なDC電源と、離散的なAC電源とが設けられ、前記DC電源及び前記AC電源の間を選択的に切り替えるためのスイッチを備えるデバイス。
【請求項11】
請求項10に記載のデバイスであって、前記スイッチがミッドレールバイアスポイントを更に備え、それにより、前記DC電源と前記AC電源は、前記ミッドレールバイアスポイントを介して回路の内外に選択的に切り替えることができる、デバイス。
【請求項12】
請求項1~11に記載のデバイスであって、取得されたデータを格納するため、及び/又は取得されたデータが対象の識別のために比較され得るライブラリデータを格納するためのデータ格納モジュールと、取得されたデータを、例えば古いテンプレートシグナルトレースを含む格納ライブラリデータと比較するデータコンパレータモジュールと、のうちの1つ以上を更に備え、これらに対して、取得されたデータは、例えば識別認識/認証目的のために比較することができる、デバイス。
【請求項13】
請求項1~12に記載のデバイスであって、データを遠隔の受信者に送信し、データのさらなる処理を可能にするデータ送信モジュールを更に備える、デバイス。
【請求項14】
生体電気シグナルを取得するためのシステムであって、該システムは、請求項1~13に記載のデバイスと、追加の受信デバイスと、前記デバイス及び前記追加の受信デバイスの間でデータの通信を行うように動作可能な無線通信システムと、前記デバイス及び/又は前記追加の受信デバイスの一部を含むデータストレージモジュールと、を備える、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであって、前記データストレージモジュールは、格納されたライブラリデータを備える、システム。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のシステムであって、識別認識/認証目的、又はより長期間の生体監視のために、取得したデータを格納されたライブラリデータと比較するデータコンパレータモジュールを更に備える、システム。
【請求項17】
生体電気シグナルを取得するための方法であって、該方法は、
少なくとも2つの電極と、
直流電源及び交流電源を備える電源回路と、
各電極を前記電源回路に結合させる容量性結合手段、及び各電極を前記電源回路に結合させる直接結合手段と、
を有するデバイスを提供することにより、前記デバイスを、
前記直流電源と前記直接結合手段が選択され、直流電流が各電極に供給される第1の動作モードと、
前記交流電源と前記容量性結合手段が選択され、各電極に交流電流が供給される第2の動作モードと、
の間で選択的に切り替え可能とするステップ、
前記電極が対象に接触していないとき、前記デバイスを前記第1のモードで動作させるステップ、並びに、
前記電極が対象の身体の皮膚表面と接触しているとき、前記デバイスを前記第2のモードで動作させるステップ、
を備える方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記デバイスを、ミッドレール又は接地を介して、前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとの間で切り替える、方法。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の方法であって、取得された生体電気シグナルデータを、古いテンプレートシグナルトレースと比較する、方法。
【請求項20】
請求項17~19に記載の方法であって、前記取得された生体電気シグナルデータを、該データの取得に続いて、無線通信を介して遠隔の受信者に送信し、前記データのさらなる処理を可能にする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブルなどのような皮膚接触型デバイスから心電計(ECG)などのような生体電気シグナルを取得及び監視するデバイス、システム並びに方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウェアラブルテクノロジー及びタッチテクノロジーは、世界市場においてより明白かつ広く利用可能になっており、ウェアラブル及びタッチセンシティブデバイスに適応される技術並びに製品が増加している。特に関心が高まっている技術分野は、生体センシングによる生体情報の取得である。この情報を得ることで、セキュリティの向上、個人認証、個人の健康状態の監視、及びストレス検知などのように、さまざまな機能アプリケーションに実装することができ、テクノロジーのさらなる向上が期待される。
【0003】
生体電気シグナルの取得及び監視は、それ自体、例えば、基礎となる生理学的状態又はプロセスを監視する手段として価値がある場合がある。さらに、識別/認証のためになどのような、他の目的のための生体センシングの一形態として価値がある場合もある。生体センシングは、指紋認識、虹彩反応、及び音声起動などのような、他のより一般的な個人身体検出の形態よりも優れている場合がある。心拍、筋肉活動、及び汗腺反応などのような、個人の自然な特徴を再現することはより困難であるため、セキュリティ及び認証システムにおいて、特に有望である。
