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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(54)【発明の名称】容易に調整可能な発光分光分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/73 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
G01N21/73
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524951
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2020080992
(87)【国際公開番号】W WO2021089639
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】19207192.6
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522168534
【氏名又は名称】ヒタチ ハイ-テク アナリティカル サイエンス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペータース,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ,ライナー
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043EA10
2G043EA11
2G043JA04
2G043KA01
2G043KA02
2G043KA03
2G043LA03
(57)【要約】
本発明は、容易に調整可能である発光分光分析装置(1)、および試料材料から発光プラズマを確立するためのプラズマスタンド(2)と、試料材料に特徴的なプラズマによって放射された光(L)のスペクトルを測定するための光学系(3)と、を備えるそのような分光分析装置(1)を設定および動作させるための方法(100)に関し、光学系(3)は、少なくとも1つの光入射開口(31)と、プラズマ(A)から到来する光(L)を分割するための少なくとも1つの回折格子(32)と、光(L)のスペクトルを測定するための1つ以上の検出器(33)とを備え、プラズマスタンド(2)および光学系(3)は、互いに直接且つ固定的に接続されたプラズマスタンドフランジ(2B)および光学系フランジ(3B)にそれぞれ直接且つ固定的に取り付けられ、発光分光分析装置(1)は、測定されたスペクトルを分析し、光学系(3)の熱膨張を考慮してプラズマスタンド(2)から光学系(3)に伝達された熱によって潜在的に引き起こされる検出器(33)に対するスペクトルのドリフトを補償するように適合された分析ユニット(34)をさらに備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料材料から発光プラズマを確立するためのプラズマスタンド(2)と、前記試料材料に特徴的な前記プラズマによって放射された光(L)のスペクトルを測定するための光学系(3)と、を備える発光分光分析装置(1)であって、前記光学系(3)は、少なくとも1つの光入射開口(31)と、前記プラズマ(A)から到来する前記光(L)をスペクトルに回折するための少なくとも1つの回折格子(32)と、前記光(L)の前記スペクトルを測定するための1つ以上の検出器(33)と、を備え、前記プラズマスタンド(2)および前記光学系(3)は、互いに直接且つ固定的に接続されたプラズマスタンドフランジ(2B)および光学系フランジ(3B)にそれぞれ直接且つ固定的に取り付けられ、前記発光分光分析装置(1)は、前記測定されたスペクトルを分析し、前記光学系(3)の熱膨張を考慮して前記プラズマスタンド(2)から前記光学系(3)に伝達された熱によって潜在的に引き起こされる前記検出器(33)に対する前記スペクトルのドリフトを補償するように適合された分析ユニット(34)をさらに備える、発光分光分析装置(1)。
【請求項2】
前記プラズマスタンドフランジ(2B)および前記光学系フランジ(3B)は、双方のフランジ(2B、3B)を一体に接続するための調整不可能な取り付け手段(5)を備える、
ことを特徴とする、
請求項1に記載の発光分光分析装置(1)。
【請求項3】
少なくとも光学系ベースプレートと、入射スリット(31)と検出器(33)との間の前記光路内の光学部品(32)は、同じ材料から作製されている、
ことを特徴とする、
請求項1または2に記載の発光分光分析装置(1)。
【請求項4】
少なくとも前記光学系フランジ(3B)は、金属、好ましくは軽金属から作製される、
