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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(54)【発明の名称】人工腎臓システム及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/62 20060101AFI20221222BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20221222BHJP
   B01D 61/24 20060101ALI20221222BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20221222BHJP
   G01N 33/70 20060101ALI20221222BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
G01N33/62
A61M1/16 105
B01D61/24
A61B5/00 N
G01N33/70
A61M1/00 140
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524081
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 CA2020051298
(87)【国際公開番号】W WO2021077206
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】62/925,334
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522163584
【氏名又は名称】ケーアイエフエフアイケー インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】KIFFIK INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100206689
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵理子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】エザリク,アブデルティフ
(72)【発明者】
【氏名】ベンセイラム,サミア
【テーマコード(参考)】
2G045
4C077
4C117
4D006
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB30
2G045DA16
2G045DA42
4C077AA05
4C077BB01
4C077CC09
4C077DD02
4C077DD07
4C077DD10
4C077DD11
4C077DD19
4C077EE10
4C077HH09
4C077HH10
4C077HH13
4C077HH15
4C077JJ08
4C077JJ09
4C077JJ13
4C077KK25
4C077PP13
4C117XA01
4C117XB01
4C117XC01
4C117XE04
4D006GA13
4D006MA12
4D006MA13
4D006MA14
4D006MA15
4D006PA01
4D006PB20
4D006PB27
4D006PB52
4D006PB70
4D006PC41
4D006PC47
(57)【要約】
被験体の腎臓不全及び透析を検出するための方法及びデバイスを提供する。方法及びデバイスは、表皮に、熱を発生することなく、不可逆的にエレクトロポレーションし、負圧を付与することによって表皮にマイクロ導管を形成し、ここから間質液を抽出、分析、濾過して、例えば、透析液を生成し、被験体に戻すことができる。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の腎臓損傷を検出する方法であって、
熱を発生することなく、前記被験体の表皮の領域へ不可逆的にエレクトロポレーションすることと、
前記被験体の不可逆的にエレクトロポレーションされている前記表皮の領域又はその付近に負圧を適用すること、皮膚を不可逆的にエレクトロポレーションすることと負圧を適用することとの組合せで、角質層にマイクロ導管を形成することと、
前記被験体の間質液を抽出することと、
バイオマーカの量を測定することと、を備え、
前記被験体の前記間質液中の前記バイオマーカは、腎臓損傷を示す、方法。
【請求項2】
前記バイオマーカは、クレアチニン及び尿素のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
間質液を抽出することによって被験体の透析を行う方法であって、
熱を発生することなく、前記被験体の表皮の領域へ不可逆的にエレクトロポレーションするステップと、
前記被験体の不可逆的にエレクトロポレーションされている前記表皮の領域又はその付近に負圧を適用すること、皮膚を不可逆的にエレクトロポレーションすることと負圧を適用することとの組合せで、マイクロ導管を形成する前記表皮にマイクロ導管を形成するステップと、
前記被験体の間質液を抽出するステップと、
抽出された前記被験体の前記間質液を濾過することによって透析液と清浄な間質液とを形成するステップと、を備え、前記清浄な間質液は、前記被験体に戻される、方法。
【請求項4】
抽出された前記間質液は半透膜を通して濾過される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記半透膜は、陽イオン交換膜(CEM)、電荷モザイク膜(CMM)、双極膜(BPM)、陰イオン交換膜(AEM)、アルカリ陰イオン交換膜(AAEM)、又はプロトン交換膜(PEM)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
分子は、抽出された前記間質液から除去され前記透析液に移動する、請求項3から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記分子は、カリウム、水、又は尿素である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