【0004】
個人の心拍に関連する特徴的な生体情報を感知する能力は、この点で、特に興味深い場合がある。心臓が異なるストレスにさらされたとき、すなわち個人が運動したときでさえ、心臓からの電気シグナルは、各個人に固有であり、かつ複製することができないデータポイントのトレースを提供する。
【0005】
対象の心拍を測定する最も一般的な方法は、心電計を使用して電気シグナルを測定することであり、心臓の電位変化を経時的に記録する。このような電気的活動のより長い記録は、心電図又はECGとして知られている。このECG測定は、電極の接触点間の電位の変化を測定する1対(又はそれ以上)の電極を使用して記録される。臨床では、ECG電極は主に粘着性ゲル電極を使用して対象の皮膚に接触し、及び正確な読み取りを実現するために心臓全体の様々なポイントに配置される。電位の変化は、個人の心拍が電気的インパルスによって刺激されるため、心臓及び筋肉の活動と強い相関がある。単一の心拍の基本要素は、左右の心房が脱分極するときに発生するP波、左右の心室の脱分極を反映するQRS複合、及び心室の再分極に対応するT波である。既存の方法論は、これらの異なる要素、並びにそれぞれのサイズ、形状、及び位置によって個人を特徴付けようとするものである。
【0006】
個人の心拍に関連する生体電気シグナルは、特に個人に特徴的である可能性があり、及びそのような特徴的な生体電気シグナルが取得及び監視される例が本明細書で論じられる。しかしながら、当業者は、このような例によって、本発明が、任意の特定の生理学的活動に特徴的な任意の特定のクラスの生体シグナルに限定される必要があると推論するのではなく、個人を特徴付けることができる任意の生体シグナルが本発明の文脈で応用され得ると理解するだろう。
【0007】
対象から生体電気シグナルを取得及び監視するための有用な手段は、ウェアラブルなどのような皮膚接触型デバイスである。多くの生体センシングデバイスは、ユーザーの自然な特徴を測定するように適合されており、同時にまた、ウェアラブルデバイスとして有効になるように、又は他の接触型タイプのデバイスに取り付けられるように十分に小さくなっている。しかしながら、ウェアラブルなどのような皮膚接触型デバイスを使用して対象から生体電気シグナルを取得しようとするとき、特にデバイスの使用が非臨床環境における日常的なアプリケーションで意図されている場合には、いくつかの問題が依然として起こりえる。
【0008】
このような問題は、例えば、ウェアラブルデバイス又は接触型デバイスによって個人のECGを測定するときに起こりえる問題を調べることによって検討することができる。ECGを測定する臨床的な方法は、非臨床環境におけるそのような日常的なアプリケーションには適していない。例えば、家庭用アプリケーションのために及び/又はスマートウォッチ、ウェアラブルバンド、ステアリングホイール、ジョイスティックなどのような消費者製品で使用するために若しくはそれらの消費者製品の一部を構成するために接触型デバイスを用いた場合などである。これらのアプリケーションでは、通常、ドライ電極の使用が必要とされ、及び小型の消費者向け製品ではスペースが限られているため、2つの電極のみを使用するように制限されることがよくあるが、製品がスペースに制限されていないのであれば、より多くの複数の電極を使用することができる。さらに、臨床ECGなどのような臨床デバイスに使用される増幅器は、より大きなオフセット電位を許容できる高電圧レールを示す。これは、スマートウォッチなどのような小型電池駆動の機器、又はその他のウェアラブル消費者デバイスには実用的ではない。
【0009】
同様の問題は、皮膚接触型デバイスが非臨床環境における日常的なアプリケーションで、及びスマートウォッチ、ウェアラブルバンド、ハンドル、ジョイスティックなどのような家庭用アプリケーションなど又は消費者製品での使用のために意図されている場合には、対象から様々な他の生体電気シグナルを取得しようとするとき、ウェアラブルなどのような皮膚接触型デバイスの使用に関連して予想され得る。
【0010】
ほとんどのドライ電極は、銀、金、銅などのような貴金属材料から作られている。これらは、皮膚と接触したときに分極効果がほとんど又は全くないため、皮膚/電極の接合部におけるオフセット電位を減少させる。他の高容量材料も使用できるが、電極システムにDCを流すとき、皮膚/電極の接合部において高い分極効果により、最適なデータ取得性能は得られない。この電流は、ユーザーが電極に接触したときを検出するために必要である。これらの材料は、着色又はテクスチャ仕上げの必要性などのような、消費者製品の美的要件を満たすように選択されることがある。これらの導電性材料の大きくかつ不安定な電位オフセットを克服するために、電極にAC結合を使用した代替の動作方法が知られている。AC結合では、リードのオンとオフの検出にAC電流を使用する必要があるが、しかしながら、この方法はDCを使用する方法よりもはるかに複雑であるため、より多くの電力を必要とする。
【0011】