ことを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の発光分光分析装置(1)。
【請求項5】
前記プラズマスタンドフランジ(2B)は、電気絶縁材料から作製される、
ことを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の発光分光分析装置(1)。
【請求項6】
前記電気絶縁材料は、サンドイッチ材料、または熱的に安定なプラスチックもしくはセラミック材料である、
ことを特徴とする、
請求項5に記載の発光分光分析装置(1)。
【請求項7】
前記プラズマスタンドフランジ(2B)と光学系フランジ(3B)との間の接続は、双方のフランジ(2B、3B)間の位置ずれを防止するための剛性の歯付き接続として実行される、
ことを特徴とする、
請求項1から6のいずれか一項に記載の発光分光分析装置(1)。
【請求項8】
前記プラズマスタンド(21)は、前記光学系(3)または前記プラズマスタンド(2)に固定的に接続され、前記プラズマの少なくとも高温部分をマスクするために前記プラズマスタンド(2)と前記光学系(3)との間の前記光路内に適切に配置された光学マスクを備える、
ことを特徴とする、
請求項1から7のいずれか一項に記載の発光分光分析装置(1)。
【請求項9】
前記プラズマスタンド(2)は、前記試料材料の前記アーク/スパークプラズマを発生させるために2つの電極(22、23)間に放電(A)を確立するためのスパークスタンド(2)であり、前記電極のうちの1つは、前記アーク/スパーク(A)において蒸発される前記試料材料(23)から作製され、前記アーク/スパーク(AS)の軸は、前記入射開口(31)に対して垂直に配置される、
ことを特徴とする、
請求項1から8のいずれか一項に記載の発光分光分析装置(1)。
【請求項10】
前記プラズマスタンド(2)は、前記試料材料の前記アーク/スパークプラズマを発生させるために2つの電極(22、23)間に放電(A)を確立するためのスパークスタンド(2)であり、前記電極のうちの1つは、前記アーク/スパーク(A)において蒸発される前記試料材料(23)から作製され、前記アーク/スパーク(AS)の軸は、前記入射開口(31)と平行に配置される、
ことを特徴とする、
請求項1から8のいずれか1項に記載の発光分光分析装置(1)。
【請求項11】
前記プラズマスタンド(2)は、レーザ(LA)がターゲット材料としての前記試料材料(24)に集束されて前記プラズマを発生させるレーザ誘起破壊分光法(LIBS)スタンド(2)である、
ことを特徴とする、
請求項1から10のいずれか一項に記載の発光分光分析装置(1)。
【請求項12】
前記発光分光分析装置(1)は、モバイル装置である、
ことを特徴とする、
請求項1から11のいずれか一項に記載の発光分光分析装置(1)。
【請求項13】
プラズマスタンドフランジ(2B)上に直接且つ固定的に取り付けられたプラズマスタンドと、いくつかの光学部品を備える光学系フランジ(3B)上に直接且つ固定的に取り付けられた光学系と、を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の発光分光分析装置(1)を設定および動作させる方法(100)であって、
-前記プラズマスタンドフランジ(2B)および前記光学系フランジ(3B)を互いに直接且つ固定的に接続するステップ(110)と、
-試料材料から発光プラズマを確立するステップ(120)と、
-少なくとも1つの入射開口(31)および少なくとも1つの回折格子(32)を備える光学系を使用して、前記試料材料に特徴的な前記プラズマによって放射された光のスペクトルを生成するステップと、
-1つ以上の検出器(33)によって前記スペクトルを測定するステップ(130)と、
-前記測定されたスペクトルを分析し、分析ユニット(34)による前記光学系(3)の熱膨張を考慮して前記プラズマスタンド(2)から前記光学系(3)に伝達される熱によって潜在的に引き起こされる前記検出器(33)に対する前記スペクトルのドリフトを補償するステップ(140)と、を含む、方法。
【請求項14】