被験体に戻される前に、清浄な間質液にはさらに物質が補充される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記角質層にエレクトロポレーションするために、少なくとも第1の可動又は静止電極と第2の静止電極との間に非パルス電圧及びパルス電圧が生成される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記負圧はパルス状又は連続的である、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
エレクトロポレーションされている前記角質層の領域又はその付近に適用される前記負圧は、圧力センサでモニタリングされる、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記被験体は動物又はヒトである、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
被験体から間質液を非侵襲的に抽出するための透析システムであって、
少なくとも1つの第1の可動又は静止電極と、角質層にマイクロ導管を形成する第2の静止電極との間に非パルス電圧及びパルス電圧を生成することによって不可逆的に前記角質層へエレクトロポレーションするために生成を行うエレクトロポレータと、
前記角質層上に負圧を適用して、前記間質液を抽出できるようにする真空ポンプと、
抽出された前記間質液を濾過するための少なくとも1つの半透膜と、を備えるシステム。
【請求項14】
前記半透膜は、陽イオン交換膜(CEM)、電荷モザイク膜(CMM)、双極膜(BPM)、陰イオン交換膜(AEM)、アルカリ陰イオン交換膜(AAEM)、又はプロトン交換膜(PEM)である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの第1及び第2の電極はチャンバ内に含まれる、請求項13又は14に記載のシステム。
【請求項16】
前記チャンバは、前記エレクトロポレーションに使用される前記第1及び第2の電極とは別の部分である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記システムは、10マイクロリットル/秒~2000マイクロリットル/秒の間の速度で、前記間質液を抽出する、請求項13から16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
抽出濾過された前記間質液を前記被験体に戻す手段をさらに備える、請求項13から17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記システムはカテーテル又はマイクロニードルのネットワークを備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
1つ又は複数のバイオマーカを分析するための1つ又は複数のセンサをさらに備える、請求項13から19のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記バイオマーカは、pH、クレアチニン、及び尿素のうちの少なくとも1つである、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
濾過された前記間質液と、濾過された前記間質液の前記被験体への送達速度とを分析するための1つ又は複数のセンサをさらに備える、請求項13から21のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項23】
前記1つ又は複数のセンサは、有線又は無線の通信デバイスをさらに備える、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記真空ポンプは、蠕動ポンプ、ダイアフラムポンプ、又はピストンポンプである、請求項13から23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
前記真空ポンプによって生成される前記負圧は、約2kPa~約98kPaである、請求項13から24のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項26】
前記ポンプによって生成された前記真空はパルス状又は連続的である、請求項13から25のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
被験体の間質液を抽出及び濾過することによる、間質液の透析のための方法及びデバイスを提供する。
【背景技術】
【0002】
透析は、本質的に溶液の浄化を可能にする技術である。医学において、透析は膜を通して血液を浄化する方法である。
【0003】
透析の原理は、膜によって2つの溶液を分離し、その2つの溶液の化学的組成を変化させることにある。異なる種類の膜、半透膜(溶媒のみを通過させる)と透析(直径がナノメートル(nm)の同一かつ既知の微細孔)が区別され、特定サイズ未満の溶媒と溶質を通過させる。(分子勾配と浸透とによる)拡散効果によって、小さな分子は膜を通過する一方で、大きな分子(しばしば巨大分子)は一方の側に留まる。医学分野における透析の主な使用は、腎臓が一時的に(急性腎不全)又は決定的に(慢性末期腎不全)機能停止した人々に関連する。膜を横切った液及び溶質を指す透析の生成物の1つが、透析液と称される。
【0004】
緊急の場合(例えば、機能性瘻がない場合)、透析は、大腿骨、頸静脈、又はキーボード下静脈カテーテルによって開始可能である。血液透析の決定があった場合、動静脈瘻は、静脈内の動脈のアバットメントによって外科的に配置される。瘻の進行性の膨張は、こうして高流量の血液チャネルへのアクセスをずっと容易にする。透析の開始には、瘻が十分に発達するまで数週間待機しなければならない。患者の選択によって、機械の準備と患者の自宅にある機械を使用して行うことができる透析セッションの実現のために、多少の自律性が可能である。
【0005】
腹膜透析では腹膜を使用する。腹膜透析は、主に慢性末期腎疾患の治療に適用される。また、薬物療法に抵抗性の心不全や高血圧の治療にも適用され得る。慢性腎不全の患者の場合、腎臓の3つの主要な機能(血圧調節に影響を与える高分子電解質バランスの維持、身体の代謝からの老廃物の除去、及び内分泌腺としての機能又は役割)はもはや十分に保証されない。腹膜透析プロセスは、血液透析手順のように、最初の2つの機能の機能不全を補うことを可能にする。
【0006】