電力消耗は、日常的な家庭用アプリケーション、又はスマートウォッチ、ウェアラブルバンド、ステアリングホイール、ジョイスティックなどのような消費者向け製品に使用を目的としたデバイスに関連して、より重要な要素となる可能性がある。このようなデバイスは、断続的にしか能動的にデータを取得できず、及び皮膚と電極の接触がされるのを待つために、長い時間アイドル状態で過ごすことがある。この効果は、電源が小型の電池である場合に最も大きくなることがある。このような場合、リードオン検出のためのAC電流の使用は、それゆえにより高い電池消耗が余儀なくされ、及び多くのそのようなデバイスで実用性が制限される可能性がある。
【0012】
したがって、より広い範囲の導電材料を利用するために、増幅器入力における低い差動電位オフセットを維持しながら、電力消費、及び特にウェアラブル並びに/又はポータブルデバイスにおける電池の電力消費を低減する必要性がある。
【0013】
本発明は、個々の対象からの生体電気シグナル、及び特に対象の特徴を示す傾向のある生体電気シグナルを取得並びに監視するためのデバイス、システム並びに方法の提供に向けられている。
【0014】
本発明は、特に、非臨床家庭環境における生体電気シグナルの取得及び監視のための、ウェアラブルなどのような皮膚接触型デバイス、並びにそれを組み込んだシステム及び方法の提供に向けられている。
【0015】
本発明は、意図された使用における乾燥皮膚接触のための電極として代替電極材料の使用を容易にするデバイス、システム及び方法の提供に向けられている。
【発明の概要】
【0016】
本発明の一態様では、生体電気シグナルを取得するためのデバイスであって、
少なくとも2つの電極、
直流電源と、交流電源と、前記直流電源及び前記交流供給の間を選択的に切り替えるように作動可能なスイッチと、を備える電源回路、
各電極を前記電源回路に結合する容量性結合手段、及び各電極を前記電源回路に結合する直接結合手段、前記直接結合と前記容量性結合手段との間を選択的に切り換えるように作動可能なスイッチ、並びに
データ取得モジュール、
を備えるデバイスが提供される。
【0017】
電極は、生きている動物の身体の皮膚表面、及び特に人間の対象の身体の皮膚表面の間隔をあけた位置に、使用時に適用され、並びに使用時にそのように適用されるように適合されている。電極は、したがって、電極と皮膚との間の接触を検出するために、間隔をあけた位置で皮膚に電位差を印加し、及びその結果媒介された生体電位シグナルを皮膚表面から生体データ取得モジュールに伝達し、それによって1つ以上の生理学的プロセスに関連する生体電気データを取得でき、並びにそれによって1つ以上のかかる生理学的プロセスを監視できるようにすることが可能である。
【0018】
その限りにおいて、本発明の第1の態様のデバイスは、従来の皮膚接触型デバイスであり、例えばウェアラブルとして構成され得、これによって、遠隔に間隔を置いた皮膚接触点からの生体電気シグナルが、対象から取得され得る、及び/又は対象において監視され得る。
【0019】
これは、選択的に切り替え可能なDC又はAC電源回路を提供すること、直接結合手段及び各電極を電源回路とデータ取得モジュールに電子的に結合する容量性結合手段の間で切り替え可能であること、によって特徴付けられている。本デバイスはこのように、2つの動作モードを持つように構成されている。
【0020】
第1の動作モードでは、DC電源及び直接結合手段が選択され、直流が各電極に供給され、電極とデータ取得モジュールの間に一般的に従来の方法で直接電気接続が行われる。第2の動作モードでは、AC電源及び容量性結合手段が選択され、及び交流が各電極に供給される。このAC電源の周波数は、測定されるシグナルの含有量よりもはるかに高くなるように設計されており、生体電位シグナルデータ取得と同時にリードのオン/オフ検出を遂行することができる。
【0021】
このデバイスは、DC電源及び直接結合手段が選択され、直流が各電極に供給され、直接電気接続が電極とデータ取得モジュールとの間でされる前記第1動作モードと、AC電源及び容量性結合手段が選択され、交流が各電極に供給される前記第2動作モードとの間で切り替え可能に構成されると便利である。
【0022】
意図した使用において、デバイスが、皮膚接触の断続的/時折の期間に基づくデータ取得の断続的/時折の期間を対象とし、その間にアイドル期間がある場合、第1の動作モードは、例えば、電極が対象の皮膚に接触しておらず、かつ電極によって構成される回路が開放しているときの動作のためのアイドルモードとして利用されてもよく、及び第2の動作モードは、例えば、電極が対象の皮膚に接触し、かつ電極によって構成される回路がそれによって閉じられ、及びデータを能動的に取得しようとするときの動作のための、アクティブモードとして利用され得る。
【0023】
これは、より広い範囲の導電性材料を利用するために、特に皮膚/電極接合部における電位オフセットを克服する、アクティブモードフェーズ使用中のAC結合データ取得の利点を提供し、一方で、皮膚と電極との接触がされるのを待っているアイドルフェーズ使用時において、電力消費を低減し、全体的な電力消費、及び特に、ウェアラブルデバイス並びに/又は携帯デバイス並びに/若しくは家庭用デバイスにおいて特に価値があると考えられる電池電力消費を低減する。
【0024】