前記スパーク/アークの軸に対する前記入射開口の向きに応じて、前記プラズマスタンド(2)と光学系(3)との間の光路内に配置され且つ前記光学系(3)または前記プラズマスタンド(2)に固定的に接続されるのに適した光学マスク(21)によって前記プラズマの少なくとも高温部分をマスキングするステップ(150)をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容易に調整可能な発光分光分析装置、およびそのような分光分析装置を設定および動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク/スパークまたはLIBS発光分光分析装置(OES)は、化学分析のための装置であり、化学物質の発光スペクトルを表示および測定するために使用される。LIBSでは、試料材料が蒸発し、レーザによって励起される。アーク/スパークでは、蒸発および励起のためのエネルギーは、電極と対電極として動作する材料試料との間の電気アークまたは一連のスパークによって提供される。いずれの場合も、試料材料(の一部)からプラズマが発生される。プラズマによって放出される光は、OESの光学系に伝達され、そこで個々のスペクトル成分に分解される。試料に含まれる各化学元素は、いくつかの特徴的な波長(スペクトル線)で発光するため、同定されることができる。このようにして測定されたスペクトル線の光強度は、試料中の関連元素の濃度に対応する。
【0003】
いくつかの理由により、特に周囲空気からプラズマを保護するために、励起は、通常、アルゴンパージされたいわゆるスパークスタンドまたはプラズマスタンドで行われる。プラズマから光学系への光路は、光ファイバを含むことができる。
【0004】
しかしながら、185nmよりも短い波長は、光ファイバおよび周囲空気によって吸収されるため、光ファイバのないアルゴンパージ光路が必要とされる。そのような光路は、仮にあったとしても光学窓、レンズ、ミラーなどのみを含み、「直視」と呼ばれる。プラズマの適切な直視を保証するために、光学系およびプラズマスタンドは、互いに正確にアライメントされる必要がある。
【0005】
しかしながら、試料に印加されるエネルギーは、プラズマスタンド内で一定量の熱を発生させる。熱がプラズマスタンドから光学系に伝達されると、その望ましくない熱膨張が分解能および性能の損失を引き起こす可能性がある。したがって、光学系とプラズマスタンドとの間に何らかの断熱を実装すること、例えば、何らかの種類の隙間を設けること、またはナイロンのような断熱材料を間に配置することは、最新技術である。プラズマスタンドと光学系との間の断熱はまた、プラズマスタンドと光学系との間の電気的絶縁を提供して、光学系への電気的フラッシュオーバーを防止することができる。
【0006】
機械的接続は、剛性のものではなく、代わりに、プラズマスタンドおよび光学系は、互いに適切なアライメントを得るために個別に調整可能な別個のユニットとして(多かれ少なかれ)設計される。この種の設計は、双方のユニットの複雑で重要な調整プロセスをもたらす。ユニットの調整は、OESの良好な光学的分解能を達成するために慎重に行われなければならない。真空紫外(VUV)波長の観察のために真空またはガス充填光学チャンバを使用することはまた、光学系およびプラズマスタンドへのアクセスをより困難にし、調整をさらに複雑にする。
【0007】
最新技術に係る発光分光分析装置(OES)には、以下のアライメント手順が適用されるべきである:(a)例えばハウジング前面に垂直なプラズマスタンドプレートによる機器ハウジングに対する自由に調整可能なプラズマスタンドとしてのプラズマスタンドの位置および配向のアライメント、(b)光学系とプラズマスタンドとの間に気密な機械的接続を提供する機器ハウジング内の光学または真空チャンバのアライメント、(c)治具またはレーザポインタまたはビーム経路に沿ったいくつかの位置におけるプラズマの画像を使用したプラズマスタンドに対する光学/真空チャンバ内の光学系のアライメント、および(d)プラズマの高温部分から到来するイオン化線の寄与なしにプラズマのより低温部分における原子スペクトル線のみを観察することができるようにするために、光学系に対してプラズマのいくつかの(高温)部分を遮蔽するためのプラズマスタンド内の切り替え可能または可変マスクのアライメント。調整ステップ(a)~(c)は、一般に視覚的に行われるため、各ステップの精度は、せいぜい約±0.1mmである。ステップ(d)のマスキングは、一般に、スペクトル線信号、例えばFe 187,6nmの強度を使用して調整される。プラズマがマスクなしで完全に見えると仮定すると、マスクは、スペクトル線の初期強度の25%の強度を提供するように調整される。この手順は、プラズマの高温部分のマスキングをもたらす。一部のプラズマスタンドは、プラズマスタンドと光学系との間の適切なアライメントが特に重要になる永久マスキングを使用する。他のシステムでは、マスクは、試料の基材(マトリックス)に応じてマスキングを最適化するために、例えばステッピングモータによって切り替え可能または調整可能とすることができる。プラズマスタンドに対する光学系の適切なマスキングおよびアライメントは、問題のスペクトル線がマスキングに敏感である場合、測定の良好な再現性および検出の良好な限界を保証するものとする。
【0008】