体外循環装置を使用する血液透析手順と異なり、腹膜透析血液浄化は、腹腔内の身体内で実施される。
【0007】
血液透析は、体外循環回路を作り、それをダイアライザに通すことによって血液を浄化する方法である。重度の腎不全がある場合、身体には透析によって取り除かれるべき物質が徐々に溜まっていく。
【0008】
持続的血液濾過は、腎代替療法を必要とし、血圧の脆弱な患者のための、必要ならば集中治療室において、数日持続させる24時間透析技術である。有害物質の血液を浄化し、細胞から余剰な水分を取り除く。敗血症性ショック、急性肺水腫(水過負荷)の場合や、血行力学的不安定性の場合の無尿に、しばしば使用される。
【0009】
透析は、血液を、フィルタとして機能する膜を介して緩衝液である滅菌液(透析液)と接触させる。血液透析では、このプロセスは体外で起こり、膜は人工である。逆に、腹膜透析では、交換は腹部内で起こり、膜は腹膜である。どちらの方法においても、関与する物理現象は同一である。
【0010】
血液濾過は、血液透析と同様に、腎外浄化の方法である。その物理的原理は血液透析のそれとは異なる。つまり対流輸送である。限外濾過された血液が収集され、収集された生成物(限外濾過液)は、それに含まれる廃棄物とともに処分される。再注入液が、除去された血漿の一部を補う。
【0011】
血液濾過は血漿浄化を可能にする。その主な適応症は腎補給であるが、その他の適応症も出現しつつある(重症敗血症、SIRS、横紋筋融解症等)。高クリアランス(又は、場合によっては大量)血液濾過は、治療量が腎不全を制御するために必要な量よりも多い場合に行われる。
【0012】
血液透析濾過は、拡散輸送と対流輸送とを組み合わせることにより、血液透析と血液濾過との双方からなる派生的技術である。これは主に、血液濾過を実施するのに必要な血流が不十分な状況で使用される(特に子供)。
【0013】
肝透析は、肝不全の被験体の透析治療の方法であり、肝臓の機能不全のために血液中に蓄積する毒素を血液から取り除くことを目的とする。この手順は、肝腎症候群の患者に有望であることが示されている。これは、水溶性毒素をほとんど除去するが肝不全で蓄積するアルブミンに結合された毒素を除去するものでない、腎不全の治療に使用される血液透析に類似している。体外バイオ人工肝臓では、これが体外循環による肝臓の人工的サポートの2つの形態のうちの1つである。
【0014】
肝透析は現在、移植又は肝再生(急性肝不全の場合)までの一過性の治療法としてのみ考えられており、腎透析とは異なり、長期間(数ヶ月又は数年)にわたって患者を救済することはない。
【0015】
膜を介した血漿と透析液との間の交換は、浸透と逆浸透という2つの異なる物理現象に依存する。
【0016】
浸透は、濃度勾配に応じて半透膜を介した溶液中の分子の交換を調節する。つまり、特定の物質は、最も濃度の高いコンパートメントからより濃度の低いコンパートメントに移動して、膜のいずれかの側の濃度のバランスをとる傾向を持つことができる。交換の速度は、濃度の違いだけでなく、膜の微細孔サイズ、物質と膜の電荷、及び交換される物質のアロステリックサイズ等、他の要因にも依存する。異なる透析膜があり、それぞれが異なる特性を備える。
【0017】
逆浸透中、水は、圧力が最も高い側から圧力が最も低い側に向かって、膜貫通圧力勾配によって変位される。したがって、水交換に影響を与える要因は、圧力と膜の水力係数(やり方によっては、その透過性)である。これらの2つのメカニズムの組み合わせのおかげで、透析セッション中に、血液からいくつかの物質(例えば、食物、特に、野菜、果物によって提供されるカリウム、又はタンパク質代謝によって生成される尿素)を同時に除去することができ、不足している物質(例えば、多くの場合に不十分となるカルシウム、又は血液の酸性化を補う重炭酸塩)を血漿に追加し、身体内に溜まった水分を除去することができる(特に被験体が無尿の場合、すなわち腎臓が尿を全く出さない場合)。
【0018】
逆浸透のプロセスでは、薄膜複合膜(TFC又はTFM)が使用される。これらは主に、浄水又は淡水化システムで使用するために製造された半透膜である。また、これらはバッテリ及び燃料電池等の化学用途にも使用されている。本質的に、TFC材料は、2つ以上の層状材料からフィルムの形で構築された分子ふるいである。逆浸透で使用される膜は、一般にポリアミドで作成され、主に水への透過性と、塩イオンや濾過できないその他の小分子を含む、様々な溶解不純物に対する相対的な不浸透性とを得るように選択される。半透膜の別の例は透析チューブである。
【0019】
他の種類の半透膜も知られており、例えば、陽イオン交換膜(CEM)、電荷モザイク膜(CMM)、双極膜(BPM)、陰イオン交換膜(AEM)、アルカリ陰イオン交換膜(AAEM)、及びプロトン交換膜(PEM)に対応する。
【0020】
ドイツのTeraklin AGによって開発されたMARSシステム「分子吸着剤再循環システム」は、最も一般的な肝体外透析システムの1つである。これは2つの別の回路で構成される。ヒト血清アルブミンで構成される第1の回路は、特殊な半透膜(MARS(登録商標)-FLUX)を介して患者の血液と接触し、患者の血液毒素を吸収した後にアルブミンを回収するための2つの特殊なフィルタを備える。第2の回路は、第1の回路に再循環される前に、第1の回路のアルブミンを浄化するために使用される血液透析装置からなる。MARSシステムは、アンモニア、胆汁酸、ビリルビン、銅、鉄、フェノール等、血液から多くの毒素を取り除くことができる。治療は通常、3~5回の8時間の透析セッションで行われる。
【0021】
SPADシステム(「シングルパスアルブミン透析」)は、追加の灌流システムなしに腎透析装置でアルブミンを使用する簡単な方法である。患者の血液は、MARSシステムで使用されるものと同一のフィルタを備えた回路を循環する。膜の反対側には、フィルタを通過した後に廃棄される向流で循環するアルブミンの溶液が横断する。血液透析は、同一の中空繊維システムによって第1の回路内で実行され得る。
【0022】
Prometheeシステム(Fresenius Medical Care、ドイツ、バートホンブルク)は、特定のポリスルホンフィルタ(AlbuFlow)でアルブミンを選択的に濾過した後、アルブミン吸着と高流量血液透析との組み合わせに基づいた新しいデバイスである。これは、(腎不全を伴う急性又は慢性の)肝腎症候群の11名の患者のグループで研究された。2日間連続で4時間以上治療し、抱合型ビリルビン、胆汁酸、アンモニア、コリンエステラーゼ、クレアチニン、尿素、及び血中pHの血清濃度が大幅に改善された。
