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特表2023-500092睡眠時無呼吸を判断するためのデバイス及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(54)【発明の名称】睡眠時無呼吸を判断するためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/256 20210101AFI20221222BHJP
   A61B 5/296 20210101ALI20221222BHJP
   A61B 5/291 20210101ALI20221222BHJP
【FI】
A61B5/256 110
A61B5/296
A61B5/291
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524983
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2020080393
(87)【国際公開番号】W WO2021084005
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】102019129288.3
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520363878
【氏名又は名称】ユニバーシタッツメディズィン デア ヨハネス グーテンベルク-ユニバーシタット マインツ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ゴウヴェリス,ハラランポス
(72)【発明者】
【氏名】ムットゥラーマン,ムットゥラーマン
(72)【発明者】
【氏名】シュワーブ,マッチアス
(72)【発明者】
【氏名】アブリアニ,アリ
(72)【発明者】
【氏名】ベックステガース,フィリップ テジャルコ
(72)【発明者】
【氏名】ファスナハト,サーニャ ミリアム
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】バー,カタリーナ
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127AA04
4C127JJ03
4C127LL13
(57)【要約】
本発明は、脳波記録及び筋電図検査を使用して、睡眠時無呼吸の重症度を判断するためのデバイス及び方法に関する。このデバイスは、患者の頭における、少なくとも脳波記録の測定ポイントC3及びC4ポイントが据えられる箇所を覆う頭部分(12;112)、ならびに顎部分(14;114)、を有するヘッドギア(10;110)を備える。頭部分(12;112)は、脳波記録ポイントC3及びC4における脳波記録のEEG信号を感知するための、2つの電極(16;116)を有し、顎部分(14;114)は、顎における筋電図検査のEMG信号を感知するための、少なくとも1つの電極(18;118)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳波記録及び筋電図検査によって睡眠時無呼吸を判断するためのデバイスであって、患者の頭における、少なくとも脳波記録の測定ポイントC3及びC4ポイントが据えられる箇所を覆う頭部分(12;112)及び顎部分(14;114)を有するヘッドギア(10;110)を備え、前記頭部分(12;112)は、脳波記録ポイントC3及びC4における脳波記録のEEG信号を感知するための2つの電極(16;116)を有し、前記顎部分(14;114)は、顎における筋電図検査のEMG信号を感知するための少なくとも1つの電極(18;118)を有する、デバイス。
【請求項2】
基準電極及び接地電極が、脳波記録に関連して設けられることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
