IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アスペクト バイオシステムズ リミティドの特許一覧

特表2023-500102コアシェル繊維プリントのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-04
(54)【発明の名称】コアシェル繊維プリントのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/209 20170101AFI20221222BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20221222BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221222BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221222BHJP
   A61L 27/50 20060101ALN20221222BHJP
【FI】
B29C64/209
B29C64/106
B33Y10/00
B33Y30/00
A61L27/50 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525213
(86)(22)【出願日】2020-11-01
(85)【翻訳文提出日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 CA2020051482
(87)【国際公開番号】W WO2021081672
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】62/929,720
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/030,885
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517440553
【氏名又は名称】アスペクト バイオシステムズ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】サイモン ベイヤー
(72)【発明者】
【氏名】チェンソン シュイ
(72)【発明者】
【氏名】ケディー ブラウン
【テーマコード(参考)】
4C081
4F213
【Fターム(参考)】
4C081AB13
4C081CD041
4C081CD091
4C081DA03
4F213AH63
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL24
4F213WL32
(57)【要約】
三次元プリンタ用のプリントヘッドであって、一実施形態では、プリントヘッドは、コアチャネル出口、第1のシェルチャネル出口、及び分注チャネルに向かって収束する第1の流体集束チャンバーを含む、マルチチャネルエンクロージャを含み、コアチャネル出口は、エンクロージャの中央領域にあり、コア及びシェルチャネルは、エンクロージャ内にそれぞれの深さを延在させる。別の実施形態では、複数のシェルチャネルは、外側シェルチャネルよりも集束チャンバー内に大きな長さで延在する内側シェルチャネルを含み、コアチャネルは、いずれのシェルチャネルよりも集束チャンバー内に大きな長さで延在する。別の実施形態では、コア及び第1のシェルチャネルのそれぞれは、別個の流体リザーバ、投入オリフィス及び制御弁を有する、少なくとも2つの入口サブチャネルを含み、これらは収束してそれぞれの集束チャンバーと連通する1つの出口を形成する。シース流チャネルが提供され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元プリンタ用のプリントヘッドであって、前記プリントヘッドが、
少なくとも1つの入口、出口、及び1つ以上の流体スイッチを有するコアチャネルと、
少なくとも1つの入口、出口、及び1つ以上の流体スイッチを有する第1のシェルチャネルと、
マルチチャネルエンクロージャと、
分注チャネルと、を含む、複数の流体チャネルを形成する複数の積層を含み、
前記マルチチャネルエンクロージャが、前記コアチャネル出口、前記第1シェルチャネル出口、及び第1の流体集束チャンバーを含み、
前記コアチャネル出口が、前記マルチチャネルエンクロージャの中央領域に配置され、前記第1流体集束チャンバーの入口と流体連通し、
前記コアチャネル出口が、第1の垂直深さを前記マルチチャネルエンクロージャ内に延在させ、好ましくは、前記コアチャネル出口が、前記第1の垂直深さを、前記分注チャネルと整列して前記第1流体集束チャンバー内に延在させ、
前記第1シェルチャネル出口が、前記コアチャネルの周りに同心状に配置され、前記第1流体集束チャンバーの入口と流体連通し、
前記第1シェルチャネル出口が、第2の垂直深さを前記マルチチャネルエンクロージャ内に延在させ、好ましくは/任意選択で、前記第1シェルチャネル出口が、前記第1の垂直深さを前記第1流体集束チャンバー内に延在させ、
前記第1流体集束チャンバーが、前記分注チャネルに向かって収束し、好ましくは、前記第1流体集束チャンバーが、前記分注チャネルへ向けて流体を集束させるように構成された円錐台形状を有する、前記プリントヘッド。
【請求項2】
前記第1シェルチャネル出口が、マルチチャネルエンクロージャへの深さが増すにつれて増加する、勾配幅を有する、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項3】
前記第1の垂直深さが、前記第2の垂直深さよりも大きく、その結果、前記コアチャネル出口が、前記第1シェルチャネル出口よりも、前記マルチチャネルエンクロージャ及び/または前記第1流体集束チャンバー内に更に延在する、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項4】
少なくとも1つの入口と出口とを有する第2のシェルチャネルを更に含み、前記第2シェルチャネル出口が、前記プリントヘッドの同じ層にある前記マルチチャネルエンクロージャの前記第1シェルチャネル出口の周りに同心状に配置され、前記第1流体集束チャンバーと流体連通している、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項5】
前記第1シェルチャネル出口が、前記第2シェルチャネル出口よりも、前記マルチチャネルエンクロージャ及び/または前記第1流体集束チャンバー内に更に延在する、請求項4に記載のプリントヘッド。
【請求項6】
少なくとも1つの入口と出口とを有する第2のシェルチャネルと、
前記第1流体集束チャンバーと前記分注チャネルの遠位端との間に配置された、第2のマルチチャネルエンクロージャと、を更に含み、
前記第2マルチチャネルエンクロージャが、前記分注チャネル、前記第2シェルチャネル出口、及び第2の流体集束チャンバーを含み、
前記分注チャネルが、前記第2マルチチャネルエンクロージャの中央領域に配置され、前記第2流体集束チャンバーの入口と流体連通し、第1の垂直深さを前記マルチチャネルエンクロージャ内に延在させ、好ましくは、前記分注チャネル出口が、前記第1の垂直方向の深さを前記流体集束チャンバー内に延在させ、
前記第2シェルチャネル出口が、前記分注チャネルの周りに同心状に配置され、前記第2流体集束チャンバーの入口と流体連通し、第2の垂直深さを前記マルチチャネルエンクロージャ内に延在させ、
前記第2流体集束チャンバーが、前記分注チャネルに向かって収束し、好ましくは、前記第2流体集束チャンバーが、前記分注チャネルへ向けて流体を集束させるように構成された円錐台形状を有する、請求項1に記載のプリントヘッド。
【請求項7】
前記第2マルチチャネルエンクロージャが、前記プリントヘッドの同じ層の前記第1流体集束チャンバーと重なる、請求項6に記載のプリントヘッド。
【請求項8】
前記第1シェルチャネル及び/または前記第2シェルチャネルが、前記第1シェルチャネル出口及び/または前記第2シェルチャネル出口の周囲に流体を分配するように構成された、少なくとも1つの流体分配オリフィスを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプリントヘッド。
【請求項9】
前記少なくとも1つの流体分配オリフィスが、前記第1及び/または第2シェルチャネル入口を、前記第1及び/または第2シェルチャネル出口の上部曲面の頂点に接続し、好ましくは、前記上部曲面が、放物線状または楕円形状を有する、請求項8に記載のプリントヘッド。
【請求項10】
前記第1及び/または第2シェルチャネル入口が、流体を同じまたは別個の流体分配オリフィス(複数可)に送達するように構成された2つ以上のサブチャネルを含む、請求項8または9に記載のプリントヘッド。
【請求項11】
各サブチャネルが、前記第1及び/または第2シェルチャネル入口をそれぞれの前記第1及び/または第2シェルチャネル出口の上部曲面の頂点に接続する流体分配オリフィスを含み、好ましくは、前記上部曲面が、放物線状または楕円形状を有する、請求項10に記載のプリントヘッド。
【請求項12】
各サブチャネルは、異なる材料を分注するように構成され、好ましくは、前記第1及び/または第2のシェルチャネルが2つの流体スイッチを含み、各サブチャネルが別個の流体スイッチに流体連通する、請求項10に記載のプリントヘッド。
【請求項13】
前記流体集束チャンバー(複数可)と前記分注チャネルの遠位端との間に位置するシース流体チャンバーで前記分注チャネルと収束するシース流チャネルを更に備え、好ましくは、前記シース流体チャンバーが、流体を前記分注チャネルに向けて集束させるように構成された円錐台形状を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のプリントヘッド。
【請求項14】
前記シース流チャネルが、シース流体チャンバーを介して前記分注チャネルに向かって収束する複数のシース流サブチャネルを備える、請求項13に記載のプリントヘッド。
【請求項15】
前記プリントヘッドが、前記コアチャネル出口、前記マルチチャネルエンクロージャ、及び/または前記流体分配オリフィスで、またはその近位で収束する、少なくとも2つのコア入口サブチャネルを含み、好ましくは、前記少なくとも2つのコア入口サブチャネルが、前記プリントヘッドの直前の層に、または前記コアチャネル出口、前記マルチチャネルエンクロージャ、及び/または前記流体分配オリフィスと同じ前記プリントヘッドの層に収束する、請求項1~14のいずれか一項に記載のプリントヘッド。
【請求項16】
前記コアチャネルが、前記コアチャネル出口の周囲に流体を分配するように構成された、少なくとも1つの流体分配オリフィスを更に含み、好ましくは、前記少なくとも1つの流体分配オリフィスが、前記収束したコアチャネル入口と、前記コアチャネル出口の上部曲面の頂点とを接続し、更により好ましくは、前記上部曲面が、放物線状または楕円形状を有する、請求項15に記載のプリントヘッド。
【請求項17】
各コア入口サブチャネルは、異なる材料を分注するように構成され、好ましくは、前記コアチャネルが、2つの流体スイッチを含み、各コア入口サブチャネルが、別個の流体スイッチに流体連通する、請求項15に記載のプリントヘッド。
【請求項18】
プリントヘッドであって、前記プリントヘッドが、
コアチャネルと、
複数のシェルチャネルと、
分注チャネルに向かって収束する流体集束チャンバーと、を含む、複数の流体チャネルを形成する、複数の積層を含み、
前記コアチャネルが、前記流体集束チャンバーと流体連通し、
前記コアチャネルが、前記流体集束チャンバーの中央領域を通って、前記分注チャネルと整列して長手方向に延在し、
前記複数のシェルチャネルが、前記プリントヘッドの同じ層の前記コアチャネルの周りに同心円状に配置され、前記流体集束チャンバーと流体連通し、
内側シェルチャネルが、外側シェルチャネルよりも長い長さで前記流体集束チャンバー内に延在し、
前記コアチャネルが、いずれのシェルチャネルよりも長い長さで前記流体集束チャンバー内に延在し、
シース流体チャンバーで前記分注チャネルと収束するシース流チャネルが、前記流体集束チャンバーと前記分注チャネルの遠位端との間に配置される、前記プリントヘッド。
【請求項19】
前記複数のシェルチャネルの周囲に流体を分配するように構成された、複数の流体分配オリフィスを更に含み、前記複数の流体分配オリフィスが、それぞれの前記シェルチャネル入口を、前記複数のシェルチャネルのうちの対応する前記シェルチャネル出口の上部曲面の頂点に個別に接続する、請求項18に記載のプリントヘッド。
【請求項20】
前記複数のシェルチャネルのうちの少なくとも1つのシェルチャネルが、前記ハウジングへの長手方向の深さが大きくなるにつれて増加する勾配幅を有する、請求項18に記載のプリントヘッド。
【請求項21】
プリントヘッドであって、前記プリントヘッドが、
第1の流体集束チャンバーと流体連通している1つのコアチャネル出口を形成するように収束する、別個の流体リザーバ、投入オリフィス、及び制御バルブを有する少なくとも2つのコア入口サブチャネルを含む、コアチャネルであって、好ましくは、前記少なくとも2つのコア入口サブチャネルが、前記コアチャネル出口で、またはその近位で収束する、前記コアチャネルと、
第2の流体集束チャンバーと流体連通する1つのシェルチャネル出口を形成するように収束する、別個の流体リザーバ、投入オリフィス、及び制御弁を有する少なくとも2つのシェル入口サブチャネルを含む、第1のシェルチャネルであって、任意選択で、前記第1のシェルチャネルが、3つのシェル入口サブチャネルを含み、そのうちの1つが、緩衝液を含む流体リザーバに接続されている、前記第1のシェルチャネルと、
分注チャネルであって、前記流体集束チャンバーが、前記分注チャネルに向かって収束し、好ましくは、前記流体集束チャンバーが、前記分注チャネルへ向けて流体を集束させるように構成された円錐台形状を有する、前記分注チャネルと、
前記第2の流体集束交差部と前記分注チャネルの遠位端との間に配置されたシース流体交差部で、前記分注チャネルと収束する、シース流チャネルと、含む、複数の流体チャネルを形成する複数の積層を含む、前記プリントヘッド。
【請求項22】
前記コアチャネルが、前記コアチャネル出口の周囲に流体を分配するように構成された、少なくとも1つの流体分配オリフィスを更に含み、好ましくは、前記少なくとも1つの流体分配オリフィスが、前記収束したコアチャネル入口と、前記コアチャネル出口の上部曲面の頂点とを接続し、更により好ましくは、前記上部曲面が、放物線状または楕円形状を有する、請求項21に記載のプリントヘッド。
【請求項23】
繊維構造を作製するためのシステムであって、前記システムが、
請求項1~22のいずれか一項に記載のプリントヘッドと、
三次元空間内で前記プリントヘッドの前記分注オリフィスの位置を決定するための位置決め構成要素であって、前記プリントヘッドに動作可能に接続された前記位置決め構成要素と、を備える、前記システム。
【請求項24】
前記位置決め構成要素を制御するため、及び前記プリントヘッドを通る1つ以上の流体の流量を制御するためのプログラム可能制御プロセッサを更に備える、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記プリントヘッドから分注される過剰な流体を除去するように構成された、流体除去構成要素を更に含み、前記流体除去構成要素が、過剰な流体の通過を可能にするように構成された多孔質膜を含み、及び/または前記流体除去構成要素が、過剰の流体を吸引するように構成された真空を含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記プリントヘッドを通る、前記1つ以上の流体の流量を調整するように構成された、圧力制御構成要素を更に備える、請求項23に記載のシステム。
【請求項27】
コアシェル繊維構造を生成するための方法であって、前記方法が、
繊維構造を作製するためのシステムを提供することであって、前記システムが、
請求項1~22のいずれか一項に記載のプリントヘッドであって、
前記プリントヘッドが、前記コアチャネル及び前記シェルチャネル(複数可)を通して複数の投入材料を分注するように構成され、前記シース流チャネルを通してシース液を分注するように構成され、前記投入材料のうちの少なくとも1つが、架橋性材料を含む、前記プリントヘッドと、
前記プリントヘッドから分注された材料の第1の層を受ける受け面と、
3D空間内で前記プリントヘッドの前記分注オリフィスの位置を決定するための位置決め構成要素であって、前記プリントヘッドに動作可能に接続された前記位置決め構成要素と、
前記位置決め構成要素を制御するため、及び前記プリントヘッドを通る1つ以上の流体の流量を制御するためのプログラム可能制御プロセッサと、
前記複数の投入材料及びシース液を含む流体リザーバであって、前記流体リザーバが、前記プリントヘッドと流体連通している、前記流体リザーバと、を含む、前記システムを提供することと、
前記架橋性材料を、前記分注チャネル内の前記シース液と接触させて、固化繊維構造を生成することと、
前記固化繊維構造を前記プリントヘッドの前記分注オリフィスから分注することと、含む、前記方法。
【請求項28】
前記システムが、それぞれ第1及び第2の投入材料を含む別個の流体リザーバに接続された、少なくとも2つのコア入口サブチャネルを含む、コアチャネルを含み、前記方法が、前記シェル入口サブチャネルを通して前記第1及び第2の投入材料を(交互に)分注して、連続繊維の長さに沿って異なるコア材料を含む固化繊維構造を生成することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記システムが、それぞれ第3及び第4の投入材料を含む別個の流体リザーバに接続された、少なくとも2つのシェル入口サブチャネルを含む、第1のシェルチャネルを更に含み、前記方法が、前記シェル入口サブチャネルを通して前記第3及び第4の投入材料を(交互に)分注して、連続繊維の長さに沿って異なるシェル材料を含む固化繊維構造を生成することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記システムが、それぞれ第3及び第4の投入材料を含む別個の流体リザーバに接続された、少なくとも2つのシェルチャネルを更に含み、前記方法が、前記第1及び第2のシェルチャネルを通して前記第3及び第4の投入材料を分注して、異なる同心状シェルを含む固化繊維構造を生成することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記プログラム可能制御プロセッサに、プリントする平面構造をコードすることと、
前記受け面上に前記固化繊維構造の第1の層を堆積させて、前記平面構造をプリントすることと、を更に含む、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記プログラム可能制御プロセッサに、プリントする3D構造をコードすることと、
前記平面構造の上部に前記固化繊維構造の後続層を堆積させて、3D構造をプリントすることと、を更に含む、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項28~30のいずれか一項に記載の方法によって作製された、繊維の長さ全体にわたって可変のコア及びシェル材料を有する、バイオプリント組織繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月1日出願の米国仮特許出願第62/929,720号、及び2020年5月27日出願の米国仮特許出願第63/030,885号の出願日の優先権を主張し、両出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、コアシェル繊維構造を作製するためのシステム及び方法、ならびにデジタルファイルからのこのような構造の3次元(3D)プリントに関する。いくつかの実施形態では、プリント繊維は生細胞を含む。
【背景技術】
【0003】
組織工学の技術は、無数の材料及び方法を使用して、生体の器官及び組織を模倣及び/または置き換えることができる実行可能な合成構造を作製することを長い間追求してきた。事前にパターン形成された血管系の欠如は、現在の生体組織工学戦略の成功を制限する主な要因のうちの1つであり、宿主組織と統合できる内在性の人工血管系または栄養導管を含む厚い組織構築物を作製する能力が現在ないことは、より大きく、生存可能であり、及び/または代謝的に活性である組織を生成すること及び/または移植することを妨げる主な技術的障害である。
【0004】
積層造形の一形態である3Dプリントは、デジタルファイルから直接三次元オブジェクトを作成するために適用されており、オブジェクトは、層ごとに構築され、所望の三次元構造が実現する。これらの3Dプリント技法を中空脈管パターン形成に適応させるための初期の取り組みでは、主にプリント及びその後の犠牲材料の除去に集中してきた。例えばBertassoni et al.は、gelMAなどの光架橋アクリル化ヒドロゲルの周囲のキャストから、テンプレート化されたアガロースを除去する物理的方法を使用した(Lab Chip14:2202(2014))。プリントされたアガロース繊維のGelMAへの結合は最小限であったが、残念なことに手動で除去する必要があり、これは時間がかかり、困難であり、またキャストのヒドロゲルがアガロース繊維よりも強固である必要がある。