【0023】
血液透析では、膜は人工の合成膜である。これは毛細血管線維の形であり、血液は繊維内部を循環し、透析液は外側にある(血液と透析液との間に直接の接触はない)。毛細血管繊維は、ダイアライザと称されるデバイス内で組み合わされ、したがって血液の入口及び出口と、透析液の入口及び出口とを有する。ダイアライザ内では、血液及び透析液の循環が反対方向に行われるため、交換が最適化される。ダイアライザには、清潔な透析液(通常は、毎分約500mlの透析液供給速度)と患者からの血液(毎分150~500mlの流量)が継続的に供給される。ダイアライザに含まれる血液量は、モデルによって異なるが約100+/-20mlである。ダイアライザの総表面積は、使用するモデルによって異なるが1m~2.5mの範囲である。
【0024】
現在、透析液は、液体濃縮物と超高純度滅菌水とから簡単に製造される。透析液濃縮物の組成は、特に、1リットルあたり1~3mmolの範囲で変動し得るカリウム濃度及び1~1.75mmolの範囲であり得るカルシウム濃度のレベルで変動し得る。濃縮透析液は、透析発生器によって希釈され、濃縮液体粉末又は重炭酸塩から即座に得られる重炭酸塩溶液と混合される。したがって、透析液の重炭酸塩含有量及びナトリウム含有量を調整することができる。定期的な血液透析セッション(4時間の持続時間)の間に120リットルの透析液が生成される。
【0025】
現在使用される既知の透析システムは高価であり、部品の度重なる滅菌、又は患者に独立して導入しなければならない各々の量の、生理食塩水で事前に準備された数個の注射器の使用を必要とする。これにより、空気中の汚染物質が患者又は患者の血液に潜在的に混入する可能性があり、それによってそのエリアを汚染する可能性がある。
【0026】
したがって、患者に透析を実施するための新たな手段を提供する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0027】
本開示の1つの目的は、間質液を抽出することによって被験体に透析を行う方法であって、熱を発生することなく、被験体の角質層領域へ不可逆的にエレクトロポレーションするステップと、被験体が不可逆的にエレクトロポレーションされている角質層領域又はその付近に負圧を付与するステップであって、不可逆的に皮膚へエレクトロポレーションすることと負圧を付与することとの組み合わせによって角質層にマイクロ導管を形成するステップと、被験体の間質液を抽出するステップと、抽出された被験体の間質液を濾過して、透析液及び清浄な間質液を形成するステップと、を備え、ここで清浄な間質液は、被験体に戻される、方法を提供する。
【0028】
さらに、被験体の腎臓損傷を検出する方法であって、熱を発生することなく、被験体の角質層領域へ不可逆的にエレクトロポレーションすることと、被験体が不可逆的にエレクトロポレーションされている角質層領域又はその付近に負圧を付与することであって、不可逆的に皮膚へエレクトロポレーションすることと負圧を付与することとの組み合わせによって角質層にマイクロ導管を形成することと、被験体の間質液を抽出することと、バイオマーカの量を測定することと、を備え、ここで被験体の間質液中のバイオマーカは、腎臓損傷を示す、方法をさらに提供する。
【0029】
一実施形態において、バイオマーカは、クレアチニン及び尿素のうちの少なくとも1つである。
【0030】
また被験体から非侵襲的に間質液を抽出するための透析システムであって、少なくとも1つの第1の可動又は静止電極と第2の静止電極との間に非パルス電圧及びパルス電圧を生成することによって角質層へ不可逆的にエレクトロポレーションし、角質層にマイクロ導管を形成するための手段と、角質層上に負圧を与えて、間質液を抽出できるようにする真空ポンプと、抽出された間質液を濾過するための少なくとも1つの半透膜と、を備える透析システムも提供する。
【0031】
一実施形態において、抽出された間質液は、半透膜を通して濾過される。
【0032】
別の実施形態において、半透膜は、陽イオン交換膜(CEM)、電荷モザイク膜(CMM)、双極膜(BPM)、陰イオン交換膜(AEM)、アルカリ陰イオン交換膜(AAEM)、又はプロトン交換膜(PEM)である。
【0033】
さらなる実施形態において、分子は、抽出された間質液から除去され、透析液に移動する。
【0034】
さらなる実施形態において、分子は、カリウム又は水又は尿素である。
【0035】
別の実施形態において、被験体に戻される前に、清浄な間質液にはさらに物質が補充される。
【0036】
追加の実施形態において、角質層にエレクトロポレーションするために、少なくとも第1の可動又は静止電極と第2の静止電極との間に非パルス電圧及びパルス電圧が生成される。
【0037】
一実施形態において、負圧は、パルス状又は連続的である。
【0038】
さらなる実施形態において、エレクトロポレーションされている角質層の領域又はその付近に付与される負圧は、圧力センサでモニタリングされる。
【0039】
別の実施形態において、被験体は、動物又はヒトである。
【0040】
一実施形態において、少なくとも1つの第1及び第2の電極は、チャンバ内に含まれる。
【0041】
別の実施形態において、チャンバは、エレクトロポレーションに使用される第1及び第2の電極とは別の部分である。
【0042】
一実施形態において、システムは、10マイクロリットル/秒~200マイクロリットル/秒の間の速度で、間質液を抽出する。
【0043】
一実施形態において、システムは、抽出濾過された間質液を被験体に戻す手段をさらに備える。
【0044】
別の実施形態において、システムは、カテーテル又はマイクロニードルのネットワークを備える。
【0045】
さらなる実施形態において、システムは、バイオマーカ、又は、濾過された間質液、及び、濾過された間質液の被験体への送達速度を分析するための1つ又は複数のセンサをさらに備える。
【0046】
別の実施形態において、1つ又は複数のセンサは、有線又は無線の通信デバイスをさらに備える。
【0047】
一実施形態において、真空ポンプは、蠕動ポンプ、ダイアフラムポンプ、又はピストンポンプである。
【0048】
別の実施形態において、真空ポンプによって生成される負圧は、約2kPa~約98kPaである。
【0049】