少なくとも1つの前記電極(16、18)は、前記ヘッドギアの中にしっかりと一体化されることを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記ヘッドギア(10;110)は、第1の半体、第2の半体、及び、前記第1及び第2の半体を分離する長手方向軸を有し、前記EMG信号を感知するための2つの電極(18;118)が設けられ、各々が前記ヘッドギア(10;110)の1つの半体に配置され、前記2つの電極(18;118)は、好ましくは前記長手方向軸に対して対称に配置されることを特徴とする、請求項1~3のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記EEG信号を感知するための前記電極(16;116)、及び/または、前記EMG信号を感知するための前記電極(18;118)は、ワイヤレス電極であることを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記EMG信号を感知するための前記電極(18;118)は、接着性電極であることを特徴とする、請求項1~5のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記EEG信号及び少なくとも1つの前記EMG信号を自動的に評価する、データ処理デバイスが設けられることを特徴とする、請求項1~6のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
ワイヤレス通信が、前記データ処理デバイスと、前記電極(16、18;116、118)との間に提供されることを特徴とする、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記ヘッドギア(10;110)は、キャップのように、詳細には基本的に頭の後を完全に覆うよう設計されることを特徴とする、請求項1~8のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記顎部分(14;114)は顎ストラップとして設計されることを特徴とする、請求項1~9のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記ヘッドギアは、第1の半体、第2の半体、及び、前記第1及び第2の半体を互いから分離する長手方向軸を有し、第1の顎ストラップが、前記ヘッドギアの前記第1の半体に設けられ、第2の顎ストラップが、前記ヘッドギアの前記第2の半体に設けられ、前記第1及び前記第2の顎ストラップは互いに接続することができることを特徴とする、請求項1~10のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
呼吸を刺激するための方法が提供されることを特徴とする、請求項1~11のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
呼吸を刺激するための方法は、少なくとも1つの埋め込み可能な刺激電極と、前記EEG信号及び/またはEMG信号を評価するためのデータ処理デバイスと、制御ユニットと、前記刺激電極(126)を励起するためのデバイスと、を有することを特徴とする、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記刺激電極、及び前記刺激電極(128)を励起するための前記デバイスは、各々磁気コイル(132、146)を有することを特徴とする、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
請求項1~14のうちいずれか一項に記載のデバイスによって、睡眠時無呼吸を判断するための方法であって、
脳波記録によって脳の電気活動を感知するステップであって、脳波記録によって感知されたEEG測定信号は、脳波記録ポイントC3及びC4における測定信号である、ステップと、
筋電図検査によって筋肉の電気活動を感知するステップであって、筋電図検査によって感知されたEMG測定信号は、顎領域における測定信号である、ステップと、
前記ポイントC3及びC4において感知された前記EEG信号、及び前記顎領域で感知された前記EMG信号を、相互に関連付けるステップと、
相互に関連付けられた、前記位置C3及びC4における前記EEG測定信号、ならびに前記顎領域における前記EMG信号を、睡眠時無呼吸に関連した呼吸事象の発生について、評価するステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
ポイントC3及びC4において感知された前記EEG測定信号、及び前記顎領域で感知された前記EMG信号を、相互に関連付けるステップ、及び、
相互に関連付けられた、前記ポイントC3及びC4における前記EEG信号、及び、前記顎領域における前記EMG信号を、睡眠時無呼吸に関連した呼吸事象の発生について、評価するステップは、
データ処理デバイスによって自動的に実行されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
相互に関連付けられた、ポイントC3及びC4における前記EEG信号、及び、前記顎領域における前記EMG信号の評価は、前記信号が感知されたらすぐに実施されることと、