【0005】
代替的な手法は、可溶化または液化により後で除去することができる材料から犠牲繊維のネットワークをプリントすることを含む。例えばWu et al.は、プルロニック(登録商標)F127-ジアクリレートゲルリザーバ内に犠牲プルロニック(登録商標)F127フィラメントを押し出すことで、3D灌流可能血管樹をプリントして、プリント中の支援を行った(Adv Mater.2011;23:H178-183)。周囲のアクリレート変性プルロニック(登録商標)F127-ジアクリレートを光硬化した後、温度をプルロニック(登録商標)F127の臨界ミセル温度より低くすることにより、非変性プルロニック(登録商標)F127導管を液化して、灌流可能な導管を残すことができる。同様の手法で、Lee et al.は、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を含むゼラチンの周りに、コラーゲン支持マトリックスの層を堆積させた(Biomaterials.2014;35:8092-8102)。プリント後、ゼラチンは溶けて、周りのコラーゲンへのHUVECの細胞播種を「活性化」するのに役立った。Miller et al.が犠牲材料として採用した「炭水化物ガラス」を含む他の様々な犠牲材料もプリントされており、その後の中空ネットワークの灌流が示されている(Nat Mater.2012;11:768-774)。
【0006】
しかし、これまでのところ、プルロニック(登録商標)F127は、その低温液化特性により最も一般的に使用される犠牲材料となり、Koleskyらは、これを様々な支持材料と共に使用して、厚い血管化組織構築物を作成することに成功した。(Adv Mater.2014;26:3124-3130)(co-printing channel structures of Pluronic F127 and cell-loaded gelatin-methacrylate(GelMA);Proc Natl Acad Sci USA.2016;113:3179-3184)(トロンビンと混合したプルロニック(登録商標)F127は、細胞搭載ゼラチン-フィブリノーゲンバイオインク内で犠牲導管の間接プリント用の「血管インク」に指定された)。しかし、特にプルロニック(登録商標)F127などの犠牲材料は、高濃度で細胞毒性があり、液化したプルロニック(登録商標)は中空導管から完全に除去される可能性が低く、液化したプルロニック(登録商標)が組織の周囲領域に与える影響は不明である。
【0007】
犠牲中空繊維パターン形成のより最近の代替案では、レーザー光の集束ビームを使用して、成形済み(またはプリント済み)組織構造内の領域が熱焼灼される。レーザービームが移動すると中空トンネルが残り、本技法は比較的高速であり得、分岐した中空管を高解像度の3Dでパターン形成でき、直径10~20umの毛細血管までパターン形成できる可能性がある。ビームの侵入深度は、2光子レーザー光を使用することにより増加され得、これは、集束外の光の強度を低減するのにも役立ち、よって焼灼される導管の外側領域への光毒性が低減される。
【0008】
より大きい組織内の中空管の直接バイオプリントも試みられた。例えばGao et al.は、同軸針を使用して、アルギン酸繊維のコアに塩化カルシウム架橋溶液を用いて中空のアルギン酸繊維を生成しプリントすることができることを実証した。プリントノズルは、カルシウム溶液の内部流並びにアルギン酸塩溶液(すなわちバイオインク)の外部流により、内在性の灌流可能なマイクロ導管を有する構造を作成するように構成された。この手法では、中空マイクロ導管はステージ上にプリントされ、ステージはカルシウム浴液の中へ徐々に下降して、二次架橋が行われた。(Biomaterials.2015;61:203-215.)。Hintonらにより液体浸水プリントの代替案が開発され、様々なヒドロゲルを使用して、架橋を容易にする犠牲ゼラチン微粒子浴で支持された直接構造プリントを行う押出方法が採用された。(Sci Adv.2015;1:e1500758)。
【0009】
しかし残念なことに、中空繊維ネットワークの従来の3Dバイオプリントに使用される上記のシステム、デバイス、及び材料は、それらのより実践的かつ効果的かつ広範囲にわたる実施を妨げる多くの欠点に苛まれている。上記の犠牲物質の手動(物理的)除去は、非実用的で、一貫性がなく、時間がかかり、小さい脈管では恐らく不可能である。さらに、犠牲材料により血管をパターン形成することは、中空導管を取り囲む軸状に細胞及び/または生体材料をパターン形成する能力を制限する。この技法を使用して、例えば、内皮細胞の内層を取り囲む平滑筋細胞を有する本物の細動脈の構造を模倣するパターン形成された導管ネットワークを作製する様子を想像することは困難である。
【0010】
レーザー焼灼では、侵入深度はわずか1~2mmに制限され、ビームを散乱しない光学的に透明な材料が必要であるが、ほとんどの細胞化組織は、不透明であり光を散乱する。最後に、犠牲材料の押出プリントでは、犠牲繊維の直径(及びその後の導管の内径)は、押出針の直径により決定される。この直径は固定であるため、組織の様々な領域で導管の管腔直径を動的に変更する機会はない。
【0011】
よって、血管形成促進バイオインク及び様々なタイプの細胞を中空導管に対し軸方向かつ平行に正確に配置することで、3D組織内に中空導管を分注しパターン化することができるシステム及びデバイスが求められている。求められる技術は、細胞の生存能力と適合する必要があり、プリントされる導管の内径は、単一の組織構築物内で毛細血管から大きな脈管に至るまで動的に変更可能でなくてはならない。例えば、灌流デバイスが取り付けられた組織の開口部では直径の大きい脈管を有し、次に組織の内側では管腔直径を縮小して小さい脈管をモデル化することが、望ましくあり得る。脈管直径の変更はまた、アテローム性動脈硬化症などの疾患において、流れの変化及び制限を調整するための有用なツールとなり得る。本発明は、これら及び他の満たされていないニーズに対処する。
【発明の概要】
【0012】
本発明の態様は、中空繊維及びマルチシェル構造を含む、コアシェル繊維構造を作製するため、及びデジタルファイルから3次元(3D)構造を作製するためのシステム及び方法を含む。いくつかの実施形態では、プリント繊維は生細胞を含む。本明細書で実証されるように、主題の発明を使用したコアシェル繊維の直接プリントは、様々な直径及び複数のシェルを有する繊維を生成することができ、様々なシェル内に様々なタイプの細胞を軸方向及び平行に正確に配置して搭載することで、複数の細胞層を有する中空脈管を生成することができる。更に、脈管壁の組成(細胞タイプ及び生体材料組成)は、連続的にプリントを行いながら、チャネルの長さに沿って変更することができる。
【0013】
本発明の態様は、コアシェル繊維構造を生成するためのマイクロ流体プリントヘッドを含み、前記プリントヘッドは、少なくとも1つの入口100及び出口102、ならびに1つ以上の流体スイッチを有する少なくとも1つのコアチャネルと、少なくとも1つの入口と出口を有する第1のシェルチャネルと、少なくとも1つのマルチチャネルエンクロージャ108と、分注チャネル110と、を含む、複数の流路を形成する複数の積層され、好ましくは接着した層、を含み、前記マルチチャネルエンクロージャ108は、前記コアチャネル出口102、前記第1のシェルチャネル出口106、及び第1の流体集束チャンバー112を含み、コアチャネル出口102は、マルチチャネルエンクロージャ108の中央領域に配置され、第1の流体集束チャンバー112の入口と流体連通しており、第1の垂直深さをマルチチャネルエンクロージャ108内に延在させ、好ましくは、コアチャネル出口102は、第1の垂直深さを、分注チャネル110と整列して第1の流体集束チャンバー112内に延在させ、第1のシェルチャネル出口106は、コアチャネルの周りに同心円状に配置され、第1の流体集束チャンバー112の入口と流体連通し、第2の垂直深さを、マルチチャネルエンクロージャ108内に延在させ、第1の流体集束チャンバー112は、分注チャネル110に向かって収束し、好ましくは、第1の流体集束チャンバー112は、流体を分注チャネル110に向けて集束するように構成された円錐台形状を備える。いくつかの実施形態では、第1のシェルチャネル出口106は、マルチチャネルエンクロージャ108への深さが増すにつれて増加する、勾配幅を有する。例示的な実施形態では、第1のシェルチャネル出口106は、コアチャネル出口102と交差しない回転軸を有する、中空シリンダーを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、コアチャネル出口102は、マルチチャネルエンクロージャ108の長さの大部分を通って延在する。好ましい実施形態では、第1の垂直深さは、第2の垂直深さよりも大きく、その結果、コアチャネル出口102は、第1のシェルチャネル出口106よりも、マルチチャネルエンクロージャ108及び/または第1の流体集束チャンバー112内に更に延在する。代替の実施形態では、第2の垂直深さは、第1の垂直深さよりも大きく、その結果、第1のシェルチャネル出口106は、コアチャネル出口102よりも、マルチチャネルエンクロージャ108内に更に延在する。いくつかの実施形態では、第1の流体集束チャンバー112は、プリントヘッドの別個の層に配置され、第1のシェルチャネル出口106は、プリントヘッドの前の層からプリントヘッドの隣接する下流層の第1の流体集束チャンバー112内まで延在する。
【0015】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、少なくとも2つのコアサブチャネルを備え、これらは収束して、第1の流体集束チャンバー112と流体連通する、コアチャネル出口102を形成する。好ましい実施形態では、少なくとも2つのコアサブチャネルは、コアチャネル出口102、マルチチャネルエンクロージャ108、及び/または本明細書で更に説明される流体分配オリフィスで、またはその近位で収束する。特に好ましい実施形態では、少なくとも2つのサブチャネルは、プリントヘッドの直前の層、またはコアチャネル出口102、マルチチャネルエンクロージャ、及び/または流体分配オリフィスと同じプリントヘッドの層に収束する。一実施形態で、コアチャネルは、非架橋性材料を分注するように構成される。例示的な実施形態では、第1のコアサブチャネルは、シース流体投入オリフィス及び制御バルブを備え、第2のコアサブチャネルは、緩衝液投入オリフィス及び制御バルブを備える。
【0016】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、少なくとも1つの入口及び出口を有する第2のシェルチャネル128を更に含み、第2のシェルチャネル出口及び/または入口132、106は、プリントヘッドの同じ層にあるマルチチャネルエンクロージャ108の第1のシェルチャネル出口106の周りに同心円状に配置され、第1の流体集束チャンバー112と流体連通している。好ましい実施形態では、第1のシェルチャネル出口106は、第2のシェルチャネル出口132よりも、マルチチャネルエンクロージャ108内に更に延在する。いくつかの実施形態では、第1の流体集束チャンバー112は、プリントヘッドの別個の層に配置され、第1及び/または第2のシェルチャネル出口106、132は、プリントヘッドの前の層からプリントヘッドの隣接する下流層の第1の流体集束チャンバー112内まで延在する。
【0017】
代替の実施形態では、プリントヘッドは、少なくとも1つの入口及び出口を有する第2のシェルチャネル128と、第1の流体集束チャンバー112と分注チャネル110の遠位端との間に配置された第2のマルチチャネルエンクロージャ134と、を更に含み、前記第2のマルチチャネルエンクロージャ134は、前記分注チャネル110、前記第2のシェルチャネル出口132、及び第2の流体集束チャンバー136を備え、分注チャネル110は、第2のマルチチャネルエンクロージャ134の中央領域に配置され、第2の流体集束チャンバー136の入口と流体連通し、第1の垂直深さをマルチチャネルエンクロージャ内に延在させ、好ましくは、第2のシェルチャネル出口132は、分注チャネル110の周りに同心状に配置され、第2の流体集束チャンバー136の入口と流体連通しており、第2の垂直深さをマルチチャネルエンクロージャ内に延在させ、第2の流体集束チャンバー136は、分注チャネル110に向かって収束し、好ましくは、第2の流体集束チャンバー136は、分注チャネル110に向けて流体を集束するように構成された円錐台形状を備える。いくつかの実施形態では、第1及び第2のマルチチャネルエンクロージャ108、344は、プリントヘッドの連続する層に配置される。更なる実施形態では、第1のマルチチャネルエンクロージャ及び第2のマルチチャネルエンクロージャ、またはその一部は、プリントヘッドの同じ層に配置することができ、例えば、第2のマルチチャネルエンクロージャは、プリントヘッドの同じ層で第1の流体集束チャンバーと重なることができる。いくつかの実施形態では、第2の流体集束チャンバー136は、プリントヘッドの別個の層に配置され、第2のシェルチャネル出口132は、プリントヘッドの前の層から隣接する下流層の第2の流体集束チャンバー136内に延在する。
【0018】
好ましい実施形態では、第1のシェルチャネル、第2のシェルチャネル128、またはその両方は、第1のシェルチャネル出口106及び/または第2のシェルチャネル出口132の周囲に流体を分配するように構成される、少なくとも1つの流体分配オリフィスを更に備える。一実施形態では、流体分配オリフィスは、第1及び/または第2のシェルチャネル入口104、130を、第1及び/または第2のシェルチャネル出口106、132の上部曲面114の頂点116に接続し、好ましくは、第1及び/または第2のシェルチャネル出口106、132の上部曲面114は、放物線状または楕円形状を有する。例示的な実施形態では、第1及び/または第2のシェルチャネル出口106、132は、楕円形の上面を有する切頭中空シリンダーを含み、その頂点116は、流体分配オリフィスに配置される。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1及び/または第2のシェルチャネル入口104、130は、2つの異なるヒドロゲル材料及び/または2つの異なる細胞材料を含む、2つの異なる材料を分注するように構成され、その結果、第1及び/または第2のシェル層の組成は、プリントされた繊維の長さに沿って変わることができる。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2のシェルチャネル入口104、130は、別個の流体リザーバ、投入オリフィス、及び制御弁を有する、別のサブチャネルを含む。いくつかの実施形態では、サブチャネルは、同じ流体リザーバ、投入オリフィス、及び制御弁を有する。他の実施形態では、第1及び/または第2のシェルチャネルは、2つの流体スイッチを含み得て、各サブチャネルは、別個の流体スイッチに流体連通され得る。更なる実施形態では、コアチャネルは2つの流体スイッチを含み得て、各コア入口サブチャネルは、別個の流体スイッチに流体連通され得る。
【0020】
一実施形態では、第1及び/または第2のシェルチャネル入口104、130は、別個の流体リザーバ、投入オリフィス、及び制御弁を有する、2つ以上のシェル入口サブチャネル126を含み、これらは収束して1つのシェルチャネル出口106、132及び/または流体分配オリフィスを形成する。例示的な実施形態では、1つのシェル入口サブチャネル126を通って流れる、より軟らかいヒドロゲル材料は、必要に応じて繊維を強化するために、第2のシェル入口サブチャネルを通って流れるより硬いヒドロゲル材料に切り替えることができる。別の例示的な実施形態では、1つのシェル入口サブチャネル126内の第1の細胞含有材料を、第2のシェル入口サブチャネル126内の第2の細胞含有材料に切り替えて、繊維の長さに沿って細胞タイプの配列を作成することができる。
【0021】
一実施形態では、第1及び/または第2のシェルチャネル入口104、130は、別個の流体リザーバ、投入オリフィス、及び制御弁を有する、3つ以上のシェル入口サブチャネル126を含み、これらは収束して、1つのシェルチャネル出口106、132及び/または流体分配オリフィスを形成する。好ましい実施形態では、3つのシェル入口サブチャネル126のうちの1つは、緩衝液投入オリフィス及び制御弁を含み、分注チャネル110内の架橋可能な材料の移動を容易にするように緩衝液を分注するように構成される。
【0022】
追加の実施形態では、第1及び/または第2のシェルチャネル入口104、130は、第1及び/または第2のシェルチャネル出口106、132に流体を送達するように構成された、2つ以上のサブチャネルを含み、各サブチャネルは、第1及び/または第2のシェルチャネル入口104、130と、第1及び/または第2のシェルチャネル出口106、132の上部曲面114の頂点116と、を接続する、別個の流体分配オリフィスに収束する。好ましい実施形態では、別個の流体分配オリフィスは、第1及び/または第2のシェルチャネル出口106、132の反対側に配置されている。例示的な実施形態では、上部曲面114は、放物線状または楕円形状を有する。
【0023】
一実施形態では、第1のシェルチャネルは、第1のシェルチャネル入口104と、第1のシェルチャネル出口106の上部曲面114の頂点116と、を接続する少なくとも1つの流体分配オリフィスを含み、その結果、流体は、上部曲面114に沿って、第1のシェルチャネル出口106の周囲に分散し、好ましくは、第1のシェルチャネル出口106の上部曲面114は、放物線状または楕円形状を有する。一実施形態では、第1のシェルチャネルは、1つの流体分配オリフィスで、またはその近位で収束する、少なくとも2つの第1のシェル入口サブチャネル126を含む。別の実施形態では、第1のシェルチャネルは、好ましくは第1のシェルチャネル出口106の反対側に配置された、2つの流体分配オリフィスで、またはその近位で収束する、少なくとも2つの第1のシェル入口サブチャネル126を含む。
【0024】
別の実施形態では、第2のシェルチャネル128は、第2のシェルチャネル入口130と、第2のシェルチャネル出口132の上部曲面114の頂点116と、を接続する少なくとも1つの流体分配オリフィスを含み、その結果、流体は、上部曲面114に沿って、第2のシェルチャネル出口132の周囲に分散し、好ましくは、第2のシェルチャネル出口132の上部曲面114は、放物線状または楕円形状を有する。一実施形態では、第2のシェルチャネル128は、1つの流体分配オリフィスで、またはその近位で収束する、少なくとも2つの第2のシェル入口サブチャネル126を含む。別の実施形態では、第2のシェルチャネル128は、好ましくは第2のシェルチャネル出口132の反対側に配置された、2つの流体分配オリフィスで、またはその近位で収束する、少なくとも2つの第2のシェル入口サブチャネル126を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、流体集束チャンバー(複数可)と分注チャネル110の遠位端との間に配置されたシース流体交差部で、分注チャネル110と収束する、シース流チャネル118を更に含む。いくつかの実施形態では、シース流チャネル118は、シース流体チャンバー120を介して分注チャネル110に向かって収束する、複数のシース流サブチャネルを備える。好ましい実施形態では、シース流体チャンバー120は、分注チャネル110に向かって流体を集束させるように構成される、円錐台形状を有する。いくつかの実施形態では、シース流体交差部は、プリントヘッドの最後/最終の下流層に位置する。いくつかの実施形態では、分注チャネル110は、プリントヘッドの最後から2番目の層から、最後の下流層のシース流体チャンバー120まで延在する。
【0026】
一実施形態では、流体集束チャンバー及びシース流体チャンバー120の出口での錐台の最小直径は、同じであり、全体の繊維直径を調整するために、例えば約0.01mmから約5mmの間で変更することができる。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、分注チャネル110の遠位端に配置されている、分注オリフィスを更に含む。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、分注チャネル110の一部に適合するように構成された外面と、分注チャネル110と整列するように構成された内面(管内の中空空間を画定する)と、を有する管を含む、延長先端部を更に備える。
【0027】