追加の実施形態において、ポンプによって生成される真空は、パルス状又は連続的である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
次に、好適な実施形態を例示として示す添付の図面を参照する。
【0051】
図1】一実施形態に係る感知電極上への感知層の堆積前後のインピーダンスセンサの図を示す。
【0052】
図2A】一実施形態に係る、感知電極と参照電極との間の電気的等価回路の概念図を示す。
【0053】
図2B図2Aに示される電気的等価回路に一致して、正弦波振幅が2~60mVの間である代替電圧を感知電極に重畳したときに得られるナイキストプロットが、電気化学セル(インピーダンスセンサ)の静止電圧又は開回路電圧に対応するDC電圧に維持されることを示す。
【0054】
図3】一実施形態に係る、本明細書に記載の抽出チャンバの底部の上面図を示す。
【0055】
図4】一実施形態に係る、抽出チャンバの底部の平面上面図を示す。
【0056】
図5】一実施形態に係る、抽出チャンバの上方部分の上面図を示す。
【0057】
図6】一実施形態に係る、抽出チャンバの上方部分の上面図を示す。
【0058】
図7】一実施形態に係る、本明細書に含まれる電子コントローラボックスと連携した1つの抽出チャンバの組立図を示す。
【0059】
図8】一実施形態に係る、電子コントローラボックスと連携した1つの抽出チャンバの組立図を示す。
【0060】
図9】一実施形態に係る、電子コントローラボックス内部の同一のポンプに直列に接続された3つの抽出チャンバの上面図を示す。
【0061】
添付の図面全体を通して、同様の特徴は同様の参照符号によって特定されていることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本記載によると、間質液を抽出することによって被験体の透析を行う方法であって、熱を発生することなく、被験体の角質層の領域へ不可逆的にエレクトロポレーションするステップと、被験体が不可逆的にエレクトロポレーションされている角質層の領域又はその付近に負圧を付与するステップであって、皮膚へ不可逆的にエレクトロポレーションすることと負圧を付与することとの組み合わせによって角質層にマイクロ導管を形成するステップと、被験体の間質液を抽出するステップと、を備える方法を提供する。
【0063】
被験体の抽出された間質液は、濾過されて、透析液及び清浄な間質液を形成することができ、ここで清浄な間質液が被験体に戻される。
【0064】
また、被験体の腎臓損傷を検出する方法であって、熱を発生することなく、被験体の角質層の領域へ不可逆的にエレクトロポレーションすることと、被験体が不可逆的にエレクトロポレーションされている角質層の領域又はその付近に負圧を付与することであって、皮膚へ不可逆的にエレクトロポレーションすることと負圧を付与することとの組み合わせによって角質層にマイクロ導管を形成することと、被験体の間質液を抽出することと、バイオマーカの量を測定することと、を備え、被験体の間質液中のバイオマーカの存在は、腎臓損傷を示す方法を提供する。
【0065】
一実施形態において、バイオマーカは、クレアチニン及び尿素のうちの少なくとも1つである。
【0066】
人工腎臓システム及びデバイスについて説明する。本明細書に含まれる人工腎臓システム及びデバイスは携帯可能であり、異なる分子、イオン等の回収、又は異なる分子、イオン等の追加のため、血液の代わりに間質液を使用する。本明細書に記載の人工腎臓システム及びデバイスは、周期的な血液透析の代わりに、間質液の透析を連続的に使用する。
【0067】
本明細書中に開示されるのは、角質層を通して数百の求電子性導管を不可逆的に作成する方法である。これらの開口は永続的で不可逆的であり、持続期間が間質液の抽出期間によってのみ限定される。あるいは、角質層を通るこれらの開口又は導管は、制御された真空の対象となる。
【0068】
本明細書中に開示されるのは、角質層を通して1つ以上の求電子性導管を作成する方法である。これらの開口は永続的であり、持続期間が治療期間によってのみ限定される。
【0069】
参照によりその全体を本明細書中に援用する、カナダ特許第2655017号に記載されたデバイス及び方法を使用して、表皮のみを通して1つ又は複数の開口又は導管を不可逆的に形成することができる。このように形成された導管は、さらなる処理のために間質液を抽出する手段を形成するであろう。このプロセス中に熱は発生しない。
【0070】
本明細書に含まれる「不可逆的に」という用語は、表皮を通して形成された実際の導管を説明することを意図している。これらの導管は、開口が配置される皮膚の部分上に真空が維持されている場合に持続する。これらの導管には、直径や深さ等の実際の物理的寸法がある。これらは不可逆的である。
【0071】
本明細書に記載の方法が適用されるときに形成される開口又は導管は、本明細書に記載の、短い制御された不可逆エレクトロポレーションの後に形成される表皮を通るマイクロホールを意味することが意図されている。不可逆エレクトロポレーションは、生きている被験体の皮膚に適用されたときに、角質層を通るマイクロホールの不可逆的な形成に繋がるプロセスである。形成されたマイクロホールは、必要とされる限り持続する。
【0072】
より具体的には、本明細書に含まれるデバイスは、非パルス電圧及びパルス電圧を生成することによって皮膚にエレクトロポレーションするための手段と、電子的に制御されたセンサと、を備える。例えば、得られた情報をさらに拡散するために、情報を変換し、この情報をアラーム又は携帯電話に送信するために、センサから得られた信号を分析することもまた電子的に制御される。皮膚領域への、本明細書に記載の不可逆的なエレクトロポレーションは、分子及びコラーゲンを変性させないように、接続組織を保護するために熱を発生することなく行われ、細胞足場への損傷をなくし、血管マトリクスを損なわないため、結果として治療エリアと非治療エリアとが明確に辺縁化される。
【0073】
カナダ特許第2655017号に記載されるように、例えばエレクトロポレーション及び感知ステップ中に使用されるチャンバは、電極、より具体的には、参照電極、感知電極、及び対電極を備える。接続パッドを使用して、電極をデバイスの電子部品に接続することができる。
【0074】
一実施形態において、本明細書で使用されるデバイスは、図1に示されるような感知電極を備えることができる。電極は、望ましくない生体材料の安定剤及び遮断剤と、炭素電極(感知電極)の表面上のXC-72R等の電子導体のアミノシラン及びナノ粒子等の接着促進剤とを含むことができる。センサ電極は、対電極の有無にかかわらず使用可能である。