いくつかの実施形態では、デバイスは、AC電源及びDC電源のための電力源として、電池電源を更に備える。追加的又は代替的に、他の一体型又は遠隔型の電力源が提供されてもよい。
【0025】
電極は、電解質ゲルなどを要件とせずに使用中に皮膚と直接接触するドライ電極として使用するように適合されてもよい。電極は、それにもかかわらず、皮膚/電極接合部において潜在的に大きく、及び/又は不安定な電位差を生じさせる材料から製造されてもよいが、AC取得モードがそのような材料の制限を緩和するので、着色若しくはテクスチャ仕上げの必要などのような、消費財における美的要件にとって望ましい他の方法でもよい。
【0026】
例えば、電極は、使用時に皮膚/電極接合部に容量性オフセットを生じさせる傾向がある不動態化層などのような表面層を含む材料から製造されてもよいが、これらに限定されるものではない。
・クロムメッキされた金属又はプラスチック。
・着色された/着色可能な窒化物又は着色された/着色可能な窒化物コーティング、特に窒化チタン、例えば物理的気相成長法(PVD)により塗布されたもの。
・ステンレス鋼、特に不動態化コーティングを施したもの。
【0027】
便利な実施形態では、デバイスは、電極と皮膚との間に接触があったとき、第1の動作モード、すなわちアイドルモードと第2の動作モード、すなわちアクティブモードとの間を自動的に切り替えるように適合されてもよい。このような接触は、電極間の回路を閉じる。デバイスは、電極と皮膚の間で接触があったときに電極間の回路の閉鎖を検出する閉回路検出モジュールと、そのような接触があったときに第1の動作モードと第2の動作モードとの間の切り替えを実現する切り替えモジュールと、を備えてもよい。
【0028】
追加的又は代替的に、デバイスは、ユーザーの指示により、第1の動作モード、すなわちアイドルモードと、第2の動作モード、すなわちアクティブモードとの間で切り替えるように適合されてもよい。ユーザーが作動可能なモードスイッチが提供されてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、各電極は、各電極を電源に結合するための容量性結合手段と、選択的に閉鎖可能なスイッチが設けられている容量性結合手段に並列に結合する直接結合手段と、を設けていてもよい。直接結合手段に関連するスイッチを閉じると、容量性結合手段は短絡され、かつ直接電気接続が一般的に従来の方法で電極に行われる。スイッチを開くと、直接電気接続はもはやされなくなり、代わりに電極が容量性結合手段を介して接続される。スイッチは、このように、電極を直接結合手段と容量性結合手段との間で選択的に切り替える役割を果たす。
【0030】
いくつかの実施形態では、容量性結合手段は、AC結合コンデンサを備えてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、離散的なDC電源と、離散的なAC電源とが設けられ、かつスイッチは、DC電源及びAC電源の間を選択的に切り替える。
【0032】
いくつかの実施形態では、スイッチは、ミッドレールレールバイアスポイントを更に備え、それにより、DC電源とAC電源は、ミッドレールレールバイアスポイントを介して回路の内外に選択的に切り替えることができる。
【0033】
デバイスは、取得されたデータを格納するため、及び/又は取得されたデータが対象の識別のために比較され得るライブラリデータを格納するためのデータ格納モジュールと、取得されたデータを、例えば古いテンプレートシグナルトレースを含む格納ライブラリデータと比較するデータコンパレータモジュールと、のうちの1つ以上を更に備えてもよく、これらに対して取得されたデータは、例えば識別認識/認証目的のため、又はより長期間の生体シグナル監視用に比較することができる。
【0034】
デバイスは、データを遠隔の受信者に送信し、さらなる処理を可能にするデータ送信モジュールを更に備えてもよい。例えば、デバイスは、WLANプロトコルを介した無線通信の適切なモードに適合されてもよい。
【0035】
本発明の別の態様では、生体電気シグナルを取得するためのシステムであって、該システムは、本発明の第1の態様に係るデバイスと、追加の受信デバイスと、前記デバイス及び前記追加の受信デバイスの間でデータの通信を行うように動作可能な無線通信システムと、前記デバイス及び/又は前記追加の受信デバイスの一部を含むデータストレージモジュールと、を備える、システムが提供される。
【0036】
随意で、データストレージは、例えば識別/認証目的のための例えば古いテンプレートシグナルトレースを含む保存されたライブラリデータを備える。随意で、システムは、取得されたデータを、例えば古いテンプレートシグナルトレースを含む保存されたライブラリデータと比較するデータコンパレータモジュールを更に備え、これに対して取得されたデータは、例えば識別認識/認証目的のために、又はより長期間の生体シグナル監視のために比較することができる。
【0037】
本発明の別の態様では、生体電気シグナルを取得するための方法であって、該方法は、
少なくとも2つの電極と、
直流電源、及び交流電源を備える電源回路と、