前記評価されたデータは、評価後すぐに制御ユニットへ送信されることと、
受信した前記評価されたデータに依拠して、前記制御ユニットは制御信号を、埋め込まれた刺激電極(126)を励起するためのデバイスへ送信することと、を特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
信号は、埋め込まれた刺激電極(126)を励起するための前記デバイスから、無線によって誘導的または容量的に、埋め込まれた刺激電極へ送信されることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記制御ユニットは、前記データ処理デバイスから受信したデータが、無呼吸または呼吸低下を表わした場合のみ、制御信号を、埋め込まれた刺激電極(126)を励起するための前記デバイスへ送信することを特徴とする、請求項17または18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠時無呼吸を判断するためのデバイスに関し、詳細には睡眠時無呼吸を自動的に判断するためのデバイスと、このようなデバイスを使用して睡眠時無呼吸を判断するための方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸は、夜間の呼吸障害であり、それは長い呼吸停止の繰り返し、または呼吸の部分的停止の繰り返しである。長い呼吸停止または長い部分的呼吸停止は、10秒より長く続く呼吸停止または部分的呼吸停止、として定義される。10秒未満しか続かない呼吸の短い休止は、通常は有害とは考慮されない。しかし、呼吸休止または部分的呼吸休止が、睡眠中に1時間で5回よりも多く生じる場合、重大な健康上の影響となる場合がある。
【0003】
睡眠時無呼吸または睡眠時無呼吸の重症度は、心臓性呼吸の睡眠ポリグラフを使用した睡眠検査室において、通常は判断される。重症度は、現在3つの重症度グループに分割される。
【0004】
公知の方法を用いて、呼吸低下(部分的呼吸休止)または無呼吸(完全な呼吸休止)は、呼吸流量センサ、胸部及び腹部周りにおける2つの圧電ストレッチベルト、ならびに血中の動脈血酸素飽和度を判断するパルスオキシメータ、を使用して睡眠中に感知される。さらに脳波が、脳波記録(EEG)によって記録され、眼球の動きが、電気眼振図(EOG)によって記録される。最後に、顎領域の筋緊張も、顎に取り付けられた接着性電極を用いて監視される。
【0005】
呼吸流量センサを使用した呼吸流量の測定は、鼻カニューレを使用した鼻の動圧の測定、及び/または口腔サーミスタを使用した口腔呼吸流量の測定である。
【0006】
患者の頭に配置された多くの電極は、脳波記録によって脳波を判断するために必要である。脳波記録は、睡眠段階中における睡眠段階の分類、したがって睡眠構成、ならびに呼吸、運動筋肉、及び生理的覚醒反応いわゆる目覚めを感知するために、夜間(または記録中)における睡眠段階と覚醒段階との間を識別するために使用される。
【0007】
使用される多くのセンサは、試験対象者の睡眠を著しく妨げ、そのため、睡眠検査室で得られた測定値が、自宅または慣れた環境における睡眠を代表するかどうか、という疑問が生じる。この理由のため、測定は時として2夜連続で実行される。
【0008】
感知される多くの測定データのため、呼吸事象自体の評価は、自動的評価を用いても比較的長時間かかる。以前から公知である自動的評価は、誤差なしでは作動しないので、通常は、評価をチェックする専門家が必要である。最悪の場合には完全な視覚評価となる場合があるこのチェックは、非常に時間を浪費する。したがって、検出された睡眠時無呼吸における呼吸事象の確実な分類は、専門家の助けなしでは現在可能ではない。
【0009】
睡眠時無呼吸による、呼吸休止または部分的呼吸休止の確実な判断は、現在はまだ非常に時間を浪費するために、睡眠時無呼吸による呼吸停止または部分的呼吸停止は、遅れて診断されることが多く、そのため人は、かなり後になって初めて治療の助けを受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目標は、以前から公知であるデバイスよりも患者の睡眠を妨げずに、人の睡眠時無呼吸の状態を自動的に判断するためのデバイスを提供することである。加えて、本発明の目標は、簡単な方法で、睡眠時無呼吸の状態を確実かつ自動的な検出を可能にする方法を提供することであり、この方法は、見出された睡眠時無呼吸の重症度を判断することもできる。
【0011】