一実施形態では、シース流チャネル118は、シース流体投入オリフィス及び制御バルブを備え、好ましくは、プリントヘッドは、シース流チャネル118を通してシース流体を分注するように構成される。いくつかの実施形態では、シース流体は、化学架橋剤を含む。いくつかの実施形態では、シース流体は、水性溶媒を含む。
【0028】
別の態様では、本発明は、コアチャネルと、複数のシェルチャネルと、分注チャネル110に向かって収束する流体集束チャンバーと、を含む、複数の流体チャネルを形成する、複数の積み重ねられた、好ましくは結合された層を含む、プリントヘッドを提供し、コアチャネルは、流体集束チャンバーと流体連通し、流体集束チャンバーの中央領域を通って、分注チャネル110と整列して長手方向に延在し、複数のシェルチャネルは、プリントヘッドの同じ層のコアチャネルの周りに同心状に配置され、流体集束チャンバーと流体連通して、内側シェルチャネルは、外側シェルチャネルよりも長い長さで流体集束チャンバー内に延在し、コアチャネルは、いずれのシェルチャネルよりも長い長さで流体集束チャンバー内に延在し、シース流チャネル118は、流体集束チャンバーと分注チャネル110の遠位端との間に位置するシース流体交差部で分注チャネル110と収束する。
【0029】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、複数のシェルチャネルの周囲に流体を分注するように構成された複数の流体分配オリフィスを更に含み、複数の流体分配オリフィスは、それぞれのシェルチャネル入口122と、複数のシェルチャネルのうちの対応するシェルチャネル出口の上部曲面114の頂点116とを個別に接続し、好ましくは、第2のシェルチャネル出口132の上部曲面114は、放物線状または楕円形状を有する。例示的な実施形態では、複数のシェルチャネルのうちの少なくとも1つのシェルチャネルは、ハウジングへの長手方向の深さが大きくなるにつれて増加する勾配幅を有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、少なくとも1つの入口及び出口を有する第3、第4、第5及び/または第6のシェルチャネルを更に含み、第3、第4、第5及び/または第6のシェルチャネル出口のそれぞれは、プリントヘッドの同じ層にあるマルチチャネルエンクロージャ内の直前のシェルチャネル出口の周りに同心状に配置され、流体集束チャンバーと流体連通している。いくつかの実施形態では、流体集束チャンバーは、プリントヘッドの別個の層に配置され、シェルチャネル出口は、プリントヘッドの前の層から隣接する下流層の第2の流体集束チャンバー内に延在する。好ましい実施形態では、第3、第4、第5及び/または第6のシェルチャネル出口のそれぞれは、直前のシェルチャネル出口よりも短い距離でマルチチャネルエンクロージャ内に延在し、コアチャネルは、第1のシェルチャネルよりもマルチチャネルエンクロージャ内に更に延在する。
【0031】
代替の実施形態では、プリントヘッドは、少なくとも1つの入口及び出口を有する、第3、第4、第5、及び/または第6のシェルチャネルと、第2の流体集束チャンバー136と分注チャネル110の遠位端との間に配置された第3、第4、第5、及び/または第6のマルチチャネルエンクロージャと、を更に含み、前記第3、第4、第5、及び/または第6のマルチチャネルエンクロージャは、前記分注チャネル110、前記第3、第4、第5、及び/または第6のシェルチャネル出口、及び第3、第4、第5、及び/または第6の流体集束チャンバーを備え、分注チャネル110は、それぞれのマルチチャネルエンクロージャの中央領域に配置され、それぞれの流体集束チャンバーの入口と流体連通し、第1の垂直深さをマルチチャネルエンクロージャ内に延在し、第3、第4、第5、及び/または第6のシェルチャネル出口は、分注チャネル110の周りに同心状に配置され、それぞれの流体集束チャンバーの入口と流体連通し、第2の垂直深さをそれぞれのマルチチャネルエンクロージャ内に延在し、第3、第4、第5、及び/または第6の流体集束チャンバーは、分注チャネル110に向かって収束し、好ましくは、第3、第4、第5、及び/または第6の流体集束チャンバーは、分注チャネル110に向けて流体を集束するように構成された円錐台形状を備える。いくつかの実施形態では、第3、第4、第5及び/または第6のマルチチャネルエンクロージャは、プリントヘッドの連続する層に配置される。いくつかの実施形態では、シェルチャネル出口は、プリントヘッドの前の層から、プリントヘッドの隣接する下流層のそれぞれの流体集束チャンバー内に延在することができる。
【0032】
1つの好ましい実施形態では、本発明は、第1の流体集束チャンバー112と流体連通している1つのコアチャネル出口102を形成するように収束する、異なる流体リザーバ、投入オリフィス、及び制御バルブを有する、少なくとも2つのコア入口サブチャネルを含む、コアチャネルと;第2の流体集束チャンバー136と流体連通している1つのシェルチャネル出口を形成するように収束する、異なる流体リザーバ、投入オリフィス、及び制御弁を有する、少なくとも2つのシェル入口サブチャネル126を含む、第1のシェルチャネルと;分注チャネル110であって、流体集束チャンバーが分注チャネルに向かって収束し、好ましくは、流体集束チャンバーが分注チャネル110に向かって流体を集束するように構成された円錐錐台形状を含む、前記分注チャネル110と;第2の流体集束交差部と分注チャネル110の遠位端との間に位置するシース流体交差部で分注チャネル110と収束する、シース流チャネル118と;を備える、複数の流体チャネルを形成する複数の積層を含む、プリントヘッドを示す。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのコア入口サブチャネルは、コアチャネル出口102で、またはその近位で、好ましくは、コアチャネル出口102と同じ、または直前のプリントヘッドの層で収束する。いくつかの実施形態では、第1のシェルチャネルは、3つのシェル入口サブチャネル126を含み、そのうちの1つは、緩衝液を含む、流体リザーバに接続されている。
【0033】
いくつかの実施形態では、コアチャネルは、前記コアチャネル出口102の周囲に流体を分配するように構成された、少なくとも1つの流体分配オリフィスを更に含み、好ましくは、少なくとも1つの流体分配オリフィスが、収束したコアチャネル入口と、コアチャネル出口102の上部曲面114の頂点116とを接続し、更により好ましくは、上部曲面114は放物線状または楕円形状を有する。
【0034】
本発明の態様は、繊維構造を生成するためのシステムを含み、前記システムは、入口及び出口を有するコアチャネルと、入口及び出口を有する第1のシェルチャネルと、マルチチャネルエンクロージャと、分注チャネル110と、を備えるプリントヘッドであって、前記マルチチャネルエンクロージャは、前記コアチャネル出口102、前記第1のシェルチャネル出口106、及び流体集束チャンバーを含み、コアチャネル出口102は、マルチチャネルエンクロージャの中央領域に配置され、流体集束チャンバーの入口と流体連通し、第1の垂直深さをマルチチャネルエンクロージャ内に延在させ、好ましくは、コアチャネル出口102が、第1の垂直方向の深さを分注チャネル110と整列して流体集束チャンバー内に延在させ、第1のシェルチャネル出口106が、コアチャネルの周りに同心状に配置され、流体集束チャンバーの入口と流体連通し、第2の垂直深さをマルチチャネルエンクロージャ内に延在させ、流体集束チャンバーは、分注チャネル110に向かって収束し、好ましくは、流体集束チャンバーは、流体を分注チャネル110に向けて集束させるように構成された円錐台形状を含む、前記プリントヘッドと;第1の流体集束交差部と分注チャネル110の遠位端との間に位置するシース流体交差部で分注チャネル110と収束するシース流チャネル118と;プリントヘッドから分注された材料の第1の層を受けるための受け面と;プリントヘッドの分注オリフィスを3D空間に位置決めするための位置決め構成要素であって、前記位置決め構成要素が、プリントヘッドに動作可能に連結されている、前記位置決め構成要素と;を備える。
【0035】
いくつかの実施形態では、システムは更に、位置決め構成要素を制御するため、及びプリントヘッドを通る1つ以上の流体の流量を制御するためのプログラム可能制御プロセッサを備える。いくつかの実施形態では、システムはさらに、プリントヘッドから分注された過剰流体を除去するように構成された流体除去構成要素を備える。いくつかの実施形態では、流体除去構成要素は、過剰流体の通過を可能にするように構成された多孔質膜を含む。いくつかの実施形態では、流体除去構成要素は、吸収性材料を含む。いくつかの実施形態では、流体除去構成要素は、過剰流体を吸引するように構成された真空を含む。いくつかの実施形態では、真空は、受け面の下に適用される。いくつかの実施形態では、真空は、受け面の上に適用される。いくつかの実施形態では、真空は、プリントヘッド上の1つ以上の真空チャネルを介して適用される。いくつかの実施形態では、1つ以上の真空チャネルは、プリントヘッド上の分注オリフィス近くに配置される。
【0036】
いくつかの実施形態では、システムはさらに、プリントヘッドを通る1つ以上の流体の流量を調整するように構成された圧力制御構成要素を備える。いくつかの実施形態では、システムはさらに、プリントヘッドと流体連通している1つ以上の流体リザーバを備える。いくつかの実施形態では、流体リザーバは、シース液を含む。いくつかの実施形態では、シース液は、投入材料を固化するように構成された架橋液を含む。いくつかの実施形態では、架橋液は、二価カチオンを含む。いくつかの実施形態では、二価カチオンはCa++である。いくつかの実施形態では、流体リザーバは、緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、緩衝液は、投入材料との混和性を有する。いくつかの実施形態では、流体リザーバは、投入材料を含む。いくつかの実施形態では、投入材料は、架橋性材料、例えばヒドロゲルを含む。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルはアルギン酸塩を含む。いくつかの実施形態では、アルギン酸塩は、解重合されたアルギン酸塩である。いくつかの実施形態では、投入材料は、1つ以上の生細胞を含む。いくつかの実施形態では、投入材料は、細胞外基質材料を含む。いくつかの実施形態では、投入材料は、活性剤を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、システムは、異なる投入材料を含む流体リザーバに接続された、少なくとも2つのシェル入口サブチャネル126、及び/または少なくとも2つのシェルサブチャネルを含む第1のシェルチャネルを備える、プリントヘッドを更に備え、方法は、第1の投入材料及び第2の投入材料を含む、コアシェル繊維構造を生成することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、第1及び第2の投入材料を第1及び第2のシェルチャネルを通して分注して、異なる同心シェルを含む、固化繊維構造を生成することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、第1及び第2の投入材料をシェル入口サブチャネル126を通して分注して、連続繊維構造の長さに沿って異なるシェル材料を含む固化繊維構造を生成することを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、分注チャネル110を通る一定の質量流量を生成するように構成される。いくつかの実施形態では、システムはさらに、架橋構成要素を備える。いくつかの実施形態では、架橋構成要素は、UVランプを備える。いくつかの実施形態では、架橋構成要素は、分注オリフィスに隣接して配置される。
【0039】
本発明の態様は、固化繊維構造を生成するための方法を含み、前記方法が、繊維構造を生成するためのシステムを提供することであって、前記システムが、入口と出口を有するコアチャネルと、入口と出口を有する第1のシェルチャネルと、第1のマルチチャネルエンクロージャ108と、分注チャネル110と、を含む、複数の流体チャネルを形成する複数の積層され、好ましくは接着された層を含むプリントヘッドであって、前記マルチチャネルエンクロージャ108は、前記コアチャネル出口102、第1シェルチャネル出口106、及び第1の流体集束チャンバー112を含み、コアチャネル出口102は、マルチチャネルエンクロージャ108の中央領域に配置され、第1の流体集束チャンバー112の入口と流体連通し、第1の垂直深さをマルチチャネルエンクロージャ108内に延在し、好ましくは、コアチャネル出口102は、第1の垂直方向の深さを分注チャネル110と整列して流体集束チャンバー内に延在し、第1のシェルチャネル出口106は、コアチャネルの周りに同心状に配置され、流体集束チャンバーの入口と流体連通し、第2の垂直深さをマルチチャネルエンクロージャ108内に延在し、流体集束チャンバーは、分注チャネル110に向かって収束し、好ましくは、流体集束チャンバーは、流体を分注チャネル110に向けて集束するように構成された円錐台形状を含む、前記プリントヘッドと;第1の流体集束交差部と分注チャネル110の遠位端との間に位置するシース流体交差部で分注チャネル110と収束するシース流チャネル118と;プリントヘッドから分注された材料の第1層を受けるための受け面と;プリントヘッドの分注オリフィスを3D空間に位置決めするための位置決め構成要素であって、前記位置決め構成要素が、プリントヘッドに動作可能に結合されている、前記位置決め構成要素と;位置決め構成要素を制御するため、及びプリントヘッドを通る1つ以上の流体の流量を制御するためのプログラム可能な制御プロセッサと;第1の投入材料を含む第1の流体リザーバと;緩衝液を含む第2の流体リザーバと;シース溶液を含む第3の流体リザーバと;を備える、前記システムであって、前記シース溶液が架橋溶液を含み、前記流体リザーバがプリントヘッドと流体連通している、前記システムを提供することと、第1の投入材料を分注チャネル110に通過させることと、第1の投入材料を架橋構成要素で架橋して固化繊維構造を生成することと、固化繊維構造をプリントヘッドの分注オリフィスから分注することと、を含む。
【0040】
好ましい実施形態では、方法は、プリント繊維内に中空コアを形成するために、コアチャネルを通して緩衝液及び/またはシース流体を、1本以上のシェルチャネルを通して1つ以上の投入材料を、シース流チャネル118を通してシース流体を、同時に分注することを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、コアチャネル内の非架橋性材料は緩衝液を含み、シース流チャネル118内のシース流体は化学架橋剤を含み、シース流体交差部で接触が起こり、分注チャネル110内で架橋性材料の流れの外面は固化する。
【0042】
いくつかの実施形態では、コアチャネル内の非架橋性材料は化学架橋剤を含み、シース流チャネル118内のシース流体は水性溶媒を含み、第1の流体集束交差部で接触が起こり、分注チャネル110内で架橋性材料の流れの内面は固化する。
【0043】
いくつかの実施形態では、コアチャネル内の非架橋性材料は化学架橋剤を含み、シース流チャネル118内のシース流体は化学架橋剤を含み、第1の流体集束交差部で接触が起こり、分注チャネル内で架橋性材料の流れの内面は固化し、シース流体交差部で接触が起こり、分注チャネル110内で架橋性材料の流れの外面は固化する。
【0044】
いくつかの実施形態では、方法は更に、プログラム可能制御プロセッサに、プリントする平面構造をコードすることと、受け面上に固化繊維構造の第1の層を堆積させて、平面構造をプリントすることと、を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、方法は更に、プログラム可能制御プロセッサに、プリントする3D構造をコードすることと、平面構造の上部に固化繊維構造の後続層を堆積させて、3D構造をプリントすることと、を含む。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、繊維の長さに沿って可変コア及び/またはシェル組成を有する連続固化繊維構造を生成するための方法を提供し、前記方法は、繊維構造を生成するためのシステムを提供することであって、前記システムが、第1の流体集束チャンバー112と流体連通している1つのコアチャネル出口102を形成するように収束する、別個の流体リザーバ、投入オリフィス及び制御バルブを有する少なくとも2つのコア入口サブチャネルを含むコアチャネルと、第2の流体集束チャンバー136と流体連通している1つのシェルチャネル出口を形成するように収束する、別個の流体リザーバ、投入オリフィス及び制御バルブを有する少なくとも2つのシェル入口サブチャネル126を含む第1のシェルチャネルと、分注チャンバー110と、を含む、プリントヘッドであって、流体集束チャンバーは、分注チャネル110に向かって収束し、好ましくは、流体集束チャンバーは、流体を分注チャネル110に向けて集束するように構成された円錐台形状を備える、プリントヘッドと;第2の流体集束交差部と分注チャネル110の遠位端との間に位置するシース流体交差部で分注チャネル110と収束するシース流チャネル118と;プリントヘッドから分注された材料の第1層を受けるための受け面と;プリントヘッドの分注オリフィスを3D空間に位置決めするための位置決め構成要素であって、前記位置決め構成要素が、プリントヘッドに動作可能に連結されている、前記位置決め構成要素と;位置決め構成要素を制御するため、及びプリントヘッドを通る1つ以上の流体の流量を制御するためのプログラム可能な制御プロセッサと;第1のコア入口サブチャネルに接続された第1の投入材料を含む第1の流体リザーバと;第2のコア入口サブチャネルに接続された第2の投入材料を含む第2の流体リザーバと;第1のシェル入口サブチャネル126に接続された第3の投入材料を含む第3の流体リザーバと;第2のシェル入口サブチャネル126に接続された第4の投入材料を含む第4の流体リザーバと;シース流チャネル118に接続されたシース溶液を含む第5の流体リザーバと;を含み、シース溶液が架橋溶液を含み、流体リザーバがプリントヘッドと流体連通している、前記システムを提供することと、第1または第2の投入材料を交互に分注チャネル110に通過させることと、及び同時に、第3または第4の投入材料を分注チャネル110に交互に通過させることと、第1、第2、第3及び/または第4の投入材料を架橋成分で架橋して、固化繊維構造を生成することと、固化繊維構造をプリントヘッドの分注オリフィスから分注することと、を含む。いくつかの実施形態にて、第1及び/または第2の投入材料は、架橋不可能な材料を含む。
【0047】
別の実施形態では、第1のシェルチャネルは3つのシェル入口サブチャネルを含み、緩衝液を含む第6の流体リザーバは第3のシェル入口サブチャネル126に接続され、この方法は、緩衝液を分注チャネル110に通して、架橋可能な材料を移動させ、繊維を終端させることを含む。
【0048】
更なる態様にて、主題の方法によって生成されたバイオプリント組織繊維はまた、繊維の長さ全体にわたって可変のコア及びシェル材料を有することが企図される。
【0049】
本発明はまた、本明細書の実施例1に詳細に示されているように、破裂することなく外部灌流システムに付着することができる合成の灌流可能な中空組織繊維を作製するという技術的課題を解決する。一態様では、本発明は、内腔と、繊維の遠位端及び近位端に強化ヒドロゲル材料を含む、前記内腔を取り囲む連続内部シェル層と、それらの間の生体適合性ヒドロゲル材料と、を含む、バイオプリント組織繊維を提供する。生体適合性ヒドロゲル材料は、好ましくは、少なくとも1つの生物学的材料、例えば、生細胞を含むが、強化ヒドロゲル材料は、無細胞である。別の実施形態では、繊維は、強化ヒドロゲル材料を含む、第2の外部連続シェル層を更に含む。
【0050】
いくつかの実施形態にて、強化ヒドロゲル材料は、例えば、アルギン酸塩、キトサン、これらに限定されないが、PEGDA、PEGTA、ポリビニルアルコール(PVA)、PCL、PLGAを含む、アクリレート化PEGから選択される。いくつかの実施形態にて、生体適合性ヒドロゲル材料は、例えば、アルギン酸塩、キトサン、アクリレート化PEG、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、フィブリン/フィブリノーゲン、脱細胞化組織ECM、ヒアルロン酸、ゼラチン、及びメタクリレート化ゼラチンを含むECM因子から選択される。例示的な実施形態では、強化ヒドロゲル材料は、より高濃度の、例えば、3.5~4.5重量%、好ましくは3.8~4.2重量%、より好ましくは約4重量%のアルギン酸塩材料を含み、生体適合性ヒドロゲル材料は、より低濃度の、例えば、1.0~1.5重量%、好ましくは1.2~1.4重量%、より好ましくは約1.3重量%のアルギン酸塩材料を含む。
【0051】