各電極を前記電源回路に結合させる容量性結合手段、及び各電極を前記電源回路に結合させる直接結合手段と、
を有するデバイスを提供することにより、前記デバイスを、
前記直流電源と前記直接結合手段が選択され、直流が各電極に供給される第1の動作モードと、
前記交流電源と前記容量性結合手段が選択され、各電極に交流が供給される第2の動作モードと、
の間で選択的に切り替え可能とするステップ、
前記電極が対象に接触していないとき、前記デバイスを前記第1のモードで動作させるステップ、並びに、
前記電極が対象の身体の皮膚表面と接触しているとき、前記デバイスを前記第2のモードで動作させるステップ、
を備える方法が提供される。
【0038】
したがって、第1の動作モードはアイドルモードとして利用され、及び第2の動作モードはその間に能動的にデータが取得されるアクティブモードとして利用され得る。これは、アクティブモード中のACデータ取得の利点を提供するが、上述したようにアイドルモードにおける電力消費を低減させる。
【0039】
いくつかの実施形態では、方法は、デバイスをミッドレール又は接地を介して、前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとの間で切り替えることを更に備える。
【0040】
いくつかの実施形態において、方法は、前記取得されたデータを、識別/認証のため又はより長期の生体測定監視のために使用することができる例えば古いテンプレートシグナルトレースを含むライブラリデータなどの他のデータと比較することを更に備える。
【0041】
いくつかの実施形態において取得された生体電気シグナルデータを、該データの取得に続いて、無線通信を介して遠隔受信者に送信し、前記データのデータのさらなる処理を可能にすることを更に備える。
【0042】
この態様の発明は、例えば、第1の態様のデバイス又は第2の態様のシステムの使用方法であり、及びこの方法の更なる好ましい特徴は、それらの態様の説明に準じて理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】(a)は、電極が右手及び左手の接触のために配置される、ステアリングホイールの2電極ECG取得アプリケーションを示す図であり、(b)は、電極が時計の前面と背面に配置されているスマートウォッチの2電極ECG取得アプリケーションを示す図である。
【
図2】2つの電極間に対象が接触したこと、すなわち電極間のDC電圧が高いことを電極が検出するDCリードオン/オフ検出モードの簡単な回路図である。
【
図3】2つの電極間に対象が接触したこと、すなわち電極間のAC電圧が高いことを電極が検出するACリードオン/オフ検出モードの簡単な回路図である。
【
図4】コンデンサが異なる増幅段に結合されている増幅段間AC結合の簡単な回路図である。
【
図5】増幅段におけるベースライン回復のためのフィードバックパス内の積分器の簡単な回路図である。
【
図6】増幅器入力への電極のAC結合手段の簡単な回路図である。
【
図7】AC結合コンデンサが回路内外に切り替え可能なECG増幅器回路の回路図である。
【
図8】1mHzにおけるフロントエンドハイパスフィルタと0.5Hzにおけるベースライン回復ハイパスフィルタの振幅及び位相応答のプロットである。
【
図9】フロントエンドコンポーネントのモード切替を示す回路図である。
【
図10】モード切替順序を示す回路図であり、(a)は、ユーザーの接続を待つアイドルモードを示し、(b)は、電極及びAC結合コンデンサを放電する中間モードを示し、(c)は、シグナルを表示し及びAC検出によりリードオフを調べる取得モードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、好ましい実施形態として本書を通じて説明されるような2電極ECG検出及び取得デバイスの適用例を提供する。
図1は、このデバイスが、例えば、これらに限定されるわけではないが、(a)ステアリングホイール100及び(b)スマートウォッチ150などの消費者製品に実装され得ることを示す。
図1(a)の電極101は、ステアリングホイールの両側、すなわち別々に間隔をあけた場所に配置され、2点皮膚接触、すなわちユーザーの左手側と右手側の接触を可能にする。電極101はまた、ステアリングホイールの左右の側面の大部分を覆うように構成及び形成されており、接触面積を増大させる。同様に、
図1(b)において電極151は、スマートウォッチ150の前面152及び背面153の2点皮膚接触を可能にするために、間隔をあけた位置に配置されている。これにより、一方の電極で手首を接触させ、及び他方の電極で反対側の指を接触させることができる。ここでも、電極151は、スマートウォッチの両側に適合するように構成及び形成され、アクセス可能な接触領域を提供することができる。電極は、
図1(b)において異なるサイズの前部電極及び後部電極によって例示されるようになど、必要に応じて、各電極が独自の形状並びにサイズを有することによって、消費者製品に合うように様々な形状並びにサイズで構築することができる。
【0045】