最後に、睡眠時無呼吸に関する呼吸の停止または部分的停止を処置するための、デバイス及び方法を提供することが、本発明の目標である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、脳波記録信号と筋電図検査信号との間の可干渉性が、睡眠時無呼吸の状態についての提示、詳細には睡眠時無呼吸の重症度の提示を可能にすることを見出すことに基づいている。
【0013】
詳細には、本発明は、脳波記録ポイントC3及びC4におけるEEG信号、ならびに顎における筋緊張の可干渉性が、人の睡眠時無呼吸の重症度を分類するのを可能にするのを見出すこと、に基づいている。
【0014】
したがって、睡眠時無呼吸の重症度を判断するための、本発明のデバイスは、脳波記録(EEG)と、筋緊張を判断するために使用できる筋電図検査(EMG)と、を利用する。
【0015】
デバイス自体は、少なくとも脳波記録の測定ポイントC3及びC4において、患者の頭を覆う頭部分と、顎部分と、を有するヘッドギアを備える。頭部分は、脳波記録のEEG信号を感知するための2つの電極を、脳波記録ポイントC3及びC4に有し、顎部分は、顎における筋電図検査のEMG信号を感知するための、少なくとも1つの電極を有する。
【0016】
本デバイスは、脳波記録及び筋電図検査の測定信号のみを利用するので、睡眠時無呼吸を判断するためのデバイスが、大幅に簡単な構成を有することを可能にする。
【0017】
詳細には、呼吸流量センサなしで行うことが可能である。以前必要だった、胸部及び腹部周りの圧電ストレッチベルト、ならびに血中の動脈血酸素飽和度を判断するパルスオキシメータは、もはやいずれも必要ない。血中の動脈血酸素飽和度を感知することが必要な場合は、睡眠時無呼吸を判断するための本デバイスは、これらの測定デバイスと組み合わせられることを、理解されたい。
【0018】
EEG信号を感知するための電極、及びEMG信号を感知するための少なくとも1つの電極は、測定電極である。したがって、脳波記録のために必要な測定電極の数は、最小限まで減らされる。全体で3つ、必要な場合は4つの測定電極のみが存在し、以下で示すように、それらは睡眠時無呼吸及び睡眠時無呼吸の重症度を判断するために測定を実施するために必要である。具体的には、2つの電極は、好ましくは脳波記録ポイントC3及びC4における脳波記録のEEG信号を感知するため、ならびに2つの電極は、顎における筋電図検査のEMG信号を感知するために、必要である。
【0019】
頭部分及び顎部分が互いに一体で接続されたヘッドギアは、比較的装着が容易であり、それによって試験中の睡眠条件は、一般環境下の睡眠条件と大きな相違はない。
【0020】
脳波記録に関連するEEG信号を、確実かつ正確に感知するために、好ましくは基準電極及び接地電極が設けられる。好ましくは、ヘッドギアは、基準電極及び接地電極が患者に使用されるポイントも覆う。
【0021】
1つの好ましい実施形態において、少なくとも1つの電極がヘッドギアの中にしっかりと一体化され、それによって少なくとも1つの電極は、夜間の試験中に偶然キャップから外れることはない。電極の全ては、ヘッドギアの中にしっかりと一体化でき、電極が睡眠中に偶然外れないよう保証することを、理解されたい。
【0022】
睡眠時無呼吸は、2つの電極がEMG信号を感知するために提供された場合、特に良好に確かめることができる。これら電極の各々は、患者の顔面における左右の顎の筋緊張を感知する。この理由のため、ヘッドギアが、第1の半体、第2の半体、ならびに第1及び第2の半体を互いから分離する長手方向軸、を有すると有利である。EMG信号を感知するための2つの電極が設けられ、ヘッドギアの各半体に1つが配置される。1つの好ましい実施形態において、2つの比較可能な測定信号を得るために、2つの電極は長手方向軸に対して対称に配置される。
【0023】
測定デバイス及び周辺機器による、患者に対する睡眠の妨げを、可能な限り少なくするために、EEG信号を感知するための電極、及び/またはEMG信号を感知するための電極を、ワイヤレス電極にすると有利である。
【0024】
さらに、EMG信号を感知するための電極が、接着性電極であると有利であることが判っている。接着性電極を提供することは、電極が特にしっかりと、睡眠中の患者の顎における所望の測定ポイントに保持される、という利点を有する。
【0025】
1つの好ましい実施形態において、大きく時間を浪費することなく呼吸事象を検出するために、EEG信号及び少なくとも1つのEMG信号を自動的に評価する、データ処理デバイスが設けられる。
【0026】