いくつかの実施形態にて、少なくとも1つの生物学的材料は、生細胞、例えば、膵臓(アルファ、ベータ、デルタ、イプシロン、ガンマ)を含む内分泌及び外分泌腺、肝臓(肝細胞、クッパー、星、類洞細胞)、甲状腺(濾胞細胞)、松果体(松果体細胞)、下垂体腺(成長ホルモン産生細胞、乳腺刺激ホルモン分泌細胞、性腺刺激ホルモン分泌細胞、副腎皮質刺激ホルモン分泌細胞、及び甲状腺刺激ホルモン産生細胞)、胸腺(胸腺細胞、胸腺上皮細胞、胸腺間質細胞)、副腎(皮質細胞、クロム親和細胞)、卵巣(顆粒膜細胞)、精巣(ライディッヒ細胞)、ならびに胃腸管(腸内分泌細胞-腸、胃、膵臓)からの細胞を含む。好ましい実施形態では、少なくとも1つの生物学的材料は、生物学的に活性な薬剤、例えば、インスリン、グルカゴン、グレリン、膵臓ポリペプチド、血管新生因子、成長因子、ホルモン、抗体、酵素、タンパク質、エキソソームなどを発現する/分泌する、細胞集団を含む。
【0052】
本発明の態様はまた、灌流可能な中空組織繊維を生成するための方法を含み、前記方法は、別個の流体リザーバ、投入オリフィス及び制御弁を有する、少なくとも2つのシェル入口サブチャネル126を含む、第1のシェルチャネルを備える、主題の発明によるプリントヘッドを提供することと;コアチャネルを通してシース流体、第1シェル入口サブチャネル126を通して強化ヒドロゲル材料、第2シェル入口サブチャネル126を通して1つ以上の生体材料を含む生体適合ヒドロゲル材料、及びシース流チャネル118を通してシース流体を分注することと;プリント繊維の長さに沿って、強化ヒドロゲル材料と生体適合性ヒドロゲル材料との間を移行することと;を含む。この方法では、強化された材料を灌流可能な繊維の端に組み込んで、例えば、針の挿入などを介して、外部灌流システムに取り付け可能にすることができる。別の実施形態では、プリントヘッドは、本明細書に記載の第2のシェルチャネル128を更に含み、方法は、同じまたは異なる強化ヒドロゲル材料を第2のシェルチャネル128を通して分注して、第1のシェル材料の周りに同心状の第2のシェルを生成して、繊維をさらに強化し、繊維の全長に沿った破裂を防ぐことを含む。
【0053】
本発明はまた、本明細書の実施例1に詳細に示されているように、破裂することなく外部灌流システムに付着することができる合成の灌流可能な中空組織繊維を作成するという技術的課題を解決する。一態様では、本発明は、内腔と、繊維の遠位端及び近位端に強化ヒドロゲル材料を含む、前記内腔を取り囲む連続内部シェル層と、それらの間の生体適合性ヒドロゲル材料と、を含む、バイオプリント組織繊維を提供する。生体適合性ヒドロゲル材料は、好ましくは、少なくとも1つの生物学的材料、例えば、生細胞を含むが、強化ヒドロゲル材料は、無細胞である。別の実施形態では、繊維は、強化ヒドロゲル材料を含む、第2の外部連続シェル層を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】1つの流体分配オリフィスを有する、主題の発明の同心シェルプリントヘッド設計の図である。
図2】1つの流体分配オリフィスを有する、主題の発明の同心シェルプリントヘッド設計における、マルチチャネルエンクロージャ及びシース流チャンバーの側面図、ならびに拡大詳細図である。
図3】1つの流体分配オリフィスを有する、主題の発明の同心シェルプリントヘッド設計における、マイクロ流体経路の主要な構成要素を示し、識別する。
図4】Aは、主題の発明の同心シェルプリントヘッド設計における、1つの流体分配オリフィスを通る流れパターンの図であり、Bは、本発明の同心シェルプリントヘッド設計のマルチチャネルエンクロージャ及びシース流チャンバーにおける、1つの流体分配オリフィスを通る流れパターンの図である。
図5】2つの流体投入オリフィスを有する、主題の発明のマルチシェル同心プリントヘッド設計における、マルチチャネルエンクロージャ及びシース流チャンバーの側面図、ならびに拡大詳細図である。
図6】2つの流体分配オリフィスを有する、主題の発明のマルチシェル同心プリントヘッド設計における、マイクロ流体経路の主要な構成要素を示し、識別する。
図7】Aは、2つの流体分配オリフィスを有する、主題の発明のマルチシェル同心プリントヘッド設計における、2つの流体分配オリフィスを通る流れパターンの図であり、Bは、本発明のマルチシェル同心プリントヘッド設計のマルチチャネルエンクロージャ及びシース流チャンバーにおける、2つの流体分配オリフィスを通る流れパターンの図である。
図8A】1つの流体分配オリフィスに収束する、2つの別個のシェル入口サブチャネルを含む、主題の発明の実施形態の図、及び拡大詳細図を提供する。
図8B】1つの流体分配オリフィスに収束する、2つの別個のシェル入口サブチャネルを含む、主題の発明の実施形態の図、及び拡大詳細図を提供する。
図9A】1つの流体分配オリフィスに収束する3つの別個のシェル入口サブチャネルを含む、主題の発明によるプリントヘッド設計の透視図(A)を提供する。
図9B】1つの流体分配オリフィスに収束する3つの別個のシェル入口サブチャネルを含む、主題の発明によるプリントヘッド設計の上面図(B)を提供する。
図9C】1つの流体分配オリフィスに収束する3つの別個のシェル入口サブチャネルを含む、主題の発明によるプリントヘッド設計の分解層図(C)を提供する。
図10A】第2のシェルチャネル、第2のマルチチャネルエンクロージャ、及びプリントヘッドの第1の流体集束チャンバーとは異なる層の第2の流体集束チャンバーを含む、主題の発明によるプリントヘッド設計の透視図(A)を提供する。
図10B】第2のシェルチャネル、第2のマルチチャネルエンクロージャ、及びプリントヘッドの第1の流体集束チャンバーとは異なる層の第2の流体集束チャンバーを含む、主題の発明によるプリントヘッド設計の上面図(B)を提供する。
図10C】第2のシェルチャネル、第2のマルチチャネルエンクロージャ、及びプリントヘッドの第1の流体集束チャンバーとは異なる層の第2の流体集束チャンバーを含む、主題の発明によるプリントヘッド設計の分解層図(C)を提供する。
図11】第2のシェルチャネル、第2のマルチチャネルエンクロージャ、及び第1の流体集束チャンバーと重なる第2の流体集束チャンバーを含む、主題の発明によるプリントヘッド設計の透視図を提供する。第2のマルチチャネルエンクロージャは、プリントヘッドの同じ層の第1の流体集束チャンバーと重なる。
図12】主題の発明による灌流可能な中空組織繊維の様々な図を提供する。
図13】主題の発明による灌流可能な中空組織繊維の追加の図を提供する。
図14】繊維の長さに沿った可変コア及び/またはシェル組成を含む、主題の発明による合成組織繊維の様々な図を提供する。
図15】ある範囲の内腔及び繊維直径を有する、主題の発明による合成中空組織繊維を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の態様は、中空コア繊維及びマルチシェル繊維を含む、コアシェル繊維構造を作製するため、及びデジタルファイルから3次元(3D)構造を作製するためのシステム及び方法を含む。いくつかの実施形態では、プリント繊維は生細胞を含む。
【0056】
定義
本明細書を解釈する目的のために、下の定義を適用するが、適当と認められる場合には、単数形で用いられる用語はその複数形も含み、逆もまた同様である。記載されるいずれかの定義が、参照により本明細書に援用されるいずれかの文献と矛盾する場合には、下記に記載される定義が優先されるものとする。
【0057】
本明細書で使用される用語「変位」は、第1の材料または流体が第2の材料または流体を所与の位置から移動させる能力を指す。例えば、いくつかの実施形態では、緩衝液は、投入材料を分注チャネル110内の位置から(例えば分注チャネル110の近位端から)変位させるように構成される。いくつかの実施形態では、変位は、約1秒未満、例えば約900、800、700、600、500、400、300、200、または100ミリ秒以下で起こる瞬間的な変位である。
【0058】
本明細書で使用される用語「混和性」は、2つの異なる液体が、組み合わされた時に均質な混合物を形成する能力を指す。
【0059】
本明細書で使用される用語「質量流量」は、単位時間当たりに所与の位置を通過する物質の質量を指す。本明細書で使用される用語「一定の質量流量」は、単位時間あたり一定のままである質量流量を指す。
【0060】
本明細書で使用される用語「固化」は、堆積時にその形状忠実度及び構造的完全性を維持する材料の固体状態または半固体状態を指す。本明細書で使用される用語「形状忠実度」は、材料が、著しく広がることなくその三次元形状を維持する能力を意味する。いくつかの実施形態では、固化材料は、約30秒以上、例えば約1、10、または30分以上、例えば約1、10、24、または48時間以上の期間にわたり、その三次元形状を維持する能力を有するものである。本明細書で使用される用語「構造的完全性」は、材料が、破損または屈曲に抵抗しながら、自重を含む荷重下で結合状態を保つ能力を意味する。
【0061】
いくつかの実施形態では、固化組成物は、約5、10、15、20、または25キロパスカル(kPa)より大きい、より好ましくは約30、40、50、60、70、80、または90kPaより大きい、さらにより好ましくは約100、110、120、または130kPaより大きい弾性率を有するものである。好ましい弾性率の範囲には、約5、10、15、20、25、または50Paから、約80、100、120、または140kPaまでが含まれる。主題の発明によれば、投入材料の弾性率は、投入材料の意図する機能に応じて、有利に変化させることができる。いくつかの実施形態では、細胞の成長及び移動を支援するために、より低い弾性率が使用され、他の実施形態では、はるかに高い弾性率が使用され得る。
【0062】
本明細書で使用される用語「天然アルギン酸塩ポリマー」は、1つ以上の天然源(例えば1つ以上の種の褐色海藻また海草)から単離され精製されたアルギン酸塩ポリマーを指す。
【0063】
本明細書で使用される用語「解重合」は、ポリマー鎖をモノマーまたは他のより小さな単位に分解することを指す。
【0064】
本明細書で使用される用語「ヒドロゲル」は、水と、親水性であるポリマー鎖のネットワークまたは格子とを含む組成物を指す。
【0065】
本明細書で使用される用語「シース流体」または「シース液」は、材料が流体チャネルを通過する時に材料を包むまたは「シース」するために少なくとも部分的に使用される流体を指す。いくつかの実施形態では、シース流体は、水性溶媒、例えば水またはグリセロールを含む。いくつかの実施形態では、シース流体は、化学架橋剤を含む。架橋剤の非限定的な例には、二価カチオン(例えばCa2+、Ba2+、Sr2+など)、トロンビン、及び重曹などのpH修飾化学物質が挙げられる。
【0066】
本明細書で使用される用語「過剰シース流体」は、分注オリフィスから分注されたシース流体の一部であって、本明細書で提供されるシステムまたは方法の1つ以上の実施形態を使用してプリントされる繊維構造の一部を形成しない、シース流体の一部を指す。例えば、過剰シース流体は、プリントヘッドの分注チャネル110を通って分注オリフィスを通る材料(例えばヒドロゲル)の通過を潤滑化するのに有用であり得る。過剰シース流体は、分注オリフィスから分注されると、分注された材料の層の表面から受け面上に流出し得、受け面上に集まり得る、すなわち溜まり得る。
【0067】
本明細書で使用される用語「チャネル長」は、流体チャネルを第1の位置から第2の位置まで追跡する時に移動した直線距離を指す。
【0068】
本明細書で使用される用語「収束角度」は、収束する2本の流体チャネルの間に形成される角度を指す。
プリントヘッド
【0069】
本発明の態様は、マルチシェル繊維及び/または中空繊維を含む、1つ以上のコアシェル繊維構造を作製するために使用することができるプリントヘッドを含む。本発明の実施形態によるプリントヘッドは、層内を垂直に流れる複数の相互接続された流体チャネルを形成する、複数の積層を含み、それは、好ましくは、一緒に結合されて、共通のハウジングまたはエンクロージャを形成し、1つ以上の投入材料を含むコアシェル繊維構造を作製するように構成される。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、固化中空繊維構造を作製するように構成される。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、生細胞を含む、固化中空繊維構造を作製するように構成される。
【0070】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、遠位端及び近位端を有する分注チャネル110を備える。本発明の実施形態による分注チャネルは、約1mm~約100mmの範囲のチャネル長、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または約95mmのチャネル長を有し得る。本発明の実施形態による分注チャネルは、約10μm~約5mmの範囲の幅または直径、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、または3.0mmの幅または直径を有し得る。本発明の実施形態による分注チャネルは、約10μm~約5mmの範囲の深さ、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、または3.0mmの深さを有し得る。本発明の実施形態による分注チャネルは、任意の好適な断面形状、例えば円形、楕円形、正方形、または長方形の断面形状を有し得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、分注チャネル110は、分注オリフィスを備える。いくつかの実施形態では、分注オリフィスは、分注チャネル110の遠位端に配置されている。本発明の実施形態による分注オリフィスは、約10μm~約5mmの範囲の直径、例えば約15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100μm、あるいは例えば約150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、または950μmの直径を有し得る。本発明の実施形態による分注オリフィスは、任意の好適な断面形状、例えば円形、楕円形、正方形、または長方形の断面形状を有し得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドはさらに、プリントヘッドから材料を分注するためのオリフィスを有する延長先端部を備える。このような延長先端部により、例えばマルチウェルプレート(例えば6、24、または96個以上のウェルを有する標準的なマイクロタイタープレート、マルチウェルプレート、またはマイクロプレート)内のウェル、またはペトリ皿などの限定領域での材料の正確な分注及びその堆積が容易となる。いくつかの実施形態では、延長先端部は、分注チャネル110の一部に適合するように構成された外部と、分注チャネルと整列するように構成された内面(管内の中空空間を画定する)と、を有する管(例えばプラスチック製、ガラス製、または金属製)を備える。延長先端部は、分注チャネル110内に挿入することができ、これにより分注チャネルの長さを延長して、ウェルプレートインサートまたはペトリ皿などの限定空間に、延長先端部のオリフィスから分注された材料を堆積させることが容易となる。
【0073】
本発明の実施形態によるプリントヘッドは、1つ以上のコアチャネルを備える。特定の実施形態では、1つ以上のコアチャネルは、分注チャネル110の近位端で分注チャネル110と収束する。いくつかの実施形態では、コアチャネルは、分注チャネル110と、約0~180度の範囲の収束角度、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、または175度の収束角度で収束する。本発明の実施形態によるコアチャネルは、任意の好適なチャネル長を有し得る。いくつかの実施形態では、コアチャネルは、約100μm~約100mmの範囲のチャネル長、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95mmのチャネル長を有する。本発明の実施形態によるコアチャネルは、約10μm~約5mmの範囲の幅または直径、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、または3.0mmの幅または直径を有し得る。本発明の実施形態による材料チャネルは、約10μm~約5mmの範囲の深さ、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、または3.0mmの深さを有し得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、流体集束チャンバーと流体連通する1つのコアチャネル出口102を形成するために収束する、同じまたは異なる流体リザーバ、投入オリフィス、及び制御弁を有する、少なくとも2つのコアサブチャネルを備える。好ましい実施形態では、少なくとも2つのコアサブチャネルは、移動距離を短縮し、材料転移点を凝固点に近づけるために、コアチャネル出口102、マルチチャネルエンクロージャ108、及び/または本明細書で更に説明する流体分配オリフィスで、またはその近位で、例えば、約100μm~約50mm以内で収束する。本発明者は、それによりプリント繊維内の材料転移間のスミアを防ぐことができると判断した。特に好ましい実施形態では、少なくとも2つのサブチャネルは、プリントヘッドの直前の層、またはコアチャネル出口102、マルチチャネルエンクロージャ、及び/または流体分配オリフィスと同じプリントヘッドの層に収束する。いくつかの実施形態では、サブチャネルが収束する位置と、コアチャネル出口102、マルチチャネルエンクロージャ108及び/または流体分配オリフィスとの間のチャネル長は、約100μm~約50mm、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、または50mmの範囲である。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、3~10つの範囲の複数のコアサブチャネル、例えば4、5、6、7、8、または9つのサブチャネルを備える。本発明の実施形態によるコアチャネルは、任意の好適な断面形状、例えば円形、楕円形、正方形、または長方形の断面形状を有し得る。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、コアチャネル(複数可)を通して非架橋性材料を分注するように構成される。
【0075】
本発明の実施形態によるプリントヘッドは、入口及び出口を有するコアチャネルと、入口及び出口を有する第1のシェルチャネルと、マルチチャネルエンクロージャ108と、分注チャネル110と、を含み、前記マルチチャネルエンクロージャ108は、前記コアチャネル出口102、前記第1のシェルチャネル出口106、及び流体集束チャンバーを含み、コアチャネル出口102は、マルチチャネルエンクロージャ108の中央領域に配置され、流体集束チャンバーの入口と流体連通しており、第1の垂直深さをマルチチャネルエンクロージャ108内に延在し、好ましくは、コアチャネル出口102は、第1の垂直深さを分注チャネル110と整列して流体集束チャンバー内に延在し、第1のシェルチャネル出口106は、コアチャネルの周りに同心状に配置され、流体集束チャンバーの入口と流体連通し、第2の垂直深さをマルチチャネルエンクロージャ108内に延在し、流体集束チャンバーは、分注チャネル110に向かって収束し、好ましくは、流体集束チャンバーは、流体を分注チャネル110に向けて集束するように構成された円錐台形状を備える。いくつかの実施形態では、第1のシェルチャネル出口106は、マルチチャネルエンクロージャ108への深さが増すにつれて増加する、勾配幅を有する。例示的な実施形態では、第1のシェルチャネル出口106は、コアチャネル出口102と交差しない回転軸を有する、中空シリンダーを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、コアチャネル出口102は、マルチチャネルエンクロージャ108の長さの大部分を通って延在する。好ましい実施形態では、第1の垂直深さは、第2の垂直深さよりも大きく、その結果、コアチャネル出口102は、第1のシェルチャネル出口106よりも、マルチチャネルエンクロージャ108及び/または第1の流体集束チャンバー112内に更に延在する。代替の実施形態では、第2の垂直深さは、第1の垂直深さよりも大きく、その結果、第1のシェルチャネル出口106は、コアチャネル出口102よりも、マルチチャネルエンクロージャ108内に更に延在する。