実施形態は、例として、個人の心拍に関連する生体電気シグナル、特にECGトレースを得ることを参照と共に、論じられる。このようなトレースは、もちろん、心血管生理学の指標としてそれ自体で価値があるが、特に個人を特徴付けることもできる。もちろん、同じ原理を、個人を特徴づける、及び/又は生理学的状態若しくはプロセスの指標を提供することができるあらゆる生体シグナルに適用することができる。
【0046】
ECG取得は、ユーザーが2つの電極の両方に接触したときに実行することができ、ユーザーを介して電極間のシグナルを測定する。ステアリングホイール100に関連しては、両手がホイールのそれぞれの側の電極101に接触しているときに測定を行うことができ、及びスマートウォッチ150については、手首が後部電極に接触しており、かつ指が前部電極に接触しているときに取得を行うことができる。受信製品における電極の配置によっては、他の構成が明らかになる場合がある。
【0047】
図2は、対象又はユーザーがデバイスに接触したときに検出するために使用される接触検出200の典型的な回路を示しており、これはしばしばリードオン検出として呼ばれ、及び皮膚と電極との間の接触が途切れたときにリードオフとなる。
図2は、回路の開放端において電極201が、アイドルモード又は「スリープ」モードで、対象若しくはユーザー202からの接触を待っている状態を示している。一般的な生体接触検出回路は、直流(DC)を一方の電極(通常はプラス203)に送り、かつ他方の電極(通常はマイナス204)から出して、かつ2つの電極間の電圧差を測定する。この電圧差は、確立された閾値、すなわちVemfのような開回路電圧と比較される。通常、人間が対象の場合、対応する抵抗が約5MΩの典型的な抵抗閾値より小さい場合、対象は電極に接続されているとみなされる。一度接続が行われ、かつ接触が検出されると、ECGの取得を開始することができる。一般的には、これは低電力電圧コンパレータ205を使用して遂行される。リード検出は、リードオフを決定するためのシグナル取得を通じて、すなわち、対象が電極からの接触を断つときに、継続することができる。しかしながら、皮膚/電極界面における分極効果により、DC回路内で使用されるドライ電極の材料選択には限界がある。薄い漏れがある誘電体層を持つ材料では、大きな分極効果が生じ、大きな電圧オフセット電位が発生する。これは、回路電子の閾値を超えるECGシグナルの検出及び取得を困難にすることがある。これらの材料の課された電圧オフセットは、対象の体内のイオンと電極自体の間の境界で生成される電気化学的半電池電位に追加される。DCオフセットはまた、皮膚の部位、圧力、面積、又は2つの異なる材料が各電極に使用されているかどうかに従って、2つの電極の間で変化する可能性がある。電極間の電圧の差は、場合によっては0.5Vを超えることがある。皮膚インピーダンスの違いによる影響から、オフセットもまた人によって異なる。したがって、電極材料と電子機器の組み合わせを変更することは、母集団のかなりの割合で有効なECGシグナルが得られない可能性があり、電極材料と仕上げの選択が制限され得る。
【0048】
代替的に、接触検出のための回路は、
図3に描かれているように、DCではなく、交流(AC)電源を有することができる。電極201及び対象202はDC電流の場合と同じでよいが、代わりに変調されたAC電流303/304が電極間に流される。検出及び取得が行われるためには、必要なECG帯域幅よりも高い値で変調されたAC電流を動作させる必要がある。これは、DC回路で起こる問題を克服するが、より多くの電力を必要とする。再び、DC回路と同様に、AC回路は、対象のECGシグナルを取得するためのAC電圧における差を測定するための対応する電圧コンパレータ305を有し、及びリードオン/オフ検出も継続することができる。しかしながら、AC駆動回路はDC小型ウェアラブルデバイスよりも多くの電力を必要とするため、利用可能な電池寿命が大幅に減少する。
【0049】
ドライ電極に薄い漏れがある誘電体層を持つ高導電性材料を使用するとき、シグナルをデバイスの適切な表示範囲に入れることによって、分極の影響に対抗するためにDC回路にハイパスフィルタを導入することができる。ハイパスフィルタは、異なる材料及び異なるユーザーによって誘発される差別化されたDCオフセットを考慮することもできる。ドライ電極を使用するときに消費者デバイスでは、誘導されるオフセットの値は0.5V以上にもなることがある。消費者デバイスのハイパスフィルタは、一般的に-3dBロールオフ値が0.5Hzである。臨床使用ECGデバイスの一般的な値は、粘着性ゲル電極を使用するため、通常0.05Hz程度である。ハイパスフィルタは、誘導オフセット値などのようなあるカットオフ周波数より高い周波数を持つシグナルを通過させることができ、及びカットオフ周波数より低い周波数を持つシグナルを減衰させる。これは、異なる回路設計を使用して実現することができる。例えば、ハイパスフィルタは、
図4に示すようにコンデンサ401を使用して、又は
図5に示すようにフィードバック経路501の積分器によって実装することができる。また、他のハイパスフィルタの設計を採用することもできる。
図4の回路400において導入されたコンデンサ401は、DCオフセットを除去し、及び出力に調整された増幅シグナル404を提供するために、段間AC結合403を通じて増幅402の異なる段に結合される。