ワイヤレス通信が、データ処理デバイスと電極との間で提供されることは、さらに有利である。測定データを感知する電極と、感知された測定データを評価するデータ処理デバイスと間の通信は、測定データの簡単な評価を可能にする。夜間の測定処理中の定期的なデータ送信によって、データは、試験の終了後の朝すぐに、評価のために利用可能である。夜間の試験中に、測定データをデータ処理デバイスに継続的に送信することは、患者をオンラインで観察することさえ可能にする。ワイヤレス通信を提供することで、測定デバイスの構造を簡略化し、そのためデータをデータ送信ユニットに送信することによる影響を、患者の睡眠に対して及ぼさないか、または僅かしか及ぼさない。
【0027】
ヘッドギアをキャップのように設計すること、詳細には頭の後を基本的に完全に覆い、それによって睡眠時無呼吸を判断するためのデバイスが睡眠中に滑り落ちないように設計することは、有利である。
【0028】
筋緊張、詳細にはEMG信号を判断するための電極を、所望の測定ポイントにしっかりと保持するために、顎部分を顎ストラップとして設計すると有利である。
【0029】
上述のように、2つのEMG測定電極が設けられ、各々がヘッドギアの半体に位置することは有利である。この理由のため、第1の顎ストラップをヘッドギアの第1の半体に設け、第2の顎ストラップをヘッドギアの第2の半体に設けることは、有用である。
【0030】
1つのEMG測定電極のみが、顔面の1つの半体に使用される場合でも、第1の顎ストラップをヘッドギアの第1の半体に設け、第2の顎ストラップをヘッドギアの第2の半体に設けることは、有利である。なぜなら、両方の場合、第1及び第2の顎ストラップを互いに接続することによって、顎ストラップを患者の顎部に安定して取り付けることが可能であるためである。例えば、2本の顎ストラップを、ベルトによって接続できるか、または顎ストラップに装着されたコードを使用して簡単に結ぶことができる。面ファスナなど、公知の代替の接続選択肢も使用することができる。
【0031】
睡眠時無呼吸を判断するためのデバイスの、1つの好ましい改良において、呼吸を刺激するための方法が提供される。したがって、睡眠時無呼吸を判断するためのデバイスは、睡眠時無呼吸、詳細には睡眠時無呼吸の重症度を判断するだけではなく、治療デバイスでもある。
【0032】
呼吸を刺激するための方法が、少なくとも1つの埋め込み可能な刺激電極、EEG及び/またはEMG信号を評価するためのデータ処理デバイス、制御ユニット、ならびに刺激電極を励起するためのデバイス、を含んだ、睡眠時無呼吸を判断するためのデバイスは、特に効果的で小型の治療デバイスであることを証明している。
【0033】
埋め込まれた刺激電極を励起することを可能にするために、埋め込まれた刺激電極及び刺激電極を刺激するためのデバイスが、各々磁気コイルを有することは有利である。刺激電極を刺激するためのデバイスのコイルは、好ましくはバッテリまたは再充電可能なバッテリに接続される。刺激電極を励起するためのデバイスのコイルが、バッテリまたは再充填可能なバッテリに接続された場合、埋め込まれた刺激電極に、外部から電力が供給される。したがってバッテリを充電または交換することは容易である。
【0034】
本発明は、本発明のデバイスによって睡眠時無呼吸を判断するための方法も含み、以下のステップを含む:
・脳波記録によって脳の電気活動を感知するステップ。ここで脳波記録によって感知されたEEG測定信号は、脳波記録ポイントC3及びC4における測定信号である;
・筋電図検査によって筋肉の電気活動を感知するステップ。ここで筋電図検査によって感知されたEMG測定信号は、顎領域における測定信号である;
・ポイントC3及びC4において感知されたEEG測定信号と、顎領域で感知されたEMG信号とを、相互に関連付けるステップ;
・相互に関連付けられた、位置C3及びC4におけるEEG測定信号、ならびに顎領域におけるEMG信号を、睡眠時無呼吸に関連した呼吸事象の発生について、評価するステップ。
【0035】
1つの好ましい改良において、ポイントC3及びC4で感知されたEEG測定信号、ならびに顎領域で感知されたEMG信号は、相互に関連付けられる。関連付けられた、ポイントC3及びC4におけるEEG測定信号、ならびに顎領域におけるEMG信号は、睡眠時無呼吸に関連した呼吸事象の発生について、自動的に評価される。
【0036】
説明した方法を使用して、睡眠時無呼吸の存在を判断できるだけではなく、睡眠時無呼吸の重症度も判断できる。
【0037】
説明した方法の、1つの好ましい改良において、ポイントC3及びC4におけるEEG信号、ならびに顎領域におけるEMG信号は、これらの信号が感知されるとすぐに、相互に関連付けられて評価される。評価されたデータは、評価後すぐに制御ユニットへ送信される。受信した評価データに依拠して、制御ユニットは制御信号を、埋め込まれた刺激電極を励起するデバイスに送信する。