【0077】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、入口及び出口を有する第2のシェルチャネル128を更に含み、第2のシェルチャネル出口132及び/または入口130は、プリントヘッドの同じ層にあるマルチチャネルエンクロージャ108の第1のシェルチャネル出口106の周りに同心円状に配置され、流体集束チャンバーと流体連通している。好ましい実施形態では、第1のシェルチャネル出口106は、第2のシェルチャネル出口132よりも、マルチチャネルエンクロージャ108内に更に延在する。いくつかの実施形態では、第2のシェルチャネル入口130は、プリントヘッドの同じ層内の第1のシェルチャネル出口106に隣接し得て、第1の流体集束チャンバー112と流体連通し得る。
【0078】
代替の実施形態では、プリントヘッドは、少なくとも1つの入口及び出口を有する第2のシェルチャネルと、第1の流体集束チャンバーと分注チャネルの遠位端との間に配置された第2のマルチチャネルエンクロージャと、を更に含み、前記第2のマルチチャネルエンクロージャは、前記分注チャネル、前記第2のシェルチャネル出口、及び第2の流体集束チャンバーを備え、分注チャネルは、第2のマルチチャネルエンクロージャの中央領域に配置され、第2の流体集束チャンバーの入口と流体連通し、第1の垂直深さをマルチチャネルエンクロージャ内に延在させ、好ましくは、第2のシェルチャネル出口は、分注チャネルの周りに同心状に配置され、第2の流体集束チャンバーの入口と流体連通し、第2の垂直深さをマルチチャネルエンクロージャ内に延在させ、第2の流体集束チャンバーは、分注チャネルに向かって収束し、好ましくは、第2の流体集束チャンバーは、分注チャネルに向かって流体を集束するように構成された円錐台形状を備える。いくつかの実施形態では、第1及び第2のマルチチャネルエンクロージャまたはその一部は、例えば、図11に示すように、プリントヘッドの同じ層に配置され、第2のマルチチャネルエンクロージャは、第1の流体集束チャンバーと重なり得る。いくつかの実施形態では、第1及び第2のマルチチャネルエンクロージャは、例えば図10Aに示すように、プリントヘッドの連続する層に配置される。いくつかの実施形態では、第2の流体集束チャンバーは、プリントヘッドの別個の層に配置され、第2のシェルチャネル出口は、プリントヘッドの前の層から隣接する下流層の第2の流体集束チャンバー内に延在する。
【0079】
本発明の実施形態によるコア及びシェルチャネルは、任意の好適な長さを有し得る。いくつかの実施形態では、コアまたはシェルチャネルは、約100μm~約100mmの範囲のチャネル長、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95mmのチャネル長を有する。本発明の実施形態によるコア及びシェルチャネルは、約10μm~約5mmの範囲の幅または直径、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、または3.0mmの幅または直径を有し得る。本発明の実施形態によるコア及びシェルチャネルは、約10μm~約5mmの範囲の深さ、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、または3.0mmの深さを有し得る。本発明の実施形態によるコア及びシェルチャネルは、任意の好適な断面形状、例えば円形、楕円形、正方形、または長方形の断面形状を有し得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、第1のシェルチャネル、第2のシェルチャネル128、またはその両方は、第1のシェルチャネル出口106及び/または第2のシェルチャネル出口132の周囲に流体を分配するように構成される、少なくとも1つの流体分配オリフィスを更に備える。好ましくは、流体分配オリフィスは、第1及び/または第2のシェルチャネル入口104、130と、第1及び/または第2のシェルチャネル出口106、132の上部曲面114の頂点116とを接続する。いくつかの実施形態では、第1及び/または第2のシェルチャネルは、少なくとも2つのシェルサブチャネルを含み、これらは、1つの流体分配オリフィスに収束し得るか、または別個の流体分配オリフィスにつながり得る。シェルサブチャネルは、同じ流体リザーバ、投入オリフィス、及び制御バルブに流体連通し得るか、または別個の流体リザーバ、投入オリフィス、及び制御バルブに流体連通し得る。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、3~10つの範囲の複数のシェルサブチャネル、例えば4、5、6、7、8、または9つのシェルサブチャネルを備える。本発明の実施形態によるシェルチャネル及びシェルサブチャネルは、任意の好適な断面形状、例えば円形、楕円形、正方形、または長方形の断面形状を有し得る。
【0081】
追加の実施形態では、第1及び/または第2のシェルチャネル入口104、130は、第1及び/または第2のシェルチャネル出口106、132に流体を送達するように構成された、2つ以上のサブチャネルを含み、各サブチャネルは、第1及び/または第2のシェルチャネル入口104、130と、第1及び/または第2のシェルチャネル出口106、132の上部曲面114の頂点116と、を接続する、別個の流体分配オリフィスを含み、好ましくは、第1及び/または第2のシェルチャネル出口106、132の上部曲面114は、放物線状または楕円形状を有する。好ましい実施形態では、別個の流体投入オリフィスは、第1及び/または第2のシェルチャネル出口106、132の反対側に配置されている。例示的な実施形態では、上部曲面114は、放物線状または楕円形状を有する。
【0082】
一実施形態では、第1のシェルチャネルは、第1のシェルチャネル入口104と、第1のシェルチャネル出口106の上部曲面114の頂点116と、を接続する少なくとも1つの流体分配オリフィスを含み、その結果、流体は、上部曲面114に沿って、第1のシェルチャネル出口106の周囲に分散する。更なる実施形態では、第1のシェルチャネルは、第1のシェルチャネル出口106の反対側に配置された、2つの流体分配オリフィスを含む。別の実施形態では、第2のシェルチャネル128は、第2のシェルチャネル入口130と、第2のシェルチャネル出口132の上部曲面114の頂点116と、を接続する少なくとも1つの流体分配オリフィスを含み、その結果、流体は、上部曲面114に沿って、第2のシェルチャネル出口132の周囲に分散する。更なる実施形態では、第2のシェルチャネル128は、第2のシェルチャネル出口132の反対側に配置された、2つの流体分配オリフィスを含む。
【0083】
本発明の実施形態によるプリントヘッドは、シース流チャネル118を備える。特定の実施形態では、シース流チャネル118は、第1の流体集束交差部と分注チャネル110の遠位端との間に配置されたシース流体交差部で、分注チャネル110と収束する。いくつかの実施形態では、シース流チャネル118は、分注チャネル110と、約0~180度の範囲の収束角度、例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、または175度の収束角度で収束する。いくつかの実施形態では、分注チャネル110の近位端とシース流体交差部との距離は、約10μm~約100mmの範囲であり、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95mmである。いくつかの実施形態では、分注チャネル110の遠位端とシース流体交差部との距離は、約10μm~約100mmの範囲であり、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95mmである。
【0084】
本発明の実施形態によるシース流チャネルは、任意の好適な長さを有し得る。いくつかの実施形態では、シース流チャネル118は、約100μm~約100mmの範囲のチャネル長、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95mmのチャネル長を有する。本発明の実施形態によるシース流チャネルは、約10μm~約5mmの範囲の幅または直径、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、または3.0mmの幅または直径を有し得る。本発明の実施形態によるシース流チャネルは、約10μm~約5mmの範囲の深さ、例えば約25、50、75、または100μm、あるいは例えば約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、または3.0mmの深さを有し得る。いくつかの実施形態では、シース流チャネル118は、2つ以上のシース流サブチャネルを備える。いくつかの実施形態では、シース流チャネル118は、3~10つの範囲、例えば4、5、6、7、8、または9つの複数のシース流サブチャネルに分岐する。いくつかの実施形態では、2つ以上のシース流サブチャネルは、シース流体交差部で分注チャネル110と収束する。本発明の実施形態によるシース流チャネルは、任意の好適な断面形状、例えば円形、楕円形、正方形、または長方形の断面形状を有し得る。
【0085】
本発明の実施形態による流体チャネルは一般に、1つ以上の投入オリフィスを含み、これを通して流体はチャネル内へ導入され得て、それは、一般的に、プリントヘッドの積層された層の第1の、すなわち1番上の層に配置される。いくつかの実施形態では、流体チャネルは、流体チャネルを通る流体の流れを調節するように構成された制御バルブを備え、それは、一般的に、プリントヘッドの積層の上から2番目の層に配置される。いくつかの実施形態では、投入オリフィスと制御バルブとの間のチャネル長は、約100μm~約100mmの範囲であり、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95mmである。いくつかの実施形態では、制御バルブと、チャネルが分注チャネル110と収束する位置との間のチャネル長は、約100μm~約100mmの範囲であり、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95mmである。
【0086】
本発明の実施形態によるプリントヘッドは、任意の好適な材料から作製され得、これは、プラスチック(例えばポリマー材料)、ガラス、金属、セラミック、またはこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、プリントヘッドは、既知のマイクロ流体成形技術(例えば、注入成形、インプリンティングまたは射出成形)、ならびに1つ以上の成形可能なポリマー、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、及びポリスチレン(PS)を使用して製造される。適切な結合処理には、溶剤結合、プラズマ結合、接着結合、超音波結合、及び加硫が含まれる。あるいは、市販の3Dプリント技術を使用して、プリントヘッドを製造することもできる。
【0087】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、光(例えば紫外線(UV)光)に対して少なくとも部分的に透明である材料を含む。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、全体的に透明な材料でできている。特定の実施形態では、分注チャネル110を囲む、または分注チャネル110に直接隣接するプリントヘッドの部分は、部分的にまたは完全に光を透過する材料を含む。このようなプリントヘッドは、光エネルギーにより架橋されるように構成された投入材料(例えば光架橋性投入材料)と併せて使用され得る。
【0088】
本発明の態様は、投入材料を架橋するために、光架橋性投入材料を電磁放射にさらすように構成された光モジュールを含む。本発明の実施形態による光モジュールは、プリントヘッドに統合され得る、またはプリントシステムの別個の構成要素であり得る。いくつかの実施形態では、光モジュールは、分注チャネル110内に投入材料が存在する間に、投入材料を感光させる。いくつかの実施形態では、光モジュールは、分注チャネル110から投入材料が分注された後に、投入材料を感光させる。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、複数の光モジュールを備え、第1の光モジュールは、分注チャネル110内に投入材料が存在する間に、投入材料を感光させるように構成され、第2の光モジュールは、分注チャネル110から投入材料が分注された後に、投入材料を感光させるように構成される。
【0089】
いくつかの実施形態では、光モジュールは、波長、強度、感光時間、またはこれらの任意の組み合わせに関して調整可能である。いくつかの実施形態では、光モジュールは、任意で係合された1つ以上の減衰フィルタを備え、減衰フィルタは、係合されると光強度を調節する。いくつかの実施形態では、光モジュールはUV光を放射するように構成され、モジュールから放射される光の波長は、約10nm~約400nmの範囲であり、例えば約20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、または375nmである。いくつかの実施形態では、好適なUV光源には、非限定的な例として、UVランプ、UV蛍光ランプ、UV LED、UVレーザー、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0090】
上記で概説されたように、本発明の態様は、分注チャネル110を備えるプリントヘッドを含み、1つ以上の材料チャネル及び任意で緩衝液チャネルは、分注チャネル110の近位端で収束する。主題のプリントヘッドは、プリントされる繊維に中空コアを形成するために、緩衝液及び/またはシース流体を、1つ以上の架橋性材料と同時に分注するように構成される。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、分注チャネル110を通る一定の質量流量を維持するように構成される。このようにして、主題のプリントヘッドは、1つ以上の投入材料(または1つ以上の投入材料の混合物)ならびに緩衝液及び/またはシース流体が、分注チャネル110を通して円滑かつ連続的に流れることを促進するように構成される。
【0091】
上記で概説されたように、本発明の付加的な態様は、分注チャネル110を備えたプリントヘッドを含み、1つ以上のシース流チャネル118は、第1の流体集束交差部と分注チャネル110の遠位端との間に配置されたシース流体交差部で、分注チャネル110と収束する。主題のプリントヘッドの使用時、分注チャネル110を流れる投入材料は、コアチャネルを流れるシース流体により内側から、並びにシース流チャネル118を流れるシース流体により外側からの両方で架橋され得る。
【0092】
好ましい実施形態で、本発明は、コアチャネルと、複数のシェルチャネルと、分注チャネル110に向かって収束する流体集束チャンバーと、を含む、複数の流体チャネルを形成する、複数の積み重ねられた、好ましくは結合された層を含む、プリントヘッドを提供し、コアチャネルは、流体集束チャンバーと流体連通し、流体集束チャンバーの中央領域を通って、分注チャネル110と整列して長手方向に延在し、複数のシェルチャネルは、プリントヘッドの同じ層のコアチャネルの周りに同心状に配置され、流体集束チャンバーと流体連通して、内側シェルチャネルは、外側シェルチャネルよりも長い長さで流体集束チャンバー内に延在し、コアチャネルは、いずれのシェルチャネルよりも長い長さで流体集束チャンバー内に延在し、シース流チャネル118は、流体集束チャンバーと分注チャネル110の遠位端との間に位置するシース流体交差部で分注チャネル110と収束する。
【0093】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、複数のシェルチャネルの周囲に流体を分配するように構成された複数の流体分配オリフィスを更に含み、複数の流体分配オリフィスは、それぞれのシェルチャネル入口122と、複数のシェルチャネルのうちの対応するシェルチャネル出口の上部曲面114の頂点116とを個別に接続し、好ましくは、シェルチャネル出口の上部曲面114は、放物線状または楕円形状を有する。例示的な実施形態では、複数のシェルチャネルのうちの少なくとも1つのシェルチャネルは、ハウジングへの長手方向の深さが大きくなるにつれて増加する勾配幅を有する。
【0094】
いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、入口及び出口を有する第3、第4、第5及び/または第6のシェルチャネルを更に含み、第3、第4、第5及び/または第6のシェルチャネル出口のそれぞれは、マルチチャネルエンクロージャ内の直前のシェルチャネル出口の周りに同心状に配置され、流体集束チャンバーと流体連通している。好ましい実施形態では、第3、第4、第5及び/または第6のシェルチャネル出口のそれぞれは、直前のシェルチャネル出口よりも短い距離でマルチチャネルエンクロージャ内に延在し、コアチャネルは、第1のシェルチャネルよりもマルチチャネルエンクロージャ内に更に延在する。
【0095】
別の好ましい実施形態では、本発明は、第1の流体集束チャンバー112と流体連通している1つのコアチャネル出口102を形成するように収束する、別個の流体リザーバ、投入オリフィス、及び制御バルブを有する、少なくとも2つのコア入口サブチャネルを含む、コアチャネルであって、好ましくは、前記少なくとも2つのコア入口サブチャネルが、コアチャネル出口102で、またはその近位で収束する、前記コアチャネルと;第2の流体集束チャンバー136と流体連通している1つのシェルチャネル出口を形成するように収束する、異なる流体リザーバ、投入オリフィス、及び制御弁を有する、少なくとも2つのシェル入口サブチャネル126を含む、第1のシェルチャネルと;分注チャネル110であって、流体集束チャンバーが分注チャネル110に向かって収束し、好ましくは、流体集束チャンバーが分注チャネル110に向かって流体を集束するように構成された円錐錐台形状を含む、前記分注チャネル110と;第2の流体集束交差部と分注チャネル110の遠位端との間に位置するシース流体交差部で分注チャネル110と収束する、シース流チャネル118と;を備える、複数の流体チャネルを形成する複数の積層を含む、プリントヘッドを提供する。更なる実施形態では、第1のシェルチャネルは、3つのシェル入口サブチャネル126を含み、そのうちの1つは、緩衝液を含む、流体リザーバに接続されている。
いくつかの実施形態では、コアチャネルは、前記コアチャネル出口102の周囲に流体を分配するように構成された、少なくとも1つの流体分配オリフィスを更に含み、好ましくは、少なくとも1つの流体分配オリフィスが、収束したコアチャネル入口と、コアチャネル出口102の上部曲面114の頂点116とを接続し、更により好ましくは、上部曲面114は放物線状または楕円形状を有する。
【0096】
プリントシステム:
本発明の態様は、主題の方法を実行するために主題のプリントヘッドと連動して作動するように構成されたプリントシステム及び関連構成要素を含む。いくつかの実施形態では、プリントシステムは、本明細書で説明される単一のプリントヘッドを備える。いくつかの実施形態では、プリントシステムは、複数のプリントヘッド、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の本明細書で説明される個別のプリントヘッドを備える。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、プリントシステムから流体的に隔離され、従って、プリントプロセスに関わる全ての流体は、プリントヘッド内で隔離された状態に保たれ、プリントプロセス中にプリントシステムの受け面とのみ接触する(下記に説明)。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、プリントプロセスに関わる流体をプリントシステムの構成要素と接触させることなく、プリントシステムに動作可能に接続されるように構成される。いくつかの実施形態では、1つ以上のプリントヘッドは、プリントプロセスの前、間、及び/または後に、プリントシステムからの取り外し、及び/またはプリントシステムへの追加を行うことができる。従って、いくつかの実施形態では、主題のプリントヘッドは、主題のプリントシステムのモジュール式構成要素である。
【0097】
いくつかの実施形態では、プリントシステムは、プリントヘッドの分注オリフィスから分注された材料の第1の層が堆積される受け面を備える。いくつかの実施形態では、受け面は固体材料を含む。いくつかの実施形態では、受け面は多孔質材料を含む。例えば、いくつかの実施形態では、多孔質材料は、流体が多孔質材料を通過できるのに十分な多孔性を有する。いくつかの実施形態では、受け面は、略平面であり、これにより、分注された材料の第1の層を堆積させることができる平坦な表面が提供される。いくつかの実施形態では、受け面は、プリントする三次元構造に対応する形状を有し、これにより、非平面の第1の層を有する三次元構造のプリントが容易になる。
【0098】