図5は、オフセットを考慮したベースライン回復のための回路500のフィードバック経路502における積分器501を示す。
図5の例はまた、範囲外のシグナルを検出することによる随意の高速ベースライン回復503も含む。これは、増幅器出力が飽和した場所を検出し、及び平均シグナルレベルが実行可能な取得範囲内になるまで積分器の時定数を減らし、出力においてより速い増幅シグナル504を提供するものである。これは、US4319197に開示されている。
【0050】
しかしながら、このようなタイプのDC回路の修正もまた、問題を引き起こすことがある。提示されたコンデンサ400及び積分器500の設計などのようなハイパスフィルタの包含は、増幅段の1つ以上の飽和による限られたオフセット電位能力に悩まされることがある。これは、デバイスが電池駆動する小型ウェアラブルデバイスの場合に特に問題となる。これは、この種のデバイスのための一般的な電池駆動電子機器が、一般的には1.8Vである低い供給レール電圧で動作するので、特に制限される。
【0051】
リードオン検出に続いてECG取得を改善するためのさらなる例は、
図6に示すように、両方の電極入力をAC結合することである。この回路設計600は、AC結合601が、
図4のコンデンサ401によって示されるように増幅402の段間の代わりに回路のフロントエンドで実行されるので、ECG取得のための生体電位シグナル処理の改善を提供する。フロントエンドにおけるAC結合コンデンサ601及び入力バイアス抵抗602/603は、平衡型ハイパスフィルタとして動き、誘導されたオフセット電位を除去する。しかしながら、この例では、必要なバランス型ハイパスフィルタを実現するために、コストがかかる。それは、主電源干渉の影響を除去及び取得された波形ECGシグナルにおける低周波位相歪みを回避するために必要な、50又は60Hzにおける良好な同相シグナル除去比(CMRR)をメインとする高価な精密公差コンポーネントを必要とする。また、フロントエンドにおいてAC結合601が存在するため、DC接点検出を使用することができない。したがって、リードオンイベント(対象が両方の能動電極に接触する)を検出するために、不活性アイドルモード中にコンデンサを通過するAC電流が必要となり、このモード中に電流消費の増加を必要とするので、上記に示したように、より多くの電池電力を使用する。
【0052】
図7の好ましい実施形態では、生体センシングデバイスは、生体電気シグナルを取得するように実装された電子集積回路700を含み、取得された生体シグナルは、心電図(ECG)、皮膚電気活動(EDA)、脳波(EEG)又は筋電図(EMG)シグナルの少なくとも1つである。このデバイスは、他の生体シグナルを測定するように適合されてもよいことが理解されるであろう。この実施形態では、検出及び取得されるシグナルはECGである。ECGセンシングデバイスの回路700は、デバイスと対象又はユーザー202との間で接触するための2つのドライ電極201を含む。電極201は、体内のイオン電流を電流に変換する。電極201は、分極効果の影響を受けやすい薄い漏れがある誘電体層を有するものを含む1つ以上の導電性又は半導体材料を備えてもよい。これにより、ドライ電極に使用される材料及び材料の組み合わせの選択肢が広がり、消費者製品に組み込むときに強化された美観を提供する、様々な色オプション、又は様々なテクスチャオプションなどのような他の望ましい特性を有することができる。これらには、クロムメッキされた金属又はプラスチック、PVD法により適用された着色窒化物コーティング、不動態化コーティングを施したステンレス鋼を含むステンレス鋼等が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
好ましい実施形態では、回路700は、電極201を増幅器702の電子機器に結合する、AC結合入力701を含む。増幅器702は、差動計装増幅器であってもよいが、他の増幅器があっても差し支えない。AC結合入力701は、電極/皮膚界面201を通って流れるいかなる平均DC電流も防止し、高分極性材料に対してそのような界面で生じる電位オフセットを克服する。これは、増幅器電子機器を線形モードで動作させ続けるために増幅器702の入力にバイアスをかけるのに必要な電流を含む。AC結合はまた、動きによるモーションアーチファクト又はECGベースラインシグナルの乱れの可能性から回路内に誘導されるDC電流、例えば、emf電流を防止する。スマートウォッチ又は他の携帯用ウェアラブルにデバイスを実装するオプションが非常に重要であるため、出力シグナルからこれらの電流を抑制又は除去することが必要である。
【0054】