【0038】
呼吸の休止が感知されながら、埋め込まれた刺激電極が励起されるこの方法は、睡眠時無呼吸の状態を判断するだけではなく、睡眠時無呼吸の患者を処置するためにも好適である。睡眠時無呼吸の状態を判断すること、及び睡眠時無呼吸の患者に治療を提供することは、同時に実行され、それは患者にとって大きい利点をもたらす。
【0039】
信号は無線によって、誘導的または容量的に、埋め込まれた刺激電極を励起するためのデバイスから、埋め込まれた刺激電極へ送信することができる。励磁コイルの使用は好ましい。
【0040】
全ての呼吸サイクルで刺激電極を励起することが可能であり、それによって患者が呼吸のいかなる休止もないことが常に確信される。しかしこの方法は、かなり大きいエネルギーを、刺激電極へ基本的に継続して供給しなければならないため、非常に多くの電気エネルギーを必要とする欠点を有することが判っている。1つの好ましい改良において、データ処理デバイスから受信したデータが、呼吸の完全停止か、または呼吸の部分的休止かの、無呼吸の状態を表わす場合のみ、制御ユニットが制御信号を、埋め込まれた刺激電極を励起するためのデバイスに送信する。したがって、睡眠時無呼吸の治療のためのエネルギー消費を、大幅に減少させることが可能である。
【0041】
本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を使用して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】睡眠時無呼吸の重症度を判断するためのデバイスにおける、第1の実施形態を示す図であり、このデバイスは患者が装着している。
図2】睡眠時無呼吸の重症度を判断するためのデバイスにおける、第2の実施形態を示す図であり、このデバイスは患者が装着し、筋肉機能を制御するためにも好適である。
図3図2に示される実施形態の詳細図である。
図4】刺激電極を励起するためのデバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、脳波記録及び筋電図検査によって睡眠時無呼吸の重症度を判断するためのデバイスにおける、第1の実施形態のヘッドギア10を示す。ヘッドギア10は、4つの測定ポイントのみを含み、それらで患者に関連した測定データが感知される。脳波記録を用いた、患者に関連した測定データを記録するための、2つの測定ポイントが存在し、他の2つの測定ポイントは、筋電図検査に関する患者に関連した測定データを記録するためのものである。
【0044】
患者に関連した測定データは、睡眠時無呼吸の状態を判断するために使用される測定データである。
【0045】
ヘッドギアは、頭部分12及び顎部分14を備える。頭部分12及び顎部分14は、互いに接続され、それによってヘッドギアは1つの部材に具現化される。
【0046】
頭部分12は患者の頭に対して快適に適合し、患者の頭頂領域及び側頭領域を完全に覆う。図示しないが、頭部分は患者の頭の後にわたって延びる場合もある。
【0047】
快適に装着するために、ヘッドギアは、繊維材料または同等の柔軟な材料で構成される。
【0048】
脳波記録信号(EEG信号)を感知するための電極16は、患者がヘッドギアを装着したときに脳波記録ポイントC3及びC4に対応した位置において、頭部分12に設けられる。これらの電極は、患者に関連した測定データを感知するために使用されるため、測定電極である。
【0049】
EEG信号を記録するための電極16は、ワイヤレス電極であり、無線リンクを介してデータをデータ処理デバイス(図示せず)へ転送する。EEG信号を感知するための電極16は、頭部分12にしっかりと接続される。
【0050】
図示しないが、脳波記録信号(EEG信号)を感知するために、測定電極として具現化された電極16に追加して、接地電極及び基準電極が設けられ、頭部分12にしっかりと接続される。接地電極及び基準電極は、正確な測定信号、詳細には関連した測定信号だけではなく、測定電極からの絶対測定信号を得るために、脳波記録との関連で有用である。したがって接地電極及び基準電極は、患者に関連した測定データを記録するために使用されないが、代わりにEEG信号を記録するための電極16によって感知された信号の、品質を保証するために使用される。
【0051】