いくつかの実施形態では、受け面は、1つ以上の真空源から受け面に対し吸引を行うように構成された真空構成要素を備える。いくつかの実施形態では、受け面は、受け面に対し吸引を行うように構成された1つ以上の真空チャネルを備える。いくつかの実施形態では、真空構成要素を備えた受け面は、プリントプロセスの実行の前、間、及び/または後に、受け面から過剰流体を吸引するように構成される。
【0099】
いくつかの実施形態では、受け面は、細胞毒性のない表面であり、この上に、プリントシステムは1つ以上の繊維構造を分注する。いくつかの実施形態では、プリントシステムは、プリンタステージを備える。いくつかの実施形態では、受け面は、プリンタステージの表面である。いくつかの実施形態では、受け面は、プリンタステージとは別個の構成要素であるが、プリンタステージに取り付けられた、またはプリンタステージにより支持された構成要素である。いくつかの実施形態では、受け面は、平坦またはほぼ平坦である。いくつかの実施形態では、受け面は、滑らかまたはほぼ滑らかである。いくつかの実施形態では、受け面は、ほぼ平坦かつほぼ滑らかである。いくつかの実施形態では、受け面は、プリントされる構造の形状、サイズ、質感、または幾何学形態に対応するように構成される。いくつかの実施形態では、受け面は、プリントされる構造のサイズ、形状、質感、または幾何学形態を制御する、またはこれらに影響を与える。
【0100】
いくつかの実施形態では、受け面は、1つ以上のモジュラー式構成要素を備え、これは、プリントシステムに動作可能に接続されるように構成されるが、プリントシステムから分離可能である。いくつかの実施形態では、受け面は、使い捨ての受け面である。いくつかの実施形態では、受け面は、滅菌用に構成される。いくつかの実施形態では、プリントシステムの流体経路全体が使い捨てであり、これは、プリントプロセスに関わる1つ以上の流体と接触するプリントシステムの全ての構成要素が使い捨てであり、プリントシステムから取り外して、清潔な構成要素と交換することができることを意味する。
【0101】
いくつかの実施形態では、受け面は、1つ以上の異なる受容容器に動作可能に結合されるように構成される。例えば、いくつかの実施形態では、受け面は、円形の受容容器(例えばペトリ皿)に動作可能に結合されるサイズの円形部分を有する。いくつかの実施形態では、受け面は、正方形または長方形の受容容器(例えばマルチウェルプレート(例えば6ウェルプレート))に動作可能に結合されるサイズの正方形または長方形部分を有する。本発明の実施形態による受け面は、好適な受容容器を収容するために、任意の好適なサイズまたは幾何学形態を有することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、プリントシステムは、受け面の温度を調節するように構成された温度調節構成要素を備える。いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、受け面の温度を周囲温度に調整及び/または維持する。いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、プリントヘッド、プリンタステージ、受け面、投入材料、及び/または流体(例えばシース液及び/または緩衝液)の温度を調整及び/または維持する。
【0103】
いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、加熱素子を備える。いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、ヒーターを備える。いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、放射ヒーター、対流ヒーター、導電性ヒーター、ファンヒーター、熱交換器、またはこれらの任意の組み合わせを備える。いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、冷却素子を備える。いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、冷却材、冷却液、氷、またはこれらの任意の組み合わせの容器を備える。いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、放射冷却器、対流冷却器、導電性冷却器、ファン冷却器、またはこれらの任意の組み合わせを備える。
【0104】
いくつかの実施形態では、温度調節構成要素は、約0~約90℃の範囲の設定点、例えば約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、または85℃に、温度を調整するように構成される。
【0105】
いくつかの実施形態では、プリントシステムは、プリンタステージに対して、またはプリント材料を受け取るように適合された受け面に対して、プリントヘッドを移動させることにより、特定の幾何学形態を実現する。別の実施形態では、プリントシステムは、プリントヘッドに対して、プリンタステージまたは受け面を移動させることにより、特定の幾何学形態を実現する。特定の実施形態では、プリントシステムの少なくとも一部は、無菌環境(例えばバイオセーフティキャビネット(BSC)内)に維持される。いくつかの実施形態では、プリントシステムは、全体的に無菌環境内に適合するように構成される。
【0106】
いくつかの実施形態では、受け面は、分注オリフィスから分注された過剰流体(例えば過剰シース流体及び/または過剰緩衝液)、及び分注オリフィスから分注された材料の1以上の層から流出する過剰流体を受け取る。
【0107】
いくつかの実施形態では、システムは、プリントヘッドのオリフィスから分注された繊維構造が堆積された受け面から、及び任意で分注された繊維構造の表面から、過剰流体(例えば過剰シース流体及び/または過剰緩衝液)を除去するための構成要素を備える。プリント中に、過剰流体は、受け面上または分注された繊維構造の表面上に集まる、すなわち「溜まる」可能性がある。このような貯留は、堆積プロセスを妨げ得る。例えば、貯留したシース流体が原因で、分注された繊維が、プリントされている3D構造内の目的の位置から滑り落ちる場合がある。従って、いくつかの実施形態では、流体除去構成要素により、受け面から、及び任意で分注された繊維構造の表面から、過剰シース流体を除去することは、三次元構造の積層造形を向上させ得る。
【0108】
受け面から、または分注された繊維の1つ以上の層の表面から過剰流体を除去することは、これらの表面から流体を引き抜くことにより、これらの表面から流体の蒸発を可能にするまたは促進することにより、実行され得、または受け面が多孔質の実施形態では、過剰流体は、多孔質表面を通して引き抜くことにより、除去され得る。いくつかの実施形態では、受け面は、多孔質材料を有し、細孔は、流体が細孔を通過しやすいサイズに決定され、細孔上に堆積された繊維構造の1つ以上の層を支持するサイズに決定される。
【0109】
いくつかの実施形態では、マルチウェルプレートまたはペトリ皿に材料を分注するように構成されたシステムには、受け面から、及び任意で分注された繊維構造の表面から、過剰流体を除去するための構成要素が含まれ得る。いくつかの実施形態では、プリント台上の受け面は、受け面からの過剰流体の吸収を促進する吸収性材料を有する、または吸収性材料に隣接して配置される。例えば、多孔質膜材料または任意の他の多孔質膜基板で作られたベースを有するウェルプレートインサートは、例えばスポンジなどの吸収性材料の上に、または吸収性材料に隣接して、配置され得る。吸収性材料は、受け面から過剰流体を引き離すように作用する。多孔質の受け面の下に吸収性材料が配置された実施形態では、受け面上の過剰流体は、多孔質の受け面を通って吸収性材料へ引き抜かれ、これにより、受け面上の過剰流体の貯留が防がれる。受け面の一部のすぐ横または上に(例えば分注された材料の堆積を妨げないように受け面の周辺に)吸収性材料が配置された実施形態では、過剰シース流体は、受け面から吸収性材料へ引き抜かれ得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、受け面は、真空源と流体連結された1つ以上の管を備え、真空源は、受け面から、及び任意で分注された繊維構造の表面から、過剰流体を除去するための吸引を提供し得る。このような実施形態では、中実または多孔質の受け面も使用され得る。いくつかの実施形態では、プリントヘッドは、1つ以上の真空チャネルをさらに備えるように構成され、1つ以上の真空チャネルはそれぞれ、分注オリフィスの近くに(すなわち隣接して)配置されたオリフィスを有する。1つ以上の真空チャネルはそれぞれ、1つ以上の真空との流体連通を促進するように構成された入口を有する。プリントヘッドが真空と流体連通している場合、1つ以上の真空チャネルは、分注オリフィスから材料が分注されているまたは分注された受け面の領域に対し、及び/または分注された繊維構造の表面領域の一部に対し、負圧をかけ、これにより、受け面から、及び任意で分注された繊維構造の表面から、過剰流体が吸い上げられ、これにより、受け面及び/または分注された繊維構造上の流体の貯留が除去される。
【0111】
いくつかの実施形態では、1つ以上の真空管は、プリントヘッドから突出する1つ以上の延長部に少なくとも部分的に設けられ、前記延長部は、分注オリフィス及び分注チャネル110を備える延長部と同じ全体的方向に突出する。このような実施形態では、真空管を備える1つ以上の延長部は、分注プロセスを妨げないように、分注オリフィス及び分注チャネル110を備える延長部を越えて延在しない。
【0112】
いくつかの実施形態では、流体除去機能は、流体組成物自体の機能であり得る。例えば、シース流体組成物及び/または緩衝液組成物は、分注オリフィスから分注された後に蒸発するように設計され得、これにより、受け面上または分注された繊維構造の表面上の過剰流体の貯留が除去される。例えば、シース流体は、分注される前は液体状態を保持するが、分注された後は蒸発に至る沸点を有することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、プリントシステムは、プリントされる材料を受け取る表面を有するプリント台の上の三次元空間においてプリントヘッド及び分注オリフィスの位置を決定するための3本のアームを有する3Dモーター駆動ステージを備える。一実施形態では、3Dモーター駆動ステージ(すなわち位置決めユニット)は、プリントヘッドのオリフィスが下向きになるように、3Dモーター駆動ステージのz軸に沿って伸びる垂直アームの位置を決定するように制御され得る。モーター駆動ステージのx軸に沿って伸びる第1の水平アームは、不動のベースフラットフォームに固定される。モーター駆動ステージのy軸に沿って伸びる第2の水平アームは、第1の水平アームの長手方向及び第2の水平アームの長手方向が互いに対して直角となるように、第1の水平アームの上面に移動可能に結合される。アームに関して上記で使用される用語「垂直」及び「水平」は、プリントヘッドの動き方を説明することを意味し、必ずしもアーム自体の物理的配向を制限するものではないことが理解されよう。
【0114】
いくつかの実施形態では、受け面は、プラットフォームの上部に配置され、プラットフォームは、第2の水平アームの上面に結合される。いくつかの実施形態では、3Dモーター駆動ステージアームは、3つの対応するモーターによりそれぞれ駆動され、コンピュータなどのプログラム可能な制御プロセッサにより制御される。好ましい実施形態では、プリントヘッド及び受け面は、3Dモーター駆動ステージによりデカルト座標系の3つの主軸全てに沿って一体的に移動可能であり、ステージの移動は、コンピュータソフトウェアを使用して定義される。本発明は、説明された位置決めシステムのみに限定されず、他の位置決めシステムも当技術分野では知られていることが理解されよう。プリントヘッド上の分注オリフィスから材料が分注される時、位置決めユニットは、ソフトウェアにより制御されたパターンで移動し、これにより、受け面上に分注された材料の第1の層が作成される。次に、分注された材料の追加の層が積み重ねられ、その結果、分注された材料の層の最終的3D幾何学形態は通常、ソフトウェアにより提供された3D幾何学形態設計図の複製となる。3D設計図は、当技術分野で知られているように、典型的な3D CAD(コンピュータ支援設計)ソフトウェアを使用して作成され得る、またはデジタル画像から生成され得る。さらに、ソフトウェアにより生成される幾何学形態が、使用する特定の材料に関する情報を含む場合、本発明の一実施形態によれば、異なる幾何学的位置に特定の投入材料のタイプを割り当てることが可能である。例えば、いくつかの実施形態では、プリントされる3D構造は、2つ以上の異なる投入材料を含むことができ、各投入材料は、異なる特性を有する(例えば各投入材料は、異なる細胞タイプ、異なる細胞濃度、異なるECM組成などを有する)。
【0115】
主題のプリントシステムの態様は、特定の繊維の平面または3D構造を形成するために、特定のパターンで特定の位置に主題の投入材料を堆積させることを促進するように構成されたソフトウェアプログラムを含む。このような構造を作製するために、主題のプリントシステムは、主題の投入材料を、受け面上の正確な位置(二次元または三次元の位置)に堆積させる。いくつかの実施形態では、プリントシステムが材料を堆積させる位置は、ユーザ入力により定義され、コンピュータコードに変換される。いくつかの実施形態では、コンピュータコードは、特定のタスクを実行するように書かれた、デジタル処理装置の中央処理装置(CPU)で実行可能な一連の命令を含む。いくつかの実施形態では、プリントされる繊維の寸法、ポンプ速度、プリントヘッド位置決めシステムの移動速度、及び架橋剤の強度または濃度を含むがこれらに限定されないプリントパラメータは、ユーザ入力により定義され、コンピュータコードに変換される。いくつかの実施形態では、プリントパラメータは、ユーザ入力により直接定義されずに、コンピュータコードにより他のパラメータ及び条件から導出される。
【0116】
本発明の態様は、組織構築物、組織、及び器官を作製するための方法を含み、方法は、コンピュータモジュールにより、所望の組織構築物の視覚的表現の入力を受信することと、コンピュータモジュールにより、視覚的表現に基づき、かつ主題のプリントシステムにより読み取り可能な一連のコマンドを生成することと、コンピュータモジュールにより、一連のコマンドをプリントシステム提供することと、プリントシステムにより、コマンドに従って、1つ以上の投入材料を堆積させて、定義された幾何学形態を有する構築物を形成することと、を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、プリントシステムが投入材料を堆積させる位置は、ユーザ入力により定義され、コンピュータコードに変換される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるデバイス、システム、及び方法はさらに、コンピュータ可読プログラムコードで符号化された非一時的コンピュータ可読記憶媒体または記憶媒体を含む。いくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体は、バイオプリンタ(もしくはその構成要素)またはバイオプリンタ(もしくはその構成要素)に接続されたコンピュータなど、デジタル処理装置の有形構成要素である。いくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体は任意で、デジタル処理装置から取り外し可能である。いくつかの実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体には、非限定的な例として、CD-ROM、DVD、フラッシュメモリデバイス、ソリッドステートメモリ、磁気ディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブ、並びにクラウドコンピューティングシステム及び/またはサービスなどが挙げられる。いくつかの事例では、プログラム及び命令は、記憶媒体上では、永久的、ほぼ永久的、半永久的、または非一時的に、符号化される。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるデバイス、システム、及び方法は、ソフトウェア、サーバ、及びデータベースモジュールを含む。いくつかの実施形態では、「コンピュータモジュール」は、より大きなコンピュータシステムと相互作用するソフトウェア構成要素(コードセクションを含む)である。いくつかの実施形態では、ソフトウェアモジュール(またはプログラムモジュール)は、1つ以上のファイルの形式で提供され、通常、より大きなソフトウェアシステム内の特定のタスクを処理する。
【0119】
いくつかの実施形態では、モジュールは、1つ以上のソフトウェアシステムに含まれる。いくつかの実施形態では、モジュールは、1つ以上の他のモジュールと統合されて、1つ以上のソフトウェアシステムとなる。コンピュータモジュールは、任意でスタンドアローンのコードセクションであり、または任意で個別に識別できないコードである。いくつかの実施形態では、モジュールは、単一のアプリケーション内に存在する。別の実施形態では、モジュールは、複数のアプリケーション内に存在する。いくつかの実施形態では、モジュールは、1台のマシン上でホストされる。いくつかの実施形態では、モジュールは、複数のマシン上でホストされる。いくつかの実施形態では、モジュールは、1つの場所で複数のマシン上でホストされる。いくつかの実施形態では、モジュールは、複数の場所で複数のマシン上でホストされる。本発明の実施形態によるコンピュータモジュールにより、エンドユーザは、コンピュータを使用して、本明細書で説明される方法の1つ以上の態様を実行することが可能となる。
【0120】
いくつかの実施形態では、コンピュータモジュールは、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を備える。本明細書で使用される「グラフィカルユーザインターフェース」は、アプリケーションの入力及び出力の画像表現並びにテキスト表現と、情報が格納される階層的または他のデータ構造とを使用するユーザ環境を意味する。いくつかの実施形態では、コンピュータモジュールは、表示画面を備える。さらなる実施形態では、コンピュータモジュールは、表示画面を介して、2次元GUIを提示する。いくつかの実施形態では、コンピュータモジュールは、表示画面を介して、仮想現実環境などの三次元GUIを提示する。いくつかの実施形態では、表示画面は、タッチスクリーンであり、インタラクティブGUIを提示する。
【0121】
本発明の態様は、1つ以上のプリント繊維が好適な特性を確実に有するように、主題のプリントシステムの1つ以上のパラメータを監視及び/または調整するように構成された1つ以上の品質管理構成要素を含む。例えば、いくつかの実施形態では、堆積プロセスの進行が速すぎる場合、プリントされる繊維構造は、分注チャネル110内に、または分注された後に分注チャネル110の外側に、コイル状の構造を形成し始め得る。いくつかの実施形態では、品質管理構成要素は、カメラを備え、カメラは、プリントされる繊維構造の1つ以上の画像を収集することにより堆積プロセスを監視し、プリントされた繊維構造がコイル状の構造を形成したか否かを判定するように構成される。いくつかの実施形態では、品質管理構成要素は、プリントされた繊維構造によるコイル状構造の形成を減少または回避するために、堆積プロセスの1つ以上のパラメータを調節するように(例えば圧力を低下させる及び/または堆積速度を下げるように)構成される。
【0122】
本発明の態様は、1つ以上の流体リザーバを含み、流体リザーバは、流体を格納し、プリントシステムとリザーバとの流体連通を提供する1つ以上の流体チャネルを通してプリントシステム(例えばプリントヘッド)に流体を送達するように構成される。いくつかの実施形態では、プリントシステムは、流体チャネルと流体連通している1つ以上の流体リザーバを備える。いくつかの実施形態では、流体リザーバは、流体チャネルの投入オリフィスに接続される。いくつかの実施形態では、流体リザーバは、約100μL~約1Lの範囲の流体体積、例えば約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100mL、あるいは例えば約150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、または950mLの流体体積を保持するように構成される。
【0123】