したがって、調整労力が最小限でありながら非常に良好な分解能をさらに提供する利用可能な発光分光分析装置を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、最小限の調整労力を有し、非常に良好な光学的分解能も提供する発光分光分析装置を提供することである。
【0010】
この目的は、試料材料から発光プラズマを発生させるためのプラズマスタンドと、試料材料に特徴的なプラズマによって放射された光のスペクトルを測定するための光学系とを備える発光分光分析装置であって、光学系は、少なくとも1つの光入射開口と、プラズマから到来する光をスペクトルに分割するための少なくとも1つの回折格子と、出射開口とPMT検出器との組み合わせまたはスペクトルを測定するためのCCDもしくはCMOSラインもしくはエリアセンサなどの空間分解固体検出器のいずれかから構成される検出器セットアップと、を備え、プラズマスタンドおよび光学系は、互いに直接且つ固定的に接続されたプラズマスタンドフランジおよび光学系フランジにそれぞれ直接且つ固定的に取り付けられ、発光分光分析装置は、測定されたスペクトルを分析し、光学系の熱膨張を考慮してプラズマスタンドから光学系に伝達される熱によって引き起こされる検出器に対するスペクトルのドリフトを補償するように適合された分析ユニットをさらに備える、発光分光分析装置によって解決される。
【0011】
プラズマは、2つの対向する電極間で点火された放電によって提供されることができ、電極のうちの1つは、分析される試料材料である。スパークまたはアーク原子発光分光法は、固体試料中の金属元素の分析に使用される。電気アークまたはスパークが試料を通過し、試料を高温に加熱して試料内の原子を蒸発させて励起する。励起された試料原子は、回折格子によって分散され且つ定量的に検出されることができる特徴的な波長の光を放射する。定量的スパーク分析は、鋳物および金属鋳造設備における生産品質管理に使用されることができる。
【0012】
あるいは、プラズマは、高エネルギーレーザパルスを励起源として使用する原子発光分光法の一種であるレーザ誘起破壊分光法(LIBS)によって提供されることができる。レーザは、試料材料を霧化して励起することによってプラズマを形成するように集束される。プラズマの形成は、集束レーザが一般に環境およびターゲット材料に依存する光学的破壊の特定の閾値を達成したときにのみ開始する。LIBSは、発光分光分析を利用し、この程度までアーク/スパーク発光分光分析に非常に類似している。
【0013】
測定される輝線は、赤外スペクトルから紫外スペクトルまで様々であってもよい。周囲空気は、より短い波長を吸収する185nmのカットオフ波長を有する。より短い波長が検出されるべきである場合、プラズマスタンドから光学系内の検出器までの光路に沿った望ましくない吸収を回避するために、発光分光分析装置は、例えばアルゴン雰囲気中など、周囲空気なしで動作されなければならない。
【0014】
一般的な分光分析装置の性能、特にスペクトル分解能は、光学分光分析装置の設定および調整、適用される光学部品、それらの配置、ならびにこれらの構成要素およびベースプレートに使用される材料に依存する。本発明は、光学系とプラズマスタンドとの直接且つ固定的な接続が、いかなる手動の位置ずれも排除して互いに対する双方の構成要素の定義された一定の調整を提供することから、最適でない調整による性能のいかなる低下も回避する。
【0015】
プラズマスタンドと光学系との間の直接且つ固定的な接続は、プラズマスタンドから光学系への熱伝達をもたらし、光学系の温度上昇および結果として生じる熱膨張をもたらす。熱膨張は、検出器に対する輝線の熱ドリフトをもたらす。光学系のウォームアップは、比較的遅いプロセスであるため、発生する輝線のドリフトは、ソフトウェアを実行するプロセッサと、測定データを記憶するデータ記憶装置とを備える分析ユニットにインストールされて実行される分析ソフトウェアによって連続的に補償されることができる。分析ユニットおよび光学系に直接且つ固定的に接続されたプラズマスタンドによるドリフト補償は、使用中のアライメント誤差およびアライメントドリフトを回避し、双方とも良好なスペクトル分解能および経時的な堅牢な性能をもたらす。さらにまた、重要で時間のかかるアライメント手順を回避することは、複雑で故障に敏感なアライメント手順を有する最新技術に係る装置と比較して、さらに良好なスペクトル分解能を有する本発明に係る発光分光分析装置のより迅速且つ容易な使用を可能にする。
【0016】
したがって、本発明に係る発光分光分析装置は、最小限の調整労力を有し、非常に良好な分解能も提供する発光分光分析装置を提供する。
【0017】