【0075】
本明細書では、2~60mVの間の正弦波振幅を有する代替電圧の単一周波数が、電気化学セル(インピーダンスセンサ)の静止電圧又は開回路電圧に対応するDC電圧に維持された感知電極に重畳されたときに、生成される電気的パラメータの測定について説明する。このような電気的パラメータには、インピーダンスの値の変動(ナイキストプロットから:図2a及び図2b)、又は界面感知電極/間質液での位相角/位相シフト(ボードプロットから)が含まれ得る。
【0076】
本明細書に記載の電気素子(図2Aを参照)は、純粋なオーム抵抗である参照電極と感知電極(R)との間の電解質の抵抗と、二重層静電容量(Cdl)と、オーム抵抗でない電荷移動抵抗(R)と、Warburg拡散要素(Zω)とを有する。Zωは、定位相要素(CPE)であり、定位相(周波数に依存しない位相)が45°で、大きさが周波数の平方根に反比例する。
【0077】
2~60mVの正弦波振幅を有する交流電圧が感知電極に重畳され、図2Aに示される電気的等価回路に一致する電気化学電池(インピーダンスセンサ)の静止電圧又は開放電圧に相当するDC電圧で維持された場合に得られるナイキストプロットが、図2Bに示される。このプロットは、正弦波電圧の周波数ωを1mHz~100KHzで変化させたときに得られる。X軸はインピーダンスの実数値(Real(Z))で表され、Y軸はインピーダンスの虚数値の負のモジュール(-Im(Z))で表され、ここでZはインピーダンスである。図2Bのプロットでは、オーム抵抗Rで表される3つの異なるドメイン、すなわちCdlで表現される少なくとも1つの時間定数によって界面抽出間質液及び感知電極において、システムが電荷移動抵抗Rctによって制御されるドメインがある。本開示において、Rctの値は、例えばCovid-19の濃度又はその存在の増加とともに大きくなる。
【0078】
皮膚のエレクトロポレーションは、印加電圧の振幅、印加電圧及び電極の形状、印加信号の周波数、印加電流の強度、及び印加信号の持続時間の影響を受ける。印加電圧の振幅はボルトで表され、上述の変数に応じて5V~500Vまで変動する可能性があり、正極と負極の間の距離が1~10cmの間である場合、その距離に依存しない。印加電圧の周期は50pS~7000pSまで変動し得る。信号の形状はスクエアであることが好ましいが、他の種類の信号を使用することもできる。上述の変数によると、推奨される持続時間は3分未満であるが、推奨値を超える又は推奨値を下回る持続時間も排除されない。
【0079】
ここで、不可逆エレクトロポレーションは、マイクロ秒の電気パルスが生きている組織又は生きていない組織に適用される事象であり、組織は、生存被験体のエピデミーに例えられ、細胞膜全体の電位を不安定にし、結果として不可逆的なナノスケール/マイクロスケールの微細孔を生じる。したがって、望ましくないジュール効果又は熱の発生を回避するために、組織の残りの部分に熱損傷を誘発することなく、細胞膜が選択的に標的とされるように電気的パラメータが選択される。これらのパラメータは、以下の表1に示されている。
【表1】
【0080】
本明細書に記載の不可逆エレクトロポレーションは、その非加熱性のため、結合組織に影響を与えず、分子及びコラーゲンを変性させず、細胞足場への損傷を除去し、血管マトリクスを損なうことはなく、不可逆エレクトロポレーションにより結果として治療エリアと非治療エリアとが明確に辺縁化される。エレクトロポレーションプロセス中の熱の発生は、痛みの感覚、エレクトロポレーションされる表面エリア内部及びこの表面エリア周辺の組織破壊等の多くの悪影響を及ぼす。
【0081】
本明細書に含まれるデバイスの抽出チャンバの実施形態が、この方法の典型的な用途を示す図3から図9に示されており、抽出された経皮液の時々又は連続的サンプリング、あるいは本明細書に含まれるその簡単な連続抽出に使用されるように設計されている。サンプリング方法は、手動又は自動とすることができる。このデバイスは、接着剤又は他の任意の適切な封止製品、又は維持方法26を使用して、表皮を通して皮膚と接触して維持される絶縁体(図3の5、5’、2、及び3を参照のこと)を備える。
【0082】
抽出チャンバは、ねじ19を受け入れるための少なくとも1つの穴1を備え、抽出チャンバの本体3は穴4を備えたポリマー本体2でできており、負の固体電極は皮膚と接触するように穴4を通過する。50~200μmの薄層膜5を使用して、皮膚を所定の位置に保ち、皮膚の吸引を回避する。2~5mmのさらに厚い膜5’を使用して、異なる抽出ミニチャンバを分離する。
【0083】
図5に見られるように、抽出チャンバの上方部分において、ポリマーを使用して、ねじ19を受け入れる穴の受容端10を含む抽出チャンバの上方部分11を作製する。抽出チャンバ12の出口は、ポンプの入口に接続される。収集マイクロ導管13は、マイクロ導管15から抽出された天然間質液を収集する機能を果たし、また、圧力センサ16を収容する機能も果たす。抽出チャンバの底部と上方部分との間の接続は、プラットフォーム14によって行われる。
【0084】
抽出チャンバ21は、ポリマー材料、ポリマー材料の組み合わせ、もしくは非導電性又は絶縁性である他の任意の材料から完全に作製することができる。
【0085】
図6に見られるように、ケープ18は圧力センサを保護するために使用され、ここでねじ19は底部を抽出チャンバの上方部分20に固定する。
【0086】
デバイスは、特に液体が抽出チャンバ21を取り囲むことができる状況において、その使用を容易にするために、カプセル又は接着剤等の材料で覆うことができる。抽出チャンバ21は、収集された新たに抽出された流体をデバイスからリモートで分析可能となるように封止穴を備えることができる。さらに、本明細書に記載されるように抽出チャンバ21の固定を増強するために、ストラップ等の非アレルギー性材料を使用してデバイスと皮膚との間の接触を安定させることができる。
【0087】
図7は、一実施形態に係る、電子コントローラボックス23と連携した1つの抽出チャンバ21の組立図を示す。抽出チャンバ21は、電気ケーブル22が圧力センサを電子コントローラボックス23に接続することによって内部にポンプを囲んで含む電子コントローラボックス23に接続され、ポンプの出口24及び入口25が電子コントローラボックス23に入る。
【0088】