いくつかの実施形態では、プリントシステムは、1つ以上のリザーバに流体連結された圧力制御ユニットを備える。圧力制御ユニットは、プリントシステムを通して1つ以上の流体を移動させる力を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、圧力制御ユニットは、1つ以上の接続管を介して1つ以上の流体に空気圧を供給する。加えられた圧力は、流体をリザーバから押し出し、それぞれの流体チャネルを介してプリントヘッドへ送り込む。いくつかの実施形態では、代替的な手段を使用して、チャネルを通して流体を移動させ得る。例えば、一連の電子制御シリンジポンプを使用して、プリントヘッドを通して流体を移動させる力が提供され得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、プリントシステムは、材料を架橋するために、任意で光架橋性投入材料を露光させるための光モジュール(前述のような)を備える。本発明の実施形態による光モジュールは、プリントヘッドに統合され得る、またはプリントシステムの構成要素であり得る。
【0125】
投入材料
本発明の態様は、繊維構造をプリントするために使用され得る投入材料を含む。いくつかの実施形態では、投入材料は、ヒドロゲルを含む。ヒドロゲルの非限定的な例には、アルギン酸塩、アガロース、コラーゲン、フィブリノーゲン、ゼラチン、キトサン、ヒアルロン酸系のゲル、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。様々な合成ヒドロゲルが知られており、本明細書で提供されるシステム及び方法の実施形態で使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上のヒドロゲルは、プリントされる三次元構造の構造的基礎を形成する。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、1つ以上のタイプの細胞の成長及び/または増殖を支援する能力を有し、1つ以上のタイプの細胞は、ヒドロゲル内に分散され得る、または三次元構成でプリントされた後のヒドロゲルに追加され得る。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、化学架橋剤により架橋可能である。例えば、アルギン酸塩を含むヒドロゲルは、二価カチオンの存在下で架橋可能であり得、キトサンを含むヒドロゲルは、トリポリリン酸ナトリウム(STP)などの多価アニオンを使用して架橋され得、フィブリノーゲンを含むヒドロゲルは、トロンビンなどの酵素の存在下で架橋可能であり得、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、またはキトサンを含むヒドロゲルは、熱または塩基性溶液の存在下で架橋可能であり得る。いくつかの実施形態では、ヒドロゲル繊維は、投入材料と混和性のある架橋剤材料に投入材料をさらして、投入材料から溶剤を抽出することで達成される沈殿反応により、生成され得る。沈殿反応を介して繊維を形成する投入材料の非限定的な例には、コラーゲン及びポリ乳酸が挙げられる。沈殿媒介ヒドロゲル繊維形成を可能にする架橋材料の非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)及びアルギン酸塩が挙げられる。ヒドロゲルの架橋は、ヒドロゲルの硬度を高め、いくつかの実施形態では、固化したヒドロゲルの形成を可能にする。
【0126】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲルはアルギン酸塩を含む。アルギン酸塩は、二価カチオンと接触すると、固化したコロイドゲル(高含水ゲルまたはヒドロゲル)を形成する。アルギン酸塩を含む投入材料により、固化したヒドロゲルを形成するために、任意の好適な二価カチオンが使用され得る。アルギン酸イオン親和性系列Cd2+>Ba2+>Cu2+>Ca2+>Ni2+>Co2+>Mn2+では、アルギン酸ゲルを形成するのに、Ca2+が最適な特徴を有し、最もよく使用される(Ouwerx,C.et al.,Polymer Gels and Networks,1998,6(5):393-408)。研究により、隣接するポリマー鎖上のポリGブロックによるCa2+イオンの協働的結合を介して、アルギン酸カルシウムゲル、いわゆる「エッグボックス」モデルが形成されることが示されている(ISP Alginates,Section3:Algin-Manufacture and Structure,in Alginates:Products for Scientific Water Control,2000,International Specialty Products:San Diego,pp.4-7)。Gリッチアルギン酸塩は、熱的に安定性があり、強いが脆いCaゲルを形成する傾向があり、一方Mリッチアルギン酸塩は、熱的安定性が低く、より弱いがより弾性のあるゲルを形成する傾向がある。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、米国仮特許出願第62/437,601号に記載される解重合アルギン酸塩を含み、この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0127】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、フリーラジカル重合反応を使用して架橋可能であり、分子間に共有結合が生成される。フリーラジカルは、光重合開始剤を光(多くの場合紫外線)にさらすことにより生成され得る、または、それぞれ開始剤及び触媒としてN、N、N、N-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)と組み合わせた過硫酸アンモニウム(APS)またはペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)などのフリーラジカルの化学源に、ヒドロゲル前駆体をさらすことにより生成され得る。光架橋性ヒドロゲルの非限定的な例には、ゼラチンメタクリレート(GEL-MA)またはポリエチレン(グリコール)ジアクリレート系(PEG-DA)ヒドロゲルなどのメタクリレート化ヒドロゲルが挙げられ、これらは、UV光にさらされた後にフリーラジカルの存在下で架橋できるため、及び細胞に対して不活性であるため、細胞生物学に使用される。PEG-DAは、重合が室温で急速に発生し、必要なエネルギー投入が少なく、含水率が高く、弾性があり、様々な生体分子を含むようにカスタマイズできるため、組織工学においてスキャフォールドとして通常使用される。
【0128】
追加構成要素
本発明の実施形態による投入材料は、例えばラミニン、フィブリン、ヒアルロン酸、ポリ(エチレン)グリコール系ゲル、ゼラチン、キトサン、アガロース、またはこれらの組み合わせを含む、生細胞の生存能力を支持する多種多様の天然ポリマーまたは合成ポリマーのうちのいずれかを含み得る。特に好ましい実施形態では、主題のバイオインク組成物は、生理学的に適合性があり、すなわち細胞の成長、細胞の分化、及び細胞間情報伝達を促進する。特定の実施形態では、投入材料は、1つ以上の生理学的マトリックス材料、またはこれらの組み合わせを含む。「生理学的マトリックス材料」は、天然の哺乳動物組織に見られる生物学的材料を意味する。このような生理学的マトリックス材料の非限定的な例には、フィブロネクチン、トロンボスポンジン、グリコサミノグリカン(GAG)(例えばヒアルロン酸、コンドロイチン-6-硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチン-4-硫酸、またはケラチン硫酸)、デオキシリボ核酸(DNA)、接着糖タンパク質、及びコラーゲン(例えばコラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、コラーゲンV、コラーゲンVI、またはコラーゲンXVIII)が挙げられる。
【0129】
コラーゲンは、ほとんどの組織に引張強度を与え、直径約100nmの複数のコラーゲン原線維は結合して、直径約10μmの強力な多重コイル繊維が生成される。特定の組織構築物の生体力学的機能は、コラーゲン繊維の整列を介して、配向される様式で与えられる。いくつかの実施形態では、投入材料は、コラーゲン原線維を含む。コラーゲン原線維を含む投入材料を使用して、組織構築物へと形成される繊維構造が作成され得る。繊維構造の直径を調節することにより、コラーゲン原線維の配向を制御して、所望の様式でのコラーゲン原線維の重合を指示することができる。
【0130】
例えば、以前の研究では、異なる直径のマイクロ流体チャネルは、コラーゲン原線維の重合を指示して、チャネルの長さに沿って配向された繊維を形成できるが、チャネルの直径は100μm以下のみであることが示された(Lee et al.,2006)。これらの配向されたマトリックスで成長した一次内皮細胞は、コラーゲン繊維の方向に整列することが示された。別の研究では、Martinez et al.は、セルローズビーズスキャフォールド内の500μmチャネルが、コラーゲン及び細胞の整列を指示できることを実証した(Martinez et al.、2012)。いくつかの実施形態では、投入材料は、約20μm~約500μmの範囲の直径、例えば約50μm、約75μm、約100μm、約125μm、約150μm、約175μm、約200μm、約225μm、約250μm、約275μm、約300μm、約325μm、約350μm、約375μm、約400μm、約425μm、約450μm、または約475μmの直径を有する繊維構造へと形成され得る。繊維の直径を調節することにより、繊維構造内のコラーゲン繊維の配向が制御され得る。よって、繊維構造及びその中のコラーゲン繊維は、3Dプリントされる構造に対し所望の生体力学的特性を与えるために不可欠なコラーゲン繊維の所望の構成を有する組織構築物を作製するように、パターン化され得る。
【0131】
哺乳動物細胞タイプ
本発明の実施形態による投入材料は、任意の哺乳動物細胞タイプを包含することができ、哺乳動物細胞タイプは、幹細胞(例えば胚性幹細胞、成体幹細胞、誘導多能性幹細胞)、胚細胞、内胚葉細胞(例えば肺細胞、肝臓細胞、膵臓細胞、胃腸管細胞、または尿生殖路細胞)、中胚葉細胞(例えば腎臓細胞、骨細胞、筋肉細胞、内皮細胞、または心臓細胞)、及び外胚葉細胞(皮膚細胞、神経系細胞、または眼細胞)、またはこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0132】
いくつかの実施形態では、投入材料は、線維芽細胞、軟骨細胞、メニスカス線維軟骨細胞、幹細胞、骨髄間質(幹)細胞、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、誘導多能性幹細胞、分化幹細胞、組織由来細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、上皮細胞、内皮細胞、筋芽細胞、軟骨芽細胞、骨芽細胞、破骨細胞、及びこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0133】
細胞は、ドナー(異質遺伝子型)またはレシピエント(自家)から入手され得る。細胞はまた、樹立細胞培養株からのものであり得る、または所望の遺伝子型または表現型を得るために遺伝子工学及び/または遺伝子操作を受けた細胞であり得る。いくつかの実施形態では、組織片を使用することもでき、これは、同じ構造内にいくつかの異なる細胞タイプを提供し得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、細胞は、ヒトまたは動物の好適なドナーから得られ得る、または細胞を移植する対象から得られ得る。哺乳類動物種には、ヒト、サル、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、及びラットが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、細胞はヒト細胞である。別の実施形態では、細胞は、イヌ、ネコ、ウマ、サル、または任意の他の哺乳動物などの動物に由来し得る。
【0135】
哺乳動物細胞の好適な増殖条件は、当技術分野では周知のものである(Freshney,R.I.(2000)Culture of Animal Cells, a Manual of Basic Technique. Hoboken N.J., John Wiley & Sons;Lanza et al. Principles of Tissue Engineering, Academic Press;第2版2000年5月15日;及び Lanza&Atala, Methods of Tissue Engineering Academic Press;第1版2001年10月)。細胞培養培地は一般に、必須栄養素、及び任意で、培養される細胞タイプ(複数可)に応じて選択され得る成長因子、塩、ミネラル、ビタミンなどの追加要素を含む。細胞の成長、分化、特定のタンパク質分泌などを向上させるために、特定の成分が選択され得る。一般に、標準的な増殖培地には、110mg/Lのピルビン酸及びグルタミンを含み、10~20%のウシ胎児血清(FBS)または仔ウシ血清が追補されたダルベッコ変法イーグル培地、低グルコース(DMEM)が含まれ、100U/mlのペニシリンは、当技術分野で周知の他の様々な標準的培地と同様に好適である。増殖条件は、使用する哺乳動物細胞のタイプ及び所望する組織により異なる。
【0136】
いくつかの実施形態では、細胞タイプ特異試薬は、該当する細胞タイプと共に使用する主題の投入材料において、有利に利用され得る。例えば細胞外マトリックス(「ECM」)は、対象の組織から直接抽出され、次いで可溶化され、投入材料に取り入れられ、プリントする組織のための組織特異的投入材料が生成され得る。このようなECMは、患者のサンプルから容易に入手でき、及び/またはzPredicta(rBone(商標)、zpredicta.com/home/productsにて入手可能)などのサプライヤから市販されている。
【0137】
活性剤
いくつかの態様では、本発明の実施形態による投入材料は、少なくとも1つの活性剤を含み得る。このような活性剤の非限定的な例として、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-12、BMP-13、塩基性線維芽細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子-1、線維芽細胞増殖因子-2、血小板由来増殖因子-AA、血小板由来増殖因子-BB、多血小板血漿、IGF-I、IGF-II、GDF-5、GDF-6、GDF-8、GDF-10、血管内皮細胞由増殖因子、プレイオトロフィン、エンドセリン、ニコチンアミド、グルカゴン様ペプチド-I、グルカゴン様ペプチド-II、副甲状腺ホルモン、テネイシン-C、トロポエラスチン、トロンビン由来ペプチド、ラミニン、細胞結合ドメインを含む生物学的ペプチド及びヘパリン結合ドメインを含む生物学的ペプチド、治療剤、並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0138】
本明細書で使用される用語「治療剤」は、対象において局所的にまたは全身的に作用する生物学的、生理学的、または薬理学的に活性な物質である任意の化学的部分を指す。「薬物」とも称される治療剤の非限定的な例は、Merck Index、Physician’s Desk Reference、及びThe Pharmacological Basis of Therapeuticsなどのよく知られた文献に記載されており、これらには、薬、ビタミン、ミネラルサプリメント、病気または疾病の治療、予防、診断、治癒、または緩和に使用される物質、体の構造または機能に影響を与える物質、または生理学的環境に置かれた後に生物学的に活性化するもしくはより活性化するプロドラッグが、非限定的に含まれる。いくつかの実施形態では、対象への移植時に、本明細書に記載の投入材料から、隣接する組織または流体に放出することができる1つ以上の治療剤が使用され得る。治療剤の例には、抗生物質、麻酔薬、再生または組織治癒を促進する、または痛み、感染、もしくは炎症を軽減する任意の治療剤、あるいはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
追加の活性剤には、タンパク質、ペプチド、核酸類似体、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸(DNA、RNA、siRNA)、ペプチド核酸、アプタマー、抗体またはその断片もしくはその一部、抗原またはエピトープ、ホルモン、抗ホルモン物質、増殖因子または組換増殖因子並びにその断片及びその変異体、サイトカイン、酵素、抗生物質または抗菌化合物、抗炎症剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、毒素、プロドラッグ、小分子、薬物(例えば薬物、染料、アミノ酸、ビタミン、抗酸化剤)、あるいはこれらの任意の組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0140】
投入材料に含めるのに好適な抗生物質の非限定的な例には、アミノグリコシド(例えばネオマイシン)、アンサマイシン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン(例えばセファゾリン、セファクロル、セフジトレン、セフトビプロール)、グリコペプチド(例えばバンコマイシン)、マクロライド(例えばエリスロマイシン、アジスロマイシン)、モノバクタム、ペニシリン(例えばアモキシシリン、アンピシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン)、ポリペプチド(例えばバシトラシン、ポリミキシンB)、キノロン(例えばシプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、オフロキサシンなど)、スルホンアミド(例えばスルファサラジン、トリメトプリム、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(コトリモキサゾール))、テトラサイクリン(例えばドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリンなど)、クロラムフェニコール、リンコマイシン、クリンダマイシン、エタンブトール、ムピロシン、メトロニダゾール、ピラジナミド、チアムフェニコール、リファンピシン、チアムフェニクル、ダプソン、クロファジミン、キヌプリスチン、メトロニダゾール、リネゾリド、イソニアジド、フォスフォマイシン、フシジン酸、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0141】
抗体の非限定的な例には、アブシキシマブ、アダリムマブ、アレムツズマブ、バシリキシマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、セルトリズマブペゴル、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、ゲムツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、インフリキシマブ、ムロモナブ-CD3、ナタリズマブ、オファツムマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、アルツモマブペンテテート、アルシツモマブ、アトリズマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベシレソマブ、ビシロマブ、カナキヌマブ、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、デノスマブ、エドレコロマブ、エフングマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、ファノレソマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴリムマブ、イゴボマブ、イムシロマブ、ラベツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、ニモツズマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オレゴボマブ、ペムツモマブ、ペルツズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、スレソマブ、タカツズマブテトラキセタン、テフィバズマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ビジリズマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0142】
本明細書に説明される投入材料での使用に好適な酵素の非限定的な例には、ペルオキシダーゼ、リパーゼ、アミロース、有機リン酸デヒドロゲナーゼ、リガーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ、グルコースオキシダーゼ、及びラッカーゼが挙げられる。
【0143】