別の実施形態では、プラズマスタンドフランジおよび光学系フランジは、双方のフランジを一体に接続するための調整不可能な取り付け手段を備える。これらの取り付け手段は、プラズマスタンドフランジと光学系フランジとの互いに対する容易で単純な(自己)アライメントを保証する。さらに、フランジの互いに対する位置および距離は、取り付け手段によって固定される。この実施形態において使用される取り付け手段は、ねじ、ピンなどとすることができ、クリック接続も可能である。
【0018】
別の好ましい実施形態では、少なくとも光学系フランジおよび入射スリットと検出器との間の光路内の光学部品は、同じ材料から作製される。これは、均一な温度分布を形成し、不必要な材料摩耗温度変動が防止されることができる。
【0019】
材料は、金属、好ましくは軽金属とすることができる。
【0020】
別の実施形態では、プラズマスタンドフランジは、電気絶縁材料から作製される。絶縁材料は、プラズマの発生によって誘導される電流がプラズマスタンドおよびプラズマスタンドフランジを通って流れることを防止し、したがってプラズマスタンドおよびそれに接続される全ての構成要素を保護する。電気絶縁材料としては、TrespaやResopalなどのサンドイッチ材料、またはポリアミド(ナイロン)やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの熱安定性プラスチック、またはセラミック材料を使用することが好ましい。
【0021】
別の好ましい実施形態では、プラズマスタンドフランジと光学系フランジとの間の接続は、双方のフランジ間の位置ずれを防止するための剛性の歯付き接続(例えば、hirthジョイント)として実行される。歯付き接続は、接続点が互いに噛み合うことを保証し、その結果、一方では所望の容易で単純なアライメントが達成され、他方では位置ずれが防止される。したがって、2つの要素を接続するために使用されることができ、各要素の端面で互いに噛み合うテーパ歯を特徴とするHirthジョイントが使用されることが好ましい。
【0022】
剛性の歯付き接続は、メンテナンス手順中にプラズマスタンドを光学系から分解することが必要になる場合に特に有益である。自動調整設定は、プラズマの正確な直視の保存を確実にする。
【0023】
別の実施形態では、プラズマスタンドは、光学系またはプラズマスタンドに固定的に接続され、プラズマスタンドと光学系との間の光路内に適切に配置されてプラズマの少なくとも高温部分をマスクする光学マスクを備える。
【0024】
別の好ましい実施形態では、プラズマスタンドは、(例えば正電荷)電極を含むスパークチャンバを備えたスパークスタンドである。試料材料は、スパークチャンバを閉鎖し、対電極として作用している。スパークの軸は、試料表面と(例えば正電荷)電極先端との間の接続ラインとして定義される。プラズマ内のスパークの軸に沿って大きな温度勾配がある。プラズマスタンドに直接に接続された光学系の入射開口は、スパークの軸に平行に、またはスパークの軸に垂直に配向されてもよい。入射開口は、スパークの軸に沿った方向から到来するビームに対してピンホールカメラとして作用するため、垂直配向は、分光分析装置システムの幅を減少させ、光学マスクがスパークチャンバと入射開口との間のビーム経路内のどこにでも配置されることを可能にする。プラズマの高温部分は、試料表面の近くに位置する。平行配向は、分光分析装置システムの高さを減少させ、光学マスクを強制的にプラズマに近付けて、少なくともプラズマの高温領域の鮮明なマスキングを達成する。
【0025】
別の実施形態では、プラズマスタンドは、レーザ誘起破壊分光法(LIBS)スタンドであり、レーザがターゲット材料として試料材料に集束されてプラズマを発生させる。
【0026】
場所や時間に関する測定の自由度を高め、発光分光分析装置の容易な取り扱いを保証するために、発光分光分析装置はモバイル装置であることが好ましい。
【0027】
さらにまた、この目的は、上述したように発光分光分析装置を設置および動作させる方法によって解決される。したがって、発光分光分析装置は、プラズマスタンドフランジ上に直接且つ固定的に取り付けられたプラズマスタンドと、いくつかの光学部品を備える光学系フランジ上に直接且つ固定的に取り付けられた光学系とを備える。これらの発光分光分析装置の動作方法は、
-プラズマスタンドフランジと光学系フランジとを互いに直接且つ固定的に接続するステップと、
-試料材料から発光プラズマを確立するステップと、
-少なくとも1つの入射開口および少なくとも1つの回折格子を備える光学系を使用して、試料材料に特徴的なプラズマによって放射された光のスペクトルを生成するステップと、
-1つ以上の検出器によってスペクトルを測定するステップと、
-測定されたスペクトルを分析し、分析ユニットによる光学系の熱膨張を考慮して、プラズマスタンドから光学系に伝達される熱によって潜在的に引き起こされる検出器に対するスペクトルのドリフトを補償するステップと、を含んでいる。