抽出チャンバ21を皮膚に適用する前に、その皮膚を浄化するために医学分野で使用される既知の化学物質によって、又は単に石鹸及び/又は水を使用して、皮膚を優しく浄化することができる。好ましくは、皮膚の表面にいずれの残留物も残さないように浄化後に蒸発する任意の化学物質が使用される。さらに、化学物質又は石鹸は、皮膚にいずれのアレルギー反応も誘発せず、皮膚の構造を変性させてはならない。さらに、場合によっては、ヨードポビドンとしても既知のポビドンヨード(PVP-I)の使用は、エレクトロポレーション及び抽出チャンバ21の設置前、及び天然間質液の抽出終了後に、皮膚の消毒のために使用されなければならない。皮膚が優しく浄化されるか、又は好ましくは消毒されるとすぐに、接着剤26又はストラップ又はブレスレット等の非アレルギー性材料の助けによって抽出チャンバ21が浄化又は消毒された皮膚上に取り付けられる(図7)。接着剤26は、導電性接着剤に基づくものであってもよく、そうでなくてもよい。
【0089】
一実施形態において、ポンプ導管は、少なくとも1つのミニサンプリングチャンバ及び完全な抽出チャンバ21と接触することができ、選択されたサンプリングデバイスは、抽出された経皮液のサンプルを収集できなければならない。収集は、例えば、封止されたサンプリングチャンバ21の天然間質液の連続抽出を可能にするマイクロ導管を介して実施することができる。サンプリングチャンバ、ポンプ導管、及び抽出チャンバ21は、例えば、逆止弁又は一方向弁によってポンプから隔離されてもされなくてもよく、分析済みの流体と分析される新たに抽出された流体との間に不連続性を生じる。逆止弁は、分析済みの流体と新たに抽出された流体との間の不連続性を発生又はその達成を助ける任意の手段とすることができ、このような逆止弁は、蠕動ポンプの場合、ポンプ自体であり得る。抽出は、いわゆる抽出チャンバ21、抽出又はポンプ導管とサンプリングチャンバを備える導管システムに付与される制御された負圧の適用によって連続的に実行される。制御された負圧は、ポンプの動作によって維持され、負圧のレベルは、逆止弁の前後に配置可能な圧力センサ又は圧力スイッチを使用して連続的にモニタリング及び制御される。
【0090】
負圧は、オン/オフ方式又は連続的に調整された方式でポンプを作動させることによって達成される。負圧の実際の値は、圧力センサ又は圧力スイッチを使用して制御できる。ポンプと圧力センサは、圧力センサ又は圧力スイッチの実際のステータスを読み取ることからデバイス内の実際の圧力を連続的又は非連続的にモニタリングし、これに応じて所望の負圧を達成するために、連続的、非連続的、又は調整した方式でポンプの動作をアクティブ又は非アクティブにするマイクロコントローラの制御下とすることができる。デバイスの効率を向上させ、必要に応じて1つ又は複数のバイオセンサの読み取りを補正するために、温度センサを組み込むこともできる。さらに、例えば、抽出プロセスが順調であることをユーザに通知するために、抽出チャンバ21の出口とポンプとの間に流動センサを設置することができる。
【0091】
接着、経皮液の連続抽出、抽出された流体の循環、ひいては抽出された天然間質液中の1つの分析物又は複数の分析物の連続モニタリング、又は単に天然間質液の収集を改善するために、皮膚とポンプとの間のチャンバ21内に真空が生成される。好ましくは、真空ポンプは、間質液のサンプルが抽出される領域の皮膚の部分を伸張させるのに十分な吸引力を与える真空を提供することができる。真空ポンプによって提供される吸引が皮膚の適切な部分を伸張させるため、真空ポンプによって提供される吸引はまた、伸張された部分を間質液で満たすようにもする。本明細書で定義されるデバイスに適した真空ポンプは、蠕動ポンプ、ダイアフラムポンプ、ピストンポンプ、ロータリーベーンポンプ、又は前述の必要な機能を実行する他の任意のポンプとすることができる。通常、真空ポンプは、自己完結型の永久磁石DCモータを採用することが好ましい。本発明に適した真空ポンプは、当業者に周知であり市販されている。真空ポンプは、好ましくは、約0.90気圧までの差圧を提供することができ、より好ましくは、約0.99気圧から0.2気圧で動作する。真空ポンプによって提供される真空は、連続的又はパルス状とすることができる。付与された真空が皮膚に不可逆的な損傷を引き起こさないことが好ましい。付与された真空は、数週間持続する皮膚の打撲傷及び変色を生じさせないことが好ましい。また、付与される真空のレベル及び真空の付与の持続時間は、真皮が表皮から分離し、その結果、流体で満たされた水疱が形成されるほど過度にならないことが好ましい。
【0092】
皮膚の不可逆エレクトロポレーションは、2つの電極又は電極のネットワークを形成する複数の電極の間にパルス電圧を印加することによって実行される。本明細書の技術の例示として、プロセスの励起部分は、接着剤としても使用される負極及び正極である、皮膚の露出部分と接触して配置された少なくとも2つの電極を使用して実行される。励起電極のうちの一方(負極又はエレクトロポレーション電極)は、非加熱不可逆エレクトロポレーションの間、皮膚の露出部分との接触を維持する。
【0093】
ここでの不可逆エレクトロポレーションの目標となる結果は、表皮の効果的且つ非侵襲的な電気透過化であり、痛みを伴うことなく吸引が適用されている限り、連続的な経皮液抽出を可能にして、必要な限り永続的なマイクロ開口を得ることができるようにする。本明細書において、経皮液は天然間質液である。本明細書において、連続的な流体抽出は、表皮の開口を含む、皮膚を通って抽出チャンバ21への間質液の連続動を指すことが意図される。
【0094】
本明細書に記載のシステム又はデバイスは、様々なサイズの穴又は微細孔を含む材料の薄層からなる半透膜をさらに備える。より小さな溶質と流体は膜を通過するが、この膜はより大きな物質(例えば、大きなタンパク質等、大きな分子)の通過をブロックする。これによって血液が腎臓に入り、より大きな物質が糸球体のより小さな物質から分離されるときに、腎臓で行われる濾過プロセスを複製するものである。
【0095】
連続的に抽出された間質液と透析液との間の膜を通る交換は、浸透と逆浸透という2つの異なる物理現象に依存する。
【0096】
浸透は、濃度勾配に従って、半透膜を通る、連続的に抽出された間質液と透析液との間の分子交換を調節する。したがって、特定の物質は、最も濃度の高いコンパートメント(連続的に抽出された流体)から、より濃度の低いコンパートメント(透析液及びその逆)に移動して、膜のいずれかの側の濃度のバランスをとる傾向を持つことができる。交換の速度は、濃度の違いだけでなく、膜の微細孔サイズ、物質と膜の電荷、交換される物質のアロステリックサイズ等の他の要因にも依存する。