主題の投入材料との使用に好適な活性剤の非限定的な追加例には、ダルベッコ変法イーグル培地、ウシ胎児血清、非必須アミノ酸、及び抗生物質などの細胞増殖培地と、線維芽細胞増殖因子、形質転換増殖因子、血管内皮増殖因子、上皮増殖因子、血小板由来増殖因子、インスリン様増殖因子、骨形態形成増殖因子、骨形態形成様タンパク質、形質転換増殖因子、神経増殖因子、及び関連タンパク質などの成長因子及び形態形成因子(増殖因子は当技術分野で既知のものであり、例えばRosen&Thies,CELLULAR & MOLECULAR BASIS BONE FORMATION & REPAIR,R.G.Landes Co.,Austin,Tex.,1995を参照)と、エンドスタチン、及び他の天然由来タンパク質または遺伝子操作されたタンパク質などの抗血管新生タンパク質と、多糖類、糖タンパク質、またはリポタンパク質と、抗生物質及び抗ウイルス剤などの抗感染剤、化学療法剤(すなわち抗癌剤)、拒絶反応抑制剤、鎮痛剤及び鎮痛剤の組み合わせ、抗炎症剤、ステロイド、またはこれらの任意の組み合わせと、が挙げられる。
【0144】
付加的流体
【0145】
本発明の態様は、1つ以上の緩衝液を含む。本発明の実施形態による緩衝液は、投入材料(例えばヒドロゲル)との混和性を有し、投入材料を架橋しない。いくつかの実施形態では、緩衝液は、水性溶媒を含む。緩衝液の非限定的な例には、ポリビニルアルコール、水、グリセロール、プロピレングリコール、スクロース、ゼラチン、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0146】
本発明の実施形態による緩衝液は、約1mPa・s~約5,000mPa・sの範囲の粘度、例えば約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000、1,250、1,500、1,750、2,000、2,250、2,500、2,750、3,000、3,250、3,500、3,750、4,000、4,250、4,500、または4,750mPa・sの粘度を有し得る。いくつかの実施形態では、緩衝液の粘度は、1つ以上の投入材料の粘度と一致するように調節され得る。
【0147】
本発明の態様は、1つ以上のシース流体を含む。本発明の実施形態によるシース流体は、少なくとも部分的に、分注チャネル110から分注される投入材料を包むまたは「シース」するために使用することができる流体である。いくつかの実施形態では、シース流体は、水性溶媒を含む。シース流体の非限定的な例には、ポリビニルアルコール、水、グリセロール、プロピレングリコール、スクロース、ゼラチン、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。本発明の実施形態によるシース流体は、約1mPa・s~約5,000mPa・sの範囲の粘度、例えば約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000、1,250、1,500、1,750、2,000、2,250、2,500、2,750、3,000、3,250、3,500、3,750、4,000、4,250、4,500、または4,750mPa・sの粘度を有し得る。いくつかの実施形態では、シース流体の粘度は、1つ以上の投入材料の粘度と一致するように調節され得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、シース流体は、化学架橋剤を含む。いくつかの実施形態において、化学架橋剤は、二価カチオンを含む。二価カチオンの非限定的な例には、Cd2+、Ba2+、Cu2+、Ca2+、Ni2+、Co2+、またはMn2+が含まれる。好ましい実施形態では、Ca2+が二価カチオンとして使用される。いくつかの実施形態では、シース流体中の二価カチオンの濃度は、約80mM~約140mMの範囲、例えば約90、100、110、120、または130mMである。
【0149】
使用方法
本発明の態様は、線形繊維構造、1つ以上の繊維構造を含む平面構造、または平面構造の2つ以上の層を含む三次元(3D)構造をプリントする方法を含む。いくつかの実施形態では、方法は最初に、プリントする平面または3D構造の設計図を提供することを含む。設計図は、市販のCADソフトウェアを使用して作製され得る。いくつかの実施形態では、設計図は、プリントする構造(複数可)内の特定の場所に割り当てる特定の材料に関する情報を含む(例えば複数の材料を含む異質構造の場合)。
【0150】
いくつかの実施形態では、方法は、3Dプリンタの使用を含み、プリンタは、プリントヘッドと、プリントヘッドが分注する材料を受け取る受け面と、受け面に動作可能に接続された位置決めユニットであって、受け面上の三次元空間内の位置にプリントヘッドを位置決めする当該位置決めユニットと、を備える。例えば、本明細書で提供されるプリントシステムの様々な実施形態は、平面または3D構造をプリントする方法で使用され得る。
【0151】
方法の態様は、プリントヘッドが分注する1つ以上の投入材料を提供することを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞タイプは、投入材料と適合性があり、任意で投入材料内に調合される。いくつかの実施形態では、シース流体は、プリントヘッド内での投入材料の動きを潤滑する潤滑剤として機能する。いくつかの実施形態では、シース流体は、ヒドロゲルがプリントヘッドから分注される前または分注されている間に、ヒドロゲルの少なくとも一部を固化する架橋剤を含む。
【0152】
方法の態様は、設計図を3Dプリンタに通信することを含む。いくつかの実施形態では、通信は、例えばプログラム可能な制御プロセッサにより実現され得る。いくつかの実施形態では、方法は、三次元空間におけるプリントヘッド及び受け面の相対的位置決めを制御することと、同時に、プリントヘッドからシース流体及び投入材料を単独でまたは組み合わせて分注することを含む。いくつかの実施形態では、プリントヘッドから分注される材料は、シース流体が投入材料を包むように、同軸状に分注される。このような同軸構成により、シース流体中の架橋剤は投入材料を固化することが可能となり、これにより、固化した繊維構造が生成され、プリントヘッドから分注される。
【0153】
いくつかの実施形態では、方法は、分注された繊維構造の第1の層を受け面上に堆積させることであって、第1の層は設計図により指定された繊維構造の構成を含む、堆積させることと、第1の層及び後続の層の上に後続の繊維構造を堆積させる堆積ステップを繰り返すことであって、これにより、3D構造を作製するために設計図により指定された幾何学構成で、分注された繊維構造の層の上に層を堆積させる、堆積ステップを繰り返すことと、を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、複数の投入材料、例えば、少なくともいくつかが1つ以上の細胞タイプを含む複数のヒドロゲルは、制御された順序で堆積され、これにより、堆積させる投入材料及び細胞タイプを、設計図により指定された幾何学構成で制御して配置することが可能となる。
【0155】
いくつかの実施形態では、方法は、受け面から、及び任意で分注された繊維構造の表面から、過剰流体を除去することを含む。例えば、過剰流体の除去ステップは、プリントプロセス全体を通して連続的に行うことができ、これにより過剰流体は除去されるが、過剰流体は、除去ステップを行わなかった場合、設計図により提供される幾何学構成で分注された繊維構造を積層することを妨げ得る。あるいは、過剰流体の除去ステップは、1つ以上の堆積ステップと連続して、または同時に、プリントプロセス全体を通して断続的に行うことができる。いくつかの実施形態では、過剰流体の除去は、受け面から、及び任意で分注された繊維構造の表面から、流体を引き抜くことにより達成される。いくつかの実施形態では、過剰流体の除去は、流体の通過を可能にするサイズの細孔を有する受け面を通して過剰流体を引き抜くことにより、達成される。いくつかの実施形態では、過剰流体の除去は、分注オリフィスから分注された後に蒸発する流体を提供することにより達成される。
【0156】
本発明の態様は、1つ以上の投入材料を含む3D構造を作製する方法を含む。3D構造は、対象における損傷したまたは罹患した組織の少なくとも一部を修復及び/または交換するのに利用される。
【0157】
前述のように、Cd2+、Ba2+、Cu2+、Ca2+、Ni2+、Co2+、またはMn2+を含むがこれらに限定されない任意の好適な二価カチオンは、化学架橋性投入材料を固化するために、主題の方法と併せて使用され得る。好ましい実施形態では、Ca2+が二価カチオンとして使用される。好ましい一実施形態では、化学架橋性投入材料は、Ca2+を含む溶液と接触して、固化した繊維構造を形成する。いくつかの実施形態では、シース液中のCa2+の濃度は、約80mM~約140mMの範囲、例えば約90、100、110、120、または130mMである。
【0158】
特定の実施形態では、投入材料は、約5秒未満で、例えば約4秒未満、約3秒未満、約2秒未満、または約1秒未満で、固化する。
【0159】
本発明の態様は、ソフトウェアツールを使用して、パターン化された方法で1つ以上の投入材料を堆積させて、多層3D組織構造へと形成される固化構造の層を形成する方法を含む。いくつかの実施形態では、多層3D組織構造は、複数の哺乳動物細胞を含む。有利なことに、主題の投入材料の成分(例えば哺乳動物細胞タイプ、細胞密度、マトリックス成分、活性剤)を調節することにより、主題の方法を使用して、多層3D組織構造を作成することができ、多層3D組織構造は、3次元空間内の任意の特定の位置に、正確に制御された組成を有する。よって、主題の方法は、複雑な三次元組織構造の生成を容易にする。
【0160】
いくつかの実施形態では、方法は、プリント繊維内に中空コアを形成するために、コアチャネルを通して緩衝液及び/またはシース流体を、1つ以上のシェルチャネルを通して1つ以上の投入材料を、シース流チャネル118を通してシース流体を、同時に分注することを含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、コアチャネル内の非架橋性材料は緩衝液を含み、シース流チャネル118内のシース流体は化学架橋剤を含み、シース流体交差部で接触が起こり、分注チャネル110内で架橋性材料の流れの外面は固化する。
【0162】
いくつかの実施形態では、コアチャネル内の非架橋性材料は化学架橋剤を含み、シース流チャネル118内のシース流体は水性溶媒を含み、第1の流体集束交差部で接触が起こり、分注チャネル110内で架橋性材料の流れの内面は固化する。
【0163】
いくつかの実施形態では、コアチャネル内の非架橋性材料は化学架橋剤を含み、シース流チャネル118内のシース流体は化学架橋剤を含み、第1の流体集束交差部で接触が起こり、分注チャネル内で架橋性材料の流れの内面は固化し、シース流体交差部で接触が起こり、分注チャネル110内で架橋性材料の流れの外面は固化する。
【0164】
いくつかの実施形態では、システムは、異なる投入材料を含む別個の流体リザーバに接続された少なくとも2つのコア入口サブチャネルを含むコアチャネルを含む、プリントヘッドを含み、方法は、シェル入口サブチャネル126を介して異なる投入材料を交互に分注して、連続繊維の長さに沿って異なるコア材料を含む、固化繊維構造を生成することを含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、システムは、異なる材料を含む別個の流体リザーバに接続された少なくとも2つのシェル入口サブチャネル126を含む第1のシェルチャネルを含む、プリントヘッドを含み、方法は、シェル入口サブチャネル126を介して異なる投入材料を交互に分注して、連続繊維の長さに沿って異なるシェル材料を含む、固化繊維構造を生成することを含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、システムは、異なる投入材料を含む別個の流体リザーバに接続された少なくとも2つのシェルチャネルを含むプリントヘッドを含み、方法は、第1及び第2のシェルチャネルを介して異なる投入材料を同時に分注して、異なる同心状シェルを含む固化繊維構造を作成することを含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、システムは、強化ヒドロゲル材料及び生体適合性ヒドロゲル材料を含む別個の流体リザーバに接続された少なくとも2つのシェル入口サブチャネル126を含む第1のシェルチャネルを含む、プリントヘッドを含み、方法は、灌流可能な組織繊維を生成するために、強化ヒドロゲル材料と生体適合性ヒドロゲル材料を分注チャネル110を介して交互に分注することを含む。別の実施形態では、プリントヘッドは、第2のシェルチャネル128を更に含み、方法は、同じまたは異なる強化ヒドロゲル材料を第2のシェルチャネル128を介して分注して、第1のシェルの周りに同心状の第2のシェルを生成することを含む。
【0168】
代替の実施形態では、固体コア繊維は、別の方法ではプリントできない材料をプリントする手段として、生成することができる。この方法では、アルギン酸塩などの簡単にプリントできるシェル材料を選択でき、ピュアコラーゲンなど、他の方法ではプリントできないコア材料を選択できる。ここで、コア材料を切り替える機能により、ユーザはコア組成を更に制御できる。コア材料は、異なるタイプの細胞を含み得て、繊維の長さに沿って配列され得るか、または組み合わされ得る。この場合、シェルの材料を切り替えることもでき、異なるタイプの細胞を含めることもできる。
【0169】
実用性
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるシステム及び方法を使用して生成される構造は、例えば様々な化合物及び組成物に対する細胞応答を特定することが重要である創薬の分野において、有用であり得る。本明細書で提供されるシステム及び方法の実施形態を使用して作製される平面及び3Dの細胞培養物の使用は、従来の2D細胞培養物と比較して、生体内の細胞及び組織条件により酷似する実験条件を提供することができる。細胞の3D構成は、生体内の細胞間相互作用及び外部刺激に対する応答をより厳密に模倣でき、本明細書で提供されるシステム及び方法を使用して生成できる3D構造の混成性質により、組織及び潜在的に器官の研究が可能となる。本明細書で提供されるシステム及び方法の実施形態を使用して作製される3D細胞含有構造は、化粧品を試験するための代替手段を提供することにより、化粧品業界に同様の利益を提供することができると考えられる。
【0170】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるシステム及び方法の様々な態様は、標準的なウェルプレート技術との適合性を有する。ウェルプレートまたはウェルプレートインサートは、本明細書で提供される方法及びシステムにおいて、プリントベッドと共に、またはプリントベッドの一部として、使用され得る。従って、本明細書で提供されるシステム及び方法の様々な実施形態は、ウェルプレートを利用する機器及び行為との適合性を有するため、既存のプロセスの流れに容易に統合されることが可能である。
【0171】
いくつかの実施形態では、主題のプリントヘッド内の1つ以上の流体チャネルは、他のマイクロ流体モジュールとの適合性を有する。例えば、既知のマイクロ流体モジュールが、分注オリフィスの上流で、本明細書で提供されるシステムのプリントヘッドに含まれ得る。このようなモジュールには、例えば、細胞計数モジュール、細胞選別モジュール、細胞分析モジュール、及び/または濃度勾配生成モジュールが含まれ得る。
【0172】
いくつかの実施形態では、3Dプリントのスループットは、システムに追加のプリントヘッドを並列に追加することにより、向上させることができる。各プリントヘッドは、マルチ材料構造をプリントするのに必要な要素の全てを備えているため、システムに追加のプリントヘッドを含めることにより、いくつかの3D構造を同時にプリントすることが可能となる。
【0173】
本明細書において言及される全ての特許及び特許公開は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0174】
上記の発明は、理解を明確にするために例示及び実施例を用いて詳細に説明してきたが、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、これらにある変更及び修正を加え得ることは、当業者には容易に明らかである。
【0175】
主題の発明は、複数の材料の切り替えを可能にするため、連続的にプリントしながら、脈管壁の組成(細胞タイプ及び生体材料の組成)を、チャネルの長さに沿って変更することができる。この一例として、尿細管の生物学的構造及び機能の再現があり、近位端の壁の組成は、遠位端の壁の組成とは異なる。または、プリントした灌流可能な3D肝臓組織の場合、脈管のより大きな開口端部では、低透過性の門細動脈内皮細が脈管壁に裏打ちされ、類洞を形成するために導管が狭くなる脈管のさらに奥では、より透過性の高い類洞内皮細胞が脈管壁に裏打ちされ得る。肝臓組織と同様に、灌流されたチャネルの内容物と、外側シェルのうちの1つ以上でのチャネルの外側の異なるタイプの間質細胞との相互作用を調査することが望ましい。これは、せん断流の影響と組み合わせた毒性の多組織モデルを生成するために適用することができる。単一の組織を、その長さに沿って繊維のシェルの細胞内容物を切り替えてプリントして、様々な器官タイプに対応する様々な領域を有するコード化された中空繊維を生成することができる。このシェル内容物の切り替えは、非マイクロ流体シリンジベースのシステムでは不可能である。
【実施例
【0176】
実施例1:灌流可能な組織繊維
液体コアと細胞含有ゲルシェルを有するバイオプリントされた灌流可能な組織繊維で、プリント後、針を繊維のコアに差し込んで、繊維を通して目的の流体を押すポンプに取り付けることができるものには、商業的及び臨床的に大きな関心が集まっている。このようにして、細胞含有繊維を通る栄養分の流れ、薬物または他の目的の化合物の流れをシミュレートすることができる。ただし、残念ながら、針を繊維に接続する際に、このような接続を行うための機械的要件が、機能生物学的に支持するために必要な要件とは大きく異なるという、重大な課題が生じる。したがって、プリント中にシェルの材料をリアルタイムで切り替えることで、ユーザは、針を接続するための領域(繊維端部)には強度の高い材料を、生体機能をサポートするための領域には軟らかい細胞含有材料を用いてプリントすることが可能になる。
【0177】
図12に示すように、主題の発明による灌流可能な組織繊維は、4重量%の低粘度アルギン酸ナトリウムからなる強化ヒドロゲル材料(青)、同じアルギン酸塩1.3重量%からなる生体適合性ヒドロゲル材料(赤)でバイオプリントされ、液体コアは3%のポリビニルアルコールで構成された。次に、標準30ゲージのステンレス鋼ルアーロック針を使用して繊維に接続し、ゼラチンとトランスグルタミナーゼの混合物を使用して、針/繊維接続を密封し、灌流中の漏れを防いだ。
【0178】
更に、適切な接続を可能にするために灌流可能な繊維の端部に適切な補強があったとしても、より軟らかい細胞含有材料を含む繊維の長さに沿って、特により高い流量で、破裂が依然として起こり得る。したがって、図13に示されるように、本発明は、繊維がその全長に沿って支持されるように、同じまたは異なる強化ヒドロゲル材料を含む第2の同心状シェル層を、任意選択で追加することを更に企図する。
【0179】
前述は本発明の原理を単に例示したものに過ぎない。当業者であれば、本明細書では明示的に説明または図示していないが、本発明の原理を具体化し、その趣旨及び範囲内に含まれる様々な構成を考案することが可能であろうことが理解されよう。さらに、本明細書中に列挙した全ての実施例及び条件付き言語は、主に、本発明の原理及び本技術を促進するために本発明者らが寄与する概念への読者の理解を支援することを意図したものであり、そのような具体的に列挙した実施例及び条件に限定されるものではないと解釈すべきである。さらに、本発明の原理、態様及びそれらの特定の実施例を列挙する本明細書中の全ての記述は、その構造的等価物と機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような均等物は、現在公知の等価物及び将来開発される等価物の両方、すなわち構造にかかわらず同じ機能を発揮するように開発された任意の要素を含むことが意図されている。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示し、記載した模範的な態様に限定されることを意図されてはいない。むしろ、本発明の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲により具体化される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】