筋電図検査信号(EMG信号)を感知するための2つの電極18は、顎領域に、顔面の軸に対して対称に設けられる。EMG信号を感知するための2つの電極18は、ヘッドギア10の顎部分14に一体化され、それによってヘッドギア10にしっかりと接続される。EMG信号を感知するための2つの電極18は、接着性電極であり、EEG信号を感知するための電極16のように、データをデータ処理デバイス(図示せず)へワイヤレス送信する。
【0052】
顎部分14は、顎ストラップとして具現化され、頭部分12に1つの部材で接続され、それによってヘッドギア10はバラクラバ帽のように具現化される。
【0053】
1つの実施形態(図示せず)において、顎ストラップは2つの顎ストラップを有する場合があり、その各々は、頭部分12の1つの半体に取り付けられる。顎ストラップの2つの自由端は、ベルト、バックル、または単純にコードによって、互いに堅固に接続することができる。
【0054】
このように、睡眠時無呼吸の重症度を判断するために、睡眠中にEEG信号がC3及びC4箇所において感知される。さらに、夜間の試験中に、顎における筋緊張の信号が、筋電図検査を使用してEMG信号の形態で登録される。感知された測定データは、無線によって定期間隔でデータ処理デバイス(図示せず)へ送信される。そこにおいて、測定データは呼吸事象の発生について評価される。これは、夜間の測定処理中にオンラインで、または睡眠終了後にオフラインで、行うことができる。専門家による視覚的評価、及びソフトウェアプログラムを使用した自動的評価、の両方が可能である。
【0055】
詳細には、評価は、C3及びC4ポイントにおけるEEG信号と、患者の顎部で感知されたEMGデータとを、相互に関連付けることによって実行される。
【0056】
健康な人のEEG/EMG信号の組み合わせは、呼吸低下または無呼吸を患う患者で感知されるEEG/EMG信号の組み合わせとは、大幅に異なる。したがって、EEG/EMG信号の組み合わせを使用して、無呼吸の重症度を分類することが可能である。
【0057】
説明した方法で感知された測定値の数が、無呼吸の重症度を分類するための従来の方法と比較して、大幅に減少するため、評価は、誤差の影響を増加させることなく、大幅に迅速かつ容易となる。
【0058】
睡眠時無呼吸の重症度を判断するためのデバイスとして示されたヘッドギアの場合、ヘッドギアは頭部分が基本的に頭を完全に覆うよう選択された。しかし本発明の範囲内で、ヘッドギアの頭部分は、脳波記録のC3及びC4信号を測定するために必要なポイントを覆うことで十分である。しかし、ヘッドギアが、試験中すなわち睡眠中にずれないことを保証することが望ましい。
【0059】
睡眠時無呼吸の重症度を判断するための、説明したデバイスは、比較的簡単な構造であり、したがって安価で製造することができる。キャップのような、またはヘッドギアのようなものに測定電極をしっかりと一体化させることは、患者の睡眠が夜間の試験中にほとんど影響を及ぼされないことを意味し、それによって、まさに平静な睡眠中に感知されたものに、非常に近い測定結果が得られる。説明したデバイスの簡単な構造は、デバイスを家庭環境で使用することも可能にし、そのため感知された測定データは、自宅における実際の睡眠状況を最大限の範囲で反映する。
【0060】
睡眠時無呼吸の重症度を判断するためのデバイスにおける、第2の実施形態が、患者がデバイスを装着して図2図4に示される。筋肉機能及び/または神経機能を制御することも可能であり、したがってこの第2の実施形態を使用して、呼吸の停止、または呼吸の部分的休止を処置することも可能である。
【0061】
図1に示されるヘッドギア10のように、図2図4に示されるヘッドギアは、頭部分112及び顎部分114を備える。頭部分112及び顎部分114は、互いに接続され、それによってヘッドギア110は1つの部材に具現化される。さらに、脳波記録信号(EEG信号)を感知するための電極116は、患者が装着したときに、脳波記録ポイントC3及びC4に対応した位置で、頭部分112に提供される。筋電図検査信号(EMG信号)を感知するための2つの電極118は、顎領域に、顔面の軸に対して対称に設けられる。
【0062】
図1に示される実施形態に加えて、ヘッドギア110は、脳波記録(EEG)信号の測定信号を増幅する第1の増幅器120を備え、それは2つの脳波記録ポイントC3及びC4の間に取り付けられる。
【0063】
第2の増幅器122は、筋電図検査信号118を感知するための、2つの電極の間に設けられる。
【0064】
さらに、マイクロプロセッサ124は、脳波記録信号(EEG信号)を感知するための電極116と、筋電図検査信号(EMG信号)を感知するための電極118との間における、それぞれ顔面の各半体に配置される。マイクロプロセッサ124は、データ処理デバイス及び制御ユニットを収容する。