【0097】
さらに、ここで説明されるのは、連続的に抽出された間質液から透析液への膜貫通圧力勾配によって水を変位させなければならない逆浸透の使用である。
【0098】
したがって、本明細書に記載の通り、水は圧力が最も高い側から圧力が最も低い側に向かって通過する。水交換に影響を与える要因は、圧力と膜の水力係数(やり方によっては、その透過性)である。
【0099】
本明細書中に記載されるのは、連続的に抽出された間質液の透析中の浸透圧と逆浸透との組み合わせである。この組み合わせは、連続的に抽出された間質液から、例えば、食物、特に、野菜、果物によって提供されるカリウム、又はタンパク質代謝によって生成される尿素など、いくつかの物質の除去につながると同時に、多くの場合不十分であるカルシウムや、血液と間質液の酸性化を補う重炭酸塩等、連続的に抽出された間質液に不足している物質を追加する。さらに、身体内に溜まった水分を取り除くことができる(特に被験体が無尿の場合)。
【0100】
一実施形態において、半透膜は、陽イオン交換膜(CEM)、電荷モザイク膜(CMM)、双極膜(BPM)、陰イオン交換膜(AEM)、アルカリ陰イオン交換膜(AAEM)、及びプロトン交換膜(PEM)である。
【0101】
肝不全で直面する重大な問題は、肝不全によってもはや除去されない毒素の蓄積である。この仮説に基づくと、ビリルビン、胆汁酸、芳香族アミノ酸代謝物、中鎖脂肪酸、サイトカイン等、アルブミン結合親油性物質の除去は、肝機能障害のある患者の改善に有益となるはずである。これは人工フィルタ及び吸着デバイスの生産につながる。
【0102】
したがって、連続的に抽出された間質液の透析のための手段を提供する。本明細書中に記載されるのは、抽出された間質液中に存在するいくつかの分子の拡散と、半透膜を越える流体の限外濾過との原理に基づいた、連続的に抽出された間質液の透析である。ここで、抽出された間質液中に存在するいくつかの分子の拡散が、高濃度のエリアから低濃度のエリアに移動することが含まれる。
【0103】
一実施形態において、低濃度の溶液が透析液を構成する。
【0104】
本明細書において提供されるシステムは、好ましくは、10マイクロリットル/秒~200マイクロリットル/秒の間である速度で、間質液を連続抽出するものである。
【0105】
一実施形態において、本明細書に記載のシステムは、ユーザが快適に維持されるなら、身体の任意の部分に配置可能な、間質液を連続的に抽出するためのものである。
【0106】
このシステムは、快適に維持することを意図されたものであり、1週間を超える期間、同じ位置に維持され、6か月に達することもできる。
【0107】
さらなる実施形態において、連続的に抽出された流体の透析による生成物は、例えば、身体内のどこにでも、好ましくは身体の腹膜部分又は間質腔に配置され得るカテーテル又はマイクロニードルのネットワークを使用することによって身体に戻すことができる。
【0108】
本明細書に記載のシステムは、身体内に注入する前に、連続的に抽出された間質液の透析による生成物の品質をモニタリングするための手段を備えることも含まれる。
【0109】
腎臓損傷は、血中の2つの重要な化学物質であるクレアチニンと尿素の増加によって特徴づけられる。一般的に、腎不全患者の血清中の尿素蓄積は、食物や筋肉等の組織の分解によって増加する。血中の尿素が高レベルであると、健康な腎臓又は血液透析によって正常値まで除去されない場合、身体の疾病に繋がる。実施例1に見られるように、血液透析前後の尿素の値は正常値に戻らずその値は非常に高いままであり、最悪の場合、血液透析前後の間質液においてより高くなる。尿素及びクレアチニンの生成及び損傷の部位が間質腔であることは周知である。ゆえに、本明細書に記載の方法は、腎不全に起因して最も損傷を与える分子が見出される場所で、間質液の連続透析を行う手段を提供する。本明細書に開示される間質液の連続透析は、腎不全のために体内に蓄積された分子の大部分の値を恒常値に非常に近く維持するであろう。
実施例1
血液透析前後のボランティアの間質液及び血液中の分析物の分析
【0110】
ボランティアには、比較の目的で、同一のボランティアの両腕に接着剤で表面積が特定されており、両方の表面積は寸法的に等しいものとなっている。接着剤によって区切られた表面のうちの一方には、本明細書に記載の方法に従って、不可逆的にエレクトロポレーションした。
【0111】
エレクトロポレーション中、エレクトロポレーションされた空間にマイクロサーミスタを挿入した。この空間は、周囲の大気からそれを隔離するマイクロチャンバによって区切られている。マイクロサーミスタを使用する目的は、熱が発生した場合の不可逆エレクトロポレーション中の温度を測定することであった。
【0112】
エレクトロポレーション前、エレクトロポレーション中、及びエレクトロポレーション後の温度は同一のままであり、初期値の30℃から変化しなかった。
【0113】
以下の表1は、血液透析前後のボランティアの間質液及び血液中で測定された分析物を示す。ボランティアは、数年間、血液の透析を行っている。さらに、ボランティアは3日ごとに血液透析を行う。表1の結果は、本明細書に記載のプロセスによるクレアチニン及び尿素の効率的な測定を実証している。
【表1】
【0114】
表2は、健康な人のいくつかのバイオマーカの値を示す。表1及び2から分かるように、本方法は、腎不全及び血液透析の有効性を査定するためのキーとなるバイオマーカの濃度を測定するための効果的な手段を提供する。表2に示される値は、3日間の研究の一環としてボランティアの研究被験体から得られた。ボランティアは、間質液の抽出を開始する前に激しい身体活動を行った。ボランティアの血液は、間質液の抽出後、3週間で得た。
【表2】
【0115】
特定の実施形態に関連して本開示を説明したが、さらなる修正が可能であり、本出願は、本分野における既知又は慣習的な実践の範囲内に現れるものとして、且つ以上に記載の必須の特徴に適用され得るものとして、且つ添付のクレームの範囲内にあるものとして、本開示から出発したものを含む、あらゆる変形、使用、又は適合を網羅することが意図されることが理解されるであろう。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】