好ましい実施形態では、回路700は、AC結合コンデンサ701を回路の内外に切り替えられることを可能にする切り替え機構を含む。これは、コンデンサ701をブリッジするスイッチによって示される。この構成は、デバイスが、2つの動作モード、すなわちDC電流、アイドルモードと、AC電流、アクティブモードの間で変化することを可能にする。DCモードでは、AC結合コンデンサは回路から切り離され、DC電流が電極に流れるようになる。この動作モードでは、デバイスを低電力状態に設定し、及びDCリードオン検出を行うことを可能にし、これにより、デバイスは、皮膚/電極が両方の電極に接触したことを検出する。AC結合コンデンサが回路に切り替えられると、第2の動作モードが有効になり、及びECGシグナルの取得を行うことができる。このアクティブモードの動作では、ハイパスフィルタの補助を伴って、電極電位オフセットを除去しながらシグナルを取得することができる。この実施形態では、入力AC結合コンデンサ及び増幅器入力バイアス抵抗は、回路700のフロントエンドにおいてハイパスフィルタ705を形成する。このハイパスフィルタの-3dBブレークポイント、つまりカットオフ周波数は、消費者製品に使用する場合は約0.5Hz(臨床用では約0.05Hz)などのような潜在的なオフセット周波数の低帯域幅より低くする必要がある。
図6のプロット605に示すように、-3dBポイントは、標準的な式、fc=1/2πRCを使用して求められる。この状態を確実に維持するために、ハイパスフィルタ502が回路700の増幅器段402に組み込まれる。このハイパスフィルタは、増幅器計装702の入力バイアス抵抗と組み合わせた結合コンデンサの効果による長いRC時定数を除去することを補助することができる。この実施態様では、時定数はAC結合回路の10%未満である。ハイパスフィルタは、ベースライン回復のための回路のフィードバック経路502に配置された積分器である。開示されているような2つのハイパスフィルタを組み込むと、
図8(a)並びに
図8(b)の振幅801及び位相応答802のプロットによってそれぞれ分かるように、0.1Hzを超える周波数で最小の位相差となる。この場合のハイパスフィルタは、フロントエンド入力705が1mHzのCRハイパスフィルタ、及び回路のバックエンド402が0.5Hzの積分器ベースライン回復ハイパスフィルタ502である。さらに、範囲外検出システム503が高速ベースライン回復のために使用され、シグナル平均を機器の線形範囲内に維持する。
【0055】
好ましい実施形態では、切り替え機構が動作するために、バイアス切り替え源703が回路700に導入される。切り替えは、固定抵抗器又はプログラマブル定電流電源のいずれかを使用することによって作動させることができる。さらなる構成では、
図9の回路900に示されるように、AC結合コンデンサ901/902とAC電流源903/904間の両方でモード切替が起こるミッドレールバイアス点が導入される。動作モードを切り替えるとき、一対のコンデンサスイッチ901及び902は一緒に動作し、並びに一対の電圧バイアススイッチ903及び904は一緒に動作する。検出、切り替え、及び取得の順序が重要である。
【0056】
検出からECG取得までの好ましい切り替え方法は、
図10(a)~(c)に示される切り替え順序によって描かれる。皮膚と電極201が接触しないリードオン検出モード1000でスタートし、回路はDC電流が流れるアイドルモードとなる(
図10(a)参照)。スイッチ901及び902は、AC結合コンデンサ間に短絡を作成し、コンデンサをラウンドする電流をバイパスするために有効化することが可能である。バイアススイッチ903/904(及び電圧コンパレータ1001/1002)は、リードオン検出モードに必要なDC電流の流れを可能にするDC電圧に設定される。回路は、ユーザー又は対象202によって、電極201に接触がされるまで、この状態を継続する。皮膚/電極の接触が両方の電極201にされると、コンパレータ1001/1002がトリガされる。一度コンパレータ1001/1002が十分な期間にわたって検証されると、バイアススイッチ903/904をアクティブコンパレータ状態から単一供給(又は接地)用のミッドレール1101/1102に切り替えることによって、両電極201のバイアス終了が実行され、回路1100からバイアス電流供給を除去する(
図10(b)参照)。この段階では、結合コンデンサは、電荷のない既知の状態に保持される。皮膚/電極界面容量上の差分電荷によって課せられた電荷の一部が放電する。この差電は、皮膚/電極の界面で生成される分極効果によって生じる。放電は、両電極201が共通の電圧1101/1102にバイアスされることにより発生する。十分な時間(通常は約0.5秒)の後、回路1200は、AC電源1201/1202に対するスイッチ903/904によって、AC電流注入が起こることを可能にする取得モードに切り替わる(
図10(c)を参照)。AC結合コンデンサ901/902は解放され、及びベースライン回復回路1203が作動し、生体電位ECGシグナルが取得され、並びに正しく受け取ることができる。この方法及びデバイス回路は、消費電力並びに電池消耗を低く抑えながら、50又は60Hzで良好な同相シグナル除去比(CMRR)を有し、電極ピックアップ並びにシグナル表示のための最良の条件を有する、全体的に改善された増幅シグナル1204を提供する。このモードの間、機器の帯域幅をはるかに超える変調周波数におけるゼロ平均AC電流は、電極と皮膚の接触が終了した場合、すなわち、対象が電極の1つから皮膚の接触を取り除き、開回路を作成したときの判断に使用することができる。
【国際調査報告】