【0028】
別の実施形態では、本方法は、プラズマスタンドと光学系との間の光路内に配置され、スパークの軸に対する光学系の向きに応じて光学系またはプラズマスタンドに固定的に接続されるのに適した光学マスクによってプラズマの少なくとも高温部分をマスキングするステップをさらに含むことができる。
【0029】
上記列挙した実施形態は、本発明に係る装置およびプロセスを提供するために個別にまたは任意の組み合わせで使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の図面に詳細に示されている。
図1】プラズマスタンドおよび光学系がアライメントされているが、取り付けられていない状態の本発明に係る発光分光分析装置の実施形態の概略図である。
図2】プラズマスタンドおよび光学系が互いにアライメントされて取り付けられている状態の本発明に係る発光分光分析装置の実施形態の概略図である。
図3】(a)アーク/スパークスタンドとしての、(b)ミラー要素を有するLIBSスタンドとしての、(c)ミラー要素を有しないLIBSスタンドとしての、および(d)スライディングスパーク分光分析装置としての、本発明に係るプラズマスタンドの概略図である。
図4】本発明に係る方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1および図2は、試料材料から発光プラズマを確立するためのプラズマスタンド2と、試料材料に特徴的なプラズマによって放射された光Lのスペクトルを測定するための光学系3とを備える発光分光分析装置1を示している。光学系3は、少なくとも1つの光入射開口31と、プラズマAから到来する光Lをスペクトルに回折する少なくとも1つの回折格子と、光Lのスペクトルを測定するための1つ以上の検出器33とを備える。光学系3および関連する光学系フランジ3Bのこれらの構成要素は、温度に耐えるために金属である同じ材料から作製される。プラズマスタンド2およびプラズマスタンドフランジ2Bも金属である同じ材料から作製される。一方、プラズマスタンドフランジ2Bは、プラズマスタンド2を電気的に絶縁するためにTrespaから作製されることができる。しかしながら、プラズマスタンドフランジ2Bが適切なプラスチック、セラミック、またはResopal、またはそれらの組み合わせから作製さることは排除されない。発光分光分析装置1は、測定されたスペクトルを分析し、光学系3の熱膨張を考慮してプラズマスタンド2から光学系3に伝達される熱によって潜在的に引き起こされる検出器33に対するスペクトルのドリフトを補償するように適合された分析ユニット34をさらに備える。
【0032】
一体に取り付けられるために、プラズマスタンド2は、そのプラズマスタンドフランジ2Bとともに、光学系3の光学系フランジ3Bに向かってアライメントされる。図1に示すプラズマスタンド2は、プラズマスタンド2のプラズマスタンドフランジ2Bに固定的に接続される接続ノズル21を備える。プラズマスタンドフランジ2Bの光学系フランジ3Bへのより良好且つ容易なアライメントのために、光学系フランジ3Bは、案内装置4を提供する。図1に示す実施形態では、これらの案内装置4は、ピンである。しかしながら、これらの案内装置4は、案内レールまたは同様の装置であることが可能である。プラズマスタンド2および光学系3のアライメントのためのさらなる案内支持体として、入射開口31および接続ノズル21は、接続ノズル21が入射開口31に挿入されることができるように相補的な形状を有する。
【0033】
プラズマスタンド2の光学系3への取り付け状態では、図2に示すように、プラズマスタンド2および光学系3は、互いに直接且つ固定的に接続されたプラズマスタンドフランジ2Bおよび光学系フランジ3Bにそれぞれ直接且つ固定的に取り付けられる。これにより、プラズマスタンドフランジ2Bの光学系フランジ3Bへの取り付けは、この例ではねじおよびピン5の組み合わせである調整不可能な取り付け手段5によって行われる。ねじの代わりに、クリック接続を使用することが可能である。
【0034】
発光分光分析装置1において個々の分光成分を測定するために、プラズマスタンド2において発生されたプラズマによって放射された光を透過させる必要がある。ここで説明する発光分光分析装置1は、試料材料(の一部)からのプラズマ発生について2つの可能性を想定している。プラズマスタンド2は、アーク/スパークスタンド2(図3a)および図3c)を参照)、またはレーザ誘起破壊分光法LIBSスタンド2(図3a)を参照)のいずれかとすることができる。
【0035】