【0065】
刺激電極126を励起するためのデバイスは、下顎縁部の下方における、顔面の一方の半体に設けられる。
【0066】
第1及び第2の増幅器120、122、マイクロプロセッサ124、及び刺激電極126を励起するためのデバイスは、各々ヘッドギア110にしっかりと接続される。
【0067】
脳波記録(EEG)信号を検出するための電極116、筋電図検査(EMG)信号を検出するための電極118、第1及び第2の増幅器120、122、マイクロプロセッサ124、ならびに刺激電極126を励起するためのデバイスは、ケーブル接続を介して互いに接続される。代替として、前述の部品は無線によって、全体的または部分的に通信することができる。
【0068】
図4に示されるように、刺激電極126を励起するためのデバイスは、ヘッドギア110に一体化されたカバー130を備え、その中にコイル132及びバッテリ134が配置される。
【0069】
埋め込まれた刺激電極と連通した、磁気誘導コイル146は、皮下組織142と広頸筋層144との間(図4のように)、または広頸筋層144の下(図示せず)、のいずれかに埋め込まれる。埋め込まれた刺激電極は、それぞれの神経を囲む。それは例えば、所謂カフ電極である。
【0070】
バッテリ134または再充填可能バッテリは、埋め込まれた刺激電極126を励起するためのデバイスにおけるカバー130に、交換可能に配置され、それによって埋め込まれた刺激電極に、外部からエネルギーを供給することができる。これは、患者にとって大きな利点を提供する。
【0071】
したがって、刺激電極126を励起するためのデバイスの正確な位置は、患者の埋め込まれた刺激電極と連通する、皮下に埋め込まれたコイル146上に、配置されるように選択される。
【0072】
EEG信号116を感知するための2つの電極及びEMG信号118を感知するための2つの電極、2つの増幅器120、122、2つのマイクロプロセッサ124、ならびに埋め込まれた刺激電極126のためのデバイスは、以下のように通信する:
【0073】
EEG信号116を感知するための2つの電極、及びEMG信号118を感知するための2つの電極、によって感知された信号は、それぞれの増幅器120、122によって増幅され、マイクロプロセッサ124へ送信される。マイクロプロセッサ124において、EEG信号及びEMG信号は、睡眠時無呼吸状態の存在について評価される。マイクロプロセッサ124に含まれた制御ユニットは、埋め込まれた刺激電極126を励起するためのデバイスへ信号を送信して、呼吸、詳細には呼吸に関わる筋肉を刺激する。刺激信号は、筋肉または神経に与えられ、埋め込まれた刺激電極126を励起するためのデバイスにおけるコイル132、及び刺激電極に接続されたコイル146によって、呼吸を刺激する。
【0074】
制御ユニットは、好ましくは、マイクロプロセッサ124によって感知されたEEGまたはEMG信号データが、睡眠時無呼吸または睡眠時呼吸低下の形態で呼吸の休止を感知したときのみ、埋め込まれた刺激電極126を励起するためのデバイスへ信号を送る。代替として、埋め込まれた刺激電極126を励起するためのデバイスは、睡眠時無呼吸または呼吸低下の場合のみ、埋め込まれた刺激電極へ信号を送達することができる。
【0075】
例えば、EEG-EMG値の可干渉性は、適応閉ループシステムによって、毎5~10秒にリアルタイムで判断される。次にこれらのデータは、次の5~10秒間の睡眠中における呼吸サイクルで、呼吸を刺激するために使用される。
【0076】
本発明は、口領域の刺激電極に関連して説明したが、埋め込まれた刺激電極を励起するためのデバイスを、他の箇所に位置付けることも可能である。埋め込まれた刺激電極を励起するためのデバイスは、好ましくはヘッドギアに配置され、それによって患者が装着したときに、埋め込まれた刺激電極に対して位置付けられる。埋め込まれた電極は、筋肉及び神経の両方を励起することができる。
【0077】
マイクロプロセッサによって感知及び送信されたデータは、記憶させることができ、例えば後で医療従事者による評価に利用可能である。感知及び送信されたデータは、オンラインで、または測定後すぐに評価することもできることを、理解されたい。
【0078】
図示しないが、刺激電極を、先行技術で公知の異なる方法で励起することもできる。
【0079】
図面に関連して説明した実施形態は、互いに組み合わせることができることを、理解されたい。実施形態において説明した個々の特徴は、本発明の範囲内で省略することもできる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】