図3a)は、アーク/スパークスタンド2としてのプラズマスタンド2を示しており、2つの電極22、23間の放電Aが確立されて、試料材料のアーク/スパークプラズマを発生させる。対電極は、試料材料23から作製される。アーク/スパークASの軸は、入射開口31に対して本質的に垂直に配置される。ここで、この開口の方向に対する「入射開口」とは、開口の軸を意味する。しかしながら、図3a)の実施形態では、アーク/スパークASの軸を入射開口31に平行に配置することも可能である。確立されたアーク/スパークAは、試料材料電極23を蒸発させて、光学系3におけるスペクトル分析のための光Lを放射するプラズマを発生させる。
【0036】
図3b)および図3c)は、それぞれ、レーザ誘起破壊分光法(LIBS)において使用されるプラズマスタンド2を示している。LIBS試料材料23は、レーザLAによって蒸発および励起される。試料材料23は、レーザLAの下方の試料台24上に配置され、レーザLAがターゲット材料である試料材料23に集束されてプラズマが発生される。図3b)の実施形態では、発生されたプラズマのそれぞれによって放射された光Lは、次いで、プラズマスタンド2内の光学装置25、特にミラー要素および集束レンズによって反射および集束され、光Lを光学系3の入射開口31に伝達する。これは、光Lの焦点合わせを可能にし、精度を高めることができる。図3c)の実施形態では、発生されたプラズマは、それぞれ、プラズマによって放射された光Lが入射開口31に直接伝達される。この実施形態は、より単純であり、プラズマの空間マスキングおよびサイズの縮小を可能にする。
【0037】
図3d)は、スライディングスパーク分光分析装置を概略的に視覚化して示している。アークAは、2つの電極22の間で点火され、電極22の間に配置された非導電性試料23に沿ってスライドし、それによって試料材料を蒸発させ、それをプラズマ状態に変換する。スライディングスパークプラズマは、試料材料の特性スペクトル線を放射する。直接光光学は、スパークスタンドに自己整列して取り付けられてもよい。
【0038】
図4は、上述したように発光分光分析装置1を設定および動作させる方法100を示している。このために、プラズマスタンドフランジ2B上に直接且つ固定的に取り付けられたプラズマスタンド2と、光学系フランジ3B上に直接且つ固定的に取り付けられたいくつかの光学素子32、33を備える光学系3とが、図2に示すように、個々の部品として最初に供給される。プラズマスタンド2を光学系フランジ3Bに接続した後、光学マスクは、プラズマスタンド2および光学系3の光路内に適切に配置され、例えば、プラズマの少なくとも高温部分をマスクするために入射開口およびスパークの軸が互いに平行に配向される場合、プラズマスタンド2に固定的に接続される。第2のステップ120において、試料材料23からプラズマを放射する光Lが確立され、それにより、少なくとも1つの入射開口31および少なくとも1つの回折格子32を備える光学系を使用して試料材料に特徴的なプラズマによって放射される光Lのスペクトルが生成される。続いて、第3のステップ130において、光Lのスペクトルが光学系3の検出器33のうちの1つ以上によって測定される。測定の後、第4のステップ140が実行され、ここでは、測定された光Lのスペクトルが分析され、プラズマスタンド2から光学系3に伝達される熱によって潜在的に引き起こされる検出器33に対する光Lのスペクトルのドリフトが分析ユニットによって補償される。別の実施形態では、本方法は、プラズマスタンド2と光学系3との間の光路内に配置され、スパークASの軸に対する光学系3の向きに応じて光学系3またはプラズマスタンド2に固定的に接続されるのに適した光学マスクによってプラズマの少なくとも高温部分をマスキングするステップ150をさらに含むことができる。
【符号の説明】
【0039】
1 本発明に係る発光分光分析装置
2 プラズマスタンド
2B プラズマスタンドフランジ
21 接続ノズル
22 プラズマスタンドの電極
23 試料材料
24 試料台
3 光学系
3B 光学系フランジ
31 入射開口、例えば入射スリット
32 回折格子
33 検出器セットアップ
34 制御ユニット
4 案内装置
5 取り付け手段
100 本発明に係る発光分光分析装置を設定および動作させる方法
110 プラズマスタンドフランジと光学系フランジとを互いに直接且つ固定的に接続する
120 試料材料から発光プラズマを確立する(120)
130 プラズマによって放射された光の光スペクトルを測定する
140 測定されたスペクトルを分析し、検出器に対するスペクトルのドリフトを補償する
150 光学マスクによってプラズマの少なくとも高温部分をマスキングする
A アーク
AS アーク/スパークの軸
LA レーザ
L 光
図1
図2
図3a)】
図3b)】
図3c)】
図3d)】
図4
【国際調査報告】